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速水奏「とびきりの、キスをあげる」
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27 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/16(火) 22:32:51.80 ID:pcs6abfO0
P(この日を区切りに俺の仕事は忙しくなり、奏と話す機会は減っていった)
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
――ある日 廊下
P「トレーナーさん」
トレーナー「ああ、プロデューサーさん。お疲れさまです」
P「お疲れさまです。いま大丈夫ですか?」
トレーナー「ええ。どうしました?」
P「奏、最近どうです」
トレーナー「奏ちゃんですか? レッスンはいつも通りですね」
P「いつも通り、ですか」
トレーナー「ええ、特に何もなく。なんか、悩みでもありました?」
P「悩み、という程のことじゃないです。ただまぁ、最近話してないななんて」
トレーナー「そうですねぇ。……引っ掛かるほどじゃなかったんですが」
P「なにか?」
トレーナー「奏ちゃんって、要領いいじゃないですか。大抵のことはすぐこなしちゃうような」
P「ええ」
トレーナー「ここ数回のレッスンは、割と普通なんですよね」
28 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/16(火) 22:33:19.23 ID:pcs6abfO0
P「普通?」
トレーナー「他の子と同じく、出来るようになるまで何回かのトライがあります。でも、みんなそれが普通なので、気に留めるほどじゃないって言いますか」
P「うーん」
トレーナー「覚えたては早くても、そこから先って地道な努力で少しずつ重ねていくしかないですよね。だから奏ちゃんも、そんな時期に来たのかなって」
P「確かに、これまでの吸収速度がすごかっただけ、ですかね」
トレーナー「ええ。まだまだ伸びると思いますよ」
P「そうですね。ありがとうございました」
トレーナー「いえいえ」
P「……」
29 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/16(火) 22:33:48.66 ID:pcs6abfO0
――ある日 事務所
千川ちひろ「レッスン場の使用記録、ですか?」
P「ええ。最近使われています?」
ちひろ「使われていますよ。候補生の子も使いますし、デビューしてからの子も自主練に」
P「まあ、そうですね。誰が使っているかはわかりますか」
ちひろ「記録はしていますけど……プロデューサーさんが知りたいのは誰ですか?」
P「あー、その」
ちひろ「あら。知られたくない感じです?」
P「そういうわけでは。……そうですよね、なんでだろ」
ちひろ「ちょ、ちょっと。調子狂っちゃいますね」
P「いえ、自分でもなんでかよくわからなかったんで」
ちひろ「はぁ」
P「奏はどんなです?」
ちひろ「奏ちゃんですか?」
30 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/16(火) 22:34:15.74 ID:pcs6abfO0
ちひろ(あー……)
P「ちひろさん?」
ちひろ「いえ。ええと、奏ちゃんはよく使って……あら、ここ最近はそうでもないですね」
P「そうですか」
ちひろ「彼女、なにか気になることでも?」
P「いえ……伸び悩んでいるのかなって」
ちひろ「でも、仕事もレッスンも普通にこなしてくれてるみたいですが」
P「それはそうなんですが。……考え過ぎですかね」
ちひろ「あの子はいいアイドルになると思いますよ」
P「俺もそう思います。なので、気にかけていたんですが」
ちひろ(なるほど……)
ちひろ「でも、伸び悩んでいるなら、自主練習を増やしていたりしませんか?」
P「いえ、なんか奏は、逆なタイプな気がします」
ちひろ「そうなんですか?」
31 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/16(火) 22:34:46.88 ID:pcs6abfO0
P「根拠はないですが……基本、器用なんで、上手くいかないことがあると意欲も下がるのかなって」
ちひろ「そう言うことですか」
ちひろ「そうですね。誰しも壁にぶつかることはあるでしょう。気が付いたなら、プロデューサーさんが声を掛けてあげてもいいんじゃないですか?」
P「ええ……ちょっと最近忙しくて」
ちひろ「確かに、彼女だけの担当ってわけじゃないですからね。でも……」
ちひろ「彼女の担当プロデューサーは、あなただけですよ」
P「はは、耳が痛い。まあ、近いうちに話をしておきます」
ちひろ「ちゃんとコミュニケーションとって、捕まえておいて下さいね」
P「はい」
ちひろ「せっかくの食い扶持……こほん。金の成る……こほん」
P「……」
ちひろ「事務所にお金を運んできてくれる金の卵なんですから」ニコッ
P「言い直して酷くなっていくのはどうかと思います」
32 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/16(火) 22:35:23.24 ID:pcs6abfO0
――ある日 撮影スタジオ
カシャッ カシャッ
アイドル「あの、もっとこんな感じのどうですか?」
カメラマン「あらっ、良いわねソレ! 服の印象がもっと良くなるわ!」
アイドル「ありがとうございます!」
カメラマン「とるわよ〜」
カシャ カシャッ
カメラマン「はいOK〜! 一度休憩、衣装変えて次いくわよ!」
アイドル「はーい」
P(……そういや、奏は指示には従えるけど、自分から提案するなんてことはしなかったな)
P(そこは彼女の弱点かもな)
P(まあこういうのは、回数を重ねないと中々できるもんじゃないけど)
カメラマン「お。Pちゃん、おつかれ」
P「お疲れさまです。どうですか」
カメラマン「あの子は慣れてるからなんも問題ないわよ」
P「まあ、そうですね」
33 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/16(火) 22:36:15.68 ID:pcs6abfO0
カメラマン「この子より、もっとついてあげた方がいい子がいるんじゃないの?」
P「え? あ、えーっと……速水のことですか」
カメラマン「この前撮ってあげたわよ。アイドルが板についてきたわよね」
P「そう見えました?」
カメラマン「初めての写真からすごく成長したのが分かったわ。もちろん、まだまだなところはあるけど」
P「ええ。仕事はこなしてくれていますが……悩んでいるような感じしました?」
カメラマン「ちょっとリテイクあったかなってくらいよ。でも許容範囲」
P「それなら問題ないのでは……」
カメラマン「確かに何か悩みがあるっていう感じじゃないけどね。勘違いしちゃダメよ。何かがわだかまっているのはあるかもしれないわ」
P「わだかまってる?」
カメラマン「カメラを通してね、その子のスタイルが見えてくるの。身体のスタイルじゃないわよ。その子が持っている芯みたいなものね」
P「……すごいですね」
カメラマン「その子を真剣に見たら、そう言うのは分かるはず。気づいてないわけじゃないんでしょ」
P「ええ。そこは、一応」
カメラマン「ああいう子は自分の成長で悩んでいるとか、どうしたらいいかわからない、じゃなくて……たぶん、もっと先の悩みを持っているんだわ」
P「……」
カメラマン「自分の芯はあるのよ。でもまだ細くて脆い」
カメラマン「自分一人で立つにはまだ幼いその芯を、誰に委ねていいのかわからない。そんな感じ」
34 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/16(火) 22:37:12.25 ID:pcs6abfO0
カメラマン「いっそ大人だったらよかったのにね。自分のことを全部自分の責任で決めていいなら、彼女も吹っ切れることができたのかも」
P「よく分かるんですね」
カメラマン「あん? そういうのはね、アンタが一番分かってあげてないといけないところでしょ」
P「返す言葉もありません……」
カメラマン「ちゃんと話聞いてあげてる?」
P「……忙しくて奏とはあまり」
カメラマン「会話はプロデューサーの重要な武器でしょ。そんなに惚れこんでいるのなら、話すためにどんなことしてでも捕まえなさいな」
P「惚れこんで……?」
カメラマン「はい? 違うっての?」
P「目立つので気にはかけていますが……うーん」
カメラマン「迂闊に下の名前で呼んで、惚れていないも何もないでしょうが」
P「えっ」
カメラマン「大人びて見えてもあの子はまだ高校生の女の子でしょ。オラッ、不安取り除いてあげなさよ!」バシッ
P「痛っ! 背中叩かなくてもいいでしょう!」
カメラマン「わははは、ごめんね! 青臭いの見ていたらつい!」
35 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/16(火) 22:37:39.69 ID:pcs6abfO0
P(ちひろさんやカメラマンさんの言う通り、奏とよく話し合った方がいい)
P(というか、それが避けられない時期に来たというべきかもしれない)
P(避けられない?)
P(俺は避けようとしていたんだろうか)
P(いや……)
P(自分で気が付いている)
P(速水奏に、本気でアイドルに取り組んでもらうとき。自分も一蓮托生になるのだろうと、気づいていた)
P(彼女の本気を受け止めるには、自分の本気を見せなくてはならない)
P(これを乗り越えないとこの先に道はない)
P(この話し合いで例え、奏がアイドルをやめることになっても。それを覚悟して話さなければ、彼女は応えてくれない)
P(だからこれは)
P(奏にも、俺にも。もっと先に進むために、必要なことなんだろう)
36 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/16(火) 22:39:51.85 ID:pcs6abfO0
今日はここまで
次で完結、スムーズにいけば明日終わります
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/17(水) 11:10:53.72 ID:PyWg68JcO
乙、待ってる
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/17(水) 19:13:08.22 ID:CDP3szDXO
良いぞ良いぞ
39 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:24:14.68 ID:3GVZYvuT0
――事務室
P(その日。一通のメールが届いた)
P「ああ」
カタカタ カチ
P「できたのか」
P(これで、全部のピースが揃った)
P(アイドル・速水奏を形づくるステージのピース)
P(……いや。まだ本人がいる。肝心の奏が必要だ)
P「ちょうどいいな」
P(奏と話す口実になる)
P(まだ仕事を始めてもいない頃、ここでなら心の空白を埋められそう、と彼女は言った)
P(彼女の空白を、知らなければいけない)
P(奏は素直に生きられる女じゃないのだろう。だけど、その素顔を隠し通せる世界じゃない)
P(彼女が満足できる場所。心から輝ける場所を用意してやりたい)
P(それは自分だからできることで……俺がやりたいことなんだ)
40 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:24:43.99 ID:3GVZYvuT0
――後日 ミーティングルーム前
奏(珍しく、プロデューサーさんから呼び出された)
奏(なにかあったかな。思い当たることは、なくもないけど)
コンコンコン
奏「Pさん」
P「ああ。はいってくれ」
ガチャ パタン
P「久しぶり、という程じゃないか」
奏「数週間ぶり、な気はするわ」
P「掛けてくれ」ガタ
奏「ええ」ギシッ
P「さて。今日は、一つ大きな仕事をもってきた」
奏「大きな……期待していいのかな」
P「ライブデビュー」
奏「ライブ……」
P「そしてそのための」
P「アイドル・速水奏のデビュー曲だ」
41 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:25:10.04 ID:3GVZYvuT0
♪〜
奏「……」
P「まずは聴いてみて、どうだった」
奏「ハウス系、というのかしら」
P「EDMかな。ダンスミュージックって意味じゃ似てるところある」
奏「これが……」
P「奏の曲だ」
奏「私のイメージになるのね」
P「そう」
奏「歌詞は……へぇ、こんな感じなのね」
奏「なんて言っていいのかしら。とても格好いい曲だけど……格好良すぎない?」
P「そうか?」
奏「高校生にこんな歌うたわせるつもり?」
P「こんな曲に負けない高校生なんて、そうそういないぞ」
奏「背伸びしているみたいで?」
P「そこも含めて、速水奏が歌うからいいんだよ」
奏「そう……Pさんが言うのなら、そうなのかもね」
42 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:25:36.45 ID:3GVZYvuT0
P「さて、是非ともこの曲でステージに立ってほしいんだけど」
奏「けど?」
P「この曲を奏にあげるには、ひとつ条件がある」
奏「条件、ね。どんな?」
P「俺の質問に答えてほしい」
奏「……内容を聞いてからでも?」
P「それでいい」
奏「じゃあ。どうぞ」
P「ああ」
P「奏。アイドル、楽しいか」
奏「……」
奏「仕事はやりがいあるわ」
奏「普通のアルバイトでも、学校の部活でも、こんなことはできないし」
奏「他のアイドルとも親交ができて、なかなかできない体験ができているわね」
43 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:26:02.43 ID:3GVZYvuT0
P「もっとシンプルなことを聞いてるんだ。楽しいかどうか」
奏「……いまは、楽しんでいるわ」
P「いまは?」
奏「いまは」
P「いつか、楽しめなくなる予感でもしているか」
奏「……どんなことでも、いずれ飽きが来るものだと思うけど」
P「本当に飽きかな」
奏「どういう意味かしら」
P「奏は……自分の本気を出してみたことはあるか」
奏「なあに、Pさん。私が本気で取り組んでないように見えた?」
P「いや、奏は本気だよ」
P「奏が、奏でいるままの限界まで、きっちり頑張っている」
奏「私でいるままの限界?」
44 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:26:29.92 ID:3GVZYvuT0
P「本当器用に、大概のことをやってのける。それでアイドルを続けていくことも奏にはできるかもしれない。そんなこと、多くの人が望んでもでることじゃない」
P「そんな器用な奏だからこそ、自分ができる限界が見えているんじゃないか」
奏「……」
P「それなのに、その先を軽々追い越していく人がいる。自分がたどり着けない場所に立っている人がいる」
P「何でもできるということは、何にもできないということ、なんて言っていたか」
P「少しその意味が……奏の空虚さが、分かった気がするよ」
奏「私の、何を?」
P「これまで、折れるほどに費やす何かが無かったんだろう。だから空虚だったんだ」
45 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:27:07.92 ID:3GVZYvuT0
P「実力の差が見えた時、急に冷めたりな。自分への失望といってもいいかもしれない」
奏「…………まるで、知っているかのように言うのね」
P「まったくの見当はずれ、だとは思ってないよ。何度も考えた上で、いま聞いている」
P「高垣さんを見た時から、あの人がずっとちらついてくるんだろう」
奏「……」
P「あの人がトップだって分かって、自分にはいけないと思ったか」
P「自分にはできないなんて思ったか」
奏「……ふぅ……」
奏「そうかも、ね」
奏「酷い人。私の、自分でも嫌な部分を突き付けて。どういうつもり?」
P「どうもこうもないよ。自分のそんなところを嫌だというけど、俺にとってはそうでもないんだ」
奏「Pさんにとって?」
P「ああ。アイドルには、必要なものになってくる」
奏「それは、なに?」
P「負けず嫌い」
奏「……そんなつもりは無いわ」
P「いや、あの高垣楓と自分を比べようとしているところなんて、だいぶ負けん気が強いよ」
P「その気概は、この先に必要なんだ」
46 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:27:49.01 ID:3GVZYvuT0
奏「負けず嫌いだったら、冷めたりしないんじゃない」
P「だから、そこも分かるんじゃないか? 自分が努力でいける限界が」
奏「……」
P「いや、正直芸能界向きだよ。その性格と器用さは」
奏「ただのコンプレックスを、長所みたいに言うのね」
P「そんなの多かれ少なかれ誰もが持っているだろ。上手く活かせたらそれは長所にもなる」
奏「……私は」
奏「私は、Pさんがいう程の女じゃないわ。ただ背伸びして、つま先立ちでよろけそうな普通の少女よ」
P「だから?」
奏「だから、って……そんな女に何の魅力があるっていうの」
P「だからいいんじゃないか」
奏「……」
P「少しはアイドルに慣れてきたと思ったけど、まだまだ候補生だな」
P「上辺だけでファンを魅了できるはずもない。嘘をつくにしても全身全霊でつかない限りファンは騙せない」
P「その奥底まで見せられるから、応援したくなるし、練習の末に絞り切った歌とダンスに心震わされるんだろう」
47 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:28:29.64 ID:3GVZYvuT0
奏「Pさんのアイドル像は分かったわ。それで? 私にも血反吐を吐く努力をしてほしいの?」
P「ああ」
P「俺には欲しいものがある。奏にあの頂点までいってほしいと思っている」
P「いまは、奏のままでいる限界まで、きっちりやっている。だけどそこは」
P「あの人が立っている場所は、手を伸ばしただけじゃ届かないんだ。だから足をあげて一歩ずつ踏み出して、そこまで歩いていく。いや、這ってでも行きたい」
奏「……私には、できないわ」
P「できる」
P「自分を捨ててまで努力したんなら、俺がその舞台を用意する」
奏「やめて」
P「いや、聞いてくれ。なんなら聞いたあとで部屋を出ても構わない」
奏「……」
P「奏の限界じゃない。俺はその先が見たい、そこを超えた奏が見たいんだ」
P「一人で無理なら、俺が超えさせる。奏の限界はそこじゃない」
48 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:29:04.52 ID:3GVZYvuT0
P「だから、俺の見せる景色が奏を満たせるか、俺に賭けてほしい」
P「奏が一緒にいてくれるなら、俺はどこまででも這って行ける」
奏「……」
奏「随分と……恥ずかしい言葉を言うのね」
P「あ、えっと……なんていうか、勢いで」
奏「……」
P「……」
P(いかん、いまさら恥ずかしくなってきた)
P(一緒にいてくれるなら、ってなんだよ……奏が呆れるのも当然……ん?)
奏「……」
P(耳真っ赤だな……)
奏「勢いだって別にいいけど……さすがに泥臭いんじゃない?」
P「アイドルは泥臭いもんだよ」
奏「……私にならできるって、信じているの?」
P「信じている」
49 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:29:31.24 ID:3GVZYvuT0
P「だから、信じてほしい」
P「奏を最高のアイドルにする」
奏「あなたが、私を?」
P「そうだ」
奏「私の、限界の先まで?」
P「ああ」
P「努力が報われる世界じゃない。やっても超えられない壁があるかもしれない」
P「それでもぶつかって超えていくしかない。そうするしかない世界だから」
P「奏が歩み続ける限り、俺は背中を押し続ける」
奏「…………」
P「…………」
奏「負けたわ」
奏「はーっ……」
奏「あの人を見た時……凄い人だと思った。憧れる人だって」
奏「同時にね。あの人に追いつける気がしなかった」
奏「でも」
奏「それでも。私も……」
50 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:30:00.27 ID:3GVZYvuT0
奏「私もそこまで行ってみたい」
P「ああ」
奏「Pさん。あの素敵な人の、隣に並ばせて」
P「ああ。もちろん」
奏「そして……追い越させてくれるのなら」
奏「あげる」
奏「Pさんに私の人生を、あげる」
P「……人生は大げさだろ」
奏「大げさでも何でもない」
奏「私のこれまでの17年を賭ける、アイドルの道なんでしょう」
奏「それがこれからの、私の生き様になるんでしょう」
奏「ならこれは、私の全てだわ」
P「……」
奏「……」
P「そうだな」
P「分かった。一部なんて言わない。丸ごと預からせてもらう」
51 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:30:28.09 ID:3GVZYvuT0
奏「ダメだった時は、そのまま貰ってくれるのは、あり?」
P「え、えー……」
奏「ふふっ」
P「いまは、なし」
奏「いまは?」
P「いまは」
奏「じゃあ、いま、じゃない時を楽しみにしてる」
P「……調子が戻ったようで、なにより」
奏「あーあ。スポ根なんてキャラじゃないと思ったのに」
P「いいじゃないか、それでも」
奏「私のことじゃないわ」
P「ん?」
奏「Pさんのことよ」
P「それはその……勢いというか、流れというか」
奏「いいわ。そんなPさんも素敵よ」
P「……そりゃどうも」
奏「でも、覚悟してね」
P「うん?」
奏「本気になった私がどうなるか」
52 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:30:55.10 ID:3GVZYvuT0
奏「歩くなんて言わない。駆け抜けていくから」
奏「いつまでも、背中を押してね」
P「ああ」
スッ
奏「?」
P「……あ、いや、なんかこう、握手の流れかと思ったんだ。すまん、先走った」
奏「ふっ、ふふ、ふふふっ」
P「あーもう……笑ってくれ」
奏「いえ、ちょっと慣れないことだったから。そうね、手を出してくれる?」
P「ん? ああ」ス…
ギュッ
P「……これは握手とは違うんじゃないか」
奏「握手するなんて言ってないわ。手を繋ぎたかったの」
奏「こうやって、指一本ずつ」
53 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:31:21.89 ID:3GVZYvuT0
奏「温かい手」
P「……奏の方が温かい気がするけど」
奏「そう? 不思議ね。どちらか、熱量が高い方が冷たいって感じるのかと思ったけど」
奏「私一人では出せない熱を。あなたが持ってきてくれた」
奏「Pさんがそうしてくれたなら、私は応えなくちゃいけないわね」
コツ
P(繋いだ手に頭をくっつけて……何しているんだろう、これは)
P「奏」
奏「もう少しだけ」
P「……こんなの、誰かに見られてみろ」
奏「そう? 私と話す時間を取っているんでしょう?」
P「……まぁ」
奏「それなら、ここは月の丘の裏側よ」
P「?」
P「ああ……誰も来やしないって?」
奏「ふふっ、素敵な歌詞ね」
奏「だから、もう少しだけ」
P「……わかった」
54 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:31:50.78 ID:3GVZYvuT0
奏「ねえ、Pさん」
奏「私が折れそうになったら」
奏「またこうしてくれる?」
P「あー…… ……誰にも見られないなら」
奏「ありがとう」
奏「あ、それに加えて……キスはだめ?」
P「悪いけど、それは気分じゃないな」
奏「そう。残念ね」
P「……そろそろいいか」
奏「ええ。名残惜しいけど」スッ…
P「部屋の時間もあるから」
奏「そうね。……続きは、このホテルで?」
P「……」
P「……そうだな、その曲についても話さないといけないんだ」
55 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:32:16.85 ID:3GVZYvuT0
奏「ふ、ふふっ、下手な誤魔化し方ね」
P「うるさいよ。レコーディングは3週間後。ライブはその後だから、まずは歌の方を完璧にしておいてくれ。当然、ライブは踊りながらになる」
P「通常のレッスンメニューに加えて、ボーカルレッスンを集中的に入れる。振付が固まってきたらダンスレッスンも増やす」
奏「ええ……それからライブ?」
P「といってもだいぶ先の話だけどな。それまでに他のアイドルのライブで場慣れしてもらう」
奏「ライブ自体はそれまでに出られるのね」
P「でも覚悟しておいてくれよ。ソロでライブ会場に立つんだ」
奏「そう……」
P「いけるな」
奏「ええ。やってみせるわ」
P「いつもながら、頼もしいよ」
56 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:32:48.21 ID:3GVZYvuT0
奏「この曲は、Pさんが発注したのよね」
P「そう。俺が売り出したいイメージを伝えて作ってもらった曲」
奏「私の曲……私のための曲。この曲は、Pさんからの最初のプレゼントね」
P「……別に俺自身が作曲家さんにお金を出すわけじゃない」
奏「それでも、私を想って作ってくれたものだわ」
P「アイドルとしての速水奏だよ」
奏「それでもいい。あなた色に染めあげてみせて。私、応えられるから」
P「……」
P「気にいったと受け取っておくよ」
奏「ええ」
P「そうだ、奏」
奏「なに?」
P「やってみたいことは無いか」
奏「やってみたいこと?」
P「この曲のライブデビューで、なにかやってみたい演出プランとか」
奏「……それは、あなたの仕事じゃない?」
P「いや、そんなこともない。アイドルの方から、こんなことやりたい、なんて良くある話だから」
奏「そう」
P「プランナーさんとの兼ね合いもあるけど、とりあえず言うだけ言ってみるといい。ミーティングにあげられるかは俺が判断するし、出来るだけ希望に沿うようにする」
奏「……考えておくわ」
57 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:33:43.68 ID:3GVZYvuT0
P「そろそろ時間かな」
奏「月も沈むものね。もっと話をしていたいけど」
P「じゃあまた、時間を取るよ」
奏「ええ。有意義だった……私の歌を貰ったんだもの」
P「ほら。曲のデータと歌詞。自分で聞く分にはいいけど社外秘だぞ」
奏「それはそうよね」
P「じゃあ……奏。これからもよろしくな」
奏「ええ、よろしくね。Pさん」
P「あー。CDが出たら……」
奏「?」
P「なにか美味しいものでも食べに行くか?」
奏「……」
P「あ、いや、別に変な意味は無くて。……あの?」
奏「いえ、そのっ……そう言うのあるって思ってなくって……」
P「そうだよな、いや、気にしないでくれ」
奏「えっ? だ、ダメ!」
P「え?」
奏「その、嬉しいの……だから、行きたい……」
P「あ、ああ。うん、わかった」
奏「……楽しみにしてる」
P「ああ」
奏「俺もだ」
58 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:34:15.16 ID:3GVZYvuT0
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
P(それから俺も奏も、目まぐるしいほど忙しい時間を過ごした)
P(CDデビューからの勢いは爆発的で、もう候補生とは呼べなくなっていた)
P(宣言通り、駆け出し始めたアイドル。その手を引っ張り、背中を押し続けて)
P(ライブの日はまだ遠く、それでも確実に近づいていた)
――事務室
P「セットリストがでたんだが、なかなか難しい位置だ」
奏「難しい? んーと……ふぅん、MC直後になるのね」
P「出番ある直後だからな。はけて出直すより、そのまま残ってソロを始める感じになるだろうけど」
奏「私一人残って、そこからイントロが入ってくるの?」
P「うーん。ビシッと決まりはしないか。でも退場している暇はない。そんな時間観客を待たせていられない」
奏「一度暗転はできる?」
P「他のアイドルが退場できなくなる」
59 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:34:43.48 ID:3GVZYvuT0
奏「うーん……」
P「できるだけインパクトある事したいなとは思うんだが」
奏「ダンサーさんに繋いでもらう……」
P「ん?」
奏「いえ、思いつき。袖から中央の出口までじゃ、時間かかりすぎるものね」
P「そうだな。イントロにそんな時間はないし」
奏「でもやってみたいわね。まるでダンスフロアのようなステージで」
奏「イントロも照明も最高潮。1・2・キスキスの直前で初めて私の姿がみえるの」
P「あー、いいな。気持ちいいくらい盛り上がるだろうけど……」
P「そうだな……イントロのロングバージョンを用意すればできるか?」
奏「用意してもらうの?」
P「それくらいの価値はある。それに作曲の人、アレンジも得意なんだ」
奏「ライブ用に……」
60 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:35:11.26 ID:3GVZYvuT0
P「作ってもらおう。ライブバージョンとして別に収録すればそれでまた売れる」
奏「……抜け目ないわ」
P「売るのが仕事なんですー」
奏「正直なんだから」
P「OK。プランは出たからこれで一回だしてみるよ」
奏「わかった」
P「あとはいつも通りのレッスンと、仕事と、もうそろそろライブの合同練習も始まるな」
奏「ええ。……大丈夫、きちんとやるわ」
P「頼んだぞ」
奏「こちらこそ」
61 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:35:39.30 ID:3GVZYvuT0
――テクニカルリハーサル
スタッフ「次、照明音響セット」「はーい」「演者誘導お願いします」
スタッフ「センターへのカート、あと一人行けるよー」「曲入りだけ出して」
ザワザワ ガヤガヤ
P「やってるか」
奏「プロデューサーさん」
P「おつかれ。なんだ、今日は衣装じゃなかったか」
奏「今日はきっかけだけだから」
P「そうだったな。少し途中で時間貰う」
奏「? ええ……」
スタッフ「次きっかけ入りまーす!」「はーい」
奏「はーい」
P「出番か。いってらっしゃい」
奏「ええ……いってきます。投げキッスはいらないわね」
P「ああ」
62 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:36:07.34 ID:3GVZYvuT0
−−−
奏「イントロでここにポップアップ。ライトが点灯してから0番の位置まで移動」
奏「1番サビまでここね。2番からはステージの下手に移動、か」
奏「移動中のカメラは……あぁ、あそこね。赤いランプ」
奏「目線を送って……あとは下手の端で2番のサビ終わりまで歌とダンス」
奏「曲終わりで戻ってハケ。うん、だいたい入ったかな」
奏「どうかしら? 舞台監督さん、演出家さん? 今の動きで問題があれば教えてください」
舞台監督「舞監おっけーでーす」
演出家「んー。んーー。優等生だね。まあ、問題は無いんで、本番はいい感じにお願いしますねー」
奏「はーい」
演出家「はい、じゃあPさんおっけーよ」
P「どうも。5分くらいで済みますんで」
奏「えっ?」
63 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:36:34.51 ID:3GVZYvuT0
P「おー、思った以上に高いんだな」
奏「どうしたの? プロデューサーさんもステージに立ちたくなった?」
P「俺が立ってどうするんだよ」
奏「そうね……デュエットはちょっとしてみたいけど」
P「せいぜいカラオケ程度にしておくよ」
奏「それで?」
P「ああ。奏は程よく緊張感があるといい働きをしそうだから、いまからプレッシャーを掛ける」
奏「……そんなこと言っていいの?」
P「言っておけば軽く受け取れるだろ」
奏「そういうものかしら」
P「そういうものだよ」
64 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:37:01.84 ID:3GVZYvuT0
P「奏。何を思ってステージに立つ」
奏「何を? んー……無事にステージを成功させる意識かしら」
奏「プロデューサーさんのことを想いながら立ってほしかった? それはいくらなんでも罪作りが過ぎるってものじゃ……」
P「ここから何が見える」
奏「客席……うん、客席一杯にいるお客さん」
P「そう、これから奏が魅了するファンのみんな」
P「その全員の視線が奏を見る」
P「客席のあの端から、反対側の端まで。君が発したものを余すことなく受け取る」
P「気張れよ。ステージの上じゃ、嘘も本当もすべてが関係ない。奏がやったことが全て真実だ」
奏「そうね。ええ……」
P「だから、思うままやって見せてほしい」
65 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:37:29.44 ID:3GVZYvuT0
奏「思うまま?」
P「そう。奏の好きなように」
P「自分の魅力を好きなだけ、見せつけてほしい」
奏「スタッフさんの手を止めてまで何を言うのかと思えば……」
奏「私はもう、アイドルよね」
P「ああ。自慢のアイドルだ」
奏「それなら……そんな心配いらないわ」
奏「見せてあげる」
奏「ファンにも。あなたにも。最高の私を」
P「ああ」
66 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:37:57.24 ID:3GVZYvuT0
――ライブ当日 楽屋
奏「……」
ゴク
奏「……」
ゴク
コンコンコン
奏「はい、どうぞ」
ガチャ
P「お疲れさま」
奏「Pさん……お疲れさま」
P「お客さんがはいり始めている。気分はどうだ」
奏「……そうね。人並みに緊張しているわ」
カチャ ゴク
奏「……ふぅ」
P「冷たいものはあまり飲み過ぎるなよ」
奏「……わかってるわ」
67 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:38:27.15 ID:3GVZYvuT0
奏「Pさんがプレッシャー掛けるから」
P「それはまあ、この先も考えると、これぐらいは乗り越えてもらわないと」
奏「ひどい人。ここは、緊張をほぐす言葉でもかけるところじゃない?」
P「そうだな。キスが欲しい、とか?」
奏「……なんでプロデューサーさんが欲しがるのよ」
P「ファンにしたら絶対欲しいと思うぞ」
奏「それはそうかもしれないけど、Pさんはプロデューサーでしょう」
P「プロデューサーでもあるけど……俺が奏の、一番最初のファンなんだよ」
奏「……それは素敵なことだけど。ファンにキスするアイドルなんていちゃダメよ」
P「なら、ステージの上で」
奏「あなたを呼びつけてステージの上で? 私をそんな破廉恥なキャラで売りだそうとするなんて」
奏「ちょっと失望したわ。なんてね」
P「……」
奏「……ふふ」
P「ははは。……どうだ?」
奏「ありがとう。少しほぐれたかも」
68 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:39:00.72 ID:3GVZYvuT0
P「とはいえ、飴の方も用意しておかないといけないよな」
奏「飴?」
P「プレッシャー掛けるだけじゃフェアじゃないだろ」
P「だから、何かご褒美を用意しよう」
奏「……ご褒美、ね」
P「せっかくのライブだからな。よし、望みをかなえよう」
奏「あら、大盤振る舞いね。望みを叶える魔法使いかしら」
P「ドレスを用意して、舞踏会に送り届けたなら、魔法使いみたいなもんだろう」
奏「ああ。確かにね」
P「それなら、シンデレラの願いに応えなきゃな」
奏「……どんなことなら叶えられるの?」
P「まあ、可能なことなら。また食事に行くか? もっとちゃんとしたところ予約入れるぞ。欲しいものなら、うーん、自腹だからあまり高価なものになると辛いかな」
奏「ふふっ……現実的な魔法使いね」
P「まぁそんなもんだ。なんなら」
69 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:39:34.01 ID:3GVZYvuT0
P「キスでも本当にしよう」
奏「……」
P「……」
奏「……そうね」
奏「映画とディナー、なんてどう?」
P「ああ。それでいいのか?」
奏「ええ。いいでしょう。Pさんにとっても、女子高生アイドルとデートなんて」
P「まあ、それは悪くないけど」
奏「……キスを選ばなくて不思議?」
P「いや、そうでもない」
奏「私ね、欲しいものに手が届くと、臆病になるのよ」
P「もっともらしい理由だな」
奏「そうね」
奏「キスが欲しいのは本当だけど」
奏「私から望んで、あなたにさせてしまうなんて、違ったものになっていると思わない?」
P「……キスが欲しいなんて言う割には、全部相手にゆだねるんだな」
奏「そう。ずるいのよ、私」
P「面倒なアイドルだ」
70 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:40:01.39 ID:3GVZYvuT0
奏「ふふ……デート、楽しみにしてる」
P「ああ、わかった」
奏「あ、でも普通に待ち合わせるんじゃなくてね」
P「ん?」
奏「学校に迎えに来て?」
P「おっと、急にハードル高くなったぞ」
奏「どう?」
P「……可能なことなら、なんて言いすぎたかなぁ」
奏「ふふ、私を甘く見た仕返し。どうせキスを選ぶわけないと思っていたんでしょう」
P「ん? あー……」
奏「確かに選びはしなかったけど、あなたの予想は裏切れたかな」
P「……わかった。迎えに行くよ」
奏「本当? 嬉しいわ」
71 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:40:28.68 ID:3GVZYvuT0
奏「……そろそろ袖に向かうね」
P「ああ。見ている」
ガタ
P「奏」
奏「なに?」
P「キスが欲しい」
奏「……ここで?」
P「ステージで」
奏「あなたに?」
P「俺に、俺たち、すべてのファンに」
P「とびきりのキスを」
奏「……」
奏「ええ」
奏「見ていてね、Pさん」
奏「とびきりの、キスをあげる」
72 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:41:05.68 ID:3GVZYvuT0
−−−
(遠く、歓声が聞こえる)
(MCの後、遠目に奏が見えた)
(ステージから一度、すべてのアイドルがはけて……一度暗転する)
(それから、曲が流れ始める)
(何回と、何十回と聞いた曲のイントロ。曲に合わせてダンサーが激しく揺れた)
(会場では、聞いたことのない曲に、ファンが耳を澄ませている)
(ステージの中央ではダンサーが踊り続けている。そのダンスに目を奪われているうちに)
(一部のファンが気が付いた)
(そうだ、あの曲だ。確かにあの曲だ)
(それが伝播して多くのファンがざわめく)
(イントロが高まっていく。その先にくるものをファンは、俺は、待ち望んでいる)
(曲は、会場のボルテージは最高潮に達している)
(そうだ。皆が待ち望んでいる)
(とびきりの、キスを)
(アイドル・速水奏を)
(最高のキスを)
『1.2.X.X』
おわり
73 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2019/04/17(水) 21:45:47.57 ID:3GVZYvuT0
ありがとうございました。
総選挙で速水奏に1票でも入れて頂ければ、本望です。
次は周子か関ちゃんあたりでなんか書こうかと思います。
でも真面目なのばかり書いてきたので、そろそろはっちゃけたい。
よければこちらもどうぞ。
速水奏「はー……」モバP「はー……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546751465/
渋谷凛「連れていってほしい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1547822704/
一ノ瀬志希「失踪しちゃおうか」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1552181742/
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/18(木) 03:03:35.26 ID:L8sow1FHo
はーの人だったか
あっちもこっちも非常に良かった
乙
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/18(木) 04:05:54.09 ID:whvSzMNzO
おつ
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/18(木) 07:19:43.56 ID:/DE3g09DO
乙
奏から弱さをもっとを引き出してみたくなりますね
>>74
今の時期、はーというとキ84を思い出す
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[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
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