【安価】殺人鬼コナン4【コンマ】

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59 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/10(水) 20:37:34.02 ID:NHyg3vYSO
【8月8日、11時45分】


「毛利係長、よろしくお願いしますっ!」

外回りに出ようとする俺に、小柄な青年が緊張気味に言った。酒匂和之巡査、これで24歳というのだから驚きだ。中学生ぐらいにしか見えない。

「単に飯と聞き込みに行くだけだ。そこまで固くなる必要もないだろう」

「でも、憧れの一課、それも本庁ですよ?できるだけ色々頑張ります!」

「……好きにしろ」

酒匂は所轄で幾つかの事件を解決した功績から、こっちに来たらしい。「嗅覚」があるということだが、とてもそうは見えない。
覚醒者ではない、とは聞いている。単に未覚醒なだけかもしれないが。もちろん、俺に彼の記憶はない。


向かう先は所沢。7月末に同市のファミレスに暴漢が押し入り、1人を殺害、5人が負傷したという事件があった。
暴漢は即逮捕されたが、凶器が銃だったこともあって俺たちが動いている、というわけだ。


そしてその被害者の名は……本庄秀司。


60 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/10(水) 20:56:02.87 ID:NHyg3vYSO
#

「しかし、マル害もついてないですよね。ファミレスでご飯食べてたら、いきなり変な奴がやって来て、銃を乱射したら当たって死んじゃったんですから」

クラウンを運転しながら、酒匂が言う。

「……そうだな」

違う。これは俺が仕組んだ。

#

7月29日、あそこで銃乱射事件が起きることを、俺は知っていた。そして、窓際の席に座っていた老婆が撃たれ、死ぬことも知っていた。自分が「担当していた」事件だからだ。

そして、そのことを俺は利用した。

佐倉のメアドを乗っ取り──これは浅賀由依に協力してもらった──重要な話があるとファミレスに呼び出す。佐倉と愛人関係にあった本庄は、疑わずにノコノコとやって来るだろう。
無論、佐倉の死は完全に伏せられている。佐倉の母親は10年前に死んでおり、父親も死んだ以上彼の死を知るのは至難だ。

そして、指定された時間、指定された場所にいる本庄は──老婆の代わりに殺される。完璧なプランだった。
合法的に、確実に殺す。朝尾との約束は、これで果たされたことになる。

#

聞き込みの成果はなかった。乱射の動機として怨恨の線がなかったかを知るためだったが、そんなものがあるはずがない。
もうじき、精神鑑定の結果が出る。そこにあるのは、双極性障害という診断だ。
むしろ、銃の入手ルートの方が問題だ。それは、これから行く場所にある。

「毛利係長、随分と落ち着いてますね」

「……まあ、こういうこともある」

不思議そうに酒匂が俺を見ている。

※40以下で?(エピローグのため、本作にはあまり影響はないです)
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/10(水) 20:58:16.27 ID:jzMo5jADO
はい
62 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/10(水) 21:10:01.24 ID:NHyg3vYSO
「……何か隠してません?」

……こいつ。

「何故そう思う」

「いや、ただの勘です。ただ、全部予定通りって顔してましたから」

なるほど。捜査一課に来るだけのモノは持っているのか。それが何かは、よく分からないが。
未覚醒者なのか、普通に勘が極端に鋭いだけなのか。とにかく、育てがいがありそうなのは確かだった。

「……気のせいだろう。今から駅前のトレーディングカードショップに行く」

「トレカ屋、ですか?何でまた急に」

「いいから来い。無論、遊びじゃない」

そこは銃の横流しもやっている。そのこともまた、俺は知っていた。

2ヶ月後、そこで銃を買った高校生が池袋で乱射事件を起こす。死者は6人。
そいつを殺せばいい、という発想もあるだろうが──元を断てば、事件は起こらない。そういう解決法もあるのだ。
63 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/10(水) 21:24:35.27 ID:NHyg3vYSO
【8月12日、11時46分】


「あ、仁のおじちゃーん」

亜衣がぴょんぴょんと手を振る。兵さんの店の駐車場には、既に美和が待っていた。

「仁さん、お疲れさま。職場復帰おめでと」

「ん、ありがとう。他の連中は」

「まだ来てない。喜んでくれるかな」

美和の左手の薬指には、銀色に光るものがある。俺にもだ。今日は兵さんたちに、結婚を報告することになっている。

あれからすぐに、俺たちは結婚を決めた。吊り橋効果、と揶揄されそうだが元々そのつもりだった。
式は11月。川越の氷川神社か沖縄かで悩んだが、色々あって沖縄に決めた。
美和にとっては2回目の結婚式だ。あまり大々的にやるものではないし、身内だけで祝いたかった。

そして何より……その頃沖縄には、あいつがいる。

駐車場に、アクアが入ってきた。

※コンマ下50以上でコナンも乗っている
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/10(水) 21:25:06.73 ID:pHWqb1ZDO
はい
65 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/10(水) 21:42:00.13 ID:NHyg3vYSO
車内には、城と薬師丸の姿があった。運転しているのは、吉岡愛結だろう。

その横、助手席には……

「藤原っ!?」

俺は目を疑った。……奴は沖縄にいるのではなかったか?

今回の責任を取って、藤原湖南の担当は沖縄になったと聞いていた。
理由は分かる。この3年で、あそこはかなり混乱することになる。C国、K国、そしてN国。そういった連中をどうするのかという意味で、確かにあそこは重要になるはずだった。
だから、単純な左遷とも言えない。相応に厳しいミッションになる。

そんな奴が、今ここにいる理由が分からなかった。

アクアが止まる。吉岡が出るなり、深々と頭を下げた。

「ご無沙汰してます。その節は、どうもありがとうございました」

「いや、俺はなすべきことをしたまでです。それより、何故藤原が」

ばつが悪そうに、藤原が出てきた。左手にはまだギブスが巻かれているようだ。

「まあ、それについては後で話す。1年と少し、こちらに残ることになった」

「どういうことだ?」

後部座席から薬師丸英華が先に出て、車椅子を取り出す。そして、城がそれに乗った。

「……お久し振りです、毛利刑事」

「そっちの具合はどうだ」

「……もう、ちゃんと歩けるようにはならないらしいですね。まあ、仕方のないことです」

城が苦笑した。薬師丸の表情が曇る。

「ジョー……」

「いいさ、こうして生きているだけでも御の字だよ。にしても驚いたね」

吉岡の顔が赤くなる。いよいよもって不可解だ。

「あ、まさか……」

美和が何かに気付いたようだ。亜衣が大きな溜め息をついた。いつの間に「25歳の亜衣」に替わっていたらしい。

「仁さん、鈍いですね。こっちにいる期間から、逆算できませんか?」

……まさか。しかし非常識にも程がある。

「……妊娠か?」

吉岡が恥ずかしそうに頷いた。
66 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/10(水) 21:42:43.69 ID:NHyg3vYSO
※視点選択です。

1 コナン
2 アユ
3 城

※2票先取
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/10(水) 21:57:34.03 ID:Hdgt7cdZ0
2
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/10(水) 21:58:35.30 ID:pHWqb1ZDO
2
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/10(水) 21:58:51.67 ID:jzMo5jADO
2
70 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/11(木) 09:26:30.75 ID:D7jtZev+O
【7月7日、16時13分】


「よう、歩美。……じゃなかったな」

アジトに入るなり、色黒の男の人が大声で言った。あたしははぁ、と彼に聞こえないように息をつく。

「静かにしていただけますか。一応、2人に応急処置は施してますけど。どちらも手術が必要です。でも、ここじゃ」

コナン君と城は、ベッドに寝かせている。コナン君は左腕橈骨の、多分複雑骨折。城は右膝の半月板などの粉砕骨折のようだった。2人とも、鎮痛剤の効果もあって一応寝ている。
一応負傷部分を固定し、消耗が激しい城にはブドウ糖の点滴を行っている。ただ、苦痛の激しさからして手術による処置は不可欠といえた。

ただ、一般の病院では受け入れてはくれない。ここから間田先生のいる病院までだと、少々距離がある。どうするのだろう?

出てきたのは、驚くべき言葉だった。

「しゃあねえな。じゃあここでやる」

「ちょっと待ってくださいよ?できるんですか、そんなの」

「手術室は簡易の無菌ルームがあるからそれでやる。バイタル測定や輸血の用意もある。何より、看護師がいる。お前が歩美の『転生体』なら、そこそこ腕は立つはずだ」

間田先生は持ってきたスーツケースを開け、巨大なビニール袋を小型ボンベで膨らませた。

「ここから先は、俺とあゆ……愛結でやる。部外者は外で本でも読んでろ」

「……ここにいちゃダメですか」

英華さんが心配そうに言う。間田先生がニタァと笑った。

「ガキがリョナやグロ趣味とは感心しねえな、しかも女が。まあ好きにしろ」

由依ちゃんや源君たちは、別室で待機ということになった。あたしは緑の手術着を放り投げられる。

「着ろ。その服でやるつもりじゃねえだろ」

「……はい」

これに袖を通すのは、もう随分と前のように思えた。……胸の鼓動が早くなる。

「まずはそっちの中坊からだな。コナンと合わせて5時間近くはやってもらうから、覚悟だけはしとけ」
71 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/11(木) 16:41:23.17 ID:bpP7IxHPO
【7月7日、20時21分】


「……縫合するぞ」

あたしは間田先生の汗を吹いた。粉砕骨折と複雑骨折の手術に、合わせて僅か4時間。予定より1時間も早い。凄まじい技術だった。
英華さんが、心配そうにこちらを見ている。あたしは小さく頷いた。

「最後まで集中切らすな。……これでよし。……久々のオペは身体に堪えるな」

無菌ルームという名の巨大風船から出てマスクを外すと、間田先生は大きく伸びをした。

「どこでそんな技術を?」

「戦場だよ。20年後の日本は、どこもかしこも戦場だ。嫌でも野戦病院的な技は身に付く。タバコかガムシロップあるか」

「ガムシロップなら」

ドラマでは女医が手術後にガムシロップを飲んでいたけど、本当に飲む人は始めてみた。彼は5個くらいを一気に飲み干す。

「……くぅ、頭に栄養が行ってる気がするな。しかし随分とやられたもんだな。報酬はかなりもらわないと割に合わん」

「いくらぐらい必要なんですかっ?私、ちゃんと払いますっ!!」

微笑しながら、先生は首を振った。

「やめとけ。お前さんから貰うつもりはない。報酬はコナンから貰う」

「いくらですか」

「そうさな。……1億円、と言いたいが。持ってるんだろ、アイスキャンディの研究記録とレシピ」

身体がブルッと震えた。

「ダメです!!それだけは、コナン君も……」

「闇に葬るつもりだった、そうだろう?だが、佐倉──いや、向谷は歴史上にない改良をあれに加えていた。研究者としては実に興味深くてな。
新型は20年後にようやく出たものだし、湖南の言っていたことが正しいなら20年後にすらなかったヴァージョンまで出ていたわけだ。
天才・青山が辿り着けなかった領域に何故こいつらが到達したのか。そもそも、何故『リセットボタン』まで作れたのか。そこが分からん。
一応言うが、網笠さんからもこの件の調査依頼を受けている。湖南が寝ている今なら問題なかろう。背景は俺が後で奴に説明する」

※コンマ下50以上で?
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/11(木) 16:46:11.11 ID:4cZFoVgDO
はい
73 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/11(木) 19:44:26.28 ID:+Tu38RqQO
確かに、真実の追求にはそっちの方がいいのかもしれない。……だけど。

「……やっぱり、ダメです。あれのせいで、死んじゃったり不幸になった人は大勢いる。アイスキャンディは、どんな形であってもあっちゃいけないんです」

あたしはじっと、間田先生を見た。険しい顔で睨み合う。

10秒ぐらい、そうしていただろうか。彼がやれやれと言いたげに肩をすくめた。

「……ほんっと、歩美を相手にしてるみてえだよ。その頑固さ含め。
まあ、言わんとすることは分かる。こいつがあっちゃいけねえもんだというのは、その通りだ。
結局、網笠さんの言った通りになっちまったな。しゃあない、今回限り慈善でオペってことにしてやる」

「網笠さんが?」

「ああ、どうせお前かコナンは断るだろうってな。それならそれで仕方ない、だそうだ。
ただ、一応言っておく。この件、まだ裏がある。向谷と佐倉──多分向谷と接触を持っていた『誰か』がいたはずだ。そいつを何とかしねえと、また似たようなことが起こるぞ。
コナンが目覚めたら、そこはよーく言ってやってくれ」

「……誰か?」

「分からん。日本人じゃないかもな。あるいは、俺たちの予想のつかない誰かか……そいつは、これからの仕事だ」

間田先生は手術着を脱ぎ、乱暴にスーツケースに詰めていく。

「一通りの薬はここに置いていく。何かあったら呼んでくれ。まあ、コナンがいるから必要ないだろうがな」

「あ、あのっ!!ありがとうございました!!」

英華さんが涙目で呼び掛けた。彼は無言で出ていく。

※80以上で?(次回作絡み)
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/11(木) 19:48:34.48 ID:f8twtbUz0
75 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/11(木) 20:24:47.37 ID:+Tu38RqQO
【7月8日、9時21分】


「……そうですか。先生が、そんなことを」

お粥を掬いながら、コナン君が言った。

食卓には、あたしたちと城、英華さんがついている。木場と林は、網笠さんの管理下に置かれるらしく昨日の夜に出ていった。
城たちは学校をどうするのかと思ったけど、ちょうどテスト休みらしく問題はないらしい。
「母は僕のことなんてどうでもいいですしね」と城が乾いた笑いを浮かべていたのが、妙に心に残った。

「うん。バックに誰かいるんじゃないかって。コナン君、心当たりは?」

「どうでしょうね。青山かと思いましたけど、彼は監視下に置かれてる。下手なことはできないし、破滅を現状強く望んでいるとも思えない。
……まだ誰かいるとしても、簡単には尻尾を掴ませない気はします」

ずずっと右手だけで中華粥をすする。城がコナン君を見た。まだかなり辛そうだ。

「……僕たちは、これからどうなるんだ?」

「しばらくはここにいてもらう。右膝の半月板粉砕だからな。杖は一生手放せないし、リハビリも必要だ。
一応、学校には階段から落ちたとでも伝えておけばいい。2週間もすれば、多少は落ち着くはずだ。
そこから先は、僕たちの監視下に置かれるだろう。仲間に加えるには、まだあまりに若い。まあ、公安もマークするだろうが」

「……そうか。でも、一応普通の生活には戻れるんだな」

「ああ。それと、アイスキャンディに伴う認知症を防ぐための性交渉は、当面禁止だ。怪我している以上当然だからな。
血液製剤を父さんに作ってもらっているから、それを射てばいい」

「……分かった」

2人の顔が赤くなる。まあ、まだ若いしそういうことをしたい盛りだから大変だろうけど、仕方ない。
何より、隣の部屋で始められたらと思うと、なかなか厳しいのも確かだった。

……あたしが、コナン君と離れられなくなってしまうから。

「……で、コナン君。処分は、今日だって」

「ええ。奇しくも毛利刑事と同じ日らしいですね。……あまり遠くないといいんですけど」

#

その想いは、あっさり裏切られた。


コナン君の行き先は、沖縄。どんなに短くても、3年は帰ってこれない、らしい。


覚悟はしていた。それでも……その日は、泣きに泣いた。


76 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/11(木) 20:59:23.57 ID:+Tu38RqQO
【7月30日、8時41分】


「……どうかな、これ」

「うん、美味しい!美味しいですよアユさん!!」

コナン君が、手を叩いて喜ぶ。彼の前のお皿には、エッグベネディクト。一番最初に、彼が作ってくれた料理だ。

「……良かった。あたしにとって、思い出の料理だから」

「……!そう、でしたね」

コナン君が下を向いた。あたしも、思わず泣きそうになる。


彼がここにいるのも、あと数日だ。……その時には、あたしは朝霞のこの家に、一人住むことになる。
首から下がったブローチの重みを感じた。これを通して彼と繋がっているとはいっても……会えないのは、やっぱり辛い。
何とか表面上は立ち直ったかのように取り繕ったけど、悲しいものは悲しいのだ。……そのことは、コナン君も感じているはずだ。

城たちは、1週間ほど前にアジトから出ていった。膝の具合も、少しは落ち着いたらしい。
あたしたちも、やっと2人になれた。……けど未練ができるからか、身体を重ねることは、どことなく避けていた。

寂しい。それをどんなに口に出したかったか。
好き、愛してる。どれ程叫びたかったか。

でも、それを言ったら疎ましく思われてしまいそうで、言えなかった。
大丈夫、別れるわけじゃない。きっと、また会える。……そう自分に言い聞かせながら、この3週間を過ごしてきた。


でも……別れの日が近付くにつれて、それは耐え難いものになっていった。
こんなに辛くて、どうしようもないものがあるなんて……あたしは、知らなかった。


別れる前に、一度だけ抱かれてみよう。……終わった後で、きっとあたしは後悔するだろうけど。


……その時、違和感があった。……そういえば「あれ」は来ただろうか。
77 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/11(木) 21:30:38.08 ID:+Tu38RqQO
【7月30日、11時22分】


「……うーん」

エコー検査の写真を見て、先生が唸った。

「どうなんですか」

事前に試した妊娠検査薬は、陽性とも陰性とも付かない結果だった。できたとしたら、多分最初にした時だ。感情のまましてしまったけど……どうだろうか。
そもそもサイズの合うゴムがなかったから、する時はいつも生だった。ピルでも飲んでおけばと思ったけど……妊娠の可能性を、あたしたちはすっかり忘れていたのだ。

「多分、おめでたですね。まだ5週目ぐらいで安定してないですから、流産には気を付けるべきですが」

「嘘っ……!!」

喜んでいいのか、どうすればいいのか。思考が現実に全く追い付かない。ただポロポロと、涙が流れていたのだけは分かった。

「まあまあ、落ち着いて。堕胎すなら、全然間に合い……」

「産みますっ!!」

思わず口に出して、しまったと思った。

コナン君は、客観的に見れば「9歳」で父親になる。……どう周りに説明すればいいのだろう。
そして、すぐに彼は私と離れてしまう。一人で育てる自信なんて、ない。

あたしの異変に気付いたのか、中年の女医が苦笑した。

「そ、そうですか。旦那さんは……なんか訳ありみたいですね」

「す、すみません。……また、詳しくは相談させて下さい」

ペコリと一礼して、あたしは処置室を出た。

コナン君には、ちょっと具合が悪いと嘘を言っている。あたしが産婦人科医に行っていることも、もちろん隠している。
このことを切り出したら、どう反応するだろう。……喜んでくれるだろうか。それとも。

#

「あ、おかえりなさい。具合はどうでした?」

「……うん。その、ね……」

酷く緊張する。……でも言わなきゃ。


「あたしね、赤ちゃんができたの」


※80以上で?(大きな変動はありません)
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/11(木) 21:33:37.47 ID:4cZFoVgDO
はい
79 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/11(木) 23:56:09.57 ID:PrMLbILPO
コナン君が口を開けたまま固まっている。

「……本当ですか??」

「うん……5週目だって。エコー写真も貰ってきた」

写真を渡すと、コナン君は「……そうか」と小さく呟く。そして、あたしの腰にぎゅっと抱きついてきた。

「……お腹の中に、僕とアユさんの赤ちゃんが……」

「うん……」

彼は愛しそうにお腹に頬擦りし、顔をあげた。泣きながら笑っている。

「……ちょっと、色々感情がぐちゃぐちゃになってて……ごめんなさい。まさか、子供ができるなんて、思ってもみなかったから。
もちろん嬉しいんですけど……本当にいいのかな」

「……これからどうしよう」

「もちろん、産んでほしいです。お金なら、僕が出せます。合法的にインサイダーができますから、資産なら父さん名義ですが結構あるんです。
問題は……どう子供を育てるか。そして、育った後僕をどう説明するのか。
世間体的にも、僕が父親だなんて言えないですし……」

そうだ。あたしは27で、コナン君は9歳だ。そんな歳の父親だなんて、まずいるわけがない。
コナン君の本当の年齢を知っていればまだしも、間違いなく世間からは奇異の目で見られるだろう。

「……一緒に、育てたいよね」

コナン君がハッとなった。

「……ちょっと網笠さんに相談してみます」

「えっ、そんなの話を聞きそうな人じゃ……」

「いえ、彼は彼で、割りと柔軟なんです。そうじゃなかったら、未来で一国の総理をやれてない。言うだけ言ってみます」

#

30分ぐらい、コナン君と網笠さんは話し合っていた。かなり苦労したようだけど、一種の停職扱いということで、赤ちゃんが3ヶ月になるまではこっちにいていいことになった。

本当に嬉しかった。別れの日が延びただけかもしれないけど、それでも全然違う。
もちろん、問題は山積みだ。お母さんにはどう言えばいいのかさっぱり分からないし、法的にどうすればいいのかも分からない。

ただ、今はまだしばらく2人でいれることが嬉しかった。

#

「ねえ、アユさん」

コナン君が、あたしの指を握って言う。

「どうしたの?」

「……あなたが、イレギュラーとして僕の前にきた理由が、少し分かった気がします」

「……え?」

コナン君は、あたしの腰を抱き寄せ、胸に顔をうずめた。

「多分……この子が生まれることで、何かが変わるのかもしれません。
本来なら、決して歴史に存在するはずのない子……それが、繰り返される破滅の未来を変えるかも……って言い過ぎですかね」

「……ううん」

あたしは首を振った。

「そうかもしれない。あたしも、そんな気がする」

コナン君は笑うと、あたしの唇に彼のそれを重ねた。
80 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/11(木) 23:57:02.45 ID:PrMLbILPO
※城パートに移行します。視点変更を後もう1回やったぐらいで完結です
81 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/12(金) 09:33:15.52 ID:g2GOM+OSO
【7月22日、10時03分】


「長い間、どうもありがとうございました」

車椅子の上から、僕は深く一礼する。吉岡さんは照れ臭そうに笑った。

「いや、あたしはご飯しか作ってないし。お礼ならコナン君に言ってあげて」

湖南は、静かに僕を見ている。

「……また会うことがあるかは分からない。ただ、不思議な気分だな。『仇』を、こういう形で送り出そうというのは」

「……『前の周』の僕と、今の僕は違うってことだろう。誰かを殺すことは、もうないさ」

僕は、車椅子を押すヤクを見て微笑んだ。彼女も、笑って頷く。

「そう願うよ。医者、目指すそうだな。易しい道じゃないぞ」

「分かってるさ。……じゃあ、またいつか、どこかで」


六本木のアジトから出る。明日は学校の終業式だ。これで、僕らはやっと日常に戻ることになる。

「……何か、寂しいね」

「……だね。でも、繋がりが切れるわけじゃない」

この2週間で、ヤクと吉岡さんは随分親しくなっていた。一人っ子のヤクのとっては「歳の離れたお姉ちゃんができたみたい」という。
僕と湖南はというと、言葉数は少なかったけど色々医者としての心構えを教えて貰った。
見た目が年下の彼に上から目線で言われるとカチンと来たことはあったけど、本質的には心優しい男なのだろう。

彼は8月から沖縄だという。詳しい話は聞いていないが、「当面会うことはないだろう」という。
自分を付け狙っていた奴にこういう想いを抱くのは変だけど、やけに寂しい気がしていた。
僕にも兄はいない。もし、兄がいたら、あんな感じだったのだろうか。
82 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/12(金) 13:16:10.86 ID:dvKf03DdO
【8月2日、10時25分】


「……あまり変化はないわね。良い意味で」

鷹山先生の言葉に、胸を撫で下ろす。

アイスキャンディの影響を抑えるための方法を血液製剤に切り替えて4週間になる。
怪我は大分良くはなってきたけど、ヤクとはしてない。僕の怪我の影響もあるし、彼女が遅れを取り戻すべく水泳に打ち込み始めたのもある。
正直、そこには幾ばくかの残念さを感じているのだけど仕方ない。それが日常に戻ることの意味なのだから。

「ありがとうございます。引き続き経過観察ですか」

「そうね。君の症例、学会発表できないのはちょっと残念だけど。
主人からは少し聞いたけど、あれは表沙汰にできないわよね」

「まあ、仕方ないですよ。藤原さんが作った血液製剤の試作品、置いておきますね。
実際に認知症に使えるようになるまで、数年かかりそうなのは残念ですけど」

本来、新薬ができるまでは数年がかりだ。僕はショートカットをしたわけだけど、本来なら薬事法的にはアウトらしい。

ティロリン、とスマホが鳴った。……毛利刑事からだ。


『8月12日に兵さんの店でパーティーをやる。暑気払いだ。薬師丸英華も誘って来てくれると助かる』


随分久し振りの連絡だなと、僕は思った。彼とは、随分と会ってない。
アジトに担ぎ込まれた数日後に、一度見舞いに来たっきりだ。停職処分中に、色々やることがあったらしい。

その背景は、つい先日分かった。GATESのトップである本庄秀司を消すために何かをしていたのだ。
そして、彼は狙い通り殺された。名も知らない暴漢によって。

どうやったかは知らないけど、彼が敵でなくて良かった、と何故か思った。
12日に会ったら、少し聞いてみようか。答えてはくれそうもないけど。

※コンマ下70以上で?(次回作関連)
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/12(金) 13:17:54.10 ID:SFcR2SiDO
84 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/12(金) 19:32:24.29 ID:S33hvMWcO
【8月12日、10時32分】


そして、12日が来た。まだ松葉杖で動くには早いらしく、僕は車椅子に乗っている。
身体がまともなら電車で鶴ヶ島まで行くところなのだけど、吉岡さんが気を利かせてくれたのか、一緒に行くことになった。

空は曇り空であまり冴えないけど、暑さが和らいだのはよかった。汗をかくと、傷口付近が蒸れて辛いのだ。

「毛利さんと会うの、久し振りだね。元気かな」

「あの人は大丈夫だよ。今日は、皆集まるんだっけ。湖南以外は」

「うーん、それがサプライズがあるって愛結さんが言ってるんだよね……」

ヤクは首をかしげた。その時、白のアクアが僕たちの前に止まる。

「こんにちは。車椅子、入れられるかな」

「畳めば何とかなると思います。ヤク、手伝って……!?」


その時、助手席から手を振る少年がいた。あれは??

85 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/12(金) 20:33:02.75 ID:S33hvMWcO
「湖南っ!?」

吉岡さんが苦笑した。

「ごめんね。色々あって、まだしばらくこっちにいることになったの」

「しばらくって?そもそも、何で……」

「1年ぐらいかな。理由は彼の口から。じゃあ、行くわよ」

後部座席に乗ると、湖南がばつが悪そうに頭をかいていた。

「どういうことなんだ?これがサプライズか」

「いや……これじゃない。結果的に、こうなったというか」

珍しく歯切れが悪い。

「何よ、隠すことでもないでしょ?」

「まあ、そうなんですけどね。……あー、うん」

湖南がこちらを向いた。顔が少し赤い。

「まあ、何というか……子供ができた」

言っていることが理解できない。

「……誰の?」

「……僕と、アユさんの子だ。6週目……いや、7週目らしい」

…………え?

「えええええええ!!!?」

ヤクが叫んだ。僕は口をあんぐりと開けたまま、固まっている。

「ちょ、ちょっと待った。お前、まだ9歳だよな??子供なんてできるのか??」

「インドでは7歳の子供が10歳の少女を孕ませたという事例がある。9歳でも精通ぐらいはするさ。
……とはいえ、自分の身にふりかかるとはね。僕も驚いたよ」

「って育てられるのか??」

「金なら問題ない。株式取引と昨年末の仮想通貨バブルで億はゆうに超える資産を持ってる。
子供は僕の両親の養子ということにするつもりだ。法的には、弟か妹ということになるね」

ヤクが顔を真っ赤にして言う。

「でも、ご両親はなんて??」

「父さんはともかく、母さんには激怒されたよ。そもそも僕らが覚醒者であるのをずっと黙ってたからね。
海外にいるはずの夫と子供が日本にいて、しかも息子が女性を妊娠させていたなんて聞いたら、温厚な母さんでも卒倒するのが当然だよ」

「あの時は大変だったよね。妹の蘭ちゃんが『弟か妹ができるんだ!』って喜んでくれたからなんとかなったけど」

吉岡さんが溜め息をついてハンドルを切る。

「まあアユさんのお母さんが喜んでくれたのは救いでしたね。ずっと独りだったみたいですし」

「……そうだね。『どんな形であっても家族が増えるのは嬉しいことよ』って言ってくれたから、大分救われたかな」

「そうですね。……というわけで、一種の育休という形で来年秋までこっちにいることになった。
バッドエンド・ブレイカーとしての活動は当面休むが、たまに兵さんの店には行くからその時はよろしく、だね」

はあ、と僕は大きな息を吐いた。あの別れの妙な湿っぽさは、何だったというのだろう。
86 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/12(金) 20:41:31.47 ID:S33hvMWcO
「じゃあ2人は一緒に住むんですか?」

ヤクが興味津々の様子で訊く。

「そうね。子供が落ち着いて、コナン君が沖縄に行くまでは。その間、コナン君は普通の小学生に戻ることになるわね」

「……今更小学校になんて行くつもりはないですけどね……カモフラージュとはいえ、行かなきゃダメですかね?」

「しょうがないでしょ。それが日常ってことなんだから」

湖南がやれやれと肩をすくめた。

「これは『もう一人の僕』に出てきてもらうかなあ……でもパニックに陥りそうか」

「そもそも『もう一人のコナン君』って、あたし会ったことないけど。『29歳』でいるうちのことって、覚えてないのかな?」

「多分夢の中の出来事ぐらいにしか覚えてないと思いますよ。13ぐらいになれば、ある程度自我を共有できるみたいですけど」

何か覚醒者であることも、なかなか大変らしい。妙に気弱になっている湖南がおかしくて、僕は思わず笑った。


車は一路鶴ヶ島に向かう。

87 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/12(金) 20:42:41.17 ID:S33hvMWcO
※最終パートです。誰視点で物語を終わらせますか?2票先取です

1 仁
2 コナン
3 城
4 愛結
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/12(金) 20:43:36.11 ID:IWhrIzQj0
3
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/12(金) 20:48:45.94 ID:SFcR2SiDO
1
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/12(金) 20:51:04.63 ID:LBbdVokDO
3
91 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/13(土) 10:04:31.62 ID:pLWf+bUUO
【8月12日、12時23分】


「しかし、こんなことになるとはなぁ。めでたいっちゃめでたいが」

コーヒーを淹れながら、白田さんが苦笑する。キッチンでは毛利刑事がケーキをオーブンから出す所だった。

「一応俺のところはまだですからね。まあ、できたらできたでいいですけど。籍は近いうちに入れますし」

「お前のとこは心配してねえよ。それより坊主だ。できたら色々まずいだろ」

僕らの顔が熱くなった。治療行為上仕方ないとはいえ、確かにゴムは一度も使ってない。

「まあ、ピル飲んでますし……」

「でも嬢ちゃんが競技生活に本格復帰したらそうもいかんだろ。血液製剤で事足りるんだし、しばらくは健全な学生同士のお付き合いをした方がいいぜ」

白田さんがニヤニヤと笑う。まあ、確かにそうなのだけど。
湖南がプイッとむくれている。

「すみませんでしたね、健全なお付き合いができませんで」

「肉体が精神に引っ張られたのかねえ……。研究者としては興味深いんじゃねえか?9歳で妊娠させるというのはあり得ないわけじゃねえが、レアだろ」

美樹さんが頷く。

「そうね。一度そこのところの相関を研究してみたいけど……。調べさせてくれない?せっかくあと1年いるんだし」

「……遠慮します。というか、覚醒者は他にもいるでしょう。そこにも」

亜衣ちゃんが自分を指す。

「私のこと?うーん……確かに、だからこそ鶴岡次郎とやりあえたのかもしれないけど。ちょっと考えさせて下さい」

「いいのよ、無理しなくて。……しかし、あなたたちみたいな子はもっといるんでしょうね」

「……かもですね」

彼女の表情が、少し曇った。思えば翔一もその一人だった。
彼らは法では裁けない。……第二、第三の翔一が出ない保証は、ない。

「……結局、翔一って何を考えてたんでしょうね。僕には最後まで分からなかった。覚醒したことで、何か狂ったんでしょうか」

「俺にも分からない。生かしておけば、何か聞けたかもしれないが……まあ、仕方ないことだ」

毛利刑事がケーキを切り分けながら言う。ふわっと香ばしい匂いが広がってきた。

※コンマ下70以上で来客、90以上だと?
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/13(土) 10:21:48.36 ID:G42rNgWDO
はい
93 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/13(土) 16:03:34.53 ID:jT3g8yyKO
「ま、難しいことは今は忘れようや。祝いだ祝い、子供はオレンジジュースでいいな?アイスコーヒー飲めるならそっちでもいいが」

白田さんがパンパンと手を叩いた。吉岡さんと宮原さんが、パスタが盛られた大皿を持ってやってくる。ボンゴレビアンコとアラビアータのようだ。

「……僕もビール……ってわけにはいかないですよね」

「いかないな、あと11年は我慢だ」

湖南がやれやれと言いたげに笑った。

「ジョー、はいこれ」

ヤクがアイスコーヒーを手渡した。手が少し触れる。その暖かさに、僕は安堵した。

ああ、僕は生きているのだ、と。

「ん……ありがと」


この3ヵ月のことを、僕は決して忘れないだろう。忘れようにも忘れられない。
失ったものは多い。犯した罪も消えない。
いつまで生きていられるのかも、正直分からない。大人になるまでは大丈夫だろう、と鷹山先生は言っていたけど。

ただ、それ以上に得たものは計り知れない。もし、彼らがいなかったら……何よりヤクがいなかったら、僕は「歴史」通りに大勢の人を殺し、そしてそこで死んでいただろう。


今の僕は違う。未来がどうなるかは分からない。僕は毛利刑事や湖南とは違う。ただの中学生に過ぎない。
けど、未来が分からないからこそ、それを知りたいと思う。それを切り開くのは、人の力だ。


「じゃあ、皆グラスは持ったな?毛利夫妻の未来と、まだ見ぬコナンと愛結の子供の未来に」


「「「かんぱーい!!!」」」


そう、僕たちの未来は、まだ始まったばかりなのだ。
94 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/13(土) 16:04:55.66 ID:jT3g8yyKO





バッドエンド・ブレイカー第一章「殺人鬼コナン」 FIN




95 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/13(土) 16:05:27.35 ID:jT3g8yyKO


……



……………



96 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/13(土) 16:08:15.63 ID:jT3g8yyKO




【10月2日】



97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/13(土) 16:22:02.72 ID:vfieLcrF0
お?
98 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/13(土) 16:26:02.02 ID:jT3g8yyKO
10月になったというのに、汗ばむような暑さだった。日本で一番暑いと言われる熊谷に近いからなのだろうか。
僕は杖を付きながら、病院までのだらだらとした坂道を上る。リハビリは進んだけど、まだまだ長い距離を歩くのは辛い。

玄関近くに、テレビ局のカメラと記者が何人かいるのが見えた。事件……ではないみたいだ。
その中心には、穏やかそうな笑いを浮かべた男性がいる。どこかの舞台俳優みたいな、ハッキリとした顔立ちだ。

不思議に思いながら、いつも通り脳神経内科に向かう。

「あら」

向こうから鷹山先生がやってきた。

「こんにちは。先生、どうされました?」

「あ、うちの期待の新戦力を一目見ようってね。今、下にいるはずよ」

「下?」

「そう。『ゴッドハンド』、瀧川浩。脳外科では日本屈指の腕らしいわ。何度もドキュメンタリーとかに出てる」

聞いたことがない。毛利刑事とかなら分かるのだろうか。

「ゴッドハンドって、そんなに凄いんですか」

「凄いってレベルじゃないらしいわね。世界でも3指に入るとか。あれで私より年下なんだから、驚くしかないわね。
君は多分お世話になることはないと思うけど、向こうが関心を持つことはあるかも。その時はよろしくね。じゃあ、またあとで」

そんな医者がいるのか。僕も医者になりたいと思っているけど、遠い先の頂にいる人のようだ。

ふうん、と思いながら待合室に向かう。今日も1時間ぐらいは待ちそうだった。ヤクの国体優勝の動画でも見ていようかな。


#


彼が新たな事件の中心になることを、その時の僕は、知らない。


To be continued
99 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/13(土) 16:29:31.00 ID:jT3g8yyKO
以上です。7ヶ月以上にわたり、どうもありがとうございました。

SS速報に全くそぐわないテーマ・ジャンルであるにも関わらず、完走できたのは安価・コンマに協力していただいた皆さんのおかげです。本当に、心から感謝しております。

なお、本作はブラッシュアップした上で某所に転載できればと考えております。その時が来ましたら、また読んでいただければ幸いです。
100 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/13(土) 16:47:07.20 ID:jT3g8yyKO
なお、次回作をにおわせた終わり方としましたが、予定は未定です。構想はエンディングまで含めてぼんやりとありますが。

今後ですが……

・中断中の前作ですが、そのままの形での再開は難しいです。
一度足が止まったことによるモチベーションの低下と、再開時に以前の設定と矛盾なく進められるかの自信がありません。

とはいえ、このまま彼らの物語を終わらせるのも忍びないため、別の形で再開できればと思っています。
途中まで全く別の話で進め、後半以降で合流……というものです。
構想はぼんやりとありますが、戦闘をどうするか思案中です。なお、テイストは大分変えます。

・同じく某所で同時進行している某2次創作はこのまま続けます。

・本作の続編は長さ的には1〜2スレで収まるものになるはずです。非安価にするかもしれません。
エセ医学サスペンス的な何かになるはずです。エンディングは今の構想だとビターなものになりそうですが。

・他にもダークファンタジーもので暖めているプロットがあります(これは本作のような形式になります)。
101 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/13(土) 17:00:05.72 ID:jT3g8yyKO
というわけで、次回作をどれにするか多数決を取ってみたいと思います。3票先取です。

1 「崩壊した〜」シリーズ続編

※サイファーたちは後半まではまず出ません。パラレルワールドの話です。
「どの職業が最も強いのか?」を決める天下一武闘会的な話から展開します。パラメーター設定あり、コンマと安価は多めです。

2 バッドエンド・ブレイカー第二章

※エセ医学サスペンスです。非安価か、重要局面以外での安価なしの方針です。(なお、第一章終盤に伏線を少しだけ入れています)

3 ダークファンタジー安価・コンマもの

※仮タイトルは「魔王『思い出させてあげよう、魔法使いよ』」。男魔王が女魔法使いを拉致し、ある目的を持って旅をする話です。コンマと安価は本作くらいの予定です。
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/13(土) 17:20:30.07 ID:S75GwN9h0
完結乙
2も気になるけど前作から見ていた身としては1かな
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/13(土) 17:48:03.49 ID:G42rNgWDO
3
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/13(土) 17:53:44.62 ID:MqGkEbo1O
同じく崩壊するを待ってるから1
デスペナ筆頭に従来のシステムのままだと破綻やスレの空気の悪化とか不安が残るけども。
105 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/13(土) 19:43:45.52 ID:kzJSL3CHO
上げます。

なお、着手できるスピードとしては

2≧3>>1ぐらいです。

(1はシステム周りから全て変えるため、どうしても時間がかかります)
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/13(土) 19:46:00.67 ID:fwVtkzqJ0
1
107 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/13(土) 19:52:11.01 ID:kzJSL3CHO
では1でやります。2及び3もそのうちやりますが、まずは1を最優先とします。少々お待ちください。
108 : ◆C9vIqtyVF2 [saga]:2019/04/13(土) 22:52:28.19 ID:kzJSL3CHO
差し当たりスレだけ建てました。
酉を変えていますがご了承下さい。

【安価】オルランドゥ大武術会【コンマ】
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