【艦これ】『Last one week & Epilogue』【天華百剣】

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102 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/04/09(火) 18:28:42.76 ID:397CxFwZ0
叢雲「どうしたの?」

( T)「……」


何をすんなりと肯定した?『菊一文字則宗』だと?バカな、そんな筈はない
検索結果を画像へと切り替える。ズラリと刀の写真が並んだ。その内の一つを拡大する


(;T)「バカな……」


そこには、柄も、鞘も、刃文も、俺が覚えている限りでは『瓜二つ』の日本刀が
この世界には『存在しない』筈の、菊一文字則宗の姿があったのだ


(;T)「……」

叢雲「ねぇ、アンタ大丈夫?」

(;T)「叢雲、答えてくれ」

叢雲「な、何を?」

(;T)「菊一文字則宗は司馬遼太郎の『新選組血風録』内で沖田の愛刀として知られているが、実在はしない。そうだろ?」

叢雲「……疲れてるの?じゃあアンタの目の前にあるこの刀は何なのよ」

(;T)「それがわからねえから聞いてんだろうが!!」


叢雲は突然の大声にギョッとしたが、謝罪の言葉が出てこなかった。『それどころでは無いからだ』
俺はさっきすんなりと『菊一文字則宗』が展示されるという情報を信じた。今の今まで、それが『当たり前』だと認識していたからだ
菊一文字則宗は小説の中だけではなく、実際に沖田総司が使用した名刀で、この世界に存在するという事を


(;T)「記憶違いか……?いや、確かに『菊一文字則宗』は存在していなかった……」

叢雲「ちょっと……本当に大丈夫?」


彼女にしては珍しく、俺を気遣う態度を取っている。それほどまでに、今の俺は『狂っている』ように見えるのだろう
しかし俺にとっては、狂っているのは自分ではなく、俺意外の全てに思えた
大した変化ではないのだろう。かの独裁者が世界大戦に勝利し、暗黒の時代を迎えたわけでもなく
ましてや核の炎で世界が焼け野原になったわけでも、猿が人を飼いならす世界になっているわけでもない


ただ、一振りの日本刀が実在の物となっただけ


その程度の些細な改変が、俺にとっては堪らなく恐ろしかった
103 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/04/09(火) 18:29:49.95 ID:397CxFwZ0
(;T)「天龍……いや、秋雲でも夕立でも時雨でもいい、呼んできてくれ」

叢雲「……わかったわ。直ぐに」


付き合いの長い副司令艦は、何も言わず指示に従ってくれた。ただ事ではないと察したのだろう。当然ながらただ事で済めば越したことは無い
しかし、同じく銘治へ出向いた奴らを招集した所で、何が出来る?菊一文字則宗が『在る』というバグを修正する?それに意味はあるのか?


(;T)「っ……」


嫌な予感が吐き気と共にやってきた。震える指先で、缶コーヒーのプルタブを開けようとしたその時――――


天龍「オイ提督!!」


天龍が、扉を蹴破らんばかりの勢いで現れた


叢雲「て、天龍?ちょうど今呼びに行こうと……」



天龍「『禍要柱』だ!!!!!!!」



缶コーヒーは口を開けることなく掌から滑り落ち、床を転がった


(;T)「……クソッタレが」


どうやら、あのクソ忌々しい禍魂という存在は
世界間を越えて尚、俺らの事を見逃す気は毛頭ないらしい
104 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/04/09(火) 18:31:26.69 ID:397CxFwZ0
叢雲「まがつかなめの……って、向こうの世界で『神隠し』の原因になった柱の事よね!?」

天龍「そうだよッ!!それが湾港にぶっ刺さってんだ!!あり得るかよ畜生が!!」


天龍は苛立ちと怒りを机にぶつけようとしたが、振り上げた拳は彼女の正気を保つために額を打った


天龍「更に悪い知らせがある……青葉が、消えた」


喉の奥から絞り出すような報告に、叢雲は唖然と口を開けた
俺の思考も止まりそうになるが、先に確認せねばならない事があった
たった一つだけ。俺達は『禍魂由来』の物をこの世界へと持ち帰っているのだ


(;T)「……」


引き出しの中にしまい込んだ小さな巾着袋。特異型からこの世界へ戻る為の片道切符のような物
『禍要柱』の欠片。今やちっぽけなゴミにしか過ぎないとタカを括っていたそれが―――


(;T)「『やられた』」


袋の中から、綺麗さっぱり消えていた


天龍「そいつが原因かよ……クソッ!!予兆は無かったのか!!」

(;T)「気づかねえと思うか!?それに、こんな事態予想も出来ねえ!!柱は今、どうなってる!?」

天龍「時雨ら叩き起こして他の連中に触れさせないように封鎖してる!!禍憑は今の所湧いちゃいねえ!!向こうから入れ替わったような奴も見かけてねぇ!!」

(;T)「出現からどれくらい経った!?」

天龍「俺だって夜間哨戒から帰って来て見つけたばっかだよ!!夜中とかそんなとこじゃねえのか!!」

(;T)「っ……」


俺らが湾港から目を放した隙に、禍要柱は出現。そして偶然、夜中に出歩いていた青葉が接触したのだろう
考察はともかく、すぐさま体制を整えねばならない。今度の神隠しは一年前とは話が違う。『向こうから顕れた』のだ
105 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/04/09(火) 18:36:11.89 ID:397CxFwZ0
(;T)「叢雲、万一に備え鎮守府全域に臨戦態勢を……ッ!?」

天龍「っ、叢雲!?」


前触れもなく崩れ落ちた叢雲の身体を、咄嗟に天龍が支えた
病気の気は無かった。疲れている様子も無かった。二つの足でしっかりと立ち、緊急に備える心構えもしていた筈だ


叢雲「ハァッ、ハァッ……!!」


そんな彼女が、何かに苛まれているかのように息を荒げている


(;T)「意識は!?」

天龍「ねぇ!!脈は正常だし、熱もねぇ!!ただ、触ってると『気味が悪ぃ』!!」

(;T)「気味……まさか!!」


応接用のソファーへと運ばれた叢雲の手を取ると、身体に『ゾク』と悪寒が奔る
覚えがあった。何度も体内に侵入され、俺を狂わせ苦しめたあの感覚と似ていたのだ


(;T)「『禍魂』だ……!!」

天龍「は……嘘だろ、オイ……」

(;T)「冗談でこんなこと抜かす……」


天龍の視線は俺でも叢雲でもなく、『窓の外』へと向けられていた
彼女の驚愕は『禍魂』によるものに間違いはない。ただしその規模は、叢雲が気を失った事すら一瞬忘れさせる大きさだった


(;T)「あ……?」


晴天だった筈の空が、急速にぶ厚い黒雲に覆われていく
日の光は遮断され、薄暗闇が辺りを包み込んだ。窓から見える水平線の先は、深い霧によって見えなくなっていた
それはまるで俺らを外界へと逃がさない為に形作られた『ドーム』のようであった
106 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/04/09(火) 18:39:32.19 ID:397CxFwZ0
(;T)「……」

天龍「……」


世界の終わりでも見ている気分だ。それは天龍も同じらしい。俺達に影響がないのは、銘治へ出向いて耐性が付いたからだろうか
だとして、無事に動けるのは俺を含めたったの『五人』。たった五人で、巫剣や巫剣使いがいないこの状況で


『禍魂』によるこの災いを、解決せねばならない


天龍「やる気か?」

( T)「当り前だ」

天龍「そうこなくちゃな……」


全く、禍憑も深海棲艦も、とことん似ている。どれだけ痛い目に遭っても、あいつらは学ぶお脳が足りていない


( T)「誰に喧嘩を売ったのか、わかっちゃいねえようだからよ……」


だったら何度だって刻み付けてやる。連中に『俺ら』という恐怖を
人々の絶望を餌に強大化する存在を、『絶望』へと蹴落とす悦びを存分に味わいながら




( T)「凄惨で素敵な『パーティー』で、盛大なお出迎えといこうじゃねえか」




壊れるまで、遊びつくしてやる―――――
107 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/04/09(火) 18:40:48.92 ID:397CxFwZ0


































108 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/04/09(火) 18:44:23.39 ID:397CxFwZ0
―――――
―――



名古屋、某所


彼とその『愛刀』が、禍要柱を殴り割って現れた『水兵の服を着た少女』に得物を振り下ろさなかったのにはワケがあった
数か月前、東京を訪れた際に立ち寄った『上野支部』にて、今し方起こった出来事と類似した事件を耳にしたからだ
異世界より現れた戦士達が、同じく異世界より現れた外敵を、御華見衆と共闘して倒したという

当然ながら、構えは解かなかった。まだどこか幼さの残る謎の少女も同じく、此方を見た瞬間には『武道の構え』を取っていた
言葉を交わすより先に『警戒』を示したのだ。それも、一瞬の躊躇いも見せずに。ただの『少女』では片づけられない妙な迫力があった
顔立ちは端正で、活発そうな雰囲気を感じ取れる。茶屋で働けば一躍看板娘として名を馳せる事だろう

『愛刀』はチラリと主を伺った。それは、催促の意味も込められていた
確認はたった一言で済む。剣先と同じく鋭い視線を向けながら、彼は意を決してその言葉を投げかけた



(´・ω・`)「『艦娘』か?」



御華見衆名古屋駐在所長『大潮 凡吉』の問いかけに対して、彼女はこう返した



「『巫剣』ですか?」



お互いに、似たような疑問を抱いていたらしい
ただの禍憑なら、会話も交わさず襲い掛かる。その上位種なら人を欺く事もあるが―――


鬼切安綱「臭いなし。とりあえず、ウチらの敵じゃないっぽい」


禍憑の『臭い』に敏感な愛刀が下した判断は『否』に下った


(´・ω・`)「……ああ、俺は御華見衆名古屋駐在所の大潮だ」

鬼切安綱「ウチはアン。巫剣だよ」


油断はしないが、探りを入れるために一先ず自己紹介をする
少女は『御華見衆』の名を聞いた瞬間、険しい表情を僅かに和らげた


「名古屋ですか……あの、菊さ……菊一文字則宗さんと、連絡出来ませんでしょうか?」


(´・ω・`)「……それはお前さんの出方次第だぜ嬢ちゃん。先ずは名乗ったらどうだ?」

「おっと、これは失礼を。では、いつもの口上で……コホン」


構えを解いてわざとらしい咳ばらいをし、踵を揃え海軍式の敬礼をして、眩しい笑顔と朗らかな声で名乗りを上げた
109 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/04/09(火) 18:45:01.20 ID:397CxFwZ0









青葉「ども!!恐縮です青葉ですぅ!!一言お願いします!!」







110 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/04/09(火) 18:45:54.53 ID:397CxFwZ0















                      『Last one week & Epilogue』  END
111 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/04/09(火) 18:46:33.88 ID:397CxFwZ0















                      『Last one week &繧ィ繝斐Ο繝シ繧ー繧ィ繝ウ繝
112 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/04/09(火) 18:47:14.88 ID:397CxFwZ0















                      『Last one week & Prologue』 Restart
113 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2019/04/09(火) 18:59:50.22 ID:397CxFwZ0
艦これ×天華百剣編第一部はこれにて完結となります
二部なんですが『参羽鴉』のストーリー進行に目途が付いてからの執筆になるので恐らくはだいぶ先の話になると思います
肝心のマッスル鎮守府本編ですが、エンドオブオオアライが見ての通り更新頻度よわよわなので暫くはクソギャグで繋いでいきます

お疲れさまでした
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/10(水) 00:19:40.35 ID:NQ8wiP4Eo
おつおつ
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/13(土) 21:01:27.84 ID:UGeycEEco
おつ
116 :以下、名無しに代わりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/02(木) 14:09:03.10 ID:YmJHgWuWO
デュフフ、続きが気になっちゃうねぇ
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