【ガルパン】みほ「私は、あなたたちに救われたから」

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75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/13(土) 14:24:41.64 ID:m4Lu0QpLO
でもまあ、いわれてみればやばいかも

すまんの、特にここの空気感忘れてたわ

しばらく黙るわ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/13(土) 20:55:36.03 ID:U+vZyEeaO
そろそろか
ワクワクすんぞ
77 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/13(土) 22:17:41.75 ID:xS+etstB0






プラウダ高校はその校風というべきか気質というべきか、比較的高緯度の海域を航海する。

故にプラウダの気温はいつだって低く、集まる生徒たちも東北から北海道にかけて寒さになれた者が集まってくる。

とはいえ、流石に今日のように雪が吹雪いている中、外に出るような生徒はおらず暖房をガンガンにつけた部屋に籠っていた。

そして、そんなプラウダの中にある談話室にカチューシャはいた。

暖炉がパチパチと音を立て、窓を打つ雪の音がどこか心地よい。

いつもならそれらを子守歌に昼寝でもしているカチューシャであったが、今日は目の前にいる来客を迎えるためにあくびをこらえていた。

その来客とは、聖グロの隊長であるダージリン。

いつだって人を食ったような言動をして、それを咎めたところでどこ吹く風でおしゃべりを続けるダージリンだが、今日はどうも様子がおかしい。


カチューシャ「まったく、あなた自分の学校が負けて暇だからって遊びすぎよ。……私が言えた義理じゃないけどね」


カチューシャはそう言って、ペチーネを齧る。

目の前の来客はわざわざ吹雪に見舞われている中やってきた。

突然の訪問にカチューシャは訝しむも、ダージリンの様子にただならぬものを感じ、腹心であるノンナですら部屋に入れず一人でダージリンと机を挟む事にした。

だというのに、先ほどからダージリンは一言も口にせず、好物であるはずの紅茶にすら口を触れていない。

そんなダージリンの殊勝な態度を最初は面白がっていたカチューシャだが、流石にそろそろ飽きてきてしまった。

せっかく自分が入れてあげた紅茶が冷めてしまうのはもったいないし、何よりもこのまま沈黙が続いてしまうと睡魔に意識を持っていかれてしまいそうだから。

いくらなんでもダージリンの前で惰眠を貪るような無様は見せたくない。

そう思い、カチューシャは今一度、ダージリンに声を掛ける。



78 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/13(土) 22:24:29.47 ID:xS+etstB0


カチューシャ「それで?いきなり来たと思ったらだんまり?お茶とお菓子の分ぐらいは私を楽しませてくれてもいいんじゃない?」


黙り込んだままのダージリンが顔を上げ、カチューシャを見つめる。

その碧眼はカチューシャを見つめようとしているのかそれとも目を逸らそうとしているのか、どうにも落ち着かない。

そんなダージリンをカチューシャはめんどくさそうに見つめ、ジャムを口に含んで紅茶を飲む。

紅茶が喉を通り抜け、その温度をカチューシャの小さな体に行き渡らせても、まだダージリンは口を閉ざしていた。


いい加減追い出そうかしらと、寒風吹きすさぶ窓の外に目をやると、そっとダージリンが口を開く。


ダージリン「……カチューシャ、あなたはなんであんな事をしたの」

カチューシャ「……あなたにどうこう言われるような事したかしら?」


ダージリンの曖昧な言葉の意味をカチューシャは理解していた。

元より、ダージリンがプラウダに来る理由と言えば一つしかないのだから。


先日行われた準決勝で、まさかの勝利を収め決勝へ駒を進めた大洗女学園。

その隊長である逸見エリカの『真実』を、カチューシャは大洗の生徒たちの前で告げた。

逸見エリカは、西住みほだと。

ダージリンが聞きたいのはその事なのだろう。


79 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/13(土) 22:33:34.51 ID:xS+etstB0



ダージリン「エリカさ……みほさんの事情はあなたが一番知っていたはずでしょ」

カチューシャ「そうよ?死んだ奴の影に隠れていつまでも情けないったらありゃしない」

ダージリン「……その理由もあなたは知っていたはずでしょ」

カチューシャ「ええ、知ってたわ。だからやったの」


ダージリンの責めるような声に、カチューシャは一向に悪びれる様子が無い。

元より、カチューシャは正しい事をしただなんて思っていないのだから。

どれだけ恨みを買おうともそれでも、やらなければならないと思ったのだから。

そんなカチューシャの気持ちをダージリンも理解しているのだろう、今度は自分を恥じるかのようにうつ向く。


ダージリン「……そうね、本当はもっと早く誰かが伝えなければいけなかったのかもしれないわ」


あの時、大洗との練習試合で初めてみほと会った時、言うチャンスはいくらでもあった。

たとえそれでみほや大洗の生徒たちが傷つくことになったとしても、あの時ならばまだ傷は浅かったかもしれない。

そんな結果論に過ぎない後悔を割り切る事も出来ず、ダージリンは自らを苛む。


ダージリン「ケイさんやアンチョビさんや私が。あるいは杏さんが。誰か一人でも、もっとはやく踏み込んでおけば……」

カチューシャ「あなたちがどうこうする義理はないでしょ」

ダージリン「……カチューシャ、あなたが去年の事を悔やんでいるのはよく知っているわ」

カチューシャ「なんのこと?」


シラを切るカチューシャに構わずダージリンは続ける。



80 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/13(土) 22:37:33.25 ID:xS+etstB0


ダージリン「……あれは、誰の責任でもない、不幸な事故。それで決着がついているし私もそうだと思っている。

      だけど、そう簡単に割り切れるものではないわ」

カチューシャ「あなたに、何がわかるのよ」


苛立ちを露わに、ペチーネを口に放り込んで乱暴にかみ砕く。

そんなカチューシャの抗議にダージリンは申し訳なさそうにうつ向く。


ダージリン「……ごめんなさい。口が過ぎたわ」

カーチュシャ「いつもの事ね」


そして、ようやくダージリンが紅茶に口をつける。

カチューシャが以前教えた『ジャムを口に含んでから飲む』というロシアンティーの作法を忘れたわけではないのだろう。

しかし、今のダージリンにはそんな余裕はなかった。

紅茶を楽しむためではなく、ただ乾いた口内を潤すためだけにわずかに口に含んで飲み込む。

何よりも紅茶に対してうるさいダージリンのそんな様子に、彼女がそれほどまでに心を疲弊させているのだとカチューシャは察した。

なんとか話を続ける事が出来るようになったのだろう。ダージリンは再び口を開く。


ダージリン「私は、みほさんと直接会った事は無いわ。だけど、知ってはいた。……次代の黒森峰を率いるであろう一人だったんだから」

カチューシャ「知らないほうが難しいでしょ。西住流の姉妹だなんて」

ダージリン「……優しく、思いやりがあって、どこか頼りなさを感じるけど戦車に乗っているときは冷静であのまほさんの意志を誰よりも理解して行動できる副隊長。

      私が知ってるみほさんは、そういう人だった」


ティーカップを持つダージリンの手がカタカタと震える。


81 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/13(土) 22:39:57.18 ID:xS+etstB0



ダージリン「でも、私が会ったみほさんは、『逸見エリカ』だった」


言いたくなかった事、信じたくなかったことを吐き出すように伝えると、あとはもうため息のように言葉が続いていく。


ダージリン「信じられなかった。あの子が持っていたであろう柔らかく、穏やかな雰囲気が全て失われていたから」

カチューシャ「失われていた。じゃなくて、捨てたのよ。あいつは」


切り捨てるようなカチューシャの言葉にダージリンは悲しそうに目を細める。


ダージリン「……私には、みほさんの気持ちを理解する事は出来なかったわ」

カチューシャ「できるわけないでしょ。私だって理解できないわよ」


そう、理解なんてできるわけがない。

過去を求めて現在さえ歪めて、未来を捨てる。

そんなみほの気持ちを理解するだなんて事ができるわけがない。

どれだけ失われた命を悼んでも、どれほど自身の無力さを悔やんでも。


それでも、それでもみほはそうする事を選んだのだ。

きっと、誰かの理解なんか求めていなくて、だからこそ、それほどまでの決意が、絶望が、みほにはあったのだと、二人は感じていた。


ダージリン「それでも、もっと……やり方があったんじゃないの?」


82 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/13(土) 22:45:21.24 ID:xS+etstB0

それは、咎めるというよりも縋りつくような言葉。

ダージリンはカチューシャなら、自分以外の誰かならもっと誰も傷つかない、方法があったのではないかと、そう思いたかった。

だから、カチューシャははっきりと告げる。


カチューシャ「その『やり方』を探しているうちに、あの子は決勝で西住まほと対面することになってたでしょうね」


ダージリンは納得と悔しさを沈黙で表す。


まほは間違いなくみほの真実を詳らかにする。

その確信がダージリンたちにはあった。

まほが持つみほへの怒りを、ダージリンは試合の中で感じていた。

もしもみほが何食わぬ顔で『逸見エリカ』として決勝の場に立とうとしたのならば、まほは躊躇なくその足元を崩しただろう。

そして、大洗の生徒たちが決勝という大舞台で自分たちの隊長の真実を知ったらどうなるのか、その先は考えるまでもない。


ダージリン「……そうね。カチューシャ、あなたが正しいのかもしれない」


カップをソーサーに置き、ダージリンはスカートの裾をぎゅっと握りしめる。


ダージリン「私は……逃げていたのよ。みほさんから、エリカさんから」

カチューシャ「それこそ、あんたたちがどうこうすることじゃないでしょ。そもそも、ダージリンは無関係なんだから」


カチューシャの正論にダージリンは唇を噛みしめる。

そしてそれを解くようにそっとため息をついた。

83 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/13(土) 22:50:09.92 ID:xS+etstB0



ダージリン「そうかもしれないわね……私の心配は、ただのお節介で、ともすれば傲慢なのかもしれないわ……」


ダージリンが何も見たくないと言うかのように両手で顔を覆う。

その両手をそっと離して、潤んで、揺れる瞳でカチューシャを見つめる。


ダージリン「ああそうよカチューシャ。私は、善意や正義感であの子をそっとしておいたんじゃない。私は、私はただ……怖かったのよ」


それは、ずっと言うべきだった、ずっと言いたかった本心。


ダージリン「みほさんに触れることが怖かった。あの子の笑顔が怖かった。当たり前のように他人を演じる彼女が、怖くてたまらなかった」


大洗で初めてみほと会った時、ダージリンは内心動揺を隠すことで必死だった。

みほの現状は知っていたのに、覚悟していたはずなのに。


ダージリン「指先で触れるだけで壊れてしまいそうな彼女をただ、遠巻きにして、偉そうに心配して、それで自分を納得させていたのよ。何もしないくせに、できもしないくせに、それが、あの子のためだって」


仕方がない。自分に出来る事なんて無い。そうつぶやくたび安堵してしまい、同じくらい自身への嫌悪が押し寄せた。

そんな自問自答なんて何の意味もない自己満足だという事なんて気づいていたのに。



ダージリン「あの子が逸見エリカでいたいのであれば、それで良いのだと。時間がいつか解決してくれると。私は、そう思いたかった」

カチューシャ「私は、そうは思わなかった」


その独白を、カチューシャが打ち切る。


カチューシャ「誰かがやらないといけなかったのよ。最悪の結末なんてとっくに迎えているのだから。あとは、どれだけ傷が広がるのを防げるか。

       たとえ最後に深い傷をつけることになるとしても、やらないといけなかった。そしてそれが出来るのは、やるべきだったのが私だった。それだけよ」

ダージリン「……答えなんて、あったのかしら」

カチューシャ「……わかんないわよ。それでも私は――――覚悟して選んだわ。あの子を『壊す』選択肢を」

84 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/13(土) 22:51:05.89 ID:xS+etstB0
ここまでー
また来週。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/13(土) 23:25:44.18 ID:gbnDvCPA0
>>1ーシャ
カチューシャ健気
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/13(土) 23:32:52.48 ID:Dr3Nsb8pO
ダージリンでも怖い。
それはどれだけの事なのかな?(ポローン


((お疲れ様でした))
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/14(日) 00:17:06.78 ID:P48Igsup0
ダー様よりカチュンのほうがメンタル強いパターン初めて見た。

88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/14(日) 00:44:17.60 ID:A4qqAVm00
>>73
他人を罵倒するようなことをよく書き込めるよね、感心するわ。
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/14(日) 01:07:10.99 ID:ElM5WkWw0

はっきり言って周りの人にみほの事を白雪姫と言いふらすばかりで自分から何とかしようとみほに行動はしてなかったからねダージリン
彼女の状況を外から見るだけで放ったらかしにして、それを見て楽しんでるだけのように見えてもおかしくないレベルで
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/14(日) 03:05:56.15 ID:eJWKlhT50
>>1さんは黒森峰黄金期√とカチューシャ「私は、あなたたちを…編と書かないといけないものが増えちゃったね(ニッコリ
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/14(日) 17:26:06.31 ID:0TuYqce20
>>90
黄金時代編……まぽりんがベヘリット使ってえりりんが精神崩壊してみぽりんがヤバい戦車乗りになるんやな!
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/14(日) 20:24:39.38 ID:mg106RrVO
最終章でエリカ活躍してエリみほssまた流行らないかな〜
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/15(月) 13:30:11.49 ID:leBAutci0
娘の不安定な面に気づかなかったしぽりん
妹が不安定な面に気づいていたのになにもしなかったまほ
自分の不安定な面の意味を理解できていなかったみほ
西住という家がおかしかったんだ
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/17(水) 00:30:57.55 ID:mCcLQ5q7O
確かに一般的にいわれるパーソナリティ障害まっしぐらな家庭環境はボコなり不器用感なり心の純粋さなりに公式で現れている気がしてるね
うん
ユニークではあるけどこりゃ戦車道止めらんないわ
西住流の宿業やね
島田流はどうなんだろうか
愛里寿ママはしほよりママ感あるけどパパ感かないよなあ
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/19(金) 11:03:21.00 ID:9P+14MeH0
みぽりんは二度と自分には戻れなかった。
みほとエリカの中間の生命体となり永遠に大洗をさまようのだ。

そして死にたいと思っても[ピーーー]ないので 、そのうち、みほは考えるのをやめた。
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/20(土) 17:59:06.13 ID:vZ/ksHWuO
その[ピー]がわからないのは俺だけなんやろか?
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/20(土) 21:15:26.98 ID:sktzU6Ux0
>>96
フィルターも知らない初心者ならローカルルール確認してきたほうがいいよ
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/20(土) 22:29:46.64 ID:o99WDEssO
あ、なるほど
律儀に○○を避けたのね

なんかもっと面白いワードが入ってるのかと
礼儀正しいのね
99 : ◆eltIyP8eDQ [sage saga]:2019/04/20(土) 22:46:05.23 ID:AaSZ+bzY0
あ、すみません。
今日ちょっと投稿できそうにないので明日でお願いします。
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/21(日) 11:56:46.45 ID:mBsG8k4P0
今週はあるのかな?
生きがいだけど自分のペースで書いてください
楽しみにしてます
101 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/21(日) 23:49:45.00 ID:U8m/w75d0




大洗女子学園に点在する学生寮、その一つであるアパートの一室の前に沙織はいた。

扉の前でじっと何かを考えていた沙織だが、覚悟を決めたように扉の横のチャイムを押す。

鳴り響くチャイムの音が扉を通して沙織の耳にも届く。

しかし、扉が開く気配はない。


沙織「西住さん」


ノックと共に沙織が部屋の主の名前を呼ぶ。


沙織「私、武部沙織だよ!今日は練習だからさ、一緒に行こう?」


努めて変わらず、以前と同じように明るく声を掛けたつもりだったが、やはり沙織の声はどこか強張っていた。

結局、扉は開かず廊下に沙織の独り言が響き渡っただけになってしまった。


沙織はため息を一つつき、小さく謝りながらドアノブに手をかける。

何度か力を入れて、ドアノブを回そうとするも僅かに音を立てるばかりで開くことは出来ない。


いっその事ベランダの方から侵入してやろうかと沙織が内心で空き巣まがいの事を考えていると、携帯の着信音が鳴り響いた。

確認してみると、送り主は『えりりん』。

文面は、


『ごめんなさい。今日は体調が悪いから休むわ』


それを見た沙織は悔しそうに、悲しそうに唇を噛みしめると、また先ほどのように明るい声を出す。


沙織「……わかった。何かあったら呼んでね?すぐ駆けつけるから!」


そう言って、逃げるように扉の前から去った沙織を、学生寮の前で優花里たちが迎える。


優花里「どうでしたか……?」


恐る恐ると言った優花里の問いかけに沙織は無言で首を振る。


優花里「やっぱり、今はまだそっとしておいた方が良いのでは……」

麻子「だからといって何もせずにいるのも違うんじゃないか」

華「私たちは、私たちで出来る事を考えるべき、ですね……」


優花里、麻子、華がそれぞれ意見を述べる。


沙織「私たちに出来る事……」


ポツリと沙織はそうつぶやくと、そのまま学校へと向かっていく。

そのあとを3人は小走りで追いかけていった。

102 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/22(月) 00:00:30.36 ID:jQ2XiiXS0






準決勝が明けて、休日を挟んだ後の練習。

既に学園は夏休みに入っているが、間近に迫った決勝の為に練習を怠るわけにはいかなかった。

既に作成されているメニューの通りに練習をこなし、朝から始まった練習が終わったのは夕方に差し掛かる頃だった。


杏「みんなお疲れー。もうすぐ決勝だし、色々詰めていこうね。それじゃあ解散ー」


相変わらずどこか気の抜けたよな声で締める杏に、各々思う様な顔を見せつつも、その場を離れていく。

残ったのは生徒会チームと、その前に立ちふさがった沙織だけだった。


柚子は何事かとおろおろして、桃はじっと表情無く沙織を見つめ、杏はわかっていたかのように微笑む。


沙織「会長」


いつもの明るさのかけらもない沙織の声に、杏は困ったように笑う。


杏「……やっぱり、隊長がいないとみんなどこかぎこちないね。やっぱり、隊長がいないと……」

沙織「会長……あなたは、どうするつもりですか」

杏「……西住ちゃんの事はなんとかしてあげたいと思ってる。でも私は……今は大会の事を考えるよ」

沙織「……あなたが、巻き込んだんじゃないですか」


苛立ちを隠しきれてない震えた声が杏に刺さる。

沙織の怒りに杏はそれでも笑顔で答える。


杏「そうだよ。それを咎められても私は何も言い返せない。悪いのは全部私なんだから」

沙織「開き直らないでくださいッ!!」


沙織の怒声が校庭に響き渡る。

杏に怒りをぶつけたところで何も変わらない。それは沙織もわかっている。

どうすればいいかわからない自分への苛立ちもその怒りには込められていた。



103 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/22(月) 00:04:13.33 ID:jQ2XiiXS0



杏はやっぱり困ったように笑うと、顔を伏せる。


杏「……ごめんね。でも、私は最後までやらないといけないんだ。優勝して、廃校を阻止出来たら……どんな報いでも受けるよ」

沙織「出来なかったら。廃校が決まったら今度はどうするつもりですか」

杏「……」


杏は何も言わない。

言いたいのに言えないのか、何も考えてないから言えないのか。

どちらでもいい。沙織はそう吐き捨てるように顔をしかめる。


沙織「私はっ……大会とかどうでもいい。西住さんの事をなんとかしてあげたい」


悔しさをこらえるように強く手を握りしめる。

廃校は嫌だ。だけど今、沙織にとって大事なのはそのことじゃない。

みほが辛いのなら、苦しんでいるのなら、助けてあげたい。

それが沙織にとっての最優先事項だった。


沙織「どうすればいいかなんてわからない。でも、あんな状態が正常なわけがない。だからっ」

桃「出来るわけないだろ」


その時、ずっと黙っていた桃が口を開いた。


沙織「……」

杏「河嶋……」

柚子「桃ちゃん今は……」


引き留めようと袖を引く柚子の手を振り払い、杏を押しのけ桃は沙織に迫る。


桃「お前が、あいつの何を知ってる。どんな気持ちで『逸見エリカ』と名乗ってたのかわかるのか?」

沙織「……」

桃「わかるわけがない。そんなの分かる奴なんていないんだ。あいつ以外には」


沙織と桃の視線がぶつかり合う。


104 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/22(月) 00:05:06.15 ID:jQ2XiiXS0


桃「なのに、他人が横から口を出すなんて、そんなの上手く行くわけがない」

沙織「だからっ!!試合の事よりもそっちの方を考えるべきだってっ」

桃「いい方法がある」

沙織「え……?」

桃「西住にまた、元気になってもらう方法だ」

沙織「……何」

桃「西住にまた隊長をしてもらえばいい」


名案だとでも言いたげな桃に沙織は舌打ちしそうになる。


沙織「それで解決するならこんな事に……」

桃「あいつの望みを叶えてやればいいんだ」

沙織「それって……」

桃「『逸見エリカ』に戻ってきてもらえばいい」

沙織「ダメだよ……それじゃあ何も変わらない」

桃「変わらなくたっていいじゃないか」


105 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/22(月) 00:22:43.63 ID:jQ2XiiXS0


沙織「……西住さんのお姉さんは、西住さんの事を嫌ってる。ううん、憎んでるように見えた。決勝に行って平穏無事に終わるとは思えない」

桃「だったら私たちが守ってやればいい。既に西住の事はみんな知ってる。いまさら暴露したって動揺するやつはいないさ」

沙織「それで、その先はどうするの。エリカさんのままにして、その後はどうするのっ」

桃「……時間が解決してくれるさ」

沙織「本気でそう思ってるの?本気で、あのままにしておけば西住さんが元気になるって思るの!?そんなのっ、桃ちゃん先輩だってわかってるでしょっ!?」


沙織がこらえきれず怒鳴ると、両肩を桃が荒々しく掴んだ。


桃「あいつはっ!!ずっと自分を責めていたんだッ!!逸見の事だけじゃないッ、プラウダとの試合で追いつめられた事だってッ!!」



『……桃ちゃん、あなたは自分を嫌いになった事がある?』



ずっと桃の中で繰り返されたいつかの問いかけ。

その意味が、今なら痛いほどわかってしまう。



沙織の肩を掴む手が震える。

こぼれた涙が校庭を濡らす。


桃「なのに私たちは……何も知らずに、あいつに何もかも押し付けて、勝利を喜んで……」


106 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/22(月) 00:25:47.19 ID:jQ2XiiXS0


桃は廃校が嫌だった。みんなと一緒にすごしてきた学校がなくなるなんて嫌だった。

だから、みほを巻き込んだ。

たとえ恨まれたって学園を守れればそれで良い。そう思っていた。

だけど、今は、


桃「私は、私はもう嫌だ……何もできないくせに、責任ばかり押し付けるだなんて真似、できない……」



『私は―――――――エリカさんになれないの? 』



雪のなかに崩れ落ち、呆然と自分を見つめる真っ白な姿。

夢に見る、脳裏に蘇る、その姿が、出会った日から今日までの彼女に重なっていく。


そんな彼女に自分がどれほどの重荷を背負わせていたのか。

その事実は桃にとって、学園よりも重く、許せない事だった。


桃が沙織を突き飛ばすように肩から手を離す。


桃「もういいんだ……負けたって構わない。戦車道が嫌だというのなら、それでも良い。あいつの、好きにさせてやってくれ……私にはもう、それしかできない……」


そしてとうとう桃は泣きじゃくってしまう。

その背中を柚子がさすり、杏はやはり動けなかった。

そして、そんな生徒会の姿を見て、桃の言葉を聞いた沙織は、


沙織「……嫌だ」


それでも、


沙織「そんなの、私は嫌だよ」


揺るがなかった。


107 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/22(月) 00:27:11.64 ID:jQ2XiiXS0



沙織「もう現状維持なんて無理なんだよ。私たちが西住さんの事を知った時点で、『私たちが知った』事を西住さんが知ってしまった時点で」


どのみち、先なんて無かった。たとえみほの真実を知らなくても、終わりは近づいていた。

そして時は巻き戻せない。どれだけ自分たちが彼女を気遣おうと、どれだけ守ろうと、沙織たちの知ってる彼女は『西住みほ』なのだ。


沙織「今ここで私たちが『エリカさん』を認めちゃったら、『西住さん』から目を逸らしたら、もう誰もあの子の事を見ることが出来なくなる」


罪悪感を抱えているのは桃だけじゃない。

出会ってからずっとそばにいたのに気づかなかった沙織も、同じように罪悪感を抱えていた。

みほに触れたくない。触れて、これ以上傷つけたくない。

その気持は痛いほどわかってしまう。


だけど、だからこそ、沙織はその願いを否定する。


沙織「たとえ傷つける事になったとしても、引っ叩いてでも、私は『西住さん』の言葉が聞きたい」

桃「そんな事する権利、お前たちにあるのか」


赤くなった瞳で、桃がにらみつける。

沙織はその視線をまっすぐ受け止める。


沙織「無いよ。でも、私たちは―――――西住さんの友達だから」


理屈や論理ではなく、どこまでも真摯な感情論。

その言葉に桃がはっと目を見開く。

その様子に沙織はふっと微笑むと、


沙織「桃ちゃん、あなただってそうでしょう?」


そう言って走って行った。



108 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/22(月) 00:41:18.94 ID:jQ2XiiXS0





結局、沙織はそのままみほの部屋の前まで走ってきた。

元より戦車道を始めるまで運動らしい運動なんて体育の授業でしかやってなかった沙織の体は悲鳴をあげ、

その痛みや息苦しさを乙女らしくないかな?なんて軽口を脳内で叩いて無理やりごまかす。

そして呼吸が整うのも待ちきれず、沙織は扉に向かって呼びかける。


沙織「西住さんっ」


返事は帰ってこない。

チャイムを鳴らしても、ノックしても同様。

だから、沙織はみほに呼びかけ続ける。


沙織「西住さんっ!!私、私あなたとちゃんと話がしたいの!!」


周囲の部屋への迷惑だなんてこの際気にしていられない。

沙織は疲れて息混じりの声で必死に声を上げる。


沙織「お願い、私と話をして。このまま終わりなんて、私……嫌だよ」


呼吸も整わない内に大声を出したからか、沙織の体はふらつき、前のめりに扉に寄りかかってしまう。


沙織「西住さんっ……」


その時、思わず手にかけたドアノブが抵抗しないことに気づく。

沙織は一瞬逡巡するように目を伏せるも、手に力を込め、引き剥がすように扉を開いた。


沙織「……西住さん」


109 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/22(月) 00:47:42.61 ID:jQ2XiiXS0



廊下はもちろん、部屋も明かりがついていない。

部屋に向かって沙織はもう一度呼びかけるも、返事は帰ってこない。

物音一つせず、まだ少し荒れている沙織の呼吸がやかましいほどだった。


やはり、勝手に部屋に入るのは……と、踵を返そうとする自分の足を沙織は必死で引き止める。

ここまで来たのだから、後で謝って怒られよう。

沙織はそう、頭の中で言い訳をすると、靴を脱いでそっと、廊下に上がった。


沙織「……お邪魔するね」


薄暗い廊下を沙織は締め切られたカーテンからわずかに差し込む夕日を目印に恐る恐る進んでいく。

そうして、部屋にたどり着く。

けれども、


沙織「いない……」


そこには誰もいなかった。


沙織「留守……?」


明かりをつけ、部屋を見渡す。

沙織たちが以前来た時と変わらない、飾り気のなく、どこか生活感のない部屋。

床には飲みかけのペットボトルと、試合の時にも持ってきていたカバンが落ちている。

ふと、沙織の瞳がベッドへと向く。

そこには『前の学校の子から預かっていた』とみほが言っていた黒森峰の略帽をつけたクマのぬいぐるみが置かれている。

そのぬいぐるみはベッドの下に乱暴にしまわれていたのに、今はまるで話し相手にでもしていたかのように姿勢正しく置かれていた。

そしてその横には、投げ捨てられたかのように携帯も置かれていた。


沙織「西住さん……」


嫌な予感が、沙織の脳裏をよぎった。


110 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/04/22(月) 00:50:00.40 ID:jQ2XiiXS0
ここまでー
すみません延期の上にガッツリ予定時間オーバーしました。
そして来週はお休みでお願いします。

色々と待たせてしまい申し訳ありません
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/22(月) 06:11:43.13 ID:++kgM5VfO
乙 自分のペースで良いのよ
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/22(月) 12:17:15.15 ID:0OfaWbl00

実の姉は何もしなかったどころか突き放して周りの友達ばかりが頑張ってるのみるとなんかなあ
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/22(月) 13:08:14.79 ID:aiSBUNDN0


まぁまぽりんはまぽりんで追い詰められてたし支えもないしである程度仕方あるめぇよ
一番問題なのは戦車道公式や西住流の在り方とか姿勢が歪んでることそれ自体じゃんね
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/22(月) 13:44:19.01 ID:NHXRg5sqO

現実から逃げてる人と向き合うには多少強引じゃないと話にすらならないから仕方ない
でもそれはそれとして大洗で「エリカ」として頑張った事は誰か認めてくれると良いんだけどなぁ
どんな形でもこれまでに頑張った事まで否定されるんじゃあまりにも辛すぎる
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/22(月) 21:53:05.40 ID:NuZJbFuZ0
乙。

やばい。滅茶苦茶嫌な予感がする。
エリカの「生きろ」というギアスがあるから、自殺は無いんだろうけど、みぽりんがはやまった事をしそうで怖いな。
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/23(火) 10:00:47.66 ID:izdnD3YXO
自己愛クラスタC回避性人格障害なのか?
また復活可能な可能性が微レ存?
早く助けて、小梅ちゃん!
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/23(火) 23:25:38.81 ID:sGkDf/VaO
沙織「えりりんが引きこもってからもう8年がたったよ」
最終章
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/24(水) 07:57:45.80 ID:nZ1CiaW10
ああ嫌な予感がするぅ…実の親子や親友がどれだけ話しても聞く耳持たなかったのに、謎の大洗あんこうパワーで解決しちゃいそうな予感がするぅ…名作が一気に駄作になる予感がするぅ…
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/24(水) 10:19:22.50 ID:qZp83lJpO
>>118 言いたいことは分からんでもないがちょっと誘導してるみたいであまり良くない文章かなーって…
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/24(水) 22:23:57.45 ID:904RfJk/O
幽玄デスネワカリマス
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/24(水) 22:36:20.66 ID:Tyj0hOur0
>>118
でもこれくらいしかないよね実際
こっからさらにまた母親とか姉、親友の加わっての説得もあるかもだけど…あるいは夢のなかでエリカに諭されるとか
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/25(木) 00:18:28.04 ID:VHZTgx0b0
逆だよ
むしろ姉や母だと近すぎる上にお姉ちゃんが今のみほの全てを拒絶してそこで終わらせようとしちゃってるから家族での話し合いのしようがないんだよ
親友も当事者の1人だから別の感情が混ざって落ち着いて話しづらい
その事件を本当に何も知らない子の方がかえって話しやすいんじゃないかな
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/25(木) 01:57:14.54 ID:LjJzPGFO0
個人的な考えだけどガルパンSS読者って、黒森峰の誰かが大洗転校、そこで友情を育み過去の諍いにも試合にも打ち勝つ!っていう展開に食傷気味というか、飽きてる気がする。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/25(木) 10:30:04.38 ID:j1Lt1dk+O
小梅ちゃんに期待
具体的にはわからんがキスやろなあ?
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/26(金) 14:30:03.66 ID:VyzvJ6FMO
二人は幸せなキスをして終了
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/26(金) 14:44:13.27 ID:H8EXA/hEO
エリカさんにはなれない→
エリカさん→エリカさん→エリカさん→エリカさん→エリカさん→ボコに相談→ひらめき→携帯で小梅ちゃんに連絡→エリカさんをよく知っている人をボコ(エリカさん)してやるぞ→沙織(いやな予感がする
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/27(土) 17:24:42.97 ID:ZV2Brcv6O
もう一週間がたった...だと...?
(待機
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/27(土) 19:56:53.79 ID:c3l2QhDg0
ごめんなさいつぎの更新来週なんですよ
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/27(土) 20:48:10.40 ID:kqI8flxqO
おぅ...
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/04/28(日) 11:15:30.51 ID:gpRQbwHz0
うわあああああん待てないもおおおおおおおおん
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/28(日) 13:34:38.07 ID:dV8jAGFbo
あぁ…今日の更新ないのか…
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/28(日) 21:20:30.58 ID:cifDZqHuO
平成の終焉をいかに過ごすか
やっぱりなんか食べたいなあ、なんて思ってたら、あれ?柚子みほってありじゃね?という新しい扉が開いた
...来週、楽しみにしてます。

アアッ、令和にイッちゃうううっ
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/04/30(火) 14:51:46.33 ID:SCSd2phU0
連休で時間あるんだから毎日更新してよ。
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/30(火) 15:20:43.77 ID:wHZIGjvU0
10連休とかファンタジーの話しないでくれませんかね…
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/01(水) 07:09:03.81 ID:24NRmz3X0
10連休なんてあるわけないじゃないですか。ファンタジーやメルヘンじゃないんですから。
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/01(水) 10:42:01.36 ID:kAxkvJ7H0
続編で十連休出てくるフラグじゃねえか
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/01(水) 10:45:31.63 ID:CEG37fc5O
「絶対に令和なんかに負けないッ」

10分後

「令和には勝てなかったよ...」

天ぷら
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/02(木) 06:05:30.38 ID:1YLac5Q80
そもそも十連休なんて本当に実在するのでしょうか?
都市伝説の類では?
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/02(木) 16:27:26.77 ID:J1KJrsCeO
公務員は10連休ゾ
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/03(金) 11:01:23.08 ID:GrUXEy4QO
ストパンでいうところのよしかちゃんとリーネ
もしくはエイラーニャ
そういえばそんなストパンssはなかったよね

久しぶりにガルパンからストパンに帰省したらえっちいすぎぞ
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/04(土) 12:01:46.31 ID:/GPm/OvSO
ようやく前スレ読み終わってリアルタイムで追いかけられるようになった
続きが楽しみだ
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/04(土) 22:49:30.53 ID:y1rSdSO4O
さーて今週のさおりんは
143 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/05/04(土) 23:46:53.35 ID:Ujk9qPiQ0






カーテンを閉め切って、電気も付けていない部屋には明りと呼べるものはカーテンの隙間からわずかに差し込む明りしかなかった。

部屋の主のはずのみほは、まるで虜囚かのように小さく膝を抱えて縮こまっている。

身じろぎ一つせず、時間が過ぎるのをただ待っていた時、チャイムの音が部屋に響き渡った。


その音にみほの肩がびくりと跳ねる。

けれども玄関には向かわず、じっと体育座りのまま動かない。

少しして、今度はノックの音がしてくる。


『西住さん』


それに合わせて聞き知った、なのに懐かしい声が自分を呼ぶ。

みほがぎゅっと目を閉じて震える体を抱きしめるように腕に力を籠める。


『私、武部沙織だよ!今日は練習だからさ、一緒に行こう?』


まるで何も気づいていないかのような明るい声。

そんな彼女の優しさが、みほにとってはどうしようもないぐらい辛く、苦しい。


だから、無造作に床に置いていた携帯を手繰り寄せ、


『ごめんなさい。今日は体調が悪いから休むわ』


震える指でなんとかそう打ち込んで送信する。

もう、『彼女』を保つのは文章ですら精一杯になっていた。


そして、どれほどの時間が過ぎたのか。

恐らく1分も経っていないだろう。

けれども、みほにとっては永遠のように感じた沈黙の末、


『わかった。何かあったら呼んでね?すぐ駆けつけるから!』


やはり、先ほどと同じような明るく、けれども気遣う様な声が聞こえてくる。

そして走り去って行くかのような足音が小さくなり、何も聞こえなくなる。

ようやくみほの震えがおさまる。


「……ごめんなさい」

144 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/05/04(土) 23:55:05.00 ID:Ujk9qPiQ0


小さく呟いた謝罪はもちろん、伝えたかった相手には届かない、ただの自己満足だった。

そうしてまた、膝を抱いて小さくなる。みほの頭に浮かぶのは何故こうなってしまったのかという疑問だった。

そして、その疑問の答えはすぐに見つかってしまう。


「私は、何も変わってない」


エリカと出会った日から、エリカを失った日から、エリカになった日から。

みほは一歩も進んでいない。

それは当然の事で、何もかもから逃げている自分が変われるわけがないのだから。

そうみほは自嘲して乾いた笑いが口から洩れる。

そしてそっと顔を上げ周囲を見渡す。

瞳に写るのは薄暗い部屋だけで、みほは失望したかのようにまたうつ向く。


「ああ……やっぱり私は……」


大洗に来てから幾度とみほの前に現れていた栗毛の少女の幻は準決勝の時を最後に一度も現れていない。

自分を責め立ててきたその幻影は、まぎれもなくかつてのみほの姿で、その言葉はまぎれもない今のみほの本心だった。

その幻影が見えなくなった。

その理由もみほは理解していた。


「私は……もう……」


結論を口にするのが怖くてみほは口を閉ざす。

そのまま倒れこんでベッドの下に手を伸ばし、そこに隠すように置いてある略帽を被ったボコのぬいぐるみをゆっくりと引っ張り出した。


無造作に置いてあったぬいぐるみは、けれども埃一つ付いてない。

みほはボコをベッドの真ん中に座らせると、自身は床に座ったまま向き合う。


「エリカさん……私、どうすればいいのかな……」


目の前のぬいぐるみはもちろん何も答えない。

それでも、みほは続ける。


「私じゃ、やっぱりダメなのかな……」


そう問いかける事自体が答えなのだと、みほは気づいていた。

なら、それならば、


「私は……どうすればいいのかな」


何も答えないぬいぐるみに救いを求めるように手を伸ばし、その手は届くことが無かった。


145 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/05/05(日) 00:05:27.41 ID:GKT/EkqT0





夕方の刻もだいぶ過ぎ、夕日に陰りが見え始めてきた頃、学園艦の町の中を戦車道チームの面々は必至に走り回っていた。

沙織から届いた『西住さんがいなくなった』というメール。

慌てて学校に集合するも、どういう事かと尋ねる暇もなく杏の指示により捜索が始まった。


大洗の学園艦は他校と比べて小さいが、それでも街一つを内包してる。

財布と携帯を持っていない事から飲食店やカラオケにいない事は想定できたが、それでも捜索範囲は広い。

圧倒的に人手が足りない中、頼れるのは自分たちの足だけだった。


カエサル「いたかっ!?」

エルヴィン「いやいないな……」


カエサル、エルヴィンが合わせて肩を落とす。

ならば残った二人はと、期待を込めておりょうと左衛門座を見つめる。

そんな二人をみておりょうは残念そうに首を振ると、親指で左衛門座を指し示す。


おりょう「さっき左衛門座が白髪のお婆ちゃんと西住さんを間違えていたぜよ」

エルヴィン「節穴!!」

左衛門座「あ、焦ってたんだからしょうがないだろ!?」



おりょうの告げ口にエルヴィンは思わず声を上げてしまう。

ふざけている場合かと左衛門座とおりょうに内心舌打ちをするも、すぐに首を振って苛立ちを追い出す。

今は言い争いをしている場合じゃない。早く西住さんを探さないと。

焦った所でしょうがない。わかっているが、それでも焦りは生まれてしまう。

みほがどこにいるのか、何をしているのかわからない現状は、皆にとって何よりもの不安要素だった。

146 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/05/05(日) 00:12:19.91 ID:GKT/EkqT0





レオポンさんチームは街の中の探索ではなく、学園艦の外周を自動車部の愛車であるソアラで走っていた。

学園艦の外周に点在する広場を捜索するためだ。

いつも飛ばしに飛ばしている道路を今は陸での法定速度で速度で走っている。


スズキ「ナカジマ―見つかったかー?」

ナカジマ「いなーい!!」


助手席の窓から顔を出したナカジマが大声で後部座席のスズキに返事を返す。


ホシノ「ツチヤーやっぱもっとスピード落としてくれ」

ツチヤ「はーい」


ホシノの指示に合わせて運転しているツチヤがスピードを更に緩める。

長い直線にツチヤはついつい癖でアクセルをふかしてしまいそうになるが、一刻の猶予もないからこそ慎重にいかなくてはと、ペダルを踏みこもうとする自身の足を努めて制御していた。


ナカジマ「……まずいなぁ。そろそろ日が沈む……」


不安げに呟くナカジマの視線の先で、街灯がぱっと明りを灯し始めた。


147 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/05/05(日) 00:19:43.80 ID:GKT/EkqT0




そど子「そっちはどう?」

寄りかかっている自販機で今しがた買った緑茶の缶を持ちながらそど子は尋ねる。

尋ねられたゴモ代はクリップボードに留められた地図に×を付けながら答える。


ゴモ代「それらしき人物は見つからず」

そど子「……了解。そのまま捜索続行で。私ももう行くわ」


飲み干した缶を自販機横のゴミ箱に入れると、そど子はゴモ代が持っているのと同じ、地図が留められているクリップボードを片手に歩き出す。

そんなそど子の向かいから疲れた様子でパゾ美がやってきた。


パゾ美「そど子ー見つからないよー……」

そど子「もうちょっとだけ頑張ってよ。……でも、流石にそろそろ次の事を考えるべきかもね」

パゾ美「やっぱり警察に言った方がいいんじゃ……」


不安げなパゾ美にそど子はため息交じりに答える。


そど子「まだ明るいし、一人暮らししてる子がほとんどの学園艦で今日いなくなりましたーって言っても様子見が関の山でしょ。

    ほら、今は口よりも足を動かしなさい。……今日は門限破りになりそうね」

パゾ美「一人暮らしなのに門限とかあるの?」


パゾ美が首を傾げると、そど子は不満そうな顔をする。


そど子「私が決めたの。規則正しい生活は風紀委員として当然の事なんだから」


本当に真面目だなーとパゾ美が感心半分呆れ半分に思っていると、そど子はため息をついて、キッと前を見つめて歩き出す。


そど子「でも、今は後回しよ」

148 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/05/05(日) 00:30:06.72 ID:GKT/EkqT0




ウサギさんチームの面々はバタバタと手足を振りながら走り回っていた。

探せども探せども、目当ての人物は見つからず、探した場所は地図に印を付けるという指示すら忘れて同じ場所を探してしまう始末であった。

それでもなんとか自分たちの持ち回りの場所を探し終えた一年生チームはあらかじめ決めておいた集合場所に集まってきた。


普段は元気の塊といったような少女たちの表情は随分とくすんでいて、そんな中半分泣きそうな表情であやが情けない声を上げる。


あや「見つかったー?もう疲れたー!!」

桂利奈「全然見つかんないよー!」

優季「私の方もダメだったぁ」

あゆみ「こっちもね」

紗希「……」

桂利奈、優季、あゆみが口々にそう告げて、それを紗希が無言の視線で締める。

声だけは普段の姦しさを残しているものの、自分たちの苦労が徒労にしかなっていない現状はどうしても堪えてしまう。

だからといって、捜索をやめるつもりは毛頭無い。

とりあえず次はどこを探そうかとあゆみがポケットにしまいっぱなしだった地図を広げると、紗希がきょろきょろと周りを見渡していることに気づく。


あゆみ「紗希、どうしたの?」

紗希「……」


紗希が小さく口を開けて何かを言おうとしたとき、隣にいた桂利奈が驚いた様子で声を上げた。


桂利奈「あれ!?梓ちゃんは!?」

あや「え?まだ戻ってないの?」

優季「紗希、梓見てない?」

紗希「……」


紗希が無言で首を振る。


あや「もー!!梓まで行方不明ー!?」


苛立ちを隠しもしないあやの声が薄暗い街中に響いた。


149 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/05/05(日) 00:52:16.10 ID:GKT/EkqT0




ねこにゃー「あ、キャプテン」

典子「猫田か」


大通りから外れた街角で偶然、ねこにゃーと典子は鉢合わせた。


典子「そっちの様子はどうだ」

ねこにゃー「さっきチームのみんなと合流したけどまだみたい……とりあえずまたバラバラに探し回ってるけど……」

典子「こっちもだ。とりあえず会長に報告はしたが……」


典子が腰に手を当てため息を吐く。

いつも元気に満ち溢れている典子のそんな姿にねこにゃーもつられてため息を吐いてしまう。


ねこにゃー「……西住さん、どこ行ったんだろう……」

典子「……それを探してるんだ。口より足を動かそう」

ねこにゃー「うん……あれ?」


その時、ねこにゃーが視線の先に見慣れた影を見つける。

小さく、どこか頼りなさを感じるその影は不安そうな顔で周囲を見渡していた。

ねこにゃー達は顔を見合わせ、その影に近づいていく。


ねこにゃー「澤さん」


ねこにゃーの呼びかけに、梓はびくりと肩を震わせるも声を掛けてきたのがねこにゃーと典子である事に気づくと安心したようにため息を吐いた。


梓「猫田先輩に磯辺先輩……びっくりさせないでください……」

典子「澤、ウサギさんチームの捜索範囲はこっちじゃなかったはずじゃ」


典子の言葉に梓はキョトンと首を傾げる。

そしてすぐに自分がみんなからはぐれてしまった事に気づくと、恥ずかしそうに顔をそむけた。


梓「え?……あ、私いつのまにこんなところにまで」


梓はぺこりと頭を下げる。


梓「ごめんなさい、あっちにいるかも、こっちにいるかもってやってたらいつの間にかみんなからはぐれちゃったみたいです……」

ねこにゃー「あはは……」

典子「熱心なのはありがたいが、ちゃんと周りも見ておこうな」

梓「はい……」

典子「……澤、ちょっといいか?」

梓「え……?」

典子「まだ、隊長の事で怒っているのか」

ねこにゃー「キャプテン、今はそれどころじゃ……」



150 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/05/05(日) 00:58:47.38 ID:GKT/EkqT0


ねこにゃーが少し焦った様子で止める。

梓がみほの事で動揺を未だに抑えられていないのは心配だが、だからといって当事者であるみほを探している今、その事を梓に尋ねるのは時期早々だと思ったからだ。

しかし、典子は梓を見つめたままキッパリと答える。


典子「いや、今話しておくべきだ」


その言葉に、典子にも考えがあるのだとねこにゃーは察すると、その視線を梓に向ける。

二人の視線に梓は視線を揺らすと、ぎゅっと手を握りしめる。


梓「……私、わかんないです。エリカ先輩が西住みほさんだって急に言われて。エリカ先輩はもう死んでるだなんていわれて」

ねこにゃー「……僕たちもだよ。急にいろんな情報が入りすぎて正直、今も混乱してる」

梓「隊長は……私たちを騙してたんですか?」


梓の声は震えていて、その瞳は否定を求めているかのように潤む。

ねこにゃーは、典子は、何も言わない。


梓「そんなわけない、そんなはずがないって何度も否定しても、心のどこかで思ってしまうんです。私たちに見せた姿は、

  私たちにかけてくれた言葉は、全部嘘だったんじゃって……」

ねこにゃー「……まぁ、そう思うのも無理はないかもね。亡くなった人の名前と姿で生きるって相当だもの」

典子「同感だ」

梓「っ……」


当然といった風に語るねこにゃーたちの言葉に梓は辛そうに顔を背ける。

そんな彼女の様子をねこにゃーは分厚いレンズ越しに優しく見つめると、その肩にそっと手を置く。


ねこにゃー「……だけど、私たちが見てきたあの人が、全部嘘だったかはわからないと思う」


梓にはその言葉の意味がわからず、どういう事かと視線で尋ねる。


ねこにゃー「澤さん、ボクたちはあの人に見つけてもらったんだよ」

梓「……はい」

ねこにゃー「戦車が好きで、だけど戦車道を履修するほどの度胸は無かった僕たちを見つけて、引っ張ってきてくれたんだ」


ついこの間の出来事なのにまるでずっと昔の事のようにねこにゃーは思い出を語る。


ねこにゃー「あの人は確かに僕たちに嘘をついていたんだと思う。それに傷つくのは仕方がないよ」


梓の気持ちが分からないなんて、ねこにゃーは言えなかった。

信頼していた人が嘘をついていたのは間違いなく、その事に傷つくななんてことを言えるわけが無かった。

だけど、


ねこにゃー「でもね、あの人が教えてくれたことに嘘は一つもなかった」


肩を掴むねこにゃーの手に力が籠められる。



151 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/05/05(日) 01:02:30.73 ID:GKT/EkqT0


ねこにゃー「バレー部の特訓を受けさせられて、本当に大変だった。インドア派な僕たちがみんなについていくために必要だってわかっててもね」

典子「お前たちは鍛えがいがあったな!」


楽しそうに笑う典子にねこにゃーは「キャプテンは笑いながらボクたちを地獄に落としてたよね……」と小さく苦笑すると、そっと梓の肩から手を放す。

梓の顔をのぞき込むように屈んで、ゆっくりと、噛んで含めるように、


ねこにゃー「でも、あの人は特訓を乗り越えればもっと戦車を好きになれるって言った。……その言葉に嘘はなかったよ」


真っ直ぐなその言葉に、真っ直ぐなその瞳に、梓は視線をそらしてしまう。

そんな梓の姿にねこにゃーは一瞬悲しそうな顔をするも、今度は典子が口を開く。


典子「澤。私は、一度は八九式を信じられなくなった。足を引っ張るだけで、何も出来ないんじゃ……って。そしてその言葉を隊長は否定しなかった」


梓の頭に想起される聖グロとの練習試合の記憶。

最後の一手を任された自分たちの奮闘は届かず、敗北を喫した事は苦い思い出として今も梓の中にあった。

そして、いつだってやる気に満ちていた典子が自分たち以上にその敗北を気に病んでいたという事に梓は驚きを隠せなかった。

けれども、典子ははっと笑うと少し気まずそうに頬をかく。


典子「でも、結局私たちは八九式に乗ってる。正直、戦車道をやればやるほど性能差を嫌でも実感する。でも……それでも私たちはあの子で戦うって決めたんだ。

   正しさとか合理性とか、そういうのを無視して、それでも私たちは今のままで頑張ることを選んだ。そして、私たちの覚悟も隊長は否定しなかった。

   だから―――私は隊長に感謝しているよ」



典子の言葉に何も言えない梓に、ねこにゃーはそっと語り掛ける。


ねこにゃー「澤さん、逸見さんが西住さんだったとして、僕たちを騙していたとして、何もかも嘘だったってあなたは思える?」

梓「……わからない、わからないよそんなのッ!!」


二人の視線に耐えられなくなった梓が、泣き叫ぶように怒鳴る。


梓「私は、本当の逸見先輩に会ったことがないっ!!西住さんがどんな人かだなんて知らないっ!!なのに、一緒に戦った時間が全部嘘かだなんて、決められない……」


けれども、その声はどんどんと小さくなっていき、梓の瞳から涙が流れだし、最後には嗚咽としゃくりあげるような音だけがあたりに響いた。

ねこにゃーたちはそんな梓が落ち着くまで、何も言わずに待っていた。

152 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/05/05(日) 01:07:39.15 ID:GKT/EkqT0





しばらくしてようやく泣き止んだ梓が、真っ赤な瞳を伏せたままポツリと声を出す。


梓「……ごめんなさい。急に泣き出しちゃって」

ねこにゃー「良いよ。ボクたちこそ、急に色々言っちゃってごめんね」

典子「……澤、隊長に会って何を聞くか決まってるか?」


梓は何も言わず頷く。

その様子に典子は満足そうに笑う。


典子「なら良い。さっさと隊長を見つけよう。それで、お前の気持ちをぶつけてやれ」

ねこにゃー「ちゃんと話して、ちゃんと聞いて、怒りたいなら怒って、それで……許すかどうか決めよう?」

梓「……はい」


今度はちゃんと声を出して、しっかりと二人を見つめて頷く。


典子「なら、捜索再開だなっ!走れっ!!」


典子の号令に、3人はまた走り出した。


153 : ◆eltIyP8eDQ [saga]:2019/05/05(日) 01:09:13.09 ID:GKT/EkqT0
ここまでー
この三人の関係性は私の捏造ですけどなんというか結構会話させやすくて扱いやすいですね。

また来週。
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/05(日) 01:16:27.76 ID:d+TfAFjg0
うぉおおこの時を待っていたんだーっ!
更新ありがとうございます!
先が気になりすぎる…
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/05(日) 02:23:45.12 ID:Uv9fbKNY0
乙です。

来週まで待てない!
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/05(日) 02:29:53.96 ID:O7lK9e9U0

待ってて良かったです!
来週も楽しみにしてます!!
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/05(日) 03:04:12.57 ID:TAyV8tIhO
こんなんさおりんが白髪になるわ

お疲れ様でした
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/05(日) 04:50:18.76 ID:5TF6rN820
西住から逃げ、姉から逃げ、母から逃げ、エリカから逃げ、黒森峰から逃げ、今度は大洗から逃げようとするみぽりん
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga saga]:2019/05/05(日) 15:25:29.23 ID:zIk+tx2S0
それもここまでだ!

>>1−シャ
待ってた! 待ってたぞ!
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/05(日) 15:45:43.68 ID:GhgZsxd60
sageろゴミカス
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/05/05(日) 16:10:46.45 ID:zIk+tx2S0
ミスってた
すまんカスゴミ
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/05(日) 23:22:48.01 ID:PLZbuxBNO
梓、典子、ねこにゃーの3人は特に「エリカ」と話をして、それに助けられた人達だからね
あんこうの皆よりも「みほがなりたかったエリカ」を感覚的に理解出来てて、そこから話をしていけるのかもね
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/06(月) 02:34:16.84 ID:PEh0b2qSO
この騒動が小梅ちゃんに知れたら普通に心労で倒れるでコレ
仮に自殺未遂なんぞしよったらカチューシャはいよいよ罪悪感でカミーユだな
結果まほちゃんは最終的には狂ってしほを衝動的に殺害し、このスレは古畑任三郎スレになるだろうな...
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/07(火) 00:31:46.80 ID:4PPOw8SR0
おいww
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/08(水) 19:30:03.72 ID:69/WtYj2O
みほみほみほみほみほみほみほみほみほみほみほみほみほみほみほみほみほみほみほみほみほみそみほみそみほみ
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/09(木) 16:42:13.65 ID:sSBQlVWqO
>>165 みそが混じってますよ
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/10(金) 08:38:47.36 ID:CpqS2DLbO
みそが混入されていた
国産有機みほ100%使用は嘘だった
やはり日本の未来は闇
汚い大人は恥を知れ
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/10(金) 19:38:38.68 ID:tbpbH7rmO
愛じゃよ、愛、小梅ちゃん
あら治療な強○キスから始めましょう
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/10(金) 19:39:13.67 ID:400E/jcp0
早く更新してよ仕事なんていつでも休めるでしょ
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/11(土) 00:35:14.59 ID:fEPBUA2eO
ミカ黒幕説(適当
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/11(土) 00:40:41.13 ID:fEPBUA2eO
西住流を潰すため島田流による陰謀説
(実はエリカは島田流のスパイ)
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/11(土) 00:49:54.74 ID:Pj2QwDqX0
クソほどつまらんそのレスはageてまでするようなものだったの?
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/11(土) 04:06:59.99 ID:pM4jEoC+O
はいはいミスです
すみませんね
適当かつセンスと内容のないクソレスでしたね
ご指導ありがとうございます
174 : ◆eltIyP8eDQ [sage saga]:2019/05/11(土) 13:52:44.47 ID:1lF84Ij30
ちょっと今日忙しくて投稿難しいと思うので明日投稿します。
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