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【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第四章【天華百剣】
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102 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 00:55:50.35 ID:FUR98O3A0
時雨《ああもう!!一瞬遅かった!!》
(;T)「過ぎた事だあいつらを信じろ!!残りは!!」
時雨《一隻!!終わったら僕も合流する!!》
(;T)「最後まで気ぃ抜くなよ!!」
時雨《耳が痛いよ、クソッ!!》
覆水、盆に還らず。俺達は無事を祈るほか無い
航路は予定通り、脇目も振らず島へと奔る
( T)「……」
褌を締め直す意味も込めて、矛を強く握る
すると、その様子を見ていたのであろう小夜がジャケットの裾を引いた
( T)「なんだ?」
小夜左文字「……もう、今しか伝えられない」
( T)「……」
真剣な眼差しに見据えられ、流石にふざけられなかった。今ふざけたら刺される。間違いない
小夜左文字「貴方、『稜威』が目覚めかけている」
( T)「おいふざけんなよお前俺がボケんの我慢したのに」
小夜左文字「冗談なんかじゃないわ……貴方の一番近くにいたのは、私だもの……」
103 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 00:58:47.37 ID:FUR98O3A0
この期に及んで緊張をほぐす為に冗談を放ったわけじゃないのだろう
耳を疑うような内容だが、小夜の言葉、表情に嘲るような色は見当たらない
( T)「……根拠は?」
小夜左文字「一つ目は、錆憑になりかけてた城和泉と偶然にも『繋がった』事……これは貴方の背にいた私も感じた……」
城和泉の記憶が『憂いの篩』のように流れ込んできた時の話か。禍魂による共鳴だと思っていたが
小夜左文字「次に、貴方が禍魂に憑かれた時の暴走。過去にも、同じような例があるとお母さんが言ってた……」
小夜左文字「未熟な巫剣使いの中に入り込んだ禍魂が、稜威と反比例しあう事で……互いの影響を強めるんだとか……」
確かに、副司令を名乗るあのアマも似たようなことを言っていた
俺は禍憑を殺せる人間だが、相反して禍魂を増幅させる力を持つと
小夜左文字「禍魂に憑かれた分、稜威がそれに囚われまいと抵抗する事で……強制的にその力を釣り上げる……」
( T)「元々あった素質が、強引に目覚めてしまったと。そんで、その逆も然り」
小夜左文字「そう、だから……副司令は貴方を試した……禍魂に憑かれ、堕ちる人間かどうかを……」
( T)「……で、俺にどうしろって?」
小夜左文字「別にどうもしないわ……何事も無く復讐できれば、それで問題はない。ただ……」
小夜はジャケットの裾を放し、今度は矛の柄を握った
途端に、矛からじんわりと温もりが伝わってくる。無機質なものではなく、『生き物』の体温に近い熱が
それが、小夜の巫魂であることは何となく理解できた
小夜左文字「どうしようもなくなった時の……最後の賭けとして、頭に入れておいて……」
( T)「……わかった。よろしく頼む」
小夜左文字「ん……」
小夜がここまで付いてきたのは、女将の言いつけもあるが、『最後の手段』も兼ねているのだろう
俺はその稜威とやらの扱いは知らないし、そもそも自覚もない。訓練すれば勝手は違っただろうが、時間もない
都合よk……いや二回死にかけてるわ。都合もクソもねえわ。それくらい目覚めてくれねえと割に合わねえ
だが当てにはしない。この研鑽した筋肉で、あの野郎を絶対にぶち殺してy
104 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 01:01:05.46 ID:FUR98O3A0
( T)「ッ!?」
ドン!!という衝突音と共に、船が大きく揺れ、速度を急激に落とす。座礁か?
いや、ここは沖合だ。それに、この付近で訓練していた海軍兵がそんなヘマをするだろうか?
夕立「ば、爆発っぽいぃ!?」
( T)「おい八宵」
八宵「違うよ!!今のはボイラー部からじゃなくて船首からでしょ!?」
(*゚ー゚)「ッ!!下がって!!」
『びたり、びたり』。吸盤を貼り付けるかのような音と共に、いくつもの『腕』が這い上がってくる
「グルルルルルルル……」
海岸でも見た、触手頭の禍憑だ。野郎、海からでも御構い無しに湧いてきやがったか
城和泉正宗「あと少しで到着って時に!!」
(#T)「ああ全くとことんうぜえ野郎どもだ!!」
上半身を乗せてきやがった禍憑の顎を全力で蹴り飛ばし、続けて這い上がった奴をゴルフスイングの要領で斬りとばす
しかし、数が多い。ゾンビ映画のワンシーンのようにキリがない。これじゃ進退儘ならぬどころか、重量超えで沈没すらあり得る
(*゚ー゚)「もう少し、なのにッ!!」
距離にして百足らず。泳いでも到達する距離だが、飛び込みでもすりゃ海の中に引きずりこまれるのがオチだ
この縄張りを抜けないことには辿り着けない。ここまで来て、雑魚の群れごときに足止めされるとは!!
105 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 01:03:40.73 ID:FUR98O3A0
小夜左文字「……仕方ない」
( T)「あ!?お前、何やって……!!」
小夜左文字「私の番が来ただけよ……!!」
小夜は防御壁を展開した。船を守るためじゃ無く、『道』を作るために
因幡の白うさぎに出てくるサメのように、均等に並んだ足場が島へと続いている
城和泉正宗「あなた一人残しては行けないわよ!!」
小夜左文字「いいから!!行って!!」
小夜の顔からは滝のような汗が流れ出し、並びの良い歯を砕けんばかりに噛み締めている
距離百足らずといっても、島まで届かせる壁を張るには壮絶な負荷が掛かるのだろう
押し寄せてくる禍憑に、刀を使う余裕など毛頭無いように見える
小夜左文字「共倒れより、マシ……!!」
( T)「っ……クソが!!若、城和泉!!行け!!」
(*゚ー゚)「はい!!城和泉!!」
城和泉正宗「し……死ぬんじゃないわよ!!絶対に!!」
小夜が身を削って作り上げた橋にすら妨害してくる禍憑を斬りはらい、二人を先行させる
俺か夕立が残るべきなのだろう。だが……
「あんたらも!!さぁ、早く!!」
「お嬢ちゃんは俺らが命を懸けて守るからよ!!」
八宵「工具って振り回したら痛いんだよぉ!!」
海兵達の身を呈した働きを、無下にするわけにもいかない
クソ、八宵までレンチ振り回して抵抗してやがる
夕立「っ、ぽぉい!!提督さん!!」
素面の状態で禍憑の塊を、夕立が海へと斬り払った
グズグズしている場合ではないと察している。俺が立ち止まってどうする!!
( T)「後は、任せた!!」
小夜左文字「フ、フフ……良い、復讐を……!!」
頼りにし続けた、小さな復讐者の心からの笑顔
それを見て湧いた力を脚に込め、架け橋を蹴って跳んだ
「グガアアアアアアアアアア!!!!!」
「さぁ!!帝国海軍の底力、見せてやれ!!」
禍憑の叫びと銃声が後ろ髪を引いたが、前を向き進み続けた
106 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 01:05:59.98 ID:FUR98O3A0
今日はここまで
ようやく折り返しです
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/15(金) 10:51:58.35 ID:aM2HhqC+o
おっつ
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/15(金) 15:31:08.11 ID:a55u4YcIo
おつ
109 :
◆L6OaR8HKlk
[saga]:2019/03/15(金) 18:32:58.17 ID:FUR98O3A0
―――――
―――
―
沖ノ鳥島をご存知だろうか。日本の排他的経済水域を広げる為に、コンクリートと鉄筋で埋め立てられた殺風景な無人島だ
教科書に載っているそのままの形を真っ黒に染め上げられたような場所を想像すれば間違いない
最後の橋を蹴って、島に踏み込んだ時には大きく、底の見えない穴に落ちるような錯覚を起こすほどだ
( T)「……」
( ゚д゚ )「来たか」
その中心部に、標的は立っていた。お前ブレイド2から来たのかよってくらいの黒衣と、同じく『漆黒』という言葉がよく似合う日本刀を握って
共謀者である北谷(きたたに)何とかも、恍惚の表情を浮かべながら頬に手を沿えている。勿論、俺たちを見ているわけではない。その視線は、奴の想い人にのみ向けられていた
(*゚ー゚)「北谷菜切……!!」
( T)「……」
そうだ北谷菜切(ちゃたんなきり)だった。読み方難しくて忘れてた
忌々しいほど無傷の連中に対して、少し離れた場所で先行隊である虎徹といずみーがいた
長曾祢虎徹「お前ら……!!」
反応を示したのは、倒れるいずみーを庇うように構えている虎徹だけだ
いずみーは死んではいないようだが、敵を前に立てないほどの重傷であるのは言うまでもない
虎徹に関しては目立った傷こそないが、服は所々破れ、大きく息を荒げている
『遅かった』と後悔はしまい。むしろ、『間に合った』と安堵するべきだろう
(*゚ー゚)「……スゥー」
緊張を押し殺し、若は自身の『菊華刀』を抜く
北谷の表情が一変して暗く沈んだが、彼は意に返さなかった
110 :
◆L6OaR8HKlk
[saga]:2019/03/15(金) 18:34:11.49 ID:FUR98O3A0
(*゚ー゚)「御華見衆隊士、椎名美琴。並びに、愛刀『城和泉正宗』!!桜禍糖の製造、流通及び国家反逆の罪により、貴方を討ちに馳せ参じた!!」
(*゚ー゚)「御覚悟を!!」
『稜威』を繋いだのだろう。刀身から淡い光が放たれる
城和泉もまた、これまでの艱難辛苦を燃料にして闘気を放った
かっこいいじゃねえか。俺たちも続くとしよう
(#T)「よぉ!!殺しに来たぜ!!三浦ァ!!」
夕立「やっ、やややっ、八つ裂きにしてやるぅぅ……」
( T)「オーケーその調子だ獰猛さに磨きが掛ったぞ夕立」
マルチーズからポメラニアンになったくらいの上げ幅だが
いや小型犬って気性荒いんだぜ?実家の犬もそうだったし(チワワ)
111 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 18:36:19.39 ID:FUR98O3A0
( ゚д゚ )「……フッ、四人か。道中で随分と数を減らしたようだな」
( T)「あー、おかげさんでな。テメーの虚仮威しに踊らされっぱなしだ」
( ゚д゚ )「ほう、虚仮威しと?」
( T)「稚拙な推理にお付き合い頂いてもよろしいかな?」
( ゚д゚ )「勿論」
虎徹が声を上げようとして、やめた。新選組の局長なだけある。息を整える時間を作っているのだと察したのだ
最も、三浦も『時間を稼がれている』とわかっているのだろう。その上で、奴は『余裕』を持っている
時間と、被った被害、相手の数に囚われていない。やはり、茂名が言った『目的』を重視していないようだ
( T)「蕾の演出、禍魂艦の派手さは確かに目を奪われた。だが、その行動には『無駄』が見受けられる」
( T)「一つは、艦の『脆さ』だ。大きさこそ時代を先取りしていたが、その割にはハイペースで沈められている。最も、俺の育てた可愛いバカが『強すぎる』ってのもあるだろうがな」
( T)「もしアレが実物に禍魂が乗り移ったものならば、もっと強化されている筈だ。実際、人や深海棲艦でそれは証明されている。つまり」
( T)「形を模しただけの『ガワ』だった。明かしてみれば何でもない、しょうもないタネだ」
三浦はさも楽しそうにクツクツと笑う。気の合う友人とカードゲームに興じているかのように
( T)「それがわかったのは、実弾ではなく『禍魂』を飛ばしていたのを見てだ。最初こそ上手い使い方だと思ったが、よくよく考えりゃ『効率が悪い』」
( ゚д゚ )「ほう?」
( T)「これも戦って知ったことだが、禍魂には修復力がある。一旦沈めて、海の底で実体のある禍憑艦として作り直せば、俺らや御華見衆も手を出しづらかったろうよ」
( T)「そうしなかったのは、戦力を救援に回し分散させる為。これはお前の作戦の内だろう。そして、『そもそも沈めるほどの破壊力は出せなかった』から」
禍憑を殺せる艦娘の実弾を防ぐ装甲が無い。つまり、敵艦の装甲を撃ち抜ける砲も実弾も無い
ブラフとリスク分散の為に作られただけの『ガワ』。だからこそ俺は、菊さんの『煩わしい』と言った評価をやんわりと否定したのだ
( T)「そうじゃなきゃ、わざわざ『拿捕』なんて面倒な手段取るかよ。ぶっ殺した方がよっぽど楽だからな」
( ゚д゚ )「フ、ハハッ!!いやはや、やはり貴様は楽しい男だ!!別世界から来たとは思えないほど禍魂に対して『理解』がある!!」
( T)「嬉しくねえ誉め言葉をどうも」
112 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 18:40:08.32 ID:FUR98O3A0
城和泉正宗「……」
敵を前に気を急いているのか。張り詰めた弓につがえられた矢のように、すぐにでも飛び出してしまいそうだ
良くも悪くも愚直な城和泉らしい。だが、もうちょっと辛抱を……いや
( T)「お嬢さん」
城和泉正宗「!!」
指を鳴らして城和泉の意識を俺に向ける。付き合いは短いが、試す価値はある
ここで一つ、大人の『小賢しさ』を学んで貰おう
( T)「男の語らいに水を差すような真似はやめてくれや」
城和泉正宗「……ふざけないで」
( T)「テメーも剣士なら『口火』の切りどころを弁えたらどうだ?ええ?」
城和泉正宗「っ……?」
反論しようとした城和泉は、俺が鳴らした『指』を見て、鳴りを潜める
正確には、俺が指す『物』に、だ。三浦達からは見えない位置に、『それ』は差し込まれている
察しがついたのは及第点。だが、表情や閉口で『臭わせてしまった』のは頂けない
打ち合わせも訓練もしていないなら、こんな所か。苦し紛れでも誤魔化すしかねえ
( T)「失礼。話を遮ってしまった」
( ゚д゚ )「構わんよ。共に茂名と戦った仲だろう」
( T)「フン」
いけしゃあしゃあと。悪党の身振りがお上手なこって
113 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 18:46:10.17 ID:FUR98O3A0
( ゚д゚ )「で、どうする?その程度の戦力で我らに立ち向かうのかね?」
( T)「見てわかんねーか?充分だろ」
( ゚д゚ )「これが『最後の好機』だとしても?」
( T)「……」
( ゚д゚ )「大方、察しはついているようだな」
三浦が剣先で地面をコツコツと叩くと、硬い筈の地面が渦潮のように蠢いた
その中から、まるでタケノコでも生やすかのように『青色』の柱が伸びてくる
長曾祢虎徹「特異型……!!」
俺たちが探し求めていた、元の世界に帰る手段
『特異型禍要柱』。その実物が、すぐ目の前に現れた
( ゚д゚ )「ここまで辿り着いた褒美と言ってはなんだが、今なら確実に元の世界へと帰れるだろう。貴様の部隊員を呼ぶ為に、しばし攻撃の手を止めて―――」
言い終わるまで待たなかった。夕立も、制止の声を上げなかった
茂名に提案された時から答えは変わっていない。俺たちにとって、当初の目的は既に『二の次』となっているからだ
( ゚д゚ )「……」
( T)「……」
投擲した矛に貫かれた特異型は、火花をいくつか散らした後に沈黙する
帰れるものか。御華見衆への恩を返さず、深海棲艦の息の根も止めず、おめおめと帰れるものか
( T)「夕立、言うたれ」
夕立「バカにすんなっぽい!!!!!!!!!!」
長く遠い帰路になろうとも、『ケリは着ける』
これが、俺たち『地獄の血みどろマッスル鎮守府』のやり方だ
114 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 18:49:14.65 ID:FUR98O3A0
( ゚д゚ )「見事……」
失望など微塵も見受けられない。寧ろ、必死に高揚を押し殺しているように見える
( ゚д゚ )「御見事!!!!!!!私の望みは、今、叶えられた!!!!」
その些細な抵抗も、程なくして消え去った
俺の好きな言葉に『好敵手』というものがある。『好みの争い相手』。一見矛盾した言葉だが、競う者にとっては栄誉よりも価値のある存在だ
俺は拳を握った。間もない激突に備える為でもあったし、『合図』としても送れるからだ
( ゚д゚ )「では戦おう!!殺し合おう!!!!異世界より現れた、蛮勇の戦士よ!!!!!」
( ゚д゚ )「その矛を握るに値する奮闘を!!!!!!!私は期待する!!!!!!」
『好敵手』。困った存在だ
あれだけ殺したいと思ったのに。友や恩人を貶め、苦しめているのに
( T)「スゥー……」
俺は、こいつをどうしても『嫌いになれない』
(#T)「求められるがままに踊ってやるぜ!!三浦ァァァァアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」
口火は、文字通り『切られた』
115 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 19:48:24.13 ID:FUR98O3A0
城和泉正宗「これで、いいのよね!?」
城和泉は問題なく俺の意図を読み取っていた。巫魂を操って、尻ポケットの『ダイナマイト』の導火線に火を付けていた
引き抜き、振りかぶって投擲。火は導火線の中程まで進んでいる。このまま素直に爆発するか?
俺はそうは思えなかった。変幻自在な禍魂を使えば、対処は幾らでも出来る
( ゚д゚ )「シッ!!」
三浦が刀を振るうと、ジャンプとかでよく見る翔ぶ斬撃が放たれる。BLEACHかよ
ブーメラン型のそれは寸分違わず導火線を切り、別たれた口火は空中で燃えカスとなる
想定済みだ。だからこそ俺は『第二の武器』を抜いていた
(#T)「『変身』ッ!!」
夕立への指示と共に、『ショットガン』を落下していくダイナマイトへとぶっ放す
狙いなど澄まさなくとも、飛距離と貫通力を犠牲に広範囲へのヒットと破壊力を得た散弾は
( ゚д゚ )「ッ!!」
細い筒にぶっ刺さり、誘爆を引き起こす。衝撃を伴う目眩しだ
夕立「ガゴゴゴガゴゴググガアアアア!!!!!!」
城和泉正宗「ハァアアアアアッ!!」
すかさず、夕立と城和泉が超人めいた素早さで追撃を狙う
北谷菜切「なまくらがッ!!」
城和泉正宗「くっ!?」
流石にあの恋愛脳も黙っちゃいねえか。城和泉一人に狙いを定め、短刀で斬りつける
咄嗟に受け止めはしたが、足は止まった。アレは任せといた方がいい
夕立「ガゴァアアア!!」
( ゚д゚ )「ハハハ!!」
夕立「ガ!?」
夕立の双刀は空振りに終わった。三浦の姿が一瞬にして消えたのだ
勢い余って地面を転がったが、立ち止まりはせず周囲をぐるりと駆け続ける
正体不明の敵に対して『停滞』は命取りだ。叩き込んだ甲斐があった。さて
116 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 19:51:01.07 ID:FUR98O3A0
(#T)「よっこらマッスル!!」
俺も俺で矛を引き抜いて回収する。禍要柱はボロリと崩れ落ち、チリとなった
乱暴に扱ったが刃こぼれも曲がりもない。さすが御華見衆製だなんともないぜ
長曾祢虎徹「旦那ッ!!」
( T)そ「うおっ!?」
背後からギンッと耳に劈く金属音。背後に迫っていた三浦の刀を、虎徹が受け止めていた
夕立「ガゴァ!!」
(;゚д゚ )「ぐぬッ!!」
そこへ夕立の飛び蹴りにより、大きく後ろに下がる。あのトリックは連発して使えないらしい
(;T)そ「助かったぐえぇ苦しぃ!!!!!!」
長曾祢虎徹「何故来た!?」
礼を言うやいなや、虎徹は胸倉を掴み上げた。僅かに切れた額から、うっすらと血が流れている
長曾祢虎徹「関係ねえだろお前らには!!時雨を連れて、サッサと帰りゃよかった!!今それも不意にして、俺たちの敵と戦ってる!!」
長曾祢虎徹「何がしてえんだよお前!!矛すら、俺の苦しみすら持ちだして、何しに来やがった!!」
凄まじい剣幕だ。情けなくも膝まで震える。叢雲に怒られた時だってここまでビビらねえ
だが、もう俺も怯むわけにはいかねえ。小心者なりに意地があるんだよこっちにも
( T)「……お前と」
助けに来た?いや、おこがましい
戦いに来た?そんなもん見ればわかる
銘治で過ごした、俺や艦娘。確実に言える全員の総意は―――
( T)
いや違うな。慣れてもいねえのにかっこつけるから悪い方に向かう気がする
気まずさに乗せられて遠慮してたのがいけなかった。そうだよ、俺らしくねえじゃん
(#T)「来たらアカンのかこの野郎ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」ドドッド!!!!!
これだよ
117 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 19:52:44.31 ID:FUR98O3A0
長曾祢虎徹「は……はぁぁ!!!!????」
一瞬呆気に取られていたが、怒りはすぐに再燃する
そうだ、これが俺のやり方だ。艦娘とも本音でぶつかり合って、喧嘩しあって、絆とやらを深めていったんだ
(#T)「つーかてめぇ局長かなんだか知らねえが一人でぐいぐい突っ込んでんじゃねえよボケが!!!!!!!!!迎えに行くこっちの身にもなれや!!!!!!!!!!」
長曾祢虎徹「言うに事欠いてそれかよアホ!!!!!!!!!なら俺が出る前に力づくで止めりゃ良かったじゃねえか!!!!!!!」
(#T)「力づくで止めないと無謀だって気がつかないんですか〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!?????」
長曾祢虎徹「あーあー悪かったよ!!!!!!小心者のアンタにゃ荷が重い仕事だったな!!!!!!!」
(#T)「ハァーーーーーーーーーーーー!!!!????俺の所為だって言うのーーーーーーーー!!!!????いずみーや若も苦労するわけだよあーーーーーーーあーーーーーーー!!!!!!!!」
( ゚д゚ )「痴話喧嘩とは余裕だな!!!!!」
(#T)「今大事な話してんだろがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」ドグシャア!!!!!!!!
(;゚д゚ )・'.。゜「ガホッ!!!!!!!?????」
迫って来ていた三浦の腹を蹴り飛ばす。空気の読めない野郎だな死ねよ
(#T)「心配しなくてもすぐに殺してやっからちょっと待ってろカス野郎!!!!!!!!!!!」
城和泉正宗「今すぐ行動しなさいよこのバカーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
(#T)「いーや一回言って聞かせないとダメだもん!!!!!!!!」
長曾祢虎徹「だもんじゃねえよ気持ち悪いな!!!!!!」
(*;゚ー゚)「お二人とも、後になさってくださーーーーーーーーーーい!!!!!!!」
夕立「ガゴゴゴグガギゴゴゴガ!!!!!!!」
(;゚д゚ )「これほど早く調子を狂わせられるとは……っと!!」
118 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 20:31:14.33 ID:FUR98O3A0
北谷菜切「中尉さん」
落ち着きがあるが、ドスの利いた声色に場が静まり返る
首筋に刃を添えられたかのような殺意とプレッシャーは、敵味方関係なく向けられた
夕立ですら攻めの手を止め、北谷菜切を警戒する程だ
北谷菜切「おふざけはここまでにしましょうね……?」
( ゚д゚ )「……君にそう言われては、な」
混乱(俺が起こしたんだけど)は収まり、三浦は刀を納める
チャンスではあるのだろうが、出方が見えない。城和泉も踏み込めずにいる
( ゚д゚ )「フゥ……虚仮威しもたった今、沈められたか」
奴の言葉とほぼ同じく、インカムから時雨の声が届く
時雨《ぶっ沈めたよ!!!!そっちに向かうね!!!!》
( T)「待て時雨、今は様子が……」
( ゚д゚ )「真打登場と行こうか!!!!」
大きく両手を広げ、柏手を一つ
それを合図に、地面から奴の身の丈を越える『腕』が生えた
長曾祢虎徹「なん……だ、ありゃ……?」
肘を曲げ手を着いて支えると、砲塔を携えた肩、続けて頭が露わになっていく
顔に目や鼻の類は無い。代わりに、剥き出しの歯が並ぶ大口が大半を占めていた
『俺らの世界』では未発達だった筈の下半身は、その巨体を支えるに相応した足腰を身につけている
例えるならば、砲と装甲を携えた『大猿』。ボス級深海棲艦が禍魂によって進化した姿
(;T)「戦艦棲姫……!!」
( ゚д゚ )「貴様の世界ではそう呼ぶのか。では、此方はこう名乗ろう」
主人のいない『独立艤装』。深海棲艦が不得手とする近接戦すら
その巨大な両拳でこなし、数多くの艦娘を肉塊へと変えた従者がーーー
( ゚д゚ )「『大禍憑・戦艦猿鬼』と」
ますます厄介な姿となって、立ち塞がった
119 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 20:40:23.46 ID:FUR98O3A0
(;T)「俺らと同時期に送り込まれた深海棲艦がそれか……ハン、戦力としては全く身合わねえな。一ダース連れてこい」
北谷菜切「虚勢だけは一人前ですね、駄犬の飼い主さん?」
クソが。艤装さえ揃ってりゃ連れて来た連中だけでも一方的に終わらせられるってのに
それに時雨が沈めたガワと違ってこいつには『実体』がある。駆逐艦の砲撃だけで殺せる相手じゃない
北谷菜切「でも、貴方の大事な大事なバカ犬さんが沈められたら……フフッ」
(;T)「見えてるな時雨!!なんとか避けろ!!」
北谷菜切「その薄っぺらい余裕も、見せられなくなりますよねぇ!!!!!」
砲塔が時雨のいる方角へと向く。俺と夕立は駆け、城和泉が炎を放とうとしたが間に合わない
両肩の六門が一斉に火を噴いた。誰もが大口径の主砲音に耳を塞ぐ。一瞬の間を置いて、放たれた火の矢が深海猿鬼とやらに当たった
「縺斐′?偵▲繧峨i繧会ス?′縺オ縺√?縺!!!!!!!」
驚くべきことに、火傷を負ったかのように被弾した顔を手で覆い悲鳴を上げた
巫魂による攻撃だからか?いやそんな考察後でも良い。バケモノから上がる、死体を焼いたような臭いを伴う黒煙を抜けた
時雨が気がかりだが、ここで足を止めたら死ぬ。一気呵成にぶっ殺してやる
(#T)そ「死おぶあッ!!!!!!!!?????????」
大猿の爪先が迫り、反射的に柄で防御する。身体が宙に浮く直前に、奴の顔が目に入った
苦しむ『素振り』を見せながら、唯一表情というものが伝わる『口』が笑っているように見えたのだ
騙し討ちするだけのお脳はあるらしい。まんまとしてやられた
(;T)「ッッッ!!!!!」
長曾祢虎徹「旦那ッ!?」
島の端まで吹き飛び、海へ転げ落ちそうになった所を虎徹が腕を掴んで引き止める
(;T)「危っねえ、ポッケのタバコが湿気る所だ」
長曾祢虎徹「そんな場合じゃねえだろ!!時雨は!?」
(;T)「悪党の弾丸なんざ当たりゃしねえよ。無線は……クソ、通じねえな」
時雨の回線から返答はない
120 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 20:49:06.61 ID:FUR98O3A0
長曾祢虎徹「そのお気楽さと肝の太さは見習いてえ所だな……どうする?」
怒る気も失せたと言いたげにため息をつき俺の身体を引き起こす
砲弾が撃ち込まれた場所では、水柱が崩れ落ちていた。時雨の姿は見えない
あの程度でくたばるようなクソガキじゃねえ。センチメンタルになるような場面でもなかった
しかし安否がわからない以上、俺の持つ切り札は深海猿鬼とやらにぶちかませない
( T)「殺すさ。皆殺しだ」
長曾祢虎徹「……小心者が聞いて呆れらぁ」
強烈な一撃を受けたにも関わらず、矛は曲がり一つない。これマジで欲しい持って帰りたい
夕立は蹴りを避けていた為、大猿の足元を駆けながら斬りつけていた
城和泉も、時雨が撃たれたという動揺は在りながらも続けざまに火を放つ
若はいずみーを庇いながら稜威能力を使い巫魂の火を操作していた
( T)「あいつらが攪乱してる内は砲撃も撃てねえだろ。その隙にお前と俺で『禍憑』の側面を叩く」
長曾祢虎徹「それが作戦か?」
( T)「ゴリ押しは立派な戦術だぜ?」
長曾祢虎徹「アンタらしいな。行くぜッ!!」
大猿に向かい、一歩踏み出した瞬間
(;T)そ「うぐっ……!!」
虎徹の拳が、鳩尾を打ち抜いた
121 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 20:51:25.40 ID:FUR98O3A0
(;T)・'.。゜「ゴホッ……」
やっぱり胴当ても借りときゃよかった
待ち構えてりゃ別だが、不意に放たれた身体の芯まで響く戦艦並みの腹打ちは、俺の膝を折った
いや、これは只のパンチじゃねえ。身体に電気を流し込まれたような痺れは、虎徹の巫魂によるものか
長曾祢虎徹「悪い。やっぱり、耐えられそうにねえわ」
(;T)「おま……」
此の期に及んで、心傷が勝るか
倒れ込みそうになる身体を、矛で支える。虎徹は俺の顔に手を添えて、笑った
長曾祢虎徹「安心しろ。刺し違えてもお前らは家に帰す。絶対に」
(;T)「ふ……ざ……けんな……」
長曾祢虎徹「ごめんな」
今度こそ、引き止めようと伸ばした腕をすり抜け、虎徹は一人で大猿へ向かう
冗談じゃねえ、謝んじゃねえ、勝手な約束すんじゃねえ
戦いしか能のねえ俺に、『傍観』なんてカッコ悪い真似をさせるんじゃねえ!!
(#T)「動け俺の筋肉ゥゥゥ……!!」
時間はない。だが焦るな。一つずつだ
昏睡状態から目覚めたザ・ブライドのように、足の指から順番に
支える脚を矛を含めた『三本』から『二本』に
『這い』から『歩み』に、そして『走り』に変えろ
あの勘違いバカに文句言うまで、死なれてもらっちゃ困んだよ!!
122 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 20:56:30.79 ID:FUR98O3A0
火の矢が止まる。北谷菜切が城和泉とつば競合いになっている
装甲の薄い大猿の肘裏に刀を突き刺していた夕立は、身の丈を覆うほどの手によって振りほどかれ、地面を転がった
三浦は戦闘など素知らぬふりをして、期待を込めた目で俺を見る。なんやねんあいつ
虎徹が雄叫びと共に跳躍し、大猿のツラへと叩き入れる
歴史に名高い名刀が、装甲の欠片を巻き上げた。大猿は痛みに悶え、震えた悲鳴をあげる
ただし、砕けたのは装甲までだ。刃は弾かれ、虎徹の身体は無防備に落ちていく
「繧ョ繧ャ蟄ヲ蜑イ!!!!!」
身体を仰け反らし、振り落とされる頭突き。大袈裟に放たれた攻撃ではないが、大きさとウエイトは段違いだ
腕で防御はしたが、地面へと強かに背中を打ちつけ、跳ねた
息を着かせず、大猿は跳ぶ。巨体で虎徹を押し潰すために
(#T)「クソッ……!!」
間に合うか。いいや、間に合わせる!!
調子は万全とは言い難いが、俺は俺の筋肉を信じる
城和泉正宗「虎徹ッ!!」
(*゚ー゚)「虎徹さん!!」
二人が同時に虎徹の名を呼んだ
《提督!!》
奇しくも、インカムから俺を呼ぶ声と同じくして
(#T)「撃てェッ!!!!!!!」
全くこいつはいつもいつも、人のことを調子付かせてくれる
お陰ですっかり『酔い』は醒めたぜ
123 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 20:58:58.21 ID:FUR98O3A0
(#T)「よっこらマッスルーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
矛を手放し、虎徹と、落ちる巨体の間に身体を滑り込ませる
両腕を広げ、大猿の身体を受け止める。ついでに一発頭突きもかます
抵抗虚しく何トンあるか考えるのも嫌になる程の重量が全身にのし掛かった
背中を発端に、腰、脚へと重みによる軋みが走った。筋肉の悲鳴、いや
(#T)「ぬおおおおおおおおおおおおおお……!!!!!!!」
長曾祢虎徹「だ……旦那……?」
『歓声』だ。重いものを持ち上げるほど、楽しいことはない
そしてこの喜びは『一瞬』しか味わえない。海上から聞こえた砲撃音によって
「縺オ縺√∩繧翫?縺セ縺」縺。繧!!!!????」
大猿の右肩付近を撃ち抜く砲弾が炸裂、フッと重量が軽くなる
(#T)「どっせえええええええええいやああああああああ!!!!!!!」
そのままの勢いに任せ、放り投げた。全身に大きな亀裂が入ったかのような激痛が走る
地響きが脚を揺らし、巨体が転がった。三浦から大きな拍手を贈られる。この後じっくり時間かけて殺そうと思った
(#T)そ「おFucK!!!!!!!!!!」
ごくありふれた悪態を吐いたところで、痛みはちっとも治まらなかった
そして今ので十三歳未満の鑑賞について保護者の厳重な注意が必要な異世界冒険譚になった
いいか良い子の皆。いくら気になるからってママに「Fuckって何?」なんて聞いたり、Googleのセーフサーチをオフにして検索したりすんなよ?
時雨《ねぇ今、戦艦棲姫の艤装投げ飛ばさなかった?》
(#T)「投げたよ……」
時雨《えっ怖……》
心配させてそれかよこの野郎
124 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:01:32.63 ID:FUR98O3A0
( T)「被害は?」
時雨《天下一武道会でダウンしたピッコロがカウントダウン中に不意打ちで悟空の胸に風穴開けたくらいのダメージだったけど》
( T)「死じゃん」
時雨《ナオルヨくん持ってたからね。タービン周りがまだちょっと調子悪いから、そっち向かうのに時間掛かっちゃうよ》
( T)「仙豆じゃん」
そういや元はアレ『携帯高速修復剤』だった。爆弾の側面ばっか目立ってて忘れてたわ
いやなんで爆発機能も付けたんだよほんと気持ち悪いな技研の連中は死ね
( T)「急いで来なくてもいい。それより、デカブツを確実にブッ沈める準備はしとけ」
時雨《タイミングは?》
( T)「教える。頼むぜ」
不意の砲撃は大猿をよろめかせはしたが、元は弩級戦艦クラスの艤装だ。駆逐艦の火力じゃ決定打に欠ける
代わりに『禍憑』の側面には大打撃だったようで、破損個所から黒い靄が漏れていた
( T)「さて……無事?俺は無事じゃない」
長曾祢虎徹「どうして……」
( T)「……」
長曾祢虎徹「どうして俺なんか助けるんだよ!!!!!!巫剣より、よっぽど弱いお前らが!!!!!」
長曾祢虎徹「どうして見捨ててくれないんだ……どうして……!!」
お前らと来たか。俺と若と、そして元主に向けられた悲痛は、涙と共に流れ出た
これが虎徹が抱える苦悩の核だ。この中の誰かが打ち砕かねば、虎徹はいつまでも呪縛から逃れることは出来ない
御華見衆の誰かがその役目を果たせられるのがベストなのだろうが、死人に口は無いし、若が語るにはまだ未熟
( T)「どうもこうもあるかよ」
矛の柄を足裏で巻き上げ、手元へ蹴り上げる
虎徹は、元主が死んでから毎日毎日考え続けたのだろう。深みに嵌るほどに
だがそれほど難しい事じゃない。彼だって、若だって、そして俺だって。その行動に小難しい理屈など無いからだ
( T)「良い女の前じゃ、かっこつけちまうんだよ。男の子はな」
ただの、『雄の本能』だ
125 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:03:57.38 ID:FUR98O3A0
長曾祢虎徹「は……?」
( T)「俺みてえな奴らは後先考えられる生き物じゃねえよ。おっ死んじまうこともあるだろうさ」
( T)「それに、自分勝手だ。残された人の気持ちよりも、自己満足を優先する」
「縺ゅ↑縺溘→縺薙s縺ウ縺ォ……!!」
夕立「グゴガガガガガ!!!!!!!!!!」
大猿が地面に左手を着いた。夕立がすかさず手首を斬りつけると、再び肘を折る
まだケアの余裕はある。ジャケットのポケットからハンカチを引き抜き、差し出した
( T)「『こんな良い女を救って死ぬのなら本望だ』ってな。悔いや苦痛じゃなく、自己陶酔と喜びの中で死ねるんだよ」
長曾祢虎徹「っ……バカなんじゃねえの……」
( T)「その通りだ。だから、笑って送り出してくれよ。そんで、心の奥隅にでも転がしてくれりゃ言う事はねえ」
長曾祢虎徹「やめろよ、っ、縁起でもねえから……」
( T)「おっと、生き急いじまったな……ハァ、最初からこう言えば良かった。つまり、お互い様だよ。お前は俺らに死んで欲しくねえし、俺らはお前に死んで欲しくねえ」
簡単だ。誰にだって根本には『思いやり』という感情がある。それを他者に制御など出来やしない
俺が虎徹と仲違いした時は『言葉足らず』だったし、彼女は彼女で過去のトラウマから感情を一方的に押し付けていた
こんなにも簡単な事で堂々巡りしていたなんて、今となってはちょっとばかし恥ずかしい。マスク被っててよかった
126 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:07:12.47 ID:FUR98O3A0
( T)「お前の気持ちを弁えずに酷いこと言って本当にすまなかった。ぶん殴るなら今だぞ?」
長曾祢虎徹「フフッ……それは、後の楽しみに取っておくことにするよ」
( T)「ごめん手加減はして?」
長曾祢虎徹「いーや、思いっきりぶん殴る。乙女を泣かせた罪は重いぜ?」
( T)「心に沁みる教訓だな。戦えるか?」
長曾祢虎徹「勿論」
虎徹はハンカチを受け取ると、目元を拭いて鼻を豪快にかんだ
乙女らしからぬ所作だ。後で洗ってから返して欲しい
長曾祢虎徹「ありがとよ。幾らか気は晴れたぜ」
(;T)「そりゃ何よりだっ……!?」
長曾祢虎徹「旦那ッ!?」
無茶をしたツケが早速回ってきた。再び亀裂のような激痛が走る
全身の筋肉が痙攣を起こし、足腰に力が入らない。顔からは脂汗が噴き出てくる
これからって時にこのザマとは、やっぱり格好つかねえ
127 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:08:50.10 ID:FUR98O3A0
( ゚д゚ )「どうした!!それで終わりか!?まだ立てるだろう!!」
傍観に回ってるくせに偉そうな口を利く。それも、だいぶ期待を込めて
大層な舞台と強大な敵を用意して、弱った相手を前にこの態度。あいつの目的は大体読めてきた
(*#゚ー゚)「三浦ッ!!」
(#゚д゚ )「子供はすっこんでいろッ!!!!!」
見兼ねた若が斬り込んでいくが、一閃放つだけで弾き飛ばす
俺に向けるものとは違い、明らかな失望を浮かべながら
若は体勢を大きく崩したものの、素早く立ち直り構え直した
(#゚д゚ )「巫剣に頼り切った木偶の分際で、私の悦びを妨げるんじゃあないッ!!!!!」
(*;゚ー゚)「う……」
城和泉正宗「主ッ!!!!!」
北谷菜切「お兄様……!?」
城和泉、それと北谷が声を上げる。様子がおかしくなってきた
三浦は『殺る気』だ。北谷の望みは既に奴の勘定から弾かれているらしい
北谷菜切「お兄様ァ!!!」
城和泉との拮抗から逃れた北谷菜切は、今までにない恐怖を浮かべて三浦へと向かっていく
城和泉も同じく、主の危機を救う為に駆け出した
「縺代?繧翫¥縺!!!!!」
夕立「ゴギィッ!!??」
大猿が巨体に見合わぬ俊敏さで夕立を掴むと、二人に向かって振り投げる
北谷菜切「ッ!!」
城和泉正宗「きゃあッ!?」
北谷は間一髪、低頭して避けたが、城和泉は夕立と受け止めるような形で衝突する
低い姿勢、そして速度を維持しながら、短刀を構えて三浦の側面から
北谷菜切「ああああああああッ!!!!」
突きを放った
128 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:09:29.34 ID:FUR98O3A0
( ゚д゚ )「フン」
避けようとしなかった。刀を持つ右手を、ダラリと下ろしただけだ
しかし、刃は彼女へと向いている。迎撃が間に合うようには見えない。『何かない限り』
北谷菜切「ッ!?」
傍目に見ても彼女の突きは脇腹を刺す完璧な一撃のように見えた
ただ一つ、若にばかり気を取られていた彼女は、この土壇場で『躓く』というミスを犯してしまったのだ
その足元には、障害など無かった平らな地面に、狙いすましたかのようにちっぽけな『段差』があった
( ゚д゚ )「消えろ」
(*;゚ー゚)「待ッ……!!」
黒刀が、振り上げられた
北谷菜切「あがっ……ッ!!!!」
腰から肩にかけての斬り上げは、小柄な彼女を簡単に持ち上げ、飛ばす
突進の勢いもあって、三浦と若の頭上を大きく弧を描いていくと、そのまま
( ゚д゚ )「くだらん」
海へと落下した
129 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:12:45.20 ID:FUR98O3A0
(*;゚Д゚)「北谷ッ!!!!」
重傷だ。自力で陸には上がれないだろう
若もそれはわかっていた。敵だということもちゃんと弁えてるだろう
それでも彼は刀と上着を放り投げ、海へと飛び込んだ
城和泉正宗「主……っ、やだ、美琴!!」
城和泉も脇目を振らず若を追った。瞬く間に、三人が陸地を降りた
三浦は妨害もせず、此方へと振り返る。イカレの目だ
( ゚д゚ )「さぁ、さぁ、さぁ!!!!邪魔者は消えた!!戦え、踊れ!!!!死力を尽くせ!!!!人の持つ可能性を、私に感じさせてくれ!!」
( ゚д゚ )「緋墨の一撃を防ぎ、愛刀を守り死んだ彼を越える奇跡を見せろ!!!」
(;T)「……キチガイが」
奴の望みはそれか。女将も言っていたが、三浦はかつて御華見衆と共に超大型禍憑の討伐を行った
そして、魅入られたのだ。人が命を燃やし尽くす一瞬の煌めきに
それをもう一度、目の当たりにしたいのだろう。わざわざ別世界から『役者』を引っ張ってきてまで
長曾祢虎徹「あの……野郎ッ!!!!」
当然、虎徹の逆鱗に触れる一言だ。主の死を、奴はただの『娯楽』として扱っているのだから
だが激情に任せた虎徹一人を向かわせられない。今度こそ、しっかりと肩を掴んで止めた
130 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:14:21.34 ID:FUR98O3A0
(;T)「聞け……」
長曾祢虎徹「っ……なんだよ!!」
(;T)「手短に言うぞ。俺の稜威を使え……」
長曾祢虎徹「おまっ……本気で言ってんのか!?」
(;T)「小夜に聞いた……最後の手段だってな……俺はこの通り、足腰立たねえ役立たずだ……若と城和泉正宗がいない今、もう賭けに出るしかねえ……」
夕立は立ち上がっているが、大きく息を切らして様子を見ている
長い時間あいつを頼りにし続けられない。時雨を使う為にも、適切な場面で働かせなければならない
虎徹も俺の異変について話は聞いていたらしいが、元より自分でなんとかするつもりだったのだろう
長曾祢虎徹「……」
躊躇いが手に取るようにわかった
(;T)「『想い、肯定、そして確信。後は勢い』。女将はそう言った」
長曾祢虎徹「……そうか、母上殿は……」
(;T)「元主に比べりゃ付き合いも短いし、頼りもねえだろう。だが、この一時だけでいい。俺を奮い立たせてくれ」
長曾祢虎徹「……そんなに自分を卑下しねえでくれよ、旦那」
虎徹は一度、刀を鞘に納めると
左手で鞘を、右手で柄を握って身体の前に出し、鯉口を切り
長曾祢虎徹「良い男に尽くすのが、『刀』の本懐だ」
鍔を、打ち鳴らした
131 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:22:04.45 ID:FUR98O3A0
某五歳児とその家族が戦国時代にタイムスリップしたアニメ映画で有名なその動作は
武士が、約束を交わし合う時に使われる。呼び名を、『金打』といった
菊華刀である矛から、腕を伝って暖かさが流れ込んで行く。燃料を補給したかのように、身体の痛みが和らぎ、力が漲った
虎徹も同じだろう。額の切り傷は塞がり、高揚感に身を震わせている
( T)「これが、『鞘入れ』か」
長曾祢虎徹「いや、稜威と巫魂を繋いだだけだ」
( T)「ちゃうんかい」
そうきっぱりと否定されると恥ずかしくなるじゃんか
長曾祢虎徹「だが、これだけでも充分だ。アンタにはどこまでも驚かされてばかりだぜ、旦那」
(;T)「やや反則な気もするがね……そりゃお相手も同じか」
深海棲艦だって禍魂で強化されたんだ。これで釣り合いは取れただろう
後は力をぶつけ合うだけ。ようやく、準備は整った
( T)「あれ言おうぜ。新選組がいつも使ってるあの言葉」
長曾祢虎徹「ハハッ、そりゃあいい。気を引き締め直すに持ってこいだ」
虎徹は刀を抜き、俺は矛を担いだ
深呼吸して、腹から声を張り上げた
長曾祢虎徹「御用ッ!!!!!」
(#T)「改めだァッ!!!!!!」
世を乱す罪人に向けて放つ、断罪の台詞を
132 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:23:30.71 ID:FUR98O3A0
( ゚д゚ )「っ……最高だ!!もっと、もっと魅せろォォォオオオオオオオ!!!!!」
「繧ォ繝矩」溘∋縺溘>!!!!!!」
大猿が四足走行で駆け出し、飛び上がって右前足を振り上げる
互いにサイドステップで躱す。掌が地面へと叩きつけられると同時に
(#T)「ドラァッ!!!!!」
矛を掌の甲へと向けて振り下ろした。自前の筋肉に馬力も加わった事もあってか、刃は装甲を抜き肉に到達する
(#T)「虎徹ッ!!」
長曾祢虎徹「あいよっ!!」
すかさず虎徹が矛の峰に刀を叩きつける
さらに押し込まれた刃は、肉の先の骨を砕き地面へと到達した
(#T)「ふんぬ!!!!!」
包丁で食材を切る要領で引き抜くと、拳骨から先の四本指が切断
猿は獣らしく汚い断末魔をあげた。獣にスゴイシツレイ
133 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:26:47.65 ID:FUR98O3A0
「縺?↓荳シ鬟溘∋縺溘>!!!!!!!」
ビンタの要領で左手が迫る。顔面どころか全身バキバキにされちまうようなサイズだ
しかし今の俺の筋肉をそんな雑に砕こうなどおこがましい。いや普通の状態でも砕かれない自信はあるけど
(#T)「オラッ!!」
身を丸めて、右肩からのタックルで受け止める。全身が若干押し込まれたが、吹き飛ばされずに踏みとどまった
長曾祢虎徹「ずああッ!!!!」
動きが止まった大猿の腹に上段斬り。そして股下まで斬り込んで行き、背後へと走り抜ける
臀部から股間にかけて一本の鋭い斬り傷が走った。タマが縮こまる
(#T)「夕立、来いッ!!」
装甲を斬り裂くだけでも上等だが、やはり浅い。右手と同じく追撃は必須だ
左手を押し退け、縦傷に沿って矛を突き刺し、押し込む。禍魂の混じった返り血がマスクへと染み付いた
夕立「ガゴガアアアアアアアアアアッ!!!!!!」
小さくて可愛い方のバケモノは、跳躍し矛の柄へと乗って体重を掛ける
軽い分、振り斬るに到らなかった負荷は
(#T)「フンッ!!!!!!!!」
夕立「ギギィッ!!」
俺の筋力と、柄からの跳躍で補った
134 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:28:37.47 ID:FUR98O3A0
突き刺した腹から股へと刃は滑り、勢い余って地面を打つ
再び上がろうとした大猿の叫び声は
夕立「ガァッ!!!!!」
「ッ!!!!!????」
顎下から突き上げた夕立のアッパーによって遮られた
艤装無しとは言え艦娘。それにいけいけドンドン状態の夕立。スプラッター映画さながらのダメージもあってか
「???z?n?f?X?R……」
勢いのない声と共に後ろへとフラついた
とは言っても、三メートルあるかないかだ。島の端まではまだ距離がある
『使えるもの』は全部使って、海に落とさねば必殺の一撃は喰らわせられない
(#T)「時雨!!大猿の正面に回って注意を引け!!その後、奴が撃ったタイミングに合わせてぶち当てろ!!」
時雨《難しい注文するね!!僕なら余裕だけど!!》
(#T)「一言多……っとぉ!?」
続けて斬りかかろうとした夕立の襟を掴んで引き、大猿のスレッジハンマーを避ける
地面を打つ轟音と風圧。そしていきなり行動を妨害された夕立の抗議を一身に受けたが、薄焼き煎餅になるよりはマシだった
135 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:31:48.47 ID:FUR98O3A0
「縺ェ繧?◆繧薙○縺?§繧!!!!」
さて、仕掛けたはいいが時間の調節に細心の注意を払わねばいけない
時雨が砲撃をした後に、大猿の側面ないしは背後に回る時間は作らなければいけないのだ
(#T)「チッ!!」
続けざまに振り落とされた左拳。夕立を突き飛ばし、俺は反対側に跳んで避ける
手首を狙って矛を振ったが、お相手も学ぶらしい。手を素早く引いた為、空振りに終わった
長曾祢虎徹「後ろがお留守だぜ!!」
右膝裏を虎徹が叩き、片脚を着く。同時に、島の側の海面から水柱が立った
時雨の威嚇砲撃だ。いやが応にも、『深海棲艦』の側面は意識を『艦娘』に向ける
両肩の砲塔が、狙いを定めた。耳を塞ぎたい所だが、直撃を妨害する為にもそうはいかない
(#T)「死ィッ!!!!!!!!」
柄の底を右手で握り、リーチを伸ばす死ね!!!!!!オラ死ね!!!!!!
死んで欲しいという先走りな思いと共に、顔面に兜割りをぶちかました死ね!!!!!すぐ死ね!!!!!
「!?」
前歯が砕けると同時に、砲撃音が耳を劈く。硝煙が目に沁みたし砲火が服と肌を焦がした。常人なら吹き飛んで死ぬ
しかし筋肉がある上にバフ掛かってるので割と平気だった。無茶の甲斐もあってか、砲塔は上を向き、砲弾は見当違いの方向へと跳んでいく
(#T)そ「あっやべえそうだった逃げろ!!」
そして頭が良かったので直後になって思い出す。時雨にぶちかませと言ったことを
虎徹と同じく股下を抜けると、大猿の胸元ドンピシャに砲撃が当たった。あっぶねえ巻き込まれるとこだ
(#T)「よしッ!!」
大猿自身の砲撃反動に加え、時雨の後押し
狙い通り、大猿はよたよたと大きく後ろへと退がった。踏み潰されないよう、足を避けて再び正面へ回る
長曾祢虎徹「決めるか!?」
(#T)「急ぐな!!じっくり嬲るぞ!!」
長曾祢虎徹「ハハッ!!趣味が悪ぃぜ、旦那!!」
俺の隣へと立つ虎徹は、そう言いつつもイキイキとした笑顔だった
136 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:34:11.54 ID:FUR98O3A0
「縺上o縺ェ縺斐≧縺後s縺ー繧!!!!!」
『追い詰められている』自覚はあるのだろう。手負いの獣らしく怒りの咆哮を上げる
右手から噴き出る血が硬質化し、歪な刃となって大きく薙ぎ払われた
長曾祢虎徹「旦那!!『俺』を頼む!!」
(#T)「なんて!!!!???」
虎徹はそれを避けずに刀身で受け止めた
長曾祢虎徹「重っ……!!」
(#T)「そういう事かよ!!」
重量差によって浮き上がった足を見て察しはつく。虎徹の身体を抱き止め、その場に留めた
刀は禍魂の刃に打ち勝ち、皹を走らせた。虎徹の身体からビリリと痺れが起こる
長曾祢虎徹「我慢しろよ旦那!!城和泉には劣るが、俺にも超常の力は使える!!」
(;T)「あっこれそうなの!?」
長曾祢虎徹「疾れ雷電ッ!!!!!」
刀身から紫電が発せられ、刃を伝って大猿の全身へと巡る
巫魂による超常の力は、相対する存在の禍憑を蝕み、焼いた
「?߂?????Ă??҂????イ!!!!!!」
刃は食い込んだ先から砕け、痛みにのたうち回る
俺も俺で結構痺れた。違う意味も含んで
137 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:36:22.06 ID:FUR98O3A0
( T)「かっこいい……しゅき……」
長曾祢虎徹「へぁっ!?」
( T)「ウルトラマンかよ」
長曾祢虎徹「い、いきなり変なこと言うからだろ!!う、うるとら!?」
なんかワタワタし出した虎徹はさて置いて、次は俺の番だ
提督超人パワー95万(瞬間最大7000万)を誇る俺の残虐ファイトを見せてやる
「繧峨>縺ゅs繧後>縺ョ繧九!!!!!!!!」
狙いはまだ原型を留めてる左腕。掴みかかろうと迫ったそれを
(#T)「フン!!!!!」
中指と薬指の間から、矛を差し込んで斬り入れる
蓄積したダメージの所為か、それとも元々薄い箇所だったのか。装甲は呆気なく抜け、手を中程まで裂いた
(#T)「逃がさねえぜ!!」
柄を地面へと突き立て手放し、頼りの無くなった薬指と中指を両腕で抱え力を込め
(#T)「オッ……ラァァァァアアアアアアアアア!!!!!!」
一気に押し込んで肘の辺りまで裂いていく。自分で裂くから美味しいのってCMで子供も言ってた
傷ってのは鋭利なものよりも雑に出来たものの方が治りづらい。それに痛い
「繧√>縺溘s縺ヲ縺??縺九■繧?≧!!!!!!???」
嗜虐心に響く心地の良い悲鳴だ。股座がいきり勃tごめん嘘そこまでじゃない
138 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:37:49.12 ID:FUR98O3A0
時雨《いつでもいけるよ!!》
(#T)「やれッ!!」
遊びの時間はこれで終わりだ。そろそろ目障りな存在には土俵から消えてもらおう
(#T)「押し出すぞ!!」
長曾祢虎徹「了解ッ!!」
切り返し、矛を抜き取る。両手がお釈迦になった大猿は、再び巨体で押し潰そうと膝を曲げた
同じ轍は踏むまい。すでに投了までの道筋は出来上がった
長曾祢虎徹「行くぜ旦那ァァァッ!!!!!」
(#T)「ルアアッ!!!!!」
俺は右、虎徹は左。両方から猿の胴に横薙ぎを放つ
重量が一気にのし掛かったが、身体の熱は脚を動かし続ける
長曾祢虎徹「これで……観念しやがれッ!!!!!」
(#T)「クソザコナメクジがァッ!!!!!」
土俵際は目前。一層力を込め、振り払う
追い込まれた大猿は、間抜けに両腕を振り回し落ちまいと堪えた。健気なもんだ涙が出るね
(#T)「オマケだ」
夕立「ゴガァ!!!!!」
勿論、これも嘘だ
139 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:39:45.26 ID:FUR98O3A0
夕立「ギィッ!!!!!」
「!?」
顔面にブチかまされた夕立のドロップキックが決まり手となり、大猿はゆっくりと倒れ込んで
「繧ュ繝」繝励ユ繝ウ繝槭?繝吶Ν!!!!!?????」
海へと落下。TUNAMIのように押し寄せた海水を被ってしまう。見つめ合うと素直にお喋りできない案件
水面を叩いてもがく様は、さながら川に流れる河童みてーだ。情けないなそれでも深海棲艦かよ
( T)「はい危ないから退がr夕立ちゃん飛び込まない!!!!!!!!!!!」
夕立「ガ?」
二人を引き連れて、大きく退がる。大猿に向かって海中を走る数本の『線』に巻き込まれないようにだ
線は背ビレを立たせて獲物に迫る鮫のように大猿に食いつくと
時雨《大当たり》
海水を多量に巻き込んで大爆発を起こした
戦艦クラスと言えども、小さな身体に大きな『魚雷』には耐えきれまい。誰のセリフだっけかこれ
( T)「反応は?」
時雨《無いね、クリティカルだ。提督、僕に言うことは?》
( T)「さすが俺の懐刀」
時雨《ふふーん、ンフフ……》
ここは素直に調子に乗らせてやるか
140 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:42:32.65 ID:FUR98O3A0
( T)「陸に上がって加勢して貰いたい所だが、若と城和泉が三浦に斬られた恋愛脳追って海に飛び込んだ。安否の確認を頼む」
時雨《ハァ〜〜〜?何やってんのさ……しょうがないなぁ……》
普段なら『見捨てればいいのに』とでも付け加えるだろうが、二人の性格を知っている以上、飲み込んだのだろう
大きく旋回して島の周囲を調べ始めてくれた。さて、こっちはこっちで大仕事だ
( T)「残りはお前だ。ハイクを詠め」
( -д- )「……」
深海棲艦は殺した。共謀者は奴が自ら斬り捨てた
たった一人残った首謀者は、刀を地面へと突き刺し、杖のように柄底に両手を添えた
( ゚д゚ )「自信作だったのだがね。役不足だったか?」
( T)「一ダース連れて来いって言っただろ」
( ゚д゚ )「フフ、一体だけでも精一杯だったのでね……これで、打ち止めだ」
あ良かったこれ以上出てこられたらどうしようかと思った
( T)「だが、まだまだ楽しませてくれんだろ?」
( ゚д゚ )「ああ。お互い、不完全燃焼だろうしな」
( T)「それじゃあ……語り合おうか。存分に」
矛を振るい、両手で構える。虎徹も霞の構えを取った
三浦は直ぐには動かなかった。地面から、いくつもの蔦のような禍魂が刀身を、脚を伝い身体を包み込んでいく
蔦は纏まり、一つの幹となった。蠢きながらギュウと締め上がると、一旦停止してから解かれ始めた
( T)「……」
犬、いや、狼を模した仮面と兜。羽根が折り重なったような肩鎧に、黒い蚯蚓の這う籠手
佩楯は苦悶の表情を浮かべる人の顔に覆いつくされ、足袋には猛禽類が如く鈎爪が生える
仮面の奥で光る瞳は青白い。深海棲艦が持つ色とそっくりだった
爪 ゚W〉「……三浦 孝一だ。手合わせ願おう」
ハッキリと言える事が一つあるとすれば、奴はヒーローより悪役の造形に心惹かれるタイプだ
141 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:44:20.09 ID:FUR98O3A0
( T)「……解除」
夕立「ッ!?」
まだ戦えるのだろう。だがこの先、こいつの体力を鑑みる余裕はない
夕立「ハァッ、ハァッ、夕立、まだ……」
( T)「わかってる。いずみーを見てやってくれ」
夕立「ハッ、ハッ……りょうか、い……ぽい……」
俺達の他に、気を失ったままのいずみーも残っている。散々暴れてからなんだが、無事は確保し続けたい
夕立が離れて、此方の手駒は俺と虎徹のみ。互いに顔を見合わせて、一歩踏み出した
戦に臨むニンジャにとって、アイサツは神聖不可侵の行為。古事記にも書かれている。アイサツはされれば、返さねばならない
( T)「地獄の血みどろマッスル鎮守府司令官、マッスルだ」
長曾祢虎徹「御華見衆上野支部所属、特殊遊撃部隊『新選組』局長。長曾祢虎徹」
( T)「……」
一騎討ちの作法なんてしらねえ。この後なんて言えばええんやろか
助けを求めて虎徹の方を伺うと、呆れた様に鼻で笑った。『好きにやれ』ってことか
( T)「スゥー……」
(#T)「てめえの腸ブチ撒いて雑魚の餌にしてやるぁあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
俺なりの返答に対し、三浦は
爪 ゚W〉「ハッ、ハハハ!!応!!死力を尽くそうぞ!!」
禍々しい見た目に反し、朗らかに笑い返した
142 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:45:54.83 ID:FUR98O3A0
長曾祢虎徹「あーあー、台無しd (#T)「あああああああああっしゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」旦那ァ!?」
今更出方を伺うなんて億劫な事はしねえ。勢いそのまま飛び出すのが一番だ
三浦との距離を一気に詰め、矛を振り上げる
爪 ゚W〉「ハハッ!!」
このまま振り下ろせば袈裟斬りになるが、こいつはブラフだ
狙いは柄底による刺突。左手を放し、槍投げの要領で喉元を突く
爪 ゚W〉「ッ!!」
柄は喉を捉え―――ず、ただ空を斬る。夕立の初撃を避けたのと同じく、姿を消した
後ろか?いや、俺の背後には虎徹が着いてきている。つまり、そこに現れるのは天敵である巫剣に背を向けるのと同じだ
では側面?ベストな判断だろう。この場合、矛で防御が出来る右側ではなくフリーな左側。だが予測さえしていれば致命傷は避けらrいいやわかんねえ凄みでなんとかしよう
(#T)「オラァッ!!!!!!」
柄を両手で握り直し、頭上に翳す。ギンッと響いた金属音と火花が散った
爪 ゚W〉「ほっ、見事だ!!」
答えは『真正面』からの上段斬り。裏の裏を掻いたって所か
重圧感は大猿よりも控えめ……と言いたいが、やはりラスボス。一撃かましただけでこの俺が抑え込まれている
力比べと行きたいが、俺のワガママに彼女を付き合わせられない。脱力することで黒刀に掛かる力の行き先を逸らし、その場から脱する
長曾祢虎徹「らァッ!!」
爪 ゚W〉「シッ!!」
間髪入れず虎徹が突きを放つが、刀身を叩き払われる。刀を返し、三浦を斬り上げようとするが
爪 ゚W〉「コォッ!!」
長曾祢虎徹「ぐふッ!?」
奴の前蹴りの速度が勝った。軌道が外れた剣筋は、三浦の仮面にギリギリ掠らなかったが
爪; W〉「ッ!?」
虎徹の持つ巫魂の紫電が、切っ先から顔面へと通電する
威力こそ大きなものでは無かったが、不意を突かれた三浦は仮面を手で覆い後ずさる
143 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:47:34.50 ID:FUR98O3A0
(#T)「ここだァァァーーーーーーッ!!!!!」
この目くらまし、使わない理由は無い。今度は矛を振り上げ、刃が頭上に落ちるように『投げつける』
爪;゚W〉「くッ……!?」
スタンは一瞬。奴は俺が馬鹿正直に好機に乗ると予想したのだろう
ところがどっこい、矛を防いだ時の手ごたえの無さにもう一度面食らう事になる
こちとら長物振り回すのだけが能じゃねえんだよ。既に奴の背後を捉えている
組みついても良いが、禍魂の鎧はどのような挙動を起こすかわからん。ならここは……
(#T)「おっ……」
後頭部を掴み膝裏を蹴って体勢を崩し
(#T)「っしゃああああああああああああああああッ!!!!!!!!!」
顔面を力任せに地面へと叩きつける。筋肉は矛より強し(真理)
(#T)「あ!!!!!!!!???????」
頭蓋が砕ける感触は無い。逆に、泥に手を押し込んだかのような感触だ
実際、三浦の頭は地面へとめり込……いや、『沈んでいく』が正しい
そうだ、ここは禍魂の陸地。土俵そのものが、奴の味方だ
長曾祢虎徹「逃がすなよ旦那!!!!」
(;T)そ「いやっ、ちょ、なんかスルスル入っていって厳しい!!!!!」
この陸地は三浦だけを自由に通すらしい。俺の指先が地面に到達しても硬いままだ
その内掴むことも儘ならなくなり、完全に沈み切った。インクリングかよこの野郎
144 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 21:53:22.21 ID:FUR98O3A0
長曾祢虎徹「あーーーーーーーーー!!!!なんで逃がしたんだよ根性ねえなぁ!!」
(#T)「逃がしたんじゃなくて逃げたんですぅーーーーーーーーー!!!!!」
長曾祢虎徹「どっちも一緒だよアホ!!ほれ!!」
投げ渡された矛を片手で受け取り、互いの背中を合わせる
ドチャクソ範囲の広いモグラ叩きだ。奴さんはお遊びがお好きなようで
( T)「なんかこう、気配とか探れたりしねえか?」
長曾祢虎徹「街中とかなら可能だが、今は場所そのものが禍魂だ。出たとこ勝負に賭けるしかねえ」
( T)「頼りになるね涙が出らぁ」
長曾祢虎徹「ほんっと口の減らねえ野郎だな旦那はよぉ!!」
禍魂はエネルギーだ。三浦にとってはF-ZEROの補給ゾーンがコース全体に広がってるようなもんだろう。この例えわかりづらいか
奴を討つにはまずこの陸地をどうにかしなければならないが、たった二人でどうにかなるだろうか?
長曾祢虎徹「あれこれ考えても仕方ねえ。まずは三浦……旦那ッ!!」
足下に波紋が浮き上がり、目の前に禍魂の壁が勢いよくせり上がる
歪な楕円形をしたその壁は、縁に鋭く太い棘が並び、さながら鰐の上顎のようだ。ていうかそのものじゃん
(;T)「チッ!!」
警戒して一箇所に固まっていたのが仇になったか。俺らをまとめて噛み潰さんと押し迫る
矛を水平に構えて押し出し、止める。背後の虎徹も同様に防いだ
危うくサンドイッチの具になる所だったが、秒読みには変わりない。万力のように確固とした圧がのしかかってくる
145 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:01:01.89 ID:FUR98O3A0
長曾祢虎徹「クッ、ソが!!旦那!!一発かますが構わねえな!?」
(#T)「男の甲斐性の見せ所だな!!やれ!!」
長曾祢虎徹「オオッ!!」
合わせた背中から強烈な電撃。身体と矛を伝い、上顎を焼く。10まんボルト食らったロケット団の気分だ
これは痛い攻撃だったらしく、のしかかる力が弱まる。二人同時に身を投げ出して離脱すると、バクンと閉じた
長曾祢虎徹「動けるか!?」
(;T)「よよよよよよ余裕だしししし肩こり治ったしししししし」
長曾祢虎徹「軽口叩けんなら大丈夫だな!!次が来るぞ!!」
俺らを喰らうのに失敗した禍魂は、今度は鮫の背ビレへと変幻し向かってくる
まともに食らえば身体が左右に真っ二つになりそうなサイズだ。悪魔殺法デビルシャークかよ
(#T)「まだやりやすいがな!!!!」
見える範囲からの攻撃ならいくら速かろうが対処はできる。背ビレを俺と虎徹の間を通るように誘い
(#T)「くたばれ!!」
長曾祢虎徹「ウラァッ!!」
薙ぎ払いで迎え撃った。が
(;T)「うおっ!?」
直前になって背ビレは潜行。大きく空ぶった
146 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:02:41.83 ID:FUR98O3A0
長曾祢虎徹「しまった!!狙いは……!!」
一度潜った背ビレは再度浮上し、ある方向へと向かって泳ぐ
夕立「ヒッ……!!」
夕立といずみーがいる場所へと
(;T)「くッ……!!」
夕立は熊さんのお面を着けなかった。あの速さだと『変身』より先に背ビレが到達する
その上、今はいずみーを庇う立場だ。迎え撃つのに集中すれば、彼女に被害が及ぶかもしれない
夕立「ッ……!!」
今にも泣き出しそうだが、山刀と脇差を構えた身体は一歩も引いていない。受け止める気だ
だが止めきれるか?俺ですら押されるほどのパワーだ。ウェイトの軽い夕立が耐えられるだろうか?
(;T)「夕立っ……!!」
咄嗟に出た言葉は、『止めろ』でも『逃げろ』でもなく
(;T)「『伏せろ』!!!!!!」
だった
147 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:04:41.35 ID:FUR98O3A0
夕立「ひゃいっ!?」
頭を抱えてすぐさま蹲った夕立の頭上を、『クナイ』が横切る
いつもとは少し違う。『火』を纏ったクナイだ。投擲の達人が放ったそれは
当たる面が極端に細い背ビレへとドンピシャに突き刺さり、火は油へと燃え移ったかのように炎上した
夕立「あ……」
「手の掛かる妹だよ。本当に」
燃え上がった背ビレは、蝋のようにドロドロと溶けてなくなる
誰の仕業など、今さら言うまでもないだろう。ここ一番で頼りになるクソガキなんざ一人しかいない
そいつは海から陸地へと軽い足取りで上がると、片手に抱えていた『北谷菜切』をゴミでも投げ捨てるかのように手放し
時雨「でもまぁ、ヘタレのクセに逃げなかったのは及第点かな?」
生意気な褒め言葉と共に、妹の頭を撫でた
夕立「じ、じぐれぇ〜……」
時雨「鼻水きったな……悪いけど抱きつかないでお願い」
夕立「濡れた手で触らないで欲しいっぽいぃ……」
時雨「お礼も言えないの?誰に似たんだろうね本当に」
お前じゃい
148 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:06:32.21 ID:FUR98O3A0
城和泉正宗「ハァッ、ゲホッ、時雨!!上手くいった!?」
(*;゚ー゚)「夕立さん!!お怪我は!?」
続けて、北谷を追って海へ飛び込んだ二人も陸地へと上がってくる
大声を出せるほど元気な姿を見て、まだ何も終っちゃいねえが一先ず胸を撫で下ろした
時雨「半人前にしては上出来だったよ。雌犬の面倒押し付けられた時は若干鬱陶しかったけど」
城和泉正宗「アンタって子は本当に可愛げも情けも無いわね!!ちょっと提督!!ちゃんと躾けときなさいよ!!」
( T)「俺は頑張ってますぅーーーーーーーーー!!!!!!」
(*;゚ー゚)「城和泉、警戒が先だよ!!」
まーた賑やかになってきやがった。敵を助けた後だって言うのに、元気なもんだ
長曾祢虎徹「ハハッ……なぁ、旦那」
( T)「なんだ?」
長曾祢虎徹「大したもんだな。過保護だったよ、俺」
( T)「親心ってのは得てしてそう言うもんだ。謝るより褒めてやった方が喜ぶぜ」
長曾祢虎徹「そうだな……ぜってー勝つぞ」
( T)「元よりそのつもりだ……さて」
島のあちこちから連続して波紋が広がる。お次は『数』で攻める気らしい
今度は水辺の生き物から陸上生物に。『狼』の群れが参上した
149 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:07:41.88 ID:FUR98O3A0
( T)「次から次へとしち面倒くせえ……」
ひーふー、数えんのめんどくっせ十匹以上おるわ。しかも増え続けている
しかし、広大とはいえ禍魂のリソースにだって限りはあるだろう。地道に削るしかねえか
(*゚ー゚)「皆さん!!時間をください!!」
腹を括った直後、若が声を上げた。先程までギャンギャン喚いていた城和泉が、打って変わって静かに精神を集中している
何かの大仕掛けをしているようだ。虎徹は言ってたな、『城和泉ほどじゃない』と
長曾祢虎徹「了解だ『隊長』殿!!どんだけ稼げばいい!?」
呼び方が変わり、若は驚きで目を丸くする。しかし、すぐに表情を引き締めた
(*゚ー゚)「一分間です!!お願いします!!」
長曾祢虎徹「おう!!」
獣の群れを一分間抑えとけってか。なかなか無茶を仰るじゃねえか気に入った!!
( T)「時雨!!夕立!!指一本触れさせるんじゃねえぞ!!」
夕立「っぽい!!」
時雨「まずは自分の心配をしたらどうかなぁ!!」
口の減らねぇガキだな誰に似たんだ
150 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:08:58.42 ID:FUR98O3A0
「「「グルルオオオオオオオオ!!!!!」」」
唸り声を上げて、狼が駈ける。もう一回TUNAMIの例えを使いたかったがくどいのでやめといた
わんこは大好きだが敵意剥き出しなら話は別だ。喉元目掛けて食らいついてきた一匹の狼を
(#T)「セイッ!!」
柄で押し出し、連続して迫ってきた複数と共に
(#T)「ルアアッ!!」
薙ぎ払いで斬りとばす。肉片と化した狼は空中で霧散するが、後に続く連中は怯む様子はない
矛を振った直後で開いた懐に一匹が飛び込んでくるが
長曾祢虎徹「させっかよ!!」
首筋から刀を突き刺され、そのまま胴体を斬り払われた
標的は俺たちばかりではない。何匹もの獣が通り過ぎ、時雨達の元へと向かう
時雨「艤装を、使うまでもないね!!」
夕立「や、やってやるっぽい!!」
時雨はウエストポーチからクナイを両手で引き抜き投擲
眉間を貫かれた狼はすっ転び、息絶える。運良く標的にならなかったものも
夕立「ていッ!!」
二つの刃により身体を三等分にされ、海へと消えていった
151 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:10:47.83 ID:FUR98O3A0
(#T)「クソッ、だが……!!」
長曾祢虎徹「言うなよ旦那!!後がッ、苦しくなる!!」
(#T)「一分って長くね!!!!????」
長曾祢虎徹「言うなっつっただろ!!!!!!!!」
矛を引き剥がそうと柄に噛み付いてきた狼を蹴飛ばし、虎徹が顎下から切り上げて始末する
彼女に覆いかぶさろうとした奴の首を俺が右手で掴み、握り潰した。だがその隙に
(#T)そ「痛ッ……!!」
左肩に噛み付かれ、体重を乗せられる。女将の具足がなかったら皮膚を噛みちぎられていたところだ(筋肉は無敵なので無傷)
振り払おうとした右腕にも噛み付かれる。下顎の牙が食い込み、そこからーーー
(#T)そ「ぐううッ!!」
『ドロドロ』としたものを流し込まれる。一度俺の身体を犯したもの、『禍魂』だ
長曾祢虎徹「旦那!!」
(#T)「バカお前ッ!!」
俺の助けに入ろうとした虎徹に、三匹の狼が迫る。噛まれていようと関係ねえ。矛を突き出し、まとめて串刺しにした
(#T)「てめえの面倒だけ見てろ!!」
長曾祢虎徹「鏡を見て言え!!」
完璧な論破だった。頭賢いなこいつ
右手に喰らいつく狼の頭を、膝をぶち当て挟み潰す。上げた右足は降ろさず、爪先で一匹の顎を蹴り上げた
長曾祢虎徹「ぐあッ、畜生共が!!」
遂に虎徹も牙の餌食となったが、全身から放電し、纏わりついた個体を焼き殺す
俺は俺で体内に入った禍魂が回り始めた。少量なのでJOJOなら排出可能だが、そこに意識を集中する余裕もない
クソ、一分が長え!!デカくて鈍い敵よりも余程厄介だ!!
(*゚ー゚)「動かないでください!!」
えっ、正気?
152 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:13:43.23 ID:FUR98O3A0
(*#゚ー゚)「『乱れ堕ちる時雨』ッ!!!!!!」
理由はすぐに判明した。頭上から降り注いだ『クナイ』を模った火が、狼の群れを貫いていく
さながら三式弾による対空制圧だ。違う点を挙げるのならば一発一発が『的確』に敵を撃ち抜いている
動くなと言ったのも納得だ。俺らに付き纏っていた奴らすら巫魂の火に焼かれて消えていく
指一歩でも動かしゃ火傷するのはこっちだ。恐れ入った
城和泉正宗「ふぅー……上手くいったわね、主」
(*゚ー゚)「連発は出来ないし、隙も多いから改良の余地はあるけどね」
時雨「ねぇねぇ、時雨って言ったよね?僕をイメージした技なの?ねぇ?」
城和泉正宗「いっ、今はそんなことどうでもいいでしょ!!自意識過剰なんじゃない!?」
そうは言うがこれ完全に時雨からヒント得た技だろ。仲良いなあいつら
長曾祢虎徹「旦那!!」
(;T)そ「あっふ痛い痺れる!?」
虎徹が俺の右手を掴み電流を流すと、傷口から禍魂がサラリとした液体になって流れ出た
(;T)「先に言ってからやってくれねえかなぁ?」
長曾祢虎徹「無事か!?禍憑化してないか!?」
(;T)「してないしてない追加はいいから!!そっちはどうだ!!」
ベタベタと身体を触ってくる虎徹をいなしながら、向こうの無事を確かめる
目立った怪我はないようだが、なんか時雨が不貞腐れてた
時雨「ない、けど、さぁ……」
夕立「だいじょぶっぽーい!!」
お腹でも痛いのだろうか
153 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:15:37.09 ID:FUR98O3A0
(;T)「オーケー虎徹ちょっと離れろ。ウチのわんこがご機嫌斜めだ」
長曾祢虎徹「っ、悪い……心配性は簡単には抜けちゃくれねえな」
( T)「それより、見ろ。若と城和泉は本当に良い仕事してくれる」
狼を貫き、地面へと突き刺さった火のクナイは未だ消えない。煙を上げながら食い込んでいく
地面も禍魂、いや、もはや『禍憑』と呼んでも差し違えないだろう。つまり攻撃は『継続』されている
長曾祢虎徹「こいつは……はは、文字通り『炙り出す』ってとこか」
( T)「そのようだな。ここまで気が周ったのは、他の要素も絡んでそうだ」
三浦に裏切られ、二人に救われた、御華見衆に属しない巫剣
若にお熱なヤンデレクソ女なら、助言の一つ二つは喜んで差し出したのかもしれない
( T)「非情が仇になったなぁ、三浦」
爪 ゚W〉「……」
音も無く静かに地面から現れた三浦。鎧は焼け焦げ、煙を上げている
俺らからは感じられないが、城和泉の炎は奴らにとっちゃ相当お熱いようだ
なんとなしに地面を柄で突くと、荒廃した土地のように乾いた音を立てた。リソースが尽きる一歩手前か
爪 ゚W〉「これほどの力を秘めていたとはな……非礼を詫びさせてくれ。椎名君、城和泉正宗」
(*゚ー゚)「……」
城和泉正宗「……」
若と城和泉が、俺と虎徹の隣に並び立つ。若の刀は鞘に納まっていた
154 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:23:54.48 ID:FUR98O3A0
(*゚ー゚)「投降の意思はございますか?」
爪 ゚W〉「フ……これほどの騒ぎを起こしておいて、今更投獄も無いだろう」
(*゚ー゚)「ええ、存じ上げております。だけど、誰にでも罪を償う権利はある。それを最後に確認したかっただけです」
爪 ゚W〉「ハッ……ハハハハハ!!まだまだ青いと思っていたが、男になったか!!」
ひとしきり大きく笑った後、黒刀を両手で握り正眼の構えを取る
若も腰の柄に手を掛け、いつでも引き抜けるように備えた
爪 ゚W〉「キミ達の雄姿を見れたのだ。その上、戦いで死ぬのなら地獄に堕ちようとも悔いは無い」
(*゚ー゚)「……僕には、選べられない道ですね」
爪 ゚W〉「狂人の戯言だ。これからめいじ館を背負うなら、それくらい受け流せ。では……」
爪#゚W〉「仕舞いにしようかッ!!」
『狂人』は膝に力を込め、低く跳躍。蹴飛ばしたボールのような軽やかさで迫る
『凶刃』が真っ先に狙いをつけたのは若だった
(*#゚ー゚)「むんッ!!」
爪 ゚W〉「ッ!?」
抜刀術。『抜く』『斬る』を一連の動作で行う、居合とも呼ばれる剣術だ
俺らの一歩前に出た若は、自身の菊華刀を三浦の黒刀に当て、身体の重心を斜め前へ移動させ斬撃をいなした
城和泉正宗「ハァッ!!」
間髪入れず城和泉による横払いが胴当てに罅を入れる。仮面の奥からくぐもった声が漏れた
155 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:25:44.46 ID:FUR98O3A0
爪#゚W〉「打ッ!!」
城和泉正宗「うッ……!!」
胸元を狙って三浦が掌底を放つが、腕で防護。直撃こそしなかったが、強烈な一発には変わりなく城和泉は間合いを取らされる
(#T)「虎徹ッ!!」
長曾祢虎徹「応よッ!!」
虎徹は上段斬りのフェイントを入れてから、脚を蹴り払って体勢を崩す
爪;゚W〉「くっ……!!」
(#T)「死ねオラッ!!!!!!」
仰向けに倒れ込んでいく三浦目がけて矛の振り下ろし。地中への離脱はもう使えまい
爪#゚W〉「コォッ!!」
刃の付け根を足裏で受け、身に受けた矛の力も利用して離脱。背中で地面を滑る
(*#゚ー゚)「だぁッ!!」
爪;゚W〉「!!」
立て続けに喉に突き立てられようとした若の刀は左手で掴んで止めた。黒刀がお返しだと言わんばかりに肋骨の隙間を狙って突き出される
(*;゚ー゚)「わっ!?」
菊華刀に執着せず、柄を手放して間一髪避けたものの
麻色のシャツと共に肌を切り裂かれたのか、脇腹を庇いながら下がった
156 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:27:14.42 ID:FUR98O3A0
城和泉正宗「三浦ぁッ!!」
爪#゚W〉「フンッ!!」
奪った菊華刀を城和泉に投げつけ、立ち直る。左手から黒い陸地にポツポツと赤い斑点が落とされた
刀を握って止めたのだ。常人なら当然の怪我だろう。だが奴の場合勝手が違う。『禍魂』を纏った身なのだ
城和泉と稜威を繋いでいる菊華刀だからなのか、それとも防御も儘ならないほど消耗しているのか。いずれにせよ
爪#゚W〉「まだまだッ!!」
『弱み』を晒した分、戦況を挽回しようと更に暴れられちまうってこった
城和泉正宗「っ……舐めるなァッ!!」
斬り込んできた三浦に、真正面から打って出る城和泉。合わさった刀は火花を散らす
虎徹と比べればやや小柄な少女にも関わらず、対等な力比べを見せている
爪#゚W〉「がッ!!」
城和泉正宗「だぁあッ!!」
三浦が手首を返し、城和泉の刀を上に弾き上げる。そのまま、頭を狙った上段斬りに移行
城和泉は引かず、身を低くして衝突までの一瞬を稼ぎ、再び刀で受け止め
城和泉正宗「吹き飛んでッ!!」
至近距離から火弾を放った
爪#゚W〉「ぐっ……これしきッ!!」
まともに喰らうが、三浦は堪えて更に刀を押し込む。城和泉の右膝が地面を着いた
長曾祢虎徹「ッ!!」
息を潜めた虎徹が背中へと斬り込む。が
爪#゚W〉「読めぬと思うかッ!!」
長曾祢虎徹「ぐあッ!?」
右脚の後ろ蹴りで腹を打ち、そのまま振り子のように
城和泉正宗「あがッ……!!」
城和泉を蹴り上げた
157 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:28:46.39 ID:FUR98O3A0
(#T)「やるじゃねえか!!」
爪#゚W〉「ハハ、光栄だなッ!!」
矛の刺突を叩いて退け、間合いを一歩詰めて顎下へと斬り込まれる
身体を逸らして回避し、三浦の胴を柄でブッ叩くが
爪#゚W〉「ぐっ……ふぉぉおおおおッ!!」
左腕で柄を巻き上げ、踏ん張られる。頑丈な矛が初めて小さな軋みを掌に伝えた
(#T)「お……おおおおおおおおおおおッ!!」
まるで岩盤に突き刺さった聖剣のようにビクともしない。手放せない理由の一つは俺の筋肉が負けを許さなかったこと
しかし三浦には俺の矜持など関係の無い話。黒刀の切っ先が左肩を突き刺した
(#T)「ンンッ……ふぅぅぅううううう……!!!!!!」
声にならない痛みとはこの事か。致命傷になり得る場所を狙わなかったのは、恐らくあいつもこの拮抗に大半の力を使っているから
少しでも体幹を乱せば、力の天秤は俺に傾く。だから今の体勢で放てる攻撃しか出来なかったのだ
爪#゚W〉「頑固な奴だな……それでこそだが……!!」
(#T)「筋肉が絡んだ勝負に俺が負けて堪るかよ……ああ、そうだ……言い忘れてた……」
爪#゚W〉「遺言などッ……求めていないぞ……!!」
手放せない理由二つ目
(#T)「『鬼は怒らせない方がいい』」
爪;゚W〉そ「鬼……ッ!?」
この場にいるもう一人の新選組の覚醒を、悟らせない為だ
158 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:30:53.39 ID:FUR98O3A0
爪;゚W〉・'.。゜「ごぷっ……」
鬼の正体に気づいた時にはもう遅い。背中を貫いた刃が、胸から飛び出している
俺も視界に入るまで意識下から抜けていたもう一人の新選組
背後の攻撃すら迎撃するほどの察知能力を持つ三浦でも、予知していない事態だろう
和泉守兼定「……士道、不覚悟ッ」
新選組の『鬼の副長』、和泉守兼定の戦線復帰は
爪;゚W〉「く、くく……一杯、食わされたな……」
(#T)「数の暴力と言っちまえば、情けない勝利ではあるがな」
和泉守兼定「これが新選組のやり方だ……数で囲いもすれば、寝込みも襲う、さ……」
いずみーの復活は直ぐに終わった。元より気を失うほど叩きのめされていたのだ
倒れていくと同時に、三浦に突き刺さった刀も抜けていく。血は噴出せず、ドロリと流れ出た
長曾祢虎徹「いずみー!!」
虎徹が身体を抱き止めた時には、寝息を立てているほどだ。労いの言葉を掛けてやりたかったが、そうも言ってられなかった
矛を抑えこむ力は、弱まるどころかますます強まっているからだ
(;T)「三浦……」
爪;゚W〉「ど、どうやら……禍魂が命を繋ぎとめているようだ……じ、時間の、問題だろうがな……」
(;T)「そのままくたばる気は、毛頭なさそうだな?」
爪;゚W〉「と、カハッ、当然……し、死ぬのならば……残った命を全て使いきりたい……か、『彼』には及ばずとも……私自身が満足できる、死を……」
長曾祢虎徹「てめぇ、まだそんな事を!!」
(;T)「虎徹ッ!!」
激昂し、トドメを刺そうとした虎徹を制止する。目は血走り、荒く呼吸を繰り返していたが
(;T)「……頼む」
長曾祢虎徹「……チッ、仮にも今の主には逆らえねえぜ」
怒りと刀を納め、いずみーを抱き上げて離れてくれた
159 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:32:36.01 ID:FUR98O3A0
爪;゚W〉「付き合って、くれるか?」
(;T)「水臭ぇこと言うなよ。共に茂名と戦った仲だろ?」
爪;゚W〉「クク、ハッハッハッハッハ!!」
(;T)「ガハハハハハ!!」
矛の圧が解かれ、肩の刀が引き抜かれた。結構ドバっと出血したが、止血は後回しだ。数歩分の距離を置き、それぞれの武器を構え直す
爪;゚W〉「では……いざ尋常に」
(;T)「尋常に……」
剣術と矛術。型は違えど、構えは同じく『上段』。予め得物を振りかざしているので、『降ろす』だけの動作で済む
奴に何度も打ち合う余力は残ってないだろう。残った命を使い切る『一撃』で勝負に出る
なら俺は、友情を以て応えよう。身勝手な欲望で大勢を巻き込み、純粋に人の可能性を信じ、若者の成長を喜んだ『好敵手』に対して
爪 ゚W〉「……」
( T)「……」
痛みが引き、呼吸は落ち着く。聞こえる音や見える風景、肌の感覚に到るまで、『余分』がそぎ落とされていく
俺、得物、そして三浦。今この瞬間、世界には『三つ』しか無くなった
爪 ゚W〉「」
( T)「」
思考も薄れ、薄れ、薄れ、薄れ――――
160 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:33:28.64 ID:FUR98O3A0
爪 ゚W〉
( T)
爪#゚W〉「ちぇいあッ!!!!!!!」
(#T)「ッだらァ!!!!!!!」
漂白された世界の中で交わされた一撃が、矛を伝い全身を揺るがした
161 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:34:44.48 ID:FUR98O3A0
爪 ゚W〉「……」
( T)「……」
爪 ゚W〉「……」
( T)「……」
爪;゚W〉「……」
( T)「……」
爪; W〉「……」
( T)「……」
爪; W〉「……お見事」
( T)「……お前もな」
宙を舞った黒刀の半身が、俺の背後で地面に突き刺さる
『命を燃やし切った』三浦が、膝から崩れ落ちた
矛の刃は鋭利を保ったまま、静かな『響き』の勝鬨を上げていた
162 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:37:38.11 ID:FUR98O3A0
爪; W〉「ここまで、か……」
へたり込んだ三浦の鎧から、禍魂が蒸発していく。兜は崩れ落ち、表情を露わにする
(; д゚ )「一太刀も、浴びせずとはな……」
( T)「余裕が無かっただけだ。刀折るだけで精一杯……」
(;T)そ「あっ桃色の肩痛い!!!!!!!!!!!!!!」
緊張が解けた瞬間、痛みが爆発的に蘇る。やべえ結構深いぞこれ
(*;゚ー゚)「だ、大丈夫ですか!?」
(;T)「大丈夫じゃない泣きそう……お前は?」
(*;゚ー゚)「薄皮一枚切れただけです!!じょ、城和泉!!」
城和泉正宗「わ、私に言われてもどうしようもないわよ!?回復系の巫魂じゃないのは知ってるでしょ!?」
時雨「傷焼けば?」
城和泉正宗「アンタ冴えてるじゃない!!いい?やるわよ!!」
(;T)そ「良くないもっとマシな方ほ熱アアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッス!!!!!!!!!!!!!!!」
取り囲むように連中が集まり始め、俺は傷を焼かれる始末だ。ランボーかよ
(; д゚ )「ハハハ……羨ましくなるほど、賑やかだな……貴様の周りは……」
(;T)「お前今の仕打ち見て本当にそう思うの?????」
(; д゚ )「ああ……いや、私は……普通の止血が好みだな……」
(;T)「俺だって好き好んでこの方法取ったワケじゃないけど??????」
163 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:40:15.75 ID:FUR98O3A0
夕立「時雨ぇ〜、運ぶの手伝ってっぽいぃ〜……」
時雨「僕もう運んだし。それにもう面倒見たくないし」
夕立「もぉー!!」
夕立は気を失ったままの北谷菜切を引きずっている。見かねた城和泉が手伝いに走った
( T)「あいつは?」
(*゚ー゚)「直前で防いでたみたいでして、思ったほど深く斬り込まれてはいませんでした。手は施しましたので、本格的な手入れと休養をすれば大丈夫でしょう」
(;T)「だ、大丈夫かなぁ……まぁ、聞きたい事もあるし……」
長曾祢虎徹「で、こいつの沙汰はどうする?トドメなら喜んで刺すぜ」
(; д゚ )「……」
( T)「……」
元主の死を冒涜された虎徹の気持ちはわかる。だが、解けていない謎がいくつか残っている。それはスッキリしない
俺の無言の意を汲んでくれたのか、虎徹は溜息を吐いてドカリと胡坐を掻いた。スカートの自覚無いのかこいつ
長曾祢虎徹「あーあーわーったよ、好きにしな……」
( T)「ありがとよ。お前下着派手だnオーウウォウウォウイージーイージー落ち着けフロイライン誰もダメとは言ってないだろ」
恰好がアレだから見られても構わんもんかと思ってた。真っ赤になって股座を隠し、今にもぶん殴ってきそうな虎徹を尻目に、俺も腰を下ろす
地面は随分スカスカな感触になっていた。まるでスナック菓子の層のように頼りなくなっている。カール黒ごま味
( T)「タバコタバコ……おっ、やったぜ濡れてねえ。マッチも無事とは」シュボッ
(; д゚ )「……」
( T)「フゥー……やるか?」
(; д゚ )「いや……酒もタバコもダメなもんでね……」
( T)「そうかい。俺も飲めねえよ」
(; д゚ )「……折角作って貰った時間を……世間話で、済ますつもりか……?」
( T)「ァあ……そうだな、悪い」
164 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:43:37.84 ID:FUR98O3A0
ニコチンとタールがクッソ重たいタバコの灰をトンと落とし、質問を始める
( T)「特異型で別世界に飛ばされたのは本当か?」
(; д゚ )「なんだ……確信してたのでは、無いのか……?」
( T)「偶然の一致って線もある。茂名が未来の情報を要求しなかった理由も、俺の仮説に過ぎない」
(; д゚ )「なら……自信を持て……間違っては、いない……私が、飛ばされたのは……ニ十世紀末の、日本だがな……」
( T)「正確な年代は?」
(; д゚ )「1999年……ああ、確か……梅雨の終わり頃だった……最初に私を迎え入れたのは、雨と湿気だったな……」
( T)「99年……」
時雨「んー……あっ、提督、なんか世界が終わるとかそういう予言無かったっけ?」
( T)「予言……あー、ノストラダムスとかいう与太話か。なんでそんな事知ってんだ?」
時雨「提督が子供の時本気で信じて親に泣きついたって」
( T)「オーケーわかった子供だから仕方ない」
ノストラダムスの大予言。1999年、七の月に人類は滅亡するという、今ならムーにでも掲載されそうなしょうもない伝説だが
三浦がこの西暦に送られていたのなら、あながち冗談でもなくなる。特定の人物が過去から未来へと渡り、そして戻った時、世界は必ずしも変貌しないとは言い切れないからだ
しかし今は関係ない。話を元に戻そう
( T)「未来の日本に絶望し、世界を変えようとするならわかる。禍魂と相性の良い深海棲艦を使って兵力を増強するってのも頷ける」
( T)「だが、俺らの世界での深海棲艦の発生は二十一世紀に入って十年以上経ってからだ。どこでその情報を仕入れた?」
(; д゚ )「それに関しては……偶然だよ……なんでも、良かった……私にとっては……」
長曾祢虎徹「お前の欲を満たせるバケモノを作り出せりゃ、それで良かったってか……どこまでも腐りきってんな」
(; д゚ )「返す言葉も、無い……だが、キミ達を尊敬していたし、憧れてもいた……今更どう取り繕うとも、聞く耳を持ってはくれない、だろうが……」
長曾祢虎徹「っ……たりめえだ!!許せるか!!お前、どれだけの人間を苦しめたのかわかってんのか!?」
( T)「虎徹」
長曾祢虎徹「っっっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」
どれだけ当たろうと、正論を突き付けようと、性根というのは死ぬまで変わらない
虎徹は怒りに任せて地面を殴る。脆くなっていた禍魂の陸地に、小さなクレバスが出来上がった
165 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:46:09.47 ID:FUR98O3A0
(; д゚ )「ああ……わかっている……唯一、俺の話を信じてくれた茂名大尉や……国を憂う彼の同志たち……彼らの正義も、俺は踏みにじった……」
(*;゚ー゚)「正義、ですか……?」
(; д゚ )「『富国強兵』……聞こえは良いが、富むのは軍の上層部や富裕層……戦場で散る命の数だけ、連中ばかりが富むバカげた仕組みだ……」
( T)「そこは今も大して変わんねーな。救えねえぜ、戦争屋ってのは」
(; д゚ )「茂名大尉は……決して秀でた人間ではなかった……だが……兵や、その家族の幸せを一心に願う……将校の鑑だった……」
(; д゚ )「自分や、同志の命すら……投げうって……世の仕組みを、ゴホッ、変えようとしたのだ……」
(*;゚ー゚)「……そんなのって」
( T)「ああ、一切同情出来ねえな」
(*;゚ー゚)「っ……」
ご立派だが、根本から捻じ曲がっている。結果がどう転ぼうが、過程で民間に被害が及んでいれば、『正しい行い』とは言えない
大使を抱いて誓いを立て、良心の呵責に苦しみ、後の世の為に暗躍して、最後は己の正義を信じ死んでいった
禍魂に犯されるワケだよ。『狂気』以外の何物でもない。魂の行きつく先は地の底だ
( T)「悪い見本だ良く覚えとけ。『正義』を免罪符に好き勝手やらかした連中が辿る末路だ。正義の味方と良く言うがな、付く方間違えりゃ破滅へと一直線だ」
( T)「これからめいじ館の看板背負って正しい行いをしていくのならば、こんなクソみてーな言葉に惑わされるな。自分の目で、救うべき『善き人』を見極めろ」
(*;゚ー゚)「……わかり、ました」
166 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:49:14.54 ID:FUR98O3A0
(; д゚ )「手厳しいな……」
( T)「そういう連中に辛酸を舐めさせられてきたんだよ。民衆から兵器扱いされる小娘抱えてりゃ特にな」
時雨「クソだよね」
(; д゚ )「達観も……しようものか……」
( T)「もう一つ解せねえのは、お前が『英雄の死』とやらに取り憑かれたのは一年前の話だろ。異世界から帰ってきて十数年は経過してる」
( T)「その間、茂名のような妄信に取り憑かれていなかったのか?」
(; д゚ )「……限界が、あったのだ……確かに、私もこの国の行く末を憂いたりもしたさ……だが……」
(; д゚ )「背負うには……途方もなく重すぎた……若くして将校の位を得たが……権力を得るほどに……青写真を描けなくなっていた……」
(; д゚ )「どうでも……良かったのかもしれない……だから、驚いたのさ……自分自身の目的の為なら……ここまで情熱を燃やせるのかと……ガッ、ゴホッ!!」
多量の血を吐き出した。そろそろこいつの人生は、終焉を迎えようとしている
他にも聞きたいことはあった。特異型の出現方法や桜禍糖の出先など。だが、証人はもう一人いる
後からでもわかる質問に時間を費やしたくはない。虎徹は怒るだろうが、『友』として、最後にどうしても聞いておきたい
( T)「満足したか?」
(; д゚ )「ッ……ああ、ああ!!素晴らしい、戦いであった!!」
( T)「そりゃ良かった」
(; д゚ )「貴様は、どうなんだ……?恨んでは、いないのか……?」
( T)「見てわかんねーかよ。そりゃ、時雨持ってかれて深海棲艦の処理までさせられて、迷惑極まりなかった」
(; д゚ )「だろうな……すまん」
( T)「だが……良い出会いには恵まれた。お前という強敵も含めてな」
(; д゚ )「ッ……!!」
167 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:50:59.00 ID:FUR98O3A0
( T)「楽しかったぜ、三浦 孝一。ありがとよ」
(; д゚ )「……そうか、そう、か……」
瞳の光が落ちていく。震える唇から、最後の溜息と共に
(; д゚ )「さらばだ……我が、友よ……」
( д゚ )
命が潰えた
( T)「……欲望一つでここまでしでかしたお前の事、嫌いではなかったぜ。ゆっくり休め」
吸いかけのタバコを地面に突き立て、線香の代わりにして
開かれたままの瞼を掌で閉じ、永い眠りへと就かせてやった
168 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:53:05.41 ID:FUR98O3A0
( T)「……」
長曾祢虎徹「……ハァー、聞き捨てならねえ台詞だな、旦那」
( T)「所詮俺も同じ穴の狢だ。戦う動機はお前らのようにご立派じゃねえ」
(*゚ー゚)「だけど……貴方は、貴方たちは、『善き人』の味方だった」
( T)「……」
長曾祢虎徹「ハッ、違いねえな。三浦との決定的な違いはあったってことだ……さて、稜威と巫魂を解くぜ」
( T)「えっちょっ待っ」
(;T)そ「エンッ!!!!!!!!!!!????????」
巫魂のお陰で和らいでいた身体の痛みが一気に駆け巡り、ショックで気が遠くなるが、なんとか持ち堪える
余韻に浸らせてくれてもいいじゃんまだ派手な柄の下着見ちゃったこと怒ってんのかよ
(;T)「ヒィー、ヒィー!!」
秋雲《ちょっとちょっと!!禍憑消え始めてんだけど終わったの!?》
天龍《こっちも穏やかに居なくなり始めてんぜ。これからだって時に余計な真似すんじゃねえよ》
(;T)「ヒィー!!オヒィー!!」
天龍《何喘いでんだ気持ち悪ぃな》
秋雲《尻の穴にウナギでも挿入てんの?》
別働隊からの通信を返せないほど痛い。普段の筋トレでもこんだけ筋繊維断裂しない
時雨「えーっと、提督はお楽しみの真っ最中だから僕が代返するね」
おいふざけんなよお前
169 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:54:46.79 ID:FUR98O3A0
時雨「首謀者、『三浦 孝一』は現時刻を持って死亡。共犯者の『北谷菜切』は確保」
時雨「この戦、僕らの勝利だ。勝鬨上げるなら今だよ!!」
やや間があって、陸から爆発的な歓声が響く
俺の苦しみも知らねえで無邪気なもんだな。仕方ねえか
天龍《避難者をこっちの駆逐艦に移送してから、小夜が乗ってる船で迎えを寄越す。それまでは保ちそうか?》
時雨「んー、大丈bわぁぁ!?」
艤装を背負う時雨の重みに耐えきれなかったのか、禍魂の陸地は陥没した。いい気味だった
小夜の船もなんとか無事らしい。安堵を吐きたい所だが、やっぱり出てくるのは喘ぎだけだった
秋雲《時雨ちゃん?》
時雨「な、なんでもない……急いでよね!!」
天龍《へえへえ仰せの通りにっと》
(;T)「アヒヒヒィーン……」
天龍《うわきっしょ……》
バーソロミュー・くまに頼んで俺の痛みをあいつに全部くれてやりたかった
170 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 22:56:43.38 ID:FUR98O3A0
夕立「天龍ちゃん、なんてー?」
時雨「迎え寄越すってさー」
陸地は端から波に削り取られ、徐々に狭まっている
だが、迎えが来るまでの間なら持ち堪えるだろう。ほんの少しだけ、寂しい光景だった
(;T)「つ、つわものどもが、夢の跡……ってな」
長曾祢虎徹「かっこつける余裕が残ってるようで何よりだぜ」
(;T)「酷なこと言うなよ……」
長曾祢虎徹「仕返しだ。ざまぁみやがれ」
(;T)「虎柄……」
長曾祢虎徹「本っ当に可愛げのカケラもねえ主だな!!」
(;T)「憎たらしい愛刀が言うじゃねえか……」
長曾祢虎徹「……」
(;T)「……ハ」
長曾祢虎徹「……ぷっ、ハハハハハ!!」
(;T)「ハハヤバい笑うと身体痛いィヒィイイイイホォッホォーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
こうして、銘治時代での俺たちの戦いは幕を閉じたのであった―――
171 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:03:04.72 ID:FUR98O3A0
―――――
―――
―
事の顛末を話そう
あの後、帰りの船上でいつも通り失神した俺は、めいじ館のベッドの上で目を覚ました。俺は上条さんか何かか
またもや蛍ちゃんの治癒能力や牛王吉光のあやしいくすりのお世話になり、日常生活を過ごす分には問題なく回復した
ただし、絶対安静を言いつけられた上でだ。激しい運動(筋トレ)が出来なくて俺は泣いた
浜辺の禍憑消失と共に、街中で暴れていた陸軍残党兵も鳴りを潜めた。副司令始めとした御華見衆上層部は、事後処理に追われている
茂名のバックにまた一つ位の高い将校が絡んでいたらしく、陸軍内部は揺れに揺れている。これを機に組織改革に乗り出すそうだ
街の治安維持は、しばらく御華見衆主体で動くことだろう
めいじ館や、阿音さん率いるみやこ屋の隊員は、大小なり怪我をしていたが、全員が無事
後に俺らを訪ねてめいじ館にやってきた渋沢大佐殿から「海軍兵も犠牲はあったものの、最小限に抑えられた」と、敬礼と共に伝えられた
因みに、女将の息子である双子は、駆逐艦上での戦働きを認められ、正式に巫剣使い『見習い』として御華見衆に迎え入れられるそうだ
まだ海兵としての任期が残っているため、配属はまだ先の話になるけどな
身柄を確保した北谷菜切は、重要参考人として本部での聴取を受ける運びとなったのだが―――
172 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:04:44.86 ID:FUR98O3A0
( T)「黒幕がいる?」
小烏丸「うむ」
事件から二日後、話を聞くにもう一つややこしい事態に陥っていたらしい
お茶会がてら開かれた報告会で、小烏丸が渋い顔で伝えてくれた
∬´_ゝ`)「製造法を陸軍が掴んでいたのは間違いないんだけど、肝心の原材料はまた別の組織が絡んでいたらしいのよ」
( T)「ええ……めんどくさ……そういや数年前に桜禍糖絡みの事件があったって聞いたな」
∬´_ゝ`)「ええ。桃太郎組という任侠団が製造、流通を行なっていたの」
小烏丸「とは言え、内部でも食い扶持の稼ぎ方を巡ってかなり揉めておった。抗争の最中、漁夫の利を得る形で主犯格を倒し、任侠団は壊滅」
小烏丸「原料の栽培場も焼き払い、終息したと思っておったんじゃが……」
秋雲「土竜の唄めいてきましたねぇ……」
( T)「シャブは駄目だ」
シャブをシノギにしないでヤクザやるから楽しいんだよってパピヨンも言ってた
∬´_ゝ`)「やだ、ごめんなさい。貴方達に言っても余計な心配増やすだけよね」
( T)「ああうんもう頑張れとしか言えねえな……」
∬´_ゝ`)「優しい言葉をかけてよ」
( T)「うわっめんどくさい……」
173 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:06:24.96 ID:FUR98O3A0
小烏丸「阿音よ、ふざけている場合ではなかろう……肝心の報告はいつ伝えるのじゃ?」
∬´_ゝ`)「はいはい仰せのままに。特異型禍要柱だけど、貴方達のような異世界の人間がいる間は頻繁に現れる代物なんですって。ただ、発生場所は不規則だから、足使って探す必要はあるわね」
( T)「そんなゆるゆるなんだ……」
秋雲「待って待って、それってまた深海棲艦現れちゃうやつじゃん!!」
小烏丸「いんや、此方が先に抑えてしまえば、良からぬものが送られる事は無いそうじゃ。今は大規模な敵勢力も居らぬ故、無事に帰れるじゃろうよ」
( T)「ハァーン……そうかい……」
小烏丸「ため息なんぞ吐いてどうした?不服なワケでもあるまい?」
( T)「もう一悶着あるもんかと思ってただけだ。あのクソガキが素直に俺らを帰すとも思えなかったしな」
阿音さんも小烏丸も信憑性のない話をわざわざ伝えに来ないだろう。捕われの北谷菜切は素直に聴取に応じているらしい
拷問でもされてんのだろうか?呼んでくれたら喜んでムカデ人間上映会を開催したっていうのに
小烏丸「懲りたんじゃろうよ。三浦には切り捨てられ、目的はお主らに潰された。顔も見たくないと言った様子じゃったぞ?」
( T)「腹の底から『ザマミロ&スカッとサワヤカ』の笑いが出てしょうがねーぜ」
小烏丸「北谷の減刑を求めた若とは違って人でなしじゃな……」
比較対象が聖人君子過ぎんだろ勝てるかよ
174 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:07:51.49 ID:FUR98O3A0
∬´_ゝ`)「特異型の調査は私達に任せて、貴方達はゆっくり傷と疲れを癒して頂戴」
( T)「ああ、長期休暇だと思って割り切って過ごさせてもらうよ」
秋雲「あんがとねー」
小烏丸「では、我らはこれで」
テラス席を立ち、二人は足早に歩き去った
忙しい中、わざわざ直接報告をしにきてくれたのだろう。頭が上がらないな
秋雲「まさか、この一連の事件すら大きな陰謀の中の一つに過ぎなかったとはねー。解決まで見ていたい気もするけど」
( T)「俺らの出る幕じゃねえよ。ここにはここの物語がある。部外者はとっとと退散しねえとな」
秋雲「ポエット」
( T)「やかましいわ」
秋雲「じゃ、提督。あとよろしくー」
( T)「は?どこ行くんだおま……」
ヒラヒラと手を振って館内に戻った秋雲と入れ替わりに
和泉守兼定「お勘定だ」
茶房の制服を着た仏頂面のいずみーが、テーブルに伝票を叩きつけた
してやられた。あいつら支払いを俺任せにして逃げやがった。結構飲み食いされたぞチクショウ
175 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:10:23.49 ID:FUR98O3A0
(;T)「っあー……ツケは利くか?」
和泉守兼定「寝言をほざくな。と言いたいところだが……フン、良いだろう。私が支払っておく」
(;T)「は?なんで?」
和泉守兼定「礼だ。貴様らが居なければ、三浦を止めることができなかった。不甲斐なくも、私はあの時ほとんど役に立たなかったからな」
( T)「決定打与えておいて何言ってんだ」
和泉守兼定「奮闘あってこそだ。それと……局長の事もある」
( T)「ああ……いや、別に気にせんでも……それより、俺こそすまんかったな」
和泉守兼定「何がだ?」
( T)「お前の期待を一度裏切ってしまった」
和泉守兼定「天幕での話か。あの時は斬り捨ててしまおうと本気で思ったな。我ながら自分の辛抱強さには感心したものだ」
聞き捨てならない物騒な台詞を吐きながら、いずみーは席に着く。懐から棒突き飴を出し、咥えた
( T)「仕事はいいのか?」
和泉守兼定「今日はこれで終わりだ。どうにも、給仕は性に合わん」
( T)「大変だね(笑)」
和泉守兼定「叩っ斬るぞ」
おお、怖い怖い
176 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:11:40.95 ID:FUR98O3A0
和泉守兼定「傷の具合はどうだ?」
( T)「快調とは言えねえが、美女と茶をしばく程度なら問題ねえよ。巫剣の回復力が羨ましいぜ」
和泉守兼定「母君の手入れの賜物だがな。それと、鳥肌が立つような台詞を吐かないでもらおうか」
( T)「厳しいねぇ……」
タバコを取り出そうとすると、いずみーから飴を投げ渡される
和泉守兼定「煙を喫むよりは、ずっと健康に良い」
( T)「いいのか?」
和泉守兼定「スられるよりはマシだ。秋雲の手癖の悪さには毎度辟易させられる」
(;T)「マジごめん」
そういう事なら、ありがたく頂いておこう。秋雲は帰ったらゲロ吐くまで指導する
しばし柑橘系の甘さを堪能していると、いずみーが唐突に切り出した
和泉守兼定「どうするつもりだ?」
( T)「何が?」
和泉守兼定「局長と、菊だ」
これ以上なんかしなきゃいけないんだろうか。肉体改造とかしなきゃならないのだろうか
177 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:12:59.22 ID:FUR98O3A0
和泉守兼定「仮とは言え、貴様は局長と稜威を繋いだ。鞘入れをすれば更に強力な力を発揮できるだろう」
( T)「その……鞘入れって、なんなの?なんかしなきゃいけないの?」
和泉守兼定「わっ、私の口からそんな恥ずかしいことを説明させるな!!」
マジで何するんだよこえーよ
和泉守兼定「コホン……と、とにかく、その気になれば御華見衆を離れようとも、局長は巫剣として活躍出来る。深海……なんとかにも対抗出来るだろう」
和泉守兼定「双方にその気があれば、貴様の世界へと……その……菊も、夕立とは別れたくないようだし……」
( T)「飴切れか?歯切れが悪いぞ?」
和泉守兼定「私は真剣に……!!」
( T)「ねえよ」
和泉守兼定「!!」
何を言うかと思えば、そんなことか。悩むまでもない
そりゃ確かに別れは辛いものさ。ただでさえ違う世界を跨ぐのだ。永遠の別れに等しい。だけど
178 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:14:15.49 ID:FUR98O3A0
( T)「お前らのワガママで俺らをこの世界に留めておけないのと同じく、俺らの世界に特定の誰かを連れ帰るなんてしない。俺だって夕立だって、ちゃんと割り切ってるよ」
和泉守兼定「だがっ……いいのか?」
( T)「個人的事情でズルは出来ねえさ。それに、お前だって辛いだろ?」
和泉守兼定「私はっ……いや、すまない……そうだな。正直言って、その言葉を聞いて安心しているよ」
( T)「ハハ、随分素直になったじゃねえか」
和泉守兼定「うっ、うるさい!!悪いか!?」
ツンデレって面白いなって思った
和泉守兼定「はぁー……なら、最早言うべきことは一つだけだな。後悔を残して帰るんじゃあないぞ」
( T)「わかってるよ。ありがとな」
和泉守兼定「べ、別に礼を言われるようなことなど……し、失礼はあったが……」
ツンデレって面白いなって思った。このタイプ、ウチにはいねえから
( T)「それより、ちょっとお喋りに付き合ってくれよ。新選組の話を聞きたい」
和泉守兼定「フ……いいだろう。私しか知らない話は山ほどあるからな」
( T)「じゃあ、北海道で鮭のチタタプを作ったってのはーーーー」
ここから先の会話は、割愛させてもらおう
179 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:15:30.68 ID:FUR98O3A0
―――――
―――
―
矢のように早い一週間が過ぎた頃、特異型の発見報告が届いた
場所は、俺たちが最初に現れた神社だそうだ。現場は確保及び封鎖され、深海棲艦が現れることも無かったらしい
俺たちは手早く帰り支度を済ませ、めいじ館に別れを告げた。わざわざ見送ってくれる為に、茶房を臨時休業にまでしてくれた
最後に一つ、寄るところがあった
( T)「……」
長曾祢虎徹「……どこ行ったかと思えば、律儀だな。旦那」
( T)「挨拶だけ、しとこうと思ってな」
墓前に手を合わせていると、俺を探していたらしい虎徹が話しかけてきた
彼女の元主が眠る墓。矛を借りたことの報告と、礼を兼ねての墓参りだ
( T)「彼はどんな人物だった?」
長曾祢虎徹「そうだな……ガタイは良いくせに気弱で口下手。純情で揶揄い甲斐のある可愛い奴だった」
長曾祢虎徹「酒は強くてなー……本人はあまり呑みたがらなかったが、何度も俺の気晴らしに付き合わせては迷惑を掛けた」
( T)「心労をお察しするな」
長曾祢虎徹「うっせ。まぁ、そう考えたら……戦い方も性格も、旦那とは真逆だったな。罵倒や騙し討ちとは無縁の、穏やかな男だった」
( T)「育ちが悪くてすいませんね」
長曾祢虎徹「ハハ、拗ねんなって……良い男だったよ。旦那にも引けを取らないくらいにな」
( T)「そうか……良い男筋肉頂上決戦、したかったな……」
長曾祢虎徹「アホか」
しんみりしてるのに酷い事言う奴だな
180 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:17:36.05 ID:FUR98O3A0
( T)「待たせたな。行こ……それは?」
長曾祢虎徹「気に入ってたんだろ?」
虎徹は担ぎ上げていた矛を俺に差し出す。この菊華刀のお陰で、俺は稜威とやらを発揮でき、虎徹と共に勝利を掴めた
確かに、喉から手が出るほど欲しい代物だ。今の技術でもこれだけの業物を作り出すのは難しいだろう
( T)「せっかくだが、やめておくよ。そりゃ彼の物だ。借りるのはともかく、持って帰るのは忍びない」
長曾祢虎徹「遠慮しなくてもいいんだぜ?勲章の一つや二つなくちゃ恰好がつかねえだろ?」
( T)「貰ったさ」
マスクを脱いで虎徹に投げ渡し、『代わり』を被る
(キT)「何物にも代えがたい勲章をな」
しっかりと『黄色い糸』で縫い留められたマスクを
長曾祢虎徹「っ……そりゃ、冥利に尽きるな」
(キT)「一度きりとはいえ、お前と繋がりを持てた事、誇りに思うぜ。新選組局長、『長曾祢虎徹』」
長曾祢虎徹「……」
虎徹は何かを堪えるかのように俯いたかと思うと、俺の胸倉を掴み、顔をグイと引き寄せた
頬が触れ合いそうなほど近くに寄せられた俺の耳元で、温く湿った吐息と共に呟く
長曾祢虎徹「『次』は、どんな手を使っても絶対に帰さねえからな」
(キT)「……」
自称『乙女』の必殺の一言を
181 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:19:12.17 ID:FUR98O3A0
長曾祢虎徹「……行くぞ!!皆を待たせてんだからな!!」
やや乱暴に突き放し、振り返ってズンズンと先を歩く彼女の耳は赤く染まっていた
最後の最後にやってくれるじゃねえか。この世界に来て一番強烈な一撃だったぜ
(キT)「ハァ〜〜〜〜〜……」
我ながら、とことん女運の無い人生だ。良い女ほど縁が無い
(キT)「アンタが惚れこんだのも納得だぜ、大将」
怨めしそうにこっちを睨む墓石にコツンと拳を当てる
生き残った者の特権だ。甘んじて見逃して貰う他ない。俺はアンタの代わりにはなれなかったが
(キT)「もっと良い主に巡り合えるよう、導いてやってくれや」
願いを託すくらい、許してくれよ
長曾祢虎徹「旦那ー!!なーにやってんだよ!!」
(キT)「今行くよ!!じゃあな。よろしく頼むぜ」
彼に別れを告げて、小走りで虎徹を追った
この長い長い、怪異の終わりを迎える場所へ向かう為に――――
182 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:20:41.57 ID:FUR98O3A0
加州清光「来た来た。きょくちょー!!提督さゲボア!!!!!」
(キT)「やだ迎え吐血……」
特異型禍要柱は、俺らがやってきた時と同じ位置に鎮座していた。違うところと言えば、禍憑の代わりに世話になった人々がいるくらいだろう
神社には、女将を始めとしためいじ館のメンバー。阿音さんと小烏丸。それと丙子椒林剣も見える。盛大な別れになりそうだ
秋雲「もしかしてお楽しみタイムでした〜?」
長曾祢虎徹「うっせうっせ!!迎えに行っただけだよ!!」
(キT)「セクハラで訴えるぞ」
ニヤケ面で揶揄ってくる秋雲は帰ったらゲロ吐くまで指導しようと思った
@#_、_@
( ノ`)「大将」
(キT)「女将。世話になりました」
@#_、_@
( ノ`)「いんや、賑やかで楽しい日々だったよ。寂しくなるね」
(キT)「そうですね……おや、ウチのクソガキは?」
天龍「ここだ」
小夜左文字「連れてきた……」
一番世話になった奴は、だだ捏ねて拗ねた子供みてーに天龍と小夜に引きずられてやって来た
誰よりも長くこの時代で過ごし、誰よりも早く帰還を望んでいた奴らしからぬ、暗い顔をぶら下げて
(キT)「艤装……ああ、特異型の近くにあるじゃん」
天龍「流石にアレ忘れちゃマズいだろ」
(キT)「無断の持ち出しだけでも極刑レベルの代物だしな……」
バレた所で逆ギレすればいいだけの話だが
183 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:24:01.44 ID:FUR98O3A0
天龍「ほれ、言う事あんだろ?」
時雨「……」
天龍「あのなぁ……」
@#_、_@
( ノ`)「いいさいいさ。時雨」
時雨「……何さ」
@#_、_@
( ノ`)「アンタは口は悪いわ働かないわ、本当に手の掛かるクソガキだったよ」
時雨「……どうも」
@#_、_@
( ノ`)「だけどね……フフ、見てて飽きない子でもあった。短い間だけど、可愛い娘が出来て嬉しかったよ」
時雨「……ッ」
堪えきれなかった時雨は、女将の大きな身体に抱き着いた。女将もまた、優しく抱き返す
時雨「……お、終わり!!放してよババア!!」
@#_、_@
( ノ`)「おや、もう少しこうしておきたいんだがね」
時雨「もう!!」
@#_、_@
( ノ`)「フフフ」
嗚咽出るくらい泣かせる気だ間違いない。涙をこらえる為に視線を逸らすと
(*゚ー゚)「城和泉、ほら」
城和泉正宗「ま、待って、私……」
なんかさっきの時雨と似たような光景が見えた
184 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:25:57.01 ID:FUR98O3A0
小夜左文字「城和泉も……別れが辛いからって……」
天龍「はぁーん……」
長曾祢虎徹「やっぱどっか似てんだよなこいつら」
城和泉正宗「そこ!!聞こえてるわよ!!」
女将は時雨から手を放し、城和泉へ向かって背中を押した
@#_、_@
( ノ`)「ほれ、順番を譲るよ」
城和泉正宗「お母さんまで……もう……」
いよいよといった表情で決意を固めた城和泉は、抱えていた紙袋を時雨に押し付ける
城和泉正宗「これ!!私の地元から送られてきた津軽のリンゴ!!」
時雨「おっとと、あ、ありがと……」
城和泉正宗「く、く、口うるさいのが居なくなってせいせいするでしょうけど、私だって生意気な子が居なくなって気が楽になるし、その……違うの、言いたいのはそんな事じゃなくて……」
時雨「……提督、これ持ってて」
(キT)「おう」
受け取った土産を俺へ手渡すと、時雨は髪飾りを外し
時雨「お節介なキミにプレゼントだよ」
城和泉の髪へと付け替えた
城和泉正宗「時雨……」
時雨「代わりにこれは貰っておくけどね」
時雨「えっ、あー!!私の髪飾り!!」
時雨の頭で、城和泉の『茎を模した髪飾り』が煌めいた。ちゃっかりしてる奴だ
185 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:27:14.72 ID:FUR98O3A0
城和泉正宗「ほんっと最後まで気に食わない子なんだから!!」
時雨「素直にサヨナラも言えない城和泉よりマシだよ」
(*;゚ー゚)「そ、その辺に……」ハラハラ
(キT)「まぁ見とけって」
二人はしばし睨み合い、そして―――
城和泉正宗「ぷっ、あはははは!!」
時雨「んふっ、ふふふ」
朗らかに、笑いあった
城和泉正宗「仕方ないわね。元の世界でも、しっかりやんなさいよ。時雨!!」
時雨「もう二度と錆びつくなんてことないようにね。城和泉」
(キT)「ヴェッ」
(*;゚ー゚)そ「ど、どうしたんです?」
(キT)「先走り嗚咽出た」
(*;゚ー゚)「はぁ……」
歳取るとどうしてこう……さぁ……
186 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:28:48.39 ID:FUR98O3A0
(キT)「さて、お前ともお別れだな」
(*゚ー゚)「はい、あっという間でした」
(キT)「『私の主と勝負しろー』なんて言われた時は呆れちまったよな」
(*;=ー=)「愛刀がご迷惑をお掛けしました」
(キT)「いやいや、お前との五番勝負、楽しかったぜ。結果は……まぁ……グダったけども……」
(*゚ー゚)「いえ、まっするさんには敵いませんよ。貴方には色々な事を教わった。お陰で、巫剣使いとして自信が持てそうです」
(キT)「俺の生き方を丸きり参考にすんじゃねえぞ。ロクデナシになりたくなけりゃあな」
(*゚ー゚)「フフ。強くなれるなら、それも悪くないですね」
(キT)「城和泉に殺されちまうからやめてくれよ」
(*゚ー゚)「冗談です。僕は、僕なりの強さを追求していこうと思います」
(キT)「ああ、そうしろ。沢山吸収して、沢山悩んで、沢山鍛えろ。誰にも負けない『漢』になれ」
(*゚ー゚)「そのつもりです」
一端の面をした若が差し出した手を握り返す
相変わらず、ナリに見合わないごわついた手だ。戦い、挑む者の、頼もしい手だった
(*゚ー゚)「ありがとうございました」
(キT)「ああ、此方こそ」
強くなるだろう。なんたって、俺の弟分だ
成長を間近で見られないのが残念でならない。その楽しみは、女将や虎徹に譲ってやるとしよう
187 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:31:22.98 ID:FUR98O3A0
小夜左文字「終わった……?」
(キT)そ「うおっ、ビックリさせんな」
このヌルっと現れる監視人とも今日でお別れだ
(キT)「お前にも世話になったな。復讐帳に書かれた数だけあんぱん作らされた時は気が狂うかと思ったぜ」
小夜左文字「優しい復讐にしてやったのだから、感謝してほしいものね……」
(キT)「結構キツkわっぷ!?」
文句は、顔に投げつけられた緋色のマフラーによって遮られる
小夜が肌身離さず着けている代物だ。それこそ、風呂の時ですら外さないらしい。アホだと思った
(キT)「これは?」
小夜左文字「餞別……」
(キT)「おっ、と……嬉しいサプライズじゃ……お前これ……」
よく見ると、マフラーの端がほんのちょっぴり焦げていた
城和泉の暴走を止めた時に掠めたのだろう。小夜の顔を見ると
小夜左文字「どうせ処分するものだから……」
あっけらかんと肩を竦めた。これも彼女なりの復讐ということなのだろうな
(キT)「ハハ。本当に、頼りになる『影』だった。ありがとう」
小夜左文字「ん……」
気恥ずかしそうに目を逸らし、マフラーで鼻先まで隠すその姿に
出会った当初、俺に刀を突きつけた冷たい復讐者の影は感じられなかった
188 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:33:49.69 ID:FUR98O3A0
丙子椒林剣「これは私たちからの餞別です〜」
うわっそうだいたんだ。結構でかい風呂敷を渡される
小烏丸「生憎、見送りには来れんかったみやこ屋の連中の物も入っておるが……その……取り扱いには注意するのじゃぞ?」
(キT)「待って怖い怖い怖い何入ってんの?」
∬´_ゝ`)「牛王ちゃんの薬とか」
(キT)「持って帰りたくねぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」
一年後、この薬が騒動を起こすことを俺はまだ知らない ※『鎮守府微震!!ショタと化した提督!!パワフル全開ですよみさえさーーーーーーん!!!!』参照
丙子椒林剣「それと、仕立て直した服も入っておりますので〜」
このババアわざわざ俺サイズのメイド服直したのかよふざけんなよどんだけ辱められたと思ってんだ
(キT)「そうかいありがとうよ恐らく今後ぜってー着ねえが思い出として取っておいてやるよ『服』司令が」
丙子椒林剣「短い間でしたが、滑稽で可愛い着せ替え人形として楽しめました〜」
(キT)「てめぇ……」
小烏丸「やめぬか椒林……元気での。其方も大変であろうが、勝利と健闘を祈っておるぞ」
∬´_ゝ`)「またね……は、可笑しいか。お互い隊を率いる者同士、頑張りましょうね」
(キT)「おう、そっちもな。ありがとよ」
189 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:37:20.57 ID:FUR98O3A0
八宵「はいはーい!!次は私たちから!!」
七香「めいじ館の名物です!!皆さんで召し上がってくださいね!!」
(キT)そ「ありが……重っめ!!!!!!?????」
茶房の名物ってこんな金属音したっけか?それより俺にバンバン物渡すのやめてくれ
天龍「ほれ、寄越せ」
(キ;T)「悪ぃな……八宵、お前何入れた?」
八宵「試作機かな☆」
(キT)「やっぱりウナギの樽にぶち込んどけばよかった」
八宵「やめてよね!!本当に持ってこられた時は貞操の危機感じたくらいなんだから!!」
(キT)「冗談だよ。ウチの変態発明家が喜ぶだろうぜ」
七香「妹が大変ご迷惑をお掛けしました……」
(キT)「いいさ、慣れてるよ。キミが淹れた茶は美味かった。気苦労が多いだろうが、身体だけは壊すなよ」
七香「はい!!」
八宵「なんでこっち見ながら言うかなあ?」
前科と余罪がたっぷりあるからだろうが
190 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:39:03.49 ID:FUR98O3A0
抜丸「て、提督さん……」
(キT)「おうおうどうした抜丸。お腹痛いのか?」
抜丸を始めとしためいじ館の巫剣達も続々と別れの挨拶に訪れる
抜丸「わ、わたくし、皆さんのお役に立てずじまいでお別れだなんて……」
不動行光「今朝からずっとこの調子なんですよ。慰めてやってください」
(キT)「あー……確かに事あるごとに窓やら壁やらぶち抜いてたのはびっくりしたが、救われた場面だって多い。抜け目ない活躍だったと俺は思うぜ?」
抜丸「ほ、本当ですか……?」
(キT)「ああ、自信を持て。これからも、抜きん出た活躍をしてやれよ」
抜丸「っ……はい!!抜丸、これからも抜かりのなく皆さんのお役に立ち続けます!!」
(キT)「いやでもちょっと肩の力は抜いた方がいい」
抜丸「ええ!?最後はダメ出しですか!?」
不動行光「確かにそれはあるかもですねー」
抜丸「ゆきさんまで!?」
(キT)「ゆきは目分量できんつば作るのやめろ。お前の手作りは食うたびになんか若干気が狂う」
不動行光「酷くないですか!?」
(キT)「冗談だよ。和菓子屋の婆ちゃんとこれからも仲良くな」
不動行光「むー……ちょっと釈然としないですけど、良しとしましょうか」
191 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:41:42.54 ID:FUR98O3A0
紅葉狩兼光「てーとく!!」ドバシドコァ!!!!!!!!!!
(キ;T)そ「背中痛って!!!!!!?????」オブリシアァン!!!!!!!!
常人なら背骨がばき折れるレベルで紅葉に背中を叩かれる
彼女らしい元気と気合の入った激励だが、評判はすこぶる悪い
紅葉狩兼光「元気でね!!僕らのこと、忘れないでよ!!」
(キ;T)「あ、ああ……背中が痛むたびに思い返すよ……」
蛍丸国俊「蛍のことも……忘れ、わす……」
夜行性の蛍ちゃんは眠気を必死に噛み殺しているが、若干負けていた
(キ;T)「風邪引くからそこらで寝るなよ……」
蛍丸国俊「善処……してみます……」
(キ;T)「ダメそう」
192 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:43:25.91 ID:FUR98O3A0
津田越前守助廣「おっちゃーん!!」
ソボロ助廣「特異型の欠片は持ちましたか?」
大阪生まれの巫剣親子も忘れちゃいけねえな
(キT)「ああ、それならここ……こ……」
秋雲「これ?」
(キT)「ああ良かった持って……いやなんでスるんだお前」
秋雲「最悪秋雲さんだけは帰れたらいいかなーって思って」
(キT)「どつき回すぞ」
ソボロ「フフ、大丈夫でしょう。ちゃーんと帰れますよ」
(キT)「ほんとかなぁ……」
津田「秋雲のねーちゃん、絵ぇ教えてくれてありがとうな!!漫画?っての、頑張って描いてみるわ!!」
秋雲「おおう、優秀な生徒が出来て嬉しいわぁ……」
津田「所で、びぃえる?っての、ホンマになんなん?マッパの男同士で相撲取り合うの、未来ではそう呼ぶん?」
ソボロ先生が固まった。俺は秋雲の頭をどついた
(キT)「つーちゃん。もうちょっと大きくなったら、かーちゃんに教えてもらいな?」
ソボロ「お、押しつけるのやめてぇや!!ウチかてそんなこと教えられへんわ!!」
秋雲「痛……う、狼狽えると関西弁になる美女ママ……有りよりはべりいまそかり……」
もう一発殴っといた
193 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:45:03.74 ID:FUR98O3A0
(キT)「ハァ……後は」
夕立「うえええ……ええええ……」
菊一文字則宗「夕立さん、ほら、提督さん来ましたよ」
菊さんに抱きついて離れない夕立を、かしゅーやいずみーが慰めている
一番仲の良かった二人だ。別れも相応に辛いのだろう。嗚咽漏れるかと思った
(キT)「最後まで世話を焼かせちまったな」
菊一文字則宗「とんでもない。僕の方こそ、彼方でお世話になったんですから」
夕立「菊ちゃん、菊ちゃあん……」
菊一文字則宗「っ……ごめんなさい、もう少しだけ、いいですか?」
(キT)「気が済むまで」
かっこつけているが、実は泣き叫ぶ一歩手前まで来ている
ダメよ、アタイ男の子。強い男は泣かない泣かない泣かない泣かない……
和泉守兼定「提督」
(キT)「ヴェッ、あっ、はい」
和泉守兼定「なんだその情けのない声は?」
加州清光「と、吐血ですか?」
(キT)「いや、ただの先走り嗚咽だ。普通の人は頻繁に血を吐かない」
差し伸べられた手。それぞれと握手を交わす
名高き新選組と肩を並べられただけでも、この旅には価値があった
194 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:46:33.84 ID:FUR98O3A0
和泉守兼定「色々あったが、こうして無事に別れを迎えられて嬉しく思う」
加州清光「菊一さんがほんっとーに、お世話になりました」
(キT)「此方こそ。良い思い出になった」
加州清光「これは、私達からの選別です」
そう言って手渡された織物。その柄には、見覚えがあった
浅葱色のだんだら模様。広げてみると、大きく『誠』の文字が縫い込まれている
新選組の象徴とも言える。旗だった
(キT)「こんな……いいのか?」
和泉守兼定「何を今更。貴様達にはその文字を背負う資格がある」
加州清光「何処にいようと、皆さんは私たちと同じ新選組の隊士ですよ!!」
(キT)「っ……」
腹から目元まで込み上げてきた熱いものをなんとか押し留める
これだけ誇らしい物を戴いたのに、情けない姿は見せられない
(キT)「これからも、副長として虎徹を支えてやってくれ。いずみー」
和泉守兼定「言われるまでもない」
(キT)「お前ちゃんと薬飲めよ。かしゅー」
加州清光「ぐ……が、頑張ってみます……いえ、病気とかじゃないんですけど……」
さて、名残惜しいが、そろそろお暇といかなければ
195 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:49:12.88 ID:FUR98O3A0
(キT)「夕立」
夕立「うぇっ、グスッ……」
(キT)「菊さんに、渡したい物があるんだろ?」
夕立「う、ん……」
菊さんからゆっくりと離れた夕立は、腰の熊さんのお面を取り、菊さんへと差し出す
菊一文字則宗「い、いいんですか?それは、夕立さんの大事な物じゃ……」
夕立「もっ、貰っで欲しいっぽい……」
菊一文字則宗「……断るのは、野暮ですね。では、僕からはこれを」
それを受け取った菊さんは、胸元に飾った『菊紋章』のエンブレムを外した
菊一文字則宗「どうぞ。僕らの友情の証です」
夕立「うん、うん……!!」
嗚咽を上げながら受け取ったエンブレムを、夕立は胸に抱きしめる
菊さんは目尻に浮かんだ涙を拭うと、眩しいくらいの笑顔を見せた
菊一文字則宗「あなた方の鎮守府に迷い込んで、あなた達と出逢えて、本当に良かった。刀が折れようとも、絶対に忘れません」
夕立「ゆ、夕立も……だ、だ、大好きな菊ちゃんに会えて、良がった……!!」
菊一文字則宗「フフ、僕も大好きですよ。夕立さん」
夕立は、泣き腫らしながらもブサイクな笑顔を作る
菊一文字則宗「っ……!!」
対照的に菊さんは押し殺してた涙を溢れさせ、もう一度強く夕立を抱きしめた
196 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:50:54.44 ID:FUR98O3A0
菊一文字則宗「ありがとう、夕立さん……さようなら」
夕立「うえっ……あああああああああん!!」
こんな時になんだが、いずみーの言葉が脳裏を過る
『その気があれば貴様の世界へと』。ズルを見逃してもらえる免罪符だ
(キT)「ッ!!」
奥歯を噛み締め、口から出かかった「もし良かったら」なんてクソふざけた言葉を飲み込んだ
二人は別れとちゃんと向き合った。俺が今更個人的な感傷で踏みにじってどうすんだ
菊一文字則宗「……ごめんなさい。思わず、引き止めてしまった」
(キT)「いや……いいさ。菊さん」
菊一文字則宗「はい?」
(キT)「短い間とはいえ、神速の剣士を我が艦隊に迎え入れられた事、本当に嬉しく思う」
菊一文字則宗「……フフ、僕のようなひ弱な巫剣じゃ、艦娘の皆様には劣るでしょうけどね」
(キT)「そんな事ないさ……元気でな」
菊一文字則宗「提督さんも。あまり叢雲さん達を困らせないようにしてくださいね?」
(キT)「ハハ、耳が痛ぇよ……夕立、行こうか」
夕立「うん……バイバイ、菊ちゃん」
菊一文字則宗「……バイバイ、夕立さん」
小さく手を振り返す菊さんに背を向けて、俺たちは特異型禍要の柱へと歩き出した
いよいよ、別れの時だ。沢山の土産と、思い出を持って、我が家へと帰る
197 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:55:59.56 ID:FUR98O3A0
(キT)「……」
長曾祢虎徹「……」
最後に、虎徹と目が合った。長々と別れの言葉を交わすのは、野暮ってものだ
花束の代わりは既に渡した。あいつの想いは、『俺の顔』に縫い込んで貰った
(キT)「じゃあな」
長曾祢虎徹「おう」
これで、充分だろう
198 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:57:04.84 ID:FUR98O3A0
(キT)「さて……」
それぞれ荷物を抱え、時雨は艤装を背負った
俺たちを送り出す柱は、深い海のような青色を放つ
欠片を持ち、これに触れるだけで元の世界へ戻れるのだ
天龍「忘れもん、ねえな?」
(キT)「……」
ここで「やだ!!忘れ物あるじゃん!!」なんて間抜けな真似はできないが
一つだけ、やり残している事があった。礼は尽くさねばならない
(キT)「地獄の血みどろマッスル鎮守府!!」
寂しさと悲しさを、雄叫びでかき消し
(キT)「御華見衆へ、敬礼ッ!!」
振り返り、海軍式の敬礼を向けた
最大級の感謝と敬意を込めた、俺ら流の別れの挨拶だ
199 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/15(金) 23:59:10.85 ID:FUR98O3A0
(キT)「……」
時雨「……」
一分にも満たない時間で、今の光景を目に焼き付ける
剛毅だが、大きな身体に見合った優しさをくれた女将
女と見間違えるような美少年だが、男としての強さを見せつけた若
時雨とぶつかり合いながらも、共に認め合う親友となってくれた城和泉
ここぞという時に、助け舟を出してくれた阿音さんと小烏丸
危険を承知で俺を試し、戦場へと送り出してくれた丙子椒林剣
賑やかで楽しい日々を彩ってくれためいじ館所属の巫剣達や、彼女達の戦いを支える二人の姉妹
天龍「……」
秋雲「……」
吐血をしては毎度俺たちを驚かせ、図らずも笑顔にさせてくれた加州
時に叱られ、時に失望をさせてしまったが、最後には認めてくれた和泉守
音もなく付き従い、要所要所で救いの手を差し伸べてくれた小夜左文字
夕立「……グスッ」
最大の事件と、最高の出逢いをもたらしてくれた菊さん
(キT)「……」
俺の心を存分にかき乱し、生涯忘れられぬ女になった虎徹
得体も素性も知れない俺たちを、暖かく迎え入れてくれた人々だった
200 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/16(土) 00:01:07.91 ID:ojCbDoXJ0
(キT)「……」
夢のような日々だった。だが、目を覚ます時は必ず訪れるものだ
俺たちは、俺たちの世界での戦いが待っている。そろそろ叢雲や青葉も痺れを切らしている頃だろう
(キT)「帰るぞッ!!てめえら!!」
一息に想いを断ち切り、禍要柱へと向き直る
時雨「やっと、だね」
夕立「グスッ、うん……」
秋雲「ついて来た甲斐があったわ〜。帰ったら、一筆描いちゃいましょうかね」
天龍「土産話も山ほどあるしな。特に、女連中が喜びそうな恋バナが」
(キT)「お前一言でも余計なこと抜かしたらマットに沈めるからな……いくぞ、せーのぉッ!!」
一斉に、禍要柱に手を触れる
触れた箇所から光が溢れ、俺たちを包み込んだ―――――
こうして、1899年の時間旅行は終わりを迎えたのだった
.
201 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/03/16(土) 00:02:05.91 ID:ojCbDoXJ0
次回、『艦天って略すとカロリー低い食材みたい』
『Last one week & Epilogue』
.
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