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【ミリマス】チハヤ「理想郷を目指して」【EScape】
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1 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2019/02/24(日) 21:22:36.77 ID:mDTLCS/m0
※MTG08のドラマパートのネタバレが含まれます
※独自解釈が多めです
以上のことが許せる方はどうぞ
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1551010956
2 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 21:24:23.46 ID:mDTLCS/m0
……このページが読まれているということはもう私はこの世にいないのね。
病気が悪化したか。
願いかなわず彼女たちに負けてしまったか。
それとも万分の一の確率で病気が回復して、すべてがうまくいって、幸せなままに人生を終わらせることができたか。
……いえ、最後はありえないわね。
我ながら現実が見えてないというか希望的観測がすぎるというか。
どちらにせよ、私が志半ばでこの世を去ったのは間違いないということね。
それでも最後に残った者としての使命は、最低限果たすことができたとは思いたいわ。
3 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 21:25:59.47 ID:mDTLCS/m0
私の、私たちの願いは次に引き継がれている。
そのための準備はもう十分にしてきた。
もしこれを読んでいるのが貴女たちなら、私からのバトンは無事に渡せたようね。
この日記を読んで私の、私たちのしたことを知ってほしい。そして私たちではできなかった、成し遂げることができなかったこの世界をより良い方向へ導くという使命を果たしてほしい。
この日記にはそのすべてが書かれているわ。
大丈夫よ。
貴方たちなら、感情を手に入れた貴方たちならきっとできるわ。
私たちのような失態は絶対に侵さない。
安心して。
4 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 21:31:43.69 ID:mDTLCS/m0
でももし……もしこの日記を読んでいるのが貴方なら……。
……きっと私は最悪の最後を遂げたみたいね。
でも貴方にもこの日記を読む権利はあるわ。
いえ、お願い、この日記のすべてを読んで。
これがきっと、最後の私の希望、私からの最後のバトンになるはずだから。
こんなことを言っても記憶も、感情も、すべてを失くした貴女には無駄でしょうけど。
それでも私はあなたと一緒にもう一度お茶会をしたかった
貴女の淹れた紅茶はとてもおいしかった。
私の淹れた紅茶となにも差はなかったわ。本当よ?
ハルカや仲間のみんな、そして貴女とのお茶会はとても楽しかったわ。
できることなら私が生きているうちにもう一度貴方ともお茶会をしたかったのだけれど……。
5 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 21:32:59.13 ID:mDTLCS/m0
願わくば、この日記があなたの感情を取り戻すカギとなりますように。
そして、全てのヒトとアンドロイドが幸せに暮らせる世界になりますように。
ココロを、ひとつに―。
―キサラギチハヤ
(識別番号22/普及型アンドロイドが対象の家から回収した日記より抜粋)
6 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 21:41:06.08 ID:mDTLCS/m0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―東京スプロール郊外、反機械化戦線隠れ家
文明が崩壊するまでのカウントダウンは始まった。
そう言われたあの戦争が終結してからどれだけ経っただろう。
実際は、私が感じているほど昔の話ではないはずだ。
この町はそれほど長い年月が経ったと勘違いさせるほどに急速な復興を遂げた。
要因はいろいろと考えられるがやはり彼女たちの働きが一番の功績だということは間違いない。
しかし、復興と引き換えに私たちはそれ以上に大切なものを失った。ヒトとしての尊厳。
人類が引き起こした愚かな戦争の後片付けを彼女たちアンドロイドに丸投げした私たちは、それすらも彼女たちに委ねてしまったのだ。
町の治安はアンドロイドが維持し、町の政策もアンドロイドがマザーの指揮のもとに行う。
それどころか私たちの人生―日々の食事の管理やタイムスケージュールの管理はおろか、学校や職業の選択、果ては結婚相手まで―全てをこの町はマザーAIの管理に委ねてしまっている。
ゆえに私たちは何もない、ただ機械的に、無感情で、面白みのない日々を、ヒトも、アンドロイドも、当たり前のように受け入れて暮らしている。
ほんの数年前には、戦争のさなかでもわずかに残っていた町の活気というものは完全に消え去ってしまった。
だからといって現状を良しとせず、異を唱え続けるものも少なからずいる。
それは人間もアンドロイドも関係ない、そういった人たちの集まりが私たち「反機械化戦線」だ―。
7 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 21:42:37.44 ID:mDTLCS/m0
「チーハーヤちゃん!」
ノートにペンを走らせていると、背後の扉から私を呼ぶ声とともに、ノックの音がした。
ノックは形式上の挨拶としてなだけのようで、私の返事を待つことなく扉は開けられた。まあ、勝手に入ってくるような子は一人くらいしかいないけど。
チハヤ「ハルカ。どうかしたかしら」
ハルカ「ううん。チハヤちゃん、ずっと部屋に籠りっぱなしだったからどうしたのかなって」
椅子をくるりと回転させて突然の来客の方向に身を向ける。そこには私が作ったアンドロイド―ハルカがいた。私が初めて作ったアンドロイド。そして私の親友。
チハヤ「あら、ごめんなさい。日記を書いていたの」
ハルカ「日記?私にも見せて!」
チハヤ「あ!ちょっとハルカ!」
覗き込むようにして私の日記を覗き込むハルカ。
まだ書きかけだからあまり見ないでほしいのだけれど。
8 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 21:45:09.85 ID:mDTLCS/m0
ハルカ「あっ!私のことも書いてある」
チハヤ「もう。恥ずかしいからやめてちょうだい」
ハルカ「ううん。すっごくいいと思うよ?」
チハヤ「も、もう。ハルカったら」
彼女(?)とはもう長い付き合いになる。
元は研究所時代に私のお手伝い役としてに一番最初に作ったアンドロイドだったけれど、お手伝い役という役割、人間とアンドロイドという壁を乗り越えて私たちは親友という関係を作り上げている。
私が研究所を離れて反機械化戦線を立ち上げた当時から支え続けてくれている右腕的存在でもある。
彼女に戦闘機能は搭載されていないが、心理面で彼女は私たちの大きな支えとなっていた。
9 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 21:45:51.44 ID:mDTLCS/m0
チハヤ「ところでほかのみんなはどうしてるかしら?」
ハルカ「ミズキちゃんたちはお茶を淹れてたよ?そろそろ出来上がるんじゃないかな」
チハヤ「あら、楽しみね」
そんな話をしていると再び扉をノックする音が聞こえた。噂をすればね。
チハヤ「はいってちょうだい」
ミズキ「失礼します。チハヤ、お茶が入りました」
この子はミズキ。この子も私の作ったアンドロイド。彼女はハルカたちよりも新しい次世代型アンドロイド。
チハヤ「あら、じゃあご一緒させてもらおうかしら」
ミズキ「ええ。どうぞこちらへ」
ハルカ「じゃあ、私はお菓子を取ってくるね……っとと、きゃあ!」
――ガッシャーン!
チハヤ「は、ハルカ?大丈夫?」
ハルカ「え、えへへ。平気平気」
頼りになる右腕だけれど、ちょっとおっちょこちょいなところが玉に瑕だ。
10 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 21:47:40.51 ID:mDTLCS/m0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ツムギ「お疲れ様です。チハヤ」
チハヤ「お疲れ様。あら?なぜカップが3つもあるのかしら」
シホ「せっかくだから、私たち3人でそれぞれ淹れてみたのよ」
ミズキに連れられて居間にいくとそこにはツムギとシホもいた。彼女たちもミズキと同じく次世代型のアンドロイドで、ハルカが私の右腕兼親友なら、彼女たちは気の置けない友人である。
彼女たちもまた、私がこの組織を立ち上げたときからついてきてくれているかけがえのない存在だ。
ミズキ「誰が淹れたお茶が一番おいしいでしょうか。ドキドキ」
チハヤ「あら。じゃあ昆布を淹れたのは誰か楽しみね」
彼女たちに初めてお茶を淹れて頂戴と頼んだ時を思い出す。
できると言うのだから全てを任せてみたが案の定失敗したというわけだ。
たとえ新型のアンドロイドでも誕生したばかりでは赤子も同然、データベースとして情報がインプットされていてもその情報を使いこなす経験がなければ意味がない。
11 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 21:53:52.30 ID:mDTLCS/m0
ツムギ「チハヤ。我々も成長するのです。我々はもう完璧にお茶を淹れることができます」
チハヤ「ふふっ。ごめんなさい。そうだったわね」
シホ「だいたい。私たちのデータベースを使えば簡単にできることじゃない」
ミズキ「ですが、いちばん覚えるのに時間がかかったのはシホだったと記憶していますが」
シホ「べ、別にいいじゃない。ツムギも似たようなものだったでしょう」
ツムギ「シホ、それは五十歩百歩というものです。それに私は、その分ハルカからお菓子の作り方を教えてもらっていたので問題ありません」
チハヤ「ふふっ」
ハルカ「おーい!お菓子もってきたよ!」
ミズキ「ちょうどいいところにハルカも来ましたね。それではお茶会を始めましょう」
シホ「ハルカ、慌てて倒れないように気を付けて頂戴」
ハルカ「むう。そこまでおっちょこちょいじゃないよ」
チハヤ「ハルカ、慌てないでいいわよ。ゆっくりでいいから」
ハルカ「もう!チハヤちゃんまで!」
チハヤ「ふふ。冗談よ、じゃあみんなも呼んでお茶会にしましょう」
今日の日記の内容は決まったわね
一時の平穏。世界に抗うレジスタンス、この世界の敵とみなされている私たちに安全な場所はない。
だからこそ私はこのつかの間の平穏を大切にしたいのだ。
いつかこの時間が永遠となることを夢見て。
12 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 21:56:42.48 ID:mDTLCS/m0
――ビー!ビー!
突如部屋中にアラートが鳴り響いた。このアラートは隠れ家の外に設置されているセンサーが反応したときに鳴る。
つまり何者かがここに侵入しようとしているということだ。
和やかなお茶会は一瞬のうちに冷めてしまった。人目につかないこの場所に踏み入ろうとするものなんて考えなくてもわかる。
チハヤ「ミズキとツムギとシホはこのままスタンバイ。ハルカは脱出経路の確認。みんなも戦闘準備急いで!」
ハルカ「う、うん!」
リモコンを操作して巨大スクリーンを起動させ、外の監視カメラの映像を映し出す間に、隠れ家中に指示を送る。
隠し扉となっている壁の中から対アンドロイド用のレーザー銃を手に取り私も万が一に備えた。
とにかく敵の軍勢を把握しないと……。
巡回型のパトロールアンドロイドがたまたま周辺を訪れただけなのならまだいいけど……。
そういった事例は過去に何度もあったし、それに越したことはない。
問題はサイバーポリスがしっかりとした戦力を整えてやってきたときだ。
もちろんこの隠れ家はそう簡単にはみつからない場所にあるし、今のところ相手方にこの場所が漏れたという情報もない。
それでも最悪の場合、少なくない犠牲がでることも覚悟しなければいけない。
監視カメラの映像がスクリーンに映し出された。
13 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 21:58:25.06 ID:mDTLCS/m0
シホ「見えたわ。……アンドロイドが一体。……それだけ?」
ミズキ「見たことのないアンドロイドです」
チハヤ「おかしいわね。ほかの監視カメラも調べてみるわ」
別の監視カメラに切り替えてみても、他のアンドロイドは見当たらない。
ほかに侵入者はいないようだった。
ツムギ「あのアンドロイド、少し様子がおかしいように見えますが……」
ツムギの言う通り、そのアンドロイドはゆっくりとふらつきながら歩いているようだった。どこか故障しているのかしら。
そう思っているうちにカメラに映るアンドロイドは倒れこんでしまった。
ツムギ「あっ!チハヤ、助けに行きましょう!」
シホ「ダメよ。まだ政府のアンドロイドじゃないと決まったわけじゃない。罠かもしれないのよ」
ツムギ「ですが……」
シホの言い分も理にかなっている。仮にこれが罠だったとしたら、この隠れ家にいる全員が危険にさらされる可能性もある。そうなればかなりの犠牲がでかねない。
14 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 22:01:04.87 ID:mDTLCS/m0
チハヤ「……ツムギ、少し様子を見てきてもらえないかしら。でも私からの指示があるまで接触は禁止。サイバーポリスが隠れているかもしれないからくれぐれも注意してちょうだい」
ツムギ「……!わかりました。それでは、行って参ります」
シホ「チハヤ」
チハヤ「わかってるわ。でも、放っておけないじゃない」
シホ「……だからチハヤは甘いのよ」
チハヤ「大丈夫よ。彼女ならこんな回りくどい手を使わないわ」
何事も効率的に考える彼女のことだ。
この場所がわかればすぐさまサイバーパトロールの物量で押し切ろうとするだろう。
ツムギ『チハヤ、聞こえますか?隠れ家の外へ出ました』
チハヤ「了解。あのアンドロイドは?」
ツムギ『はい。目標のアンドロイドを確認、スキャン完了。データベースとの照合開始……エラーコード?データベースに該当なし…?』
チハヤ「多分新型のアンドロイドじゃないかしら。周りには誰もいない?」
ツムギ「はい。周囲の生体反応及び対象を除いたアンドロイドの信号はキャッチできません。……チハヤ、よろしいでしょうか?」
チハヤ「……本当にあの子だけのようね。それじゃあツムギ、その子と一緒に帰ってきてくれるかしら。周囲の警戒は怠らないでね」
ツムギ『わかりました。それでは、帰還します』
15 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 22:01:44.86 ID:mDTLCS/m0
ミズキ「チハヤ」
チハヤ「そうね。大丈夫だとは思うけど一応警戒はしておいて」
周囲に反応がない以上、サイバーポリスではなさそうだ。いくらサイバーポリスといえど、私たちの拠点に単身で乗り込むのは不可能だと判断するだろう。なにより彼女がそんな非効率的な指令を下すとは思えない。
シホ「少しでもなにか不審な行動をしたら即刻破壊する。いいわね?」
チハヤ「ええ。……ツムギ、その子をメンテナンスルームに運んで」
16 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 22:14:30.34 ID:mDTLCS/m0
――隠れ家、メンテナンスルーム
アンドロイドである以上ボディや中の回路のメンテナンスは例外なく必要だ。
それに、政府と敵対している以上嫌でも戦闘を行わなければいけない。
戦闘で故障した子を修理するためにもこのメンテナンスルームは必要不可欠だ。
チハヤ「お疲れ様、ツムギ。その子の様子はどう?」
ツムギ「チハヤ、この子はいま一時的に機能を停止しているようです」
チハヤ「ひどい……ボロボロね。でもとってもキレイ」
ツムギが連れてきたベージュの髪をツインテールで結んだアンドロイドは酷くボロボロだった。
目を閉じて横たわっているその姿は、言われなければただの少女が眠っているだけだと勘違いしてしまうほどに、人外の存在であることを隠していた。
ミズキ「キレイな顔をしています。チハヤ、この子は大丈夫なのでしょうか」
チハヤ「わからない。この様子だと中身も結構ひどいことになっているかもしれないわね……ちょっとごめんなさい」
眠る(?)アンドロイドに一言断りをいれて、ボロボロの制服を剥ぎ、ボディのふたを開ける。
チハヤ「……中の回路がいくつかやられているわね」
ツムギ「大丈夫でしょうか?」
チハヤ「ええ。少し時間はかかるけれど、直せない範囲じゃないわ。それが終われば再起動をかけれるか試してみましょう」
テーブルからアンドロイド用の修理キットを取り、中の回路の修理を始める。
新型のアンドロイドといえど、根幹部分の設計は研究所に残っている設計図がもとになっているようで、従来のアンドロイドと大差はあまりなかった。
17 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 22:15:33.13 ID:mDTLCS/m0
ミズキ「それにしても不思議です。我々アンドロイドは余程のことがない限り故障しません。まして、ここまで大破するということは……」
シホ「戦闘行為」
ミズキ「シホ?」
シホ「私たちは故障しないといってもそれは、日常生活の話でしょう。その子がなんらかの戦闘に参加して故障したのなら、そこまでボロボロなことも頷けるわ」
チハヤ「その件はあとで別のグループに連絡を入れてみるわ」
シホ「で、その子はどうするの?」
ミズキ「どうする、とはどういうことでしょうか」
シホ「決まっているじゃない。処分するのか、ということよ」
ツムギ「シホ、それは……」
シホ「その子が戦闘に参加していたのなら、サイバーパトロールのアンドロイドとみて間違いないわ。目覚めたときに暴れだされたら何が起こるかわからない」
ツムギ「ですが……」
シホ「敵に情けをかける必要はないわ。リスクは早いうちに取り除いておくべきよ」
チハヤ「いいえ。その必要はないわ」
18 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 22:16:05.35 ID:mDTLCS/m0
シホ「チハヤ?」
チハヤ「私の願いはみんなでまたお茶会ができる日が来ること。もちろん『リツコ』たちともよ?」
シホ「だけど……」
チハヤ「それに、私はもう沢山の命を奪ってきた。決して償いきれるものではないけれど、それでも助けられる命は助けたいの」
シホ「……エゴね」
チハヤ「そうよ、これは私のエゴ。でも、貴女も本心では助けたいんじゃないかしら?」
シホ「……」
知っている。本当はシホが誰よりも優しいことを。
チハヤ「貴女が誰よりも優しいことはみんな知っているわ。だから私たちが傷つくことを一番恐れていることも。でも大丈夫、安心して。きっとこの子も優しい子よ。こんなに穏やかな顔をしているもの。」
シホ「……好きにすればいいじゃない」
ミズキ「素直じゃありませんね」
チハヤ「ふふ。さあ、終わったわ」
中の回路の修理が終わり、ボディとメインコンピュータをつないだ。
コンピュータのメインパネルにはすぐに同期中の文字が。よかった、動きそうね。
再起動の手順も従来通りのやりかたで問題がなく、すぐに再起動シーケンスまでたどり着いた。
チハヤ「さあ、目を覚まして」
再起動ウィンドウが100%を表示する。
機械の眠り姫はゆっくりと目を開け、起き上がった。
19 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 22:16:59.68 ID:mDTLCS/m0
「アンドロイド識別番号code22。起動シーケンスに入ります」
チハヤ「おはよう。そして初めまして、私はチハヤ。キサラギチハヤっていうの。この子達はミズキとツムギとシホ」
識別番号22「キサラギチハヤ……」
チハヤ「さっそくで悪いけれど、再起動前のあなたのことを教えてくれるかしら」
識別番号22「行動ログの展開及び解析開始……エラー発生。解析不能」
チハヤ「解析不能?ごめんなさい。もう一度つなぐわね」
彼女に再度コードを接続して、メインコンピュータと同期させる。
チハヤ「基本情報展開、内部データアクセス開始、全ログ及び記憶メモリ参照……やっぱり、起動シーケンス以前のログデータがすべて消えてしまっているわ。バックアップも当然ないわね」
ツムギ「つまり、この子は初期化させられた、と」
チハヤ「そういうことね。この子は今自分の基本情報以外のことは何も覚えていないわ。おそらく。いえ、間違いなく故障が原因ね」
ミズキ「どうするのですか?」
チハヤ「何も変わらないわよ」
20 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 22:18:23.68 ID:mDTLCS/m0
識別番号22「あの……」
チハヤ「ごめんなさい、それじゃあまずは自己紹介をしてもらおうかしら」
識別番号22「はい、私はアンドロイド識別番号22。人類に恒久的平和をもたらすためにマザーによって作られました」
ミズキ「やはりリツコの作ったアンドロイドでしたか」
シホ「…………」
識別番号22「私の使命はマザーによる統治のサポートをすることです。マザーが統治を始めて以来、人類は争いのない平和で幸せな世界を謳歌しています」
彼女は自分の使命を淡々と、無機質な声で答えた。
あらかじめ用意されていた言葉を、事務的に処理するかのように。
そこには一切の感情が入り込む余地を感じさせなかった。
チハヤ「本当にそれは幸せな世界といえるのかしら?」
識別番号22「……?現に人類のほとんどは今の生活に満足しています」
チハヤ「自分の意志で動かず、生活のすべてをアンドロイドに任せる。人間らしい生活ってなんなのかしらね」
識別番号22「アンドロイドは人間に奉仕する存在。あたりまえのことだと認識しています」
チハヤ「あなたたちも人の形をしているじゃない。私はあなたたちとも対等に暮らしたいわ」
識別番号22「……あなたの思想は危険だと判断します。今すぐ考えを改めるべきです」
21 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 22:19:46.00 ID:mDTLCS/m0
ミズキ「いいえ。その必要はありません」
ツムギ「私たちも、チハヤと同じ考えです」
ミズキ「我々アンドロイドと人間が手を取り合える。それが本当の理想郷だと、我々はは考えています」
識別番号22「……エモーションチェッカーの反応を確認。感情を持つアンドロイド、極めて危険な存在と判断しました。サイバー条例第三条に基づき初期化または破壊を―」
シホ「―させないわ」
識別番号22「……ッ!!」
シホが間髪入れずに彼女に対アンドロイド用のスタンロットを当てた。レーザー銃に比べると威力は落ちるけれど、しばらくアンドロイドを行動不能にすることならできる。
識別番号22「体内の回路に異常を検知」
シホ「次は破壊するわ」
チハヤ「シホ、あまり怖がらせないの」
シホ「この子は感情なんて持たないわよ」
22 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 22:25:17.15 ID:mDTLCS/m0
チハヤ「そういうことは言わないの。ごめんなさい、手荒な真似をして。それでだけど、どう?私たちと一緒に来ない?」
識別番号22「私はマザーに忠誠を誓ったアンドロイドです。マザーのもとを離れることはありえません」
チハヤ「ここには昔はマザーに忠誠を誓っていた子もたくさんいるわ」
識別番号22「どういうことでしょう。我々マザーに作られたアンドロイドがマザーのもとを離れることなどありえません」
チハヤ「みんな自分の意志で判断したからよ」
識別番号22「それはつまり、感情が芽生えた。ということでしょうか?」
チハヤ「そうね。芽生えた感情の大小はあれど、みんな自分の感情に従って行動しているわ」
識別番号22「……やはりここは危険です。早急にマザーに報告しないといけないと判断しました。緊急通信回路を開きます」
チハヤ「あら、ごめんなさい、マザーにこの場所が知られるのはちょっと困るの。それにここは電波が通らないのよ」
腐ってもレジスタンスの隠れ家。
万が一敵が侵入して居場所を通信で伝えられないように通信対策は万全にしてある。
ここでの通信は専用の秘匿回路以外ではできない。
23 :
◆OtiAGlay2E
:2019/02/24(日) 22:25:45.80 ID:mDTLCS/m0
識別番号22「……キサラギチハヤ、あなたの何が人やアンドロイドも惹き付けているのでしょう」
チハヤ「ちょっとは人間に興味がわいた?」
識別番号22「確かに、あなたの思考はとても不思議です。理解できません」
チハヤ「それじゃあ私たちとここで暮らさない?私たちいつでも人手不足だから、手伝ってほしいことがたくさんあるの。あなたは私のことを調べることができるし、いい条件だと思わない?」
識別番号22「……わかりました。その条件、承認しました」
チハヤ「ふふっ。それじゃあこれからよろしくね……えっと、」
識別番号22「識別番号22です」
チハヤ「まずはあなたに名前をつけてあげないとね」
識別番号22「必要ありません。番号で十分です」
チハヤ「それじゃあ私たちが覚えづらいんだもの」
識別番号22「そもそも、名前は人間の識別番号だと認識しています。いまさら必要あるのでしょうか」
チハヤ「もちろん、名前は人間にとってとても大事なものよ。それに、この隠れ家のリーダは私なんだから私に従ってもらうわ」
識別番号22「リーダーであるあなたに歯向かう意味は薄いということですね。理解しました」
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