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だいたいなんでも解決してくれる杏ちゃん小品集
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1 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 18:59:42.14 ID:p8Id/7Jt0
モバマスSSです。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1546509581
2 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:03:32.88 ID:p8Id/7Jt0
〜高垣楓編〜
3 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:04:17.83 ID:p8Id/7Jt0
――事務所内の一室
楓(……少し、時間が空いちゃいましたね)
楓「こんなときは……ふふっ」
楓(窓、カーテン、テーブル、椅子……)キョロキョロ
楓(ドア、ドア……扉、戸……蛍光灯……明かり……)
楓(…………)
楓(…………?)
楓(おかしいですね、こんなはずは……)
楓(落ち着いて、落ち着くのよ楓。ダジャレを言うのは誰じゃ。――よし)
楓「ふぅ……」
楓(…………)
楓(……お、思いつかない!?)
4 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:05:18.80 ID:p8Id/7Jt0
*
――通路
杏「あー疲れた。早く帰ってダラダラしよっと」トコトコ
楓「杏ちゃん!」ドン!バキャア!
杏「うわあ! か、楓……さん?」
楓「私にはなにもない!!」
杏「なんなの!?」
楓「……驚かせてしまってすみません」
杏「いや、それより壁に穴あいてるけど、そんなパワーキャラだっけ?」
楓「壁なんかどうでもいいんです、聞いてください」
杏「う、うん……なに?」
楓「……ダジャレが」
杏「……が?」
楓「ダジャレが思い浮かばないんです!」
杏「予想通りにくだらない」
5 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:06:18.92 ID:p8Id/7Jt0
楓「くだらないとはなんです、私からダジャレを取ったらなにが残るんですか!」
杏「いや、大部分残るでしょ。むしろ楓さんはヘタに喋らない方がいいと思うよ」
楓「私は――人形じゃない……!」
杏「すぐ影響を受ける」
楓「そんなことより、どうしましょう。私は、どうしたら……?」
杏「てか、なんで杏に訊くの? そんなん杏にはどうしようもないよ」
楓「その……世間では、なにかあっても、『どうせいざとなれば無敵の杏ちゃんがなんとかしてくれるだろう』と評判で」
杏「やめてよ! そういう風潮ぜったい嫌だからね!!」
楓「冗談です」
杏「実は絶好調じゃない?」
6 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:07:41.19 ID:p8Id/7Jt0
ちひろ「――あら、楓さんに杏ちゃん」
楓「!」ビクッ
杏「あ、ちひろさん」
ちひろ「……その壁は」
楓「杏ちゃんが壊しました!」
杏「マジかこの人」
7 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:08:36.57 ID:p8Id/7Jt0
楓「すみません、これ杏ちゃんがやったことにしてください」ヒソヒソ
杏「ええ? なんでさ、やだよ……」
楓「私、最近色々とやらかしてて、次やったら禁酒させられるんです」ヒソヒソ
杏「でも杏だって怒られたくないし」
楓「お金ならいくらでも積みます」ヒソヒソ
杏「そういうのやめようよ」
楓「だいじょうぶです、私こう見えてもお金はけっこうあるんです」ヒソヒソ
杏「いや、あるように見えてるよ。楓さんクラスが貧乏だったらこの仕事、夢も希望もないよ」
楓「じゃあ飴を。トラック1台分、トラックごと進呈します」ヒソヒソ
杏「迷惑だって」
8 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:09:36.76 ID:p8Id/7Jt0
ちひろ「なにをコソコソと――」
杏「あー、えっと……」
楓「お願いします」ボソッ
杏「あ、あのさ……杏、ちょっと勢いあまって壁に穴あけちゃって……ごめんね」
ちひろ「杏ちゃんにそんな力あるわけないでしょう。楓さんですね?」
杏「ですよね」
ちひろ「素直に謝れば穏便に済ませてもよかったんですが、ひとに罪をなすりつけるとは、さすがに許せませんね」
楓「そんなの後出しだから言えることですよ。最初から正直に言っても怒られましたよ、ぜったい」
杏「立場をわきまえよう」
9 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:10:33.67 ID:p8Id/7Jt0
楓「ご慈悲を!」
ちひろ「いーえ、今度という今度は――」
杏「……そいえば楓さん、手は平気なの?」
楓「手? あ、ハイ。なんともないです」
杏「そっか」
ちひろ「手が、どうかしたんですか?」
杏「いや、これ楓さんが壁ドンで穴あけたんだけど、楓さんもそんな武闘派じゃないでしょ? だったらもしかして、壁のほうに問題があるんじゃないかなって」
ちひろ「……壁に?」
10 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:11:15.13 ID:p8Id/7Jt0
*
――翌日
杏「白アリかぁ」
楓「はい♪」
杏「で、おとがめなしになったわけね」
楓「私のおかげで早く発見できて被害が少なかったですからね♪」
杏「怪我の功名でしょ。いい歳した大人がはしゃがないの」
楓「そのセリフ、ナナちゃんの前でも言えるんですか?」
杏「菜々ちゃんを巻き込まない」
11 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:11:56.76 ID:p8Id/7Jt0
楓「もちろん杏ちゃんのおかげでもありますから、お礼にトラック1台分の現ナマを進呈します」
杏「そういうのやめてってば」
楓「お金はおっかねー、ですからね♪」
杏「…………」
楓「?」
杏(――あ、自分で気付いてない)
杏「なんか、杏が言うのもなんだけど……楓さんてけっこうダメ人間だよね、意外と」
楓「…………ふふっ」
杏「なんで嬉しそうにしてんのさ」
<高垣楓編、終わり>
12 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:12:28.93 ID:p8Id/7Jt0
〜鷺沢文香編〜
13 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:13:16.94 ID:p8Id/7Jt0
――事務所内の一室
『ガチャ』
文香「……たしか、この部屋のはずですが」キョロキョロ
文香「少し、早すぎましたか」ストン
文香「待たせていただきましょう……」ゴソゴソ
文香「…………」ペラッ
文香「…………」ペラッ
文香「…………」ペラッ
14 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:14:21.41 ID:p8Id/7Jt0
『ガチャ』
杏「あー、疲れた」トコトコ
文香「…………」ペラッ
杏「うーん、軽く寝てから帰ろっかな……」ボフッ
文香「…………」ペラッ
杏「よっと」ゴロン
文香「…………!」ハッ
杏「……zzzzz」スヤァ
文香「杏さん」
杏「うわあ! えっ、文香? いつからいた?」
文香「……1時間ほど前、ですね」
杏「ええ……ぜんぜん気づかなかった……忍者みたい」
あやめ「いま忍者の――」ガラッ
杏「してない」ピシャン!
15 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:15:29.70 ID:p8Id/7Jt0
杏「……『ガラッ』?」
杏「…………」ガチャ
杏「…………」バタン
杏「……まあいっか」
文香「あの……」
杏「あっ、ごめんごめん、声かけられてたんだっけ」
文香「相談したいことがありまして……」
杏「……杏に? なに?」
文香「実は最近、ある小説の評判を聞きまして、興味をそそられ、ぜひとも読んでみたいと思ったのですが……なにぶん古い作品なので、遥か昔に絶版になっており」
杏「ふむふむ?」
文香「叔父の店にもそれは置いておらず、他の古書店もいくつか巡ってみたのですが、やはり見つからずに……」
16 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:16:25.76 ID:p8Id/7Jt0
杏「あのさ、なんでそれを杏に相談しようと思ったの?」
文香「『困ったことがあれば杏さんに言えばなんとかしてくれる』、と」
杏「やめてよ! 誰だそれ言ったの!」
文香「高垣かえ――いえすみません。口止めされてまして」
杏「まるで隠す気ないよね。まあ予想通りだけどさ」
文香「お知恵を、貸してはいただけないでしょうか?」
杏「そう言われても……ブックオフオンラインとかヤフオクにはなかった?」
文香「……?」
杏「あー……スマホはあるよね? 検索するといいよ」
17 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:17:08.61 ID:p8Id/7Jt0
文香「け、検索」プルプル……ポチッ
杏(やっぱり使い慣れてないかー)
文香「…………」プルプル……ポチ
杏「…………」
文香「…………」プルプル……ポチ
杏(遅い!)
文香「あ、ありました! ブックオフに!」
杏「まって! なんで3タップで商品にたどり着いてんの!?」
18 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:17:38.57 ID:p8Id/7Jt0
文香「しかし……在庫はあるようですが、これは」
杏「どうかした?」
文香「……19800円、ですか」
杏「たっか! え、小説でしょ? そんなにするもん?」
文香「希少本であれば、そのようなこともありますが……」
杏「プレミアついてるってことね。さすがに本1冊にその値段は出したくないなー」
文香「…………それでも」プルプル
杏「あ、ストップ。いちおう他のとこも見て――いや、杏が調べるから、ちょっと待ってて」
文香「お手数おかけします……」
杏「タイトルはなんていうの?」
文香「『一億年の孤独』です」
杏「ひどい話だな」
19 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:18:23.10 ID:p8Id/7Jt0
杏(ヤフオクには……ないか。メルカリにもなし。あとは、アマゾンが中古扱ってたかな?)
杏(あ、出品されてる――けど、2万円超えてら。うーん……ん?)
杏「……Kindle版あるじゃん」
文香「きんどる?」
杏「電子書籍だよ。値段、千円ちょっとだ」
文香「……電子」ピクッ
杏「スマホでも読めるから、これなら――」
文香「杏さん!!」
杏「な、なに?」ビクッ
文香「…………」
杏「…………」ドキドキ
20 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:18:55.38 ID:p8Id/7Jt0
文香「……頭が固いと、古臭いと言われるかもしれません。ですが私は、どうしても電子データというものに信頼が置けないのです。もちろんそれが紙の本に印刷されたものであれ、液晶画面に表示されたものであれ、たしかに文字として、情報としての価値は変わらないでしょう。しかし紙は少なくとも触れることができます。自ら手放さないかぎりは、いつまででも所有しておくことができます。しかし、データはどうでしょう? 形なきものは、いったい、いつまで存在し続けてくれるのでしょうか? ずっとずっと、それが永遠にあるものと信じて疑わず、何年にも渡って生活を切り詰めて、自由にできるお金の大半を費やし続けた果てに、突然のサービス終了と――」
杏「まって! 黙って!! 黙れ!!!」
21 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:19:31.92 ID:p8Id/7Jt0
文香「はっ! す、すみません……」
杏「途中から違う話だったよね! その手の話題はデリケートなんだから気を付けて!」
文香「……つまり私は、紙の本が好きなのです」
杏「最初からそれだけ言ってほしかったよ……じゃあ、19800円出す?」
文香「迷うところです。そもそも、その本が面白いかもわからないですから」
杏「まあ2万近く出してハズレは引きたくないよね。――あ、だったら」
文香「なんでしょう?」
杏「いや、試しにKindleで買って読んでみて、それから2万円出してもまだ欲しいって思ったら、本買えばいいんじゃないかなってさ」
22 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:20:37.84 ID:p8Id/7Jt0
*
――翌日
文香「素晴らしい作品でした!」
杏「もう読み終わったんだ、早いね。じゃあ本買うの?」
文香「すでにポチりました。明日には届く予定です」
杏「そっか、余計なお金使わせちゃったね」
文香「……いえ、誤差のようなものですし、むしろ感謝しているぐらいです」
杏「なんで?」
文香「常日頃から滅べばいいのにと思っていた電子書籍に、試し読みという使い方があるとは、目から鱗でしたから」
杏「過激派こわい」
文香「……杏さん」
杏「うん?」
文香「素敵な物語を、ありがとうございました」
杏「えっと……どういたしまして?」
<鷺沢文香編、終わり>
※公式の文香さんは過激派ではありません。
23 :
◆ikbHUwR.fw
[saga]:2019/01/03(木) 19:21:33.59 ID:p8Id/7Jt0
〜岡崎泰葉編〜
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