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【艦これSS】不器用を、あなたに。
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47 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/04(金) 23:54:02.23 ID:ClKm8+sSO
暁「(でも、喋っていかない?なんてあの山城さんから言われたら、期待しちゃうのも仕方ないわよね)」
そうやって内心舞い上がってしまった自身を慰めようとした時だった −
48 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/04(金) 23:55:29.09 ID:ClKm8+sSO
暁「(...やっぱ変だわ!)」
暁「(じゃあ何であの時、最初から「伝言頼んでいいか」って言わなかったのかしら?)」
先程の違和感の正体に気づく。
暁「(そうよ!それにあの程度の伝言を頼むためだけに、わざわざ私がトイレを済ませるまで待っててくれたのも気になるわ。こんな寒いのに...)」
49 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/04(金) 23:58:15.78 ID:ClKm8+sSO
天気予報では、昨日から特に冷え込みが厳しくなったと言っていた。本格的な寒波が到来してるんだそうな。
暁「(...!?)」
続けて暁はさらに大きな矛盾に気づく。
前を黙々と進む幽霊のような格好をした人物は、まさか後ろにいる少女が彼女のことをずっと考えているなど、露も知らないだろう。
50 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/04(金) 23:59:19.40 ID:ClKm8+sSO
しばらくして、暁はようやく納得のいく結論を導く。
暁「(もしかして...!山城さんは...)」
そう考えると、辻褄が合うのである。
暁「(どうしてこんな簡単なことに気づけなかったんだろう...)」
51 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/05(土) 00:00:29.90 ID:WoFj9c7TO
それは“嫌われ者の山城”という先入観が強すぎた故なのかもしれない。
それと同時に山城が現状を甘受しているというのも、この発見を妨げた原因であろう。
暁「(きっとみんなも、こういうところに気づけば...!)」
52 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/05(土) 00:02:19.20 ID:WoFj9c7TO
山城「...着いたわね」
暁「そ、そうね!」
暁が考え事をしている間に、早くも暁型の部屋の前に着いていたようだ。
山城「それじゃあ、おやすみ」
山城はそれだけ言うと、すぐにこちらに背を向け、歩みを再開させた。
それでもその短い言葉にはどこか優しさが篭っているようにさえ、暁には感じられた。
今だから、やっと、心の底からそう思えるのかもしれない。
53 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/05(土) 00:02:57.01 ID:WoFj9c7TO
暁「えぇ、おやすみなさい。......ありがとう、山城さん」
二言目は彼女に届いただろうか。
54 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/05(土) 00:04:24.69 ID:WoFj9c7TO
今回はここまでです
アニメ2期は時雨とか西村艦隊が重要な役で出るんじゃないか、なんて話が出てますね!
楽しみですね!!
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/05(土) 00:07:48.85 ID:9dsXnKEFo
おつおつ
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/05(土) 01:39:11.35 ID:id5IWYE00
そしていっつもハブられる時雨の長女と。もう期待してないから良いけど
57 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/06(日) 23:26:27.19 ID:KI4sEnEvO
昨日は投下できませんでしたが今日はします
別にその分ストックが増えたとかではないのですけども・・・
58 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/06(日) 23:27:33.02 ID:KI4sEnEvO
暁はドアをそっと開け、妹達が寝静まる部屋に入る。
ドアを閉めその場に座り込み、ドアに片方の耳を当てる。
コツ...コツ......コツ............コツ...
しっかりと耳を澄ませば、遠ざかっていく足音が聞こえる。
59 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/06(日) 23:29:04.63 ID:KI4sEnEvO
暁「(前回は私があぁなっちゃったから、負い目を感じたのか、山城さんは無条件でトイレの間付き添ってくれたわ)」
改めて、以前に今夜と同じような状況で山城と会った時のことを思い出す。
暁「(でも今回は私は驚かなかったし、そんな必要はなかった)」
足音はついに聞こえなくなる。
60 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/06(日) 23:30:07.28 ID:KI4sEnEvO
暁「(それでも山城さんは、私が安心できるようにと、一緒に居ようとしてくれた...)」
暁「(その気遣いを隠すために、わざわざ大したことない伝言を頼んだんでしょうね)」
.........コツ......コツ...コツ...コツ...
また足音が聞こえ始め、こちらに近づいてくる。
61 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/06(日) 23:32:18.11 ID:KI4sEnEvO
暁「(帰りだってそうよ。前の時は夏の暑苦しい夜だったから何も不思議に思わなかったけど...)」
コツ、コツ、コツ...
ちょうどその足音は、扉を隔てて暁の真横を通る。
62 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/06(日) 23:32:56.11 ID:KI4sEnEvO
暁「(こんな冬の日にあんな格好で中庭に出るわけないわ。だから、山城さんがこっちに来る理由なんて何も無いのに...)」
...コツ......コツ............コツ...
先程のようにまた足音は遠ざかる。もっとも、今度は真逆の方向にであるが。
63 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/06(日) 23:35:52.26 ID:KI4sEnEvO
暁「(...全ては怖がりの私のために。)」
暁はそっとドアノブをひねり、身一つ分だけドアを静かに開ける。廊下の先を窺えば“幽霊”が戦艦寮へ向かうのが見える。
皆から怖がられ、嫌悪される存在・・・
64 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/06(日) 23:38:36.98 ID:KI4sEnEvO
暁は再びドアをそっと閉め、今度こそ寝床に向かう。
暁「(こんなことをする人が、本心で時雨たちに暴言を吐くはずがないわ...!)」
そう確信をした。
ふと右側の二段ベッドの下段で眠る末の妹を見れば、彼女は穏やかな顔をして眠っている。
65 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/06(日) 23:44:52.69 ID:KI4sEnEvO
暁「(電、あなたがずっと言ってきた事はこういうことだったのね)」
周りからも奇異の目で見られてきた、電の必死な山城擁護。
姉妹艦である暁でさえ、そうまでする必要性は理解出来なかった。
それでも、真実の欠片を拾ってしまった今は、そうせざるにはいられない気分にさえなりそうだ。
明日この事を暁型で共有しよう。鎮守府全体ともなると先は長いのかもしれないが。
そう決心して暁は再び眠りに付くのだった。
66 :
◆eZLHgmSox6/X
:2019/01/06(日) 23:47:04.92 ID:KI4sEnEvO
投下はここまでです
明日の夜にでも続き投下出来たらいいなぁ、なんて。
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/06(日) 23:53:21.38 ID:WssSez8Qo
おつおつー
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/07(月) 00:46:11.52 ID:xEn7kYJJO
これはまごうことなきレディですわ
69 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/08(火) 23:58:46.79 ID:g1x252iwO
そういやsagaを入れることを失念してました
まぁこれ入れたところでどうせ誤字るのであんま意味無い気もしますが・・・
続き投下します
70 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/08(火) 23:59:27.53 ID:g1x252iwO
−−−−−−
−−−−
−−
那珂「はぁ...」
那珂「もぅ〜〜〜!!!なんでみんな那珂ちゃんのファンになってくれないの〜〜〜(泣)」
麗らかな日光に照らされながら、朝礼台の上で嘆く川内型末妹の姿がそこにあった。
那珂「歌だって結構いいと思うんだけどなぁ!那珂ちゃんの可愛さにマッチしてるいい曲だと思うんだけどなぁ!!!」
那珂「神通ちゃんもそう思うよね!?」
朝礼台の傍に置いた音響機材を片している姉妹艦に同意を求める。
71 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/09(水) 00:02:12.50 ID:LspMO4cxO
神通はいつもなんだかんだで 妹の“アイドル活動”に付き添ってくれるのだ。普段は規律に厳しく皆から“鬼教官”なんて呼ばれているが、こういう所に彼女の優しさを感じる。
72 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/09(水) 00:02:57.88 ID:LspMO4cxO
神通「私もいい曲だとは思いますよ」
那珂「だよねっ!!!」
神通「そのせっかくの曲をみんな聞いてくれないのは、那珂ちゃんがアイドルアイドルうるさすぎるからなのでは?」
那珂「」
同意を得て完全に舞い上がっていた那珂は、強烈なカウンターを受け言葉を失ってしまった。前言撤回、やはり神通は鬼かもしれない。
73 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/09(水) 00:08:22.61 ID:LspMO4cxO
川内「神通...。那珂ちゃんの心を解体しちゃダメでしょ」
もう一人の姉妹艦が配線ケーブルを纏めながらツッコミを入れる。
彼女もまた、妹の閑古鳥が鳴くステージの手伝いをしていた。
夜戦好きの印象しかない彼女だが、実は妹や駆逐艦達の面倒見が良かったりする。また神通と共にこの鎮守府の古参であり、戦力と人格の両方の面で慕われている艦娘であることは意外な点である。
74 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/09(水) 00:11:59.28 ID:LspMO4cxO
神通「まぁ半分冗談ですけど、那珂ちゃんは普段からもっと大人しくしてて欲しいといいますか...」
こめかみを指で押さえて呆れているような表情をして言う。
神通「あ、もちろん姉さんもですからね?」
川内「え、私もなの!?」
那珂「なんで自分は大丈夫だと思ったの...。川内ちゃんへのクレーム、私のとこに来るんだからね?」
75 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/09(水) 00:12:50.52 ID:LspMO4cxO
ここで神通と那珂が指しているものは、もちろん川内の夜に騒ぎ出す習性についてである。
夜戦好きな川内は夜になるとハイテンションになる。それだけでなく、周りを巻き込んでまで夜間演習をしようとしたりするので、鎮守府に所属するあらゆる艦娘に大迷惑なのだ。
76 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/09(水) 00:13:36.42 ID:LspMO4cxO
神通「それと駆逐艦まで付き添わせるのはやめてください。あの子たちは遠征やら戦術講義やらがあって毎日大変なんですから」
川内「じゃあ軽jy」
神通「当然、軽巡洋艦や他の艦もダメですからね」
川内「うぅっ...妹たちが厳しいよ...」
トホホ...と、あざとく嘆く川内。
77 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/09(水) 00:18:51.15 ID:LspMO4cxO
川内「でも最近はクレームないでしょ?」
神通「そういえばそうですね」
那珂「あれ?なのに相変わらず夜騒いでるけど、もしかして川内ちゃん一人で夜戦でもしてるの?」
たしかに川内による夜間演習招集のクレームはここ1週間は聞いていない。その割には毎日夜に騒ぎながら外へ飛び出しているのだが。那珂の疑問は自然なものだった。
川内「そんな、一人でやる夜間演習なんてつまんなくて私でも飽きちゃうよ〜!」
川内「そうじゃなくって、お得意様が出来たんだよ!」
78 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/09(水) 00:20:04.67 ID:LspMO4cxO
お得意様、と聞いて妹達は首を傾げてしまう。そんなに川内の夜戦に付き合うのを厭わないでくれる艦娘など居ただろうか?
神通「姉さんの夜戦に付き合うなんていう物好きな人がいるんですか?」
当然またもや沸いてくる素朴な疑問を声に出した神通。
79 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/09(水) 00:21:29.36 ID:LspMO4cxO
川内「気になるぅ〜?」
川内は束ねた複数のケーブルを拾い上げながら、ニヤけた顔で2人を煽る。
神通の方を見れば、勿体ぶらないで教えてください、なんて表情をしている。
その時、彼女の視界にタイミングよく映りこんだ艦娘がいた。
それを認めた川内は、反射的にその方を指しながら声を上げた。
80 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/09(水) 00:22:29.53 ID:LspMO4cxO
川内「あ!ちょうどあそこにいる!」
神通と那珂はそのお得意様とやらが気になり、すぐに川内の指した方向を探す。その先に見つけたのは、2人が思ってもみなかった人だった。
81 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/09(水) 00:24:56.38 ID:LspMO4cxO
神通「えっ...山城さんなんですか...?」
那珂「(えっ、山城さんって...あの...)」
やはり驚きを隠せない。
那珂「...嫌われてる...戦艦だよね...?」
82 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/09(水) 00:25:57.02 ID:LspMO4cxO
本日はここまでです
また書き溜めを作らないと・・・
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/09(水) 00:33:41.26 ID:Ebfrgo4Go
おつおつの
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/09(水) 03:36:21.69 ID:ltGR0NTXO
いいですね〜
85 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/11(金) 01:20:40.23 ID:Rk+RUbUMO
今日は寒かったですねぇ
明日も寒くなるんでしょうか
さて、ちょっと投下です
86 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/11(金) 01:22:09.87 ID:Rk+RUbUMO
−−−
−−
−
1ヵ月程前、つまり那珂がこの鎮守府に着任した時、山城はすでに嫌われていた。というより、これは後から知ったことなのだが、ちょうど那珂の着任のわずか3日前に“事件”が勃発していたのだ。
87 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/11(金) 01:24:00.11 ID:Rk+RUbUMO
那珂は艦時代に四水戦で指揮したこともあって、着任直後から村雨や夕立に歓迎された。そして自然に白露型達とよく話すようになると、すぐに彼女達が山城を憎んでいることに気づいた。それどころか、山城への憎悪の雰囲気は鎮守府の色々な所で見受けられたのだ。
もちろん他人事ではあるのだが、ここまで異常に嫌われているとなると気になって仕方がない。そこで那珂は着任して間もないうちに、遠慮気味にではあるが、皆が彼女を嫌う理由を夕立に聞くことにした。
88 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/11(金) 01:25:22.59 ID:Rk+RUbUMO
夕立「アイツは...時雨の幸運が憎いのよ...」
すると夕立は、怒気をはらみながらも抑えたトーンで、ゆっくりと答えた。
夕立「自分が不運だからって、時雨の幸運に嫌味を吐いたの」
こみ上げ続ける怒りを懸命に抑えながら言葉を紡ぐ夕立。
その様子は可愛らしい語尾で元気に話してくれる普段の夕立とはあまりにかけ離れている。
89 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/11(金) 01:26:26.22 ID:Rk+RUbUMO
夕立「しかもあのクソ戦艦は...他のかつての仲間たちにも暴言を吐いたわ」
夕立「私たち艦娘が1番大切にしている絆を、仲間ごっこと呼んで馬鹿にして...邪魔でしかない足枷ってほざいたわ...」
夕立の身体は小刻みに震えている。
90 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/11(金) 01:27:55.22 ID:Rk+RUbUMO
夕立「そして最後には...ニヤけながらっ...!そんなに仲間ごっこが好きなら、スリガオ海峡で時雨が私の代わりに沈めば良かったわね、って!!」
夕立「時雨が誰よりもスリガオ海峡のことを気にしてるはずなのにっ!」
夕立「アイツはっ...!それを分かってながら嫌味を言った!!」
夕立「こんなクズを...憎まないでられるわけないっ...!!絶対に許さないっ...!!」
91 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/11(金) 01:29:18.60 ID:Rk+RUbUMO
那珂はしばらく何も言うことが出来なかった。
嫌なことを思い出させてごめんね、とやっとのことで夕立に言った時には、彼女はすでに平静を取り戻しつつあった。
夕立「新しく来る人が事情を聞いてくるのは仕方ないし・・・」
夕立「むしろこっちこそ変な空気にしちゃってごめんなさい・・・っぽい」
そう言って夕立は苦笑する。
92 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/11(金) 01:30:39.06 ID:Rk+RUbUMO
夕立「だからね、あまりアイツとは関わらない方がいいと思うっぽい」
語尾こそいつも通りに戻ったが、その口調にはナイフのような鋭い冷たさが残っていた。
そしてこれが、那珂がこの鎮守府の山城を一番最初に知った時であった。
93 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/11(金) 01:33:14.94 ID:Rk+RUbUMO
今回はここまでです
書き溜めを作るのでこれから投下頻度が一気に落ちそうです
なかなか大変です・・・
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/11(金) 01:36:21.20 ID:m+vK3O56o
おつおつ
まってる
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/21(月) 09:56:52.25 ID:oSIai5g7O
大変期間が空いてもうしわけないです
今夜あたりに少し投下しようと思います
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/21(月) 12:05:05.33 ID:WiWWpdp7o
待ったかいがあった
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/21(月) 18:53:49.14 ID:sWFAKILaO
10日くらいどうってことはないさ
楽しみです
98 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:21:56.52 ID:FHIWeP8+O
お待たせしました、投下します
99 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:22:36.27 ID:FHIWeP8+O
〜
那珂「ねぇ、川内ちゃんと神通ちゃん」
川内「ん〜、な〜に?」
神通「何か相談ですか?」
夕立から山城の話を聞いたその日の夜、那珂は思い切ってその2人に山城の話を聞くことにした。
綺麗な姿勢で文庫本を読んでいる神通と、だらしなく寝っ転がりながらマンガを読む川内。このコントラストが川内型の日常風景だったりする。
100 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:23:37.92 ID:FHIWeP8+O
那珂「あのね、山城さんのことなんだけど...」
那珂がそう言うと、神通は読んでいた本に栞をはさみ、そっと閉じた。その顔を見れば表情が少し曇っている。
川内はちょっとだけ真面目な顔つきになってこちらを一目見た。が、一瞥しただけですぐに視線をマンガに戻してしまった。
那珂「...(川内ちゃんと神通ちゃんでさえ、あまり触れてほしくないんだね...)」
101 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:26:32.91 ID:FHIWeP8+O
なんとなく、そんな感じになるとは想像していた。人懐っこい夕立があんなにも憎悪の感情を剥き出しにしていたのだ。それに鎮守府のみんなが嫌っているとなると、いかに山城の吐いた暴言がショッキングなものだったかが窺える。
でも、だからこそ事の次第をより冷静に語ってくれそうな人の話を聞きたかった。そう思うのは、もちろん姉として2人を慕っているからであるし、また彼女らがこの鎮守府で山城に並ぶ古参勢だからということもある。
102 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:27:43.14 ID:FHIWeP8+O
せっかく私たちは人の姿で生まれ変われたのだ。それならば今度こそ誰も沈まずに、みんなで笑い合いながら戦いを終わらせたい。そのためにもなんとかこの状況を解決して、ギスギスした雰囲気を無くせないものか。
そういう願いが那珂にはあった。
103 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:30:29.15 ID:FHIWeP8+O
川内「で、那珂は山城さんの何が知りたいの」
目はマンガに向けたままで、川内が聞いてきた。
どうやら話はちゃんと聞いてくれているらしい。
那珂「山城さんは、艦隊の仲間に暴言を吐いたから嫌われてるんだよね...?」
神通「先日の件を知ってるんですね」
那珂「うん...。着任してからのここ数日ずっと気になってたから、さっき夕立ちゃんに聞いて教えてもらったの」
那珂「...すごい怒ってた。酷いこと思い出させちゃったな...」
自責の念に駆られて落ち込む那珂。その様子を見て神通は話を本題へ切り替える。
104 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:31:33.93 ID:FHIWeP8+O
神通「でも夕立さんから聞いたのならそれ以上に何を知りたいのですか?」
神通「彼女は山城さんが暴言を吐いた現場に居合わせていたわけですし、逆にその場に居なかった私の出る幕は無さそうですが...」
あっ、でも、と思いついたように零して神通は川内の方を見る。
105 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:32:33.31 ID:FHIWeP8+O
神通「姉さんはあの時もろに目撃してましたね」
那珂「川内ちゃんもその場に居たんだね」
川内「まーね」
那珂「それなら最初から夕立ちゃんじゃなくて川内ちゃんに聞いてれば良かったなぁ...」
那珂は再びしょんぼりとしてしまう。
すると今度は川内が口を開いた。
川内「...あえて私たちに聞きたいことがあるんだね?」
106 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:33:53.25 ID:FHIWeP8+O
彼女はマンガを閉じて起き上がった。どうやら真剣に話を聞くに値する、と感じてくれたようだ。
那珂「そうなの。私思うんだけど、本当に山城さんはそんな酷い人なのかな、って...」
那珂「だからね、この鎮守府で軽巡最古参の川内ちゃんと、2番目の神通ちゃんなら山城さんがどんな人か知ってるかなって思ったの」
107 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:35:11.96 ID:FHIWeP8+O
少し間を置いて、那珂は深呼吸をする。今から口にすることは、きっとこの鎮守府では決して歓迎されないことだろう。だからこそ、この2人には言うのだ。
那珂「ねぇ、山城さんは本当に仲間を邪魔だって思ってるのかな」
那珂「本当にずっと前からああいう人だったのかな」
那珂「みんなでずっと嫌い続けてていいのかな」
その疑問はとても斬新なものだった。
108 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:36:47.70 ID:FHIWeP8+O
先日の事件以来、そんなことを口にするものは居なかった。一部の“優しすぎる”と呼ばれる艦娘は、何か事情があるんだと言って擁護しようとはしていた。しかしその努力は無駄でしかなかった。
とはいえ、もちろん山城の言動に憤りを感じながらも、多くの人は最初は「どうして?」の気持ちを抑えきれずに彼女に問い詰めた。
疑問に思っていたという点は那珂と同じなのである。
109 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:37:59.45 ID:FHIWeP8+O
しかしそこに含まれる感情はあまりに違いすぎた。
信頼を踏みにじられた哀しみ、姉妹艦や仲の良い同僚を傷つけられた事への怒り、そんな考えを持つ山城自体への恐怖・・・
2人は少し黙りこんでしまった。しばらくして最初に沈黙を破ったのは川内だった。
110 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:38:43.84 ID:FHIWeP8+O
川内「なんとなく那珂の言いたいことは分かったよ」
川内「みんな事件のショックに振り回されて感情的になりすぎてないか、ってことだよね」
那珂「うん...」
那珂「山城さんが絶対悪いけど、それでも仲直りしようとしないでみんなで嫌い続けるなんて良くないよ...」
那珂は懸命に訴えた。それは着任してから感じ続けてきた形容し難い嫌な雰囲気への、精一杯の抵抗だった。
111 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:41:27.09 ID:FHIWeP8+O
川内「でもさ、那珂」
川内「山城さんはそれだけのことをしたんだよ?」
那珂「...うん、そうだね」
川内「那珂は優しいからさ、そう思えるのかもしれないけどさ」
川内「あの人が時雨に言ったことは許されないことだよ」
夕立とは違って一貫して落ち着いている川内。しかしその言葉の重みは夕立のと変わらず、強い感情が篭っていることが感じ取れる。
112 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:43:56.44 ID:FHIWeP8+O
神通「それに私達だって、何度も彼女に聞いたんですよ。どうしてあんなことを言ったのか、って」
神通「返ってくる言葉は毎度「あの時言ったことが全てよ」なんです」
神通「ですから、もうここ2、3日前からは誰も問い詰めなくなりましたね」
神通曰く、山城は本当にそう思っていたのだという。
那珂の思いは引き裂かれようとしていた。
113 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:46:10.00 ID:FHIWeP8+O
那珂「でも...!」
反論しようとしたが、すぐに川内にバトンが渡る。
川内「時雨はさ、初期の訓練から面倒見てるけど、本当に繊細な子なんだよ」
川内「どこか戦いを心底憎んで嫌ってそうで、でも自分が強くなって周りを守りたいと思ってて。」
川内「なのに自身の幸運で自分だけ無傷ななんて事が起きちゃう。その度に悔しさと悲しさと寂しさが混じったような複雑な顔をするの」
114 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:53:13.01 ID:FHIWeP8+O
神通「そういったところが日常生活をに反映されてるのか、時雨さんは極端に遠慮がちですよね」
川内「うん、私が話しかけてもどこか申し訳なさそうにするしね」
神通「それくらいデリケートな彼女を、トラウマを抉ってまで傷つけたんです」
神通「こんなの擁護する必要はないと思いませんか」
古参の2人でさえ、ダメだった。
やはりこの考え方が正しいのだろうか。
那珂「...そう...なのかな」
那珂は自信なさげに呟いた
115 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:58:33.43 ID:FHIWeP8+O
神通「まぁ、でも私はあの人は艦娘としてのスキルはかなり高いと思ってますよ。しょっちゅう被弾しますけど」
神通「なので任務の際は私情を持ち込まないで、彼女とも上手く協力するべきだとは思います」
川内「たしかにあの人は旗艦とか上手かったよね。冷酷だからか落ち着いてるし、艦隊メンバーの状況把握とか戦術理解はかなりのもんだよね。不運すぎるけど」
神通「ですので最初の疑問に答えるなら、山城さんは有能な艦娘ではありましたよ」
神通「ですが、ただそれだけです」
神通「私達は彼女の優しさを目の当たりにしたことがある、とかではないのです」
川内「そう。だからあの人のことは単に“酷いことが簡単に言えちゃう不幸戦艦”っていう認識でしかないよ」
116 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 01:59:53.59 ID:FHIWeP8+O
いつの間にか那珂が沈黙する側になっていた。だが那珂の理想はまだ完全に否定されたわけではなかった。
山城となんてまだ直接会話したことなんてない。それでも山城は、いや山城だけじゃなく艦娘は皆、きっと自分と同じはずだ。
だからまだ言うことは残っている。
117 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/22(火) 02:00:56.52 ID:FHIWeP8+O
今回はここまでです
ほんと更新が遅くなって申し訳ないです
多分次回もまたこれくらい空くかもしれないですがご了承ください
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/22(火) 07:00:08.07 ID:TzqLlarRo
おつお
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/22(火) 23:15:51.22 ID:3yr76B5Y0
>>47
>内心舞い上がってしまった自身を慰めようとした時だった
舞い上がった気分を諌めるどころか利用して自慰に耽っちゃうレディー
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/01/27(日) 23:05:23.55 ID:O+d+ImQ8O
今日あたりに投下できるようにと思ってたんですが諸事情により結局水曜くらいになりそうです
駄作なのに待たせてしまってて申し訳ない限りです
相変わらずインフル流行ってるようですが皆さんお気をつけて
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/27(日) 23:13:45.55 ID:Qls5BhKBo
体に気をつけてね!
122 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/01/31(木) 23:09:37.70 ID:7KmWi23FO
首都圏でも雪降るくらい寒いですね!
明日の夜までには続き投下します
暖かくして眠りましょうね
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/02/02(土) 14:09:25.01 ID:ShT9FOd/O
そういや艦娘に毒舌キャラっていたっけ?提督に対して当たりの強い艦娘はいるけど、艦娘同士ではどうなんだろ。
124 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:14:36.11 ID:hoU/oQbZO
度重なる遅延にただただ申し訳なく思っております...
続き投下します
125 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:17:11.85 ID:hoU/oQbZO
−
−−
−−−
神通と那珂の、驚きを含んだ確認の問いは、しばらくの沈黙を作り出す。
川内「...あー、言っちゃった」
先程までの嬉々として語ってきた川内は別人だったのだろうか。
どういうわけか、やってしまった、という表情をしているのだ。
126 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:18:27.78 ID:hoU/oQbZO
神通「姉さんが自分から言ってきた事じゃないですか」
川内「いやぁ、その...言いたい事だったのは本当なんだけど、言っちゃいけない約束だったから...」
まぁそのうち2人にはバラそうと思ってたけどね、と苦笑しながら川内は付け加えた。
神通「言っちゃいけないって...山城さんに口止めでもされてるんですか?」
川内「そうなんだよね...だから周りの人には秘密ね?」
127 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:19:40.20 ID:hoU/oQbZO
神通「いいですけど...別に夜戦の練習相手くらい口止めする必要ないでしょうに」
川内「私もそう言ったんだけどね...約束だから...」
川内「ほんと必要ない約束なのに...」
2人が話す間に那珂は再度山城のいる方を見た。かなり離れた所のベンチに座って本を読んでいる。ベンチがこちらに向いていなかったおかげで、私達が注目していることは気づいていない。ここからではよっぽど大声で叫ばない限りは会話も聞こえないであろう。
128 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:21:13.92 ID:hoU/oQbZO
那珂「でも戦艦が夜戦に付き合うなんて珍しいね」
ふと疑問に思ったことを口にした。
山城のことを話題にするなど、那珂にとっては久々であった。
艦種がまるっきり違うため、元々自発的な交流は期待しずらいというのもあった。そして戦闘や演習で同艦隊になった事も、着任して1ヶ月程度では片手で余裕で数えられる程しかなかった。
129 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:23:10.92 ID:hoU/oQbZO
−もっとも、それらは実に些細な追加的説明にしかならない。一番の理由は、山城が嫌われ者で彼女自らも他者を拒絶する姿勢を見せていること、そして何よりもあの夜に姉達が放った言葉が、ますます真実味を帯びて那珂にとっての山城という人物像を固めていったことにあった。
こうして那珂には、最初は山城に対する漠然とした怯えが定着していった。次にその怯えは鎮守府生活への順応と共に、意識する必要がない程までに遠い距離感へと変容していった。そしていつの間にか、その遠い距離間ゆえに、山城のことを特別意識するということはほとんど無くなっていた。
それはちょうど、街を歩く時にすれ違う人々への態度に似ている。すれ違う知らない人々に対して、一々何か考えることなどあるだろうか。相手の進路を予測してぶつからないように歩くくらいである。
130 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:24:14.05 ID:hoU/oQbZO
もはや山城の意図や思考が気になるなんてことはなくなっていた。山城が噂通りの言動をする度に、あぁ流石は嫌われ者だな、と納得するだけであった。
今もしも誰かに − 例えば取材好きの青葉にでも − 山城についての人物像を尋ねられたのならば、那珂は迷わずにこう答えるだろう。
酷いことが言えちゃう不幸戦艦、と。
131 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:27:41.71 ID:hoU/oQbZO
だから川内が指差した先に山城が居ることには目を疑った。
しかし振り返ってみれば、素振りはあったかもしれない。
そういえば先日の山城が出撃部隊の救援を拒否した騒動では、珍しく川内が助け舟を出していた。
その出撃部隊というのが時雨を含んだ艦隊であったというのが問題を大きくしたのだった。
132 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:29:09.66 ID:hoU/oQbZO
もちろん執務室は山城糾弾の熱気を一瞬にして帯び、最優先の救援部隊編成そっちのけで取っ組み合いが起こってもおかしくない状態になった。残念なことにその時は、神通や加賀といった冷静な振る舞いが期待できて発言力もある古参勢が不在だったというのに。
だからいつもは神通がやる役目を同じく古参の川内が引き継いだのだろうと、那珂は納得していたのだった。
だが今の話を聞くと、もしかするとその時既に川内は山城をお得意様としていたのかもしれない。
133 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:30:03.65 ID:hoU/oQbZO
神通「たしかに。戦艦は闇夜に紛れて魚雷で肉薄攻撃するなんてスタイルじゃないですからね」
神通「そうなると避ける練習くらいしか出来ないと思うのですが」
川内「そうだよ、避ける練習になるからって付き合ってくれるんだよ」
那珂「うわ〜、夜戦モードの川内ちゃん相手に練習したいなんてドMだね〜」
川内は苦笑している。
134 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:31:06.49 ID:hoU/oQbZO
神通「でもそこまでして避ける練習したいんですかね」
神通「というより、姉さん相手じゃ被弾する練習にしかならないじゃないですか」
川内「...被弾が前提だからね」
少しの沈黙の後に川内はそう答えた。先程よりその表情は険しくなっている。
那珂「どういうこと?」
135 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:32:53.99 ID:hoU/oQbZO
川内「山城さんはね、自身の不幸を痛いほど理解してるの」
川内「不幸のせいなのか敵の外れ弾がやたら飛んでくるし、そのせいで被弾率は軒並みトップだし」
この事は鎮守府では知らない人はいない。何よりこれこそが、山城が嫌われ者になる事件のファクターなのだから。
川内「だから山城さんは、いかに致命的な被弾をしないかを考えてる」
川内「私との夜戦はね、どれだけ機関部に被弾しないでいられるかを極める練習なの」
136 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:33:55.85 ID:hoU/oQbZO
神通「なるほど...被弾前提というのはそういう意味なのですね」
神通「機関部だけは守って窮地での生存率を上げるためですか」
那珂「あの人、自分だけは生き残りたいって思ってそうだもんね〜」
那珂は別に悪意を込めてそのように言ったわけではなかった。そう思えたし、周囲もそう思っているからこそ、自然と口に出ただけだった。
137 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:35:07.40 ID:hoU/oQbZO
川内「それは違うよ!!!」
川内が突如強く否定する。
川内「山城さんは...決して自分のために生き残りたいんじゃないのよ...」
そして懸命な訴えを絞り出すかのように、口にした。
138 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:36:12.59 ID:hoU/oQbZO
神通「姉さん...山城さんから何か聞いたんですか?」
川内「うん...」
川内「でもごめんね、その内容は本当に言えない」
川内「こっちの方は、私が勝手に必要ない約束だとか言えるものじゃないから...」
悲しそうな顔をして川内は答える。
ということは、よっぽど触れてはならないような話なのだろうか。
139 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:41:07.45 ID:hoU/oQbZO
那珂「でもさ、川内ちゃん」
今のやり取りを聞いて口を開かずにはいられなかった。
那珂「何か事情があったにせよ時雨ちゃんに言ったことは許されない、って川内ちゃんが言ったんだよ?」
那珂「それが許せちゃうほどの事情が存在するの?」
那珂「それがあるんだとして、そんな大きなことを隠し続けて正当化していいの?」
神通「那珂ちゃん...」
140 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:43:39.13 ID:hoU/oQbZO
川内「悪いけどその事はこれ以上は言えないよ」
川内「私に言いふらす権利はないから」
どうやらこの点については譲る気はないようである。
川内「でもね、2人にだけは私が伝えていい範囲で、大きな事情があったことを知っておいて欲しいの」
既に伝えていい範囲守ってないけどね、と自らを皮肉って付け加えた。
川内「山城さんの言動は、全てその大きな事情のためなの」
川内「神通にも那珂にも、山城さんの味方をしてあげて欲しいとは思わない」
川内「そもそも味方になろうとしても本人が拒絶するしね」
141 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:45:33.41 ID:hoU/oQbZO
川内「だけど、周りに流されないで欲しいの。先入観で、感情的に、山城さんの言動を受け止めないで」
川内「これは那珂があの日言ってたことでもある」
思い返せば、着任したてのあの時はそんなことを力説したのだった。
那珂「でもそれは間違ってたよ」
那珂「その時はまだあの人の酷さを自分では目撃してなかったからそう言っただけで...」
川内「それを言うなら、あの時那珂が最後に言ってた言葉は合ってたよ」
川内は食い気味に返してみせた。
142 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:47:36.93 ID:hoU/oQbZO
最後に言った言葉...
−−−
那珂「...ねぇ、川内ちゃんと神通ちゃん」
那珂「私は2人にまた再会できて本当に嬉しかったんだよ!」
川内「い、いきなりどしたの...!?」
神通「えっと...それは今関係ある話なのですか?」
那珂「艦娘として、姿形はだいぶ変わったけど、それでもまた姉妹で一緒に居られるんだもん」
那珂「しかも今度は、夜に騒ぎ回ったり、本を読んだり、歌ったりできる」
那珂「どんな艦娘にとっても、これほど嬉しかったことはないよ」
143 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:48:19.54 ID:hoU/oQbZO
那珂「だから思うんだ、山城さんだって本当は艦時代の仲間達のこと、誰にも負けないくらい大事に思ってるはずだ、って」
−−−
144 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:50:45.77 ID:hoU/oQbZO
川内「神通だってこの言葉で少し変わったんじゃない?」
神通「...たしかに思うところはありましたが、そんなことはないですよ」
川内「でもあの日以来、積極的に山城を目立たないようにフォローしてるよね」
川内「事務伝達とか、部隊編成で山城を憎んでる子達を上手く納得させるのとか、その子達との対立を収拾つけたり」
川内「でも本来は神通は私と同じ駆逐艦の指導がメインだから、事務伝達は加賀さんや同じ艦種の金剛さんに任せればいいだけ。2人とも中立的だしね」
川内「トラブルだって放っておいても電ちゃんや古鷹さん、最終的には提督が対処してくれるよ」
川内「それを神通もやるようになったのは、那珂の言葉を聞いてからでしょ?」
川内「山城さんの事をどこかでまた信じてあげようって思えたからだよね?」
145 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:52:19.54 ID:hoU/oQbZO
神通は下を向く。バレていないと思っていた事が見透かされていたことへの一種の恥ずかしさからであろうか。
那珂「(そういうのって、元々神通ちゃんの役目だったとかいうわけじゃないんだ...)」
そして自分の言葉を、大好きな2人が真剣に考えていてくれていたという事実に、嬉しさがこみ上げる。
それと同時に・・・
那珂「(じゃあ、私のあの言葉が合ってるって...)」
146 :
◆eZLHgmSox6/X
[saga]:2019/02/02(土) 23:54:17.09 ID:hoU/oQbZO
那珂「じゃあ山城さんは...本当に...?」
川内は声にこそ出さなかったが、1度頷いた。その頷きがきっと彼女が伝えられる最大限そのものなのかもしれない。
川内「それにさっき言いそびれちゃったけど、夜戦の練習に付き添ってる事を口止めされた理由もね、私達のことを心配してっていうのもあるんだよ」
那珂「私達を...?」
川内「駆逐艦のほとんどは山城さんに嫌悪や恐怖を抱いてるからね、駆逐艦と接する機会の多い私が仲良くしてるなんて噂が広まったら川内型は気まずい思いをするんじゃないか、って」
川内「特に那珂は白露型と仲が良いでしょ?だから鎮守府生活に慣れ始めたばかりの妹の事も考えなさい、ってね」
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