隊長「魔王討伐?」 Part2

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 : ◆O.FqorSBYM [sage saga]:2018/12/24(月) 20:32:18.02 ID:XUuL3A850

前スレです。
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1542544023/

近日また投稿します。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1545651137
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/25(火) 00:00:53.84 ID:rAynsepK0
待ってます!
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/25(火) 04:51:26.05 ID:KPAXRdev0
たて乙
舞ってる
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/26(水) 00:21:47.90 ID:+aBtXGnj0
追いついた
待ってるよ
5 : ◆O.FqorSBYM [sage saga]:2018/12/26(水) 20:31:54.50 ID:czzKzwQ80

〜〜〜〜


魔王子「...ついにボケたか?」


ここには彼の母親などいない。

彼の暴言はそれが引き金となっていた。

世界が変わる、あたりには闇が醸し出されていた。


魔王子「自らの妻を、知りもしない世界へと送るのか...」


魔王子「...クソ親父がぁ」


彼の周りにはとてつもなく濃い闇が生まれていた。

なぜなのか、それは彼だからこその理由。

父と母を知る息子だから故の理由であった。


魔王「...子にはわからんさ、我らの野望には」


魔王「残念だ...息子を殺すことになるとはな...」


魔王子「...!」


──......

無音が響く、それがどれだけ不気味なモノなのか。

魔王子が抜刀する、光の剣に纏わせるのはどす黒い色。

いよいよをもって始まってしまう。


女勇者「...始まるね」


女騎士「あぁ...備えろ、今までの戦闘の比じゃないぞ」


女賢者「...鳥肌が止まりません、魔王子さんの闇も...魔王の闇も...」


魔王子「俺が全力で叩き斬る...後方に居てくれ」


──■■■■...

闇が広がる、冒涜的な擬音があたりを包み込む。

そして両者の口から同じ魔法が唱えられた。
6 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 20:32:24.79 ID:czzKzwQ80










「────"属性付与"、"闇"」









7 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 20:34:37.38 ID:czzKzwQ80

────ギィィィィィィィイイイイイン■■■■ッッッッ!!!

そして続くのはあまりにも鈍い金属音。

魔王子は早くも、父である魔王に向けて剣気を放っていた。


女騎士「──うっ...!?」


魔王子「女勇者ッ! 女騎士と女賢者の前に立てッ!」


女勇者「そんなことわかってるよっ! "属性付与"、"光"」


──□□□□ッッ!

光の擬音、その心まで照らされるような明るい音が女勇者を包む。

そしてある箇所に光が重点的に集まる。


女賢者「...光の盾といったところでしょうか」


女勇者「絶対に後ろにいてっ! 魔王子くんたちの闇をこれで護るからっっ!」


女騎士「凄まじいな...」


魔王子「──それでいい、それなら...俺も...」


先程の剣気の余波が、魔王によって創り出された闇が彼女たちを襲う。

だが光の盾がここにあるのならばその心配はない。

人の大きさに合わせて作られたこの盾、その面積を補うように光が展開する。


魔王子「本気を出せる...■■■■」スッ


────■ッ...!

素早く剣を鞘に収めたかと思えば、すぐさまに抜刀を行う。

彼の最も得意な基本戦術、その鋭い一撃が闇を纏う魔王に直撃する。


魔王「...これが本気なのか?■■■■■」


魔王子「準備運動だ、そんなことにも気づけないのか?」


魔王「...その口の悪さは誰の譲りだろうか」


女騎士(...絶対に魔剣士だろうな)


魔王「では...今度はこちらの番だな...■■」


魔王の両手に闇が集まる。

そして背中に生えた翼を大きく広げる。

なにが起こるのかは明白であった。
8 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 20:36:19.01 ID:czzKzwQ80

魔王子「──ッ!」


魔王「────喰らえ」シュンッ


────ッッッッッッッッ!!!

音にならない衝撃が耳を貫く。

身にまとった闇でさえ追いつくことのできない速度であった。

翼を利用した超高速接近、そして繰り出されたのは闇の爪。


魔王「...光の魔剣か、だが十分に扱えていないようだな」グググ


魔王子「...ッ! クソッ...!」グググ


剣と爪が鍔迫り合う、一見して互角のような力関係と思えた。

だが決定的な力量差が見て取れる事実があった。

魔王にはもう1つ、手段があった。


魔王子(──片腕でこれか...ッ!?)


魔王「ほら、腕はもう1本あるぞ?」スッ


女勇者「──っ!」ダッ


闇の右手で光の魔剣を掴み取られている。

そして左手が炸裂しようとした瞬間であった。

闇への抵抗手段を持たない彼女たちを置いて、女勇者が突撃する。


魔王「素早い判断だ、だが代償を払ってもらうか...」スッ


魔王子の首元へと伸びようとしていた左手を、別の場所に向けた。

それは光の盾を失った無防備な彼女たち、女勇者の判断は間違いであったのだろうか。


魔王「あのままなにも起きなければ、魔王子の首を跳ねていた」


魔王「正しい判断だ、大事な戦力をここで失う意味などない...」


魔王「...だが、あの人間の女2人は死ぬ」スッ


──■■■■ッッッッ!!!

左手の闇を地面へと叩きつける。

そして生まれたのは、地を這う黒の魔法。

闇が彼女たちへと襲いかかる。
9 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 20:37:48.95 ID:czzKzwQ80

女勇者「──ごめんっ! 避けてっっ!!」


女騎士「言われなくともわかっているさっ!」


女賢者「...そうですね、このぐらい対処できないと足を引っ張るだけですからね」


──■■■■ッッ!!

迫る闇、そして彼女は詠唱を行う。

黒は地面を這っている、ならばその経路さえ潰せば。

彼女は賢き者、光魔法や解除魔法が使えないのならこの魔法を使えばいい。


女賢者「..."地魔法"」


──メキメキメキメキッッッ!

彼女の魔法に反応して、魔王の間の床がめくり上がる。

迫りくる黒の動きが止まる、誰しも道がなければ歩けないのと同じ原理であった。

だがそれを許す魔王もいるわけがなかった。


魔王「...ならこれはどうだ?」スッ


──■■...ッ!

道を失った闇が宙へと浮かぶ。

これならわざわざ床を這わなくても迫らせることができる。

属性付与の魔法故に、簡単に操作できてしまう。


魔王子「...いい加減離せッ! このクソ親父...■■■」


女勇者「僕の仲間を、いじめないでよ□□□」


女騎士(...時間は稼げたな)


女騎士「女賢者っ! こっちだっっ!!」グイッ


女賢者「ぐえっ...もうちょっと優しく引っ張ってくださいね...」


結果的に、女騎士と女賢者では闇に抗えなかった。

だが女賢者が魔法を唱えたことによって、時間を稼ぐことができた。

あの魔王から時間を奪うことができたのならばそれだけで上々。


魔王子「────死ね■■■■」


女勇者「──くらえっっっ□□□□」


人間の女に気を取られすぎた、近くには光の勇者。

そして、剣を手から離し自身と同じような闇の展開をしている実の息子。
10 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 20:41:20.03 ID:czzKzwQ80

魔王「...これはこれは」


────□□□□□ッッッ!!

まず決まったのは、光を帯びた盾による打撃。

そのあまりの眩しさに魔王の闇は萎える。


魔王「────ぐゥ...ッ!?」


──■■■ッッッッ!!

そして次に炸裂するのは息子の拳。

誰に教えてもらったのか、黒を纏った殴りが魔王の顎に直撃する。

魔王の身体はどこかへと吹き飛ばされていた。


魔王子「まさか魔闘士の真似事をするとはな」


女勇者「...かっこよかったよっ!」


女賢者「早速、魔王に一泡吹かせるとは...」


女騎士「...そうだな、っと...落ちてたぞ」スッ


落ちていたのはユニコーンの魔剣。

魔王子の強烈なストレートの威力に負け、魔王はソレを離してしまっていた。

ともかく先制に成功した、状況は魔王子側が有利だろう。


魔王「...なかなかやるじゃないか」


あたりには塵芥、なかなか掃除をする機会がないようだった。

魔の王としての衣装についたソレを手で払い、口の中に貯まる血を吐き捨てる。


魔王「久々にまともな一撃を喰らってしまったな」


魔王子「...抜かせ、わざと受けただろ?」


魔王「...お見通しか、血の繋がりとは面倒なものだ」


女勇者「どういうこと...?」


なぜ不利になるようなことをするのか。

光魔法により自らの魔力を封じられ魔王子の類まれに見る純度の闇を受ける。

それがどれだけ危険なことなのか、わかりきったことだというのに。


女賢者「...狙いがわかりませんね」


女騎士「混乱させようとしているのか...?」


魔王という男がこのような一撃をまともに喰らうだろうか。

そのように問いかければ誰しも疑問に思うだろう。

混乱を招こうとしている、そう言われても不思議ではない現状。
11 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 20:42:53.34 ID:czzKzwQ80

魔王「...」


魔王子「...なぜだ?」


魔王「なにがだ?」


沈黙を破る、息子からの問いかけ。

それは今起きた出来事に関するものではなかった。

なぜ、このように対峙せざる得ない状況に陥ったのか。


魔王子「なぜ...民を見捨てた...」


魔王子「俺の知っている...魔王は...そんな男ではなかったぞ」


魔王「...言ったはずだ」


魔王子「確かに答えは聞いた...だが、その理由を述べてもらったことなどないぞ」


女騎士「...」


事情を知る女騎士。

あの時、炎帝により叩き落とされたあの城下町。

あそこで漏らした魔王子の言葉、今も耳に残っている。


女騎士「無駄だ、訳など話してくれそうにもないぞ」


魔王子「...」


魔王「まさか...人間の娘に言葉を漏らすとはな」


事情を知る顔つき、それだけで魔王は察する。

当然であった、彼は魔王子の父親、息子の行動原理など手にとってわかる。

だからこそ意外でもあった。


女騎士(...私にできるのは、これぐらいか)


女騎士「魔王子、しっかり守ってくれよ?」ボソッ


魔王子「...?」ピクッ


正直言って戦力になることのできない女騎士。

治癒魔法や防御魔法を唱えることのできる女賢者より足手まといかもしれない。

だからこそ彼女は、賭けにでる。
12 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 20:43:59.13 ID:czzKzwQ80

女騎士「...所詮コイツは、愚かな暴君でしかないみたいだ」


女騎士「民の気持ちもわからず、治安を改善しようともせずに椅子に座るだけのジジイに過ぎない」


女騎士「魔族の王...? 笑わせてくれる...これなら魔剣士のほうがいい政治ができるんじゃないか?」


魔王「...煽りか? 悪いが無駄だぞ」


────ピリッ...!

無駄、その言葉とは裏腹にとてつもない威圧感が女騎士を襲う。

お前のような雌などいつでも殺すことができる、そのような意図が組める。


女騎士「...っ! そうやって脅すことしかできないところを見ると、図星のようだな」


女騎士「魔族の王と言うより...蛮族の王といったところか?」


女騎士「これなら納得できるな、民の治安よりも人間界や異世界への侵略を優先するわけだな」


魔王「...まるで全てを知ったような口を叩くじゃないか」


女騎士(...やはり城下町の治安については、なにか訳があるみたいだな)


女騎士(だがそれの追求は今することじゃない...今やるべきことは...っ!)


女騎士「何も語らないお前が悪いんじゃないか?」


女騎士「それにしても、魔王子の母も可哀想なモノだな」


魔王「...」


ある言葉に反応して沈黙が訪れる、禁忌の言葉を連発させる。

キーワードは絞られた、女騎士の巧みな話術がそれを逃すわけがない。


女騎士「このような野蛮な男の政略に付き合わされて、挙句の果てには異世界へとばされる」


女騎士「...考えられないな、同じ女として同情する」


女騎士「それとも..."愛"は盲目といったところか?」


魔王「────ッ!」


────■■■■ッッッ!!

闇が溢れ出る、魔王子と瓜二つのその顔に地獄のような表情が付与される。

先程のモノとは桁違いの質を誇る暗黒が辺りを破壊する、釣れてしまったのはとてつもない大物であった。
13 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 20:45:40.48 ID:czzKzwQ80

女騎士「すまん魔王子、お前の母を侮辱して」


魔王子「...お前じゃなければ首を切り落としていたところだ、安心しろ」


女勇者「...」ブツブツ


女賢者「...」ブツブツ


後ろにいた2人は既に唱えていた。

魔法の練度を高めるために、とても丁寧に。

これから来るであろう超弩級の闇に対する防衛策を。


魔王「女ァ...地獄の底まで付き合ってもらうからなァ...」


魔王「我が妻は自ら志願したんだァ...側近も自らを転世魔法の生贄にしろと志願した」


魔王「彼らの忠誠心を...穢すことは断じて許せん...」


────■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッッッッ!!!!!!!!!!

とてつもない量の闇が魔王城の内部を破壊する。

これが魔王の本気、属性付与が繰り出す最強の黒。


魔王子「...やはり、薄々わかってはいたが...側近は生贄か...」


女騎士「...顔見知りが亡くなるのは、辛いな」


魔王子「あぁ...それにもう...母様とは会えないだろうな」


女騎士「それも...辛いな」


魔王子「...どちらにしろ魔王に背けば四帝や側近、母様にまで刃を向けねばならないことに」


魔王子「だが...母様だけはこの手で殺めずに済んで、良かったと思える自分がいる」


女騎士「...いいのか? 異世界にいった魔王妃は...キャプテンたちによって殺害されるぞ?」


魔王子「仕方ないことだ...仕方ない...ことだからな」


苦渋の決断、そのような苦虫を潰したような顔をしている。

過去の同朋を選ぶか、現在の同朋を選ぶか、そのような選択の答えは明白。


魔王子「俺は...今を生きている...だからこそ、今の貴様らを選ぶ」


魔王子「だから...少し下がっていろ■■■■■」


魔王「────死ね」


──■■ッッ! ■■ッッ! ■■ッッ! ■■ッッ! ■■ッッ!

魔王が闇の爪を、前方にかつ一心不乱に振り回す。

過去に魔王子が風帝に見せたあの地獄のような光景。

それを己の素手のみで実現させていた。
14 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 20:48:06.57 ID:czzKzwQ80

魔王子「────死ね」


──■■ッッ! ■■ッッ! ■■ッッ! ■■ッッ! ■■ッッ!

ならば当然、こちらも抜刀の勢いで生み出した剣気で応戦するまでだった。

魔王にできるのなら彼にだってできる、闇と闇がぶつかり合う、共喰いじみた光景が広がっていた。


魔王「──その女を差し出せ、殺させろ」


魔王子「それはできん、大事な戦力だ...」


──■■ッッ! ■■ッッ! ■■ッッ! ■■ッッ! ■■ッッ!

──■■ッッ! ■■ッッ! ■■ッッ! ■■ッッ! ■■ッッ!

黒がぶつかれば、闇が闇を喰らう。

イタチごっこにすらならない、これが闇属性同士の競り合い。

どちらかが気を抜けばこの暗黒が身を滅ぼす、しかしその気配は一向に起ころうとはしない。


魔王「闇に闇をぶつけても、なにも進展しないぞ?」


女勇者「────ならこれならどう?」


────□□□□□ッッッ!!

遠くから光が魔王へと歯向かう。

彼女には遠距離攻撃ができないはずだというのに、どのようにしてコレを行ったのか。


魔王「...自らの武器を投げ捨てるのか」


女勇者「悪いね、僕は魔王子くんのようなことできないから」


答えは単純、至極単純であった。

彼女は己の剣を、光を纏わせたソレを投げつけてきていた。

だが、上位属性の相性には叶わなかった。


魔王「...残念ながら、無駄だ」


────■■...

魔王子による連鎖剣気を凌ぎながらの動作であった。

上位属性の相性の優劣は質の高さ、という話以前の問題であった。

光を帯びた剣は魔王に避けられてしまった。


魔王子「────...ッ!」


一瞬の好機、たとえ魔王といえども慢心は絶対にしない。

光属性とはそれほどに恐ろしい、それは魔王子自身も味わっている。

ならば絶対に強く警戒をする、その場面を見逃すわけがなかった。
15 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 20:49:56.25 ID:czzKzwQ80

魔王子「──そこだ」スッ


────ブン■■ッ!

この黒の一撃が、どれほどに凄まじいモノか。

魔王の爪から放たれる闇を相殺する中でのこの新たな剣気。

その抜刀はとても素早く、たとえ魔剣士程の達人でも見逃せてしまうほど。


魔王「...見えてるぞ」


連鎖的な剣気の間に造り出した新たな抜刀、だというのにこの王の眼は捉えていた。

両手の爪は魔王子の剣気を殺している、ならば身にまとっている闇をソレに向かわせる。


魔王「─────しまった」


その時だった、視界の端に見えてしまった。

先程、愚かにも自身の武器を投げ捨てた女。

彼女が新たな、それも見知らぬ武器を構えていた。


女騎士「────引き金を引けっっ!!」


女勇者「──っっ!」スチャ


────ダァァァァァァァァン□□□□ッッッ!!

未曾有の炸裂音、そして予感する地獄の痛み。

この期に及んで光による遠距離攻撃など皆無だと勝手に認識していた。

まるで走馬灯、魔王の感覚はとてもゆっくりと。


魔王(...息子の闇は殺せても、このままだとこの光は直撃してしまうな)


身に纏わりついてた闇は、魔王子の一撃を相殺しようとしている。

つまりは無防備、風帝戦での魔王子のような状況。

ならばこの光の散弾はまともに受けることになる。


魔王「"転移魔────」


だが彼は違う、ただの魔物ではない。

魔の頂点である彼がこのような陳腐な戦術に屈するだろうか。

この反則じみた詠唱速度の魔法を唱える、そのはずだった。


女賢者「──"封魔魔法"」


その魔法は、あの時魔女を苦しめたモノ。

とてつもなく長く、そして丁寧に詠唱されたソレ。

たとえ魔王という相手でも引けは取らなかった。
16 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 20:52:40.04 ID:czzKzwQ80

魔王「────なッ」


────グチャグチャッ...!

その封魔魔法はほんのわずかに残っていた魔王の闇によって一瞬で破壊された。

だがこの状況、一瞬でも魔法を封じられたとしたら。

それがどれだけ状況を覆すものなのか。


魔王子「...手が止まってるぞ、クソ親父」スッ


──■■■ッッ!! ■■■ッッ!! ■■■ッッ!! ■■■ッッ!!

その一瞬の隙が連鎖剣気を放つ時間を与えてしまう。

封魔魔法が戦術を奪い、光の銃弾が身をえぐらせ、闇の剣気が壊滅的な負傷を与える。

確実に格下である光と闇、しかしソレを生身で受けてしまえば。


魔王「────グウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!?!?」


魔王子「──畳み掛けろッッッ!!」


女騎士「──それを引けっ! そうすればもう1発撃てるっっ!!」


女勇者「──わかったっっ!」ジャコンッ


女賢者「──これならいけますっ!!」


魔王「...」


なぜ、たった一度だけまともに攻撃を当てられて喜んでいるのか。

先程はわざと当たったが今回は違う、その事実が苛立ちを沸かせる。

実力差を知らないこの無知な餓鬼共が。


魔王子「────ッ!?」ピクッ


その様子に気づけたのは実の息子だけであった。

父親のいつもの表情、憎たらしいほどに冷静さを保つ二枚目の顔。

そんなモノではなかった、感情がむき出しの顔、怒れる表情、それは矛盾したことに無表情に近いモノだ。


魔王子「──女勇者ッッ! 光魔法を唱えろッッ!」


女勇者「────えっ!?」


ショットガンのポンプアクションを終え次弾発射の準備が整っていた。

魔王子による急な要求、それに答えるためにすぐさまに詠唱を行なう。

彼女ならば2秒もあればすぐに放てる。


魔王「...」


尤も2秒あったところで大惨事は逃れられないのは確実であった。

魔王の口から例の魔法が放たれる、いままで苦戦を強いられたあの魔法を黒くした物。
17 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 20:53:29.50 ID:czzKzwQ80










「..."属性同化"、"闇"」









18 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 20:55:07.64 ID:czzKzwQ80

────■■■■■■■■■■■■■■■■■■...

闇が闇を引き寄せる、付与などとは訳が違う。

桁違いの漆黒、とてつもない質量を誇る闇が生まれ続ける。

その影は光すらを奪い取ろうとする。


女勇者「────"光魔法"おおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!」


────□□□□□□□□□□□□□□□ッッ!

悲劇の雄叫び、その魔法はあまりにも眩しい。

列車にて死神に襲われたときに放ったまるで太陽のような光魔法。

それをも凌駕する光量、だが相手が悪すぎた。


魔王「...■■■■■■■■■■■■■」


魔王子「──チッ! 凄まじすぎるッッ!?」


身体が魔王へと引っ張られる。

それが意味するのは、闇の質量の多さ。

重力じみたソレが発生するということは、そういうことである。


女騎士「────なにかに掴まれっっっ!!」


女賢者「眩しすぎて、何も見えませんよっっ!?!?」


身体の力が抜ける、そしてあまりにも眩しすぎる。

だが目の前には黒が、底の見えない闇が存在している。

女勇者から少しでも離れればこの闇に飲まれてしまう。


女勇者「──"属性付与"、"光"っっっ!!」


ようやく届いた日差しよけ、それがみんなの身体に染み渡る。

女勇者が付与した光がこの人工太陽の日差しを軽減させていた。

そのかわり失うのは己の魔力、だが背に腹は代えられない。


女賢者「────えっ?」


─────ふわっ...

その可愛らしい音ともに浮かぶのは、深い絶望。

光によって魔力を失った、つまりは完全なる普通の人間。

彼女はまだ21の女性、ただの女性がブラックホールのような引力に抗えるだろうか。
19 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 20:57:08.59 ID:czzKzwQ80

魔王子「な...ッ!?」


女勇者「──嘘っ」


女騎士「────掴まれえええええええええええええっっっっ!!!」


──ガシィィィィィッッッ!!

いつの間にか彼女は武器を返却してもらっていた。

即席で作った槍のような武器、ベイオネット。

それを地面に突き刺すことで支える力を助長させる。


女賢者「──女騎士さんっっ!?」グイッ


女騎士「────死んでも離すなよっ!!!」グググ


身体は光の属性付与によって身体の動きが制限されている。

だが魔力とは関係なしに、持ち前の筋肉がこの行動を可能にしていた。

それでも本当はダルいはずなのに彼女は手を伸ばしていた。


魔王子「この輝きの中で、そこまで動けるのか...尊敬するぞ...」


女勇者「ごめんっ...! 魔法を持続させるので精一杯...助けにいけない...っ!」


女騎士「くっ...魔王子っ! なんとか魔王を止められないかっっ!?」


彼に助けを求めるその時。

突如として突風が襲いかかったかのような錯覚に囚われる。

まるで大きな鳥が、こちらへと羽ばたいてきたかのような。


魔王「...止められるとおもうか?」


魔王子「────女勇者から離れるなッッ!!」スッ


────ブン□■...ッ!!

自らが付与した闇、そしてその上から付与された光。

2つの属性が混ざることもなく、剣気と一緒に放たれる。


魔王「だめだな...光が闇を、闇が光の質を互いに下げているぞ」


────......

闇の身体を持つ魔王にソレが当たる。

だが被弾音すら鳴らない、悲しいことに威力が計れてしまう。


女勇者「くっ...どうすれば...っ!」


魔王「どうすることもできん、もう終わりだ...一撃を与えられただけ誇りに思え」


魔王「いや...茶番を含めれば二撃か...」
20 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 20:59:19.92 ID:czzKzwQ80

女騎士「────っ!」グイッ


女賢者「うわ...っ!?」


闇へと引っ張られていた女賢者を力任せに引き寄せる。

甲冑越しとはいえそのまま胸へと抱き寄せ、己の軸足を頼りにする。

床に刺さった歴代最強の魔王の残骸、それを引き抜いて。


女騎士「────っっ!!」スチャ


──ダァァァァァァァンン□□□ッッッ!

属性付与の影響か、拡散された銃弾は輝かしかった。

だが果たして、このような行動が得策になるか。


魔王「...光量が足りてないのでは?」


女騎士「くっ...だめかっ...!」


魔王「諦めはついたようだな...妻を侮辱した代償は払ってもらうぞ」スッ


実態のない闇の身体、そこから現れる黒の翼。

コレで羽ばたかれてしまえば、いかに女勇者が光魔法で闇を払っていたとしても。

その圧倒的な質の差で壊滅するのは間違いなかった。


魔王「...闇の風は冷酷なまでに冷たいぞ」


女勇者「...」


女勇者(...だめ、この光魔法を途切れさせたらそれこそ即座に全滅だ)


女勇者(動けない...どうすれば...っ!?)


女賢者「...っ」ビクッ


女騎士「それは結構、暑いよりかはマシだ...私は汗かきだしな」


魔王「...生意気な、その抱いている娘のように怯えていれば良いものを」


────バサァ■■■■ッ...

風とともに闇が、彼女たちの身を滅ぼす。

暗黒の音が間近に聞こえる、そのはずだった。


魔王「────何?」ピクッ


女騎士「...女賢者を頼んだ」グイッ


魔王が感じたのは新たな闇の気配。

だがこれは自分のモノではない、それでいて息子のモノでもない。

そして女騎士はかなり強引に彼女を突き飛ばした、それを受け取る魔王子、彼は直感する。

21 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 21:02:24.18 ID:czzKzwQ80

魔王子「────やめろ」


女賢者「...女騎士...さん?」


女勇者「────まってっっ!!」


────■...

とても小規模な闇が生まれる。

さらには光に包まれている、まるで線香花火のような黒だった。

だがそれが、どれだけ恐ろしい闇なのか。


魔王「────これはッ!?」


女騎士「特攻させてもらうぞ...魔王...っ!!」ダッ


無謀にも闇の塊へと走り込んでしまう、身体の鎧が次々と朽ち果てていく。

その走行速度は引力も相まって、まるで坂道を下るような速度であった。


魔王「────歴代最強の魔王...ッ!? なぜ貴様がッ!?」


誰が想定できるであろうか、ただの人間が最強の魔剣を所持していることを。

たとえ粗悪な魔力を餌にしたとして、あの堅牢な地帝を貫くことができる代物。

とてつもない質の闇が魔王の闇を破壊していく。


女騎士「────うおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!」


────グチャ■■ッ...!

お手製の槍が刺さる音、たとえ実態を持たぬ闇の身体ですら可能にしたこの刺突音。

だが彼だけではなかった、この音の主は彼女でもあった、最高質の闇を持ったとしてもその身体はただの人間。

折れた刀身と魔王の闇に耐えきれず、ショットガンと彼女の一部が完全に破壊された。


女騎士「...肩付近まで持ってかれたか」


魔王「────ッッ!?!?」


あまりの激痛に、魔王の同化は曖昧なものへと変化していた。

両手や両足などは闇のままだというのに、一部の身体や顔は元の姿に。


魔王(魔王子に持たせていたコレは...ここまでの威力だったか...初めてまともにくらった...ッ!?)


魔王(闇の質にあまりの差があると相性以前の問題になることを失念していた...ッ!)


魔王(クソッ...まさか人間の魔力でもここまで...歴代最強の名は伊達じゃないな...ッ!?)


魔王「────くたばれッッ!!!」


女騎士「──っ!」


魔王が放つ闇が襲いかかる。

ここまで肉薄している、もう回避するのは不可能。

右腕を失い多量の出血にうろたえている人間には避けることができなかった。
22 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 21:04:26.30 ID:czzKzwQ80

女勇者「────女騎士っっ!!」


女賢者「...どうすればっっ!!」


魔王子「.....」


傍から見るしかない、先程の特攻である程度の闇が晴れたとはいえ。

暗黒に身を投げ、女騎士を守ろうという気など起きるわけがなかった。

例えるなら、普通の人間が毒蛇を素手で触ろうとすることができるだろうか。

闇の恐ろしさが脳に染み付いている、動けるわけがなかった。


??1「...あんな蛮勇を見せられたら、動くしかないな」


??2『あァ...そうだなァ...闇に突っ込むのはもう何度目だろうなァ...』


しかし、愚者は現れた。

かつて何度も光を持たずして、圧倒的な闇と対峙者たちが。

万の数の兵を抹殺し、まるで図ったかのようなタイミングで現れる。


??1「...全力で走るのは久々だな」


彼が見せてくれたのは、ただの全力疾走。

過去に隊長を苦しませたこの速度が可能にするのは。


女騎士「──魔闘士」


魔闘士「挨拶は後だ、まずは少し距離を置くぞ」


あと僅かで闇が女騎士に接触しようとしたその瞬間。

ウルフよりも優れた疾走で彼女を救出する、だがそれを許してくれる魔王など存在しない。


魔王「────逃さんぞッッ!!」


??2『──逃げられるんだよなァ、これが...』


────バサァッッッ!!

大きな羽音、魔王の背中に生えてあるモノとは桁が違う。

異形の翼、それの持ち主は1人しかいなかった。


女騎士「──魔剣士」


魔剣士『よォ...お前も"欠損"したクチかァ』


女騎士「...ふっ、心配よりも冗談が先にでるか」


竜の形をした魔剣士が、魔闘士ごと女騎士を攫う。

そしてそのまま光り輝く場所へと導く、そしてすぐさまに女勇者が動く。
23 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 21:06:07.86 ID:czzKzwQ80

女勇者「────さがっててっっ!!」


魔力を集中させるとともに前方へと出る。

女騎士の特攻により魔王は怯む、その成果は目に見える。

明らかに属性同化と共に出現した闇の量が減っている。


女勇者(これなら...これでなんとかなりそう...っ!)


────□□□□□□□...!

そうすると、彼女は既に光り輝いていた盾に光魔法を移行させる。

属性付与により光を纏った盾は更に輝かしく、まるで光魔法を補給し光度を増したかの如く。


女賢者「──女勇者さんっ! 私に付与した属性付与を解除してくださいっ!」


女勇者「わかってるよっ! 女騎士を頼んだよっ!」


魔王の闇の量が減り、光魔法を盾に収めた今。

こうなれば身を守ってくれてる光の属性付与など不必要であった。

前方の魔王を盾越しに警戒しつつ、彼女は女賢者への付与を解除した。


女賢者「──"治癒魔法"っ! "治癒魔法"っ!」ポワッ


女騎士「...すまない...迷惑をかけた」


女賢者「まだしゃべらないでくださいっ! 血が止まっていないんですからっ!」


魔闘士「...この状況で意識があるだけ、褒めたものだ」


魔剣士『あァ...だがこの出血量はやべェぞ...」


失ったのは右腕の二の腕付近、魔闘士が強引に止血していると言うのにも関わらず止まらない。

決して女賢者の魔法の質が悪いわけではない、だがどうしても止まらない。

なぜなら、闇というモノが右腕を奪ったのであるから。


魔闘士「傷口が闇に侵されている...治りが悪いのも納得だ」


女騎士(......そういうことか、通りであの時...地帝は...)


魔剣士「...緊急措置だ、燃やすぞ」


女賢者「そ、それは...」


魔闘士「致し方ない...俺が押さえつけるぞ」


女騎士「すまない...頼んだ...」


隊長の世界でも過去に行われた療法。

焼灼止血法という地獄の等価交換。

出血による死亡は避けられても、他の危険性が迫る。
24 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 21:08:17.75 ID:czzKzwQ80

魔剣士「久々に爆以外を唱えるなァ..."炎魔法"」


──ボォッ...!

ロウソクよりも少しばかり大きな炎。

ゆらゆらと揺れるその温かみのある魔剣士の魔法。


魔剣士「...やんぞォ?」


女騎士「きてくれ...痛いのは我慢する...っ」


魔剣士「......」


炎が女騎士へと迫る。

かつて研究所で魔剣士の心を支えてくれていた彼女。

その彼女に向かって放つ、灼熱の魔法。


女騎士「────うっ」


────じゅううううううううううううぅぅぅぅぅぅ...

焦げる音が響く、そして身体には拒絶反応。

だが身体は魔闘士により強く押さえつけられている、逃れなれない。

ただただ彼女は唇を噛む、それしかできなかった。


女勇者「...」


魔王「クッ...あの女ァ...よくも...」


女勇者「...許さないんだからね」


────□□□□...

怒りという感情が光を強くする。

盾に集中した輝きが激しく膨張する。

それが魔王を、ほんの少しだけ冷静にさせる。


魔王「...なかなかだな、だが剣もなしにどうするつもりだ?」


女勇者「...僕にはこれがある...みんなを護れる盾がある」


魔王「現に仲間の1人の腕が奪われたんだぞ? 護れていないじゃないか...」


女勇者「──っ! うるさいっ!」


──□□□□□□□□□□□□ッッ!

さらに激しさがます、それでいて後方には光が向かわないように調整されている。

内なる感情を押さえつけなんとかして理性を保っている、魔王の挑発は無におわる。

25 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 21:11:03.20 ID:czzKzwQ80

魔王「その程度じゃ...この魔王の闇には敵わんぞ...」


女勇者「あとで泣いてもしらないからね...っ!」


彼女もまた特攻をしかけるつもりであった。

だが女騎士とは決定的に違う、非常に高い安全性が確保されている。

確かに正面から戦っても魔王の闇には敵わない、だが自衛に関しての話は別。


魔王(質の差でこちらが有利なのは変わらんが...かなり濃い闇をぶつけなければ即死は厳しいか)


魔王(挑発に乗っても理性を乱す様子はない...へたに煽っても光だけが増すだけか)


魔王(...ならば、己の戦術のみでやるしかない)


────バサァ■■■■ッッ!!

闇の翼が広がる、ついに激しい戦闘が始まる。

格下相手だとはいっても光魔法を前にしての侮りは死を意味する。

全力をもって魔王の最も得意とする近接格闘を炸裂させようとした、その時。


魔王子「......」


闇の属性付与をいつの間にか解除し、沈黙する魔王子が前にでる。

女騎士の腕が奪われても、女勇者が激しい光を展開しても無言を貫く。

そんな彼がようやく行動に移った。


女勇者「...魔王子くん、どいて」


女勇者「眩しいでしょ...? あぶないよ?」


魔王「...お前の相手は後でしてやる、まずは女勇者を潰させてもらう」


魔王「だから...下がってろ■■■■」


──■■■ッッッ!!

魔王が片腕を素振りさせる、そして生まれたのは闇の衝撃波。

剣を使わずとも、彼は剣気のような技を放つことができたのだった。

驚異的な威力が予想される、魔王子を護るべくと女勇者が盾を構える。


女勇者「...え?」


────□□□□...ッ!!

激しい光、たとえどれほど眩しくとも魔王の闇の前では苦戦を強いられる。

この盾を持ってしても、あの闇に当てればとてつもない衝撃を受けるだろう。

だがこの闇が直撃したとしても即死を防げる、それだけでも十分でもあった、しかし今は彼女の光の話ではなかった。


魔王「────まさかッ!?」


右手に握りしめられた、奇妙なほど豪華な柄。

そしてその細すぎる刀身から輝きが生まれる。

桁違いの光が、あたりを照らし尽くす。
26 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 21:12:06.27 ID:czzKzwQ80










『......』









27 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 21:13:41.30 ID:czzKzwQ80

魔王「馬鹿な...魔剣と一体化しただと...ッ!?」


魔王「その光の剣...手にして間もないはずだろうに...ッ!?」


女勇者「...嘘」


魔王子『......』


どこかで馬の嘶き声が聞こえるというのにまだ無言を貫く。

爆発しそうな感情をまだ抑えている、然るべきときを待つ、その時まで。


女勇者「すごい、僕の光よりも...断然に...」


光の魔力を持つ女勇者。

そんな彼女が驚愕するほどに輝かしかった。

そして時は早くも訪れる、光が剣に収縮する。


魔王子『────死ね□□□□□』スッ


────□□□ッッッ!!

光の剣気、その一撃と同時に放つのは邪悪な言葉。

魔王の重厚なる闇が抵抗するも、わずかに残ってしまった光。


魔王(────この魔王の闇と同等の光だとッッ!?)


魔王「──■■■■■■ッッッ!!」


──■■■■■■■■■■■■ッッッ!!

闇の翼がありったけの黒を光にぶつける、そうすることでようやく止まった。

質の差は同等、ここにきて初めてイタチごっこをすることができる。


魔王子『...どうだ? 息子の成長具合は』


魔王「...驚いたさ、ここまで育つとはな」


意外にもその表情は変わらなかった。

むしろ逆に、冷静なようにも思える。

先程まで妻を侮辱され、怒り狂っていた彼はいない。


魔王「...」


改めて見れば、冷静な顔つきではなかった。

その瞳の奥にあるのはどこか暖かな眼差し。

まるで妻と同等の相手を見るような。


魔王「...どうせ、時間を潰さねばならん」


女勇者「...?」


魔王「初めてだ、属性同化という魔法を使って...全力を出せるのは」
28 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 21:15:41.48 ID:czzKzwQ80

魔王「尤も、先程の一撃で本調子とはいかないがな...」


魔王子『...ヤリあう前から、言い訳づくりか?』


魔王「...そう思えるか?」


魔王子『思えん...これでも俺の父親なのは変わらない...だから...』


魔王子『────死ね□□□□□□』


────□□□□ッッッ!

輝かしい剣気が魔王を襲う。

まともに喰らえば、確実に勝敗がついてしまう威力であった。

まともに喰らわせることができればの話ではあるが。


魔王「...■■■■■■■■■」


闇の言語と共に、溢れ出る漆黒。

周りの雑魚のことなど眼中にない、明らかに魔王子1人を狙っている。

そのような軌道をした闇が光の一閃を滅ぼす。


魔王子『...チッ!』


魔王「どうした■■■■■■?」


こんなものか、と言わんばかりの声色。

それも当然であった、たしかに光の質が魔王の闇に追いついた。

だからといっても魔王子自体の実力が魔王に追いついたわけではなかった。


魔王子『...これでも歯が立たないか□□□□』


──□□□ッッッ!

────■■■■■ッッッ!!

剣気を飛ばせば、すぐさまに闇が相殺してくる。

どうにかしてこの光をまともに当てることができるのなら、勝敗に決め手がつく。

だがあと一歩及ばない、それも当然であった。


魔王「単純な話だ、剣は1つしかないのに、こちらは両手がある」


魔王「...殺したければ、腕を落としてみろ...あの人間の娘の仇でも取ってみろ」


魔王子『────ッッッ!!』


安い挑発、一体化させた魔剣を力任せに降る。

そうした結果聞こえるのは、あまりにも鈍すぎる音。

魔王子がいつも放っているあの鋭い剣気とは程遠いモノであった。
29 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 21:17:47.19 ID:czzKzwQ80

魔王「────なに■■■?」


────バコンッッ!

鈍重なる音、その正体が明らかとなる。

通りで似合わない訳であった、こんな音を魔王子が発するわけがなかった。

剣が1つたりないのであればもう1つ用意すればいい。


魔剣士『──よォ、俺様も混ぜてくれよ...なァ?』


魔王「...愚かだ、そうした無謀さが己の"翼"を失くした理由だ」


魔剣士『ケッ、焦ってんのかァ? 魔王子を捌くのに手一杯なんだろォ?』


彼の爆発が直撃すれば、無視することのできない負傷をするのは間違いない。

先程までのように身体全体に闇が同化しているわけではない。

この些細な剣士が1人増えることが、どれだけ不利な状況へと近づいてしまうのか。


魔王子『...女騎士はどうした?』


魔剣士『出血は止めたが...闇が蔓延るここは危険すぎる...一時撤退させたぞォ』


魔剣士『魔闘士が運び、賢者の嬢ちゃんがひたすら治癒、そして女勇者は付き添いだァ』


魔剣士『女勇者はすぐ戻るとかほざいてたけどなァ...』


魔王子『...それでいい』


────□□□□□□□□ッッッ!!

輝きが増す、今までの戦闘で出していた光量など比ではない。

ここにいるのはわずか3人、出し惜しみをする理由などなかった。


魔王子『...この場にいるのが魔剣士程の男だけなら、巻き添えを作らずに済むな』


魔剣士『ふざけんなァ、魔剣と一体化してひたすら魔力を供給させてねェともう倒れてんぞォ』


魔王子『それができるだけ上等だ』


決して今まで、女騎士らが邪魔だったわけではない。

魔王子が今になって全力の一段階上を出そうとする理由が1つある。

それは、魔王のはらわたに答えがあった。


魔王子『絶好の機会だ、女騎士があのクソ親父のはらわたを捌いていなければ、今の俺の全力もあしらわれていた』


魔王子『そして今、誰も巻き添えを喰らうものがいない...今しかない...ッ!!』


魔王「...チッ」


よく見ると魔王の腹部にはまだ刺さっていた。

桁違いの闇を秘める、歴代最強の魔王がそこに。

とてもじゃないが引っこ抜くことなどできない、触れれば己の手を失うだろう。
30 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 21:19:02.49 ID:czzKzwQ80

魔剣士『...あれでよく動けんなァ』


魔王子『父親なだけはある...俺も過去にあの魔剣に誤った触れ方をしたが...』


魔王子『服の裾に少し闇が付着しただけで、3日は寝込んだぞ』


魔剣士『ゲッ...そんな危険なもんを振り回してたのかァ...』


魔王子『それ以来は魔剣自体に注ぎ込むこと魔力をかなり抑えたさ』


魔剣士『...その抑えた魔力量で、俺様の"翼"をぶった切ったのかァ?』


魔王子『そう言うことになるが...あの魔剣に魔力を注ぎ込む事自体に臆病になっていたと言おう』


魔剣士『ケッ...まぁ自らを滅ぼすような魔剣には出会いたくねェな』


魔剣士『...つーことでェ、任せるぜェ?』


────ドクンッ...!

まるで心臓の鼓動のような音が鳴る。

魔剣士が握る異形の魔剣、それが答えた。


魔王子『...そういえば、魔剣士の魔剣...詳細を聞いたことがない』


魔剣士『あァ? 内緒だァ』ブンッ


────バコンッッッ!!

彼が魔剣を振るうと付与された爆が弾ける。

下位属性の剣気だというのに、魔王の顔に冷や汗を流れさせる。


魔王(この軌道...同化が不安定で生身の箇所を狙っているな...)


魔王「──厄介なッ...」


──■■■■ッッッ!

魔王が左手を強く降ると闇が放たれる。

そうすることで、魔剣士の攻撃は呆気なく破壊されてしまう。


魔王子『────そこだ』スッ


────□□...ッ!

────■■■■■ッッ!!

魔王子の剣気は間髪入れずに破壊される。

右手で放たれた闇は、光を苦しそうに飲み込んだ。
31 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 21:21:07.68 ID:czzKzwQ80

魔剣士『ハッ! 本当に余裕がねェんじゃねェのかァッ!?』


魔王「...うるさい竜だな、殺すぞ」


魔王子『そう簡単には殺させる訳にはいかん...』


両手を使うことで2人の剣気を殺す。

だが明らかに、状況は変化しつつある。

片手で済んでいたというのに急遽両手を強いられれば、当然魔王への負担は大きい。


魔剣士『オラァッ! どんどんいくぜェッ!!!』ブンッ


魔王子『──死ね□□□□□□』スッ


──バコンッッ! バコンッッ!!

──□□□□ッッ! □□□ッッ!

爆発と光がまるで弾幕のように襲いかかる。

前者ならともかく、後者には絶対に触れてはならない。


魔王「...ッッ!!」
 

────■■■ッッッ!! ■■■■ッッ!!

両手を的確に振り回すことで、前方からの剣気を闇で相殺させる。

だがどうして、どうしても通してしまう場面に陥る。


魔王(...捌く余裕がない、魔剣士の攻撃は受けるしかない)


たかが下位属性の剣気。

数万発も喰らうのなら話は別だが、数発程度の被弾は受けることができる。

我が身を犠牲にすることで魔王子の光に集中するつもりであった。


魔剣士『...へェ』


にやり、不敵な笑顔を見せる。

彼は熟知していた、己が魔王の立場ならばどうするかを。

ならばどうするか、魔剣士の剣の振り方が少し変化する。


魔剣士『────そこだァッ!』


──ブンッッッ!!

豪快でいて、緻密な風が飛ぶ。

魔王はそれを目視すると、自らの身体を差し出した。

たった一発、爆属性の剣気など取るに足らないはずだった。
32 : ◆O.FqorSBYM [saga]:2018/12/26(水) 21:22:38.24 ID:czzKzwQ80

魔王「────なぁッ!?」


──ぐにゅ...

柔らかな肉に、刃物が刺さりこむ音が身体の中から聞こえた。

なぜこのような痛みが生まれたのか。


魔王「────魔剣士ぃぃぃぃぃいいいいいいいいいッッッッ!!!」


魔剣士『おーこわ...気持ちよかったかァ?』


魔王子『...フッ、お前はそういう奴だったな』


魔王子『乱暴な素振りをしている分際で、小賢しいことを平気で熟す』


魔剣士『...褒めてんのかそれ?』


魔王「グゥゥゥウウウ...ッッッ!!」


腹部に刺さる歴代最強が体内へと潜り込む。

炎帝が見せたあの偏差魔法の如くの精度。

爆風により生まれた押し込む力が、折れた刀身に当たったのであった。


魔王子『────隙だらけだぞ』スッ


──□□□□ッッ!! □□□ッッ! □□□ッッッ!

痛みに喘ぎ魔剣士に怒りを向けている間。

その僅かな刹那に、ありったけの剣気が放たれる。

闇で相殺する暇など与えてくれない。


魔王「────ッ」


これを受けたら、死ぬ。

光で身体の自由を奪われ輝きの中に眠る鋭い剣気が身を裂く。

時間の流れが遅く感じてしまう、つまりは魔王という男は。


魔王(これが走馬灯とやらか、つまり死を感じているわけか...だが)


魔王「────まだ死ぬわけにはいかない」


────■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■...

彼の感情に比例して闇が姿を現した。

新たな魔法を発動したわけではない、これは魔王の意地。

その単純な理由で惨劇を生み出そうとしている、わずか一瞬で大量の闇がばら撒かれたのであった。
290.44 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)