バットマン「グランド……オーダー?」レオナルド「その3だね」

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2 : ◆GmHi5G5d.E [sage saga]:2018/11/20(火) 15:16:39.47 ID:Jv0JlffCO
バットマン「グランド……オーダー?」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1511494020/

バットマン「グランド……オーダー?」 マシュ「その2です」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1517495048/

前スレをば。ここまで長くなるとは……(想像力の欠如)
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/20(火) 17:25:23.43 ID:lg7jukWS0
そして気が付けば10スレ目
4 : ◆GmHi5G5d.E :2018/11/20(火) 19:14:44.01 ID:GYV8vN900


………………

霧「」ズォォォォォオ……

パラケルスス「……」タッタッ

パラケルスス「……」タッタッ……ピタッ

パラケルスス「……」ジッ


街「」…………


パラケルスス(……)


パラケルスス「……マキリ、聞こえますか」ピッピッ

通信機『パラケルススか。ああ、聞こえている』

パラケルスス「今すぐ『雷』の召喚に取り掛かって下さい。私はもう、戻れそうにない」

通信機『……そうか。分かった、召喚を開始する。さらばだパラケルスス』

パラケルスス「さようなら、マキリ」プツッ……


5 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:15:48.98 ID:GYV8vN900



パラケルスス「……」


パラケルスス(私に、その権利はない。私の魂には既に罪が染み付いた)

パラケルスス(やり直す事などできない。汚れた手で、美しい理想を作る……ああ、心地良い御題目だった)

パラケルスス(最後に……少しでも、貴方の理想を手伝わせてください、マキリ)


ホムンクルスA「……」ドシ、ドシ

ホムンクルスB「……」ズルズル……

ホムンクルス達「「「」」」ザッ、ザッ


パラケルスス「ここの守りを固めます。彼らをこの先へ行かせはしない」


6 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:16:19.15 ID:GYV8vN900



………………


ナーサリー「きゃっ!?」ドサァッ

ジャック「あぶない!」ガガァッ?

ホムンクルスD「……」ブォンッ

ジャック「うわっ!?」ドシャ、ゴロゴロッ

フラン「フンッ!」ガッ、グィィィ

ホムンクルスD「!?」ドシャシャシャシャシャ……

ホムンクルスE「!!」グォッ

ホムンクルスF「!!!」ドシィ?

フラン「ウゥ……!」ガギィィィィ?



ジキル(守りが明らかに固い。この先に敵の本拠地があるのか、それともブラフなのか……このままじゃ押し切られる!)


7 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:16:58.03 ID:GYV8vN900



ハイド(使えよ。あの薬を)

ジキル(……駄目だ! 逃げないと! あの薬には頼れない。絶対にダメだ!)


ジキル「皆っ、一旦屋内に退避しよう! フラン、また霧に電撃を通してもらえるか!?」

フラン「う、ウゥ……!」バチバチバチバチィ?


霧「」バチチチチチチチチチチチィ?


ホムンクルス達「「「」」」ヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂィ……


ジキル(この隙に、ブルースからもらったスモークペレットで……!)ドシュゥゥゥゥゥゥゥ……


ジキル「今だ皆、隠れよう!」

ジャック「うん!」

ナーサリー「分かったわっ!」

フラン「ウゥ……!」ヨロヨロ


8 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:17:27.46 ID:GYV8vN900



扉「」バタンッ


ジャック「はあ、はあ……」

ナーサリー「たい、へんね……数が多すぎて、相手取れないわ」

フラン「……ウゥ……」

ジキル「……このままじゃ進めない……」


ハイド(いつまで俺を否定してるつもりだ? 使えよ、俺がまたお前に教えてやる……肉を裂く快感、命が消える瞬間の恍惚! 覚えてるんだろ?)

ジキル(黙れ……僕はもうお前に頼らない、絶対に)

ハイド(忘れたなんて言わせねえ。俺はお前だ。罪は染み付いてる、そうだろう? 一度も二度も変わらねえさ……)


ジキル「……」


ジキル(落ち着け……恐怖ガスを吸い過ぎて、幻聴が酷くなってる……)


ハイド「俺が幻だとでも?」

9 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:17:54.59 ID:GYV8vN900



ナーサリー「え?」

ジキル「っ……なんでもない。なんでもないんだ」

ナーサリー「……ひどい汗よ、ミスタージキル」

ジキル「……」

ナーサリー「何だかよく分からないけど、休んだ方が良いなら……」


扉の外「」ドシ、ドシ……ドシ、ドシ


ジキル「いいや、移動しよう。このままじゃ見つかる」スタスタ


10 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:18:35.02 ID:GYV8vN900


ジキル(そうだ、分かってたハズだ。僕は逃げられない。因果応報だ。分かってる)スタスタ


ジャック「どうするの?」

ジキル「敵はまだ僕たちを見失ったままだ。このまま裏口から出て……見つからないように進んで、敵の本拠地を見つけよう。うまくいけばそのまま相手の企みを阻止できる」

ナーサリー「そう上手くいくかしら……」

ジキル「……速攻で叩けば何とかなるさ。さあ、行こう」

フラン「ウゥ!」コクコク


11 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:19:02.60 ID:GYV8vN900


………………


霧「」ズォォォォォオ……


ジキル「……」コツ、コツ……

ナーサリー「……」ソロソロ……

フラン「……」スタスタ

ジャック「……」ヒタヒタ……


街灯「」……



12 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:19:31.01 ID:GYV8vN900



ジキル(……静かだ)コツ、コツ……

ジキル(初めて殺人を犯した夜も、こんな静けさが漂っていた)

ジキル(ステッキで老人を殴り殺したんだ。今でも、鮮明にその感触を思い出せる。老人の命乞いも)

ジキル(僕は全てをハイドのせいにした。ハイドという人格がやったんだ。そう思い込んで、罪悪感を全て押し付けた。そして、その人格を封印した)

ジキル(……でも、僕も本当は、分かっていたのかもしれない)ピタッ


ジキル「……」

パラケルスス「……来ましたか、偽の希望を持つ者よ」


ジキル(いつか、過去が僕を殺しに来ると)


13 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:20:10.48 ID:GYV8vN900



パラケルスス「この先へ行かせる訳にはいきません。あなた方には、ここで消えて頂きます」

ナーサリー「待ち伏せられてたのね……」ジリッ

ジキル「どうして本拠地に戻ってないんだ? 折角スケアクロウが囮になってくれたっていうのに」

パラケルスス「……人は、過去からは逃れられません。私は罪を犯した。穢れた魂の持ち主が、理想の世界に居る事ができますか?」

ジキル「……!」

パラケルスス「一度罪を犯せば、元に戻る事はない。言ったハズです。悪に染まった魂を、善良な心は直視できないと。私は悪鬼のまま、ここで死ぬ」


14 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:20:41.18 ID:GYV8vN900



ジャック「……どうするの?」

ジキル「っ……やるしかない。皆構えて、彼を倒す!」

フラン「う、ウゥゥオォ!!」バチバチバチバチィ?

ナーサリー「植物園では後れを取ったけど、今回は!」


パラケルスス「無論、そう来るでしょう。ですが……これは、どうでしょうね」パチンッ


ホムンクルスA「……」ドシ、ドシ

ホムンクルスB「……」ドシ、ドシ

ホムンクルス達「「「」」」ザッ、ザッ、ザッ……


ジキル「なっ……」


ジキル(まだ、こんな量のホムンクルス達が……!?)


パラケルスス「さあ、……圧し潰しましょうか」スッ


15 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:21:29.44 ID:GYV8vN900


ホムンクルスA「オォォォォ!」ドォッ

ホムンクルスB「アァァァァァッ!!!」グォンッ

フラン「グゥッ……」ガギャァ?

ホムンクルスC「……!!」ブォン?

フラン「がっ!?」ドシャシャシャァ……


ナーサリー「フランッ!」ギュギュギュ、ドドドドォッ

ホムンクルスC「ぐぎ……」ドシャシャシャァ

ホムンクルスX「!」バシィィィ?

ナーサリー「うッ」ガガッ、ゴロゴロ……


ジャック「くっ……」ガガッ、ガギギッ

パラケルスス「やはり貴方は特別厄介なようだ」ガィン、ギギィ?


ホムンクルスH「……」ドシ、ドシ

ホムンクルスI「……」ドシ、ドシ

ホムンクルスJ「……」ドシ、ドシ



16 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:22:07.56 ID:GYV8vN900


ジキル「皆っ、持ちこたえてくれ……うぐっ!?」ドゴォッ

ホムンクルスL「……」ブンッ

ジキル「ぐわぁっ!?」ドシャァ?


ナーサリー「じ、ジキル!」

フラン「ウゥ……!?」



17 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:22:34.40 ID:GYV8vN900


ホムンクルスM「……」ドシ、ドシ

ホムンクルスN「……」ドシ、ドシ

ジキル「う……くっ……」

ホムンクルスL「……」ドシン

ジキル「う、ぐおおぉ……!」グググ……


ジキル(駄目だ、重い。足すら退かせられない。僕は、僕はどうしたら……)


(((分かってるだろ?)))


18 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:23:03.31 ID:GYV8vN900



(((俺を解き放て。薬だ。お前は逃げられねえ)))

ジキル(……やっぱり、そうなのか……)

(((そうだ。殺人鬼になるんだ、ジキル。恐怖ガスを吸ったところで、お前が感じてたのは仮初の恐怖。そんな恐怖、すぐに戻れる快感に塗りつぶされるさ)))

ジキル(僕は、罪を犯したから、だから)

(((ハイドになれ。片付けてやる。俺が、片付けてやる)))

ジキル(だから、二度と戻れないのか)


ドォン……?


19 : ◆GmHi5G5d.E [sage saga ]:2018/11/20(火) 19:25:07.97 ID:Jv0JlffCO
!!→?に変換されてますね……緊張感が台無しだ。最初から投稿し直すのでここまで全部無かったことにしてください。お願いします。キレそう。
20 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:25:58.37 ID:GYV8vN900


………………

霧「」ズォォォォォオ……

パラケルスス「……」タッタッ

パラケルスス「……」タッタッ……ピタッ

パラケルスス「……」ジッ


街「」…………


パラケルスス(……)


パラケルスス「……マキリ、聞こえますか」ピッピッ

通信機『パラケルススか。ああ、聞こえている』

パラケルスス「今すぐ『雷』の召喚に取り掛かって下さい。私はもう、戻れそうにない」

通信機『……そうか。分かった、召喚を開始する。さらばだパラケルスス』

パラケルスス「さようなら、マキリ」プツッ……


21 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:26:24.73 ID:GYV8vN900



パラケルスス「……」


パラケルスス(私に、その権利はない。私の魂には既に罪が染み付いた)

パラケルスス(やり直す事などできない。汚れた手で、美しい理想を作る……ああ、心地良い御題目だった)

パラケルスス(最後に……少しでも、貴方の理想を手伝わせてください、マキリ)


ホムンクルスA「……」ドシ、ドシ

ホムンクルスB「……」ズルズル……

ホムンクルス達「「「」」」ザッ、ザッ


パラケルスス「ここの守りを固めます。彼らをこの先へ行かせはしない」


22 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:27:06.93 ID:GYV8vN900



………………


ナーサリー「きゃっ!?」ドサァッ

ジャック「あぶない!」ガガァッ!!!

ホムンクルスD「……」ブォンッ

ジャック「うわっ!?」ドシャ、ゴロゴロッ

フラン「フンッ!」ガッ、グィィィ

ホムンクルスD「!?」ドシャシャシャシャシャ……

ホムンクルスE「!!」グォッ

ホムンクルスF「!!!」ドシィ!

フラン「ウゥ……!」ガギィィィィ!!



ジキル(守りが明らかに固い。この先に敵の本拠地があるのか、それともブラフなのか……このままじゃ押し切られる!)


23 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:27:51.18 ID:GYV8vN900



ハイド(使えよ。あの薬を)

ジキル(……駄目だ! 逃げないと! あの薬には頼れない。絶対にダメだ!)


ジキル「皆っ、一旦屋内に退避しよう! フラン、また霧に電撃を通してもらえるか!?」

フラン「う、ウゥ……!」バチバチバチバチィ!!


霧「」バチチチチチチチチチチチィ!


ホムンクルス達「「「」」」ヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂィ……


ジキル(この隙に、ブルースからもらったスモークペレットで……!)ドシュゥゥゥゥゥゥゥ……


ジキル「今だ皆、隠れよう!」

ジャック「うん!」

ナーサリー「分かったわっ!」

フラン「ウゥ……!」ヨロヨロ


24 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:28:23.01 ID:GYV8vN900



扉「」バタンッ


ジャック「はあ、はあ……」

ナーサリー「たい、へんね……数が多すぎて、相手取れないわ」

フラン「……ウゥ……」

ジキル「……このままじゃ進めない……」


ハイド(いつまで俺を否定してるつもりだ? 使えよ、俺がまたお前に教えてやる……肉を裂く快感、命が消える瞬間の恍惚! 覚えてるんだろ?)

ジキル(黙れ……僕はもうお前に頼らない、絶対に)

ハイド(忘れたなんて言わせねえ。俺はお前だ。罪は染み付いてる、そうだろう? 一度も二度も変わらねえさ……)


ジキル「……」


ジキル(落ち着け……恐怖ガスを吸い過ぎて、幻聴が酷くなってる……)


ハイド「俺が幻だとでも?」

25 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:28:49.33 ID:GYV8vN900



ナーサリー「え?」

ジキル「っ……なんでもない。なんでもないんだ」

ナーサリー「……ひどい汗よ、ミスタージキル」

ジキル「……」

ナーサリー「何だかよく分からないけど、休んだ方が良いなら……」


扉の外「」ドシ、ドシ……ドシ、ドシ


ジキル「いいや、移動しよう。このままじゃ見つかる」スタスタ


26 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:29:21.12 ID:GYV8vN900



ジキル(そうだ、分かってたハズだ。僕は逃げられない。因果応報だ。分かってる)スタスタ


ジャック「どうするの?」

ジキル「敵はまだ僕たちを見失ったままだ。このまま裏口から出て……見つからないように進んで、敵の本拠地を見つけよう。うまくいけばそのまま相手の企みを阻止できる」

ナーサリー「そう上手くいくかしら……」

ジキル「……速攻で叩けば何とかなるさ! さあ、行こう!」

フラン「ウゥ!」コクコク


27 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:29:47.39 ID:GYV8vN900


………………


霧「」ズォォォォォオ……


ジキル「……」コツ、コツ……

ナーサリー「……」ソロソロ……

フラン「……」スタスタ

ジャック「……」ヒタヒタ……


街灯「」……



28 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:30:15.49 ID:GYV8vN900



ジキル(……静かだ)コツ、コツ……

ジキル(初めて殺人を犯した夜も、こんな静けさが漂っていた)

ジキル(ステッキで老人を殴り殺したんだ。今でも、鮮明にその感触を思い出せる。老人の命乞いも)

ジキル(僕は全てをハイドのせいにした。ハイドという人格がやったんだ。そう思い込んで、罪悪感を全て押し付けた。そして、その人格を封印した)

ジキル(……でも、僕も本当は、分かっていたのかもしれない)ピタッ


ジキル「……」

パラケルスス「……来ましたか、偽の希望を持つ者よ」


ジキル(いつか、過去が僕を殺しに来ると)


29 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:30:43.67 ID:GYV8vN900



パラケルスス「この先へ行かせる訳にはいきません。あなた方には、ここで消えて頂きます」

ナーサリー「待ち伏せられてたのね……」ジリッ

ジキル「どうして本拠地に戻ってないんだ? 折角スケアクロウが囮になってくれたっていうのに」

パラケルスス「……人は、過去からは逃れられません。私は罪を犯した。穢れた魂の持ち主が、理想の世界に居る事ができますか?」

ジキル「……!」

パラケルスス「一度罪を犯せば、元に戻る事はない。言ったハズです。悪に染まった魂を、善良な心は直視できないと。私は悪鬼のまま、ここで死ぬ」


30 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:31:20.40 ID:GYV8vN900



ジャック「……どうするの?」

ジキル「っ……やるしかない。皆構えて、彼を倒す!」

フラン「う、ウゥゥオォ!!」バチバチバチバチィッ

ナーサリー「植物園では後れを取ったけど、今回は!」


パラケルスス「無論、そう来るでしょう。ですが……これは、どうでしょうね」パチンッ


ホムンクルスA「……」ドシ、ドシ

ホムンクルスB「……」ドシ、ドシ

ホムンクルス達「「「」」」ザッ、ザッ、ザッ……


ジキル「なっ……」


ジキル(まだ、こんな量のホムンクルス達が……!?)


パラケルスス「さあ、……圧し潰しましょうか」スッ


31 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:32:08.23 ID:GYV8vN900


ホムンクルスA「オォォォォ!」ドォッ

ホムンクルスB「アァァァァァッ!!!」グォンッ

フラン「グゥッ……」ガギャァッ!

ホムンクルスC「……!!」ブォン!

フラン「がっ!?」ドシャシャシャァ……


ナーサリー「フランッ!」ギュギュギュ、ドドドドォッ

ホムンクルスC「ぐぎ……」ドシャシャシャァ

ホムンクルスX「!」バッシィィィ

ナーサリー「うッ」ガガッ、ゴロゴロ……


ジャック「くっ……」ガガッ、ガギギッ

パラケルスス「やはり貴方は特別厄介なようだ」ガィン、ギギィッ


ホムンクルスH「……」ドシ、ドシ

ホムンクルスI「……」ドシ、ドシ

ホムンクルスJ「……」ドシ、ドシ



32 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:32:34.19 ID:GYV8vN900


ジキル「皆っ、持ちこたえてくれ……うぐっ!?」ドゴォッ

ホムンクルスL「……」ブンッ

ジキル「ぐわぁっ!?」ドシャァッ


ナーサリー「じ、ジキル!」

フラン「ウゥ……!?」



33 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:33:08.73 ID:GYV8vN900


ホムンクルスM「……」ドシ、ドシ

ホムンクルスN「……」ドシ、ドシ

ジキル「う……くっ……」

ホムンクルスL「……」スッ……ドシン

ジキル「う、ぐおおぉ……!」グググ……


ジキル(駄目だ、重い。足すら退かせられない。僕は、僕はどうしたら……)


(((分かってるだろ?)))


34 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:33:42.50 ID:GYV8vN900



(((俺を解き放て。薬だ。お前は逃げられねえ)))

ジキル(……やっぱり、そうなのか……)

(((そうだ。殺人鬼になるんだ、ジキル。恐怖ガスを吸ったところで、お前が感じてたのは仮初の恐怖。そんな恐怖、すぐに戻れる快感に塗りつぶされるさ)))

ジキル(僕は、罪を犯したから、だから)

(((ハイドになれ。片付けてやる。俺が、片付けてやる)))

ジキル(だから、二度と戻れないのか)


ドォン……!


35 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:34:09.48 ID:GYV8vN900


ジキル「え?」

ホムンクルスL「……」グラリ、ドシャァ

ジキル「こ、これは……」


???「撃つの自体が久々だったから、外さないかと冷や冷やしてしまったな。だが、これで元軍人の面目躍如と言っていいだろう」

ジキル「貴方、は……」

ワトソン「やあジキル博士、事件の渦中に君達ありだな!」


36 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:34:50.30 ID:GYV8vN900



パラケルスス「……あれは」

ジャック「よそみッ!」タタッ、ブゥンッ

パラケルスス「チィッ」ガギギギィ



ワトソン「くっ……」ドォンドォン、ヒュンッ

ホムンクルスM「……」バタリ

ホムンクルスN「……」ドッサァン……


ワトソン「ジキル博士、立てるか!?」

ジキル「……ぐっ、くっ……無理です……」

ワトソン「一旦隠れて体勢を立て直そう、行くぞ!」ガシ、ズルズルズル

ジキル「……」ズサササササァ……

ワトソン「……失礼、ズボンに傷が付いても許してくれたまえ!」ズルズルズル


37 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:35:35.11 ID:GYV8vN900


ワトソン「よし、この物陰なら……傷の具合を診る、動かないでくれ」

ジキル「……僕は、大丈夫です。放っておいてください」

ワトソン「何を言ってる、助けない訳にいくか。……ふむ……肋骨に衝撃を受けたな、ヒビが入っているかもしれない。息をしやすいように上体を起こすぞ」グイ

ジキル「うっ……」ズリ……

ワトソン「……手ひどくやられたな。一旦麻酔を打つぞ」カチャカチャ

ジキル「……」


38 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:36:34.11 ID:GYV8vN900



ワトソン「……どうだ、こうして治療してるし……僕にも、君達が戦う理由を教えてくれても良いんじゃないか」プスッ

ジキル「……僕たち……」

ワトソン「……」

ジキル「……僕は、もう戦えません。ワトソン医師、助けて頂いてありがとうございます。ですが、逃げて下さい」

ワトソン「……どうしたんだ? 戦えないとはどういう事なんだ、こうやって治療を……」

ジキル「……一度罪を犯せば、元に戻る事はない」

ワトソン「……」

ジキル「……僕は悪鬼のまま、ここで死ぬ。良いんです。もう、戻れはしないから」


39 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:37:05.79 ID:GYV8vN900



ワトソン「……そうか。ジキル博士というのは、成程、やっぱりジキルとハイドの、あのジキル博士だったのか」

ジキル「……知って、たんですね」

ワトソン「……」

ジキル「……」


40 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:38:35.13 ID:GYV8vN900



ワトソン「小説というのは奇妙なものなんだ、ジキル博士」

ジキル「……」

ワトソン「私が書いた小説は、たいてい犯人が罪を犯す。そしてホームズが鋭い推理で犯人を追い詰め、罪を認めさせて終わらせる。そこまでなんだ、殆どの人間が知れるのは」

ジキル「…………」

ワトソン「でも人生はそこで止まりはしない。たとえどんな犯人が、どんな罪を犯して、どんな刑を言い渡されても、たとえ絞首刑だったとしても、牢の中で改心するヤツも居る。僕も、そんなヤツを何人も見てきた」

ジキル「……だから、僕もやり直せると?」

ワトソン「違う、やり直せはしない。死人が出た。誰もその人間の生を償えないだろう、ジキル博士。貴方はそれを背負っていくんだ」

ジキル「……」

ワトソン「だけどな、博士……人間の本当の価値は、何をしたか、じゃあない。何をしようとしてるか、なんだ」


41 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:39:51.73 ID:GYV8vN900


ジキル「……」

ワトソン「戦争ではな、博士。僕も沢山殺して来たよ。今でも夢に見る。死ぬ直前の敵兵の、懇願するような目を思い出す。でも、それだけで今の僕を作る事なんてできない。そうだろ博士」

ジキル「……肋骨にヒビが入ってるのに、立てって言うんですね」

ワトソン「それは、うぅむ……」

ジキル「冗談です。……ありがとうございます、博士」ムクリ、ゴソ……

ワトソン「いや、礼を言われるような事じゃないさ。……なんだその試験管は?」

ジキル「少し、変身します」



42 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:40:51.05 ID:GYV8vN900



 獣じみた声が、濃霧のしじまを震わせた。

「今のは……?」

 首を傾げ、建物の陰を見つめるパラケルスス。その足元には、既に打倒されたジャックが横たわる。このままトドメを刺すところだったが、それを取りやめ、異様な威圧感の出どころを探る。

 次の瞬間、飛び出した影あり。それはナイフを構え、赤い瞳の残光を霧中に残し、凄まじいスピードでパラケルスス目掛けて飛び掛かった。

「っ」

 パラケルススは短剣でナイフを受け止め、突進をいなす。受け流された影は地面に手をつき、石畳を抉りながら鬼じみたターンで再度襲い掛かる。魔術師はギリギリで受け、ナイフの切っ先を弾き逸らした。

 散る火花。克明に映し出された凄惨な笑み。ジキル博士の顔を持ちながら、それはもはやジキルではなかった。パラケルススの背を恐怖が駆け抜ける。

「とうとう出て来ましたか」
「待ちくたびれたかよ、説教野郎」

 ハイドは笑う。笑い、蹴りを繰り出す。パラケルススは飛び退き、魔法陣を……

「っ」

 一瞬で危険を察知したパラケルススは短剣を打ち振り、飛来した弾丸を叩き切る。物陰で銃を構えているのは、ワトソン医師だ。そして……

「へッ、余所見したか?」

 ぞわり。魔術師は背後へ短剣を突き出した。いや、突き出そうとした。その時既に、パラケルススの胸からナイフの刃が飛び出していた。


「……申し訳、ありません」


 その死の瞬間、パラケルススの……おのれの罪が許されぬものと信じて疑う事のなかった魔術師の口から、謝罪が漏れた。それは理想の向こうへと歩む同志へ向けたものか、それとも顔もかすむ誰かへ向けた謝罪だっただろうか。それを知る術はもはやない。

 呆気ないほど静かに、魔術師は倒れ伏した。


43 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:41:51.20 ID:GYV8vN900


ハイド「……ケッ、つまらねえな」

ワトソン「終わった……か?」

ハイド「おう、俺が終わらせてやった。おいジャック、ナーサリー、フラン。起きろ行くぞ」

ジャック「……う、うぅん……?」

ナーサリー「ちょっと、まだこっちは終わってないのだけど!」ギュドドッ

ホムンクルス達「「「」」」ドシ、ドシ

フラン「ウゥゥォォォ!」ブンブンッ


ハイド「チッ……いつまでも雑魚に構ってんじゃねえ! 行くぞ!」スタスタ

ナーサリー「ちょっと……もう!」タッタッ

フラン「ウゥゥ!」ダッ

ジャック「う……」

ワトソン「ああ、あー……来なさいキミ、危険だ!」ガシッ

ジャック「……ありがとう、おじちゃん……」

ワトソン「……おにいさんだ!」グイッ


ワトソン(ああもう、ジキル博士が活躍した手前、元殺人鬼のこの少女に文句を付けるわけにも……)


ワトソン「……これが終わったら覚えてろよ!!」ダダッ

ジャック「??」グラグラ


44 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:42:57.78 ID:GYV8vN900



ハイド「……ふぅん、案外すぐ着いたな」

ワトソン「はーっ、はーっ、僕も歳かな……」

ジャック「もっと背伸びして!」グラグラ

ワトソン「肩車になってるし……!」

ナーサリー「次は私! 次は私よ!」

フラン「ウゥ……」

ハイド「おい、敵の本拠地に降りるんだ。もうちょっと緊張感持てよ……もしもし」

ドクター『もしもし、聞こえてるよ』

ハイド「そろそろ敵の本拠地が地下にある、観測してくれ」

ドクター『はいよ、ちょっと待っててね……何だかワイルドになったねジキルくん』

ハイド「黙って仕事できねえのか」

ドクター『えっ』


45 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/20(火) 19:44:13.20 ID:GYV8vN900


ドクター『……よし、観測完了! どうやら大きな空間がぽっかり地下に空いてるみたいだ、魔力反応はひとつ……サーヴァントじゃないな。聖杯反応もある、黒幕が居るぞ!』

ハイド「へえ、おもしれえ。よっしゃ、ブルースの奴にもここの座標送っとけ。俺らで攻め込んでやる」

ドクター『え、本気!? 増援を待った方が……』

ハイド「悠長な事言ってんじゃねえ! 準備が整ってねえならここで叩いてやる。行くぞお前ら、誰が最初に黒幕を潰すか勝負だ!」

ジャック「しょうぶ!?」ピョコン

ワトソン「いやそれはどうかと思うぞ」

ハイド「相手はたった一人なんだろ、行くぜ!」ダッ

ジャック「わたしもいく!」ピョンッ


ワトソン「……君らはいつもこうなのか?」」

ナーサリー「大丈夫よおじさま、落ち着いてる時は落ち着いてるもの」

ワトソン「おじ……」

フラン「ウゥ……」スタスタ

ナーサリー「私も行かなきゃ……」スタスタ

ワトソン「……」


ワトソン「まさかホームズと一緒な方が安心できる、なんて思わされるとはなぁ」ポリポリ



46 : ◆GmHi5G5d.E [sage saga]:2018/11/20(火) 19:46:07.30 ID:GYV8vN900
今回の更新はここまでです。そして訂正です。

44ですが、

ハイド「そろそろ敵の本拠地が地下にある、観測してくれ」

ハイド「敵の本拠地は地下にあるみてえだ、観測頼むぜ」

に脳内変換願います。今回全体的にボロッボロで申し訳ない……次から気を付けます
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/20(火) 23:17:04.69 ID:Cacrf9FkO
乙乙
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/21(水) 15:42:31.48 ID:kD0QIQ/A0
乙!
おじさん呼びに内心ショックなワトソンくんすこ……
ハイドも出てきてどうなるかなー
次回も楽しみにしてます!
49 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:48:22.20 ID:TJuPBE+k0


………………


 私が恐怖を学んだのは、何歳の時だっただろうか。

 まだ少年だった頃、父の『実験』の対象にされた私は、モルモットとして恐怖ガスを吸引した。見慣れた父親の顔は歪み果て、夕暮れを飛ぶ鳥すら酷く恐ろしく見えた。

 誰かが叫んでいた。喉がかれるまで、自分が恐怖の叫びをあげていると気付けなかった。恐怖は無慈悲で、止まらなかった。その時私は、醜い夕空が世界の真理だと知った。


 それから何十年経っただろうか。私の傍らには常に恐怖があった。いや、私だけではなく、全ての人間は恐怖から逃れられないのだ。恐怖を制御する術を身に付けた今でも、歪み果てた父の顔は忘れられなかった。


 誰かが叫んでいるのが聞こえる。私の喉はかれてしまった。



50 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:48:58.82 ID:TJuPBE+k0



………………ジキル達によるパラケルスス撃破の、十数分前。


バットマン「……ふむ……」ザリッ


バットマン(スケアクロウの血痕はこちらへ続いている。今のところ、レーダーに表示されている予測進路と大差ないか……)


マシュ「……」フラッ

モードレッド「っと、おい平気か……」ガシッ

マシュ「は、はい。大丈夫です、すみません」

モードレッド「……」


バットマン「このまま進むぞ。警戒を怠るな」スクッ

モードレッド「分かってる」


51 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:49:24.90 ID:TJuPBE+k0


モードレッド「なあ、その……お前は怖くねえのかよ、ブルース」

バットマン「……何の話だ」

モードレッド「この霧だよ。人間が吸っちまったらブッ倒れちまうくらいキツイんだろ」

バットマン「当然、恐れている」

モードレッド「……何を?」

バットマン「……」

マシュ「……」


52 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:49:56.81 ID:TJuPBE+k0


モードレッド「……」

モードレッド「……オレは、オレはな、ブルース」

モードレッド「オレはずっと、憧れの影だった。要らねえって言われ続けて、余計な存在だって言われ続けて……それでも、オレは騎士として認めて欲しかったんだ」

モードレッド「憧れは簡単に歪んじまった。最初、オレの事、疑ってたよな。オレだって分かってる。裏切ってアーサー王を殺した騎士のオレを、信用するなんておかしい事だ」

モードレッド「……それでも、一緒に戦えて、嬉しかったぜ」


53 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:50:24.78 ID:TJuPBE+k0


バットマン「……そうか」

モードレッド「そうだ。そんだけだ」

バットマン「……ベストは尽くす。お前達を死なせない」

モードレッド「それはオレとマシュの台詞だっての、なあ?」

マシュ「あ、は、はい! もちろんマスターは守ります!」

バットマン「頼りにしている。……それと」

モードレッド「?」

バットマン「私も、お前達と共に戦えるのは光栄だ。必ず世界を救うぞ」

モードレッド「……トーゼンだろ!!」バシィッ

バットマン「ふっ……」

マシュ「フフ」クスクス



レオナルド「……ブルースのスーツが凄まじい衝撃を受けたってデータが来たんだけど、あの時代はトラックでも走ってたかな……?」



54 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:50:50.77 ID:TJuPBE+k0


バットマン(精神面への影響は、緩和剤のお陰でほぼ乗り切ったか)

バットマン(あとは、どれだけメンタル管理をうまく行えるか。今はとても好ましい精神状態だが、肝心のスケアクロウを見つけた時にボロボロでは意味がない)

バットマン(……ここばかりは、計算の出番か)


(((逃げろマーサ、ブルース……)))


バットマン(……私が何を恐れているか、か)

バットマン(いや、今考えるべきではない)


55 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:51:31.50 ID:TJuPBE+k0



スケアクロウ「……ハーッ、ハァーッ……」


スケアクロウ(追いつかれれば、今度こそ死ぬか……しかし、ただで死ぬわけにはいかん)ゴソ

スケアクロウ(……まだ、スケアビーストに変身するための薬は残っている。身体への負担は尋常ではない。負ければ当然死ぬだろうが、もし勝てても……)カチャ……


スケアクロウ「……ぐっ……」プシュッ……


スケアクロウ(……バベッジ、お前は最期に何を見た。この世を計算し尽くしてしまったお前は、絶望のうちに死んでしまったのか)グ、グググ……


スケアクロウ(パラケルスス。お前は、自分の罪を許して死んで行けるのか)ググググ……!


スケアクロウ(……マキリ。お前が最期まで、自分に失望しない事を祈ろう)バキバキ、バキ……


スケアビースト「……グルルルルロァ……」フシュルルルルル……

スケアビースト「ウゴォォォォォァァァアアアアアアア!!!」



56 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:51:57.57 ID:TJuPBE+k0



バットマン「!! 聞こえたか」

マシュ「はい! 近いです!」

モードレッド「チッ、街に反響して場所が特定できねえ! どっから来やがる!?」

バットマン「落ち着け、背中合わせだ!」スッ

マシュ「了解!」ドッ

モードレッド「おう!」ガッ

バットマン「全員聴覚を研ぎ澄ませろ、どこから来てもおかしく……」


ドンッ!


マシュ「今のは!?」

バットマン「っ、上だ!!」バッ

モードレッド「野郎!?」バッ

スケアビースト「グルォォォォォォォ!!!」ヒュゥゥゥゥゥッ



57 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:52:23.68 ID:TJuPBE+k0



スケアビースト「グンッ!!!」ドッガァ!!

モードレッド「ちいっ」ゴロゴロッ

バットマン「くっ、無事かマシュ!」ゴロゴロ、ガバッ

マシュ「は、はい。ありがとうございます、マスター」

バットマン「立て! 来るぞ!」

スケアビースト「グ……ググググ……真理モ見エヌ、愚者共……!」フシュルルルルル……

モードレッド「剣以上の真理なんざあるか!!!」ダッ


58 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:53:26.40 ID:TJuPBE+k0



………………


ハイド「……そうか、それじゃアンタが今回の黒幕って事か?」

???「そうか……お前達がここに来たという事は、パラケルススは敗れたか」

フラン「……う、ウゥ……」

ワトソン「失礼、初対面なら名乗るのが常識でしょうが、今回の黒幕相手なら私もうっかり礼儀を忘れそうでね」カチャリ

???「物騒なものを向けないでくれ、ワトソン医師。私は確かに悪逆の徒であるが、しかし悪には悪の理由がある。私はマキリ・ゾォルケン」

ワトソン「まき……」

ドクター『……気を付けて、その人から聖杯反応!』

ワトソン「聖杯……?」

ハイド「こっちの話だ。やっぱ間違いねえみてえだな」


59 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:53:53.03 ID:TJuPBE+k0



巨大機械「」ボシュッ、ボシュッ、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


ナーサリー「なんて大きな機械……アレが霧を産み出してるのね」

ジャック「……いやなにおい」

マキリ「恐怖ガスでの緩慢な世界崩壊は、あくまで紳士的なやり方だった」

ワトソン「紳士的? 紳士的だって?」

ハイド「おい、」

ワトソン「紳士的だって!? 貴様よくも……よくもそんな事が言えたものだな! どの口が……アレのせいで何人の人間が……貴様……!」ギリィ

マキリ「無論、紳士的だ。だが、そちらは我々を止める気らしい。ならば我々としても、少々手荒なやり方をするしかなくなった」


60 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:54:20.17 ID:TJuPBE+k0



ハイド「で、俺らが黙ってお前に『手荒なやり方』をさせるとでも思ってんのか?」

マキリ「もう遅い。全ての工程は終わった後だ。今、全ての霧が、このロンドンの中心部へ向かって集まってきている」

ハイド「……どういう事だ。テメェらは何をするつもりだ」

マキリ「君達も見てきたハズだ。その、フランケンシュタインの怪物でな」

フラン「……?」

マキリ「『電気』だ。この霧は、電気を受けて活性化する」

ハイド「……!!」

ドクター『まさか……!!』


61 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:54:47.38 ID:TJuPBE+k0



ハイド「ナーサリー、援護しろ! ジャック、フラン、やるぞ!」

マキリ「さあ来たれ、我らが最後の英霊よ。我が悪逆、完成させるに足る星の開拓者よ。
汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者」

ハイド「オラァァァァッ!!!」ギュォッ

ジャック「たあっ!!」ギュンッ

ナーサリー「そこ!!」ギュドドド……

フラン「ウゥ!!!」ブォンッ


マキリ「汝三大の言霊を纏う七天! 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!」ギュォォォォォォォォォォォッ


ドドォォォォォォォォ……


62 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:55:14.27 ID:TJuPBE+k0



ゴォォォォォォォォ……!!


ジャック「きゃっ!?」ブワッ

ハイド「うぐっ!?」ドシャシャッ

ナーサリー「ひゃっ……!!」ドシャァ

フラン「ウゥ……!」ググッ

ワトソン「なっ、いったい……」



バチ、バチバチ……バチバチバチ……


???「────……」バチバチ、バチチィ……

マキリ「……来たか。雷電の化身、二コラ・テスラ」


63 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:55:42.74 ID:TJuPBE+k0



テスラ「……私を。呼んだな」

マキリ「やるべき事は分かっているな、天才よ。地上へ行き、雷を落とせ。それだけで、ロンドン中心部へ固まった霧は爆発的に広まり、世界を飲むだろう」

テスラ「良かろう。私は、雷電であるがゆえに」スタ、スタ……


ワトソン「ま、待て!! 急に現れて、世界を滅ぼすだと!? 私が見逃すものか!」カチャリ


テスラ「……勇猛なる紳士よ、同胞よ。私とて抗えるものなら抗おう。しかし……」

マキリ「無駄だ。彼の召喚式には狂化を加えた。彼が止まる事はない」


ワトソン「……! 人の意思を玩具のように扱う外道め!」


マキリ「何とでも言うが良い。理解は求めていない」


64 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:56:09.73 ID:TJuPBE+k0



ハイド「そうかい、それじゃあ俺達がさっさとあの雷野郎を片付けても良いってワケだな……!」

マキリ「無論、させん。そのために私が居るのだ」

ハイド「お前に止められるかよ!」

マキリ「止めるのは私ではない。……破滅の空より来たれ、我らが魔神……」グ、ググググググググ……!!!


マキリ?「う、うぅ……」ズム、ズムムムムム……!!


ハイド「なんだこりゃあ……」

ワトソン「肉の、柱……!?」

ドクター『……この反応、まさか……!』


65 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:56:36.62 ID:TJuPBE+k0



魔神柱「七十二柱の魔神が一柱。我が名は魔神バルバトス」


ジャック「目が、たくさんついてる……」

ナーサリー「ユニークな見た目ね」

フラン「ウゥ!」スッ


バルバトス「これがマキリの、悪逆の到達点。我らが王に見いだされた、ねじまがった善の形。醜悪の極みである」

テスラ「……」

バルバトス「行け、雷電の化身よ。時間は稼ごう。新たな世界のために」

テスラ「……」スタ、スタ



66 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:57:02.43 ID:TJuPBE+k0



ハイド「あー……つまり?」

ワトソン「この醜いのを片付けて、さっさとあの雷男を止める! そういう事だ!」

ハイド「アァ、分かりやすくなったぜ」ムクリ

ジャック「かいたいするよ!」

フラン「ウゥ!!」グッ

ナーサリー「負けないんだから!」


バルバトス「何を知り、何を望もうとも。友は全て消えゆく」ズォォォォォォ……


67 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:57:28.96 ID:TJuPBE+k0



バットマン「っぐぅ!?」ゴッシャァァァァ!

スケアビースト「グロァァァァァァ!!」

バットマン「くっ……!」ムクッ、ダダッ


バットマン(ヤツの身体から常時漏れ出す、濃厚な恐怖ガスが厄介だ……マシュもモードレッドも動きを鈍らされ、まともに戦えていない!)ダダダダダ


モードレッド「っだりゃああああああ!!!」ブンッ

スケアビースト「無駄、ダ!!」ガッ!

モードレッド「クソ!!」ガガッ、ズシャシャッ

マシュ「たあっ!!」ヒュンッ

スケアビースト「無駄ダト、言ッテイル!!」ガッ、グインッ

マシュ「きゃっ!?」ドシャッ

モードレッド「うおっ!?」ドガガッ



68 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:57:54.99 ID:TJuPBE+k0



霧「」ズ……ググググググォォォォォォォオオ……


バットマン「!?」


バットマン(何!? 霧が、引き始めた……!?)


バットマン「どういう事だドクター、ジキル達がやったのか!?」

ドクター『違う! これは敵の手の内だ! 霧がロンドン中心部へ……ああもう、とにかく止めないと不味い! 今対応策を探してる!』


スケアビースト「……モウ、遅イ。バットマン」

バットマン「……」


69 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:58:21.09 ID:TJuPBE+k0



スケアビースト「人ハ、恐怖ニ抗ウ術ヲ持タナイ。見タハズダ、醜ク争ウ人ノ本性ヲ」

スケアビースト「オ前達ノ希望ハ、ニセモノダ……!」


モードレッド「ダラァァァァァッ!!!」ブンッ

スケアビースト「グロァッ!」ガシィ!

モードレッド「ちくしょ……テメェ、離せ……!」

バットマン「モードレッド!!」ダッ

スケアビースト「フン……」ゲシッ

バットマン「うっぐぉ……!?」ドシャァッ


70 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:58:46.95 ID:TJuPBE+k0



スケアビースト「言ッタダロウ。オ前達ノ希望ハ、ニセモノダ」

バットマン「ぐっ……」プルプル


スケアビースト「……ダカラ、コンナ風ニ簡単ニ、折レル」グイッ、プスッ……

モードレッド「ぐぅっ!?」

バットマン「っ、モードレッ……」

バットマン(しまった、あの注射は恐怖ガスの濃縮液……!)


マシュ「モードレッドさん!!」ダンッ、シュバッ

スケアビースト「ソラ、次ダ」ガガッ

71 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:59:13.07 ID:TJuPBE+k0



バルバトス「無益だと、分からないらしい」グ、ググググ……


フラン「ウアアアアアアアア!!!」バチバチバチィ!

ナーサリー「くっ!!」ギュドドドドド!


ワトソン「……よし、治療完了だ!」

ジャック「ありがとう!」ダダッ

ハイド「オラァ!」ズバァッ


バルバトス「無益。何もかも。我は全てを知るがゆえに、全てを嘆くのだ。望まれぬ存在共よ」



72 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 02:59:42.69 ID:TJuPBE+k0




バルバトス「ある者は不完全な物語として生まれ、その不完全性ゆえに何者かに強く依存する」ドドドォッ

ナーサリー「……!!」ギュギュギュ、ギャリギャリギャリィ!

バルバトス「またある者は、母にすら求められず、生まれる事すら許されず」ボボボボボボ……

ジャック「っ!!」ギャギャギャンッ

バルバトス「またある者は、イヴとして作られながら涙すら流せず」

フラン「ウ、ウゥァァ!!」ブォンッ







バットマン「よせスケアビースト!!!」


スケアビースト「サア、恐怖ヲ思イ出セ……!」プス、ブォンッ

マシュ「ぐぅぅ……!!?」ドシャシャ、ゴロゴロ……

バットマン「マシュ……!!」

マシュ「う、う……うぅぅぅぅ……!!!」ガクガクガクガク……

マシュ(先輩……先輩……!)ガクガク、ガク……







バルバトス「……ある者は、身勝手な実験の失敗のせいで、生まれながらに寿命すら短いと決まっている。望まれぬ命というのは、実に哀れだ」

ハイド「……」

ワトソン「黙れ、きs……」


通信機『黙りなさいッ!!!!』キィィィィィィィィィ……ン



73 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:00:09.95 ID:TJuPBE+k0


ワトソン「えっ」

バルバトス「……何?」




スケアビースト「……?」ピタッ

バットマン「……所長?」





通信機『黙れって言ったのよ、さっきから黙って聞いてれば……!!! アンタねえ、望まれない命!? 哀れ!? 何様のつもりなのよ!!!!』

バルバトス「……」


74 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:00:50.31 ID:TJuPBE+k0



ドクター「しょ、所長、急に……」

所長「確かに私達は傲慢だったわよ!! その罪は背負っても背負いきれない!! だから私は地獄に堕ちる、そんな覚悟は済んでる!! けど……」

所長「けど、それでも、一生懸命生きてる命を憐れむ権利なんて、アンタには無いのよ!! 誰にも無いの!!! 伏せってでも、這ってでも、生きようとするヤツを馬鹿にするんじゃない!!!」





マシュ「……」ガクガク……ピタッ

所長『……だから、起き上がりなさい! 立つのよ! 望まれないなんて言わせない!! アンタ達は、今、私達の希望なのよ!!』

マシュ「……」グッ、プルプル……ムクリ

モードレッド「へ、へへ……言いやがる……!」ググググ……ムク







フラン「……」ムクリ

ナーサリー「……」スクッ

ジャック「……」スタッ

バルバトス「……お前達には無理だ」

ワトソン「どうだか、そっちこそそろそろ諦めたらどうだ?」

ハイド「ったく、暑苦しい演説でこっちにも熱がこもっちまうぜ……」

バルバトス「理解、不能である……」



75 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:01:24.41 ID:TJuPBE+k0



ワトソン「立ったは良いがボロボロか。どうする」

ハイド「ケッ……」


ハイド(……望まれねえ、か)


ハイド「……俺が突っ込んで囮になる、その隙にジャック、テメェのスピードでケリをつけろ」

ジャック「え」

ワトソン「な……待ってくれ、囮だと? 分かってるのか、全員に攻撃が分散されていてもようやく立っていられるほどの……」

ハイド「分かってる。死ぬだろうな」

ワトソン「分かっていて何故!」

ハイド「ようやく希望になれたんだ。それなら、俺は戦いたい」

ワトソン「っ……」



76 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:01:50.73 ID:TJuPBE+k0



ハイド「俺はハイドだ。ジキルじゃねえ。殺人者の人格で、封じ込められた悪の側面だ。なら、あのブサイクな肉塊と道連れで死ぬにはちょうどいい」

ハイド「……頼めるな、ジャック」

ジャック「……うん」カチャッ

ワトソン「……分かった。そこまでの覚悟があるなら、僕は止めない」

フラン「ウゥ!!」スッ


ナーサリー「……」ギュゥッ……


77 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:02:16.84 ID:TJuPBE+k0



ナーサリー(分かってる。わたしが口出ししても、覚悟を持った人は止まらない)

ナーサリー(本当に勝手な人達。勝手に納得して、勝手に消えて行く。残された人の気持ちも考えず)

ナーサリー(……でも、)

ナーサリー(……だけど、いつまでも泣いてはいられないものね。そうでしょう、アンデルセン)


ナーサリー「……ええ、やりましょう! 突破口は開くわ!」ギュギュギュオォォォォォッ


78 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:02:48.80 ID:TJuPBE+k0



スケアビースト「……何故ダ、何故立ツ」ジリッ

マシュ「う、うぅぅぅぅ……!!」プルプル

モードレッド「ぐぐぐぐぐがァァァ……」ガクガクガク……

バットマン「……」


バットマン(そうか。……そうだったな、マシュ。お前達は、そういう強さを持っている)


マシュ「守るって、誓ったから……! 私が、守るって!」ガシャリ

モードレッド「ムカつく、からだよ、カカシ野郎!!」ガッシャァ!



79 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:03:20.39 ID:TJuPBE+k0



 ゾンビじみて立ち上がったマシュ達を前に、スケアビーストはたじろぐ。恐怖ガスの濃縮液を注射したというのに、この不屈はどういう事だ。恐怖が……恐怖が、真理だったハズ。彼は咄嗟に、最も体格差のあるマシュを潰しにかかる。


 対するマシュは深呼吸する。その脳は鋭敏化され、瞳には恐怖の色がありありと映る。しかし、その恐怖は彼女の動きを鈍らせはしなかった。むしろ逆だ。スケアビーストは気付けない。彼がもたらした恐怖が、マシュの『想像の世界』を完璧にしてしまった事に。


(対応策を、瞬時に)


 マシュは全ての角度から打ち込まれる打撃に備え、身体をフラットに保っている。恐怖を脳に閉じ込め、身体を楔から解き放つ。それは一瞬の中で行われ、また一瞬の中で何度も繰り返された。


 スケアビーストが腕を振り下ろした。その先にマシュは居ない。スケアビーストは目を見開く……胸に、拳が突き込まれている。盾の少女は、一瞬にして、最適な角度での反撃を繰り出していた。


「グゥッ……!」


 怪物は吐血し、石畳を削りながら吹き飛ぶ。スケアビーストとしての維持時間が限界に近付いている。だが、まだだ。スケアクロウは吼え、地面に腕を叩きつけ、転がって起き上がる。まだだ。真理は譲らない。命に換えても。命? いかほどの価値を持つ? 真理に比べれば!!


 起き上がる科学者のその目の前、既にモードレッドが迫っていた。スケアクロウは咄嗟にクロスガードの姿勢を取るが、衝撃が入ったのは脛だった。


「ぐぅっ……!」


 ローキック。モードレッドの。彼女はそのまま、舞うようにスケアクロウの後方へ回り込む。恐怖の化身は歯を食い縛り、無理やり振り向こうとし……そして、目を見開き、止まった。


 霧の引いて行くロンドンの向こう、夕陽が今にも沈もうと、真っ赤な光を投げていた。それはテムズ川の水面に反射し、輝いている。鳥が空を飛び、家路についている。


「ああ」


 醜かった、ハズなのだが。その言葉を発する前に、スケアクロウの首は剣にはね飛ばされた。


80 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:04:12.94 ID:TJuPBE+k0




 その死を感知したバルバトスは目を瞠った。それは、未だ残る『マキリ』としての人格がなした、最期の、人間らしい反応だった。

 その隙を見た全身ボロボロのハイドが突貫し、目玉の一つへとナイフを突き立てた。血が噴き出し、報復の魔力が返る。ハイドの胴体に穴が開く。

「痛かったかよ、テメェ」

 血を噴いて笑うハイドのその後方から、フランがジャックを放り投げた。それは絶妙にバルバトスの隙を突いた投擲であり、小柄なジャックは空中での姿勢制御も巧みであった。彼女は殆ど優雅に見えるほどの流麗さで、ナイフを構えた。


 投げられた勢いをそのままに、バルバトスの肉を貫通し、弾丸じみてジャックが飛び出した。そして着地。肉の柱は呻き声をあげ、よろめく。絶対的な悪逆の支柱じみたその存在が、今になってようやく孤独を悟り、助けを求めるかのようでもあった。


 そして、凄まじい音をあげ、倒れた。



81 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:04:46.66 ID:TJuPBE+k0


ジャック「おわりだよ」スッ


ハイド「……ようやくお役御免か」フラッ

ワトソン「は、ハイド!!」ダッ、ガシッ

ハイド「……ったく最期までうるせえオッサンだったぜ、テメェは……」ヒュー、ヒュー……

ナーサリー「ミスターハイド、ああ、ごめんなさい……!」

ハイド「先に言っとくが、テメェらの、力不足のせいじゃねえ。鬱陶しくメソメソすんなよ、こうするのが最善だったんだ……」ヒュー、……

フラン「ウゥ……」シュン

ワトソン「……ハイド、君は……」

ハイド「馬鹿が、チンタラしてる時間があるか……早く、行け。雷野郎を止めろ、やべえんだろうが……」

ナーサリー「……そう、ね」

フラン「ウゥ……!!」スクッ

ジャック「いこう!!」

ワトソン「……必ず止める、君の犠牲を無駄にはしないぞ!」ダッ



タッタッタッタッタッ……


ハイド「ハッ……」

ハイド「当然だぜ、チクショウめ……」

ハイド「……」



82 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:06:11.34 ID:TJuPBE+k0



バットマン「マシュ、モードレッド!!」

モードレッド「ぐっ……ふう、流石に効くな、あの注射……!」ドシャッ

マシュ「く……く、うう……」ドサッ

バットマン「大丈夫か。ドクター、二人の状態を」

ドクター『さっきまで動けてたのが不思議だよ、これじゃいつ死んでもおかしくない! 多分、死ぬ直前に身体が奮起して……』

バットマン「……」

ドクター『……けどその力も尽きた。二人共、そのままじゃ毒で衰弱死してしまう。脳へのストレスが半端じゃない、体機能もところどころ誤作動を起こしてる』

バットマン「…………」



83 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:06:37.70 ID:TJuPBE+k0




バットマン(解毒剤は一本。緩和剤は無い。どちらかに打ち、どちらかを見捨てねばならない)


バットマン「……」


(((キミは、世界が滅んでも……彼女を助けたいと思うかい?)))


ドクター『ブルースくん、これは……』

バットマン「……すまない、ドクター」プツッ


84 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:07:04.66 ID:TJuPBE+k0



モードレッド「……マシュに、打て。マシュに、打ってくれ」ゼエ、ゼエ

バットマン「……」

モードレッド「お前が、一番大切なモンを、見失うな。それは、オレじゃねえ。マシュだ」

バットマン「……」

モードレッド「……頼む、ブルース」


85 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:07:31.57 ID:TJuPBE+k0


バットマン「……いいや」

モードレッド「……何?」

バットマン「私はバットマンだ。モードレッド」カチャ、カチャ

モードレッド「何を……テメェ、なにしてる、やめろ! オレじゃねえ!」

バットマン「いいや、お前だ。今、世界を救える可能性が一番高いのは、お前なんだ」プスッ……

モードレッド「テメェ……テメェ!!!」ガバッ



86 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:07:58.36 ID:TJuPBE+k0



モードレッド「そこまで臆病だったのか、テメェは!!」ガシッ

バットマン「計算だ。早く行け、モードレッド」

モードレッド「クソが!! 見損なったぜ、そこまで外道だったなんて……!」

バットマン「見損なってもらって結構だ。だが、今、世界はお前を必要としている。騎士モードレッド、お前はこれを裏切れないハズだ」

モードレッド「……!!!」ブチィ


87 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:08:24.89 ID:TJuPBE+k0



モードレッド「……っ」バシィ!

バットマン「ぐっ……」ドシャァッ

モードレッド「……卑怯者。オレ、やっぱりお前の事、嫌いだ。大嫌いだ」ググググ……

バットマン「……行け。世界を救って来い」

モードレッド「……」クルッ、ダダッ



通信機『』ピピーッ! ピピーッ!


88 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:09:01.41 ID:TJuPBE+k0



バットマン「もしもし」

ドクター『もしもし!? ブルースくん、解毒剤はどっちに!?』

バットマン「モードレッドだ。今、我々のうちで最も強いのは彼女だ」ゴソゴソ

ドクター『……そう、か……』

バットマン「そうだ」ゴソゴソ……

ドクター『……その、ブルースくん。今回の件は、君にだけ責任があるんじゃない。元はと言えば、僕たちの……』

バットマン「ドクター、謝罪は後だ。私の脳波の観測を頼む」スチャッ

ドクター『うん、そうだよね……え? 何をかぶって……そ、その帽子!?』

バットマン「マッドハッターの帽子だ。マシュの精神へ潜行し、恐怖から救い出す」スッ




89 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:09:30.23 ID:TJuPBE+k0



………………


職員B「え!? って事は、ブルースさんは初めからどっちも助けるつもりだったんですね!?」

レオナルド「どっちにしろ賭けだなあ。ようしロマニ、本領発揮だ!」

ロマニ「いや、本当に心臓に悪いなあ彼は……!」ドキドキドキドキ

職員A「何にせよ、正念場ですね」

所長「ええ! 気を引き締めてかかりなさい!」

職員達「「「はい!!!」」」



90 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:09:55.91 ID:TJuPBE+k0



職員C「……んん?」

職員B「どうしたの?」

職員C「動体レーダーに感あり。カルデアの外、雪山に……」

職員B「えぇ? また雪崩とかじゃないの?」

職員C「そうか……そうかもな。こんな時に、気を逸らすべきじゃなかった。悪い悪い」

職員B「もう、しっかりしてよ」



91 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/23(金) 03:10:22.32 ID:TJuPBE+k0



雪山「」ビュォォォォォオオオォォォォォ……!!


ドシ、ドシ。ドシ、ドシ


ベイン「ようやく座標を割り出したぞ、カルデア……」ニヤリ


92 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/11/23(金) 03:11:56.50 ID:TJuPBE+k0
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました。

(バルバトスに個としての意思はない設定らしいんですがほんのり改変してます……許してガチ勢。今更か)
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/23(金) 09:07:07.73 ID:eHaOVW7Z0
乙、面白いしええんやで
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/23(金) 09:22:31.39 ID:SF//NcC/O
ベインさんが有能すぎる
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/24(土) 10:47:21.71 ID:Iw+NGnzA0
乙!
さらばバルバトス、走れモーさん
96 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/11/25(日) 20:39:02.14 ID:cGh5K5DM0


 ベイン(……成程、雪景色の中に施設の外観を紛れ込ませたか。おまけに結界での防護もいくつか……)ドシ、ドシ

ベイン(だが、どの結界も紙くず同然。これで守っているつもりとは笑わせる)グ、ググ……


ベイン「さあ、ミスター・ウェイン。お前の帰りが間に合うかな?」グッ


ベイン「フン!!」ドシン、ギュゴォッ!!

拳「」ゴウッ!!

バリィィィィィィィィ!!



97 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/11/25(日) 20:39:44.32 ID:cGh5K5DM0



ビィィィィ! ビィィィィ!


所長「なっ、こ、この警報は……」

レオナルド「……!! 全区画のシャッターを下ろすんだ! 緊急事態、カルデアに侵入者有り!!」

ドクター「な、なな、」

職員A「侵入者!? しかし……」

職員B「まさか、通信機の周波数から逆探知を!? 厳重に偽装してあったはずなのに……」

所長「過去の可能性の話をしてる場合じゃないわ、全職員は今すぐ退避を! 命を大事にしなさい!」

職員C「御言葉ですが、今持ち場を放棄したらブルースさん達のサポートが出来ません! お、おおっ、俺は残ります!」

職員B「私も!」

職員A「俺もです!」

所長「馬鹿! 死んでも恨むんじゃないわよ! レオナルド、足止めに行きましょう!」

レオナルド「オッケー、天才の底力を見せてやろう!」


98 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/11/25(日) 20:40:11.94 ID:cGh5K5DM0



ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!

ベイン「……」ドシ、ドシン


ベイン(成程、シャッターが降りたか。ようやく俺の侵入に気付いたようだが、もう遅い)メリメリメリィ、バキン

ベイン(だが……このシャッター、脆い。脆すぎる。俺の力を加味したとしても)


ベイン「……」

ベイン「フフ」


ベイン(誘導しているな? 面白い)



99 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/11/25(日) 20:40:39.90 ID:cGh5K5DM0




所長「……ね、ねえ、アイツ、素手でシャッターを……」

レオナルド「こじ開けたね。アレは強度が多少低いとはいえ、たとえトラックが突っ込んでも傷一つ付かないように作られてるんだが」

所長「監視カメラの誤作動じゃ……」

レオナルド「ないね。折り紙付きの高精度だ」


レオナルド(……それに奴はこちらの誘導に気付いてる。気付いてて乗ってるんだ、不気味な奴め……)


レオナルド「所長、これは本当に手強い相手だ。悪くしたら死ぬけど、本気で私と一緒に戦うつもりかい?」

所長「ほ、本気よ! やらなきゃ皆が危険なんでしょ!?」

レオナルド「うん、よし……それならこちらも本気で行こう! 奴の行動を、少しでも遅らせなきゃね!」


100 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/11/25(日) 20:41:24.98 ID:cGh5K5DM0


ピーンポーンパーンポーン……


ドクター「これは……」

職員A「区画放送だ」


レオナルド『もしもし。これから電灯や空調が消え、地獄のような寒さと暗さが襲って来るだろうけど我慢してくれ』


ドクター「よ、よーし……湯たんぽがあるから平気平気」

職員C「ドクター、こっちにも分けて下さい」

職員B「こ、こんな寒さ……平気……!」

職員A「防寒具を着用しよう。外壁があるとは言え、外は雪山だ。体温がどんどん奪われてしまう」



101 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/11/25(日) 20:41:51.54 ID:cGh5K5DM0


レオナルド(よし。普段使ってる電力をベインの妨害にあてる。魔力を通路に充満させ、少しでも進行速度を落とさせる……)

レオナルド(だがそう上手く行くか。戦力的にはやはりマシュ、ブルースが帰って来ないとキツイものがある)

レオナルド(それに、相手は彼らを一度打ち破ってる。あぁ、控えめに言って絶体絶命か)


所長「……だっ、大丈夫よ、必ず勝てるわ!」

レオナルド「……勿論勝つとも! 天才の本領発揮だ!」ポチッ



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