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男「恋愛アンチなのに異世界でチートな魅了スキルを授かった件」
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30 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/02(金) 22:38:50.14 ID:dY7GkpCm0
『虜になった対象は術者のどんな命令にも身体が従う』
男(魅了スキルの効果の一つ)
男(それによってあんなにも固執していた女友が自分から抱きつくのをやめて俺と距離を置いた)
女友「……あれ?」
男(自分で自分が何をしたのか理解できないように手元を見つめている)
男(命令に身体が従うということで、心の方の理解が追いついていないのだろう。
男(異性に好意を抱かせて命令できる……ちょっと不明な部分もあるが、魅了スキル、これチート過ぎるだろ)
31 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/02(金) 22:39:53.72 ID:dY7GkpCm0
続く。
しばらく毎日更新の予定です。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/02(金) 23:17:01.21 ID:pcvgrkbCo
乙ー
33 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:23:57.00 ID:wiS+VjWp0
男(女友の拘束から命令で開放される)
男(そのまま魅了スキルが何故女友にだけ効果が現れたのか考察したいところだったが)
クラスメイト「「「………………」」」
男(周囲を囲むクラスメイトたちのそろそろ何が起きているのか事態を説明しろという圧力をひしひしと感じる)
男(そのため俺はステータスの開き方をみんなに教えた。言葉にするだけで開けるという言葉に半信半疑の表情だったが)
クラスメイト「ステータスオープン……うおっ、何か出た!?」
男(直後ステータスウィンドウが次々に浮かぶのを見て払拭された)
34 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:24:55.95 ID:wiS+VjWp0
クラスメイト1「職は剣士……王道だな」
クラスメイト2「魔法使いって……え、魔法が使えるの? 呪文は……『ファイア』! あ、炎が出た」
クラスメイト3「『影分身』! うおっ、ニンジャ凄え!!」
男(広場に散ってそれぞれに備わった力を確認するクラスメイトたちだが……)
男(え、何その戦闘に使えそうな力?俺には何も無かったんですけど?)
男(どうやら職の力によるものらしい。改めて自分のステータスを確認すると職には『冒険者』とある。タッチしてみると詳細が出た)
『職:冒険者』
『誰もが最初に通る職。経験を積んで力を身につけよう』
『使える職スキル:無し』
男(どうやら俺だけ初期の何も力を持たない初期職のようだ)
男「えー……何この不公平さ……」
男(俺だって剣を使って戦ったり、ド派手な魔法をかましてみたかったのに)
35 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:25:28.41 ID:wiS+VjWp0
女「女友の『魔導士』ってすごいね。たくさん魔法が使えるみたいだし」
女友「女の『竜闘士』程じゃありませんよ。それにスキルもたくさん持っているみたいですし」
男(委員長の女と俺に抱きついてきた女友の二人が互いのステータスを確認している。二人とも親友とは聞いていたが、ずいぶん仲がいいようだ)
男(にしてもステータスウィンドウの9割を占めてレイアウトを考えろと思っていたスキル欄も、それぞれたくさんのスキルに溢れているようで結果的にバランスが良くなっている)
男(俺のようにスキルが『魅了』一つだけといったものは誰もいない)
男「もしかして……俺、外れを引かされたのか?」
男(初期の職にスキルも一つだけ。つまりは戦闘力は0ということで随分と格差を感じるが……)
男(その一つのスキル『魅了』がチートなためバランスが取れているという事だろうか? 実際他のクラスメイトに『魅了』スキルを持っている人はいない)
36 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:25:59.64 ID:wiS+VjWp0
男(クラスメイトたちは一通り力を確認したところで、みんな石碑の前に戻ってきた。もう一つの疑問を解消するためだ)
イケメン「ステータスウィンドウについては理解したよ。これがあの石碑にかかれていた力ということだね」
イケメン「でも女友が君に抱きついたり、子作りをせがんだりした理由はまだ不明だな。僕が知らないだけで、君たちそのような仲だったのかな?」
男(副委員長のイケメンがみんなの疑問を代弁する。爽やか系のイケメンでトップグループの一人だ。女友もそのグループの一人のためこのような物言いになったのだろう)
男(ここで「実は隠れて付き合っていたんですよ、HAHAHA」と言っても信じてもらえないだろう。おそらく冗談とも認識されないかもしれない)
男(手の内を明かすのは嫌だったが、このままだと納得してもらえなさそうだったため、俺は魅了スキルの詳細について開示する)
スキル『魅了』
効果範囲:術者から周囲5m
効果対象:術者が魅力的だと思う異性のみ
・発動すると範囲内の対象を虜にする。
・虜になった対象は術者に対して好意を持つ。
・虜になった対象は術者のどんな命令にも身体が従う。
・元々対象が術者に特別な好意を持っている場合、このスキルは効力を発揮しない。
・一度かけたスキルの解除は不可能。
37 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:26:28.47 ID:wiS+VjWp0
男(スキルの詳細を見たクラスメイトの反応はというと)
クラスメイト男子1「……はぁっ!? 何だよこれ!? 男の夢みたいなスキルじゃねえか!! 俺の『剣士』の職スキルと取り替えっこしてくれよ!!」
クラスメイト男子2「ハーレム作り放題じゃねえか!! くっそリア充爆発しろ!!」
クラスメイト男子3「おう、俺爆発魔法使えるけど、手伝おうか?」
クラスメイト女子1「……汚らわしい」
クラスメイト女子2「それで女友さんをあんな目に合わせたってことね」
クラスメイト女子3「外道め」
男(男子からは羨望の声が飛び。女子からは罵声が飛ぶ)
男(見事に分かれたなー……まあ当然の反応か)
38 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:26:54.98 ID:wiS+VjWp0
女友「ということは私はその魅了スキルにかかったから男さんに好意を持ったということですね?」
男「その……女友さん。ごめんなさい。こんなことになってしまって」
女友「女友、でいいですよ。それに元々男さんには興味を持っていましたし」
男「興味?」
女友「……あ、でも悪いと思っているならば、お詫びに抱きついてもいいでしょうか? 抱き心地も素晴らしかったですし」
男「それは駄目だ。……ったく」
男(異性に対する免疫の足りない俺は、蠱惑的な態度の女友の対応に苦労する)
39 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:27:35.00 ID:wiS+VjWp0
イケメン「女友の件は分かった。さっきの光の柱が魅了スキルだったということか」
イケメン「対象は異性のみということで男子たちはかからなかったようだが、そうなると他の女子が魅了スキルにかかっていないのが気になるな」
男(イケメンが次の疑問点を提示すると、声を上げた女子が一人いた)
ギャル「もう、イケメン! 自分の彼女があんな冴えないやつを好きになって良いっていうの!?」
イケメン「そんなことないさ、愛しているってギャル。だけどギャルだってあの光には飲み込まれたはずだろ? 不思議じゃないのか?」
ギャル「そう? かかってないんだからどうでもいーじゃん」
男(ギャルっぽい見た目そのままの中身のギャル。トップカーストの一人で、イケメンと付き合っている)
男(俺のことを冴えないやつとさりげなくディスってくることから分かるようにプライドや攻撃性が高い)
男(俺の苦手なタイプで――だからこそ魅了スキルがかからなかったのかもしれない)
男(そう、俺は魅了スキルの説明を改めて見たことでギャルやクラスの女子たちが魅了スキルにかからなかった理由に気づいた)
男(だが、それを口走ると余計な争いを招くので黙ったままに――)
40 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:28:10.42 ID:wiS+VjWp0
女友「ひょっとして魅了スキルの『効果対象 魅力的だと思う異性のみ』が原因じゃないでしょうか?」
女友「男さんがギャルさんを魅力的に思っていないから、魅了スキルがかからなかったと」
男「あっ、バカっ!」
男(余計な言葉を投げた女友に、俺は思わず言葉が口を突いて出る)
男(さっきまで見落としていたが魅了スキルの対象は正確にいうと『効果対象 魅力的だと思う異性のみ』である)
男(これはつまりブスに魅了スキルを間違ってかけてしまい迫られたりしないというわけだ。都合のいいスキルだ)
男(だが、問題はこの『魅力的だと思う』という表記だ)
男(……正直に言うとギャルの容姿だけなら整っている方だと俺も思う。だが、高圧的な態度に苦手意識を感じていた)
男(魅了スキルはどうやらそこらへんの事情も組んで、やつを魅力的ではないと判断したらしい)
男(つまり魅力的かどうかは基準は個人の主観によるものということだ。例えばブス専であるなら、ブスにも魅了スキルをかけることも出来るということだろう)
41 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:28:50.76 ID:wiS+VjWp0
男(それはいいが……不名誉なことを指摘されたギャルはというと)
ギャル「……はぁ? 何それ? 私に魅力が無いっていうの?」
ギャル「別にイケメンの彼女だからそいつに好かれる必要なんてないけど……何かムカつく」
男(予想通りの反応。自尊心が高く自分の容姿に自信を持っているギャルに、魅力が無いなんて言えばどうなるか火を見るよりも明らかだ。)
女友「少なくとも男さんの中ではギャルさんより私の方が魅力的だったということです」
男(その反応に面白くなったのか、女友は新たな爆弾を投下する)
男「女友、ちょっと黙ってろ!!」
ギャル「……絶対に潰す」
男(あわてて命令するも時すでに遅し。ドスの利いた恐ろしい言葉が聞こえた気がする)
42 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:29:29.84 ID:wiS+VjWp0
イケメン「もう、そんなに怒ったら愛らしい顔が台無しだよ、ギャル」
ギャル「……でも、イケメン。あいつが」
イケメン「大丈夫だって、俺の中ではギャルが一番だから」
ギャル「イケメン……っ!」
男(ギャルのご機嫌を取る彼氏のイケメン。これで一件落着――)
ギャル「(キッ……!)」
男(とは行かないようだな。イケメンに抱きつきながらも、こっちを睨んでいる)
男(怖くなってきたためそちらから視線を外すが、その移動先であるクラスメイトの女子たちにも敵意を向けられていた)
クラスメイト女子1「女友さんに勝っていると自惚れるつもりはないけど……こうも魅力がないと思われると癪だわ」
クラスメイト女子2「ボッチのくせに生意気」
クラスメイト女子3「あんたの方が魅力無いわよ」
男(ギャルと同じように他の大多数の女子を俺は魅力的だと思われなかったわけで、その扱いに腹を立てられている)
男(とはいっても仕方ないだろう。教室というのはその人の素が出るものだ。一目惚れという言葉があるように内面を知らない方が夢を見れる)
男(つまり内面を知ってまで魅力的と思えたクラスメイトは女友だけということに…………いや)
43 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:30:05.61 ID:wiS+VjWp0
女友「ですがそうなりますと、女も魅了スキルにかかっていないのは彼女を魅力的に思っていないからということになりますが……どうなのでしょうか、男さん?」
男「ほんとおまえも懲りないよな。それにちょっと黙ってろと命令したよな……魅了スキルで虜になってるから命令に従うはずだが……」
女友「ですからちょっと黙ってましたよ」
男(微笑を浮かべる女友。どうやら命令内容の曖昧な部分は受け手側が解釈出来るようだ。一時間は黙っていろと命令するべきだったか)
男「うーん……でも、それは俺も分からないんだよな……」
男(ギャルや他の女子が魅了スキルにかからなかった理由は分かったが、委員長の女が魅了スキルにかからなかった理由が分からない)
男(容姿や性格、異世界に来てすぐみんなをまとめた度胸、全部評価しているし特に悪い印象は持っていない)
女友「親友の私が言うのも難ですが、非の打ち所が無い美少女ですし、性格も文句無いですよ」
男「……まあ、その、俺もそう思う……って何言わせてるんだ」
女友「ノリツッコミですか、面白い人ですね」
男(ああもう余計なことを口走ってしまった。女友が相手だと調子が狂う)
44 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:31:14.29 ID:wiS+VjWp0
女「も、もうそんなに誉めても何も出ないって!」
男(女にも聞こえていたらしい。恥ずかしいやつだな俺)
女「でも……このままだと………………なら」
男「……?」
男(ぼそぼそと何やらつぶやいた女は何やら決心をした顔で告白した)
女「私も男君の魅了スキル……かかっているかもしれない」
45 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/03(土) 21:32:29.79 ID:wiS+VjWp0
続く。
なろうテンプレの設定や展開使ってますが、ssにすると唐突感がすごいですね。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/03(土) 23:44:53.16 ID:1EH77ZNdo
乙ー
47 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:10:05.12 ID:CNVzLp6E0
男「……え?」
男(女の言葉に驚く俺だが……論理的に考えてその可能性は高いと思っていた)
男(魅了スキルの効果範囲にいて、対象の『魅力的だと思う異性のみ』にも当てはまっている。失敗する理由が思い当たらない)
男(だが、ネックとなっていたのは)
男「だったらどうして女友と反応が違うんだ?」
男(魅了スキルによる好意から抱きついてきた女友と違って、女の俺に対する反応は今までと変わりが無い)
女「そ、それは私に聞かれても困るけど……」
女友「……なるほどそういうことですか」
男(しどろもどろになる委員長の女に対して、女友が謎が解けたという顔をしている)
48 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:10:57.35 ID:CNVzLp6E0
女友「そういえば女は先ほど確認したステータスでスキルに『状態異常耐性』を持っていましたね」
女友「それのせいで魅了スキルのかかりが中途半端なのでは」
女「そう、それ! そういうことだよ! ほら見て!!」
男(女友の言葉に女は身を乗り出して同意するとステータスウィンドウを開いて見せる。スキルの中に『状態異常耐性』という表示があった)
男「これで魅了スキルがかからなかったってことか」
女友「いえ。耐性であって無効ではありません。魅了スキルはかかってはいるはずです」
女友「女もあの光を浴びてから男さんにそれなりの好意を持ったんじゃありませんか?」
女「え、えっと……言われてみればそうかも」
男「つまり中途半端に魅了スキルにかかったってわけか」
男(好意が女友ほど上がらなかったから突然抱きついたりしなかったってことだろう)
49 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:11:31.36 ID:CNVzLp6E0
女友「ですから、男さん。女に命令を出してみたらいかがですか?」
女友「中途半端とはいえかかっているなら、命令にも従う可能性もあります。そうなればあんなことや、こんなことをさせることも……」
女「ちょ、な、何を言っているの女友!?」
男「衆人環視な状況でそんなことをするかっての」
男(そもそもそんなことをしたら、今も嫉妬の眼差しで俺を射殺さんばかりに睨んでいるクラスメイトの男子たちに本当に殺されるかもしれない)
クラスメイト男子1「女友さんに飽きたらず……女さんまで!?」
クラスメイト男子2「やっぱり爆発だな。頼めるか?」
クラスメイト男子3「スタンバーイ、オッケー」
男(ほらな)
50 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:12:01.35 ID:CNVzLp6E0
男「………………」
男(まあでもどういう状況なのかは気になる)
男(好意に関しては中途半端だっただけで命令には完全に従う、とかだとしたらちょっとした言葉尻を命令と受け取って暴走する可能性もあるわけで面倒だ)
男「すまん、確認のために命令するけど、委員長はいいか?」
女「へ、変な命令は駄目なんだからね! 絶対駄目だからね!!」
男(顔を真っ赤にして念押しされる)
男(……何だろうか。押すなよ、押すなよ言っているようでお約束を守りたくてムズムズするが、しかし命がかかっているので我慢する)
51 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:12:50.17 ID:CNVzLp6E0
男「よし、命令だ――右手を挙げろ」
女「え……はい」
男「左手を挙げろ」
女「えっと……こう?」
男「右手を下げるな」
女「……おっと」
男「左手を下げるな」
女「……っ、よしっ」
男(右手も左手も挙げて、バンザイした状況の女)
男「ん、どうやら命令は聞くよう――」
女友「駄目です、男さん」
52 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:13:22.21 ID:CNVzLp6E0
男「どうした?」
女友「こんな脳トレで何が分かるって言うんですか?」
男「いや、でも命令に従ってはいるだろ」
女友「こんなのフリでも従えます」
男「いや、女がそんなフリする意味がないだろ?」
女友「とにかく。本当にどこまで魅了スキルにかかっているか確認するには、やはり本人がやりたがらないことを命令するべきです」
男「いや、でも……おまえこの状況分かっているのか?」
男(周囲の嫉妬の眼差しを向けている男子を指さす)
女友「分かってますとも。ですから……ちょっと耳を貸してください」
男(女友は耳打ちで女に出すべき命令を伝える。そして最後にフッと息を吹きかけられた)
男「っ!? く、くすぐったいだろうが!!」
女友「ふふっ、ちょっとした悪戯心です」
男(クスクスと笑みを浮かべて離れる女友。くそぅ、翻弄されているな)
53 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:13:57.91 ID:CNVzLp6E0
女「ねえ、何の話? そろそろ両手下げていい?」
男「ああいいぞ……ってずっと挙げてたのか。いやこれも命令の効力か?」
男(下げないと言った命令をずっと下げてはいけないと受け取ったのだろうか)
男(俺としてはその瞬間だけのつもりだったが、曖昧な命令は受け手側で解釈できるのはすでに分かっている)
男(つまり女が律儀な性格だということだろう)
男(この件からしてもう女に命令できると確信してもいい気がするが…………女友に言われた命令を最終試験にするか)
男「じゃあ最後に委員長に命令だ」
女「何かな?」
男(安心している表情の女。変なことを命令されるという不安から、脳トレが始まったのですっかり俺が次も普通の命令を出すと信じているのだろう)
男(……まあ、それは裏切られるのだが)
54 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:14:40.52 ID:CNVzLp6E0
男「委員長の……ス、スリーサイズを教えろ」
女「………………へ?」
男(間の抜けた表情を見せる女はそのままフリーズする)
男(さっきとは違ってすぐには命令に従わないようだが……これも耐性で魅了スキルのかかりが悪いからだろうか)
女「………………」
男(黙ったまま見る見る内に顔が赤くなっていく女)
男(口を開かないということは命令が効いていない……これは耐性のせいか……)
男(いや、そもそも魅了スキルが失敗していたという可能性もある。優しい性格の彼女だから、クラスメイトには一定の好意を持っているのだろう。それを魅了スキルによる好意だと思ってしまった。脳トレには反射的に対応してしまったというところだろう)
男(でも、だとしたらどうして魅了スキルが失敗したのか……そんな可能性があるのか……?)
女「84・60・80……です」
男(ボソっと答えた声に、思考から現実に引き戻される)
男(女は命令を順守した。どうやら失敗したという危惧は無駄だったようだ)
55 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:15:10.80 ID:CNVzLp6E0
女「…………」
男「そ、そうか……悪い……」
男(顔を真っ赤にして羞恥に震えている女を見て、罪悪感を覚える俺に対して)
女友「え、何て言いましたか? 男さん、もう少し大きな声で言うように命令してください」
男(まさに死人に鞭を打つ女友)
男「鬼だな、あんた」
女友「本当に命令できるかの確認ですよ、ほら男さん」
男「……もう少し大きな声で言え、女」
男(やけっぱちで命令を追加する)
女「だ、だから……84・60・80よ!! 悪いっ!?」
男(女に涙目で睨まれた)
男「す、すまん」
女友「ふふっ……そういうことですか」
男(どうして俺が……いや女友に従って命令を出した以上俺が悪いのだが)
56 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:15:41.55 ID:CNVzLp6E0
クラスメイト男子1「……おいおい、聞いたかよ」
クラスメイト男子2「ああ、バッチリだ」
クラスメイト男子3「ふう……まあ爆発させるのは止めておくか」
男(周囲の男子が、女のスリーサイズを聞き出した俺を英雄視する。みんなが得する命令ならば嫉妬されない。女友の提案は流石だったが……)
クラスメイト女子1「サイテー」
クラスメイト女子2「卑劣」
クラスメイト女子3「死ね」
男(直球の罵倒が女子から浴びせられる。……これは甘んじて受けるしかないか)
57 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:16:19.46 ID:CNVzLp6E0
女「……どうよ!! これで分かったでしょ!! 私にもちゃんと魅了スキルがかかっているって!!」
男「分かった、分かった。疑って悪かった、委員長」
女「女。女友も名前で呼んでるんだから私も名前で呼んでよ」
男「え、えっと……ごめん、女」
女「ふん……」
男(まだ少し涙目が残っている女が仁王立ちで訴えると、俺は両手を挙げて降参を示す。勢いで名前呼びも要求された)
男(疑惑は晴れて女に魅了スキルがかかっていて、命令も効くようだと判明した)
男(それはいいのだが……少し違和感を覚える)
男(それは女の態度についてだ)
男(どうして女は自分が魅了スキルにかかっていると主張してきたんだろうか? 分かったところで、俺なんかに命令されるリスクを負うだけだというのに)
男(律儀な性格だから曖昧にしたくなかった……ということなのだろうか?)
58 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:17:59.19 ID:CNVzLp6E0
女友「これで一件落着ですね」
女「女友? あんたも許してないんだからね」
男「きゃー怖いですっ! 男さん、助けてください」
男(俺の身体を盾にする女友。いや、どうしろと)
男(というか女さんも俺が庇っているように見ないでください。何なら熨斗を付けて差し出してもいいんで)
男(しばらく怒りの表情が収まらなかった女だが、首を振って切り替えると)
女「全く、色々あったけど……よろしくね、男君。頑張って元の世界に戻ろうね!」
男(俺に右手を差し出してきた)
男「……」
男(本当にすごいスキルだ)
男(女友もそうだったが、女だって元の世界ではほとんど話したことがない)
男(それなのにこんな俺によろしくなんて言葉を投げかけるほどには好意を持ってしまっている)
59 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:18:42.85 ID:CNVzLp6E0
男(向けられた好意にトラウマがフラッシュバックする)
『……あー、勘違いしちゃったか。女慣れしてなくてからかうの面白かったよ、おもちゃ君』
男(彼女たちが俺に向けている好意は……トラウマのあの子と同じで本物ではない)
男(魅了スキルによって作られた偽物の好意だ)
男「……こんな俺でもいいならよろしく頼む、女」
女「うん!」
男(おそるおそる握り返した俺に、女は朗らかな笑顔を浮かべる)
男(……大丈夫だ、今度こそ俺は間違わない)
男(揺れ動く心を落ち着けるため、もう一度自戒の言葉を胸中でつぶやいた)
60 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/04(日) 16:22:13.16 ID:CNVzLp6E0
続く。
毎回乙の反応ありがとうございます。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/04(日) 16:35:19.43 ID:Owg0dQQw0
乙!
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/04(日) 17:03:07.09 ID:5ijSNgdTo
乙ー
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/04(日) 17:12:49.51 ID:0c+xL9X70
乙
64 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:07:54.87 ID:zgd3yvvu0
女「よし、状況も確認できたし、次は周囲の探索をするよ!」
男(魅了スキルの確認作業から立ち直った女が全体に方針を伝える)
男(みんながそれを当然の風景として受け取っていることが、彼女のリーダーシップの高さを表している)
男「探索か……まあ妥当な判断だな」
男(俺たちが召喚されたこの広場は、どうやら一通り拠点として機能するようだ)
男(メッセージが記されていた石碑しか気にしていなかったが、広場の隅には倉があり中には一通りの得物や生活道具が置いてあった)
男(田舎の公民館のような広いだけで中に何もない建物があり、そこにはみんなが寝るだけのスペースもある)
男(しかし生活するために足りないものが一つだけあった)
女「とりあえず今日は食料を探すよ! 人里の探索はまた明日からね!」
男(女が目標として告げたように、この拠点には食料が無かった)
男(おそらく俺たちを異世界に召喚した何かがこの地に拠点を築いたのだろうが、ここまで準備してくれたなら缶詰めの一つくらい置いてくれれば良かったのに)
65 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:08:51.33 ID:zgd3yvvu0
男(というわけで食料調達は急務だ。拠点は360°森に囲まれているため、そこで見つけなければならない)
男(となると、現代の高校生が森の中で食べ物を見つけられるのか、見つけたとして食べられるのか毒があるのか、調理法が分かるのか、など疑問に思うだろうが……ここは異世界だ)
女「可食かどうかは『鑑定』スキル持ちが確認するから、食べられそうなものがあっても勝手に判断しないで回してね!」
女「倉に調理道具があったし、『調理師』スキルを持っている人もいるからちゃんとした食事にあり付けることは私が保証するから!!」
男(『鑑定』は発動することで触れた物がどういうものなのか調べることが出来るスキル)
男(『調理師』は未知の食材であろうと調理方法が分かるスキルだ)
男(どちらもクラスで四、五人ほど使い手がいるようだ)
男「使い勝手が良さそうなスキルだなー」
男(もちろんそのどちらも俺は所持していない。俺のスキルは『魅了』一つのみだ)
女「よし、というわけでみんな行くよ!」
男(女のかけ声に、クラスメイト総勢28名は森に足を踏み入れるのだった)
66 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:09:44.13 ID:zgd3yvvu0
男(それから数分後。一同はすっかりピクニック気分だった)
クラスメイト1「このキノコ食えるかな?」
クラスメイト2「……その毒々しい紫色無理だろ。早く捨ててこい。それよりこのシイタケに似たやつ食えるんじゃね?」
クラスメイト3「いやそっちの紫は可食で、しいたけっぽいのは猛毒持ちだ。鑑定して驚いたが」
クラスメイト1&2「「マジかよ!?」」
男(クラスメイトたちの和気藹々とした雰囲気の中)
男「くっそ……俺はインドア派なんだっつうの……」
男(俺は既に疲労困憊だった)
男(体育会系の多いウチのクラスがずんずんと進んでいくのに着いていくだけで精一杯だ)
男(それにみんな異世界でもらった職のおかげで体力面も補強されている)
男(つまり特に力を持たない初期職『冒険者』の俺は二重に遅れを取っている)
67 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:10:36.83 ID:zgd3yvvu0
クラスメイト「女さん、このキノコは食べられるでしょうか」
女「ちょっと待ってね……『鑑定』発動! ん、食べられるみたいだよ」
クラスメイト「では同じものを集めるように言っておきますね」
女「うん、お願い。あ、でも取ったキノコは全部鑑定するように言ってね」
女「元の世界でも食べられるキノコとよく似た毒キノコを食べて病院に搬送されたなんてニュースを聞いたことがあるし、見た目が似ているからって全部食べられるって判断するのは危ないから」
クラスメイト「……流石女さん、的確なアドバイスです! 分かりました!」
男(集団の先頭で女が女子のクラスメイトの信用をさらに上げている)
男(職『竜闘士』とスキルを複数持つ女だが、どうやらその中に『鑑定』スキルもあるいるようだった。加えて『調理師』スキルも持っているという話で、どちらも持っているのは女だけらしい)
男(……やっぱり元の世界と同じように、この異世界でも天は才あるものに二物も三物も与えるようだ)
男「にしても魅了スキルがかかっているってのに、あんまり様子が変わらないな」
男(クラスメイトと談笑する女の姿は、元の世界と変わりないように見える)
男(魅了スキルのような人を強制的に虜にする力の出てくる創作物では、かかった相手が術者に病的なまでに心酔する様子がよく描かれるが、俺の魅了スキルはそこまで強力なものではないようだ)
男(いや、それとも……)
68 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:11:17.52 ID:zgd3yvvu0
女友「どうしたんですか、男さん。そんなに考え込んで……いや、これは隙有りと見るべきでしょうか。ならば……」
男「女友、俺に近づくな、命令だ」
女友「ああもう、早すぎます」
男(両手をワキワキさせている女友に、先手を打って命令する)
男「全く、油断も隙もないな」
女友「少しくらい抱きつかせてもらってもいいじゃないですか。男さんの恥ずかしがり屋!」
男(ぶうたれる女友だが、そんなことを許しては嫉妬された他の男子に何をされる分からないので、警戒するに越したことはない)
男「しかし、女はいつもと変わらない感じなのに、女友は結構ぐいぐい来るよな。何が違うんだ?」
女友「魅了スキルのかかり方の違いでしょう。状態異常耐性のせいで、女はそこまで好意が上がっていないということになっています」
男「なっていますというか、その通りなんだが……にしては振れ幅が大きいような……」
男(色々あって流されたが、最初女友は子作りをせがんでくるほどだったのだ。それはもう結婚相手に感じるほどの好意であろう。耐性があるとはいえ、女の態度と落差が大きい)
69 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:12:19.74 ID:zgd3yvvu0
女友「なるほど……それは私の価値観のせいでしょう」
男「……え?」
女友「このような性格なので意外でしょうが、私はずいぶんと古めかしい家柄の出身で。幼いころから男女交際は生涯を共にする伴侶とのみするべきだという価値観を植え付けられているのです」
男「そうか……」
男(思いもよらなかった言葉だが、聞いてみれば腑に落ちた)
男(好意を持った相手にどのような反応するかは人によって違う。照れて否定すればツンデレだし、相手を独占したいと思えばヤンデレだ)
男(女友は好意を持った相手とは、結婚まで行くべきという価値観だった。だから子作りをせがんだと)
男「一言でまとめると古きよき大和撫子ってことか? 全然そう見えないけど」
女友「酷いです。私はこんなに一途じゃないですか」
男「俺的には抱きついて子作りをせがむやつはビッチだ」
女友「あれはいきなり魅了スキルにかかったからですよ。突然好意が沸き上がるなんて初めてで、どう対応すれば分からなくて衝動的に迫ってしまったんです」
女友「でもほら、あれから子作りはせがんでいないでしょう?」
男(言われてみれば俺もアニメで好きになったキャラのグッズを衝動的に買い集めたことがある。あれの人間版と考えると女友の行動も理解できる……のか?)
70 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:13:19.58 ID:zgd3yvvu0
女友「もうこの状況にも慣れてきたのでいつも通り好意をコントロール出来ると思います」
女友「今後子作りをせがむような酷い暴走はしないと誓いましょう」
男「……そうか」
男(さらっと言われたが好意のコントロールか)
男(おそらくだけど嫌っている相手にも好意的に対応しないといけなかったり)
男(逆に好意的な相手にも他の人と同じように接しないとといけない立場だったが故に身につけたのだろう)
男(好意を一律でシャットアウトしている俺より、よほど苦労している)
女友「それより一般的にみれば男さんの行動の方がおかしいですよ。こんな美少女に好意を持たれて、どんな命令でも出来る立場を得たのに、何もしないんですから」
男「自分で美少女っていうか、普通?」
男(軽口で返すが言われたことには分かるところがあった。女性にどんな命令も出来るなんてR18展開に移ってもおかしくない)
男(それでも俺は命令して欲望を満たすつもりはなかった)
男(いや……俺の欲望を満たすことが出来ないと言った方が正しいだろう)
男(心まで操ることが出来ないこのスキルではどこまでいっても人形遊びにしかならないからだ)
男(女と同じく、目の前の女友も過去と重なる)
男(こうして俺に対して好意的に接している彼女……本当は俺のことをどう思っているのだろうか、と)
71 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:13:54.60 ID:zgd3yvvu0
男「………………」
男(ズン、と落ち込む俺に対して、女友は気づいているのかいないのか、調子を変えずに聞いてくる)
女友「そういえば、そろそろいいでしょうか?」
男「いいって何が?」
女友「忘れていますね……ならば、いいでしょう。えいっ!」
男「っ!? だから、抱きつくなって!? くそっ、さっき近づくなって命令したはずだろ!?」
女友「ええ、ですがその命令も忘れていそうなのでいいかと思って」
男「良いわけあるか! つうかこれも暴走じゃねえのか!?」
女友「こんなのただのスキンシップの範疇ですよ」
男「ああもう、おまえの価値観は分からん!! もう一回離れろ、命令だ!!」
72 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:15:09.15 ID:zgd3yvvu0
そうやって男と女友がどたばた騒ぎしているのを嫉妬の籠もった眼差しで見ている男子たちとは別に、神妙な面持ちで見ている者たちがいた。
イケメン「男……か。女友が魅了スキルのせいで好意を持ってしまった相手は。女も同じものにかかっているが、大丈夫か?」
女「大丈夫だって、イケメン君。そんなに心配しなくても」
イケメン「……少し警戒が薄いぞ。男は今、女にどんな命令でも出来る。何をされるか分かったものじゃない」
女「男君はそんなことしないよ。……ス、スリーサイズの件は、女友がけしかけたみたいだし」
イケメン「そうか……これが魅了スキル……。どうして…………」
女「……? それより女友もあんなに男君に抱きついて…………私も……いやでも……」
異世界の森の中であることも忘れて、元の世界の教室のようなやりとりが続く……そんな気の抜けたタイミングでそれは起きた。
73 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:15:54.15 ID:zgd3yvvu0
クラスメイト「っ……おいっ、何か現れたぞ!?」
男(一人のクラスメイトが指をさして声を上げる)
男(全員がその方向を見ると、森の奥から自分たちの腰の高さくらいあるイノシシに似た生物が三匹がそこにはいた)
男「これが魔物か……」
男(広場にあった倉にはこの世界における常識について書かれた書物があった。探索に出る前にクラス全員で共有したその中の一つを思い出す)
男(どうやらこの異世界には魔物という、人間に害を為す生物があちこちに生息しているらしい)
男(一般人にとってかなり驚異で、魔物に襲われて死亡するという事故はこの世界ではよくある話のようだ)
女「っ、みんな魔物から離れて! 後衛職は遠距離から魔物を攻撃! 前衛は襲って来たらガード出来るようにして!」
男(なので女は最大限に警戒するように全体に指示を出すと、それが伝わったのかさっきまでの和やかなムードも一変して無言で動く)
男(配置に付いた俺たち異世界召喚者と魔物との初めての戦いが幕を開けて)
74 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:16:33.86 ID:zgd3yvvu0
女「先手必勝! 『竜の拳(ドラゴンナックル)』!!」
男(――次の瞬間には終わった)
女「……あれ?」
男(『竜闘士』の女が出した拳の余波によって三体のイノシシは一撃で倒された)
女「牽制のつもりだったのに……」
男(思ったよりの手応えの無さに、倒した女が一番驚いている)
クラスメイト1「な、なんだ……びびったけど、弱っちいじゃねえか!!」
クラスメイト2「おいっ、『鑑定』したらこいつらの肉食えるみたいだぞ!」
クラスメイト3「おおっ、肉! キノコだけじゃ物足りないと思ってたんだ!」
クラスメイト4「あっちにもいるぞ! 倒しに行こうぜ!!」
男(調子に乗ったクラスメイトたちが、近くにいた別のイノシシに似た魔物に突撃。それを一撃で屠った)
75 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:17:09.97 ID:zgd3yvvu0
女「ふう、驚異じゃなかったのは良かったけど……あんまり離れすぎないでね!! はぐれたら探すのも大変なんだから!!」
男(女は緊張を解くと、今度は注意を飛ばす)
男「危険といっても……それは一般人に限った話で、力を授かったやつらにとっては敵じゃないのか」
男(どうやら俺たちが授かった力は、この世界基準でかなり強い方らしい)
男(そうして人数分の食料を手に入れた辺りで、その日の探索は終了。拠点に戻って『調理師』のスキルを持つ者たちが、キノコとイノシシ肉のソテーを作って振る舞った)
男(調味料は探索中に見つけた岩塩のみだったが、朝から異世界に召喚されて、昼の探索で腹ペコになった高校生にとってはごちそうであった)
76 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/05(月) 23:19:28.66 ID:zgd3yvvu0
続く。
三つも乙の反応ありがとうございます。
前作、夢野ニューゲームのときの癖で淡々と投稿してましたが、これからはなるべくレスに反応するようにしたいです。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/06(火) 00:47:55.43 ID:ZThEoX2xo
乙ー
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/06(火) 01:18:29.41 ID:ueTkUF+M0
28人いるとそのうちに誰か脱落しそうだな
まだ、みんな落ち着いているけど、そのうちに不満やホームシックにかられる奴はいそう
あと調子に乗ったバカ
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/06(火) 06:29:31.43 ID:WLExCqIgO
乙!
80 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:22:22.96 ID:xS52Z/Jn0
>>77
>>79
乙ありがとうございます。読者がいると分かることがとてもありがたいです。
>>79
デスゲームものが捗る設定ですよねー
投下します。
81 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:23:03.20 ID:xS52Z/Jn0
男(異世界召喚されてから三日が経った)
男(その間俺たちは召喚された広場を拠点として、周囲の森の探索を続けていた)
男(目標は二つ。食料の調達と人里への到達である)
男(食料については一日目から継続してである。食べ盛りの高校生が28人もいる以上、いくら取ってきてもその日の内に消費してしまうためだ)
男(森にいる魔物が驚異でないと分かった二日目からは探索の効率を上げるために、女の提案の元四つの隊に分けて行っている。というのも、二つ目の目標である人里の到達を早めに為したいからだ)
男(未だ俺たち以外の人間に会ったことがないので実感が沸かないが、どうやらこの世界にも文明はあるらしい)
男(そもそも俺たちの最終的な目的は元の世界に戻るために宝玉とやらを集めることだ)
男(宝玉について石碑に書いている情報はなく、どんな見た目なのか、集めろということは複数存在するはずだがそれが何個あるのか、そして一体どこにあるのかと分からないことばかりだ)
男(この拠点に止まっていても進まない)
男(といっても宛もなく探しても見つからないだろうので、人里で情報収集するべきというのが俺たちの共通見解だった。もしかしたらこの世界の人たちなら宝玉について知っているかもしれないという期待もある)
82 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:23:32.29 ID:xS52Z/Jn0
男「疲れた……ようやく拠点に戻って来れたな」
男(拠点の北側を探索する女をリーダーとする隊に入れられた俺は、今日の探索で食料こそ手に入れたものの、人里の痕跡はなく空振りだった)
男(夕方になり拠点に戻ってきたが、どうやら四つの隊で一番の到着のようだ)
男(早速『調理師』のスキルも持つ女が、今日の獲物で夕食を作り始める。厨房はスキル『調理師』を持つ者の独壇場であり、俺のやることはない)
男(手持ちぶさたにしていると南の探索に向かった隊が帰ってきて、そのメンバーである女友が俺を見つけて近寄ってきた)
女友「お疲れさまです、男さん」
男「女友か。そっちの探索はどうだったか?」
女友「残念ながら人里の手がかりは何も。西に行った一行に期待ですね」
男「だな。昨日人の痕跡を見つけたらしいしな。今日で何か掴めていてもおかしくない」
男(そのときちょうど俺の言葉を裏付けるように)
クラスメイト「やったぞ!! ようやく人里を見つけた!!」
男(西に向かった隊が帰ってきて、その成果を報告するのだった)
83 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:24:01.41 ID:xS52Z/Jn0
男(その後、調理を終えたようで夕食が振る舞われた)
男「ふぅ食った食った。しかしそろそろ違うものも食べたいよな……」
男(三日連続でイノシシ肉とキノコのソテーだ。それ以外に食料が見つからないため仕方がないのだが、こうも続くと飽きる。生活が安定しているからこその贅沢な悩みだ)
クラスメイト1「今日は祭りだぁぁっ!!」
クラスメイト2「ウェェェェイ!!」
クラスメイト3「ひゃっほぉぉっ!!」
男(もうみんな食べ終えたようだが、新たな発見に沸いたクラスメイトたちはテンション高く騒いでいる)
男(どうやら今日の調査で森を抜けて、整備された道路を発見。それを辿ることで人里、規模からして村を見つけたらしい)
男(というわけで明日はその村に行くつもりのようだ。そして自分たちを受け入れてもらえるようなら、この広場から生活拠点をそちらに移すとのこと)
男(まあこの広場は生活できるというだけで、居心地はどちらかというと良くない方だったので村に移れるならありがたいことだ)
84 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:25:11.39 ID:xS52Z/Jn0
女「人里も見つけたし、これからどうするか、だよね」
男(騒ぎに巻き込まれないように避難していた俺のところに、女がやってくる)
男「委員長様、あの騒ぎを収めないでいいのか?」
女「あはは、私でも無理だよ。まあ時間が経てば収まると思うから」
男「女でも無理となると相当だな。……ああ、そうだ。夕食おいしかったぞ」
女「ん、ありがと。隣、座るね」
男(俺が座っていたベンチの空いたスペースに女も腰掛ける)
男「それでどうするかって言ってたが、何か考えでもあるのか?」
女「うん。私たちの目的である宝玉だけど、集めろって言葉から複数存在するはずでしょ?」
女「それなのにどこにあるのかすら分からないわけだし……クラスでまとまって探していたら途方も暮れるような時間がかかると思って」
男「つまりクラスを分散して、手分けして各地に探索に向かわせるってことか?」
女「とりあえず今日見つかったっていう村にはみんなで行くけどその後はってこと。その方が探索の効率は上がるから……どうかな、男君」
男「へいへい、委員長様の指示に従いますよ」
85 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:25:57.25 ID:xS52Z/Jn0
男(冗談めいた雰囲気で肯定するが、女の顔は晴れない)
女「そうじゃなくて……ねえ、男君の考えを聞かせて?」
男「いや、だから委員長様の――って、あ……」
男(女がこちらを真剣な目つきで見ていることに気づいた。膝に置かれた手は微かに震えている)
男「………………」
男(そうだな、教室にいたときと同じように、この異世界でもリーダーシップを取っていた女)
男(それはいつもと変わらない光景のようで……その実、大きな負担を女に強いていたのだろう)
男(突然の異世界召喚で混乱しないはずがないのに、頼れる大人はおらず、縋ってくるクラスメイトしかいない)
男(クラスメイトたちにとって、自分が最後の拠り所なのだと分かっていた。だから毅然とした態度を取るしかなかった)
男(だから気づけなかった。そうやってみんなを支えるために頑張っていた女を……支えてあげる人が誰もいなかったということに)
86 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:26:32.42 ID:xS52Z/Jn0
男「……そうだな、探索効率を上げるために分散することに賛成だ。そのおかげで人里も素早く見つけることが出来たんだしな」
男「そもそも宝玉がどこにあって、どれだけ集めないといけないのか分からないし。ちんたらやって元の世界に戻れたのがやっと老人になったころなんて、浦島太郎も笑えない話は勘弁だ」
男「どうやらそこらの魔物も俺たちにとっては敵じゃないって事が分かったし、分散しても十分な戦力は維持できると思う」
男(誠意を持って、女の判断を尊重する意見を出す)
女「そう……かな。そこまで言ってもらえると助かるよ。ありがとね、男君」
男「どういたしまして」
男(女の声のトーンが少し上がったことにホッとする)
女「学校でも……こっちの世界でも……男君には助かってるよ」
男「それは買いかぶりだと思うが……って、学校?」
男(女とは元の世界ではほとんど接点がなかったはずだが……女の勘違いか?)
87 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:27:05.13 ID:xS52Z/Jn0
男「………………」
女「………………」
男(それからしばらく二人の間に会話は無かった。単に俺は話すことが無いだけなのだが、女は何かを切り出そうとして躊躇しているのが見て取れた)
男(だが、それを聞き出せるほど俺のコミュニケーションスキルは高くないので居心地悪いながらも待つしかない)
男(また数分が経って、いきなり女が口を開いた)
女「それで……宝玉の探索だけど、効率を上げるためとはいえ流石に28人全員がバラバラになるのは良くないと思うの」
男「え……ああ、そうだな」
男(まさかそれを言うためだけにこんな時間をと思った俺だが、どうやら前置きだったようだ)
女「だから3人から4人くらいかな。前衛後衛支援職のバランスを考えながらも、気の合う人たちでパーティーを組むように言おうと思ってるんだけど……」
女「その私のパーティーに……男君も加わってくれない?」
88 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:27:32.39 ID:xS52Z/Jn0
男「…………」
男(なるほど、女が言い渋っていた理由が分かった)
男(宝玉探索には時間がかかる。それは俺も言ったことだ。つまりパーティーを組めば、その長い探索の間ずっと一緒にいることになる)
男(そのパーティー分け……修学旅行の班決めより荒れるだろうな……。余り物グループに入ったので俺は関わらなかったが、喧々囂々していた教室を思い出す)
男(そして女が俺をパーティーに誘った……と)
男(女子には慕われ、男子には想いを寄せられる女)
男(そんな高嶺の花に求められる、誰もが羨むようなシチュエーションに)
男(しかし、俺は渋面を作って答えた)
89 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:28:19.79 ID:xS52Z/Jn0
男「……どうして俺なんだ? 魅了スキルなんてものしか持ってない役立たずだぞ」
女「役立たずと組みたいって思ったら駄目なの?」
男「ああ、駄目だな。その分宝玉を集めるのが遅れて、元の世界に戻るのが遅くなる。女の職『竜闘士』は優秀なんだから、優秀なスキルを持ったメンバーと組んで宝玉をガンガン集めてもらわないと」
女「でも、スキルだけじゃその人の優劣は決まらないよ。さっきだって私の考えに、ちゃんと自分の意見を伝えてくれた。そうやってこれからも支えて欲しいの」
男「そんなの誰だって出来ると思うぞ。おまえの親友の女友とかまさに適任だ」
女「どうして……そんな否定ばっかりするの?」
男「事実だからだ。……もういいか?」
男(半ば強引に会話を打ち切り、立ち上がって逃げようとするが)
女「じゃあ最後に一つだけ。私が男君とパーティーを組みたいのは、この異世界でも一緒にいたかったから。それだけの理由じゃ駄目かな?」
男(俺のにべもない態度にも食い下がる女)
男(どうやら言葉はそれが最後のようで、口を閉じて俺の返事を待つ)
90 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:28:59.04 ID:xS52Z/Jn0
男(逃亡に失敗した俺は一度あげた腰を下ろした)
男「………………」
男(俺は子供でもないし、馬鹿でもないし、鈍感でもない)
男(故に今の言葉が……女が俺に好意を持っているからこそ出たのだと分かっている)
男(それを理解して……俺は……)
女友「そういえば、女。私はパーティーに誘ってもらえるのかしら?」
女「もちろんだって。私は前衛だし、後衛の女友がいてくれれば百人力だし………………………………え?」
女友「まあそうですか。良かったです♪」
男(手を合わせて喜びを表現する女友を、オイルの切れた機械のようにギギギと効果音が出そうなほどゆっくりと振り向いて見る女)
91 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:29:52.58 ID:xS52Z/Jn0
女「…………一体いつからそこにいたんですか?」
女友「それはもう、『それで……宝玉の探索だけど、効率を――』」
女「はああああああああああっ!? そこからぁぁぁっ!?」
男(錯乱して叫び声を上げる女)
男(パーティーのお誘いからということは、つまり女が弱った部分を見せて俺の意見を頼った場面は見られていないということだが、その程度の事実は焼け石に水のようだ)
女友「二人きりで隣に座って雰囲気を作っていれば、それは注目しますよ。みなさん、そうですよね?」
男(さらに女にとって最悪なことは、さっきまで騒いでいたクラスメイトたちがいつの間にか静かになり、二人を囲んで見守っていたことだった)
クラスメイト男子1「っ……正直羨ましすぎるが……」
クラスメイト男子2「くっ……だがあそこまで乙女な一面を見せた委員長の思いを……俺たちは踏みにじることは出来ん……!!」
クラスメイト男子3「俺たちの分まで……幸せにしろよ」
男(今まで俺と女の関係に嫉妬していた男子たちが、血涙を流しながらも祝福ムードになり)
クラスメイト女子1「……いいわね」
クラスメイト女子2「私たちも……あそこまで思える人が欲しいわ……」
クラスメイト女子3「お幸せにね」
男(女子たちはうっとりとしている)
92 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:30:33.79 ID:xS52Z/Jn0
女「ちょ、へ、変な雰囲気にしないでよ!? 私が男君をパーティーに誘ったのはそんなつもりじゃ――――」
女友「そんなつもりでは?」
女「無い……と言えなくも無いような気がしないでもないけど……」
女友「要するに『ある』というわけですね?」
女「………………女友のイジワル」
クラスメイトたち「「「Fooooooo!!」」」
男(女が暗に認めたことによりヒートアップする観客たち)
男(口々にはやし立てたり、いじったり、祝ったりする中、当事者でありながら置いていかれている存在に気づいた者が現れた)
クラスメイト1「それで男の返事はどうなんだよ!?」
クラスメイト2「そうだぞ、女さんがここまで言ってるんだぞ!?」
クラスメイト3「早く答えなさいよ、それが男ってもんでしょ!!」
男(口々に俺の返事を催促する)
93 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:31:29.23 ID:xS52Z/Jn0
男「ああ……そうだな」
男(一連の流れに圧倒されて思考を放棄していた俺は、その言葉で復活した)
女「男君……」
男(女が胸の前で両手を合わせて答えを待つ。周囲も黙って待ちかまえる)
男(そんな中俺は小さくため息を付いて……口を開いた)
男「全く揃いも揃って――――馬鹿ばかりだな」
94 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:32:05.01 ID:xS52Z/Jn0
女「……へ?」
男(YESかNOが返ってくると思っていた女と周囲のクラスメイトたちはその言葉に困惑した)
男「分かってない。女のその言葉は……魅了スキルで植え付けられた偽りの好意によるものだ」
女「…………」
男「二人の様子があまり変わらなかったから、心配してなかったが……ここまで影響を及ぼすとは。……まあスキルを暴発させた俺が言えた義理ではないか」
男(俺は自嘲気味に発言して、次の宣告を行った)
男「二人にかけた魅了スキルを解除する」
女「………………へ?」
女友「どういうことでしょうか、男さん」
男(女も女友も雰囲気が変わっていない)
男「やっぱり無理か……」
男(魅了スキルの詳細に『一度かけたスキルの解除は不可能』と書いていたので駄目で元々ではあったが)
95 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:32:41.83 ID:xS52Z/Jn0
男「なら、命令だ。二人とも俺に対する好意を忘れろ」
男(自分でもゾッとするような冷たい声音で続ける。魅了スキルにかかった二人に対する命令は絶対のものになるはずだったが)
女「ねえ、男君? さっきから何をしているの?」
女友「忘れられる訳が無い……ってふざける場面ではなさそうですね」
男(やはり様子の変わらない二人。これも想定済みではある)
男(魅了スキルの一文には『虜になった対象は術者のどんな命令にも身体が従う』とあった。つまり命令できるのは肉体のみで心にまで影響を及ぼすことは出来ないということだろう)
男(それでも一縷の望みをかけてだったが……駄目みたいだな)
男「しょうがない、なら対症療法でしかないが、物理的に近づけさせなければいいだけだ」
男「命令だ、二人とも俺への接触を禁――」
女「ちょっと待ってよ!」
96 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:33:43.44 ID:xS52Z/Jn0
男(女の気迫の籠もった声に、俺は命令を中止させられる)
女「ねえ、さっきから男君私たちを遠ざけようとしてどういうことなの!?」
男「どういうことも何も、魅了スキルに蝕まれた二人をあるべき姿に戻すためだ」
女「蝕むって……私はそんなこと……!」
男「無い、という言葉に魅了スキルが関わっていないと証明できるのか? 偽りの好意から来ている言葉じゃないのか?」
女「それは……」
男(その言葉は予想外だったようだ。否定しきれない女から、周りのクラスメイトに視線を移す)
男「みんなも今日の女の行動は忘れてやってくれ。あれは魅了スキルによって歪められた行動だ」
女「何で……そんなことを……」
男「どうしてか……それは」
女「…………」
男「いや、知る必要の無いことだな。――命令だ、二人とも絶対に俺を追ってくるな。他のみんなも願わくば俺を一人にしてくれ」
男(感傷的になり口を滑らせそうになった俺は、今度こそ命令をかけて踵を返す。向かうのは広場の外に広がる森だ)
男(色んな感情がごちゃ混ぜになっている)
男(一人になって整理をしたかった)
97 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/06(火) 20:34:41.29 ID:xS52Z/Jn0
続く。
曇りパートはなるべく短めで行きます。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/06(火) 20:58:28.59 ID:ueTkUF+M0
乙
三流小説なら男を振った女が別経由で異世界でいるとかで男と再会とかありそうだけどなぁ〜
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/06(火) 22:03:28.78 ID:+5jXCP6WO
乙ー
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/07(水) 00:50:15.55 ID:5AQUCZqB0
>>14
の
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/07(水) 00:51:12.94 ID:5AQUCZqB0
ミスったら
>>14
の「元々対象が術者に特別な好意を持っている場合、このスキルは効力を発揮しない」に今の所、触れていないのがキーぽい
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/07(水) 01:39:29.94 ID:xy18/qS5o
全員気づいてるぞ
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/07(水) 06:44:04.54 ID:Qw/mm2bPO
乙!
104 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/07(水) 20:12:00.61 ID:YRuZMajN0
>>98
アイデアとしては考えてますが、現時点でのプロットには組み込まれてないですね
>>101
「………………」
>>102
なんですと!?
投下します。
105 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/07(水) 20:12:50.85 ID:YRuZMajN0
男(どこをどう走ったのかは覚えていない)
男(気が付くと俺は森の中でも少しだけ開けた場所に出た)
男「……ここらでいいか」
男(近くにあった切り株に腰掛ける)
男(月明かりだけが見守る中、俺は物思いに耽ることにした)
男(俺は自分のことをボッチで、卑屈な人間だと理解している)
男(それでも自分でいうのも何だが、昔は普通の少年だった……はずだ)
男(歪んだのはあの出来事を経験してからだろう)
106 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/07(水) 20:13:35.82 ID:YRuZMajN0
男『好きです! 付き合ってください!!』
『……あー、勘違いしちゃったか。女慣れしてなくてからかうの面白かったよ、おもちゃ君』
男(中学生、思春期というのは恋愛事に非常な興味を持つ世代だ)
男(俺たち二人だけの出来事だったはずの告白失敗は、当然のように多くの人に広まった)
男(ボッチな今と違って、あのころは友達がかなりいた。その全員から同じような質問を受けた)
『なあ、おまえ告白失敗したんだって?』
男(ニヤニヤとしながら、興味津々であることを隠そうとせずに)
男(嬉々として人の傷を抉ろうとする彼らが、得体の知れない怪物のように思えて、その質問全てを無視して縁を切った)
男(こうして俺は人間関係の全てを放り出した。これ以後の中学三年ずっとボッチで通した)
男(高校は遠くに進学したため、今のクラスメイトに当時のことを知るものはいない)
男(リセットしたこの場なら新しい友達を作ることも出来ただろうが、長年のボッチ生活が災いして、俺は人間関係を作るのに億劫になっていた)
男(高校でもボッチが続いているのはそういう理由である)
107 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/07(水) 20:14:15.70 ID:YRuZMajN0
男(対人関係だけではない。俺の内面にも影響はあった)
男(告白失敗から俺が学んだのは、人間とは心の奥底で何を考えているか分からないということだった)
男(あの子の好意は嘘だった)
男(俺が勝手に勘違いして、期待したのも悪かったかもしれない)
男(それでも当時の俺はただ裏切られたとしか思わなかった)
男(告白というのは自分の好意を晒け出すことだ)
男(失敗すれば心をズタボロに引き裂かれる)
男(ともすれば、自分自身を否定されたようにも感じるだろう)
男(その傷を癒す方法は色々ある)
男(例えば勉強やスポーツに打ち込んで失恋の傷を癒すなんてのはよく聞く話だ)
男(他にも新しい恋を探すなんて方法もある)
男(そんな中、俺は自己否定を重ねて傷を癒した)
108 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/07(水) 20:14:57.82 ID:YRuZMajN0
男(相手に好意を持ったのが悪かった。告白したのが悪かった……と)
男(恋愛なんてしたのが悪かった、と)
男(過去の自分を否定して、今の自分を守った)
男(もちろんその代償は存在する)
男(度重なる自己否定で俺の思考は偏り、恋愛アンチとなったのだ)
男(人に好意を持たないようにした。誰にも心を許さないようにした)
男(最初から好意を持たなければ報われず傷付くこともない。信じなければ裏切られることはない)
男(その二つを強要する恋愛なんてもってのほか)
男(本気で打ち込むやつらの考えが知れない)
男(こうして俺は歪みと引き替えに心の安寧を勝ち取った)
『人は一人では生きていけなくても、独りでは生きていける』
男(これを俺の座右の銘にした)
男(順風満帆ではなく……凪のようにひたすらに平穏な人生を送っていくつもりだった)
109 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/07(水) 20:15:39.10 ID:YRuZMajN0
男(なのに)
男(この異世界に来てその目論見は崩れ去った)
男(魅了スキルのせいで俺に好意を向けるようになった女や女友の存在だ)
男(偽りの好意だと分かっているのに……かつて捨て去ったはずの理想が叶うのではと期待してしまう俺がいた)
男(ああ、そうだ。俺は恋愛アンチになった今でも、恋愛に夢を見ているんだ)
男(それは、いつの日か俺の前に心の底から――――)
110 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/07(水) 20:16:13.26 ID:YRuZMajN0
魔物「ブモオオオオオッ!!」
男「……っ!?」
男(近くで上がった鳴き声に俺は思考を中断して立ち上がる)
男(月明かりしか無かった森に、いつの間にかイノシシ型の魔物が現れていた。俺の目の前5mほどの距離にいて、完全にこちらを認識している)
男「っ、なんだおまえか。雑魚の相手をしている場合じゃないんだ。とっとと…………………………」
男(そこまで言って俺は気づいた。この森には何度も入っていたが、毎回誰かと一緒でそいつが魔物を蹴散らしていた)
男(俺は一度も戦闘をしたことがなかった)
男(それも当然だ。俺に備わった力は『魅了』スキルのみ。戦闘で使える力ではない)
男(当たり前すぎて、なのにごちゃごちゃした感情のせいで忘れていた。今さらのように注意を思い出す)
男「一般人が魔物によって殺されるという事件はよくあること……」
男(そして、俺の戦闘力は一般人と同じかそれ以下だ)
111 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/07(水) 20:16:50.08 ID:YRuZMajN0
男「………………」
男(浮かび上がるは恐怖)
魔物「ブモオオオオオッ!!」
男(再度雄叫びを上げると、イノシシの魔物は地を蹴り、俺に向かって突進してきた)
男「く、来るな……!!」
男(その言葉には、いかほどの力もこもっていない)
男(速度にして人間が走ったのと変わりないくらいの突進だったのに、まともに食らって俺は冗談のように吹っ飛んだ)
男「ぐっ……」
男(突進の衝撃で腹部を強く打ち、地面を転がったせいで腕や足の至る所に擦り傷が付く)
男(重傷ではない。だが、大きな怪我をしたこともなく、スポーツもケンカもまともにやったことのない俺は初めての味わう大きな痛みに動けないでいた)
男(さらに悪いことは、イノシシの魔物は追撃を加えようと俺に迫っていることだ)
112 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/07(水) 20:17:52.83 ID:YRuZMajN0
男「…………」
男(立ち上がる力が沸かない)
男(自分が嫌になって逃げたその先で襲われて死ぬ)
男(なんと惨めな終わり方だろうか)
男(いや、でも……それが俺にふさわしいんだろうな)
男(目の前に迫る最期に、俺は諦めて――)
男「嫌だ……俺は、まだ……っ!!」
男(諦めきれずに漏れた声に応えたのか)
???「『影の弾丸(シャドウバレット)』!!」
男(黒い弾丸が音も無く月明かりに照らされた森を進み標的を打ち抜いた)
113 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/07(水) 20:18:50.25 ID:YRuZMajN0
男「……え?」
男(気づくとイノシシの魔物は倒れていて……)
男「助かった……のか?」
男(何が起きたのか信じられない俺は呆然となる)
イケメン「間一髪だったみたいだね」
男(その背後には人差し指を標的に向けたポーズで副委員長のイケメンが立っていた)
男(俺は腰が抜けて、へたりこんだ状態のままイケメンに話しかける)
男「ど、どうしてここが……」
イケメン「元々あの夕食後の騒ぎには加わってなくてね。遠くから見ていたんだけど、そしたら君が一人森の中に向かうからあわてて付いてきたんだ。君が魔物と戦う力を持っていないのは承知済みだったからさ」
男「そうか……すまない、失念していた」
イケメン「いいさ、いいさ。気にしないでくれ」
男(様になる笑みを浮かべるイケメン)
114 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/07(水) 20:19:57.96 ID:YRuZMajN0
男「とにかく助かった……ここは危険だな、すぐに拠点に戻らないと。悪いけど護衛を……………………………………」
男(言いかけて俺は言葉が止まる)
男(何かがおかしい。失念している)
男(助けてもらったことは感謝しているが……イケメンは、こいつは……ああ、そうだ)
男(さっきの表情、顔は笑っていたけど……目はぎらついて濁っていた)
男「なあ、イケメン。助けてもらってなんだが……おまえは本当に俺を助けに来たのか?」
イケメン「くくっ、中々鋭い……まあ隠すつもりも無かったけどね」
男(善人としての仮面を脱ぎ捨て、本性丸出しの笑みを浮かべるイケメン)
115 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/07(水) 20:21:08.03 ID:YRuZMajN0
イケメン「ところで僕の職は『影使い(シャドウマスター)』っていうんだ」
男(ふいにイケメンはそんな話を始める)
イケメン「これが中々に強力なスキルが目白押しでね。音もなく対象を打ち抜く『影の弾丸(シャドウバレット)』」
イケメン「影を操ることで任意の映像を出す『影の投影(シャドウコントロール)』」
イケメン「影に潜み敵をやり過ごすための『潜伏影(ハイドシャドウ)』とまあ色々あってね」
イケメン「中でもお気に入りがこれさ! 『影の束縛(シャドウバインド)』!!」
男「くっ……!」
男(イケメンがスキルを唱えると、俺の足下の影が蠢き、主である俺の体をかけ走って拘束する)
イケメン「くくっ、すごいだろう? 誰だって自分の影を掴むことは出来ない。その影が主を拘束する。完璧な拘束術さ!!」
男(俺を空中に磔にしてあざ笑うイケメン)
116 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/07(水) 20:22:00.87 ID:YRuZMajN0
イケメン「さてそろそろ疑問に答えようか。僕は君を助けに来たのか、だったね」
イケメン「それは愚問だろう? こうして君を魔物から守ったことからさぁ!」
男「……ここまで胡散臭い言葉もあったんだな」
イケメン「ははっ、何を言っているんだ。僕は失うわけにはいかないんだよ」
イケメン「君を……いや、君の魅了スキルをね!!」
男「俺の魅了スキルを……?」
男(どういうことだ。俺の魅了スキルがこいつに利するなんてことは…………)
男「いや、まさか……」
イケメン「そうだ、君には――」
男(愉悦の表情を浮かべ、両手を広げたイケメンは、自身の欲望を語る)
イケメン「手当たり次第に魅了スキルを女どもにかけて、僕に奉仕するように命令するための道具になってもらうってことさ!!」
117 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/07(水) 20:23:13.28 ID:YRuZMajN0
続く。
こっちにはルビ機能が無いのが辛いです。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/07(水) 20:31:15.81 ID:8Do6VrJKO
乙ー
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/08(木) 20:48:47.63 ID:mzn6V75G0
ギャルは利用していただけだったか…描写的にいいやつでもなかったし、こいつも何か報いを受けそう
120 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/08(木) 21:36:15.52 ID:INPf73SG0
男(いつもの善人面を脱ぎ捨てたイケメンが語った欲望はつまり)
男「ハーレム願望ってことか」
男(恋愛アンチな俺が珍しいだけで、魅了スキルなんてものを持てばまずは考えることだろう)
男(モテない男が魅了スキルに類するものをもらって、女性相手に欲望の限り好き放題する作品がごまんと存在するのがその証拠だ)
男(だが……それをイケメンが語ったのは不可解だった)
男「おまえにはギャルって彼女がいたじゃねえか。随分と惚れられているようだし、あいつじゃ満足しないのか?」
男(リア充で彼女持ちのやつが、浮かべる欲望には似合わない)
イケメン「ギャルか……あんなやつで僕が満足すると思ったのか? あいつはただのキープさ」
イケメン「あっちから寄ってきて、見てくれも良いから側に置いておくことにした。それだけさ」
イケメン「本命が手に入れば捨てるつもりだった」
男「冷酷なやつめ」
イケメン「何を言ってる、ギャルも夢見れてるんだ。むしろ慈善事業だと思ってほしいね」
男(そこに虚偽も誇張もない。イケメンは本気なのだろう。何とも自分勝手なやつだ)
121 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/08(木) 21:37:32.94 ID:INPf73SG0
男「にしても……おまえの願いは俺に魅了スキルをかけさせて、自分に奉仕するように命令させるだったか」
イケメン「その通りだ。素晴らしいだろう?」
男「どこが。一ミリも引かれねえよ。それに何か勘違いしてねえか?」
イケメン「勘違い?」
男「ああ、だって俺の魅了スキルは術者に好意が向くスキルだ。それに命令では人の心を操れないことも確認している」
男「つまり、おまえが言う通りにしたところで……心までは手に入らないんだよ」
男(俺に好意が向いている女子に奉仕されたところで空しいだろう)
イケメン「くくっ、何を言い出すかと思えば、そんなことか」
男「何がおかしい?」
イケメン「――別に心なんて必要ないだろう? 従順に命令通りの行動をする身体、それさえあれば十分さ!」
イケメン「むしろ心が自分に向いてない方が、無理やり感や征服感があって良いくらいだ!!」
122 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/08(木) 21:38:26.64 ID:INPf73SG0
男「…………」
男(イケメンの言葉に俺は黙る。というのもイケメンの返答が思ってもいないものだからだった)
男(……いや、でも考えてみればそうだな。女を物扱いだったり、屈服させることが好きという人種もいる。それくらい俺だって分かってはいる)
男(なのに失念していたのは……ああ、そうだ)
男「ちっとも良くねえよ。身体だけ手に入っても……こちらに好意的な素振りを見せたところで、心が伴っていなければ意味ねえだろ」
男(俺の理想と相反する考え方だからだ)
男「お互いが心の底から愛し合う……恋愛ってのはそれが理想だろうが!」
123 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/08(木) 21:39:03.29 ID:INPf73SG0
イケメン「へえ……」
イケメン「なるほど魅了スキルなんてものを貰っておきながら、どうして女友や女にあらゆる命令を出さずに自重しているのかようやく分かったよ」
イケメン「君は純愛家なのか。似合ってないな」
男「そんなこと分かってるっつうの」
イケメン「お節介な忠告だが、君のその態度では一生叶わないよ」
男「叶わないことを追い求めるからこそ理想なんだろ」
イケメン「心なんて無駄なものを追い求めるのは、やはりロマンチストだからか?」
男「身体だけで満足する即物主義者には分からねえだろうよ」
124 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/08(木) 21:40:38.61 ID:INPf73SG0
イケメン「平行線だね……まあ、君の主張なんてどうでもいい」
イケメン「君はこれから道具になる。道具には理想なんてもの必要ないからな」
男「ぐっ……!?」
男(イケメンが『影の束縛(シャドウバインド)』の拘束の力を上げる。締められた四肢が痛み、俺は声を上げる)
イケメン「話はここまで。これから君を痛め続け……泣いても、叫んでも、喚いても止めない。心を破壊するまで」
男(痛みによる調教。魅了スキルが無くても出来る、相手を自分の意のままに動かすための原始的な方法)
イケメン「君のステータスは確認済み。職(ジョブ)が『冒険者』で戦う力は無く、スキルも『魅了』のみ」
イケメン「魅了スキルは相手を命令を聞かせることが出来るがその対象は異性のみ。つまり男の僕には効かない以上、この場で君は無力だ」
イケメン「クラスメイトたちの前でこんなことをしたらスキルを使って止められただろう」
イケメン「だからみんなに付いてこないように命令し、わざわざ自分からこの森の中に入ったのはまさにカモがネギをしょってきたようなものだったよ!!」
イケメン「さあ、もう一段階上げようか!! 時間をかけてはいられないのでね!!」
125 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/08(木) 21:41:22.44 ID:INPf73SG0
男「ごほっ……ごほっ……」
男(影が首にまで及び締められ酸素が欠乏する)
男「……ああ……そうだな。馬鹿は俺の方じゃねえか……!」
男(それでも俺は自嘲の言葉を出さずにはいられなかった)
男(魅了スキル。俺には無用の長物なスキル……だが、どうして他の者まで同じ評価をすると思った?)
男(その強大な力に引かれ、イケメンのように我が物にしようとするやつが現れるのを予想してしかるべきだった)
男(男と女。世界の半分を意のままに出来るこのスキルは、残りの半分に対して無力で羨望の対象になることを分かっていなかった。)
男(そして今さら認識したところで……もう遅い)
男「うっ……っ……ああっ……」
男(四肢の拘束は堅く、ずっともがいているが抜け出せる気配すらない。首の拘束により、呼吸も困難になってきて………………俺、は…………)
126 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/08(木) 21:42:13.58 ID:INPf73SG0
イケメン「ああ、これで世界中の女性を僕の物に出来る……! ああ、だがどんなに美しい女性を手にしても一番は……そう。女、君だからね……!」
男「おん…………な……」
男(俺が魅了スキルをかけてしまった少女の名前を、イケメンが口にする)
男(この状況、自力でどうにかするのは不可能だろう)
男(だが、俺を助けに来る者がいるとは思えなかった)
男(クラスメイトとはろくに話したことも無く、俺を助ける義理なんて無い)
男(可能性があるとすれば、魅了スキルをかけてしまった女と女友がその好意に従って助けに来ることぐらいだったが)
男『――命令だ、二人とも絶対に俺を追ってくるな』
男(二人には他でもない俺が付いてくるなと命令を出している)
男(こんな事態になったのも……日頃の俺の行いのせいだろう)
127 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/08(木) 21:43:35.43 ID:INPf73SG0
男「ははっ…………おまえ、なんかに………言われなくても………………分かって……るんだ、自分でも」
男「…………そもそも……傷つくのおそれて、誰も信じない俺が………………」
男「お互いを信じ合う、関係を………………作れるはずが無いって、そんなことくらい……!!」
イケメン「今さら後悔か! 遅い、遅すぎる!! その教訓は来世にでも生かしてくださいねぇっ!!」
イケメン「今世は僕に尽くす道具として働いて貰うからさぁ!!」
男(苦痛と酸素の欠乏により麻痺した思考が、もう全てを諦めようとしていた)
男(いいじゃないか、こいつの道具になることくらい)
男(どうせ生きてたっていいことはない)
男(分かってるのに……ああ、そうだ。さっきイノシシ型の魔物に襲われたときも思ったが、どうやら俺は諦めが悪いようだ)
男(何がそこまで俺をかき立てるのか)
男(そうだ、俺は恋愛アンチになっても捨てられない理想……)
男(いつかこんな俺の全てを愛してくれて、俺も全てを愛することが出来る……そんな相手が現れてくれないかと思っているんだ)
男(もちろん自分から誰も信じない俺はその土俵にも立てない。宝くじを買っていないのに、3億円で何をするか考えているような馬鹿だ)
男「こんなことなら……俺は…………誰かを……信じて…………みるべきだったな……」
男(今さらな言葉が宙に消えようとした――そのとき)
128 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/08(木) 21:44:27.67 ID:INPf73SG0
???「『竜の咆哮(ドラゴンシャウト)』!!」
ゴォォォォッ!!
男(夜の森の静寂を破るように、重低音のうなり声と同時に風切り音が轟いた)
イケメン「ぐはっ!」
男(その正体は指向性の衝撃波。対象にされたイケメンは踏ん張ることも出来ずに吹き飛ばされる)
男「っ……げほっ、ごほっ…………はあ、はあ……」
男(イケメンがダメージを負ったことで集中が途切れたのか『影の束縛(シャドウバインド)』が解除される)
男「はぁはぁ……はぁはぁ……」
男(呼吸できることがこんなにありがたいことだとは……)
男(空中での磔を解かれた俺は、地に倒れ込んで大きく深呼吸する)
129 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/08(木) 21:50:35.82 ID:INPf73SG0
女「大丈夫だった、男君?」
男(そんな俺に言葉と共に手を差し出したのは……ここに来れるはずが無い少女)
男(女だ)
男「……どうして? 追ってくるなって魅了スキルで命令したはずなのに」
女「私が男君を助けようと思ったから……それだけじゃ駄目かな?」
男「それは…………」
男(あり得るはずがない)
男(確かに、女は状態異常耐性で魅了スキルのかかりが中途半端だ。それでもスリーサイズを聞いたときのように命令には従うはず)
男(……いや、でも命令についても中途半端で、効かないときがあったということか?)
男(だとしても、助けたいという思いは好意を起点に発する感情だ)
男(魅了スキルから生まれた思いなら、同時に追ってくるなという命令も干渉するのが道理で女がこの場に現れることは出来ないはずだ)
男(しかし、女はこうして俺を助けてくれた。それを成し遂げられたのは……論理的に考えると……)
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