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男「恋愛アンチなのに異世界でチートな魅了スキルを授かった件」
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157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/10(土) 21:27:42.31 ID:tdKo6Zqf0
女さんが男君が好きになった理由も語られてほしいが…
158 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/10(土) 21:51:51.47 ID:hc/kgHeB0
女友「その反応……やはり、思っていた通りなんですね」
女「……いつから、気づいていたの?」
女友「最初から疑っていました。というより、今まで気づかれなかったのが不思議なくらい綱渡りでしたよね? 私がフォローしなければ今ごろどうなっていたことやら」
女「それは感謝しているけど……気づいていたなら見逃して欲しかったなあ……って」
女友「そんなこと出来るわけありません。こんな親友が面白……悩んでいる状況を見過ごすなんて……!」
女「ねえ、今面白いって言おうとしたよね?」
女(よよよ、と嘘泣きしている親友を半眼で睨みつける)
女友「それよりはっきりさせておきましょう」
女友「まずは魅了スキルの詳細について振り返っておきましょうか」
女「えっと……こうだったっけ」
159 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/10(土) 21:52:33.71 ID:hc/kgHeB0
スキル『魅了』
効果範囲:術者から周囲5m
効果対象:術者が魅力的だと思う異性のみ
・発動すると範囲内の対象を虜(とりこ)にする。
・虜(とりこ)になった対象は術者に対して好意を持つ。
・虜(とりこ)になった対象は術者のどんな命令にも身体が従う。
・元々対象が術者に特別な好意を持っている場合、このスキルは効力を発揮しない。
・一度かけたスキルの解除は不可能。
160 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/10(土) 21:53:29.09 ID:hc/kgHeB0
女友「それで女。あなたは男さんが魅了スキルを発動した際に、効果範囲5mの内にいました」
女「はい」
女友「男さんが漏らした言葉から、効果対象の魅力的な異性にも当てはまっているはずです」
女「……えへへ、魅力的だって。男君、私を魅力的だって思ってるんだって!」
女友「そこ、ニヤケない! 真面目な話をしているんですよ」
女「真面目なのかな……?」
女友「とにかく、ここまで条件が揃っているのに、女が魅了スキルにかかっていない理由です。それは――」
女「私が……魅了スキルにかかる前から……元の世界にいたときから、男君をその……す、好きだから……ってことだよね」
女友「それによって魅了スキルの詳細にあった文の一つ『元々対象が術者に特別な好意を持っている場合、このスキルは効力を発揮しない』が当てはまり、そもそも魅了スキルは女に対して失敗していたということですね」
女(普通に考えれば好意を持たれている相手を虜にしようなんて思わない。無駄な手間だからだ)
女(ということで、男君もおそらく重要視していないこの一文こそが私にとって厄介な状況を作っていた)
161 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/10(土) 21:54:37.17 ID:hc/kgHeB0
女友「そう、ここまでは事故のようなものです。女は悪くないでしょう。つまりこのヘタレがやらかすのはここからなのです」
女「ヘ、ヘタレって……否定できないけど……」
女友「『魅了スキルが失敗した理由……それはつまりあなたのことが好きなんです』と男さんに告白する度胸が無く、あろうことか誤魔化すために自分にも魅了スキルがかかっていると嘘を付きだしたのです」
女「あのままだと失敗した理由にたどりついたかもしれなかったからね。咄嗟にしてはいい判断――」
女友「ではもちろんありませんでした」
女「うわーん、酷いよぅ」
女友「すぐに子作りを迫った私との反応の違いを指摘されて、魅了スキルがかかってないんじゃないか? と男さんに疑われたでしょうが」
女「あのときはありがとね。状態異常耐性なんて言い訳をくれて」
女(状態異常耐性のおかげで魅了スキルが中途半端にかかっているというのは、魅了スキルが失敗している以上もちろん嘘である)
女(女友が言い出した苦肉の策だったが、案外上手くハマっていた)
162 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/10(土) 21:56:19.47 ID:hc/kgHeB0
女友「それで対応の違いを誤魔化し、命令にも一通り従った姿を見せて、どうにか男さんに魅了スキルがかかっていると思わせることに成功しました」
女「……そういえば、最初から私が魅了スキルにかかってないと疑ってたって言ったよね? だったらどこで気づいたの?」
女友「正直元の世界にいたときから女の気持ちには薄々気づいていましたから」
女「え、そうなの!? 初耳だよ、それ!!」
女友「ですが、実際状態異常耐性があるのも分かっていたので半々の可能性といったところですね。確信したのは、男さんにスリーサイズを言うように命令されたときです」
女友「スリーサイズ?」
女友「ええ。女が言ったのは84・60・80でしたか」
女「そうだね」
女友「……この数値、鯖を読んでますよね?」
女「い、いやそんなこと……私はナイススタイルで……」
女友「親友の目を誤魔化せると思ったのですか。本当はもっと貧乳でしょう。パッドを入れた数値を申告した時点で、命令に従っていない=魅了スキルにかかっていないと判断しました」
女「な、何で私の本当のスリーサイズを知ってるの!? ていうか酷いっ! そんな判断方法を取るなんて!」
女友「あなたが空しい見栄を張るのが悪いんです」
女(女友の言葉は容赦がない。ちなみに女友との胸囲格差も容赦がない)
女友「となれば後の出来事は簡単です。男さんがイケメンさんに襲われた際、魅了スキルで追ってくるなと命令されていたのに駆けつけられたのは」
女友「そもそも魅了スキルになんてかかっていなかったから命令の意味が無かったということですね。魅了スキルの外で助けたいと思ったとか関係ありません」
女「はい……その通りです」
163 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/10(土) 21:57:03.51 ID:hc/kgHeB0
女友「ここまでボロが出てるのに気づかれなかったのは、色んな要因が重なったからでしょうか。まずは女が元の世界で男さんが好きだってことをおくびにも出したことが無かったこと」
女「隠すのは上手いからね!」
女友「まあ、ヘタレなだけですが。次に男さんの自己評価の低さからでしょうか。学校にいたときから女に好かれているなんて、おそらく一片たりとも考えたことが無いのでしょうね」
女「うーん……これはどう反応すべきなの?」
女友「ヘタレ女と自己評価の低い男で相性がいいんじゃないですか、適当ですけど」
女「やったー……って適当なの!?」
女友「こんなの真面目に付き合ってたら、精神力がいくらあっても足りないです。後は女と男さんが釣り合いが取れてないからでしょうか?」
女友「スクールカーストトップが、言い方悪いですが最低辺に恋するなんて思いもよらないですからね。一体どういう経緯で好きになったのかは気になるところですが」
女「え、えっと……言わないと駄目?」
女友「いえ、お楽しみはまたの機会に取っておきましょう。……ではなくて、あまりに一度にたくさん聞き出すと女も大変でしょうからね遠慮しておきます」
女「今の言い直す必要あった!?」
女(面白がっていることを隠そうともしていない)
164 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/10(土) 21:58:44.46 ID:hc/kgHeB0
女友「というわけで状況の整理は出来ましたが……これからどうするつもりですか?」
女「どうするつもり……って、宝玉を集めて元の世界に戻るためにみんなで頑張って」
女友「そういう大局的なことではありません。男さんとの仲をどうするつもりなのかってことです」
女「お、男君と!?」
女友「話の流れで分かりませんか?」
女(だんだん女友の迫力が増している。……それほど私のヘタレさにイライラしているのかもしれない)
女「えっと……それを聞いて、どうするの?」
女友「そう構えないでください。アドバイスをしようと思っているだけです。あわよくば楽しもうなんて思っていません」
女「それ思ってるよね……でも、女友も魅了スキルにかかって男君に好意を持っているはずなのに、私にアドバイスって……その大丈夫なの?」
女友「最初こそ突然の好意に振り回されて子作り宣言してしまいましたが、慣れた今は完全に支配下においています。心境としては親友が良き男性とくっつくのを応援したいといった感じでしょうか」
女「そ、そう……良かった、女友が恋敵になんてなったら、一瞬で負けてもおかしくないし」
女友「まあ、ヘタレに負けるとは思えません」
女(酷い言われようだ)
165 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/10(土) 22:00:01.03 ID:hc/kgHeB0
女友「それで男さんとの仲はどうするつもりなのですか」
女「そ、それは……せっかく一緒のパーティーになったんだし、宝玉を集めながらも仲を深めて……こっちも魅了スキルで好意を持っているって言い訳で迫ることが出来るし……それでいつの日か男君から告白してきてゴールインって感じで……」
女友「全く、脳内お花畑ですね♪」
女「辛辣すぎない!?」
女友「男さんがどうして一人拠点を飛び出したのか忘れたんですか? 事情は分かりませんが……どうやら、男さんは嘘の好意にトラウマを持っているようです」
女友「……勝手な予想ですが、自分に好意的な女子に告白したけど、相手は眼中に無かったとかいう出来事を過去に体験しているとかでしょうか」
女「まるで見てきたことのように話すね……」
女友「つまり女にいくら迫られたところで、男さんの視点では女は魅了スキルにかかっていると思っています」
女友「となればそれは作られた好意により起こした行動、心の籠もっていない行動となり、受け入れることはあり得ません。つまり二人が結ばれる日は永遠に来ないのです」
女「…………ど、どうしよう、女友」
女友「今ごろ事の重大さに気づいたのですか」
166 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/10(土) 22:00:43.77 ID:hc/kgHeB0
女友「しょうがない親友のために二つ選択肢を示しましょう。いいですか?」
女「はい、女友様!」
女友「調子のいい子ですね……一つ目は、すぐに自分が魅了スキルにかかってないことを明かし、元の世界にいたときから好きだったと告白することですが」
女「(ブンブンブン)」
女友「残像が出るほどに首を横に振っている以上無理でしょうね。そんな度胸があるならこんなややこしい事態になっていません」
女友「……全く、どうしてああやってパーティーに誘うことは出来たのに告白は出来ないんでしょうか?」
女「だ、だって……あれはまだ魅了スキルのせいって心の中で言い訳出来たから……。あ、あれでも心臓が張り裂けそうだったんだよ! 告白なんてしたら、心臓が破裂して死んじゃうって!!」
女友「死ぬわけ無いでしょうが」
167 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/10(土) 22:01:37.65 ID:hc/kgHeB0
女友「はぁ……では二つ目の方法です。それはこのまま誘惑を続けることです」
女「誘惑……って、ん? 私が言った男君に迫るってのと何か違うの?」
女友「まあ、似たようなものですね」
女「えー……なのに私お花畑って罵倒されたの?」
女友「黙らっしゃい。似てはいますが、狙いが違います。男さんはトラウマにより、このままでは女を恋愛対象と見ることがありません」
女「ふむふむ」
女友「しかし、男さんは年頃の男の子です。トラウマを抱えているとはいえ、性欲はあるはずです」
女「なるほ……えっ!?」
女友「なので誘惑することで既成事実を作り、責任を取るように迫りましょう」
女「ちょ、そ、それはあんまりだよ!」
168 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/10(土) 22:02:29.84 ID:hc/kgHeB0
女友「そうですね……女の心配も分かります」
女「よ、良かった……女友が分かってくれて」
女友「つまり、女はこう言ういたいのですね――流石に妊娠はマズいと」
女「そんな心配してないって!? ああいや、確かに言っていることは正しいけど!?」
女友「男さんが重すぎる責任を恐れて、逃げるという可能性を考えているんですね」
女「いや、そうじゃなくて……女友はさ、こう、倫理的って言葉を覚えようって!!」
女友「倫……理……? はて……?」
女「いや、知らない振りしないでよ」
女友「というわけで既成事実はマズいですから、まあ行為ぐらいで我慢しましょう。男さんならばそれくらいでも責任は感じてくれるはずです」
女「こ、行為って……それって……////」
女(顔からプシューと煙が出そうなくらい熱くなる)
女(そういえば女友は男君にいの一番に子作りを迫っていたり、どうにも思想が過激だ)
169 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/10(土) 22:03:18.10 ID:hc/kgHeB0
女友「煮え切らないですね。自分から告白する勇気がないならばこれが一番の近道なのですが……何が不満なんですか?」
女「だ、だって…………」
女友「……?」
女「理由言っても笑わない?」
女友「内容を聞かないことには分かりませんとしか」
女「そこは嘘でも笑わないって言って欲しかったけど……そ、そのね。そうやって男君の一時的な衝動から負い目作ってそこに付け込んで付き合っても……心が通じ合っているとは言えないじゃない」
女友「心……」
女友「お互いがお互いを想い合う……それが私の恋愛の理想なんだけど……あはは、やっぱり夢見過ぎかな?」
女友「………………」
女(照れ臭くなった私は笑って誤魔化すが、思いの外女友は真面目な顔つきだった)
170 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/10(土) 22:03:56.54 ID:hc/kgHeB0
女友「いえ……そういう人がいてもいいと思いますよ。私には理解できませんが……その考えは尊重します」
女「女友……」
女(親友が遠い目をしている)
女(これでも長年の付き合いなので何となく分かる、女友の家庭環境が関係するのだろう)
女(でも、それを自ら言いださないということは踏み込むタイミングではないということだ)
女(ならばその女友の意志を尊重するし……逆に助けを求めてくれれば、いつだって絶対に駆けつけると決心する)
女友「っ……」
女(女友は珍しく感傷に浸っていたことが恥ずかしいのか気まずそうに顔を伏せて)
女友「………………まあそれとは別に、自分から告白する勇気もない人が心を通じ合わせられるのかは疑問ですが」
女「そ、それは言わないでもらえるとありがたいです……」
女(ここまで切れ味鋭い毒が飛んでくるなら、もういつも通りに戻っているかな)
171 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/10(土) 22:05:17.59 ID:hc/kgHeB0
女友「では、女の要望をまとめておきましょうか。過激なことをするのはNGで、負い目に付け込むのではなく心が通じ合った関係を作るために、相手は自分をトラウマに思う状況を作っていますけど、それでも自分から告白する勇気はないので相手から告白するように仕向けたいということですか」
女「……あ、あれ? そうやって並べられてみると私わがまま過ぎない……?」
女友「今さらですか」
女「女友えもん、何か解決策出してよ〜」
女友「ネコ型ロボットではありません。……まあなら方法は一つしかないでしょう。男さんのトラウマから来る恋愛アンチを克服させるということです」
女友「逐一指示は出しますが、基本的には男との距離を縮めればいいでしょう。出来ますね?」
女「うん! 頑張るよ!」
女(元の世界に戻るために宝玉を集めるのも大事だけど……でも、この異世界にいる間に絶対に男君といい仲になってみせる!!)
女(私は決まった方針にガッツポーズを作って奮起した)
女友(トラウマから来る恋愛アンチの克服……言葉にすれば簡単ですが、それがどれだけ茨の道なのかは……分かってなさそうですね)
女友「はぁ……」
女友(のうてんきな親友を見て、今夜何度目になるか分からない溜め息を吐いた)
172 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/10(土) 22:09:14.77 ID:hc/kgHeB0
続く。
>>155
>>156
ありがとうございます。
>>157
またの機会になります、申し訳ないです。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/10(土) 23:33:47.52 ID:vWwgNgouo
乙ー
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/11(日) 02:44:13.18 ID:YnP6vLE40
乙!
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/11(日) 08:19:55.62 ID:z2Onz+Fk0
乙
女友さん、まるで知っていたように男のトラウマあてるな……
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/11(日) 16:33:13.86 ID:QaR4CcZO0
ワシの好きなタイプの主人公やな
177 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/11(日) 21:58:34.51 ID:R0pBPhLP0
>>173
>>174
ありがとうございます。
>>175
どうなんでしょう、知っていたんですかね。作者にも分かりません(酷い)
>>176
卑屈系主人公ワシも好き
投下します。
178 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/11(日) 22:01:32.30 ID:R0pBPhLP0
男(俺の自己嫌悪から陥った危機、イケメンの襲撃、パーティーの結成など色々あった濃い夜も明けて朝を迎える)
女「それじゃ出発するよ!」
男(女の言葉に、クラスメイトたちは森へ一歩踏み出す)
男(異世界に来てからずっと生活の拠点としていた広場を出て、人里を目指すときが来た)
男「こんな短い期間だったけど、少しは感慨深く……ならないな」
男(本当生活できるってだけで最低限の施設しかなかったし、現代の日本の暮らしに慣れた俺たちにとって充実度は最悪だった)
男(まあでも未練がないわけではない)
男「あの石碑はやっぱり気になるよな……」
男(俺たちを異世界に呼んだと思われる者によるメッセージ……宝玉を集めれば、世界を救い、元の世界に戻れる……どういうことなのだろうか?)
179 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/11(日) 22:02:49.38 ID:R0pBPhLP0
クラスメイト1「しかし、イケメンも自分たちだけ別行動するとか水臭いよな」
クラスメイト2「何がだ。ちゃんと彼女のギャルも連れて行ってるんだろ? さながら異世界デートってところじゃねえのか?」
クラスメイト3「デートってより旅行じゃね。羨ましいよな」
男(魔物が出る森を気楽に進んでいるクラスメイトたちの話し声が聞こえてきた。まあ、俺以外のやつにとっては危険じゃない場所ではあるが)
男「にしても……イケメンとギャルか……」
男(昨夜、猛スピードで去ったため追跡を諦めた二人は、結局今朝になっても拠点に戻ってくることはなかった)
男(突然の消失に騒ぎになるクラスメイトたちだったが、女が二人は今から向かう村以外に人里を見つけてそちらを見てくるために急遽出たという嘘で収めていた)
男(後で事情を聞いたが、あんなやつでも表では人望があったので、真実を伝えては動揺するだろうから配慮してとのことらしい)
男(結果、昨夜起きたことを知っているのは俺と女と女友の三人だけのようだ)
180 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/11(日) 22:04:04.89 ID:R0pBPhLP0
男「あいつ絶対また襲ってくるよな……」
男(反省しているなら戻ってくるはずだ。それが逃げて潜伏するのを選んだということは……俺の魅了スキルをまだ諦めていないということだろう)
男「まあ、そのときのために女とパーティーを組んだんだ。考え無しに突っ込んできたら返り討ちだ……女の手によって」
男(他力本願でイキる小悪党のような発言をしたところで)
女「……あれ、私の名前呼んだ?」
男「あ、女」
男(集団を先導していたはずの女が、後ろの方にいる俺のところまで戻ってきていた)
男「一番前にいなくていいのか?」
女「私たちは拠点から東を調査していたけど、今は人里がある西に向かってるでしょ? だから正直今どこにいて、どっちに向かっているのかも分からなくて……正直私が先導する意味って無いの」
女「まあ何かトラブルがあったときは対処しないといけないけど」
男「なるほどな」
男(リーダーとして前には立っていたが、道案内は他に任せていたってことだろう。で、今は順調だからこうやって後ろに来る余裕もあると)
181 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/11(日) 22:05:07.43 ID:R0pBPhLP0
男(しかし余裕があるのと、実際に行動するのは別だ。ずっと前にいても良いのにわざわざ下がって俺なんかのところまで来た理由は)
男(……ああ、そういえば昨夜も自分がみんなを導く立場に押しつぶされそうになってたな。それ関連だろう)
男「もしかしてこの後についての相談か? この異世界で初めて人に会うってわけで、どうすればいいか不安になるのも分かるが、俺だって出たとこ勝負だとしか言えないぞ」
男(パターンとしては良くある旅人として無関心に対応されるか、よそものとして排斥されるか……)
男(いや、意外と異世界召喚がメジャーで事情を完璧に把握されているという可能性とかもあるのか)
男(とにかくこの世界の文化が分からない以上、俺たちがどんな態度をとられるかは想像も付かない)
女「あ、うん、そうだね」
男「……あれ、この用件じゃなかったか?」
女「いや気にはなってたけどそうじゃなくて。……あっ、でも男君と同じで出たとこ勝負だと思ってたから、同じ意見ってのは嬉しいよ」
男「……? なら、どうしてわざわざ俺のところなんかに来たんだ?」
男(昨夜みたいに相談でないのならどうして?)
男(何か他に大層な理由があるのかと俺が考えていると)
182 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/11(日) 22:05:58.56 ID:R0pBPhLP0
女「え、特に用はないよ」
男「だったら……」
女「男君と話したかったから……じゃ駄目かな?//」
男(女は少々照れたのか頬を染めて、こちらを上目使いに見てくる凶悪コンボをかましてくる)
男「い、いや……そう言われてもな……」
クラスメイト「……ん? 委員長! ちょっと来てくれないか!?」
女「何かトラブルかな……? ごめんね、男君来たばかりなのに。私行かないと」
男「……ああ、俺のことなんか気にせず行ってこい」
女「うん、じゃあまた後でゆっくり話そうね!」
男「………………」
男「………………」
男「………………」
男「だあっ、もう! ……あれは魅了スキルによるものだ、好意的な仕草に心を動かされるのは仕方ないが……ああ内心どう思っているのかなんて分かりやしない」
男「……勘違いするな、また失敗を繰り返したいのか俺…………信じる? いや無理だろ…………そうだ…………結局…………」
183 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/11(日) 22:06:49.54 ID:R0pBPhLP0
歩きながらぶつぶつと自戒の言葉をつぶやく男は端から見たら不審者であった。
男は気にする余裕もなかったが、クラスメイトたちからも奇異な視線を向けられている。
だが、その内の一つは興味深い物を見る視線で。
女友(思っている以上に女の言葉に心を動かされていますね。トラウマを持っていたとしても、そこは思春期の男の子といったところですか)
女友(糸口が見えてきたように思えますが……反面難しさも明らかになりましたね。執拗なまでの自戒はトラウマの深さの現れですから)
女友(しかし女の上目使い……狙ってやったのならなかなか小悪魔ですが……天然だとしたらなおのこと恐ろしい娘ですね……)
184 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/11(日) 22:08:27.26 ID:R0pBPhLP0
男(女が呼ばれたというトラブルも大したことが無かったようで、一行はその後特に障害無く目的地近くまでやってきていた)
男「聞いてはいたが、規模からしてやっぱり村って感じだな」
男(家や教会など建物がまばらに並んでいるのを見て俺は評価する。あまり大きくは無いが……それでも異世界で初めての人里だ)
男「周辺には畑や田んぼ……農耕で生計を立てているってところか」
男(元の世界の田舎と何ら変わらない光景……強いて言うなら、さらにその外縁を堀や柵で囲っているのが違うか)
男「魔物対策……なんだろうな」
男(この世界で暮らす以上、無視できない驚異への備えといったところだろう)
男(と、観察しながら歩いていたところで先頭が村に後一歩というところまで近づいたようだ)
青年「ふわぁ……っ……。……って、何だ、ちょっと止まれ!」
男(警備なのか村の入り口で突っ立っていた青年が俺たちの姿を認めて制止を要求する。……だが、その直前の大きなあくびのせいで緊張感が全然感じられない)
185 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/11(日) 22:09:18.32 ID:R0pBPhLP0
女「……どうやら言葉は通じるみたいだね。良かった」
男(異世界人とコミュニケーションが取れそうなことに胸をなで下ろす女。……そういや異世界なのに日本語が通じるんだな、石碑も読むことが出来たし心配はしてなかったが)
男(まあ異世界召喚ならよくある話で、勝手に翻訳されてるとかそんなところだろう。
青年「しかしこうもぞろぞろと東から人が来るとは……何の用だ、おまえたち!」
女「申し遅れました。私は女といいます。この村には――」
青年「……って、東? でも、ここより先はあれしか………………思い当たるのは……まさか……!? ちょっと待っていろ、おまえたち!!」
女「あ、あの……話を……」
男(女の自己紹介の途中で、何かに気づいたのか血相を変えて村の中に走って引き返す男)
男(取り残される俺たちだが、相手ははっきりと俺たちに待っていろと要求した。なら、勝手に村に入るのは良くないだろう)
男「しかしあの反応は……俺たちの存在について何か心当たりがあるというところか……?」
男(ならばこの後、無関心な対応は無いだろう)
男(歓待か敵対か。出来れば前者であって欲しいが……後者であっても、これだけの実力者が揃っていればどうにか出来るだろう)
186 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/11(日) 22:10:14.53 ID:R0pBPhLP0
男(しばらくして青年は戻ってきた)
青年「村長、この人たちです! 東からやってきたというのは!!」
村長「……ふむ」
男(村長と呼ばれた老人は顎に手を当て値踏みするように俺たちを見回す)
村長「なるほどな……」
村長「ここは大陸の東の果て……ここより東に人里は存在しない。あるのは……忘れ去られし女神教の祭壇場のみのはずじゃ」
村長「察するに……おぬしらは女神様の遣い……なのじゃろうか。まさかこんな日が来るとは……」
男(女神教……祭壇場……女神様の遣い。次々に発せられる聞き慣れぬ名詞)
女「つまり……どういうことなのでしょうか?」
村長「おっと、すまぬな若人よ。これだから年を取るというのは辛い。相手の都合にまで気が回らなくなる」
女「は、はぁ……」
村長「ワシは村長じゃ。女神教の神父も兼任しておる。おぬしたちを歓迎しよう」
男(反省はしているようだが、次々と畳みかける言葉はやはり俺たちを置いてきぼりにしている感は否めない)
男「とりあえず……歓迎してくれるようだな」
男(俺たちがはっきりと分かったのはそれくらいだった)
187 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/11(日) 22:13:50.87 ID:R0pBPhLP0
続く。
新展開です。設定説明回が続くと思います。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/12(月) 00:47:05.30 ID:37oBWH360
乙
男は中学生のメンツとは完全に会わなくなったと思っているけど、全員覚えているとは思えないんだよね
つまり、女友さんが一緒の中学の可能性が……ないか
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/12(月) 01:03:34.56 ID:7x8hZRTdo
乙ー
190 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/12(月) 17:21:39.29 ID:8qMeLV5G0
>>188
>>189
乙ありがとうございます。
投下します。
191 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/12(月) 17:22:51.31 ID:8qMeLV5G0
青年「この家も随分前に主が死んで空き家になっていましてね。息子もいたんですけど、都会に住み慣れたのか帰っても来なくて」
青年「家財道具もそのまま残っているし、ときどき掃除はしていたんで寝ることくらいは出来るはずです。使ってください」
女「ありがとうございます」
男(村長に歓迎すると言われた俺たち)
男(その村長は何やら準備があるということで、村の案内は残った青年がすることになった)
男(今は一通り村を見て回ったところで、最後に俺たちが泊まる場所に来ている)
青年「あともう一件空き家があるんで、そちらも案内しましょうか。それで人数的には十分ですかね」
女「ありがとうございます、青年さん。じゃあこっちの空き家は男子が使って、もう一つは女子が使うことにしようか」
男(元々異世界にやってきたクラスメイトは28人。その内イケメンとギャルは失踪してどうやらこの村にも来ていない)
男(俺たちが訪れることが分かっていたから避けたのだろう。というわけでここにいるのは26人)
男(男女比は半々ということで、一つの空き家に13人が泊まることになる。
男(だが、十分にその人数を収容してあまりあるスペースだった。かなり立派な家である。これが息子も帰ってこないで、空き家になっているということは……)
男「魔法もあるファンタジー世界なのに過疎農村ってわけか。世知辛いな」
男(ここも一つの現実なのだと俺は再認識した)
192 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/12(月) 17:23:41.84 ID:8qMeLV5G0
男(荷物を置いた俺たちは、準備が整ったという村長の要請に従って、村の隅にある教会に向かう)
男(教会には参列者用の席が置いてあり俺たちがそこに座ると教壇に立った村長が口を開く)
村長「おお、参ったな女神の遣いたちよ。色々と確認に時間がかかった。本当にこのような機会が来るとは……」
村長「伝承がワシが生きている内に本当に起こるとは思わなんだ。しかし、同時に世界の危機ともいうわけで……悩ましいのう」
男「いや、だから……」
男(相変わらずのこちらの事情を考慮しないマシンガントークに言葉を上げたのは意外な人物だった)
青年「ああもう、だから親父! みんな置いてきぼりじゃねえか!!」
男(俺たちをここまで案内した青年だ。先ほどまでの丁寧な口調をかなぐり捨てている)
男「親父……? その青年さんって」
青年「ああ、そこの村長の息子だ。すまんな、親父もちょっとボケが回ってきていてな」
村長「失礼な! ワシはボケておらんわい!!」
青年「それはボケ老人の口癖だっつうの!!」
193 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/12(月) 17:24:20.27 ID:8qMeLV5G0
村長「全く。村の番もろくに出来ない、親をバカにする息子でワシは悲しいわい」
青年「ったく、口が減らねえジジイだな。とにかく、こいつらが理解できるように一から説明しろってんだ!」
青年「女神から遣わされたってことは、この世界について何も知らないはずなんだからな!」
村長「言われんでも分かっておるわい!」
男(分かってねえだろ、と俺は心の中でツッコむ。さすがに青年さんのように口に出す勇気はない)
村長「気を取り直して……青年も言っておったが、おぬしらは別世界より呼ばれし者。この世界についての知識はほとんど無いということでいいんじゃな?」
女「はい、その通りです」
村長「ふむ、ではどこから話せばいいのか…………うむ、ではまずこの大陸について話そう」
194 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/12(月) 17:25:04.78 ID:8qMeLV5G0
男(それから数分後……俺は世界共通の真理を見つけていた)
男「どこの世界だろうと老人の話は……支離滅裂だな」
男(最初こそちゃんと説明していた村長だが、話が脇に逸れたりあまり関係ない自分の体験談を挟んだりでとても理路整然とした話では無かった)
男(度々青年さんが注意してくれてその直後は大丈夫なのだが、少しするとまた話が脇に逸れる)
男(そんな何が大事なのか分からなくなる会話を、どうにか俺の中でまとめた)
男(まず、俺たちは巨大な大陸にいるらしい)
男(大陸には王国、帝国、新興国、商業都市、学術都市などさまざまな生活圏があるようで、村長は多くの国に訪れたことがあるようだ。そのせいで体験談などを挟み話が長くなったのだが)
男(今いる村は大陸の東、人里としては最東端に位置しているようだ。これより東にあるのは女神教の祭壇場のみ、とはこの村に来たときも聞かされてはいたが……)
195 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/12(月) 17:26:53.78 ID:8qMeLV5G0
村長「女神教とは太古の昔、この大陸に降りかかった災いを鎮めた女神様を祀る宗教のことじゃ」
女「災い……とは何なんですか?」
村長「そこまでは記されておらぬ。この大陸の危機、人類の存亡にまでかかわつような大きな出来事だったそうじゃが……」
村長「とにかく女神様……いや、祀られる前じゃから一人の女性じゃが、災いを愛の力を活用して収めたのじゃ」
村長「その功績を讃えて、女神として祀られるようになった」
女「なるほど」
男(女神に愛の力ねえ……胡散臭く感じるのは俺が日本生まれの無宗教者だからだろうか)
村長「災いから救って貰った感謝の念があったのか、女神教は瞬く間に大陸全土で信仰されるようになった」
村長「全盛期には、教会の決定は絶対であったほどじゃ」
村長「じゃが、先ほども言ったように災いがあったのも太古の昔、伝承も感謝の念もうつろい風化し……」
村長「次第に女神教を信仰するものは少なくなっていった」
村長「今では女神を信じるものはほとんどおらず……教会がちゃんと残っておるのはこの村くらいじゃ」
男(一つの宗教の栄枯盛衰の物語。ちゃんとこの世界にも歴史があることを実感する)
196 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/12(月) 17:30:52.61 ID:8qMeLV5G0
村長「しかし、それで諦めるワシではない。少しずつ布教活動を繰り返して、最近では――」
女友「それで私たちが女神様の遣いというのはどういうことなのでしょうか?」
男(女友が村長の言葉に割り込む形で質問する。放っておけば自分の過去を語り出す村長の扱いを徐々に分かってきたようだ)
村長「おう、その話があったな。それは女神様が亡くなる最期の言葉のことじゃ。有名な話で、代々伝えられたそれが……こうじゃ」
村長「『災いはまだ終わっていない。この大陸に再度降りかかる。しかし心配はいらない。その時には我が遣いがこの世に召喚され防ぐであろう』……とな」
女友「それは……どういうことでしょうか……?」
村長「ワシにも分からん。こう言っては罰当たりかもしれんが、当然ワシは災いも女神様もこの目で見たことはない。太古の昔、教えの中の存在なのじゃ」
村長「抽象的な、こう概念だと思っておったのが……こうして女神の遣いが目の前に現れたことでワシも驚いているというのが正直なところじゃ」
村長「そして同時に女神の遣いが現実だったということは……」
女友「災いだって現実に起きてもおかしくない……というわけですね」
男(災い……石碑にこの世界を救うとは、再び降り注ごうとするその災いを防ぐということなのだろうか?)
197 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/12(月) 17:31:45.27 ID:8qMeLV5G0
青年「正直親父に言われて祭壇場を定期的に掃除していた俺も驚きましたね」
青年「こんな面倒なことを続ける意味があるのかと思ってましたが……どうやら役に立ったようで良かったです」
男(あの広場……祭壇場の施設は妙に整備が行き届いていると思っていたが、そんな裏話があったとは)
村長「あの地はその昔上からの指令で、代々この村の教会に仕えるものが整備を任されておってな」
村長「女神の遣いが召喚される場所だとは聞いておったが……ワシが生きておる間に本当に起こるとは……」
村長「しかし、どういうことじゃ!? 今おぬしは神聖な祭壇場の掃除を、面倒と言ったな!?」
青年「実際面倒じゃねえか! 魔物が現れる森の中を切り抜けるのが、どれだけ手間なのか分かってるのか!?」
村長「ふん、おぬしには信仰心が足りんのじゃ!」
男(唐突に始まる親子喧嘩。村長に意見してくれる青年もありがたいが……正直これにもかなり時間を取られたような気がする)
村長「説明はこんなところじゃな。分からぬところがあったら聞くぞ」
女友「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて……村長は宝玉という物に心当たりは無いでしょうか?」
女友「石碑に記されていたのですが、どうやら私たちの使命はそれを集めることらしくて……」
198 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/12(月) 17:32:40.12 ID:8qMeLV5G0
村長「宝玉……ふむ、教えにはそのような存在が記された覚えは無かったが……」
青年「石碑にメッセージ……? そんなの見た覚えないですが、召喚と同時に刻まれたんですかね?」
青年「俺も宝玉なんて聞いたことが無いですが……もしかして……」
女友「何かありますか?」
青年「ええ、女神教では教会毎に女神様の像を祀っていたのですが……その胸元にかかっているアクセサリーには本物の青い宝石が使われているんです。この教会にもあって……あれです」
男(壇上に立つ村長の頭上を示す。そこには教会を見下ろすように女神の像が祀ってあった)
女友「言う通り胸元が青く光っていますね」
女「宝石……見せてもらってもいいでしょうか?」
村長「うーむ……神聖な女神像をいじるのは恐れ深いことじゃが……女神の遣いの頼みじゃ。仕方がないのう。倉に整備をする際のはしごがあったはずじゃ。取ってこい」
青年「分かってるっつうの。大体、毎年誰が整備していると思ってるんだ」
男(文句を言いながら青年が教会の外に出て、はしごを取って戻ってくる)
男(それを教会の壁に立てかけて登り、宝石だけを取り外して降りてきた)
199 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/12(月) 17:33:35.02 ID:8qMeLV5G0
青年「ほら、これだ。中に魔法陣みたいな模様があるし特別な代物であるとは思っていたが……でも、本当にその宝玉ってやつなのかは分からないぞ」
青年「正確に判断するには……そうだな、都会に行けば鑑定スキルを持っているやつもいるだろうしそれに頼んで……」
女「いえ、その必要はありません。鑑定スキルなら私も持っています」
青年「……マジかよ。持っていれば多方面から引く手数多で就職にも困らないレアスキルを?」
女「そんなに珍しいんですか?」
村長「食料や鉱石の採集にも役立つから民間からも引っ張りだこじゃし、商品偽造を取り締まる監察官など公務員にもポストがある」
村長「ワシのせがれにもそのようなスキルがあれば、就職に失敗して村に戻ってくることも無かったんじゃがな」
青年「う、うっせえよ、親父! よけいなお世話だ!」
男(どうやら青年は就職に失敗して故郷に戻ってきた口のようだ。……本当この世界は世知辛い)
200 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/12(月) 17:35:15.26 ID:8qMeLV5G0
青年「しかし、鑑定スキルまで持っているやつがいるとは……女神の遣い、あんたたちがどんな力を持っているか気になってきたぜ。後で見せて貰ってもいいか?」
女「それくらいなら。ですが、今はこっちの確認を……」
青年「ああ、気にせずやってくれ」
女「では……『鑑定』!!」
男(女は青い宝石に触れてスキルを発動した)
男(すると、宝石からウィンドウがホップアップして……そこに表示されたのは)
『名称 宝玉
効果 世界を渡る力を持つ。数を集めることで力が増す』
女「宝玉……やった一つ目見つけたよ!!」
男(俺たちが目的とするその物であることが判明した)
男(一つ目だからかあっさりと手に入ったな)
201 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/12(月) 17:39:45.02 ID:8qMeLV5G0
続く。
この話の主軸は古来から続く『散らばった何かを集める』系の話です。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/12(月) 18:18:15.88 ID:C5TqywfwO
乙!
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/12(月) 18:51:30.46 ID:1+pCmCMro
乙です!
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/12(月) 18:52:04.63 ID:1+pCmCMro
乙です
続き楽しみに待ってます
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/12(月) 19:05:46.25 ID:bjH8u2qno
色々とキッついな
乙
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/12(月) 21:41:14.63 ID:7ckK6xMqO
乙ー
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/13(火) 19:13:57.05 ID:RcZtmCwL0
乙
最後に気になったけど『監察官など公務員』と村長が言っていたけど、ファンタジーぽいのにそんな言葉存在するの?と思ってしまった
男たちや読者に分かりやすく言っているだけ?それとも他に適切の言葉が浮かばなかったからあくまで代理?
208 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/13(火) 22:03:29.91 ID:+Qc41FMC0
乙ありがとうございます。
>>207
異世界にも社会はあるってことで、存在するつもりで書きましたね
投下します。
209 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/13(火) 22:05:46.17 ID:+Qc41FMC0
男「宝玉……こうもあっさり見つかるとはな」
男(女の鑑定スキルによって表示されたウィンドウにはしっかりと俺たちが集めるべき宝玉の名が記されていた)
青年「おう、正解だったのか。良かったな」
村長「ふむ、喜ばしいが……しかし……」
女「よし、宝玉一つ目を見つけたね。これが何個かあってどれくらい集めないといけないのかも分からないけど……他の在処もこれで検討が付いた」
女友「そうですね、教会の女神像のアクセサリーに使われている……ということは、他の教会を回っていけば自然と集められることになりますから」
男「いや、そう簡単には行かないぞ。さっき言ってただろ、女神教は既に廃れた宗教。信者も少なくなり……教会が残っているのはこの村くらいだって」
村長「悔しいが、そこの少年が言う通りじゃ。信仰者のいない教会ほど無駄な建物は無い。取り壊しの際に女神像も一緒に壊されてしまったじゃろう」
210 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/13(火) 22:06:31.92 ID:+Qc41FMC0
女「えっ……じゃあ宝玉も壊されて……」
青年「いや、それは無いと思いますね。ここまで綺麗な宝石は珍しいですから、目敏い人間が壊す前に取っているでしょう」
青年「そのまま所有しているか売ったかは分かりませんが……人の手に渡っていると思います」
男「そうだな。壊されていないだろうが、これで面倒な手順が増やされた」
男「教会を壊した際に、誰の元に宝玉が手渡ったのか調べて、さらに今の持ち主にそれを譲って貰うように頼まないといけない」
村長「女神の遣いという立場も、世界を災いから救うという理由も、信仰が失われて久しい今では通じないじゃろうな」
女友「つまり正面から価値のある宝石を譲ってもらわないといけないということですか」
女友「交渉手段として、お金を積む、頼みを聞くなどありそうですが……いずれにしても簡単に行くとは思いませんね」
男(これなら異世界にあるダンジョンの奥地に宝玉があるとか、謎の敵が持っているから奪えとかの方が、力押しが出来て楽だったな)
男(とはいえ、それならそれでやりようがある。……というより、魅了スキルを持つ俺の独壇場だ)
211 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/13(火) 22:07:11.59 ID:+Qc41FMC0
女「村長さん、女神教の教会がどこにあったのか、何か地図でもありませんか?」
村長「それなら探せばすぐに見つかるじゃろうが……一時は大陸全土で信仰されていた宗教じゃ。教会もかなりの数があるぞ?」
女「大丈夫です。すいませんがすぐに用意してもらえますか?」
村長「それならお安いご用じゃ」
女「じゃあそれを待っている間にみんな聞いて!」
女「話の通り教会の数も多いみたいだから、昨夜もちょっと言っていたけど私たちクラスを分けて事に当たることにするね」
女「といっても分散しすぎは良くないから……一つのパーティーは三人以上で構成すること。職やスキルの戦闘スタイルのバランスも考えて組んで欲しいけど……」
女「おそらく長い旅になると思うから、個々人の相性がやっぱり一番かな」
女「というわけで早速だけど……パーティー分け開始!」
男(女の突然の宣言は、二人組作れーならぬ、三人組以上を作れーである)
男(体育の授業ですら争いの種となるこれが、この異世界で期限が検討の付かない生活を左右するのだ)
「…………」
男(教会の空気が一瞬でピリッと張りつめる)
212 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/13(火) 22:08:05.48 ID:+Qc41FMC0
男「……まあ、こうなるよな。良かった先に決まっといて」
男(すでに女と女友、三人でパーティーを組むことに決まっている俺はこれより始まる争いに参加する必要が無いため気楽だ)
村長「……ん、何か皆の様子がおかしいぞ?」
青年「あーこれは……うん、親父逃げた方がいいぜ」
男(察した青年が村長を引っ張って、地図を探しに教会を辞したその直後)
クラスメイト1「俺とパーティー組んでくれませんか!?」
クラスメイト2「あっ、ずるいぞ!! 俺が先に言おうと思っていたのに!!」
クラスメイト3「あ、じゃあ私たち一緒に組もうか」
クラスメイト4「え……う、うん」
クラスメイト5「私もそのパーティーに入りたいけど……駄目?」
クラスメイト6「俺も、俺も! 立候補します!」
クラスメイト7「え、あんたが入ってくるなら止めようっと」
クラスメイト8「……ねえ、私たち友達だよね?」
クラスメイト9「あら、そう思っているのはあなただけよ?」
男(そこかしこで始まる大競り合い、小競り合い)
男(参加していれば胃痛が止まらなかったのだろうが、安全地帯にいるならばこんなにも悲喜交々が混じった面白いエンターテイメントも無いのだな、とまさに人ごとな感想を俺は思い浮かべるのだった)
213 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/13(火) 22:08:42.67 ID:+Qc41FMC0
男(そうして昼ごろに始まったパーティー分けが何とか終わったのは夕方だった)
男(その後は用意してもらった地図を見て俺たちは各パーティーがどこの町に向かうかを話し合った)
男(無事に決まった後、その他細々としたことを決めて明日の朝には旅に出れるほどに準備がまとまったころには夜になっていた)
男(村長はどうやら地図を探しに行った際に村の人たちに事情を説明していたようで話が広まった結果、村の中央の広場で俺たちの歓迎の宴が始まることになった)
男(村の中央には篝火がたかれ、それを村民やクラスメイトたちが囲んでいる。用意された料理や酒を手に、飲めや食えや騒げやで大盛り上がりだ)
クラスメイト1「はっはっは! 初めて飲んだけど、俺って酒強いみたいだな! 全然酔ってねえぜ!」
クラスメイト2「……いや、おまえどっち向いて話してんだよ? 俺はこっちだぞ?」
クラスメイト3「酔ってるやつほど酔ってないって言うの本当なんだな」
男(クラスメイトの中には酒を飲んでいる者もいる。どうやらこの世界では15才から飲酒がOKなようで、高校二年の俺たちは全員その条件を満たしている)
男(元の世界ではまだ飲める年齢ではないので、憧れながらも体験出来無かった飲酒に挑戦している者もいるようだ)
214 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/13(火) 22:09:31.94 ID:+Qc41FMC0
男「しかし光あるところに影があるか……死屍累々が転がっているところもあるな」
男(盛り上がっている一団から視線をはずし広場の一角に目を向けると)
クラスメイト男子A「………………」
クラスメイト男子B「………………」
クラスメイト男子C「………………」
男(クラスメイトの男子三人が顔を付き合わせて放心している)
男(そういや見てたがあいつらは三人一緒のパーティーだったな。……まあ、そりゃ男三人だけで組むことになったときには、ああなってもおかしくないか)
男(クラス全体の男女比は半々であるが、俺が女と女友の女子二人と組むことが決まっている以上、その時点で男女の数は偏っている)
男(また最小単位が三人で奇数なのも、偏らせる原因となったのだろう。気づけば男三人が余り……それに気づいたときの絶望顔は見ているこっちまで胸が痛んだ)
男(これから長い異世界生活に華が無く、むさいことが決定しているのだ。騒ぐ元気も無いということだろう)
男(恋愛アンチの俺ではあるが、それが=女の顔を見たくもないというわけでは無いし、断じてホモでも無い)
215 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/13(火) 22:10:00.16 ID:+Qc41FMC0
男「本当料理が旨いな……酒も飲んでみたいが、また今度の機会だな。ちょっと考えないといけないこともあるし」
男(用意されたサラダや唐揚げを俺は摘む。拠点ではクラスメイトが作る料理を食べていたので、異世界人による料理を口にしたのは初めてだ)
男(文化的に違いはあまり無いようで、元の世界に似た食べ物が散見されるのはありがたい)
村民1「あんたらが女神の遣いか! 話は聞いてるぞ!」
村民2「おう、俺の酒が飲めねえのか!?」
村民3「向こうの世界ではそんなことが……すげえな!」
男(村の人たちにも村長の村長から俺たちの事情が話されたようで歓迎ムードで騒いでいる声が聞こえてくる)
男(しかし、この歓迎もこの地に女神教の信仰が残っているからで、他の場所ではそう行かないだろうと言われている)
男「そういう意味で本当に居心地がいい村だな……明日にはここを出ないといけないのが寂しいくらいだ」
男(今日で準備も出来たとなれば長居は無用。宝玉集めがどれくらい大変なのか分からない以上、少しでも早く取りかかった方がいい)
男(ということで明日朝にはそれぞれの目的地に出発することになっている))
216 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/13(火) 22:10:37.31 ID:+Qc41FMC0
男「さて腹も満たしたし……向かうべきはあそこだろうな」
男(広場には大小さまざまな集団が出来ているが、その中でも真面目な話をしている一団がいる。そこには)
女「あ、男君」
村長「おお、少年か」
女友「ちょうど良かったです、男さんも一緒に聞いていてもらえませんか?」
青年「魅了スキルの少年ですか」
男(女に村長。生徒側と村側のトップに、女友と青年もいる)
男「ああ、いいぞ。こっちも聞きたいことがあるしな」
217 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/13(火) 22:12:48.98 ID:+Qc41FMC0
続く。
この話もなろう式異世界なので、ファンタジー要素がありながら、現実世界的なところもあるという何とも都合のいい世界になっています。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
218 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/14(水) 01:46:01.61 ID:N7U4OaJgO
乙ー
219 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/14(水) 07:44:41.32 ID:mw7/nX+CO
乙!
220 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/14(水) 18:51:11.77 ID:q1BBaQbe0
乙
221 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/14(水) 21:45:42.55 ID:kc1O/Kdp0
乙ありがとうございます。
投下します。
222 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/14(水) 21:46:29.20 ID:kc1O/Kdp0
男(俺、女、女友、村長、青年とこの場にいる五人で最初に口を開いたのは女だった)
女「まずお礼を言わせてください。私たちに宝玉を譲ってくださり、旅の資金までも工面してもらって……本当にいただいても良かったのでしょうか?」
村長「ほっほっ、気にするで無い。女神の遣いの使命なのじゃ。宝玉はおぬしらが持っておいた方がいいであろう」
村長「宝玉が無くとも、女神像さえ残っておれば信仰の偶像として成り立つ」
村長「資金だって教会への寄付金を取っておいたものじゃ。なら女神の遣いのために使っても文句は無かろう」
男(今の話は夕方ごろにパーティーが決まり、地図でどこに向かうか決めた後、村長が突然言い出したことだった)
男(教会で見つけた宝玉はそのまま持って行っていいということ。そして教会に集まっている寄付金から、俺たちの旅の資金を援助すると)
男(宝玉は代表して女が受け取り、旅の資金は出来上がった8つのパーティーで分配することにした)
男(女神教は廃れた宗教でもう寄付金も少ないと村長は謙遜したが、それでも分配して尚、およそ二週間は過ごせるだろうという額らしく、先立つものがない俺たちにはありがたかった)
223 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/14(水) 21:47:20.62 ID:kc1O/Kdp0
青年「とはいえ資金援助出来るのもこの一回きりなので、尽きたら自分たちで稼いでもらうしかないですね。……まあ皆さんのステータスからすれば楽に稼げるでしょうが」
男(少しやさぐれている青年)
男(宴の前に話をしていた俺たちのステータス確認を行ったのだが、どうやら俺たちのステータスはこの異世界基準でもかなり高いらしい)
青年「伝説の傭兵も持っていると言われる『竜闘士』の職に、その他有用なスキルを多数持っている女さん」
青年「覚えている呪文数が、学術都市の大魔術師に迫る勢いの女友さん」
青年「唯一、初期職の『冒険家』で親近感も沸いた男さんも『魅了』なんて聞いたこともないスキルを持っていて、ここにいる人だけでもすごい人ばかりじゃないですか」
青年「あーあ、俺もその内一つでも持ってれば、楽に就職出来たのに」
村長「全く。おぬしのそういう性根が見抜かれて、採用され無かったんじゃろうな」
青年「うぐっ……痛いところ突くなよ、親父」
男(どうやら就職に困っているらしいことは聞いていたが、青年は俺たち異世界召喚者が持っているスキルが羨ましいようだ)
224 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/14(水) 21:47:59.75 ID:kc1O/Kdp0
男「しかし……やはり魅了スキルというのは、これまで確認されたことがないスキルなんですね?」
村長「そうじゃな、ワシももう長い間生きておるが聞いたこともない」
男(魅了スキルがこの世界にありふれていたら、それぞれが欲望の限りを尽くして社会がまともに回らないだろう)
男(だから俺はレアなスキルだと踏んでいたが、どうやら当たっていたようだ)
男(にしても齢80は過ぎていそうで、過去の話からして色んな体験をしている村長さんが知らないと言うのだから)
男(レアどころかこれまでこの世界に魅了スキルの使い手は俺だけしかいないと見るのが正しいのだろう)
男(となると、どうして俺がそんなスキルを持っているかは気になるところだが……ふむ)
青年「魅了スキルによって男さんは、この女友さんと女さんにも好意を抱かれているって話でしたよね」
青年「いやー羨ましいです。どんな命令も聞くって事は、あんなことやこんなこともしたんですか?」
男(実に下世話な話を振ってくる。言動が軽い青年だ)
225 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/14(水) 21:48:37.17 ID:kc1O/Kdp0
男「してません。女と女友に対しても暴発みたいなもので……俺は以降、この魅了スキルは宝玉を集めるためにしか使わないつもりです」
村長「うむ。真面目な少年じゃな。うちのせがれのような者が、強大な力故に身を滅ぼしかねないスキルを持たんで良かったわい」
青年「何だよ、親父。いいじゃねえか夢見るくらい。俺だって魅了スキルがあれば大勢の女がかしずくハーレムを作って……」
村長「それを聞きつけた欲深い者に殺されかけて、力で従うように言われるオチじゃろうな」
青年「うえっ、そうか。厄介事も背負いそうだな。なら、噂にならないくらいの規模でハーレムを作って……」
村長「おぬしがそのように欲望を制御できるわけ無かろう」
青年「……ぐっ。くそっ、言い返せねえ」
男(青年が村長にぐうの音が出ない正論をぶつけられる。……しかし鋭いな、今の懸念は正に俺を襲ってきたイケメンのことを言い当てている)
226 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/14(水) 21:49:05.68 ID:kc1O/Kdp0
女「でも宝玉を集めるために魅了スキルを使うってどういうこと?」
男「ああ、言ってなかったな。宝玉が人の手にあるって聞いて思いついたんだ」
男「例えばもし女性が宝玉を持っているなら、俺が魅了スキルをかけて譲るように命令するだけで手に入れることが出来るだろ」
女「そ、それは……」
女友「宝玉は価値ある宝石だと思われています。正面から譲ってもらうのは大変とは先ほども話してましたが……まさかそのような方法があるとは」
男「まあ、その反応も分かるさ。つまるところ俺のやろうとしていることは強盗だしな」
女「そうだよ!! そんなことやっちゃ駄目だって!!」
女友「……ですが、そうやって一概に否定する方法でもないと思いますよ。金を積んで譲ってもらえるならやりやすいですが」
女友「例えば宝玉が親の形見になっている人なんていたら、譲ってもらうのは困難です。そういうときは男さんの魅了スキルの強引さも必要だと思います」
男「まあなるべく犯罪はしないようにするって。普段は円滑にゲットするためのサポートに使うくらいだ」
男「そういう強引な手段は最後にする。これも元の世界に戻るため、ひいては世界を救うためなんだ」
女「世界を……うーんいや、でも」
女友「私はいいと思いますよ」
227 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/14(水) 21:49:35.97 ID:kc1O/Kdp0
村長「これこれ、全くワシの前で堂々と犯罪相談をするでない」
男「あ、村長さん」
村長「女神教の教主としては犯罪に手を染めることは賛成出来ぬ」
青年「でも、親父よう。男さんの言うことも一理あると思うぜ」
青年「大体元々女神教のものだったんだ。それを取り返すって考えればいいんじゃねえか?」
村長「取り返す……? うーむ……そうか。……そう考えると……悩ましいが…………」
村長「………………」
村長「少年も言っていたように、なるべく犯罪にならないように手段を尽くすこと」
村長「それでもやむを得ぬ場合は……女神教最後の教主として、そなたの行動を赦そう」
男「お墨付きか。ありがたいな」
女「……分かった。でも、ズルは駄目だからね。私が見逃さないんだから」
男「分かってるって。そもそも魅了スキルのことを余り多くの人に知られたくないんだ。目立つような行動は避けるって」
男(多くの人に知られれば、その中にイケメンのように俺の魅了スキルを手に入れようとする者が現れるかもしれない)
男(元から目立つような犯罪をするつもりはなかった)
228 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/14(水) 21:50:11.24 ID:kc1O/Kdp0
男「というわけでそんな感じで集めるとして……でも、やっぱりどうして女神像に宝玉が使われていたのかは気になるよな」
女友「……そうですね、どこの教会も同じだったということは、誰か指示したものがいたということです。もしかしたらその方は宝玉の価値を分かっていたのかもしれません」
村長「そうじゃな。ワシは宝玉について知らんかったが……その昔、女神教の中枢にいたものなら知っておってもおかしくはない」
村長「といっても組織も崩壊して久しいから、知っておった者も亡くなっておるじゃろう。知識を記した書物などが残っておればいいが……」
男「そういうのが見つかったらありがたいんだけどな」
男(この村に来て分かったことも多いとはいえ、未だに宝玉が何個あって何個集めれば元の世界に戻れるのか)
男(大昔に起きて今また起きようとしている災いとは何なのか)
男(なぜ宝玉を集めることが世界の危機を救うことになるのか、など疑問は尽きない)
229 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/14(水) 21:50:40.23 ID:kc1O/Kdp0
村長「まあ難しい話はここらへんで良かろう。今宵は宴、そろそろ若人らしく飲んで食べて騒いではどうじゃ?」
女「そうですね、お言葉に甘えさせてもらいます。ちょっとみんなに挨拶して回ろうかな」
女友「なら、私も付き合いましょうか」
男(女と女友は一礼すると、未だ続いている騒ぎの中心に向かう)
青年「っと、俺もそろそろ手伝いに戻らないとやばいか。……あーでも若いからってこき使われるんだよなー、嫌だなあ」
男(青年も実に気が進まない様子でその場を離れる)
男「………………」
村長「………………」
男(残ったのは俺と村長だけになった。何となくこの場を離れるタイミングを逃したな……)
230 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/14(水) 21:51:06.78 ID:kc1O/Kdp0
村長「少年、おぬしは少女たちと一緒に行かなくていいのか?」
男「あー……二人と違ってみんなと挨拶するような仲でも無いので。明日からしばらく会えないって言ってもそれでという感じで……まあなのでそろそろ空き家に戻って寝ようかと」
村長「ふむ、これが近頃話題のドライな若者といったやつなのか?」
男「あ、こっちの世界でも問題になってるんですね」
男(この世界に来てから何度も同じようなことを思っている気がする)
村長「しかし……」
男「……?」
村長「先ほどは真面目な少年と言ったが……どうやらそうではないようじゃな」
村長「大きな歪みを抱えておるのに、それを表面上は取り繕って過ごしておる。実に危うい状態じゃ」
男「っ……!?」
231 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/14(水) 21:51:49.83 ID:kc1O/Kdp0
村長「良ければ事情を聞いても……」
男「どうしてそんなこと話さないといけないんですか?」
男(感情が制御できず、ありったけの拒絶の意がこもってしまう)
村長「……それもそうじゃな。いやはや出過ぎたことを言った、忘れてくれ」
男(気まずそうに頬を掻く村長)
男(俺の事情を表に出したつもりはないが……年の功と教会の神父といった立場から見抜いたってところだろうか? だとすれば流石である)
男「いえ……こちらこそすいません」
男「ですが、俺自身でどうにかするつもりなので大丈夫です」
村長「そうか……やはり余計な言葉だったな」
村長「女神教の神父として、そなたの行く末に祝福を願おう」
男「ありがとうございます」
男(一礼して俺は空き家に向かった)
232 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/14(水) 21:52:34.49 ID:kc1O/Kdp0
続く。
明日が第一章最終話です。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/14(水) 21:58:55.18 ID:N7U4OaJgO
乙ー
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/14(水) 22:02:32.35 ID:Ulxx42UY0
乙
男が誰かに自分の過去を話す機会はあるのだろうか……
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/15(木) 06:57:34.65 ID:Ojdzh+KAO
乙!
236 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/15(木) 19:48:00.65 ID:X9VmG+0p0
毎度、乙ありがとうございます。
>>234
そんな機会が来るくらいエタらずに頑張りたいですねー。
投下します。
237 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/15(木) 19:48:39.85 ID:X9VmG+0p0
男(宴の翌朝。これより俺たちは元の世界に戻るため、この世界の各地に赴き、宝玉を集めることになる)
男(そんな旅立ちの朝にふさわしい晴れ空の下には――)
クラスメイト1「あー……飲み過ぎた……」
クラスメイト2「二日酔いってこんなに辛いのか……」
クラスメイト3「うげえ……吐きそう……」
男(実に顔色の悪いクラスメイトたちがいた)
女友「全く締まりませんね……ほら、二日酔いにも効く魔法をかけますから、一列に並んでください」
男「そんなのあるんかい」
男(女友が軽く言い出したことに驚く俺。どうやら状態異常を治す魔法の一種らしいが、その中でも系統上位の魔法は二日酔いに効くらしい。それを女友は持っているというのだ)
238 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/15(木) 19:49:32.49 ID:X9VmG+0p0
女「青年さんも言ってたけど、女友が覚えている魔法ってすごい多いみたいだね」
女「そういえば男君は二日酔い大丈夫だったの?」
男「ああ、昨日は酒飲む気分じゃなくてな」
女「私と同じだね。私の家系って下戸が多いからたぶんすぐ酔っちゃうだろうし遠慮しといたんだ」
男「そうか。俺は両親ともに酒に強かったしおそらく大丈夫だとは思うが」
男「というか二日酔いが状態異常扱いなら、耐性がある女は大丈夫じゃないのか? 魅了スキルだってかかり悪くしているわけだし」
女「あ、そう言われてみるとどうなんだろう……? な、なら……え、えっと……その、今度機会があったら、お酒付き合ってくれる?」
男「……まあ一緒のパーティーなわけだし、機会くらいあるだろ。そのときにな」
女「うん、約束したからね!」
男(顔をほころばせて嬉しそうにしている女)
男(……うん、まあ、あれだ。サラリーマンだった両親も、飲みニケーションは大事って言ってたしな)
男(これよりしばらく行動をともにするわけだしその一環で女も提案しているだけだろう。そうに違いない)
男(……しかし、お酒付き合ってってなんか大人なセリフだよな)
239 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/15(木) 19:50:15.39 ID:X9VmG+0p0
女友「最後の一人も終わり……っと」
女「女友、お疲れさま」
女友「これくらいお安い御用です。それより見てましたが、自然と男を誘えてましたね」
女「……しょ、正直未だにすごく心臓がバクバクしてます」
女友「それでも誘えたなら上出来ですよ。……しかしお酒の席、酔った二人、一夜の過ちには絶好のシチュエーションなんですけど……」
女「だ、だからそういう強引なのは駄目だからね!!」
男「……ん、何か二人で話してるな」
男(女が女友を労いに向かい少し離れたので、何を話しているのか聞こえないが……)
男(どうやら仕草から見て女が女友にからかわれているようだ)
男「しかし、あの女をからかえるなんて、やっぱり大物だよな女友は……」
男(俺から見ると女にそんな隙は無いように思えるのだが……親友の前だと違うのだろうか?)
240 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/15(木) 19:50:49.02 ID:X9VmG+0p0
男(二日酔いも治り、気を取り直した俺たちはそれぞれ荷物を持って村の広場に集合する)
クラスメイト1「また……絶対に会おうな」
クラスメイト2「当たり前だろ!!」
男(ガッシリと固い握手を組むクラスメイトの男子二人)
男(広場ではパーティー間での交流が行われていた)
男(これより俺たちは8つに分かれて行動を開始する。同じパーティーなら長い間行動を共にするわけだが、それは裏返すと違うパーティーとは長い間会えないことになる)
男(そのため違うパーティーに仲のいい友達が存在するようなやつらはその別れを惜しんでいるというわけだった)
241 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/15(木) 19:52:02.48 ID:X9VmG+0p0
男「つまり、俺にとってはどうでもいいってことだな」
男(魅了スキルで繋がりが出来た女と女友以外とは未だに馴染めていない。興味も無く、所在なさげに佇んでいたところに)
クラスメイト1「そういや男! おまえの魅了スキルは頼りにしているからな!」
クラスメイト2「そうよ、女の話によると女性からなら無条件に宝玉を譲ってもらえるんでしょ?」
クラスメイト3「すげースキルだが……俺の方が絶対集めてやるんだからな!!」
男(何故か人だかりが出来ていた)
男「……どういうことだ、これ?」
男(ほとんどが話したこともないクラスメイトだ。なのに妙に馴れ馴れしいというか……)
242 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/15(木) 19:52:44.97 ID:X9VmG+0p0
女友「昨夜の宴で女が魅了スキルの有用性について説いて回ったからかもしれませんね」
男「女が?」
女友「ええ。村長の村長さんの話を聞いた後に挨拶に回ったって言いましたよね? そのときに、話の流れから女が男の力について力説して……」
男「そんなことがあったのかよ。……ったく、どうして女友も止めてくれなかったんだ?」
女友「それは止める理由が無かったからですわね」
男「いや、あるだろ。俺の力についてあんまりアピールされるととマズいんだっての」
男(女性を支配するスキルなんて、知れば欲しがるやつは出てくるだろう。その内イケメンのような強硬な行動を取るやつが出てきてもおかしくない)
女友「だからこそです。魅了スキルの強力さと同時に危うさも伝えて、なるべく言いふらさないように注意しておきました」
男「なるほど……女もそのつもりで」
女友「いえ。女は子供を自慢気に話す母親のように、男さんを誉め讃えるだけでしたから、私が補足したところです」
男「駄目じゃねえか」
243 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/15(木) 19:53:21.20 ID:X9VmG+0p0
クラスメイトA「期待してるぞー」
クラスメイトB「頑張ってね」
クラスメイトC「応援しているからな」
女「わっ、すごい人だかり。もしかしてこれって……男君に対する応援!? 良かったね、男君!」
男「いや、どこに喜ぶ要素があるんだよ。正直俺をよくも知らないのにどうしてあんなに期待できるんだか呆れる気持ちの方が大きいな」
男「まあ言うだけならタダだし、俺が頑張ってくれればラッキーだからな。ノーリスクハイリターンってわけか」
女「え、えっと……ずいぶん個性的な考え方だね」
男「まあな。そりゃ俺だって元の世界に戻りたいんだ。やる気はあるが、失敗する可能性もある。期待されても困るんだっつーの」
女「でも、ほら。期待されてると、それに応えてやるぞーって感じで力が漲ってこない?」
男「こないな」
女「全否定っ!?」
男(女が驚いているが、そのような楽観論に基づいた思考回路は俺の脳内に存在しない)
男(あるのは勝手に期待しておいて、失敗したら勝手に失望するだろうウザい反応が気にくわないという思いだけだ)
244 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/15(木) 19:53:55.81 ID:X9VmG+0p0
女友「二人とも逆のベクトルなんですね。期待に対して女は正の面に、男は負の面に捉えていると」
男「みたいだな。……まあでも女の考え方も分かるさ。そうでもないとみんなの期待を一身に背負うリーダーなんて出来ないからな」
男「ただ理解は出来るが、俺にはゴメンってだけだ」
女友「そうですね。ただ逆のベクトルとはいえ、二人とも期待に誠実に向き合っています。似たもの同士ですね」
男「対極故に近しいってやつか」
女「似たもの同士って……もう、恥ずかしいじゃない、女友!」
男(何故か恥ずかしがっている女。似てはいるが真逆のため相容れ無いという話なのだが……分かっているのだろうか?)
男「まあいいか……ところで女友、あんたは他人に期待されたらどうするんだ?」
女友「それはもちろん……期待を裏切るに決まってますわ。良い方向か悪い方向はともかく、期待通りの行動なんて詰まらないですもの♪」
男「ああ、あんたは期待に対して最も不誠実なやつだよ」
245 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/15(木) 19:54:31.05 ID:X9VmG+0p0
男(そんな出発直前とは思えない緊張感の無い会話だったが、時間になりみんな整列して女が前に立つとさすがに引き締まる)
女「これより私たちは宝玉探索のための旅に出ます。目標は元の世界への帰還、並びに世界の危機を防ぐこと」
女「人の手に渡った宝玉を譲ってもらうことには苦労がかかると思う。だから、みんなの尽力を期待しているね」
男(女の言葉に小さく、しかししっかりとうなずくクラスメイトたち)
女「きっと多くの困難も待ちかまえていると思う。でも、私は信じているから。みんななら、私たちなら成し遂げられるって!!」
男(女の言葉は大仰であるが……異世界でその世界を救うなんて事態になっているのだ。その言葉にあうだけのスケール感はあるだろう)
女「みんなバラバラになることに心寂しく思うかもしれない」
女「でも、忘れないで。離ればなれになってもこの世界のどこかに仲間がいて、一緒に頑張っているってことを!」
女「それではしばしの別れを……必ずの再会を願って!!」
クラスメイトたち「「「うおおおおおおっっ!!」」」
男(雄叫びのような声が上がる)
246 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/15(木) 19:54:57.73 ID:X9VmG+0p0
男「……大したやつだな」
男(異世界に来て力を授かったとはいえ、元の世界では高校生だった身)
男(何が起こるか分からないこの異世界でバラバラになることに不安を持っているやつだっていたはずなのに、今の女の言葉がそれを吹き飛ばした)
男(とはいえ、もちろん女の言葉だって無責任な期待だ。先ほど俺に投げられた言葉と何ら代わりやしない)
男「いつか俺も人を信じて……こういう言葉に応えたいって思うようになるんだろうか……?」
男(死の間際に後悔して、治そうとは思っている俺の性格。とはいえ深く根付いたそれは一朝一夕で変えられるようなものでは無いが……)
男「この長くなるであろう異世界の旅路で……変われるのか?」
247 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/15(木) 19:55:36.62 ID:X9VmG+0p0
男(それから村の外まで場所を移した)
村長「頑張るんじゃぞ、女神の遣いたちよ!」
青年「まあほどほどにな!」
村民「また帰ってきたときは宴を開くからな!」
男(村長やその青年、その他村民に見守られながら)
女「行くよ!」
男(俺たち26名は、それぞれの目的地に向け、八つの方向に一歩踏み出した)
男(旅の開始である)
248 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/15(木) 19:57:04.77 ID:X9VmG+0p0
一章完。
続きの二章『商業都市』編は新スレを立ててやろうと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
これからもどうかよろしくお願いします。
この作品は同タイトルで小説家になろうに投稿している作品を、ss用にいじって投下しています。
元作品
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
249 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/11/15(木) 20:11:29.26 ID:5piKgi/4O
乙ー
250 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/15(木) 20:59:18.89 ID:iG029GJUo
乙
だけど章ごとにスレ分けると叩かれそう
251 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/16(金) 08:29:13.73 ID:tzup/e3AO
乙!
252 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/16(金) 21:35:30.88 ID:KSI/sfAT0
乙、ありがとうございます。
>>250
ですね。やっぱりこのスレで続きを書いて行こうと思います。
というわけで二章『商業都市』編投下します。
253 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/16(金) 21:36:10.46 ID:KSI/sfAT0
男(目的地に向け歩き出した俺たち)
男(現在地は森の中……ここ数十分は変わらない景色が続いている)
男(とはいえ人が行き交う道のようで整備がされているため、祭壇場の周りを探索していた頃よりかは歩きやすい)
女「旅の開始だね……よしっ、やるぞー!!」
女友「あまり最初から飛ばしすぎるとバテますよ」
男(先行する女と女友の二人に俺が遅れて続くという形で進んでいる)
男(クラスメイト26人だったのが一気にパーティーメンバーの3人、俺と女と女友だけになって居心地が悪く……)
男「ならないな……元々二人とくらいしか会話してなかったし」
男(クラスで孤立していたことがここで影響するとは)
254 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/16(金) 21:36:44.10 ID:KSI/sfAT0
男「ところで俺たちが最初に向かう商業都市ってどんなところなんだ?」
女友「ええ、ちょうどその確認をしようと思っていたところです」
男(女友は頷くと、村長から授かった情報を披露した)
女友「商業都市の起源は元々商人が長旅をする際の宿泊地だったそうです」
女友「それが多くの人がやってくるようになって宿が増え、商人相手に商売する者も現れて、町の規模が大きくなって」
女友「商人たちが共同でお金を出し合い、魔物の対策のために塀で囲い兵を雇って……と、商人を中心に発展した経緯がありますね」
男「なるほど」
女友「そのため今でも商業都市は大商人会という、大きな商会のトップが集まる会議が行政を担っているようです」
女友「この地にあった女神教の教会の取り壊しもおそらく行政側が行ったでしょうから、その大商人会の誰かの手に宝玉が渡ったのではないか……と、村長さんの予想です」
男「売り飛ばしてなければ、今もその大商人ってのが持っているわけか……」
女「どう思う、男君?」
男「最初から面倒な案件になりそうだな」
255 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/16(金) 21:37:55.68 ID:KSI/sfAT0
男「まず、現在の俺たちの身分は村民って扱いだ」
女友「村長がそのように図ってくれたからですね」
男(『俺たちは異世界出身の女神の遣いです』なんて言葉は女神教の信仰も失われた現代では通じないため、村長が親切にも申し出てくれた)
男(日本のようにガチガチな管理社会でもないため、村長がこいつは村の出身だという書類を書くだけで簡単に身分の偽造が通るらしい)
男「つまり女神の遣いだからって特別な権限は何も持っていないただの一般人だ」
男「対して相手は町の行政を担うようなトップ階級」
男「となれば会うのも一苦労、ましてや宝玉がどうなったのか、持っているなら譲ってもらうように話を付けるなんてそれ以上の難題だ」
女友「商業都市は都市と名が付いていますが、一つの独立した国のようなものです」
女友「そのトップとなると日本でいえば総理大臣のようなもの……対して私たちはただの旅行客という事ですから、交渉の場を設けること自体が厳しいでしょう」
256 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2018/11/16(金) 21:38:37.89 ID:KSI/sfAT0
女「あんまり気は進まないけど……宝玉を持っている大商人を魅了スキルで虜にして、取引に応じてもらうか譲ってもらうように命令する……のが早いのかな」
男「その大商人が女で、しかも俺が魅力的だと思えたならな」
女「あっ、その条件があった……」
男(魅了スキルにかけられた二つの枷。異性で魅力的な相手にしかかけられないというもの)
男(男やブスに間違ってかけるという失敗が無いのはいいものの、それは男やブスを操れないということでもある)
男(商会のトップを務めるようなやつだ。男女共同参画社会なんて言葉がこっちの異世界でも流行っているのかは分からないが、まあ十中八九で男だろう)
男「まあ抜け道は存在するけどな。大商人が男だったとしても、例えばその妻から攻略する方法がある」
男「魅了スキルをかけて夫に会わせるように命令するとかな。偉いやつが妻にするような女だから、おそらく魅力的だろうし」
女「そんな方法が……」
男「他にも色々方法は考えている。魅了スキルで女を支配できる以上、選択肢はかなり多い」
男「難易度が高いとはいえ、こんなところで躓いてられないしさっさと攻略するぞ」
男(魅了スキルだけがこの異世界における俺の武器だ。使い方、生かし方は常日頃から模索している)
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