巌窟王「これは、嘘で世界を変える物語だ」 アンジー「あなたの名前は――」

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582 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/15(火) 21:17:46.36 ID:QFB1HuNv0
夢野「落ち着けェーーー! 落ち着くんじゃ入間ァ! こんなことをしても現実はなにも変わらん!」

入間「夢野ォ……手を組もうぜェ……!」フシュルルルルル

夢野「は?」

入間「アレを見ろォ!」

夢野「アレ?」チラッ

ハトムギ「くるっぽー」

赤松「……ん? あ、ハトムギ。なんで私の頭の上に乗ってるの?」

夢野「…………………………」

夢野「は????????????」

最原「……赤松さん。彼女に懐かれるようなマネした?」

赤松「いや、特に……むしろ私、セミラミスさんを地下世界から連れ戻すのに彼女に随分と助けられてさ……よしよし」ナデナデ

ハトムギ「くるっぽー」

夢野「えっ。セミラミス? えっ? えっ?」

入間「寝取りだ寝取り」

赤松「ねとり?」キョトン

ハトムギ「くるっぽー」

夢野「……ふっ……」







夢野「うおおおおおおおおおおおおおおお! 許さんぞおおおおおお!」ゴオオオオオオッ

赤松「!?」ガビーンッ

夢野「よくも……よくもウチの商売仲間を寝取ってくれたなぁぁぁぁぁぁ……」フシュルルルルル

赤松「えええええええっ!? いや、これは違っ……ていうか仮に彼女を誘惑した人がいたとしてもそれセミラミスさんで! 私関係無い……」

夢野「殺すッ!」ジャキイイイインッ

赤松「殺す!?」ガビーンッ

最原(どこからともなく丸ノコが出てきたーーーッ!)

入間「ヒャーーーハハハハ! いいぞ! やっちまおうぜ! 俺様たち二人で!」

ギュイイイイイイイイイインッ ドグシャアアアアアッ
583 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/15(火) 21:27:19.05 ID:QFB1HuNv0
入間「……ゑ?」

最原(今の一瞬、何が起こったのか僕たちは全員理解できなかっただろう)

最原(だって、今夢野さんが粉々にしたのは……入間さんが持っていたエグイサルのコントローラーだったから)

夢野「……」ギュインギュインギュインギュイイイイイイイイインッ








夢野「貴様ら全員を! 殺すッ!」ジャキジャキジャキジャキイイイイイインッ

百田「丸ノコ増えたーーーッ!」ガビーンッ

天海「ていうかドリルも追加されてるーーーッ!?」ガビビーンッ

入間「え? なに? え? 俺様、ラスボスになるはずじゃ……え? え?」オタオタ

東条「入間さん! 今すぐそこから離れて! そのままじゃ一番最初にミンチになるのはあなたよ!」

夢野「ウチの魔法の供物になれェェェェェェ!」ギュイイイイイイイインッ

入間「ぴゃーーーーーーーッ!?」ダッシュッ!

赤松「入間さん! こっち! こっちーーー!」

茶柱「いやダメです呼ばないで! じゃないと暴走した夢野さんまで」

夢野「サバトじゃああああああああああああ!」ギュイイイイイイイイインッ

茶柱「こっちに来ちゃいますからヴェエエアアアアアアアアアアア!?」



ドカァァァァァン! ドリドリドリドリ バツーーーンッ ギャーーー!



白銀「……夢野さんが……裏ボスになった……」ガーンッ

最原「……だ……誰か」

最原「誰か……助けて……」

最原「誰か僕たちを助けてくれーーーッ!」






カルデア

??「はい。それでは、最後の支援です!」ポチッ
584 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/17(木) 21:51:45.71 ID:Jkli8XaZ0
??「……これで正真正銘、完全にお終いです。私たちの我儘に乗ってくれてありがとうございました」

???「別に構いはしないさ。貴様には随分と世話になったらしいからな。俺はまったく覚えがないが」

??「……あの。人生を台無しにするレベルで人が好すぎません? ちょっと心配になってくるんですけど」







巌窟王「クハハハ! なにを言う! まったく見覚えのない人間に嘘を吐いたのだからな!」

巌窟王「その俺がお人好しなどと、まったく笑えるジョークだ」

BB「別に構いやしないんですよ、嘘で」

BB「真実と嘘に違いなんてありはしません。特に人間にはね」

BB「その違いを認識できるとしたら人間より上の知生体だけ」

BB「だから全然構わないんです。見抜かれてない嘘は真実そのものなのですから」

巌窟王「……気に入らない論理だ」クルッ

BB「おや。どちらへ?」

巌窟王「マスターに呼ばれている。またくだらないクエストだろう。だが行かないわけにはいくまい?」

巌窟王「俺は徹頭徹尾、あの男のサーヴァントだからな!」ギンッ

BB(……さてと。これでこの世界への興味を、私は完全に失いました)

BB(さようならです。才囚学園のみなさん)
585 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/20(日) 08:25:31.88 ID:FzR96pf+0
才囚学園

血塗れの入間「」チーンッ

赤松「入間さんが死んだ!」ガビーンッ

白銀「このひとでなし!」

茶柱(いやー。実際はケチャップを頭から被って死んだフリしているだけですけど。バレないものですねー)

ケチャップ入間「……」

赤松「春川さん! 助けて! 犠牲者出てる! 犠牲者出ちゃってるから!」

春川「めんどい」ンアー

赤松「なんで超初期の夢野さんみたいなこと言ってるの!?」

春川「夢野の怒りと体力が尽きるまで頑張って。そう時間はかからないから」

春川「二十四分くらい……?」

赤松「疑問調だし結構長いし!」

百田「頑張れ赤松頑張れ! お前は今まで良く頑張ってきた! これからも頑張れる!」

赤松「いやそろそろ助けがないと心が折れ――」

夢野「止めじゃアアアアア!」ギュイイイイイインッ

赤松「なああああああああ!?」ガビーンッ



キラーンッ



キーボ「あれ。なんか空から降ってきませんか?」

獄原「え? なんか……ってなに?」チラッ

姫路城「書籍超特急ドーーーーンッ!」グシャアアアアアアッ

夢野「んあああああああああああああっ!?」

最原「空から姫路城降ってきたーーー!? なんで!?」ガビーンッ

赤松「こ……これは……刑部姫さんの姫路城! の人間大ミニチュア!」

茶柱「見覚えあるんですか!?」
586 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/22(火) 22:06:41.53 ID:HjsaBEgi0
最原(なんか知らない女の人の声が聞こえたような気がしたけど……)

百田(うっ。何故か頭の中に太陽神殿の映像が……何故だ……?)ガタガタ

最原(トラウマを刺激されている……)

最原「いやそんなことより夢野さんの身体が丸っと姫路城に押しつぶされてるよね、アレ!」

獄原「た、大変だ! 早くどかさないと!」

夢野「……」ズルッ

白銀「あれ。自力で抜け出してきたよ」

東条「……無傷のようね。どうやら」

夢野「……うっ……」ポロポロ

獄原「う、うわぁ! 泣いてるの、夢野さん! 痛かった!? どこか見えない場所にたんこぶとか……」

夢野「ううううううううううう……!」

白銀「……ん。夢野さん? あのさ」











白銀「その片手に持ってる厚手の本、なに?」
587 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/25(金) 20:06:51.18 ID:e677obpl0
夢野「……卒業アルバム……」グスグス

全員「!?!?」

夢野「全員分……! あ、あ、あの姫路城、ペーパークラフトで……底の部分が……!」

最原「百田くん! 確認しよう!」

百田「お? おう。おうッ!」バッ


ガサゴソ


東条「……どう?」

最原「底の部分から分解できる。これ箱だ! 意図はまったくわからないけど姫路城型のプレゼントボックスだ!」

赤松「刑部姫さん、折り紙とかペーパークラフトの類は大得意だったなぁ……じゃなくて! まさか、それの中身って!」


ドサドサドサッ


全員「!!!!!!!!!」

卒業アルバム群「」ズラーッ

白銀「……」

アンジー「彼の遺品……彼の未練。卒業アルバム……間違いない、ね……」

獄原「中身! 中身を確認しないと! ねえ!」ワクワク

キーボ「……全員分、名前を振ってあるみたいですね。本当、巌窟王さんって人は……」
588 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/28(月) 21:50:31.10 ID:DZoGeXDu0
赤松「でもなんで。巌窟王さんはもういなくなってるのに、誰がこんなものを作ったの?」

最原「……」

最原(待てよ。それだ。僕はそれに心当たりがある気がする……)

百田「終一。何か閃きそうなんだな?」

最原「もうちょっとで……何か思いつきそうなんだ」

春川「いくら何でもそれは無理があるよ。だって卒業アルバムがいきなり降ってくるなんて誰が予想できるの?」

春川「誰かが『予告』してたのならともかくさ」

最原「!」




最原『……こんな……こんなことって! 待ってよ! 才囚学園の生徒全員はみんな死んでないんだ!』

最原『最後の最後まで誰も欠けずに行けると思ったのに! こんなの!』

BB『『BBという存在』が消えたりはしませんよ。かと言って、おそらくもう二度と会えないでしょうが』

BB『私を作った代償に、オリジナルのBBは三日間一切の行動が取れないので』




最原「あっ……」




『三日程度待っていてください。すぐに用意しますので』



最原「……あ、ああああああああああっ!」

最原(そうか……そのための三日間!)

最原(そのためのモラトリアムだったんだ!)
589 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/01(金) 16:56:13.95 ID:sPd2AzC/0
最原「BBさんだよ! 彼女が卒業アルバムの作成を引き継いだんだ!」

入間「んなっ……BBだと!?」

東条「ありえるわね。私たちの前で砕け散ったBBさんは分身。本体はまだピンピンしているはずだもの」

獄原「でも引き継いだって……巌窟王さんの卒業アルバムのデータを一体どうやって引き継いだの?」

アンジー「元からBBと彼は組んでたからねー。卒業アルバムのデータくらいどうとでもなるよー」

白銀「そういえば……あのパソコン、中身を定期的にどこかへ送ってる形跡あったね」

白銀「そっか。BBさんに送ってたんだね」

春川「……アイツの不器用さが、完成に一役勝ったってことか」

百田「ん? なんだよハルマキ。懐かしそうな顔してんぞ?」

春川「!!!!!!!!」ハッ

春川「え、そ、そう……かな……? 気のせいだよ。こっち見ないで殺されたいの?」ガタガタ

百田「なんで動揺してんだよ」

王馬「どうしたの春川ちゃん! 具合でも悪いの!? 頭!? 頭でも痛いの!?」ニヤニヤ

王馬「俺のこと覚えてる? なにか忘れたことない? 試しに思い出せることを片っ端から言ってみてほしいなぁ」ニヤニヤニヤ

春川「……」ガシイッ

王馬「おげぁっ」

茶柱「ね、ネックハンギングツリー……」

真宮寺「……」ペラペラ

真宮寺「……はあ。仕方ないネ」

最原「え? 仕方ない?」

真宮寺「しばらく姉さんの友達作りは中止かなって話」

最原「!」

百田「……どういうこったよ、そりゃあ」

真宮寺「この卒業アルバムを見ればイヤでもわかるヨ。巌窟王さんたちがどれだけ僕たちのことを信じていたか」

真宮寺「希望……いや、期待、と言い換えた方がいいかな……」
590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/02(土) 01:30:37.68 ID:VWBvd9BfO
むしろ中止してなかったのかよ
591 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/04(月) 21:20:00.55 ID:HlDb7I860
真宮寺「僕は間違ったことをしていたとは思わない。思わないけど、これ見て考えをちょっと変えたんだ」

真宮寺「……まだ僕には足りないことがある。それを見つけるまでは、友達作りをしても虚しいヨ」

王馬「……!」ペラペラ

王馬「ふーん……そっか。だから名前をそれぞれに振ってたんだ」

最原「!」

春川「まさか、遺言でも書いてあったっての?」

アンジー「そういうのとは無縁な人だよー」

王馬「ささやかなものだよ。本当にちょっとしたものだ」

王馬「……見てみれば? 中。白銀ちゃんの分含めて全員分あるんだしさ」

最原「……」

最原(ちょっと怖い、と思うのは何故だろう)

最原(……巌窟王さんといよいよ本当に別れてしまう気がしているのか?)

最原(だとしたら僕は、やっぱり僕は弱いままなのかもな)

最原(でも)

最原「……」ペラペラ

最原(それ以上に中身が気になる)

最原(……割と普通の卒業アルバム、だな。巌窟王さんが撮った写真がいっぱいだ)

最原(巌窟王さん自身が入っている写真もあるけど、これは……キーボくんの視点っぽいな)

最原(一体どうやってこんな操作したのか……)

最原(……懐かしい。なにもかも遠いむかしのことのようだ)

最原(……あとは)

最原「!」

最原(あ……!)
592 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/08(金) 19:44:17.91 ID:utJs4QEu0
『卒業証書
最原終一
上はエドモン・ダンテス所定の全過程を終了したことを証する。

才囚学園 エドモン・ダンテス』



最原「……は、ははははははっ……!」

百田「そ、卒業証書……くくっ! アイツ、マジかよ。本当にささやかだな」

百田「どこの世界に空から卒業証書落とすヤツがあんだよ……!」

アンジー「……エドモンの字だ。これ、エドモンの字だよー」

春川「嘘……でもどうやってこれを書いたの? どの時点で?」

赤松「……」

赤松(カルデアには『巌窟王さん』がいる。こっちの世界のエドモン・ダンテスが消えたことで、完全にカルデアの巌窟王が復活したはず)

赤松(彼に書かせれば、それは間違いなくこっちのエドモン・ダンテスと同じ筆跡になる……か)

赤松(……トリックは想像付くけど、わざわざ言うこともないよね)

アンジー「……ッ!」

赤松(……嘘は暴かれない限り真実だから)

王馬「……にししっ」ニヤニヤ

赤松(なんでか知らないけど王馬くんは見当付いてるみたいだけど、黙っててよね本当)ハラハラ
593 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/13(水) 17:11:32.27 ID:q8j2Smps0
アンジー「……」

アンジー「楓も進路決めたみたいだし、アンジーもここで言っておこうかなー」

アンジー「アンジーもアンジーで、エドモンを探してみる」

百田「あ? おい、アイツはもう……」

アンジー「そもそもの話さ、英霊召喚のシステムってかなり広い意味での死者蘇生だよねー」

アンジー「……不可能ではないと思うな」

百田「……」

百田「どんな不可能もやり遂げちまえば可能に変わる!」

アンジー「!」

王馬「えー? いいの? 止めなくて」

百田「いい! 自由にしろ! アンジーの人生はアンジーのモンだ!」

百田「当然だが、つまりいつ止めてもいいってこった! 後悔さえ残らなきゃなにしたっていいんだよ!」

アンジー「その結果、アンジーが誰かを生贄にするような道を取っても?」

百田「やりたいと思うのは自由だぜ? まあそんときは俺か、終一か、ハルマキが止めるけどな! 自由なんだからよ!」

最原「え!? 僕も!?」

百田「止めねーのか?」

最原「いやまあ視界に入ったら多分止めるけどさ……」

最原「……」

最原「あれ? 春川さんは抗議しないの?」

春川「いいよ。私だって止めてあげるよ」

春川「……文句はそのとき百田と夜長に言えばいいし」

百田「おし! じゃあ俺も進路言うぞー! 宇宙行く! 以上!」

最原「早い! しかも変わってない!」ガーンッ
594 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/19(火) 22:34:02.07 ID:UouBwDkN0
入間「俺様は! 俺様は諦めねぇぞ! 魔術と科学の両面の道を完全に極めてやる!」

入間「こっから出たらアトラス院に就職してやるぜ! あったらだけどな!」

最原「アトラス……え? なに?」

獄原「ゴン太は外に出てから考えるよ! 虫さんたちといっぱい相談してみる! 山とかで!」

星「さて。俺はせっかくのシャバだ。当てはないがひとまず外の空気を楽しむさ」

星「……ふん。俺が楽しむ、か……やれやれ」

真宮寺「僕は旅にでも出ることにするヨ。もちろん魔術師とかに暗殺されないように気を付けながらネ」

真宮寺「……というか永続的にみんなを魔術師から守る方法をどうにか探さないとネ」

茶柱「どの人ももうそうそう暗殺されそうにない猛者ばかりですけどね」

茶柱「転子は……うーん、ゴン太さんのマネじゃあありませんが、山籠もりでもしましょうか」

最原「え?」

茶柱「修行です修行! 一から身も心も叩き直すんです!」

茶柱「……どこの山かは非公開で!」

最原「非公開なの!?」ガビーンッ

茶柱「誰かが迎えに来るまでは十年でも二十年でも引き籠る予定ですので! そのつもりで!」

最原「僕への責任が重すぎる!」

百田(もう素直に茶柱のことを自分の責任として処理してんなー)

春川(あっつい。顔があっつい)

赤松「ふふっ……」

最原(そこかしこから生暖かい視線を感じる……!)
595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/22(金) 17:03:52.63 ID:jCCEeg/v0
まだ続いてたんだこのss
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/24(日) 23:03:01.55 ID:wrD2gkLC0
見てます
597 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/25(月) 19:22:35.89 ID:ePqpcCVp0
夢野「……ぐすっ……ウチは……ウチの進路は……っ!」

夢野「ん?」

最原「どうかした?」

夢野「……王馬はどこじゃ?」

最原「どこもなにも、ここに……?」




全員(……あれ?)




百田「アイツいなくねぇ?」

春川「これからキーボ飛ばして外に出る段取り付けようって段だよ? 今更どこに行かれても……」

獄原「あれ。そこの岩になんか書かれてるよ?」

春川「……なんか?」




『このせかいはおうまこきちのもの』




最原「……」

最原(まったくもって荒唐無稽な書置きだったが、なんとなく意図するところは見えた気がした)

百田「なんか……この学園出るまでもうアイツと再会することはない気がすんな……」

最原「不思議だけど僕もそんな気がする……」

春川「アイツなら別口で脱出ルートを見出しててもおかしくなさそうだね」

獄原「最後の最後まで王馬くんは王馬くんだったね!」ニコニコ
598 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/12/02(月) 21:50:46.96 ID:00wmXuo00
夢野「ウチの進路は……そうじゃのう。ひとまず表の世界で有名になることかのう」

夢野「魔法使いとして!」

東条「……大丈夫? かなり危険だと思うのだけれども」

夢野「それでも誰かがやらないといけないじゃろう。いざ生徒たちが集まりたいとなったときに目印が何もないとなったら困るじゃろ?」

夢野「その役目はウチがやる。ウチが一番の適任じゃ!」

夢野「……腕が鳴るわい!」ギュイイイイイイイイ

最原「さっきから聞きたかったんだけど、その丸鋸とドリル何!?」

夢野「人体切断マジカルショーのアレと、箱を使った瞬間移動のときに箱へブッ刺すアレじゃな!」

茶柱「あ! やっぱり一応意味はあったんですね!?」ガーンッ

キーボ「ボクは……今決まりましたね。夢野さんの護衛をやりながら、このふざけた機能を解除する方法を探します!」ガチューンッ

赤松「気のせいじゃなかった。やっぱりキーボくんの周りの音、おかしいよね……? なんで?」

キーボ「セミラミスさんのせいですけど!?」ウガァッ

赤松「私に向かって噛み付かないでよ! 知らないよ!」ガビーンッ



ギャー ギャー


白銀「……みんな凄いなぁ。もう外に出た後のこと考えてるよ」

白銀「私なんて、これから生きてていいのかすら曖昧なのにさ」

天海「いや生きるべきっすよ。ていうか俺と一緒に来てもらうっすよ」

白銀「は?」

天海「ほら、俺が命懸けで前回の学級裁判から解放した二人……動機ビデオに映ってたあの二人に会いに行かないと。ね?」

白銀「いや、私はどの面下げてって感じだし」

ザッ

東条「やはりそうなるわね。いつ出発するの? 私も同行するわ」

白銀「花京院」

東条「東条よ」

白銀「……」

白銀「……え!? なんで!?」ガビーンッ
599 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/12/09(月) 22:02:48.85 ID:VhI1ZdEw0
東条「私がこの学園に来てから一番うれしかったことはなんだか、わかる?」

東条「巌窟王さんに赦されたときよ」

白銀「!」

東条「……最初はあなたのことを許せないと思ったわ。だけど、ね。事情を聞いて、その後許すか許さないかを決めるのなら、そこからは感情論よ」

東条「私は白銀さんを許したいと思う。巌窟王さんにやられて嬉しかったことを、誰かにやるの」

東条「……彼がいたことの最高の証明になると思わない?」

白銀「東条さん、巌窟王さんのこと大好きだよね。惚れてたの?」

東条「今の茶々は許さないわ」ガシイッ

白銀「アイアンクローはやめて。ごめんなさいごめんなさいマジでごめんなさあああああああ!」ギリギリギリ

東条「……」メシメシミミシミシミシ ピシリッ

東条「ここまでにしておきましょう」フッ

天海(今ピシリッて言った……! ヒビが入るような音した……!)ガタガタ

白銀「私だけ死ぬかと思った……」ゼェゼェ

東条「あとそうね、これも大事なのだけど」

白銀「まだ理由あるの?」

東条「……この学園の中で、あなただけがまだ救われてない」

東条「それってとても気持ちの悪いことよ。シンクについた水垢みたい」

東条「……私の前で、心の底から笑ってほしいのよ」

白銀「……」

白銀「まあ、いつかは」

東条「ええ。いつか、ね」フフッ

天海「決まりっすね! 俺たちは三人一緒に旅に出るっすよ! 燃えてきた!」メラメラメラ
600 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/12/16(月) 20:30:40.33 ID:svYqk3pB0
最原「よし! それじゃあ、やろう! キーボくん!」

キーボ「了解です!」チュドドドドドドド

入間「……本当にしまらねぇエンジン音だな」

百田「飛行にも支障出そうだが、なんで飛べてるのかわかんねぇ」

キーボ「音だけ! かっこ悪くなってるの音だけですからーーーっ……!」ズボボボボボボーッ

最原「……」

最原(穴から見える空は明るい。でも、それだけだ。なにも見えない。空だけが広がっている)

最原(この先に進んだ僕たちには一体なにが待っているのだろう)

最原(……サーヴァントのみんなと別れた後の僕たちに、なにができるんだろう)

最原(いや。不安に思うのは後でいい! 壁にぶつかったときでいいんだ!)

最原(この学園で巌窟王さんに貰ったものを、僕は生きている限り忘れない)

最原(それでほんのちょっと強くなれる……そんな気がするから!)






学園某所

ジャガーマン「よーっし! ぐるぐるパンチよーーーいっ!」グルグルグルグル

王馬「……で。キミは外に出たらどうすんの?」

ジャガーマン「絶対魔獣戦線バビロニア、アニメ絶賛放送中! 次は! 次クールのオープニングこそは出てやるぜ!」ビシイッ

王馬「うーん、ダメだ! 俺をもってしても何を言ってるのやらさっぱりわからない!」ヘラヘラ

ジャガーマン「で? キミはどうするの?」

王馬「この学園にしばらく残るよ」

王馬「ま……痕跡の後始末的な? そう何か月もいる気ないけどね!」ヘラヘラ

ジャガーマン「いいんでない? 学園っていうのは何かを貰って先に進む場でもあると同時に」

ジャガーマン「あなたたちが、なにかを『残す場』でもあるんだから。それを消すかどうかも生徒次第ってことで!」

王馬「……なんか消したくなくなってきたなー」

ジャガーマン「バーニングジャガーーーーーッ……」ゴゴゴゴゴゴ

ジャガーマン「ナッコォーーーッ!」シュンッ



ドカァァァァァンッ
601 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/12/23(月) 22:28:05.06 ID:sv0J2rwb0
物語はやがて終わる。

それを見た者の心になにかを残したのだとしても、やがてすべては記憶の影に薄れていく。





赤松「……みんな行っちゃったな。よしと。それじゃあ、いよいよカルデアに出発かな」

ブワッ

赤松「うわっ……凄い風。外と繋がる穴ができたって実感できるなー」

赤松「……」

ネコアルク「赤松嬢ー! 才囚学園の強制力が無くなってるから行き来は自由とは言え、いつ消えてもおかしくない出入口だからお早目ににゃー!」

赤松「わかってるってば!」

赤松「……行ってきます! 巌窟王さん! BBさん! セミラミスさん!」





――それでも僕たちが生きて歩いた道筋は、必ずどこかに残るし、今の自分たちに続いてくる。

他の誰が知らない道行でも、自分自身が忘れても、それでも絶対自分のルーツに繋がる物語。

僕たちの生きた証拠。僕たちの背中を押した、彼らが存在したという証拠が残る。
602 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/12/30(月) 23:03:07.67 ID:7FYy70kQ0
最原「……」



ザザーンッ ザザーンッ……



最原「……?」キョロキョロ

ミャア……ミャア……

最原「……」

最原「いつの間にか見覚えのない島にいるーーーッ! ウミネコがみゃーみゃー鳴いてるーーーッ!」ガビーンッ

最原「あれ!? どういうこと!? ここどこ!? ていうかみんなどこ!? あれ!? 学園のドームすら見当たらないぞ!?」アタフタ

魔猪「ぶもももももももーーーッ!」ドドドドドド

最原「うわあああああああああああデカいイノシシがこっちにーーー!?」

最原(避 否 死――)

武蔵「しゃああああああ今日の晩飯ゲットーーーッ!」ザァァァンッ

魔猪「ぶもげばっ!?」ブシャアアアアアッ

最原「ええーーーッ!?」ガビーーーンッ

武蔵「はー、大量大量。さてと、それじゃあさっさと血抜きとかして……」

最原「……」

武蔵「……あなた誰?」

最原「ここはどこですか?」



僕たちの冒険は終わらない。
僕たちだけの物語は……


武蔵「……あっ。また飛ばされる感じだコレ。ちぇ」キラキラキラキラ

最原「え? あれ!? 僕も!?」キラキラキラキラ

武蔵「おー、計らずも旅の道ずれゲット! しかもちょっと可愛い! LINEやってる?」キラキラキラ

最原「それどころじゃな――」キラキラキラキラ



シュイイイイインッ


これからも続く。
603 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/01/05(日) 00:05:58.70 ID:LtiM+y/l0
茶柱「!? !? !?!?」ガタガタ

百田「おーっし! それじゃあ、外に出れたことだし、それぞれの進路に向かって……一旦、サヨナラだな!」

春川「また会える……ううん。絶対に会うよね」

天海「最後の最後まで力になれたかは怪しいっすけど、それでもみんなとあの学園で同じ時間を過ごせたのは俺にとって――」

茶柱「待って! ちょっと待ってェーーー! 最原さんが! 最原さんがなんかキラキラキラキラシュイーーーンッて消えたんですけど!」

白銀「え? な、なに? なんのこと?」

茶柱「だから光の粒子に包まれたと思ったら身体が透けて消え失せたんですってば!」

百田「終一のヤツ、みんなと別れるの辛そうだと思ってたが……内心、舐めてたんだろうな。まさか真っ先に自分の道を見つけるとはよ」

茶柱「そういう感じじゃないと思うんですけど! むしろ消える瞬間『えっ?』みたいな顔してたんですけど!」

東条「今まで英霊召喚だのサーヴァントだのを散々見てきたのだから、人が消えるくらい今更と思わないでもないわね」

夢野「最原までウチのライバルになったのか? やれやれ、めんどいなんてますます言ってられなくなったのう」フウ

茶柱「そ、そういう感じ!? え!? みんな心配しないんですか!?」

獄原「最原くんなら多分大丈夫じゃないかな……」

星「まあ、なんだかんだ巌窟王に最後まで付いていったのは夜長を除けばアイツくらいだ」

真宮寺「その内、ひょっこり自力で戻ってくるヨ。第一僕たちに何ができるの?」

茶柱「それはっ、まあ……なにかしら……」アタフタ

アンジー「その通りだけどねー! まあ、今は各々やれることをやるしかないんだよー!」

キーボ「急がば回れ、ですよ! 証拠もないことですし!」

茶柱「え、ええーーーっ……!?」

入間「どうしても会えないなーってなったらそんとき考えろよ。ま、俺様に相談すりゃ手を貸してやらなくもなくもなくもないような気がするぜ!」

茶柱「どっち!?」ガビーンッ

茶柱「……ああー……!」





茶柱「もう! 思ったよりも大変そうですねぇ。約束果たすの……」
604 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/01/16(木) 17:10:19.96 ID:LRHajYlv0
百田「んじゃあな! 縁がありゃまた会おうぜ。それまで風邪とか引くなよ!」

アンジー「にゃははー! こっちの台詞だよー! もう吐血とかしないでねー!」

百田「!?」ビクウッ

百田(……いつ気付かれてた!?)

春川(吐血?)

百田「……」

百田(ハルマキの空気が変わった気がする! 逃げる一択だな!)ダダッ

春川「待って」シュバッ

百田「クソッ! ハルマキはえぇーーーッ!」シュバババババッ

春川「待って」ヒュンッ

百田「瞬間移動まで使って来やがった! ま、待てハルマ――あ゛あ゛ああああああああっ!」ガビーンッ

春川「待たない」






天海「……こ、怖……もう見えなくなっちゃったっすけど、怖かったっす……」アワワワワワ

天海「まあ、ここから先は二人の問題なんでもう手出しはできないっすけど。白銀さん! 俺たちも出発っすよ!」

白銀「ん? うん。いいけど。少し遅かったね」

天海「え? なにが?」

白銀「もうみんないなくなっちゃった」



ガラーンッ



天海「……去るの早ッ!」ガビーンッ

白銀「結局みんなワンマンプレイ大好きなんだよね……」

天海「み、みんなーーーッ! 俺っ……俺これから白銀さんと頑張るっ……頑張るって……」

天海「それっぽいこと言って別れたかったのにィーーーッ!」ガクーンッ

白銀「……」

白銀「私が聞いてれば充分でしょ」ボソッ

天海「え? なんか言ったっすか?」

白銀「早く行こう。目的地は……ひとまず前で」

天海「了解っす!」
605 :100日後に死ぬ天海:一日目  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/01/23(木) 20:42:53.95 ID:lI/2phEK0
東条「当然私も行くわ」

天海「あ! 東条さん!」

東条「白銀さんの眼も治さないといけないから」

白銀「覚えてたんだ」

東条「ちなみに解決策はもう見つかったわ」

天海「はっっっや!」ガビーンッ

東条「実はこの辺りフリーWi-Fiが飛んでいるらしいの。学園から持ってきたノーパソで繋げることができたわ」

東条「アマゾネス・ドットコムという通販サイトに『とてもよく効く目薬』があったから早速注文したの。後は指定場所まで行って待つだけよ」

天海「ん!? ちょっと待って! それ代金は!?」

東条「ないわよ。着払い設定にしたけど」

天海「え!? じゃあどうやって荷物受け取るんすか!?」

東条「強奪」

天海「」

白銀「……アウトローまっしぐらだね」

東条「世界に楯突くのはもう慣れっこでしょ」

天海(猛烈にイヤな予感がするなー……まあ、いつものことか)

天海(……巌窟王さん。あなたがいなくなっても、俺たちはなんとか生きていけそうっすよ)

天海(どっかで見守ってくれると嬉しいんすけど)

天海(……ま、伝えたいことはアンジーさん伝でいいか!)

天海(彼女ならきっと――!)
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/29(水) 11:35:36.83 ID:Sd1Ka9yLO
607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 21:34:34.45 ID:IyZ1fBE00
ええ……まだ続いてたんかこのss。よくネタが続きますね
608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 22:07:00.38 ID:3jYWjL7DO
随分前から1日1レス程度の投下で延々と続けてるだけで今でもまとめて投下してたならとっくの昔に終わってると思うんだけどな
609 :アンジーとあなたのための物語  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 09:42:13.39 ID:c/mEDpnF0




地面がある。空がある。星のような光がある。でもそれ以外は特になにもないような場所だった。

道はないし、方角もいつの間にか狂うし、目印を付けたとしてもそこまで戻ることができない。

一体、どのくらい歩いたのか。さっぱり思い出せない。ていうかそろそろ心が砕けそうだ。疲れた。

なんとか足を動かせるのは、胸の中にあるキラキラした思い出たちのお陰だろう。

無限に歩き続けていれば、理論上は確実に会えるはずとか言える場所じゃない。

無限に広い場所かもしれないんだから、無限に歩いても永遠に見つからないかも。




「……?」




なんか、凄く大きな黒い竜を見つけた。スケッチとか、これをモデルに彫刻とかしてみようかなーと一瞬思ったが、やめた。

ここを歩いていればたまにある奇妙なオブジェクトの一つだ。生きてはいるんだろうけど、どうでもいい。



「会いたいなー」



この言葉も何百回言ったか。何千回かな。何万回か。
610 :アンジーとあなたのための物語  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 09:50:53.19 ID:c/mEDpnF0



どれくらい歩いたのか、やっぱりもうわからない。

心はもうボロボロで砂のように粉々だ。

やっぱりただの人間にはキツすぎるみたい。倒れたり膝を付いたりしたらそこで終わりだ。億劫すぎて二度と立ち上がれないだろう。



「……ていうかー」



本当にここにいるのかな。実は全然見当違いの方向を探してたりしてなかったかな。

後悔の二文字が頭に浮かぶ。まあどっちにしろ、ここに来る前に全力で身体をいじくったから、二度とまともな世界に戻れないんだけど。



「……」



涙はもう枯れた。だからもう泣かないという決意も必要ない。自分がどんどんコンパクトなものに変わっていく感覚がある。

彼に会ったとき、言いたいことの半分も言えるかどうか――
611 :アンジーとあなたのための物語  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:01:28.74 ID:c/mEDpnF0


「……う」


ヤバい。


「……ううううううう……」


ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。


「もう無理ー」


いよいよ限界が近い。

いや、多分この『もう無理−』という台詞も何億回言ったのか覚えてないけど、今回ばかりは本当に無理だよ。

だってもうなにも覚えてないもん。

記憶や精神がここまで簡単に風化するなんて思わなかった。

ダメで元々だと思ってここに来たけど、まさか本当にダメだとは微塵も考えてなかった。

多分、そう、とても大事な人に会いにここまで来たということはわかるけど。その人とどんな関係だったのか覚えてない。

家族? 恋人? 先生? 弟子? 信仰を向けられる誰かしら?



「……」



わからない。わからないけど――


『何故自分から迎えに行かなければならない? 来るならむしろ向こうからでは?』


思考がちょっとありえない方向に、奇跡的に吹っ飛んだ。
612 :アンジーとあなたのための物語  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:09:35.49 ID:c/mEDpnF0
「……もう!」


なにもかも失って、それでも最後に残ったものが一つだけあった。

それは怒り。そうだ。これは元々、自分の中に無かったものだ。

誰かに教えられて獲得したもの……違う。

誰かに『お前の中に確かにあるのだ』と教えられて気付いたものだ。




凄く腹が立ってきたぞ。もうどうでもいい。疲れた。辛い。イヤになった。

もう二度と会えなくなっても知らない。

ここまでやってあげた自分と会える権利を、みすみす手放した彼が悪いのだ。

もう倒れよう。そして呪おう。超眠いし。



お前は永遠に独りぼっちだ、ばーかーめー! にゃははははははは!



そうしてやっと、自分の両足から力を抜いて――



「……?」



誰かに受け止められた。


「……!」


アンジーを受け止めた、誰かがいる。





巌窟王「……まったく。とんでもないナリだな、アンジー」

アンジー「あ……」
613 :俺とアンジーのための物語  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:23:45.85 ID:c/mEDpnF0
巌窟王「……まあいい。後のことは俺に任せろ。前からずっと、そういう役割だったろう? 俺は」ニヤァ

アンジー「……」

巌窟王「なにか言っておきたいことはあるか?」

アンジー「……」

アンジー(とても眠い。でも、とにかく彼に伝えたかったことがある)

アンジー(これだけは……最低限だ)

アンジー「あ……」

アンジー「アンジーを一緒に連れてって。エドモン」

アンジー「どこにだってついていくから」

巌窟王「……!」




エドモン「そうだったな。俺はエドモン・ダンテス」

エドモン「お前と共にある者だ」

アンジー「……」

アンジー(願いは叶った。ああ、でも凄く眠いなー)

アンジー(積もる話はあるんだけど、今はちょっと思い出せないし……)

アンジー(……寝よ)

アンジー「……」

エドモン「行くぞアンジー! 俺とお前の旅路は、まだ始まったばかりだ!」

エドモン「クハハハハハハハハハハハ!」

アンジー(うん。ずっと一緒)






アンジー(大好き。エドモン)
614 :押忍! BB道場  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:27:53.27 ID:c/mEDpnF0






BB「……さてと」

BB「安心しました? 元同級生が願いを叶えて」

??「……」

BB「ねーえー! せっかくまた再会できたんだからなんかしら言ってくださいよー! ねー! ねー!」
615 :押忍! BB道場  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:35:55.35 ID:c/mEDpnF0
最原「ちょっと黙っててよ! そういう雰囲気じゃないから今! ていうか、ここどこ!?」キョロキョロ

BB「BB道場ですけど」

最原「BB道場!?」ガビーンッ

BB「いや、建設途中なんですけど。バッドエンドを迎えたなにかをここに無理やり引っ張ってアドバイスして、ちょっと時間を巻き戻してリトライさせる」

BB「そんな素敵な憩いの場になる予定です」ドヤァ

最原「多分拷問に近い何かになる気がする……!」

最原「というかBBさん! それなら僕にアドバイスしてほしいんだけど!」

BB「なんです?」






最原「なんか、かれこれ何年かずっと漂流(ドリフト)が止まらないんだよ! 気が付いたら別の場所に転移してるってことずーっと!」

BB「……」

BB「えっ。最原さんも自力でここまで辿り着いたクチじゃなかったんですか!?」ガーンッ

最原「全然違うよ! たまに過去や未来に飛ばされてたりして、目的の場所に全然行けないんだよ!」

BB「ええ……? ちょっと待ってくださいよ。一体なにをどうすればそんな素敵体質に……なんか変なものと契約したりしませんでした?」

最原「契約? そんなものするわけが」

最原「あ、いや。したかも……最初の内は時間軸まではズレてなかったんだよな……確か過去や未来に跳ぶようになったのは……えーと」
616 :押忍! BB道場  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:43:46.06 ID:c/mEDpnF0
回想 〜武蔵との漂流中〜


真っ黒な穴『』ズズズズズズズ

最原『え。契約すれば目的地に行ける確率が上がるんですか……?』

武蔵『まー、このままずっと漂流し続けるよりは、腰を落ち着けて契約するのも一つの手なんじゃないかなー。せっかく目の前にいるんだしさー』

最原『ていうか、この真っ黒な大穴はなんですか? ブラックホールみたいな』

武蔵『な、なんか……よくしりょく? とか言ってたっけな。よく覚えてないけど』

真っ黒な穴『』ズズズズズズズズズ

武蔵『あ! なんか消えちゃいそう! 穴がどんどん小さくなってってる!』

最原『えっ!? ちょっと待って、まだ考える時間が欲し……あーーー!』

最原『契約! 契約しますから! それでみんなに会えるんなら文句ないですからちょっと待ってあああああああああ!』



回想終了




最原「ってことがあったんだよね」

BB「」

最原「そのまま穴は消えちゃったから契約はできてないと思うんだけど」

BB(『正義の味方』にされてるーーーッ!)ガビーンッ

BB「ああ、えーっと……職場紹介しましょうか? カルデアってところなんですけど」

最原「それ赤松さんが行ったところじゃ……」

BB「いいから!」ウガァ!
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/01(土) 13:54:50.65 ID:MckWlqPe0
やりおるわアンジー。
618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/07(金) 17:57:44.22 ID:tJkZDO8F0
ちょこちょこみてたけど、もうすぐ終わりそうだな…
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/08(土) 10:54:31.04 ID:02RDgOjC0
1年ぶりくらいに見に来たけど、まだ更新してたとは!
620 :押忍! BB道場  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/10(月) 20:36:31.53 ID:8DvDci3t0
数時間後

BB「ってことで、これで晴れてサーヴァントとしてカルデアに召喚される準備が整ったということで!」

BB「霊基は星5相当ですよー! クラスはひとまずアヴェンジャー!」

最原「……なんか釈然としないけど、これで今度こそみんなと会える確率は上がるんだよね」

BB「多少は」

BB(しかし漂流体質かぁ……元の世界でとびっきり変な偶然に巻き込まれない限りこんなことになるヤツは稀も稀のはずだけど)

BB(……巻き込まれまくってたか。考えるまでもありませんでしたね)

BB「さあ! それでは、このままカルデアに行ってらっしゃーい!」

最原「と言われても、どうすればいいやら……ん!」キラキラキラ

BB「お。早速呼ばれちゃってるみたいですね! ヒューヒュー! こーの人気者ー! 羨ましいぞー!」

最原「確かに今までとは違う感覚……! うん、ありがとう! また会えてよかったよ、BBさん!」キラキラキラキラ

最原「向こうのBBさんと会えたら、また仲良くするからねー……!」シュイイイイインッ







BB「……あっ」

BB「待てよ。『同じカルデア』に行けるかどうかは五分以下じゃないですか?」

BB「……やっちゃったZE☆」
621 :特異点F:炎上汚染都市冬木  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/10(月) 20:47:05.29 ID:8DvDci3t0
??「ええっと……ここにこの石を投げ込めばいいんだよね。わかってるわかってる。もう『二度目』だし」

???「どんな人が来るのか、楽しみですね! 先輩! ライダーがまだ二基しかいないので、そこを補える誰かだといいのですが……」



バシュウウウウウウッ



最原「……着いた! はあ、やっと腰の落ち着けるところに来れたって感じだ」

「!?!?!?」

??「……えっと、どこの英霊かな。今度は……」

???「さあ。見た目からは先輩とそう変わらない年齢の男性にしか見えませんが……」

最原「あ。えーと、カルデアのマスターさん、だよね。前に夢で一度だけ会ったけど覚えて……?????」

最原(……? あれ。カルデアのマスター……って女性だったっけ。前に会ったときは確か男性だった気がするんだけど……)

立香「?」

マシュ「?」

最原「……巌窟王って名前に聞き覚えはある?」

立香「ないけど」

最原「……は、ははは……ははははははははは……!」






最原「間違えてるよッ!」ガビーンッ

立香「何をッ!?」ガビビーンッ
622 :ロストルーム  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/10(月) 20:52:55.53 ID:8DvDci3t0
とある寂れた倉庫内

モノクマ「……うぷ……うぷぷぷぷぷ……」

モノクマ「そう、まだ終わってないんだよ……最原くんの旅も、ボクの大活躍も……」

モノクマ「ボクはモノクマ。才囚学園、および希望ヵ峰学園の学園長。そして……」







モノクマ「このカルデアの新たなる、支配者なのだッ!」ギャリィィィィンッ







ガシャガシャガシャガシャッ パリィィィィンッ




THE END
623 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/10(月) 21:09:37.30 ID:8DvDci3t0
というわけで終了!
長くない……長くないヨ……全然長くなかったヨ……!

確か初期のころはFate映画にエキサーイエキサーイしてたから二年くらい前? からやってたのかな。うん長くない全然。三部作より全然短い。

HTML化依頼出さなきゃ!
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/10(月) 22:43:31.96 ID:iKTQvfbH0
完結乙 2年半ですな(2017/10からだから)
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/11(火) 20:02:05.51 ID:V/fYtZ/so
終わったか乙
次は最原の人理修復編じゃな?
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/12(水) 00:35:07.67 ID:bAA2QSyf0
お疲れ様っす!最初っからおっかけさせて頂きました。・・・・・・なんだろう。最終的にカルデアで赤松最原再会。転子ちゃんがフェードアウトな気がしてならん。そして、モノクマのラストはなんなんだろうか。
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/12(水) 11:36:00.13 ID:XHZrN9sUO
お疲れ様です、やっとこさ追いついた....
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/14(金) 11:48:17.66 ID:zqMEKGghO
お疲れ様です!こらのおかげで巌窟王が好きになりました!
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/19(水) 19:45:12.14 ID:IJSOGX8R0
お疲れ様です!
投稿者様の作品がどれも大好きで一気してきました!
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/14(火) 17:26:20.51 ID:H+jLeksQ0
遅くなりましたがお疲れ様です!
今後外の世界はFate/requiemのような世界になるんでしょうか…。
631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/07(木) 18:07:21.43 ID:Rc4Jtosu0
FGO二部五章をプレイした後に読んだけど、
もしモノクマの選択を選んでいたら、外の世界はあの地球国家元首の養分になってたというわけか
末恐ろしい話だ
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