巌窟王「これは、嘘で世界を変える物語だ」 アンジー「あなたの名前は――」

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431 :アァアア! 魔神柱がァ! 魔神柱が狩り尽くされている!  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/11(土) 19:52:23.70 ID:kKGOIR3K0
モノクマ「しゃきーんっ!」バッ

最原(ん? 鍵だ)

モノクマ「はいぶすーっ!」ガチャリッ

最原(あ、手元の鍵穴に刺した)



ズゴゴゴゴゴゴゴゴ!


最原「!?」

獄原「裁判場が……!」

王馬「揺れて揺れ揺れあばばばぶぶぶぶぶぶ」ブルブルブルブル

百田「いやいくら揺れてもそうはならねーだろ! プリンか!?」ガビーンッ

白銀「なっとる! やろがい!」

巌窟王「何をした……!?」

モノクマ「本来なら、オマエラのことを見ている視聴者の顔をリアルタイムで映すためのギミックだったんだけどさー」

モノクマ「そろそろいいかなって」

巌窟王「……!?」

モノクマ「この密封性は偶然。本来、ここに魔術由来の何かを呼び出す気なんて無かったんだから」

モノクマ「でも実際には閉じ込めることができた。閉じ込めることができてしまった」

モノクマ「……さあ、概念の存在を汲み上げる器の完成だ。サーヴァントの強大な魔力を延々と注ぎ続けたらどうなる?」

モノクマ「それは膨大な魔力リソース。無計画に開放すれば外の世界を壊滅させかねない程の」

ナーサリー「……まさか」

モノクマ「人の抱えたあらゆる願いを叶える密室」

モノクマ「形而上のものを組み上げ、物質に変換する奇跡の産物。それをオマエラは一体、なんて呼んでる?」

モノクマ「巌窟王さんなら答えられるよね?」

巌窟王「……」


1.聖杯
2.聖杯
3.聖杯
432 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/12(日) 16:29:59.95 ID:c7Cfu39z0
巌窟王「なるほどな。魔力を溜めておける器に、相当量の魔力を注ぎ込めば一つや二つ程度、できるか」

ナーサリー「……肩入れした女神サイドにも問題があったわね。ごめんなさい、きっかけは私よ」

最原「え?」

巌窟王「この才囚学園は聖杯だ! 正確に言うなら、聖杯の内側となっている!」

最原「!?」

春川「正気で言ってる……? いや、聖杯の定義が魔術の世界ではどうなのかは知らないけどさ」

春川「もし本当にあんなものが存在するのなら、もうこの場の誰にも手が付けられないんじゃない?」

百田「伝承の上での聖杯と同じなら、不老不死だの願いを叶えるだの、スケールが大きすぎてピンと来ねぇよな」

百田「つーかそんなもんがあるんなら俺たちのことを無事に出してくれって願うだけに決まってんだろ」

巌窟王「おそらくだが、それは無理だな」

百田「あ? なんでだよ」

巌窟王「お前も聖杯の一部だぞ」

百田「は?」

巌窟王「モノクマも、白銀も、モノクマーズも才囚学園の校舎もこの裁判場に至るまですべてが聖杯だ」

モノクマ「そう! ニューダンガンロンパV3は変性する!」

モノクマ「現実を嘘で塗り替え、物語は歴史となる!」

モノクマ「偽物は本物となり、外の世界は丸ごとすべてオマエラの礎に変わる!」

天海「……バカげてる! いや、さっきまで人類をぶっ壊せるかもって議論してた俺たちに言えた義理じゃないのかもだけど!」

天海「モノクマ! お前は今! まさかそれを望んでるって言うんすか!?」

白銀「まさか……モノクマ、あなたは」

白銀「視聴者の味方ですら……なかった……!?」

モノクマ「うぷぷぷぷぷぷ……!」

最原(……裁判場の揺れが強くなっている! まさか、足場が壊れたりしないよな?)



ビキビキビキイッ!



赤松「むぐう!?」

最原「案の定壊れてるよーーーッ!」ガビーンッ
433 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/13(月) 19:58:43.54 ID:/Z60ZPA40
ドガラガラガシャアアアアアアアアアアアアンッ


入間「ぎゃあああああああああああ!? こ、これ落ちっ……落ちてっ、落ちてるだろおおおおお!?」

獄原「入間さん! みんな! ゴン太に捕まって!」

星「……なんだこれは! 裁判場の地下にこんな巨大な空間があったら……!」

東条「建築学の何もかもが成立しないはずよね」

茶柱「いや冷静に分析してる場合じゃっ……これどこまで落ちるんですかーーー!?」

王馬「死ぬーーーっ! ヒャッホーーーウ!」

春川「……!」

百田「ハルマキ! ハルマキ! 『今ならどさくさに紛れて殺せる』とか思ってねぇよな!?」

春川「……ちっ」

百田「思ってたんだな!?」ガビーンッ

真宮寺「これは……いくらなんでも穴が深すぎないかい?」

夢野「……」シーン

天海(気絶してる!)ガビーンッ

セミラミス「ぐー」スヤァ

赤松「んむぐぐがおおおおおおーーーッ!(特別意訳:この人まだ寝てるよーーーッ!)」

白銀「まさか底がない……?」

巌窟王「アンジー!」

アンジー「……!」

最原(気の遠くなるような時間だったけど、実際はそこまで経っていないはずだ。タイムリミットがあるんだから)

最原(でもそうやって落ちて落ちて落ちて落ちて、落ちた先で、気が付くと……)

モノクマ「はい到着です!」

最原「……ここは……」

最原(壊されたはずの校舎がすべて元通りになった、才囚学園……?)

最原「……違う。これは……この景色は才囚学園じゃありえない……」ガタガタ

最原(だって、そう。今、僕たちの周りには……!)





白銀「果ての壁が……ない……」
434 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/14(火) 21:04:40.71 ID:DcW6gtfh0
モノクマ「正確には、壁はあることにはあるんだよ。ずっと遠くに。霧状の壁的なものが」

百田「……おいおいおい。なんだよこれ。いくらなんでも広すぎんだろ……」

最原(時刻は深夜だけど、空にはあつらえたような満月があるのでちっとも暗くない)

最原(果ての壁があったその場所から、ずっと向こうまで草原が広がっていた。ところどころに花畑がある以外は本当に何もない)

モノクマ「現実ではありえない光景でしょ? その内に、オマエラのものになるかもしれない世界だよ」

巌窟王「なんだと?」

モノクマ「あの樹の仕組みは相変わらずよくわかんないんだけどさー、用意が十全なら世界を変えてしまえるんだって」

モノクマ「今見えている光景は幻。あるはずのない幻像。でもあの根さえ下りてしまえば話は完全に別になる」

白銀「教えてモノクマ。あなたは一体、何をするつもりなの?」

モノクマ「知りたい? 知りたい? なら教えてあげましょう! 一から一万まで!」

春川「一から十まででいいよ……」

モノクマ「人類史ダンガンロンパ化計画! それがボクが! 誰の意思でもなくボク自身が実行している計画の名前だよ!」ギンッ

最原「人類史……ダンガンロンパ化計画……?」

モノクマ「あの根を下ろして人類史を改変してフィクションに過ぎないダンガンロンパの世界で人類史を上書きしたいと思いますハイお終い!」

天海「説明が早すぎる!」ガビーンッ

巌窟王「バカな。この学園の嘘の記録を、外の世界の正史にするだと……? そんなことできるはずが……」

モノクマ「できないと思うんならそれでもいいよ。でも、あの根があれば本当にできそうだっていうのがボクの見解」

モノクマ「……ま、必要なものは色々あったんだけどね。サーヴァントをこの場に呼び寄せたりとか?」

ナーサリー「私とイシュタルとジャガーマンは自分の意思でこの学園に来たのよ? 呼び寄せられた気はないわ」

モノクマ「ロムルスさんは?」

ナーサリー「……あっ」

夢野「……そうじゃな? よく考えたら、なんでロムルスがこの場にいるんじゃ? ジャガーマンからもこやつの話は聞いたことがないぞ?」

ロムルス「ローマ故に」

夢野「全然わからん」
435 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/15(水) 18:58:07.16 ID:ya88okeu0
最原「いや。ローマが関係あるかどうかはわからないけど、方法自体はわかるよ」

最原「これに見覚えはない?」バサッ



ビクウッ


春川(ん。なんだろう。誰か今、ビクついたような……?)

百田「んん……? なんだそれ」

最原「研究論文。ざっくり言うと『学園からの脱出の可能性』について書かれてる」

最原「かなり個人的な研究だったみたいでさ。こっそり秘密裏に行われて、こっそり秘密裏に葬られたみたいだ」

夢野「葬られた……ってことは、要は失敗したってことじゃろ? 成功してたらとっくに全員で脱出していたか」

東条「さもなくば一人で脱出してそのまま帰ってこないか、ですものね。でも今の私たちは誰一人として欠けていない」

最原「でも部分的に成功したことはあった。だよね?」

??「……」ビクビク

最原「……とぼけなくていいよ。入間さん」

入間「おぎゃぱあっ!?」ガビーンッ

真宮寺「また入間さんか……相変わらず余計なことをしてくれるよネ」

入間「赤松よりはマシだろうがボケッ!」

真宮寺「まあそうだけどさ」

赤松「むが!?」ガビビーンッ

茶柱「みなさーん。流れ弾で赤松さんを殺さないでくださいねー」
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/15(水) 23:28:22.62 ID:kihX7cmIO
気がつくとゲロブタビッチ未満になっていた女
437 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/16(木) 21:53:25.91 ID:QViNFvHZ0
最原(ていうか落ちた後もまだ拘束されてるのか……)

最原「部分的には成功した、と言ったのはさ。要は穴を開けることには成功したんだ。向こう側に通れなかっただけで」

最原「で。その穴の向こうの世界って、どこだったと思う?」

百田「は……? いや、どこも何も、穴の向こうは穴の向こうだろ。俺たちが視聴者って呼んでる連中が住んでる……」

最原「半分正解。ナーサリーさんやBBさんとかも間違いなく視聴者には違いなかったしね」

ナーサリー「……まさか、とは思うのだけれども……」

ナーサリー「ねえ。まさか。まさかよ? その穴の向こうの世界って……!」

最原「巌窟王さんのホーム。巌窟王さんがカルデアと呼んでいる場所だよ」

巌窟王「!?」バッ

入間「ひ、ひい!? こっち見んな!」

最原「内容はこうだ。最初に巌窟王さんを召喚した魔法陣の応用。これを使って巌窟王さんが元いた場所に逃げられないかと入間さんは考えた」

最原「でもこの計画は様々な理由で頓挫した。まず穴を開けたはいいものの、入間さんはその向こうに行けなかった」

最原「穴の大きさの問題じゃない。なんらかの強制力が働いて、こちら側の人間は向こう側に行けないんだよ」

最原「ある程度のところまでは進めるらしいんだけどね」

巌窟王「それは……第一の学級裁判のときの!」




天海『さて。入間さんのアリバイは?』

入間『え、えーと俺様は……地下にいたぜ……?』

百田『あ? 何言ってんだ。作戦会議に来なかっただろ、テメェ』

入間『そっちじゃねぇ! 別の地下だ!』

最原『まさか……裏庭のマンホールの中のこと言ってるの? デスロードに通じてる』

入間『そう! それだ! 巌窟王が外からやってきた魔法陣はそっくりそのまま残ってたからよ!』

入間『それを開けて、俺様たちが向こう側に行けないかどうかの実験をしてたんだ!』




天海「……半分成功してたんすね!? ていうか今の今まで忘れてたっすよ!」ガビーンッ
438 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/17(金) 19:58:25.96 ID:TwI+MWRZ0
天海「じゃあ、つまりロムルスさんもその穴を通って……!?」

東条「待って。話がおかしいわよ。それって入間さんが秘密裏に行っていた研究を、モノクマか白銀さんが奪わないと成立しない話よね?」

王馬「学園全体を監視してたんだから奪うことくらい余裕っぽいけどなぁ」

最原「実際そうだったんだろうね。この論文にははっきりと『白銀さんに目撃された。妙な質問もいくつかされた』ってハッキリ書かれてる」

最原「そして……この論文を奪った白銀さんは、あるものをカルデアから持ち去った」

真宮寺「それは……?」

最原「セミラミスさん。正確に言うと、セミラミスさんが入っていたゲームだよ」

巌窟王「そうか……コイツの侵入経路もずっと謎だったが、入間の作った穴から入ってきていたのか」

ナーサリー「あくまで魔術の素人考えだけれども、その穴は『サーヴァントを呼ぶ道』と『巌窟王の転送経路』が混線した結果産まれたものね」

ナーサリー「いわば偶発的に誕生したちょっとしたポータル。でもあくまでサーヴァントを呼ぶための道である以上は……」

ロムルス「一方通行、ないしサーヴァントしか通れない特殊な道となっているはずである」

白銀「あのゲームを持ち去ったのは、ちょっとした偶然だよ」

白銀「……面白そうだなって思ったから、ちょっと貸してもらったんだ。全部終わったら巌窟王さんに返すつもりだったし」

白銀「ていうか勝手に持ち去るだろうし」

巌窟王「……」

アンジー「『いやあ流石にあれはちょっと……』って思ってる顔だよー」

セミラミス「今、ナルシスはカタルシスに……むにゃむにゃ」スヤァ

赤松(なんか変な夢見てる)

白銀「面白半分に新世界プログラムに組み込んでみたら、中には謎のアルターエゴはいるし、聖杯もあるし、手に負えないってわかったんだけどね」

巌窟王「何故デリートしなかった?」

白銀「居座られたから……しかもちょっと怖い勢いで権限を無理やり奪い取られたし……あのナチュラル横暴ムーブには従わざるを得ないって……」

巌窟王「……」

アンジー「『流石にちょっと同情する』って顔だねー」
439 :爆死の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/18(土) 22:18:09.75 ID:2QjooAtv0
邪ンヌピックアップで爆死したので今日はなし……ライネス嬢は大勝利だったはずなのに……
440 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/19(日) 10:09:17.80 ID:WH0vq5Gl0
百田「どうだロムルス。テメェは一体どうやってここに来たんだ?」

ロムルス「テルマエ用の入浴剤を探していた折、ふと目の前が真っ暗になった。おそらく背後から麻袋かなにかを被せられたのであろう」

ロムルス「襲撃犯が自分より遥かに小さい体躯であることだけはわかったので、暴れるのも気が引けた」

ロムルス「故に、流れに身を任せ、気が付くと……」

巌窟王「あのロケットの中に鮨詰め状態になっていたということか……」

最原「でもなんでロムルスさんを……?」

モノクマ「あの樹の説明書に書いてあったんだよね。根を下ろした後は、あの樹を育てる王のようなものが必要だって」

モノクマ「強力な権能を持っていればひとまず王として成立するらしいから、それっぽいのをあっち側の世界で物色することにした」

モノクマ「それで! たまたま見つけたのが、入浴剤を探していて隙だらけだったロムルスさんだったってわけ!」

ナーサリー「……まあ、どんな空間であれそれを支配する王さまはいた方がいいわよね」

モノクマ「今となっては、別にセミラミスさんでも構わないよ。権能自体は持ってるし、権力に関してもボクから奪い取った」

モノクマ「むしろ動機がある分、彼女を説得した方がいいかなとも思うよ。まさかここまで生き残るなんて思わなかったから予定外だけど」

巌窟王「貴様の考えるダンガンロンパ化した異界の王にか?」

モノクマ「あの樹の力を使えば、延命くらいは充分可能だよ。いや? なんならサーヴァントとして復活することもできるかもね?」

赤松(……確かにそれを聞いたら、セミラミスさんにも動機がありそう)

モノクマ「で。ロムルスさんはどう?」

ロムルス「今日から才囚学園の理事長となったローマである」キラキラキラキラキラ

夢野「もうやる気になっておる! タスキかけておる!」ガビーンッ

東条(『今日から理事長』……?)

ロムルス「というのは当然冗談である」ポイッ

最原「あ。捨てた」

ロムルス「……ただし。この場にいる生徒たちを守れるというのであれば、選択肢の一つとして考えてもいいだろう」

茶柱「さ、流石にこんなトンチキ計画を成立させるわけにはいきませんよ! 気遣いはありがたいですけど!」
441 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/20(月) 19:19:12.10 ID:rKGz9wvR0
モノクマ「ボクの言う通りにすれば、キーボくんを簡単に止められるけど?」

キーボ「!」

最原「……なんだって?」

モノクマ「だってさー。今は確かに『視聴者の意思』でロムルスさんやナーサリーさんのサーヴァントの力を大部分没収してるけど」

モノクマ「あの樹を使えば少なくとも、ロムルスさんかセミラミスさんがサーヴァントとして復活するんだよ?」

モノクマ「これでサーヴァント級の力を持ったキーボくんを制圧できる駒が巌窟王さんと合わせて二人」

モノクマ「見る限り、キーボくんの戦力は『サーヴァント一騎程度なら余裕を持って倒せる程度』だから……」

白銀「もう一体のサーヴァントがいれば、制圧力が逆転……!」

獄原「楽にキーボくんを助けられるってこと!?」

巌窟王&最原「!?!?」ガビーンッ

モノクマ「以上が、ボクがオマエラに捧げるプレゼント」

モノクマ「『最原終一の進路』と『巌窟王の進路』に並ぶ第三の選択肢! 『モノクマの進路』だよーーーんっ!」ギンッ

百田「ざけんなっ! 一体これまでどれだけテメェに苦しめられてきたと思ってる!」

百田「今更テメェの用意した進路なんざ選ぶわけねーだろ!」

モノクマ「感情論でボクの進路をけっぽるのは自由だけどさー……現実問題、あと二つの進路って博打じゃん?」

モノクマ「どっちにしろキーボくんを最終的に制圧することが前提になってるけど、それをしくじれば……」

星「……俺たちは一巻の終わり。死んで終了。ジエンドだ」

星「なるほど。確かに聞いた限りではモノクマの進路にもメリットはあるか……?」

百田「星。本気で言ってるわけじゃねーよな?」

星「……フン。俺は思い知っただけさ。この学園の中で戦うことの虚しさをな」

星「何もかもが嘘でフィクション。俺も、お前さんらも、モノクマも」

星「……同じなんだ。俺たちも、モノクマも。この学園にいる時点でな。白銀を庇っているお前さんならわかると思うが?」

百田「……」ギリッ

真宮寺「……嘘を本当にできる、か。それが本当なら僕もこの進路を推したいところだネ」

春川「真宮寺……!」

モノクマ「うぷぷ。そうだよねー。真宮寺くんの場合、嘘になったら困るものがたっくさんあるもんねー」

モノクマ「いいんじゃない? ならボクはキミの意思を尊重して――」






真宮寺「だが断る」

モノクマ「なっ!?」ガーンッ
442 :新番組:アマデウス滅の刃  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/21(火) 21:27:05.25 ID:ZmEJUkGe0
真宮寺「ククク……美味しい話には裏がある。そんな言葉に僕が引っかかるとでも?」

モノクマ「……」

春川「……どうしたの真宮寺。『本当なら僕もこの進路を』ってくだりに関しては完全に本気っぽく聞こえたけど」

真宮寺「そこに関しては間違いなく本気だヨ。でもさ、よく考えて」

真宮寺「最原くんも巌窟王さんも、自分の進路のデメリットを懇切丁寧に説明してくれたよネ?」

真宮寺「じゃあモノクマは?」

百田「……んん。言ってない……か?」

百田「いや。絶対に言ってねぇぞ!」

モノクマ「……うぷぷ」

獄原「そっか! 真宮寺くんはそのデメリットに気付いたんだね! だからあっさりその進路を突っ撥ねたんだ!」

獄原「それで! そのデメリットって?」ワクワク

真宮寺「いやさっぱりわからないんだけど」

獄原「さっぱり!?」ガビーンッ

真宮寺「でもネ。すべての設問が終わってタイムリミットが迫るこのタイミングで、二つの進路よりも優れているように聞こえる進路が出るってさ」

真宮寺「どう考えてもおかしいヨ……何かあるって考えるのは至極当然でしョ?」

最原「人間には急なタイミングで都合のいい選択肢をチラつかされると『その選択肢を選ぶデメリット』の方を優先的に排除しにかかる心理がある」

王馬「詐欺の常套手段だよね。幸運のツボを売りましょうって言って相手が買うかどうか迷ったタイミングであえて引くと……」

王馬「『買うことのデメリット』の方を優先的に排除して、かなりの人数が引っかかるんだよ。『やっぱり買う。買わせてくれ』ってね!」

王馬「いや俺はそんな詐欺やったことないけど!」ケタケタ

夢野「あえて言わんでいい。余計に疑わしくなる」

東条「私たちが焦って冷静な判断能力を失うタイミングでの有利な条件」

東条「……なるほど。この疑念こそがある意味で『モノクマの進路のデメリット』ね」

ナーサリー「物語を歴史に改変するような危険物よ? 下手を打つと、私たちカルデアが後であなたたちを排除しにかかる未来もあるかもしれないわ」

最原「時間的に、もう『モノクマの進路のデメリット』は『謎』のままにしておくしかない」

最原「……僕の進路の方も出た後の可能性に賭けるって点ではモノクマと似たり寄ったりだけど、モノクマの進路は度を越してるよ」
443 :サリエリ「私は限りなく天才に程遠い音楽家だ」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/22(水) 19:54:45.86 ID:sH1fosxm0
モノクマ「……あれ?」

モノクマ「あれ? あれ? あれれれれれ? 本当にボクの進路を蹴っちゃうのー?」

天海「くどいっすよモノクマ! 選択肢としてぶっちぎりでアンフェアなんだから、モノクマの進路だけは圧倒的に論外っす!」

モノクマ「んー。じゃあこんなメリットを更に提示しようか。この進路だと巌窟王さんとお別れしないで済むよ?」

巌窟王「何?」

アンジー「……」

最原「……えっ」

モノクマ「あの樹が成長した暁には王に選んだサーヴァントだけでなく、一人程度のサーヴァントを完全治癒させるには充分なリソースが得られる」

モノクマ「更に、この空間だとサーヴァントが王なんだよ? なら今の才囚学園と同様に、新しい世界もサーヴァントがいて当たり前の空間になる」

モノクマ「ねえ? このメリットなら揺らがないかな?」

最原「……」

最原(正直ちょっと揺らがないでもないけど……)

最原「ありえない! だって巌窟王さんには帰るべき場所がある!」

最原「僕たちに帰る場所が無くっても、彼にだけはそれが存在する! だから論外だよ!」

アンジー「ないけど?」

最原「ん? アンジーさん、今なんか言った?」

アンジー「彼、もうどこにも行けないけど?」

巌窟王「……!? アンジー! よせ!」

最原「……?」






アンジー「彼はもう終わり。この学園生活が終わったら、どこにも行けない」

最原「……は?」
444 :マーリン「久しぶりの運動は堪えるねぇ。背中が痛い」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/23(木) 20:37:29.79 ID:VJDdNc0F0
巌窟王「……」

巌窟王「……」カチカチ

天海「ゲームやり始めた!」ガーンッ

白銀「ていうかそれもやっぱり私のゲーム機だよねぇ!? 勝手に触らないで!?」

最原「なんでサーヴァントのみんなは誤魔化すのがとにかく下手なんだろう……いや今はそんなことは後回しでよくって」

最原「アンジーさん! どういうこと!?」

アンジー「BBから聞いた。彼はもう、帰る場所がないんだって」

最原「なんで!?」

ナーサリー「……ああ。なるほど。そういうこと……伯爵、あなた『変容』しちゃったのね」

巌窟王「……」

ナーサリー「もう既にあなたは巌窟王ではない別の何かに変わりつつある。だから無理なのね」

アンジー「……」




BB『巌窟王さん。あなたはもう今の私と同じなんです』

BB『カルデアのアヴェンジャーと才囚学園のアヴェンジャーは明確な別個体になりつつある』

BB『カルデアには霊基が登録されているから再召喚は容易ですが……』

BB『ここにいるあなたはもうどこへも行けない可能性があるんですよ』

巌窟王『……』

アンジー『……え』




最原「よくわからない……よくわからないけども!」

最原「巌窟王さん! どうして!? それを僕たちに、もっと早い時点で相談してくれれば別の可能性だってあったはずなのに!」

巌窟王「キーボの復旧方法を見つけたようにか?」

巌窟王「ないぞ。今回ばかりはどうしようもない。これはまず間違いなく貴様の専門外だからな」

最原「……!」

最原(考えろ! 考えろ! なにか……なにか裏技は……!)

入間「……お、俺様の論文を使うのはどうだ!?」

最原「!」

夢野「おお! そうじゃ! それがあったのう! 消える前にカルデアに戻ればよい! 後はどうとでもなるじゃろう!」

巌窟王「無理だな」

夢野「んあ? なんて?」

巌窟王「……才囚学園のものは、強制力が働いて向こう側に行けないのだろう?」

入間「え? あ、ああ……それは間違いないけどよ……」

巌窟王「問題の根が同じなのだ。俺は才囚学園のアヴェンジャーとなってしまった。だからその方法でも俺は帰れない」

夢野「……い、入間……? 別の理論は……ないのか?」

入間「……」
445 :ジーク「猫関連のツイートばかりしていたらbotと認識された」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/24(金) 21:08:10.27 ID:QGQlKApD0
入間「ヒャーーーッハッハッハ! ねぇよ! そんな都合のいいもん、都合よく持ってるわけねーだろうが!」

夢野「んあ!?」

入間「で、でもよ……これまでなんとかしてくれただろ?」

入間「こ、今回もなんとかしてくれるよな!? ダサイ原!」

最原「……」

入間「……最原ぁ……!」

巌窟王「もうやめろ入間。なんて声を出している」

入間「……」

巌窟王「……人知れず葬った、か。なるほど。『俺をカルデアに帰したくないがため』に論文を隠滅したのだな?」

巌窟王「そうでなければ、俺が帰れないという話になった途端にすぐ論文を使う発想に至れない」

巌窟王「……それをよく、この場で! クハハ! 随分と成長したものだな!」

真宮寺「……巌窟王さん……」

巌窟王「真宮寺! 貴様もだ! モノクマの進路をよく真っ先に突っ撥ねた! 強い誘惑であっただろうに!」

真宮寺「……!」

最原「……」

最原(ああ。そうか……この二人に共通することがある。アンジーさんを殺そうとしたことだ)

最原(この局面で、それを忘れたかのような発言……強い激励の言葉……)

夢野「よせ巌窟王……そんなっ……しょんなこと……!」ズビッ

入間「は、はは……なに言ってんだ。おい、ブスロリ。なんで泣いてんだよ……天才の俺様にとってはなんてことねぇ言葉だろ」

入間「『遺言』受け取ったみてぇな反応してんじゃねぇよッ! やめろ、泣くな! お、俺様も……我慢できなく……ぶうっ」ボロッ

真宮寺「……ありがとう。巌窟王さん。今の言葉だけで僕は前に進める覚悟ができた気がするヨ」

巌窟王「そうか! そんなつもりはなかったがな!」ギンッ
446 :三蔵「蹴鞠? この玉を思い切り蹴ればいいの? えいっ」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/25(土) 20:26:35.43 ID:4WOHXbzG0
百田「……死ぬってことか? この学園がぶっ壊れたら、巌窟王は」

巌窟王「概ねその理解で問題ないな」

百田「ざ……ざけんなっ! それならモノクマの進路だって、その一点だけで充分検討可能だろうが!」

巌窟王「絶対にNOだ! 何をバカなことを言っている!」ギンッ

百田「ッ!」

巌窟王「アイツの言う通りになることだけは俺が許さない……! どう考えてもあの樹は異質だ!」

巌窟王「万が一カルデアを敵に回せば貴様らはどっち道お終いだぞ! 俺のホームを甘く見るな!」

ロムルス「……無論、それでもいい。足掻けるだけ足掻きたいというのであればローマが力を貸すが」

巌窟王「囀るな、神祖。この進路だけは取らせるべきではない」

ロムルス「確かにカルデアには実績がある。もしもこの空間がカルデアに睨まれれば、速やかに切除にかかってくるだろう」

ロムルス「だが――忘れたか? 人類最後のマスターは、彼らと同じ程度には『柔い』」

巌窟王「……!」

ロムルス「条件は同じなのだ。ぶつかればどちらが勝つかは、やってみなければわからない」

茶柱「……やってみなければわからない、ですか。いいですね。それ。転子好みの言葉です」

巌窟王「茶柱!」

茶柱「……でも」

茶柱「転子は最原さんの選んだ道に従います」

最原「!」

茶柱「どれも同じくらい正しく聞こえます。いえ、きっと全部正しいんです」

茶柱「この世に本当の正しさが存在するとすれば、それはきっと自分の心の中だけ」

茶柱「……嘘じゃない、本当の真実があるとするなら、自分の感情だけです。それなら……転子は……!」

茶柱「最後の最後まで、信じたい人を信じたい!」

最原「……」

最原(ああ、そうか……真実から目を逸らさないことを選んだ僕は……)

最原(もう絶対に立ち止まれないんだな)
447 :レジライ「ハッハァ! 判断が遅ェ!」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/26(日) 19:57:43.02 ID:lv1jNBst0
巌窟王「さて。最原。俺を失望させるなよ……と言っても、こういうときは必ず決めるからこその貴様だったな」

巌窟王「俺を救う方法はあるか?」

巌窟王「モノクマの進路以外の方法で、俺が生き延びる術はあるか?」

最原(……そんなものは……)

最原「ないよ」

最原「……そんな都合のいいもの……あるわけないだろ……!」

百田「終一……!」

夢野「最原! お主、これまで頑張ってきたじゃろ!? キーボを救う方法だって見つけた! 白銀だって庇ってみせた!」

夢野「お願いじゃ! お願いじゃから、そんなことを言わんでくれ!」

夢野「……助けられるじゃろ……お主に無理なら、もう……誰にも……」グスグス

赤松「……」

入間「……上っ等じゃねぇか……もうテメェみてぇな役立たずに頼んのはやめだ」

夢野「入間……?」

入間「俺様はモノクマの進路を選ぶぜェ! 誰が何と言おうがもう知るかボケェ!」

王馬「……ふーん。それが入間ちゃんの答え? 対して巌窟王ちゃんはなんて言う?」

巌窟王「絶対にやめろ。やめた方がいい。死にたいのか?」

入間「死ぬような目には何回も遭ってきただろうが……今更すぎんぞクソが!」

星「この進路の場合、そこのロムルスが手伝ってくれるんだろう? それならいくらでもやりようがある」

赤松(……セミラミスさんは……どう反応するだろうな。多分、味方にはなってくれるだろうけど)

赤松「……」

モノクマ「さて! それじゃあ! 残り時間が少なくなってきたところで、最後の投票のルールを説明しましょう!」

最原「投票……?」

春川「最後……って?」
448 :赤兎馬「ディルムッド殿が蹴鞠に首吹っ飛ばされて死にました!」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/27(月) 20:26:29.50 ID:De0yy7Gg0
モノクマ「ルールは今までの投票と同じ! ただし、今回はクロではなく今まで出てきた三つの進路の中から一つを選んでもらいます!」

モノクマ「そして、今回の投票の特別ルール! これが一番大事だから絶対に聞いてね!」

最原「特別ルール……?」

モノクマ「白銀さん含め、巌窟王さんを除いた生徒十六人全員の選んだ進路が同じ場合にのみ投票が有効!」

モノクマ「それ以外の場合、強制的にモノクマの進路に従ってもらいまーす!」ギンッ

獄原「んなぁっ……!?」ガーンッ

春川「……最悪。そんなのアンタだけが圧倒的に有利じゃん」

モノクマ「ああ、安心して。タイムリミットになるまで投票は何回でも受け付けるから」

モノクマ「それ以外の場合っていうのは平たく言って『タイムリミットまでに進路が決まらなかった場合』のことだよ」

巌窟王「バカめ! 貴様のルールなぞ今更知ったことか! 勝手にアレをぶっ壊してしまえばいい!」

巌窟王「ぶっ壊して……?」キョロキョロ

巌窟王「……??????」

アンジー「あー。そういえばさっきから、あの白い根が見えないねー」

百田「あ? んなバカな! あんな目立つもんがそうそう簡単に消えるわけが……」キョロキョロ

百田「……本当にねーぞ!? どうなってんだ!」ガビーンッ

モノクマ「最原終一の進路か、巌窟王の進路を選んだ場合にのみ出してあげる。今はボクが隠してるから見えないだけだよ」

白銀「……最後の最後まで忌々しいマスコットだったよ。あなたは」

モノクマ「うぷぷ」

最原「……」

最原「もうこれ以上は時間の無駄だね」

巌窟王「そうだな。俺も同感だ」

最原「……十六人全員の意思を統一することが勝利の条件なら」

巌窟王「復讐を遂げるための前提なら!」






最原&巌窟王「そのルールのまま突っ切るまでだッ!」ギンッ
449 :酒呑童子「なんかめっちゃ烏が喋りかけてくるんやけど」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/28(火) 19:30:56.54 ID:gukK1isB0
最原「みんな! 一回目の投票だ!」

東条「……もうやるの? 意思統一も何もできていないと思うのだけど」

最原「それでいい! みんなの主張が、今どこにあるのかを調べるためだけの投票だから!」

巌窟王「その後で、別の主張を持つ連中を押し込めて押し込めて押し切ってやる! 『スクラムのように』な!」

百田「おっしゃーーー! 気合入れていくぜ! まず最初の投票だ! モノクマ!」

モノクマ「了解しましたー! それではみなさん、お手元のスイッチで投票してください!」

モノクマ「……あ。赤松さんにはこの特別性モノパッドを渡すから、そこで投票してね。スイッチに手が届かないし」

赤松「むぐ……」ジャラッ

モノクマ「投票の結果、選ばれる進路はどれなのか!」

モノクマ「さあ! 張り切って行ってみよー!」バァーーーンッ



ガシャコンッ



最原(あ。モノクマの後ろから巨大液晶が出てきた……)

最原(時間が惜しい! 投票はできるだけバラけないでくれ!)


最原終一の進路
・最原
・春川
・百田
・茶柱
・白銀
・天海

巌窟王の進路
・赤松
・アンジー
・東条
・真宮寺
・王馬


モノクマの進路
・入間
・星
・夢野
・獄原

無効票(投票放棄)
・キーボ


最原「……!」

最原(もっ……物凄いバラけてる! これを統一しなきゃなのか!?)ガビーンッ

巌窟王「投票の内訳が出るのか。薄々勘付いていたことだが、こうなると普段の投票とは別物だな。何が『今までの投票と同じ』だ」
450 :ダヴィンチちゃん「嗅ぐとめっちゃクラクラするお香作ったよ!」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/29(水) 22:09:18.85 ID:I1hdYtNZ0
百田「この意見をどれか一つに統一しなけりゃ、モノクマの進路直行か」

百田「……ん? 投票放棄……? キーボ?」

キーボ「……」

王馬「おおっと。これはかなーり厄介かな……キー坊が投票を放棄したってことは、視聴者が投票を放棄したってことと考えていいんだよね?」

最原「構わないよ。最後の最後にキーボくんを僕たち全員で相手すればいい」

巌窟王「Wave1でモノクマの進路を始末。Wave2で最原の進路を始末。Wave3でキーボを始末……余裕だな」

天海「い、いやいや……この中で視聴者にとって一番マシなのは最原くんの進路っすよ?」

天海「反対に、巌窟王さんの進路を選んだら外の世界は滅茶苦茶になる。それが一番マズイことじゃないんすか?」

巌窟王「そうでもないのだろう。最原の進路の場合、脱出した生徒の中には魔術的武装を解除されていないキーボも含まれている」

巌窟王「それで才囚学園の生徒全員が外の連中に交渉を仕掛けようというのだ。魔術師にとっては死んだ方がマシなくらいの屈辱だろう」

東条「それは魔術師の都合でしょう? 他の多くの視聴者はすべて魔術とは無関係の一般人のはず。それがどうして……」

巌窟王「今のキーボを動かしているのは外の世界の総意」

巌窟王「そして、総意とは良くも悪くも力の強い物が動かしやすい」

王馬「要は力任せのインチキってことか……魔術関係なしのノーマルの意見も無視してはいないだろうけど」

王馬「でも魔術師の総意に勝つほどじゃないってこと、だよね?」

ナーサリー「随分と強引な手ね。そんなことをしたら『魔術を知らない勢力を操作する別の力が存在する』ってことを大々的に知らせることになる」

ナーサリー「つまり『魔術師が実在する』ってことを自分から話すも同然なのに」

ロムルス「それだけ外の世界が追い詰められているという証左であろう」

ロムルス「……この戦果は誇れるものだぞ?」ニコニコ

最原「……ただ僕たちは議論を重ねてきただけなのに、外の世界は魔術の秘匿もあったものじゃないくらいグズグズか……」

最原「そう思うと、ちょっと面白いね。面白いけど!」








モノクマ「キミたちの未来を愛してるぅー!」待った!

巌窟王「ああ、そうだ! もっと面白くしてやろう!」

最原「時間が無い……? だからって何も変わらない! 僕たちが!」

巌窟王「俺たちが!」




――絶対に勝つ!
451 :意見□立! 議論サバイバル!  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/30(木) 19:58:06.34 ID:WhD6gJDo0
モノクマ「それでは! 最後の最後でバージョンアップした変形裁判場の出番となりまーす!」

モノクマ「上手く使って、意見を統一してね!」

百田「どうする。終一!」

最原「決まってる! 一番容認できないモノクマの進路から分解する!」

最原「最初の標的は『彼女』だ!」

春川「私が最原と一緒に行くよ。他は手分けして別の連中説得してて」

百田「……全員で行った方が早くねぇか?」

茶柱「アホですね! 転子たちは追い詰めたいわけじゃないんです! 全員で行ったら威圧的極まりない!」

天海「ま、そういうことっすね。白銀さんは俺と一緒で」

白銀「……本気?」

天海「本気」ニコニコ

白銀「……勝手にすればいいんじゃない?」プイ

赤松「……むぐ……」

赤松(この鎖さえ解ければ……!)

セミラミス「……ふう。あー、よく寝た」ジャラリ

赤松「えっ……? あ! 鎖が解けた!」

セミラミス「最低限は回復した。後は好きにしろ」

赤松「……!」

セミラミス「どのような結果になろうと、我はそれを必ず見るぞ。無様は晒すな」

赤松「うん。うんっ! 当然だよ! 行ってくるね!」




意見対立

意見"対"立

意見"■"立




452 :意見乱立! 議論サバイバル!  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/31(金) 20:52:39.48 ID:ecZuec5i0
意見乱立

議論サバイバル



どの進路に向かうべきか?

Wave1/3


最原終一の進路!
・最原
・春川



モノクマの進路!
・夢野






サバイバル開始!
453 :VS夢野秘密子  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/31(金) 21:05:30.66 ID:ecZuec5i0
夢野「『犠牲』の上に成り立つ大勝利なんぞウチは御免じゃぞ……!」

最原(僕が!)

最原「巌窟王さんは自分のことを『犠牲』だなんて思ってない! 僕も絶対そうだとは思わない!」

夢野「勝ったときは『巌窟王』も一緒じゃ! じゃなきゃ何のために戦ってきたのかわからんぞ!」

最原「春川さん!」

春川「モノクマの進路を取ったとき、『巌窟王』がどんな顔してるのか想像できない?」

夢野「イヤじゃ! ウチは魔法使いなんじゃ! 誰も彼もが『笑顔』になって欲しい! 誰も欠けてほしくないッ!」

最原(それでも……僕は!)

最原「その進路じゃ誰も『笑顔』にならない! ならないんだよ、夢野さん!」







最原&春川「それは違うぞ(よ)ッ!」

全論破!

夢野「うぎゃああああああああああああああっ……!」




ガシャガシャガシャンッ パリィィィィンッ


COMPLETE!
454 :魔法使い夢野秘密子  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/01(土) 20:08:25.32 ID:A5Rm3Q9B0
夢野「……」

夢野「ああ、わかっておる。わかっておるんじゃ、そんなこと! こんなことをしても巌窟王は喜ばないってことくらい!」

夢野「でもお……!」

最原「……夢野さんは最初から今までずっと『みんな』の味方だったよね」

最原「凄いよ。僕だって白銀さんの私怨を優先させてた期間があったのにさ。夢野さんはずっと、みんなのことが大好きだった」

春川「それでもずっと一緒ってわけにはいかないでしょ」

春川「……誰だって最後は一人だよ。自分が死ぬか、自分以外が全員死ぬかの違いでしかない」

春川「最後の最後にはみんな死ぬ。みんな別れる。だから今を精一杯生きるんでしょ」

春川「……アイツの場合、別れの時期がすぐそこってわかってるだけ幸運だよ。だからさ!」

最原「せめて引き留めることはしないであげよう。巌窟王さんがいなくなっても僕たちは真っ直ぐ立っていられる」

最原「そう証明してあげるのが、僕たちが巌窟王さんにできるすべてなんじゃないかな」

夢野「……証明……証明、か。くくく……!」

夢野「そうじゃなあ。ウチもアイツに唯一、むかっ腹が立ってたことがあったのを思い出したわい」

夢野「ウチは魔法使いじゃ。誰が何と言おうが絶対にそうなんじゃ。守られっぱなしの立場ももう飽いた!」

夢野「別れが避けられないというのなら……せめて!」

夢野「巌窟王に勝ってみたい! ウチらのことを舐め腐ったあの『クハハ笑い』を曇らせてやりたい!」

最原「夢野さん……!」

夢野「待たせたのう最原よ……! ウチの恩讐の炎はまだ朽ちとらんぞ!」ズギャアアアアアアン!
455 : ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/02(日) 20:15:39.25 ID:x3DUsFow0
風邪こじらせたんで今日はなし
456 :二巡目の投票  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/03(月) 20:36:31.49 ID:FpsrgvaN0
モノクマ「そこまで! 一回議論をストップして! 二回目の投票に行きますよー!」

モノクマ「さあ! 今度こそ票は統一できたかなー!?」

百田「終一! 夢野の説得はできたか!?」

最原「大丈夫! キチンと仲間になってくれたよ! そっちは?」

百田「……ダメだな。割とかたくなだ。寝返ったヤツは出なかったが、引き抜けたヤツもいないぜ」

最原(ということは……次の投票の結果は……!)





最原終一の進路
・最原
・春川
・百田
・茶柱
・白銀
・天海
・夢野

巌窟王の進路
・赤松
・アンジー
・東条
・真宮寺
・王馬
・獄原
・入間
・星


モノクマの進路
・なし


無効票(投票放棄)
・キーボ



百田「んなあっ……!?」

最原(二巡目の投票でモノクマの進路完全崩壊……!?)

茶柱「……巌窟王さんの方の手がこっちより早いですよ! どうなって……!」

巌窟王「クハハハハハハハハ!」ビュンビュン

アンジー「にゃはははははははははははー!」ビュンビュン

茶柱「アンジーさんの席に巌窟王さんが同席してるーーーッ!」ガビーンッ

最原「狭そう……っていうか実際狭いだろうな、あれ」
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/03(月) 23:07:44.58 ID:v3YdUokiO
そりゃ巌窟王の意思を尊重するならこうなるな
458 :思わぬ協力者  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/04(火) 20:25:59.49 ID:ZIN9ihpu0
天海「説得する口が一つ増えれば、議論においての手数が増える……っていうのは単純な構図すぎっすけど」

白銀「巌窟王さんの進路の責任を巌窟王さん自身が取るって安心感が説得の大きな力になったみたい」

夢野「ウチらの進路でも巌窟王の命に関してはどうしようもないのは同様じゃが……確かにそこだけは最原の進路にはない強みじゃな」

白銀「あとあれ。あまり関係ないけど赤松さんの方にも同席者がいてさ」

春川「まさかあのウザ女帝が来てたりしてないよね……!?」

ネコアルク「にゃー!」

ネコアルク2「にゃー!」

ネコアルク3「にゃー!」

ネコカオス「にゃー!」

赤松「もぐがごげごごごげがっ……!」モミクチャモミクチャ

最原「ネコアルクにもみくちゃにされてるーーーッ!」ガビーンッ

天海「セミラミスさんに『ないよりはマシだろう。連れていけ』って言われたらしいっすよ。これまた善意百%の笑顔で」

春川「ない方がマシでしょ。何考えてんのあのアホ女帝」

白銀「ね? 関係ないでしょ?」

茶柱「どうでもいいの間違いですね!」

夢野「相変わらず赤松発言力全損状態に変わりないのー」

最原「……ともあれ、これで次の敵は決まったかな」

百田「ああ。次の敵は巌窟王の進路を推進する側だ。総力戦ってことでいいんだよな?」

最原「……」

巌窟王「……」






最原&巌窟王(引導を渡してやる――!)
459 :議論サバイバル再突入!  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/05(水) 20:55:12.03 ID:ZMrweXlf0
議論サバイバル



どの進路に向かうべきか?

Wave2/3


最原終一の進路!
・最原
・春川
・百田
・茶柱
・白銀
・天海
・夢野


巌窟王の進路!
・赤松
・アンジー
・東条
・真宮寺
・王馬
・獄原
・入間
・星





サバイバル開始!
460 :VS巌窟王の進路  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/06(木) 19:54:15.68 ID:P7ZUVSVh0
星「これは『清算』だ。やられたことに対価を払うのは当然の発想だろう?」

最原「百田くん!」

百田「何が『清算』だ! 命の帳尻が合ってねぇって話はさっきしたろ!」

入間「俺様たちは先に進むんだよ! 誰にだって『邪魔』させねぇ!」

最原「白銀さん!」

白銀「絶対に許さないよ。何度だって『邪魔』してあげるから」

王馬「俺はどっちでもいいんだよねー。『楽しい』方に投票してるだけでさ」

最原「天海くん!」

天海「こっち側も結実さえすれば『楽しい』ことがいっぱいあるかもっすよ」

真宮寺「とても正気だとは思えないネ。外の世界のどこに『期待』できるの?」

最原「夢野さん!」

夢野「外の世界にしておるのではない。ウチらの未来に『期待』しておるのじゃ!」

東条「私は巌窟王さんの『意思』を尊重してあげたい。彼の依頼なら、どんな理不尽でも!」

最原「茶柱さん!」

茶柱「自分の『意思』に耳を傾けてください! 最後の最後なんですから!」

獄原「怖いよ……『自分』の意見で自分の未来を変えるのが、凄く怖いんだ……!」

最原「春川さん!」

春川「甘えないで。どんな局面でも最後に頼れるのは『自分』だけなんだから」

赤松「……ぶっ……もが『希望』むぐ……」ニャーニャーニャーニャー!

最原(僕が?)

最原「ご、ごめん。『希望』って部分しかまったく聞き取れなかったよ……」

アンジー「楓はねー。これが学園のみんなの『希望』が通る進路だって言ったみたいだねー」

最原(……僕が!)

最原「多くの誰かを犠牲にしてでも勝ち取る『希望』なんてないよ!」








最原終一の進路チーム「これが僕(俺)(ウチ)(転子)(私)たちの答えだ(っす)(です)(じゃ)!」

巌窟王「違う、違う違う!!」反論!



バリッ バリバリバリガシャアアアアアアアアアアアンッ
461 :ロムルス「ム? ナーサリーライムは何処か?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/06(木) 20:21:04.02 ID:P7ZUVSVh0
巌窟王「クハハハハハハ! やはりな! 理屈の上で貴様に勝つことは不可能か!」

巌窟王「いや、そんなことはこの学園生活でイヤになるほどよぉぉぉぉぉぉくわかっているとも!」ギンッ

最原「やっぱり出てきたね。巌窟王さん」

巌窟王「当然だ。そして時間もないので宣言させてもらおう」

最原「……?」

巌窟王「『俺たちは投票先をもう絶対に変えない』とな」

最原「!!!!!!!」

巌窟王「理屈! 弁舌! 論破! この土俵で戦うから俺たちは負ける!」

巌窟王「ならもうやめだ! 俺たちは対話を放棄する!」

百田「んなっ……ことしたらモノクマの進路確定に……!」

巌窟王「ならないのだよ……! 何故なら、巌窟王の進路が相手にしているのは『最原終一の進路』なのだからなァ!」ギンッ

百田「あ……?」

春川「……そうか。最原の性格上、巌窟王の進路の票がもう動かないと確定したら」

最原「まあ、諦めるしかない、かな。モノクマの進路に向かうのだけは僕にとっても最悪の結末だ」

最原「だから多分、折を見てみんなに『巌窟王さんの進路に投票しよう』って提案するだろうね」

百田「!」

白銀「それは……私たちの足元を崩すようなマネだね。ここまで連れてきた最原くんが、今度は巌窟王さんの進路のためにみんなを説得するんだもん」

天海「多分俺たちは簡単に説得されるっすよね……もうそれしかないと最原くんが言ったのなら。時間もないっすし」

夢野「最原……!」

最原「……」








最原「何の切り札もないと思った?」ニヤァ

巌窟王「……何ッ!?」
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/08(土) 17:15:48.43 ID:Ejb7jayJ0
ところで何でモノクマはカルデアに入れたん?
463 :セミラミスは無言で何かを組み立てている……  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/08(土) 19:24:05.29 ID:iItk3JVm0
巌窟王「……!」

巌窟王(いや。慌てるな! そもそも話さなければいい話……これ以降は口を開かないのが得策!)

最原「アンジーさんには巌窟王さん。赤松さんにはネコアルク。生徒についた同席者……」

最原「僕たちの陣営にいないとでも思ったの?」

巌窟王「……!?」

百田「……いるのか!? 俺たちの方にも協力者が!」

ネコアルク「どこにゃ?」キョロキョロ

ネコカオス「どこだ?」キョロキョロ

百田「どこにいるんだーーー!?」キョロキョロ




バッサァ!



ナーサリー「ここにいたのよーーーッ!」バァーーーンッ

百田「ア゛ーーーーーーーーッ!(汚い低音)」ガビビーンッ

天海「百田くんのジャケットの下から出てきたーーーッ!?」ガビーンッ

春川「!?!?」

ナーサリー「うふふふ……裁判が変形する直前に百田の服の中に本形態になって潜り込んでいたのだわ」ニコニコ

百田「全然気付かなかった……とてもビックリしたぜ……」ドキドキ

巌窟王(バカな! ナーサリーライムだと!? この局面でヤツに何ができるというのだ!?)

ナーサリー「この局面で私に何ができるのかしら?」キョトン

巌窟王(本人もわかっていないようだが!?)ガビーンッ

最原「僕の『記憶力』を貸すよ。だから一冊の本に化けてくれないかな」

ナーサリー「?」

最原「……それで証明してみせる!」
464 :セミラミス「くくく……いい出来だ……」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/09(日) 22:03:28.10 ID:ZJbkrt5J0
赤松(本……? そんな衝撃的な効果のある本なんてあったっけ?)

ナーサリー「ん……? ああ! この本ね! 装丁は違うけどカルデアにもあったわ!」

最原「お願い!」

ナーサリー「了解よ!」




ポンッ




赤松「……むぐうっ!?」

赤松(あれは!)




最原『実はさ。巌窟王さんと会ってから、なんとなく気分が明るいんだ』

最原『なんとかなるんじゃないかって思えてきたんだよ』

赤松『え?』

最原『……実は図書室から、モンテ・クリスト伯を借りて来たんだ』

最原『結構面白くってさ。現実に起こったことなんだ、と思うとちょっと残酷なんだけど』

最原『この人と同一人物なんだ、って思うと、なんとなく心強く思えてきちゃって』

赤松『……』





赤松(そうか……思い出した! そうだ! そうだよ! 最原くん、あの本を読んでた!)

ナーサリーライム「ナーサリーライム・モンテ・クリスト伯エディションよー!」テッテレー!

巌窟王「!?」

最原「みんな。少し耳を貸してほしい。とある復讐鬼の話をしよう」

最原「僕たちを助けてくれた優しい復讐鬼の結末を!」
465 :ロムルス「何を組み上げている?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/10(月) 17:19:44.85 ID:rIw4ynFr0
――時は十九世紀半ば。とある船乗りの青年に過ぎなかった彼は無実の罪を着せられた。

彼はすべてを失った。将来を誓い合った婚約者。平穏な日々。ヒトの善性すらも。

やがて同じく無実の罪を着せられたファリア神父と出会い、導かれ、脱獄を果たした彼はモンテ・クリスト島の財宝を手に入れた。

以降、男はモンテ・クリスト伯として自らを貶めた者たちへの復讐を開始する。





入間「……いや、古典作品はそんなに知ってるわけじゃねーけどよ……それ本人が散々言ってたことじゃねーか」

入間「今更聞いて『まあビックリ』ってなる要素なんかどこにも……」

最原「ないよね。そうだよ。ここまでは本人が嬉々として語る部分」

最原「でも彼は僕たちに言って聞かせてない部分がある。調べればわかることだからっていうのもあるけど……」

最原「この局面では少し不都合だからね」

星「不都合?」

真宮寺「……あっ」

巌窟王「……」ダラダラダラダラ

最原「裁判で重視されるのは議論だけじゃない。『判例』だってそうだ。判例っていうか僕が示そうとしてるのは前例だけど」




――血塗られた復讐劇の果てに、男は、自らを構成していた悪を脱ぎ捨てた。



生徒全員「!!」



――彼は再び得たのだ。失われてしまったはずの尊きものを。


――想いを。愛を――ヒトの善性を。




最原「そう。巌窟王だからって復讐劇を最後まで成し遂げる必要なんかない」




男の名は……モンテ・クリストであることを捨てた、彼の名は。



最原「……そうだろう! 僕たちを導いた凄絶の復讐鬼――!」

最原「"エドモン・ダンテス"!」
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/11(火) 00:22:01.72 ID:yfBneXPuO
違う、違う違う!
467 :セミラミス「ニンテンドーラボだ!(満面の笑み)」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/11(火) 20:27:53.73 ID:LpoqyOnw0
巌窟王「……!」

最原「反論を放棄したのは失敗だったって、後悔しても遅いよ?」

最原「ここで言いたいのは巌窟王さんの前歴。『復讐劇を途中でやめた』という過去だよ」

巌窟王(コイツ……コイツ、コイツ、コイツコイツ!)ギリイッ

最原「言いたいことはわかるよ。伊達に一緒にいたわけじゃない。確かに巌窟王さんは召喚した直後の尋問で、僕にこう言っていた」





最原『本名、エドモン・ダンテス。復讐の最後の最後において愛と人間性を取り戻した男……』

最原『ここまでで何か間違っていることは?』

巌窟王『俺はエドモンではない!』

最原『え。モンテ・クリスト伯爵なのに?』

巌窟王『モンテ・クリストだからこそだ! 最後の最後に愛を得た男ではなく、この身は永遠の復讐者』

巌窟王『なればこそ、俺は間違ってもエドモン・ダンテスなどではない!』





最原「つまり復讐者として召喚された以上、エドモン・ダンテスとして救われたという結末が今のあなたには、ない」

ナーサリー「サーヴァントですもの。全盛期で召喚されるという法則上、充分ありえる話ね」

最原「あなたが巌窟王として存在している限りは、あなたはエドモン・ダンテスではありえない……」

最原「……でも、さっきこう言ってたよね。巌窟王は『別の何かに変わりつつある』って。『だから帰れない』ってさ」

巌窟王「!!」ビクウッ

最原「……具体的にどんなふうに変性してきてるのか詳しく教えて欲しいな?」

巌窟王「……」ダラダラダラダラ

最原「……予想はつくけど。巌窟王さんは自分のことをエドモン・ダンテスではないと言った」

最原「逆に言えば『エドモン・ダンテスに変わること』は『巌窟王ではなくなること』だし」

最原「更に言えば『巌窟王はエドモン・ダンテスに戻ったという前例』がある以上……」

最原「『巌窟王が何か別の物に変わる』という事実はそっくりそのまま『前例通りになっている可能性』を示すはずだ」

最原「……さて。巌窟王さんがだんまりだから、巌窟王さんの進路を取ったみんなに質問したいな」

赤松「……」

最原「そこにいる彼はかつて復讐をやめることができたんだよ」

最原「だから『復讐鬼の彼のための行動』がそっくりそのまま『復讐劇の続行』だとは限らないんだ」

最原「それを念頭に置いて、再度自分の進路を見直してほしい!」






最原「本当にその進路でいいの!? 巌窟王さんですら復讐をやめたのに!」

巌窟王「黙れ黙れ黙れ黙れ……黙れェ!」ギンッ
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/11(火) 21:53:04.82 ID:CnLkc4wJ0
セミラミスさんは役にたたないみたいですね……
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/11(火) 22:42:26.16 ID:lDh4rXheO
セミ様此の期に及んで遊ぶ気か
470 :ロムルス(保存用と……書いてある、な……)  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/12(水) 20:23:16.43 ID:W6XT/FgZ0
巌窟王「貴様……そこまでして勝ちたいか!?」

巌窟王「今ここにいる俺の存在を! 否定してでも勝ちにきたいか!?」

巌窟王「外の世界はそこまで価値のあるものか!?」

最原「逆だよ。今ここにいる巌窟王さんを正当に評価するための推理なんだ。それとも、何か間違ってた?」

巌窟王「……」

最原「限りなくそれっぽい理論を並べ立てたんだけども……」

ナーサリー「彼自身、否定する材料がないはずよ。今の自分が誰かなんて絶対にわかりっこないわ」

ナーサリー「だってマスターから一度も『名前』を呼ばれてないサーヴァントですもの!」

巌窟王「……アンジー……!」

アンジー「……はー……」

アンジー「喋っちゃったね?」

巌窟王「ぬ?」

アンジー「……対話したら負けるから口を閉ざすんじゃなかったっけー?」

巌窟王「!!」

アンジー「……」

巌窟王「……クハハ! アンジー、俺は」

アンジー「もういいや」ドカッ

巌窟王「バカなァァァァァァァ……」ヒュウウウウウウ

百田「ええーーーッ!?」ガビーンッ

最原(突き飛ばして落としたーーー!?)ガビビーンッ






セミラミス「さて! それでは思う存分遊んでくれよう! ニンテンドーラボ、如何程のものか――」

巌窟王「あああああああああああ!」グシャアッ

セミラミス「我のToy-Conがーーーッ!」ガビーンッ

ロムルス「お前のではない」
471 :セミラミス「どけっ!(蹴)」 巌窟王「がはあ!?」 ロムルス(躊躇がない)  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/13(木) 20:29:59.25 ID:SAuv7Moy0
アンジー「……あーあ……台無しだなー、もー」

入間「おいおいおい! 巌窟王を落としちまってどうすんだよ!」

星「一応無事みたいだが」

赤松(セミラミスさんに蹴り転がされてる……)

白銀(気のせいかな。あの段ボールの残骸、見覚えがあるような……)

アンジー「負けでいい」

東条「……え?」

アンジー「アンジーが言うよ。絶対に彼は言わないだろうからさー」

アンジー「彼はもう負け。この進路はここでお終い。少なくともアンジーの票は終一の進路に入れるよ」

入間「!!」

東条「……いいの? それで、本当に」

アンジー「もうこれ以上は無理だよ。彼が口を開いちゃった時点で負け確定に近いしさー」

アンジー「……みんなも終一の票に鞍替えしてくれると嬉しいんだけどなー」

真宮寺「ここまで引っ張ってきた巌窟王さんの負けをマスターの夜長さんが認めた」

真宮寺「……それなら僕も、意地を張る必要はないかもネ」

入間「……ダサイ原。一つ聞かせてくれよ」

最原「なに?」

入間「なんであっさり巌窟王を助ける方法はないって言ったんだ?」

入間「……人間は消極的事実の証明はできない。『ないこと』を完全には証明できない」

入間「キーボの修繕方法や、赤松と真宮寺が破壊したパソコンの中身を探してたときはもっと必死だったよなァ……?」

獄原「……そっか。それなのになんで巌窟王さんの救出方法に関してはあっさり諦めたんだろう」

最原「理由は簡単かな。『どっちにしろ同じ』だから」

最原「……巌窟王さんが助かろうが助かるまいが、僕たちの目の前から消えるって結果は一緒でしょ。帰れるか帰れないかの違いだけだ」

獄原「は? い、いや! 確かにそれは一緒かもだけども……!」

最原「あともう一つ。これが一番大きな理由だ。彼は『助けてほしい』って思ってない。言えないとかじゃなくて本気で思ってない」

最原「……気がする」

赤松(気が!?)ガビーンッ
472 :巌窟王「……(ティッシュを鼻にIN)」 ロムルス「鼻血か」 巌窟王「蹴られたのでな」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/14(金) 21:49:38.01 ID:zsTgBbuW0
最原「経験則と現状を鑑みて、だけどさ。本気で助かりたいと思ってたのならもっと前の段階で気付いてたよ」

最原「だってこのままじゃどこにも行けないって事実を隠す理由はどこにもないよね?」

夢野「それは……そうじゃの。アンジーにでも助けを求めて助かる方法を大々的に探しておったはずじゃな」

夢野「それをしていないということは最初から助かる気がまったくないとしか考えられぬか」

茶柱「……どこにも行けないって辛そうな響きに聞こえますけど。それなのに彼は何故、その点に関してはノーコメントなんでしょう」

アンジー「悪くないって思ってるみたい」

茶柱「?」

アンジー「……今のイシュタルや、消滅したBBと状況は同じなんだって」

アンジー「今ここにいる『彼』がいなくなるだけで、彼のホームで再度『アンジーたちを知らない彼』を呼ぶ手筈は整ってる」

アンジー「消えるのは『今ここでアンジーたちと一緒の時間を過ごした彼』だけなんだってさー」

百田「つまり……数字の上で見れば差し引きはゼロ。損も益もない状態に戻るだけってことか?」

百田「でもよ! だからって消えてもいいって考える理由には弱いだろ!」

春川「サーヴァントといつまでも一緒にいるわけにはいかないでしょ」

春川「少なくとも私たちと一緒にずっと……ってのはナシ」

百田「ハルマキ!」

春川「心情で考えるのはよして! ダメでしょ、どう考えても! 今は利害が一致してるから一緒にいるだけ! それが大前提!」

春川「現状ですら魔術師関連で散々ヒイヒイ喘いでるんだよ! 核弾頭級の負債を無暗に抱えるわけにはいかない!」

王馬「あーらら。春川ちゃんってば本当に現実主義だね。ここまで来ると悲観主義だけど」

春川「……」

夢野「……すまぬ。お主にばっかり辛い指摘させて……」

春川「やめて。殺されたいの?」

ナーサリー「カルデアに帰すのも、何度も言うけど本当に無理よ」

ナーサリー「仮にあの状態の巌窟王をカルデアに引き込める可能性があったのだとしても」

ナーサリー「私たちの傍にいるのはカルデアの復讐者であるべきだわ。そうでなければ戦えない。マスターと一緒に歩めない」

最原「……もし、万が一巌窟王さんを延命できたとして、この有様じゃ彼の居場所はどこにもない」

真宮寺「どん詰まり……ってことだネ」

アンジー「だから、悪くないって思ってるんだってば。そんな悪いことばかり考えてないんだってさー」

真宮寺「?」
473 :巌窟王&セミラミス「何をする貴様ァ!」 ロムルス(ハーモニーである)  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/15(土) 20:56:59.83 ID:51lRNPIm0
アンジー「終一と一部分だけは考え方が一緒だよ。この学園で起こった出来事のすべてが悪いことだったなんて思ってない」

アンジー「自分自身の存在が歪むような出会いと経験なら、それはきっと悪いだけのものであるはずがない」

アンジー「この学園での思い出を他ならぬ自分だけで独占できるのなら、それはきっといいことだ」

アンジー「……悪いことなんかであってたまるかって思ってるんだと思うよー」

最原「……」

赤松「……むぐぐっ……」ベリベリ

ネコアルク「にゃー……」ヒューッ

ネコカオス「あー……」ヒューッ

赤松「ぶはっ! やっと話せるようになった!」

百田「お。赤松。議論ならもう終盤だぜ」

赤松「わかってるよ。もう私たちの負け。最原終一の進路の勝ちでいい」

赤松「でも最後に最原くんに推理してほしいことがあってさ」

最原「え? なに?」

赤松「セミラミスさんはさっきなんて言いかけたのかなって。ほら」




セミラミス『別に命は重くもなんともないぞ? 質量に直して考えてみよ。どう計算してもゼログラムだ』

セミラミス『人が命を惜しむのは、命そのものが惜しいからではない。本当に恐れているのは……』




星「そんなことも言ってたな……途中で言うのをやめたんだったか」

最原「……流石にセミラミスさん本人に聞かないとわからないけどさ。多分こう続ける気だったんじゃないかな」

最原「本当に恐れているのは『命の上に乗っているものが無くなることだ』って」

春川「……」

最原「思い出とか、絆とか、快楽とか。そういう命あってのものが無くなるのが怖いんだ」

最原「だからそれが命が無くなっても消えないことが証明できたのなら……例え全部じゃなくって、一部だけだったとしても」

最原「もうそこまで恐れることは特にないって言いたかったんじゃないかな」

赤松「……言いそうだなぁ。後で確認してみる」

赤松「あの下の方で巌窟王さんと大人気なく言い争ってる、ちょっと怖い女帝サマに、さ」






巌窟王&セミラミス「こっちの台詞だァ!」

ロムルス(またハーモニーである)
474 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/16(日) 18:43:29.46 ID:SOuSdg690
ユガ・クシェートラ……空想切除完了……クッソよかった……

燃え尽きたんで今日ちょっと無理……ラクシュミーの育成もあるし……寝かせてくれ……
475 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/17(月) 22:02:32.05 ID:+O8DlL780
巌窟王「ふん! まあいい。こんな言い争いにかまけている余裕はないからな!」

セミラミス「多少は大人になったか。謝罪は?」

巌窟王「すまなかった!」バァーーーンッ

セミラミス「誠意が足りんがまあよかろう!」ドォーーーンッ!

巌窟王「……まさかアンジーが俺を突き落とすとはな……腹立たしい。おそらくこれで俺の進路は完全敗北だろう」

巌窟王「見上げてみれば……遠いな。だが小さいという気はなんとなくしない」

ロムルス「……」ニコニコ

巌窟王「その微笑ましいものを見るような笑顔をこちらに向けるな」

セミラミス「くくく……感慨深いか? 癪に障るが、気持ちはわかるぞ」

巌窟王「……俺はアイツらを導けたのだろうか」

セミラミス「さてな。だがあれもこれもと介入し続けるのはサーヴァントとしてもマナー違反だ。このくらいでちょうどいいと思うぞ」

セミラミス「……さて。あの聖女のことは我もそこそこ好きではないが、一つだけ意見が合うことがあったな。ふと思い出しただけだが」

巌窟王「?」

セミラミス「死者(サーヴァント)が生者を導くなどおこがましい」

巌窟王「!」

セミラミス「……いや? 流石に貴様のことを全否定する気はない。あくまでふと思い出しただけだ。この言葉も我の本意ではない」

セミラミス「ただ『それは言い過ぎだが、スタンスとしては我に近しい』と思っただけなのだ」

セミラミス「我らはサーヴァント。今を生きている者、どこかに向かおうとしている者の背中を押すだけでちょうどよい」

セミラミス「その結果、連中が心底絶望して落涙するのを見るのもよいし……」

セミラミス「勢い余って世界を救ったりしたら傑作だろう?」クスクスクス

セミラミス「我は背中を押すだけ。押した結果、あやつらがどうなるかを我は楽しむ。期待する」

セミラミス「……こういう楽しみは貴様にはできぬか? 言ってはなんだが大分一般的な趣味嗜好であろう?」

巌窟王「……戯言を。世界を救うだと……? そんな大したこと、アイツらは微塵も考えていないだろう」

巌窟王「そら。最後の戦いだ。俺はあれを見届ける。今はそれでいい」
476 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/18(火) 21:21:57.73 ID:VT1t03HO0
最原終一の進路
・最原
・春川
・百田
・茶柱
・白銀
・天海
・夢野
・赤松
・アンジー
・東条
・真宮寺
・王馬
・獄原
・入間
・星

巌窟王の進路
・なし

モノクマの進路
・なし


無効票(投票放棄)
・キーボ




最原「仕上げをしよう」

最原「……外の世界の総意を、こちら側に傾ける!」

キーボ「……」

最原「考えようによってはこれはチャンスだよ」

最原「直接、視聴者に僕たちの声を届ける最後にして最大のチャンス」

百田「ああ。絶対にモノにしてやろうぜ」

茶柱「最大級の援護をします! だから」

最原「うん。僕たちの手で、僕たちの未来を切り拓く!」ズギャアアアアアンッ
477 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/19(水) 19:47:21.64 ID:LFTW/sOY0
ナーサリー「ただいまー」ヒラヒラ

セミラミス「戻ったか。大儀であった」

ナーサリー「え。別にあなたのために頑張ったわけじゃないのだけれども。なんで当然のように自分が指示した風に労っているの? 恥を知らないの?」

セミラミス「何故急に毒を吐いた!?」ガビーンッ

ロムルス「専売特許を奪われたか」

セミラミス「我は確かに毒を使うが毒舌ではない!」

ロムルス「それよりナーサリーライムよ。もう援護はしなくて大丈夫なのか?」

ナーサリー「その辺りは、そこの伯爵に聞いてみればわかるわ。どう思う?」

巌窟王「……いや。必要はないな」

セミラミス「ほう。その心は?」

巌窟王「ヤツらは必死に戦ってきた。ヤツらだけがこの地獄の学園における真の当事者だった」

巌窟王「ただの傍観者たる外の人間がいくら束になったところで――」






キーボ「……!」

最原「これでッ……!」

全員「終わりだーーーッ!」



ガシャアアアアアアアアアアアンッ



COMPLETE!




巌窟王「最原たちに……アンジーたちに勝てるはずがないだろう」
478 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/20(木) 23:42:48.21 ID:wDTxaBfz0
百田「あっ……か……勝った?」

王馬「おおー。やったやった。派手に吹っ飛んでったねーキー坊」

最原「……時間! 残り時間!」

赤松「もう確認する手間も惜しいでしょ! 早く投票しよう!」

茶柱「泣いても笑ってもこれが正真正銘、最後の投票です!」

アンジー「押し間違いがないよう注意しよー! それじゃあ行っくよー!」

百田「いっせーのーせでいくぞ!」

真宮寺「え? 今更合わせる必要……ああ、もういいヨそれで」




「いっ!」


「せーっ!」


「のーっ!」


「せっ!」ガチンッ




モノクマ「……」

夢野「あわばばばばば……頼むぞー。今度こそ全会一致であってくれー」ガタガタ

最原(どうだ! どうなった!? 何故こんなに間を取る!? 僕たちは間に合わなかったか!?)

最原(ああ、違う。長いと感じるのは錯覚かもしれない。時間が短いのかも判別できないけど。心臓の音だけが強く聞こえる)

モノクマ「……結果発表ーーーッ!」ガシャコンッ

最原「あ……!」
479 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/21(金) 19:50:14.80 ID:8GukGS+D0
最原終一の進路
・最原
・春川
・百田
・茶柱
・白銀
・天海
・夢野
・赤松
・アンジー
・東条
・真宮寺
・王馬
・獄原
・入間
・星
・キーボ

巌窟王の進路
・なし

モノクマの進路
・なし





百田「……やっ――!」

最原「やっ……たーーーっ!」

天海「全会一致……最後の最後で……!」

白銀「……みんな! 空見て! 樹! 樹!」



ズッ ズズズッ……


ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



星「ああ。間違いないな。あの樹だ」

真宮寺「あとはアレを裁断して、キーボくんを復旧し、壁に穴を開ければすべてが終わりだネ」

獄原(……あれ? 目の錯覚かな。あの樹、宇宙から生えてきてるような気がするんだけど……?)

春川「……で。モノクマ。結局タイムリミットはどうなったの? かなり余裕がないことだけはわかってたけどさ」

モノクマ「んとねー。十秒くらい」

百田「ああ。マジで危ないところだったな! んじゃああと十秒で俺たちは避難して、あとは巌窟王たちのサポートを……」

モノクマ「十一、十二、十三、十四、十五……」

赤松「……あれ?」

獄原「変だな。なんでカウントダウンじゃなくてカウントアップしてるんだろ」

最原「……もう手遅れだからかもしれない……! この分なら投票そのものは有効だけど!」

アンジー「……ッ!」

最原「あと十秒くらいって意味じゃない! タイムアップしてから十秒くらいって意味だ!」




ズガァァァァァァァンッ!
480 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/22(土) 23:22:09.37 ID:yKvq+kYL0
「……けよ……!」

最原「……」

「……目を……開け……」

最原「……ぶっ……がっ……ごほっ!?」

最原(何が……起こった? 耳が痛い。真っ直ぐ立っていられない……)

最原(……いや。どうやらもう立っていないみたいだ……平衡感覚が狂いまくって、目の前の光景すら真っ白にしか見えない)

最原(自分の呼吸がまともなリズムで行われていないことに気付いたのはちょっと時間が経ってからだった)

最原(苦しい。苦しすぎて涙が止まらない……!)

ドンッ

最原「がはあっ! はあっ……はあ!?」ゴホッゴホッ

最原(肺を誰かに思い切り叩かれた。その勢いでやっとまともな呼吸を取り戻す)

最原(目の前がやっと開けてきた……!)

ロムルス「お前たちに再度告げよう!」

ロムルス「目を開けよ! まだ終わってはおらぬ!」

最原「……地、面……僕たち、席から落ちたのか!?」

最原(ん? なんだろう。自分で言ってて凄く違和感がある。あの激音が響いた瞬間、何か見えたような……)




アンジー『……!』

巌窟王『クハ……ハハハハハ……!』




最原「……もしかして巌窟王さんに」

春川「そうだね。アイツに攻撃される寸前に全員地面に引き落とされたみたい。凄いスピードだったから全員まだ酔ってるよ」

最原「道理で気分が最悪なわけだよ! あ、僕の肺を叩いたのって春川さん?」

春川「茶柱」

茶柱「……よ、よかった……どうにか無事みたいですね……」ホッ

最原「ありがとう。助かったよ」

最原「……本当に物凄く強くなっちゃったなぁ。キーボくん」





キーボ「……」ドドドドドドドドドド
481 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/22(土) 23:47:56.63 ID:yKvq+kYL0
最原「……巌窟王さんは……あそこか」

最原(少し離れた場所で、月を背にホバリングしているキーボくんを眺めていた。傍らにはセミラミスさんもいる)

巌窟王「セミラミス。仕込みはどうなっている?」

セミラミス「厳しいな。まずはあの樹を裁断しないことには始まらぬ。我が仕込んだのは書き換えられて新品になった才囚学園ではないのだからな」

セミラミス「あの樹さえ裁断すれば才囚学園は元のボロ状態に戻るはずだ。すべての話はそこからだな」

巌窟王「そうか。それはよかった。安心しろ、すぐに戻る」

セミラミス「……貴様が裁断するのだろう?」

巌窟王「いや。キーボにとってもあの樹は邪魔なはずだ。そうでなければ投票しない。故にアイツは俺たちよりも真っ先に」






ザァァァァァァァンッ




キーボ「……切除、完了」ジャキンッ

巌窟王「あの樹を叩き折る」

セミラミス「ふむ。壮観だな」

最原「巌窟王さん!」

巌窟王「……」

最原「後は任せて……いいんだよね?」

巌窟王「愚問だ。俺にしかできないだろう。アレは」

アンジー「『たち』だよー?」

巌窟王「……!」

巌窟王「……クハハハハ! 愚かなのは俺も同じか!」ケラケラケラ

巌窟王「ロムルス! アンジーは連れて行くが、それ以外の生徒はすべて守れ!」

巌窟王「お誂え向きの結界宝具があるだろう!」

ロムルス「……私(ローマ)を誰だと思っている。私(ローマ)である! すべて! すべてを守ってみせよう! 我が愛し子たちを!」

ロムルス「すべては我が愛に通ずる(モレス・ネチェサーリエ)!」キンッ


ズゴゴゴゴゴゴゴゴッ


天海「これは……まさか! ローマ建国神話の……弟レムスを誅したときの国境騒動! その再現宝具っすか!?」

ロムルス「うおおおおおおおおおお!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ボコッ

最原「あ。柵が出てきた」

ロムルス「ふうっ。終了である」フー

天海「えっ」

ショボい柵「」チマーンッ

天海「……」

天海「えっ?」ヌボーンッ
482 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/22(土) 23:59:27.61 ID:yKvq+kYL0
夢野「ん、んあーーー! これはやばい! 物凄くやばいぞ!」アタフタ

天海「ろ、ロムルスさぁーーーんっ!? あのっ、これっ、なんかの悪ふざけじゃ」

ロムルス「普段はもう少し派手な見た目である。が、今は大した魔力がないのでこれが限界だ。許せ」

白銀「……」

白銀「あ。私たち、死んだねこれ」

天海「諦めが早すぎるーーーッ!」ガーンッ

キーボ「ターゲット、ロック。エネルギーチャージ」シュインシュインシュイン

天海「あばばーーーっ!? なんか明らかにこっちに向けて大技放つ感じーーー!」ガビーンッ

天海「に、逃げ……!」クルッ

天海「……」ピタッ

最原「……まだみんな立って歩くのも間々ならないよ。酔ってるからさ」

天海「あ、死んだ」

キーボ「シュート!」ズガアアアアアアアアアアアアアアンッ

天海「うわあああああああああああああああああっ!?!?」

ロムルス「……なにを恐れることがある」



ドォォォォォォォンッ



天海「……?」

ロムルス「グレードが下がっているのは『見た目』だけである」

ナーサリー「結界としての防御性能は疑う余地もないのよ!」ニコニコ

天海「……今……見えない壁に阻まれて……あんな強力な攻撃が!」

ロムルス「ローマ!」ビシイッ

天海「ロ、ローマァーーーッ!」ビシイッ
483 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/23(日) 00:08:52.17 ID:kHtaFi3U0
夢野「いやウチは最初から結界の防御性能の話なんぞしておらん! そこに不安はない! そこじゃなくて!」アタフタ

最原「……?」

春川「ロムルス! 今すぐ結界を解除して! 物凄くマズイことになってる!」

真宮寺「……どうしたの?」

王馬「さっき鎖のジャラジャラ音がしたの気付かなかった?」

最原「鎖……鎖?」

最原「……!」キョロキョロ

百田「……あ、ぐ、あーーーッ! やっと復活だ! 本調子には程遠いけどよ!」ガバリッ

百田「あー、くそ耳が痛ェ! どんなスピードで移動したらこんなことに」ピタッ

百田「……あれ? 赤松どこ行った?」





全員「……」

全員「……!!!!!!!!!!!!」





赤松「入れてーーー! 中に入れてーーー! 死んじゃう! このままだと私死んじゃうからーーー!」ドンッドンッ

全員「ハブられてるーーーッ!」ガビビーーーンッ

最原「鎖のジャラジャラ音……ってことは、犯人は考えるまでもなく!」

セミラミス「……」ニヤニヤ

春川「……アイツやっぱり殺した方がよかったね」

王馬「今からでも遅くないんじゃない? 目だけで人を殺したりできるでしょ、春川ちゃんなら」
484 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/24(月) 20:39:17.92 ID:Rkkks7Tb0
最原「でもよかった。下手したらさっきのキーボくんの砲撃で火傷しててもおかしくなかったし」

赤松「火傷はギリギリしてないけど物っ凄く熱かったよ! 見てこれ! 毛先がクルンってなってる! ストーブに近づきすぎた猫のヒゲみたい!」クルン

茶柱「思ったより遥かに危ないですね! 運が悪ければ焼死してましたよ!」

春川「何してるのロムルス! 早く!」

ロムルス「……」

獄原「……え。悲しそうな顔して黙っちゃったよ?」

ナーサリー「えっとね? 一度解除して、赤松を中に引き込んでから再度宝具を発動というプランはかなり難しいわ」

ナーサリー「だって二回目の宝具を発動するだけの魔力が残ってないのだもの」

獄原「じゃ、じゃあ危険度が高いことは間違いないけど、巌窟王さんに守ってもらおうよ!」

東条「……残念なのだけれども……それも難しそうだわ」



ガキンッ ドカッ バキイイイインッ ドシュウウウウウッ



巌窟王「クハハ……クハハハハハハハハ!」ボオオオオッ

キーボ「……!」ドドドドドドドド

獄原「……攻撃で精一杯。最低限の防御の機会は全部アンジーさんのために使ってるね……」

東条「赤松さんにまで回す余裕がないわ。あの様子だと」

セミラミス「くっ……考えれば考えるほどに愚かしい! 何故カエデは結界の外に出たのだ!? いや本当に愚かしい!」プンスカ

春川「ッ!」ブチイイイイッ



ブンッ  ガンッ



セミラミス「……ククク。結界さえ無ければ今の投石で我は死んでいたかもしれぬな! 結界さえ無ければ! くっははは!」ケラケラ

春川「……!」ビキビキビキッ

百田「ハルマキ! 落ち着け! すんごい表情になってきてんぞ!」
485 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/25(火) 18:49:10.43 ID:zbFUW5IL0
ナーサリー「……最近は気に入った人間には一途って面しか見ていなかったから忘れていたのだわ。この人、そういえば本質は毒婦だったわね」

ロムルス「気が済んだら仕事に戻るであろう」

白銀「……ん!?」

最原(傷一つなかった才囚学園の校舎が……元のボロボロの状態に戻っていく! 巨大ネコアルクオブジェも!)

アンジー「セミラミスー! 『彼』が仕込みのスイッチを入れるのはまだかって急かしてるよー」

セミラミス「少し待つように伝えろ! 一番大事なことをまだやっておらんからな!」ワクワク

赤松「一番大事なところ……? 何でワクワクしてるの? とても怖いんだけど!」

セミラミス「時間がない。すぐ済ませよう。貴様が死ぬ前にな」パチンッ

赤松「縁起の悪いことを言わないでっ……て、なにそれ?」

ロムルス&ナーサリー「……なあっ!?」ガビーンッ

聖杯「」キラキラキラキラキラ

セミラミス「見ての通りの聖杯だが?」

赤松「いや黄金のなんかコップっぽいものってことくらいしか私にはわからな……聖杯ィ!?」ガビーンッ

生徒一同「はああああああああああああっ!?!?」ガビビーンッ

ナーサリー「待って! セミラミス、あなたそんなものをどこから! まさかカルデアから盗んで……!」

セミラミス「バカな! 流石に我にも礼儀くらいはある! これは『さっき作ったもの』だ!」プンスカ

ナーサリー「礼儀は弁えてても常識をドブに捨てたような発言だわーーーっ!?」

赤松「作っ……は!? え!? なにそれ! 聖杯って材料なしで作れるほど気安いものだっけ!?」

セミラミス「いや。材料ならついさっきキーボが粉々にしたアレだぞ」

ロムルス「……そういうことか」

百田「どういうことだ!? 説明しろロムルス!」

ロムルス「世界を改変するようなオブジェクトの中心核には当然、凄まじい魔力があるだろう。それ単体で聖杯として成立しかねないほどの」

ロムルス「基本的に魔力を受け入れる器と、膨大な魔力があれば聖杯は作成可能だ」

セミラミス「魔力の方はあの白い樹から徴収した。さて、器の方は……あったであろう? 都合よくサーヴァントすら閉じ込めることのできる器が」

赤松「え?」

赤松「……あっ! マザーモノクマ!」

セミラミス「正解だ。巌窟王ではなくキーボが樹を破壊すると聞いたときは魔力を直前で掠め取れるかどうか肝を冷やしたものだが……!」

セミラミス「……我は女帝、セミラミス! 魔術も当然使える! クリアしてみせたぞ、この難行!」
486 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/26(水) 22:15:54.45 ID:hXbA+M6X0
諸事情により種火が物凄く必要になったので今日はなし!
487 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/27(木) 23:47:23.11 ID:UDvHHJ620
獄原「そっか! セミラミスさんはあの聖杯で巌窟王さんを助けるつもりなんだね!」

セミラミス「貴様論外」

獄原「論外!?」ガビーンッ

ロムルス「であろうな。セミラミスの仕込みとやらが発動した場合、聖杯も消えるはずである」

ナーサリー「魔術由来の物品であることには変わりないもの。最後にサーヴァントが壁に穴を開けるという都合上サーヴァントは後回しだけど……」

ナーサリー「聖杯は後回しの対象外のはずよ。仕込みが発動したらすぐに消えるか、仮に消えなくとも大した願いは叶えられなくなると思うわ」

セミラミス「長生きしたいなー程度の願いならば消えかけた状態でも余裕だな。長生きする価値のある世界が前提の願いだが」

春川「……待って。つまり聖杯をフルスペックで使えるのはまさに今だけってこと?」

春川「しかもそれを巌窟王を助けるために使わないつもりって」

セミラミス「つもりだ」ウン

春川「……最原」

最原「凄くマズイことになってるのはわかるけど、僕たちにはどうしようもないよ」

百田「ん? ん? ん?」

セミラミス「さてカエデ。ここから先、言動には細心の注意を払えよ」

赤松「へ?」

セミラミス「外の人間に復讐したいと強く願ってみろと言っている」ニィィィィ

赤松「!?」

茶柱「なっ……!?」

入間「何だとォォォォォォォォォ!?」ガビーンッ

星「……やられたな。これは。俺たちはロムルスの結界の内側で、あいつらは外側だ。手出しができない」

東条「セミラミスさんはこの好機を狙っていたというの? 偶然ではなく?」

真宮寺「忘れてた……! 僕たちの前ではアホな言動丸出しの緊張感ゼロで空気読めないダメ女だったから完全に油断してたヨ!」

真宮寺「彼女は人類史初の毒殺成功者! つまり、その当時最高峰の頭脳の持ち主だ! 頭が悪いはずがない! 機を窺う精神力も段違いだ!」

セミラミス「誰がダメ女か!」プンスカ

赤松(アホな言動丸出しの緊張感ゼロで空気読めないってくだりに関してはガンスルーしてる!)ガビーンッ
488 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/28(金) 22:41:16.90 ID:G7vEb4nP0
セミラミス「……論外で圏外な残骸どものことはもう放っておくことにしよう。大事なのはここからなのだからな」

王馬「うわー。ボロクソ言われてるね俺たち」

春川「……」スッ

百田「うおーーーい! ロムルス、もう絶対に結界を解除すんなよ! ハルマキがクラウチングスタートの姿勢になってっから!」

最原「結界が解除された途端に全力疾走して一瞬で殺す気だ!」ガビーンッ

セミラミス「カエデ。汝はまだ子供であろう?」

赤松「……だったら何?」

スッ

赤松「!?」ビクッ

セミラミス「……たまには大人に甘えてみろ。その年頃ならまだ自然だろうさ」ギュッ

赤松(……あまりにも自然な動作で、避ける暇が無かった。私は今、ふわりとした力加減で抱き寄せられている)

アンジー「……」

アンジー(まずいなー、これ。セミラミス、明確に本気になってる。アンジーたちの前に現れてから初めてかも)

最原「容赦無しで落としにかかってる……!」

茶柱「こ、これ。万が一赤松さんがセミラミスさんの提案に『YES』って言ったらどうなるんですか?」

王馬「さっきの議論での勝敗が逆転するだろうね。赤松ちゃんの希望が、これまで積み上げてきたすべてを台無しにしてでも優先される」

王馬「ただしあくまで聖杯が聞き届けるのは赤松ちゃんの願望みたいだから、俺たちに直で不利益になるような展開はないはずだよ」

入間「オイオイオイオイ……オイオイオイオイオイオイオイ……! 多数決じゃなく赤松たった一人の意見でか!?」

最原「騒ぐのはもうちょっと後でいいよ」

百田「……そうだな。終一と俺も同意見だ」

天海「どうしてっすか?」

百田「まだ赤松の答えを聞いてねぇ」

最原「確かに僕たちは結界の内側にいるから、もうセミラミスさんに手出しは不可能だけどさ」

最原「……いや、仮に外に出れたとしてセミラミスさんを無傷でどうにかできる保証が無いから手出しできないし、させるわけにもいかない」

最原(同じ理由でアンジーさんにも無茶はさせられない。彼女がいないと巌窟王さんが凄く困るし)

最原「この場で彼女をどうにかできる人間がいたとしたら、たった一人……」

天海「……赤松さん、だけ……!」
489 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/29(土) 20:00:21.59 ID:rPeFjwYs0
赤松「私が願えば……叶う。外の世界の人間に復讐できる……?」

セミラミス「そうだ」

赤松「……さっきまでの議論で出した結論は……」

セミラミス「無意味、とは言うまいよ。ただ最後に物を言うのは力を持った誰かの意見だ」

セミラミス「今の貴様にはそれがある……不服な結果を塗り替えて何が悪い?」

赤松「……」

赤松(不服?)ピクッ

セミラミス「さあ。願え。そして貴様の望む未来を創ってみせよ。我の用意した機会だ、まさか断りはすまい?」

赤松「断るよ」

セミラミス「クハハ! そうだろう! 断るだろう――って」

セミラミス「は!?」ガビーンッ

アンジー「!」

セミラミス「……聞き間違いか? いや、言い間違いか? 今、断ると言ったように聞こえたが……」パチクリ

バッ

赤松(私を抱きしめていたセミラミスさんから少しだけ距離を取る。それでも至近距離のままだけど)

赤松(でもこれでいい! 心底困惑しているセミラミスさんの表情がよく見える、この位置が凄くいい!)

赤松「ここで私がそんなズルをしたとして! そこから先どうするの?」

赤松「セミラミスさんはずっと私を甘やかしてくれるの!? そんなわけないよね!」

赤松「その場一回限りの勝利を掴んだところで、その先の私にはロクでもない結末しか待ってないよ!」

セミラミス「なっ……にい……!?」

赤松「ごめん。正直、凄く嬉しい。動機はどうあれ、私のためにこんな凄いものを用意してくれたって事実が、とにかく嬉しい!」

赤松「多分セミラミスさんの想像よりずっと私は感謝してる! でもさ! そんな甘いだけの言葉に飛びつけるほど、私は子供じゃない!」

セミラミス「……!」

赤松「……その聖杯は受け取れない。だから、終わりにしよう」

赤松「悪だくみなんてやめてさ、予定通り……みんなで一緒に決めた通りに」

赤松「この学園を終わりにしようよ……!」

セミラミス「……」
490 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/30(日) 19:52:52.64 ID:pVYswqYA0
ロムルス「……決まりである。セミラミスは人の輝きを(かなり屈折した視点で)見守る者だ」

ロムルス「故に転落するにしろ上へのし上るにしろ、本人の自業自得でなければ面白くない」

最原「赤松さんが自分の意思で『断る』って言ったら、もうセミラミスさんには特に動機がないよね」

東条「……みんなで決めたことを守ってくれるのね、彼女は。赤松さん、そういうところはずっと変わらなかったわね」

セミラミス「……チッ。つまらん」ポイッ

ガツーンッ

赤松「ぶへっ」ドサァッ

最原(セミラミスさんがポイ捨てした聖杯が赤松さんの眉間にクリーンヒットした!)ガーンッ

セミラミス「人の厚意をドブに捨ておって……このノーパン娘が!」

赤松「ご、ごめんセミラミスさ……ノーパンじゃないよ!?」ガビーンッ

セミラミス「まあよい。こんなものは所詮戯れよ。我の心は夜の湖のように凪いでおる」

セミラミス「……全然! まったく! 気にしてないからな! 余裕のあまりネイルケアもできる!」ガタガタガタガタ

赤松「震えすぎ震えすぎ! 爪割れるから!」

百田「気にしてんじゃねーか。言葉と裏腹に」

セミラミス「……はあーーー……いや、本当に気にはしていないのだ。ただ本心から残念に思っているだけよ」

セミラミス「聖杯で一回願いを叶えさせた後はカエデのことを体のいい傀儡にして外の世界に我君臨! という計画がパァだ……」

赤松「ろ、ロクでもない……! 本当にロクでもないよ……!」

セミラミス「……予定通りが注文だったな。よかろう。やってやる」

セミラミス「玉座を!」パチンッ

ネコアルク「はいですにゃー」トタトタ

ネコアルク2「猫の宅配便ですにゃー」トタトタ

百田「お……モノクマがついさっきまで座ってた椅子じゃねーか。あれ玉座にすんのかよ……?」

百田「あれ? モノクマはどこに消えてんだ?」

白銀「結界の内側。あっちで遊戯王してるよ」

モノクマ「シャアアアアアアイニングドロオオオオオオッ!」ピカアアアアアアッ

ネコアルク「どういう……ことにゃ……!?」カン☆コーン!

天海「いつの間に!?」ガビーンッ






セミラミス「……結局ピアノは聴けなかったな」

赤松「……え?」

セミラミス「始めるぞ……! ここから先は、我の独壇場だ!」

セミラミス「人の女帝は人の国を統べようとする。ならばゲームの女帝は何を統べるべきだ!?」


ズズウウウウンッ……


赤松「……!?」

セミラミス「然り! 然り! 然り!」

セミラミス「『ゲームの国』しかありえぬではないか!」
491 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/01(月) 21:15:47.05 ID:klYtNCo80
ズガアアアアアアンッ

巌窟王「……」ブラーンッ

巌窟王(まずいな。時間稼ぎも限界か? 吹っ飛んだ衝撃で、才囚学園の鉄筋に足がひっかかってしまった。吊られた男か俺は)ブラブラ

巌窟王(このままだと本当に死ぬぞ)

キーボ「どうやら間に合わなかったようですね」

巌窟王「……?」

フワッ

巌窟王「……それはどうかな?」ニヤリ

キーボ「?」


ズズズズ……!


キーボ「……なんですか。この鳴動は……!」

巌窟王「やっと重い腰を上げたか、あの性悪女め」

キーボ「……セミラミス! 彼女か!」バッ





アンジー「気付かれたみたいだよー」

セミラミス「構わん! もうどんなロングレンジの攻撃方法があろうが!」

セミラミス「どんなスピードで接近してこようが!」

セミラミス「仕込みは発動した! もう(我にも)止められん!」

赤松「待って! 今こっそり小声でなんか言った!? 『我にも』とか言わなかった!?」

セミラミス「お気の毒ですが冒険の書は消えてしまいました!」バァーーーンッ

赤松「露骨な忘れたアピで誤魔化せると思わないで!」

セミラミス「さあ! お楽しみはここからだぞ!」ギュインッ

赤松(……セミラミスさんの周りに無数の魔法陣が……!)

セミラミス「神秘よ! 我が糧となれ! これ以上ないほど有効活用してやろう!」

フワッ フワフワッ……

赤松「……これは……!」

アンジー「おおーーー! 綺麗だねー! たくさんの蛍が飛んでるみたいだよー!」キャッキャッ

セミラミス「ネコアルクに再配置させた神性、神核のなれの果てだ。まあつまりざっくり言うと死骸だ」

アンジー「きったね」ウエッ

赤松「ざっくり言い過ぎじゃない!? せっかく感動してたのに!」
492 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/02(火) 21:36:11.77 ID:HLS2IoI+0
キーボ「させません。もう巌窟王さんの妨害もない。ここからでも充分にキャノンは届く!」

巌窟王「絶対に無理だ。諦めろ」

キーボ「エネルギーチャージ……シュート!」バチイッ

キーボ「……!?」






赤松「まずい! キーボくん、あの距離からこっちを狙って……撃っ――!」

セミラミス「……ったところで無理だな?」ニヤニヤ

ビュンッ

赤松「……え? ハズレ? っていうか……」

アンジー「見当違いの方向にビームが吹っ飛んでったねー」

セミラミス「当たり前だ。キーボは絶対に我を撃てない。少なくともすべての工程が終了するまでは絶対に。何故なら!」






巌窟王「貴様が外の世界の意思を代表して『最原終一の進路』に投票したのだ」

巌窟王「少なくとも学園全体の無毒化の処理が済むまでは、貴様を支配する意思がセミラミスを攻撃することを絶対に許しはしない」

キーボ「……! ……!」グググッ

巌窟王「アイツの仕込みが終われば、貴様の魔術的強化もすべて打ち消される」

巌窟王「弱体化した後のキーボなど俺の相手として不足にも程がある。すぐに復旧してやるぞ……!」ボオウッ

キーボ「……ゼロ距離なら……!」ドシュウッ

巌窟王(……ム。予想外だな。妙にセミラミスのことを警戒している)

巌窟王(魔術の無効化に関してはクリアできるが、これではそれが終わった直後に……)

巌窟王「ちっ。しばらく休むつもりだったのだが……! こうなったら足に引っかかった鉄筋を切断……いやそれでは真っ逆さまだな」ボキッ

巌窟王「ボキ?」



バキィィィンッ



巌窟王「何だとォォォォォォォ……」ヒューーーーッ
493 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/03(水) 22:14:36.29 ID:AIOZvaJq0
セミラミス「ふはははははは! 見よ! 巌窟王のヤツ地面に向かって真っ逆さまだ!」ゲラゲラゲラ


ビュンッ


キーボ「この距離なら」キイイイイインッ

赤松「――ッ!?」

赤松(早……! セミラミスさんの目の前に! 一瞬で! この距離はまずい!)

ジャララッ

セミラミス「邪魔だ」クンッ

キーボ「!?」ブンッ

キーボ(鎖を使っての投げ飛ばし……ワンパターンですね。これはもう一度食らいました! この状態からでも、この距離なら外さない!)ガチンッ

赤松「ダメ……! やっぱり無理だよ! 攻撃される!」

セミラミス「見よ! 巌窟王のヤツ、上から降ってきた更なる瓦礫に生き埋めにされたぞ! 犬神家のようだ!」ゲラゲラゲラ

赤松「!?」ガビーンッ

アンジー「うわー。この期に及んでまだ笑ってるよー。キーボの方は見もしてないねー」

セミラミス「当然だ。距離の問題ではないのだから」

キーボ「シュー……!?」グアンッ

キーボ(銃口が移動させられた……! 鎖? 違う、勝手にボクの手が動いたんだ! この角度はマズ……!)


ドシュウウウウッ

ドカァァァァァンッ


赤松「……!? 空が割れ……違う! 空を映していた天井が壊れた!?」

セミラミス「いや? まだ威力が足りんな。ちょっと亀裂が入った程度だ」

セミラミス「待っていろ。首級が欲しくばな。もうすぐ終わる……!」


ズドドドドドドドドド


赤松「……ずっと聞いていなかった。セミラミスさんは具体的に何をするつもりなの?」

赤松「仕込みって一体何?」

セミラミス「とてつもなくくだらなくて、物凄く馴染むことだ。端的に表すなら……」






セミラミス「学園よ! 浮上せよ!」
494 :ハァ……ハァ……ガチャの敗北者……? ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/04(木) 18:11:57.23 ID:mpExMwwBO
世界滅ばないかな
495 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/04(木) 22:01:48.08 ID:lxrKtO4c0
今日のところはとても悲劇的なことが起こったのとイベントが楽しすぎるのでナシ
496 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/05(金) 23:35:19.98 ID:mjnaZFwn0
ズズガガガガガガガガガンッ

最原「……鳴動……じゃない! いや、この空間全体が震えてること自体は間違いないけど!」

最原「密室だから全然気付かなかった! 窓でもあれば一発でわかることでも、ここじゃわからない!」

百田「憧れの感覚だ! 『浮上』の感覚! 宇宙に向かってるような高揚感!」ワクワク

王馬「……え? 嘘でしょ。マジで?」

茶柱「学園が……いえ! この私たちを閉じ込めている密室そのものが! 浮上しているんですか!?」

セミラミス「少しだ。少し浮けばいい。五センチでも構わない! それでこの空間は我の宝具として成立する!」

キーボ「仮にそうなったとして、一体何をする気ですか。死にぞこないのあなたが、いくら強力な宝具を振りかざしたところでボクには!」

セミラミス「敵わないだろう! 別にいい! 美味しいところをすべて持っていくのは巌窟王で構わない!」

セミラミス「我は楽しければそれでよいのだ!」

アンジー「……なにかが萎んでいく感覚がある……学園にあったはずの大事な要素が消えていくような……」

ナーサリー「これは……そう。そういうことね! どんなエネルギーでも使えば消える! あるいは散る! 質が落ちる!」

ナーサリー「つまり熱力学の第二法則に則った超原始的な宝具!」

ロムルス「通常であれば宝具を使うには魔力が必要。これはその発想を逆転させた『魔力を使うためだけの宝具』」

ロムルス「いや。それだけではない。扱いを間違えれば死人が出る、呪力のような危険なエネルギーすら一緒くたにして消費している」

入間「ちょっと待て! それ魔術をちょっと齧っただけの俺様でもおかしいことだってわかるぞ!」

入間「軽油とレギュラーガソリンとハイオクガソリン、ロケットエンジン用の燃料ちゃんぽんにしてモンスターマシンを動かすみたいな話だろ!?」

入間「んなことしたら俺様たちは問答無用で吹っ飛ぶぞ! こんなコンドーム並みの薄々バリアなんざ木っ端微塵だ!」

ロムルス「そのためにヤツは神性を求めていたのだろう。どんな燃料を使っても絶対に壊れないエンジンと骨格を作るために」

セミラミス「……嗚呼! 嗚呼! 最高だ! たまらない! この仕組みを作るために我がどれだけ……どれだけの手間を……!」

セミラミス「マザーモノクマの中で時間を加速させ、三日三晩かかる呪文詠唱を先んじて終わらせたのも、すべてこのため!」

セミラミス「驚嘆せよ! 祝福せよ! 刮目せよ! 瞬き一つももう許さん! これが、ここにいる我だけの宝具!」

セミラミス「対魔力宝具、『遊興の空中庭園(ゲーミングガーデンズオブバビロン)』である!」
497 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/06(土) 22:36:58.91 ID:0OQEbHat0
巌窟王「……!」

巌窟王(段々と瓦礫が振動で移動して……あと少しで出られそうだが……!)ジタバタジタバタ

巌窟王「ダメだな。出られん。念話しかないか」

巌窟王『アンジー!』

アンジー『学園に満ちてる魔力なら、あと少しで除去できそうだよー』

巌窟王『そうか! それは朗報だ! だが今すぐセミラミスから離れろ! いや、ヤツのことだから安全策くらいは取っているだろうが……』

アンジー『……何を焦ってるの?』

巌窟王『今、キーボはセミラミスを攻撃できない! だが全部終わったら話は別だ!』

アンジー『……セミラミスはキーボに勝てるかなー』

巌窟王『貴様はどう思う? 率直な意見を言え。それが答えだ』

アンジー『百パー無理』

巌窟王『続いて俺が質問するが、すべての工程が終わればセミラミスはどうなると思う?』

アンジー『……』







アンジー「……楓ー。ちょっと離れよっかー」ニコニコ

赤松「イヤだ」

アンジー「!」

赤松「……大したことじゃないけどさ。私、最後まで全部見たいんだ」

赤松「どんな結末を迎えたとしても。アンジーさんなら、わかってくれるよね」

アンジー「……」
498 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/07(日) 23:53:54.23 ID:OJ5hssOQ0
セミラミス「あと少し……だ! あと少しで……完成する!」

セミラミス「くっくくくはははははは! 財産というものはすぐに無くなるものだが、無くそうと思って使うと気が遠くなるものよ!」

セミラミス「ネコアルク! 進捗は!?」

ネコアルク「あと十数秒で完了ですにゃー」

ネコカオス「やれやれ。まさか我々も、ここまで付き合うことになるとはな」

ネコリンボ「ンンンンンンンン拙僧は! 拙僧は昂ってまいりましたぞ!」

セミラミス「そう言うな。段々と我も貴様らのことが気に入って……ム? 知らんヤツがいるな? こんなヤツまで作ったか? はて?」

セミラミス「まあよい。後のことは任せたぞ、ネコアルク」

ネコアルク「……あなたは最高の雇い主だったにゃ」



ズズンッ



セミラミス「終了だ。もうよいぞ」



ズガアアアアアアアアアアアアアアンッ



最原「……な……え……?」

最原(それはとあるサーヴァントの最期だった)

最原(……あまりにも唐突に、それは訪れた。彼女の胸を、上空からキーボくんの砲撃が貫いて。でも!)

キーボ「……せ、みら、ミスぅぅぅぅぅぅぅ!」ジャラララッ

セミラミス「……ごぼっ……は、ははははは……!」

セミラミス「くははははははははははははははっ! あーあー! 馬鹿め! ここまで計算通りに行って、いいものか! はははははは!」ゲラゲラ

セミラミス「ごぼっ……う、げほっげほっ……!」ビシャッ

天海「攻撃された瞬間を狙って……!」

百田「野郎、カウンターで鎖をキーボの胴体に叩き込みやがった!」

セミラミス「我は毒殺の女帝、セミラミス! 故に! ああ、そしてゲームの女帝でもあるからこそ!」

セミラミス「本物ですら難しいことも我ならできる! たっぷり味わえ、電子ウイルスをなァ! あっははははははははは!」

キーボ「うおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああっ!」ガシャンッ

赤松「セミラミスさんっ!」

セミラミス「……カエデ。多くはもう語らん」

セミラミス「凄く。とても。ありえないくらい……」





セミラミス「楽しかったぞ!」ニコリ

赤松「……!」




ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ
499 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/08(月) 23:36:47.47 ID:eF0dfIH20
ロムルス「……見事!」

最原「……セミラミスさん……!」

春川「地面に大穴が空いてる……砲撃の勢いで地下に玉座ごと押し込まれたみたいだね」

王馬「この分じゃあ、春川ちゃんが殺すまでもなくプレッシャーで身体はズタズタだろうね」

王馬「というか、崩落してるってことは地下まで落下してるのかな……」

春川「……殺したかっただけで死んでほしかったわけじゃない……こんな結果って……!」

東条「最初からセミラミスさんはこのつもりで……!?」

ナーサリー「でしょうね。全部が終わったらキーボに射殺されることくらいはわかっていたはずよ」

最原「ならロムルスさんの結界の中で全部の工程をやれば、自分の身の安全だけは確保できたはずじゃ……!」

最原「……いや、そうか。動機があったから、か」チラッ

赤松「……私のことを本気で篭絡するつもりだった。だからロムルスさんの結界の中に入るわけにはいかなかった……」

アンジー「本人の望んだ通りだねー。『自業自得』で堕ちる必要のない場所まで堕ちた」

赤松「BBさんに続いて、これで二人目」

赤松「……ネコアルク!」

ネコアルク「コーヒーガム食べます?」サッ

赤松「び、微妙なフレーバーのガムだね。それは後! ねえ、私の言うこと、聞いてくれるんだよね!」

ネコアルク「そりゃもちろん」

赤松「私と一緒に地獄の底まで付いてきて!」

真宮寺「赤松さん? 何を……!?」

赤松「私はッ!」

赤松「……私はせめて……この学園での犠牲者を出すことを止められないのなら!」

赤松「それが人間であろうとなかろうと! せめてノーカン扱いにはしたくない! 約束も果たしてない!」キィィィンッ

入間「赤松。まさか、その聖杯を使う気か!?」

赤松「『長生きさせる程度なら余裕』なんでしょ。まだ死なせない……!」

赤松「ごめん! 時間かかるようなら、先に脱出しておいていいよ! これは私の『エゴ』だから!」バッ

ネコアルク「赤松嬢に続くにゃーーー!」バッ

ネコカオス「男は赤に染まれ」バッ

ネコリンボ「異星の神の加護あれかしィィィィィ!」バッ

星「……本当に行っちまった。穴の中に」

天海「なんかネコアルクの中に一体変なの混じってなかったっすか?」

白銀「全部変だと思うけど」
500 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/09(火) 19:47:48.79 ID:FeVmFuah0
百田「セミラミスの方は赤松に任せるとして、キーボの方はどうなった!? ドテッ腹に鎖ぶち込まれてたぞ!」

真宮寺「一瞬のことだったから自信はないけど、あまり深々とは刺さってなかったヨ。もっとも電子ウイルスを仕込んだらしいから深刻度はわからない」

キーボ「……!」ググッ

アンジー「……ずっと飛んでたのに、着地して苦しんでるみたい」

獄原「でもよかった。死ぬほどの傷じゃなさそうだよ」

キーボ「……まさか、こんな……こんなくだらないマネを……!」ピコピコピコピコ

最原「ん?」

入間「……」

入間「は?」

星「どうした入間」

入間「あ、い、いや……気のせいか? 今サウンドエフェクトがおかしかったような……?」

白銀「は? 何言ってるの?」

キーボ「すぐにウイルスの除去を……ぐっ」ポッ


テテッテテテッテテ


夢野「んあ!? 本当じゃ! なんかキーボがコケたときに聞き覚えのあるサウンドエフェクトが……!」

白銀「●リオだ! スーパーマリ●ブラザーズの被弾の効果音だ! 8bit音の!」

キーボ「まさか……まさかこんな!」キュワンキュワンキュワン(キノコで巨大化のサウンド)







キーボ「ボクの行動のすべてが懐ゲー風のサウンドエフェクトに変わってしまう電子ウイルスだなんてーーーッ!」テッテッテーテレレテーレレーレー

全員「本当にくだらねぇーーーッ!?」ガビーーーンッ

白銀(そして今のはマリ●のゲームオーバーのBGMだーーーッ!)
501 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/10(水) 21:05:46.29 ID:7tTQWhnU0
キーボ「除去……すぐにクリーニングを」ピッピッ ブブーッ

デケデケデケデケデケデンッデデンッ

白銀「あ。冒険の書が全部消えた」

キーボ「うおおおおおおおおおおおあああああああああああ!」ズピョーンッ

百田「……嘘だろ。除去できねーのか? アイツ一応最新技術の塊だったよな?」

ロムルス「もはやあれは毒というより呪いなのだ。だから生半な方法では除去できない」

ナーサリー「その凄まじい技術力で作った電子ウイルスの内容が物凄くくだらないのは……ご愛敬といったところね」

茶柱「愛嬌で済まされますかッ! これが!」

白銀「普通、こういう命と引き換えの置き土産ってもうちょっと有用じゃない……? いくらなんでもこれはちょっと」

キーボ「……ぐう! 仕方……ありません! 行動そのものに支障はないので作業を続行します!」ガチョーンッ

アンジー「わあ。機械の駆動音も物凄くチープだねー」

最原「言ってる場合じゃない! アンジーさん!」

アンジー「ん?」

夢野「アンジー! 周りをよく見るんじゃ! 赤松とセミラミスが消えて、ネコアルクもそれに追随したということは……!」

アンジー「あっ」

キーボ「あとのターゲット候補はあなただけです」ピュインピュインピュインピュイン

キーボ「あなたさえ消えれば巌窟王さんは消える!」

アンジー「……」

アンジー「ううん、それは順序が……逆だよ!」

キーボ「!」





「クハハハハハハハハハハハハ!」
502 :「裁判場が特異点化しましたにゃー」「なんで!?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/11(木) 21:01:40.72 ID:OBZgQ+jF0
ザッ

「ああ、そうだとも! この俺の目が黒い内は! マスターに指一本触れること能わぬと思え!」

「俺が! そう、この俺が……!」

最原「巌窟王さ……ん!?」ガーンッ

ザッ

ボロボロ王「夜長アンジーのサーヴァントだ!」プルプルプルプル

最原「既に重傷だーーーッ!?」ガビーーーンッ

ナーサリー「……ちょっと時間稼ぎさせすぎたわね、セミラミスが。ダメージが八割足に来てるわ」

天海「勝てるんすか!? あれで! 勝てるんすかね!? 流石の巌窟王さんでも!」

ボロボロ王「安心しろ。あと一撃を食らえば確かに気を失いそうだが、逆に言えばあと一発も貰わずに攻略すれば済む話」


クルッポー!


ガンッ バタリッ


かつて巌窟王だったもの「」チーンッ

最原「倒れたーーーッ!」ガビーンッ

獄原「なに!? 何が起きたの!? 何が激突してきたの!?」オロオロ

夢野「あ……あ、あ、あやつは……!」

ハトムギ「くるっぽー」

夢野「ハトムギじゃーーーッ! 研究教室のケージが壊れて脱走してきたんじゃーーー!」

最原「第三の学級裁判のときの鳩ォ!? なんで今!?」

ハトムギ「くるっぽー!」

夢野「うんうん……おお。セミラミスに献花しにきたのか。偉いぞ」

真宮寺「偉いけど今はやめてほしかったヨ」

巌窟王「くっ……あ、危なかった……」ムクリ

ナーサリー「あ。ギリギリのところで大丈夫だったみたい。幸運ね」

最原「心臓が止まるかと思った……!」
503 :「カルデアのマスターと接触しましたにゃー」「この人が噂の!?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/11(木) 21:07:31.47 ID:OBZgQ+jF0
巌窟王「さてと……余興も終わったところで、終幕にするか。すべて」ボオオウッ

キーボ「同じことの繰り返しです。すべて無駄ですよ」

巌窟王「いや。もうさっきまでとは状況が違う。背景も、何もかもな」

キーボ「……!?」

巌窟王「勝算があるのはどちらか……答えは! 貴様の身を持って知るがいい!」ギュンッ



ボンッ



最原「……また二人とも、空に飛んだ!」

百田「くそ! 早すぎて目で終えねぇぞ! また!」

茶柱「……ん?」

東条「あら……これは……どうして」

夢野「どうしたんじゃ。転子。東条」

茶柱「いえ、気のせいか……ああ、すみません。気のせいじゃありませんでした」

夢野「?」








茶柱「キーボさんが遅くなって、巌窟王さんが速くなってます」
504 :「期間限定加入ですにゃー」「え? 私ネコアルクとセット扱い!?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/12(金) 20:39:57.82 ID:gf2jmi1D0
キーボ(……身体が……重い、のとはちょっと違う! 頭でわかっている挙動と実際の動きに……ラグがある!)

巌窟王「貴様の身体の中に植え付けられたのは拡張機能ではなく電子ウイルスだ」

キーボ「!」

巌窟王「つまり『現状ある機能を割いて無理やり懐ゲーサウンドエフェクトを出させている』のだから、挙動が重くなって当たり前だろう?」

キーボ「……」

キーボ(ボクの動きが遅いことはそれで説明が済むとして、彼の動きが先ほどよりも鋭敏になっているのは何故だ)

キーボ(さっきと今とで何が違う!? 何が……!)

巌窟王「クハハ! それでもまだ疑問が残る、という顔だな!」

巌窟王「なに、簡単なことだ。今までの俺は『校則の影響下』にいたからこそ生徒によって何度も殺された」

巌窟王「だが、当然だが校則というのは所詮ローカルルール。場が学園でなければ効力を発揮しない」

キーボ「学園で無ければ……?」

キーボ「あっ」ピコーンッ








最原「……モノクマーズパッドがバグってる」

百田「んだ、こりゃ。校則のページが文字化けしまくってんぞ。ピクトグラムもバラバラだ」

ナーサリー「今この空間は才囚学園ではなくガーデンズオブバビロン。少なくとも浮遊している限りはね」

ナーサリー「着地するまでの僅かな間、この場は学園じゃない。だから校則の影響もない!」

ロムルス「枷のすべてを外した巌窟王は無敵である。最原終一の進路を選んだ時点で、キーボの勝ちの目は無くなっていた」

最原「……勝てる。どんなにキーボくんが武装していようと、これならもう絶対に! 巌窟王さんは負けない!」
505 :「イベントショップ店員ですにゃー」「アーネン……えと、何? この店名」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/13(土) 18:59:31.34 ID:8NEEMbqU0
キーボ「まだです! 『最原終一の進路』では、魔術的武装を部分的に残したボクを鹵獲する算段になっていた!」

キーボ「つまり、いかに校則の縛りから解き放たれようが、魔術武装を手にしたボクが巌窟王さんを下す可能性はまだゼロじゃない!」ボーンッ

巌窟王「……まさか、冗談だと思ってはいないだろうな?」

キーボ「え」



ヒュンッ



キーボ「……あ?」

キーボ(懐に入って――この位置は……!)



ドシュウウウウウウウッ



キーボ(回避ッ! 回避ッ! 間に合った! まだ追いつける……! まだ食らい付け――!?)

ビュンッ

巌窟王「もう一度言おうか」ガシイッ

キーボ「背後……に……!?」ギギッ

巌窟王「一発も貰わずに攻略すれば済む話だ」ボオオッ




バガァァァァァァァンッ!



キーボ「ぐああああああああああああああああっ!?」
506 :「お買い上げありがとうございまーす! よっ御大尽!」「疑問なんだけど貰ったアイテムってどこ行くの?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/14(日) 23:21:14.95 ID:dMcwPhaK0
ヒューーーーーッ ポカッ

キーボ「があっ!」ポテッ ポテッ

キーボ(こ、この電子ウイルス……うざったい。かなりの衝撃で地面に叩きつけられたのに、その効果音すらポップにされた!)

キーボ(必要な機能を必要なだけ追加拡張できる超高校級のロボットの才能を完全に逆手に取られている!)

キーボ(アンジーさんは巌窟王さんが守っている。その他の生徒は全員ロムルスさんが結界で囲っている)

キーボ(赤松さんを追ったところでネコアルクに邪魔されるだろう。巌窟王さん本体は……何か勝算がないと、このままでは……!)

巌窟王「貴様は運がいい。実に運がいい」

キーボ「ッ!」


ボカーーーンッ


キーボ「……キャノンの砲身が……蹴りで潰された。蹴りで!?」

巌窟王「この学園で犠牲になったのは二人。BBとセミラミスだけだ。結局のところ才囚学園の生徒は一人たりとも死んでいない。それがとてもいい」

巌窟王「もしもあと一人死んでいたら……しかもそれが才囚学園の生徒だったりしたら、俺は貴様を殺すしかなくなっていたかもしれないな」

キーボ「……?」

巌窟王「わからないか? 貴様は危険な綱渡りを渡り切った先にいる。今!」

巌窟王「数多くの偶然が貴様を生かしている。才囚学園の生徒が全員死ななかった偶然。カルデアのサーヴァントがこの場にやってきた偶然」

巌窟王「結果何が起こったか! 語るまでもない。俺は貴様に手心を加える余裕がある!」

巌窟王「殺さずに貴様を止める方法も!」

巌窟王「そして止めた後、貴様が帰るべき場所も! すべてが誂えたかのように!」

キーボ「!!!!!!!!」

巌窟王「帰るがいい、キーボ! 最原たちが貴様の帰りを待っているぞ!」

キーボ「……」
507 :「霊基再臨だにゃー!」「着替え……? 持ってきてないけど」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/15(月) 20:27:21.21 ID:pAtPmj2Q0
キーボ「声が止まない……まだ止まるわけには行かない……!」

巌窟王「貴様にも事情はあるか。ならば虎の子だ。指令紋章を使わせてもらおう!」ボオオオッ

キーボ「その紋章が当てにしたような効果かどうかはまだ――!」

巌窟王「わかるのだよ! 良くも悪くも、この空間は視聴者がすべてだ!」

巌窟王「さっきのことを思い出してみろ。この紋章は間違いなく人格の復元プログラムだと『視聴者が』認めたはずだぞ」

キーボ「……がっ!?」

巌窟王「迂闊すぎたな。境界を跨いだ貴様の! 負けだ!」

キーボ「……!」カチッ

巌窟王「!?」

巌窟王(……今、なんのスイッチを押した? いや、気を取られるな! 早くキーボにこの紋章を叩き込……!)ポンッ





ヤシの実「」アロハー





巌窟王「」

キーボ「」

巌窟王「……」

キーボ「ヤシの実ですね」

巌窟王「いや?」ブンッ



バガァァァァァァンッ!



キーボ「がああああああああああああっ!?」

巌窟王「知っての通りヤシの実は固い。振り回せば鈍器くらいにはなる。そして――」

キーボ「」ブツンッ

巌窟王「……皮肉だな。あそこで俺に指令紋章を使わせていれば」

巌窟王「……いや。今となってはわからないが、見た目だけは間違いなくくだらない切り札だったぞ」
508 :「ネコリンボが裏切ったにゃー!」「うわぁ! 聖杯奪って超活き活きしてるぅ!」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/16(火) 21:24:46.41 ID:UuYV2q7Z0
キーボ「が……が、が、が……」ピーガガガーッ


バチバチバチバチッ


キーボ「ぐああああああああああああああああっ!」

巌窟王「……反応は劇的だが……これは本当に復旧できているのだろうな……?」

キーボ「あ……あ、あ、あああああああうううううう……!」

キーボ「巌窟王、さ……ん……!」グッ




ボキイッ




巌窟王「!?」

巌窟王(頭のアンテナを引きちぎった!?)

キーボ「ボクは! 正気に! 戻った!」シャキーンッ

巌窟王「おかえりと言っておこう」

キーボ「ただいまです」

キーボ「……涙を流せたら泣いていましたよ。ああ、長い時間会えてなかったような気がします」

巌窟王「今までのことは覚えているのか?」

キーボ「セミラミスさんに致命傷を与えたことを含め、暴走していたときの記憶もキチンとボクの中に残ってます」

キーボ「……巌窟王さん。最後にあなたに伝えなければならないことがあります。時間がありませんので手短に」

巌窟王「……」
509 :「レイドイベントにゃー! かかれ全国のカルデアマスター!」「秒間619体のペースで殺されてるー!?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/17(水) 21:50:21.10 ID:OUMZ30si0
最原「……静かになったね」

百田「やったか!?」

白銀「百田くん、それフラグになっちゃうから黙って」

アンジー「……あっ! 念話が入ったよー!」

最原「アンジーさん! どうなったって!?」

アンジー「キーボの復旧に成功したって!」

全員「……ッ!」

百田「シャアアアアアアアアアアアアアアッ! やりやがったな、あの野郎ォ! 後でシャンパンタワーだ!」グッ

春川「シャンパンシャワーでしょ。タワーじゃホストクラブのヤツだから」

巌窟王『……だが一つ問題が残っている』

アンジー「え?」

巌窟王『キーボを連れてそちらに帰る。話は直接、顔を突き合せて行おう。幸いにして猶予はまだあるようだ』

アンジー「……」








巌窟王「では移動するぞキーボ」ズリズリズリ

キーボ「引きずらないで貰えます!? 土が隙間に入り込みます! 土が!」ガーンッ

巌窟王「自力で移動できるのならそうしよう」ズリズリズリズリ

キーボ「うおおおおおおおおお超不満ですーーーッ! 最後なのに! 最後なのに!」
510 :「イベントもクライマックスですにゃー」「ぺんぺん草も残ってない……」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/18(木) 23:59:35.47 ID:Hk4YVM3U0
巌窟王「戻ったぞ」ズリズリズリズリ

最原(引きずってる!)ガビーンッ

百田「キーボ! 俺のこと思い出せるか!」

キーボ「当然じゃないですか。忘れられないですよ、泣く子も憧れる超高校級の宇宙飛行士さん」

茶柱「……はあ……緊張の糸が切れちゃいましたよ。これでやっと……やっと……!」ヘタッ

最原「……」

キーボ「……あれ? 引きずられてること気にしてるの、もしかしてボクだけですか!?」ガビビーンッ

最原「大丈夫だよ! 僕も気にしてたから! なんで引きずってるの!?」

巌窟王「体力の温存のためだ。許せ」

キーボ「わかりました!」カッ

真宮寺「わあ寛大」

最原「いや巌窟王さん側の都合もそうだけど、なんでそこまでキーボくんが消耗してるのかを訊いたんだよ」

巌窟王「それについての回答は少し時間を割かねばならないな。ロムルス。結界の解除はまだだぞ」

ロムルス「……?(怪訝そうな顔で結界の一画を指さす)」

王馬&天海&百田「……」ビターーーーーッ

巌窟王「まだ待たせておけ」

白銀「結界に張り付きすぎだよ! いや待ち遠しいのはわかるけどさ!」

最原「……時間を割く?」

茶柱「?」

最原「待ってよ。それ、時間が無い人の言葉じゃないか。これから、これ以上何も起こるはずが……」

巌窟王「そうは行かなかった。それだけの話だ」ヒョイ

最原「……なにその……デジタル時計?」

白銀「!!!!!!!!!!!!!」ガーンッ







巌窟王「キーボに搭載されていた自爆機構だ」

最原「……」

全員「は?」
511 :「目標! 見つけたにゃーーー!」「必ず連れ帰る! まだ終わってない!」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/19(金) 19:41:09.74 ID:UY9mhClE0
ナーサリー「……なんで持って帰ってきてるの? そんなものどこへなりとも捨ててくればよかったでしょう? 選択肢はトラッシュオンリーよ」

巌窟王「厄介なことだが……学園のどこへ捨てても無駄だ。キーボの言うことにはな」

キーボ「この学園を丸ごと吹っ飛ばす程度の威力があります。なにせ学園のドームの内側だと衝撃の逃げ場がありません」

キーボ「これを起爆させたが最後、なんの防衛機構も持っていない人間は粉々でしょう。DNAの一片も残るか怪しい」

獄原「安心してキーボくん! ロムルスさんの結界は頑丈だから!」

王馬「相変わらずバカだなーゴン太は。全員中にいるわけじゃないでしょ?」

獄原「……あっ!」ガビーンッ

巌窟王「アンジーと赤松、それと他でもないキーボ自身はそうは行かない」

巌窟王「このままだと、この三人は確実に死ぬ」

最原「……入間さん! あれ解体できる!?」

入間「時間次第だ! 巌窟王! ちょっとそれよく見せろ! タイマー部分を重点的にだ!」




アト 4 フン 50 秒




星「……どうだ。入間」

入間「……回路の複雑さに対して短すぎる……!」

キーボ「これでも初期設定のままだから最長ですよ。これを起動させたときのボクは慌てていたので、時間設定ができなかったんです」

巌窟王「一度起動したが最後時間設定はいじくれない。だがキーボから取り外すことは辛うじてできた」

巌窟王「その後遺症でキーボは歩くこともできないがな。入間。後があるのなら直してやれ」

アンジー「!」

最原「……考えがあるの?」

巌窟王「当然だ」
512 :「ネコリンボが逃げたにゃー!」「誰かアレを止めて!」「任せてください!」「……包帯だらけのBBさん?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/20(土) 13:02:19.21 ID:MyFgEubZ0
巌窟王「二つほど考えがある。まず一つ目は、業腹だがセミラミスに再度頼る案だ」

巌窟王「セミラミスが聖杯を赤松に渡したのは見えていた。あれを使えば瞬間移動くらい容易いだろう。ロムルスの結界の内側にも入り込めるはずだ」

巌窟王「魔術的要素が薄くなった今のこの空間内でも三人程度なら問題無い」

アンジー「楓ならさっきセミラミスを追ってそこの穴に入っちゃったんだよねー」

巌窟王「そうか。ならばすぐに連れ戻して――」





キングプロテアの頭「」ミヂッ……




全員「」

ロムルス「……穴が塞がれてるな」

最原「ていうかアレ何ーーー!?」ガビーーーンッ

ナーサリー「キングプロテアの頭……かしら。巨大化して穴をみっちり塞いでるのだわ」

獄原「え? キングプロテア? え? 花? あんな大きくなかったよね?」

巌窟王「……」ゲシゲシ

キングプロテア「……!」イタタタタタ

巌窟王「……」

巌窟王「プランBだ!」ズバァァァァンッ!

春川「あ。諦めた」

白銀「ていうか下で何してんの赤松さん!」

入間「バカ松はよおおおおおおおお! 本当によおおおおおおお! 状況を悪化させてばかりでよおおおおおお!」orz

星「喚くな入間。あのとき赤松を止めなかった俺たちの連帯責任だと思え」
513 :「ネコリンボを捕まえたにゃー!」「ありがとうキング……えっと、なんちゃらさん!」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/21(日) 22:15:38.98 ID:erFFGBd50
キングプロテア「……プロテア……プロテアですから……」ミヂミヂッ

巌窟王(一体どんなシチュエーションならこんな台詞が出る……? 頭皮より下は全部地下だからよく聞こえん)

アンジー「もう一つの案ってー?」

巌窟王「俺の宝具を使って学園に穴を開ける。そして爆弾を外に投棄。そうすればすべて解決だ」

ナーサリー「なるほど。単純ね。でも完璧だわ」

巌窟王「聖杯が使えない以上、仕方あるまい! ああ、安心しろ。外に誰がいたとしても生徒が選んだのは『最原終一の進路』だ」

巌窟王「投棄した爆弾で攻撃するような意地汚いマネはしないさ」

最原「……それって」

アンジー「お前はどうなるの?」

巌窟王「消えるに決まっているだろう。最初からそう言っていたはずだ」

アンジー「……」

巌窟王「……ム? アンジー、貴様。まさかとは思うが、今更後悔などしていないだろうな?」

巌窟王「貴様は最初からモノクマの進路に投票などしていなかった。俺との別れは覚悟の上だろう?」

アンジー「後悔はしてないよ」

巌窟王「クハハ! だろうさ! この俺のマスターなのだから――」



ガシイッ



巌窟王「!?」

アンジー「……別れを惜しんでるんだよ! そのくらい言わなくてもわかってよぉ!」

巌窟王「待て。マントをそんな乱暴に掴むな。皺になる……」アタフタ

最原(動揺のあまりしょうもないことを言っている……!)
514 :「んじゃあ後はカルデアに任せるにゃー」「あ……イベント終了?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/22(月) 21:56:26.35 ID:FJhmeAfn0
巌窟王「……」

巌窟王「アンジー。俺は貴様への第一印象が最悪だった」

アンジー「……」

巌窟王「嫌いな知り合いに似ていてな……いや、あのころの貴様はそれより酷かった。何もかもが『神様の言う通り』なのだからな」

巌窟王「自分の意思がどこにもない」

アンジー「今は?」

巌窟王「もう何回も言ったはずだぞ。今の貴様は俺のマスターとして相応しい」

巌窟王「お前はお前の意思で怒れる。泣ける。憎悪できる。直近だと主にその対象は最原だったが」

最原「……お腹痛い」ズーン

茶柱「黙ってください」シーッ

巌窟王「アンジー。どこまで行ってもサーヴァントは『使い魔』だ。マスターに意思が無ければ始まらない」

巌窟王「ましてや、本来なら聖杯戦争を戦い抜くのが主な仕事だぞ。『願い』も持たない人形には務まらない」

巌窟王「……ああ、違う。そうじゃない。今の言い方は遠回しすぎた」

アンジー「……?」

巌窟王「意思を持て。願いを持て。貴様には才能があるのだから、それだけで世界は美しく色付く」

巌窟王「俺が俺の進路で復讐を推したのは……貴様が心の底ではそれを望んでいると思ったからだ」

アンジー「……ちが……うよ……!」

巌窟王「なに?」

アンジー「アンジーは……アンジーはね……お前の意思を汲みたかった……!」

巌窟王「……」

アンジー「お前が何者だとかはもう本当にどうでもよくって! アンジーは! アンジーの意思で! お前と一緒に!」

アンジー「別れがすぐそこだったから、同じ道を歩んでいたかったんだよ!」

アンジー「だって今まで楽しかったんだもん! だから、これからだって楽しくしたいんだよ!」

アンジー「一緒が……楽しいってアンジーが……」ズビッ

アンジー「それがアンジーの『願い』だったから!」

巌窟王「……」

巌窟王(俺が見たかったもの。俺が作りたかったもの。今、それが目の前にある)

巌窟王(俺は夜長アンジーが心底何かを願う姿を見たかった)

巌窟王「……そろそろだな。充分だろう」ゴオッ

アンジー「ッ!」









巌窟王「お別れだ。アンジー」
515 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/24(水) 21:06:38.43 ID:z6UEY0gQ0
百田「待てよ! 俺たちもテメェに言いたいことがあんだよ!」

巌窟王「……」ゴオオオオオオオッ

百田「待てって! 火力上げてんじゃねぇ! 発進準備にはまだ早ぇってーの!」

夢野「……いや。もうよい。これ以上は無理じゃろ。それに無意味じゃし」

百田「んだとォ……!?」

夢野「あやつは知っておるわ。ウチらがどれだけ巌窟王との別れを惜しんでいるか」

夢野「……よーく知っておるじゃろ。お主は忘れてても、巌窟王は忘れない。ここで過ごした日々のお陰でな」

王馬「だろうねー。特にこの十六人の生徒の中で最もわかりやすいのは百田ちゃんだろうしさ」

百田「テメェが言うと褒められてる気がしねぇな。絶無だな」

茶柱「最原さん。あなたはどうです?」

最原「僕?」

最原「……」

最原(言いたいことは沢山あるに決まってる。沢山ありすぎて短く絞り込むことが不可能だ。だから何も言えない)

最原「……僕は……」

巌窟王「最原。最後に貴様に言いたいことがある」

最原「!」

巌窟王「最後の最後。ささやかな復讐だ。貴様、結局最後まで嘘だと明かさなかったな」

最原「……何のこと?」

巌窟王「『白銀のやったことを絶対に許せない』、という下り。あれは嘘だろう」

白銀「え」

巌窟王「……どれだけ怒ったフリをしたところで無駄だ。貴様はいつか白銀を許してしまう」

巌窟王「おそらく貴様が思っているよりも遥かにくだらない理由ときっかけで」

最原「……だったら何?」

巌窟王「何でもないさ! ただ貴様の嘘を暴いてやりたかった! それだけのことだ!」クハハハハハハ

最原「ええっ!?」

真宮寺「本当にささやかだネ……最原くんに言論で叩きのめされまくったことを余程根に持ってたんだ……」

巌窟王「黙れ!」
516 :爆死の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/25(木) 22:57:42.90 ID:rFQnBfSz0
おっすオラ爆死太郎!
今日はBBに挑んだけど石が滅んだのでなしだぞ! 泣いてる
517 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/26(金) 20:56:14.94 ID:U7b4Z57Q0
最原「……はあーーーっ……巌窟王さん」

巌窟王「なんだ!」

最原「憧れてる。巌窟王さんのことをかなり前から格好いいと思ってるんだ」

巌窟王「……は?」

アンジー(あ。言った)

最原「別に僕は巌窟王さんのこと嫌ってないよ。一度としてそんなこと言った? 言ってないよね。言動にはそれなりに気を付けてたんだからさ」

巌窟王「……やたらと俺に噛みついてきたのは?」

最原「憧れてる人に勝てたら最高に気持ちいいでしょ。そういうこと」

王馬「うわあお。最高に負けず嫌いなヤツの理屈だね、それ」

巌窟王「……そうだな。憧れているヤツに勝てれば、それは喜悦の極みだろう」

巌窟王「俺は一度として貴様に負けたことはないがな!」ズギャアアアアアアンッ

ナーサリー「嘘は良くないわ」

ロムルス「往生際の悪さ選手権重量級の世界チャンピオンである」

巌窟王「フン! もう喋ることはない!」ゴオオオッ

ビュンッ

ナーサリー「あ! 逃げたのだわ!」

最原「……嘘じゃないなあ。残念だけど、さっきの彼の言葉は。一度だって僕は巌窟王さんに勝ててない」

ロムルス「?」

最原「相手の得意分野で上回らなきゃ、そんなの勝利じゃないよ」

最原「僕が欲しかった強さはああいうのだ。縦横無尽に飛び回って、僕たちの手の届かない場所にある希望を掴む」

最原「ああいう、理不尽な強さだよ」

アンジー「……彼も……」

アンジー(彼も終一に憧れてたんだよ。終一にしか持てない強さにさ)

アンジー(……なんて、分かり切ったことだからもう言わないけどねー)
518 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/27(土) 23:17:35.93 ID:c5riuyDC0
巌窟王「……」

巌窟王(思えば……随分と長居したものだ)

巌窟王(狙う場所は頭上。先ほどキーボが誤射したドームのヒビ部分!)

巌窟王(道を示す。道を作る。障害は軒並み排除する!)

巌窟王(これが最後の宝具となる!)

巌窟王「叩き壊してやる……まとめてさよなら絶望学園だ!」ゴオオオオッ

巌窟王「虎よ、煌々と燃え盛れ!」






真宮寺「始まった……分身し始めたヨ!」

ギュンッ ギュギュギュギュギュンッ

入間「……多くね!? 今まででぶっちぎりの多さだぞ!」

星「最後だからな。張り切っているってのが一つ。もう一つにして最大の要因は……」

キーボ「もう邪魔は無いとは言え、今まで僕たちを閉じ込めていた堅牢にして鉄壁の壁」

キーボ「時間があるのならともかくとして、短時間でブチ破るのならあれでも足りるかどうか……!」

アンジー「……」

アンジー(思えば……随分と一緒に過ごしたよね)
519 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/28(日) 20:23:27.40 ID:ldYnDayo0
アンジー(行かないで。一緒にいて。まだアンジーと遊んで欲しい)

アンジー(包み隠さないアンジーの本音は、そう叫んでいる)

アンジー(……でもその本音の中に、アンジーの本当の本当の本当の本音がある。弱さからくる叫びじゃない)

アンジー(彼の背中をずっと見てきたから得た、強さがそこにある)

アンジー(アンジーの強さは……アンジーの望みは……!)

アンジー「……すうううううううっ……!」






巌窟王「……!」

巌窟王(足りない! まだ、これでも間に合わない! このままでは……!)

「負けないでッ!」

巌窟王「!」






アンジー「お前はアンジーのサーヴァントなんでしょ! ならアンジーの望みを叶えてよ!」

アンジー「勝って! ぶち壊して! 隔てるものが何もない綺麗な青空をアンジーに見せて!」

アンジー「恩讐の果てに何があるのか、このアンジーに見せてよ!」

アンジー「エドモン・ダンテス――!」

巌窟王「……!」




――ガチリ。

頭の中で、小気味良くそんな音が聞こえた。
すべてのピースが揃ったパズルか、百年越しに動いた古時計の歯車のような。




????「身体が軽い……」

????(初めて名前で呼ばれた)

????「……」



そう。彼女こそは超高校級の美術部にして、とある復讐のサーヴァントのマスター。夜長アンジー。
彼女が自らのサーヴァントの名前を間違えるなどありえない。ならば、そこにいるのはきっと復讐の完遂を目論む鬼ではなく。



エドモン「……クハハ」



幸せな結末へ直走る、復讐劇の果てに『人』へ戻った男。エドモン・ダンテスでしかありえない。



エドモン「クハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
520 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/29(月) 21:37:51.38 ID:gLeP+baZ0
バガァァァァァァンッ!

最原「……!」

最原(もう目を開けているのが辛い。太陽を直視しているような本能的な拒否反応がある!)

最原(……というかもう、あれは『モロ』だ……!)

百田「黒い……太陽……!」

王馬「へえ。やるねぇ。虚構の空を、真っ黒な嘘の太陽でぶち抜こうって気なんだ」

白銀「……眩しい」

東条「でも見て。アンジーさんもキーボくんも涼しい顔よ。私たちに害はないみたいね」

獄原「見た目ドス黒くて、実はゴン太たちを思いやってる太陽。うん! まるっきり巌窟王さんみたいだね!」


ズズズンッ……!


獄原「……頑張れ! 巌窟王さん! 頑張って!」

夢野「見せてみるんじゃ巌窟王! お主の最後の根性! 最後の魔法を! 二度と忘れないよう鮮烈に!」

春川「思い出せないなら思い出せないなりに……アンタのことを信じてる。だから!」

春川「ん……? 思い出せない? 待って。前にもこんな台詞を吐いたような……古傷が疼くような……」

夢野「良い思い出じゃないから忘れておいた方が、よいぞ?」

天海「最後まで信じて! 俺たちが巌窟王さんのことを信じてるってことを!」

星「行け……行け! お前さんの大事な物を守るために!」

茶柱「みんな応援してます! これでダメだったら承知しませんからね!」

入間「ぶち抜いて犯れーーーーーーッ!」

キーボ(今酷い誤植があったような!)ガーンッ

百田「終一。お前もなんか言ってやれ! 最後だぞ!」

最原「巌窟王さん……」

最原「……みんな終わらせてくれ! すべてを!」






全員「頑張れええええええええええええっ!」ズギャアアアアアアアアンッ
521 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/30(火) 22:37:31.17 ID:AOlOxVlb0
エドモン(まだだ。体に力が漲ってくる! 一体どうしたことか、俺の身体は!)

エドモン(BBに曰く、俺のことを正しく認識すれば本来の力を取り戻せるらしい)

エドモン(だがそれだけではない! 俺の背中を押すこの力は! 胸に広がるこの熱は!)

ビキビキビキッ

エドモン「姿を晒せ! 俺たちの前に! 今日! この場で!」

バキンッ ビシビシビシッ

エドモン「安全圏からアイツらを嬲る時間はもう終わりだ! 貴様らには同じ土俵に立ってもらう!」

エドモン「出会い頭に命は取らない……だが! 一切の隔たりの無い空だけは一方的に奪ってやる!」

エドモン「我が名はエドモン・ダンテス! 希望と共にある彼らを導く者!」

エドモン「そして――!」ゴオオオオオオオオッ



ガシャガシャガシャッ!




エドモン「才囚学園のアヴェンジャーであるッ!」




バリイイイイイイイイインッ
522 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/31(水) 21:44:32.96 ID:doLUvusT0
FGOイベントラストスパートなので今日はなし!
523 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/02(金) 18:04:41.60 ID:nCJiEzqW0
エドモン(壁が壊れた! もう時間はない! 後はこれを思い切り外に放り投げておしまいだ!)

エドモン「間に合え!」ブンッ

エドモン(タイマーを見る余裕もなかったが……! 終わりだ! これで全員無事に!)

エドモン「……」

エドモン「まだやりたいことがあったな」



カッ



ロムルス「これは……マズイな」パチンッ

最原(ロムルスさんが手を鳴らしたと思ったら、結界が急に真っ黒になった)

天海「ロムルスさん?」

ロムルス「音と光に警戒したのだ。流石は爆弾。モロに食らうとしばらくスタンする威力である」

春川「そんなことまでわかるの?」

ロムルス「皇帝特権は直感も拝借できる」

最原「アンジーさんは……」

ナーサリー「伯爵のこと、きっと念話で注意を促してるはずね。耳と目を塞いでいれば大丈夫よ」

入間「一歩も動けねぇキーボは今頃悲惨なことになってるだろうけどな」ハンッ

最原「……」

最原(……最期を、僕たちは見ることができなかった)

最原(僕たちの目の届かないところで、彼は……)
524 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/04(日) 00:45:34.05 ID:cF6G9GHc0
ロムルス「……」

ナーサリー「……」

ロムルス(このときばかりは、二人きりにさせるべきであろう)

ナーサリー(マスターとサーヴァントの絆はワンオフだもの。邪魔は……しない方がいいわ)

最原「……?」








結界の外


「……アンジー。起きろ。アンジー」

アンジー「ん……?」

アンジー(あれ。アンジーは……なんで倒れてるんだっけ)

アンジー(……そうだ。確か、爆弾の音と光が目と耳を塞いでても予想外に大きすぎて……ていうか身体が吹っ飛んで真後ろの結界に叩きつけられて)

アンジー(身体が痛い。でも起きれないほどじゃない)

ムクリ

アンジー「……わぁ」

アンジー(周囲は一変していた。アンジーたちを閉じ込めていた檻は完全に叩き壊されて……)

エドモン「見覚えのある星空だ。やっと知っている星座を拝めたな」

アンジー「……」

アンジー(こちらに背を向けるエドモンの姿は透けていた。変な光った粒子も見える)

アンジー「……どうしてこっちを見ないの?」

エドモン「なに。大した理由などないさ。爆発の影響で顔が傷だらけになったとでも思っておけ」

アンジー「さっきお別れだとか言ってたのに」

エドモン「俺は前からこうしていたぞ。分身に余力のあるときは、アンジー。少しだけでもお前にリソースを割く」

エドモン「今もそうしているだけだ。それに……」

アンジー「それに……なに?」

エドモン「ありがとう」

エドモン「……と、まあ。礼を言い忘れていたと思ってな。それだけだ」

アンジー「……本当に……お前はさー……」
525 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/04(日) 22:30:05.11 ID:cF6G9GHc0
アンジー「……アンジーは、お別れは言わないよー」

アンジー「たった今決めた。胸に銘じた。アンジーは生涯をかけてやりたいことができた」

エドモン「言ってみろ」

アンジー「もう一回エドモンの顔を見る!」

エドモン「なに?」

アンジー「どこにも行けないのが本当なら、それはきっと消滅って意味じゃない。どっかに何かは必ず残る!」

アンジー「アンジーは生涯をかけて絶対にそれを掴む! その途中の旅路でいっぱい楽しいもの、美しいもの、心に残るものをありったけ見て!」

アンジー「辿り着いたら、それをエドモン! あなたにもちゃんと、わかるように見せてあげる!」

アンジー「アンジーだからできること! アンジーにしかできないことを! 誰に何と言われようと絶対に成し遂げてやるッ!」

エドモン「道半ばで倒れたらどうする?」

アンジー「それでもきっと後悔は残らない。やらないよりはずっとマシ!」

アンジー「……だと思うんだよねー」

エドモン「……やれやれ。随分と厄介な女をマスターにしてしまったものだ。この俺を恐れさせるとは、まったく大した女傑だな。アンジー」

エドモン「だが……それがお前の進路だと言うのなら、俺がどうこう言うのは筋違い、か」

エドモン「もう学園もないのだから」スタスタ

アンジー「……エドモン……振り返らないのはさ……」


ボロッ


ポタポタッ



アンジー「アンジーの泣き顔を見ないため……?」グスグス

エドモン「……さてな。何か言ったか。アンジー」

エドモン「俺のマスターが、俺の門出を涙で汚すわけがない。そうだろう」

エドモン「当然、俺は笑っている。俺が笑っているのだから、お前も笑っているはずだ」

エドモン「胸を張れ。お前が掴んだのはこれ以上のないハッピーエンドだ。そうでなければ、これまでの苦しみが報われないだろう!」

アンジー「……うん。視界がぼやけるから涙はもう二度と流さない」グシグシ

アンジー「ありがとう。もうアンジーは真っ直ぐ前を向ける。あなたの名前だってもう二度と忘れない」

アンジー「あなたの名前は――!」
526 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/06(火) 20:51:28.19 ID:wLlhRlmt0
キーボ「……はっ! 起きた! 凄い音と光で一瞬フリーズしてた!」ピョイーンッ

キーボ「あれ!? セミラミスさんの8bit化ウイルスがまだ消えてない!? マリ●のジャンプ音が!」ガガーーーンッ

キーボ「しかも爆風のせいでちょっと転がったみたいだし!」

エドモン「……」スタスタスタ

キーボ「あ。巌窟王さん! ボクの身体のウイルスって除去できるんですか……って」

キーボ「……」

キーボ「泣いて……る?」

エドモン「幻覚作用だろう。セミラミスのウイルスが進行してきたようだな」

キーボ「え゛」

エドモン「速やかに入間に除去してもらえ。このままだとどの道死ぬからな」

キーボ「い、いやだーーーっ! ここまで来てボクだけ死ぬのはヤだーーー!」ジタバタ

エドモン「……」スタスタ

キーボ「うわぁぁぁぁぁ……って、どこへ?」

エドモン「どこでもいい。俺はエドモン・ダンテスだぞ。この場限りの存在であるならば――」

エドモン「巌窟王とは違う。どこへ向かうのも悪くはないさ」

キーボ「……オルボワール。エドモン・ダンテス。あなたの進路にも幸多からんことを」

エドモン「俺は――」

キーボ「終わりませんよ。ここで消滅したとしても」

キーボ「ボクたちの進路に影響を与えた時点で、何一つとして終わりません」

キーボ「ボクたちの進路にはいつもあなたがいます。何と言おうが勝手にボクらが連れて行きますからね」

エドモン「……」

キーボ「あ、それと……泣いてたことは一生黙ってますから! ご安心を!」

エドモン「先に地獄で待ってるぞ」スタスタ

キーボ「ボクはそんなとこに行く予定ありませんけど!?」ガビーンッ

キーボ「まったく! 巌窟王さんはまったくもう!」プンスカ

キーボ「……あれ。巌窟王さん? 巌窟王さーん?」

キーボ「……」







キーボ「いつも通りだったなあ。消えるそのときまで」

キーボ「……うん。泣きもしてなかったかも……な……いつも通りだったから」
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/08/07(水) 17:59:16.43 ID:f7qPMhtx0
真名伏せて再登場とか無いんか…?
528 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/08(木) 23:56:38.02 ID:MPv1zc2j0
巌窟王「……ハ。俺はこの期に及んで……何故こんな場所に」

巌窟王(マンホールの中。出口と書かれた罠の在処。俺はそこを死に場所と決めたらしい)

巌窟王(我ながら随分と女々しい)

巌窟王(だが……)

巌窟王「……すべてを昨日のことのように思い出せる。ここでアイツらと出会ってすべてが始まり……」

巌窟王「そして終わる」

巌窟王「……卒業アルバムの完成くらいは目にしておきたかった。今となってはそれが唯一の心残りだな」

巌窟王「それだけしか心残りがないくらい、好き勝手したということだが」

巌窟王「……」





アンジー『……』

アンジー『神様、ですか?』





巌窟王「違うな。俺は――」

巌窟王「ただの、人だ。星空に心を打たれ、別れに涙するような」

巌窟王「そういうただの人間になってしまった、この場限りの影法師だ」ウトウト

巌窟王「……アンジー……俺も……楽しかっ……」コックリ コックリ

巌窟王「…………」


パキンッ サラサラサラサラサラ……




静寂の中で男は目を閉じた。
すべては闇の中に消え、痕跡は跡形もなく。

だが、それが彼にとっての救いだった。
何も残らないからこそ、彼は呵責無く学園の法則すら捻じ曲げてみせたのだから。

復讐鬼からヒトへ戻った男は、結果的に物語と同じ末路を辿る。

どこへなりとも消え去った。

伴がいないことだけが、物語と今との相違点だった。
529 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/10(土) 23:16:02.57 ID:156BgLom0
最原「……アンジーさん」

最原(ロムルスさんが結界を解除したのは、光と音を遮断してそう時間が経たない内だった)

最原(でも爆発という瞬間的なものを警戒したにしては、少し長すぎる時間だった)

最原(別のものを隠したかったんだ。そう確信するには充分なくらい)

最原(僕たちの前には、ただ前を真っ直ぐ見るアンジーさんがいる)

最原(そして偽りの空を映し出していたドームに開いた穴からは、胸が痛くなるくらいの綺麗な星空が見えて……)

最原「巌窟王さんは行ったの?」

アンジー「うん」

最原「……そう。そ……っか」

アンジー「でもアンジーはもう泣かない」

アンジー「信じられる物から目を逸らさないって決めたから」

アンジー「……一周回って元に戻っただけだねー。にゃははー!」

ビュオウッ

百田「お……風だ」

夢野「気持ちいい風じゃのー」

春川「……炎の熱気はもうないね。さっきまでの業炎が嘘みたい」

最原(その風は僕たちに告げていた。すべては終わったのだと)

最原(……苦しいことだけじゃない。その中にあった楽しいことや、綺麗な思い出も全部過去のものへと変わって――)






ナーサリー「……退去が始まったようね」キラキラキラキラ

ロムルス「ローマは彼らに残す言葉はない。あったとして、それはすべて巌窟王の残したものに埋もれてしまうだろう」キラキラキラキラ

ロムルス「無言の内に消えるとしよう。それでいい。それがいい」

ナーサリー「……?」

ロムルス「どうかしたか?」

ナーサリー「キングプロテアの退去が始まってない……?」

ナーサリー「地下と地上とでセミラミスの宝具の効果が違うのかしら」

ナーサリー「……大した問題じゃないわね。どちらにせよ、彼女も戻るでしょう」

ナーサリー「すべてはハッピー。世はこともなく、すべては流れに流れいく。なるようになってお終いよ」

ロムルス「……さらばだ。才囚学園よ」


シュイーン


キングプロテア「……」モゾモゾ
530 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/10(土) 23:16:02.62 ID:156BgLom0
最原「……アンジーさん」

最原(ロムルスさんが結界を解除したのは、光と音を遮断してそう時間が経たない内だった)

最原(でも爆発という瞬間的なものを警戒したにしては、少し長すぎる時間だった)

最原(別のものを隠したかったんだ。そう確信するには充分なくらい)

最原(僕たちの前には、ただ前を真っ直ぐ見るアンジーさんがいる)

最原(そして偽りの空を映し出していたドームに開いた穴からは、胸が痛くなるくらいの綺麗な星空が見えて……)

最原「巌窟王さんは行ったの?」

アンジー「うん」

最原「……そう。そ……っか」

アンジー「でもアンジーはもう泣かない」

アンジー「信じられる物から目を逸らさないって決めたから」

アンジー「……一周回って元に戻っただけだねー。にゃははー!」

ビュオウッ

百田「お……風だ」

夢野「気持ちいい風じゃのー」

春川「……炎の熱気はもうないね。さっきまでの業炎が嘘みたい」

最原(その風は僕たちに告げていた。すべては終わったのだと)

最原(……苦しいことだけじゃない。その中にあった楽しいことや、綺麗な思い出も全部過去のものへと変わって――)






ナーサリー「……退去が始まったようね」キラキラキラキラ

ロムルス「ローマは彼らに残す言葉はない。あったとして、それはすべて巌窟王の残したものに埋もれてしまうだろう」キラキラキラキラ

ロムルス「無言の内に消えるとしよう。それでいい。それがいい」

ナーサリー「……?」

ロムルス「どうかしたか?」

ナーサリー「キングプロテアの退去が始まってない……?」

ナーサリー「地下と地上とでセミラミスの宝具の効果が違うのかしら」

ナーサリー「……大した問題じゃないわね。どちらにせよ、彼女も戻るでしょう」

ナーサリー「すべてはハッピー。世はこともなく、すべては流れに流れいく。なるようになってお終いよ」

ロムルス「……さらばだ。才囚学園よ」


シュイーン


キングプロテア「……」モゾモゾ
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