巌窟王「これは、嘘で世界を変える物語だ」 アンジー「あなたの名前は――」

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282 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/09(水) 20:52:03.00 ID:ekeziLWE0
百田「で。結局どうやったところで救出するころには難易度ナイトメア&ザ・ヘルになってるのはわかった」

百田「だけど茶柱が最初言った通り『議論して誤答率を下げてから回答』っていう大雑把な方向性でいいんじゃねーか?」

茶柱「事前情報なしで回答しまくってたらどんどん焦りと恐怖が募ってたでしょうから、その情報があるのとないのとでは大違いですけどね」

茶柱「今までの正答は『仲間』と『首謀者』ですか……」

真宮寺「首謀者は特にコメントすることはないけど、仲間っていうのは過去形じゃないかな? これでも正解になるの?」

天海「俺からしてみれば現在進行形で仲間っすよ。悲しい茶々入れないでくれっす」

茶柱「その他に白銀さんを現す言葉というと……」

茶柱「うがああああああ! 基本情報くらいしか出てこないです! 超高校級のコスプレイヤーとしか!」

カチッ

モノクマ「不十分でーす」

ワラワラワラ

イシュタル『ぎゃあああああああ! なんか造形がエロ方面にひたすら最悪な蟲がーーー! これ私じゃなくてパールヴァティ―とかの方が適任じゃない!?』

入間「チン……」

百田「言わせねぇよ!?」

最原「……話の流れから正答を拾うんだ……こっちのタイミングはお構いなしなんだね」

白銀「……」

夢野「まだだんまりしておる」

最原「……イシュタルさん、まだ余裕があるよね」

赤松「ん? そう、だね……入間さんを処刑するためのおしおきでしょ? あの人、明らかに入間さんよりバイタリティ高そうだし」

赤松「しばらくは大丈夫じゃない?」

最原「次の回答、ちょっと前置きが長くなるんだ。説明しないわけにもいかないし、かなり大事なことだしね」

巌窟王「構わない。アイツなら大丈夫だ」

最原「うん。あのさ、なんで白銀さんが首謀者なんだと思う?」

最原「そもそも、首謀者ってどうやって選ばれたのかなって話なんだ」

星「簡単に言えば……『能力』じゃねーか? こういうシチュエーションに適応できる人材。手近にいる中で最も適した者だろう?」

最原「それも多分ある。最終的にはそれだろうけど、実際に彼女を選んだ理由は『経歴』なんだよ」

星「経歴……だと?」
283 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/10(木) 20:56:58.76 ID:lUNynB+H0
最原「天海くん」

天海「……うん。もういいんじゃないっすか。話しても」

最原「この中に、コロシアイを二回経験した人が二人いる」

百田「あ?」

最原「一人は天海くん。彼の才能、実は僕はかなり前の時点で名前だけは知ってたんだ」

最原「超高校級の生存者。それが彼の才能だよ」

春川「いや知ってるよ。天海本人が言ってたでしょ。生存者特典を使って赤松とか夜長とかを見つけたわけだし……」

春川「……ん? 二人?」

百田「二人……」

百田&春川「……!」バッ

白銀「……!」ビクウッ

最原「直接的に彼女のことを『そう』だと言うのはちょっと待ってね。イシュタルさんの余裕が消えるから」

最原「もっとわかりやすく言うと、もしかしたら能力の点の優劣で天海くんが選ばれる可能性があったってことだ」

星「!」

入間「?」

最原「これ以降、ちょっとした軽口が正答になっちゃうかもしれないからできる限り黙ってて。僕の話を聞いてほしい」

最原「もしかしたらショックかもしれないけど」

巌窟王「……」





最原「白銀さんは一方的な加害者じゃない。これが僕の答えだ」

最原「……僕たちにとって最悪の答えだけどね」
284 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/11(金) 22:17:43.26 ID:mwZhBPlR0
最原「白銀さんは天海くんと同じだ。証拠も色々ある。証人もいる」

最原「証拠は白銀さんの動機ビデオで、証人は天海くん」

巌窟王「……!?」

最原「天海くんの動機ビデオと、白銀さんの動機ビデオは内容が同一だったんだ。つまり天海くんが忘れてるだけで二人の『経歴』は同一なんだよ」

最原「あ。ごめん、ちょっと訂正。天海くんが忘れてただけ、だ。今はもう思い出してるよ」

最原「ええっとね……だからさ……」

最原「……」

最原「言ってて僕自身物凄く辛くなってきた……!」

百田「ん!? なんでだよ! 俺たちにとってすげぇ嬉しい情報だぞ、それ!」

茶柱「ええっとですね。要は白銀さん、転子たちとはくらべものにならないほどの改造を受けてたんですよ」

茶柱「記憶だけじゃなくって容姿まで変えられる始末だそうで」

百田「全然嬉しい情報じゃなかった……! 反吐が出るほど胸糞悪ィ」

春川「……」オロオロ

夢野「……今は非常時じゃし、無理に励ましの言葉を捻り出さなくともよいぞ。後回しにするんじゃ、後回し」

百田「でも大体はわかったぜ。そうか、白銀が『天海と同じ』か……大分ボカされてるけど、ああ。理解したぜ」

獄原「……」

星「……」

東条「……」

入間「……」

百田「……?」

百田「ん? お? あれ? おいおい終一。理解できてねぇヤツらがいるみてぇだぞ。やれやれって感じだな、ははっ!」ケラケラ

茶柱「い……いや。これ見たことあります。さっきの最原さんと同じ顔です」

茶柱「信じられない情報を急激に頭にぶち込まれて、なにもかも信じられなくなった人の顔です」

百田「……はあ?」

春川「……どうしたの? そこまでありえないって話でもないと思うよ? 確かに胸糞悪いけどさ」

東条「ありえないわ」ギンッ

春川「え。でも……」

東条「あ、り、え、な、い」ギロリ

春川「????????」

最原「やっぱり……そういう反応になるよね……」
285 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/12(土) 22:46:04.07 ID:ZjNU9ptc0
春川「何が理解できないの? 確かにここまで信じられないものが連発して出されてきたけど……」

春川「この件だけを拒む理由はなに? 反証があるの?」

東条「……」

茶柱「……東条さーん? あ、あれ。どうしちゃったんでしょう。ここで黙るなんて彼女らしくないっていうか……」

茶柱「まさか本当に反証がないってことはないでしょうし」

最原「ないよ。事実だから」

最原「反証がないけど認められないんだよ」

最原「……当然だ。だって彼女は……!」

白銀「敵じゃなきゃダメだから」

最原「!」

最原(……ここで口を開くのか。キミが……!)ギリッ

百田「白銀?」

白銀「……困るんだよね? 私が敵じゃないとさ。その前提が崩れたら真っ直ぐ立っていられなくなるから」

星「やめろ。それ以上に口を開くな。テメェに聞くことなんてもう一つたりともない」

白銀「もう喋ることしかできないでしょ。私にはさ……!」

白銀「本当に、見事になにもかもぶち壊してくれたよね! 自分自身の復讐をする理由すら壊すなんて、どこまであなたたちは愚かなの?」

百田「……終一?」

最原「とても単純な構造だよ。『正義の味方には倒すべき悪が必要』なんだ」

最原「それも生半な作り物(フィクション)じゃない。産まれた時点で殺されなければならないことが決定されてるような、純粋培養の悪の華が」

最原「百田くんたちにはわからないよ……! 何もかもがフィクションで構成されてて、たった一つだけ僕たちを明確に苦しめてるリアルの象徴がさ……!」

最原「それすらも用意されたものだって聞いたとき、どれだけの喪失感があったか」

百田「……テメェら……!」

最原「結末はどうでもいい。殺すのもアリだ。許すのだって簡単だ。どこかに閉じ込めて二度と僕たちの目の前に現れないようにするのだって可能だよ」

最原「白銀さんが本当に敵なら、それだけで『何か』が変わったはずなんだ」

茶柱「……でも実際にはそうじゃない。そういうこと、ですか」
286 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/13(日) 20:27:33.56 ID:pyrqHhE50
百田「……どう思う。終一。テメェはもう受け入れちゃいるんだろ。その事実を」

最原「白銀さんのやったことは絶対に許さない! でも理屈で考えれば、白銀さんが天海くんと一緒だとわかった以上は……!」

最原「恨むだけ体力と精神力の無駄……だよ」

最原「……だからと言って、じゃあ次に誰を恨めばいいんだって話になっちゃう。何を壊すために生きればいいのかもうわからないんだ……!」

巌窟王「いや? この際、もう白銀に対してはそれでいいだろう。奇しくも最原、貴様があれこれ手を回した影響で白銀は死ななかった」

巌窟王「白銀が天海と一緒だと言うのなら、そいつにはもう殺す価値すらない」

白銀「……」
287 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/13(日) 20:45:17.05 ID:pyrqHhE50
最原「……」

巌窟王「わかるな? その憎悪を、次に誰に向ければいいか。貴様はわかるはずだ。諸悪の根源がなんなのか」ギンッ

百田「巌窟王。テメェ、やり口が段々悪魔そのものになってきやがったな」

百田「やらせると思うか?」

巌窟王「クハハ! 貴様の意見など知ったことではない!」

巌窟王「……と言うのは簡単だが、ここは学級裁判だ。そういうわけにもいくまい」

巌窟王「第一、この方向性で『俺の望む方』へと誘導するのは至難の業だ」

春川「……どういうこと?」

巌窟王「白銀への憎しみを理屈で断ち切る。最原なら可能な芸当だろうな。苦しんではいるが、そいつはそれができる人間だ」

巌窟王「今の最原なら、俺の力で充分『救える』。だが他はそうではない」

巌窟王「『白銀は悪くない』という理屈を、他の連中は絶対に受け入れない。理論での証拠がいくらあろうとだ!」ギンッ

春川「……!」キョロキョロ

入間「……」

東条「……」

星「……」

獄原「……」

春川「……そこまで憎い? そこまでイヤ?」

春川「そこまで疲れちゃったの? 誰かを恨まなきゃ、目の前を見ることもできないくらい?」

春川「……ねえ! なんか言ってよ! みんな!」

巌窟王「クハハハハハハ! ままならないな! 今の最原の状態なら充分篭絡できようが……!」

巌窟王「白銀への憎悪で身を焦がしていた連中は、そこから魂を動かせない! 白銀から世界への『憎悪の切り替え』が不可能だ!」

巌窟王「白銀を憎むことこそが、世界を憎むことだと信じていたのだろう?」

巌窟王「残念ながら、白銀すら『世界から犠牲にされた側』だ! とうに切り離されたトカゲの尻尾でしかない!」

巌窟王「……さあ。どうする最原? 貴様はこいつらを救えるか?」

最原「え?」

巌窟王「救えないのなら……無責任極まりなかったな。貴様はただ真実を振りかざして、仲間を傷つけただけだ」

巌窟王「……貴様は真実を追い求めるべきではなかった」

最原「――」





最原(……今のは……物凄く、カチンと来た)
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/14(月) 10:07:59.28 ID:vp7Lzi1kO
真宮寺と赤松は?っと思ってたけどこの二人は既に知ってたか。
289 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/14(月) 21:26:58.03 ID:aaoxF/yR0
巌窟王「さて。話はこれで終わりだろう? さっさと回答してしまえ。イシュタルに時間はあっても俺たちの時間はそう多くないのだから――」

最原「責任は取るよ」

巌窟王「……今、なんと言った?」

最原「確かに真実はみんなを傷つけるだけかもしれない。みんなから大事な何かを奪うだけかもしれない」

最原「……でも僕は、この学園で探偵役をやらされて思ったんだ。『それだけじゃない』って!」

最原「一度道を見失うことになったのだとしても、生きてさえいればきっと何かが見つかる」

最原「真実は、そのとき『もっと正しい選択』を掴む原動力になる!」

最原「前提が間違ってたのなら、もう一度やり直せばいい!」

巌窟王「……ほう」

最原「……一朝一夕で受け入れてもらえるとは思ってないよ。というか時間が解決してくれる問題なら僕だって情報の出し惜しみなんかしていない」

最原「でも僕は『真実を知るべきではなかった』なんて絶対に思わない! そんなものはただの臆病者の思考停止だ!」

最原「まだあるよ。『天海くんと同じ』以外に、彼女を現す言葉。それで多分モノクマも満足してくれると思う」

百田「終一。テメェ、なんか急に背筋が伸びたな。キレてんのか?」

アンジー「……」チラッ

アンジー(煽ったね?)ニコニコ

巌窟王(さて。なんのことやら)ニヤァ

巌窟王(ただ、この場に何人受け入れられない人間がいようと関係ない。学級裁判ではただ一人、最原だけが前に進めればいい)

巌窟王(自分の言葉のせいで誰かが傷つくのではないか。そんな無用な優しさのせいで議論が滞るのは本意ではないだろう?)

アンジー(……割り切りすぎだと思うけどなー。それはそれで)

巌窟王(なに。立ち止まった者を蔑ろにする気はないさ。アイツらもアイツらで、頭ではわかっているだろう)

巌窟王(前に進む以外に道はない、と。今の最原を見れば猶更なァ!)ギンッ

赤松「……念話で内緒話? ズルいなー、二人とも」

真宮寺「セミラミスさんと念話とかできないの?」

赤松「やめて。飽きるまでからかわれるのが目に見えてる。縁起でもない」ブルッ

最原「白銀さん。キミがなにに怯えてるのか、少しだけわかるかもしれない」

白銀「……」

最原「でも、ここまで来たら絶対に止まれない。悲鳴を上げても泣いても絶対に許さないよ」

白銀「だから何?」

最原「……だからさ」






最原「ごめんね」

白銀「……いいよ。私も……ちょっと逃げ疲れちゃったからさ」
290 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/15(火) 21:09:53.41 ID:ku+QdB2C0
最原「秤にかけてみよう。この場は曲がりなりにも学級裁判。証拠と証言がモノを言う!」

最原「白銀さんへの復讐をかねて、この場で彼女の正体を暴く!」

百田「おう! それで。何か手伝うことはあるか?」

百田「欲しい証言があればいくらでも証言してやるぜ!」

百田「終一のやることだ! 残酷なだけじゃ終わらねぇんだろ?」

夢野「……よいのか? 白銀はそれで」

白銀「バカだなぁ、夢野さん。今更私の心配してるの?」

夢野「んあ? しちゃダメなのか?」

白銀「……!」

最原(僕たちが先に進むために必要な証拠……)

最原「事件が起こったとき、罰の重さを計るのに必要な要素を僕たちは今まで議論してなかったかもしれない」

赤松「それは?」

最原「『そこに悪意があったかどうか』だよ。突発的な犯罪か、計画的な犯罪かだけでも罪の大きさは段違いでしょ?」

真宮寺「え? 情状酌量の余地を議論しようっていうの?」

巌窟王「導入からしてナンセンスだな……許せないと自分で言ったばかりだろう」

最原「それでも必要なことだと思うよ。この学園が始まった直後はどういう想定だったのかは知らないけどさ」

最原「『今』を見てよ。結果的に、生徒は誰も死んでないでしょ?」

天海「あれだけ色々あって、未だに誰も死んでいないっていうのは確かに奇跡的っすよね」

天海「……前のときは最初から最後までバカスカ人が死んでたっすよ」

最原「……正解をこの場で言うことはできる。でもそうなったら巌窟王さんはすぐにイシュタルさんを助けに行っちゃう」

最原「その後は最後の設問だ。時間があるかどうかわからない。できればこの場で聞いていてほしいんだ。それで納得してほしい」

最原「そうじゃないと戻ってこないからさ」

茶柱「戻る? 何が……あっ」

白銀「……?」
291 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/16(水) 21:46:29.27 ID:nJRGmLb10
東条「……まさかあなた……白銀さんの視力を元に戻す気?」

白銀「!」

最原「ついでだからそこまで欲張ってもいいかなって。議論するのが白銀さんの正体で、情状酌量の余地なら、別に不自然じゃないでしょ」

巌窟王(……煽り過ぎたか)イラッ

最原「忘れてるわけじゃないよ。僕は間違いなく巌窟王さんからこう聞いた」



最原『これから暴く真相の中に、白銀さんが悪くないって内容の真実が含まれてたとしたら……』

巌窟王『それでも、ダメだな』

最原『どうして!』

巌窟王『ヤツがやったことを俺は忘れない』

巌窟王『……多かれ少なかれ、本人にどうしようもない事情というものはあろうさ。だが限度はある』




最原「『覚えている上で』言ってるんだよ」ギンッ

巌窟王「業突く張りが……余計な希望を持つだけ無駄だぞ」

アンジー(……違うなー。終一は嘘を言っている。『彼』はあれでお人好しだから全然気付いてないみたいだけど)

アンジー(それを建前にしてもっとデカい欲求を満たそうとしている)

アンジー(具体的にそれが何かはわからないけどねー)

最原「じゃあまず彼女の行動から見える理念を整理だ。まずは二択。『彼女は勝つ気があったのかどうか』」

赤松「それ以前に、彼女の勝利条件ってなに? 当然だけど皆殺しじゃないよね。そんなのエグイサルを使えば最序盤で簡単にできるわけだし」

最原「番組側の人間である、とかのノイズを置いておけば、この学園の勝利条件はたった一つだけだよ」

最原「『生き残ること』だ。それも『生徒同士』っていう対等な立場で。これを仮の前提として話を進めよう」

最原「モノクマと組めるっていう最大のアドバンテージはあったけど、彼女の立場はそれを差し引いてもとにかく不合理だ」

最原「最初からコロシアイから隔絶された領域で、モノクマに生徒同士を煽らせておけば、校則に則って勝つのだとしても……」

百田「二人になった時点でコロシアイは終了だもんな。共食い状態になっちまえばある程度安全に生き残れる」

最原「適当なクロが勝利しちゃったら、その時点でシロの生徒ともども処刑だろうけどさ。それでも『誰にも殺されない』っていうのは大きい」

最原「誰にも認識されない十六人目の高校生。その権利をわざわざ放棄してまで僕たちの中に混ざったのは一体何故か」

最原「……そこは次の議題にしよう。勝負に勝つ気があったのか否かに関しては『最善手を放棄した以上、なかったと考えるのが妥当』だ」
292 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/17(木) 23:21:28.56 ID:dwd7JKxm0
最原「じゃあ次。勝利を放棄するに等しいマネをしてまで僕たちの中に混じったのは何故か」

最原「……僕たちのことを虐め抜くためって感じじゃないよね」

アンジー「アンジー、新世界プログラムの中でつむぎに相当痛い目にあわされたんだけど」

最原「それ本当に白銀さん? 違うよね。新世界プログラムで僕たちをハメたのって正確には白銀さんのアルターエゴだった」

アンジー「……」

赤松「うん。あれはアルターエゴ。白銀さん本人じゃないよ。燃やしちゃったし」

最原「この学園で最善手を放棄することは、命を放棄することと同義だ。『命より大事なことがある』からそんなことをする」

最原「白銀さんが本当に、僕たちを命懸けで虐めたがるような筋金入りの下衆なら、それは間違いなく『自分の手で』やるよね?」

最原「だって既に命を投げ捨ててるんだ。そこでわざわざ引く理由がない」

最原「だから僕たちを責め立てるため、という答えもこれまた否」

最原「さて。勝つ気がなく、僕たちを虐めることにも興味が無い。じゃあ彼女があとやったこととは何か」

最原「……たった一つだけあるよね。というより、この二つの要素で誘引された物が明確にこの場には存在してる」

最原「白銀さんへの憎悪だよ」

王馬「………………………………………………」

王馬「え? マゾ銀ちゃん?」

白銀「恥も外聞もなく茶柱さんに泣きつきたいんだけど」

茶柱「オーライでーす。そしてその次の瞬間から王馬さんの死亡確定でーす」カモーン

王馬「許してっ」キャピンッ

白銀「いいよ!」キャピンッ

春川「寒気のする馴れ合いやめて……」

最原「白銀さんの行動のすべてが、白銀さんの憎悪を呼び起こしている。じゃあなんで。王馬くんの言う通り、白銀さんの性的嗜好?」

最原「……違うよ。それも。僕たちを裏切る前の白銀さんのことを、僕は覚えてる」

最原「白銀さんはそういう方向性の異常さは、欠片も見せたことがない。命を賭けるほどの欲求なら、完全に隠し通すことは不可能だ」

最原「加虐に対して興味がなく、被虐に対しても同様。憎悪を一身に受けて白銀さんに起こったのは……」

最原「……敗北。それしかない」
293 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/18(金) 22:15:29.49 ID:YW4OcDFR0
最原「別視点から見てみよう。裏切る直前から、今に至るまで白銀さんにあった異常性とはなにか」

王馬「『仲間想い』でしょ」

最原「!」

赤松「……仲間……想い……?」

王馬「『分断』された後の白銀ちゃんのことは俺がよく知ってる。だからそこから先は俺が証言するよ」

王馬「その前に聞きたいなぁ。俺の評価、ちゃんと合ってた? こればかりは何も忘れてない最原ちゃんに訊ねるしかないんだけど」

百田「分断される前の白銀が、仲間想いだったかどうか、か? どうだ終一。王馬にしては割といい線行ってると思うぜ」

百田「気持ち悪いくらいのストレートだ……なんか裏あんのか?」

王馬「いや? ただ今の白銀ちゃんが可愛いなと思ってさぁ」

王馬「ちょっとずつ首を締め上げられるようでしょ?」ニヤァ

白銀「……こんなときだけ嘘を吐かないのってどうなの」

王馬「本気にするなよ。キミのことなんてさらさら興味ない」

白銀「!」カチンッ

春川「よしなよ。そいつの言葉に耳を貸すの」

春川「……最原」

最原「王馬くんが正解。ちょっと過激に言うなら白銀さんは『仲間』という言葉に雁字搦めにされてた」



最原『どうしてキミは夢野さんを殺したりしたの?』

白銀『えっ? 私が? 夢野さんを?』

白銀『……最原くん! 私が仲間を殺したりするわけないじゃん! 悲しいこと言わないでほしいなぁ?』ニコニコ



最原「新世界プログラムの中で行われた学級裁判。この一言がずっと気にかかってたんだ」

最原「だって本当に『夢野さんを殺してない』! この点に関して彼女は嘘を吐いてなかったんだから! それだけじゃない!」



白銀『……やめてよぉ! そんな顔で私を見ないで!』

白銀『だって……だって、仲間なんだよ! 私が夢野さんを殺すわけないじゃんッ!』



最原「この時点で殺されたはずだった夢野さんの名前とセットで、仲間だってことを繰り返してる」

最原「あのときは怖かった。でも今は気持ち悪いよ。だって裏切ってるはずなのに仲間アピールしてるんだよ?」
294 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/19(土) 21:19:28.58 ID:y8SLyUDF0
白銀『ふふっ。楽しみにしててね。あなたには第二弾があるから。巌窟王さんも味わってないとっておきのおしおきが、さ!』ニコニコ

アンジー『……ろして……ころして……』

白銀『やだ。仲間だもん』



アンジー「……そだねー。今から考えるとあれって未練だったのかも」

アンジー「もっとも、あれはアルターエゴの台詞だったけどさー。まあ『ほぼ』本人だから誤差の範囲だよねー」

天海「あっ。俺も心当たりあるっすよ! 分断の後で白銀さんに拉致られて……」

最原「あ、それはいいや。天海くんの場合はちょっと方向性変わっちゃうから」

王馬「じゃ、俺の番だね! 白銀ちゃんはさー。俺に『裏切りの協定』を持ちかけたんだ」

王馬「条件は『次のコロシアイでの首謀者の地位』。お世辞抜きにいい条件だったから俺もそれを飲んだんだよね」

王馬「こんな武器まで貰っちゃったりして」ガチャリッ

赤松「えっ? じゅ、銃?」

夢野「そ、それ……ウチを撃ったあの麻酔銃じゃな?」

王馬「麻酔銃だったんだ。自分で撃ったことないから全然知らなかったや」

王馬「さて。俺の証言はこれで終わりだよ。これで充分でしょ」

百田「早っ!」

百田「……でも確かに、そうだな。ああ。間違いねぇ。テメェが何を言いたいのか完璧に理解したぜ」

天海「そう……っすね。わかりたくなかったっすけど」

春川「白銀。あんたさ……」

白銀「……」





百田&天海&春川「これだけはないだろっ(でしょ)(っす)!」

王馬「てへぺろっ」キャピンッ
295 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/20(日) 16:36:04.07 ID:k2JZrfSk0
春川「確かに『コイツ』なら私たちのことを裏切りかねない。しかもこっちに残った連中の中では唯一『飴だけで』懐柔が可能だよ」

春川「他の連中を裏切らせるのなら人質を取るとか、どうしてもキツイ鞭になっちゃうから」

春川「でもさ! よく考えればわかるでしょ! 『裏切りやすいヤツを味方に付けること』は、それだけで破滅の秒読み、無限のリスクだ!」

天海「なんてったって『裏切りやすい』んだから当然っすよね。再度裏切り返される可能性とずーっと付き合わないといけないっす」

天海「彼と信頼を前提として組むことは百パーセント不可能っすよ」

百田「百歩譲って、王馬と付き合うことに利益があるとすれば、だ」

百田「それは『裏切られることを前提としたチーム』を組みたいときだけだ! コイツを操縦することが不可能だとは言わねぇが……」

百田「その場合、犠牲にしなきゃいけねーもんが多すぎる。場合によっては『命を含むほぼすべて』を諦めなきゃならねぇ」

百田「コイツと組むようなヤツがいたとしたら、そいつは相当追い詰められてる!」

王馬「うわっ。ボロックソ言うね……みんなして俺のことそう思ってたんだ……」

王馬「ありがとう! 最っっっ高の誉め言葉だよ!」キラキラキラキラキラ

天海「王馬くん……そういうところっすよ……」ズーンッ

最原「もしも……もしも白銀さんの想定通りなら、すべてが終わった後じゃないとそうは思わなかったのかもしれないけど」

最原「この裏切り協定はあまりにも酷い。王馬くんを味方に付けたってことは『裏切りを持ちかけた自分を裏切るように仕向けた』ってことに他ならない」

最原「さあ。これだけ証拠を並べ立てたんだ。これだけでももう確定に近いよね」

最原「白銀さんが何を狙っていたのか」

百田「……」






百田「自爆……としか考えられねえ」
296 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/20(日) 22:30:10.81 ID:k2JZrfSk0
最原「白銀さんが敗北した場合、得をするのは誰?」

最原「考えるまでもない。この才囚学園に生き残った全員だよ」

最原「白銀さんから見え隠れしていた異常性。狙っていた結末。実際に巻き起こったこと……これが僕の提出する証拠だ」

最原「彼女の行動は『仲間のため』! これが僕の答えだ!」

赤松「それは違うよ!」

最原「!」

百田「……やっぱりな。今のテメェなら反論すると思ってたぜ」

百田「でもよ。これ状況証拠ってだけじゃねぇ。実際に白銀がやったことを並べ立ててんだ」

百田「人は言動でいくら嘘を吐けても、行動そのもので嘘を吐くことは困難だぞ」

赤松「そうかな? 結局のところ、行動から何を読みとるかは解釈の問題だよ?」

赤松「それに、彼女が明確に気にしていたことがあったよね。夢野さんの学級裁判のときに最原くんが言ってたはずだよ」

最原「『演出重視』のことを言ってるの?」

赤松「自分の生存を度外視してることは確かに。信じられないけど、私にもそうとしか思えないよ」

赤松「でもさ。彼女が命をかけてる対象は仲間じゃない。演出だよ」

赤松「彼女は私たちをとことんコケにすることに命がけだった。王馬くんの裏切りに関してもそう」

赤松「正攻法で王馬くんの裏切りの策が上手く行ったら……つまり万が一王馬くんが白銀さんを裏切らなかったら?」

赤松「私たちにとって大打撃だよね。例えば茶柱さんとかを人質に取ったりしたら、その時点で私たちの勝ちの目は薄くなる」

赤松「心理面でも私たちに与えられるダメージが大きい。無限のリスクに釣り合うとは言えないけど、ハイリターンではある」

赤松「……ね? 結局は解釈次第。それで証拠と言われても困るよ」

巌窟王「クハハ! やはり春川の言う通り、なにかに怒ってるな? 赤松!」

巌窟王「随分と言い切るな? お前の主張も結局は、自分の言った通り『解釈次第』だと言うに!」

最原「……」

赤松「うん。怒ってるのは、今更隠すつもりもないよ」

赤松「ただし、別に最原くんのせいだけってわけじゃない」

最原「?」

最原(……その一言は予想外だったな?)

赤松「結構思い込み激しいな、最原くんも」

赤松「……最原くんのせいだけで怒るほど、私も短気じゃないよ」ギロリ
297 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/20(日) 23:06:47.00 ID:k2JZrfSk0
百田「……ん? 終一。赤松になんかしたのか?」

最原(赤松さんが巌窟王さんと共犯で白銀さんを殺そうとした……という事実をネタにしてゆすったってことがわからなきゃ意味不明な一言だな)

最原「……ごめん。なんのこと言ってるのかさっぱりわからない」

赤松「わかったって言われても困るんだけどさ。最原くんだけわかってくれればいいよ」

最原「……なんにせよ、赤松さんは白銀さんの善意を認めるつもりはないってことでいいんだよね?」

赤松「だって、そんなものないでしょ。仮に善意だったとして、今までのことが許される?」

最原「許されないね」

最原「……少なくとも僕だって許せない。だから何?」

赤松「はあ……?」

最原「『考える機会』を奪うことはないだろ。『もしかしたら許せる部分もあるんじゃないか』ってさ」

百田「それに更生の余地を与えることは、俺たちにとっても利益があるぜ?」

百田「なんせこのコロシアイの首謀者だ! コイツの情報がありゃ、巌窟王の提案よりいい案を出せるかもしれねぇ!」

赤松「そんな時間……!」

最原「ないだろうね。もしも本当に『白銀さんが救いようのない下衆』だったらの話だけど」

最原「『最初から僕たちの仲間』の場合のみ活路が開ける! そして今回の場合、白銀さんはそうなんだよ!」

白銀「……」

最原「証拠が不十分かな? なら仕方ないか」

最原「この場で即座に用意できる証拠、まだあるよ」

最原「この場で用意できる証拠は、あと二つしかない」

最原「……それで納得してくれない場合、三つ目の証拠を出すしかないけど……これだけは使いたくないな。赤松さんをこれ以上怒らせたくないし」

赤松「……?」

赤松(『卒業アルバム』のことを言ってる……? バカだな、最原くん)

真宮寺(持ってきてはいるヨ。万が一のためにネ。でもこれは仲間全員に必要になったときのための保険だ)

真宮寺(『白銀さんの弁護のため』になんか絶対に使わせないヨ……!)ニヤァ
298 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/21(月) 20:34:05.39 ID:FF0/V0hI0
アンジー「……ねえ楓ー。早めに意見は翻した方がいいと思うよー?」

赤松「なんで?」

アンジー「なんでって……こういうときの終一って凄く怖いしさー」

アンジー「……ね?」

赤松「……」

アンジー「うーん。聞く耳持たないかー。ならいいけど」

巌窟王「さあ。出してみろ最原! 即座に用意できる二つの証拠とは一体なんだ?」

最原「本。そして写真だよ」

白銀「!」

ナーサリー「……本?」

夢野「その本! まさか……!」

最原「モノクマでもわかる家庭料理レシピ百選」

夢野「やっぱりか!」

百田「やっぱりかじゃねーよ! 満を持して出してそれか!? い、いや……それなんだ!?」

最原「古今東西の拷問法が書かれた雑学本」

茶柱「料理ってそっちの意味ィ!?」ガビーンッ

最原「イラスト満載で、子供でもよくわかる内容だよ。子供にわかっちゃダメな内容だけど」

百田「知らねーよ!」

最原「確かに本の内容なんかどうでもよかったね。僕も半分くらいしか読んでないし」

茶柱「半分読んだあなたが怖いんですけど……」

最原「……問題は内容じゃない。それ以外の部分だ。『タイトル』と『厚さ』だよ」
299 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/22(火) 21:44:50.32 ID:1YwUbx5S0
バシッ

最原「ん!?」

ナーサリー「貸して」

百田「……いや貸してと言う前に奪ってんじゃねーか!」

ナーサリー「タイトル『モノクマでもわかる家庭料理レシピ百選』。縦30CM。横21CM。厚さ約10mm。ページ数152」パラララララ

ナーサリー「国際標準図書番号、なし。デザイン監修、編集、監修、すべてモノクマ」

ナーサリー「発行年月『オマエの誕生日』。発行所は『才囚学園』。非売品」パタンッ

ブワッ

最原「うわっ! ドレスの柄がモノクマカラーに!?」

ナーサリー「ありがとう、貸してくれて。お礼に本の情報を並べ立ててみたけど、どうかしら?」ヒョイッ

最原「あ、ああ。うん。これ以上ないと思うよ」

巌窟王「ナーサリーライムは本の英霊……というより物語の英霊だ。万が一内容について話したくなったらコイツに頼るといい。別に外観でも構わないが」

巌窟王「なに。『英霊を証拠品扱いする』なぞ、貴様なら慣れたものだろう?」

ナーサリー「別に直接的に本に触る必要はないのだけれども、一応貸してもらったわ。とても不道徳な本ね」

真宮寺「で。その不道徳な本のタイトルが、何だって?」

最原「この本、図書室の首謀者の隠し部屋の近くにあった本棚にあったんだ」

夢野「正確には発見したのは首謀者の部屋の中じゃぞ。『本来しまわれていたはずの場所が隠し部屋の近くの本棚』というだけじゃ」

最原「あそこあたりの本棚の、並べ方の順番は『タイトル順』なんだよ」

最原「で。首謀者の部屋で見つかったこの本を、本棚に戻し入れてみたら……」

最原「過不足なくハマったよ。本同士が詰まることもなく、かと言って隙間が大きすぎない程度にね」

赤松「それがどうかしたの?」

最原「過不足がないのが不自然なんだ」

最原「……だって、あの本棚は『既に一冊の本が焼失した後』なんだから」
300 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/23(水) 21:58:37.85 ID:nyS7HiUi0
最原「モノクマでもわかる写真術。覚えてる?」

夢野「当然覚えておるぞ。ただ、この本の違和感に気付いて、本棚を検めた時点ではもう『どこにも存在しなかった』がな。当然じゃけど」

百田「ちょっと待て。なんだその、写真術? それがどうしたってんだよ」

最原「やっぱり百田くんは覚えてないか……被害者が巌窟王さんだったわけだから当然だけど」

最原「実は最初の事件の被害者は巌窟王さんだったんだ。色々あって巌窟王さんは復活して、犯人の赤松さんも無事だった」

最原「その途中、少しだけ話題に出たんだよ。巌窟王さんがたまたま欲しがってた本。モノクマでもわかる写真術……」

天海「事件が終わった後で図書室に行ってみたら、その本はすっかり焼失してたっす。燃えカスが残るのみだったっすよ」

天海「多分、後後の王馬くんの台詞と行動を考えるに、巌窟王さんのビックリした顔が見たいがために燃やされたんだと思うんすけど……」

王馬「ああ。そういえば理由はまったく覚えてないけど、そんな本を燃やしたような記憶がぼんやりあるような……」

アンジー「実際に燃やしたんだよー。後で『彼』が物凄く恨み節まき散らしてたから間違いないねー」

巌窟王「……」

巌窟王「図書室だな? 同一タイトルの本が一つや二つあってもおかしくはないが」

巌窟王「……あの本は王馬が燃やした一冊だけだ。モノクマが補充しない限りは、もう二度と図書室には並ぶまい」

モノクマ「図書室の本の補充? ボクはそんなことしてないよ。更に言えば図書室の掃除の方もあまり小まめにはやってないなぁ」

最原「本棚にも触ってないんだな?」

モノクマ「もちろんです」ムフー

最原「そうか。じゃあ決まりかな……」

最原「……そうだ。記憶を失ってないみんなには改めて、件の本棚の詳しい座標を改めて言っておかないと」

最原「隠し扉へ向けたカメラ。第一の事件で巌窟王さんが倒れていた場所だよ」

最原「そして、写真術の本に関してはもう永久に消えているのに、料理本を本棚に戻すと『すべて揃う』」

最原「加えて、この料理本と写真術の本はタイトルが酷似しているとなると……」

最原「……段々新しい証拠の輪郭が見えてこない?」
301 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/24(木) 22:57:44.64 ID:00OzEERT0
赤松「最初の学級裁判でちょっとだけ触れたよね」

赤松「『もしかして赤松楓が隠しカメラのセットと一緒に、巌窟王さんおびき寄せのために写真術の本を同時にセットしたんじゃないか』って」

赤松「あのときは最原くんが否定した。『カメラを仕掛けた人と本をあそこに置いた人が同一人物だとは思えない』って」

真宮寺「限りなく可能性の低い偶然が重なった結果起こった悲劇……情報が足りなかったあの時点ではそう結論付けるしかなかった」

真宮寺「ククク……でも違うんだネ! その口ぶりだとさぁ!」

最原「偶然の可能性は消える。すべては必然だった」

最原「本に続いて、この写真が証拠だよ」ピラッ

モノクマ「拡大して上のモニター……の何枚かに出しまーす!」

百田「白銀? ……場所は図書室、だよな。階段側じゃなくて奥側の扉のあたり、か?」

最原「場所はそれで間違いないよ。問題は、これが撮影された時間だ」

最原「第一の学級裁判が起こる前なんだよ、これ」

春川「根拠は?」

王馬「俺が本を燃やしたタイミングでしょ」

最原「うん。この白銀さん、本を持ってるでしょ? タイトルは微妙に隠れちゃってるけど辛うじて『写真術』って読める」

ナーサリー「……」ジーッ

最原「全文はわからない。でも、白銀さんの持ってるこれこそが件の『モノクマでもわかる写真術』だよ」

最原「一冊しか存在しなかったはずの本が、この写真に写ってる。これが第一の学級裁判が起こる前だと主張する根拠だ」

最原「……白銀さんは一冊しか存在しないはずの本を持って、何をしたのか」

最原「決まってる。『本の入れ替え』だよ」
302 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/25(金) 23:57:36.87 ID:5xuU6JFi0
最原「さっきから意図的に黙ってる出戻り組はもう気付いてるよね。つまり図書室には写真術の本なんて無かった! 少なくともあの本棚には!」

最原「後から白銀さんが、本来そこにあった料理百選の本と入れ替えたんだよ!」

夢野「まさかこんな写真が『ここに』出るとまでは予想しておらんかったがの」

夢野「最初の事件のトリックについて、重要なのはとにかく『巌窟王の位置』じゃ。『砲丸の位置』でもよいが」

夢野「巌窟王の頭上にドデカい鉄骨が落ちて来る! とかならそこまで気を遣う必要はない。でも現実にはそうではなかった」

夢野「重さ、高さは問題ないとしても『命中率』にはどうしても不安が残る!」

夢野「じゃから保険が必要じゃった。ダメ押しとも言えるし、願掛けとも、ともすれば単なる『おまじない』とも言えるような極微量の底上げが」

夢野「ついでに、あからさまに図書室に向かうつもりじゃった巌窟王が、万が一あそこに来た場合の備えがな!」

夢野「それが写真術の本じゃ。あの当時の巌窟王は、卒業アルバムのために写真について書かれた本を欲しておったからな!」

夢野「……そういえば最原。お主、カメラをセットした後、ずっと階段傍の教室で見張ってたわけではなかったのか?」

最原「カメラを設置した後すぐ、ってわけじゃなかったからね。首謀者が僕たちと一緒にいる場合はタイムリミットギリギリにならなきゃ来ないだろう」

最原「そう赤松さんが言ったからさ」

最原「あのトリック全体を見るに『首謀者がなにかと理由を付けて大人数で地下に降りるはず』って予測した上での発言だったんだと思う」

赤松「百田くんの予定を偶然知ったからね。首謀者なら絶対にその計画にあえて乗るだろうって思ったんだよ」

赤松「わざわざ私たちの中に紛れ込むような人だし。そうじゃなきゃ最初からあの部屋に引きこもってる」

赤松「あの大爆音のトリックは、カメラを仕掛ける前日にすべて実験は終わったけど」

赤松「AVルームの細工だけは出来る限り計画実行直前、せめて当日に行う必要があった。あのAVルームって結構使用頻度高かったから」

赤松「で。『緊張でガチガチになってるから食堂でなにか食べてきなよ』という口実で最原くんを追い出して」

赤松「すべての細工を終えた後で悠々と最原くんを拾って、階段傍の教室に戻ってきたってわけ」

赤松「……念のために言っておくけど、それでも十七時だよ。あの事件が起こる寸前、つまり二十二時寸前まで見張ってたわけだから……」

巌窟王「五時間はあの教室にいたのか。退屈だっただろうな、死ぬほど」

最原「僕たちがいない間に首謀者が中に入ってしまったかも、という心配は元からしてなかったよ」

最原「入間さんの作ってくれたブザーだけは携帯してたからね。倉庫の赤外線センサーとは違ってこれは射程が長いんだ」

最原「いや赤外線センサーの方も後から長くなったけど……これの応用で作ったのかな」
303 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/26(土) 23:01:46.24 ID:7XbpdrVj0
最原「タイトルが酷似している理由はこれでわかったよね。本来そこにあったものと取り換えるとき、本棚がタイトル順ならどうしても似てしまう」

最原「……というか似てるヤツを急ごしらえで作ったんだ。よくもまあ間に合ったものだよね」

白銀「モノクマが一晩でやってくれました」

最原「次。白銀さんは本を作った際、意図的に増加させたものがある」

最原「本の厚みだ」

百田「あ? 本が厚くなると……何が起こるんだ?」

春川「……」

春川「取り出しにくくなる……」

百田「い、いやいやハルマキ。取り出しにくくなるからってなんだって……」

最原「確かに聞くだけなら物凄くショボい細工だよ」

最原「でも現実に、巌窟王さんはそのせいで赤松さんに殺されたんだ」

最原「……と、まあここまでなら、あくまで赤松さんの殺人計画の後押しでしかないんだけど」

最原「問題はここまでやっても『殺人計画が上手く行くかどうかわからない』ってところだ」

最原「命中率はかなり上がったけど必中じゃない。多分一割くらいの確率で外れてしまう」

最原「ここから先は白銀さんの話を聞いて判断するしかないんだけどさ……」

最原「もし外れたら何をする気だったの、白銀さん」

白銀「……」

最原「巌窟王さんが触っていなかったにも関わらず、隠し扉の本棚は動いた」

最原「ということは、白銀さんはあのとき隠し部屋の中にいたんだよね」

最原「……本当に本棚を動かすためだけにあそこで待機してたのかな?」

白銀「どうしても私の口から言わないとダメ?」

最原「うん。そうじゃないとダメだ」

白銀「……はあー……」
304 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/27(日) 21:28:27.68 ID:5uTnDdYF0
白銀「本当にこれだけはぜーーーったいに取りたくない手段だったんだけど」

白銀「赤松さんの砲丸が外れた場合は、私がやるしかないなって思ってたよ」ニヤァ

百田「!」

夢野「……ゴミ箱の中の砲丸」

白銀「ああ。やっぱり気付くよね。そうだよ。結局用済みになっちゃったから適当に捨てたんだけど」

夢野「……」

赤松「……ねえ。情状酌量の余地を議論したら、余計にドツボに嵌まってない?」

最原「いや。これでいいんだ。今の一言ではっきりした」

最原「彼女が真に何をしたがってたのかがね」

夢野「白銀よ……よもやそこまで……!」ギリッ

白銀「……?」

白銀「……ッ!」キョロキョロ

最原「本当に怖がってたのはこの光景、だろ。僕はこれを見せたかった」

最原「……白銀さん。キミの行動はなにもかも矛盾だらけだよ。なんでそんなことになったと思う?」

最原「抜群の行動力、モノクマの強権、僕たちのキャラクターを理解した上で行われる圧倒的な先読み」

最原「それらすべてを駆使して、何をしたかったのか」

最原「……『なにもしたくない』。それが答えだ。自分が死ぬのもイヤ。仲間が死ぬのもイヤ。終わるのがイヤ。裏切るのも裏切られるのもたくさんだ」

最原「自分の罪が裁かれるのも、裁かれないのも耐えられない」

最原「それらの願望を叶える方法はたった一つ。自分自身が、何一つとして誰にも理解できない『謎』であればいい」

最原「ずっと謎でいるのは難しいから、せめて自分が生きている間だけという限定条件付きで!」

白銀「い……いや……!」ガタガタ

最原「その可能性は僕が今、摘み取る。そんな希望を許すわけにはいかない! なんだって利用してやる!」

最原「……百田くん!」

百田「ああ……利害関係は一致してるよなぁ……なら仕方ねぇよなぁ……終一。てめぇの口車に乗ってやる」

百田「白銀」

白銀「!」ビクッ





百田「テメェが何言おうが、俺はテメェの仲間を辞めるつもりはねーぞ。絶対に」
305 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/27(日) 21:40:16.24 ID:5uTnDdYF0
赤松「……なに? なんでみんな、そんな顔してるの?」

赤松「今の言葉、聞いてたよね……? ならなんで……」

赤松「なんで白銀さんのことを『憐れんでる』の!?」

天海「今の一言が完璧に嘘だったからっすよ」

赤松「へ」

天海「……子供でももっとマシな嘘を吐く。言葉自体に嘘はなくとも、彼女の態度に嘘がある」

天海「本当に赤松さんの砲丸がハズレたらマジでやるつもりだったでしょうね! でも……」

白銀「ま、待って。ははは! おっかしいなぁ! 最後まで話を聞いてよ!」

白銀「私はさ! 巌窟王さんを殺しても、クロにはならないんだよ! 赤松さんに罪を全部押し付けるつもりだったからさぁ!」

白銀「赤松さんが犯人ってことにして……! 代わりにおしおきを受けてもらって学園生活を続行する気で……!」

春川「……もういいよ白銀。もうたくさんだから」

春川「この記憶が偽りのものだったとしても、誰かを『それっぽい理由で殺す』ことの辛さは知ってるから」

春川「『どの方向性に転ぶのもイヤ』なら……もう何もしなくっていいんだ! アンタは!」

白銀「な、何を……言って……」ガタガタ

巌窟王「……」

巌窟王(なんだ。何が起こっている? この空気はなんだ!?)

巌窟王「何故……白銀を守る方向で団結をする……!?」

巌窟王「貴様らはただ、状況が呑み込めていなかっただけだろう? 『何も知らない』から白銀を庇っていたに過ぎなかった」

巌窟王「それが何故……すべてを知ってなお、許す方へ向かっている……!?」

アンジー「わからなくっていいよ。少なくとも、この場で、お前だけは」

アンジー「……それがわからないあなたが好きだからさー。アンジーは」

巌窟王「……バカな……最原……!」
306 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/28(月) 21:28:18.89 ID:3w9DTCg+0
最原「もっと早い段階で気付いておくべきだったね、白銀さん。たとえ気付けてたとしても、他にいい言い訳を思いついていたとは思えないけど」

最原「あまりにもグズグズすぎる」

白銀「……」

最原「この場にいる、記憶を消された人たちは全員気付いてるから今更言うまでもない」

最原「キミのことをずっと信じてた夢野さんに至っては、料理百選の本の真実にはとっくのとうに気付いてる!」

最原「砲丸も、本も、写真も……これらがなければ真相に至れなかった。ならなんで!」

天海「なんで『こんな証拠がある』んすか? 真っ先に処分すれば何も無かったはずなのに」

天海「特に、最悪なのが写真っすよ。これ明らかに、アングルが最原くんの隠しカメラっすよね」

天海「これに関しては、記憶を取り戻した俺だからこそわかるヤバさっすよ」

天海「……赤松さんに罪をなすりつけて代わりにおしおきを受けてもらうつもりだった、か」

天海「その案は結局、九割の命中率が上手い具合に働いたから実行には至らなかった『ルール違反未遂』でしかない」

天海「でもこれは違う。校則に真っ向から反している!」

天海「『モノクマはコロシアイには関与しない』の校則にね!」

夢野「あのとき、写真の現像をしたのはモノクマじゃ。モノクマーズではなく、モノクマだったんじゃ!」

夢野「したがって、この写真を握り潰せるのもモノクマだけということになる!」

夢野「重要な証拠じゃぞ! 握り潰したら大変なことになる!」

夢野「最悪、握り潰して誰にも発覚されなければそれで済むが、現実にはこうやって最原に見つかっておる! ありえないじゃろ!」

夢野「写真なんぞ処分しやすい証拠ベスト3に入る! なんで後生大事に持っておったんじゃ!」

白銀「裁判のフェアさを維持するため……」

最原「建前だろ。すっかり騙されたよ。キミにあるのは行動力だけだ。自分の意思がない」

最原「……誰かに何かしてほしかった。されたかったんだ。それがキミの望みだよ」

最原「裁かれるのも、殺されるのも、傷つけられるのも、許されるのも全部良かったんだ」

最原「どこまで……どこまで生きることに疲れたらこんなことになるんだ……! ふざけるのもいい加減にしてくれよ……!」

百田「なら俺たちがやることはたった一つだけだ」

白銀「……!」





百田「裁かない。俺は白銀の罪を知らないからな」

百田「殺さない。殺すわけねーだろアホか」

百田「傷つけない。仲間を傷つける? 論外だろ」

百田「許さない。そもそも最初から怒ってない」

百田「俺たちは、白銀に『何もしない』」
307 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/29(火) 22:43:18.28 ID:joItBt9c0
最原(……真宮寺くんをあの場でタコ殴りにしたときと同じ気分だ)

最原(胃がムカムカする。体が怠くなってくる。とにかく息がものすごく苦しい)

白銀「最原くん……お願い。これ以上はやめて……お願いだから……!」ガタガタ

最原「これは僕の復讐だ。やめる道理がどこにある?」

最原「……キミはこれまでやらかしたことの責任を一切取らなくていい。取っちゃダメだ」

白銀「はっ……ははははは! そんな! そんなバカなこと」

最原「バカじゃないよ。キミを現す言葉は『天海くんと一緒』ともう一つ」

最原「ここまで言えばもう誰でもわかる。特に百田くんたちには」

最原(『被害者』。つまり――)

茶柱「……『転子たちと同じ』……ということですね」

最原「同じ境遇、同じ地獄に落とされた仲間だ。一体なにをどうして、そんな人を裁かなきゃダメなんだろう」

最原「時間の無駄だ」

王馬「考えてみれば、第一の事件のモノクマのタイムリミット、第二の事件の動機ビデオ……」

王馬「このふたつの動機に関しては『首謀者であるはずの白銀ちゃんにも有効』だよね! 本当に『天海ちゃんと一緒』ならさ!」

白銀「王馬くん!」

最原「もう悪あがきはよそうよ、白銀さん」

最原「……キミがやってきたことは全部無駄だった」

白銀「ッ!」ビクッ

百田「おい。終一……!」

最原「血反吐を吐くような努力、ご苦労様。余計なお世話だった……だけなら可愛いものか」

最原「キミのやったことは全部無意味だった」

白銀「いや……いやあ……!」

最原「こんな茶番劇の裏方に、よくも徹しきれたものだよね。僕にはまったく理解できない」

最原「キミはキミ自身が考えている以上に無能だった」

白銀「ひっ……ひうっ……うああああああ!」ガタガタ

最原「でも安心してよ。百田くんたちは相も変わらず仲間を続けてくれるそうだから」

最原「……キミはこの学園で『なにもできなかった』から。いや……」

最原「キミにはこれからも『なにもできない』。『誰も殺せない』から『誰も救えない』!」






最原「『無力』だ」

白銀「いやあああああああああああああああああああああっ!」
308 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/30(水) 23:34:53.26 ID:vuQiQmWD0
ゴッ

最原「がっ……!?」

茶柱「……転子はあなたのことを信じてます。信じてますが……それはそれとして死ぬっっっほど不快です」

最原「え。ちょっと待って。今、何を投げ……」ヒョイッ

ネコアルク「にゃあ〜〜〜星がくるくる回る〜〜〜」ピヨピヨ

最原「爆発物を無造作に投げないでくれるっ!?」ガビーンッ

赤松「それ以前に自立意識のあるロボットを投げないでよ……キーボくんじゃないけどロボット差別はダメだからさ……」

茶柱「……ここまで追い詰める必要がありましたか? 今までの努力は無駄だったと突きつける以上に残酷なこと、そうそうありませんよ?」

最原「二度と同じことをされないように徹底的にしておきたくって……当然私怨も入ってるけど」ダラッ

最原「うわ。血が出てる……かなり強く投げたね……おでこから結構出血が……」

百田「ツバでもつけとけ! あるいは茶柱のツバでもつけとけ!」

茶柱「!?」ガビーンッ

百田「……敵は決まった。確かに議論自体は無駄じゃなかったかもな。この場に敵が一人もいないってんなら……」

百田「俺たちの敵は『外の世界すべて』だ! 白銀にこんなことさせたヤツも、俺たちにこんな目をあわせたヤツらも!」

百田「目に物を見せてやるぜーーーっ!」

白銀「だからっ! それがダメなんだって!」

白銀「それが一っ番ダメなんだってば!」

百田「お?」

白銀「私がっ……私がなんの理由もなくこんなこと考えたと思ってるの!?」

白銀「ちょっとでも勝算があったのなら、仮にそれがどんなに小さくたって、それに賭けてみるのが一番簡単だよ!」

白銀「でも実際には違う! 世界なんて相手にしてられない! たったの十六人……それも、この世に実在してない私たちに何ができるの!?」

白銀「……やってみなけりゃわかんない、とか言わないでよ! もうやったんだよ! 天海くんが知らないところでも何回も!」

白銀「天海くんと一緒のときも! 何回だって……何回だって……諦めずに、希望を捨てずに何回だって……!」

春川「……白銀……」

白銀「は、ははっ。知ってるんだよ、私はさぁ。春川さんみたいな目をした人、前にも見たよ!」

白銀「その人は私たちのことを信じて、無念さを隠して、満足そうに死んでったよ!」

白銀「ふざっけないでよバカじゃないの!? そういう抜き身の優しさ、どうせ死ぬヤツにはないほうがいいに決まってるじゃん!」

白銀「残される私たちのが百倍辛くなるだけなんだよっ!」
309 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/30(水) 23:51:53.03 ID:vuQiQmWD0
白銀「嘘……嘘! 嘘! 嘘! この学園にあるものは全部フィクション! 現実に存在するものの模造品!」

白銀「優しさ、決意、希望、心、未来……! そういうポジティブなものはぜーんぶ実在しない! 少なくともこの学園では!」

白銀「消えちゃうんだよ……! 私が消すこともできるし、外の世界の連中ならもっと簡単に消すことができる!」

白銀「実際、私が何をしたか、百田くんたちはどれだけ覚えてる!? なにも覚えてない……! 辛うじて巌窟王さんの影響だけが残ってるのみだ!」

白銀「どうせふいに消えるものなら、せめて私の手で壊してしまいたかった。私の知らない場所で消えるのは凄く怖いんだよ! 毎回心臓が止まりそうなの!」

白銀「信じてたものに裏切られるのも怖い! なら私が裏切りの原因になってしまった方がいくぶんかマシだよ!」

白銀「どうせ残酷な形で消えるものなら……その最期を私が少しだけでも……!」

百田「消えねーよ」

白銀「その台詞も知ってる! 聞いたことあるよ……結局嘘だった!」

百田「嘘じゃねーよ。だってよ」






百田「ならなんでテメェは泣いてんだ?」

白銀「……は……」

百田「嘘と真実の定義なんぞいちいち議論できねぇけどよ。終一ほどその分野に明るいわけじゃねーし」

百田「……そうだな。テメェは知ってるんだ。『何一つとして嘘なんかない』ってことに」

百田「でもそれじゃ耐え切れねぇから『全部嘘だった』ってことにしてぇだけだ」

百田「悪い夢だったって思いたいだけなんだよ。行動を裏返せば結局、やればやるほど『嘘だと思ってない』って証明するようなもんなのによ」

白銀「……」

百田「……天海。わり。これ以上、俺が言うべきじゃねーだろ。テメェに任せた」

天海「……あははっ。うん。ありがと……後のことは俺に任せてくれっす」

天海「百田くん。超高校級の生存者として参加したこの学園で、キミに会えて本当によかった」

天海「キミを信じることができて、本当によかった……」

百田「いいってことよ!」
310 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/31(木) 20:45:38.80 ID:BYswMy6f0
天海「……白銀さん。俺はどうやって、分断前の記憶を取り戻したんだと思います?」

白銀「……」

天海「薄々感づいてたんじゃないっすか。俺は最原くんみたいなスキルでもなんでもなく『偶然』で記憶を取り戻したんすよ」

天海「それ以外にマジで理由がないんす」

天海「……ははっ。何もかも偶然っすよ。赤松さんの砲丸がマジで巌窟王さんの頭上に落ちたのも」

天海「いや。巌窟王さんがそもそもここに呼ばれたのだって」

天海「……白銀さん。ただの偶然で、今回のこの学園での出来事は、前回の学園でのコロシアイみたいにならずに済んだ」

天海「ここまで来たらもう……偶然じゃなくって『運命』って言えるのかもしれないっすね」

白銀「だから……なに?」

天海「諦めてくれないっすか? 流石に相手が運命じゃ、白銀さんでも勝てないでしょ。世界より余程に分が悪い」

天海「友達からの一生のお願いっす」

白銀「……まだ私のことを友達だって言ってくれるの? 何もできなかったのに」

白銀「あなたを殺して終わらせることも。私が死んで終わることも」

白銀「……あなたたちが何も思い出さずに私を殺してくれたら、少なくとも『才囚学園での物語』はハッピーエンドだった」

白銀「一瞬だけだったとしても、達成感で幸せになれたはずだったのにさ……!」

天海「興味ないっすね! 余計なお世話クソ食らえっす!」ニカッ

天海「……今回の学園で発揮した行動力、今度は正真正銘、俺たちのために使ってくれないっすか?」

白銀「……なんていうか……」





ネコアルク「メンタルをボッコボコにした後で新しい目的意識を植え付けるとか、やり方が完璧に洗脳のそれじゃないかにゃー」

天海「!?」ガーンッ

最原「今は黙ってて」ガバッ

ネコアルク「もがぐぐ」
311 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/31(木) 21:15:56.37 ID:BYswMy6f0
天海「ほ、本当だ。今の俺って最低の鬼畜野郎なんじゃ……」

茶柱「安心してください。最低なのは間違いありませんが、鬼畜野郎なのはこの場で最原さんだけです」

最原「ぶっ」ブシュウアアッ

バタンッ

最原「」チーン

王馬「最原ちゃんは……茶柱ちゃんの言葉のショックで古傷が全部開いて死んだ」

真宮寺「超善人だったのに、どうしてこんなことに……」グスン

茶柱「謝りませんよ! 謝りませんからね!」

白銀「……」

白銀「私は私のことが嫌い。最近までそうじゃなかったのに、最原くんのせいで嫌いになった」

白銀「……もっと私は色んなことができると思ってた。なんだって……世界に歯向かう以外なら、なんだって……!」

巌窟王「勘違いだな」

白銀「!」

巌窟王「……なんでもできるヤツなどいない。俺がこの学園でイヤというほどに思い知ったことだ」

巌窟王「何もできないということはない。だが、一人一人、個人個人がやれることは驚くほどに少ない」

巌窟王「才能のあるなしに関わらずだ」

巌窟王「貴様の失敗がどこから始まったか。考えてみれば、ありきたりだな。この年頃の娘なら珍しくもない」

巌窟王「無理に背伸びをしすぎだ」

天海「……驚いた。説教する余裕なんてまだあったんすね。てっきりまだ怒り狂ってるものだと」

巌窟王「当然、この復讐鬼たる身に忘却はない。怒りも当然保持している。だがその女があまりにも情けないものだからな」

巌窟王(……もう取り残された方の団結は止められそうにないな。これが狙いだったのか、最原)

最原「ちょっとでいい……ポジティブなことを言ってくれれば即復活するから……」ピクピク

茶柱「えー。面倒臭いですね……えーと……」

茶柱「……転子も癖がおかしくなっちゃいましたかね。真実を暴くあなたの姿、ちょっと格好よく見えましたよ」ポソッ

最原「ベホマ級の威力」ギュインギュインギュイン

王馬「本当に復活しちゃったよ」
312 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/01(金) 20:27:14.68 ID:QQfPlFmo0
プリヤ追い込み期間のため今日はなし! 復刻だからって舐め腐りすぎた……
313 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/02(土) 22:49:37.15 ID:105jg2mv0
天海「俺は諦めない。何度記憶を消されたって、絶対にキミも! キミの大事なものも助けに行く!」

天海「できるかどうかは関係ない! 絶対に全力でそうしてやるっす!」

天海「だから白銀さん。これから先は覚悟を決めておいてくれないっすか」

天海「……助けられる覚悟を」

白銀「……またみんな死んじゃうよ? 今度こそ」

百田「死んでたまるかッ! そのために頑張るんだよ!」

夢野「最初から何もかも諦めて生きることと、結果を確実に出せる生き方しかしないことはほぼ同列じゃぞ」

夢野「そういうのはとてもよくないことじゃ。大事なのは頑張ろうっていう気概じゃぞ」

春川「……私たちは誰も殺さない。気に入らないものだけを粉砕する」

春川「ここまで誰も死なずにやってこれたんだ! 最後の最後までワガママを通そうよ!」

赤松「ちょっと待ってよみんな! 本当にそれでいいの? それ以前に、最原くんの言うことを信じるの?」

赤松「写真はともかくとして、件の写真術の本に関しては確証が――!」

真宮寺「赤松さん、赤松さん」チョイチョイ

赤松「ん?」

真宮寺「あれあれ」

赤松「……んっ?」

王馬「ごーまーだーれー」チャーリーラーラー

モノクマでもわかる写真術「」キラキラキラ

赤松「……んんんんんんんんんん!? 燃やしたんじゃなかったのーーー!?」ガーンッ

最原「ナーサリーさんに協力してもらった」

モノクマでもわかる写真術「本を読んだ子がいれば辛うじて可能よ!」

真宮寺「あ、ホントだ。ナーサリーさんの声だネ……」

赤松(……ダメだ! 最原くんの手回しが異常に素早い! 新世界プログラムの中で巌窟王さんに追いかけ回されて泣きべそかいてた人だとは思えない!)

赤松(この局面で冷静すぎる!)
314 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/03(日) 20:46:31.47 ID:OceWqH7A0
巌窟王「満足か? 白銀の希望を粉砕できて、満足なのか」

巌窟王「……最原。貴様に訊いているのだぞ」

最原「三分の一くらいは気が晴れたよ」

茶柱「半分以上残ってるじゃないですか……」

最原「白銀さんから一切謝られてないし、完全に善意からの行動だったのなら白銀さんはこれからも絶対に謝らないからね」

最原「仮に謝ったとしても絶対に形だけの謝罪だよ。僕は赦す努力はするけど、最後の最後では憎んでると思う」

最原「……それでいいんじゃないかな。白銀さんからすれば、なにも覚えてない百田くんたちや、これまた全部善意の天海くんに一生つきまとわれるんだよ?」

最原「罪悪感を一切清算できないままね。それって最高の罰でしょ?」

巌窟王「……俺には貴様が何かと理由を付けて、人を殺すことを避けているようにしか見えん」

最原「当たり前だよ。好き好んで人を殺す人間なんかこの場にいないんだから」

ナーサリー「『人間』はね……」ニコニコ

夢野「意図的に場の空気を濁らせるようなマネはやめい!」

最原「さあ。ここまでの議論でハッキリしたよね」

巌窟王「白銀が敵ではない、ということがか? フン、今更確認するまでもない内容だった――」

最原「違うよ。そっちじゃなくってさ」

巌窟王「なに?」ピクッ

最原「『一億人を殺して外の世界に出る選択肢』が完璧に論外だってことがハッキリしたんだ」

百田「!」

天海「えっ」

白銀「はい?」

巌窟王「……」

アンジー「ま……」





真宮寺「マジで?」
315 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/04(月) 20:19:06.04 ID:3JKd31dI0
赤松「……さ、最原くん。ちょっと聞きたいんだけどさ」

最原「なに?」

赤松「白銀さんの視力を元に戻すための議論じゃなかったの?」

最原「言ったはずだ。『ついで』だって」
316 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/04(月) 20:29:13.05 ID:3JKd31dI0
赤松「……」

赤松(言ってた! 確かにさりげなく『ついで』って言ってた!)ガビーンッ

巌窟王(まさか、コイツ……! 白銀の視力を元に戻す云々は建前で!)

アンジー(本当は早期の内に『最悪の選択肢』を潰しておきたかっただけかー。物凄い欲張り)

巌窟王「ま、待て。今までの議論のどこにそんな話が……!」アタフタ

最原「巌窟王さんの進路が論外の理由は主に二つ。一つ目はさっき百田くんが言った通り、単純に一億人を殺す選択肢を選べないという人倫の問題」

最原「もう一つの理由は今までの議論で裏打ちがされたと言うべきかな」

最原「……ずっと僕が言うのも、段々説得力がなくなっていきそうだから、この二つ目の理由は百田くんに任せようか」

百田「お? 俺か?」

最原「ずっと前のめりで、前向きだった百田くんが一番気付いてそうかなって思ったんだけど……」

百田「あー……つっても、テメェの言った人倫の問題以外に、この案を跳ね返す理由なんて……」

百田「……ないことはねぇけどよ? 怒るなよ?」

赤松「え。あるんだ」

百田「意外そうな顔してんじゃねーよ。あのな、一つ訊いていいか?」

百田「そもそもなんでそんな選択肢を検討しなきゃなんねーんだよ」

巌窟王「……ム? それは外の世界への報復に決まってるだろう?」

百田「いやだからそれだよ。あ、いや、感情論とか……絡んでねぇわけじゃねぇんだけど、若干ズレてんな。そうじゃなくって」

巌窟王「?」

百田「……それゲームで言うところの邪道だろ? なんで王道を行かねぇんだ?」

巌窟王「――」

赤松「え。なに? どういうこと?」

百田「いや、だからよ」







百田「『正攻法で勝てるゲーム』で『ゲームそのものをぶっ壊すような勝ち方』を求める意義はなんだって訊いてんだよ」
317 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/05(火) 20:26:28.15 ID:jfNIEKiO0
アンジー「えっとねー。んっとねー。色々言いたいことはあるんだけどねー」

アンジー「……正気?」

百田「あ!? そこまで言うか!? むしろ俺の方がテメェらにそう言いたいんだっつの!」

百田「巌窟王の進路は、魔術師からの暗殺の可能性を根こそぎ破壊できるってところのみが魅力だぞ! それ以外は狂気の沙汰だろうが!」

巌窟王「違う。アンジーは今更、そんなことを確認したりはしない。俺の進路が狂気の沙汰だと? わかったことを言うな」

巌窟王「アンジーが言いたいことの全文は『なんでまだそんな正気を保った発言できるの』だ」

百田「あー?」

天海「……ああ、なるほど。そういうことっすか」

白銀「……」

最原「天海くんと白銀さんはわかるよね。そう。この場には越えがたい『壁』がある」

最原「巌窟王さんたち新世界プログラムへ隔離された側は、白銀さんが誘導した通り『ゲームそのものへの憎悪』が桁違いだ」

最原「このゲームを用意した世界への憎悪も当然、ね」

最原「対して、百田くんたちはどうだろう。このゲームのことを振り返ってどう思う?」

百田「どう思うも何も……」

春川「別に」シラーッ

赤松「……え。ごめん春川さん。なんて言った?」

春川「ゲームに対してはどうも思ってないけど……」

春川「……むしろ何か思わないとダメなの? だってさ」

王馬「結果だけを見れば、誰も死んでないよねぇ?」ニヤァ

真宮寺「あっ」

赤松「……ちょ、ちょっと待って。結果だけを見ればそうかもしれないけど、過程の方が散々だったでしょ……!」

赤松「あっ」

最原「それが壁の正体だ。百田くんたちは結果だけしか見ない」







最原「……結果だけしか『見えない』んだよ!」
318 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/06(水) 21:47:01.78 ID:8dJIphJ+0
春川「確かに死ぬような目には遭ったけど正直、私の職業だとそういうのないことはないし……いつものことっていうか……」

百田「俺もだ。宇宙飛行士って『命懸けの状況を作らないように命懸けで訓練してる』ようなもんだけど、それでもやっぱり死と隣り合わせだしなぁ」

王馬「え? 俺? 楽しかったよ?」

茶柱「……結果だけ見れば確かに……百田さんの言う通りですね」

茶柱「相手の土俵で勝てる算段が付いてるのなら、それで勝つのが一番でしょう? それこそが完全勝利ってものです」

夢野「自分の有利な条件で一方的に喧嘩を吹っかけて来た相手を返り討ちって構図になるからのう。一切の言い訳が効かんな」

夢野「ぶっちゃけこれで負けたら自殺級に恥ずかしいじゃろ」

白銀「既にかなり精神削られてるよーう」ヘラヘラ

天海「白銀さん! 白銀さん気を確かに!」アタフタ

巌窟王「なるほど。確かにそれは美しい勝ち筋だな。だが正攻法で勝った後はどうする」

巌窟王「魔術のことを知り過ぎたお前たちを、外の魔術師が放っておくとは到底思えん。百田も俺の進路のこの長所だけは否定しなかったな?」

百田「まあな。そこだけはお手上げだぜ」

夢野「学園が崩壊したら巌窟王はウチらの傍から消えてしまうしのう。どうしたものか」

最原「問題が無い、とまでは言えないけどさ。一つだけいい案があるよ」

巌窟王「案だと?」

最原「巌窟王さん、一つ僕たちにあえて言ってないことがあったよね」

最原「セミラミスさんの計画が始動した場合、魔術関連の物品はすべて学園から消滅する」

最原「……この言に嘘はない。じゃあキーボくんの改造はどうなるの?」

巌窟王「特段隠していたつもりはない。そうだな、キーボの改造も『この学園で当初から想定されていたレベル』に戻るだろう」

最原「ああ。やっぱり。でもそっちのことじゃなくってさ」

最原「……巌窟王さんはどうなるの?」

巌窟王「!」

最原「文脈から察するに巌窟王さんも消えるだろうね。でもたった今言ったよ。キーボくんの改造は全部が無かったことになるわけじゃない」

最原「少なくとも、白銀さんの想定では魔術抜きでも『僕たち全員を皆殺しにできるレベル』の改造が、キーボくんに施されていたはずなんだ」

最原「もし魔術物品の消去が同時に行われたとしたら……」

赤松「あっ! 残ったキーボくんに対処できる人が誰もいない!」

最原「……それだけじゃないな。学園に穴を開ける方法も消える。巌窟王さんがいなくなったらね」

最原「答えてくれる? ただ黙っていただけなら、この場でさ」
319 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/07(木) 20:22:21.08 ID:Z8wtRKTT0
巌窟王「……俺の順番は最後だ。セミラミスはどうもいらぬ気を回したらしいな。お節介焼きめ」

赤松「お節介?」

巌窟王「別れの言葉でも残しておけ、とでも考えていたのだろう。魔術物品の排除計画で、俺は一番最後だ。そういうことになっている」

赤松「……ほ、本当だ。いかにもあの人が考えそうな余計なお世話だ……」

最原「でも今回、それがいい方に働いたよね。キーボくんの魔術強化解除をした後、巌窟王さんにはちょっとだけ時間があるんだから」

巌窟王「……生徒の総意がそういうふうに傾いたのなら、俺とて全力でそれを成そう。今更揺らがせる気はない」

百田「終一。なんでこんなこと確認したんだ? 念のためか?」

最原「ここから先はネコアルクか、さもなくばセミラミスさん本人に問い合わせるしかないんだけどさ」

最原「順番を弄れるのなら、キーボくんの魔術強化をちょっとだけ残すこともできないのかな」

巌窟王「……?」

ネコアルク「えー。残してどうするにゃー? キーボくん制圧の可能性を自ら小さくするような自殺行為にしかならないけど」

最原「発想を元に戻すんだ。キーボくんは僕たちの『仲間』でしょ?」

最原「学園から脱出した後で巌窟王さんが消えてしまうのなら、他の対抗手段が必要だ」

最原「……今すぐ用意できる対抗手段は限られてるけど、真っ先に手が届きそうなのは……僕たちに一番近い魔術物品、それも戦闘に特化したものは……」

最原「たった一つしかない、でしょ?」

巌窟王「……!」

真宮寺「……ああ! ああ! なんてことを考えるんだ! 最高だヨ最原くん!」

真宮寺「キミはよりにもよって! この局面で! そんな常軌を逸した決断をするんだネ! 王道がどうとか言ってる割に! それはそれで外道だヨ!」

茶柱「え。何をするつもりなんですか、最原さん」

真宮寺「ククク。決まってるじゃないか。相手の戦力を削り、なおかつ自分たちの戦力を増強する」

真宮寺「この戦法のせいで近代以降の兵器は、最悪でも自爆はさせないといけないという縛りを設けるハメに陥った」

真宮寺「何故ならそうしないと自分自身の兵器に殺されることになるから! つまるところ! そう! 最原くんのやることを二字熟語で表すならば――」





巌窟王「鹵獲か!」
320 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/09(土) 21:30:09.80 ID:h8oRcUGJ0
最原「どう? 答えられる? ネコアルク」

ネコアルク「……」チラッ チラーッ

赤松「……わかってるよ。ここで情報を出し惜しみする理由がないよね。喋っていいよ、ネコアルク。私も気になる」

ネコアルク「セミラミスのお嬢に聞かなければ詳細はわからない……とは言え、軽く演算してみたら『不可能ではなさそう』と出たにゃ」

ネコカオス「そもそも、キーボの魔術改造に使われた素材はカルデア由来ではなくあくまで『この世界に本来存在していた魔術』だ」

ネコカオス「内と外との気圧差という視点にのみ話を絞れば、消す理由が存在しない。可能ではあるが」

赤松「……うええ……」

ネコアルク「嘘でも『できましぇえええええええん』と言った方がよかったかにゃ?」

赤松「私のエゴのために重要な情報を偽るわけにはいかないでしょ」

最原「『一部分だけ残す』っていう方向の転換、間に合うかどうかが分岐点だ。だけど不可能じゃなさそうなら、話を続けることができる」

最原「……とは言っても、キーボくんに魔術改造を残したところで何ができるかもわからないんだけどね」

最原「交渉。反撃。逃走……どれを選ぶかに関しては『外に出てから考える』しかない」

最原「ここが僕の進路の限界」

最原「以上が『巌窟王さんの進路』と並べる『最原終一の進路』だよ」

巌窟王「……」

巌窟王(……コイツ……!)

百田「すげぇ……すげぇよ終一! 今ここにある素材だけを並べ立てて、誰も死なない選択肢を創りだしやがった!」

春川「外に出た後で何ができるかがわからないってところがネックだけど」

百田「それでいいと思うぜ。俺好みの提案だ! 少なくとも巌窟王の進路よりは百倍支持できるぜ!」

巌窟王「隙だらけだぞ。俺の進路と一長一短だ」

百田「……わかってるよ。テメェの進路自体も結局『俺が選ぶのがイヤだ』ってだけで、一定の理はあるしな」

百田「でも目の前に二つの進路があって、どちらにも一定のメリットがあるのなら、選ぶ理由なんてたった一つだろ」

百田&王馬「好みだ!」

王馬「……と言う!」ニヤァ

百田「ハッ……!」
321 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/09(土) 22:14:19.01 ID:h8oRcUGJ0
巌窟王「好み……好みと来たか? クハハ! クハハハハハハ……!」

巌窟王「最原! 貴様は……貴様はこの期に及んで……いや! 記憶が戻っているのなら更に度し難い!」

巌窟王「何故この学園で起こった出来事を『ゲーム』と認識している!」

最原「……」

巌窟王「現実だ! 真実だぞ……! この学園で起こった悲劇! 喜劇……」

巌窟王「今はもう消え去ってしまった百田たちの記憶! 百田たちの想い!」

巌窟王「アンジーたちが味わった苦痛! それらは間違っても嘘ではない!」

巌窟王「……虚構なんかであってたまるものか! それを貴様は『ゲーム』として処理するのだな!?」

最原「流石に『想い』には嘘は吐けない。処理もできないね」

最原「でもこれまでの議論で、わかったじゃないか」

最原「最序盤はともかく、この学園で本当に命がけだったのは二人だけだよ」

最原「身を挺して僕たちを守ってくれていた巌窟王さんと……すべての謎を抱え落ちして死のうとしていた首謀者である白銀さんだけだ!」

白銀「!」

最原「流石に巌窟王さんみたいに、僕たちの想いまでは守ってはくれなかった」

最原「でも僕たちの命を最大限に尊重してたことは確かだ! 最初からコロシアイはデスゲームとして成立していない!」

最原「実際には命を懸けていなかったゲームだよ? なら勝ったからって相手の命を奪うようなマネは許されない!」

巌窟王「……現実だと言っているだろう……この学園で起こったすべては!」

巌窟王「この学園で感じた恐怖! 流した涙! それに背を向けるような行為を俺は間違っても容認しない!」

巌窟王「できるものか……目の前で見て来たのだぞ! 俺は!」

巌窟王「……お前たちは!」

最原「違うね。仮に僕たちが感じた想いに嘘が無かったのだとしても」

最原「この学園で起こったことは、現実なんかじゃない。悪趣味な『ゲーム』だ」

最原「……平行線だね。僕はゲームに勝ちたい。巌窟王さんはゲームを壊したい」

最原「決着を付ける手段はたった一つしか存在しない」

巌窟王「……議論、だな。そして多数決だ。それが学級裁判のルールだ」

巌窟王「最原。貴様にはこれまで何回も煙に巻かれてきた」

巌窟王「……今回ばかりはそうはいかんぞ」ギンッ

最原「……」
322 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/10(日) 22:40:13.66 ID:MsPdmii90
最原「時間稼ぎはもういいよね。イシュタルさんには悪いことしちゃったな」

百田「あっ。すっかり忘れてた」

春川「……」ジトーッ

百田「……俺のせいじゃねーだろ!?」ガビーンッ

真宮寺「時間稼ぎとは言うけども、実際のところ時間稼ぎを『させてた』からネ。僕たちの方が」

入間「……あっ。思い出した」

赤松「あ。口開いた」

巌窟王「関係が無い。もうアイツをこの場に連れて来ることは確定だ」

巌窟王「ナーサリーとは違って本当に意味がないと思うがな……」

入間「あっはっはっはっは……あのー、それじゃあいっそ助けないって方向で話纏めてくんねーかなー……」ダラダラダラ

最原「ん? どうしたの入間さん。凄い汗だけど」

入間「いや本当、俺様は悪くねーぞ!? 結局のところあんな仕掛けにイシュタルを乗っけたヤツが一番悪いんだからよ!」アタフタ

夢野「んあー? ひとまず落ち着け。一体なにを思い出したんじゃ、お主」

入間「イシュタルが持ってた銃、どっかで見たことがあるっていうか、俺様が作ったはずなのにまったく覚えが無かったんだけど」

入間「理由がわかった。あれ俺様の発明の改造品だ! 安全装置付きの拳銃、名前は『ガチ縛りロック&サドキング』!」

赤松「うわ相変わらず酷い名前! 安全装置って?」

入間「自分に向けて撃とうとすると、それ以降一発たりとも銃弾が発射されなくなる」

最原「自殺防止機構付きの拳銃……? 名前はともかくまともに大発明だよね? それが?」

入間「改造品っつったろ。どんな改造されてたのかって部分が問題なんだ!」

入間「……ある発明品と融合させられてんだよ、アレ! グリップの部分だ! 別のモノがくっついてんだよ!」

巌窟王「別のモノ……」ジーッ

入間「一種の向精神薬が沁み込ませてある……湿布? みたいなもんだ! 掴んでると血流に混じって段々精神がハイになってくる!」

入間「でもあの薬はすぐ捨てた……はず! はずなんだ! すげぇイヤな副作用があったから!」

最原「……な、なんか察しがついた。聞くのが凄く怖いんだけど……!」

入間「聞け! 耳クソかっぽじってよーく聞けよ! アイツのこと助けたいんならな!」




入間「最終的にはめっちゃ死にたくなるんだよ! ハイになってた反動で!」
323 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/11(月) 21:38:33.65 ID:YB0q0AJh0
最原「ということは、あのおしおきのクライマックスって……」

赤松「ゾンビに追い詰められたイシュタルさんが自殺しようとトリガーを引いて」

春川「安全装置が働いて死ねず、しかもそのせいで銃が使い物にならない最悪の八方塞がりに陥って」

百田「ゾンビに無抵抗に食われて……終わり!?」

夢野「んあーーー!? んぎゃああああああ! まるっきりホラー映画ーーーッ!」ガビーンッ

巌窟王「いや! いや! 問題はない! それでも問題はないぞ! イシュタルの状態を見る限り、まだ薬の効き目はアッパー状態だ!」

ナーサリー「……それはちょっと違うんじゃないかしら。そもそもダウナー状態に陥ることがないんじゃない?」

ナーサリー「人体にはそう作用するってだけよね?」

最原「あ、そっか。それじゃあもしかして、最初から問題が……」

ナーサリー「ううん。あるわよ? それならそれで別種の大問題が」

ナーサリー「本当に助けても無意味かもしれないわ」

最原「え?」

入間「……中和剤、用意してねぇぞ。捨てたはずの薬だからな。『捨てたはずだと俺様が記憶している薬』なんだから!」

入間「もしかしたら最初から中和剤なんて存在してないかもしれねぇ!」

最原「中和剤がないと……どうなるの?」

入間「ダウナーになってくれた方がある意味健全かもしれねぇな」

入間「……もっと単純だ! 中毒状態になって内臓からジワジワ死んでく! しかも短時間で!」

最原「なん……」

百田「だとォーーーッ!?」ガビーンッ

入間「やべぇ……やべぇやべぇやべぇよアレ! どうしよう!」

夢野「いや! 気付けただけ幸運じゃ! さっきのウチみたいになんとかできるじゃろ! お主なら!」

入間「無茶言うな! 流石に今すぐ中和剤なんか作れねぇよ!」

赤松「そ……そんな……!」

巌窟王「……いや。大丈夫だ。やはり問題はなかったな」

入間「え?」





巌窟王「安心しろ入間。お前の不安に思っているようなことは決して起こらない」
324 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/12(火) 21:11:50.83 ID:XDYWLYD40
最原「……ええっと、何かに気付いたの?」

巌窟王「どうということはないのだが、そうだな。赤松」スタスタ

赤松「え?」

巌窟王「……を……に……集め……」ゴニョゴニョ

赤松「……別にいいけど、それで本当になんとかなるの?」

巌窟王「それが最善策だ。アンジーに誓おう」

赤松「そこまで言うんなら従うよ。巌窟王さんがアンジーさんを貶めるようなマネするわけないしね」チョイチョイ

ネコアルク「呼びましたかにゃー」トタトタ

最原「……?」

最原(妙だ。なにか……騙されてる気がする。『最善である』という部分以外は絶対に嘘だらけだ)

最原「巌窟王さ……」

最原(……やめよう。だからって何ができるわけじゃない。僕にできるのは)

巌窟王「最原。時間だ」

最原「白銀さんの正体……それは――!」

最原(ただ答えを並べ立てるだけ!)






モノクマ「すべてではありません……が! 充分です!」ピンポンピンポンピンポーーーンッ
325 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/13(水) 20:37:26.16 ID:1KYvxjrn0
おしおき装置内

イシュタル「なあああああああーーーッ!?」バンッバンッバンッ

ゾンビ1「ひでぶっ」ブシャアッ

ゾンビ2「たわらば!」ブシャアッ

ゾンビイカ「マンメンミ!」

イシュタル「な、なんか……なんかまた急にクリーチャーの数が大増加したんだけどーーー!」

イシュタル「だ、ダメ! これはちょっとキツい! さっきまでとはくらべものにならない!」

イシュタル「なんて最悪な状況! 私……私……!」ガタガタ




ドバババババババッ



イシュタル「たーのしー!」バンバンバンッ

巌窟王「……」

巌窟王(助けに来たのはいいが……思ったよりも遥かにトリガーハッピーが進行しているな)

巌窟王(もう本当に見捨ててしまおうか)

イシュタル「アーハハハハハハハ! すっごーい! 脳味噌をだらしなく垂れ流すのが得意なフレンズなのねーーー!」ゲラゲラゲラ

アンジー『どうしたのー? 問題発生?』

巌窟王『いや。大丈夫だ。赤松に準備を急がせろ。思ったよりもクリーチャーが多いから』ボオウッ

イシュタル「あら。今度の新手は空から?」

イシュタル「……って、あ!」

巌窟王「時間がかかりそうだ」
326 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/14(木) 22:15:15.33 ID:PSwmduvr0
裁判場

赤松「ネコアルクは全員配置についた?」

ネコアルク「うーん。このペンデュラムの振れ幅だとまだっぽいですにゃー」ブンブン

赤松「ペンデュラムの使い方が違う! 振り回しちゃダメ!」

ネコアルク「知ってる。実は使えないんですにゃ、じゃれちゃうから」ポイッ

王馬「白目にぎゃあああああああああ!」ブスウッ

最原「あのさ。巌窟王さんになんて言われたの?」

赤松「目立つ場所にネコアルクを集めろって。わかりやすければどこでもいいから校舎の屋上がベストとかなんだとか……」

最原「なんでネコアルクを……」

入間「さあ。イシュタルの治療でもさせる気なんじゃねーか?」

最原「……あっ」

百田「どうした、終一」

最原「……イシュタルって確か女神の名前だよね」ダラダラダラ

夢野「……あっ」

ネコアルク「あ! 揃いましたにゃー」

アンジー「おっけおけー!」

最原「あ、うわ! ちょっと! 何もおっけーじゃな――!」




校庭

ドカァァァァァンッ

イシュタル「うひゃあああああああああっ! ちょ、ちょっと酔う! あまりにも激しい動きに酔っちゃうー!」ウプッ

巌窟王「薬の副作用だ。俺のせいではない。そして安心しろ」

巌窟王「すぐ楽にしてやる!」ニヤァ
327 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/15(金) 21:51:50.78 ID:KqocBTwt0
最原「くそっ! もう脱出済みだ! 早すぎる!」

百田「どうしたんだよ終一」

最原「覚えてない? さっきネコアルクが言ったこと!」



ネコアルク『ム! こっちからも匂いが……』クンクン

獄原『あ。これかな。前に巌窟王さんから貰ったモンテ・クリストの秘法なんだけど……』

ネコアルク『ああ。これならいいっす。神性ないんで。材料に組み込む規格じゃないんで』



春川「……アイツらがセミラミスの計画のために食ってたのって、まさか」

最原「まず間違いなく神性、つまり神様由来の何かだよ! というか最初から巌窟王さんもあまり隠す気なかったなぁ!」

最原「何回も言ってたからね! 助けたところで無意味だって!」

王馬「あ。そっかー。じゃあ巌窟王ちゃんが『心配するようなことは起こらない』って言ったのも嘘じゃないよね。どっち道死ぬんだから!」

百田「あ、あの野郎暴走してやがる! それが本当ならすぐに止めねぇと! 赤松!」

赤松「わ、わかってる! ネコアルク、今すぐ中だ――」


ヒューッ


イシュタル「いやあああああああああ!」ドシーンッ

赤松「ンボアアアアアアアアアアアアアアア!?」メリイイッ

最原(天井の巌窟王さんが作った穴から落ちてきたーーーッ!?)ガビーンッ

ネコアルクs「にゃーにゃーにゃー!」ワラワラワラ

イシュタル「いやー! いやー! 来ないでー!」タッ

コケッ

ナーサリー「……もう諦めましょう、女神様。騙されたようで癪だけど。確かに伯爵の言う通りだわ」

イシュタル「ナーサリー! い、今あんた、私の足を引っかけ……!」

ナーサリー「すべてが終わったらカルデアで会いましょう」





ガブウッ

ネコアルク「あっ、おいし」ガブガブ

イシュタル「あっ」

最原(足を噛まれた)
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/16(土) 08:07:30.52 ID:jMbj4LdoO
ゾンビに食われるかネコアルクに食われるかしか変わんねーじゃねえか!
329 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/16(土) 17:14:30.92 ID:9LejZ/eJ0
ガブウッ ガブガブガブガブガブッ

イシュタル「がっ……あぎっ……ふぐうあああああああああああああっ!?」

最原(……直では見えない。モノクマほど露悪的ではないらしい。わざわざネコアルクたちは目隠しのための衝立も用意していた)

最原(音はとにかく最悪の一言だけど)


ガブガブッ…… ボリボリボリボリボリボリゴクゴクゴクピチャピチャ


イシュタル「ほ、骨っ……私の骨っ……食べてるぅ……あ、ああああ……!」

入間「うぶっ」

ナーサリー「ああ。気分が悪いなら耳を塞いでおくことをお勧めするわ。別に聞かなくてもあなたの物語に関係ないもの」

最原(ふと思い出していた。ミステリーものの海外ドラマで、ちょくちょく出て来る『ネコに食い荒らされた死体』のことを)

最原(実際に、あれは現実でも起こりえることのようで、もともとネコ科は腐肉でも美味しく食べられるらしい)

最原(……ネコアルクは食べやすいところから食べているだけだ。別に苦しめようとか楽にしようとか一切考慮していない)

最原(それでもイシュタルさんの叫び声が消えて、食事の音だけになるのはそう時間がかかることではなかった)

最原(気分が悪いなら耳を塞げ、か。赤松さんが気絶してくれてて助かった。こんなの一生のトラウマになる)

赤松「」チーン

春川「……東条。そろそろ復活して。赤松のこと助けてよ」

東条「……指名されたら、頷くしかないわね」



ボリイッ


最原(ひときわ大きい音が響き、それきり食事の音は消えた)

巌窟王「……よし」

百田「何一つとしてよくねぇよふざけんな」
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/16(土) 17:32:16.37 ID:MO564X9d0
イシュタルが死んだ!ひとでなし!
331 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/17(日) 20:50:00.13 ID:6+wYRhwE0
最原「巌窟王さん。これしかなかったの?」

巌窟王「さて、な。もしかしたら貴様に相談すれば別の道もあったかもしれないが」

巌窟王「意味がないだろう? これでまったく問題が無いのだから」

夢野「んなわけあるかァッ! どう考えてもバッドエンドじゃろうがコレ! どうするんじゃこの空気!」

夢野「悲鳴から肉が裂ける音や骨が蝕まれる音やら何から何までトラウマモノなんじゃけど!」

巌窟王「最初から状況は詰んでいた。その中でもこれはかなりマシな方のノーマルエンドだ」

巌窟王「助け出したところでネコアルクが群がることは避けられない。赤松が止めればおそらく止まっただろうが……」

巌窟王「仮にそうしたところで入間の薬のせいで内臓からジワジワ死んでいくこともやはり避けられない」

東条「巌窟王さんには回復宝具があるでしょう?」

巌窟王「この後大仕事だ。そんなことに裂けるリソースはない」

百田「そ、そんなこと……だとォ……!?」

最原「百田くん落ち着いて。確かに心底ムカつくけど正論だ。ナーサリーさんを助けるだけでも相当無理してるんだよ」

巌窟王「いいか。この場合の真のバッドエンドとは、あのままモノクマにイシュタルが殺されていたことだ」

巌窟王「イシュタルほどの霊核、ネコアルクの管理外で消えたらセミラミスの計画がどうなっていたかわかったものではない」

巌窟王「……九割方大丈夫だったとは思うが」ボソッ

百田「聞こえてんだよこの野郎!」プンスカ

巌窟王「反面、ネコアルクが管理下に置けば都合のいいことだらけだ」

巌窟王「おそらくすべてが終わった後、イシュタルの霊基はカルデアへと無事に帰るだろう」

巌窟王「……BBのような念には念をの精神で来たわけではないから、俺たちには相当ピーキーな立ち回りが要求されるがな」

最原「巌窟王さんの進路にしろ、僕たちの進路にしろ、結局勝たなきゃすべて水の泡。全部犠牲になってパァだからね」

巌窟王「そういうことだ」

最原「……また余計なものを背負わされちゃったな……」
332 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/18(月) 22:08:47.00 ID:1Hn7Qbxh0
モノクマ「はい! それじゃあ一区切りついたところで、インターバルです! 次の設問は五分後としましょうか!」

モノクマ「赤松さん起きてこないし」

赤松「う、うーん……ネコアルク……いい子いい子……よく止まってくれたね……むにゃむにゃ……」スヤァ

春川「むごいほど幸せな夢見てる」

東条「起こすのが憚られるわね」

百田「……はあー……」ボリボリ

百田「赤松が起きる前に確認しておきたいことが二つあるな。一つはモノクマに」

モノクマ「はいはいなんでしょう!」

百田「次の設問、目の前にあるヤツだよな」

モノクマ「その通りです! 百田くんのおしおきの流用、New宇宙旅行であります!」

百田「これ、万が一俺たちの目の前で点火されたら……」

モノクマ「全員死ぬね。妬け死んじゃうね。ちなみに、設問を答える前に裁判場を出ることは例え相手が巌窟王さんでも許さないから、そのつもりで!」

モノクマ「次の設問は重要だよ。ウェルダンにならないようにみんな必死で頑張ってねー!」

王馬「にししっ! 悪趣味だね! だけどわかりやすくていいかも」

百田「おしおきが悪趣味だなんてもう言うまでもねえだろ。わかりやすくていいっていうのはその通りだけどよ」

百田「次。おい、てめぇらそろそろ口開いたらどうだ?」

星「……」

獄原「……」

百田「……この局面じゃなきゃ聞けないことがある」

百田「どう思ったよ。終一の進路」

星「悪くはないと思ったさ。これが正直な感想だ」

星「外に出た後の俺たちの身の安全が五分五分だという点がネックだけどな」

獄原「……誰も死なないのはいいことだよね。うん。ゴン太はどちらかと言うと、最原くんの案の方が好きかな」

獄原「凄いな、最原くんは。ゴン太はさ、ずっとみんなを何かから守らないとって……そればかり考えてた」

獄原「でもゴン太が敵だと思ってた何かは、どこまで目を凝らしても『何か』以上のそれにはならなかった」

獄原「……影や雲や幻を相手に戦ってる気分だったよ。どんどん疲れて……それで一歩も動けなくなった」

獄原「最原くんはさ、なんのために戦えたの?」

最原「!」

獄原「……どうして最後まで足を止めないことができたの?」
333 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/19(火) 19:59:01.97 ID:JIQSspfa0
最原「怒り?」キョトン

獄原「怒ってたの!?」ガビーンッ

百田「ブチ切れまくってたよなぁ?」

最原「巌窟王さんの見え見えの挑発が物凄く頭に来ちゃって……」

巌窟王「……」ニガニガ

アンジー「結果だけ見ればやめておけばよかったよねー。終一の提案が無ければみんなお前の言うこと聞く選択肢しかなかったしさー」

巌窟王「……反省は必要か?」ツーンッ

アンジー「いらなーい」

ナーサリー「うふふ。可愛いわね。必死に顔を逸らしちゃって!」

アンジー&ナーサリー「ねー!」

巌窟王「……」ニガニガニガニガニガ

星「過去最高記録だな。巌窟王の渋面度が」

真宮寺「アンジーさんと他のサーヴァントが仲良くしてるのが気に入らないんでしョ」

獄原「……そっか。最原くんは巌窟王さんと戦ってたんだね」

獄原「ゴン太みたいな独り相撲とは大違いだよ」

最原「……そう、なのかな。言葉だけ聞くと仲間割れっぽいよね」

茶柱「学級裁判は議論の場ですよ。どこまで行っても」

茶柱「無秩序に殴り合ったり、人格を否定しあったりの醜い争いとは次元が違います」

茶柱「……武術の試合と同じですよ! あなたが相手にしてたのは巌窟王さんという高い壁であり、同時にそれに挑む自分自身です」

夢野「ネオ合気道って試合できるほどメジャーな武術じゃったかのう」
334 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/20(水) 21:20:45.25 ID:24Xwd+CN0
赤松「……ハッ!」バッ

赤松「……」キョロキョロ

赤松「……わ……」

赤松「私のせいじゃ……ないよぅ……」ガタガタ

茶柱「あーーーっ! 誰よりも責任感が強くて若干見てて危なっかしかった赤松さんがついに折れちゃいましたよ!」ガビーンッ

最原「わ、わかってるよ! 大丈夫だよ! 赤松さんが気絶したのはイシュタルさんのせいだし、黙ってた巌窟王さんも悪いし!」アタフタ

ネコアルク「げえーーーーっふ」マンゾクー

赤松「うあああああああああああネコアルクの口臭に未知の匂いが混じってるよーーー!」ビエエエエエエ!

春川「本当はこいつら赤松のこと嫌いなんじゃない……?」

入間「セミラミスの置き土産だしな……」

星「あいつは……酷いヤツだった……少なくとも赤松と入間に対しては酷かった……」

夢野「星がそこまで言うなんて、どういうヤツじゃったんじゃ。もうまったく想像つかんぞ」

最原「すぐわかるよ。あまりわかってほしくないけど……」

百田「設問は、残り一つだけだ!」

モノクマ「五分経過……! 次の設問に移ります!」

最原(最後の設問……! 一体どんな問題が――!)

モノクマ「上部モニターをご覧くださーい!」

デーデンッ

最原「……」

巌窟王「……」

全員「……」





全員「はあ?????????」
335 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/21(木) 22:00:03.46 ID:+AGKoPes0
最原(モニターに映った問題は……誰の不安や恐怖にも応えなかった)

最原(あまりにも簡単すぎる)

最原(……いや、それ以前に……)

百田「か……」




モニター『イタリアの首都はどこ?』




百田「関係ねぇ……関係なくねぇ?」

春川「いやどう考えても関係ないよ。そこで自信失くさなくていいから」

赤松「え。なにこれ。こんなものが最後の問題なの?」

モノクマ「じゃ、答えてちゃってください! この超難問に!」

巌窟王「……」

ナーサリー「……こ、これ……答えない方がいい気がするのだわ。本当に。本当にやめておいた方がいいと思うのだわ」

ナーサリー「予感しかないのだけど、この予感おそらく的中してしまうし……!」

最原「え。どうしたの。なんで二人とも眉を八の字にしてるの?」

赤松「どんなトンチキな設問でも、セミラミスさんが待ってるんだよ! 答えないわけにはいかない!」

赤松「ローマだよ!」

モノクマ「……え? なんだって?」

赤松「無駄に引っ張らないでよ! だからローマだってば!」

モノクマ「聞こえないなー。なんて?」

赤松「ローマ! ローマ! ローマ!」

巌窟王「赤松! やめろ! モノクマの煽り方で核心に至った! これは罠だ!」

モノクマ「じゃ、最後に思い切り正解を叫んじゃってくださーい!」

赤松「ああもう! こんなやり取りに何の意味があるの! 思いっきり言ってあげるから耳をよーく澄ませて今度こそ聞いてよ!」

赤松「すうううう……!」

赤松「ロー」
336 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/21(木) 22:05:11.87 ID:+AGKoPes0
ロムルス「マアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!」バリバリドガラッシャアアアアアアアンッ

赤松「」

巌窟王「」

ナーサリー「」

最原「」

夢野「……」

夢野「え? あれがセミラミスなのか? え?」オロオロ

百田「」

春川「」

茶柱「」

東条「」

獄原「」

星「」

王馬「」

入間「」

天海「」

真宮寺「」

アンジー「」

白銀「」

赤松「……ハッ……だ、だ、だ……」ガタガタ






赤松「誰ぇええええええええええええええええええっっっ!?」ガビビーーーンッ!
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/22(金) 00:04:43.59 ID:uezkGZzLO
ローマ!
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/22(金) 18:30:52.45 ID:/GpZF/GN0
ロムルス失踪はここに繋がっていたのか…
339 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/22(金) 20:18:41.13 ID:4ko2XdkL0
最原「……えっ。あ、あれ。この人、今どこから出て来た?」

百田「ロケットの中からだな」

最原「どこから出てきたって!?」

百田「現実から目ェ逸らしてんじゃねえよ! どっからどう見ても『ロケットの中から扉ぶち明けて出て来た』ようにしか見えなかったろ!」

最原「じゃ、じゃあセミラミスさんは……!? いない! というか、あの巨体がどうやって入ってたのか疑問になるくらい狭い!」
340 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/22(金) 20:32:41.69 ID:4ko2XdkL0
入間「いやいやいやいやいやいやいや! もっと他に議論することがあるだろ!?」

東条「……どちら様……?」

ロムルス「誰何するか? このローマに。既に熱烈に呼んだな? このローマを」

赤松「はい? ローマ……え? あれ。セミラミスさんは……!?」ガタガタ

ロムルス「透き通るような良い声である! ローマ!」シュバッ

赤松「なああああああああああああああああああ!?」ガビーンッ

最原(赤松さんの方に飛んだーーーッ!?)

ロムルス「ローマ」ドタドタドタドターッ

赤松「きゃー! きゃー!?」ドタドタドターッ

真宮寺「……赤松さんのことを追い始めたけど?」

巌窟王「放っておけ。感極まって抱擁しようとしているだけだ。特に愛情表現以外の意図はない」

ナーサリー「狭い場所にずっと閉じ込められていたのだものね。流石の彼もノイローゼ気味なのかしら」

最原「巌窟王さん! あの人なに? サーヴァントなの!?」

巌窟王「ローマ建国神話の神祖ロムルスだ」

天海「あれがぁ!? いやそう言われてみると微妙にそう見えないこともないっすけど、それにしたってローマアピール露骨すぎっすよね!?」

ロムルス「ローマ!」ギュウウウウウ

赤松「あ……あ……あ……」グッタリ

夢野「おおーい。赤松が追い付かれて目から光が消えとるぞー」

赤松「あうあう……」ホワンホワン



ネロ『余の愛はワガママだ。何もかも与える代わりに何もかも奪わねば気が済まぬ。愛すべき者には全霊をもって応える』

ネロ『だがそれはただの炎だ。人々が抱く愛とはもっと柔らかいものだった』

ネロ『余はそこを分かっていなかった……』



赤松「なんかよくわからないけど第五代皇帝ネロ・クラウディウスの肖像が脳内に流れ込んでくるよぉぉぉぉぉ……なんでぇぇぇぇぇ……」エグエグ
341 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/23(土) 18:32:15.05 ID:lVzVj96U0
巌窟王「モノクマ。言ったはずだな。設問は三問だけだと」

モノクマ「ん? んー……ちょっとそれは正確じゃないなぁ。ボクはキチンと言ったと思うけど」

巌窟王「なに……?」

巌窟王「……」

巌窟王「……!」

最原「まさかお前……ここに来て、そんな屁理屈を持ちだす気か……!?」




モノクマ『ボクが用意した設問は全部で三問! 全部答え終わったころには、この学園の真実はすっかり解き明かされていることでしょう!』




モノクマ「そう。ボクが用意した設問に関してはこれで終わり。でもそれだけで終わりだとは言ってないなぁ」

モノクマ「この学園の真実に関してはもうすっかり解き明かされていることは事実だよ? もう本当にネタ切れなの」

モノクマ「でも設問はあと二問残ってる。その内の最初の一問目の方でセミラミスさんの解放権をあげるよ」ニヤァ

ナーサリー「エクストラクエストね。ぬか喜びさせられたわ」

百田「ちょっと待て。モノクマが用意したわけじゃないのなら、その二問は誰が用意した設問なんだよ?」

最原「……」

モノクマ「そりゃあ決まってるよ! 当然決まってましてよ?」

巌窟王「視聴者……というヤツか。それしか考えられない」

赤松「!」

茶柱「バカな……! どこまで転子たちのことをいじめれば気が済むんですか!」

茶柱「いいえ! それだけじゃありませんよ! 今回の裁判に関しては巌窟王さんの仲間にまで手を出してる!」

茶柱「節操がないなんてものじゃない! こんなの無差別犯罪となにも変わらないでしょう!」

モノクマ「オマエラにとっては喜ばしいことかもよ?」

茶柱「はい?」

モノクマ「この学園はフィクション……そこは間違いのない事実のはずだった」

モノクマ「でも巌窟王さんの介入によって、この学園全体のリアリティがシャレにならないほどに上がった」

モノクマ「今ではもう『全人類に向けて爆弾を投げつけて出る』か『フィクションのまま終わるか』を議論してる」

モノクマ「オマエラだけじゃここまでは来れなかっただろうなぁ。仮に真実に辿り着いたとしても、フィクションのまま終わるしかなかったはずだよ?」

巌窟王「……そうだな。アンジーの召喚が、俺の存在が、この学園での出来事をゲームではなくしてしまった」

巌窟王「カルデアのサーヴァントとしては失格かもしれんな。まさか俺自身が才囚学園を特異点化してしまうとは」

ナーサリー(エリザベートとか割とやってた気がするんだけども)




カルデア

エリザベート「くちゅんっ」
342 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/24(日) 22:20:54.49 ID:lGAZF7Z00
ロムルス「ところで、そこな少年からローマの気配がする」ジーッ

最原(うわっ、僕のこと見てるよ!)ビクウッ

ナーサリー「具体的にどんな気配?」

ロムルス「ホームズに似た……そこで一つ訊ねたいのだが」

ロムルス「先ほどローマの入っていた牢獄に外側から攻撃を仕掛けたのは誰だ?」

入間「あー? なんのこと……」

入間「あっ」

最原「……」

最原(全員の視線がゆっくりと百田くんの方へと集まって行ってしまった)

百田「……」

百田「……!」ダラダラダラ

ロムルス「わからないというのであれば仕方がないが、その場合、この場で宝具を開陳しすべてを平等にローマするしかなくなるであろう」

百田以外全員「アイツ(あの人)がやりました!」ビシイッ

百田「おばっ……お前らぁーーーっ!?」ガビーンッ

ロムルス「ローマ!」ビシイッ

百田「でこぴんっ」ガフッ



カエサル『うむ。あのときの私は実に乗りに乗っていたな。だから愛する女王に厚顔にも言ってのけたのだ』

カエサル『私を阻む者はもういない。ローマのすべてを掌握したのだ。パルティア王国遠征が成功した暁には、必ずお前を正式に妻として迎え』

カエサル『カエサリオンを我が息子として広く世界へ告げてみせよう、と』

カエサル『……さて。それが成されなかったのは、適当な歴史書を見れば明らかだろう』



百田「ぐあああああああ! 何故か古代ローマの英雄ガイウス・ユリウス・カエサルの肖像が脳内に流れ込んでくるーーー!」ジタバタ

最原「さっきから何なの、この特殊能力! 怖っ!」
343 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/25(月) 23:03:48.74 ID:a4F/9FRk0
ナーサリー「……と、いうわけで、ロムルスよ。心強い味方になってくれるかどうかは微妙だけど」

最原「微妙なの!?」

ナーサリー「普段はとにかく強いのよ。とにかく。少なくとも私よりは間違いなく戦闘向けサーヴァントだし」

ナーサリー「でも……今は槍持ってないわよね?」

ロムルス「?」ガサゴソ

ロムルス「……!?」チクワーーーンッ

百田「ちくわしか持ってねぇ!」ガビーンッ

ロムルス「……!」スッ

赤松「いらないよ! おじさんに鷲掴みにされたちくわなんて流石に食べたくないよ!」

ロムルス「!?」ガビーンッ

巌窟王「明らかに権能のほとんどを没収されている。イシュタルのときと同じだな」

巌窟王(赤松にあんな口をきかれたら俺でも立ち直れないかもしれんな……)

最原「妙にサーヴァントにモテるよね赤松さん」

巌窟王「この中で本来のマスターと一番似ているのが赤松だからかもしれんな」

モノクマ「はいはーい! それでは次の設問行きますよー! 正解で、セミラミスさんの解放権をあげましょう!」

東条「ついに、ね」

星「今となってはアイツがこの学園の鍵だ。マザーモノクマの権利を譲渡されているわけだからな」

星「アイツの奪還だけは絶対に成し遂げなければならない。じゃなけりゃすべてがパァだぜ」

赤松「……今度こそ、絶対に助けないと!」

モノクマ「それでは、次の設問はこれでーーーす!」

モノクマ「……と、その前に、今回は順番を前後します」

赤松「え。前後?」

モノクマ「セミラミスさん、いらっしゃーーーい!」

赤松「!」

最原「え。な……まさか、呼ぶの? ここに!?」
344 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/26(火) 23:31:42.53 ID:DecnRQFh0
最原(そのときだった。妙な音が裁判場に響いたのは)


ペリ……


最原「……ん?」

赤松「最原くん! モノクマの後ろだよ!」

巌窟王「……バカな! 今まで裁判場には二か所穴を開けた! ならば流石に気づくはずだ!」

巌窟王「あの壁は紙なんかではなかった!」

モノクマ「ボクはこの新世界の紙であり、学園長だよ? あ、誤字った。神だよ」


ペリペリペリペリっ……

パサッ


最原(シールのように壁が剥がれ、現れたのは暗い空間……と)

セミラミス「む……?」シャクシャクシャクシャク

最原「座布団の上に正座してウエハース的なものを食べてるセミラミスさんだーーーッ!?」ガビーンッ

セミラミス「……」シャクシャクシャクシャクシャクシャク

セミラミス「……」ゴクン

セミラミス「……そこで何をしている? 揃いも揃って」キョトン

赤松「こっちの台詞なんだけどッ!?」ガビーンッ

セミラミス「おお、カエデか。いいところに来たな。モノクマ! 予備のコントローラーを持て!」

セミラミス「我の力をとくと見せてやろうではないか……!」ギンッ

赤松「は?」

白銀「……あっ」

最原「あ?」

白銀「ぎゃあああああああああああああああああっ!? そ、それ! ウエハースのカスがぼろぼろこぼれてるそれ! それーーーっ!」

セミラミス「?」





セミラミス「我のゲーム機がどうかしたか?」

白銀「私のゲーム機だよっ!」

入間「相変わらず……引くほど図々しいな……」ズーン
345 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/27(水) 18:15:16.62 ID:I88TvUoT0
赤松「で、でもよかった。なんとか無事みたいだね」

セミラミス「そうだな。今日一日くらいは生きることができるぞ。流石に腹を貫かれたときに霊核が砕けて、そう長くは生きられぬが」

セミラミス「見よ。モノクマがやったのだが、ガムテープで我の腹が無残にもグルグル巻きだ。外したら死ぬからどうしようもない」グチャァァァ

赤松「」

百田「全っ然! 無事じゃねぇーーー!」ガーーーンッ

天海「巌窟王さん!」

巌窟王「……」

ナーサリー「風聞だけど、カルナが似たようなことをやっていたのを知っているわ」

ナーサリー「彼女はもう『死んでいる』。少なくともサーヴァントとしては」

ナーサリー「ただ全力で死に対して抗ってるだけよ。精神力だけでね」

巌窟王「……俺の宝具の範囲が及ぶのは瀕死までだ。死亡している者はどうしようもない」

巌窟王「そうか。キーボがセミラミスを連れ去ったのは殺す気がなかったからではなく」

最原(……単純に殺しきれなかっただけ……!)

赤松「……ぐっ……! ぜ、ぜみらみずざ……!」ブワアッ

セミラミス「!?」ガビーンッ

赤松「ぶ、ぶじとかっ……ぐずっ……ぶじなんがじゃ、ないじゃんっ……うええええええ……!」グスグス

セミラミス「……!?」オロオロ

セミラミス「何故泣いておる? スギ花粉か? いや、この学園にスギはなかったな……心因性のなにかか?」アタフタ

春川「どうして……そんな状態になって生きてるのって、どんな気分? そこまでしてなんで生きてるの!?」ガタガタ

春川「素直に死んじゃったほうが遥かにマシじゃん! なんでッ!」

セミラミス「……確かに今すぐ舌を噛み千切って死にたいくらいの最悪の気分だが……む。いや今のは忘れよ。普通にしてるだけで死ぬのだったな」

セミラミス「まあ、安心せよ。我もこういうことは二度目だ。霊核が砕けた状態で夜明けまで生き延びたこともあるぞ?」

セミラミス「やらなければならないことが一つだけある。それをやりきるまでは死ぬに死に切れん」

巌窟王「……セミラミス……」
346 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/28(木) 20:48:55.36 ID:MknF0CcK0
セミラミス「モノクマとキーボはもうこれ以上なにもしてこないようだし、重く考える必要は特にないぞ?」シャクシャクシャクシャク

セミラミス「ウエハースにはそろそろ飽きたがな」シャクシャクシャクシャクシャク

最原「……!」

春川「こ、こいつ……!」

最原(う、嘘だ……この人……こんなことがありえるのか!? BBさんですら、あの犠牲は最低限『本体は無事』だっていう保険ありきだったんだぞ?)

最原(この人の場合は違う。自分自身が今ここにしかいないことを知っている! そういう振る舞いを今まで徹底していた! なのに!)

百田「は、はは……なんだこいつ。俺たちは自分たちが死ぬかもしれないって躍起になってるってのに……」

百田「もう絶対確実に死ぬってときに、こいつってヤツは……なんで平然と菓子食ってんだよ……」

セミラミス「……ふむ? 貴様ら勘違いしておるな? 揃いも揃って、修羅場を潜り抜けてきたくせに」

セミラミス「別に命は重くもなんともないぞ? 質量に直して考えてみよ。どう計算してもゼログラムだ」

セミラミス「人が命を惜しむのは、命そのものが惜しいからではない。本当に恐れているのは……」

モノクマ「はい! そこまででーす! さっさと先に進めたいのでおしおき装置を出しちゃいましょうー!」

夢野「んあ!? 今からいいセリフ言いそうだったのにか!?」

セミラミス「しかたがないな。カエデ、電話番号を教えろ。ここから先の台詞はLINEで言ってやろう」スッ

赤松「ないよぉっ……スマフォないよぉっ!」ダバァァァァァ!

セミラミス「なん……だとっ……!?!?」ガビビーンッ



ズドドドドンッ ズゴゴゴゴゴゴンッ……!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!


巌窟王「……!?」

ロムルス「奥からなにかが出てくる。ナーサリーライム、ローマの後ろに隠れるがいい」

ナーサリー(……とてもイヤな気配……!)スッ

最原「あれは!」

茶柱「!?」





ショベル「」ポンポンポン ポンポンポン♪

最原「しょっ……ショベル!」ガーンッ

茶柱「ショベル!?」ガビーンッ

最原「ま、まずい! これはまずい! ダンガンロンパの記憶は中途半端にしか戻ってないけど、それでもショベルは特にまずい!」

白銀「え? ショベルとダンガンロンパってなにか関係……」

白銀「……あった!」アワワワワワワワワ
347 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/01(金) 22:58:58.84 ID:8jXUU5nP0
東条「説明してくれるかしら? 何が起ころうとしているの?」

最原「一番最初のコロシアイで、似たようなおしおきがあったんだ! そのおしおきは例外的で、クロが処刑されたものじゃなかった」

最原「とあるものを破壊するためのおしおきだったんだよ!」

白銀「おしおきの名前はショベルの達人。壊されたのは、そう……」

白銀「……アルターエゴだった!」

巌窟王「なんだと……!?」

ロムルス「ふっ。ならば問題はないな。安心するがいい、教え子たちよ」

ロムルス「セミラミスはAIの類ではない。あそこに座っているのがBBならともかく、セミラミスであるならば攻撃の効きは薄いだろう」

赤松「今はAIなんだよッ!」ガーンッ

ロムルス「よしんば仮にAIだったとして、クラスがアルターエゴでない限りは、やはり壊滅的な打撃は絶対に受けないと断言しよう」

赤松「アルターエゴなんだよぉっ!」ガガーーンッ

ロムルス「……?」キョトン

セミラミス「色々と事情があってだな……」フッ

ロムルス「そうか。それはローマか?」

セミラミス「多分そう。部分的にそうだな」

白銀「なんでアキネイターみたいな問答してるの?」

星「それ以前に質問の内容そのものが意味不明だな」

モノクマ「さて! 準備はOK! これがボクがセミラミスさん処刑のためだけに用意したおしおき!」

モノクマ「ニューショベルの達人、またの名を『ショベル72』!」

獄原「ななじゅうに?」

モノクマ「ノリで付けただけで特に意味はないよ」ショウサンガアルッ

モノクマ「今回に限り、おしおき装置は一定時間が経つまで動きません! 期間は大雑把にボクが飽きるまで!」

モノクマ「または、セミラミスさんの目の前にあるスイッチを、セミラミスさん自身が押すまでです!」

セミラミス「これか?」サッ サッ

赤松「セミラミスさぁん! 無駄に押すフリをしないでぇ!」

巌窟王「赤松。言いにくいことだが、ヤツがあんな挙動を取っているのはお前の反応を面白がってるからだぞ」
348 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/02(土) 20:16:16.60 ID:Ar0VRKhy0
モノクマ「では! これが次の設問です! みんな頑張って議論してねー!」

デデンッ

モニター『昨夜、巌窟王と共謀して白銀を殺そうとした共犯者は誰? 証拠も併せてお答えください』

赤松「ッ!」

百田「……これって、昼の内にセミラミスが誘拐された直後で終一が言ってたヤツか?」

最原「多分そうだろうね。それ以外に該当しそうなものがない」

最原「……」

最原(とにかく気が進まない……本当に答えないとダメなのか!?)

セミラミス「くっ……ククククク! はははっ! モノクマめ! 妙に大仰なマネをすると思ったら、この程度か! 肩透かしにも程がある!」

セミラミス「今の我はマザーモノクマ。監視権限も当然持っておる。その気になれば過去の映像も思うがままに閲覧可能だ」

アンジー「おー! 凄いねー! じゃあ瞬殺だねー!」

セミラミス「その通り! この程度の問題、我自身が直々に答えて――」チラッ

セミラミス「あっ」

アンジー「あっ?」

セミラミス「……」ペリペリ

セミラミス「……」レロレロ

アンジー「……えっ。黙っちゃった……?」

百田「飴舐め始めたぞオイ」

最原(……い、今一瞬、赤松さんの方を見たな……!)チラッ

赤松「……」カタカタ

最原「……」

最原(庇っ……てる? 赤松さんのことを?)

夢野「んあ? どうしたんじゃ? 犯人のことを知っておるならさっさと答えんか。時間がもう残っておらんぞ?」

セミラミス「……」レロレロ

茶柱「……あの、これ……もしかして喋る気が失せているのでは?」

入間「は!? んなバカな! セミラミスだぞ! やりたいことのためなら命は惜しくない、ってのは行動原理として理解できなくはねぇが」

入間「流石に自分から命を捨てるようなマネをするヤツじゃない! コイツのスタンスはそれくらいブレねぇんだ!」

真宮寺「……一緒に過ごした時間は相当短かったけど、それでも本当わかりやすい人だったんだよネ……」

最原(それでも命をかけて守っているものはあった。やっぱりそうだ、彼女! セミラミスさん!)

最原(赤松さんを庇うために口を閉ざしている!)
349 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/03(日) 19:37:21.79 ID:M7E2oEcW0
王馬「……」

王馬「へえ。ちょっと楽しくなってきたかもね。いいよ、全力で俺も議論に参加してみようか」

王馬「証拠付きでってことは自白だけじゃどう考えても足りないしね。ここで必要なのは明確に誰かを追い詰める『悪意』だよ」ニヤァ

王馬「今更犯人が自白するかどうかは微妙だしねぇ」

巌窟王「犯人が仮に俺の進路を取りたがっている場合は、セミラミスが死ねば都合のいいことだらけだ。もうその方向性しかなくなるわけだからな」

巌窟王「なにより、セミラミスの口を永遠に封じることさえできれば、犯人は自分の手が汚れているということを永久に隠すことができる」

アンジー「後からつむぎを殺そうとした犯人を捜そうって展開になるとは考えにくいしねー。そんなことしても無駄なだけだし」

アンジー「今のこの状況はあくまでモノクマが設問を提示したからこそ成立してるんだからさー。ね、終一」

最原「……」

春川「待って。セミラミスを今ここで拷問して聞き出せばいいんじゃないの?」

春川「この場には三人サーヴァントがいるんだよ? アイツの嫌いなものとかなにかないの?」

セミラミス「……」サワッサワッ

星「おい。アイツ、スイッチを撫でまわしてるぞ」

巌窟王「『そんなマネをされるくらいならさっさと死ぬ』と言っているようだな」

春川「こ、この女っ……!」

夢野「なんか仲悪いのう、お主とあやつ。何かあったのか?」

春川「なんっでもっない!」ギンッ

巌窟王「赤のアサシン……だな。両方とも。いや、くだらないことを言った。忘れろ」

セミラミス「いや? 中々いい着眼点だ。そら、超高校級の暗殺者よ。我のことを先輩と呼ぶがいい」ニヤニヤ

セミラミス「後輩というものにちょうど興味があったのだ。なんなら盾も用意するぞ?」ワクワク

春川「……!」ビキビキ

百田「赤松! セミラミスを止めろ! ハルマキの口数が少なくなってるのが超マズイ!」アワアワ

赤松「私に言われても!」イヤイヤイヤイヤ

茶柱「いやー。流石にネコアルクの親玉ですね。腹立たしさのベクトルが微妙にそっくりです」

最原「……」

最原「はやく決着を付けよう。もう真相はわかってるから。証拠もこの場で用意できる」

赤松「!」

最原(くそ。セミラミスさんめ……ひょっとして巡り巡って僕のこともおちょくってるんじゃないか? 本当に最悪の気分だ)

セミラミス「……」ニヤニヤ

最原(おちょくってたよ!)ガビーンッ
350 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/04(月) 20:16:36.73 ID:liBAsxp90
最原「犯行の手口から洗ってみようか。共犯者は僕の予測では二人だよ」

最原「一人だと手が足りなくなっちゃうから」

百田「二人? そんなにいんのか?」

最原「うん。赤松さんと真宮寺くんだよ」

赤松「!」

真宮寺「ハ……?」

星「……いつもより数倍早いな? 結論を先に言うのは初じゃないか?」

最原「なんというか……動機がわかりやすかったから……」ジトーッ

赤松(気付かれてる……! パソコンの中に何が入ってるのか白銀さんから聞いたんだ!)

真宮寺(この場で白銀さんがそのことを暴露したところで、パソコンがここにある以上は誰もそれを信じないだろうけどネ)

真宮寺(この場では証拠こそがすべてだからさ)

獄原「ど、どうしてその二人なの? 他にも動機がありそうな人は……あまり言いたくないけど沢山いたよね?」

最原「動機に関しては後で説明するよ。証拠の準備は……そのころには多分できてるから」

最原「……まず、白銀さんを発見した赤松さんと真宮寺くんは、白銀さんからあるものを奪った」

最原「それは多分、エグイサルのコントローラーだ。入間さんが作った箱型のあれだよ」

王馬「ああ。俺が拾ったアレだよね。そっかー。あれって最初は白銀ちゃんが持ってたのかー」

最原「……持ってきたのは王馬くんじゃないかな? 茶柱さんから聞いたよ。王馬くん、白銀さんをみんなの目の前から一度逃がしたんだって?」

最原「あのときみんなはほぼほぼ二人以上の人数で固まってて、単独行動の人は少なかった。王馬くんくらいだよ、あのとき行方がわからないの」

王馬「あ。うん。エグイサルのコントローラーを白銀ちゃんに渡したの俺だよ」シラーッ

白銀「とても素直……」

東条「……確か、あのコントローラーが使われ始めたのは……」

巌窟王「俺がモノタロウの持っているエグイサルを破壊しきった後だな。白銀がコントローラーを使ったのはおそらくその直後からだろう」

最原「あのコントローラーには、ある重要な証拠が残っていた」

最原「……白銀さんの抵抗の痕跡だ」
351 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/05(火) 19:48:24.92 ID:5Y+amNF80
最原「春川さん。協力してくれる?」

春川「……ああ。なるほど。あれを証言しろってこと」

春川「協力してもいいよ。セミラミスが頭を下げるのなら」

セミラミス「頼む。この通りだ」ジャララララッ

入間「いげぎゃぎゃぎゃっ……!」ギリギリギリギリ

春川「頭を下げろって言ったんだよ。誰が首を落とせって言ったの」イライラ

巌窟王「……鎖はまだ出せるのか」

セミラミス「少しだけだ。やり過ぎると消える」キラキラキラキラ

赤松「本当だぁ!? なんか透けてる!」ガビーンッ

最原「お願い春川さん! セミラミスさんがこの場で消えると本当に困るんだ! 僕が代わりにいくらでも頭下げるから!」ドゲザーッ

春川「仕方ないな……わかったよ」

セミラミス「ククク。人間素直が一番だぞ。わかればよい」ドヤァァァァァ

春川「生身の状態でサーヴァントを殺せたら、初めての自慢できる殺人になる気がする」ギロリ

夢野「よせい! というかセミラミスもなんでさっきからこうも煽リティが高いんじゃ!」

赤松「ごめんなさい本当になんの意図もないんです! あの人の素なんですぅーーー!」ドゲザーッ

巌窟王「もうアイツのことは放っておくがいい。いないものと考えろ。どうせ証言などする気がないのだ」

最原「……」

最原(さて。それはどうかな)

春川「私たちが発見したとき、白銀は爪に異常があったんだよ。明らかに割れたり剥がれかけたり酷い有様だった」

春川「でもあれは多分、半分くらいは白銀が自分自身で付けた傷だと思う」

最原「白銀さんは自分の意思で爪を割った。つまり、全力で何かを引っかいたんだ」

百田「引っかいた……?」

白銀「それは……」

最原「いいよ、白銀さんは喋らなくても。最低限度まで首を突っ込んでほしくない」

白銀「……」

最原(……やっぱり気分は最悪だ……白銀さんに責任を取らせないと決めたのは僕なのにな)
352 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/06(水) 22:49:24.84 ID:qYaaVhm30
最原「コントローラーだよ。白銀さんは誰かにコントローラーを奪われそうになって、必死にコントローラーを引っかいたんだ」

最原「その証拠に……!」

王馬「俺が発見したときのコントローラーには血が混じった引っかき傷がしっかり残ってたよー」

王馬「そうだ! ついでに言っておこうか! 万が一の反論を許さないためにね!」

王馬「あのコントローラーには引っかき傷はあった! でもあるものがなかったんだよ!」

百田「あるものがなかった?」

入間「ど、どっちだよ……ふにゃちん野郎……あるのかないのか……」ゼェゼェ

ナーサリー「あ……拘束解けてる……」

セミラミス「……」ゼェゼェ

巌窟王(……本当に時間がないな。一撃でも貰えば間違いなく耐え切れない)

最原「焦げ跡」

獄原「こ……焦げ跡? ちょっと待ってよ。火の気なんて今までの話のどこにあったの?」

王馬「あったはずだよゴン太〜。そのお粗末な脳味噌でよーく思い出してみよっかー」ニヤニヤ

獄原「……?」

獄原「……」

獄原「……??????」

百田「王馬。わかってて言ってんだろ。ゴン太はあれを直接見てねーんだ。伝聞だけじゃいまいちわかんねーだろ」

王馬「あんなにデカかったのになー。じゃ、時間切れってことで正解を、最原ちゃん!」

最原「巌窟王さんの暴走だよ。それが火の気だ」

巌窟王「!」

アンジー「あ。そっかー。つむぎはあのとき思い切り巻き込まれてたからー」

アンジー「あの周囲にコントローラーがあったら一緒に焦げ焦げになってなきゃおかしいんだねー!」

王馬「どう? 万が一の反論も許さないって俺の意思、わかってくれた?」

赤松(底意地の悪さはもうそれ以前からはっきりと……!)
353 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/07(木) 21:24:06.63 ID:mBwg9U550
赤松「待ってよ! コントローラーが誰かに奪われたってことはわかったとしても!」

赤松「だからってなんで私たちなの?」

赤松「いや! それ以前に共犯者が複数だなんて、なんでわかるの?」

最原「言ったでしょ? 手が足りないんだよ、明らかに」

最原「さて、白銀さんからコントローラーを奪った共犯者は、次になにをする?」

アンジー「んー? 相手の立場になって考えろってことー? えっとねー……」

アンジー「おー! そっかー! つむぎの抵抗を抑えないとねー! 気絶させるかどうにかして……」

最原「気絶はダメ。共犯者はこの後、白銀さんにやってもらいたいことがあったから」

百田「やってもらいたいこと……?」

最原「それはまた後で。すぐの話だから」

アンジー「んーとねー。それじゃあ……」

アンジー「……まずはエグイサルだよねー。『彼』が戦ってるエグイサルをどうにかして無力化しないとー」

アンジー「できることなら二度と使えないように、安全な場所で自爆させるとかがベストかなー」

アンジー「エグイサルが全部壊れちゃったら、コントローラーの意味なんてもうないもんねー」

獄原「安全な場所で自爆……」

入間「安全な場所で自爆……? 自爆……?」

獄原&入間「ああっ!」

茶柱「どうしたんですか? 過去に読んだ読み切り漫画の作者と今連載している人気漫画家が一緒だったことに気付いたような顔して」

入間「そんな嬉しいことじゃねーよ! 今思い出したんだ! エグイサルの操縦者、確かに途中から変わったとしか思えなかった!」

入間「巌窟王が急に何かに気付いて、どこかに飛んで行った直後あたりからだろ! エグイサルが俺様たちのことを追いかけ回し始めたの!」

東条「……ああ。そういえば、そうね。殺意はなかったけど、大迷惑には変わりなかったわ」

星「……そうか。エグイサルが巌窟王を追わずに、意図不明の挙動を取り始めたのは……!」

最原「操縦者の善意。そして空回りだよ。途中からはもう、下手に触らない方がマシだなってコントローラーそのものを手放したみたいだけど」

最原「それを再度王馬くんが拾って、キーボくんのオブジェにエグイサルが衝突。そして終了だよ」

最原「さあ。入間さんは今、興味深いことを言ったよね。巌窟王さんが何かに気付いた、とか」

入間「ん……」

最原「……一体巌窟王さんはなにに気付いたんだろう。あのときは夜で、視界はかなり狭まってたよね」

最原「視界によらない変化が起こってたとしたら?」
354 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/09(土) 00:01:31.82 ID:TFzfLDKg0
キングプロテアを相手どっていたらこんな時間。もうマジで時間ないのでプロテア倒せるまで更新はなし!
多分倒せると思うんだよなぁーあと少しで
355 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/09(土) 00:45:10.08 ID:TFzfLDKg0
ギリギリで勝ったーーー!
今日の夜から通常更新です
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 02:47:20.59 ID:RX6dwCFs0
おめです!
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 08:26:32.82 ID:R2ohOFywo
おめ、次はダメージチャレンジだ!一億目指そうれ
358 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/09(土) 19:56:17.93 ID:TFzfLDKg0
春川「また私の協力が必要かな」

最原「うん。お願い、春川さん」

春川「白銀の右手の爪はさっき言った通りボロボロだった。でもそれだけじゃなかったんだよね」

春川「指の骨もバキボキに砕かれてたんだよ。関節を外したとかじゃなくってピンポイントで骨がさ」

百田「ああ。そういえばあんときの白銀、巌窟王の炎以外の傷がやたらあったよな」

茶柱「……」ダラダラダラ

最原「……えっと。うん。その……」

茶柱「ほ、ほぼ私がやりましたァ!」

最原「言わなくてよかったのに!」ガビーンッ

王馬「まさかの真実! 共犯者は茶柱ちゃんだった!?」

ネコアルク「号外だにゃーーー! 意外な真実だにゃーーー!」バッサバッサァ!

赤松「下手な情報で新聞をバラまかないで!」

最原「ええと、うん。茶柱さんが白銀さんをボコボコにしたのは真実だけどさ」

最原「指の骨に関しては百パーセントそれ以降のものだよ」

最原「だよね。春川さん」

春川「指がまともに動かせない状態で、ものを引っかけると思う?」

東条「それは当然不可能だけど……それが……ああ、なるほど。順序の話ね」

春川「爪がボロボロなのも指の骨が折られていたのも右手」

春川「つまり、指の骨が折られたのは『誰かにコントローラーを奪われそうになったときに抵抗した後』ってこと」

最原「春川さんが気付いてくれなかったらと思うとぞっとするよ。本当にありがとうね」

春川「……最原の進路を取るかどうかはまだ迷うけど、百田の理念には賛同してる」

春川「全員揃って私は外に出たい。そのための協力は惜しまないよ」

百田「ハルマキ……!」ジーンッ

春川「……」プイッ

最原(照れてる)

ナーサリー「照れてるのね」ニコニコ

セミラミス「これがラブコメの波動か」

ロムルス「これこそがローマである!」ビシイッ

巌窟王「クハハハハハ! ご祝儀袋は外目からも札束だとわかるほどに包んでやろう!」ギンッ

春川「殺されたいの!? 揃いも揃って!」

最原「……サーヴァントってみんなこんな感じなのかな」
359 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/10(日) 20:12:49.98 ID:wNnXUZHb0
百田「でもよ。なんで白銀の指がそんなボロボロになってたんだ? それはどんな抵抗の痕なんだよ」

最原「抵抗なんかしていないよ。これは抵抗を抑えた状態で行われた拷問の痕だ」

夢野「そうかー。拷問の痕かー。かっかっかっ……」

夢野「……冗談じゃよな?」ガクガクガク

最原「真面目に言ってるよ」

夢野「いやいやいや! ちょっと待つんじゃ! 白銀を拷問したところで引き出せる情報なんぞあるか!?」

夢野「ないじゃろ! あの時点でかなーり学園の真実についてはわかっておった!」

獄原「そ、そうかな。この場でわかった事実も相当数あった気がするけど……」

東条「白銀さんの心理面の真実がね。そこに矛盾があるのよ」

東条「白銀さんに拷問をしかけるような人間が、白銀さんの心理面の真実に興味を持つと思う?」

獄原「ああ! そっか! 白銀さんのことが嫌いなら、そんなことを聞きたいとは最初から思わないんだ!」

獄原「あれ。それじゃあ……共犯者って白銀さんになにを聞き出そうとしたんだろう」

最原「聞こうと思ったことは特にないよ。いや、拷問することで白銀さんの口から捻り出そうとしたものは確かにあったんだけど」

百田「あー? なんだそりゃ。まるで拷問すること自体が目的だったみてーな……」

春川「白銀から聞こうと思ったことは特にないのに、白銀の口からなにかを捻り出そうとしていた……?」

春川「……」

アンジー「……悲鳴?」

春川「!」

百田「……あっ……!」

最原「それで正解だと思う。共犯者は白銀さんの悲鳴のみが目的だったんだ」

最原「指折ったら普通、出るよね。悲鳴」

最原「補足すると、白銀さんを地面に抑えつけながら右手を後ろに捻り上げ、指を一本ずつ折っていくとなると……」

最原「加害する側に必要な腕は二本だよね」

最原「更に、ほぼ同時進行でエグイサルをどうにか処分しようとコントローラーを弄っていたわけだから……」

ロムルス「腕がどう頑張っても一人分では足りない、ということか!」

ナーサリー「本当に? 物凄く高速移動すれば腕が増えたりしないかしら?」

ロムルス「増えたな」ブンブンブンブンブンブン

最原「サーヴァント式は禁止! 僕たちは人間だから!」ガーンッ
360 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/11(月) 19:33:26.83 ID:nhPFSkUv0
最原「赤松さんと真宮寺くんは多分、王馬くんが白銀さんを逃がした後で白銀さんを見つけたんだ。一番に」

最原「そこで彼女は魔が差した。白銀さんの位置を巌窟王さんに教えようとしたんだよ」

百田「拷問による悲鳴で、か……!」

東条「……巌窟王さんは炎のせいで闇の中でも位置が丸わかりよ。現在地から悲鳴が届くかどうかは一目瞭然だったはずだわ」

東条「その代わり、他の誰かも巻き添えで呼んでしまうかもしれないけど……」

星「……そうか。そこだな、最原が赤松のことを疑っている根拠は」

赤松「えっ?」

最原「真宮寺くんを疑っている根拠はたった一つ。赤松さんと同行していたから、というだけだ」

最原「でも赤松さんに関しては違う。彼女には手口の面でどうしても疑わざるを得ない」

巌窟王「……聴覚か」

赤松「ッ!」

夢野「そうか! 第一の事件のときも、第三の事件のときも、赤松の聴覚は頭抜けておった!」

夢野「白銀の悲鳴があがったら赤松も当然聞こえておるはずじゃぞ!」

赤松「……!」

最原「……下手なこと言えないけど、どうする? どんな証言をするの、赤松さん」

天海「必要ないっすよ。赤松さんはあの場にいなかった。巌窟王さんにボコにされてた」

天海「……俺があそこに辿り着いたのも結構運の要素が強かったっすね。本当によかった」

赤松「……」

赤松「聴こえなかったから、ね。白銀さんの悲鳴なんてさ」

最原「!」

百田「指折られてんだぞ……! 悲鳴を上げてないわけがねぇだろッ! 赤松!」

百田「誰よりも耳のいいテメェが……誰よりも優しかったテメェが、なんで白銀の声を聞けねぇんだよ!」

赤松「……」

赤松「なにも聞かない。証拠がない限り、私はなにも納得しない。それだけだよ!」

最原「ならつきつけよう! キミに! そうじゃないと僕たちは前に進めないから!」

最原「……歯を食いしばっててよ」
361 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/12(火) 22:18:02.01 ID:Lhk2LV9s0
赤松「あるわけない。証拠なんて用意できているはずがない」

真宮寺「ククク。僕たちは共犯者なんかじゃないんだ。証拠があるはずがないよネ?」

最原「赤松さん。髪飾りはどうしたの?」

赤松「……」

春川「髪飾り? あの音符のヤツのこと?」

最原「最初に気付いたのは入間さんなんだけどさ」




入間『おっ……俺様は悪くねーぞ……別に泣かせるつもりじゃ……』シドロモドロ

入間『おっ。バカ松、髪飾り変えたか? いつもより一ピコグラムほど可愛さが増してるぜ!』ニカッ

巌窟王『誤魔化すな!』ギンッ

入間『テメェに言われたかねぇッ!』ウガァ!



最原「赤松さん、髪飾りはどうしたの?」

赤松「……付けてるけど?」

入間「ん? ああ、そうだな。付けてるな。ダサイ原、あんまし意味ねぇ追求してんじゃねぇよ。時間の無駄だろ?」

入間「確かにいつもと音符の並びが違ぇけどよ! それが一体なんだってんだ?」

赤松「ッ!」

夢野「音符の並び……?」

入間「おお! いつも処女松は左右のコメカミ部分に音符の髪飾り付けてただろ?」

入間「右側のコメカミには、髪のせいで上半分が隠れているからわかりづらいけど多分、繋がった二音の十六分音符の髪飾り」

入間「左側には四分音符三つに、間に八分音符の髪飾りが一つの計四つだ」

東条「よく覚えてたわね。そもそも音符の区別がついたこと自体意外なのだけれども」

入間「俺様は世紀の大天才だからなーーー!」ヒャッハー!

最原「僕も覚えてるよ。赤松さんの普段の髪飾りの並びはさ。今、入間さんが言った通りだ」

最原「……でも今は違うよね? 普段なら八分音符のあったところにあるのは……!」

春川「全部四分音符だね。八分音符の髪飾りは?」

赤松「……」
362 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/13(水) 21:50:52.33 ID:l79vQCsq0
赤松「どこかで落としたみたいなんだ。八分音符の旗の部分をね」

獄原「え。壊れちゃったってこと?」

星「髪飾りだぞ? そうそう簡単に壊れるもんじゃないだろう」

赤松「割と脆かったからさ。そういうこともあるんじゃない?」

最原「コントローラーを無理やり奪ったとき、白銀さんは凄い抵抗をしたはずだよね。爪から血が出てるんだよ?」

最原「共犯者の側にもなんらかの被害が出ててもおかしくない」

赤松「白銀さんが私の髪飾りを壊したって? いくらなんでもそんなこと……」

最原「仮に、本当にタイミング良く髪飾りが壊れただけだったとしてもさ」

最原「……赤松さんが白銀さんの抵抗を受けて何かしらの痕跡を現場に残したのは確かだと思う」

最原「じゃなかったら、僕の揺さぶりに対してあんな無茶苦茶な隠蔽を図るはずがない」

百田「隠蔽だと?」

最原「現代アート風味の超巨大ネコアルクオブジェだよ!」

赤松「ぐうっ……!」

ネコアルク「え? 呼びましたかにゃ?」

赤松「呼んでない……座ってて」

最原「天海くん、あのオブジェができてた位置ってさ」

天海「ああ。白銀さんと巌窟王さんが揉み合いになってた場所が大体まるっと全部潰されてたっすね」

天海「……」

天海「ああっ!? 嘘っすよね!? まさか! それだけのために!?」

茶柱「え。なんです? あんなトンチキオブジェクトになんの意味があると?」

最原「昼の間に僕が白銀さんを庇うために言ったことはほぼブラフだった」

最原「巌窟王さんと共謀した人がいる。その人が名乗り出ない限りは白銀さんの身が危険。裁判が始まるまで引き渡すわけにはいかない」

最原「僕の要求はおおよそこんな感じだったけどさ」

最原「赤松さん。僕は本当に、そのことを追及しようなんて気はなかったんだ。こんな状況でなかったらキミを糾弾なんかしない」

最原「でもキミはそうは思えなかったんだよね」

赤松「ぐ……うあっ……!」ダラダラダラ
363 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/14(木) 20:46:14.63 ID:DbfGqOA90
アンジー「あーそかそかー! 楓があんなバカバカしいオブジェクトをネコアルクに作らせたのって、落とした音符の旗部分を隠蔽するためかー!」

ネコアルク「そうそう、あのバカでかいオブジェクト……バカバカしいって言いましたかにゃ今?」

アンジー「……にゃは?」

最原(誤魔化した!)

夢野「じゃがのう。隠蔽されたというのなら、もうあそこにはなんの証拠も残っていないということではないか?」

最原「ここは科学捜査の基本に立ち返ってみよう。ロカールの交換原理だ」

赤松「ロカー……なに? 誰?」

東条「科学捜査の父、エドモンド・ロカールの言葉ね。ざっくり言うと『証拠を処分されても証拠を処分したという痕跡が残る』ということよ」

最原「ネコアルクは赤松さんに上手く乗せられただけだ。多分、真意は絶対に教えてもらってない」

最原「真意を教えようが教えまいが、ネコアルクたちの行動は変わらないんだから話す必要がない」

最原「ただし、キミはそれ故にミスを犯した。ネコアルクたちの能力をちょっとだけ過小評価してたんだ」

赤松「なんのことを……?」

最原「あのオブジェを作ったあたり、実は変化が可逆性なんだよ」

赤松「――」

赤松「か、ぎゃく……? 元に戻せるってこと?」

最原「そう。それも一部の隙もなく完璧に」

最原「これはキミの指示だよ赤松さん。ネコアルクはそれを律儀に実行したんだ」




ネコアルク『もしかして率直に『邪魔』って言ってるのかにゃん? 安心を。赤松嬢からは『生徒に迷惑をかけるな』と仰せつかっておりますにゃん』

最原『え? どういうこと?』

ネコアルク『時間さえくれれば、このオブジェを解体して一日で全部元通りにすることは可能ってこと』




最原「そう。あそこ一帯はすべて元通りにする準備ができてるんだよ」

最原「キミの何気ない指示のお陰でね」
364 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/15(金) 20:49:07.95 ID:Y7F91Zeg0
赤松「……ね、ネコアルク?」

ネコアルク「生徒に迷惑をかけるな、と言われた以上、あらゆる物品を元の位置に戻す準備はきっちり用意してありますにゃー!」

ネコアルク「そこら辺に埋まってた岩! 生えていた草は根に至るまで! 土も粒子の位置レベルまできっちりと元に戻せますにゃ」ギランッ

赤松「なっ……あ!?」ガーンッ

真宮寺「赤松さん……正直な感想を述べていいかな……?」

真宮寺「このネコもどきども、やっぱり間違いなくメイドバイセミラミスさんだヨ。存在のなにもかもが大迷惑だもの」

赤松「知ってる!」

セミラミス「……」

セミラミス「む? 何故だ。何故どの方面からもフォローが飛んでこぬ? 我のせいではないであろう?」

ナーサリー「気遣いと労いと思いやりがまったくないとは言わないわ。言わないけども……」

巌窟王「自分自身が毒婦であることは貴様自身が理解しているはずだな?」

巌窟王「それと、実はこういう展開を貴様も内心少し期待していたのではないか? 赤松の追い詰められた表情を見たいがために」

巌窟王「別に『誰かを庇いたかったから黙った』というわけではないのだろう?」

赤松「……えっ」

セミラミス「……」

セミラミス「……」カチカチ

天海「あっ。ゲームやり始めた……」

茶柱「都合の悪い話になった途端!」ガーンッ

最原「決まりだ! 赤松さん! ネコアルクたちの持っている四次元ポシェットの中身を検める!」

最原「その中にもしも八分音符の旗があったら!」

最原「そして、その旗がもしも溶けたり焦げ跡がついていたとしたら!」

最原「キミが一度は白銀さんの元に辿り着いたというこの上ない証拠になるはずだ!」

最原「当然! 赤松さんと一緒にいた真宮寺くんも共犯者として確定だ!」ズギャアアアアアアンッ

赤松「ぐっ……ぐうううううううう……!」ガタガタ
365 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/16(土) 22:55:45.94 ID:82jG8SIf0
百田「四次元ポシェット……?」

アンジー「あのねー。実はネコアルクの機能ってモノクマ並みに理不尽なんだよー」

アンジー「ネコアルクオブジェを作ったこともそうだけどー、今彼女たちが自己申告した通り、元通り戻すことも自由自在」

アンジー「でもさー、まず前提としてそれを成すには、加工した土地の、加工する前の状態の物資を丸っとどこかに保存する必要があるよねー?」

入間「どんな科学力だよ……いや思い出しライトやモノクマやモノクマーズの時点でそうは思ってたけどよ」

獄原「その保存した先が四次元ポシェットってこと? でもネコアルクは複数いたよね? どのネコアルクのポシェットに何が入ってるのかは……」

王馬「完全にランダムだろって? そうかな? どうなの最原ちゃん」

最原「ネコアルクの言を信じるなら、すべての四次元ポシェットは独立していたはずだよ」

最原「でも問題ない。だって問題となる四次元ポシェットは全部、この裁判場にあるはずだから!」

春川「……巌窟王のストックした爆弾用ネコアルク」

巌窟王「……」

最原「……隠さないよね。巌窟王さん」

巌窟王「赤松が見せるな、と言わない限りはな」

真宮寺「意地悪だネ。そんなことを言ったら認めたようなものじゃないか」

巌窟王「念のため、補足だ。ナーサリーライム救出のときに弾けさせたネコアルクの四次元ポシェットもきちんと回収している」

巌窟王「これでネコアルクオブジェ作成に関わった四次元ポシェットはこの場にすべて揃っていると言ってもいいだろう」

最原「土の粒子の一粒に至るまで元に戻せるっていうのなら、すべての物質にタグ付けに等しい情報処理が行われているはずだ」

最原「直接的にポシェットの中身をいじくるのはネコアルクにやらせよう。そうすればすぐに終わる」

最原「……嘘は吐かないよね?」

ネコアルク「赤松嬢が『嘘を吐け』と言わない限りは!」ビシイッ

赤松「……」

巌窟王「……クハハ! 皮肉だな。何も言わずとも勝手にお前を守った者は、この中ではセミラミスただ一人だけだ」

巌窟王「動機自体は邪まには違いないがな」

赤松「いいよ。セミラミスさんには感謝してる。動機なんてどうでもいい」
366 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/17(日) 22:11:01.73 ID:MFCfEVJE0
王馬「赤松ちゃんさー。もう言動からして隠す気がないよね?」

王馬「つまらないの。もうちょっと汗だらっだら流してわめいてほしかったのに」

赤松「別に私、あなたを楽しませるために産まれてきたわけじゃないから」

赤松「こっちはこっちなりに必死だったんだよ」

ネコアルク「……あ。これですかにゃ?」キランッ

茶柱「あ。見つかっ……た?」

最原「うん。溶けてはいるけど材質は同じだ。間違いないよ」

最原「八分音符の旗だ」

百田「じゃあ、やっぱり!」

最原「共犯者はキミだ! 赤松さん! そして並びに真宮寺くんも!」

赤松「……」

真宮寺「……」

星「フン。こんな事実が今更わかったところで、お前さんらをどうこう言う気は一切ねぇけどな」

星「それにしても随分と落ち着き払ってるもんだ」

赤松「……そうでもないよ。こんな問題を出した視聴者側への憎悪は更に募ってる」

赤松「ごめん。セミラミスさん。せっかく黙ってもらったのに」

セミラミス「……ふむ? 謝るのはまだ早いぞ? 我の予測ではな?」

赤松「へ?」

モノクマ「残念だけどさー、犯人だけがわかっても意味がないんだよ」

赤松「は?」

モノクマ「言ったじゃん? 証拠付きでって。旗だけじゃ視聴者は満足できないなぁ?」

赤松「……え。なに? どういう……?」

モノクマ「動機」ニヤァ

赤松「……っ!?」

最原「……言うだろうなと思ったよ。この問題が出た時点でさ」

最原「お前たちは徹底的に僕たちを慰み者にする気なんだな」

王馬「お? ん? あれ? もしかしてもしかしてもしかして!」キラキラキラ

王馬「第二ラウンド開催の巻的なーーー!?」ワクワクワクワクワク
367 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/18(月) 22:13:21.42 ID:aie1FTO+0
最原「赤松さんと真宮寺くんの動機……ね」

最原「わかるよ。大丈夫。証拠も多分、この場に――」

赤松「……真宮寺くん。壊しちゃえ」

最原「は?」

真宮寺「了解」ニヤァ

スッ

最原「!!!!!!!!」

最原(そんな……嘘だろ!? 正気の沙汰じゃない!)

最原「やめ――!」

真宮寺「えいっ」


ドガシャアアアアアアアアンッ


最原(気の抜けた掛け声で、それはあっさりと壊された。動機を証明するはずだったモノクマカラーのパソコン……!)

最原(ゴミみたいに、床に叩きつけて踏みつけて!)

最原(あの中にあるデータが見れない以上、赤松さんの動機は!)

赤松「証明不可能、だよね」

最原「バカな……! キミはセミラミスさんを助けたがってたはずだ! これじゃあ一体どうやって!」

赤松「……ごめん。セミラミスさん。あなたを助けたかった。それは心の底からの本音だよ」

赤松「どうすれば償いになるかな……?」

セミラミス「……」ペラペラ

最原「漫画読んでるっ!」ガビーンッ

セミラミス「……む? すまぬな? 話を聞いてなかった。この漫画、とても面白いぞ」

セミラミス「ギャンブラーズパレード! 既刊二巻は絶賛発売中だ! 打ち切られたくなければ買うがいい!」ジャァァァァンッ

最原「それ今言わないとダメ!?」ガーンッ

赤松「わかった! それで償いになるのなら!」フンスッ

最原「ならないよッ!」ガビーンッ




蜘蛛手『くたばれ! ギャンブラー!』
368 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/19(火) 19:53:19.00 ID:lKMjzcAp0
百田「落ち着け終一! 見え見えの撹乱だ! コイツら明らかに組んでやがる!」

最原「!」

巌窟王「……ジャバウォック島のときから思ってはいたが……どちらだ? どちらが手懐けた?」

セミラミス「ククク。我の方がカエデを、に決まっておろうが。実際ちょっと楽しい」クックック

巌窟王「その結果、貴様が赤松の目の前で惨死することになってもか?」

セミラミス「癪ではある。だがそれが流れだ。わざわざ逆らおうとは思わんな」

セミラミス「それに……この『もうどうしようもない』という雰囲気がとても心地よい。最原の顔を見てみよ、傑作だぞ」クックックックック

最原「ぐっ……!」

茶柱「そういうトークは最原さんの耳が聞こえない範囲でやってくれませんか!?」

夢野「……そこまで悪いヤツには思えんのう。なんだかんだ、赤松の願いを聞き届けようとするよいサーヴァントではないか」

夢野「ウチらにとっては敵じゃがのう! わっかりやすい敵!」ビシイッ

百田「終一! あのパソコンの中には何が入ってたんだ!」

最原「赤松さんの動機だよ。真宮寺くんは……多分、赤松さんに協力してるだけだ。具体的に殺意を持っていたのは赤松さんの方だと思う」

天海「……もしかして、いやもしかしなくてもアレっすよね?」

最原「うん。アレ」

天海「うわぁーーー! な、なんてことしてくれたんすか! パソコンがボロッボロ!」

茶柱「どうにか直せないんですか! この場には入間さんもいますよね!?」

入間「一日くれれば元通りにできるぜ!」グッ

茶柱「はやーい! でもおそーい!」ガーンッ

最原(クソ……! あのパソコンがなければ、なにをどうやって証明すれば……!)

白銀「……」

白銀「バックアップ」

最原「えっ?」

白銀「……」

最原(今、白銀さん、なんて……)

最原「……」

最原(考えろ! もう白銀さんが嘘を吐いてるかどうかを検討する暇はない! バックアップがあるとしたら、どこに……!?)

最原「考えろ……考えろ……!」

最原(モノクマがタイムリミットだと言う前に! そうじゃないと……!)
369 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/20(水) 19:17:27.05 ID:2kjc9oWa0
モノクマ「おーっとそろそろ飽きてきちゃったぞー? タイムリミット設定しちゃおっかなー?」カチカチ

デンッ

05:00

モノクマ「あと五分でおしおき装置を起動させちゃうから、頑張って回答してね!」

春川「五分? 五分であのパソコンの中身を見る方法を探せって? 冗談でしょ?」

モノクマ「本気と書いて『むっちゃマジやねん』と読む!」

白銀「ルビが長い。やり直し」

モノクマ「マ」

白銀「いいよ。採用!」

百田「短ぇーよ!」

茶柱「どうでもいいですよ! そんなの! なんでもいいからヒントになりそうなもの片っ端から言ってください!」

百田「あのパソコン、どう見てもモノクマカラーだよな。ならモノクマがバックアップを持ってたりしねーか?」

最原「!」

王馬「ん……?」

モノクマ「持ってたとして、出すわけないじゃん。流石にボクの私物を理由もなしに裁判に提出するわけにはいかないなぁ」

茶柱「最初の事件の時点で証拠を握り潰してたくせに! 何を今更!」

最原「……」

最原(モノクマ……?)

王馬「あれ。最原ちゃん、なにかに気付いちゃった?」

最原「……」

王馬「俺は確信には至ってないけどさ。最原ちゃんがもしそうだと言うのなら、きっと『あの人』が持ってるんじゃない?」

王馬「バックアップ」ニヤァ

最原「……いや。ダメだ。だとしても、それを提出してくれるとは思えない。下手を打つとモノクマより手強いかも……!」

王馬「口説き落とせよ。相手が誰であれ。ここは議論の場だよ?」

王馬「嘘でも真実でもなんでもいい。そいつが望むものを的確に提示してやれば……」

王馬「案外、コロッと落ちるかもよ?」

最原「……」

百田「あんだ? 終一に何言ってんだよ、王馬」

王馬「すぐにわかるよ」ニヤァ

最原「……いるよ。バックアップを持っていそうな人。この裁判場に!」ズバァーーーンッ
370 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/20(水) 19:25:24.11 ID:2kjc9oWa0
赤松「……ハッタリで言ってるの? 流石に揺さぶられないよ。私たちはそんなもの用意してないからさ」

最原「赤松さん。先に謝っておくよ。本当にごめん」

赤松「……?」

最原(この裁判場で、モノクマカラーのパソコンのバックアップを持っていそうな人……!)

最原(もうこの可能性に賭けるしかない!)



人物指定

→セミラミス





最原(あなたしかいない……!)

最原「バックアップを持っているのは、セミラミスさんだよ!」

赤松「……はあ?」

セミラミス「そうか。我がバックアップを持っていたのか。これは意外な展開だ。想像だにしていなかった……」ケラケラ

セミラミス「……」







セミラミス「!?!?!?!?!?!?!?」ガビビビーンッ

赤松「って! セミラミスさんが一番驚いてるけど!?」

セミラミス「我が……バックアップを持っている……? ん? んん??????」

茶柱「……なんか凄くハズレ臭いですよ! 少なくとも彼女に心当たりがなさそうです!」

最原(だとしても彼女が持っていなければ、もう誰にも可能性がない! このまま確認させるしかない!)
371 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/21(木) 18:43:24.66 ID:kVNg8b5z0
巌窟王「……興味深いな。最原と王馬のやり取りも、赤松をそこまでの狂気に駆り立てた動機の方も」

巌窟王「いいだろう。続けろ最原」

赤松「巌窟王さん?」

巌窟王「クハハ! 確かに俺たちの側が不利になりかねないな。だが仕方あるまい? 好奇心ネコをも殺すと言うだろう?」

巌窟王「俺は今、あえて好奇心だけで現状を見守ろう」

最原「巌窟王さんだけは僕を応援しないで! 後で後悔するのが目に見えてるから!」

巌窟王「何ィ!?」ガーンッ

アンジー「んー? 珍しいねー。終一がこんなに明確に彼を拒絶したのって初じゃない?」

東条「今までのはあくまでやむにやまれぬ事情があってこそだったものね」

最原「……ええと、どこから話せばいいか……じゃあ第四の事件のときまで時間を遡ろうか」

最原「プログラム世界に分断された側の人、覚えてる? あのときもモノクマカラーのパソコンが議論の中心になってたよね?」

獄原「ん……? ああ。あの夢野さんにハエさんがいっぱいたかってたあの事件だね!」

夢野「んあ!?」ガビーンッ

百田「夢野そんなことになってたのかよ……やべぇな、プログラム世界」

最原「あのときは軽く流しちゃったけど、モノクマカラーのパソコンに僕たちは触れている」

最原「現実のパソコンと、プログラム世界のパソコンが同一のものだったとしたら……」

赤松「……壊れちゃってるよね? プログラム世界」

最原「わかってる。だからあそこに戻ってパソコンを取り戻すなんてことはもうできない。する気もない」

最原「僕の予想通りなら、あそこに行く必要がないんだ。あの世界で見せたパソコンには、今となっては無視できない機能があったから!」

真宮寺「今となっては無視できない機能……?」

最原(頼む! 当たっていてくれ! 内心では、そう願わずにはいられない!)

最原(でもそれじゃダメだ。出来る限り、それが当然のことのように振る舞わないと!)
372 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/22(金) 18:26:45.20 ID:tWsGCDan0
最原「あのパソコンにあった今は無視できない機能! それは『マザーモノクマとの同期機能』だ!」ズギャァァァンッ

赤松「同期……機能?」

入間「……ん……」




春川『入間。どう?』

入間『んー……まあ俺様か巌窟王ならパソコンの時計を無理やり弄ることは可能だろうが』

入間『逆に言うと普通の手段では操作できねーな』

獄原『パソコンに内蔵されてる時計だよね? そんな難しい操作が必要だとは思えないんだけど』

入間『知らねーよ。なんか知らねーけど操作できねーんだ』

モノクマ『ああ。首謀者権限のロックのせいだね、それ』

モノクマ『あ、ちなみにロックをする前に時計を弄ったとしても……』

モノクマ『ロックをかけた瞬間にマザーモノクマとデバイスが同期して時計の時間のズレを直しちゃうんだ』




入間「ああ、そうだ。確かにあったな? 同期機能。時計のズレの話題になったときに話してたぜ」

赤松「同期機能があったからって、それが今更なに?」

最原「今のマザーモノクマ、中身は一体誰だったっけ?」

春川「……あっ」

百田「あ? ……あー……なるほどな」

赤松「……!」ダラダラダラダラ

セミラミス「一体、誰だと言うのだ……?」ハラハラ

巌窟王「……」

巌窟王「何を他人事みたいな顔をしている! 貴様だ貴様ァ!」ギンッ

セミラミス「チッ。もう少しで誤魔化せたものを」

赤松「全然! 全っっっ然! 誤魔化せてなかったよぉ!」
373 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/23(土) 21:58:20.12 ID:85Lyy2aC0
赤松「……ぐ……考えろ。考えろ私……! 最原くんのプランはすべてが完璧ってわけじゃない……!」

赤松「……二つ。穴があるよね。仮にセミラミスさんがバックアップを持っていたとしても!」

赤松「一つ目の穴は、セミラミスさんに渡された権限のこと! 監視権限と、モノクマの複製権限が今ある彼女のすべてのはずだよ」

赤松「それ以外に彼女が持っている権限はないはずだ!」

最原「問題はない。だって!」

最原「……」

最原(……これでいいのか? 確かに赤松さんの言っている議論の穴を、これで塞ぐことはできる!)

最原(でもあまりにも都合が良すぎる! 僕は一体、なんのために……!)

白銀「私が首謀者の権限をセミラミスさんに共有すればいい」

最原「!」

赤松「なっ……!?」

白銀「モノクマにできたことだよ。私にだって当然できるよ」

白銀「……首謀者の権限で、ロックを解除! セミラミスさんに情報を開示する!」

ピコンッ

セミラミス「……ム……!」

白銀「モノクマが彼女に譲渡した権限。そして、首謀者である私がセミラミスさんにたった今共有した権限」

白銀「たった今をもって、彼女は名実共に『マザーモノクマそのもの』となった!」ズギャアアアアンッ

最原「……」

白銀「礼は言わないでよ。これは私が勝手にやったこと。私を許さないって決めたんでしょう?」

最原「……そうだ。その通りだよ」

最原(こうでないと先に進めないから!)
374 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/24(日) 20:52:29.00 ID:0f7fTaSd0
赤松「二つ目の穴があるよ。これは私の口からはあまり言いたくないんだけど」

セミラミス「そうだな。まあカエデも思春期だ。ならば我が代わりに言おう」

セミラミス「理由はどうあれ、我は命を賭けている。つまりカエデのために動く我が、何故貴様のために動かなければならない?」

獄原「えっ! い、言わないの!? 死んじゃうんだよ!?」

セミラミス「そこまで興味がないのでな。別にここで生き残ったところで遠からず消滅する未来は避けられない」

セミラミス「逆に、カエデが『やっぱり助けて』と正直に言えば我とて貴様らに協力はしようさ」

セミラミス「だがカエデの性格は貴様らもよく知っておろう! 決めたことは内心はどうあれ最後まで貫き通すバカがそいつよ!」

セミラミス「情の湧いた隣人を、自分のエゴですり潰す苦痛の表情は見物だ。この報酬でもって我は消滅を迎えようか」ニヤニヤ

赤松「……」

茶柱「……相っ当歪んでますね。聞いてるだけでこっちの頭がおかしくなってきそうです」

星「だが強固な絆だ。これを切り崩して協力してもらおうってんなら、相当の労力が必要だぜ」

王馬「本当にそうかなー? 俺にはそうは思えないなー?」

獄原「えっ。王馬くん、それどういうこと?」

王馬「ん? いやいや。最原ちゃんなら別なんじゃないかなって。彼なら案外、口説き落とせるかもよ?」

最原「……」

最原(やるしかないな)

最原「セミラミスさん」

セミラミス「……」ポチポチ

ナーサリー「スマフォいじってるわね……本当にこっちに興味がないみたい」

最原「……所詮そんなものだったのかな。アッシリアの女帝の知略って」

セミラミス「……!」ピクッ

赤松(……今度は安い挑発?)

最原「まだわからないかな?」







最原「今、赤松さんを絶望の底に叩き落せるのはあなたしかいないんだよ?」

セミラミス「……ム……?」

赤松「は?」
375 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/25(月) 19:53:25.88 ID:ggjDycCU0
セミラミス「……」ジーッ

最原(食いついた)

最原「サーヴァントとして誰かに尽くす。誰かを守る。誰かを導く。大いに結構! 僕はその意思にとやかく言う気はない」

最原「やり方を間違えていることを指摘するだけだ」

赤松「……さ、最原くん? なに言ってるの?」

最原「赤松さんを貶めたくないんだよね。あくまで善意によって赤松さんを苦しめたいんだよね」

最原「なら話は簡単だ! セミラミスさん! あなたが今持っているはずのバックアップ、おそらくそれを公開することの方が!」

セミラミス「カエデの助けになる、か?」ニヤァ

赤松「……なっ……はっ……ばっ……!?」ガタガタ

最原「……今更どうとも思わない、だって? 星くんの言ったことは欺瞞だよ」

最原「そんなはずないじゃないか! その殺意を有耶無耶にしていいはずがない!」

最原「僕たちは赤松さんの凶行に『止むに止まれぬ事情があったんだ』と信じたいよ!」

天海「……これは……!」

王馬「うん。最原ちゃんなりのラブコールだよね。赤松ちゃんを裏切ってこっちにつけっていう内容の、さ」

巌窟王「……そうか。なるほど。セミラミスは裏切りの女帝だ。そして先ほど議論で言っていたな」

巌窟王「確かこうだ。『裏切りやすいヤツを味方に付けること』は――」







王馬「破滅の秒読み。無限のリスク」ニヤァ

王馬「赤松ちゃんはその泥沼に嵌まりかけている」
376 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/26(火) 19:42:44.28 ID:cnEyXVbp0
天海「……もう仮定の話なんかしなくったっていいっすよ最原くん」

天海「セミラミスさんは間違いなくバックアップを持っているから!」

赤松「!?」

天海「白銀さんはどこに引きこもってアレを編集していたのか。俺は知っているんすよ」

天海「……セミラミスさんの宝具、虚栄の空中庭園の中だ!」

白銀「あっ……そういえば……そうだったね。あれの管理人、セミラミスさんだもんね」

セミラミス「白銀、今の今まで忘れてたな。間借りさせていた恩を……」

白銀「だってあのときのセミラミスさん、まったくなんの権限もなかったじゃん。むしろ新世界プログラムに間借りさせてたの私の方だよ?」

セミラミス「ふん。屁理屈を」

白銀「……みんなー。この場合、屁理屈を言ってるのってどっちかなー」

星「セミラミス」

真宮寺「セミラミスさんだネ」

獄原「セミラミスさんだと思う……」

セミラミス「白銀だと思うぞ」

セミラミス「白銀の方だと思え!」ウガァ!

夢野「勢いだけで押し通そうとしておる!」ガーンッ!

白銀「でもあそこからはデータを全部引っ越しさせちゃったから、もう何も残ってないっていうか……」

白銀「そもそもそれも新世界プログラムの崩壊と一緒に粉々になってるよね? 残骸相手にしても時間の無駄じゃない?」

王馬「なんだー。がっかり。セミラミスちゃんって割と見掛け倒しなんだなぁ。ま、これに関しては最初から期待してなかったし、いいか別に」

セミラミス「……」イラッ

赤松(あ、やばい)

セミラミス「く、ククククク! バカめ! あの庭園の中で起こったことならすべて我の手に取るようにわかっていたに決まっておろうが!」

白銀「はっ?」

赤松「……」

セミラミス「……!」ハッ







セミラミス「いや白銀のプライベート空間を覗き見するようなマネはやっぱりしていなかったような気がするな?」ガタガタ

白銀「今更嘘を吐かれても!?」ガビーンッ
377 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/27(水) 22:09:59.64 ID:LfWGbrPX0
ケムリクサとかカーマ育成とかイベントとか重なりまくったので今日はなし!
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/27(水) 23:16:49.36 ID:X5ubZMUF0
乙っす
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/28(木) 07:52:02.52 ID:e4ZToZ6gO
カーマおめでとう……
380 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/28(木) 21:22:27.53 ID:Te/UDNvR0
セミラミス「……ふっ。まあいい。どうせ最初から最原にはわかっていたようだからな」

セミラミス「バラしたのが我か最原かの違いに過ぎぬだろう。問題はまったくない。ないな?」

最原「……あ、えと……」アセッ

赤松「……セミラミスさん。私は最原くんとの付き合いがちょっとだけ長いからわかるんだけどさ」

赤松「最原くんの言ってたこと、多分ほとんどハッタリだったよ……!」

セミラミス「」

最原「現時点でバックアップを持っていそうな人がセミラミスさんくらいしか思いつかない」

最原「だから結構前の時点でこっちの底を見せないように立ち回ってたんだけど……」

最原「助かったよ王馬くん」

王馬「こっちは命懸けだからね。最初から命のことをどうでもいいと思って隙だらけ緩々になった女の人なんて相手にならないよ!」アッハッハッハ

セミラミス「……」ジッ

赤松「え……なんでこっち見てるの?」

セミラミス「あやつ殺していいか?」

赤松「気持ちは本当よくわかるけどダメ!」

王馬「……よくわかっちゃうの?」

春川「よくわかっちゃうね」

王馬「ガーン!」

セミラミス「まあ白銀から権限を渡された時点で詰んでいた気もするがな」

セミラミス「この方向性からバックアップを取り寄せる方が情報が新しく正確だ」

赤松「その補足いる!? 余計に追い詰められるだけなんだけど!」

セミラミス「……」シラーッ

赤松「……!」

最原(あと一押しで抱き込めそうだ!)

最原(なにか……他に交渉に使えそうなファクターはないか!)キョロキョロ

ネコアルク「にゃー……コタツで寝たい……」ゴロゴロ

最原「あった」
381 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/29(金) 19:27:11.20 ID:hc26jykx0
最原「セミラミスさん、ネコアルク――!」

巌窟王「ネコアルクを置き去りにして死ぬ気か?」

最原「んっ?」

赤松「うわっ……!」

アンジー(凄くイヤそうな顔になったねー)

セミラミス「別にその猫に愛着はないが……?」

巌窟王「だが自身の立てた計画に愛着はあるはずだ。そうだろう?」ニヤァ

セミラミス「……」

巌窟王「片鱗すら見せずに、計画を計画のままにして死ぬ気か?」

セミラミス「……ククク。子供か貴様は! いやまったくもって滑稽だぞ!」

セミラミス「最原の論に看過されて『自分もやってみたい』と思っただけだろう、それは!」

巌窟王「!」

最原「?」

セミラミス「かめはめ波とか卍解とか螺旋丸とかスタンドとかと同じだ。サーヴァントのくせして随分とまあ子供っぽい」

巌窟王「……」ワタワタ

セミラミス「そもそも宝具なんてものを持っておるのだから無い物ねだりも程々にしろ。既に人類史の英雄と認められているのだからな」

巌窟王「セミラミス!」







巌窟王「それは違うぞ!」ズギャァァァンッ

ナーサリー「その一言でもうボロがボロッボロよ」

ネコアルク「喋れば喋るだけ嘘がバレるタイプですにゃー」

ロムルス「うむ! なにかに憧れるその姿勢もローマである!」ビシイッ

茶柱「……あー……察しました。全部……」

最原「????????」

茶柱「またこの人はこういうことになるとアホになるんですよね……」ハァー

最原(呆れられてる!?)ガビーンッ
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