巌窟王「これは、嘘で世界を変える物語だ」 アンジー「あなたの名前は――」

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282 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/09(水) 20:52:03.00 ID:ekeziLWE0
百田「で。結局どうやったところで救出するころには難易度ナイトメア&ザ・ヘルになってるのはわかった」

百田「だけど茶柱が最初言った通り『議論して誤答率を下げてから回答』っていう大雑把な方向性でいいんじゃねーか?」

茶柱「事前情報なしで回答しまくってたらどんどん焦りと恐怖が募ってたでしょうから、その情報があるのとないのとでは大違いですけどね」

茶柱「今までの正答は『仲間』と『首謀者』ですか……」

真宮寺「首謀者は特にコメントすることはないけど、仲間っていうのは過去形じゃないかな? これでも正解になるの?」

天海「俺からしてみれば現在進行形で仲間っすよ。悲しい茶々入れないでくれっす」

茶柱「その他に白銀さんを現す言葉というと……」

茶柱「うがああああああ! 基本情報くらいしか出てこないです! 超高校級のコスプレイヤーとしか!」

カチッ

モノクマ「不十分でーす」

ワラワラワラ

イシュタル『ぎゃあああああああ! なんか造形がエロ方面にひたすら最悪な蟲がーーー! これ私じゃなくてパールヴァティ―とかの方が適任じゃない!?』

入間「チン……」

百田「言わせねぇよ!?」

最原「……話の流れから正答を拾うんだ……こっちのタイミングはお構いなしなんだね」

白銀「……」

夢野「まだだんまりしておる」

最原「……イシュタルさん、まだ余裕があるよね」

赤松「ん? そう、だね……入間さんを処刑するためのおしおきでしょ? あの人、明らかに入間さんよりバイタリティ高そうだし」

赤松「しばらくは大丈夫じゃない?」

最原「次の回答、ちょっと前置きが長くなるんだ。説明しないわけにもいかないし、かなり大事なことだしね」

巌窟王「構わない。アイツなら大丈夫だ」

最原「うん。あのさ、なんで白銀さんが首謀者なんだと思う?」

最原「そもそも、首謀者ってどうやって選ばれたのかなって話なんだ」

星「簡単に言えば……『能力』じゃねーか? こういうシチュエーションに適応できる人材。手近にいる中で最も適した者だろう?」

最原「それも多分ある。最終的にはそれだろうけど、実際に彼女を選んだ理由は『経歴』なんだよ」

星「経歴……だと?」
283 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/10(木) 20:56:58.76 ID:lUNynB+H0
最原「天海くん」

天海「……うん。もういいんじゃないっすか。話しても」

最原「この中に、コロシアイを二回経験した人が二人いる」

百田「あ?」

最原「一人は天海くん。彼の才能、実は僕はかなり前の時点で名前だけは知ってたんだ」

最原「超高校級の生存者。それが彼の才能だよ」

春川「いや知ってるよ。天海本人が言ってたでしょ。生存者特典を使って赤松とか夜長とかを見つけたわけだし……」

春川「……ん? 二人?」

百田「二人……」

百田&春川「……!」バッ

白銀「……!」ビクウッ

最原「直接的に彼女のことを『そう』だと言うのはちょっと待ってね。イシュタルさんの余裕が消えるから」

最原「もっとわかりやすく言うと、もしかしたら能力の点の優劣で天海くんが選ばれる可能性があったってことだ」

星「!」

入間「?」

最原「これ以降、ちょっとした軽口が正答になっちゃうかもしれないからできる限り黙ってて。僕の話を聞いてほしい」

最原「もしかしたらショックかもしれないけど」

巌窟王「……」





最原「白銀さんは一方的な加害者じゃない。これが僕の答えだ」

最原「……僕たちにとって最悪の答えだけどね」
284 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/11(金) 22:17:43.26 ID:mwZhBPlR0
最原「白銀さんは天海くんと同じだ。証拠も色々ある。証人もいる」

最原「証拠は白銀さんの動機ビデオで、証人は天海くん」

巌窟王「……!?」

最原「天海くんの動機ビデオと、白銀さんの動機ビデオは内容が同一だったんだ。つまり天海くんが忘れてるだけで二人の『経歴』は同一なんだよ」

最原「あ。ごめん、ちょっと訂正。天海くんが忘れてただけ、だ。今はもう思い出してるよ」

最原「ええっとね……だからさ……」

最原「……」

最原「言ってて僕自身物凄く辛くなってきた……!」

百田「ん!? なんでだよ! 俺たちにとってすげぇ嬉しい情報だぞ、それ!」

茶柱「ええっとですね。要は白銀さん、転子たちとはくらべものにならないほどの改造を受けてたんですよ」

茶柱「記憶だけじゃなくって容姿まで変えられる始末だそうで」

百田「全然嬉しい情報じゃなかった……! 反吐が出るほど胸糞悪ィ」

春川「……」オロオロ

夢野「……今は非常時じゃし、無理に励ましの言葉を捻り出さなくともよいぞ。後回しにするんじゃ、後回し」

百田「でも大体はわかったぜ。そうか、白銀が『天海と同じ』か……大分ボカされてるけど、ああ。理解したぜ」

獄原「……」

星「……」

東条「……」

入間「……」

百田「……?」

百田「ん? お? あれ? おいおい終一。理解できてねぇヤツらがいるみてぇだぞ。やれやれって感じだな、ははっ!」ケラケラ

茶柱「い……いや。これ見たことあります。さっきの最原さんと同じ顔です」

茶柱「信じられない情報を急激に頭にぶち込まれて、なにもかも信じられなくなった人の顔です」

百田「……はあ?」

春川「……どうしたの? そこまでありえないって話でもないと思うよ? 確かに胸糞悪いけどさ」

東条「ありえないわ」ギンッ

春川「え。でも……」

東条「あ、り、え、な、い」ギロリ

春川「????????」

最原「やっぱり……そういう反応になるよね……」
285 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/12(土) 22:46:04.07 ID:ZjNU9ptc0
春川「何が理解できないの? 確かにここまで信じられないものが連発して出されてきたけど……」

春川「この件だけを拒む理由はなに? 反証があるの?」

東条「……」

茶柱「……東条さーん? あ、あれ。どうしちゃったんでしょう。ここで黙るなんて彼女らしくないっていうか……」

茶柱「まさか本当に反証がないってことはないでしょうし」

最原「ないよ。事実だから」

最原「反証がないけど認められないんだよ」

最原「……当然だ。だって彼女は……!」

白銀「敵じゃなきゃダメだから」

最原「!」

最原(……ここで口を開くのか。キミが……!)ギリッ

百田「白銀?」

白銀「……困るんだよね? 私が敵じゃないとさ。その前提が崩れたら真っ直ぐ立っていられなくなるから」

星「やめろ。それ以上に口を開くな。テメェに聞くことなんてもう一つたりともない」

白銀「もう喋ることしかできないでしょ。私にはさ……!」

白銀「本当に、見事になにもかもぶち壊してくれたよね! 自分自身の復讐をする理由すら壊すなんて、どこまであなたたちは愚かなの?」

百田「……終一?」

最原「とても単純な構造だよ。『正義の味方には倒すべき悪が必要』なんだ」

最原「それも生半な作り物(フィクション)じゃない。産まれた時点で殺されなければならないことが決定されてるような、純粋培養の悪の華が」

最原「百田くんたちにはわからないよ……! 何もかもがフィクションで構成されてて、たった一つだけ僕たちを明確に苦しめてるリアルの象徴がさ……!」

最原「それすらも用意されたものだって聞いたとき、どれだけの喪失感があったか」

百田「……テメェら……!」

最原「結末はどうでもいい。殺すのもアリだ。許すのだって簡単だ。どこかに閉じ込めて二度と僕たちの目の前に現れないようにするのだって可能だよ」

最原「白銀さんが本当に敵なら、それだけで『何か』が変わったはずなんだ」

茶柱「……でも実際にはそうじゃない。そういうこと、ですか」
286 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/13(日) 20:27:33.56 ID:pyrqHhE50
百田「……どう思う。終一。テメェはもう受け入れちゃいるんだろ。その事実を」

最原「白銀さんのやったことは絶対に許さない! でも理屈で考えれば、白銀さんが天海くんと一緒だとわかった以上は……!」

最原「恨むだけ体力と精神力の無駄……だよ」

最原「……だからと言って、じゃあ次に誰を恨めばいいんだって話になっちゃう。何を壊すために生きればいいのかもうわからないんだ……!」

巌窟王「いや? この際、もう白銀に対してはそれでいいだろう。奇しくも最原、貴様があれこれ手を回した影響で白銀は死ななかった」

巌窟王「白銀が天海と一緒だと言うのなら、そいつにはもう殺す価値すらない」

白銀「……」
287 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/13(日) 20:45:17.05 ID:pyrqHhE50
最原「……」

巌窟王「わかるな? その憎悪を、次に誰に向ければいいか。貴様はわかるはずだ。諸悪の根源がなんなのか」ギンッ

百田「巌窟王。テメェ、やり口が段々悪魔そのものになってきやがったな」

百田「やらせると思うか?」

巌窟王「クハハ! 貴様の意見など知ったことではない!」

巌窟王「……と言うのは簡単だが、ここは学級裁判だ。そういうわけにもいくまい」

巌窟王「第一、この方向性で『俺の望む方』へと誘導するのは至難の業だ」

春川「……どういうこと?」

巌窟王「白銀への憎しみを理屈で断ち切る。最原なら可能な芸当だろうな。苦しんではいるが、そいつはそれができる人間だ」

巌窟王「今の最原なら、俺の力で充分『救える』。だが他はそうではない」

巌窟王「『白銀は悪くない』という理屈を、他の連中は絶対に受け入れない。理論での証拠がいくらあろうとだ!」ギンッ

春川「……!」キョロキョロ

入間「……」

東条「……」

星「……」

獄原「……」

春川「……そこまで憎い? そこまでイヤ?」

春川「そこまで疲れちゃったの? 誰かを恨まなきゃ、目の前を見ることもできないくらい?」

春川「……ねえ! なんか言ってよ! みんな!」

巌窟王「クハハハハハハ! ままならないな! 今の最原の状態なら充分篭絡できようが……!」

巌窟王「白銀への憎悪で身を焦がしていた連中は、そこから魂を動かせない! 白銀から世界への『憎悪の切り替え』が不可能だ!」

巌窟王「白銀を憎むことこそが、世界を憎むことだと信じていたのだろう?」

巌窟王「残念ながら、白銀すら『世界から犠牲にされた側』だ! とうに切り離されたトカゲの尻尾でしかない!」

巌窟王「……さあ。どうする最原? 貴様はこいつらを救えるか?」

最原「え?」

巌窟王「救えないのなら……無責任極まりなかったな。貴様はただ真実を振りかざして、仲間を傷つけただけだ」

巌窟王「……貴様は真実を追い求めるべきではなかった」

最原「――」





最原(……今のは……物凄く、カチンと来た)
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/14(月) 10:07:59.28 ID:vp7Lzi1kO
真宮寺と赤松は?っと思ってたけどこの二人は既に知ってたか。
289 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/14(月) 21:26:58.03 ID:aaoxF/yR0
巌窟王「さて。話はこれで終わりだろう? さっさと回答してしまえ。イシュタルに時間はあっても俺たちの時間はそう多くないのだから――」

最原「責任は取るよ」

巌窟王「……今、なんと言った?」

最原「確かに真実はみんなを傷つけるだけかもしれない。みんなから大事な何かを奪うだけかもしれない」

最原「……でも僕は、この学園で探偵役をやらされて思ったんだ。『それだけじゃない』って!」

最原「一度道を見失うことになったのだとしても、生きてさえいればきっと何かが見つかる」

最原「真実は、そのとき『もっと正しい選択』を掴む原動力になる!」

最原「前提が間違ってたのなら、もう一度やり直せばいい!」

巌窟王「……ほう」

最原「……一朝一夕で受け入れてもらえるとは思ってないよ。というか時間が解決してくれる問題なら僕だって情報の出し惜しみなんかしていない」

最原「でも僕は『真実を知るべきではなかった』なんて絶対に思わない! そんなものはただの臆病者の思考停止だ!」

最原「まだあるよ。『天海くんと同じ』以外に、彼女を現す言葉。それで多分モノクマも満足してくれると思う」

百田「終一。テメェ、なんか急に背筋が伸びたな。キレてんのか?」

アンジー「……」チラッ

アンジー(煽ったね?)ニコニコ

巌窟王(さて。なんのことやら)ニヤァ

巌窟王(ただ、この場に何人受け入れられない人間がいようと関係ない。学級裁判ではただ一人、最原だけが前に進めればいい)

巌窟王(自分の言葉のせいで誰かが傷つくのではないか。そんな無用な優しさのせいで議論が滞るのは本意ではないだろう?)

アンジー(……割り切りすぎだと思うけどなー。それはそれで)

巌窟王(なに。立ち止まった者を蔑ろにする気はないさ。アイツらもアイツらで、頭ではわかっているだろう)

巌窟王(前に進む以外に道はない、と。今の最原を見れば猶更なァ!)ギンッ

赤松「……念話で内緒話? ズルいなー、二人とも」

真宮寺「セミラミスさんと念話とかできないの?」

赤松「やめて。飽きるまでからかわれるのが目に見えてる。縁起でもない」ブルッ

最原「白銀さん。キミがなにに怯えてるのか、少しだけわかるかもしれない」

白銀「……」

最原「でも、ここまで来たら絶対に止まれない。悲鳴を上げても泣いても絶対に許さないよ」

白銀「だから何?」

最原「……だからさ」






最原「ごめんね」

白銀「……いいよ。私も……ちょっと逃げ疲れちゃったからさ」
290 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/15(火) 21:09:53.41 ID:ku+QdB2C0
最原「秤にかけてみよう。この場は曲がりなりにも学級裁判。証拠と証言がモノを言う!」

最原「白銀さんへの復讐をかねて、この場で彼女の正体を暴く!」

百田「おう! それで。何か手伝うことはあるか?」

百田「欲しい証言があればいくらでも証言してやるぜ!」

百田「終一のやることだ! 残酷なだけじゃ終わらねぇんだろ?」

夢野「……よいのか? 白銀はそれで」

白銀「バカだなぁ、夢野さん。今更私の心配してるの?」

夢野「んあ? しちゃダメなのか?」

白銀「……!」

最原(僕たちが先に進むために必要な証拠……)

最原「事件が起こったとき、罰の重さを計るのに必要な要素を僕たちは今まで議論してなかったかもしれない」

赤松「それは?」

最原「『そこに悪意があったかどうか』だよ。突発的な犯罪か、計画的な犯罪かだけでも罪の大きさは段違いでしょ?」

真宮寺「え? 情状酌量の余地を議論しようっていうの?」

巌窟王「導入からしてナンセンスだな……許せないと自分で言ったばかりだろう」

最原「それでも必要なことだと思うよ。この学園が始まった直後はどういう想定だったのかは知らないけどさ」

最原「『今』を見てよ。結果的に、生徒は誰も死んでないでしょ?」

天海「あれだけ色々あって、未だに誰も死んでいないっていうのは確かに奇跡的っすよね」

天海「……前のときは最初から最後までバカスカ人が死んでたっすよ」

最原「……正解をこの場で言うことはできる。でもそうなったら巌窟王さんはすぐにイシュタルさんを助けに行っちゃう」

最原「その後は最後の設問だ。時間があるかどうかわからない。できればこの場で聞いていてほしいんだ。それで納得してほしい」

最原「そうじゃないと戻ってこないからさ」

茶柱「戻る? 何が……あっ」

白銀「……?」
291 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/16(水) 21:46:29.27 ID:nJRGmLb10
東条「……まさかあなた……白銀さんの視力を元に戻す気?」

白銀「!」

最原「ついでだからそこまで欲張ってもいいかなって。議論するのが白銀さんの正体で、情状酌量の余地なら、別に不自然じゃないでしょ」

巌窟王(……煽り過ぎたか)イラッ

最原「忘れてるわけじゃないよ。僕は間違いなく巌窟王さんからこう聞いた」



最原『これから暴く真相の中に、白銀さんが悪くないって内容の真実が含まれてたとしたら……』

巌窟王『それでも、ダメだな』

最原『どうして!』

巌窟王『ヤツがやったことを俺は忘れない』

巌窟王『……多かれ少なかれ、本人にどうしようもない事情というものはあろうさ。だが限度はある』




最原「『覚えている上で』言ってるんだよ」ギンッ

巌窟王「業突く張りが……余計な希望を持つだけ無駄だぞ」

アンジー(……違うなー。終一は嘘を言っている。『彼』はあれでお人好しだから全然気付いてないみたいだけど)

アンジー(それを建前にしてもっとデカい欲求を満たそうとしている)

アンジー(具体的にそれが何かはわからないけどねー)

最原「じゃあまず彼女の行動から見える理念を整理だ。まずは二択。『彼女は勝つ気があったのかどうか』」

赤松「それ以前に、彼女の勝利条件ってなに? 当然だけど皆殺しじゃないよね。そんなのエグイサルを使えば最序盤で簡単にできるわけだし」

最原「番組側の人間である、とかのノイズを置いておけば、この学園の勝利条件はたった一つだけだよ」

最原「『生き残ること』だ。それも『生徒同士』っていう対等な立場で。これを仮の前提として話を進めよう」

最原「モノクマと組めるっていう最大のアドバンテージはあったけど、彼女の立場はそれを差し引いてもとにかく不合理だ」

最原「最初からコロシアイから隔絶された領域で、モノクマに生徒同士を煽らせておけば、校則に則って勝つのだとしても……」

百田「二人になった時点でコロシアイは終了だもんな。共食い状態になっちまえばある程度安全に生き残れる」

最原「適当なクロが勝利しちゃったら、その時点でシロの生徒ともども処刑だろうけどさ。それでも『誰にも殺されない』っていうのは大きい」

最原「誰にも認識されない十六人目の高校生。その権利をわざわざ放棄してまで僕たちの中に混ざったのは一体何故か」

最原「……そこは次の議題にしよう。勝負に勝つ気があったのか否かに関しては『最善手を放棄した以上、なかったと考えるのが妥当』だ」
292 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/17(木) 23:21:28.56 ID:dwd7JKxm0
最原「じゃあ次。勝利を放棄するに等しいマネをしてまで僕たちの中に混じったのは何故か」

最原「……僕たちのことを虐め抜くためって感じじゃないよね」

アンジー「アンジー、新世界プログラムの中でつむぎに相当痛い目にあわされたんだけど」

最原「それ本当に白銀さん? 違うよね。新世界プログラムで僕たちをハメたのって正確には白銀さんのアルターエゴだった」

アンジー「……」

赤松「うん。あれはアルターエゴ。白銀さん本人じゃないよ。燃やしちゃったし」

最原「この学園で最善手を放棄することは、命を放棄することと同義だ。『命より大事なことがある』からそんなことをする」

最原「白銀さんが本当に、僕たちを命懸けで虐めたがるような筋金入りの下衆なら、それは間違いなく『自分の手で』やるよね?」

最原「だって既に命を投げ捨ててるんだ。そこでわざわざ引く理由がない」

最原「だから僕たちを責め立てるため、という答えもこれまた否」

最原「さて。勝つ気がなく、僕たちを虐めることにも興味が無い。じゃあ彼女があとやったこととは何か」

最原「……たった一つだけあるよね。というより、この二つの要素で誘引された物が明確にこの場には存在してる」

最原「白銀さんへの憎悪だよ」

王馬「………………………………………………」

王馬「え? マゾ銀ちゃん?」

白銀「恥も外聞もなく茶柱さんに泣きつきたいんだけど」

茶柱「オーライでーす。そしてその次の瞬間から王馬さんの死亡確定でーす」カモーン

王馬「許してっ」キャピンッ

白銀「いいよ!」キャピンッ

春川「寒気のする馴れ合いやめて……」

最原「白銀さんの行動のすべてが、白銀さんの憎悪を呼び起こしている。じゃあなんで。王馬くんの言う通り、白銀さんの性的嗜好?」

最原「……違うよ。それも。僕たちを裏切る前の白銀さんのことを、僕は覚えてる」

最原「白銀さんはそういう方向性の異常さは、欠片も見せたことがない。命を賭けるほどの欲求なら、完全に隠し通すことは不可能だ」

最原「加虐に対して興味がなく、被虐に対しても同様。憎悪を一身に受けて白銀さんに起こったのは……」

最原「……敗北。それしかない」
293 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/18(金) 22:15:29.49 ID:YW4OcDFR0
最原「別視点から見てみよう。裏切る直前から、今に至るまで白銀さんにあった異常性とはなにか」

王馬「『仲間想い』でしょ」

最原「!」

赤松「……仲間……想い……?」

王馬「『分断』された後の白銀ちゃんのことは俺がよく知ってる。だからそこから先は俺が証言するよ」

王馬「その前に聞きたいなぁ。俺の評価、ちゃんと合ってた? こればかりは何も忘れてない最原ちゃんに訊ねるしかないんだけど」

百田「分断される前の白銀が、仲間想いだったかどうか、か? どうだ終一。王馬にしては割といい線行ってると思うぜ」

百田「気持ち悪いくらいのストレートだ……なんか裏あんのか?」

王馬「いや? ただ今の白銀ちゃんが可愛いなと思ってさぁ」

王馬「ちょっとずつ首を締め上げられるようでしょ?」ニヤァ

白銀「……こんなときだけ嘘を吐かないのってどうなの」

王馬「本気にするなよ。キミのことなんてさらさら興味ない」

白銀「!」カチンッ

春川「よしなよ。そいつの言葉に耳を貸すの」

春川「……最原」

最原「王馬くんが正解。ちょっと過激に言うなら白銀さんは『仲間』という言葉に雁字搦めにされてた」



最原『どうしてキミは夢野さんを殺したりしたの?』

白銀『えっ? 私が? 夢野さんを?』

白銀『……最原くん! 私が仲間を殺したりするわけないじゃん! 悲しいこと言わないでほしいなぁ?』ニコニコ



最原「新世界プログラムの中で行われた学級裁判。この一言がずっと気にかかってたんだ」

最原「だって本当に『夢野さんを殺してない』! この点に関して彼女は嘘を吐いてなかったんだから! それだけじゃない!」



白銀『……やめてよぉ! そんな顔で私を見ないで!』

白銀『だって……だって、仲間なんだよ! 私が夢野さんを殺すわけないじゃんッ!』



最原「この時点で殺されたはずだった夢野さんの名前とセットで、仲間だってことを繰り返してる」

最原「あのときは怖かった。でも今は気持ち悪いよ。だって裏切ってるはずなのに仲間アピールしてるんだよ?」
294 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/19(土) 21:19:28.58 ID:y8SLyUDF0
白銀『ふふっ。楽しみにしててね。あなたには第二弾があるから。巌窟王さんも味わってないとっておきのおしおきが、さ!』ニコニコ

アンジー『……ろして……ころして……』

白銀『やだ。仲間だもん』



アンジー「……そだねー。今から考えるとあれって未練だったのかも」

アンジー「もっとも、あれはアルターエゴの台詞だったけどさー。まあ『ほぼ』本人だから誤差の範囲だよねー」

天海「あっ。俺も心当たりあるっすよ! 分断の後で白銀さんに拉致られて……」

最原「あ、それはいいや。天海くんの場合はちょっと方向性変わっちゃうから」

王馬「じゃ、俺の番だね! 白銀ちゃんはさー。俺に『裏切りの協定』を持ちかけたんだ」

王馬「条件は『次のコロシアイでの首謀者の地位』。お世辞抜きにいい条件だったから俺もそれを飲んだんだよね」

王馬「こんな武器まで貰っちゃったりして」ガチャリッ

赤松「えっ? じゅ、銃?」

夢野「そ、それ……ウチを撃ったあの麻酔銃じゃな?」

王馬「麻酔銃だったんだ。自分で撃ったことないから全然知らなかったや」

王馬「さて。俺の証言はこれで終わりだよ。これで充分でしょ」

百田「早っ!」

百田「……でも確かに、そうだな。ああ。間違いねぇ。テメェが何を言いたいのか完璧に理解したぜ」

天海「そう……っすね。わかりたくなかったっすけど」

春川「白銀。あんたさ……」

白銀「……」





百田&天海&春川「これだけはないだろっ(でしょ)(っす)!」

王馬「てへぺろっ」キャピンッ
295 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/20(日) 16:36:04.07 ID:k2JZrfSk0
春川「確かに『コイツ』なら私たちのことを裏切りかねない。しかもこっちに残った連中の中では唯一『飴だけで』懐柔が可能だよ」

春川「他の連中を裏切らせるのなら人質を取るとか、どうしてもキツイ鞭になっちゃうから」

春川「でもさ! よく考えればわかるでしょ! 『裏切りやすいヤツを味方に付けること』は、それだけで破滅の秒読み、無限のリスクだ!」

天海「なんてったって『裏切りやすい』んだから当然っすよね。再度裏切り返される可能性とずーっと付き合わないといけないっす」

天海「彼と信頼を前提として組むことは百パーセント不可能っすよ」

百田「百歩譲って、王馬と付き合うことに利益があるとすれば、だ」

百田「それは『裏切られることを前提としたチーム』を組みたいときだけだ! コイツを操縦することが不可能だとは言わねぇが……」

百田「その場合、犠牲にしなきゃいけねーもんが多すぎる。場合によっては『命を含むほぼすべて』を諦めなきゃならねぇ」

百田「コイツと組むようなヤツがいたとしたら、そいつは相当追い詰められてる!」

王馬「うわっ。ボロックソ言うね……みんなして俺のことそう思ってたんだ……」

王馬「ありがとう! 最っっっ高の誉め言葉だよ!」キラキラキラキラキラ

天海「王馬くん……そういうところっすよ……」ズーンッ

最原「もしも……もしも白銀さんの想定通りなら、すべてが終わった後じゃないとそうは思わなかったのかもしれないけど」

最原「この裏切り協定はあまりにも酷い。王馬くんを味方に付けたってことは『裏切りを持ちかけた自分を裏切るように仕向けた』ってことに他ならない」

最原「さあ。これだけ証拠を並べ立てたんだ。これだけでももう確定に近いよね」

最原「白銀さんが何を狙っていたのか」

百田「……」






百田「自爆……としか考えられねえ」
296 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/20(日) 22:30:10.81 ID:k2JZrfSk0
最原「白銀さんが敗北した場合、得をするのは誰?」

最原「考えるまでもない。この才囚学園に生き残った全員だよ」

最原「白銀さんから見え隠れしていた異常性。狙っていた結末。実際に巻き起こったこと……これが僕の提出する証拠だ」

最原「彼女の行動は『仲間のため』! これが僕の答えだ!」

赤松「それは違うよ!」

最原「!」

百田「……やっぱりな。今のテメェなら反論すると思ってたぜ」

百田「でもよ。これ状況証拠ってだけじゃねぇ。実際に白銀がやったことを並べ立ててんだ」

百田「人は言動でいくら嘘を吐けても、行動そのもので嘘を吐くことは困難だぞ」

赤松「そうかな? 結局のところ、行動から何を読みとるかは解釈の問題だよ?」

赤松「それに、彼女が明確に気にしていたことがあったよね。夢野さんの学級裁判のときに最原くんが言ってたはずだよ」

最原「『演出重視』のことを言ってるの?」

赤松「自分の生存を度外視してることは確かに。信じられないけど、私にもそうとしか思えないよ」

赤松「でもさ。彼女が命をかけてる対象は仲間じゃない。演出だよ」

赤松「彼女は私たちをとことんコケにすることに命がけだった。王馬くんの裏切りに関してもそう」

赤松「正攻法で王馬くんの裏切りの策が上手く行ったら……つまり万が一王馬くんが白銀さんを裏切らなかったら?」

赤松「私たちにとって大打撃だよね。例えば茶柱さんとかを人質に取ったりしたら、その時点で私たちの勝ちの目は薄くなる」

赤松「心理面でも私たちに与えられるダメージが大きい。無限のリスクに釣り合うとは言えないけど、ハイリターンではある」

赤松「……ね? 結局は解釈次第。それで証拠と言われても困るよ」

巌窟王「クハハ! やはり春川の言う通り、なにかに怒ってるな? 赤松!」

巌窟王「随分と言い切るな? お前の主張も結局は、自分の言った通り『解釈次第』だと言うに!」

最原「……」

赤松「うん。怒ってるのは、今更隠すつもりもないよ」

赤松「ただし、別に最原くんのせいだけってわけじゃない」

最原「?」

最原(……その一言は予想外だったな?)

赤松「結構思い込み激しいな、最原くんも」

赤松「……最原くんのせいだけで怒るほど、私も短気じゃないよ」ギロリ
297 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/20(日) 23:06:47.00 ID:k2JZrfSk0
百田「……ん? 終一。赤松になんかしたのか?」

最原(赤松さんが巌窟王さんと共犯で白銀さんを殺そうとした……という事実をネタにしてゆすったってことがわからなきゃ意味不明な一言だな)

最原「……ごめん。なんのこと言ってるのかさっぱりわからない」

赤松「わかったって言われても困るんだけどさ。最原くんだけわかってくれればいいよ」

最原「……なんにせよ、赤松さんは白銀さんの善意を認めるつもりはないってことでいいんだよね?」

赤松「だって、そんなものないでしょ。仮に善意だったとして、今までのことが許される?」

最原「許されないね」

最原「……少なくとも僕だって許せない。だから何?」

赤松「はあ……?」

最原「『考える機会』を奪うことはないだろ。『もしかしたら許せる部分もあるんじゃないか』ってさ」

百田「それに更生の余地を与えることは、俺たちにとっても利益があるぜ?」

百田「なんせこのコロシアイの首謀者だ! コイツの情報がありゃ、巌窟王の提案よりいい案を出せるかもしれねぇ!」

赤松「そんな時間……!」

最原「ないだろうね。もしも本当に『白銀さんが救いようのない下衆』だったらの話だけど」

最原「『最初から僕たちの仲間』の場合のみ活路が開ける! そして今回の場合、白銀さんはそうなんだよ!」

白銀「……」

最原「証拠が不十分かな? なら仕方ないか」

最原「この場で即座に用意できる証拠、まだあるよ」

最原「この場で用意できる証拠は、あと二つしかない」

最原「……それで納得してくれない場合、三つ目の証拠を出すしかないけど……これだけは使いたくないな。赤松さんをこれ以上怒らせたくないし」

赤松「……?」

赤松(『卒業アルバム』のことを言ってる……? バカだな、最原くん)

真宮寺(持ってきてはいるヨ。万が一のためにネ。でもこれは仲間全員に必要になったときのための保険だ)

真宮寺(『白銀さんの弁護のため』になんか絶対に使わせないヨ……!)ニヤァ
298 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/21(月) 20:34:05.39 ID:FF0/V0hI0
アンジー「……ねえ楓ー。早めに意見は翻した方がいいと思うよー?」

赤松「なんで?」

アンジー「なんでって……こういうときの終一って凄く怖いしさー」

アンジー「……ね?」

赤松「……」

アンジー「うーん。聞く耳持たないかー。ならいいけど」

巌窟王「さあ。出してみろ最原! 即座に用意できる二つの証拠とは一体なんだ?」

最原「本。そして写真だよ」

白銀「!」

ナーサリー「……本?」

夢野「その本! まさか……!」

最原「モノクマでもわかる家庭料理レシピ百選」

夢野「やっぱりか!」

百田「やっぱりかじゃねーよ! 満を持して出してそれか!? い、いや……それなんだ!?」

最原「古今東西の拷問法が書かれた雑学本」

茶柱「料理ってそっちの意味ィ!?」ガビーンッ

最原「イラスト満載で、子供でもよくわかる内容だよ。子供にわかっちゃダメな内容だけど」

百田「知らねーよ!」

最原「確かに本の内容なんかどうでもよかったね。僕も半分くらいしか読んでないし」

茶柱「半分読んだあなたが怖いんですけど……」

最原「……問題は内容じゃない。それ以外の部分だ。『タイトル』と『厚さ』だよ」
299 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/22(火) 21:44:50.32 ID:1YwUbx5S0
バシッ

最原「ん!?」

ナーサリー「貸して」

百田「……いや貸してと言う前に奪ってんじゃねーか!」

ナーサリー「タイトル『モノクマでもわかる家庭料理レシピ百選』。縦30CM。横21CM。厚さ約10mm。ページ数152」パラララララ

ナーサリー「国際標準図書番号、なし。デザイン監修、編集、監修、すべてモノクマ」

ナーサリー「発行年月『オマエの誕生日』。発行所は『才囚学園』。非売品」パタンッ

ブワッ

最原「うわっ! ドレスの柄がモノクマカラーに!?」

ナーサリー「ありがとう、貸してくれて。お礼に本の情報を並べ立ててみたけど、どうかしら?」ヒョイッ

最原「あ、ああ。うん。これ以上ないと思うよ」

巌窟王「ナーサリーライムは本の英霊……というより物語の英霊だ。万が一内容について話したくなったらコイツに頼るといい。別に外観でも構わないが」

巌窟王「なに。『英霊を証拠品扱いする』なぞ、貴様なら慣れたものだろう?」

ナーサリー「別に直接的に本に触る必要はないのだけれども、一応貸してもらったわ。とても不道徳な本ね」

真宮寺「で。その不道徳な本のタイトルが、何だって?」

最原「この本、図書室の首謀者の隠し部屋の近くにあった本棚にあったんだ」

夢野「正確には発見したのは首謀者の部屋の中じゃぞ。『本来しまわれていたはずの場所が隠し部屋の近くの本棚』というだけじゃ」

最原「あそこあたりの本棚の、並べ方の順番は『タイトル順』なんだよ」

最原「で。首謀者の部屋で見つかったこの本を、本棚に戻し入れてみたら……」

最原「過不足なくハマったよ。本同士が詰まることもなく、かと言って隙間が大きすぎない程度にね」

赤松「それがどうかしたの?」

最原「過不足がないのが不自然なんだ」

最原「……だって、あの本棚は『既に一冊の本が焼失した後』なんだから」
300 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/23(水) 21:58:37.85 ID:nyS7HiUi0
最原「モノクマでもわかる写真術。覚えてる?」

夢野「当然覚えておるぞ。ただ、この本の違和感に気付いて、本棚を検めた時点ではもう『どこにも存在しなかった』がな。当然じゃけど」

百田「ちょっと待て。なんだその、写真術? それがどうしたってんだよ」

最原「やっぱり百田くんは覚えてないか……被害者が巌窟王さんだったわけだから当然だけど」

最原「実は最初の事件の被害者は巌窟王さんだったんだ。色々あって巌窟王さんは復活して、犯人の赤松さんも無事だった」

最原「その途中、少しだけ話題に出たんだよ。巌窟王さんがたまたま欲しがってた本。モノクマでもわかる写真術……」

天海「事件が終わった後で図書室に行ってみたら、その本はすっかり焼失してたっす。燃えカスが残るのみだったっすよ」

天海「多分、後後の王馬くんの台詞と行動を考えるに、巌窟王さんのビックリした顔が見たいがために燃やされたんだと思うんすけど……」

王馬「ああ。そういえば理由はまったく覚えてないけど、そんな本を燃やしたような記憶がぼんやりあるような……」

アンジー「実際に燃やしたんだよー。後で『彼』が物凄く恨み節まき散らしてたから間違いないねー」

巌窟王「……」

巌窟王「図書室だな? 同一タイトルの本が一つや二つあってもおかしくはないが」

巌窟王「……あの本は王馬が燃やした一冊だけだ。モノクマが補充しない限りは、もう二度と図書室には並ぶまい」

モノクマ「図書室の本の補充? ボクはそんなことしてないよ。更に言えば図書室の掃除の方もあまり小まめにはやってないなぁ」

最原「本棚にも触ってないんだな?」

モノクマ「もちろんです」ムフー

最原「そうか。じゃあ決まりかな……」

最原「……そうだ。記憶を失ってないみんなには改めて、件の本棚の詳しい座標を改めて言っておかないと」

最原「隠し扉へ向けたカメラ。第一の事件で巌窟王さんが倒れていた場所だよ」

最原「そして、写真術の本に関してはもう永久に消えているのに、料理本を本棚に戻すと『すべて揃う』」

最原「加えて、この料理本と写真術の本はタイトルが酷似しているとなると……」

最原「……段々新しい証拠の輪郭が見えてこない?」
301 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/24(木) 22:57:44.64 ID:00OzEERT0
赤松「最初の学級裁判でちょっとだけ触れたよね」

赤松「『もしかして赤松楓が隠しカメラのセットと一緒に、巌窟王さんおびき寄せのために写真術の本を同時にセットしたんじゃないか』って」

赤松「あのときは最原くんが否定した。『カメラを仕掛けた人と本をあそこに置いた人が同一人物だとは思えない』って」

真宮寺「限りなく可能性の低い偶然が重なった結果起こった悲劇……情報が足りなかったあの時点ではそう結論付けるしかなかった」

真宮寺「ククク……でも違うんだネ! その口ぶりだとさぁ!」

最原「偶然の可能性は消える。すべては必然だった」

最原「本に続いて、この写真が証拠だよ」ピラッ

モノクマ「拡大して上のモニター……の何枚かに出しまーす!」

百田「白銀? ……場所は図書室、だよな。階段側じゃなくて奥側の扉のあたり、か?」

最原「場所はそれで間違いないよ。問題は、これが撮影された時間だ」

最原「第一の学級裁判が起こる前なんだよ、これ」

春川「根拠は?」

王馬「俺が本を燃やしたタイミングでしょ」

最原「うん。この白銀さん、本を持ってるでしょ? タイトルは微妙に隠れちゃってるけど辛うじて『写真術』って読める」

ナーサリー「……」ジーッ

最原「全文はわからない。でも、白銀さんの持ってるこれこそが件の『モノクマでもわかる写真術』だよ」

最原「一冊しか存在しなかったはずの本が、この写真に写ってる。これが第一の学級裁判が起こる前だと主張する根拠だ」

最原「……白銀さんは一冊しか存在しないはずの本を持って、何をしたのか」

最原「決まってる。『本の入れ替え』だよ」
302 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/25(金) 23:57:36.87 ID:5xuU6JFi0
最原「さっきから意図的に黙ってる出戻り組はもう気付いてるよね。つまり図書室には写真術の本なんて無かった! 少なくともあの本棚には!」

最原「後から白銀さんが、本来そこにあった料理百選の本と入れ替えたんだよ!」

夢野「まさかこんな写真が『ここに』出るとまでは予想しておらんかったがの」

夢野「最初の事件のトリックについて、重要なのはとにかく『巌窟王の位置』じゃ。『砲丸の位置』でもよいが」

夢野「巌窟王の頭上にドデカい鉄骨が落ちて来る! とかならそこまで気を遣う必要はない。でも現実にはそうではなかった」

夢野「重さ、高さは問題ないとしても『命中率』にはどうしても不安が残る!」

夢野「じゃから保険が必要じゃった。ダメ押しとも言えるし、願掛けとも、ともすれば単なる『おまじない』とも言えるような極微量の底上げが」

夢野「ついでに、あからさまに図書室に向かうつもりじゃった巌窟王が、万が一あそこに来た場合の備えがな!」

夢野「それが写真術の本じゃ。あの当時の巌窟王は、卒業アルバムのために写真について書かれた本を欲しておったからな!」

夢野「……そういえば最原。お主、カメラをセットした後、ずっと階段傍の教室で見張ってたわけではなかったのか?」

最原「カメラを設置した後すぐ、ってわけじゃなかったからね。首謀者が僕たちと一緒にいる場合はタイムリミットギリギリにならなきゃ来ないだろう」

最原「そう赤松さんが言ったからさ」

最原「あのトリック全体を見るに『首謀者がなにかと理由を付けて大人数で地下に降りるはず』って予測した上での発言だったんだと思う」

赤松「百田くんの予定を偶然知ったからね。首謀者なら絶対にその計画にあえて乗るだろうって思ったんだよ」

赤松「わざわざ私たちの中に紛れ込むような人だし。そうじゃなきゃ最初からあの部屋に引きこもってる」

赤松「あの大爆音のトリックは、カメラを仕掛ける前日にすべて実験は終わったけど」

赤松「AVルームの細工だけは出来る限り計画実行直前、せめて当日に行う必要があった。あのAVルームって結構使用頻度高かったから」

赤松「で。『緊張でガチガチになってるから食堂でなにか食べてきなよ』という口実で最原くんを追い出して」

赤松「すべての細工を終えた後で悠々と最原くんを拾って、階段傍の教室に戻ってきたってわけ」

赤松「……念のために言っておくけど、それでも十七時だよ。あの事件が起こる寸前、つまり二十二時寸前まで見張ってたわけだから……」

巌窟王「五時間はあの教室にいたのか。退屈だっただろうな、死ぬほど」

最原「僕たちがいない間に首謀者が中に入ってしまったかも、という心配は元からしてなかったよ」

最原「入間さんの作ってくれたブザーだけは携帯してたからね。倉庫の赤外線センサーとは違ってこれは射程が長いんだ」

最原「いや赤外線センサーの方も後から長くなったけど……これの応用で作ったのかな」
303 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/26(土) 23:01:46.24 ID:7XbpdrVj0
最原「タイトルが酷似している理由はこれでわかったよね。本来そこにあったものと取り換えるとき、本棚がタイトル順ならどうしても似てしまう」

最原「……というか似てるヤツを急ごしらえで作ったんだ。よくもまあ間に合ったものだよね」

白銀「モノクマが一晩でやってくれました」

最原「次。白銀さんは本を作った際、意図的に増加させたものがある」

最原「本の厚みだ」

百田「あ? 本が厚くなると……何が起こるんだ?」

春川「……」

春川「取り出しにくくなる……」

百田「い、いやいやハルマキ。取り出しにくくなるからってなんだって……」

最原「確かに聞くだけなら物凄くショボい細工だよ」

最原「でも現実に、巌窟王さんはそのせいで赤松さんに殺されたんだ」

最原「……と、まあここまでなら、あくまで赤松さんの殺人計画の後押しでしかないんだけど」

最原「問題はここまでやっても『殺人計画が上手く行くかどうかわからない』ってところだ」

最原「命中率はかなり上がったけど必中じゃない。多分一割くらいの確率で外れてしまう」

最原「ここから先は白銀さんの話を聞いて判断するしかないんだけどさ……」

最原「もし外れたら何をする気だったの、白銀さん」

白銀「……」

最原「巌窟王さんが触っていなかったにも関わらず、隠し扉の本棚は動いた」

最原「ということは、白銀さんはあのとき隠し部屋の中にいたんだよね」

最原「……本当に本棚を動かすためだけにあそこで待機してたのかな?」

白銀「どうしても私の口から言わないとダメ?」

最原「うん。そうじゃないとダメだ」

白銀「……はあー……」
304 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/27(日) 21:28:27.68 ID:5uTnDdYF0
白銀「本当にこれだけはぜーーーったいに取りたくない手段だったんだけど」

白銀「赤松さんの砲丸が外れた場合は、私がやるしかないなって思ってたよ」ニヤァ

百田「!」

夢野「……ゴミ箱の中の砲丸」

白銀「ああ。やっぱり気付くよね。そうだよ。結局用済みになっちゃったから適当に捨てたんだけど」

夢野「……」

赤松「……ねえ。情状酌量の余地を議論したら、余計にドツボに嵌まってない?」

最原「いや。これでいいんだ。今の一言ではっきりした」

最原「彼女が真に何をしたがってたのかがね」

夢野「白銀よ……よもやそこまで……!」ギリッ

白銀「……?」

白銀「……ッ!」キョロキョロ

最原「本当に怖がってたのはこの光景、だろ。僕はこれを見せたかった」

最原「……白銀さん。キミの行動はなにもかも矛盾だらけだよ。なんでそんなことになったと思う?」

最原「抜群の行動力、モノクマの強権、僕たちのキャラクターを理解した上で行われる圧倒的な先読み」

最原「それらすべてを駆使して、何をしたかったのか」

最原「……『なにもしたくない』。それが答えだ。自分が死ぬのもイヤ。仲間が死ぬのもイヤ。終わるのがイヤ。裏切るのも裏切られるのもたくさんだ」

最原「自分の罪が裁かれるのも、裁かれないのも耐えられない」

最原「それらの願望を叶える方法はたった一つ。自分自身が、何一つとして誰にも理解できない『謎』であればいい」

最原「ずっと謎でいるのは難しいから、せめて自分が生きている間だけという限定条件付きで!」

白銀「い……いや……!」ガタガタ

最原「その可能性は僕が今、摘み取る。そんな希望を許すわけにはいかない! なんだって利用してやる!」

最原「……百田くん!」

百田「ああ……利害関係は一致してるよなぁ……なら仕方ねぇよなぁ……終一。てめぇの口車に乗ってやる」

百田「白銀」

白銀「!」ビクッ





百田「テメェが何言おうが、俺はテメェの仲間を辞めるつもりはねーぞ。絶対に」
305 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/27(日) 21:40:16.24 ID:5uTnDdYF0
赤松「……なに? なんでみんな、そんな顔してるの?」

赤松「今の言葉、聞いてたよね……? ならなんで……」

赤松「なんで白銀さんのことを『憐れんでる』の!?」

天海「今の一言が完璧に嘘だったからっすよ」

赤松「へ」

天海「……子供でももっとマシな嘘を吐く。言葉自体に嘘はなくとも、彼女の態度に嘘がある」

天海「本当に赤松さんの砲丸がハズレたらマジでやるつもりだったでしょうね! でも……」

白銀「ま、待って。ははは! おっかしいなぁ! 最後まで話を聞いてよ!」

白銀「私はさ! 巌窟王さんを殺しても、クロにはならないんだよ! 赤松さんに罪を全部押し付けるつもりだったからさぁ!」

白銀「赤松さんが犯人ってことにして……! 代わりにおしおきを受けてもらって学園生活を続行する気で……!」

春川「……もういいよ白銀。もうたくさんだから」

春川「この記憶が偽りのものだったとしても、誰かを『それっぽい理由で殺す』ことの辛さは知ってるから」

春川「『どの方向性に転ぶのもイヤ』なら……もう何もしなくっていいんだ! アンタは!」

白銀「な、何を……言って……」ガタガタ

巌窟王「……」

巌窟王(なんだ。何が起こっている? この空気はなんだ!?)

巌窟王「何故……白銀を守る方向で団結をする……!?」

巌窟王「貴様らはただ、状況が呑み込めていなかっただけだろう? 『何も知らない』から白銀を庇っていたに過ぎなかった」

巌窟王「それが何故……すべてを知ってなお、許す方へ向かっている……!?」

アンジー「わからなくっていいよ。少なくとも、この場で、お前だけは」

アンジー「……それがわからないあなたが好きだからさー。アンジーは」

巌窟王「……バカな……最原……!」
306 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/28(月) 21:28:18.89 ID:3w9DTCg+0
最原「もっと早い段階で気付いておくべきだったね、白銀さん。たとえ気付けてたとしても、他にいい言い訳を思いついていたとは思えないけど」

最原「あまりにもグズグズすぎる」

白銀「……」

最原「この場にいる、記憶を消された人たちは全員気付いてるから今更言うまでもない」

最原「キミのことをずっと信じてた夢野さんに至っては、料理百選の本の真実にはとっくのとうに気付いてる!」

最原「砲丸も、本も、写真も……これらがなければ真相に至れなかった。ならなんで!」

天海「なんで『こんな証拠がある』んすか? 真っ先に処分すれば何も無かったはずなのに」

天海「特に、最悪なのが写真っすよ。これ明らかに、アングルが最原くんの隠しカメラっすよね」

天海「これに関しては、記憶を取り戻した俺だからこそわかるヤバさっすよ」

天海「……赤松さんに罪をなすりつけて代わりにおしおきを受けてもらうつもりだった、か」

天海「その案は結局、九割の命中率が上手い具合に働いたから実行には至らなかった『ルール違反未遂』でしかない」

天海「でもこれは違う。校則に真っ向から反している!」

天海「『モノクマはコロシアイには関与しない』の校則にね!」

夢野「あのとき、写真の現像をしたのはモノクマじゃ。モノクマーズではなく、モノクマだったんじゃ!」

夢野「したがって、この写真を握り潰せるのもモノクマだけということになる!」

夢野「重要な証拠じゃぞ! 握り潰したら大変なことになる!」

夢野「最悪、握り潰して誰にも発覚されなければそれで済むが、現実にはこうやって最原に見つかっておる! ありえないじゃろ!」

夢野「写真なんぞ処分しやすい証拠ベスト3に入る! なんで後生大事に持っておったんじゃ!」

白銀「裁判のフェアさを維持するため……」

最原「建前だろ。すっかり騙されたよ。キミにあるのは行動力だけだ。自分の意思がない」

最原「……誰かに何かしてほしかった。されたかったんだ。それがキミの望みだよ」

最原「裁かれるのも、殺されるのも、傷つけられるのも、許されるのも全部良かったんだ」

最原「どこまで……どこまで生きることに疲れたらこんなことになるんだ……! ふざけるのもいい加減にしてくれよ……!」

百田「なら俺たちがやることはたった一つだけだ」

白銀「……!」





百田「裁かない。俺は白銀の罪を知らないからな」

百田「殺さない。殺すわけねーだろアホか」

百田「傷つけない。仲間を傷つける? 論外だろ」

百田「許さない。そもそも最初から怒ってない」

百田「俺たちは、白銀に『何もしない』」
307 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/29(火) 22:43:18.28 ID:joItBt9c0
最原(……真宮寺くんをあの場でタコ殴りにしたときと同じ気分だ)

最原(胃がムカムカする。体が怠くなってくる。とにかく息がものすごく苦しい)

白銀「最原くん……お願い。これ以上はやめて……お願いだから……!」ガタガタ

最原「これは僕の復讐だ。やめる道理がどこにある?」

最原「……キミはこれまでやらかしたことの責任を一切取らなくていい。取っちゃダメだ」

白銀「はっ……ははははは! そんな! そんなバカなこと」

最原「バカじゃないよ。キミを現す言葉は『天海くんと一緒』ともう一つ」

最原「ここまで言えばもう誰でもわかる。特に百田くんたちには」

最原(『被害者』。つまり――)

茶柱「……『転子たちと同じ』……ということですね」

最原「同じ境遇、同じ地獄に落とされた仲間だ。一体なにをどうして、そんな人を裁かなきゃダメなんだろう」

最原「時間の無駄だ」

王馬「考えてみれば、第一の事件のモノクマのタイムリミット、第二の事件の動機ビデオ……」

王馬「このふたつの動機に関しては『首謀者であるはずの白銀ちゃんにも有効』だよね! 本当に『天海ちゃんと一緒』ならさ!」

白銀「王馬くん!」

最原「もう悪あがきはよそうよ、白銀さん」

最原「……キミがやってきたことは全部無駄だった」

白銀「ッ!」ビクッ

百田「おい。終一……!」

最原「血反吐を吐くような努力、ご苦労様。余計なお世話だった……だけなら可愛いものか」

最原「キミのやったことは全部無意味だった」

白銀「いや……いやあ……!」

最原「こんな茶番劇の裏方に、よくも徹しきれたものだよね。僕にはまったく理解できない」

最原「キミはキミ自身が考えている以上に無能だった」

白銀「ひっ……ひうっ……うああああああ!」ガタガタ

最原「でも安心してよ。百田くんたちは相も変わらず仲間を続けてくれるそうだから」

最原「……キミはこの学園で『なにもできなかった』から。いや……」

最原「キミにはこれからも『なにもできない』。『誰も殺せない』から『誰も救えない』!」






最原「『無力』だ」

白銀「いやあああああああああああああああああああああっ!」
308 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/30(水) 23:34:53.26 ID:vuQiQmWD0
ゴッ

最原「がっ……!?」

茶柱「……転子はあなたのことを信じてます。信じてますが……それはそれとして死ぬっっっほど不快です」

最原「え。ちょっと待って。今、何を投げ……」ヒョイッ

ネコアルク「にゃあ〜〜〜星がくるくる回る〜〜〜」ピヨピヨ

最原「爆発物を無造作に投げないでくれるっ!?」ガビーンッ

赤松「それ以前に自立意識のあるロボットを投げないでよ……キーボくんじゃないけどロボット差別はダメだからさ……」

茶柱「……ここまで追い詰める必要がありましたか? 今までの努力は無駄だったと突きつける以上に残酷なこと、そうそうありませんよ?」

最原「二度と同じことをされないように徹底的にしておきたくって……当然私怨も入ってるけど」ダラッ

最原「うわ。血が出てる……かなり強く投げたね……おでこから結構出血が……」

百田「ツバでもつけとけ! あるいは茶柱のツバでもつけとけ!」

茶柱「!?」ガビーンッ

百田「……敵は決まった。確かに議論自体は無駄じゃなかったかもな。この場に敵が一人もいないってんなら……」

百田「俺たちの敵は『外の世界すべて』だ! 白銀にこんなことさせたヤツも、俺たちにこんな目をあわせたヤツらも!」

百田「目に物を見せてやるぜーーーっ!」

白銀「だからっ! それがダメなんだって!」

白銀「それが一っ番ダメなんだってば!」

百田「お?」

白銀「私がっ……私がなんの理由もなくこんなこと考えたと思ってるの!?」

白銀「ちょっとでも勝算があったのなら、仮にそれがどんなに小さくたって、それに賭けてみるのが一番簡単だよ!」

白銀「でも実際には違う! 世界なんて相手にしてられない! たったの十六人……それも、この世に実在してない私たちに何ができるの!?」

白銀「……やってみなけりゃわかんない、とか言わないでよ! もうやったんだよ! 天海くんが知らないところでも何回も!」

白銀「天海くんと一緒のときも! 何回だって……何回だって……諦めずに、希望を捨てずに何回だって……!」

春川「……白銀……」

白銀「は、ははっ。知ってるんだよ、私はさぁ。春川さんみたいな目をした人、前にも見たよ!」

白銀「その人は私たちのことを信じて、無念さを隠して、満足そうに死んでったよ!」

白銀「ふざっけないでよバカじゃないの!? そういう抜き身の優しさ、どうせ死ぬヤツにはないほうがいいに決まってるじゃん!」

白銀「残される私たちのが百倍辛くなるだけなんだよっ!」
309 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/30(水) 23:51:53.03 ID:vuQiQmWD0
白銀「嘘……嘘! 嘘! 嘘! この学園にあるものは全部フィクション! 現実に存在するものの模造品!」

白銀「優しさ、決意、希望、心、未来……! そういうポジティブなものはぜーんぶ実在しない! 少なくともこの学園では!」

白銀「消えちゃうんだよ……! 私が消すこともできるし、外の世界の連中ならもっと簡単に消すことができる!」

白銀「実際、私が何をしたか、百田くんたちはどれだけ覚えてる!? なにも覚えてない……! 辛うじて巌窟王さんの影響だけが残ってるのみだ!」

白銀「どうせふいに消えるものなら、せめて私の手で壊してしまいたかった。私の知らない場所で消えるのは凄く怖いんだよ! 毎回心臓が止まりそうなの!」

白銀「信じてたものに裏切られるのも怖い! なら私が裏切りの原因になってしまった方がいくぶんかマシだよ!」

白銀「どうせ残酷な形で消えるものなら……その最期を私が少しだけでも……!」

百田「消えねーよ」

白銀「その台詞も知ってる! 聞いたことあるよ……結局嘘だった!」

百田「嘘じゃねーよ。だってよ」






百田「ならなんでテメェは泣いてんだ?」

白銀「……は……」

百田「嘘と真実の定義なんぞいちいち議論できねぇけどよ。終一ほどその分野に明るいわけじゃねーし」

百田「……そうだな。テメェは知ってるんだ。『何一つとして嘘なんかない』ってことに」

百田「でもそれじゃ耐え切れねぇから『全部嘘だった』ってことにしてぇだけだ」

百田「悪い夢だったって思いたいだけなんだよ。行動を裏返せば結局、やればやるほど『嘘だと思ってない』って証明するようなもんなのによ」

白銀「……」

百田「……天海。わり。これ以上、俺が言うべきじゃねーだろ。テメェに任せた」

天海「……あははっ。うん。ありがと……後のことは俺に任せてくれっす」

天海「百田くん。超高校級の生存者として参加したこの学園で、キミに会えて本当によかった」

天海「キミを信じることができて、本当によかった……」

百田「いいってことよ!」
310 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/31(木) 20:45:38.80 ID:BYswMy6f0
天海「……白銀さん。俺はどうやって、分断前の記憶を取り戻したんだと思います?」

白銀「……」

天海「薄々感づいてたんじゃないっすか。俺は最原くんみたいなスキルでもなんでもなく『偶然』で記憶を取り戻したんすよ」

天海「それ以外にマジで理由がないんす」

天海「……ははっ。何もかも偶然っすよ。赤松さんの砲丸がマジで巌窟王さんの頭上に落ちたのも」

天海「いや。巌窟王さんがそもそもここに呼ばれたのだって」

天海「……白銀さん。ただの偶然で、今回のこの学園での出来事は、前回の学園でのコロシアイみたいにならずに済んだ」

天海「ここまで来たらもう……偶然じゃなくって『運命』って言えるのかもしれないっすね」

白銀「だから……なに?」

天海「諦めてくれないっすか? 流石に相手が運命じゃ、白銀さんでも勝てないでしょ。世界より余程に分が悪い」

天海「友達からの一生のお願いっす」

白銀「……まだ私のことを友達だって言ってくれるの? 何もできなかったのに」

白銀「あなたを殺して終わらせることも。私が死んで終わることも」

白銀「……あなたたちが何も思い出さずに私を殺してくれたら、少なくとも『才囚学園での物語』はハッピーエンドだった」

白銀「一瞬だけだったとしても、達成感で幸せになれたはずだったのにさ……!」

天海「興味ないっすね! 余計なお世話クソ食らえっす!」ニカッ

天海「……今回の学園で発揮した行動力、今度は正真正銘、俺たちのために使ってくれないっすか?」

白銀「……なんていうか……」





ネコアルク「メンタルをボッコボコにした後で新しい目的意識を植え付けるとか、やり方が完璧に洗脳のそれじゃないかにゃー」

天海「!?」ガーンッ

最原「今は黙ってて」ガバッ

ネコアルク「もがぐぐ」
311 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/01/31(木) 21:15:56.37 ID:BYswMy6f0
天海「ほ、本当だ。今の俺って最低の鬼畜野郎なんじゃ……」

茶柱「安心してください。最低なのは間違いありませんが、鬼畜野郎なのはこの場で最原さんだけです」

最原「ぶっ」ブシュウアアッ

バタンッ

最原「」チーン

王馬「最原ちゃんは……茶柱ちゃんの言葉のショックで古傷が全部開いて死んだ」

真宮寺「超善人だったのに、どうしてこんなことに……」グスン

茶柱「謝りませんよ! 謝りませんからね!」

白銀「……」

白銀「私は私のことが嫌い。最近までそうじゃなかったのに、最原くんのせいで嫌いになった」

白銀「……もっと私は色んなことができると思ってた。なんだって……世界に歯向かう以外なら、なんだって……!」

巌窟王「勘違いだな」

白銀「!」

巌窟王「……なんでもできるヤツなどいない。俺がこの学園でイヤというほどに思い知ったことだ」

巌窟王「何もできないということはない。だが、一人一人、個人個人がやれることは驚くほどに少ない」

巌窟王「才能のあるなしに関わらずだ」

巌窟王「貴様の失敗がどこから始まったか。考えてみれば、ありきたりだな。この年頃の娘なら珍しくもない」

巌窟王「無理に背伸びをしすぎだ」

天海「……驚いた。説教する余裕なんてまだあったんすね。てっきりまだ怒り狂ってるものだと」

巌窟王「当然、この復讐鬼たる身に忘却はない。怒りも当然保持している。だがその女があまりにも情けないものだからな」

巌窟王(……もう取り残された方の団結は止められそうにないな。これが狙いだったのか、最原)

最原「ちょっとでいい……ポジティブなことを言ってくれれば即復活するから……」ピクピク

茶柱「えー。面倒臭いですね……えーと……」

茶柱「……転子も癖がおかしくなっちゃいましたかね。真実を暴くあなたの姿、ちょっと格好よく見えましたよ」ポソッ

最原「ベホマ級の威力」ギュインギュインギュイン

王馬「本当に復活しちゃったよ」
312 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/01(金) 20:27:14.68 ID:QQfPlFmo0
プリヤ追い込み期間のため今日はなし! 復刻だからって舐め腐りすぎた……
313 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/02(土) 22:49:37.15 ID:105jg2mv0
天海「俺は諦めない。何度記憶を消されたって、絶対にキミも! キミの大事なものも助けに行く!」

天海「できるかどうかは関係ない! 絶対に全力でそうしてやるっす!」

天海「だから白銀さん。これから先は覚悟を決めておいてくれないっすか」

天海「……助けられる覚悟を」

白銀「……またみんな死んじゃうよ? 今度こそ」

百田「死んでたまるかッ! そのために頑張るんだよ!」

夢野「最初から何もかも諦めて生きることと、結果を確実に出せる生き方しかしないことはほぼ同列じゃぞ」

夢野「そういうのはとてもよくないことじゃ。大事なのは頑張ろうっていう気概じゃぞ」

春川「……私たちは誰も殺さない。気に入らないものだけを粉砕する」

春川「ここまで誰も死なずにやってこれたんだ! 最後の最後までワガママを通そうよ!」

赤松「ちょっと待ってよみんな! 本当にそれでいいの? それ以前に、最原くんの言うことを信じるの?」

赤松「写真はともかくとして、件の写真術の本に関しては確証が――!」

真宮寺「赤松さん、赤松さん」チョイチョイ

赤松「ん?」

真宮寺「あれあれ」

赤松「……んっ?」

王馬「ごーまーだーれー」チャーリーラーラー

モノクマでもわかる写真術「」キラキラキラ

赤松「……んんんんんんんんんん!? 燃やしたんじゃなかったのーーー!?」ガーンッ

最原「ナーサリーさんに協力してもらった」

モノクマでもわかる写真術「本を読んだ子がいれば辛うじて可能よ!」

真宮寺「あ、ホントだ。ナーサリーさんの声だネ……」

赤松(……ダメだ! 最原くんの手回しが異常に素早い! 新世界プログラムの中で巌窟王さんに追いかけ回されて泣きべそかいてた人だとは思えない!)

赤松(この局面で冷静すぎる!)
314 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/03(日) 20:46:31.47 ID:OceWqH7A0
巌窟王「満足か? 白銀の希望を粉砕できて、満足なのか」

巌窟王「……最原。貴様に訊いているのだぞ」

最原「三分の一くらいは気が晴れたよ」

茶柱「半分以上残ってるじゃないですか……」

最原「白銀さんから一切謝られてないし、完全に善意からの行動だったのなら白銀さんはこれからも絶対に謝らないからね」

最原「仮に謝ったとしても絶対に形だけの謝罪だよ。僕は赦す努力はするけど、最後の最後では憎んでると思う」

最原「……それでいいんじゃないかな。白銀さんからすれば、なにも覚えてない百田くんたちや、これまた全部善意の天海くんに一生つきまとわれるんだよ?」

最原「罪悪感を一切清算できないままね。それって最高の罰でしょ?」

巌窟王「……俺には貴様が何かと理由を付けて、人を殺すことを避けているようにしか見えん」

最原「当たり前だよ。好き好んで人を殺す人間なんかこの場にいないんだから」

ナーサリー「『人間』はね……」ニコニコ

夢野「意図的に場の空気を濁らせるようなマネはやめい!」

最原「さあ。ここまでの議論でハッキリしたよね」

巌窟王「白銀が敵ではない、ということがか? フン、今更確認するまでもない内容だった――」

最原「違うよ。そっちじゃなくってさ」

巌窟王「なに?」ピクッ

最原「『一億人を殺して外の世界に出る選択肢』が完璧に論外だってことがハッキリしたんだ」

百田「!」

天海「えっ」

白銀「はい?」

巌窟王「……」

アンジー「ま……」





真宮寺「マジで?」
315 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/04(月) 20:19:06.04 ID:3JKd31dI0
赤松「……さ、最原くん。ちょっと聞きたいんだけどさ」

最原「なに?」

赤松「白銀さんの視力を元に戻すための議論じゃなかったの?」

最原「言ったはずだ。『ついで』だって」
316 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/04(月) 20:29:13.05 ID:3JKd31dI0
赤松「……」

赤松(言ってた! 確かにさりげなく『ついで』って言ってた!)ガビーンッ

巌窟王(まさか、コイツ……! 白銀の視力を元に戻す云々は建前で!)

アンジー(本当は早期の内に『最悪の選択肢』を潰しておきたかっただけかー。物凄い欲張り)

巌窟王「ま、待て。今までの議論のどこにそんな話が……!」アタフタ

最原「巌窟王さんの進路が論外の理由は主に二つ。一つ目はさっき百田くんが言った通り、単純に一億人を殺す選択肢を選べないという人倫の問題」

最原「もう一つの理由は今までの議論で裏打ちがされたと言うべきかな」

最原「……ずっと僕が言うのも、段々説得力がなくなっていきそうだから、この二つ目の理由は百田くんに任せようか」

百田「お? 俺か?」

最原「ずっと前のめりで、前向きだった百田くんが一番気付いてそうかなって思ったんだけど……」

百田「あー……つっても、テメェの言った人倫の問題以外に、この案を跳ね返す理由なんて……」

百田「……ないことはねぇけどよ? 怒るなよ?」

赤松「え。あるんだ」

百田「意外そうな顔してんじゃねーよ。あのな、一つ訊いていいか?」

百田「そもそもなんでそんな選択肢を検討しなきゃなんねーんだよ」

巌窟王「……ム? それは外の世界への報復に決まってるだろう?」

百田「いやだからそれだよ。あ、いや、感情論とか……絡んでねぇわけじゃねぇんだけど、若干ズレてんな。そうじゃなくって」

巌窟王「?」

百田「……それゲームで言うところの邪道だろ? なんで王道を行かねぇんだ?」

巌窟王「――」

赤松「え。なに? どういうこと?」

百田「いや、だからよ」







百田「『正攻法で勝てるゲーム』で『ゲームそのものをぶっ壊すような勝ち方』を求める意義はなんだって訊いてんだよ」
317 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/05(火) 20:26:28.15 ID:jfNIEKiO0
アンジー「えっとねー。んっとねー。色々言いたいことはあるんだけどねー」

アンジー「……正気?」

百田「あ!? そこまで言うか!? むしろ俺の方がテメェらにそう言いたいんだっつの!」

百田「巌窟王の進路は、魔術師からの暗殺の可能性を根こそぎ破壊できるってところのみが魅力だぞ! それ以外は狂気の沙汰だろうが!」

巌窟王「違う。アンジーは今更、そんなことを確認したりはしない。俺の進路が狂気の沙汰だと? わかったことを言うな」

巌窟王「アンジーが言いたいことの全文は『なんでまだそんな正気を保った発言できるの』だ」

百田「あー?」

天海「……ああ、なるほど。そういうことっすか」

白銀「……」

最原「天海くんと白銀さんはわかるよね。そう。この場には越えがたい『壁』がある」

最原「巌窟王さんたち新世界プログラムへ隔離された側は、白銀さんが誘導した通り『ゲームそのものへの憎悪』が桁違いだ」

最原「このゲームを用意した世界への憎悪も当然、ね」

最原「対して、百田くんたちはどうだろう。このゲームのことを振り返ってどう思う?」

百田「どう思うも何も……」

春川「別に」シラーッ

赤松「……え。ごめん春川さん。なんて言った?」

春川「ゲームに対してはどうも思ってないけど……」

春川「……むしろ何か思わないとダメなの? だってさ」

王馬「結果だけを見れば、誰も死んでないよねぇ?」ニヤァ

真宮寺「あっ」

赤松「……ちょ、ちょっと待って。結果だけを見ればそうかもしれないけど、過程の方が散々だったでしょ……!」

赤松「あっ」

最原「それが壁の正体だ。百田くんたちは結果だけしか見ない」







最原「……結果だけしか『見えない』んだよ!」
318 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/06(水) 21:47:01.78 ID:8dJIphJ+0
春川「確かに死ぬような目には遭ったけど正直、私の職業だとそういうのないことはないし……いつものことっていうか……」

百田「俺もだ。宇宙飛行士って『命懸けの状況を作らないように命懸けで訓練してる』ようなもんだけど、それでもやっぱり死と隣り合わせだしなぁ」

王馬「え? 俺? 楽しかったよ?」

茶柱「……結果だけ見れば確かに……百田さんの言う通りですね」

茶柱「相手の土俵で勝てる算段が付いてるのなら、それで勝つのが一番でしょう? それこそが完全勝利ってものです」

夢野「自分の有利な条件で一方的に喧嘩を吹っかけて来た相手を返り討ちって構図になるからのう。一切の言い訳が効かんな」

夢野「ぶっちゃけこれで負けたら自殺級に恥ずかしいじゃろ」

白銀「既にかなり精神削られてるよーう」ヘラヘラ

天海「白銀さん! 白銀さん気を確かに!」アタフタ

巌窟王「なるほど。確かにそれは美しい勝ち筋だな。だが正攻法で勝った後はどうする」

巌窟王「魔術のことを知り過ぎたお前たちを、外の魔術師が放っておくとは到底思えん。百田も俺の進路のこの長所だけは否定しなかったな?」

百田「まあな。そこだけはお手上げだぜ」

夢野「学園が崩壊したら巌窟王はウチらの傍から消えてしまうしのう。どうしたものか」

最原「問題が無い、とまでは言えないけどさ。一つだけいい案があるよ」

巌窟王「案だと?」

最原「巌窟王さん、一つ僕たちにあえて言ってないことがあったよね」

最原「セミラミスさんの計画が始動した場合、魔術関連の物品はすべて学園から消滅する」

最原「……この言に嘘はない。じゃあキーボくんの改造はどうなるの?」

巌窟王「特段隠していたつもりはない。そうだな、キーボの改造も『この学園で当初から想定されていたレベル』に戻るだろう」

最原「ああ。やっぱり。でもそっちのことじゃなくってさ」

最原「……巌窟王さんはどうなるの?」

巌窟王「!」

最原「文脈から察するに巌窟王さんも消えるだろうね。でもたった今言ったよ。キーボくんの改造は全部が無かったことになるわけじゃない」

最原「少なくとも、白銀さんの想定では魔術抜きでも『僕たち全員を皆殺しにできるレベル』の改造が、キーボくんに施されていたはずなんだ」

最原「もし魔術物品の消去が同時に行われたとしたら……」

赤松「あっ! 残ったキーボくんに対処できる人が誰もいない!」

最原「……それだけじゃないな。学園に穴を開ける方法も消える。巌窟王さんがいなくなったらね」

最原「答えてくれる? ただ黙っていただけなら、この場でさ」
319 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/07(木) 20:22:21.08 ID:Z8wtRKTT0
巌窟王「……俺の順番は最後だ。セミラミスはどうもいらぬ気を回したらしいな。お節介焼きめ」

赤松「お節介?」

巌窟王「別れの言葉でも残しておけ、とでも考えていたのだろう。魔術物品の排除計画で、俺は一番最後だ。そういうことになっている」

赤松「……ほ、本当だ。いかにもあの人が考えそうな余計なお世話だ……」

最原「でも今回、それがいい方に働いたよね。キーボくんの魔術強化解除をした後、巌窟王さんにはちょっとだけ時間があるんだから」

巌窟王「……生徒の総意がそういうふうに傾いたのなら、俺とて全力でそれを成そう。今更揺らがせる気はない」

百田「終一。なんでこんなこと確認したんだ? 念のためか?」

最原「ここから先はネコアルクか、さもなくばセミラミスさん本人に問い合わせるしかないんだけどさ」

最原「順番を弄れるのなら、キーボくんの魔術強化をちょっとだけ残すこともできないのかな」

巌窟王「……?」

ネコアルク「えー。残してどうするにゃー? キーボくん制圧の可能性を自ら小さくするような自殺行為にしかならないけど」

最原「発想を元に戻すんだ。キーボくんは僕たちの『仲間』でしょ?」

最原「学園から脱出した後で巌窟王さんが消えてしまうのなら、他の対抗手段が必要だ」

最原「……今すぐ用意できる対抗手段は限られてるけど、真っ先に手が届きそうなのは……僕たちに一番近い魔術物品、それも戦闘に特化したものは……」

最原「たった一つしかない、でしょ?」

巌窟王「……!」

真宮寺「……ああ! ああ! なんてことを考えるんだ! 最高だヨ最原くん!」

真宮寺「キミはよりにもよって! この局面で! そんな常軌を逸した決断をするんだネ! 王道がどうとか言ってる割に! それはそれで外道だヨ!」

茶柱「え。何をするつもりなんですか、最原さん」

真宮寺「ククク。決まってるじゃないか。相手の戦力を削り、なおかつ自分たちの戦力を増強する」

真宮寺「この戦法のせいで近代以降の兵器は、最悪でも自爆はさせないといけないという縛りを設けるハメに陥った」

真宮寺「何故ならそうしないと自分自身の兵器に殺されることになるから! つまるところ! そう! 最原くんのやることを二字熟語で表すならば――」





巌窟王「鹵獲か!」
320 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/09(土) 21:30:09.80 ID:h8oRcUGJ0
最原「どう? 答えられる? ネコアルク」

ネコアルク「……」チラッ チラーッ

赤松「……わかってるよ。ここで情報を出し惜しみする理由がないよね。喋っていいよ、ネコアルク。私も気になる」

ネコアルク「セミラミスのお嬢に聞かなければ詳細はわからない……とは言え、軽く演算してみたら『不可能ではなさそう』と出たにゃ」

ネコカオス「そもそも、キーボの魔術改造に使われた素材はカルデア由来ではなくあくまで『この世界に本来存在していた魔術』だ」

ネコカオス「内と外との気圧差という視点にのみ話を絞れば、消す理由が存在しない。可能ではあるが」

赤松「……うええ……」

ネコアルク「嘘でも『できましぇえええええええん』と言った方がよかったかにゃ?」

赤松「私のエゴのために重要な情報を偽るわけにはいかないでしょ」

最原「『一部分だけ残す』っていう方向の転換、間に合うかどうかが分岐点だ。だけど不可能じゃなさそうなら、話を続けることができる」

最原「……とは言っても、キーボくんに魔術改造を残したところで何ができるかもわからないんだけどね」

最原「交渉。反撃。逃走……どれを選ぶかに関しては『外に出てから考える』しかない」

最原「ここが僕の進路の限界」

最原「以上が『巌窟王さんの進路』と並べる『最原終一の進路』だよ」

巌窟王「……」

巌窟王(……コイツ……!)

百田「すげぇ……すげぇよ終一! 今ここにある素材だけを並べ立てて、誰も死なない選択肢を創りだしやがった!」

春川「外に出た後で何ができるかがわからないってところがネックだけど」

百田「それでいいと思うぜ。俺好みの提案だ! 少なくとも巌窟王の進路よりは百倍支持できるぜ!」

巌窟王「隙だらけだぞ。俺の進路と一長一短だ」

百田「……わかってるよ。テメェの進路自体も結局『俺が選ぶのがイヤだ』ってだけで、一定の理はあるしな」

百田「でも目の前に二つの進路があって、どちらにも一定のメリットがあるのなら、選ぶ理由なんてたった一つだろ」

百田&王馬「好みだ!」

王馬「……と言う!」ニヤァ

百田「ハッ……!」
321 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/09(土) 22:14:19.01 ID:h8oRcUGJ0
巌窟王「好み……好みと来たか? クハハ! クハハハハハハ……!」

巌窟王「最原! 貴様は……貴様はこの期に及んで……いや! 記憶が戻っているのなら更に度し難い!」

巌窟王「何故この学園で起こった出来事を『ゲーム』と認識している!」

最原「……」

巌窟王「現実だ! 真実だぞ……! この学園で起こった悲劇! 喜劇……」

巌窟王「今はもう消え去ってしまった百田たちの記憶! 百田たちの想い!」

巌窟王「アンジーたちが味わった苦痛! それらは間違っても嘘ではない!」

巌窟王「……虚構なんかであってたまるものか! それを貴様は『ゲーム』として処理するのだな!?」

最原「流石に『想い』には嘘は吐けない。処理もできないね」

最原「でもこれまでの議論で、わかったじゃないか」

最原「最序盤はともかく、この学園で本当に命がけだったのは二人だけだよ」

最原「身を挺して僕たちを守ってくれていた巌窟王さんと……すべての謎を抱え落ちして死のうとしていた首謀者である白銀さんだけだ!」

白銀「!」

最原「流石に巌窟王さんみたいに、僕たちの想いまでは守ってはくれなかった」

最原「でも僕たちの命を最大限に尊重してたことは確かだ! 最初からコロシアイはデスゲームとして成立していない!」

最原「実際には命を懸けていなかったゲームだよ? なら勝ったからって相手の命を奪うようなマネは許されない!」

巌窟王「……現実だと言っているだろう……この学園で起こったすべては!」

巌窟王「この学園で感じた恐怖! 流した涙! それに背を向けるような行為を俺は間違っても容認しない!」

巌窟王「できるものか……目の前で見て来たのだぞ! 俺は!」

巌窟王「……お前たちは!」

最原「違うね。仮に僕たちが感じた想いに嘘が無かったのだとしても」

最原「この学園で起こったことは、現実なんかじゃない。悪趣味な『ゲーム』だ」

最原「……平行線だね。僕はゲームに勝ちたい。巌窟王さんはゲームを壊したい」

最原「決着を付ける手段はたった一つしか存在しない」

巌窟王「……議論、だな。そして多数決だ。それが学級裁判のルールだ」

巌窟王「最原。貴様にはこれまで何回も煙に巻かれてきた」

巌窟王「……今回ばかりはそうはいかんぞ」ギンッ

最原「……」
322 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/10(日) 22:40:13.66 ID:MsPdmii90
最原「時間稼ぎはもういいよね。イシュタルさんには悪いことしちゃったな」

百田「あっ。すっかり忘れてた」

春川「……」ジトーッ

百田「……俺のせいじゃねーだろ!?」ガビーンッ

真宮寺「時間稼ぎとは言うけども、実際のところ時間稼ぎを『させてた』からネ。僕たちの方が」

入間「……あっ。思い出した」

赤松「あ。口開いた」

巌窟王「関係が無い。もうアイツをこの場に連れて来ることは確定だ」

巌窟王「ナーサリーとは違って本当に意味がないと思うがな……」

入間「あっはっはっはっは……あのー、それじゃあいっそ助けないって方向で話纏めてくんねーかなー……」ダラダラダラ

最原「ん? どうしたの入間さん。凄い汗だけど」

入間「いや本当、俺様は悪くねーぞ!? 結局のところあんな仕掛けにイシュタルを乗っけたヤツが一番悪いんだからよ!」アタフタ

夢野「んあー? ひとまず落ち着け。一体なにを思い出したんじゃ、お主」

入間「イシュタルが持ってた銃、どっかで見たことがあるっていうか、俺様が作ったはずなのにまったく覚えが無かったんだけど」

入間「理由がわかった。あれ俺様の発明の改造品だ! 安全装置付きの拳銃、名前は『ガチ縛りロック&サドキング』!」

赤松「うわ相変わらず酷い名前! 安全装置って?」

入間「自分に向けて撃とうとすると、それ以降一発たりとも銃弾が発射されなくなる」

最原「自殺防止機構付きの拳銃……? 名前はともかくまともに大発明だよね? それが?」

入間「改造品っつったろ。どんな改造されてたのかって部分が問題なんだ!」

入間「……ある発明品と融合させられてんだよ、アレ! グリップの部分だ! 別のモノがくっついてんだよ!」

巌窟王「別のモノ……」ジーッ

入間「一種の向精神薬が沁み込ませてある……湿布? みたいなもんだ! 掴んでると血流に混じって段々精神がハイになってくる!」

入間「でもあの薬はすぐ捨てた……はず! はずなんだ! すげぇイヤな副作用があったから!」

最原「……な、なんか察しがついた。聞くのが凄く怖いんだけど……!」

入間「聞け! 耳クソかっぽじってよーく聞けよ! アイツのこと助けたいんならな!」




入間「最終的にはめっちゃ死にたくなるんだよ! ハイになってた反動で!」
323 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/11(月) 21:38:33.65 ID:YB0q0AJh0
最原「ということは、あのおしおきのクライマックスって……」

赤松「ゾンビに追い詰められたイシュタルさんが自殺しようとトリガーを引いて」

春川「安全装置が働いて死ねず、しかもそのせいで銃が使い物にならない最悪の八方塞がりに陥って」

百田「ゾンビに無抵抗に食われて……終わり!?」

夢野「んあーーー!? んぎゃああああああ! まるっきりホラー映画ーーーッ!」ガビーンッ

巌窟王「いや! いや! 問題はない! それでも問題はないぞ! イシュタルの状態を見る限り、まだ薬の効き目はアッパー状態だ!」

ナーサリー「……それはちょっと違うんじゃないかしら。そもそもダウナー状態に陥ることがないんじゃない?」

ナーサリー「人体にはそう作用するってだけよね?」

最原「あ、そっか。それじゃあもしかして、最初から問題が……」

ナーサリー「ううん。あるわよ? それならそれで別種の大問題が」

ナーサリー「本当に助けても無意味かもしれないわ」

最原「え?」

入間「……中和剤、用意してねぇぞ。捨てたはずの薬だからな。『捨てたはずだと俺様が記憶している薬』なんだから!」

入間「もしかしたら最初から中和剤なんて存在してないかもしれねぇ!」

最原「中和剤がないと……どうなるの?」

入間「ダウナーになってくれた方がある意味健全かもしれねぇな」

入間「……もっと単純だ! 中毒状態になって内臓からジワジワ死んでく! しかも短時間で!」

最原「なん……」

百田「だとォーーーッ!?」ガビーンッ

入間「やべぇ……やべぇやべぇやべぇよアレ! どうしよう!」

夢野「いや! 気付けただけ幸運じゃ! さっきのウチみたいになんとかできるじゃろ! お主なら!」

入間「無茶言うな! 流石に今すぐ中和剤なんか作れねぇよ!」

赤松「そ……そんな……!」

巌窟王「……いや。大丈夫だ。やはり問題はなかったな」

入間「え?」





巌窟王「安心しろ入間。お前の不安に思っているようなことは決して起こらない」
324 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/12(火) 21:11:50.83 ID:XDYWLYD40
最原「……ええっと、何かに気付いたの?」

巌窟王「どうということはないのだが、そうだな。赤松」スタスタ

赤松「え?」

巌窟王「……を……に……集め……」ゴニョゴニョ

赤松「……別にいいけど、それで本当になんとかなるの?」

巌窟王「それが最善策だ。アンジーに誓おう」

赤松「そこまで言うんなら従うよ。巌窟王さんがアンジーさんを貶めるようなマネするわけないしね」チョイチョイ

ネコアルク「呼びましたかにゃー」トタトタ

最原「……?」

最原(妙だ。なにか……騙されてる気がする。『最善である』という部分以外は絶対に嘘だらけだ)

最原「巌窟王さ……」

最原(……やめよう。だからって何ができるわけじゃない。僕にできるのは)

巌窟王「最原。時間だ」

最原「白銀さんの正体……それは――!」

最原(ただ答えを並べ立てるだけ!)






モノクマ「すべてではありません……が! 充分です!」ピンポンピンポンピンポーーーンッ
325 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/13(水) 20:37:26.16 ID:1KYvxjrn0
おしおき装置内

イシュタル「なあああああああーーーッ!?」バンッバンッバンッ

ゾンビ1「ひでぶっ」ブシャアッ

ゾンビ2「たわらば!」ブシャアッ

ゾンビイカ「マンメンミ!」

イシュタル「な、なんか……なんかまた急にクリーチャーの数が大増加したんだけどーーー!」

イシュタル「だ、ダメ! これはちょっとキツい! さっきまでとはくらべものにならない!」

イシュタル「なんて最悪な状況! 私……私……!」ガタガタ




ドバババババババッ



イシュタル「たーのしー!」バンバンバンッ

巌窟王「……」

巌窟王(助けに来たのはいいが……思ったよりも遥かにトリガーハッピーが進行しているな)

巌窟王(もう本当に見捨ててしまおうか)

イシュタル「アーハハハハハハハ! すっごーい! 脳味噌をだらしなく垂れ流すのが得意なフレンズなのねーーー!」ゲラゲラゲラ

アンジー『どうしたのー? 問題発生?』

巌窟王『いや。大丈夫だ。赤松に準備を急がせろ。思ったよりもクリーチャーが多いから』ボオウッ

イシュタル「あら。今度の新手は空から?」

イシュタル「……って、あ!」

巌窟王「時間がかかりそうだ」
326 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/14(木) 22:15:15.33 ID:PSwmduvr0
裁判場

赤松「ネコアルクは全員配置についた?」

ネコアルク「うーん。このペンデュラムの振れ幅だとまだっぽいですにゃー」ブンブン

赤松「ペンデュラムの使い方が違う! 振り回しちゃダメ!」

ネコアルク「知ってる。実は使えないんですにゃ、じゃれちゃうから」ポイッ

王馬「白目にぎゃあああああああああ!」ブスウッ

最原「あのさ。巌窟王さんになんて言われたの?」

赤松「目立つ場所にネコアルクを集めろって。わかりやすければどこでもいいから校舎の屋上がベストとかなんだとか……」

最原「なんでネコアルクを……」

入間「さあ。イシュタルの治療でもさせる気なんじゃねーか?」

最原「……あっ」

百田「どうした、終一」

最原「……イシュタルって確か女神の名前だよね」ダラダラダラ

夢野「……あっ」

ネコアルク「あ! 揃いましたにゃー」

アンジー「おっけおけー!」

最原「あ、うわ! ちょっと! 何もおっけーじゃな――!」




校庭

ドカァァァァァンッ

イシュタル「うひゃあああああああああっ! ちょ、ちょっと酔う! あまりにも激しい動きに酔っちゃうー!」ウプッ

巌窟王「薬の副作用だ。俺のせいではない。そして安心しろ」

巌窟王「すぐ楽にしてやる!」ニヤァ
327 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/15(金) 21:51:50.78 ID:KqocBTwt0
最原「くそっ! もう脱出済みだ! 早すぎる!」

百田「どうしたんだよ終一」

最原「覚えてない? さっきネコアルクが言ったこと!」



ネコアルク『ム! こっちからも匂いが……』クンクン

獄原『あ。これかな。前に巌窟王さんから貰ったモンテ・クリストの秘法なんだけど……』

ネコアルク『ああ。これならいいっす。神性ないんで。材料に組み込む規格じゃないんで』



春川「……アイツらがセミラミスの計画のために食ってたのって、まさか」

最原「まず間違いなく神性、つまり神様由来の何かだよ! というか最初から巌窟王さんもあまり隠す気なかったなぁ!」

最原「何回も言ってたからね! 助けたところで無意味だって!」

王馬「あ。そっかー。じゃあ巌窟王ちゃんが『心配するようなことは起こらない』って言ったのも嘘じゃないよね。どっち道死ぬんだから!」

百田「あ、あの野郎暴走してやがる! それが本当ならすぐに止めねぇと! 赤松!」

赤松「わ、わかってる! ネコアルク、今すぐ中だ――」


ヒューッ


イシュタル「いやあああああああああ!」ドシーンッ

赤松「ンボアアアアアアアアアアアアアアア!?」メリイイッ

最原(天井の巌窟王さんが作った穴から落ちてきたーーーッ!?)ガビーンッ

ネコアルクs「にゃーにゃーにゃー!」ワラワラワラ

イシュタル「いやー! いやー! 来ないでー!」タッ

コケッ

ナーサリー「……もう諦めましょう、女神様。騙されたようで癪だけど。確かに伯爵の言う通りだわ」

イシュタル「ナーサリー! い、今あんた、私の足を引っかけ……!」

ナーサリー「すべてが終わったらカルデアで会いましょう」





ガブウッ

ネコアルク「あっ、おいし」ガブガブ

イシュタル「あっ」

最原(足を噛まれた)
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/16(土) 08:07:30.52 ID:jMbj4LdoO
ゾンビに食われるかネコアルクに食われるかしか変わんねーじゃねえか!
329 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/16(土) 17:14:30.92 ID:9LejZ/eJ0
ガブウッ ガブガブガブガブガブッ

イシュタル「がっ……あぎっ……ふぐうあああああああああああああっ!?」

最原(……直では見えない。モノクマほど露悪的ではないらしい。わざわざネコアルクたちは目隠しのための衝立も用意していた)

最原(音はとにかく最悪の一言だけど)


ガブガブッ…… ボリボリボリボリボリボリゴクゴクゴクピチャピチャ


イシュタル「ほ、骨っ……私の骨っ……食べてるぅ……あ、ああああ……!」

入間「うぶっ」

ナーサリー「ああ。気分が悪いなら耳を塞いでおくことをお勧めするわ。別に聞かなくてもあなたの物語に関係ないもの」

最原(ふと思い出していた。ミステリーものの海外ドラマで、ちょくちょく出て来る『ネコに食い荒らされた死体』のことを)

最原(実際に、あれは現実でも起こりえることのようで、もともとネコ科は腐肉でも美味しく食べられるらしい)

最原(……ネコアルクは食べやすいところから食べているだけだ。別に苦しめようとか楽にしようとか一切考慮していない)

最原(それでもイシュタルさんの叫び声が消えて、食事の音だけになるのはそう時間がかかることではなかった)

最原(気分が悪いなら耳を塞げ、か。赤松さんが気絶してくれてて助かった。こんなの一生のトラウマになる)

赤松「」チーン

春川「……東条。そろそろ復活して。赤松のこと助けてよ」

東条「……指名されたら、頷くしかないわね」



ボリイッ


最原(ひときわ大きい音が響き、それきり食事の音は消えた)

巌窟王「……よし」

百田「何一つとしてよくねぇよふざけんな」
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/16(土) 17:32:16.37 ID:MO564X9d0
イシュタルが死んだ!ひとでなし!
331 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/17(日) 20:50:00.13 ID:6+wYRhwE0
最原「巌窟王さん。これしかなかったの?」

巌窟王「さて、な。もしかしたら貴様に相談すれば別の道もあったかもしれないが」

巌窟王「意味がないだろう? これでまったく問題が無いのだから」

夢野「んなわけあるかァッ! どう考えてもバッドエンドじゃろうがコレ! どうするんじゃこの空気!」

夢野「悲鳴から肉が裂ける音や骨が蝕まれる音やら何から何までトラウマモノなんじゃけど!」

巌窟王「最初から状況は詰んでいた。その中でもこれはかなりマシな方のノーマルエンドだ」

巌窟王「助け出したところでネコアルクが群がることは避けられない。赤松が止めればおそらく止まっただろうが……」

巌窟王「仮にそうしたところで入間の薬のせいで内臓からジワジワ死んでいくこともやはり避けられない」

東条「巌窟王さんには回復宝具があるでしょう?」

巌窟王「この後大仕事だ。そんなことに裂けるリソースはない」

百田「そ、そんなこと……だとォ……!?」

最原「百田くん落ち着いて。確かに心底ムカつくけど正論だ。ナーサリーさんを助けるだけでも相当無理してるんだよ」

巌窟王「いいか。この場合の真のバッドエンドとは、あのままモノクマにイシュタルが殺されていたことだ」

巌窟王「イシュタルほどの霊核、ネコアルクの管理外で消えたらセミラミスの計画がどうなっていたかわかったものではない」

巌窟王「……九割方大丈夫だったとは思うが」ボソッ

百田「聞こえてんだよこの野郎!」プンスカ

巌窟王「反面、ネコアルクが管理下に置けば都合のいいことだらけだ」

巌窟王「おそらくすべてが終わった後、イシュタルの霊基はカルデアへと無事に帰るだろう」

巌窟王「……BBのような念には念をの精神で来たわけではないから、俺たちには相当ピーキーな立ち回りが要求されるがな」

最原「巌窟王さんの進路にしろ、僕たちの進路にしろ、結局勝たなきゃすべて水の泡。全部犠牲になってパァだからね」

巌窟王「そういうことだ」

最原「……また余計なものを背負わされちゃったな……」
332 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/18(月) 22:08:47.00 ID:1Hn7Qbxh0
モノクマ「はい! それじゃあ一区切りついたところで、インターバルです! 次の設問は五分後としましょうか!」

モノクマ「赤松さん起きてこないし」

赤松「う、うーん……ネコアルク……いい子いい子……よく止まってくれたね……むにゃむにゃ……」スヤァ

春川「むごいほど幸せな夢見てる」

東条「起こすのが憚られるわね」

百田「……はあー……」ボリボリ

百田「赤松が起きる前に確認しておきたいことが二つあるな。一つはモノクマに」

モノクマ「はいはいなんでしょう!」

百田「次の設問、目の前にあるヤツだよな」

モノクマ「その通りです! 百田くんのおしおきの流用、New宇宙旅行であります!」

百田「これ、万が一俺たちの目の前で点火されたら……」

モノクマ「全員死ぬね。妬け死んじゃうね。ちなみに、設問を答える前に裁判場を出ることは例え相手が巌窟王さんでも許さないから、そのつもりで!」

モノクマ「次の設問は重要だよ。ウェルダンにならないようにみんな必死で頑張ってねー!」

王馬「にししっ! 悪趣味だね! だけどわかりやすくていいかも」

百田「おしおきが悪趣味だなんてもう言うまでもねえだろ。わかりやすくていいっていうのはその通りだけどよ」

百田「次。おい、てめぇらそろそろ口開いたらどうだ?」

星「……」

獄原「……」

百田「……この局面じゃなきゃ聞けないことがある」

百田「どう思ったよ。終一の進路」

星「悪くはないと思ったさ。これが正直な感想だ」

星「外に出た後の俺たちの身の安全が五分五分だという点がネックだけどな」

獄原「……誰も死なないのはいいことだよね。うん。ゴン太はどちらかと言うと、最原くんの案の方が好きかな」

獄原「凄いな、最原くんは。ゴン太はさ、ずっとみんなを何かから守らないとって……そればかり考えてた」

獄原「でもゴン太が敵だと思ってた何かは、どこまで目を凝らしても『何か』以上のそれにはならなかった」

獄原「……影や雲や幻を相手に戦ってる気分だったよ。どんどん疲れて……それで一歩も動けなくなった」

獄原「最原くんはさ、なんのために戦えたの?」

最原「!」

獄原「……どうして最後まで足を止めないことができたの?」
333 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/19(火) 19:59:01.97 ID:JIQSspfa0
最原「怒り?」キョトン

獄原「怒ってたの!?」ガビーンッ

百田「ブチ切れまくってたよなぁ?」

最原「巌窟王さんの見え見えの挑発が物凄く頭に来ちゃって……」

巌窟王「……」ニガニガ

アンジー「結果だけ見ればやめておけばよかったよねー。終一の提案が無ければみんなお前の言うこと聞く選択肢しかなかったしさー」

巌窟王「……反省は必要か?」ツーンッ

アンジー「いらなーい」

ナーサリー「うふふ。可愛いわね。必死に顔を逸らしちゃって!」

アンジー&ナーサリー「ねー!」

巌窟王「……」ニガニガニガニガニガ

星「過去最高記録だな。巌窟王の渋面度が」

真宮寺「アンジーさんと他のサーヴァントが仲良くしてるのが気に入らないんでしョ」

獄原「……そっか。最原くんは巌窟王さんと戦ってたんだね」

獄原「ゴン太みたいな独り相撲とは大違いだよ」

最原「……そう、なのかな。言葉だけ聞くと仲間割れっぽいよね」

茶柱「学級裁判は議論の場ですよ。どこまで行っても」

茶柱「無秩序に殴り合ったり、人格を否定しあったりの醜い争いとは次元が違います」

茶柱「……武術の試合と同じですよ! あなたが相手にしてたのは巌窟王さんという高い壁であり、同時にそれに挑む自分自身です」

夢野「ネオ合気道って試合できるほどメジャーな武術じゃったかのう」
334 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/20(水) 21:20:45.25 ID:24Xwd+CN0
赤松「……ハッ!」バッ

赤松「……」キョロキョロ

赤松「……わ……」

赤松「私のせいじゃ……ないよぅ……」ガタガタ

茶柱「あーーーっ! 誰よりも責任感が強くて若干見てて危なっかしかった赤松さんがついに折れちゃいましたよ!」ガビーンッ

最原「わ、わかってるよ! 大丈夫だよ! 赤松さんが気絶したのはイシュタルさんのせいだし、黙ってた巌窟王さんも悪いし!」アタフタ

ネコアルク「げえーーーーっふ」マンゾクー

赤松「うあああああああああああネコアルクの口臭に未知の匂いが混じってるよーーー!」ビエエエエエエ!

春川「本当はこいつら赤松のこと嫌いなんじゃない……?」

入間「セミラミスの置き土産だしな……」

星「あいつは……酷いヤツだった……少なくとも赤松と入間に対しては酷かった……」

夢野「星がそこまで言うなんて、どういうヤツじゃったんじゃ。もうまったく想像つかんぞ」

最原「すぐわかるよ。あまりわかってほしくないけど……」

百田「設問は、残り一つだけだ!」

モノクマ「五分経過……! 次の設問に移ります!」

最原(最後の設問……! 一体どんな問題が――!)

モノクマ「上部モニターをご覧くださーい!」

デーデンッ

最原「……」

巌窟王「……」

全員「……」





全員「はあ?????????」
335 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/21(木) 22:00:03.46 ID:+AGKoPes0
最原(モニターに映った問題は……誰の不安や恐怖にも応えなかった)

最原(あまりにも簡単すぎる)

最原(……いや、それ以前に……)

百田「か……」




モニター『イタリアの首都はどこ?』




百田「関係ねぇ……関係なくねぇ?」

春川「いやどう考えても関係ないよ。そこで自信失くさなくていいから」

赤松「え。なにこれ。こんなものが最後の問題なの?」

モノクマ「じゃ、答えてちゃってください! この超難問に!」

巌窟王「……」

ナーサリー「……こ、これ……答えない方がいい気がするのだわ。本当に。本当にやめておいた方がいいと思うのだわ」

ナーサリー「予感しかないのだけど、この予感おそらく的中してしまうし……!」

最原「え。どうしたの。なんで二人とも眉を八の字にしてるの?」

赤松「どんなトンチキな設問でも、セミラミスさんが待ってるんだよ! 答えないわけにはいかない!」

赤松「ローマだよ!」

モノクマ「……え? なんだって?」

赤松「無駄に引っ張らないでよ! だからローマだってば!」

モノクマ「聞こえないなー。なんて?」

赤松「ローマ! ローマ! ローマ!」

巌窟王「赤松! やめろ! モノクマの煽り方で核心に至った! これは罠だ!」

モノクマ「じゃ、最後に思い切り正解を叫んじゃってくださーい!」

赤松「ああもう! こんなやり取りに何の意味があるの! 思いっきり言ってあげるから耳をよーく澄ませて今度こそ聞いてよ!」

赤松「すうううう……!」

赤松「ロー」
336 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/21(木) 22:05:11.87 ID:+AGKoPes0
ロムルス「マアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!」バリバリドガラッシャアアアアアアアンッ

赤松「」

巌窟王「」

ナーサリー「」

最原「」

夢野「……」

夢野「え? あれがセミラミスなのか? え?」オロオロ

百田「」

春川「」

茶柱「」

東条「」

獄原「」

星「」

王馬「」

入間「」

天海「」

真宮寺「」

アンジー「」

白銀「」

赤松「……ハッ……だ、だ、だ……」ガタガタ






赤松「誰ぇええええええええええええええええええっっっ!?」ガビビーーーンッ!
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/22(金) 00:04:43.59 ID:uezkGZzLO
ローマ!
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/22(金) 18:30:52.45 ID:/GpZF/GN0
ロムルス失踪はここに繋がっていたのか…
339 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/22(金) 20:18:41.13 ID:4ko2XdkL0
最原「……えっ。あ、あれ。この人、今どこから出て来た?」

百田「ロケットの中からだな」

最原「どこから出てきたって!?」

百田「現実から目ェ逸らしてんじゃねえよ! どっからどう見ても『ロケットの中から扉ぶち明けて出て来た』ようにしか見えなかったろ!」

最原「じゃ、じゃあセミラミスさんは……!? いない! というか、あの巨体がどうやって入ってたのか疑問になるくらい狭い!」
340 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/22(金) 20:32:41.69 ID:4ko2XdkL0
入間「いやいやいやいやいやいやいや! もっと他に議論することがあるだろ!?」

東条「……どちら様……?」

ロムルス「誰何するか? このローマに。既に熱烈に呼んだな? このローマを」

赤松「はい? ローマ……え? あれ。セミラミスさんは……!?」ガタガタ

ロムルス「透き通るような良い声である! ローマ!」シュバッ

赤松「なああああああああああああああああああ!?」ガビーンッ

最原(赤松さんの方に飛んだーーーッ!?)

ロムルス「ローマ」ドタドタドタドターッ

赤松「きゃー! きゃー!?」ドタドタドターッ

真宮寺「……赤松さんのことを追い始めたけど?」

巌窟王「放っておけ。感極まって抱擁しようとしているだけだ。特に愛情表現以外の意図はない」

ナーサリー「狭い場所にずっと閉じ込められていたのだものね。流石の彼もノイローゼ気味なのかしら」

最原「巌窟王さん! あの人なに? サーヴァントなの!?」

巌窟王「ローマ建国神話の神祖ロムルスだ」

天海「あれがぁ!? いやそう言われてみると微妙にそう見えないこともないっすけど、それにしたってローマアピール露骨すぎっすよね!?」

ロムルス「ローマ!」ギュウウウウウ

赤松「あ……あ……あ……」グッタリ

夢野「おおーい。赤松が追い付かれて目から光が消えとるぞー」

赤松「あうあう……」ホワンホワン



ネロ『余の愛はワガママだ。何もかも与える代わりに何もかも奪わねば気が済まぬ。愛すべき者には全霊をもって応える』

ネロ『だがそれはただの炎だ。人々が抱く愛とはもっと柔らかいものだった』

ネロ『余はそこを分かっていなかった……』



赤松「なんかよくわからないけど第五代皇帝ネロ・クラウディウスの肖像が脳内に流れ込んでくるよぉぉぉぉぉ……なんでぇぇぇぇぇ……」エグエグ
341 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/23(土) 18:32:15.05 ID:lVzVj96U0
巌窟王「モノクマ。言ったはずだな。設問は三問だけだと」

モノクマ「ん? んー……ちょっとそれは正確じゃないなぁ。ボクはキチンと言ったと思うけど」

巌窟王「なに……?」

巌窟王「……」

巌窟王「……!」

最原「まさかお前……ここに来て、そんな屁理屈を持ちだす気か……!?」




モノクマ『ボクが用意した設問は全部で三問! 全部答え終わったころには、この学園の真実はすっかり解き明かされていることでしょう!』




モノクマ「そう。ボクが用意した設問に関してはこれで終わり。でもそれだけで終わりだとは言ってないなぁ」

モノクマ「この学園の真実に関してはもうすっかり解き明かされていることは事実だよ? もう本当にネタ切れなの」

モノクマ「でも設問はあと二問残ってる。その内の最初の一問目の方でセミラミスさんの解放権をあげるよ」ニヤァ

ナーサリー「エクストラクエストね。ぬか喜びさせられたわ」

百田「ちょっと待て。モノクマが用意したわけじゃないのなら、その二問は誰が用意した設問なんだよ?」

最原「……」

モノクマ「そりゃあ決まってるよ! 当然決まってましてよ?」

巌窟王「視聴者……というヤツか。それしか考えられない」

赤松「!」

茶柱「バカな……! どこまで転子たちのことをいじめれば気が済むんですか!」

茶柱「いいえ! それだけじゃありませんよ! 今回の裁判に関しては巌窟王さんの仲間にまで手を出してる!」

茶柱「節操がないなんてものじゃない! こんなの無差別犯罪となにも変わらないでしょう!」

モノクマ「オマエラにとっては喜ばしいことかもよ?」

茶柱「はい?」

モノクマ「この学園はフィクション……そこは間違いのない事実のはずだった」

モノクマ「でも巌窟王さんの介入によって、この学園全体のリアリティがシャレにならないほどに上がった」

モノクマ「今ではもう『全人類に向けて爆弾を投げつけて出る』か『フィクションのまま終わるか』を議論してる」

モノクマ「オマエラだけじゃここまでは来れなかっただろうなぁ。仮に真実に辿り着いたとしても、フィクションのまま終わるしかなかったはずだよ?」

巌窟王「……そうだな。アンジーの召喚が、俺の存在が、この学園での出来事をゲームではなくしてしまった」

巌窟王「カルデアのサーヴァントとしては失格かもしれんな。まさか俺自身が才囚学園を特異点化してしまうとは」

ナーサリー(エリザベートとか割とやってた気がするんだけども)




カルデア

エリザベート「くちゅんっ」
342 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/24(日) 22:20:54.49 ID:lGAZF7Z00
ロムルス「ところで、そこな少年からローマの気配がする」ジーッ

最原(うわっ、僕のこと見てるよ!)ビクウッ

ナーサリー「具体的にどんな気配?」

ロムルス「ホームズに似た……そこで一つ訊ねたいのだが」

ロムルス「先ほどローマの入っていた牢獄に外側から攻撃を仕掛けたのは誰だ?」

入間「あー? なんのこと……」

入間「あっ」

最原「……」

最原(全員の視線がゆっくりと百田くんの方へと集まって行ってしまった)

百田「……」

百田「……!」ダラダラダラ

ロムルス「わからないというのであれば仕方がないが、その場合、この場で宝具を開陳しすべてを平等にローマするしかなくなるであろう」

百田以外全員「アイツ(あの人)がやりました!」ビシイッ

百田「おばっ……お前らぁーーーっ!?」ガビーンッ

ロムルス「ローマ!」ビシイッ

百田「でこぴんっ」ガフッ



カエサル『うむ。あのときの私は実に乗りに乗っていたな。だから愛する女王に厚顔にも言ってのけたのだ』

カエサル『私を阻む者はもういない。ローマのすべてを掌握したのだ。パルティア王国遠征が成功した暁には、必ずお前を正式に妻として迎え』

カエサル『カエサリオンを我が息子として広く世界へ告げてみせよう、と』

カエサル『……さて。それが成されなかったのは、適当な歴史書を見れば明らかだろう』



百田「ぐあああああああ! 何故か古代ローマの英雄ガイウス・ユリウス・カエサルの肖像が脳内に流れ込んでくるーーー!」ジタバタ

最原「さっきから何なの、この特殊能力! 怖っ!」
343 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/25(月) 23:03:48.74 ID:a4F/9FRk0
ナーサリー「……と、いうわけで、ロムルスよ。心強い味方になってくれるかどうかは微妙だけど」

最原「微妙なの!?」

ナーサリー「普段はとにかく強いのよ。とにかく。少なくとも私よりは間違いなく戦闘向けサーヴァントだし」

ナーサリー「でも……今は槍持ってないわよね?」

ロムルス「?」ガサゴソ

ロムルス「……!?」チクワーーーンッ

百田「ちくわしか持ってねぇ!」ガビーンッ

ロムルス「……!」スッ

赤松「いらないよ! おじさんに鷲掴みにされたちくわなんて流石に食べたくないよ!」

ロムルス「!?」ガビーンッ

巌窟王「明らかに権能のほとんどを没収されている。イシュタルのときと同じだな」

巌窟王(赤松にあんな口をきかれたら俺でも立ち直れないかもしれんな……)

最原「妙にサーヴァントにモテるよね赤松さん」

巌窟王「この中で本来のマスターと一番似ているのが赤松だからかもしれんな」

モノクマ「はいはーい! それでは次の設問行きますよー! 正解で、セミラミスさんの解放権をあげましょう!」

東条「ついに、ね」

星「今となってはアイツがこの学園の鍵だ。マザーモノクマの権利を譲渡されているわけだからな」

星「アイツの奪還だけは絶対に成し遂げなければならない。じゃなけりゃすべてがパァだぜ」

赤松「……今度こそ、絶対に助けないと!」

モノクマ「それでは、次の設問はこれでーーーす!」

モノクマ「……と、その前に、今回は順番を前後します」

赤松「え。前後?」

モノクマ「セミラミスさん、いらっしゃーーーい!」

赤松「!」

最原「え。な……まさか、呼ぶの? ここに!?」
344 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/26(火) 23:31:42.53 ID:DecnRQFh0
最原(そのときだった。妙な音が裁判場に響いたのは)


ペリ……


最原「……ん?」

赤松「最原くん! モノクマの後ろだよ!」

巌窟王「……バカな! 今まで裁判場には二か所穴を開けた! ならば流石に気づくはずだ!」

巌窟王「あの壁は紙なんかではなかった!」

モノクマ「ボクはこの新世界の紙であり、学園長だよ? あ、誤字った。神だよ」


ペリペリペリペリっ……

パサッ


最原(シールのように壁が剥がれ、現れたのは暗い空間……と)

セミラミス「む……?」シャクシャクシャクシャク

最原「座布団の上に正座してウエハース的なものを食べてるセミラミスさんだーーーッ!?」ガビーンッ

セミラミス「……」シャクシャクシャクシャクシャクシャク

セミラミス「……」ゴクン

セミラミス「……そこで何をしている? 揃いも揃って」キョトン

赤松「こっちの台詞なんだけどッ!?」ガビーンッ

セミラミス「おお、カエデか。いいところに来たな。モノクマ! 予備のコントローラーを持て!」

セミラミス「我の力をとくと見せてやろうではないか……!」ギンッ

赤松「は?」

白銀「……あっ」

最原「あ?」

白銀「ぎゃあああああああああああああああああっ!? そ、それ! ウエハースのカスがぼろぼろこぼれてるそれ! それーーーっ!」

セミラミス「?」





セミラミス「我のゲーム機がどうかしたか?」

白銀「私のゲーム機だよっ!」

入間「相変わらず……引くほど図々しいな……」ズーン
345 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/27(水) 18:15:16.62 ID:I88TvUoT0
赤松「で、でもよかった。なんとか無事みたいだね」

セミラミス「そうだな。今日一日くらいは生きることができるぞ。流石に腹を貫かれたときに霊核が砕けて、そう長くは生きられぬが」

セミラミス「見よ。モノクマがやったのだが、ガムテープで我の腹が無残にもグルグル巻きだ。外したら死ぬからどうしようもない」グチャァァァ

赤松「」

百田「全っ然! 無事じゃねぇーーー!」ガーーーンッ

天海「巌窟王さん!」

巌窟王「……」

ナーサリー「風聞だけど、カルナが似たようなことをやっていたのを知っているわ」

ナーサリー「彼女はもう『死んでいる』。少なくともサーヴァントとしては」

ナーサリー「ただ全力で死に対して抗ってるだけよ。精神力だけでね」

巌窟王「……俺の宝具の範囲が及ぶのは瀕死までだ。死亡している者はどうしようもない」

巌窟王「そうか。キーボがセミラミスを連れ去ったのは殺す気がなかったからではなく」

最原(……単純に殺しきれなかっただけ……!)

赤松「……ぐっ……! ぜ、ぜみらみずざ……!」ブワアッ

セミラミス「!?」ガビーンッ

赤松「ぶ、ぶじとかっ……ぐずっ……ぶじなんがじゃ、ないじゃんっ……うええええええ……!」グスグス

セミラミス「……!?」オロオロ

セミラミス「何故泣いておる? スギ花粉か? いや、この学園にスギはなかったな……心因性のなにかか?」アタフタ

春川「どうして……そんな状態になって生きてるのって、どんな気分? そこまでしてなんで生きてるの!?」ガタガタ

春川「素直に死んじゃったほうが遥かにマシじゃん! なんでッ!」

セミラミス「……確かに今すぐ舌を噛み千切って死にたいくらいの最悪の気分だが……む。いや今のは忘れよ。普通にしてるだけで死ぬのだったな」

セミラミス「まあ、安心せよ。我もこういうことは二度目だ。霊核が砕けた状態で夜明けまで生き延びたこともあるぞ?」

セミラミス「やらなければならないことが一つだけある。それをやりきるまでは死ぬに死に切れん」

巌窟王「……セミラミス……」
346 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/02/28(木) 20:48:55.36 ID:MknF0CcK0
セミラミス「モノクマとキーボはもうこれ以上なにもしてこないようだし、重く考える必要は特にないぞ?」シャクシャクシャクシャク

セミラミス「ウエハースにはそろそろ飽きたがな」シャクシャクシャクシャクシャク

最原「……!」

春川「こ、こいつ……!」

最原(う、嘘だ……この人……こんなことがありえるのか!? BBさんですら、あの犠牲は最低限『本体は無事』だっていう保険ありきだったんだぞ?)

最原(この人の場合は違う。自分自身が今ここにしかいないことを知っている! そういう振る舞いを今まで徹底していた! なのに!)

百田「は、はは……なんだこいつ。俺たちは自分たちが死ぬかもしれないって躍起になってるってのに……」

百田「もう絶対確実に死ぬってときに、こいつってヤツは……なんで平然と菓子食ってんだよ……」

セミラミス「……ふむ? 貴様ら勘違いしておるな? 揃いも揃って、修羅場を潜り抜けてきたくせに」

セミラミス「別に命は重くもなんともないぞ? 質量に直して考えてみよ。どう計算してもゼログラムだ」

セミラミス「人が命を惜しむのは、命そのものが惜しいからではない。本当に恐れているのは……」

モノクマ「はい! そこまででーす! さっさと先に進めたいのでおしおき装置を出しちゃいましょうー!」

夢野「んあ!? 今からいいセリフ言いそうだったのにか!?」

セミラミス「しかたがないな。カエデ、電話番号を教えろ。ここから先の台詞はLINEで言ってやろう」スッ

赤松「ないよぉっ……スマフォないよぉっ!」ダバァァァァァ!

セミラミス「なん……だとっ……!?!?」ガビビーンッ



ズドドドドンッ ズゴゴゴゴゴゴンッ……!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!


巌窟王「……!?」

ロムルス「奥からなにかが出てくる。ナーサリーライム、ローマの後ろに隠れるがいい」

ナーサリー(……とてもイヤな気配……!)スッ

最原「あれは!」

茶柱「!?」





ショベル「」ポンポンポン ポンポンポン♪

最原「しょっ……ショベル!」ガーンッ

茶柱「ショベル!?」ガビーンッ

最原「ま、まずい! これはまずい! ダンガンロンパの記憶は中途半端にしか戻ってないけど、それでもショベルは特にまずい!」

白銀「え? ショベルとダンガンロンパってなにか関係……」

白銀「……あった!」アワワワワワワワワ
347 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/01(金) 22:58:58.84 ID:8jXUU5nP0
東条「説明してくれるかしら? 何が起ころうとしているの?」

最原「一番最初のコロシアイで、似たようなおしおきがあったんだ! そのおしおきは例外的で、クロが処刑されたものじゃなかった」

最原「とあるものを破壊するためのおしおきだったんだよ!」

白銀「おしおきの名前はショベルの達人。壊されたのは、そう……」

白銀「……アルターエゴだった!」

巌窟王「なんだと……!?」

ロムルス「ふっ。ならば問題はないな。安心するがいい、教え子たちよ」

ロムルス「セミラミスはAIの類ではない。あそこに座っているのがBBならともかく、セミラミスであるならば攻撃の効きは薄いだろう」

赤松「今はAIなんだよッ!」ガーンッ

ロムルス「よしんば仮にAIだったとして、クラスがアルターエゴでない限りは、やはり壊滅的な打撃は絶対に受けないと断言しよう」

赤松「アルターエゴなんだよぉっ!」ガガーーンッ

ロムルス「……?」キョトン

セミラミス「色々と事情があってだな……」フッ

ロムルス「そうか。それはローマか?」

セミラミス「多分そう。部分的にそうだな」

白銀「なんでアキネイターみたいな問答してるの?」

星「それ以前に質問の内容そのものが意味不明だな」

モノクマ「さて! 準備はOK! これがボクがセミラミスさん処刑のためだけに用意したおしおき!」

モノクマ「ニューショベルの達人、またの名を『ショベル72』!」

獄原「ななじゅうに?」

モノクマ「ノリで付けただけで特に意味はないよ」ショウサンガアルッ

モノクマ「今回に限り、おしおき装置は一定時間が経つまで動きません! 期間は大雑把にボクが飽きるまで!」

モノクマ「または、セミラミスさんの目の前にあるスイッチを、セミラミスさん自身が押すまでです!」

セミラミス「これか?」サッ サッ

赤松「セミラミスさぁん! 無駄に押すフリをしないでぇ!」

巌窟王「赤松。言いにくいことだが、ヤツがあんな挙動を取っているのはお前の反応を面白がってるからだぞ」
348 :逆転の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/02(土) 20:16:16.60 ID:Ar0VRKhy0
モノクマ「では! これが次の設問です! みんな頑張って議論してねー!」

デデンッ

モニター『昨夜、巌窟王と共謀して白銀を殺そうとした共犯者は誰? 証拠も併せてお答えください』

赤松「ッ!」

百田「……これって、昼の内にセミラミスが誘拐された直後で終一が言ってたヤツか?」

最原「多分そうだろうね。それ以外に該当しそうなものがない」

最原「……」

最原(とにかく気が進まない……本当に答えないとダメなのか!?)

セミラミス「くっ……ククククク! はははっ! モノクマめ! 妙に大仰なマネをすると思ったら、この程度か! 肩透かしにも程がある!」

セミラミス「今の我はマザーモノクマ。監視権限も当然持っておる。その気になれば過去の映像も思うがままに閲覧可能だ」

アンジー「おー! 凄いねー! じゃあ瞬殺だねー!」

セミラミス「その通り! この程度の問題、我自身が直々に答えて――」チラッ

セミラミス「あっ」

アンジー「あっ?」

セミラミス「……」ペリペリ

セミラミス「……」レロレロ

アンジー「……えっ。黙っちゃった……?」

百田「飴舐め始めたぞオイ」

最原(……い、今一瞬、赤松さんの方を見たな……!)チラッ

赤松「……」カタカタ

最原「……」

最原(庇っ……てる? 赤松さんのことを?)

夢野「んあ? どうしたんじゃ? 犯人のことを知っておるならさっさと答えんか。時間がもう残っておらんぞ?」

セミラミス「……」レロレロ

茶柱「……あの、これ……もしかして喋る気が失せているのでは?」

入間「は!? んなバカな! セミラミスだぞ! やりたいことのためなら命は惜しくない、ってのは行動原理として理解できなくはねぇが」

入間「流石に自分から命を捨てるようなマネをするヤツじゃない! コイツのスタンスはそれくらいブレねぇんだ!」

真宮寺「……一緒に過ごした時間は相当短かったけど、それでも本当わかりやすい人だったんだよネ……」

最原(それでも命をかけて守っているものはあった。やっぱりそうだ、彼女! セミラミスさん!)

最原(赤松さんを庇うために口を閉ざしている!)
349 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/03(日) 19:37:21.79 ID:M7E2oEcW0
王馬「……」

王馬「へえ。ちょっと楽しくなってきたかもね。いいよ、全力で俺も議論に参加してみようか」

王馬「証拠付きでってことは自白だけじゃどう考えても足りないしね。ここで必要なのは明確に誰かを追い詰める『悪意』だよ」ニヤァ

王馬「今更犯人が自白するかどうかは微妙だしねぇ」

巌窟王「犯人が仮に俺の進路を取りたがっている場合は、セミラミスが死ねば都合のいいことだらけだ。もうその方向性しかなくなるわけだからな」

巌窟王「なにより、セミラミスの口を永遠に封じることさえできれば、犯人は自分の手が汚れているということを永久に隠すことができる」

アンジー「後からつむぎを殺そうとした犯人を捜そうって展開になるとは考えにくいしねー。そんなことしても無駄なだけだし」

アンジー「今のこの状況はあくまでモノクマが設問を提示したからこそ成立してるんだからさー。ね、終一」

最原「……」

春川「待って。セミラミスを今ここで拷問して聞き出せばいいんじゃないの?」

春川「この場には三人サーヴァントがいるんだよ? アイツの嫌いなものとかなにかないの?」

セミラミス「……」サワッサワッ

星「おい。アイツ、スイッチを撫でまわしてるぞ」

巌窟王「『そんなマネをされるくらいならさっさと死ぬ』と言っているようだな」

春川「こ、この女っ……!」

夢野「なんか仲悪いのう、お主とあやつ。何かあったのか?」

春川「なんっでもっない!」ギンッ

巌窟王「赤のアサシン……だな。両方とも。いや、くだらないことを言った。忘れろ」

セミラミス「いや? 中々いい着眼点だ。そら、超高校級の暗殺者よ。我のことを先輩と呼ぶがいい」ニヤニヤ

セミラミス「後輩というものにちょうど興味があったのだ。なんなら盾も用意するぞ?」ワクワク

春川「……!」ビキビキ

百田「赤松! セミラミスを止めろ! ハルマキの口数が少なくなってるのが超マズイ!」アワアワ

赤松「私に言われても!」イヤイヤイヤイヤ

茶柱「いやー。流石にネコアルクの親玉ですね。腹立たしさのベクトルが微妙にそっくりです」

最原「……」

最原「はやく決着を付けよう。もう真相はわかってるから。証拠もこの場で用意できる」

赤松「!」

最原(くそ。セミラミスさんめ……ひょっとして巡り巡って僕のこともおちょくってるんじゃないか? 本当に最悪の気分だ)

セミラミス「……」ニヤニヤ

最原(おちょくってたよ!)ガビーンッ
350 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/04(月) 20:16:36.73 ID:liBAsxp90
最原「犯行の手口から洗ってみようか。共犯者は僕の予測では二人だよ」

最原「一人だと手が足りなくなっちゃうから」

百田「二人? そんなにいんのか?」

最原「うん。赤松さんと真宮寺くんだよ」

赤松「!」

真宮寺「ハ……?」

星「……いつもより数倍早いな? 結論を先に言うのは初じゃないか?」

最原「なんというか……動機がわかりやすかったから……」ジトーッ

赤松(気付かれてる……! パソコンの中に何が入ってるのか白銀さんから聞いたんだ!)

真宮寺(この場で白銀さんがそのことを暴露したところで、パソコンがここにある以上は誰もそれを信じないだろうけどネ)

真宮寺(この場では証拠こそがすべてだからさ)

獄原「ど、どうしてその二人なの? 他にも動機がありそうな人は……あまり言いたくないけど沢山いたよね?」

最原「動機に関しては後で説明するよ。証拠の準備は……そのころには多分できてるから」

最原「……まず、白銀さんを発見した赤松さんと真宮寺くんは、白銀さんからあるものを奪った」

最原「それは多分、エグイサルのコントローラーだ。入間さんが作った箱型のあれだよ」

王馬「ああ。俺が拾ったアレだよね。そっかー。あれって最初は白銀ちゃんが持ってたのかー」

最原「……持ってきたのは王馬くんじゃないかな? 茶柱さんから聞いたよ。王馬くん、白銀さんをみんなの目の前から一度逃がしたんだって?」

最原「あのときみんなはほぼほぼ二人以上の人数で固まってて、単独行動の人は少なかった。王馬くんくらいだよ、あのとき行方がわからないの」

王馬「あ。うん。エグイサルのコントローラーを白銀ちゃんに渡したの俺だよ」シラーッ

白銀「とても素直……」

東条「……確か、あのコントローラーが使われ始めたのは……」

巌窟王「俺がモノタロウの持っているエグイサルを破壊しきった後だな。白銀がコントローラーを使ったのはおそらくその直後からだろう」

最原「あのコントローラーには、ある重要な証拠が残っていた」

最原「……白銀さんの抵抗の痕跡だ」
351 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/05(火) 19:48:24.92 ID:5Y+amNF80
最原「春川さん。協力してくれる?」

春川「……ああ。なるほど。あれを証言しろってこと」

春川「協力してもいいよ。セミラミスが頭を下げるのなら」

セミラミス「頼む。この通りだ」ジャララララッ

入間「いげぎゃぎゃぎゃっ……!」ギリギリギリギリ

春川「頭を下げろって言ったんだよ。誰が首を落とせって言ったの」イライラ

巌窟王「……鎖はまだ出せるのか」

セミラミス「少しだけだ。やり過ぎると消える」キラキラキラキラ

赤松「本当だぁ!? なんか透けてる!」ガビーンッ

最原「お願い春川さん! セミラミスさんがこの場で消えると本当に困るんだ! 僕が代わりにいくらでも頭下げるから!」ドゲザーッ

春川「仕方ないな……わかったよ」

セミラミス「ククク。人間素直が一番だぞ。わかればよい」ドヤァァァァァ

春川「生身の状態でサーヴァントを殺せたら、初めての自慢できる殺人になる気がする」ギロリ

夢野「よせい! というかセミラミスもなんでさっきからこうも煽リティが高いんじゃ!」

赤松「ごめんなさい本当になんの意図もないんです! あの人の素なんですぅーーー!」ドゲザーッ

巌窟王「もうアイツのことは放っておくがいい。いないものと考えろ。どうせ証言などする気がないのだ」

最原「……」

最原(さて。それはどうかな)

春川「私たちが発見したとき、白銀は爪に異常があったんだよ。明らかに割れたり剥がれかけたり酷い有様だった」

春川「でもあれは多分、半分くらいは白銀が自分自身で付けた傷だと思う」

最原「白銀さんは自分の意思で爪を割った。つまり、全力で何かを引っかいたんだ」

百田「引っかいた……?」

白銀「それは……」

最原「いいよ、白銀さんは喋らなくても。最低限度まで首を突っ込んでほしくない」

白銀「……」

最原(……やっぱり気分は最悪だ……白銀さんに責任を取らせないと決めたのは僕なのにな)
352 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/06(水) 22:49:24.84 ID:qYaaVhm30
最原「コントローラーだよ。白銀さんは誰かにコントローラーを奪われそうになって、必死にコントローラーを引っかいたんだ」

最原「その証拠に……!」

王馬「俺が発見したときのコントローラーには血が混じった引っかき傷がしっかり残ってたよー」

王馬「そうだ! ついでに言っておこうか! 万が一の反論を許さないためにね!」

王馬「あのコントローラーには引っかき傷はあった! でもあるものがなかったんだよ!」

百田「あるものがなかった?」

入間「ど、どっちだよ……ふにゃちん野郎……あるのかないのか……」ゼェゼェ

ナーサリー「あ……拘束解けてる……」

セミラミス「……」ゼェゼェ

巌窟王(……本当に時間がないな。一撃でも貰えば間違いなく耐え切れない)

最原「焦げ跡」

獄原「こ……焦げ跡? ちょっと待ってよ。火の気なんて今までの話のどこにあったの?」

王馬「あったはずだよゴン太〜。そのお粗末な脳味噌でよーく思い出してみよっかー」ニヤニヤ

獄原「……?」

獄原「……」

獄原「……??????」

百田「王馬。わかってて言ってんだろ。ゴン太はあれを直接見てねーんだ。伝聞だけじゃいまいちわかんねーだろ」

王馬「あんなにデカかったのになー。じゃ、時間切れってことで正解を、最原ちゃん!」

最原「巌窟王さんの暴走だよ。それが火の気だ」

巌窟王「!」

アンジー「あ。そっかー。つむぎはあのとき思い切り巻き込まれてたからー」

アンジー「あの周囲にコントローラーがあったら一緒に焦げ焦げになってなきゃおかしいんだねー!」

王馬「どう? 万が一の反論も許さないって俺の意思、わかってくれた?」

赤松(底意地の悪さはもうそれ以前からはっきりと……!)
353 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/07(木) 21:24:06.63 ID:mBwg9U550
赤松「待ってよ! コントローラーが誰かに奪われたってことはわかったとしても!」

赤松「だからってなんで私たちなの?」

赤松「いや! それ以前に共犯者が複数だなんて、なんでわかるの?」

最原「言ったでしょ? 手が足りないんだよ、明らかに」

最原「さて、白銀さんからコントローラーを奪った共犯者は、次になにをする?」

アンジー「んー? 相手の立場になって考えろってことー? えっとねー……」

アンジー「おー! そっかー! つむぎの抵抗を抑えないとねー! 気絶させるかどうにかして……」

最原「気絶はダメ。共犯者はこの後、白銀さんにやってもらいたいことがあったから」

百田「やってもらいたいこと……?」

最原「それはまた後で。すぐの話だから」

アンジー「んーとねー。それじゃあ……」

アンジー「……まずはエグイサルだよねー。『彼』が戦ってるエグイサルをどうにかして無力化しないとー」

アンジー「できることなら二度と使えないように、安全な場所で自爆させるとかがベストかなー」

アンジー「エグイサルが全部壊れちゃったら、コントローラーの意味なんてもうないもんねー」

獄原「安全な場所で自爆……」

入間「安全な場所で自爆……? 自爆……?」

獄原&入間「ああっ!」

茶柱「どうしたんですか? 過去に読んだ読み切り漫画の作者と今連載している人気漫画家が一緒だったことに気付いたような顔して」

入間「そんな嬉しいことじゃねーよ! 今思い出したんだ! エグイサルの操縦者、確かに途中から変わったとしか思えなかった!」

入間「巌窟王が急に何かに気付いて、どこかに飛んで行った直後あたりからだろ! エグイサルが俺様たちのことを追いかけ回し始めたの!」

東条「……ああ。そういえば、そうね。殺意はなかったけど、大迷惑には変わりなかったわ」

星「……そうか。エグイサルが巌窟王を追わずに、意図不明の挙動を取り始めたのは……!」

最原「操縦者の善意。そして空回りだよ。途中からはもう、下手に触らない方がマシだなってコントローラーそのものを手放したみたいだけど」

最原「それを再度王馬くんが拾って、キーボくんのオブジェにエグイサルが衝突。そして終了だよ」

最原「さあ。入間さんは今、興味深いことを言ったよね。巌窟王さんが何かに気付いた、とか」

入間「ん……」

最原「……一体巌窟王さんはなにに気付いたんだろう。あのときは夜で、視界はかなり狭まってたよね」

最原「視界によらない変化が起こってたとしたら?」
354 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/09(土) 00:01:31.82 ID:TFzfLDKg0
キングプロテアを相手どっていたらこんな時間。もうマジで時間ないのでプロテア倒せるまで更新はなし!
多分倒せると思うんだよなぁーあと少しで
355 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/09(土) 00:45:10.08 ID:TFzfLDKg0
ギリギリで勝ったーーー!
今日の夜から通常更新です
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 02:47:20.59 ID:RX6dwCFs0
おめです!
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 08:26:32.82 ID:R2ohOFywo
おめ、次はダメージチャレンジだ!一億目指そうれ
358 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/09(土) 19:56:17.93 ID:TFzfLDKg0
春川「また私の協力が必要かな」

最原「うん。お願い、春川さん」

春川「白銀の右手の爪はさっき言った通りボロボロだった。でもそれだけじゃなかったんだよね」

春川「指の骨もバキボキに砕かれてたんだよ。関節を外したとかじゃなくってピンポイントで骨がさ」

百田「ああ。そういえばあんときの白銀、巌窟王の炎以外の傷がやたらあったよな」

茶柱「……」ダラダラダラ

最原「……えっと。うん。その……」

茶柱「ほ、ほぼ私がやりましたァ!」

最原「言わなくてよかったのに!」ガビーンッ

王馬「まさかの真実! 共犯者は茶柱ちゃんだった!?」

ネコアルク「号外だにゃーーー! 意外な真実だにゃーーー!」バッサバッサァ!

赤松「下手な情報で新聞をバラまかないで!」

最原「ええと、うん。茶柱さんが白銀さんをボコボコにしたのは真実だけどさ」

最原「指の骨に関しては百パーセントそれ以降のものだよ」

最原「だよね。春川さん」

春川「指がまともに動かせない状態で、ものを引っかけると思う?」

東条「それは当然不可能だけど……それが……ああ、なるほど。順序の話ね」

春川「爪がボロボロなのも指の骨が折られていたのも右手」

春川「つまり、指の骨が折られたのは『誰かにコントローラーを奪われそうになったときに抵抗した後』ってこと」

最原「春川さんが気付いてくれなかったらと思うとぞっとするよ。本当にありがとうね」

春川「……最原の進路を取るかどうかはまだ迷うけど、百田の理念には賛同してる」

春川「全員揃って私は外に出たい。そのための協力は惜しまないよ」

百田「ハルマキ……!」ジーンッ

春川「……」プイッ

最原(照れてる)

ナーサリー「照れてるのね」ニコニコ

セミラミス「これがラブコメの波動か」

ロムルス「これこそがローマである!」ビシイッ

巌窟王「クハハハハハ! ご祝儀袋は外目からも札束だとわかるほどに包んでやろう!」ギンッ

春川「殺されたいの!? 揃いも揃って!」

最原「……サーヴァントってみんなこんな感じなのかな」
359 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/10(日) 20:12:49.98 ID:wNnXUZHb0
百田「でもよ。なんで白銀の指がそんなボロボロになってたんだ? それはどんな抵抗の痕なんだよ」

最原「抵抗なんかしていないよ。これは抵抗を抑えた状態で行われた拷問の痕だ」

夢野「そうかー。拷問の痕かー。かっかっかっ……」

夢野「……冗談じゃよな?」ガクガクガク

最原「真面目に言ってるよ」

夢野「いやいやいや! ちょっと待つんじゃ! 白銀を拷問したところで引き出せる情報なんぞあるか!?」

夢野「ないじゃろ! あの時点でかなーり学園の真実についてはわかっておった!」

獄原「そ、そうかな。この場でわかった事実も相当数あった気がするけど……」

東条「白銀さんの心理面の真実がね。そこに矛盾があるのよ」

東条「白銀さんに拷問をしかけるような人間が、白銀さんの心理面の真実に興味を持つと思う?」

獄原「ああ! そっか! 白銀さんのことが嫌いなら、そんなことを聞きたいとは最初から思わないんだ!」

獄原「あれ。それじゃあ……共犯者って白銀さんになにを聞き出そうとしたんだろう」

最原「聞こうと思ったことは特にないよ。いや、拷問することで白銀さんの口から捻り出そうとしたものは確かにあったんだけど」

百田「あー? なんだそりゃ。まるで拷問すること自体が目的だったみてーな……」

春川「白銀から聞こうと思ったことは特にないのに、白銀の口からなにかを捻り出そうとしていた……?」

春川「……」

アンジー「……悲鳴?」

春川「!」

百田「……あっ……!」

最原「それで正解だと思う。共犯者は白銀さんの悲鳴のみが目的だったんだ」

最原「指折ったら普通、出るよね。悲鳴」

最原「補足すると、白銀さんを地面に抑えつけながら右手を後ろに捻り上げ、指を一本ずつ折っていくとなると……」

最原「加害する側に必要な腕は二本だよね」

最原「更に、ほぼ同時進行でエグイサルをどうにか処分しようとコントローラーを弄っていたわけだから……」

ロムルス「腕がどう頑張っても一人分では足りない、ということか!」

ナーサリー「本当に? 物凄く高速移動すれば腕が増えたりしないかしら?」

ロムルス「増えたな」ブンブンブンブンブンブン

最原「サーヴァント式は禁止! 僕たちは人間だから!」ガーンッ
360 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/11(月) 19:33:26.83 ID:nhPFSkUv0
最原「赤松さんと真宮寺くんは多分、王馬くんが白銀さんを逃がした後で白銀さんを見つけたんだ。一番に」

最原「そこで彼女は魔が差した。白銀さんの位置を巌窟王さんに教えようとしたんだよ」

百田「拷問による悲鳴で、か……!」

東条「……巌窟王さんは炎のせいで闇の中でも位置が丸わかりよ。現在地から悲鳴が届くかどうかは一目瞭然だったはずだわ」

東条「その代わり、他の誰かも巻き添えで呼んでしまうかもしれないけど……」

星「……そうか。そこだな、最原が赤松のことを疑っている根拠は」

赤松「えっ?」

最原「真宮寺くんを疑っている根拠はたった一つ。赤松さんと同行していたから、というだけだ」

最原「でも赤松さんに関しては違う。彼女には手口の面でどうしても疑わざるを得ない」

巌窟王「……聴覚か」

赤松「ッ!」

夢野「そうか! 第一の事件のときも、第三の事件のときも、赤松の聴覚は頭抜けておった!」

夢野「白銀の悲鳴があがったら赤松も当然聞こえておるはずじゃぞ!」

赤松「……!」

最原「……下手なこと言えないけど、どうする? どんな証言をするの、赤松さん」

天海「必要ないっすよ。赤松さんはあの場にいなかった。巌窟王さんにボコにされてた」

天海「……俺があそこに辿り着いたのも結構運の要素が強かったっすね。本当によかった」

赤松「……」

赤松「聴こえなかったから、ね。白銀さんの悲鳴なんてさ」

最原「!」

百田「指折られてんだぞ……! 悲鳴を上げてないわけがねぇだろッ! 赤松!」

百田「誰よりも耳のいいテメェが……誰よりも優しかったテメェが、なんで白銀の声を聞けねぇんだよ!」

赤松「……」

赤松「なにも聞かない。証拠がない限り、私はなにも納得しない。それだけだよ!」

最原「ならつきつけよう! キミに! そうじゃないと僕たちは前に進めないから!」

最原「……歯を食いしばっててよ」
361 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/12(火) 22:18:02.01 ID:Lhk2LV9s0
赤松「あるわけない。証拠なんて用意できているはずがない」

真宮寺「ククク。僕たちは共犯者なんかじゃないんだ。証拠があるはずがないよネ?」

最原「赤松さん。髪飾りはどうしたの?」

赤松「……」

春川「髪飾り? あの音符のヤツのこと?」

最原「最初に気付いたのは入間さんなんだけどさ」




入間『おっ……俺様は悪くねーぞ……別に泣かせるつもりじゃ……』シドロモドロ

入間『おっ。バカ松、髪飾り変えたか? いつもより一ピコグラムほど可愛さが増してるぜ!』ニカッ

巌窟王『誤魔化すな!』ギンッ

入間『テメェに言われたかねぇッ!』ウガァ!



最原「赤松さん、髪飾りはどうしたの?」

赤松「……付けてるけど?」

入間「ん? ああ、そうだな。付けてるな。ダサイ原、あんまし意味ねぇ追求してんじゃねぇよ。時間の無駄だろ?」

入間「確かにいつもと音符の並びが違ぇけどよ! それが一体なんだってんだ?」

赤松「ッ!」

夢野「音符の並び……?」

入間「おお! いつも処女松は左右のコメカミ部分に音符の髪飾り付けてただろ?」

入間「右側のコメカミには、髪のせいで上半分が隠れているからわかりづらいけど多分、繋がった二音の十六分音符の髪飾り」

入間「左側には四分音符三つに、間に八分音符の髪飾りが一つの計四つだ」

東条「よく覚えてたわね。そもそも音符の区別がついたこと自体意外なのだけれども」

入間「俺様は世紀の大天才だからなーーー!」ヒャッハー!

最原「僕も覚えてるよ。赤松さんの普段の髪飾りの並びはさ。今、入間さんが言った通りだ」

最原「……でも今は違うよね? 普段なら八分音符のあったところにあるのは……!」

春川「全部四分音符だね。八分音符の髪飾りは?」

赤松「……」
362 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/13(水) 21:50:52.33 ID:l79vQCsq0
赤松「どこかで落としたみたいなんだ。八分音符の旗の部分をね」

獄原「え。壊れちゃったってこと?」

星「髪飾りだぞ? そうそう簡単に壊れるもんじゃないだろう」

赤松「割と脆かったからさ。そういうこともあるんじゃない?」

最原「コントローラーを無理やり奪ったとき、白銀さんは凄い抵抗をしたはずだよね。爪から血が出てるんだよ?」

最原「共犯者の側にもなんらかの被害が出ててもおかしくない」

赤松「白銀さんが私の髪飾りを壊したって? いくらなんでもそんなこと……」

最原「仮に、本当にタイミング良く髪飾りが壊れただけだったとしてもさ」

最原「……赤松さんが白銀さんの抵抗を受けて何かしらの痕跡を現場に残したのは確かだと思う」

最原「じゃなかったら、僕の揺さぶりに対してあんな無茶苦茶な隠蔽を図るはずがない」

百田「隠蔽だと?」

最原「現代アート風味の超巨大ネコアルクオブジェだよ!」

赤松「ぐうっ……!」

ネコアルク「え? 呼びましたかにゃ?」

赤松「呼んでない……座ってて」

最原「天海くん、あのオブジェができてた位置ってさ」

天海「ああ。白銀さんと巌窟王さんが揉み合いになってた場所が大体まるっと全部潰されてたっすね」

天海「……」

天海「ああっ!? 嘘っすよね!? まさか! それだけのために!?」

茶柱「え。なんです? あんなトンチキオブジェクトになんの意味があると?」

最原「昼の間に僕が白銀さんを庇うために言ったことはほぼブラフだった」

最原「巌窟王さんと共謀した人がいる。その人が名乗り出ない限りは白銀さんの身が危険。裁判が始まるまで引き渡すわけにはいかない」

最原「僕の要求はおおよそこんな感じだったけどさ」

最原「赤松さん。僕は本当に、そのことを追及しようなんて気はなかったんだ。こんな状況でなかったらキミを糾弾なんかしない」

最原「でもキミはそうは思えなかったんだよね」

赤松「ぐ……うあっ……!」ダラダラダラ
363 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/14(木) 20:46:14.63 ID:DbfGqOA90
アンジー「あーそかそかー! 楓があんなバカバカしいオブジェクトをネコアルクに作らせたのって、落とした音符の旗部分を隠蔽するためかー!」

ネコアルク「そうそう、あのバカでかいオブジェクト……バカバカしいって言いましたかにゃ今?」

アンジー「……にゃは?」

最原(誤魔化した!)

夢野「じゃがのう。隠蔽されたというのなら、もうあそこにはなんの証拠も残っていないということではないか?」

最原「ここは科学捜査の基本に立ち返ってみよう。ロカールの交換原理だ」

赤松「ロカー……なに? 誰?」

東条「科学捜査の父、エドモンド・ロカールの言葉ね。ざっくり言うと『証拠を処分されても証拠を処分したという痕跡が残る』ということよ」

最原「ネコアルクは赤松さんに上手く乗せられただけだ。多分、真意は絶対に教えてもらってない」

最原「真意を教えようが教えまいが、ネコアルクたちの行動は変わらないんだから話す必要がない」

最原「ただし、キミはそれ故にミスを犯した。ネコアルクたちの能力をちょっとだけ過小評価してたんだ」

赤松「なんのことを……?」

最原「あのオブジェを作ったあたり、実は変化が可逆性なんだよ」

赤松「――」

赤松「か、ぎゃく……? 元に戻せるってこと?」

最原「そう。それも一部の隙もなく完璧に」

最原「これはキミの指示だよ赤松さん。ネコアルクはそれを律儀に実行したんだ」




ネコアルク『もしかして率直に『邪魔』って言ってるのかにゃん? 安心を。赤松嬢からは『生徒に迷惑をかけるな』と仰せつかっておりますにゃん』

最原『え? どういうこと?』

ネコアルク『時間さえくれれば、このオブジェを解体して一日で全部元通りにすることは可能ってこと』




最原「そう。あそこ一帯はすべて元通りにする準備ができてるんだよ」

最原「キミの何気ない指示のお陰でね」
364 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/15(金) 20:49:07.95 ID:Y7F91Zeg0
赤松「……ね、ネコアルク?」

ネコアルク「生徒に迷惑をかけるな、と言われた以上、あらゆる物品を元の位置に戻す準備はきっちり用意してありますにゃー!」

ネコアルク「そこら辺に埋まってた岩! 生えていた草は根に至るまで! 土も粒子の位置レベルまできっちりと元に戻せますにゃ」ギランッ

赤松「なっ……あ!?」ガーンッ

真宮寺「赤松さん……正直な感想を述べていいかな……?」

真宮寺「このネコもどきども、やっぱり間違いなくメイドバイセミラミスさんだヨ。存在のなにもかもが大迷惑だもの」

赤松「知ってる!」

セミラミス「……」

セミラミス「む? 何故だ。何故どの方面からもフォローが飛んでこぬ? 我のせいではないであろう?」

ナーサリー「気遣いと労いと思いやりがまったくないとは言わないわ。言わないけども……」

巌窟王「自分自身が毒婦であることは貴様自身が理解しているはずだな?」

巌窟王「それと、実はこういう展開を貴様も内心少し期待していたのではないか? 赤松の追い詰められた表情を見たいがために」

巌窟王「別に『誰かを庇いたかったから黙った』というわけではないのだろう?」

赤松「……えっ」

セミラミス「……」

セミラミス「……」カチカチ

天海「あっ。ゲームやり始めた……」

茶柱「都合の悪い話になった途端!」ガーンッ

最原「決まりだ! 赤松さん! ネコアルクたちの持っている四次元ポシェットの中身を検める!」

最原「その中にもしも八分音符の旗があったら!」

最原「そして、その旗がもしも溶けたり焦げ跡がついていたとしたら!」

最原「キミが一度は白銀さんの元に辿り着いたというこの上ない証拠になるはずだ!」

最原「当然! 赤松さんと一緒にいた真宮寺くんも共犯者として確定だ!」ズギャアアアアアアンッ

赤松「ぐっ……ぐうううううううう……!」ガタガタ
365 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/16(土) 22:55:45.94 ID:82jG8SIf0
百田「四次元ポシェット……?」

アンジー「あのねー。実はネコアルクの機能ってモノクマ並みに理不尽なんだよー」

アンジー「ネコアルクオブジェを作ったこともそうだけどー、今彼女たちが自己申告した通り、元通り戻すことも自由自在」

アンジー「でもさー、まず前提としてそれを成すには、加工した土地の、加工する前の状態の物資を丸っとどこかに保存する必要があるよねー?」

入間「どんな科学力だよ……いや思い出しライトやモノクマやモノクマーズの時点でそうは思ってたけどよ」

獄原「その保存した先が四次元ポシェットってこと? でもネコアルクは複数いたよね? どのネコアルクのポシェットに何が入ってるのかは……」

王馬「完全にランダムだろって? そうかな? どうなの最原ちゃん」

最原「ネコアルクの言を信じるなら、すべての四次元ポシェットは独立していたはずだよ」

最原「でも問題ない。だって問題となる四次元ポシェットは全部、この裁判場にあるはずだから!」

春川「……巌窟王のストックした爆弾用ネコアルク」

巌窟王「……」

最原「……隠さないよね。巌窟王さん」

巌窟王「赤松が見せるな、と言わない限りはな」

真宮寺「意地悪だネ。そんなことを言ったら認めたようなものじゃないか」

巌窟王「念のため、補足だ。ナーサリーライム救出のときに弾けさせたネコアルクの四次元ポシェットもきちんと回収している」

巌窟王「これでネコアルクオブジェ作成に関わった四次元ポシェットはこの場にすべて揃っていると言ってもいいだろう」

最原「土の粒子の一粒に至るまで元に戻せるっていうのなら、すべての物質にタグ付けに等しい情報処理が行われているはずだ」

最原「直接的にポシェットの中身をいじくるのはネコアルクにやらせよう。そうすればすぐに終わる」

最原「……嘘は吐かないよね?」

ネコアルク「赤松嬢が『嘘を吐け』と言わない限りは!」ビシイッ

赤松「……」

巌窟王「……クハハ! 皮肉だな。何も言わずとも勝手にお前を守った者は、この中ではセミラミスただ一人だけだ」

巌窟王「動機自体は邪まには違いないがな」

赤松「いいよ。セミラミスさんには感謝してる。動機なんてどうでもいい」
366 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/17(日) 22:11:01.73 ID:MFCfEVJE0
王馬「赤松ちゃんさー。もう言動からして隠す気がないよね?」

王馬「つまらないの。もうちょっと汗だらっだら流してわめいてほしかったのに」

赤松「別に私、あなたを楽しませるために産まれてきたわけじゃないから」

赤松「こっちはこっちなりに必死だったんだよ」

ネコアルク「……あ。これですかにゃ?」キランッ

茶柱「あ。見つかっ……た?」

最原「うん。溶けてはいるけど材質は同じだ。間違いないよ」

最原「八分音符の旗だ」

百田「じゃあ、やっぱり!」

最原「共犯者はキミだ! 赤松さん! そして並びに真宮寺くんも!」

赤松「……」

真宮寺「……」

星「フン。こんな事実が今更わかったところで、お前さんらをどうこう言う気は一切ねぇけどな」

星「それにしても随分と落ち着き払ってるもんだ」

赤松「……そうでもないよ。こんな問題を出した視聴者側への憎悪は更に募ってる」

赤松「ごめん。セミラミスさん。せっかく黙ってもらったのに」

セミラミス「……ふむ? 謝るのはまだ早いぞ? 我の予測ではな?」

赤松「へ?」

モノクマ「残念だけどさー、犯人だけがわかっても意味がないんだよ」

赤松「は?」

モノクマ「言ったじゃん? 証拠付きでって。旗だけじゃ視聴者は満足できないなぁ?」

赤松「……え。なに? どういう……?」

モノクマ「動機」ニヤァ

赤松「……っ!?」

最原「……言うだろうなと思ったよ。この問題が出た時点でさ」

最原「お前たちは徹底的に僕たちを慰み者にする気なんだな」

王馬「お? ん? あれ? もしかしてもしかしてもしかして!」キラキラキラ

王馬「第二ラウンド開催の巻的なーーー!?」ワクワクワクワクワク
367 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/18(月) 22:13:21.42 ID:aie1FTO+0
最原「赤松さんと真宮寺くんの動機……ね」

最原「わかるよ。大丈夫。証拠も多分、この場に――」

赤松「……真宮寺くん。壊しちゃえ」

最原「は?」

真宮寺「了解」ニヤァ

スッ

最原「!!!!!!!!」

最原(そんな……嘘だろ!? 正気の沙汰じゃない!)

最原「やめ――!」

真宮寺「えいっ」


ドガシャアアアアアアアアンッ


最原(気の抜けた掛け声で、それはあっさりと壊された。動機を証明するはずだったモノクマカラーのパソコン……!)

最原(ゴミみたいに、床に叩きつけて踏みつけて!)

最原(あの中にあるデータが見れない以上、赤松さんの動機は!)

赤松「証明不可能、だよね」

最原「バカな……! キミはセミラミスさんを助けたがってたはずだ! これじゃあ一体どうやって!」

赤松「……ごめん。セミラミスさん。あなたを助けたかった。それは心の底からの本音だよ」

赤松「どうすれば償いになるかな……?」

セミラミス「……」ペラペラ

最原「漫画読んでるっ!」ガビーンッ

セミラミス「……む? すまぬな? 話を聞いてなかった。この漫画、とても面白いぞ」

セミラミス「ギャンブラーズパレード! 既刊二巻は絶賛発売中だ! 打ち切られたくなければ買うがいい!」ジャァァァァンッ

最原「それ今言わないとダメ!?」ガーンッ

赤松「わかった! それで償いになるのなら!」フンスッ

最原「ならないよッ!」ガビーンッ




蜘蛛手『くたばれ! ギャンブラー!』
368 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/19(火) 19:53:19.00 ID:lKMjzcAp0
百田「落ち着け終一! 見え見えの撹乱だ! コイツら明らかに組んでやがる!」

最原「!」

巌窟王「……ジャバウォック島のときから思ってはいたが……どちらだ? どちらが手懐けた?」

セミラミス「ククク。我の方がカエデを、に決まっておろうが。実際ちょっと楽しい」クックック

巌窟王「その結果、貴様が赤松の目の前で惨死することになってもか?」

セミラミス「癪ではある。だがそれが流れだ。わざわざ逆らおうとは思わんな」

セミラミス「それに……この『もうどうしようもない』という雰囲気がとても心地よい。最原の顔を見てみよ、傑作だぞ」クックックックック

最原「ぐっ……!」

茶柱「そういうトークは最原さんの耳が聞こえない範囲でやってくれませんか!?」

夢野「……そこまで悪いヤツには思えんのう。なんだかんだ、赤松の願いを聞き届けようとするよいサーヴァントではないか」

夢野「ウチらにとっては敵じゃがのう! わっかりやすい敵!」ビシイッ

百田「終一! あのパソコンの中には何が入ってたんだ!」

最原「赤松さんの動機だよ。真宮寺くんは……多分、赤松さんに協力してるだけだ。具体的に殺意を持っていたのは赤松さんの方だと思う」

天海「……もしかして、いやもしかしなくてもアレっすよね?」

最原「うん。アレ」

天海「うわぁーーー! な、なんてことしてくれたんすか! パソコンがボロッボロ!」

茶柱「どうにか直せないんですか! この場には入間さんもいますよね!?」

入間「一日くれれば元通りにできるぜ!」グッ

茶柱「はやーい! でもおそーい!」ガーンッ

最原(クソ……! あのパソコンがなければ、なにをどうやって証明すれば……!)

白銀「……」

白銀「バックアップ」

最原「えっ?」

白銀「……」

最原(今、白銀さん、なんて……)

最原「……」

最原(考えろ! もう白銀さんが嘘を吐いてるかどうかを検討する暇はない! バックアップがあるとしたら、どこに……!?)

最原「考えろ……考えろ……!」

最原(モノクマがタイムリミットだと言う前に! そうじゃないと……!)
369 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/20(水) 19:17:27.05 ID:2kjc9oWa0
モノクマ「おーっとそろそろ飽きてきちゃったぞー? タイムリミット設定しちゃおっかなー?」カチカチ

デンッ

05:00

モノクマ「あと五分でおしおき装置を起動させちゃうから、頑張って回答してね!」

春川「五分? 五分であのパソコンの中身を見る方法を探せって? 冗談でしょ?」

モノクマ「本気と書いて『むっちゃマジやねん』と読む!」

白銀「ルビが長い。やり直し」

モノクマ「マ」

白銀「いいよ。採用!」

百田「短ぇーよ!」

茶柱「どうでもいいですよ! そんなの! なんでもいいからヒントになりそうなもの片っ端から言ってください!」

百田「あのパソコン、どう見てもモノクマカラーだよな。ならモノクマがバックアップを持ってたりしねーか?」

最原「!」

王馬「ん……?」

モノクマ「持ってたとして、出すわけないじゃん。流石にボクの私物を理由もなしに裁判に提出するわけにはいかないなぁ」

茶柱「最初の事件の時点で証拠を握り潰してたくせに! 何を今更!」

最原「……」

最原(モノクマ……?)

王馬「あれ。最原ちゃん、なにかに気付いちゃった?」

最原「……」

王馬「俺は確信には至ってないけどさ。最原ちゃんがもしそうだと言うのなら、きっと『あの人』が持ってるんじゃない?」

王馬「バックアップ」ニヤァ

最原「……いや。ダメだ。だとしても、それを提出してくれるとは思えない。下手を打つとモノクマより手強いかも……!」

王馬「口説き落とせよ。相手が誰であれ。ここは議論の場だよ?」

王馬「嘘でも真実でもなんでもいい。そいつが望むものを的確に提示してやれば……」

王馬「案外、コロッと落ちるかもよ?」

最原「……」

百田「あんだ? 終一に何言ってんだよ、王馬」

王馬「すぐにわかるよ」ニヤァ

最原「……いるよ。バックアップを持っていそうな人。この裁判場に!」ズバァーーーンッ
370 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/20(水) 19:25:24.11 ID:2kjc9oWa0
赤松「……ハッタリで言ってるの? 流石に揺さぶられないよ。私たちはそんなもの用意してないからさ」

最原「赤松さん。先に謝っておくよ。本当にごめん」

赤松「……?」

最原(この裁判場で、モノクマカラーのパソコンのバックアップを持っていそうな人……!)

最原(もうこの可能性に賭けるしかない!)



人物指定

→セミラミス





最原(あなたしかいない……!)

最原「バックアップを持っているのは、セミラミスさんだよ!」

赤松「……はあ?」

セミラミス「そうか。我がバックアップを持っていたのか。これは意外な展開だ。想像だにしていなかった……」ケラケラ

セミラミス「……」







セミラミス「!?!?!?!?!?!?!?」ガビビビーンッ

赤松「って! セミラミスさんが一番驚いてるけど!?」

セミラミス「我が……バックアップを持っている……? ん? んん??????」

茶柱「……なんか凄くハズレ臭いですよ! 少なくとも彼女に心当たりがなさそうです!」

最原(だとしても彼女が持っていなければ、もう誰にも可能性がない! このまま確認させるしかない!)
371 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/21(木) 18:43:24.66 ID:kVNg8b5z0
巌窟王「……興味深いな。最原と王馬のやり取りも、赤松をそこまでの狂気に駆り立てた動機の方も」

巌窟王「いいだろう。続けろ最原」

赤松「巌窟王さん?」

巌窟王「クハハ! 確かに俺たちの側が不利になりかねないな。だが仕方あるまい? 好奇心ネコをも殺すと言うだろう?」

巌窟王「俺は今、あえて好奇心だけで現状を見守ろう」

最原「巌窟王さんだけは僕を応援しないで! 後で後悔するのが目に見えてるから!」

巌窟王「何ィ!?」ガーンッ

アンジー「んー? 珍しいねー。終一がこんなに明確に彼を拒絶したのって初じゃない?」

東条「今までのはあくまでやむにやまれぬ事情があってこそだったものね」

最原「……ええと、どこから話せばいいか……じゃあ第四の事件のときまで時間を遡ろうか」

最原「プログラム世界に分断された側の人、覚えてる? あのときもモノクマカラーのパソコンが議論の中心になってたよね?」

獄原「ん……? ああ。あの夢野さんにハエさんがいっぱいたかってたあの事件だね!」

夢野「んあ!?」ガビーンッ

百田「夢野そんなことになってたのかよ……やべぇな、プログラム世界」

最原「あのときは軽く流しちゃったけど、モノクマカラーのパソコンに僕たちは触れている」

最原「現実のパソコンと、プログラム世界のパソコンが同一のものだったとしたら……」

赤松「……壊れちゃってるよね? プログラム世界」

最原「わかってる。だからあそこに戻ってパソコンを取り戻すなんてことはもうできない。する気もない」

最原「僕の予想通りなら、あそこに行く必要がないんだ。あの世界で見せたパソコンには、今となっては無視できない機能があったから!」

真宮寺「今となっては無視できない機能……?」

最原(頼む! 当たっていてくれ! 内心では、そう願わずにはいられない!)

最原(でもそれじゃダメだ。出来る限り、それが当然のことのように振る舞わないと!)
372 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/22(金) 18:26:45.20 ID:tWsGCDan0
最原「あのパソコンにあった今は無視できない機能! それは『マザーモノクマとの同期機能』だ!」ズギャァァァンッ

赤松「同期……機能?」

入間「……ん……」




春川『入間。どう?』

入間『んー……まあ俺様か巌窟王ならパソコンの時計を無理やり弄ることは可能だろうが』

入間『逆に言うと普通の手段では操作できねーな』

獄原『パソコンに内蔵されてる時計だよね? そんな難しい操作が必要だとは思えないんだけど』

入間『知らねーよ。なんか知らねーけど操作できねーんだ』

モノクマ『ああ。首謀者権限のロックのせいだね、それ』

モノクマ『あ、ちなみにロックをする前に時計を弄ったとしても……』

モノクマ『ロックをかけた瞬間にマザーモノクマとデバイスが同期して時計の時間のズレを直しちゃうんだ』




入間「ああ、そうだ。確かにあったな? 同期機能。時計のズレの話題になったときに話してたぜ」

赤松「同期機能があったからって、それが今更なに?」

最原「今のマザーモノクマ、中身は一体誰だったっけ?」

春川「……あっ」

百田「あ? ……あー……なるほどな」

赤松「……!」ダラダラダラダラ

セミラミス「一体、誰だと言うのだ……?」ハラハラ

巌窟王「……」

巌窟王「何を他人事みたいな顔をしている! 貴様だ貴様ァ!」ギンッ

セミラミス「チッ。もう少しで誤魔化せたものを」

赤松「全然! 全っっっ然! 誤魔化せてなかったよぉ!」
373 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/23(土) 21:58:20.12 ID:85Lyy2aC0
赤松「……ぐ……考えろ。考えろ私……! 最原くんのプランはすべてが完璧ってわけじゃない……!」

赤松「……二つ。穴があるよね。仮にセミラミスさんがバックアップを持っていたとしても!」

赤松「一つ目の穴は、セミラミスさんに渡された権限のこと! 監視権限と、モノクマの複製権限が今ある彼女のすべてのはずだよ」

赤松「それ以外に彼女が持っている権限はないはずだ!」

最原「問題はない。だって!」

最原「……」

最原(……これでいいのか? 確かに赤松さんの言っている議論の穴を、これで塞ぐことはできる!)

最原(でもあまりにも都合が良すぎる! 僕は一体、なんのために……!)

白銀「私が首謀者の権限をセミラミスさんに共有すればいい」

最原「!」

赤松「なっ……!?」

白銀「モノクマにできたことだよ。私にだって当然できるよ」

白銀「……首謀者の権限で、ロックを解除! セミラミスさんに情報を開示する!」

ピコンッ

セミラミス「……ム……!」

白銀「モノクマが彼女に譲渡した権限。そして、首謀者である私がセミラミスさんにたった今共有した権限」

白銀「たった今をもって、彼女は名実共に『マザーモノクマそのもの』となった!」ズギャアアアアンッ

最原「……」

白銀「礼は言わないでよ。これは私が勝手にやったこと。私を許さないって決めたんでしょう?」

最原「……そうだ。その通りだよ」

最原(こうでないと先に進めないから!)
374 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/24(日) 20:52:29.00 ID:0f7fTaSd0
赤松「二つ目の穴があるよ。これは私の口からはあまり言いたくないんだけど」

セミラミス「そうだな。まあカエデも思春期だ。ならば我が代わりに言おう」

セミラミス「理由はどうあれ、我は命を賭けている。つまりカエデのために動く我が、何故貴様のために動かなければならない?」

獄原「えっ! い、言わないの!? 死んじゃうんだよ!?」

セミラミス「そこまで興味がないのでな。別にここで生き残ったところで遠からず消滅する未来は避けられない」

セミラミス「逆に、カエデが『やっぱり助けて』と正直に言えば我とて貴様らに協力はしようさ」

セミラミス「だがカエデの性格は貴様らもよく知っておろう! 決めたことは内心はどうあれ最後まで貫き通すバカがそいつよ!」

セミラミス「情の湧いた隣人を、自分のエゴですり潰す苦痛の表情は見物だ。この報酬でもって我は消滅を迎えようか」ニヤニヤ

赤松「……」

茶柱「……相っ当歪んでますね。聞いてるだけでこっちの頭がおかしくなってきそうです」

星「だが強固な絆だ。これを切り崩して協力してもらおうってんなら、相当の労力が必要だぜ」

王馬「本当にそうかなー? 俺にはそうは思えないなー?」

獄原「えっ。王馬くん、それどういうこと?」

王馬「ん? いやいや。最原ちゃんなら別なんじゃないかなって。彼なら案外、口説き落とせるかもよ?」

最原「……」

最原(やるしかないな)

最原「セミラミスさん」

セミラミス「……」ポチポチ

ナーサリー「スマフォいじってるわね……本当にこっちに興味がないみたい」

最原「……所詮そんなものだったのかな。アッシリアの女帝の知略って」

セミラミス「……!」ピクッ

赤松(……今度は安い挑発?)

最原「まだわからないかな?」







最原「今、赤松さんを絶望の底に叩き落せるのはあなたしかいないんだよ?」

セミラミス「……ム……?」

赤松「は?」
375 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/25(月) 19:53:25.88 ID:ggjDycCU0
セミラミス「……」ジーッ

最原(食いついた)

最原「サーヴァントとして誰かに尽くす。誰かを守る。誰かを導く。大いに結構! 僕はその意思にとやかく言う気はない」

最原「やり方を間違えていることを指摘するだけだ」

赤松「……さ、最原くん? なに言ってるの?」

最原「赤松さんを貶めたくないんだよね。あくまで善意によって赤松さんを苦しめたいんだよね」

最原「なら話は簡単だ! セミラミスさん! あなたが今持っているはずのバックアップ、おそらくそれを公開することの方が!」

セミラミス「カエデの助けになる、か?」ニヤァ

赤松「……なっ……はっ……ばっ……!?」ガタガタ

最原「……今更どうとも思わない、だって? 星くんの言ったことは欺瞞だよ」

最原「そんなはずないじゃないか! その殺意を有耶無耶にしていいはずがない!」

最原「僕たちは赤松さんの凶行に『止むに止まれぬ事情があったんだ』と信じたいよ!」

天海「……これは……!」

王馬「うん。最原ちゃんなりのラブコールだよね。赤松ちゃんを裏切ってこっちにつけっていう内容の、さ」

巌窟王「……そうか。なるほど。セミラミスは裏切りの女帝だ。そして先ほど議論で言っていたな」

巌窟王「確かこうだ。『裏切りやすいヤツを味方に付けること』は――」







王馬「破滅の秒読み。無限のリスク」ニヤァ

王馬「赤松ちゃんはその泥沼に嵌まりかけている」
376 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/26(火) 19:42:44.28 ID:cnEyXVbp0
天海「……もう仮定の話なんかしなくったっていいっすよ最原くん」

天海「セミラミスさんは間違いなくバックアップを持っているから!」

赤松「!?」

天海「白銀さんはどこに引きこもってアレを編集していたのか。俺は知っているんすよ」

天海「……セミラミスさんの宝具、虚栄の空中庭園の中だ!」

白銀「あっ……そういえば……そうだったね。あれの管理人、セミラミスさんだもんね」

セミラミス「白銀、今の今まで忘れてたな。間借りさせていた恩を……」

白銀「だってあのときのセミラミスさん、まったくなんの権限もなかったじゃん。むしろ新世界プログラムに間借りさせてたの私の方だよ?」

セミラミス「ふん。屁理屈を」

白銀「……みんなー。この場合、屁理屈を言ってるのってどっちかなー」

星「セミラミス」

真宮寺「セミラミスさんだネ」

獄原「セミラミスさんだと思う……」

セミラミス「白銀だと思うぞ」

セミラミス「白銀の方だと思え!」ウガァ!

夢野「勢いだけで押し通そうとしておる!」ガーンッ!

白銀「でもあそこからはデータを全部引っ越しさせちゃったから、もう何も残ってないっていうか……」

白銀「そもそもそれも新世界プログラムの崩壊と一緒に粉々になってるよね? 残骸相手にしても時間の無駄じゃない?」

王馬「なんだー。がっかり。セミラミスちゃんって割と見掛け倒しなんだなぁ。ま、これに関しては最初から期待してなかったし、いいか別に」

セミラミス「……」イラッ

赤松(あ、やばい)

セミラミス「く、ククククク! バカめ! あの庭園の中で起こったことならすべて我の手に取るようにわかっていたに決まっておろうが!」

白銀「はっ?」

赤松「……」

セミラミス「……!」ハッ







セミラミス「いや白銀のプライベート空間を覗き見するようなマネはやっぱりしていなかったような気がするな?」ガタガタ

白銀「今更嘘を吐かれても!?」ガビーンッ
377 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/27(水) 22:09:59.64 ID:LfWGbrPX0
ケムリクサとかカーマ育成とかイベントとか重なりまくったので今日はなし!
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/27(水) 23:16:49.36 ID:X5ubZMUF0
乙っす
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/28(木) 07:52:02.52 ID:e4ZToZ6gO
カーマおめでとう……
380 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/28(木) 21:22:27.53 ID:Te/UDNvR0
セミラミス「……ふっ。まあいい。どうせ最初から最原にはわかっていたようだからな」

セミラミス「バラしたのが我か最原かの違いに過ぎぬだろう。問題はまったくない。ないな?」

最原「……あ、えと……」アセッ

赤松「……セミラミスさん。私は最原くんとの付き合いがちょっとだけ長いからわかるんだけどさ」

赤松「最原くんの言ってたこと、多分ほとんどハッタリだったよ……!」

セミラミス「」

最原「現時点でバックアップを持っていそうな人がセミラミスさんくらいしか思いつかない」

最原「だから結構前の時点でこっちの底を見せないように立ち回ってたんだけど……」

最原「助かったよ王馬くん」

王馬「こっちは命懸けだからね。最初から命のことをどうでもいいと思って隙だらけ緩々になった女の人なんて相手にならないよ!」アッハッハッハ

セミラミス「……」ジッ

赤松「え……なんでこっち見てるの?」

セミラミス「あやつ殺していいか?」

赤松「気持ちは本当よくわかるけどダメ!」

王馬「……よくわかっちゃうの?」

春川「よくわかっちゃうね」

王馬「ガーン!」

セミラミス「まあ白銀から権限を渡された時点で詰んでいた気もするがな」

セミラミス「この方向性からバックアップを取り寄せる方が情報が新しく正確だ」

赤松「その補足いる!? 余計に追い詰められるだけなんだけど!」

セミラミス「……」シラーッ

赤松「……!」

最原(あと一押しで抱き込めそうだ!)

最原(なにか……他に交渉に使えそうなファクターはないか!)キョロキョロ

ネコアルク「にゃー……コタツで寝たい……」ゴロゴロ

最原「あった」
381 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/29(金) 19:27:11.20 ID:hc26jykx0
最原「セミラミスさん、ネコアルク――!」

巌窟王「ネコアルクを置き去りにして死ぬ気か?」

最原「んっ?」

赤松「うわっ……!」

アンジー(凄くイヤそうな顔になったねー)

セミラミス「別にその猫に愛着はないが……?」

巌窟王「だが自身の立てた計画に愛着はあるはずだ。そうだろう?」ニヤァ

セミラミス「……」

巌窟王「片鱗すら見せずに、計画を計画のままにして死ぬ気か?」

セミラミス「……ククク。子供か貴様は! いやまったくもって滑稽だぞ!」

セミラミス「最原の論に看過されて『自分もやってみたい』と思っただけだろう、それは!」

巌窟王「!」

最原「?」

セミラミス「かめはめ波とか卍解とか螺旋丸とかスタンドとかと同じだ。サーヴァントのくせして随分とまあ子供っぽい」

巌窟王「……」ワタワタ

セミラミス「そもそも宝具なんてものを持っておるのだから無い物ねだりも程々にしろ。既に人類史の英雄と認められているのだからな」

巌窟王「セミラミス!」







巌窟王「それは違うぞ!」ズギャァァァンッ

ナーサリー「その一言でもうボロがボロッボロよ」

ネコアルク「喋れば喋るだけ嘘がバレるタイプですにゃー」

ロムルス「うむ! なにかに憧れるその姿勢もローマである!」ビシイッ

茶柱「……あー……察しました。全部……」

最原「????????」

茶柱「またこの人はこういうことになるとアホになるんですよね……」ハァー

最原(呆れられてる!?)ガビーンッ
382 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/30(土) 22:52:33.32 ID:PbSfdbHr0
セミラミス「ふむ。まあ、頃合いか。これでいいだろう。貴様らの説得は及第点だ」

赤松「せ、セミラミス……さん?」

セミラミス「ム? ああ。安心しろカエデ。我は汝を裏切らない」

セミラミス「ただ我は我の意思で汝を助けようというだけだ」ニヤァー

赤松「う……うあっ……!?」ガタガタ

王馬「助けるって人の顔じゃないよ。息の根を止めてやるとか、楽にしてやろうとか言ってる殺し屋スマイルだよあれ」

赤松「だ、ダメ! やめてよセミラミスさん! せっかくここまで来たのに、それを公開しちゃったら!」

セミラミス「ム? ダメか? いやダメなどとは言うまい! 我はカエデを助けたいだけだからな!」

セミラミス「カエデを!」ニヤニヤニヤニヤ

セミラミス「助けたい!」キラキラキラキラ

セミラミス「だけなのだ!」ヘラヘラヘラヘラヘラ

赤松「う……うあ……」

赤松「うあああああああああああああああああああっ!?」

巌窟王「……憐れだな。よりによってそんなヤツに目を付けられたばかりに。心底から同情するぞ」

巌窟王「だが貴様には相応しい最期だと思うぞ? 善意で状況を悪化させる天才の貴様が、悪意で誰かを支えるサーヴァントに止めを刺される」

巌窟王「クハハハハハハッ! いやまったくこの世の歯車は上手く嵌まっているものだ!」ギンッ

赤松「やめて! お願い! セミラミスさん! そんなことをするくらいなら……っ!」

赤松「……」

最原「言えないよね。赤松さんには悪意がないから」

最原「『自分の隠し事を抱えたまま死んでくれ』なんて酷いことを、優しいキミが言えるはずがない」

最原「……これで詰みだ赤松さん」

セミラミス「残念だったな。汝にもし『自分のために死んでくれ』と言えるようなエゴがあったら、そのときは素直に死んでもいいと思っていたぞ?」

セミラミス「……ククク。いや言うまい。ともすれば弱さともとれるようなその優しさが、我にとっては何よりの娯楽だ」

赤松「あ……あ……あああああああああ……!」
383 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/03/31(日) 20:19:19.45 ID:eDOlEIyt0
セミラミス「……ふむ。この拘束にも飽いたな? よし」

セミラミス「出でよ! グングニルの魔槍!」

シャガンッ シャガガガンッ

モノクマ「え」

最原(僕たちの目の前でそれは起こった)

最原(……ショベルがあっさりと、突如召喚された杭に滅多刺しにされた)

セミラミス「もう我にない権限はない。故に、既にこの学園の神は既にモノクマではない。この我だ!」ビシイッ

セミラミス「とうっ」

最原(見えない戒めを解き放ち、セミラミスさんは跳んで――!)

セミラミス「……がふっ」ベシャッ

最原(墜落した!)ガビーンッ

セミラミス「ぐ……足が痺れ……動けな……!」ブルブル

東条「ずっと正座させられてたのだもの。当然ね」

巌窟王「ロムルス!」

ロムルス「承知!」

ナーサリー「私も参加するわ!」

最原「?」

ロムルス「はい、ローマ!」パシャッ

巌窟王&ナーサリー「……!」

最原「記念撮影してる! 倒れてるセミラミスさんバックに!」ガビーンッ

百田「なんてイヤな野郎どもだ!」

白銀「あれ見たことある! ゲーム会場で半ケツの人をバックに写真撮る人だ! 半ケツのヤツ!」

王馬「ニッチすぎてわからないよ」

セミラミス「お……の……れ……!」ビクンビクンッ

赤松「せ……セミラミスさ……!」オロオロ

セミラミス「……」

セミラミス「あ。忘れていた。上部モニターに動機を出すぞ」ブオンッ

赤松「ずっと忘れてればよかったのに!」
384 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/01(月) 20:53:04.75 ID:AC76OvPj0
ブオンッ

一同「…………………………」

一同「えっ?」

巌窟王「……?」

巌窟王「……がっっっ!?」ガビーンッ

最原「これが白銀さんの持っていた、モノクマカラーのパソコンの中身。赤松さんが白銀さんを殺してでも隠蔽したかった情報」

最原「……卒業アルバムだ」

夢野「んあ? いや、ちょっと待つんじゃ。アンジー、おそらく巌窟王に直で訊ねてもはぐらかされるだけじゃろうからお主に聞くが」

夢野「巌窟王は卒業アルバムを作っていたはずじゃな?」

アンジー「うん! かなーり気合入れて作ってたねー!」

夢野「で。上部モニターの卒業アルバム……おそらく作りかけじゃが、あれどう思う?」

アンジー「んー……」

アンジー「……言っちゃなんだけど、彼の作っていたものよりも玄人っぽいねー。レイアウトやらフォントやら何もかも」

百田「そりゃ、白銀が作ってたものだろうからな。当然じゃねえか?」

百田「ていうか巌窟王、卒業アルバムなんてもん作ってたのか」

夢野「それ自体は巌窟王自身も隠しておらんかったぞ。写真も撮りまくっておったしな?」

天海「かなり堂々と公言してたっすよね。卒アル制作」

巌窟王「……白銀」

白銀「なに?」

巌窟王「……貴様が一から卒業アルバムを作っていた場合は目を瞑ろうかと思っていたが……!」


ボオウッ


巌窟王「どういうことだ! あれはどう見ても、俺のデータを流用して作られている!」

星「!」

最原(それだけじゃない。この卒業アルバム、例えばモノクマが作った場合は悪ふざけと嫌がらせ全開で制作されてただろうけど)

最原(……あれは違う。素人目で見ても明らかだ。あのアルバムを形作っているものは……)

アンジー「……善意と愛情……しか伝わってこないねー……」
385 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/02(火) 20:57:00.52 ID:ZYuFqZCe0
百田「……なんでだよ……!」

赤松「……」

百田「赤松は誰よりも先にこれを見たんだな? なら、どうして! なんで!」

百田「こんなもん見たら逆に白銀のことを殺そうだなんて思わなくなるはずだ! なあ、そうだろ!」

百田「こんなの納得できるか!? 俺は全然納得できねぇ!」

獄原「……赤松さん、もしかして……」

王馬「お? ゴン太? 何に気付いた? 言ってみてよ?」ニヤニヤ

獄原「えっと、上手く言えないんだけど……」

獄原「あの時点では、まさかキーボくんがゴン太たちの脱出を妨害するだなんて思ってなかったよね」

獄原「だから全部の問題が片付いたらすぐに脱出できる……いや」

獄原「逆だ。ゴン太たちはすぐにでもここから出たかった。だから『脱出しないといけない』って思ってた」

獄原「……できたかな。仮にキーボくんの妨害がなかったとしてもさ」

夢野「んあ? キーボが邪魔しなければ……できるじゃろ。外の魔術師からの妨害なんて巌窟王なら意に介さないじゃろうし?」

夢野「キーボを強化する以外の方法でなら屁でもない、とウチなら思う」

獄原「えっと……あの……」

最原「……あの時点で想定されていなかった妨害工作は除外しよう。赤松さんにそれは知りようがなかったから」

最原「白銀さんが生きてて、白銀さんの心理面の真実を知ったなら、僕たちは外に出れたかな」

東条「……」

東条「まず間違いなく足踏みするわ」

春川「どうして? この学園に敵はいなかったんだよ? それなら……」

東条「それが致命的なのよ」

東条「……私たちは私たちの手の届かない者の手で一方的に踊らされていたってことになるのだもの」

春川「ん……」

星「そうだな。白銀の真実を知っちまった今、俺たちの中にあるのは圧倒的な虚無感だ」

星「絶対的な敵対者だったはずの人物がその実、それすらも用意されていたものだった。そんなのは……」

真宮寺「僕たちの戦い、この学園で過ごした日々が丸っと全部『無』だった。そういうことになるよネ」

真宮寺「いもしない敵にずっと戦いを挑んでいたんだからさ」
386 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/03(水) 22:04:14.47 ID:n2q/bmQ40
赤松「誰か一人は……一人くらいはいてほしかったよ」

赤松「この人さえいなくなれば……ううん! 別の方法でもいい! とにかくこの人さえ倒せれば!」

赤松「それで一旦区切りにはなるって胸を張れるような、そんな本物の悪役がさ!」

最原「でもそんな人はこの学園に一人もいなかった。それに一番最初に気付いたんだ。赤松さんは」

赤松「偽物が本物に勝てない道理なんてない! 白銀さんを制圧した後で、私はそう言ってやりたかった!」

赤松「そう証明しなきゃ、私たちは本物だらけの外の世界に出て、とても戦っていけない! 生きていけないよ!」

赤松「でもさぁ……!」ポロッ

天海「そのタフな台詞を吐くために必要な前提が最初から存在しなかった」

天海「……白銀さんすら被害者で、偽物だったから。俺たちが外の世界に勝てるかもって希望を得るためには、本物だけは絶対に必要なのに」

赤松「最原くん。あると思う?」

最原「……」

赤松「私たちが外に出た後で、煙のように吹き消されない。そんな可能性がどこかにある?」

赤松「また同じようにコロシアイに組み込まれるだけかもよ?」

赤松「ううん! それならまだいいかもね! もしかしたらサックリ一瞬で全滅ってことだってあり得る!」

赤松「私たちは外の世界のことを何も知らない! だって外の世界から来た物なんて、この学園に一個たりとも無かったんだから!」

赤松「この恐怖を……未知っていう恐怖を味わった人に! 外に出る気概があると思う!?」

赤松「いや! あったとしても! それで外に出れるとしても! 想像を絶する苦痛には違いないよね!?」

赤松「私たちは散々思い知ったはずだよ! 学級裁判で何回も! ただ選択をするだけでも、そこには耐え難い苦痛が伴うんだよ!」

赤松「それが自分の命を賭けた選択であれば当然! 隣の大事な誰かの命もかかったものなら猶更!」

巌窟王「……だから目を逸らし、他の連中の目も欺いたのだな」

巌窟王「選択に伴う苦痛を……せめて他人のものだけでも軽減するために」

アンジー「……楓……」

最原(僕の答えは決まっていた。多分、赤松さんのやったことに気付いた昨晩からずっとだ)

最原「僕は外に出たい」

赤松「……ッ!」

最原「……怖くても、苦しくても、辛くても、何があるのかまったくわからなくっても……!」







最原「それでも僕は、外に出たいんだ!」ズギャアアアアアアンッ
387 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/04(木) 21:29:54.25 ID:+epZHX1Z0
赤松「どうして……」

赤松「まったく理解できない! なんで! なんでなんでなんでっ……!」

赤松「どうして外の世界に期待できるの!? 私たちのことを傷つけたってことしかわからない外の世界に!」

赤松「自分好みの方法でぶっ壊してから外に出ることだってできるのに!」

赤松「わからないわからないわからない! 最原くんが何を考えてるのか、私には全っっっ然わかんないんだよお!」

最原「僕自身もそうだよ。前に進む理由がずっと見つからなかった」

最原「……でも赤松さんのお陰でやっと言語化できた気がするんだ!」

最原「そうだよ。僕はずっと、外に出たかったんだ! 戦う理由なんてそれだけだったんだよ!」

赤松「なんで……!」

最原「外の世界に何があるのかわからない。何故なら敵対者すら偽物だったから!」

最原「じゃあ味方はどうなの? 僕たちの仲間に外の世界から来た誰かはいなかった?」

赤松「!」

巌窟王「……最原。まさか……」

最原「そうだよ! 言うのは物凄く恥ずかしいけど、僕たちは巌窟王さんに会ったんだ!」

最原「デバイス越しにはイシュタルさんとかナーサリーさん、BBさんとも話した!」

最原「いっぱい……いっぱい、助けてもらったんだ! 返しきれないくらいに色々なものを送ってもらった!」

最原「外の有様を見た? 現代アート風味の巨大ネコアルクオブジェってなんだよ! ふざけてるのかって感じだ!」

最原「……ああいうのを見て……少しは思ったはずだよ」

最原「赤松さん! 僕たちは、この学園で傷付いただけだったの!?」

赤松「……うっ……!」

最原「違う……そうじゃなかったはずだ。僕たちは笑ってた!」

最原「巌窟王さんたちのせいで、悲しんだり、苦しんだりしてるのを中断しなきゃいけないタイミングがあった!」

最原「笑うのとか、巌窟王さんがアホなことをしてるのを見て呆然としたりとか、もう滅茶苦茶だよ! 手間ばっかりかけさせてくれる!」

最原(そうだ。戦う理由なんて明らかだった。巌窟王さんが全部でいいって言ってたのもあながち間違いじゃなかった!)

最原「『記憶』に嘘は吐けない。産まれの記憶が捏造だったとしても……!」

最原「この学園での思い出だけは、本当にあったことだ!」

最原「……『思い出』に嘘を吐きたくない! 背を向けたくない! 決意したことを忘れたフリすることはできない!」

最原(この忘却補正にかけて――)

最原「僕は……みんなと外に出ることを諦めない! 絶対に外の世界に行くんだ!」
388 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/05(金) 19:16:46.90 ID:QABCV73t0
巌窟王「……フン。好き放題言ってくれる」

東条「巌窟王さん。確かにあなたがいなければ私たちは今ここに立っていないわ。それは事実よ」

東条「でもあなたの悪行の煽りを真正面から受けたの大体、最原くんですもの。その点に関しての弁護は難しいわ」フッ

巌窟王「そこまで言うか!」

アンジー(あ、ちょっと傷付いた)

ナーサリー「でも言っていること自体は素敵よ。悲しいことがいっぱいだったこの学園の、楽しいことを大事にしたい」

ナーサリー「幸せな人の理屈だわ。マルタとかジャンヌとかの聖人好みの、幸せを大切にできる人の論理」

ローマ「つまるところがローマである!」

獄原「ローマなの?」

ローマ「ローマは――」

ローマ「まだガンには効かないがそのうち効くようになる」

獄原「ローマ凄い!」キラキラキラ

百田「騙されてんぞ!」ガーンッ

最原「……この辺りで区切りにしよう」

最原「赤松さん。真宮寺くん。昨晩に起こったことを纏めてキミたちを告発して……」

最原「僕は僕の進路を突き進む!」
389 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/06(土) 19:23:04.92 ID:rXzih/3q0
クライマックス推理

最原「まずは昨晩からこの学級裁判に至るまでの共犯者の行動を整理しよう」

最原「彼女たちの隠滅工作はまさにこの場まで続くからね」

最原「モノクマの設問は、一連のすべてを『白銀さんが被害者の事件』だと考えられる」

最原「だから最初は、僕たちが新世界プログラムから脱出した後だ」

最原「茶柱さんから王馬くんが白銀さんを逃がした辺りから始めよう」

最原「まず王馬くんは白銀さんを茶柱さんから逃がした後で、あるものを彼女に手渡した」

最原「それは、入間さんが開発したエグイサルのコントローラーだ」

最原「このとき、王馬くんと白銀さんの間にどんな協定があったのか僕は具体的には知らないんだけど……」

最原「今は関係がない。後回しにするね」

最原「同時刻、百田くんと春川さんが巌窟王さんに救助されて、エグイサルから降りた」

最原「そのタイミングを見計らって、白銀さんはコントローラーを起動」

最原「巌窟王さんへの挑発を開始したんだ」

最原「白銀さんの計画に『自分自身の死亡』が条件として組み込まれていたからなんだよ」

最原「それを後ろから見ていた僕たちは、白銀さんを探すために二手に別れた」

最原「……今思えば、あのときこじつけでもいいから絶対に全員同行するべきだったよ……!」
390 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/07(日) 17:56:37.86 ID:3u8qvLu70
最原「幸か不幸か、一番最初に白銀さんを見つけたのは彼女たちだった」

最原「そのときから彼女たちは明確な殺意を持って『共犯者』へと変じたんだ」

最原「まずエグイサルの操縦に夢中になっていた彼女を急襲。一人が彼女の右腕を捻り上げる形で地面に押さえつけ……」

最原「もう一人はエグイサルのコントローラーを奪い取り、操作権を奪った」

最原「この二つのことが同時にできたのは、共犯者が二人いたからだ」

最原「そのときの抵抗の痕跡は、コントローラーに爪痕として残り……」

最原「そして、その証拠がこの後白銀さんに襲い掛かる拷問の決定的な証拠となったんだ……!」

最原「白銀さんを押さえつけていた共犯者は、速やかに白銀さんの右手の指の骨を折り始めた」

最原「当然、白銀さんは大きな悲鳴を上げたはずだ。そしてその声が、巌窟王さんの耳に届いた」

最原「普通ならこの要素は単なる事実で終わるはずだけど、今回はこの手口そのものが共犯者の存在を限定する」

最原「聴こえないはずがないんだ! 彼女に、白銀さんの悲鳴が!」

最原「やがて巌窟王さんが白銀さんを見つけ、それと入れ替わるように共犯者たちはその場を立ち去った」

最原「もしかしたら巌窟王さんは、コメントをしていないだけで彼女たちの姿を見たかもしれない」

最原「絶対に言わないだろうから、彼からの証言は期待できないけどね」

最原「その後、エグイサルの操縦に失敗したり、天海くんが巌窟王さんから白銀さんを庇ったりとゴタゴタが続く」

最原「結果的に白銀さんは生き残ったけど、バレずに殺せるという利点が無くなった時点で共犯者たちは恐らく殺害は諦めたんだ」

最原「白銀さんの証言は誰も信じないだろうし、第一姿を見られていない。後戻りができるという点で彼女たちは余裕があった」

最原「白銀さんは気を失って、口を開けなくなったという点も大きいかもしれない」

最原「……そう。この最後の学級裁判という場が無ければ、彼女たちの暗躍はそこで終わっていたはずなんだ」
391 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/08(月) 21:57:20.42 ID:ga8G2LUh0
最原「翌日、白銀さんの意識は戻ったけど、大した情報を吐いてないことを確認した後は、油断してはいなかっただろうけど安心していたはずだ」

最原「もっと徹底的な殺意を持っていたのだとしたらきっとわかりやすい無茶をしていただろうからね」

最原「状況が一変したのはキーボくんが学園からの脱出を妨害し、最後の学級裁判の開催を発表してから」

最原「更に、僕が『巌窟王さんの共犯者』の件で脅しかけたから、心中穏やかでなんていられなかったはずだ」

最原「……これは信じて欲しいけど、あの時点での僕の言動は本当にただの脅しだったんだ」

最原「こんなことになるなんて思いもしなかった……」

最原「脅しをかけられた犯人は焦ったはずだ。僕の言ったことが事実かどうかはもう関係ないくらいに」

最原「でもそこで、天からの助けに等しい出来事が彼女に起こった」

最原「セミラミスさんが残したネコアルクのマスターが、共犯者に移ったんだ」

最原「共犯者は理由をこじつけてネコアルクにある指令を下した」

最原「……事件現場をネコアルクに提供し、現代アート風味の巨大ネコアルクオブジェを建設することによって現場ごと証拠隠滅したんだ!」

最原「でも犯人は知らなかった。ネコアルクにどれだけ理不尽な機能があったのかを」

最原「そこの考慮を怠り、指令がこじつけ故に大雑把になったせいで、犯行の決定的な痕跡をそこに残すことになってしまった……」

最原「最後の学級裁判の議論が進み、設問が共犯者の正体の特定を要求したときに、その痕跡は共犯者の存在を決定的なものにしてしまう」

最原「そうなんだ。ネコアルクたちは、現場にあったものを丸ごと保存していたんだよ」

最原「後で指示があったときに丸ごと元に戻せるように、完全な形で」

最原「そしてそれに含まれていた、髪飾りの破片がキミに止めを刺したんだ」
392 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/09(火) 21:59:52.96 ID:oiFKxxEp0
最原「最後に、彼女たちはどうしても隠滅したかった情報を、この裁判場で粉々にした」

最原「あらかじめ持ちだしていたモノクマカラーのパソコンをね」

最原「仮に自分の殺意がバレたのだとしても、最低限これだけは隠し通さないと、今までの行動がそれこそ全部無駄になる」

最原「追い詰められた共犯者たちは、仮にセミラミスさんを殺すことになったのだとしても隠滅したい証拠があったんだ」

最原「……巌窟王さんの卒業アルバムのデータを引用した、白銀さんの卒業アルバムのデータをね」

最原「でもパソコンを粉々にしてもバックアップに手は出せない」

最原「……動機の証明は、セミラミスさんと白銀さんの協力によって可能となる!」

最原「証拠を隠滅しようとして手を出した悉くが、裏返ってキミを追い詰める!」
393 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/09(火) 22:02:30.17 ID:oiFKxxEp0
最原「"超高校級の民俗学者"、真宮寺是清」

最原「そして"超高校級のピアニスト"、赤松楓」

最原「……キミたち二人を『巌窟王さんの共犯者』として告発する!」




バリバリバリッ ガシャアアアアアアアアアアンッ!




COMPLETE!
394 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/10(水) 21:12:28.13 ID:La1CgKg20
最原「証拠と動機。モノクマが要求したものはすべて揃った」

百田「本人の自白も取れてるし、決まりだな。つっても、もうセミラミスは自力で脱出してるけどよ」

セミラミス「」チーン

ナーサリー「……足の痺れのせいで言語を失ってるわ」

巌窟王「玩具(意味深)を投与してみろ。延命できるはずだ」

赤松「……まさか、だなぁ……まさかここまで裏目裏目になるなんてなぁ……」

赤松「なんでかなぁ……私、なんか運が悪いなぁ……!」

春川「アンタの運の悪さがどこから始まってるか教えてあげるよ」

春川「最原だけなら問題なかったかもしれない。巌窟王だけでもまあなんとかなるよ」

春川「最原と巌窟王が同時にこの場にいたのが悪かった。この二人、食い合わせが悪すぎるよ」

星「記憶の大半を失ってるお前さんが言うのならもう真性だな……」

真宮寺「僕は二度目だからわかるんだけどネ。この二人がたまに仲良く手を組むと犯人側からすると地獄なんだよネ」

真宮寺「……さて。モノクマ。結果発表とかしなくていいのかな」

モノクマ「うぷ……うぷぷぷぷぷ……」

最原「……?」

モノクマ「あーあ。ついに解いてしまったね。最後……の一歩手前の設問を」

モノクマ「お仲間も随分と増えちゃって。心強さの極みってところかなぁ?」

最原「半分くらいはお前のせいだろ……」

巌窟王「もしくは外の世界の魔術師のせいだろうがな」

巌窟王「……ム? 半分?」

最原「それの詳細は後で。大したことじゃないし」

最原「……インターバルでちょっと済ませたいことがある。設問がクリアできたことを確認できたら今はそれでいい」

巌窟王「そうだな。こちらもセミラミスの介抱がある。余裕があるのなら活用させてもらおう」
395 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/11(木) 20:11:47.23 ID:RFRSXfFv0
モノクマ「アーッハッハッハッハッハ! 残念ですが、今回は――!」

セミラミス「インターバルはないんだよーん! とか抜かしたら貴様を殺す」ハァハァ

モノクマ「」

最原(這いつくばったまま脅してる!)

セミラミス「勘違いするなよモノクマ……もう既にこの学園の支配構造の頂点は我だ。貴様には最後の学級裁判の進行を任せてるに過ぎん」ゼェゼェ

セミラミス「モノチッチの映像もすべて見れる。既に無意味だがな。貴様に対して自爆命令も下せるし」

セミラミス「なんならモノクマーズを復活させてやろうか。もう貴様を父親だなどとは絶対に言うまい」

モノクマ「」

白銀「……流石に全権渡したのはやり過ぎだったなぁ……ごめんモノクマ」

白銀「完全に私の……ぶふっ……私のミスだよ……くくくくっ……あ、ダメ笑いすぎて腹筋割れちゃうぅ……」プルプル

モノクマ「何他人事みたいな顔してんの!? ボクと組んでるオマエも結構ヤバいんだけど!?」ガビーンッ

白銀「私が絶対に嫌がるような設問出したんだよ! この恨みは絶対に晴らしてやると思ってたんだよ! もう晴れた! いい気味!」

モノクマ「うわあああああああああああああっ!」orz

赤松「……醜い……すごく醜い争い……」ジャララッ

赤松「ん? ジャララ? あれ? なんで私の首に鎖が――」

セミラミス「こっちに来いカエデ」ジャララララッ

赤松「うぶえっ!?」ガクンッ

最原「赤松さーーーんっ!?」

ガチンッ

赤松「があああああああっ!? な、何故か正座の状態で床に固定されたーーーッ!」ジタバタ

セミラミス「我は疲れた! 裁判が終わるまで寝る! 膝枕を貸せ!」プンプン

赤松「なんで私!?」ガビーンッ

セミラミス「口答えは許さん。猿ぐつわもしておくか」ジャララッ

赤松「ぐむがまぼっ!?」ガキンッ

セミラミス「ぐー」スヤァー

赤松「むぐがごごごーーーっ!?」ジタバタジタバタ



赤松楓:発言力全損 学級裁判脱落



百田「勝手に裁判から脱落しやがった!」ガビーンッ

最原「ええええええええええええっ!?!?」ガビビーンッ

アンジー「通常の学級裁判のおしおきの代わりかなー。共犯者ってだけだし死なないだけ有情だよねー」
396 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/12(金) 20:32:39.00 ID:ayEy98R00
茶柱「いやいや……いくら殺人未遂だからってアレはちょっとやり過ぎですよ……第一、実行犯の巌窟王さんがこうして普通にしてますし」

巌窟王「クハハハハハハ! バカめ! 生徒と俺とを同列に考えるな!」

巌窟王「だがまあ、確かに。赤松の受けている扱いが不当であるということは認めるところだ。どれ、鎖を引きちぎって――」


パァンッ


巌窟王「……?」

アンジー「……」



アンジーから唐突にもらった"平手打ち"



アンジー「……!」ブワッ

巌窟王「!?」ガビーンッ


ガツンッ


予想外の"肘"


特に理由のない暴力が巌窟王を襲う――!




巌窟王「何故だ……」チーン

アンジー「おしおき代行。アンジーでないとできないから」

最原(続いて巌窟王さんも逝ったーーー!)ガーーーンッ

アンジー「次は是清だねー」

真宮寺「……え」

真宮寺「え? 僕も? 僕もこんな理不尽極まりないおしおき受けるの? 嘘でしョ?」オロオロ

真宮寺「嘘……」ハッ

最原(そのとき真宮寺くんは気付いたのだろう。自分の受ける罰が決定的なものとなったのを)

最原(そう。場の空気が真宮寺くんを裁くことを決めた。何故なら)

夢野「赤松を止めることが充分できたはずじゃぞ、お主の立ち位置なら」

真宮寺「……!」アワワワワワワワ

夢野「おしおき確定じゃぞ?」
397 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/13(土) 20:59:42.65 ID:MnLOOJ3t0
真宮寺「逃――!」

夢野「がさん。当然じゃろ」サラサラサラ

最原(ん? 三角帽になんか注いでる……粉?)

夢野「食らえ! これが巌窟王との因縁の末に手に入れたウチの対真宮寺宝具!」

白銀「範囲しょぼっ」

夢野「ソルトスプラーーーーッシュ!」

真宮寺「おぶっ」ザバァァァァァァァッ

最原「真宮寺くんの帽子から大量の白い粉が出てきたーーーッ!?」ガビーンッ

夢野「ウチの帽子に入れた塩を真宮寺の帽子に転送するウチの必殺技じゃぞ」キラーンッ

巌窟王「夢野!」

夢野「なんじゃ?」

巌窟王「……よく頑張った。後で希望の菓子をやろう」

夢野「そんなこと言われてもちょっとしか上機嫌にならんぞ? とらやの羊羹よこせ」テレテレ

最原「物凄く上機嫌になってない……?」

真宮寺「ぎゃあああああああああああ! あ、あ、あ、甘ァァァァァァ!」ジタバタジタバタゴロゴロ

東条「……砂糖よ? これ」ペロッ

夢野「!?」ガビーンッ

夢野「……」

入間「あ? どうしたドチビ。急に黙って……」

夢野「食らえ! これが巌窟王との因縁の末に手に入れたウチの対真宮寺宝具!」サラサラ

王馬「あ。やり直そうとしてる」

真宮寺「あばっ!?」ガビーンッ

夢野「ソルトスプラーーーッシュ!」



ドバァァァァァ!



真宮寺「ぎゃふああああああああああああああああっ!?!?」overkill

最原「別に砂糖の時点で充分だったのに!」
398 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/14(日) 19:00:52.35 ID:+aZTVxod0
リザルト

赤松:セミラミスに拘束され強制膝枕化。発言力全損

巌窟王:特に理由のないアンジーからの暴力を受け軽くトラウマ

真宮寺:甘じょっぱい空のお星さまとなった





真宮寺「ああああああああああマスクの中が甘じょっぱいヨォォォォォォォォォォ……!」ガタガタ

赤松「ぐむ……」←鎖の破壊が不可能なので諦めた

巌窟王「ふん……これで赤松は俺の援護ができなくなったな」

巌窟王「これも貴様の読み通りか? 最原」

最原「そんなわけないでしょ。セミラミスさんがこっちの想定を超えて奔放すぎたせいだよ」イヤイヤイヤイヤ

最原「なんなの。巌窟王さんの周りには厄介な女の人しかいないの?」

巌窟王「心外だ! 俺ではなく俺の元のマスターに依り付くのだ、そういうのが!」ギンッ

ナーサリー(あら? さらっと言われたけどもしかして私のことも厄介扱いかしら?)イラッ

夢野「消えたとは言っても別に発言権が没収されただけで、投票権自体はなくなってはおらんじゃろ」

夢野「じゃが赤松、真宮寺の暗躍のせいで巌窟王の進路への心証は割と最悪になったのは確かじゃ」

百田「テメェらはよってたかって白銀をいじめすぎた。しかも話を聞けば聞くほどに、白銀を責めたところで無意味だったし」

百田「一番アウトだったのは、赤松自身も『白銀を責めることの無意味さ』を知ってた上で犯行を進めたところだ!」

百田「というか巌窟王がモロに、大々的に白銀を殺そうとしたのに対して、赤松たちの立ち回りが暗躍ってのも最初からおかしかっただろ!」

王馬「本当に自分に正義があると思ってたのなら、巌窟王ちゃんと一緒に堂々と白銀ちゃんを殺しに向かってただろうからね」

王馬「あくまで共犯だから直接的に自分の手が汚れるわけじゃないし?」

赤松(言い訳できない……結構地獄だな。この状況)

東条「……誰も彼もが正しい判断をできるわけじゃないわ」

赤松「ん?」

東条「赤松さんを責めるようなことを、それ以上言わないでちょうだい。単純に胸が痛いから」

赤松「……」

春川「わかった。その辺り、気を付ける。百田」

百田「んん……」
399 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/15(月) 21:22:29.81 ID:i8xRrcMl0
茶柱「……そうですね。もう無条件で終わりにしたいですよ。お互いに罪を誹り合うようなマネは」

茶柱「みんなボロボロじゃないですか。辛くて辛くて胸が張り裂けてしまいそうです」

茶柱「何が学級裁判? 何がおしおきですか。何でこんなことをみなさんがしないといけないんですか」

巌窟王「……茶柱……」

赤松(……そんなこと言われても仕方ないのに。私たちはこれしか生き残る方法を知らない)

赤松(そういうふうに外の世界の人たちが作ったんだから)

赤松(……でも、そんな正論をぶつけられる空気じゃないな。茶柱さん相当疲れてるし。口も塞がってるし)

最原「今更そんなこと言われても困るよ」ケロリ

巌窟王「!?」ガーンッ

赤松(言っちゃうんだよなぁーーー! 言っちゃうんだよなぁ、この人は! 頭いいから! 頭いいのに!)ウワアアアアアアア!

茶柱「……」ズモモモモモモ

獄原「ん? 微かにアドレナリンの臭いがする……」クンクン

最原「どうしたの茶柱さん。何で怒ってるの?」キョトン

茶柱「」ブチイッ

獄原「アドレナリンの臭いが超増えた!」ガーンッ

百田(うわぁーーー! コイツうわぁーーー! 自殺志願者か!?)ガタガタ

春川(怒ってる女に怒らせた本人が『何で怒ってるの?』と訊くのって遠回しに『殺していいよ!』って意味だもんね)

茶柱(この人ここで殺した方が普通にこのまま生きていくよりずっと楽なのでは? 有体に言って死ねばいいのでは?)ゴゴゴゴゴゴ

茶柱(なんかもう……死んだ方がマシって状況に慣れすぎてここから先幸せになれそうもない気がしてきました。やっぱり殺しましょうか)ゴゴゴゴゴ

最原「あとちょっとで外に出れるんだ」

茶柱「?」

最原「……もう正直に言っちゃおうか。僕は巌窟王さんの進路でも別にいいと思う」

茶柱「!」

百田「おいおい。テメェが示した進路はどうすんだよ」

最原「もちろんそっちの方がいいと思うんだけどさ。みんなで一緒に外に出れるのなら、それがきっと一番いい」

最原「……どんなに苦しくても、考えて考えて議論して議論して、そうやって掴み取った進路にこそ価値があるんだ」

最原「選択は確かに、それだけで想像を絶する苦痛かもしれないけど絶対に無意味じゃない」

最原「……僕たちの呪いをぶちまけられて壊滅寸前の世界でも、僕たちに何一つとして優しくないディストピアでも」

最原「大切な人と一緒ならきっとそこは地獄じゃないから。少なくとも、僕にとっては」

茶柱「……」
400 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/16(火) 22:08:49.80 ID:uWzaSR2Y0
最原「……」チラッ

茶柱「?」

最原「僕の場合は茶柱さんがいればギリギリ二本足で立ってられるよ!」ズギャアアアアアアアンッ

茶柱「ぴっ!?」ガビーンッ

赤松(言ったーーーッ!?)ヒエエエエエエ!

春川「最原。違う違う。茶柱が黙ってたの別に『わかりづらかったから』じゃなくって『わかりきってたから』だから」

春川「なんで一々わかりきった正論を口に出すのアンタは」

星「……話すだけでどんどん罪深い生物になっていくな、最原」

アンジー「最終的には転子か転子以外の女の子のどちらかに背中刺されて死ぬと思うよー」ニコニコニコニコ

赤松「んーんー」コクコクコクコク

巌窟王「赤松。頷くのも一苦労だろう。無理はするなよ」

最原「……僕なんかしたっけ……?」ズーン

最原「今はいいや。ええと、巌窟王さん」

巌窟王「?」

最原「……どっちの選択でも善悪はない。正義もない。それでも僕が巌窟王さんに楯突く理由は色々ある」

最原「その中でも一番大きいのは負けたくないからだ」

最原「……あなたのすべてを論破して、僕は仲間を連れて外に出る」

最原「それが今、僕が前を向ける理由だ」

巌窟王「……本気なのだな?」

最原「うん」

ナーサリー(……ふふっ。ここまで想われて、伯爵もさぞ嬉しいでしょうね)

ナーサリー(あんなに真っ直ぐ見据えられて。余程憧れている……いえ、憧れていたんでしょうね)

ロムルス(うむ。師の教え、師の生きざまを超えようとする貪欲さもまたローマである)ウンウン

巌窟王「……」







巌窟王(そこまで嫌われていたか……)ズーン

アンジー(全然気付いてないなー。まったく気づいてないなー)

夢野「さて。そろそろじゃな。インターバルを終えなければ……全体的なタイムリミットまでもう時間がないぞ」
401 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/17(水) 22:05:52.35 ID:LQlyJmE30
天海「次は一体どんな問題が……って考えるまでもないっすよね。今まで放置されてた謎とギミックなんて一つしかないっす」

王馬「え? そんなのあったっけ?」

白銀「わざとだよね。わざと忘れたフリしてるんだよね。キーボくんだよ」

キーボ「……」

王馬「ああ! ずっと置物化してたからすっかり忘れちゃってたや! ごめんごめん!」

王馬「ところでアレ、なんだっけ? 鉄屑の力身に着けた鉄屑マン?」

キーボ「……」

王馬「……ごめん。この状態のキー坊をいじっても一ミリたりとも面白くないからもうやめるね」ショボーン

百田「別に頼んじゃいねーよ! 誰も!」

入間「どっちの進路に進むとしてもキーボは邪魔だし、どっちの進路を取るとしてもキーボ抜きじゃ完全勝利と程遠い」

入間「何度かメンテしてるからどういう仕組みかはある程度頭にゃ入ってるけどよ……」

入間「完全破壊はナシだぞ! 俺様でも流石に、キーボの人格と記憶の復旧は不可能だ! そこら辺は正真正銘のブラックボックスだかんな!」

東条「真面目な話なのだけれども……巌窟王さんを撤退させ、セミラミスさんの霊核を破壊した今のキーボくんに勝てる当てはあるの?」

巌窟王「クハ……クハハハハハハハハハ!」

巌窟王「クハハハハハ! 当てはあるか、だと? クハハハハハハハ!」キョロキョロ

巌窟王「クハハハハハハハハ……」アタフタ

夢野「ん。なんか挙動不審になっておるぞ」

ナーサリー「ないのよ。勝機が。だから笑って誤魔化している間に『何か勝機ないかなー』って探してるのよ」

巌窟王「勝機ならある! 素の状態でも一パーセント程度はな!」

巌窟王「セミラミスも抱き込めたのだから、これで勝率は五分五分まで上がったと言ってもいい!」

巌窟王「……決め手に欠けるだけだ。キーボの人格をどうにかしなければ俺たちの完全勝利はありえないのだから」

最原「もしもそんなものがあるのなら、だけど。僕が絶対に見つけるよ」

最原「誰かの知られたくない秘密を暴くよりは遥かに楽な作業だし、アクビが出そうだ」

巌窟王「クハハ! いつの間にそんなタフな台詞が吐けるようになった?」

巌窟王「……」

巌窟王「……成長したな」

最原「……」テレテレ

入間「イチャついたり対立したり忙しいヤツらだなぁ」
402 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/18(木) 21:56:32.02 ID:kpPB2/4C0
モノクマ「それじゃあ、そろそろ準備できたかな? できたよね?」ワクワク

巌窟王「次は一体、どのサーヴァントを人質にした? パールヴァティとかなら頭を抱えるぞ」

東条「インド神話の女神もいるの? 一体どんなサーヴァントなのか一度会ってみたいわね」

ナーサリー「写真はあるわよ。結構頻繁に遊んでくれるいい人だから」タプタプ

最原(スマフォ……)

ナーサリー「この人よ」

パールヴァティの写真『』シャクティー

最原「BBさんじゃんっ!!」ガビーンッ

百田「え!? コイツがBBなのか!?」

最原「……ん? いやなんだろう。僕たちが見たときよりもちょっと大人びてるような……気のせいかな」

モノクマ「ご期待にそえなくて残念だけど、今回は特にそういうことはないんだよね」

モノクマ「人質を用意する必要がないからさ」

夢野「それもそうじゃのう。最後の設問じゃから区切りはもうない」

夢野「タイムリミットはキーボが切る最後の『おしおき』。つまり今回、秤にかけられている命はウチらのもので事足りるじゃろうし」

ロムルス「ついでに私たちの命もカウントされているだろう。もうこうなれば否が応にも一蓮托生である」

百田「おう。悪ィな。巻き込む形になっちまって」

最原(軽いよ……)

ロムルス「許す」

最原(こっちも軽かった……)

モノクマ「それじゃあ! これが正真正銘、最後の設問!」

モノクマ「カモーーーン!」

最原「……カモン?」



ズ……



最原「……は?」


ズ……ズズズズズ!


ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!


赤松「んむぐう!?」

赤松(な、なにこの揺れ……? いや、揺れよりなにより、なんか空気が変!)

赤松(息をする度に寿命が二倍速で減っていくようなプレッシャーがある。いや……)

赤松(やってくる!?)

ナーサリー「な、なにあれ!? 初めて見るわ! 大きいわ! とても!」

ロムルス「……」

最原(裁判場に浸食してくる『何か』。壁や天井に一切の破壊を与えず、ゆっくりと広がっていく。僕たちを覆うように)

ロムルス「……?」





ロムルス「根、か? これは」
403 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/19(金) 21:12:07.05 ID:QaVXKLeQ0
最原「……何これ!? 明らかに物理世界の法則に従ってない……裁判場全体の雰囲気を飲むこの禍々しい気配!」

最原「明らかに魔術……いや! それ以上の何かだ!」

巌窟王「モノクマ。なんだこれは。どこでこんなものを手に入れた?」

モノクマ「視聴者からのプレゼントの一つなんだ! 名前は確か……く、く……『ウンコ樹』……?」

入間「ウンコ!?」ガビーンッ

モノクマ「あ、いやもうちょっと下品な言い方だったかな。く、くーそー……『クソ樹』?」

入間「クソ!?」ガガビーンッ

モノクマ「とにかくその『クソ樹』の苗らしいよ。成長するといいことがあるんだって」

モノクマ「『ンンンンンンこれがこの世界に正しく植えられた暁にはあなたの仇敵は一匹残らず屍となっておりましょう!』とかなんだとか」

モノクマ「『誰かに見せる世界であったが故に、異なる星の神も異なる目で視聴していた。なんともはや』とも言ってたなぁ」

巌窟王「どこの誰かは知ったことではないが、余計なマネをしてくれる」

ロムルス「どこの誰かはわからぬが!」

ナーサリー「どこの誰だかまったく心当たりがないわ! 多分時系列的な問題で!」

ネコアルク「ンンンンンンンン拙僧の! 拙僧の肉球が! 赤松嬢! 拙僧の肉球が回転を! 赤松嬢!」ギュリイイイイイインッ!

赤松(何故急に口調を変えて……)

巌窟王「……具体的にわかることは少ない。だがたった一つだけわかることがある」

巌窟王「これは危険だ。キーボとは別件で、選択肢を間違えれば大事になる。世界が滅ぶ滅ばない以前にすべてが台無しになるような……!」

最原「……これの切除の方法も後で考えないと。でも現時点で、これに関しては単なる演出だと考えて問題ないと思う」

春川「多分健康に害はないしね。とは言っても、このプレッシャー……本物だよ。絶対にこれは放置しちゃダメ」

春川「早く終わらせよう! 私たちの世界がこれ以上おかしくなる前に!」

最原「それよりも早く! 正しく!」






最原「この世界(ダンガンロンパ)を! 僕たちの手で終わらせる!」
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/19(金) 21:48:57.16 ID:gZPG495k0
キャスターリンボや麻婆神父ならともかく、異星の神まで関わってきやがった…
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/20(土) 12:53:35.37 ID:Z58V94Q20
下手すれば才囚学園というか外の世界が第八の異聞帯になってしまいそうだな。
可能性としては、未来機関が絶望と思しき者達を片っ端から殲滅している『絶望も希望もない強い者だけの世界』か、
もしくは、御手洗が天願の目論見通りに希望のビデオを全世界に発信した結果、あーぱーな人間達で溢れ返ることとなった『希望のみ存在する弱者だけの世界』か、
はたまた、アニメ3希望編で苗木が希望ヶ峰学園の学園長になって人類史上最大最悪の絶望的事件は終結したが、あまりにも平和すぎてこれ以上の発展の可能性が見込めなくなった『平和で退屈な停滞した世界』か、
最悪の可能性としては、絶望の残党が未来機関に勝利して、文字通り暗黒に包まれた『絶望のみが存在する救いようのない世界』もあるが、
いずれにせよ、このままでは最原達の世界が才囚学園ごと塗りつぶされる危険があるのは間違いないな。
406 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/20(土) 23:59:24.57 ID:LIrhWXzQ0
モノクマ「はいはーい! それではこれが正真正銘、最後の設問でーす!」


デデンッ


モニター『キーボの人格と記憶を元に戻す方法の有無を答えよ。ある場合は証拠もご一緒に』

東条「……妙な出題形式ね?」

獄原「これって……ない場合は答える必要がないってこと?」

モノクマ「その通りです。ギブアップはいつでも受け入れます!」

モノクマ「更に、ギブアップした場合においても裁判そのものの進行になんら影響はありません!」

巌窟王「よく言う。事はもう裁判どころではないだろう」

星「巌窟王。お前さんの意見が聞きたい。ギブアップは安全だと思うか?」

巌窟王「毛ほども思わないな。この正体不明の白い根を見ろ。モノクマ好みの答えを安直に答えれば、おそらくなにかが起こるぞ」

巌窟王「そうだな。ナーサリーライムは虚構の世界と結界のプロフェッショナルだ。こっちに引き継ごう」

ナーサリー「別にそこまで詳しいつもりはないわ。人だってたんぱく質でできてるけど、別に全員化学が得意なわけじゃないでしょう?」

ナーサリー「……それを差し引いても断言できることはあるけども」

王馬「つまり?」

ナーサリー「諦めたら一生後悔しても足りないようなことが絶対に起こるわ!」

ナーサリー「知ってるのよ! 私もこういう趣向やったことあるから! というか攻撃方法が大体こんな感じだから!」

百田「つまり有ろうが無かろうが関係なく、キーボが元に戻る方法を何が何でも見つけるか……」

王馬「最悪の場合、捏造するかしないとダメってことね。『ない』と答えることは許されない」

王馬「ナイトメアモードすぎないかなぁ?」ニシシ
407 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/21(日) 23:45:27.36 ID:MoM+A9fb0
巌窟王「わざわざギブアップ推奨のルールと、ギブアップしたら何が起こるかわからないシチュエーションを用意したくらいだ」

巌窟王「暗に『キーボを元に戻す方法がある』と答えたも同然だな」

茶柱「でも少し考えた程度でパッと出てくるような場所にはないでしょうね。あったら全員気付いてるでしょうし」

最原「目の前にあった。だから気付かなかったってこともあるよ」

王馬「心理の盲点ってヤツかな? それなら猶更、きっかけがないとわからないよね」

赤松「……!」

赤松(待てよ。確か、あのときセミラミスさんは……)

赤松「ん! んんん!」ジタバタ

天海「ん。どうしたんすか赤松さん……って、その状態じゃ喋れないじゃないっすか」

赤松「ん! ん!」チラッチラッ

天海「え? セミラミスさんに目配せしてるっすけど、どうしたんすか?」

天海「……あっ」




セミラミス『この常識外れのスピード……! 今まで出力を抑えていたな……』

セミラミス『は、ははっ。バケモノ……め……巌窟王のときですら本気でなかった……か』

赤松『もうやめてよキーボくん! 正気に戻って!』

セミラミス『よせ……! 新世界プログラムを破壊した今となっては、そんな叫びに何の意味もない』

赤松『え?』





天海「そうだ。ずっと気になってたことがあったんす。大した発言じゃなかったんすけど」

天海「何故か、あのときのセミラミスさんの言葉がずっと頭の端に引っかかって……!」
408 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/22(月) 21:16:23.86 ID:oMQenuas0
夢野「セミラミスがそんなことを? こやつなら知っておるのか。キーボを元に戻す方法を!」

入間「よし! 今すぐコイツを起こせ! 赤松! 超音速振動で貧乏ゆすりしろ!」

赤松「んんーん!」ムリムリ

入間「よ、よせよ……今そんなこと言われても、俺様はそんな安い女じゃねぇぜ……」テレテレ

赤松「むぐう!?」ガビーンッ

白銀「……違うよ。多分大幅な解釈違いだよ?」

百田「起こしていいもんか?」

巌窟王「やめておけ。コイツにはこの後大仕事が残っている。新世界プログラムの中に鍵がありそうだと証言してくれただけ丸儲けだ」

巌窟王「心当たりはあるか? 場所が限定できたのだから、特定はしやすくなったはずだぞ」

アンジー「……!」ピコーンッ

アンジー「……」

巌窟王「?」

巌窟王『アンジー。どうした?』

アンジー『……終一なら絶対に知ってるよ。揺さぶってみて』

巌窟王『ム? そうか。わかった』

巌窟王「最原。貴様は既にわかっているはずだな? 答えは得ているはずだ」

最原「ん……」

最原「言っていいの?」

アンジー「いいよー。責任は取らないとねー」

巌窟王「……何?」

最原「アンジーさんが真っ先に壊した」

巌窟王「は? 何を……またハッタリじみた言いがかりか? バカも休み休み」

巌窟王「……アンジーが壊したものが、キーボを元に戻す手段?」

巌窟王「……!?」ガビーンッ





巌窟王「ぐうううううううああああああああああああああああああっ!?!?」
409 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/23(火) 20:48:09.85 ID:eV7nkozO0
回想


赤松『アンジーさん!』

赤松(巌窟王さんから降りてかけよる。ゴン太くんと星くんが、やっとのこと私たちに気付いたようだった)

星『赤松……』

獄原『……ご、ごめん。赤松さん……間に合わなかった、みたい?』

赤松『二人とも。何を見て……!』

赤松『……それ……誰……?』


回想ここまで




巌窟王「そうか……そうか! そういうこと……か!」ガタガタ

百田「んだよ! 急に大声出しやがって! ビックリするじゃねぇか、なあ!」

ナーサリー「……あら? なんか急に静かになったわね。お通夜のよう」

真宮寺「当然だヨ。だって希望が既に打ち砕かれていたことを僕たちは今まさに認識したからネ」

天海「最原くんの……アルターエゴ……」

春川「……なに? それ」

天海「新世界プログラムの中で俺たちが見つけたプログラムっすよ」

最原「あれのお陰で僕はダンガンロンパの記憶を一部分だけ元に戻すことができたんだ」

最原「つまり、あのアルターエゴは記憶の復元ができるんだよ」

夢野「……いやー。待つんじゃ。ちょっと待つんじゃ。白銀は確かこう言っていたはずじゃな」




白銀『でもあそこからはデータを全部引っ越しさせちゃったから、もう何も残ってないっていうか……』

白銀『そもそもそれも新世界プログラムの崩壊と一緒に粉々になってるよね? 残骸相手にしても時間の無駄じゃない?』




夢野「新世界プログラムは崩壊したはずじゃろ? ウチはてっきり『キーボを元に戻すカギを誰かが持ち帰ってきている』と思っていたんじゃが?」

夢野「持ち帰ってきておるんじゃよな!? 誰か! セミラミスは!? 巌窟王は!? 生徒の誰かは!?」キョロキョロ

巌窟王「……俺たちは最原のアルターエゴにまったく触れていない!」

夢野「ひっ……!?」

巌窟王「唯一接触したのはアンジーだが……!」

アンジー「徹底的に壊しちゃったんだよねー。私情でさ」
410 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/24(水) 20:02:09.18 ID:ouC/NDfx0
余裕ぶっこきすぎた。まだ帝都ミッション90にも満たないので今日はなし!
411 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/25(木) 23:14:36.65 ID:PlHvjvEL0
最原「これは予測でしかないから、あくまでも可能性。実際のところは『彼』をこの場に連れてくるなりしないとわからない」

最原「でももうそれは不可能だからさ。モノクマ。答えてくれる?」

モノクマ「……」

最原「今のところはそれっぽい傍証しかないんだ。そこまでカッチリする必要ないだろ?」

最原「どうせ最後なんだしさ」

モノクマ「うぷぷ。『違うよ! それは全然まったく関係ないよ!』って言葉を期待してたのかな?」

モノクマ「ボクがそう言えば予測できるからね! ああ、あれが違うのなら他の場所に他の方法があるんだってさ」

百田「御託はいい! どうなんだ! モノクマ!」

モノクマ「関係あるに決まってるじゃん! もちろんです! あの最原くんのアルターエゴこそが、ボクと白銀さんの用意した最後のギミックだよ!」

百田「……ぐっ……!?」

モノクマ「ボクと白銀さんの用意した、最後のギミックだよーーーんっ!」ギンッ

春川「二度言わないで。うざったい」

東条「……まずいわね。これは。新世界プログラムが崩壊する以前に、あのアルターエゴは完膚なきまでに叩き壊されている」

東条「既に叩き壊されたものがキーボくんを元に戻す手段だとモノクマが証言した以上は……」

真宮寺「他の方法は望み薄。キーボくんを元に戻す方法は完全消滅した……そう考えていいヨ」

夢野「ま、待て! 待つんじゃ! さっきの白銀の卒業アルバムの件を忘れたのか!」

夢野「この場にはマザーモノクマの権限をすべて手に入れたセミラミスがおるんじゃぞ! アルターエゴ一体の復元程度……!」

巌窟王「時間が足りない。魔力も足りない。セミラミスの霊基が持たない。しかもセミラミスの専門外」

巌窟王「アルターエゴはいわば仮想生命だ。生命である以上、そう簡単に修繕はできない。一度壊れたらそれまでと考えた方が自然だ」

巌窟王「そして最後だ。これが一番重要な点だが」

夢野「な、なんじゃ……? 他にもっと絶望的な情報があるというのか!?」ガタガタ

巌窟王「白銀の卒業アルバムではない! 俺の卒業アルバムだ!」ギンッ

夢野「……」

総勢「……」

夢野「……ご……」







夢野「ごめんなさい……」ショボーン

最原「謝らなくていいよ! 巌窟王さんが極端に空気読んでないだけだから!」ガビーンッ
412 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/26(金) 23:57:10.43 ID:nnlmMJX80
獄原「みんな! もうちょっと考えてみようよ! 少しくらい心当たりはない!?」

獄原「ゴン太、頭が良くないからよくわからないけど、それでもこの話の流れだけは絶対にまずいよ!」

獄原「だってキーボくんを助けることができなくなっちゃうんだよ!?」

白銀「ごめん。少なくとも私が関知してる限りでは、これ以外にキーボくんの人格と記憶を復活させる方法に心当たりが無い……」

天海「あ、いや。最悪、直さなくてもいいんじゃないっすか?」

獄原「天海くんっ!」

天海「誤解しないでほしいっす! 今は直す方法がなくてもいいって言ってるだけ!」

天海「外の世界に行ってから存分に調べればいい! そうしたらあるはずっすよ! 事実、白銀さんとモノクマなら作れてるっすよね!」

巌窟王「確かにこの場で作れるものであるならば、外の世界に出ればあるだろうな?」

巌窟王「だがキーボを破壊せずに制圧する方法が、果たしてあると思うか?」

天海「えっ?」

巌窟王「よく考えろ。外の世界に出たころに、コイツが無事でいるはずがないだろう」

巌窟王「流石に『最後の最後まで敵意と殺意を捨てない武装キーボ』を相手に、この場にいる俺たちが完勝できる余地は皆無だ」

巌窟王「どこかの時点では確実にキーボには戦意を喪失して貰わなければならない。さもなければ俺が死ぬか……」

キーボ「ボクが完全に破壊されるか」

最原「!」

王馬「重要な局面では喋るんだなー」

王馬「……あ、違うか。喋らされてるんだね、これ」
413 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/27(土) 21:30:25.25 ID:0MmHrKWz0
キーボ「断言します。ボクの人格と記憶を復元することはもう不可能です」

キーボ「ボクはタイムアップと共に、あなたたちを破壊します」

キーボ「名目、お題目はいくらでも。あなたたちを破壊する理由は揃いすぎています」

東条「度重なる校則違反。セミラミスさんの権限乗っ取り。外の魔術師の自己防衛。確かに私たちを殺す理由はより取り見取りでしょうね」

百田「どうする! 正規手段がないと断言されちまったぞ! 他にイレギュラーな方法はねぇのか!」

百田「このままじゃどんな最高の結末を迎えようとキーボだけはその場にいなくなっちまう!」

巌窟王「……カルデアからのバックアップはどうだ?」

ナーサリー「もう無理よ。ダ・ヴィンチが抑えてるわ。BBも未だに昏倒中」

ナーサリー「むしろ伯爵。あなたの宝具は使えないのかしら?」

巌窟王「相手がロボだからな……それに人格や記憶は専門外だ」

ナーサリー「……ロムルス」

ロムルス「回復宝具はない。あったとしても没収されていただろう」

ロムルス「事実、槍は回収されてしまったしな。『槍ではない方』に関してはその限りではないが」

ナーサリー「そんなもの持ってたの?」

ロムルス「……」ゴニョゴーニョゴーニョゴーニョ

ナーサリー「そんな便利なものがあったのね。後で必要になりそうだから温存しててもらえる?」

ロムルス「ローマ!(了承の意)」ビシイッ

巌窟王「そういえば貴様も結界宝具持ちだったな……」

最原「?」

巌窟王「……ちっ。面倒なことになった。流石にこの期に及んでキーボを破壊するなど御免だぞ。完全勝利をしたいのはこちらも同じだ」

天海「なにか……! なにかないんすか! 逆転の一手は!」

最原「あるよ」

天海「……そっすよね。そう簡単に見つかったら苦労はしな――」

天海「え?」

巌窟王「最原……今、なんと言った?」

最原「大丈夫。僕たちは勝つ。ピースはこの場にすべて揃ってる」

最原「キーボくんは正統派の手段で復元可能だ!」







モノクマ「……はあっ!?」
414 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/28(日) 18:45:52.62 ID:d+h4qFAG0
モノクマ「いやいや……いやいやいや! 最原くん! ハッタリもそこまでにしなよ!」

モノクマ「ていうか本当に今回は何の裏もなく、あの最原くんのアルターエゴは壊されちゃってるの!」

モノクマ「ボクを動揺させたところでもう新事実は出てこないよ!」

ロムルス「ふむ。確かにモノクマの先の反応は素だった。どうやらモノクマは本気で『キーボを助ける方法はない』と思っているらしい」

モノクマ「でしょ〜〜〜?」ニコニコ

白銀「なんでロムルスさんが真偽判断してるの。というかできるの……?」

ロムルス「皇帝特権で直感を拝領した」

白銀「????????」

巌窟王「ひとまずロムルスがこう言っているのなら、少なくともモノクマの知っている範囲でキーボの復元手段がないというのは本当だ」

最原「モノクマの知らない範囲にあるんだよ」

最原「……順繰りに考えてみよう。本当に、あのアルターエゴのデータを獲得できた人は、アンジーさん以外にいなかったのかな」

最原「あのアルターエゴをアンジーさんが損壊した後、僕たちは彼の処遇をどうした?」

天海「どうもこうも、修繕するしかなかったから、修繕してもらったっすよね」

最原「誰に?」

天海「そりゃあ、BBさんに……」

天海「……?」

東条「まさかとは思うけども、BBさんがアルターエゴのデータを手に入れていたはず、と論理を発展させるつもりかしら?」

最原「僕はそう考えてる」

真宮寺「ダメだヨ、最原くん。その方向ではデータは手に入らない。BBさんは僕たちの目の前で力尽きて消えてしまったんだヨ?」

真宮寺「交霊術でも行わない限り、彼女と僕たちが逢うことはもう不可能なのさ……」

最原「BBさんにデータを託された人が、この中にいるとしたら……?」

巌窟王「バカな。そんなヤツがいたとしたら、今頃とっくに証言しているはずだろう」

巌窟王「それとも発言権を失った赤松が持っているとでも?」

赤松「むうー!」ナイナイ

巌窟王「……ないと言っている」
415 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/29(月) 23:04:48.86 ID:ZJpg275/0
最原「BBさんがなにを考えていたのかは、彼女がこの場にいない以上、もう確かめようがない」

最原「でも彼女は最高の仕事をしてくれた」

最原「今! この局面で! モノクマや視聴者たちの不意を突くようなタイミングでわかるように!」

最原「……託された本人すらわからない形で託したんだ!」

巌窟王「そこまで言うからには、誰がBBの遺産を受け取っていたのか見当が付いているのだろうな?」

獄原「だ、誰? 誰が受け取っているの!?」キョロキョロ

最原(BBさんの遺産を受け取った人……それは!)




人物指定


→巌窟王



最原(これが僕の答えだ!)

最原「巌窟王さん。さっきから実は気付いてるんだよね?」

最原「気付いてる上で、その可能性から目を逸らしてるんだよね?」

巌窟王「……なんのことだ?」

ナーサリー「……!」

最原「巌窟王さん。BBさんの遺産を受け取ったのは、あなただ」

巌窟王「……」

赤松「むぐ!?」

巌窟王「……そうか。何を根拠に言っている?」

最原「消える間際のBBさんの言葉だ。裁判の直前に至るまで意味がずっとわからなかった」
416 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/04/30(火) 21:21:28.91 ID:klKke+G70
BB『そろそろ……限界ですね』

最原『BBさん……!』

BB『……楽しかったですよ。あなたたちをサポートしていた時間は。とっても』

BB『巌窟王さん。ハリボテ以外にも一つプレゼントがありますので。期待しててくださいね』

BB『……バトンタッチです。後は任せました』ニコリ





最原「もう一つのプレゼントって何? 今まで巌窟王さん、その話だけはしてなかったよね?」

巌窟王「……」

巌窟王「ふん。らしくないことをするべきではなかったか」

巌窟王「一つ、間違いを正そう。俺はこの事実を悪意で隠していたわけではない。ただ……」

最原「ただ?」

巌窟王「これの正体が俺にもわからないからな。どういう使い方をすれば正解なのか俺にもわからない」

巌窟王「箱詰めにされている上に『揮発性だからいざというときまで温存で』と走り書きされているようなアイテムだ。そう簡単に期待させられるか」

天海「さっきから具体性が大分欠けてるんすけど……巌窟王さん、BBさんから何渡されたんすか?」

天海「今すぐちょっと見せてくれないっすかね?」

巌窟王「無理だな。俺がBBから渡された……と思われるものはただの『刻印』だからな。しかも目に見える場所に刻まれてない」

天海「刻印?」

アンジー「ああー。これBBがやったんだ? 途中から気絶してたから全然わかんなかったよー」

アンジー「……BBを犠牲にした事実を受け止めるのが怖かったの?」

巌窟王「……」

アンジー「甘えんぼさん。だから自分で言わずに終一に指摘させたんだねー」

巌窟王「アンジー」

アンジー「……ごめんなさい」
417 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/01(水) 20:59:04.54 ID:3kHy4z570
ナーサリーライム「……星マークはない?」

アンジー「ん? 刻印の説明文に? あるよー。というかそれしかないねー」

ナーサリーライム「なら確定よ。BBは正体不明だとか測定不能のステータスを★のマークで表すの」

ナーサリーライム「一度見たことがあるから間違いないわ」

入間「なら刻印がBBからのプレゼントってことはまず確定ってわけか。どうにか精査する方法はねーのかよ」

ナーサリーライム「あるわ! 使ってみればいいのよ! まあ使ったらどうなるかわからないけども! 消滅とかしたら最悪ね!」

入間「最悪ね、じゃねーんだよサイコロリ! こっち命かかってんだぞ!」

巌窟王「どう考えてもアイツにも時間がなかった。仮にこれが人格の復元プログラムだったとしても不具合の一つや二つあるだろうな」

巌窟王「一度使ったら消滅してしまう、だとかの不合理な回数制限があっても不思議ではない」

ロムルス「技術と時間さえあればデータの複製そのものはできるかもしれぬ」

ロムルス「その刻印を使った瞬間のデータを記録。その後、どうしたらそれを再現できるか逆算すればいいという理屈だ」

百田「技術の方はなんとかなるとして、時間の方は無理っぽそうだな」

百田「つまり『状況証拠から人格の復元プログラムだという可能性が高い必殺技』を使えるのは結局、一回限りってことだ」

春川「しかも可能性が高いってだけだからまったく別のプログラムである場合もある」

春川「……私たちはそのBBのことをほとんど知らない。五分五分よりずっと低い可能性に見えるよ」

入間「ん? 待て待て。技術の問題をどうやってクリアするって?」

百田「なんとかしろ入間!」

入間「俺様頼みかよッ!?」ガビーンッ

百田「なんだ、できねぇのか?」

入間「できらぁ! ……いややっぱりムズすぎるっつの! 俺様はハードはともかくとしてソフトの方はそこまでだぞ!」

王馬「なんだぁ。技術の方もクリアできてないね? がっかりだなぁ。入間ちゃんはやっぱり見た目通りのクソブス肉便器ちゃんのままだったね」

入間「泣いていいか!? 無様にのたうち回り大声上げて小便漏らしながら泣いていいか!」

巌窟王「ロムルス!」

ロムルス「ローマ!」ギュウウウウウ!

入間「ぎゃあああああああああああああああ!? 大いなるローマに抱擁されて心が安らぐぅーーー!?」

夢野「……纏めるとこうじゃな? 『その刻印を使ったところでキーボが元に戻るかは疑問が残り、しかも使うチャンスも一度限り』と」

夢野「リスキーすぎるのう」
418 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/02(木) 22:15:30.62 ID:s1uZRzrD0
最原「……巌窟王さん。この中でBBさんを一番知ってるのは、多分あなただ」

最原「彼女は一体、何を考えてそれをあなたに託したんだと思う?」

最原「それを判断できるのはこの中ではたった一人。巌窟王さんだけだよ」

巌窟王「……そうだな。俺にとってアイツは……」



BB『こんにちはー。アヴェンジャーキラーのムーンキャンサーでーす! 敵対したらお注射しますのでそのつもりでー!』



巌窟王「アイツは……」



BB『あっれー! 巌窟王さんあっれー!? ギリギリNP溜まってないように見えますけど、あっれーーー??????』ニヤニヤニヤニヤ



巌窟王「……」



BB『え? お注射が嫌い? あはは! おバカさんですねぇ! 別に敵対しなければ刺しはしないとは言ってませんけどぉ?』ケタケタケタケタケタ



巌窟王「死ぬほど忌々しかったな……」ズーン

ナーサリーライム「敵にも味方にもとにかく悪ふざけ全開だったわね……」

ロムルス「……」フッ

赤松(あの優しさ全開のロムルスさんが遠い目に!)

巌窟王「だがヤツは異常な凝り性だった」

巌窟王「……無意味なことはしない。少なくとも自分自身で無意味だろうと思っていることは絶対に」

巌窟王(俺が長くないこともヤツは知っていたはずだ。この学園生活で完結するような効能の刻印でないわけがない)

巌窟王「断言はできない。だがヤツを信じてみる価値はある。俺はそう思う」
419 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/03(金) 19:06:54.35 ID:3FwcsTI/0
バルバトス滅の刃してくるので今日はなし! 狩るぞ!

貴様ァァァ! 逃げるなァァ! 鯖落ちで逃げるなァァァ!
420 :お前もバルバトスにならないか?  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/04(土) 20:58:09.42 ID:JuCWhHl10
最原「話は纏まったね。ナーサリーライムさんから興味深い証言も貰ったし」

ナーサリー「あら? そうだったかしら?」

最原「その刻印の効果を検証するにはまず使ってみなければならない、だっけ?」

ナーサリー「ああ、言ったわね。ちなみに使い方は簡単よ。それって多分、コマンドコードだと思うもの」

入間「こま……なに? コマシコード?」

ナーサリー「指令紋章、コマンドコード。つい最近カルデアで試験運用されているシステムよ。BBったらちゃっかりデータを拝借してたのね」

ナーサリー「攻撃を当てる、あるいは攻撃をすることによって効果を発動する簡易魔術で、能力は様々」

ナーサリー「自分自身の回復。相手への状態異常付与。その他、単純に攻撃力を上げたり特攻を付与したり……」

ナーサリー「あのBBがわざわざプレゼントしたものなら、多少効果が無茶苦茶でも不思議じゃないわ」

百田「聞けば聞くほど、それを作ったヤツは凄かったんだな」

百田「……いなくなって惜しいって思うぜ。俺も」

最原「さて。設問の内容は、なんだったっけな?」

モノクマ「……」ダラダラダラダラ

最原「僕が代わりに言おうか。キーボくんの人格と記憶を元に戻す方法の有無を答えよ。ある場合は証拠もご一緒に」

最原「でもさ、今言った通り、この証拠が本当に答えなのかは使ってみないとわからないからさ」

最原「……今ここで使わせてくれるよね?」ギンッ

モノクマ「ざなどぅ!」ビクウッ

茶柱「拒否ることは許しませんよ。設問として出したのはあなたです」

茶柱「今更、引っ込めるとなったら転子たちが納得しない……どころか、外にいる視聴者だって納得するかどうか」

アンジー「なんてったって、いくら魔術師がこの放送を見ていようが、この裁判は番組という軛からは逃れられない」

アンジー「逃れられているのならとっくのむかしにアンジーたちは死んでるだろうしねー?」

モノクマ「ふぁざなどぅ!」ビクビクンッ!

最原「さあ! モノクマ!」

巌窟王「すぐ使わせろ! 今使わせろ! 言い訳の余地はもうとっくにないぞ!」

巌窟王「貴様自身の設問ならば歪めることは容易だったろうが、これは視聴者からの設問なのだからなァ!」ギンッ
421 :バルバトスになると言え杏寿郎!  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/05(日) 20:50:18.86 ID:hm8aA+Yv0
モノクマ「……ぐ……ぐ、ぐ……!」ガタガタ

百田「おいおい。コイツは一体どういうこったよ」

王馬「この設問は最初から出来レースだったんだよ。モノクマは新世界プログラムごとキー坊が元に戻る可能性が霧散したことを知っていた」

王馬「だからこそこんな設問を堂々と出すことができた。俺たちに最後の最後で仲間を切り捨てさせるために」

最原「反撃の機会をくれたのはBBさんだ。あの世界でのモノクマは監視権限が使えなかった。BBさんがあらかじめセミラミスさんから没収してたから」

最原「それに、まさかあの短時間でアルターエゴのプログラムをコピーしただなんて思わなかったはずだ」

巌窟王「BBなら可能だぞ。そこそこ機転も利くヤツだからな」

最原「この刻印の効果が物凄く下らないものだった場合、逆に追い詰められるのは僕たちだよ」

最原「でももし! キーボくんの人格復元プログラムなら!」

夢野「後に残るのは選択肢だけ。人類をぶっ壊して出るか、可能性を信じて出るかの二択じゃ」

茶柱「活殺自在ってヤツですね。笑えますよ。この賭けに勝つだけで、転子たちは外の世界を逆にどうこうできる立場になる」

王馬「あっはっはっはっは! 笑える結末だよね! 散々俺たちを虐めてきた連中が、今度は逆に俺たちにビクつくんだ!」

王馬「結末はどうあれ、それ自体がこれ以上にない復讐劇だよねぇ!」

キーボ「……」

東条「乗ってみる価値のあるギャンブルね」

星「ふっ。思えば随分と遠くまで来たもんだ」

巌窟王「終わりだ、モノクマ!」スタスタ

モノクマ「あっ! 待っ……!」

巌窟王「待たない。外の世界と、才囚学園との決戦の舞台。勝者は俺たち――」

巌窟王「――才囚学園の復讐者だ!」ブンッ








キーボ「まだですね」ガシイッ

巌窟王「……!?」

巌窟王(攻撃を……受け止められた!)

キーボ「処理が巻き戻しになります」
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/05(日) 21:01:13.14 ID:O27KwM4nO
イッチの名前がアカザさんになっとるwww
423 :もうやめてバルバトスさん  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/06(月) 20:59:48.26 ID:zz66xPtL0
巌窟王「……巻き戻しだと? 何を言っている?」ギギギッ

巌窟王(腕がまったく動かん)

キーボ「早まり過ぎです。上部のモニターを見てください」

巌窟王「モニター?」

モノクマ「え? モニター?」



モニター『大正解! コングラッチュレーション!』テッテレー




巌窟王「……」

最原「……」

全員「……」

全員「何だってーーーッ!?」ガビビーンッ

百田「お、おい! どういうこったよ! まだ証拠を提示してねーよな!? それを逆利用してキーボを元に戻そうって話だったよな!?」

春川「モノクマ! どういうつもり!?」

モノクマ「え!? 何!? どういうこと!? 教えてえらえら偉い人!」キュッキュッキュー

モノクマ「ヒアウィ、ヒアウィ、ヒアウィ、ヒアウィゴー」チュキチュチュキチュチュキチュ

夢野「ダメじゃ! モノクマも動揺のあまりDJ化しておるぞ!」

白銀「動揺のあまりDJ化!?」ガビーンッ

最原「モノクマに視聴者の設問を無理やりどうこうする権限なんか無かったはずだ! あったら今ごろセミラミスさんを殺してる!」

最原「視聴者の設問を途中で切り上げることができる誰かがいたとしたら、それは……!」

巌窟王「外の世界の視聴者としか考えられない、か……」

巌窟王「……くは」

巌窟王「クハハハハハハハハ! ああ、愉快だ! そこまで追い詰めていたか、俺たちは!」ゲラゲラ

アンジー「笑ってる場合じゃないと思うけどなー」

巌窟王「クハハハハハハハハハハハハ……!」

アンジー「……?」
424 :バルバトスは虚しい生き物だ。悲しい生き物だ  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/07(火) 20:11:09.99 ID:uQULXhCP0
ナーサリー「認めちゃったわね? このプログラムが逆転の一手だって」ギンッ

最原「……!」

最原(……裁判場の雰囲気が変わった。違う!)

最原(裁判場に殺気が満ちている! どこから? いや、誰から!?)

最原(決まってる! こんな気配を人間が出せるわけがない!)

百田「……おい。息が詰まるぜ。ちょっと気配を緩めろよ」

ロムルス「……」ニコニコ

最原(だ、誰一人として改善しない! 何がそんなに嬉しいんだ?)

ナーサリー「認めちゃったのなら仕方がないわよね」

ナーサリー「……BBの残したプログラムが、本当にくだらないものだった可能性を自分で潰したわけだけども、どんな気分かしら?」

キーボ「……」

春川「……どういうこと?」

巌窟王「聖杯戦争を一度体感してみればわかる。魔術とはほとんど理屈のこじつけで万能の効力を発揮する異能だ」

巌窟王「先ほどセミラミスは学園の全権を掌握した自分のことを神だと自称していたが、とんでもない!」

巌窟王「この学園に神がいるとしたら、この学園を作り、試聴し、楽しんでいる者に他ならないだろう!」

ナーサリー「この場をやり過ごすためだとは言え、随分と軽はずみなマネをしちゃったわね」ニヤニヤ

ナーサリー「一度認めちゃったのだから、もう訂正できないわよ?」

ロムルス「……境界を跨いだな」

最原「巌窟王さん? みんな? 一体、何を言ってるの?」

巌窟王「クハハ! 今はわからなくてもいい」

巌窟王「……BBの遺産については心配するな。必ず活用する」
425 :私はバルバトスの存在意義がわからなくなってきた  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/08(水) 22:30:24.46 ID:ZHDf7UG10
最原(……ここまで言い切るなんて。彼らには一体、何が見えたんだ?)

百田「そっか。んじゃ任せるな」ケロリ

最原「さっきからちょいちょい軽いよ百田くん!」ウワァ!

百田「終一。ちょっとはアイツらの立場になって考えてみようぜ」

百田「俺は多分、大事な仲間が一人でも欠けたら夜に枕に泣き散らかすぞ」

最原「……うん。僕もそうだと思うけど……?」

百田「キレてるぜ。コイツら。たった今気付いたことだけどよ、ハナからブチっとな」

最原「!」

サーヴァント一同「……」

最原(当然だ……なんで気付かなかったんだ、僕は!)

最原(BBさんがいなくなったら一番怒るのは、どう考えても僕たちより先にこの人たちだろう!)

巌窟王「フン。そんなことはいい。俺たちは自分の身を心配していればいいのだからな」

巌窟王「……ともかく、これでだ」

巌窟王「問題の答えはすべて揃ったな?」ニヤァ

アンジー「モノクマが急に裁判のルールを変更、追加しなければだけどねー」

茶柱「よしてくださいよ。この局面で更にとなったら転子、流石に暴れますよ?」

獄原「モノクマ……!」

モノクマ「……ふうー」
426 :魔神柱こそこそ噂話 ◆SxyAboWqdc [Saga]:2019/05/09(木) 21:28:25.76 ID:N5+5XyyR0
ごっさ鼻血が出て怖くなったので今日は更新なし!
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/10(金) 00:59:29.88 ID:AZ2CM7xS0
お大事に
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/10(金) 09:51:42.05 ID:smaJpKiWO
それは怖い
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/10(金) 12:29:40.62 ID:9fKN0dgjO
漫画か何かで脳の血管が破裂だかして行き場を失った血液が鼻から出る(=手遅れ)ってのを見たな
430 :アァアア! 魔神柱がァ! 魔神柱が狩り尽くされている!  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/10(金) 21:12:33.18 ID:hoCMgH680
ビキイッ……

最原「!」

最原(周りを覆ってる白い植物が……動いた? いや、成長してる?)

最原(なんだろうこれ。今まで嗅いだことのない匂いがする。放射線とか出てないだろうな……?)

モノクマ「そこそこいい感じに根を張ってきたかなぁ。あと少しかも」

巌窟王「……」

モノクマ「そう睨まないでよ。ちゃんとオマエラの功績は評価してるからさ!」

モノクマ「うぷぷ。ここまでよく頑張りました。学園長、嬉しい!」オヨヨ

巌窟王「もう貴様は学園長でもなんでもない。こっちの赤松の膝枕でダウンしている真っ黒ボロ雑巾が学園長だ」

赤松(言い草酷ッ!)ガビーンッ

セミラミス「ぐー」スヤァ

モノクマ「さてと。それじゃあ、後のプランはたった一つ。この学園を出るか否か……に関してはとっくに結論が出ているからパス」

モノクマ「この学園を如何にして出るか。後に残ってる議論はそれだけだよ」

モノクマ「制限時間は……」





アト 0ジカン 40フン 56ビョウ




百田「意外と残ってるじゃねーか」

東条「そうは言っても、この残り時間が現してるのは私たちの寿命そのものよ」

入間「ああ。いい気はしねーよな」

モノクマ「さて! それじゃあ、すべての議論を終え、残すところは進路選択だけとなったオマエラにボクからプレゼントがあります!」

巌窟王「プレゼントだと?」
431 :アァアア! 魔神柱がァ! 魔神柱が狩り尽くされている!  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/11(土) 19:52:23.70 ID:kKGOIR3K0
モノクマ「しゃきーんっ!」バッ

最原(ん? 鍵だ)

モノクマ「はいぶすーっ!」ガチャリッ

最原(あ、手元の鍵穴に刺した)



ズゴゴゴゴゴゴゴゴ!


最原「!?」

獄原「裁判場が……!」

王馬「揺れて揺れ揺れあばばばぶぶぶぶぶぶ」ブルブルブルブル

百田「いやいくら揺れてもそうはならねーだろ! プリンか!?」ガビーンッ

白銀「なっとる! やろがい!」

巌窟王「何をした……!?」

モノクマ「本来なら、オマエラのことを見ている視聴者の顔をリアルタイムで映すためのギミックだったんだけどさー」

モノクマ「そろそろいいかなって」

巌窟王「……!?」

モノクマ「この密封性は偶然。本来、ここに魔術由来の何かを呼び出す気なんて無かったんだから」

モノクマ「でも実際には閉じ込めることができた。閉じ込めることができてしまった」

モノクマ「……さあ、概念の存在を汲み上げる器の完成だ。サーヴァントの強大な魔力を延々と注ぎ続けたらどうなる?」

モノクマ「それは膨大な魔力リソース。無計画に開放すれば外の世界を壊滅させかねない程の」

ナーサリー「……まさか」

モノクマ「人の抱えたあらゆる願いを叶える密室」

モノクマ「形而上のものを組み上げ、物質に変換する奇跡の産物。それをオマエラは一体、なんて呼んでる?」

モノクマ「巌窟王さんなら答えられるよね?」

巌窟王「……」


1.聖杯
2.聖杯
3.聖杯
432 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/12(日) 16:29:59.95 ID:c7Cfu39z0
巌窟王「なるほどな。魔力を溜めておける器に、相当量の魔力を注ぎ込めば一つや二つ程度、できるか」

ナーサリー「……肩入れした女神サイドにも問題があったわね。ごめんなさい、きっかけは私よ」

最原「え?」

巌窟王「この才囚学園は聖杯だ! 正確に言うなら、聖杯の内側となっている!」

最原「!?」

春川「正気で言ってる……? いや、聖杯の定義が魔術の世界ではどうなのかは知らないけどさ」

春川「もし本当にあんなものが存在するのなら、もうこの場の誰にも手が付けられないんじゃない?」

百田「伝承の上での聖杯と同じなら、不老不死だの願いを叶えるだの、スケールが大きすぎてピンと来ねぇよな」

百田「つーかそんなもんがあるんなら俺たちのことを無事に出してくれって願うだけに決まってんだろ」

巌窟王「おそらくだが、それは無理だな」

百田「あ? なんでだよ」

巌窟王「お前も聖杯の一部だぞ」

百田「は?」

巌窟王「モノクマも、白銀も、モノクマーズも才囚学園の校舎もこの裁判場に至るまですべてが聖杯だ」

モノクマ「そう! ニューダンガンロンパV3は変性する!」

モノクマ「現実を嘘で塗り替え、物語は歴史となる!」

モノクマ「偽物は本物となり、外の世界は丸ごとすべてオマエラの礎に変わる!」

天海「……バカげてる! いや、さっきまで人類をぶっ壊せるかもって議論してた俺たちに言えた義理じゃないのかもだけど!」

天海「モノクマ! お前は今! まさかそれを望んでるって言うんすか!?」

白銀「まさか……モノクマ、あなたは」

白銀「視聴者の味方ですら……なかった……!?」

モノクマ「うぷぷぷぷぷぷ……!」

最原(……裁判場の揺れが強くなっている! まさか、足場が壊れたりしないよな?)



ビキビキビキイッ!



赤松「むぐう!?」

最原「案の定壊れてるよーーーッ!」ガビーンッ
433 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/13(月) 19:58:43.54 ID:/Z60ZPA40
ドガラガラガシャアアアアアアアアアアアアンッ


入間「ぎゃあああああああああああ!? こ、これ落ちっ……落ちてっ、落ちてるだろおおおおお!?」

獄原「入間さん! みんな! ゴン太に捕まって!」

星「……なんだこれは! 裁判場の地下にこんな巨大な空間があったら……!」

東条「建築学の何もかもが成立しないはずよね」

茶柱「いや冷静に分析してる場合じゃっ……これどこまで落ちるんですかーーー!?」

王馬「死ぬーーーっ! ヒャッホーーーウ!」

春川「……!」

百田「ハルマキ! ハルマキ! 『今ならどさくさに紛れて殺せる』とか思ってねぇよな!?」

春川「……ちっ」

百田「思ってたんだな!?」ガビーンッ

真宮寺「これは……いくらなんでも穴が深すぎないかい?」

夢野「……」シーン

天海(気絶してる!)ガビーンッ

セミラミス「ぐー」スヤァ

赤松「んむぐぐがおおおおおおーーーッ!(特別意訳:この人まだ寝てるよーーーッ!)」

白銀「まさか底がない……?」

巌窟王「アンジー!」

アンジー「……!」

最原(気の遠くなるような時間だったけど、実際はそこまで経っていないはずだ。タイムリミットがあるんだから)

最原(でもそうやって落ちて落ちて落ちて落ちて、落ちた先で、気が付くと……)

モノクマ「はい到着です!」

最原「……ここは……」

最原(壊されたはずの校舎がすべて元通りになった、才囚学園……?)

最原「……違う。これは……この景色は才囚学園じゃありえない……」ガタガタ

最原(だって、そう。今、僕たちの周りには……!)





白銀「果ての壁が……ない……」
434 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/14(火) 21:04:40.71 ID:DcW6gtfh0
モノクマ「正確には、壁はあることにはあるんだよ。ずっと遠くに。霧状の壁的なものが」

百田「……おいおいおい。なんだよこれ。いくらなんでも広すぎんだろ……」

最原(時刻は深夜だけど、空にはあつらえたような満月があるのでちっとも暗くない)

最原(果ての壁があったその場所から、ずっと向こうまで草原が広がっていた。ところどころに花畑がある以外は本当に何もない)

モノクマ「現実ではありえない光景でしょ? その内に、オマエラのものになるかもしれない世界だよ」

巌窟王「なんだと?」

モノクマ「あの樹の仕組みは相変わらずよくわかんないんだけどさー、用意が十全なら世界を変えてしまえるんだって」

モノクマ「今見えている光景は幻。あるはずのない幻像。でもあの根さえ下りてしまえば話は完全に別になる」

白銀「教えてモノクマ。あなたは一体、何をするつもりなの?」

モノクマ「知りたい? 知りたい? なら教えてあげましょう! 一から一万まで!」

春川「一から十まででいいよ……」

モノクマ「人類史ダンガンロンパ化計画! それがボクが! 誰の意思でもなくボク自身が実行している計画の名前だよ!」ギンッ

最原「人類史……ダンガンロンパ化計画……?」

モノクマ「あの根を下ろして人類史を改変してフィクションに過ぎないダンガンロンパの世界で人類史を上書きしたいと思いますハイお終い!」

天海「説明が早すぎる!」ガビーンッ

巌窟王「バカな。この学園の嘘の記録を、外の世界の正史にするだと……? そんなことできるはずが……」

モノクマ「できないと思うんならそれでもいいよ。でも、あの根があれば本当にできそうだっていうのがボクの見解」

モノクマ「……ま、必要なものは色々あったんだけどね。サーヴァントをこの場に呼び寄せたりとか?」

ナーサリー「私とイシュタルとジャガーマンは自分の意思でこの学園に来たのよ? 呼び寄せられた気はないわ」

モノクマ「ロムルスさんは?」

ナーサリー「……あっ」

夢野「……そうじゃな? よく考えたら、なんでロムルスがこの場にいるんじゃ? ジャガーマンからもこやつの話は聞いたことがないぞ?」

ロムルス「ローマ故に」

夢野「全然わからん」
435 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/15(水) 18:58:07.16 ID:ya88okeu0
最原「いや。ローマが関係あるかどうかはわからないけど、方法自体はわかるよ」

最原「これに見覚えはない?」バサッ



ビクウッ


春川(ん。なんだろう。誰か今、ビクついたような……?)

百田「んん……? なんだそれ」

最原「研究論文。ざっくり言うと『学園からの脱出の可能性』について書かれてる」

最原「かなり個人的な研究だったみたいでさ。こっそり秘密裏に行われて、こっそり秘密裏に葬られたみたいだ」

夢野「葬られた……ってことは、要は失敗したってことじゃろ? 成功してたらとっくに全員で脱出していたか」

東条「さもなくば一人で脱出してそのまま帰ってこないか、ですものね。でも今の私たちは誰一人として欠けていない」

最原「でも部分的に成功したことはあった。だよね?」

??「……」ビクビク

最原「……とぼけなくていいよ。入間さん」

入間「おぎゃぱあっ!?」ガビーンッ

真宮寺「また入間さんか……相変わらず余計なことをしてくれるよネ」

入間「赤松よりはマシだろうがボケッ!」

真宮寺「まあそうだけどさ」

赤松「むが!?」ガビビーンッ

茶柱「みなさーん。流れ弾で赤松さんを殺さないでくださいねー」
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/15(水) 23:28:22.62 ID:kihX7cmIO
気がつくとゲロブタビッチ未満になっていた女
437 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/16(木) 21:53:25.91 ID:QViNFvHZ0
最原(ていうか落ちた後もまだ拘束されてるのか……)

最原「部分的には成功した、と言ったのはさ。要は穴を開けることには成功したんだ。向こう側に通れなかっただけで」

最原「で。その穴の向こうの世界って、どこだったと思う?」

百田「は……? いや、どこも何も、穴の向こうは穴の向こうだろ。俺たちが視聴者って呼んでる連中が住んでる……」

最原「半分正解。ナーサリーさんやBBさんとかも間違いなく視聴者には違いなかったしね」

ナーサリー「……まさか、とは思うのだけれども……」

ナーサリー「ねえ。まさか。まさかよ? その穴の向こうの世界って……!」

最原「巌窟王さんのホーム。巌窟王さんがカルデアと呼んでいる場所だよ」

巌窟王「!?」バッ

入間「ひ、ひい!? こっち見んな!」

最原「内容はこうだ。最初に巌窟王さんを召喚した魔法陣の応用。これを使って巌窟王さんが元いた場所に逃げられないかと入間さんは考えた」

最原「でもこの計画は様々な理由で頓挫した。まず穴を開けたはいいものの、入間さんはその向こうに行けなかった」

最原「穴の大きさの問題じゃない。なんらかの強制力が働いて、こちら側の人間は向こう側に行けないんだよ」

最原「ある程度のところまでは進めるらしいんだけどね」

巌窟王「それは……第一の学級裁判のときの!」




天海『さて。入間さんのアリバイは?』

入間『え、えーと俺様は……地下にいたぜ……?』

百田『あ? 何言ってんだ。作戦会議に来なかっただろ、テメェ』

入間『そっちじゃねぇ! 別の地下だ!』

最原『まさか……裏庭のマンホールの中のこと言ってるの? デスロードに通じてる』

入間『そう! それだ! 巌窟王が外からやってきた魔法陣はそっくりそのまま残ってたからよ!』

入間『それを開けて、俺様たちが向こう側に行けないかどうかの実験をしてたんだ!』




天海「……半分成功してたんすね!? ていうか今の今まで忘れてたっすよ!」ガビーンッ
438 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/17(金) 19:58:25.96 ID:TwI+MWRZ0
天海「じゃあ、つまりロムルスさんもその穴を通って……!?」

東条「待って。話がおかしいわよ。それって入間さんが秘密裏に行っていた研究を、モノクマか白銀さんが奪わないと成立しない話よね?」

王馬「学園全体を監視してたんだから奪うことくらい余裕っぽいけどなぁ」

最原「実際そうだったんだろうね。この論文にははっきりと『白銀さんに目撃された。妙な質問もいくつかされた』ってハッキリ書かれてる」

最原「そして……この論文を奪った白銀さんは、あるものをカルデアから持ち去った」

真宮寺「それは……?」

最原「セミラミスさん。正確に言うと、セミラミスさんが入っていたゲームだよ」

巌窟王「そうか……コイツの侵入経路もずっと謎だったが、入間の作った穴から入ってきていたのか」

ナーサリー「あくまで魔術の素人考えだけれども、その穴は『サーヴァントを呼ぶ道』と『巌窟王の転送経路』が混線した結果産まれたものね」

ナーサリー「いわば偶発的に誕生したちょっとしたポータル。でもあくまでサーヴァントを呼ぶための道である以上は……」

ロムルス「一方通行、ないしサーヴァントしか通れない特殊な道となっているはずである」

白銀「あのゲームを持ち去ったのは、ちょっとした偶然だよ」

白銀「……面白そうだなって思ったから、ちょっと貸してもらったんだ。全部終わったら巌窟王さんに返すつもりだったし」

白銀「ていうか勝手に持ち去るだろうし」

巌窟王「……」

アンジー「『いやあ流石にあれはちょっと……』って思ってる顔だよー」

セミラミス「今、ナルシスはカタルシスに……むにゃむにゃ」スヤァ

赤松(なんか変な夢見てる)

白銀「面白半分に新世界プログラムに組み込んでみたら、中には謎のアルターエゴはいるし、聖杯もあるし、手に負えないってわかったんだけどね」

巌窟王「何故デリートしなかった?」

白銀「居座られたから……しかもちょっと怖い勢いで権限を無理やり奪い取られたし……あのナチュラル横暴ムーブには従わざるを得ないって……」

巌窟王「……」

アンジー「『流石にちょっと同情する』って顔だねー」
439 :爆死の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/18(土) 22:18:09.75 ID:2QjooAtv0
邪ンヌピックアップで爆死したので今日はなし……ライネス嬢は大勝利だったはずなのに……
440 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/19(日) 10:09:17.80 ID:WH0vq5Gl0
百田「どうだロムルス。テメェは一体どうやってここに来たんだ?」

ロムルス「テルマエ用の入浴剤を探していた折、ふと目の前が真っ暗になった。おそらく背後から麻袋かなにかを被せられたのであろう」

ロムルス「襲撃犯が自分より遥かに小さい体躯であることだけはわかったので、暴れるのも気が引けた」

ロムルス「故に、流れに身を任せ、気が付くと……」

巌窟王「あのロケットの中に鮨詰め状態になっていたということか……」

最原「でもなんでロムルスさんを……?」

モノクマ「あの樹の説明書に書いてあったんだよね。根を下ろした後は、あの樹を育てる王のようなものが必要だって」

モノクマ「強力な権能を持っていればひとまず王として成立するらしいから、それっぽいのをあっち側の世界で物色することにした」

モノクマ「それで! たまたま見つけたのが、入浴剤を探していて隙だらけだったロムルスさんだったってわけ!」

ナーサリー「……まあ、どんな空間であれそれを支配する王さまはいた方がいいわよね」

モノクマ「今となっては、別にセミラミスさんでも構わないよ。権能自体は持ってるし、権力に関してもボクから奪い取った」

モノクマ「むしろ動機がある分、彼女を説得した方がいいかなとも思うよ。まさかここまで生き残るなんて思わなかったから予定外だけど」

巌窟王「貴様の考えるダンガンロンパ化した異界の王にか?」

モノクマ「あの樹の力を使えば、延命くらいは充分可能だよ。いや? なんならサーヴァントとして復活することもできるかもね?」

赤松(……確かにそれを聞いたら、セミラミスさんにも動機がありそう)

モノクマ「で。ロムルスさんはどう?」

ロムルス「今日から才囚学園の理事長となったローマである」キラキラキラキラキラ

夢野「もうやる気になっておる! タスキかけておる!」ガビーンッ

東条(『今日から理事長』……?)

ロムルス「というのは当然冗談である」ポイッ

最原「あ。捨てた」

ロムルス「……ただし。この場にいる生徒たちを守れるというのであれば、選択肢の一つとして考えてもいいだろう」

茶柱「さ、流石にこんなトンチキ計画を成立させるわけにはいきませんよ! 気遣いはありがたいですけど!」
441 :バ滅の刃の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/20(月) 19:19:12.10 ID:rKGz9wvR0
モノクマ「ボクの言う通りにすれば、キーボくんを簡単に止められるけど?」

キーボ「!」

最原「……なんだって?」

モノクマ「だってさー。今は確かに『視聴者の意思』でロムルスさんやナーサリーさんのサーヴァントの力を大部分没収してるけど」

モノクマ「あの樹を使えば少なくとも、ロムルスさんかセミラミスさんがサーヴァントとして復活するんだよ?」

モノクマ「これでサーヴァント級の力を持ったキーボくんを制圧できる駒が巌窟王さんと合わせて二人」

モノクマ「見る限り、キーボくんの戦力は『サーヴァント一騎程度なら余裕を持って倒せる程度』だから……」

白銀「もう一体のサーヴァントがいれば、制圧力が逆転……!」

獄原「楽にキーボくんを助けられるってこと!?」

巌窟王&最原「!?!?」ガビーンッ

モノクマ「以上が、ボクがオマエラに捧げるプレゼント」

モノクマ「『最原終一の進路』と『巌窟王の進路』に並ぶ第三の選択肢! 『モノクマの進路』だよーーーんっ!」ギンッ

百田「ざけんなっ! 一体これまでどれだけテメェに苦しめられてきたと思ってる!」

百田「今更テメェの用意した進路なんざ選ぶわけねーだろ!」

モノクマ「感情論でボクの進路をけっぽるのは自由だけどさー……現実問題、あと二つの進路って博打じゃん?」

モノクマ「どっちにしろキーボくんを最終的に制圧することが前提になってるけど、それをしくじれば……」

星「……俺たちは一巻の終わり。死んで終了。ジエンドだ」

星「なるほど。確かに聞いた限りではモノクマの進路にもメリットはあるか……?」

百田「星。本気で言ってるわけじゃねーよな?」

星「……フン。俺は思い知っただけさ。この学園の中で戦うことの虚しさをな」

星「何もかもが嘘でフィクション。俺も、お前さんらも、モノクマも」

星「……同じなんだ。俺たちも、モノクマも。この学園にいる時点でな。白銀を庇っているお前さんならわかると思うが?」

百田「……」ギリッ

真宮寺「……嘘を本当にできる、か。それが本当なら僕もこの進路を推したいところだネ」

春川「真宮寺……!」

モノクマ「うぷぷ。そうだよねー。真宮寺くんの場合、嘘になったら困るものがたっくさんあるもんねー」

モノクマ「いいんじゃない? ならボクはキミの意思を尊重して――」






真宮寺「だが断る」

モノクマ「なっ!?」ガーンッ
442 :新番組:アマデウス滅の刃  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/21(火) 21:27:05.25 ID:ZmEJUkGe0
真宮寺「ククク……美味しい話には裏がある。そんな言葉に僕が引っかかるとでも?」

モノクマ「……」

春川「……どうしたの真宮寺。『本当なら僕もこの進路を』ってくだりに関しては完全に本気っぽく聞こえたけど」

真宮寺「そこに関しては間違いなく本気だヨ。でもさ、よく考えて」

真宮寺「最原くんも巌窟王さんも、自分の進路のデメリットを懇切丁寧に説明してくれたよネ?」

真宮寺「じゃあモノクマは?」

百田「……んん。言ってない……か?」

百田「いや。絶対に言ってねぇぞ!」

モノクマ「……うぷぷ」

獄原「そっか! 真宮寺くんはそのデメリットに気付いたんだね! だからあっさりその進路を突っ撥ねたんだ!」

獄原「それで! そのデメリットって?」ワクワク

真宮寺「いやさっぱりわからないんだけど」

獄原「さっぱり!?」ガビーンッ

真宮寺「でもネ。すべての設問が終わってタイムリミットが迫るこのタイミングで、二つの進路よりも優れているように聞こえる進路が出るってさ」

真宮寺「どう考えてもおかしいヨ……何かあるって考えるのは至極当然でしョ?」

最原「人間には急なタイミングで都合のいい選択肢をチラつかされると『その選択肢を選ぶデメリット』の方を優先的に排除しにかかる心理がある」

王馬「詐欺の常套手段だよね。幸運のツボを売りましょうって言って相手が買うかどうか迷ったタイミングであえて引くと……」

王馬「『買うことのデメリット』の方を優先的に排除して、かなりの人数が引っかかるんだよ。『やっぱり買う。買わせてくれ』ってね!」

王馬「いや俺はそんな詐欺やったことないけど!」ケタケタ

夢野「あえて言わんでいい。余計に疑わしくなる」

東条「私たちが焦って冷静な判断能力を失うタイミングでの有利な条件」

東条「……なるほど。この疑念こそがある意味で『モノクマの進路のデメリット』ね」

ナーサリー「物語を歴史に改変するような危険物よ? 下手を打つと、私たちカルデアが後であなたたちを排除しにかかる未来もあるかもしれないわ」

最原「時間的に、もう『モノクマの進路のデメリット』は『謎』のままにしておくしかない」

最原「……僕の進路の方も出た後の可能性に賭けるって点ではモノクマと似たり寄ったりだけど、モノクマの進路は度を越してるよ」
443 :サリエリ「私は限りなく天才に程遠い音楽家だ」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/22(水) 19:54:45.86 ID:sH1fosxm0
モノクマ「……あれ?」

モノクマ「あれ? あれ? あれれれれれ? 本当にボクの進路を蹴っちゃうのー?」

天海「くどいっすよモノクマ! 選択肢としてぶっちぎりでアンフェアなんだから、モノクマの進路だけは圧倒的に論外っす!」

モノクマ「んー。じゃあこんなメリットを更に提示しようか。この進路だと巌窟王さんとお別れしないで済むよ?」

巌窟王「何?」

アンジー「……」

最原「……えっ」

モノクマ「あの樹が成長した暁には王に選んだサーヴァントだけでなく、一人程度のサーヴァントを完全治癒させるには充分なリソースが得られる」

モノクマ「更に、この空間だとサーヴァントが王なんだよ? なら今の才囚学園と同様に、新しい世界もサーヴァントがいて当たり前の空間になる」

モノクマ「ねえ? このメリットなら揺らがないかな?」

最原「……」

最原(正直ちょっと揺らがないでもないけど……)

最原「ありえない! だって巌窟王さんには帰るべき場所がある!」

最原「僕たちに帰る場所が無くっても、彼にだけはそれが存在する! だから論外だよ!」

アンジー「ないけど?」

最原「ん? アンジーさん、今なんか言った?」

アンジー「彼、もうどこにも行けないけど?」

巌窟王「……!? アンジー! よせ!」

最原「……?」






アンジー「彼はもう終わり。この学園生活が終わったら、どこにも行けない」

最原「……は?」
444 :マーリン「久しぶりの運動は堪えるねぇ。背中が痛い」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/23(木) 20:37:29.79 ID:VJDdNc0F0
巌窟王「……」

巌窟王「……」カチカチ

天海「ゲームやり始めた!」ガーンッ

白銀「ていうかそれもやっぱり私のゲーム機だよねぇ!? 勝手に触らないで!?」

最原「なんでサーヴァントのみんなは誤魔化すのがとにかく下手なんだろう……いや今はそんなことは後回しでよくって」

最原「アンジーさん! どういうこと!?」

アンジー「BBから聞いた。彼はもう、帰る場所がないんだって」

最原「なんで!?」

ナーサリー「……ああ。なるほど。そういうこと……伯爵、あなた『変容』しちゃったのね」

巌窟王「……」

ナーサリー「もう既にあなたは巌窟王ではない別の何かに変わりつつある。だから無理なのね」

アンジー「……」




BB『巌窟王さん。あなたはもう今の私と同じなんです』

BB『カルデアのアヴェンジャーと才囚学園のアヴェンジャーは明確な別個体になりつつある』

BB『カルデアには霊基が登録されているから再召喚は容易ですが……』

BB『ここにいるあなたはもうどこへも行けない可能性があるんですよ』

巌窟王『……』

アンジー『……え』




最原「よくわからない……よくわからないけども!」

最原「巌窟王さん! どうして!? それを僕たちに、もっと早い時点で相談してくれれば別の可能性だってあったはずなのに!」

巌窟王「キーボの復旧方法を見つけたようにか?」

巌窟王「ないぞ。今回ばかりはどうしようもない。これはまず間違いなく貴様の専門外だからな」

最原「……!」

最原(考えろ! 考えろ! なにか……なにか裏技は……!)

入間「……お、俺様の論文を使うのはどうだ!?」

最原「!」

夢野「おお! そうじゃ! それがあったのう! 消える前にカルデアに戻ればよい! 後はどうとでもなるじゃろう!」

巌窟王「無理だな」

夢野「んあ? なんて?」

巌窟王「……才囚学園のものは、強制力が働いて向こう側に行けないのだろう?」

入間「え? あ、ああ……それは間違いないけどよ……」

巌窟王「問題の根が同じなのだ。俺は才囚学園のアヴェンジャーとなってしまった。だからその方法でも俺は帰れない」

夢野「……い、入間……? 別の理論は……ないのか?」

入間「……」
445 :ジーク「猫関連のツイートばかりしていたらbotと認識された」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/24(金) 21:08:10.27 ID:QGQlKApD0
入間「ヒャーーーッハッハッハ! ねぇよ! そんな都合のいいもん、都合よく持ってるわけねーだろうが!」

夢野「んあ!?」

入間「で、でもよ……これまでなんとかしてくれただろ?」

入間「こ、今回もなんとかしてくれるよな!? ダサイ原!」

最原「……」

入間「……最原ぁ……!」

巌窟王「もうやめろ入間。なんて声を出している」

入間「……」

巌窟王「……人知れず葬った、か。なるほど。『俺をカルデアに帰したくないがため』に論文を隠滅したのだな?」

巌窟王「そうでなければ、俺が帰れないという話になった途端にすぐ論文を使う発想に至れない」

巌窟王「……それをよく、この場で! クハハ! 随分と成長したものだな!」

真宮寺「……巌窟王さん……」

巌窟王「真宮寺! 貴様もだ! モノクマの進路をよく真っ先に突っ撥ねた! 強い誘惑であっただろうに!」

真宮寺「……!」

最原「……」

最原(ああ。そうか……この二人に共通することがある。アンジーさんを殺そうとしたことだ)

最原(この局面で、それを忘れたかのような発言……強い激励の言葉……)

夢野「よせ巌窟王……そんなっ……しょんなこと……!」ズビッ

入間「は、はは……なに言ってんだ。おい、ブスロリ。なんで泣いてんだよ……天才の俺様にとってはなんてことねぇ言葉だろ」

入間「『遺言』受け取ったみてぇな反応してんじゃねぇよッ! やめろ、泣くな! お、俺様も……我慢できなく……ぶうっ」ボロッ

真宮寺「……ありがとう。巌窟王さん。今の言葉だけで僕は前に進める覚悟ができた気がするヨ」

巌窟王「そうか! そんなつもりはなかったがな!」ギンッ
446 :三蔵「蹴鞠? この玉を思い切り蹴ればいいの? えいっ」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/25(土) 20:26:35.43 ID:4WOHXbzG0
百田「……死ぬってことか? この学園がぶっ壊れたら、巌窟王は」

巌窟王「概ねその理解で問題ないな」

百田「ざ……ざけんなっ! それならモノクマの進路だって、その一点だけで充分検討可能だろうが!」

巌窟王「絶対にNOだ! 何をバカなことを言っている!」ギンッ

百田「ッ!」

巌窟王「アイツの言う通りになることだけは俺が許さない……! どう考えてもあの樹は異質だ!」

巌窟王「万が一カルデアを敵に回せば貴様らはどっち道お終いだぞ! 俺のホームを甘く見るな!」

ロムルス「……無論、それでもいい。足掻けるだけ足掻きたいというのであればローマが力を貸すが」

巌窟王「囀るな、神祖。この進路だけは取らせるべきではない」

ロムルス「確かにカルデアには実績がある。もしもこの空間がカルデアに睨まれれば、速やかに切除にかかってくるだろう」

ロムルス「だが――忘れたか? 人類最後のマスターは、彼らと同じ程度には『柔い』」

巌窟王「……!」

ロムルス「条件は同じなのだ。ぶつかればどちらが勝つかは、やってみなければわからない」

茶柱「……やってみなければわからない、ですか。いいですね。それ。転子好みの言葉です」

巌窟王「茶柱!」

茶柱「……でも」

茶柱「転子は最原さんの選んだ道に従います」

最原「!」

茶柱「どれも同じくらい正しく聞こえます。いえ、きっと全部正しいんです」

茶柱「この世に本当の正しさが存在するとすれば、それはきっと自分の心の中だけ」

茶柱「……嘘じゃない、本当の真実があるとするなら、自分の感情だけです。それなら……転子は……!」

茶柱「最後の最後まで、信じたい人を信じたい!」

最原「……」

最原(ああ、そうか……真実から目を逸らさないことを選んだ僕は……)

最原(もう絶対に立ち止まれないんだな)
447 :レジライ「ハッハァ! 判断が遅ェ!」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/26(日) 19:57:43.02 ID:lv1jNBst0
巌窟王「さて。最原。俺を失望させるなよ……と言っても、こういうときは必ず決めるからこその貴様だったな」

巌窟王「俺を救う方法はあるか?」

巌窟王「モノクマの進路以外の方法で、俺が生き延びる術はあるか?」

最原(……そんなものは……)

最原「ないよ」

最原「……そんな都合のいいもの……あるわけないだろ……!」

百田「終一……!」

夢野「最原! お主、これまで頑張ってきたじゃろ!? キーボを救う方法だって見つけた! 白銀だって庇ってみせた!」

夢野「お願いじゃ! お願いじゃから、そんなことを言わんでくれ!」

夢野「……助けられるじゃろ……お主に無理なら、もう……誰にも……」グスグス

赤松「……」

入間「……上っ等じゃねぇか……もうテメェみてぇな役立たずに頼んのはやめだ」

夢野「入間……?」

入間「俺様はモノクマの進路を選ぶぜェ! 誰が何と言おうがもう知るかボケェ!」

王馬「……ふーん。それが入間ちゃんの答え? 対して巌窟王ちゃんはなんて言う?」

巌窟王「絶対にやめろ。やめた方がいい。死にたいのか?」

入間「死ぬような目には何回も遭ってきただろうが……今更すぎんぞクソが!」

星「この進路の場合、そこのロムルスが手伝ってくれるんだろう? それならいくらでもやりようがある」

赤松(……セミラミスさんは……どう反応するだろうな。多分、味方にはなってくれるだろうけど)

赤松「……」

モノクマ「さて! それじゃあ! 残り時間が少なくなってきたところで、最後の投票のルールを説明しましょう!」

最原「投票……?」

春川「最後……って?」
448 :赤兎馬「ディルムッド殿が蹴鞠に首吹っ飛ばされて死にました!」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/27(月) 20:26:29.50 ID:De0yy7Gg0
モノクマ「ルールは今までの投票と同じ! ただし、今回はクロではなく今まで出てきた三つの進路の中から一つを選んでもらいます!」

モノクマ「そして、今回の投票の特別ルール! これが一番大事だから絶対に聞いてね!」

最原「特別ルール……?」

モノクマ「白銀さん含め、巌窟王さんを除いた生徒十六人全員の選んだ進路が同じ場合にのみ投票が有効!」

モノクマ「それ以外の場合、強制的にモノクマの進路に従ってもらいまーす!」ギンッ

獄原「んなぁっ……!?」ガーンッ

春川「……最悪。そんなのアンタだけが圧倒的に有利じゃん」

モノクマ「ああ、安心して。タイムリミットになるまで投票は何回でも受け付けるから」

モノクマ「それ以外の場合っていうのは平たく言って『タイムリミットまでに進路が決まらなかった場合』のことだよ」

巌窟王「バカめ! 貴様のルールなぞ今更知ったことか! 勝手にアレをぶっ壊してしまえばいい!」

巌窟王「ぶっ壊して……?」キョロキョロ

巌窟王「……??????」

アンジー「あー。そういえばさっきから、あの白い根が見えないねー」

百田「あ? んなバカな! あんな目立つもんがそうそう簡単に消えるわけが……」キョロキョロ

百田「……本当にねーぞ!? どうなってんだ!」ガビーンッ

モノクマ「最原終一の進路か、巌窟王の進路を選んだ場合にのみ出してあげる。今はボクが隠してるから見えないだけだよ」

白銀「……最後の最後まで忌々しいマスコットだったよ。あなたは」

モノクマ「うぷぷ」

最原「……」

最原「もうこれ以上は時間の無駄だね」

巌窟王「そうだな。俺も同感だ」

最原「……十六人全員の意思を統一することが勝利の条件なら」

巌窟王「復讐を遂げるための前提なら!」






最原&巌窟王「そのルールのまま突っ切るまでだッ!」ギンッ
449 :酒呑童子「なんかめっちゃ烏が喋りかけてくるんやけど」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/28(火) 19:30:56.54 ID:gukK1isB0
最原「みんな! 一回目の投票だ!」

東条「……もうやるの? 意思統一も何もできていないと思うのだけど」

最原「それでいい! みんなの主張が、今どこにあるのかを調べるためだけの投票だから!」

巌窟王「その後で、別の主張を持つ連中を押し込めて押し込めて押し切ってやる! 『スクラムのように』な!」

百田「おっしゃーーー! 気合入れていくぜ! まず最初の投票だ! モノクマ!」

モノクマ「了解しましたー! それではみなさん、お手元のスイッチで投票してください!」

モノクマ「……あ。赤松さんにはこの特別性モノパッドを渡すから、そこで投票してね。スイッチに手が届かないし」

赤松「むぐ……」ジャラッ

モノクマ「投票の結果、選ばれる進路はどれなのか!」

モノクマ「さあ! 張り切って行ってみよー!」バァーーーンッ



ガシャコンッ



最原(あ。モノクマの後ろから巨大液晶が出てきた……)

最原(時間が惜しい! 投票はできるだけバラけないでくれ!)


最原終一の進路
・最原
・春川
・百田
・茶柱
・白銀
・天海

巌窟王の進路
・赤松
・アンジー
・東条
・真宮寺
・王馬


モノクマの進路
・入間
・星
・夢野
・獄原

無効票(投票放棄)
・キーボ


最原「……!」

最原(もっ……物凄いバラけてる! これを統一しなきゃなのか!?)ガビーンッ

巌窟王「投票の内訳が出るのか。薄々勘付いていたことだが、こうなると普段の投票とは別物だな。何が『今までの投票と同じ』だ」
450 :ダヴィンチちゃん「嗅ぐとめっちゃクラクラするお香作ったよ!」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/29(水) 22:09:18.85 ID:I1hdYtNZ0
百田「この意見をどれか一つに統一しなけりゃ、モノクマの進路直行か」

百田「……ん? 投票放棄……? キーボ?」

キーボ「……」

王馬「おおっと。これはかなーり厄介かな……キー坊が投票を放棄したってことは、視聴者が投票を放棄したってことと考えていいんだよね?」

最原「構わないよ。最後の最後にキーボくんを僕たち全員で相手すればいい」

巌窟王「Wave1でモノクマの進路を始末。Wave2で最原の進路を始末。Wave3でキーボを始末……余裕だな」

天海「い、いやいや……この中で視聴者にとって一番マシなのは最原くんの進路っすよ?」

天海「反対に、巌窟王さんの進路を選んだら外の世界は滅茶苦茶になる。それが一番マズイことじゃないんすか?」

巌窟王「そうでもないのだろう。最原の進路の場合、脱出した生徒の中には魔術的武装を解除されていないキーボも含まれている」

巌窟王「それで才囚学園の生徒全員が外の連中に交渉を仕掛けようというのだ。魔術師にとっては死んだ方がマシなくらいの屈辱だろう」

東条「それは魔術師の都合でしょう? 他の多くの視聴者はすべて魔術とは無関係の一般人のはず。それがどうして……」

巌窟王「今のキーボを動かしているのは外の世界の総意」

巌窟王「そして、総意とは良くも悪くも力の強い物が動かしやすい」

王馬「要は力任せのインチキってことか……魔術関係なしのノーマルの意見も無視してはいないだろうけど」

王馬「でも魔術師の総意に勝つほどじゃないってこと、だよね?」

ナーサリー「随分と強引な手ね。そんなことをしたら『魔術を知らない勢力を操作する別の力が存在する』ってことを大々的に知らせることになる」

ナーサリー「つまり『魔術師が実在する』ってことを自分から話すも同然なのに」

ロムルス「それだけ外の世界が追い詰められているという証左であろう」

ロムルス「……この戦果は誇れるものだぞ?」ニコニコ

最原「……ただ僕たちは議論を重ねてきただけなのに、外の世界は魔術の秘匿もあったものじゃないくらいグズグズか……」

最原「そう思うと、ちょっと面白いね。面白いけど!」








モノクマ「キミたちの未来を愛してるぅー!」待った!

巌窟王「ああ、そうだ! もっと面白くしてやろう!」

最原「時間が無い……? だからって何も変わらない! 僕たちが!」

巌窟王「俺たちが!」




――絶対に勝つ!
451 :意見□立! 議論サバイバル!  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/30(木) 19:58:06.34 ID:WhD6gJDo0
モノクマ「それでは! 最後の最後でバージョンアップした変形裁判場の出番となりまーす!」

モノクマ「上手く使って、意見を統一してね!」

百田「どうする。終一!」

最原「決まってる! 一番容認できないモノクマの進路から分解する!」

最原「最初の標的は『彼女』だ!」

春川「私が最原と一緒に行くよ。他は手分けして別の連中説得してて」

百田「……全員で行った方が早くねぇか?」

茶柱「アホですね! 転子たちは追い詰めたいわけじゃないんです! 全員で行ったら威圧的極まりない!」

天海「ま、そういうことっすね。白銀さんは俺と一緒で」

白銀「……本気?」

天海「本気」ニコニコ

白銀「……勝手にすればいいんじゃない?」プイ

赤松「……むぐ……」

赤松(この鎖さえ解ければ……!)

セミラミス「……ふう。あー、よく寝た」ジャラリ

赤松「えっ……? あ! 鎖が解けた!」

セミラミス「最低限は回復した。後は好きにしろ」

赤松「……!」

セミラミス「どのような結果になろうと、我はそれを必ず見るぞ。無様は晒すな」

赤松「うん。うんっ! 当然だよ! 行ってくるね!」




意見対立

意見"対"立

意見"■"立




452 :意見乱立! 議論サバイバル!  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/31(金) 20:52:39.48 ID:ecZuec5i0
意見乱立

議論サバイバル



どの進路に向かうべきか?

Wave1/3


最原終一の進路!
・最原
・春川



モノクマの進路!
・夢野






サバイバル開始!
453 :VS夢野秘密子  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/05/31(金) 21:05:30.66 ID:ecZuec5i0
夢野「『犠牲』の上に成り立つ大勝利なんぞウチは御免じゃぞ……!」

最原(僕が!)

最原「巌窟王さんは自分のことを『犠牲』だなんて思ってない! 僕も絶対そうだとは思わない!」

夢野「勝ったときは『巌窟王』も一緒じゃ! じゃなきゃ何のために戦ってきたのかわからんぞ!」

最原「春川さん!」

春川「モノクマの進路を取ったとき、『巌窟王』がどんな顔してるのか想像できない?」

夢野「イヤじゃ! ウチは魔法使いなんじゃ! 誰も彼もが『笑顔』になって欲しい! 誰も欠けてほしくないッ!」

最原(それでも……僕は!)

最原「その進路じゃ誰も『笑顔』にならない! ならないんだよ、夢野さん!」







最原&春川「それは違うぞ(よ)ッ!」

全論破!

夢野「うぎゃああああああああああああああっ……!」




ガシャガシャガシャンッ パリィィィィンッ


COMPLETE!
454 :魔法使い夢野秘密子  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/01(土) 20:08:25.32 ID:A5Rm3Q9B0
夢野「……」

夢野「ああ、わかっておる。わかっておるんじゃ、そんなこと! こんなことをしても巌窟王は喜ばないってことくらい!」

夢野「でもお……!」

最原「……夢野さんは最初から今までずっと『みんな』の味方だったよね」

最原「凄いよ。僕だって白銀さんの私怨を優先させてた期間があったのにさ。夢野さんはずっと、みんなのことが大好きだった」

春川「それでもずっと一緒ってわけにはいかないでしょ」

春川「……誰だって最後は一人だよ。自分が死ぬか、自分以外が全員死ぬかの違いでしかない」

春川「最後の最後にはみんな死ぬ。みんな別れる。だから今を精一杯生きるんでしょ」

春川「……アイツの場合、別れの時期がすぐそこってわかってるだけ幸運だよ。だからさ!」

最原「せめて引き留めることはしないであげよう。巌窟王さんがいなくなっても僕たちは真っ直ぐ立っていられる」

最原「そう証明してあげるのが、僕たちが巌窟王さんにできるすべてなんじゃないかな」

夢野「……証明……証明、か。くくく……!」

夢野「そうじゃなあ。ウチもアイツに唯一、むかっ腹が立ってたことがあったのを思い出したわい」

夢野「ウチは魔法使いじゃ。誰が何と言おうが絶対にそうなんじゃ。守られっぱなしの立場ももう飽いた!」

夢野「別れが避けられないというのなら……せめて!」

夢野「巌窟王に勝ってみたい! ウチらのことを舐め腐ったあの『クハハ笑い』を曇らせてやりたい!」

最原「夢野さん……!」

夢野「待たせたのう最原よ……! ウチの恩讐の炎はまだ朽ちとらんぞ!」ズギャアアアアアアン!
455 : ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/02(日) 20:15:39.25 ID:x3DUsFow0
風邪こじらせたんで今日はなし
456 :二巡目の投票  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/03(月) 20:36:31.49 ID:FpsrgvaN0
モノクマ「そこまで! 一回議論をストップして! 二回目の投票に行きますよー!」

モノクマ「さあ! 今度こそ票は統一できたかなー!?」

百田「終一! 夢野の説得はできたか!?」

最原「大丈夫! キチンと仲間になってくれたよ! そっちは?」

百田「……ダメだな。割とかたくなだ。寝返ったヤツは出なかったが、引き抜けたヤツもいないぜ」

最原(ということは……次の投票の結果は……!)





最原終一の進路
・最原
・春川
・百田
・茶柱
・白銀
・天海
・夢野

巌窟王の進路
・赤松
・アンジー
・東条
・真宮寺
・王馬
・獄原
・入間
・星


モノクマの進路
・なし


無効票(投票放棄)
・キーボ



百田「んなあっ……!?」

最原(二巡目の投票でモノクマの進路完全崩壊……!?)

茶柱「……巌窟王さんの方の手がこっちより早いですよ! どうなって……!」

巌窟王「クハハハハハハハハ!」ビュンビュン

アンジー「にゃはははははははははははー!」ビュンビュン

茶柱「アンジーさんの席に巌窟王さんが同席してるーーーッ!」ガビーンッ

最原「狭そう……っていうか実際狭いだろうな、あれ」
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/03(月) 23:07:44.58 ID:v3YdUokiO
そりゃ巌窟王の意思を尊重するならこうなるな
458 :思わぬ協力者  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/04(火) 20:25:59.49 ID:ZIN9ihpu0
天海「説得する口が一つ増えれば、議論においての手数が増える……っていうのは単純な構図すぎっすけど」

白銀「巌窟王さんの進路の責任を巌窟王さん自身が取るって安心感が説得の大きな力になったみたい」

夢野「ウチらの進路でも巌窟王の命に関してはどうしようもないのは同様じゃが……確かにそこだけは最原の進路にはない強みじゃな」

白銀「あとあれ。あまり関係ないけど赤松さんの方にも同席者がいてさ」

春川「まさかあのウザ女帝が来てたりしてないよね……!?」

ネコアルク「にゃー!」

ネコアルク2「にゃー!」

ネコアルク3「にゃー!」

ネコカオス「にゃー!」

赤松「もぐがごげごごごげがっ……!」モミクチャモミクチャ

最原「ネコアルクにもみくちゃにされてるーーーッ!」ガビーンッ

天海「セミラミスさんに『ないよりはマシだろう。連れていけ』って言われたらしいっすよ。これまた善意百%の笑顔で」

春川「ない方がマシでしょ。何考えてんのあのアホ女帝」

白銀「ね? 関係ないでしょ?」

茶柱「どうでもいいの間違いですね!」

夢野「相変わらず赤松発言力全損状態に変わりないのー」

最原「……ともあれ、これで次の敵は決まったかな」

百田「ああ。次の敵は巌窟王の進路を推進する側だ。総力戦ってことでいいんだよな?」

最原「……」

巌窟王「……」






最原&巌窟王(引導を渡してやる――!)
459 :議論サバイバル再突入!  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/05(水) 20:55:12.03 ID:ZMrweXlf0
議論サバイバル



どの進路に向かうべきか?

Wave2/3


最原終一の進路!
・最原
・春川
・百田
・茶柱
・白銀
・天海
・夢野


巌窟王の進路!
・赤松
・アンジー
・東条
・真宮寺
・王馬
・獄原
・入間
・星





サバイバル開始!
460 :VS巌窟王の進路  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/06(木) 19:54:15.68 ID:P7ZUVSVh0
星「これは『清算』だ。やられたことに対価を払うのは当然の発想だろう?」

最原「百田くん!」

百田「何が『清算』だ! 命の帳尻が合ってねぇって話はさっきしたろ!」

入間「俺様たちは先に進むんだよ! 誰にだって『邪魔』させねぇ!」

最原「白銀さん!」

白銀「絶対に許さないよ。何度だって『邪魔』してあげるから」

王馬「俺はどっちでもいいんだよねー。『楽しい』方に投票してるだけでさ」

最原「天海くん!」

天海「こっち側も結実さえすれば『楽しい』ことがいっぱいあるかもっすよ」

真宮寺「とても正気だとは思えないネ。外の世界のどこに『期待』できるの?」

最原「夢野さん!」

夢野「外の世界にしておるのではない。ウチらの未来に『期待』しておるのじゃ!」

東条「私は巌窟王さんの『意思』を尊重してあげたい。彼の依頼なら、どんな理不尽でも!」

最原「茶柱さん!」

茶柱「自分の『意思』に耳を傾けてください! 最後の最後なんですから!」

獄原「怖いよ……『自分』の意見で自分の未来を変えるのが、凄く怖いんだ……!」

最原「春川さん!」

春川「甘えないで。どんな局面でも最後に頼れるのは『自分』だけなんだから」

赤松「……ぶっ……もが『希望』むぐ……」ニャーニャーニャーニャー!

最原(僕が?)

最原「ご、ごめん。『希望』って部分しかまったく聞き取れなかったよ……」

アンジー「楓はねー。これが学園のみんなの『希望』が通る進路だって言ったみたいだねー」

最原(……僕が!)

最原「多くの誰かを犠牲にしてでも勝ち取る『希望』なんてないよ!」








最原終一の進路チーム「これが僕(俺)(ウチ)(転子)(私)たちの答えだ(っす)(です)(じゃ)!」

巌窟王「違う、違う違う!!」反論!



バリッ バリバリバリガシャアアアアアアアアアアアンッ
461 :ロムルス「ム? ナーサリーライムは何処か?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/06(木) 20:21:04.02 ID:P7ZUVSVh0
巌窟王「クハハハハハハ! やはりな! 理屈の上で貴様に勝つことは不可能か!」

巌窟王「いや、そんなことはこの学園生活でイヤになるほどよぉぉぉぉぉぉくわかっているとも!」ギンッ

最原「やっぱり出てきたね。巌窟王さん」

巌窟王「当然だ。そして時間もないので宣言させてもらおう」

最原「……?」

巌窟王「『俺たちは投票先をもう絶対に変えない』とな」

最原「!!!!!!!」

巌窟王「理屈! 弁舌! 論破! この土俵で戦うから俺たちは負ける!」

巌窟王「ならもうやめだ! 俺たちは対話を放棄する!」

百田「んなっ……ことしたらモノクマの進路確定に……!」

巌窟王「ならないのだよ……! 何故なら、巌窟王の進路が相手にしているのは『最原終一の進路』なのだからなァ!」ギンッ

百田「あ……?」

春川「……そうか。最原の性格上、巌窟王の進路の票がもう動かないと確定したら」

最原「まあ、諦めるしかない、かな。モノクマの進路に向かうのだけは僕にとっても最悪の結末だ」

最原「だから多分、折を見てみんなに『巌窟王さんの進路に投票しよう』って提案するだろうね」

百田「!」

白銀「それは……私たちの足元を崩すようなマネだね。ここまで連れてきた最原くんが、今度は巌窟王さんの進路のためにみんなを説得するんだもん」

天海「多分俺たちは簡単に説得されるっすよね……もうそれしかないと最原くんが言ったのなら。時間もないっすし」

夢野「最原……!」

最原「……」








最原「何の切り札もないと思った?」ニヤァ

巌窟王「……何ッ!?」
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/08(土) 17:15:48.43 ID:Ejb7jayJ0
ところで何でモノクマはカルデアに入れたん?
463 :セミラミスは無言で何かを組み立てている……  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/08(土) 19:24:05.29 ID:iItk3JVm0
巌窟王「……!」

巌窟王(いや。慌てるな! そもそも話さなければいい話……これ以降は口を開かないのが得策!)

最原「アンジーさんには巌窟王さん。赤松さんにはネコアルク。生徒についた同席者……」

最原「僕たちの陣営にいないとでも思ったの?」

巌窟王「……!?」

百田「……いるのか!? 俺たちの方にも協力者が!」

ネコアルク「どこにゃ?」キョロキョロ

ネコカオス「どこだ?」キョロキョロ

百田「どこにいるんだーーー!?」キョロキョロ




バッサァ!



ナーサリー「ここにいたのよーーーッ!」バァーーーンッ

百田「ア゛ーーーーーーーーッ!(汚い低音)」ガビビーンッ

天海「百田くんのジャケットの下から出てきたーーーッ!?」ガビーンッ

春川「!?!?」

ナーサリー「うふふふ……裁判が変形する直前に百田の服の中に本形態になって潜り込んでいたのだわ」ニコニコ

百田「全然気付かなかった……とてもビックリしたぜ……」ドキドキ

巌窟王(バカな! ナーサリーライムだと!? この局面でヤツに何ができるというのだ!?)

ナーサリー「この局面で私に何ができるのかしら?」キョトン

巌窟王(本人もわかっていないようだが!?)ガビーンッ

最原「僕の『記憶力』を貸すよ。だから一冊の本に化けてくれないかな」

ナーサリー「?」

最原「……それで証明してみせる!」
464 :セミラミス「くくく……いい出来だ……」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/09(日) 22:03:28.10 ID:ZJbkrt5J0
赤松(本……? そんな衝撃的な効果のある本なんてあったっけ?)

ナーサリー「ん……? ああ! この本ね! 装丁は違うけどカルデアにもあったわ!」

最原「お願い!」

ナーサリー「了解よ!」




ポンッ




赤松「……むぐうっ!?」

赤松(あれは!)




最原『実はさ。巌窟王さんと会ってから、なんとなく気分が明るいんだ』

最原『なんとかなるんじゃないかって思えてきたんだよ』

赤松『え?』

最原『……実は図書室から、モンテ・クリスト伯を借りて来たんだ』

最原『結構面白くってさ。現実に起こったことなんだ、と思うとちょっと残酷なんだけど』

最原『この人と同一人物なんだ、って思うと、なんとなく心強く思えてきちゃって』

赤松『……』





赤松(そうか……思い出した! そうだ! そうだよ! 最原くん、あの本を読んでた!)

ナーサリーライム「ナーサリーライム・モンテ・クリスト伯エディションよー!」テッテレー!

巌窟王「!?」

最原「みんな。少し耳を貸してほしい。とある復讐鬼の話をしよう」

最原「僕たちを助けてくれた優しい復讐鬼の結末を!」
465 :ロムルス「何を組み上げている?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/10(月) 17:19:44.85 ID:rIw4ynFr0
――時は十九世紀半ば。とある船乗りの青年に過ぎなかった彼は無実の罪を着せられた。

彼はすべてを失った。将来を誓い合った婚約者。平穏な日々。ヒトの善性すらも。

やがて同じく無実の罪を着せられたファリア神父と出会い、導かれ、脱獄を果たした彼はモンテ・クリスト島の財宝を手に入れた。

以降、男はモンテ・クリスト伯として自らを貶めた者たちへの復讐を開始する。





入間「……いや、古典作品はそんなに知ってるわけじゃねーけどよ……それ本人が散々言ってたことじゃねーか」

入間「今更聞いて『まあビックリ』ってなる要素なんかどこにも……」

最原「ないよね。そうだよ。ここまでは本人が嬉々として語る部分」

最原「でも彼は僕たちに言って聞かせてない部分がある。調べればわかることだからっていうのもあるけど……」

最原「この局面では少し不都合だからね」

星「不都合?」

真宮寺「……あっ」

巌窟王「……」ダラダラダラダラ

最原「裁判で重視されるのは議論だけじゃない。『判例』だってそうだ。判例っていうか僕が示そうとしてるのは前例だけど」




――血塗られた復讐劇の果てに、男は、自らを構成していた悪を脱ぎ捨てた。



生徒全員「!!」



――彼は再び得たのだ。失われてしまったはずの尊きものを。


――想いを。愛を――ヒトの善性を。




最原「そう。巌窟王だからって復讐劇を最後まで成し遂げる必要なんかない」




男の名は……モンテ・クリストであることを捨てた、彼の名は。



最原「……そうだろう! 僕たちを導いた凄絶の復讐鬼――!」

最原「"エドモン・ダンテス"!」
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/11(火) 00:22:01.72 ID:yfBneXPuO
違う、違う違う!
467 :セミラミス「ニンテンドーラボだ!(満面の笑み)」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/11(火) 20:27:53.73 ID:LpoqyOnw0
巌窟王「……!」

最原「反論を放棄したのは失敗だったって、後悔しても遅いよ?」

最原「ここで言いたいのは巌窟王さんの前歴。『復讐劇を途中でやめた』という過去だよ」

巌窟王(コイツ……コイツ、コイツ、コイツコイツ!)ギリイッ

最原「言いたいことはわかるよ。伊達に一緒にいたわけじゃない。確かに巌窟王さんは召喚した直後の尋問で、僕にこう言っていた」





最原『本名、エドモン・ダンテス。復讐の最後の最後において愛と人間性を取り戻した男……』

最原『ここまでで何か間違っていることは?』

巌窟王『俺はエドモンではない!』

最原『え。モンテ・クリスト伯爵なのに?』

巌窟王『モンテ・クリストだからこそだ! 最後の最後に愛を得た男ではなく、この身は永遠の復讐者』

巌窟王『なればこそ、俺は間違ってもエドモン・ダンテスなどではない!』





最原「つまり復讐者として召喚された以上、エドモン・ダンテスとして救われたという結末が今のあなたには、ない」

ナーサリー「サーヴァントですもの。全盛期で召喚されるという法則上、充分ありえる話ね」

最原「あなたが巌窟王として存在している限りは、あなたはエドモン・ダンテスではありえない……」

最原「……でも、さっきこう言ってたよね。巌窟王は『別の何かに変わりつつある』って。『だから帰れない』ってさ」

巌窟王「!!」ビクウッ

最原「……具体的にどんなふうに変性してきてるのか詳しく教えて欲しいな?」

巌窟王「……」ダラダラダラダラ

最原「……予想はつくけど。巌窟王さんは自分のことをエドモン・ダンテスではないと言った」

最原「逆に言えば『エドモン・ダンテスに変わること』は『巌窟王ではなくなること』だし」

最原「更に言えば『巌窟王はエドモン・ダンテスに戻ったという前例』がある以上……」

最原「『巌窟王が何か別の物に変わる』という事実はそっくりそのまま『前例通りになっている可能性』を示すはずだ」

最原「……さて。巌窟王さんがだんまりだから、巌窟王さんの進路を取ったみんなに質問したいな」

赤松「……」

最原「そこにいる彼はかつて復讐をやめることができたんだよ」

最原「だから『復讐鬼の彼のための行動』がそっくりそのまま『復讐劇の続行』だとは限らないんだ」

最原「それを念頭に置いて、再度自分の進路を見直してほしい!」






最原「本当にその進路でいいの!? 巌窟王さんですら復讐をやめたのに!」

巌窟王「黙れ黙れ黙れ黙れ……黙れェ!」ギンッ
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/11(火) 21:53:04.82 ID:CnLkc4wJ0
セミラミスさんは役にたたないみたいですね……
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/11(火) 22:42:26.16 ID:lDh4rXheO
セミ様此の期に及んで遊ぶ気か
470 :ロムルス(保存用と……書いてある、な……)  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/12(水) 20:23:16.43 ID:W6XT/FgZ0
巌窟王「貴様……そこまでして勝ちたいか!?」

巌窟王「今ここにいる俺の存在を! 否定してでも勝ちにきたいか!?」

巌窟王「外の世界はそこまで価値のあるものか!?」

最原「逆だよ。今ここにいる巌窟王さんを正当に評価するための推理なんだ。それとも、何か間違ってた?」

巌窟王「……」

最原「限りなくそれっぽい理論を並べ立てたんだけども……」

ナーサリー「彼自身、否定する材料がないはずよ。今の自分が誰かなんて絶対にわかりっこないわ」

ナーサリー「だってマスターから一度も『名前』を呼ばれてないサーヴァントですもの!」

巌窟王「……アンジー……!」

アンジー「……はー……」

アンジー「喋っちゃったね?」

巌窟王「ぬ?」

アンジー「……対話したら負けるから口を閉ざすんじゃなかったっけー?」

巌窟王「!!」

アンジー「……」

巌窟王「……クハハ! アンジー、俺は」

アンジー「もういいや」ドカッ

巌窟王「バカなァァァァァァァ……」ヒュウウウウウウ

百田「ええーーーッ!?」ガビーンッ

最原(突き飛ばして落としたーーー!?)ガビビーンッ






セミラミス「さて! それでは思う存分遊んでくれよう! ニンテンドーラボ、如何程のものか――」

巌窟王「あああああああああああ!」グシャアッ

セミラミス「我のToy-Conがーーーッ!」ガビーンッ

ロムルス「お前のではない」
471 :セミラミス「どけっ!(蹴)」 巌窟王「がはあ!?」 ロムルス(躊躇がない)  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/13(木) 20:29:59.25 ID:SAuv7Moy0
アンジー「……あーあ……台無しだなー、もー」

入間「おいおいおい! 巌窟王を落としちまってどうすんだよ!」

星「一応無事みたいだが」

赤松(セミラミスさんに蹴り転がされてる……)

白銀(気のせいかな。あの段ボールの残骸、見覚えがあるような……)

アンジー「負けでいい」

東条「……え?」

アンジー「アンジーが言うよ。絶対に彼は言わないだろうからさー」

アンジー「彼はもう負け。この進路はここでお終い。少なくともアンジーの票は終一の進路に入れるよ」

入間「!!」

東条「……いいの? それで、本当に」

アンジー「もうこれ以上は無理だよ。彼が口を開いちゃった時点で負け確定に近いしさー」

アンジー「……みんなも終一の票に鞍替えしてくれると嬉しいんだけどなー」

真宮寺「ここまで引っ張ってきた巌窟王さんの負けをマスターの夜長さんが認めた」

真宮寺「……それなら僕も、意地を張る必要はないかもネ」

入間「……ダサイ原。一つ聞かせてくれよ」

最原「なに?」

入間「なんであっさり巌窟王を助ける方法はないって言ったんだ?」

入間「……人間は消極的事実の証明はできない。『ないこと』を完全には証明できない」

入間「キーボの修繕方法や、赤松と真宮寺が破壊したパソコンの中身を探してたときはもっと必死だったよなァ……?」

獄原「……そっか。それなのになんで巌窟王さんの救出方法に関してはあっさり諦めたんだろう」

最原「理由は簡単かな。『どっちにしろ同じ』だから」

最原「……巌窟王さんが助かろうが助かるまいが、僕たちの目の前から消えるって結果は一緒でしょ。帰れるか帰れないかの違いだけだ」

獄原「は? い、いや! 確かにそれは一緒かもだけども……!」

最原「あともう一つ。これが一番大きな理由だ。彼は『助けてほしい』って思ってない。言えないとかじゃなくて本気で思ってない」

最原「……気がする」

赤松(気が!?)ガビーンッ
472 :巌窟王「……(ティッシュを鼻にIN)」 ロムルス「鼻血か」 巌窟王「蹴られたのでな」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/14(金) 21:49:38.01 ID:zsTgBbuW0
最原「経験則と現状を鑑みて、だけどさ。本気で助かりたいと思ってたのならもっと前の段階で気付いてたよ」

最原「だってこのままじゃどこにも行けないって事実を隠す理由はどこにもないよね?」

夢野「それは……そうじゃの。アンジーにでも助けを求めて助かる方法を大々的に探しておったはずじゃな」

夢野「それをしていないということは最初から助かる気がまったくないとしか考えられぬか」

茶柱「……どこにも行けないって辛そうな響きに聞こえますけど。それなのに彼は何故、その点に関してはノーコメントなんでしょう」

アンジー「悪くないって思ってるみたい」

茶柱「?」

アンジー「……今のイシュタルや、消滅したBBと状況は同じなんだって」

アンジー「今ここにいる『彼』がいなくなるだけで、彼のホームで再度『アンジーたちを知らない彼』を呼ぶ手筈は整ってる」

アンジー「消えるのは『今ここでアンジーたちと一緒の時間を過ごした彼』だけなんだってさー」

百田「つまり……数字の上で見れば差し引きはゼロ。損も益もない状態に戻るだけってことか?」

百田「でもよ! だからって消えてもいいって考える理由には弱いだろ!」

春川「サーヴァントといつまでも一緒にいるわけにはいかないでしょ」

春川「少なくとも私たちと一緒にずっと……ってのはナシ」

百田「ハルマキ!」

春川「心情で考えるのはよして! ダメでしょ、どう考えても! 今は利害が一致してるから一緒にいるだけ! それが大前提!」

春川「現状ですら魔術師関連で散々ヒイヒイ喘いでるんだよ! 核弾頭級の負債を無暗に抱えるわけにはいかない!」

王馬「あーらら。春川ちゃんってば本当に現実主義だね。ここまで来ると悲観主義だけど」

春川「……」

夢野「……すまぬ。お主にばっかり辛い指摘させて……」

春川「やめて。殺されたいの?」

ナーサリー「カルデアに帰すのも、何度も言うけど本当に無理よ」

ナーサリー「仮にあの状態の巌窟王をカルデアに引き込める可能性があったのだとしても」

ナーサリー「私たちの傍にいるのはカルデアの復讐者であるべきだわ。そうでなければ戦えない。マスターと一緒に歩めない」

最原「……もし、万が一巌窟王さんを延命できたとして、この有様じゃ彼の居場所はどこにもない」

真宮寺「どん詰まり……ってことだネ」

アンジー「だから、悪くないって思ってるんだってば。そんな悪いことばかり考えてないんだってさー」

真宮寺「?」
473 :巌窟王&セミラミス「何をする貴様ァ!」 ロムルス(ハーモニーである)  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/15(土) 20:56:59.83 ID:51lRNPIm0
アンジー「終一と一部分だけは考え方が一緒だよ。この学園で起こった出来事のすべてが悪いことだったなんて思ってない」

アンジー「自分自身の存在が歪むような出会いと経験なら、それはきっと悪いだけのものであるはずがない」

アンジー「この学園での思い出を他ならぬ自分だけで独占できるのなら、それはきっといいことだ」

アンジー「……悪いことなんかであってたまるかって思ってるんだと思うよー」

最原「……」

赤松「……むぐぐっ……」ベリベリ

ネコアルク「にゃー……」ヒューッ

ネコカオス「あー……」ヒューッ

赤松「ぶはっ! やっと話せるようになった!」

百田「お。赤松。議論ならもう終盤だぜ」

赤松「わかってるよ。もう私たちの負け。最原終一の進路の勝ちでいい」

赤松「でも最後に最原くんに推理してほしいことがあってさ」

最原「え? なに?」

赤松「セミラミスさんはさっきなんて言いかけたのかなって。ほら」




セミラミス『別に命は重くもなんともないぞ? 質量に直して考えてみよ。どう計算してもゼログラムだ』

セミラミス『人が命を惜しむのは、命そのものが惜しいからではない。本当に恐れているのは……』




星「そんなことも言ってたな……途中で言うのをやめたんだったか」

最原「……流石にセミラミスさん本人に聞かないとわからないけどさ。多分こう続ける気だったんじゃないかな」

最原「本当に恐れているのは『命の上に乗っているものが無くなることだ』って」

春川「……」

最原「思い出とか、絆とか、快楽とか。そういう命あってのものが無くなるのが怖いんだ」

最原「だからそれが命が無くなっても消えないことが証明できたのなら……例え全部じゃなくって、一部だけだったとしても」

最原「もうそこまで恐れることは特にないって言いたかったんじゃないかな」

赤松「……言いそうだなぁ。後で確認してみる」

赤松「あの下の方で巌窟王さんと大人気なく言い争ってる、ちょっと怖い女帝サマに、さ」






巌窟王&セミラミス「こっちの台詞だァ!」

ロムルス(またハーモニーである)
474 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/16(日) 18:43:29.46 ID:SOuSdg690
ユガ・クシェートラ……空想切除完了……クッソよかった……

燃え尽きたんで今日ちょっと無理……ラクシュミーの育成もあるし……寝かせてくれ……
475 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/17(月) 22:02:32.05 ID:+O8DlL780
巌窟王「ふん! まあいい。こんな言い争いにかまけている余裕はないからな!」

セミラミス「多少は大人になったか。謝罪は?」

巌窟王「すまなかった!」バァーーーンッ

セミラミス「誠意が足りんがまあよかろう!」ドォーーーンッ!

巌窟王「……まさかアンジーが俺を突き落とすとはな……腹立たしい。おそらくこれで俺の進路は完全敗北だろう」

巌窟王「見上げてみれば……遠いな。だが小さいという気はなんとなくしない」

ロムルス「……」ニコニコ

巌窟王「その微笑ましいものを見るような笑顔をこちらに向けるな」

セミラミス「くくく……感慨深いか? 癪に障るが、気持ちはわかるぞ」

巌窟王「……俺はアイツらを導けたのだろうか」

セミラミス「さてな。だがあれもこれもと介入し続けるのはサーヴァントとしてもマナー違反だ。このくらいでちょうどいいと思うぞ」

セミラミス「……さて。あの聖女のことは我もそこそこ好きではないが、一つだけ意見が合うことがあったな。ふと思い出しただけだが」

巌窟王「?」

セミラミス「死者(サーヴァント)が生者を導くなどおこがましい」

巌窟王「!」

セミラミス「……いや? 流石に貴様のことを全否定する気はない。あくまでふと思い出しただけだ。この言葉も我の本意ではない」

セミラミス「ただ『それは言い過ぎだが、スタンスとしては我に近しい』と思っただけなのだ」

セミラミス「我らはサーヴァント。今を生きている者、どこかに向かおうとしている者の背中を押すだけでちょうどよい」

セミラミス「その結果、連中が心底絶望して落涙するのを見るのもよいし……」

セミラミス「勢い余って世界を救ったりしたら傑作だろう?」クスクスクス

セミラミス「我は背中を押すだけ。押した結果、あやつらがどうなるかを我は楽しむ。期待する」

セミラミス「……こういう楽しみは貴様にはできぬか? 言ってはなんだが大分一般的な趣味嗜好であろう?」

巌窟王「……戯言を。世界を救うだと……? そんな大したこと、アイツらは微塵も考えていないだろう」

巌窟王「そら。最後の戦いだ。俺はあれを見届ける。今はそれでいい」
476 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/18(火) 21:21:57.73 ID:VT1t03HO0
最原終一の進路
・最原
・春川
・百田
・茶柱
・白銀
・天海
・夢野
・赤松
・アンジー
・東条
・真宮寺
・王馬
・獄原
・入間
・星

巌窟王の進路
・なし

モノクマの進路
・なし


無効票(投票放棄)
・キーボ




最原「仕上げをしよう」

最原「……外の世界の総意を、こちら側に傾ける!」

キーボ「……」

最原「考えようによってはこれはチャンスだよ」

最原「直接、視聴者に僕たちの声を届ける最後にして最大のチャンス」

百田「ああ。絶対にモノにしてやろうぜ」

茶柱「最大級の援護をします! だから」

最原「うん。僕たちの手で、僕たちの未来を切り拓く!」ズギャアアアアアンッ
477 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/19(水) 19:47:21.64 ID:LFTW/sOY0
ナーサリー「ただいまー」ヒラヒラ

セミラミス「戻ったか。大儀であった」

ナーサリー「え。別にあなたのために頑張ったわけじゃないのだけれども。なんで当然のように自分が指示した風に労っているの? 恥を知らないの?」

セミラミス「何故急に毒を吐いた!?」ガビーンッ

ロムルス「専売特許を奪われたか」

セミラミス「我は確かに毒を使うが毒舌ではない!」

ロムルス「それよりナーサリーライムよ。もう援護はしなくて大丈夫なのか?」

ナーサリー「その辺りは、そこの伯爵に聞いてみればわかるわ。どう思う?」

巌窟王「……いや。必要はないな」

セミラミス「ほう。その心は?」

巌窟王「ヤツらは必死に戦ってきた。ヤツらだけがこの地獄の学園における真の当事者だった」

巌窟王「ただの傍観者たる外の人間がいくら束になったところで――」






キーボ「……!」

最原「これでッ……!」

全員「終わりだーーーッ!」



ガシャアアアアアアアアアアアンッ



COMPLETE!




巌窟王「最原たちに……アンジーたちに勝てるはずがないだろう」
478 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/20(木) 23:42:48.21 ID:wDTxaBfz0
百田「あっ……か……勝った?」

王馬「おおー。やったやった。派手に吹っ飛んでったねーキー坊」

最原「……時間! 残り時間!」

赤松「もう確認する手間も惜しいでしょ! 早く投票しよう!」

茶柱「泣いても笑ってもこれが正真正銘、最後の投票です!」

アンジー「押し間違いがないよう注意しよー! それじゃあ行っくよー!」

百田「いっせーのーせでいくぞ!」

真宮寺「え? 今更合わせる必要……ああ、もういいヨそれで」




「いっ!」


「せーっ!」


「のーっ!」


「せっ!」ガチンッ




モノクマ「……」

夢野「あわばばばばば……頼むぞー。今度こそ全会一致であってくれー」ガタガタ

最原(どうだ! どうなった!? 何故こんなに間を取る!? 僕たちは間に合わなかったか!?)

最原(ああ、違う。長いと感じるのは錯覚かもしれない。時間が短いのかも判別できないけど。心臓の音だけが強く聞こえる)

モノクマ「……結果発表ーーーッ!」ガシャコンッ

最原「あ……!」
479 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/21(金) 19:50:14.80 ID:8GukGS+D0
最原終一の進路
・最原
・春川
・百田
・茶柱
・白銀
・天海
・夢野
・赤松
・アンジー
・東条
・真宮寺
・王馬
・獄原
・入間
・星
・キーボ

巌窟王の進路
・なし

モノクマの進路
・なし





百田「……やっ――!」

最原「やっ……たーーーっ!」

天海「全会一致……最後の最後で……!」

白銀「……みんな! 空見て! 樹! 樹!」



ズッ ズズズッ……


ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



星「ああ。間違いないな。あの樹だ」

真宮寺「あとはアレを裁断して、キーボくんを復旧し、壁に穴を開ければすべてが終わりだネ」

獄原(……あれ? 目の錯覚かな。あの樹、宇宙から生えてきてるような気がするんだけど……?)

春川「……で。モノクマ。結局タイムリミットはどうなったの? かなり余裕がないことだけはわかってたけどさ」

モノクマ「んとねー。十秒くらい」

百田「ああ。マジで危ないところだったな! んじゃああと十秒で俺たちは避難して、あとは巌窟王たちのサポートを……」

モノクマ「十一、十二、十三、十四、十五……」

赤松「……あれ?」

獄原「変だな。なんでカウントダウンじゃなくてカウントアップしてるんだろ」

最原「……もう手遅れだからかもしれない……! この分なら投票そのものは有効だけど!」

アンジー「……ッ!」

最原「あと十秒くらいって意味じゃない! タイムアップしてから十秒くらいって意味だ!」




ズガァァァァァァァンッ!
480 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/22(土) 23:22:09.37 ID:yKvq+kYL0
「……けよ……!」

最原「……」

「……目を……開け……」

最原「……ぶっ……がっ……ごほっ!?」

最原(何が……起こった? 耳が痛い。真っ直ぐ立っていられない……)

最原(……いや。どうやらもう立っていないみたいだ……平衡感覚が狂いまくって、目の前の光景すら真っ白にしか見えない)

最原(自分の呼吸がまともなリズムで行われていないことに気付いたのはちょっと時間が経ってからだった)

最原(苦しい。苦しすぎて涙が止まらない……!)

ドンッ

最原「がはあっ! はあっ……はあ!?」ゴホッゴホッ

最原(肺を誰かに思い切り叩かれた。その勢いでやっとまともな呼吸を取り戻す)

最原(目の前がやっと開けてきた……!)

ロムルス「お前たちに再度告げよう!」

ロムルス「目を開けよ! まだ終わってはおらぬ!」

最原「……地、面……僕たち、席から落ちたのか!?」

最原(ん? なんだろう。自分で言ってて凄く違和感がある。あの激音が響いた瞬間、何か見えたような……)




アンジー『……!』

巌窟王『クハ……ハハハハハ……!』




最原「……もしかして巌窟王さんに」

春川「そうだね。アイツに攻撃される寸前に全員地面に引き落とされたみたい。凄いスピードだったから全員まだ酔ってるよ」

最原「道理で気分が最悪なわけだよ! あ、僕の肺を叩いたのって春川さん?」

春川「茶柱」

茶柱「……よ、よかった……どうにか無事みたいですね……」ホッ

最原「ありがとう。助かったよ」

最原「……本当に物凄く強くなっちゃったなぁ。キーボくん」





キーボ「……」ドドドドドドドドドド
481 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/22(土) 23:47:56.63 ID:yKvq+kYL0
最原「……巌窟王さんは……あそこか」

最原(少し離れた場所で、月を背にホバリングしているキーボくんを眺めていた。傍らにはセミラミスさんもいる)

巌窟王「セミラミス。仕込みはどうなっている?」

セミラミス「厳しいな。まずはあの樹を裁断しないことには始まらぬ。我が仕込んだのは書き換えられて新品になった才囚学園ではないのだからな」

セミラミス「あの樹さえ裁断すれば才囚学園は元のボロ状態に戻るはずだ。すべての話はそこからだな」

巌窟王「そうか。それはよかった。安心しろ、すぐに戻る」

セミラミス「……貴様が裁断するのだろう?」

巌窟王「いや。キーボにとってもあの樹は邪魔なはずだ。そうでなければ投票しない。故にアイツは俺たちよりも真っ先に」






ザァァァァァァァンッ




キーボ「……切除、完了」ジャキンッ

巌窟王「あの樹を叩き折る」

セミラミス「ふむ。壮観だな」

最原「巌窟王さん!」

巌窟王「……」

最原「後は任せて……いいんだよね?」

巌窟王「愚問だ。俺にしかできないだろう。アレは」

アンジー「『たち』だよー?」

巌窟王「……!」

巌窟王「……クハハハハ! 愚かなのは俺も同じか!」ケラケラケラ

巌窟王「ロムルス! アンジーは連れて行くが、それ以外の生徒はすべて守れ!」

巌窟王「お誂え向きの結界宝具があるだろう!」

ロムルス「……私(ローマ)を誰だと思っている。私(ローマ)である! すべて! すべてを守ってみせよう! 我が愛し子たちを!」

ロムルス「すべては我が愛に通ずる(モレス・ネチェサーリエ)!」キンッ


ズゴゴゴゴゴゴゴゴッ


天海「これは……まさか! ローマ建国神話の……弟レムスを誅したときの国境騒動! その再現宝具っすか!?」

ロムルス「うおおおおおおおおおお!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ボコッ

最原「あ。柵が出てきた」

ロムルス「ふうっ。終了である」フー

天海「えっ」

ショボい柵「」チマーンッ

天海「……」

天海「えっ?」ヌボーンッ
482 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/22(土) 23:59:27.61 ID:yKvq+kYL0
夢野「ん、んあーーー! これはやばい! 物凄くやばいぞ!」アタフタ

天海「ろ、ロムルスさぁーーーんっ!? あのっ、これっ、なんかの悪ふざけじゃ」

ロムルス「普段はもう少し派手な見た目である。が、今は大した魔力がないのでこれが限界だ。許せ」

白銀「……」

白銀「あ。私たち、死んだねこれ」

天海「諦めが早すぎるーーーッ!」ガーンッ

キーボ「ターゲット、ロック。エネルギーチャージ」シュインシュインシュイン

天海「あばばーーーっ!? なんか明らかにこっちに向けて大技放つ感じーーー!」ガビーンッ

天海「に、逃げ……!」クルッ

天海「……」ピタッ

最原「……まだみんな立って歩くのも間々ならないよ。酔ってるからさ」

天海「あ、死んだ」

キーボ「シュート!」ズガアアアアアアアアアアアアアアンッ

天海「うわあああああああああああああああああっ!?!?」

ロムルス「……なにを恐れることがある」



ドォォォォォォォンッ



天海「……?」

ロムルス「グレードが下がっているのは『見た目』だけである」

ナーサリー「結界としての防御性能は疑う余地もないのよ!」ニコニコ

天海「……今……見えない壁に阻まれて……あんな強力な攻撃が!」

ロムルス「ローマ!」ビシイッ

天海「ロ、ローマァーーーッ!」ビシイッ
483 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/23(日) 00:08:52.17 ID:kHtaFi3U0
夢野「いやウチは最初から結界の防御性能の話なんぞしておらん! そこに不安はない! そこじゃなくて!」アタフタ

最原「……?」

春川「ロムルス! 今すぐ結界を解除して! 物凄くマズイことになってる!」

真宮寺「……どうしたの?」

王馬「さっき鎖のジャラジャラ音がしたの気付かなかった?」

最原「鎖……鎖?」

最原「……!」キョロキョロ

百田「……あ、ぐ、あーーーッ! やっと復活だ! 本調子には程遠いけどよ!」ガバリッ

百田「あー、くそ耳が痛ェ! どんなスピードで移動したらこんなことに」ピタッ

百田「……あれ? 赤松どこ行った?」





全員「……」

全員「……!!!!!!!!!!!!」





赤松「入れてーーー! 中に入れてーーー! 死んじゃう! このままだと私死んじゃうからーーー!」ドンッドンッ

全員「ハブられてるーーーッ!」ガビビーーーンッ

最原「鎖のジャラジャラ音……ってことは、犯人は考えるまでもなく!」

セミラミス「……」ニヤニヤ

春川「……アイツやっぱり殺した方がよかったね」

王馬「今からでも遅くないんじゃない? 目だけで人を殺したりできるでしょ、春川ちゃんなら」
484 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/24(月) 20:39:17.92 ID:Rkkks7Tb0
最原「でもよかった。下手したらさっきのキーボくんの砲撃で火傷しててもおかしくなかったし」

赤松「火傷はギリギリしてないけど物っ凄く熱かったよ! 見てこれ! 毛先がクルンってなってる! ストーブに近づきすぎた猫のヒゲみたい!」クルン

茶柱「思ったより遥かに危ないですね! 運が悪ければ焼死してましたよ!」

春川「何してるのロムルス! 早く!」

ロムルス「……」

獄原「……え。悲しそうな顔して黙っちゃったよ?」

ナーサリー「えっとね? 一度解除して、赤松を中に引き込んでから再度宝具を発動というプランはかなり難しいわ」

ナーサリー「だって二回目の宝具を発動するだけの魔力が残ってないのだもの」

獄原「じゃ、じゃあ危険度が高いことは間違いないけど、巌窟王さんに守ってもらおうよ!」

東条「……残念なのだけれども……それも難しそうだわ」



ガキンッ ドカッ バキイイイインッ ドシュウウウウウッ



巌窟王「クハハ……クハハハハハハハハ!」ボオオオオッ

キーボ「……!」ドドドドドドドド

獄原「……攻撃で精一杯。最低限の防御の機会は全部アンジーさんのために使ってるね……」

東条「赤松さんにまで回す余裕がないわ。あの様子だと」

セミラミス「くっ……考えれば考えるほどに愚かしい! 何故カエデは結界の外に出たのだ!? いや本当に愚かしい!」プンスカ

春川「ッ!」ブチイイイイッ



ブンッ  ガンッ



セミラミス「……ククク。結界さえ無ければ今の投石で我は死んでいたかもしれぬな! 結界さえ無ければ! くっははは!」ケラケラ

春川「……!」ビキビキビキッ

百田「ハルマキ! 落ち着け! すんごい表情になってきてんぞ!」
485 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/25(火) 18:49:10.43 ID:zbFUW5IL0
ナーサリー「……最近は気に入った人間には一途って面しか見ていなかったから忘れていたのだわ。この人、そういえば本質は毒婦だったわね」

ロムルス「気が済んだら仕事に戻るであろう」

白銀「……ん!?」

最原(傷一つなかった才囚学園の校舎が……元のボロボロの状態に戻っていく! 巨大ネコアルクオブジェも!)

アンジー「セミラミスー! 『彼』が仕込みのスイッチを入れるのはまだかって急かしてるよー」

セミラミス「少し待つように伝えろ! 一番大事なことをまだやっておらんからな!」ワクワク

赤松「一番大事なところ……? 何でワクワクしてるの? とても怖いんだけど!」

セミラミス「時間がない。すぐ済ませよう。貴様が死ぬ前にな」パチンッ

赤松「縁起の悪いことを言わないでっ……て、なにそれ?」

ロムルス&ナーサリー「……なあっ!?」ガビーンッ

聖杯「」キラキラキラキラキラ

セミラミス「見ての通りの聖杯だが?」

赤松「いや黄金のなんかコップっぽいものってことくらいしか私にはわからな……聖杯ィ!?」ガビーンッ

生徒一同「はああああああああああああっ!?!?」ガビビーンッ

ナーサリー「待って! セミラミス、あなたそんなものをどこから! まさかカルデアから盗んで……!」

セミラミス「バカな! 流石に我にも礼儀くらいはある! これは『さっき作ったもの』だ!」プンスカ

ナーサリー「礼儀は弁えてても常識をドブに捨てたような発言だわーーーっ!?」

赤松「作っ……は!? え!? なにそれ! 聖杯って材料なしで作れるほど気安いものだっけ!?」

セミラミス「いや。材料ならついさっきキーボが粉々にしたアレだぞ」

ロムルス「……そういうことか」

百田「どういうことだ!? 説明しろロムルス!」

ロムルス「世界を改変するようなオブジェクトの中心核には当然、凄まじい魔力があるだろう。それ単体で聖杯として成立しかねないほどの」

ロムルス「基本的に魔力を受け入れる器と、膨大な魔力があれば聖杯は作成可能だ」

セミラミス「魔力の方はあの白い樹から徴収した。さて、器の方は……あったであろう? 都合よくサーヴァントすら閉じ込めることのできる器が」

赤松「え?」

赤松「……あっ! マザーモノクマ!」

セミラミス「正解だ。巌窟王ではなくキーボが樹を破壊すると聞いたときは魔力を直前で掠め取れるかどうか肝を冷やしたものだが……!」

セミラミス「……我は女帝、セミラミス! 魔術も当然使える! クリアしてみせたぞ、この難行!」
486 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/26(水) 22:15:54.45 ID:hXbA+M6X0
諸事情により種火が物凄く必要になったので今日はなし!
487 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/27(木) 23:47:23.11 ID:UDvHHJ620
獄原「そっか! セミラミスさんはあの聖杯で巌窟王さんを助けるつもりなんだね!」

セミラミス「貴様論外」

獄原「論外!?」ガビーンッ

ロムルス「であろうな。セミラミスの仕込みとやらが発動した場合、聖杯も消えるはずである」

ナーサリー「魔術由来の物品であることには変わりないもの。最後にサーヴァントが壁に穴を開けるという都合上サーヴァントは後回しだけど……」

ナーサリー「聖杯は後回しの対象外のはずよ。仕込みが発動したらすぐに消えるか、仮に消えなくとも大した願いは叶えられなくなると思うわ」

セミラミス「長生きしたいなー程度の願いならば消えかけた状態でも余裕だな。長生きする価値のある世界が前提の願いだが」

春川「……待って。つまり聖杯をフルスペックで使えるのはまさに今だけってこと?」

春川「しかもそれを巌窟王を助けるために使わないつもりって」

セミラミス「つもりだ」ウン

春川「……最原」

最原「凄くマズイことになってるのはわかるけど、僕たちにはどうしようもないよ」

百田「ん? ん? ん?」

セミラミス「さてカエデ。ここから先、言動には細心の注意を払えよ」

赤松「へ?」

セミラミス「外の人間に復讐したいと強く願ってみろと言っている」ニィィィィ

赤松「!?」

茶柱「なっ……!?」

入間「何だとォォォォォォォォォ!?」ガビーンッ

星「……やられたな。これは。俺たちはロムルスの結界の内側で、あいつらは外側だ。手出しができない」

東条「セミラミスさんはこの好機を狙っていたというの? 偶然ではなく?」

真宮寺「忘れてた……! 僕たちの前ではアホな言動丸出しの緊張感ゼロで空気読めないダメ女だったから完全に油断してたヨ!」

真宮寺「彼女は人類史初の毒殺成功者! つまり、その当時最高峰の頭脳の持ち主だ! 頭が悪いはずがない! 機を窺う精神力も段違いだ!」

セミラミス「誰がダメ女か!」プンスカ

赤松(アホな言動丸出しの緊張感ゼロで空気読めないってくだりに関してはガンスルーしてる!)ガビーンッ
488 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/28(金) 22:41:16.90 ID:G7vEb4nP0
セミラミス「……論外で圏外な残骸どものことはもう放っておくことにしよう。大事なのはここからなのだからな」

王馬「うわー。ボロクソ言われてるね俺たち」

春川「……」スッ

百田「うおーーーい! ロムルス、もう絶対に結界を解除すんなよ! ハルマキがクラウチングスタートの姿勢になってっから!」

最原「結界が解除された途端に全力疾走して一瞬で殺す気だ!」ガビーンッ

セミラミス「カエデ。汝はまだ子供であろう?」

赤松「……だったら何?」

スッ

赤松「!?」ビクッ

セミラミス「……たまには大人に甘えてみろ。その年頃ならまだ自然だろうさ」ギュッ

赤松(……あまりにも自然な動作で、避ける暇が無かった。私は今、ふわりとした力加減で抱き寄せられている)

アンジー「……」

アンジー(まずいなー、これ。セミラミス、明確に本気になってる。アンジーたちの前に現れてから初めてかも)

最原「容赦無しで落としにかかってる……!」

茶柱「こ、これ。万が一赤松さんがセミラミスさんの提案に『YES』って言ったらどうなるんですか?」

王馬「さっきの議論での勝敗が逆転するだろうね。赤松ちゃんの希望が、これまで積み上げてきたすべてを台無しにしてでも優先される」

王馬「ただしあくまで聖杯が聞き届けるのは赤松ちゃんの願望みたいだから、俺たちに直で不利益になるような展開はないはずだよ」

入間「オイオイオイオイ……オイオイオイオイオイオイオイ……! 多数決じゃなく赤松たった一人の意見でか!?」

最原「騒ぐのはもうちょっと後でいいよ」

百田「……そうだな。終一と俺も同意見だ」

天海「どうしてっすか?」

百田「まだ赤松の答えを聞いてねぇ」

最原「確かに僕たちは結界の内側にいるから、もうセミラミスさんに手出しは不可能だけどさ」

最原「……いや、仮に外に出れたとしてセミラミスさんを無傷でどうにかできる保証が無いから手出しできないし、させるわけにもいかない」

最原(同じ理由でアンジーさんにも無茶はさせられない。彼女がいないと巌窟王さんが凄く困るし)

最原「この場で彼女をどうにかできる人間がいたとしたら、たった一人……」

天海「……赤松さん、だけ……!」
489 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/29(土) 20:00:21.59 ID:rPeFjwYs0
赤松「私が願えば……叶う。外の世界の人間に復讐できる……?」

セミラミス「そうだ」

赤松「……さっきまでの議論で出した結論は……」

セミラミス「無意味、とは言うまいよ。ただ最後に物を言うのは力を持った誰かの意見だ」

セミラミス「今の貴様にはそれがある……不服な結果を塗り替えて何が悪い?」

赤松「……」

赤松(不服?)ピクッ

セミラミス「さあ。願え。そして貴様の望む未来を創ってみせよ。我の用意した機会だ、まさか断りはすまい?」

赤松「断るよ」

セミラミス「クハハ! そうだろう! 断るだろう――って」

セミラミス「は!?」ガビーンッ

アンジー「!」

セミラミス「……聞き間違いか? いや、言い間違いか? 今、断ると言ったように聞こえたが……」パチクリ

バッ

赤松(私を抱きしめていたセミラミスさんから少しだけ距離を取る。それでも至近距離のままだけど)

赤松(でもこれでいい! 心底困惑しているセミラミスさんの表情がよく見える、この位置が凄くいい!)

赤松「ここで私がそんなズルをしたとして! そこから先どうするの?」

赤松「セミラミスさんはずっと私を甘やかしてくれるの!? そんなわけないよね!」

赤松「その場一回限りの勝利を掴んだところで、その先の私にはロクでもない結末しか待ってないよ!」

セミラミス「なっ……にい……!?」

赤松「ごめん。正直、凄く嬉しい。動機はどうあれ、私のためにこんな凄いものを用意してくれたって事実が、とにかく嬉しい!」

赤松「多分セミラミスさんの想像よりずっと私は感謝してる! でもさ! そんな甘いだけの言葉に飛びつけるほど、私は子供じゃない!」

セミラミス「……!」

赤松「……その聖杯は受け取れない。だから、終わりにしよう」

赤松「悪だくみなんてやめてさ、予定通り……みんなで一緒に決めた通りに」

赤松「この学園を終わりにしようよ……!」

セミラミス「……」
490 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/06/30(日) 19:52:52.64 ID:pVYswqYA0
ロムルス「……決まりである。セミラミスは人の輝きを(かなり屈折した視点で)見守る者だ」

ロムルス「故に転落するにしろ上へのし上るにしろ、本人の自業自得でなければ面白くない」

最原「赤松さんが自分の意思で『断る』って言ったら、もうセミラミスさんには特に動機がないよね」

東条「……みんなで決めたことを守ってくれるのね、彼女は。赤松さん、そういうところはずっと変わらなかったわね」

セミラミス「……チッ。つまらん」ポイッ

ガツーンッ

赤松「ぶへっ」ドサァッ

最原(セミラミスさんがポイ捨てした聖杯が赤松さんの眉間にクリーンヒットした!)ガーンッ

セミラミス「人の厚意をドブに捨ておって……このノーパン娘が!」

赤松「ご、ごめんセミラミスさ……ノーパンじゃないよ!?」ガビーンッ

セミラミス「まあよい。こんなものは所詮戯れよ。我の心は夜の湖のように凪いでおる」

セミラミス「……全然! まったく! 気にしてないからな! 余裕のあまりネイルケアもできる!」ガタガタガタガタ

赤松「震えすぎ震えすぎ! 爪割れるから!」

百田「気にしてんじゃねーか。言葉と裏腹に」

セミラミス「……はあーーー……いや、本当に気にはしていないのだ。ただ本心から残念に思っているだけよ」

セミラミス「聖杯で一回願いを叶えさせた後はカエデのことを体のいい傀儡にして外の世界に我君臨! という計画がパァだ……」

赤松「ろ、ロクでもない……! 本当にロクでもないよ……!」

セミラミス「……予定通りが注文だったな。よかろう。やってやる」

セミラミス「玉座を!」パチンッ

ネコアルク「はいですにゃー」トタトタ

ネコアルク2「猫の宅配便ですにゃー」トタトタ

百田「お……モノクマがついさっきまで座ってた椅子じゃねーか。あれ玉座にすんのかよ……?」

百田「あれ? モノクマはどこに消えてんだ?」

白銀「結界の内側。あっちで遊戯王してるよ」

モノクマ「シャアアアアアアイニングドロオオオオオオッ!」ピカアアアアアアッ

ネコアルク「どういう……ことにゃ……!?」カン☆コーン!

天海「いつの間に!?」ガビーンッ






セミラミス「……結局ピアノは聴けなかったな」

赤松「……え?」

セミラミス「始めるぞ……! ここから先は、我の独壇場だ!」

セミラミス「人の女帝は人の国を統べようとする。ならばゲームの女帝は何を統べるべきだ!?」


ズズウウウウンッ……


赤松「……!?」

セミラミス「然り! 然り! 然り!」

セミラミス「『ゲームの国』しかありえぬではないか!」
491 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/01(月) 21:15:47.05 ID:klYtNCo80
ズガアアアアアアンッ

巌窟王「……」ブラーンッ

巌窟王(まずいな。時間稼ぎも限界か? 吹っ飛んだ衝撃で、才囚学園の鉄筋に足がひっかかってしまった。吊られた男か俺は)ブラブラ

巌窟王(このままだと本当に死ぬぞ)

キーボ「どうやら間に合わなかったようですね」

巌窟王「……?」

フワッ

巌窟王「……それはどうかな?」ニヤリ

キーボ「?」


ズズズズ……!


キーボ「……なんですか。この鳴動は……!」

巌窟王「やっと重い腰を上げたか、あの性悪女め」

キーボ「……セミラミス! 彼女か!」バッ





アンジー「気付かれたみたいだよー」

セミラミス「構わん! もうどんなロングレンジの攻撃方法があろうが!」

セミラミス「どんなスピードで接近してこようが!」

セミラミス「仕込みは発動した! もう(我にも)止められん!」

赤松「待って! 今こっそり小声でなんか言った!? 『我にも』とか言わなかった!?」

セミラミス「お気の毒ですが冒険の書は消えてしまいました!」バァーーーンッ

赤松「露骨な忘れたアピで誤魔化せると思わないで!」

セミラミス「さあ! お楽しみはここからだぞ!」ギュインッ

赤松(……セミラミスさんの周りに無数の魔法陣が……!)

セミラミス「神秘よ! 我が糧となれ! これ以上ないほど有効活用してやろう!」

フワッ フワフワッ……

赤松「……これは……!」

アンジー「おおーーー! 綺麗だねー! たくさんの蛍が飛んでるみたいだよー!」キャッキャッ

セミラミス「ネコアルクに再配置させた神性、神核のなれの果てだ。まあつまりざっくり言うと死骸だ」

アンジー「きったね」ウエッ

赤松「ざっくり言い過ぎじゃない!? せっかく感動してたのに!」
492 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/02(火) 21:36:11.77 ID:HLS2IoI+0
キーボ「させません。もう巌窟王さんの妨害もない。ここからでも充分にキャノンは届く!」

巌窟王「絶対に無理だ。諦めろ」

キーボ「エネルギーチャージ……シュート!」バチイッ

キーボ「……!?」






赤松「まずい! キーボくん、あの距離からこっちを狙って……撃っ――!」

セミラミス「……ったところで無理だな?」ニヤニヤ

ビュンッ

赤松「……え? ハズレ? っていうか……」

アンジー「見当違いの方向にビームが吹っ飛んでったねー」

セミラミス「当たり前だ。キーボは絶対に我を撃てない。少なくともすべての工程が終了するまでは絶対に。何故なら!」






巌窟王「貴様が外の世界の意思を代表して『最原終一の進路』に投票したのだ」

巌窟王「少なくとも学園全体の無毒化の処理が済むまでは、貴様を支配する意思がセミラミスを攻撃することを絶対に許しはしない」

キーボ「……! ……!」グググッ

巌窟王「アイツの仕込みが終われば、貴様の魔術的強化もすべて打ち消される」

巌窟王「弱体化した後のキーボなど俺の相手として不足にも程がある。すぐに復旧してやるぞ……!」ボオウッ

キーボ「……ゼロ距離なら……!」ドシュウッ

巌窟王(……ム。予想外だな。妙にセミラミスのことを警戒している)

巌窟王(魔術の無効化に関してはクリアできるが、これではそれが終わった直後に……)

巌窟王「ちっ。しばらく休むつもりだったのだが……! こうなったら足に引っかかった鉄筋を切断……いやそれでは真っ逆さまだな」ボキッ

巌窟王「ボキ?」



バキィィィンッ



巌窟王「何だとォォォォォォォ……」ヒューーーーッ
493 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/03(水) 22:14:36.29 ID:AIOZvaJq0
セミラミス「ふはははははは! 見よ! 巌窟王のヤツ地面に向かって真っ逆さまだ!」ゲラゲラゲラ


ビュンッ


キーボ「この距離なら」キイイイイインッ

赤松「――ッ!?」

赤松(早……! セミラミスさんの目の前に! 一瞬で! この距離はまずい!)

ジャララッ

セミラミス「邪魔だ」クンッ

キーボ「!?」ブンッ

キーボ(鎖を使っての投げ飛ばし……ワンパターンですね。これはもう一度食らいました! この状態からでも、この距離なら外さない!)ガチンッ

赤松「ダメ……! やっぱり無理だよ! 攻撃される!」

セミラミス「見よ! 巌窟王のヤツ、上から降ってきた更なる瓦礫に生き埋めにされたぞ! 犬神家のようだ!」ゲラゲラゲラ

赤松「!?」ガビーンッ

アンジー「うわー。この期に及んでまだ笑ってるよー。キーボの方は見もしてないねー」

セミラミス「当然だ。距離の問題ではないのだから」

キーボ「シュー……!?」グアンッ

キーボ(銃口が移動させられた……! 鎖? 違う、勝手にボクの手が動いたんだ! この角度はマズ……!)


ドシュウウウウッ

ドカァァァァァンッ


赤松「……!? 空が割れ……違う! 空を映していた天井が壊れた!?」

セミラミス「いや? まだ威力が足りんな。ちょっと亀裂が入った程度だ」

セミラミス「待っていろ。首級が欲しくばな。もうすぐ終わる……!」


ズドドドドドドドドド


赤松「……ずっと聞いていなかった。セミラミスさんは具体的に何をするつもりなの?」

赤松「仕込みって一体何?」

セミラミス「とてつもなくくだらなくて、物凄く馴染むことだ。端的に表すなら……」






セミラミス「学園よ! 浮上せよ!」
494 :ハァ……ハァ……ガチャの敗北者……? ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/04(木) 18:11:57.23 ID:mpExMwwBO
世界滅ばないかな
495 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/04(木) 22:01:48.08 ID:lxrKtO4c0
今日のところはとても悲劇的なことが起こったのとイベントが楽しすぎるのでナシ
496 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/05(金) 23:35:19.98 ID:mjnaZFwn0
ズズガガガガガガガガガンッ

最原「……鳴動……じゃない! いや、この空間全体が震えてること自体は間違いないけど!」

最原「密室だから全然気付かなかった! 窓でもあれば一発でわかることでも、ここじゃわからない!」

百田「憧れの感覚だ! 『浮上』の感覚! 宇宙に向かってるような高揚感!」ワクワク

王馬「……え? 嘘でしょ。マジで?」

茶柱「学園が……いえ! この私たちを閉じ込めている密室そのものが! 浮上しているんですか!?」

セミラミス「少しだ。少し浮けばいい。五センチでも構わない! それでこの空間は我の宝具として成立する!」

キーボ「仮にそうなったとして、一体何をする気ですか。死にぞこないのあなたが、いくら強力な宝具を振りかざしたところでボクには!」

セミラミス「敵わないだろう! 別にいい! 美味しいところをすべて持っていくのは巌窟王で構わない!」

セミラミス「我は楽しければそれでよいのだ!」

アンジー「……なにかが萎んでいく感覚がある……学園にあったはずの大事な要素が消えていくような……」

ナーサリー「これは……そう。そういうことね! どんなエネルギーでも使えば消える! あるいは散る! 質が落ちる!」

ナーサリー「つまり熱力学の第二法則に則った超原始的な宝具!」

ロムルス「通常であれば宝具を使うには魔力が必要。これはその発想を逆転させた『魔力を使うためだけの宝具』」

ロムルス「いや。それだけではない。扱いを間違えれば死人が出る、呪力のような危険なエネルギーすら一緒くたにして消費している」

入間「ちょっと待て! それ魔術をちょっと齧っただけの俺様でもおかしいことだってわかるぞ!」

入間「軽油とレギュラーガソリンとハイオクガソリン、ロケットエンジン用の燃料ちゃんぽんにしてモンスターマシンを動かすみたいな話だろ!?」

入間「んなことしたら俺様たちは問答無用で吹っ飛ぶぞ! こんなコンドーム並みの薄々バリアなんざ木っ端微塵だ!」

ロムルス「そのためにヤツは神性を求めていたのだろう。どんな燃料を使っても絶対に壊れないエンジンと骨格を作るために」

セミラミス「……嗚呼! 嗚呼! 最高だ! たまらない! この仕組みを作るために我がどれだけ……どれだけの手間を……!」

セミラミス「マザーモノクマの中で時間を加速させ、三日三晩かかる呪文詠唱を先んじて終わらせたのも、すべてこのため!」

セミラミス「驚嘆せよ! 祝福せよ! 刮目せよ! 瞬き一つももう許さん! これが、ここにいる我だけの宝具!」

セミラミス「対魔力宝具、『遊興の空中庭園(ゲーミングガーデンズオブバビロン)』である!」
497 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/06(土) 22:36:58.91 ID:0OQEbHat0
巌窟王「……!」

巌窟王(段々と瓦礫が振動で移動して……あと少しで出られそうだが……!)ジタバタジタバタ

巌窟王「ダメだな。出られん。念話しかないか」

巌窟王『アンジー!』

アンジー『学園に満ちてる魔力なら、あと少しで除去できそうだよー』

巌窟王『そうか! それは朗報だ! だが今すぐセミラミスから離れろ! いや、ヤツのことだから安全策くらいは取っているだろうが……』

アンジー『……何を焦ってるの?』

巌窟王『今、キーボはセミラミスを攻撃できない! だが全部終わったら話は別だ!』

アンジー『……セミラミスはキーボに勝てるかなー』

巌窟王『貴様はどう思う? 率直な意見を言え。それが答えだ』

アンジー『百パー無理』

巌窟王『続いて俺が質問するが、すべての工程が終わればセミラミスはどうなると思う?』

アンジー『……』







アンジー「……楓ー。ちょっと離れよっかー」ニコニコ

赤松「イヤだ」

アンジー「!」

赤松「……大したことじゃないけどさ。私、最後まで全部見たいんだ」

赤松「どんな結末を迎えたとしても。アンジーさんなら、わかってくれるよね」

アンジー「……」
498 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/07(日) 23:53:54.23 ID:OJ5hssOQ0
セミラミス「あと少し……だ! あと少しで……完成する!」

セミラミス「くっくくくはははははは! 財産というものはすぐに無くなるものだが、無くそうと思って使うと気が遠くなるものよ!」

セミラミス「ネコアルク! 進捗は!?」

ネコアルク「あと十数秒で完了ですにゃー」

ネコカオス「やれやれ。まさか我々も、ここまで付き合うことになるとはな」

ネコリンボ「ンンンンンンンン拙僧は! 拙僧は昂ってまいりましたぞ!」

セミラミス「そう言うな。段々と我も貴様らのことが気に入って……ム? 知らんヤツがいるな? こんなヤツまで作ったか? はて?」

セミラミス「まあよい。後のことは任せたぞ、ネコアルク」

ネコアルク「……あなたは最高の雇い主だったにゃ」



ズズンッ



セミラミス「終了だ。もうよいぞ」



ズガアアアアアアアアアアアアアアンッ



最原「……な……え……?」

最原(それはとあるサーヴァントの最期だった)

最原(……あまりにも唐突に、それは訪れた。彼女の胸を、上空からキーボくんの砲撃が貫いて。でも!)

キーボ「……せ、みら、ミスぅぅぅぅぅぅぅ!」ジャラララッ

セミラミス「……ごぼっ……は、ははははは……!」

セミラミス「くははははははははははははははっ! あーあー! 馬鹿め! ここまで計算通りに行って、いいものか! はははははは!」ゲラゲラ

セミラミス「ごぼっ……う、げほっげほっ……!」ビシャッ

天海「攻撃された瞬間を狙って……!」

百田「野郎、カウンターで鎖をキーボの胴体に叩き込みやがった!」

セミラミス「我は毒殺の女帝、セミラミス! 故に! ああ、そしてゲームの女帝でもあるからこそ!」

セミラミス「本物ですら難しいことも我ならできる! たっぷり味わえ、電子ウイルスをなァ! あっははははははははは!」

キーボ「うおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああっ!」ガシャンッ

赤松「セミラミスさんっ!」

セミラミス「……カエデ。多くはもう語らん」

セミラミス「凄く。とても。ありえないくらい……」





セミラミス「楽しかったぞ!」ニコリ

赤松「……!」




ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ
499 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/08(月) 23:36:47.47 ID:eF0dfIH20
ロムルス「……見事!」

最原「……セミラミスさん……!」

春川「地面に大穴が空いてる……砲撃の勢いで地下に玉座ごと押し込まれたみたいだね」

王馬「この分じゃあ、春川ちゃんが殺すまでもなくプレッシャーで身体はズタズタだろうね」

王馬「というか、崩落してるってことは地下まで落下してるのかな……」

春川「……殺したかっただけで死んでほしかったわけじゃない……こんな結果って……!」

東条「最初からセミラミスさんはこのつもりで……!?」

ナーサリー「でしょうね。全部が終わったらキーボに射殺されることくらいはわかっていたはずよ」

最原「ならロムルスさんの結界の中で全部の工程をやれば、自分の身の安全だけは確保できたはずじゃ……!」

最原「……いや、そうか。動機があったから、か」チラッ

赤松「……私のことを本気で篭絡するつもりだった。だからロムルスさんの結界の中に入るわけにはいかなかった……」

アンジー「本人の望んだ通りだねー。『自業自得』で堕ちる必要のない場所まで堕ちた」

赤松「BBさんに続いて、これで二人目」

赤松「……ネコアルク!」

ネコアルク「コーヒーガム食べます?」サッ

赤松「び、微妙なフレーバーのガムだね。それは後! ねえ、私の言うこと、聞いてくれるんだよね!」

ネコアルク「そりゃもちろん」

赤松「私と一緒に地獄の底まで付いてきて!」

真宮寺「赤松さん? 何を……!?」

赤松「私はッ!」

赤松「……私はせめて……この学園での犠牲者を出すことを止められないのなら!」

赤松「それが人間であろうとなかろうと! せめてノーカン扱いにはしたくない! 約束も果たしてない!」キィィィンッ

入間「赤松。まさか、その聖杯を使う気か!?」

赤松「『長生きさせる程度なら余裕』なんでしょ。まだ死なせない……!」

赤松「ごめん! 時間かかるようなら、先に脱出しておいていいよ! これは私の『エゴ』だから!」バッ

ネコアルク「赤松嬢に続くにゃーーー!」バッ

ネコカオス「男は赤に染まれ」バッ

ネコリンボ「異星の神の加護あれかしィィィィィ!」バッ

星「……本当に行っちまった。穴の中に」

天海「なんかネコアルクの中に一体変なの混じってなかったっすか?」

白銀「全部変だと思うけど」
500 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/09(火) 19:47:48.79 ID:FeVmFuah0
百田「セミラミスの方は赤松に任せるとして、キーボの方はどうなった!? ドテッ腹に鎖ぶち込まれてたぞ!」

真宮寺「一瞬のことだったから自信はないけど、あまり深々とは刺さってなかったヨ。もっとも電子ウイルスを仕込んだらしいから深刻度はわからない」

キーボ「……!」ググッ

アンジー「……ずっと飛んでたのに、着地して苦しんでるみたい」

獄原「でもよかった。死ぬほどの傷じゃなさそうだよ」

キーボ「……まさか、こんな……こんなくだらないマネを……!」ピコピコピコピコ

最原「ん?」

入間「……」

入間「は?」

星「どうした入間」

入間「あ、い、いや……気のせいか? 今サウンドエフェクトがおかしかったような……?」

白銀「は? 何言ってるの?」

キーボ「すぐにウイルスの除去を……ぐっ」ポッ


テテッテテテッテテ


夢野「んあ!? 本当じゃ! なんかキーボがコケたときに聞き覚えのあるサウンドエフェクトが……!」

白銀「●リオだ! スーパーマリ●ブラザーズの被弾の効果音だ! 8bit音の!」

キーボ「まさか……まさかこんな!」キュワンキュワンキュワン(キノコで巨大化のサウンド)







キーボ「ボクの行動のすべてが懐ゲー風のサウンドエフェクトに変わってしまう電子ウイルスだなんてーーーッ!」テッテッテーテレレテーレレーレー

全員「本当にくだらねぇーーーッ!?」ガビーーーンッ

白銀(そして今のはマリ●のゲームオーバーのBGMだーーーッ!)
501 :爆死の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/10(水) 21:05:46.29 ID:7tTQWhnU0
キーボ「除去……すぐにクリーニングを」ピッピッ ブブーッ

デケデケデケデケデケデンッデデンッ

白銀「あ。冒険の書が全部消えた」

キーボ「うおおおおおおおおおおおあああああああああああ!」ズピョーンッ

百田「……嘘だろ。除去できねーのか? アイツ一応最新技術の塊だったよな?」

ロムルス「もはやあれは毒というより呪いなのだ。だから生半な方法では除去できない」

ナーサリー「その凄まじい技術力で作った電子ウイルスの内容が物凄くくだらないのは……ご愛敬といったところね」

茶柱「愛嬌で済まされますかッ! これが!」

白銀「普通、こういう命と引き換えの置き土産ってもうちょっと有用じゃない……? いくらなんでもこれはちょっと」

キーボ「……ぐう! 仕方……ありません! 行動そのものに支障はないので作業を続行します!」ガチョーンッ

アンジー「わあ。機械の駆動音も物凄くチープだねー」

最原「言ってる場合じゃない! アンジーさん!」

アンジー「ん?」

夢野「アンジー! 周りをよく見るんじゃ! 赤松とセミラミスが消えて、ネコアルクもそれに追随したということは……!」

アンジー「あっ」

キーボ「あとのターゲット候補はあなただけです」ピュインピュインピュインピュイン

キーボ「あなたさえ消えれば巌窟王さんは消える!」

アンジー「……」

アンジー「ううん、それは順序が……逆だよ!」

キーボ「!」





「クハハハハハハハハハハハハ!」
502 :「裁判場が特異点化しましたにゃー」「なんで!?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/11(木) 21:01:40.72 ID:OBZgQ+jF0
ザッ

「ああ、そうだとも! この俺の目が黒い内は! マスターに指一本触れること能わぬと思え!」

「俺が! そう、この俺が……!」

最原「巌窟王さ……ん!?」ガーンッ

ザッ

ボロボロ王「夜長アンジーのサーヴァントだ!」プルプルプルプル

最原「既に重傷だーーーッ!?」ガビーーーンッ

ナーサリー「……ちょっと時間稼ぎさせすぎたわね、セミラミスが。ダメージが八割足に来てるわ」

天海「勝てるんすか!? あれで! 勝てるんすかね!? 流石の巌窟王さんでも!」

ボロボロ王「安心しろ。あと一撃を食らえば確かに気を失いそうだが、逆に言えばあと一発も貰わずに攻略すれば済む話」


クルッポー!


ガンッ バタリッ


かつて巌窟王だったもの「」チーンッ

最原「倒れたーーーッ!」ガビーンッ

獄原「なに!? 何が起きたの!? 何が激突してきたの!?」オロオロ

夢野「あ……あ、あ、あやつは……!」

ハトムギ「くるっぽー」

夢野「ハトムギじゃーーーッ! 研究教室のケージが壊れて脱走してきたんじゃーーー!」

最原「第三の学級裁判のときの鳩ォ!? なんで今!?」

ハトムギ「くるっぽー!」

夢野「うんうん……おお。セミラミスに献花しにきたのか。偉いぞ」

真宮寺「偉いけど今はやめてほしかったヨ」

巌窟王「くっ……あ、危なかった……」ムクリ

ナーサリー「あ。ギリギリのところで大丈夫だったみたい。幸運ね」

最原「心臓が止まるかと思った……!」
503 :「カルデアのマスターと接触しましたにゃー」「この人が噂の!?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/11(木) 21:07:31.47 ID:OBZgQ+jF0
巌窟王「さてと……余興も終わったところで、終幕にするか。すべて」ボオオウッ

キーボ「同じことの繰り返しです。すべて無駄ですよ」

巌窟王「いや。もうさっきまでとは状況が違う。背景も、何もかもな」

キーボ「……!?」

巌窟王「勝算があるのはどちらか……答えは! 貴様の身を持って知るがいい!」ギュンッ



ボンッ



最原「……また二人とも、空に飛んだ!」

百田「くそ! 早すぎて目で終えねぇぞ! また!」

茶柱「……ん?」

東条「あら……これは……どうして」

夢野「どうしたんじゃ。転子。東条」

茶柱「いえ、気のせいか……ああ、すみません。気のせいじゃありませんでした」

夢野「?」








茶柱「キーボさんが遅くなって、巌窟王さんが速くなってます」
504 :「期間限定加入ですにゃー」「え? 私ネコアルクとセット扱い!?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/12(金) 20:39:57.82 ID:gf2jmi1D0
キーボ(……身体が……重い、のとはちょっと違う! 頭でわかっている挙動と実際の動きに……ラグがある!)

巌窟王「貴様の身体の中に植え付けられたのは拡張機能ではなく電子ウイルスだ」

キーボ「!」

巌窟王「つまり『現状ある機能を割いて無理やり懐ゲーサウンドエフェクトを出させている』のだから、挙動が重くなって当たり前だろう?」

キーボ「……」

キーボ(ボクの動きが遅いことはそれで説明が済むとして、彼の動きが先ほどよりも鋭敏になっているのは何故だ)

キーボ(さっきと今とで何が違う!? 何が……!)

巌窟王「クハハ! それでもまだ疑問が残る、という顔だな!」

巌窟王「なに、簡単なことだ。今までの俺は『校則の影響下』にいたからこそ生徒によって何度も殺された」

巌窟王「だが、当然だが校則というのは所詮ローカルルール。場が学園でなければ効力を発揮しない」

キーボ「学園で無ければ……?」

キーボ「あっ」ピコーンッ








最原「……モノクマーズパッドがバグってる」

百田「んだ、こりゃ。校則のページが文字化けしまくってんぞ。ピクトグラムもバラバラだ」

ナーサリー「今この空間は才囚学園ではなくガーデンズオブバビロン。少なくとも浮遊している限りはね」

ナーサリー「着地するまでの僅かな間、この場は学園じゃない。だから校則の影響もない!」

ロムルス「枷のすべてを外した巌窟王は無敵である。最原終一の進路を選んだ時点で、キーボの勝ちの目は無くなっていた」

最原「……勝てる。どんなにキーボくんが武装していようと、これならもう絶対に! 巌窟王さんは負けない!」
505 :「イベントショップ店員ですにゃー」「アーネン……えと、何? この店名」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/13(土) 18:59:31.34 ID:8NEEMbqU0
キーボ「まだです! 『最原終一の進路』では、魔術的武装を部分的に残したボクを鹵獲する算段になっていた!」

キーボ「つまり、いかに校則の縛りから解き放たれようが、魔術武装を手にしたボクが巌窟王さんを下す可能性はまだゼロじゃない!」ボーンッ

巌窟王「……まさか、冗談だと思ってはいないだろうな?」

キーボ「え」



ヒュンッ



キーボ「……あ?」

キーボ(懐に入って――この位置は……!)



ドシュウウウウウウウッ



キーボ(回避ッ! 回避ッ! 間に合った! まだ追いつける……! まだ食らい付け――!?)

ビュンッ

巌窟王「もう一度言おうか」ガシイッ

キーボ「背後……に……!?」ギギッ

巌窟王「一発も貰わずに攻略すれば済む話だ」ボオオッ




バガァァァァァァァンッ!



キーボ「ぐああああああああああああああああっ!?」
506 :「お買い上げありがとうございまーす! よっ御大尽!」「疑問なんだけど貰ったアイテムってどこ行くの?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/14(日) 23:21:14.95 ID:dMcwPhaK0
ヒューーーーーッ ポカッ

キーボ「があっ!」ポテッ ポテッ

キーボ(こ、この電子ウイルス……うざったい。かなりの衝撃で地面に叩きつけられたのに、その効果音すらポップにされた!)

キーボ(必要な機能を必要なだけ追加拡張できる超高校級のロボットの才能を完全に逆手に取られている!)

キーボ(アンジーさんは巌窟王さんが守っている。その他の生徒は全員ロムルスさんが結界で囲っている)

キーボ(赤松さんを追ったところでネコアルクに邪魔されるだろう。巌窟王さん本体は……何か勝算がないと、このままでは……!)

巌窟王「貴様は運がいい。実に運がいい」

キーボ「ッ!」


ボカーーーンッ


キーボ「……キャノンの砲身が……蹴りで潰された。蹴りで!?」

巌窟王「この学園で犠牲になったのは二人。BBとセミラミスだけだ。結局のところ才囚学園の生徒は一人たりとも死んでいない。それがとてもいい」

巌窟王「もしもあと一人死んでいたら……しかもそれが才囚学園の生徒だったりしたら、俺は貴様を殺すしかなくなっていたかもしれないな」

キーボ「……?」

巌窟王「わからないか? 貴様は危険な綱渡りを渡り切った先にいる。今!」

巌窟王「数多くの偶然が貴様を生かしている。才囚学園の生徒が全員死ななかった偶然。カルデアのサーヴァントがこの場にやってきた偶然」

巌窟王「結果何が起こったか! 語るまでもない。俺は貴様に手心を加える余裕がある!」

巌窟王「殺さずに貴様を止める方法も!」

巌窟王「そして止めた後、貴様が帰るべき場所も! すべてが誂えたかのように!」

キーボ「!!!!!!!!」

巌窟王「帰るがいい、キーボ! 最原たちが貴様の帰りを待っているぞ!」

キーボ「……」
507 :「霊基再臨だにゃー!」「着替え……? 持ってきてないけど」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/15(月) 20:27:21.21 ID:pAtPmj2Q0
キーボ「声が止まない……まだ止まるわけには行かない……!」

巌窟王「貴様にも事情はあるか。ならば虎の子だ。指令紋章を使わせてもらおう!」ボオオオッ

キーボ「その紋章が当てにしたような効果かどうかはまだ――!」

巌窟王「わかるのだよ! 良くも悪くも、この空間は視聴者がすべてだ!」

巌窟王「さっきのことを思い出してみろ。この紋章は間違いなく人格の復元プログラムだと『視聴者が』認めたはずだぞ」

キーボ「……がっ!?」

巌窟王「迂闊すぎたな。境界を跨いだ貴様の! 負けだ!」

キーボ「……!」カチッ

巌窟王「!?」

巌窟王(……今、なんのスイッチを押した? いや、気を取られるな! 早くキーボにこの紋章を叩き込……!)ポンッ





ヤシの実「」アロハー





巌窟王「」

キーボ「」

巌窟王「……」

キーボ「ヤシの実ですね」

巌窟王「いや?」ブンッ



バガァァァァァァンッ!



キーボ「がああああああああああああっ!?」

巌窟王「知っての通りヤシの実は固い。振り回せば鈍器くらいにはなる。そして――」

キーボ「」ブツンッ

巌窟王「……皮肉だな。あそこで俺に指令紋章を使わせていれば」

巌窟王「……いや。今となってはわからないが、見た目だけは間違いなくくだらない切り札だったぞ」
508 :「ネコリンボが裏切ったにゃー!」「うわぁ! 聖杯奪って超活き活きしてるぅ!」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/16(火) 21:24:46.41 ID:UuYV2q7Z0
キーボ「が……が、が、が……」ピーガガガーッ


バチバチバチバチッ


キーボ「ぐああああああああああああああああっ!」

巌窟王「……反応は劇的だが……これは本当に復旧できているのだろうな……?」

キーボ「あ……あ、あ、あああああああうううううう……!」

キーボ「巌窟王、さ……ん……!」グッ




ボキイッ




巌窟王「!?」

巌窟王(頭のアンテナを引きちぎった!?)

キーボ「ボクは! 正気に! 戻った!」シャキーンッ

巌窟王「おかえりと言っておこう」

キーボ「ただいまです」

キーボ「……涙を流せたら泣いていましたよ。ああ、長い時間会えてなかったような気がします」

巌窟王「今までのことは覚えているのか?」

キーボ「セミラミスさんに致命傷を与えたことを含め、暴走していたときの記憶もキチンとボクの中に残ってます」

キーボ「……巌窟王さん。最後にあなたに伝えなければならないことがあります。時間がありませんので手短に」

巌窟王「……」
509 :「レイドイベントにゃー! かかれ全国のカルデアマスター!」「秒間619体のペースで殺されてるー!?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/17(水) 21:50:21.10 ID:OUMZ30si0
最原「……静かになったね」

百田「やったか!?」

白銀「百田くん、それフラグになっちゃうから黙って」

アンジー「……あっ! 念話が入ったよー!」

最原「アンジーさん! どうなったって!?」

アンジー「キーボの復旧に成功したって!」

全員「……ッ!」

百田「シャアアアアアアアアアアアアアアッ! やりやがったな、あの野郎ォ! 後でシャンパンタワーだ!」グッ

春川「シャンパンシャワーでしょ。タワーじゃホストクラブのヤツだから」

巌窟王『……だが一つ問題が残っている』

アンジー「え?」

巌窟王『キーボを連れてそちらに帰る。話は直接、顔を突き合せて行おう。幸いにして猶予はまだあるようだ』

アンジー「……」








巌窟王「では移動するぞキーボ」ズリズリズリ

キーボ「引きずらないで貰えます!? 土が隙間に入り込みます! 土が!」ガーンッ

巌窟王「自力で移動できるのならそうしよう」ズリズリズリズリ

キーボ「うおおおおおおおおお超不満ですーーーッ! 最後なのに! 最後なのに!」
510 :「イベントもクライマックスですにゃー」「ぺんぺん草も残ってない……」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/18(木) 23:59:35.47 ID:Hk4YVM3U0
巌窟王「戻ったぞ」ズリズリズリズリ

最原(引きずってる!)ガビーンッ

百田「キーボ! 俺のこと思い出せるか!」

キーボ「当然じゃないですか。忘れられないですよ、泣く子も憧れる超高校級の宇宙飛行士さん」

茶柱「……はあ……緊張の糸が切れちゃいましたよ。これでやっと……やっと……!」ヘタッ

最原「……」

キーボ「……あれ? 引きずられてること気にしてるの、もしかしてボクだけですか!?」ガビビーンッ

最原「大丈夫だよ! 僕も気にしてたから! なんで引きずってるの!?」

巌窟王「体力の温存のためだ。許せ」

キーボ「わかりました!」カッ

真宮寺「わあ寛大」

最原「いや巌窟王さん側の都合もそうだけど、なんでそこまでキーボくんが消耗してるのかを訊いたんだよ」

巌窟王「それについての回答は少し時間を割かねばならないな。ロムルス。結界の解除はまだだぞ」

ロムルス「……?(怪訝そうな顔で結界の一画を指さす)」

王馬&天海&百田「……」ビターーーーーッ

巌窟王「まだ待たせておけ」

白銀「結界に張り付きすぎだよ! いや待ち遠しいのはわかるけどさ!」

最原「……時間を割く?」

茶柱「?」

最原「待ってよ。それ、時間が無い人の言葉じゃないか。これから、これ以上何も起こるはずが……」

巌窟王「そうは行かなかった。それだけの話だ」ヒョイ

最原「……なにその……デジタル時計?」

白銀「!!!!!!!!!!!!!」ガーンッ







巌窟王「キーボに搭載されていた自爆機構だ」

最原「……」

全員「は?」
511 :「目標! 見つけたにゃーーー!」「必ず連れ帰る! まだ終わってない!」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/19(金) 19:41:09.74 ID:UY9mhClE0
ナーサリー「……なんで持って帰ってきてるの? そんなものどこへなりとも捨ててくればよかったでしょう? 選択肢はトラッシュオンリーよ」

巌窟王「厄介なことだが……学園のどこへ捨てても無駄だ。キーボの言うことにはな」

キーボ「この学園を丸ごと吹っ飛ばす程度の威力があります。なにせ学園のドームの内側だと衝撃の逃げ場がありません」

キーボ「これを起爆させたが最後、なんの防衛機構も持っていない人間は粉々でしょう。DNAの一片も残るか怪しい」

獄原「安心してキーボくん! ロムルスさんの結界は頑丈だから!」

王馬「相変わらずバカだなーゴン太は。全員中にいるわけじゃないでしょ?」

獄原「……あっ!」ガビーンッ

巌窟王「アンジーと赤松、それと他でもないキーボ自身はそうは行かない」

巌窟王「このままだと、この三人は確実に死ぬ」

最原「……入間さん! あれ解体できる!?」

入間「時間次第だ! 巌窟王! ちょっとそれよく見せろ! タイマー部分を重点的にだ!」




アト 4 フン 50 秒




星「……どうだ。入間」

入間「……回路の複雑さに対して短すぎる……!」

キーボ「これでも初期設定のままだから最長ですよ。これを起動させたときのボクは慌てていたので、時間設定ができなかったんです」

巌窟王「一度起動したが最後時間設定はいじくれない。だがキーボから取り外すことは辛うじてできた」

巌窟王「その後遺症でキーボは歩くこともできないがな。入間。後があるのなら直してやれ」

アンジー「!」

最原「……考えがあるの?」

巌窟王「当然だ」
512 :「ネコリンボが逃げたにゃー!」「誰かアレを止めて!」「任せてください!」「……包帯だらけのBBさん?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/20(土) 13:02:19.21 ID:MyFgEubZ0
巌窟王「二つほど考えがある。まず一つ目は、業腹だがセミラミスに再度頼る案だ」

巌窟王「セミラミスが聖杯を赤松に渡したのは見えていた。あれを使えば瞬間移動くらい容易いだろう。ロムルスの結界の内側にも入り込めるはずだ」

巌窟王「魔術的要素が薄くなった今のこの空間内でも三人程度なら問題無い」

アンジー「楓ならさっきセミラミスを追ってそこの穴に入っちゃったんだよねー」

巌窟王「そうか。ならばすぐに連れ戻して――」





キングプロテアの頭「」ミヂッ……




全員「」

ロムルス「……穴が塞がれてるな」

最原「ていうかアレ何ーーー!?」ガビーーーンッ

ナーサリー「キングプロテアの頭……かしら。巨大化して穴をみっちり塞いでるのだわ」

獄原「え? キングプロテア? え? 花? あんな大きくなかったよね?」

巌窟王「……」ゲシゲシ

キングプロテア「……!」イタタタタタ

巌窟王「……」

巌窟王「プランBだ!」ズバァァァァンッ!

春川「あ。諦めた」

白銀「ていうか下で何してんの赤松さん!」

入間「バカ松はよおおおおおおおお! 本当によおおおおおおお! 状況を悪化させてばかりでよおおおおおお!」orz

星「喚くな入間。あのとき赤松を止めなかった俺たちの連帯責任だと思え」
513 :「ネコリンボを捕まえたにゃー!」「ありがとうキング……えっと、なんちゃらさん!」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/21(日) 22:15:38.98 ID:erFFGBd50
キングプロテア「……プロテア……プロテアですから……」ミヂミヂッ

巌窟王(一体どんなシチュエーションならこんな台詞が出る……? 頭皮より下は全部地下だからよく聞こえん)

アンジー「もう一つの案ってー?」

巌窟王「俺の宝具を使って学園に穴を開ける。そして爆弾を外に投棄。そうすればすべて解決だ」

ナーサリー「なるほど。単純ね。でも完璧だわ」

巌窟王「聖杯が使えない以上、仕方あるまい! ああ、安心しろ。外に誰がいたとしても生徒が選んだのは『最原終一の進路』だ」

巌窟王「投棄した爆弾で攻撃するような意地汚いマネはしないさ」

最原「……それって」

アンジー「お前はどうなるの?」

巌窟王「消えるに決まっているだろう。最初からそう言っていたはずだ」

アンジー「……」

巌窟王「……ム? アンジー、貴様。まさかとは思うが、今更後悔などしていないだろうな?」

巌窟王「貴様は最初からモノクマの進路に投票などしていなかった。俺との別れは覚悟の上だろう?」

アンジー「後悔はしてないよ」

巌窟王「クハハ! だろうさ! この俺のマスターなのだから――」



ガシイッ



巌窟王「!?」

アンジー「……別れを惜しんでるんだよ! そのくらい言わなくてもわかってよぉ!」

巌窟王「待て。マントをそんな乱暴に掴むな。皺になる……」アタフタ

最原(動揺のあまりしょうもないことを言っている……!)
514 :「んじゃあ後はカルデアに任せるにゃー」「あ……イベント終了?」  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/22(月) 21:56:26.35 ID:FJhmeAfn0
巌窟王「……」

巌窟王「アンジー。俺は貴様への第一印象が最悪だった」

アンジー「……」

巌窟王「嫌いな知り合いに似ていてな……いや、あのころの貴様はそれより酷かった。何もかもが『神様の言う通り』なのだからな」

巌窟王「自分の意思がどこにもない」

アンジー「今は?」

巌窟王「もう何回も言ったはずだぞ。今の貴様は俺のマスターとして相応しい」

巌窟王「お前はお前の意思で怒れる。泣ける。憎悪できる。直近だと主にその対象は最原だったが」

最原「……お腹痛い」ズーン

茶柱「黙ってください」シーッ

巌窟王「アンジー。どこまで行ってもサーヴァントは『使い魔』だ。マスターに意思が無ければ始まらない」

巌窟王「ましてや、本来なら聖杯戦争を戦い抜くのが主な仕事だぞ。『願い』も持たない人形には務まらない」

巌窟王「……ああ、違う。そうじゃない。今の言い方は遠回しすぎた」

アンジー「……?」

巌窟王「意思を持て。願いを持て。貴様には才能があるのだから、それだけで世界は美しく色付く」

巌窟王「俺が俺の進路で復讐を推したのは……貴様が心の底ではそれを望んでいると思ったからだ」

アンジー「……ちが……うよ……!」

巌窟王「なに?」

アンジー「アンジーは……アンジーはね……お前の意思を汲みたかった……!」

巌窟王「……」

アンジー「お前が何者だとかはもう本当にどうでもよくって! アンジーは! アンジーの意思で! お前と一緒に!」

アンジー「別れがすぐそこだったから、同じ道を歩んでいたかったんだよ!」

アンジー「だって今まで楽しかったんだもん! だから、これからだって楽しくしたいんだよ!」

アンジー「一緒が……楽しいってアンジーが……」ズビッ

アンジー「それがアンジーの『願い』だったから!」

巌窟王「……」

巌窟王(俺が見たかったもの。俺が作りたかったもの。今、それが目の前にある)

巌窟王(俺は夜長アンジーが心底何かを願う姿を見たかった)

巌窟王「……そろそろだな。充分だろう」ゴオッ

アンジー「ッ!」









巌窟王「お別れだ。アンジー」
515 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/24(水) 21:06:38.43 ID:z6UEY0gQ0
百田「待てよ! 俺たちもテメェに言いたいことがあんだよ!」

巌窟王「……」ゴオオオオオオオッ

百田「待てって! 火力上げてんじゃねぇ! 発進準備にはまだ早ぇってーの!」

夢野「……いや。もうよい。これ以上は無理じゃろ。それに無意味じゃし」

百田「んだとォ……!?」

夢野「あやつは知っておるわ。ウチらがどれだけ巌窟王との別れを惜しんでいるか」

夢野「……よーく知っておるじゃろ。お主は忘れてても、巌窟王は忘れない。ここで過ごした日々のお陰でな」

王馬「だろうねー。特にこの十六人の生徒の中で最もわかりやすいのは百田ちゃんだろうしさ」

百田「テメェが言うと褒められてる気がしねぇな。絶無だな」

茶柱「最原さん。あなたはどうです?」

最原「僕?」

最原「……」

最原(言いたいことは沢山あるに決まってる。沢山ありすぎて短く絞り込むことが不可能だ。だから何も言えない)

最原「……僕は……」

巌窟王「最原。最後に貴様に言いたいことがある」

最原「!」

巌窟王「最後の最後。ささやかな復讐だ。貴様、結局最後まで嘘だと明かさなかったな」

最原「……何のこと?」

巌窟王「『白銀のやったことを絶対に許せない』、という下り。あれは嘘だろう」

白銀「え」

巌窟王「……どれだけ怒ったフリをしたところで無駄だ。貴様はいつか白銀を許してしまう」

巌窟王「おそらく貴様が思っているよりも遥かにくだらない理由ときっかけで」

最原「……だったら何?」

巌窟王「何でもないさ! ただ貴様の嘘を暴いてやりたかった! それだけのことだ!」クハハハハハハ

最原「ええっ!?」

真宮寺「本当にささやかだネ……最原くんに言論で叩きのめされまくったことを余程根に持ってたんだ……」

巌窟王「黙れ!」
516 :爆死の人 ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/25(木) 22:57:42.90 ID:rFQnBfSz0
おっすオラ爆死太郎!
今日はBBに挑んだけど石が滅んだのでなしだぞ! 泣いてる
517 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/26(金) 20:56:14.94 ID:U7b4Z57Q0
最原「……はあーーーっ……巌窟王さん」

巌窟王「なんだ!」

最原「憧れてる。巌窟王さんのことをかなり前から格好いいと思ってるんだ」

巌窟王「……は?」

アンジー(あ。言った)

最原「別に僕は巌窟王さんのこと嫌ってないよ。一度としてそんなこと言った? 言ってないよね。言動にはそれなりに気を付けてたんだからさ」

巌窟王「……やたらと俺に噛みついてきたのは?」

最原「憧れてる人に勝てたら最高に気持ちいいでしょ。そういうこと」

王馬「うわあお。最高に負けず嫌いなヤツの理屈だね、それ」

巌窟王「……そうだな。憧れているヤツに勝てれば、それは喜悦の極みだろう」

巌窟王「俺は一度として貴様に負けたことはないがな!」ズギャアアアアアアンッ

ナーサリー「嘘は良くないわ」

ロムルス「往生際の悪さ選手権重量級の世界チャンピオンである」

巌窟王「フン! もう喋ることはない!」ゴオオオッ

ビュンッ

ナーサリー「あ! 逃げたのだわ!」

最原「……嘘じゃないなあ。残念だけど、さっきの彼の言葉は。一度だって僕は巌窟王さんに勝ててない」

ロムルス「?」

最原「相手の得意分野で上回らなきゃ、そんなの勝利じゃないよ」

最原「僕が欲しかった強さはああいうのだ。縦横無尽に飛び回って、僕たちの手の届かない場所にある希望を掴む」

最原「ああいう、理不尽な強さだよ」

アンジー「……彼も……」

アンジー(彼も終一に憧れてたんだよ。終一にしか持てない強さにさ)

アンジー(……なんて、分かり切ったことだからもう言わないけどねー)
518 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/27(土) 23:17:35.93 ID:c5riuyDC0
巌窟王「……」

巌窟王(思えば……随分と長居したものだ)

巌窟王(狙う場所は頭上。先ほどキーボが誤射したドームのヒビ部分!)

巌窟王(道を示す。道を作る。障害は軒並み排除する!)

巌窟王(これが最後の宝具となる!)

巌窟王「叩き壊してやる……まとめてさよなら絶望学園だ!」ゴオオオオッ

巌窟王「虎よ、煌々と燃え盛れ!」






真宮寺「始まった……分身し始めたヨ!」

ギュンッ ギュギュギュギュギュンッ

入間「……多くね!? 今まででぶっちぎりの多さだぞ!」

星「最後だからな。張り切っているってのが一つ。もう一つにして最大の要因は……」

キーボ「もう邪魔は無いとは言え、今まで僕たちを閉じ込めていた堅牢にして鉄壁の壁」

キーボ「時間があるのならともかくとして、短時間でブチ破るのならあれでも足りるかどうか……!」

アンジー「……」

アンジー(思えば……随分と一緒に過ごしたよね)
519 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/28(日) 20:23:27.40 ID:ldYnDayo0
アンジー(行かないで。一緒にいて。まだアンジーと遊んで欲しい)

アンジー(包み隠さないアンジーの本音は、そう叫んでいる)

アンジー(……でもその本音の中に、アンジーの本当の本当の本当の本音がある。弱さからくる叫びじゃない)

アンジー(彼の背中をずっと見てきたから得た、強さがそこにある)

アンジー(アンジーの強さは……アンジーの望みは……!)

アンジー「……すうううううううっ……!」






巌窟王「……!」

巌窟王(足りない! まだ、これでも間に合わない! このままでは……!)

「負けないでッ!」

巌窟王「!」






アンジー「お前はアンジーのサーヴァントなんでしょ! ならアンジーの望みを叶えてよ!」

アンジー「勝って! ぶち壊して! 隔てるものが何もない綺麗な青空をアンジーに見せて!」

アンジー「恩讐の果てに何があるのか、このアンジーに見せてよ!」

アンジー「エドモン・ダンテス――!」

巌窟王「……!」




――ガチリ。

頭の中で、小気味良くそんな音が聞こえた。
すべてのピースが揃ったパズルか、百年越しに動いた古時計の歯車のような。




????「身体が軽い……」

????(初めて名前で呼ばれた)

????「……」



そう。彼女こそは超高校級の美術部にして、とある復讐のサーヴァントのマスター。夜長アンジー。
彼女が自らのサーヴァントの名前を間違えるなどありえない。ならば、そこにいるのはきっと復讐の完遂を目論む鬼ではなく。



エドモン「……クハハ」



幸せな結末へ直走る、復讐劇の果てに『人』へ戻った男。エドモン・ダンテスでしかありえない。



エドモン「クハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
520 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/29(月) 21:37:51.38 ID:gLeP+baZ0
バガァァァァァァンッ!

最原「……!」

最原(もう目を開けているのが辛い。太陽を直視しているような本能的な拒否反応がある!)

最原(……というかもう、あれは『モロ』だ……!)

百田「黒い……太陽……!」

王馬「へえ。やるねぇ。虚構の空を、真っ黒な嘘の太陽でぶち抜こうって気なんだ」

白銀「……眩しい」

東条「でも見て。アンジーさんもキーボくんも涼しい顔よ。私たちに害はないみたいね」

獄原「見た目ドス黒くて、実はゴン太たちを思いやってる太陽。うん! まるっきり巌窟王さんみたいだね!」


ズズズンッ……!


獄原「……頑張れ! 巌窟王さん! 頑張って!」

夢野「見せてみるんじゃ巌窟王! お主の最後の根性! 最後の魔法を! 二度と忘れないよう鮮烈に!」

春川「思い出せないなら思い出せないなりに……アンタのことを信じてる。だから!」

春川「ん……? 思い出せない? 待って。前にもこんな台詞を吐いたような……古傷が疼くような……」

夢野「良い思い出じゃないから忘れておいた方が、よいぞ?」

天海「最後まで信じて! 俺たちが巌窟王さんのことを信じてるってことを!」

星「行け……行け! お前さんの大事な物を守るために!」

茶柱「みんな応援してます! これでダメだったら承知しませんからね!」

入間「ぶち抜いて犯れーーーーーーッ!」

キーボ(今酷い誤植があったような!)ガーンッ

百田「終一。お前もなんか言ってやれ! 最後だぞ!」

最原「巌窟王さん……」

最原「……みんな終わらせてくれ! すべてを!」






全員「頑張れええええええええええええっ!」ズギャアアアアアアアアンッ
521 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/30(火) 22:37:31.17 ID:AOlOxVlb0
エドモン(まだだ。体に力が漲ってくる! 一体どうしたことか、俺の身体は!)

エドモン(BBに曰く、俺のことを正しく認識すれば本来の力を取り戻せるらしい)

エドモン(だがそれだけではない! 俺の背中を押すこの力は! 胸に広がるこの熱は!)

ビキビキビキッ

エドモン「姿を晒せ! 俺たちの前に! 今日! この場で!」

バキンッ ビシビシビシッ

エドモン「安全圏からアイツらを嬲る時間はもう終わりだ! 貴様らには同じ土俵に立ってもらう!」

エドモン「出会い頭に命は取らない……だが! 一切の隔たりの無い空だけは一方的に奪ってやる!」

エドモン「我が名はエドモン・ダンテス! 希望と共にある彼らを導く者!」

エドモン「そして――!」ゴオオオオオオオオッ



ガシャガシャガシャッ!




エドモン「才囚学園のアヴェンジャーであるッ!」




バリイイイイイイイイインッ
522 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/07/31(水) 21:44:32.96 ID:doLUvusT0
FGOイベントラストスパートなので今日はなし!
523 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/02(金) 18:04:41.60 ID:nCJiEzqW0
エドモン(壁が壊れた! もう時間はない! 後はこれを思い切り外に放り投げておしまいだ!)

エドモン「間に合え!」ブンッ

エドモン(タイマーを見る余裕もなかったが……! 終わりだ! これで全員無事に!)

エドモン「……」

エドモン「まだやりたいことがあったな」



カッ



ロムルス「これは……マズイな」パチンッ

最原(ロムルスさんが手を鳴らしたと思ったら、結界が急に真っ黒になった)

天海「ロムルスさん?」

ロムルス「音と光に警戒したのだ。流石は爆弾。モロに食らうとしばらくスタンする威力である」

春川「そんなことまでわかるの?」

ロムルス「皇帝特権は直感も拝借できる」

最原「アンジーさんは……」

ナーサリー「伯爵のこと、きっと念話で注意を促してるはずね。耳と目を塞いでいれば大丈夫よ」

入間「一歩も動けねぇキーボは今頃悲惨なことになってるだろうけどな」ハンッ

最原「……」

最原(……最期を、僕たちは見ることができなかった)

最原(僕たちの目の届かないところで、彼は……)
524 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/04(日) 00:45:34.05 ID:cF6G9GHc0
ロムルス「……」

ナーサリー「……」

ロムルス(このときばかりは、二人きりにさせるべきであろう)

ナーサリー(マスターとサーヴァントの絆はワンオフだもの。邪魔は……しない方がいいわ)

最原「……?」








結界の外


「……アンジー。起きろ。アンジー」

アンジー「ん……?」

アンジー(あれ。アンジーは……なんで倒れてるんだっけ)

アンジー(……そうだ。確か、爆弾の音と光が目と耳を塞いでても予想外に大きすぎて……ていうか身体が吹っ飛んで真後ろの結界に叩きつけられて)

アンジー(身体が痛い。でも起きれないほどじゃない)

ムクリ

アンジー「……わぁ」

アンジー(周囲は一変していた。アンジーたちを閉じ込めていた檻は完全に叩き壊されて……)

エドモン「見覚えのある星空だ。やっと知っている星座を拝めたな」

アンジー「……」

アンジー(こちらに背を向けるエドモンの姿は透けていた。変な光った粒子も見える)

アンジー「……どうしてこっちを見ないの?」

エドモン「なに。大した理由などないさ。爆発の影響で顔が傷だらけになったとでも思っておけ」

アンジー「さっきお別れだとか言ってたのに」

エドモン「俺は前からこうしていたぞ。分身に余力のあるときは、アンジー。少しだけでもお前にリソースを割く」

エドモン「今もそうしているだけだ。それに……」

アンジー「それに……なに?」

エドモン「ありがとう」

エドモン「……と、まあ。礼を言い忘れていたと思ってな。それだけだ」

アンジー「……本当に……お前はさー……」
525 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/04(日) 22:30:05.11 ID:cF6G9GHc0
アンジー「……アンジーは、お別れは言わないよー」

アンジー「たった今決めた。胸に銘じた。アンジーは生涯をかけてやりたいことができた」

エドモン「言ってみろ」

アンジー「もう一回エドモンの顔を見る!」

エドモン「なに?」

アンジー「どこにも行けないのが本当なら、それはきっと消滅って意味じゃない。どっかに何かは必ず残る!」

アンジー「アンジーは生涯をかけて絶対にそれを掴む! その途中の旅路でいっぱい楽しいもの、美しいもの、心に残るものをありったけ見て!」

アンジー「辿り着いたら、それをエドモン! あなたにもちゃんと、わかるように見せてあげる!」

アンジー「アンジーだからできること! アンジーにしかできないことを! 誰に何と言われようと絶対に成し遂げてやるッ!」

エドモン「道半ばで倒れたらどうする?」

アンジー「それでもきっと後悔は残らない。やらないよりはずっとマシ!」

アンジー「……だと思うんだよねー」

エドモン「……やれやれ。随分と厄介な女をマスターにしてしまったものだ。この俺を恐れさせるとは、まったく大した女傑だな。アンジー」

エドモン「だが……それがお前の進路だと言うのなら、俺がどうこう言うのは筋違い、か」

エドモン「もう学園もないのだから」スタスタ

アンジー「……エドモン……振り返らないのはさ……」


ボロッ


ポタポタッ



アンジー「アンジーの泣き顔を見ないため……?」グスグス

エドモン「……さてな。何か言ったか。アンジー」

エドモン「俺のマスターが、俺の門出を涙で汚すわけがない。そうだろう」

エドモン「当然、俺は笑っている。俺が笑っているのだから、お前も笑っているはずだ」

エドモン「胸を張れ。お前が掴んだのはこれ以上のないハッピーエンドだ。そうでなければ、これまでの苦しみが報われないだろう!」

アンジー「……うん。視界がぼやけるから涙はもう二度と流さない」グシグシ

アンジー「ありがとう。もうアンジーは真っ直ぐ前を向ける。あなたの名前だってもう二度と忘れない」

アンジー「あなたの名前は――!」
526 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/06(火) 20:51:28.19 ID:wLlhRlmt0
キーボ「……はっ! 起きた! 凄い音と光で一瞬フリーズしてた!」ピョイーンッ

キーボ「あれ!? セミラミスさんの8bit化ウイルスがまだ消えてない!? マリ●のジャンプ音が!」ガガーーーンッ

キーボ「しかも爆風のせいでちょっと転がったみたいだし!」

エドモン「……」スタスタスタ

キーボ「あ。巌窟王さん! ボクの身体のウイルスって除去できるんですか……って」

キーボ「……」

キーボ「泣いて……る?」

エドモン「幻覚作用だろう。セミラミスのウイルスが進行してきたようだな」

キーボ「え゛」

エドモン「速やかに入間に除去してもらえ。このままだとどの道死ぬからな」

キーボ「い、いやだーーーっ! ここまで来てボクだけ死ぬのはヤだーーー!」ジタバタ

エドモン「……」スタスタ

キーボ「うわぁぁぁぁぁ……って、どこへ?」

エドモン「どこでもいい。俺はエドモン・ダンテスだぞ。この場限りの存在であるならば――」

エドモン「巌窟王とは違う。どこへ向かうのも悪くはないさ」

キーボ「……オルボワール。エドモン・ダンテス。あなたの進路にも幸多からんことを」

エドモン「俺は――」

キーボ「終わりませんよ。ここで消滅したとしても」

キーボ「ボクたちの進路に影響を与えた時点で、何一つとして終わりません」

キーボ「ボクたちの進路にはいつもあなたがいます。何と言おうが勝手にボクらが連れて行きますからね」

エドモン「……」

キーボ「あ、それと……泣いてたことは一生黙ってますから! ご安心を!」

エドモン「先に地獄で待ってるぞ」スタスタ

キーボ「ボクはそんなとこに行く予定ありませんけど!?」ガビーンッ

キーボ「まったく! 巌窟王さんはまったくもう!」プンスカ

キーボ「……あれ。巌窟王さん? 巌窟王さーん?」

キーボ「……」







キーボ「いつも通りだったなあ。消えるそのときまで」

キーボ「……うん。泣きもしてなかったかも……な……いつも通りだったから」
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/08/07(水) 17:59:16.43 ID:f7qPMhtx0
真名伏せて再登場とか無いんか…?
528 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/08(木) 23:56:38.02 ID:MPv1zc2j0
巌窟王「……ハ。俺はこの期に及んで……何故こんな場所に」

巌窟王(マンホールの中。出口と書かれた罠の在処。俺はそこを死に場所と決めたらしい)

巌窟王(我ながら随分と女々しい)

巌窟王(だが……)

巌窟王「……すべてを昨日のことのように思い出せる。ここでアイツらと出会ってすべてが始まり……」

巌窟王「そして終わる」

巌窟王「……卒業アルバムの完成くらいは目にしておきたかった。今となってはそれが唯一の心残りだな」

巌窟王「それだけしか心残りがないくらい、好き勝手したということだが」

巌窟王「……」





アンジー『……』

アンジー『神様、ですか?』





巌窟王「違うな。俺は――」

巌窟王「ただの、人だ。星空に心を打たれ、別れに涙するような」

巌窟王「そういうただの人間になってしまった、この場限りの影法師だ」ウトウト

巌窟王「……アンジー……俺も……楽しかっ……」コックリ コックリ

巌窟王「…………」


パキンッ サラサラサラサラサラ……




静寂の中で男は目を閉じた。
すべては闇の中に消え、痕跡は跡形もなく。

だが、それが彼にとっての救いだった。
何も残らないからこそ、彼は呵責無く学園の法則すら捻じ曲げてみせたのだから。

復讐鬼からヒトへ戻った男は、結果的に物語と同じ末路を辿る。

どこへなりとも消え去った。

伴がいないことだけが、物語と今との相違点だった。
529 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/10(土) 23:16:02.57 ID:156BgLom0
最原「……アンジーさん」

最原(ロムルスさんが結界を解除したのは、光と音を遮断してそう時間が経たない内だった)

最原(でも爆発という瞬間的なものを警戒したにしては、少し長すぎる時間だった)

最原(別のものを隠したかったんだ。そう確信するには充分なくらい)

最原(僕たちの前には、ただ前を真っ直ぐ見るアンジーさんがいる)

最原(そして偽りの空を映し出していたドームに開いた穴からは、胸が痛くなるくらいの綺麗な星空が見えて……)

最原「巌窟王さんは行ったの?」

アンジー「うん」

最原「……そう。そ……っか」

アンジー「でもアンジーはもう泣かない」

アンジー「信じられる物から目を逸らさないって決めたから」

アンジー「……一周回って元に戻っただけだねー。にゃははー!」

ビュオウッ

百田「お……風だ」

夢野「気持ちいい風じゃのー」

春川「……炎の熱気はもうないね。さっきまでの業炎が嘘みたい」

最原(その風は僕たちに告げていた。すべては終わったのだと)

最原(……苦しいことだけじゃない。その中にあった楽しいことや、綺麗な思い出も全部過去のものへと変わって――)






ナーサリー「……退去が始まったようね」キラキラキラキラ

ロムルス「ローマは彼らに残す言葉はない。あったとして、それはすべて巌窟王の残したものに埋もれてしまうだろう」キラキラキラキラ

ロムルス「無言の内に消えるとしよう。それでいい。それがいい」

ナーサリー「……?」

ロムルス「どうかしたか?」

ナーサリー「キングプロテアの退去が始まってない……?」

ナーサリー「地下と地上とでセミラミスの宝具の効果が違うのかしら」

ナーサリー「……大した問題じゃないわね。どちらにせよ、彼女も戻るでしょう」

ナーサリー「すべてはハッピー。世はこともなく、すべては流れに流れいく。なるようになってお終いよ」

ロムルス「……さらばだ。才囚学園よ」


シュイーン


キングプロテア「……」モゾモゾ
530 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/10(土) 23:16:02.62 ID:156BgLom0
最原「……アンジーさん」

最原(ロムルスさんが結界を解除したのは、光と音を遮断してそう時間が経たない内だった)

最原(でも爆発という瞬間的なものを警戒したにしては、少し長すぎる時間だった)

最原(別のものを隠したかったんだ。そう確信するには充分なくらい)

最原(僕たちの前には、ただ前を真っ直ぐ見るアンジーさんがいる)

最原(そして偽りの空を映し出していたドームに開いた穴からは、胸が痛くなるくらいの綺麗な星空が見えて……)

最原「巌窟王さんは行ったの?」

アンジー「うん」

最原「……そう。そ……っか」

アンジー「でもアンジーはもう泣かない」

アンジー「信じられる物から目を逸らさないって決めたから」

アンジー「……一周回って元に戻っただけだねー。にゃははー!」

ビュオウッ

百田「お……風だ」

夢野「気持ちいい風じゃのー」

春川「……炎の熱気はもうないね。さっきまでの業炎が嘘みたい」

最原(その風は僕たちに告げていた。すべては終わったのだと)

最原(……苦しいことだけじゃない。その中にあった楽しいことや、綺麗な思い出も全部過去のものへと変わって――)






ナーサリー「……退去が始まったようね」キラキラキラキラ

ロムルス「ローマは彼らに残す言葉はない。あったとして、それはすべて巌窟王の残したものに埋もれてしまうだろう」キラキラキラキラ

ロムルス「無言の内に消えるとしよう。それでいい。それがいい」

ナーサリー「……?」

ロムルス「どうかしたか?」

ナーサリー「キングプロテアの退去が始まってない……?」

ナーサリー「地下と地上とでセミラミスの宝具の効果が違うのかしら」

ナーサリー「……大した問題じゃないわね。どちらにせよ、彼女も戻るでしょう」

ナーサリー「すべてはハッピー。世はこともなく、すべては流れに流れいく。なるようになってお終いよ」

ロムルス「……さらばだ。才囚学園よ」


シュイーン


キングプロテア「……」モゾモゾ
531 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/10(土) 23:33:51.33 ID:156BgLom0
第六章

超高校級の生徒たちが超高校級の召喚を目撃し超高校級の協力で超高校級の絶望に立ち向かい超高校級の結末を掴むお話


END……?



ブロロロロロロロロ



百田「ん? なんだこの音――?」

イシュタル「あああああああ私を置いてくんじゃないわよーーーッ!」ブロロロロロロ


ドカァァァァァァンッ


春川「あべしっ」

百田「ハルマキが超速度で宙を走るスクーターに轢かれて吹っ飛んだーーーッ!?」ガビーンッ

百田「……ってなんかこんな光景前にも見た気がするぞオイ!」

春川「ごはっ」ベシャッ

百田「ハルマキ! しっかりしろ! ハルマキー! ってこんな台詞もなんか一字一句そのまま吐いた気がする! 覚えてねぇけど!」

茶柱「いい雰囲気が台無しなんですけど!」ガーンッ




END

マアンナのミラーを手に入れました!
532 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/12(月) 18:31:16.73 ID:bMftJBDD0
???????


エドモン「……ここは……どこだ」

エドモン「何故俺はこんな場所にいる?」

エドモン「……まあいい。どこへ行くのも悪くないと言ったのは俺自身だ」

エドモン「見渡す限り本当に何もないが……歩くことくらいはできそうだ」

エドモン「……」スタスタ

エドモン(俺は何も忘れない。気の遠くなるような時間歩いていても、何も忘れないし摩耗しないだろう)

エドモン(多分これ以上、何も起こらない。俺は怒らない)

エドモン(すべて終わったのだから、それでいいのだ)









黒い竜(ジャンヌが来るのはいつ頃くらいだろうか……)ボーッ

エドモン「!?」ガビーンッ



歩いていると巨大な黒い竜の後ろ姿を見つけたが、特に用はないのでエドモンはスルーして歩き続けた








エピローグ

僕らの為の物語
533 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/12(月) 18:51:13.36 ID:bMftJBDD0
超高校級の発明家の研究教室

入間「……」

キーボ「……」

入間「んん……んんんんんんんんんんんんんんんんんん」グギギギギギギギギ

入間「無理ィーーーッ」ポーイッ

キーボ「匙を投げないでください! あなたに見捨てられたら……見捨てられてしまったら!」ヒョコヒョコ

入間「やめろこっちに来るんじゃねぇ。間抜けな音に思わず吹いちまいそうだブっフォフォウ」

キーボ「もう既に思い切り吹いてますねぇ!? お願いです! 除去してください! ボクの身体の中のセミラミスウイルスをおおおおおお!」ピコピコ

入間「だから無理だって。俺様何度も言うけどソフト関係に関してはその筋の才能持ってるヤツよか劣るんだっつの」

入間「セミラミス自身には解毒できるかもしれねーが、アイツ死んじまったしなぁ」

キーボ「死んだところをボクら見てませんよね!?」

入間「撃った本人が言っていい台詞じゃねぇ。それに……」

入間「まともに寝てねぇんだ。全部終わったのも昨晩のことだぞ……ふあーあ……」

入間「他に可能性があるとすれば、最原がまた抜け道を見つけることだけどよ……」







キーボ「……真っ先にぶっ倒れて眠ってしまいましたからね……」

キーボ(時間はまだ朝……起きていない人の方が多かった)

キーボ(ボクらは脱出をまだ保留している)
534 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/13(火) 20:49:22.17 ID:R7u814Dc0
入間「いいじゃねーか。結局巌窟王の『除去しなきゃ死ぬ』って言葉が嘘だってわかったし、修理のお陰でほぼ後遺症も残らなかっただろ?」

キーボ「唯一残った後遺症が一番イヤなんですよボクは!」ピニョーーーンッ

入間(なんかナムコのシューティングゲーみたいな効果音になってきやがったな……)

入間「後回しだ後回し。この場にある機材と人材じゃどうしようもねぇ」

入間「それに、俺様は他にやることもあるしな。これ」ポンポンッ

キーボ「……スクーター? どこかで見たデザインですけど」

入間「ド貧乳川をふっ飛ばしたあのスクーターのコピー品だ」

キーボ「ああ! 本当だ! デザインが一緒!」ピコーンッ

キーボ「……と、いうことは」

入間「飛べるぜ。これで。あの大穴から誰か一人が先に脱出して、その後で一連の全員脱出の段取りを付けるって寸法だ」

キーボ「ボク以外の魔術の痕跡は全部消えたはずなのに、よく作れましたね?」

入間「それがよくわかんねーんだよなー。ネコアルクに捕食されたはずのイシュタルが普通に復活してたのも意味不明だったしよー」

入間「ひとまず人身事故の衝撃で外れたミラーを基にして、どうにか人一人分くらいは余裕で乗せられる程度のクソ劣化品は作れたけどな」

キーボ「まさかセミラミスさんの仕込みが上手く行ってなかったんじゃ……」

入間「そりゃねーな。実際に、ナーサリーライムもロムルスも消えてんだろ?」

キーボ「……巌窟王さんも、ですよね……」

入間「……ハッ。散々振り回されたんだ。せいせいすらァ」

キーボ「いや入間さんが勝手に自分からぶんぶん振り回されに行ってたように見えましたが」

入間「るせーーー! この万年レトロゲーロボがッ! 64以上のスペックになってから出直せコラ!」

キーボ「罵倒文句のチョイスがロボに対するものとして酷すぎる!」ガビーンッ
535 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/14(水) 22:24:33.44 ID:x3uLQYOV0
病院:病室

春川「……ハッ! 痛ッ!」ズキッ

春川「ここは……病院? 良かった。今度はちゃんと記憶がある」

百田「ぐー」スヤァー

春川(椅子に座った百田が、頭を私の寝ていたベッドに預けて寝ている)

春川「……もう朝か……百田、こんな体勢で寝てたら身体痛めるって」ユサユサ

百田「ぐー」スヤァー

春川「全然起きない」

春川「……まあ二度目だし、撥ねられるの。また記憶を失ったらと思ったら私の立場でも心配する……?」

春川「あれ。撥ねられて記憶を失うなんてこと、前にもあったっけ?」

春川「……あった。そういえば巌窟王に思い切り轢かれて……」

春川「あっ!」

春川(思いだしちゃったよ……今更……! 叩かれて思い出すなんて、我ながらなんて単純な脳味噌……)ズモモモモモモモモ

春川「……」

春川「でもまあ、いいか」

春川(特に何も変わりない。記憶を取り戻そうが、取り戻すまいが、私は私)

春川(……似たようなこと、コイツなら言いそうかな)ナデナデ

百田「ハルマキ……」

春川「!?」ビクウッ

百田「……アルカリ性の風呂で王馬をドロドロに溶かすのはやめてくれ……」グギギギギギ

春川「どんな夢見てるの……」
536 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/15(木) 22:18:55.72 ID:+3dRTaID0
中庭

真宮寺「……」

王馬「あ。真宮寺ちゃんじゃん。おはよー!」

獄原「真宮寺くん。こんなところで何してるの?」

真宮寺「アレまだあるんだなーって思ってネ」

獄原「アレ?」

キングプロテア「……」ミヂッ

王馬「まだあったんだ!?」ガーンッ

獄原「……人間の頭皮と毛髪だね、これ。サイズはおかしいけど」ペンペン

キングプロテア(くすぐったい)モゾモゾ

王馬「考えるまでも無く百パーサーヴァントじゃん。なんでまだいるの」

真宮寺「あくまで可能性だけど、地下と地上とじゃ流れている法則が違うのかもネ」

真宮寺「話を聞ければ手っ取り早いけど、現状地上で見えているのが頭のてっぺん程度だから男女の区別すら付かないヨ」

王馬「ま、この辺は下にいる赤松ちゃんがなんとかしてくれるでしょ。状況を悪化させる天才だけど、だからって無能じゃないよ。彼女は」

獄原「うん。そうだね! 赤松さんはいつだって明るいから!」

真宮寺「……」

真宮寺(……何の根拠もないけど、確かになんとかなる気しかしないんだよネ)

獄原「ところでこの髪の色、どこかで見た気がするんだけど……気のせいかな……」
537 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/16(金) 21:32:37.73 ID:gTdTTrvX0
真宮寺「で。質問をそっくりそのまま返すけど、こんな早朝にそっちこそ何を?」

王馬「早朝だからかなぁ。アレを見たくって」

真宮寺「……ああ。空に開いた大穴ね」

王馬「正確には天井に開いた大穴だけど、実際俺たちにとって最近まであれが空だったからねぇ。気持ちはわかるよ」

獄原「うん! ちゃんとした日差しと、ちゃんとした青空だよ。綺麗だね」

王馬「ゴン太と会ったのは偶然だよ。たまたま行先が一緒だったからさぁ」

獄原「……で。あそこからどうやって脱出すればいいんだろう」

王馬「穴さえ開けば後はどうとでもなるよ。入間ちゃんなりキー坊なりが頑張れば」

王馬「問題はあれが穴ってところだね」

真宮寺「どういうこと?」

王馬「……調子を取り戻した入間ちゃんが穴に関する下ネタを言う確率、八十五パーセント」ズーン

真宮寺「百パーでしョ……」

獄原「い、いやなんだね……元の調子に戻られるの」

王馬「できれば彼女に頼らず脱出したいよ……下ネタが耐えがたいんだよね」

王馬「時間停止モノを謳ったAV以上に存在自体が耐えがたいんだよね」

真宮寺「それ自体が既に下ネタだヨ」

王馬「エロ描写がワンパな上に竿役の口調が必要以上に悪いエロ小説以上に耐えがたいんだよね」

真宮寺「わざとだネ。わざとだよネ?」

獄原「????????」
538 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/17(土) 19:44:21.86 ID:EAixPJeA0
超高校級のマジシャンの研究教室

夢野「……いない! ハトムギがどこにもおらんぞ!」キョロキョロ

夢野「まさか単独でセミラミスのところに……!? 寝取りか!? 寝取られたのか!?」ガタガタ

東条「よくわからない単語を連呼するのはよくないことよ」

夢野「んああっ!? と、東条!? 驚かすな!」

東条「朝ご飯の時間よ。冷める前に食べることをお勧めするわ」

夢野「……」

夢野「傷」

東条「今度こそ、もう大丈夫よ。痛むのは事実だけれども……そろそろ、塞がってきたから」

夢野「……思ったよりみんなボロボロになったのう。最原とかを始めとして」

東条「私は自業自得だけれどもね」フッ

夢野「……」

夢野「さて。今日のご飯は何かのう」

夢野「下手したらここで食べる最後の朝ご飯じゃ! モリモリ食うぞ!」

東条「ふふっ。今日のご飯は腕によりをかけたの。楽しみにしておいて」

夢野「腹がはちきれるまで食べるんじゃー!」






食堂


天海「」チーン

白銀「天海くーーーん! だから言ったじゃん、食べ過ぎだってさぁーーー!」ウワァァァァ

夢野「本当にそこまで食うヤツがあるか!?」ガビーンッ
539 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/18(日) 23:25:49.60 ID:InB6uqwD0
マーリンに財布を殺されたオタクになったので今日はなし。

さっ財布ーーーっ!
540 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/19(月) 19:04:50.16 ID:sNe8N8+i0
白銀「……『東条さんのご飯を食べられる機会なんてもうないかもしれないっすから』。それが彼の最期の言葉だったよ」ホロホロ

夢野「死んでおる!?」ガビーンッ

東条「いいえ。死にかけてるだけね。生きてるわ」

夢野「それでも重症なんじゃな!?」

天海「う、うう……仮面が……アマデウスの仮面が……ない」ガクッ

夢野「え? 失くしたのか?」

白銀「帰ったっていうのが正確かもね。ほら、イシュタルさんたちみたいにさ」

夢野「……全部、形跡すら残らないんじゃな。この学園に、巌窟王のものは。なにも」

夢野「終わってみれば夢みたいな話じゃったなぁ。魔術だの英霊召喚だのサーヴァントだのと」

東条「……それじゃあ、ご飯にしましょうか。しんみりするのは後でいいわ」カタッ

夢野「いよっしゃあーーー! お待ちかねの東条の」

麻婆豆腐「」ユエツ!

夢野「麻婆豆腐!? 朝から!? しかも色が真っ赤で臭いが目に痛い!」ガビビーンッ

東条「あら。ごめんなさい。うっかりしていたわ。これはみんなに出すつもりが無かったのだけれども」

東条「……」

天海「それ。東条さんが怪我する前に、巌窟王さんがよく食べてたヤツっすよね」

白銀「!」

東条「……弱い女と笑ってちょうだい。誰に出すわけでもないのに、作ってしまったのよ」

東条「王馬くんの悪ふざけのせいだけれども……彼に食べてもらったほぼ唯一の料理だったから」

夢野「……」

夢野「はくっ」モシャァ

東条「あっ。それ辛さは見た目以上なのに」

夢野「ぎゃああああああああああ辛ッ! かっっっらァ! なんじゃこれは! 地獄原産のホアジャオでも使っておるのか!?」ガタガタ

夢野「でも美味いのう」ハクハク

東条「……」

夢野「ぐっ……う、うううん。美味い美味い。多分、巌窟王も同じことを思ったじゃろうなぁ」

夢野「……幸せだったじゃろうなぁ。あやつ」

東条「夢野さん……」

夢野「……ほら。ウチも巌窟王のことを思い出すぞ。別に弱くもなんともないわい、この程度」
541 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/20(火) 22:09:52.25 ID:aBCfmz550
夢野「ウチはまだやりたいことがいっぱいあるんじゃ……!」

夢野「実現のためにこの学園での思い出は絶対に切り捨てることができない! できるわけないじゃろう!」

夢野「思い出は! 強さじゃ!」

天海「……ははっ! 夢野さん……強くなったっすね。なんか」

夢野「それはそれとして、この麻婆豆腐辛いんじゃあーーー! 涙と汗が止まらないんじゃがー!?」ダバダバダバダバ

天海「唇が腫れてなかったら本当格好良かったんすけどね……」

白銀「……えっと、夢野さん。一緒に食べようか。二人なら早く終わるでしょ」

夢野「頼むぞ!」

白銀(即答……いいのかなぁ。こんなの。天海くんだけでも充分なのに、私のことを仲間だと思ってくれる人がまだいるなんて)

白銀「……ちょっと幸せすぎるかも」

夢野「辛党か」

白銀「全然違う」

東条「そう。よかったわ。実はフライパン一枚分ほど作ったからまだまだ余ってたのよ」ドンッ

白銀&夢野「」

東条「食べると言ったからには食べてもらうわよ。全部。量そのものは二人がかりなら余裕だから安心して?」

白銀&夢野「」

天海「……俺も食べるっすよ」ハハハ





この日、天海、白銀、夢野の三人の間で『麻婆豆腐』が禁句になった
542 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/21(水) 22:30:11.89 ID:T1CU8+9E0
モノクマ「……負けちゃったなー。完璧に。外の世界はどうなっちゃうんだろうなー。キーボくん取られちゃったし」

ネコアルク「気にすんなって。明日は明日の風が吹くさ」キランッ

モノクマ「それもそうだね! あっはっはっはっは」

ネコアルク「にゃっはっはっはっはっはっは!」





「「あーーーっはっはっはっはっはっはっは!」」





茶柱「うるっっっさいんですけど二匹揃ってェ! なんで転子の部屋にいるんですか! そして仲良くなってるんですか!」ウガァ!

モノクマ「マザーモノクマのいるあの部屋、セミラミスさんの改築工事が途中で終わったせいでズタボロなんだよね……」

ネコアルク「ロムルスさんの結界の内側にいたせいで赤松嬢に置いてかれてしまったので行き場もなくー人肌も恋しくー」

モノクマ「ついでに寄宿舎の中でかなりダメージが少ない部屋が今となっては茶柱さんの部屋オンリーと言っていい状況だし」

ネコアルク「病院のベッドの方も埃や砂塵に塗れてないヤツは春川さんが使ってるからにゃー。あの子に関わると命がいくつあっても足りなさそう」

茶柱「……仲良くなっている理由は?」

モノクマ&ネコアルク「仲良しごっこと馴れ合いは十八番!」ビシイッ

茶柱「それを素面で言い合えるのならもう友達と言っていいのでは!?」

モノクマ「……」

モノクマ「で。なんで最原くんを自分の部屋に連れ込んでるの?」キョトン

最原「……」スヤァ

茶柱「……巌窟王さんとキーボさんとの戦いのせいで病院のベッドすらすぐに使えそうなのはないんですよ。さっき言ってたでしょう」

モノクマ「ふっうーん?」

ネコアルク「ほっへぇー?」

茶柱「もう校則も何もないので力尽くで排除してもよいのですが?」ゴキンッ

モノクマ&ネコアルク「……」ガタガタ
543 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/23(金) 21:15:24.85 ID:fnuzjqNf0
茶柱「……最原さんが」

ネコアルク「?」

茶柱「最原さんが起きたときに転子がいないと、危なっかしいでしょう」

茶柱「脊髄反射で無茶をしますし」

モノクマ「巌窟王さんの影響で自分から飛び込んで行ってたよね。火に」

ネコアルク「人間がサーヴァント相手に張り合うとかエアーズロック相手にメンチ切る以上の無意味なんだけどにゃー」

茶柱「確かにこの学園で一番の無意味バカでしたが……転子以外の人間に彼の悪口言われると物凄くムカつきますね」

モノクマ「茶柱さんの沸点はヘリウム並みなの?」


ガチャリンコ


星「茶柱。最原は起きたか?」

茶柱「まだですね。夕方までぐっすり寝てても不思議じゃない眠りっぷりです」

星「そうか。コイツは少し頑張り過ぎていたからな。休めるのなら休んでいた方がいいだろう」

星「これは東条の作った朝飯と、スポドリと包帯だ」

茶柱「あ。ありがとうございます」

茶柱「……えーっと、最原さんの包帯の取り換えは星さんがやってくださいね。転子そのために星さんに声をかけたんですから。身を切る思いで」

星「やれやれ。じゃあ先に手を洗わせてもらうぞ。そういうことをするのならな」

モノクマ「……」

モノクマ「あれ? 水道、まだ生きてるの?」

茶柱「え」

星「……ム……? 確かに妙だ。何故施設としての能力がまだ生きているんだ? 全部終わったはずだろう」

ネコアルク「……あー……施設の長がまだ生きてるからじゃないですかにゃー……」

茶柱「……仮にそうだったとしても転子たちには関係ありませんね。あの傷じゃあ長く生きられないはずですし」

星「赤松に全部任せるべきだろうな。むしろアイツを手伝おうとするのは野暮だぜ」

茶柱「……」
544 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/24(土) 12:21:20.61 ID:w7izNxCi0
茶柱「……出会いの象徴みたいな人たちでしたね。巌窟王さんたち、サーヴァントって」

茶柱「悪影響を与えたり、最原さんや赤松さんを魅了したり」

星「あそこまで理不尽なヤツらは外の世界でもそうそういないと思うがな」

茶柱「でも、呪いを撒き散らすことを選ばなかった転子たちにはきっと彼ら以上の出会いがあるかもですよね」

星「……否定はできねーな」

星「ふっ。俺も絆されたか。少し前は生きる希望なんて何もないと思っていたが……」

星「今はちょっとだけ……一番星みたいな小さな明かりが見える気がするぜ」

モノクマ「うんうん。成長してくれて先生嬉しい! 感動のせいで涙が止まらない!」ネチョオオオオオオ

茶柱「汚ッ! 粘度が高くて気持ち悪ッ!」ガビーンッ

ネコアルク「あちしもサーヴァント由来のアレにゃんですけどにゃー。どう? 出会ってよかった? よかった?」チラッチラッ

茶柱「ノーコメントでお願いします」

星「口を開けば悪口しか出ない、という意味ではなく本当にコメントが不可能だからな」

ネコアルク「そんにゃー」

茶柱「……ところで、ネコアルク同士って通信できたりしないんですか? 赤松さんの安否がわかったりしません?」

ネコアルク「できなくはにゃいんですけど、地下と地上とでノイズが入りまくりで、あまり鮮明な情報は入ってきませんにゃー」

茶柱「それで構わないですから。無事ですか?」

ネコアルク「……あー……」

ネコアルク「宝具レベル上げしているところだからもうちょっと待ってって言ってますにゃ」

茶柱「え? 何ですそれ。意味がわからないから別件じゃないですか?」

ネコアルク「だからノイズが入ってるって言ったのに」

星「もうちょっと待って、の部分だけ抜き出していいのなら、俺たちは赤松が帰ってくるまで学園で待つべきだろうな」

茶柱「幸いライフラインも生きてますしね。好きにさせてあげましょうか」
545 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/26(月) 23:58:24.38 ID:yanit82o0
裏庭 地下

アンジー「……」ガリガリガリ

アンジー「よーしかんせーい!」キラーンッ




『エドモン・ダンテス

生徒を導いた偉大な復讐鬼、ここに眠ってない』




アンジー「完璧なレリーフだよー! これでこの学園に思い残すことはないねー」

アンジー「……」

アンジー「やっぱりどっかで学園のスケッチでも描こうかなー」

アンジー「アンジーにとって満足度百二十パーセントの道行じゃないと、会ったときに彼も残念がるだろうしねー」

アンジー(……考えたこともなかった。アンジーが嬉しいのなら、エドモンも喜んでくれる)

アンジー(エドモンが嬉しいのならアンジーも嬉しい)

アンジー(……似たようなことが他の誰かにも言える。終一、楓、解斗、魔姫、美兎、ゴン太、他の生徒も全員)

アンジー(誰かと感情を交換できるようになるのが絆)

アンジー(そういうささやかな思い出を忘れないように必死に生きていく)

アンジー(仮にまた思い出しライトで忘れられても、それまで必死に生きてきた記録は絶対になくなりはしない)

アンジー(……特に)






アンジー「美術品みたいな形に残るものは、いいよねー」
546 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/27(火) 22:30:53.79 ID:jNFXrRUD0
うおおおおおやったーーー! 水着獅子王宝具2だーーー!
育てるので今日はなし
547 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/28(水) 20:44:30.62 ID:f1d7GApm0
アンジー「後の懸念材料は終一だけだけど……」

アンジー「……大丈夫だよね。ちゃんと起きられるよね。終一」

アンジー「一応ネコアルクに確認しておこうかな。モノクマとデュエルしてた個体が一体だけ残ってたと思うんだよねー」

アンジー「……今どこにいるんだろー? 食堂かなー?」スタスタ






食堂

デデドドドンッドドンッドドンッ エェェェェェェェェェェェェ(死体発見時BGM)

夢野「」チーン

天海「」チーン

白銀「」チーン

アンジー「!?」ガビーンッ

東条「……」

東条「私が来たときには既にこうなっていたわ」シレッ




面倒ごとがイヤだったので東条は嘘を吐いた
548 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/29(木) 20:42:57.61 ID:EitKLrOG0
某所

最原「……」

物凄く大きい黒い竜「……」

最原(なんだこの竜)

物凄く大きい黒い竜(誰だこの人)

最原「……いやいや。僕は確か巌窟王さんが開けた天井の大穴を見て……見た後、物凄く眠くなって……寝たのかな。じゃあ夢かな」

物凄く大きい黒い竜「俺にとっては現実だが」

最原「うわあ!? 喋った! 発声器官どうなってるのドラゴンって!」

物凄く大きい黒い竜「え。あれ。そういえばどうなってるんだろう。考えたこともなかったな……まあいいか」

物凄く大きい黒い竜「何かの縁を辿って夢で繋がったのか……要は魂の迷子だな。良ければ俺の力で元の場所に送り返すが」

最原「……」

最原「帰ったところで、僕にやれることなんてあるのかな」

物凄く大きい黒い竜「無いことは無いのではないか。俺もやることもなくずっとこうしているだけだが……」

物凄く大きい黒い竜「だから待つことはできる」

最原「待つ?」

物凄く大きい黒い竜「ルーラーを……大事な人を待っているんだ」

物凄く大きい黒い竜「世界は絶えず動いている。その場から動くことがないのなら、それはそれで何かに引っかかることもあるだろう」

物凄く大きい黒い竜「川の底の石のようにな」

最原「……僕は……ヒーローになりたかったんだ」

最原「結構ガムシャラに頑張ったつもりだったんだけど、無理だった。目標の人の背中にまったく手が届かなくってさ」

最原「多分一生、手が届かない」

物凄く大きい黒い竜「ヒーローになれなければキミの存在に意味はないのか?」

最原「……」

最原「いや。そんなことはなかった、かな。こんな僕のことを好きだって言ってくれる人もいた」

物凄く大きい黒い竜「ならばやっぱり、やれることはあるのだろう。人間とはそういうものだ」

最原「竜なのに随分と人間臭いことを言うなぁ……」

最原(……あれ?)





最原「何かの縁……? こんな非現実的な場所に僕を呼び寄せるような? まさか……!」
549 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/30(金) 21:51:45.73 ID:Y9rPt+rY0
バサッ

最原「!」

最原(……もう二度と会えないと思っていた。死んだ人間と過ごした日々の方がおかしかったんだから当然だ)

最原(でも僕は……! もう一度会えるのなら、それは奇跡で……!)

最原(あのマントは……見間違えようもない! 二度と手が届かないと思っていた彼の!)

最原「……巌窟王さ――!」ダッ







巌窟王コスのBB「BBちゃんでしたーーーッ!」キャピーーーンッ

最原「んんがおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!?」ズザザザザリザリザーーーッ

物凄く大きい黒い竜「十メートルくらいズッこけたな」

最原「……び、BBさん……どうしてここに……」ピクピク

BB「甘いですね! 私は死んでも死なないこと、二周目と三週目の狭間に出てくることに関しては定評があるんですよ!」

BB「壊れても世界の裏側に向かう程度は造作もないことです! ていうか裏側って言葉自体に親和性があるので!」キラーーーンッ

最原「じゃあ僕をここに呼んだ縁って!?」

BB「巌窟王さんだと思いましたか? 残念、BBちゃんでしたー!」キャルーンッ

最原「男としては最低最悪だけどもッ! 今すんごくBBさんを殴りたいッ! 何の用!?」ダンッ

BB「脱出おめでとうメールをあげたくて……」スッ

最原「ああ、ありがとう……」カサッ

BB「ジメチルスルホキシドって知ってます?」

最原「確か皮膚に触れると中に混ぜた毒物ごと体内に浸透させる薬品……」ヌショッ

最原「うわあああああああああああ油断したーーーッ!」ポイッ

BB「まあそれただの食塩水ですけどね」プスススーッ

最原「」

物凄く大きい黒い竜(仲がいいのはいいことだ)
550 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/08/31(土) 15:55:42.34 ID:zrrW8+vf0
BB「安心してその手紙を読んでください。お願いっ」マイメロォォォォ

最原「……うん。僕たちを祝ってくれているのなら……」ペラッ



『TYPE-MOON studio BB設立おめでとうございます!
あと才囚学園生徒一同脱出おめおめー

by BB』



最原「何のことだかわからないけど別件が混じってる! むしろ僕たちの脱出の祝福のがオマケじゃない!?」ガビーンッ

BB「……ユーモアはこのあたりにしておいて、本題は手短に済ませましょうか」

BB「まずは脱出おめでとうございます。お陰で私もこっちに来ることができました」

最原「……え?」

BB「ああ、勘違いさせたのなら申し訳ありませんが、私がこちらに来れたのは巌窟王さんが学園の壁を破壊した直後ですよ」

BB「それまでは本当、バラバラの状態のまま完璧に壊れてどうしようもありませんでした」

BB「理屈上は巌窟王さんと一緒にこっちに来たって感じですね」

最原「いるの!? やっぱり、巌窟王さんも!」

BB「もうはぐれちゃいましたけどね。ここ本当に広いので探しても見つからないと思いますよ。ありえない時間を彷徨わない限り」

最原「……紋章を刻印したときに何かしたの?」

BB「このタイミングで理解した!? とんでもない頭の速さですね! 人間にしてはですけど」

BB「有体に言っちゃうとあの紋章こそが私だったんですよね。圧縮した私のデータ」

BB「アルターエゴと記憶復元のプログラムの記録ではなく、それを完全に覚えている誰かが適確な対応をその場で作り上げれば無敵でしょう?」

BB「全部が終わった後、巌窟王さんが学園から去るときに行き場所を世界の裏側に誘導すれば……」

BB「少なくとも『行方不明』ってほどじゃなくなるので」

最原「……物凄く広いんじゃなかったの?」

BB「他にも『終わったヤツが行く場所』の候補は色々あるんですよ。そのどれもが『ありえないくらい広い』んです」

BB「多少なりとも場所を限定してあげたんだから額を地面にこすりつけて感謝してください」

最原「……」エー

BB「……凄くイヤそうですね」
551 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/02(月) 19:28:10.55 ID:Jta5mEbj0
最原「……すぐに会えるっていうのなら考えたけど、労力がかかるっていうのなら僕はいいよ。アンジーさんやみんなには伝えておくけどさ」

最原「ありがとう。BBさん」

BB「いえいえー。このくらい当然ですよー。えへへ」テレテレ

BB「……ところで」

最原「なに?」

BB「ぶぶづけいかがですか?」サッ

最原「呼んでおいてその対応はないでしょ!?」ガビーンッ

物凄く大きい黒い竜「美味しそうだが、食べていかないのか?」

BB「彼は皮肉をまったく理解できていませんが、あなたは理解できていますよね?」

最原「……帰り道はどこ?」

物凄く大きい黒い竜「なんだ。もう帰るのか。それならば道を用意しよう」ズズッ

最原「あ。地面に穴ができた……」

BB「持病ーーーッ!」ドンッ

最原「えっ? あっ、あああああああああああ……」ヒューッ

物凄く大きい黒い竜「……何故突き飛ばした?」

BB「癖です」
552 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/03(火) 21:27:05.04 ID:vUunmabX0
最原「待って! まだ僕は……!」ヒュウウウウッ

最原(うおおおおおっ! 加速が付いてきた……確か人間の体格だと落ちている途中でスピンがかかって遠心力で意識を保てなくなるはずだ!)

最原(相当長い時間落ちないとそうはならないけど、この穴の場合は深すぎる!)

最原「BBさん! 僕は……僕はまだッ……!」

最原「キミにも感謝したかったのに――!」

最原(どうしてサーヴァントは全員、自分の都合しか考えないんだ……!)

最原「……!」

最原(意識が……!)








物凄く大きい黒い竜「あなたも行くのか」

BB「もう用時が完全になくなっちゃったので。次はどこに行きますかねー。自我が崩壊するまで歩いてみましょうか」




「……ありがとう……!」




BB「!」

物凄く大きい黒い竜「……穴から声が聞こえたか?」

BB「気のせいじゃないですか? 私はそうは思いませんけどね」

BB「……」

BB「今更ですがあなた誰です?」

物凄く大きい黒い竜「それを俺も聞きたかったところだ」
553 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/04(水) 20:39:20.06 ID:+WWtz8230
最原「……はあっ!?」ガバアッ

最原「はあっ……はあっ……ゆ、夢……?」ガサッ

最原「じゃないな……手紙が残ってる……」

茶柱「最原さん?」

最原「え?」

最原「……茶柱さん? なんでここに……いやその前に、ここは……?」キョロキョロ

茶柱「あ、後で説明してあげますから、それは。とりあえず……おはようございます」

茶柱「夜はもうとっくに明けてますよ。もう昼です」

最原「……」

最原(忘却補正が……消えたのか……)

最原「あれだけは残せるんじゃないかって根拠なしに期待してたんだけどな……」

茶柱「……ところで、その紙は一体なんですか?」

最原「貰いものなんだ。みんなのことを祝うメッセージが書かれて……」ペラッ

最原(……紙から柑橘類の臭いがする。これまたベタな……!)

最原「寝起き一番でこんな質問をするのは変かもだけど」




星「」チーン




最原「なんで星くんが死んでるの?」

茶柱「激辛麻婆に殺されて」

最原「なんだって?」
554 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/05(木) 20:19:13.61 ID:9hSmhRh/0
茶柱「……昼ご飯、何にします? パン類とご飯類の両方ありますよ。危険物は星さんがその身をかけて処理してくれましたので安心です!」

最原「危険物があったの!?」ガビーンッ

最原「……ま、まあいいや。パン類がいいな。それで、ご飯の後はみんなと集まって話したいんだけど……」

茶柱「転子もそれを考えてました。多分他の生徒も全員。おそらく百田さんあたりが起きたら走り回って、みんなを集めるでしょうから……」



ドタドタドタッ


ガチャリンコッ



百田「茶柱! 終一! 星! 後で食堂に集合な!」


バタンッ ドタドタドタッ……



茶柱「それまではゆっくりしていようって、なんとなく思っていたのですが……」ハァ

最原(まるで僕が起きたのを見計らったみたいなタイミング……)

最原(ゴン太くん並みの野性の勘だなぁ)

最原「時間について話してなかった。すぐに来いって意味だよね」

茶柱「あ、お昼ご飯……」

最原「行きながら食べるよ」

茶柱「ひぃーーーっ! 行儀悪ッ!」
555 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/07(土) 18:54:37.39 ID:76gGQ/xu0
十分後 食堂

百田「……おーっし! 全員集まったな!」

春川「王馬と赤松以外はね」

百田「何事もなく一夜明けたみてぇだな! 全員不安事も解消されたみたいですっきりした顔してるぜ!」

春川「王馬と赤松はいないけどね」

春川「……それに」

天海「」ボヘー

夢野「」ボヘー

白銀「」ボヘー

星「」ボヘー

春川「……何人か魂が抜けてない? 何かあったの?」

最原「これでも話しかければ喋る程度には回復してるらしいから、追及は後にしよう」

最原「それで百田くん。みんなを集めた趣旨は?」

百田「……あ? 必要か、それ?」

最原「必要だよッ! せっかく集まったんだからさ!」

真宮寺「ならこの集まりの冒頭は、僕が仕切らせてもらおうかな。いくつか処理したいことがあるからネ」

アンジー「処理したいことー?」

真宮寺「まだ学園にはいくつか謎が残っている……その種明かしなしには夜もまともに眠れなさそうなんだヨ。気になってさ」

入間「パッと思いつく謎だと……やっぱアレだよな。急に復活したイシュタル」

入間「アイツの復活のお陰で脱出の算段は想定したよりも早くついたけどよ……真っ先に目につくのはアイツの不自然さだ」

獄原「ゴン太たちの目の前でネコアルクに貪られてたはずだからね……」
556 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/08(日) 20:27:25.11 ID:Ur6aooe/0
最原「……食べられたはずのものが出てきたのなら、シンプルに考えて吐き戻したとしか考えられないよね」

入間「クソとして出た! とも考えられるぜ!」

茶柱「……久しぶりな気がしますね。入間さんの下ネタ」

最原「前にアンジーさんの令呪の力で、骨から巌窟王さんが復活してきたこともあったし……」

最原「はっきり言って魔術世界はなんでもありだ。真相を知りたいのなら彼女に訊くしかない」

ネコアルク「……まごまごまご……」ムシャムシャ

アンジー「そこでサバ缶食ってるナマモノのことだよねー」

東条「……今となっては貴重な食糧だから、食べる必要がない者には食べてほしくないのだけれども」

ネコアルク「酷くね? マジ酷くね?」

ネコアルク「……で、えーと。イシュタルを吐いたかどうかが争点なんですにゃ? ええ、吐きましたよ。ゲロッと」

真宮寺「何故?」

ネコアルク「漠然とした質問ですにゃー。『何故吐いたのか』という答えに関しては『用済みだったから』で」

ネコアルク「何故吐いたイシュタルが生きていたのかに関しては『計算外』と言う他ありませんにゃー」

最原「……計算外?」

百田「そっちは後回しだ。先の証言から片付けようぜ。魔術的痕跡は全部消すとか言ってなかったか?」

ネコアルク「神性は骨組み。燃料じゃないから全部終わったら解体して処分するシークエンスでしたにゃー」

ネコアルク「退去するサーヴァントたちに混じって元の世界に帰れるはずなので」

春川「……実際に帰ったんだろうね。姿形が見えないし」
557 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/09(月) 22:50:37.96 ID:hqcrY6ZX0
最原「計算外っていうのは?」

ネコアルク「まさかゲロったイシュタルがあんな見事に再生するとは思わなかったんですにゃー」

ネコアルク「あの人がチート級のポテンシャルの持ち主だってこと物の見事に忘れてたっていうか」

最原「……他に『吐いてみたらそのまま出てきた』って人、いないよね? いたら少しビックリするんだけど」

ネコアルク「ハハハ! 流石に……いやゲロったときちょっと苦しすぎて涙目だったから周囲の確認はまともにやってないけど」

ネコアルク「流石ににゃいにゃい!」

ガタガタンッ

春川「……ん……窓から何か物音が……?」チラッ

ジャガーマン「あっ!」

ジャガーマン「やべっ」サッ

春川「」

百田「ん? どうかしたかハルマキ。そんなサバンナで猛獣にでも遭遇したような顔してよ」

春川「今窓に……」

春川「……」

春川「気のせいだよ。うん」

百田「?」

最原「魔術的痕跡はキーボくんの中にあるものを除いて、ほぼこの学園から消え去る」

最原「……ちょっとだけ不具合があったんだね。イシュタルさんが出てくるなんてさ」

東条「でも今はいなくなっている。それがすべてよ」

入間「どっこい、そうでもねえんだな。これが。魔術的痕跡がすべて消え去るのが本当なら、あのスクーターのミラーすら消えてるはずだ」

キーボ「……あ! そうか! 不具合が無ければ、あのスクーターはまず作れませんね!」

百田「ないならないでキーボに空まで吹っ飛んでもらって、そこから段取りをする予定ではあったけどな。俺の中では!」

最原(意外とよく考えてたんだな……)

百田「意外って思ってんな終一……」
558 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/10(火) 20:53:01.40 ID:NG74Ahwv0
真宮寺「今となってはイシュタルさんも消えていることだし……この問題は解決したと考えてよさそうだネ」

真宮寺「じゃあ次。王馬くんは除外して、この場にいない人について話そう。誰か連絡が付いた人はいる?」

獄原「赤松さんのことだよね。ちゃんと帰ってこれるかな……ゴン太、迎えに行ってこようか?」

キーボ「赤松さんが侵入したという地下への穴は謎の巨人の頭皮によって塞がれてしまっています」

キーボ「学園崩壊の影響がエレベーターに出ている可能性もある以上、アレも使えたものではありませんし……」

茶柱「大丈夫だと思います。ネコアルク経由で赤松さんらしき人と連絡は取れました」

茶柱「……もうちょっと待って、だそうです」

キーボ「……帰っているようですね。よかった、安心しました。どうにか彼女のピアノをまた聞きたいと思っていたところだったんです」

百田「それは同感だけどよ……学園がここまで崩壊しててピアノが無事ってことは……」

キーボ「それなんですが……不自然なことに、巌窟王さんはアンジーさんの次にピアノのことも庇って戦闘していたんですよ」

最原「え? ピアノを?」

キーボ「間違いありません。まあ、あれだけの衝撃だったので直で破壊されずとも調律は乱れまくってるでしょうけど」

最原「……」

最原「……モノクマでもネコアルクでもいいんだけどさ」

ネコアルク「はいは――」

モノクマ「はいはいなんでございましょ!」バァーーーンッ

ネコアルク「むぎゃあっ!?」

モノクマ「バカめ! 残酷マスコット路線で出番を貰えないのであれば、貴様のウザかわ系味方マスコット路線を奪い取るまでよ!」ギンッ

モノクマ「で? なんか用ですか最原サマ? 靴でも舐めましょうかゲヘゲヘゲヘヘ」

最原「路線変更に口出しはしないからせめてキャラは守ってよ……」

モノクマ「自分のキャラには秒で飽きちゃうんだよね。なんなら容姿も変えようかな」ゴソゴソ

ジバックマ「ジバックマだクマー!」

アンジー「ウザいよー」ブチブチブチ

モノクマ「ぎゃああああああああああ毛皮があああああああああああ!」

春川「夜長! 素手で毟ったりしたら変な菌付くよ! やめて!」

東条「後で念入りに手は洗わせるわね」

最原(う、うわぁーーー……そういう問題じゃないと思うんだけどツッコミが追い付かないなぁー……)

最原「……ピアノの調律、やっておいてくれる?」

モノクマ「も、もちろん……暇だからね……その程度やっておくよ……」ピクピク

百田「地肌見えてんぞ……毟り過ぎだアンジー」

アンジー「てへ?」
559 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/12(木) 20:07:47.63 ID:a6CPxeEb0
真宮寺「僕からはこんなところ、かな」

最原「じゃあ次は僕から、でいいかな?」

春川「……なにか気になることでもあった?」

最原「BBさんに会って手紙を渡されたんだけど……」カサッ

東条「……それ、いつの話かしら?」

最原「信じられないかもしれないけど、ついさっきだよ」

獄原「え?」

最原「かなり前に天海くんに頭をぶん殴られて、巌窟王さんの精神と夢で繋がったことがあったんだけど、それと同じ原理だと思う」

最原「死んでも縁や絆は簡単に切れないみたいだね。流石にこんなことが二度三度続くとは思えないけど」

百田「……その手紙、中身はなんて書いてあんだ?」

最原「これ」ペラッ

真宮寺「……簡潔だし明らかに別件も混じってるネ……」

最原「今から考えるとこれが不自然なんだ。紙の大きさに対して内容が少なすぎる」

最原「加えて、紙から微かに臭う柑橘類の臭い……BBさんは食塩水って言ってたけど、多分実際に食塩水なのは淵に付着してた部分だけだ」

東条「……炙り出し?」

アンジー「うわー。すごくしゃらくさいよー」

最原「誰かライターかアルコールランプとか持ってない? すぐに確認したいから焙ってる間固定できるものがいいんだけど」


シュボッ


夢野「あ……あ……」ガタガタ

キーボ「夢野さんがジッポライター所持していたようですね。マジック……いや魔法用でしょうか」

春川「まともな受け答えすら覚束ないじゃん、アレ」

最原「え、えっと。借りるよ?」
560 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/13(金) 19:37:01.87 ID:hifsYsiF0
ジジジ……

最原「……やっぱり! 文字が浮かんできた! えーと……」




『三日程度待っていてください。すぐに用意しますので』




最原「……??????」

入間「あんだこりゃ? 三日程度待て……? 何をだ?」

春川「炙り出しは果汁を使って文字を書くのが主流だからどうしても字が滲んで大きく書かないとダメなんだよね」

春川「……紙の大きさが足りなかったのかな。最原。なにかわかる?」

最原「脱出おめでとうって書かれている手紙に『三日待て』って書かれてるんだから、穴が開いた学園から脱出するのはしばらく待てって意味……」

最原「……だと思うんだけど、あまり賛成できないな」

百田「ん? どうしてだ?」

最原「かなりぐっすり眠っちゃった僕が言うのは凄く間抜けなんだけど、外の世界の人間が僕たちに何もしてこない可能性を信じられないんだ」

最原「今ごろ、どんな算段を付けているか……」

百田「忘れたのかよ終一! そのためにキーボの魔術的処理を残したんだろうが! 全部テメェの発案だぜ!」

キーボ「生半可な報復行動ならボクがどうにかしますけど……生半可以上となると少し不安です」

白銀「……ご、ごほっごほっ! げはっ! あ、あの、一ついい?」

アンジー「あ。復活した」

白銀「多分、外の世界からの攻撃は無視して考えていいと思うよ」

白銀「考えても見てよ。私たちの抹殺に失敗した魔術師が、次に誰を標的にすると思う?」

百田「?」

最原「……あ。もしかして!」

白銀「この学園を作って運営して放映していたチームダンガンロンパが次のターゲットになってると思う」

白銀「余計なことを知っているかもしれないしね。もちろん、チームダンガンロンパの方も生半な組織じゃないけどさ」

白銀「だからこそ事態は膠着して泥沼化してると思うよ」

白銀「……何事もなくニューダンガンロンパV3をフィクションとして放映し終えてから纏めて抹殺したかったんだろうけど」
561 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/15(日) 00:02:35.11 ID:nzeFBvbC0
入間「あ! じゃあよ! ずっとこの学園で生きていくってのはどうだ! まさに発想の逆転、天才の俺様大勝利だな!」ヒャッハー!

東条「そんなわけにはいかないでしょう。無視ができると言っても長くて数ヶ月程度の話でしかないわ」

真宮寺「早くて数週間……小競り合いが終わったときどちらの勢力が生きているかは問題じゃない」

真宮寺「どちらにしても僕たちに相当の恨みがあるだろうからネ」

百田「それに仮に残ったらだ。これまで何のために命懸けで戦ったのかわからなくなっちまうだろ」

入間「う……」

最原「……三日程度なら待っても問題はない、かな。うん、少しは勝算のあるギャンブルかもしれない」

アンジー「にゃははー! こりゃ残留で決まりだねー! それじゃあ、病院のベッドを今の内にもっと使えるように修繕しておかないと――」

最原「アンジーさん」

アンジー「……?」

最原「次に心配なのはキミに関してだよ」

アンジー「へ?」

最原「……みんなあまり深くは突っ込んでなかったけどさ、巌窟王さんがいなくなったんだよ?」

最原「その……大丈夫かなってさ……」

アンジー「……」








アンジー「……う……!」ジワッ

最原「!?」ガビーンッ

茶柱「おバカっ! もうちょっと段階とか聞き方ってものがあるでしょう!」バシーンッ

最原「ごめぶっ!?」イタイ!

アンジー「だ、大丈夫……泣かない、泣かないよー」ゴシゴシ

アンジー「悲しいよ! 寂しいよ! でも……だからってアンジーに何ができるの?」

アンジー「前に進むしかないよね……泣いたって、慰められたって、現実は何も変わらないんだよー?」

アンジー「何も……!」
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/15(日) 11:17:32.35 ID:aY6hci8+0
まあ外の世界の魔術協会や時計塔に所属している魔術師達からしてみれば、
「英霊召喚、しかもアヴェンジャークラスのサーヴァントの召喚を全世界に公式配信して、お前ら何してくれちゃってんの?」
と、文句の一つや二つ言いたいだろうしね。
563 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/16(月) 21:13:01.29 ID:h6urHTFb0
「……にしッ」

最原「ん?」

「にししししし……にししし……」

「あーーーっはっはっはっはっは! 違うなぁ! 全然違うよアンジーちゃん!」

「俺たちはさんざっぱら目にしてきたはずだ……現実は変わる」

「嘘で! 『現実』は! 変えられるんだよ!」

百田「この声……まさか!」

百田「……って形式上言ってみるが一人しか該当者いねーよな」

王馬「ええっ!? 心当たりがあるの百田ちゃん! 一体誰!?」

百田「あばっふあ!?」ガビーンッ

最原(いつの間にか食堂の中に侵入してる!)ガビーンッ

アンジー「小吉?」

王馬「外に出てみようよアンジーちゃん。面白いものがあるかもよ?」ニヤァ

アンジー「……?」

王馬「まあまあいいからいいから!」グイグイ

アンジー「あ? あー……」ペタペタペタ

最原(……王馬くんに引っ張られて外に連れ出されてしまった)

春川「……アイツ、何する気?」

最原「彼なりにアンジーさんを励まそうとしてるのかな」

入間「……なんかイヤーな予感がしねぇか……?」ダラダラダラ

真宮寺「様子、見てみないわけにはいかないよネ」
564 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/18(水) 18:06:47.41 ID:ce31ictl0


王馬「葬式っていうのは徹頭徹尾生きている人間のための儀式だ」

王馬「悲しんだフリ。立ち直ったフリ。誰かを思いやってるフリ。その場に則しているのならどんな嘘でも吐き放題」

王馬「俺が埋もれちゃうから冠婚葬祭どの行事も基本嫌いだけど、今日だけはアンジーちゃん他余り物くんたちのために一肌脱いであげたよ!」

百田「誰が余りモンだ」

春川「……なんだ。外に出てみたはいいけど、何もないじゃん。安心した」

王馬「……」ポチッ



ヒューーーーッ ボンッッ



最原「!」

夢野「……あ、あ、あれはっ……!?」

王馬「ま、略式だけどさ。行事に花火は付き物でしょ」

最原(あれは……!)

入間「お、おい。あの色はまさか……!」

王馬「入間ちゃーん、いつの間にこんなもの作ってたのさー。巌窟王ちゃんと同じ色の炎を出す燃焼促進剤なんて」

最原(空に打ちあがっていたのは、黒い花火だった。いつか入間さんが作った燃焼促進剤の作る)

最原(彼と同じ色の偽りの炎)

アンジー「……」

最原(……でも。偽物だったとしても)

最原(あの炎の色が僕たちの心を痛めるくらい懐かしい)

王馬「あと少しボンボン弾けさせるよー!」ポチリッ

入間「俺様の発明品ーーーッ!」ガビーンッ
565 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/20(金) 16:27:20.96 ID:fC/xwglJ0
ヒューーーーッ……ボボボボンッ

百田「おおーーー……やべぇな! なんかテンション上がってくんな、アレ!」ワクワク

入間「勝手に上げんな! 弾けさせすぎだクソドチビ! 一体どのくらいアレに突っ込んだ!?」

王馬「全部っ部」サラリ

入間「全部っ部!?」ガビビーンッ

真宮寺「また後で作ればいいと思うヨ」ポンッ

入間「い、いや……いやいやいや! あの炎は仕上げに巌窟王が出していた炎を穴が開くほど見つめながら色を細かく微調整しなきゃ作れない……」

入間「つまるところモデルがいない今! もう二度と完全に同じ色にはならなくって!」



ヒューーーッ ボボボーボッ ボーボボンッ



入間「話を聞けぇーーーッ! せめて一滴残してサンプリングさせてくれーーー!」ガビーンッ

王馬「人生って花火みたいなものだと思わない? 儚さとか」

春川「聞く耳持ってないねコイツ。最悪」

入間「……」

入間「はなびきれー」ボアーッ

夢野「あ、諦めおった……!」

天海「……ご愁傷様っす」

星「後で肩でも揉んでやろうか?」

最原(さっきからちょくちょく復活してきてるな……)
566 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/21(土) 20:27:49.47 ID:0jR4Tcmx0
キーボ「……待ってください。つまり王馬クンは入間さんの研究教室に忍び込んだわけですね?」

王馬「……ん。耳にノイズが入っちゃったな」

キーボ「ボクの声をノイズ扱いしないでください! 入間さん! 沈んでないで周囲を見てください! この程度で終わるはずがありません! だって」




ギュンッ




全員「!!!!!!!!!!!」

最原「がっ……!」

アンジー「……え」

最原(正直な話、それが見えたのは一瞬のことだったと思う)

最原(でも、僕たちはそれをそうだと認識した。例え一瞬だったのだとしても、その衝撃は忘れないだろう)

アンジー「エドモン……!」

最原(その影は僕たちには一切振り向くことなく、天井に開いた穴に真っ直ぐ向かって飛んでいき)

最原(……そのまま見えなくなった)

春川「……嘘……だって、アイツは……!」

最原(その背中を、僕たちは呆然と見つめていた)

キーボ「……ああ、もう……こんなことのために……」

入間「……こんなこと……?」

入間「あっ」

最原「え?」

入間「あ、あ、あああああああああ……!」

入間「やりやがったなこのドチビィィィィィィィ!」
567 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/23(月) 12:06:13.27 ID:mNqW0ssy0
最原「どういうこと?」

獄原「……巌窟王さんじゃなかった」

最原「え」

獄原「ごめん。ゴン太、目だけはいいんだ。凝視すれば流石にわかるよ」

獄原「マントの下に隠れていたのは、木の骨格を付けたスクーターだった……気がする」

アンジー「……木の骨格……?」

王馬「なーんだ、一番騙されやすそうなゴン太が引っかからないのなら、この嘘は出来損ないだなぁ。食えたモンじゃないや」

百田「お、お前……!」

入間「そうだよ! あの空飛ぶ巌窟王の正体は……!」

入間「俺様たちが脱出の段取りに使うはずだった飛行スクーターだ! 一台しか作れなかった超〜〜〜〜〜貴重品の!」

白銀「な」

天海「な」

夢野「なんじゃとォ〜〜〜ッ!?」ガビーンッ

王馬「時間になったらアクセルを踏んで無人で飛ぶようにセットしておいたんだよね」

王馬「まあ大丈夫でしょ。キー坊を飛ばせば段取りそのものは問題ないし」

入間「いやっ、おまっ……ふざけんなよ? ふざけんなよ!? 俺様が魔術に触れられる最後の機会をテメェはよォ〜〜〜!」

春川「……ねえ。今はそれどころじゃなくない?」

入間「あァ? 何がだ!?」ゼェゼェ

春川「あれだよあれ」

入間「あれ……?」







アンジー「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

入間「あふ」ガクーンッ

天海「腰抜かした!」ガビーンッ

星「……地雷だったか……?」
568 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/25(水) 21:38:44.77 ID:wkIbyNwb0
「……ぷっ……」




アンジー「あっはっはっはっは! 一瞬……ほんの一瞬だったけど騙されちゃったよー!」ケラケラ

最原(よ、よかった。存外機嫌良さそうだぞ!)

アンジー「お礼に死をプレゼントしてあげる」ギンッ

王馬「」

最原(激怒してたーーー!)ガビーンッ

アンジー「……」

アンジー「この嘘でチャラにしてあげるよー」

王馬「え」

アンジー「……やり方はどうあれ、さ。アンジーを励まそうとしてくれたんだよね?」

アンジー「この場に彼がいればまず間違いなく哄笑しながら小吉を八つ裂きにしてただろうけど」

春川「目に浮かぶね」

アンジー「……現実にはそうじゃないからさ」

王馬「そうでもないよ。嘘で変えられる現実は間違いなくある」

王馬「……未来っていう現実がさ」

アンジー「……」

王馬「ま、今回は半ば失敗したけど、本当はアンジーちゃんはもっと元気になるはずだったんだ」

王馬「それに、一瞬完全に騙されたとき、どんな気分だった?」

アンジー「ちょっと嬉しかったよー。ぬか喜びだったわけだけどさー」

王馬「そっか。それならまあ、俺は別にそれでいいんだ。何よりの報酬はキミの笑顔だから……!」キランッ

百田「しゃあしゃあとコイツは……」
569 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/27(金) 21:06:00.61 ID:b4uKjyF60
王馬「さて、それじゃあ本題! 俺たちはいつ脱出すればいい?」

最原「……」

百田「三日後の朝だ。赤松も帰ってきてねぇしな……」

最原(結局百田くんが半ば適当に言った決定がそのまま生徒全員の決定となった)

最原(スクーターは王馬くんのイタズラで消失。キーボくんがいなければ外への脱出の段取りはできない)

最原(脱出がたった一人の能力頼みになっている時点で否応なしに僕たちは共同体になってしまう)

最原(今更それに異議を唱える人はいないけど)

最原「……」

最原「三日後、いや……あの言い方だと違うだろうな」

最原「三日以内に何が起こる?」

最原(その後、しばらくはおだやかな時間が続いた)

最原(……赤松さん抜きで)







待機二日目 夜

キングプロテア「……」モゾモゾ

ズポッ
570 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/28(土) 21:49:09.70 ID:ujxGk7yL0
赤松「……かっ……!」

赤松「帰って……これた……!」ズタボロッ

ネコアルク「お疲れ様でしたにゃー。いやマジでお疲れ様でした」

赤松「……あ、ありがとうキングプロテアさん。BBさんによろしく伝えておいて」

キングプロテア「ばいばいです」ヒラヒラ

赤松「本当に凄い冒険をした……ローマ皇帝の歌声聞かされたりドラゴンの女の子の歌声聞かされたりネコリンボが裏切ったり……!」

ネコアルク「イベントショップの店員したりなんだりと大忙しでしたにゃー。いやー。みんなが見てないのが惜しかった」

赤松「……でもまあ、その甲斐はあったけど」

赤松「急ごう! ネコアルク!」

ネコアルク「らじゃー!」

セミラミス「……」ボソッ

赤松「え? なんか言ったセミラミスさん! 酔うから走るのやめろって提案はなしだよ! 勝手におんぶしてる私が言うのもなんだけど!」

セミラミス「死ぬまでに一度でいいからスマブラに出演したかった」ボソッ

赤松「どうしてロクでもない願いがそうポンポンと出てくるの!?」ガビーンッ

ネコアルク「しかも願いの規模が無謀そのものですにゃ」

赤松「しばらく黙ってて! もういいから! 私は私の約束のために、最後まで全力出すだけだから!」

セミラミス「……」







病院

最原「……明日になったら脱出開始か……赤松さん、まだ帰ってこなかったな」

最原「間に合うといいんだけど……」


……ポーンッ


最原「?」


ポーンッ ポンポンポーンッ……


最原(ピアノの音? こんな夜中に……)

最原「……まさか」
571 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/09/30(月) 21:59:41.99 ID:BpqVKkO20
超高校級のピアニストの研究教室 外 廊下

最原「……ドビュッシーの……月の光だっけ」

最原(一度だけ赤松さんの研究教室からCDを借りて聞いたことがある。あのときと違うのは、彼女が直接的に弾いているところだろう)

最原(部屋の外には、アンジーさんが中をこっそり覗き込むように立っていた。僕に気付くと小さく手招きする)

アンジー「……帰ってきたみたいだねー。望み通りに、さ」

最原(中にはネコアルク。椅子に座ったセミラミスさん。ピアノを弾いている赤松さん)

最原(……セミラミスさんは、今にも消えてしまいそうに身体を明滅させている)

最原(でもこの部屋に満ちている空気は穏やかなものだ)

最原「……本当に怖いな、彼女。赤松さんのことだけは絶対に怒らせられないよ」

アンジー「迂闊に約束なんてできないよねー。地獄で血の池風呂浴びてても無理やり引っ張り出されそうだもん」

アンジー「でもアンジーは楓が楽しそうにしているの、見てるの好き」

アンジー「楓の若干空元気入った明るい声も嫌いじゃない」

アンジー「多分みんなそうだと思うなー」ニコニコ

最原「……うん。僕も好きだよ」

アンジー「転子にチクってやろー」ニヤァ

最原(ハメられた!)ガビーンッ

セミラミス「……」ボソッ

最原「あ」

最原(……ほぼ一瞬のことだった。セミラミスさんが演奏途中の赤松さんに何か声をかけて……)

赤松「!」

最原(ハッとなった赤松さんが顔を上げて、彼女のことを見て)

バキンッ

最原(……セミラミスさんは、跡形もなく消えてなくなった)

赤松「……」

赤松「……」グシッ

最原(……この部屋の電力はモノクマの修理の甲斐もなく、まだ復旧しきっていない。だから暗闇の中、赤松さんの影が辛うじて見える程度だ)

最原(だから顔を何度もこすっている、ということしかわからなかった)
572 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/02(水) 20:44:01.64 ID:3QKG9Lya0
赤松「……はー……」

赤松(やりたいことは全部やった。かなり周りに迷惑かけまくっちゃったけど)

赤松(みんなはもう脱出してるのかな。多分してないだろうな。ネコアルク経由で伝言はしたし)

赤松(……ちゃんと話さないと。全部)

赤松「ネコアルク。眠れる場所探して」

ネコアルク「合点承知の助ー!」

ネコカオス「数多くの気配が病院の中に集まっていた。おそらくほとんどの生徒はあそこで寝泊まりをしているはずだ」

ジャガーマン「……よく頑張ったね。えらいえらい」ナデナデ

赤松「や、やめてよネコアルク……」

ネコアルク「え? 何を?」

赤松「へ? 今私の頭を撫でたでしょ?」

ネコアルク「ん?」

赤松「え?」

ネコカオス「お取込み中のところ申し訳ないが」ガチャリンコ







最原「あ」

アンジー「あちゃー」

ネコカオス「ドアの裏に隠れていた彼らは、キミの友達ではないかね?」

赤松「!」
573 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/04(金) 20:51:23.26 ID:cfhLn+zK0
赤松「ええっと……見てた?」

アンジー「聞いてもいたよー! 流石にセミラミスの最期の言葉は聞こえなかったけどねー」

アンジー「……なんて言ってたの?」

最原(好奇心のままに口に出すな、この人は……僕も興味あるけどさ)

赤松「秘密。一生言わない。詮索もされたくない」

アンジー「だよねー」

赤松「ふふふ」

最原(……わからない空気だ。サーヴァントと順当に絆を深めた二人にしかわからないものがあるのだろう)

赤松「で。最原くん、実は伝えなきゃいけないことがあるんだけど……」

赤松「……」

赤松「明日でいいや。今日は眠い……今何時?」

最原「ええっと……待って。モノクマーズパットを見れば正確な時間が――!」

最原「……」

最原(ああ)

アンジー「……モノクマーズパット、壊れちゃったのー? 画面が……」

最原(そうか。この学園の新しい主が消えたから……)

赤松「……う……ぐ……っ!」ジワッ

最原(……少しずつ壊れていく)

最原(少しずつ終わっていく)

最原(僕たちの学園生活が)
574 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/06(日) 20:03:34.00 ID:mxnOdMuX0


百田「あァァァかァァァまァァァつゥゥゥ!」ピョイーーーンッ

赤松「凄い跳んだーーーッ!?」ガビーンッ

ダダダダダダダッ ダンッ

春川「……」ビュンッ

百田「え?」








グインパクト




バガァァァァンッ


百田「ぎゃあああああああああああああ!?」

赤松「と思ったら春川さんも跳んでライダーキックおみまいしたーーー!?」ガーーーンッ

白銀「ライダーキックはキン肉バスターと同じで、リアルでも一応再現可能なんだよね。プロレスラーが証明してる」

天海「普通のキックよりは危険らしいっすけどね」

最原「はしゃぎすぎだよ! みんなして!」

春川「私は止める側だよ。勘違いしないで」

王馬「ノリノリで最新式ライダーキックをかます女の子の台詞じゃないよ……」
575 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/07(月) 20:36:25.60 ID:IKMyStBG0
春川「……おかえり。赤松」

百田「あ! ズリィ! 俺が最初に言おうとしてたのによ!」ガバリッ

星「お前はいい加減落ち着きを持った方がいい」

赤松「うん……みんな! ただいま!」

ブヂイッ

赤松「いいっだぁぁぁ!?」

入間「……毛根付き毛髪ゲット。後でDNA鑑定かけてみねーとな。偽物かもしんねー」

赤松「本物だけど!?」ガビーンッ

キーボ「すみません赤松さん。彼女は王馬クンに酷い狼藉を働かれ、今ちょっと人間不信気味なんです」

赤松「私がいない間に何があったの!?」

東条「赤松さん。帰還おめでとう。腕によりをかけてケーキを作ったわ」バチバチバチシュボオオオオオオッ

赤松「何それ!? あ、ケーキ!? ケーキ部分より花火部分が多くて一瞬『何それ!?』って思っちゃったよ!」ガビーンッ

最原「……みんな嬉しいんだよ。赤松さんが帰ってきてさ。これで一緒に外の世界に出れる」

茶柱「ええ! これにて一件落着ですね! 今度こそ……!」

赤松「……」

赤松「あのさ。みんな」

真宮寺「何? 僕の祝福の証、モーショボー人形を作りながらで良ければ聞くけど」グッグッ

赤松「モーショボー人形!? それもプレゼントなの!?」ガーンッ

アンジー「アンジーも色々作ったんだよー! 楓の似顔絵とかさー! ほら、あそこで布被ってる塊」

最原「その布、絶対に取らないでね! せめて外に出るまでは!」

赤松「い、いや……その……」シドロモドロ

最原「……どうかしたの? 赤松さん」








赤松「私、外の世界には出たくない……んだけど」ダラダラダラ

全員「……」

全員「はああああああああああああああああっ!?!?」ガビビーンッ
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/08(火) 17:29:35.80 ID:yMTeEANoO
さてはゼロワン見てるな
577 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/09(水) 21:38:41.79 ID:v6/m5UQT0
最原「なっ、なななっ……ななななな、なんで!? どうして!? 悪い夢でも見たの!?」

ガシャーーーンッ

獄原「……ハッ! しまった! ショックのあまり標本を落としちゃった!」

白銀「モノクマ! モノクマーーー! カウンセリングの用意!」

モノクマ「モノクマーズが全滅しちゃったからもう無理でーーーす!」

夢野「ど、どうしたんじゃ赤松! ノーパンだったころのお主はもっと輝いておったぞ!?」

赤松「だからアレはセミラミスさんが勝手に言ってただけで私ノーパンじゃないってば!」

王馬「思い出せ! 黄金のノーパン時代を! ノーパン! ノーパン! ノーパン! ノーパン!」

入間&夢野「ノーパン! ノーパン! ノーパン! ノーパン!」

赤松「イジメだよねイジメなんだよねコレ!」ガビーンッ

赤松「違うって! コレ見てよコレ! 別に逃げるわけじゃないってば!」ペラッ

最原「紙?」

赤松「契約書。なんか炎ボーボー出す自称ジャンヌ・ダルクさんに書けって言われたんだけど……」

茶柱「はあ……?」

アンジー「……これ……は……!」

最原「ばっ……バカな! そんな!?」







赤松「私、実は巌窟王さんのホーム……カルデアに呼ばれてる、みたいな……?」

ネコアルク「既に内定してて、この学園から去った後にすぐ行くことになっておりますにゃー」
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/11(金) 12:08:56.11 ID:NsnSyKbf0
炎を出す自称ジャンヌって、水着の方のジャンヌ・オルタのことか
というより、地下の世界で何があったんだwwww
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/11(金) 17:26:24.18 ID:0hPNCzLhO
別に水着の方でなくとも炎使うし、契約書うんぬんだからむしろジャンヌオルタでしょ
……まぁどっちでも変わらんけど。契約書ネタの贋作イベも数年前だしな
580 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/11(金) 21:30:06.06 ID:eBWaw8TC0
赤松「ネコアルクとコンビで期間限定サーヴァント? みたいなのやってたらさ。なんかいつの間にか正式加入することになって……」

最原「え。え。え」

赤松「あの……ごめん。今の今まで姿消してたからアレなんだけど」ダラダラダラ

ネコアルク「就職先! 決まりましたにゃー!」

ネコアルクs「祝えー! イエエエエエエエエエエエエエイ!」ドンドンパフパフ!

入間「……ぬ……ぬ、ぬ、ぬ、ぬ……!」ガタガタガタ

王馬「抜け駆けだぁぁぁぁぁ!?」ガビビーン!

春川「赤松……ホントアンタさぁ……ホントにさぁ……そういうところが最悪にさぁ……」ハァーーーーー

獄原「おめでとう赤松さん! あれ? 祝うんだよね? おめでたいことなんだよね?」

入間「おおおおおおおおうおうおうおうおう……なんで赤松が! なんで赤松なんかが!」ダバダバダバ

最原(滂沱の涙を流してる……)

アンジー「……」

アンジー「本当に行っちゃうの?」

赤松「うん。運で結ばれた縁でしかないけど……」

赤松「私! 例え別人だったのだとしても、巌窟王さんやBBさんに会いたい!」

赤松「……セミラミスさんとも!」

アンジー「そっか。頑張ってね」サラリ

茶柱「不気味なほどあっさりですね。思うところはないんですか?」

アンジー「あるよー。あるけどさー……」

アンジー「アンジーはアンジーの道で、エドモンと再会したいから」

茶柱「……なんか背、伸びました?」

アンジー「にゃははー! ちょっとはそうかもねー! まだまだ成長したりないよー!」キラキラキラ

赤松「というわけだからさ。私は地下で待ってるカルデアの人と一緒に、魔法陣を潜って向こうに行っちゃうから」

赤松「……みんなを見送らせて欲しいな」ニコ
581 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/13(日) 17:48:05.35 ID:OcdSLI5M0
入間「……いいなぁ。いいなぁ。赤松ばっかズリィなぁぁぁぁぁ……」

獄原「みんな。入間さんがいじけちゃってるけど」

百田「ほっとけ、と言いたいところだが、最後だしな。励ましてやるか」

王馬「よっ! 天才発明家!」

百田「脳殺巨乳!」

王馬「そこそこの美女!」

百田「天下一の脳細胞!」

王馬「ゲロ豚シャブ●●●! ●●●!」

入間「大分早い段階から悪口になってんだろうが! やめろバーカバーカ!」

入間「もういいぜ! こうなったら俺様もやることは一つだ!」

百田「おっ! 立ち直ったな! よかったよかった!」

入間「スイッチオン」ポチッ

百田「ん?」



ガシャガシャガシャガシャコンッ




エグイサルs「」フシューーーーッ……

全員「」

入間「……」

入間「俺様がラスボスだーーーッ!」ヒャッハー!

最原(変な立ち直り方してるーーーッ!)ガビーンッ

赤松(エグイサル修理してるーーーッ!)ガビビーンッ
582 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/15(火) 21:17:46.36 ID:QFB1HuNv0
夢野「落ち着けェーーー! 落ち着くんじゃ入間ァ! こんなことをしても現実はなにも変わらん!」

入間「夢野ォ……手を組もうぜェ……!」フシュルルルルル

夢野「は?」

入間「アレを見ろォ!」

夢野「アレ?」チラッ

ハトムギ「くるっぽー」

赤松「……ん? あ、ハトムギ。なんで私の頭の上に乗ってるの?」

夢野「…………………………」

夢野「は????????????」

最原「……赤松さん。彼女に懐かれるようなマネした?」

赤松「いや、特に……むしろ私、セミラミスさんを地下世界から連れ戻すのに彼女に随分と助けられてさ……よしよし」ナデナデ

ハトムギ「くるっぽー」

夢野「えっ。セミラミス? えっ? えっ?」

入間「寝取りだ寝取り」

赤松「ねとり?」キョトン

ハトムギ「くるっぽー」

夢野「……ふっ……」







夢野「うおおおおおおおおおおおおおおお! 許さんぞおおおおおお!」ゴオオオオオオッ

赤松「!?」ガビーンッ

夢野「よくも……よくもウチの商売仲間を寝取ってくれたなぁぁぁぁぁぁ……」フシュルルルルル

赤松「えええええええっ!? いや、これは違っ……ていうか仮に彼女を誘惑した人がいたとしてもそれセミラミスさんで! 私関係無い……」

夢野「殺すッ!」ジャキイイイインッ

赤松「殺す!?」ガビーンッ

最原(どこからともなく丸ノコが出てきたーーーッ!)

入間「ヒャーーーハハハハ! いいぞ! やっちまおうぜ! 俺様たち二人で!」

ギュイイイイイイイイイインッ ドグシャアアアアアッ
583 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/15(火) 21:27:19.05 ID:QFB1HuNv0
入間「……ゑ?」

最原(今の一瞬、何が起こったのか僕たちは全員理解できなかっただろう)

最原(だって、今夢野さんが粉々にしたのは……入間さんが持っていたエグイサルのコントローラーだったから)

夢野「……」ギュインギュインギュインギュイイイイイイイイインッ








夢野「貴様ら全員を! 殺すッ!」ジャキジャキジャキジャキイイイイイインッ

百田「丸ノコ増えたーーーッ!」ガビーンッ

天海「ていうかドリルも追加されてるーーーッ!?」ガビビーンッ

入間「え? なに? え? 俺様、ラスボスになるはずじゃ……え? え?」オタオタ

東条「入間さん! 今すぐそこから離れて! そのままじゃ一番最初にミンチになるのはあなたよ!」

夢野「ウチの魔法の供物になれェェェェェェ!」ギュイイイイイイイインッ

入間「ぴゃーーーーーーーッ!?」ダッシュッ!

赤松「入間さん! こっち! こっちーーー!」

茶柱「いやダメです呼ばないで! じゃないと暴走した夢野さんまで」

夢野「サバトじゃああああああああああああ!」ギュイイイイイイイイインッ

茶柱「こっちに来ちゃいますからヴェエエアアアアアアアアアアア!?」



ドカァァァァァン! ドリドリドリドリ バツーーーンッ ギャーーー!



白銀「……夢野さんが……裏ボスになった……」ガーンッ

最原「……だ……誰か」

最原「誰か……助けて……」

最原「誰か僕たちを助けてくれーーーッ!」






カルデア

??「はい。それでは、最後の支援です!」ポチッ
584 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/17(木) 21:51:45.71 ID:Jkli8XaZ0
??「……これで正真正銘、完全にお終いです。私たちの我儘に乗ってくれてありがとうございました」

???「別に構いはしないさ。貴様には随分と世話になったらしいからな。俺はまったく覚えがないが」

??「……あの。人生を台無しにするレベルで人が好すぎません? ちょっと心配になってくるんですけど」







巌窟王「クハハハ! なにを言う! まったく見覚えのない人間に嘘を吐いたのだからな!」

巌窟王「その俺がお人好しなどと、まったく笑えるジョークだ」

BB「別に構いやしないんですよ、嘘で」

BB「真実と嘘に違いなんてありはしません。特に人間にはね」

BB「その違いを認識できるとしたら人間より上の知生体だけ」

BB「だから全然構わないんです。見抜かれてない嘘は真実そのものなのですから」

巌窟王「……気に入らない論理だ」クルッ

BB「おや。どちらへ?」

巌窟王「マスターに呼ばれている。またくだらないクエストだろう。だが行かないわけにはいくまい?」

巌窟王「俺は徹頭徹尾、あの男のサーヴァントだからな!」ギンッ

BB(……さてと。これでこの世界への興味を、私は完全に失いました)

BB(さようならです。才囚学園のみなさん)
585 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/20(日) 08:25:31.88 ID:FzR96pf+0
才囚学園

血塗れの入間「」チーンッ

赤松「入間さんが死んだ!」ガビーンッ

白銀「このひとでなし!」

茶柱(いやー。実際はケチャップを頭から被って死んだフリしているだけですけど。バレないものですねー)

ケチャップ入間「……」

赤松「春川さん! 助けて! 犠牲者出てる! 犠牲者出ちゃってるから!」

春川「めんどい」ンアー

赤松「なんで超初期の夢野さんみたいなこと言ってるの!?」

春川「夢野の怒りと体力が尽きるまで頑張って。そう時間はかからないから」

春川「二十四分くらい……?」

赤松「疑問調だし結構長いし!」

百田「頑張れ赤松頑張れ! お前は今まで良く頑張ってきた! これからも頑張れる!」

赤松「いやそろそろ助けがないと心が折れ――」

夢野「止めじゃアアアアア!」ギュイイイイイインッ

赤松「なああああああああ!?」ガビーンッ



キラーンッ



キーボ「あれ。なんか空から降ってきませんか?」

獄原「え? なんか……ってなに?」チラッ

姫路城「書籍超特急ドーーーーンッ!」グシャアアアアアアッ

夢野「んあああああああああああああっ!?」

最原「空から姫路城降ってきたーーー!? なんで!?」ガビーンッ

赤松「こ……これは……刑部姫さんの姫路城! の人間大ミニチュア!」

茶柱「見覚えあるんですか!?」
586 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/22(火) 22:06:41.53 ID:HjsaBEgi0
最原(なんか知らない女の人の声が聞こえたような気がしたけど……)

百田(うっ。何故か頭の中に太陽神殿の映像が……何故だ……?)ガタガタ

最原(トラウマを刺激されている……)

最原「いやそんなことより夢野さんの身体が丸っと姫路城に押しつぶされてるよね、アレ!」

獄原「た、大変だ! 早くどかさないと!」

夢野「……」ズルッ

白銀「あれ。自力で抜け出してきたよ」

東条「……無傷のようね。どうやら」

夢野「……うっ……」ポロポロ

獄原「う、うわぁ! 泣いてるの、夢野さん! 痛かった!? どこか見えない場所にたんこぶとか……」

夢野「ううううううううううう……!」

白銀「……ん。夢野さん? あのさ」











白銀「その片手に持ってる厚手の本、なに?」
587 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/25(金) 20:06:51.18 ID:e677obpl0
夢野「……卒業アルバム……」グスグス

全員「!?!?」

夢野「全員分……! あ、あ、あの姫路城、ペーパークラフトで……底の部分が……!」

最原「百田くん! 確認しよう!」

百田「お? おう。おうッ!」バッ


ガサゴソ


東条「……どう?」

最原「底の部分から分解できる。これ箱だ! 意図はまったくわからないけど姫路城型のプレゼントボックスだ!」

赤松「刑部姫さん、折り紙とかペーパークラフトの類は大得意だったなぁ……じゃなくて! まさか、それの中身って!」


ドサドサドサッ


全員「!!!!!!!!!」

卒業アルバム群「」ズラーッ

白銀「……」

アンジー「彼の遺品……彼の未練。卒業アルバム……間違いない、ね……」

獄原「中身! 中身を確認しないと! ねえ!」ワクワク

キーボ「……全員分、名前を振ってあるみたいですね。本当、巌窟王さんって人は……」
588 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/10/28(月) 21:50:31.10 ID:DZoGeXDu0
赤松「でもなんで。巌窟王さんはもういなくなってるのに、誰がこんなものを作ったの?」

最原「……」

最原(待てよ。それだ。僕はそれに心当たりがある気がする……)

百田「終一。何か閃きそうなんだな?」

最原「もうちょっとで……何か思いつきそうなんだ」

春川「いくら何でもそれは無理があるよ。だって卒業アルバムがいきなり降ってくるなんて誰が予想できるの?」

春川「誰かが『予告』してたのならともかくさ」

最原「!」




最原『……こんな……こんなことって! 待ってよ! 才囚学園の生徒全員はみんな死んでないんだ!』

最原『最後の最後まで誰も欠けずに行けると思ったのに! こんなの!』

BB『『BBという存在』が消えたりはしませんよ。かと言って、おそらくもう二度と会えないでしょうが』

BB『私を作った代償に、オリジナルのBBは三日間一切の行動が取れないので』




最原「あっ……」




『三日程度待っていてください。すぐに用意しますので』



最原「……あ、ああああああああああっ!」

最原(そうか……そのための三日間!)

最原(そのためのモラトリアムだったんだ!)
589 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/01(金) 16:56:13.95 ID:sPd2AzC/0
最原「BBさんだよ! 彼女が卒業アルバムの作成を引き継いだんだ!」

入間「んなっ……BBだと!?」

東条「ありえるわね。私たちの前で砕け散ったBBさんは分身。本体はまだピンピンしているはずだもの」

獄原「でも引き継いだって……巌窟王さんの卒業アルバムのデータを一体どうやって引き継いだの?」

アンジー「元からBBと彼は組んでたからねー。卒業アルバムのデータくらいどうとでもなるよー」

白銀「そういえば……あのパソコン、中身を定期的にどこかへ送ってる形跡あったね」

白銀「そっか。BBさんに送ってたんだね」

春川「……アイツの不器用さが、完成に一役勝ったってことか」

百田「ん? なんだよハルマキ。懐かしそうな顔してんぞ?」

春川「!!!!!!!!」ハッ

春川「え、そ、そう……かな……? 気のせいだよ。こっち見ないで殺されたいの?」ガタガタ

百田「なんで動揺してんだよ」

王馬「どうしたの春川ちゃん! 具合でも悪いの!? 頭!? 頭でも痛いの!?」ニヤニヤ

王馬「俺のこと覚えてる? なにか忘れたことない? 試しに思い出せることを片っ端から言ってみてほしいなぁ」ニヤニヤニヤ

春川「……」ガシイッ

王馬「おげぁっ」

茶柱「ね、ネックハンギングツリー……」

真宮寺「……」ペラペラ

真宮寺「……はあ。仕方ないネ」

最原「え? 仕方ない?」

真宮寺「しばらく姉さんの友達作りは中止かなって話」

最原「!」

百田「……どういうこったよ、そりゃあ」

真宮寺「この卒業アルバムを見ればイヤでもわかるヨ。巌窟王さんたちがどれだけ僕たちのことを信じていたか」

真宮寺「希望……いや、期待、と言い換えた方がいいかな……」
590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/02(土) 01:30:37.68 ID:VWBvd9BfO
むしろ中止してなかったのかよ
591 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/04(月) 21:20:00.55 ID:HlDb7I860
真宮寺「僕は間違ったことをしていたとは思わない。思わないけど、これ見て考えをちょっと変えたんだ」

真宮寺「……まだ僕には足りないことがある。それを見つけるまでは、友達作りをしても虚しいヨ」

王馬「……!」ペラペラ

王馬「ふーん……そっか。だから名前をそれぞれに振ってたんだ」

最原「!」

春川「まさか、遺言でも書いてあったっての?」

アンジー「そういうのとは無縁な人だよー」

王馬「ささやかなものだよ。本当にちょっとしたものだ」

王馬「……見てみれば? 中。白銀ちゃんの分含めて全員分あるんだしさ」

最原「……」

最原(ちょっと怖い、と思うのは何故だろう)

最原(……巌窟王さんといよいよ本当に別れてしまう気がしているのか?)

最原(だとしたら僕は、やっぱり僕は弱いままなのかもな)

最原(でも)

最原「……」ペラペラ

最原(それ以上に中身が気になる)

最原(……割と普通の卒業アルバム、だな。巌窟王さんが撮った写真がいっぱいだ)

最原(巌窟王さん自身が入っている写真もあるけど、これは……キーボくんの視点っぽいな)

最原(一体どうやってこんな操作したのか……)

最原(……懐かしい。なにもかも遠いむかしのことのようだ)

最原(……あとは)

最原「!」

最原(あ……!)
592 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/08(金) 19:44:17.91 ID:utJs4QEu0
『卒業証書
最原終一
上はエドモン・ダンテス所定の全過程を終了したことを証する。

才囚学園 エドモン・ダンテス』



最原「……は、ははははははっ……!」

百田「そ、卒業証書……くくっ! アイツ、マジかよ。本当にささやかだな」

百田「どこの世界に空から卒業証書落とすヤツがあんだよ……!」

アンジー「……エドモンの字だ。これ、エドモンの字だよー」

春川「嘘……でもどうやってこれを書いたの? どの時点で?」

赤松「……」

赤松(カルデアには『巌窟王さん』がいる。こっちの世界のエドモン・ダンテスが消えたことで、完全にカルデアの巌窟王が復活したはず)

赤松(彼に書かせれば、それは間違いなくこっちのエドモン・ダンテスと同じ筆跡になる……か)

赤松(……トリックは想像付くけど、わざわざ言うこともないよね)

アンジー「……ッ!」

赤松(……嘘は暴かれない限り真実だから)

王馬「……にししっ」ニヤニヤ

赤松(なんでか知らないけど王馬くんは見当付いてるみたいだけど、黙っててよね本当)ハラハラ
593 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/13(水) 17:11:32.27 ID:q8j2Smps0
アンジー「……」

アンジー「楓も進路決めたみたいだし、アンジーもここで言っておこうかなー」

アンジー「アンジーもアンジーで、エドモンを探してみる」

百田「あ? おい、アイツはもう……」

アンジー「そもそもの話さ、英霊召喚のシステムってかなり広い意味での死者蘇生だよねー」

アンジー「……不可能ではないと思うな」

百田「……」

百田「どんな不可能もやり遂げちまえば可能に変わる!」

アンジー「!」

王馬「えー? いいの? 止めなくて」

百田「いい! 自由にしろ! アンジーの人生はアンジーのモンだ!」

百田「当然だが、つまりいつ止めてもいいってこった! 後悔さえ残らなきゃなにしたっていいんだよ!」

アンジー「その結果、アンジーが誰かを生贄にするような道を取っても?」

百田「やりたいと思うのは自由だぜ? まあそんときは俺か、終一か、ハルマキが止めるけどな! 自由なんだからよ!」

最原「え!? 僕も!?」

百田「止めねーのか?」

最原「いやまあ視界に入ったら多分止めるけどさ……」

最原「……」

最原「あれ? 春川さんは抗議しないの?」

春川「いいよ。私だって止めてあげるよ」

春川「……文句はそのとき百田と夜長に言えばいいし」

百田「おし! じゃあ俺も進路言うぞー! 宇宙行く! 以上!」

最原「早い! しかも変わってない!」ガーンッ
594 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/19(火) 22:34:02.07 ID:UouBwDkN0
入間「俺様は! 俺様は諦めねぇぞ! 魔術と科学の両面の道を完全に極めてやる!」

入間「こっから出たらアトラス院に就職してやるぜ! あったらだけどな!」

最原「アトラス……え? なに?」

獄原「ゴン太は外に出てから考えるよ! 虫さんたちといっぱい相談してみる! 山とかで!」

星「さて。俺はせっかくのシャバだ。当てはないがひとまず外の空気を楽しむさ」

星「……ふん。俺が楽しむ、か……やれやれ」

真宮寺「僕は旅にでも出ることにするヨ。もちろん魔術師とかに暗殺されないように気を付けながらネ」

真宮寺「……というか永続的にみんなを魔術師から守る方法をどうにか探さないとネ」

茶柱「どの人ももうそうそう暗殺されそうにない猛者ばかりですけどね」

茶柱「転子は……うーん、ゴン太さんのマネじゃあありませんが、山籠もりでもしましょうか」

最原「え?」

茶柱「修行です修行! 一から身も心も叩き直すんです!」

茶柱「……どこの山かは非公開で!」

最原「非公開なの!?」ガビーンッ

茶柱「誰かが迎えに来るまでは十年でも二十年でも引き籠る予定ですので! そのつもりで!」

最原「僕への責任が重すぎる!」

百田(もう素直に茶柱のことを自分の責任として処理してんなー)

春川(あっつい。顔があっつい)

赤松「ふふっ……」

最原(そこかしこから生暖かい視線を感じる……!)
595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/22(金) 17:03:52.63 ID:jCCEeg/v0
まだ続いてたんだこのss
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/24(日) 23:03:01.55 ID:wrD2gkLC0
見てます
597 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/11/25(月) 19:22:35.89 ID:ePqpcCVp0
夢野「……ぐすっ……ウチは……ウチの進路は……っ!」

夢野「ん?」

最原「どうかした?」

夢野「……王馬はどこじゃ?」

最原「どこもなにも、ここに……?」




全員(……あれ?)




百田「アイツいなくねぇ?」

春川「これからキーボ飛ばして外に出る段取り付けようって段だよ? 今更どこに行かれても……」

獄原「あれ。そこの岩になんか書かれてるよ?」

春川「……なんか?」




『このせかいはおうまこきちのもの』




最原「……」

最原(まったくもって荒唐無稽な書置きだったが、なんとなく意図するところは見えた気がした)

百田「なんか……この学園出るまでもうアイツと再会することはない気がすんな……」

最原「不思議だけど僕もそんな気がする……」

春川「アイツなら別口で脱出ルートを見出しててもおかしくなさそうだね」

獄原「最後の最後まで王馬くんは王馬くんだったね!」ニコニコ
598 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/12/02(月) 21:50:46.96 ID:00wmXuo00
夢野「ウチの進路は……そうじゃのう。ひとまず表の世界で有名になることかのう」

夢野「魔法使いとして!」

東条「……大丈夫? かなり危険だと思うのだけれども」

夢野「それでも誰かがやらないといけないじゃろう。いざ生徒たちが集まりたいとなったときに目印が何もないとなったら困るじゃろ?」

夢野「その役目はウチがやる。ウチが一番の適任じゃ!」

夢野「……腕が鳴るわい!」ギュイイイイイイイイ

最原「さっきから聞きたかったんだけど、その丸鋸とドリル何!?」

夢野「人体切断マジカルショーのアレと、箱を使った瞬間移動のときに箱へブッ刺すアレじゃな!」

茶柱「あ! やっぱり一応意味はあったんですね!?」ガーンッ

キーボ「ボクは……今決まりましたね。夢野さんの護衛をやりながら、このふざけた機能を解除する方法を探します!」ガチューンッ

赤松「気のせいじゃなかった。やっぱりキーボくんの周りの音、おかしいよね……? なんで?」

キーボ「セミラミスさんのせいですけど!?」ウガァッ

赤松「私に向かって噛み付かないでよ! 知らないよ!」ガビーンッ



ギャー ギャー


白銀「……みんな凄いなぁ。もう外に出た後のこと考えてるよ」

白銀「私なんて、これから生きてていいのかすら曖昧なのにさ」

天海「いや生きるべきっすよ。ていうか俺と一緒に来てもらうっすよ」

白銀「は?」

天海「ほら、俺が命懸けで前回の学級裁判から解放した二人……動機ビデオに映ってたあの二人に会いに行かないと。ね?」

白銀「いや、私はどの面下げてって感じだし」

ザッ

東条「やはりそうなるわね。いつ出発するの? 私も同行するわ」

白銀「花京院」

東条「東条よ」

白銀「……」

白銀「……え!? なんで!?」ガビーンッ
599 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/12/09(月) 22:02:48.85 ID:VhI1ZdEw0
東条「私がこの学園に来てから一番うれしかったことはなんだか、わかる?」

東条「巌窟王さんに赦されたときよ」

白銀「!」

東条「……最初はあなたのことを許せないと思ったわ。だけど、ね。事情を聞いて、その後許すか許さないかを決めるのなら、そこからは感情論よ」

東条「私は白銀さんを許したいと思う。巌窟王さんにやられて嬉しかったことを、誰かにやるの」

東条「……彼がいたことの最高の証明になると思わない?」

白銀「東条さん、巌窟王さんのこと大好きだよね。惚れてたの?」

東条「今の茶々は許さないわ」ガシイッ

白銀「アイアンクローはやめて。ごめんなさいごめんなさいマジでごめんなさあああああああ!」ギリギリギリ

東条「……」メシメシミミシミシミシ ピシリッ

東条「ここまでにしておきましょう」フッ

天海(今ピシリッて言った……! ヒビが入るような音した……!)ガタガタ

白銀「私だけ死ぬかと思った……」ゼェゼェ

東条「あとそうね、これも大事なのだけど」

白銀「まだ理由あるの?」

東条「……この学園の中で、あなただけがまだ救われてない」

東条「それってとても気持ちの悪いことよ。シンクについた水垢みたい」

東条「……私の前で、心の底から笑ってほしいのよ」

白銀「……」

白銀「まあ、いつかは」

東条「ええ。いつか、ね」フフッ

天海「決まりっすね! 俺たちは三人一緒に旅に出るっすよ! 燃えてきた!」メラメラメラ
600 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/12/16(月) 20:30:40.33 ID:svYqk3pB0
最原「よし! それじゃあ、やろう! キーボくん!」

キーボ「了解です!」チュドドドドドドド

入間「……本当にしまらねぇエンジン音だな」

百田「飛行にも支障出そうだが、なんで飛べてるのかわかんねぇ」

キーボ「音だけ! かっこ悪くなってるの音だけですからーーーっ……!」ズボボボボボボーッ

最原「……」

最原(穴から見える空は明るい。でも、それだけだ。なにも見えない。空だけが広がっている)

最原(この先に進んだ僕たちには一体なにが待っているのだろう)

最原(……サーヴァントのみんなと別れた後の僕たちに、なにができるんだろう)

最原(いや。不安に思うのは後でいい! 壁にぶつかったときでいいんだ!)

最原(この学園で巌窟王さんに貰ったものを、僕は生きている限り忘れない)

最原(それでほんのちょっと強くなれる……そんな気がするから!)






学園某所

ジャガーマン「よーっし! ぐるぐるパンチよーーーいっ!」グルグルグルグル

王馬「……で。キミは外に出たらどうすんの?」

ジャガーマン「絶対魔獣戦線バビロニア、アニメ絶賛放送中! 次は! 次クールのオープニングこそは出てやるぜ!」ビシイッ

王馬「うーん、ダメだ! 俺をもってしても何を言ってるのやらさっぱりわからない!」ヘラヘラ

ジャガーマン「で? キミはどうするの?」

王馬「この学園にしばらく残るよ」

王馬「ま……痕跡の後始末的な? そう何か月もいる気ないけどね!」ヘラヘラ

ジャガーマン「いいんでない? 学園っていうのは何かを貰って先に進む場でもあると同時に」

ジャガーマン「あなたたちが、なにかを『残す場』でもあるんだから。それを消すかどうかも生徒次第ってことで!」

王馬「……なんか消したくなくなってきたなー」

ジャガーマン「バーニングジャガーーーーーッ……」ゴゴゴゴゴゴ

ジャガーマン「ナッコォーーーッ!」シュンッ



ドカァァァァァンッ
601 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/12/23(月) 22:28:05.06 ID:sv0J2rwb0
物語はやがて終わる。

それを見た者の心になにかを残したのだとしても、やがてすべては記憶の影に薄れていく。





赤松「……みんな行っちゃったな。よしと。それじゃあ、いよいよカルデアに出発かな」

ブワッ

赤松「うわっ……凄い風。外と繋がる穴ができたって実感できるなー」

赤松「……」

ネコアルク「赤松嬢ー! 才囚学園の強制力が無くなってるから行き来は自由とは言え、いつ消えてもおかしくない出入口だからお早目ににゃー!」

赤松「わかってるってば!」

赤松「……行ってきます! 巌窟王さん! BBさん! セミラミスさん!」





――それでも僕たちが生きて歩いた道筋は、必ずどこかに残るし、今の自分たちに続いてくる。

他の誰が知らない道行でも、自分自身が忘れても、それでも絶対自分のルーツに繋がる物語。

僕たちの生きた証拠。僕たちの背中を押した、彼らが存在したという証拠が残る。
602 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2019/12/30(月) 23:03:07.67 ID:7FYy70kQ0
最原「……」



ザザーンッ ザザーンッ……



最原「……?」キョロキョロ

ミャア……ミャア……

最原「……」

最原「いつの間にか見覚えのない島にいるーーーッ! ウミネコがみゃーみゃー鳴いてるーーーッ!」ガビーンッ

最原「あれ!? どういうこと!? ここどこ!? ていうかみんなどこ!? あれ!? 学園のドームすら見当たらないぞ!?」アタフタ

魔猪「ぶもももももももーーーッ!」ドドドドドド

最原「うわあああああああああああデカいイノシシがこっちにーーー!?」

最原(避 否 死――)

武蔵「しゃああああああ今日の晩飯ゲットーーーッ!」ザァァァンッ

魔猪「ぶもげばっ!?」ブシャアアアアアッ

最原「ええーーーッ!?」ガビーーーンッ

武蔵「はー、大量大量。さてと、それじゃあさっさと血抜きとかして……」

最原「……」

武蔵「……あなた誰?」

最原「ここはどこですか?」



僕たちの冒険は終わらない。
僕たちだけの物語は……


武蔵「……あっ。また飛ばされる感じだコレ。ちぇ」キラキラキラキラ

最原「え? あれ!? 僕も!?」キラキラキラキラ

武蔵「おー、計らずも旅の道ずれゲット! しかもちょっと可愛い! LINEやってる?」キラキラキラ

最原「それどころじゃな――」キラキラキラキラ



シュイイイイインッ


これからも続く。
603 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/01/05(日) 00:05:58.70 ID:LtiM+y/l0
茶柱「!? !? !?!?」ガタガタ

百田「おーっし! それじゃあ、外に出れたことだし、それぞれの進路に向かって……一旦、サヨナラだな!」

春川「また会える……ううん。絶対に会うよね」

天海「最後の最後まで力になれたかは怪しいっすけど、それでもみんなとあの学園で同じ時間を過ごせたのは俺にとって――」

茶柱「待って! ちょっと待ってェーーー! 最原さんが! 最原さんがなんかキラキラキラキラシュイーーーンッて消えたんですけど!」

白銀「え? な、なに? なんのこと?」

茶柱「だから光の粒子に包まれたと思ったら身体が透けて消え失せたんですってば!」

百田「終一のヤツ、みんなと別れるの辛そうだと思ってたが……内心、舐めてたんだろうな。まさか真っ先に自分の道を見つけるとはよ」

茶柱「そういう感じじゃないと思うんですけど! むしろ消える瞬間『えっ?』みたいな顔してたんですけど!」

東条「今まで英霊召喚だのサーヴァントだのを散々見てきたのだから、人が消えるくらい今更と思わないでもないわね」

夢野「最原までウチのライバルになったのか? やれやれ、めんどいなんてますます言ってられなくなったのう」フウ

茶柱「そ、そういう感じ!? え!? みんな心配しないんですか!?」

獄原「最原くんなら多分大丈夫じゃないかな……」

星「まあ、なんだかんだ巌窟王に最後まで付いていったのは夜長を除けばアイツくらいだ」

真宮寺「その内、ひょっこり自力で戻ってくるヨ。第一僕たちに何ができるの?」

茶柱「それはっ、まあ……なにかしら……」アタフタ

アンジー「その通りだけどねー! まあ、今は各々やれることをやるしかないんだよー!」

キーボ「急がば回れ、ですよ! 証拠もないことですし!」

茶柱「え、ええーーーっ……!?」

入間「どうしても会えないなーってなったらそんとき考えろよ。ま、俺様に相談すりゃ手を貸してやらなくもなくもなくもないような気がするぜ!」

茶柱「どっち!?」ガビーンッ

茶柱「……ああー……!」





茶柱「もう! 思ったよりも大変そうですねぇ。約束果たすの……」
604 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/01/16(木) 17:10:19.96 ID:LRHajYlv0
百田「んじゃあな! 縁がありゃまた会おうぜ。それまで風邪とか引くなよ!」

アンジー「にゃははー! こっちの台詞だよー! もう吐血とかしないでねー!」

百田「!?」ビクウッ

百田(……いつ気付かれてた!?)

春川(吐血?)

百田「……」

百田(ハルマキの空気が変わった気がする! 逃げる一択だな!)ダダッ

春川「待って」シュバッ

百田「クソッ! ハルマキはえぇーーーッ!」シュバババババッ

春川「待って」ヒュンッ

百田「瞬間移動まで使って来やがった! ま、待てハルマ――あ゛あ゛ああああああああっ!」ガビーンッ

春川「待たない」






天海「……こ、怖……もう見えなくなっちゃったっすけど、怖かったっす……」アワワワワワ

天海「まあ、ここから先は二人の問題なんでもう手出しはできないっすけど。白銀さん! 俺たちも出発っすよ!」

白銀「ん? うん。いいけど。少し遅かったね」

天海「え? なにが?」

白銀「もうみんないなくなっちゃった」



ガラーンッ



天海「……去るの早ッ!」ガビーンッ

白銀「結局みんなワンマンプレイ大好きなんだよね……」

天海「み、みんなーーーッ! 俺っ……俺これから白銀さんと頑張るっ……頑張るって……」

天海「それっぽいこと言って別れたかったのにィーーーッ!」ガクーンッ

白銀「……」

白銀「私が聞いてれば充分でしょ」ボソッ

天海「え? なんか言ったっすか?」

白銀「早く行こう。目的地は……ひとまず前で」

天海「了解っす!」
605 :100日後に死ぬ天海:一日目  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/01/23(木) 20:42:53.95 ID:lI/2phEK0
東条「当然私も行くわ」

天海「あ! 東条さん!」

東条「白銀さんの眼も治さないといけないから」

白銀「覚えてたんだ」

東条「ちなみに解決策はもう見つかったわ」

天海「はっっっや!」ガビーンッ

東条「実はこの辺りフリーWi-Fiが飛んでいるらしいの。学園から持ってきたノーパソで繋げることができたわ」

東条「アマゾネス・ドットコムという通販サイトに『とてもよく効く目薬』があったから早速注文したの。後は指定場所まで行って待つだけよ」

天海「ん!? ちょっと待って! それ代金は!?」

東条「ないわよ。着払い設定にしたけど」

天海「え!? じゃあどうやって荷物受け取るんすか!?」

東条「強奪」

天海「」

白銀「……アウトローまっしぐらだね」

東条「世界に楯突くのはもう慣れっこでしょ」

天海(猛烈にイヤな予感がするなー……まあ、いつものことか)

天海(……巌窟王さん。あなたがいなくなっても、俺たちはなんとか生きていけそうっすよ)

天海(どっかで見守ってくれると嬉しいんすけど)

天海(……ま、伝えたいことはアンジーさん伝でいいか!)

天海(彼女ならきっと――!)
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/29(水) 11:35:36.83 ID:Sd1Ka9yLO
607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 21:34:34.45 ID:IyZ1fBE00
ええ……まだ続いてたんかこのss。よくネタが続きますね
608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 22:07:00.38 ID:3jYWjL7DO
随分前から1日1レス程度の投下で延々と続けてるだけで今でもまとめて投下してたならとっくの昔に終わってると思うんだけどな
609 :アンジーとあなたのための物語  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 09:42:13.39 ID:c/mEDpnF0




地面がある。空がある。星のような光がある。でもそれ以外は特になにもないような場所だった。

道はないし、方角もいつの間にか狂うし、目印を付けたとしてもそこまで戻ることができない。

一体、どのくらい歩いたのか。さっぱり思い出せない。ていうかそろそろ心が砕けそうだ。疲れた。

なんとか足を動かせるのは、胸の中にあるキラキラした思い出たちのお陰だろう。

無限に歩き続けていれば、理論上は確実に会えるはずとか言える場所じゃない。

無限に広い場所かもしれないんだから、無限に歩いても永遠に見つからないかも。




「……?」




なんか、凄く大きな黒い竜を見つけた。スケッチとか、これをモデルに彫刻とかしてみようかなーと一瞬思ったが、やめた。

ここを歩いていればたまにある奇妙なオブジェクトの一つだ。生きてはいるんだろうけど、どうでもいい。



「会いたいなー」



この言葉も何百回言ったか。何千回かな。何万回か。
610 :アンジーとあなたのための物語  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 09:50:53.19 ID:c/mEDpnF0



どれくらい歩いたのか、やっぱりもうわからない。

心はもうボロボロで砂のように粉々だ。

やっぱりただの人間にはキツすぎるみたい。倒れたり膝を付いたりしたらそこで終わりだ。億劫すぎて二度と立ち上がれないだろう。



「……ていうかー」



本当にここにいるのかな。実は全然見当違いの方向を探してたりしてなかったかな。

後悔の二文字が頭に浮かぶ。まあどっちにしろ、ここに来る前に全力で身体をいじくったから、二度とまともな世界に戻れないんだけど。



「……」



涙はもう枯れた。だからもう泣かないという決意も必要ない。自分がどんどんコンパクトなものに変わっていく感覚がある。

彼に会ったとき、言いたいことの半分も言えるかどうか――
611 :アンジーとあなたのための物語  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:01:28.74 ID:c/mEDpnF0


「……う」


ヤバい。


「……ううううううう……」


ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。


「もう無理ー」


いよいよ限界が近い。

いや、多分この『もう無理−』という台詞も何億回言ったのか覚えてないけど、今回ばかりは本当に無理だよ。

だってもうなにも覚えてないもん。

記憶や精神がここまで簡単に風化するなんて思わなかった。

ダメで元々だと思ってここに来たけど、まさか本当にダメだとは微塵も考えてなかった。

多分、そう、とても大事な人に会いにここまで来たということはわかるけど。その人とどんな関係だったのか覚えてない。

家族? 恋人? 先生? 弟子? 信仰を向けられる誰かしら?



「……」



わからない。わからないけど――


『何故自分から迎えに行かなければならない? 来るならむしろ向こうからでは?』


思考がちょっとありえない方向に、奇跡的に吹っ飛んだ。
612 :アンジーとあなたのための物語  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:09:35.49 ID:c/mEDpnF0
「……もう!」


なにもかも失って、それでも最後に残ったものが一つだけあった。

それは怒り。そうだ。これは元々、自分の中に無かったものだ。

誰かに教えられて獲得したもの……違う。

誰かに『お前の中に確かにあるのだ』と教えられて気付いたものだ。




凄く腹が立ってきたぞ。もうどうでもいい。疲れた。辛い。イヤになった。

もう二度と会えなくなっても知らない。

ここまでやってあげた自分と会える権利を、みすみす手放した彼が悪いのだ。

もう倒れよう。そして呪おう。超眠いし。



お前は永遠に独りぼっちだ、ばーかーめー! にゃははははははは!



そうしてやっと、自分の両足から力を抜いて――



「……?」



誰かに受け止められた。


「……!」


アンジーを受け止めた、誰かがいる。





巌窟王「……まったく。とんでもないナリだな、アンジー」

アンジー「あ……」
613 :俺とアンジーのための物語  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:23:45.85 ID:c/mEDpnF0
巌窟王「……まあいい。後のことは俺に任せろ。前からずっと、そういう役割だったろう? 俺は」ニヤァ

アンジー「……」

巌窟王「なにか言っておきたいことはあるか?」

アンジー「……」

アンジー(とても眠い。でも、とにかく彼に伝えたかったことがある)

アンジー(これだけは……最低限だ)

アンジー「あ……」

アンジー「アンジーを一緒に連れてって。エドモン」

アンジー「どこにだってついていくから」

巌窟王「……!」




エドモン「そうだったな。俺はエドモン・ダンテス」

エドモン「お前と共にある者だ」

アンジー「……」

アンジー(願いは叶った。ああ、でも凄く眠いなー)

アンジー(積もる話はあるんだけど、今はちょっと思い出せないし……)

アンジー(……寝よ)

アンジー「……」

エドモン「行くぞアンジー! 俺とお前の旅路は、まだ始まったばかりだ!」

エドモン「クハハハハハハハハハハハ!」

アンジー(うん。ずっと一緒)






アンジー(大好き。エドモン)
614 :押忍! BB道場  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:27:53.27 ID:c/mEDpnF0






BB「……さてと」

BB「安心しました? 元同級生が願いを叶えて」

??「……」

BB「ねーえー! せっかくまた再会できたんだからなんかしら言ってくださいよー! ねー! ねー!」
615 :押忍! BB道場  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:35:55.35 ID:c/mEDpnF0
最原「ちょっと黙っててよ! そういう雰囲気じゃないから今! ていうか、ここどこ!?」キョロキョロ

BB「BB道場ですけど」

最原「BB道場!?」ガビーンッ

BB「いや、建設途中なんですけど。バッドエンドを迎えたなにかをここに無理やり引っ張ってアドバイスして、ちょっと時間を巻き戻してリトライさせる」

BB「そんな素敵な憩いの場になる予定です」ドヤァ

最原「多分拷問に近い何かになる気がする……!」

最原「というかBBさん! それなら僕にアドバイスしてほしいんだけど!」

BB「なんです?」






最原「なんか、かれこれ何年かずっと漂流(ドリフト)が止まらないんだよ! 気が付いたら別の場所に転移してるってことずーっと!」

BB「……」

BB「えっ。最原さんも自力でここまで辿り着いたクチじゃなかったんですか!?」ガーンッ

最原「全然違うよ! たまに過去や未来に飛ばされてたりして、目的の場所に全然行けないんだよ!」

BB「ええ……? ちょっと待ってくださいよ。一体なにをどうすればそんな素敵体質に……なんか変なものと契約したりしませんでした?」

最原「契約? そんなものするわけが」

最原「あ、いや。したかも……最初の内は時間軸まではズレてなかったんだよな……確か過去や未来に跳ぶようになったのは……えーと」
616 :押忍! BB道場  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/01(土) 10:43:46.06 ID:c/mEDpnF0
回想 〜武蔵との漂流中〜


真っ黒な穴『』ズズズズズズズ

最原『え。契約すれば目的地に行ける確率が上がるんですか……?』

武蔵『まー、このままずっと漂流し続けるよりは、腰を落ち着けて契約するのも一つの手なんじゃないかなー。せっかく目の前にいるんだしさー』

最原『ていうか、この真っ黒な大穴はなんですか? ブラックホールみたいな』

武蔵『な、なんか……よくしりょく? とか言ってたっけな。よく覚えてないけど』

真っ黒な穴『』ズズズズズズズズズ

武蔵『あ! なんか消えちゃいそう! 穴がどんどん小さくなってってる!』

最原『えっ!? ちょっと待って、まだ考える時間が欲し……あーーー!』

最原『契約! 契約しますから! それでみんなに会えるんなら文句ないですからちょっと待ってあああああああああ!』



回想終了




最原「ってことがあったんだよね」

BB「」

最原「そのまま穴は消えちゃったから契約はできてないと思うんだけど」

BB(『正義の味方』にされてるーーーッ!)ガビーンッ

BB「ああ、えーっと……職場紹介しましょうか? カルデアってところなんですけど」

最原「それ赤松さんが行ったところじゃ……」

BB「いいから!」ウガァ!
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/01(土) 13:54:50.65 ID:MckWlqPe0
やりおるわアンジー。
618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/07(金) 17:57:44.22 ID:tJkZDO8F0
ちょこちょこみてたけど、もうすぐ終わりそうだな…
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/08(土) 10:54:31.04 ID:02RDgOjC0
1年ぶりくらいに見に来たけど、まだ更新してたとは!
620 :押忍! BB道場  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/10(月) 20:36:31.53 ID:8DvDci3t0
数時間後

BB「ってことで、これで晴れてサーヴァントとしてカルデアに召喚される準備が整ったということで!」

BB「霊基は星5相当ですよー! クラスはひとまずアヴェンジャー!」

最原「……なんか釈然としないけど、これで今度こそみんなと会える確率は上がるんだよね」

BB「多少は」

BB(しかし漂流体質かぁ……元の世界でとびっきり変な偶然に巻き込まれない限りこんなことになるヤツは稀も稀のはずだけど)

BB(……巻き込まれまくってたか。考えるまでもありませんでしたね)

BB「さあ! それでは、このままカルデアに行ってらっしゃーい!」

最原「と言われても、どうすればいいやら……ん!」キラキラキラ

BB「お。早速呼ばれちゃってるみたいですね! ヒューヒュー! こーの人気者ー! 羨ましいぞー!」

最原「確かに今までとは違う感覚……! うん、ありがとう! また会えてよかったよ、BBさん!」キラキラキラキラ

最原「向こうのBBさんと会えたら、また仲良くするからねー……!」シュイイイイインッ







BB「……あっ」

BB「待てよ。『同じカルデア』に行けるかどうかは五分以下じゃないですか?」

BB「……やっちゃったZE☆」
621 :特異点F:炎上汚染都市冬木  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/10(月) 20:47:05.29 ID:8DvDci3t0
??「ええっと……ここにこの石を投げ込めばいいんだよね。わかってるわかってる。もう『二度目』だし」

???「どんな人が来るのか、楽しみですね! 先輩! ライダーがまだ二基しかいないので、そこを補える誰かだといいのですが……」



バシュウウウウウウッ



最原「……着いた! はあ、やっと腰の落ち着けるところに来れたって感じだ」

「!?!?!?」

??「……えっと、どこの英霊かな。今度は……」

???「さあ。見た目からは先輩とそう変わらない年齢の男性にしか見えませんが……」

最原「あ。えーと、カルデアのマスターさん、だよね。前に夢で一度だけ会ったけど覚えて……?????」

最原(……? あれ。カルデアのマスター……って女性だったっけ。前に会ったときは確か男性だった気がするんだけど……)

立香「?」

マシュ「?」

最原「……巌窟王って名前に聞き覚えはある?」

立香「ないけど」

最原「……は、ははは……ははははははははは……!」






最原「間違えてるよッ!」ガビーンッ

立香「何をッ!?」ガビビーンッ
622 :ロストルーム  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/10(月) 20:52:55.53 ID:8DvDci3t0
とある寂れた倉庫内

モノクマ「……うぷ……うぷぷぷぷぷ……」

モノクマ「そう、まだ終わってないんだよ……最原くんの旅も、ボクの大活躍も……」

モノクマ「ボクはモノクマ。才囚学園、および希望ヵ峰学園の学園長。そして……」







モノクマ「このカルデアの新たなる、支配者なのだッ!」ギャリィィィィンッ







ガシャガシャガシャガシャッ パリィィィィンッ




THE END
623 :逆転の人  ◆SxyAboWqdc [saga]:2020/02/10(月) 21:09:37.30 ID:8DvDci3t0
というわけで終了!
長くない……長くないヨ……全然長くなかったヨ……!

確か初期のころはFate映画にエキサーイエキサーイしてたから二年くらい前? からやってたのかな。うん長くない全然。三部作より全然短い。

HTML化依頼出さなきゃ!
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/10(月) 22:43:31.96 ID:iKTQvfbH0
完結乙 2年半ですな(2017/10からだから)
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/11(火) 20:02:05.51 ID:V/fYtZ/so
終わったか乙
次は最原の人理修復編じゃな?
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/12(水) 00:35:07.67 ID:bAA2QSyf0
お疲れ様っす!最初っからおっかけさせて頂きました。・・・・・・なんだろう。最終的にカルデアで赤松最原再会。転子ちゃんがフェードアウトな気がしてならん。そして、モノクマのラストはなんなんだろうか。
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/12(水) 11:36:00.13 ID:XHZrN9sUO
お疲れ様です、やっとこさ追いついた....
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/14(金) 11:48:17.66 ID:zqMEKGghO
お疲れ様です!こらのおかげで巌窟王が好きになりました!
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/19(水) 19:45:12.14 ID:IJSOGX8R0
お疲れ様です!
投稿者様の作品がどれも大好きで一気してきました!
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/14(火) 17:26:20.51 ID:H+jLeksQ0
遅くなりましたがお疲れ様です!
今後外の世界はFate/requiemのような世界になるんでしょうか…。
631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/07(木) 18:07:21.43 ID:Rc4Jtosu0
FGO二部五章をプレイした後に読んだけど、
もしモノクマの選択を選んでいたら、外の世界はあの地球国家元首の養分になってたというわけか
末恐ろしい話だ
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