モバP「よっしゃ、暇だし自殺するか!」

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1 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 22:10:51.71 ID:seikrJsf0
モバマスSSです。
沢山の人が出る予定ですが、完璧に見切り発車です。
あとキャラ崩壊とか地の文とかありますので色々よろしくお願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1533561051
2 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 22:13:41.57 ID:seikrJsf0
P「仕事もある程度区切りついたし、やることなくなったなぁ……」

P「よーしドッキリでもしてアイドル驚かしてやろ!!!」

P「何しようっかな〜誰が来るかな〜????」

P「スケジュール表確認! これから来るのは……」

P「……へぇ、このアイドルか。じゃ、ちょっと手の込んだドッキリでもするか!」
3 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 22:16:38.42 ID:seikrJsf0
美優「……今日は確か、お昼過ぎから雑誌の撮影がありましたね……」

美優「少し事務所に辿り着くのは早いですけど……」

美優「うふふ……」ガチャ

P「……」

(天井から垂れ下がった千切れたロープ)

(倒れた椅子)

(横たわるPの体)

(首に巻き付いた千切れたロープ)

美優「……????????」
4 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 22:19:52.42 ID:seikrJsf0
美優「え……ちょ、ちょっと……え?」

美優「は……?」

 ――その場に立ち尽くす美優。やけに冷たい冷房が、彼女の焦燥をなんとか食い止めていた。
 思わず腕に掛けていたバッグを落としてしまった。鈍い音がする。聞こえなかった。
 彼女の耳には、音が届いていなかった。感覚さえも今では鈍い。視界が狭まる。舌が痺れる。埃の匂いが、鼻に染みついて抜けない。

美優「……え?」
5 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 22:22:39.04 ID:seikrJsf0
 横たわるPに駆け寄る。体に触れる。
 寝ているフリだろうか――首にロープをかけて?
 触れた手がやけに冷たい気がする……きっと冷房が効きすぎているんだろう――首にロープをかけて?
 先ほどから呼吸音が聞こえない……浅い眠りだからだろうか、それともうつ伏せだからだろうか――首にロープをかけて?

 どうみても、これはもう、そういうことだった。
 少なくとも、美優にはそうとしか思えなかった。
6 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 22:26:43.43 ID:seikrJsf0
 いや、無論“そういうこと”ではある。P自身の手の込んだドッキリの内容ではあるのだが――如何せん、手が込みすぎていた。
 やけに寒い部屋。冷房をガンガン利かせた狭い室内――悪寒にも似た条件付けが彼女の動悸を促進する。倒れた椅子には片方の靴が乗っており、天井からぶら下がっているロープは僅かに揺れている。
 つまり、今まさに起きた出来事なのだという実感と、襲い来る非現実感の隙間で、美優の意識を完璧に奪い取っていた。

美優「……」

 声が出ない。足が動かない。落としたバッグを拾って、救急車を呼ぶことすら、今では敵わない。ところで119って何番だっけ――朦朧とした視界の中で、美優はそんなことを考えている。
 完全に、静止していた。
7 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 22:29:07.29 ID:seikrJsf0
美優「ぷ、Pさん……」

 かろうじて動いた舌を、強引に引っ張って動かす。
 ボイストレーニングと同じだ。何ら変わりはない。同じ要領、同じ行動。
 だというのに、美優の舌は動かなかった。
 もちろん声が出ていたとしても、出ていなかったとしても同じことだ。
 結局、Pは起き上がることをしない。

美優「なっ……んで……」

 絞り出すように窮屈な声。吐き出すように熾烈な声。追い込むように暗澹たる声。
 明らかに、美優の限界を超えた出来事だった。
8 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 22:33:53.45 ID:seikrJsf0
美優「なんでですかっ!」

 溢れ出した感情は激流のように。
 漏れ出した激情は雪崩のように。
 美優の舌を動かした。

美優「なんで……なんでなんでなんで……っ!?」

 出てきたのは疑問と焦燥。己を保つための言語。己を守るための言語。理論で以た武装であって理屈にならない言語。
 それが、淡々と漏れていた。

美優「わかりません……わかりません……何か……ダメでしたか? ……私……」
9 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 22:37:53.03 ID:seikrJsf0
美優「私がこんな性格だから? 貴方を失望させてしまいましたか? 私じゃダメだったんですか? 何か足りなかったんですか? 何があればよかったんですか? 何が貴方をそうさせてしまったんですか? 私の何が――私が……ダメだったんですね……」

P「……」

 ……流石にこの独白には、若干Pの内心にも申し訳なさを纏った罪悪感が出てきた。もっと泣き叫んだところで起き上がって「てへへー実は生きてたよん♪ ごめんね美優さん♪」とか言って許してもらう作戦を考えていたのだった。
 しかしこうなってしまうともうどうしようもない。完全に作戦が行き過ぎてしまった。
 ありていに言って、ネタバラシのタイミングに困っていた。
10 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 22:41:09.11 ID:seikrJsf0
P(どっ……どうする俺!? なんていうか……後には引けない感じ! このままだと美優さん、何をしでかすかわかったもんじゃ……)

P(し……しかもやべぇ! まだ色々ギミックを用意したままだ! このまま俺がネタバラシしなかったら、美優さんは気付いてしまうんじゃないだろうか……そうなったら、マジでもうどうしようもなくやばいッ!)

美優「Pさんの……卓上……手紙……?」

P(ゲーッ!? マジィ!?)

美優「いや……遺書……」

P(めっちゃ口調暗い……暗くない? も、もうそろそろ起き上がるか……)
11 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 22:43:56.38 ID:seikrJsf0
美優「読む……読みましょう……」

P「……み、みy」

美優「……」ナミダドバー

P(な、泣いてるーっ!? 別に一文ちょっと書いただけじゃん!? そんな号泣するほどの遺書だっけ!?)

遺書「お疲れさまでした」

美優「Pさん……Pさん……」
12 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 22:48:39.51 ID:seikrJsf0
 手紙を抱きかかえるようにして俯く。涙は下る。もう、他の人間は遺書を読むことは出来ないのではないだろうか……涙で滲んでしまって、文字が歪んでいる。
 けど、それでいいような気もした。
 Pさんは疲れていたのだろう。それが何かはわからない。けれど、何かに対して疲れを感じていたことは確かだ。それが自分かもしれないと思うと……美優は頬の熱を抑えられなかった。
 寒風を割いて涙が落ちる。跳ねる宝石のように煌めいて――砕けた。
 
美優「お疲れさまでした……」

 文字みたいに掠れた声。
 そっと、絞りだした。
13 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 22:49:38.58 ID:seikrJsf0
P「あの、すいません……」

美優「……はい?」

P「ごめんなさい。死んでません……」

美優「……え?」

P「ドッキリです……」

美優「きゃ――――っ!? 動いてる――――っ!?!?!?」
14 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 22:52:14.78 ID:seikrJsf0
美優「だ、だって……体だって冷たくて……」

P「この部屋の冷房、20℃まで下がってますし服の中に保冷剤詰めてます……美優さんが触るであろう左手は重点的に冷たくしたんですけど、後から考えると天井のロープが揺れてるのに体が冷たいのは、時間のつじつまがあっていませんね……」

美優「い、遺書……」

P「どうせ書くならもっと色々書きます」

美優「し、死んだはずじゃ……」

P「残念だったな、トリックだよ」

美優「…………」

P「ご、ごめんなさい……ふざけすぎました……」
15 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 22:55:45.40 ID:seikrJsf0
美優「カメラはありますか?」

P「いえ、企画立案並びに演者は俺だけです」

美優「……」

P「すいませんでしたぁーっ! まさかこうなるとは……許してください本当にごめんなさい!」

美優「じゃあ……生きてるんですね……」

P「あ……はい。しばらくは死ぬつもりもありませんよ」

美優「しばらく……?」

P「80まで生きるつもりなんです。だからあと50年弱は生きてます」

美優「じゃあ、これは、全部、嘘……」

P「そういうことになります……」
16 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 23:01:03.04 ID:seikrJsf0
美優「良かった……良かったです……Pさん、いなくなっちゃうのかと……」

P「いやー20代で死ぬのは勿体ないですよ」

美優「そう……そうですね……ふふ……」

P「み……美優さん?」

美優「私、凄く怖かったです。泣いちゃいました。貴方がいなくなったらと思うと、怖くて怖くて潰れてしまいそうでした。まるで海底に沈む空き缶の気分でした」

P「いやぁ申し訳ない……なんと申せばいいか……」

美優「責任、とってくださいね……」

P「え?」
17 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 23:03:51.02 ID:seikrJsf0
P「なんかめっちゃ迫られて怖かったけど週末に美優さんの洋服を見に行くことで手打ちになったぞ!」

P「さっきのは流石にやりすぎだったな!」

P「次はもうちょっと柔らかいドッキリにするぞ!」

P「勿論まだ続けるぞ!」

P「俺はめげない!」

P「さて、次に来るアイドルは……」

P「……じゃ、どういうドッキリにしようかな!」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/06(月) 23:04:39.09 ID:6+ORLuTg0
いいぞぉ
19 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 23:06:13.81 ID:seikrJsf0
茜「おはようございまーす!」

茜「おや、誰もいませんね!?」

茜「Pが席を外すなんて珍しいですね!」

茜「あ、窓があいてますよ! エアコンもついてるのに!」

茜「よーし窓を閉めるだけにも全力行きますよぉおおおお!!!!!!!」
20 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 23:08:30.34 ID:seikrJsf0
茜「……靴?」

茜「窓際に靴?」

茜「なんでこんなところに脱いである靴が置いてあるんでしょうか?」

茜「窓は……開いてて……カーテン――……たなびいてる……P……席を…………外して……」
21 : ◆V1gN/9sbLo :2018/08/06(月) 23:12:44.54 ID:seikrJsf0
 ――――ゾクリ、と。
 背筋を昇るように、鋭い悪寒が極めて鋭敏な煌めきを示した。
 悪い予感がした。何か、よくないことが起こるような――否、もう既に、起こっているような……。

 カーテンは風になびいて揺れている。窓から流れ込むぬるい風が、茜の頬を撫でる。
 赫い焦燥。相反するは背中を纏う蒼い絶望。
 暑さにやられたのだろう……茜は、しばしその場にかたまっていた。
 体震える。末端が凍えるように冷たい。体のいたるところが、焦っていた。狂ってしまった。狂ってしまっている。そんな気がした。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/06(月) 23:14:13.41 ID:uKPmFmCQo
こういうのを待ってた
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/06(月) 23:16:03.66 ID:QwrhUvvFo
待ってないよ
ドッキリでもかなしくなる
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