瑞鶴「私は、あんたに憧れられるような艦じゃない」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 19:13:43.24 ID:B0VuCpDy0

※大戦末期のお話です。
※史実とは異なる場合があります。
※シリアス基調ですがコメディもあります。
※初投稿なので不慣れな点が多いです。助けてください。


それでも大丈夫な方よろしくお願いします┏○



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1532945622
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 19:17:51.31 ID:B0VuCpDy0


雨。
鎮守府の片隅にある部屋で私は、しとしとと降り続く雨を窓越しに見ていた。

「また煙草?」

聞きなれた声が聞こえる。

「……そうよ」

「あんたね……無理してそんなもの吸わなくてもいいんじゃない?」

この声の主は瑞鳳。私にとって……大事な仲間だ。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 19:18:44.48 ID:B0VuCpDy0

「うるさいわね。あんたも吸えば?」

「わたしはエンリョ。 ……ところでさ最近できた後輩のことなんだけど」

そう言って、扉の方を見る。……あぁまたか。

「あんた、名前なんだっけ」

「は、はいっ!?」

呼ばれるとは思わなかったのだろう、すっとんきょうな返事を返す。

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 19:20:33.34 ID:B0VuCpDy0

「葛城ちゃんよ。 あんたと話したいって言ってしょうがないの」

「私に?」

「は、はい!」

目をキラキラ輝かせながら返事をする。
…私はこの子が苦手だ。

5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 19:23:35.08 ID:B0VuCpDy0

「あ、憧れの瑞鶴さんにお話がしたく…」

「……私に、ね」

「は、はい!!瑞鶴先輩と言えば軍関係者でなくても知らない人はいないくらい!!」

聞きたくない。

「お話には聞いています!!一航戦として前線を張り」

やめて。

「幸運艦として名も高く、数々の作戦をーー」

「違う!!!!」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 19:25:01.44 ID:B0VuCpDy0


つい大声で叫ぶ。
呆然とする葛城。 それを見て我に返る。

「…わたしは」



「わたしは、あんたに憧れられるような艦じゃない――」


7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 19:26:16.54 ID:B0VuCpDy0
――――
――――

「あの子がごめんね?」

「い、いえ」

廊下を歩きながら、申し訳なさそうに瑞鳳さんが口を開く。

「あ、あの……」

「なぁに?」

「わたし…何か無礼をしてしまったのでしょうか…」

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 19:27:10.59 ID:B0VuCpDy0

「うーん……、うん。葛城ちゃんは悪くないよ」

「え……。で、でも」

「いーの、今はそっとしといてあげて、ね?」

「は、はい」

わたしが悪くないはずがない。瑞鶴先輩のあの形相…見たことも聞いたこともなかった。

9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 19:31:08.73 ID:B0VuCpDy0

しばらく沈黙が続いた。足音と雨音だけが廊下を響く。

「……あの子はね、変わっちゃったんだ」

ポツリ、と。こぼすように瑞鳳さんの口が開いた。

「え?」

「葛城ちゃんは知ってるかな、瑞鶴はね。昔は、第五航空戦隊に所属してたんだ」

「もちろん知ってます」

忘れるはずがない、3年前民間人のわたしを助けてくれたのは他でもない。
瑞鶴先輩だ。

10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 19:34:41.49 ID:Yd7tPvuxO
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11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 19:34:44.43 ID:B0VuCpDy0

「その頃の瑞鶴はね、無邪気で、明るくて――。なにかする度に先輩に怒られてばっかりだったんだよ?」

「へー、そうなんですね」

瑞鳳さんが楽しそうに話す。無邪気に笑う瑞鳳さんについ見とれてしまう。
いやいや今は違う…。
……わたしの知っている瑞鶴先輩とはイメージが程遠い。
今の瑞鶴先輩は、冷静で、落ち着いていて、大人で、……どこか寂しそうで。

12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 19:37:29.01 ID:B0VuCpDy0

「――でもね、2年前を境に…いや、正確には半年前、かな」

「…それって」

「んじゃ、私はこっちだから。話に付き合わせちゃってごめんね葛城ちゃん」

「い、いえそんなこと!」

「今度またお話しよ?その時は間宮で!!」

「ぜ、是非!!」

約束だよー、と笑顔で走っていく瑞鳳さん。
新兵のわたしが言うのは失礼だが、可愛い人だな、と思う。

……ふと、外を見る。
雨は窓を激しく叩いていた。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 19:38:34.78 ID:B0VuCpDy0

今日はここまでです。

瑞鶴が好きすぎて書きました…


14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 19:40:35.69 ID:JA9IegCBo
おつ
きたい
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 23:21:20.19 ID:B0VuCpDy0

コメントありがとうございます!少し投下します。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 23:22:09.85 ID:B0VuCpDy0


「はあ……」

布団におもむろに倒れ込む。
私は何をしているんだろう。
葛城にあたり散らかす自分が嫌になる。

「私は……」

17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 23:24:13.18 ID:B0VuCpDy0


――――
――――

1週間前。

「新入り?」

「そうだ。新しい正規空母が3隻うちに来ることになった」

「こんな最前線に新しい艦を?提督さん本気なの?」

「ああ、本気だ」

「ちょっと…そんなの、死にに来るようなもんじゃない!」

「ちょっと瑞鶴!!」

瑞鳳が口を挟む。





18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 23:29:11.20 ID:B0VuCpDy0


「いい、瑞鳳。……お前のいうことも最もだ。私も乗り気ではないのだがな。急遽手配されたため……訓練も終わったばかりの娘達だ」

「……そんなの無駄死にになるだけじゃない」

「そこでだ、瑞鶴、瑞鳳。」

「なによ?」「はい」

「お前達が稽古をつけてやって欲しいんだ」

「……私達が?」

「ああ、彼女達を助けるためにも」

19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 23:31:57.37 ID:B0VuCpDy0


――――
――――

帰り道。

「……」

「そんな怖い顔しなくてもいいじゃない」

「別に」

「でもさ、瑞鶴もそういう立場になってきたわけだねぇ」

「……私は嫌よ。足でまといになるだけだわ」

「ふふっ……」

「何がおかしいのよ」

「いや?あんた加賀に似てきたなって、さ」

「はあ?何を言って……」

「そのままの意味よ?」



20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 23:33:05.66 ID:B0VuCpDy0



―――
―――

「……似てきた、かあ」


布団に倒れたまま、横目で写真を見る。
そこにいる加賀さんはいつもの通り、ぶっきらぼうな顔をしていた。

「加賀さん……皆。私さ、どうしたらいいのかなあ」

もちろん返事は帰ってこない。けど、それでも何かにすがりたかった。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 23:35:42.34 ID:B0VuCpDy0



写真の中のみんなは優しい笑顔で私を見ていた。
皆は……、皆は私を見ててくれてるのかな。

……。
ダメだ。

これ以上考えちゃ。
私が泣いてちゃダメ。弱い私が邪魔をする。
こんな顔みんなには見せれない。

22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 23:36:36.40 ID:B0VuCpDy0

その時、ノックが響いた。

「秋月です!瑞鶴さん今、大丈夫ですか?」

最悪のタイミングだなあ。

「うん、どうした?」

戸が開く。幸いにも灯りは暗く、顔までは伺えないだろう。

「失礼します。瑞鶴さん、ご飯ができましたのでお呼びにまいりました!!」

「なんだそんなことね。分かったわ、すぐ行くわ」

「はい!今日は私も手伝ったんですよ!」

「それは楽しみね、何かなー?」

「ふふふ、お楽しみですよ」

23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 23:38:41.43 ID:B0VuCpDy0


――秋月、この娘も半年前の戦いで大切な人を無くした。
瑞鳳も、そうだ。
それでも、暗い顔をひとつもせず、いつも明るく周りを支えてくれている。
それなのに、私はどうだ?

「……何してんだろ」

「? 何か言いました?」

「ううん、何でもない。ほら、いこ?」

「はい!」

私は……。
皆……。

24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 23:39:39.44 ID:B0VuCpDy0

以上です。また溜まり次第投下します。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 23:46:10.16 ID:lP0UoIMeO
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/31(火) 22:10:59.83 ID:Z8kgPS9WO

おつありですー!23時前後に投稿します。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/31(火) 23:05:59.58 ID:Z8kgPS9WO


「……すごいわね」


食堂につくと豪華な料理がずらりと並んでいた。いつぶりだろうか、こんなに華やかな料理を見るのは。
そこで思い出した。
あぁ…今日は、
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/31(火) 23:06:37.24 ID:Z8kgPS9WO


「雲龍さんたちの正式な入隊を祝う会ですから」

そうだった、すっかり忘れていた。

目を移すと、緊張しているのだろうか。

……いや、私を怖がっているのか。

葛城がこわばった顔でこちらを見る。


その隣には落ち着いた顔の雲龍、そしてこちらも緊張ぎみの天城。

29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/31(火) 23:07:33.07 ID:Z8kgPS9WO

「……祝う、か」


「瑞鶴、ほらこっち座って!」


「はいはい」

瑞鳳がぴょんぴょんと跳ね、私を呼ぶ。

子供だな、と思いながらもその席につくことにした。

30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/31(火) 23:09:30.37 ID:Z8kgPS9WO


コホン、と提督さん。


「えー、それでは雲龍型の入隊を記念したパーティを始める!!」

みんなの視線が提督さんに集まる。

「雲龍!」

「はい」

「天城!」

「はい」

「葛城!」

「はい!」

「諸君らを本日をもって、我が鎮守府着任とする」

「「「はい!!」」」

「みんなよろしく頼む」

パチパチパチ、と一斉に拍手がなる。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/31(火) 23:11:21.58 ID:Z8kgPS9WO


私は、そんな光景を遠目に見ていた。

「ちょっと……あんたも拍手!」

「……え、ああ」

瑞鳳に小声で促さられる。
言われるまで気づかなかった。

32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/31(火) 23:12:01.17 ID:Z8kgPS9WO


「……あんたいい加減にしてよね」

少し、声色が変わる。


「なによ……」

「なによ、じゃない。あんたいつまでそんな態度を取るつもり?」

「私は別に……」

「……はあ」

33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/31(火) 23:13:07.30 ID:Z8kgPS9WO

「いい?あの娘達が心配なのはわかる」

「……」

「けど、それはもう変えれられないことなの。あの娘達も覚悟を決めて――」

「そんな覚悟……、あってたまるか!!」

つい、声が荒ぶる。

「瑞鶴さん……」

秋月にも聞こえてたのだろう。心配そうな顔でこちらを見る。

34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/31(火) 23:14:27.69 ID:Z8kgPS9WO


「……」

「私は……怖いのよ」

「瑞鶴……」

「もうこれ以上……誰も失いたくないのよ。私は」

「……」

「……」


「……意気地無し」

「……へっ?」


思いもよらぬ言葉に変な声が出る。

35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/31(火) 23:15:54.43 ID:Z8kgPS9WO

「それならさ、守ればいいじゃない」

「……簡単に言ってくれるじゃない」

「もう決まったことは変えられない。けど、彼女達のために……出来ることはあるはずよ、“意気地無し“のあんたにも、ね」

「……私に出来ること?」

「あんたが……、あんたがされてきたように……、ね」

「……」

「それにあんたにはさ、私がついてるんだからね?瑞鶴?」

「瑞鳳……」

36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/31(火) 23:19:03.29 ID:Z8kgPS9WO

「わ、私も。私もいます!!」

隣を見ると、目を赤くした秋月がいた。少しだが……体が震えているのが分かる。

「ふふっ、秋月ちゃんも瑞鶴のこと好きだからねー?」

「す、好きだなんて!そんなんじゃ……」

「……秋月」

「は、はい?」

「ありがと、ね」

「!! は、はいっ!」

(ず、瑞鶴さんの笑顔…いつぶりだろう……)


37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/31(火) 23:20:26.00 ID:Z8kgPS9WO



「よし、んじゃ私行ってくるわ」

「ん、行ってきな」

もう、迷いはなくなっていた。

38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/31(火) 23:21:03.22 ID:Z8kgPS9WO

―――
―――

ひと通り挨拶が終わり、私は席に着き 姉妹で話していた。

「―――?」

姉達の話は私の耳には残らず、目線は無意識に先輩を追っていた。

「ーーぎ」

なんだか、瑞鳳さんと話してるみたいだ。

真剣な話っぽいなあ。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/31(火) 23:22:49.74 ID:Z8kgPS9WO

「ちょっと葛城、聞こえてる?」

「わっ、な、なに?」

「さっきからどうしたの?」

「……なんだ天城姉か。ううん、なんでもないわ」

「……変な葛城」

「いつもじゃない」

「雲龍姉にだけは言われたくないわ…」


40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/31(火) 23:23:40.32 ID:Z8kgPS9WO

ふと、

「雲龍型!」

馴染みのある声で呼ばれた。この声は…!

「…? 瑞鶴さん」

「!! 瑞鶴先輩!」

慌ててビシッ!と敬礼。 足が震えちゃっている。

「そんなにきちっとしなくていいわ」

困ったように笑う瑞鶴先輩。

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