【艦これ】龍驤「たりないもの」外伝

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732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/06(金) 21:33:19.13 ID:cHjmTwwaO
イラストは以前支援絵を描いて頂いた煮干さんから許可を得て使用しました。

それではまた…
733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/06(金) 21:41:01.84 ID:c70mXPa1O

もっと平和な日常みたいみたい
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/06(金) 21:50:51.80 ID:c9DPq1BGo
乙です!
ついに…一線超えたんだね…!
なんだろ娘をお嫁に出した気分だ…

あ、2冊セットの委託まだっすかね
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:45:42.25 ID:88ZmNXU00
あり得たかもしれないもう一つの事象

ーー


んぎゃおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーー!


提督「緊急事態か!?」


龍驤「なんや!?何の音や!?」


秋雲「あ〜心配しなくてもいいよ。今のはいわゆる断末魔ってやつだね〜」


龍驤「今のが誰かの声…?化け物の叫びとかそんな音やったで?」


提督「秋雲は何か知っているのか?」


秋雲「そりゃあ〜秋雲さんだもん。イズモマンこと飛鷹さんの叫びだってすぐわかるよ」


提督「イズモマン…?」


龍驤「あ、もしかして飛鷹が明日休日届け出してたのに関係してる?」


秋雲「その通り!まぁ説明するより見た方が早いだろうから一緒に飛鷹さんの部屋まで行こっか」
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:47:05.86 ID:88ZmNXU00
ーー


飛鷹「ひ、ひひ……」ヒクヒク


清霜「飛鷹さんしっかりして!」


提督「大丈夫か!?」


龍驤「飛鷹が泡吹いて倒れとる!?」


秋雲「うんうん、そりゃあショックだよね〜」


清霜「秋雲は飛鷹さんが倒れた原因が何か知ってるの!?」


秋雲「モチのロンだね」


清霜「だったら早く教えて!もし病気なんだったら霞に言って薬を…!」


秋雲「残念だけど飛鷹さんのソレは薬じゃ治んないかな」


龍驤「まさかまた精神状態が悪化したんか?」


秋雲「むしろその方がマシだったかもね〜」
737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:48:24.35 ID:88ZmNXU00
提督「飛鷹は本当に大丈夫なんだな?」


秋雲「そこまで心配するぅ?って思ったけどここはそういう鎮守府だもんね。わかった、ちゃんと説明するから」


清霜「こんなになってるのに大丈夫なの…?」


飛鷹「ひ…ひ……」


秋雲「明日は飛鷹さんにとってそれはもう大切な日だったのさ。それが原因で倒れちゃったんだよね」


龍驤「そんなに大事な用事なんか?」


清霜「私とのデートより大切なものがあるの…?」


秋雲「そーそー、デートなんかよりもずぅっっっと大切だね」


提督「飛鷹にとってそんなものが存在したのか…」
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:49:21.46 ID:88ZmNXU00
秋雲「提督達はさ、同人ってどれくらい知ってる?」


龍驤「…司令官がロリものの同人誌隠し持っとるレベルで知っとる」


提督「龍驤!?」


清霜「ぅああ…」


秋雲「それってオリジナルのやつ?」


龍驤「何かのキャラやったりオリジナルやったりしとるな」


提督「頼む…もうその辺りで……!」


清霜「こんなになってる提督って初めて見たかも…」


秋雲「ならサークルとかの話をしても大丈夫っぽいね。うん、じゃあ説明してくよ〜」
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:50:23.32 ID:88ZmNXU00
秋雲「飛鷹さんはイズモマンっていう名前で同人活動をしてたんだよね」


龍驤「飛鷹が…それは知らんかったわ」


秋雲「あ〜知らなくて当然だと思うよ。だって今回が初参加だし」


清霜「もしかして明日って…」


秋雲「そ、イズモマンのデビュー戦だったんだよね」


龍驤「デビュー戦って…そんな戦うわけと違うやろ?」


秋雲「いーやあそこは戦場だね。海の上とはまた違う…全てのオタクの為の祭典…戦場っ!」


龍驤「はぁ…」


提督「…俺は分かるぞ」ボソッ


清霜「飛鷹さんがそういう活動をしてるからって別に嫌いにならないのに。私には言って欲しかったな」


秋雲「いや〜あの内容だと言えないと思うよ」
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:51:24.70 ID:88ZmNXU00
秋雲「イズモマンさんはね、清霜の写真集で参加しようとてたんだよ」


清霜「清霜の…?そんな写真撮ったかなぁ?」


秋雲「撮られた覚えが無いってことは〜?」


龍驤「…隠し撮りか」


秋雲「その通り!」


清霜「飛鷹さん…………」


飛鷹「……」


秋雲「イズモマンさんは全年齢版と成年版の写真集、二つを用意してたんだよね〜」


提督「成年版ということは…」


秋雲「もちろんエチエチなやつ!しかもページ増量!」


清霜「……」


飛鷹「………………」
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:52:22.33 ID:88ZmNXU00
龍驤「なんとなく分かったで、その写真集に不備があって発売できへんようになったから飛鷹はあんな声出したんやな」


秋雲「う〜〜ん残念ながら外れかな。写真集は問題なく印刷されてるよ」


提督「じゃあ何が原因なんだ?」


秋雲「実はね、明日は清霜オンリーのイベントだったんだよ!」


清霜「清霜…オンリー…?」


秋雲「本や漫画や写真集。全部がぜーんぶ清霜のだけってイベント!」


龍驤「そんなんあるんやな…」
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:53:16.62 ID:88ZmNXU00
秋雲「艦娘ごとにファンはいるからねぇ。提督も確か軽空母龍驤の写真集持ってたよね?」


提督「…そうだ、あの写真集は龍驤オンリーで買った」


清霜「龍驤さんの前だよ…?」


龍驤「ごめん清霜…その写真集司令官とのプレイに使ってんねん…」


清霜「ど、どうやって!?」


龍驤「司令官がウチに入れながら写真集の方を見る…みたいな…」


秋雲「龍驤さんをオナホ替わりってプレイか!いや〜中々高レベルじゃん!」


提督「……」
龍驤「……」


清霜「うわ…ぅわあ……」
743 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:54:28.95 ID:88ZmNXU00
秋雲「…で、話を戻すけどイズモマンさんが倒れたのはそのイベントが例のウイルスで中止になったからなんだよね」


龍驤「はあぁぁ…成る程なぁ」


秋雲「さっき中止が発表されたんだよね。情報が出ると同時に参加者にメールが来て…」


提督「それを見た飛鷹があの悲鳴をあげたのか」


秋雲「イズモマンさんは死ぬほどこのイベントを楽しみにしてたからね。そりゃああんなことになるよ」


清霜「…本物がここにいるのに」


秋雲「いやいやいや!それとこれとは違うんだって、ねぇ提督?」


提督「……その通りだ」


秋雲「同人誌っていうのは欲望や妄想の塊なわけ!何をどうやっても本物とは違う!!」


飛鷹「秋雲の…言う通りよ……」
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:55:14.05 ID:88ZmNXU00
飛鷹「私は清霜に思いが通じた…でもそれが全てでは無いの…」


飛鷹「清霜のことが大好きだから…同人誌だって欲しかったの…」


清霜「喜んでいいのか凄く微妙なんだけど」


秋雲「喜んどいていいと思うよ〜」


提督「…俺はイズモマンの気持ちは分かる」


清霜「ロリコンはちょっと黙ってて」


提督「……」


龍驤「司令官…」


清霜「…とにかく、飛鷹さんとは色々話し合う必要があるってことは分かったよ」
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:56:38.55 ID:88ZmNXU00
飛鷹「ごめんなさい清霜…隠し撮りとか…色々と…」


清霜「…色々?」


飛鷹「清霜とシてる所とか…お風呂の様子とか…」


清霜「…お騒がせしてごめんなさい龍驤さん。コレはちゃんとしつけておくから」


龍驤「う、うん…」


清霜「飛鷹…イズモマン?これからたぁ〜っぷりお話…しよ?」


飛鷹「ふぁい……」

ガチャッ

龍驤「あのまま放っといてよかったんかな…」


秋雲「イズモマンさんにとってはむしろ良かったんじゃない?」
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:58:04.19 ID:88ZmNXU00
秋雲「あ、提督ぅ〜秋雲さんオススメの極上ロリもの同人誌…欲しくない?」ヒソヒソ


提督「……」


秋雲「出てくる子みーんなまな板!本物のロリコン作家が描く超大作!これで抜けないロリコンは居ないね!」ヒソヒソ


提督「……」


秋雲「龍驤さんに見つからないようにコソッとあげるから」ヒソヒソ


提督「頼む」ヒソヒソ


秋雲「流石は提督!で、その代わりと言っちゃなんだけど…」ヒソヒソ


提督「あぁ、それくらいなら…」ヒソヒソ


龍驤「……司令官がロリコンなのは知っとるけど…でも浮気しとったウチは強く言えれへんわなぁ…」


秋雲「うしししし…まいどあり…!」ヒソヒソ


提督「これくらいなら安い…それより…」ヒソヒソ


龍驤「ウチ…こんな体しとってほんま良かったわ……」


ーー
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/07(土) 19:59:05.40 ID:88ZmNXU00
清霜オンリーは中止にならなくて本当に良かったと思います



それではまた…
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/07(土) 20:02:26.52 ID:QSu1WC37o
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/07(土) 20:10:51.63 ID:6pwtjwFoo
おつおつ
これはコンマ失敗しましたわ…
皆様も出来る範囲でお気を付けを…
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/07(土) 21:53:50.55 ID:c0+MPDX8o
ナマモノネタが黙認とはなかなか罪深い世界やなって…
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:20:34.87 ID:ScHfjfj60
少し、書き込みます


ーー


Y子「お姉ちゃん元気してる?」ガチャ


富士「そこそこね」


Y子「お、こんな時間からお酒だなんてご機嫌だねぇ」


富士「やっとこれが手に入ったから少し味見しようとしてただけよ。貴女もどう?」



Y子「あたしはワイン派だからね、お姉ちゃんが楽しみなよ」



富士「ならそうさせてもらうわ」
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:22:02.66 ID:ScHfjfj60
Y子「しかしお姉ちゃんってほんと絵に描いたように和風だよね。抹茶が趣味で日本酒好きでしょ?」


富士「私は生まれながらにしてそういう存在なのよ。貴女が捨てた名前が世界の破滅を望むように」


Y子「まぁねぇ…そうなんだけどさ」ジーッ


富士「…何かしら?」


Y子「お姉ちゃんの名前は富士。生まれながらにして大いなる力を持ってる」


富士「えぇ…」
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:23:26.24 ID:ScHfjfj60
Y子「富士というのはこの国にとって重要な名前であり重要な存在。山の名前にもなってるし」


富士「そんな当たり前のことを今更どうしたの?」


Y子「この国の…いいや、全ての艦娘の上にいるような存在のお姉ちゃんに聞きたいことがあるんだよね」


富士「何かしら?」


Y子「お姉ちゃんの出身地ってどこ?」


富士「…」


Y子「…」


富士「……」


Y子「……」


富士「………」


Y子「………」
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:25:12.92 ID:ScHfjfj60
Y子「ヘーイ富士、アーユーフロム?」


富士「…」


Y子「おー姉ーちゃーんー?」


富士「………」


富士「……」


富士「…」


富士「…イギリス」ボソッ


Y子「ダウト!はいダーウートーーー!」


富士「ちょっと待って…」


Y子「待ちません〜〜!エセジャパニーズのお姉ちゃんに弁明の余地はありませんーーーー!」


富士「違う、違うのよ…」
755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:26:56.72 ID:ScHfjfj60
Y子「そんなさ、わざとらしく和服なんか着ちゃってなんなの?ただの日本かぶれのイギリス人じゃん!」


富士「違うの……」


Y子「正直に言ってみなよ、抹茶なんかより紅茶の方が好きなんでしょ、ん?」


富士「そうじゃないの…」


Y子「あたし知ってるからね、金剛と紅茶会みたいなのちょくちょくしてるでしょ?」


富士「あれは紅茶会じゃなくてただのアフタヌーンティーで…それに金剛だけじゃなくて他の艦娘との交流もあるから…」


Y子「アフタヌーンティーって!あたし何も言ってないのに。こんなの自白と一緒じゃん!」


富士「違うの…私の話を聞いて…」
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:28:24.16 ID:ScHfjfj60
富士「私は生まれる前から名前が決まっていたの…だから私は富士を名乗れるし、そういう存在でいられるの…」


Y子「ふーん。まぁでもイギリス生まれなのには変わりないってことだね」


富士「……」


Y子「別に問題無いならさ、隠さなくても良かったんじゃない?」


富士「こうやって茶化されるのが嫌だったのよ…」


Y子「きひひひ!それが嫌だからずっと黙ってたのにね!」


富士「本編でこんなことが知られたら、どうなるかなんて分かりきってたもの…」


Y子「でも歴史というかその辺の知識が豊富な人だったらとっくに知ってたんじゃない?」


富士「……」


Y子「でもさ、こっちの歴史と四つの壁の向こう側の歴史とじゃ若干違ってるから、それを言い訳にはできたかもね」
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:29:49.88 ID:ScHfjfj60
Y子「お姉ちゃんの姉というか、先輩というか先人的なのって何?」


富士「…トラファルガー、それにナイル」


Y子「そこ。そこが大きく違う。あたしの知ってる名前が出てこない」


Y子「お姉ちゃんのルーツはロイヤル・サブリン改。腹違いの妹を含めるなら七人の妹が居る姉に当たる、そんな船を元に作られたはずなんだよ」


富士「…聞いたこともない名前ね」


Y子「あたしが知っててお姉ちゃんが知らない。ということは?」


富士「扉の影響…」


Y子「間違いなくそうだろうね」
758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:30:45.21 ID:ScHfjfj60
富士「この世界には貴女が言っている船が存在しない…その結果どうにかなったの?」


Y子「結果は変わらない。けどその過程が違ってしまってる」
富士「…貴女はどう思ってるの?」


Y子「あたしという存在を出現させるための帳尻会わせ。エンプレス・オブ・インディアがあたしの元だなんてカッコ悪いもん」


富士「その名前は分からないけど、確かに貴女らしくはないわね」


Y子「Yというものが存在する為には、ロイヤル・サブリン級が邪魔だった…か」
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:31:28.83 ID:ScHfjfj60
富士「貴女の名は富士型戦艦二番艦にも付けられている。本来なら私のように存在していてもおかしくないはず」


Y子「そうならなかったのはあたしの名前が付いた兵器が世界を滅ぼすから。だからあたしの名前にはそういう因果が廻るようになってしまった」


富士「……」


Y子「お姉ちゃんの名前は有難いと崇められ、信仰の対象にまでなってる。こんなのどうやっても悪い因果なんか廻りっこないもんね」
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:33:48.29 ID:ScHfjfj60
Y子「あたしの本体はなんでそこに気付かなかったんだろう。それが分かっていればお姉ちゃんと手を取り合うって結末もあったかもしれないのに」


富士「世界が多少変わっても、力に溺れてしまうということには変わりが無いのね…」


Y子「…色々とごめんねお姉ちゃん。あたしが名前を捨てる前にやったことは、あたしもやったことになるし」


富士「なんとも思ってないわ。こうやって可愛い妹とお喋りできているんだもの」


Y子「…やっぱりあたしも飲む。コップとか何か持ってくるからちょっと待ってて」


富士「取りに行かなくても…ほら、ここにあるわ」スッ
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:35:37.65 ID:ScHfjfj60
Y子「あたしはこの名前を貰ってからまだ少ししか経ってない。だから知らないこともある」


Y子「そんなあたしに、これから色々と教えて欲しいな」


富士「ええ勿論よ」


Y子「…お姉ちゃん」


富士「分かってるわ。でもその前に」


Y子「うん」


富士、Y子「「…乾杯」」


ーー
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/15(日) 20:36:40.32 ID:ScHfjfj60
富士とY子しか出ないなら外伝でやるべきですね


それでは、また…
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/15(日) 20:57:42.16 ID:9OV3Iwoyo
おつおつ
…つまり龍驤みたいな出身地さgうわなにをするやめ
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/15(日) 20:57:59.73 ID:r/JGbOwJo
もっとみたいみたい
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/22(日) 02:29:28.95 ID:H+/CbiUoO
Each



「今日から晴れて鎮守府に所属や長かった訓練所暮らしとも、ようやくおさらばできて嬉しい限りやで」

ガタンゴトン

「あんな閉塞的な所におったらストレスが溜まってしゃあないわ。有給休暇が貯まり次第に全部消化したろ!」



◯「………」

「向かいに座っとる龍驤はなんか雰囲気が軽そうやな。同じ龍驤やからウチには分かるで」



◯「ふぁ…」

「ここは電車の中やのにあんな大あくびしよってしゃあない奴やな」

ガタンゴトン

「電車…そういえばウチはなんでここに座っとるんや?」



「他にお客さんもおらんようやし一体どうなっとるんやろ?」


ゴーーーー

「あ、トンネルに入るんか」




ガタンゴトンガタンゴトン
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/22(日) 02:32:05.03 ID:H+/CbiUoO
Rapid



◯「ふぁぁほんまダルいわ。なんでウチが朝から出やなあかんねん」



◯「鎮守府での訓練とか出撃がこんなにチョロいとは思わんかったわ。これやと訓練所の方がしんどかったで」



◯「あれだけ手抜いても怒られへんとはホンマにええ鎮守府に恵まれたわ」

ガタンゴトン

×「うんええで、ほな待ち合わせはいつものホテルでな

◯「あの龍驤なんちゅう電話してんねん。一応ここは公共の場やで」



×「よしほな次はコイツに……もしもし」

◯「二股かいな、しかも同じ日に違う相手と会うとかアイツ終わっとるな」



◯「でもこんな貧相な体を好きになってくれるマニアは貴重や、キープしときたいって気持ちは分からんでもないわ」

ゴーーーー

◯「トンネル…そもそもウチはどこに向かってるんやったか?」




ガタンガタン、ガタンガタン
767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/22(日) 02:35:27.78 ID:H+/CbiUoO
Limited



×「よっしゃこれで次の休みは朝から晩までハメ放題や、今から楽しみやわぁ」



×「もうじき田舎に異動になるし、遊び倒してからやないと損やからね」



×「あのクソ司令官に色仕掛けが通用しとったらウチは異動せずに済んだのに。こればっかりはしゃあないか」



×「こんな楽しいことを知ってしまったからには、もう止めるなんて考えられへんからね」

ガタンガタン

×「ウチはなんでこの電車に乗ってるんや。目の前に不快なもんが座っとるし次の駅で降りたろ」



龍驤「……」

×「なんやねんあの龍驤ガイジとか終わっとるやろ。さっさと解体されろや」



×「左腕と左脚が無いとか生きとる意味ないやろ、死んだ方が社会の為やっていうのがわからんのか」



龍驤「………」

×「今の聞こえてたか。こっち見んなよキモいねん」



×「ほんま気分悪いわさっさと着けへんのか」

ゴーーーー

×「ここにきてトンネルとか最悪や…」




ガタンゴトン…ガタンゴトン…
768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/22(日) 02:39:21.02 ID:H+/CbiUoO
Ordinary



龍驤「一体何が起こってるんや、向かいに座っとったのは昔のウチと違うかったか?」



龍驤「龍驤なんか他にもおるけどアイツは間違いなくウチや」




龍驤「あ、え、ウチいつの間にこっちに座っとるん?」



龍驤「向かいの龍驤がおった所にウチが座って、元々ウチがおった所には…」



□「………」

龍驤「え、ええ?」

ガタンゴトン……

龍驤「あの右腕は義手で右脚も作りもんや」



□「………」

龍驤「なあアンタなんでそんな死んだような目をしてんの?」




□「………」

龍驤「ウチが言うてること聞こえてるなら返事してくれへん?」



□「………」

龍驤「何か答えてや嫌なこと想像してしまうやろ」



□「………」

龍驤「右側はいつケガした?」



□「………」

龍驤「どれくらい前から四肢を欠損してんの?」




□「………」

龍驤「アンタは……未来のウチなんか?」




□「………」

ゴーーーー

龍驤「トンネル…。ああそうかウチは…」




ガタン…ゴトン…ガタン…ゴトン…
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/22(日) 02:41:01.39 ID:H+/CbiUoO
Slowly



□「………」



□「………」



□「………」

ガタン…ゴトン…

□「………」



□「………」



□「………」



□「………」



□「………」



□「………」



□「………」

ゴーーーー

□「………」





ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン
ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン
ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/22(日) 02:44:13.61 ID:H+/CbiUoO
ガタンゴトン



・「あれ、いつの間に電車に乗ってたんだろ。無意識に乗ってたらちょっと怖いな」



・「今日は何曜日だっけ、休みだったら最悪だ…」

ガタンゴトン

□「………」

・「あれ向かいに座ってるのって」



□「………」







・「お**さんどうしてそんな所にいるの?」



Forwarding
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/22(日) 02:48:17.47 ID:H+/CbiUoO
End point?



End point does not come



Sin is never forgiven



From y to r...
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/22(日) 10:53:32.92 ID:qceKnl4Fo
トンネルは扉で世界を渡ってることの暗喩なのかな…?
四肢を欠損してる□は違う世界線の龍驤で・はその龍驤の子?
y to r はyou to relatedであなたから血縁へ?

あの世界で罪を償えない、償おうとしないままだったら龍驤から子へと罪は受け継がれてたってことなのかな

あの世界のその後で復帰した龍驤が死傷して罪は残ったまま子に受け継がれたとかは嫌だなぁ
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/22(日) 12:57:18.88 ID:Ff7xbej9o
単純にYの人からから龍驤へじゃないの?
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/22(日) 13:08:40.95 ID:qceKnl4Fo
各駅、快速、特急、普通、鈍行ときて最後に輸送で終点は来ない罪は許されないって語り
だから輸送列車は乗ってる人から乗ってる人に罪が受け渡されるのかなと
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/03/22(日) 18:34:18.89 ID:SkwEfY560
◯、×は昔の龍驤じゃないの?
扉が開いて世界が変わったから性格も変わった?

あと名無しと◯、◯と×みたいに2人の龍驤が出てきてたのに□の時は他の龍驤が居ないのもなにかあるのか
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/03/25(水) 02:01:37.42 ID:RueD5HeKO
終わり?



そんなの無いよ



自分のしたことくらいわかるでしょ



きひ、きひひひひ………
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/25(水) 07:44:06.27 ID:Q/hNIjW+o
何故Yさんはそこまで許さないのだろうか
、それともYさん以上の何かが許さないのだろうか
Yさんが落ち度のある人を死ぬまで(もしくは死んだ後も)つつき続けるだけの性悪女とは思えぬ
自責の念に駆られて死を選ばせたら魂が貰えるみたいな、キリスト教的悪魔に近い存在なのかね
名前を呼んであげたら嬉しくなってるあたり、信仰も関わってるだろうし
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/25(水) 12:49:23.41 ID:18FVSQ1NO
そもそも血族に受け継がれてその後の運命を左右するような許されない罪ってなんだんだろう

社会的に罪を裁かれて罰を受けるのは法があってその基準に則っているから

龍驤があの子を結果的に見殺しにしたことが、あの子の家族と和解しても償うことができず子供にまで受け継がれる罪なのだとすれば
海月姫だって深海棲艦として誰かを殺めた罪があの子に影響を及ぼしたとも取れるのでは
父親の深海提督だって人間側と深海側の提督として戦闘でひとを殺めるを指示を出してきてる

人や艦娘が戦闘で他人(人や深海棲艦)を殺めたりするのは罪にならない?
タシュケントみたいに私利私欲からくる仕事で殺めるのは罪になる?
日常生活の中で人が人を殺すのは罪になる?
深海棲艦が人を殺すのは罪にならない?
どのような存在がどの生命までを殺めるのはセーフ?
その境界線は何がどう決めている?

一律で間接的にでも生命を殺めることが罪であれば罪のない存在なんていない
動物はどんな存在であれ自分のために他の命を奪って存在しているから
そこに時代によって変わる人の倫理感が当てはまるのであれば、それは世界の仕組みとしての罪ではなく、ただ誰かが主観で罰を与えているだけなのでは
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/25(水) 13:24:10.39 ID:18FVSQ1NO
だから罪ではなくて誰かにかけられた呪いといったほうがしっくりくる
もしくは自分自身が作り出した許されないという幻想に振り回されてる
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/26(木) 21:54:33.89 ID:/Juigski0
「きひひ、何か色々と騒がしいみたいだけど、そういうのは大歓迎だから」


「一応言っとくと龍驤についてとかは簡単にネタバレしないよ。あたしは軽い女じゃないし」


「でも本編が終わったっていうのに、こんな所を見てる物好きには少しくらいサービスしないとね」


「よーく考えてるみたいだね。けどそれは的を得て無いって所かな」


「言ってることは事実、ただそれだけ。答えが証明結果だというなら、答えに必要な仮定や式を導けていない」


「でもこの答えにたどり着くことは不可能だと思うよ。本編に種は蒔いてあるけど小さいし、龍驤の過去について誰も当てられなかったんだから」


「龍驤のときはそれなにり種は蒔いてたって自覚はあるんだよ?なんであそこまで提督に依存するのか…いやぁ一人くらい当てられるかと思ったんだけどな」


「ヒントはこれくらいかな。どうしても知りたいっていうなら教えてあげなくもないけど、そんなのつまんないでしょ?」



「こんなあたしに教えてくれって…きひひひ!あたしを拒んだお前らがそんなこと言うわけないもんね!」


「ま、精々頑張ってよ。それじゃあね〜」
781 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/26(木) 22:00:30.74 ID:sOLl0YuWo
やーん、Y様のいけずぅ
782 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/26(木) 22:32:12.52 ID:dCYw0gAWO
自分のしたこと、だから過去の龍驤の行動に関わってるよね
海月姫の子供の件はすでに語られてるからこれではない
そんでもって本編では意図的な「殺し」に関わってるのは罰が降りかかる
あとYさんには名前が重要

龍驤が男遊びしてた時に孕んで中絶した名もなき水子かな
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/26(木) 22:46:35.73 ID:9vYoo7URO
いや中絶疑惑はあったけど結局妊娠はしてないはず
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/03(日) 12:07:59.45 ID:51wVxtPAo
続き待ってるぞぉ〜
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/03(日) 12:42:23.88 ID:JdI97Rweo
Yさんの名前呼んだら続き来ないかな
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/03(日) 12:44:51.84 ID:dJ/V9LUqO
書きたいものと方向が違うんだろうけどやさしい世界が見たいんだよなぁ
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/10(日) 23:25:39.65 ID:TDpnU3nDO
>>663から
 
 
球体内部から露出した八島と目が合った


そう理解した瞬間私は反射的に砲台の射手席から飛び出していた


その直後に砲台が爆発、私は吹き飛ばされ危うく要塞から落下する所を島風が受け止めてくれた


島風「大丈夫!?…いったい何が…」


【そんな…切り札が…これじゃあ…】


狼狽する富士さんの声が聞こえた。そして…


八島『ようやく脱出できたよ。ありがとうねぇ』


まだ燃えている砲台の残骸の上にその火を纏うように彼女は居た


八島『ふん…あたしも慢心してたって事かな、あんな死に損ないの亡者共に動きを抑えられるなんてねぇ』


島風「やあぁッ!」


島風が飛び蹴りを放つもあっさりと叩き落とされてしまう


島風「ぎゃん!」


「島風!」


八島『邪魔だよ、雑魚が』


そこに音も無く背後から奇襲を仕掛ける早霜さん、しかしそれも防がれカウンターを食らってしまう
788 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:28:03.97 ID:TDpnU3nDO
 
 
早霜「がふっ…」


八島『不意討ちしか能が無いのかな?来るって解ってればそうそう食らわないよ』


「もう止めてください!」


私は砲を八島に向けて構える、それを見ても八島は全く動じる気配は無い。私の力では威嚇にもならないようだった


八島『さぁて…何を狙ってたのかは知らないけどこれでチェックメイトだねぇ』


「っ…」


八島『おっと、ここでただ消してしまってもつまらないか…。ねぇ朝潮、ちょっとお話しようか』


「何を…」


倒れた島風を踏みつけにし、早霜さんを横目で見ながらそう言って笑う。早霜さんはそれを見て歯噛みをする。下手な動きをすれは島風は無事では済まないだろう


八島『朝潮?あんたが今ここに居る理由、消える前に教えてあげる』


ドクン


私がここに居る理由…それは私が売り飛ばされ、そして人を殺したから


八島『きひ、そうだねぇ。ならそもそもどうしてそんな事になったと思う?』


ドクン


聞いてはいけない、そんな予感がする。しかしここで拒否しても島風は殺される。結局はその時が早まるだけだとしても迂闊な事は出来ない
789 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:29:36.59 ID:TDpnU3nDO
 
 
八島『あの人間…島風提督だっけ?安心していいよ。あいつは正しく善良な人間だった』


「…」


それは解る。そうでなければあの五月雨や島風だってあそこまで慕ったりはしない。今現在の彼こそが本来の島風提督なのだろう


八島『ならどうして朝潮を始め艦娘を売り飛ばすなんて悪事に手を染めたのかなぁ?』


島風「…っ!」


島風が泣きそうな顔になる。島風提督がそうした原因となったのは自分のせいだと責任を感じているのは知っていた


早霜「…その口振りだとまるで貴女がそうさせたと言っているように聞こえるわね」


八島『きひひひ!ご名答!』


「は…?」


八島『四肢を失った島風を救う為にはお金が必要だった。艦娘を買いたがってる人間も居た。でもあの人間は最初は踏み止まってた』


島風「え…」


八島『だからさぁ…あたしが背中を押してあげたのさ!魔が差したってやつみたいにさぁ!いや神の導きかな?』


「……どうして…」


島風「こいつが…?」


八島『何事も無く丸く収まるなんて観客は納得しないんだよ!それをあいつは邪魔ばっかりしてさぁ!』
790 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:31:12.58 ID:TDpnU3nDO
 
 
「邪魔…?もしかして…」


八島『あたしから力を奪っただけじゃ飽き足らず、あたしのシナリオにケチばっかりつけてくるようになった!忌々しい!』


「貴女は…」


八島『あぁでもあれは良かった。あの深海棲艦…潜水新棲姫。あいつが頭をぶち抜かれた時…あの艦娘の絶望の叫び…きひひひ』


「な…!」


八島『…なのにあそこでもフォローのつもりか知らないけど救いやがった…。何度も何度も何度も何度もあたしが決定した運命を覆してきやがって…!』


「…私がここに居る理由はじゃあ…」


八島『あ?あぁ…あんたもあのままだったらその存在自体フェードアウトしてただろうねぇ。たまーに話には上ってもいずれは忘れ去られていくだけの過去に』


忘れ去られて…司令官が私を忘れる…


八島『それをあいつは…ここに救い上げた。まぁそれはそれで?また新しい絶望を考える楽しみが出来たからいいけどさぁ』


そうして八島は私に向かって腕を伸ばす。その手のひらに凶悪な力が充填されていくのを感じる


八島『今回の絶望はあいつに。苦労して救った朝潮が敢えなく殺される。あいつが見たのは消え行く朝潮の魂、生まれ変わる事も最早不可能と…きひ』


「…く」

791 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:33:52.76 ID:TDpnU3nDO
 
 
島風「ねぇあんた」


八島『あ?』


背後から声を掛けられ振り向いた八島。その後頭部に砲弾が吸い込まれていくのが妙にスローモーションで見えた


ドゴォン!


八島は完全に不意を突かれていた。私や島風、早霜さんには全く付け入る隙は無かった。しかしそのどれとも違う方向からの奇襲だった


ドゴォン!ドォン!


更に別の方向からも砲撃、対してダメージは与えられてはいないようだが爆発自体は八島の動きを阻害している


「あれは…連装砲ちゃん?島風?」


島風の連装砲ちゃんが八島に対して十字放火を仕掛けている。そういえば島風は接近戦ばかりで武装を出してはいなかった。違う、既に出していたのだ


ヒュンヒュンヒュン


そこに風を切る音がして何かが宙を走る


「あれは…糸?…あっ」


糸が八島の足に巻き付き更に自由を奪っていく。早霜さんの使っていたあの糸だった


島風「切り札はここぞで使うものだよ!」


早霜「朝潮!今しか無いわ!」


「っ!…はい!」

792 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:37:02.06 ID:TDpnU3nDO

 
私は再び砲を構え、八島に向ける。威嚇にもならない私の砲、避けるまでもない私の攻撃


八島『雑魚共が姑息な真似を!そんな攻撃があたしに効くか!弾が尽きた時がお前らの命が尽きる時だ!』


そして私は撃った。私達の攻撃は八島には通じない。奇襲により多少のダメージは与えられてもそこまでだ。だけど―――


ギュウウウウン!


八島『な!?』


八島を中心にまるでブラックホールのような黒い力場が発生し八島を拘束した


八島『何だこれは!ぐぅう!』


「…思っていました」


八島『あぁ!?』


「富士さんもそうですが貴女も対人戦には慣れていませんね?」


八島『は?あたしが…あたしがどれだけの人間や艦娘を殺したと思ってる!』


「それは圧倒的な火力や攻撃範囲で蹂躙するだけのものですよね、二人の戦い方を見ていて解りました」


早霜「確かに単体としてもその強さは私達では敵わない…だけど割りと隙は見付けられていたわ」


「だから陽動やフェイントには引っ掛かり易いと思いました。だから…」


八島がずっとこちらを観察しているのには気付いていた。この切り札もただ普通に使っては防がれるか避けられてしまう可能性が高かった
793 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:39:54.96 ID:TDpnU3nDO
 
 
だから砲台には自前の砲弾をあたかも切り札のように装填。そして実際には無力な砲台を破壊させ自らの勝ちを確信した八島は必ず油断すると踏んだのだ


八島『このぉぉぉ!艦娘ごときがあたしを!がぁぁぁ!何でだ!何で動けない!?』


【―――その弾は貴女にも抵抗は不可能よ】


「富士さん」


少しは休息が取れたのか顔色が幾分良くなっている富士さんが私達の後ろに立っていた


八島『こいつは何なんだ!愚姉!』


【―――それはあの人が作ったものよ】


八島『!!!』


【…と言っても持ち込んだのは設計図だけだったけど。み…とある協力者に設計図を渡して頼んでみたら見事に再現してくれた。紛れも無く天才ねあの子】


「結局何だったんですか?あの弾は。当てさえすればとは聞いていましたが…」


【未来…過去かしら?とにかく今の世界には存在しない技術により作られた特殊砲弾…対象をその空間ごと抉り取り別次元に放逐する】


島風「SFの武器みたいな?」


【そうね、だけどその世界でも正式採用はされなかったけれど、砲弾ひとつに莫大なコストが掛かりすぎると計画は凍結されたわ。幾つかの試作品は封印され、そして設計図だけが残った】


「あの…抵抗出来ないというのは…」

794 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:46:39.62 ID:TDpnU3nDO
 
 
【…その弾の設計者は…艦娘、富士の要塞艤装を…そして空中要塞八島を作った、その他にも数々のこの世界ではあり得ない兵器を作った人物…その因果はその名を持つ者にこそ効く】


八島『…』


その人物の話が出ている間の八島はこれまでとは比べ物にならない憎悪と、そして僅かに恐怖を浮かべていた


【今の私達には貴女は倒せない、だからこうして追い返す。だけどここには並大抵では来る事は出来ない。例え貴女でも】


八島『…時間稼ぎのつもりか』


【そうね…今は無理だけどいずれは対抗出来るようになって見せるわ】


八島『はっ…、いいよ。今回はあたしの敗けだ、認めてあげる。でも次は無い。あたしも今度は準備してお前らを消しに行ってやる』


【…簡単にはいかないわよ】


八島『…だけど置き土産くらいはしていくよ』


「何を…」


八島『忘れるな、世界はあたし達を―――』


そうして八島はこの世界から放逐されたのだった
795 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:49:57.86 ID:TDpnU3nDO
 
 
それから少ししてボロボロになったY子さんが戻って来た。八島が居なくなった事により、空中要塞もあの死者の群れも消えたようだった


『いやぁ…死ぬかと思ったよ…数の暴力って怖いねぇ』


見た目はボロボロだが割りと元気そうで安心した


再び拠点となる家を修復する作業に富士さんが取り掛かるが消耗もあってあまり進んではいない。しばらくは野宿になるだろう


「あの…Y子さん」


『無事で良かったよ朝ちゃん。頑張ってくれたみたいで。…その…ありがとね、身内というか同一存在の不始末というか…』


「聞きました…力の事…」


『…』


その言葉を聞いたY子さんは俯いて私と目を合わせようとしない。出来ないのか


「聞かせてください」


『…あいつが本格的に干渉を始めたのが何時かはあたしは知らない、あたしという存在が生まれたのはそれほど前じゃないから』


『気付いたらあたしだった、そんな感じで、もう一人のあたしが色々やってるのを見てるだけだった』


『あいつは楽しそうだった。人の運命を狂わせたり、争いを助長したり、悲劇的な事を好んで行っていた』


『だけどあたしにはそれの何処が楽しいのか解らなかった。だから…』


『あいつが干渉した結果を更に干渉して覆そうとした。だけど起こった事を無かった事には出来ないから本当に難しかった』
796 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:54:42.97 ID:TDpnU3nDO

 
 
『そしたらあいつは激怒してあたしを消そうとした、あたしは消えたくなかった』


『だから…』


機械的に感情を殺し話すY子さん。まるで懺悔をしているようで


「これまであった事で良い結果になったのはY子さんが?」


『全部じゃないよ…もちろん悪い結果の全てにあいつが関わってる訳でもない。そもそも個人である以上全てを関知なんて出来やしないんだ』


「私が…売られたのは」


『っ…ごめんなさい!』


土下座でもしそうな勢いで謝るY子さんを遮り


「それをしたのはあっちであって貴女ではないんですよね?」


『それは…そうだけど…』


「今更…私にY子さんを憎めとでも言うんですか?それこそ怒りますよ」


『うぅ…』


彼女は決して言わないがおそらくはこれまで何度も救われているのだ、私だけではなく、消えてしまうはずだった漣さんや、新棲姫さん、それ以外にも沢山


それでも溢れてしまう。一人の手のひらでは全ては救えない。例え運命に干渉出来てもそれは変わらないのだ


そしてそれ以上にこの世界は残酷なのだと私達は知っている


仮にそんな力が存在しなかったとしてもこの世界は私達を―――


この世界はあたし達を


―――憎んでいる
797 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/10(日) 23:56:34.66 ID:TDpnU3nDO
ここまで
ごめん…なさ…
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/11(月) 00:06:27.08 ID:Kx99jNGDo
おかえりぃ!
こんな時だけど光明が…後光が…
Y子さん関係の深堀本当に助かります、ありがとう!
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/11(月) 00:17:40.76 ID:+oLAMpVuO
お久しぶりですね…
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/18(月) 09:07:21.08 ID:IdvMNZ3tO
こっちに書くのもあれだけど、本線のあれは流れ的に最後にアレをさせるのが狙いなのかしら
どちらにせよオチ的には少なくともつながるし、アレを起こして、というか起こしてしまうことでソイツが出てきて……が狙いかな?どうやっても今のままじゃ無視できないし
作者もバッドエンド普通に書く人なのでどうともいえないけど

何のことかまったく分かりませんがね
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/18(月) 09:52:52.12 ID:AXzbe2S1o
こちらで書かれた短編の登場人物である「・」がかすみであるとしたら、
霞の死はおそらく何をしても防げなかった?
「□」に龍驤がなってしまうのは規定路線?
他と違って「□」と同時に他の個体が存在しないのは生きていないから?
「トンネル」と「罪」が何を示しているのかが分からん
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/18(月) 10:19:50.59 ID:70j+KmSRO
あーそういうことね完全に理解した(わかってない)

今の二人合わせて十全の力でないようなので出来るか気になるが
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 01:31:25.65 ID:/MxgXHWUo
本編でもう一度アイツを呼ぶ必要があるんかな
804 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 19:53:12.69 ID:V8lm4V7DO
>>796から
 
 
八島との戦いからしばらくして


修復された部屋で私達はまたいつもの様にくつろいでいた


あれからも現世では色々な事があった


反大本営派と大本営との対立が本格化する中で鉄の海域に鎮座していた繭がついに孵化した


それは世界中の深海棲艦のほとんどを吸収して生まれた深海棲艦の完全体であるという


「新棲姫さん…」


新棲姫「なんだ?」


「深海棲艦って虫なんですか?糸出したり繭から産まれたり…」


私にはたまに失言をする癖があるのを忘れていた。涙目の新棲姫さんにすごい睨まれてしまった…


そしてその完全体…現世では成虫と呼称されている辺りやっぱり


新棲姫「あ"?」


…その完全体にはおかしな事に一人の少女の人格が宿っていた。かつて龍驤さんが助けられなかった人間と深海棲艦との間に産まれた少女が


何故陸地で亡くなったはずの少女の人格が遠く離れた海の繭に宿っていたのか…。新棲姫さんはあくまでも仮説だがと前置きをして


新棲姫「件の少女は電車に引かれバラバラになった。もしかするとそこに大本営か組織が関わっていたのかもしれない」


「まさか…遺体の一部を回収して…?」


新棲姫「何らかの実験にそれが使われ、別の深海棲艦となっていて、それが繭に吸収されたという可能性だがどうだろうな」

805 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 19:54:46.83 ID:V8lm4V7DO
 
 
そして完全体の脅威を感じた富士さんがついに現界する決意を固めた


【あれほどの力を持った存在をあの子が放っておくとは考えられない。奪われる前に何とかしないとならないわ】


『お姉ちゃん…気をつけて、多分あいつはそれも狙って…』


【えぇ…私がそう考え動くのを待っているのかもしれないわね。だけど動かなければ結局はあの成虫は奪われる、小さな女の子の魂なんてあの子にとっては何の障害にもならない】


「富士さん…」


【…また、会いましょう】


そう言って私達一人一人を抱き締めてから富士さんは現世へと向かうのだった


そしてその懸念は見事に的中してしまっていた


漣さんの協力で建造ドックを作動させ艦娘、富士を完成させようとしている最中、それは来た


よりにもよって今現在現世で一二を争う強さを誇る武蔵さんの身体を乗っ取った八島が


「間に合わなかった…!」


新棲姫「あのままドックを破壊されたら富士は…」


『漣!!!』


突然Y子さんが声を張り上げた。その声が届いたのかどうか武蔵さんに倒されていた漣さんが僅かに反応した


『無理矢理だけど材料はそろってる!お願い!』

806 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 19:56:19.24 ID:V8lm4V7DO
 
 
「Y子さん…?」


ガコン


ギギィィィィ…


何処かで扉が開く様な音が聞こえた


画面向こうの武蔵さん…八島が苦しみの声を上げる。その身体が薄れて…いや、武蔵さんの中に居る八島が薄れていっているのが判る


その八島が何かをしようと手を翳す





『させるか!』


私達には何をしているのかまるで判らなかったが、画面向こうの八島がこちらを、Y子さんを睨み付けている


―――くそっ、邪魔しやがって―――


そう言っている様な気がした


そして八島の気配が消えていく


何処からか光が漏れているのか画面向こうの様子がよく見えなくなっていく


『…お姉ちゃん』


新棲姫「そうか…あの光が例の扉か…私達には変化は無いようだが」


『…あの扉は現世の存在にしか影響は無いよ。少なくともそういう願いをわざわざしない限りは』


そして世界は一部書き変わった

807 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 19:58:03.41 ID:V8lm4V7DO
 
 
艦娘には富士守りという物があり、その守りを身に付けた艦娘は旗艦である限り沈む事は無いという


荷電粒子砲八島は消え、代わりに核弾頭に置き換わっていた。それも充分脅威ではあるのだが


「富士さんは…」


『まだ…完全には消えてない…でも何処に居るのかまでは…』


―――また会いましょう


富士さんはそう言ったのだ、嘘にしないでと私は願った


その後、漣さんとまるゆさんの働きにより核は停止され、いよいよ大本営も後が無くなった


そして繭から生まれた成虫に少女の人格が宿っている事に気付いた龍驤さんが接触、なんと和解する事に成功した


深海海月姫も姿が変わってしまったとはいえ子供が戻って来た事で態度を軟化させているようだった


これで龍驤さんの過去も精算されたかに見えたが、少女と再会した龍驤さんは償いにと鎮守府を出てその子の側に着くようになってしまった


「また…」


新棲姫「しかも今度は戻るつもりが無いと来た。全く…漣とタメを張るトラブルメーカーだな」


呂500「あの子の事は今の龍驤さんの原点です…簡単にはいかないんですって…」


早霜「罪を…償うか…でも」


「えぇ、今居る人達を蔑ろにしてまでする事ではありませんね…」
808 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 20:00:01.53 ID:V8lm4V7DO
 
 
しかし龍驤さんにとっては再会してしまった以上ごめんなさい、許します、では済まないのだろう


そして龍驤さんに会えない期間が続く中司令官は心労から倒れてしまう。そんな司令官を支えようと必死な朝霜さんも精神に変調をきたし足を切り落としてしまった


そんな状況に漣さんは激昂し、あちらの新棲姫さんを伴って龍驤さんを殺そうとする


新棲姫「間違いだとは思う。だがワタシが拒否したら漣は一人でいってしまうだろうな…。と言っても説得する暇も無い。こういう時の漣は行動が早いからな…」


ならせめて側に居られるようにと協力するのは解ると悲しそうにこちらの新棲姫さんは言った


しかしやはり漣さんは冷静さを欠いていたようだった。龍驤さんの側にはすっかり懐いた完全体が居る、あっさりと気絶させられてしまう


漣さんから状況を聞いた龍驤さんはついに司令官の元へ帰り、ようやく元の鞘へと戻ったようだった


病院にて追い付いて来た漣さんの殺さずに済んだという表情が忘れられない、誰よりも嫌っていて、それでも決してそれだけではないという複雑な感情を垣間見た気がした


そして大本営は荷電粒子砲を失い、切り札であった信濃さんのクローンも完全体に全滅させられ瓦解、新大本営として幹部さんが指揮を執っている


ようやく状況が落ち着き始めた。司令官の横須賀鎮守府への栄転の話が出ていて司令官は悩んでいるようだった


だが…困難はまだ終わってはいなかった

809 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 20:02:15.43 ID:V8lm4V7DO
 
 
整備士さんの所の深海吹雪が暴走、拘束されていた旧大本営の艦娘を脱走させたのだ


しかもその艦娘達は


「霧の艦隊…?話には聞いた事はありますが実在していたんですか?」


レ級さんのような超重力砲、攻撃を反射するというバリアを使うらしいが私は詳しくは知らない


新棲姫「…常々おかしいと思っていたが旧大本営の技術レベルはアンバランス過ぎるな」


「え?」


新棲姫「艦娘自体も大概だが、使う武器そのものは人類がかつて使っていた兵器の延長に過ぎない」


新棲姫「かと思えばSFの世界かという程のトンデモ兵器を隠していたりどうもな…」


新棲姫さんにも確信は無いのか歯切れ悪く続ける


新棲姫「それにだ、仮に扉の力だとしても何も無い所から兵器が出てきたりはしない。これまで話にも上らなかったが設計者は誰だ?それに組織の傀儡は元々は整備士だったらしいが今は誰だ?」


ひとしきり疑問を吐き出して満足したのか新棲姫さんは黙りこみ再び思索に耽った


『…』


その間Y子さんが苦し気な表情をしていたのが印象に残ったが私では何を聞けばいいのか解らず沈黙するしかなかった

810 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 20:04:45.63 ID:V8lm4V7DO
 
 
脱走した霧の艦娘というのはどうも不完全なようで超重力砲は使えないらしかった。それでも反射するフィールドだけでも充分脅威だ。何せこちらから攻撃が出来ないのだから


しかし状況は反逆の首魁であるはずの深海吹雪の暴走で一気に動いた


あろうことか説得する為に現れた整備士さんを撃ち殺し発狂、深海化し味方であるはずの霧の艦娘達に襲い掛かった。その力は凄まじく次々と自ら脱走させた艦娘達を殺戮していく


しかしその隙を突いたレ級さんの超重力砲が暴走する深海吹雪をついに消し飛ばした


「やりましたね…。あれ?あんな所に深海棲艦が居ます」


新棲姫「いつか聞いた精神汚染するという奴と同じ姿だな…アイツの仕業か」


『…違う』


「え?」


『深海吹雪の力はあんな奴を遥かに超えてる、精神力でも。簡単に汚染なんて出来やしない』


新棲姫「じゃあ…」


『あいつだ…まだ消えてなかった…しかも…見付けた…お姉ちゃん…』


そう言った直後


ガコン…ギギイイィィィ…


また扉が開く音が聞こえ、そして気付いた時には状況が一変していた


深海吹雪が居た場所にはあの―――繭から生まれた完全体が居た、しかも遥かに巨大でオーラのようなものまで纏っている

811 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 20:07:11.92 ID:V8lm4V7DO
 
 
『世界の滅びを願ったか…しかもあいつ…それに便乗してあの身体を手に入れた…一応、ここからは名前は伏せてくれる?』


名は力…そして鎖。いつか言っていた言葉を思い出す。そうか…あの人が…


新棲姫「…あの化け物の中に奴が居るのか?」


『そしてお姉ちゃんも…捕まってる…』


「このままじゃ…どうしたら…」


『こちらからじゃどうにも…いや、ちょっと待って、そうか…』


何かを考えているY子さんを尻目にまたも状況は動いていく、私達には何も出来ない…


完全体が核を手に入れようと向かっている中、レ級さんと暁さんがそれを爆破、そして荒潮が完全体に何かを仕掛け―――時が止まった


「え?」


新棲姫「あれが荒潮の能力か、本当にアイツらはチートだな」


半ば呆れた声を出す新棲姫さん、止まった時の中でこれでもかと防弾や魚雷を投げつけている荒潮


『だけどこっちにも好都合、あの二人が鍵だ。今のお姉ちゃん一人の力じゃキツいから呼び込むのを手伝った』


「あの二人?」


『あれは言ってみれば外の世界の力…あいつにもそれなりに有効だから』


画面が切り替わりその姿が映し出される、そこにはレ級さんと、肌が白く染まった暁さんがまさに決着を付けている所だった

812 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 20:15:33.18 ID:V8lm4V7DO
 
 
荒潮の攻撃の影響か身体半分を失い、レ級さん達の攻撃でついにその元凶は今度こそ消えていく。やけにあっけない気もするが…


新棲姫「これでやっと終わったんだよな…」


「でも…富士さんが…」


島風「あの人消えちゃうの?まだちゃんとお話した事無かったのに…」


早霜「…彼女も自らの罪を精算する機会を探していたのね、出来たら色々参考にさせて貰いたかったのだけれど…」


口々に言う私達の言葉を聞いていかにも仕方無くという風にY子さんが言った


『…あーもう世話の焼ける愚姉だよ全く。まだ隠居するには早いんだってば』


そうしてY子さんが何かをしたようだった。後に建造ドックで呆然と立ち尽くす富士さんを見付けた私はY子さんにお礼を言うと


『別に…勝手に満足して消えるなんて許さないだけだよ、まだ…やらなきゃならない事は沢山あるんだから』


とそっぽを向いて言うのだった。漣さんの龍驤さんに対するような複雑な感情をY子さんからも感じ、私は微笑ましいような、不安なようなそんな気持ちになるのだった
813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/19(火) 20:17:20.06 ID:V8lm4V7DO
ここまで
次辺りで
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/20(水) 00:50:08.10 ID:8fLyvzrOo
おつおつです
こっちがあって本当に助かってます……
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/20(水) 14:43:04.29 ID:D22k0svHO
本スレにも書き込んだけど、最後の富士っぽいやつの台詞の一文字だけを読むと
早苦気ずい掌
で早く気付いてなのには何か理由がある?

早で二文字使ってるのと掌がてのひらって読まないならこじつけ
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/20(水) 15:00:40.28 ID:jBF1rFvyO
日向が提督送り返す時に言ってたのが
我らふ…ってあったけどこれは富士を倒すものか、または富士を信奉する語が入るんだろうか
でも日向の主張が兵器が感情もっちゃダメってのは富士の艦娘はただのモノではないって主張と反しているし、やっぱり倒す方向なんだろうか
旧大本営派(というか日向個人の)富士に対するスタンスでわるいひとの有無が分かるかもしれないと思う
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/20(水) 15:59:59.88 ID:uFqERg8gO
>>815
よく気付いたと思う
実際すごい

んで読み返したんだが、そのご-その2の>>130でY子が「愚姉」と言ってる所
この単語前シリーズざっと調べた中では『Y子』さんは言ったことが無かったんです
こいつYSMちゃうか?
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/20(水) 22:19:08.99 ID:iRG6gBGVo
そのごpart1と2で富士の発言がガラッと変わってるんだよなー
そ気になるとこではあるんだけどミスリードだろうか
819 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/20(水) 23:13:11.59 ID:FSUyRoqoO
足りなかったものpart10ラストで
「これからウチが話す内容にタイトルをつけるとしたら……うん、これやね」

龍驤「足りないもの」
龍驤「まだ、足りないもの」
龍驤「もう少し、足りないもの」
龍驤「足りなかったもの」

今のタイトルは
漣「足りないもの、そのご」

本編が龍驤によって語られたものだとするとこの物語は龍驤が語ることができない?
考えすぎかな?
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/21(木) 10:16:23.97 ID:8sq/e06/O
現行の方で出てるけどやっぱりG呼ぶしかない?
仕掛けてきそうな残ってる芽で夕雲や深海仏棲姫もいるっちゃいるけどこいつら影も読み取れるないし…
821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/23(土) 00:19:03.23 ID:2hlHeXURo
アイツ勿論嫌いだけどああいうかまってちゃんクソガキムーブはちょっと可愛いんだよな
調子乗りそうだからこっちで言う
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/23(土) 00:24:39.70 ID:r7uiuW68O
わかる
なんというか「わからせ」たい
823 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:08:21.89 ID:8IHg2OgDO
>>812から
 
 
繭から生まれた完全体や大本営、組織、深海吹雪、そして八島…だいたいの問題が一応の決着を見て現世は忙しなく動き続けている


時の止まった世界で私達はそれを眺める


現界した富士さんが司令官達に伝えた深海吹雪が残した世界滅亡の願いもあちらの新棲姫さんの機転で回避出来そうだった


新棲姫「さすがはワタシだな、あの富士ですら思い付かない事に容易く辿り着く」


『いやぁ…お姉ちゃんは割とポンコツだからねぇ』


これでようやく平和になるのだと安心した私だったが


Y子さんはそれからというもの考え込む事が多くなった


そしてある日、私達全員を集めて突然こう言い出した


『…あたしは、行こうと思う』




824 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:10:30.89 ID:8IHg2OgDO
 
 
「…行くって何処へですか?」


『現世に』


「どうして…」


早霜「説明はしてくれるのでしょう?わざわざこうして集めたのだから」


『もちろん』


そうしてY子さんは話出す


『まずひとつ、世界の滅亡は一旦は回避された、遥かな未来に先送りにするという方法で』


『確かにあの場面ではあれ以上の策は無かった、ひとつの犠牲も出さないという意味では。でも…』

新棲姫「一旦はと言ったな、つまりまだ…」


『願いは今もまだ発動し続けている、その先送りした時に辿り着くまで』


「そんな…」


『逆に言えばそれまでは絶対に世界は滅びないとも言える』


「だったら何も問題は無いのでは…」


『なら聞くけど、例えば人間が100万人死んだら朝ちゃんはそれで世界が滅んだと思う?』


「っ!それじゃあ…」


『そう、結局は今までと何も変わってはいないんだ。100万人は極端な例だけど、世界が滅ばない程度の何が起きるかは判らない』


以前には2000人の犠牲者が出たり大本営が町ひとつを消したり、そもそもこれまでの深海悽艦との戦いでどれだけの人や艦娘が亡くなったのか…
825 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:12:12.53 ID:8IHg2OgDO
 
 
『もう一人のあたし…扉の力でも消しきれないのは証明されてる。何かの拍子に名前を呼ばれないとも限らない。そんな時お姉ちゃん一人じゃ心許ないし…それに…』


「それに?」


『……杞憂、なら…いいけど、あたしには多分やらなくちゃならない事がある』


まただ、あの八島も、そしてY子さんも浮かべていたあの表情…畏れのような…


「あの人…ですか?」


『っ……うん、そう…。造り出し、名前を与え、因果が生まれた…もし…今の世界にも居たらきっとまた…』


「もし?」


『判らない…あたしからは何も読み取れない、もしかしたらお姉ちゃんなら判るかもだけど…』


何だかY子さんが普段よりも更に縮こまって見えた。それほどに怖いのだろうか


『……何かあった時…見守るだけじゃ駄目なんだって、見に染みて解ったんだ…だから…』


Y子さんは私達を見回し、言った

『出来たら一緒に来て欲しい、いざという時にあたしに力を貸して欲しい…お願い』


そうして頭を下げた

826 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:13:41.08 ID:8IHg2OgDO
 
 
「私はもちろんY子さんに協力しますよ、頼まれなくったって」


『朝ちゃん…ありがとう』


早霜「…私は朝霜姉さんにもう一度会えるなら…」


呂500「ろーも…でっちに…」


呂500さんはちらりと早霜さんを見る。自分を殺した張本人が側に居る、とはいえその目には恐怖は無かった


再会して少し後、早霜さんは呂500さんを呼び出して二人だけで何かを話していた。その時にはもう一度殺されるんじゃないかと怯えていたが、Y子さんが説得してやっと話し合いに応じた


詳しい内容は知らないがどうやら土下座までしたらしいとY子さんがこっそり教えてくれた


呂500さんは客商売をしているだけあって人を見る目はかなり鍛えられている。早霜さんが以前とは違うと理解してくれたようだった


島風「あたしも!提督やさみだれに会いたい!」


新棲姫「ワタシ達は戻れるのか?しかし…既に…」


新棲姫さんや島風、呂500さんは既に傀儡として生きている、そこに私達が加わったらまたややこしい事にならないだろうか


『そこなんだけどね…、いやぁホント…これはあたしも予想外だった』


新棲姫「勿体振るな」


『あの人間…整備士の再現度は半端じゃない、本当に同じ魂を再現している、本人は全然気付いてはいないみたいだけど』

827 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:15:55.52 ID:8IHg2OgDO
 
 
「つまり?」


『統合可能という事、これが別個体なら無理矢理乗っ取るとかして人格崩壊しかねないんだけどね』


「でも私や早霜さんには身体が無いのでは…それに整備士さんはもう…」


『生きてるよ、あの人間もある意味不死の存在なのかもね…全くこれだから人間が一番…』


『…そして整備士は今、朝潮と早霜を再現してる。どんな考えなのかは知らないけど、ここに便乗させて貰う』


私も甦れる?司令官や皆に会える…?


「……ぁ、っ…会いたい…です…会って謝りたい…私…」


『…うん、だけど…ひとつだけ、朝ちゃんだけじゃなくて皆にもこれだけは忘れないで欲しいんだ』

真剣な目で私達一人一人を見、そして言う


『肉体を得るという事はまたあらゆる欲望や痛みや苦しみも得るという事。現世は誘惑に満ち溢れてる、下手をしたらまた繰り返してしまう可能性だってゼロじゃない、それでも…』


それでも…戻りたいか、とY子さんは問い掛ける


私は……

828 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:19:06.85 ID:8IHg2OgDO
 
 
『なんてね』


「え?」


『さっきも言ったけど、あたしはもう見守るだけなのは止めたんだ…そんな事にはさせない。誰だって幸せになっていいんだ』


「Y子さん…」


『…そしてこの五人には力を貸して欲しい。いざという時…魂の世界での生活は無駄にはならないはずだから』


『そして…』


その後の言葉は私達には届かない小さなもので、聞き返しても答えてはくれなかった


―――そしてもし、あたしが駄目な時には、残った全てを、そしてあたしの代わりに―――

829 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:22:39.61 ID:8IHg2OgDO
 
 
それから、私達は現世へ旅立つ準備をしている


と言っても持っていける荷物など無いので身一つ、というか魂一つ


そして私達は大きな建物の前に集まっている


それは私達にとっては慣れ親しんだ鎮守府と同じ外観だった


『念の為にこの場所は残しておこうと思う。けど引っ張り上げる者も居なくなるから辿り着けるかは本人次第になるけど』


「必要にならなければいいですね…」


『そうだね…』


早霜「それを防ぐ為に行くのでしょう?」


島風「早く行こうよー」


目の前には白いトンネルのようなものが開いている、丁度人ひとりが通れる大きさだ。ここを潜れば次に目覚めた時には身体に入っているらしい


新棲姫「ふ…ふふ、もうすぐ会えるな…漣」


呂500「でっちー、待っててね…」

『じゃあまずは…島風から』


島風「はーい!朝潮!皆!またね!」


そして島風はトンネルを潜り、その姿が見えなくなった、そうして次に呂500さん、早霜さん、新棲姫さんとトンネルに入っていく


そうして最後に私とY子さんだけが残った

830 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:25:14.48 ID:8IHg2OgDO
 
 
『最後は朝ちゃんだよ』


「はい」


トンネルの前に立つ。正直、不安が無い訳ではない。憎しみ、欲望、痛み、悪夢、また苦しみの世界に行く事になるのかと


だけど…そればかりではなかった事を私は知っている、私はひとりじゃない。またこの目が濁ってそれを忘れても、きっと思い出させてくれる人が居る


今の私はそれを信じよう


そうして私はトンネルに飛び込んだ、次に目覚めた時には、まずは司令官に謝らないとなと思いながら

831 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:27:42.19 ID:8IHg2OgDO
 
 
『最後はあたしか…こんな事はそう何度も出来るとは思えない、きっと…頑張らないとなぁ…』


そう呟いて彼女はトンネルを潜り、そして白いトンネルは消えていった


ここは三途の川、死者達の集まる世界


その外れに建つ今はもう無人の鎮守府


その一室、提督の執務室に当たる部屋の机には名簿があった


Y子、朝潮、潜水新棲姫、島風、呂500、早霜、富士、■■


最後の名前は塗り潰されていて読み取る事は出来そうになかった
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