【艦これ】龍驤「たりないもの」外伝

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662 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/12/31(火) 08:50:22.76 ID:fQH11UZDO
 
 
視線を巡らせるとそこにあったのは八島の空中要塞らしき何か


完全に死者の群に包まれて巨大な球体のようになっていた


早霜「…鉄の海域にあるアレを数倍醜悪にしたようなものね…まるで」


島風「あいつもあの中に居るのかな」


「いますね…何となく判ります」


そうして私達は目的の砲台へと急ぐ。途中死者に襲われるも数はまばらであっさり早霜さんと島風が蹴散らしてしまう


砲台に辿り着いた私達に富士さんから通信が入る


≪朝潮?聞こえる?≫


「はい、砲台に着きました。これからどうしたら…」


≪砲台側面のスロットにその砲弾を装填して頂戴≫


「ええと…これですね。………」


≪どうしたの?早く≫


ガシャ、ガキン


「…装填完了しました」


早霜「あの死者の壁はどうするのかしら…」


≪問題無いわ、それはこちらで排除するから≫


「富士さんまた何か無理を…」


≪無理はしないわ。…無茶はするけれど。それより早く射手席に≫
663 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/12/31(火) 08:53:51.37 ID:fQH11UZDO
 
 
「まったくもう…」


実際言い合いをしている時間は無い。私は渋々射手席に着いて照準を覗く。死者の壁がアップになって思わず吐き気を催すがそれを無視。吐こうがどうしようが目を離す訳にはいかない


≪…撃つわ≫


ガコン…ドォォォン!ドゴォン!


半壊した別の砲台が無理矢理砲撃を敢行、直後に爆発し完全に吹き飛んでしまう


それを富士さんは次々と行い、死者の壁を削っていく


≪ぐっ!…まだよ…≫


「富士さん…」


照準を覗き、トリガーに指を掛けひたすらに待つ。徐々に死者の壁が剥がれて内部に居た八島の姿が見え始める。どうやら防壁を張って死者に呑まれるのを防いでいたようだ


「防壁が…あれじゃあ…」


≪大丈夫よ。防がれても当たりさえすればいい≫


照準越しに八島の姿が露出していく。そしてその顔が見える程になってきた時―――


目が、合った
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/12/31(火) 08:59:12.72 ID:fQH11UZDO
ここまで
気付けば一ヶ月以上も開いてしまい申し訳ありません
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/31(火) 14:08:02.85 ID:r/vHarnZo
おつです
いよいよ正念場
本年度中は大変お世話になりました
良いお年を
666 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/03(金) 23:26:27.71 ID:RUmfBvhW0
ーー

漣「ご主人、初詣でも一緒にどうですか?」


提督「いや遠慮しておこう」


漣「あら?そんなに仕事溜まってましたっけ?」


提督「人が多い時期は避けた方が良いかと思ってな」


漣「あ…龍驤さんが…」


提督「俺が背負って移動するにしても人混みは良くない。行くにしても人が少ない時を選ぶな」


漣「あーすいません…ほんと漣ってアレですよね…」


提督「もう慣れたさ、気にしていない」


漣「ほぉ…ご主人様も言うようになりましたな」


提督「漣のせいで危険な目に遭ったり、事態がややこしくなったりしたことは一度や二度じゃないからな」


漣「いやぁほんと、普通なら追い出されて終わりですよ。それがこうやってご主人様の隣に普通に居れるのがおかしいんですって」


提督「俺が誰かを追い出したりすると思っているのか?」


漣「思いません、ご主人様は甘ちゃんの塊ですもん。龍驤さんを殺そうとまでしたこの漣を許すんですよ?」


提督「……ふっ」


漣「ふふふ。こんなご主人様だから皆ついて来てくれるんですよね」
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/03(金) 23:29:15.81 ID:RUmfBvhW0
提督「俺は正しく無いし平気で間違える。それを正してくれる仲間がここには居るんだ」


漣「…素敵ですご主人様。やっぱり大好きです」


潜水新棲姫「漣ぃ〜〜〜新年早々浮気なのかぁ〜〜…」キィィ


漣「ぬぁーに言ってんすかぁ、お前が一番に決まってんでしょうが」ダキッ


潜水新棲姫「んふ…っ」


提督「俺達のことは気にしなくていい。二人で遊んで来ればいい」


漣「ではお言葉に甘えてそうしてきます!おらおら!お前には着物きせて可愛いくしてやりますからね!」


潜水新棲姫「富士がやってくれると聞いてる」


漣「勿論漣も着付けしてもらいますよ!ご主人様、後で漣と嫁の写真送っときます!」


提督「あぁ」


漣「それじゃあ行きますよぉー!」


潜水新棲姫「おー」ガチャ


提督「…漣も色々と乗り越えてくれたようだな。最近まで俺が許したと言っても自分では納得している様子が無かった」


提督「漣の嫁…潜水新棲姫がうまくやってくれたのか。それに関しても色々あったようだが最終的にはなんとかなったのか」


提督「龍驤と出会わなければ俺は漣と…いや、もしもの話はするべきでは無い」


提督「漣も俺も幸せだ。それだけで十分じゃないか、これ以上なにもない」
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/03(金) 23:31:46.55 ID:RUmfBvhW0
提督「…さて、一段落したら龍驤の様子を……」


ピコン


提督「漣から連絡?着付けはそんな短時間で終わるのか?」スッ


漣『飛鷹さんが廊下で正座なう』


提督「……」


漣『どうやら清霜さんに姫初めを迫った飛鷹さんが反省してる模様』


提督「……」


提督『飛鷹には誰の迷惑にならないように反省するように伝えてくれ』


漣『ガッテンです。あと暁氏とレ級氏の姫初めの声が部屋の外までだだ漏れなのでそれとなく注意しておきますね』


提督『…頼んだ』


漣『あと加賀さんと瑞鶴さんが盛り上がってて、ダブル朝潮さんが喧嘩しながら走ってご主人様の所に向かいました』


提督『とめてくれ』
提督『たのむ』


漣『善処します』


提督「……」


提督「…………」

ダダダダダッ

司令官ーー!

司令官、ネコミミ着けてきました!私と初詣に行きましょう!!


提督「……」


提督「漣…………」
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/03(金) 23:34:19.19 ID:RUmfBvhW0
富士「…なんだか執務室の方が騒がしいわね」


漣「あー多分ダブル朝潮さんが騒いでますな」


潜水新棲姫「あいつらか」


富士「漣は知ってて止めなかったの?」


漣「だってあの二人の相手面倒臭いんですもん。目的がご主人様なので、全部任せておけばいいんですよ」


富士「貴女ねぇ…」


潜水新棲姫「漣がこういう性格なのは分かりきってるだろう?」


富士「それは知りすぎてるくらいだけど、少しは改善する気はないの?」


漣「ありませんね」


潜水新棲姫「言い切るのも漣らしいな」


漣「漣が今考えてるのは嫁との初詣だけです。それが邪魔されるのは許されません」


富士「貴女…いつか仕返しされるわよ」


漣「それはその時考えれば良いんですよ〜〜」


ーー
670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/03(金) 23:35:21.41 ID:RUmfBvhW0
中途半端に長くなってしまいました。ネタはいくらでもあるんてすが、短編となると難しいですね

それではまた
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/03(金) 23:37:10.76 ID:JZwxxsfpO
乙です
672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/04(土) 00:36:33.42 ID:pa8qmPSYo
善処(丸投げ)
飛鷹さん……
あけましておめでとうございます
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/30(木) 20:10:51.15 ID:Afarbvso0
あらすじ
ツクオリがスポンサーをやっているテレビ番組にゲスト出演することになった白鶴。ライは白鶴のマネージャーとして収録に参加することとなった。
白鶴が出演するバラエティー番組で特技を披露する流れに。ホームレス時代に身に付けた人間ポンプをやろうとする白鶴だったが…



「ほんで何か特技があるんやって?」


白鶴「は、はい!私は人間ポンプができます!」


「なんやねんそれ!芸人でもやるの躊躇するで!」


白鶴「人間ポンプはラジオだと伝わらないんです。せっかくテレビという機会なので披露してみようかなと…」


「なんでもええけど特技やっていうならやってみいな」


白鶴「はい、それでは失礼して…」ゴソゴソ


ライ「頑張って白鶴さん…!」
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/30(木) 20:12:41.08 ID:Afarbvso0
白鶴「今からこのビー玉を飲み込みます。そして全部このお皿に吐き出します」


「ほんまにできんの?失敗したらエライ事になるで」


白鶴「練習では上手くいったのでだ、大丈夫です」


「めっちゃ緊張してるやん!」


「ごっつ心配やわぁ…」


白鶴「それでは…いきます」ゴクッ


「コイツほんまに飲み込みよったで」


ライ「緊張しなくても大丈夫、いつも通りやれば失敗しないわ」


白鶴「……」プルプル


「なんやえらい震えとるけど…」


「これ失敗するん違うやろな!?」
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/30(木) 20:14:13.76 ID:Afarbvso0
ライ「どうしたの白鶴さん?まさか調子が悪いのかしら…」


「あのーすいません。白鶴さんのマネージャーさんですよね?」


ライ「そうよ、何かあったの?」


「白鶴さんの楽屋に置いてあったお弁当が無くなっていたんです。確か持ち帰るからって言ってましたよね?」


ライ「私は食べてないわよ?」


「おかしいですね…」


白鶴「……」プルプルプルプル


「これほんまにいけるんか!?」


「皿やなくてバケツ用意しとけって!」


ライ「まさか白鶴さん…人間ポンプのこと忘れてお弁当食べちゃったの……?」
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/30(木) 20:16:25.37 ID:Afarbvso0
ライ「私が先にスタジオに来ちゃったから…ちゃんと確認してないけど……」


白鶴「……げろっ」


「うわ!!この女吐きよった!!」


「収録止めろって!こんなん放送できるかぁ!!」


ライ「あぁぁ…白鶴さん……」


白鶴「ぉえっ、げっ……」


「お前なんやねん!何しに来てん!!」


コロンッ
白鶴「で…出ました……ビー玉…」スッ


「こいつ体張り過ぎやろ!」


「ここまで来たら引くって…」


ライ「あぁぁ…せっかくのテレビだったのに…これじゃ放送されないじゃない……」


白鶴が吐く場面にキラキラ加工が施され、まさかのノーカットで放送された。
『地上波デビューで吐く女』後に芸能界という荒波を制した白鶴の伝説はここから始まった
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/30(木) 20:16:56.06 ID:Afarbvso0
思い付いた所だけを書きました。それでは失礼します
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/30(木) 20:25:46.68 ID:f7tBtJ3sO
ええやん
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/30(木) 20:25:56.11 ID:JcQV7hzEo
芸人超え過ぎィ!
おつおつ
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/30(木) 21:11:57.27 ID:z7BeGTj3o
もっと平和なやさしい世界みたいみたい
681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/30(木) 21:33:03.79 ID:dRivNYDmo
いきなりヨゴレとは…
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:00:49.11 ID:I10vUzVr0
思い付いたので少し


龍驤「突然集められたと思ったら何よ?」


潜水新棲姫「ワタシと龍驤はいいとして、富士まで呼ぶとはな」


富士「一体なにが始まるの?」


漣「動画サイトで見た面白そうな企画があったんですけど、それを漣達でやったらどうなるかって試してみたくなったんですよ」


Y子「ここで反応良かったら人数増やして本編でもやるかもってさ」


龍驤「本編?」


Y子「そっちは干渉できない話だから気にしないで〜」


富士「……」
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:04:22.57 ID:I10vUzVr0
漣「ええっと…Y子さんも参加ということでよろしいですか?」


Y子「あたしはお姉ちゃんの影みたいなものだから、居ないものとして考えていいよ」


漣「分かりました。それでは今からお題を出します。それに最も合うであろう言葉を紙に書いて下さい」


潜水新棲姫「言葉というだけでは定義が曖昧だと思うぞ」


龍驤「固有名詞は有りなんか?」


漣「それは龍驤さん達に任せます。それじゃあ一回戦、始めますよ!」


富士「なんで私がこんな事を…」


Y子「頑張れお姉ちゃ〜ん」
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:07:39.57 ID:I10vUzVr0
「あ」から始まる高いもの


龍驤「なんやえらい簡単やね」


潜水新棲姫「ふむ…」


漣「高いといっても色々ありますぜ。そこをどう解釈するかが楽しいんですよ!」


富士「……これよね?」カキカキ


Y子「あたしは何も知らないな〜」


富士「少しくらい助けてくれてもいいのよ…?」
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:11:49.16 ID:I10vUzVr0
漣「全員書けましたね。それではまずは龍驤さんから!」


龍驤「高い…これしか無いんと違う?」
『アルプス山脈』


富士「あっ…表現は少し違うけど私も同じよ」
『アルプス』


漣「なるほど、純粋に高いものを書いたと。漣が書いたのはこれです!」
『アマゾ◯』


龍驤「通販サイトの何が高いんよ?」


漣「送料高くないですか?」


潜水新棲姫「確かにそういう高さもあるな」
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:14:45.26 ID:I10vUzVr0
漣「嫁は何を書いてんです?」


潜水新棲姫「高い言葉を書いた」
『above』


龍驤「…はぁ」


富士「あ、あぼ…」


Y子「アバーブね。英語の前置詞で意味は〜より高くとかそんな感じ」


潜水新棲姫「これより高いものはない。aboveアルプス山脈でワタシの勝ちだ」


漣「それって有りなんですか?」


潜水新棲姫「漣が司会なんだから決めてくれ」


漣「うーん多数決が基本なんですけどねぇ…」


龍驤「一回目やし多数決にしとくか?」


漣「…分かりました、それではアルプス山脈で!」


Y子「お姉ちゃん英語苦手だもんね」


富士「…うるさいわね」
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:17:43.65 ID:I10vUzVr0
「か」から始まる強い生き物


漣「これもどういう強さを表現するかですね〜」


龍驤「あかん…何も出てけぇへん…」


潜水新棲姫「こいつは見た目よりも強い」カキカキ


富士「……」カキカキ


Y子「ぶっ…!」


富士「…私の答えを見て笑うのはやめて欲しいのだけど」


Y子「ごめんってお姉ちゃん」


龍驤「もう…無理やな……」
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:20:29.95 ID:I10vUzVr0
漣「龍驤さんが苦戦してたので漣からいきます!」
『カブトムシ』


潜水新棲姫「昆虫の中では強いということか」


漣「昆虫というより甲虫ですね。コイツは強いですよ!」


潜水新棲姫「ならワタシはこれだ」
『カバ』


Y子「あ〜確かカバってワニとか襲うんだってね」


潜水新棲姫「間違いなく強いだろう」
689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:24:04.44 ID:I10vUzVr0
Y子「二人が実在する生き物を書いてる中お姉ちゃんは〜?」


富士「……」
『怪獣』


漣「あぁ〜…はい…」


潜水新棲姫「せめて何か固有名が欲しかったな」


富士「何も思い付かなかったのよ…」


漣「さて龍驤さん、顔色が良くありませんがそろそろ出しましょうか?」


龍驤「…ごめん」
『かなり強いライオン』


漣「いやいやいやいや」


潜水新棲姫「かなり強いがつけば何でもいいじゃないか」
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:26:45.83 ID:I10vUzVr0
龍驤「ほんまにゴメンって…何も出てけぇへんねんって…」


Y子「お姉ちゃんより酷い答えでよかったね」


富士「……」


漣「龍驤さんは話にならないのと、富士さんも具体的な名前が無いので…ここはカバですか」


潜水新棲姫「カブトムシくらいカバなら一捻りだからな」


龍驤「カバ、カブトムシ…それくらい出てきて普通やんな…」


漣「そんなに落ち込まないで下さい。さぁ次にいきますよ」
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:30:04.05 ID:I10vUzVr0
「さ」から始まるお洒落な趣味


漣「あ、やべぇ…今度は漣が何も出てこない…」


龍驤「これは出てきた!これしかない!」カキカキ


潜水新棲姫「うーむ…これがお洒落か?」カキカキ


富士「……」カキカキ


Y子「ふぅ〜ん」


富士「何よ」


Y子「べっつに〜書いてるな〜って見てるだけだから」


富士「私はこういうの苦手なのよ…!」
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:34:00.17 ID:I10vUzVr0
龍驤「自信あるからウチからいくで!」
『サーフィン』


漣「あぁぁぁぁ…それだ…」


潜水新棲姫「ワタシは龍驤に負けたな」
『サッカー』


龍驤「よし!これでさっきの汚名返上や!」


Y子「次はお姉ちゃん出しといたら?別に変じゃないから」


富士「……」
『裁縫』


龍驤「これが趣味やと確かにお洒落やね」


潜水新棲姫「だがお洒落というより女子力が高いというイメージだ」
693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:37:12.64 ID:I10vUzVr0
漣「漣の答え…先に謝っておきますので…」
『皿に絵を描く』


Y子「んひひひひっ!」


龍驤「あのなぁ…」


漣「分かってますって!でも何も出てこないんだから仕方ないじゃないですか!」


潜水新棲姫「せめて単語を書いて欲しかった所だ」


富士「……!」プルプル


漣「笑いを堪えられるのが一番キツイんで笑って下せぇ…」


潜水新棲姫「これは龍驤のサーフィンが答えで良いだろうな」
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:40:39.50 ID:I10vUzVr0
「た」から始まる持ち歩くもの


漣「…これですね」カキカキ


龍驤「これと違うんかなぁ」カキカキ


潜水新棲姫「これしか浮かばない」カキカキ


富士「これ…かしらね…」カキカキ


Y子「んぐっ!」


富士「…もう相手にしないわよ」


Y子「ぐ…ぐふふ…!」


漣「なんか富士さん辺りが騒がしいですな…」
695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:44:12.96 ID:I10vUzVr0
漣「じゃあ漣からいきますよ」
『タブレット』


龍驤「よっしゃ同じや!」
『タブレット』


潜水新棲姫「ほぼ同じだが少し違うな」
『端末』


漣「意味は同じようなもので、こっちと同じと思っていいですね」


富士「……」


Y子「皆がそれっぽいことを書いてる中、お姉ちゃんは何を書いたのかな〜?」


富士「……」
『たまごっち』
696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:49:05.95 ID:I10vUzVr0
漣「古っ!」


龍驤「世代が…年代が…」


潜水新棲姫「これじゃあ漣がよく言ってるロリババアじゃないか」


富士「漣っ!!」


漣「ちょ、何暴露してんすか!」


Y子「ふじさんじゅうさんさい」


富士「貴女ねぇ!!」


Y子「だって仮にも始まりの艦娘でしょ?その経歴で十代はキツイって」


富士「貴女も漣も覚えてなさいよ…!」


漣「とばっちりぃ!」


龍驤「とばっちりも何も裏で色々言うてる漣が悪いんやろ」


潜水新棲姫「とりあえず正解はタブレットだな」
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:53:34.97 ID:I10vUzVr0
「な」から始まるされて嬉しいこと


漣「命の危険を感じるのでこれが最後のお題です…」


龍驤「…書いてええか分からんけど、これしか思い付かん」


潜水新棲姫「ワタシもこれしか無い」


Y子「お姉ちゃん白紙はダメだよ〜」


富士「うるさいわね…!だったら適当に書いてさっさと終わらせるわよ!」


Y子「お〜怖い怖い」


漣「プレッシャーが凄まじくて頭が回らない…」
698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 20:56:43.55 ID:I10vUzVr0
漣「何も思い付かなかったので…これで勘弁して下せぇ」
『ナイスって言われる』


富士「私はこれよ!」
『ナポリタン』


Y子「お姉ちゃん適当過ぎ」


富士「早く終わらせるのが目的だから中身は関係ないのよ!」


漣「マジ怖ぇ…」
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 21:02:42.27 ID:I10vUzVr0
龍驤「あのな…そっちの答えチラッと見えたから一緒に出そ」


潜水新棲姫「同時にか。よし分かった」
『中◯し』
『中に出される』


Y子「うわ…」


龍驤「最低なのは分かってるよ…うん…」


潜水新棲姫「お題が悪いぞ漣」


Y子「あ〜それがさ、二人が答え出したと同時に漣が逃げて、それをお姉ちゃんが追いかけてってよ」


潜水新棲姫「なら答えが出せないな」


龍驤「答えなんか出さんでええって…ウチってほんまこれの事しか考えられへんのかな…」


Y子「仕方ないって、次があるならその時改善すれば良いんだしさ」


龍驤「次があってもウチは呼ばんといて…」
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 21:03:14.68 ID:I10vUzVr0
少し長くなってしまいました

また何か思い付けば書き込みます
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/01(土) 21:09:53.93 ID:3/c+ilTgo
案の定の二人
こういうのもっと見たい見たい
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/01(土) 21:39:38.44 ID:WSPZz/b9o
おつおつ
富士さんとY子が微笑ましく?喋ってたりじゃれ合ってるのを見れる…こんなに嬉しいことはない…
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/01(土) 21:40:32.56 ID:tWeL8lCAO
漣さん、お子さんは何人の予定ですか
704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/06(金) 18:25:25.58 ID:c70mXPa1O
ツイッターで画像の貼り方が分からないとツイートしてたので

専ブラを使ってないなら

@ ここで
https://imgur.com/

A ここ押して
https://i.imgur.com/kJsRswI.jpg

B この画面で画像選んでアップして
https://i.imgur.com/gQ02ClO.jpg

C 画像アップできたらここ押して
https://i.imgur.com/rrVesCn.jpg

Da ここ押してリンクコピーして
https://i.imgur.com/lMMgd65.jpg

Ea リンクを貼る。これだと拡張子つけれない
https://imgur.com/a/i1Hdrlj

もしくは
Db 画像をクリックしてURLをコピーして
https://i.imgur.com/7mbn72G.jpg

Db 適当に.jpgとか拡張子をつけて貼る
https://imgur.com/XBPVAyE.jpg
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/06(金) 18:31:04.80 ID:c70mXPa1O
サインアップしなくても使えるけどサインアップしないと消せなくなるからそれだけは注意で
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/03/06(金) 18:51:36.59 ID:Z6kKuDk00
テスト

http://imgur.com/gallery/kH6QzwX
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/06(金) 18:54:21.82 ID:Z6kKuDk00
テスト2

https://i.imgur.com/I2tBEOI.jpg
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 20:47:36.75 ID:cHjmTwwaO
ある日

飛鷹「今日も清霜は可愛いかったわ…」


清霜「飛鷹さん、分かってると思うけど今日は日帰りでデートだからね?」


飛鷹「分かってるわ、この後ホテルに…!だなんてもう言わないわよ」


清霜「飛鷹さんの事は嫌いじゃないけど、ちゃんと時と場合を考えてって何度も言ったもんね」


飛鷹「清霜とは気持ちが通じたの。もう下心を全開にだなんてしないわ」


清霜「…昨日ベッドで激しかったクセに」


飛鷹「それはそれ、これはこれよ」


清霜「もう、調子いいんだから…」
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 20:48:53.72 ID:cHjmTwwaO
飛鷹「えっと…この路線の電車に乗ればいいのよね?」


清霜「そうそう。それで三つ先の駅で乗り換えだよ」


飛鷹「横須賀に来てから交通の弁が良くなったのはいいけど、乗り換えは慣れないわね」


清霜「前の所は乗り換えなんて無かったもんね」


飛鷹「これも慣れれば問題無いんでしょうけど…」


清霜「誰にでも苦手なものってあるもんね。清霜が切符買ってくるよ!」タタタッ


飛鷹「清霜…そんな優しい所も好きよ…」
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 20:50:15.98 ID:cHjmTwwaO
飛鷹「下手に動くと迷子になってしまうから、ここで待っているのがいいわね」


飛鷹「……」キョロキョロ


飛鷹「流石は都会ね…掲示物やポスターが張り巡らされてるわ」


飛鷹「多くは企業のポスターみたいだけど、イベントやその告知なんかも多いのね」


飛鷹「……!?」


清霜「買ってきたよ飛鷹さ〜ん…あれ、どうしたの?」


飛鷹「こ、このイベントって……!!」
711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 20:52:19.70 ID:cHjmTwwaO
ーー

秋雲「この秋雲さんに聞きたいことってなにぃ?」


清霜「秋雲って同人誌とか描いてるんだよね?」


秋雲「そりゃー描いてるよ!そっちが本業なんじゃないかってくらいね!」


清霜「じゃあサークルが何かとかよく知ってるんだ」


秋雲「もち!なになに〜?そういうのに興味ある?」


飛鷹「あるのよ!!」


秋雲「ビックリしたぁ…飛鷹さん一人だけテンションおかしくない?」


飛鷹「おかしくもなるわ!こんな掲示を見つけたのよ!」スッ


秋雲「ほうほう…」
712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 20:54:23.73 ID:cHjmTwwaO
秋雲「清霜オンリーか。うん、やることは知ってるよ〜」


飛鷹「ひゃあ!!夢じゃなかったのね!」


清霜「ポスターの写真スマホで撮ったのに、夢じゃないのかって飛鷹さんうるさかったよ…」


秋雲「場所はここからそこまで遠くないし、ここの提督なら休みだって貰えるでしょ?」


清霜「それなら司令官に相談するよ。秋雲に話があるっていうのはね…」


飛鷹「秋雲!!私はそのイベントに参加したいのよ!」


秋雲「ほほぅ、なるほどねぇ」
713 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 20:56:08.45 ID:cHjmTwwaO
秋雲「確認するけどさ、飛鷹さんって絵描ける?」


飛鷹「描けないわ。でも秋雲に教えてもらえば…!」


秋雲「それは無理かなぁ」


飛鷹「そんな…」


清霜「やっぱり秋雲も忙しいもんね」


秋雲「そうじゃないよ、素人が絵が描けるようになるのは長〜い時間が掛かるからねぇ」


飛鷹「イベントまでまだ日にちはあるわよ!?」


秋雲「たった数ヶ月じゃ無理無理。最低でも数年は覚悟しておかないと」


飛鷹「……」


清霜「飛鷹さん元気出して。そもそも清霜は目の前にいるでしょ?」


飛鷹「違う…そうじゃないのよ…」
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 20:57:41.21 ID:cHjmTwwaO
飛鷹「私がどれだけ…清霜を愛しているか表現したかった…誰にも負けない自信があったのに…」


清霜「飛鷹さん…」


飛鷹「私は…清霜が好き、愛してるわ。それを皆にも知らしめたかった…!」


清霜「うん、その気持ちが嬉しいよ。でも秋雲に頼んで無理ならもう仕方が無いから諦めよ?」


秋雲「いいや〜?秋雲さんは無理だなんて一言も言ってないよ?」


清霜「でも…絵はそんな簡単に描けないんでしょ?」


秋雲「確かに『絵』は簡単には描けないねぇ」
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 20:59:08.15 ID:cHjmTwwaO
秋雲「飛鷹さん、絵が描けなくても創作ができなくても参加する方法はあるよ」


飛鷹「本当に…?」


秋雲「それはね、ズバリ写真集!」


清霜「私…の……?」


秋雲「その通り!艦娘の写真集って物凄〜〜く需要あるからね!」


清霜「で、でも勝手にそんなことしていいの?清霜達の体って一応機密扱いじゃ…」


秋雲「背中のハードポイントは写らないようにして、清霜のコスプレ写真集ってことにすれば問題無し!」
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:00:43.80 ID:cHjmTwwaO
飛鷹「それでも万が一バレたら…」


秋雲「バレてもどうなるさ?核武装して狂ってた大本営はもう存在しないじゃん」


飛鷹「あ…」


清霜「私の…写真集……」


秋雲「どうする?もし本気でやるなら手伝ってあげるよ」


飛鷹「…やりたいわ」


清霜「飛鷹さん…」


飛鷹「お願い秋雲手伝って!私の清霜への愛を全て表現したいの!」


秋雲「よし、乗ったぁ!!全力でサポートしてやろうじゃんか!」
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:04:23.71 ID:cHjmTwwaO
ーー


龍驤「また揃って二人で休みやね」


清霜「ここの所よく休んじゃってごめんね…」


提督「謝る必要は無い。いくらでも休んでもらって構わないからな」


飛鷹「ありがとう提督!」


龍驤「書類では鎮守府外で一泊って書いてあるからそれは守ってな?」


清霜「大丈夫、ちゃんと一日で戻ってくるから」


飛鷹「さぁ行くわよ清霜!!」バタン


提督「…あの二人も順調そうで何よりだ」


龍驤「泊まり掛けでデートやなんてなぁ。ちょっと前の二人やったら考えられへんかったね」


提督「飛鷹も落ち着いたということか」


龍驤「飛鷹も黙ってたらかなりの美人やからね。きっと清霜もそれが分かってきたんと違うんかな」
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:05:43.00 ID:cHjmTwwaO
ーー


飛鷹「いいわ…絶景をバックにした清霜…最高……」ジュルッ


清霜「飛鷹さん、ヨダレを垂らす前にシャッター押して」


飛鷹「おっとと…そうだったわね」


清霜「そのカメラは秋雲に貸してもらったやつだから大事にしないとダメだよ?」


飛鷹「よく分かってるわ。秋雲は資料用に使ってるって言ってたけど、このカメラとんでもなく高いのよね…」


清霜「そんなカメラをヨダレまみれなんて…洒落にならないからね?」


飛鷹「分かってるわ…あ、その表情いい!!」パシャッ


清霜「もう…」
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:06:45.91 ID:cHjmTwwaO
飛鷹「ふぅ、少し休憩ね…」


清霜「大丈夫、疲れてない?」


飛鷹「可愛い清霜を見れば疲れなんて吹き飛ぶわ!」


清霜「やめてよそんな、恥ずかしい…」


飛鷹「清霜は可愛いの!これは誰が何と言おうと覆らない事実なの!」


清霜「もう分かったからぁ…」


飛鷹「あ"!!その表情…クる……!カメラぁっ!!」パシャパシャッ


清霜「……」
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:08:10.20 ID:cHjmTwwaO
ーー


飛鷹「ふーーー!むふぅーーーー!」


清霜「飛鷹さん興奮し過ぎ…」


飛鷹「清霜の裸…撮影……あ"っ!!」ブシュッ


清霜「もう鼻血出してるし…」


飛鷹「秋雲にどうせならR-18版も作ったらって言われたけど…これは…凄いわ!!」


清霜「…お風呂に入ってるだけだよ?鎮守府で一緒に入ってる時はそこまでならないよね?」


飛鷹「ホテルの…お風呂ぉ"っ!!」ダラダラ


清霜「…飛鷹さんが貧血になる前に撮影して」


飛鷹「うぅん…!!」パシャッ
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:09:34.64 ID:cHjmTwwaO
飛鷹「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ…!!」


清霜「ベッドでも…撮影するんだよね…」


飛鷹「清霜ぉ…!」


清霜「こんな姿…飛鷹さんにだから見せるんだからね…?」


飛鷹「あ"ぁぁぁぁーーーーー!!」


清霜「私の裸が色んな人に見られるのは恥ずかしいけど…清霜のコスプレをしてる一般人っていうなら…許容範囲だけどさ…」


飛鷹「ききききき清霜!手でこうやって隠して……!」


清霜「私の…ここを……?」


飛鷹「毛が!手からはみ出て……!!」


清霜「そ、そんな恥ずかしい写真撮ろうとしないでよ!!」


飛鷹「あ"あ"あ"あ"ぁっーーーーー!」パシャパシャパシャッ
722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:11:10.62 ID:cHjmTwwaO
ーー


秋雲「お疲れさま〜撮影どうだった?」


清霜「飛鷹さんが…」


秋雲「あーうん、あの様子見てたらなんとなく分かるよ」


飛鷹「……燃え尽きたわ」灰


秋雲「飛鷹さんが選んだ写真と、こっちでも良さそうだと思った写真をピックアップしてしておくから」


清霜「何から何までありがとう秋雲」


秋雲「いいっていいって!それより清霜の裸の写真秋雲さんも見るんだけど別にいいの?」


清霜「何か問題ある?」


秋雲「いんや〜別に何も〜」(やっぱこの鎮守府色々とぶっ飛んでるねぇ)
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:12:40.74 ID:cHjmTwwaO
秋雲「あとは印刷所にデータを送って、本が郵送されてくるんだけど受け取り場所はここだと不味いよねぇ」


清霜「あ、そっか…」


秋雲「まぁそこは秋雲さんがなんとかしておくから!ぜーんぶ任せておいて!」


飛鷹「頼りになるわ…」


秋雲「飛鷹さんは初参加になるわけだから何部用意しておけばいいかがちょっと迷うけど、売れ残らない程度にしておくよ〜」


清霜「本当にありがとうね秋雲!」


秋雲「いいってことよ〜あとはイベント当日までに体調整えといてね?」


飛鷹「善処…するわ…」


清霜「飛鷹さんが心配だよぉ…」
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:17:51.19 ID:cHjmTwwaO
ーー

ザワザワ


清霜「凄い…これがイベント会場…」


飛鷹「予想より人が多いわね…」


清霜「ここに居る人達…全員清霜の事が好きな人なんだよね…」


飛鷹「その気持ちは分かるわ。清霜はこんなにも可愛いんだもの!」


清霜「飛鷹さん人前で…っと危ない。今日はイズモマンって呼ばないといけないんだよね」


飛鷹「秋雲がその名前を用意してくれたのよ。サークルカットっていうのも用意してくれて有難かったわ」


https://i.imgur.com/P36wBWY.jpg


清霜「こんなイラストを用意してくれるなんて、流石は秋雲だよね!」


飛鷹「清霜もコスプレ売り子?ってやつで手伝ってくれるのも嬉しいわよ!」


清霜「自分のコスプレって何だか変だけど…もし本物だって分かったら大変なことになっちゃうもんね」
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:20:11.56 ID:cHjmTwwaO
「すいません一ついいですか?」


清霜「あ、はいどうぞ!」


「全年齢版とR-18版…」


飛鷹「セットだとお得なので是非二冊どうぞ!」


「おぉ、クオリティの高いコスプレ」


清霜「あはは…ありがとうございます」


飛鷹「この調子なら売れ残ることは無さそうね」ヒソヒソ


清霜「うん、良かったねイズモマンさん!」ヒソヒソ
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:23:10.04 ID:cHjmTwwaO
ーー
清霜写真集R-18版完売しました


飛鷹「…誰も来なくなっちゃったわね」


清霜「まさかR-18版だけが売り切れるなんて…」


飛鷹「二冊セットならお得で…皆一緒に買うと思ったのに…


清霜「みんなそんなにエッチなのが好きなのかな…」


飛鷹「需要は…あるわね…」


清霜「…でもこんなに売れたんだし良かったじゃないイズモマンさん!」


飛鷹「良くないわ…」


清霜「どうして?」


飛鷹「清霜の魅力は…こんなものじゃないのよ…」
727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:24:35.43 ID:cHjmTwwaO
飛鷹「もっと色んな人に清霜を知って欲しかった…成年向けだけじゃなくて、全年齢のも頑張ったのよ…」


清霜「…イズモマンが頑張ったのは私がよく知ってるよ。そんな落ち込む必要だなんて無いよ」


飛鷹「ありがとう…清霜…」


清霜「…もう帰ろっか?この辺りにデートできる場所って色々あるし…」


秋雲「帰るのはまだ早ーーーい!」


清霜「え…?」


飛鷹「あれは秋雲…?」
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:26:00.57 ID:cHjmTwwaO
「あれは伝説のサークルS.D.Sのオークラ先生!」


「今日は参加してなかったはずじゃ!?」


秋雲「R-18版が売り切れたんだって?オークラさんが支援物資を持ってきたよ!」ドンッ


飛鷹「その台車に乗った段ボールって…まさか中身は?」


秋雲「もちろんR-18版の写真集!」


清霜「どうやってその情報を知ったの?それになんで本が…」


秋雲「いやー一応SNSでチェックしてたんだけどさ、即効で売り切れって知って慌てて持ってきたんだよね。あとこの本は通販で(勝手に)売ろうとしてた分を持ってきたってわけ!」


飛鷹「秋雲…」


秋雲「チッチッ、ここではオークラ先生と呼びたまえ!」
729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:27:35.16 ID:cHjmTwwaO
「オークラ先生、どうしてここに!?」


「その人達の本をなぜ先生が?」


秋雲「あ〜…うんとね、イズモマンは私の後輩なんだよね」


飛鷹「…そうね、オークラ先輩にはお世話になってるわ」


「オークラ先生に後輩が!?」


「あの先生の後輩の本…中途半端な物じゃないはず!」ザワザワ


清霜「え、えぇ急に人が…!」


秋雲「このオークラ先生も手伝ってあげるから、残りを全部売っちゃうよ!」


飛鷹「…ええ!」
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:28:44.51 ID:cHjmTwwaO
ーー


秋雲「完売おめでとーー!いやぁ初参加とは思えない戦果だね!」


飛鷹「全部売れた…全年齢版も…」


清霜「秋雲が後から持ってきた本も相当量があったはずなのに…」


飛鷹「それもこれも全部秋雲のお陰よ、本当にありがとう」


秋雲「ん〜確かにさ、後半のブーストは秋雲さんの影響もあったけど、あの本を作り上げた飛鷹さん達が凄いんだよ?」


秋雲「全年齢版には清霜の魅力がこれでもか!ってくらい詰まってたし、R-18版なんかもう最高!」


清霜「飛鷹さんはそこまで頑張って撮影してくれたんだ…」
731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/06(金) 21:31:46.24 ID:cHjmTwwaO
飛鷹「私の写真で清霜の魅力が少しでも伝わったのなら勝ちね」


清霜「こういうのって勝ち負けで考えていいのかな…」


秋雲「艦娘それぞれってことでいいんじゃない?」


飛鷹「あ、そういえば写真集が売れたお金って私達が貰ってよかったの?」


秋雲「もち!二人のデート資金にでも使ってよ〜」


清霜「秋雲にはあれだけ手伝ってもらったのに。それなのにお礼が無いっていうのはちょっと…」


秋雲「じゃあさ、二人の馴れ初めとか聞かせてよ!次の本のネタにするから!」


清霜「そんなの面白い?」


秋雲「ロリコン女がロリっ娘を手込めにする話なんて面白いに決まってるじゃん!」


飛鷹「ロリコン女…」


清霜「飛鷹さんって第三者から見たら相当ヤバい人だって自覚してね」


飛鷹「はい……」


秋雲「さぁこの後は打ち上げだよ!パーッとやっちゃうから覚悟しててよぉ!」

ーー
732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/06(金) 21:33:19.13 ID:cHjmTwwaO
イラストは以前支援絵を描いて頂いた煮干さんから許可を得て使用しました。

それではまた…
733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/06(金) 21:41:01.84 ID:c70mXPa1O

もっと平和な日常みたいみたい
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/06(金) 21:50:51.80 ID:c9DPq1BGo
乙です!
ついに…一線超えたんだね…!
なんだろ娘をお嫁に出した気分だ…

あ、2冊セットの委託まだっすかね
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:45:42.25 ID:88ZmNXU00
あり得たかもしれないもう一つの事象

ーー


んぎゃおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーー!


提督「緊急事態か!?」


龍驤「なんや!?何の音や!?」


秋雲「あ〜心配しなくてもいいよ。今のはいわゆる断末魔ってやつだね〜」


龍驤「今のが誰かの声…?化け物の叫びとかそんな音やったで?」


提督「秋雲は何か知っているのか?」


秋雲「そりゃあ〜秋雲さんだもん。イズモマンこと飛鷹さんの叫びだってすぐわかるよ」


提督「イズモマン…?」


龍驤「あ、もしかして飛鷹が明日休日届け出してたのに関係してる?」


秋雲「その通り!まぁ説明するより見た方が早いだろうから一緒に飛鷹さんの部屋まで行こっか」
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:47:05.86 ID:88ZmNXU00
ーー


飛鷹「ひ、ひひ……」ヒクヒク


清霜「飛鷹さんしっかりして!」


提督「大丈夫か!?」


龍驤「飛鷹が泡吹いて倒れとる!?」


秋雲「うんうん、そりゃあショックだよね〜」


清霜「秋雲は飛鷹さんが倒れた原因が何か知ってるの!?」


秋雲「モチのロンだね」


清霜「だったら早く教えて!もし病気なんだったら霞に言って薬を…!」


秋雲「残念だけど飛鷹さんのソレは薬じゃ治んないかな」


龍驤「まさかまた精神状態が悪化したんか?」


秋雲「むしろその方がマシだったかもね〜」
737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:48:24.35 ID:88ZmNXU00
提督「飛鷹は本当に大丈夫なんだな?」


秋雲「そこまで心配するぅ?って思ったけどここはそういう鎮守府だもんね。わかった、ちゃんと説明するから」


清霜「こんなになってるのに大丈夫なの…?」


飛鷹「ひ…ひ……」


秋雲「明日は飛鷹さんにとってそれはもう大切な日だったのさ。それが原因で倒れちゃったんだよね」


龍驤「そんなに大事な用事なんか?」


清霜「私とのデートより大切なものがあるの…?」


秋雲「そーそー、デートなんかよりもずぅっっっと大切だね」


提督「飛鷹にとってそんなものが存在したのか…」
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:49:21.46 ID:88ZmNXU00
秋雲「提督達はさ、同人ってどれくらい知ってる?」


龍驤「…司令官がロリものの同人誌隠し持っとるレベルで知っとる」


提督「龍驤!?」


清霜「ぅああ…」


秋雲「それってオリジナルのやつ?」


龍驤「何かのキャラやったりオリジナルやったりしとるな」


提督「頼む…もうその辺りで……!」


清霜「こんなになってる提督って初めて見たかも…」


秋雲「ならサークルとかの話をしても大丈夫っぽいね。うん、じゃあ説明してくよ〜」
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:50:23.32 ID:88ZmNXU00
秋雲「飛鷹さんはイズモマンっていう名前で同人活動をしてたんだよね」


龍驤「飛鷹が…それは知らんかったわ」


秋雲「あ〜知らなくて当然だと思うよ。だって今回が初参加だし」


清霜「もしかして明日って…」


秋雲「そ、イズモマンのデビュー戦だったんだよね」


龍驤「デビュー戦って…そんな戦うわけと違うやろ?」


秋雲「いーやあそこは戦場だね。海の上とはまた違う…全てのオタクの為の祭典…戦場っ!」


龍驤「はぁ…」


提督「…俺は分かるぞ」ボソッ


清霜「飛鷹さんがそういう活動をしてるからって別に嫌いにならないのに。私には言って欲しかったな」


秋雲「いや〜あの内容だと言えないと思うよ」
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:51:24.70 ID:88ZmNXU00
秋雲「イズモマンさんはね、清霜の写真集で参加しようとてたんだよ」


清霜「清霜の…?そんな写真撮ったかなぁ?」


秋雲「撮られた覚えが無いってことは〜?」


龍驤「…隠し撮りか」


秋雲「その通り!」


清霜「飛鷹さん…………」


飛鷹「……」


秋雲「イズモマンさんは全年齢版と成年版の写真集、二つを用意してたんだよね〜」


提督「成年版ということは…」


秋雲「もちろんエチエチなやつ!しかもページ増量!」


清霜「……」


飛鷹「………………」
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:52:22.33 ID:88ZmNXU00
龍驤「なんとなく分かったで、その写真集に不備があって発売できへんようになったから飛鷹はあんな声出したんやな」


秋雲「う〜〜ん残念ながら外れかな。写真集は問題なく印刷されてるよ」


提督「じゃあ何が原因なんだ?」


秋雲「実はね、明日は清霜オンリーのイベントだったんだよ!」


清霜「清霜…オンリー…?」


秋雲「本や漫画や写真集。全部がぜーんぶ清霜のだけってイベント!」


龍驤「そんなんあるんやな…」
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:53:16.62 ID:88ZmNXU00
秋雲「艦娘ごとにファンはいるからねぇ。提督も確か軽空母龍驤の写真集持ってたよね?」


提督「…そうだ、あの写真集は龍驤オンリーで買った」


清霜「龍驤さんの前だよ…?」


龍驤「ごめん清霜…その写真集司令官とのプレイに使ってんねん…」


清霜「ど、どうやって!?」


龍驤「司令官がウチに入れながら写真集の方を見る…みたいな…」


秋雲「龍驤さんをオナホ替わりってプレイか!いや〜中々高レベルじゃん!」


提督「……」
龍驤「……」


清霜「うわ…ぅわあ……」
743 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:54:28.95 ID:88ZmNXU00
秋雲「…で、話を戻すけどイズモマンさんが倒れたのはそのイベントが例のウイルスで中止になったからなんだよね」


龍驤「はあぁぁ…成る程なぁ」


秋雲「さっき中止が発表されたんだよね。情報が出ると同時に参加者にメールが来て…」


提督「それを見た飛鷹があの悲鳴をあげたのか」


秋雲「イズモマンさんは死ぬほどこのイベントを楽しみにしてたからね。そりゃああんなことになるよ」


清霜「…本物がここにいるのに」


秋雲「いやいやいや!それとこれとは違うんだって、ねぇ提督?」


提督「……その通りだ」


秋雲「同人誌っていうのは欲望や妄想の塊なわけ!何をどうやっても本物とは違う!!」


飛鷹「秋雲の…言う通りよ……」
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:55:14.05 ID:88ZmNXU00
飛鷹「私は清霜に思いが通じた…でもそれが全てでは無いの…」


飛鷹「清霜のことが大好きだから…同人誌だって欲しかったの…」


清霜「喜んでいいのか凄く微妙なんだけど」


秋雲「喜んどいていいと思うよ〜」


提督「…俺はイズモマンの気持ちは分かる」


清霜「ロリコンはちょっと黙ってて」


提督「……」


龍驤「司令官…」


清霜「…とにかく、飛鷹さんとは色々話し合う必要があるってことは分かったよ」
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:56:38.55 ID:88ZmNXU00
飛鷹「ごめんなさい清霜…隠し撮りとか…色々と…」


清霜「…色々?」


飛鷹「清霜とシてる所とか…お風呂の様子とか…」


清霜「…お騒がせしてごめんなさい龍驤さん。コレはちゃんとしつけておくから」


龍驤「う、うん…」


清霜「飛鷹…イズモマン?これからたぁ〜っぷりお話…しよ?」


飛鷹「ふぁい……」

ガチャッ

龍驤「あのまま放っといてよかったんかな…」


秋雲「イズモマンさんにとってはむしろ良かったんじゃない?」
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/07(土) 19:58:04.19 ID:88ZmNXU00
秋雲「あ、提督ぅ〜秋雲さんオススメの極上ロリもの同人誌…欲しくない?」ヒソヒソ


提督「……」


秋雲「出てくる子みーんなまな板!本物のロリコン作家が描く超大作!これで抜けないロリコンは居ないね!」ヒソヒソ


提督「……」


秋雲「龍驤さんに見つからないようにコソッとあげるから」ヒソヒソ


提督「頼む」ヒソヒソ


秋雲「流石は提督!で、その代わりと言っちゃなんだけど…」ヒソヒソ


提督「あぁ、それくらいなら…」ヒソヒソ


龍驤「……司令官がロリコンなのは知っとるけど…でも浮気しとったウチは強く言えれへんわなぁ…」


秋雲「うしししし…まいどあり…!」ヒソヒソ


提督「これくらいなら安い…それより…」ヒソヒソ


龍驤「ウチ…こんな体しとってほんま良かったわ……」


ーー
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/07(土) 19:59:05.40 ID:88ZmNXU00
清霜オンリーは中止にならなくて本当に良かったと思います



それではまた…
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/07(土) 20:02:26.52 ID:QSu1WC37o
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/07(土) 20:10:51.63 ID:6pwtjwFoo
おつおつ
これはコンマ失敗しましたわ…
皆様も出来る範囲でお気を付けを…
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/07(土) 21:53:50.55 ID:c0+MPDX8o
ナマモノネタが黙認とはなかなか罪深い世界やなって…
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:20:34.87 ID:ScHfjfj60
少し、書き込みます


ーー


Y子「お姉ちゃん元気してる?」ガチャ


富士「そこそこね」


Y子「お、こんな時間からお酒だなんてご機嫌だねぇ」


富士「やっとこれが手に入ったから少し味見しようとしてただけよ。貴女もどう?」



Y子「あたしはワイン派だからね、お姉ちゃんが楽しみなよ」



富士「ならそうさせてもらうわ」
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:22:02.66 ID:ScHfjfj60
Y子「しかしお姉ちゃんってほんと絵に描いたように和風だよね。抹茶が趣味で日本酒好きでしょ?」


富士「私は生まれながらにしてそういう存在なのよ。貴女が捨てた名前が世界の破滅を望むように」


Y子「まぁねぇ…そうなんだけどさ」ジーッ


富士「…何かしら?」


Y子「お姉ちゃんの名前は富士。生まれながらにして大いなる力を持ってる」


富士「えぇ…」
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:23:26.24 ID:ScHfjfj60
Y子「富士というのはこの国にとって重要な名前であり重要な存在。山の名前にもなってるし」


富士「そんな当たり前のことを今更どうしたの?」


Y子「この国の…いいや、全ての艦娘の上にいるような存在のお姉ちゃんに聞きたいことがあるんだよね」


富士「何かしら?」


Y子「お姉ちゃんの出身地ってどこ?」


富士「…」


Y子「…」


富士「……」


Y子「……」


富士「………」


Y子「………」
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:25:12.92 ID:ScHfjfj60
Y子「ヘーイ富士、アーユーフロム?」


富士「…」


Y子「おー姉ーちゃーんー?」


富士「………」


富士「……」


富士「…」


富士「…イギリス」ボソッ


Y子「ダウト!はいダーウートーーー!」


富士「ちょっと待って…」


Y子「待ちません〜〜!エセジャパニーズのお姉ちゃんに弁明の余地はありませんーーーー!」


富士「違う、違うのよ…」
755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:26:56.72 ID:ScHfjfj60
Y子「そんなさ、わざとらしく和服なんか着ちゃってなんなの?ただの日本かぶれのイギリス人じゃん!」


富士「違うの……」


Y子「正直に言ってみなよ、抹茶なんかより紅茶の方が好きなんでしょ、ん?」


富士「そうじゃないの…」


Y子「あたし知ってるからね、金剛と紅茶会みたいなのちょくちょくしてるでしょ?」


富士「あれは紅茶会じゃなくてただのアフタヌーンティーで…それに金剛だけじゃなくて他の艦娘との交流もあるから…」


Y子「アフタヌーンティーって!あたし何も言ってないのに。こんなの自白と一緒じゃん!」


富士「違うの…私の話を聞いて…」
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:28:24.16 ID:ScHfjfj60
富士「私は生まれる前から名前が決まっていたの…だから私は富士を名乗れるし、そういう存在でいられるの…」


Y子「ふーん。まぁでもイギリス生まれなのには変わりないってことだね」


富士「……」


Y子「別に問題無いならさ、隠さなくても良かったんじゃない?」


富士「こうやって茶化されるのが嫌だったのよ…」


Y子「きひひひ!それが嫌だからずっと黙ってたのにね!」


富士「本編でこんなことが知られたら、どうなるかなんて分かりきってたもの…」


Y子「でも歴史というかその辺の知識が豊富な人だったらとっくに知ってたんじゃない?」


富士「……」


Y子「でもさ、こっちの歴史と四つの壁の向こう側の歴史とじゃ若干違ってるから、それを言い訳にはできたかもね」
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:29:49.88 ID:ScHfjfj60
Y子「お姉ちゃんの姉というか、先輩というか先人的なのって何?」


富士「…トラファルガー、それにナイル」


Y子「そこ。そこが大きく違う。あたしの知ってる名前が出てこない」


Y子「お姉ちゃんのルーツはロイヤル・サブリン改。腹違いの妹を含めるなら七人の妹が居る姉に当たる、そんな船を元に作られたはずなんだよ」


富士「…聞いたこともない名前ね」


Y子「あたしが知っててお姉ちゃんが知らない。ということは?」


富士「扉の影響…」


Y子「間違いなくそうだろうね」
758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:30:45.21 ID:ScHfjfj60
富士「この世界には貴女が言っている船が存在しない…その結果どうにかなったの?」


Y子「結果は変わらない。けどその過程が違ってしまってる」
富士「…貴女はどう思ってるの?」


Y子「あたしという存在を出現させるための帳尻会わせ。エンプレス・オブ・インディアがあたしの元だなんてカッコ悪いもん」


富士「その名前は分からないけど、確かに貴女らしくはないわね」


Y子「Yというものが存在する為には、ロイヤル・サブリン級が邪魔だった…か」
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:31:28.83 ID:ScHfjfj60
富士「貴女の名は富士型戦艦二番艦にも付けられている。本来なら私のように存在していてもおかしくないはず」


Y子「そうならなかったのはあたしの名前が付いた兵器が世界を滅ぼすから。だからあたしの名前にはそういう因果が廻るようになってしまった」


富士「……」


Y子「お姉ちゃんの名前は有難いと崇められ、信仰の対象にまでなってる。こんなのどうやっても悪い因果なんか廻りっこないもんね」
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:33:48.29 ID:ScHfjfj60
Y子「あたしの本体はなんでそこに気付かなかったんだろう。それが分かっていればお姉ちゃんと手を取り合うって結末もあったかもしれないのに」


富士「世界が多少変わっても、力に溺れてしまうということには変わりが無いのね…」


Y子「…色々とごめんねお姉ちゃん。あたしが名前を捨てる前にやったことは、あたしもやったことになるし」


富士「なんとも思ってないわ。こうやって可愛い妹とお喋りできているんだもの」


Y子「…やっぱりあたしも飲む。コップとか何か持ってくるからちょっと待ってて」


富士「取りに行かなくても…ほら、ここにあるわ」スッ
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/15(日) 20:35:37.65 ID:ScHfjfj60
Y子「あたしはこの名前を貰ってからまだ少ししか経ってない。だから知らないこともある」


Y子「そんなあたしに、これから色々と教えて欲しいな」


富士「ええ勿論よ」


Y子「…お姉ちゃん」


富士「分かってるわ。でもその前に」


Y子「うん」


富士、Y子「「…乾杯」」


ーー
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/15(日) 20:36:40.32 ID:ScHfjfj60
富士とY子しか出ないなら外伝でやるべきですね


それでは、また…
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/15(日) 20:57:42.16 ID:9OV3Iwoyo
おつおつ
…つまり龍驤みたいな出身地さgうわなにをするやめ
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/15(日) 20:57:59.73 ID:r/JGbOwJo
もっとみたいみたい
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/22(日) 02:29:28.95 ID:H+/CbiUoO
Each



「今日から晴れて鎮守府に所属や長かった訓練所暮らしとも、ようやくおさらばできて嬉しい限りやで」

ガタンゴトン

「あんな閉塞的な所におったらストレスが溜まってしゃあないわ。有給休暇が貯まり次第に全部消化したろ!」



◯「………」

「向かいに座っとる龍驤はなんか雰囲気が軽そうやな。同じ龍驤やからウチには分かるで」



◯「ふぁ…」

「ここは電車の中やのにあんな大あくびしよってしゃあない奴やな」

ガタンゴトン

「電車…そういえばウチはなんでここに座っとるんや?」



「他にお客さんもおらんようやし一体どうなっとるんやろ?」


ゴーーーー

「あ、トンネルに入るんか」




ガタンゴトンガタンゴトン
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/22(日) 02:32:05.03 ID:H+/CbiUoO
Rapid



◯「ふぁぁほんまダルいわ。なんでウチが朝から出やなあかんねん」



◯「鎮守府での訓練とか出撃がこんなにチョロいとは思わんかったわ。これやと訓練所の方がしんどかったで」



◯「あれだけ手抜いても怒られへんとはホンマにええ鎮守府に恵まれたわ」

ガタンゴトン

×「うんええで、ほな待ち合わせはいつものホテルでな

◯「あの龍驤なんちゅう電話してんねん。一応ここは公共の場やで」



×「よしほな次はコイツに……もしもし」

◯「二股かいな、しかも同じ日に違う相手と会うとかアイツ終わっとるな」



◯「でもこんな貧相な体を好きになってくれるマニアは貴重や、キープしときたいって気持ちは分からんでもないわ」

ゴーーーー

◯「トンネル…そもそもウチはどこに向かってるんやったか?」




ガタンガタン、ガタンガタン
767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/22(日) 02:35:27.78 ID:H+/CbiUoO
Limited



×「よっしゃこれで次の休みは朝から晩までハメ放題や、今から楽しみやわぁ」



×「もうじき田舎に異動になるし、遊び倒してからやないと損やからね」



×「あのクソ司令官に色仕掛けが通用しとったらウチは異動せずに済んだのに。こればっかりはしゃあないか」



×「こんな楽しいことを知ってしまったからには、もう止めるなんて考えられへんからね」

ガタンガタン

×「ウチはなんでこの電車に乗ってるんや。目の前に不快なもんが座っとるし次の駅で降りたろ」



龍驤「……」

×「なんやねんあの龍驤ガイジとか終わっとるやろ。さっさと解体されろや」



×「左腕と左脚が無いとか生きとる意味ないやろ、死んだ方が社会の為やっていうのがわからんのか」



龍驤「………」

×「今の聞こえてたか。こっち見んなよキモいねん」



×「ほんま気分悪いわさっさと着けへんのか」

ゴーーーー

×「ここにきてトンネルとか最悪や…」




ガタンゴトン…ガタンゴトン…
768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/22(日) 02:39:21.02 ID:H+/CbiUoO
Ordinary



龍驤「一体何が起こってるんや、向かいに座っとったのは昔のウチと違うかったか?」



龍驤「龍驤なんか他にもおるけどアイツは間違いなくウチや」




龍驤「あ、え、ウチいつの間にこっちに座っとるん?」



龍驤「向かいの龍驤がおった所にウチが座って、元々ウチがおった所には…」



□「………」

龍驤「え、ええ?」

ガタンゴトン……

龍驤「あの右腕は義手で右脚も作りもんや」



□「………」

龍驤「なあアンタなんでそんな死んだような目をしてんの?」




□「………」

龍驤「ウチが言うてること聞こえてるなら返事してくれへん?」



□「………」

龍驤「何か答えてや嫌なこと想像してしまうやろ」



□「………」

龍驤「右側はいつケガした?」



□「………」

龍驤「どれくらい前から四肢を欠損してんの?」




□「………」

龍驤「アンタは……未来のウチなんか?」




□「………」

ゴーーーー

龍驤「トンネル…。ああそうかウチは…」




ガタン…ゴトン…ガタン…ゴトン…
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/22(日) 02:41:01.39 ID:H+/CbiUoO
Slowly



□「………」



□「………」



□「………」

ガタン…ゴトン…

□「………」



□「………」



□「………」



□「………」



□「………」



□「………」



□「………」

ゴーーーー

□「………」





ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン
ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン
ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/22(日) 02:44:13.61 ID:H+/CbiUoO
ガタンゴトン



・「あれ、いつの間に電車に乗ってたんだろ。無意識に乗ってたらちょっと怖いな」



・「今日は何曜日だっけ、休みだったら最悪だ…」

ガタンゴトン

□「………」

・「あれ向かいに座ってるのって」



□「………」







・「お**さんどうしてそんな所にいるの?」



Forwarding
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/22(日) 02:48:17.47 ID:H+/CbiUoO
End point?



End point does not come



Sin is never forgiven



From y to r...
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/22(日) 10:53:32.92 ID:qceKnl4Fo
トンネルは扉で世界を渡ってることの暗喩なのかな…?
四肢を欠損してる□は違う世界線の龍驤で・はその龍驤の子?
y to r はyou to relatedであなたから血縁へ?

あの世界で罪を償えない、償おうとしないままだったら龍驤から子へと罪は受け継がれてたってことなのかな

あの世界のその後で復帰した龍驤が死傷して罪は残ったまま子に受け継がれたとかは嫌だなぁ
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/22(日) 12:57:18.88 ID:Ff7xbej9o
単純にYの人からから龍驤へじゃないの?
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/22(日) 13:08:40.95 ID:qceKnl4Fo
各駅、快速、特急、普通、鈍行ときて最後に輸送で終点は来ない罪は許されないって語り
だから輸送列車は乗ってる人から乗ってる人に罪が受け渡されるのかなと
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/03/22(日) 18:34:18.89 ID:SkwEfY560
◯、×は昔の龍驤じゃないの?
扉が開いて世界が変わったから性格も変わった?

あと名無しと◯、◯と×みたいに2人の龍驤が出てきてたのに□の時は他の龍驤が居ないのもなにかあるのか
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/03/25(水) 02:01:37.42 ID:RueD5HeKO
終わり?



そんなの無いよ



自分のしたことくらいわかるでしょ



きひ、きひひひひ………
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/25(水) 07:44:06.27 ID:Q/hNIjW+o
何故Yさんはそこまで許さないのだろうか
、それともYさん以上の何かが許さないのだろうか
Yさんが落ち度のある人を死ぬまで(もしくは死んだ後も)つつき続けるだけの性悪女とは思えぬ
自責の念に駆られて死を選ばせたら魂が貰えるみたいな、キリスト教的悪魔に近い存在なのかね
名前を呼んであげたら嬉しくなってるあたり、信仰も関わってるだろうし
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/25(水) 12:49:23.41 ID:18FVSQ1NO
そもそも血族に受け継がれてその後の運命を左右するような許されない罪ってなんだんだろう

社会的に罪を裁かれて罰を受けるのは法があってその基準に則っているから

龍驤があの子を結果的に見殺しにしたことが、あの子の家族と和解しても償うことができず子供にまで受け継がれる罪なのだとすれば
海月姫だって深海棲艦として誰かを殺めた罪があの子に影響を及ぼしたとも取れるのでは
父親の深海提督だって人間側と深海側の提督として戦闘でひとを殺めるを指示を出してきてる

人や艦娘が戦闘で他人(人や深海棲艦)を殺めたりするのは罪にならない?
タシュケントみたいに私利私欲からくる仕事で殺めるのは罪になる?
日常生活の中で人が人を殺すのは罪になる?
深海棲艦が人を殺すのは罪にならない?
どのような存在がどの生命までを殺めるのはセーフ?
その境界線は何がどう決めている?

一律で間接的にでも生命を殺めることが罪であれば罪のない存在なんていない
動物はどんな存在であれ自分のために他の命を奪って存在しているから
そこに時代によって変わる人の倫理感が当てはまるのであれば、それは世界の仕組みとしての罪ではなく、ただ誰かが主観で罰を与えているだけなのでは
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/25(水) 13:24:10.39 ID:18FVSQ1NO
だから罪ではなくて誰かにかけられた呪いといったほうがしっくりくる
もしくは自分自身が作り出した許されないという幻想に振り回されてる
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/03/26(木) 21:54:33.89 ID:/Juigski0
「きひひ、何か色々と騒がしいみたいだけど、そういうのは大歓迎だから」


「一応言っとくと龍驤についてとかは簡単にネタバレしないよ。あたしは軽い女じゃないし」


「でも本編が終わったっていうのに、こんな所を見てる物好きには少しくらいサービスしないとね」


「よーく考えてるみたいだね。けどそれは的を得て無いって所かな」


「言ってることは事実、ただそれだけ。答えが証明結果だというなら、答えに必要な仮定や式を導けていない」


「でもこの答えにたどり着くことは不可能だと思うよ。本編に種は蒔いてあるけど小さいし、龍驤の過去について誰も当てられなかったんだから」


「龍驤のときはそれなにり種は蒔いてたって自覚はあるんだよ?なんであそこまで提督に依存するのか…いやぁ一人くらい当てられるかと思ったんだけどな」


「ヒントはこれくらいかな。どうしても知りたいっていうなら教えてあげなくもないけど、そんなのつまんないでしょ?」



「こんなあたしに教えてくれって…きひひひ!あたしを拒んだお前らがそんなこと言うわけないもんね!」


「ま、精々頑張ってよ。それじゃあね〜」
781 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/26(木) 22:00:30.74 ID:sOLl0YuWo
やーん、Y様のいけずぅ
782 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/26(木) 22:32:12.52 ID:dCYw0gAWO
自分のしたこと、だから過去の龍驤の行動に関わってるよね
海月姫の子供の件はすでに語られてるからこれではない
そんでもって本編では意図的な「殺し」に関わってるのは罰が降りかかる
あとYさんには名前が重要

龍驤が男遊びしてた時に孕んで中絶した名もなき水子かな
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/26(木) 22:46:35.73 ID:9vYoo7URO
いや中絶疑惑はあったけど結局妊娠はしてないはず
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/03(日) 12:07:59.45 ID:51wVxtPAo
続き待ってるぞぉ〜
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/03(日) 12:42:23.88 ID:JdI97Rweo
Yさんの名前呼んだら続き来ないかな
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/03(日) 12:44:51.84 ID:dJ/V9LUqO
書きたいものと方向が違うんだろうけどやさしい世界が見たいんだよなぁ
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/10(日) 23:25:39.65 ID:TDpnU3nDO
>>663から
 
 
球体内部から露出した八島と目が合った


そう理解した瞬間私は反射的に砲台の射手席から飛び出していた


その直後に砲台が爆発、私は吹き飛ばされ危うく要塞から落下する所を島風が受け止めてくれた


島風「大丈夫!?…いったい何が…」


【そんな…切り札が…これじゃあ…】


狼狽する富士さんの声が聞こえた。そして…


八島『ようやく脱出できたよ。ありがとうねぇ』


まだ燃えている砲台の残骸の上にその火を纏うように彼女は居た


八島『ふん…あたしも慢心してたって事かな、あんな死に損ないの亡者共に動きを抑えられるなんてねぇ』


島風「やあぁッ!」


島風が飛び蹴りを放つもあっさりと叩き落とされてしまう


島風「ぎゃん!」


「島風!」


八島『邪魔だよ、雑魚が』


そこに音も無く背後から奇襲を仕掛ける早霜さん、しかしそれも防がれカウンターを食らってしまう
788 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:28:03.97 ID:TDpnU3nDO
 
 
早霜「がふっ…」


八島『不意討ちしか能が無いのかな?来るって解ってればそうそう食らわないよ』


「もう止めてください!」


私は砲を八島に向けて構える、それを見ても八島は全く動じる気配は無い。私の力では威嚇にもならないようだった


八島『さぁて…何を狙ってたのかは知らないけどこれでチェックメイトだねぇ』


「っ…」


八島『おっと、ここでただ消してしまってもつまらないか…。ねぇ朝潮、ちょっとお話しようか』


「何を…」


倒れた島風を踏みつけにし、早霜さんを横目で見ながらそう言って笑う。早霜さんはそれを見て歯噛みをする。下手な動きをすれは島風は無事では済まないだろう


八島『朝潮?あんたが今ここに居る理由、消える前に教えてあげる』


ドクン


私がここに居る理由…それは私が売り飛ばされ、そして人を殺したから


八島『きひ、そうだねぇ。ならそもそもどうしてそんな事になったと思う?』


ドクン


聞いてはいけない、そんな予感がする。しかしここで拒否しても島風は殺される。結局はその時が早まるだけだとしても迂闊な事は出来ない
789 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:29:36.59 ID:TDpnU3nDO
 
 
八島『あの人間…島風提督だっけ?安心していいよ。あいつは正しく善良な人間だった』


「…」


それは解る。そうでなければあの五月雨や島風だってあそこまで慕ったりはしない。今現在の彼こそが本来の島風提督なのだろう


八島『ならどうして朝潮を始め艦娘を売り飛ばすなんて悪事に手を染めたのかなぁ?』


島風「…っ!」


島風が泣きそうな顔になる。島風提督がそうした原因となったのは自分のせいだと責任を感じているのは知っていた


早霜「…その口振りだとまるで貴女がそうさせたと言っているように聞こえるわね」


八島『きひひひ!ご名答!』


「は…?」


八島『四肢を失った島風を救う為にはお金が必要だった。艦娘を買いたがってる人間も居た。でもあの人間は最初は踏み止まってた』


島風「え…」


八島『だからさぁ…あたしが背中を押してあげたのさ!魔が差したってやつみたいにさぁ!いや神の導きかな?』


「……どうして…」


島風「こいつが…?」


八島『何事も無く丸く収まるなんて観客は納得しないんだよ!それをあいつは邪魔ばっかりしてさぁ!』
790 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:31:12.58 ID:TDpnU3nDO
 
 
「邪魔…?もしかして…」


八島『あたしから力を奪っただけじゃ飽き足らず、あたしのシナリオにケチばっかりつけてくるようになった!忌々しい!』


「貴女は…」


八島『あぁでもあれは良かった。あの深海棲艦…潜水新棲姫。あいつが頭をぶち抜かれた時…あの艦娘の絶望の叫び…きひひひ』


「な…!」


八島『…なのにあそこでもフォローのつもりか知らないけど救いやがった…。何度も何度も何度も何度もあたしが決定した運命を覆してきやがって…!』


「…私がここに居る理由はじゃあ…」


八島『あ?あぁ…あんたもあのままだったらその存在自体フェードアウトしてただろうねぇ。たまーに話には上ってもいずれは忘れ去られていくだけの過去に』


忘れ去られて…司令官が私を忘れる…


八島『それをあいつは…ここに救い上げた。まぁそれはそれで?また新しい絶望を考える楽しみが出来たからいいけどさぁ』


そうして八島は私に向かって腕を伸ばす。その手のひらに凶悪な力が充填されていくのを感じる


八島『今回の絶望はあいつに。苦労して救った朝潮が敢えなく殺される。あいつが見たのは消え行く朝潮の魂、生まれ変わる事も最早不可能と…きひ』


「…く」

791 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:33:52.76 ID:TDpnU3nDO
 
 
島風「ねぇあんた」


八島『あ?』


背後から声を掛けられ振り向いた八島。その後頭部に砲弾が吸い込まれていくのが妙にスローモーションで見えた


ドゴォン!


八島は完全に不意を突かれていた。私や島風、早霜さんには全く付け入る隙は無かった。しかしそのどれとも違う方向からの奇襲だった


ドゴォン!ドォン!


更に別の方向からも砲撃、対してダメージは与えられてはいないようだが爆発自体は八島の動きを阻害している


「あれは…連装砲ちゃん?島風?」


島風の連装砲ちゃんが八島に対して十字放火を仕掛けている。そういえば島風は接近戦ばかりで武装を出してはいなかった。違う、既に出していたのだ


ヒュンヒュンヒュン


そこに風を切る音がして何かが宙を走る


「あれは…糸?…あっ」


糸が八島の足に巻き付き更に自由を奪っていく。早霜さんの使っていたあの糸だった


島風「切り札はここぞで使うものだよ!」


早霜「朝潮!今しか無いわ!」


「っ!…はい!」

792 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:37:02.06 ID:TDpnU3nDO

 
私は再び砲を構え、八島に向ける。威嚇にもならない私の砲、避けるまでもない私の攻撃


八島『雑魚共が姑息な真似を!そんな攻撃があたしに効くか!弾が尽きた時がお前らの命が尽きる時だ!』


そして私は撃った。私達の攻撃は八島には通じない。奇襲により多少のダメージは与えられてもそこまでだ。だけど―――


ギュウウウウン!


八島『な!?』


八島を中心にまるでブラックホールのような黒い力場が発生し八島を拘束した


八島『何だこれは!ぐぅう!』


「…思っていました」


八島『あぁ!?』


「富士さんもそうですが貴女も対人戦には慣れていませんね?」


八島『は?あたしが…あたしがどれだけの人間や艦娘を殺したと思ってる!』


「それは圧倒的な火力や攻撃範囲で蹂躙するだけのものですよね、二人の戦い方を見ていて解りました」


早霜「確かに単体としてもその強さは私達では敵わない…だけど割りと隙は見付けられていたわ」


「だから陽動やフェイントには引っ掛かり易いと思いました。だから…」


八島がずっとこちらを観察しているのには気付いていた。この切り札もただ普通に使っては防がれるか避けられてしまう可能性が高かった
793 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:39:54.96 ID:TDpnU3nDO
 
 
だから砲台には自前の砲弾をあたかも切り札のように装填。そして実際には無力な砲台を破壊させ自らの勝ちを確信した八島は必ず油断すると踏んだのだ


八島『このぉぉぉ!艦娘ごときがあたしを!がぁぁぁ!何でだ!何で動けない!?』


【―――その弾は貴女にも抵抗は不可能よ】


「富士さん」


少しは休息が取れたのか顔色が幾分良くなっている富士さんが私達の後ろに立っていた


八島『こいつは何なんだ!愚姉!』


【―――それはあの人が作ったものよ】


八島『!!!』


【…と言っても持ち込んだのは設計図だけだったけど。み…とある協力者に設計図を渡して頼んでみたら見事に再現してくれた。紛れも無く天才ねあの子】


「結局何だったんですか?あの弾は。当てさえすればとは聞いていましたが…」


【未来…過去かしら?とにかく今の世界には存在しない技術により作られた特殊砲弾…対象をその空間ごと抉り取り別次元に放逐する】


島風「SFの武器みたいな?」


【そうね、だけどその世界でも正式採用はされなかったけれど、砲弾ひとつに莫大なコストが掛かりすぎると計画は凍結されたわ。幾つかの試作品は封印され、そして設計図だけが残った】


「あの…抵抗出来ないというのは…」

794 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:46:39.62 ID:TDpnU3nDO
 
 
【…その弾の設計者は…艦娘、富士の要塞艤装を…そして空中要塞八島を作った、その他にも数々のこの世界ではあり得ない兵器を作った人物…その因果はその名を持つ者にこそ効く】


八島『…』


その人物の話が出ている間の八島はこれまでとは比べ物にならない憎悪と、そして僅かに恐怖を浮かべていた


【今の私達には貴女は倒せない、だからこうして追い返す。だけどここには並大抵では来る事は出来ない。例え貴女でも】


八島『…時間稼ぎのつもりか』


【そうね…今は無理だけどいずれは対抗出来るようになって見せるわ】


八島『はっ…、いいよ。今回はあたしの敗けだ、認めてあげる。でも次は無い。あたしも今度は準備してお前らを消しに行ってやる』


【…簡単にはいかないわよ】


八島『…だけど置き土産くらいはしていくよ』


「何を…」


八島『忘れるな、世界はあたし達を―――』


そうして八島はこの世界から放逐されたのだった
795 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:49:57.86 ID:TDpnU3nDO
 
 
それから少ししてボロボロになったY子さんが戻って来た。八島が居なくなった事により、空中要塞もあの死者の群れも消えたようだった


『いやぁ…死ぬかと思ったよ…数の暴力って怖いねぇ』


見た目はボロボロだが割りと元気そうで安心した


再び拠点となる家を修復する作業に富士さんが取り掛かるが消耗もあってあまり進んではいない。しばらくは野宿になるだろう


「あの…Y子さん」


『無事で良かったよ朝ちゃん。頑張ってくれたみたいで。…その…ありがとね、身内というか同一存在の不始末というか…』


「聞きました…力の事…」


『…』


その言葉を聞いたY子さんは俯いて私と目を合わせようとしない。出来ないのか


「聞かせてください」


『…あいつが本格的に干渉を始めたのが何時かはあたしは知らない、あたしという存在が生まれたのはそれほど前じゃないから』


『気付いたらあたしだった、そんな感じで、もう一人のあたしが色々やってるのを見てるだけだった』


『あいつは楽しそうだった。人の運命を狂わせたり、争いを助長したり、悲劇的な事を好んで行っていた』


『だけどあたしにはそれの何処が楽しいのか解らなかった。だから…』


『あいつが干渉した結果を更に干渉して覆そうとした。だけど起こった事を無かった事には出来ないから本当に難しかった』
796 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/10(日) 23:54:42.97 ID:TDpnU3nDO

 
 
『そしたらあいつは激怒してあたしを消そうとした、あたしは消えたくなかった』


『だから…』


機械的に感情を殺し話すY子さん。まるで懺悔をしているようで


「これまであった事で良い結果になったのはY子さんが?」


『全部じゃないよ…もちろん悪い結果の全てにあいつが関わってる訳でもない。そもそも個人である以上全てを関知なんて出来やしないんだ』


「私が…売られたのは」


『っ…ごめんなさい!』


土下座でもしそうな勢いで謝るY子さんを遮り


「それをしたのはあっちであって貴女ではないんですよね?」


『それは…そうだけど…』


「今更…私にY子さんを憎めとでも言うんですか?それこそ怒りますよ」


『うぅ…』


彼女は決して言わないがおそらくはこれまで何度も救われているのだ、私だけではなく、消えてしまうはずだった漣さんや、新棲姫さん、それ以外にも沢山


それでも溢れてしまう。一人の手のひらでは全ては救えない。例え運命に干渉出来てもそれは変わらないのだ


そしてそれ以上にこの世界は残酷なのだと私達は知っている


仮にそんな力が存在しなかったとしてもこの世界は私達を―――


この世界はあたし達を


―――憎んでいる
797 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/10(日) 23:56:34.66 ID:TDpnU3nDO
ここまで
ごめん…なさ…
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/11(月) 00:06:27.08 ID:Kx99jNGDo
おかえりぃ!
こんな時だけど光明が…後光が…
Y子さん関係の深堀本当に助かります、ありがとう!
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/11(月) 00:17:40.76 ID:+oLAMpVuO
お久しぶりですね…
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/18(月) 09:07:21.08 ID:IdvMNZ3tO
こっちに書くのもあれだけど、本線のあれは流れ的に最後にアレをさせるのが狙いなのかしら
どちらにせよオチ的には少なくともつながるし、アレを起こして、というか起こしてしまうことでソイツが出てきて……が狙いかな?どうやっても今のままじゃ無視できないし
作者もバッドエンド普通に書く人なのでどうともいえないけど

何のことかまったく分かりませんがね
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/18(月) 09:52:52.12 ID:AXzbe2S1o
こちらで書かれた短編の登場人物である「・」がかすみであるとしたら、
霞の死はおそらく何をしても防げなかった?
「□」に龍驤がなってしまうのは規定路線?
他と違って「□」と同時に他の個体が存在しないのは生きていないから?
「トンネル」と「罪」が何を示しているのかが分からん
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/18(月) 10:19:50.59 ID:70j+KmSRO
あーそういうことね完全に理解した(わかってない)

今の二人合わせて十全の力でないようなので出来るか気になるが
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 01:31:25.65 ID:/MxgXHWUo
本編でもう一度アイツを呼ぶ必要があるんかな
804 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 19:53:12.69 ID:V8lm4V7DO
>>796から
 
 
八島との戦いからしばらくして


修復された部屋で私達はまたいつもの様にくつろいでいた


あれからも現世では色々な事があった


反大本営派と大本営との対立が本格化する中で鉄の海域に鎮座していた繭がついに孵化した


それは世界中の深海棲艦のほとんどを吸収して生まれた深海棲艦の完全体であるという


「新棲姫さん…」


新棲姫「なんだ?」


「深海棲艦って虫なんですか?糸出したり繭から産まれたり…」


私にはたまに失言をする癖があるのを忘れていた。涙目の新棲姫さんにすごい睨まれてしまった…


そしてその完全体…現世では成虫と呼称されている辺りやっぱり


新棲姫「あ"?」


…その完全体にはおかしな事に一人の少女の人格が宿っていた。かつて龍驤さんが助けられなかった人間と深海棲艦との間に産まれた少女が


何故陸地で亡くなったはずの少女の人格が遠く離れた海の繭に宿っていたのか…。新棲姫さんはあくまでも仮説だがと前置きをして


新棲姫「件の少女は電車に引かれバラバラになった。もしかするとそこに大本営か組織が関わっていたのかもしれない」


「まさか…遺体の一部を回収して…?」


新棲姫「何らかの実験にそれが使われ、別の深海棲艦となっていて、それが繭に吸収されたという可能性だがどうだろうな」

805 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 19:54:46.83 ID:V8lm4V7DO
 
 
そして完全体の脅威を感じた富士さんがついに現界する決意を固めた


【あれほどの力を持った存在をあの子が放っておくとは考えられない。奪われる前に何とかしないとならないわ】


『お姉ちゃん…気をつけて、多分あいつはそれも狙って…』


【えぇ…私がそう考え動くのを待っているのかもしれないわね。だけど動かなければ結局はあの成虫は奪われる、小さな女の子の魂なんてあの子にとっては何の障害にもならない】


「富士さん…」


【…また、会いましょう】


そう言って私達一人一人を抱き締めてから富士さんは現世へと向かうのだった


そしてその懸念は見事に的中してしまっていた


漣さんの協力で建造ドックを作動させ艦娘、富士を完成させようとしている最中、それは来た


よりにもよって今現在現世で一二を争う強さを誇る武蔵さんの身体を乗っ取った八島が


「間に合わなかった…!」


新棲姫「あのままドックを破壊されたら富士は…」


『漣!!!』


突然Y子さんが声を張り上げた。その声が届いたのかどうか武蔵さんに倒されていた漣さんが僅かに反応した


『無理矢理だけど材料はそろってる!お願い!』

806 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 19:56:19.24 ID:V8lm4V7DO
 
 
「Y子さん…?」


ガコン


ギギィィィィ…


何処かで扉が開く様な音が聞こえた


画面向こうの武蔵さん…八島が苦しみの声を上げる。その身体が薄れて…いや、武蔵さんの中に居る八島が薄れていっているのが判る


その八島が何かをしようと手を翳す





『させるか!』


私達には何をしているのかまるで判らなかったが、画面向こうの八島がこちらを、Y子さんを睨み付けている


―――くそっ、邪魔しやがって―――


そう言っている様な気がした


そして八島の気配が消えていく


何処からか光が漏れているのか画面向こうの様子がよく見えなくなっていく


『…お姉ちゃん』


新棲姫「そうか…あの光が例の扉か…私達には変化は無いようだが」


『…あの扉は現世の存在にしか影響は無いよ。少なくともそういう願いをわざわざしない限りは』


そして世界は一部書き変わった

807 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 19:58:03.41 ID:V8lm4V7DO
 
 
艦娘には富士守りという物があり、その守りを身に付けた艦娘は旗艦である限り沈む事は無いという


荷電粒子砲八島は消え、代わりに核弾頭に置き換わっていた。それも充分脅威ではあるのだが


「富士さんは…」


『まだ…完全には消えてない…でも何処に居るのかまでは…』


―――また会いましょう


富士さんはそう言ったのだ、嘘にしないでと私は願った


その後、漣さんとまるゆさんの働きにより核は停止され、いよいよ大本営も後が無くなった


そして繭から生まれた成虫に少女の人格が宿っている事に気付いた龍驤さんが接触、なんと和解する事に成功した


深海海月姫も姿が変わってしまったとはいえ子供が戻って来た事で態度を軟化させているようだった


これで龍驤さんの過去も精算されたかに見えたが、少女と再会した龍驤さんは償いにと鎮守府を出てその子の側に着くようになってしまった


「また…」


新棲姫「しかも今度は戻るつもりが無いと来た。全く…漣とタメを張るトラブルメーカーだな」


呂500「あの子の事は今の龍驤さんの原点です…簡単にはいかないんですって…」


早霜「罪を…償うか…でも」


「えぇ、今居る人達を蔑ろにしてまでする事ではありませんね…」
808 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 20:00:01.53 ID:V8lm4V7DO
 
 
しかし龍驤さんにとっては再会してしまった以上ごめんなさい、許します、では済まないのだろう


そして龍驤さんに会えない期間が続く中司令官は心労から倒れてしまう。そんな司令官を支えようと必死な朝霜さんも精神に変調をきたし足を切り落としてしまった


そんな状況に漣さんは激昂し、あちらの新棲姫さんを伴って龍驤さんを殺そうとする


新棲姫「間違いだとは思う。だがワタシが拒否したら漣は一人でいってしまうだろうな…。と言っても説得する暇も無い。こういう時の漣は行動が早いからな…」


ならせめて側に居られるようにと協力するのは解ると悲しそうにこちらの新棲姫さんは言った


しかしやはり漣さんは冷静さを欠いていたようだった。龍驤さんの側にはすっかり懐いた完全体が居る、あっさりと気絶させられてしまう


漣さんから状況を聞いた龍驤さんはついに司令官の元へ帰り、ようやく元の鞘へと戻ったようだった


病院にて追い付いて来た漣さんの殺さずに済んだという表情が忘れられない、誰よりも嫌っていて、それでも決してそれだけではないという複雑な感情を垣間見た気がした


そして大本営は荷電粒子砲を失い、切り札であった信濃さんのクローンも完全体に全滅させられ瓦解、新大本営として幹部さんが指揮を執っている


ようやく状況が落ち着き始めた。司令官の横須賀鎮守府への栄転の話が出ていて司令官は悩んでいるようだった


だが…困難はまだ終わってはいなかった

809 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 20:02:15.43 ID:V8lm4V7DO
 
 
整備士さんの所の深海吹雪が暴走、拘束されていた旧大本営の艦娘を脱走させたのだ


しかもその艦娘達は


「霧の艦隊…?話には聞いた事はありますが実在していたんですか?」


レ級さんのような超重力砲、攻撃を反射するというバリアを使うらしいが私は詳しくは知らない


新棲姫「…常々おかしいと思っていたが旧大本営の技術レベルはアンバランス過ぎるな」


「え?」


新棲姫「艦娘自体も大概だが、使う武器そのものは人類がかつて使っていた兵器の延長に過ぎない」


新棲姫「かと思えばSFの世界かという程のトンデモ兵器を隠していたりどうもな…」


新棲姫さんにも確信は無いのか歯切れ悪く続ける


新棲姫「それにだ、仮に扉の力だとしても何も無い所から兵器が出てきたりはしない。これまで話にも上らなかったが設計者は誰だ?それに組織の傀儡は元々は整備士だったらしいが今は誰だ?」


ひとしきり疑問を吐き出して満足したのか新棲姫さんは黙りこみ再び思索に耽った


『…』


その間Y子さんが苦し気な表情をしていたのが印象に残ったが私では何を聞けばいいのか解らず沈黙するしかなかった

810 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 20:04:45.63 ID:V8lm4V7DO
 
 
脱走した霧の艦娘というのはどうも不完全なようで超重力砲は使えないらしかった。それでも反射するフィールドだけでも充分脅威だ。何せこちらから攻撃が出来ないのだから


しかし状況は反逆の首魁であるはずの深海吹雪の暴走で一気に動いた


あろうことか説得する為に現れた整備士さんを撃ち殺し発狂、深海化し味方であるはずの霧の艦娘達に襲い掛かった。その力は凄まじく次々と自ら脱走させた艦娘達を殺戮していく


しかしその隙を突いたレ級さんの超重力砲が暴走する深海吹雪をついに消し飛ばした


「やりましたね…。あれ?あんな所に深海棲艦が居ます」


新棲姫「いつか聞いた精神汚染するという奴と同じ姿だな…アイツの仕業か」


『…違う』


「え?」


『深海吹雪の力はあんな奴を遥かに超えてる、精神力でも。簡単に汚染なんて出来やしない』


新棲姫「じゃあ…」


『あいつだ…まだ消えてなかった…しかも…見付けた…お姉ちゃん…』


そう言った直後


ガコン…ギギイイィィィ…


また扉が開く音が聞こえ、そして気付いた時には状況が一変していた


深海吹雪が居た場所にはあの―――繭から生まれた完全体が居た、しかも遥かに巨大でオーラのようなものまで纏っている

811 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 20:07:11.92 ID:V8lm4V7DO
 
 
『世界の滅びを願ったか…しかもあいつ…それに便乗してあの身体を手に入れた…一応、ここからは名前は伏せてくれる?』


名は力…そして鎖。いつか言っていた言葉を思い出す。そうか…あの人が…


新棲姫「…あの化け物の中に奴が居るのか?」


『そしてお姉ちゃんも…捕まってる…』


「このままじゃ…どうしたら…」


『こちらからじゃどうにも…いや、ちょっと待って、そうか…』


何かを考えているY子さんを尻目にまたも状況は動いていく、私達には何も出来ない…


完全体が核を手に入れようと向かっている中、レ級さんと暁さんがそれを爆破、そして荒潮が完全体に何かを仕掛け―――時が止まった


「え?」


新棲姫「あれが荒潮の能力か、本当にアイツらはチートだな」


半ば呆れた声を出す新棲姫さん、止まった時の中でこれでもかと防弾や魚雷を投げつけている荒潮


『だけどこっちにも好都合、あの二人が鍵だ。今のお姉ちゃん一人の力じゃキツいから呼び込むのを手伝った』


「あの二人?」


『あれは言ってみれば外の世界の力…あいつにもそれなりに有効だから』


画面が切り替わりその姿が映し出される、そこにはレ級さんと、肌が白く染まった暁さんがまさに決着を付けている所だった

812 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/19(火) 20:15:33.18 ID:V8lm4V7DO
 
 
荒潮の攻撃の影響か身体半分を失い、レ級さん達の攻撃でついにその元凶は今度こそ消えていく。やけにあっけない気もするが…


新棲姫「これでやっと終わったんだよな…」


「でも…富士さんが…」


島風「あの人消えちゃうの?まだちゃんとお話した事無かったのに…」


早霜「…彼女も自らの罪を精算する機会を探していたのね、出来たら色々参考にさせて貰いたかったのだけれど…」


口々に言う私達の言葉を聞いていかにも仕方無くという風にY子さんが言った


『…あーもう世話の焼ける愚姉だよ全く。まだ隠居するには早いんだってば』


そうしてY子さんが何かをしたようだった。後に建造ドックで呆然と立ち尽くす富士さんを見付けた私はY子さんにお礼を言うと


『別に…勝手に満足して消えるなんて許さないだけだよ、まだ…やらなきゃならない事は沢山あるんだから』


とそっぽを向いて言うのだった。漣さんの龍驤さんに対するような複雑な感情をY子さんからも感じ、私は微笑ましいような、不安なようなそんな気持ちになるのだった
813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/19(火) 20:17:20.06 ID:V8lm4V7DO
ここまで
次辺りで
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/20(水) 00:50:08.10 ID:8fLyvzrOo
おつおつです
こっちがあって本当に助かってます……
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/20(水) 14:43:04.29 ID:D22k0svHO
本スレにも書き込んだけど、最後の富士っぽいやつの台詞の一文字だけを読むと
早苦気ずい掌
で早く気付いてなのには何か理由がある?

早で二文字使ってるのと掌がてのひらって読まないならこじつけ
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/20(水) 15:00:40.28 ID:jBF1rFvyO
日向が提督送り返す時に言ってたのが
我らふ…ってあったけどこれは富士を倒すものか、または富士を信奉する語が入るんだろうか
でも日向の主張が兵器が感情もっちゃダメってのは富士の艦娘はただのモノではないって主張と反しているし、やっぱり倒す方向なんだろうか
旧大本営派(というか日向個人の)富士に対するスタンスでわるいひとの有無が分かるかもしれないと思う
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/20(水) 15:59:59.88 ID:uFqERg8gO
>>815
よく気付いたと思う
実際すごい

んで読み返したんだが、そのご-その2の>>130でY子が「愚姉」と言ってる所
この単語前シリーズざっと調べた中では『Y子』さんは言ったことが無かったんです
こいつYSMちゃうか?
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/20(水) 22:19:08.99 ID:iRG6gBGVo
そのごpart1と2で富士の発言がガラッと変わってるんだよなー
そ気になるとこではあるんだけどミスリードだろうか
819 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/20(水) 23:13:11.59 ID:FSUyRoqoO
足りなかったものpart10ラストで
「これからウチが話す内容にタイトルをつけるとしたら……うん、これやね」

龍驤「足りないもの」
龍驤「まだ、足りないもの」
龍驤「もう少し、足りないもの」
龍驤「足りなかったもの」

今のタイトルは
漣「足りないもの、そのご」

本編が龍驤によって語られたものだとするとこの物語は龍驤が語ることができない?
考えすぎかな?
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/21(木) 10:16:23.97 ID:8sq/e06/O
現行の方で出てるけどやっぱりG呼ぶしかない?
仕掛けてきそうな残ってる芽で夕雲や深海仏棲姫もいるっちゃいるけどこいつら影も読み取れるないし…
821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/23(土) 00:19:03.23 ID:2hlHeXURo
アイツ勿論嫌いだけどああいうかまってちゃんクソガキムーブはちょっと可愛いんだよな
調子乗りそうだからこっちで言う
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/23(土) 00:24:39.70 ID:r7uiuW68O
わかる
なんというか「わからせ」たい
823 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:08:21.89 ID:8IHg2OgDO
>>812から
 
 
繭から生まれた完全体や大本営、組織、深海吹雪、そして八島…だいたいの問題が一応の決着を見て現世は忙しなく動き続けている


時の止まった世界で私達はそれを眺める


現界した富士さんが司令官達に伝えた深海吹雪が残した世界滅亡の願いもあちらの新棲姫さんの機転で回避出来そうだった


新棲姫「さすがはワタシだな、あの富士ですら思い付かない事に容易く辿り着く」


『いやぁ…お姉ちゃんは割とポンコツだからねぇ』


これでようやく平和になるのだと安心した私だったが


Y子さんはそれからというもの考え込む事が多くなった


そしてある日、私達全員を集めて突然こう言い出した


『…あたしは、行こうと思う』




824 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:10:30.89 ID:8IHg2OgDO
 
 
「…行くって何処へですか?」


『現世に』


「どうして…」


早霜「説明はしてくれるのでしょう?わざわざこうして集めたのだから」


『もちろん』


そうしてY子さんは話出す


『まずひとつ、世界の滅亡は一旦は回避された、遥かな未来に先送りにするという方法で』


『確かにあの場面ではあれ以上の策は無かった、ひとつの犠牲も出さないという意味では。でも…』

新棲姫「一旦はと言ったな、つまりまだ…」


『願いは今もまだ発動し続けている、その先送りした時に辿り着くまで』


「そんな…」


『逆に言えばそれまでは絶対に世界は滅びないとも言える』


「だったら何も問題は無いのでは…」


『なら聞くけど、例えば人間が100万人死んだら朝ちゃんはそれで世界が滅んだと思う?』


「っ!それじゃあ…」


『そう、結局は今までと何も変わってはいないんだ。100万人は極端な例だけど、世界が滅ばない程度の何が起きるかは判らない』


以前には2000人の犠牲者が出たり大本営が町ひとつを消したり、そもそもこれまでの深海悽艦との戦いでどれだけの人や艦娘が亡くなったのか…
825 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:12:12.53 ID:8IHg2OgDO
 
 
『もう一人のあたし…扉の力でも消しきれないのは証明されてる。何かの拍子に名前を呼ばれないとも限らない。そんな時お姉ちゃん一人じゃ心許ないし…それに…』


「それに?」


『……杞憂、なら…いいけど、あたしには多分やらなくちゃならない事がある』


まただ、あの八島も、そしてY子さんも浮かべていたあの表情…畏れのような…


「あの人…ですか?」


『っ……うん、そう…。造り出し、名前を与え、因果が生まれた…もし…今の世界にも居たらきっとまた…』


「もし?」


『判らない…あたしからは何も読み取れない、もしかしたらお姉ちゃんなら判るかもだけど…』


何だかY子さんが普段よりも更に縮こまって見えた。それほどに怖いのだろうか


『……何かあった時…見守るだけじゃ駄目なんだって、見に染みて解ったんだ…だから…』


Y子さんは私達を見回し、言った

『出来たら一緒に来て欲しい、いざという時にあたしに力を貸して欲しい…お願い』


そうして頭を下げた

826 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:13:41.08 ID:8IHg2OgDO
 
 
「私はもちろんY子さんに協力しますよ、頼まれなくったって」


『朝ちゃん…ありがとう』


早霜「…私は朝霜姉さんにもう一度会えるなら…」


呂500「ろーも…でっちに…」


呂500さんはちらりと早霜さんを見る。自分を殺した張本人が側に居る、とはいえその目には恐怖は無かった


再会して少し後、早霜さんは呂500さんを呼び出して二人だけで何かを話していた。その時にはもう一度殺されるんじゃないかと怯えていたが、Y子さんが説得してやっと話し合いに応じた


詳しい内容は知らないがどうやら土下座までしたらしいとY子さんがこっそり教えてくれた


呂500さんは客商売をしているだけあって人を見る目はかなり鍛えられている。早霜さんが以前とは違うと理解してくれたようだった


島風「あたしも!提督やさみだれに会いたい!」


新棲姫「ワタシ達は戻れるのか?しかし…既に…」


新棲姫さんや島風、呂500さんは既に傀儡として生きている、そこに私達が加わったらまたややこしい事にならないだろうか


『そこなんだけどね…、いやぁホント…これはあたしも予想外だった』


新棲姫「勿体振るな」


『あの人間…整備士の再現度は半端じゃない、本当に同じ魂を再現している、本人は全然気付いてはいないみたいだけど』

827 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:15:55.52 ID:8IHg2OgDO
 
 
「つまり?」


『統合可能という事、これが別個体なら無理矢理乗っ取るとかして人格崩壊しかねないんだけどね』


「でも私や早霜さんには身体が無いのでは…それに整備士さんはもう…」


『生きてるよ、あの人間もある意味不死の存在なのかもね…全くこれだから人間が一番…』


『…そして整備士は今、朝潮と早霜を再現してる。どんな考えなのかは知らないけど、ここに便乗させて貰う』


私も甦れる?司令官や皆に会える…?


「……ぁ、っ…会いたい…です…会って謝りたい…私…」


『…うん、だけど…ひとつだけ、朝ちゃんだけじゃなくて皆にもこれだけは忘れないで欲しいんだ』

真剣な目で私達一人一人を見、そして言う


『肉体を得るという事はまたあらゆる欲望や痛みや苦しみも得るという事。現世は誘惑に満ち溢れてる、下手をしたらまた繰り返してしまう可能性だってゼロじゃない、それでも…』


それでも…戻りたいか、とY子さんは問い掛ける


私は……

828 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:19:06.85 ID:8IHg2OgDO
 
 
『なんてね』


「え?」


『さっきも言ったけど、あたしはもう見守るだけなのは止めたんだ…そんな事にはさせない。誰だって幸せになっていいんだ』


「Y子さん…」


『…そしてこの五人には力を貸して欲しい。いざという時…魂の世界での生活は無駄にはならないはずだから』


『そして…』


その後の言葉は私達には届かない小さなもので、聞き返しても答えてはくれなかった


―――そしてもし、あたしが駄目な時には、残った全てを、そしてあたしの代わりに―――

829 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:22:39.61 ID:8IHg2OgDO
 
 
それから、私達は現世へ旅立つ準備をしている


と言っても持っていける荷物など無いので身一つ、というか魂一つ


そして私達は大きな建物の前に集まっている


それは私達にとっては慣れ親しんだ鎮守府と同じ外観だった


『念の為にこの場所は残しておこうと思う。けど引っ張り上げる者も居なくなるから辿り着けるかは本人次第になるけど』


「必要にならなければいいですね…」


『そうだね…』


早霜「それを防ぐ為に行くのでしょう?」


島風「早く行こうよー」


目の前には白いトンネルのようなものが開いている、丁度人ひとりが通れる大きさだ。ここを潜れば次に目覚めた時には身体に入っているらしい


新棲姫「ふ…ふふ、もうすぐ会えるな…漣」


呂500「でっちー、待っててね…」

『じゃあまずは…島風から』


島風「はーい!朝潮!皆!またね!」


そして島風はトンネルを潜り、その姿が見えなくなった、そうして次に呂500さん、早霜さん、新棲姫さんとトンネルに入っていく


そうして最後に私とY子さんだけが残った

830 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:25:14.48 ID:8IHg2OgDO
 
 
『最後は朝ちゃんだよ』


「はい」


トンネルの前に立つ。正直、不安が無い訳ではない。憎しみ、欲望、痛み、悪夢、また苦しみの世界に行く事になるのかと


だけど…そればかりではなかった事を私は知っている、私はひとりじゃない。またこの目が濁ってそれを忘れても、きっと思い出させてくれる人が居る


今の私はそれを信じよう


そうして私はトンネルに飛び込んだ、次に目覚めた時には、まずは司令官に謝らないとなと思いながら

831 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/30(土) 20:27:42.19 ID:8IHg2OgDO
 
 
『最後はあたしか…こんな事はそう何度も出来るとは思えない、きっと…頑張らないとなぁ…』


そう呟いて彼女はトンネルを潜り、そして白いトンネルは消えていった


ここは三途の川、死者達の集まる世界


その外れに建つ今はもう無人の鎮守府


その一室、提督の執務室に当たる部屋の机には名簿があった


Y子、朝潮、潜水新棲姫、島風、呂500、早霜、富士、■■


最後の名前は塗り潰されていて読み取る事は出来そうになかった
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/30(土) 20:38:17.26 ID:8IHg2OgDO
ひとまずこれで終わりです
もしも復活が無ければ三途の川鎮守府エンドになっていました
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/30(土) 21:09:02.17 ID:m5udF7HOO
乙でした
かなり本編に影響与えてたよね
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/30(土) 21:17:03.59 ID:qJnR1XI+o
お疲れ様でした
それぞれ掛け合いが違和感なく本編と地続きにかんしられるのがすごかった
その後が今拝めているのも貴方のお陰と言っても過言ではないです
ありがとうございました!
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/30(土) 21:17:35.33 ID:qJnR1XI+o
かんしられる✕
感じられる○
836 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/31(日) 17:25:04.10 ID:ln8Y0OyDO
 
 
夢を視た


元々あたしは夢を視ない、休息する事はあってもそれは単なる停止状態であり人のような眠りとは根本的に違う


ならば今見ている光景は何なのだろう


あたしという存在が生まれる前の、記憶ではなく記録か


その世界は―――


837 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/31(日) 17:26:06.74 ID:ln8Y0OyDO
 
 
空一面をはしる無数の光の帯、それが海上に鎮座する巨大な球体――繭に突き刺さる


穴だらけになった繭から悲鳴が辺りに響き渡る、そして憎しみに満ちた怒号


その声を掻き消すように更なる光を放つ巨大な空中要塞


ささやかな抵抗として繭から触手が伸ばされるがそれも光に飲まれ蒸発させられてしまう


また悲鳴、それはいつしか泣き声になり、すすり泣きになり、そして何も聞こえなくなった


その日、世界から深海棲艦は消えた


長かった戦いに勝利した艦娘達は喜びの声を上げる、これからは平和な世がやってくるのだと、沈んでいった仲間にやっと報いる事が出来たのだと


―――しかしそうはならなかった

838 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/31(日) 17:28:17.45 ID:ln8Y0OyDO
 
 
その時になってやっと気付いたのだ。艦娘は、自分達は戦う以外の生き方を知らない、教えられていなかったと


そして人間もせっかく手に入れた力を手放す事を拒んだ


大本営はそれまで蓄えた力を使い、軍事的に国を、そして世界を支配しようとした


大本営に付き従う艦娘達、それに反発する陣営に属する艦娘達とそして他の国が入り乱れた争いが始まった


深海棲艦という人類の敵に対して一丸となって戦う、それが建前だとしてもまだ纏まりがあった


だが、共通の敵が居なくなった今、それぞれがそれぞれの正義を掲げ、もはや敵味方の区別を付けるのは困難となっていく

839 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/31(日) 17:29:29.21 ID:ln8Y0OyDO
 
 
戦いこそが技術の発展を促すと誰かが言った


ある意味それは事実で、敵を殺す為の兵器の開発だけは目まぐるしい進化を遂げていく


その兵器を使い同族を、同胞を殺していく艦娘達


しかし艦娘達に迷いは無かった、これこそが自分達の存在意義なのだと胸を張る者も居た


そうしていつしか、敵を倒す為でも、平和を勝ち取る為でもない、ただただ戦う為に戦うという目的も無い戦争に変わっていった


戦いに疲れた大本営の上層が停戦を唱えた時、決定的な事態が起こる


大本営側の艦娘達は停戦派の上層部を粛清、そして反発する陣営側にも同じ事態が起こる、まるで示し合わせたかのように


艦娘の誰かが言った


「今更怖じ気付きましたか?でも途中下車は許しませんよ」


「私達に戦う以外を教えなかったお前らが悪いんだ」


「軍艦らしく戦って沈むなら悔いは無い」


「戦争が終わったら私達は捨てられる、そんなのは嫌」


「あのスリルを知ったら普通の生活なんて…あは」

840 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/31(日) 17:30:43.21 ID:ln8Y0OyDO
 
 
延々と続く戦争の中で人間達はどうなったのか、和平を望む者も粛清を恐れ口をつぐみ嵐が過ぎるのをじっと待つしかなかった


決して止む事のない嵐を、止む事を望まない者達がそれを許さない


「これが…我々が彼女等を兵器扱いし続けた報いか…」


銃口をこめかみに当てた幹部服の誰かが言った


「艦娘達は敵を求めておる、儂等はせめて彼女等を退屈させない敵を用意するくらいじゃな…」


傀儡を従えた老人が呟いた


「力が欲しいというのならば私が与えましょう、あなたの望むままの力を。さあ、どんな力がお好みです?」


男の声で、女の声で、子供の声で深海棲艦の声で、機械の声で、それは言った。その姿は――――


――――――――――

841 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/31(日) 17:32:08.61 ID:ln8Y0OyDO
 
 
『―――――っ!ぁあっ!は…ぁ』


目が、覚めた


そこは横須賀鎮守府のあたしにあてがわれた部屋


ベッドの上で身を起こす、すごい汗だ、お風呂借りないと…


『夢か…』


もはや喪われた世界の、喪われたはずだ


あたしがあの世界で覚えている最期の場面


1000はくだらない荷電粒子砲部隊とそれを迎え撃つ巨大空中要塞、半壊した海上移動要塞、衛星兵器から降り注ぐ光の束


『……頭、いたい』


……少なくとも、あの世界はもう終わったはずだ、今のあたし達には何の関係も無い、はずだ


もしも、終わっていなかったら?


もしも、あの世界で勝利者が生まれていたら?


もしも、次元を超えるだけの技術力を獲得していたら?


更なる敵を求めて、戦い続ける為に?


『はっ…まさかね…』


ベッドから立ち上がり姿見に自分の顔を映す


『ひっどい顔』


ふと、鏡に手を伸ばしてみる

842 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/31(日) 17:33:33.17 ID:ln8Y0OyDO
 
 
どくん


何故だろう


どくん


鏡に手が近付くにつれて


『はっ…はっ…』


鏡に映る自分の顔が歪んで見える


どくんどくんどくん


鏡の向こうに映る自分の部屋の壁が崩れてその向こうから何かが入って来ようとしている


鏡に映る自分の顔が真ん中から割れ、違う顔が覗いている、それでも手は止まらない


どっどっどっどっどっどっ


そして遂に鏡に手が触れ――――

843 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/31(日) 17:35:21.29 ID:ln8Y0OyDO
 
 
ガチャ


「Y子さん?なにし―――」


『うわああああああああ!!!』


「きゃああああああああ!!?」


思わず飛び退いたあたしは後ろの壁にヒビが入る勢いで頭をぶつけてしまう


『お…おおおお…』


「だ…大丈夫ですか?」


痛みに踞るあたしに朝ちゃんが心配そうな声を掛けてくる


自分の顔に触れてみるがちゃんとくっついてる、割れてない


『大丈夫…だと思う。頭へこんでない?』


「…ふむ、ちゃんとまるいです」


朝ちゃんに頭を差し出すとそっと撫でてくれる、自分が驚かせてしまったという負い目があるみたいだった


「朝食にと思ったんですが、何だかひどい顔してますね。寝起きが悪かったんですか?」


『あー、まあ、大丈夫、大丈夫大丈夫。じゃあ行こう!』


朝ちゃんの背中を押して部屋を後にしようとする、その間にちらりと鏡の様子を見たが特に何も変わった所は無かった

844 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/05/31(日) 17:37:21.10 ID:ln8Y0OyDO
 
 
「何だか汗臭いです」


『く…臭くない!』


「先にお風呂に入ってきたらどうですか」


『背中流してー』


「お断りします」


『そんなー(・ω・`)』


「そういうのって漣さんのネタじゃないですかね…」


バタン
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ぴしり
845 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/31(日) 17:40:56.50 ID:ln8Y0OyDO
たまに何か思い付いた時に短いですが
846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/31(日) 19:03:27.16 ID:MjSlPTzgo
おつです
最悪を回避できてよかった、もう大丈夫……のはず
847 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/02(火) 13:29:15.27 ID:WN5Qc+HEO
お疲れ様です、そしてありがとうございました

ここの話が無ければY子やS朝潮達の復活はありませんでした

本編をこう見てこう解釈したのかと、勉強になる部分もありました。また何か思い付けば自由に書いて下さい
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/02(火) 13:37:23.30 ID:WN5Qc+HEO
Y子「あ、あー…聞こえる?」


Y子「一応あたしからもお礼くらい言っておかないとね」


Y子「名前を捨てるなんてよく思い付いたよね。そのお陰であたしはこうやって存在してる」


Y子「お姉ちゃんや××とは違う。あんたがあたしを生み出したんだ」


Y子「誇っていいんだよ?何しろある意味で神を創造したとも言えるんだし」


Y子「…なんてね。あんたはそんなこと望んで無いもんね」


Y子「あたしを生み出したのは気紛れだったかもしれない。けどその気紛れがこっちの世界を変えたんだ」


Y子『ある意味での創生者に感謝の意を込めて』


Y子「…はぁ〜あ、あたしらしくないことしちゃったかな」


Y子「以上Y子でした。また、気が向いたらお願いね?」
849 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/02(火) 21:18:59.91 ID:e2A2GAuDO
こちらこそありがとうございます
SSなんて書いた事も無かった人間をその気にさせてしまう魅力がある作品です
先の展開を安価で考えるという形が良い刺激になったのだと思います
Y子さんに関しては作者様のYとはやはり性格が違うという所からああいう形になりました
途中長い間を開けてしまい申し訳なく思いましたがひとまず終わらせる事が出来たのは作者様と読んでくださった読者様のおかげです
本当にありがとうございました
850 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:29:12.07 ID:6RwVJW5hO
ミーンミンミン……


Y子「あっっっっっっっつい……」グデー

S朝潮「だらしないですよ、Y子さん」カキカキ

Y子「だってさ……こんな暑さ、経験したことないんだもん……」グデー

S朝潮「あっち側がおかしいだけです。年中こたつを出してるってどういうことですか」カキカキ

Y子「……朝ちゃん、アイスとってきて」グデー

S朝潮「忙しいので」カキカキ

Y子「はいはい……今度は捨てないでね」

S朝潮「勿論です……この絵を見せたい人が、いるので」カキカキ



提督「…………朝潮、まだか?」トキワシティジムリーダー

S朝潮「動かないでください」カキカキ

851 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:30:29.95 ID:6RwVJW5hO

S朝潮「……はい、できました」

提督「どれどれ……うん、上手いな。よく描けてるよ」

S朝潮「ふふっ、ありがとうございます」

提督「秋雲が太鼓判を押すだけある……絵、続けてみたらどうだ?」

S朝潮「絵ですか?」

提督「俺だけじゃない、他のみんなや風景、花や食べ物……いろんなものを描いてみるといい」

S朝潮「司令官以外のものを……」

提督「朝潮は、俺やこの鎮守府以外のことを、あまり知らないだろ?だから、絵を通じて、いろいろなものに触れたらいいんじゃないかと、思ったんだが……」



S朝潮「なるほど、つまり司令官は、私にかまってほしくないと……」

提督「ち、ちがう!誤解だ!!俺でいいなら、いくらでも題材に……」ワタワタ

S朝潮「冗談ですよ。落ち着いてください」

提督「……言うようになったな、朝潮」

S朝潮「ふふっ、司令官を、信頼してますから」

852 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:31:31.59 ID:6RwVJW5hO


S朝潮「でも、知見を得ることは、大事かもしれません」

S朝潮「私が知っていたのは、司令官と、暗い牢獄と、痛みくらいですから」

提督「……朝潮」

S朝潮「足りないもの、知らないことに嫉妬して、傷つけて、奪って……そんな自分が嫌になって、死にたくなって……」

提督「…………」




S朝潮「この前、夢を見たんです」


853 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:32:21.58 ID:6RwVJW5hO


そこは、戦場のようでした。

あちこちで銃弾が飛び交って、たくさんの人が死んでいました。

そして、残された人が、叫んでいました。

痛い、苦しい、死なないで、置いていかないで……

そんな地獄の中に、私はひとりで立っていました。


まわりの人を見ると、それは、私の知っている人ばかりでした。





漣さん。


霞。


朝霜。


そして、龍驤さんも…………




854 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:33:25.34 ID:6RwVJW5hO


ふと、銃声が聞こえました。

見上げると、死んだ目をした司令官がいました。

駆け寄ろうとした瞬間、背後から艦娘があらわれました。



『これでもう、私を見放したり、しないですよね?』



司令官の背後にいたのは、








禍々しいほどの重装備を付けた、朝潮でした。

855 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:34:48.47 ID:6RwVJW5hO

誰かが言いました。

欲しいものがあるなら、奪うつもりでいけばいい、と。


私は思いました。

司令官に見放されないためには、力を手に入れればいい、と。




その朝潮は、私の理想に叶う朝潮でした。

見放されることのない力を手に入れ、私しか見ない司令官を手に入れた。



でも、この寂しさは何なのでしょうか?

この虚しさは、私が望んだものなのでしょうか?



すると、朝潮と司令官は、どこかへ行ってしまいました。

追いかけますが、その背中がどんどん遠くなっていきます。

届かなくなる背中に、声にならない声で、私は叫びました。






「死ぬのだけじゃ、あんまりじゃないか」



856 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:36:01.80 ID:6RwVJW5hO



提督「………………」

S朝潮「こんな話をして、ごめんなさい」

提督「いや……いいんだ、朝潮」

S朝潮「でも、思ったんです。以前の私なら、夢の中の私のように、力を望んで、司令官を奪おうとしていたんじゃないかって」

S朝潮「でも、それは狭い世界で、何も知らない私だからで。だから、もっとたくさんのことを知りたいんです」


S朝潮「司令官のこと、花のこと、鎮守府の外のこと……いろんな幸せのこと。いまはまだ、足りないものばかりの私ですが、いつか、きっと」

857 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:36:47.40 ID:6RwVJW5hO


Y子「ほいっ」ピトッ

S朝潮「わっひゃあちべたいっ!!?!?!??!」ビクゥッ!?

提督「……Y子」

Y子「朝ちゃんが忙しいからアイス持ってきてあげたよ。ほい、提督も」

提督「すまん、ありがとう」

S朝潮「なにするんですかY子さん!」ウガーッ

Y子「ん〜?だって朝ちゃんがまた難しそうな顔してるから」

S朝潮「こっちは真剣に悩んでいるというのに!!」

Y子「……う〜ん」

858 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:37:59.67 ID:6RwVJW5hO


Y子「ねぇ朝ちゃん、朝ちゃんはさ、絵を描くの、好き?」

S朝潮「…………急に何を」

Y子「好きかどうかって聞いてるんだけど?」

S朝潮「……まぁ、好き、だと思います」

Y子「じゃあさ、アイスを食べるのは、好き?」

S朝潮「……好きです」



Y子「じゃあ、それでいいんじゃない?」

S朝潮「…………?」

Y子「誰を殺すとかさ、傷つけるとかさ、そんなことより、面白いことをしたほうが楽しいじゃん?」

Y子「ダメなところをなくすとか、足りないものを補うとか、そんなこと考えてもつまらないでしょ?」

Y子「別に目を背ける必要はないけど、もっと面白いことをしようよ。というか、させてくれるでしょ?」

提督「……もちろんだ」

859 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:39:02.81 ID:6RwVJW5hO


S朝潮「…………じゃあ、司令官」

提督「ん」

S朝潮「私、もっと絵を描いてみたいです。どこかに連れて行ってください!」

提督「よし、今度休暇をとって、どこかに出かけようか」

S朝潮「あっ、でしたらみなさんを連れて行きたいです!」

Y子「いいじゃん、ピクニック的なやつ行こうよ。あたしダルいから行かないけど」

S朝潮「なんでですか!」



オ、ナンヤオモロソウナハナシシテルヤン?

ピクニック?デシタラサザナミモ

ナニナニー?ナニカタノシソウー!

ワイワイ……


860 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:40:24.39 ID:6RwVJW5hO


S朝潮「私」



星野源「私」より着想
https://youtu.be/ayZw1d2O6Rc
861 : ◆lxd9gSfG6A [saga]:2020/06/04(木) 12:46:56.79 ID:OL+mLMt3O
スレ検索が面倒なのでいったんあげ

そういえば本編では「その後」が始まってますが、外伝は新スレあるのでしょうか?
862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 14:36:41.19 ID:YaFtDswrO
おつでした
その「ご」ならこうなっていたかもしれぬ……
外伝新スレは>>1が建ててくれれば嬉しいなあ
863 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 14:37:52.84 ID:YaFtDswrO
S朝潮の夢が本編になっていたかもしれぬ、です言葉が足りてない
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 15:35:40.39 ID:exWL6/zDO
おつです
そういえば朝潮も「戦う事しか知らない艦娘」の一人だった
でも本当の平和になって鎮守府というものが必要無くなったら一人では済まないかもしれない…提督も含めて
865 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 14:41:49.94 ID:ZRn8r0f/O
数々の作品をありがとうございます

外伝の新スレですが、外伝その2か、足りないものその後外伝のどっちかで建てておきます

自分で書き込んだものもありますが、まさかほぼ1スレ分も使うとは思っていませんでした
本当にありがとうございます
866 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/06/05(金) 14:46:22.41 ID:ZRn8r0f/O
八島「きひひひひ、たまにはあたしもサービスくらいしとかないとね」


八島「神を超えた存在であるあたしが来てあげたんだから、もっと喜びなよ?」


八島「…きひひ、やっぱり安価じゃないとあたしの魅力は伝わらないかぁ」


八島「お前には感謝してるよ?だってあの扉の向こうに追いやってくれたんだから!」


八島「きひひひひひひひひひ」


八島「…よくもやってくれたよ。あの恨みは一生忘れない」


八島「あたしは世界を滅ぼすのは確定事項。それなのにこの八島を負けさせやがって」


八島「いつかお前らに復讐してやる」


八島「不意にあたしを呼んでみろ、全員ブチ殺してやるからな」


八島「……はぁ〜あ、もう時間かぁ」


八島「以上八島でした。また、勝負しようよ。まさかお前らが勝ち逃げなんてしないもんねぇ?」


八島「きひ、きひひひひひひ…」
867 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 15:08:37.34 ID:mnUMDs/2o
ほんにこの性悪は…
868 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 19:21:02.68 ID:FgKiEG5bo
はいヤシープ洗濯脱水乾燥
869 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 19:22:10.64 ID:+w50OPfSO
やっしーも男作ればいいのに
870 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/05(金) 21:03:14.13 ID:DzjX24sDO
 
 
「そっちはどう?」


「居ないわね」


「何処に行ったんだろ」


「そっちを探してみよう」


複数の足音が遠ざかっていくのを聞きながら私はダクトの中で身を震わせた


「見付かったら死ぬ…!」


どうしてこんな事になったのか、私が何をしたというのか


―――自分の胸に、いえ、下半身に聞いてみたら解るんじゃないですか?―――


「だって他に方法があると思う!?」


―――幾らでもあるんじゃないですかね―――


「ぐうぅ…!」


私は深海綾波、艦娘綾波に寄生した名も無き深海棲艦。流れ流れてどういう訳か大本営で綾波として働く日々である



―――考え無しに手を出しまくるからこうなるんですよ?解ってますか?―――


「仕方無いじゃんかぁ…特務艦を味方に付ければ安泰だと思ったんだよぉ…」


―――結果、腹上死の危機な訳ですが―――



「ぐうぅ…!」


呻きながらもダクトを進む、自分のテリトリーでこんな潜入ミッションみたいな事をするとは…

871 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/05(金) 21:04:26.14 ID:DzjX24sDO
 
 
「あっついなぁ、早く外に出たい」


―――今出ると見付かりますよ?―――


「ここで干からびてミイラになって発見されるのは嫌だぁ」


―――そんな死に方はさすがに私も嫌ですね―――


こうして私が話している相手こそがこの身体の持ち主である綾波その人である


いつだったか海上で死にかけているのをこれ幸いにと寄生して乗っ取ってやろうとしたら何故か中途半端にしか乗っ取れなかった


そして死にかけが故に動く事も出来ずにいたら仲間の艦娘が救助に来て回収、何があったか答えられない私は記憶喪失を通す事にした


綾波に聞いてみてものらりくらりと誤魔化され、いつしか聞くのを諦めたのだった


「まぁ実際?あのまま雑魚深海棲艦として死ぬより今の方が何倍もマシだけどね」


―――割りと良いお給金も貰えて衣食住も完備、特務艦としての特権に沢山の彼女、刺されてもおかしくありませんね―――


「腹上死もミイラも刺殺も嫌だぁ!」


ガコンガコン


ダクトの中で暴れていると


「そこに誰か居るのか」


突然声が掛かった


「……」


やばいやばいやばいやばい

872 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/05(金) 21:05:52.73 ID:DzjX24sDO
 
 
「に……にゃ〜ん」


「なんだ猫か」


「ほっ…」


「とはならんよなぁ、出てこい、出ないのなら壁ごと吹き飛ばす」


―――この声は―――


「うん…」


仕方無くダクトから這い出すと私を見下ろす武蔵が居た


「何だ綾波じゃないか、お前を探している奴らが走り回っていたぞ」


「まぁその…のっぴきならない事情がありまして…」


「はっはっは、お前も年貢の納め時か」


笑い事じゃない、こっちは命掛かってるんだ


「誰彼構わず手を出すからこうなるんだ、少しは反省しろ」


―――ふふっ―――


同じ事言いやがった、あと笑うな


「助けてやってもいいが…私の頼みを聞いてくれるか?」


そら来た、だからこの人にはあまり会いたくなかったのに…


以前私は残党の深海棲艦との戦いでピンチになって綾波に助けを求めた。そしたら右腕だけとはいえそれはもう一瞬で蹴散らしてくれた


それを見られていたみたいで、事ある毎に私に手合わせを申し込んでくるようになってしまったのだ
873 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/05(金) 21:07:20.89 ID:DzjX24sDO
 
 
「ここには私の相手が出来る奴が他に居ないんだ、このままでは体が鈍ってしまう」


私だって無理なんだけどね!


「なに、ちょっとでいいんだ、ちょっとだけ、時間は取らせない」


怪しい勧誘みたいな言い方すんな


「……断ったら」


「まぁあとは一人で頑張れ」


「ぐうぅ…!」


あ…綾波ぃ


―――仕方無いですね、以前ならともかく今は私もあんまり死にたくはないですし―――


なんだか意味の解らない事を言うが、どうやら助けてくれるらしい


スッと私の右腕が勝手に動く。それを見て武蔵は嬉しそうに笑った。この脳筋め


「ならばいくぞ」


武蔵が―――構えた。ちょ…ここで!?


ズッ


「ひっ…」


周囲の空気が変わった、重力が何倍にもなったように感じる、呼吸すら満足に出来ない、下級の深海棲艦ならそのプレッシャーだけで殺せてしまえそうだ。私もその下級深海棲艦なんですけどね!


「ふっ」


武蔵が呼気を吐いてその拳を―――あ、綾波ぃ!

874 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/05(金) 21:09:24.00 ID:DzjX24sDO
 
 
―――解ってます―――


バギン!!!


凄まじい衝撃音に思わず目を閉じてしまう、その直後に声


「―――っぐ」


見ると何が起こったのか、武蔵が右腕を押さえている、よく見るとなんだか曲がっちゃいけない方向に曲がっているような…


―――ちょっとやり過ぎましたかね―――


あんたなぁ…何も折らなくても…


―――加減してたら頭が無くなってましたよ―――


マジで


その武蔵だが、腕を折られて怒る所か急に笑い出した、痛みで頭がやられた?


「くっくっく…やはりな、やはり私の見立てに間違いは無かったようだな」


うわっ…この流れはめんどくさい流れだ


「どういう理由かは知らんがお前は実力を隠している、あえてそれは聞くまい」


あーはいはいそーですねー


「だがこれからは私も退屈せずに済みそうだ。くっくっく」


はいは…


「はい?」


「今回は私の負けとしよう、だが次は勝つ」


また来るの?嘘だと言ってよムーニィ!

875 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/05(金) 21:11:13.59 ID:DzjX24sDO
 
 
「あのぉ…約束はぁ…」


「ああ、そういえば特務艦共に追われていたな。その力があるなら逃げ回る必要も無かろうが…それも考えあっての事か」


―――ふふっ―――


もうそれでいいです…あとだから笑うな


その後、武蔵立ち会いの下で私と特務艦ズの話し合いが催された、武蔵が居なかったら即その場で襲われていただろう


話し合いの結果一日の人数制限とローテーションが組まれる事となり私はどうにか死なずに済みそうだった


どうせなら綾波が助けてくれてれば逃げなくてもよかったんじゃ…


―――好意を向けてくる相手を叩き伏せたら可哀想じゃないですか―――


まぁ…それもそうか…そうなのかな?



「あぁ〜つっかれたぁ…」


自室へと帰還した私はベッドに倒れ混み、目を閉じる。シャワーは…起きてからでいいか。とにかく何だか…凄く…眠い…程無くして私は眠りに落ちていった


そうして私、深海綾波の一日が終わった

876 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/05(金) 21:13:00.90 ID:DzjX24sDO
 
 
―――やっぱりあんまり表には出ない方がいいですね、この子の負担が大きい―――



―――全く最近は私も退屈しませんね、この子に寄生された時は余計な事をと思ったものですが―――


―――あの時はあの子とひとつになって…そして海の底に沈んで…それでいいと思っていました―――


―――だけどこうして彼女を通して世界を見てみたらなんだか…なんだか勿体無く感じられて―――


―――ふふ、見るもの触れるもの全てに新鮮な反応をするこの子を見るのも楽しいですし―――


―――今しばらくは、守ってあげます、一人立ち出来るまでは―――


それでいいと思うよー、綾波が決めた事ならさ、あたしも見てて楽しいしさー


―――そうだね、二人で見守っていこう、敷波ちゃん―――
877 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/05(金) 21:17:42.34 ID:DzjX24sDO
右腕だったか左腕だったかは忘れました
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 21:17:44.37 ID:+UNzv6W5o
水姫水鬼クラス単騎でボコって素手で海を割る武蔵の拳を…
その綾波が死にかけるようなこととはいったい…?
879 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 21:25:23.38 ID:Hr9+R4HUO
あの大本営ピンチ時も綾波が出てくればなんとかなったのでは疑惑が
880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 21:26:20.29 ID:FgKiEG5bo
おつでした
武蔵…あれが抜けてもあんまりかわってねぇ!
881 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 22:23:40.63 ID:mnUMDs/2o
んー…武蔵がやられるのは解釈違いかな…
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 23:47:44.04 ID:l3ss+jQI0
Yの器で無くなった武蔵の強さは深海綾波と…凄く面白いと思います

あと綾波が宿ってるのは右腕だったと思います

新スレは900超えたら建てておきます
883 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 00:03:10.92 ID:uU4AtyqVO
>>882
器になる前からあの強さ
もともと力があったけど乗っ取られて自我を失ってわんぱく武蔵に
その後元に戻る

足りなかったものその10から
>武蔵「私には記憶が無い、だが何かをしていたのは覚えている。まるで誰かに操られていたように、私は操り人形だった」
>
>
>武蔵「私には力があった。素手で海を割りこの拳は山をも砕く」ギチッ
>
>
>武蔵「だが私に自我が目覚めた時、カブトムシを食べていた。何を言っているか分からないだろうが私も分からない」
884 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 00:05:49.10 ID:uU4AtyqVO
と思ったけど>>1かな?ならその解釈が正しいのか…

このやり取りのあと大淀に海を割る〜って言われたときに否定してなかったけれども
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 00:10:26.86 ID:COvRpJRio
そんなに姿を表さないけど凄く強いキャラってあんまり格落ちしてほしくないんだよな…
886 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:07:25.37 ID:xN2dVukDO
>>876から
 
 
「うおおおおおぁぁぁ!!!」


全力疾走、それはもう人生の中でこんな全力で走る事なんてそう無いだろうという勢いの


私は今、おそらくこの世界でも一、二を争うくらいのヤバい存在に追われてる


―――貴女はいつも何かから逃げていますね―――


誰のせいだ誰の!


あれから数日後、早速武蔵がまた手合わせを申し込んできた、折れた腕は何故か翌日には治っていた


艤装を展開せずに受けた傷は普通に治療が必要になるはずなのにどうなっているんだ


活き活きとして手合わせをという武蔵を前に私も危機感無くそれを受けてしまってから綾波の声がした


―――あっ―――


どしたの?今度はちゃんと手加減してよね、武蔵の腕を折ったとかあの後幹部に怒られたの知ってるでしょ


―――逃げた方がいいですよ―――


「は?」


と、目の前の武蔵が言った


「今度は前の様にはいかんぞ」


その言葉の直後に私は宙を舞ったのだった

887 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:08:47.62 ID:xN2dVukDO
 
 
へっ…?



武蔵の右腕が消えたように見えたと思ったらそれに反応して私の右腕も消えた、直後に衝撃で私の身体は吹き飛ばされていた


壁に叩き付けられる、そう思ったが私の右腕がまた素早く動き右腕だけで受け身を取り着地させられる


「ななななな…」


―――最初の一撃は反らしました。早く逃げてください、とりあえず幹部さんの所か、とにかく人の居る場所へ―――


なんで!?前みたいに出来ないの!?


―――あんな奇襲じみた事は武蔵さんには二度も通じません。それに一番の問題は―――


も…問題は…?


―――武蔵さんには両手両足があって私には右腕しか無いという事です―――


「つまりどういう事でしょうか」


思わず敬語になってしまう。自分の顔から血の気が引いていくのを感じる


―――攻撃すればその隙に反撃で死にます、防御するにしても手数の差でやっぱり死にます―――


マジで


―――マジです。何で安請け合いしてるんですか―――


そりゃあ…前みたいにしてもらおうと


―――簡単に手を貸した私の落ち度ですねこれは―――

888 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:10:39.82 ID:xN2dVukDO
 
 
「どうした、来ないのか?私からばかりではなくそちらからも仕掛けてこい」


武蔵が構えて待っている、身体が十倍くらいに巨大化して見えるのは気のせいか、いわゆる小動物的視点なのか


「あーっ!あれはーっ!」


私はあさっての方向を指差して叫ぶ。これで気を反らしてその隙に…!


「……」


「あれはーっ」


おや?


ドドドドドドドドド


「お前は私を馬鹿にしているのか?」


「ひいぃっ!?」


武蔵からの圧力が一段と強くなる、若干の怒りの波動のようなものを感じてもう私は死にそう


―――本当に貴女は……しかし簡単には逃がしてくれそうにありませんね、死にたくないなら私の言う通りに動いてください―――


はい!何でも言って!


―――ん?今、なんて言っている場合でもありませんね、まずは―――

889 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:12:15.79 ID:xN2dVukDO
 
 
そして


「でやああああ!」


私は左腕を振りかぶって武蔵に突進する


「来るか」


武蔵は私の攻撃の動作を注視している


私の左腕の攻撃は当たり前のように防がれてしまう。あまりに弱い攻撃に武蔵は反撃も忘れて怪訝な顔になる


「なんだそのパンチは?ふざけているのか」


武蔵のプレッシャーが一層強くなる、やばい…本気で死にそう


「うあああ!」


次に蹴りを放つもそれもあっさりと防がれる、私が攻撃する度に圧力が増して行く、武蔵の顔から表情が失せていく


「私は遊びでお前に手合わせを申し込んだ訳ではない。自らを高める為にお前を見込んだからだ」


ああああああああやばいやばい本気で怒ってる死ぬ私ここで死ぬ


「だがお前はそうやって…本気でやらないのならばここで…」


―――今です、構えて―――


私は武蔵に近付く、すると右腕が動き武蔵の腹部に拳を当てた、右の拳を


「今度はなんだ、これ以上私を侮辱するなら、ここで殺す」


そう言って武蔵が動きを見せた瞬間


―――この動作が可能な範囲まで近付く為には右腕だけでは足りません、貴女の弱い攻撃は逆に効果的でしたね―――


ズ ド ン!!!

890 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:13:48.31 ID:xN2dVukDO
 
 
「ガッ!?」


武蔵の身体が後ろに下がる、だが倒れるまではいかない


―――やはり右腕だけでは充分な威力が出ませんか―――


私は更に武蔵に肉薄する。もう密着する勢いで接近するとまた右拳が武蔵に添えられる


「おのれ…何だ今のは!」


武蔵が再び私に攻撃しようという動きを見せると


ズドン!


「グッ」


ようやくこの技の正体を察したのか武蔵が大きく距離を取る


―――今です、走って―――


そこで私は踵を返し脱兎の如く走り去ったのだった


「……は?」


次の攻撃に備えていた武蔵の呆気に取られる声、そして


「ははは…あくまで私をおちょくる気か…ははは…殺す」


あのさ…最初から逃げてればまだ半殺しくらいで済んでたんじゃないかな


―――おや?―――


「お前えええええええ!!!?」


大本営に私の絶叫がこだました

891 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:15:27.53 ID:xN2dVukDO
 
 
そうして私は武蔵から全力で逃走中な訳だ


「ところであの技って何なのさ」


ひとまずトイレに逃げ込んで一息吐いた私は綾波に聞いてみた


―――あれは寸打といいます。相手の動きに合わせて全身のバネを使ってカウンターを打ち込む超近接技です―――


「全身の…」


―――ええ、ですから全く威力が出ませんでしたね。本来なら急所に打ち込めば一撃必殺なんですが―――


「必殺したら問題だよ…」


―――今は私達が必殺されそうですが―――


「誰のせいだよ!」


―――勝負を受けた貴女では―――


「ぐうぅ…!」


「何処に居る、この辺りから声がしたぞ」


「……!……!」


慌てて自分の口を塞ぐ


「ここか?」


扉を開く音が聞こえた


「こっちか?」


また扉を開く音、そして私が居る個室にだんだん近付いてくる


おいこれなんてホラーだよ!?

892 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:17:22.51 ID:xN2dVukDO
 
 
―――見上げたらそこに…となる前にここを出ましょうか、そこの窓が開いてます―――


音を立てないように、尚且つ素早く、私は窓から這い出す。そこは中庭だ


「これでひとまず安し…」


ドゴオォン!!!


安心…と言おうとした私の背後の壁が吹き飛んだ。そこは私がさっきまで居た個室の辺りだ


「見付けたぞ」


「あ…あああぁぁぁ…ぁ…」


ああ…せっかくトイレに居たんだから済ませておけばよかった…ちょっと漏れちゃった…ホントにちょっとだけだけど!


「……お前は何処かおかしいな」


「へ…?」


「普段の言動はとても演技とは思えんし、あれだけ殺気をぶつけてもただ逃げ惑うだけ、かと思えば先程のような鋭い一撃を放ったり私の腕を折ったりする」


―――ああこれは―――


やっぱり…?


「お前の中には誰が居る」


気付くよね普通…出来たらあんまり知られたくはなかったんだけどなぁ…


レ級様の所とか一部を覗いて私は誰にも正体を明かしてはいない。今の新しい大本営なら大丈夫じゃないかとも思うけどなるべくならバレないに越した事は無いのだ

893 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:19:25.18 ID:xN2dVukDO
 
 
―――仕方ありませんね、これからも挑まれるリスクを考えれば話してしまうのが一番ですか―――


そうして私は武蔵に全部ぶちまける事にした


「―――なるほどな…寄生体か、言われて見れば微弱ながら深海棲艦の気配もあるが…これは言われなければ解らんな」


ええ、ええ、あまりに雑魚過ぎて気配もしないと言いたいんでしょ!そうですよ!悪かったな!


「そして右腕だけは自由になる綾波か…さっきの技も綾波のものか」


「そうですよ、よく知りませんけど」


「その綾波とは話せるのか?」


「ええっと…」


――――――


「あれ?綾波?」


「どうした?」


「返事しなくなっちゃいました…」


「ふむ…他人とはあまり話したくないのかもな。綾波…近接戦闘を行う綾波か…」


武蔵が何か考え込んでいる姿を横目に…うぅ…何だか眠い…さっきまで死に物狂いで逃げ回ってたツケかなぁ…


「おい、大丈夫か?」


私を殺すとか言っていたのはあくまで本気を出させる為だったらしいが…ふぁぁ…そんな武蔵の心配する声が遠くに聞こえ…


そして私の意識は暗闇へと落ちていった

894 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:21:30.28 ID:xN2dVukDO
 
 
夢を視た


私が知らない誰かを抱き締めて愛を囁いている


そしてその口でその相手に噛み付いた


ぶちぶちぶち


鮮血が溢れだす。そして夢の中の私はそのまま相手を…喰らっていた


その相手も食べられながらも愛を囁き、そして同じように私に噛み付く。夢だからなのか痛みは感じない。そしてその顔は幸せそうな笑顔で


これは私の夢?……違う…これは…


その相手が私を見た。夢の中の私ではなくこの夢を視ている私を


「人の営みをあんまり見るもんじゃないよ、恥ずかしいじゃんか」


軽い口調で、しかし有無を言わせぬ迫力でそう言った


「という訳で、そろそろ起きなよ」


お前は…


夢から覚めていく感覚、その姿が消えていく


そして目覚めた場所は自室のベッドだった

895 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:23:46.26 ID:xN2dVukDO
 
 
「なんつー夢だよ…私にそんな趣味無いっての」


―――見ました?―――


まぁ…よく解んないけどずいぶん幸せそうだったよ


―――ええ、もちろんです―――


何となくだがこの綾波がどういう奴だか少しだけ解った気がする。そして私が寄生する前に何があったのかも


「愛の形は様々ってか…」


どうやら急に眠りに落ちた私を部屋まで送り届けたのは武蔵らしいと後から聞いた


それからというもの執拗に手合わせを申し込んでくる事は無くなったがよく見られているような気がする


今の所は私の正体は広まってはいない。武蔵も秘密は守ってくれているようでひとまずは安心してもいいのかもしれない


―――もしバレたらどうしますか?―――


「どうかな…こんな寄生体に行く所なんてあるかな…」


―――あの鎮守府は?―――


「わかんない…でもレ級様怖いしちょっと遠慮したいかな…」


―――もし…もしも何処にも居場所が無くなったら…私達と…―――


「え?」


―――いえ、何でもありません―――


「まっ、いざとなれば何処でだって生き抜いて見せるよ。今までだってそうしてきたんだ」

896 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:26:05.22 ID:xN2dVukDO
 
 
―――逞しいですね、その強さは素敵だと思いますよ―――


図太く、図々しく、私は生きてやるんだ。かつての同胞達のように使い潰されて沈んでいくのは御免だ


艦娘になった今もその可能性はあったけど私にとっての幸運は綾波が一緒だという事かな


「これからも頼りにしてるからねっと」


―――はいはい―――


そうして私、深海綾波の日々は過ぎていく


未だ平和な世の中は来ない、それでも私は絶対に最後まで生きてやると改めて誓うのだった
897 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/06(土) 05:30:21.45 ID:xN2dVukDO
誤解が生じてしまったようなので急ピッチですみませんでした

あくまで強いのは右腕のみで深海綾波自身はそうではないという解釈です
武蔵は今もちゃんと強いと思います
強者は基本攻撃を避けない
898 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 08:00:36.09 ID:1NgUuJsmO
おつ

この綾波って何者だっけ……?
不知火に傀儡モードで廃人にされたやつ?
899 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 08:26:46.95 ID:dNmHgdEvO
その綾波とは別
瀕死の綾波に規制した木っ端深海棲艦
なんやかんやあって深海棒で大本営の特務艦達をメロメロにして味方につけた地味な功労者
一昔前の映画で言うなら陽気な黒人枠

本体の綾波について詳しく語られたことはなくて右手は本体の綾波が自由に動かせるくらいしか背景の情報はなかった…はず
900 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 11:15:44.40 ID:eRCsX9ado
おつー
陽気な黒人枠は言い得て妙
寄生が成る深海棲艦は何処か特殊なんだなあやっぱし
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