千歌「――それが私の戦い方だ」

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83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/22(水) 22:10:24.74 ID:qboBiFwh0
現在の情報

高海千歌
隻眼の喰種(左)

渡辺曜
喰種
赫子 甲赫、尾赫

桜内梨子
喰種
レート S

津島善子
喰種(カラス)

国木田花丸
三等捜査官 Q's
クインケ マルちゃん二号(甲赫)
赫子 尾赫
母親が入院中

黒澤ルビィ
二等捜査官

松浦果南
一等捜査官 Q's

黒澤ダイヤ
特等捜査官

小原鞠莉
喰種


高坂穂乃果
カフェΜο?σαを経営
隻眼の喰種(右)

南ことり
カフェΜο?σαを経営

園田海未
上等捜査官

小泉花陽
CCG局員
クインケの製造

西木野真姫
CCG局員

絢瀬絵里
准特等捜査官

東條希
上等捜査官 Q's班長


宮下愛
??

中須かすみ
三等捜査官 Q's二期生
八区にて中須ベーカリーを経営

天王寺璃奈
喰種

近江彼方
??等捜査官

朝香果林
喰種

※こちらに名前のないキャラクターは今後追加されていきます。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 22:10:57.90 ID:qboBiFwh0
今日はここまで。また近々更新します。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:02:36.08 ID:3pH66J9+0
―――

「こんにちは、にこさん」

にこ「……あんたは?」

せつ菜「初めまして。私は優木せつ菜と言います」

にこ「せつ菜ね。それで、なにをしに来たのよ?わざわざこんなトコまで」

せつ菜「どうしてこんな隅の区……十三区なんかに」

にこ「住めば都ってやつよ。あんたもどう?この辺りは争いもなくて平和よ」

せつ菜「そうじゃなくて!」

せつ菜「……私、憧れてました。μ'sに、にこさんに。私もこんなスクールアイドルになりたいって思ってたんです。なのに!突然の引退発表、半数のメンバーは行方もわからなく……にこさんも、その一人で」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:03:03.46 ID:3pH66J9+0
にこ「失望した?」

せつ菜「失望、なんて……でも寂しかったです」

にこ「ファンサービスで教えてあげるわ」スッ

にこ「μ'sは全員、生きている。それぞれに幸せになれる場所で……ね」

せつ菜「それじゃあ……にこさんは今、幸せなんですか?」

にこ「えぇ、これでも結構幸せなのよ」

せつ菜「…………凛さんは?」

にこ「え?」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:04:25.67 ID:3pH66J9+0
せつ菜「凛さんだけ、居場所が掴めていないんです。にこさんなら知っているんじゃないですか?」

にこ「……凛は」

にこ「――コクリアにいるわ」

せつ菜「だから、コクリアがある十一区の隣に……?」

にこ「だとしたら?」

せつ菜「にこさん、私を仲間にしてくださいっ!」

にこ「はぁ!?」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:06:07.90 ID:3pH66J9+0
―――

花陽「……凛ちゃん」

凛「……」

花陽「ごめんね、私がすぐに……」

凛「……かよちん、だめだよ」

花陽「でも、私……」

真姫「花陽」

花陽「真姫ちゃん……」

真姫「……なにしてるの?早く終わらせてアレの続きをやるわよ」

花陽「でも、でも……」

真姫「無駄なことは考えない方がいいわ。ここから逃げ出せた喰種なんていないんだから」

花陽「……」

真姫「……もう用事は済んだ?行きましょ」

凛「……ごめんね」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:06:50.95 ID:3pH66J9+0
花陽「…………じゃあ、またね。凛ちゃん」

真姫「あ、これ。あんたが頼んでた本届いたから」スッ

凛「ぁ、ありがとにゃ」

真姫「……」

コツコツコツ……

凛「……はぁ」

凛「寂しいなぁ……」パラパラッ
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:07:17.34 ID:3pH66J9+0
凛「えー、こんな絵本みたいなのだったっけ……」

ペラッ

凛「あれ、カバーが外れて……って、これ全然違う本じゃん!真姫ちゃんめ……」
凛「『やさしいせかい 著:くにきだ××』」

凛「くにきだ……?名前は削れて見えないけど……なーんか聞いたことある、ような?」

凛「それよりも真姫ちゃんめ……楽しみにしてたのに」プンプン

凛「……」パラッ
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:07:51.90 ID:3pH66J9+0
―――

千歌「――うん、うん。わかってる。うん、じゃあね」

曜「平気だった?」

千歌「うん。泊まるって言ったら迷惑かけないようにーってだけ。曜ちゃんでよかったよ」

曜「そっか、それならよかった」

千歌「えと、それで……」

曜「ねぇ、千歌ちゃん」

曜「どうやって生きる?」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:08:24.14 ID:3pH66J9+0
千歌「どう、って」

曜「普通に学校行って普通に生活する?喰種にとって、それがどれだけ大変か……想像はつくよね?」

千歌「……まだ、なにも」

千歌「なにもわかんない。喰種のことも、私のことも、ずっとなんでも知ってるつもりだった曜ちゃんのことも」

曜「私が怖い?」

千歌「こわ、くはないよ……」

曜「でも私喰種だよ?ヒトを食べて生きてきた。なのに?」

千歌「…………それ、言ったら、私」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:08:59.47 ID:3pH66J9+0
曜「……」

千歌「ぅ、ぉえ」バッ

曜「吐いてきなよ、大丈夫だから」

千歌「っ、」コクコク

ダッ

曜「……」

曜(……これじゃ足りない)

曜(今まで通りじゃダメだ。それじゃ千歌ちゃんを守れない。なら、なら私は)

曜(いいよ。化け物にだってなってやる)

曜(心なんて捨ててしまえばいい)パキッ
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:09:27.04 ID:3pH66J9+0
千歌「っは、は、は……ご、ごめん、ね」

曜「あはは、仕方ないよ。みんな最初はそんなもんだって」

千歌「ん、うん……」

曜(とりあえず梨子ちゃんには言っておいた方がいい、よね……家も隣だしサポートは私よりできるはず)

千歌「曜ちゃん、あのね」

曜「ん?」

千歌「私に喰種のこと、教えてほしい。生きる術を教えて」

曜「……うん、わかった」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:10:15.95 ID:3pH66J9+0
―――

ダイヤ「ルビィ」

ルビィ「……お姉ちゃん」

ダイヤ「鍛練はちゃんと積んでいますか?」

ルビィ「うん、ちゃんとやってる。大丈夫だよ」

ダイヤ「黒澤家として誇りを持つのですよ。あなたには才能があるわ」

ルビィ「……ありがとうお姉ちゃん」

ルビィ(お姉ちゃんはルビィと二歳しか変わらないのに特等捜査官。黒澤家の長女だからってのをなしにしても同年代の捜査官じゃ圧倒的な強さ……なのに、ルビィは)

ダイヤ「そうだ。この前花丸さんがルビィと手合わせをしたいと言っていたわ。Q'sとならいい練習になるのではない?」

ルビィ「花丸ちゃんかぁ……うん。声かけてみるよ」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:10:46.55 ID:3pH66J9+0
ダイヤ「……Q'sもそろそろなにか功績を上げてくれるといいのだけど。仲間としてあまりいい評判じゃないのは寂しいですから」

ルビィ「きっともうすぐだよ。花丸ちゃんたち、すごく強いもん」

ルビィ(そう、ルビィとは違って……)

ダイヤ「それでは私はこれから特等会議がありますから、鍛練もほどほどにするのですよ」

ルビィ「わかった。いってらっしゃいお姉ちゃん」

ダイヤ「えぇ、また後でねルビィ」

…パタン
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:11:15.18 ID:3pH66J9+0
ルビィ(もう行っちゃうんだ。さっき来たばかりなのに)

ルビィ(最近ずっと忙しそうだなぁ……特等になってからはとくに)

ルビィ(……寂しいなぁ)

ピロン

ルビィ「ん……」

ルビィ「……ふーん、そっか」

ルビィ「ふふ、また一歩前進!」

ルビィ「これでルビィもお姉ちゃんに近付ける!よーし!がんばるぞぉー!」オー!
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:11:50.11 ID:3pH66J9+0
―――

果南(五区の件から見回りの捜査官を増やしたみたいだけど……それでいいのかな。また同じ区で補食をしない可能性を考えたら……)

トントン

果南「はい?」クルッ

希「果南ちゃん、久しぶりやね〜!」

果南「げ、希さん」

希「げ、とはなんや。班長様に向かって!」

果南「はいはい……帰ってきてすぐ解析室にこもるなんて、どうしてたんですか?」

希「ほら、五区で事件があったよね?あれの赫子痕とドイツでちょうど追ってた喰種の赫子痕の照合をしてたんよ」

果南「ドイツの?それで、照合率は?」
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:12:24.00 ID:3pH66J9+0
希「二十三パーセント」

果南「うぅん……とても親兄弟だとは思えない数字ですね」

希「そうなんよ。ビリッと来たんだけどね。向こうは赫者だし、赫子痕が変わってると仮定すれば可能性はあると思うけど……」

果南「ダイヤ……特等にブッブーですわぁ!なんて言われそうですね」クスッ

希「あはは、間違いない!」

「果南さん、ブッブーですわね」

果南「そうそう、こんな風、に……?」クルッ

ダイヤ「ごきげんよう」ニコッ

果南「ひぇっ……」
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:12:52.37 ID:3pH66J9+0
ダイヤ「……まったく。変なことを言ってないで真面目に仕事しなさいな」

果南「してるしてる、してますよ〜」

ダイヤ「あら、これが例の赫子痕ですか?」

希「そうなんよ特等〜」

ダイヤ「ふむ……照合率は低いですが、引っかかるものはありますわね。こちらはもう少し掘り下げたいところですわ」

希「おぉ!あのダイヤ特等が!」

ダイヤ「なんですの?」

希「なんでもありません」

ダイヤ「黒澤家の方でも調べますので、こちら預かってもよろしいかしら?」

希「えぇ、えぇ、どうぞ。ウチはちょっとシャトーでゆっくりさせてもらうよ。明日は休暇とってるし!」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:13:18.55 ID:3pH66J9+0
果南「あはは、せっかくの休暇だしゆっくりしてくださいよ?また前みたいに無理なんてしたら……」

希「えりちに縛り付けられそうやんな……気を付けます」

ダイヤ「私も会議がありますのでこれで」

果南「おっ頑張ってねダイヤ」

ダイヤ「果南さん」

果南「やば……すみませんダイヤ特等」

ダイヤ「ふふ、冗談ですわ。上官がいるときだけちゃんとしてくれればいいのですよ。じゃないと寂しいもの」クスッ
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:13:52.94 ID:3pH66J9+0
―――

カランコロン

鞠莉「ハーイ!ことり、穂乃果!」

穂乃果「あ、鞠莉ちゃんだ!久しぶり!」

ことり「いらっしゃいませ、鞠莉ちゃん♪今日はどうしたの?」

鞠莉「coffeeをいただきにきたの?ここのコーヒーはSo excellent!」

ことり「わー!ありがとう!今淹れてくるから待っててね!」

鞠莉「えぇ、ありがとう」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:14:31.52 ID:3pH66J9+0
鞠莉「ところで……隻眼の喰種の噂を聞いたのだけど」

ことり「隻眼?」

鞠莉「珍しいから気になっちゃった?」

璃奈「……それ知って、何をする気なの?」

鞠莉「Oh!coolなマスクね!どちらさま?」

璃奈「…………天王寺璃奈」

穂乃果「璃奈ちゃん、大丈夫だよ!ちょっと変わってるけど……悪い人じゃないから!」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:15:08.72 ID:3pH66J9+0
璃奈「む……穂乃果さんが、そう言うなら。ごめんなさい」ペコリ

璃奈ちゃんボード『しゅーん…』

鞠莉「So Cute?」

ことり「はい、鞠莉ちゃん」

鞠莉「Thanks,ことり!」

鞠莉「……五区の事件、犯人知ってる?」ゴクリ

鞠莉「うん、おいしいわ♪」

ことり「ううん。情報はなにも……」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:15:41.61 ID:3pH66J9+0
穂乃果「最近こっちに来た喰種とか、かなぁ……璃奈ちゃんに依頼は?」

璃奈「気になるような人は、来てない。だいたい常連さんだから」

鞠莉「依頼?」

璃奈「喰種相手にマスクを作ってる。あなたも必要なら三区まで来てね」

鞠莉「そうなのね!マリーも今度お願いしようかな」

鞠莉「うぅん、それにしてもわからないコトだらけね……またなにかわかったら遊びに来るわね。ごちそう様!」

ことり「いつも情報ありがとね、鞠莉ちゃん……例のアレも」

鞠莉「こちらこそおいしいコーヒーをいただいてるもの♪」

カランコロン

璃奈「例のアレ……って?」

穂乃果「あー……ほら、自分で補食できない喰種に渡してるのあるでしょ?あれを提供してもらってるんだ」

ことり「もちろん、自殺者のだよ?平和主義の喰種だから、そうやって最低限にしてはいるんだけど……いつになったら喰種と人間がわかりあえる日が来るんだろうね」

穂乃果「きっと来るはずだよ。そのために私たちがいるんだから……」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 00:16:28.63 ID:3pH66J9+0
今日はここまで。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 16:58:08.33 ID:g6IYXtTR0
***

曜「――まずい」

曜「は、は……っ」グジュッ

曜「強くなるんだ、つよく、つよくなって、守らなきゃ……ッ」

――コツン

曜「っ!?」バッ

ルビィ「こんばんは」

曜(ルビィちゃん!?右手に持ってるトランク、あれ、クインケ……?てこと、は)

曜(捜査官……)
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 16:58:41.48 ID:g6IYXtTR0
ルビィ「お食事中ごめんなさい喰種さん」ニコッ

曜(マスクしてるから顔はバレない……声だけ、出さなきゃ……どうする、戦えない。捜査官とはいえ、仲間だ。傷付けないようにしてなんとか逃げて……)

ジャキッ

ルビィ「資料には載ってない喰種さんですね」

曜(見た感じ甲赫……かな。あの武器さえ壊せれば逃げられる)ズズ…

ルビィ「甲赫、ですね。お揃いだぁ」

曜「……」

ルビィ「ふふ。あなたですよね、五区の共食い」
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 16:59:30.56 ID:g6IYXtTR0
曜(……仕掛けてくる様子はない。隙を見てクインケを破壊するしかないかな)

ドゴォンッ

ルビィ「壊せますかぁ?」

曜「っ……!」

曜(コンクリートの壁が粉々に!?)

ルビィ「お話をしましょう。楽しいお話です」

ルビィ「……ある不思議な姉妹がいました。優秀な姉と普通な妹です。二人は幼い頃から共に遊び鍛え、生きてきました。やがて大きくなって二人の差はどんどん広がっていきます。普通な妹は必死になって努力を続けますがどんどんどんどん広がって、追い付けません」

ルビィ「さてさて、どこで差が開いたんだと思いますか?」

曜(なんの話……?油断させようとしてるだけなのか、なにか意味があるのか……楽しい話だとは、思えないし)
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:04:03.51 ID:g6IYXtTR0
ルビィ「“才能”ですよね」

ルビィ「努力じゃ才能に勝てないんですよ。ねぇ、あなたにはわからないですか?」

ルビィ「わかりませんよね、そんな立派な赫子を持ってちゃ」

曜「……」ジリッ

ルビィ「でもあなたはルビィに勝てません。なぜなら攻撃できませんから」

ルビィ「もうひとつ、面白い話をしてあげますね」スッ

ルビィ「千歌さんって……本当に前から人間だったんですかね?」

曜「っ!?」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:04:30.30 ID:g6IYXtTR0
ルビィ「なーんちゃって!ふふ、じゃあルビィは帰りますね」

ルビィ「――また明日」クスッ

曜「……」

曜(バレてる……?いや、それだけじゃない。なんで千歌ちゃんのことまで?本当に前から人間だったか……そんなの当たり前だ。じゃなきゃあんな反応は……)ハッ

曜「……もう、いない」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:06:57.89 ID:g6IYXtTR0
―――

千歌「……しにたくない」

梨子「えぇ、みんなそうよ」

千歌「いきるために、ころすんだね」

梨子「弱肉強食。それが普通でしょ?」

千歌「……ふつう」

千歌「普通って、なんだろうね。千歌はずっと普通だと思ってたけど……そうじゃない、みたいだし」

梨子「……自分が、怖い?」

千歌「怖いよ……自分の体がどうなってるのか、なんでこうなったのか……いつからこうなったのか。なにもわからないんだもん」

梨子「私だってわからないよ。喰種の私と普通の人間。どこで違っちゃったんだろう。どこで戻れなくなったんだろう……って」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:07:42.77 ID:g6IYXtTR0
梨子「……家族には?」

千歌「言えると思う?」

梨子「…………じゃあ、どうするの?嫌な言い方だけど、このままじゃみんなを巻き込むことになるわよ」

千歌「巻き込む……って」

梨子「悪いことは言わない。家族から離れた方がいいわ」

梨子「……自分のせいで家族を失う人を、見たくないの」

千歌「……」
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:08:22.55 ID:g6IYXtTR0
梨子「私と一緒に、来る?喰種として生きるための戦い方……教えてあげられるよ」

千歌「でも……」

梨子「曜ちゃんが心配?」

千歌「……」コクン

梨子「守ってあげたいんでしょ?」

千歌「そうなん、だけど」

千歌「でも、どうすれば」

梨子「今のままじゃ、千歌ちゃん死んじゃうよ。親に飛び方を教えてもらえなかった鳥みたいなもの……死ぬのを待つだけでいいの?守られてるだけでいいの?」

千歌「……」

千歌「…………お願い梨子ちゃん」

梨子「えぇ、死なないように……頑張ってね。厳しくするから」

千歌「……」ゴクリ
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:08:51.19 ID:g6IYXtTR0
***

千歌「地下室……こんなところがあったんだね」

梨子「喰種ってね、傷付くほどに強くなるの」ズズ…

千歌「ひっ……!?なに、それ」

梨子「これが赫子……私のは鱗赫」

梨子「他にも羽赫、甲赫、尾赫があって……それぞれに特徴があるのよ」

梨子「壊して、壊して、壊して……壊してあげる」

ビュッ

千歌「ぃづっ!?」ガクッ

千歌「ぃあ、ち、血が……っ」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:09:24.23 ID:g6IYXtTR0
梨子「ほら、早く治さなきゃ」グジュッ

千歌「ひぁっ……ッ!?い、ぅあ、あ゙ぁあ゙あ゙!!?」

千歌「ひ、ひっ、ゔあ、」グッ

千歌「なおれなおれなおれなおれ」

グイッ

千歌「ヴアァア!!?ぅあ、あ、やら、やらぁ……っ」

梨子「……治しもしない、反撃もしない。やる気ある?」

千歌「ぃ、ぅ、ぁああ……っ」

梨子「…………」スッ

千歌「ぅあ、ゆ、び、やだ、やだ、やだやだ!」バタバタ

グイッ……

――ペキン

千歌「ひぁ……っ!?」ゾワッ

千歌「ぉあ、おぇあ……っ」ビチャッ

千歌「う、がは、は、おえ、んぐ……っい、だ……っ」ズキンズキン
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:09:57.39 ID:g6IYXtTR0
梨子「ほら早く」

梨子「殺しちゃうよ」

千歌「っ……!」グッ

梨子「…………なんで赫眼すら出さないの」

コツ…

梨子「あら、曜ちゃんじゃない」クスッ

曜「なに……してんだよ……」

曜「ねぇ、私……頼んだよね?外でてる間、千歌ちゃんを守ってって……」

曜「…………これ、“そういうこと”って受け取っていいのかな」ズズ…

梨子「甲赫。相性悪いけど、大丈夫?」

曜「言っとくけど、手加減なんてしないし[ピーーー]つもりだから」パキッ

梨子「ふふ、私は強いよ?」

曜「……千歌ちゃん。ちょっとだけ待っててね」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/29(水) 17:10:36.32 ID:g6IYXtTR0
千歌「ょ、ちゃ」ギュッ

曜「大丈夫、大丈夫だよ」

千歌「ゃだ、やめ……おね、が、おねがい……ッ」

千歌「たたかわ、ないで……っ」

曜「……」

曜「ごめんね」フッ

梨子「ふふふ。もういい?ほら、早く来てよ」

曜「言われなくても……殺してやるよッッ」バッ

梨子「あははっ、ふふ……」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:12:50.88 ID:g6IYXtTR0
曜「なにがおかしい……?」

梨子「こんなに楽しいことなんてないもの!ほらもっと!」

曜「……変態」

梨子「あら?もうおしまい?ふふ……じゃあ今度は私から」ズ…

ビュッ

曜「ッ」

曜(動きが速い……それにかすっただけで結構奥まで……治せるには治せるけどあんまり受けるとまずいか)

曜(鱗赫……再生力と攻撃翌力は強いけどもろい。私の甲赫で攻撃すればひとたまりもないはず……ただスピードで負けてるから攻撃を入れる暇はない……)

曜(……だったら!)ダッ
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:13:19.60 ID:g6IYXtTR0
梨子「っ……ほら、まだまだ!」

曜(赫子の動きを読んで……それに沿うように……ッ)

梨子「当たっちゃうよっ!?」

曜「あっは……」グジュッ

曜「っ……」

グイッ

曜「捕まえた」ニィッ

梨子「っ……!」

曜(赫子は四本……一本ないだけで攻撃翌力はぐんと下がる。これで切り取るように……っ)

ダンッッ

曜(……あと三本)

梨子「く……っ」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:13:51.77 ID:g6IYXtTR0
曜(動きが遅くなった……これならいける)

梨子「…………ふふ」

曜「……どうしたの?」

梨子「すごい硬さね。びっくりしちゃった」

曜「…………負けを認めたら、そしたら」

梨子「あっはは!そうしたら許してくれるの?さっきまで殺してやるなんて言ってたのに!」

曜「……仮にも仲間、でしょ」

梨子「仲間ぁ?やめてよそういうの」ズズ…

曜「ッ!?」
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:14:18.38 ID:g6IYXtTR0
梨子「自分が優勢だと思ったんでしょ?じゃなきゃあんなこと言えないもんね」クスッ

梨子「六本になったら――避けられる?」

曜「っ……だからトカゲ、か」

梨子「うふふ……」

曜(……あれ)

曜(私、なにしてたんだっけ)

千歌「よぅ、ちゃぁ!りこちゃん、おねが、も、もう……っ」

梨子「……[ピーーー]つもりで来たんなら、殺される覚悟も出来てるはずよね?ねぇ、曜ちゃん」

曜(あぁ、そっか……私負けたんだ)
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:16:13.70 ID:g6IYXtTR0
曜(出血がひどい……これ、治るのかな)

千歌「りこちゃん!だ、め……っ」グッ

梨子「……立てるわけないじゃない」チラッ

千歌「ふー……ふーっ……」

梨子「治ってる……?この短時間で完治……ふふ、そっか」パッ

曜「ぐっ……」ドサッ

梨子「千歌ちゃんも鱗赫なのかな……赫子は?出せそう?」

千歌「か、ぐね……?」

梨子「曜ちゃんのこの腕に巻き付いてるやつや……私の尻尾みたいなやつ。どうかな?」

千歌「…………わかん、ない、よ」

梨子「そっかぁ……なーんだ期待して損した」ズズ…

グイッ

曜「ぅぐ……」
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:17:03.26 ID:g6IYXtTR0
梨子「じゃあ千歌ちゃんのせいで曜ちゃんが死んじゃうの、指くわえて見ててよ」スッ

千歌「やめ、やめて……っ」

ダンッッ

曜「あぁぁあ゙ぁ゙あ゙!!」

曜「うで、っくそ……血が……」ドクドク

千歌「ぅあ……ようちゃ…………っ」

梨子「なに目をそらしてるの?千歌ちゃん、あなたのせいなのよ?」

千歌「ちか、の」

梨子「そう、千歌ちゃんのせい。全部あなたが悪いの」

曜「違うッ!千歌ちゃん、大丈夫だから!」クラッ
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:17:32.46 ID:g6IYXtTR0
曜「っ……」バタッ

千歌「ぁ……」

曜「はー……はー……へいき、だいじょうぶだよ」ニコッ…

梨子「甲赫は治りが遅いって効くけど……腕、生えるかな?しかも曜ちゃんは食事もまともに取ってないみたいだし……どうなっちゃうんだろうね?」

千歌「っ……ようちゃ、ごめ、ごめんなさ、ちかのせいで……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

曜「梨子ちゃん……」グッ

梨子「顔真っ青よ?大丈夫?」

曜「はは……勝ったつもり?」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:18:10.08 ID:g6IYXtTR0
梨子「強がりはもういいわ」

曜「私は甲赫だけじゃない」

グジュッ

梨子「……は?」

梨子「なに、これ」ボタタッ

曜「…………メインはこっちの尾赫」パキッ

梨子「二種持ち……ッ!?」

曜「返すよ、梨子ちゃん」

梨子「こんなの……っ」ググッ

曜「無駄だよ……」スッ

梨子「やめ……ッ」

ダンッッ

梨子「っうぁあ゙ッッ!!?」

曜「…………これで“おそろい”だね」ニコッ
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:18:41.08 ID:g6IYXtTR0
梨子「……狂ってる」

曜「それは、どうも」

梨子「ふふ……せっかくのおそろいだし千歌ちゃんもおそろいになる?」

曜「……やってみなよ。腕一本で済めばいいけどね」

ズ…

曜「うわ、なにその回復力……きもちわるい」

梨子「うるさいわね……これで満足した?」

曜「私と“おそろい”じゃ足りないでしょ?まだ千歌ちゃんの分……返してない」

ズズ…

曜「っ!?」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:19:11.23 ID:g6IYXtTR0
千歌「やめ、やめてよ……もう……」グスッ

梨子「鱗赫。なんでこのタイミングで……」

千歌「もう、たたかわないで……おねがい……」

梨子「……」

曜「千歌ちゃんがそう言うなら、やめる」スッ

梨子「ふふ、大丈夫?治る?」

曜「治んないよ、食べなきゃね」

梨子「じゃあ食べればいいじゃない?」

曜「そういうことじゃないんだよねぇ……わかんないかなぁ、わかんないか」
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:19:45.89 ID:g6IYXtTR0
梨子「わかんないわよ」

千歌「……へ?」

曜「ん、どしたの?平気?」

千歌「も、おわり……?もう、戦わない……?」

梨子「うん、もう必要ないし」

曜「必要ない……って?」

梨子「再生と赫子が見れればよかったから」

曜「は?そのために私腕落とされたの?」

梨子「まぁ……そうなるわね」

曜「……はぁ」
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:20:27.32 ID:g6IYXtTR0
梨子「それで千歌ちゃんどうだった?喰種になって初めての痛み……」

千歌「……はじめてお腹に穴があいた」

梨子「ふふ」

曜「……あはは」

千歌「な、なんで笑うの!」

曜「いや、ごめん……ふふ、あははは!あーもう、なんかどうでもよくなってきた!」

曜「まだもらったのあるし、食べるよ!そうじゃなきゃ治んないだろうし!」

梨子「ふふ、ごめんね曜ちゃん」

曜「いいよ、別に……」

梨子「お詫びにご飯持ってこようか」

曜「…………いらない」

パサッ

梨子「じゃあ、せめて隠したら?」

曜「……ありがと。上にアレ置いてあるから、食べたら帰るね」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:21:47.87 ID:g6IYXtTR0
***

千歌「あ、あの、梨子ちゃん」

梨子「ん?」

千歌「えと……その」

千歌「……どうやったら、強くなれるかな」

梨子「焦ることはないよ。いきなり強くなれる人なんていないもの」

千歌「でも……」

梨子「少しずつ、それでいいんだよ」

千歌「……そう、だよね」

ピロン

梨子「ん……ふふ、千歌ちゃん見て」

YOU:生えましたv

千歌「ぶふっ!な、なにそれ、あはは!なんの“v”なの!」

梨子「曜ちゃんってちょっとズレてるというか……う、ふふっ」

梨子「…………ふふ」
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/29(水) 17:22:23.72 ID:g6IYXtTR0
今日はここまで。
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