花丸「喫茶花丸」

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37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:01:30.11 ID:xz1J9Lo7O

花丸「えーっと……つまり梨子ちゃんを迎えるにあたっておかえり会用の料理作りを教えてほしい…って事?」

千歌「プロの花丸ちゃんにお願いするのは失礼かと存じておりますが何卒寛大な処置をお願いしたく……」

花丸「うん、いいよ」

曜「いいんだ!?」

花丸「うん……というかマルの料理はマルが食べたくて覚えた事が殆どの我流だから……そんな畏まらなくてもいいずら」


千歌「ありがとう花丸ちゃん…天使!菩薩!」

曜「………宗教がグチャグチャだよ、千歌ちゃん」


千歌「曜ちゃんのツッコミ……最近キレがない」

曜「…………そんなことないもん」

花丸「(…地味にショック受けてるずら)」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:02:18.62 ID:xz1J9Lo7O

花丸「じゃあ、早速練習しよっか…!」

千歌「料理は花丸先生にお任せします!」

花丸「なるほど…料理の練習はまず好きな物を作る事が一番楽なんだけど…」

曜「おお…なんかそれっぽい」

花丸「やっぱり触ったり香りを嗅ぐことになるから…苦手なものだと辛いずら、後…好きなものだと食べておいしい」

曜「好きなものかぁ……」

千歌「みかん!」

曜「それじゃ料理にならないって…千歌ちゃん」






花丸「………いや、それずら!そういえばアレがあったずら!」

千歌「……?」

曜「……花丸ちゃん…?」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:02:50.71 ID:xz1J9Lo7O
花丸「今から作るのは、祝い事の定番…ケーキずら」

千歌「ケーキ…!いいね!」

曜「さっき何か使うみたいな事言ってたけど…何を使うの?」

花丸「それは……コレずら!」

千歌「おお…!箱一杯のみかん!」

曜「しかも、これって……」



花丸「そう!我らが故郷の味、寿太郎みかんずら!」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:03:30.62 ID:xz1J9Lo7O
千歌「みかんにケーキ…絶対美味しいよ!」

花丸「家でパクパク食べてたこの寿太郎みかんも飲食店として仕入れてみれば普通のみかんの三倍の値段…ありがたみを感じるずら…」

曜「ええ…いいの?これお店のなんじゃないの?」

花丸「もちろん!大切な友達を迎えるため、喜んで使わせてもらうずら!」

千歌「流石花丸ちゃん!日本一!大好き!」





花丸「……それにお店暇な時ちょくちょく食べてるから…今更ずら」

曜「……あはは…それはいいのか…な?」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:04:05.53 ID:xz1J9Lo7O
花丸「それでは早速始めていくずら…まず寿太郎みかんの皮剥きをしていくずら」

千歌「うーん…!もういい香り!このまま食べてもおいしそう!」

曜「それもうただのみかんだから…」

花丸「流石は上等みかん、香りがいいずらね……さて、ここからコンポートを作っていくずら」

千歌「コンポート…?」

曜「なんか…果物を砂糖で煮たやつ…だっけ?」

花丸「そう!よくお店のケーキとかに乗ってるやつずら」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:04:38.81 ID:xz1J9Lo7O

花丸「お水にお砂糖を加えてまるごとの寿太郎みかんを弱火で煮込んでいくよ……元々寿太郎みかんの甘みが強いからお砂糖は少し控えめずら」

千歌「花丸ちゃん…このビンは?」

花丸「オレンジリキュールずら、これも少し入れて…っと…」

曜「わぁ…!すごくいい香り!」

花丸「オレンジリキュールは柑橘系のものにも生クリームにも良く合うからバッチリずら、アルコールが苦手なら量に気を付けた方がいいけど……」

千歌「うーん!なんだか…オトナな香りがする!」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:05:16.55 ID:xz1J9Lo7O
花丸「みかんが煮えたら粗熱をとった後冷蔵庫で冷やしてっと…さて、その間に生地を作っていくずら」

曜「生地の材料は…これかな?」

花丸「そうずら、まず卵を黄身と白身に分けて…白身を泡だててメレンゲを作るんだけど…千歌ちゃんにお願いするずら!」

千歌「はい!何をすれば良いですか!」

花丸「この白身をひたすら混ぜて欲しいずら」

千歌「了解!」シャカシャカシャカシャカ

花丸「千歌ちゃんがメレンゲを作ってくれてる間に黄身と砂糖をボウルに入れて混ぜていくずら」

曜「あ、私やりたい!」

花丸「よし、なら曜ちゃんに黄身はお任せするずら、トロリとするまでかき混ぜてね」

曜「了解であります!」シャカシャカシャカ
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:05:54.35 ID:xz1J9Lo7O

花丸「両方の卵が混ぜ終わったらメレンゲを潰さないようさっくりと混ぜて、ふるいにかけた薄力粉を加えるずら」

曜「おお…生地っぽくなってきたね…!」

千歌「ハァ…ハァ………なんで……曜ちゃんは私と同じだけ混ぜたのにそんな余裕なの……」







花丸「優しく混ぜながら牛乳を加えて馴染ませたら型に生地を流し込むずら」

曜「この型は……?」

花丸「バットにクッキングシートを敷いたものずら……さて!後は180℃に熱したオープンに入れてっと…12分待つずら…その間に…」

曜「その間に…?」

花丸「生クリームを混ぜて泡立てるんだけど…」チラッ

千歌「……ごめんなさい…もう勘弁してください…」

曜「あはは……」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:06:38.40 ID:xz1J9Lo7O

花丸「生地が焼きあがったずら!」

千歌「わあ!ふんわりして…おいしそう…」

曜「なんだろう…たまごの香り…?すごくいい匂いがするね」

花丸「一旦この生地を冷まして…クリームを塗っていくずら」

千歌「でもこのスポンジ…そのまま食べるにはちょっと……」

曜「なんだか…ちょっと薄いよね…」

花丸「大丈夫ずら、クリームを満遍なく塗り終わったら……お待ちかね、コンポートにしていた寿太郎みかんをまるごと並べていくずら」

千歌「これ…一個!?」

曜「………迫力がすごいね」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:07:38.66 ID:xz1J9Lo7O
花丸「並べ終わったら最後の仕上げ!クッキングシートごとくるっと丸めて…」

千歌「あー!分かった!」

曜「なるほど…!ロールケーキだね!」

花丸「そうずら!巻き終わったら一人分ずつに切り分ければ…」

千歌「わ、綺麗な模様…!なんかお花みたい!」




花丸「みかんロールケーキ、完成ずら!」


47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:08:37.35 ID:xz1J9Lo7O

花丸「それではお待ちかね、実食タイムずら!」

千歌「いただきまーす……んむっ……うん!おいしい!」

曜「まるごと齧り付くとみかんの果汁が口いっぱいに広がって…幸せ…」

千歌「生地もふわふわで…いくらでも食べられそう…!」


花丸「……ふふっ…生地が柔らかななのは千歌ちゃんが頑張って白身をかき混ぜたからずら」

千歌「あの努力がここに生きてるのか…報われたよ…」

曜「…口いっぱいにみかんとクリームの甘みを感じて…柑橘の爽やかな香りが広がるよ」


花丸「どれ…マルも一口……うん、バッチリの出来ずら!」

千歌「完食しました!」

曜「千歌ちゃん早ッ!?」

花丸「ふふふ、まだまだあるよ…これが自分達で作った時の特権ずら」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:09:35.24 ID:xz1J9Lo7O





千歌「ふー…お腹いっぱい…!」

曜「おいしかったねー…これで梨子ちゃんにも満足して貰えそうだね!」

千歌「…………うん、そうだね」

曜「………さては千歌ちゃん、忘れてたね」

千歌「……ソンナコトナイヨ」

花丸「来週も作るならお店の厨房使う?」

曜「いいの…花丸ちゃん?」

花丸「開店前なら先に準備を終えておくから大丈夫ずら」

千歌「ありがとう花丸ちゃん……恩にきるよ」


花丸「ふふっ…次はあんまり手伝わないずら、二人でしっかり作るんだよ」

曜「了解であります!…千歌ちゃん頑張ろうね…!」

千歌「うん、曜ちゃん!」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:10:49.36 ID:xz1J9Lo7O
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次の週、週末


千歌「大丈夫かなぁ……」

曜「花丸ちゃんが教えてくれた通りにやれば大丈夫だよ…!」

千歌「お願いだから…卵を混ぜるやつは曜ちゃんやってね…」

曜「よっぽど疲れたんだね…それ」

千歌「腕がもげるかと思った……」

曜「アホなこと言ってないで…ほら、花丸ちゃんのお店に着いたよ」

千歌「最近心なしか容赦ないね…曜ちゃん…」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:11:42.71 ID:xz1J9Lo7O

カランカラン

千歌「こんにちはーー!」



梨子「久しぶり…曜ちゃん、千歌ちゃん」


千歌「梨子ちゃん!?」

曜「え…なんで……なんで!?」

梨子「もう…二人とも遅いわよ…先にエプロン着て待ってたわよ」

千歌「え……ん?え!?」

曜「千歌ちゃん変な声しかだしてないよ……気持ちは分かるけど…」






花丸「ふふっ…びっくりしたずら?」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:12:26.20 ID:xz1J9Lo7O

千歌「花丸ちゃん!どういうこと!?」

曜「そうだよ!とりあえず……どういうこと!?」

花丸「完全に混乱してるずら」

梨子「あはは………」






花丸「順に話していくずら、実はね……」





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52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:13:10.20 ID:xz1J9Lo7O

昨日


カランカラン

花丸「いらっしゃいませ〜!」



梨子「こんにちは、花丸ちゃん」

花丸「え…!?梨子ちゃん?どうしてここへ!?帰って来るのは明日だって聞いてたずら……」

梨子「えへへ…一日早くお休みもらっちゃったから…早く日本へ帰ってきちゃった」

花丸「そうだったんだ…まあ、座って欲しいずら」

梨子「ふふ…お邪魔します…」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:14:54.81 ID:xz1J9Lo7O
梨子「それでね…私、花丸ちゃんに相談があるのよ」

花丸「…何ずら?」

梨子「実はね、曜ちゃんと千歌ちゃんがお帰り会をしてくれるらしいんだけど…私からもサプライズで何かしたいなって思うのよ」

花丸「うん…なるほど?」

梨子「それで…出来たら簡単に出来る料理とか教えてもらえたらいいんだけど……」

花丸「…………どこかで聞いた話ずら」

梨子「え…?なんて?」

花丸「ううん、なんでもないずら……それよりも梨子ちゃん一つ聞いてもいいずら?」

梨子「何かな、花丸ちゃん?」


花丸「…………その二人の好物と言えば何ずら?」

梨子「うーんと……みかんかな、四六時中食べてた気がするし」

花丸「ふふっ………」

梨子「…どうしたの花丸ちゃん?」

花丸「…………だったら、こういう計画はどうずら…?」

梨子「……なになに?」

花丸「実はね……」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:15:33.92 ID:xz1J9Lo7O

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花丸「…というのが事の顛末ずら」


千歌「なにさー!花丸ちゃん言ってくれればいいのに!」

梨子「ふふっ…内緒にしててって私が言ったのよ」

曜「もう…本当にびっくりしたよー……」

梨子「さあ、お喋りもいいけど…そろそろ始めましょう」

千歌「始めるって…何を…?」




梨子「何って…作るんでしょ?ロールケーキ」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:16:12.23 ID:xz1J9Lo7O
花丸「(……お互いに考えることが同じ…本当に仲良しさんずら)」



千歌「花丸ちゃーん!!ここから先全然分からないんだけど!!」

梨子「二人は先に練習したんじゃなかったの……」

曜「千歌ちゃん……」




花丸「ふふっ…………はーい!今いくずらー!」



#3「みかんと高海千歌と渡辺曜」

おわり
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:16:41.80 ID:xz1J9Lo7O
カランカラン

花丸「いらっしゃいませ〜!」




ルビィ「………」




花丸「ルビィ…ちゃん」

ルビィ「……久しぶりだね、花丸ちゃん」

花丸「うん、久しぶり……ずら」

ルビィ「座ってもいい?」

花丸「あ、うん……カウンターへどうぞ」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:17:10.91 ID:xz1J9Lo7O

花丸「ルビィちゃんが東京に出てからだから…何年ぶりずら?」

ルビィ「………いち…に……三年ぶりかな…?」

花丸「そっか…もっと空いてるかと思ったずら」

ルビィ「うん……いつも一緒だったからね」

花丸「ふふっ……懐かしいずら、ルビィちゃんアイドルになるって言って…今まで離れた事無かったから長く感じたずら」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:18:15.89 ID:xz1J9Lo7O
花丸「はい、おしぼりどうぞ…何か飲み物飲むずら?」

ルビィ「………花丸ちゃん、お酒ってある?」

花丸「……お酒…ずら?」

ルビィ「うん…ここが喫茶店なのは分かってるけど…ダメかな?」

花丸「……本当はここは喫茶店じゃなくてカフェだからお酒を出すことはできるずら、それに軽食とワインを飲みたいってお客さんもいるから…ちょっとだけなら置いてあるけど…」

ルビィ「喫茶店とカフェ…って違うの?」

花丸「カフェなら手の込んだ料理やお酒を提供出来るけど、喫茶店にはそれが出来ないずら…もっとも、名前に反映させる必要はないからここの名前は喫茶花丸だけど…」

ルビィ「……花丸ちゃん、詳しいんだね…」

花丸「ふふふ…今やマルはマスターずら!」

ルビィ「すごいなぁ…じゃあ、ワインと…何か花丸ちゃんのお任せでください」

花丸「はい、承ったずら!」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:19:05.03 ID:xz1J9Lo7O
ルビィ「そうして包丁握ってると…なんだかかっこいいね、花丸ちゃん」

花丸「んー?そうずら?」トントントン

ルビィ「うん、職人!って感じだよ」

花丸「そっか…それは嬉しいずら、マルは将来的にダンディーなマスターを目指してるずら」

ルビィ「ふふっ……なにそれ」

花丸「あ、ワイン赤と白どっちがいいずら?」

ルビィ「あー……今花丸ちゃんが作ってくれてるのに合うのはどっち?」

花丸「うーん…きっと赤が合うずら…!」

ルビィ「じゃあ…赤ワイン貰えるかな?」

花丸「はいずら!」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:19:45.35 ID:xz1J9Lo7O

花丸「(オーリブオイル、にんにく、塩…それにブラックペッパー。これらを常温に戻した牛肉に満遍なく擦り込む)」

花丸「(後はオーブンで焼きあげるだけ、この時油を染み込ませたキッチンペーパーで包む事でパサつきを抑える事が出来る…)」

花丸「……ちょうど焼きあがる頃にルビィちゃんが来てくれてよかったずら……後はジャガイモを下処理してと……」





ルビィ「…………」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:20:57.96 ID:xz1J9Lo7O
花丸「はい、どうぞ」コトッ



ルビィ「わぁ…!すごい…これ、ローストビーフ?」

花丸「そうずら、ルビィちゃんの大好きだったおいもさんもあるよ」

ルビィ「……そっか、覚えててくれたんだね」

花丸「もちろん、前ルビィちゃん言ってたずら『おうちで唐翌揚げ粉使って揚げたおいもさんが一番好き』って…だからちょっぴりスパイシーに仕上げてあるずら」

ルビィ「ふふっ…本当に、よく覚えてるね…」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:21:42.69 ID:xz1J9Lo7O

花丸「元気が無い時には大好物にお肉、これが一番ずら」

ルビィ「…………」

花丸「……ルビィちゃん?」

ルビィ「……ルビィ、元気が無さそうに見えた?」

花丸「………昔のルビィちゃんとは、少し違う感じがしたずら……悲しんでるような、思い悩んでるような…マルはそんな顔してるように感じたずら」」

ルビィ「…………」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:23:13.33 ID:xz1J9Lo7O

花丸「ささっ、お芋が冷めないうちに早くたべるずら」

ルビィ「あ、うん……頂きます…」

ルビィ「うむうむ……」

花丸「……どうずら?」

ルビィ「うん…すごく旨味がしっかりしてて…おいしいよ、花丸ちゃん」

花丸「…よかったずら!」

ルビィ「……一緒にワインも貰おうかな」

花丸「マルはワインには詳しくないけど…確かチリ産…だったと思うずら」

ルビィ「………んむっ……うん、スッキリしてて飲みやすいよ」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:24:51.72 ID:xz1J9Lo7O

ルビィ「…………はむっ…あむっ……」

ルビィ「………んくっ……」

花丸「………」

ルビィ「……こくっ……んくっ……ぷはっ……ごちそうさま」

花丸「お粗末様ずら」

ルビィ「………ふぅ………花丸ちゃん…」

花丸「……何ずら、ルビィちゃん?」








ルビィ「…ルビィね、アイドルになれなかったんだ」
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:25:29.00 ID:xz1J9Lo7O

花丸「…………」

ルビィ「……頑張って、頑張って、東京に出てアイドルになろうと思ったけど…ダメだった」

花丸「………マルは分かってたずら、ルビィちゃん言ってたもん、立派にアイドルになるまで帰って来ないって」

ルビィ「………うん、ごめんね?なれなかったのに、戻ってきちゃった」

花丸「……悪いことなんて、ないずら」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:26:00.74 ID:xz1J9Lo7O

ルビィ「……ルビィ、出て行く時は思ってたんだ…『やれるだけやろう、ボロボロになるまで頑張ってみよう』って…そう家族にも言って出てきた」


ルビィ「でもね、私は…恐ろしくなったんだ…次も、そのまた次もダメだったら…自分がこの先どうなってしまうのか…とにかく怖くて、前を向けなくなって……ボロボロになった果てが恐ろしくて、逃げ出してきちゃった」

花丸「そんな…ルビィちゃん…」

ルビィ「だからね……もうルビィには泣く資格も…もう、なくなっちゃったんだ…」

花丸「…………」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:27:14.86 ID:xz1J9Lo7O
花丸「ルビィちゃん、一つ聞いてもいい?」

ルビィ「………うん、花丸ちゃん」




花丸「…………わさび、食べられる様になったずら?」

ルビィ「……わさび…?」

花丸「ほら昔ダメだったから、回転寿司みんなで食べに行っても一人だけサビ抜きだったずら」

ルビィ「あぁ…ちょっぴりだけなら大丈夫になったけど…でもなんで?」

花丸「ワインがちょっぴり余ってるから冷蔵庫の余りでおつまみ、サービスするずら…ちょっと待ってて!」


ルビィ「あ…うん……」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:27:48.49 ID:xz1J9Lo7O

花丸「はい、ルビィちゃんどうぞ」

ルビィ「これは……?」

花丸「カマンベールチーズにオリーブオイル、上に摩り下ろしたわさびを乗せただけずら」

ルビィ「……花丸ちゃん……ルビィ、大丈夫にはなったけどまだそんなにわさび得意ではないよ…」

花丸「そっか…そうずらか……」

ルビィ「ごめんね花丸ちゃん…お寿司にちょっぴり入ってくるくらいなら食べられるけど……」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:29:17.76 ID:xz1J9Lo7O



花丸「……このわさびはマルがお茶漬けにしようと買ってきた…ここ静岡県産の高級品ずら」

花丸「わさびは香りが立つのは擦ってから3分から5分…こうして問答してる間にちょうど辛みのピークずら」

ルビィ「…?だから、ルビィはそんな直接食べられる程わさびは得意じゃ……」





花丸「そんな辛い辛いおつまみを苦手なルビィちゃんが食べたら…泣いちゃっても、仕方ないずら」

ルビィ「…………!」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:30:01.29 ID:xz1J9Lo7O

ルビィ「…………いただきます」

花丸「…どうぞずら」




ルビィ「…………」パクッ

花丸「…………」






ルビィ「……花丸ちゃん」

花丸「なにずら?ルビィちゃん」

ルビィ「…………ルビィね、お歌もダンスの練習も一杯したんだ…特に歌うのが得意じゃなかったから…一杯頑張った」

花丸「…………うんうん」

ルビィ「お酒を飲むのも、お外に遊びに行くのも全部、全部我慢したんだ…」

花丸「………そっか」





ルビィ「必死で打ち込んで、出来るだけを全部ぶつけて頑張ってきたのに………それなのに…それなのに!!!どうして…!!!」ポロポロ

花丸「…………」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:31:04.83 ID:xz1J9Lo7O

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花丸「本当に大丈夫…?ワインまあまあの量飲んでたし…顔赤いよ?」

ルビィ「だいじょうぶ…だいじょうぶ……すぐそこでタクシー呼んで実家まで送ってもらうから」

花丸「……本当に大丈夫…?うちに泊まっていっても…」

ルビィ「…花丸ちゃんにもう迷惑かけられないよ」

花丸「迷惑だなんて…そんなこと……」

ルビィ「いいから…いいから……それじゃ、バイバイ」

花丸「あっ……バイバイ」






ルビィ「……ありがとうね、花丸ちゃん」

花丸「…………」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:32:04.00 ID:xz1J9Lo7O
花丸「さて、閉店作業しないと…すっかり遅くなっちゃったずら」

ルビィは追加でワインを数杯飲み干し、幼さの残る顔を真っ赤に染めた後店を去っていった。ルビィの去った店の中は夜も更けていた事もあり、いつもより静まり返っているように感じられた。






花丸「(ありがとう、か…………)」

夜遅いので扉を静かに開けて店の外に出る、夜更けの風が少し肌寒い。『開店中』と書かれた札を裏返し今日一日の営業を終える。

メニューの書かれた立て看板を片付けながら、花丸が思い起こしていたのはさっきまでいた親友の残した感謝の言葉とその切なげな顔だった。





#4 「ワインと山葵と黒澤ルビィ」

おわり
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:33:12.61 ID:xz1J9Lo7O
#5 エピローグ


ジリリリリリリリリリリリ!!!

花丸「んぅっ……誰ずら…こんな朝から……」

花丸「携帯、携帯っと……ポチッと…」


花丸「はい、もしもし?」







『ちょっと!!!!どうなってるのよ!!!』

花丸「うぎゃっ…!ちょっとうるさい…耳がキーンとなるずら」

『どうもこうもないわよ、どうなってるって聞いてるのよ!』



花丸「朝から騒がしいずら……善子ちゃん」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:34:10.32 ID:xz1J9Lo7O
善子『全く…昨日ルビィがそっち行ったんでしょ?』

花丸「あぁ……うん、そうだけど…」

善子『あいつ、酔いが回ってタクシーの運転手に行き先言えなくて結局タクシー降りて、片っ端から携帯の連絡先に電話してたわよ』

花丸「うげっ……マジかずら」

善子『結局私が回収してうちで寝かせてるけど……ルビィにどんだけ飲ませたのよ!』

花丸「……ごめんなさい、やっぱりマルが店で引き止めるべきだったずら」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:35:26.18 ID:xz1J9Lo7O

善子『……まあ、もういいわ……一応無事私の家で寝てるし…』

花丸「う、うん……」

善子『それより…ルビィ、いつこっち戻ってきたのよ…』

花丸「昨日帰って来てすぐうちに来たみたいだけど……」

善子『そう……ルビィ元気なさそうだったわ、目も腫れてたけど……』

花丸「…………」

善子『……まあ、それは聞かないでおくわ』

76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:35:57.11 ID:xz1J9Lo7O

善子『そういや……ルビィが来てるなら今丁度全員こっちの方来てるんでしょ?』

花丸「全員……うん、果南ちゃん達も千歌ちゃん達も…みんな最近遊びに来てくれたよ」

善子『……そう、みんな元気だった?』

花丸「うん…みんな変わらなかったよ」





善子『それなら……アンタの店、今日の8時から空いてる?……空いてるなら予約入れるわ』

花丸「予約…ずら?」

善子『人数は…分かんないけど今から電話かける…マックス8人!』
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:36:59.95 ID:xz1J9Lo7O

花丸「それって……」

善子『いいじゃない!突発の同窓会よ!』

花丸「………善子ちゃん…でもどうして?」

善子『一つは、久々にみんなの顔をみたいし……それに…』

花丸「それに…?」

善子『ルビィのこと…何があったか知らないし、何が出来るか分かんないけど……ほっとけないじゃない…』

花丸「………善子ちゃん…」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:37:41.54 ID:xz1J9Lo7O

善子『つまり…その…そういう訳だから!予約!入れたから!』

花丸「………ふふっ……集まらなかったら善子ちゃんだけずら」

善子『ルビィは連れてくわよ!っていうか…そうならないようにアンタも連絡して!』

花丸「えー……なんでマルも…!?」

善子『いいから!集めるために連絡する!』

花丸「………はぁい、分かったずら…」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:38:18.21 ID:xz1J9Lo7O

善子『じゃ、そういうことだから頼むわね』

花丸「はーい、8時で待ってるけど1時間前には人数教えてほしいな、一応料理の下準備があるずら」

善子『あ、うん…分かったわ、なるべく早く連絡する』

花丸「うん、待ってるね………善子ちゃん」

善子『………何よ?』




花丸「……楽しみにしてるずら」




プツッ
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:39:26.65 ID:xz1J9Lo7O

花丸「ふぅ………」


受話器をゆっくりと置き、小さく伸びをする


今日は忙しくなりそうだ、隠れ家的魅力を売りにしているこの店でも一応平日の昼間には昼食を取りに来るサラリーマンや散歩の小休憩に立ち寄るお年寄りなどで一人で回すのが大変になる程度には客が入る。


パンのストックはあっただろうか。戸棚を確認すれば残り幾枚。サンドイッチが五度出たなら失くなってしまうだろう、早急に仕入れなければならない。

それに、茶の葉を開けてから少し日が経ってしまっている気がする、コーヒーの種類が少ないこの店ではもっぱら菓子と共に濃いめの茶を出すことが多い。残量を気にかけていても時にこのように余ってしまうこともある。


花丸「(店の掃除と基本メニューの下準備をしたら、パンを発注して‥‥‥お茶は…濃いめに出してケーキの味付けにしよう、それがいいずら)」



素早く思考を纏めて手を動かし始める、客入りの多くない店であっても喫茶の朝は猫の手も借りたいほどに忙しい。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:40:45.57 ID:xz1J9Lo7O

花丸「料理午後の内に考えないと‥‥でも材料足りるかな……」

木張りの床全体に箒掛けしながら頭の中は夜に出す料理の算段を立てていた。なにぶん最大8人…自分も合わせて9人だ、それなりの量を作らなければならない。


そうだ、料理の材料は善子を使い走らせればいい。そもそも急に店を使うと言いだしたのは善子の発案だ、それくらいしてもきっとバチは当たらない。


善子が買い物へ行く姿がありありと目に浮かぶ。ぶつくさと、「人使いが荒い!」なんて私への文句を言いながらスーパーをウロウロするのだろう。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:41:43.33 ID:xz1J9Lo7O

花丸「いや…待てよ…今ならきっとルビィちゃんも連れて行くか…」

それならきっと、使い走りでも楽しそうだ。微笑ましい絵面が頭に浮かんでくる。うん、それがいい。ルビィちゃんも少しは元気を取り戻すだろう。





花丸「さてと、考え事は後にして………今日も、一日頑張るずら」


雑念を頭に浮かべながらも手は動かし続け、店の掃除を終わらせる


そろそろ、開店の時間だ
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:43:00.68 ID:xz1J9Lo7O

喫茶花丸

静岡県の東部。沼津駅前の商店街裏の一角に位置している店。

この木張りの喫茶店に別段変わった売りは無く、お客さんのあまりいない静かな店の雰囲気と店の端に位置する本棚にびっしりと詰め込まれた本の数々…それくらい。

私がお客さんに出すのはもっぱらコーヒーではなく…慣れ親しんでいるという理由で緑茶やほうじ茶などの茶の部類を手作りの菓子にいつも添えていた。

駅前に位置しているものの立地の関係で客入りはそれほどでもなく…普段は一人で店をやりくりできる程度の混み具合。とりたてて店主が聞き上手な訳でも、話し上手な訳でもない。いわば普通の店だ。




ただ訪れてもらえれば、店にいる時間の間少しだけ、自分の人生と切り離して休憩できる。そんなお店。


そんな穏やかでとりとめのない日常の流れるだけのこの店だけど…

今日はちょっとだけ、楽しい日になりそうだ。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:43:28.52 ID:xz1J9Lo7O

カランカラン……




花丸「はーい!いらっしゃいませ!」





おわり
85 :>>2 ミス :2018/07/05(木) 19:44:38.58 ID:xz1J9Lo7O
カランカラン



果南「こんにちは、やってる?」

花丸「あ!果南ちゃん!…うん、ちょっと早いけど準備終わってるから大丈夫だよ」

果南「あ、時間まだだったんだ…ごめんね」

花丸「ううん……ほら、カウンターにどうぞ」

果南「お、それじゃあ失礼して…っと」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/14(土) 22:47:34.19 ID:/UoJoH4co
焼き鳥の人?
焼き鳥のやつ大好きやからもっと書いてくれー
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