花丸「喫茶花丸」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:23:06.57 ID:xz1J9Lo7O
静岡県の東部。沼津駅前の商店街裏の一角にその店は位置していた。

この木張りの喫茶店に別段変わった売りは無く、店主が年若い娘な事と店の端に位置する本棚にびっしりと詰め込まれた本の数々…それくらいのものだった。

店主が客へ出すのはコーヒーではなく…慣れ親しんでいるという理由でもっぱら緑茶やほうじ茶など茶の部類を手作りの菓子にいつも添えていた。

駅前に位置しているものの立地の関係で客入りはそれほどでもなく…普段は店主一人で店をやりくりできる程度。

もっとも、店主自身は繁盛や売り上げの拡大に全く頓着しておらず、その日の暮らしが出来て、後ちょっぴり美味しいものが食べられさえすれば気にしない…そんな人間だった。



これらの話はそんな片田舎のちっぽけな喫茶店とその店主、そしてその周りで起きたとりとめのない日常である。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1530782586
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/05(木) 18:24:10.65 ID:xz1J9Lo7O
カランカラン



果南「こんにちは、やってる?」

花丸「あ!果南ちゃん!…うん、ちょっと早いけど準備終わってるから大丈夫だよ」

果南「あ、時間まだだったんだ…ごめんね」

花丸「うう…ほら、カウンターにどうぞ」

果南「お、それじゃあ失礼して…っと」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:25:21.21 ID:xz1J9Lo7O
花丸「何か食べる?」

果南「うーん、そうだね……お腹はそれなり空いてるんだけど…」

花丸「お店開けたばっかりだから…全部出来立て中の出来立てだよ!」

果南「……うーん……あ、そうだ」

花丸「……?」

果南「そういえば……花丸に食べさせて欲しいものがあるんだけど」

花丸「なになに、どうしたの?」

果南「実はね……」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:26:04.71 ID:xz1J9Lo7O

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(電話中)


鞠莉『今度のお休み…三人でどこか行かない!?』


果南「私は構わないけど…ダイヤは?」


ダイヤ『わたくしも特に用事は有りませんが……どこかアテでもあるのですか?』

鞠莉『ええ、実は食べたいものがあるのよ〜!』

果南「……食べたいもの?」

鞠莉『それはね……』

果南「それは…?」

ダイヤ『……なんですの?』



鞠莉『そう!パンケーキよ!』
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:27:41.44 ID:xz1J9Lo7O
ダイヤ『パンケーキって……あなたしょっちゅう食べてそうですけど』

鞠莉『いや〜それが無くて……一度でいいから食べてみたいのよー…ほら、華の女子高生の頃あんなの出すお店無かったから』

ダイヤ『まあ確かに……それにしても女子高生って…何年前の話してますの…』

果南「…………」

鞠莉『果南…?』

ダイヤ『果南さん…どうかしましたか?』

果南「あ……あはは…何でもないよ…」

鞠莉『……そう?ならいいけど…』

果南「私はダイヤがいいなら行くけど…ダイヤな?」

ダイヤ『ええ、構いませんわ』

鞠莉『OK!じゃあ次の祝日までにお店リサーチしておくわね!』
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:28:30.75 ID:xz1J9Lo7O
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果南「……なんて事があったんだけど…」

花丸「ふんふん、三人とも仲が良くて羨ましいずら……でもそれがどうかしたの?」

果南「あー……問題はそのパンケーキなんだけど…」

花丸「パンケーキが問題…?」

果南「その、さ………」

花丸「……?」




果南「パンケーキって……女の子っぽくない?」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:29:27.31 ID:xz1J9Lo7O
花丸「…………果南ちゃん女の子だよね?」

果南「いや、それはそうなんだけど……なんていうか"ザ・女の子"っていうか…甘いのガッツリっていうのがどうも…」

花丸「なるほ…ど…?」

果南「後……鞠莉もちょっと言ってたけど響きが都会の女子高生っぽいっていうか…」

花丸「………まあ分からないでもないけど…」

果南「だからちょっと緊張するっていうか…そもそも行儀よく食べられるかなって…あの二人何だかんだで作法はバッチリだし」

花丸「あー……長く一緒にいると忘れそうになるけど…二人ともお嬢様だもんね…」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:30:20.26 ID:xz1J9Lo7O

果南「だからさ、一回ここでパンケーキ食べさせてくれないかな…」

花丸「そっかー…パンケーキかぁ…」

果南「お願い!私を助けると思って!」

花丸「大袈裟だなぁ果南ちゃん……分かったずら」

果南「え…それなら…!」





花丸「うん!マルがバッチリ、果南ちゃんにパンケーキつくってあげるずら!」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:30:58.60 ID:xz1J9Lo7O
花丸「……と大見得切っちゃったけど…どうしようかなぁ…」


花丸「(お茶菓子にクッキー焼いたりする事はあるけどパンケーキなんてあんまり作ったことないずら…それに果南ちゃんあんまり甘いの得意じゃなさそうだし……)」


花丸「クッキーに使ってたやつでなんか使えそうな材料は…っと…………ん?」






花丸「…………これずら!これなら上手くいくかもしれないずら!」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:31:40.88 ID:xz1J9Lo7O

花丸「(薄力粉にベーキングパウダー、上白糖と塩を少し入れて混ぜ合わせる)」

花丸「(次に卵の黄身と白身を分けて黄身の方にバニラ、牛乳、サラダ油を入れて混ぜ合わせ、さっきの粉に投入する)」


花丸「ここで一手間、分けた白身をひたすら混ぜてメレンゲを作る……っと」カシャカシャカシャ

花丸「(卵をまるごと全部混ぜるより遥かに大変だけど……出来上がりがよりふんわり仕上がる…ずら…!)」カシャカシャカシャ




花丸「はぁ…はぁ……いつやってもメレンゲを作るのは…疲れるずら」カシャカシャカシャ
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:32:12.53 ID:xz1J9Lo7O
花丸「(出来上がったメレンゲを潰さないように優しく生地に流し込み混ぜ合わせる)」


花丸「ここで…今回は特別に"これ"を入れるずら…味を壊さないように少しだけ…」


花丸「混ぜ合わせた生地が滑らかになったら後は焼くだけ!…本当は型で焼くのがいいんだけど無いから…アルミホイルで型を作るずら」


花丸「(弱めの中火でじっくり……しっかり中まで火が通って膨らみきるのを見計らって…)」





花丸「うん、バッチリ!完成ずら!」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:33:28.25 ID:xz1J9Lo7O
花丸「果南ちゃん!お待たせ、パンケーキセットずら!」

果南「おー戻って来たね…お茶とパンケーキ…すごくいい匂いする…」


花丸「どうぞ!花丸特製パンケーキずら!」


13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:34:17.14 ID:xz1J9Lo7O
果南「すごくいい香り…それにメープルシロップと一緒に上に乗ってるやつは…なんだろ?」

花丸「まあまあ、食べてみればわかるずら!」

果南「確かに…それじゃあいただきます!」

果南「………んむっ…もぐ…」

花丸「……どうずら?」




果南「うん、美味しいよ!」

花丸「よかった〜……!」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:34:57.18 ID:xz1J9Lo7O
果南「上に乗ってるのは…生姜かな?」

花丸「そうずら、ジンジャークッキーを思い出して入れてみたんだけど……」

果南「うん、甘すぎなくてサッパリ美味しいよ…」

花丸「えへへ…果南ちゃんのお墨付きずら」

果南「このお茶は…緑だし日本のお茶…?紅茶じゃないんだね」

花丸「それは煎茶ずら…まあまあ一口」

果南「う、うん……じゃあ…」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:35:33.06 ID:xz1J9Lo7O
果南「…なにこれ!?」

花丸「ふふっ……ビックリした?」

果南「さわやかなんだけど香りが抜けるっていうか……とにかく凄くいい香りがする…」

花丸「神奈川で取れた香駿っていうお茶なんだけど…よく花の香りがするって言われてるずら」

果南「なるほど……今まで飲んだ事ある日本茶とちょっと違う…」

花丸「煎茶やほうじ茶は元々洋菓子に割と合うんだけど…このお茶はより一段甘みの強いお菓子に合う気がするずら」

果南「ほえー……すごいね花丸は…こんな事まで知ってるんだ」

花丸「えへへ、マルがお家で緑茶ばっか飲んでて…紅茶に馴染みが無かったから…探したずら」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:36:08.77 ID:xz1J9Lo7O
果南「ふう…ご馳走さま、美味しかったよ!」

花丸「お粗末様でした…果南ちゃんが気に入ってくれたならなによりずら」

果南「うん、これで鞠莉達と行くパンケーキもおいしく食べられそうだよ」

花丸「それは何よりずら…ゆっくり、おいしく食べるお菓子が一番ずら」

果南「うんうん…あ、お茶もう一杯貰える?」


花丸「ふふっ……かしこまったずら!」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:37:07.23 ID:xz1J9Lo7O

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その後、週末



花丸「はぁー……やっぱり皿洗いが一番骨が折れるずら……食洗機買えたらなぁ…」

花丸「(今頃…果南ちゃん達は今頃遊びに出かけるのかなぁ…)」




花丸「……お店のを食べに行ったらなら…もうあのパンケーキは出す事は無い、か」

花丸「(果南ちゃんがおいしく食べてくれたのは嬉しかったけど……それはちょっぴり、寂しいかも)」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:38:49.25 ID:xz1J9Lo7O

カランカラン


花丸「あ、いらっしゃいませー!」




鞠莉「ハロー!花丸!」

ダイヤ「こんにちは、花丸さん」

果南「……やっほ」

花丸「……あれ!?鞠莉ちゃん達…?今日はお出かけだって…」



鞠莉「いやー…それがね?私達パンケーキ食べに行こうとしたのよ?でもね」

ダイヤ「果南さんが……花丸さんの所で食べたのが美味しかったってあまりにも自慢げに言うものですから…」

鞠莉「だから…気になって来ちゃったの!」

花丸「果南ちゃんが……?」

果南「あはは……」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:39:46.67 ID:xz1J9Lo7O
果南「花丸ごめん………という訳なんだけど…また食べさせてくれる?」

花丸「ふふっ……」

果南「……花丸?」





花丸「もちろん!マルにお任せずら!」




#1「パンケーキと生姜と松浦果南」

おわり
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:40:28.59 ID:xz1J9Lo7O


善子「よっと……やってる?」

花丸「あ、善子ちゃん…うん、カウンターどうぞ」

善子「そう…お邪魔するわ」

花丸「…………?」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:40:57.81 ID:xz1J9Lo7O
花丸「はい!お水どうぞ」

善子「ありがと……」

花丸「外、暑かったでしょう?朝ちょっと覗いた時もうカンカン照りだったずら」

善子「ええ……そうね」

花丸「……善子ちゃん…大丈夫…?元気なさそうだけど…」

善子「あぁ……うん、ちょっとね…」

花丸「マルじゃ頼りないかもだけど…良かったらなんでも聞くよ」

善子「……こんな事言うと笑われるかもしれないけど…」

花丸「笑わないよ、善子ちゃん」

善子「…………そう…優しいわね」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:41:49.90 ID:xz1J9Lo7O
善子「私達…昔はなんていうか…頑張ってたじゃない…アイドルやったり…学校を救おう!なんて躍起になったり…」

花丸「………うん」

善子「夢、なんて大層な物じゃないけど…目標みたいなのが無いのよ今の私には」

花丸「………でも、今善子ちゃんは目標にしてるところに入れたって……立派にお仕事頑張ってるずら…」

善子「……もちろん、何もしてないつもりは無いけど…なんていうか」

善子「ただただ同じ場所で同じように時間を過ごしてるだけな気がして…時々堪らなく、怖いの」

花丸「…………」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:42:48.32 ID:xz1J9Lo7O
善子「悪いわね、愚痴みたいな事言っちゃって……酒も入ってないのに…」

花丸「……ううん、大丈夫ずら」

善子「最近はあんまり食欲もなくてね…ま、これは暑さのせいでもあるんだけど」



花丸「……ならマルが何か作ってあげるずら!」

善子「ずら丸が…?」

花丸「うん!善子ちゃんが少しでも元気になれるようなご飯を作ってあげるずら」

善子「……じゃあ頼むわ…メニューはずら丸に任せる」

花丸「うん!マルにお任せずら!」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:44:04.37 ID:xz1J9Lo7O

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花丸「元気がない善子ちゃんを元気にする料理……栄養がある物がいいかな?」

花丸「あと善子ちゃん…辛いものが好きだっけ…うん、食欲も湧きそうだし辛いものがきっといいずら」

花丸「冷蔵庫にあるものは…っと」

花丸「豆腐に葉物……あとパスタ用の魚介が少し……ん?」





花丸「……これずら、これならきっと元気になって貰えるずら!」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:45:16.86 ID:xz1J9Lo7O
花丸「さて、始めるずら!」


花丸「今回作るのは麻婆豆腐…ポピュラーな中華料理ずら」

花丸「まずはフライパンで油を火にかけてにんにく、生姜、唐辛子を加えて油に香辛料の風味を移していくずら……今回はちょっぴり生姜多めにするずら」


花丸「それを待つ間に…鍋いっぱいに水を張って塩を少々入れて沸かしていく…沸騰したら豆腐を入れて火を通す為のお湯ずら、豆腐を茹でると中の水が抜けて味が染みやすくなるずら」

花丸「ニンニクの色が変わって風味が油に移ったら……いよいよお肉を炒めていく…と言いたいところだけど…今回は違う食材を使うずら!」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:49:06.83 ID:xz1J9Lo7O

花丸「それはこれ、牡蠣!」




花丸「牡蠣には冬が旬のイメージがあるけど岩牡蠣の旬は夏!栄養たっぷりずら」

花丸「牡蠣に小麦粉を軽くまぶして…さっきのフライパンに投入!そこに豆板醤と甜麺醤を加えるずら……豆板醤は入れすぎると辛くなるけど…善子ちゃんなら大丈夫かな?」


花丸「火を通しすぎないよう軽く焼き色が付いたらパスタ用に取っておいた魚介出汁と醤油を少しを加えて……ここで茹でておいた豆腐を入れるずら」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:51:15.02 ID:xz1J9Lo7O
花丸「うん、あとは火を弱めにして豆腐に旨味が移るのを待って、片栗粉を溶いたスープでちょっと強めにとろみをつける……うぅ…片栗粉の塩梅が一番難しいずら…」

花丸「そして最後にラー油を少し回しかけて…超強火で少しの間鍋を熱する!」

花丸「これをする事で油たっぷりの中華料理でもしつこくなく美味しく食べられるずら」




花丸「よし、完成ずら!」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:52:17.95 ID:xz1J9Lo7O
花丸「おまたせ、善子ちゃん!」




善子「これは麻婆豆腐……でもこれって…牡蠣…?」

花丸「うん、牡蠣入り麻婆豆腐ずら!ほらほら、この山椒をかけて熱いうちに」

善子「わ、分かったわよ……頂きます…」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:53:21.10 ID:xz1J9Lo7O

善子「もぐもぐ………」

花丸「……どうずら?」

善子「これ美味しいわね!……ピリッと辛いけど牡蠣の旨味がしっかりしてるから…幾らでも食べられそう」

花丸「……よかったずら」

善子「山椒もそうだけど……結構生姜が強くて…食べてると汗が出てくるわ」

花丸「麻婆豆腐は中華料理だけど……具材の美味しさを豆腐に戻すって考え方はなんだかちょっと…和食的な心を感じるずら」

善子「牡蠣と豆腐だからスルッと食べられて…それでいて旨味と辛味がしっかりしてる…ずら丸結構やるわね」

花丸「えへへ…お褒めにあずかり光栄ずら」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:54:37.82 ID:xz1J9Lo7O

花丸「善子ちゃん」

善子「……?何よずら丸」

花丸「牡蠣は動かない貝ずら、激しい波に打たれてもジッと岩場に留まってひたすら栄養をその身に蓄えるずら」

花丸「その結果貝殻は頑強に育ち、その蓄えられた生命力で水から揚げても一週間は生きていられるらしいずら」

善子「へぇ…意外と丈夫なのね」

花丸「だから…ジッと耐えて蓄えた経験はきっと善子ちゃんの糧になるずら、今は目に見えなくてもきっと善子ちゃんの栄養になってるずら」

善子「………」

花丸「オラもそうずら…社会に出なくちゃいけない、自分に何が出来るか考えた時…頼ったのは食べる事ずら」



花丸「オラは自分が牡蠣を食べたくてこの料理を覚えたずら……案外、どこで何が為になるのか…分からないものだよ」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:55:55.72 ID:xz1J9Lo7O
花丸「………なんてね、ちょっとお喋りし過ぎたずら」

善子「……ありがとずら丸、ちょっと元気出た」

花丸「ふふっ、麻婆豆腐冷めちゃうよ?」

善子「おっと、そうね……早めに頂くわ」



善子「もぐ……これ、ご飯にも合いそうね」

花丸「そりゃあ麻婆豆腐だからね……でも今日は炊いてないずら…」

善子「………そう、残念ね…」

花丸「ごめんね、最初にオラが気付いていれば早炊きで間に合ったかもしれないのに…」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:57:41.49 ID:xz1J9Lo7O

善子「……次、来週来るから」




花丸「へ……?」

善子「………来週来るから、ご飯とこれ……用意しておきなさい」

花丸「……………ふふっ…」

善子「……何よずら丸、言いたいことあるなら言いなさいよ」

花丸「ううん、何でも?」

善子「………全く…はむっ……」



花丸「ふふっ………また来週、お待ちしてるずら!」




#2 「麻婆と牡蠣と津島善子」

おわり
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:58:16.91 ID:xz1J9Lo7O
千歌「こんにちは〜!」

曜「こんにちは、花丸ちゃん」

花丸「あ…二人とも、いらっしゃいませ!」

千歌「今日は暑いねぇ……ちょっと外歩いただけで汗だくだよ…」

曜「……千歌ちゃんが新しい日傘持ってくるって言って結局忘れたからでしょ」

千歌「……そんなこと言ってないもん」

曜「いやいや…言ってたでしょ」

花丸「ふふっ……さあ、座って?今お冷出すずら」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:58:51.84 ID:xz1J9Lo7O
花丸「はい、お冷とおしぼりずら」

千歌「ありがとう花丸ちゃん……んくっんくっ…ぷはぁ!!うまい!」

曜「千歌ちゃん早っ…!」

花丸「本当に暑かったんだね…ほい、もう一杯注ぐね…」

千歌「花丸ちゃんありがとー……ホント灼熱だったよ…」

曜「まだ夏始まったばかりなのにね〜……」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 18:59:43.16 ID:xz1J9Lo7O
花丸「そういえば、電話で言ってたマルに相談って何ずら?」

千歌「あ、そうそう!その事で来たんだよ!すっかり忘れてた!」

曜「千歌ちゃん……」

花丸「マルに出来ることなんてそんなにないけど……力になれる事ならお手伝いしたいずら」





千歌「実はね…来週末に梨子ちゃんが久々に帰ってくるんだ!」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/05(木) 19:00:37.04 ID:xz1J9Lo7O
花丸「梨子ちゃん…確か一年くらい海外に音楽のお勉強しに行ってたんだっけ…?」

千歌「そうだよ!どこだっかな……オーストラリア…だっけ…忘れちゃった!」

曜「オーストリアだよ、千歌ちゃん……」

花丸「あはは……」

曜「それでね…ここからが花丸ちゃんにしか頼めないお願いなんだけど…」

千歌「失礼を承知でお願い致します……」

花丸「…………?」
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