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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」
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150 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/08/17(金) 23:14:46.30 ID:PvAq2ipeo
* 太平洋上 *
卯月「……」
ザザァ…
卯月「どこへ行くって……どこに行ったらいいぴょん」
卯月「妙高さんは、N中佐と一緒に、どっかの鎮守府に行ったって聞いたけど……」
卯月「行先、わかんないぴょん」
卯月「あとは……提督准尉のところくらいしか、行くところがないぴょん」
卯月「……提督准尉は、うーちゃんのこと、忘れてないよね……?」ウルッ
卯月「うーちゃんは……」
卯月「准尉にまで忘れられたら、どこに行ったらいいぴょん……」
ヒュウウウ
卯月「!?」
ドガァァン
卯月(中破)「あう!?」ヨロッ
151 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/08/17(金) 23:15:47.32 ID:PvAq2ipeo
ツ級「……」シュゥゥ…
卯月「……あ……」
リ級「……」ジャコッ ドォン
ドカドカァン
卯月(大破)「ぐ……ぅ……!」
卯月「回避……回避する、ぴょ……」
タ級「……」ガシャッ
卯月「!!」
ドガァァァァン
卯月「ぎゃ……!!」ズガァァン
卯月「……あ……」フラッ
卯月「……じゅ……い……」
ドポンッ
ザァァ…
ザザァ…
152 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2018/08/17(金) 23:16:32.07 ID:PvAq2ipeo
今回は、これまで。
N中佐は「チートやツールを使った提督」として描いていたので、
その鎮守府のその後、というイメージで描いております。
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/18(土) 03:10:03.24 ID:D36plFK40
せめてここのうーちゃんアケ仕様だったら最初の中破以外
無傷で逃げれたのだが原作スタイルだったか(違
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/18(土) 09:58:53.61 ID:zLXYci6A0
おつ
BANされちゃったわけか…
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/18(土) 17:14:01.65 ID:XaN3Mr5JO
乙!
記憶をリセットですか、弥生が出て来ないから逃げれたのかな?
156 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/08/25(土) 17:15:47.94 ID:Q82r3i52o
続きです。
157 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/08/25(土) 17:16:40.10 ID:Q82r3i52o
* ??? *
ザッ…ザッ…
卯月(……何の音ぴょん?)
ザクッ…ザクッ…
卯月(ここはどこだぴょん? 体が動かないぴょん)
無言で穴を掘っている提督「……」ザクッザクッ
卯月(……提督、准尉……?)
卯月(もしかして……)
提督「……」チラッ
卯月(うーちゃん、沈んで島に流されてきたぴょん?)
卯月(……やっぱり、声が出ないぴょん……)
提督「……」
卯月(抱えられてるけど、全然感覚がないぴょん……うーちゃんはこのまま……)
提督「……」ザッ
卯月(やっぱり、うーちゃん埋められるぴょん……)
158 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/08/25(土) 17:18:53.22 ID:Q82r3i52o
卯月(……)
卯月(だんだん、真っ暗になってく……)
――……!
卯月(みんな、お別れだぴょん……!)
――き……!
――づき……!
卯月(なんだか、懐かしい声が聞こえるぴょん……)
――うづき!
卯月(弥生……うーちゃんは、弥生のこと、忘れないぴょん……!)
弥生「卯月!!」
159 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/08/25(土) 17:19:39.17 ID:Q82r3i52o
* N鎮守府 卯月たちの部屋 *
卯月「……ぴょん?」パチリ
弥生「な、なにがあったの!?」
卯月「」パチクリ
弥生「泣きながら寝てたから、なにがあったのかって……びっくりした」
卯月「夢ぴょん?」
弥生「夢?」
卯月「……」
弥生「……」
扉<ガチャバーン
望月「弥生! 鳳翔さん呼んできた!」
鳳翔「卯月さん大丈夫ですか!?」
卯月「……」
鳳翔「こんなに目元を腫らせて……怖い夢を見たんですね!」ガッシ
卯月「おうっ!?」ギュウ
160 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/08/25(土) 17:20:25.93 ID:Q82r3i52o
鳳翔「可哀想に……怖かったでしょう!」ナデナデギュウウ
卯月「もごー!?」ジタバタ
望月「鳳翔さん、卯月めっちゃ苦しんでんだけど」
鳳翔「はっ!? ご、ごめんなさい!」パッ
卯月「び、びっくりしたぴょん……!」ゼーゼー
弥生「……それで、いったいなにがあったの」
卯月「ぴょん……」
* *
望月「うへえ……なんて夢みてんだよぉ、ぞっとしねえし」
弥生「でも、確かに、今一番頼れる人って准尉さんになるかも」
卯月「今、艦隊に来てる人は本営からのつなぎの人ぴょん。ちゃんとした司令官はいつ来るぴょん?」
鳳翔「それでしたら、先程その本営から連絡がありましたよ。艦隊の指揮を引き継いでくれる方が決まったそうです」
卯月「本当!?」
鳳翔「はい。この鎮守府の体制もそのままで良いそうです、大淀さんから聞きました」
望月「マジで!? やったじゃん!」
161 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/08/25(土) 17:21:41.18 ID:Q82r3i52o
弥生「……どんなひとなの?」
鳳翔「さすがにそこまでは。噂では、自殺を図ったこともあるそうですが」
弥生「ええ……?」
望月「それはそれで超不安なんだけど」
鳳翔「それから、先日この鎮守府に監査に来た方の先輩だそうですので、それなりに実績がある方のようですよ」
望月「監査に来たってーと……あー、あの准尉と話してた士官の人?」
鳳翔「O少尉ですね」
望月「えー、准尉より階級上なんだ……」
鳳翔「准尉はどういうことか冷遇され続けていますね……」
弥生「L大尉が言ってたけど……やっぱり、中佐のせいじゃないかな」
望月「まー、そうなんだろうけどさあ……」
卯月「とにかく、どのくらい信用できるか、時間がたたないとわかんないぴょん」
162 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/08/25(土) 17:23:22.58 ID:Q82r3i52o
* それから一週間後 *
* N提督鎮守府 執務室へ向かう廊下 *
鳳翔「申し訳ありません、まさかカレーが苦手だとはつゆ知らず」
新提督「気にしないでくれ、これは私の我儘だ。海軍にいてカレーを嫌ってしまった私が悪い」
鳳翔「しかし、半ばトラウマなのでしょう?」
新提督「……私の未熟ゆえだ。それに、食べられないわけじゃない」
鳳翔「あの挨拶もみな一様に驚いています。あそこまで頭を低くされなくても……」
新提督「私はかつて、その部下の心を蔑ろにしたために轟沈させてしまっている」
新提督「勤め先が変わったからと言って、その愚行を忘れて繰り返す馬鹿者にはなりたくないんだ」
鳳翔「……然様でございますか」
新提督「むしろ、初日から気を遣わせてしまってすまないな。わざわざ執務室に夕餉を運んでくれるとは」
鳳翔「個室なら不快になる者もいないと思いまして。苦手なのでしたら、残してくださって構いません」
扉<チャッ
鳳翔「こちらへどうぞ」
新提督「……」スン
163 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/08/25(土) 17:24:02.22 ID:Q82r3i52o
新提督「……鳳翔?」
鳳翔「はい?」
新提督「このにおい……」
鳳翔「あの、どうかなさいましたか」
新提督「この、カレーは」
鳳翔「お、お気に召しませんでしたか」
新提督「いや、とんでもない。この食欲をそそられるこの香り……」
鳳翔「……」
新提督「鳳翔。このカレーは、あなたが作ったのか?」
鳳翔「え、ええ、そうですが」
新提督「……すまない、言い方が悪かった。このカレーのレシピは、あなたのオリジナルか?」
鳳翔「そういう意味でしたら……違います」
新提督「……誰に習ったかを聞いても?」
鳳翔「も、申し上げてよろしいのでしょうか……」
新提督「ああ、頼む」
164 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/08/25(土) 17:26:10.27 ID:Q82r3i52o
鳳翔「とある鎮守府の……比叡さんに教わりました」
新提督「! ……それは……いつ教わった?」
鳳翔「いつ……!? ほ、ほんの一か月前くらいです」
新提督「……そうか」
鳳翔「提督? 大丈夫ですか? お体が震えてるようですが」
新提督「ああ、大丈夫だ。すまないが、席を外してもらえるか? 食べ終わったら電話で呼ばせてもらいたい」
鳳翔「……承知致しました。失礼致します」ペコリ
パタン
新提督「……」
新提督「……」カチャ
新提督「……」モグ
新提督「……」
新提督「……」モグ
新提督「……」
新提督「……あの味だ」ポロ
新提督「懐かしい……あの味だ」
新提督「もう二度と、口にすることはないと思っていたのに」ポロポロ
新提督⇒V提督「生きて、いたんだな、比叡……!!」
V提督「良かった……! 本当に、良かった……!」
165 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/08/25(土) 17:27:30.88 ID:Q82r3i52o
* 太平洋上 海軍護衛艦艦内 *
O少尉「このたびは無茶なお願いを聞いていただいて、ありがとうございます」
O少尉「……ええ、無事に着任したと。はい……はい」
O少尉「とんでもありません、私こそ若輩の身で差し出がましいことを……」
O少尉「いえ、艦娘のみんなは、我々や国民のために身を粉にして戦っているんです」
O少尉「私がしなければならないのは、彼女たちを労い、一緒に笑える雰囲気を作ってやることです」
O少尉「今も、傷付いた彼女たちをどうにか癒してあげなければと、暗中模索しているところですから」チラッ
瞳に光の宿っていない伊168「……」
瞳に光の宿っていないU511「……」
O少尉「……はい。ありがとうございます。ご武運を」
ピッ
O少尉「……」
木曾(O少尉秘書艦)「O少尉。そろそろ港に着くぞ」
O少尉「そうか。木曾君、報告ありがとう」
木曾「……今、通信で話していたのは、W提督か?」
O少尉「ああ、そうだよ」
木曾「聞く限り、W提督ってのは、いろいろやり手らしいな?」
O少尉「戦況の見極めが上手、というべきかな? 本営にも一目置かれてるみたいだね」
166 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/08/25(土) 17:29:41.16 ID:Q82r3i52o
木曾「大将の甥っ子と同期ってだけで、ちやほやされてるわけじゃないんだな」
O少尉「だからこそ目を付けられてるところもあるけどね。それに、君の長姉ともよくやっているみたいだよ」
木曾「なるほど……球磨姉と仲がいいなら、悪い奴じゃあなさそうだな」
木曾「で? これから会うX提督ってのも信用できんのか? そいつこそ親の七光ってわけじゃあないだろうな?」
O少尉「この前の……艦娘八つ裂き事件で本営に集められた時に、X提督は潜水艦のゴーヤとイクを連れて行ったそうだ」
木曾「……変態じゃねえの?」
O少尉「ちゃんとセーラー服とスカートを着せて行ったそうだよ?」
木曾「変態だ!」
O少尉「なんでだよ!?」
木曾「そこまで気遣いできるなんて、絶対変態だ。間違いねえ」
O少尉「もしかして褒めてんのかい? よくわかんないね、木曾君も」
O少尉「まあ、そういうわけだから、君たちにも決して悪いようにはならないよ」
伊168「……」
U511「……」
O少尉「伊8君が沈んでしまったことは、本当に無念と言うほかなかった」
O少尉「だからと言って、君たちまで同じ目に合わせるわけにはいかない」
O少尉「どうか、君たちの未来のためにも、私たちに力を貸してほしい」
木曾「……フッ、どこまで甘ちゃんなんだか」
167 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/08/25(土) 17:32:47.95 ID:Q82r3i52o
というわけで今回はここまで。
かつて比叡の司令官で、ピストル自殺を図ったV提督がN中佐の後釜に。
そして、中佐の部下だったO少尉は、伊8がいたブラックな某鎮守府を
指揮することになりました。
当初、夢オチにせずに島に卯月が埋まってる設定にしようとも考えましたが、
他のキャラやいろんな救済を考えた結果、こんな形に収まりました。
近いうちに余所の鎮守府や関係者がどうなったかも
書いてみたいと思います。
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/25(土) 19:05:40.31 ID:vwW4HyINO
乙
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2018/08/28(火) 02:57:55.62 ID:i82TJZyhO
卯月以外の艦娘は結局なんだったの?
170 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:28:14.67 ID:ANe0enUYo
復活ktkr!
>>169
アカウントが消された場合、所属の艦娘はどうなるか……?
という前提の書き方をしたのでわかりづらいですが、
卯月以外はリセットしちゃったパターンです。
卯月のように放逐されて闇に葬られるパターンもあるかもしれませんし、
鎮守府ごとなかったことにされるとか、人によって捉え方は様々でしょうが、
そのうちの一説として書いた次第です。
結果として夢オチにしてしまいましたけど。
今回は日常編です。
171 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:34:04.07 ID:ANe0enUYo
- きっかけは一冊の雑誌 -
* 休養室 *
朧(読書中)「……」
扉<チャッ
伊8「……」テクテク
伊8「……」ゴトン
伊8「……」ペラリ
朧「……伊8さん?」
伊8「ハチ、で、いいよ?」
朧「……ハチさん、その分厚い本、なんですか? 電話帳?」
伊8「これ? 通販のカタログ。この前の物資の、別の箱に入ってたから、持って来たの」
朧「通販?」
伊8「うん。通販」ペラリ
172 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:34:41.42 ID:ANe0enUYo
朧「……」ノゾキコミ
伊8「……」ペラッ
朧「……あ」
伊8「?」
朧「いえ、なんでもないです」
伊8「なにか、欲しいものでもあった?」
朧「ま、まあ……」
伊8「ふぅん……あ」ペラリ
朧「ハチさんも何か見つけました?」
伊8「うん。これ」
173 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:35:16.48 ID:ANe0enUYo
* それから数日後 食堂 *
長門「大淀。ちょっとこれを見て欲しいんだが」
大淀「なんでしょう? あら、これは……通販カタログですか」
長門「ああ。卯月たちが持ってきた古い本なんだが、一年前のものでな。これの最新刊が欲しいんだ」
長門「欲しいものがあっても買い物にも行けないし、どんな品物が売っているのか、世の中にどんなものが出回っているのか……」
長門「私たちがそれを調べるとなると、情報源はこれしかないんだ」
大淀「なるほど……折り目やら付箋やら、いっぱいついてますね」ペラリ
長門「みんなそれぞれに必要だと感じているものが多くてな」
大淀「……このお掃除セットは古鷹さんですか?」
長門「これのワックスの原液が欲しいんだそうだ」
大淀「鎮守府全体に使うとしたら、量が多すぎて市販品の価格では経費で落ちなさそうですね……別口で探しましょう」ペラッ
大淀「……こちらのホースとスプリンクラーは?」
長門「初雪の希望らしい。畑に使うんだと。スプリンクラーが駄目なら、ホースに取り付けるヘッドでもいいそうだ」
大淀「ホースとヘッドくらいなら良さそうですね」
大淀「わかりました。それではこちらのカタログの最新版を取り寄せましょう」
大淀「同じものでも、もっと良いものがでているかもしれませんからね」
長門「ああ、よろしく頼む」
大淀「……」ペラリ
174 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:36:43.19 ID:ANe0enUYo
* さらにそれからしばらくして 執務室 *
不知火「……」
提督「……」ソロバンパチパチ
長門「……」
提督「……」カリカリ
大淀「……」
提督「……まあ、こんなとこか」ピラッ
長門「お、おお……!」パァッ
大淀「よろしいんですか!?」パァッ
提督「いいだろこのくらい。考えてみりゃあ、N中佐んときの艦娘制御ツールの存在を確認できたのは、うちの手柄だしな」
提督「このくらいのボーナス、要求したって罰は当たんねえだろ」
提督「さすがに古鷹のワックスみたいな消耗品とかは別口で上に依頼するが、それ以外は買っていいんじゃねえか?」
長門「そうか……ありがたい!!」
大淀「ありがとうございます! さっそく申請します!」ダッ
長門「頼むぞ!!」
175 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:37:39.11 ID:ANe0enUYo
提督「……嬉しそうだな」フフッ
不知火「司令。よろしいんですか」
提督「大丈夫だろ。俺の給料、全然手を付けてなかったし……つうわけで不知火。これ持って本営に行け」
不知火「……これは、司令の通帳ですか」
提督「記帳もしてないし、ぶっちゃけ今いくら入ってるかわかんねえ。足りねえときはここからおろして使え」
不知火「……は、はい……」
* そして2週間後 埠頭 *
明石「届きましたね!」ワクワク
長門「おお、ついに……!」ワクワク
大淀「順番に配りますから、あわてないでくださいねー!」
提督「届いたのか。不知火、ご苦労さん」
不知火「はっ」ビシッ
176 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:40:18.43 ID:ANe0enUYo
不知火「ときに司令、お預かりしていた通帳ですが」
提督「いいよ、お前が預かってろ」
不知火「内容だけでもご確認をお願いいたします」スッ
提督「……」ウケトリ
不知火「……」
提督「……なんだこりゃ」タラリ
不知火「休暇もなく、離島勤務ということもあって特別手当がついておりまして」
提督「……」
不知火「中将からのボーナスもその中に……司令? だ、大丈夫ですか? 顔色が優れないようですが」
提督「いや、ちょっと気分が悪くなった。不知火、こいつはお前が持っててくれ」
不知火「は……」
提督「ついでに適当に使って減らしておいてくれ。俺には分不相応の大金すぎて、眩暈がしてきた」
不知火「はぁ!?」
提督「手に余るような大金抱えても、使い方を知らなきゃ身を滅ぼすだけだ。そんなもんいきなり持たされても困る」ヨロッ
提督「そういうわけだから、不知火が適当に使ってくれ。俺は休んでくる」
不知火「……あの、不知火にどうしろと」タラリ
177 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:41:39.94 ID:ANe0enUYo
* 提督の私室への廊下 *
妖精「どうして無駄遣いしろなんて言うのさ? 貧乏性にもほどがあるよ」
提督「そうかもしれねえが、なんで俺があんなに貰えてるんだ? 俺は都合の悪いことから逃げてるだけだぞ?」
提督「人間どものしがらみから逃げたくて好きでこの島に引き籠ってんのに、あんなに支払ってくるとか、海軍はなにを企んでやがんだ」
妖精(相変わらず自己評価が自虐的すぎるなあ……)
妖精「でも、お金なんてあって困ることはないんじゃない?」
提督「人間から遠ざかりたいのに、金なんか持ってたら欲深どもが寄ってくるじゃねえか。勘弁してほしいぜ……」
扉<チャッ
如月「あっ、司令官!」
大和「提督! お疲れ様です!」
提督「……なにやってんだお前ら」
妖精「その大きなベッドはどうしたの?」
如月「これは、司令官に日頃からお世話になってるお礼よ」ニコッ
提督「ああ、でかいベッドを買いたいってのはお前たちだったのか。てっきり大和が使うのかと思っていたが」
大和「ちゃんとしたベッドで休んでいただいたほうが疲れが取れると思いまして、こちらを是非提督にと!」
178 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:42:40.83 ID:ANe0enUYo
提督「いくらなんでも、でかすぎだろ……正方形じゃねえか」
妖精「これ、キングサイズってやつかな?」
如月「どうせシャワーを浴びて寝るだけのお部屋だもの、スペースなんか有り余ってるでしょう?」
提督「確かにそうだが、別に俺なんかに気を遣わなくても……」
如月「私たちの指揮をしてくれている司令官だもの、健康でいて欲しいのよ?」
提督「んー……そういや古いベッドはどうした」
大和「老朽化がひどいので処分しました。寝返りを打つたびに軋む音がするベッドでは寝苦しいでしょうし」
提督(なんで軋みがひどいって知ってんだ)
如月「枕だけは残しておいてるわ。新しいほうも用意してるから、どちらかがいいかはお試ししてね?」ウフフー
提督「……」アタマガリガリ
妖精「提督、ちょうどいいから横になってみたら? 気分が優れないんでしょ?」
如月「えっ!? 司令官、大丈夫なの!?」
大和「そういうことでしたらすぐ横になられたほうが! 上着をお預かりします!」ササッ
提督「あー、わかったわかった……試しにちょっと横になる……」ノソノソ
179 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:43:16.69 ID:ANe0enUYo
提督「……」モフ
大和「提督、いかがですか?」
提督「……あー、確かにこれは……」
提督(やべえな、すっげえ楽だ……意識が沈んでく……)
提督「……」
如月「司令官?」
提督「……」スヤー
妖精「……寝てるね」ツンツン
大和「ほ、本当ですか」
妖精「こんなにすぐ落ちるように寝ちゃったのを見たのは初めてだよ」
如月「やっぱり普段から疲れてたのかしら……」
大和「提督……」
如月「……ねえ、大和さん? 今なら試せるんじゃないかしら」
大和「! で、でも、提督が起きたりしたら……」
妖精「いや、大丈夫じゃないかな」
大和「そ、そうでしょうか……」
180 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:44:28.31 ID:ANe0enUYo
如月「それじゃ、私はこっちね」コロン
大和「私はこちらから……」ゴロン
(提督を挟んで川の字になる3人)
如月「……」
大和「……寝心地、いいですね」ヒソヒソ
如月「ええ……とっても」ヒソヒソ
大和「それにこれなら、3人でも寝られそうですね……!」
如月「ベッドから落ちずに済みそう……!」
大和「夜が楽しみ……」ニコー
如月「うふふふ……」ニコー
妖精「……やれやれ」
提督「」スヤスヤ…
181 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:46:25.80 ID:ANe0enUYo
* 一方その頃、工廠 *
明石「おお……おおおおお!」ガサゴソ
明石「いいですね、これ! すっごくいい!」キラキラキラッ
朝潮「明石さん、それはなんですか?」
明石「ふふふ……これはねえ、このアタッチメントを付けると……」キュイーン
朝潮「それはドリルですか!?」
明石「これだけじゃないわ。こっちのアタッチメントを見て!」
朝潮「ドライバーにもなるんですか!?」
明石「そう! で、こっちはグラインダーでしょ? これがサンダーで、こっちが丸鋸で……!」
朝潮「なんでもできるんですか!? これはすごいですね!」
明石「欲しかったのよ、こういうの! この鎮守府っていろんなものが不足してるでしょ?」
明石「だからいろいろDIYで自作したいなーって思ってて! こういうのが一つあると、すっごく便利よね!」ウキウキ
利根「ふむ、これが説明書か。朝潮、読んでみるか?」ペラリ
朝潮「はい! マルチインパクトツール……こんな便利なものが世の中にはあるんですね!」ペラペラ
182 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:47:17.24 ID:ANe0enUYo
利根「それにしても、新しいおもちゃを手に入れた子供のようじゃな」
明石「そういう利根さんだって面白そうなもの買ってるじゃないですか!」
利根「うむ。カタパルトの調整がしたくての」
朝潮「小さくて綺麗な工具箱ですね……!」
利根「中身も綺麗だぞ」ガパッ
朝潮「うわぁ……」
明石「汚れのついていない新品の工具セット! いいですねえ!」
利根「奮発させてもらったが、このように立派な道具だと、使うのがもったいないのう」
明石「駄目ですよー、せっかくの道具なんですから使わなきゃ! 飾るつもりなら私が有効活用しますよ!?」
利根「うむ、使ってもらって構わんよ。むしろ、明石に正しい使い方を教えてもらわねばならんかな?」
明石「えっ、い、いいんですか!?」キラキラキラ
利根「うむ。それがこれからの吾輩や、朝潮たちの力になるのなら、買った甲斐があるというものじゃ」
朝潮「え!? わ、私もですか!?」
明石「あ、物の貸し借りはちゃんと本人に断ってからにしてくださいね? その辺は提督がうるさいですから」
朝潮「はいっ! 了解しました!!」ビシッ
利根「それにしても、自分のために買い物をすると言うのは、なんとも心が躍るものだな」フフッ
183 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:48:41.10 ID:ANe0enUYo
* 一方その頃、長門の部屋 *
ダカダカダカダカ…
暁「ミシンって、意外とうるさいのね……」
潮「それに、すごく速いし……ちょっと怖いかも」
長門「……」
暁「でも、長門さん楽しそう」
潮「……うん」
ダカダカダカダカ…
チョキッ
長門「よし。できた」ガタッ
暁「わぁ……!」
長門「どうだろう? 暁、試着してみてくれ」
暁「はーい!」シュルシュルッ
潮「いいなあ……新しいエプロン」
184 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:50:07.58 ID:ANe0enUYo
暁「じゃーん! 着てみたわ! どう? 似合う?」
長門「うん、いいな! サイズもぴったりだ!」
潮「ピンク色でかわいい……!」
長門「やはり手縫いとは違うな、縫い目が綺麗だ」ウンウン
長門「よし、それじゃ次は潮の分を作ろうか。こっちの水色の水玉模様の生地を使おう」シャッ
暁「長門さん、みんなの分を作るの?」
長門「ああ。人によって背丈も違うし、体つきも違う。それに、貸し借りするよりは各々で持っていたほうがいいだろう?」
潮「そう言われれば、そうですね……!」
長門「もっともそれ以上に、作るのが楽しいというのもある」ニッ
長門「潮の分を作ったら、次は比叡の割烹着だ。フフ、腕が鳴るな」チョキチョキ
暁「……暁も長門さんにお裁縫を教えてもらおうかなあ」
潮(私は暁ちゃんにお料理教えてもらいたいんだけど……)
185 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/15(月) 22:51:12.35 ID:ANe0enUYo
今回はここまで。
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/10/15(月) 23:25:54.83 ID:YiDVKpzlo
久しぶりの更新超乙。また読めて嬉しい…
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/10/16(火) 10:42:12.30 ID:tX2M4eXa0
同感すぎる
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/10/16(火) 12:15:37.08 ID:oc5mTjDp0
復活乙!
長門がすごく可愛い、利根のツールはTONE製のいい奴に違いない
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/10/19(金) 23:55:23.91 ID:dCLEpJ5GO
あかん、明石見てたらオレも欲しくなってきたわ……
190 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/20(土) 01:26:56.52 ID:Qb90QjBLo
私はトルクレンチが欲しいです。
では続きです。
191 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/20(土) 01:27:49.81 ID:Qb90QjBLo
* 厨房 *
電「長門さん、スキップしながら新しいミシンをお部屋に持っていってたのです」
朝雲「大事そうに抱えていったわねー。生地まで買っちゃって、エプロンくらいなら普通に買ったほうが安くないの?」
電「わたしたち駆逐艦向けのエプロンは、そのちょうどいいサイズが少ないのです」
朝雲「……まあ、微妙なサイズよね」
電「手縫いでも良かったのですが、どうせなら綺麗に作りたくってミシンを探していたのです」
電「倉庫で見つけた足踏み式のミシンは錆だらけで動かなかったから、あの最新型のミシンはなおのこと嬉しいはずなのです」チラッ
朝雲「そうね……」チラッ
比叡「うふ、うふふふ……」
比叡「新しい包丁とフライパン、とっても綺麗……!」
比叡「さーーあ、何を作ろうっかなーーー!」ルンルン
朝雲「うん、比叡さんも嬉しいのはわかるけど、刃物眺めて笑うのはやめてほしいわ……」
電「なのです……」
五月雨「あ、こっちにいたんですね! 比叡さーん!」ヒョコッ
比叡「はい?」
五月雨「やかんを貸してください!」
比叡「??」
192 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/20(土) 01:29:31.65 ID:Qb90QjBLo
* 執務室 *
大淀「まあまあ、でしょうか」フゥ
不知火「いえ、十分かと」
吹雪「いい感じのソファですね!」
不知火「大淀さん、配置の確認のためにも座ってみましょう」
吹雪「座りましょう座りましょう!」ポスン
大淀「ええ」ストン
不知火「……」ストン
不知火「……いいですね。固いところもなく、背もたれもしっかりしています」
吹雪「前のソファは、中のスポンジが破けたり潰れてたりしてぺったんこだったからね!」ポヨンポヨン
不知火「大淀さんから進言していただかないと、こういった調度品は新調できませんから」ウンウン
大淀「いえいえ、そんなことは」
大淀(以前、提督に膝枕をされて耳かきしていただいたとき、ソファが痛くて肩や腰が痛かったんですよね……)
大淀「安物ではありますが、この座り心地なら体を痛めることもないでしょう……」
吹雪「大淀さんは優しいんですね!」
不知火「見習わないといけませんね」
大淀「えっ!? あ、いえいえ……」
大淀(わ、私、どこから口に出してたんだろ……)ハラハラ
193 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/20(土) 01:30:46.38 ID:Qb90QjBLo
* 大浴場 脱衣所 *
初春「うむうむ、これで良い。由良殿、助かりましたぞ」
由良「これで洗面台の鏡の貼り換えもおしまいね。うん、いいんじゃない?」
初春「腐食してくすんだ鏡では、身だしなみも整えられん。備品として申請できてなによりじゃ」
由良「でも、取り付けはこっちでやれ、だなんて、どこまで由良たちと関わろうとしないのかしらね」
初春「いやまったく。もしやとは思うが、工賃もケチっておるのかもしれんな」
由良「あ、そうそう。これもおいていかないと」
初春「む? それは……」
由良「新しいドライヤー。ほら、スイッチ入れても動かなかったり、風が弱かったりしてたでしょう?」
由良「提督に新しいのを買えないか、聞いてみたの」
初春「これはありがたい! わらわの髪も乾かすのが大変でのう……!」
ガラガラッ
古鷹「お風呂の鏡の取り付けも終わりました!」
霞「ついでにお風呂も綺麗になったわよ」
初春「おお、戻ったか……って、確かに綺麗になったのう……」
由良「あの大きなお風呂を……すごいわね」
194 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/20(土) 01:31:40.94 ID:Qb90QjBLo
霞「古鷹さん、新しいお掃除道具が来て張り切っちゃってるんだもの。手が付けられないわ」
古鷹「汚れが落ちるのって、とっても楽しいですよね!」
霞「……まあ、否定はしないけど」
古鷹「あれ? ドライヤーも取り替えるんですか?」
初春「うむ! これで湯上りに髪の毛を絞ったりせずに済みそうじゃ!」
由良「じゃあ、ドライヤーの空き箱、捨ててくるわね」
霞「それなら、私も一緒に行くわ」
由良「え? だ、大丈夫。ひとりで行けるわ、大した荷物じゃないし」
古鷹「そうですか?」
由良「ええ。それじゃ!」ピャッ
三人「「「?」」」
由良「……」タタタッ
由良「由良の分だけ、最新型のドライヤー買ってもらっちゃったの、ばれてないわよね? ね?」キョロキョロ
由良「早く部屋においてこようっと」コソコソッ
195 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/20(土) 01:32:50.34 ID:Qb90QjBLo
* 休憩室 *
扉<ガチャ
朧「ふんふん〜♪」
伊8「……珍しい」
朧「はい?」
伊8「朧ちゃんが鼻歌歌ってるとこ、初めて見た」
朧「い、いいじゃないですか、別に」
伊8「うん。いいよ? すごくいいことだと思う」
朧「……か、からかわないでください」カァ
伊8「それで、お目当ての本は買ってもらえたの?」
朧「はいっ! ハードカバーの新書です!」ニコー
伊8「それなら良かった」ニコー
朧「ハチさんも、あの本を買ったんですか?」
伊8「うん」ペラリ
朧「……それ、医学書ですよね? ハチさん、お医者さんになるんですか?」
伊8「うん、臨時のね。私たちの修理は明石ができるけど、提督を治療できる人っていないでしょ?」
朧「……!」
196 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/20(土) 01:34:25.93 ID:Qb90QjBLo
伊8「はっちゃん、あまり出撃する気はないから、こっち方面で役に立とうかと思って」
朧「そうだったんですか……朧も、そういう本にすれば良かったのかな」
伊8「朧ちゃんは、ちゃんと出撃して戦果を挙げてるんだから、趣味を大事にしたほうがいいよ?」
伊8「はっちゃんの本も、気になることがあるから買ったんだし」
朧「……それ、提督がなにかの病気だってことですか?」
伊8「病気っていうか……精神的なものかも。多分それほど深刻じゃないから、大丈夫」
朧「???」
伊8「あと、病気じゃないけど……提督のあの性格は、もう少し良いほうに治ったらいいなって思う」
朧「朧もそう思います」
* 提督の私室 *
提督「……くしゅん! ……んあ?」
妖精「あ、目が覚めた」
如月「し、司令官!? 風邪ですか!?」
大和「寒いんでしたら、大和がお傍に!」
提督「……つうかなにやってんだよお前ら」タラリ
197 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/20(土) 01:36:15.82 ID:Qb90QjBLo
* 食堂 *
金剛「Oh, テートク! 良いところにおいでになりマーシタ!」
提督「よう。いい匂いがするな」
大和「これは紅茶の香りですね」
金剛「Yes ! ティーセットと紅茶の茶葉を買わせていただきまシタ!」
如月「良かったんですか?」
提督「いいんじゃねえの? 今まで鎮守府にはなかったんだし、欲しいなら欲しいで構わねえさ」
金剛「これで急な来客にも、品の良い紅茶でお出迎えできマース!」
提督「とってつけたような建前だがな」
如月「一番喜んでるのは金剛さんですよね」
金剛「Of course ! さあさあ、テートクも一緒にティータイムを楽しみまショウ!」
提督「……まあ、眠気覚ましにいただくか」
金剛「みなさんも please sit down !」
大和「よろしいんですか?」
金剛「勿論デース! ティータイムは争いの場ではありまセン!」
如月「それじゃ、お言葉に甘えさせていただくわ」
「金剛さーん!」
金剛「五月雨? どうしまシター?」
198 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/20(土) 01:37:06.86 ID:Qb90QjBLo
五月雨「厨房からケーキをお持ちしましたーー!」タタタッ
朝雲「ちょっと五月雨! 走ったら危な……」
コケッ☆
全員「「「あ」」」
バターーーン!
大和「五月雨さん!?」ガタッ
朝雲「だから言ったじゃない!」
如月「ちょっと、大丈夫!?」ガタッ
五月雨「いたたた……あ、はい、ケーキは無事でした」ヒリヒリ
金剛「Cake より、あなたの体のほうが心配デス!」
提督「ケーキかばって、まともに受け身とってなかったからな。ほれ、腕と顔、見せてみろ」ダキカカエ
五月雨「あっ」
提督「ケーキは朝雲、ちょっと預かっててくれ」
朝雲「ええ」
提督「ひじと、顎か? 膝も打ってるな、痣になってるぞ」ヒョイッ
五月雨「きゃ!?」オヒメサマダッコ
如月「!?」
大和「!?」
199 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/20(土) 01:37:52.10 ID:Qb90QjBLo
提督「明石に診てもらうか。悪いがお茶会は先に始めててくれ」
金剛「い、いえーす……」
五月雨「お、降ろしてください! 一人で歩けます!」
提督「暴れんな。じっとしてろ」スタスタスタ…
全員「「「……」」」
比叡「ごめんなさい、ケーキナイフ渡し忘れてまし……あれ? 司令と五月雨ちゃんは?」
朝雲「あー、五月雨が転んで怪我したから、司令官が連れて行ったわ」
電「みんなはどうしたのですか?」
如月「……羨ましいわ」
電「えっ」
大和「五月雨さんが提督にお姫様抱っこされていきました……」
電「ああ……そういうことですか」
金剛「経験済みの比叡が羨ましいデース!!」バーン!
比叡「ひえええ!? 私ですか!?」
大和「大丈夫。戦艦の比叡さんも抱っこされたんだから、私にもチャンスはあります……!」
如月「そうよ、まだあわてるような時間じゃないわ……!」
200 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/20(土) 01:38:45.69 ID:Qb90QjBLo
朧「……飲み物を探しに来たんだけど」
伊8「なにこのカオス」
電「電もなにがなんだかわからないのです……」
金剛「But !! 私は諦めまセーン! テートクの heart は必ず掴んで見せマース!」
暁「それはいいけど、静かにしてないとまた司令官に顔を掴まれるわよ?」スッ
金剛「!?」ビクッ
電「暁ちゃん!? そのエプロンはどうしたのですか!?」
暁「長門さんに作ってもらったわ! 似合うでしょ? いいのよ、もっと褒めても!」ドヤァ!
朝雲「サイズぴったりね。買ってきたみたい」
朧「へーえ、さすが長門さんだね」
潮「あ、あの、私も作ってもらいました……!」
比叡「わぁ、二人ともかわいい!」
朧「うん、潮も似合ってる」
電「……」
朝雲「……」
201 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/20(土) 01:40:04.59 ID:Qb90QjBLo
比叡「? どうしたの二人とも」
電(エプロンだけ見ると、潮ちゃんの胸の大きさが際立ってるのです……)ペタ
朝雲(潮のエプロン、ちゃんと胸のサイズも考慮されてるのよね……)ペタ
如月(あの二人、私とは違う意味で暗黒面に堕ちそうな顔をしてるわ……)
金剛(……もしかして私、潮に負けてマスカ?)ガクガク
大和(金剛さんもどうしたんでしょう)
伊8「金剛さん、顔色悪いけど大丈夫……?」
金剛「ヒィィィ!! もっと勝ち目のない相手がいマース!!」
伊8「???」
暁「みんなどうして怖い顔してるのかしら……あ、比叡さん、これ、長門さんから預かってきた割烹着よ!」
比叡「私にもあるんですか!? やったぁ! さっそく着てみます!」バサッ イソイソ
比叡「うわぁ……サイズもぴったり!」キラキラキラ
潮「良かったですね、比叡さん」
比叡「気合い十分! 力が湧いてくるようです!」フンス!
朧「比叡さんたちはこんなにキラキラしてるのに、どうして金剛さんたちは戦々恐々としてるんだろう……」
伊8「カオスすぎ」
202 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/20(土) 01:41:17.64 ID:Qb90QjBLo
* 工廠 *
五月雨(こ、こんな恰好のまま、工廠まで連れてこられちゃった……)カァァ
提督「おーい、明石いるかー?」
ヂュィイイイイン!!
提督「なんだこの音?」
明石「ああ、この丸鋸の切れ味……イイ……」ウットリ
朝潮「あ、あの、明石さん、試し切りはその辺にしたほうが良いかと……」
五月雨「」
提督「……」
明石「あ、提督? どうかしまし」
五月雨「ヒィィィ!!」ヒシッ ギュゥ
提督「ぐえっ」クビシマリ
朝潮「あっ」
明石「さ、五月雨ちゃんどうしたのその怪我!」
五月雨「いやあああああ!!」ビクビクビクーーッ
提督「」ギリギリギリ
利根「お、落ち着け五月雨! 提督の首が絞まっておるぞ!?」
明石「ちょっ、五月雨ちゃん手を離して! 提督の顔色がやばいことになってる!」
朝潮「司令官お気を確かに!!」
203 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/20(土) 01:42:14.04 ID:Qb90QjBLo
* 外 ビニールハウス *
シャワーーー
初雪「……」
初雪「……」
初雪「……ふふ」ニヤニヤ
神通(初雪さん、すごくキラキラしてますね……)←新品の園芸道具を抱えながら
敷波「ねえねえ神通さん、そっちの移植べらは新しいのに、このスコップは結構古い感じしない?」
神通「そちらの大きな道具は、陸軍が払い下げた品物だそうですよ。提督が格安で買い取ったそうです」
敷波「ふーん」
神通「見た目は無骨ですが、軍用品だけあってしっかりした造りで使いやすいですよ」
敷波「これで塹壕掘ってたりしたのかなー」
204 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/20(土) 01:43:01.21 ID:Qb90QjBLo
今回はここまで。
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/10/20(土) 11:43:11.00 ID:WfS6Z1+n0
更新乙です
スコップは穴もほれれば首も飛ばせる万能武器
マルチツール系は本体の方が故障すると他も全部使えなくなるから
めんどくさくてもバラバラにそろえちゃう派です
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/10/20(土) 13:59:47.92 ID:VceEvdB1O
スコップと言ったら中国の超多用途スコップを思い出すな
サンダーとかもいいがやっぱり高圧洗浄機が欲しいかも……
墓場島をケルヒャーで掃除したら気ん持ちいぃーだろうなぁ
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/10/21(日) 12:15:13.56 ID:7zcz8jTco
よし!スコップがあれば抜刀術が使えるな!
208 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/21(日) 16:38:11.95 ID:knK5K9iqo
思いついてしまったので追加で一コマだけ投下。
209 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/21(日) 16:40:39.86 ID:knK5K9iqo
敷波「うわー、なんか物騒な刃物もある! なにこれ、鉈?」
神通「それは斧ですね。柄が短くて片手で使えるものが鉈です。ちなみに、柄が長くて刃物の幅が広いと鉞と呼ばれます」
敷波「ふーん……」
神通「提督が薪割りに使うつもりで取り寄せたみたいですよ」
敷波「……」
敷波「あ、この斧、なんかしっくりくる……これ欲しいかも」
神通「え?」
210 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/21(日) 16:41:43.45 ID:knK5K9iqo
とりあえず日常編はここまで。
ツイッターは謎が多すぎる。
211 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/27(土) 18:23:08.17 ID:dU/gqv+wo
続きです。
212 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/27(土) 18:24:35.79 ID:dU/gqv+wo
* 北東の砂浜 *
五月雨「本当にすみませんでした!」ペコペコ
提督「もういい、っつってんだろ……」
五月雨「ですが、私のせいでお茶会だって参加できなかったんですし……!」
提督「構やしねえよ。俺はそういう風流な趣味、持ち合わせてねえしな」
五月雨「それはよくありませんよ! コミュニケーションは大事です!」
提督「俺のことは放っておいても構わねえんだがなあ……」
五月雨「そういうさみしいことを言わないでください!」
提督(こいつも吹雪と同じ世話焼き系か? 面倒臭えな……)
提督「わかったわかった。それはそうと、膝とかは大丈夫なのか?」
五月雨「はい! 艦娘ですから、あのくらいなら修復剤で綺麗に治ります!」
提督「……どういうカラクリなのか、いまいちよくわかんねえな」
五月雨「確かに原理はわかりませんけれど、深く考えないほうがいいですよ?」
提督「なんでだよ」
五月雨「私、考え事をしながら歩くと、よく躓いて転んじゃうので……えへへ」ポリポリ
提督「……」
213 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/27(土) 18:26:12.98 ID:dU/gqv+wo
五月雨「あ、でも、転んだ時に持ってたお茶をこぼしたり、書類を散らかしたりしたことはないんですよ!」エッヘン!
提督「いや、転ぶなよ普通……」ズツウ
五月雨「ところで、どうして提督がわざわざ巡視なさってるんですか?」
提督「日課だよ。外に出ないと体がなまるし……まあ、気晴らしにぶらぶらしたいってのもあるか」
五月雨「そうなんですか……あれ?」
提督「どうした」
五月雨「なんだか、誰かの声が聞こえませんか?」
提督「……?」
「……さま……そう……ま……!」
提督「女の声……また誰か流れ着いてきたのか?」スタスタ
五月雨「また、って……えええ!?」
山城(大破)「扶桑お姉様……扶桑お姉様はどこなの!? ああ、なんてこと……!」
山城「ここはいったいどこなの……扶桑お姉様は!?」
ジャリッ
山城「だ、誰!? 扶桑お姉様!?」
提督「いや、誰だよ扶桑って」ヌッ
214 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/27(土) 18:28:06.39 ID:dU/gqv+wo
山城「!? あ、あなたこそ誰よ!?」
提督「俺は……」
五月雨「危ないっ!!」バッ
提督「!?」
山城「え」
??「!」ブンッ!
ガキィン!
五月雨「きゃあっ!?」ドシャッ
提督「五月雨!? てめえ……なにしやがる!」
山城「なに!? なによ!? なにがどうしたの!?」オロオロ
五月雨「あ、あいたたた……」
提督「おい五月雨、大丈夫か」
五月雨「は、はい! で、でも、どうして……どうして提督にいきなり襲いかかってきたんですか!?」
五月雨「那珂さん!!」
??→那珂(大破)「……」
提督「なか?」
那珂「……」
215 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/27(土) 18:29:37.64 ID:dU/gqv+wo
山城「……ちょっと、どういうことか説明しなさいよ。あなたは何者なの!? ここはどこよ!?」
提督「俺はこの××島鎮守府の責任者、提督准尉だ。こっちは部下の五月雨」
山城「提督……あなたが!? というか、この島に鎮守府があるの!?」
提督「まあ、まともな鎮守府じゃねえがな。それでだ……那珂、っつったな」
那珂「……!」
提督「お前、さっきから目を丸くしたり冷や汗かいたりしてるみたいだが、どうかしたか?」
那珂「……」ダラダラ
山城「それは無理もないわよ。いくら准尉とはいえ、艦娘を率いてる人間にいきなり襲いかかったんだもの」
山城「普通だったら解体もやむなしの不祥事よ? ご愁傷様、としか言い様がないわ」
提督「ふーん……」チラッ
那珂「!」ビクッ
提督「まあいい。おい、那珂。お前、なんでいきなり襲ってきた」
那珂「え、えっと、それはぁ……」
提督「……」
那珂「……ご、ごめんなさい!!」バッ
提督「あぁ?」
216 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/27(土) 18:31:15.97 ID:dU/gqv+wo
那珂「その、敵だと……思っちゃったんです!」
提督「……勘違いした、と?」
那珂「は、はい……!」ビクビク
提督「ふん。だったら頭下げる相手が違うぞ」
那珂「え?」
提督「ちゃんと吹っ飛ばした五月雨に謝っとけ。五月雨、さっきは助かった、庇ってくれてありがとうな」
五月雨「!? は、はい! 護衛はお任せください!」
那珂「……」ポカーン
提督「……おい」
那珂「えっ!? あ、ごめんなさい! さ、五月雨ちゃん、ごめんなさい!」ペコッ
五月雨「い、いえ、間違いは誰にでもありますから!」
那珂「でも、思いっきり殴り掛かっちゃったし……怪我してない?」
五月雨「はい! これくらい、大丈夫です!」
那珂「よ、良かったぁ……」ヘナヘナ
山城「あの……准尉? ここはいったい、なんなのよ」
提督「ん?」
山城「私はともかく、どうして那珂まで大破してるの? それに……」チラッ
提督「……」
217 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/27(土) 18:32:36.16 ID:dU/gqv+wo
山城「この砂浜、艦娘の艤装の残骸が其処此処に散らばってるわ。私たち、本当に生きてるんでしょうね……!?」
提督「残念だが夢じゃねえぞ。この砂浜には、しょっちゅう沈んだ艦娘が流れ着いてきてる」
提督「お前らみたいに生きて流れ着く奴もいれば、そうでない奴らもいる。それだけの話だ」
山城「……それじゃ、扶桑お姉様は……」マッサオ
提督「もしかしたらこの浜のどこかに流れ着いてるかもな。どうなったかは知らねえが」
山城「そんな……! 扶桑お姉様……ああ、不幸だわ……!」
五月雨「あの、那珂さんもそうなんですか?」
那珂「……え? あっ、ご、ごめんなさい、聞いてなかった……」
提督「……お前、顔色悪いな。損傷はそれほどじゃねえが、目の下にクマができてんぞ」
那珂「!」
提督「ほほも少しこけてるし、過労か栄養失調ってとこか。比叡や伊8がこんな感じだったしな」
山城「そうね……徹夜明けって感じの顔をしてるわね」
提督「だな。それで? お前は誰だ?」クルリ
山城「! わ、私は、扶桑型戦艦姉妹、妹のほう、山城よ……!」
提督「ふぅん。何しに来た」
山城「何しに!? 別に私はここに来たくて来たわけじゃないわ! 私は……私たちは……!」
提督「……」
山城「……私たちは、沈められたのよ。敵艦隊に……」ウツムキ
218 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/27(土) 18:33:29.73 ID:dU/gqv+wo
提督「私たち、ってのは?」
山城「私と、扶桑お姉様よ。ほかの子たちがどうなったかは、知らないわ……」
提督「こっちの那珂は仲間じゃないのか」
山城「私は初対面よ。D提督って知ってる? 私たちの鎮守府の指揮官なんだけれど」
提督「俺は知らねえな。五月雨は」
五月雨「す、すみません、私も知らないです」
提督「そうか。おい、那珂。お前は……」
那珂「……」ウツラウツラ…
提督「……寝てんのか?」
五月雨「めちゃくちゃ眠たそうですね……白目向いて涎まで垂らして、うとうとしてる那珂さんなんて、初めて見ます」
提督「珍しいのか?」
五月雨「はい、珍しいと思います。私の鎮守府にはいませんでしたけど、演習でお会いした那珂さんはみんなキラキラしてて……」
五月雨「艦隊のアイドルを名乗ってましたから、こういうお姿はちょっと想像したことありませんでした」
提督「アイドルねえ……」チラリ
那珂「……はうっ!? ね、寝てません! 那珂ちゃん寝てません! ……はっ!?」キョロキョロ
山城「もう、全然余裕ないじゃない……見てられないわ」タラリ
219 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/27(土) 18:34:30.10 ID:dU/gqv+wo
提督「やれやれ。おい、那珂」ズイッ
那珂「は、はひっ!?」ビクッ
提督「お前はどうしてここに来た?」
那珂「そ、それは……」
提督「……」
那珂「那珂ちゃん、真のアイドルを目指してるんです!」
五月雨「……」
山城「……」
提督「何言ってんだお前」
那珂「詳しく言うと、那珂ちゃんは、24時間歌って戦い続けられるアイドルになりたいんです!」
山城「ええ……?」
提督「だから何言ってんだお前。それとお前がここに流れ着いたのと、どう関係があるんだよ」
那珂「その、那珂ちゃんは、みんなと一緒に特訓してたんです」
五月雨「特訓って、アイドルのですか?」
那珂「アイドルの特訓じゃなくて、今回は普通の戦闘だよ? 休息なしで、24時間と言わず一週間くらいオールナイトで!」
五月雨「えええ!?」
山城「どうかしてるわ……」
220 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/27(土) 18:35:43.84 ID:dU/gqv+wo
那珂「それで、だいたい5日目くらいから脱落者が出てきて……」
五月雨「!?」
那珂「最後まで残ってたのが那珂ちゃんと……えっと、誰だったっけ」ウーン
提督「じゃあなにか? ほかにももう数人、浜に流れ着いてる可能性があるわけか? ったく、やってられねえよ、くそが」ハァ
提督「……まあいい。それでお前ら、これからどうすんだ?」
那珂「へっ?」
山城「これから?」
提督「早い話が、お前ら生きたいか、それとも死にたいかって話だよ」
山城「はあ!? いくらなんでもそこで死にたいなんて言う人がいるわけないでしょ!? 何考えてんの!?」
提督「そういうやつがいるから、そう聞くときもあるんじゃねえか。じゃあお前はなにがしたいんだよ。何が望みだ?」
山城「……扶桑お姉様よ」
提督「?」
山城「私の望みは、扶桑お姉様の幸せ。その扶桑お姉様を見つけられなければ話にならないわ」
山城「お願い、扶桑お姉様を……扶桑お姉様を探して。お願い、します……!」
提督「そういうもんか……わかった。手は尽くす」
山城「ほ、本当!?」パァ
提督「ああ、ただしどんな姿で見つかるか、そこまでは保証できねえぞ。そこは覚悟しとけよ」
山城「え、ええ……それは……そう、なって欲しくないけど」
221 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/27(土) 18:37:18.64 ID:dU/gqv+wo
提督「で、那珂はどうすんだ?」
那珂「……うーん、那珂ちゃんは……元の鎮守府に、戻りたい、かな。ちゃんとアイドルやりたいし!」
提督「そいつはできるかどうかわかんねーな。お前、轟沈したんだろ?」
那珂「え……して、ないと思う、けど……」
提督「何言ってんだ、どうやってこの島に来たのか説明できねえんだったら、その時点で意識はすっとんでたってことだろ?」
提督「まあ、お前がなんて言おうと、お前んとこの司令官が轟沈したって認識したならそれまでだがな」
那珂「そ、それ、どういうこと!?」
提督「とりあえずその話はあとだ。五月雨、明石呼んで来い。念のため、探照灯とバケツも持ってくるよう伝えろ」
提督「あと、ちょうど金剛と比叡が埠頭で偵察機の調整してたよな? その2人にも声をかけてこっちに来るように伝えろ。できるか?」
五月雨「わかりました! 任せてください!」ダッ
提督「……さて、俺はもう少し浜を見て回るかね。お前らは休んでな」
山城「そうはいかないわ……私も扶桑お姉様を探しに……くっ」ヨロッ
那珂「山城ちゃん大丈夫!?」ガシッ
山城「ちゃん付けで……って、あなたこそ大丈夫なの!? 本当に顔色悪いじゃない! 異常よ!? そのやつれ方!」
バウーン
提督「!」
222 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/27(土) 18:38:24.88 ID:dU/gqv+wo
山城「何か飛んできたわ。あれは……」
那珂「零式水上偵察機?」
ザザァ…
金剛「Yes, I am ! その子は私の偵察機デース!」ビシッ
提督「金剛!? 海を来たからって、いくらなんでも早すぎだろ!?」
金剛「ノンノン! この金剛の愛の力を甘く見ては困りマース!」
提督「何が愛だよ、適当なこと言ってんじゃねえぞくそが! どうせ偶然だろうが、ったく!」
比叡「はい、たまたまですよー! 司令が何をしてるのか見に来たら、たまたまそこで五月雨ちゃんと会いまして!」ザザァ
金剛「Nooo ! 比叡、ネタばらしが早すぎマス!」
山城「なによ、あの二人があんたの部下なの?」
提督「まあな」
山城「……悩みがなさそうね、羨ましいわ」ハァ
那珂「ちょっと、山城ちゃん!?」
223 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/27(土) 18:39:15.65 ID:dU/gqv+wo
比叡「ところで司令、向こうのほうに倒れてる艦娘がいる、って偵察機から連絡が入ったんですけど!」
提督「なに?」
比叡「映像がぼやけててよくわかりませんが、戦艦っぽいそうです!」
金剛「Really !?」
提督(あの偵察機、金剛じゃなくて比叡が飛ばしてたのか)
山城「まさか……扶桑お姉様!?」ガタッ
那珂「きゃあ!?」ビクッ
提督「よし、じゃあ行ってみるか」
比叡「はいっ! こちらです!」ザァッ
金剛「ひ、比叡!? どうしてあなたが仕切るんデスカー!?」
提督「山城は歩けるのか?」
山城「扶桑お姉様ああああ!!」ドドドドド
那珂「きゃあああ!?」ダキカカエラレ
提督「……元気そうだな」タラリ
224 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/27(土) 18:40:18.81 ID:dU/gqv+wo
今回はここまで。
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/10/28(日) 15:43:24.66 ID:A5eLePbX0
更新乙です
毎回楽しみにしています
那珂はなんか事情がありそうにも思えますが、次回もまっています
226 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/10/28(日) 17:05:23.17 ID:LCS1cCKHo
ぎゃああああ! 一箇所、致命的な間違いやっちまったああああ!
>>221
誤)
那珂「……うーん、那珂ちゃんは……元の鎮守府に、戻りたい、かな。ちゃんとアイドルやりたいし!」
正)
那珂「……うーん、那珂ちゃんは……元いた場所に、戻りたい、かな。ちゃんとアイドルやりたいし!」
差し替えお願いいたします、理由は後ほど。
227 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/10/28(日) 21:15:43.44 ID:A5eLePbX0
那珂、野良艦娘か…
続きゆっくりお待ちしております
228 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/01(木) 00:43:29.43 ID:sd/OoPuBo
少しだけ続きです。
229 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/01(木) 00:44:34.82 ID:sd/OoPuBo
*
比叡「もうすぐです、司令! たしかこのあたりに船影が……」
提督「あれか」タタタッ
山城「あれは……」
ピタッ
那珂「山城ちゃん?」
山城「扶桑お姉様じゃないわ……」ガクーッ
那珂「山城ちゃん!? しっかりして!?」
比叡「え、えらい落ち込み様ですね……」
金剛「……比叡、急ぎまショウ」
比叡「金剛お姉様?」
金剛「あれは、私たちの姉妹……金剛型の艤装デス!」
提督「!」
比叡「えええ!?」
金剛「あの砲の迷彩……おそらく、榛名だと思いマス!」
230 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/01(木) 00:45:34.35 ID:sd/OoPuBo
タタタッ
提督「なるほどな。確かにお前らと同じ衣装だ」シャガミ
金剛「榛名は、私たち金剛型高速戦艦の三番艦デス。まさか、My sister のこんな姿を見るとは思いませんデシタ……」
榛名(大破)「」
比叡「ひどい……こんなにぼろぼろになるなんて」グスッ
那珂「……榛名ちゃん……!」タタタッ
提督「知ってんのか?」
那珂「うん、確か……覚えてる中で、あたしの後を一番最後まで追いかけてきてくれたのが、榛名ちゃんだよ」
提督「……ほかの連中はどうした?」
那珂「だ、だんだん人数が減ってったのは覚えてるんだけど……どうなったのかまでは……」
提督「つくづく馬鹿げた特訓だ」チッ
提督「とにかく、五月雨に明石を呼ぶよう頼んでる。こいつも埠頭のそばに運んでやらなきゃ……」
那珂「!」ビクッ!
提督「? どうした、いきなり海のほうを見て」
231 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/01(木) 00:46:20.20 ID:sd/OoPuBo
那珂「みんな伏せて!!」バッ
提督「うお!?」
金剛「What's !?」
比叡「ど、どうしたんですか!?」
那珂「深海……深海棲艦が近づいてきてる……!」
提督「なに?」
金剛「そういうことなら、テートクは早く避難してくだサーイ! ここは私たちの出番ネー!」
提督「近づいてきてる、って、この砂浜にか?」
那珂「うん……!」
山城「……ああ、こんなタイミングで……不幸だわ……!」
提督「比叡。偵察機飛ばせ」
比叡「は、はい!?」ガシュン
零式水上偵察機<バゥーン
提督「お前らも武器おろせ。警戒しなくていい」
金剛「な、何を言ってるんデスカ!?」
那珂「そうよ! 敵が来てるのよ!?」
232 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/01(木) 00:47:18.08 ID:sd/OoPuBo
山城「そうだわ、こんなこと、現実に起こるわけないもの……夢よ、私は海底で夢を見てるのよ……フフフ、不幸だわ」ブツブツ
提督「敵じゃねえよ。比叡、そうだろ?」
比叡「あ。ほんとだー」
金剛&那珂「「え?」」
ザザァ…
ル級「アラアラ、知ラナイ顔ガ随分増エタワネ?」
比叡「ル級さんでしたか! ひっさしぶりー!」
金剛「!?」
那珂「!?」
提督「よう。なにかあったのか?」
ル級「私ノ塒ニ艦娘ガ流レテキタカラ、アナタノ知リアイカト思ッテ曳航シテキタワ」グイ
ドサ
比叡「この人は……」
扶桑(大破)「……」
山城「ふ、扶桑お姉様ああああああああ!?」ガバッ!!
233 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/01(木) 00:48:47.11 ID:sd/OoPuBo
提督「わざわざ連れてきてくれたのか。ちょうど探してくれって頼まれてたんだ、助かったぜ」
比叡「これはル級さんにちょっといいものを御馳走しないといけませんねー!」
ル級「アラ、イイノ? 楽シミダワァ」ウキウキ
那珂「」ボーゼン
金剛「」アッケ
山城「うわぁぁぁん、良かったああああ扶桑お姉様あああああ!!」ナミダジョバー
金剛「テ、テートク、どういうことデース?」
那珂「し、深海棲艦でしょ?」
提督「ああ。深海棲艦の知り合いだ」
ル級「別ニ問題ナイデショ?」
金剛「……」
那珂「……」
提督「さて、探し人は見つかったことだし、いったん鎮守府に戻るか?」
比叡「そうですねえ、これ以上誰かが見つかっても人手が足りませんし、応援を呼んだほうがいいですね!」
234 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/01(木) 00:49:40.35 ID:sd/OoPuBo
提督「ああ、ル級にも礼をしなきゃ……」
榛名「……う……」
提督「!」
比叡「榛名!?」
金剛「はっ! 榛名、大丈夫デスカ!?」
那珂「榛名ちゃん!」
榛名「う、うう……」
提督「……」
榛名「ここは……」パチリ
那珂「榛名ちゃん!」
榛名(……海の底じゃない……?)
比叡「榛名!」
榛名(那珂ちゃんと……比叡お姉様と、金剛お姉様……?)
金剛「目を覚ましてくれたみたいで良かったデース!」
提督「そのようだな……」
235 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/01(木) 00:50:33.87 ID:sd/OoPuBo
榛名(……この男の人は……)
金剛「テートク、早く榛名を連れて行きまショウ!」
提督「ああ」
榛名(……提督……?)
提督「おい、榛名。お前、話はできるか?」
榛名(この人は……この方は……ちゃんと、榛名のことを見てくれてる……)
榛名(この方は、ちゃんと榛名を、『人』として見てくれている、そういう瞳……!)
榛名(最期に、こんな素敵な方に出会えるなんて……!)
榛名「……榛名は……」テヲノバシ
提督「!」ダキツカレ
榛名「……榛名は、幸せです……!」カオヲチカヅケ
ズギュゥゥゥゥン
提督「!?」
金剛「!?」
比叡「!?」
那珂「!?」
山城「!?」
ル級「……」
236 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/01(木) 00:52:07.78 ID:sd/OoPuBo
「「……」」
榛名「……」カクン(←幸せそうな顔で失神)
提督「……」
比叡「えっ!? えええ!? ど、どういうことですか司令!?」オロオロ
提督「俺が訊きてえよ……こりゃどういうことだ、金剛?」アタマカカエ
金剛「... Oh ! My !! Goddess !!!」URYYYYYYY!
金剛「いくら可愛い My sister とはいえ、私に無断で唇を奪うなんて! 私は榛名をそんな子に育てた覚えはないデェェェス!!」
提督「やってることはお前そっくりだがな……」
那珂「えっ? ちょっ、准尉さんって、榛名ちゃんとそういう関係なの!?」カオマッカ
提督「いや、初対面だぞ……?」
那珂「本当に!?」
提督「本当だよ……どういうことなんだ? 理解が追いつかねえ」ハァ
ル級「ネェ」
提督「ん?」
ル級「ソイツ、撃ッテイイ?」ジャゴン
比叡「ひええええ!? ストップ! ストップです!!」
237 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/01(木) 00:53:25.22 ID:sd/OoPuBo
五月雨「な、なにかあったんで……し、深海棲艦っ!?」ビクーッ
明石「提督……まーたなにかやったんですか?」
提督「やってねえよ。つうか、毎回俺がなにかやらかしてるみたいな言い方すんな」
山城「そんなことはどうでもいいから早く扶桑お姉様を治療してあげてぇぇ!!」
金剛「Nooo ! ソレはそんなことじゃないし、どうでもよくなんかないデェェェェス!!」グワッ
山城「心っ底どうでもいいわよぉぉぉぉお!!」ブワッ
提督「明石、とりあえず扶桑を診てやってくれ」ハァァ
五月雨「っていうか深海棲艦ですよ深海棲艦っ! みなさん戦わなくていいんですかっ!?」オロオロ
比叡「あー、大丈夫大丈夫、ル級さんは怖くないからー」
ル級「ナァニ? マタ新顔ナノ?」ギロリ
五月雨「めちゃくちゃ殺気立ってるじゃないですかあああ!!」
238 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/01(木) 00:54:10.16 ID:sd/OoPuBo
今回はここまでー。
239 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/01(木) 11:10:13.24 ID:AbG3h4JB0
更新お疲れ様です
いつも楽しく読ませていただいております
提督「あれ?また俺なにかやっちゃいました?」
艦娘「キャー!」
うらやましい
240 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/11/05(月) 11:39:25.00 ID:Rp81LBaZ0
これをそれと一緒にしないでほしいなぁ別にそれが悪いとは思わないけど
241 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/05(月) 11:57:27.94 ID:llrWnOtCO
アゲるな荒らしが
242 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/05(月) 23:00:13.72 ID:0Dog8pqKo
続きです。
243 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/05(月) 23:03:42.30 ID:0Dog8pqKo
* 日没 入渠ドック *
明石「とりあえず、今回流れてきた4人については、命に別状はないことをご報告します」
提督「おう」
明石「ですが、その中でも扶桑さんは損傷も激しく、疲労も相当たまってるようです。4人の中では一番重傷です」
明石「同じくらい損傷が激しいのが榛名さんですが、精神状態がいいのか、穏やかな顔してますね」
提督「……」
明石「で、同じく精神状態がよろしいのは山城さん。損傷の具合も先の二人よりはまあマシ、という感じでしょうか」
明石「那珂さんは損傷はそれほどではないのですが、疲労の累積が一番ひどくて。よく倒れませんでしたね、って言いたいですよ」
提督「んじゃあ、最初に話が聞けそうなのは山城か?」
明石「そうですね。ただ、山城さんは扶桑さんにかなり依存してるみたいですから、素直に話をしてくれるかどうか……」
提督「扶桑が目を覚ますまで付きっきり、って可能性もあるわけか」
明石「はい」
提督「となると、次に目を覚ましやすそうなのは榛名か那珂か」
明石「多分、榛名さんのほうが先だと思いますけど」チラッ
提督「……」チラッ
金剛「ガルルルル……」ウロウロ
提督「……」
244 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/05(月) 23:04:57.74 ID:0Dog8pqKo
明石「で、何したんですか今回は」ヒソヒソ
提督「何もしてねえよ、榛名が目を覚まして俺にキスしてまた気を失ったんだからよ」ヒソヒソ
明石「は? キス? なんでそんなことに!?」ヒソヒソ
提督「それがわかんねえから困ってんだよ……」ヒソヒソ
提督「まあ、あの金剛の妹だからな。来て早々初対面の俺にあの挨拶だ、お前も見てたろ」
明石「そうですね、あれは度肝を抜かれました……それを今回は榛名さんが金剛さんの目の前でやったと」
提督「如月と大和がいなくて良かったぜ。あの二人がいたらますます面倒なことに」
扉<ガチャバーン!
如月「司令官? 流れ着いたばかりの子にキスされたって本当……?」ゴゴゴゴゴゴ
大和「ル級さんから聞きました。どういうことか、ご説明いただけますでしょうか……?」ゴゴゴゴゴゴ
提督「……」アタマカカエ
明石「あー、二人とも? 確かにそういうことらしいですけど、提督は何も身に覚えがないそうですよー」
大和「明石さん……本当ですか」
明石「ええ。提督が、出会った艦娘を手当たり次第誘惑するような人じゃないことくらい、二人ともわかってるでしょう?」
如月「それはそうだけど……」
245 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/05(月) 23:07:39.58 ID:0Dog8pqKo
明石「思ったんですけど、榛名さんがキスしちゃったのは、むしろ金剛型としての素養なんじゃないですか?」
金剛「!?」
明石「比叡さんが例外なだけで、榛名さんも金剛さんと同じくらい惚れっぽいんですよねえ……その辺、金剛さんがどう思ってるんでしょう」
如月「っていうことは、そういうことなのかしら……」クルリ
明石「いやあ、金剛さんもこの鎮守府に来て提督へ挨拶したとき、みんなの前で何したか覚えてます?」
金剛「わ、私は無関係デース!」
明石「あ、揉め事は外でお願いしますよ。榛名さんも含めて治療中の人がいるんですから、騒音厳禁でお願いします」
大和「はい、お任せくださいね。さ、行きましょう金剛さん」ガシッ
金剛「ヒィイ!?」グイッ
如月「あっちでゆっくりお話を聞かせてもらいますね?」グイグイ
金剛「Nooooo !! Help ! Please help meee !!」ズルズル
扉<パタム
提督「……お前、すげえな」
明石「そうですか?」シレッ
246 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/05(月) 23:08:57.98 ID:0Dog8pqKo
明石「まあそれよりも、話の出所がル級さんなら、彼女のところにも説明しに行ったほうがいいと思いますよ」
提督「それもそうだな……これ以上変な話になっても困る。悪いがあの4人は任せていいか」
明石「はい、こちらはお任せください。とりあえず急いだほうがいいですよ、ル級さん、見た感じ明らかに不機嫌そうだったし」
提督「……なあ」
明石「はい?」
提督「なんでル級は不機嫌になってるんだ?」
明石「ネボケテンジャネエゾクソガー」ボウヨミー
提督「……」
明石「あ、すいません、つい本音が」ニッコリ
提督「……くそ。やっぱり理解できねえや」
ガチャ バタン
明石「……あらら。痛いとこ突いちゃったかな?」
工廠妖精「……明石、よくあんなこと言えたな。提督が怒ると思わなかったのか」ヒョコ
明石「提督ってさ、自分に非があると思ってるときは言い返してこないんだよね」
明石「多分、ル級さんが腹を立ててることには気付いたみたいだけど、その理由がわからなくて私に探りを入れたんじゃないかなあ」
247 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/05(月) 23:09:59.74 ID:0Dog8pqKo
工廠妖精「……まあ、たぶんな」
明石「ル級さんはさ、結果的にだけど助けてもらったり悩みを聞いてもらったりしてるから、多少なりとも提督に対して好意はあると思うの」
明石「その自分を助けてくれた相手と、余所から遅れて来た誰かとのキスシーン見せられたら、面白くないのは当然でしょ」
明石「あの人のニブさは今に始まったことじゃないけど、普通ならそのくらい、すぐわかることじゃない」
明石「その辺を提督が自覚してないから、こういうゆか……ややこしい事態を招いてるんだから自業自得よ」
工廠妖精「今、『愉快』って言おうとしたな」タラリ
明石「うん」テヘペロー
明石「いやー、だってねえ、ル級さんも嫉妬してるの無自覚っぽいし? どうなっちゃうのか恋バナ的にはわくわくしてくるよねー!」
工廠妖精「明石……いくら話ができても相手は深海棲艦だぞ? バッドエンドに向かって行ったらどうなるか……」
明石「その辺は提督がうまくやるでしょ。そういうところのバランス感覚はいいし、万が一には自分の身を投げて場を収めるだろうし」
工廠妖精「だから、その万が一、提督が身を投げたらどうするんだ!?」
明石「誰かが助けるんじゃない? 危なっかしいから目が離せないんだよね、今回だってみーんな提督のために動いてるし」
工廠妖精「……」
明石「そのおかげで多少は提督も自覚し始めてくれてるんだけど、まだまだ押しが足りないかなー」
工廠妖精「……やめてあげてくれ」タラリ
248 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/05(月) 23:12:15.20 ID:0Dog8pqKo
* その晩 執務室 *
那珂「おはようございまーっす!」キャピーン
提督「よう、お前が最初に目ぇ覚ましたか。元気そうだな」
那珂「那珂ちゃんはアイドルですから! いつだって元気元気! なんです!」クルリーン
提督「そうかい」
那珂「ええと、それはそれとして。今回はお世話になりました、ありがとうございました!」ペコッ
提督「……ああ、まあうちの鎮守府じゃよくある話だ。無事で何よりだ」
提督「とりあえず、お前がすぐ元の鎮守府に戻るのは、やめといたほうがいいとだけ言っておく」
那珂「どうしてなんですか?」
提督「一度轟沈した艦娘は、深海棲艦になる恐れがあるから運用しないってのが海軍じゃ常識なんだとさ。知ってるか?」
那珂「は、初耳です……!」ブンブン
提督「意外と知られてねえんだな。とにかく、お前の所属してた鎮守府はどこだ。そこの鎮守府から……」
那珂「そのぉ……それなんですけど、鎮守府じゃないです」
提督「……ん?」
那珂「那珂ちゃん、鎮守府じゃなくて養成所所属なんです!」
提督「……養成所? 艦娘ってのは、必ず海軍に所属するもんじゃねえのか?」
249 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/11/05(月) 23:13:59.35 ID:0Dog8pqKo
那珂「海軍の附属学校っていえばいいのかな? 海軍の外部組織として艦娘養成所っていう組織があるんです!」
那珂「そこで、那珂ちゃんはメディア向けの艦娘として、日々特訓を重ねてきてました!」ビシッ
提督「……そんなもん初めて聞いたぞ。お前と榛名はその組織の所属だって言うのか?」
那珂「はいっ!」
提督「……那珂、お前は建造艦か?」
那珂「はいっ! 那珂ちゃんは生まれながらにして正真正銘のアイドル艦ですっ!」
提督「で、お前はその養成所の出身だと」
那珂「はい、その通りです! っていうか、那珂ちゃん何か変なこと言ってます?」クビカシゲ
提督「艦娘ってのは、海軍支配下の各鎮守府が所有する建造ドックで作られるか、海上で艦娘が発見することで邂逅できると聞いてる」
提督「海軍が直接支配していない組織が艦娘建造ドックを持ってたら、艦娘を第三者に悪用される危険性がある。危険視されて当然だ」
那珂「そうなんですか!? その情報、本当ですよね……?」
提督「いくら辺境の鎮守府にいるからって、艦娘の指揮を執っている以上はリスクくらい把握して当然だろ」
那珂「そうですか……」ウーン
提督「それにしても、養成所ねえ……そんなもん轟沈のリストにはねえぞ」ブツブツ
那珂「……」
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