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ギャルゲーMasque:Rade 文香√
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102 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/02(土) 17:43:10.87 ID:MhFa6slW0
P「……遅いなぁ」
少し呆れる様に笑って、手に息を吹きかけた。
まぁ、多分そろそろ来るだろう。
今か今かと、恋人が現れるのを心待ちにする。
ガチャ
玄関が開いて。
文香「お待たせしました、P君」
P「……待ってないよ、今来たとこ」
文香「……ふふ。照れ隠し、下手ですね」
待ち望んだ恋人の姿は見慣れていた筈なのに、見違える程綺麗だった。
文香「化粧、お洒落……そう言ったものを、フレデリカさんから教えて頂きました」
P「……あの人に知られてんのか……」
文香「……柄にも無いと思われてしまうかもしれませんが……貴方の前では、精一杯……出来る限り相応しい私でありたいですから」
P「相応しいって……」
むしろ不相応なのは俺の方だ。
こんなに綺麗な女性と並んで歩いていたら、周りの男性から妬み恨みを連ねられてしまいそうで。
文香「……貴方から見て……今日の私は、如何ですか?」
P「……隣に立つに相応しい男になりたいなって思った」
文香「……照れ隠し、では無いのでしょう……けれどそれなら、貴方は些か以上に自己評価が低過ぎる」
P「何言ってんだよ。姉さんこそそんな綺麗な容姿なのに、俺みたいな奴とクリスマスを過ごしてたら宝の持ち腐れ過ぎてバチが当たるかもしれないぞ」
文香「でしたら……そんな宝も、財も必要ありません……私は既に、貴方という宝物に出逢えていますから」
……よくもまぁ、そこまで喜んで頂けるものだ。
嬉しい反面、こそばゆくて妙に居心地が悪くなってくる。
文香「……もし貴方が、本気でそう思っているのでしたら……この寒さで、貴方の自分に対する意識が凍ってしまっているのでしたら。私が、貴方の心を暖めて溶かしてあげます」
P「……いや、その……十分だから」
恥ずかしさで、心以上に顔が熱くなる。
103 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/02(土) 17:43:42.92 ID:MhFa6slW0
文香「……ふふ。やはり貴方は、照れを隠すのが下手な様ですね」
P「良いんだよ別に、嘘吐きになるよりは馬鹿でも正直な方が」
文香「そうですか…………そうですね。貴方が愚直なまでに愚かで、真っ直ぐで、馬鹿で……正直だったから。私はこうして、この冬から先の季節を……諦めずに済みましたから」
すっ、っと。
文香姉さんが此方へと手を伸ばした。
それを俺は、殆どノータイムで握る。
文香「あら……普段の貴方なら、もう少し照れたり渋るものだと思っていましたが……」
P「今日くらいはご要望に応えてもっと素直になってみようかなって」
文香「……そうですか」
P「言い損ねたけど……すっごく綺麗だぞ、今の文香」
文香「……まったく……やはり、恋愛において予想予測はなんの役にも立ちませんね」
P「……照れてる?」
文香「……はい。貴方の素直な気持ちは、私が思っていた以上に温か過ぎて……私の気持ちは、私が思っていた以上に舞い上がり易いものでした」
頬を赤く染めて微笑む文香姉さん。
そんな表情が愛おし過ぎて、俺は握る手を強くした。
P「んじゃ、行こっか」
文香「はい……ふふ、とても……楽しみです」
一度手を離して腕を組み。
傘を開き、文香姉さんを招き入れて。
俺はまぁ濡れても良いし、多少文香姉さん寄りでさす。
P「にしても、結構降って来てるな」
文香「せめて、今はあまり積もらないでくれると助かるのですが……ですが今は……この寒さが、心地良いです」
本屋へと向かって歩き出す。
十二月二十五日。
恋人という関係になって初めて、文香姉さんと二人きりで出掛けたこの日。
文香「……ふふ。素敵な冬になりましたね」
これから始まる幸せな時間に想いを馳せて、楽しそうに微笑む文香姉さんと共に。
そんな笑顔と一つ傘の下、二つ並んだ足跡を残した。
104 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/02(土) 17:44:18.25 ID:MhFa6slW0
街は既にクリスマス一色だ。
クリスマスのイメージカラーは三色だけど。
赤と緑と白に彩られ、舞い降りる雪がより一層その色を鮮やかにしていた。
つい先日までハロウィン仕様だった街並みが、ほんの数日で全く違う世界に変わっている。
クリスマスが終われば、またすぐ正月仕様に早着替えするんだろう。
周りを見回せば二人一組の多さに驚く。
それもそうか、クリスマスなんだから。
P「そう言えば、何か本買うって言ってなかったっけ?クリスマスのフェアだったか」
文香「……あ……そうでしたね……確か私は以前、その様な事を言っていた様な気がします」
P「えっ?」
文香「……ええと、その……その時の言い訳で……其の場凌ぎの嘘だったので……」
P「まじかー……ん、あれ?いややってるやってる!本屋に垂れ幕掛かってるぞ!」
文香「というのは全て冗談です。さ、P君。早く入りますよ」
なんとも都合の良い事で。
とはいえ楽しそうだし、まぁ良いか。
文香姉さんに腕を引かれて本屋に入る。
……ここもカップルばっかりだ。
神聖なる書店で腕組んでイチャイチャしてんじゃねぇよ。
文香「……目移りしてしまいましたか?」
P「……本にだよね?他の女性見てるんじゃねぇよ的な意味じゃ無いよね?」
文香「……勿論です。私は、貴方を信頼していますから」
そう言いながらも、腕を強く引き寄せられて。
さっき投げた言葉は、どうやらくの字型をしていたらしい。
思いの外勢い良く自分に返って来た。
文香「……成人向け雑誌コーナーが気になりますか?」
P「いや別に……」
文香「クリスマス特集、開催中らしいですよ……?」
それはちょっと気になる。
サンタコス系が多いんだろうか。
文香「……サンタコス、ですか……」
P「しなくて良い、まじで」
いつの間にやらお会計を済ませていた様で、既に手に袋をぶら下げていた。
どうせなら今日くらいは俺が支払い持ちたかったんだけどな。
過ぎた事は仕方ないので、代わりに袋を受け取って持つ。
あっ結構重いこれ何冊買ったんだ。
105 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/02(土) 17:44:47.03 ID:MhFa6slW0
P「……ふぅ」
文香「……ふぅ」
二人同時に溜息をついた。
少々はしゃぎ過ぎた様だ。
本屋を梯子したり屋台でスイーツを食べているうちに結構時間は過ぎていて。
思いの外消費してしまった体力の回復を図るべく、現在俺たちは喫茶店でコーヒーを傾けていた。
特に会話は無いけれど。
ゆっくりと温かく過ぎてゆく時間が、とても心地良くて。
P「……ふぁぁぁ……」
つい、欠伸が漏れてしまった。
外が寒過ぎた分、暖房の効いた店内は少し居心地が良過ぎる。
それに昨晩も、結構遅くまで起きてたし。
文香「……良い眺めですね」
P「だなー。クリスマスって感じだ」
窓の外はひたすらに平穏で、行き交う人々も幸せそうで。
降り積もる雪が足跡を消しそこへまた新たな足跡が作られ。
静かに移り変わる光景が、時間の経過を忘れさせる。
ふと視線を戻せば、幸せそうな文香姉さんが目の前にいて。
あまりにも窓の外を眺めるその姿が綺麗過ぎて、俺は焦ってまた窓へと視線を移す。
けれどその窓に映って見えた文香姉さんの頬は、ほんのりと紅く染まっていた。
文香「……さて、P君」
P「っし、そろそろ出るか」
既に時刻は十六を回っていた。
このままのんびりしていたい気持ちもあるが、遅くなると帰るのが大変そうだ。
P「じゃ、最後に駅前行っても良い?」
文香「……構いませんが……何か買い損ねた物でも……?」
P「ちょっと見せたいものがあってさ」
文香「……ふふ。でしたら……エスコート、お願いします」
106 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/02(土) 17:45:14.68 ID:MhFa6slW0
駅前へと到着するも、どうやら少し早かった様で。
思い浮かべていた光景は、まだ広がっていなかった。
文香「……ここで、何か催されるのですか?」
P「まぁまぁ、多分もうすぐだから」
文香姉さんは越して来て初めての冬だから、見た事無いんだよな。
だったら、良かった。
俺が知ってる中で一番綺麗な光景は、この日のこの場所だから。
ひゅぅっ
強い風が通り抜けた。
文香「あっ……」
一瞬よろめいた文香姉さんが倒れない様に抱き寄せる。
なんともまぁ、恋愛小説の1ページみたいな出来事だこと。
文香「すみません……ありがとうございます」
P「いいっていいって」
文香「……離さないのですね」
P「離して欲しい?」
文香「まさか……普段の貴方なら、という話です」
P「さっきも言ったけど、今日はちょっと特別性なんだよ」
文香「……ふふ……なんて、優しく甘い恋物語なんでしょう」
P「渋さや苦さは如何なさいますか?」
文香「結構です……先程、珈琲を頂いたばかりですから」
傘の下で、甘いだけの空間を作る。
さて、そろそろ最後の一手間が加わる筈だ。
107 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/02(土) 17:45:42.33 ID:MhFa6slW0
文香「…………あ……」
パッ、と。
駅前が、一瞬にしてイルミネーションに彩られた。
大きなモミの木に飾られた装飾品が、ただのロータリーを聖夜へと塗り替える
煌々と光るその輝きは、雲に覆われたこの夜を、傘に覆われたこの場所を。
今日この日を祝福するかの様に、優しく照らした。
P「ここのイルミネーション、すっごく綺麗でさ。文香に見せてあげたかったんだ」
半分本当、半分は嘘。
吐かないと言っていたけれど、どうやら冬の魔法に心が揺られてしまった様だ。
残りの本音は、文香と並んでこの光景を見たかったから。
俺が、見たかったから。
喜ぶ文香が、見たかったから。
文香「……本当、柄にも無い事を……」
P「失礼な。時にはロマンチストになる時だってあるんだよ」
文香「……ええ、本当に…………私は柄にも無く……綺麗だ、嬉しいといった程度の感想しか言えそうにありません」
P「それ自分で言っちゃうんだな。でも良いんじゃないか、それで……」
多分逆の立場だったら、俺は恍惚として何も言えなくなってたと思うから。
文香「……ありがとうございます、P君。今私は……とても…………幸せです」
それ程に、文香から語彙力を奪うくらいには、その光景は綺麗で。
そして、俺から言葉を奪うくらいには、照らされた文香は綺麗だった。
108 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/02(土) 17:46:45.61 ID:MhFa6slW0
文香「……ですが……この光は、私には眩し過ぎます」
P「どのくらい?」
文香「貴方くらい……という表現は、月並みでしょうか?」
P「……慣れるしかないな」
このこそばゆい感覚にも。
いや、果たして慣れる日はくるんだろうか。
文香「……ですから……眩しい光は、一つで十分です」
P「えっ……」
気が付けば、眼に映るのはイルミネーションではなく文香になっていて。
唇に、柔らかいものが触れた。
文香「……では、もう一度柄にもなく……直接的な言葉で、伝えようと思います」
そう言って、微笑んで。
文香「……貴方と、二人きりになりたいです」
P「……あぁ」
組んだ腕を少し強く引いて、今度は俺から唇を重ねた。
触れた場所から伝わる温もりが、冬の寒さを忘れさせて。
特別な夜の中、この傘の下はより特別で。
既に消え掛けた足跡と別れ。
俺たちは雪に、この夜に。
二人並んで、足跡を重ねた。
文香√ 〜Fin〜
109 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/02(土) 17:47:58.47 ID:MhFa6slW0
以上です
これで一応全√完結となります
長い間、お付き合い本当にありがとうございました
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/02(土) 20:55:33.38 ID:1ohkTFYd0
乙
アフターとR-18も期待してるぞ
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/02(土) 22:27:46.44 ID:6gqslSidO
乙でした
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/04(月) 12:12:42.16 ID:lbTj9rlG0
全√完結
???
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クオリティの高いサービスを貴方に
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