相棒×聲の形「灯台下暗し」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:15:58.62 ID:YOGuTys40
初投稿になります。

以下は、この作品を読む前に把握していただきたい事でございます。

1.この作品は、相棒と聲の形のクロスオーバーSS。
時系列は相棒側は、シーズン16第1・2話が終了してから
第8話までの間の11月という設定で、右京さんの相棒が冠城亘君です。
聲の形は、小学生編になります。

2.世界観は相棒寄り。聲の形の年代も相棒側に合わせた形になります。

3.ストーリーの都合で、双方の原作に登場していないオリキャラや独自設定が出て来ます。
苦手な方はご注意して下さい。

最後に、私は聲の形そのものは未見です(そもそも、見る勇気が…)
一応ネタバレ情報等は見ていますが、それでも原作と合わない部分が出てくるかもしれないことをご了承下さい……

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1526886958
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:16:24.68 ID:YOGuTys40
―2017年 11月―


岐阜県のとある市で『ある事件』が起きた。

それは、『見落としてはならないもの』を
見落としてしまった者達が犯してしまった大きな過ち……

これは、そんな彼らと関わった2人の刑事の物語である。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:16:52.46 ID:YOGuTys40
〜相棒シーズン16 オープニング〜
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:17:18.33 ID:YOGuTys40
相棒×聲の形 〜1日目〜


ある日、東京から岐阜県水門市を2人の男が訪れた。

1人は眼鏡を掛け、スーツを着た初老の男。

もう1人は、彼より若い男。


初老の男の名は『杉下右京』

警視庁の陸の孤島にして人材の墓場とも言われる『特命係』の係長で、
数々の難事件を解決してきた、本庁きっての切れ者にして変わり者で有名な人物だ。


もう1人の若い男は『冠城亘』

かつては法務省事務次官『日下部彌彦』の下にいたキャリア官僚で、
当初は出向という形で特命係を出入りし、何かと右京に絡んできていたが、
1年前に起きたある事件をきっかけに法務省をクビになり、警察学校に入学。
その数ヶ月後、紆余曲折合って杉下右京の現在の相棒となった。

ちなみに、彼が本格的に特命係入りを果たして、今年で早二年目である。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:17:48.95 ID:YOGuTys40
冠城「ここですね」


そんな窓際部署の2人は、とある一軒家に辿り着く。

表札には『伍堂』と書かれてある。

早速、その家の呼び鈴を右京が鳴らすと、中から若い風貌の男性が姿を現した。



若い男性「はい…どちら様でしょうか?」

右京「東京の警視庁から来ました、特命係の杉下右京です」


そう言いながら警察手帳を見せる右京に続いて、
冠城も「冠城です」と名乗った。


右京「交番巡査の伍堂圭三さんですね?」

「警視庁からの命令で、あなたが東京への旅行の際に落とした、警察手帳をお届けに上がりました」


と言って、スーツの中から自分の物とは別の警察手帳を差し出す右京。
それを見て「あぁ、間違いない!僕のですよ!」と言って手帳を受け取る伍堂と呼ばれた男。
今回、特命係に下された命令は、この伍堂刑事に警察手帳を届ける事だったのである。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:18:25.07 ID:YOGuTys40
伍堂刑事「ありがとうございます!」

「見付からなかったらクビだと部長から言い渡されて、どうしようかと思っていたところで……」

「本当に、助かりました!」

冠城「お礼は、届けてくれた方に言って下さい」

右京「今度からは気を付けて下さいよ?」

「念押しで常に持ち歩くのは構いませんが、警察手帳は我々警察官の命のようなもの」

「今回は、善良な市民が拾ってくれたから良かったものの、万が一犯罪者の手に渡りでもしたらそれこそ大変です」

伍堂刑事「以後、気を付けます!」


右京の注意を受け、びしりと敬礼する伍堂刑事。

そんな彼に見送られながら、特命係の2人は家を後にした。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:19:06.44 ID:YOGuTys40
冠城「しっかし、旅行先で警察手帳落とすなんて、間抜けにも程があると思いませんか?」

右京「もっともな意見です。後は、気を付てくれるようになる事を祈るしかありません」

冠城「それにしても、内村刑事部長も面倒なお使いを頼んだものですね……」

「いち早く届けなければならないものだったとはいえ……」

「何も、東京から離れたこんな所に、わざわざ俺達送り込む必要ないんじゃないですかね?」

「持ち主も分かってるんだし、郵送で送ればいいのに」

右京「あの方の事ですから、恐らくそれすら面倒だったのでしょうねぇ…」

冠城「ところで…ちょっとお腹空きません?」

右京「言われてみると……」

冠城「じゃあ、早速近場の店でも探しましょうか?」

右京「構いませんが、出来る限り安いお店をお願いします。
僕達は、観光に来たわけではありませんからねえ」

冠城「ホント、真面目ですね。少しくらい羽目を外しても罰は当たりませんよ」


と言いつつ、冠城はスマホを取り出して、近場の安い店を探し始めた。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:19:56.84 ID:YOGuTys40
右京「…?」


その時であった。右京がふと、側にあった小学校の裏門目を向けてみると、
門の向こうで小学6年程度の3人の少年の姿が目に留まる。

それ自体は、特に何でもなかったが、問題は少年達の様子……

3人の内2人が、1人の少年に暴力を振るっていたのだ。


右京「冠城君…!」

冠城「どうしたんで……あっ!」


右京の声掛けで目の前で起こっている事に気付いた冠城は、店を探すのを中断。
すぐさま2人の少年に向かって「君達、何してるんだ!」と叫ぶ。
その声に反応した2人の少年は、まずい…!と言った様子でその場から逃げ出した。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:22:08.02 ID:YOGuTys40
少年「………」


一方、暴行を受けていた少年は、その場からフラフラと立ち上がりながら、
門の向こうにいる右京達にゆっくり顔を向ける。


右京「大丈夫ですか?」

冠城「酷い怪我だね…一度保健室で診てもらった方がいいよ」

右京「僕達も一緒に行って先生に相談してあげますよ」

少年「……」


優しく声を掛ける特命係の2人であったが、少年は何も言わずにフラフラと立ち去った。
予想外の反応に、冠城は不思議がる。


右京「?」


一方、右京はある事に気付く。向こうにある体育館らしき建物の陰から、
限りなくピンク色に近い茶色の髪をしたショートボブカットの少女が覗き込んでいたのだ。
だが、その少女は右京に見付かったのに気付いたのか、すぐに建物の陰に姿を消してしまう。


冠城「どうしました?」

右京「いえ……何も」

冠城「それにしても今の……ただ事じゃありませんでしたね」

右京「そうですねぇ……」

冠城「腹ごしらえの前に、立ち寄りますか?ここ……」


問い掛ける冠城。

右京の答えは、言うまでも無くYESであった。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:23:21.80 ID:YOGuTys40
―水門小学校 校長室―


水田校長「私が、校長の水田門木です」


校長室に招き入れられた特命係の2人に自己紹介をし、お辞儀をする水田校長。
それに対して、特命係の2人もお辞儀し返し、水田校長に促されて椅子に腰かける。


水田校長「警察の方が、何のご用でしょうか…?」

右京「実は、少しばかり確認したい事がありましてね…」

水田校長「確認……ですか?」

右京「つい先程、校舎内でこちらの学校の生徒さんが、別のクラスか同じクラスかは分かりませんが……」

「2人の生徒さんから、暴力を振るわれているところを見掛けました」

「そこで、この学校で何が起こっているのか、確かめようかと……」

冠城「申し訳ありませんね。細かい事が気になる方でして」

水田校長「…………」


右京の問いに、水田校長は顔を曇らせた。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:23:54.23 ID:YOGuTys40
冠城「……?」


その様子に冠城は怪訝に思う。

一方、校長はそれに気付かないままこう答えた。


水田校長「多分……喧嘩か何かでしょう」

右京「喧嘩?」

水田校長「はい…当校では、生徒が他の児童に暴力行為を行ったと言う事実は、確認されていません」

「しかし、年頃の子供も多いですからね……ちょっとした事で、衝突を起こすといった事はあると思いますよ」

右京「なるほど…ちょっとした衝突による喧嘩ですか………」

冠城「となると、思いの外大した事ではなかったって訳ですね?」


冠城の言葉に水田校長は「はい…」と答えた。


右京「お忙しい所、お時間を取らせてしまいました…」

水田校長「いえ構いません。これも、あなた方の仕事でしょう……?」

冠城「そうですね。じゃ、行きますか?」

右京「えぇ…これで、失礼します」


こうして右京は、冠城と一緒に校長室を後にしようと立ち上がったが……
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:24:59.36 ID:YOGuTys40

右京「あ…!最後にひとつだけよろしいですか?」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:25:36.40 ID:YOGuTys40
と言って、また校長にある事を聞いた。


右京「この学校で、他に何かしらのトラブルがあった事はありませんでしたか?」

「例えば、先程の男の子の件とは別に、いじめもしくはそれに相当する事案があったとか……」

水田校長「…………いいえ」

右京「そうですか…」


一言そう答えると、右京は冠城を連れて校長室を後にした。

それを確認すると、水田校長は自分以外誰もいなくなった室内で
「ふぅ……」と、まるで肝が冷えるような状況から脱したかのように、安堵の表情を浮かべていた。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:31:51.78 ID:YOGuTys40
―水門小学校 廊下―


校長室を後にした特命係の2人が、外に向かって歩いていたその時であった。


???「だから何度も言ってるだろう!お前にアイツらを糾弾する資格は無い!」

右京と冠城「「?」」


突然、向こうから誰かの怒鳴り声が聞こえる。

何事かと思いその先に向かい、覗き込んでみると、
そこには先程の少年が、教師と思われる眼鏡を掛けた男性と向かい合っている。
一応、少年は手当てを受けたらしく、顔中絆創膏だらけ。

だが、教師らしき男性は彼に対し、何故かあまりいい顔をしていない。

それだけにとどまらず、こうも言い放った


教師「これはお前がまいた種だ!自分でやった事は、自分でどうにかしろ!」

少年「け、けど……」

教師「何だ?文句があるなら、言ってみろ」

少年「…………」

教師「無いならさっさと教室に戻れ!次の授業に間に合わんだろ」


教師に吐き捨てられ、少年は何も言い返さずに教室に戻っていく。
その一部始終を、特命係の2人は隠れて静観する。

そして……
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:32:33.74 ID:YOGuTys40
少女「……………」

右京「……」


右京はまた、あの少年の姿を心配そうに見ている少女の姿を目撃するのであった。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:34:51.23 ID:YOGuTys40
その後、校舎から離れた特命係の2人は、近場に飲食店で食事をとる事になった。


冠城「どうです?あなたのご注文通り、近くて安いお店を探してあげました」

右京「確かにそうですが……」

冠城「そうですが……何か?」

右京「この料理…明らかに君好みのものではありませんか?」

冠城「別にいいじゃないですか。パイナップル入りの酢豚がある訳じゃあるまいし…」

右京「そういう問題ではないですがねぇ……」


そのようなやり取りを交わしつつ、淡々と料理を口にしていく特命係の2人。

その途中、冠城はいきなり「右京さんは、どう思います?」と問い掛けた。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:37:16.96 ID:YOGuTys40
右京「何がですか?」

冠城「何がって…さっきの事ですよ」

「率直に言って、俺はあの校長は怪しいと考えています」

右京「怪しい、ですか……」

冠城「えぇ……」

「あの2人の少年が彼にしていた事は、喧嘩にしては明らかに度が過ぎてる感じだったし…」

「何しろあなたに問い掛けられた時、あの校長の顔色は明らかに変わっていました」

「そこで俺が考えたのは、『学校があの少年へのいじめを知りながら、見て見ぬ振りをしているではないか?』ということなんですが……」

右京「確かに、色々と気になる点があるのは事実です。しかし、ひとつ分からない事があります」

冠城「分からない事って?」

右京「先程の少年の担任と思われる教師の言葉です」

「あの時彼は、『これはお前がまいた種だ!自分でやった事は、自分でどうにかしろ!』と言っていました」

「それも、あんなに傷だらけな少年を前にしてです」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:38:35.95 ID:YOGuTys40
冠城「確かに、なんか引っ掛かりますね」

右京「いずれにせよ、あの学校が何か隠しているのは、間違いないでしょう」

冠城「それをはっきりさせないと気が済まない」

右京「えぇ…」

冠城「そう来なくちゃ、面白くありませんね」

右京「冠城君…遊びではありませんよ?」


右京の突っ込みに、冠城は「分かってますっ!」と返す。


冠城「で?次は何処当たるつもりですか?」

右京「その事ですが、もう決めてあります」

冠城「何です?」

右京「それはですねぇ……」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:42:15.48 ID:YOGuTys40
数時間後……

水門小学校は下校時間になり、生徒達が次々と正門から出て家路に就く。
その様子を、特命係の2人が遠くから隠れて覗いている。


冠城「どうして、下校中の子供達を見張らなくちゃならないんです?」

右京「…………」

冠城「ここで待ち構えて、さっきの少年を捕まえて話を聞き出すという算段ですか?」

右京「………………」

冠城「まあ確かに、方法としてはありかもしれませんが……」

右京「君……少し黙っててくれませんか?」

冠城「すみません……」


と言って頭を下げる冠城。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:42:54.34 ID:YOGuTys40
右京「…来ましたよ」

冠城「え…?」


その直後、目当ての子供が学校から出てくる。
それは、先程少年の様子を見ていた少女であった。

少女は、特命係の2人が見張っている事に気付かないまま、家路に就く。


冠城「女の子?」

右京「行きますよ」

冠城「あ…はい!」


予想外の相手に戸惑いつつも、冠城は右京と共に彼女を尾行する。

一見すると、普通に歩いて帰っているように見えるが……
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:48:39.65 ID:YOGuTys40
冠城「………あの娘、やけにキョロキョロしてません?」


冠城の言う通り、少女はやたらと周囲を気にしながら歩いている様子であった。


右京「確かにそうですねぇ……」

冠城「まさか、俺達の気配に勘付いたとか?」


早くも尾行がバレたと考える冠城。その時、彼の横を自転車に乗った男性が走り抜ける。
運が悪い事に、男性の行く先には、尾行中の少女がいた。

しかし、男性は曲がるのが面倒なのか、
避ける気配がなく代わりにベルを鳴らして自分の存在を知らせている。


少女「…」


だが、何故か少女は振り返らず、まるで何事もないかの如く前進している。


冠城「危ない!」


冠城の声と共に特命係は助けに出ようとしたが、
尾行の為に距離を取っていたせいだろう、間に合わなかった。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:52:28.39 ID:YOGuTys40
キキ――ッ!

が、男性の方が寸での所で急ブレーキを掛けた為、衝突は避けられた。


少女「!!」


そして、ようやく自分の後ろに自転車が来ていた事に気付いたのだろう、
少女は男性の方に振り返り、驚いている。

その際、右京は彼女の耳に注目したのだが、この時誰も気が付いていない。


男性「馬鹿野郎!何であんだけ鳴らしたのに避けねぇんだよ!今度から気を付けろ!!」


怒鳴り付けてくる男性に対し、少女は無言で頭を下げている。
そんな彼女の様子を確認すらしないまま、男性は走り去った。
彼が走り去るのを確認すると、少女は再び歩き出す。
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 16:55:28.30 ID:YOGuTys40
右京「…大事に至らなくて良かったですね」

冠城「しかし、感じ悪い人でしたね」

「目の前に人がいると分かってるんだから、自分の方から避ければいいのに……」


男性の行動に呆れ返る一方、冠城はある疑問を抱く。


冠城「けど…何であの娘、ベルの音に気付かなかったんでしょうか?
あれだけ鳴らされたら、普通誰だって気が付くのに……」

右京「どうやらあの娘、耳が不自由なようですよ」

冠城「何でそんなこと分かるんですか?」

右京「今、ほんの一瞬だけ耳に補聴器を入れているのが見えたもので……」

冠城「相変わらず、細かいところに目が行くこと……」

右京「君もせっかく鼻が利くのですから、視野も広くなくては困りますよ」


右京の言う事に冠城は「出来る限り精進してみます」と答えた。

それと同時に、彼女がやたらと周囲を気にしているのに納得がいった。
音がよく聞こえない以上、他に頼れるのは自分の目だけ。
だからこそ、周囲に気を配らねばならなかったのだろう。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:00:05.47 ID:YOGuTys40
そんな事がありつつも、2人は少女の尾行を続けた。

尾行の末、彼らは一件のマンションに辿り着く。
彼女の入っていったマンションを前に、冠城が「ここがあの娘の家ですか…」
と呟く一方、右京はマンションに向かって歩き出す。


冠城「あ、ちょっと待って下さいよ!」


自分を置いて先に進む上司の後を、冠城は急いで着いて行く。
彼らが向かったのは、マンションの管理人室。

そこで、マンションの管理人と対面する。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:01:20.06 ID:YOGuTys40
管理人「私が管理人の者です」

右京「どうも…警視庁特命係の杉下右京です」

冠城「冠城亘です」


特命係の2人は、名乗りながら警察手帳を管理人に見せた。


管理人「警察の方が、ウチに何のご用で…?」

右京「実は、お会いしたい方がいらっしゃいましてねぇ……」

管理人「お会いしたい方?どちら様で?」

右京「こちらのマンションに、『西宮さん』と言う方は住んでいらっしゃいますか?」

管理人「西宮……えぇ、確かに住んでますよ。何か、御用で?」

右京「大した事ではありません。少し、確認したい事があるだけです」

冠城「何はともあれ、西宮さんのお宅に案内してくれませんか?」

管理人「分かりました」


こうして、特命係の2人は西宮家の前に案内された。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:02:02.73 ID:YOGuTys40
管理人「こちらです」

右京「どうもありがとう……」

冠城「今回の事は、我々が本部に直接お伝えしますので、後はお任せ下さい」

管理人「分かりました。どのような事情があるのか知りませんが、お仕事頑張って下さい」


そう言い残して、管理人は立ち去った。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:02:41.91 ID:YOGuTys40
冠城「……さて、そろそろ話してくれませんか?」

右京「何をですか?」

冠城「とぼけないで下さい」

「何で急に、あの娘を尾行しようなんて話しになったんです?」

「おまけにあの娘の名前……いつ知ったんですか?」

「俺達、まだ一度もあの娘と会ってないはずなんですが」

右京「実は、先程あの少年の様子をあの娘が覗いているのが見えましてねぇ……」

「彼女が何か知っているのではないかと思ったんです」

「その上、胸のところに名札をしていました。名前はそこから…」

冠城「本当に細かい所に目が行きますね」

「とはいえ……目の付け所はいいと思いますよ?」

「隠し事をしようとしている人や被害者本人をつつくより、目撃者に当たった方が情報を得られる確率は高いですからね」

右京「分かったのならば、行きますよ」

冠城「はい」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:03:20.36 ID:YOGuTys40
ピンポーン!

一通り話しを終えると、特命係の2人は西宮宅の呼び鈴を鳴らす。
すると、1人の老婆が玄関の扉を開けて顔を出す。

この家に暮らす少女の祖母『西宮いと』である。


いと「はい?」

右京「西宮さんですか?」

いと「そ、そうですが…あなた方は?」

右京「東京の警視庁から来ました、特命係の杉下右京です」


伍堂刑事の時と同じ要領で名乗りながら警察手帳を見せる右京と、
それに続いて「冠城です」と名乗る冠城。

唐突な警察官の訪問に、いとは目を丸くした。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:12:06.85 ID:YOGuTys40
いと「あの…警察の方が、どうして?」

右京「お宅にいらっしゃる娘さんに、用がありましてねぇ…」

冠城「もう学校も終わってる時間ですし、戻られていますよね?」

いと「え、えぇ…しかし孫に何のご用が?」

右京「大した事ではありません。少し、お話しを聞きたいもので…」

いと「とにかく、外で立ち話も何ですので、中へどうぞ…」

右京「お心遣い、感謝します」

冠城「お邪魔させて頂きます!」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:13:32.70 ID:YOGuTys40
いとに案内され、西宮宅に上がり込む特命係の2人。
すると今度は、黒髪のショートヘアーのボーイッシュな出で立ちの少女が待っていた。

少女の3歳年下の妹『西宮結絃』である。


結絃「婆ちゃん、その人達誰?」

いと「警察の方よ。ウチの娘に用があるみたいなのよ」

結絃「それって……ひょっとしてオレ?」

右京「残念ながら違います。君より3歳くらい年上の娘の方で……」

結絃「それって姉ちゃん?」

冠城「そんな所だね……」

結絃「それじゃあ、オレ呼んでくるから、その間そこで婆ちゃんと一緒に待ってなよ」


結絃はそう言って姉を呼びに向かっていった。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:14:21.26 ID:YOGuTys40
いと「やれやれ、気が早いね……」

冠城「いえ…むしろ大助かりですよ」

右京「それにしても、随分とボーイッシュなお孫さんですねぇ…」

いと「おや…ゆずが女の子だと分かるんですか?」

右京「えぇ……」

「髪も短く服装も男性的で、パッと見た感じ男の子に見えますが」

「目元や唇、顔の輪郭等に少女としての特徴が見えたものでして……」

いと「これはまた、随分と細かいところに目を付けたこと……」

右京「そういう所を気にしてしまう性分でして……」

冠城「しかし…あの娘、あれですよね?今時で言うその、僕っ娘……的な、そういうのですよね?」

いと「………」


冠城の言葉に、いとは何故か表情を曇らせた。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:15:50.68 ID:YOGuTys40
いと「それだけなら、まだ良かったんですがね……」

冠城「え…?」

いと「何でもありません。こちらの事です……」

「ゆずが、もう1人の孫を連れて来るまで居間の方で待っていて下さい」


こうして特命係の2人は居間に案内され、自家製のしそジュースを振る舞われる。
それから少しすると、ショートボブカットの少女が結絃の手で彼らの前に連れて来られる。

彼女こそ、暴行を受けた少年を見つめていた少女だ。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:16:35.33 ID:YOGuTys40
結絃「ほら、これがお姉ちゃんに用事がある刑事さんだよ」

右京「どうも初めまして。特命係の杉下右京です」

冠城「冠城亘です」

少女「…………」


自己紹介をする特命係の2人に対し、
少女は何も喋らず、代わりに両手で何かしらのジェスチャーを見せた。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:17:46.91 ID:YOGuTys40
冠城「?」

結絃「刑事さん、手話分かんないかな?」

冠城「ごめんね…こう言う子とは、筆談でしか会話した事なかったから……」

「ちなみに…何て言ってたの?」

結絃「『始めまして、私の名前は西宮硝子です』だよ」

右京「西宮硝子ちゃんと言うのですか…」

冠城「硝子ちゃんは、喋る事も出来ないんですね」

いと「全く喋れない訳ではありません」

「しかし、生まれ付き耳が不自由だったことが祟って、正しい声の出し方が分からないもので……」

結絃「だからさ、刑事さん達には悪いけど、オレが通訳やるから、お姉ちゃんに何聞きたいのか話してくれない?」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:18:48.20 ID:YOGuTys40
右京「その必要はありませんよ」

結絃「え?」


予想外の答えに結絃はキョトンとする。

そんな彼女をよそに、右京は硝子の前に立ち目線を合わせると、
笑顔を浮かべながら手話で


「僕は特命係の杉下右京。あちらにいるのは、冠城亘君…」

「今日は、君にお話しがあってここに来ました」


と伝える。

極々自然に手話を使う右京の姿に結絃は驚いた。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:19:17.10 ID:YOGuTys40
結絃「す、凄い!刑事さん、手話出来るの?」

右京「彼と違い、いかなる相手ともコミュニケーションを取れるよう、必要最低限のスキルは身に着けているもので……」

冠城「右京さん……今、さり気なく僕の事けなしませんでした?」


と冠城は突っ込んだが、右京は無視して手話で硝子との会話を始める。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:22:58.86 ID:YOGuTys40
右京「硝子ちゃん……今から僕の質問に、正直に答えて下さい。いいですね?」


手話を交えながらの指示に梢子は「分かりました」と手話で伝える。


右京「今日、君の通っている学校でいじめられている男の子を見かけました」

「君は、その男の子の事を心配そうに見ていましたね?」


右京の問い掛けに、硝子は少し表情を濁しながら「はい…」と手話で答えた。


右京「一体彼は何故、あんな事になってしまったのですか?

「彼の事を見ていた君なら、何か事情を知っていますよね?」


更なる質問を掛ける右京。
だが、硝子は複雑そうな表情を浮かべ、手話をやる手が止めてしまう。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:25:20.64 ID:YOGuTys40
誤字がありました…

×手話をやる手が止めてしまう。→〇手話をやる手を止めてしまう。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:25:57.33 ID:YOGuTys40
いと「おや…どうしたんだね?」

硝子「………」


中々その先を話そうとしない硝子。
その様子は、心を痛めているように見える。

一方、右京の手話を見ていた結弦は、何かに気付いたかのように右京にある事を聞く。


結絃「刑事さん……横から悪いけど、そのいじめられていた男の子ってどんな奴だった?」

右京「そうですねぇ…黒く、ボサボサした髪をしていて、少しばかりつり目な印象受けました」

結絃「ボサボサ頭のつり目……」


「もしかして……『石田』かな?」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:26:25.86 ID:YOGuTys40
右京「石田?」

結絃「石田将也……お姉ちゃんをいじめてた野郎さ」

「ひょっとして刑事さん達、お姉ちゃんが学校でいじめられた事、調べてるの?」

右京「はいぃ?」


結絃の言葉に、右京らは疑問の表情を浮かべた。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:27:28.36 ID:YOGuTys40
結絃「違うのか?」

右京「確かに、僕達が調べているのは、あの学校で起こっているいじめの事ですが…」

冠城「僕達は、男の子がいじめられている事実を確認しようと、硝子ちゃんに話を伺いに来ました」

「だから、硝子ちゃんがいじめられていたという話しは、初耳です」

右京「一体、どういう事なのでしょうか?差し障りがなければ、お教え頂けませんか?」

いと「えぇ…」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:27:58.80 ID:YOGuTys40
そう言っていとは、事の経緯を語り始める。


梢子があの学校の6年2組へ転校したのは、今年の4月頃……

その時は、特にこれと言った異変はなかったのだが、6月頃から何かがおかしくなり始めた。
硝子がずぶ濡れで帰ってきたり、筆談用に持たせたノートや靴を紛失したり……
挙句の果てには補聴器の紛失と故障が8回、それに伴って耳を負傷するという事態が発生。
そこで硝子と結絃の母親が、学校側を問い質したのだという。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:30:06.53 ID:YOGuTys40
いと「そこで開かれた生徒会で、石田君が犯人である事が判明したんだそうです……」

右京「そうでしたか…」

冠城「しかしその石田君、どうして硝子ちゃんをいじめたんですかね?」

「8回も補聴器に手を出すなんて、さすがにやり過ぎだと思いますよ」

結絃「決まってんじゃないか。お姉ちゃんが耳悪いから、その事バカにしてたんだよ!」

「オレも、アイツが姉ちゃんの補聴器捨ててるとことか見たし!」


結絃の一言に特命係の2人は、硝子の身に何が起きたのか大体把握できた。

人は、自分と大きく異なるものを見ると、
珍しがってちょっかいを出したり、排除しようとしたりするもの。

要するに、石田は硝子の聴覚障害をネタに彼女をいじめていたのだろう。

そう思う一方で、右京の脳内に『ある疑問』が渦を巻き始める……
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:31:02.30 ID:YOGuTys40
いと「ゆず……落ち着きなさい。その事はもう終わったんだから………」

結絃「け、けど……」

冠城「終わったって?」


結絃をたしなめるいとの一言に、疑問を呈する冠城。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:31:28.41 ID:YOGuTys40
???「ただいま」


その時であった。1人の女性が部屋にこの家に入ってきたのである。
彼女こそ、梢子と結絃の母親である『西宮八重子』だ。


結絃「……!」

いと「おや八重子、今日は随分と早かったねぇ」

八重子「今日は色々とあってね…あら?あなた達は?」

右京「どうも…警視庁特命係の杉下です」

冠城「冠城です…諸々の事情があって、お邪魔させてもらっています」

八重子「ふーん……?」


特命係に対して無関心そうに振舞う八重子であったが、硝子がこの場にいる姿を見て顔色を変える。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:33:39.45 ID:YOGuTys40
八重子「硝子!アンタ、宿題は終わったの?」

硝子「あ……ぅ………」

八重子「その様子だとまだなようね。さっさと部屋に戻りなさい!」

冠城「あ…あの、奥様?僕達、彼女に用事がありましてね……」

八重子「うるさいわね!アンタ達には関係ないことよ!」

結絃「ちょっと母さん!この刑事さんの話しも聞いてやりなよ!」

八重子「アンタもうるさいわね!」

「大体、何で警察がウチに上がってるのよ?ウチは、何もやましい事やってないわよ!」

「ほら硝子!部屋に戻りなさい!」


そう怒鳴り散らした末、八重子は硝子を無理矢理自室に引っ張っていった。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:34:31.83 ID:YOGuTys40
結絃「クソ!アイツめ……!」

いと「これ、ゆず……」

「刑事さん、娘の八重子が不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません……」

冠城「いやいやいや!不快だなんてとんでもない!」

右京「いきなり上がり込んだのは、事実ですからねぇ…早々に退散させてもらいます」

「硝子ちゃんも、少しばかり話すのを躊躇っている様子でしたし、無理強いは出来ません」

「また、日を改めてお伺いします……」

いと「え、えぇ…」


こうして、申し訳なさそうないとを背に、特命係の2人は西宮宅を後にする。

その後、いとは心配そうに……

結絃は恨めしそうに……

それぞれ違う表情で、母親に無理やり連れていかれた
硝子の部屋の扉を無言で見つめるしかなかった。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:38:39.60 ID:YOGuTys40
―水門市内―


冠城「まさか、あなたに手話の心得まであったとは驚きです」

「あなたの事ですから、耳の不自由な人間が関わった件がいくつかあってもおかしくないとは、思っていましたが……」

「その手の方と直接会話する術を、きちんと持っていたんですね?」

右京「かくいう君は元はキャリア官僚だったんですから、手話のひとつくらいは出来なくてはならないと思うんですがねぇ……」

冠城「申し訳ありませんね。あなたと違い、幽霊やプリキュアに関心を持てる程の多趣味性がないものでして……」

右京「冠城君……前者はともかく、後者はあの時の捜査に必要だったから調べただけであって、大して興味があった訳ではありませんよ」

冠城「大して興味がないのなら、シールになっている人物が何のアニメのキャラクターなのか特定するのに、結構時間が掛かるはずです」

「しかし、俺の記憶が正しければ、あなたは写真に映ったあのシールを見てから」

「あのキャラクターがプリキュアである事を特定するのに、あまり時間が掛からなかったような気がするんですが……」

「そこのところ、どうなんです?」

右京「…………」


冠城の問いに、右京は何も答えなかった。

黙秘を実行した上司に、冠城は先程けなされた仕返しが出来たような気分になるが、
「まあ、その事はともかく……」と言って気持ちを切り替える。
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:40:45.45 ID:YOGuTys40
冠城「右京さんはどう思いました?硝子ちゃん達のお母様の態度……」

「確かに唐突に上がり込んだのは俺達だし、2人の刑事2人がいきなり上がって来たと知ったら」

「最初のお婆様みたく自分達が疑われてるんじゃないかと勘ぐってしまうのは、まあ分かりますが……」

「だからといって、あんなに言うことないと思いませんか?」

右京「確かにあまりにも辛辣ではないかと、僕も思います。ただ……」

冠城「ただ?」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:41:15.03 ID:YOGuTys40
右京「あのお母様からは、何かしらの『意思』を感じました」

冠城「意思ですか?」

右京「ご本人は、厳しい顔のままでいるつもりだったようですが、僕には彼女の目から強い意思が宿っているように見えました」

「それが何なのか、現段階では見当が付きませんが、障害を持つお子様がいらっしゃる家庭です。何か複雑な事情があってもおかしくはない……」

冠城「ああいう家庭は、デリケートな面が多いですしね」

「ただ、それなら何で硝子ちゃんは、あの学校に通ってるんでしょう?」

「あの水門小って学校、見た感じ普通の学校ですよね?」

右京「その点も気になりますが、今重要なのはそちらではありません」

冠城「あの少年の事ですね」


冠城の言葉に右京は「えぇ…」と答えると、こう続ける。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:44:53.76 ID:YOGuTys40
右京「この一連の調べで、あの子の身に起きた出来事の背景が少しずつ見えてきました」

「結絃ちゃんの話しが正しければ、あの少年の名前は石田将也……当初彼は、西宮硝子ちゃんをいじめていた」

「最初はただちょっかいを出しているだけだったのか、それとも始めからいじめに相当する行為だったのか……」

「いずれにせよ、石田君は硝子ちゃんが難聴である事を理由に嫌がらせを行った」

「その行為が積みに積み重なり、とうとう彼女の補聴器を8度に渡って故障・紛失させ、その上耳を負傷させる事態にまで発展させてしまった」

「恐らく、昼間彼の担任と思われる方が言っていたのは、この事を指していたのでしょうねぇ……」

冠城「この事から石田君は硝子ちゃんをいじめた事で、クラス内から報復を受けている可能性が高い。」

「となると、あれは石田君の自業自得と言う事になりますが……」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:47:01.88 ID:YOGuTys40
右京「そうだった所で、あのようなやり方が許されると思いますか?」

「それに、今日我々が知ったのは、硝子ちゃんと石田君がいじめを受けていたと言う大まかな事実だけ……」

「詳しい状況を把握した訳ではありません」

「硝子ちゃんいじめの報復と断定するのは、あまりにも早過ぎる」

冠城「俺達、まだ石田君本人に話を聞いていませんしね」

「それに、『もう終わった』という西宮さん達の言葉も気になるし……」

「……ん?」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:48:11.87 ID:YOGuTys40
その時であった。噂をすれば何とやらか、向こうの道を昼間見た少年……
即ち、石田将也がトボトボ歩いている姿を特命係の2人は発見する。

昼間の暴行の跡である、顔の絆創膏が相変わらず痛々しい。

そんな印象を彼らが抱いていると、石田は一件の店に入っていく。

それは『HAIR MAKE ISHIDA』と書かれた看板がある床屋であった。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:48:56.37 ID:YOGuTys40
冠城「HAIR MAKE ISHIDA(ヘアメイクイシダ)……」

右京「恐らく、ここが彼の自宅でしょう。そして、看板にイシダとあると言う事は……」

冠城「やはり、彼が石田将也君で間違いない…」

右京「…冠城君」

冠城「何ですか?」

右京「至急、今夜泊まる宿を探して下さい」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:50:25.60 ID:YOGuTys40

「東京に帰るのは、まだ少し先になりそうです」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:53:14.44 ID:YOGuTys40

冠城「了解……」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:55:42.03 ID:YOGuTys40
1日目(第1話)はここまでになります。
次回は、石田周りを攻めて行きます。

以下は補足


その1.伍堂圭三。

本作のオリジナルキャラクターです。名前の元ネタは特にありません。
当初は伍堂啓介にする予定でしたが、広瀬啓介と被るので現在の名前に変更したという経緯があります。
ちなみに彼、今後もストーリーに絡んできますのでお忘れなく。

その2.水門小学校の校長。

聲の形公式のキャラクターですが、原作アニメでは名無しの権兵衛でした。
当SSでは、名前が無いと少し不便かなと思い、勝手に名前を追加させてもらいました……
ちなみに、水田門木と言う名前にこれと言った元ネタは無く、
水門小学校の水門の響きから適当に着想したものです。

それと、右京さんが手話できるのはシーズン5元日スペシャルで披露された公式設定です。
また、聲の形側の月数はネットで調べた考察を参考にしているので、
原作と違うかもしれません事をご了承ください……
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/21(月) 17:56:16.26 ID:YOGuTys40
とりあえず、今日の更新は以上です。
今後、不定期に更新していく予定でございます。

初投稿ゆえに色々と不慣れなところがありますが、どうぞよろしくお願いします…
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/21(月) 19:17:10.46 ID:Mny47cvFO
乙。別の人が同じネタを使っていたけどどう変わっていくのか気になりますね。
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/27(日) 11:51:51.01 ID:1GsLvrze0
>>59
遅ればせながら……

問題はそこなんですよね……
一応、冠城時代設定にするなど差別化は図ってはいるのですが、ちゃんと出来ているかどうか……

とはいえ、既に一通り書き溜めてあるし、一度投下しちゃった以上、最後までやらせて頂く所存ではあります。
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/27(日) 11:53:22.33 ID:1GsLvrze0
改めて見てみると細かいミスが……

>>23

×冠城「けど…何であの娘、ベルの音に気付かなかったんでしょうか? → 冠城「けど…何であの娘、ベルの音に気付かなかったんでしょうか?あれだけ鳴らされたら、普通誰だって気が付くのに……」
あれだけ鳴らされたら、普通誰だって気が付くのに……」

>>51

×冠城「この事から石田君は硝子ちゃんをいじめた事で、クラス内から報復を受けている可能性が高い。」→ 冠城「この事から石田君は硝子ちゃんをいじめた事で、クラス内から報復を受けている可能性が高い」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 11:56:05.69 ID:1GsLvrze0
そして、続きです。

今回不快な話が出てくるので、苦手な方はご注意を……
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 11:56:44.37 ID:1GsLvrze0
相棒×聲の形 〜2日目〜


翌日の朝……

西宮宅では硝子は朝食を終え、服を着替えて学校に行く時間になっていた。


硝子「………」


だが、硝子は1人気乗りしない表情を浮かべている。
そんな彼女が自身の脳裏に浮かべているのは、昨日いじめられたり、
教師に突き放されたりしていた石田の姿……

そして、その事を調べに来た右京の顔であった。


八重子「硝子!学校に行く準備は出来たの?!」


それを遮らんと言わんばかりに、怒鳴るような声と共に八重子が姿を現す。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 11:57:13.85 ID:1GsLvrze0
八重子「もう出来てるじゃないの!早く行きなさい、遅刻するわよ!」

硝子「………」

八重子「何よその顔は!あの事はもう終わったのよ?」

「そんな顔をしてると、またあのクソガキに舐められるわよ!」


娘の表情に苛立つような表情を浮かべる八重子は、彼女の腕を無理矢理引っ張り、玄関へ連れて行く。
それを結絃は見逃さない。


結絃「母さん!ちょっとは優しくしてやれよ!」

八重子「うるさいわね。ほら!行きなさい硝子!」


反論しようとする結絃を無視して、八重子は硝子を押す。
八重子の強い押しに硝子は素直に従うしかなく、学校へと出掛けて行った。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 11:57:40.01 ID:1GsLvrze0
八重子「さて…私も早く仕事に行かなくちゃね」

「母さん!私がいない間結絃を甘やかさないで頂戴」

結絃「ちょっと…婆ちゃんはオレらのこと甘やかしてなんか……」


バタン!

だが、結絃の言葉を無視して、八重子も仕事に出て行ってしまった。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 11:58:52.22 ID:1GsLvrze0
結絃「またシカトかよ!」

いと「ゆずや、仕方ないよ……」

「それに、石田君の事ももう終わったんだから………」

結絃「石田の事……か」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:00:11.58 ID:1GsLvrze0
いと「……どうしたんだい?」

結絃「いや、昨日の刑事さんの言ってた事が少し気になってさ」

いと「石田君がいじめられている……確かそんな事言ってたねぇ」

結絃「アイツがいじめられようが、知った事じゃないけどさ…」

「『何でそれを、刑事さんが調べてるんだろ?』って思って……」

「しかも、姉ちゃんがそれを見てたっていうし……」

「一体、何が起きてるっていうんだ?」

いと「…………」

結絃「とにかく、学校が終わったら姉ちゃんに聞いてみるよ」

いと「そうね……そうするのが一番かもね………」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:00:39.65 ID:1GsLvrze0
―石田宅―


石田「母ちゃん…俺、行ってくるから」


一方、石田もまた学校へ登校しに行く所であった。


美也子「行ってらっしゃい……ショーちゃん」


そんな彼を、母親の『石田美也子』は見送る。

しかし、玄関を出る石田の後ろ姿は、とても暗く映った。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:03:27.04 ID:1GsLvrze0
美也子「…………」


何故彼は、あんなに暗いのだろうか?

そう言えば昨日、傷だらけで学校から帰ってきた。

いや、昨日だけではない。

本人は、また学校ではしゃぎ過ぎたといっていたが……

その割には、あまりにも傷の具合が酷過ぎる。


美也子(やっぱり……あの子………)
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:04:01.04 ID:1GsLvrze0
いじめられているのか?

そう考え、美也子は首を横に振った。

もし仮にそうであったとして、自分に何が出来る?
彼が硝子をいじめたのは紛れもない事実……

いじめの加害者の母親の自分がいくら言った所で、
よその子をいじめた母親が何を言うのかと断じられるのは目に見えている。


美也子「ショーちゃん……」


それでも彼女は、これ以上何もしてあげられない自分に、歯がゆさを感じた。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:06:22.77 ID:1GsLvrze0
―水門小への通学路―


小学校低学年・高学年が自身の母校へと向かう道。

その途中で、石田と硝子が出くわした。


石田「あ…」

硝子「…………」


目が合ってしまう2人……

石田はとても複雑そうにしている一方、硝子は彼の顔をジッと見ている。
彼の顔には、未だに昨日の傷の手当てをした跡である、絆創膏が貼られてある。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:06:51.50 ID:1GsLvrze0
石田「な…なんだよ?」

硝子「…………」

石田「なに人の顔ジロジロ見てんだよ!」

硝子「……………」

石田「あぁ…そういやお前、耳聞こえなかったんだっけ?それでいて、凄く音痴で……」

硝子「……………」

石田「大体、俺がこうなったのは全部お前のせいだ!お前なんか来なかったら…!」


まるで、今の自分の状況に対する苛立ちをぶつけるかのように言い放つ石田。
しかし硝子は、表情を崩さず彼を見続けている。

そんな彼女に、石田は余計苛立ちを募らせた。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:07:22.20 ID:1GsLvrze0
石田「ンな顔されても分かんねぇよ!なんか言いたきゃはっきり言えよ!このぉ!」


当たり散らすように硝子を軽く押し飛ばすと、石田はさっさと先に行ってしまう。
それでも梢子は、怒らずに彼の後ろ姿をジッと見つめていた……
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:07:57.56 ID:1GsLvrze0
―旅館の前―


冠城「さあて…右京さん、今日は何処から行きますか?」


そう言いながら旅館から出て来つつ、「やっぱり、石田君のお宅ですか?」と冠城は隣を歩く上司に尋ねた。


右京「そうするつもりですが、今日は別行動と行きましょう」

冠城「別行動ですか。それは面白い……」

右京「…………」


面白がっている様に振る舞う冠城に対し、右京は冷ややかな目を向けた。


冠城「冗談です!だから、何をすればいいか教えてくれません?」

右京「………それはですね」


右京は、冠城に何をして欲しいのかを説明した。
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:09:40.82 ID:1GsLvrze0
冠城「分かりました。出来る限りやってみましょう」

右京「お願いします。僕は、石田君のお宅を当たります」


こうして、2人はそれぞれ別の場所へと向かって行った。
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 12:13:35.97 ID:1GsLvrze0
一旦切ります。何とか今日中には終わらせたいです
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:13:20.56 ID:1GsLvrze0
―HAIR MAKE ISHIDA―


店内には客がおらずガラガラであった。

石田の硝子いじめが発覚して以来、こんな調子なのだ。

あんな出来事が起きたのだ、何処からか噂が流れて石田家に不信感を抱かれてもおかしくない……


???「お邪魔します」


だがその時、誰かが店に入って来る。


美也子「いらっしゃいませ…」


美也子が店の出入り口に目を向けると、そこには眼鏡とスーツ姿の男が1人……

言うまでもなく、特命係の杉下右京だ。

右京は、「どうも初めまして。こういう者です……」と言いながら警察手帳を見せた。
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:14:30.44 ID:1GsLvrze0
美也子「警察?」

右京「東京の警視庁にある特命係から来ました、杉下右京です」

「あなたが、石田将也君のお母様ですか?」

美也子「は、はい。母の石田美也子ですが………」

右京「少々お話があります。お時間頂いても、よろしいですか?」

美也子「…………」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:15:55.70 ID:1GsLvrze0

「はい、構いません……」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:16:44.17 ID:1GsLvrze0
警察がウチに来た……

この事実に、美也子はある確信を抱き、右京を自宅の居間に案内した。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:19:14.94 ID:1GsLvrze0
―石田家の居間―


右京「本当にいきなり押し掛けて、申し訳ありませんねぇ……」

美也子「そんな事ありません。最近めっきりお客様が減ってしまって、暇でしたから…」


最近、客が減っている……


何故、そうなっているのかについて、右京はあえて言及しなかった。
石田の硝子いじめが関連している事は、今までの調べで明らかであったからだ。

一方、美也子は恐る恐るこう尋ねた。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:20:31.54 ID:1GsLvrze0
美也子「ところで、刑事さん……お話と言うのはもしかして、息子の……」

「ショーちゃ…じゃなくて、将也のことで来たのでは……?」

右京「そんな所です」

美也子「じゃあ目的は……」

右京「彼が、西宮硝子ちゃんに対して行ったいじめについて、詳しい話を伺いに……」


右京の一言に、美也子の表情が一気に重苦しくなる。

それだけ、息子の所業を憂いているという事なのだろう。

息子が硝子をいじめた事実に対する
強い責任と自任の念を美也子から感じつつ、右京は話しを続ける。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:21:07.63 ID:1GsLvrze0
右京「ご察しであると思いますが、我々はとある事情から息子さんのした事を調べました」

「結果、西宮硝子ちゃんの事をいじめていた事実が判明した……」

「しかし、動機の面が未だ不透明でありましてねぇ……」

「硝子ちゃんの妹さんは、硝子ちゃんの難聴の事を馬鹿にしていたのではないかと仰っていましたが……」

「実際のところ、どうなのでしょう?」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:22:32.24 ID:1GsLvrze0
美也子「…多分、その娘の言う通りだと思います」

「ショーちゃんは、友達とつるんで度胸試しとか言って河に飛び込んだり、自分より体の大きい人に喧嘩を売ったり……」

「親の私が言うのも何ですが、やんちゃ過ぎる悪ガキでした」

右京「随分と無茶をなさっていたのですねぇ……」

「しかし、止めなかったんですか?」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:24:33.34 ID:1GsLvrze0
美也子「…………」

「はい……」

「数年前に夫が出て行って以来、1人で店を切り盛りしていて忙しかったですし……」

「何より、変に叱るより、好きにさせておいた方がいいと思っていました」

「一番上の娘も、しょっちゅう恋人をとっかえひっかえに連れて来てたので」

「尚更、子供達は自由にしておくべきだと……」

「けど、それがこんな事になってしまうなんて……」

右京「普段からやんちゃが過ぎていたという事は、硝子ちゃんへのいじめもそれの延長線上のようなものだったと?」

美也子「恐らくは…………」

「それに、今年に入ってから、お友達の子とつるむ事がなくなってきたので、それも関係しているのかもしれません」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:25:04.63 ID:1GsLvrze0
右京「………」

「ところで、息子さんが硝子ちゃんをいじめた事で、学校から他に何か聞いていませんか?」

美也子「いいえ…将也が西宮さんのお子さんをいじめていたこと以外、なにも……」


彼女のその言葉に、右京は「なるほど……そうですか」と納得してみせる。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:26:41.40 ID:1GsLvrze0
美也子「あの…聞きたいのは、それだけですか?」

右京「えぇ……何か?」

美也子「…せっかくお伺いしてくれた所、こんな事を言うのは申し訳ありませんが……」

「出来るなら、もう息子の事で来ないで欲しいんです……」

右京「…………」

「…息子さんの事で色々とお辛い事はご察しします」

「しかし、警察としてこの問題に目を瞑る訳には……」

美也子「違うんです」


これ以上、石田の事で責められるのが
嫌なのだろうと思って言った右京であったが、美也子はそれを否定した。
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:27:57.81 ID:1GsLvrze0
右京「違う?それは、どういう事で……?」

美也子「………」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:28:23.80 ID:1GsLvrze0


「実は…………」

90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:29:08.13 ID:1GsLvrze0
―水門小学校―


6年2組の教室では、いつも通りの授業が行われ、いつも通りの時間が過ぎていた。

ただ1人、石田を除いては……
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:29:37.42 ID:1GsLvrze0
石田「……………」


昨日特命係の2人に見付かった事があったのか、向こうがそう言う気分なのかは不明だが、
今日は肉体的苦痛を与えるようないじめは行われはしなかった。

だがその代わり、誰からも無視され、一部の生徒からはケラケラと笑われている……
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:30:17.64 ID:1GsLvrze0
石田「ん…?」


その時であった。石田は自分の席に目を向けると、そこには梢子がいた。
一体彼女は何をしているのかと言うと、彼の机を雑巾がけをしている。

本来ならば、自分の机を誰かが掃除してくれる事は喜ばしい事であるはずなのだが、
相手がよりによって自分がいじめた相手……

石田は、それが不愉快に感じた。
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:31:04.35 ID:1GsLvrze0
石田「おい!何勝手に人様机拭いてんだよ!あっち行け!」

硝子「あ……」


彼は怒鳴りながら梢子を机から突き放すと、もう手を出されまいと言わんばかりに席に腰掛ける。
それでも硝子は心配そうな目を向けるが、「何見てんだよ?さっさと行けよ!」と結局突き放されてしまう。

耳がはっきりと聞こえないとは言え、彼の様子からそう言われていると察したのだろう、
硝子はシュンとしながら彼の席から離れるしかなかった。
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:32:18.47 ID:1GsLvrze0
石田(たく…何なんだよ!)


そう言えば、この前も勝手に机の中を漁っていた事もあったっけ……?

と、硝子の行動を思い出したが、今の状況の事で頭が一杯な石田は、
その理由まで考える余裕はなかったのであった……
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:33:57.92 ID:1GsLvrze0
その頃、校長室ではある男が水田校長に呼び出されていた。
石田がいる6年2組の担任教師である。


担任「校長…いきなり呼び出して、何でしょうか?」

水田校長「竹内君。実は昨日、警察の方が私のとこに来てね……」


校長の問いに、『竹内』と呼ばれた6年2組の担任は「警察が?」と少しばかり驚く。


竹内「一体、何の用で来たんで?」

水田校長「…………」

「『この学校の生徒が、暴力を振るわれている現場を見た』と……」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:35:00.48 ID:1GsLvrze0
竹内「……………」

水田校長「一応、喧嘩と言う事にはしておいたんだが……」

竹内「…………」

「あなたが喧嘩だと思っていらっしゃるのなら、そうなのでは?」

水田校長「んーまあ…そうだと思いたいんだが……」

「向こうは『いじめか何かがあったのではないか?』と疑っているみたいでね」

竹内「それに対しては、何と答えたんです?」

水田校長「『特に何もなかった』と……」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:36:01.65 ID:1GsLvrze0
竹内「……………」

「だったら、問題ないじゃないですか」

「西宮いじめの犯人は石田……そういう事で話しは付いたはずです」

「あれ以来、私のクラスも平和です。今更聞くような事じゃないでしょう?」

水田校長「それも、そうだな……」

「すまんね……西宮君のいじめ問題があったばかりだから、少し心配になって………」

竹内「本当に、要らない心配ですね」


呆れた風に返すと、竹内は「では、業務に戻らせてもらいます」と言って退室する。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:37:34.28 ID:1GsLvrze0
竹内「ふぅ…………」


そして、校長室の外で安堵するかのように息を吐いた。
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 15:39:56.24 ID:1GsLvrze0
―放課後―


石田はいじめられる前にさっさと家に帰ろうと、足早に学校を出ようと歩いていた。


???「おい…!」


だが、正門を出た辺りで、彼は後ろから誰かに呼び止められる。
その声に石田は反射的に反応し、振り返ってしまう。


???「お前……さっさと帰って逃げようとか思ってるんじゃねぇよな?」


振り返った先には、昨日自分に暴力を振るっていた2人の少年……

名前は、『島田一旗』と『広瀬啓祐』
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