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花丸「恋の魔力」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/08(火) 20:25:36.05 ID:sLn23MpL0
人を好きになるきっかけって何だろう。
運命的な体験? 日常の中の積み重ね?
たぶん十人十色、決まった形なんてなく、唐突に訪れる。
だけど全員に共通することもある。
好きになると皆、恋という魔法にかけられるんだ
それは素敵な魔法。
世界の全てがキラキラと輝いて見える、とても素敵な。
だけど徐々に、恋は姿を変えていく。
その強力すぎる魔力は、人を盲目的にして、狂わせるようになり、互いに傷つき、傷つけられる。
でも深みにはまり、苦しみを味わっても、それからは誰も逃れられない。
だって、恋は一度味わうと抜け出せない、麻薬のような物だから、
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1525778735
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 20:29:04.29 ID:sLn23MpL0
※
善子「はぁ、やっと落ち着けたわね」
放課後、マルたち一年生しかいない部室。
今日の練習は休みだけど、涼みたくてやってきたのだ。
ルビィ「お疲れだねぇ」
善子「ルビィは元気そうね」
ルビィ「がんばルビィしてるからね!」
善子「なにそれ、意味が分からないわ」
ルビィ「善子ちゃんの堕天使よりはマシだよぉ」
善子「マシって何よ! あとヨハネ!」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 20:31:35.53 ID:sLn23MpL0
じゃれ合うルビィちゃんと善子ちゃん。
最初はぎこちなかった二人も、最近はすっかり仲良しさん。
微笑ましい光景を眺めてながら、ゆっくりと本を読むこの時間はとても楽しい。
ルビィ「この後はどうする?」
善子「今日は暑いし、アイスでも食べに行くのはどうかしら」
ルビィ「うーん、それよりもかき氷屋さんに行こうよ。ちょうど今の季節は空いてるよ」
善子「あー、いいわね」
ルビィ「マルちゃんも行くよね」
花丸「うん、もちろん」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/08(火) 20:33:13.33 ID:sLn23MpL0
善子「じゃあさっさと行きましょう、早くしないとバスが出ちゃうわ!」
ルビィ「ま、待ってよ、善子ちゃん」
花丸「ルビィちゃん、走ると転んじゃうよ〜」
かき氷、何味がいいかな。
やっぱりここは定番のいちご?
でも善子ちゃんもいちごだろうし、他のにしたら交換できるかも。
それならやっぱりみかん――は善子ちゃんが嫌いだ。
あっ、ルビィちゃんを経由して三人で交換っこする手もある。
まあその辺も話し合いながら行けばいいかな。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 20:35:20.50 ID:sLn23MpL0
善子「あれ」
そんな風に考えながら歩いていたんだけど、中庭の辺りで善子ちゃんが突然足を止める。
ルビィ「どうしたの?」
善子「ねえ、あそこにいるのって曜じゃない」
善子ちゃんが指さす方向には、確かに見覚えのある灰色の癖毛の先輩の姿。
花丸「本当だ。よく気づいたね、善子ちゃん」
ルビィ「ま、マルちゃん、それに横にいるの」
花丸「あれは、クラスメイトの」
何やら妙に距離が近い二人。
その姿は、まるで恋人みたいで――
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 20:39:55.32 ID:sLn23MpL0
花丸「あっ」
そして気づけば。自然と唇を重ね合わせていた。
ルビィ「ピギィ!」
善子「あ、あの二人、キスしたわよ!」
花丸「み、未来ずら……」
三者三様、でもみんな顔を真っ赤にしながら、視線は二人に釘付けに。
善子「す、凄いわね、なんか」
ルビィ「うゅ……」
目の前で繰り広げられる愛の語らいは、初心なマルたちには刺激が強すぎる。
でも初めて生で見るそれに夢中になり、目を離すことができない
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 20:43:02.37 ID:sLn23MpL0
ルビィ「って善子ちゃん、バスの時間!」
善子「ああ!」
ルビィちゃんの声で正気に戻ると、既に結構な時間が経っている。
善子「ヤバい、今度こそ走るわよ!」
ルビィ「がんばルビィ!」
花丸「ちょ、ちょっと待って〜」
―――
――
善子「でもびっくりしたわね」
ルビィ「まさかあんな場面に遭遇するなんて予想外だよぉ」
問題の場面の話で、キャッキャッとはしゃぐ二人。
最初は恥ずかしがっていたけど、そこは女子高生、切り替えは早いみたい。
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 20:46:56.09 ID:sLn23MpL0
善子「でも曜さんに恋人がいたなんて」
ルビィ「しかも何か慣れてる感じだったよ」
花丸「流石曜ちゃん、大人だよねぇ」
学校の人気者は伊達じゃないってことかな。
善子「ちょっと意外だったけどね」
善子「あの人、千歌さん一筋のイメージがあったし」
ルビィ「うゅ、複雑なのも大人の恋愛の一部なんだよ」
善子「面倒くさいわねぇ、恋愛って」
ルビィ「ルビィたちにはまだ早いかなぁ」
善子「そうねぇ」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:00:59.37 ID:sLn23MpL0
恋愛、か。
マルは小説が大好きだから、物語の中の恋愛にはたくさん接してきた。
ただ純粋な愛から、歪んだ愛まで、ある意味色んな愛を知ってる。
小説家って変わった人が多いから、意外と純愛みたいな話は少ないんだよね。
どこか歪で、暗くて、でもそれが美しい。
だからそういう恋愛の方が馴染みはあるかも、なんて。
花丸「ねえ、善子ちゃんは好きな人とかいる?」
善子「な、なによ急に」
露骨に動揺してみせる善子ちゃん。
この反応は、もしかしたら。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:04:39.78 ID:sLn23MpL0
花丸「あー、さてはいるんだね」
善子「いや、それはその」
ルビィ「えっ、善子ちゃん好きな人いるの!」
善子「そんなわけないでしょ、堕天使に好きな人なんて――」
ルビィ「あっ、もしかして梨子ちゃんじゃない?」
善子「!」
花丸「ルビィちゃん、この反応は当たりみたいだよ」
ルビィ「やっぱり! 善子ちゃんと梨子ちゃん仲良しさんだもんね!」
予想が当たって嬉しそうなルビィちゃん。
無邪気な姿、可愛いな。
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:06:50.68 ID:sLn23MpL0
善子「……そうよ、私が好きなのはリリーよ」
流石に流れが悪いと感じたのか、善子ちゃんもあっさりと認める。
ルビィ「いつから? いつから好きになったの?」
善子「ちょ、落ち着きなさいよ」
ルビィ「わかったから、早くはやく」
善子「え、えっと、あれはね――」
グイグイと迫るルビィちゃんに押されて、言わなくてもいいことまで喋り始める善子ちゃん。
2人とも、ある意味らしいというか。
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:08:58.12 ID:sLn23MpL0
でもみんな、平然と女の子が好きなのは、女子高って環境だから?
この辺は男の子も少ないし、あんまり異性を意識する機会はないもんね。
実際マルも、恋愛の相手をイメージするとしたら女の子になるかも。
うーん、どんな人がいいかな。
ぼんやりして頼りないマルを引っ張ってくれる格好いい王子様みたいな人とか素敵かも。
それで物語の登場人物みたいに、どこか脆く、傷つきやすい儚さを持ってたりして――
ルビィ「マルちゃん?」
花丸「――あ、ごめん」
しまった、想像の世界に入り込んじゃった。
マルの悪い癖だなぁ、こういうの。
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:11:28.46 ID:sLn23MpL0
善子「そういうあんたたちはどうなの、好きな人とか」
ルビィ「ピギッ」
花丸「ずら?」
善子「私に喋らせたんだから、あんた達も話しなさいよ」
まあごもっとも。
ルビィ「えっと、ルビィはね、内緒かな」
善子「いや、それは卑怯でしょ」
ルビィ「マルちゃんは?」
善子「聞きなさいよ!」
花丸「うーん……、マルも内緒」
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:17:36.11 ID:sLn23MpL0
好きな人、特にいないから話しようはないし。
ルビィ「ありゃ、マルちゃんも内緒なんだ」
花丸「うん、内緒仲間だよ〜」
ちょっと残念そうなルビィちゃん。
やっぱり仲良しの友達の好きな相手は気になるのかな。
実際、マルもルビィちゃんの意中の相手は気になったもんね。
善子「ちょっとあんた達ね〜」
花丸「あはは、マルとルビィちゃんは内緒同盟だから」
ルビィ「むしろ異端なのは善子ちゃんの方だよ」
善子「くぅ、これだから人間風情は」
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:20:35.19 ID:sLn23MpL0
花丸「まあ代わりに、善子ちゃんの恋愛を応援してあげるよ」
善子「え、本当に?」
花丸「ね、ルビィちゃん」
ルビィ「うん、ルビィも2人には上手くいってほしいし」
善子「あ、ありがとう、2人とも」
実際、梨子さんと善子ちゃんは相性がいいと思うから。
友達には幸せになってほしいもんね。
ルビィ「じゃあ早速、告白の計画だよ!」
善子「って待ちなさいよ、流石にそれは早い――」
ルビィ「どんなシチュエーションがいいかなぁ」
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:23:29.37 ID:sLn23MpL0
善子「ちょっと待って、もっと段階を踏んでからでもいいでしょ」
ルビィ「駄目だよ、恋愛はスピード勝負、早い者勝ちの世界だよ」
善子「経験もないのに偉そうに語らないでよ!」
大きな声で照れ隠しをする善子ちゃん。
その姿はとても可愛いし、話しているルビィちゃんも楽しそう。
現実の恋愛は小説とは違って素敵なものなんだね、やっぱり。
マルもいつか、好きな相手ができるのかな。
相手はどんな人なんだろう、どんな恋をするんだろう。
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:25:14.91 ID:sLn23MpL0
ルビィ「マルちゃんはどんな告白がいいと思う?」
花丸「そうだねぇ、夜の海岸で『この堕天使ヨハネと恒久的な契約を結びなさい!』って言うのはどうかな」
ルビィ「あはは、その台詞で色々台無し――」
善子「いいわね、それ」
ルビまる「「ええっ!?」」
善子「でももう少し堕天使っぽさを出すために――」
まあいっか。
今はこうやって友達と楽しく過ごせれば。
ルビィちゃんと一緒に善子ちゃんをからかいながらも助けてあげて、どんな人がいいかな何て理想を語り合って、現実的じゃない想像をして。
きっとそれぐらいが、マルにはちょうどいいんだろうな。
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:27:05.52 ID:sLn23MpL0
※
ダイヤ「ルビィ、そこ遅れてますわよ!」
ルビィ「あっ、ごめんなさい」
ダイヤ「そうそう、そんな感じですわ」
千歌「こうやって――こうかな?」
梨子「違うわよ、千歌ちゃん……」
鞠莉「そうそう、そこはもっと派手に――」
果南「鞠莉、それも違うから」
屋上から響く声。
Aqoursのみんながちょうど練習中。
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:30:05.46 ID:sLn23MpL0
大会も迫ってきてるし、みんな気合いは入ってる。
でも今日のマルは図書委員の仕事。
他にやる人もほとんどいないから、たまにはお手伝いしないといけないから。
でもちょうど読書ができる時間もできて、ちょっと得した気分。
花丸「ふわぁ……」
外は暑いけど、冷房がしっかり整備されている図書室は快適で、少しずつ眠気を誘う。
わざわざ放課後にここに来る人なんて珍しいけど、流石に寝たらマズい。
でも最近、練習がハードで疲れてる。ちょっとぐらい休んでもいいかな。
花丸「……」
本を閉じて目を閉じると、何だかとてもいい気分。
ああ、このまま本当に眠っちゃいそう――
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:34:37.33 ID:sLn23MpL0
??「すいませーん」
花丸「は、はい!」
落ちそうなところで響いた声に急いで目を開けてると、目の前に迫る制服。
曜「お、起きたね」
花丸「よ、曜ちゃん?」
そこには灰色の癖毛、曜ちゃんの姿。
練習中のはずなのに、何で図書室に?
曜「今サボって寝てたでしょ〜」
花丸「そ、そんなこと、ないよ」
曜「でもよだれ垂れてるよ」
花丸「えっ」
指摘されて口元に触れると、そこには確かに水っぽさが。
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:37:12.21 ID:sLn23MpL0
曜「あはは、隠さなくてもいいよ」
花丸「は、恥ずかしい……」
曜「大丈夫だよ、可愛いから」
そう言いながらハンカチで口元を拭ってくれる。
花丸「あ、ありがとう」
曜「うん、どういたしまして」
流石、動きにそつがない。
これだからモテるのかな。
マルだったらきっと指摘することさえできないもの。
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:39:22.94 ID:sLn23MpL0
花丸「ところで曜ちゃん、練習はどうしたの?」
曜「あー、一応水泳部の方に顔出しててさ」
花丸「あ、そっか」
曜ちゃんは水泳部との兼部だったっけ。
よく見るとちょっと髪が湿っぽい感じがするし。
曜「それでね、早めに切り上げてAqoursの方に行こうと思ったんだけど、何か気が乗らなくて」
花丸「つまり、サボり?」
曜「そうそう、花丸ちゃんと同じサボり仲間」
少しバツ悪そうな、でも爽やかな笑顔。
その表情に、思わずドキッとしてしまう。
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:41:31.23 ID:sLn23MpL0
ああ、これは恋人の1人や2人いるわけだ。
整った顔、中性的な声、きっと男装したら王子様のように見えると思う。
こんな人に迫られたら、あっさりと落ちちゃうよね、きっと。
曜「花丸ちゃんは練習行かないの?」
花丸「今日は最後まで図書委員の仕事があるから」
曜「仕事? この図書室を使う生徒っているの?」
花丸「えっと……」
何とも言い返しにくい。
実際、今日は本当に人が来ていないから。
部活でもない限り、学校に残ってる人なんていないだろうし。
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:44:57.68 ID:sLn23MpL0
曜「ほら、やっぱりいないんでしょ」
花丸「そうだけど、流石にここを離れるわけにはいかないよ」
ばれることはなくても、任された仕事はちゃんとこなさないといけないもん。
曜「へぇ、じゃあここを離れなきゃいいのかな」
花丸「まあ、そうだね」
さっきも寝ちゃってたぐらいだし。
曜「ならちょうどいいや」
花丸「えっ――」
曜ちゃんはカウンターを乗り越えると、座っていた椅子ごとマルを壁に押し付ける。
曜「暇つぶしに、私と楽しいことしない?」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:47:13.65 ID:sLn23MpL0
あれ、この状態なんていうんだっけ。
確か梨子ちゃんが好きだった、壁ドン?
間近に迫る顔、覆い被さられることによって、自分が支配されている感じ。
曜「ねえ、こっち向いて」
花丸「え、えっと」
曜「ふふっ、可愛いよ」
さらに迫る曜ちゃんの顔と唇。
高まる胸の鼓動、伝わってくる曜ちゃんの身体の感触。
駄目、これじゃあ抵抗できない――
曜「なーんてね、冗談だよ」
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:50:00.56 ID:sLn23MpL0
でも、まさにキスしようかという瞬間、曜ちゃんは離れてしまう。
花丸「な、なにを」
曜「ごめんね、ちょっとやり過ぎたかも」
花丸「ほ、本当だよ……」
まだドキドキしている。
強引な行為だったのに、嫌な気分はしなかった。
これは自分の中の問題か、相手が曜ちゃんだからなのか、それは分からない。
もし曜ちゃんが原因だとしたら、まるで恋の始まりみたい。
曜「花丸ちゃん?」
花丸「……もう、駄目だよ。曜ちゃんは彼女がいるのに」
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:53:21.17 ID:sLn23MpL0
曜「へっ、私彼女なんていないけど」
花丸「でも前に見たよ、中庭でキスしてるとこ」
曜「あぁ――あれは別に彼女じゃないよ」
花丸「でもキスしてたよ」
彼女じゃない人とするなんて、考えられない。
曜「それはほら、あっちから迫ってきてから」
花丸「そ、そんな理由で?」
曜「駄目? 拒否するのも可哀想でしょ」
花丸「でもそんなの」
曜「やれやれ、花丸ちゃんは本当に初心だね」
もしかして、普通のことなの?
でも倫理的におかしい――いや、マルに恋愛経験が皆無だから分からないだけなのかな。
もうなにがなんやら、頭が混乱している。
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 21:55:48.73 ID:sLn23MpL0
曜「じゃあ私は練習に行こうかな――花丸ちゃんも仕事頑張ってね」
花丸「う、うん」
でも混乱を引き起こした張本人は、何事もなかったようにその場を立ち去ろうとして。
何かモヤモヤするな、一言言った方がいいかな。
でも曜ちゃんも先輩だし、特に言葉を思いついているわけじゃないし――
曜「あっ、そうだ」
チュ
花丸「あっ」
い、いま、ほっぺにキスされて――。
曜「あはは、その顔も可愛いよ」
手を振って図書室を出ていく曜ちゃん。
マルはその姿を、呆然と見送ることしかできなかった。
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 22:26:29.67 ID:sLn23MpL0
※
「――ルちゃん」
キスされた。
曜ちゃんに、あの人気者の曜ちゃんに、キス。
「――マルちゃん」
あの日以来、その事で頭がいっぱいになってる。
柔らかい唇の感触。
物語の世界ではそれ以上の事を経験しているはずなのに、実際に体験すると、こんなに心を奪われるなんて――
ルビィ「花丸ちゃん?」
花丸「ふぁ」
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/08(火) 22:29:49.90 ID:sLn23MpL0
目の前に迫るルビィちゃんの顔。
このぐらいの距離感なんて、何度も経験している仲のはずなのに、意識してしまう唇。
曜ちゃんのややふっくらした物とは別の魅力を持った小さなそれから、目が離せない。
ルビィ「どうしたの、体調悪い?」
花丸「う、ううん、そんなことないよ」
花丸「ちょっとね、買った本について考えてて」
ルビィ「そっかぁ、マルちゃんいっぱい買ってたもんね」
今日はルビィちゃんと沼津へ遊びに来ている。
高校に入ってから善子ちゃんと3人が多かったから、久しぶりに2人きりで遊びに行こうと誘われたの。
でも部活で忙しくて本屋さんに行くのも久しぶりだったから、つい買いこんでしまった。
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 22:32:24.45 ID:sLn23MpL0
花丸「ごめんね、せっかく遊びに来てるのに、たくさん買い物したり、ボーっとしたり」
ルビィ「そう? マルちゃんらしいし、昔に戻ったみたいでルビィは楽しいよ」
笑顔で手元にあるジュースを飲む姿はとても微笑ましい。
高校で新しくできた関係も素敵だけど、やっぱりルビィちゃんとの関係は特別。
ルビィ「この後はどうしようか。どこかで買った本を読む?」
花丸「うーん、でもちょっと小腹が空いたような」
ルビィ「それならクレープ屋さんに行くのはどうかな」
花丸「あ、いいね!」
ちょうど場所も近いし、良い提案。
甘い物を想像しただけで、テンションが上がってくる。
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 22:34:40.60 ID:sLn23MpL0
ルビィ「あはは、マルちゃん、よだれ垂れてきてるよ」
花丸「おっと、恥ずかしい」
慌てて自分でよだれを拭う。
我ながら食い意地がはりすぎている。
花丸「うぅ、ちょっと食欲を抑えていかないと太っちゃうかも」
ルビィ「大丈夫だよ、マルちゃんはそれでも可愛いから」
ほっぺたをプニプニと突かれる。我ながらちょっと怪しい感触。
花丸「でも――――あれ?」
突かれるのを止めようとルビィちゃんの方を向くと、ちらりと見えたオレンジ色の髪。
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/08(火) 22:36:07.25 ID:sLn23MpL0
ルビィ「どうしたの?」
花丸「いや、いまそこに千歌ちゃんの姿が見えたような」
ルビィ「えっ、珍しいね」
花丸「誰かと遊びに来てるのかな」
ルビィ「あー、もしかして曜ちゃんと?」
花丸「っ」
名前が出ただけで、ついドキッとしてしまう。
ルビィ「ちょっと声かけていく?」
花丸「あっ、そうだね」
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 22:38:28.92 ID:sLn23MpL0
もし本当に曜ちゃんだったらどうしよう。
あれ以来、一度も会話してないけど。どんな顔をすればいいのかな。
というかもしかしてデート?
千歌ちゃんと曜ちゃんは仲良しだ。
前に言ってたように水泳部の子と付き合ってないなら、それも十分あり得るような――
花丸「あれ、千歌ちゃんの横にいるの、誰だろう」
でも千歌ちゃんの横にいたのは、黒系のロングヘア―の女の子。
ルビィ「髪、長いね」
花丸「うん、身長もちょっと高いような」
黒系で長い人はAqoursにもいるけど、ダイヤさんにしては体格が良いし、善子ちゃんにしては身長が高すぎる。
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 22:40:57.94 ID:sLn23MpL0
花丸「うーん、知らない人と一緒だったら、声かけない方がいいかな」
ルビィ「そうだね、ルビィは知らない人はちょっと……」
花丸「相変わらず人見知りだねぇ」
ルビィ「こ、これでもマシにはなったんだもん!」
花丸「知ってるよ〜」
ムキになって膨らませているほっぺたをプニプニし返しながら考える。
千歌ちゃんと歩いていた人、誰なんだろう。
ルビィちゃんは気づいてなかったみたいだけど、ずいぶん距離感が近かった気もするし、恋人なのかな。
メンバーの恋愛話だとしたら、やっぱり気になる。
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/08(火) 22:43:44.74 ID:sLn23MpL0
今度、直接聞いてみようかな。
でも曜ちゃんみたいなパターンもあるし、うーん。
ルビィ「ねえねえ、もう行っちゃったし、早くクレープを食べに行こうよ」
花丸「……うん、そうだね」
まああんまり気にしても仕方ないかな。
きっとじきに分かること。
今は素直にルビィちゃんとのひとときを楽しもう。
せっかくの貴重な時間なんだ、考え事をしてたら勿体ないよね。
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/08(火) 22:47:27.93 ID:sLn23MpL0
ちょっと限界なので一度寝ます
明日か明後日ぐらいまでには完結させる予定です
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/05/09(水) 05:00:48.29 ID:RJBD5t7X0
見てる
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/05/09(水) 13:08:23.69 ID:hsSCbHDC0
※
夏の暑さも本格的になってくると、同時に試験も近づいてくる。
善子「あぁ、もう限界……」
花丸「ちょっと善子ちゃん、手が止まってるよ」
目の前にはダイヤさんお手製対策プリントの山。
これを全部消化するのが今日の義務だ。
善子「仕方ないじゃない、こんなのやってられないわよ」
花丸「まあねぇ」
正直、マルもちょっとウンザリしてる。
普段部活に勤しみ過ぎて勉強が遅れ気味なので仕方ないけど、この量はつらい。
『一緒にいたら甘やかすでしょう』と言われて、ルビィちゃんも連れて行かれちゃうし。
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/09(水) 13:11:21.62 ID:hsSCbHDC0
善子「しかもこの内容、それなりの点を取るだけなら必要なさそうなところまで入ってるわよね」
花丸「そこはほら、ダイヤさんの場合、一位が普通になってそうだし……」
善子「あーあ、せっかくリリーとデートに行こうって話してたのになぁ」
花丸「その言い方だとあの後進展があったんだね」
善子「まあ、進展というか……」
花丸「えっ、何その意味深な言い方」
善子「いや、実はね――」
―――
――
花丸「梨子ちゃんと付き合うことになったの!?」
善子「しっ、あんまり大声で言わないでよ」
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/09(水) 13:14:02.21 ID:hsSCbHDC0
花丸「で、でも、本当に?」
善子「う、うん」
花丸「ほぇー、未来ずらぁ……」
びっくりした。
梨子ちゃんへの気持ちを聞き出してからそんなに経ってないのに。
まさか、付き合うところまで進展していたなんて。
花丸「告白は善子ちゃんからしたの?」
善子「まあ、一応ね」
花丸「何か言いにくそうだね」
善子「正直、特別に何かをしたというわけじゃなくて」
花丸「なくて?」
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/09(水) 13:15:51.87 ID:hsSCbHDC0
善子「その、雰囲気とノリで付き合うことしたというか……」
花丸「えー、それはつまらないよ」
小説だったら間違いなく売れない。
善子「仕方ないでしょ、現実の恋愛なんてそんなものよ」
花丸「むぅ、経験者の上から目線だよ」
善子「別に上からじゃ――ないわよ」
花丸「あー、いま少し間が空いたずら!」
善子「気のせいよ、気のせい」
絶対わざとだ。
心なしか普段よりも余裕のある態度だし。
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/09(水) 13:18:25.87 ID:hsSCbHDC0
花丸「くぅ、むかつくずら」
善子「ふふん、悔しかったらあんたも早く恋人作りなさいよ」
花丸「でもマル、相手もいないし……」
相変わらず浮いた話もなければ好きな相手もいない。
そもそもきっかけになることがないから発展しようがないもの。
善子「じゃあルビィでいいじゃない。仲良しでしょ」
花丸「ルビィちゃんかー」
あんまり考えたことはなかったけど、確かに周囲の人の中では一番恋人に近い関係なのかもしれない。
でも親友だし、恋人関係は想像しづらいかも。
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/05/09(水) 13:21:19.84 ID:hsSCbHDC0
善子「嫌なの?」
花丸「そうじゃないんだけど、あんまりピンとは来なくて」
善子「ふぅん、そういうものなのね」
花丸「そもそもルビィちゃんの気持ちも分からないし」
善子「確かに自分一人の気持ちじゃ成り立たないもんね」
花丸「はぁ、マルに春が来るのはまだ先なのかな」
善子「そんなに焦ることはないわよ」
花丸「そうなんだけど、なんだかね」
善子「一応相談に乗ってもらったし、もし好きな人ができたら、私もできる限り協力するから」
花丸「うん、ありがとう」
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