魔法使い「私の事、スカウターで覗くのやめてくださいっ!」 勇者「やだ」

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220 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:11:15.80 ID:XRdwJlJb0

縛人「昨夜はよく眠れたかい?」ニッコリ

魔法使い「うん!」モグモグ

弓射手「いつも通りね」パクパク


勇者「…俺は若干、寝付けなかったけど。でも布団は心地よかったし、ゆっくり休むことは出来ました」

弓射手「ふふ。ありがとう」


縛人「うんうん、まぁ今日は魔王のところに行くんだし、勇者さんみたいに寝付けないのはむしろ当然なのだとおもうよ。実は僕も少し緊張してねれなくて」

弓射手「あら・・・」

勇者(いや、俺は本当は、魔法使いにあんな風に言われちゃって、一つ屋根の下にいるんだよなとかドキドキして変な妄想までしたせいだとかいえない)

221 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:11:46.12 ID:XRdwJlJb0

縛人「あは。実は久しぶりに弓射手と一つ屋根の下にいると思ったら、ドキドキしちゃって久しぶりにいちゃいちゃしたいなぁとか妄想しちゃったせいなんだけどね!」

弓射手「馬鹿じゃないの?」

縛人「うっ」ガーン

魔法使い「そういうちょっとエッチなところ、あんま好きじゃない」

勇者「 」ガーン

弓射手「? なんで勇者さんまでちょっとヘコんだの?」

魔法使い「?」


縛人「さ、さぁ! 気を取り直して! 今日は、魔王のもとへいくよ!」

勇者「行くよ、って言われても やっぱりあんまり実感がわかないんだけど」
222 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:12:28.53 ID:XRdwJlJb0

縛人「実はね、昨夜のうちに、彼女が嘆願書をだしておいてくれてるんだ」

魔法使い「嘆願書? 魔王城までの案内ができるのは聞いていたけど…。そんなもので魔王とあえるの?」

縛人「彼女の嘆願書は少し特別さ。理由はまぁいろいろだけど」

勇者「昨日聞いた、“人間との綱渡し”の役目・・・?」

縛人「それもあるけど、そんなに簡単な話じゃないよ」

弓射手「私みたいに、何かしら人間との橋渡しの役目を負ってる職は他にもいるの。人間も、魔族もね」

弓射手「でも、普通に嘆願書を魔王城に送ったところで、魔王に届く前に“揉みつぶされる”事の方が多いんじゃないかしら」

勇者「…和平反対派、ですか」

弓射手「ふふ。これ以降、あまりむやみにそのことは口に出さないほうがいいわ。こう思っておくの。魔王宛の手紙は、“運の悪い配送事故”によくあうものだ、ってね」

223 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:13:00.52 ID:XRdwJlJb0

魔法使い「…でも、ならどうしてお母さんが昨夜出した“嘆願書”は無事だってわかるの?」

勇者「あ、さては縛人。なにか手紙に細工の魔法でも?」

縛人「あはは。そんなことをしたら、まず間違いなくそんな怪しい手紙は真っ先に処分されると思うよ」

勇者「????」

魔法使い「じゃぁ、なんで・・・?」

弓射手「…さぁ。魔王のきまぐれじゃないかしら」

縛人「行けば、わかると思うよ」クスクス

224 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:24:31.38 ID:XRdwJlJb0

勇者(……なんだか少し釈然としない物言いだな)

勇者(何か裏がある…? 例えば弓射手さんは実は諜報かスパイか…なにかそういう仕事を特別にこなしている、とか)

勇者(魔法使いがあまり両親について知らないまま育ったのも、すこし過剰すぎる気がするし…まだもう少し、聞いていない何かがあるのも確かだろう)

勇者(魔王、か。平和を望むというのは本当なのだろうか。魔法使いの両親だからと、話をうのみにしてもいいものなのか?)

勇者(第一、魔王自身のことについてあまりにも語られなさすぎる…)

勇者(終わらせることもなく、暗黙の了解の元で沈静化だけした戦争。水面下で人間とのアクセスを望む行動。それは本当に、ただ和平を望むだけの行動なのか)

勇者(…………いまだ多い反対派、か。それこそ…本当の魔王の真意に仕えている可能性があるのではないだろうか)

勇者(魔王城。こんなに簡単に乗り込めてしまうものなのか…? それに、もしそうなったら… って、あれ…? なんだか・・・)


勇者(……なん、だか………)ゾクッ


225 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:24:59.73 ID:XRdwJlJb0

縛人「――だからまぁ少なくとも、“彼女は”魔王に会えるだろう。だからそれについて、いっしょに行っておいで。きっときみたちも会えるさ」

勇者「………っ」


弓射手「どうかしたの? 勇者さん」

縛人「っと、ごめん。少し話が長かったかな」


勇者「…い、いえ」

魔法使い「勇者さま、なんだか顔色が…?」


勇者「あの…」

縛人「?」

226 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:25:29.70 ID:XRdwJlJb0

勇者「昨夜の和平の話などはもちろんちゃんと聞いていました。でも、反対派も多いというのも聞きました…」

弓射手「そうね」

勇者「…本当に、いいんですか? 魔王の意には沿ったとしても、反対派にとっては俺を連れていくことは何よりも目障りな行為のはず」

弓射手「……」

勇者「俺をここまであからさまに連れて行っては、弓射手さんが、生活しにくくなるような…いや、危険な目にあうようなこともあるのでは…」

弓射手「…優しい子なのね、勇者さんは」

勇者「魔王が和平に積極的とは聞いたけど…。そうではない魔族にとっては、これは魔王に勇者を仕向けるような行為です」

魔法使い「勇者様…」

227 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:26:49.53 ID:XRdwJlJb0

勇者「それに・・・二人とも、この魔族の町にすっかりなじんで生活していて。あまつさえ弓射手さんは魔族の血も引いている」

弓射手「…それが?」

勇者「………魔族に好意的なお二人の前でこんなことを言うのも難ですが…」


勇者「俺が…魔族を嫌って、姿を見たとたんに 刺しに行かないとも限りませんよ」



弓射手「…………」

魔法使い「勇者、さま…?」

228 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:27:18.55 ID:XRdwJlJb0

縛人「ふふ。魔王城に向かうには、いい気構えと雰囲気になったね」

魔法使い「お父さんっ」

縛人「なぁに、大丈夫さ」ナデナデ

魔法使い「わ」

縛人「…僕はね、娘のことを信じているよ。その娘の選んだ人も…そんなに軽率なだけの人間じゃないって、信じている」ニコリ

勇者「………」

魔法使い(……勇者、さま…?)

229 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:28:21.82 ID:XRdwJlJb0

勇者「……すみません。魔王に、悪意を今のところ抱いているわけじゃないんです」

弓射手「…」ホッ


勇者「もともと、俺は戦闘狂でもない。魔王の元へも政治交渉がメインだと聞いてこのたびに出たくらいです」

弓射手「それなのに、どうしてそんなことを?」


勇者「・・・急にふと、とても嫌な予感がして」

弓射手「…」


勇者「何か…とても、自分の嫌悪する何かが待ち構えているような、そんな胸騒ぎがしたんです」

勇者「もし、そうなれば…と考えているうちに、いくつも懸念事項が思い浮かんで。それだけ、です」

230 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:28:47.72 ID:XRdwJlJb0

縛人「……穏やかじゃないね」


魔法使い「…おとうさん、おかあさん・・・」ギュ

弓射手「どうしたの、魔法使い」

魔法使い「……大丈夫、だよね…?」


縛人「…」

弓射手「………」


縛人(…勇者の素質。それは戦闘スキルや頭脳もあるけれど、なによりも必要とされ、選考の基準とされるのは…)

弓射手(………天性の、カンの良さ。未来を選び取るだけの、予知にも近い“予感能力”・・・・・・)

231 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:29:37.86 ID:XRdwJlJb0

縛人(経験や場の慣れによって、状況を見極める訓練に慣れた騎士団長などがこれまで勇者になってきた)

弓射手(でも、今回のこの勇者はそうじゃないのは明らか。どう見ても、戦闘や訓練によってそういうのを覚えたわけじゃない)

縛人(これまでの勇者は魔王の元へたどり着くことはなかった…それは、彼らが“真正”の勇者ではないのが明らかだったからだ)

弓射手(経験や戦術で未来を読むものは、小手先に騙される。それは安易に裏切る可能性を秘めている。だからこそ、“遠い本物の未来”を選び取れる勇者を待っていたはず…)


弓射手(………その“本物”が、ここにきて感じた嫌悪・・・)



縛人(……進むべき道を間違っているのは)

弓射手(手に取るべき相手を間違ったのは)


((――本当に、自分たちではないと、言いきれるだろうか?――))


232 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:30:44.91 ID:XRdwJlJb0

魔法使い「……お・・・」


勇者「魔法使い」ポン

魔法使い「!」ビクッ


勇者「………怖がらせて、悪かったな」

魔法使い「勇者さま…?」


勇者「………せっかくついてきてくれるっていうのに、ビビらせたから。その…スマン」


魔法使い「……ううんっ!!」ブンブン

魔法使い「大丈夫です! 私…勇者様といれるなら、怖くないです!」ニコ

勇者「そうか」ニコ

魔法使い「…っ」カァ


弓射手「……」

縛人「……」

233 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:31:35.53 ID:XRdwJlJb0


勇者「―――――行こう」


勇者「旅の終わりへ。――魔王城へ、行こう」


234 : ◆rRu4LM9vFs [sage saga]:2018/07/19(木) 22:33:05.02 ID:XRdwJlJb0
短いけど今日はここまで
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/20(金) 01:08:59.52 ID:MVmndSTDO
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/20(金) 14:58:57.02 ID:AjX19L6wO
おつ!
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/21(土) 22:27:00.50 ID:/I7s2iOPo
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/30(木) 08:21:17.16 ID:cQKN9KmJO
まだかなー
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/30(木) 14:07:31.34 ID:cQNLwzpHo
>>238
今やってます
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/12(水) 23:12:34.71 ID:wo3B5+dYo
おい
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/26(水) 09:11:31.03 ID:o3NNGNyDO
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