剣と魔法と運送業

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

421 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:30:10.95 ID:9QidveBa0
-物流協会事務局 女の執務室-


バタンッ

女「それで?話っt ガバッ


ギュゥゥッ…


先輩「…心配させやがって」

女「心配、してくれたのね?」フッ

先輩「…守れなくてすまなかった」ギュッ

女「…気にしないで、私だっていい大人なんだk グイッ

チュッ…チュ…

422 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:30:52.53 ID:9QidveBa0
女「んっ…ちょ…ん…」チュッ

先輩「っはぁ…んく…」チュッ


女「…っぷ、もう…」

女「本当に強引なんだから」クスッ

先輩「…俺の前では強がらないでくれ」

先輩「今回は守れなかったが…あぁっくそっ…!」ギリッ

先輩「お前が居ないのは…しんどいんだ」ギュッ

女「…ん、私も、です」フフッ

ギュッ…チュッ…

423 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:32:24.28 ID:9QidveBa0
-王宮 国王執務室-



国王「涙の欠片と魔法石が揃ったか」

側近「はい。彼らの惹かれ合う心が、共依存の状態にまで高まるのは」

側近「もはや時間の問題かと」

国王「…20年か、彼にもよく働いてもらったが」

国王「この辺りが潮時だろう」

側近「…鍛治職人の里での暴発以降、力の制御は困難になる一方でした」

側近「今回の措置は良い梃入れになるかと」

国王「全ては民の為、王国の為…」

国王「ならば私は、悪にでもなろう」

側近「…。」

424 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:33:31.92 ID:9QidveBa0
-鍛治職人の里-


ゴゥンゴゥン…

親父「男が入院!?」

先輩「運転中に一時的に意識を失ったそうで…」

先輩「命に別状はないそうですが、今は面会謝絶の状態です」

親父「むぅ…それで、魔法石はどうした?」

先輩「魔法石?…ナビちゃんですか」

先輩「…騎士団の連中に没収されました」ギリッ

親父「騎士団!?国王の私兵か!」

親父「あの野郎…何を企んでやがる」

親父「…まさか」ハッ

先輩「っ!?何か心当たりがあるんですか!?」

親父「クソッ!」ダダッ

先輩「あ!親父さん!」ダダッ

425 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:34:34.93 ID:9QidveBa0
-親父の家-

親父「この前女が訪ねてきた時には余裕こいてはぐらかしちまったが」ゴソゴソ

親父「クソ野郎…まさか向こうから時計の針を進めてきやがるとは」ゴソゴソ

先輩「ど、どういう事ですか?」

親父「あった…女の奴、自分が知らない事には何にでも首突っ込みたがるだろ?」

先輩「えぇそうですね、学者肌というか」クス

親父「だからはぐらかしたのさ、危なっかしくて仕方ねぇからな」

親父「それに、アイツやお前らがいくら調べた所で最後のピースは見つからない」スッ

先輩「これは…写真?」

426 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:35:34.74 ID:9QidveBa0
親父「勇者一行出立の時のだ、ホラ左のこれが俺で」

先輩「ホントだ、ははっ親父さん変わんないっすねー」ニコッ

親父「お世辞はいいからよ、んでこの右側の男…見た事あんだろ?」

先輩「ん?この人は…陛下の側近の!?」

親父「そうだ。20年前のあの時、俺と共に勇者の落涙で全てを目撃した男」

親父「そして、ナビシステムの開発指揮を採った男」

親父「賢者だ」

427 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:36:19.79 ID:9QidveBa0
先輩「そうだったんですか…」

先輩「それでこの真ん中に写っているのが、勇者の落涙で命を落とした先代勇者なんですね」

親父「それだよ、最後のピースは」

先輩「?」

親父「勇者はな、代替わりなんざしちゃいねぇのさ」

428 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:37:52.00 ID:9QidveBa0
-王立診療所 男の病室-


ピッ…ピッ…ピッ…

男「」zzzz

魔法石(ナビ)『』zzzz

側近「わざわざご足労頂き恐縮です」

修道女「い、いえいえ私こそき、恐縮です」アワアワ

側近「前回の男さんと魔法石との再リンクの一件、報告を読ませてもらいました」

側近「過去に前例のない処置にも関わらず、見事にやってのけたそうで」

側近「感服致しました」

修道女「いやー大した事ないですよぉぉ」テレテレ

429 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:38:24.00 ID:9QidveBa0
修道女「そ、それで今回は…?」

側近「現在、男さんと魔法石は深い眠りについています」

側近「男さんの抱える心の問題…過度のストレスが原因という事にしていますが」

側近「実は別の問題があるのです」

修道女「別の問題…?そ、それじゃ前回の再リンクになにか不備が!」アセッ

側近「いいえ。修道女さんの詠唱は完璧でした」

側近「前回は魔法石側の不具合でしたが、どうやら今回は男さんの方の心に原因があるようなのです」

修道女「男さんの心に…?」

430 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:39:02.95 ID:NYTVBiDBO
側近「…彼は20年前、北西の村で火災に巻き込まれた際に深い心の傷を負いました」フゥ

側近「幼き頃の心の傷というのは、成長し大人になったからと言って簡単に癒えるものではないのです」

修道女「そうだったんですね…男さん」

側近「今回は男さんの心へ魔法石をリンクさせ、再度心の補完をしてもらいたいのです」

側近「彼の絶望感や孤独感を、魔法石の人格情報によって癒してあげて欲しいのです」

側近「お力を貸して頂けますか?」

修道女「も、もちろんです!」グッ

側近「ありがとうございます」ニコッ

431 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:40:27.50 ID:9QidveBa0
-王都へ向かう街道-



ブロロロ…

親父「20年前のあの時、俺達は魔王との戦いにケリをつけようと考えていた」

親父「勇者が最大火力の詠唱を使う間、俺と賢者であいつの守りを固めてた」

親父「当時はまだあの辺にゃドラゴンなんかがゴロゴロ居たからな」ケラケラ

先輩「ど、ドラゴンですか…」

親父「…あの場所に馬鹿でかい魔法石が埋まってたのは全くの偶然だったんだ」ギリッ

432 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:41:06.84 ID:9QidveBa0
-20年前、大陸中央 北の荒野-


ビュォォォォォ…

[天空高く聳え立つ 神をも砕く雷の王]ゴワァァァァァ…

勇者「…っく」パァァァァ

剣士「おらぁぁ!」ザシュッ

賢者「ふんっ!」バシュゥゥ

[我と汝の力を以って 全ての愚かなる者に]ギュワァァァァ…

勇者「…!!」ギリギリッ

[清浄なる一撃を与え給え]

剣士「くるか!!」バッ

賢者「これで終わりだ!!」ババッ





-ドクンッ-

433 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:41:35.77 ID:9QidveBa0
勇者「っ!!…何だ、この感じは」グワングワン

剣士「ど、どうした勇者!!」






-ドクンッ ドクンッ-

434 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:42:06.65 ID:9QidveBa0
勇者「何かがおかしい…こんな…こんな膨大な力…」グワングワン

賢者「…ちっ!力が暴走したか!?」

剣士「暴走だと!?」






-ドクンドクンドクンドクンドクン-

435 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:43:10.38 ID:9QidveBa0
勇者「漲ってくる…大いなる力…」ユラユラ

ギュワァァァァ…!!

剣士「おい!あぶねーぞ!!」

賢者「ダメだ…心が力に飲まれる!」

剣士「勇者!おいしっかりしろ勇者!!」

賢者「このままじゃ道連れだ…避難するぞ!」ガシッ

剣士「見捨てて行けるかよ!仲間なんだぞ!?」

賢者「一緒に死んでしまったら元も子もないだろう!!」

436 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:43:45.31 ID:9QidveBa0
勇者「力が…ふふ…」ニヤニヤ

勇者「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」ギュワァァァァ…!!!





カッ…





437 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:44:43.77 ID:9QidveBa0
親父「あの馬鹿でかい魔法石…巨石の力に魅了された勇者は」

親父「あの辺り一帯の空間を消し飛ばす程の爆発を起こしながら、消えた」

親父「…巨石に取り込まれたんだ」シュボッ スゥ

先輩「と、取り込まれた!??」

親父「事故の後、王国まで巨石を持ち帰った賢者は」

親父「勇者の心を宿した巨石の力を使い」

親父「魔族に反応して自動で攻撃をぶっ放つシステムを作ったんだ」

先輩「じ、じゃあ勇者は!!」

438 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:45:58.30 ID:9QidveBa0
親父「巨石の中で今も戦ってるのさ」スパァァ

先輩「親父さん…あなた…全部知ってて…!」

親父「なんで勇者を助けに行かねぇかって?馬鹿だなお前」

親父「…あいつはな、多分利用されてる事にも気付いてるんだ」

先輩「知ってて…あえて?」ゴクリ

親父「力に魅了されてたって勇者は勇者だ」

親父「巨石の力を利用してでも、賢者や王国に利用されてでも…」

親父「魔王を討つという使命を果たそうとしてるんだ」

先輩「そんな…人としての存在を捨ててまで…」

439 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:47:09.47 ID:9QidveBa0
親父「漢が一度決めた事だ、途中で邪魔しちゃ野暮ってモンだろ」

先輩「野暮って…」

親父「だがな、勇者の決意は俺の息子にゃ関係ねぇ話だ」ギロリッ

親父「賢者…お前の好きにはさせねぇぜ!」クワッ

440 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 21:16:23.64 ID:9QidveBa0
今日はここまでとします
明日第二部終了予定です
ありがとうございました
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/01(火) 01:00:13.67 ID:BHDz90dbO

楽しみにしてる
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/01(火) 07:12:52.28 ID:QcrAygzhO
443 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:31:43.56 ID:hNFIRtqbO
投下します
444 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:32:11.60 ID:hNFIRtqbO
-王宮地下 巨石の間-


ピッ…ピッ…ピッ

男「」zzzz

魔法石(ナビ)『』zzzz

修道女「こ、ここで詠唱するんですか!?」

側近「今回の詠唱は多大な魔力を必要とします」

側近「この巨大な魔法石であれば、修道女さんの魔力に大きな助けとなるでしょう」ニコッ

修道女「そ、それはまぁ…でも」

巨石「」シーン

修道女「(あの時は気付かなかったけれど、この魔法石…)」

修道女「(膨大な魔力以外の何かを内包している…これは…)」

オォォォォォ…オォォォ

修道女「(…声!?人の心!??)」ゾクッ

445 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:32:46.52 ID:hNFIRtqbO
修道女「そ、側近さん!この巨石は…!」

側近「…これだけ膨大な魔力が一箇所に凝縮すると、思念のようなものを形成する事があります」

側近「心配いりません。善なる光で満ちたあなたの心ならば」

側近「巨石の力はきっとあなたの味方をしてくれますよ」ニコッ

側近「では私はこれで。詠唱の邪魔をしてはいけませんからね」クルッ

修道女「…あっ!側近さん!」

ガチャ バタン

446 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:33:16.79 ID:hNFIRtqbO
修道女「行っちゃいました…」

修道女「…仕方ありませんか」フゥ

修道女「男さん、ナビちゃん」

修道女「今助けますからね」スッ

パァァァァ…

男「」zzzz

魔法石(ナビ)『…男ちゃん』ムニャムニャ

447 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:35:28.82 ID:hNFIRtqbO
-男の精神世界-



ナビ「…ん」パチ

ナビ「んぁーよぉ寝た」ノビーッ

ナビ「…ここどこ?」キョロキョロ

ナビ「え、ウチまだ寝てるん??」ホッペギュー

448 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:36:53.22 ID:hNFIRtqbO
ナビ「あったかいなぁ…」

ナビ「この感じ、この匂い」

ナビ「この前とは違う…うん、きっとここは男ちゃんの心ん中や!」

449 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:38:28.53 ID:hNFIRtqbO
男「」zzzz

ナビ「男ちゃんみーっけ?」ニコッ

ナビ「くすっ。夢ん中でも寝てるってどんだけ寝るねん」ケラケラ

ナビ「髪の毛…やわっこいなぁ」サワサワ

ナビ「相変わらず睫毛なが…へへ」スッ

チュッ

450 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:39:06.20 ID:hNFIRtqbO
男「…ん」パチ

ナビ「んむぅ!!!」ビクッ

男「…寝ている間に唇を奪われるとは」クス

ナビ「は、はわわ////」カァァッ

男「奪っておいて赤くなるなよ」ケラケラ

ナビ「だ!だってタイミング!!」

男「…足りないな」スッ

ナビ「にぎゃっ!??」ビクッ

パタッ

451 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:39:37.76 ID:hNFIRtqbO
ナビ「…押し倒された」ドキドキ

男「…押し倒した」ドキドキ

ナビ「お、男ちゃん!?ウチな!??」

男「分かってる」ニコッ

ナビ「いやいや絶対分かって…へ…」


チュッ…チュ


ナビ「ん…」

男「んくっ…ナビ…」


ギュッ チュッ チュ

452 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:40:20.78 ID:hNFIRtqbO
-物流協会事務局 女の執務室-


コンコン ガチャ

親父「よう」ニカッ

女「お、おじ様!??」

親父「職場訪問!…って場合じゃねぇ」

親父「時間がない、一緒に来てくれ」

女「ど、どうしたんですか!?どこへ行くんですか!??」

親父「巨石の…勇者の所だ」

453 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:40:59.91 ID:hNFIRtqbO
-物流倉庫事務所-


先輩「同僚いるか?」ガチャ

同僚「あ、おつかれっすーwww」

先輩「ちょっとツラ貸せ」クイッ

同僚「なにそれ怖いwww」

先輩「時間がない。男が危ないかも知れない」

同僚「…っ!了解っす。なら診療所へ?」

先輩「いや…巨石の間だ」

454 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:41:41.09 ID:hNFIRtqbO
-王宮 国王執務室-


側近「あのシスターの詠唱が上手く運べば、時を置かず心の補完は成就するでしょう」

国王「うむ。ではその瞬間をこの目で見届けるとしよう」スクッ

国王「贄を捧げる者の責任としてな」

ガチャ バタンッ

455 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:42:22.38 ID:hNFIRtqbO
-男の精神世界-


ドクン…ドクン…

-なぁ男ちゃん?-

-ウチら色んな所に行ったなぁ?-

-シップの甲板から見上げた、ダイヤモンドぶちまけたような星空…-

-キラキラ光る朝の水平線…-

-どこまでも続く隣国の田園風景…-

-水の街へ続く、海に架かる橋…-

-里が襲われた時、すぐに逃げるかどうかで喧嘩したやんか?-

-くすっ。男ちゃんと喧嘩するなんてあれが初めてやったんちゃう?-

-どれもこれも、大事な思い出…-

-ウチの宝物やで-

456 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:43:09.64 ID:hNFIRtqbO
-あんなぁ?あの時…-

-昔の記憶に押し潰されそうな時-

-男ちゃん、来てくれたやんか?-

-自分だって辛いのに-

-うぅん、自分の事やからこそ辛いのに-

-…あなたは来てくれた-

-嬉しかったぁ-

-もう一人やないんやって-

-見捨てられたと思ってた過去の記憶が、ようやく天に帰ってくみたいな?-

-上手く言われへんけど…-

-でな?あん時決めてんか-

-男ちゃんが好き-

-ずっと側におりたいって-

457 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:43:49.82 ID:hNFIRtqbO
-男の精神世界-



ドクン…ドクン…

-俺はずっと寂しかった-

-俺には親父がいるし、女も、協会のみんなもいる-

-でも、心の奥にずっと埋まらない空洞があって-

-そこは冷え切った場所で-

-真っ暗で誰にも触れられない場所で-

-そこは多分、一生埋まらないんだろうなって…-

-ナビの中に置き忘れた、北西の村での記憶-

-あの時の孤独感や絶望感が空洞の正体なのかも知れない-

-再リンクでそれは分かったけど、分かったからって空洞が埋まるワケじゃない-

-俺はどうしたらいいんだろう?…-

458 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:44:30.37 ID:hNFIRtqbO
-ナビ、お前が俺のこと好きだって言ってくれた時-

-本当は嬉しかったんだ-

-聞こえないフリしてゴメンな?-

-俺も、お前のことが好きだよ-

-でもこの好きって、本物なのか?-

-俺はただ、無条件に俺のことを受け止めてくれるお前に-

-寄りかかりたいだけなんじゃないか?-

-そういう思いが消えなかった-

-俺はこのまま踏み出してもいいのかな?-

459 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:45:52.29 ID:hNFIRtqbO
-王宮地下 巨石の間-


パァァァァ…

バタンッッ!!

親父「遅かったか!!」ダダッ

女「し、修道女さん!??」

修道女「…っく!お、女さん!?」ビリビリ

先輩「男!ナビちゃん!無事か!?」

同僚「おい!お前何やってんだ!!」

修道女「同僚さん!?な、何って…」ビリビリ

460 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:46:57.26 ID:hNFIRtqbO
側近「役者が揃ったようですね」ガチャ

親父「賢者!てめぇ俺の息子を!!」チャキ

側近「久しぶりですね剣士。そうか涙の欠片は貴方の…」

側近「昔話は後にしましょう、物騒なものは仕舞って下さい」

側近「国王陛下の御前ですよ」

国王「始まったようだな」ズイッ

女「へ、陛下!」

国王「…諸君には感謝している」

国王「此度の我らが計画に際し、その力を存分に発揮してくれた諸君らは」

国王「まさに王国民の鑑である」

先輩「力を貸した覚えなんてないが?」

側近「分からんか。ここに集いし諸君ら全員が力を合わせ、この計画を実現に導いてくれたのだ」

側近「私からも礼を言うぞ」

同僚「何が何やらさっぱりwww普通に生きてるだけですがwww」

側近「普通に、か」ニヤッ



男「…」zzzz

魔法石(ナビ)『…』zzzz
461 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:48:22.64 ID:eNxFMH/p0
-男の精神世界-



-あんなぁ?心の空洞は無理に埋めんでもえぇんちゃうかなぁ?-

-埋めなくてもいい?-

-多分な、きっとみんな同じなんちゃうかなぁ?-

-同じ?誰の心にも空洞が?-

-多かれ少なかれ、な-

-でな?例えばそれを無理に埋めようとするやん?-

-誰かで、何かで…か-

-ぅん…でもきっと上手くいかへん。一瞬忘れる事は出来るかもやけど-

-…分かるよ、俺もそうだった-

-普通の人はみんなそう、でも…-

-普通の人は?-

-ウチと男ちゃんは特別なんやで-

-特別?-

462 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:49:13.02 ID:eNxFMH/p0
-同じ心を持って、同じ痛みを抱えて…-

-こんなに分かり合える存在ないよ?-

-…確かにそうかも知れない-

-やろー?ウチら最強のコンビやもん♪-

-ふふ。久しぶりに聞いたな-

-えへへ。だからな?男ちゃん…-





-ウチと一つになろ?-

463 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:50:09.44 ID:eNxFMH/p0
-王宮地下 巨石の間-




パァァァァ…

側近「ここまで力が高まれば問題あるまい」

側近「修道女さん、もう結構です」スッ


パァァァァ…バシュンッ!!


修道女「…っく!は!」フラッ

同僚「ないすきゃーっちwww」ダキッ

親父「賢者、お前…」ギロリッ

親父「俺の息子を生贄にするつもりだな!?」

側近「礎、と言ってくれ」

親父「ふざけんな!何が礎だ!!」

国王「剣士よ」

国王「側近…賢者は知恵を貸してくれたに過ぎん」

国王「全ての責は国王たる私にある」

国王「恨むならば私を恨め」

464 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:50:52.60 ID:eNxFMH/p0
女「陛下!!男くんを生贄にってどういう事ですか!??」

親父「勇者が巨石に取り込まれて20年…」

親父「巨石の力に勇者の心が食い尽くされちまう前に」

親父「心の補充をしようって魂胆だよ!」スチャ

側近「無礼者!剣を仕舞え!」

女「そ、そんな…酷い…!」フルフル

465 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:51:55.29 ID:eNxFMH/p0
国王「恨むならば私を、と、重ねて言おう」

国王「強大なる魔王の力を前に、人々を、世界を守る為」

国王「勇者を取り込んだこの巨石の力…」

国王「"神の雷"を制御する心が必要なのだ」

修道女「か、神の雷…!?」

側近「巨石の力を制御するには、揺るぎなき心の力が必要なのだ」

側近「20年前のあの日…勇者から飛び散った、悪を憎む善なる心の残留思念」

側近「"涙の欠片"を内包した男くんの心が、まさに適任だったのだ」

側近「が、火災により深い傷を負った彼の心だけでは不十分…」

側近「その為に彼の心の片割れたる魔法石との接近…心の補完が切望された」

国王「諸君らは、人の心という複雑で繊細な代物を上手く導き」

国王「彼らの心が惹かれ合うのを後押ししてくれたというわけだ」

女「そ、そんな…」

先輩「じ、じゃあ俺達がした事が…」

同僚「あいつとナビちゃんの為を思ってした事が…!?」

修道女「酷い…人の心を何だと思ってるんですか!??」ブワッ

466 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:52:37.23 ID:eNxFMH/p0
親父「…まだだ」

側近「?」

親父「…俺の息子を舐めんな」ギロリッ

側近「愚弄などしていない。涙の欠片は…」

親父「俺の息子を変な名前で呼ぶんじゃねぇ!!!」クワッ

親父「男…とっとと目を覚ましやがれ」

男「…」zzzz

魔法石(ナビ)『…』zzzz

467 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:53:39.17 ID:eNxFMH/p0
-男の精神世界-


-俺達が、一つに?-

-せやでぇ。…あ、エッチな意味ちゃうで!?-

-…ま、まぁ、それもえぇねんけど…-

-あんなぁ?ウチら一つになったらな?この寂しさも消えると思うねん-

-心の空洞だって埋まるかもしれへんし!な!?-

-俺は…-

-…ウチと一つになろ?そしたらこの力も…-

-力?-

-この巨石の力もウチらのもんや-

-おいナビ、何言ってるんだ?-

-こっちへ…こっちへ…-

468 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:54:32.61 ID:eNxFMH/p0
-王宮地下 巨石の間-



パァァァァ…

女「っ!巨石が光り出した…!?」

側近「いよいよ始まるか…」

先輩「男ー!!目を覚ませー!!!」

修道女「あぁ…神よ…」

親父「…。」ギロリッ



男「…っく!」zzzz

魔法石(ナビ)『…。』

469 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:56:51.54 ID:eNxFMH/p0
-巨石内部-


男「…ん」パチ

ナビ「…。」

男「…お前、誰だ?」ムクッ

ナビ「…。」

男「ナビをどこへやった!?」

ナビ「…。」ニタァ

男「っ!?」ビクッ

ナビ「…もう疲れたんだよ、俺は」


グニャァァァァ…


勇者「独りで戦い続ける事に、な」パァァァァ…

470 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:57:52.33 ID:hNFIRtqbO
男「あなたは…先代勇者!?」

勇者「代替わりしたって事になってんのか…酷いモンだな」ハハッ

勇者「俺はここでずっと戦ってきた。ずっとな」

男「ここって…そもそもここは…?」

勇者「巨石の中さ。俺はあの日北の荒野で、巨石の力を制御し切れずに」

勇者「この中に取り込まれたんだ」

男「取り込まれた!?じ、じゃあナビシステムと同じ…?」

勇者「ナビシステムってのは人の心を魔法石に写し取ったものなんだろ?」スッ

魔法石(ナビ)『』チリンッ

男「な、ナビ!!」

471 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:58:32.08 ID:hNFIRtqbO
勇者「俺の場合は生身の人間がそのまま取り込まれちまったワケだから、順序としちゃ逆だ」

勇者「でな?この中から力を振るうには、善を望む強い心が必要なのさ」

男「誰よりも崇高な魂を持つとされる勇者だからこそ出来る芸当か…」

勇者「お褒めにあずかりどうも。だがな、俺も人間だ」ポイッ

男「ナビっ!!」パシッ

勇者「枯れる事のない膨大な力の奔流に晒され続け…」

勇者「終わりの見えない戦いに力を振るい続ける事に、もう疲れちまったんだよ」

勇者「俺の心がな」

472 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:59:08.83 ID:hNFIRtqbO
男「…不憫な話だとは思うが、しかし」

勇者「同情なんざいらねーよ」フンッ

勇者「…欲しいのはお前の心だ」チャキ

男「な、剣!?」

勇者「お前の心を寄越せ」

勇者「魔法石に入ってる分とセットでな」ニヤッ

魔法石(ナビ)『…。』

473 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 18:59:58.42 ID:hNFIRtqbO
-王宮地下 巨石の間-



パァァァァ…

国王「巨石が輝いておる…」

側近「準備が整いました、陛下」

国王「うむ…騎士団長!」

騎士団長「ここに」ズイッ

ズラズラッ…

国王「あとは任せたぞ」クルッ

騎士団長「承知しました」チャキッ

474 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:01:06.14 ID:hNFIRtqbO
親父「へっ…用が済んだら証拠隠滅って訳かよ」チャキ

女「くっ…!外道め!」

同僚「これw確実に消されるパティーンwww」

修道女「ひぃっ…!」ガクガク

先輩「…はいそうですかって、簡単に消されるとでも思ったか?」ギロリッ

チャキッ…ブンンッッ!!!

同僚「ちょwww先輩そんな大剣どっからwww」

475 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:01:48.77 ID:hNFIRtqbO
先輩「クソネズミ共…前々から気に入らないと思っていたが」ギリギリッ

先輩「俺の女に手ぇ上げた阿保はどいつだ!?ここで根性叩き直してやっから腹決めろ!!!」ダンッッ!!

同僚「こぇぇぇぇ」ビクビク

女「もう…どさくさに紛れて何勝手に恋人宣言してるのよ」ハァ

女「…バカね」クスッ

親父「(今俺の女って言った!?ねぇ俺の女って言った!??)」

476 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:02:27.42 ID:hNFIRtqbO
親父「…久し振りの実戦が、魔族じゃなく人間相手とはな」チャキ

親父「手加減しねぇからな…子を持つ親を舐めんじゃねぇ!!」ブンッ

親父「全員散開!男達と巨石を囲むように広がるんだ!」

先輩「了解!」バッ

女「やるしかないのね」タタッ

修道女「わ、私戦いなんて…!」ビクビク

同僚「回復役なら出来んだろwwとりあえずこっち来いwww」ズイッ

477 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:03:07.68 ID:hNFIRtqbO
-巨石内部-


パァァァァ…

勇者「…。」チャキッ

男「俺を殺そうって言うのか?」

勇者「この中にいる限り死にゃしねぇから安心しろ」

勇者「ま、斬られりゃ普通に痛いだろうけどな」ニヤッ

男「…っく!」ギリッ

478 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:03:54.68 ID:hNFIRtqbO
魔法石(ナビ)『…ん』コロンッ

男「な、ナビ!!」

魔法石(ナビ)『…男ちゃん、どうする?』

勇者「お、パートナーのお目覚めか」

男「ど、どうするって…」

魔法石(ナビ)『…あの人本気やで』ジッ

魔法石(ナビ)『形は歪んでしまっとぉけど、使命に燃える心はまだ残っとぉ』

魔法石(ナビ)『ウチらを取り込んででも…人の血で手を汚してでも』

魔法石(ナビ)『魔王を討ち取るつもりや』

勇者「そういう事だ。お前達には悪いが」

勇者「世界の平和という大義の為…」

勇者「お前達にはその礎となってもらう」

479 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:04:33.04 ID:hNFIRtqbO
男「バカな!大義の為なら普通に生きてる民の犠牲は厭わないってのか!?」

勇者「"普通"ね…」ギロリッ

魔法石(ナビ)『男ちゃん!話して分かる相手やないで!とりあえずこれ!!』

パァァァァ…ポンッ!

パシッ

男「こ、これは親父がくれた剣…!」チャキッ

勇者「ようやくやる気になったか」

勇者「ならば行くぞ…!」ダダッ

魔法石(ナビ)『男ちゃん!来るで!』

男「っ…ぬぁぁ!」

480 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:05:23.15 ID:hNFIRtqbO
ブゥンッッ!!!ガキンッ!!

男「っく!!なんて剣速…!」ギリギリッ

勇者「そう言いながらきっちり反応出来てるじゃねぇか」ニヤッ

勇者「久し振りの実戦、そうでなくちゃ面白くねぇや!!!」ババッ

勇者「ぅおりゃぁー!!」ブンッ

男「っく!!!このぉお!!」ブンッ

ガキンッ!!キンッ キィンッ

481 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:06:01.83 ID:hNFIRtqbO
-男の精神世界-


男「…っはぁ…はぁ…」ギュッ

勇者「お前、さっき普通がどうとか言ったな?」スッ

勇者「…お前達の"普通"を守る為に、俺達がどれだけのモンを諦めなきゃならなかったか」シマイ

勇者「お前、考えた事あるか?」

男「…っく、どういう事だ」チャキッ

482 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:06:39.32 ID:hNFIRtqbO
タタッ…

勇者「っはぁ!」ドカッ!バキッ!

男「ぐはっ!!」

勇者「剣士や賢者と違い、勇者はなろうと思ってなれるもんじゃねぇ」

勇者「ある日突然、啓示が下るのさ」ドカッ!バキッ!

勇者「それまで"普通"に暮らしてた俺は、啓示によってある日突然勇者に任命された」

勇者「そんな理不尽な事ってあるか?」

男「ぐっ…はぁはぁ」

483 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:07:24.17 ID:hNFIRtqbO
勇者「それまでの生活を…」ギリッ

勇者「友達と遊んだり、喧嘩したり」ゴスッ

勇者「誰かに恋をしたり」バシッ

勇者「"かったりーなー"なんて言いながら仕事したり」ドカッ

勇者「仲間と酒を飲んだり」ゲシッ

勇者「そういう"普通"を全部捨てて!」

ドカッ!バキッ!!

勇者「ただの若造が、いつ殺されるか分からない戦いの渦中に突然放り込まれて!!」

ブンッ!ドゲシッ!!

勇者「俺が諦めなきゃならなかった"普通"を謳歌するお前達の為に!!!」

ガシッ!ギリギリッ…

勇者「ずっと戦ってきたんだ!!!」

484 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:08:03.48 ID:hNFIRtqbO
男「が…は…」

魔法石(ナビ)『男ちゃん!!』

勇者「…でもそれも終わりだ」ニヤッ

ブンッッ ポイッ

男「ぐはぁぁ!!」ズシャーッッ

勇者「使命は果たす。魔王はこの手で討ち取る」チャキッ

勇者「お前達も道連れだ」

485 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:08:52.02 ID:hNFIRtqbO
-王宮地下 巨石の間-


ガキィィン!! キィン! キィン!!

親父「おらぁ!」ブンッ

騎士「ぐはぁ!」

親父「へっ…しかし、誰かを守りながら剣を振るうなんざ」

親父「あの日以来だな!勇者!」

先輩「お前か、それともお前か?女に手を上げやがったのは…」ギロリッ

先輩「腹は決まったのかよ!」

ブゥンッッ…ドカァン!

騎士「うわぁぁ!」

486 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:09:37.41 ID:hNFIRtqbO
女「修道女さん程ではない私の魔力でも、巨石の力を利用すれば…」パァァァァ…

女「こんな事も出来るのよ!」バシュゥゥ

ドッカーンッッ!!

同僚「おいおい女ちゃんwwここ室内www」

修道女「やたらと火炎属性の詠唱を用いるのは危険です!」

女「ふふっ…まだまだ」ニヤッ

同僚「あいつwwwしっかり魅了されてねぇかwww!?」

修道女「マズいです!いくら広いとは言え、室内であんな火力の詠唱は…」

同僚「みんなも何だかんだ戦い難そうだしな…あwww」ピコーン

487 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:10:27.55 ID:hNFIRtqbO
同僚「おいちょっと耳貸せwww」

修道女「な、何か思い付きましたか!?」ササッ

同僚「はい女ちゃんも集合www」

女「何よ今いいところなのに」ブツブツ

同僚「あのな…www」ゴニョゴニョ

修道女「…そ、それなら何とかなるかもです!」スッ

女「いけそうね…私も手伝うわ!」スッ

パァァァァ…

グワァァァ…

488 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:11:02.64 ID:hNFIRtqbO
同僚「巨石の力をレンタルしーのww」

同僚「ミラクルブースト転移魔法でwww」

女「巨石の間にいる私達を…」ビリビリ

修道女「騎士団の皆さん諸共まとめて転移させます!!」クワッ


パァァァァ…

バシュゥゥ!!!

489 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:15:20.15 ID:hNFIRtqbO
男「(啖呵切ったはいいが…さてどうする…?」チャキッ

カチャ…ポロッ

勇者「ん?なんか落ちたぞ」

魔法石(ナビ)『ホンマや、剣の部品ちゃう?』

男「どれどれ…あ、柄の丸い凹みって穴を塞ぐキャップだったのか」

男「…あ」ピコーン

490 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:16:35.03 ID:hNFIRtqbO
男「親父のくれた剣…キャップを外して出てきた丸い穴」スッ

男「これは多分、こう使うんだ」スポッ

カチャ…

魔法石(ナビ)『あらまぁなんと収まりのえぇ場所』スッポリ

パァァァァ…ブァン!!

オォォォ…

男「ナビと巨石の力を反応させて、強大な魔力を纏う魔法剣…」チャキッ

勇者「な、何だと…!?」

男「勇者さん」

男「これでもう一度勝負だ」チャキッ

491 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:17:16.80 ID:hNFIRtqbO
-王都市街地-


…バシュゥゥ!!!

親父「な!?外に出た…?」ポカーン

先輩「転移魔法で全員外に放り出したのか!」

先輩「助かるぜ!これで思う存分…」チャキッ

騎士団長「っく!…こ、ここは市街地!?王宮から転移してきたのか」

騎士団長「まぁ良い!貴様らを討つ事に変わりはない!!」チャキッ

騎士団長「ゆくぞ!!!」ブゥンッッ

先輩「おらぁぁ!!」ブゥンッッ

ガキィィン!!キィン!キィンキィン!!

492 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:17:49.42 ID:hNFIRtqbO
同僚「かーらーのーwww」スチャッ

親父「ん?まだ何かあんのか?」

同僚「親父さんwこれ持ってって下さいwww」ポイッ パシッ

親父「これは…通信用の魔法石?」

同僚「イッツ☆ショータイムwww」

ピピッ

493 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:18:32.50 ID:hNFIRtqbO
-王宮 国王執務室-


国王「さて、そろそろ頃合いか」

タッタッタッ…バタンッ!

警備兵「陛下!!」

側近「なんだ騒がしい!」

警備兵「報告します!き、巨石の間から…」

警備兵「男を除く全員が消失しました!」

側近「消失?…転移魔法か」ギリッ

国王「何だと!?しかしそんな事が可能なのか?」

側近「恐らく巨石の力を借りた超出力の転移魔法で…」

側近「巨石の間にいた者全員を一気に転移させたものかと…」

494 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:19:02.15 ID:hNFIRtqbO
国王「むぅ…閉鎖された空間で戦う事を避けたか、しかし一体どこへ?」

警備兵「分かりません、しかし…」

警備兵「現在、王都市街地の複数箇所で同時に戦闘が展開されていると報告が!」

国王「な、何だと!?」ダダッ

495 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:19:34.38 ID:hNFIRtqbO
ガララッ!

<キィン…ドカンッ…

国王「おい…これは…」

側近「…むぅ…」

国王「…市民を人質に取ったか…」ゴクリ

側近「あいつら…」ギリリッ

496 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:20:23.42 ID:hNFIRtqbO
-巨石内部-


勇者「そんな…バカな…っく」ボロッ

男「これで分かっただろ、俺はあんたにも負けない力がある」

男「だから…もういいんだよ」

勇者「…っくふふ、ふははは!!」

男「…?」

勇者「あーっははははは!!!!」

勇者「はは…はぁ…うっ…く…」ポロポロ

勇者「あぁ…あぁぁぁ」ポロポロ

男「…。」スッ

ギュッ…

497 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:20:54.51 ID:hNFIRtqbO
男「…勇者様」サスサス

男「長い間、俺達の為に」サスサス

男「…本当にありがとうございました」サスサス ギュッ

勇者「俺は…俺は…!!」ポロポロ

勇者「うぉぉぉぁぁぁぁぁ」ポロポロ

魔法剣(ナビ)『…。』ウルッ

498 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:21:30.41 ID:hNFIRtqbO
勇者「すまなかった、色々と」フカブカー

男「顔を上げて下さい」フルフル

男「あなたは元々、生身の人間ですから」

男「ここから出ようと思えば出られたはずなんです」

勇者「巨石の力に魅了された俺の弱さがそれを許さなかったって事か…」

499 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:24:46.66 ID:hNFIRtqbO
勇者「俺も戦士だ!正々堂々戦って負けたのだから、お前の言葉に従うよ」

男「勇者さん…」

勇者「だが、俺は諦めないぜ!」

勇者「人間として失われた時間は長いが、それでも俺は俺…」

勇者「魔王討伐に向けて!今度は俺自身の力で!」

男「俺にも出来る事があればお手伝いします」

魔法剣(ナビ)『マジか!!』

男「お前も手を貸してくれるか?」

魔法剣(ナビ)『あったりまえやん!なんたってウチら…』

男「最強のコンビだからな」ニコッ

男「ですが、その前に…」

勇者「…だな」ギリッ

500 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:25:24.82 ID:hNFIRtqbO
-王都 市街地-



…ブロロロ…

女「カーゴ…こんな時間に運行なんてあったかしら」

女「っていうかあれ…同僚くんのカーゴ!?」

ブロロロ…キキッ

同僚ナビ『集荷に参りましたわ!』

同僚「よう相棒wwささ乗った乗ったwww」グイグイ

修道女「え?え??」

女「今度は何をしようってのよ?」

バタンッ

同僚「騎士団狩りだよwww」

ブォン!ブロロロ…

501 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:25:55.14 ID:hNFIRtqbO
先輩「ん?無線?同僚か」ピピッ

同僚ナビ『私です!同僚さんは運転中なので私が騎士団の位置と人数をナビゲートします!』

親父「そいつは助かるぜ!なにせこいつら人数が…っとりゃ!」キィン!キィン!

同僚ナビ『王立騎士団は総勢100人の大所帯…ですが』

同僚ナビ『王都の街並みを隅々まで知り尽くした私達ならば』

同僚「どこに隠れてたって逃がさねぇよんwww」

女「更に同僚くんコンビの索敵情報を使って、私と修道女さんの詠唱を組み合わせて…」

修道女「攻撃魔法をピンポイントで転移!」

先輩「よし!これなら行けるぞ!」ブンッッ!

502 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:26:24.22 ID:hNFIRtqbO
同僚ナビ『先輩さん!2ブロック北に3人!』

先輩「了解!」ダダッ

同僚ナビ『剣士様はその先3ブロックに渡って2人ずつ計6人ですわ!』

親父「おうよ!剣士様なんてこっ恥ずかしいぜ!親父で構わねぇよ!」ニカッ

503 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:26:53.13 ID:hNFIRtqbO
同僚ナビ『女さん!南6ブロック先に8人固まっています!』

女「了解!行くわよ修道女さん!」パァァァァ

修道女「了解です!」パァァァァ

同僚「そして俺は、そこら辺にいる騎士団の連中を追い回して一箇所に追い込む係www」

同僚「たかまるぅwwww」ガチャン

504 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:27:25.38 ID:hNFIRtqbO
先輩「親父さん!」ピピッ

親父「おう!どした!」キィン!キィン!

先輩「この戦いが終わったら俺、親父さんに話が…!」ガキィン!

親父「あー聞こえない聞こえない!妙なフラグ立てんじゃねぇよバカ!!」

女「こっちには聞こえてるわよ…ホントにもう」クスッ

ブォン!ブロロロ…

505 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:28:03.76 ID:hNFIRtqbO
-王宮 国王執務室-



勇者「お久しぶりです、陛下」ペコッ

男「…。」ペコッ

国王「勇者!?本当に勇者なのか!??」ガタッ

側近「…。」ギリッ

勇者「賢者も久しぶりだな、今は側近か」

勇者「何とか言ったらどうだ」

側近「…。」フンッ

506 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:28:45.20 ID:hNFIRtqbO
男「陛下。20年前の勇者の落涙での一件」

男「そして、今回の俺とナビに降り掛かった出来事…」

男「全て公表して下さい」

男「勇者の命を犠牲にして、神の雷を作り出した事」

男「そしてその力を保つ為に、今度は俺とナビを…」

男「これは人の道に外れる行為です」

507 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:29:37.12 ID:hNFIRtqbO
勇者「俺が巨石の力に魅力されてしまったのは俺の不徳の致すところだ」

勇者「だが賢者、お前はそれを好機と捉え」

勇者「俺を一人の人間ではなく、兵器として利用してきた」

勇者「…俺はまだいい」

勇者「巨石の中とは言え、魔王を討つという使命の為にやってきた事は同じだからな」

勇者「だが、彼らにしようとした事は違う」

側近「…。」

508 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:30:13.58 ID:hNFIRtqbO
国王「勇者よ、そして男よ」スクッ

国王「そなた達は大義を前に小さき者を蔑ろにするな、と言うが」

国王「それは理想論だ…詭弁とも言える」

国王「誰一人傷付ける事無く、全てを守り抜く…」

国王「それが出来るならば私だってそうしたい」

国王「しかし現実を見よ」

国王「魔王を前に、我々人間の力はあまりにも無力だ」

国王「民を、世界を守る為」

国王「側近…賢者の考えは次善の策であると考え、私は支持したのだ」

509 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:30:41.98 ID:hNFIRtqbO
男「陛下!それは違います!」

国王「違わんな。私は王国の為、世界の為」

国王「私は悪にでもなろうと覚悟を決めたのだ」

国王「そなたにその覚悟はあるか?」ギロリッ

510 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:31:25.60 ID:hNFIRtqbO
ピピッ ピピッ

側近「こんな時に何だ!?」ガチャ

騎士団長『わ、私です…』

側近「おぉ騎士団長!城下の争いはどうなった?奴らを仕留めたのだろうな!??」

騎士団長『そ、それが…あっ』

親父『おいーっす』

側近「なっ!剣士か!」

親父『騎士団だっけか?コイツら全員制圧したぜ』

側近「何だと!??」

国王「か、代われ!」バッ

511 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:31:52.97 ID:hNFIRtqbO
国王「私だ!おぬしら、まさか騎士団を全員…」ワナワナ

親父『国王陛下か!安心しろよ、全員生け捕りだ』

国王「い、生け捕り…」

親父『まさか市街地で人斬りをするわけにゃいかねぇだろ』

親父『それにな、アンタ達と同じ土俵に立つつもりはねぇんだ』

国王「…どういう意味だ」ギリッ

512 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:32:26.80 ID:hNFIRtqbO
親父『っつーわけで、あとは俺の息子に委ねるとするか!』

親父『おい男!こんだけ騒がしきゃーさすがに目ぇ覚めたろ!!』

親父『そいつらにガツンと言ってやんな!!』ガチャ

国王「っく…」イテテ

男「親父ホントに声がデカいな…丸聞こえだぞ」クスッ

勇者「剣士…全然変わらないなあいつは!」ケラケラ

513 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:32:54.89 ID:hNFIRtqbO
男「…外の騒ぎで、王都の人々も目を覚ましたことでしょう」

男「どちらにしろ早晩、みんなに説明しなきゃいけなくなるはずです」

勇者「陛下、俺はこいつらに教えられました」

勇者「力の使い方次第では、誰かを守りながら戦う事も出来ると…」

国王「…むぅ」

514 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:33:21.84 ID:hNFIRtqbO
勇者「陛下!俺にもう一度チャンスを下さい!!」バッ

勇者「今度はこの手で!俺自身の力で!!」

勇者「魔王を討ち、平和を勝ち取ってみせます!!」

勇者「お願いします!!」フカブカー

男「俺からもお願いします!!」

515 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:34:27.88 ID:hNFIRtqbO
-王宮 国王執務室-



国王「…分かった」

側近「へ、陛下!!」

国王「…おぬしらの言うことは所詮理想論」

国王「だが、国を統べるものとして」

国王「初めから完全無欠の答えを諦め、次善の策に甘んじた私は間違っていたようだ」

側近「陛下!それは違います!!」

側近「王国の…世界の将来を憂い、陛下は自ら道を踏み外してでも民を守ろうとした!!」

側近「そんな陛下を誰が非難できるでしょう!??」


516 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:34:55.25 ID:hNFIRtqbO
国王「…側近よ、ありがとう」

国王「だが私は悟ってしまった」

国王「目的の為、自ら悪の道を歩まんとするような考え方は」

国王「魔王と何が違う?」

側近「そ、それは…」

517 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:35:23.28 ID:hNFIRtqbO
勇者「答えが出たようですね」

国王「あぁ…勇者よ」

勇者「はっ!」

国王「私の最後の頼みだ」

国王「魔王を討て」

国王「平和を勝ち取ってくれ」

勇者「承知致しました!!」ビシィッ

国王「男くん、そして魔法石に宿りし心よ」

男「はい!」

魔法剣(ナビ)『はぃな!』

国王「勇者の力になってやってくれ」

男「分かりました!」

魔法剣(ナビ)『やったんで!』

側近「…くっ」ギリギリッ

518 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:35:57.68 ID:hNFIRtqbO
-数日後 王都酒場街-


ワイワイ…ガヤガヤ…


<乾杯!!!カチンッ


同僚「ぷはーうめーwwwww」グビ

修道女「今回はまた大騒ぎでしたねー」ゴクッ

女「この一件で王立騎士団は解体…騎士団長は修行の旅に出るそうよ」

先輩「いい心がけだな、女性に手を上げるなんざ、紳士の風上にもだ」

先輩「あ、ラス1もーらい」パク

女「あ!私狙ってたのに!紳士の風上にも置けないわね!」

先輩「旨いもんは別だ」ニカッ

修道女「それは同感です」ケラケラ

519 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:36:24.89 ID:hNFIRtqbO
親父「勇者!お前全然変わらないなー!!」バシバシ

勇者「剣士もな!見た目は老けたが中身は全然だ!!」バシバシ

親父「それ褒めてねぇだろー!」ワハハ

520 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/01(火) 19:37:29.78 ID:hNFIRtqbO
男「昨日、陛下から将来的な王制廃止の通達が出たな」グビ

同僚「陛下の気持ちも分からんではないが…やり方がマズかったな」

男「この国はこれからどうなるんだろうなー」

先輩「議会が中心になって、民主主義の国を作っていくそうだ」

修道女「色んなものが変わっていくんですねぇ…」

同僚「シリアスな顔しちゃってwwどうせ1時間もしたらとっ散らかっちゃうんだろwww」ケラケラ

修道女「また馬鹿にしてー!!」ムキー

472.30 KB Speed:0.3   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)