剣と魔法と運送業

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321 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 10:57:25.83 ID:9QidveBa0
-同刻 王宮 陸軍警備部 監視室-


ウゥー!ウゥー!

警備部長「どこから攻撃されたか分からないだと!?」

職員「はっ。今調べておりますが、王国全域にある120の警備用の魔法石…」カタカタ

職員「そのどこにも魔族の出現は感知されておりません!」カタカタ

警備部長「人間のする事だ、如何に万全な警備体制を敷いた所でそれらが破られる事はある…が」

職員「残念ながら。しかし、そもそも魔族の出現すら発見できないなどという事は…」

警備部長「理論上有り得ない、か」

警備部長「どうなってやがる…まさか王国内部に…?」

322 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 10:58:16.75 ID:9QidveBa0
-同刻 鍛治職人の里-



<ドォォォン…!ドカァァン…!



親父「!」

男「!」



…モクモク



親父「…あっちは王都じゃねぇか」

男「ま、まさか!王都へ魔族の攻撃が!?」ダダッ

親父「っ!おい!待て!」ガシッ

男「こうしちゃいられない!協会や王都のみんなが…!」

親父「落ち着けって言ってんだよ!!!」クワッ

男「…っく」キィィン…

親父「ここから王都までどんなに急いだって2時間は掛かる、ドライバーやってりゃ分かんだろ!」

親父「王都には陸軍の奴らが常駐してるんだ、最悪の事態なんざそうそう起こねぇよ!」

男「で、でも…!」

親父「だから落ち着けって…!行くなとは言ってねぇ」

親父「ちょっと来い」スタスタ

男「…?」スタスタ

323 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 10:58:55.52 ID:9QidveBa0
-親父の家-


親父「里の炉があんなんなっちまう直前にな」ゴソゴソ

親父「ずーっと手を入れてた剣がようやく完成したんだよ…っと」ゴソゴソ

男「剣…?」

親父「あったあった」ガサッ

スチャ…キランッ

親父「持ってけ」スッ

男「親父…これって」スチャ

親父「俺が昔使ってた剣だ」

親父「お前の体格や剣技に合わせて仕立て直してある」

男「今使ってるのより少し短い…そしてすごく軽い」ブンッ

親父「お前の手に馴染むハズだぜ?何せ俺が育てたんだからよ」

親父「剣も、剣士もな」ニカッ

324 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 10:59:41.53 ID:9QidveBa0
男「ん?この柄の丸い凹みは…」

親父「いいか男」ズイッ

親父「迷いに克つんだ」

親父「剣に限らず、最後は腹括った奴が生き残る」

親父「勝とうとなんざ思うな」

親父「とにかく生き残れ」

親父「人間、生きててナンボだ」ニカッ

男「親父…分かったよ」

親父「気ぃつけて行ってこい」

親父「そして必ず無事で帰って来い」

親父「お前達の居場所はここにある」

男「あぁ…ありがとな」ニコ

325 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:00:50.69 ID:9QidveBa0
-???-



…ヒュゥゥン…バシュッ!

ドサドサッ!!

同僚「のわっ!いってぇwww」

修道女「ち、着地失敗です…あ」

ぽよーん

修道女「あ、あの同僚さん…手をどけて頂けますか…///」

同僚「む、これは失敬wwまさにこれこそラッ◯ースケベwww」サッ

修道女「もう!むしろスケベの方を伏せて下さい!」

同僚「とりあえず手の残り香をばww」クンカクンカ

修道女「へ、変態!!」バシバシ

326 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:01:29.13 ID:9QidveBa0
シィィィン…

同僚「…どこだここww?」

修道女「真っ暗で何も見えませんね、広い空間だという事は分かりますけど」

同僚「段々目が慣れてきたなw」

同僚「ん?あのデカいまん丸いのは何ぞww?」

修道女「岩、ですかね?それにしては…ま、まさか魔法石とか!?」

同僚「いやいやいやwww魔法石にしちゃデカ過ぎでしょwwww」

同僚「ア◯ファード位あんぞwww」

修道女「ですよね、こんな巨大な魔法石なんて聞いた事が」



バババッ

327 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:02:10.88 ID:9QidveBa0
同僚「っ!?眩しwww」

修道女「急に灯りが…」

警備兵1「おい貴様ら!そこで何をやってる!!」ガチャ

警備兵2「ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ!!どうやって侵入した!!」ドタドタ

同僚「やべwwいっぱい来たwww」

修道女「わ、私達完全に侵入者だと思われてますよ!!」アセアセ

同僚「まぁ間違ってないわなww故意じゃねぇけどww」

警備兵3「武器を捨てろ!!」スチャ

警備兵4「両手を上げて膝を付け!!」

同僚「あのーww俺ら王国物流協会のモンでしてww」

警備兵5「む?確かにそれは協会員証…」

警備兵6「騙されるな!偽造したものに違いない!!」

警備兵7「そうだ!大体こんな所へ届け物などあるものか!!」

同僚「確かにwwウチら空荷でーすwww」パタパタ

修道女「ふ、ふざけてる場合ですか!!」

328 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:03:00.64 ID:9QidveBa0
グイッ

同僚「おい、ここから飛べるか?」ヒソヒソ

修道女「ど、どうでしょう…こういう場所では結界が張られている事も」ヒソヒソ

同僚「ってかよく見りゃアイツら王立騎士団じゃねぇか」ヒソヒソ

修道女「っ!という事はここって王国の中…!?」ヒソヒソ

同僚「どうやらそうみたいだな…とりあえずわけわかんねー外国じゃねぇなら」ヒソヒソ

同僚「どうにかなんだろ」ニカッ

329 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:03:42.89 ID:9QidveBa0
同僚「あー皆さんwとりあえず身分証を提示するのでご覧遊ばせww」ポイッ

同僚「ほらお前もww」

修道女「は、はいです!」ポイッ

警備兵8「んーどれどれ…同僚…王都在住…お前写真写り悪いなぁー」

同僚「やめてww気にしてるのにww」

警備兵9「こっちの娘は王立修道院の者のようです!」

同僚「実は俺達、物流協会の新規事業の担当でしてwww」ヘーコラ

かくかくしかじか

330 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:04:13.80 ID:9QidveBa0
同僚「…ってなわけでしてww」テモミ

警備兵10「そうか、あの騒ぎで転移に失敗したと」

警備兵11「物流協会事務局と連絡が取れました!この者たちの言っている事は本当です!!」

警備兵12「と、いうわけだ。疑ってすまなかったな」武器シマイ

警備兵13「しかし不法侵入には違いないぞ?物流協会とは言え、配達でもないんだからな」

同僚「仰る通りでww」ヘヘーッ

修道女「す、すみませんでした」シュン

331 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:04:46.36 ID:9QidveBa0
警備兵14「まぁ事情は分かったから拘束はせん。速やかに立ち去るんだな」クルッ

同僚「ありがとうございますぅwww」フカブカー

修道女「か、感謝します!」フカブカー

同僚「あw失礼ついでに何ですけどww」

警備兵15「ん?何だ?」

同僚「俺達文字通り飛んで来たもんで、帰り道が分かんねーんすわwww」

同僚「ここって王国のどの辺なんすかねww?」

警備兵16「あぁそうか。ここはな、王宮の地下にある部屋」

警備兵17「巨石の間だ」

332 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:06:06.49 ID:9QidveBa0
-翌朝 王都市街地-



ワイワイ…ガヤガヤ…

売り子「号外!号外!!」ペラッ



[王都襲撃は王国内部からの犯行か!?]

[暗躍するテロリストの影!!]




-物流協会事務局 女の執務室-


女「災難だったわね」

同僚「まったくひでぇ目に遭ったぜww転移した先が徒歩圏内とかwww」

修道女「ご迷惑をおかけしました」フカブカ

女「顔を上げて頂戴。2人のせいじゃないわ」フルフル

同僚「しかしあのデッカい魔法石www一体何なんだww?」

修道女「警備兵さんは巨石の間と仰っていましたけど…」

女「巨石の間…巨大な魔法石」

女「そんな話聞いた事もないわ」

修道女「私達の見たものが巨大な魔法石であるなら、私の詠唱と何らかの原因で干渉して」

同僚「転移魔法が邪魔されたってかwww」

女「そうね…と言うか、引き寄せられたのかも知れないわね」

修道女「引き寄せられた…それじゃ!」

女「まだ憶測だけれど」

女「何らかの意思が働いているのかも」

同僚「石だけにってかwww」ケラケラ

女「…。」

修道女「…同僚さん、一回ぶっていいっすか」ジトッ

333 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:06:54.45 ID:9QidveBa0
-同刻 物流倉庫事務所-


男「みんな無事か!?」バタンッ!

魔法石(ナビ)『!お、男ちゃん…』ウルウル

魔法石(ナビ)『怖かったよぉぉぉぉぉぉ』ビエーン

男「あぁ、もう大丈夫だ」ナデナデ

配車係「お、男さん!」タタッ

男「配車係さん!無事で何よりです」

配車係「事務局を含めて、協会の職員は皆さん無事のようです」

男「そっか…良かったぁ」ホッ

配車係「市街地では軽傷者が出ているようですが、それでも大した被害は無かったようで」

男「親父の言ってた通りだ、さすが王国陸軍」

配車係「まぁそれはそうなんですが…」

男「どうしたんですか?」

配車係「…人で溢れて、かつ縦横に入り組んだ王都に攻撃が加えられて」

配車係「なのに1人の死者もない、というのは…」

男「不幸中の幸いでしたね」

配車係「…本当にそうでしょうか?」ペラッ

334 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:07:32.62 ID:9QidveBa0
男「これは?」

配車係「市街地で配られているタブロイドの号外です」

男「王国内部…テロリスト!?」

男「じ、じゃあ外から攻撃をされたんじゃなくて」

配車係「分かりません。タブロイドなんて面白おかしく書き殴ってナンボですから」

配車係「ただ王都の人達は疑心暗鬼に陥っているようで…」

魔法石(ナビ)『ヒック…ヒック』ウルウル

男「仕方ないです、みんな…」

男「怖かったんですよ、な」ナデナデ

魔法石(ナビ)『うぅ…』ウルウル

335 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:08:21.20 ID:9QidveBa0
-夜 物流協会事務局 大会議室-



男「さて、集まったな」

女「明日から復旧作業やら何やらで忙しくなると思うから」

女「今の内に情報を付き合わせておきましょう」

同僚「知りたがりのおねーさんだな全くwww」ヒソヒソ

男「悪いな、昔からなんだ」ヒソヒソ

女「コホン!聞こえてるわよ」

女「まずは同僚くんの見てきた勇者の落涙ね」

同僚「ありゃあスゴかったwww空間が消し飛ぶって何だそりゃwww」

修道女「私は直接見たわけではありませんけど、それだけの膨大なエネルギーを放出する事は」

修道女「いかに先代勇者様であっても、独力では不可能です」

女「何らかのエネルギー源と先代勇者の力が反応して、大爆発を起こした…」

女「そういう事ね」

修道女「その可能性はあります」

336 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:09:26.21 ID:9QidveBa0
男「北西の村で起こったような事が、水の街でもあったらしいよ」

女「水の街って、クリスタル細工で有名な?」

男「そうそう、まさにそのクリスタル細工を積みに行ったんだけど」

男「そこに流れ弾が飛んで来たのもちょうど20年前らしいんだ」

女「それじゃあ、もしかしたら勇者の落涙による被害だったのかも知れないわね」

同僚「…人が亡くなったのか?」

男「…あぁ、水の街近くの小島を丸ごと墓地にしたらしい」

同僚「…そうか」ギリッ


337 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:10:07.79 ID:9QidveBa0
男「そこへ来て、巨大な魔法石の登場か」

女「王宮地下の巨大な魔法石…巨石が、勇者の落涙を引き起こしたものだったとしたら」

女「事故後の王国軍の派兵、その後の軍の解体と再編成」

女「この辺りの辻褄が合うわね」

修道女「当時の王国軍が勇者の落涙から巨石を運び出して、その後事実関係を隠蔽する為に組織ごと解体した…」

同僚「展開が分かりやすくてwww」

男「でもさ、そこまでして巨石の存在をひた隠しにする意図は何だ?」

修道女「"不幸な事故がありました、原因はこの魔法石でした"」

修道女「先代勇者様はお気の毒ですが、それで話の筋は通りますもんね」

338 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:10:43.31 ID:9QidveBa0
先輩「悪いな、お待たせ」ガチャ

同僚「先輩ちーっすwww」

男「お疲れ様です、運行だったんですね」

先輩「あぁ、男の代打で西の街へな」

先輩「帰って来て驚いたぞ、なんだこの有様は」

魔法石(ナビ)『なぁなぁ、ウチもえぇかな?』ピョンピョン

339 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:11:23.53 ID:9QidveBa0
女「ナビちゃん、何かあるの?」

魔法石(ナビ)『あんな?攻撃が始まる直前に変な声が聞こえてん』

女「変な声?」

同僚ナビ『地の底から響くような、苦しげな呻き声でしたわ』

同僚ナビ『それも、私達だけに聞こえていたようで』

男「ナビ達にだけ…?」

ナビ『でな?呻き声の方はな?遠くから聞こえとぉ感じやってんけど』

同僚ナビ『そのすぐ後、今度はもっと近い場所から』

同僚ナビ『そう、本当に耳元で叫ばれているかのような声が聞こえましたの』

ナビ『あれはビビったなぁ…でもそっちは呻き声というよりは咆哮やな?』

同僚ナビ『えぇ、勇壮ささえ感じましたわ』

340 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:12:03.36 ID:9QidveBa0
女「呻き声と咆哮…それらを合図にして」

女「王国内部に潜伏していた魔族が一斉に攻撃を仕掛けた…?」

男「でも警備網のどこにも魔族は引っ掛からなかったんだろ?」

先輩「俺もそう聞いてるぞ」

女「そこが分からないわね、魔族の反応がどこにも感知されないなんて」

同僚「そりゃやっぱアレじゃねww王国に反発するテロリスト集団www」

先輩「人間の敵は人間ってか、それもあり得ない話じゃないが…」チラッ

男「今のところ、全てが憶測か」

女「何かがまだ欠けているわね」ギリッ

341 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:13:34.31 ID:9QidveBa0
-同刻 王宮 国王執務室-



側近「巨石の間に侵入者?」

騎士団長「はっ。物流協会の職員と王立修道院のシスターです」

騎士団長「話によると、物流協会の新規事業の一環で極東地域への魔法転移を試みたところ」

騎士団長「王都襲撃のタイミングと重なり、転移に失敗したとのことで」

側近「偶然迷い込んだという事か」

騎士団長「そのようです。彼らの身元と証言は物流協会へ照会済みです」

側近「そうか…むぅ」チラッ

342 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:14:10.91 ID:9QidveBa0
国王「…騎士団長」ギロッ

騎士団長「っ!はっ」ゾクッ

国王「巨石の間の存在は極秘事項だ」スクッ

国王「我々と、私の近衛騎士団である君達以外には絶対に知られてはならん」

国王「その2名から情報が漏洩するような事は何としても避けるのだ」

国王「どんな手を使ってでも、な」

国王「言っている意味が分かるか?」ギロリ

騎士団長「は、はぁっ!」

側近「へ、陛下」

国王「構わん。事ここに至り、だ」

国王「侵入した2名と、その周囲の人間を監視せよ」

国王「公には手配を掛けるな、気取られぬよう秘密裏にだ」

国王「情報の漏洩を防ぐ為、止むを得ん場合は」

国王「…構わん、殺害しろ」

343 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:14:47.24 ID:9QidveBa0
側近「よろしかったのですか?あのような踏み込んだご発言…」

国王「事ここに至り、と申しただろう」

側近「しかし…侵入者2人はマッピングシステムの担当者」

側近「今消してしまうのは些か早計かと」

国王「大義の為ならば止むを得まい、駒はまた足せばよいのだ」

国王「…巨石の秘密は何としても守らねばならん」

国王「我らが希望、神の雷(いかずち)の為にな」

344 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:16:17.13 ID:9QidveBa0
-数日後 王都酒場街-

[BAR REQUIEM]



カランッカランッ…

同僚「ここよく無事だったなwww」

先輩「ホントだな」

男「なんだか…話が大事になってきましたね」グイッ

同僚「ホントそれww王国の秘密だテロリストだって話がインフレし過ぎwwwジ◯バブエかwww」グビ

男「俺達ただのドライバーだってのに」ハァ

先輩「全くな。あ、そういえば男さ」

345 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:16:56.01 ID:9QidveBa0
男「何ですか?」

先輩「配車係とは話したのか?」

男「配車係さん?」

同僚「話した事すら忘れてたりしてwwww」ケラケラ

先輩「おい止めとけよ…いや何だ、お前最近その…」

同僚「物忘れの具合はどうですかーお爺ちゃんwwww」ケラケラ

男「物忘れ?」

ゴチンッ

346 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:17:46.96 ID:9QidveBa0
同僚「」ピクピク

先輩「…配車係の奴がさ、ナビちゃんに相談されたんだと」

先輩「あの子、心配してるみたいだぞ?」

男「あぁそういう事ですか。いやぁお恥ずかしい」タハハ

先輩「そんなにしょっちゅう色んな事を忘れちまうのか?」

男「自分ではそれ程気にしてないんですけどね…まぁでも」

男「ナビに助けられてるから気にならないだけなのかなぁ」

先輩「疲れでも溜まってるんじゃないか?それとも何か悩みでもあるのか?」

男「悩み…うーん強いて言えば」

先輩「どうした?話なら聞くぞ?」

男「…ナビの事、ですかね」フッ

先輩「ナビちゃん?何かあったのか」グイッ

先輩「あ、俺アードベッグを」カランッ

男「グレンキンチーを」

347 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:18:25.76 ID:9QidveBa0
<お待たせしました


先輩「そうか…ナビちゃんがね」

男「初めてですよ、女の子に好きだなんて言われたの」ハハッ

先輩「それで、お前はナビちゃんの事どう思ってるんだ?」

男「…。」グイッ

男「…好き、なんだと思います」ジッ

先輩「思いますじゃねぇだろ」バシッ

男「いてて…ですよね」

男「…でも考えちゃうんですよ、色々」

先輩「…。」グイッ

348 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:18:58.97 ID:9QidveBa0
男「生身の人間である俺と、魔法石に宿った"心"だけのあいつと…」

男「もし仮に俺達の心が同じ方を向いていたとして、その先は?とか」

男「魔法石の耐用年数は大体150年…」

男「俺が死んだ後、あいつはどうするんだ?とか」

男「そもそも俺なんかがあいつの事、本当に幸せにしてやれるのか?とか」

先輩「…そういう事か」フゥ

先輩「あのな男、まずn同僚「まずお前、ちょっと勘違いしてねぇか?」

男「あ、起きた」

349 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:19:49.80 ID:9QidveBa0
同僚「お前ナビちゃんの旦那になったわけでもねぇのに幸せにするだ何だってのはおかしくねぇか?」

男「そうは言うけどさ、考えちゃうんだよ」

同僚「そもそもよ、さっきから聞いてりゃデモデモダッテばっかじゃねぇか」フンッ

同僚「お前本当にナビちゃんの気持ちになって考えてるか?」

男「あいつの気持ち?」

同僚「そーだよ、お前が気にしてる事なんて全部自分の都合じゃんか」

男「そ、それは違うぞ」ムッ

同僚「違わないね。お前は自分が傷付かないように言い訳してるだけだ」

同僚「実体がない?先に死ぬ?んなこと関係あるかよ!」ダンッ

男「関係あるだろ!」カチン

男「1人取り残される気持ちはお前には分かんないよ!無責任な事言うな!」ダンッ

350 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:20:38.29 ID:9QidveBa0
先輩「おいお前ら声がデカいぞ」シーッ

男「大体何だ?さっきから聞いてればお前の言ってる事は全部ブーメランじゃやいか」

同僚「何だと?」カチン

男「修道女さんとの事、お前どう思ってるんだよ」

同僚「あいつの話は今はかn」男「関係あるね!」

男「あれだけ真っ直ぐ気持ちを向けてくれてる人に対して、お前何やってんだよ!」

同僚「あいつは聖職者だぞ!俺なんかがおいそれと手を触れるわけにいくか!」

男「それこそ言い訳じゃないか!向こうはお前が手を取ってくれるのを待ってるんだぞ!」

同僚「うるせぇ!お前に何が分かる!」

男「何だと!?」ギロッ

同僚「何だよ!?」ギロリ

351 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:21:12.29 ID:9QidveBa0
先輩「お前らいい加減にしろ!喧嘩するなら外で…ん?」



男「…っぷ」クスクス

同僚「…www」クスクス



男「っぷははは!」ケラケラ

同僚「これには大草原不可避www」ケラケラ

先輩「な、なんだぁ…??」ポカーン

352 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:21:52.61 ID:9QidveBa0
男「何だよ俺達、腹割って話してみれば…」クスクス

同僚「まんま同じよーな事で悩んでやんのwww」ヒーヒー

男「似た者同士だなー」ニコッ

同僚「結局それなwww」ニカッ

男・同僚「マスター!お代わり!」

先輩「…ったくコイツらは」ハァ


353 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:22:56.57 ID:9QidveBa0
-翌日 王都市街地-


ブロロロ…

同僚「久しぶりの本業だわさwww」

同僚ナビ『やっぱり運転席にあなたが居るのはしっくりきますわね』ニコッ

同僚「だろーwww?復旧工事で通れる道が限られてるがwww」

同僚「そこは地元民の意地www私めにお任せあれwww」

同僚ナビ『流石ですわね。時間管理はお任せ下さいませ』

同僚「頼むぜwwほんじゃ行きますかwww」

ブォン!ブロロロ…




ササッ

偵察兵「…。」

354 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:24:31.22 ID:9QidveBa0
-同刻 王都外れ 北の街道-


ブロロロ…

男「今日は北の山脈まで木材を積みに行くぞ」

ナビ『王都の復旧工事に不可欠やかんな!』

男「…襲撃の時、一緒にいてやれなくてすまなかった」

ナビ『大丈夫やで。どーちゃんも配車係さんもおったし』フルフル

男「…王都が狙われた今、確実に安全と言える場所はない」

男「配車係さんに交渉して、退勤後も魔法石(キー)を持ち帰る事にしたよ」

男「これでいつでも一緒だ」ニコッ

ナビ『え!え!!えぇ!!!?』

355 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:25:20.23 ID:9QidveBa0
男「俺はお前を守りたい。出来る限り側にいたい」

男「勝手に決めちゃったけど、いいかな?」

ナビ『お、男ちゃん…それって…』ウルウル

男「…ダメ、だったか?」

ナビ『んなわけあるかいな!おーるおっけーやで!!!』ピョンピョン

男「良かった、それじゃよろしく頼むよ」ニコッ

ナビ『ここ、こちらこそ不束者ですが』ペコ

男「ははっ何言ってんだよ」ケラケラ

ナビ『(男ちゃんと一緒…昼も夜も』ドキドキ

ナビ『(マジか…マジなんかぁ…)』ドキ
ドキ

ナビ『えへ…えへへぇ…』ニヤニヤ

ポチ

[魔法石過給装置ヲ作動シテイマス…]ブォォォォ

ナビ『あ』

男「おいおいおいおい」


バヒューーーーーン…!!!




ササッ

偵察兵「…。」

356 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:26:07.34 ID:9QidveBa0
-同刻 王立修道院 正門-


修道女「んー久しぶりに帰って来ましたー」ノビーッ

シスター長「おかえりなさい。お元気そうで何よりです」ニコッ

修道女「ただいま戻りました!」ペコッ

修道女「王都の襲撃で新規事業はしばらくお休み…」

修道女「その間、またみんなと一緒に神に仕えたいと思います」ニコッ

シスター長「…。」ジーッ

修道女「?」

シスター長「その事なんですが…」ハァ

修道女「へ?何ですか??」

シスター長「…お茶でも淹れましょうか」スタスタ

修道女「わ、私やりまーす!」タッタッ

357 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:26:48.26 ID:9QidveBa0
-修道院 中庭-


シスター長「…これは私の勘なのですが」トクトク スッ

シスター長「…。」ズズッ

修道女「…。」ズズッ

シスター長「…あなた、恋をしていますね?」

修道女「…っ!げほげほっ!」

シスター長「やはりそうですか…」ハァ

修道女「…あ、あのっ」チラッ

シスター長「私はあなたの育ての親ですよ?顔を見れば分かります」

修道女「うぅ…そう、ですよね」シュン

シスター長「…ふぅ」コトッ

修道女「…。」ビクビク

358 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:27:57.14 ID:9QidveBa0
シスター長「あなたもご存知の通り、私達王国正教会のシスターは、清貧、貞潔、服従の誓願に従い日々の生活を送っています」

シスター長「まぁ清貧に関しては、修道院でエールの製造を伝統的に行なっておりますので」

シスター長「嗜む程度、の飲酒は認められておりますが…」

修道女「た、嗜む程度…ですよね」タハハ

シスター長「オホン!自覚があるのならば、ここでクドクド申しません」

修道女「はい…すみません」シュン

シスター長「問題は貞潔。我々シスターは結婚はもちろん、男性との交際も認められておりません」

修道女「神の花嫁たる存在、ですね」

シスター長「そうです。この掟は飲酒云々ほど寛容ではありません」

シスター長「そこは承知しておいでですね?」キッ

修道女「…はい」


…パタパタ…チュン…チュンチュン…

359 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:28:37.17 ID:9QidveBa0
シスター長「あなたがここへ来て、もう20年ですか」

シスター長「早いものですね」

シスター長「今でも思い出します…」

シスター長「あなたが小さい頃はそりゃーもう大変でした」ニコニコ

修道女「そ、その節はご迷惑を…」

シスター長「とんでもない!」フルフル

シスター長「子供のいる信者の方達に教えを乞いながら、悪戦苦闘の子育て…」

シスター長「本来子を成す事のない私達が、偶然にも授かった…」

シスター長「幸せで満ち足りた時間でした」

シスター長「あなたと過ごした時間は、私の人生における宝物です」ニコッ

修道女「し、シスター長…」ウルッ

360 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:29:37.19 ID:9QidveBa0
シスター長「…あなたは私達と違い、自らの意志で修道の門を叩いたわけではありません」

シスター長「ですから王国正教会の掟も、あなたを縛り付けることは出来ないのです」

修道女「…っ!そ、それって!」バッ

シスター長「最後まで聞きなさい」

シスター長「…とは言え、一度は神の従者として仕えた身」

シスター長「自らの道を歩むのならば、けじめはつけなければなりません」

修道女「け、けじめって…嫌」フルフル

シスター長「ベールを脱ぐのです」

361 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:30:36.67 ID:9QidveBa0
修道女「い、嫌です!ここは私の家です!!」ブワッ

修道女「ここには!!私を愛してくれた神と…!!あなたが…!!」ポロポロ

シスター長「…家を捨てろ、神を捨てろ、などとは言っていません」ナデナデ

シスター長「ですがけじめとして、一度ここを離れる必要はあります」

修道女「…っく…ひっく…」ポロポロ

シスター長「安心なさい」ナデナデ

シスター長「あなたがどんな道を歩もうとも、神はあなたと共にあります」

シスター長「それは私も同じです」

修道女「し、シスター長ぉ…」ポロポロ

シスター長「あなたの家はここにあります。いつでも、いつまでも」ナデナデ

シスター長「結論を急ぐ必要はありません。じっくり考えてみると良いでしょう」

修道女「…はい」グスッ



ササッ

偵察兵「…。」

362 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:31:39.42 ID:9QidveBa0
-西の街 陸軍第1倉庫-


ゴゥンゴゥン…

兵士「ホントなんですって!」

先輩「陰謀論とか好きだなーお前も」ケラケラ

兵士「陸軍内部ではもっぱらの噂ですよ!?例の襲撃事件が!」

先輩「国王の自作自演だってか?んな事して何になるってんだ」シュボッ!スゥ

兵士「あ、ここ禁煙…」

先輩「ん?ほれ」スッ

兵士「あ、こりゃどうも…」シュボッ スゥ

363 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:32:38.23 ID:9QidveBa0
兵士「…じゃなくって!あの攻撃は開発中の新兵器の実験だったんじゃないかって話です!」

先輩「新兵器?」スパァァ

兵士「何でも地図情報と転移魔法を組み合わせて、狙った場所にピンポイントで攻撃を仕掛けるって寸法!」

兵士「らしいです!噂ですけど!」

先輩「地図情報と転移魔法…」

兵士「ただ、分からないのが動力源なんですよねー」

兵士「今回王都内で被弾したのが約30箇所…」

兵士「それだけの場所を同時に、転移魔法も併用しての攻撃ですからねー」ペラペラ

兵士「そこいらの詠唱士や魔法石じゃーとても無理ですもん!」ペラペラ

兵士「…って聞いてます?」

先輩「…あぁ」


ササッ

偵察兵「…。」

364 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:34:15.84 ID:9QidveBa0
-第1倉庫 裏手-


偵察兵「…。」コソコソ

先輩「偵察兵ちゃんみーっけ!ぽこぺん!」タッチ

偵察兵「!!」バッ

先輩「待てよ」ガシッ

ギリギリッ…

偵察兵「…っく」

先輩「…元軍人を舐めんじゃねーぞボンクラ」ギロリ

先輩「何を探ってやがる?言え」ギリギリッ

偵察兵「…っ!」

先輩「その制服、騎士団だな」

先輩「軍とは別組織、国王陛下お抱えの私兵の登場か…」

先輩「おいおい陰謀論も捨てたもんじゃねぇってか?」

365 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:34:54.09 ID:9QidveBa0
先輩「なんとか言えよクソネズミ」ギリギリッ

偵察兵「…ぅ」クラクラ

先輩「あぁ首締めてたらしゃべれねーか、悪い悪い」ユルメ

偵察兵「…っかは!げほげほ!」

先輩「ほれ緩めたぞ、言え」

偵察兵「…!」ババッ ダダダッ…

先輩「あっ!…逃げられちゃった」

先輩「何だよタッチしたじゃんかー」ケラケラ

先輩「でもま、大体ざっくりふんわりとは」

先輩「見えてきたんじゃねぇの?」ギロリ

366 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:35:48.44 ID:9QidveBa0
-???-



ナビ「ここ…どこやろ」トボトボ

ナビ「真っ白でなーんも見えへんなぁ」トボトボ

ナビ「ん…?誰かおるな…」

ナビ「…男ちゃん?」

???「…。」

ナビ「なぁー男ちゃーん!ここどこ?」タタッ



???「…。」ギュッ

ナビ「っ!?ちょ、ちょっと男ちゃん!」カァァッ

ナビ「いきなりどしたん?寂しくなってもうたん??」アセアセ

???「…。」

ナビ「も、もう何か言うてぇな…間が持たんやん…」テレテレ

???「…。」

ナビ「なぁ男ちゃんってば…」チラッ

ナビ「…え?」

367 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:36:31.84 ID:9QidveBa0
ナビ「あ、アンタ、誰や」ガクガク

???「…。」ギュッ

ナビ「い、いや!離して!!」ジタバタ

ナビ「嫌や!アンタと一緒には行かれへん!!」ジタバタ

???「…。」ニヤァ

ナビ「ひっ!いや…いやぁぁぁ!」

368 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:37:18.44 ID:9QidveBa0
-王都 男の家-

魔法石(ナビ)『!!!』ビクッ

魔法石(ナビ)『…ゆ、夢』ガクガク

男「…ん、もう朝か」パチ

魔法石(ナビ)『っ!ご、ごめん起こしてもうた』

男「平気だよ…ふわぁー」ノビーッ

魔法石(ナビ)『(せ、せやった)』

魔法石(ナビ)『(夕べから、夜も男ちゃんと一緒におれる事になって)』

魔法石(ナビ)『(今日が初めての朝…やのに)』

369 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:38:07.24 ID:9QidveBa0
魔法石(ナビ)『もう最悪やー』コロンッ

男「どうした?怖い夢でも見たか」

魔法石(ナビ)『だいせーかい。もう…せっかくの初夜やったのに』ブー

男「初夜って…まぁ間違ってないけど」

男「おはよう、ナビ」ニコッ

魔法石(ナビ)『うん…おはようさん。男ちゃん♪』ニコッ

370 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:39:04.50 ID:9QidveBa0
-物流倉庫 事務所-


男「監視されてる?」キョトン

先輩「そうだ。俺とお前、恐らく同僚と修道女さんもな」

男「な、何で俺達が…?例の巨石の件ですか!?」

先輩「だろうな。とにかく国王陛下お抱えのネズミが出てきた以上、これは緊急事態だ」

男「き、緊急事態って言われても仕事もあるし…」

魔法石(ナビ)『せやで。これからまた港湾倉庫まで行くんやもん』

先輩「むしろ普通に仕事してろ、連中が気にしてるのは恐らく機密の漏洩だ」

先輩「なぁに、怪しい動きをしなきゃ何にもされねぇから安心しろ」

男「安心しろって言われても…なぁ?」

魔法石(ナビ)『見張られとぉって考えるだけで陰鬱な気になるわ…』

先輩「ははっ。まぁしばらくの辛抱だな」

371 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:39:39.23 ID:9QidveBa0
先輩「むしろその位緊張感がある方がいいんじゃないかー?」ニヤニヤ

男「それは、どういう」

先輩「仕事中にイチャイチャすんのも程々にしろって事だよ」ニカッ

男「なっ…!」カァァッ

魔法石(ナビ)『ちょっ…!』カァァッ

先輩「お前らホントに息ピッタリだなー!」ワハハ

先輩「…まぁそれは冗談として」

先輩「もはや俺達の敵は魔族だけじゃないかも知れん。それだけ忘れんな」

男「…分かりました」

372 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:40:39.38 ID:9QidveBa0
-王都 外れ 北の街道-



ブロロロ…

先輩「地図情報、転移魔法、動力源…」

先輩「地図情報は有る」

先輩「何せ王都の中なんだ、詳細な地図情報なんぞいくらでも用意できる」

先輩「動力源も有る」

先輩「魔法石の蓄積できる魔力はその大きさに依存する、らしい」

先輩「例の巨石を使えば問題ないだろう」

先輩「となると、残るは…転移魔法」

373 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:41:23.41 ID:9QidveBa0
先輩「いくら膨大な魔力があろうと、術者がいなけりゃ詠唱は出来ない」

先輩「…攻撃の瞬間、修道女さんは同僚と一緒にいた」

先輩「と、なると…いや」

先輩「そんなワケはない…」

ブォン!ブロロロ…

374 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:42:04.53 ID:9QidveBa0
-王都外れ 東の街道-


ブロロロ…

…ちゃん…とこちゃん…

男「…ん…」

ナビ『男ちゃんってば!!!』クワッ

男「!!」ビクッ


ブロロロ…キキッ

375 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:42:47.30 ID:9QidveBa0
ゴゥンゴゥン…

ナビ『大丈夫?気分悪いんか??』

男「俺…今、寝て…?」クラクラ

ナビ『うぅん。たぶん眠ってはなかった』フルフル

ナビ『なんや目ぇ開いたまんまぼーーっとしとって』

ナビ『話し掛けても何も!心ここにあらずみたいな感じやったで!』

男「心が…」

ナビ『なぁホンマに大丈夫!?体調悪いなら無理せんと休も!?』

ナビ『それか配車係さんに言うて代わりの人を…』

男「…それはダメだ、ただでさえ復旧作業でドライバーは大忙しなんだから」

男「少し休めば良くなると思う…心配掛けてゴメンな」ヘラッ

ナビ『そんなんえぇて!なら路肩寄って休憩しよ?な?』カチッカチッ

男「あぁ…」クラクラ


ササッ

偵察兵「…。」ピピッ

376 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:43:34.57 ID:9QidveBa0
-夜 物流協会事務所-



女「運転中に意識を?」

配車係「はい。今日の運行はナビちゃんのおかげで無事に終わりましたが」

配車係「僕としても、このまま男さんに業務に就いてもらうわけには」

女「分かりました。事務局の方で手配します」

女「まずは医療機関で検査を受けてもらいましょう」

魔法石(ナビ)『お、女さん…』オロオロ

女「大丈夫よ。人間もあなた達と一緒で、時々メンテナンスが必要なの」

女「きっとすぐに良くなるわ」ニコッ

魔法石(ナビ)『そ、そっかぁ…』ホッ

377 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:44:06.58 ID:9QidveBa0
先輩「おつかれーっす」ガチャ

配車係「先輩さん、お疲れ様です」

女「あら、お帰りなさい」

先輩「おう、事務所(こっち)にいるなんて珍しいじゃないか」ヒラヒラ

女「男くんがね、運転中に意識を失ったらしいの」

先輩「男が?大丈夫なのか!?」

女「無事に帰って来てるわ、でもこのまま運行を続けるのは無理ね」

女「とりあえず明日にでも医療機関へ連れて行くわ」

先輩「それなら俺が連れてってやるよ、ちょうど明日休みだし」

女「ほんとに?助かるわ、それなら後で連絡するわね」

378 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:44:38.51 ID:9QidveBa0
先輩「了解。あとさ、こんな時に何だが…この後空いてるか?」

女「ホント、こんな時にね」ジトッ

先輩「まぁいいじゃないか、男の事は今あぁだこうだ言っても始まらんさ」

女「そりゃそうだけど…」

先輩「まぁ…いいからよ」ニコッ

女「…?」

379 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:46:19.53 ID:9QidveBa0
-王都 酒場街-


ワイワイ…ガヤガヤ…

女「こういう肩肘張らない店も悪くないわね」

先輩「たまにはいいだろ?ほいおまっとさん」コトッ


<乾杯…カチンッ

380 : ◆o/5nn0YDew [saga ]:2018/04/30(月) 11:47:17.80 ID:9QidveBa0
女「…で、どうしたの?」

女「一人酒が寂しいなんてガラじゃないでしょ?」

先輩「どうしても君と2人きりになりたくて、さ」ニコッ

女「ふふっ。その割には賑やかな店をチョイスしたものね」ニコッ

先輩「こんだけ騒がしきゃー盗み聞きもされねぇだろってな」ケラケラ

女「盗み聞き?…まさか」ハッ

先輩「そのまさかだ、監視されてる」

381 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:47:53.92 ID:9QidveBa0
女「れ、例の巨石の件で…?」

先輩「そーゆー事。しかも相手は王立騎士団」グビグビ

女「騎士団って…じゃあ陛下が直接!?」

先輩「声がでけーよ。んで、こっからは噂を元にした俺の推測だが…」


かくかくしかじか

382 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:48:54.94 ID:9QidveBa0
女「陰謀論がまさかのって感じね…」ハァ

先輩「だろー?何だか知らないが、俺達は相当デカい話に巻き込まれてるらしい」ニヤニヤ

女「もしその仮説が正しいなら、私達は兵器開発の片棒を担がされてる事になるじゃない!」

先輩「国王陛下とそのネズミが出てきたんだ、ほぼ決まりだろ」ニヤッ

女「…なんだか楽しそうね」ジトッ

先輩「そんな事ないさ」ニヤニヤ

女「どうだか…」ハァ

先輩「まぁそれはそれとして」

383 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:50:47.23 ID:9QidveBa0
女「まだ何かあるの?」

先輩「海はどうだった?」ニコッ

女「…え?」

先輩「君、俺が訪ねてった時に留守だった事あったろ?」

女「あ…あぁ、あの時ね」ドギマギ

先輩「実はあの時そこらの職員に聞いててな、ホントは港湾倉庫に行ってたそうじゃないか」

ズイッ

先輩「…お前、何か隠してんだろ」ギロリッ

女「…店、変えましょうか」フイッ

384 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:51:56.95 ID:9QidveBa0
[BAR REQUIEM]


カランッ…

先輩「アードベッグ」

女「私も」


<お待たせしました


先輩「…。」グイッ

女「…あなたに嘘はつけないわね」フゥ

先輩「おかしいと思ったんだ」フンッ

先輩「同僚達はともかく、俺や男まで呼び出して情報の付き合わせ…」カランッ

先輩「そんな事する必要あるか?」

女「…。」

先輩「何を知ってる?」

先輩「そして何を隠してる?」

385 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:52:33.15 ID:9QidveBa0
女「…知ってる事はみんなと同じよ」

女「結果的には、ね」グイッ

先輩「結果的に?」

女「マッピングシステムで実際に荷物を運ぼうと思ったら、莫大なエネルギー源が必要になるわ」

女「それを賄う方策として、巨大な魔法石が用意されてるって事までは聞いてた」

女「ただ、それがどこから来たのか」

女「なぜ極秘にされてるのか」

女「探ってみたけどサッパリだったのよ」フルフル

386 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:53:17.94 ID:9QidveBa0
先輩「その一環で港湾倉庫か」

女「えぇ。魔法石が海外から持ち込まれたのなら」

女「何らかの記録が残ってるんじゃないかと思ったのよ」

先輩「その調査は、事務局の仕事としてか?」

女「半分はね。もう半分は私の探究心」クスッ

先輩「全く君って奴は…」ハァ

387 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:53:57.91 ID:9QidveBa0
女「みんなが日々の運行や何かで知り得た話…噂でも何でも」

女「とにかくカードを出し尽くしてみれば何か分かるかも、と思ったのよ」

先輩「俺達を偵察隊か何かと勘違いしてないか?」クスッ

女「気を悪くしないで頂戴。知りたがりなのは性分なの」

先輩「まぁいいさ、結果的に面白そうな展開になってきやがったしな」ニヤッ

女「やっぱり楽しんでるじゃない…怖い人」クスッ

388 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:54:57.03 ID:9QidveBa0
先輩「同僚の調査で分かったのが勇者の落涙」

先輩「つまり巨石の出所だが」

女「あとは力の制御なのよ…ん」ノビーッ

先輩「詠唱が出来れば誰でもいいってモンでもないのか?」

女「精神が保たないわ」フルフル

女「そこまでの莫大な魔力を使いこなすことは普通の人間じゃ無理なの」

女「それこそ修道女さんレベルの詠唱士が何人も必要でしょうね」

先輩「…。」フゥ

389 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:55:34.68 ID:9QidveBa0
先輩「そこについては教えてもらってないのか?」

女「"問題ない"の一点張りよ」ハァ

先輩「問題ないって言う時は、大体何かあるもんだ」ニヤッ

女「同感ね。彼らはまだ何か隠してる」

先輩「国王陛下に騎士団…」

女「これ以上何が出てくるって言うのかしら」

390 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:57:01.93 ID:9QidveBa0
-翌日 王立診療所-


男「何だかすみません、わざわざ送ってもらっちゃって」ペコッ

先輩「気にすんな。まぁ医者にじっくり診てもらって」

先輩「バッチリ治してバリバリ働いてくれや」ニカッ

男「分かりました、それじゃ」ニコッ

先輩「お大事にな」ヒラヒラ

391 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:57:50.77 ID:9QidveBa0
-検査室-

医師「事情は分かりました。脳の状態を調べますのでこちらのベッドに横になって下さい」

男「んしょ、と」ゴロンッ

医師「楽にしていて下さい」スッ

男「ん?その注射は…」

医師「弱めの安定剤です」

医師「男さんの場合、カーゴの運転等で無意識のうちに緊張状態が続いていた事がストレスになっていたと思われます」

男「ストレスですか」

医師「はい。心が安定した状態で検査をする為に、ご協力下さい」チクッ

男「んっ…」

医師「そのまましばらく安静にしていて下さいね」スクッ

ガチャ バタンッ

男「…ぅ…ぁ」ウトウト

男「」zzz

392 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:58:59.27 ID:9QidveBa0
-王宮 国王執務室-


騎士団長「監視対象者の中に、同僚の同期である男という職員がいるのですが」

側近の「ふむ…どこかで聞いた名だ」チラッ

国王「涙の欠片か」

騎士団長「昨日体調を崩して、本日より王立診療所へ入院しています」

側近「何?」

騎士団長「報告によれば、運行中に一時的に意識を失った様で」

国王「…ほう」

騎士団長「念の為、催眠剤で昏倒させてあります」

騎士団長「向こう24時間は眠ったままです」

側近「仕事が早いな、流石だ」


393 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:59:34.20 ID:9QidveBa0
騎士団長「ありがたきお言葉を賜った後で申し上げにくいのですが…」

側近「何だ?」

騎士団長「別の監視対象者…先輩という元陸軍所属の者に、偵察兵が接触されました」

側近「監視がバレた、という事か?」

騎士団長「誠に申し訳ございません」フカブカー

側近「お前らしくないな」チラッ

国王「まぁ、構わん」

394 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 12:00:24.94 ID:9QidveBa0
国王「元陸軍という事は、偵察兵が騎士団の人間である事も見破ったのだろう」

騎士団長「仰る通りです」

国王「それがどういう意味を持つのか、さえな」

騎士団長「…無言の圧力、という事ですか」

側近「左様。旧陸軍からの選り抜きで組織された王立騎士団と」

側近「たかだか寄せ集めの現陸軍、ましてや退役者だ」

側近「どんな馬鹿でも喧嘩の相手は選ぶものだ」


395 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 12:01:12.43 ID:9QidveBa0
国王「うむ…騎士団長」

騎士団長「はっ!」

国王「引き続き対象者の監視を続けろ」

国王「男に関してはそのまま診療所にて軟禁しろ、面会謝絶とでもしておけ」

国王「男のナビシステム、魔法石を入手しろ」

国王「時は近い、油断するな」

国王「今回の失態は不問に伏す。だが次はないぞ」ギロリ

騎士団長「は、はぁっ!」ビシッ

396 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 12:01:53.79 ID:9QidveBa0
夜に続き投下します
ありがとうございました
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/30(月) 17:05:22.73 ID:wHvKp2OWO
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/30(月) 17:32:18.47 ID:x/TOOzZEO
期待
399 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 19:58:10.00 ID:9QidveBa0
投下します
400 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 19:58:54.90 ID:9QidveBa0
-王立診療所 受付-



魔法石(ナビ)『面会謝絶ぅ!?』

女「どういう事ですか?」

受付係「検査の結果、男さんの症状を鑑みて」

受付係「過度なストレスを避ける為、一時的に面会謝絶するようにと」

受付係「先生のご指示です」

女「じ、じゃあ…」

医師「症状自体は重いですが」ガチャ

受付係「あ、先生」

魔法石(ナビ)『せんせー!?お、男ちゃんどうなるん!??』アセアセ

医師「今すぐ命に関わるとか、そういった事はありません」

魔法石(ナビ)『そ、そっかぁ…』ホッ

401 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:00:12.90 ID:9QidveBa0
医師「ただ、彼には休養が必要なのです。ゆっくり一人の時間を過ごさせてあげて欲しいのです」

女「そういう事ですか…分かりました」

女「それじゃ男くんを宜しくお願いします」ペコッ

魔法石(ナビ)『せんせー、お願いします!』ペコッ

医師「はい。お任せ下さい」ニコッ

魔法石(ナビ)『ほんなら女さんどーするー?』チリンッ

女「事務局へ戻る前に食事でもしていくわ」

カツカツカツ…

402 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:01:00.82 ID:9QidveBa0
ピピッ

医師「私です。例の魔法石は女という事務局職員が所持しています」

医師「えぇ、はい。あとはお任せ致します。」

403 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:01:49.29 ID:9QidveBa0
-王都 酒場街-



魔法石(ナビ)『昼間っからお酒かいな!』

女「ふふっ違うわよ。ここら辺のパブはランチの営業もしてるの」カランッ


<いらっしゃいませー

404 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:02:56.75 ID:9QidveBa0
魔法石(ナビ)『やば!フィッシュフライでか!』ピョンピョンッ

女「私の掌2つ分位かしら?ここのは肉厚で美味しいのよ」モグモグ

魔法石(ナビ)『それをまぁ3つも4つも…女さんどんだけ食べんねん』アキレ

女「あらそうかしら?」ケロッ



偵察兵「…。」ジーッ

405 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:05:35.69 ID:9QidveBa0
<ありがとうございましたー


女「ふぅ美味しかった」

魔法石(ナビ)『しかしあんだけ食べた分どこへ行ってんねや…』ジロジロ

女「あら、私こう見えて…」ニコッ

女「欲しい所にはしっかり付いてるのよ?」チラッ

魔法石(ナビ)『っ!うおー!すげー!!』キャッキャ

女「ふふっ。…なんなら挟まってみる?」スポッ

魔法石(ナビ)『わ!わ!!わ!!!』

魔法石(ナビ)『アカン…ここが理想郷(ユートピア)か…』ドキドキ

女「大袈裟ね、女の子同士じゃない」クスクス

魔法石(ナビ)『って、てか、女さんキャラ変わってへん??突然どないしたん??』ドキドキ

女「…そこでじっとしててね」ダッ

魔法石(ナビ)『わっ!な、何!?』ユラ

偵察兵「…!」ダダッ

406 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:06:41.21 ID:9QidveBa0
-街外れ 路地裏-

女「はぁ…はぁ…」

女「ここまで来たら撒いたかしら?」フゥ

魔法石(ナビ)『(揺れる度にあっちゃこっちゃでぽよんぽよんとまぁ)』ウットリ

魔法石(ナビ)『(住みたい…ここに)』

女「さて、ここからどうしようかしら…」ガシッ!

女「!」


407 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:07:21.64 ID:9QidveBa0
偵察兵「…。」ガシッ ギリギリッ

女「痛っ!ちょっと離しなさいよ!」

偵察兵「…。」ギリギリッ

魔法石(ナビ)『な、何!?女さんどないしたん!??』

偵察兵「…魔法石を寄越せ」

女「男くんの魔法石!?それが目的なの!??」

偵察兵「…寄越せ」ギリギリッ

女「っく!…そんなの持ってないわよ!!」ジタバタ

408 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:08:29.93 ID:9QidveBa0
ブロロロ…

同僚ナビ『さて次の配達は、と』

同僚「この先の路地裏だなw…あ」


ガチャン!ギュルル!!


同僚ナビ『っ!ちょっと急旋回ですわよ!一体どうしたんですの!?』

同僚「…配達やーめっぴ」ガコンッ!

同僚ナビ『ちょっと何言って…っあ!あれ!!』

同僚「急な集荷依頼にも即対応ってな!!」

409 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:09:17.58 ID:9QidveBa0
ブロロロ…キキーッ!

女「っ!同僚くん!!」

同僚「集荷依頼はこちらですかーwww?」

女「こんの…!離せってば!!」ガブリ

偵察兵「!」バッ

女「出して!!」ガチャ バタンッ

同僚「毎度ありーwww」


ブォン!ブロロロ…


偵察兵「…。」ヒリヒリ

410 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:11:19.27 ID:9QidveBa0
-王都 街外れ-



ブロロロ…

女「助かったわ同僚くん。ありがとう」フゥ

同僚「びっくりしたわーwwwでも先輩の言ってた事マジだったのねwww」

同僚ナビ『監視されているなんてちっとも…』

女「私も偶然気が付いただけよ」

女「でも彼の言ってたのと違って、向こうから手を出してきた…」

女「状況が変わった、って事なの?」

魔法石(ナビ)『あの、女さん?』

女「あらごめんなさい、狭かったでしょう」スポンッ

同僚「んなっ!?ナビちゃんお前なんという羨ましい所からwww」

魔法石(ナビ)『控えめに言うて天国やったで』ツヤツヤ

同僚「おいちょっと残り香よこせwww」クンカクンカ

魔法石(ナビ)『にぎゃー!気持ちわるーっ!!』ジタバタ

女「もう!バカな事言わないでよ!」

同僚ナビ『全くこの人は…』ハァ

ブロロロ…

411 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:12:20.72 ID:9QidveBa0
-物流協会事務局 正門-



ブロロロ…キキッ

同僚「到着なりーwww」

女「ありがとね」

同僚ナビ『では私達は運行に戻りますわ』

女「えぇ、お気を付けて」フリフリ

魔法石(ナビ)『いってらっしゃーい!』

カツカツカツ…



ザッ

412 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:12:55.25 ID:9QidveBa0
女「…あなた達もしつこいわね」ハァ

騎士団長「先程は私の部下がとんだご無礼を」

女「全く。騎士団の名に恥じない紳士的な方だったわ」ハァ

騎士団長「お恥ずかしい限りです」

騎士団長「ですのでここからは、あくまで紳士的に進めさせて頂きます」ペラッ

騎士団長「女、あなたを拘束する」

魔法石(ナビ)『た、逮捕状!?』

女「…どういう事?」ギロリッ

413 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:17:53.70 ID:9QidveBa0
騎士団長「最近のあなたの動向を調べさせて貰いました」

騎士団長「ナビシステムの私的な持ち出し、並びに機密情報の閲覧」

騎士団長「これらは犯罪行為だ」

女「こ、これは協会にきちんと許可を取った行為です!」

魔法石(ナビ)『せやで!配車係さんにお願いしたんやもん!』

騎士団長「夜な夜な飲屋街へナビシステムのデータを持ち出す事もか?」

女「そ、それは…」

騎士団長「それに機密情報の閲覧。あなたは禁書指定されている魔術文献を入手されていますね」

女「…レディの部屋に忍び込むなんて、本当に紳士の鑑ね」ギリッ

騎士団長「捜査ですので。無礼をお許し下さい」

414 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:20:05.48 ID:9QidveBa0
騎士団長「お連れしろ、手荒な真似はするな」バッ

偵察兵「…。」スッ

女「…っく、お優しいのね」ギロリッ

騎士団長「もはやその必要がないからだ」

魔法石(ナビ)『え!お、女さん!』アワアワ

騎士団長「所持品は後程お預かりします」

騎士団長「無論、魔法石もです」

女「ナビちゃん…!ごめんなさい…」

415 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:22:19.86 ID:9QidveBa0
-王立診療所 男の病室-



魔法石(ナビ)『へ??お、男ちゃん!?』

男「」zzzz

騎士団長「今は薬で眠っている。命に別状はないし、身体は健康そのものだ」

魔法石(ナビ)『男ちゃーん!!会いたかったよぉぉー!!』ビエーン

騎士団長「お前達にはここでしばらく生活してもらう」

魔法石(ナビ)『ぐすんっ…ぐすん…え…なにそれ?』ウルウル

騎士団長「国王陛下の御命令だ。お前達をここに閉じ込め片時も離れさせるな、と」

魔法石(ナビ)『意味わかれへんわ…男ちゃんと一緒におれるのは嬉しいけど…』グスッ

416 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:23:26.28 ID:9QidveBa0
コンコン ガチャ

側近「ご苦労。」

騎士団長「御足労頂き恐縮です!」ビシッ

魔法石(ナビ)『おっちゃんだれー?』

騎士団長「無礼者。この方は国王陛下の側近。この王国で陛下に次ぐ高位の方だ」

魔法石(ナビ)『側近さん?へぇー偉い人なんやー』

側近「成る程。これが魔法石に宿りし人の心…」

騎士団長「では、私はこれで」

側近「うむ。引き続き頼むぞ」

騎士団長「はぁっ!」ビシッ

ガチャ バタン


417 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:24:12.26 ID:9QidveBa0
側近「…楽にしたまえ」ストッ

魔法石(ナビ)『わ!男ちゃんの胸の上!』キャッキャ

男「」zzzz

魔法石(ナビ)『呼吸に合わせて胸が動いとぉ…可愛い…』ニコニコ

魔法石(ナビ)『鼻のあなー♪ぷぷっローアングルやとおもろいなぁ』ケラケラ

側近「…。」ジッ

魔法石(ナビ)『側近さん?あんなぁ?』クルッ

側近「何だね?」

魔法石(ナビ)『ウチてっきり、怖い人達が男ちゃんとウチを引き離そうとしとるんやと思っててんかぁ』

魔法石(ナビ)『そーじゃないん?ウチら一緒におってえぇの?』

側近「あぁ。その通りだとも」

魔法石(ナビ)『なんだぁ…安心したぁ』
ホッ

418 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:25:44.30 ID:9QidveBa0
魔法石(ナビ)『男ちゃん…えへへ、男ちゃん…』ニコニコ コロコロ

側近「…。」スクッ


ガチャ バタンッ

ガチャリ!パァァァァ…

419 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:27:52.63 ID:9QidveBa0
-翌日 物流倉庫事務所-


先輩「うぃっすー」ガチャ

配車係「おはようございます」

女「あら、おはよう」フリフリ

先輩「…ん?下手こいて捕まったと聞いたが、釈放されたのか?」

女「お陰様で。元々逮捕容疑なんて取るに足らないものだったし…んー」ノビーッ

先輩「あー逮捕の為の逮捕って奴か」スッ フーーッ

カチッ ピンポーン

配車係「8時28分です、今日は特にかもしれない運転を心がけて下さい」

420 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 20:29:01.82 ID:9QidveBa0
先輩「あいよ。で?エロい事でもされたか??」ニカッ

女「バカ言わないで。建前上は正規の手続きに則った拘束なのよ?」

女「事情聴取の上、厳重注意で釈放。ただ…」ギリッ

先輩「ナビちゃん、か」

女「没収されたわ。あの状況じゃ突っ撥ねる事も出来ないし」ハァ

先輩「成る程。分かった」グイッ

女「ち、ちょっと、何?」

先輩「折り入って話がある。お前の部屋で構わん」

女「…?えぇ、分かったわ」

配車係「え、ちょ、運行」

ガチャ バタンッ

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