剣と魔法と運送業

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102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:21:29.34 ID:IDFS0p+l0
男「…何があろうと、ナビ(あいつ)が俺の相棒って事は変わらないです」

同僚「よく言ったwwいいぞー男www」

先輩「今ナビちゃんは何かに怯えて出てこれなくなってる」

先輩「手を差し伸べられるのはお前だけだ」

先輩「あの子とお前の心をもう一度リンクさせて、隠されてるものを見つけ来い」

男「俺の心と?どういう事ですか?」

同僚「お前インストールの時に説明あったろww」

同僚「ナビシステムは使用者の心を写し取って魔法石に閉じ込めたモンだってw」

男「全然覚えてない…」

先輩「俺は使った事ないからよく分からんが、インストールの際に記憶が飛ぶのはよくある事らしい」

同僚「あれ?先輩ナビシステム使ってないんですっけw」

先輩「選考に落ちたんだよ、あれも向き不向きがあるらしい」ぐび

先輩「とにかく、ナビちゃんと心を繋げられるのはお前だけだ」

先輩「今はそれだけ覚えとけ」

103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:23:04.41 ID:IDFS0p+l0
-深夜 王都酒場街-



<ありやしたー!

先輩「すっかり遅くなっちまったな」

男「すみませんご馳走になってしまって」

先輩「なに、一応年長者だからな」

先輩「こんな時ぐらいカッコつけさせてくれや」

同僚「先輩ごちでーすwwwやだかっこいいwwww」ケラケラ

先輩「こいつ酔っ払ってんなぁ…ちゃんと帰れるか?」

男「ははっこれで案外大丈夫なんですよ」

先輩「そうなのか…?」ジーッ

同僚「やだ照れちゃうwww」ケラケラ

先輩「はぁ…男は大丈夫そうだな」

男「はい。っていうか先輩と話してシャキッとしちゃいました」ハハ

先輩「まぁあんまり気負い過ぎんなよな」

先輩「気ぃつけて帰れよ」

男「はい!それではおやすみなさい」ペコッ

先輩「はいよ、お疲れさん」フリフリ

同僚「おつかれサマンサーwww」フリフリ

104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:23:40.77 ID:IDFS0p+l0
同僚「んだよ男の奴wさっさと帰りやがってwww」テクテク

同僚「微妙に飲み足りねぇなwwもう一軒行きますかwwww」

105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:25:20.23 ID:IDFS0p+l0
[BAR REQUIEM]

…カランッ

同僚「こんばんわっすw」ガチャ

同僚「お嬢さんお隣失礼しますよっとw」ストッ

女性「はいどうぞ…ん?」

修道女「あ!あなたは!」ビク

同僚「げっ!お前はこの前の酔いどれ(たゆんたゆん)シスター!」ビクッ

修道女「…その節は大変ご迷惑を…」フカブカ

同僚「あれw今日は普通じゃんw」

修道女「まだ来たばかりなので…」シュン

同僚「あーシラフだとそういうテンションなのねwwなら平気かwww」

同僚「むwしwろwww」チラッ

同僚「まぁ飲もうぜww俺フィディックをロックでwwwあんたは?」

修道女「ぼ、ボストンクーラーをお、お願いします」

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:26:10.69 ID:IDFS0p+l0
<お待たせしました

<乾杯!カチンッ



同僚「つーかシスターが夜な夜な飲み歩いてていいのかよwww」クイッ

修道女「わ、私のところはエールを造っている位ですので」

修道女「その辺は緩いのです」クイッ

同僚「にしてもww緩いにも限度があんだろwwww」ケラケラ

修道女「あぁぁ…あの時の醜態はどうか忘れてくださいまし」シュン

同僚「インパクトあり過ぎて忘れらんねぇよwwwww」

同僚「つか聞いたぜ?詠唱士としての能力はマジモンだってww」

修道女「わ、私なんて全然大した事!」フルフル

同僚「いやいやwwwそうでなきゃ速攻追い出されてるだろwww」

修道女「うぅ…プレッシャーに弱いのです…」シュン

修道女「近々また高度な詠唱の依頼が来ていまして…」ハァ

同僚「んん?それってもしかして人とナビシステムを再リンクする的な奴だったりする??」

修道女「ご、ご存知なんですか?」

同僚「ご存知ご存知wwwだってその対象者って俺の同期の奴だもんwww」

修道女「そ、そうなんですか!?」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:27:58.27 ID:IDFS0p+l0
同僚「…ってな訳で、あんたの力を貸してちょーだいってことwwww」

修道女「…。」ウツムキ

同僚「どしたー?眠いのか?」チョイチョイ

修道女「…同僚さんっっ!」バッ

同僚「っな、何だよ」ビクッ

修道女「わたし…かんどーしました…」ウルウル

同僚「今の話のどこに感動要素があったんだよwww」

修道女「わたひ、がんばりまふ!」スクッ

修道女「ぜったいにおふたいを!さいかい!させてみせまふ!!」フンス

同僚「ちょww呂律が迷子www急に立ち上がるからwwww」

修道女「どーりょーしゃん!わたひ!わたひは!!」ジタバタ

同僚「あーもー分かった分かったwwマスターお会計wwうん一緒でwww」ヨッコラセ

108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:28:36.11 ID:IDFS0p+l0
<ありがとうございましたー

同僚「結局こうなるのねww」ヨイショ

修道女「えへへーwwどーりょーしゃんとみっちゃくwww」

同僚「肩貸して歩いてるだけだろがww…しかし」チラッ

修道女「…んー?どこ見てるのかなー???」クス

同僚「っ!いやあのべつにw」タジ

修道女「まー見られて減るもんでもないしww構わんよwww」ケラケラ

同僚「そう言われると逆に萎えるwww不思議www」ケラケラ

109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:29:40.19 ID:IDFS0p+l0
同僚「…。」テクテク

修道女「」スゥ…スゥ…

同僚「おぶった瞬間に寝やがったw」

修道女「」スゥ…スゥ…

同僚「まぁ、大変だとは思うが」

同僚「男の事、頼むぜ」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:02:54.70 ID:nRtd3ZTwO
-3日後 王立アカデミー研究室-



ブゥゥン…ブゥゥン…

女「気分はどう?」

男「なんだか緊張するよ」

研究室職員「楽にしていて下さい」

研究室職員「これから男さんの精神と魔法石とを再リンクします」

研究室職員「まず男さんには深い睡眠状態に入ってもらい、ナビシステムの心の中へ入っていきます」

研究室職員「現状ナビシステムの人格情報に損傷が見られる為、普段とは性格が異なっている場合があります」

研究室職員「あまり気にしないように」

研究室職員「上手くコンタクトが取れたら、ロックの掛かっている記憶情報にアクセスしていただきます」

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:03:28.47 ID:nRtd3ZTwO
女「男くん、先に謝っておくわ」

男「?どうしたんだ急に」

女「あなたは忘れている、忘れていたかった…」

女「そういう記憶を直視する事になるからよ」

男「仕方ないよ、それに俺の記憶をナビの奴に肩代わりさせておくわけにもいかないし」

女「謝りたい事は他にもあるのだけれど…」

男「?」

女「いえ、直接その目で見てきて頂戴」

男「うん、分かったよ」

112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:13:08.01 ID:nRtd3ZTwO
バタバタバタッ…ガチャ!

修道女「遅くなりましたー!」ハァハァ

研究室職員「詠唱士の方ですね?お待ちしておりました」

女「遅かったじゃない」

修道女「す、すみません!」ペコッ

修道女「あ、あなたが男さんですね?」

男「?はいそうですけど」

女「今回の再リンクには高度な呪文の詠唱が必須なの」

女「そこで王立修道院から選り抜きの詠唱士の方をお呼びした…のだけれど」チラッ

修道女「ど、同僚さんと約束しました!絶対にナビさんを呼び戻して来て下さいね!」たゆん

修道女「私、全力でサポートします!」たゆーん

男「同僚と?よく分かんないけど、あぁ」

男「必ずあいつを連れ戻して来るよ」

女「(負けた…)」クッ

113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:14:38.46 ID:nRtd3ZTwO
-王立アカデミー 研究室-


ブゥゥン…ブゥゥン…

修道女「それでは詠唱を始めます」キリッ

スゥ…

[闇よ 月よ 全ての星々よ]

[夜の帳に舞い降りたる汝の名において]

[この者にひと時の安らかなる眠りを与え給え]

パァァァァ…

男「」zzzz

女「…寝たわね」

修道女「深い眠りです。フライパンでひっぱたいても起きません」

女「確かに」ペシペシ

修道女「続いて、男さんの精神と魔法石をリンクさせます」

女「頼むわ」

修道女「…」キッ

[数多の心の一欠片 全てを統べる金色の意志]

[夢と現の狭間に在りし 敬虔なる汝の名において]

[今ここに眠りし 小さき者達の魂を]

[慈愛の縁(えにし)で結び給え ]

パァァァァ…グワン!

修道女「…っく」ギリッ

男「」zzzz

女「(男くん…)」

女「(ごめんなさい…)」

研究室職員「魔法石とのリンクが始まりました!」

修道女「…。」ギリリッ

114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:17:59.97 ID:nRtd3ZTwO
-魔法石内部 精神世界-


シィィィン…

男「…ん」パチ

男「ここが魔法石の中か…んっ」ノビーッ

男「まずはナビの奴を探すか」スクッ

男「ナビシステムを探すってのもおかしな表現だけども」クス

テクテク…

男「見渡す限り真っ白な世界だな」

男「動くものは何も見えないし、声も聞こえない」

ザザッ…ザザッ

女『男くん聞こえる!?』

男「女か?あぁ聞こえてるよ」

女『どうやらリンクは成功したみたいね』

女『どんな状況?周りに何か見えるかしら?』

男「いや、見渡す限り真っ白な…ん?」

女『何か見えるの?』

男「あれは」テクテク
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:18:36.19 ID:nRtd3ZTwO
男「間違いない、俺のカーゴだ」ペタペタ

女『…なるほどね、男くんとナビちゃんが最も長い時間を過ごしたのがカーゴの中ですものね』

男「とりあえず乗ってみるか」ガチャ

女『気をつけてね。精神世界は夢と想像力の世界』

女『なにが起こっても不思議じゃないわ』

男「…うん、さっそく実感してるよ」

女『!男くん!何があったの!?』



「あーもーうるさいなぁー」

「邪魔せんとって」

116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:19:12.21 ID:nRtd3ZTwO
女『ちょっと!おt』プツッ

男「…探すまでもなかったな」

ナビ「ちゃーお?」フリフリ

男「久しぶりだな…心配したんだぞ?」

ナビ「…夢やってん、いや今も夢の中みたいなもんやけど」

男「?」

ナビ「男ちゃんの助手席に座んの?」ニコニコ

男「…ここでは実体があるんだな」

ナビ「せやでー?ほら見てみて!隣国でもらったストール巻いてみてん」フワッ

ナビ「なぁ似合うー??」

男「あぁ、よく似合ってるよ」ニコ

ナビ「えへへー?カラダがあるで、お望みならあんな事やこんな事も出来てまうでー?」ヘラヘラ

ナビ「とりあえず、触っとく?」モミ

男「バカ言ってんなよ…でも意外と元気そうで安心したよ」

ナビ「…そう思う?」


117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:19:40.60 ID:nRtd3ZTwO
キュルキュル…ブォン!

ゴゥンゴゥン…

ナビ「男ちゃんはな、ウチの中に色々置き忘れてん」

ナビ「っていうかウチ自身も忘れててんけど」

ナビ「…忘れたまんまでいたかったけど。」ハァ

ナビ「見に行くんやろ?その為に来たんやもんな」

男「あぁ、お前に持たせたままじゃいられないからな」

ナビ「…言うたな?」

ナビ「ほんなら行こか。ウチらの思い出再発見ツアー?」

ナビ「しっかり掴まっとき。」

ブォン!ブワァァァァ…!

118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:24:49.19 ID:nRtd3ZTwO
ブワァァァァ…

ナビ「男ちゃん、ちっちゃい頃の事覚えとぉ?」

男「里にいた頃か?親父に剣術を叩きこまれたり…」

ナビ「他には?友達の事とかは?」

男「友達?…いたはずだな、よく思い出せないが」

ナビ「…ほんならその前は?」

男「その前?」

ナビ「里に来る前の事。」

男「里に来る前?いやいや俺は里が地元で…」

ナビ「ちゃうで。」フルフル

119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:25:34.87 ID:nRtd3ZTwO
ナビ「男ちゃんの…ウチらの産まれた場所は里やない。」

ナビ「ついでに、男ちゃんが親父って呼んどぉ人も」

ナビ「男ちゃんの本当の父親やない。」

男「っ!…おいおい何を言い出すんだ!俺は里の生まれで…」

ナビ「まぁまぁ。まずはそっからやな。」

ナビ「これからウチらの本当の生まれ故郷に行くで。」

ナビ「その場所が失われるその時へな。」

男「俺の本当の生まれ故郷…」

ナビ「そ。今から20年前の」カチッ

ガタンッブロロロ…

ナビ「北西の小さな村。」

ブロロロ…キキッ

ナビ「よぉ見とって。」

カッ…バヒューーーーーン…

120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:29:02.83 ID:nRtd3ZTwO


ゴォォォォ…パチッパチッ


<おい!はよ逃げぇ!!

<がはっ!煙の勢いが…!

<誰か!まだ子供がおる!!


ブワァァァァ…!


男「ここは…」

ナビ「20年前、この北西の小さな村は焼失した。」

ナビ「この前の里ん時と同じ、勇者と魔王の戦闘の巻き添え食ぅてな。」

ナビ「殆どの村人が亡くなったんやけど、ウチらは奇跡的に助かった。」

ナビ「気ぃ失っとったおかげで煙をあんまり吸い込まんで済んだんや。」

ナビ「ほら、あれ見て。」

121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:30:39.89 ID:nRtd3ZTwO


<いややー!おとん!おかん!

<来い!とりあえず安全な場所まで逃げるで!



男「おじさんが小さな子供を…!」

男「おい!あれが俺なのか!?」

ナビ「ちゃうで。よぉ聞いてて。」



<うぅ…おとん…おかん…

<お…とこくん…



男「っ!!!…今俺の名前を…」

ナビ「今燃えとぉあの家が、ウチらの本当の生家。」

ナビ「今おっちゃんに助け出されたあのちびっ子はな、女さん。」

男「女!?女だって!??」

ナビ「今ウチらはまだあの家ん中におんねん。」

ナビ「炎に巻かれて、逃げようにもどっちがどっちかも分からんよぉになって」

ナビ「ウチらの両親は亡くなった。」

男「そ、そんな…」ガクガク

ナビ「隣に住んでた女さんは、ウチら家族がまだ家の中におるのに気がついて」

ナビ「助け出そうとしたんや。」

122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:34:39.27 ID:nRtd3ZTwO
男「女が…」

ナビ「でも無理やった。そらそうやろ?ちびっ子一人でどうにかなる訳ないやん」

ナビ「アホな女さん。」クスクス

男「な、お前、笑って…?」ゾクッ

ナビ「なぁ男ちゃん、こっから見てても始まらんわ。」

ナビ「話聞いとぉだけじゃ実感できひんやろ?今あん中におる男ちゃんの意識に繋げるから。見てきて。」

男「あ、あの中に!?」ガクガク

ナビ「だいじょーぶやて。これは記憶の世界やねんから」ケラケラ

ナビ「ほな行ってきて。」スッ

男「おい待てっ!」グワン…グワングワン

123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:36:55.11 ID:nRtd3ZTwO


ゴォォォォ…ブワァァァァ…!

男「…っく!」パチ

男「熱っ!ここは…暖炉の中か…!」

ゴォォォォ…パチッ!パチッ!!

男「煙がひど…えほっげほっ!」

男「何とかここから逃げなきゃ…通れそうな場所h ガシャーン!

男「!!っくそ!閉じ込められたっ」ガンガンッ

男「ダメだ、頭がぼーっとしてくる…煙を吸ったせいか…」クラクラ

男「誰か気付いてくれ…俺はまだここに…あっ!」

男「瓦礫の隙間から人影が見える…あれが女か…!」

男「…げほっげほっ!声を出そうにもこの煙じゃ…!」ハァハァ

男「頼む…気付いてくれ…」ギュッ

ブワァァァァ…!

124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:38:11.83 ID:nRtd3ZTwO


男「このままじゃ死ぬ…助からない」クラクラ

男「あ、おじさんが女の手を」

男「行かないでくれ…俺を」

男「俺を置いて行かんとってくれ…」

男「お願いや…誰か…!!」



<くん…! おとこくん…!



ゴォォォォ…!!

男「うぅ…もう…あかんか」パタッ

男「頼む…一人に…せんと…って」ポロポロ



キラッ …パァァァァ


男「光が…なんや、へへ、お迎え、か…」ポロポロ


ブワァァァァ…!!


125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:43:06.34 ID:nRtd3ZTwO
パチンッ

男「!!!」ビクッ

ナビ「はーいおかえりちゃーん♪」

ナビ「どうやった?って聞くまでもないか」ケラケラ

男「…うぅ」ポロポロ

ナビ「怖かったやろー?しんどかったやろー??」ニヤニヤ

男「…っ」グシグシ

ナビ「ウチらはあのまま気ぃ失って、あのすぐ後軍の救助隊に助け出された。」

ナビ「両親が亡くなって、天涯孤独の身になってもうたんやけど」

ナビ「そんなウチらを女さん共々引き取ってくれたんが、里の親父さん達やったっけワケ。」

男「…なんで、お前…ずっと…」ポロポロ

ナビ「言わんかったかって?せやからウチも忘れててんもん」アハハ

ナビ「ホンマに思い出してたくなんてなかった。」

ナビ「でもあの時、里の炉が燃え上がったのを見て」

ナビ「ぜーんぶ思い出してもた。」

126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:43:44.06 ID:nRtd3ZTwO
ナビ「燃え盛る炎の熱」

ナビ「煙で喉が焼かれる痛み」

ナビ「暖炉の中に閉じ込められて」

ナビ「誰も助けてくれへんかって」

ナビ「女さんの姿が見えたけど」

ナビ「呼んどぉ声も聞こえたけど」

ナビ「こっちの声なんか届くはずもなくて」

ナビ「そのうちに連れて行かれてもぉて」

ナビ「また一人取り残されて」

ナビ「痛くて」

ナビ「熱くて」

ナビ「怖くて」

ナビ「悲しくて」

ナビ「寂しくて」

ナビ「…。」キュッ

127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:44:18.79 ID:nRtd3ZTwO
ナビ「分かったかいな?これがウチらの本当n」男「すまなかった!」ダキッ

ナビ「ちょ!ちょっと男ちゃん!こんなとこでアカンよぉ…///」カァァッ

男「お前一人に苦しい記憶を押し付けてしまって…俺…」ポロポロ

ナビ「…えぇんやで。」ナデナデ

ナビ「ウチこそ怖い思いさせてごめんな。」ナデナデ

ナビ「でもな?ほんまは知ってもらえて嬉しいねん。」ナデナデ

ナビ「知ってもらいたかってん。」

ナビ「ウチずっと…独りぼっちやったからぁ…うぅ」グスッ

男「…。」ポロポロ

ナビ「男ちゃぁん…ウチ…怖かった…」ポロポロ

ナビ「さびしかったよぉぉぉ」ポロポロ

男「…。」ギュッ

ナビ「うわぁぁぁあん…!!」ポロポロ

128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:45:09.36 ID:nRtd3ZTwO
ナビ「ぐすっ。ごめんな。」グシグシ

男「いいんだ、好きなだけ吐き出してくれて」

ナビ「…うん、もう大丈夫。」ニコ

ナビ「さて男ちゃん、しゃんとしよか。」トントンッ

男「…あぁ」スッ

ナビ「たぶんな、女さんはこの時の事を今も引きずってると思う。」

男「女が?」

ナビ「ウチらを助けられへんかった、それどころか置いてってしもた」

ナビ「その思いにずぅーっと縛られとぉと思うねん。」

ナビ「赦してあげられるのは男ちゃんだけや。」

男「赦すも何も俺は…」

ナビ「ウチらはそうかも知れんけど、女さんにとってはそうじゃないねん。」フルフル

ナビ「だから戻ったら言うてあげて?もう自分を責めんといてって。」

ナビ「もう自分を赦してあげてって。」

ナビ「そう言うてあげて?いや、ちゃうな。」

ナビ「そう言うてあげよ?一緒に。」ニコ

男「…あぁ、分かった」

129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:52:01.98 ID:nRtd3ZTwO
-王立アカデミー 研究室-



パァァァァ…

修道女「…っく…!」ビリビリ

女「(リンクが始まってかれこれ30分)」

女「(転移魔法…それも人間の精神を実質二人分扱うという情報量)」

女「(それに高度な幻惑魔法を複合した詠唱で、魔法石とのリンク状態を保ち続けている…)」

女「(伊達に修道院の選り抜きじゃない…この人、只者ではないわ)」

女「(でも、さすがに)」

修道女「…っ!はぁ…はぁ」ビリビリ

パァァァァ…

女「加勢するわ」スッ…パァァァァ

修道女「!?お、女さん転移魔法を!?」

女「あなたのような高度で大出力の詠唱は到底出来ないわ」

女「せいぜいあなたの魔力を補ってあげる位かしら…っく!」ビリビリ

女「すごい魔力消費ね…私一人じゃ5分と保たないわ」ビリビリ

女「でも、少しは足しになるかしら?」

修道女「大助かりです!ありがとうございます!!」ビリビリ

女「それにしてもその底無しの魔力…あなた一体何者なの?」

修道女「…じ、自分でもよく分からないんですよね」ヘラッ

女「どういう事?」

修道女「…。」ニコッ

130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:52:43.63 ID:nRtd3ZTwO
修道女「ある日の朝、礼拝堂の入り口に揺り籠が置かれていて」

修道女「私はその中で寝息を立てていました」

修道女「そのまま修道院に引き取られた私は、シスター長さんの実の娘として育てて頂いたのです」

女「…辛い話をさせたわね、許して頂戴」

修道女「い、いえいえ!」ブンブン

修道女「…今のは、私が親に捨てられた話ではなく」

修道女「愛のある方に見つけて頂き、育てて頂いたという話」

修道女「私が、この世界から確かな愛をもらったという話なのです」

女「…!」

女「…愛、ね」

修道女「す、すみません!一応宗教家の端くれなものでこんな口調になってしまうのです」アセアセ

女「いいのよ。素敵なお話だったわ」

女「聞かせてくれてありがとう」

パァァァァ…

131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:54:18.14 ID:nRtd3ZTwO
パァァァァ…

修道女「…女さんも一緒ですよ」ビリビリ

女「?どういう事かしら」ビリビリ

修道女「なんとなく分かります、目を見れば」

修道女「女さんにもきっと誰かの愛が注がれているはずです」

修道女「誰だって同じです、気付いていないかも知れませんが…」

女「…私に愛される資格なんてあるのかしら」ボソッ

修道女「?」

女「何でもないわ、それより中の様子はどうなのかしら」ビリビリ

女「だんだんキツくなってきたわ…」フゥ

修道女「ですね…上手くいってると良いのですが…っく!」ギリッ

パァァァァ…

132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:55:00.09 ID:nRtd3ZTwO
…さん…なさん…!

女「!この声は!」

<女さん!ウチやで!

女「ナビちゃん!」

<心配かけてごめんなさい!ウチはもう大丈夫やでー!

女「そう…良かったわ」ホッ

<これから男ちゃんがそっちに戻るで!

<受け止めたってー!

修道女「す、すごい…!本当に魔法石の中に人の心が…!」

<んー?おねーさんだれー?

<まぁええか!ほなよろしくー!

133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:57:21.63 ID:nRtd3ZTwO
パァァァァ…バシュンッッ!!

修道女「…っく!はぁぁぁぁ…」パタッ

女「ちょっと!大丈夫!?」ダキッ

修道女「さ、さすがに疲れましたぁ…」グッタリ

女「見事にやり遂げたわね、大したものだわ」

女「お疲れ様、ありがとう」ニコッ

修道女「え、えへへ…やったぁ」ニヘラ

男「…ん」パチ

女「男くん!」

134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:57:57.00 ID:nRtd3ZTwO
男「やぁ、どうにか帰って来たよ」フラ

男「一時は焼け死ぬかと思ったけどな」ハハッ

女「…っ!!」

男「その話はあいつが戻ってから、な」

男「それよりその人大丈夫か?」

女「…かなり消耗しているわ、常人じゃそれこそ干からびる程の魔力を使い続けたのだから」

修道女「zzzz」スゥ…スゥ

スッ

男「初めて会ったけど、感謝しています」

男「あなたの力が無かったら、俺達は自分を取り戻せなかった」

男「本当にありがとう」ペコッ

修道女「zzzz」スゥ…スゥ…ニコッ

135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:11:53.83 ID:nRtd3ZTwO
-夕刻 王都 市街地-


ブロロロ…

同僚「…なげーーーよwwwwwww」

同僚ナビ『あらそうですか?今日の配送はもう終わりでしてよ?』

同僚「つかスレタイ詐欺じゃねww魔法はともかく運送業どこいったwwww」

同僚ナビ『またわけの分からない事を…おや?事務所からですわ』ピピッピピッ

カチャ

同僚「おつかれサマンサwww」

配車係「…またわけの分からない事を」

同僚「んだよノリわりぃなwwどったの無線なんてwww」

配車係「ノリって…実は一件飛び込みで集荷の依頼がありまして」

同僚「でたでたww早く帰れると思った時に限ってこれだwww」

配車係「まぁそう言わないで下さいよ、なにしろ同僚さんご指名の依頼で」

136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:12:46.77 ID:nRtd3ZTwO
同僚「俺指名ってマジかwww指名料取っていーのww?」

配車係「その辺はご本人と話して下さい、協会は関知しませんので」フフッ

同僚「ご本人?あぁ荷主って事かww」

配車係「荷主というか…まぁとにかく向かって下さい、積み地は王立アカデミーですので」

同僚「了解しまくりですwww」カチャ

同僚ナビ『珍しいですわね、同僚さんご指名の集荷依頼なんて』

同僚「つーか初めてじゃねww時代がようやく俺に追いついたかwww」

同僚ナビ『…まぁキャラはともかく、ドライバーとしてのスキルは私も認めておりますわ』

同僚ナビ『私としても誇らしいですわね』ニコ

同僚「だろwwwんじゃまー行きますかwwww」

ブォン!ブロロロ…

137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:14:25.00 ID:nRtd3ZTwO
-1時間後 王立アカデミー正門-


修道女「…。」

同僚「…。」

修道女「ど、どーも」

同僚「まwたwお前wかwww」

同僚「しかし集荷なんてどったのwwしかもこんな所でwww」

同僚「あ、あれかwwさてはイケないおクスリでも製造して運ばせようってかwww」

修道女「…。」チョイチョイ

同僚「あん?で、荷物ってどれよww」

修道女「わ、私です…荷物」アハ

同僚「」

修道女「ダメ…ですかね?」ジッ

同僚「」

138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:15:24.27 ID:nRtd3ZTwO
-王都 街道-


ブロロロ…

修道女「先日は誠に申し訳…」フカブカ

同僚ナビ『…顔を上げてくださいまし』ハァ

同僚ナビ『まぁお酒が入ってらしたのなら仕方ない…といえる範疇を超えてましたが』ジトッ

修道女「うぅ…」ビクビク

同僚ナビ『男さんとナビちゃんの一件、大変ご尽力いただいたとか』

同僚ナビ『ナビ(あの子)の友人としてお礼申し上げますわ』

同僚「俺からも言わせてくれ」

同僚「あいつらの為に頑張ってくれて、ありがとな」ニカッ

修道女「い、いえいえ」ニコッ

同僚ナビ『まーこれで前回の暴言についてはチャラにして差し上げますわ』

修道女「よ、良かったです…」ホッ

139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:16:04.85 ID:nRtd3ZTwO
同僚「それにしても集荷依頼って何だよwww」ケラケラ

修道女「あ、あのその…」モジモジ

修道女「男さんとナビさんの事、同僚さんには一番先に伝えたくて…」

同僚「そーゆー事ねwwそういや連絡先とか知らんもんなwww」

修道女「それに…真っ先に会いたかったし」ボソッ

140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:16:39.69 ID:nRtd3ZTwO
同僚ナビ『!』ピコーン

ササッ

同僚ナビ『(そういう事ですの?あなたも変わったご趣味を…)』ごにょごにょ

修道女「(そ、そうですかぁ?や、優しい所もあるんですよ?)」ごにょごにょ

同僚ナビ『(そこはまぁ分かりますが…とにかくそういう事なんですのね?)』ごにょごにょ

修道女「(どうやらそういう事みたいです…何しろこんな気持ち初めてで)」ごにょごにょ

ごにょごにょごにょごにょ

141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:18:06.98 ID:nRtd3ZTwO
同僚ナビ『何でもありませんわ』シレッ

同僚ナビ『それより同僚さん、今回の件では修道女さんに大きなご恩があるのですから』

同僚ナビ『ここはひとつお礼の席でも設けて差し上げては如何でしょう?』

同僚「名案キタwwww素敵じゃないのwww」

同僚ナビ『男さん達の復帰祝いもありますしね』

同僚「お前さん頑張ってくれたしなwwみんなでぱーっとやるべwww」ポンポンッ

修道女「///」カァァッ

修道女「は、はい!ぜひ!」

142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:18:34.69 ID:nRtd3ZTwO
同僚「協会(うち)の連中には俺から声掛けておくからよww」

修道女「お、お願いしちゃっていいんですか?」

同僚「まwかwせwろwww」ビシッ

修道女「じ、じゃあお願いしますね!」

同僚「おうよwwあ、そしたらお前さんの連絡先も聞いとくかww」

修道女「は、はい!」カキカキ

同僚ナビ『(まずは連絡先交換、次は大人数で…そこから徐々に距離を縮めて…)』

同僚ナビ『(いける…黄金パターンですわ)』ニヤリ

143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:25:14.62 ID:nRtd3ZTwO
-後日 王都酒場街-


[BAR REQUIEM]

カランカランッ…

先輩「全員揃ったな」

同僚「おっけwそれじゃ始めますかww」

<乾杯!カチンッ…

同僚「ぷはwやっぱ一杯目はこれよねww」ぐび

男「そういえば今日は全員エールなんだな」

女「今回の功労者である修道女さんに敬意を表して、ね」ごく

修道女「な、なんだかすみません」アセ

同僚「でもこれ普通に美味いからなww」

先輩「修道女ちゃん達が製造したエールを、俺達運送屋が各地に運んで」

男「こうして色々な人の手に渡るわけか」

男「なんだか感慨深いな」グビ

144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:26:00.23 ID:nRtd3ZTwO
女「あ!いけない忘れる所だったわ」

女「修道女さん」チラッ

修道女「は、はい!」ごそごそ

コトリッ…

同僚「んー?何だそのデカい魔法石はww易でも立てようってかwww」

女「修道女さんに情報転移魔法のコツを教えて頂いたの」パァァァァ

修道女「今日の主役の登場です!」パァァァァ

ナビ『やっほーみんな?』ピョンッ

男「おぉ!」

同僚ナビ『私もおりましてよ』スッ

同僚「お前もかwww」

145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:26:43.49 ID:nRtd3ZTwO
女「ナビちゃん達のインストールされている本物の魔法石は協会の備品だから」

修道女「彼女達のデータだけを情報転移魔法で連れて来たんです」

先輩「また規則ギリギリな事を…」

女「まぁいいじゃないですか、始末書なら私が」

先輩「配車係の奴には黙っておくよ、ともかくこれで本当に全員揃ったわけだな」

同僚「それでは改めましてww」コホン

<乾杯!カチンッ…

146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:29:45.12 ID:nRtd3ZTwO
修道女「本当に良かったです、男さんとナビちゃん…」シミジミ

同僚「過去との再会ねーw」

先輩「辛い記憶だとしても、今になって取り戻せたのならそれは何か意味のある事なんだと思う」

先輩「これからのあいつらの人生において、な」

修道女「む、無駄なものなんかないですよね!」ダンッ

先輩「だな、親父さんも喜ぶだろうよ」

同僚「あれ?先輩あいつの親父さんと知り合いなんすか?www」

先輩「直接面識はないけど、俺は元々軍出身だから」カランッ

先輩「親父さんの噂…伝説に近いな、そんな話はよく聞いたよ」

147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:30:39.43 ID:nRtd3ZTwO
同僚「伝説wwwやっぱ只者じゃなかったかwwwあ、俺マッカランをロックでwww」

先輩「俺も同じのを。そうだな…何てったって先代勇者一行の一人だからな」グイッ

修道女「せせせ先代勇者一行!!?」

同僚「話がインフレし過ぎて一般庶民の俺にはついていけねぇwwwww」

先輩「俺だって同じさ、軍を抜けて今はただの運送屋」

先輩「世界の命運なんざ雲の上の話だ」

先輩「でも、修道女ちゃん程の能力があれば軍からも声が掛かりそうなもんだが…あ、何飲む?」

修道女「わ、私なんて全然っ!あ、アマレットジンジャーをお願いします」

148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:32:18.74 ID:nRtd3ZTwO
同僚「ホントかなーwww女ちゃんが大絶賛してたぜ?お前さんの事www」

修道女「…な、ない訳でもなかったんですけど」アセ

同僚「やっぱなwww」

同僚「で?断っちまったのかwwwまぁシスターが軍の仕事出来ねぇわなwww」

修道女「ぎ、逆です」

先輩「逆?」

修道女「わ、私元々が孤児ですからね」ヘラッ

修道女「今はシスター長さんの娘という事になっていますけど」

修道女「軍の偉い方にそういうの気にされる人がいたんじゃないですかね…なんて」ハハ

先輩「…お役所って感じだな、出自なんざどうだっていい事だろうに」ハァ

同僚「全くふざけた話ですね、今のコイツには何の関係もねぇのに…」チッ

修道女「(あ、草生えてない)」

修道女「ま、まぁ私としては何か皆さんの力になれるならいつでも!って感じですので!」

修道女「困った事があったら言って下さいね?」ニコッ

149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:32:59.93 ID:nRtd3ZTwO
先輩「ありがとな。まぁ詠唱に関する事だと、女あたりがまた世話になるかも知れん」

先輩「その時はよろしくな」ニコッ

修道女「は、はいです!」ビシッ

先輩「さて、んじゃそろそろ行きますか」スクッ

同僚「あれ先輩帰るんすかwww」

先輩「ちょっと他の奴とも話してくるのさ、まぁ…邪魔者は退散すっから」コソッ

先輩「(上手い事やれや、ジェントルマン)」ニヤ

修道女「?」

同僚「かーっwwwみんなそういうの好きねぇwwww」

150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:35:53.78 ID:nRtd3ZTwO
ナビ『どーちゃん久しぶりやんか!』ハイタッチ

同僚ナビ『ふふっ元気そうで安心しましたわ』ハイタッチ

ナビ『心配かけてごめんな?』

同僚ナビ『いいんですのよ、無事に戻ってらっしゃったなら』フルフル

ナビ『色々あって引き篭もってもぉてんけどな』

ナビ『男ちゃんが来てくれてん!』ニコニコ

同僚ナビ『聞きましたわ』

同僚ナビ『元々男さんの中にあった過去の記憶が』

同僚ナビ『コピーされるのではなく、ナビ(あなた)の側にそっくり移動してしまっていた…』

同僚ナビ『そういう解釈でよろしいかしら?』

151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:37:02.75 ID:nRtd3ZTwO
ナビ『そぉなんよー、何でそんな事になったかよぉ分かれへんねんけど』ウーム

ナビ『よっぽど辛かったんやろな、男ちゃん』

同僚ナビ『その時、男さんはまだ2歳位でしたのでしょう?』

同僚ナビ『深い心の傷となるのも頷けますわ』

ナビ『でもな?男ちゃんは来てくれてん』

ナビ『わざわざ見たくもない過去の記憶と向き合ぅて』

ナビ『ウチにだけ押し付けられへんからって』

ナビ『正直ね、嬉しかったんよ』

152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:37:41.97 ID:nRtd3ZTwO
同僚ナビ『優しい人ですね』ニコッ

ナビ『せやろー!?ホンマ大好きやわぁ男ちゃん♪』ピョンッ

同僚ナビ『…あなたって人は』

ナビ『で、どーちゃんは最近どうなん?同僚ちゃんと上手くやっとぉ??』

同僚ナビ『私達は相変わらずですわ』フッ

同僚ナビ『彼と私は良い意味でのビジネスパートナー』

同僚ナビ『彼のドライバーとしての能力を認めこそすれ、特別な感情を抱いたりは致しませんわ…が』

153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:38:29.73 ID:nRtd3ZTwO
ナビ『が?なになに??』グイッ

同僚ナビ『実は最近同僚さんにも…』ひそひそ

ナビ『ほんまかいな!あ、あの修道女さんって人!?』ワクワク

ナビ『同僚ちゃんもたゆんたゆん好きやかんなー』ケラケラ

同僚ナビ『むっ…いえ実は、彼女の方からなのですわ』ひそひそ

ナビ『まーじーでー!?』ノケゾリー

ナビ『やるやん同僚ちゃん!隅に置けへんなー!』ニシシッ

ナビ『で?どーちゃん的にはその辺どぉ思ってるん??』わくわく

同僚ナビ『そうですわねー』ウーム

154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:39:26.03 ID:nRtd3ZTwO
同僚ナビ『彼女は修道女らしく、慈愛に満ちた素敵な方だとお見受けしますわ』

ナビ『ほうほう』

同僚ナビ『詠唱士としての能力も高く、将来的な事を考えても悪くないお相手かと』

ナビ『えーやんべた褒めやん!』キャッキャ

同僚ナビ『ただし…』

ナビ『ただし??』



<バカルディ!店にあるだけ持ってきて!!

<なんちってwww



同僚ナビ『…あれさえ無ければ』ハァ

ナビ『あららー絶好調やんなぁ』

155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:41:01.31 ID:nRtd3ZTwO
ガララッ…

女「バーにテラス席とは珍しいわね」

男「夜風が気持ちいいな」ストンッ

女「私はブルームーンを」

男「エールおかわり」


<乾杯 カチンッ…

156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:41:34.39 ID:nRtd3ZTwO
女「…見てきたのね」

男「あぁ、あの村が消えるその日をな」

女「…今更私から何も言う事は出来ないわ」フルフル

女「あの時の事が、まだ小さかったあなたの心をどれだけ傷つけたか」

女「私は生涯自分を赦す事は出来ないと思う」

女「何も出来なかった自分を」

女「それどころか、あなたを置き去りにしt男「もうさ、やめにしないか?」

女「男くん…」

157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:42:32.49 ID:nRtd3ZTwO
男「俺さ、あの時の記憶を追体験してきて」

男「確かに怖かった」

男「誰にも見つけてもらえずに、ただ死ぬのを待つしかないってのは」

男「今思い出しても震えるよ」

女「…っ」ギュッ

男「でもな?そんな状況で、女だけは俺を助けようとしてくれた」

男「必死になって俺の名前を呼んでくれた」

男「あの時の俺にも、それはちゃんと聞こえてたんだぜ?」

女「っ!だけどっ…!私はっ…!」

男「あの時は気付けなかった女の優しい心に、今回の一件でやっと気付けた」

男「ずっと苦しませてごめん」ペコッ

男「それ以上に、助けてくれようとしてありがとうな」ニコッ

女「…っっ!!男くん…」ジワッ

158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:43:05.33 ID:nRtd3ZTwO
男「女が自分を赦せなくても、俺は女を赦すよ」

男「それどころか、今は感謝の気持ちでいっぱいだ」

男「だから、な?少しずつでいいから」

男「女は女自身のこと、赦したってくれへんかなぁ…?」ポンポン

女「うぅ…男くん…」グスッ

女「ごめんな…ほんまに…」ポロポロ

男「えぇて。もう過ぎた事やんか」ナデナデ

女「うぅ…あぁ…」ポロポロ

159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:43:41.08 ID:nRtd3ZTwO
ナビ『どーちゃんとの恋バナに夢中になって出遅れたけど』コソッ

ナビ『男ちゃん、しっかり伝えてくれたみたいやな』ウンウン

ナビ『…でも、あの頭ポンポン』ジトッ

ナビ『やっぱりちびっと妬けるわ…』ムムム

160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:44:56.73 ID:nRtd3ZTwO
-深夜 王都酒場街-


男「今日は皆さんありがとうございました」ペコッ

ナビ『ました』ペコッ

同僚「いーって事よwwwパーっとやるいい口実だったわwwww」

同僚ナビ『またそんな憎まれ口を…』

先輩「明日から復帰だろ?気合い入れていけよ」

ナビ『まかしてーな!ウチらは最強のコンビやで♪』フンス

ナビ『な!男ちゃん!』クルッ

男「あぁ、これからもよろしく頼むぞ」

先輩「それじゃここらで解散とするか。みんな気をつけてな」フリフリ

同僚「おつかれさんでしたーwww」

男「みんなおやすみなさい」

161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:46:46.75 ID:nRtd3ZTwO
女「先輩さん」タッタッ

先輩「お、どうだ気分は」

女「えぇすっかり、ご心配お掛けしました」

先輩「なぁに、男が付いてたんだから安心してたさ」スッ

シュボッ…

女「…先輩さん」

先輩「?」スゥ…

女「一本頂いても?」

先輩「あぁ構わねぇよ、ほい」スッ

先輩「えぇと火は」ごそごそ

女「ここにあるじゃないですか」グイッギュッ

先輩「お、おいおい」

ジジッ…ポワッ

162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:47:30.91 ID:nRtd3ZTwO
スゥ…フゥゥ

先輩「シガーキスなんざ初めてだ…」ポリポリ

女「私もです」

女「…お嫌でしたか?」ジッ

先輩「うっ…全く女心ってのは分からんもんだなぁ」ポリポリ

女「ふふっ」スパァァ

163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 12:49:00.45 ID:nRtd3ZTwO
第1部完となります
ありがとうございました
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/27(金) 13:11:26.85 ID:DEvaNBSdo
おもっっっっしろい。
続きも期待します
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/27(金) 19:44:46.52 ID:D/01SbYK0
おもしろかった
ただ若干、ストーリーの中で修道女が浮いているように感じたかな。なんか突然現れて、同僚と恋仲になりそうな雰囲気に違和感。ナビは人工精霊が元ネタっぽいかな。少しだけ登場した王や、先輩も設定も確り作り込んでるようだから、今後の展開が楽しみ。
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 19:46:21.80 ID:IDFS0p+l0
読んでくれてる方がいて嬉しいです
ありがとうございます
第2部は明日から順次投稿します
よろしくお願いします
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/27(金) 19:57:24.69 ID:cwPcvREYo
竜と勇者と配達人
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/27(金) 22:13:20.14 ID:a6rHRxdD0
乙でございます
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/27(金) 22:44:43.99 ID:4KW6Z1olo
おつ
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/28(土) 04:54:14.73 ID:3vWm5r4Q0
1部乙
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/28(土) 12:01:24.95 ID:T6taEMXHO
草生やすの止めてくれ
内容は良いのに不必要に草生えてて途中で読む気が失せる
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/28(土) 12:56:27.07 ID:Qm8icYht0
じゃあ読まなきゃいい

と言って欲しそう
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/28(土) 18:53:30.25 ID:vVKp/IT/O

面白い
174 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 19:12:06.89 ID:i3v8qfwTO
1です
読んでくれる方がいるみたいなので酉付けてみたんですけど出来てるかな?
175 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:13:27.29 ID:VGIaeuJI0
色んな言葉を頂けて嬉しいです
励みになります
ありがとうございます

第二部始めます
176 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:14:30.32 ID:VGIaeuJI0
-3ヶ月後 王都 街道-


ブロロロ…

ナビ『♪』ルンルン

男「ご機嫌だな」

ナビ『今日めっちゃ順調やんかぁ!珍しく荷待ち無しで積めたし』ニコニコ

男「大体待たされるからな、あそこの倉庫は」クスッ

ナビ『ウチらの日頃の行いがえぇからやなー』ウンウン

男「そうだな…」

男「…。」ボーッ

ナビ『んー?どしたん??』クルッ

男「…里での一件以降も、あちこちで軍と魔族の衝突が起きてる」

男「小競り合いから一般人に被害が及ぶ規模のものまで様々だが」

ナビ『そういえば増えたな』

男「…戦争は続いていて」

男「戦闘の度に傷付くのは普通に生きてる人達だったりもして」

男「…でも、俺達の仕事や生活自体にあんまり変化はなくて」

男「…。」
177 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:16:16.94 ID:VGIaeuJI0
男「里での出来事が心の中で風化しつつあるのを感じるんだ」フゥ

ナビ『過ぎてしまえば、自分の身に降りかからなければ』

ナビ『忘れてってまう…みんなそんなもんなんちゃう?』

男「分からんではないけど…それでいいのかなって思うんだよ」ウーム

ナビ『んー男ちゃんの言いたいことも分かんねんけどな?』

ナビ『ウチらは勇者やない、ただの一般人やから』

男「…世界の命運を憂いても仕方ない、そう言いたいのか?」

ナビ『そこまで言わんけどなぁ』

178 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:17:04.41 ID:VGIaeuJI0
ナビ『やからこそ、普通の日常を大事に過ごさなアカンなーとは思うねんかぁ』

男「普通の日常か…それは確かにそうだけどな」

ナビ『ま、ウチは男ちゃんとおれればおーるおっけーやし♪』ニシシ

男「お前は気楽でいいよな…」ハァ

ブロロロ…

179 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:18:19.61 ID:VGIaeuJI0
-19:00 王立倉庫事務所-



同僚「異動っすかww?」

所長「うんそう。運送屋だけに」ププッ

同僚「草枯れる」

所長「あ、でも異動はマジよ」

所長「異動ってか抜擢?やったじゃない同僚ちゃん」

所長「しかも新規事業の立ち上げメンバーだってよ??」グイッ

所長「いやー眩しいわー後光が差してるわー」

同僚「抜wwww擢wwwww」

同僚「新規www事業wwww」

所長「いよいよ時代が君に追いついてきたんじゃないのー?このこのー」ウリウリ

同僚「どうやらそのようですねwww」フッ

同僚「それで?新規事業って何やるんすかww?」

所長「え?知らない」

同僚「えっ」

所長「えっ」

180 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:19:11.25 ID:VGIaeuJI0
所長「なんかねー事務局の上層部直々の辞令なんだよねー」ホジホジ

所長「外部から顧問も呼ぶー?みたいな話ー?だったけど」フーッ

所長「とりあえず女ちゃんがプロジェクトリーダーになるみたいだからさー」

所長「明日の運行後にでも女ちゃんのとこに顔出してみてくれるー?」

同僚「深まる謎wwとりあえず了解っすwww」

所長「よろしくちゃーん」スタスタ



同僚「なんだか上手いこと乗せられてる気がwww」

181 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:21:13.80 ID:VGIaeuJI0
-同刻 物流協会事務局 女の執務室-


カリカリ…

女「先人の知恵もなんとやら、面倒がらずに古い文献も漁ってみるものね」ペラ

女「今の魔術経典からは削除されている、情報転移や位相転移の詠唱…」フムフム

女「この辺を応用すればいけそうね…」ペラッ

女「問題は動力源、か」パタン

ドサッ

[禁書指定 それいけ!転移ちゃん!]
[禁書指定 カバでも出来る位相転移]
[禁書指定 絶対殲滅!爆撃☆どかん]

コンコンッ

女「どうぞ」シマイッ

先輩「おーす、おつかれ」ヒョコ

女「あら、お疲れ様」

女「遅くまで残業か?肌に悪いぞ」コーヒーヒョイ

女「ご心配どうも。でも今日は残業じゃないのよ」スッ

先輩「あぁ、いつもの趣味か」

182 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:22:09.36 ID:VGIaeuJI0
女「ライフワークと言って欲しいわね、魔術の世界がこんなにも奥深いものだったなんて」フゥ

先輩「…あんまり奥まで首突っ込んで噛みつかれても知らんぞ?」

女「深淵を覗くものはまた同時に、って奴かしら?」

女「構いやしないわ、この探究心を止める事は誰にも出来ないもの」クックッ

先輩「お前ちょっとこえーよ…」ヒキッ

先輩「だが、覗き込んでくるのは深淵だけじゃないかも知れないぞ?」

女「それこそ望むところだわ、鬼でも蛇でも出てきてみなさい」フフフ

先輩「…そんな可愛いモンだったらいいんだけどな」ボソッ

183 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:23:43.25 ID:VGIaeuJI0
-鍛治職人の里 広場-


ワーワー!タンッ!タンタンッ…!

親父「おーし!今日の稽古はこれまでー!」

<ありがとーございましたー!

親父「ふぅ…ガキどもの相手もなかなかいい運動になるな」フキフキ

親父「しかし…あいつら見てっと」シュボッ!スゥ…

親父「思い出すなぁ」スパァァ…

184 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:24:27.42 ID:VGIaeuJI0
-17年前-

<こいつしゃべれねーんだって!

<えーへんなの!

<おいなんかいってみろよ!

幼男「…」グスッ

幼女「こらー!またよわいものいじめしてー!」ダダッ

<わ!おんなだ!

<おとこおんながきたぞー!

<にげろー!

幼女「まったくあいつら…」プンプン

幼女「さ!男くんかえろ?」クルッ

幼男「…」コクリ

185 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:25:17.35 ID:VGIaeuJI0
幼女「でねー?あいつらったらひどいのよ!」ペラペラ

親父「まーアホどもの相手してもしゃーねぇさ」ゲラゲラ

親父「なぁ男!」ガシッ

親父「焦んなくていいんだぞ?」グシグシ

親父「声なんざ出なくったってお前はお前だ、女共々俺の大事な家族だ」

幼女「おじさん…」

親父「お前達の居場所はここにある。それだけ忘れんな、いいな?」

幼男「…」コクリ

親父「よし!」ニカッ

親父「まーそのうちコイツみたいにペラペラしゃべれるようになっからよ!」ゲラゲラ

幼女「なんかむかつくー」プクー

ワイワイ…

186 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:29:00.10 ID:VGIaeuJI0
親父「クリスマスかー!」

親父「お前ら何か欲しいもんあるか?あんまり高ぇもんはダメだかんな!」

親父「…って!サンタのじじいが!」

幼女「わ、わたし新しい本が欲しい!」

親父「女は本が好きだなー!分かった!ジジイに頼んどく!」

幼女「やったー!」

親父「男、お前はどうだ?」

親父「何か欲しいモンあったらこのサンタのカタログを指差してだな」ズイッ

幼女「おじさん!ゆめがこわれる!」
187 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:30:22.69 ID:VGIaeuJI0
幼男「…お…お…」

親父・幼女「!!」

親父「…何だ?ゆっくりでいいから言ってみ?」ナデナデ

幼男「お、おと…さん、て」

幼男「よ、よんで…い?」

幼女「お、男くん…!」ウルウル

親父「…っ!」ジワッ

親父「…ったくおめぇは無欲だな!修行僧かっつーんだよ!」グシグシ

親父「当たり前だろーが!パパでも親父でも好きなように呼んでいいぜ!」

幼女「うーんでもぱぱってかんじじゃないかも」

親父「そうだな…それに親父も…俺まだ30だし」ウーム

幼男「おと…さん」

幼男「おとさん!」ニコッ

親父「おうよ!じゃ決まりだな」ニカッ


188 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:35:57.85 ID:VGIaeuJI0
-王宮 国王執務室-


側近「…。」

国王「…。」

事務局高官「…。」タラッ

側近「気になるな…この、男といったか」ペラッ

側近「先日の鍛治職人の里での事故現場に居合わせた際、過去の記憶のフラッシュバックによりナビシステムがダウン」

側近「本人は平気な顔をしていたのに、なぜナビシステムだけが…」

事務局高官「アカデミー研究員の話によれば、過去のトラウマの引き金になる記憶そのものが」

事務局高官「魔法石内部のナビシステム側にそっくり移動していたのでは、とのことで」

側近「共有ではなく移動だと?」

事務局高官「はい、原因は定かではありませんが…」アセッ
189 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:36:53.08 ID:VGIaeuJI0
側近「ふぅむ…」チラッ

国王「…。」

側近「その後はどうなっておる?」

事務局高官「はっ、男との再リンクにより人格情報と記憶情報の相互共有に成功しました後は」

事務局高官「特に問題なく運行を行っております」

側近「…ひとまず落着、と見るか」チラッ

国王「いや」ギロッ

事務局高官「っ!」ビクッ

側近「その後は問題なし、と言ったが」

側近「再リンク後、その職員とナビシステムの関係性はどうなのだ?」

事務局高官「関係性、ですか…」

190 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:40:06.85 ID:VGIaeuJI0
事務局高官「目に付く事と言えば、再リンク後は運行中の燃費効率が向上していますね」ペラッ

事務局高官「同じ運行でも拘束時間の短縮が見られたり」

事務局高官「総じて業務効率が上がっています」

側近「効率が上がったという事は、両者の連携が取れているという事だな」

事務局高官「はい。事務局としては良い傾向と捉えております」ニコッ

側近「…。」チラッ

国王「うむ」

側近「この男という職員とナビシステムについては、今後も注意を怠るな」

側近「何か変化があればすぐに報告するように」

事務局高官「し、承知しました」

側近「行ってよいぞ」

事務局高官「し、失礼致します」ソソクサ

…バタンッ

191 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:43:10.92 ID:VGIaeuJI0
側近「…記憶の補完が成された結果、この職員の本当の出身地が明らかになりました」

側近「北西の村の生き残りだそうです」

国王「涙の欠片、か…」

側近「可能性はあります」

国王「うむ。今はまだ可能性の段階だ」

国王「しかし備えは常にしておかねばなるまい」

側近「…あれから20年、早いものですね」

国王「…。」ギリッ

192 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:48:06.37 ID:VGIaeuJI0
-日中 王都街道-



ブロロロ…

ナビ『ん?あれ同僚ちゃんのカーゴちゃう?』

男「ホントだ、ちょっと声掛けていくか」

キキッ

ナビ『同僚ちゃんやっほー♪』フリフリ

ナビ『…って、あれ?』

男「同僚の姿が見えないな、配達中か?」

同僚ナビ『あら男さん、お疲れ様です』

ナビ『どーちゃんおつかれ!』ハイタッチ

同僚ナビ『はいはいお疲れ様です…ふふ』ハイタッチ

男「同僚は配達中か?」

同僚ナビ『いえ、今日は別行動なのですわ』フルフル

ナビ『べつこーどー??』
193 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:49:15.38 ID:VGIaeuJI0
同僚ナビ『元々私は同僚さんの記憶情報を共有しておりますので』

同僚ナビ『その気になれば私単体で運行する事も可能ですのよ』

男「そうか、あいつの頭ん中の道路についての情報を使ってって事か」

同僚ナビ『そういう事ですの』

同僚ナビ『ま、実際の積み下ろし作業は作業員の方にやって頂いてますが』

タッタッタッ…

作業員「お、お疲れ様でーす」ハァハァ

ナビ『おつかれちゃん!どーちゃんにこき使われてるんやなー?』ニヤニヤ

作業員「いやもうこのナビ…手加減ってもんを知らなくて…」ヘトヘト

同僚ナビ『情けないですわねーこの程度で』ジトッ

194 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:51:20.84 ID:VGIaeuJI0
男「まぁまぁ…お手柔らかに頼むよ」

男「それで、同僚の奴は?」

同僚ナビ『事務局ですわ』

同僚ナビ『何でも新規事業の立ち上げメンバーに選ばれたとかで』

男「全然知らなかった、最近会ってなかったからなぁ」

ナビ『すごいやん!出世やん!』

同僚ナビ『…そう単純な話には思えないのですが』

男「そうなのか?」

同僚ナビ『何か気になるのです…男さんも話を聞いてみて下さいまし』

同僚ナビ『事務局に行けばいると思いますので』

男「分かったよ、お祝いの一つもしてやらなきゃだしな」

同僚ナビ『よろしくお願い致しますわ』


195 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 20:52:17.00 ID:VGIaeuJI0
同僚ナビ『それでは私達まだ配達がございますので』

作業員「え!もう行くんすか!?」

同僚ナビ『ほら、ちゃっちゃと行きますわよ!』

作業員「うへぇ…」ゲンナリ


ブォン!ブロロロ…


男「あーぁ、大丈夫かなあの人」タラッ

ナビ『ホンマにドSやなどーちゃん…』
196 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 21:02:10.78 ID:VGIaeuJI0
-物流協会事務局 大会議室-



修道女「マッピングシステム?」

同僚「噂のwww新規事業www」

女「これは、この世界のありとあらゆる場所の地図情報を網羅して」

女「転移魔法と組み合わせる事で物流コストを大幅に削減する試みなの」

同僚「でもよーww物流コスト=俺たちの給料だぜ?」

同僚「自分で自分の首締めてる気がしないでもないんだがwwww」

女「短期的に見ればそうかも知れないわ、でも情勢は常に変化しているの」

女「同僚くんには、その優れた空間把握能力を活かして」

女「マッピングシステムの元となる、全世界の詳細な地図情報を構築してもらうわ」

同僚「世界をこの手にww熱いwww」

197 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 21:03:21.10 ID:VGIaeuJI0
女「そして、地図情報を元に荷物の転移を行うシステムを作る為に」

女「詠唱のスペシャリストである修道女さんにお越し頂いたってわけ」

修道女「す、スペシャリストだなんて私」アワアワ

女「ここに世界各地の地図を用意してあるわ」ドッサリ

同僚「おぅふww山のようwww」

女「これでも世界中を網羅するには全然足りていないの」

女「例えば人の手の及ばない高山や密林」

女「未発見の島なんかも出てくるでしょうし」

同僚「その情報いるww?そんなとこに荷物届けねぇだろwww」

女「いいから。そういった場所へは実際に行ってみて詳細な情報を集めてきてもらうわ」
198 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 21:04:29.74 ID:VGIaeuJI0
修道女「で、では手元の地図情報で足りない部分へは同僚さんを転移魔法で派遣して…という事ですか?」

女「察しが良くて助かるわ」

同僚「俺に伊◯忠敬になれとwww」

女「もちろん、修道女さんの負担にならない範囲でなら」

女「一緒に行ってもらっても構わないわ」ニコッ

修道女「え、ええぇぇ!??」

女「あくまで仕事に支障の出ない範囲で、ね?」ウインク

修道女「ど、同僚さんと…二人旅…///」

同僚「お前らほんっっっとに好きねーそういうのwwww」

同僚「まぁ良く分かんないけど、せっかくコンビ組むんだしwww」

同僚「よろしく頼むぜww」ニコッ

修道女「は、はいですっ!」ニコッ

199 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 21:16:20.94 ID:VGIaeuJI0
-深夜 王立倉庫事務所-



カタカタ…カリカリ…

配車係「王立倉庫所属の50台を超えるカーゴ…」フゥ

配車係「毎日変わる仕事内容を考慮しながら、各車への仕事の割り振りをしつつ」

配車係「各ドライバーの労働時間や各種手当のバランス配分も考えて配車組みをしなければならない…」ウーム

配車係「誰かが勤務超過になる一方で、手当が少なく割に合わない誰かが出たりする事は極力避けなければいけませんからねぇ」

配車係「それらと並行して、車両トラブルや客先トラブルの対応など…」ハァ

配車係「行ったらすぐ積める!って聞いてた場所で実は1時間待ち!とかザラですからね!?」

配車係「1時間位…と思われるでしょうが」

配車係「1時間変われば結構違ってくるんですよ…」ウーム

200 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 21:17:20.69 ID:VGIaeuJI0
配車係「これ、文章にすると伝わりにくいですが」

配車係「なかなか骨の折れる作業なんですよ…」ハァ

配車係「なんて、独り言も増えてしまいますよね」ハハ

先輩「おはよーさん」ガチャ

配車係「あ、おはようございます」

フーッ…カチッピンポーン

配車係「今日は夜間便でしたね…と、23時30分です」

配車係「今日は特に過積載注意です」

先輩「はいよ」カキカキ

先輩「ん?そういうお前は夜勤ってわけでもないはずだが」

配車係「いやー配車組みが終わらなくて…」ハハ

201 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/28(土) 21:19:17.89 ID:VGIaeuJI0
先輩「大変そうだな…お前の仕事にこそナビシステムが必要な気もするよ」

配車係「ホントですよ!…同じ脳味噌を持ったパートナーがいたらどんなに楽か…」ハァ

配車係「あ、ナビシステムといえば男さん達はその後どうですか?」

先輩「再リンク後って事か?まぁ上手いことやってるみたいだな」

先輩「前にも増して息ピッタリ…ピッタリ過ぎる位にな」

配車係「ピッタリ過ぎる?」

先輩「あいつらな、最近会話が減ったんだと」

先輩「話さなくてもお互いの考えてる事が何となく分かるらしい」

配車係「なんだか熟年夫婦みたいですねそれ…」

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