カドック君がカルデア爆破から生還しました。【Fate / FGO】

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 22:31:40.80 ID:1hXREu2Fo
おつ
小次郎…
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [むsage]:2018/04/21(土) 22:37:23.35 ID:/hz8UqwsO
C71
200 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/22(日) 16:30:17.72 ID:52hF72pvo
「ゆけ」

剣士は穴だらけの体を起こし、静かに立ち上がる。今にも砕けそうな体を魂で持ち上げる。

「ふうん。かっこいいじゃない。でも」

巨大生物にのり、追跡していた女は、それの歩みを止めさせることなく、満身創痍の男を踏み越えようとする。事実、そうすることができたはずだ。

「――――」

迫りくる巨大な影。男は無言で、納刀したまま立ち尽くす。

しかし、その生物の足は、男の頭上で制止した。

「――なんて気迫。気が変わりました。相手をしてあげましょう」

女は生物から降り、地面にたつ。

「全く困ったものです。狂化のせいで意識にモヤがかかっているよう。任されたのは追跡だったけど、この機に私を片付けてもらう予定だったってのに。邪魔だよ、アンタ」

「そちらも訳ありであったか。しかしあまり買いかぶるな。『重量オーバーだ』と蹴り落とされてしまったのでな。慰めに可憐な乙女でも口説き落としてみようかと思っただけのこと。――無論、この刀でな」

「そう。それはかわいそうに」

つまらない冗談。と、女は鼻で笑う。

しかし気を抜いたわけではない。刀に手をかけたあの男はすでにその首を狙っているのだから。

「今にも消えそうなその体で……やってみせなさい」

杖を構える女に、男の刀はぴくりとも動かない。

「大した気概だが、果し合いの前に名乗りもなしとは無礼であったな。……あえて名乗ろう。我が名は”佐々木小次郎”」

「ふぅん。田舎モンだね。アンタ。嫌いじゃないよ。……コホン。我が名は”マルタ”です」

「ほう。臆さず名乗るとは、なかなか骨があるではないか。マルタ殿」

「ノってきたわ……じゃなくて。――ええ、ええ。いいでしょう。私も応えます。海辺の聖女マルタとして、全力で応えます。来なさい。コジロウ」

「では存分に果たし合おう。……参る」

「”愛知らぬ悲しき竜よ”」

「……翼があり空を飛ぶのなら鳥だろうが、これはさて、我が刃どこまで通じるかな。……”秘剣”」


パキン、と鈍い金属音が辺りに響いた。


201 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/22(日) 16:32:33.32 ID:52hF72pvo



「追ってこないな。やるじゃないか。今頃は生きていないだろうけど、うん。仕方ないな」

「まあ! なんて言い方なのアマデウス。私知っているわよ。こういうときなんていうか。……あなたがおりればよかったのに、この音楽以外能のないクズ! これでよかったかしら!」

「ああ100点だ。君が罵倒してくれるなら僕は気兼ねなくクズれるよ」

キャスター「……どう見る? マスター」

カドック「現に僕たちは逃げ延びている。信じがたいが、あの傷で足止めに成功したと考えるべきだ」

キャスター「本当に強かったのね。アサシン」

カドック「ああ戦力を失った。これならそこの弱そうなのが残った方がよかったな。本当に」

「失礼だな。確かに僕は弱いけど、だからって死ぬのは嫌だ。人間、生きててこそだろう? それに弱すぎて足止めにもならなかったと思うな!」

ジャンヌ「森が見えてきました。身を隠せそうです。日も沈んできました。いったんあそこで休憩しましょう」

キャスター「言うまでもないわ。そもそもあの森を目指して走っていたのだから」


202 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/22(日) 16:33:18.88 ID:52hF72pvo



龍脈に陣を形成する。これでカルデアと物質的に通信が可能となったはずだ。


ダ・ヴィンチ「やっほー。みんなの天才、ダ・ヴィンチちゃんだよ」

カドック「これでサークルは構築されたんだな?」

ダ・ヴィンチ「ああ。ご苦労だった。見ていたとも。大変だったね。今夜はゆっくり休むといい」

カドック「こちらからは食料を送ろう。手っ取り早くつくった干し肉なんかがある」

ダ・ヴィンチ「ああ助かるよ。職員たちも毎日缶詰やレトルトじゃ仕事に支障をきたすからね。精神的に。希望があればこちらからも食べ物を送るよ? 食べたいものはないかい」

カドック「食糧なんざ栄養が摂れればなんでもいい。すこし鉄分が不足している。サプリメントを送ってくれ」

ダ・ヴィンチ「わかった。だがサプリメントはノーだ。食うことは生きることっていうだろ? カルデア室内菜園ほうれん草を送ろう。それから真水だね。精製するのは手間だろう。浄水設備の整っているこちらから送るほうが合理的だ。好きだろう、そういうの」

カドック「ああ。お前とちがって凡人だからな、僕は」

ダ・ヴィンチ「おやおや嫉妬かいー? 他に必要なものはあるかな」
203 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/22(日) 16:33:47.51 ID:52hF72pvo
カドック「ベッドは送れないか。野宿は勘弁だ。無理ならシュラフでもいい」

ダ・ヴィンチ「ベッドって君の部屋のベッド!? 森で!? わかった試してみよう。天才として睡眠の質の重要性には理解を示そう」

カドック「それから、一つ問題がある……キャスターが霊体化できない」

ダ・ヴィンチ「ほうそれは妙だな。カドック君とキャスターのパスはしっかり通っているはずだけど」

カドック「どうにもキャスターが本調子じゃないのもそのせいかもしれない。僕からの魔力の変換効率が格段に悪い。どうやら自分の魔力で補っているようだ」

ダ・ヴィンチ「キャスターとは話したのかい」

カドック「あちらも気づいているが、言ってこない以上その必要はないだろう」

ダ・ヴィンチ「レイシフトという不安定な環境が原因かもだ。調べてみるよ」

カドック「頼む」

ダ・ヴィンチ「ああ、それから職員一同から『ヒャッホー、肉だ、魚だ、果物だ! カドック最高!』だそうだ」

カドック「どうでもいい。……切るぞ」
204 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/22(日) 16:34:33.59 ID:52hF72pvo
通信終了。龍脈は確保したし、寝具が整うなら当面がここが拠点になるだろうか。


キャスター「おかえりなさいカドック! さあマリー! 紹介がまだでしたわね。彼はカドック・ゼムルプス。人類最後のマスターにして人類最後の希望」

マリー「まあ! 人類最後の希望! なんて宿命的なのかしら」

キャスター「彼女はマリー・アントワネットです。ご存知でしょう? 私は知っています」

カドック「マリー・アントワネット王妃か。会えて幸栄だ。クラスは、ライダーか?」

マリー「ええ! 無事でよかった。でも疲れているかしら。疲れているわよね。あなたはきっと背負いすぎているのだわ」

キャスター「そうなの! マスターはいつも悲壮感というか、そう。背負いすぎているの。わかるのねマリー」

マリー「もちろんよ。意地っ張りな殿方の顔なんて飽きるほど見てきたんですもの」


……ずいぶん打ち解けたな。

なんか、眩しいな。あまり近寄りたくない。
205 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/22(日) 16:37:15.38 ID:52hF72pvo
「こっちにきたまえ。そこは輝きに満ちていて目がつぶれてしまいそうだろう。なんなら心もやられるぞ」

マリー「彼は”ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト”。私の友人です」

アマデウス「クラスはキャスターだが、戦力には数えないでくれ」

キャスター「アマデウス……私、あなたのピアノは好きよ」

アマデウス「さすがに教養があるとみえる。モーツァルト好きに悪い奴はいても馬鹿はいない!」

カドック「クラシックに興味はない、退屈だ」

アマデウス「はい馬鹿。馬鹿発見。僕と、僕の音楽を聴く者以外は馬鹿だ」

カドック「言っておくが別に音楽そのものを見下してやいないからな。まるでこの世の音楽は全部自分が生み出したかのような言い分だな」

アマデウス「え。そうだけど? だって僕以降の音楽家は全部僕のパクリだろう? アレ」

カドック「ちっ……嫌いなタイプの天才だ」

アマデウス「あはは。そもそも天才が嫌いってクチだろう。君。嫉妬が顔ににじみ出てるぞ」

キャスター「そこまでよ。アマデウス。私のマスターを愚弄するなら、その指、壊死させる」
206 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/22(日) 16:38:27.10 ID:52hF72pvo
アマデウス「はは、嫌だなあ、僕のピアノのファンなんだろう。そんなことするわけない。え、しないだろ?」

キャスター「まずは小指でいいかしら」

アマデウス「おいおい、冗談。だいたい僕は馬鹿とか嫉妬とか大好きだ。君のマスターもこき下ろしているわけじゃない」

マリー「キャスター。残念だけど本当なの。彼、クズなの。人間の汚い部分が大好きな汚物フェチなの」

アマデウス「うん……フォローになってないな!」

キャスター「マリーがいうのなら……」


英霊ってのはどいつもこいつも……これだけ集まるとコントロールができない。何かを尊重すれば何かをないがしろにすることになる。

常に誰かしらの琴線に触れている気分だ。僕自身も気が立ってしまう。ダメだ。冷静にならなければ。

キャスターがマリー・アントワネットを気にいったのはよかった。アマデウスは嫌な奴だが協調性がないわけではない。これからは戦闘での連携も望めるだろう。

つかの間の休息だ。今のうちに新たに加わったサーヴァントのステータスを確認して、作戦を練っておこう。
207 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/22(日) 16:39:39.08 ID:52hF72pvo
ここまで。がんばれカドック君
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 17:06:30.66 ID:GCUC0CWSO
念願のマルタ戦でタラスク返しは決まったのかな?乙
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 18:31:31.99 ID:ApyEdg/v0
割と本気でクズとゲスの割合が高い文科・芸術系サーヴァントたち。シェイクスピアとか。
実際の逸話に基づいた性格である場合が多いのが困りものである。

しかし、音楽家と王女×2って凄いパーティ構成だなカドック君。
早急にすまないさんかゲオルギウス先生を取り込まないと、最悪カドック君が前衛を務めることになるのだろうか。
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/23(月) 06:21:22.07 ID:YmAurBif0
結局カドックはワイバーンを狩る概念と化したアサシンの真名を知ることが出来なかったのか…
211 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/23(月) 19:35:35.04 ID:4/aJQH6ko
ジャンヌ「みなさん!」


見張りをさせていたルーラーが慌てて戻ってきた。敵襲だな。


ジャンヌ「ワイバーンに嗅ぎつけられました! 何匹か引き返していったので場所を知らせにいったのかもしれません!」

カドック「予想よりずっとはやいな。移動する。せっかく僕のベッドの間取りを考えてたんだ。荒らされたら台無しになる」


キャスター。”真名不明”

ルーラー、”ジャンヌ・ダルク”。

ライダー、”マリー・アントワネット”。

キャスター、”ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト”。

四騎のサーヴァントを連れて森をかける。

夕食を摂る前で助かった。満腹だったらこの距離を走るのは苦しい。
212 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/23(月) 19:36:11.13 ID:4/aJQH6ko
マリー「やああ!」

ルーラー「はあっ!」

アマデウス「そら」

キャスター「死んで」


森の中でワイバーンに出くわすが、四騎のサーヴァントがこれを蹴散らす。

純粋に数が多いとさすがに圧倒的だ。難なく撃退していく。

だが、この感じ……僕でも感じ取れるようになった。近くにサーヴァントがいる。


ジャンヌ「出てきなさい!」

マルタ「さすがにワイバーンじゃ歯が立たないわね。私は”マルタ”。あなたたちには恨みもなければ邪魔もしたくない。だから、私を倒しなさい」
213 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/23(月) 19:36:39.97 ID:4/aJQH6ko
――マルタといえば、新約聖書に出てくる悪竜タラスクを鎮めた、一世紀の聖女じゃないか。


カドック「倒せってのはどういうことだ」

マルタ「あなたたちの力にはなれない。だからせめて、ここで……く、理性があるうちにはやくしろっての!」

キャスター「マスター、彼女は無理やり使役されているみたい」

カドック「そのようだな。おい、マルタ。話合えないか」

マルタ「無理。いつあなたたちを殺す衝動に駆られるかわかったもんじゃない。問答無用!」

カドック「くっ!」


魔力の砲弾が杖先から飛んでくるのを、ルーラーが弾く。
214 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/23(月) 19:37:09.23 ID:4/aJQH6ko
ジャンヌ「応戦します! カドックさん、指示を」

カドック「マルタ……海辺の聖女マルタか……」

ジャンヌ「カドックさん!」

カドック「わかった。マリー、アマデウス。お前たちは何ができる」

アマデウス「奏でる」

マリー「歌う」

カドック「よし。僕とアマデウスが最後尾。キャスターとマリーで攻める。ルーラーは前衛でこれを守れ。いいか重ねて言う。守るためだ。ミドルレンジより近づくな。こちらにはインファイターがいない」

アマデウス「キミさてはこのカオスにツッコミを諦め始めたな?」
215 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/23(月) 19:37:38.38 ID:4/aJQH6ko
カドック「そして……最前線がマリー・アントワネットだ」

マリー「私が!? できるかしら」

カドック「ほかにできるやつがいない。頼む。宝具の常時解放を許可する。死なない程度に駆け回ってくれ」

ジャンヌ「近距離なら私が対応できますが」

カドック「マルタは魔力を込めた弾を撃ってきた。アンタの対魔力が頼りだ。それに伝承通りなら”祈り”による何かがあるかもしれない」

ジャンヌ「なるほど。しかし彼女一人に前線で戦わせるのは……」

マリー「ありがとう。ジャンヌ・ダルクさん。でも大丈夫よ。任せて……”百合の王冠に栄光あれ”!」

アマデウス「デカブツがくるぞ!」

カドック「キャスター、弾幕を張れ。向こうも遠距離タイプだ。マリー、走れ。魔力は気にするな」

キャスター「いつでもいけるわ」

カドック「キャスターの君に言うのは酷だが、攻撃に専念してくれ」

キャスター「今まで全部ひとりでこなしてきたんですもの。むしろそれだけでいいの? と言ってさしあげます」
216 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/23(月) 19:38:20.31 ID:4/aJQH6ko
氷の刃が複数精製され、射出される。

マルタは後退し、これを巨大生物に薙ぎ払わせる。

マリーが馬で突進をかけるが、これも固い皮膚に阻まれる。


カドック「ダメか……ルーラー、好機と見たら前に出ろ。タイミングは任せる。ただし、そのときは確実に仕留めろ。しくじれば僕が死ぬ。最悪アマデウスがいるが、きっと一緒に死ぬ」

アマデウス「そのとおりだから何も言い返せないな」

カドック「マルタと言ったな。ならそのカメは”タラスク”か」

マルタ「ええ。私の祈りを聞き入れ舎弟……ではなく。協力を誓ってくれた頼もしい舎弟……仲間です。あなたたちに敗れるかしら」

カドック「狂化が色濃く出ているな。何を言っているのかいまいちわからない」


今はタラスクを守備に回し、自身の光弾で攻めてくるが、タラスクを攻撃に回されたら厄介だな。

あれでも竜だ。それも上位と推測される。そしてなにより警戒すべきなのがそれを屈服させたという”祈り”だ。おそらく精神干渉系の魔術か何かだろう。

この巨竜を黙らせるほどだ。僕程度のレジストでは心もとない。ルーラーと一応アマデウスにかけるしかないな。
217 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/23(月) 19:38:49.54 ID:4/aJQH6ko
アマデウス「あれでもマリアの歌は僕の支援で強化してある。ちょっとした魔術防壁なら突破できるはずだ」

カドック「そうか。マリー! キャスターと連携して攻撃を途絶えさせるな」

マリー「ええ、まっかせて!」


カドック「アマデウス、さっきのカーミラをとめた宝具はつかえないのか」

アマデウス「位置が悪いな。これではみんなを巻き込んでしまう。音楽家としては聴衆が多いにこしたことはないんだろうけど、誰もお代をくれなさそうだ」

カドック「わかった。そろそろ向こうもしびれを切らす頃合いだ。気を引き締めろ」


マリーとキャスターの連撃を受けるのでタラスクはかかりっきり。自分の攻撃はルーラーに弾かれる。

いつまでも守りに徹してはいられないだろう? 聖女マルタ。


マルタ「――っ! ああうっとおしい! 私が出ようかしら! ダメね! タラスゥゥゥゥク! 跳びなさい!」
218 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/23(月) 19:39:18.50 ID:4/aJQH6ko
なんだって、あの形状で飛ぶのか!? しまった空襲は想定していなかった。


マルタ「”愛知らぬ悲しき竜よ”」


ドッ!


アマデウス「け……」

マリー「け……」

キャスター「け……」


蹴り飛ばしてきた――――っ!?


キャスター「宝具疑似展開……ダメ間に合わなっ……」

ジャンヌ「”我が神は――”」


ルーラーが飛び出し、旗を構える。あれは宝具か……?


ジャンヌ「”ここにありて”!」


マルタ「そう……それがあなたの本来の力なのね」

ジャンヌ「はああ!」


タラスクの突進がとまる。どうやらルーラーが受け切ったようだ。大した隠し玉で助かった。
219 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/23(月) 19:40:14.52 ID:4/aJQH6ko
キャスター「そこっ!」


キャスターが躊躇なく隙をつく。無防備なマルタの額に氷柱が飛ぶ。

それをマルタは、叩き砕いた。


マルタ「私の対魔力はAよ」

アマデウス「いや今のは筋力に依存した防ぎ方じゃなかったか」

カドック「キャスター、まずはタラスクを狙え。これだけのものを使役し続けるには膨大な魔力が必要なはずだ」

キャスター「魔力切れ……そういうことね」

アマデウス「マリーの前衛は速度によるかく乱。タラスクの消費が目的ってところか」

カドック「ああ。それと左の前足を狙え。どうやらヤツは右足をかばっている。それで動きを封じられるはずだ」


タラスクの右前脚には深い刀傷があり、それをかばうように動いている。両前足を奪えば四足歩行はできない。


アマデウス「なるほどあれか。よし、あの東洋の剣士の弔い合戦といこう」

マリー「口だけいいこと言って、何もしないじゃないあなた」

アマデウス「少々辛辣が過ぎないかマリア! 僕だってやることにはやるぞ。後方支援がいいところだけど。実際、君を前線に出すのはつらいと思ってはいる。適材適所ってやつだ」
220 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/23(月) 19:43:18.78 ID:4/aJQH6ko
ここまで。タラスクがんばれ。カドック君がんばれ。
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/23(月) 20:13:14.01 ID:nIR1ZLeb0
ちゃんとマスターが攻撃の指示してる…なるほど、ぐだーずもこんな感じだったのか…?
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 01:29:03.27 ID:IP/mJRPqo
タラスク君はこれ以上ケガしないように下がってて
姐御に任せときゃ大丈夫さ
223 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/24(火) 20:04:20.72 ID:sMZgZECgo
アマデウスとマリーの攻撃がタラスクの左足に集中する。これを避けるためタラスクは左足を持ち上げるが、傷の深い右足では体重を支え切れずバランスを崩す。


ルーラー「崩れた……カドックさん! 出ます」

カドック「仕留めろよ」


ルーラーがタラスクに向かって走り出す。 せっかちかコイツ。自分のタイミングでいかせたほうが成功率が高いとふんだが、少々詰めにははやい気もする。

後ろ足だけになったタラスクは前のめりに倒れ……倒れ……倒れない……?


マルタ「タラスクあなた……立てたの!?」


二足で直立するペットに飼い主も驚いている。こんなところで新しい芸を覚えやがって。
224 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/24(火) 20:06:29.20 ID:sMZgZECgo
アマデウス「とまれルーラー!」

ルーラー「しかし今止まってはマスターががら空きに……攻め切るしかありません! はあ!」

アマデウス「脳筋! 僕はどうなる!」


ルーラーが旗で左後ろ足の脛を殴りつける。左後ろ足が浮き、ついに支えの足は一本となった。

倒れる。ルーラーはタラスクの上体が落ちてくる力を利用してとどめを刺すつもりのようだ。

――だが、倒れない。


キャスター「とうとう一本足でバランスをとっているわ。なんて見世物! サーカスの像も真っ青ね」

カドック「感心してる場合か! 敵が……」

マルタ「タラスク、すごいわ、いつの間にそんな曲芸を」

カドック「感心してる場合か……そうか」
225 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/24(火) 20:07:02.79 ID:sMZgZECgo
ここで決めきれないと僕の守りがアマデウスだけになってしまう。ルーラーの対魔力がないとマルタの攻撃は防げない。

僕が死ねばすべて終わりだ……さがるか? いや。最も安全なのは……。


カドック「アマデウス! 背水の陣だ前に出ろ! 投石でも目つぶしでもなんでもいい。ここで仕留める」

アマデウス「賛成だ。こうなれば最前線だろうがジャンヌ・ダルクの近くが一番安全だし」

マリー「最後の足を崩すのね!」


マリーの騎乗からの声撃が最後の一足を崩しにかかる。確かにあれは速いが……軽すぎる。

もっと、もっと重い一撃が必要だ……! 何かないか、重量を……。
226 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/24(火) 20:08:18.37 ID:sMZgZECgo
カドック「重量……」


――――!


カドック「マリー! その馬に僕を乗せろ!」

マリー「ごめんなさい。私、華奢に見えるかもしれないけれど、サーヴァントだから耐えられているの。足元は危険よ、人間が踏まれたらぺしゃんこに……」

カドック「なりふり構うな。アマデウスお前もこい」

アマデウス「どうする気だい。あれに乗っていたほうが的にはなりにくいけど、僕はあの聖女の真後ろをオススメする」


口の減らない音楽家を引っ張り、マリーの馬の元にたどり着く。


マリー「強引に乗ってくるなんて。乱暴なのね。嫌いではないけど……重量オーバーでしてよ?」

カドック「それでいい……とまるなよ!」

アマデウス「おいおいおいまさか……」

カドック「タラスクの足めがけて突進する!」
227 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/24(火) 20:18:19.75 ID:sMZgZECgo
宝具による攻撃だ。神秘は十分…… ウェイトはプラス100キログラムってところか。しかしあの大木のような足を倒すには、まだ足りない。

――ひとつ、関係ない話をしよう。僕は寝具にはこだわるほうだ。

先ほどダ・ヴィンチに転送してもらった、僕のベッド。それはダブルベッドで、寝返りできしまないよう強度も抜群。マットも分厚い高級品。

つまり、めちゃくちゃ重い。

――魔術で収納していたベッドを取り出す。


アマデウス「なにぃ!? ここで寝るのかキミ! まさかな! え、意味が分からない」

マリー「重量オーバーって言ってるのに!」


人間三人、ベッド一つ。加えてこの速度だ。崩れろ!

景色が揺れる。目を開けているのに何を見ているのかわからない。すごい衝撃だ。

そのまま落馬し、地面に転げ落ちる。頭を打ったか、温かい。意識がもうろうとする。
228 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/24(火) 20:20:28.45 ID:sMZgZECgo
マデウス「ここで永眠するって高度なギャグか! 命を張ってまでとる笑いにしては三流だぞマスター!」

マリー「マスター避けてっ!」

アマデウス「あぶないマリア!」

ジャンヌ「カドックさん! 竜が、倒れる!」


暗い……どうやら僕はこのまま竜の下敷きになるようだ。さすがに死ぬか……無茶したな。






キャスター「カドック!」
229 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/24(火) 20:24:20.68 ID:sMZgZECgo
キャスターの声が聞こえた。ずいぶん近くから聞こえた。

そうか、君もそこにいるのか。どうしてわざわざ自分から潰されにくるのか……。

そういえば、ピンチのとき、いつも君は遠くにいたな。

僕がマスターで、君がサーヴァントだから、こういう局面ですぐ側にキャスターがいるのは、新鮮だ。


キャスター「”■■・■■■■”」


――それはまるで、小さな氷山のようで。

――大きなダイヤモンドのようで。


いままでの比じゃない魔力の密度で編まれた巨大な、美しい氷柱が、竜を串刺しにする。

四足歩行と固い甲羅で隠されていた、柔らかい腹が裂けていく。


マルタ「タラスクっ!」


竜は慈愛に満ちた目で聖女を一瞥すると、静かに光になって消えた。
230 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/24(火) 20:25:27.46 ID:sMZgZECgo
マルタ「――――タラスク」


キャスター「マスター、頭から血が……」

カドック「アア……打った」

キャスター「意識もある……ろれつも回る……大丈夫そうね」

カドック「そうか、安心した」

キャスター「あんな無茶苦茶するなんて、マスターらしくないわ」

カドック「全くだ。もう二度とゴメンだ……と言いたいところだが、これくらいしなきゃ、僕では駄目みたいだ」

キャスター「ごめんなさい……私の力不足でマスターに危険な選択をさせてしまった」

カドック「違うな。君の力を考慮した作戦だった。本当に死ぬ気なんてなかったよ」

キャスター「――。すべては私に膝枕されるための作戦だったってわけ?」

カドック「笑わせるな。頭に響く」

キャスター「あら。面白かった? あなたのツボってわからないわ。あ、ここ、コブになっている」

カドック「いっ……!」


笑うキャスターの冷たい手が、痛む患部を冷やす。
231 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/24(火) 20:26:33.80 ID:sMZgZECgo
ここまで。タラスク、散る。がんばれカドックくん
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 20:52:25.10 ID:+56YKdnHO

タラスクの曲芸で不覚にも草
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 21:09:27.92 ID:7i2/1Mfuo
姉さんの為に芸を覚えるタラスクに涙
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 21:58:18.79 ID:pqnJojidO
ギロチンブレイカーに自ら乗るとはカドック君もかなり頭がぐだぐだしてきたな良いことだ
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 23:20:33.31 ID:6oUz0Y5Q0
無理無茶無謀も押し切れば戦術だカドック君

ぶっぱも当たれば読みってね
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/25(水) 05:28:09.34 ID:BmFdTv0do
乙、カドックガンバ

ジャンヌの名称がルーラーになったりジャンヌになったりするのが気になる
237 : ◆.qiZSe5l06 [sage]:2018/04/25(水) 06:44:40.04 ID:dHaEY+i30
あ、ゴメン。気になる人は気になるか。気をつける
238 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/25(水) 21:24:14.55 ID:dHaEY+i3o
ジャンヌ「カドックさん、無事ですか!」

アマデウス「生身で竜に特攻とか、正気か君は。狂想曲(カプリチオ)は演じるのは易いが魅せるのは難儀だぞ」

カドック「ああ……われながらイカれてる」

マリー「ごめんなさい。あなたのベッド、壊してしまって」

カドック「ああ言うなクソ。帰ったらどこで寝るんだ僕は」


治癒も効いてきた。まだ体を動かすのも苦痛だが……なんとか立ち上がる。


カドック「まだ終わってない。僕のことはあとだ」

マルタ「魔力ももうない。どうやら、私の負けのようです。――――と、言いたいところだけど」
239 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/25(水) 21:25:08.35 ID:dHaEY+i3o
マルタが杖を構える。タラスクを失ってもやる気のようだ。


マルタ「タラスクは最後まで戦って逝った。なら私が途中でやめるわけにはいかない」

カドック「そうか、協力的なあんたならおとなしく負けを認めてくれるかとも思ったが」

マルタ「覚悟は決めた。どのみち私程度乗り越えられないようじゃ、人理修復なんてムリだっての!」

カドック「――っ!?」


はやい!

五感を強化しているのに最初の踏み込みがギリギリ見えた以外何もわからなかった!

まばたきを一回する間に範囲外だったマルタの杖は僕の直前でルーラー旗とつばぜり合いをしている。

……ルーラーの力強い後姿もさることながら、マルタの鬼のような形相は先ほどとは比べ物にならない殺気を放っている。
240 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/25(水) 21:25:45.35 ID:dHaEY+i3o
マルタ「チンチンクリンが、見直したよ。あんがい根性あるじゃない。私が正気だったら仮契約くらいしてあげてもよかったかもね!」


そう言ってマルタは旗の上からルーラーを押し返す。

圧で森全体が揺れる。……これが宝具を失い魔力も尽きたライダーの力か!?


だが、それこそ最期の特攻だった。

こちらは四騎。ルーラーと競り合っている時点で、背後には三騎が控えていた。

キャスター、マリー、アマデウスの攻撃を背中で受けたマルタは、杖を落とし、両肩から力なく腕をぶら下げる。

それでも、口から流れる血を拭うこともなく、まっすぐこちらを見据えて、膝をつかない。

この聖女に僕たちは勝ったというのに、そんな気はまるでしない。


マルタ「――――」
241 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/25(水) 21:26:29.04 ID:dHaEY+i3o
ジャンヌ「マルタ様……これ以上あなた様を苦しめるわけにはいきません。どうかご容赦を」

カドック「待ってくれ……ルーラー」


旗を振り上げるルーラーを制止する。


マルタ「これはケジメよ。坊主は黙ってな」

カドック「考えがある。……マルタの狂化を解く」

ジャンヌ「狂化を……!? そんなことが可能なのですか」

カドック「契約に割り込み、僕と再契約させる。……僕だけでは難しいが、できるはずだ。力を貸してくれキャスター」

ジャンヌ「……どうかお願いします」

キャスター「え、無理よ、私、魔術師じゃないもの」

カドック「えっ」


――初耳だ。
242 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/25(水) 21:27:13.48 ID:dHaEY+i3o
カドック「キャスターのくせに、魔術師じゃ、ないのか……」

キャスター「ごめんなさい」

カドック「たしかに、音楽家(キャスター)もいたな……くそ」

アマデウス「僕にできることがあるなら手を貸そう。魔術ならすこし。かじった程度だけど」

カドック「えっ」

ダ・ヴィンチ「再契約か。おもしろそうだ。通信越しだが私も手伝おう」



243 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/25(水) 21:27:59.81 ID:dHaEY+i3o



マルタ「……はああっ! スッキリした! あの黒女……次会ったら鉄拳制裁してやるんだから」

カドック「うまくいった。狂化は外せなかったようだが:

マルタ「ううん? しっかり解けてるわよ。ヒョロガキのくせに、やるじゃない」


海辺の聖女は頭上で手を組んで背伸びをしながら関節をパキパキと鳴らす。

言動から見て狂化は残っているが、どうやら本人に自覚はないようだ。協力的なようだから問題はないだろう。


ジャンヌ「よかった……! 本当によかった。マルタ様。改めまして、我が名はジャンヌ。ダルクです。どうかこのフランスを救うためお力添えください」

マルタ「こほん……あまりかしこまらないでください。それは私も望むところです。救国の聖女よ、同じ聖女でありながら敵の手に落ちた私に慈悲をくれた聖女よ。へりくだるべきは、私なのです」
244 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/25(水) 21:28:29.56 ID:dHaEY+i3o
ジャンヌ「そういうわけには参りません。せめて、そう。同士として」

マルタ「ありがとうございます……私は海辺の聖女マルタ。既知のとおり、タラスクはもうおりませんが、この身には奇跡の力があります。どうかお役立てください」

マリー「マリー・アントワネットよ。気軽にマリーって呼んで。よろしくね、えっと」

マルタ「よろしくマリー。マルタで構いません」

マリー「ええ! よろしくマルタ」

アマデウス「アマデウスだ。強い仲間ができて大変喜ばしい」

マルタ「いえ、宝具を失ったライダーなど、とても戦力としては……」

アマデウス「はは。さすが聖女様だ、謙遜しちゃって。怒る竜を沈めた祈りってアレだろ、拳で語り合う的な」

マルタ「――失礼。なんですか?」

アマデウス「なんでもないさ。さあ行こうか」
245 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/25(水) 21:28:57.95 ID:dHaEY+i3o
キャスター「そうはいっても、行く当てがないわ。ねえマスター」

カドック「…………」

キャスター「マスター?」

カドック「ん、ああ」


さっきのタラスクにとどめを刺したキャスターの一撃……いままでとは明らかに質も威力もケタ違いだった。あれがキャスターの本来の力なのだろうか。

あのときは僕とキャスターの魔力変換が円滑だった。何が違ったんだ……?
246 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/25(水) 21:29:29.22 ID:dHaEY+i3o
カドック「当面の目標は戦力の補強だ。各地を巡り味方してくれるサーヴァントを探す。マルタ、敵戦力を教えろ」

マルタ「私が知っているサーヴァントは私を抜いて六騎。あなたたちも先刻みた四騎に加えて、アーチャーとアサシンです。別命を受けているようでした」

カドック「アーチャーにアサシンか……まて、アサシンはすでにカーミラがいたはず」

マルタ「ええ。どうやらすでに基本クラス七騎のルールは崩壊しているようです。更なる召喚も考えられます」

カドック「敵もまだ増えるってことか……」

マルタ「それから、邪竜”ファブニール”。敵戦力としてはこれが最大のはずよ」

カドック「ファブニール……北欧神話のファブニールか」

マルタ「あれはサーヴァント以上よ。対策なしでは絶対に勝てない」

キャスター「サーヴァント以上……あのタラスクよりも?」

マルタ「ええ。はるかに凶悪よ」

カドック「となると、やはり三騎士が欲しいな。大英雄級の英霊が必要だ」

マルタ「一人、邪竜を打倒しうるサーヴァントに心当たりがあります」
247 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/25(水) 21:30:09.74 ID:dHaEY+i3o
カドック「まさかシグルドか?」

マルタ「行く当てがないのなら、案内します」

カドック「わかった。なんであれ今必要なのは戦力だ。行こう」

ジャンヌ「私は別働でも構いませんが」

カドック「いや。お前と竜の魔女が別人であることは証明されたし、信用しよう。ただし人のいる場所に行くときは待機させる」

ジャンヌ「わかりました。改めてよろしくおねがいします」

キャスター「ジャンヌ・ダルク……」

カドック「キャスター、マリーと仲良くしてやってくれ。王室育ちだ。旅を不満がられると面倒になる」

キャスター「え、うん! わかった。仲良くする」


嬉しそうにしやがって。これで当面はジャンヌ・ダルクとのギクシャクも解消できるだろう。


248 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/25(水) 21:31:34.44 ID:dHaEY+i3o
ここまで。ここからが邪竜百年戦争だ。がんばれカドックくん
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/25(水) 21:41:51.76 ID:CUcILYUDO
ぐだーずには出来ないアプローチで物語が進んでいくのは面白いね
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/26(木) 00:05:32.86 ID:VUgphgHBO
カドックくんも一端の魔術師なんやなって
狂化残ってるで草
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/26(木) 08:24:57.06 ID:rQsMQeFUO
あれこれゲオル先生待たずしてすまないさん戦力にできるのか?
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/26(木) 08:44:18.77 ID:4sYwY3FkO
>>251
祈り(心)と祈り(物理)ですまないさんの呪いが直せる訳n(タラスク)
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/26(木) 11:13:27.18 ID:9k536LtbO
壊れたテレビは叩けば治る理論ですまないさんを回復させるマルタ殿か
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/26(木) 13:26:09.09 ID:s+xvr0nYO
マリー生存ルート?
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/26(木) 19:51:47.64 ID:RRoRKFJi0
ぇ?先生無しできよひー生存ルート?
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/26(木) 22:40:55.14 ID:mH5GpDMqO
皇女、聖女、音楽家、皇女、聖女
まるでお茶会のような組み合わせ
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/27(金) 20:12:46.55 ID:XxEcMRKnO
それ狂化じゃないんです素なんです
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/28(土) 14:01:38.96 ID:IW3yRN8yO
こいつホントに聖杯戦争する気あんの?ってパーティで草
頑張れカドック君
259 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/28(土) 21:43:13.77 ID:5j+9kMkio



マルタ「途中の街はまだ竜の魔女の手には落ちていません。目的地まではまだかかります。装備を整えるために立ち寄ってはいかがでしょう」

カドック「そうか襲った場所とまだの場所を把握してるのか。便利だな」

マルタ「私も神に仕える者の端くれ。いかに狂気に飲まれ無数のがれきを築こうとも、救える命を数えることはやめるわけには参りません」

カドック「そうか立派だな。次の街には寄ることする」

マルタ「……キャスター」

キャスター「なんでしょうか。聖女マルタ」

マルタ「彼は本当に人類史を救うべく戦っているマスターなのですか」

キャスター「そうは見えないかもね。事実、私も彼が何のために戦っているのかは……」

マルタ「コイツで大丈夫かしら……」

キャスター「でも、私は信じています。私のマスターは必ず人理修復を成し遂げます。どうか力を貸してください。慈悲深いマルタ様。彼はまだ、道半ばなのです」

マルタ「いいでしょう。あのお方の導きがあれば、私はそれを示しましょう。それがこの世界のためになるのなら」

キャスター「ありがとう」
260 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/28(土) 21:43:42.71 ID:5j+9kMkio
アマデウス「おっ街の気配が聞こえてきたぞ。しかし、秩序のある足音に規則的な金属音……これは、兵団か」

キャスター「ずいぶん大所内な兵が駐屯しているわね」

アマデウス「目がいいな。僕の耳並みだ。千里眼でも持ってるのか?」

マルタ「兵……なら私とジャンヌはこれ以上は進まず待機しています」

マリー「そうね。さみしいけどそれがいいわ。あなたたちを見たら民がきっと混乱してしまう」

カドック「行ってくる。ドクター、遠隔通信の準備をしてくれ。二人とも敵襲や異常があったらこれで連絡しろ」

ジャンヌ「わかりました。私の代わりに街の様子を見て来てください。それから兵の方々に伝えてください。街の守護を、どうか頼みます。と」


261 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/28(土) 21:52:08.63 ID:5j+9kMkio



街はまだ機能を失っておらず、平然と店が開いていた。

兵が駐屯しているようだが、その程度で守れるような秩序なら特異点になんかならない。

あえて残していると考えられるが、敵の力を考慮するに、そんなものは真っ先に潰して不安因子の切除と相手への精神的敗北感……絶望を植え付けるのが有効な手ではないのか。

最後の希望を摘み取るという楽しみをとっておいている……のだとしたら足元をすくってやるチャンスはありそうだ。徹底されない戦略なら付け入る隙はいくらでもある。


キャスター「ようやく服を着替えることができた。選んでくれてありがとう。マリー」

マリー「よろしくてよ。あなたのような美しい人のドレスを見繕えて私、とっても楽しかったわ。ああ、どうしましょう。私も新しいドレスを用意するんだった!」

キャスター「でしたら今度は私がマリーのドレスを選んでもいいかしら!」

マリー「もちろん! それってとっても素敵だわ! どのお店にしようかしら!」

キャスター「ついでに茶葉と、ティーセット、ジャムも用意させましょう」

カドック「どうしてそうなる」
262 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/28(土) 21:52:38.22 ID:5j+9kMkio
キャスター「マリーはどんなカップがお好き? 白? 飲み口は薄い方がいい? やはり装飾は剣蘭なほうが?」

マリー「そうだわ、フランスを救ったらみんなでお茶会をしましょう。ああ。国も時代も異なる方々と出会えるなんて、英霊になってよかった!」

キャスター「楽しみね。せっかくの衣裳ですもの。しかるべき場を設けるべきだわ。マスター、マスター。ほらご覧になって。前の衣裳とあまり変わらないけれど、マリーが生地を見立ててすぐに仕立てさせたの! きっとマリーのロイヤルな雰囲気が効いたんだわ」

カドック「あまりわがままに付き合わせるな」

キャスター「開口一番なんて言いぐさ! 他にいうことがあるんじゃないの」

マリー「そう。女性が衣裳替えしたら男性は褒めなきゃ。あなた、生まれはどちら?」

カドック「そちらの流儀など知らない。用が済んだなら街を出るぞ」

マリー「そうだわ。ジャンヌとマルタがかわいそう。戻りましょう。アマデウスはどこかしら」

カドック「耳がいいみたいなんで情報集めに行かせた」

マリー「一人で行かせたの? きっと遊び回っているわよ。それでいてちゃっかり最低限の仕事はこなしてくるのよ。頭にくるでしょう」

カドック「言われたことができるなら使い魔としては上出来だ」

キャスター「ねえマスター! 私の服は?」

カドック「ああ似合ってるよ。素材がいいから何着たって同じだろ、お前」

キャスター「一緒じゃないのよ。一緒じゃないけどもういいわ」
263 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/28(土) 21:53:07.52 ID:5j+9kMkio
街を出てジャンヌ、マルタと合流する。アマデウスもすでに戻っているようだ。


アマデウス「やあ。キャスター。マリア。素敵なドレスだね。前のボロ切れよりかはいいじゃないか。品がある」

ジャンヌ「お戻りですかマスター。中の様子はいかがでしたか」

カドック「問題ない。治安もいいようだった。まだこれだけの街が残っているなら、この国も少しはもつだろう」

ジャンヌ「よかった。兵の方々は?」

カドック「襲撃に備えろ、とは伝えた。一応な。怪しまれないよう魔術は使ったが」

ジャンヌ「ありがとうございます。一刻も早く敵を滅ぼさなくてはなりませんね。身一つで守るには、この国は広すぎる」

マリー「わかるわジャンヌ。この街に残りたいのでしょう。でもそうすれば代わりに他の街を守れなくなる。辛いけれど、戦わなくちゃ」

ジャンヌ「ありがとうマリー。わかっています。さあ、前に進みましょう」


264 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/28(土) 21:53:36.83 ID:5j+9kMkio



ロマン「ワイバーンだ。数は少ないが気を付けてくれ」


作業感ましましのドクターの報告。無理もない。何度目だワイバーン。


キャスター「マリー、後ろ」


マリーの背後で牙をむくワイバーンの羽をキャスターの氷柱が撃ち抜く。

それをマリーが追撃することでワイバーンは停止した。


マリー「助かったわ。ありがとうキャスター」

キャスター「服を選んでくれたお礼」

マリー「服を選んでなかったら見捨てられていたのかしら!」

キャスター「まさか、そのときは貸し一つにしていました」

マリー「いつかきっと返せないほど貸しだらけになってしまうわ!」

キャスター「気にしないで。そのときはアマデウスに返してもらうから」

アマデウス「ひどい流れ弾だ! 僕はマリーの保証人じゃないぞ。女に貸しをつくると一生たかられるから始末が悪い」
265 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/28(土) 21:56:24.20 ID:5j+9kMkio
ワイバーン狩りにもずいぶん慣れてきた。正直サーヴァントの真剣みが欠ける。

これだけの力があれば当然だが、油断に繋がらないように僕がコントロールする必要がある。

キャスターとマリーの関係は相変わらず良好で、連携にもいい効果をもたらしている。

しかしこれで何度目だ。遭遇する頻度が増しているな。大所帯になってきたせいで発見されやすくなったか。


マルタ「既に敵に発見された……と考えていいでしょう。急ぎましょうカルデアのマスター」

カドック「こうもひっきりなしに襲撃されてりゃ日も暮れる……街を離れてしばらくだが、あとどのくらいで着く?」

マルタ「想定よりだいぶ遅れています……が、見えてきました」

ロマン「遠方より巨大な反応だ……! なんて巨大な魔力だ、そちらに向かっているぞ! 急いでくれ」

カドック「やっぱり見つかってたか。急ぐぞ」


266 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/28(土) 21:57:00.01 ID:5j+9kMkio



かつて街だった残骸。”竜の魔女”による破壊のあとだろう。

いったいどれほどの憎しみがあれば、ここまで執拗に破壊行為を繰り返すことができるんだ。

何の生産性もない不条理の極み。吐き気を催す悪だ。


ジャンヌ「なんて……身の毛のよだつほどの呪いに満ちている……誰か、生存者はいませんか!」

アマデウス「ここには死体しかいないだろう。それも動くタイプだ。相当寝つきが悪いと見える。……聞くがいい」


アマデウスが音楽を奏でると、途端周囲の動く死体どもは動きを止める。鎮魂歌か、あるいは子守歌か。

確かにこれだけの才能と力があれば英霊となるのもうなずける。基本無能だが。
267 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/28(土) 21:58:37.49 ID:5j+9kMkio
カドック「手間が省けた。助かる。その調子で続けてくれ。さて、サーヴァントを探そう」

アマデウス「何。人間の醜さは大好物だが、この手の趣向はジャンル違い。今回はただ働きしてやろう」

キャスター「本当に、いい音。ねえアマデウスさん? この特異点を修復できたら、最後に私のために一曲演じてくださらない? みんなでお茶会をしたいの」

アマデウス「お茶会のほうには誘ってくれないのか。んー考えておこう。リクエストはあるかい?」

キャスター「じゃあ、き――」


「ああ、聞こえる……聞こえる……生者の声(うた)が……この地獄においても君の悲鳴(うた)は」


ロマン「微弱なサーヴァント反応……の前にもう一つサーヴァント反応! 状況から考えて敵だ!」

カドック「顔を半分覆ったサーヴァント……何者だ」
268 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/28(土) 21:59:42.87 ID:5j+9kMkio
ここまで。謎のサーヴァントあらわる。頑張れカドック君
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 00:16:38.04 ID:mmtNPuj6o
一体何ジオペラなんだ
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 09:24:53.09 ID:OJNfpflDO
戦闘服を着てガンド撃ちなよ
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/29(日) 10:01:18.62 ID:JGSN3T3h0
ぐだ男と違ってカドック君は礼装無くてもある程度魔術使えるから戦闘服ガンドとか大変なことになりそう

魔術協会礼装着ればアナスタシアへの魔力供給も問題無くなる可能性
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 10:29:42.92 ID:RWa2fIm30
ガンド(霊丸)
273 : ◆.qiZSe5l06 [sage]:2018/04/29(日) 14:05:02.19 ID:HbF6rBmFo
魔術礼装はまだ未実装なんだ
274 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/29(日) 14:06:15.54 ID:HbF6rBmFo
マルタ「アサシン……”ファントム・ジ・オペラ”です。黒いジャンヌ・ダルクによって召喚された英霊」

アマデウス「街で噂されていた背格好と一致するな……殺人鬼だ」

ファントム「私も歌おう。それだけが私の務め。私の嘆き。私の恨み。私の喜び。殺そう。求めよう。私は、私は……」

カドック「アレもバーサクか、何をいっているのかわからない」

アマデウス「歌劇(オペラ)ときたか。確かにいい声してるじゃないか。この天才が賛美してやろう。だが、精神汚染だな? 君の心はチグハグすぎる。妄言なら流せるが、それを歌というのは聞き苦しいな。死の芸術――己の性癖を芸術と信じて疑わない迷惑な変態め」

マリー「気が合いそうね?」

アマデウス「合うもんか。答えが自身の中にあることに死に際まで気づかないタイプだろ、アレ」

ファントム「さあ聞かせておくれ。地獄にこそ響け……”クリスティーヌ・クリスティーヌ”」
275 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/29(日) 14:06:44.50 ID:HbF6rBmFo
あれは骨……? 悪辣で醜いオルガンが現れ、魔力ののった音波を発生させる。

――精神攻撃か!?


カドック「まずい! 耳を塞げ!」


――遅かった! そもそもこの距離で音を聴くなという方が無理な話か。

魂を直接針で縫い留められるような不快感。鈍重で下劣な魔力が精神を壊していく……。

サーヴァントたちも膝をつく。肉体をもたないサーヴァントには余計に効くかもしれない。


アマデウス「く、そ……耳が良すぎるってのも考えものか……」

マリー「アマデウス……どうして私の前に……私をかばっているの……?」

カドック「”麗しの姫君”……お前のスキルだ」

マルタ「しゃんとしなさいっ!」

カドック「お前動けるのか」
276 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/29(日) 14:07:45.40 ID:HbF6rBmFo
マルタ「私には”信仰の加護”があります。”奇蹟”によって僅かですがあなたたちにも緩和を!」

カドック「マリー・アントワネットを動けるようにしてくれ!」

マルタ「わかりました。『願い……想い……そして……』」

マリー「あれ……? 動けるわ、私!」

カドック「マリー! 歌え、その声であの呪いをかき消せ!」


マリー「まかせて!」

ファントム「私を、クリスティーヌを、聞かぬのか……では殺そう。嫉妬こそ我が正義」


怪人の爪がマリーを襲う!


アマデウス「ぐわー」

マリー「アマデウス私をかばって……どうして!?」

カドック「お前のスキルだ」
277 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/29(日) 14:08:14.34 ID:HbF6rBmFo
ファントム「クリスティーヌ、ああクリスティーヌ」

マリー「アマデウスのカタキっ! 宝具解放”愛すべき輝きは永遠に”!」

アマデウス「死んでないぞ」


マリーの霊基が……変化した……?

豪華絢爛に自己顕示欲を足して謙虚を引いたような装いに変化したマリー・アントワネットはその美声でもってありったけの魔力と煌きを放つ。

ライダークラスは多彩な宝具を所有することもあると聞くが、これが彼女の第二宝具ということか。

オルガンの放つ呪いの音を見事に打ち消し、代わりに光と輝きときらきらをまき散らす。マリー・アントワネットが示す王権の力……なのか?


ファントム「聞こえぬ……聞こえぬ……クリスティーヌ! 嗚呼愛しき君よ何処に……」
278 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/29(日) 14:08:43.67 ID:HbF6rBmFo
常に錯乱状態にあるファントムが重ねて錯乱し、マリーに襲い掛かる。――マリーは今歌に夢中で無防備だ!


アマデウス「ぐわー」

マリー「アマデウスーっ! 誰がこんなことを!」

カドック「お前のスキルだ」

ファントム「おお、なんと美しい……クリスティーヌ……そこにいるのか……」

マリー「ごめんなさい。人違いよ。クリスティーヌさんはここにはいらっしゃいません」

ファントム「そうか……ああ、私はいったい今まで何を……ありがとう麗しい君。どうやら私は……」

マルタ「――――とった」


隙をついて背後に回ったマルタの祈りがファントムの仮面を砕く。

ものすごい速度で地面に打ち付けられたファントムは土煙の中に消えた。


カドック「やったか!?」
279 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/29(日) 14:09:14.06 ID:HbF6rBmFo
マルタ「ええ。やったわ」


土煙が張れると、小クレーター群の中に海辺の聖女だけが佇んでいた。


マルタ「ハレルヤ」

キャスター「クレーターの聖女……」

マルタ「私の祈りが届いたのでしょう……彼は最期、狂気から解き放たれ去っていきました。せめてもの救いになればいいのですが」

アマデウス「君の祈りが届く前にもう正気に戻ってたような気もするけど怖いから黙っておくとしよう」

マルタ「黙っておくならしっかり黙りなさい。……さて。確かコッチの方角だったはず。ついてきて」


280 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/29(日) 14:09:43.19 ID:HbF6rBmFo
「誰だ」


マルタ「私の名はマルタ。覚えておいでかしら。竜殺し様」

「マルタ……? そうか。俺を匿っておいて、今更殺しに来たわけでもあるまい」

マルタ「ええ。こちらに竜とサーヴァントが数騎、向かってきています。どうかご助力を」

「そういうことか。いいだろう。そちらがマスターか……? 我が名は”ジークフリート”。クラスはセイバー。竜を殺すしか能のないサーヴァントだが、使ってくれ」

カドック「カドック・ゼムルプスだ。ジークフリートか。竜を殺してくれるならなんでもいい。力を借りるぞ」

ジークフリート「しかしこの身は強い呪いを受けていてな。全力を発揮することはできない。すま」

キャスター「ひどい呪い! こんな状態でなぜ動けるのかしら!」

ジークフリート「人々を守るため抵抗したが、力及ばず……不甲斐ないサーヴァントですまな」

マルタ「うじうじ言わない! さあここを出るわよ!」

ジークフリート「あ、ああ……手を貸してくれ。すま」

カドック「呪いならもしかして洗礼で解除できるんじゃないか? ルーラー」
281 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/29(日) 14:10:17.02 ID:HbF6rBmFo
ジャンヌ「とても強力な呪いです。私ひとりでは……せめて、二人の聖人がいればこの呪いは解けるはずです」

カドック「聖人が二人……」

アマデウス「あと一人必要か……」

マルタ「こほん」

マリー「そんな都合良く……」

キャスター「いないわよねぇ……」


マルタ「 い る で し ょ ! 」


282 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/29(日) 14:10:47.27 ID:HbF6rBmFo
ここまで。どんまいゲオルギウス先生
283 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/04/29(日) 14:14:50.52 ID:HbF6rBmFo
【メンテナンス実施のお知らせ】

4月30日〜5月6日までメンテナンスを実施します。
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 14:28:52.13 ID:XIfBSbjdO
仮面を砕く祈り(物理)怖いなぁ
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 14:47:11.35 ID:mmtNPuj6o
>>283
詫び石寄越せ
24時間×7日で168個な
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 15:21:37.10 ID:zIzptRjpo
ことごとくキャンセルされるすまない
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 20:16:56.12 ID:JGSN3T3h0
ドンマイ丸太
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/30(月) 20:56:25.85 ID:la40rp/Jo
どうせ石10個前後ぞ
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/03(木) 19:14:05.92 ID:vQO5UUJvO
せめて30個ください
290 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/07(月) 19:12:43.54 ID:ZUigXxbvo
侘び石は自分で買ってくれ。すまんな
291 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/07(月) 19:13:47.91 ID:ZUigXxbvo



ジャンヌオルタ「何をしているのかと思えば。瀕死のサーヴァントを一人見つけたところでどうなるというのです」


とてつもなく巨大な魔力……あれがファブニールか。


マルタ「――っ!」


マルタが飛び出す。制止する暇もない。やっぱりバーサーカーかこいつ。

杖を握りしめることで力をこめた祈りが、黒いジャンヌの顔面をぶん殴る。……その前に巨竜の翼がマルタを叩き落とす。


マルタ「がはっ」

ジャンヌオルタ「裏切ったのですね。もともと期待もしていませんでしたし、構いませんけど」

マルタ「――――はあ?」

ジャンヌオルタ「……慈悲です。神に祈る時間はカットしてあげましょう。さあファブニール。殺しなさい!」
292 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/07(月) 19:14:19.55 ID:ZUigXxbvo
黒いジャンヌの命令でファブニールは咆哮し、口元に魔力が集中する。

――ドラゴンブレス。

これだけの巨体で、強大な魔力が放出されれば対軍……いや対城級の威力と規模になるかもしれない。

ファブニールはそれをたったの一呼吸で繰り出す。……風圧。ひたすら暴力的な風がぶつかってくる。まるでサイクロンに身を投じたようだ。

しかしそれはまだ余波でしかない。強大な魔力が空を切り、地面を削りながら接近してくる。

目が乾く。耳が痛い。息ができない。体が吹き飛ぶ。


ロード・カルデアス
”残光、忌まわしき血の城塞”


キャスターが盾となるが、数秒も持たないのは明白だ。このままでは全員まとめて焼き尽くされる……。


ジークフリート「行くぞ――”幻想大剣・天魔失墜”!」


剣からほとばしる衝撃がファブニールの息を上書きする。


ジャンヌオルタ「ちょっ……ええっ!?」


黒いジャンヌを乗せたファブニールはそのまま上空へ逃れた。
293 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/07(月) 19:14:48.84 ID:ZUigXxbvo
マリー「す、すごい」

ジークフリート「退けただけだ。打ち倒せてはいない」


ここで追撃するべきか、離脱するべきか、考えろ。

こちらの戦力もそろってきたとはいえ、もう一声欲しいというのが本音だ。

だが今敵は戦力を割いている……加えて時間の経過とともに敵サーヴァントが増えるリスクも上がる。最大戦力が集まる前にファブニールだけでも撃つか……。

しかしジークフリートは解呪できたとはいえまだ魔力供給が十分ではないし、ワイバーンやアサシンとの連戦で他も疲労している。

幸いファブニールと黒いジャンヌは上空から降りてくる様子はない。ここはジークフリートを得ただけでもよしとするか。


カドック「今のうちに離脱する!」

ジークフリート「了解した。攻め切るに足る根拠をつくれなくてすまな」

マルタ「状況を見誤らない! もう一度よく考えなさいマスター! こちらは六騎、対する相手は黒いジャンヌ・ダルクと邪竜ファブニールのみ。勝負所で逃げるな!」

ジャンヌ「私も戦闘を続行すべきだと思います。数に置いて有利に立ち回れる機会は二度とはないでしょう」

キャスター「マスター。確かに勝利とは小さなアドバンテージを積み重ねることで得られるものよ。でも、勝つためには勝たなきゃいけない。どのみちこの局面で押し切れないような私たちでは、人理修復なんて夢物語よ」

カドック「しかし……」
294 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/07(月) 19:15:18.19 ID:ZUigXxbvo
黒いジャンヌの攻撃方法は火炎。遠距離攻撃も可能だが、それより接近戦を好む。好戦的ゆえに乗せると恐ろしいが守りが脆弱。分析は先の戦闘でできてる。

問題はファブニール。情報がない。戦いながらセイバーやマルタの話を聞いている暇があるとも思えない。サーヴァント六騎でも及ばない可能性すらある。

――だが、キャスターの言う通りだ。これは、確定した敗北をひっくり返す戦いだ。自分の有利を捨てて敗走するような奴に人理修復なんてできるものか。


カドック「黒いジャンヌとファブニールをここで倒す……! 力を貸せ」

ジークフリート「こちらからもお願いする。アレを俺一人で撃ち滅ぼすのは難しい。力を貸してくれ」

カドック「ああ……! カルデアからの魔力補助を全てお前に回す。邪竜を滅ぼせ! セイバー!」


バルムンクが淡く輝き出す。

――改めて、己の無力さを思い知る。僕はもう任せることしかできない。


ジャンヌオルタ「この魔力の高まり……! またあの宝具か! させるなファブニール!」
295 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/07(月) 19:15:47.86 ID:ZUigXxbvo
上空の敵も動き出す。先ほどの「ただの息」とは違う。正真正銘の竜の一撃が装填される。

あれはダメだ。人智を超えている。計り知れない。

セイバーの一撃が、最大の一撃であるならば、ヤツの一撃は無限の一撃。計測の域を脱している。

あれは、無理だ。


ジークフリート「くっ……まだ溜める……無理を承知で頼む! 時間を稼いでくれ!」

ジャンヌ「我が神はここにありて”」

キャスター「”残光、忌まわしき血の城塞”」


天から突きたてられた神の槍を彷彿とさせる。隕石か、雷か。世界を滅ぼす鉄槌が下る。

その結末を、ルーラーとキャスターがほんのわずか遅らせるために、身を粉にして立ち向かう。
296 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/07(月) 19:16:17.31 ID:ZUigXxbvo
キャスター「マスター……いまにも体が焼ききれそうなの。両の手が引き裂かれそうなの。骨が、肉が、魂が蒸発しそうなの……」

カドック「キャスター……すまない……耐えてくれ……すまない……僕は……何もできない」

キャスター「もう辛くて、苦しくて、涙がとまら、ない、の……だから、そんな悲しいことを、い、わないで」


力を籠めすぎて、つい声が漏れる。歯ぎしりで顎が砕けそうだ。己の無力に、震えが止まらない。

僕は――――僕は、僕は、僕は――――弱い。


キャスター「任せるなんて、寂しいわ。マスター。信じて。私を、私たち、を……」


計算の域を出た、僕の想像を超えた次元での戦い。

それでもなお、勝利を信じることができるやつがいるとすれば、ド素人か、よほどの馬鹿か、あるいはその両方だ……。

すまない。僕はなにより、僕を信じることができない……。
297 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/07(月) 19:17:06.22 ID:ZUigXxbvo
巨大な光がキャスターを飲み、次いでルーラーも飲み込まれていく。


ルーラー「っあ、ああ……! ま、すた……令呪、をっ……」


――ああ。こんなときに、呆然とへたれこむ人間なんかに、人類最後のマスターが務まるはずもない……。


ジークフリート「”バル”……”ムンク”ゥァァァァァァアアア!」


魔力が溜まりきる前に解放された幻想大剣は、押し返すどころか、拮抗すらしない。確実に侵食されていく。


ジークフリート「うぅおおおおおおおおお!」


――なぜ諦めない。


ジークフリート「俺が、英雄だからだ…………っ!」


ずり下がる足裏を全身で踏み留め、なお後退する。バランスを崩しのけぞった身体を命を燃やして前のめる。

英雄は、僕の疑問に答える。

その姿が、答えだ。

その背中が、英雄を語る。

その言葉が、決定的な差だ。
298 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/07(月) 19:17:59.33 ID:ZUigXxbvo
僕だって、お前のような強さがあったなら……。


ははっ。僕は結局最期まで、嫉妬と自己否定か。

くそったれな弱者に相応しい結末だ……。

だから、もうやめてくれ。頼むから、やめてくれ。


マリー「”クリスタル・パレス”」


大英雄でもないお前が聖女でもないお前が竜殺しでもないお前が臆せず立ち向かってしまったら、とうとう僕はみじめじゃないか。


マリー「守る! 守るわ! 我が名は”マリー・アントワネット”! フランスを愛する無知で愚かな王妃よ! 笑われ、蔑まれ、憎まれ、そして奪われた負の象徴! だからこそ、黒いジャンヌ・ダルク! 私はあなたには負けない……!」


竜の息吹に体を焼かれながら、王妃は叫ぶ。戦士ではなく、王妃が立ちはだかる。

ルーラーとキャスターのいた、さらにその前。宝具と自身の霊基でもって、ほんのわずかな綻びを生み出す。
299 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/07(月) 19:18:45.44 ID:ZUigXxbvo
光に消えたはずのルーラーとキャスターが、地に這いつくばりながら、宝具を展開し続けているのが見えた。

まるで万力にはさまれたクルミのように、砕ける一歩手前で。ついに全身全霊をかけた三つのクルミが、一瞬、万力を止めた。


ジークフリート「でゃああああああああっは!」


破壊の光がセイバーを起点に屈折する。

僅かに着弾のずれた爆発が、辺り一帯を吹き飛ばし、爆は意識を失った。


――――。


――。

300 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/07(月) 19:19:35.14 ID:ZUigXxbvo
光に消えたはずのルーラーとキャスターが、地に這いつくばりながら、宝具を展開し続けているのが見えた。

まるで万力にはさまれたクルミのように、砕ける一歩手前で。ついに全身全霊をかけた三つのクルミが、一瞬、万力を止めた。


ジークフリート「でゃああああああああっは!」


破壊の光がセイバーを起点に屈折する。

僅かに着弾のずれた爆発が、辺り一帯を吹き飛ばし、爆は意識を失った。


――――。


――。


「マスターー、よかった、意識が戻ったわ」


キャスターの声で覚醒する。どういうわけか、生きているようだ。


キャスター「全員無事よ。壊滅的ではありますけど。ファブニールは大技を放って消耗したのか、上空から仕掛けてくる様子はありません。黒いジャンヌ・ダルクも沈黙しています」

カドック「そうか……なぜ、助かった……」

キャスター「…………マリー、が……」


キャスターの目線の先には、変わり果てたマリー・アントワネットが横たわっていた。

気品も王権も匂わせない、ただの枯れ果てた少女が、マルタに介抱されている。


キャスター「マリーがつくった隙間を使って、ジークフリートが僅かに軌道をずらしたの」

ジークフリート「酷なことを言うが、立ってくれ。マスター。これを凌いだのは好機だ」

キャスター「マリーがつくってくれた好機よ。撤退は許さない」

カドック「だが……どうする。正直僕にはもう打つ手が浮かばない」

ジークフリート「俺に考えがある。狡猾な手だが」
301 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/07(月) 19:21:13.60 ID:ZUigXxbvo
ここまで。がんばれカドックくん
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/07(月) 19:53:15.37 ID:Zmcxd0Kb0
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/07(月) 20:47:19.85 ID:HwgBK5V3o
おか
詫び石はよ
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/07(月) 20:48:40.27 ID:qzQmLQ+po
おかえり
そういうのいいから詫び石はよ
優しいからキリよく1000個でいいぞ
305 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/08(火) 19:28:06.73 ID:AKw9cYuSo
ジークフリート「俺に考えがある。狡猾な手だが」

カドック「言ってみろ。狡猾だった英雄などいくらでもいる」

ジークフリート「まず、この中で邪竜を屠る威力をもつ者は俺だけのようだ。だが、それだけの一撃を用意するのに魔力を溜めていては感知され迎撃される。そこで、ノーモーションで宝具を解放する。幸い俺のバルムンクは出がはやい」

カドック「しかしそれでは威力が足りないんだろう」

ジークフリート「そうだ。そこで、剣から放たれる余波ではなく、刀身を直接叩き込む。特攻になるが、やるのは俺だ。問題ない」

カドック「残りで、そのための隙をつくる……そういう作戦だな。で、飛行するヤツの元までお前はどうやっていく」

ジークフリート「俺には飛行能力はない。俺がヤツに接近する方法だが……そちらでなんとかしてくれ」

カドック「お前の立ち回りしか決まってないじゃないか、この作戦」

ジークフリート「これだけの豪傑ぞろいに、有能な指揮官がいるんだ。信頼している」

カドック「こちらは信頼できないな。仮にお前をファブニールまで到達させたとして、確実に仕留められるのか」

ジークフリート「全力を出す。必ず我が最強の一撃を叩き込んでみせよう。英雄の誇りにかけて誓う……と、言いたいところだが、それはわからない。それでもなお、ファブニールは滅ぼせないかもしれない」

カドック「……いや、逆に大した自信だ。必ず仕留めると言い切られるよりよほど賭けてみたくなる」

マルタ「どのみちバルムンクを当てる以外の倒し方なんてないわ。……まだ隠し玉もある。作戦自体には賛成よ」
306 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/08(火) 19:28:35.51 ID:AKw9cYuSo
ジャンヌ「接近するなら、ファブニールを落ち落とすのはどうでしょう。キャスターの魔術で翼を凍らせるとか」

キャスター「無理よ。あんな遠くの大きいものを瞬時に止めるなんて。だいたい接近方法がなぜ撃ち落とすという発想になるの。脳みそがゴリラなのかしら」

カドック「上空まで氷山を形成するのはどうだ」

キャスター「可能よ。でも派手すぎて気づかれてしまうわ。時間もかかる……マルタはどう?」

マルタ「申訳ありません……私にはそのような能力は……」

キャスター「能力ではなく、筋力を聞いているの」

マルタ「……はい? 失礼。聞き間違えたかもしれないからもう一度お願いします」

キャスター「タラスクのように、ジークフリートを投げ飛ばせない?」

ジャンヌ・ジークフリート・カドック「それだ」

マルタ「それだ。じゃない!」

カドック「要素は揃ってる。なら作戦を構築してやる。英雄ってのがどれほどのものか……あとは成し遂げて見せろ」

キャスター「ええそうね。結果を示して、認めさせてあげる」

ジャンヌ「では参りましょう!」

マルタ「それだ。じゃなーーーい!」


307 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/08(火) 19:29:55.73 ID:AKw9cYuSo



ジャンヌオルタ「――来るか」


キャスターに氷山を作成させ、斜面をルーラーに登らせる。


ジャンヌオルタ「懲りずに仕掛けてきたわね。ファブニールも力が戻りつつある。愚かで低能な虫けら! 今灰にして差し上げましょう!」


単純だな。派手な陽動に食いついた黒いジャンヌは黒炎をルーラーに放つ。

それをキャスターの氷塊が相殺。続けて氷山を形成。サーヴァントの急激な魔力消費に鼻血が垂れてくる。


カドック「……っ」

キャスター「マスター!?」

カドック「続けろ。カルデアの予備電力もある。問題ない」
308 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/08(火) 19:30:23.38 ID:AKw9cYuSo
接近を嫌う黒いジャンヌは邪竜に攻撃を命じる。

竜の息吹が氷山を溶かし、さらにルーラーを襲う。たまらずルーラーは跳躍する。


ジャンヌオルタ「熱に耐えきれず飛び込んできたか! 砂抜きするアサリのように砕いてあげま……? え?」


ルーラーが自身を狙ってくると踏んで身構える黒いジャンヌだったが、ルーラーは敵も足場もない空に飛び出す。


ジャンヌオルタ「……? 馬鹿な娘。そのまま落ちなさい!」


黒炎の追い打ち。対魔力を貫く憎悪がルーラーを焼く。


ジャンヌ「っ……」

ジャンヌオルタ「あっははは! 今度こそまとめて消し炭にしてやる! やれファブニール!」


ファブニールの口に魔力が集中する。また大規模な殲滅攻撃が来る……!
309 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/08(火) 19:31:18.26 ID:AKw9cYuSo
カドック「ここだ!」

マルタ「”愛知らぬ悲しき竜殺しよ”……星のように」


ジークフリート
”聖女式投擲法”


高速で上昇するセイバー。この速度なら間違いなく不意をつける! 届け!


ジークフリート「邪悪なる竜は失墜し――」

ジャンヌ「私の旗を足場に跳んでください!」

ジークフリート「世界は今洛陽に至る――」

ジャンヌオルタ「そんな! まずい、ファブニールっ!」


計算違いだ。まさかあいつがファブニールの前に飛び出してくるとは。愛着ではなく、単純に戦力の保持が優先されたか。

届くか……!?


ジークフリート「撃ち落とす――!」


バルムンク
”幻想大剣・天魔失墜”
310 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/08(火) 19:32:15.58 ID:AKw9cYuSo
割り込んできた黒いジャンヌ・ダルクの旗とセイバーの大剣がぶつかり合い、閃光を放つ。


ジャンヌオルタ「”ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン”!」


セイバーが一手速かった。黒いジャンヌの宝具だったのだろうか。呪いに満ちた槍の数々は、勢いを帯びる前にバルムンクに打ち払われた。

大きな爆発が見えて、一瞬遅れて地上に轟音が響く。


――ファブニールは健在だった。


余波は受けたようだが。本命は黒いジャンヌが受け切ったようだ……失敗だ。


ジークフリート「くっ……無念だ……あまりに無念だ……!」


ルーラーとセイバーが落下してくる。奇襲攻撃に二度目はない。バルムンクはもう届かない。


カドック「畜生が……やはりダメか……」
311 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/08(火) 19:32:43.77 ID:AKw9cYuSo
もはや、ファブニールが自分から落下してくることに期待するほかない。


キャスター「この戦いでマリーが倒れている……! 諦めることは許さないわマスター! 魔力を回しなさい。翼を凍らせる!」


キャスターの冷気が上空に飛ぶ。しかしそれも無駄だ。届くはずがない。

令呪を切るしかない。

――第一特異点半ばで既に二画。カルデアの予備令呪を考えてもこのペースは絶望的だ。

その場しのぎのために、無駄に終わるかもしれない命令に令呪を使う……嫌だ、こんな無能なマスターであることが。

何を命じればいい……ジークフリートをファブニールのもとまで? それでしくじったらどうする。

キャスターに翼の凍結を……いや、バルムンクの最大開放……はこの距離で決定打になるのか……?


カドック「クソ……クソックソックソックソックッソぉおおおおお!」

キャスター「カドック……」

カドック「あと一手だ! あと一手で積みだ! なのに……最善手が見えない……!」





「いや。布石は既に打たれていた。どうやら間に合ったようだな。しかし決め手に欠けると見える。要りようなのは殺傷力かな?」





312 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/08(火) 19:33:40.17 ID:AKw9cYuSo






男の話をしよう。

男は女との死闘の末、その身は霊核を砕かれ、消滅が始まっていた。

「よく戦いました。人類史の英霊」

「ふむぅ……もはや、刀を握る感覚すらない……この手は刀を握れているか……?」

「ええ。しかと」

「なら……よい……はぁ……さて、鞘はどこに、やった、か、な……」

「いいえ。あなたが鞘に収まるのはまだ早い。私の最後の理性……そのわがままを聞いてはくれませんか」


男は深くため息をつくと、静かにうなずいた。勝者はお前なのだ。と。


「とても、勝った気にはならないけどね……どうか、お許しを。敗者に慈悲など、最も屈辱的であることは理解しています。それでも……」

「……?」

消えかけていた体が、冥途の縁でわずかに留まる。依然として痛みも重みも消えないが、崩壊だけは止まった。
313 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/08(火) 19:34:24.31 ID:AKw9cYuSo
「私の”奇蹟”によって、消滅の運命を誤魔化しました。あと一度だけなら、戦闘も可能でしょう。どうかその時が来たら、もう一人の竜殺しと共に力を貸してください」

「匿う……のか」

「わかっています。誇りを汚す行為であると。しかし……」

「いや、相当の訳があるのだろう。何も言うな。ではこの命、いずれ御身のために使い果たすと約束しよう」

「その身、願わくばこの世界の救済のために……」


なるほど。美しいと感じるわけだった。

武士は来るその時のため、つかの間の休息に身を委ねた。




314 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/08(火) 19:35:29.45 ID:AKw9cYuSo





「その時がきたのだろう」


マルタが打ち上げた人影が、邪竜に到達する。


「――――秘剣……”燕返し”」


……信じがたいことだが。

彼の刀はその時確かに、同時に三本存在した。

鋭く、死角も隙もない完ぺきな軌道が、ファブニールの片翼を根元からぶった切る。


カドック「”燕返し”……ヒナコから聞いたことがある。ニホンのササキコジロウと、ミヤモトムサシ。並び称される最強の剣豪だ……」

キャスター「ムサシの……なら、あのイレギュラーにも納得がいく」

小次郎「はっはっは。此度の現界は実によかった! 何より自由であった。竜(つばめ)も斬った。悔いもなし!」
315 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/08(火) 19:36:23.16 ID:AKw9cYuSo
そのまま崩壊していくサムライソードのアサシンはキン……と気持ちのいい音を立て長い刀を鞘にしまうと――


小次郎「ここで一句――――」


完全に消滅した。


カドック「サムライ……いや、”佐々木小次郎”。礼を言う」

キャスター「……! マスター、ファブニールが落ちてくる!」

カドック「決めろセイバー!」

ジークフリート「ううぅおおおおおおお!」


邪悪なる竜は失墜し、世界は今洛陽に至る――――


316 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/08(火) 19:37:03.91 ID:AKw9cYuSo



ロマン「ファブニール、消滅確認……なんてこった……本当にやってくれた……すごいぞ。何度もう駄目だと思ったか。職員一同かたずをのんでみていたよ」

キャスター「マリー! やったわ! わたくしたち、勝ちました。貴女のおかげよ」

マリー「ああ、よかった……すごい。あんな怪物に勝ってしまうなんて」

キャスター「貴女のおかげなのよ。じゃなきゃ今頃、私とそこの聖処女は確実に死んでいた。マスターたちだって危なかった」

マリー「私、役に立てたのね。友達を……守れたのね」

キャスター「ええ。ありがとうマリー。ゆっくり休んで」

マリー「ふふっ。貸し一つ、よ。キャスター」

キャスター「なら、名誉として貴女を『英霊お茶会副会長』に任命するわ!」

マリー「幸栄なことだわ……楽しみね」

キャスター「うん。平和になったフランスで、一緒にお茶会しましょうね」

マリー「私、カップは真っ白がいいわ。無駄な装飾がないのがいい。そんなものは生前で飽き飽き」

キャスター「うん」

アマデウス「おおい! こっちだこっち」

カドック「アマデウス! お前どこに行っていたんだ!」
317 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/08(火) 19:38:07.03 ID:AKw9cYuSo
アマデウス「いやあ。どうせ戦力にならないと思ってね。逃走経路を確保しておいた。まさか倒してくるとは思わなかったな! でも無駄じゃなかったろう。これからリビングデッドの群れを抜けるなんて、考えたくもないはずだ。眠らせておいた」

マリー「まあ……! 今回ばかりは感謝しかないですわね……ありがとうアマデウス」

アマデウス「おい……マリア。君は戦闘向けじゃないんだ。そんなになるまで無茶はしないでくれ」

マリー「ごめんなさい」

アマデウス「うん……。さて、勝利の凱旋と行こうじゃないか」

マルタ「あんたが言うなっての」


廃墟から撤退する。損害は甚大だが、なんとか戦力を減らさずに敵の最大戦力に勝利できた。まさに奇跡だ。

これほどの勇姿を見せつけられて、最高の結果をもぎとってきて……認めざるを得ない。

無力で非力なマスターを、サーヴァントというのは支えてくれるのかもしれない。

勝利までを計算するのではなく、勝利することを計算に組み込むこと――勝利を信じることは、できるのかもしれない。


キャスター。セイバー。ルーラー。マルター。マリー。


ボロボロで、格好のいい五つの背中に、強い憧れと、頼もしさを覚える自分がいた。


318 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/08(火) 19:39:21.91 ID:AKw9cYuSo
ここまで。がんばれカドックくん
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/08(火) 19:46:29.57 ID:jQ9UiZO00
もうちょっとがんばれ>>1

具体的には完結くらいまでがんばれ
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/08(火) 19:51:39.75 ID:B5RPcwC5O

これカドック君が主人公になりつつあるな
ぐだ男の見た目案が男になった遠坂凛だし、凛の冷静な部分を前面に押し出した男主人公が居たらこうなるだろう的な感覚で見れるわ
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/08(火) 20:12:47.19 ID:FjVzUcOOo
サーヴァントとの出会いでマスターも成長していくのがfateシリーズの醍醐味だし実に良い
ぐだーずだとプレイヤーのアバターという要素のせいでそういうのがあまり感じられないんだよね

ところでカドック君無理に他の皆に合わせてマルタの名前変えなくて良いから
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/08(火) 21:38:13.43 ID:Fz0GCT+AO
かっこいい背中にアマデウスはいない模様
323 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/11(金) 00:29:47.65 ID:lsPrJa8Io



ジャンヌオルタ「はぅあ……あ、あ……」


廃墟群から出る途中、仰向けで血を吐いて倒れる黒いジャンヌ・ダルクに出くわした。

そういえばセイバーのバルムンクが直撃してから姿がなかったが、こんなところまで吹き飛んでいたのか。


ジャンヌオルタ「私は、まだ……まだだ……こ、んな」

ジャンヌ「あなたは、一体……」

ジャンヌオルタ「き、貴様、おのれ、ブリキの、聖女、がっ、はっ……」

ジャンヌ「あなたは本当にジャンヌ・ダルクなのですか? どうしてもこの身から、あなたのような感情が生まれるとは思えないのです」

ジャンヌオルタ「それは貴様が偽物だからだ……あ、ああああ! あつぅい……体が……怒りで、憎しみで、焼かれ……ああ熱い熱い熱い!」

ジャンヌ「なぜです……それだけではないはず……私にとってフランスは、穏やかな思い出もある場所のはずでしょう」

ジャンヌオルタ「そんなものはない! 知らない! 殺す! お前を殺す! 死ね! 聖女!」

ジャンヌ「なんて、悲しい……」
324 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/11(金) 00:30:22.82 ID:lsPrJa8Io
ジャンヌオルタ「これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮――」


ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン
”吼え立てよ、我が憤怒”


リュミノジテ・エテルネッル
”我が神はここにありて”


ルーラーの旗が、黒いジャンヌ・ダルクの最後の魂の叫びをかき消す。


ジャンヌオルタ「私は決して許さない! 私を殺したフランスを! この世界を呪い続けてやる!」


ジャンヌ「……消滅確認。我々の勝利です。マスター」

キャスター「自分殺しの気分はどう? 聖女様」

ジャンヌ「あれが私であったなら、やはり私が殺すべきだったのでしょう。誰にせよフランスに仇名すもの……人理に仇名すものは打ち倒すのみです」

キャスター「そう……」
325 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/11(金) 00:30:52.07 ID:lsPrJa8Io
カドック「ドクター。元凶と思われるサーヴァントを倒した。なにか変化はないか」

ロマン「それが……何も変わらないんだ」

カドック「なにも、だと」

ロマン「なにも、だ。彼女が聖杯を所有していたなら、それを回収して終わり……かもしれなかったんだが」

カドック「どういうことだ……ヤツは聖杯を持っていなかった……」



「Arrrrrr!」



ジークフリート「上だっ!」


丘の反対斜面から黒いサーヴァントが突如飛び出してくる。ソイツはそのまま引き絞った掌底を繰り出すが、ジークフリートの剣がそれを阻む。

この距離まで誰も気づけなかった……!? 気配遮断……? アサシンか……?


「Arrrrrr!」


ジークフリート「――っ」
326 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/11(金) 00:31:34.53 ID:lsPrJa8Io
黒いサーヴァントがセイバーの剣を握りしめる。セイバーは得物があるぶん素手相手じゃ立ち回りが遅い……いや違う!

なんだあれは……黒いサーヴァントの黒い気配がジークフリートの剣を侵食していく……!


ジークフリート「はああっ!」


中段蹴りを放つセイバー。黒いサーヴァントはたまらず反対の肘でそれを受けるが、セイバーはその反動を利用してヤツの掌中から剣を引き抜いた。


カドック「さがれセイバー! あの黒い奴……ステータスが見えない!」

ジークフリート「スキルか宝具か……ならば卑怯とは言えまい。看破できない俺の未熟だ」


一方、マリー達の前にもサーヴァントが現れる。奇抜な大剣……セイバーか? それにしては戦士の気迫は感じられない。


「どこへ行くんだい? 君の向かうべき場所なんて、ここしかないだろう。そうここだ。この刃先(ギロチン)までおいでマリー」
327 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/11(金) 00:32:13.36 ID:lsPrJa8Io
マリー「”シャルル=アンリ・サンソン”……!」

アマデウス「げえ、サンソン」

サンソン「今度こそ君を処刑するために、そのためだけに僕はここまで来たんだ。そう今確信したよ。これは運命だ。君もそう思うだろう? ああなんて健気なんだマリー」

アマデウス「彼、気持ち悪いな」

マリー「そこを通してちょうだい。サンソン。あなたの処刑場はここではないわ」

サンソン「そうとも。わかってくれるかい。僕の処刑場は場所ではなく君そのものなんだ」

マリー「彼……少し、気持ち悪いわ」

アマデウス「遠慮しないでもっとハッキリ言ってやるといい。君がハッキリしないから化けて出たんだ」

マリー「きっと狂化のせいよ」

アマデウス「狂化にかこつけて自分を解放してるだけだろう。あれもかなりの変態だから」


向こうはまだ戦闘にはなっていないようだが、どうやら旧知の仲のようだ。
328 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/11(金) 00:32:44.85 ID:lsPrJa8Io
カドック「あっちは手負いのマリーとただのアマデウスだ。マルタ、ジャンヌ、援護に行ってくれ、こちらはセイバーとキャスターで対処する」

マルタ「わかりました」

ジャンヌ「そちらもお気をつけて!」

「――――! A! Aaaaaaaaaaa!?」


ジャンヌを視界にとらえた瞬間、黒いサーヴァントの様子が一変する。

対峙していたセイバーを無視して、ルーラーめがけて突っ込んでいく。もう彼女以外何も見えていないようだ。


ジャンヌ「なに!?」

「Arrrrrrserrrrrrrrr!」
329 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/11(金) 00:33:27.19 ID:lsPrJa8Io
カドック「仕方ない作戦変更だ。僕たちでマリーたちの援護に向かう。ルーラー、そいつを抑えてろ。なぜかそいつはお前に首ったけだ」

ジャンヌ「しかし! かなり! 強いのですがっ!」

カドック「逃げ回ってもいい。そいつを釘づけにしててくれ」

ジャンヌ「それすら難しい! 強さ! なのですがっ!」

カドック「セイバー、キャスター、マルタ! 先にあの奇妙な大剣の男を全力で倒す!」


「そうはいかないな」


鋭い矢が飛んでくるが、セイバーが斬りはらう。

セイバー……強い……!

これまでの非戦士サーヴァントの戦いっぷりの数々を思い出して少し涙目になった。
330 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/11(金) 00:33:58.17 ID:lsPrJa8Io
ジークフリート「アーチャーか」

「ああそうだ。汝らを殺さねばならぬことになっている。許せ」


野性を感じる女のアーチャー……心当たりは数名あるが、情報が足りない。こいつ一体どこの英霊だ……? やはりギリシャか……?


キャスター「”アタランテ”……?」

カドック「知っているのかキャスター!」

アタランテ「汝……なにものだ」

キャスター「生前面識はありませんが」

ジークフリート「どうするマスター」

カドック「ちっ……各個撃破は難しいか……」

キャスター「マリーが心配。アーチャーを迎撃しながら合流しましょう」
331 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/11(金) 00:36:19.42 ID:lsPrJa8Io
ここまで。次回、マリー死す。がんばれカドックくん。
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/11(金) 00:48:19.45 ID:7pMKt3hIo


マリー死ぬのか
せっかく割とまともな水着性能になれたのに・・・
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/11(金) 23:47:22.63 ID:5JtjyerU0
>カドック「あっちは手負いのマリーとただのアマデウスだ。マルタ、ジャンヌ、援護に行ってくれ、こちらはセイバーとキャスターで対処する」

アマデウスェ………
334 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/12(土) 22:26:04.31 ID:327UbzRto
ジャンヌ「マスター!」

カドック「どうしたルーラー、悪いが援護は無理だ」

ジャンヌ「しかし、あちら! フランス兵がワイバーンに襲われています! 助けねば!」


黒いサーヴァントと交戦しながら、ジャンヌが指をさす。――攻撃を受けるたびに語尾が強まる。――確かにあれはフランス兵だ。あれは先ほどの街の駐屯兵か?


カドック「自分で何とかしろ!」


あんなのを気にかけている場合ではない。かといってそれを聞くジャンヌ・ダルクではない。

自分で何とかしろとしか言いようがない。たとえそれが無理無謀だったとしてもだ。


ジャンヌ「そんな」
335 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/12(土) 22:26:44.36 ID:327UbzRto
薄情……と言われればその通りだ。

この場において最も合理的なのは敵戦力の分断。いくら数で上回っていても疲弊したこちらが圧倒的に不利だ。

一人一殺とはいかないまでも、一騎で一騎を抑えられるなら迷うべくもない。

……はずだ。いままでそうしてきた。そうするんだ。カドック・ゼムルプス。


カドック「……ルーラー。よく聞け。事態は最悪だ。こちらは全員満身創痍。対するは万全のサーヴァント三騎。望むべくは各個撃破……それが無理なら一騎でも隔離する必要がある。それ以外に勝ちの目はない。……僕の言っていることがわかるか。ルーラー」

ジャンヌ「…………。わかりました」


おそらく死ぬが囮になれ。――救国の聖処女はうなずいた。


カドック「すまない」

ジャンヌ「…………。キャスターさん。最後にお願いがあるのです」
336 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/12(土) 22:27:13.04 ID:327UbzRto
キャスター「なんでしょう」

ジャンヌ「その、もしも私が生きて合流できたならば……私もお茶会に、混ぜてはもらえませんか。身分の低い身ではありますが」

キャスター「……大命を果たしたのであれば、そのときは、あなたに給仕長の座くらいは、用意してもいいわ」

ジャンヌ「ありがとうございます。よくわかりませんがきっと名誉なことなのでしょう。……行ってください。あの黒いサーヴァントは私が請け負いました」

キャスター「ジャンヌ・ダルク……」

ジャンヌ「さあお早く! 行ってください!」


黒いサーヴァントごと、フランス兵の救出に向かうジャンヌ・ダルクに背を向け、僕たちもマリーとアマデウスの援護に向かう。


キャスター「ジャンヌ・ダルク! お茶会の無断欠席はタブーよ! まさかそこまで礼儀知らずじゃないわよね!」
337 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/12(土) 22:27:41.82 ID:327UbzRto
キャスターの氷柱がアタランテを狙う。それを交わし、矢を番え、弓を引く。その一連の動作が滑らかで、目で追うことすらできず、もはや迎撃はセイバー頼みだ。

このだだっ広い平原は、本来なら白兵戦に弱いアーチャーは不利になるはずだが、とにかく速い。移動速度でそのハンデを埋めている。

まずは動きを捉えなければ。


カドック「アマデウス! 宝具を解放しろ! 聞こえるか!」


アマデウス「『聞こえるか』だって。誰に向かって言っているんだ。無論聞こえるとも。さあ、ここら一体巻き込んでしまうけど……命令とあらば開演だ!”レクイエム・フォー・デス”!」

サンソン「くだらないな。音楽で死を慰めようだなんて。さて、そろそろ僕たちも始めよう。二人とも僕がすぐに処刑(なくさ)めてあげよう!」


アタランテ「む……なんだこの音は……体が重い……」

マルタ「私たちも重いわ……この位置じゃ誰もかれも巻き込んじゃうじゃない」

カドック「スキルで弱体を解除してくれ。それくらいできてこその”奇蹟”だろう」

マルタ「祈りで緩和するくらいならできます」

カドック「キャスター、気温を下げまくれ。アタランテの俊足を止める」

キャスター「いいのね? やるわよ。はあ!」
338 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/12(土) 22:28:10.08 ID:327UbzRto
周囲が雪原と化す。まずは寒さと足場の悪さでアタランテの動きを封じる!


カドック「今のうちにもう一騎を頼む! マルタ!」

マルタ「はいよ……こほん。お任せください」

カドック「セイバー、矢の迎撃を頼む。キャスター、打ち合いなら物量でお前が勝る。とにかく打ちまくれ!」



――!? 耳鳴りとめまいがする。魔力が切れる……キャスターを使役しすぎたか。

短期決戦で行くしかない。


カドック「ドクター、予備電力をキャスターに回してくれ……僕は限界のようだ」

ロマン「むしろここまでよくもった。あとはこちらで都合をつける! 戦況の判断に集中してくれ」

キャスター「ごめんなさいカドック……無茶し続けていたのね」

カドック「さっさと仕留めるぞ、もうこちらの体力が尽きる」

ジークフリート「さすがに俺もばててきている。何とかしてみるが大きな成果をあげられるかどうか」
339 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/12(土) 22:28:44.52 ID:327UbzRto
キャスター「……ならば。アタランテ!」

アタランテ「なんだ女。降伏か? 受け入れよう楽にしなせてやる」

キャスター「先のフランス兵の中に、”ジル・ド・レェ”という男がいるのだけれど、ご存知かしら」

アタランテ「なに、ジル・ド・レェだと、馬鹿な、あの男は……」

キャスター「あの男は近い将来、幼い子どもたちを殺して回る殺人鬼になるのよ」

アタランテ「――待て。なんだと。フランス兵など知らないが、”ジル・ド・レェ”が子供を……私はそんな男の元で……」

キャスター「狂化されているんでしょう。でも、あなたがアタランテであるなら、そんな男を放っておけるはずがない」

アタランテ「――待て、待て待て待て。頭が割れそうだ。汝、答えろ、……がはっ!?」


動揺したアタランテの隙をついた見事な一撃だった。

氷柱で胸を貫かれたアタランテは、何が起きたのかわからないといった様子で倒れると、そのまま動かなくなった。

しかしアタランテを看破したり、さっきの問答といい……。


キャスター「急ぎましょう。マリーが危ない」

カドック「おいキャスター。お前一体……」
340 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/12(土) 22:29:46.14 ID:327UbzRto
しかしその疑問は答えを得られず……。


「処刑人だが、クラスはアサシンだ。少々油断が過ぎないか?」


カドック「……っ! 気配遮断……!」


サンソン「その通り」


大剣がキャスターの背部を切り裂く。雪原が赤く染まった。


キャスター「あ…………」

カドック「キャスター!」

サンソン「ダメだな……すまない。狂化を付与されているせいか、処刑がうまくいかないんだ。でも大丈夫。次こそは痛みもなく……気持ちよくいかせてあげるから」

キャスター「ま、マリー、は……?」

サンソン「残念だがまだ生きているよ。バーサーカーはどこかに行ってしまったし、アーチャーも負けてしまったようだから、撤退することにした。はやく傷の手当をしたほうがいい。その隙に僕は逃げるとしよう……キミが生きていたらの話だが」


キャスター「――!?」
341 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/12(土) 22:30:14.72 ID:327UbzRto
キャスターの頭上にギロチンが出現する。

これは運命力に影響される宝具か!? まずい、キャスターにその手の逸話はあるのか? あるとしたら回避は許されない!


サンソン「”ラモール・エスポワール”」


血しぶきが上がり、キャスターを真っ赤に濡らす。綺麗な顔も、肌も、そしてマリーに選んでもらったドレスも、彼女の血に染まる。

断頭台から押し出されて倒れ込むキャスターの代わりに、マリー・アントワネットの首が転がる。


キャスター「え――――?」

サンソン「ああ、嘘だ……こんなはずじゃ……君には最高の処刑を施してあげるはずだったのに、そんな、そんな……」


痙攣するマリーの体は、首から血をまき散らしながら、透明になって消えていく。


キャスター「いやあああああああああ!」


麗しの姫君は、友達の盾となって消えた。






342 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/12(土) 22:30:48.50 ID:327UbzRto






ジャンヌ・ダルクは苦戦していた。

フランス兵を襲うワイバーンは何とか倒したものの、黒い狂戦士の実力はジャンヌ・ダルクをはるかに上回っていた。

加えて非力な兵たちをかばいながらの戦い。もはや敗戦は決定づけられていた。


「力も技量もあちらが上……執念ですら及ばない……もはや……」


私は勝てない。


「ですが、私の背後には、守るべきものがある……」


「あれはやはり……ジャンヌ……?」

「”竜の魔女”補足! 皆武器をとれ! この国すべての悪があの姿だ! 打ち取れえええええ」

「待ちなさい! なぜわからないんだ! 彼女は我々をワイバーンから救い、あの黒兜から守護しているのだぞ!……駄目か、既に指揮がとれない……ジャンヌ! 私です! ジル・ド・レェにございます!」

「ジル……」

「ジャンヌ! あなたは死んだはずだ。死してなおこのフランスのために立ち上がったのか……それとも、本当にこの国を恨む怨霊として……」
343 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/12(土) 22:31:21.27 ID:327UbzRto
「申し訳ありませんジル。今は説明している時間がないのです」


狂戦士が向かってくる。

迷いなど最初からなかった。だってそれしか方法がないのだから。

ジャンヌ・ダルクは腰の剣に手をかける。


「ジル。必ず、私に代わってこのフランスを救うものが現れます。だからどうか、最後まであなたたちを守らせてください。今度は、今度こそは」

「なにをおっしゃる! あなたの存在があるだけで我々の闘志が、精神が、愛が、どれほど守られてきたというのか……」

「今度こそは戦士してあなたたちの盾となり敵を撃ち滅ぼす剣となる……!」


「主よ、この身を捧げます――――」


紅蓮の炎がジャンヌ・ダルクを包み込み、そして爆発的に、反則的に霊基の段階を引き上げる。

狂戦士は技量こそ残っていたが、既に理性などなく、その膨大な力を前にしても闘争本能のみで立ち向かう。

ジャンヌ・ダルクの心は穏やかだった。自分は囮であるとも、死地に追いやられたのでも、見捨てられたのでもないと、真に思っていた。
344 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/12(土) 22:32:02.71 ID:327UbzRto
「これは神によって導かれた我が魂の救済――」


ラ・ピュセル
“紅蓮の聖女”


己が身を薪としてくべた聖なる炎が狂戦士を飲み込む。


「おお、我が王よ……ついに私を、裁くというのか……」


邪竜百年戦争を最後までカルデアのマスターと戦いぬくサーヴァント……だったはずの彼女は、光と消えていく。

さあ、証明してみせなさい。あなたでもできるということを。

私は確信しています。あなたしか辿れない道があると。

――ゆえに、私は、ここまで。


「ジル。彼に会ったら伝えてください。『立ち向かい続けろ』と」


旗手を失った旗だけが残り、温かいフランスの南風になびく。

次第に旗の存在もほつれ、英霊ジャンヌ・ダルクの痕跡の一切が消えていった。




345 : ◆.qiZSe5l06 [saga]:2018/05/12(土) 22:34:27.37 ID:327UbzRto
ここまで。
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/13(日) 15:02:25.84 ID:jtRFGmid0
マリー死す(マリーだけとは言ってない)
確かにサンソンの宝具は天敵だな…
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2018/05/13(日) 16:18:50.32 ID:M0WHHdKp0
2部CM出てた暗殺天使シャルロット、コルデー対してもサンソンの宝具は天敵なんだよな
何しろ死因何だし
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/13(日) 20:30:02.76 ID:zsK99ePb0
変わり始めた矢先にこれでカドアナ曇るよ
197.81 KB Speed:0.1   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)