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僧侶「勇者様は勇者様です」
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1 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 21:36:38.42 ID:66S2KmHM0
過去スレ
狐神「お主はお人好しじゃのう」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447422430/
狐神「おぬしはお人好しじゃのう」 其ノ貮
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474192815/
の続きとなっています。
全て書き終わってから立てるつもりでしたが、モチベーション維持のために始めることとしました。
そのため例によって不定期にゆっくりと更新されていきます。
前回は一年間かかってしまいましたが、今回はなるべく早く終われるようにはしたいです。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1523190998
2 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 21:42:43.70 ID:66S2KmHM0
《はじまり》
──遥か昔、まだ世界が混沌としていた頃の話……
──死を振りまく厄災、魔王の恐怖に怯える日々が続いていた……
──しかしその暗黒の日々に終止符を打つ者たちが現れた……
──絶対神様のご加護によって聖なる力を手にした一行……
──勇者とその仲間達、彼ら八人によって邪悪は打倒され、永劫の平和が訪れたのであった……
3 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 21:47:04.61 ID:66S2KmHM0
*
勇者「……だそうだけど」
僧侶「初代勇者の英雄譚の一節ですよね。それがどうかしましたか?」
勇者「永劫に平和なら、何でこんな事をしているんだろうなって」
僧侶「仕方がないですよ。勇者一族の大事な勤めの一つなんですから」
僧侶「根も葉もない噂だったとしても、魔王の名がそこにあるなならば貴方が行かなくてはならないのです」
僧侶「そうすることで人々は安心することが出来ますから」
勇者「それにしたって最近多くないかな。“魔王軍の残党が現れた”って噂」
僧侶「確かに頻繁に有りすぎる気がしますね……」
勇者「騒ぎになるのを見て面白がっている愉快犯がいるかもしれないね」
4 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 21:51:57.90 ID:66S2KmHM0
僧侶「そうだとしたら許せませんね」
勇者「僕も面倒だしね」
勇者「さて、ここが目的地か」
僧侶「私は教会に挨拶に行って来ますね」
勇者「僕はその辺うろついているかな」
僧侶「あまりに遠くには行かないでくださいよ」
勇者「もう僕が教会に行かないことに対しては怒らないんだね」
僧侶「その事は半ば諦めています……ですが、貴方にもいずれ正しい信仰の心が芽生えると信じています」
僧侶「何故ならば貴方は絶対神様に選ばれし勇者の血統なのですから」
勇者「はいはい」
5 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 21:57:19.30 ID:66S2KmHM0
僧侶「はあ……貴方はもう少し大人になるべきですね」
勇者「善処はしているよ」
僧侶「……まあいいです。さっきも言いましたが遠くには行かないでくださいね」
勇者「そこまで子供扱いしなくても良いじゃん……」
勇者「じゃあ後でね」
僧侶「はい、それでは」
勇者「…………」
勇者(特に理由はないのだけれども、昔から教会で祈る気分にはなれない)
勇者(得体の知れない胡散臭さを感じてしまうのだ)
勇者(こんな気持ちで形式だけの祈りをしても逆に失礼な気がして最近は教会に入ることも少なくなった)
6 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 22:05:06.00 ID:66S2KmHM0
王都郊外の町の子供「あ、勇者様だ!」
勇者「こんにちは」
王都郊外の町の子供「こんにちは!」
王都郊外の町の子供「ねえ、腰にあるのがあの勇者の剣?」
勇者「そうだよ。お仕事で来ているから一応持ってきたんだ」
王都郊外の町の子供「えっ、悪い怪物がこの辺にいるってこと!?」
勇者「うーん、どうだろう。いないと思うんだけど、本当に現れたとしても僕達がいるから大丈夫だよ」
王都郊外の町の子供「だよね! 勇者様がいれば安心だもんね!」
勇者「うん、そうだね」
勇者(実際は父さん達抜きでの実戦経験はあまり無いから、僕らだけで対処できるかわからないけど……)
7 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 22:11:06.32 ID:66S2KmHM0
勇者(まあ今回もただの噂だと思うけどね)
その時、何かが崩れる音とと悲鳴が勇者の耳に届いた。
王都郊外の町の子供「な、何の音……!?」
勇者(……噂だと良かったんだけど……)
勇者「君は直ぐにお家へ帰りなさい。危ないから今の音がした方に行ったら駄目だよ」
王都郊外の町の子供「う、うん……!」
勇者(音がした方角はあっちだ)
勇者(急がないと……!)
8 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 22:13:01.15 ID:66S2KmHM0
*
勇者は町外れの墓地に着いた。
勇者(これは……ゾンビ……!?)
勇者(墓地の遺体がゾンビになっている……!)
ゾンビA「ウウウ……」
勇者(どうしよう……ゾンビとは言ってもついさっきまで安らかに眠る遺体だったんだよね……)
勇者(剣で斬ってしまっても良いんだろうか……)
ゾンビB「グウウウウ……」
ゾンビC「ガアアアッ!」
勇者「うわっ!」
9 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 22:19:34.60 ID:66S2KmHM0
勇者(そんな事言ってられないか……!)
勇者「後でちゃんと埋葬し直しますので!」
勇者が剣を一閃するだけでゾンビ達はまとめて真っ二つになった。
勇者(相変わらず、流石は伝説の剣って感じだな……)
勇者(持っているだけで安心できる)
ゾンビD「オオオッ!」
ゾンビE「ガウッ!」
勇者(って、キリがないな! 結構広い墓地だからどんどんゾンビが湧いて出てきちゃうのか!)
僧侶「勇者様、退いてください!」
勇者「僧侶!」
10 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 22:26:02.52 ID:66S2KmHM0
僧侶が呪文を唱えると、たちまちゾンビたちが動きを止めて倒れ出した。
勇者「僧侶って回復以外も出来たんだね」
僧侶「こういう相手の場合限定ですけれどもね」
ゾンビF「ウウウウ……」
僧侶「……!」
僧侶(大丈夫……平気よ……平気……)
僧侶(落ち着いて私……)
僧侶「……ふう……」
勇者「それよりも僧侶、どんどんゾンビが湧いて出てきちゃうんだけど……」
僧侶「……これはどこかにゾンビを生成する魔法陣がありますね。それを探し出して破壊しないと駄目です」
11 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 22:39:37.30 ID:66S2KmHM0
勇者「魔法陣か……」
勇者「あの下が怪しいかもしれない」
僧侶「墓地のシンボルの石像が崩されていますね……。酷いことを……」
勇者「瓦礫を退かさないと……」
僧侶「勇者様!? 勇者の剣で瓦礫を叩かないで下さい!」
勇者「いやでも、この剣を持っていないとただの非力な人になっちゃうから……」
僧侶「身に着けるだけで効力があるのをお忘れになったのですか!? 手で瓦礫を退かせるとか、他にもやりようがあるでしょう!」
勇者「そ、そうだね……」
僧侶「ゾンビの方は私が引き受けますので、なるべく早くお願いします……! その、あまり対峙していたくないので……」
勇者「わかった、任せて……!」
12 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 22:45:32.59 ID:66S2KmHM0
勇者「よっと……!」
勇者(やっぱりこの剣は凄いなあ……僕でもこんな大きな瓦礫を持ち上げられるなんて)
勇者(でもこの剣無しでは僕は本当に無能だから、絶対に失くさないようにしないと……)
勇者(さて、これが魔法陣か……)
勇者は魔法陣の描かれた石畳を踏みつけて壊した。
勇者「魔法陣は壊したよ!」
僧侶「まだ他にもあるはずです! 探し出して同じように破壊してください!」
勇者「わかった!」
それから勇者は六つの魔法陣を発見し、その都度破壊した。
勇者「ゾンビの数が増えなくなった……今ので最後だったみたいだ!」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/04/08(日) 22:53:59.35 ID:BHKPBdw10
剣の勇者
14 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 22:54:03.06 ID:66S2KmHM0
僧侶「わかりました。残りを一掃します……!」
僧侶の術で残ったゾンビが全て動かなくなった。
僧侶「……この後埋葬し直さなくてはなりませんね」
勇者「そうだね」
勇者「うーん……」
僧侶「どうかしましたか?」
勇者「いや、少し変だなあって」
僧侶「変、とは」
勇者「いや、この魔方陣なんだけどね。見つけられたくなかったもっと上手く隠す方法がなかったのかな」
僧侶「確かにそれはそうですね」
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/04/08(日) 23:00:49.81 ID:rxDTDsnd0
テスト
16 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:01:24.21 ID:66S2KmHM0
勇者「まるでここは本命じゃないみたいな、そんな感じがする」
僧侶「本命とは?」
勇者「わからないよ。そんな気がするってだけ」
勇者「さて、教会に報告しに行こうよ」
僧侶「そうですね」
王都郊外の町の神官「ゆ、勇者様! ここにおられましたか!」
勇者「どうしたんですか、そんなに慌てて……」
王都郊外の町の神官「一大事です……! 早く王都へお戻りになってください……!」
勇者「……王都で何が……?」
17 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:08:59.16 ID:66S2KmHM0
*
──王都中心部
勇者「こ、これは……」
僧侶「私達の街が……!」
王都の聖騎士A「きょ、強力な人外が突然大量に現れて……我々では手も足も出ず……」
王都の聖騎士A「あの方々も応戦されていましたが……」
勇者「……! 家を見てくる……!」
僧侶「私も……!」
勇者「…………」
勇者(一体何が……)
勇者(父さん……! 母さん……!)
18 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:21:35.51 ID:66S2KmHM0
勇者は両親が住む実家へと駆け出した。
勇者「はあ……はあ……家はもうすぐだ……」
勇者(……着いた……!)
勇者「二人共無事!?」
勇者「…………母さん…………?」
勇者「そんな……母さん……」
勇者「返事をして、母さん……!」
勇者の父「……お、お前か……」
勇者「父さん!!」
勇者「すぐに術師を呼んで来る!」
19 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:23:47.99 ID:66S2KmHM0
勇者の父「いや……無駄だ……」
勇者(……! 内臓が……!)
勇者の父「よく……聞け息子よ……」
勇者「…………」
勇者の父「敵を……見誤るな……」
勇者の父「自分で考えて……信じた道を……」
勇者の父「…………」
勇者「父さん……!」
勇者「くっ……」
勇者「…………」
20 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:24:59.69 ID:66S2KmHM0
勇者「僕の……せいだ……」
勇者「さっきの町での事は囮だったんだ……」
勇者「僕が勇者の剣を持って行ってしまっていたから父さんは……」
勇者「うううっ……」
21 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:26:43.12 ID:66S2KmHM0
*
白髪の国王「……そなたらの家族の事は、誠に残念であった」
勇者「…………」
僧侶「…………」
白髪の国王「勇者の血筋がいる区画であるからと安心していたが、それは大きな間違いであった」
白髪の国王「そなたらがいるからこそ、厳重な警戒態勢をしくべきであったのだ……」
勇者「……いえ、国王様がお気に病むことではございません」
白髪の国王「……そなたの父、そして僧侶の父は共に稀代の強力な力の持ち主であった」
白髪の国王「“奴ら”はそなたらの父の事を恐れて、今回の様な強襲に出たのであろう」
勇者「奴ら……ですか?」
22 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:27:29.48 ID:66S2KmHM0
白髪の国王「うむ……信じたくはないが、信憑性の高い情報が入った」
白髪の国王「そなたらの家族を殺めた者達は魔王軍の残党……新生魔王軍を名乗る集団であるということがわかった」
勇者「魔王……軍……」
白髪の国王「うむ……」
白髪の国王「もしかすると、これは大いなる厄災の始まりなのかもしれない……」
勇者「…………」
白髪の国王「……今のそなたにこのような事を言うのは心苦しいのだが、聞いてくれ」
勇者「……はい」
白髪の国王「そなたには勇者一族の当主として、共に戦う仲間を探す旅に出て欲しいのだ」
勇者「仲間……」
23 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:29:00.20 ID:66S2KmHM0
白髪の国王「そうだ。初代勇者が七人の仲間と共に千年前の大戦を戦ったという話は知っているな」
勇者「はい。魔法使い、剣士、僧侶、弓使い、格闘家、戦士、アサシンの七人と様々な困難に立ち向かったと聞いています」
白髪の国王「その通りだ」
白髪の国王「勇者の剣を持つことが可能な直系の者の元には、七人の選ばれし仲間が集うという……」
白髪の国王「そしてその仲間達には、伝承の通り強力な力が宿るとされている」
勇者「初めて耳にしました」
白髪の国王「次期当主が二十の歳を迎える時に口伝される事になっている……」
白髪の国王「本来ならばもう直ぐそなたの父から語られるはずの事だった」
勇者「そうでしたか……」
白髪の国王「僧侶の父は、勇者の父の“仲間”として選ばれていた」
24 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:29:53.51 ID:66S2KmHM0
白髪の国王「仲間として選ばれた者の身体にはその証が刻まれる……」
白髪の国王「そなたにはその証が現れる者を大陸中を旅して探し出して欲しいのだ」
白髪の国王「そなたの父が倒れた事によって国民は不安にかられている……」
白髪の国王「そなたには現当主として彼らを照らす次の灯火になって欲しい」
勇者「……しかし、仲間を探すとは言ってもこの広い大陸でどうやって……」
白髪の国王「初代勇者の仲間達の子孫に証が刻まれることが多いらしいのだが、例外もあるようでな……」
白髪の国王「しかし安心せよ。どういう理屈かは私にはわからないが、必ず彼らとは出会うようになっているらしい」
白髪の国王「何万里離れていようとも、勇者が仲間を求め続ければ必ずその者と出会うと私は聞いた」
勇者「なるほど……」
勇者「この話、承りました」
25 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:30:42.03 ID:66S2KmHM0
勇者「勇者一族の当主として、必ず仲間を引き連れて戻って参ります」
白髪の国王「おお勇者よ。頼もしい言葉だ」
白髪の国王「万全の準備で旅に出られるように計らおう」
勇者「ありがとうございます」
僧侶「……一つ、よろしいでしょうか」
勇者「僧侶……?」
僧侶「その旅、私も同行させて頂きたいのです」
勇者「なっ……」
白髪の国王「……僧侶よ。この旅は勇者の仲間を探すための旅なのだ」
白髪の国王「残念ながら関係のない者があまり多く同行すると、その道を困難にすると伝えられている」
26 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:31:11.45 ID:66S2KmHM0
僧侶「国王様、私の手の甲をご覧下さい」
白髪の国王「む……その紋章は……!」
僧侶「はい。昨晩、突然現れました」
勇者「まさか……つまり……」
白髪の国王「そなたが勇者の一人目の仲間であるという事か……」
僧侶「はい」
白髪の国王「ならば同行を断る理由はない。そなたの分も準備を進めよう」
僧侶「ありがとうございます」
勇者「…………」
27 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:33:38.12 ID:66S2KmHM0
*
勇者「まさか僧侶が仲間として選ばれるなんてね」
勇者「でもお互い初代勇者パーティーの末裔なわけだし、不思議な事でも無いのかな」
僧侶「…………」
僧侶「勇者様は、普段と変わりないんですね」
勇者「……別にそういう訳じゃないよ……」
勇者「まだロクに親孝行出来ていないのになって、後悔と悲しさで一杯だけど……」
勇者「もう起きてしまったって事は事実なんだ。起きてしまったことは何をしたって変わらない」
勇者「今から変えられるのは未来だけだと思うんだ」
僧侶「こんなに取り乱している私が異常なんでしょうか」
28 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:36:45.34 ID:66S2KmHM0
勇者「……いや、きっと変なのは僕の方だと思う」
勇者「昔から良くあるんだ……心が煮えたぎるはずの場面で妙に落ち着いてしまう事が」
勇者「まるで同じような場面に幾千と立ち会って来たみたいな、そんな気分になることがね」
僧侶「…………」
僧侶「……ちなみに勇者様が今回の旅に出ようと決意したのは何故ですか?」
僧侶「王の御前だったからですか? 勇者の末裔であるという事から湧く義務感からでしょうか?」
勇者「その二つは当然あるとして……」
勇者「その理由もよくわからないんだよね」
勇者「ただ、僕の中の何かがそう促したんだ」
僧侶「……自分の事なのに何もわからないんですね」
29 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:38:14.39 ID:66S2KmHM0
勇者「まだまだ子供だからね」
僧侶「……私は勇者様よりもずっと子供かもしれません」
僧侶「今の私の原動力はただ一つ、復讐心だけです」
僧侶「お父さんとお母さんを殺した奴を探し出して殺してやりたい。それだけなんです」
勇者「それは当然の感情だと思うけどな」
勇者「僧侶が言うには少し物騒な台詞だけど」
勇者「復讐が良いことなのか悪いことなのかは語れないけど、そう思う事自体は咎められる事では無いと思うよ」
勇者「ただし、ちょっと気になることがあるから、僧侶もこの言葉を覚えておいて欲しい」
僧侶「気になること……?」
勇者「うん。父さんが息絶える間際に僕に言った言葉なんだけど、きっと僕だけに向けられた言葉ではないと思うんだ」
30 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:38:41.45 ID:66S2KmHM0
勇者「『敵を見誤るな』って」
勇者「この言葉の意味は今はわからないけれど、最期に力を振り絞って言う程のことだから……」
僧侶「……わかりました、覚えておきます」
僧侶「でも、今の私にとっての敵は明確です」
僧侶「憎き人外達……奴らが私達の家族を殺めたという事実は変わらないです」
勇者「…………」
勇者「まだ少し早いけど今日はもう休もう」
僧侶「そうですね……まだ色々と疲れているみたいですし」
僧侶「それではまた明日」
勇者「うん……」
31 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:39:28.69 ID:66S2KmHM0
*
???「こんばんは」
勇者「こんばんは。貴方は?」
???「僕かい? 僕は■■だよ」
勇者「■■……? 一体誰だろう……」
???「今は分からないかもね。でもいずれ分かってくるかもしれない」
勇者「いずれ?」
???「うん。これは僕の失敗のせいでね。ごめんね」
勇者「失敗? 何が何やら……」
???「それもいずれ分かるようになると思う」
32 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:40:13.42 ID:66S2KmHM0
勇者「そっか。それじゃあその時まで待つかな」
???「本当はそうならない方が良いんだけど」
???「こんなつもりだったんだ……慣れないことをしたばっかりに……」
勇者「うーん、やっぱりよく分からないな」
???「ごめんね。まだ君が理解するには早すぎるみたいだ」
勇者「という事は、いずれは何か分かるってこと?」
???「うん。その時は遠くない未来にきっと」
???「……そろそろ時間だね」
???「またね……という言葉が適切かは分からないけれども、とりあえず言っておくね」
勇者「うん、それじゃあまた」
33 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:41:30.73 ID:66S2KmHM0
*
勇者「……変な夢……」
勇者「そうだ、僧侶の所に行かないと」
僧侶「──勇者様、入っても良いですか」
勇者「あ、ちょうどいい所に。大丈夫だよ」
僧侶「失礼します」
勇者「うん。何か用事かな」
僧侶「はい。これから始まる旅について少し見通しを持ったほうが良いと思いまして」
勇者「僕も丁度そう思っていた所」
僧侶「その……国王様が仰っていた話では紋様が現れる素質のある者とは自然に出会えるという事でしたが……」
34 :
◆8F4j1XSZNk
[saga]:2018/04/08(日) 23:42:14.71 ID:66S2KmHM0
僧侶「闇雲に探すよりはある程度当たりをつけた方が良いと思うのですが」
勇者「そうだね」
勇者「そうなると、まずは自分達みたいな初代の勇者パーティーの末裔を尋ねるのが得策かもしれない」
僧侶「王国内ですと初代魔法使い様の末裔が居ますが……」
僧侶「現当主及び次期当主が不在だと聞いています」
勇者「ええ、そうなの?」
僧侶「詳しいことは不明らしいのですが皇国の方に赴いているとの事です」
勇者「皇国に……」
僧侶「ですので皇国には行く必要があるでしょうね」
僧侶「勿論少し後回しにはなりますが」
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