加蓮「……ねえ、私の眷属になってよ」奈緒「え……」

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1 : ◆sWs1XPoFz2Ci :2018/03/21(水) 03:16:18.81 ID:RrjEOvhp0
なおかれ吸血鬼ものです
ドラクエのような中世ヨーロッパのファンタジーな世界観の物語です
戦闘シーンがときどきあります
もしかしたら登場人物の死亡シーンがあるかもしれません

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1521569778
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/21(水) 03:17:42.32 ID:RrjEOvhp0
「……よしっ、掃除終わりっと」

城門前の掃き掃除を終え、箒を持ちながら城の廊下を歩く。
ここはスニエーク王国のお城。大陸の真ん中にある小さな国だ。
にしてもなんであたしがメイドなんかしてるんだよ……絶対似合わないだろ……。

「あっ、ナオ。おつかれさまです」

「おう、アーニャ!これから勉強か?」

「いえ、これからは食事会ですね。」

他愛もない話をしながら2人で廊下を歩く。
アーニャはこの国の王女様。王様の一人娘でそのうち王位を継ぐことになるらしい。
本当は敬語を使うべきなんだろうけど昔から仲よかったからかタメ口のほうがいいらしい。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/21(水) 03:18:43.18 ID:RrjEOvhp0
「しっかし、あたしがメイドなんて似合ってないと思うんだよなぁ。なんてったって元は部隊の隊長だぜ?」

「似合ってますよ?」

「そうか?あたしは戦いの方が性に合ってる気がするよ」

「ンー、でも、去年、魔王が倒されてから魔物、減りましたね?」

「ああ、そうだな」

去年、勇者達によって魔王が倒された。それによって魔物達は力を失い、人間を襲う事もほぼなくなった。無抵抗の魔物を[ピーーー]のは忍びない、ということで人間と魔物は住み分けしてそれぞれ別の場所で暮らしている。それでもところどころで小競り合いは起きているらしいが。

「魔物もいないのに、兵士がたくさんいると、国が大変、ですね?」

「それは……そうだけどよ……」

「まあ、これは建前、です」

「え?」

「魔物が少なくなった今、気をつけないといけないのは人間です」

「ああ……」

「先日、遂に領土の奪い合いがおきてしまいました」

「だったら、戦争に備えて戦力を強化しなきゃならないんじゃないか?ただでさえ小国なのに軍を縮小してる場合じゃ……」

「ダー。その通りです。平和になったので、どの国も軍隊を縮小してますがそれは表向きは、です」

「じゃあ……この国も……?」

「ハイ。ナオ以外の辞めた兵士達は秘密裏に訓練しています」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:19:39.92 ID:RrjEOvhp0
「じゃあ、なんで私だけ……」

「それは、ナオが私のボディーガードとしてメイドさんをしてもらうからです」

「私がアーニャの?」

「ダー。メイドさんは私の横にいても、敵に警戒されません。それに、ナオは腕が立ちますし、仲良しです。」

「そういうことか……」

「お城にいるときは、兵士もいます。だからできるかぎりで結構です。でも、外に行くときはナオと一緒にいます」

「そういえばここ最近アーニャと一緒にいる時間多かったよな……」

「本当は初めに伝えるべきだったんですが、タイミングがなくて……」

「別にいいよ。ちゃんと話してくれたんだし」

アーニャは歩きながら申し訳なさそうにしていた。
あたしだけ他のメイドさんと比べてメイドの仕事少ないなぁ、と思ってたんだけどこれで合点がいった。いつアーニャが狙われるかわからないし、私も訓練続けておかないとな!

「着きました。これから勉強なので、私はここで、失礼します」

「おっ、そうか。またな」

「ダー」

そういってアーニャは部屋に入っていった。普段はメイドとして仕事してアーニャが外出するときについて行くということか。なるほど。
さて、私も仕事仕事っと。次は夕食の準備だったかな……
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:20:25.40 ID:RrjEOvhp0
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翌日 書庫

今日は午前中アーニャが勉強してる間は書庫の整理だったな。しっかし本が多いな……。書庫だから当たり前だけども。

ん?机の上に置きっぱなしの本がある。だしたらちゃんとしまえよなー。どれどれ……。

『吸血鬼とその対処法』

吸血鬼、か。本の整理にも飽きてきたしちょっと読んでみるか。
近くにあった椅子に腰掛けて本を読み始める。

『吸血鬼は別名ヴァンパイアと呼ばれ、人と非常によく似た容姿をしているが、吸血のための牙を持っていたり、鏡に映らなかったりするのが特徴。吸血鬼は知性が高く人語を話し、非常に高い魔力を持つ。
そしてなにより吸血鬼を語る上で外せないのが人の血を吸うということだ。吸血鬼に血を吸われるとそのまま血を吸い尽くされて死ぬか、吸血鬼の眷属にさせられると言われているが、詳細は不明。』

ふむふむ……。そういえば吸血鬼は兵士やってた時も出会ったらすぐに逃げろって言われてたな。やっぱ強いんだろうなぁ。眷属になるなんて真っ平御免だし。

『弱点は日光だと言われている。吸血鬼のいるであろう場所は夜中には近づかないのが懸命だ。もし出会ってしまったときは逃げること。桁外れの魔力を持っているため並大抵の人間では勝てないからだ。銀の武器や十字架、流れる水やニンニクが苦手だという報告があるが、証拠はない。』

へー。まあ吸血鬼のいるところに近づくことはないだろうけど一応覚えとくか。
ん?足音……。こんなところに誰だ?

「ナオ!」

「アーニャか。勉強は終わったのか?」

「ダー!お手伝いにきました」

「ありがとな」

読んでいた吸血鬼の本をしまい、2人で書庫整理を始める。しっかしアーニャはなんていい子なんだ……。私がしっかり守らないとな。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:21:13.96 ID:RrjEOvhp0
ーーーーーーーーーーーー

ある日

晴れとも言えず、曇りとも言えない天気の中、あたしは出かける用意をしていた。
これで準備出来たかな……。おっと、剣もちゃんと持っていかないとな。
今日はアーニャがお隣のヴァルガルズ王国に行く日だ。あたしたちのスニエーク王国と友好国であるミズガルズ王国とはよく食事会を行っている。

「ナオ、準備出来ましたか?」

「ああ、ちょうど終わったところだ」

「それじゃあ、いきましょうか」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:21:47.94 ID:RrjEOvhp0
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国を出て、馬車に揺られること数時間。あたしたちは現在魔物が出る森を通過している。魔物が出る森だが、街道を通る限り危険は少ないとのこと。
だから今回ヴァルガルズ王国に行くメンバーはあたしとアーニャ、それに城の兵士数人だ。
城の警備を怠るわけにはいかないから少数だ。
のんびりアーニャと話していると外から叫び声が聞こえてきた。

「うわああああ!」

「どうしたんだ!」

「魔物だ!魔物がでたぞ!」

「いっても1、2体だろ?そんなに叫ばなくてもいいだろ」

「そんなもんじゃない!軽く10体は超えている!」

「なんだって!」

急いで馬車から出て剣を鞘から抜き、戦闘態勢をとる。
戦いはまず、状況の整理からだ。敵の数は10数体。こちらの兵士の数だと全員倒すのは厳しいだろう。こちらが絶対にしてはいけないのはアーニャを危険な目に合わせること。そういうことなら……。

「みんな!聞いてくれ!」

「まず馬車を運転してるやつ!あたしと兵士達で道を切り開くからアーニャを無事にヴァルガルズ王国まで送り届けてくれ!」

「わかった!まかせろ!」

「次に他の兵士達!死ぬ気で姫様を守ってくれ!」

「おう!」

「あたしは道を防ぐ魔物を倒す!」

「いくぞ!」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:22:15.20 ID:RrjEOvhp0
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「はぁっ!」

あたしの一撃が魔物に直撃し、魔物が地に伏せる。
よしっ、これで道は開けた!

「道は開けた!行ってくれ!」

「でも、これじゃあナオ達が!」

「大丈夫だ。馬も何頭か残ってるし、アーニャが逃げる時間を稼いだら頃合いをみてあたし達も逃げるよ。」

「でも……」

「大丈夫だ。先に行って待っててくれ」

「……わかりました!また後で!」

アーニャを乗せた馬車が駆け抜けていく。よし、後は時間稼ぎだ。足を狙って機動力を奪う!
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:22:46.60 ID:RrjEOvhp0
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「はあっ!」

勢いよく魔物の足を切り裂く。見渡すと、他の兵士達もうまくやれているようだ。

なんだか違和感がする。魔物達の殺気が少ない。というか何かに怯えているような……?

「ギィヤァァァ!!」

突然聞こえた鳴き声に振り向く。そこには巨大な猿型の魔物がいた。
3メートルを超える巨体に、遠目からでもわかる筋肉は自分の力を余すことなく誇示していた。

魔法が得意ではないあたしでは相手にならないことは一目瞭然だ。他の兵士達の中には魔法が得意なやつもいるが、あの魔物の攻撃を回避しながらだとなかなか難しいだろう。
アーニャが逃げる時間も十分に稼いだし頃合いか……。
あたしは剣を鞘に納めて叫ぶ。

「みんな!撤退だ!馬に乗れ!」

あたしの合図であたし達は各自、戦う前に止めておいた馬に向かって駆け出す。
あの魔物もそれを許そうとはせず、1人、また1人とやられていく。
くっ……。心苦しいが勝てる相手じゃない。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:23:15.33 ID:RrjEOvhp0
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決死の思いで走り、なんとか馬までたどり着いた。
後ろからはあの魔物が迫ってくる様子は何故かない。
今がチャンスだと急いで馬にまたがる。

いざ駆け出そうとした瞬間、目の前に木の山が降ってきた。後ろを振り向くと、あの猿型魔物の周りの木が無くなっていた。どうやら周りの木をむしり取って私たちの目の前に投げ、逃げ道を防いだらしい。

まずは逃げ道を防ぐとは……。まったく……賢い野郎だぜ。
こうなったら戦うしかない!

あの魔物は逃げ道を防いだことを確認するとこちらに向かってきている。
あたしは馬から降り、再び剣を抜いて斬りかかる。

「えいや!」

あたしの剣が真っ二つに折れる。

「えっ……」

くそっ!国から支給される剣じゃダメか!武器がなかったらどうにもならねぇ……。得意じゃないけど魔法で……!

「火炎魔法!」

だめだ……。魔物の体毛が少し焦げたぐらいでまともなダメージになっていない。万事休すか……。

魔物の手があたしに向けて振り下ろされる。
なんとか、かわし続けているがこれも時間の問題だろう。なにか、なにか方法はないのか!?

「ガハッ……」

魔物の攻撃をモロに受け、森の中に吹き飛ばされる。
くそっ、打開策を考えるのに夢中になりすぎたか。
魔物はトドメを刺したと思ったのかこれ以上追ってこない。

それにしてもこれは本格的にやべぇ……。体も動かないし、視界もぼやけてきた……。アーニャと約束したのに……。くそ……。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:23:54.10 ID:RrjEOvhp0
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「いってて……」

なんとか生きてるか……。
まだ残る痛みを堪えながら目を覚ますと、待っていたのは静寂だった。かすかに聞こえるのは、窓から見える森に住む鳥のさえずりだけ。いつのまにか寝かされていたベッドから体を起こす。

いったいここはどこなんだ?おそらくあたし達が戦ってた森の中なんだろうけど。窓からの景色を見る限りはここは二階か。それにしても豪華な部屋だな。

「あっ、起きた?」

「うわっ!?誰だ!?」

赤みがかった茶髪の、真紅のドレスを着た女の人が突然話しかけてきた。深い赤色が、どこか儚げな雰囲気によく似合っている。

「そんなに驚かなくてもいいじゃん。私は加蓮。この屋敷で1人で暮らしてる」

「そうか……。あたしは奈緒だ。お前が助けてくれたんだよな?礼を言うよ。ありがとう」

「どういたしまして」

加蓮という人はベッドの横にある椅子に腰掛ける。その立ち振る舞いからはどこか気品が感じられる。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:25:16.84 ID:RrjEOvhp0
さて、これからどうしよう。取り敢えずアーニャのいるであろう〇〇国に行かないとな……。

……待てよ。よく考えるとここはどこだ?それにこの加蓮っていう人は、なんで森で倒れてたあたしを助けてくれたんだ?

「なぁ加蓮……だっけ。いろいろ聞いてもいいか?」

「あ、やっと?すぐに聞かれると思ったんだけど」

「こっちも突然のことでいろいろ考えてたんだよ」

「はいはい」

「んで、聞いてもいいか?」

「うん。なんでもどうぞ」

「まずここはどこなんだ?」

「ここはスニエーク王国の南の森にある、私の屋敷だよ」

「え?でもこの森って魔物が出るよな?そこに住んでるのか?」

「まあね。でも、私の敵じゃないし」

「は……?」

当たり前だというように加蓮は話す。
あんなに強い魔物がいて何言ってるんだこいつ。
そうとう腕が立つ人なのか?
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:26:39.01 ID:RrjEOvhp0
「それであの後どうなったんだ?」

「あの後?私がそこに着いたときにはアンタ以外全員死んでたよ。」

「くっ、そうか……。」

あたしは死んでいった兵士たちに黙祷を捧げる。
あたしも死んでいてもおかしくなかったんだ……。そう思うと突然恐怖が込み上げてくる。

「それで、加蓮はなんでこの森に?魔物ばっかりだし危ないだろ?」

「確かにそうだけど、人間社会では苦手なものが多くてまともに生きづらいし、しょうがないよね」

「え?どういうことだ?」

「だって私、吸血鬼だし」

「吸血鬼!?」

「そうだよ?あ、これ見る?」

加蓮は見せつけるように牙を見せてくる。たしかにあの本に書いてた牙にそっくりだ……。

それにしても吸血鬼ってあの本に書いてあったあの吸血鬼か!?まじかよ……。
に、逃げなきゃ……。

急いでベッドから立ち上がろうとするも、体が痛み上手く動けない。

「まあまあ、体も満足に動かないだろうし、少しお話でもしようよ」

あたしは立ち上がろうとするのを諦め、ベッドの上に座る。
これはやばいことになったな……。幸いにも、今のところあたしに危害を加える気は無いみたいだし、慎重にいかないと。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 03:27:21.33 ID:RrjEOvhp0
「きゅ、吸血鬼のってあの吸血鬼か?」

「うん、そうだよ?」

「じゃ、じゃあなんで吸血鬼なのに私を助けてくれたんだ?」

「なんでだと思う?」

加蓮がいたずらっぽく笑顔であたしに聞いてくる。
吸血鬼のくせしてかわいい顔してるなこいつ……。おっと、そんなことはどうでもいい。吸血鬼が人を殺さずにして生かしておく理由ってなんだ……。ハッ!

「もしかしてあたしのち、血が目当てか!?」

「うーん、半分正解で半分間違いかな」

「どういうことだ?」

「うーん、順を追って説明しようか」

「私は確かに血が好き。でも、普段は人間を襲わずに魔物の血で我慢してるんだけど、やっぱ人の血のが美味しいんだよね」

「…………」

「そしたらちょうど魔物に襲われた後を見つけてさ。」

「それでギリギリ生きてたあたしの血を吸おうとしたわけだ」

「そういうこと。でも、酷い怪我でね。これ以上血を吸ったら死んじゃうなって状態。ここで死なせるぐらいなら私専用の血液パックになってもらおうかなって」

「ん?つまりどういうことだ?」

加蓮は淡々と話しているがあたしの頭の中は大パニックだ。
吸血鬼が人を助ける?聞いたことがない!
それに血液パックって……


「……ねぇ、私の眷属になってよ」

「え……」
15 : ◆sWs1XPoFz2Ci :2018/03/21(水) 03:29:01.82 ID:RrjEOvhp0
まだまだ導入ですが眠いので今回はここまで
sagaし忘れて一箇所やられてしまいましたね……
書き溜めは完結はしてるので安心してください。
質問や見にくいなどの意見があればなんでもどうぞ
16 : ◆sWs1XPoFz2Ci [saga]:2018/03/21(水) 03:40:02.73 ID:RrjEOvhp0
>>3訂正

「しっかし、あたしがメイドなんて似合ってないと思うんだよなぁ。なんてったって元は部隊の隊長だぜ?」

「似合ってますよ?」

「そうか?あたしは戦いの方が性に合ってる気がするよ」

「ンー、でも、去年、魔王が倒されてから魔物、減りましたね?」

「ああ、そうだな」

去年、勇者達によって魔王が倒された。それによって魔物達は力を失い、人間を襲う事もほぼなくなった。無抵抗の魔物を[ピーーー]のは忍びない、ということで人間と魔物は住み分けしてそれぞれ別の場所で暮らしている。それでもところどころで小競り合いは起きているらしいが。

「魔物もいないのに、兵士がたくさんいると、国が大変、ですね?」

「それは……そうだけどよ……」

「まあ、これは建前、です」

「え?」

「魔物が少なくなった今、気をつけないといけないのは人間です」

「ああ……」

「先日、遂に領土の奪い合いがおきてしまいました」

「だったら、戦争に備えて戦力を強化しなきゃならないんじゃないか?ただでさえ小国なのに軍を縮小してる場合じゃ……」

「ダー。その通りです。平和になったので、どの国も軍隊を縮小してますがそれは表向きは、です」

「じゃあ……この国も……?」

「ハイ。ナオ以外の辞めた兵士達は秘密裏に訓練しています」
17 : ◆sWs1XPoFz2Ci [saga]:2018/03/21(水) 03:41:17.08 ID:RrjEOvhp0
>>3
>>16
なにやってんだ……
訂正の訂正

「しっかし、あたしがメイドなんて似合ってないと思うんだよなぁ。なんてったって元は部隊の隊長だぜ?」

「似合ってますよ?」

「そうか?あたしは戦いの方が性に合ってる気がするよ」

「ンー、でも、去年、魔王が倒されてから魔物、減りましたね?」

「ああ、そうだな」

去年、勇者達によって魔王が倒された。それによって魔物達は力を失い、人間を襲う事もほぼなくなった。無抵抗の魔物を殺すのは忍びない、ということで人間と魔物は住み分けしてそれぞれ別の場所で暮らしている。それでもところどころで小競り合いは起きているらしいが。

「魔物もいないのに、兵士がたくさんいると、国が大変、ですね?」

「それは……そうだけどよ……」

「まあ、これは建前、です」

「え?」

「魔物が少なくなった今、気をつけないといけないのは人間です」

「ああ……」

「先日、遂に領土の奪い合いがおきてしまいました」

「だったら、戦争に備えて戦力を強化しなきゃならないんじゃないか?ただでさえ小国なのに軍を縮小してる場合じゃ……」

「ダー。その通りです。平和になったので、どの国も軍隊を縮小してますがそれは表向きは、です」

「じゃあ……この国も……?」

「ハイ。ナオ以外の辞めた兵士達は秘密裏に訓練しています」
18 : ◆sWs1XPoFz2Ci [saga]:2018/03/21(水) 13:00:28.33 ID:RrjEOvhp0
ーーーーーーーーーーーー


「どう?」

加蓮は足を組みながらあたしに尋ねる。
なんてことを聞いてくるんだこいつは……。無理やり断っても殺されるかもしれないし、取り敢えず情報を引き出してみるか。

「そもそも眷属ってなんだ?」

「あっ、知らないんだ。眷属っていうのは人間の体内に吸血鬼の血液を入れて僕にする……みたいな?」

「なんでお前が覚えてないんだよ……」

「だって覚えたの数百年前だし」

「そういえば吸血鬼は長寿だったな……。あたしの眷属になるメリットデメリットは?」

「細かいところまで確認するね。そういうところ私は好きだよ」

そう言って吸血鬼の加蓮は考え始める。しっかしどうしたものか……。眷属になる気はさらさらない。でも無理やり断ると死ぬまで血を吸われる可能性があるからな……。

「まずはデメリットからね。そっちのデメリットとしてはまず人間社会で暮らしにくくなる。苦手なものも多くなるし、半分とはいえ吸血鬼だからね。牙も生えるし、見られたら1発でバレちゃう」

加蓮は続けて言う。

「あとは吸血鬼まではいかないけど血が飲みたくなるのもデメリットかな。本物の吸血鬼と違って眷属は飲まなくても生きていけるみたいだけど」

「へぇ……」

「次にメリット。1番のメリットとしては吸血鬼のような力を得られる。魔力だったり、長寿だったり、再生能力だったりね。さすがに本物の吸血鬼には敵わないけど」

「あとは普通の魔物が恐れて近づかなくなるのもメリットになるのかな?私はこれのせいでなかなか獲物が見つからなくて困るんだけど」

本には書いてなかったこともいっぱいあるな……。しっかり覚えとかないと。
デメリットを先に言って印象を薄くするあたり、こいつ頭も冴えるな。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 13:03:08.15 ID:RrjEOvhp0
「それじゃあお前にメリットがないんじゃないか?」

「まあそうだね。アンタが眷属になったときのメリットは2つ。」

「1つは私が好きな時に血が吸えること。眷属の血はおいしいらしいんだよね」

「あっ、もちろん死なない程度には抑えるからね」

慌てて訂正する加蓮。
血を吸われるってどんな感覚なのかな……。いや!吸われる気はないけどな!

「もう1つはこの屋敷で一緒に暮らせること。やっぱり1人だと退屈なんだよね」

加蓮は窓の外を眺めながら言う。
そりゃあ、数百年も1人じゃ暇だよなぁ。ちょっと同情するぜ。

「これぐらいかな。どう?」

「ちょっと考えさせてくれ……」

あからさまに考え始めるフリをする。どうしたらこの状況を打開できるか。こういうときは、まず1番してはいけないことをしないことが大事だ、っていうのが兵士やってた時からのあたしの考えだ。この場合は眷属になること。眷属になると人間をやめることになる。これだけは絶対に回避しないとな……。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 13:04:11.61 ID:RrjEOvhp0
「……決まったよ」

「答えを聞かせて?」

「助けてくれたのはありがたいけど、それはできない」

「……なんで?」

「私はアーニャのところに行かなくちゃならないんだ。人間社会で生きていけないのは困る」

「そんなに王女様のことが大事なんだ……」

「ああ……」

「そっか……残念だよ」

私が目線を落とすと加蓮は心底がっかりしたようにそう呟いた。

「じゃあ……」

「ここで干からびるまで血を吸わせてもらうよ!」

突然屋敷が揺れだす。加蓮の目の色が紅くなり、加蓮から溢れる魔力がひしひしと伝わってくる。やっぱこうなるよな……。それにしても吸血鬼の魔力やべーな。近くにいるだけで気圧されるぜ……。こうなったらしょうがない。最後の手段だ。

「まあ待て。話は最後まで聞け」

「……なに?」

加蓮は睨むようにあたしに目線を向ける。
怖ぇ……。ここからは1つでも間違えたらゲームオーバーだ。

「私は眷属にはなれない。でも加蓮の条件は飲むことができる」

「は?」

「死なない程度なら血だって吸っていい。屋敷にだって一緒に住んでやる」

「ふーん……。それならまあいっか」

加蓮の魔力が収まっていき、目の色も元に戻る。
ふぅ……。怖かったぜ。怒らせないようにしないとな。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 13:04:46.60 ID:RrjEOvhp0
「それじゃあよろしくね。奈緒」

「ああ、よろしく。加蓮」

加蓮が差し出してきた手を握り握手する。なんだかひんやりしてて緊張して火照った体にはちょうどよかった。

私は隙を見てここを抜け出す!そのために不本意だけどコイツと仲良くなって、ある程度あたしに隙をみせるようになる必要がある。

「じゃあ今日はここで寝てていいよ。ご飯とかは時間を見て持ってくるし」

「吸血鬼用の飯とかじゃないだろうな?」

「当たり前じゃん。私だって普段は人間と同じもの食べてるんだよ」

へぇ……また新しいこと知ったな。あとあと役にたつかもしれないから吸血鬼のことはしっかり覚えとかないと。
あたしは1つ気になったことを加蓮に問いかける。

「なぁ……」

「なに?」

「そもそも私を無理やり眷属にさせることも出来たんじゃないか?」

「まあねー。でも無理やり眷属にしてこの屋敷に住まわせてもギスギスするじゃん。そういうの嫌なんだよね」

「確かにそうだな……」

「だから奈緒はギスギスしないで仲良くしようねー♪それじゃ」

そう言って加蓮は部屋から出て行った。
やっぱ数百年も1人っていうのは寂しいんだろうな……。ちょっとくらいなら優しくしてやるか。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 13:06:42.56 ID:RrjEOvhp0
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森の小鳥のさえずりで目を覚ます。寝起きのまだ開かない目を擦りながら、ぼーっと考える。

あの後、加蓮が持ってきたご飯を食べてから、やっぱり疲れていたのかすぐに眠りについてしまった。吸血鬼の食べ物だからゲテモノなんじゃないかと不安に思ってたけど、普通のシチューで美味しかった。

体の痛みは随分とマシになったな。加蓮が回復魔法かけてくれたおかげか?

「おっはよー!起きた?」

「いきなりビックリさせんなよ……加蓮」

「ごめんごめん」

「それでどうした?」

「奈緒にはこの屋敷の家事をしてもらうから。一緒に暮らすんだから、当たり前でしょ?」

「まあな……。んで、何をすればいいんだ?」

「んー、掃除とか、食事とかいろいろあるけど、取り敢えず屋敷の案内するよ」

そう言って部屋から出て行く加蓮の後ろをついて行く。
相変わらず真紅のドレスは似合っているけど、昨日の儚げな雰囲気が薄くなって、快活で元気な少女のような印象を受けた。
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 13:07:32.26 ID:RrjEOvhp0
「まずは二階の1番奥の部屋。奈緒の寝てた部屋ね。この部屋を奈緒の部屋にするからよろしく」

「あぁ」

加蓮の言葉に返事をしながら廊下を見渡す。いったいいくつ部屋があるのやら……。

「次はここ。私の部屋ね。何か私に用があるときはここに来るのがいいのかな?」

「なんでお前が疑問形なんだよ……」

「だって私結構うろうろしてるし」

加蓮は口角を上げて言った。
加蓮の部屋は二階に上がってすぐの部屋っと。もし脱出するとしたら加蓮の部屋の前を通らないといけないのは厄介だな……。

「二階はこれだけ。空いてる部屋はいっぱいあるけど、大体使ってないから気にしなくていいよ」

「りょーかい」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 13:08:35.29 ID:RrjEOvhp0
ーーーーーーーーーーーー

あたしたちは階段を降りると広間にでる。
左右に廊下があり、正面には入り口があった。
なんか高そうな彫刻や絵がたくさんあるけど、こういうのはよくわからん。

「ここは玄関……というかロビーみたいなところ?とにかく屋敷に入ってすぐのところだよ」

やけに広いな……。ダンスパーティでも出来そうだぜ。

「次はこっちだよ」という加蓮の声についていく。なんかウキウキしてるなあいつ……。

「入って左の廊下にはホールっていうのかな?とにかく大きい部屋で、ご飯食べたりするところ!」

「でけぇ……」

広すぎるだろ……。うちの国の兵舎の食堂よりでかいぞ……。なんだこの屋敷。

……加蓮はこんなに広いところで1人ご飯を食べてたのか……。そりゃあ寂しくもなるよな。

「隣の部屋にはキッチンがあるよ。食料庫もすぐ隣にあるから、もし料理するときは自由に使ってね」

「りょーかい」

「反対側の廊下にはお風呂とか、来客用の部屋とかあるけど行けば大体わかるだろうし、説明しなくてもいいかな」

「来客用の部屋?誰か来たりするのか?」

「ううん。誰も来ないよ」

「じゃあなんでそんな部屋があるんだ?」

「私はもともとあった屋敷に住んでるだけで、この屋敷を建てたわけじゃないの」

「え?それじゃ加蓮がその……乗っ取ったのか?」

「人聞きの悪いこと言わないでよ。テキトーにフラフラしてたら屋敷を見つけて、中を見てみたら誰もいなかったから住んじゃえ!って思っただけだよ」

加蓮はそう答えた。
結局一緒じゃね……?そう思ったけど黙っておく。
じゃあ誰がこんな魔物が出る森に屋敷なんか建てたんだ……?
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 13:10:27.17 ID:RrjEOvhp0
「説明はこれで終わりでいいかな。何か聞きたいこととかある?」

「何個か聞いていいか?」

「うん、いいよ」

2人で近くにあった椅子に座る。
情報収集は大事だ。いくつか疑問に思ったことを聞いてみよう。

「この森は魔物が出る森だけど、この屋敷が襲われたりすることはないのか?」

「大丈夫だよ。魔物達は私を恐れて近づこうとしないしね。それに、この屋敷の周りには結界を張ってあるから、魔物が入ろうとしても入れないんだ」

加蓮はあたしにそう説明する。
それに結界って言ったか?それじゃもしかして……

「奈緒の考えてること、当ててあげよっか?」

「へ?」

加蓮が悪そうな顔をしながら言ってくる。
本当にわかるのか……?

「結界張ってあるんじゃ逃げられないんじゃないか、って思ってるでしょ」

「なんでそれを……!あっ……」

「やっぱり。」

「くそっ!心を読む魔法でも使ったな!?」

「そんな魔法ないから。奈緒がわかりやすいのがいけないんだよ」

加蓮は悪戯っぽく笑う。昨日は大人っぽいイメージだったけど、今日は少女のように見える。

「結界に触れるとはじき返されるから気をつけてね。まあ、逃げようとしなければ関係ないけど」

加蓮は悪戯っぽく笑う。
うーん。どうしたものか。いきなり計画が頓挫したような……。
……考えてもしょうがないか。そのうち必ずチャンスはあるはずだ。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 13:11:30.78 ID:RrjEOvhp0
「もう一つ聞くな?加蓮はいつから1人なんだ?」

「うーん、正確には覚えてないんだけどね。生まれてから10年ちょっとは親もいたし、仲のいい人……というか吸血鬼もいたんだけどね。いろいろあって、みーんないなくなっちゃった」

「そっか……。すまん、嫌なことを聞いた」

「別にいいよ。数百年も前だし」

「それに、吸血鬼って数も少ないし、普段は人間のフリしてるからなかなか同族には会わないんだ」

「そっか……」

「そんな暗い顔しないで!私はもう何も気にしてないから!」

加蓮はそうは言ったが表情は暗い。
数百年もひとりぼっちで暮らすなんて辛すぎるだろ……。

「それで、聞きたいことはこれだけ?」

「いやもう一個あるんだけどよ……」

「何?」

「着替え、ないか?昨日からずっとこの服だし、そろそろ着替えたいんだよ。あと出来れば風呂にも入りたい」

「あっ、そっか。そうだよね」

加蓮は顎に手をあてながら考えている。
怪我してたせいか、寝てる時に汗をかいたみたいだから、さっぱりしたい。

「サイズはだいたい同じっぽいし、着替えは私と同じ服でいい?」

「同じ服って……その真紅のドレスか?」

「そうだよ?これなら何着もあるんだよね」

どこか嬉しそうに言う加蓮。
そんなにあたしにこの真紅のドレスを着せたいのか?

「む、無理だって!そんな肩丸出しの服なんて恥ずかしいって!」

「そう?残念……」

加蓮は肩を落とす。
そんなに残念そうにするなよ加蓮……。あたしは小さい頃から戦いにしか目がなかったんだ。そんなは、肌を晒すようなことなんて……。

「普通の!普通の服でいいから!寝巻きみたいなやつ!」

「うーん、それだと私の分がなくなっちゃうし……」

少し考えた後あたしを見ながら加蓮が続けて言う。

「ねぇ、奈緒。服買いに行こっか」

「は……」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 13:13:17.08 ID:RrjEOvhp0
ーーーーーーーーーーーー

ところ変わってここは、ピニャコラーダ王国のというう国街中。ぴにゃこら太という動物?がたくさんいるからこんな名前になったらしい。
あたしのいた××国や〇〇国だと、あたしの知り合いに会って面倒なことになるから、という理由でこの国へ買い物に来た。

途中で逃げ出そうとしたけど、逃げたらあの国滅ぼすよ?と言われてしまった。冗談っぽく言っていたが、加蓮なら出来そうなところが恐ろしい。

あの屋敷からはだいぶ離れてるけど、あの屋敷とこのピニャコラーダ王国の近くの森の中にある遺跡が転移の魔法陣で繋がっているらしく、さほど時間を労せずにこの国までたどり着くことができた。

「ねぇ奈緒。どこの店から行く?あっち?そっち?」

「この国には来たことないからわかんねぇや。とりあえず、適当にブラブラしようぜ」

外出用に動きやすい服装に着替えた加蓮は目に見えてウキウキしている。仮にもここは人間だらけのところだぞ?普段これないから嬉しいのか?

ちなみに加蓮は着替えただけでなく、吸血鬼だとバレないように軽く変装している。帽子を深めに被って、牙を見られないように口元までマフラーをしている。万が一の時のリスクを減らすためらしい。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 13:14:17.81 ID:RrjEOvhp0
「なぁ加蓮。加蓮はよくこういう町にくるのか?」

「ううん。たまーにだね。食料庫の食べ物がなくなったときとか……あっ!」

「どうかしたか?」

「ポテト!」

そう言い残すと加蓮は一目散に駆けて行く。急にどうしたんだよ……。


ーーーーーーーーーーーー

たまたまあった出店のポテトを買ったあたしたちは、近くの公園のベンチに座ってそれを食べる。

「いやーさっきはごめんね」

「ああ、びっくりしたよ」

「大好きなんだよねー、ポテト。もう血より好き」

「あたしも嫌いじゃないけどさぁ……」

加蓮は満足そうにポテトを頬張っている。
血より好きってそれでいいのか吸血鬼……。

「あ〜、屋敷でもポテトが食べられたらなぁ……」

「確か家でも作れたはすだぞ」

「ホントに!?」

今までで1番の反応の速さだ……。こういうところを見ると私たちと変わらないなぁと思う。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 13:15:37.36 ID:RrjEOvhp0
「ああ、あたしは作ったことないけど友達が作ってるの見たことあるし」

「いや〜これからは毎日ポテトが食べれるなんて……夢のようだよ」

お前の夢は毎日ポテトを食べるでいいのかと心の中でつっこむ。見よう見まねでやってみるか……。

「しょうがない、初めてだけど、帰ったら作ってやるよ」

「やったー!奈緒大好き!」

「大好きってお前なぁ……」

加蓮があたしに抱きついてくる。さすがに大げさすぎるだろ……。好かれて悪い気はしないけど。

「なぁ加蓮さっきから思ってたんだけどよ……」

「うん、言いたいことはわかるよ」

「このブサイク緑、多くないか?」

公園の中にはたくさんの緑のブサイクこと、ぴにゃこら太がいた。
なんとも言えない目つきでこっちを見てくるから変な気持ちになる。人間に害はないらしいが……。

「あっ、ポテトなくなっちゃった……」

「ちょうどいい、そろそろ行くか」

2人でベンチから立って歩き出す。

「ポテトと言えば、まずは芋だよね!」

「おいおい目的を忘れたのか?芋買うのはそのあとにしようぜ」

「目的?ポテトでしょ?」

「服だよ!服!」

「そんなに大きな声出さなくてもわかってるって」

まったく……。こいつ、ポテト大好きすぎるだろ。吸血鬼じゃなくて吸芋鬼とかじゃないのか?……語呂悪いな。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 13:16:46.43 ID:RrjEOvhp0
2人でとりとめもない話をしながら街中を歩く。

「というか日光大丈夫なのか?ガンガン日が照ってるけど」

「大丈夫だよ?確かに日光で少しは弱るけど、誤差の範囲だし。もっと言うと日光で弱体化するんじゃなくて、闇で強化される感じ」

加蓮は帽子を被りなおしながら言う。
へぇ……。これはまた新しいことを知った。もし加蓮と戦うなら暗いところは禁物だってことか。

そうこう話しているうちに服屋らしき店に着いた。
2人で店の中に入る。

「うっわ〜いろいろあるね」

「そうだな」

2人で妙に緑色が多い店中を見て回る。
国から推されている動物とはいえ、こんなにぴにゃこら太が書いてある服いらないだろ……。

「お店の中も広いみたいだし、2人で別れて探そっか」

「ああ、そうだな」

「じゃあ、私が普段着見て来るから、奈緒は寝る時の服見ててね!」

「わかった」

そう言って別れて服を探し始めた。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 13:17:27.05 ID:RrjEOvhp0
ーーーーーーーーーーーー

うーん、とりあえず寝る時の服はこれでいいか……。それにしても、ぴにゃグッズばっかりだな。緑色が目に痛いぜ。
あとは普段着だけど……。

「な〜お!」

「うわっ!びっくりした!」

「これなんてどう?」

「バッカ!お前こんな服着れるわけないだろ!」

加蓮は、え〜!とか言ってるけど、こんな服着れるか!め、メイド服だぞ!しかもみ、ミニスカ!
お城でメイドの真似事やってたときは、普段通りの格好だったから良かったけどこれは恥ずかしい……。

「私が屋敷の主人で奈緒はそのメイド。ぴったりじゃない?」

「関係的にはそれでいいかもしれないけどよ……。やっぱり恥ずかしいよ」

「じゃあ奈緒に服買ってあげない!」

「それはずるいぞ!」

加蓮がそう言ってそっぽを向いた
私が今一文無しだからって……。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/21(水) 13:18:02.96 ID:RrjEOvhp0
「もう……奈緒ったらしょうがないなぁ。こっちで勘弁しといてあげる」

そう言って加蓮が見せてきたのは、ロングスカートのメイド服。これならまぁいいか……。露出も少ないし。

「わかったよ」

「イェーイ!」

結局私はそのロングスカートのメイド服とあたしが自分で決めた寝る時の服を買った。
流されちまった気もするが、まあしょうがない。

「よし、それじゃあポテト買いに行こう!」

「ポテトじゃなくて材料の芋だろ」

「いいや?ポテトだけど?」

「え?」

結局帰り道にもポテトを買って食べた。
あいつの体、ポテトでてきてるんじゃないか?
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/21(水) 13:18:35.66 ID:RrjEOvhp0
それから市場によって芋を山ほど買って帰った。こんなに買っちゃうと当分の食事はポテトだらけだな……。

「それじゃ芋も買えたし、帰ろっか」

「ああ。というか加蓮もちょっとは芋持てよな」

「私は奈緒の服持ってるし。雑に扱って買ったばかりの服がしわしわになるのは嫌でしょ?」

「ぐぬぬ……」

2人で町を出て森の中の転移の魔法陣へと歩く。
行きはなんとも思わなかったが、芋を大量に持った帰りの森の道は想像以上に辛かった。加蓮め……。後で覚えとけよ……。
34 : ◆sWs1XPoFz2Ci :2018/03/21(水) 13:19:43.47 ID:RrjEOvhp0
とりあえずここまで
また後で来ます
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