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北上「我々は猫である」
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687 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/05(土) 03:29:00.31 ID:ul40+rcH0
北上「ただいま我が家ー」ガチャ
木曾「ん?神風?」
神風「北上さん木曾さんおかえりなさーい」
北上「私らの部屋でなにしてんの?」
神風「ほら、この前借りた本を返しにと」
北上「それだけ?」
神風「ついでに他にもなにか借りようかと」
北上「棚の一番下はまだ読んでないゾーンだからダメー」
神風「リョーカイです」
木曾「…なあ神風、一つ質問いいか?」
神風「?なんでしょう」
688 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/05(土) 03:29:27.46 ID:ul40+rcH0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
神風「北上さんが駆逐艦に人気の理由ですか」
北上「確かになんかやけに絡まれるんだよねぇ」
木曾「本人がこの調子だからよく一緒にいる神風に聞こうかと思ってな」
北上「こんな調子ってどういう意味さ」
神風「あー」
北上「あれ、なんか伝わっちゃってる?」
神風「距離感、じゃないですかね」
木曾「ほう」
北上「距離感?」
689 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/05(土) 03:29:57.59 ID:ul40+rcH0
神風「来るものは拒まず去る者は追わずって感じのです」
木曾「それはわかるな」
北上「わかるんだ」
私はわからん。
神風「北上さん、私達がベタベタくっついても拒まないでしょ?」
北上「ウザイけどね」
神風「でも拒まないでしょ?」
北上「うっ」
私をまっすぐ見つめる目に思わず怯む。
木曾「確かにそうらしいな」クツクツ
北上「笑うなこら」
690 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/05(土) 03:30:32.08 ID:ul40+rcH0
神風「それでいて北上さんから絡んでくることはない。なんて言うか、遠慮とかがいらないというか、仲がいいとは違う遠慮のなさがあるんです」
木曾「上姉は基本的に誰に対しても同じ接し方をするからな」
北上「それはまあそうかも」
神風「あとあと、拒みはしないけれどいつの間にかサッとどこかへ行っちゃったり」
木曾「さっきもまさにそんな感じだったな」
北上「長居したってしょうがないしさ」
神風「まさに猫って感じなんです。猫女子ですね」
なんだ猫女子って。
木曾「なるほどな」
こいつまさか適当に頷いてるだけじゃあるまいな。
691 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/05(土) 03:31:18.52 ID:ul40+rcH0
バタン!
神風「ひゃあっ!?」
木曾「おわっ!!」
北上「お?」
突如扉が開かれる。なんでみんな静かに出入りできないんだ。
大井「神風!!」ツカツカ
神風「お、大井さん!?」グワシッ
大井っちが神風の両手を掴む。なんだ何をする気だ。
大井「よく分かってるじゃない!」
神風「へ?」
大井「そうよ!そこが北上さんのいいところなのよ!昔から!誰にでも懐くようで誰にも靡かない!まさに猫!でしょ!!」
神風「は、はい!」
木曾「はぁ…」
大井っちに掴まれたまま気圧される神風と手を額にあて俯き深い溜息をつく木曾。
よし。
北上「私ちょっと図書室行ってくる」
神風「あズルい!ズルいですよ!!」
北上「ほら私猫だから」
木曾「俺もちょっと用事が」
神風「あーー!!!」
692 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/05(土) 03:32:30.26 ID:ul40+rcH0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
北上「神風の悲鳴ってなんか可愛いよね」
木曾「上姉はそういうとこもっと自重した方がいいぞ」
北上「そういうとこ?」
木曾「加虐的なとこ」
北上「猫だからね」
木曾「免罪符にするなよ」
北上「木曾だって見捨ててたくせに」
木曾「身を守っただけだ」
北上「はいはい。それでどこ行くの?」
木曾「少なくとも図書室以外かな」
北上「それじゃまた後で」
木曾「おう」
木曾と別れる。
さてと誰かに見つかる前に移動しなくては。
693 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/05(土) 03:35:49.62 ID:ul40+rcH0
吹雪「おやおや」
北上「げっ」
まるで幽霊のようにヌルりと現れた。
吹雪「げってなんですかげって。職場の廊下で出くわした上司に向かってげって」
北上「上司だからだよ」
吹雪「ふふん、そうですよ偉いんですよ。敬ってもいいんですよ」
思わず鼻あたりをつまみたくなるようなドヤ顔をする秘書艦殿。
北上「敬うより謝る事の方が多いからなあ」
吹雪「それは自分の責任です」
こういうとこはハッキリ言ってくるよねこの娘。
北上「それで、なにかよう?」
吹雪「捜し物について」
北上「はい?」
吹雪「どの道無理ですよ。ああいうのって観覧権限みたいなのがあるんで、提督じゃ無理です」
北上「なんのこと」
吹雪「何ってレ級の話ですよ」
694 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/05(土) 03:36:27.53 ID:ul40+rcH0
ああ、ほら。そうやっていつもの子供らしい笑顔をすっと引っこめる。
北上「だから げってなるんだよね」
天敵と言うなら、まさに今目の前にいるこの吹雪がそうだ。
吹雪「駆逐艦達の噂は砲弾よりも早いですから。迂闊に漏らすもんじゃあないですよ」
北上「なるほど」
吹雪「強力な深海棲艦については関わっていい人間とそうでない人間がいるんです。ウチの提督はまだまだ新米ですからね」
北上「でもそういう情報って隠してていいものなの?運悪く邂逅する可能性はあるじゃん」
吹雪「そこまで運のないやつはどの道死ぬって話ですよ。力の差ってのは下からじゃよく分からないものですから、武勲を上げたくて身の丈に合わないことしようって輩を出せないためにです」
北上「本当にそれで効果はあるの?」
吹雪「例えば北上さん、敵主力がいる座標だけ渡されてそこにたどりつけますか?勝てると思いますか?敵の編成も艦種も装備も不明で道中の海路や深度や波風、それらの情報一切抜きで」
北上「…」
吹雪「海を進むって本当に難しい事なんですよ。僅かな事で私達は簡単に沈みます。深海棲艦はその要因のひとつに過ぎません。馬鹿な輩でもそこら辺は心得てるもんなんです」
北上「そっか」
吹雪「そうです」
695 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/05(土) 03:36:55.45 ID:ul40+rcH0
吹雪「それでは」
あっさりと踵を返し立ち去ろうとする。
北上「それだけ?」
吹雪「それだけですけど?」
北上「そっか」
吹雪「そうです」
北上「私がレ級を知ってる事に対して何も言わないんだ」
吹雪「…」
696 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/05(土) 03:37:28.94 ID:ul40+rcH0
だってそうじゃないか。それを聞かないと言うなら、それはつまり、
吹雪「北上さん。もしどうしても開けて欲しくないパンドラの箱があったらどうします?鍵をかけます?コンクリートで固めます?ドラム缶にでも詰めて海に流します?」
私はこの時引かないと決めていた。
吹雪「まあそれもいい手ですけど、例えばその箱を特定の誰かにどうしても開けて欲しくない場合はどうします?」
目の前の天敵相手に、引かないと。
吹雪「開けるなって言うと気になるものですからね。忘れようとしても気になるものです」
北上「私みたいなのは特に、ね」
吹雪「だから私は、あえて箱の中身を見せるんです」
北上「見せる?」
吹雪「そう。それがどういうものなのか。あなたが今開けようとしているものはこういうものだと教えるんです。そして聞くんです。あなたはそれでもこれを開けますか、と」
北上「私は今、そう問われているの?」
吹雪「いえいえ、まだですよそれは」
697 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/05(土) 03:38:34.53 ID:ul40+rcH0
触れてほしくないからあえて触れさせる。
確かに理屈としては間違っていない。
北上「それを開けたらどうなる?」
吹雪「さあどうでしょう。開け方にもよりますから」
北上「開け方…」
吹雪「それでは」
今度こそ、恐らく引き止めることは出来ないだろう。
パンドラの悪魔は去っていった。
北上「私に期待してるってのは、その開け方の事なのかな」
でも徐々に、確実に箱の蓋が開かれていくのを感じた。
698 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/05(土) 03:42:23.52 ID:ul40+rcH0
JAZZコンサートしゅごい
言い出したらキリがないので以上です。
だんだん話が長くなってきました。
次も多分長いです。
また週一くらいで書いていけたらなあと思っては、思ってはいます。
699 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/05(土) 14:40:00.63 ID:nG77xzSpo
おつ上様ー
700 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/07(月) 05:10:12.69 ID:BUfuQ74K0
長いと読みごたえがあってウレシイ……ウレシイ……
おつ、次の更新も待ってる
701 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/10(木) 12:59:10.45 ID:5P22OAmzO
動くみっちゃん見れて羨ましい
702 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:05:22.77 ID:UdZIN3p00
73匹目:バター猫のパラドクス
猫は高いところから落ちる時必ず足の方から着地する。
バターを塗ったトーストは必ずバターを塗った方から落ちる。
なんて実際のところ猿も木から落ちるように着地に失敗することはそう珍しくもないのだけれど、
これはあくまで考え方の話。
気の利いたジョークみたいなものだ。
必ずそうなると言われる2つを、例えば猫の背中にバタートーストを乗せて高所から落としたらどうなるか、という話だ。
足から着地すればバタートーストを美味しくいただけるし、バターが床を台無しにしてしまえば猫は恥をかくことになる。
必ず起こりうるというそれはどちらか一方だけになってしまう矛盾。パラドクス。
703 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:05:53.75 ID:UdZIN3p00
私に言わせればそれは猫でもなくバタートーストでもなく「バタートーストを乗せた猫」という全く別の存在なのだから矛盾はない、と思うのだ。
最強の矛と最強の盾を一緒に装備してできるのは最強の勇者だ。
そこへいくと猫であり船である私は、一体何なのだろうか。
704 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:06:28.00 ID:UdZIN3p00
提督「お前なんかやらかしたか?」
北上「なんの事?」
急に提督室に呼び出されたかと思えば見た事ないくらい真剣な顔つきをした提督と吹雪が私を待ち受けていた。
前に本で読んだ問題を起こした生徒が校長室に呼び出されるシーンを思い出す。
提督「今朝急に呼び出しがあったんだよ。しかも名指しでお前にな」
北上「誰から」
提督「元帥のおっさんから」
北上「誰それ。偉いの?」
提督「俺の上司的なやつだな。めちゃくちゃ偉い」
北上「校長先生くらい?」
吹雪「知事くらいですね」
北上「わお」
マジか。
705 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:06:59.27 ID:UdZIN3p00
北上「でも私そもそもその人に会ったことなくない?」
提督「まあそうなんだがな」
吹雪「演習をした事はありますけど基本向こうの鎮守府に出向いてますし、北上さんは参加してませんからね」
提督「前に外出した時になんかあったりしたか?」
北上「あいにく知事のおっさんに会った記憶はないけどなあ」
提督「どうなってんだ…」
吹雪「相変わらず読めない人ですね…」
2人の反応からして知り合い、っぽい感じなのかな?
北上「一体なぜ私が」
吹雪「一応向こうは友人が会いたがってる、とか言ってきましたけど」
北上「だから誰よそれ」
提督「俺に聞くなよ」
分からん尽くしだ。
706 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:07:25.73 ID:UdZIN3p00
北上「私ゃどうすりゃいいのさ」
提督「あちらの鎮守府に呼び出しだよ。しかも今日」
北上「今日!?」
吹雪「最近お馴染みの例の駅にお迎えが来てるそうですよ」
北上「またバスか」
提督「三回目だ。流石に慣れたろ」
北上「どうだかねえ」
吹雪「待ち合わせは一時。なので軽く昼食を食べたらすぐ向かった方がいいですね」
北上「そっかぁ…ん?一人?私一人なのもしかして」
吹雪「はい」
提督「うん」
北上「マジか…」
707 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:07:55.36 ID:UdZIN3p00
北上「死ぬほど心細い」
吹雪「でも向こうから一人でって言われてるんですよ。何故か」
北上「何故だ」
提督「それがわからんからどうにもな」
北上「何かあったらどうするのさ」
提督「そん時ゃ迷わず連絡しろ」
北上「どうやって」
提督「いやスマホあるだろスマホ」
北上「あーうっかりしてた」
提督「そこはしっかりしててくれ頼むから」
吹雪「不安なら提督の手とか持ってきます?」
北上「いやそんな趣味はない」
提督「俺はいつからサイボーグになったんだよ」
708 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:08:28.20 ID:UdZIN3p00
そんなこんなでまたバスに揺られて街に向かう事になった。
北上「何がどうなってるんだか」
ともかく失礼のないようにな、と提督には念を押された。
襲われるような事はないと思うんでそこは安心してください、と吹雪は言っていた。
街が見えてくる。ここ最近でこう幾度も訪れる事になるとは。
北上「ヤバいな」
今になって凄く不安になってきた。
どうしよう。心細い。Help me提督。
あ、スマホで話せばいいのか。
北上「えっと確か」
709 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:08:54.52 ID:UdZIN3p00
北上:ハロー
これで提督に届いてるはず。多分。届いてるのかな?
提督:どうした!?
うわ凄い速さで返信が来た。暇なのかよ。
北上:なんか不安です
…なんだろう。普通に話すべきなんだろうけどこうして文字で会話するとどうにも他人行儀な話し方になる。
手紙のようで会話のテンポは直に話しているのと変わらない。ネットとは不思議なものだ。
提督:マジで大丈夫なのか!?ヤバいなら戻ってきていいからな!後先考えなくていいから!
北上「うわぉ」
余計に心配させてしまったようだ。
710 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:09:21.20 ID:UdZIN3p00
提督は今どうしてるんだろう。
私の文面を見て慌てて返信しているのだろうか。提督は案外過保護だ。
前に帰りが遅くなった時だって大井っちと二人でえらい大騒ぎしてたし。
そうだ、大井っちにも連絡を…
北上「いや、よそう」
ここまで飛んできかねない。
木曾や多摩姉、球磨姉も無駄に心配かけかねない。
北上:緊張解す方法ない?
提督:掌に人という字を書いて飲み込むとか
北上:艦娘って人食べるの?
提督:忘れてくれ
711 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:09:48.54 ID:UdZIN3p00
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
吹雪「服装は一応制服の方がいいですね」
北上「でもそれで外歩いちゃまずいっしょ」
提督「なんか上に着てくしかないか。最近寒くなってきたし」
北上「大井っちのコート借りようかな」
吹雪「普通艦娘の移動は海上か車での移動なんですけれどね。なんで待ち合わせなんでしょうか」
提督「俺は知らねえよ」
吹雪「提督には期待してませんから」ニッコリ
提督「なんで満面の笑みなんだよコノヤロウ」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
712 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:10:31.65 ID:UdZIN3p00
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
北上「これでホントにいいのかな」
服装も髪型もいつも通り。コートを着ただけで誤魔化せるのだろうか。
それとも一般人の認識なんてそんなものか。
しかしどうするんだ?駅に来たはいいけどここからどうやって合えばいいのだろう。
相手が誰で何処で待っているのかもわからない。
すると、
「おーい」
とても聞きなれた声がした。
713 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:11:03.19 ID:UdZIN3p00
正確には普段聞いている声と少し違う。
何せ普段は空気を通さず直接聞いているのだからこうして離れて聞くとなんだかむず痒いものがある。
バス停から少し離れたところで手を振る彼女を見つけてそこへ向かう。
あの時と同じく髪は解いていた。
北上「久々、というには早い再開だったね私」
北上「全くだね。でも元気そうで何よりだよ私」
北上「で、もしかしなくても君がお迎え?」
北上「そそ、はいこれ」
北上「何これ」
北上「ヘルメットをご存知でない?」
北上「物は分かるけど意図がわからない」
北上「そりゃあだって」
714 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:11:40.36 ID:UdZIN3p00
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
北上「おーーーーー!」
バイクに二人乗り。
陸でこんなにも風をを感じる事があるとは思わなかった。
最初は怖かったけど慣れてくるとそんな事どうでもいいくらい気持ちがいい。
北上「楽しんでるねぇ」
北上「すっごいやこれ。立ってみてもいい?」
北上「死にたいならいいよ」
北上「よし辞めた」
北上「賢明賢明」
北上「これ君のなの?」
北上「いんや、提督の。私のはもちっとちっちゃいやつなんだ。だから借りた」
北上「へえ」
北上「いつか私もこんなカッチョイイの買うんだ」
北上「これはなんて言うやつなの?」
北上「カタナ」
715 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:12:13.74 ID:UdZIN3p00
両脇の木々がものすごい速さで通り過ぎてゆく。
紅に染まった美しい山々もこうして走り抜けているとまた違った風情がある。
私がバスで超えてきた山と反対側の山を抜けていくようだ。
北上「最初ヘルメット渡された時はびっくりしたよ」
北上「顔を隠せるから一石二鳥だよ」
北上「キスも防げるしね」
北上「あれ?怒ってた?」
北上「怒ってはいないけどもうゴメンかな」
北上「提督にはしたの?」
北上「しないよ。そういうのは、まだわかんない」
北上「のんびりしてると欲しいものが取られちゃうかもよ」
北上「焦って取り逃すよりいいさ」
北上「それもそうか」
716 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:12:47.41 ID:UdZIN3p00
北上「木ー木ー木ー。森ってほんと木ばっかだ」
北上「そりゃそうだ。海だって海ばっかりだもの」
北上「あ、今の木折れてた」
北上「あんまりキョロキョロしないでよ。バランス崩れちゃうから」
北上「はーい」
北上「次右にカーブ」
北上「ほいほい」
北上「おー慣れてるねえ」
北上「バランスの取り方は海に出てる時と変わんないね」
北上「それもバイクのいいところさ」
717 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:13:19.25 ID:UdZIN3p00
北上「ところでなんで駅で待ち合わせなの?」
北上「これで鎮守府にお迎えでーすってきたら流石に引かれるから」
北上「駅で見た時も引いたけどね」
北上「カッコイイのになあ」
北上「そういう問題じゃないよ」
北上「ところでどう?バイクは」
北上「うん。好き。私も乗ってみようかなあ」
北上「いいよぉバイクは。車と違って体で操作するからね。さっきみたいに海に出ている時と似てるんだ」
北上「分かる分かる。この風感じるのがいいね」
北上「おお!同士だ!」クルッ
北上「ちょ!?前!前見てちゃんと!!」
718 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:13:57.53 ID:UdZIN3p00
北上「私他の鎮守府行くの初めてだ」
北上「へぇ、それじゃ今日が初体験か。光栄だね」
北上「君は結構他のとこに行ったことはありそうだね」
北上「しょっちゅうね。新鮮なのは最初の数回だけだよ。大体は公的なやつで外に遊びにも行けないし」
北上「そりゃ辛そうだ」
北上「悪くは無いんだよ。特別良くもないだけ」
北上「そっちの鎮守府ってでかい?」
北上「デカいよー。君のとこと比べたら更に。何せウチの提督お偉いさんだからね」
北上「偉くなるとでかくなるのか」
北上「お墓と一緒だね」
北上「その例えはどうかと思う」
719 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:14:26.80 ID:UdZIN3p00
北上「あ、今日はおめかししてないんだね」
北上「うん。お偉いさんとこ行くから制服でって」
北上「ちぇー」
北上「何企んでた」
北上「大井っちに見せたかった」
北上「なんでまた」
北上「可愛かったから」
北上「自画自賛なのでは」
北上「そりゃね、自分の事くらい自分で褒められるよ」
北上「さいですか」
720 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/15(火) 04:20:38.28 ID:UdZIN3p00
書いてる場合か!!
札が少ない時でないと挑めないと思いE3甲に挑んでますが分不相応な感じが否めない。
でももしかしたらがあるのが希望でもあり引けなくなる理由でもあります。
運営さん頑張って…
721 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/15(火) 12:43:19.34 ID:DTTQFacaO
伸びたからクリア行けると良いですね
無理そうなら相談をどっかでするか無理せず下げるのも手と思います
次回更新もお待ちしています
722 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/15(火) 15:11:48.50 ID:9vv2otZX0
カタナは北上の身長では厳しい気がするが艦娘パワーでねじ伏せてるのか
もう甲で仕留めたからわからん時は聞いとくれ
みんな猫対策以外なら相談に乗ってくれるはず
723 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:05:49.91 ID:nuBYPo7T0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
北上「…でっか」
北上「でしょ?」
徐々に見えてきた鎮守府は想像を遥かに超えるスケールだった。
なんだろう。お城というのが一番近いかもしれない。
北上「凄い、見張りまでいる」
北上「提督の命は高価だからね」
北上「偉いって大変なんだね」
北上「いい事も多いけど、私はなりたくはないね」
門の前でバイクを止める。
見張り「おかえりなさ、え?その後ろの人誰っスか」
北上「私だよ」
見張り「いつから影分身覚えたんですか北上さん」
北上「実は火影を目指しててね」
見張り「そこは水影にしましょうよ」
やけに親しげに話しているな。こっちの私はバイクが好きというし出入りの度に話しているのだろうか。
724 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:06:49.05 ID:nuBYPo7T0
北上「聞いてない?今日お客が来るって」
見張り「あー他所の鎮守府からって、は?それがこの人?バイクで連れてきたんスか!?」
北上「そだよー。特別に提督からカタナ借りちった。いいでしょ」
見張り「羨ましいっス。じゃなくて!なんの為に俺らがいると思ってるんスか!」
北上「こうして出かける度に私と話す為じゃないの?」
見張り「そんな村人Aみたいなやつに金を払う程今の世界は余裕ないッスよ!大体普段のバイクでの散歩だって厳密にはアウトなんスよ…」
北上「別に事故らなきゃ問題ないっしょ」
見張り「こんなデカブツを見た目中学くらいの女子がまして二人乗りなんて通報されても文句言えないっスよ」
北上「偉いってのは大変だけど偉い知り合いがいるってのは便利だよね」
見張り「あのおっさんも艦娘に甘すぎるんスよ」
北上「既婚者だしね!」
見張り「普段は指輪をどこに置いたかも忘れるくらいなのに都合のいい時だけ」
北上「あーそういうこと言うんだー言っちゃおっかなーてーとくの事おっさん呼ばわりしてるのー」
見張り「あ!ずりぃ!それはずりぃっスよ!!」
北上「まあまあ、今度カタナ乗せたげるからさ」
見張り「マジッスか!?」
北上「大井っちがOKだしたら」
見張り「あ、無理っスね」
725 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:07:32.46 ID:nuBYPo7T0
北上「いつまで門で止まってるつもりさ」カポッ
ヘルメットを取りつつ終わらない押収に思わず口を挟む。
見張り「あ、すいません。ってホントにそっくりっスね」
北上「そりゃあ私だもん」
見張り「いつもの髪型だったら多分見分けつかないッスよこれ」
北上「お、じゃあ髪型戻しちゃおうかな」
見張り「変な事しそうなんでやめ欲しいッス」
北上「ちぇー」
見張り「では、ようこそ北上さん」
726 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:08:04.83 ID:nuBYPo7T0
中に入ると改めてその大きさに驚かされた。
何よりも驚いたのが人の多さだ。
というか人がいる事だった。
軍服だったりそうでなかったりとマチマチではあるが人間が多いのだ。
鎮守府の施設にも艦娘ではなく人用の物がいくつもあるようだった。
車やヘリや港には大きな船も見える。
私の思う鎮守府とは全く違う世界だった。
艦娘の方もボチボチ出歩いているのは見えるがそこまで多くはなさそうだ。
出撃とか色々忙しいのだろうか。何せ元帥殿だし。
727 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:08:45.11 ID:nuBYPo7T0
北上「とうちゃーく。さ降りた降りた」
北上「はーい、よっと」スタ
建物裏の駐車場にバイクを止める。
他にもいくつかバイクがあるな。北上の、もしくはここの提督の私物なのかな?バイクには詳しくないのでみてもわからない。
北上「おりゃ」ガタン
北上「…よくつま先たちで支えられるね」
北上「慣れだよ慣れ。あ、持ってみる?」
北上「それを?」
北上「そうそう。ほら、ハンドルんとここう持って、こんな感じで支えるの」
北上「えっと、こうで、こう?」
北上「それ」
パッ、とバイクを支える北上の手が半分になる。途端
北上「うお゛!?」
重い!!
728 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:09:20.17 ID:nuBYPo7T0
北上「あはは、ビックリした?」
すぐさま支えに戻るもう1人の私。すると不思議な程にバイクが軽くなる。
北上「魔法?」
北上「そこはほら、艦娘の力よ」
北上「あーそういうことか」
便利だな。
艦娘の人間とはかけ離れた身体能力。
私みたい低練度だと大雑把にしか扱えないがこっちの私のように高練度だと細かく出力を調整出来るらしい。
北上「この小さな体でこんなデカブツを御せる。これがまた気持ちいいんだよねえ」
北上「事故った事はないの?」
北上「ないない。免許はキラッキラのゴールド」
北上「そりゃそうか」
北上「まあこいつの持ち主はシルバーだけどね」
北上「君の提督が?どんな事故やったの」
北上「高齢者って事」
北上「ああ」
中々小洒落た事を言う。
729 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:09:56.02 ID:nuBYPo7T0
鎮守府を歩く。
北上が二人。
そりゃもう目立つわけで、周りの注目度が凄かった。
北上「でも誰も寄ってこないね」
北上「他所の娘が来る時って大体公用だし、そこら辺は皆ちゃんと弁えてるんだよ」
北上「他所からくるのもしょっちゅうなの?」
北上「割と。こんなふうに同じ顔が並んで二人だけってのは今回が初めてだけどね」
北上「こんなに目立っていいのかな」
北上「後で噂になったら面白そうだなあ」
北上「えぇー」
面倒くさいと思うんだけど。
730 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:10:30.70 ID:nuBYPo7T0
大井「北上さーん!」
北上「「あ、大井っち」」
大井「北か、え、北上、さん?北上さん?北上さんと北上さん?ダブル北上さん!?やだ両手に花だわ」
おっと、つい癖で私も反応してしまった。
隣を見るともう一人の私が何やら楽しそうにニヤニヤしている。
ろくな事を企んでそうにないので私から大井っちに事情を話した。
大井「なるほどなるほど。事情はわかりましたけど、バイクでお迎えはどうかと思いますよ」
北上「え〜いーじゃん。乗りたかったし」
大井「ならしょうがないですね」
おう、予想はしてたけど激甘だ大井っち。
731 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:11:37.57 ID:nuBYPo7T0
大井「でも一体なんの用事でここに?」
北上「それそれ、私もそれを聞いてないんだよね」
北上「それはまだ秘密」
大井「えー教えてくださいよぉ」
北上「提督に秘密って言われてるしさ」
大井「提督と私どっちが大切なんですか!」
北上「この場合それほど差はない」
大井「凄い真面目に返された…でもそんな所も好きです」
北上「これも仕事だからね。知りたかったら提督に聞いてみてよ」
大井「分かりましたぁ。それでは、北上さん。と、北上さん?」
北上「またね大井っち」
北上「じゃね大井っち」
大井「…すみませんやっぱりひとつお願いがあります」
732 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:12:58.58 ID:nuBYPo7T0
北上「君のとこと比べてどう?大井っちは」
北上「大体同じ。あそこまで積極的じゃないけど」
あの後大井っちの頼みで私と私で大井っちの両腕に抱きつくというリアル両手に花ポーズをした。
幸せそうに気を失った大井っちをこっちの私はサラッと放置して行ったけどよかったのだろうか。
北上「そりゃ私と大井っちは一線を超えた関係ですからねえ」
北上「一線ねぇ」
こっちの大井っちは私の知ってる大井っちと何ら変わらないように見えて、やはり別人だと確信できる何かがあった。
ガワだけ大井っちで、中身というか根本的なところは違う。
北上「自分や仲間が二人いるってどう思う?」
北上「二人どころじゃないでしょ。私は自分とだけでもう十人くらいは会ってると思う」
北上「十…」
想像もできない数だ。
733 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:16:04.20 ID:nuBYPo7T0
北上「でもさ、会って話してみるとやっぱりどこか違うんだよね。環境による違いは大きいんじゃないかなあ。私だって提督のせいでバイク乗り始めたし」
北上「それはあるだろうね」
艦娘にとって環境とはそのまま提督と言い替えてもいいだろう。
北上「球磨型の皆は言うならてんでバラバラなようで何処か繋がってる姉妹って感じで、もう1人の自分は全く同じなようでどこか違う双子ってところかな」
北上「姉妹に双子か。言い得て妙だね」
北上「別人のようで、そうは思えない。みたいな。君はそう思わない?」
北上「私は…どうだろ」
自分が周りとは明らかに自分が浮いてるという感覚がある。
それはきっと私の根源的な部分が北上でもあり猫でもあるからだ。私はかなり特殊な例と言える。
北上「わからないや」
鎮守府内で一番立派な建物に入る。
うわここにも見張りがいるのか。
しかし凄い。建物めちゃくちゃ綺麗だ。王室か何かみたい。
734 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:16:38.17 ID:nuBYPo7T0
北上「そこへいくと君は少し違うんだよね」
北上「私?」
北上「うん」
そう言うと当たり前のように身体をすっと近づけてくる。
前回のキスの件があるので身構えてしまう。
北上「…べつに取って食いやしないよ」
北上「食われたようなもんだけどね」
北上「君は他の私とはまるで違う。もちろん私とも」
北上「どうしてそう思うの?」
北上「んー、カン」
北上「えぇ…」
735 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:17:07.92 ID:nuBYPo7T0
北上「さて、ここが提督室」
北上「おー、てあれ?扉だけ妙にボロいね」
北上「みんな煩雑に扱うからねー」
北上「そこはウチと一緒だ」
北上「お偉いさんとかも始めてくる人は皆あれ?ってなるから面白いんだ」
北上「そんな所で面白がらなくても」
北上「てーとくー入るよー」ガチャ
返事を待たずに扉を開ける北上。提督の扱いは確かに似ているのかもしれない。
736 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:17:54.45 ID:nuBYPo7T0
元帥「おう、どうじゃったカタナは」
北上「もう最っ高!提督死んだら私に譲ってよ」
元帥「勝手に殺すな。第一アレはわしが死んだら一緒に埋葬しろと電に伝えとるわ」
北上「えー勿体ない。孫に残していきなよ」
元帥「誰が孫じゃ。どうせわしが途中でくたばったら山程の仕事を残していく事になるんじゃ。バイクまで任せられんわい」
北上「おーおー部下思いですこと」
元帥「さて挨拶が遅れたな。わしがここの提督だ。元帥と呼んでくれ」
北上「えー提督は提督でいいじゃん」
元帥「…このように誰も元帥と呼んではくれんのでな。まあ提督でも構わんよ」
737 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:18:29.08 ID:nuBYPo7T0
北上「あーえっと、初めまして、私は北上と、申します?」
失礼のないようにってどうすりゃいいんだ。よくわからん。
北上「いーよいーよ普通に喋って。私は気にしないから」
元帥「なんでお前が決めるんだ」
北上「でも提督も堅苦しいの嫌でしょ?」
元帥「そりゃあな」
北上「じゃ決まりね」
北上「まあそれでいいなら私としても有難いけど」
部屋の中央にテーブルとそれを囲む四つの椅子があり、その一つに少し大柄の老人が座っていた。
どう見ても還暦はとっくに迎えてそうではあるが身体はウチの提督よりも強そうに見える。
僅かな白髪を残し頂点がツルって逝ってる頭にはその矍鑠とした見た目とは裏腹に柔和な表情を浮かべている。
あのデッカイのバイクに乗るというのも納得である。
738 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:18:55.05 ID:nuBYPo7T0
元帥「立ち話もなんじゃ、二人とも好きな所に座りなさい」
北上「はーい」
北上「お邪魔しまーす」
元帥「…」
私の隣に私。向かい側に提督。
元帥「いやお前はわしの隣に来るもんじゃないか?」
北上「えーやだよ提督と自分だったら自分選ぶでしょ」
元帥「一応指輪渡した仲じゃろ」
北上「ただの強化アイテムじゃん」
元帥「わしとて上の連中の戯言を間に受けた訳じゃないがもう少し信頼してくれてもいいじゃろ」
北上「やだなんか年寄りが移りそう」
元帥「あーいかんわ年寄りは涙腺が緩くなっていかんわー」
739 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:19:25.67 ID:nuBYPo7T0
北上「いつまでそれやるの…」
北上「ほら、君の緊張をほぐそうかなって」
元帥「楽にしてて構わんよ。腹が減ってるならお菓子もあるぞ」
なんだろう、孫が来て喜んでるだけのおじいちゃんに見える。
北上「あ、提督お茶も出てないじゃん」
元帥「それくらいお前が入れろ」
北上「私は北上だから実質お客」
元帥「どんな理屈じゃ」
電「いや少しは働いてください」
北上「うわ!?」
気がつくと後ろに電が立っていた。手にはお茶とお菓子が乗ったお盆を持っている。
740 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:20:01.67 ID:nuBYPo7T0
元帥「紹介しよう。うちの嫁だ」
電「秘書艦の電なのです」ニッコリ
そういいつつお茶をテーブルにおく。
あ、顔が笑ってない。
北上「ありがと」
北上「サンキュー、てあれ?」
電「働かざる者飲むべからずなのです」
北上「そんなあ!」ガビーン
元帥「はっはっはっやーい怠け者めー」
電「それではごゆっくり」
元帥「あり、ワシのは?」
電「なのです」バタン
北上「行っちゃった」
北上「え、嘘。お茶一個とお菓子だけ置いてきやがったよ」
元帥「お茶なしでお菓子あってもなぁ」
北上「提督が変な事言うから」
元帥「前々から温めてた必殺のギャグだったんじゃがなあ」
741 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/19(土) 04:24:56.44 ID:nuBYPo7T0
北上と北上で紛らわしい!
同じ艦娘が複数いると世界観だと居合わせた時ややこしそう、と思って書いているので分かりにくさは仕様。
延長戦、有難い限りです。
何言ってるんだこいつと思われるかもしれませんが旗艦が軽空母(嫁)でネルソンも長門もないとなると水上である意味ってもしかして、ないですか
742 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/19(土) 10:02:16.94 ID:NjIMOyZGO
乙
冷静に考えると大艦隊が一つの港に集まってるのってやばくね?
他の港にも同型どころかまんま同じがゴロゴロと…
743 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2019/01/19(土) 13:34:11.62 ID:u9mvtmp/0
>>741
ネルソンも長門もいないなら
1.大和型と空母4+高速戦艦2軽巡と磯風萩風嵐から2の機動部隊。cに対潜航空隊ボスに陸偵52熟練以上陸攻を二つ(うちはこれでクリア)
2.潜水幼女に怯えながら水上。東海4前提、対潜支援必須 羽黒妙高磯風萩風嵐の特攻倍率高いラインを詰め込む(潜水が害悪過ぎて中止)
こんな感じか
744 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/19(土) 14:45:28.28 ID:eoqPG077O
甲に拘らないなら行けるだろうけど
軽空連れて行こうとしたら機動になるからちょい厳しい気がする
他の方も言われてるが基地とかも其なりに要るからなぁ
更新乙です、クリア報告お待ちしています
745 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:42:28.23 ID:dpWG6V4B0
北上「なんでそんなもん温めてたのさ」
元帥「普通の客人には流石に言えんからな」
北上「普通誰に対しても言わないでしょあんなん」
北上「…あのー、それで私はどうすれば?」
元帥「おーすまんな、ついつい」
北上「それより私にもそのお茶頂戴」
北上「それはダメ」
北上「はやっ!?」
元帥「さてと、北上」
北上「はい?」
北上「ん?」
元帥「えーっと、ウチじゃないほうの北上な」
北上「ややっこいねこれ」
北上「何を今更」
元帥「おめぇが呼べっつったんだろ」
北上「テヘペロ」
元帥「よし!じゃあウチの北上を北ちゃん!もう一人の北上を上ちゃんと呼ぼう!」
北上「うっわ」
北上「えぇ…」
元帥「おっと反応が悪い」
746 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:42:59.73 ID:dpWG6V4B0
北上「いやだっていくらなんでもねぇ?」
北上「まあ言わんとすることは分かるけどね」
元帥「おお?じゃあなんか代案あるのか?お?言うてみい!」
北上「うわ年端も行かない娘に逆ギレしたきたよこのお爺ちゃん」
北上「ちなみに代案は」
北上「私が北上1号で君が2号ね」
北上「よし北ちゃん上ちゃんでいこう」
北上「なんと!」
元帥「よっしゃ!」
747 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:43:44.24 ID:dpWG6V4B0
元帥「でだ、北ちゃん」
北上「私?」
元帥「おめぇじゃねえこっちだ」
北上「だってさっき私の方が北ちゃんだって」
北上「うんうん」
元帥「あれ、そうじゃったか?」
北上「おいジジイ」
元帥「うるせぇ年寄りいたわれ」
北上「話が進まないよこれ」
元帥「上ちゃんな、上ちゃん、よし」
748 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:44:19.57 ID:dpWG6V4B0
元帥「改めて上ちゃん」
北上「はい」
元帥「ここに呼んだのは他でもねえ。お前さんとこの提督の様子を聞きたいんだ」
北上「様子?」
妙な事を聞く。意図が読めない。
元帥「具体的にどうこうって感じの報告じゃのうて、本人がどんな様子かって話よ」
北上「どうって言われても、元気、だよ?」
元帥「あ〜そうじゃなくて、あれじゃよあれ」
北上「あれ?」
元帥「…ん?」
北上「え?」
元帥「おい北ちゃん」
北上「あ、私で合ってる?」
元帥「合っとる。こいつホントに知っとるのか?」
北上「さあ?」
元帥「は?」
北上「いやあこの前知り合ったからなんとなく会いたいなあって思って」
元帥「お前しばらく間宮抜きな」
北上「なぁ!?」
749 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:44:57.48 ID:dpWG6V4B0
北上「えっと、つまりどういうことなんでせう?」
元帥「あぁーどうするかのお」
北上「話しちゃえばいーじゃんかYo」
元帥「お前が言うなこら」
北上「でもこのまま何も言わず帰してもしょうがないでしょ」
元帥「まあそうなんだがなあ」ハァ
北上「私気になります」
元帥「分かった分かった。そこは北上を信じよう」
北上「今のは私?」
北上「それとも私?」
元帥「どっちも、だ」
750 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:45:28.95 ID:dpWG6V4B0
元帥「お前、アイツがなんで提督になったか知ってるか?」
アイツとは、やはり随分親しい仲のようにだ。
北上「前に聞いたけど、あん時ははぐらかされたなあ」
元帥「ま、そうじゃろうな」
北上「でもコネで提督になったとは聞いたよ」
元帥「ほお」
北上「それは話したんだ」
北上「なんで提督を提督にしたの?」
元帥「なるほどな。随分アイツに信頼されてるのは確からしいのお」
北上「ほらやっぱり。流石私」
元帥「はいはいおめぇさんの目は正しかったよ」
751 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:46:40.07 ID:dpWG6V4B0
元帥「別に今どき珍しくもない。ただの復讐じゃよ」
北上「復讐…」
元帥「こんなご時世じゃ。やつらに恨みがないやつなんてそういない」
北上「深海棲艦か」
元帥「アイツの父親は優秀な提督じゃった。少なくともあの激動の時代を生き抜くくらいには」
昔はもっと戦いは激しく、悲惨だっと聞いた。
谷風は鎮守府に50年前からいるとか言ってたっけ。その時か。
元帥「いつの間に見つけてきたのか綺麗な嫁さんとくっついて、まあ幸せだったんじゃろうな。その嫁さんが亡くなるまでは」
北上「それが、深海棲艦のせい」
元帥「殆ど事故みたいなもんだったが、そうじゃな。後悔して、泣いて、そして提督を辞めると言い出した」
北上「なんでそこで辞めるってなるのさ」
元帥「今のままじゃ指揮官としてやっていけないと思ったんじゃろうな。激情に駆られて動く指揮官なんて確かにろくなもんじゃねえだろうが、やつにも色々あったんじゃろう」
愛する者を失うとはどんな気持ちか。そこには本当に色々、色々あるのだろう。
元帥「当然そんな理由で優秀な提督を失うなんて本来認められるわけもない。だがやつには息子がいた。それが特別に提督を生きたまま辞めるという事を許された理由になった」
北上「提督がいなくなった鎮守府を機能させる実験、なんだよね」
元帥「…随分と知っとるようじゃな」
752 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:47:25.03 ID:dpWG6V4B0
元帥「これまで提督がいなくなるってのは鎮守府か壊滅する事と同義だった。だが今のように戦況が安定してくると鎮守府は機能しているのに提督だけが病や寿命でいなくなる事が考えられる」
提督が消えた鎮守府がどうなるか。
女王蜂が消えた蜂の巣。
蜜蜂はどうなるのか。
鎖が解かれた猛獣はどうなるのか。
元帥「親族ならば提督という核を受け継ぐことが可能かもしれない。そういう理由で運良くやつは円満退職となった」
北上「円満ねぇ」
元帥「そう言うな。だが息子とは決裂したようでな。言ってしまえば復讐から逃げた親父と復讐を誓った息子だ。どちらの気持ちも間違っちゃいない。結果親父の方は海外に、嫁の故郷へ向かったらしい」
北上「海外なんだ」
元帥「ここまではまだよかったんじゃ。ここまでは。問題はその後じゃ」
お爺ちゃんがお茶を一口飲む。
ってそれ私のじゃんか何やってんだ。
と思ったら今度はそれをもう一人の私も飲み始めた。
なんなんだ。私がおかしいのか?くそう二対一は分が悪い。
元帥「一年ほど前その親父も死んでな」
北上「え?」
753 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:48:16.44 ID:dpWG6V4B0
元帥「海外から日本に船で来る途中だった。海路はかなり安全なものだったし護衛もしっかりついていた。だが沈められた。深海棲艦に」
一度ならず二度も、か。
元帥「大型の船で大量の物資や人が乗っていた。強力な護衛艦隊もいた。普通の深海棲艦じゃあねえ。もっと強力な、例外的な個体だろう」
じゃあきっとそれが、そいつが、レ級だ。
元帥「息子の方はそれから変わったよ。それまでは仕事も真面目にやってたし、俺が強くなって奴らを滅ぼすんだみたいな、こういうのもなんじゃがまあ可愛いもんじゃった」
そんな立派なもんじゃねえよ。そう提督は言ってたっけ。
元帥「今じゃ随分と適当なやつになっちまった。にも関わらず艦隊の練度だけドンドン上がっている」
北上「ん?それはなんで知ってるの?」
元帥「吹雪から聞いたんじゃよ」
北上「吹雪が?」
そういえば吹雪もこのお爺ちゃん提督を知っている風だった。知り合いどころか提督の様子を伝える程の仲だったのか。
考えてみれば吹雪も提督の前任者、親父さんの時から鎮守府にいたのだから繋がりがあって然るべきというわけか。
754 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:49:02.02 ID:dpWG6V4B0
元帥「あいつは牙を研いでるのさ。ただ深海棲艦を殺るんじゃあねえ。両親を殺った大物を殺るためにな」
北上「でも、それっていい事なんじゃないの?危険な、危うい動機かもしれないけど、現に戦力は強くなってるんだし」
元帥「海軍には深海棲艦に関するデータが大量にある。だがそれには情報事に階級があってランクの高いものは普通の提督には見られないようになっておる」
吹雪が言っていたやつだ。
北上「武勲を焦って身の丈に合わないことをする輩を出さないため、って聞いたよ」
元帥「お前さんワシらが姫と呼ぶあの化け物共の親玉と殺り合った事あるか?」
あるはずもない。黙って首を横に振る。
元帥「一時は真実本当に人類を滅亡寸前まで追いやった元凶そのもの、それがヤツらじゃよ」
先程と変わらない表情。だがその威圧感というか、凄みはこれまでのこの人の経験を察するには十分なものだった。
755 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:49:53.35 ID:dpWG6V4B0
元帥「並の艦隊が挑んだって肥やしにもならん。それにそんな事すれば当然提督の首が飛ぶ。そうさせる訳にはいかんじゃろ」
あぁそうか。だから吹雪はこの人と繋がっているのか。
鎮守府を任された彼女は、提督を失う訳にはいかない。鎮守府を守らなくてはならない。
元帥「情報を隠しとるおかげで今のところは大丈夫そうじゃがな。それでも気をつけるに越したことはない。じゃからたまに様子を聞いとるのじゃよ」
北上「なるほど。色々腑に落ちた」
元帥「今回もまた吹雪に聞こうと思っとったんじゃが、こやつがそれなら丁度よさそうなのが他にもいるとか適当吹きよってな」
北上「テヘペロ」
元帥「長期遠征にでも出してやろうかこいつ」
北上「ああ!それだけはご勘弁を〜」
北上「私完全に巻き込まれたわけだね」
北上「でも結構事情は把握してたよね?どうして?」
北上「いや、まあ、吹雪から聞いたりしてて」
盗み見したり盗み聞きしたりとかはさすがにいえない。
元帥「吹雪がのお」
北上「なんでだろ」
756 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:50:35.38 ID:dpWG6V4B0
北上「コネでなったって話は提督から聞いた」
元帥「正確にはわしのコネじゃなく海軍の総意なんじゃがな」
北上「ほほぉう。やはり随分と提督とは親しいようですなあ」
元帥「あーそういうあれか」
北上「そういうあれのようですなぁ」
北上「な、何さ二人して」
ニヤニヤと気持ち悪い笑みが並ぶ。
元帥「じゃから吹雪のやつお前さんに話したのかもしれんな」
北上「どゆこと?」
北上「提督を止めてくれって事でしょ」
北上「…あー、なるほど」
期待してる、とはつまりそれか。
757 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:51:08.38 ID:dpWG6V4B0
元帥「さて、それを踏まえてもう一度聞こう。提督の様子はどうじゃ?」
北上「…迷ってる、と思う」
北上「迷ってる?何と?」
北上「復讐が鎮守府にとって危険な行為だと理解してるなら、多分それをするか否か、提督は迷ってる」
だってそれは、大井っちと一緒に居られなくなるという事になりかねない。
一年前と今とじゃ提督の心境は変わっているのではないだろうか。
元帥「ふむふむ。何にせよいい兆候じゃな」
北上「ねえねえなんで?なんでそうなってんの?」
元帥「あまり首を突っ込むんじゃない愉快犯め」
北上「ちぇーいーじゃんか」
元帥「今後は吹雪だけじゃなく上ちゃんにも様子を聞くとするかの」
北上「なら次からはその呼び方辞めて欲しいかなって」
北上「えー私と見分けつかないじゃん」
北上「ややこしいからもう会いたくないって意味」
北上「酷い!」ガビーン
758 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:51:37.00 ID:dpWG6V4B0
元帥「あ、当然じゃがこの事はないしょな」
北上「わかってまーす」
北上「今日の事は私がただ会いたくて呼んだって事にしときゃいいよ」
北上「実際半分くらいそれだよね」
北上「まあね」
元帥「もうカタナ貸さんぞ」
北上「すんませんでしたホントマジで」
北上「あ、一つ質問いいかな?」
元帥「なんじゃ?」
北上「提督の親父さんってどんな人だったの?」
元帥「あー、そうじゃな」
昔を思い出しているのか、上を向き少し考えているようだ。
759 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:52:19.73 ID:dpWG6V4B0
元帥「オンオフの切り替えが激しい男でな。優秀だし真面目なやつじゃよ。真面目に、自分は海を取り返して海外の美女と結婚するんだとか言うやつじゃった」
北上「えぇ…」
北上「すげぇ」
元帥「実際その通りになったわけじゃし実力も運も確かにあったな。だからこそ、実に惜しい」
凄い人だったんだな。鷹が鳶を、て提督も実はやればできる子なんだっけか。
元帥「わしもやつが深海棲艦にやられたと聞いた時は即座に艦隊を動かそうとしたものじゃよ。じゃがまあ、沈めた奴が誰か分からなければどうしようもない。それこそ深海棲艦を滅ぼさなきゃならん」
北上「疑わしきは滅ぼせか」
元帥「気持ちはよぉく分かるんじゃよ。事件当時息子の艦隊は近くにいてな。救援要請を受けて向かいはしたが雑魚共に邪魔され到着した頃には船も犯人も海に消えていたそうじゃ」
北上「それマジ?」
元帥「本人から聞いたよ。もっともその時は船に父親が乗っとるとは知らなかったようじゃがな」
北上「そりゃ悔しいよね。間に合っていればもしかしたらって」
元帥「間に合っていたところでどうにかなるとも思えんがな。結果的にそれで艦隊は命拾いしたと言える」
そうか。一年前大井っちが遭遇したあの事件がそれなのか。
なら
760 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:52:47.08 ID:dpWG6V4B0
北上「え?」
北上「どったの?」
北上「いや、えっと」
おかしく、ないか?
今なんて言った?
沈めた奴が誰か分からない?
そんなはずはない。提督は間違いなくレ級を追ってる。吹雪もそれを知ってるし加担している。
知らないなんてことはありえない!
艦隊だってその犯人に出会っていたはずだ!
北上「あ、日が沈みそう」
元帥「早いとこ送ってった方が良さそうじゃな」
北上「暗くなるの早いもんねぇ」
元帥「バイクは危ないからのお」
北上「車は嫌だからね」
761 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:53:23.26 ID:dpWG6V4B0
北上「ほら、行こ」
北上「う、うん」
思考がまとまらない。
何故提督はそれを黙っていた?
いやそれはハッキリしてる。提督はそいつに復讐するつもりだ。だから自分の獲物の事を誰にも言ってないんだ。
でも提督を止めるつもりならなんで吹雪もそれを黙っていた?
矛盾している。
まだ何かあるのか、まだ私はパンドラの箱を開けていないのか?
元帥「またのぉ北上」
聞くべきだ。言うべきだ。
だが私はまだ決めかねていた事があった。
私はまだ、自分自身が提督を止めたいのかどうか分かっていないのだ。
762 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:53:59.76 ID:dpWG6V4B0
北上「意外とショック受けてるね」
北上「そりゃあ、まあね」
北上「ほいヘルメット」
北上「また駅まで?」
北上「せっかくだしこのまま鎮守府まで送ったげる」
北上「それは助かるね」
なんというか、疲れた。
このまま布団まで運んで欲しいくらいだ。
763 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 04:54:40.01 ID:dpWG6V4B0
こっちの大井っちに見送られて、見張りの人とちょっと話して、バイクで来た道を戻る。
北上「別に深く考えなくてもいいんだよ?」
北上「へ、なんて?」
北上「考え過ぎってこと。嫌なら関わらなくたっていいんだ。逃げじゃない。君子危うきに近寄らずってね」
北上「そうはいかないでしょ」
北上「別にいいけどさ。君にとって提督がそうまで悩んで苦しむに値する事ならそれでもいい。でもそうじゃないなら」
北上「値するよ。もちろん」
北上「なら、悩みたまえ。なあにどうしても相談相手がいないなら私を呼ぶといい」
北上「それだけはないかな」
北上「どうも私って信用度低いよね」
北上「信用はしてる。信頼はちょっとあれだけど」
764 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 05:00:00.39 ID:dpWG6V4B0
北上「ほらほら。夕日でも見て落ち着いたら?」
北上「夕日って、山の向こうだから見えないんだけど」
北上「空が赤くて綺麗じゃん」
北上「山火事みたいだね」
北上「不吉なこと言うなぁ」
北上「山か。こんなにマジマジと見たのは初めてだ」
北上「艦娘は陸に縁がないからねぇ。船だから当たり前なんだけどさ」
北上「そりゃそうだ」
船ねぇ。ふとすると忘れそうになる。
自分が北上という名前の船なのだと。
765 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 05:08:46.40 ID:dpWG6V4B0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
北上「そろそろ鎮守府だ」
北上「ん?あぁもうか」
北上「ずっと黙りこくってたけど、ホントに大丈夫?」
北上「考え事してただけ」
北上「そっか」
北上「…鎮守府までってこんな道通ったっけ?」
北上「バス使ってたんだよね?私はナビに従ってるだけだけど、ルートはバスと違うかもね」
北上「なるほど」
山を抜けるとまた古い家がいくつか立ち並ぶ、まるで村のような場所が見えてきた。
山奥に住むのって大変じゃないのだろうか。バスくらいしか通ってないし。
北上「お?」
北上「どったの」
北上「古本屋って書いてあった」
北上「寄ってく?」
北上「流石に今はいいよ。今度一人で行こっこな」
766 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 05:11:57.02 ID:dpWG6V4B0
北上「見えた見えた。鎮守府だよ」
私の頭越しに見慣れた建物が見えた。
さあいよいよだ。
北上「パンドラの箱があってさ」
北上「なになにどうしたの。ヘルメットに変なもの憑いてた?」
北上「そうじゃなくて。ただ私はそれを開けるべきなのかなって」
北上「んーよくわかんないけど、パンドラの箱って最後に残ってたのは希望なんでしょ?」
北上「そうなの?」
北上「知らずに聞いたんかい。私も別に詳しくはないんだけどね、聞いたことがあるだけで」
北上「希望かあ。それって誰の希望?」
北上「誰の?誰、だろうね。神様とか?」
北上「神様は当てにならないなあ」
北上「それには同意」
バイクに揺られながら沢山のことを考えた。
でも、考えてわかることなんて結局は何もない。
ぶっつけ本番。箱に手をかけるしかない。
願わくば、その中の希望が私の願いにそうものであって欲しい。
767 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/01/28(月) 05:19:20.52 ID:dpWG6V4B0
頑張れシリアス。
違って当たり前の人間が共通点を探すように、同一人物がいて当たり前の艦娘は非共通点を探してそうだなって。
やはり機動部隊かなと計画を立てていたら妙高さんと雪風が1/4スナイプを共に決めてくれました。コミケ友軍後に1/4ですから状況はお察しです。可能性がゼロじゃなければ勝てちゃうのいいですよね。
アドバイスありがとうございます。
768 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/28(月) 05:26:49.63 ID:kkk+BsgN0
おつ
イベントも乙、自分も嵐に3択で決めてもらいました
769 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/28(月) 12:26:25.88 ID:D3hmQVmro
おつかーレ
770 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/28(月) 22:46:08.51 ID:P+zQGS980
>>767
勝てば最適解 おめ
うちは旗艦のみ残しでメシマズの魚雷カットインで仕留めた
機動は不確定要素少ないから仕留め切れるかは同航戦以上引けるか次第だった
油6万食いつぶす間ラスダン反航戦しかでなかない嫌がらせほんとやめろ
771 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/29(火) 09:30:20.99 ID:KzkaWbJmO
感覚的には生き別れの双子みたいな感じかな
川端康成の古都みたいな
772 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/29(火) 09:53:04.85 ID:qC0gTO5DO
更新乙です
うちは旗艦残しが続いて最後に旗艦のみになって
妙高さん、雪風で行くかと思ったら連撃でアシスト予定の妙高さんが
叩き割ったなぁ、豆で5−5行ったけどレカスは本当嫌いだわ
773 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/02/04(月) 04:19:57.07 ID:syE/uFsm0
74匹目:シュレーディンガーの猫
よく聞く言葉だ。なので意味を調べて見たことがある。
さっぱり分からなかった。これに比べれば艦娘だとか妖精だとかの方がまだわかりやすいんじゃないかとすら思えた。
だからとりあえず思ったのは猫をそんな事に使うなと。
箱。
開けるまでどちらか分からない箱。
もし開けたら犬がいたなんて事になったら、どうなんのかな。
774 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/02/04(月) 04:20:31.23 ID:syE/uFsm0
北上「ただいま〜」カチャリ
吹雪「」
提督「」
提督室の扉を開けてあえて普通に帰還を報告してみたところ、空気が止まった。
二人で同じパソコンの画面を見て何やら話し合っていたようだったが、今はお互い私の事をまるで幽霊でも見たような顔で凝視している。
775 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/02/04(月) 04:21:31.16 ID:syE/uFsm0
吹雪「い、いつのまに戻ってたんですか!?しかもそんな軽い感じで!」
提督「バス乗る時連絡しろって言ったろ!」
北上「いやバイクで来たから」
吹雪「は?」
提督「は?」
二人並んでそっくりな反応をする。兄妹みたいだな。
北上「向こうの私にバイクで送ってもらった」
提督「北上がバイクに北上乗せてきたのか?」
北上「うん」
吹雪「タチの悪い冗談としか思えないんですけどバイクって事は多分本当ですね」
提督「あのジジイバイク好きだもんなあ…」
吹雪「だからってなんの護衛もなしでここまで送りますか普通…」
北上「その意見には概ね賛成だけどね。あでもバイクはすっごい気持ちよかった。私も乗ろうかなって」
提督「これ以上心配事増やすな頼むから」
776 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/02/04(月) 04:22:45.30 ID:syE/uFsm0
吹雪「それで、一体なんの用だったんですか」
自然な、ごくごく自然な感じで吹雪が聞いてくる。
白々しい。まさか予想がついていない訳じゃあないだろう。
提督「そうだぜ。そこが一番の謎だったんだ」
提督はどうなんだろうか。自分の復讐を邪魔される可能性については警戒しているのだろうか。
北上「前に話したでしょ?街でもう一人の私と出会ったって」
提督「あー聞いたな。ん、じゃあそいつが今回の北上なのか?」
北上「YES」
吹雪「あの人またそうやって勝手に外出許可を…」
北上「外出自体は提督の判断で別にいいんじゃないの?」
吹雪「元帥ですよ元帥。国内でも選りすぐりの戦力。北上と言えばその中でもさらに特筆すべき実力者と聞きます。当然扱いも私達なんかとは比べ物になりませんよ」
北上「なる、ほど。あれ、なんか改めて考えると凄いやばい事してたな私達」
提督「やべぇってレベルじゃねぇぞ、マジで。でその北上がどうしたって」
北上「会いたかったんだって」
提督「はい?」
北上「私にまた会いたくなったんだってさ」
提督「何考えてんだ北上」
北上「私じゃないよ。私だけど、でも私ならそうは考えない」
777 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/02/04(月) 04:23:33.80 ID:syE/uFsm0
提督「何話したんだ?わざわざお出迎えまでして」
北上「色々だよ。向こうの提督と一緒に、色々とね」
チラと吹雪を見る。特に普段と変わったところはない。でも吹雪も結構狸だしなあ。
提督「おっさんとも話してたのか?どんな?」
提督が先に食いついてきた。
北上「どんなって、まあ色々と聞かれたよ」
提督「それで…お前は答えたのか?」
やはり警戒しているのかな。少し目が変わった。
また吹雪を見る。こちらはやはり反応はない。
北上「うん。隠すようなこともないし。なんか提督の事凄く心配してたよ」
提督「あぁ…だろうな…」
提督も元帥のじいちゃんが自分を止めようとしているのは気づいているはずだ。私が何をどこまで言ったか、聞きたくて仕方なかろう。提督の中では私は何も知らない新人のはずだが。
吹雪は、微動だにしない。
やれやれ。私はこういう駆け引きみたいなのよく分からないんだけどねえ。
778 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/02/04(月) 04:24:14.22 ID:syE/uFsm0
北上「提督の目的ってなんなの?」
我慢できずに口を開いたと言うべきか、私は提督だけを見て問いを投げかけた。
提督「…それ改めて聞くことか?」
北上「ああいや、そういうんじゃなくてさ。究極的には深海棲艦を倒す事、ひいては海の平和を取り戻す事ってのはわかるよ。
でもそれって提督というより海軍という組織の目的であって、その目的にそう提督になる理由ってのはまた違うじゃん?
例えば治安維持が目的の警察官に正義感を持って入ることは別に不思議でもないけど、それ以外にも憧れとか親が警察官とか逮捕したいやつがいるとか刑事ドラマに憧れてたとかとかとか。
ともかく何か理由があるのかなって思ったんだ」
提督「なんで、なんで今それを聞くんだ」
提督はわけがわからないという感じで私を見ている。私の意図を測り兼ねているのだろう。
北上「なんとなく、かな」
提督「北上はたまに核心的なとこ突いてくるよなあ」
779 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/02/04(月) 04:25:28.89 ID:syE/uFsm0
提督「復讐だよ。特に深いものは無い」
北上「両親の?」
提督「やっぱ聞いてたか。おっさんも、なんでまた北上に話したんだか」
北上「それについては本当にただの偶然って感じなんだけどね」
提督「おっさんはなんて?」
北上「提督はどんな様子かって聞いてきた」
提督「それで返答は」
北上「…迷ってるんじゃないかって。そう言ってきた」
提督「迷ってる?」
北上「うん」
提督「俺が?」
北上「うん」
提督「…なんで」
北上「うーん、なんとなく?」
大井っちのせい、とは流石に言えない。
提督「適当過ぎないかそれ」
北上「なんとなくだよ。でも、適当じゃない」
780 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/02/04(月) 04:26:45.96 ID:syE/uFsm0
提督「そっか」
北上「うん」
やけにあっさりと納得された。図星だっ?
吹雪「迷ってるじゃないですか、実際」
提督「まあ、そうだな」
吹雪が唐突に口を開いた。
吹雪「それで、北上さんは何処まで話したんですか?」
北上「今言った通りだよ。私が話せるのなんてそれくらいでしょ」
吹雪「そうですか。そうですよね」
残念そうにも、安堵したようにも見えない。
私が何も話してないなら提督は復讐できるかもしれない。
私が洗いざらい話していたら提督は復讐することはできなくなるかもしれない。
吹雪はどっちを望んでいるのだろうか。
彼女にとって前任の提督は大切な人だったはずだ。なら復讐したいというのは自然に思える。
でもその大切な人にこの鎮守府を、皆を任されているなら、破滅を呼びかねない提督の行動を止めようとするのもまた不自然ではない。
781 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/02/04(月) 04:29:16.29 ID:syE/uFsm0
提督「俺は追ってるんだ。親父を殺した奴を。そいつが誰かを」
誰かを提督は知っている。
私はそれを知っている。
私が知っているのを提督は知らない。
ここに来てもまだそれを私に秘密にしたがるのは元帥のじいちゃんと同じ理由からだろうか。私を関わらせたくないという。
提督「なりふり構わず、何をしてでも。そう思ってたんだがな」
提督が少し下を向く。提督がいつも使っている机。残念ながら仕事だけに使っているわけではなさそうだが、そこにはきっとこれまでの思い出があるのだろう。
提督「親父がなんで躊躇してたのかわかる気がするよ。お前らといるうちに、俺も変わってた」
いつもの優しげな目を私に向ける。以前は、私が知らない提督は、違う目をしていたのだろうか。
提督「一人、置いて行きたくないやつがいてな」
吹雪「!」
ここで初めて吹雪が動揺を見せた。慌てて提督の方を見ている。
いや私も驚いたさ。なんなら大井っちに対する思いを自覚してないんじゃないかとすら思ってたし。
782 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/02/04(月) 04:30:28.28 ID:syE/uFsm0
提督「でも、やめる訳にはいかないんだよ。復讐に変わりはない。ただもうあんな事が起こらないようにとは思ってるけどな」
やめる気はないか。そっか。
提督「なあ北上。お前はどう思った?おっさんの話を聞いて。今の話を聞いて」
なら、私は提督を止めよう。私はみんなでここにいたい。大井っちとも、提督とも。
北上「…ねぇ、親父さんってどんな人だったの?」
私は決めた。
復讐なんて私には分からない。でもきっとそれは全てを不意にして良いものじゃ無いはずだ。
提督「ん?そうだなあ」
身を屈めて机の引き出しを弄り出す。鍵がかけてあるのかカチャカチャと音がした。
提督「頑固もんだったよ。しかも母さんに夢中でな。俺の事も見ろって昔はよくきれたよ」
今度はガサゴソと紙を漁るような音がした。写真でも探しているのかな。
それにしても元帥のじいちゃんと言い方は真逆だな。現してる人柄は同じだけど捉え方でこうも違うとは。
783 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/02/04(月) 04:31:02.40 ID:syE/uFsm0
一歩一歩、提督の机に向かってゆく。
吹雪「北上さん?」
目と目が合った。流石秘書艦、直ぐに私が決意したことを察したようだった。
それでも何も言わなかった。結局何が目的なのかさっぱり分からなかったや。
期待に添えてるのかは分からない。でも私はパンドラの箱の開け方を決めた。
世界平和なんてどうでもいい。私にとって世界とはこの鎮守府でしかないんだ。
提督「あったあった。これが親父だ。俺が産まれる前のだけどな」
一枚の古びた写真が机の上に置かれた。
784 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/02/04(月) 04:31:33.71 ID:syE/uFsm0
この時確かにパンドラの箱は開けられた。
私の手ではなく、誰の手でもない。
強いて言うなら神とか悪魔とか。そういった何かに。
中身はもう猫でも犬でもない。はっきりと観測されてしまった。
もしかしたらと、そう思う事がなかったわけじゃない。むしろだからこそ私はそれに蓋をしていたんだ。
でももう遅い。
災厄は撒き散らされた。
785 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/02/04(月) 04:32:21.20 ID:syE/uFsm0
北上「提督は、復讐するとして、どうやるつもりだったの」
提督「今はもう皆を巻き込むつもりはねえよ。ここには親父の時から居て俺に着いてきてくれた奴がいてな。何人か仇討ちに協力するってのもいたんだ」
北上「誰と」
提督「ん、飛龍と日向、だけなんだけどな。随分と無謀な話だろ」
北上「そうだね」
吹雪「北上、さん?」
北上「提督」
提督「おう」
北上「なら私が三人目だ」
提督「は?」
吹雪「へ?」
北上「私も協力する」
786 :
◆rbbm4ODkU.
[saga]:2019/02/04(月) 04:33:11.09 ID:syE/uFsm0
写真に写っていたのはかつて神社で見た、金髪でこそなかったが、確かに私の探していた人物だった。
私が愛した人。恩を受けた人。会いたかった人。
提督の瞳に映る自分を見て理解した。
きっと昔の提督もこんな眼をしたのだろう。
思考が徐々に薄れる。
身体の中を何か黒くて熱い、少し心地よいもので満たされていくのを感じた。
箱の中に、もはや希望はなかった。
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