大石泉「高峯のあの事件簿・都心迷宮」

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85 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:10:53.66 ID:29cK37xH0
37

夕方

清路駅南西・下向き矢印のビル付近

のあ「……」

真奈美「のあ、戻ってたのか」

のあ「真奈美も戻ってきたのね」

真奈美「正確には戻らされた」

のあ「私も同じよ、別ルートでもこの通り」

真奈美「小松伊吹の言っていたことは確かめられたな」

のあ「ええ、落書きのルートは色々あるけれど」

真奈美「終点はここなんだ」

のあ「小松伊吹と吉岡沙紀はスタートとして使っていたけれど」

真奈美「スタートじゃない、逃げ道として使うなら」

のあ「どこからでも始められるべき」

真奈美「大きな周回コースだったわけだな」

のあ「吉岡沙紀のアトリエで指示された場所も」

真奈美「指示された場所と方角からして、ここに戻ってくるだろうな」

のあ「どこかでサインを見逃したのかしら」

真奈美「それなら、小松伊吹があんなこと言うか?」

のあ「嘘とは思えないわね」

真奈美「一番隠したいものが見つかっているんだ、その必要が感じられない」

のあ「フム……」

シッポシッポシッポヨ、アナタノ……

のあ「ごめん、電話よ。あら、まゆからね」

真奈美「もうこんな時間か」

のあ「大丈夫よ、一段落したところだから」

真奈美「さて、どうする?」

のあ「戻るわ。ええ、お夕飯はゆっくりでいいわ。ばいばい」

真奈美「今日は撤退か」

のあ「そうしましょう、家で休憩する時間も大切よ」

真奈美「そうだな、戻るとしよう」

のあ「収穫はあったけれど……」

真奈美「進む方向は間違ってない」

のあ「だけれど、道は途切れた」

真奈美「情報が抜け落ちているか」

のあ「思い違いをしているのか……」

真奈美「……」

のあ「……」

真奈美「路上で悩んでいても解決しない。車も近くにある、帰ろう」

のあ「そうするわ」
86 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:11:41.34 ID:29cK37xH0
38

高峯探偵事務所

のあ「ただいま」

まゆ「のあさん、お帰りなさい」

のあ「お友達はまだいらっしゃるかしら」

まゆ「はい」

高森藍子「のあさん、こんばんは」

如月千早「お邪魔しています」

高森藍子
まゆのクラスメイト。まゆとは特に仲が良く、事務所にもよく訪れている。

如月千早
まゆのクラスメイト。得意なことは歌うこと。

のあ「いらっしゃい。お夕飯を食べていくかしら、まゆの手伝いをしてくれると喜ぶわ」

千早「お言葉だけで。これから予定があって」

のあ「お仕事かしら」

千早「レッスンです。佐久間さん、高森さん、また明日」

まゆ「千早さん、また明日……」

藍子「ばいばい♪」

のあ「高森さんは?」

藍子「お言葉に甘えようかな。のあさん、いいですか?」

のあ「ええ、ゆっくりしていってちょうだい」

真奈美「ただいま……ひとつ聞いていいか?」

まゆ「真奈美さん、お帰りなさい」

のあ「帰ってすぐに質問があるのかしら」

真奈美「さっき、如月千早とすれ違ったんだが」

のあ「それがどうかしたのかしら」

真奈美「如月千早だぞ?」

藍子「はい、千早ちゃんです」

真奈美「アイドルであることは知ってるよな?」

のあ「ええ。この前、テレビの歌番組に出ていたわ」

まゆ「がんばり屋さんですよぉ」

藍子「今日はレッスンまで時間があるので、一緒にお話してたんです」

のあ「だそうよ」

真奈美「つまり、私が気負い過ぎか。君らにとってはクラスメイトだものな」

のあ「ええ」

まゆ「藍子ちゃん、お夕飯の支度手伝ってくれますかぁ?」

藍子「はーい。のあさん、真奈美さん、ゆっくりしててくださいね」

真奈美「お言葉に甘えるとしよう」

のあ「ええ、大人はだらけていましょう」
87 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:12:54.36 ID:29cK37xH0
39

高峯探偵事務所

まゆ「お味はいかがですかぁ?」

のあ「美味しいわ。珍しい味付けね」

まゆ「藍子ちゃんから教わったんですよ……ね?」

藍子「はい、おばあちゃんが教えてくれた高森家特製です」

真奈美「酢が利いた爽やかな味だな」

のあ「残暑の時期にはいいわね」

真奈美「疲れが取れそうだ」

まゆ「うふふ、いっぱいありますから食べてくださいねぇ」

のあ「ありがとう」

藍子「のあさん達は、今日はお仕事だったんですか?」

のあ「ええ。探偵のお仕事を、中身は秘密だから言えないけれど」

藍子「さっき、まゆちゃんにも断られちゃいました」

まゆ「まゆはのあさんの助手……ですから」

のあ「秘密もあるけれど、話せることもある」

真奈美「この写真かな」

藍子「まぁ、カワイイネコちゃんですね♪」

まゆ「小さくて……かわいい……」

のあ「真奈美、向井拓海から連絡は」

真奈美「ちゃんと引き取って育てるそうだ」

のあ「安心したわ」

藍子「迷いネコを探してたんですね」

のあ「そういう仕事が増えるといいわね。真奈美、探してきて」

まゆ「のあさん……遂に仕事をやる気に……」

真奈美「待つのが信条だと思っていたが、そういうなら幾らでも」

のあ「前言撤回するわ。遮二無二働くのはらしくない」

真奈美「なんだ、残念」

のあ「高森さん、困りごとはないかしら?」

藍子「困りごと……えっと」

のあ「すぐに出ないなら、問題ないものよ」

真奈美「そうだな」

のあ「何かあったら言ってちょうだい。助けになるわ」

藍子「はい、ありがとうございます」

のあ「そうね……いいかもしれないわ」

まゆ「のあさん、何か思いつきましたかぁ?」

のあ「高森さん、ひとつ教えて欲しいの」

藍子「私に答えられますか?」

のあ「答えられるわ、高森さん、都心迷宮という言葉を知っているかしら?」
88 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:14:05.75 ID:29cK37xH0
藍子「としんめいきゅう?」

のあ「知らなそうね。ありがとう」

藍子「まゆちゃん、知ってますか?」

まゆ「ううん、わからない……」

のあ「例えばだけれど、難しい宿題に悩んでしまったら、どうするかしら」

藍子「そうだなぁ……お散歩に行ったり、誰かの意見を聞いたり?」

のあ「そうすると何かあるのかしら」

藍子「思い込んで悩んでるのを、ちょっと辞めてみるんです」

のあ「思い込み……」

藍子「……答えになりましたか?」

のあ「もちろんよ。ゆっくりしていってちょうだい」

真奈美「のあ、もういいのか?」

のあ「部屋に戻るわ」

真奈美「わかった」

藍子「怒らせちゃいましたか……?」

まゆ「そんなことないですよぉ」

真奈美「いつものことだ。お茶の時間には帰ってくるさ」
89 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:14:58.51 ID:29cK37xH0
40

高峯探偵事務所

藍子「おじゃましました」

のあ「また、来てちょうだい」

藍子「もちろんです。まゆちゃん、またね」

まゆ「また明日……ばいばい」

のあ「真奈美、無事に送り届けてちょうだい」

真奈美「了解した。行くとしようか」

藍子「はい、お願いします」

のあ「……」

まゆ「のあさん……何か思いつきましたか?」

のあ「いいえ」

まゆ「そうですか……」

のあ「高森さんも言ってた通り、散歩とか話が足らないわね。それと休息も」

まゆ「疲れちゃいましたか……?」

のあ「私は大丈夫だけれど、大石泉はわからない」

まゆ「……はい」

のあ「何か……足りてないのかしら」

まゆ「足りない?」

のあ「情報か、何か」

まゆ「のあさん」

のあ「……どうしたの?」

まゆ「お風呂を入れますから、今日はお休みしましょう……ね?」

のあ「……そうするわ」

まゆ「はい……そうだ、少しお話しませんか。この前、本で読んだことを話したくて」

のあ「ええ……ありがとう、まゆ」
90 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:16:04.68 ID:29cK37xH0
41

幕間

深夜

清路駅西・旧市街地・防空壕

沙紀「これで終わりか……ここも引き上げ時っすかね」

恵磨「そうなん?」

沙紀「わっ、エマ!?なんで、いるっすか?」

恵磨「ここが沙紀のアトリエか。道具が揃ってんのに、引き上げるの?」

沙紀「いつからっすか」

恵磨「なにが?」

沙紀「ここにいつから張ってたのか」

恵磨「そんなに前じゃないけど、暗いから眠気と戦うのが大変だった」

沙紀「……」

恵磨「沙紀がそれを見てる間に逃げ道も塞いでおいたし、どうする?」

沙紀「ちえっ、エマ割と真面目っすよね」

恵磨「不真面目だったことないんだけどなー、よく言われる」

沙紀「……」

恵磨「沙紀、誰から依頼受けてるか知らないけどさ、辞めなよ」

沙紀「じゃあ、エマが用意してくれるっすか?」

恵磨「……」

沙紀「警察の仕事じゃないとはアタシもわかってるっすよ、冗談っすよ、冗談」

恵磨「わかった。協力する」

沙紀「……別に本当にして欲しいわけじゃないっす」

恵磨「これでも公務員だからさ、なんとかなるっしょ。うん」

沙紀「信用ならないっすね、相変わらず」

恵磨「絶対は絶対な時以外は約束しないって、決めてるから。前に失敗したし」

沙紀「……そうっすか」

恵磨「沙紀の希望はわかったし、協力するよ」

沙紀「アタシの希望?」

恵磨「作品を作る意味と場所が欲しい」

沙紀「……」

恵磨「アタシは依頼主と縁を切れと言っただけなのに、回答がなんでそれになるのさ?」
91 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:17:19.83 ID:29cK37xH0
沙紀「はぁ、慌ててるとボロが出るっすね……」

恵磨「引き上げ時なら、辞めれば」

沙紀「……さっきの約束守るっすか」

恵磨「努力する、やれそうより一段上で」

沙紀「秘密っすよ」

恵磨「わかった」

沙紀「これ、依頼書っす」

恵磨「依頼書?」

沙紀「本棚のあるページに仕事の封筒が挟まれてるっす。それが仕事の依頼」

恵磨「数字に、方角、日付……あの落書きのやつ?」

沙紀「そう、それで今日はこれも」

恵磨「おみくじ?」

沙紀「ただのメモっす。見てください」

恵磨「どれどれ……『依頼はこれで終わりです、お疲れ様でした』?」

沙紀「……」

恵磨「『報酬は先払いです。さようなら』、なにこれ?」

沙紀「クビってことっすね」

恵磨「報酬は先払いか。うーん……」

沙紀「辞め時かと思ってたところっす。渡りに船っすね」

恵磨「沙紀、この仕事だけやって」

沙紀「これをやって欲しいなんて、期待されてないっすよ?」

恵磨「沙紀が危ないかもしれないし……ん?期待されてない?」

沙紀「普段は完成したら後払いなのに、それに」

恵磨「それに?」

沙紀「アタシのアートは依頼主が核心めいて欲しがってたのは、あれだけっす」

恵磨「あの布?」

沙紀「わかるっすか?」

恵磨「話は聞いてる。阿紗橋の遺体のやつだ」

沙紀「そういうことっすよ。アタシはアートに意味と報酬があるから、従ってるだけっす。だけど、本質は知らない」

恵磨「本質ね……」

沙紀「あの落書きはただの記号っす。依頼主にとって必要な意味はそれしかない」

恵磨「どういうこと?」

沙紀「アタシの作品を見たいわけでもなければ、アートに込めたものもないっす」

恵磨「沙紀、よくわかんない。何が言いたいのさ?」

沙紀「アタシもアタシのアートも、依頼主に大した意味はないっすよ」

恵磨「ないなら、どうしてあんな数の依頼をする?」

沙紀「……考えられるのは、エマがさっき言った通りっす」

恵磨「なんか言ったっけ?」

沙紀「アタシがアタシの作品に求めているのは、アタシが誰かに認められたい、求められたいという意味っす」

恵磨「……」
92 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:19:37.63 ID:29cK37xH0
沙紀「ツライっすね……依頼主は芸術じゃなくてアタシの本心に詳しかったってことっすよ」

恵磨「……そっか」

沙紀「手下にしておくために、依頼してたってことっす」

恵磨「……」

沙紀「切られちゃったっすけど」

恵磨「沙紀は依頼主については何も知らないんだな?」

沙紀「そうっすよ。アタシはただのアーティス……『ペインター』っすから」

恵磨「この仕事で終わりにしよう。このままだとロクなことにならない」

沙紀「もちろんっす」

恵磨「それに、アタシが作るよ」

沙紀「何を、っすか」

恵磨「沙紀の作品の意味。アタシは好きだよ」

沙紀「……」

恵磨「ただ、落書きはダメだけど」

沙紀「……ありがと、わかったっす」

恵磨「家、帰りなよ。わかった?」

沙紀「そうするっす。ここ、居心地悪いっすから」

恵磨「そうなん?」

沙紀「肩がこるんっすよ……なんでっすかね?」

恵磨「そりゃあ……防空壕だし……ねぇ?」

沙紀「取り壊せないのは祟りがあるから、らしいっす」

恵磨「わかってるじゃん……」

幕間 了
93 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:20:50.97 ID:29cK37xH0
42

翌朝

高峯探偵事務所

のあ「正直に言うと、行き詰ってるわ」

まゆ「のあさん……お電話中でした」

のあ「そう言ってくれるとありがたいわ。また連絡するわ、そちらも何かあったらいつでも連絡をちょうだい」

まゆ「……」

のあ「まゆ、どうしたのかしら?」

まゆ「お電話は終わりですかぁ?」

のあ「ええ」

まゆ「今日も調査に?」

のあ「クライアントの期待には応えるわ」

まゆ「解決できそうですか……?」

のあ「目的地はわかっている。道順がわからないだけ」

まゆ「無理しないでくださいね、のあさん」

のあ「真奈美もいるわ、大丈夫よ、まゆ」

まゆ「はい」

のあ「何か用事かしら、まゆ」

まゆ「今日も帰りは遅くなりそうですかぁ?」

のあ「わからない、お夕飯は待ってなくてもいいわ」

まゆ「そうですか……」

のあ「一人でご飯を食べるのは寂しいかしら」

まゆ「……はい」

のあ「必ず戻るわ、お願いね」

まゆ「はい、のあさん」

真奈美「のあ、出発する準備は出来たか?」

のあ「ええ」

まゆ「今日はどちらに?」

のあ「まずは警察署。情報が必要だもの」
94 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:23:52.59 ID:29cK37xH0
43

清路警察署・科捜研

真奈美「おはよう。お邪魔するよ」

志希「のあにゃーん、助けてよ〜」

のあ「志希じゃない、ちゃんと帰ってたのね」

久美子「のあさん、真奈美さん、おはよう」

のあ「おはよう、久美子」

志希「むっ!すーはー、クンカクンカ……のあにゃん、シャンプー変えたな……良い良い、エクセレントだよ〜」

久美子「この子、見つけてくれてありがとう。今日から来てもらってるわ」

真奈美「のあの髪に引っ付いてるのはともかくとして、無事に復帰できたようで何よりだ」

久美子「家ないらしいから、音葉ちゃんの家にいてもらうことにしたわ」

真奈美「それは良かった」

志希「良くないっ!」

のあ「良くないのかしら」

真奈美「音葉君のことだから、家もキレイだと思うが」

久美子「仲良くしてあげてね、志希ちゃん。年上だけど後輩なんだし」

音葉「……志希さん、お聞きしたいことが」

志希「わー、来たー」

音葉「お二人とも……おはようございます」

のあ「おはよう。志希と仲良くやれてるかしら」

音葉「先輩ですから……聞きたいことがたくさんあります」

のあ「志希、カワイイ後輩の指導をしてあげるといいわ」

志希「えー、志希ちゃんそういうタイプじゃないし〜」

音葉「そう言わずに……のあさん、お預かりします」

のあ「どうぞ」

音葉「ありがとうございます……」

志希「久美子さんー、この後輩スキンシップが多いよー、背が高いから志希ちゃん逃げられないー」

久美子「そのため……ゴホン、音葉ちゃんがやりやすいようにしていいわ」

音葉「さぁ…行きましょうか」

志希「いいけどー、科捜研の仕事は嫌いじゃないしー」

のあ「抱きかかえられて連れていかれたわね……」

真奈美「仲良くやっているのか?」

久美子「音葉ちゃん、一人っ子だし、年上に囲まれて育ったから妹が欲しかったみたい」

真奈美「年下の先輩に聞きたくてしょうがないのか」

久美子「ご両親も不在がちだったから、ペットが飼いたくても飼えなかったとか」

のあ「先輩というよりはネコ扱いね……」
95 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:24:21.15 ID:29cK37xH0
久美子「二人で協力してくれると私としては助かるわ。あんなこと言ってたけど、第一印象は悪くないみたいだし。二人とも天才肌だから」

のあ「音葉に話があったのに、呼び止めるのを忘れたわ」

久美子「落書きの話?のあさんから貰ったデータは、私の方でまとめておいたわ」

のあ「助かるわ」

久美子「地図を画面に出すわね」

真奈美「清路駅周辺の地図だな」

のあ「私の情報よりも増えてないかしら」

久美子「あれ、そっか。恵磨ちゃんから話聞いてないの?」

のあ「恵磨から?」

久美子「『ペインター』を捕まえたから、落書きした場所の情報を本人から聞き出したの」

真奈美「恵磨君のところにも行ってみる必要がありそうだな」

のあ「そうね。それで、次の道は見つかったかしら」

久美子「残念だけれど、私には見つからない。のあさんはどう?」
96 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:24:53.71 ID:29cK37xH0
のあ「情報は増えたけれど、感想は昨日と同じ」

真奈美「ゴールがあるとは思えない」

のあ「循環する道、支流は色々とあるけれど」

久美子「私もそう思うわ、これに出口はない。循環する意匠は良い意味なことが多いのだけどね」

のあ「ありがとう。もう少しこっちで考えるわ」

久美子「わかった」

のあ「もう一つの話だけれど」

久美子「ハッカーの話?」

のあ「ええ。久美子と音葉の意見はどうかしら」

久美子「可能性としては無きにしも非ず、くらいしか言えないわね」

のあ「探している大石泉がそのハッカーという可能性は」

久美子「彼女の実力がわからないもの、言えることなんてないわ」

真奈美「まぁ、そうだな」

久美子「私でわかるのはこれぐらい。どうする?」

のあ「……」

真奈美「のあ、久美子君達に頼むことはあるか?」

のあ「ないわ、今の所は」

久美子「仕事に戻るわね。何かあったら、言って」

のあ「ええ。真奈美、恵磨の所に行きましょう」

真奈美「わかった」

のあ「久美子、やっぱり一つ頼んでいいかしら」

久美子「どうぞ、なに?」

のあ「その地図、印刷してくれるかしら」
97 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:25:58.71 ID:29cK37xH0
44

清路警察署・少年課

のあ「なるほどね……」

夏美「恵磨ちゃんから聞いたのはそんな所だけど」

真奈美「最後の落書きはどうするつもりなんだ?」

夏美「知らなかったことにする」

のあ「理由は」

夏美「彼女、吉岡沙紀を守るため。恵磨ちゃんの提言通りに」

のあ「それでいいと思うわ」

真奈美「それにしても、重要な意味がない、とはな」

夏美「違うわ。重要なのは、ほとんど、ない」

のあ「つまり、どれかは重要だと」

夏美「そうじゃないと、位置と方向を事細かに指定する意味がないわよね?」

真奈美「論理展開が飛躍している。どうしてだ?」

夏美「全て意味がないなら、吉岡沙紀とパルクールの二人で自由にやらせればいいじゃない」

のあ「一部に意味があるということは」

夏美「そうそう、全部に意味を持たせないと描いた人物を騙せないじゃない」

真奈美「吉岡沙紀を騙すために、意味を持たせたのか」

のあ「そして、私達も悩んでいる」

真奈美「夏美君としては何か意見がないか?」

夏美「パルクールとか、隠れ家とかなら少年課の範囲内だけど、違うわよね?」

真奈美「それは表向きの意味だ」

夏美「子供達がわかることじゃないものね」

のあ「……真奈美」

真奈美「どうした?」

のあ「久美子がくれた地図、夏美に見せてくれるかしら」

真奈美「わかった。これだ」

夏美「だいぶ大きく印刷したのね」

真奈美「志希君がサービスしてくれた」

夏美「ふーん、こんなにあるのね」

のあ「夏美に聞きたいのだけれど」

夏美「うん」

のあ「ホームレスや家出少年が一晩を過ごすなら、どこかしら」

夏美「そんなの決まってるじゃない。清路駅南北の地下道、地下鉄に、新都心付近かしら」

真奈美「ん?」
98 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:26:41.63 ID:29cK37xH0
夏美「あれ、全然違うわね。吉岡さんからは全部聞いたはずだけど」

のあ「地下にこだわっているのに」

真奈美「新都心側にはいかないんだな」

夏美「つまり、どういうこと?」

のあ「……」

真奈美「のあ?」

のあ「平面の地図ではいけなかった」

真奈美「どういうことだ?」

のあ「真奈美、音葉にお願いして方向に上下を追加して」

真奈美「わかった。のあはどうする?」

のあ「都市計画について調べるわ。科捜研まで行くから、待っててちょうだい」

真奈美「了解した」

夏美「ヒントはつかめた?」

のあ「ええ、ありがとう」

夏美「どういたしまして。忙しい所悪いけど、お礼代わりに一つ聞いていいかしら」

のあ「もちろん。ただし、大石泉のことがあるわ、手短に」

夏美「はい、か、いいえ、で良いわ」

のあ「ええ」

夏美「弓を使う殺し屋を知らないかしら」

のあ「殺し屋……?」

夏美「わかるかしら」

のあ「答えはいいえ」

夏美「大丈夫、早く行ってあげて」

のあ「今はこれで。大石泉を見つけてくるわ」
99 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:27:56.96 ID:29cK37xH0
45

清路警察署・科捜研

音葉「これは……」

志希「にゃはは、これは一本取られた?」

久美子「なるほどね、最初から全員間違ってた」

真奈美「どうやら、そのようだ」

音葉「のあさん……いかがでしょうか」

のあ「答えは全員がわかってる通り」

志希「どんなループでも通る共通点で」

真奈美「吉岡沙紀と小松伊吹は使い方を間違えていた」

久美子「次の落書きに行く道しるべじゃなかった」

のあ「下向き矢印のビル、そこから地下に潜ればいい」

志希「でもさー、のあにゃん?」

のあ「疑問でもあるのかしら」

志希「地下道はあるけどー、どこにもつかないよ〜?」

音葉「その通りですね……さすが志希さんです……」

志希「音葉ちゃん、無理に褒めなくてもいいからさぁ……」

のあ「どこかに着くわ」

久美子「どうして?」

のあ「都心迷宮はそもそも、清路駅周辺を指す言葉。地下工事のいざこざから生まれた、都市伝説よ」

志希「だから?」

のあ「どこかにつながるわ」

音葉「どこか……」

のあ「記録にない場所もあるでしょう」

久美子「思いっきり汚職とかその類じゃない、のあさん、知ってたの?」

のあ「さぁ。政治にはあまり関わりたくないもの」

志希「むふー、志希ちゃん興奮してきたよ〜」

音葉「……」

志希「……音葉ちゃん、音もなく抱きかかえないで。ちゃんと仕事するから」

のあ「真奈美、探検は得意かしら」

真奈美「洞窟を、地図を描きながら潜ったことがある。スリリングだったな」

志希「なにそれ、楽しそう〜」

のあ「洞窟探検は休みの日に相談してちょうだい」

久美子「さて、私達は仕事に戻りましょう。志希ちゃん、音葉ちゃん、良い?」

志希「はーい」

音葉「はい……」

久美子「のあさん、気をつけてね」

のあ「ええ。真奈美、行くわよ」
100 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:28:50.65 ID:29cK37xH0
46

都心迷宮・下向き矢印のビルの地下

下向き矢印のビルの地下
下向き矢印のビルに地下階はない。この地下はビルとは別の構造物で、真っ暗で細長い通路に風だけが吹いている。

のあ「真奈美、あったわ」

真奈美「どこだ、ライトで照らしてくれ」

のあ「ここよ」

真奈美「シールか」

のあ「落書きより安上がりね」

真奈美「しかし、絵なのか?だとしても、抽象画の領域だな……」

のあ「そうみたい。でも、落書きと同じ」

真奈美「向かう方向がある」

のあ「おそらく道なりでしょうけれど、音葉にもらったものを使いましょう」

真奈美「答えは」

のあ「見た通りね。このまま奥へと進みましょう」

真奈美「了解だ」
101 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:30:09.86 ID:29cK37xH0
47

都心迷宮・最初の分かれ道

真奈美「公式の資料だとここが行き止まりだ」

のあ「志希の懸念は解消されたわ」

真奈美「上に行く梯子もある。どこに出るんだろうな」

のあ「どこにも出れない可能性があるわね」

真奈美「もとよりその気はない。私達が行くの道は三つのどれか」

のあ「左か右か」

真奈美「あるいは、真っ直ぐにある階段のどれかだ」

のあ「サインはあるかしら」

真奈美「見当たらない」

のあ「それなら、階段を登りましょうか」

真奈美「足元に気をつけてくれ」

のあ「わかってるわ」
102 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:32:52.86 ID:29cK37xH0
48

都心迷宮・固められた鉄の扉前

真奈美「何か音がしないか?」

のあ「音というよりは振動……あら」

真奈美「行き止まりだ。鉄の扉だが」

のあ「開かないわね、これは」

真奈美「塞がれているな、溶接か?」

のあ「しかも、反対側から。ここから出るのは無理でしょうね」

真奈美「公式の資料に間違いはないということか」

のあ「真奈美、この先に何があるかわかるかしら」

真奈美「すぐには出てこないな。のあはわかるのか?」

のあ「地下鉄」

真奈美「なるほど。確かに、位置関係もあってるな」

のあ「そうなると、何のためのものだったのかしら」

真奈美「避難路じゃないか」

のあ「避難路?」

真奈美「火事や事故の際に逃げ込めるようになっているんだろう」

のあ「あるいは、排水路かしら」

真奈美「いずれにせよ、緊急事態に使うのだろう」

のあ「それなら、ここを閉じた理由は」

真奈美「それこそ、政治的事情じゃないのか」

のあ「政治的、ね」

真奈美「わざわざ工事も終わってる避難路をないものとする理由なんてあるか?」

のあ「普通は考えられないけれど、工事そのものを隠したかった」

真奈美「工事費の圧縮が市民団体から求められていたが、契約を破棄するわけにもいかない」

のあ「書類とも祖語があってもいけない」

真奈美「だから、消した。工事費用は何かに上乗せして支払ったんだろうな」

のあ「誰も得しないわね」

真奈美「市民団体は満足感を得られただろうな」

のあ「事情を知って使っている人物も」

真奈美「そこまで調べてるのか、相手は」

のあ「それはわからないけれど、行き先は見つかった」

真奈美「サインはどこだ?」

のあ「天井。さっきの分かれ道を右よ」
103 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:34:16.20 ID:29cK37xH0
49

都心迷宮・歯車の絵が飾られた広場

のあ「歯車……」

真奈美「のあ、向こうの道を見て来た」

のあ「どうかしら」

真奈美「ここまでのマッピングだ、参考にしてくれ」

のあ「フム……歯車の絵と関係は」

真奈美「思い当たらない」

のあ「道は複数ある、という意味は」

真奈美「それはあるかもしれないな」

のあ「地図であることを放棄した意味は」

真奈美「確かにこれまでとは違う」

のあ「迷路にするため、かしら」

真奈美「なるほどな。心得がなければ、既に迷っていてもおかしくない」

のあ「そうなると意味としては」

真奈美「侵入者を防ぐため」

のあ「いいえ。古来から逆の意味よ」

真奈美「牛の怪物を閉じ込めるため、か」

のあ「アリアドネの糸は大石泉には用意されなかったようね」

真奈美「ようやく、都心迷宮らしくなってきたな」

のあ「真奈美は余裕ね」

真奈美「人工的に放置された区画だ。限界がある」

のあ「加えて、使われている区画に近づきすぎてもいけない」

真奈美「そこで、考えた」

のあ「降りる」
104 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:34:49.04 ID:29cK37xH0
真奈美「答えを先に言われたか。探偵の意見を聞こう」

のあ「真奈美がマッピングした部分以上にここから離れるとは思えないこと」

真奈美「それで」

のあ「昇るか降りるか。どちらかならば、降りるしかないわ」

真奈美「それは何故かな?」

のあ「何もなくても降りられる」

真奈美「地球は昇るのを妨げるが、降ろすことは助けてくれる」

のあ「人間はそれを制御できないけれど。それで、真奈美?」

真奈美「どうした?」

のあ「降りる場所を見つけてるでしょう、案内なさい」

真奈美「ご明察だ。推理じゃなく、調査から来た結論だよ」

のあ「どちらでもかまわない。行きましょう」
105 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:35:59.46 ID:29cK37xH0
50

都心迷宮・梯子部屋

真奈美「外れたりはしなそうだな……よし、行こうか」

のあ「真奈美、質問していいかしら」

真奈美「どうした?」

のあ「歩きながらでいいわ。折りたたみの梯子で降りて来たけれど」

真奈美「そうだな。外れることはなさそうだから、帰りも問題ない」

のあ「梯子がないと戻れないわよね」

真奈美「ここからは戻れない。別ルートがあるのかもしれないが」

のあ「逃げようとしても逃げられない、と」

真奈美「誰かが梯子を上に戻した場合は、そうなるな」

のあ「上に道があることすら、わからないわね……」

真奈美「のあ、何か思い当たることでもあるのか」

のあ「逃げようとして、迷っていなければいいけれど」

真奈美「……」

のあ「真奈美、ケータイの電波入るかしら」

真奈美「全滅だな。無線らしきものもない」

のあ「助けも呼べない、と」

真奈美「だが、電気は通っている」

のあ「所々、照明がついてるわね」

真奈美「インターネット回線もあるかもしれないな」

のあ「……何のための場所なのかしら」

真奈美「部屋のようなものも見られるが」

のあ「地下鉄からは離れてるわよね」

真奈美「今思えば、歯車の絵は地下鉄駅の更に下だった」

のあ「単純に機械の意味だったのかしら」

真奈美「清路新都心駅から今は北東に進んでいる」

のあ「つまり」

真奈美「行政施設が集まってる区域の下だな」

のあ「シェルターかしら」

真奈美「いや、そんな大仰なものじゃない。計画が頓挫しただけだな」

のあ「計画?」
106 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:36:31.79 ID:29cK37xH0
真奈美「ああ。この資料は見たか?」

のあ「流し見ただけ。教えてちょうだい」

真奈美「地下に歴史資料館、美術館、図書館、商業施設等の計画があったようだな」

のあ「工事だけやられている、と」

真奈美「元々基礎工事で深く掘るのは必要だったみたいだな。放置した理由は私にはわからない」

のあ「真奈美、ストップ」

真奈美「見つけたか」

のあ「向こう側、明かりが強いわ」

真奈美「誰かいるかもしれないな」

のあ「真奈美、警戒して」

真奈美「わかってる」
107 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:37:46.79 ID:29cK37xH0
51

都心迷宮の奥

泉「思わず、隠れちゃったけど……」

のあ「PCに、冷蔵庫に、電子レンジに、ゲーム機……本も大量ね」

真奈美「電気も点いてる。誰かいそうだな」

泉「あいつらの味方かな……同じように背が高いし……」

のあ「冷蔵庫の食料、残り数日分と言ったところかしら」

真奈美「隠れてるか、閉じ込められているか」

泉「銃、持ってる……」

真奈美「ベッドもイスも一つだ」

のあ「古ぼけたイスはあるけれど」

真奈美「誰か一人の部屋だ」

泉「……」

のあ「大石泉、いるかしら。友人から依頼を受けて、探しに来たわ」

泉「……え?」

真奈美「いたな、銃はしまっていいか」

のあ「どうぞ。大石泉さん、出てきていいわ」
108 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:38:17.08 ID:29cK37xH0
泉「……見つかった」

のあ「こんにちは。どうぞ、こちらへ」

泉「……」

のあ「座っていいわ。仕事席かしら」

泉「……そうだけど」

真奈美「写真の通りだな。髪が少し荒れているが」

のあ「美容師は紹介してあげるわ」

泉「えっと……」

のあ「敵か味方で言えば、味方よ」

泉「……誰の?あいつらじゃないの?」

のあ「あいつらが誰かは知らないけれど、あなたの味方のつもりよ」

泉「……質問していいかな」

のあ「どうぞ」

泉「さくらと亜子があなたに……」

のあ「……」

泉「さくらと亜子が、私を探してくれたの……?」

のあ「……」

真奈美「のあ、答えてやれ」

のあ「私は高峯のあ、探偵よ。村松さくらと土屋亜子の依頼を受けて、あなたを無事に帰らせることを約束したわ」

泉「……」

のあ「その約束を果たしていいかしら」

泉「あ……うん」

のあ「大石さん?」

泉「さくらと亜子が……見つけてくれた……」

のあ「……」

泉「信じてた、信じて、良かった……待ってて、良かったんだ……」

真奈美「……」

泉「何も話さないで、親友に何も話さないで、心配かけたのに……見つけてくれて……私、ごめん、って言わないと……」

真奈美「のあ、お茶の準備をしようか」

のあ「お願い。大石泉?」

泉「ぐすっ……なに」

のあ「落ち着いたら、話を聞かせてちょうだい」

泉「……ごめんなさい」

のあ「いいのよ。もう急ぐこともないのだから」
109 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:39:19.18 ID:29cK37xH0
52

都心迷宮の奥

真奈美「緑茶で良かったか?」

泉「うん。ありがとう」

のあ「落ち着いたかしら」

泉「泣いちゃった、まだ二人に会ってもいないのに」

のあ「心細かったかしら」

泉「……二人には言わないでね」

のあ「別に良いと思うけれど」

泉「誰かに連れていかれたんじゃなくて、自分で選んだことにしたい」

真奈美「ここに来たのは君の意思が少なからず反映されている、のか?」

泉「元はといえば、私が願ったこと。それに、ここで追い詰められてた、なんて言ったら死にそうなくらい心配しそうだから」

のあ「追い詰められていた、とはどういうことかしら」

泉「仕事は終わってたの。仕事内容は……ハッキング」

のあ「仕事の話は後にしましょう。それで」

泉「私の支援が打ち切られた」

真奈美「詳しく教えてくれないか」

泉「まずインターネットが切られて、お世話係が来なくなった」

のあ「お世話係は何をしていたのかしら」

泉「生活に必要な物とか色々調達してくれた」

のあ「ここに連れて来たのは」

泉「わかんない……目隠しされてたし」

真奈美「食品も、か?」

泉「そう。でも、残りはあれだけ」

のあ「つまり」

泉「私は選択を迫られてた」

のあ「……」
110 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:39:49.84 ID:29cK37xH0
泉「残るか、逃げるか。餓死するか、遭難して死ぬか」

真奈美「……それは不安だったろう」

泉「私は待つことを選んだ、二人なら見つけてくれるから」

のあ「その賭けには勝ったわね」

泉「でも、わかった」

のあ「なにかしら」

泉「不安だとお腹が空く。食料に限りがあることが不安で」

のあ「……その選択を迫られたのは何時かしら」

泉「一昨日の夜だった」

のあ「誰から」

泉「わからない、親玉みたいな人」

のあ「親玉……」

泉「私の仕事に関わる人のリーダーだと思う……多分」

真奈美「どんな人物なんだ」

泉「名前もよくわからないけど、メガネで長髪の女性だった」

真奈美「女性、か」

泉「30歳は絶対に行ってないと思う。もしかしたら、もっと若いかも」

のあ「仕事の依頼はその人物から、かしら」

泉「大元を辿ればそうだと思う。直接の依頼はお世話係から」

のあ「仕事のことについて、聞いていいかしら」

泉「ハッキング」

真奈美「前からやっていたのか?」

泉「そんなことしてない……出来るかも、とは思ってたけど」

のあ「ハッカーにさせたのは、この状況なのね」

泉「……それを言い訳にしていい、かな」

のあ「それで整理がつくならば」

真奈美「そうだな」

のあ「ショッピングモールのハッキングをしたのは、あなたかしら」

泉「そうだよ。一番大きい仕事だったと思う」

のあ「使ったのは」

泉「銀髪のサンタクロースって自称してた人、なん……だけど」
111 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:40:27.31 ID:29cK37xH0
真奈美「どうした?」

泉「ここで、殺されて……」

真奈美「ここ、か。君は大丈夫か?」

泉「……大丈夫。そのサンタも私がショックを受けるのを望んでない」

のあ「遺体は発見されているわ。トナカイの一人も捕まってる」

泉「……」

のあ「辛いことを聞くけれど、殺害したのは」

泉「偶に来る殺し屋、弓矢で……その」

のあ「弓矢の殺し屋……」

真奈美「もしかして、未成年だったか」

泉「大人っぽかったから……でも、そうかも」

真奈美「夏美君の悩み事が増えるな」

のあ「自棄食いで昔の体形に戻らないといいけれど」

泉「私のせい、かな。あのサンタクロース、悪い人じゃなかった」

のあ「どうして、そう思うのかしら」

泉「助けてくれようとした。その……弟も含めて」

のあ「あなたのせいではないわ」

真奈美「善意を持っていたとはいえ、彼女は犯罪者だ」

のあ「弟について聞いていいかしら。それがあなたの動機なのね」

泉「……そう」

のあ「聞かせてもらっていいかしら」

泉「弟の病気を治療するのと引き換えに、私は仕事を受けた」

のあ「ご両親は」

泉「知ってる。私がここに来た後に知らされてるはず。でも……」

のあ「何か問題が」

泉「治療するのは嘘だった」

真奈美「嘘、か」

泉「治療法が公開されるという情報だけしか、持ってなかった」

のあ「その情報だけで、あなたを操ったのね」

泉「騙されちゃった」

真奈美「治療法があるというのは本当なのか」

泉「これから調べる。ここまでやったなら、普通のことなら出来る」

のあ「応援しているわ。二人は弟さんのことを知っているの」

泉「詳しくは言ってない……言わないとかな」

真奈美「どんな事情でもわかってくれるはずだ」

のあ「そういうものでしょう」

泉「親友だから、話すよ」

のあ「ええ。きっと力になってくれるでしょう」

泉「……うん」
112 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:41:15.78 ID:29cK37xH0
のあ「結果的に、待つのは正解だったわ」

真奈美「おそらく、出れなかっただろうな」

泉「そうなんだ?」

真奈美「帰り道でわかる」

のあ「詳細は警察にでも話してちょうだい」

泉「……捕まるかな」

のあ「事情は配慮してくれるでしょう」

泉「そっか、正直に話すね」

のあ「私が聞きたいことはあなたを雇った側のこと」

真奈美「目的はなんだろうな」

泉「よくわからない。何に協力させられてるのかも」

のあ「ショッピングモールの件は」

泉「あれは本題だったのかな……?」

のあ「わからない」

泉「親玉のような人が言うには、だけど、いや、これも意味がわからないやつなんだけどね……」

のあ「言ってみなさい」

泉「私がハッカーになるのを見ていたかった、とか」

真奈美「……どういう意味だ?」

のあ「犯罪を見るのが目的、と。映画でも見ているつもりなのかしら」

泉「あんまり考えたくない、理解もしたくない」

真奈美「いずれにせよ、真っ当な人間な思考ではないな」

のあ「あなたが会った人物は全部で何人かしら」

泉「メガネの親玉に、お世話係、サンタクロース、弓矢の殺し屋、えっと、もう一人誰かいたんだけど……」

のあ「無理に思い出さなくていいわ。その人物につながる情報は何かあるかしら」

泉「ごめん、何もない。誰かが親玉の名前を呼んでたような気がするんだけど……思い出せなくて」

のあ「でも、妙ね」

真奈美「妙とは」

のあ「影も形も掴ませないのがこれまでだったけれど」

真奈美「確かにそうだな」

のあ「大石さんもこの通り無事で、私達に引き渡された」

泉「それって……」

のあ「現実にならなかった最悪の事態を想定するのは、無駄。心労にしかならない」

泉「……わかった。そうだ、親玉につながる手掛かりならあるよ」

のあ「何かしら」

泉「これ」

真奈美「カギか」
113 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:42:18.45 ID:29cK37xH0
泉「奥の扉のカギ。親玉のコレクションルームみたい」

のあ「ちょっと覗いてくるわ。真奈美、大石さんと帰る支度をしておいて」

真奈美「わかった。大石君、帰り支度をしよう」

泉「わかった」

真奈美「食事は取れているか」

泉「実はあんまり。泣いて安心したらお腹すいた」

真奈美「少し、冷凍庫から拝借しようか。美味しそうだが、どうだったかな?」

泉「味は良いよ。お世話係が持って来たデリバリーはもっと美味しかった」

真奈美「ちょっと見繕おう。帰り支度は続けてくれ」

泉「わかった」

真奈美「PCの回収は後だな。ケータイはあるのか」

泉「そういえば返された。電波が繋がらないから使い物にならないけど」

真奈美「村松君と土屋君への連絡は」

泉「私が文面を作って、お世話係が外で送信してたみたい。私も心配させたくなかったから、それについては共犯かな」

真奈美「お風呂は」

泉「奥の方にユニットバスがあるよ。お湯もちゃんと出たけど、シャンプーが合わなくて」

真奈美「なんとか暮らしていけそうだな」

泉「ううん、暮らしていけない」

真奈美「そうかな?」

泉「友達がいない暮らしなんてイヤなんだ」

真奈美「フッ、その通りだな」
114 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:42:48.25 ID:29cK37xH0
のあ「……」

真奈美「のあ、もう戻ってきたのか」

のあ「大石さん、ありがとう。真奈美は、これを見て」

真奈美「なんだ、日記帳か?」

のあ「スクラップブック、見覚えがあるはずよ」

真奈美「待て、乙倉悠貴が持っていたものだ」

のあ「何故ここにあるのか。それに、これが挟まれていたわ」

泉「……アイドルのプロマイド?眠り姫みたい」

真奈美「そう見えるだろうが……これは」

のあ「遺体の写真よ。このスクラップブックの持ち主が個人的に撮って印刷したもの」

泉「い、遺体?」

のあ「他のコレクションは美術品や写真だった」

真奈美「事件に関わるものがあったのか」

のあ「ええ。成宮由愛の絵も飾ってあったわ」

泉「ライブの半券もあったけど、それも?」

のあ「おそらく。松永涼のバンドがあったわ」

真奈美「つまり、だ」

のあ「乙倉悠貴は、無関係な第一発見者ではなかった」

真奈美「まさか、大石君を雇った側だったのか」

のあ「それに、このページを」

真奈美「西島櫂が犯人だ、と……亡くなる前に気づいていたのか」

のあ「でも、このスクラップブックは見つかっていない」

泉「何の話かわからないけど……」

のあ「あの人物なら合点がいくわ」

泉「親玉に心当たりがあるの?」

のあ「明らかに開示してる。気づいてもらいたがっている」

真奈美「その理由はわからないが。のあ、写真はあるか?」

のあ「希砂島で撮ったものがあるわ。大石さん、写真を見てちょうだい」

泉「……」

のあ「この写真の中に、あなたの雇い主はいるはずよ」

泉「……いた。この人が親玉」

のあ「名前は古澤頼子」

泉「思い出した、サンタクロースが呼んでた、古澤って。あと自分は何と呼ばれているか、言ってた」

のあ「何と」

泉「『キュレイター』って」
115 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:43:21.89 ID:29cK37xH0
のあ「学芸員……そのままじゃない」

真奈美「西川保奈美の事件からずっと近くにいたのか」

のあ「……」

真奈美「のあ?」

のあ「その気ならば」

泉「その気って……なに」

のあ「相手になるわよ、古澤頼子」
116 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:44:38.83 ID:29cK37xH0
53

夕方

高峯探偵事務所

まゆ「ただいま帰りましたぁ」

のあ「まゆ、お帰りなさい」

まゆ「のあさん、お帰りになってたんですねぇ」

のあ「ええ」

まゆ「大石泉さんは……?」

のあ「無事に送り届けて来たわ」

まゆ「まぁ……お体は大丈夫ですかぁ?」

のあ「ええ。村松さくらと土屋亜子に良い報告ができて良かったわ」

まゆ「はい……のあさん、お疲れ様でしたぁ」

のあ「ありがとう、まゆ」

まゆ「着替えたら、お夕飯の準備をしますねぇ」

のあ「慌てなくていいわ。まゆ、聞いていいかしら」

まゆ「お夕飯のリクエストですかぁ?」

のあ「最近、古澤頼子から連絡があったかしら」

まゆ「古澤さん、ですかぁ……ないですよぉ」

のあ「そう。成宮由愛とは連絡を取ってるかしら」

まゆ「最近はお電話してませんねぇ、今日してみようかな」

のあ「……そう」

まゆ「何か……ありましたか」

のあ「事件の背後に誰かがいる、という話はしたわね」

まゆ「……はい」

のあ「それが古澤頼子だった」

まゆ「……え?」
117 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:45:35.48 ID:29cK37xH0
のあ「今は調べているところよ」

まゆ「古澤さんが……?」

のあ「もしも連絡があったら、教えてちょうだい」

まゆ「本当ですかぁ……普通の学芸員さんでしたよ」

のあ「私もそうだと思っていたわ」

まゆ「違うんですかぁ……?」

真奈美「のあ」

のあ「真奈美、何かわかったかしら」

真奈美「佐久間君、お帰り」

まゆ「ただいま、真奈美さん」

真奈美「古澤頼子についてだが」

まゆ「……」

真奈美「市立美術館は先月末で退職している」

のあ「先月末、タイミングが良すぎるわね」

真奈美「6月には退職を願い出ているようだな」

まゆ「希砂島でそんなこと言ってなかったのに……学芸員の仕事が充実してるって……」

のあ「退職理由は」

真奈美「家庭の事情だそうだ、要するにわからない」

のあ「計画通りだった、ということかしら」

真奈美「大石泉が登校して来ないことがわかるのが9月1日、予想通りだろう」

のあ「今はどこにいるのか、わかるのかしら」

真奈美「消息不明だ」

まゆ「行方不明……」

真奈美「職員は親しい友人を知らなかった。個人のケータイでは連絡が取れない」

のあ「消えた、と」

真奈美「学芸員になる前も簡単に問い合わせしてみた」

のあ「手掛かりは」

真奈美「こちらもないが、あることがわかった」

まゆ「あること……」

真奈美「本当に古澤頼子、なのか?」
118 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:47:28.67 ID:29cK37xH0
のあ「言っている意味がわからない。説明してちょうだい」

真奈美「彼女の存在を確認できたのは、学芸員になる前の大学院時代だけだ」

のあ「それ以前は」

真奈美「書類上は卒業しているが」

まゆ「あの人が見つからない……」

真奈美「地味だが間違えはしない容貌だろう、背は高いが猫背だ」

のあ「誰かになりすましている、と」

真奈美「もしくは書類を偽造しているか」

のあ「そう……」

真奈美「どうする」

のあ「こちらが勘付くのも想定内、ならば」

真奈美「調べよう」

のあ「ええ。でも、今日は」

まゆ「今日は……?」

のあ「友情を守ったことを喜びましょう」

真奈美「そうだな」

のあ「何があっても、彼女達なら立ち向かっていけるわ」

まゆ「はい、お友達は大切ですよねぇ」

のあ「ええ」

真奈美「私達も立ち向かえるか」

のあ「きっと」

まゆ「皆で協力すれば……必ず」

のあ「真奈美、まゆ、偶には甘いものが食べたいわ。用意してくれるかしら」

まゆ「はぁい、のあさん」

エンディングテーマ

The brightNess

歌 高峯のあ、木場真奈美、佐久間まゆ
119 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:49:38.03 ID:29cK37xH0
54

幕間

星輪学園・教会

水野翠「……」

クラリス「水野さん、お祈りですか」

水野翠
星輪学園高等部の3年生。最後のインターハイも周囲が望まれた結果ではなかった。

クラリス
星輪学園の住み込みシスター。倫理と宗教の担当教員でもある。

翠「祈りなど捧げていません」

クラリス「誰かの声を聞いているようでした。主の声でないのなら、どなたでしょうか」

翠「自分に決まっています」

クラリス「没我しているように見えましたが」

翠「バカらしい。人間が理性を捨てて、『素直に世界を見たら』、見える世界は完全に主観です。歪みに歪み切った世界が真実だなんて、虚偽が過ぎます」

クラリス「面白い見方をしていますね」

翠「没我ではなく、自分を極める行為なのです。没我したいなら、操り人形になればいいのです。世間とか理想で自分を消していけばいいのですから。わかりますか、シスタークラリス?」

クラリス「祈りではなく、自分の欲望を聞いていたのですね」

翠「ええ、その通りです」

クラリス「翠さん、考えを変えるなら今のうちですよ」

翠「今更、なんですか」

クラリス「自分の欲望をわかっていますか」

翠「わかっています。私は然るべき……」

クラリス「申し訳ありません。今はお話を聞いている時間がありません」

翠「来客ですか」

クラリス「はい。奥の懺悔室が空いています、ご利用ください」

翠「わかりました。お気遣い感謝します」

クラリス「罪を知り、赦すことが魂の救済です。私は限られた時間で一人でも救わないといけません」

翠「救われようなど思っていません」

クラリス「貴方は、まるで炎のようです」

翠「炎、でしょうか」

クラリス「周囲はおろか自身を燃やして、いつか消えてしまいますよ」

翠「ふふっ……それも悪くありません」

コンコン……

翠「来ました、失礼します」

クラリス「どうぞお入りください、扉はいつでも開かれていますよ」

幕間 了


製作 tv○sahi

120 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:51:04.27 ID:29cK37xH0
次回予告

絶対にあの人は無実を証明してくれるから……大丈夫。

第8話
浅野風香『高峯のあの事件簿・佐久間まゆの殺人』
121 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:52:19.48 ID:29cK37xH0
>>84

(1)
Barnett Newman, From “The New American Painting”, SWI 179
122 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:54:22.70 ID:29cK37xH0
オマケ

撮影休憩中の一幕・嗅覚、聴力と来たら……

志希「志希ちゃん、思いついたんだけどー」

音葉「志希さん……どうしましたか」

久美子「アドリブでも思いついた?」

志希「志希ちゃんが嗅覚、音葉ちゃんが聴覚でしょ〜」

久美子「私は?」

志希「良い匂いがする」

久美子「それは違わない?」

志希「だから、視力担当を入れよう!」

音葉「視力担当……ですか」

志希「触覚、味覚、平衡覚にシックスセンス担当も入れちゃおう!」

久美子「そこまで入れると別のドラマじゃないかしら」

音葉「フム……愛海さんに、葵さんに、穂乃香さん、朋さん辺りでしょうか……?」

久美子「触覚担当愛海ちゃんでいいの……?あと、ユッコちゃんがへそを曲げちゃいそう」

志希「わかりやすい視力担当は〜?」

音葉「それなのですが……」

久美子「何故かわからないけど、視力が悪い子とメガネを勧めてくる子しか思い出せない」

志希「あ〜……」

音葉「この前のドラマで衣装として身に着けてから……メガネの推薦が度々……」

志希「にゃはは、執事似合ってたよ〜」

真奈美「……なあ、のあ」

のあ「真奈美……どうしたのかしら……」

真奈美「音葉君は志希君を平然と膝の上にのせているが、役作りなのか?」

のあ「真実は揺らぐもの……虚構と現実は不可分……」

真奈美「それにしても、喉を撫でる必要はないと思うがなぁ」
123 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:56:03.88 ID:29cK37xH0
P達の視聴後

PaP「実際のところ、泉ちゃんはハッキング出来るのか?」

CoP「バカなこと言わないでよ、やらないから、だそうです」

CuP「やれるんですか……?」

CoP「やらないならやれないと同じです」

PaP「格言みたいなこと言うんだな。さくらちゃんと亜子ちゃんにも聞いたのか」

CoP「そんなことしませんよぉ、と言っていました」

CuP「普通そうですよね」

PaP「それにしても」

CoP「どうしました?」

PaP「女の子の声真似も上手いんだな。さくらちゃんの真似の方が似てた」

CoP「これでも役者の端くれだった時期もあるので」

CuP「否定しないあたり、強いなぁ。他にも誰か出来るんですか?」

CoP「そうですね……きらりちゃんの真似は自信がありますよ」

PaP「残念だが、聞きたくない。よしんば聞いても、評価はしない」

おしまい
124 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:58:24.24 ID:29cK37xH0
あとがき

高峯のあの事件簿も後半突入した早々、次話からラストまでのロングスパート開始です。
後半戦は4年を経て、リメイクすることになるあの話から。

次回は、
浅野風香『高峯のあの事件簿・佐久間まゆの殺人』
です。

それでは。

登場キャラクターリストとシリーズもこの後に載せておきます。
125 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:58:59.39 ID:29cK37xH0
主要キャラクターリスト(第7話時点)

高峯のあ
高峯探偵事務所を営む探偵。資産家、実業家の面も併せ持つ。特技は柔道。趣味は前川みく。
中学生の時に両親を失っており、人格形成に大きな影響を及ぼしている。
スパイシーなものが好きらしい。

木場真奈美
助手その1。生活面等々の他方面から探偵を支えている。
普段はボイストレーナーの仕事をしている。海外生活で身に着けた多彩なスキル持ち。
特に料理、運転、射撃は人並み以上らしい。

佐久間まゆ
助手その2。東郷邸の事件をきっかけに高峯家に居候することになった。
お料理と編み物が趣味の優しい女の子。
火事で両親を失って、親族の所を転々としていた。星輪学園の前に通っていた高校にはあまり馴染んでいなかったようだ。

前川みく
愛称はみくにゃん。とってもかわいいねこちゃんアイドル。
小柄ながらグラマーな体形、ジャズを得意にするなどカワイイねこちゃんなだけじゃないのよ。
12月には清路市でライブが決まっているの。今から準備しないといけないわ。
126 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:59:30.82 ID:29cK37xH0
清路警察署

高橋礼子
清路警察署の署長。階級は警視正。中央でキャリアを積んでいたが、訳あって清路警察署の署長職についたようだ。

柊志乃
刑事一課長。階級は警部。留美とコンビを組み、多大な成果を上げていた。猛者揃いの刑事一課をまとめる女傑。

和久井留美
刑事一課和久井班班長。階級は警部補。趣味は仕事とトレーニング。柔道、空手、剣道、少林寺拳法の有段者。射撃も研鑽中。のあとは前川みくの件も含めて腐れ縁。

大和亜季
刑事一課和久井班。階級は巡査部長。自他共に認める肉体派。留美とトレーニングをしていることが多くなったらしい。

新田美波
刑事一課和久井班。階級は巡査。爽やかで真面目な女性警察官。署内では人気があるらしい。

相馬夏美
少年課の巡査部長。真面目、ストイック、正義感の強いという評価をされている。昔は豊かな体格をしていたようで、ダイエットに精通しているらしい。

仙崎恵磨
少年課の巡査。夏美のバディ。ベリショの溌剌とした若手女性警察官。人情にもろい所があるが、夏美とはバランスがとれているらしい。

片桐早苗
交通課の巡査部長。普段は美世とバディを組んで、パトカーで巡回している。志乃や留美とは飲み友達で、のあと知り合いになった時期も早い。

原田美世
交通課の巡査。パトカーの運転を担当している。将来の夢は交通機動隊らしい。

瀬名詩織
いわゆる白バイ隊員。美しいと評判の白バイ乗りだが、勝負を求めて頼子達と内通している。

斉藤洋子
生活安全課の巡査。普段は防犯教育などを担当している。朗らかな性格で老若男女問わず、特に子供から好かれるタイプらしい。

ヘレン
国際調査官。サンタクロースを追って来日した。本人は実績ある調査官だが、怪しく見られることもしばしば。

松山久美子
科捜研所属。常に白衣着用の美女。個性の強い後輩に囲まれて大変よ、と言っているがあなたもそのうちの一人である。突出したものはないけど一通りできるし、使命感がある、らしい。

一ノ瀬志希
科捜研所属。海外の大学を飛び級で卒業したギフテッド。突然辞職届を残して失踪したが、この度科捜研に復帰した。鼻が強いタイプ。

梅木音葉
科捜研所属。久美子とは所属前から知り合いだった。音楽と同じだからプログラミングも出来るとのこと。耳が強いタイプ。
127 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 21:59:56.88 ID:29cK37xH0
高峯ビル

相原雪乃
高峯ビル2階、喫茶St.Vのマスター。お嬢様だが自立し、自分の夢だった喫茶店を営んでいる。立てこもり事件では、事件解決に貢献した。

安部菜々
喫茶St.Vのウェイトレス。メイド喫茶の店長に勧められ、St.Vに勤められるようになった。ウサミンメイドサービスは無料で可能、ただし繁忙期不可。

槙原志保
喫茶St.Vのウェイトレス。良く動きよく働く原動力はパフェ。今の規模ならフロアを一人で回すことができるらしい。

海老原菜帆
喫茶St.Vでアルバイトをしている女子高生。フロアやキッチンのお手伝いだけでなく、和風ラインナップ拡充にむけて情報収集や試食を担当しているとか。

太田優
高峯ビル1階、美容室Z−ARTに勤める美容師。お喋りでウワサ好き。最近はまゆと共闘して、のあの長髪保護プランに取り組んでいる。

星輪学園

高森藍子
まゆのクラスメイト。穏やかな性格な女の子。まゆと一番早く打ち解けたそうだ。

川島瑞樹
まゆのクラスの担任。お喋りが得意な花の28歳。口数の少ない副担任とあわせて、話す量は2人分らしい。

クラリス
星輪学園の住み込みシスター。倫理と宗教の担当教員でもある。生徒の悩みを日々聞き、力となることを目標としている。
128 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 22:00:34.46 ID:29cK37xH0
キュレイターサイド

古澤頼子
『キュレイター』。間接的に事件を引き起こし、人の様子を観察している。現在、行方不明。

渋谷凛
西園寺琴歌を殺害した犯人。実家の花屋を両親と身代わりごと焼殺し、書類上は死亡している。

水野翠
殺し屋。弓矢と短刀が得物の暗殺者。星輪学園の3年生。言動は自罰的でヒステリックと、弓道部の主将を務めていた普段の姿とは異なる。

桐生つかさ
GP社の社長。表向きは学生レベルの事業をしているが、裏では人や物資の手配、真っ当でない仕事の仲介などを行っている。

井村雪菜
『化粧師』。希砂二島の事件を引き起こした張本人であり、死化粧や他人に化けてメッセンジャー行為などを行っている。海外でも活動しているらしい。

イヴ・サンタクロース
爆弾の製造・販売、時に実行を行うサンタクロース。トナカイと呼ばれるメンバーと共に犯罪行為を行っていた。都心迷宮で翠に殺害された。

佐藤心
爆弾魔。爆弾と発火装置を製造していて、彼女の作品は今もまだ存在している。犯行後に自殺。

吉岡沙紀
『ペインター』。西川保奈美の事件で見つかった色が塗られた布や、街中の落書きを担当していた。
129 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2018/03/14(水) 22:01:15.89 ID:29cK37xH0
シリーズリスト・公開前のものは全て仮題

高峯のあの事件簿

第1話・ユメの芸術
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1472563544/
第2話・毒花
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1475582733/
第3話・爆弾魔の本心
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1480507649/
第4話・コイン、ロッカー
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1484475237/
第5話・夏と孤島と洋館と殺人事件と探偵と探偵
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1503557618/
第6話・プレゼント/フォー/ユー
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1513078349/
第7話・都心迷宮
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521022496/
第8話・『佐久間まゆの殺人』
第9話・高峯のあの失踪
第10話・星とアネモネ
最終話・銀弾の射手(完)

更新情報は、ツイッター@AtarukaPで。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/14(水) 23:16:11.87 ID:SIzfTmbE0
四年前という事実に震える乙
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/15(木) 05:26:18.71 ID:UMn4i0AgO
次はどうリメイクされるか楽しみ
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/15(木) 08:45:19.79 ID:Ldk6sZ/ho

今回も読みごたえがあって面白かったです
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/15(木) 12:24:47.57 ID:cwZf4mMoO
頼子の邪悪ぶりガクセになるSS
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 01:59:42.31 ID:/BwiKsnho
1ヶ月も気付かなかった……
次は例の話すなぁ、
前シリーズのときはうちの担当さん、元子役なのにのあさんに飲まれたりして設定活かせてもらえてなかったし
今度は目立つといいなあ
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