【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88

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491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:43:48.05 ID:Ba0DEi5B0

重巡「まぁ、あんたは頑張ったよ。面白かった。退屈しのぎにはなったさ。」

重巡「太平洋には骨のある、根性座った奴らが多いねぇ。」

ポーラ「んん…、褒められるのは悪い気がしませんねぇ…。」

重巡「……、その艤装の煙突に書いてあるクロバーリーフに唐辛子の意匠。」

重巡「昔に見たことあるな。」

ポーラ「やっと思い出したかこのスカポンタン。」

重巡「ははぁ。成程ねぁ、姉妹の仇討ちか。実に、実に殊勝な心がけじゃないか。」

重巡「ただ、その願いも叶わずここで妹もまた私の手にかかると。」

重巡「実に喜劇じゃないか!」



笑いながら語る重巡棲姫。



ポーラ「あー……、あんたに伝えたい重要な事があるのだけど?」

重巡「あん?」

ポーラ「いいですか?一度しか言わないのでそのボロ耳よーくかっぽじって聞きやがれ。」



自分の首にかかる重巡棲姫の手を両手でやや引き離し話しやすくした状態で会話を続ける。



ポーラ「まず、一点。今のポーラは海面に立っていません。」

重巡「?」

ポーラ「次にもう一点。ポーラは現状一発も。そう、一発も被弾していません。」

重巡「お前、何言っているんだ?」

ポーラ「そして、最後に一番重要な事。」

ポーラ「絶望とは幸せの絶頂から叩き落される時が最も大きくなる。」

重巡「何いってんだお前?」

ポーラ「今、そう、正に今だ。」



ポーラがそう言い終えた。まさにそのタイミングだった。

炎が壁として立ちはだかりその姿を捉えることの出来ない向こう側。

ポーラと重巡棲姫の戦闘はそれぞれが望んだこともあり邪魔が入らない状態。

であった、いや、故意にポーラがそう思わせていた為に思考の完全に外からの。

492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:44:36.64 ID:Ba0DEi5B0





北上「片舷20門、全40門。」











北上「93式酸素魚雷!やっちゃってぇ ―――――!」





493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:47:32.09 ID:Ba0DEi5B0

その速力45kt

弾頭重量は艦艇用の増量型の三型のため780kg

その無機質な死神達の群が一斉に海面を走り重巡棲姫に襲い掛かる。

死神達は接触式信菅であり触れたものの首を切り落とす。

始まりは一本の命中。それによる爆発が周囲の魚雷の誘爆を起こし一気に爆発。

爆発による衝撃波、爆風、炎熱。それらは周囲で戦闘していた雪風達の元にも届き。

ポーラの艤装から撒かれた油についていた炎さえも消し飛ばす程の物であった。



北上「ポーちゃんは生きてるかなぁ?」



重雷装巡洋艦の魚雷一斉射。

その量は姫、水鬼級達を屠るに余りある量である。



ポーラ「かろうじて〜……。」

北上「あら――。セクスゥィー。」



艤装の全防御能力集中での防壁に制服による反応装甲、

それら全てで爆発の衝撃を和らげてなお。



ポーラ「あと少しで轟沈でしたよぉ〜。」

ポーラ「でも、北上ならポーラの意を汲んで

    容赦なく撃ってくれると信じてましたよ〜。」

北上「相方が覚悟を決めたんだ。」

北上「それならその覚悟に応えるのが相棒ってもんでしょ?」

ポーラ「流石の北上です〜。」

北上「よせやい。照れるぜぃ。」



そうなのだ、ポーラは万一に備え、そう、自身が仕留めそこなった時。

その最悪の事態まで想定して備えていたのだ。

重巡棲姫と最悪刺し違えるまでを考え、最後は北上の暴力的物量の魚雷による飽和攻撃。

自分が囮となり相手の動きを止めさせ注意を引く。

足が止まった艦への魚雷は目を瞑っていたとしても当る。



ポーラ「流石に機関が死んでますね。浮いているのが不思議です〜。」

北上「ポーちゃんってこうみるとグラマラスだね。」



制服が形をなしていないためその服下から覗くサイズのよい胸を眺めながら北上が語る。



ポーラ「おっぱい揉んでみます〜?」ユサユサ

雪風「それもいいですが、敵旗艦の死亡確認です。」



ル級達を鎧袖一触とばかりに一掃し爆心地のポーラの元へ現れた雪風が気を引き締める一言。
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:48:49.92 ID:Ba0DEi5B0


雪風「大願成就、おめでとうございます。」

雪風「ですが、敵の死体を確認するまでは気を引き締めてでお願いします。」



旗艦としての一言。



北上「だねー。さぁて、敵さんは何処へ吹き飛びましたかねぇ。」



ポーラがもといた位置からかなり吹き飛ばされていた事を考えれば

重巡棲姫もかなり吹き飛ばされていておかしくは無い。



スパ「雪姉さん。あれ?重巡棲姫の体?じゃないですかね?」



周囲の戦闘もあらかた片付き既に残敵掃討に移っている状態の中で

波間に漂う重巡棲姫らしきものをウォースパイトが発見。



ポーラ「おぉ。いい形になっているじゃないですか〜。」


その視線の先には胸から下がなくなり腕も右しか残っていない。

どうにか人と判別できるだけの状態の重巡棲姫が文字通り波間を漂っていた。

495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:49:58.73 ID:Ba0DEi5B0


ポーラ「美人になりましたねぇ〜。」

北上「随分過激なダイエットに成功したもんだ。」



そして、ポーラがそれの髪を掴み引き上げた。



ポーラ「ざまぁないねぇ。今の気分はどうだい?」

ポーラ「もっとも生きて口が利けるかどうか知りゃぁしないが。」

ポーラ「姉さまの仇も無事討ち取れました。」

重巡「……、さすがあいつの妹と言ったところか。」

ポーラ「まだ喋れますか。今、楽にしてやりますよ。」

重巡「まぁ、まてよ…、こんな状況じゃなにも出来ねぇ。最後の話くらい聞けよ。」



重巡棲姫がポーラに吊り下げられ、



重巡「お前の姉は…。煙突にクロバーリーフと太陽のモチーフをペイントしていなかったか?」

ポーラ「えぇ。それが何か?」



いぶかしみ、眉根を潜める。

自分の艤装のファンネルマークに見覚えがあれば

姉のファンネルマークに覚えがあってもおかしくはない。

瞬時にその考えにいたるのだが重巡棲姫の質問には言外の含みがあった。

496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:50:52.17 ID:Ba0DEi5B0

重巡「お前の姉なぁ?生きてるよ。」

ポーラ「!」

重巡「地中海でな?深海棲艦の地中海方面軍第二艦隊旗艦やってる。」

重巡「まぁ、ここで私が死ぬから格上げで地中海方面軍の総旗艦だ。」

重巡「めでたいよなぁ〜?」



ニタリと笑った後に大音声での笑い声があたりに響く。



ポーラ「そんな、姉様が生きていて。」



知りたくなかった事実。その事実がポーラの反応を遅らさせた。



重巡「さようならは…、なんて言うんだったかな?」

重巡「あぁ、そうだった。Addio だったな。」

重巡「これで最期だ。Addio !」

雪風「ポーラさん!離れてください!」



重巡棲姫が自身の最期の力を集中させての道連れの自爆。

その瞬間、周囲を爆炎と爆音が空間を支配した。

497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 01:03:57.14 ID:Ba0DEi5B0
本日の更新はこれにて終了です、なにげに1年近くやっているのかと少し感慨深くもあるところ
カプサイシンの結晶ですが市販されたもので1600万スコルビィル値だそうです
デスソースの一番辛い奴で10万スコビィル値、やばさはお察し下さい
因みに素手で触るなどは危険とされゴム手袋の着用が推奨されています(触って何かあっても知らないよという奴)
ご質問いただいていた陰陽道系統の1の設定としては陰陽道自体が道教、神道、密教系仏教のごちゃまぜなので


師匠 龍驤 弟子雲龍型 →道教系陰陽道(キョンシーとかがこの辺りの系列)

飛鷹、隼鷹       →神道系陰陽道(神、英霊を降ろす系列)

あきつ丸        →真言密教系陰陽道(蘆屋道満、お化け、妖怪とかの類の系列)


とこんな感じでの設定です、本編に関係ないところではあるのですが…


鯖落ちでお読みいただいていた方々が戻ってきて下さっているのか多少の不安がある状態ではあります
レスいただけてると、読んでくださっている人いたんだよかったと胸をなでおろす状況
こういう内容のSS増えないですねぇ……、ほんと、なんでなんだろうか……
感想レス、応援レス、本当にありがとうございますでは、また次回の更新でお会いしましょう!
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 01:41:25.28 ID:FCaRUqGd0
おつ
艦娘が深海側にいることがあるってのが本当なら逆もあるのかもね
立川流真言(風説)で姫級を虜にして引き連れる秘匿艦隊とか
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 03:14:24.89 ID:rbTkvgYQ0
乙!
相変わらず面白い!続きが楽しみ
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 10:16:50.48 ID:Y4fwZyQcO
乙です。
海外艦の所属事情がそれぞれ違って面白いです
501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 10:53:58.86 ID:qWzHYLQDo
おつ!!
502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 23:18:03.05 ID:RYCVlyX/0
いいねぇ、痺れるねぇ、ポーラさんょぉ
503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:18:31.53 ID:voPzULVm0
皆様こんばんは
こっそりと更新に来ました
今回の更新部分は艦これ二次SSではあんまり語られない?世界情勢というかその辺りが少し
エリア88ベースである以上触れずにいる事が出来ないわけで……
読み飛ばしていただいてもそれ程問題はないかな?
では、お時間よろしければ本日の更新にお付き合いいただきますようお願い申し上げます
504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:21:23.49 ID:voPzULVm0

悲痛な叫び声が響く。

今まで彼女と同行した者がいたとすれば

恐らく初めてと言えるかもしれない叫び声。



雪風「あぅぅぅ!」



とっさで重巡棲姫とポーラの間に割って入った雪風が

その体に全ての衝撃を受け吹き飛ぶ。

いかに改装を重ね装甲を増しているとは言えその装甲はあくまで駆逐艦。

ポーラを守った事により雪風はあっさりと大破した。


雪風「……、涼しくなってしまいました。」イテテ

ポーラ「雪風!?」

雪風「雪風はいいワインを所望します。」ニマァ



大破ながらにまだ余裕の有り気な雪風。



ポーラ「……、Si、戻ったらバローロの当たり年を開けましょう!」



明るく応じるポーラを確認し。



雪風「第一分遣隊総員傾注!」



一匹の獣として敵拠点を屠りつつあった部隊の全員に聴こえるように連絡。



雪風「旗艦雪風大破の為、旗艦権限を戦艦ウォースパイトへ移譲します!」

スパ「うぇぇぇ!?」

雪風「ウォースパイトさん、あとは任せましたよ。」

雪風「雪風は後方へ下がります。」

北上「やー、これは責任重大だねぇ。まぁ、私は二人を曳航して下がるからー。」

北上「がんばってね。」ニヤニヤ



そして、ウォースパイトへの個人無線へ雪風が一言。



雪風「島風さんの無念晴らしてきて下さい。」

雪風「雪風は一旦後方へ下がります。」

スパ「えっ、でも雪姉さん!?自分でいいんですか?!」

雪風「雛が巣立って鷲になるのを見せて下さいな。」

雪風「しれぇから説明を受けた作戦、Operation Woodpecker (きつつき作戦) 」

雪風「成功に導いてくださいよ?」



プレッシャーとも期待の一言ともとれる言葉をつげ雪風達は海域を離脱した。
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:22:43.82 ID:voPzULVm0

強襲揚陸艦内



不知火「司令。雪風からの連絡で大破の為後方へ下がるとの事です。」

不知火「旗艦はウォースパイトさんへ引き継ぐと。」

提督「珍しいな。雪風が大破するとは。」

不知火「此方に向け同じく大破されたポーラさんと向って来ています。」

提督「ポーラも大破か。」

不知火「はい。大破については2名だけだそうです。」

提督「第一分遣隊の状況は?」

不知火「敵拠点の破壊、旗艦の排除に成功、ウォースパイトさんの指示の元、

    第二分遣隊との集合地点めざし艦隊の再編成を行っています。」

不知火「また、残敵追討についてはリスク考慮の上で不要判断をウォースパイトさんが下しています。」

提督「うん。及第点だ。状況完了までの時間は?」

不知火「完了まで後2時間程を予定と報告がありました。」

提督「そうか。長門達の方の状況も確認してくれ。タイミングが大事だからな。」



さも当然、想定内といわんばかりに淡々と確認作業を行う提督。

そして、それに従う不知火。

艦橋内の海図を再度見つめなおし、ふんと鼻をならした所に大佐が話しかけてきた。

506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:29:41.89 ID:voPzULVm0

大佐「少将、その?」

提督「どうなさいました?」



その顔は大丈夫なの?とでも言いたげ。



大佐「そちらの鎮守府に所属の雪風といいますと

    Queen of Heartsだったと思うのですが?」

提督「ハートの女王ですか。随分なコードネームが割り振られているもんですな。」

大佐「そちらの登録名は死神や生還者だったと思うのですが。」

提督「えぇ、それなら間違いなくそうですが。」



それがどうした?



大佐「そちらの鎮守府において相当な戦力と認識しているのですが。」

提督「英雄を頼みとして作戦立てをする程おろかじゃないですよ。」

提督「戦力としてみた時に一人ひとりの能力が高いという事は実に重要ではありますが。」

大佐「英雄頼みになるような戦場は既に劣勢であるという基本ですね。」

提督「おっしゃる通りです。

   一人の英雄が戦況を左右するような事というのは正直いいとは言いがたいですね。」

提督「戦争というのはいかに標準規格の兵士と物資を

   いかに効率よく消費と配置で勝つかが重要ですので。」

大佐「確かに英雄は所謂『 規格外 』になってしまいますね。」

提督「私が率いている連中が一般鎮守府の理の外にある事は自覚しています。」

提督「ですが、それを頼みとしての作戦の立案は後に繋がらない。」

大佐「少将はその後の事もお考えと。」

提督「そうです。我々は此処に常駐する軍ではないですからね。」

提督「今いる連中で後の対処も出来るように見本を見せないといけないわけです。」

提督「持てる力全てで相手を叩き潰しますが、

   一般兵レベルでも倒せるというやり方を覚えてもらわにゃならんのです。」ハァ



言外に出さぬ現上層部、そして味方である正規軍連中への不満。

まさしく自分の部下達を独楽鼠の如く北へ南へと

動かざるを得ない状況を溜息と共に吐き出したのだった。

そして、それは同盟軍であり本来の太平洋の盟主である米国。

目の前の相手への不満でもある。

だけに大佐が述べた質問はある種のカウンターパンチであり不意打ちだった。

507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:31:58.34 ID:voPzULVm0

大佐「時に話は変わりますが、

   そちらに英国王室の血を引かれる方がいらっしゃいませんか?」

提督「!?」

大佐「そのお方は次期国王陛下としても家柄、血筋、序列が申し分ない。」

大佐「実に次期国王として相応しいと思いませんか?」



少しばかりの沈黙。



提督「……。」

提督「その様な高貴な出自の艦娘がいるかどうかは分かりかねます。」



正しく後頭部をハンマーで殴られた衝撃。

普段の提督であれば質問の意図を考える為に思考を巡らせられたであろう。

だが、内容がまったくの不意打ちだっただけに

考えるのが一瞬遅れ動揺したのが顔に出てしまった。



大佐「初めに御紹介いただいたように表情を隠せない方のようだ。」

大佐「 『 艦娘 』とは私は一言も言ってはいませんよ?」

提督「!!」



動揺したが故の失言。



大佐「我が国は大西洋戦線における現英国政府を見捨てる選択をとろうとしています。」



あっさりと質問をした理由を述べ、人懐っこくニコニコとした顔で提督の顔を覗きこむ大佐。

508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:33:37.84 ID:voPzULVm0

提督「……、その、どうしてそのような?」



鏡があれば映る顔は引き攣った顔なのは間違いないだろう。



大佐「お教えしたいのはやまやまですが宜しいのですか?」

提督「…………。」



先ほどから我が国を強調する大佐。これはつまり個人で国を代表できる人物。

米国大統領が関わっている、それもアフリカや中南米の後進国の国家転覆等ではなく。

先進国、それも国連での五大常任理事国の一国を紐付きにしようという謀略。

その話しを聞くのは正しくパンドラの箱を開けるが如しであり底に希望は残らない。

だが、提督は既に、そう、うっかりと決定がされた理由を尋ねてしまった。

これは見ようによっては協力はしないが容認はすると言っている様なものである。

さらに提督の失態が有るとすれば

初めに英国王室関係者、王族がいる事を強く否定しなかった事。

そればかりかうっかりと艦娘にそれがいると言ってしまった事。

これは以前に明石との会話でも漏らしたように何某かの切り札になるかもしれないと、

面倒ではあるが使い方によっては強力な毒にも薬にもなる代物と判断していたという背景がある。

その所為で大佐に匿っているという情報を与え、

その出自を把握している事を自白したも同然なのである。

そして、続いた衝撃の計画。

初めに鍵を握っている人物が自分の手元にいる事を仄めかしてしまった為にその計画を阻止すればどうなるか。

そして、阻止できない事を提督程の人物ともなれば理解が出来ない訳ではない。

ゆえに、積極的に協力は出来ないとなれば消極的に何もしないという選択肢しか残らないのだ。

つまりは沈黙と黙認、ということである。それを理解し、大佐が言葉を続ける。


509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:35:45.02 ID:voPzULVm0

大佐「考えられているほどに最悪の事態ではありません。」

大佐「我が国はあくまで現英国政府が

   信用の置ける友好的政府へ交代していただきたいだけですよ。」



それは、つまり、現政府は信用に値しないという事。それも政権交代を考えるほどに。

でも、どうやって?



大佐「現女王陛下は高齢で公務を全て代理の方が行われている状況です。」

大佐「新国王の即位は英国民が望んでいる状態でもあります。」



話が見えてきた。国王が変われば国璽も変わる。

英国政府の公文書に押される印は殆どが当代国王の戴冠する姿を表した国璽である。

つまりは現女王から印を預かる大法官を含めて英国政府の一部、

或いは全部が勝手に印を押し国家を正しく我が物としている。

大法官の任務は庶民院からの議員が選ばれなくはないが

慣習として貴族の有力者が選ばれ、そして大臣としての権能は法務に関わる。

地味ではあるがその役割は意外と大きく、なにより英国を体現する貴族社会の有力者のみがなりえる仕事。



大佐「新国王への忠誠を盾に英国貴族達を割る予定です。」



それは今までの国璽が変わるという事実をつきつけ

敵か味方かの踏み絵を貴族たちへ迫るという事でも有る。

議会と貴族社会に睨みの利く要職が変わる。

それはそのコミュニティに所属する者からすれば正しく青天の霹靂であろう。



大佐「これから先の話は世界の趨勢にも関わりますので

   少将にも覚悟いただきたいのと、一つ条件を飲んでいただきたい。

   我が国からの駐在武官をそちらの鎮守府で引き受けていただけないでしょうか。」



それは同盟国全ての政治について話が大きくなっているという意味。

旧き友人から託されたバスクリン缶の中身に、先の保険の引受人の一覧。

時雨やウォースパイトが88鎮守府に流れ着いた理由。

一見関係ないように見える、一つ一つの点と点がつながり線になる。

510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:38:18.65 ID:voPzULVm0


現英国政府は深海棲艦と何某かの

それも同盟国に対し隠すほどの密約を結んでいるという事。

大方、カリブに浮かぶバージン諸島がそれらの裏取引の舞台になったのであろう。

考えてみれば当然とも言える。

日本のように自国で艦娘を独自開発という事無く、まして、島国。

大陸諸国であるドイツ、フランス、イタリアといった国と比べ

海上封鎖ともなれば圧倒的な不利が出る。

加えて多くの海外領、それらの安全の保証は盟主であるイギリス本国の責任でもあるのだ。

深海棲艦達と取引せざるを得ないだけの事情はある。だがしかし。

世界はそれをどう判断するであろうか?

ましてや現状として世界の海で船の航行の安全が保たれていない状況において。

英国が島国であり自国周辺に欧州棲姫や水姫といった強個体がいるにも関わらず国を保てている。

ドイツ、フランスが軍港等の軍事的重要拠点を奪われ、

イタリアが地中海の制海権を完全に掌握していない状況から見ればどうであるか?

日本からの救援部隊が幾度か送り込まれたのが敵深海棲姫達を容易に撃退出来たのも実は出来レース。

疑われない為の猿芝居。更に言えば戦後の事まで考えた二枚舌外交。

英国は深海達と手を組み人類側を裏切っている可能性まで有り得ると言う事である。

そして、考えたくは無いが最初に艦娘を作り出した日本もまた島国なのである……。

自国の利益を最大限にするのが外交ではあるが

世界のリーダーを自負するアメリカからすれば英国のそれは容認できるわけがない。

また、似た地理的状況の日本に疑念の目が向くのも納得のいく理由では有る。

511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:39:51.57 ID:voPzULVm0


提督「……、条件ですが、駐在武官の派遣という事でしたら

   駆逐艦娘をお願いします。」

提督「この一線は越えられませんな。」



提督が黙ること数分。考えられる限りの可能性を考え出した結論。



大佐「この一件はお分かりかと思いますが貴国政府にも無関係ではないです。」



そう、今回の一件、現在、救援に向っている所が

襲撃を受けているという情報が故意に握りつぶされた。

恐らく、遅れていたという表現に置き換わるのだろうが。

それを自分が察知し撃退したとなれば。



大佐「そちらの国内の敵対勢力。そうですね。

   そちらに少将提督は皮手袋を投げつけたようなものでしょうか?」



ニコニコと満面の笑みを浮かべる大佐。

救援を遅らせることが予め密約として成り立っていたのであれば

それを壊した提督は当然の如く敵となる。

提督の階級が責任と仕事を増やし動きを鈍くする事を

狙ったかの様に作戦前に上がった事を考えると敵は自ずと見えてくる。

それは間違いなく軍上層部。人事を自在に出来る立ち位置に居る。

そして、時雨をここに叩き込んだ相手に繋がっているだろう。

512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:41:34.28 ID:voPzULVm0


大佐「駐在武官で駆逐艦ならば受け入れていただけるという事でしたら……。」

大佐「そうですね。サミュエル・B・ロバーツを派遣いたしましょう。」

大佐「駆逐艦でなければ少将提督も安心出来ないでしょう?」



想定内、いや予めその答えを予定していたと言わんばかりに艦娘名を挙げる大佐。

戦艦や空母といった艦娘の派遣はすなわち派遣先を

武力制圧する可能性も見据えているという意思が見えなくも無い選択。

また、逆の見方、提督と敵対する相手からみれば

米軍から戦力の支援を受ける事が容易であるという誤ったメッセージを送ることになる。

敵がはっきりとしていない状態で緊張をより深めるのは賢いとは言いがたい。

それらを抑えつつでのギリギリの妥協点が駆逐艦なのである。

さらに言えばそれらを配慮する必要が有るという事は

米国側も日本国内の敵をはっきりと特定しきれていないということでもある。



大佐「財閥系の企業、軍上層部。我が国の諜報機関の全力で調べても解明は難しいですな。」

大佐「何せ人種そのものが違いますから。」



欧米の顔つきとアジア人の顔つき。当たり前といえば当たり前。

直接動けば人種の違いは枷となる。



大佐「我が国は戦後もリーダーであり続けることを自認しています。」

大佐「少将の協力、感謝いたします。」

この一言に含まれる意味。

それは日本が戦後に艦娘を利用しての海洋権益の拡大は元より、

現在の提督にとっての不明な敵が英国とも繋がっている可能性、いや繋がっているという事。

そして、米国は決してそれを許さないという強い決意表明であり

敵対勢力は容赦なく制裁するという事。


513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:43:12.62 ID:voPzULVm0


大佐「太平洋の盟主は今後も中国などでは無く我が国です。」



中国をわざわざ挟むという事は国内の敵は中国とも通じているという明示。



提督「……。軍人の私が政治に嘴を挟むわけにはいきませんので……。」

提督「とりあえずは目の前に集中しましょうか。」



自分の手には余る話し。関わりたくないというのが本音。

そして、それは望むと望まざると今後に関わってくるといううんざりするほどの現実。



提督(目の前の深海連中を叩きつぶすだけの方がどんなに楽か。)



目の前でニコニコと笑う相手の顔が

これほど憎らしく見える事はこれからもまずはないだろう。

頭を切り替え、やるべき事。再び海図に目を落す提督だった。

時を遡り雪風達が重巡棲姫達と事を始める頃と同じ時。

長門達もまた敵の部隊と事を構えようとしていた。

514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:44:43.43 ID:voPzULVm0


深海陣営 後方集積所守備隊 泊地

戦艦棲姫は一人、思考を巡らせる。



戦艦「……、あの指揮官が出てきていたら負けねぇ。」



脳裏によぎるは北方水姫が鮮やかに負け、沈んだ先の一戦。



戦艦「それに、あの時の、あの場所に居た戦艦の艦娘達。」



そして、自身の目の前で行われた鮮やか退き口。



戦艦「英雄に頼らなければいけない戦場は駄目だけれど

   英雄というのは時として全ての事象を引っくり返すトリックスター。」

戦艦「世の理を無視する事の出来る者。」

戦艦「この泊地の位置は本隊への補給拠点、

   そして、周辺敵鎮守府への睨みを効かす意味でも重要な場所。」

戦艦「巧妙に隠してはあるけれど。

   それを理解できる相手、そして、こちらを先に排除する事を目的としてくる相手ならば。」



本隊の後ろを取るつもりであるという意思は明確。

さらには重巡棲姫が守る泊地へまで敵が部隊をまわしている可能性は充分にある。

そしてその二つを襲撃、壊滅された場合は。本隊の退路が絶たれる事になる。

515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:46:21.97 ID:voPzULVm0

戦艦「敵が優秀だと、相手が打つ手を予想しやすいからいいことだけれど。」



最悪の結果になる事はいただけない。いや。そこまで出来る相手ならば。



戦艦(部下の兵の質も当然良いでしょうね。)

戦艦(敵が羨ましい。)



将として上に立つ者であれば

配られた手札で戦わねばならないのは兵家の常だが。

無いものねだりをしたくなるのも性である。



戦艦「タ級ちゃん、頼まれごとをお願いできるかしら?」



迎撃に出たはずの駆逐棲姫が既に水底に沈んだ事は把握済み。

敵が愚かしい事を願うは無策の極み。



タ級「戦艦棲姫様。用事と言うのは一体?」

戦艦「駆逐古姫様に意見具申を。」

タ級「駆逐古姫様にですか。」



姫級は艦種の違いはあれど対等。

これは基本原則ではあるが何事にも例外という物はある。

名前に古(いにしえ)とわざわざつけられる様に

その個体は極初期から確認されていた。

艦娘システムがある程度制度化し同盟国と国際コードネームで

情報の共有を行っていく中で割り振られた名前が古姫。

それは姫達の中でも古(いにしえ)とあえてつけられる古参兵である。

駆逐艦というその艦種も先駆けを誉れとする艦種という事も考えれば、

生き残り、そこに存在する事の意味は自ずと分かるというものである。

なればこそ姫級であれば敬意を払わないものはおらず、

水鬼級指揮官も参謀職として重用したりしている。

そして、この戦場の深海側総旗艦である戦艦水姫もまた、

彼女を参謀として用いていた。

516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:49:09.78 ID:voPzULVm0

戦艦「私達のいるこの泊地、もしくは重巡棲姫が守っている泊地。

   どちらかが落ちるような場合があれば即時撤退をと、駆逐古姫様に伝えて頂戴。」

タ級「無線での連絡ではなくですか。」

戦艦「今は無線封鎖中よ。それに戦う前から撤退の話しを無線でしてみなさい。」



誰が聞いているか分からないのに、いらぬ動揺を招くでしょと察しの悪い自身の部下を叱責。



戦艦「あの方ならば私からの言葉を聞いてくださるわ。」



既に損切の期限は過ぎている。戦艦棲姫は確実に理解していた。

そして、自分たちの将である戦艦水鬼に思いを馳せる。優秀ゆえに負け知らず。

百戦百勝、全戦全勝、常勝無敗。

で、あるが故に。部下からの意見を聞き入れたがらない一面もある。



戦艦(今回の負け戦を負けと認めるまでには時間が掛かるでしょうね。)



タ級が駆逐古姫へのメッセージを持ち泊地を出て行くのを見送る戦艦棲姫。



戦艦「今度の戦で戦艦水鬼様は一回り大きく、より強き将へなられるはず。」

戦艦「将は大敗をして真の名将になる。」

戦艦(なればこそ。命惜しむ訳にはいかないわね。)



駆逐棲姫への意見具申が仮に通ったとしても

いままで掛けた損害をそうやすやすと損切出来るとも思えず。

ましてや敵の拠点は後一歩で陥落寸前まで来ている。



戦艦(ゴール目前での撤退なんて考えないわよね。)



総旗艦ではなくあくまで艦隊の一員であるがため

思考に余裕があるからこそ見えてくる現状。

総旗艦であれば恐らくは自身も損切のラインを見誤っているであろう事。

駆逐古姫へ意見具申した撤退を考えるラインも実は遅いのではないかと少し思っている事。
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:54:55.21 ID:voPzULVm0

戦艦「全てに時遅し。」

戦艦「なれど…、なれど退くは恥。死して時を稼ぐもまた配下の将の勤め。」



惜しむらくは。



戦艦「深海棲艦としての今後の行く末を見届けられない事かしらね。」



戦艦水鬼がこの方面の指揮官として移動をしてきて共に巡った戦場の思いに浸る。

今まで上官が無能であったが故に放置されてきた敵の突出部への侵攻作戦。

先任へ幾度かその重要性について意見具申をしたことはあったが無視されてきたもの。

ゆえに戦艦棲姫も放置を決め込んだ突出部。

新しい総旗艦は幾度かの戦役を過ごした後、自身の才能でその重要性に気付き

敵拠点の奪取を計画、立案、実行。

それは戦略的勝利に今一歩のところまで迫ってはいた。

戦艦棲姫に己の命を掛けてもよいと思わせるほどの才能の片鱗。



戦艦(敵の指揮官が有能であったという事ね。)

戦艦(あの世があるならば。)

戦艦(敵の指揮官が死んだ後にでもあの世で教えを請いたいものね。)



戦艦棲姫は指揮官として優秀な将である為、

現状、自分の命が助からない事を悟っている。

敵の偵察機などは来ていないが間違いなくまもなく接触するはず。

願わくばその命、燃え尽きるまで、立ったままで死ぬることを願い。

彼女は配下の深海棲艦へ即時戦闘態勢を取る事を命じたのだった。

518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 01:02:30.77 ID:voPzULVm0
本日の更新これにて終了です

どうにかこのスレ内で救援の話は終われそうな感じです

88メンバーでのスピンオフ?的番外編は多分、別スレになる予感

それまでにはスレ建てバグがなおっているといいなぁと思います

Rに建てられるとか困りますね本当、アゲ荒しがいるのか特定のスレがあげられているのが目に付きますし

管理人さん管理して……の現状こまりました、愚痴的な部分が多く申訳ありません

本日も、長々とした本作品をお読み頂きありがとうござました

こういったシリアス系SSが増えない中ニッチなのを読んでくださっている方がいるのは本当に感謝です

応援レス、感想レス、いつもありがたく拝読しています

どうぞ、お気軽にレスいただきますようお願い申し上げます
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 01:12:06.90 ID:GRb6sIzI0
乙です
何やらきな臭くなってきましたが次回以降の更新も楽しみです
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 01:18:29.50 ID:NwSxQws40
あれだけ自分が政治的に危険な状態にあり尚且つ目の前にいる人物が危険だとわかっていながらこの大失態
このままじゃ新設された日本州から移動鎮守府でも用意してトンズラこくしか生きる道がなくなりそうだ
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 08:42:22.26 ID:ZRuABN9GO
乙!
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 00:12:04.54 ID:VuM8kfT60
久しぶりにケルベロスよんでてふと思いついた一発ネタ
よろしければ御笑納ください
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/05(月) 00:13:02.78 ID:VuM8kfT60

鹿児島県 海軍 岩川基地



大淀「提督、救援要請です。」

提督「救援依頼を受理した。」

提督「至急、救援を送る。」

大淀「相手先へは?」

提督「30分程我慢してくれと連絡を。」



太平洋某所



陽炎「後、30分我慢しろですって!?」

陽炎「30分も持つわけが無いわ!」

陽炎「だいたいこの近くの鎮守府から救援に来るっていったって30分でなんて無理でしょう!!」

叢雲「……。」

叢雲「救援を30分で届けるっていったのね?」

陽炎「えぇ、そうだけど。」

叢雲「もしかして『 明王 』が来るのじゃないかしら?」

陽炎「明王ってあの特殊作戦群の?」
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/05(月) 00:14:00.41 ID:VuM8kfT60



キィィィィィ



機長「高度維持。」

副機長「了解。」

機長「これより1分後、荷物を投下する。」

副機長「了解。」

機長「こちらB1輸送隊、近隣の友軍へ連絡。まもなく部隊の輸送が完了する。」



ガポン



「こちら不動隊。降下準備良し。」

機長「了解。爆弾庫の扉を開ける。Good luck!」



バシュッ



陽炎「ウィングスーツが6人!?」

叢雲「来た!戦場の死神!軍神!」



シュー!



バッ!



ドン!



叢雲「空中からの砲撃が敵に命中したわ!」



「ガァァァ!」



叢雲「艤装にペイントされている部隊マークは不動明王!間違いないわ!」

叢雲「あれは、四菱重工製 重火力強化型外部追加艤装 紅朱雀 試製甲型!」

叢雲「他の戦場で一度だけ見たこと有るわ!」

叢雲「あれは戦場の伝説!不動明王隊よ!」

525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/05(月) 00:14:57.25 ID:VuM8kfT60

超音速の爆撃機をただ前線に兵士を送るためのタクシー代わりに利用。

音速の世界には深海棲艦の持つ艦載機がどんなに優秀であろうと。

追いつける者などいやしない。

海軍岩川基地は海に面していない代わりに特殊部隊が配属されたいた。

特殊機動降下猟兵、不動明王隊。

深海棲艦を圧倒的戦力で打ちのめす姿が仏敵を容赦なく討ち滅ぼす

その姿に似ていたことからいつしか戦場の伝説と呼ばれるようになった。

彼らは先行試製追加艤装を使用し危機的状況に陥った部隊の救援活動を行っていた。

また、超音速爆撃機を利用した強襲作戦も行い戦果をあげていた。

その追加艤装を用いた艦娘は駆逐艦娘でも戦艦の火力を優に超える。



「岩川海軍基地所属 特殊作戦群 不動明王隊所属 夕雲型 19番艦 」



「 清霜!救援に推参! 」



彼女達が通った後には敵の骸が転がっていたという。

この物語は一人の駆逐艦娘が軍神へと至るまでの物語である。

526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 00:16:41.34 ID:VuM8kfT60
本編すすめず何やってんだ
岩川基地所属の提督の方いらしたらごめんなさい
海が無い基地の岩川って実はこういった感じで艦娘を出撃させてるんじゃない?という
なんとなーくな妄想からの一発ネタでした、お読み頂きありがとうございました
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 00:27:34.84 ID:nQK9sJXH0
軍神(戦艦にはなれず)
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/11(日) 00:21:03.68 ID:gduTkyzB0
戦艦通り越して軍神になったかぁ…
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/11(日) 00:30:11.01 ID:0SQgp8xMo
駆逐艦は一応狭義の軍艦ではないからなぁ
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:44:14.14 ID:N7yw9PNn0
少しだけ本編更新
体調が優れない日が多い…
お時間よろしければお読みいただけると幸いです
531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:45:18.58 ID:N7yw9PNn0

戦艦「敵偵察機に逃げられたのね。」

戦艦「そう、随分と愉快な敵みたいね。」



哨戒に出ていた部隊からの報告に微笑む。

敵の偵察機は戦艦棲姫達のいる泊地を確認後、全力でこちらの迎撃機を振り切り離脱。

離脱時に平文で『 我ニ追イツク敵機ナシ 』と挑発して消えていった。



戦艦「来るのね。」



偵察機が敵泊地を発見し強襲。

各所で戦端が開かれそこかしこに砲煙があがり火蓋は切られた。

532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:46:25.21 ID:N7yw9PNn0

長門「………。」

時雨「どうしたの?」

長門「瑞鶴!」

瑞鶴「何?」

長門「すまないが旗艦を任せてもいいか?」

瑞鶴「ずっとはやらないわよ?」

長門「何、直ぐに済ませるさ。」

長門「時雨。川内と二人で瑞鶴の護衛を頼む。」

時雨「任されたよ。長門はどうするの?」

長門「一仕事だ。」

時雨「そっか。」

時雨「……。Good Luck!」b サムズアップ

長門「あぁ、行って来る。」フッ



そこかしこで戦闘が行われる中、

長門は一人、一番激しく戦闘が行われている所へ向った。
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:48:02.45 ID:N7yw9PNn0


深海泊地 守備隊本隊



戦艦「この首、あなた達雑兵にくれてやるほど安くはないわよ!」ドンドン!

戦艦「さぁ!どうしたの艦娘というのはその程度のものなの!?」



その激戦区では戦艦棲姫が部下を従えず一人で複数の艦娘達を相手していた。

普通に考えれば1対複数となれば多勢に無勢で負ける。

だが、これはあくまで一般論。

相手との力量差が明らかに大きければ大きいほど

複数で戦うほうが不利になる。



戦艦「それを狙っていたのは分かっていたわよ?」



巨大な人型艤装を軽々と移動させ自身の正面に居た艦娘を

背後から他の艦娘が自分へ向けて撃った魚雷で仕留める。

戦艦棲姫は自分を狙った軽巡艦娘の魚雷を自分の艤装を影にして射線を見せず

その背後からの攻撃をさらに利用して正面に相手どっていた重巡艦娘に当てたのだ。

そう、1対複数での戦いは敵が老練であればあるほどこちらの攻撃が味方への攻撃として利用される。

そして、乱戦ともなれば空母艦載機による爆撃も味方への誤爆もある為、ほぼ不可能。



戦艦「あら、足を止めちゃ駄目でしょう?」



陣形を整え一丸となって戦おうと

態勢を立て直し始めた艦娘達の集団に戦艦棲姫は一気に突っ込んだ。



戦艦「他愛の無い物ねぇ。」



陣形の中に突っ込まれると味方同士の距離が近い為

魚雷等の射線が制限されてしまう。

そして、近接距離での砲撃戦になると当然。

534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:49:35.28 ID:N7yw9PNn0

戦艦「私の勝ちよ?」



立て直しつつあった陣形の中に突っ込まれ

中から切り崩された結果、艦娘部隊は全員死亡した。



戦艦「思った程、強くない相手だったかしら?」



闇夜を切り取ったかの様な

漆黒のロングドレスに付いた敵の肉片を手で軽く払う。



戦艦(駆逐古姫様への進言は杞憂だったかしら?)



上空を睨み、敵攻撃機への牽制の対空射撃をしつつ

益体もない事を考えていた時だった。



戦艦「!」ゾクッ

戦艦「この感覚は……。」

戦艦「恐怖!?」



背中に一筋ながれる冷や汗。

敵の姿は見えていない、それでも感じる威圧感。

姫級としていくつもの戦場を渡り歩いてきたが。

とうの昔に忘れたはずの感覚。であるにもかかわらず。



戦艦「再び恐怖を感じる事があるなんて。」



その身に感じるは高揚感。

ドン!

敵の砲弾は自身の目前に着弾した。



戦艦「挨拶代わりというわけね。」



面白い、間違いなく、あの時のあの戦艦が来たのだ。

535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:52:02.23 ID:N7yw9PNn0

ザリザリザリ



戦艦「あなたが砲撃をしたのかしら?」



無線での呼び出しがあり、それに応答する。

恐らくは総旗艦と会話をした際に使われた無線と同じ周波数。



長門「そうだ。」



やはりか。



戦艦「何のようかしら?降伏勧告かしら?」

戦艦「悪いけれどキャッチセールスなら間に合っているわよ?」

長門「ふん。なかなか冗談の出来る相手のようだ。」

長門「お前か?」

戦艦「そうよ。」

戦艦「貴方が?」

戦艦「そうだ。」



なれば。



戦艦 長門「「言葉は不要!!」」



オレンジの砲火に大量の砲煙、砲撃の轟音が周囲に響き渡る。



戦艦(反応の速さは流石ね)



戦艦棲姫の人型艤装についた砲塔が回転し終わる前に舵を切り回避。



長門「私を仕留める心算なら目で追っているようでは無理だぞ?」

戦艦「厄介な相手ねぇ。」ニヤリ

長門(あれだけの巨体を細やかに動かすか。)



高火力、高出力、大きい事はいいことだを地でいく艤装でありながら

長門の攻撃を目で確認した後で回避をする。



長門「戦い難い相手だなぁ。」ニィッ



空母艦載機による攻撃が艦艇に対して有効ともなれば航空主兵論が台頭するは当たり前。

そんな中での戦艦ともいえば時として時代遅れとも揶揄される。

一人の艦娘と一人の深海棲艦。

戦艦という同じ艦種の二人は今、その生まれ持っての役割を大いに楽しんでいた。
536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:53:18.94 ID:N7yw9PNn0

砲撃して離脱。艦砲射撃の基本、同航戦を避け、ジグザグ航行。



長門「その程度の基本を守った所で。」

戦艦「倒せるような相手ではない事は分かっているわよ?」



ガコガコガコ

長門の艤装の第一砲塔、第二砲塔がクロスショットを狙い仰角を修正。



戦艦(第三砲塔はあえて外すわけね)



第一、第二砲塔は散布界を重ねる様に砲撃。

そして、戦艦棲姫の進路を制限する為に第三砲塔は回避行動の先へと砲撃。

戦艦棲姫はその意図を読んでか長門の狙う方向以外へと回避。



長門(流石に見え透いた罠にはかからんか。)



何度かの反航戦の後、先に仕掛けたのは戦艦棲姫だった。

537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:55:15.23 ID:N7yw9PNn0

巨大な人型艤装の腕が海面に向って打ち込まれる。

どどん!

その深海の姫級の全力で打ち込まれた海面からは巨大な水柱があがる!

そして!海水の壁が出来、長門と戦艦棲姫の間の視界を塞いだ!



長門「目くらましか!」



直前の戦艦棲姫の位置、そして自分の位置。

それから敵が砲撃を仕掛けてくるであろうポイントを即座に判断し、

それに備え防御態勢をとる。

しかし、次の瞬間に長門を襲ったのは砲弾では無かった!



長門「これは!」



水壁を突きぬけ飛んできたのは砲弾でも戦艦棲姫でもなく。

視界に飛び込んできたのは先ほどまで周囲で戦艦棲姫と戦っていた仲間達の骸だった。

長門だからこそ、戦闘中もそれが視認出来る程の余裕があった訳だが。

その余裕が長門に一瞬の躊躇をさせた。

ドン!

戦艦棲姫の砲撃音が響き長門の位置へ全弾着弾。



戦艦「水柱を抜けて威力が多少は落ちているでしょうけど。」

戦艦「当れば只ではすまないでしょう?」ニマァ



その笑顔は命中を確信してのものであり。



戦艦「あなたの仲間の死体を目くらましに使ったことを卑怯だなんて。」

戦艦「まさか言うようなタマじゃないわよね。」



水柱が納まるのを待ちつつ、戦艦棲姫は備える。

なぜなら自身の砲撃を一、二発受けた程度では沈む訳がない事を確信しているから。



戦艦「まだ、終わりじゃないでしょ?」



戦艦棲姫は戦闘態勢のまま、正面を睨みつけた。
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/14(水) 01:01:05.70 ID:N7yw9PNn0
今日はここまでの更新です、ホント少しだけ
現実的な話、艦娘同士の一騎打ちとかは条件がかなり限られると思います
話の盛り上がりの為にポーラや長門において採用していますが笑って許していただけると感謝です
バトル部分も擬音だけですませると味気ないしなぁとかとか色々悩みますね……
感想、乙レス、いつもありがたく拝読しています
本当に感謝です、レスが付かないのは書いていて色々心配になる性格なので本当……
では、こんな感じではありますが次回もお読みいただけると感謝です
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/14(水) 07:51:52.00 ID:mw7/nX+CO
乙!
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/14(水) 16:22:51.56 ID:PKDINovE0
どっちも戦士ではなく将だからちょっとやそっとの奇手は鼻歌交じりでかわしそうだがなりふり構わないラフファイトはどっちが上手かな
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:19:33.65 ID:of9urzBn0
だいぶ間が空きましたが年内に終わらせれるように頑張ります
多分、このスレ内で第二部?的な形でのある程度キリがいい所まで話しを進める事は出来ると思っています
艦これSS書いていた人達で定期的に挙げていた人達がやめちゃったのか数が少なくなりましたね……
どこに移動したのやら、それでは本日も長めで申し訳ないですがお時間よろしければお付き合いください
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:21:17.63 ID:of9urzBn0

ドン!

砲声に構え人型艤装の左腕が守るように戦艦棲姫の前に被さる。

戦艦(やはり生きていたわね。)ニヤリ

顔が緩むのが自分でも分かる。

そして、その一瞬を突かれた。

シャーッ!



戦艦「ばかな!」



そう、それは敵が自分と同じ戦艦であれば本来は使えないはずの兵装。



長門「なに、私は人から艦娘になったのでな。」

長門「最初の、艦娘としての初等訓練で駆逐艦種の訓練も受けていたに過ぎんよ。」

長門「ほんのお遊び程度だがな。」



長門が放った魚雷は周囲で兵装をつけたまま死んだ艦娘の魚雷である。

戦艦棲姫の水柱を目隠しにしての攻撃を長門も利用し

周囲に漂っていた駆逐艦娘の魚雷発射装置を利用したのだ。

そして、その魚雷は見事に戦艦棲姫に命中した。

543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:22:38.37 ID:of9urzBn0


戦艦「やるじゃない。」



被雷直前に人型艤装の右手が海面に刺さり

魚雷が重要機関へと当るのを防いだ事もあり。

戦艦棲姫には見た目にさほどダメージは入っていないようである。

だが、後方の人型艤装の右手は指が吹き飛び

ダメージを与える事に成功しているのは間違いない。



長門「お前さんほどではないさ。」



水柱による視界の制限、味方艦娘の死体を利用しての不意打ち。

長門はこれに対応する為に一時的に姿勢制御システムを手動でダウン。

これにより砲撃の反動の衝撃が長門の体へ直接伝わる事になる。

砲撃の反動を緊急回避に使用した形である。

しかし、体への負担はどれだけの物か。



戦艦「大丈夫かしら?」

長門「心配してもらうほどではないさ。」

長門「それよりお前の方こそ大丈夫なのか?」

戦艦「それこそそっくりそのまま返すわ?」



お互いの状況をじっくりと眺め、互いのダメージを推し量る二人。



戦艦「ふっふっふっふ。」

長門「くっくっくっく。」



二人はお互いの状況を確認して笑い出した。

そして、ひとしきり大声で笑った後。どちらからともなく。

544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:23:43.62 ID:of9urzBn0


戦艦「名前を聞いてもいいかしら?」

長門「名前?」

戦艦「えぇ、戦艦長門ではなく。

   そうね、貴方ほどの将なら二つ名の一つや二つあるんでしょ?」

長門 フン

長門「名乗る程の名ではないが……。」

長門「そうだな。火車曳兎が一番古い名か。」



長門の言葉に驚くような顔をする戦艦棲姫。



戦艦「あなたが……、そう。

   あなた、私達の間で名の知れた賞金首(アイドル)よ?」

長門「そうか。それならサインに握手でもしてやろうか?」

戦艦「冗談。」

長門「それで、随分と我々人間側の事情に明るいようだが?」

戦艦「今こうして貴方と会話をしている。お互いの言葉を理解出来ている。」

戦艦「あなた達が私達を研究しているように。

   私達もあなた達の事を研究していない道理が無いわよね?」



言われてみればそれは至極最も。

つまりは占領した地域に残った鎮守府施設などから

可能な限りの機密情報などを拾い上げこちらを研究しているという事であり。

場合によっては人間側と何某かのやり取りを行っているという事。

人類側は決して一枚岩では無いと言う事である。

545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:25:26.31 ID:of9urzBn0

長門「で、私だけ名乗るというのは不公平なのではないかな?」

戦艦「あぁ、これは失礼したわね。」

戦艦「そうね。私の名前ね。」

戦艦「私達の間での呼び名はあなた達の言葉では発音できないわね…。」



そして、思い出したかの様に言葉を繋ぐ。



戦艦「あなた達が私につけた名前は……、そうね。

   確か。グレモリーだったかしら?」

長門「………。貴様が。貴様がグレモリーか。」



瞬間、空気が震えた。



戦艦「えぇ、そうよ。お互いに、面白い縁だとは思わない?」

長門「成程、ソロモン……、アイアンボトムサウンド以来という事か…。」



お互いに因縁浅からずという奴である。

そして、将として、名乗りを挙げれば

その戦い方は自ずと決まる。



戦艦「小細工無しなんてどうかしら?」

長門「部隊を率いる指揮官のする戦い方ではないな。」

戦艦「あら?いやだったかしら?」

長門「いや?久しく一騎打ちなどしていなかったのでな。」



三次元での戦いを仕掛けることの出来る空母艦載機が主兵力となる戦場へ移行する中で、

戦艦である彼女達がその活躍をする機会と言うのは実際には少なくなってきている。

その活躍の場といえば艦隊の主力となる空母の護衛であったり、

味方が敵艦隊の航空戦力を屠った後での殲滅、止めの一撃。

更に言えば連合艦隊の旗艦として、

指揮艦として全体の流れを見て指示を出すという責任ある立場になれば

一騎打ちは元より最前線で戦うなどという機会はまずない。

だけに二人にとってのそれは一軍を率いる将ではなく一戦士としての決闘。

546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:26:41.66 ID:of9urzBn0

戦艦「戦いの合図は任せても?」

長門「随分と信用して貰ったもんだ。」

戦艦「こういう時の戦い方の相場はあれでしょ?

   あなた達の映画でみたわ?」

長門「西部劇か?」ニヤリ

戦艦「そうねぇ。

   『 賢い者程、最後まで銃を手に取らない 』だったかしら?」ニヤリ

長門「それであれば、銃を、いや、初めから砲で語り合う我らはなんであろうなぁ?」ニタリ

戦艦「そうねぇ、少なくとも賢者ではないわよね。」ニタリ

長門 フフン



そして、上着のポケットの中から一枚のコインを取り出す長門。



長門「クオーターか……。」(25¢硬貨)

長門「こいつでどうだ?」

戦艦「実に雰囲気がらしくていいじゃない。」



そして、長門が手に乗せたコインを指で上空に弾いた。

チィ ――――――― ン

コインが上空へと飛び上がった瞬間から

長門の艤装が黒煙を大量に吐き出す。

そして、戦艦棲姫の人型艤装もまたその瞬間に備え

大きく振動を始め口から大きく息を吐いた。

一秒が一分にも、一時間にも、あるいは一日。

スローモーションでコインが上空から二人の間に落ち。

チャプン

海に沈んだ。

547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:28:08.62 ID:of9urzBn0


その瞬間からの全ての支配者は砲声と砲煙だった。

仰俯角、共に零でお互いに回避が出来ても

間に合わない距離からの砲撃が開始された。

砲煙は周囲に黒々と広がり視界を封じる。

お互いに回避行動をとりつつ砲撃を続ける、

相手の姿は煙の中で見えないはずだが。



長門(回避行動での動きで空気が動けば。)

戦艦(煙も動く。その始まりに相手はいる!)



砲撃を行えばその衝撃で煙は晴れるがまたその砲撃で発生した砲煙で周囲が煙る。

間断なく激しい砲声が続き周囲を黒々と染め上げ時折なかで火花が明滅。



戦艦(砲撃の最適距離の確保を!)



戦艦棲姫は砲撃の為に距離をとる。

お互いの息遣いが聞こえそうな距離での砲撃戦は

被害が甚大になりやすく通常選択するべきではない選択肢。

そして、戦艦棲姫は小細工なしとはいったが彼女自身の目的は時間稼ぎ。

自分が長門をこの場に引き止めていれば

それだけ本隊の逃げる時間を稼げると算盤を弾く。

そして、敵の長門にしても自分と戦った後がある。

だから被害が大きくなるのは避ける筈。

指揮官として戦艦棲姫は冷静判断し距離をとった後、

砲弾の雨で長門を倒す選択をした。
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:29:38.54 ID:of9urzBn0


長門「最後まで将であるか。」

煙の中から眼前に突きつけられたのは長門の第一主砲塔。

そう、長門は被害無視で戦艦棲姫が後退したのに対し、

真逆で前に!前に出たのだ!

ガオン!



戦艦(チィイイィィィ!)



盛大な舌打ちをし人型艤装の手で砲身を殴りつけ砲撃を逸らす。

ズァッ!



戦艦(蹴り!?)



その蹴り自体に自分を撃沈できるだけの威力は無い。

しかし、戦艦の艦娘の全力が乗った蹴りである。

当たれば無事である訳がない。

眼前に迫る長門の蹴りをギリギリで見切り交す。



戦艦「次はどこから!?」



それは驚喜。自分の予想を超えてくる敵がいた事に対して。



戦艦「そっちかぁ!」



空気が動く、ちりちりと肌が焼ける気配。

砲塔の回転が間に合わない。

長門が人型艤装の脇を蹴りを交された勢いを利用してすり抜ける!



長門「背後をとったぁ!」



腰を低く落とし戦艦棲姫の背後をとった長門が砲撃の構えに入る!

ドォン!

長門の砲撃と同時に人型艤装の左手が長門の横っ腹に直撃した。

横へ大きく吹き飛ぶ長門、

だが、その視界には敵の艤装の右腕が彼方へ吹き飛ぶのを捉ええていた!

549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:30:54.57 ID:of9urzBn0


長門「こいつは効くなぁ。」



長門は掬い上げるように殴られた為に

艤装左側、第三砲塔と副砲が破損。



戦艦「やられたわね。」



片や戦艦棲姫は艤装の右腕を犠牲に重要機関が砲撃されるのを防いだ。



戦艦(全ての砲撃を防ぎ損ねたわね。)

戦艦(艤装の背骨をやられたみたい…。神経伝達が上手く行かないわね…。)

長門(第三砲塔と副砲であれば火力は落ちるが致命傷ではない。)

長門(こちらより向うの方が受けたダメージは大きいようだな。)ニヤリ



ぐいと口から垂れる血を拭い。



長門「死ぬ前のお祈りは済ませたか?」

戦艦「月並みな台詞ねぇ。気の利いた台詞を考えなさいな。」

長門「お前さんを倒した後にでもゆっくり考えるさ!」

戦艦「簡単には逝かないわよ!」



再びの砲撃戦。長門の主砲弾は戦艦棲姫の艤装砲塔を直撃した。



戦艦「主砲が死んでも、まだ!まだやられないわ!」

戦艦(敵の右側の砲塔の動きにだけ集中すれば弾道を読める!)

戦艦(少しでも!少しでも時間を!)

長門(敵の艤装の損傷は予想以上!ここは一気呵成に!)



時間を稼ぐ為の守りへ入る戦艦棲姫、そして、一気に畳み掛ける長門!

550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:32:43.11 ID:of9urzBn0


戦艦「あなたは、あなたは何の為に戦っているの!?」



長門の砲撃の直撃を交しながら長門へと問いかける。



長門「そうだな。貴様に私の話しを少ししてやろう。」

長門「私には守るべき故郷といえるものはない。」

戦艦「国を守っているのではなくて!?」ブン!



人型艤装の残った左腕が長門へと振り下ろされる。

そして、頭の上でそれを両手で受け止める長門。



長門「ぐぅ!なぁ、戦艦棲姫よ…。

   指揮官として幾つもの海戦を戦えばいつの間にか感情。」

長門「そうだな。

   部下をいつしかただの駒としてしか見なくなっていてな。」

それは戦場を俯瞰的に考える事が多くなれば成程、

そして立場が上になればなるほど。

そうあれかしとして求められる視点。



戦艦「それがどうしたというの?普通じゃない!」



勝つためには犠牲が必要。当たり前の話。



長門「あぁ、お前にとっては普通なんだろうな。」

長門「嘗ての私にとってもそれは普通だった…。」



艤装のフルパワーで耐えるが戦艦棲姫の艤装の力の方が勝るのか

徐々に海中へと押し込まれ始め少しずつ体が沈んでいく。



戦艦「それなら!ここで納得して沈みなさい!」

長門「私はな…、とある事が切欠で変わることが出来たのでな……。」



ガコガコガコ



戦艦「はん!変わったからといって何になるというの!?」

戦艦「結局はここで血みどろの戦いに明け暮れているだけじゃない!」



戦艦棲姫本人がなかなか沈まない長門に痺れを切らし長門の首を直接絞め始めた!
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:34:14.83 ID:of9urzBn0

長門「確かにな。結局は戦いに明け暮れるだけの毎日だ。」

長門「だがな。

   ここで、今の鎮守府に移動して得た物がたった一つだけある…。」

戦艦「一体なにって言うの!!」

長門「絆だ。」ニヤリ

戦艦「なんですって!?」



なおも長門の首を絞める手に力が入り続け、

長門を押さえつける腕にも力が込められる。



長門「戦場を生き抜いて、

   仲間と今日も生き残ったとお互いに馬鹿を言う。」

長門「息の根が止まるその時まで一戦士として生き。」

長門「そして、戦場で互いの為に命を張る。」

長門「例え最後に燃え尽き、灰になったとしてもだ……。」

長門「仲間との絆ってのはそんなもんだ……。」

戦艦「取るに足らないわ!」



ドゴォン!



長門の艤装右側、第一砲塔、第二砲塔が火を噴いた。

避けようのない必中距離からの砲撃は戦艦棲姫の体を貫通。

これが致命傷となり二人の戦いを終わらせる幕引きとなった。



戦艦「絆…、絆ね…。」

戦艦「そんなものを持っていると……、重くて疲れるわね……。」グラリ



死す時は前のめり。

戦艦棲姫は前向きに倒れ、その体が海中に没した。

552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:35:17.22 ID:of9urzBn0


分遣隊本隊



時雨「瑞鶴、長門は大丈夫かな?」

瑞鶴「大丈夫よ。長門だもの。」

時雨「………。」

瑞鶴「私はね。長門を知っているから。」

時雨「そっか。」



二人がなかなか帰ってこない長門について会話をしていた時、無線が入る。



長門「瑞鶴。」

瑞鶴「分かってるわ。

   護衛を出してあげるから後方へ下がりなさい。」

長門「すまない。」

瑞鶴「いいわよ。そうなるだろうと分かってたわ。」

瑞鶴「それより。満足した?」

長門「あぁ。」

瑞鶴「そう、じゃぁ、後は任せなさい。」

長門「頼む。」



戦艦棲姫との戦いを終えた長門はその損傷が激しい為、戦線を離脱した。

553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:37:07.88 ID:of9urzBn0


川内「大まかに敵拠点の破壊終了といったところかね。」

瑞鶴「そう、分かったわ。ありがとう。」

川内「なんというか、試合に勝って勝負に負けたといったところかねぇ。」

瑞鶴「そうね。

   敵の目的が本隊撤退の為の時間稼ぎだとすれば目標達成でしょうね。」

瑞鶴「よく分かったわね。」

川内「敵の動きが拠点から出て迎撃というより遅滞防衛、

   早い話が死守をする形だった。」

瑞鶴「『 かわうち 』は時に鋭いわね。」

川内「どーも。」

川内「で、時間の遅れと今後の行動はどうする?『 旗艦 』様。」

瑞鶴「どうもしないわ。いつも通りよ。」

川内「了解。」



そして、とんと拳を付き合い交す二人。



川内「時雨。これからきつくなるよ。」

時雨「分かってるさ。」



そして、こちらも同じく拳を交し気合一声。



川内「さて、散歩いきますか。」

時雨「気楽に言うね。」

川内「こういうのはいつも通りが大事なの。」

時雨「了解。」



時雨と川内は残敵掃討へと向ったのであった。

554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:39:55.26 ID:of9urzBn0
以上終了です、お読み頂きありがとう御座いました
いつも、乙レス、感想レス本当にありがとうございます
何度も読み返し、書く気力をいただいています、本当にありがとうございます
冒頭でも触れましたが艦これSS、落ちる前に比べて数が減りましたね……
燃え系のSSは今後望めないのだろうかと少し不安です、増えて欲しいのですが……
では、お読み頂き本当にありがとうございました!
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/30(金) 01:26:24.17 ID:71PjXoN7o
乙乙
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/30(金) 02:35:28.31 ID:woVZz3J10
鯖の長期故障という前代未聞の事態で焼け野原状態からの再起だしな
新しい作者が生まれたり復帰者が出るには時間がかかるかるし気長に待つしかない
燃え系の旗振りとして頑張っておくれ

勝ったようで勝ってない日本は対米政策込みで苦しい立場になりそうだなあ
大鉈振るわないと提督ジリ貧
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/11/30(金) 06:40:13.93 ID:fNa+BlyVO
SSで何日後、来週、今月中に投稿または終らせるといって其が守られた事など皆無に等しい
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/30(金) 08:48:52.76 ID:N3Ed6B31O
乙です
軍上層部は白兵戦用の武器の携帯をみとめるべき
せめて錨ぐらいはね
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/30(金) 13:00:22.61 ID:UmwWb0HC0
錨が猫に見えた

戦力物量に劣る側が近接兵装持つと大体万歳アタックフラグ
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:03:22.06 ID:g2Ml+n1F0
少しだけ更新です
お時間宜しければお読みいただけると幸いです
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:05:14.50 ID:g2Ml+n1F0

救援部隊本隊 強襲揚陸艦艦内指揮管制室



提督「長門は修理の為に帰還か。」

不知火「はい、その様に連絡が入りました。」

提督「長門が戦線離脱か。」



正しく予想外。

いつだってこちらの想定通りには事が運ばないと心の中で一人ごちる。



提督「……、遅れはどのくらいだ?」

不知火「凡そ1時間程の遅れが出ていますが想定の範囲内だと思われます。」



主力である雪風、北上、ポーラに長門。

88鎮守府の看板役者が戦線を離脱。

彼女達の実力は88以外の鎮守府であればどこででも即で一軍。

それも主力中の主力をやれる実力の持ち主である。

並みの鎮守府であれば作戦続行を諦めるほどの物である。

であるにも関わらず、想定の範囲内と言うかと。

不知火の見解に頼もしさを感じると共に、

自軍がいかに規格外かを改めて実感。

そして。

562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:06:22.06 ID:g2Ml+n1F0

不知火「現在、ウォースパイトさんが旗艦を勤められる第一分遣隊と

    瑞鶴さんが旗艦を勤める第二分遣隊との合流、部隊の再編成は後30分程で完了との連絡。

    総旗艦は瑞鶴さんでよろしいですか?」

提督「あぁ、その様に進めてくれ。」



そして、少しだけ黙考。



提督「細工は終わったな。」

大佐「いよいよですか。」

提督「えぇ、グランドフィナーレ。最終幕の開幕です。」

提督「不知火。無線の全回線オープンだ。」

不知火「了解です。」

提督「周辺全鎮守府へ通信!」

提督「進軍命令!Operation Woodpecker (きつつき作戦)発動!」



提督の指示に従い強襲揚陸艦から海域にある全鎮守府へ

進軍命令の符丁が打電される。


563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:07:45.11 ID:g2Ml+n1F0



『 真鐡(まがね)の城達よ!皇国(みくに)の四方を守るべし! 』



『 汝らの弾撃つ響きは雷(いかづち)なり! 』



念をいれ、複数回の打電が行われる。
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:09:26.84 ID:g2Ml+n1F0


大佐「勇ましい符丁ですね。」

提督「うちの連中が全力で後顧の憂いを断つべく

   敵の後方拠点をつぶしましたのでこの周辺の臆病者(チキン)連中に

   仕事をしてもらわにゃならんという訳です。」

大佐「臆病者(鶏)が突撃兵(きつつき)ですか。」フフッ



きつつきが連続して木を叩く音は時として銃声の様に形容される事を意識して

突撃小銃を持ち敵を掃討する突撃兵ときつつきを掛ける大佐。

また、余談ではあるが、きつつきの一種ウッドスパイトに掛けて

敵の船に穴を開けるとして戦艦ウォースパイトの艦船紋章に一時期使用されていた事もある。


565 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:11:24.34 ID:g2Ml+n1F0


提督「私が今回の一件を知る事になった島風なんですが。」

大佐「はぁ。」

提督「この周辺鎮守府全てに立ち寄り救援を求めていた

   その航行記録はきっちり艤装に残っていたんですよ。」

提督「そしてですね。私の鎮守府での島風との会話は全て録音済みなんです。」

大佐「成程……。」

大佐「更迭、収監、懲役のお買い得3点セットを選ぶか救援の。

   救国の英雄になるかの簡単な二択を選ばせたという事ですか。」

提督「えぇ。とはいえ選択肢のない選択にはなります。」

大佐「一般的に前者を選ぶ人間はいませんかね。」フフッ

提督「おっしゃる通りです。」

提督「私が事前に本土の主管に問い合わせて

   救援を断った連中がどうなるかというのを教えたやりましたからね。」

提督「私が連中の説得に使ったのは

   お買い得3点セットの書類を先に作っておいたくらいですかね。」

提督「ここへ救援に向かっている間に幾人か

   周辺鎮守府へ連絡に向かわせていましてね。」

提督「もちろんきっちりと公式に記録に残る形で、です。」

大佐「不測の事態で連絡が来ていなかったとの言い訳を封じられますか。」

提督「椅子磨きに長けている連中は磨くのに長けておりますからな。

   よく滑りを良くするワックスを持っています。」

大佐「成程、口の滑りはいいでしょうなぁ。」

提督「ワックスの製造業者をお聞きしたいと囁くように部下には申し伝えてもいます。」

大佐「随分と人が悪い方だ。」



つまりは無能でありながらその地位にいるというのは口八丁、話術に長けるという事。

言い逃れをされては敵わないという奴である。

そして、そのワックスとは人と人の関係をよくする麗しきかな潤滑剤(賄賂)でもある。

小人なんとやら本土から離れた鎮守府ともなれば不正が横行するのもままあるわけで。

提督がその交友関係にある旧き友人にそれとなく連絡をとっていたというのは言うまでも無い。

566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:13:41.07 ID:g2Ml+n1F0


もっともその友人曰く。



「肥え太らせた後に出荷するつもりだったけどまぁ、どうぞ。」



と、軍人としての才ではなく商人としての才能は評価していたようである。

最も事態を説明した後、早く言えと慌てて証拠を送ってきたり

何処で情報が止められていたのか調べておくと言ってきたりとなかなかな友人でもある。

それらの合わせ技ともなれば麻雀ではないが数え役満で収監後、銃殺。

なんて結果になってもおかしくは無いわけである。



提督「願わくば尻に火が付いたアホ指揮官が部下を浪費しない事ですかね。」

大佐「消費ではなく浪費は困りますね。」

提督「おっしゃる通りです。」

大佐「しかしてこの作戦ですが……、Battle of Kawanaka?」

提督「よくご存知で。

   正しくは何度かあった川中島の戦いで特に有名な第四次の戦いで用いられた戦法です。」



武田の名軍師。

山本勘助がきつつきが木の表皮を叩き虫を中から叩き出し

その食べる姿から構想を得たと言われる作戦である。

この作戦自体は敵の上杉に見破られ成功はしなかったのだが

その作戦内容としては単純かつ有効な作戦である。


567 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:15:58.21 ID:g2Ml+n1F0


基本的な流れとしては鉄床戦術そのものであり敵の背後を急襲。

そして正面に布陣した本隊とで挟み撃ちで叩くという物である。

しかし、違いも勿論有り通常の鉄床作戦は

前線で歩兵部隊が囮となりひきつけている間に敵後方を襲撃するのに対し。

今回のきつつき作戦は敵後方を急襲させ

敢えて作っている逃げ道へ敵を誘導するというやり方である。

当然ながらその逃げ道には本隊による待ち伏せつきな訳である。

総旗艦として無線機能の充実、経験の申し分ない瑞鶴がこれに当るのは当然といえる。



提督「周辺鎮守府の全力で当たらせれば後方急襲部隊の数は。」

提督「そうですね、数だけは我々が減らしたぶん敵を上回るでしょう。」

大佐「そして逃げ道に殺到したところを叩くわけですな。」

提督「航空戦力については艦載機の扱いに長けている連中を此方に残していますからね。」

提督「本音を言えば瑞鶴についてもこちらにまわしておきたかったくらいです。」



三次元機動可能な航空機による攻撃というのは直線軌道で飛んでくる大砲の弾より厄介な物である。



大佐「なかなかに見ものなようですね。」

提督「最後の仕上げですからね。画竜点睛とならぬよう締めてかかりましょう。」

568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:17:48.47 ID:g2Ml+n1F0


分遣隊集合地点

部隊を分け敵後方拠点を叩いていた部隊が合流する。

その集合地点に時雨の姿はない。



スパ「総旗艦に敬礼!」ガッ

瑞鶴「あー、そういうの良いから。」

スパ「礼を欠くと雪姉さんに後で怒られちゃう……。」

瑞鶴「よく教育が行き届いている事ね。」

瑞鶴「雪風は、確かに異質だけどねぇ。」

スパ「やっぱりそうなんですか?」

瑞鶴「あの娘が本気だすと電探でないと存在を追えないわよ?」

瑞鶴「存在が完全に周囲と同化しちゃうから。」

瑞鶴「居る、しかし、存在はしない。

   矛盾を含んでるけどそう表現するしかないもの。」

川内「だねー。だてにうちの駆逐No1じゃないよ。」

川内「提督がどこから拾ってきたか割りと謎だけどね。」

川内「瑞鶴。周辺鎮守府連中の木っ端どうする?」

瑞鶴「私達との艦隊行動は練度が段違いに低いから望めない。

   個別に戦闘目標を設定してつぶして貰ったほうがいいでしょうね。」

川内「了解。」

瑞鶴「ウォースパイト、私と、あなたが積んでる通信機の出力が大きいから

   そっちでも語りかけて貰えるかしら?」

瑞鶴「複数チャンネルで聞こえて居ませんでしたってのは勘弁願いたいからね。」

スパ「了解です!」ビシッ

瑞鶴「この作戦の肝は全軍の動きを合わせないといけない事なのよね。」

瑞鶴「たたき出す方向を間違えるとこっちが面倒な事になる。」

スパ「瑞鶴さん!各部隊への指示命令は何と打電しましょうか?」



川内との打ち合わせ中に88鎮守府以外の艦娘達へ何と指示を出すかとウォースパイトが訊ねてくる。



瑞鶴「………そうね。」

瑞鶴「あなたの国の有名な提督が言った名言でいいんじゃない?」

スパ「おぉ。あの名言ですか。」

瑞鶴「個別の標的を指示するよりいいでしょう。

   最優先事項だけはっきりさせて頂戴。」

瑞鶴「何をすべきかの作戦の概要はきっちりと理解しているでしょうからね。」



こうしてウォースパイトから各鎮守府の艦娘へ指示が出された。

その内容は。

569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:18:40.28 ID:g2Ml+n1F0



『 我が国は各員がその義務を果たすことを期待す! 』



570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:20:50.45 ID:g2Ml+n1F0

すこしだけ変えられた名言ではあったが。

簡潔なその電文は勇ましい文言ではないからこその

飾り気のない言葉が参加している艦娘達を奮いたたせた。

島風が周辺に助けを求めて回っていたことを

中央に報告していなかったとしても現場。

その現場に居た艦娘達が目撃をしていない訳がなく、

また人の口に戸は立てられないもの。

ともなれば今回の救出作戦を待ち望んでいた者の方が多いのは当然でもある。

88メンバー達と比べ練度低かれど、その意気軒昂也。

窮地に陥った仲間を救出せんと鬨の声をあげる。



瑞鶴「いいじゃない。」

川内「だね。時雨は別働?」

瑞鶴「えぇ。時雨クラスになれば考えて動いてもらった方が楽よ。」

瑞鶴「何人か下つけて自由にさせてるわ。」

川内「まー、将来の指揮官だよねー。」

瑞鶴「なんでうちに流れて来たのやら。」

川内「じゃ、ま。仕事をしますか。」

瑞鶴「あんたはいいの?」

川内「そうだねー。いつもの面子と以外だとね……。」

川内「一人の方が気楽かな?」

川内「まぁ、瑞鶴のお守りをしますかね?」

瑞鶴「へーへー。それでは背中宜しくお願いしますだよぉ。」

川内「任された。」

瑞鶴「よろしく。」


訳知り合った頂上同士のコンビ。

猟犬は野に放たれ、狩りは始まった。

571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 00:27:43.63 ID:g2Ml+n1F0
近接兵装はロマンですよね…、一部艦娘は所持したイラストになってますが使うことあるのでしょうか?
ボツネタにしたので近接で戦う川内姉妹のネタはあるんですがね
そういうのも書く人少ないなぁでそれなりに量は書いたものの筆がとまっている
イチャコラ読んでりゃ他のも読みたくなるというやつで…、自分で需要を満たすのもなんか違うと思うのです
他のSS作者様で書いてくださらないものかねぇと思うこと最近、増えませんね
愚痴が多くてすみません、皆様からの乙レス、感想レス、いつもありがたく拝読しています
本当にありがとうございます、宜しければお気軽にレスいただけると感謝です
今日はこれにて終了です、本当に少しで申し訳ないです、またの次回も御待ちいただけると幸いです
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 01:51:17.77 ID:GTH0gUlO0
瑞鶴最後の通信である機動部隊の誘引に成功が栗田艦隊に届くことはなかったことを思い出すと通信設備が充実しているというくだりが悲しみを誘う
島風を見捨てた周辺海域の提督への報復はいずれ元締め潰した後にシレッと蒸し返して完遂したいもんだ
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 13:56:47.31 ID:333pmtaK0
乙乙
近接と言うと雷と天龍がまず浮かぶが他にいたっけ
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 19:24:20.85 ID:ru7CQCFs0
乙乙乙です
近接といえばヤバレカバレでになって手持ちの魚雷で殴りかかるなんてのも
有り得そうで怖い
二水戦の逆落としはすれ違いざまに相手に直接魚雷を叩き込むなんて話も
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 21:27:36.65 ID:tDnlfRh70
速報に拘らなきゃ、割と熱い艦これはあると思うけどね
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 22:19:12.07 ID:GTH0gUlO0
>>573
叢雲 伊勢型 ゴトさん 皐月 多分文月など
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/07(金) 02:05:02.75 ID:HnBEtA56O
文月は持ってないぞ
武功抜群は皐月艦長に贈られたから皐月だけのもの
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:22:28.82 ID:FWWFZVbA0
お世話になります、更新に参りました
いよいよ大詰めへ、何とかこのスレ内に納めるぞ…
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:24:46.26 ID:FWWFZVbA0

瑞鶴達88鎮守府救援部隊分遣隊の合流2時間前



敵 深海側包囲軍 駆逐古姫隊



古姫「連絡…、遅かったわね…。」



タ級からの伝言を苦悶の表情で受ける駆逐古姫。



タ級「………。」

古姫「みなさい。あれを。」



駆逐古姫が指差す方角、水平線の向こう側からは黒々とした煙が上がるのが見えた。



タ級「あの方角は!」

古姫「えぇ、貴方の主である戦艦棲姫が

守将として守備に付いていた後方拠点のある方角。」



その煙の量をみれば拠点が陥落した事は察しが付く。



古姫「戦艦棲姫は覚悟を決めていたのでしょうね……。」

タ級「………。」

古姫「仇討ちや後追いはやめなさい。」

古姫「戦艦棲姫が貴方を此方に遣した意味を考えなさい。」

タ級「意味ですか?」



はるか遠くの煙を睨み付ける表情をしていたタ級へ嗜めるように言う駆逐古姫。



古姫「あの娘が撤退の進言に貴方を遣したという事は

貴方にしか出来ない役割が此方であるという事よ。」



タ級は戦艦である。そして、その装甲は厚い。

何かに思い至ったかはっとする表情を見せるタ級。

580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:28:13.04 ID:FWWFZVbA0


古姫「そういう事よ。

戦艦棲姫は貴方に戦艦水鬼様を逃がす際の殿を託したのよ。」



戦艦棲姫の覚悟とその託された想い、

それを知ったタ級はがっくりと項垂れる。

重巡棲姫との連絡も付かなくなっている。

これから導き出される敵の行動は……。

駆逐古姫は考える。考える為の時間は少ない。

自身の経験、そして、敵が設定しているであろう勝利目標。

自分達の現状を考えれば撤退しか道はないのだが

どうすれば安全に総旗艦の戦艦水鬼を逃がす事ができるか。

敵の目的は何であろうか?

至上命題なのはこの地に残る味方戦力の救出なのは間違いない。

では、こちらの殲滅についてはどうであろうか?

その答えを導く鍵は敵が先に後方拠点をつぶしに掛かったという点。



古姫「一般的な鉄床戦術を取るのであれば

   本隊となる部隊で前線を押さえる陽動を図るはず。」



そう、一般的な鉄床戦術は装甲に勝る兵科で前線の敵をひきつけ

機動力に勝る兵科で敵の後ろを奇襲し前後で挟み撃ちを行う包囲殲滅戦。



古姫「挟み撃ちをするのであれば

   先に行動を起こすのは後方拠点の襲撃ではないはず。」



正しく行うなら、先に本隊を叩き、本隊側に後方拠点から援軍を送らせるなどをして

後方への注意が逸れた時に機動力を持った精鋭で突き後方を陥落させるのが定石。

だが、敵は順番が違う。



古姫「理由は?そうせざるを得ない理由があるという事?」



一般的?そう、一般的ではない。

一般的な鉄床作戦は前方で釘点けにする本隊と

後方襲撃の部隊とは連携が密に出来ないと無理なのだ。

それは作戦の決行において双方の部隊の練度が同程度

或いは後方側担当が精鋭である事が望ましい。

581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:30:01.64 ID:FWWFZVbA0


古姫「なるほど。」



一つの推論。いや、それこそが理由であり結論だろう。



古姫「後方部隊は数が多いけれど存外錬度の低い兵の方が多い?」

古姫「連携に不安要素がある。」



敵に囲まれ後方を、

退路を絶たれ逃げ道を指定されている中での一筋の光明。



古姫「艦隊参謀長駆逐古姫麾下の全軍へ告ぐ!」

古姫「我が部隊は敵拠点攻略を停止!別命あるまで待機!」



自分の指揮権下にある部隊へ敵攻略の手を止め待機命令を下す 。

これは臆病風に吹かれてのものではなく。

総旗艦からの撤退命令が出れば即応させる為の物であり

その後の目的については。



古姫(突破口を切り開く為の捨て駒に……。)

古姫(麾下の皆。すまない……。)



ここからは時間との戦い。

敵が後方拠点を潰したのであれば現在包囲している敵

目の前の敵救援対象が呼応して反攻してくる可能性もある。

その事態は避けたい。



古姫「戦艦水姫様の下へ行かないと!」



自分の麾下部隊へ撤退の為の方角と指示を飛ばし

撤退時は先頭を切れるような状態にして駆逐古姫は本陣へと急いだのだった。

582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:31:40.39 ID:FWWFZVbA0


深海敵地攻略部隊 本隊 戦艦水鬼部隊 本陣



戦水「状況は分かったわ。」

戦水「正面の敵拠点攻略は諦めましょう。」

空鬼「私が最初に負傷し敵本隊の迎撃に失敗したばかりに…。

   申訳ありません。」

戦水「あなたに問題はなかったわ。あれについては敵を褒めるべきかしらね。」

空姫「正面を攻略し我々が拠点とするのはいかがでしょうか?」

戦水「愚作。それこそ無能の極みよ。

   これだけの相手に篭城戦を戦える自信は私は無いわね。

   それよりも敵の包囲網が完成する前に

   撤退をすべきと言う駆逐古姫の進言が正しいわ。」

戦水「今なら損害は多いけれど全滅は避けられる段階。

   全軍に撤退命令を出して頂戴。」

古姫「進言を受け入れてくださりありがとうございます。」



予想以上にあっさりと進言を受け入れ撤退の決意をする戦艦水鬼。

状況が不利と判断すれば撤退する事に迷いが無い辺りは

他の水鬼級と比べ秀でているであろう。

だけにもっと早く、そう、空母水鬼が負傷し戻ってきた時点で撤退を決めていれば。

駆逐棲姫達の部隊は元より重巡棲姫、

そしてなにより戦艦棲姫を失わずに済んだであろう。

583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:33:01.46 ID:FWWFZVbA0


戦鬼「嘆いても時は戻らないわ。

   古姫、どの方向へ逃げるのが最適解と思うのかしら?」

古姫「はい。私が考えるにこの方角に敵の包囲網の穴があると思われます。」



そして、駆逐古姫の指揮下で深海の撤退戦が、提督の指揮下で艦娘の追撃戦が始まった。



強襲揚陸艦 艦橋 指揮司令室



提督「大佐。始まりましたよ。」



司令室内のモニターに明滅する光を見ながら提督が語りかける。



大佐「見事に前方へ叩きだす事に成功したようですね。」



それは敵が見事に策に嵌ったとの証の明滅。



不知火「司令。こちらを。」

提督「減った戦闘機、艦攻、艦爆も到着予定か。」



不知火が渡してきたメモ紙に目を通す。



大佐「あぁ、初めの戦闘で減った機材の補充ですか……。」



強襲揚陸艦には艦娘用の艦載機の予備は

それ程積んできては居なかったはずだがと思う大佐。

最初の防衛戦時に当てはあると言っていたそれが着くのであろう。

だが、この光点の数は……。まさか?!

584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:34:53.88 ID:FWWFZVbA0

提督「お気づきになられましたか。」ニヤリ

大佐「確かに船で輸送するより直接飛ばした方が早いですね。」



船で運ぶより飛行機を飛ばしたほうが運搬という点では早いのは当たり前。

ただ、人でやろうと思えばパイロットの疲労問題や

人員の都合などでとてもではないがやれたものではない。

更に言えば長距離、長時間飛行した後にさぁ、戦え、根性だ。

となればいかな熟練パイロットであろうと最高の結果を出す事は困難だろう。

だが、艦娘の使う艦載機のパイロットは疲労しらずの妖精さん達である。

妖精達の疲労は使用者の艦娘に移るとの話でもあるが……。

その頃の海上では栄養補給にいそしむ姿があった。



グラ「疲労回復の為に甘味を採るか。」ゴソゴソ

瑞鳳「あっ、そろそろ?」

グラ「あぁ、瑞鳳も食べるといい。」

瑞鳳「じゃぁ、お茶にすりゅ――?」

グラ「いただこうか。」



そう、艦娘には疲労回復専用の戦闘糧食。甘味間宮羊羹がある。


585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:36:55.44 ID:FWWFZVbA0

大佐「成程。成程。実に合理的だ。」

大佐「ですが。航続距離については?

   空中給油機など無いはずでは?」

提督「それについてはそちらの同盟国の

   フォークランド時の対応を参考にさせていただいています。」

大佐「Operation Black Buck ?」(ブラックバック作戦?)

提督「その通りです。爆撃機と戦闘機や艦爆といった違いはありますが

   無理やり航続距離を伸ばすやり方は参考にさせてもらっています。」

大佐「成程。敵の尻を蹴りだせばこちらに向ってくる敵の方角は

   分かりきってますから早期警戒機の幾つかを誘導に回せるという事ですか。」

提督「我々の鎮守府からこの海域までのあいだに補給艦と護衛隊をつけた空母を配置。」

提督「燃料を補給後離陸。それの繰り返しで艦載機を飛ばし続けている形です。」

大佐「なるほど補給艦をリレーで回すことで

   空母艦娘とその護衛艦隊へ燃料、弾薬を切らさない形ですね。」

大佐「空母へは燃料だけの補給で良い訳ですから

   補給艦娘に積む燃料も弾薬を減らして多く積めますね。」

大佐「艦載機については収容可能数以上であったとしても救出先に地面はありますしね。」

提督「そうです。仮に我々の空母娘達で収容出来なくても

   周囲に島が幾つもありますからね。そこへ降ろせばいいわけです。」

提督「奇策で理屈は分かっても普通はやらないという奴です。」

大佐「かの国はそれをやりますからね。」

提督「かの国の柔軟な発想は当り外れありますが様々な戦訓を与えてくれます。」



提督の言葉に頷く大佐。

586 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:38:16.14 ID:FWWFZVbA0


「You have control 」(無線)

グラ「I have control 」モチモチ(無線)



グラーフが艦載機の管制を中継した艦娘から無線を通し受け継ぐ。



グラ「零52型が中心か。」

グラ「フム。さてと、艤装を無理やり拡張しているからな。」

グラ「どれだけ余分に動かせるかといった所か。」

瑞鳳「リミッター外す感じ?」

グラ「うむ。

   艤装の寿命を縮めるから好ましくはないが贅沢も言ってられまい。」

グラ「我々が始めて、我々が終わらせる。」

グラ「ともなれば主人公は我々であろう?」

瑞鳳「やだ、グラたん口説いてる?」

グラ「Shall we dance ?」ニヤリ

瑞鳳「きゃぁ ――――― ///」

587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:39:20.22 ID:FWWFZVbA0


秋津洲「ワイルドギース01より管制へ!」

不知火「こちら88コントロール。どうされました?」

秋津洲「敵艦隊発見!艦影のライブラリへの照会よろしくかも!」

不知火「確認しました。照合します……。」



二式大艇から送られてきたデータの照合。



不知火「照合完了、艦影、空母水鬼です!」



にわかに色めき立つ司令室内。



提督「敵の将官か。優先して狩ってくれ。」



提督の指示が排除への優先順位を告げる。



グラ「艦載機の数で押せるのであれば我らが有利!」

瑞鳳「艦攻隊に艦爆隊のみんな!やっちゃぇ!」



正面、提督達本隊の空母艦娘が管制する艦載機部隊が一斉に哀れな獲物。

空母水鬼へと襲いかかる!


588 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:43:02.11 ID:FWWFZVbA0

空鬼(来たわね!これでいい!これで!)



空母水鬼の随伴は対空に定評のあるツ級ではなく駆逐ナ級。

もっともナ級自体が最新鋭である為それもなかなかの対空ではあるのだが。



グラ「ふむ。なにやら覚悟を決めた様子だな。」

瑞鳳「負けを悟った感じ ――― ?」

空鬼「そういうことよ!さぁ!かかって来なさい!」



覚悟を決めた空母水鬼。

最後の足掻きと自身の艦載機を全て出しグラーフ達の部隊に抗う。

だが、最初の接触時と違いその戦闘機や艦爆、艦攻の数は決定的に違う。

空母水鬼の随伴は徐々に数を減らし、その直援機もついには零となる。

飛行機達の攻撃が集中すれば制空の取られた状況では為すすべなどある訳が無く。

空母水鬼は集中攻撃を浴び、大破炎上、そして轟沈へ。



グラ「なかなか頑張った。いい、戦争だった。」フム



お互い顔の見える距離ではない。

グラーフははるか遠くの距離で炎上、

ゆっくりと沈降して轟沈してゆく相手へ最大限の賛辞を贈った。



空鬼「これで、これでいい。」

空鬼「私は役割を果たした………。」

空鬼「戦艦水鬼様……。後は。後は、宜しくお願いいたします……。」



そして、空母水鬼は役割を果たし、

満足した顔で水底へと逝った。



589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/13(木) 00:46:50.23 ID:FWWFZVbA0
今日はこれにて終了
お読みいただいている皆様には展開が遅いよ!と怒られそうですがもう少しでなんとか…
今まで何も動いていなかった娘達がようやく出番です!(雪風達負傷組みは……)
後少しで終われそうですので今しばらくお付き合いいただけると幸いです
乙レス、感想レスありがとうございます、いつもありがたく拝読しています
どうぞ、お気軽にレス残していただけると幸いです
590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/13(木) 06:18:30.33 ID:kKA6vi+u0
更新乙です
深海側の描写も多いので肩入れしたくなってしまいますね
591 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/13(木) 06:47:12.55 ID:2pwfk3YdO
乙!
592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/13(木) 13:28:43.73 ID:Xmrg0bnv0
ブラックバックまで持ち出すとは…

あとは袁術殲滅戦よろしく十面埋伏の中ですり潰されるのか金ヶ崎の退き口となりトップは逐電しおおせるか
593 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/17(月) 16:08:51.68 ID:CRptWKzG0

艦娘だからできる戦術ってええなあ
594 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:32:01.15 ID:O5Yg9HcV0
私事でばたばたしてきておりますが更新にきました
お時間よろしければお付き合いいただけますと幸い
595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:33:42.88 ID:O5Yg9HcV0
提督達救援対象鎮守府



その鎮守府の指揮は提督が嘆いたように少佐が執っていた。

階級としてそれは余りにも低く提督として新米と言えた。

しかし、彼は踏ん張り救援が来るまで耐えきった。



少佐「敵が。敵が撤退していく?!」



目の前の包囲網が解かれ、敵が撤退していくのが見える。



少佐「ここは敵の追撃を!」



今まで篭城戦を戦ってきていた全員に命令を下す少佐提督。



「島風の仇!」

「仲間の恨みを!」



目の前で惨殺された島風、

そして、幾度にも及ぶ攻撃で散っていった仲間達の仇を討つ。

その強い意志が極限まで追い詰められ疲労しているはずの彼女達に力を与えた!



ウォォォォォォオオオ!


596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:34:51.56 ID:O5Yg9HcV0


古姫「包囲していた敵が追ってきたわね…。」



予想の範疇。

既に深海勢は撤退戦に切り替えて部隊を素早く退いている。



タ級「空母水鬼様撃沈の報!」

戦鬼「空母水鬼が撃沈?!」



彼女程の豪の者であれば

包囲網を抜けられると思っていたのにも関わらず轟沈したと?

包囲網の穴と思われる所へ斬り込みを掛けていた自分の部下、

指揮官級がやられた事は戦艦水鬼に更なる衝撃を与えた。



古姫「戦艦水鬼様!立ち止まられてはいけません!」

古姫「空母水鬼様が何の為に沈んだと思っているのです!」

戦水「駆逐古姫……。ここを攻めたのは間違いだったのかしら?」

戦水「戦艦棲姫を始めとした優秀な部下を失ってまで獲るべき場所だったのかしら?」



自身の部下が次々と為すすべなくやられていく戦況というのは

今まで負けなしできていた戦艦水鬼には実に耐えられない物の様であった。


597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:36:15.40 ID:O5Yg9HcV0

空姫「戦艦水鬼様?」

戦鬼「敵は強いわねぇ、私達、皆、死ぬのかしら……。」

戦鬼「ねぇ、どうせ皆死ぬのなら敵の旗艦を潰して…「この痴れ者!」パァン!



自暴自棄になりかけた戦艦水鬼に駆逐古姫の張り手が決まる。



古姫「貴方という方は何を考えているんですか!!」



戦艦水鬼の発言に怒り心頭に発した駆逐古姫が戦艦水鬼の服の襟首を掴む。



古姫「戦艦棲姫や空母水鬼様が何故に死んだと思っているのです!?」

古姫「皆、貴方に次の、深海棲艦の未来を託し、

   生き延びて欲しいが為に死んでいったのですよ!?」

古姫「この世界の支配者の器たる才を貴方に視たからこそ

   彼女達は命を賭して貴方が逃げる為の時間を稼ぎ敵を防いだんです!」

古姫「ここで貴方が折れてどうするんですか!」

古姫「死んでいった者達にすまないと思うなら

   生きて敵を滅ぼす為に再起を誓うべきではありませんか!」



激昂し、その怒りのままに戦艦水鬼を叱り飛ばす駆逐古姫。

そして、戦艦水鬼のドレスの襟首を掴む手は怒りに震えていた。



戦鬼「手を……。手を服からどけてもらえるかしら。」

古姫「これは…、無礼いたしました…。」

戦鬼「いえ、私が愚かだったわ。」



その顔からは迷いが消えた。



戦鬼「私は全力で逃げるわ!」

戦鬼「駆逐古姫!空母棲姫!二人とも殿は頼んだわ!」



そして、戦艦水鬼は護衛を連れ全力で海域を離脱していった。


598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:37:41.07 ID:O5Yg9HcV0


古姫「ふ ―――― …。

   戦艦水鬼様が全力で逃げるなら追いつけないでしょうや。」

空姫「流石に戦艦水鬼様ほどの方になると逃げっぷりもさまになるわねぇ。」

古姫「あれくらい豪快に逃げてもらわないと困るわ?」

空姫「そうね。戦艦水鬼様には逃げて深海棲艦の戦力を立て直していただかないと。」

空姫「それにしても、始めに敵の本隊の力量を見誤っていなければ

   犠牲は少なかったかもしれないと思うのだけれど。」

古姫「やめときましょう。戦の『たら』『れば』なんて言い出したらきりがない。」

古姫「今回は敵がたまたま一枚上手だっただけよ。」

古姫「私達はここで私達がなすべきことをしましょう。」

空姫「えぇ。そうしましょう。」

空姫「エンドロールが流れ始めたからといってまだ完全に終わった訳ではないですもの。」



二人の姫が敵へ向き直り咆哮を挙げた。

599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:40:48.40 ID:O5Yg9HcV0


強襲揚陸艦内 艦橋司令室

不知火「秋津洲さんから入電です!」

提督「どうした?」

不知火「撤退中敵旗艦艦隊と思しき艦隊を発見するも

    敵艦隊の攻勢激しく警戒機の護衛が落とされたので

    撤収するとの事です。」

提督「敵さんも必死こいて逃げているようだな。」

提督「位置は?」

不知火「此方です。」



机代わりにしている大型モニターにタップして敵を表示させていく不知火。



大佐「ははぁ。これは敵に天晴れな才を持った者が居たようですね。」

提督「確かに。これは上手い事こちらの隙間を突いて来ています。」



駆逐古姫が戦艦水鬼を逃がす為に戦闘を行っている場所は

丁度、提督達88鎮守府組み本隊と周辺鎮守府連中の合わせ目だった。

三角形をイメージしていただけるだろうか。

包囲網が三角形で構成された場合、一辺を瑞鶴達遊撃隊、

もう一辺が周辺鎮守府部隊。

そして、底辺が提督達本隊。

ただ弱いところを突くというのであれば周辺鎮守府部隊を潰せばいいのだろう。

だが、思い出していただきたい。

深海棲艦達が攻め立てた場所の特徴を。

そう、この場所は敵、深海棲艦の陣地へと食い込む形に突出した場所である。

だけに周辺鎮守府で構成された部隊の方向を突き抜ければ

そこは深海棲艦達にとって敵である艦娘側勢力下なのだ。

寡兵でもって敵の支配地域を追撃を交しながら逃げるというはとても困難である。

たまたま上手くいった狂人集団達が歴史にその名を残してはいるが普通は行わないもの。

失敗した者の方が多いのは当たり前でそれが語られる事が無いのは歴史が雄弁に物語る。

で、あればという事で駆逐古姫が目をつけたのが包囲網端である。

中心部分からの面の構成ははどうしても端の部分の展開が遅れる。

駆逐古姫はそれを巧みに見抜き一番脱出できる可能性がある方向を目指していた。

600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:42:03.15 ID:O5Yg9HcV0


提督(……、救援の目的は達したと言えなくは無いか。)

提督(敵の指揮官をどうみるか……。)



後顧の憂いを断つのは基本なれど。



提督(手札が足りない。大役は狙うべきではないか。)

提督(現状で目的は達して後はボーナスを狙うかどうか。)

提督(ポーカーにしてもなんにしても賭け事ってのは引き際が肝心だ。)

提督(伏せ札で一枚とっておきがあるとは言え、

   今時点で幕を下ろすのもありか。)

提督(周辺鎮守府連中には期待できんしな……。)



88鎮守府の主力に負傷者が出ている現状で最優先の目的は達成済み。

となれば逃げる敵は追うべきではないか?

死に物狂いで逃げる敵と言うのは時として予想以上の力を発揮する事がままある。

その必死の力に盆を返されてはたまらない。

提督がそう考えた時だった。

601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:44:02.54 ID:O5Yg9HcV0


不知火「司令。瑞鶴さんから無線通信が入っています。」

提督「繋いでくれ。」

瑞鶴「提督。空母棲姫が頑張っているって?」(無線)

提督「あぁ。」(無線)

瑞鶴「私がやるわ。」(無線)

提督「そうか。頼んだ。」(無線)



そして、瑞鶴からの無線通信を終えたくらいに

また一人の艦娘からの通信が入る。



不知火「司令。時雨さんからも通信が入っています。」

時雨「提督。」(無線)

提督「瑞鶴の護衛ではなく移動していたんだな?」(無線)

時雨「うん。察しが良くて助かるよ。僕も行くよ。」(無線)

提督「頼んだ。」(無線)



瑞鶴からの許可を得て、

手勢を連れ遊撃隊として行動していた時雨は

予め包囲網の穴となりそうな場所を予測して動いていた。



提督(敵の殲滅……、いけるか?)

提督(総大将を逃がす為に敵は必死になるだろうが。)

提督(瑞鶴に時雨…。自分で考え動く事が出来る、

   更に有効打を打てる兵というのは実に得難い。)

提督(指揮官として将として。次代を担える存在だ。)

提督(追撃戦は大事だが。二人を失う愚は避けないといけないな…。)


602 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:47:34.02 ID:O5Yg9HcV0
88鎮守府敵後方襲撃部隊


瑞鶴「川内!私の体の護衛頼まれてくれない?!」

川内「……。全力でいくの?」

瑞鶴「敵の艦隊を追っかけるのに

   私が向っていちゃ間に合わないしね。」

瑞鶴「今飛んでるのを直接向わせるしかないでしょ。」

川内「そっか。」

瑞鶴「魂降ろし(フルダイブ)をやるわ。」

川内「了解。お姫様の体には指一本触れさせないよう頑張るよ。」

瑞鶴「宜しく。」



そして瑞鶴は意識を集中させ両手を顔前で合掌した。

嘗て、深海棲艦への対抗策として艦娘が出始めた頃の事。

まだ二つ名持ち(ネームド)制度が始まる前の事。

比類なき強さを誇った、

その種類の艦娘として艤装の製造番号が初期の艦娘が居た。

一人は呑波の赤鬼と呼ばれもう一人は呑舟の青鬼と呼ばれた。

呑波、呑舟、どちらも意味は同じで舟を喰らう程の大魚。

二人はその名の通りに多くの舟、深海棲艦を喰らい沈めた。

そしていつしか、二人を合わせて呑波呑舟、大喰らいの一航戦と呼ぶようになる。

その強さ比肩する者なし、時として国士無双と賞されるほどだった。

強すぎた艦娘。

強すぎた為に敵深海棲艦に徹底的に狙われ

最優先排除対象とされ最期は水底へと消えていった。

その半ば伝説として語られる二人が得意とした、

いや二人だけが使えた特殊な艦載機操縦方法がある。

それは艦載機に自己の意識を載せるやり方『 魂降し 』と呼ばれ、

それは艦載機の搭乗員妖精と自己を完全に同化する手法だった。

同化した艦載機達は一個の群体として動き敵を屠っていった。

ある程度の指示を与えた後は搭乗員妖精に任せる通常の操縦方法と違い

艦載機全てを操り自己の視界とするするその操縦方法は

艦載機妖精同士の連携が不要となり最強を誇った。

しかし、それを行う艦娘への負担は計り知れないほど大きく、

結局、この二人以外行えた者は居ないとされる。



瑞鶴「加賀さんみたいに降ろした後にお握り摘むような余裕は無いけどね。」



パンと改めて一拍。


瑞鶴「88鎮守府筆頭空母、瑞鶴!相手仕る!戦技!魂降し!」


その瞬間、瑞鶴が繰る艦載機達の纏う気配が変わった。

603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:49:49.64 ID:O5Yg9HcV0


殿軍部隊 空母棲姫



空姫「敵の攻撃隊は温いわねぇ!」



撤退する深海棲艦軍の殿軍を駆逐古姫と

空母棲姫は自己の手勢と共に勤めていた。



古姫「予想通り後方を襲撃した連中と比べて練度が低いわね。」



機関全速で撤退する中で追撃を仕掛けてくる敵の艦載機攻撃隊は動きが鈍重。

そして、艦娘による砲撃も雷撃も命中精度は低かった。



古姫「回避しやすい単調な攻撃というのは助かる。」



ひょいひょいと敵の攻撃を交し追撃部隊にお返しとばかりに砲雷撃。



古姫(これなら私と空母棲姫も脱出できるかもしれない。)



そんな淡い夢を見たときだった。

戦う二人の間を一陣の風が吹き抜けた。


604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:51:16.67 ID:O5Yg9HcV0

空姫「駆逐古姫様……。」



急に敬称をつけて駆逐古姫を呼ぶ空母棲姫。

一体どうしたというのか。



古姫「どうしたの?」

空姫「重要機関をやられました。」



そんなばかな。たった今のその一瞬で?

そんな動きの取れる敵機は対空戦闘が始まった先程からまったく見ていない。



空姫「胴体シンボルに加賀梅鉢。尾翼マークに二羽飛び鶴。」

空姫「私の真横を一瞬ですが見せ付けるように飛んでいった部隊がいました…。」

空姫「青鬼の弟子でしょうや……。」

古姫「あの!あの青鬼に弟子がいたの!?」



駆逐古姫程の古参となれば敵の強兵の名を知っているのは当然であり

その名は驚愕を伴いつつ古い記憶を呼び起こした。



空姫「過去の因果が追いついたと言うところでしょうか。」

空姫「あれの弟子がここにいる以上は足止め出来るのは私だけでしょう。」

空姫「操る艦載機全てが落とされるまであがき時間を稼ぎます。」

空姫「戦艦水鬼様をどうぞ。よろしくお願いいたします。」



畏まり深々と頭を垂れる空母棲姫。



空姫「お行きください。」



そして駆逐古姫を見送ると空母棲姫は改めて追撃部隊の方へ向きなおる。


605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:52:53.39 ID:O5Yg9HcV0


空姫「殿軍としての務め。しっかりと果たしてみせましょう。」

瑞鶴「いいじゃない。その覚悟。受取った。」



瑞鶴の意思が乗った艦載機、いや、瑞鶴そのものと言って過言ではないだろう航空隊が

覚悟を決めた空母棲姫へ襲い掛かる。



空姫「動きが捉えきれない!」



敵の攻撃隊を一言で形容するなら俊足俊英。

一機が魚雷を落せばその機体とまったく同じ高度、位置につけた二番機がそれに続く。

前衛の機体を盾に後続が全て突撃。突撃タイミングはコンマ以下秒のずれもない、

そして迎撃機が敵の死角位置から後ろを取れば迎撃機の死角に敵が居る。

背中に目がついているのかはたまたその敵機は本当にそこに居たのか或いは未来予知?

いいように翻弄され空母棲姫はあっという間にダメージを重ねていく。



空姫「私が相手をするには力不足だったようね……。」

空姫「……、青鬼の弟子という事であればこんな戦場では

   仮に旗艦を勤めているのであったとしても役不足なのでしょうけれど。」

空姫「自分の命を奪っていく相手の顔くらいは拝みたかったわね。」



既に艦攻からの魚雷の命中弾が数発。

そして、艦爆からの直撃弾も食らっている。

錬度の低い敵攻撃隊に上手く紛れて攻撃してくる精鋭。

その姿、気配を見ることは最期まで敵わなかった。



空姫「ここまでですか……。」

空姫「これほどの強さを誇る艦娘がまだ隠れていたとは……。」

空姫「我々の完敗ですね……。」

空姫「駆逐古姫様……。

   後は、どうぞ、どうぞ…よろしくお願いいたします。」
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:54:05.63 ID:O5Yg9HcV0

瑞鶴「ふん。なかなか頑張ったじゃない。」

瑞鶴「でもね。ひとつだけ訂正して逝きなさい。」

瑞鶴「私に技を教えてくれたあの人はこんなもんじゃないわよ。

   正しく鎧袖一触だったわ?」

瑞鶴「私はあの伝説の足元にも及ばないんだから。」

瑞鶴「私はあの伝説と比べて自分がそれに並べるなんて思っちゃいないわ。」

瑞鶴「あんたがここで負けたのは、

   たまたまあんたが私より弱かっただけよ……。」



意識を載せた艦載機達の視界に

空母棲姫が炎上、轟沈する様を捉え瑞鶴は意識を体へと戻した。

607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:55:49.25 ID:O5Yg9HcV0


瑞鶴「……、川内?」

川内「お帰り。」

瑞鶴「迷惑掛けたわね。」

川内「いえいえ。戻ってきたなら何より。」



敵の必死の猛攻は意識がなくなり

棒立ち状態だった瑞鶴を格好の的としていたようである。

瑞鶴が自分の体に戻ってきた時、

体の護衛を頼んでいた川内はかなり消耗しているようだった。



瑞鶴「あの人達みたいに意識を飛ばしていても

   自分の体を動かすなんて芸当は無理ね。」

瑞鶴「まだまだ修行が足りない事を痛感したわ。」

川内「んー、まぁ、瑞鶴は瑞鶴でいいんじゃない?」

川内「まっ、確かに明確な目標があったほうが

   やりやすいってのはあるかもだけどね。」

川内「で、首尾は?」

瑞鶴「上々よ。」

川内「じゃま、後は時雨にまかせますか。」

瑞鶴「そうね。さすがに疲れたわ。」

瑞鶴「ウォースパイト?」(無線)



瑞鶴が無線でウォースパイトを呼び出す。



スパ「お呼びですか?」(無線)

瑞鶴「疲れたから旗艦よろしく。

   副官として補助はしてあげるから頑張んなさい。」(無線)

スパ「えぇ!?」(無線)



そして、二の句を告げさせず無線を切る。



川内「いいの?」

瑞鶴「そろそろ一人立ちさせるべきでしょ?」

瑞鶴「這えば立て、立てば歩めの親心よ。」

川内「スパルタだねぇ。」

瑞鶴「雪風が過保護なのよ。」



そう川内に返し瑞鶴はゆっくりと自己の艦載機を再度発艦させた。


608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 01:06:09.77 ID:O5Yg9HcV0
以上更新終わりで御座います

590様、そういっていただけると何よりです
深海側のドラマもある程度あると主人公側も引き立てられるかと思いながらの話づくり
主人公側を面白く見せるには魅力あふれる敵役も重要と自分は思っています

591様、乙レスありがとうございます

592様、いつも話の展開を考えて感想レスを下さっている方でしょうか?
考察ありがとうございます、戦国史好きなら外せない戦いですよね、自分も好きです

593様、レスありがとうございます
軍艦としてではなくあくまで艦娘だから出来る作戦や手法をいくつか足した話し作りのほうが
他の艦これ2次と差別化できるかしら?と無い知恵をうんうん絞ったかいがありました

次回は時雨が満を持して主役(?)の貫禄。ヒーローは遅れてやってくる!
何とか年内に終われるよう頑張ります、この救援話しだけでスレの半分くらい消費している事実
もっと上手くまとめれないと駄目ですね…
いただいているレスには目を通して返せる場合はレスを返しますのでどうぞお気軽にレスを残していただけると嬉しいです
では、次回もお時間の都合が宜しければお読みいただけると幸いです
ここまでお読み頂きまことにありがとうございました
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/21(金) 00:39:25.78 ID:k98FMmF90
乙です
既に戦没している一航戦のヤバさが半端なくてなんとも
ここの瑞鶴的に他の鎮守府の一航戦(特に加賀)が自分に対し
舐めた態度とったりするとやっぱブチギレ案件なんでしょうかね
610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/21(金) 01:04:16.11 ID:yBUtarlV0
たまたま上手くいった狂人集団(名指し)

深海は札2枚、提督は1枚 うーむ
提督としてはうまいこと少佐提督が大将首を挙げる状況を創出出来れば功の上げすぎも多少隠せるがそんな状況意図してでっち上げるのは難しいなあ
そういやでっちの姿見ないような
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/12/21(金) 06:41:36.27 ID:f4OjJbdSO
私の艦載機は最近航続距離や威力が弱い気がする
亜鉛飲んだほうがいいのかなぁ
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/21(金) 10:15:02.90 ID:SE5IBpml0

フルダイブって敵味方の動きをほぼ随時把握しつつリアルタイムで細かく指示できるようなものなのか
鬼かよ
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:23:13.35 ID:KSP3WUqy0
室内の吐く息が白い、少しだけ更新します
イベントやる気が出ない、皆様もう突っ込まれてます?
新艦は可愛いなぁと思うのですが、にんともかんとも
614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:25:05.97 ID:KSP3WUqy0

深海棲艦達の撤退は三々五々、

四分五裂といったいかにもな敗残軍の撤退ではなく。

駆逐古姫が逃げるべき方向を示し、

その他の姫級たちが死ぬ最後まで指揮を執っていたことも有り只の敗残兵とは違った。



提督「負けているにも関わらず統制が執れている敵というのは厄介ですね。」

大佐「えぇ、平時の練度と敵の統率力の高さを窺い知れます。」



ここで多くの敵指揮官を倒せた事は後々有利に働くと二人は考える。



提督「時雨はそろそろか。」



先の無線時に聞いた座標から秋津洲が連絡してきた敵旗艦艦隊の座標とを見比べ、

手元の時計を見て呟く。

本隊の艦載機部隊は提督の指示の元、

撤退しつつある敵旗艦艦隊以外の敵を先に始末していっている。



大佐「丁寧な仕事ですね。」

提督「今、敵主力に向っている部下が任せろと言ったんです。」

提督「上がやれることはその言を信用して

   周りの邪魔が入らないようにすることですよ。」

大佐「部下を育てる為に裁量を与え見守るという事ですか。」

提督「最悪仕留めきれずともこの戦域における絶対的勝利は我々のものです。」

提督「我々の強さを知れば復讐を誓うにしても相応の期間を置くでしょう。」

提督「現状、時間は我々にも必要です。」



提督の言葉には大佐から示唆された色々な面倒事を片付ける為の時間が居るという事であり。



大佐「銃後の面倒事、政治の方は厄介ですからね。」

大佐のこの一言は根が恐ろしく深い事をしめしている。

615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:27:09.10 ID:KSP3WUqy0

深海棲艦 殿軍 駆逐古姫隊



古姫(電探に敵機影が映り始めたわね。)



空母棲姫を残し自軍の直参を連れ

戦艦水姫の殿軍を勤める駆逐古姫の部隊にも

グラーフや瑞鳳の艦載機達が迫ってきていた。

しかし。



ツ級「ツァ!」



駆逐古姫直参部隊ともなれば、深海を支える精鋭なのだ。



グラ「ふむ。さすがに普段使わない52型だと操作に難ありか。」

瑞鳳「へぇー、あそこまで海面スレスレに飛んでる艦攻隊を落せるかぁ。」



艦攻隊が海面スレスレを低く飛ぶのは対空機銃の俯角には限界値があるため。

機銃を下向きにした範囲内で狙えなくなる範囲の内側にまで入り込めば

雷撃はやり放題になる。

だが、敵の殿軍の精鋭達はそれをさせてくれない。



グラ「雷撃のコースに乗る前に落とされると抱えた魚雷が無駄になるな。」

瑞鳳「うん。余り意味の無い物になっちゃう。」



追撃隊の艦載機達が落とされ始めた時にグラーフ達の無線に連絡が入った。



時雨「ようやく敵殿軍に追いついたよ。」(無線)

グラ「時雨か。」(無線)

時雨「道中の抵抗もなかなか厳しくてね。」

瑞鳳「直接やる?」(無線)

時雨「うん。僕がやる。任せて貰えるかな?」(無線)

グラ「上空は任せて貰えるか?」(無線)

時雨「お願いするよ。」(無線)

瑞鳳「それじゃぁ、周辺のお掃除はこっちがするね!」(無線)

時雨「うん。お願いする。」(無線)


616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:28:11.64 ID:KSP3WUqy0


古姫(ここに来て、まだ強兵の手札を切れるか……。)

古姫(敵の…、敵の救援部隊の層のなんと厚いことよ…。)



迫ってきた時雨の纏う雰囲気は歴戦の古参兵のそれ。



古姫(なれど、救援部隊の中核のみが頭抜けて質が高いだけのようね。)

古姫(全体の軍の質であれば我ら深海側の方が上なのは揺るがない。)

古姫(それだけ相手は全体的に追い詰められてきている。)

古姫(なればこそ、今回は相手が一枚上手だった。)

古姫「それにつきるわね。」

時雨「?」

古姫「こちらの独り言よ。」

古姫「今、この場に立つということは

   あなたもそれなりに名のある艦娘と思うのだけれど。」

古姫「名乗る名があるのなら聞いてもいいかしら?」



古姫が連れていた直参の深海棲艦達は

時雨が瑞鶴に任された部下達が相手取り

グラーフ、瑞鳳の攻撃隊がそれを援護する。
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:29:37.91 ID:KSP3WUqy0

時雨「名乗れる程の名は無いけれど。」

時雨「そうだね。

   僕は外地鎮守府管理番号88所属。」

時雨「白露型二番艦、時雨だよ。」

古姫「此方の求めに応じてくれて感謝するわ。」

古姫「流石にこの首、

   知らない相手にくれてやるには惜しいかと思っていたのよ。」

時雨「それで、君は?」

古姫「深海南方方面軍戦艦水鬼艦隊が参謀長駆逐古姫。」



名乗りを終え、武者両名の戦が始まった。

先の先、先の後、後の先。

剣道でよく言われる試合運びの為の対峙法であるが

武芸者同士での戦い方の心得の一つ。

相手の動きを先読みしそれに対して先に動く。

また、相手が仕掛けてきた際に出来た隙に対してカウンターを返す。

先に長門と戦艦棲姫が演じた演武の様に戦うが。

その駆逐艦たる二人の動きは正しく自由自在。

砲が擬装に固定され砲の動きが制限される戦艦達と比べ

駆逐艦である二人の砲は携行式。

そこには仰角、俯角という艦艇に固定される砲の概念はない。

更には。

618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:31:42.59 ID:KSP3WUqy0

時雨「流石にいい所に魚雷を撃ってくる。」



ひらりとかわし避けきれない魚雷を砲撃。



古姫「軽くかわしてくれるものねぇ。」



時雨がお返しとばかりに

返してくる魚雷を避けた先の砲撃を交しつつ返す駆逐古姫。

ただ、戦艦同士の戦いと違い。

こちらは駆逐艦である。

一撃一撃はお互いに致命傷になる確実なダメージとなる。

駆逐古姫の方に装甲の分があるとは言え

流石にそれに頼った戦いは出来ないだろう。

お互いに死への一撃を軽くいなす戦い。



時雨「そろそろ観念してその首、渡しておくれよ。」

古姫「今はまだあげられないわねぇ。」



魚雷を放った後にその後ろで加速して突っ込んで来る時雨。

これは駆逐古姫が魚雷を避けきると確信しているからこそ出来る芸当。



古姫「自身の放った攻撃を

   一撃も無駄にしないその心意気は素敵だと思うわよ?」

古姫「でも、魚雷が私に当っていたら貴方、爆発に巻き込まれていたわよ?」


ほいと時雨の放った牽制の蹴りを

海老ぞりで交しつつ言葉をかける駆逐古姫。



時雨「あれに当ってくれるような君なら

   僕が此処で戦っていなくて済むんだけどね。」



蹴り抜けた足の勢いを活かし

駆逐古姫の後ろを取ろうとした時雨に駆逐古姫が砲身の先を向けてくる。

それを体を捻らせ砲撃で逸らし言葉を返す時雨。



古姫「本当に困った相手がいたものね。」

時雨「どうも。」



この期に及んでというのが正しいのかは別として。

相手を褒めるに困った相手というのは適切なのかどうか、

そしてそれに謙遜ともとれる無気力な返事。

弛緩した雰囲気が漂うが周囲は敵味方入り乱れ命のやり取りが行われている愁嘆場。
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:33:52.28 ID:KSP3WUqy0

古姫「貴方が敵でなければ

   野点の一つでもと誘いたいところなのだけれどね。」



幾度にも及ぶ砲雷撃。

それを交わし続ける二人に少しづつの変化が出始めていた。

方や明石によりつねに最新の技術を投下され進化し続けている兵装。

そして、その体力は無尽蔵ともいえる若さからくる。

対峙する駆逐古姫は、その名の示すように時雨と比べれば年をとっている。

更に、艤装そのものが持つ性能は決して悪い物ではないのだが。

事、ここに至っては総合力で時雨に分があるのである。

更に元々の戦況も今は時雨に味方する。

時間が経てば経つほどにこの海域に敵が、

艦娘が集まってくるのは明らかである。

時雨の三つに編んだお下げが回避行動にあわせくるりと揺れる。



古姫(美しいものよな。)



だが、見惚れていては自分の首に当てられた死神の鎌が振り下ろされる事になる。



時雨「なかなかに時間を稼いでくれるね。」

古姫「あら、流石に見抜かれていたわね。」

時雨「消極的な戦い方をされているとね。」

時雨「ここに僕の仲間が集中すれば

   君が逃がそうとしている総旗艦を追う者は少なくなるからね。」

時雨「かといって君の相手が単騎で出来るのは僕くらいだろうしね。」

時雨「乱戦で戦う方が得意なタイプと見るよ。」

古姫(本当に困った相手だ。)



その双眸はこちらを良く観察しこちらが得意とする戦いへ持ち込ませないように

周囲の部下へ戦闘の参加を禁じ、自分たちを無視し本来の追撃を行わせている。



古姫(こちらの手をきっちりと封じてくる。)


会話を楽しんでいるように語っているが実際は

自分を引きとめ戦艦水鬼へ追撃隊を殺到させているのだろう。

お互いにお互いを引きとめておきたいという意味では利害が一致しているとも言えるが。
620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:35:07.03 ID:KSP3WUqy0

古姫「貴方だけしか止められないのであればそれは意味無き事。」

時雨「なんだ、こっちの意図も読まれてたか。」

古姫(涼しい顔で。子憎たらしい。)



しかし、その内心は晴れやか。

死出の旅路によき敵に合間見えた事、その喜びが大きい。



古姫「今、再び、一武人として戦える。」

古姫「時雨。あなたに感謝を。」

古姫(といっても体がもう気持ちに追いついて来ないわね。)

古姫(歳はとりたくないものね。)

時雨「……。」

時雨「改めて。僕は外地鎮守府管理番号88所属。白露型二番艦時雨。」

時雨「相手をさせて貰うよ。」

古姫「深海南方方面軍戦艦水姫参謀長 駆逐古姫。」

古姫(あぁ、成程。)

古姫(此方が一息入れるだけの。その一息で調子を戻せと。)



時雨が改めて自分の名乗りをあげ、敢えて作った間の意図を見抜き。

621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:36:41.60 ID:KSP3WUqy0

古姫(尚も全力を出せと目の前の将は言うか。)

古姫「貴方は貴方の指揮官に老人を敬えと教わらなかったのかしら?」

時雨「労わらなければいけないほどの歳なのかい?」



ここに来て、駆逐古姫はようやっと時雨の意図を理解し

その行為に敬意を払いたいという、いや払うべき行為と気付いた。

時雨は自分に全力を出し切らせ、そして武人として死なせる。

最大限の名誉を与え死なせる心算なのである。

殿軍の将といえば追撃され命を落とす事が多いのが常。

更には名の知らぬ者に狩られその死体は切り刻まれ辱めを受ける事が多い。

時雨が味方から信頼されて部下を良く使っているのを見れば分かる。

時雨自身、それなりの位置にいる者なのだろう。

実力で他のものに自分の命令を聞かせるだけの力がある。

その者が自ら自分を倒し、

誰とも知らぬ者に首を獲らせ不名誉な死に方はさせぬとの意思表示。

名誉ある死を与えると言っているのだ。

戦い、銃口を、魚雷を突きつけ合わせた僅かな時間で時雨の人となりは理解出来た。


622 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:38:21.36 ID:KSP3WUqy0

古姫(………。

   戦艦水姫様が電探の感知範囲から消えて大分たつ。)



一呼吸入れさせて貰ったものの時雨の動きに自分の老いた体は再び遅れ始めている。



古姫(………、どうやらここまでですか。)

古姫(いえ、よく持ったといえますか。)



反応速度の遅れから時雨の放った魚雷が駆逐古姫に命中した。



古姫「時雨。貴方の勝ちよ。」

時雨「君はまだ動ける。」

古姫「流石に老体にこれ以上は無理よ。」

古姫「そして、時雨、ごめんなさいね。

   この体。貴方達の研究材料にくれてやる訳にはいかないわ。」



時雨程の人物がそれをするとは思わないが。



古姫「代わりにこれを討ち取った証拠にしなさい。」



シュルリと髪を解き纏めていた、りぼんを時雨に投げる。



時雨「とっとっと。」



時雨が手を出して拾おうと目を一瞬だけ離した隙だった。

623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:40:38.12 ID:KSP3WUqy0
ズドン!



時雨「!」



駆逐古姫は自分の主砲を自分に向け発砲。

そして、自沈した。



時雨「なんて覚悟だ。」



自らの腹部を吹き飛ばした後、

艤装に残っていた砲弾を砲身内でわざとに爆発。

誘爆がおきて駆逐古姫が沈み消えるまではあっと言う間だった。



古姫(これで、これでいい……。)

古姫(戦艦水姫様に足りなかったもの。敗北の経験。)

古姫(それが、やっと、やっと足りた……。)

古姫(電探の範囲から消えて大分たつ。

   無事逃げおおせたでしょう。)

古姫(この敗北の経験は戦艦水鬼様を真の名将にしてくれるでしょう。)

古姫(皆さん、やりおおせました。)

古姫(先に逝った戦艦棲姫や空母棲姫。空母棲鬼様にこれで顔向け出来る。)

古姫(笑って出迎えてくれるでしょうね…。)



海底へ向け沈み行く体、薄れ行く意識の中で駆逐古姫は考える。

その表情は笑顔。



古姫(後は……、今しばらく、今しばらくの時間を。)



目の前で駆逐古姫が沈んでいくのを見届け

時雨はようやく自身の電探を起動させた。

時雨は余裕をある風を装っていたが

電探を切りそれで生じた処理能力の余分を艤装の他の動作処理に回していたのだ。

いや、回さざるを得なかった。

実際はそこまでしなければならないほどに駆逐古姫は手強かった。

そして、電探の範囲内には敵の部隊と言えるものが残っていない事に勝利を確信。

そしてまた敵の大将はまんまと逃げおおせた事を把握した。

624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:41:56.83 ID:KSP3WUqy0

瑞鶴「とまれ勝利は勝利よ。」(無線)



測ったように。いや。

ブィィィィィン---



瑞鶴「見てたわよ。彩雲を通して。」(無線)

時雨「やれやれ。壁に耳あり空には彩雲ありか。」(無線)

瑞鶴「お疲れ。」(無線)

時雨「うん。ありがとう。」(無線)

川内「今回はお守りだったぁ ―――― 。」(無線)

瑞鶴「あんたは縁の下の力持ちやったんだから誇りなさい。」(無線)

川内「えぇ ―――――― 。」(無線)



時雨と瑞鶴の無線に活躍の場が無かった川内が割り込む。

実際には瑞鶴の護衛として充分以上の働きをしていたのだけれど。



瑞鶴「は ―――― 。あんたには私の報奨金あげるから。」(無線)



それで満足しなさいと恐らく言葉が続いたのであろうが。



川内「わ ――――― い。」(無線)



無邪気な歓声でそれはかき消された。
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 00:48:43.83 ID:KSP3WUqy0
相変わらず地の文多めです
クリスマスギャグスレ建てたらRに飛ばされちゃいました
スレ建てバグ直ってないみたいですね、新スレ建てるのに専ブラどうなのさ日向状態
このお話はもうちょっとだけ続きます!今年もあと少し!
ねっ年内には終わらせるし!31日の12時までは年内だし!
E3の輸送で涼月掘りたい、所持制限無いみたいですよみなさん(尚、掘れるとは)
イベ、やる気持が出らんですねぇ、複数持ちしたくなるのが涼月くらいしかない
乙レス、感想レス、いつもありがたく拝読しています、どうぞ、お気軽にレスを残していただけるとありがたいです
では、次回で最後の更新とできる様に頑張りたいと思っています
ここまでお読み頂きありがとうございました
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 00:50:57.06 ID:KSP3WUqy0
ところどころ水鬼が水姫になっているのは
お読みいただいている皆様の心の中で訂正いただけると感謝いたします
いっちの不始末です
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 05:24:19.06 ID:kUOKECOpO
乙!
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 19:16:11.69 ID:asNWcBC30
更新乙です
どっちの陣営にも魅力的なキャラが多すぎぃ
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/30(日) 03:24:36.04 ID:8mCFG6w50

ゲームでこんなんが相手じゃなくてよかった
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/30(日) 22:59:08.23 ID:N0c9OvKf0
S勝利絶対させないウーマンさん流石の捨てがまり
足枷気味の部下抜きで鬼姫級連合艦隊と88主力連合艦隊の激突なら結果は逆になってたんだろうなあ
生き死ににたらればはないけど
631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:05:47.60 ID:ihf9M2Jd0
年内間に合わなかったぁ!?
いや!まだ2018年12月31日25時!?(悪あがき)
最後の更新となります、お時間よろしければお付き合いください
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 01:08:56.44 ID:ihf9M2Jd0

深海勢力と人類側勢力の境界付近



チャプ

時刻は夕暮れを迎え日は水平線の向うへと消えようとしていた。



伊58「敵艦影、いまだ発見せず。」

伊8「目視範囲内には敵は居ないよ。」

伊13「同じくこちらも見つけられません。」

伊58「もうすぐ日が暮れるでち。」



夜は潜水艦にとって一番襲撃を掛けやすくなる時間帯。

だが、今、待ち伏せをしている場所は敵と自勢力の境目。

彼女達に指示を出した提督は敵を沈められなくてもいいと言った。

それは初めの会敵後に魚雷と燃料の補給の為に一旦戻った時の事だった。



提督「この方角に逃げてくるだろうぐらいしか分からん。」

提督「海は広いからな。」

伊58「適当でち。」

提督「柔軟性を持った対応といってくれ。」ハハ

提督「まっ、それはさておきだ。」

提督「この作戦を終了すればお前さん達は晴れて自由の身だが国内には戻せない。」



58達の過去を考えれば当然。

633 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:10:45.89 ID:ihf9M2Jd0

提督「でだ、再就職先に米軍の新設潜水艦艦隊の教導の席を用意した。」

提督「収監中の伊14については既にアラスカ経由でアメリカに入ってる。」



こいつを見てくれと提督がノートPCを取り出す。



「あっ!姉貴−!」



通話アプリに姿が写るのは伊14。



伊13「イヨちゃん!?」



暫しの会話の後、伊14がアメリカに間違いなく居る事を確認。



伊58「どんな手品でち?」

提督「例のウォースパイトが頑張った作戦があるだろ?」

提督「あの後に色々米軍と仲良くしておいたんでな。」

提督「お前さん達は今回の仕事が終わったら

   こっちの方向へ向かってくれ。」

提督「米軍の収容部隊が来ている。

   表向きには観戦、情報収集という形だ。」

提督「相手先はこの時間には引き上げるから絶対に遅れるなよ?

   遅刻は無しだ。」

提督「いいな。この船には戻るな。」



そういうと三人に小冊子を渡し始める。



提督「本物の偽物だ。

   米国に着いたらグリーンカードに切り替えるから直ぐに不要になるが

   とりあえずの身分証明に必要だからな。渡しておく。」



そして続いて渡すのはプラスチック製のカード。



提督「洗濯機を回して綺麗にした奴を入れてある

   バンカメのキャッシュカードだ。」

提督「暗証番号はここでの個人認識番号の下4桁だ。向うに着いたら直ぐ変えとけよ。」



最後に3人へと腕時計を取り出す提督。
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:12:46.39 ID:ihf9M2Jd0

伊8「これは…、パネライ、ですか?」

提督「流石、博識だな。」

提督「餞別だ。金に困ったら売るといい。」



一人ひとりの腕に巻く姿を見た後に一言。



提督「二度と帰ってくるな。せっかく生きて出られるんだからな。」

提督「新天地で頑張れよ。」



ポンと伊58の肩を叩き提督は司令室へと踵を帰す。



伊13「あっ、あの!」

提督「なんだ?」

伊13「ありがとうございます!」



司令室に戻りかけた体を再度三人の方に向け、

思い出したように敬礼。

そして、伊13の言葉に笑みを返し提督は艦橋へと帰っていった。

635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:13:44.99 ID:ihf9M2Jd0


伊58「最後の大立ち回り。」

伊8「なんとか成功させたいですね。」



だが、自分たちを収容する予定の艦隊との合流時間は迫っている。



伊58「………、時間でち。」



提督が示した敵の退却経路。

移動を考えればその範囲内に留まれる時間はもう無い。



伊13「敵艦隊発見!」



待ち伏せである為に電探で

自己の位置を逆探される様な電波を出すわけには行かない中。

そして、夕暮れを迎え夜の帳が下り、

目視での敵艦影が発見しにくくなるギリギリ。

伊13が敵旗艦艦隊を見つけた。

636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:15:14.10 ID:ihf9M2Jd0

伊58「敵艦確認!」

伊58「魚雷発射後全力離脱!」

伊58達が発射した魚雷は敵へ向って一気に殺到した!

ネ級「右舷30度!距離300!敵魚雷!」



魚雷の針路は図ったようにまっすぐと戦艦水鬼への衝突コース。

命中かと思われたタイミングだった!

ズドン!



タ級「どうにか、お役目果たせたようです。」

戦鬼「タ級!?」

タ級「戦艦棲姫様に胸を張って会いに行けます。」

タ級「後ろを振り返らずこのままお逃げ下さい。」

タ級「敵の艦影が見当たらない以上は潜水艦からの攻撃。」

タ級「立ち止まれば敵の思う壺です。」

戦鬼「タ級、ごめんなさい。」



その謝罪は曳航せず、置いていかざるを得ない事への物であり。



タ級「覚悟の上です。いえ、最後の奉公が出来てよかったです。」



タ級が戦艦水鬼を庇って被弾したのは伊58達にも見えていた。

637 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:16:19.19 ID:ihf9M2Jd0

伊8「もう夜になるからもっと近付かないと視認出来ないよ!」

伊13「聴音襲撃だと敵艦隊の隊列が密だから聞き分けが困難です!」

伊8「どうする!?」

伊58「………。」

伊58「撤収でち。」

伊8「!?」

伊13「ここまで来てですか!?」

伊58「ゴーヤ達をアメリカへ送り出す為に

   提督は危ない橋を渡っているのは間違いない。」

伊58「わざわざ腕時計を餞別に贈って来た意味を考えろ。」

伊58「時間だ。」



敵艦隊の艦種までは判別出来ないほどに既に周囲は暗闇の中。

そして、敵勢力圏は直ぐそこ。

いや、既に内側に入っていておかしくない。

提督がなぜそこまでをしたのかを考えれば。

伊58が強い口調で撤退を言うのは当然ともいえる。

638 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:17:57.83 ID:ihf9M2Jd0

伊58「もう一度言う。撤退。」

伊8「……、了解。」

伊13「了解しました……。」



提督が仕掛けた最後の罠はタ級の献身的犠牲により不発に終わった。

そして、明けて翌日、残敵の掃討終了、

当該海域での戦闘終結宣言がなされこの海域での戦闘は終了した。



一ヶ月後  88鎮守府 荷揚げ用埠頭


長門「こんな所にいたのか。」

提督「色々な処理がある程度落ち着いたんでな。」

提督「さぼりだ。」

長門「そうか。それでよかったのか?」

提督「よかったのか、というのは?」

長門「例の不正を行っていた鎮守府の提督連中は処分保留だそうだが?」

提督「首をほいほい挿げ替えられるほど人間が残ってないのさ。」

提督「お前が提督になるのを受けてくれていれば話は違ったんだがな。」


先の作戦時に島風が救援を求めて立ち寄った鎮守府の提督達は

救援を断った事、他にも色々とあった不正への処分は保留されていた。

639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:19:28.89 ID:ihf9M2Jd0

提督「だいぶ前の作戦のときに首を飛ばしすぎた。」

提督「これ以上飛ばすとなり手が居ないだとさ。」

長門「私はやらんよ。」

提督「艦娘でベテランの連中を

   提督へってのは前から少しずつは進められているんだがなぁ。」

提督「要件を満たせる奴がほとんどいない。」

長門「だから私はやらんよ。」

提督「分かってるよ。二度も繰り返すな。」

長門「大事な事だからな。」

提督「処分保留にして

   手綱を握っておいたほうがいいだろうと考えたらしい。」

長門「大丈夫なのか?」

提督「一応あの辺りの人事異動はやったそうだ。」

提督「例の救援にいった所な?

   あそこの提督は後ろに下げて不正をやらかしてた連中で

   一番階級の高かったやつらから近い順に最前線。」

長門「ははぁ。死にたくなければ頑張れよと。」

提督「あぁ、例の頑張った少佐は昇進して周辺に睨みを利かせる事が出来る位置に移動だ。」

長門「なるほどなぁ。」
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:20:50.42 ID:ihf9M2Jd0

長門「ところで、教導の昔の部下だった娘から

   今回の救援作戦が艦娘養成学校の教科書に掲載されたと聞いたのだが?」

提督「月並みだがな。人の寿命は二つあるって奴だ。」

長門「肉体の、命が尽きたときと人の記憶から忘れ去られた時の二つだったな。」

提督「そうだ。島風が生きた記憶を。生き抜いてなした事を。」

提督「島風の自己犠牲の精神を真似ろとは言わないが、その高潔さを知って欲しい。」

提督「そして、皆の記憶の中に残れば、残っている間は島風も死んでいないだろ?」

長門「……、そうだな。島風は皆の心の中で行き続けるだろうな。」

提督「あぁ。」



そして少しの間があって長門がまた提督に話しかける。

641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:24:54.10 ID:ihf9M2Jd0

長門「グラーフやポーラが本国へ帰ると聞いたのだが。」

提督「今回俺たちは目立ち過ぎた。」

提督「グラーフに関しては

   それを面白く思わない連中が手を回してうちの弱体化を狙ったんだろ。」

提督「ポーラはもともと志願だ。契約が終われば帰るだろうさ。」

長門「他にも人員が抜けるようだが?」

提督「出る杭は打たれるのが世の慣わしだろ?」

長門「打たれるどころか引っこ抜かれそうな勢いだな。」

提督「今回は目立ち過ぎた。それだけだ。」

提督「日陰者は日陰者らしくしとけという事さ。」

長門「これから厳しくなるな。」

長門「我々は守れただけだからな。」

提督「それが理解出来ているお前はさっさと艦娘やめて提督になってくれよ。」

長門「だからならぬと言っているだろうが。」

提督「あー…、そうだったな、すまん。」

長門「………。」



そして、また、しばしの沈黙。



提督「………。なぁ、長門。」

長門「なんだ?」

提督「島風は死ななきゃいけなかったのかな?」

長門「止められたのに止めなかった事を悔いているのか?」

提督「お前は察しがいいな。」

長門「付き合いは長いからな。だが、それは、たら、ればだろう?」

提督「……、そうだな。議論するだけ意味の無い事だったな。」



そして、また間が空き提督が口を開く。
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:27:35.47 ID:ihf9M2Jd0

提督「長門。煙草を吸ってもいいか?」

長門「……、あぁ、いいぞ。」



そして、一本取り出し。火をつける提督。



長門「……、鬼の目にも涙か?」

提督「ちげえよ。煙草の煙がな……。」

提督「煙草の煙が、目に染みただけさ……。」



人生の最後が幸せに迎えられたかどうか。

それを決められるのは本人だけだろう。

或る者は裏切られ、また或る者は金を稼ぐ為。

或る者は復讐を胸に誓い、或る者は世話になった者への忠誠を誓う。

ここは外地鎮守府管理番号88。

様々な艦娘達の人生が交差し、また離れていく場所でもある。

ここへ送られてくるのは人生が終わりの一方通行ではなく交差点である。

彼女達の活躍は仲間の心に、記憶に残る。

それだけで充分だろと彼女らは今日も出撃する。






続外地鎮守府管理番号88 完
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 01:31:47.63 ID:ihf9M2Jd0
以上一年近く長々と続きました第二部完でございます
お付き合いいただき本当にありがとうございました、途中でネタやおまけなど色々脱線ありましたが…
最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました
お読みいただいている皆様の乙レス、感想レスにやる気をいただきながらの作成でした
本当にありがとうございました、依頼を出しに行き、このスレは終了とさせていただきます
スレがあまっているのでボツネタの投下等に使うかもしれませんがその際は生暖かい目で見てやっていただけると幸いです
ではでは、本当にお付き合いいただきありがとうございました!
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 02:55:20.98 ID:x60SYXEX0
おつ 完結は惜しいがお疲れ様でした
最後の一枚は不発だったがでっちが出番あって何より
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 08:06:32.99 ID:nuOcqu1j0
第3部に期待
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 14:41:02.99 ID:ytlaAwaU0
お疲れ様でした
海外勢以外のメインキャラの中から多くの移動者が出ていたら
本当にきつそうですね
(現地裁量でメリケンからの人員支援を受けるてもあるかもしれませんが)

第三部の開始期待してます
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 23:47:21.89 ID:91iE+9l40
お疲れ様です
熱いストーリー良かったっす
自分も3部期待です
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/02(水) 14:33:30.76 ID:7UJ5uOv70
乙!
完走お疲れ様でした、第3部も期待してる。
649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/02(水) 20:34:04.42 ID:zbHNqNyT0
別スレのおまけにボツネタ供養でちょっと書かれた話を
もっと書いてとお願いしたのは1年以上前でしたか。
本当に良かったです。
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 03:44:41.65 ID:ul40+rcH0
お疲れ様
知識が浅いから難しい所はあったけど戦い方は凝ってて読んでてワクワクした。
熱い艦これ待ってます!
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:07:36.63 ID:S4P9bhGd0
おまけネタ 日常を少しな話し
652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:08:41.94 ID:S4P9bhGd0


提督「今日は何曜日だったか…。」



或る冬の日、窓からの日差しは暖かくまさしく小春日和だった。



不知火「今日は月曜日ですね。どうされました?」

提督「あぁ。今度、定例の提督会議があるだろ?」



各方面軍事での提督が集まっての戦略会議。

提督曰くおっさん達の同窓会だとか。

早い話、中身がないという事でもある。

以前に時間の無駄とばっさり言いきっていた程でもある。



提督「出席しないと後の割り当てにケチが付く。」



防衛を担当している戦域からの『 あがり 』。

燃料等のその他工業製品の割り当てはこの会議の後の打ち合わせで決まる。

当然の様に戦果が一番大きい提督の所が割り当ては大きいわけだが、

その打ち合わせの場に居なければ減らされてしまうというのもありえてしまう。

必要な所に必要なだけ送るという基本的な事にも、

袖の下、派閥、階級なんてものが付いて回るのである。

653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:10:00.56 ID:S4P9bhGd0

不知火「鼻薬、手土産、お歳暮は手配しております。」

提督「あぁ、いつも助かっている。」

不知火「では?」



何か落ち度でも?と言いたげに首を傾ける不知火。



提督「月曜日は理髪店協会の加盟店は営業しないんだ。」



自身の頭をぽんぽんと叩く提督。

なるほど散発かと合点がいく不知火。



不知火「それでしたら。」

提督「ん?」

不知火「お切りします。」ヌイ!

提督「そうか。では頼もうか。」



そして、窓辺の明るい場所で散髪が行われたのだった。
654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:11:24.21 ID:S4P9bhGd0

チョキチョキチョキ

軽快な鋏音。



提督(窓ガラス越しの日差しというのは暖かいな……。)

南方というのを考えれば暑いくらい。

提督(少し、眠くなってきたな……。)zzzz

提督 Zzzzzzzzzz



チョキチョキチョキ



そして、悲劇は起こる。



提督 Zzzzzzzzzz カクッ



チ゛ョ゛キ゛ン゛



不知火「!」

不知火「ヌイィィィ!!」



眠りに落ちた提督の首が傾く。

そして、鋏はそれに対応できず、

余分に切りすぎてしまった……。



不知火「バッバランスを!」



チョキチョキチョキ



不知火「まっ、まだなんとかなるはずです……。」



チョキチョキチョキチョキ



不知火「こっ、こっちを……。」



チョキチョキチョキチョキチョキ

655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:13:11.14 ID:S4P9bhGd0

30分後



提督「と、思わず寝てしまった。」

提督「不知火。すまなかったな。」

不知火「………。」

提督「?」

提督「随分とさっぱりしたのか気持ち頭が軽くなった気がするよ。」

不知火「!!」

提督「鏡はあるか?」

不知火「申訳有りません……。」

提督「あぁ、鏡なかったか。まぁ、いいさ。」

提督「少し、眠気覚ましに散歩に行って来る。

   どうにも眠くてな。」フワァ



そして、提督は執務室を出て散歩へと向った。



長門「おっ、提督。」



提督の後ろ姿を見て声をかける長門。



提督「ん?なんだ?」クルリ

長門「………。その、随分と思い切ったイメチェンだな。」

提督「そうか。不知火に頼んだんだ。」

長門「そうか。」

提督「眠気覚ましに散歩中でな。どうだ?付き合うか?」

長門「いや、遠慮しておこう。」

提督「そうか。」



その後、長門以外にも幾人かと会話を交わしたのだが

何故か皆、歯切れの悪い会話。

そして、提督はウォースパイトとの会話で気付いた。

656 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:14:44.98 ID:S4P9bhGd0

スパ「Admiral」

提督「ん?どうした?」クルリ

スパ「あっ、Admiralのお客様でマフィアの方でしたか。」

スパ「勘違い失礼いたしました。」ペコリ

提督「…………。」



埠頭まで来ていたこともあり明石の工廠に立ち寄れば。



明石「どこのヤクザの組長が来たかと。」

秋津洲「マフィアのボスでも相当ヤバイクラスかも!」

提督「忌憚無い感想ありがとうな。」ハァ―



提督は自分の状態を把握した。



明石「なるほど道理で皆さんが

   紫電改を注文に来ると思いました。」

提督「艦載機のか?」

秋津洲「育毛剤かも。」

提督「あー、成程……。」



なお、育毛剤は間に合わず、

この状態で提督会議に出席した提督は

他の提督にいつも以上の威圧を周囲に与えていたそうである。



不知火「この不知火。自沈してお詫びを……。」

提督「いいさ。結果的に上手く事は運んだし暫く髪を切る必要もなくなったし。」

提督「前向きに考えるさ。」

スパ「元々少なかったですしね。」



余計な一言が原因でこの後ウォースパイトが

楽しい演習に参加する事となったのは言うまでもない。

657 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 00:17:30.50 ID:S4P9bhGd0
ちょっとした鎮守府の日常ほのぼの
お読み頂きありがとうございました
完結にあたっての第三部期待のコメント沢山ありがとうございます
改めてここに御礼もうしあげます
コネタや日常ネタなんかで今後もこちらにあげることあるかもしれませんが
その際は温かい目でみてやっていただけると幸いです
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 05:52:52.69 ID:SIB406j6o

スパ子…
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 09:00:14.46 ID:T2YiU9iLO

ヤポンスキー的な空気の読み方は難しいのかな
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/01/07(月) 09:34:32.19 ID:3FOkM2/5O
ヤクザの組長は金子信夫の演じる役は最高
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 10:30:01.67 ID:LeL6M+b5o

ここのスパ子ほんと好きだ
662 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 11:57:24.20 ID:MP8xFXdx0

信頼と安心のオチ担当
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 19:30:25.52 ID:5pJ1sCJv0
提督は進化すると禿になるからね仕方ないね
リアップが良いらしい
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/18(金) 23:53:29.98 ID:CIcpqvvX0
艦これ小ネタスレにだいぶ昔に投下して
色々考えて続きを書いたけど結局やめたものを供養代わりに投下します
御笑納ください(続きはかかないんだからね!)
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/18(金) 23:56:35.07 ID:CIcpqvvX0

『 赤備え 』


じゃらん。

錫丈の鐶の音が響く。

暗闇に、水底に敵を引きずり沈めゆく。

奴等は赤備え。

奴等が通った後には深海棲艦は一隻として残らない。

全てが灰燼に。

灰は灰に塵は塵に。

軽巡陸人の近接切り込み戦隊。

彼女達を知るものは言う。

陸人の女武芸者達には近寄るなと。

鐶の音が聞こえた時には手遅れだと。

奴等の艤装は敵の返り血で染められたものだと。

冥府の使者、黄泉比良坂の案内人。

血濡れの錫丈、仕込三味線、地蔵菩薩の代弁者。

彼女らを表現する言葉は無数に有る。

魂を送り届ける先は黄泉の国か、はたまた冥府か。

面頬に隠れたその下を覗くはその命、無きものと知れ。

彼女らが何処から現われ何処へ消えるか知る者は居ない。

ただ、その艤装が赤く染められている事からか

海軍の公式記録には

『 赤備え 』の所属不明な壱団有りと記されている。

666 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/18(金) 23:57:43.45 ID:CIcpqvvX0
『 闇に咲くは地獄華 』



都内高級料亭 上客用離れ



大将「いや、座敷遊びまで手配しておるとはな。」

中将「大将閣下には日頃お世話になっておりますので。」



ベンベンベンベべべべ。

はぁーっ!

〽  妖も人も 死ねば変わりは無き事よ

大将「舞を踊っている舞妓もだが、三味線奏者もなかなかだな。」

〽  少し渚に人待てば 果てる命はなかるるに

中将「向島の置屋で一番の綺麗所をお願いしていますので。」

〽  この世儚く 夢落つる

大将「ふん。なかなか美形さな。」

〽  憂き捨てて 捨てて憂き世の浜千鳥

ぺぺぺぺぺん。いよっ!


中将「次の作戦であの鎮守府を・・・・。」

大将「あぁ、あの生意気な若造を潰す。

無理な作戦海域を割り当てて引責よ。」

中将「まぁ、口のきき方も弁えぬ小僧でしたからな。」

大将「ふん。」



酒をほとほとと飲み始める二人。

酔いが回り始めた頃にそれは起きた。

じょあぁぁぁーーーん。

三味線の音と共に照明が一斉に消えたのだった。



大将「むっ?停電?まぁ、直ぐに元に戻るだろう。」

「さぁて、灯りが戻るまで命が持てばいいけどねぇ。」



言うが早いか白刃一閃。

大将の首が椿の花が落ちるが如くぼとりと落ちる。
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/18(金) 23:58:52.79 ID:CIcpqvvX0

中将「なっ!何事?!何も見えない、聴こえないぞ!?」

「あの世で閻魔にあったら私の名前を出すといい。

刑期の割引をしてくれるはずだよ。」

「川内にやられたってね。」



背中側を三味線の撥による袈裟斬り。

斬った本人は撥に付いた血を相手の軍服で拭う。



「撥には毒が塗ってあるんだー。

えへへ、万が一にも助からないよねー。」

「姉さん、早めの撤収を・・・。」



カラリと襖が開く。



「姐さん、こっちも終わりやした。」

「天さん達も終了かい。こっちも今、方が付いたよ。」

「那珂。そこの鞄を忘れずにね。」

「はーい!」

「書類鞄は後でじっくりと拝見と行こうじゃないか。」

「姉さん、ここはこのままで?」

「海軍の偉いさんが何をしていたって話でしょ。表沙汰には出来まいよ。」

「帰ったら風呂にするよ!豚の血は臭くて敵わないわ。」

「姐さん、そいつは豚に失礼ですぜ。」

「あぁ、俺もそう思うな。」

「姉さん、私もそう思います。」

「そうねぇ〜。私は豚の方がまだ可愛いと思うわ〜。」

「那珂ちゃんも完全同意!」

「あらま。まぁ、いいや。フタフタマルマル、作戦終了。帰投するよ。」

「了!」



東京不夜城。

夜の闇に今日も命の灯が消えた。

668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/19(土) 00:00:48.48 ID:7HM3/1m90

『 始まりの詩 』



2×××年

人ならざる者達が諸国沿岸に現われ人類へ攻撃を開始した。

始めは大型海洋哺乳類のような異形の物達が

統率されることなくただ暴れていた。

多くの国家は自国の軍事力で多大な労力と犠牲を払い撃退。

そして、段々と敵は人型を取るようになり

ある一定の水準を超えたとき劇的に進化した。

彼らの進化により現代兵器での戦闘は割りに合わなくなった。

世界はその敵を深海棲艦と名付けた。

敵は現代兵器を満載した船舶をあざ笑うかのごとく沈めていく。

しかし、海に出ない限りは襲ってこない。

結果として巨大輸送船団の護衛に軍を回せる国のみが生き残る。

大陸諸国は自国が生き残る為に弱い国を侵略。資源の収奪を繰り返す。

世界最強の国は自国だけで全てが回せる為沈黙を貫く。

そんな中、極東の島国がオカルト的アプローチにより事態の解決を図る。

『 相手が得体の知れない化け物ならこっちも化け物で応じればいい 』

これがプロジェクトを進めたものの台詞。

研究は進められ、嘗て皇国の四方を守った鉄の城達の御霊。

これを燃料、弾薬、鋼材、ボーキ、そして開発資材という名の有機物。

5つの要素をいい塩梅で混ぜて御霊を降し、艦娘と呼ばれる兵士を作り上げた。

彼女ら兵士は強かった、

そして海軍は分霊(わけみたま)で同じ艦娘を複数作り上げて行った。

人ならざるものに人ならざるもので戦う。

倫理観等はそこに有る訳も無く

彼女達を押し込み留めた場所は鎮守府と呼ばれる収容施設。

ここには幾人もの兵士が押し込まれていた。

同じ武器、同じ顔、同じ名前。ややこしいと思うだろう。

同じ物であったとしてもそれが価値あるものであれば

双方とって置くのだろうが特に価値が無ければ?

取り置くのは片方だけ、それも先に有る方だけだろう。

兵士から『 魂 』を抜き元の無機物に戻す作業を彼ら海軍は『 解体 』と呼んでいた。

これはある収容施設に拾われ解体されるはずだった者達が逃げ出したことから始まる物語。
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/19(土) 00:02:17.79 ID:7HM3/1m90

『 不要とされた者 必要とした者 』



ザザーン。



大淀「こちらが本日ドロップ現象で

入手したと連絡のあった艦娘の報告です。」


艦娘を海軍が創り出した時、

黄泉路は開かれ偶に海軍の意図しない降霊が起きる事があった。

海上の有機物、海草の塊や、水生生物の死体といった有機物を憑代として

艦娘が海上に生まれることを海軍は魂が堕ちるという意味も含め

ドロップ現象と名付けていた。



提督「ちっ、レアはいないんだろ?」

大淀「・・・・、川内型が3人です。」

提督「けっ、ハズレかよ・・・、ったく。

艦隊が戻り次第全員解体にまわしてくれ。」

提督「いや・・・・、今日は何曜日だ?」

大淀「日曜日ですが。」

提督「ちっ、めんどくせぇ。

明日の任務入れ替わりの際の近代化合成任務用においといてくれ。」

提督「逃げ出したりしないように営倉につっこんどけ。」

大淀「・・・・、了解しました。」

提督「まったく、今更夜偵なんざいらねぇし。育てる資材も勿体ねぇ。」



ぶつくさと太った身体をゆすらせながら

提督と呼ばれた男は鎮守府建屋へと消えて行った。

程なく帰投を告げる無線の声が聴こえ、

出撃をしていた艦娘達が帰ってきた。

そして、大淀は連れて帰ってこられた艦娘の一人に目を留める。

自分と同じ。

純粋じゃない目。

混ざり者の目。

大淀はそれを見て予てよりの計画を実行に移す決意をした。

670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/19(土) 00:05:07.03 ID:7HM3/1m90
以上導入部分だけ
お気付きの方もいらっしゃるかと思いますが隼鷹さんを始めとする
軽空母や空母の艦載機の設定は元々はこっち用で用意していたものです
こういうシリアス系の奴は書いていて乙レスいただけにくいのでモチベが保てない奴です
モチベが保てないとエタっちゃう……、うん、ごめんなさいです
お読み頂きありがとうございました、とりあえずのボツネタ供養でした
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/22(火) 01:01:47.47 ID:c5Ong7Rw0
もしやゴーヤは海を漂う野菜から生まれたのかw
672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:33:39.92 ID:jo7lW8fX0
ボツネタその2
カウボーイビバップとブラックラグーンを足して割らない感じのをやろうとして止めた奴です
それと、瑞鶴の師匠との思い出話しを少し
お時間よろしければお読み下さい
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:36:04.39 ID:jo7lW8fX0

阿賀野型が主人公になるSSってみないなぁとの考えからのお話です




Cowgirl 阿賀野



※この作品は喫煙、暴力、麻薬、キャラ下げ等の内容が含まれます。
 これらが駄目という方は読むのは御遠慮いただきますようお願いいたします。



人類と深海棲艦達の長期にわたる戦争は終結し世界は平和を取り戻した。

人類と深海棲艦達の間には和平が結ばれ世界は復興へ向け歩み始める。

嘗て深海棲艦を敵として人類は一つとなり世界政府という、壮大な。

そう、戦争前には夢物語と言われた物が樹立され

その構成メンバーに深海棲艦を迎え入れるという形で平和を得た。

だが、深海棲艦達の中には破壊と殺戮を好む者も多く残り

彼女らは本能の赴くままに破壊活動を行っていた。

更には退役した艦娘が犯罪組織を作り非合法活動を行うなど

正しく魑魅魍魎が跳梁跋扈し戦争中より混沌とした状況となってしまう。

その為、事態を打開すべく嘗て艦娘として人類を守り、

平和を向かえ人員削減を迎えることとなった彼女達の一部へ

世界政府はある許可を与えた。

そう、さながら、アメリカ西部開拓時代のように賞金稼ぎ、

Cowgirlとして無法者達を取り締まるべく新たな活躍の場を彼女達へ与えたのだ。

674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:38:17.17 ID:jo7lW8fX0

大型クルーザー 前部甲板



ペコリ

ペコリ

フン! ハッ

      ガッ ゴッ ベキ!

ヅン!  ホッ!

阿賀野「ねぇ!能代!矢矧!ごはん出来たよ!」

酒匂「ぴゃん!阿賀野お姉ちゃんの特製炒飯だよ!」



クルーザー内 食堂



矢矧「ねぇ、阿賀野姉。

   海老無し具無し焼き飯は炒飯って言わないんじゃないかしら?」

阿賀野「矢矧、お金が無い時はただの焼き飯も炒飯っていうんだよ。」

能代「今月はちょっと厳しいからね。

   船の燃料と税金払ったらかつかつだわ。」

酒匂「そんな皆にグッドニュースだよ!」

能代「あら、何かしら?」

酒匂「ジャーン。空母イントレピッド、賞金100万ドル。」

阿賀野「何したのその芋。」モグモグ

矢矧「えーっと?麻薬密売、臓器売買に政府機関への襲撃。」

能代「悪の総合デパートかしら?」

酒匂「艦娘として働いていた時からの悪事みたいだよ!」

阿賀野「あー、アメリ艦でも一人だけ白系華人っぽい顔立ちだったからねぇ。」

矢矧「中共のスパイ説もあったわね。」

能代「華が無かった。」

矢矧「華人なのに華が無いとはこれ如何に。」

阿賀野「まぁ、それらはおいておくとして100万はでかいわ。」

矢矧「確かに。」

能代「矢矧は今度は気をつけなさいよ?

   この間捕まえた相手ぼこぼこにしすぎて顔が変わっていた所為で引き渡した後、

   阿賀野姉と二人、警察に文句を言われたんだから。」

矢矧「能代姉もかなり殴ってなかったかしら?」

酒匂「とりあえず、今回はこの元艦娘が獲物だよ!」

一同「了解。」

675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:40:27.50 ID:jo7lW8fX0


アジアのとある港町



ガン「さてと、ラングレーの人間が

   こんな辺鄙な所にバカンスへ来た理由を聞こうか?」

ヴェル「同志、葉巻を持ってきたよ。」

ガン「あぁ、ありがとう。さてと、ヤンキーの貴方は煙草は好きかね?」ン?

ガン「私は大好きでね。特に葉巻が好きなんだよ。」

ガン「君も吸うかね、1本どうだ?

   シガーパンチで吸い口を作ってあげようじゃないか。」

バチン

ガン「どうだね?此処へ来た理由を話してみないかな?」

フン

ガン「そうか。実に残念だ。

   ところで葉巻と指の太さは近い物があると思わないか?」

ガン「あぁ、いやいや。君がそう震えなくても大丈夫だ。」

ガン「ここには10本ある。ゆっくりと考えてくれて大丈夫だ。

   私もゆっくりと切るからな。」

ブツン

ギャァ!!

ガン「やれやれ、まだ1本しか切っていないんだがな。」フゥ

ガン「話したくなったかね。そうかそれは実にいいことだ。」

ガン「君にはこの葉巻を進呈しよう。何、遠慮なくたっぷりと吸ってくれ。」

ガン「キューバ産の上物だ。」

ゴトゴトゴト

ヴェル「同志大佐。準備が出来たよ。」

ガン「Молодец では、我々は帰るとするか。」

ガン「あぁ、その葉巻は落すなよ?命が惜しければな。

   ん?何?燃えるのが早い?」

ガン「君用の特別な葉巻だからな。ゆっくりと味わってくれ。」

ギィィ

バタン

ドゴン!!

ヴェル「同志大佐。欲しい情報は手に入ったのかい?」

ガン「あぁ、ヤンキー共が戦争の下調べに来た理由は分かったよ。」

ガン「予想通り例の麻薬絡みだ。雪風に繋ぎを取ってくれ。

   陽炎と直接話をしなければいけないな。」

ヴェル「了解。」

ガン「まったく厄介な芋が。」

ガン「同じ芋でも酒の原料にもなりゃしない。」

ガン「頭が痛い話だ。」

676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:42:27.45 ID:jo7lW8fX0
とあるアジアの仏教国

阿賀野「入港の手続きも終わったから情報を集めに行きましょ!」

矢矧「阿賀野姉ぇ。ここは確か。」

能代「陽炎ちゃんが仕切ってた街だよね。」

酒匂「今は雪風ちゃんが代表しているみたいだよ!」

阿賀野「雪風と連絡とってるの?」

酒匂「うん!陽炎ちゃんは今、日本の本拠地を固めてるんだって。」

酒匂「それで東アジア地域は雪風ちゃんが担当してるんだよ!」

阿賀野「雪風なら話がしやすいわね。」

酒匂「うん!」



とある酒場

ドラムがテンポを刻み始め、

トランペットの音が甲高く流れる。

続いてサックスが謳い始める。

ガン!

入り口扉を蹴破る音がした後、二人の少女が入り口に立っていた。



「ちょうどいい曲ではないか。踊って貰おうか。」

「磯の字。曲名はSingじゃけぇ踊るゆうより謳うやわ。」

「むっ?そうか?」

「まぁ、ジャズダンスいうのもあるからあながちハズレやないかもしれんけど。」



元艦娘の1人が取り出したのはM134



「うちのシマで勝手やってくれとるのを

  見逃すんは他に示しがつかんからねぇ。」



ドドドドドドド キンキンキン



「セッションにはちょいと無粋な金属音やったかねぇ。」

「浦風よ、今気付いたのだが生存者が残らないな。挽肉だ。」

「肉屋を開店出来る勢いだぞ。」

「あぁ、まぁ仕方ないねぇ。

 うちらのシマで薬物捌いてるあほぼん残すんは雪風も嫌っていたし。」

「ふむ。まぁいいか。火は付けて置くか?」

「そうやね。後始末が楽でええね。」

「ふむ。秋刀魚を持ってきていれば良かったな。料理にいい感じの火力になりそうなのだが。」

「せやろか。」

「うむ。料理は火加減こそ大事だと浜の子も言っていたからな。」ムフー

「帰るか。」

「せやねぇ。」


677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:43:41.02 ID:jo7lW8fX0
以上これまた導入でとまったボツネタ供養

続いて瑞鶴の過去話、おまけです
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:46:51.68 ID:jo7lW8fX0

「やれやれ、どっこい祥鳳」

「ちょっ。(笑)」


目の前で疲れたとばかりにブイのように漂う敵の死体を腰掛にするのは

私の教導を勤める先輩というか師匠の加賀さん。

そしてその僚艦の赤城さんは先の駄洒落におなかを抱えて笑っている。



加賀「これに喧嘩売るにはまだ早いっていったでしょう。」ゲシッ



これ、とはレ級である。



加賀「喧嘩を売ってでも仲間を逃がす為に時間を稼ごうとした心意気は褒めますがね?」

加賀「あのね?そういうのは実力があって初めてかっこよくやれるのですからね?」

赤城「加賀さん、おこ?」

加賀「おこです。下手したら死んでいたのかもしれないんですよ?」



げしと尻下のレ級だった物に蹴りを入れる師匠。



加賀「瑞鶴?あなたに死なれると目覚めが悪いんですから。」

赤城「加賀さんね?貴女が殿を務めているって聞いて全力で来たんですよ?」


それは分かる。

自分をしとめに来たレ級その他が目の前で瞬殺されたのをみて

それが出来るのは自分が知る限り2人しか居ないから。

679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:48:26.61 ID:jo7lW8fX0

加賀「反省しました?」

瑞鶴「はい。」

加賀「うん。よろしい、では、帰りましょうか。」

赤城「今日の夕飯のデザートは瑞鶴さんの奢りということで。」



加賀がそういうと周囲にいた駆逐艦の娘達もわあと歓声をあげる。



瑞鶴「えっ。」

加賀「あらん?」ギギギギギ



ニッコリと笑っているが鬼の形相で振り返る加賀。



瑞鶴「おごらさせていただきまぁす。」

赤城「よろしくお願いしますね。」キャッ

瑞鶴「はぁー、強くなりたい。」



二人の、伝説といわれる二人の

大きな背中を見ながらぼやきを入れる毎日である。



提督「まぁ、無事でよかったよ。」



そういってくれるのはここの提督で初老に見えるのは苦労が耐えないからか。



提督「うちに新人が配属されるなんて何年ぶりだったか。」



いやまて、本当にここだったのかと突っ込みを入れたいが。



提督「しかも最新鋭空母だなんてねぇ。」シミジミ

瑞鶴「頑張ります。」

提督「一航戦の二人とは仲良くやれてる?破天荒な二人だから苦労していない?」

瑞鶴「あの、今更ですけどここって特殊というか結構激戦地?なんですか?」

提督「あの二人が強いからね。

   色々な戦役を重ねていたら精鋭ばっかりになっちゃってね。」



一航戦の二人が戦果を重ねるほどにやらされる事が増え

結果それに付いていける者だけが残ったという事である。

実際駆逐艦娘も精鋭ばかりで毎日足をひっぱる日々で肩身が狭い。

680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:50:01.09 ID:jo7lW8fX0

提督「だから新人なんて来る筈がないと思ってたんだよ。」



いきなり右も左も分からないひよっこを最前線に叩き込めばどうなるか?

当たり前の話だが訃報の電報が着任の翌日に遺族に送られる事になるのは想像に難くない。

では、なぜ瑞鶴がそんな所へというのは。



瑞鶴(辞令書がどうも配属先の鎮守府の管理番号を間違えていた臭いのよね…。)



そう、この激戦区の鎮守府は横須賀鎮守府第108番。

そして瑞鶴が本当は着任するかもだった新人向け鎮守府は111番。

お気付きだろうか?辞令書は漢数字で書かれるのが慣わしであるため。

111、この文字列が百と11に別れ、

手書きでその草案を書いた担当者の字が汚かった不幸もかさなり。



「えーっと?百……八?」



養成学校から卒業した後に大量に作成される着任の辞令書の前に

そのうっかりはそのまま何事も無かったようにスルーされ。



瑞鶴「気が付いたら激戦地。」



しかし、新人が来た事に鎮守府あげて歓迎してくれた事もあり。



瑞鶴「笑顔が絶えない明るい職場だけれど瑞鶴は元気です。」



実家への手紙にはそう書くしかなかった。

そして、一航戦の二人の指導は、はちゃめちゃだった。


681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:51:15.07 ID:jo7lW8fX0

加賀「矢なんてとりあえず飛べばいいのよ。」

瑞鶴「えぇ!?」

加賀「当たり前田のクラッカーでしてよ?」



養成学校では的へ命中させる事とか

射るときの姿勢とか煩かったのになぁ。



加賀「無駄ね。」

瑞鶴「えぇ!?」

加賀「じゃぁ聞くけど、あなたの敵は的なの?」

瑞鶴「いえ、深海棲艦です。」

加賀「そう。深海棲艦の相手は矢に降ろした艦載機の妖精さん達が殺るわね。」

瑞鶴「うっす。」

加賀「だから本当に重要なのは矢を放った後の艦載機の動きへの指示ね。」

瑞鶴「まじですかー。」

加賀「学校では指示の出し方とか色々教えたと思うのだけれどね。」

加賀「妖精さんがある程度勝手に敵を倒すからあんまり深く教えなかったでしょ?」

瑞鶴「えーっと。そうですね。」

赤城「学校では深く教えてくれない!何故か!」

加賀「無知だからよ。」

瑞鶴「えー…。」

加賀「例えば駆逐艦が輪形陣で守る空母がいたとします。」

瑞鶴「はい。」

加賀「これを妖精さんにまかせちゃうとどうなるか分かります?」

瑞鶴「空母から攻撃ですか?」

赤城「ファイナルアンサー?」

加賀「ライフライン残っていますよ?」

瑞鶴「ファイナルアンサーです。」

赤城 加賀「「…………。」」

赤城 加賀「「正解。」」


682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:52:44.36 ID:jo7lW8fX0

瑞鶴「でも、攻撃方法として敵の頭を叩くのは重要なのじゃないでしょうか?」

加賀「最後はそうあるべきよ。

   でもやるべきは先に周りの駆逐艦を潰すのが先。」

赤城「天下に名高い堅城として知られた大阪城も

   堀を埋められたらあっという間に落ちたですよね。」

赤城「それと同じで『 将を射んと欲するならばまずは馬を射よ 』という事なんです。」

加賀「駆逐艦は的が小さいから精密操作をして指定してあげないといけないの。」

赤城「特に魚雷を落すタイミングなんかは近すぎても遠すぎても駄目なんですよ。」

瑞鶴「成程。」

加賀「そういうわけで今日の訓練は!」

赤城「流星隊チキチキ艦攻勝負!」ヒャッホウ!

瑞鶴「あの。」

加賀「なにかしら?」キリッ

瑞鶴「敵に囲まれつつあるこの状況で訓練ですか?」



偵察機に電探の情報では既に周囲を敵機動部隊が

2艦隊程迫って来ているようなのだが?



加賀「習うより慣れろ!でしてよ!」オホホホ!

赤城「実戦こそ最高の訓練と偉い人はいいましてよ!」オホホ!

瑞鶴「お嬢様口調で騙されませんから!」

加賀「生き残れれば名誉一航戦の称号を与えます!」ヒャッホゥ!

赤城「ワォ!こいつはすごいや!ジョンに連絡しなくっちゃ!」ヒャッハァ!

瑞鶴「命の危機感ゼロだ ―――― !後、ジョンって誰だぁ!」ウワーン!



そして月日は流れ現在。



瑞鶴(よくもまぁ、あの人外の後ろを付いていけてたものね。)

瑞鶴(とはいえ無茶はさせても無理はさせない人達だったからなぁ。)

瑞鶴(だからこその強さだったんだろうな。)

瑞鶴(まだまだ背中が遠い。)

瑞鶴「つくづくとんでもない人達と肩を並べて戦っていたものね。」



在りし日の記憶。今は昔の記憶である。

683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/24(木) 01:58:31.30 ID:jo7lW8fX0
あくまで個人的な話しですが弓道うんぬんって敵が迫ってる状態で姿勢うんぬんなんじゃいなーと
とりあえず矢がとべばいいんだ、こまけぇこたぁいいんだよな感じの姿勢の一航戦がいてもいいじゃないと
とにかく数をあげる、弾幕うすいよ!じゃないですけど艦載機をさっさと飛ばせやぁ!って感じでしょうか?
こんな師匠たちと一緒に戦っていればそりゃ強くなりますって奴です
冒頭のどっこら祥鳳はツイ?だったかでみかけたよっこら翔鶴の派生、元ネタのよっこい正一の派生と思います
今後もこちらには小ネタなどをあげて行きますので宜しければお読みいただけると幸いです
メンバーの話しとかで気になる部分とかありましたら可能な限りはお答えしたいなぁとも思っています
お読み頂きありがとうございました
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/24(木) 03:22:03.92 ID:dxLx/UMt0
戦国時代、一歩半の間合いまで接近してきた敵を弓で射殺できる名人が結構いたときく
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/01/24(木) 15:10:18.19 ID:VQ6uKs2rO
乙です
このすてきな一航戦が既に故人なのが残念です
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/25(金) 02:57:42.14 ID:geK92fWH0
乙乙
強いから生き残ることもあれば強いから生き残れないこともあるって、いいよね…
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/28(月) 15:57:52.79 ID:8NUmY+3h0
瑞鶴の敵空母に関する反応から一航戦絡みだろうとは思っていたけど
ここまでの一航戦だとは思いませんでした(月並みな感想)
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/20(水) 00:52:58.54 ID:MNrFkHzD0

ある日の食堂

時雨「そういえば瑞鶴と初月ってコンビを組んでる事が多いけど

此処に来る前からの付き合いなのかい?」

瑞鶴「いきなりなにかと思えば…。」

初月「そうだな。僕が瑞鶴とコンビを組んでいるのは瑞鶴の師匠によるものが大きいな。」

雪風「あー、あの、知らずの一航戦のお二人が関わっていたんですか。」アキレ

瑞鶴「あれはそうね…、私が着任一周年を迎えた日の事だったかしら……。」

689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 00:55:34.05 ID:MNrFkHzD0
それは丁度着任一年目の事だった


回想

加賀「赤城さん、懐かしいですね。」ナツカシイ

赤城「えぇ、ボストンバッグを肩にした瑞鶴さんが

青褪めた顔をしていたのを思い出します。」シミジミ


ゴトゴト バタバタ

瑞鶴が着任した日は丁度大規模作戦の真っ最中で。



瑞鶴「野戦病院さながらでしたねー。」

瑞鶴「周囲に転がる死者累々。」

赤城「バケツぶっ掛けるのが追いつかずで入渠待ちがいっぱいいました。」

加賀「ドックとセットで使用しないといけないというのはもどかしいものです。」

瑞鶴「最前線の空気というのを感じました。」

加賀「それからでしたねぇ。とりあえず手が足りないから空母なら直ぐに来てと。」

赤城「ボストンバッグを奪い、艤装をつけさせて出撃させたのでしたねぇ。」

瑞鶴「いきなり矢筒渡されて、大丈夫だから背中はちゃんと守るからと言われたのを思い出しました。」

瑞鶴「沈んでも直ぐ引き上げるからとか言われたの忘れていませんよ!?」

加賀「いやぁ、懐かしい。」

赤城「懐かしいです。」

加賀「ほんとに1年ちゃんと生き抜いてくれて…。」ベソベソ

赤城「立派になりました。」ベソベソ

加賀「よく戦力に……。」



ムームー!ゴトゴト!



瑞鶴「あの、やっぱり1年持たないんですか?」

加賀「うちの損耗率は極端に低いですが、理由はあります。」

赤城「それは全員が余所の鎮守府であればその艦種のエース。

切り札足りえる程に精鋭だからなんですね。」

瑞鶴「異常に練度は高いですよね。」

加賀「ここが出来た当初は酷かったんですよ?そりゃもう。」

赤城「2人に2人が死ぬ状況でしたねぇ。」

瑞鶴「あれ?それだと致死率100%…。」

加賀「あれ?」

赤城「あら?」

瑞鶴「あれ?」

加賀「………。」

加賀「そんな訳で生き残れば誰でも精鋭になれる状況だったわけです。」
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 00:59:26.64 ID:MNrFkHzD0

瑞鶴「さらっと流したぁ!?」

赤城「私達二人は空母として苦労しましたから

後輩が出来る事があれば苦労させたくないねと

以前から話しをしていたんです。」

瑞鶴「うっそだ ―――― 。」

加賀「いえいえほんとのほんとですよ?」

赤城「最短で戦力になるように所謂パワーレベリングをやってきたわけです。」

加賀「私達ベテランが新人の貴方をお守りしながら危険地帯にハイキング。」

赤城「あれですよMMORPGとかでギルドのベテランが初心者のレベリングに装備作り。」

加賀「さらにはハイランクモンスターの狩り方の立ち回りとかを全て教えてあげるあれです。」

瑞鶴「確かに最初から命の危機に瀕した状況スタートだと

物事を覚えるのは早かったです。」

加賀「でしょ!」ドヤッ!

赤城「ですよね!」ドヤドヤッ!

瑞鶴(うわっ、なんか腹立つわ)



モガモガ!ジタバタジタバタ!



瑞鶴「その、それで先程から気になっているんですけど……。」

瑞鶴「その動いているのはなんですか?」ユビサシ

加賀「よくぞ聞いてくださいました!」

赤城「瑞鶴さんの着任1周年記念に私達からのプレゼントです!」


691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:00:18.99 ID:MNrFkHzD0




時雨「あっ、なんとなくオチが読めたよ…。」

瑞鶴「まぁ、予想通りよ。

その袋のなかに猿轡嚙まされた初月が突っ込まれたのよ。」

雪風「流石(常識)知らずの一航戦……。」




692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:01:35.64 ID:MNrFkHzD0

瑞鶴「なにしてるんですか!

なにしてるんですか、真面目に、ほんっと!」

瑞鶴「貴方達馬鹿ですか!?

うちに新人というか最新鋭駆逐艦の新人とか着任するわけないじゃないですか!!」

瑞鶴「どっから拉致してきたんですか!!」

加賀「拉致だなんて人聞きが悪い。」

赤城「きちんと配属希望申請出ていますよ。」

つ 配属希望書類

瑞鶴「あれ、本当だ……。」


693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:04:24.94 ID:MNrFkHzD0


時雨「その、それは捏造とかでは無かったんだね。」

瑞鶴「まぁ、捏造に近いかしらね……。」

初月「あぁ、養成学校卒業前の僕に

   しこたま酒を飲ませて酩酊状態にした挙句。」

初月「外泊証明書と嘘を言ってサインさせたのが捏造で無ければね。」

瑞鶴「手続き上はサインを本人が書いた物である以上は希望が通るのよ。」

雪風「あぁ、そうなんでしたか…。」

初月「そして僕がそれに気が付いて再度の訂正をしようとする前に。」

雪風「拉致されたという事なんですね。」

初月「朝起きたらどうやって生徒寮に侵入したのか

   如何にもエージェント然とした二人が立っていて、

   バチッとされて気が付いたら袋の中だったんだ。」

瑞鶴「で、私が謝罪したおして着任してもらった感じかなぁ。」

初月「その後も色々と演習や前線に引き摺られて行ったのは

   今となってはいい思い出かな。」

694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:05:56.68 ID:MNrFkHzD0

対空訓練中


加賀「初月さん!

   あなたと言う方は一体いつになったら

   撃ち落すべき艦爆の区別がつくようになるんですかねぇ!?」



ギューン!



赤城「回避すべきなのと撃墜する必要のある物の区別がつけられないなんて

   駄目ですねぇ!?」

初月「明日までにはなんとか!なんとかする!」タタタタ!テテテテテ!

加賀「明日の何時になれば一体習得できるんですか!?」

初月「明日の、明日の6時までには!」ドドドドド!

加賀「6時!?一体いつの6時ですかねぇ!?」

初月「夕方だ!」ダダダダダダ!

加賀「赤城さん!!」

赤城「えぇ!」サッ ←携帯を取り出す



ピポパポ



赤城「あっ、いつもお世話になっています。

   横須賀第108鎮守府の赤城です。」

赤城「はい。はい…。えぇ、はい。」

赤城「加賀さん!何人で予約しておきますか!」

加賀「とりあえず明日の非番は20人くらい居たので25人くらいで!」

加賀「足りない時はお隣の大笑いの二人を連れてきます。」キリッ

赤城「加賀さん!いつもの焼肉店の予約とれました!」

加賀「初月さん!明日は終われば焼肉食べ放題に飲み放題です!」

加賀「頑張りましょう!」

初月「あぁ!頑張る!」トトトトト!


695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:06:28.10 ID:MNrFkHzD0


時雨「ツンデレかな?」

初月「とはいえ出撃とかは無茶苦茶だったよ。」

初月「初陣は対空母棲姫だったかな。」

瑞鶴「あぁ、あの裸踊り事件だったわね……。」

雪風「なにをさせたんですか……。」

瑞鶴「艦隊は守ったんだけど迎撃段階で中破した初月に師匠達が切れてねぇ……。」



696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:09:04.35 ID:MNrFkHzD0

加賀「あっといっちまい!」イヨッ

赤城「あっといっちまい!」ゲラゲラゲラ

陸奥「あの、とどめ刺してもいいかしら?」ヤレヤレ

加賀「あっ、いいですよ。」

赤城「装甲を少しずつ剥いていくのも飽きましたんで。」

陸奥「身につけてるのが下一枚って器用な攻撃するわね。」

加賀「うちの新人を可愛がってくれたお礼です。」ニタリ

赤城「覚えとけ糞虫が、うちの新人を中破させたらどうなるか。」Fuck!

加賀「あの世でしっかり敗北を噛締めるといいわ。」b→q ビシッ!

赤城「日が昇る東の水平線から、日が沈む西の水平線まで。」

加賀「私達一航戦は敵を討ち地獄へ送る。」

赤城「私達の支配する領域に貴方達の居場所はありません。」

加賀 赤城「「あの世へ特等席で待っていなさい。」」

ボガーン!

697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:11:30.95 ID:MNrFkHzD0

瑞鶴「師匠の二人が本気で切れてたからなぁ…。」

初月「今だから言えるがあの時加賀達の恐ろしさに

   少しだけ漏らしてしまったんだ。」

雪風「仕方ないかと。初陣で生死の境に触れれば無理もないですよ。」

雪風「さらに言えば、瘴気纏った一航戦が近くにいれば、まぁ…。」

時雨「そうだね。

   それを笑う者が居るとしたらこっちとあっちの

   境界が分からない鈍感くらいだろうさ。」

雪風「にしても聞きしに勝る規格外だったんですね。」

瑞鶴「いまだに語り継がれる変態だからね……。」

瑞鶴「さてと、まぁ、そういう訳でコンビをずっと組んでるわけよ。」

初月「あぁ、どちらかが死なない限りは解消される事もないだろう。」


698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:12:49.18 ID:MNrFkHzD0

食堂で時雨達の近くにいた長門



長門(死が二人を別つまでか……、夫婦かな?)

長門(まぁ、大方瑞鶴は守るものがあったほうが

   強さを発揮できるタイプだからな。)

長門(そういう所を見抜いた上でのコンビを組ませたんだろうな。)

長門(守るものが無い時に強さを発揮できるもの。)

長門(或る方がより発揮できるもの。)

長門(その辺りは人それぞれだ。……、瑞鶴が少し羨ましくはあるな。)

瑞鶴「あっ!長門!」

長門「うん?なんだ?」

瑞鶴「戦艦の随伴お願いしたいんだけど!」

長門「私は高いぞ?」

瑞鶴「敵の泊地強襲のピンポンダッシュやるから報酬はいい作戦よ。」

長門「報酬と危険度は比例するぞ?」

瑞鶴「今更でしょ?成功10万の頭割りよ。」

長門「チームは私を入れて何人だ?」

瑞鶴「今居る5人にかわうち入れて6人。割ったときの細かいのはかわうち行き。」

長門「いいだろう。一口乗ろうか。」

瑞鶴「じゃ、食事終わったら出撃ドックで。」

長門「あぁ。」

モグモグモグ

長門「さてと、明日の飯代の為に仕事に行きますか……。」

長門「料理長。食器は返しておくぞ。」

「了解。」

「長門!」

長門「む?」

「いってらっしゃいぴょん!」b ビシッ

長門「あぁ、いってきます。」ニヤリ


699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 01:15:14.88 ID:MNrFkHzD0
メインのPCお亡くなり、サブのPCも挙動が怪しい、お金ない…
プロットが全部飛んだのが痛い……
香港編も死んだし、変態仮面も死んだし、はぁ……
久しぶりに少しです、お読み頂きありがとうございました
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/20(水) 06:57:15.88 ID:NXN5ibhG0
更新感謝
一航戦と言うか生え抜きのエースはみんなおかしい!!
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/20(水) 14:01:58.53 ID:NoK+7gIB0
そういう大事なもんはクラウドにも保管しとくんだ!
onedriveやDropboxといった無料分で充分使えるもんがある
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/21(木) 03:42:42.24 ID:x6Mn1+l00
乙乙
思ってた以上に変態だ一航戦。
バックアップ大事慢心ダメ絶対
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:29:23.20 ID:+N3qmstH0
少しばかりはお話前、後編
香港編を記憶に頼りに再度書いてますが艦娘同士の戦闘分が少ない!と感じたのでこっちで補給
なにやってんだ!さっさと更新しろ馬鹿!という声が聞こえてきそう…
お時間宜しければ読んでやってください
704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:31:00.71 ID:+N3qmstH0

それはほんの軽い冗談のような切欠だった。

それは、ある日の食堂での仲間同士での軽い会話だった。



スパ「駆逐艦の方々は妙にオーラというか雰囲気のある方が多いですけど、

   実際誰が一番強いんですか?」

提督「うん?それは俺への質問か?」



食堂でウォースパイト達の席近くでうどんを啜っていた提督が

自分への質問かと確認の声をあげる。



スパ「もちろんですよ。」



提督の答えに近くに座っていた一同が聞き耳を立てる。



提督「そうだな。普段任務に出る奴らでなら時雨か雪風だな。」



妥当。



周囲に居るもの達はみな納得という風に頷く。



スパ「任務にでる娘っていう事はその他も加えると

   更に上がいるという事ですか?」



後日、川内は語った。

こんな時だけなぜに聡いのかと。



提督「あぁ。まぁ、そうだな。全員という事でなら不知火を推す。」

提督「総合的に判断してだがな。」ズルズル

スパ「えー、前回の作戦で早々に戦闘不能になっていませんでしたっけ?」



馬鹿者というのは時として地雷原を全裸で全力疾走することが有る。

705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:33:24.92 ID:+N3qmstH0

長門(さっ、寒い!なんだこの空気の冷え込みは!?)

瑞鶴(体感気温が急に下がった!)

提督「あれは俺の不始末だ。不知火に責はねぇ。」

スパ「前回の作戦で駆逐艦で一番戦果を上げたのは時雨さんですよ。」

スパ「最強は時雨さんなのでは?」

提督「お前は不知火に散々可愛がられた記憶が抜けているのか?」

スパ「あっ、いえ、そういう訳では無いですけど……。」ガタガタ

提督「なら議論しなくても分かるだろう?」

スパ「………。でも、普段事務職されていますし……。」

提督「それは俺がそれを望んでいるからだ。」



提督がウォースパイトの議論を切ろうと手を翳すが……。

提督は何かに気付く。



提督「………、時雨。

   3日後、予定を空けられるか?」ハァ……

時雨「僕に用かな?」

提督「あー、まぁ、そのなんだ。

   あっちの入り口で静かに闘志を燃やしている奴がいてな。」

提督「もし良ければ演習の相手をしてやって欲しい。」

時雨「僕で相手が務まるかな?」

提督「あぁ、大丈夫だ。気軽に付き合ってやってくれ。」

提督「不知火。3日後だ。

   ルールはありあり、戦闘システムダウン、

   もしくは降参宣言させた方の勝ち。いいな。」



言い切った後にうどんのスープを飲み干し。



提督「時雨、迷惑掛けるな。」

提督はそういい残し出て行った。

雪風「時雨さん、御武運を。」

時雨「一度、全力ではやってみたかったんだ。

   胸を借りるつもりでいくよ。」

706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:35:37.04 ID:+N3qmstH0
そして迎えた3日後



明石「えー、おせんにキャラメルいかがですかー?」

秋津洲「キンキンに冷えたビールあるかもー!」

摩耶「あるの?ないの?」

秋津洲「あるかも!じゃなかったあるよ!」

摩耶「一つ貰おうか。」

秋津洲「毎度ありかもー!」

提督「ちょいとしたお祭り騒ぎになってるな……。」

明石「まぁ、時雨さんに不知火さんの演習対決ともなればですねぇ。」

提督「一応聞いておくが賭博なんかやってないよな?」

提督「まぁ、成立するとは思わんがな。」

明石「ところがどっこい。」



提督が明石の言葉に頭を抱える。



明石「ウォースパイトさんが逆貼りで。」

提督「………。」

明石「ちゃんと証文も作ってますよ!」

提督「あー、なになに?

   負けた者が勝った者に酒を一杯奢る。か…。」

提督「時雨が勝てばウォースパイトの総獲りでその酒代がお前の丸儲け。」

明石「負けてもウォースパイトさんが皆に奢るので私のお店は潤います。」

提督「お前、二枚舌外交の本家のお国をよくもまぁ……。」

明石「日本語は難しいですからねぇ。」ニヤニヤ

提督「まぁ、身から出たなんとかだな。」

明石「ですとも。」ニヤニヤ



そして、提督が埠頭に用意した椅子に腰掛け。

明石がその近くの大型陸上設置型電波探信儀の電源を入れた。

707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:37:33.35 ID:+N3qmstH0

提督「アメリカ製か?平面座標表示が出来るようだが?」

明石「戦後の技術を突っ込んで改良できるといっても

   ベースが二次戦ですからね。」

明石「元のスペックが良いものを観戦用に用意しました。」

提督「どうせ実験的データー獲りも兼ねているんだろ?」

明石「御明察。後は秋津洲さんの大艇で現場の映像をライブで流しますよ。」

明石「提督はどうみます?」

提督「途中までは五分だな。」

提督「だが、最後は不知火が勝つ。

   どう勝つかは分からんが結末は読める。」

提督「それだけだ。」

明石「さようで。」

提督「見届け人で長門と瑞鶴にでばってもらっちゃいるが……。」

雪風「止め時は見誤らないようお願いします!」

提督「あぁ、分かっているさ。」

明石「一応お二人の艤装にダメージ計測装置積んで演習用モードにしちゃいますがね?」

提督「あの二人なら演習用モードでも敵をぶっ殺せるからな。」

提督「長門達にもまずいと思ったら俺の判断待たずに止めに入れともいっちゃいる。」

雪風「しれぇ!万一の時は雪風も行きます!」

提督「そこまで理性のなくなるような事にならない様祈るよ……。」


なんで許可しちゃったかなぁと言いたげに提督が雪風に答える。

708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:38:54.22 ID:+N3qmstH0

そして、埠頭から離れた本日の演習用にわざわざ設定された海域では。



長門「という訳だ。万一の際は我々の判断で止めに入るからな。」

時雨「うん。宜しくお願いするよ。」

瑞鶴「といってもま、気の済むまでやるといいわ。」

不知火「お気遣い感謝します。」

不知火「時雨さん。」

時雨「なんだい?」

不知火「胸をお借りします。」ヌイッ!



艶やかに、そして神々しいまでに白い

陽炎型専用手袋を再度きっちりと嵌めなおし。

時雨へと礼儀とばかりに頭を下げる不知火。



時雨「それは僕の台詞だ。」

時雨「今の僕が君に何処まで通用するかは分からないけど……。」

時雨「全力で行かせて貰うよ。」

不知火「望むところです。」ギチギチッ



手袋の嵌り具合を確かめるようにグーパーを行う不知火。



長門(やれやれ。頼むから我を忘れるような事にはなってほしくないもんだ。)

長門「それでは。両者いいかな?」

時雨 不知火「「勿論」」

瑞鶴「では、只今より演習開始!」


709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:40:31.73 ID:+N3qmstH0

モモモモモモモモ

演習の火蓋が切って落とされると同時に

時雨の機関から大量の黒煙が上がり始める。



長門「初手煙幕か。」

瑞鶴「悪くわないわね。」



埠頭



提督「成程。やはり初手煙幕か。」



双眼鏡を最大倍率で覗きながら提督が言う。



川内「これは不知火との実戦経験の差をつめるためのものかな?」

雪風「ですね。目視下での攻撃であれば

   不知火さんの方に間違いなく軍配が上がります。」

スパ「それほど差があるんですか?」

雪風「実戦に出る機会が少ないですが不知火さんの強さは本物です。」

雪風「砲撃の精度はその類まれなる感性に寄るものです。」

川内「でも、どんなに狙撃能力に優れようと敵を目視、照準を決めて、撃つ。」

川内「この動作は避けられない。」

川内「不知火はそこに居るという気配だけで撃ってくるような化け物だけどね。」

川内「だけど、その気配だけで撃つ事を続けるのは

   通常の砲撃から比べると精神的な負担は大きい。

   いつまでもやることは出来ない。」

雪風「その通りです。ですので煙幕でその視界を奪うというのは理にかなっています。」

雪風「本来の煙幕の使用方法とは違いますが……。」


710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:42:07.48 ID:+N3qmstH0

演習海域



瑞鶴「なかなか考えたものね。」

長門「あぁ、だが……。」

瑞鶴「やっぱり?」

長門「昨日、提督と話しをしたのだがまぁ、予想していたぞ。」

瑞鶴「あのハゲ親爺はほんと食えないわねぇ。」

長門「起こりうる事象を複数考えて

   それに一つずつ対処方法を考えるのが参謀職といってたからな。」

長門「といっても負けをやる前から悟っているなら

   やらせないのが仕事とも言っていたぞ?」

瑞鶴「どの口が言うかと言いたいわね……。」

瑞鶴「まっ、公正を期すために不知火に対処法を教えたりはしていないんでしょうけど。」

長門「秘書が長いからなその思考は似通っている。

   不知火もまぁ、読んでいるだろうよ。」

瑞鶴「まったく食えない上だわね。」

長門「まったくだ。」

711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:43:20.27 ID:+N3qmstH0

煙幕内



時雨「煙幕内であれば電探性能にまさる僕の方が有利だよ。」



時雨の艤装につまれている電探は最新鋭のアメリカ製。

オシロスコープで敵の映像を捉え電探の方向を手動で変えている

旧式の日本製と異なり最新鋭で全てが自動で行われ。

その受像機である平面座標表示には敵への距離、方角が明確に表示される。



時雨「艤装の性能差が実力差を埋めてくれる。」

時雨「そして、それをカバーする為に不知火が集中するならば。」

不知火「私の消耗が早いという計算ですか……。」



ドゴン!

煙幕内での砲撃が開始された。



不知火「流石に艤装の性能差は致し方ありませんね。」

不知火「ですが、音の方向でより正確に方角が分かりました。」



そして始まる砲撃戦。


712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:44:43.12 ID:+N3qmstH0

埠頭



摩耶「煙幕内での戦い方となると魚雷の使い所が難しいだろうね。」

提督「あぁ。闇夜での戦闘と変わりないからな。」

提督「闇夜ってのは思っている以上に感覚を狂わせる。」

提督「艦娘の皆は夜戦を幾度もなく行っているからわかると思うが

   戦闘に集中してしまうと自艦の位置を見失いやすい。」

雪風「夜間の戦闘は魚雷が見えにくくなりますから味方にうっかり魚雷が怖いです。」

スパ「でも、一対一での演習ですよね?」

提督「あぁ、だからお互いに魚雷は撃ち放題。」

提督「だがな、魚雷を撃つって事はお互いの必殺アイテムを減らす事になる。」

提督「駆逐艦の砲撃ってのは大したダメージを与えねぇ、あくまで本命は魚雷だ。」

雪風「ですのでそれをそうそうに撃ち尽くすのは勝率を自分から落す事になります。」

川内「どこで撃つかを考えながら煙幕内を接近していっている感じかな?」

提督「不知火からしたらそれしかないからな。」

提督「不知火の艤装の電探性能では相手の懐に入らないとどうしようもならん。」

提督「あいつは俺の部下扱いになるから艤装の改造の自由が少ないのが裏目にでちまってる。」

スパ「あぁ、それでノーマルに近いんですね。」

提督「機関の交換とかはしているがな、あいつには悪い事をしてると思っているさ……。」

713 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:51:47.96 ID:+N3qmstH0

演習海域


時雨「流石に距離を開けさせてくれないか。」



砲撃を繰り返しながら一定の距離を保ちつつお互いに煙幕中を移動していた。



不知火「時雨さんの方が正確な砲撃をしてきますね……。」

不知火「やはり砲撃タイプの違いも影響しますね。」



ドン!

冷静に分析する不知火の頬を時雨の砲撃が掠めていく。



不知火「着弾の位置を調節しつつ当てて来ますね。」

不知火「二丁拳銃の強みをしっかりと生かされています。」



時雨の砲は単装砲のように一つずつ手にもつ二丁拳銃スタイル。

対して不知火の砲はアサルトライフルの様に構えスタイル。

駆逐艦の砲は艤装に固定されない。

その為、一度に砲撃できる範囲については時雨の砲に優位である。

これはやろうと思えば前方と後方を一度に撃つ事が可能な

二丁拳銃スタイルの強みでもある。

砲撃の際にカバーできる高さの範囲についても

二点同時砲撃可能な時雨有利になるのである。

上、中、下の高さで砲撃をしようと思った際に時雨は

上、下あるいは上、中さらには中、下等といった組み合わせで砲撃が可能となる。

対して不知火の場合は上で撃った後に高さを変えて持ち替える必要がある。

それは当然ながら反応の遅れとなり敵への砲撃の遅れとなる。

結果、仰角、俯角、手に持っての調整で

より多くの範囲を時雨の場合はカバーできることになるのだ。
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:52:37.31 ID:+N3qmstH0


不知火「煙幕で此方の視界を奪い、電探で位置を測り。」



ゴン!

不知火の艤装に演習弾が掠め着弾を示すペイントが広がる。



不知火「音で微調整ですか?」



スイッ。

細かく移動し位置を掴みにくく行動する時雨。

それに対して不知火は電探の性能上、時雨を探知する為にあまり激しく動く事が出来ない。

いや、敢えて動こうとせずに単調な動きを続けている。



時雨「反攻戦に誘っているということか。」

時雨「いいね。流石、その誘い、乗ろうか。」



ここまで煙幕を張ってまで慎重に運んできたかのように振舞ってきた時雨にしては大胆な。

いや、ともすれば愚かとも言える挑発にのる。

715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:53:53.59 ID:+N3qmstH0

埠頭



川内「あら?時雨が不知火の思惑にのるのかな?」



電探の受像機に表示されている光点を見ながら川内が呟く。



摩耶「らしくねぇな。」

雪風「当然の様に策があっての物だと思いますが……。」



雪風が時雨に何を売った?と明石を見れば。



明石「おおっとそれはこれからのお楽しみですよ?」ニヒヒ

提督「まぁ、何が起こるか。楽しもうじゃないか。」

秋津洲「提督余裕の表情かも!」

提督「時雨にゃぁ悪いが俺の中での絶対的評価は変わらねぇ。」

提督「どうせ最後に勝つのは不知火だ。」

提督「過程なんざ糞喰らえだよ。」

明石「上に立つものの言葉じゃないですねぇ。」ニヤニヤ

提督「俺があいつを信用しなくて誰が信用してやんだよ。」

提督「あいつが勝つと言ったなら俺は黙って結果を待っていればいいんだ。」

提督「今の俺に出来る事は黙って待っていることだけさ。」



提督はそういうと煙幕で見えないはずの向こうに再び双眼鏡を向けるのだった。

716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 01:00:04.24 ID:+N3qmstH0
次回決着!
日本とアメリカのというか二次戦時の電探で最も技術が進んでいたのはイギリスです
日本もですね、大戦末期には追いついてきてはいたようです、ようです…
作中にも触れていますが受像機がそもそもしょっぼい、アメリカ側は全自動で敵を追尾して距離も方角も自動表示してくれるのに
日本側はオシロスコープみたいなものにぼやーん…、そして計算尺で計算!そら負けますわ
冶金術が連合国と比べて劣っていた所為も有り純度の高い銅が作れなかった為真空管の性能についてもかなり低かったそうです
というかですね?電探(探知機、探信儀)の基礎理論ね?マイクロウェーブ含めて日本の先生が提唱ですよ?
ホント、新しい物を積極的に取り入れていなかった所為でという奴ですね
といっても取り入れていたところで物量に勝る米帝に勝てていたかというとまた別のお話にすぎません
どうせ負けています、早いか、遅いかだけです、はい、春イベ、モチーフどこでしょうねー、資源備蓄してまってます!
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 06:08:57.23 ID:YcDuEXdb0
乙です
馬乗りになったりなられたりの殴り合いになる前に誰かが止めてくれれば良いのですが
金マンと銀マンの争いの末路だけは勘弁してください
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 13:25:09.77 ID:T7lRSDE60
電探の死角をかいくぐって肉薄攻撃を仕掛けてきた時雨を組み伏せ、手にしていた計算尺で尻をペンペンするぬいぬいか
胸が熱いな
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 17:13:11.50 ID:LqH2JZLE0

下手な電探より優秀そうだなぬいぬいのカン
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:26:10.57 ID:aBfZ3KXR0
デデン!
3部へ向けてプロット作っているデース!
金剛改二丙デース!デース!
とりあえず、続きになります、お時間宜しければお読み下さい
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:27:21.62 ID:aBfZ3KXR0


スパ「にしても、なんでわざわざ煙幕内で?」

提督「それはあれだな。

   魚雷を装備として使わない者だから出てくる意見だな。」

雪風「確かに煙幕内で戦うのは最善手とは言えません。

   ですが、駆逐艦の主兵装は魚雷です。」

雪風「煙幕を嫌って外に出れば電探の性能上

   一方的に魚雷を撃たれてしまう可能性が高くなってしまいます。」

提督「そうだ。少なくともお互いに魚雷を打ち合ったときに

   安全距離をとれない状態を維持していれば鍔迫り合いの状況に持っていける。」

提督「レーダーレンジ(電探の感知できる範囲)が不知火の方が狭いからな。」

提督「その外から移動しながら撃たれると不知火も被弾の危険性が高くなる。」

提督「さらに言えば魚雷は電探に写らないからな。雷跡を見て避けるしかない。」

雪風「ですが、時間を掛ければ不知火さん有利な状況ではあります。」

雪風「いずれ煙幕は晴れますから。

   時雨さんにしても何度も張り直せるほどの追加は持っていないでしょう。」

スパ「だから不知火さんが仕掛けたのに時雨さんは敢えて乗ったという事?」

提督「勝算があっての賭けだろうがな。」

722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:28:44.77 ID:aBfZ3KXR0
煙幕外


長門「と、この反応は……。」

瑞鶴「時雨がデコイを蒔いたみたいね。」



煙幕内



不知火「……、こちらの電探が低性能である事をとことん突くようですね。」

不知火「敵の弱点を分析した上で利用できるだけしますか。流石ですね。」ヌイ!

時雨(大方、関心されているんだろうなぁ。)



埠頭



ガン「あの〜、今、どんな状況なんでしょうか?」

提督「ん?なんだお前も居たのか。」

ガン(ひどい!)



着任時のぐだぐだの所為で若干空気気味なガングートが

恐る恐るといった感じに提督に声をかける。



川内「そうだねぇ。明石のレーダーの情報を見る限りは

   これは時雨がいつぞやのデコイを蒔いたようだね。」

摩耶「だね。だけど、不知火の電探の性能を考えるにこいつは不利なんじゃね?」

提督「そうだな。明石のこれはアメリカ製だから有る程度の数が分かるが…。」コンコン

明石「日本製電探の不知火さんのだと多分、塊になってるでしょうね。」コワサナイデクダサイヨ?

川内「いいとこ大きな円表示かなぁ。」

ガン「という事は、不知火さんは時雨さんの位置が分かっていない状態という事ですね?」



そう、時雨が使ったのはいつぞやの千島列島作戦で使用されたデコイつき魚雷。

それは電探に実像を写すデコイ付き。

速度に関しても駆逐艦の範囲内に納まるように調整された代物である。

723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:30:29.10 ID:aBfZ3KXR0


煙幕外



長門「密集状態だと電波の反射が拾いにくくなるな。」

瑞鶴「そうね。艦戦、艦攻が編隊組んで飛ぶのと同じ理由になるわね。」

長門「あぁ、確かまとまる事によって

   電波反射での数の把握をしにくくする目的があったな。」

瑞鶴「そうよ。攻撃機の全体数の把握を抑える効果があるわ。」

長門「となると、不知火はこの煙幕の中だと時雨本体が探しにくくなるか……。」

瑞鶴「不知火が煙幕の中から出ずに戦う事を

   選択する事を見越した上での準備だったと見るべきでしょうね。」

長門「確かにな。時雨が作り出した時雨に有利な状況に敢えて乗ったわけだからな。」

瑞鶴「不知火の慢心、或いは。」

長門「それを力で捻じ伏せれるだけの策があるのか。」

瑞鶴「はたまたそれすらも利用するつもりだったのか?かしらね。」

長門「なぁ瑞鶴。こんな言葉を知っているか?」

瑞鶴「何?」

長門「飼い犬は飼い主に似るそうだぞ?」



それは個体差はあるものの艦娘の不知火という艦が提督の指示を忠実に、

そう、狂気的に守る事から狂犬とも忠犬とも言われる事を揶揄したものだろうか。



瑞鶴「あれが犬?狼かなにかの間違いじゃないの?」ジョウダン

長門「………、確かにな。」ジョウダンダ

瑞鶴「飼い主というとあの曲者だものねー。」

長門「提督だからな…、不知火が何手先まで読んでいるかだな。」

瑞鶴「詰め将棋みたいね。」

長門「結局は相手との心理戦だ。

   いかに騙し、相手を躍らせるか。だ。」

瑞鶴「時雨は割と純だからねぇ。」

長門「いい意味で汚れてないからな。」

瑞鶴「あら、私達がひねくれているみたいじゃない。」

長門「自覚がないのか?」

瑞鶴「あるわよ。大有り。」クスクス

長門「さて、どうなるかな。」

瑞鶴「楽しんでるわね。」

長門「まぁな。」

724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:32:13.83 ID:aBfZ3KXR0

煙幕内



不知火(成程、いい判断です。)

不知火「間違いなく最後尾に陣取っているのでしょうが、

    このデコイに使用している魚雷は弾頭有りや無しや?」

不知火「それを判断するに当って

    行動分析においての最適解の建て方をよく理解されています。」

不知火「不知火にとって敗北につながるのはこの魚雷が弾頭有りであった場合、

    そして、もう一つのパターンが無弾頭であり

    時雨さんがこのデコイに紛れて不知火に接近、

    致命傷を負わせる事を狙う場合です。」

不知火「私がそれを防ぐには当然ですが飽和的に魚雷を撃ち接近を防ぐしかありません。」

不知火「成程、考えたものです。」

不知火「不知火が安全策、つまり最悪を事前に潰す事を好むのを良く考えられていますね。」



不知火が喋りながら魚雷を次々と発射するのは

自身に爆発の衝撃が来ないようにする安全距離ギリギリの為。



時雨「そう、不知火は魚雷で対処しなければならない。」

時雨「自分が不利になる可能性を考えた際に

   それを無視することが最悪の結果を齎すと判断するのであれば。」

時雨「例えそれが無弾頭のデコイであったとしてもだよ。」



正面のデコイへ向けて放たれた魚雷の第一陣だろうか、深度設定を間違えたのか。

デコイ群をすり抜け時雨のはるか下の海中を魚雷が抜けていく。

魚雷が深度設定の問題から敵の艦底をすり抜けて行くことは稀にある事。

だから時雨はこれをあまり気に留めなかった。



不知火「……、やはり無弾頭でしたか。」

時雨「であったとしても、潰さなければならない状況なのは辛いよね。」

不知火「さすがに先手を取られてしまった状況ですので。」ヌイッ


725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:33:16.62 ID:aBfZ3KXR0

埠頭



提督「煙幕が薄れだしたな。」

雪風「煙幕内での魚雷の爆発音もかなりありましたから

   それで煙もそれなりに流れたと思います。」

川内「魚雷の残りの残段数で行くと不知火が不利だろうね。」

摩耶「といっても有視界での戦闘になってくると不知火に軍配があがるかな?」

スパ「ここからは砲撃もお互いに精度の高い争いになるという事ですか?」

提督「そうだな。

   だが煙幕内での戦闘においてダメージを蓄積させられているのは不知火の方だな。」



お互いの損傷状況を知らせるモニターをちらりと見る提督。



雪風「不知火さんの魚雷の残弾数は最大で残っていても一斉射分。」

川内「四連装2基に残る8本で終わりだろうね。」

摩耶「いざという時までは撃てない。」

提督「そうだな、使い方を誤ると負けだな。」

スパ(勝ったな。)



中破寸前の不知火に対し、カスダメ程度の時雨。

726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:34:03.03 ID:aBfZ3KXR0

演習海域近く



長門「まさしく土俵際といった所か。」

瑞鶴「古典的な言い方をするなら俵を割る寸前かしらね。」

長門「で、どっちが勝つと思う?」

長門の質問に無駄な質問をといわんばかりに鼻を鳴らし。

瑞鶴「勝敗が読めないほど仲間の力量を見誤るもんじゃないでしょ?」

長門「まぁ、そうだがな。」

瑞鶴「時雨は強いわよ。私の背中を任せていいくらいにはね。」

長門「ほう。」

瑞鶴「だけど、敵は深海棲艦ではなく不知火だった。」

長門「あぁ。」

瑞鶴「それだけよ。」

727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:35:14.28 ID:aBfZ3KXR0

演習海域



煙幕が薄れてきてお互いの姿をしっかりと捉えてからの砲撃戦が始まる。

時雨が煙幕を張ったのは電探の優位性を生かし

視界不良下でのレーダー射撃を行うのが主目的。

と思わせておいてその実は不知火の継戦能力を奪うべく

魚雷を大量に使用させることが目的だった。

そして、視界がクリアになれば不知火は一撃必殺の為の残り少ない魚雷を生かし。

尚且つそれを叩き込む為の一瞬の隙を狙うべく砲撃を行う。

となれば。



時雨「狙ってくるのは勿論」

不知火「魚雷発射装置。」



時雨と不知火はお互いに距離を保ちつつ再び砲撃戦に興じている。

ただ、砲撃の弾を当てるだけであれば面積の多い胴体を狙うが常套。

しかし、魚雷の誘爆を狙うのであれば正確な射撃が必要となる。



時雨「残りの魚雷をここで使うのかい!?」



自分の進路を遮るかのように放たれる4本の魚雷。

煙幕内であれば雷跡、発射のタイミングは見えない為避ける事は難しいだろう。



時雨「でも、もう煙幕は薄れている状態だ。」



だからこそ回避は容易。



不知火「太腿の魚雷発射装置を狙うために方向転換をしていただく必要性がありましたので。」ヌイ!



時雨の魚雷発射装置は足、対して不知火の魚雷発射装置は背中の機関のサイド。

正面から撃ちあいすれ違う反攻戦を繰り返すのであれば狙いやすさについて。


728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:36:10.06 ID:aBfZ3KXR0

時雨「不知火に分がある。」

不知火「ギリギリで耐えてきたかいもあると言うもの。」



さらに言えば魚雷を先に撃てるだけ撃ってしまっている分、

不知火の方が魚雷の誘爆の危険度は少ない。

いや、既に1基分は空の為、

背負い式の艤装の機関を守る防御盾、装甲代わりに使えなくも無い。



不知火「すれ違う際に既に空になっているサイドを盾にさせてもらいます。」



そして、すれ違い相手の背中をとる一瞬を逃さず狙いを付ける不知火。



時雨「目に頼りすぎて電探を忘れちゃ駄目だよ。」

時雨「せっかくの2丁拳銃スタイルなんだ。」

時雨「あちこち撃てなきゃ意味が無いよね!」



ドン!

しかし、電探の反応に従い後ろを振り返らずに砲撃をする時雨。

それにより一瞬のチャンスは潰された。

シャーッ!

そしてここぞとばかりの魚雷のおまけつき。



不知火「なかなかこれは面白いですね。」

729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:37:21.49 ID:aBfZ3KXR0
埠頭



スパ「勝てそう!」

雪風「時雨さんが確実にポイント貯めて来ていますね。」

提督「問題ない。」

明石(あれ?なんかやばい?)

摩耶「不知火は後、2〜3発もらうと終わりか?」

川内「不知火らしいといえばらしいかなぁ。」

雪風(劇的な逆転劇を演じて後々の

   トラウマを植えつけるおつもりでしょうか?)

雪風(心底恐ろしい)

提督「そうでもないさ。

   不知火は時雨と演習ができるのを本気で楽しみにしていた。」

提督「トラウマみたいなものを与える心算なら初めから全開でやるさ。」

提督「あいつはスロースターターだからな。」

提督「それに演習用の炸薬量が抑えられた魚雷にペイント弾だ。」

提督「ステゴロをやらかすような事にはならんよ。」



身震いをしていた雪風の頭に

その考えを見透かしたかのように手をポンと置く提督。

まもなく演習海域では雌雄を決する時が訪れようとしてた。

730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:39:28.75 ID:aBfZ3KXR0

演習海域

時雨(なかなかしぶとい!)



それは時雨が不知火の方へ向け進行方向を変えた時だった。

ドン!

轟音を立て、足元の海中が急に爆発。



時雨「えっ!?何が!?」



何が起きたかは分からない、

だが、この一瞬を相手が見逃すわけが無い。



時雨「不知火は!?」



バランスを建て直し不知火の方向を顔を向けた。

正にその瞬間だった。

一瞬の出来事に気がとられ電探ではなく

直接目で見て不知火の位置を確認しようとしたのが裏目にでる。



時雨「あぁ!!」



強烈な光、探照灯の灯りを目に当てられ完全に視界が消失する時雨。

駆逐艦用の探照灯でも約10万カンデラ、ワット数で凡そ1600W。

それだけの明りを照射されれば視力は一時的に失われる。

その一瞬を不知火が見逃すわけが無い、

瞬時に判断を下した時雨が次にとった行動は。



時雨「降参。」

時雨「不知火はここまで読んでたの?」



電探の端に魚雷の安全距離に位置取る不知火を捉え敗北宣言をする時雨。



不知火「不知火の仕事は司令の事務仕事の手伝いです。」

時雨「うん。そうだね。」

不知火「日々、皆さんの提出される戦闘映像を分析し報酬の支払い査定を行っています。」

時雨「うん。」

不知火「ですので、皆さんの戦闘行動時の思考パターン、

    行動パターンはある程度トレースが可能です。」

時雨「あー、つまり初めから全て読まれていたという事か。」

時雨「どうやら僕は孫悟空だったようだ。」
731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:40:38.24 ID:aBfZ3KXR0

一瞬の照射だったおかげでようやく視力が戻ってきた時雨が

不知火の方へ近付き手を差し伸べてくる。



不知火「彼を知り己を知れば百戦殆うからず、

    戦う前に相手の情報を徹底的に洗える相手。」

不知火「つまり時雨さんだったからこそ勝ちを拾うことが出来たといえます。」



握手を交わし、時雨へと感謝を述べる不知火。



不知火「いい演習、ありがとうございました。」ペコリ

時雨「は ――――――。君の爽やかさに毒気が抜かれるよ。」

時雨「僕の完敗だ。まだまだ君には敵いそうにないや。」

不知火「いえ、いずれ、すぐに抜かれてしまうかと。」

不知火「ですが、不知火より強い方が増えるのは

    全体の戦力の底上げになりますので大変喜ばしい事と思っています。」

時雨「やれやれ、かな……。」



器の大きさも負けた。本当の意味での完敗である。

732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:42:16.63 ID:aBfZ3KXR0


埠頭



提督「勝負が付いたようだな。」

雪風「しれぇ、不知火さんはどういう手品を?」

提督「ん?雪風ほどの者でも分からないか。」

ガン「あの、解説お願いします…。」

川内「足元の爆発は魚雷?」

摩耶「機雷を用意していたようには見えなかったし、

   そもそも自分も危ないもんな。」

提督「あれは遅延信管を仕込んだ魚雷の接触信管を感度あげまくってたんだろ。」

提督「信管の感度設定をみすると魚雷が海中で波などの衝撃で

   作動した結果、敵に当る前に爆発する事があるだろ?」

雪風「感度設定は確かに難しいです。」

提督「その感度を良くした状況で魚雷を投げれば勝手に作動するわけだ。」

川内「成程、つまり本来は戦艦等の装甲を破って突き刺さった後に

   破孔をより大きくする為に使う遅延信管を使用した事で

   魚雷が時限爆弾に化けたわけか。」

提督「うまいこと爆発するタイミングを見計らったという事なんだろ。」

摩耶「よくもまぁ、上手くいったもんだな。」

提督「さらに言えば燃料も少なめにして魚雷が余り走り過ぎないように調整したんだろ。」

川内「全ては時雨のデコイを掃除する時に仕込んでいたってわけか……。」

提督「それ以外に進路を読まれないように砲撃で制限し、

   魚雷が潜んでいるところに誘導したり、

   自分の残り少ない魚雷を使ったというのが手品の種明かしだ。」

733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:44:11.58 ID:aBfZ3KXR0

ガン「でも、時雨さんがその場所へ行く保障なんてないのでは?」

提督「人間だれしもピンチに陥った時の一瞬の閃きを勘とかよく言うだろ?」

川内「あぁ、やま勘って奴だね。」

提督「そうだ、だがな。勘なんてものはあるようでないもんなのさ。」

雪風「?」

提督「勘だの閃きだのと思うのは全て、

   本当は自分の今までの経験や知識の中から最短距離で

   自分が正解と思えるものを導きだしているだけなのさ。」

摩耶「てことは時雨が勘で避けてくるのは折込済みだった?」

提督「普段の業務で得た時雨の戦闘データーで全て読んでいたということだな。」

提督「どこを狙えばどう避けるか、魚雷の回避は右と左、どちらを好むか。」

提督「全て、想定内、いや、そう思わせることすらも不知火の術中なのかもしれないな。」



胸元から煙草を取り出し、一本咥え、火をつけふいと煙を吐く。

提督の周りの艦娘はその圧倒的格上な不知火の実力に溜息を漏らす。



提督「さてと、勝負は付いたわけだ。」

摩耶「あっ、そうだった。」

川内「宴会だねぇ。」

明石「ウォースパイトさん!これ。支払い宜しくお願いしますね!」



そして渡される請求書。



スパ「えっ、何この金額。」

提督「俺は助けないからな。」

明石「いっぱい(many)飲まれる方が多いですからねぇ。」

スパ「a cup of (一杯)じゃないんですか!?」

明石「契約書は絶対。」ニヤニヤ

スパ「Nooooooooooooo !!」


絶叫を上げるウォースパイトを背に

提督は戻ってきている不知火達を迎えにいったのだった。
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:45:01.61 ID:aBfZ3KXR0

長門「なかなかいい試合だったな。」

瑞鶴「探照灯で視力を奪うとはね。」

長門「らいしといえばらしいな。

   時雨がああすれば負けを認めると読んでいたんだろうな。」

瑞鶴「そうね。あっさりと負けを認めたというのがよかったわね。」

長門「我々の出番もなかったからほっとしたよ。」ヤレヤレ

瑞鶴「そうね。殴りあいはまだしも虐殺状態になるのは勘弁だったわ。」

長門「不知火がその辺は弁えたという事かな?」

瑞鶴「そうでしょうね。いい意味で丸くなったと思うわ。」

長門「確かに、見ていてそう思う。」

瑞鶴「何が切欠なんでしょうね?」

長門「さぁな。」



そして長門達もまた宴会に参加すべく鎮守府へと戻ったのである。

尚、皆が飲んだ酒代の所為で

ウォースパイトが数ヶ月ただ働き状態だったのはまた別の話である。

735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:46:35.68 ID:aBfZ3KXR0

とある日の鎮守府会議室

提督は米軍の将校二人と会議を行っていた。



提督「と、以上で打ち合わせについては終了ですかね?」

米中将「あぁ、実に有意義な会談だったよ。」

提督「いえ、先日の救援作戦においては色々助けていただきましたし

   その際の礼もありますので。」

米大佐「こちらに我が国から派遣する駆逐艦に付いてですが

    最新鋭に交代させていただいて宜しいんですね?」

提督「えぇ、そのくらいの変更を受け入れないほど狭量でもありませんよ。」

米中将「最新鋭の方が抜けるデーターも多い?」

提督「虐めるのはお良し下さいな。」ハハ

提督「と、先日の救援のお礼という訳では無いですが

   宴席を用意させていただいるのでどうぞ食べていっていただけませんか?」

提督「うちの料理長が腕を奮っておりますので是非。」

米中将「大佐から腕のいい料理人がいると聞いている。是非に食べさせていただくよこう。」

提督「ありがとうございます。」



そして。
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:47:51.32 ID:aBfZ3KXR0


「こちら前菜でございます。」



いつもと違い、シェフ然とした格好の料理長が配膳を行う。



米大佐「実に素晴らしい彩……。」

「桜と薔薇をイメージし、当鎮守府周辺で取れた野菜を使用しております。」

米中将「実に素晴らしい味わいだ。」



一つ一つの料理に料理長が素材の産地や料理方法を説明していく。

前菜が終わり、メインのスープが終わる。

そして、魚介料理へとメニューが移ってゆく。



「こちら、あこや貝の貝柱バターポワレ、

 ほうれん草のグリーンソース添えになります」

米中将「あこや貝かね?」

「はい、あこや貝そのものは食べれたものではありませんが、その貝柱は別物」

「本日の貝柱は三重県、伊勢湾産を使用しています」

米大佐「うーん。お酒は日本酒ですか?」

「えぇ、獺祭ですよ。

 日本酒は魚貝にあう物が多いので気に入っていただけたのでしたら幸いです。」



そして尚もコースは続いてゆく。

737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:50:11.77 ID:aBfZ3KXR0

「此方、鳩肉の唐揚げ香草添えになります。」

米大佐「鳩肉ですか。」

「えぇ、フレンチのではなく中華の香炸。

 予め下味をつけた物を揚げています。」

「蜂蜜や老酒で下味をつけています。詳細はお教えできませんが…。」

米大佐「実に食感も素晴らしいですね。」



そしてメインデイッシュも終盤へ。



米中将「目の前で切り分けるパフォーマンスかね?実に素晴らしい」

「牛フィレ肉フォアグラと抱き合わせにしロッシーニ風に仕上げ」

「どうぞ」

提督「ソースのコントラストが美しいものですな」

米大佐「あぁ、ジョエル・ロブションの期間限定メニューで見た事がありますね。」

米中将「……、再現出来る腕前とは恐れ入る。」

提督「肉が綺麗な円形に整形されている。」

「その様な形になるように型にいれ整えておきましたので。」

そして楽しい食事会は最後のデセール(デザート)へ。

「こちらミニャルディーズ、プチフール、

 季節の果物、春の香り添えになります」

米中将「あぁ、実にいい香り、味。」

米大佐「実に素晴らしい。」



人は本当に美味しいものを食べると語彙力が無くなるとか。

提督が設けた二人の米軍高官をもてなす食事会は無事終了したのだった。

そして、帰路に着いた米軍人の二人は船内で改めて提督について話をしていた。



米中将「会議で表明できない自分の立ち位置を料理で伝えてくるとはな。恐れ入る。」

米大佐「大使館勤務経験のある料理人だったのでしょうか?」

米中将「かもしれん、そこは分からんが。超一流なのは間違いない。

    それと、少なくとも、あの提督は我々と事を構えるつもりは無いようだ。」

米大佐「歴史に従うという事ですか。」

米中将「あぁ、そして脅威となる連中についてもある程度示唆してきていたな。」

米大佐「終わった後の事でも共闘できる部分はするということでしょうか?」

米中将「あの料理のメニューで判断する限りではな。」



738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:51:17.37 ID:aBfZ3KXR0

鎮守府食堂



提督「上手く伝わったかな?」

「司令官の意思に添える料理は出したと思うよ?」

「ただ、それを読み取れるかどうかは相手次第でしょ?」

「それにそれを読み取れない程度のニブチンならかえって扱いやすいんじゃないの?」

提督「まっ、そうだな。」

「司令官も大変だねぇ。」

提督「なに、手元に有効な手札があったんだ。使いたくもなるさ。」

提督「今日はありがとうな。また、頼むよ。」



戦場は何も魚雷と砲弾が飛び交う場所だけではない。

政治の駆け引きもまた戦争なのである。

739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:55:26.45 ID:aBfZ3KXR0
以上で更新おわりでございます!
首脳会談時の晩餐会や昼食会での料理のメニューは様々なメッセージがこめられている事が多いので
興味をもたれましたら調べてみるのも面白いかもしれません
個人的に記憶に残っているのは習近平がイギリスに行った時の皮肉たっぷりな晩餐会メニュー
色々、隠されたメッセージを受信出来ないと無能呼ばわりされる外交の世界
こわいですね!ここまでお読みいただきありがとうございました!
また、更新間隔がのびのびになっていることをお詫び申し上げます
乙レス、感想レスいつもありがとうございます、お気軽に残していただけるといっちが喜びます
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/19(金) 06:37:39.75 ID:v2h3PD9i0
乙です。
うーちゃん うーちゃん うーちゃん∩( ・ω・)∩ ばんじゃーい
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/19(金) 11:40:37.78 ID:bHIkmmrD0

うーちゃん意外と出番あるどころか切り札になってて嬉しい
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/19(金) 19:22:50.63 ID:ibELC143O
ここのうーちゃん大好きだわ
743 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/20(土) 19:07:35.85 ID:9mofOjPQ0
あの有名店を再現出来る腕前って一体…

でも有能なうーちゃんって好きだなぁ
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/21(日) 19:38:00.35 ID:RgAMSUgF0
半分くらいは料理のメッセージ読み取れたと思うけど第3部ヤバすぎやしませんかねこれw
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/08(水) 00:30:33.58 ID:nFQLBL4F0


「はぁ ――――――――― 。」



大きな溜息を一つ。

いや、分かっている、自分が原因である事は。

しかし、あれを見過ごす事は断じて許せないのだ。



「といっても4回目の出戻りはなぁ ――――― 。」



初期艦として選ばれて提督の秘書艦として本来は仕事していたはずなのだ。



「いや、犠牲が出ることがあるのは当たり前なのよ。」



そう、その犠牲の出し方が糞なのは実に許しがたいのだ。



「だからといって意見具申も許されないなんて。まったくやになっちゃう。」



恐らくは自分が更迭された後、自分が助ける為に動いたあの娘達は水底へ。だろう。

それを考えれば。



「はぁ ――――――――――― 。」



巨大な溜息が出るのは仕方のない事だろう。


746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/08(水) 00:32:10.31 ID:nFQLBL4F0


「あら、今度もお早いお帰りでしたね。」

「あぁ、教官。また、お世話になります。」

「いったじゃありませんか。あの方は叢雲さんとは真逆ですよって。」

「そうはいいましてもですね。向うが指名してきた以上はですね。」



にこりとこちらを威圧してくる教官は

艦娘養成校にその人有りと知られる練習巡洋艦鹿島。

鹿島といえば可愛さが売りなんて思われているけれど

今、私の目の前にいるこの女は全然違う。

いや、見た目を最大限に擬装欺瞞、

相手の油断を誘う事に費やしているのだから一番危険なタイプだろう。

中身が陸上自衛隊で格闘徽章持ちの美女にして野獣とよばれ

一体何人の男性を正しくベッドへと沈めて来たことやら。

艦娘の適正があった為海軍に編入する事になった際、

別れへの悲しみの涙……、ではなくうれし涙を流した隊員が多かったとか。

そういえば昔、私、脱いだら凄いんですなんてCMあったなぁと。

もっとも目の前のゴリラは筋肉ダルマなのだ。ふふ。そりゃ彼氏も出来ませんよねぇ。



「叢雲さん?余計な事を考えていませんか?」

「いえ!考えていないです!」ビシッ



目が笑っていない。

あっ、これ後でお説教というなの楽しい格闘訓練時間だ。泣きたい。

だが、神というものは時として降臨あそばされるものなのだ。



747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/08(水) 00:32:56.18 ID:nFQLBL4F0

「あー、お嬢さん方。申し訳ないのだがこちらの校長室はどちらか教えていただけないだろうか?」



やった!この場を離れられると振り返ったそこに居たのは。

まぁ、このうだつが上がらない雰囲気のセールスマンが私の最初の印象だったかしら。

その後もこのそうと思わせない見た目に騙され続けていく事になるんだけど。

そうね。とりあえず、私が最初に感じた印象は胡乱げな、

それこそ詐欺師かなにかみたいなだったわ。

後々、あんた、お前の仲になるなんてまったく思っていなかったわ。

748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/08(水) 00:34:44.03 ID:nFQLBL4F0
提督の初期艦叢雲との出会いを少し
しょっぱなから詐欺師扱いの提督、仕方無いね!
お読み頂きありがとうございました、番外編の方も宜しくお願いいたします!
感想、おつレスいつもありがとうございます!お気軽にレスいただきますといちが喜びます
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/08(水) 04:05:17.92 ID:VKqyDi2aO
乙!
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/08(水) 08:20:08.64 ID:IERZX957O
乙!楽しみにしてる!
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/08(水) 12:47:01.14 ID:cPzWr1k90
カシマ・カシマ
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/09(木) 07:12:57.52 ID:kgM+/xCGo
お嬢の浴室的鹿島か。
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:26:55.58 ID:TYakSQdC0
ちょっぴりばかりの更新
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:28:35.14 ID:TYakSQdC0

校長室に案内して聞き耳を立てたところで。



「叢雲さーん。」ネットリ

「あぁぁぁぁ ―――――――― !」ズルズルズル



私は曳航されたのだった。



「外でなにやら断末魔が聞こえたようですが?」

「あぁ、まぁ、君が気にする事ではないよ。中……。」

「申訳ありません。階級については。」

「あぁ、そうか。にしても君が前線に回されるとはね。

 いよいよ人材の底が見えるようだ。」

「いえいえ。私が動ける、動かせる状態であればこそです。」

「軍令の全員で前線整理の道筋つけて後方のお片づけをしてです。」

「ここだけの話しですが南太平洋の悲劇。

 あれは戦線を押し下げる抜群の効果がありました。」

「君の師匠はつねづね撤退を提案していたのだったか?」

「えぇ、教授は拡大を続ける戦線の整理縮小の必要性を言われていました。」

「国力全てを注いでの維持はいずれ破綻が来る。歴史に学べという事です。」

「力を貯めてまた取り戻せばいい、国際社会を巻き込めと。」

「そして、それが敵わないが故に前線で嫌がらせを続け

 戦術的に対処療法的な止血作業をされておりました。」

「おしい方をなくした。」

「最後まで軍人であったようです。」

「奥方がいらしたと風の噂で聞いていたがどうされている事やら。」

「艦娘と結婚をしたと聞いてはおりました。

 年をいった上での初婚だったからか手紙にのろけが多かったですね。」

「あの鉄面皮がね。」

「教授はあれで表情豊かではあったと思うのですが。」

「私が軍令に居た頃とは大分違ったようだな。」

「でだ。本題に入ろう。事前に受取ったこの書類に間違いないのかね?」



机の上に出される軍令部の各部署の責任者の名前が連ねられた一枚の書類。

755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:29:35.35 ID:TYakSQdC0

「えぇ、士官学校で提督課程は学びはしましたが

 最低限ですので改めて学びなおしたいと思いました。」

「君なら不要と思うが上には私も逆らえん。」

「にしても、ここを卒業後の君は各鎮守府の建て直し作業が主になるのかね?」

「どうしても戦闘ドクトリンを徹底させるには

 現場に出向いて指導する者がいりますからね。」

「といってもやらかした所の建て直し。

 例えるならピアノの調律師の様なものです。」

「正しく、綺麗な音が出るように調整。調整後は演奏者に任せる。」

「私はあくまで裏方ですよ。

 そのうちどこかに腰をすえるかもしれませんが今はその時ではないです。」

「軍令の戦略参謀長の渋面が思い浮かぶようだよ。」

「兄弟子筋に当る方ですから可愛がっていただきました。

 だけにお前以外に頼めないとも言われましたので腰を上げたという状態です。」

「縁は時として有効であり時として己を縛る……だな。」

「私のような無能が参謀の末席を汚すのは

 偲びありませんのでまじめに仕事をする次第です。」



(狸め。)

(狐野郎。)


756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:33:00.52 ID:TYakSQdC0

笑顔で楽しい世間話という名の腹の探りあいは社会人の嗜み。

否、社会人の名刺交換という初級講座レベルの基本スキルである。

そう、オンシャノツギノプロジェクト、ジュチュウヨロシクネー!の言葉の後に

モットヤスクシテクレマスカ?ヨロシクヨー!が続いたかと思えば。

ザッケンナコラー!ミツモリタケエゾコラー!

ザッケンナコラー!ノウキギリギダゾコラー!

の楽しい宣戦布告となるあれである。

先日まで情報の坩堝にして中枢に居た相手から

何某か有益たる情報を引き出せたらと水を向けるも

相手もそれを知ったもので自分が知る以上の話しを語ろうとしない。

情報の統制がしっかりとされていることと

相手は自分が把握している情報のレベルを

しっかりと知っている事を確認できたに過ぎない。

なれば。



「君につける補佐の艦娘だが。

 大和型、翔鶴型、君の望む娘をつけようじゃないか。」

「あー、余計な気遣いは不要です。校長。」

「寧ろ通常の提督候補生と同じように初期艦課程を修了している者をお願いします。」



艦娘養成校でのそれは士官学校におけるそれとあまり代わらない。

提督候補生に艦娘一人を補佐につけ無事任官(卒業)した後は

そのまま一緒に鎮守府に着任となる形なのだ。

そんななかで即戦力として活躍可能な戦艦、空母をつけましょうと申し出てくる。

つまるところ、ようはこの校長。



(おべっかを使ってでも軍令、本営に近いところに知己を得たいという事か。)



参ったものである。



(好意をうけとれや若造!)

(ふざけんなや!はげ!後、俺はもうおっさんだっつーの!)

(黙れこの若造!

 手前もハゲだろうがハゲって言う方がハゲじゃ!!)

(薄毛ですぅ!?薄毛!!

 ないのと薄毛は天と地ほどの差があるわ!!)



お互いに目で鍔迫り合いを行う、

恐らくモノローグが見えるのであれば上の様なやり取りが見えた事だろう。

757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:35:53.38 ID:TYakSQdC0


「では、挨拶はこのくらいで。提督候補生向の寮へ向わせていただきます。」

「あぁ、そうか。であれば、教官との顔合わせも兼ねて案内させよう。」



校内での専用電話的なもので呼び出してきたのは……。



「練習巡洋艦鹿島、お呼び出しに従い参りました。」

「こちらの方を部屋まで案内してさしあげて。」

「了解です!」



廊下を歩く道すがら。



「提督候補生さんは民間候補生に偽装ですか?」

「こちら側の匂いがしますねぇ。こらからもよしなに。」



手身近に自己紹介をされる。

これはあれだろうか?

胡散臭いもの同士は惹かれあう。

昔見た漫画の一節を思い出す。

成程、前を行く艦娘の背中は何かを語るには充分すぎる。



(なんとか神拳とかの伝承者と名乗られても納得するやもしれん。)



それほどに目の前の艦娘の背中は自己主張をしていた。

漢なら背中で語れ。目の前の背中はそう語っていた。



(いや、艦娘は女性だよ………な?)



益体もない事を考えている内に割り当てられた寮の部屋へと辿り着いたのだった。

そして野戦将校の行李並に小さく荷物を纏めたトランクからノートPCを取り出す。

文明の利器というのは昔のように

大量の書類などと言うものを持ち運ばなくてもいいようにしてくれる。

しかし、逆に出来る事を増やすという事でも有る。



「軍令の参謀職から離れたにも関わらず椅子がそのままか……。」



おぉ素晴らしき官僚機構。

万一提督として卒業できなくても参謀として

再度お仕事出来るように籍はそのままにしておくよとの「ありがたい」お言葉。

裏を返せば参謀の人数足りないから

提督課程を勉強している間も出来る事はやってね!という事である。

758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:37:40.88 ID:TYakSQdC0


「人手の足りなさ、いや、足らぬ足らぬは工夫が足らぬか。」



つねに軍令部に詰める形とは代わる為仕事の量は減っているものの。



「確認して対策とらねぇといけないことが多すぎねぇかこれ?」



支給されたPCで軍令部の専用クラウドにアクセスすれば

スパムメールが如き書類の量。

軍令部の参謀総長の顔が思い出される。



いずれ仕事の量は減らすといった………。

今回、まだ、その時と場所の指定まではしていない……。

君はそのことをどうか思い出していただきたい。

つまり、参謀本部がその気になれば仕事を減らすのは10年後、20年後ということも

可能だろう……ということ!



「死者を生き返らせてでも仕事をさせそうだ。」



提督候補として軍令部を離れる間の仕事量は減るかなと

期待した方が間違いだったようである。



「実際、こちら側の人材の不足も戦線の縮小理由ではあったんだよな。」

「師匠もとんでもねぇ宿題を残してくれやがるぜ、まったく。」



そして、人事部から手に入れた艦娘養成学校の所属艦娘候補生の資料に再度目を通し。
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:40:43.78 ID:TYakSQdC0


「提督秘書以外の仕事のつぶしも効く奴を見繕わにゃならんな。」



彼、便宜上、提督とするが提督が軍令部の戦略畑の長、

軍令部総長から受けていた指令に一つ艦娘の中で

提督の資質がある奴がいれば引き抜けという指令があった。



「提督になる為にはただ単純に士官としての資質があればいいってわけでもないか…。」



艦娘を総べる提督と呼ばれる職位は

単純に提督として勉強をすればいいというものでもなかった。

単純かつ絶対的な要素「艦娘から無条件で好かれる」これがなければならない。

組織の長ともなれば調整能力は必要であるが女性を、ともすれば100から200人。

それだけの人数運用ともなれば間違いが起きればそく内部崩壊。

艦娘として生まれ変わった元人間の女性たちに早い話

「なんかいい人ね」と思わせる何かがいるのだ。

何か?とぼんやりした物なのはそれが判明していれば

今頃提督を量産出来ているという上側の恨み的な物が入っている事なのは言うまでもない。

提督候補として艦娘養成学校に送られてくるのは最低限をクリアしている事になる。

軍令、司令部付きの艦娘達が士官学校、

或いはその他選考過程で○、×をつけている事は上の方の人間の一部しかしらないのである。

現場の鎮守府で真っ黒運用をやらかしてもめったに後ろ弾案件が起きないのはそういう事。

ともすれば狂信的な好意があるおかげで

運営がなりたっている鎮守府があるのもそういう訳なのだ。

だけになれる人間が少なく民間人の積極的(但し適正者は少ない)募集も行うという

人手不足が極まっている状態なのだ。

しかし、艦娘になれる適性を持つ女性は意外に多い。

ならば艦娘に提督を兼ねさせて人数不足をとなるのは自然の流れでもあったわけである。

人材の不足というのが組織の大小関わらずなのは悲しい世の現実なのだ。

叩き上げの将の出現を待つよりは早いうちに芽を見つけて

悪い方向へ育たないように植え替えてという事。



「まぁ、現場叩き上げの方が結局は面白い奴が育つんだがねぇ。」



優先度は低く、掛けられる時間は少ない。


「頑張って提督になるべく勉強をしますか……。」

といっても士官学校を卒業し、参謀課程を修了、

尚且つ直近で軍略参謀を務めていれば児戯が如き内容な訳であり。


「ベッドってこんなに柔らかかったんだねぇ……。」スヤァ


改めて提督向の教本等を読む気にもならず日頃の疲れからか睡魔に勝てる訳もなく、

提督はのんびりと久方ぶりのベッドの感触を楽しむのだった。
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:43:30.06 ID:TYakSQdC0
以外!それはボクカワウソ!
あれが着ぐるみになるとかよそう出来た人いるわけないと思います
イベントの具体的日程はステージでご案内とかとか
まぁ、そうなるな
秋津洲4人目でねぇといいつづけて暇暇周回してきていてS勝利100超えました、出ない時は出ない
バケツがやばいですね、ここまでお読み頂きありがとございました
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/12(日) 14:27:37.96 ID:6Ah90Ll+O
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/18(土) 19:09:35.67 ID:fPhBGAbI0
乙乙ボーキくれる遠征はもちっと欲しい
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:10:20.75 ID:o6WlkERf0
今回のイベント難易度おかしくないですかね?
後、甲限定装備全般オーパーツ気味…
運営さん、ちょっと?さすがにおかC
すみません愚痴入りました、お時間宜しければ少し更新しますのでお読みいただけると幸いです
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:11:23.02 ID:o6WlkERf0

「うわっ、煙い」



そいつの部屋に入っての最初の感想はそれ。



「この部屋はバルサンでも焚いてるの?」



締め切った個室に充満する煙草の煙。

物流が死んだこの情勢で煙草をこれだけすきに吸えているって時点で

それなりに怪しい奴と気付くべきだったと今にして思う。

まぁ、あれよね、私が未熟だった。それにつきるわ。



「お嬢ちゃんが、叢雲かい。」

「提督候補生として今後とも宜しく。」



差し出してくる手は見た目の胡散臭さとは別にしっかりとした厚みがある手。



「わたしを選ぶなんて物好きね。」

「今までの経歴には目を通した実に立派な経歴だ。」



何かの皮肉かしら?私は今まで4回も秘書艦を首になってるんですけど?



「上官反抗の角で秘書艦解任。実に面白い。」



こいつ、意図的に地雷を踏み抜きに行く奴かしら?

765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:12:29.49 ID:o6WlkERf0

「意見具申として記録に残っているものに関して目を通させてもらった。」

「俺の意見を言えば叢雲。嬢ちゃんの意見が正しい。」

「広い視野、現場に出撃したものならではの戦況判断。」

「熟練の兵の指揮と言われても俺は納得するだろうな。」

「ただ、相手を説得するには言葉を選んだ方がいい。」

「美辞麗句でもって相手を褒めて煽てて

 きちんと思考誘導してやった方がいい。」

「人間、欠点を直で指摘されると腹立つもんだ。

 特にそれが正しい場合は尚更だ。」

「合理的に割り切れる人間ならいい。

 が、曲りなりに組織の長だ、顔を立ててやれ。」

「嬢ちゃんは恐ろしく頭が切れるのは俺には分かる。」

「だからな、少しは馬鹿の気持ち、そうだな下々の思考もちょいと配慮してやってくれ。」


なんだろう、この胡散臭い詐欺師みたいな奴の言葉が

この時はすっと入ってきたのよね。

例えるなら子を諭す親みたいな話し方に……、まぁ、いいわ。

どうせ深く考えた所で結論が出ない事だってあるわけだし。

それで、まっ、この詐欺師との共同生活がスタートしたってわけ。


766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:13:31.68 ID:o6WlkERf0

「えーっと。」



名前そういえば聞いてなかったわねと詐欺師の顔を見る。



「あぁ、俺の事なら好きに呼んでくれ。

 中二っぽくMr,CigaretteとかSmokingmanでも。」

「普通に候補生何某でも。呼び名に大した意味などないからな。」



顔に似合わず茶目っ気を、いや、これ私をおちょくってるじゃない!



「あんたなんか煙男(けむお)煙男で充分よ!」

「というかもうね!あんた呼びにしてやる!名前なんて勿体ないわ!」

「ひでぇや。だが、まぁ、それでいいか。」



で、まぁ、こいつとの候補生、その秘書艦生活がスタートしたって訳。

提督候補生といってもまぁやる事自体は普通に鎮守府運営でやる事と変わりないわ。

艦娘訓練課程の娘達が通うこの学校で所属艦娘を指揮して演習しての毎日。

後は座学で鎮守府運営の基礎や艦隊指揮を学ぶって訳。

そうしていくなかで当たり前のように……、

そう派閥って物も出来るのよね。

まったくめんどくさいったらありゃしない。馬鹿よね。馬鹿。


767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:14:37.91 ID:o6WlkERf0

「あー、これはこれは。」



講堂でおべっかを使うあいつ。

基本的に候補生同士の個人情報、

民間出身だとか軍大学出身だとか?

そういうのは学校側がばらすことは無い。

教官や艦娘達へも先入観の排除という事でわざわざ知らせることはない。

自分から吹聴して回らない限りは

誰がどんなご出身でございなんて分からない。

私から言えばそういうのを自分から吹聴して回るのって

いかにも小者って感じがするのよね。

あいつみたいにおべっかを使ってくれる相手が欲しいんでしょうね。

まったく。

にしてもまぁ、なんというかヨイショが堂に入ったものね……。

民間ならきっと上に気に入られるタイプなんだろうなぁ。

ああいう言葉づかいは見習わなきゃかしらね。

そしてあいつの部屋で細々とした話しをしていたときに一言。



「口が軽いやつは情報を得やすくて助かるな。」

「叢雲もそう思うだろ?豚もおだてればなんとやらだ。」



同意を求めるなっての!ほんと、厄介な奴だわ!

にしても……。

768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:16:00.80 ID:o6WlkERf0

「一体何者なの?」



直球で聞く。



「さぁて?」

「とぼけないで、私が4回も戻されている事が連絡されていたとしても。」



そう、初対面の時に感じた胡散臭さはこれ。



「どういう状況でどういう内容の意見具申をしたかなんてまでは

 候補生風情で調べられるわけがないわ。」



その断言に、にこにことした笑顔。



「やっと気付いたか。まっ、心して聞けよ?秘密だからな。」



結局ここで騙されたのよね。ほんと詐欺師なんだから。



「俺はな、海軍の特務機関、諜報畑の人間なんだよ。

 ちょいとな内部調査でな。」

「色々調べてるんだ。なに、叢雲。お前の立場に身分は保証しようじゃないか。」

「条件があるなら言ってくれ。可能な限り応じる。」

「条件ね。まぁ、それは後でもいいわ。」

「それより私にそんな事打ち明けて大丈夫なの?」

「なんだ?心配してくれるのか?

 この部屋は毎日『 掃除 』してるから安全だ。」

「相手を思いやれるたぁ、見かけよりずっといい女だな。」

「ばか!」



辻褄も合うしそれっぽいなと思ったのがすべての終わり。

769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:17:03.73 ID:o6WlkERf0

こいつがすべて終わって卒業した後で言った言葉。



『 嘘をつくときは相手が望む、信じたいと思っている嘘をつく事。 』



えぇ、騙されたって訳。

まっ、学校を卒業した後は私に対して嘘はつく事なかったから許してあげるって所かしらね。



「それで、なんで私はパシリの手伝いさせられているのかしら?」

「まぁ、まぁ。」



あいつが色々な連中におべっか使って取り入って…、

までは良かったんだけど。

いや、よくはないか。ううん、あいつだけで完結してたからいいのよ。

で、それで調子づいた連中があいつに色々本来するべき事を押し付けてきたのよね。

提督としての仕事を学ぶ為に色々な資材の手配のやり方とか、

指揮の実務経験を積む為に割り当てられた艦娘達の訓練、

演習カリキュラムを組んだりとか。

まぁ、めんどくさい事務仕事が色々あるわけよね。

それをあいつはぜ ――――――― んぶ引き受けたってわけ。

そしてあいつは私にもその片づけを手伝わせるんだから信じらんないわ!



「その候補生Aのところの戦艦だが命中率に難ありだ。」

「じゃぁ、砲撃訓練を集中強化ね。」

「あぁ、頼む。それとそれに伴う燃料、弾薬の手配もだな。」

「ついでで演習相手に候補生Bのとこを組むと相互でいい塩梅になる。」

「わかったわ。」



まっ、優秀な私に掛かればこの程度の手伝いなんて朝飯前ね。

770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:18:04.14 ID:o6WlkERf0
「きっちり、がっちり、俺たちは優秀だろぉ?」

「おべっかを使うのといらない仕事を増やす程度にはね!」



にたりと笑うあいつに怒りの返事。

私達が受け持った娘達の演習、

訓練カリキュラムもやらないといけないわけだし。

こういっちゃなんだけど同時に並行して

いくつものを鎮守府運営をやっているような気分になるわね。


「楽しくなってきただろ?」

「そんなわけあるか!」



図星の指摘をされ照れ隠し。

まっ、この作業が後々重要だったって気付くのもまた別の話し。

人生に余裕と無駄がない男って本当に退屈だわ。
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:23:04.79 ID:o6WlkERf0
今日は此処まで
お気付きかとは思いますが小説形式になれるべく少し書き方を変えて練習をしております
こうしたらいいよとか、読みにくいとか色々意見をいただけるとありがたいなぁと…
にしても、今回のイベ色々おかC E2のラスダンまではいきました、はい
正直な話しボスへ陸攻を飛ばすより21熟練MAXや基地の陸戦で対空値高いのを大艇でのばすなどして飛ばした方が
空母おばさんの艦載機を枯らせますのでそっちの方がいいと思います、陸攻はどうせダメでません…
ぜかましさんなんかをみながら色々攻略サイトを見ながら試行錯誤
普段から予備艦などを鍛えていてよかったと思うことひとしおです、ですが、一言いいたい
運営、かげんしろ馬鹿と
ここまでお読み頂きありがとうございました、乙レス、感想レス気軽に残していただけるとイチが喜びます
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/28(火) 00:34:23.32 ID:f4CPZcTI0
乙で。
今からE2輸送を始める身としましては戦力yゲージ攻略が恐ろしくて仕方ない次第です
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/28(火) 00:53:07.42 ID:DrYnfxxx0
陸偵+陸戦を当てて涼月のCIが綺麗に入れば割とおばさんは黙らせられると計算したけど到達までのリスク管理が偶然頼みで実質無理と判断して噴進砲ルートで楽して叩き潰した
E3-2ラスダンなう

嘘は適度に真実を入れておくと信じやすくなるからそのさじ加減こそ腕の優劣だとどこぞの軍学署に書いてあったなあ
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/28(火) 04:22:08.46 ID:82eRS9qA0
乙乙
難易度もそうだけど最終回域まで御札はお辛い
最後くらい何でもありの総力戦にして欲しい
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/30(木) 17:15:52.89 ID:wAudkZcn0
久し振りにブックマークで残して有った某纏めサイトで読み返ししてたら
>>459の次が>>466と端折られていたので
「あれ?あきつ丸?雲龍じゃ無かったの?」と混乱したわ
やっぱ、途中の雑談も大事よねー
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/01(土) 00:20:02.62 ID:PUP4laW20
特定の艦娘(故人)をイメージした香水を自作してその香りでトランス状態に入って故人を降ろし闘う降霊術系のオシャレなコマさんとかふと思いついた
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:32:58.74 ID:2HdN4PtG0
>>776様 シャーマン系でしょうか面白いですね今やってる候補生時代が終わりましたら
    ちょこっと書かせていただきたいなと思います

イベントも終り焦げ付いた資源をかき集め日々の艦隊運営を行っているイチの鎮守府
今月のEOもぼちぼちやらななーです、後、ネジ任務、イベについては他で触れたのでもう不知火
サーカスとかやるらしいですけど地方の田舎民なんでほーん状態、京本政樹さんには驚きましたが
行かれる方は是非楽しまれてください(リアイベよりゲーム内イベの方が嬉しいと思っているのは内緒)
では、すこしばかり更新させていただきます
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:34:26.47 ID:2HdN4PtG0

そして、私達はパシリ扱いをされながら候補生達の一大イベント。

卒業試験を兼ねた大演習大会を迎えたってわけ。

このイベントは連合艦隊としての最小単位である12人の艦娘を運用して

トーナメント式の勝ちあがり方式で対戦していく形ね。

で、優勝者は当然ながら色々優遇を受けて赴任先へって訳。

最下位も当然ながら決められてその最下位は卒業不可判定になる。

早い話、あなたは永遠に提督になれませんよって奴かしら。

この演習の対戦相手については今までの戦績などで公平に決められる形になるわ。

そして海軍のお偉いさん達も招いて、そうね、さながら観閲式ね。



「のんびりいこうぜ?」



その一大イベントが数ヵ月後に控えているっていうのに……。



「はぁ、不幸だわ……。」

「そうか?山城。お前さんの砲撃の腕前は一級だ。」

「俺の言うとおりにやれば三面六臂の活躍ができるぞ?」

「あなたの言うとおりに動いていたら負担が酷いのだけど。」

「戦艦には期待してるよ?戦艦だものなぁ。」

「不幸だわ……。」

「山城、頑張りましょう……。」

「姉さま……。」



ニタリと笑顔を向ける相手は扶桑型戦艦の妹山城。

そしてそれを励ますのは姉の扶桑。

あの気難しいマイナスガール達を上手く手懐けたのか

上手くあしらいながら訓練させているのは口先が上手いあいつならではね。

779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:36:29.72 ID:2HdN4PtG0

「候補生さん!だいぶなれてきたなのね!」

「潜水艦は体が冷えやすいからな。温まっとけよ?」

「イク、お前さんの魚雷の精度は抜群だ。頼りにする。」

「お褒めの言葉ありがとうなの。それと、カイロありがとうなのね!」

「はぁー、あったまるぅ。」

「イムヤ、お前もっともってけ。」

「なんか見ていて寒い。」

「ありがとうございます!」



なぜか、いや、艦隊運営という事であれば

潜水艦も居ておかしくないんだけど……。



「先日いただいた本、大変いいものでした。」

「だろ?温故知新。古き軍略家達の思考ってのは面白い。」

「なにか気付いた事あれば教えてもらいたい。」

「あの、はっちゃんとしてここが気になりました。」

「ん?どれどれ?」



連合艦隊の12人を選抜するうえで何故4人も最大に潜水艦娘達を入れた。

と、貴重な枠を潰す事への疑問を抱えていれば。



「おーい、ゴーヤ。」

「なんでち?」

「潜水艦隊の隊長として動いているお前の総評を聞きたい。」

「郡狼作戦への水上艦との連携はどうだ?」



こいつ最悪だわと納得。

つまりはやろうとしていることは敵を誘引撃滅という事かしらね。
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:37:50.58 ID:2HdN4PtG0

「あんた手心とか。」

「叢雲。実戦形式に手心なんてしてたら相手に失礼だろ。」

「教育ってのは痛い目をみて覚えるって事も大事だとはおもわねぇか?」

「じゃぁ、教育というかご教授いただきたい事があるんだけどいいかしら?」

「さて?」

「空母姉妹が飛鷹、隼鷹。そして駆逐艦が特V型三姉妹。」



叢雲の指摘は当然としてしたり顔で返す提督。



「制服、背格好。みなよく似てる、そして似せて貰っている。」

「目的はなにかしら?」



ある程度は分かっているけどきちんと確認したいわけで。



「答えは出ているんだろ?」

「あの、私は艦影を似せる事での混乱を狙ってのものだと思うんです。」



猫を1000匹くらい被った隼鷹が口を挟む。

全体に知られた隼鷹って艦娘と180度違う感じなのよね。

飛鷹が二人いると言われれば

納得できるくらいのお淑やかな感じ。

話しをしてみればこいつの渋い中年顔に一目惚れとか言ってたけど……。

恋は盲目と誰がいったものかしらね。



「なかなか理解が早くて助かる。その通りだ。」

「目視下での艦種、艦名判断だと似ている艦娘が多いと攪乱できるからな。」

「つまり艦隊を分けて動かした際に

 どちらがどっちか分かりにくくするという事ですね。」

「そして、そのまま罠、潜水艦の娘達がある所へ連れて行くという訳ですね。」

「隼鷹は賢いな。」

「いえ〜。そんな〜。」



デレデレ顔がなんというか腹立つ。

781 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:38:52.94 ID:2HdN4PtG0

「でも、叢雲がいるとまずくないのかしら?」



冷静に指摘するのは飛鷹。

私が指摘したかったのに……、

ってなによこれじゃ私が隼鷹に嫉妬してるみたいじゃない?!



「いい所に気付いた。だが、それはわざとだ。」

「わざと?」



あいつの答えに疑問を返す飛鷹。



「あぁ。そうだな。すべて教えても勉強にはならねぇな。」

「次回の訓練までに考えておいてくれ。」



そういい踵を返してあいつは自室へと向っていく。



「響は分かる?」

「あぁ、暁には難しかったかい?」

「なによ!響は正解分かったの!?」

「あぁ、私の考えが正しければあの候補生さんは相当な策士。」

「あるいは稀代の詐欺師だね。相当に曲者なのは確かだよ。」



暁と響の姉妹の会話。

782 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:41:25.19 ID:2HdN4PtG0

「ねぇねぇ、響、後で教えて頂戴!」

「雷も少しは考えた方がいいと思うのだけれど。」



電が初期艦として外れている為特V型姉妹が三人だけ。

そういえば響は私と同じ髪色だったわね。



「叢雲は答えが出ているんだろ?」



私の方を見ながら響が確かめるように質問。



「えぇ、まぁね。たぶん響と同じよ。」

「あいつはとことん人の心をもてあそぶやり方が好みみたいね。」

「とはいっても多用は出来ないと思う。」



響はなかなか鋭いと思う。



「えぇ、その通りよ。」

「叢雲、暁に雷に説明してもらってもいいかい?」

「いいわよ。あいつから強奪した特A甘味配給券で

 羊羹貰ってきてそれでも食べながら話しをしましょう。」



共に演習大会を戦い抜くのであれば打ち合わせも大切よね。

あいつから奪った特A甘味配給券(通称間宮券)で

貴重品の甘味を貰ってこよう。

にしてもどういう伝手で入手してるのかしらね。

まっ、他の連中を手伝ったりした礼で手に入れているんでしょうけど。

秘書として艦隊を円滑に動くように裏から支えるのは重要よね。

783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:42:19.57 ID:2HdN4PtG0

「いひひ、イク達もお世話になるのね。」

「あら、勿論私達もお誘いいただけるわよね?」



結局艦隊全員に奢ることとなり強奪した配給券がすべてなくなったのよね。

迂闊だったわ。


784 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:49:02.53 ID:2HdN4PtG0
叢雲はなんというか恋女房とか古女房とか相棒とか
そんな感じの言葉がしっくりくる艦娘、他の初期艦と一味違う雰囲気が好きです
本編では故人ですが………
第三部!需要あるかどうかしらんが第三部!書いてまーす!(一応宣伝)
第一話はアブーンがでます、みんなの鎮守府で過労死寸前の阿武隈ですよ!
大体の予想されるとおりな癖が酷い、一癖も二癖もある感じのキャラ付けでございますが
他に書いてるのを早めにけり付けないとですね
更新期間がどんどん空いていってるのでレスが付かないくらいに忘れ去られた状況に
先日更新したのなんて2レスもつけていただきホント忘れられていなくてよかったと胸を撫で下ろした始末
なるべく更新期間を短めに頑張らないとだめですね、では次回もお付き合いいただけると幸いです
感想、他、お気軽にレスいただけるとイチがよろこびます、どうぞよろしくお願いいたします
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/04(木) 02:41:00.37 ID:inENqlmm0
前の鎮守府で酷使されすぎ壊れて多重人格になり赤疲労になると次の人格が出てきて働き続ける阿武隈(うちはトリプル阿武隈だからかなりホワイトですよニッコリ

しかしまあお若い士官候補生様から見たら卑怯もお経もあったもんじゃない策を用意するもんだ
もうこの時期から情勢が悪くなる前提で運用実験してるのかな
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/04(木) 03:19:59.89 ID:KLGGXsonO
乙!
待ってるぜ!
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/04(木) 09:55:58.26 ID:reh7MeH0O
続き楽しみ
788 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/04(木) 22:57:52.47 ID:inENqlmm0
何かしらの理由で絶対に提督にするわけにはいかない奴を確実に不適格者にするために師匠に送り込まれたのかも知れぬ
789 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/08(月) 04:23:59.86 ID:YX4H6MyE0
乙乙
見た目の偽装って深海棲艦にも効果あるのだろうか
阿武隈の服とか着させたら真っ先に狙われたりして
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 00:59:43.95 ID:ZkrAgJQR0
8月下旬にイベでーす!
まじかよ……(真顔)
資材カンスト無理そうデース!(やけ)
更新デース!
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:01:16.34 ID:ZkrAgJQR0

それから暫くして卒業検定代わりの演習試験が始まったわ。

一番端っこの最下位から始まったにもかかわらず

勝ちあがっていく度にメンバーの皆が盛り上がる。


「のはいいんだが俺の部屋は談話室じゃねぇぞ?」

「候補生さん。あの、候補生さんのおかげで

 旧式といわれている私達姉妹がもの凄く注目を浴びる事が出来ています。」

「ほんとうに感謝いたします。」

「扶桑、やめてくれ。拝むな。」



提督を拝みだす扶桑。



「まぁ、姉さまが凄いだけだけど?あなたも頑張ってるんじゃない?」



扶桑に続き山城がまあまあねといった具合に褒め始める。

実際、演習のトーナメント表は順調に勝ちあがっている。

勝つほどに結束も強まり、いつのまにかこいつの部屋で反省会やら

次回に向けての打ち合わせが全員で自主的に行われるようになってきたのよね。

792 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:01:59.58 ID:ZkrAgJQR0

「叢雲。すまねえ。ちょっと外に出てくる。」

「ちょっと。」

「流石にちび達がいる部屋で煙草はまずいだろ?」



私には遠慮しなかったくせに…。

そういいあいつは外へと出て行った。



「叢雲。」

「響?どうしたの?」

「候補生さん、ライターを忘れていっているみたいだから届けてくるね。」

「あっ。」



私が持っていくわと言う前に出て行っちゃった…。

そして、養成学校近くの港にて提督は煙草を吸おうと

ポケットから煙草入れを取り出したところで、ライターがない事に気付いた。

793 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:03:17.59 ID:ZkrAgJQR0

「まいったね。」

「候補生さん。忘れ物だよ。」

「………、響かありがとう。」

「となり、座ってもいいかい?」

「あぁ、いいぞ。」

「煙草、吸わないのかい?」

「ちびっこが近くにいるのなら遠慮するのが大人のマナーだ。」

「私はちびっこになるのかな?」

「少なくとも俺の中ではな。それで、何か用か?」

「うん。候補生さんに二三聞きたいことがあってね。」

「答えられる範囲内でならいいぞ。」



提督が座るベンチの横に腰掛ける響。



「候補生さんはこの卒業試験を

 外部から調整する任務かなにかを受けているの?」

「さて、どうしてそう思った?」

「叢雲の言がヒントになったのだけれど、彼女曰く、らしくない。」

「短期間での付き合いにも関わらず叢雲にあそこまで言わせるなんてね。」

「候補生さんはかなり叢雲に信頼されているようだね。」

「そうならありがたいね。」



続きがあるんだろ?と目で促す提督。

当たり前だが響が感じた疑念の根拠というにはまだ薄い。

794 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:05:00.72 ID:ZkrAgJQR0

「候補生さんは追撃すれば圧勝できる状況でわざと見逃し相手の被害を抑えた。」

「或いは此方に被害を出せずに勝てる状況でわざとに軽微な被害を食らう。」

「それら一つづつは違和感なく行われているし最もな理由付けも可能だよ。」

「例えば追撃をせずとも此方の勝利は確定しているため被害軽減に努めた。」

「多少の被害を出すことにはなったが

 強引に進めたため勝利を確実に物にすることが出来た。とかね。」



響の説明は尚も続く。



「演習はこれまでのテスト等で成績上位者が

 演習海域もしくは勝利条件を選択して、残った方をもう一人が選択する。」

「成績最下位でスタートした候補生さんは

 相手が有利に進められるはずの条件全てにおいて勝ってきている。」

「辛勝という風に見せかけた試合運びから

 圧勝という試合運びのものまで自在に演習結果を操作しながらね。」

「その手際は熟練の司令官に並ぶとも劣らないと思う。」

「そして試合内容と対戦相手を改めて見比べれば

 私達艦娘候補生の間で評判が宜しくない相手には容赦なく

 逆の相手には手心を加えている。」

「私も叢雲が『 らしくない 』といわない限りは見比べようとは思わなかった。」



響がいい終わると提督の顔を見た。



「なかなか叢雲はよくみてるな。」



響の説明に相槌を打つ提督。

その表情は生徒が正しい答えを述べるのを満足そうに見つめる教師の様である。

795 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:07:55.01 ID:ZkrAgJQR0

「その事を踏まえて本来は私達に知らされていない採点基準があって

 候補生さんはそれを調整しているのじゃないかなと思ったんだ。」

「叢雲がらしくないと言ったのも相手に加点、或いは減点させるものだった。

 候補生さんが採点基準を知る立場にあると仮定すれば……。」

「不自然な艦隊指揮にも納得がいくと。」



それはある種の確信を持った結論。



「それに、候補生さんはあまりにも指揮が慣れすぎているのだもの。

 暁や私が司令官と呼びそうになるくらいにね。」

「それほど堂に入っていると思われているわけか。」

「そうだね。」



そして少しばかりの間が空き提督が笑う。



「まっ、いいだろ。及第点という所か。もう少し早く気付くかと思ったがな。」

「その推測の通り俺は採点基準を知っている。

 当たり前だが勝ち負けだけで艦隊運営されちゃ敵わんからな。」

「敵を殲滅したが自分の艦隊も壊滅しました、じゃ話しにならんだろ?」

「それはそうだね。」

「さらに言えば敵拠点を破壊、確保したとしても

 今度は敵が奪い返しにくるのに対して

 守る為の余力が無いと奪ってもまた直ぐに取り返されてしまう。」

「艦隊を動かすってのは1つ終ればそこで終了ではない。

 連続で次がある。それを見据えた指揮が必要なんだ。」

「時には負けて勝ちをとる必要もあるっていうことだ。」

「敵の被害を多くすることを主目的として

 積極的に勝ちに行かない事も必要という事だね。」

「そういう事。ただの試合の勝ち負けよりそういう将来を見据えた指揮が

 出来ているかどうかのほうに成績の採点は重きを置いている。」

「さらに言えば鎮守府運営を模擬的にさせることで部下へ仕事を投げる事、

 早い話采配上手か独善的に全てを自分でやりたがる残念さんかを見分けたりとかな。」

「人となりも採点されているという事なんだね。」

「工場出荷の製品が足りないからといって不良品を出荷するわけにはいかないだろ?」

「なるほど、司令官は不良品を取り除く検査員という事なんだね。」

「俺は、ただの候補生にすぎんよ。司令官呼びはやめてくれ。

 まぁ、俺の役割としてはそんな所だ。」

「ふふ、油断すると司令官呼びしてしまうね。」

「私達は既に皆、卒業後も貴方、候補生さんの部下でありたいという部分で意見は一致しているのだけど?」



続く言葉は可能かという事。
796 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:10:14.05 ID:ZkrAgJQR0

「すまねぇ。そいつは無理だ。

 俺の立場上、一つの鎮守府に納まり指揮する事はない。」

「そっか。」

「代わりに一線級の精鋭が集まる鎮守府に配属されるように手引きはしてやる。」

「俺の下でいる間は色々勉強になっただろ?」

「それは間違いなく。」

「それを役立てて欲しい。

 そしてその言を入れないような無能な上なら教育してやって欲しい。」

「まぁ、傲慢かもしれんがな。」

「確かに傲慢だね。」



そして隣に座る響の顔を覗きこむ提督。



「そして、本題に移るか。」



提督の言に体をこわばらせる響。



「電から情報の提供を頼まれたんだろ?」

「隠し事は出来ないね。」

「隠し事というよりバレバレだ。諜報活動は基本のきだしな。」

「卑怯だとかは言わないんだね。」

「戦争にルールはある、が、だからといって

 卑劣な手を使うなという訳じゃないだろ?」

「それを入れての採点だ。諜報にしてもされる事前提で動いているかどうかも一つの基準だよ。」

「妹の電に頼まれたんだろ?流したいだけ流すといい。」

「暁は俺に隠し事できないだろうし肝心の情報を抜くには頼りない。」

「雷だと俺に直接聞けとつれてきそうだしな。それはそれで楽しそうだが。」



くっくっくと笑いながら響の顔を見る提督。
797 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:10:45.92 ID:ZkrAgJQR0
「ま、そういう訳でこっそりどういう戦術をとるのか

 聞き出してくれと頼めるのがお前さんという単純な消去法だ。」

「いいのかい?」

「いいさ。ただ、俺はお前さんの妹を秘書艦に選んだ候補生を徹底的に叩き潰すつもりでいる。」

「そいつはどうあがいても変えられない必定だ。」

「知ったからこそ負けを悟るという事もあると言う奴だ。

 しかし、電が秘書艦を勤める候補生にはそれを望めるほどの才はねぇ。」



そして、煙草を咥え、火をつける仕草をしようとしてやはり止め。



「無能の七光りは刈り取らねぇといかん。

 すまねぇがお前の妹には辛い目に遭ってもらう。」

「妹から聞いちゃいると思うが最終戦の相手は『 屑 』だからな…。」

「うん。」

「電に聞かれたことはすべて教えてやれ。俺はそれを上回る。」

「傲岸不遜と笑うならそれでもいい。だが、勝つのは俺だ。」



圧倒的強者の余裕。その言葉を聞き何かに納得したのか安心したのか響は席を立ち帰って行った。
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:12:37.76 ID:ZkrAgJQR0

そして、提督が煙草に火をつけ一服。



「叢雲?いるんだろ?」



建物の物陰に一言。



「あんたは…。」



気付いてたのと言いたそうに出てくる叢雲。



「やっぱりいた。」



煙草を手に持ち替え、笑い声を上げる提督。



「ちょっと、かまかけたっていうの!?」

「その通りだ。まんまと引っかかったな。」



はーっと溜息を一つつく叢雲。



「凡そは聞いていたんだろ?」

「えぇ、まぁ。」

「響に手の内を全部教えてやれ。どうせ使わん。」

「あんたって本当に性質が悪いわね。」

「なに、相手が勝手に踊ってくれるんだ。

 こっちは踊りを鑑賞すればいいのさ。」

「それにこっちが流した情報を馬鹿正直に信じるアホなら、

 はなから提督業なんぞ務まらんよ。」

「あっきれた。」



そして、提督は脳裏に思い出す。

叢雲が今まで秘書艦を務めその能力に問題有りとした提督連中の

所属する派閥の長が今度対戦する演習相手の血縁である事を。


「叢雲。」

「なによぉ。」

「勝つぞ。」

「当たり前よ!」

「いい返事だ。」


この演習が後に卑劣上等、型破りな演習で

敵を圧倒したとして記録に残ったのはまた別の話しである。

そして、一人の提督とその秘書艦が、

悪名でその後有名になる切欠となる最初でもあった。
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 01:19:27.86 ID:ZkrAgJQR0
次回オシオキデース!
試験の採点はナルトの中忍試験をイメージいただければいいでしょうか?
勝ち負けで提督の資質を判断してるわけじゃないよという奴ですね
レスで篩にかける&落さないといけないやつをつぶすために来たとのレス
良くお読みいただいた上での考察ありがたいと思っております
お読みいただいている皆様のレスはこの先の展開を色々推察していただいていてというのが前から多く
本当に感謝です、とはいっても次回はうわ、これは卑劣だわという戦い方になります
屑を相手どる以上仕方無いね!
ここまでお読み頂きありがとうございました、乙レス、感想レスいつもありがとうございます
励みになっております、他のも頑張って更新するべく頑張っておりますので更新の際は呼んでいただけるとありがたいです
では次回の更新もよろしくお願いいたします
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 02:40:33.80 ID:BfU/kMLOo
乙しか言えなくて悪いがいつも楽しみにしてますよ
乙!
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 06:35:00.52 ID:1+v62k180
乙。
もっと早くに続きが読みたいわ
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 10:07:35.70 ID:Ju8Z49gj0
乙!
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 11:49:24.17 ID:a16hG/ur0
完全に叩き潰し将器がないとレッテル貼るとなると艦娘へ調略仕掛けておいて演習中に次々と離反させるくらいしか思い付かないがそれだと群狼戦術のフリが勿体無いなあ、展開が楽しみだ

この提督適性は軍学者に見えるがやってることは軍師の仕事なんだよな
この歪みがいつか大きな失敗招きそうで怖い
804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:23:44.38 ID:1e9/xGBr0
暖かいレス、ありがとうございます
更新速度をあげれるよう頑張りたいものの相変わらずの亀更新
本当に申訳ありません、という訳で今回の更新です
お時間宜しければお付き合いくださいますと嬉しいです
805 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:25:36.24 ID:1e9/xGBr0

そして、決勝戦の時が来た。

その日はいつになく軍令部や艦隊司令部から、

所謂お偉いさんの方々が養成学校へと集まってきていた。



「これはこれは元帥まで……。」

「軍令部参謀総長に誘われてな。」



養成学校の校長が摩擦から火を起こせるのではないかという勢いで揉み手し迎える。



「養成学校はいくつかあるが此処の決勝戦はレベルが高いと元帥と話しをしていてね。」



元帥と気さくに会話をするのは

軍令部参謀総長にして戦略参謀長の大将。



「将来有望な艦娘候補生がいれば横須賀にいただきたいものですな。」

「君の所は充分だろう。なかなか欲張りだな。」



元帥と参謀長の会話に加わるのは

横須賀連合艦隊司令部長官にしてこれもまた同じく大将。

そして。



「決勝進出の提督候補生だが三重尾(みえお)中将の息子が出ているそうですね。」



司令長官が水を向ければ。



「ええ、息子の春蔵(はるぞう)が出ます。」

「これはなかなか優秀なんでしょうな。さすがですね。」

「卒業後は南方方面軍で中将の右腕として活躍してくれそうですな。」



中将と階級で呼ばれた相手は

今だ戦線整理を進めている南方方面を指揮する司令長官である。

806 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:27:05.75 ID:1e9/xGBr0

「えぇ、いずれその様にはと考えています。

 それにしても対戦相手はなんとも……。」



お茶を濁すがその言葉にはいかにも見下した印象が伺える。

一番下から勝ち上がってきているとはいえ

一見すれば運がいいだけのような勝ちあがり方。



「息子の対戦相手には力不足ですな。」

「これはしかり。

 中将の息子殿にとってこの様な未熟者の相手は役不足でしょうなぁ。」



中将が息子を褒めればその腰巾着の大佐が言葉を重ねる。



「はは。まぁ、ここまで頑張ってきたんだ。

 それなりには実力もあるのだろう。」



参謀長がその中将の言葉に理解を示しつつも嗜め。



「運も実力のうちといいますからな。」



司令長官がそれにつづけば。



「圧倒的格上に当れば今までのメッキも剥げるだろう。

 我らはそれを見ていればいい。」



元帥が会話を纏めた。

そして、演習の開始時間が迫る中。

二人の候補生はそれぞれが選んだ出撃地点近くに移動を完了していた。

807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:28:18.10 ID:1e9/xGBr0

「随分と上層部の方々がいらしていたな。」

「勝てば上層部への覚えも目出度くなる事間違いなし。」



自分の父親以外にも上層部の重鎮達が集まっていたことを思い出し。



「おい、電。演習相手が使う戦術とかすべて間違いないんだろうな?」

「はっはい。間違いないのです。」

「もし間違えていたら『 罰 』を覚悟していろよ?」



下卑た顔とそしてねちっこい視線を電へと向ける。

彼が言う罰とは精神的、性的な苦痛。

彼はそれを自己の親、

寅の威を借るなんとやらでそれを外へ漏らさないようにしている。



「雑魚の三下が生意気なマネをしやがって。思い出すだけで腹が立つ。」



提督が俺が勝つと挑発したこともありこの三重尾候補生は

成績上位者が先に選ぶ演習海域、もしくは勝利条件で勝利条件を選択していた。

その選択した勝利条件とは敵艦隊の殲滅である。

そして提督が後から選んだ演習海域は

国際海峡であるマラッカ、シンガポール海峡を想定した多島海海域。

島がそれなりに点在する形の演習海域である。


808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:29:27.49 ID:1e9/xGBr0

「小型艦に旧式のポンコツ戦艦を抱えている連中だけあって頭が回るな。」

「だが、連中の潜水艦に気をつけていればこっちの艦隊の敵じゃない。」



自身が率いる艦娘は大和型に翔鶴型。最新鋭の艦娘達に駆逐にしても島風。

軽巡は球磨、長良と火力重視、おまけに重巡は摩耶、鳥海と

成績優秀な娘達を自分の親の立場を利用して選んでいる。

対潜、火力、制空。全てにおいて、万に一つも負ける理由がない。



「そろそろ演習開始です。」



不正が無いかの監視役として来ている教官の鹿島が開始時刻の到来を告げた。

そして。

演習は午前9時きっかりに始まった。



「全艦娘、出撃!」



出撃地点に設けられた出撃ドックから

次々と艦娘達が出撃していくのを見送り始めた次の瞬間だった。

海面に雷跡が走り、最初に出撃していった駆逐、軽巡の艦娘達に魚雷が命中。

複数本の魚雷による水柱が派手にあがる。



「馬鹿な!?相手は出撃地点をどうやって!?」



双方の出撃地点は幾つかある中から

公平性を期すために養成学校側がランダムで選ぶ。

だからそれを知る事ができる訳が無い。まさか。

809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:31:50.65 ID:1e9/xGBr0

「買収して出撃地点を事前に知っていただと!?」


狼狽し、とんでもない独り言をつい口走る候補生。


「言葉には気をつけていただけますか?

その様な工作は受け付けていませんよ。」

「それとも御自分がされている事の自己紹介ですか?」



冷ややかな笑顔で候補生の独り言を即座に否定する鹿島。



「駆逐艦 電、大破、軽巡 球磨、長良、大破、重巡 鳥海、中破。」

「駆逐艦島風 小破、重巡 摩耶 小破。被害判定は以上ですね。」



淡々と被害を確認し告げる鹿島。



「こっ、こんなの無効だ!無効試合だ!!」



演習開始と同時の潜水艦による攻撃。

相手の準備が終ってないところを攻撃する卑劣な一手。

無効な攻撃であると言いたくなるのも分からないではないが

鹿島が次に口を開け述べた言葉は呆れだった。

810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:33:05.87 ID:1e9/xGBr0

「随分とよく喋る無能さんですね?」

「なっ!?貴様!誰に口を聞いていると……。」

「思っているか?ですか?

 当然、目の前にいる状況を把握していないお馬鹿さんですよ?」



銀色のふんわりとウエーブの掛かった髪が、

その腹のそこから来る笑いを抑えているのが分かる程に揺れる。



「いいでしょう、理解出来ていないようなので特別に教えて差し上げます。」

「私達がお知らせしている演習日時、

 演習の開始時刻はあくまで開始時刻に過ぎません。」



蟲惑的笑みを浮かべ、口の前に指を一本立てて鹿島は解説を始める。



「開始時刻は開始する時刻であって出撃する事を表す時間ではありません。」



鹿島のこの言葉にいまだに要領を得ないという顔を見せる候補生。

その候補生の顔をみて、

やれやれとでもいいたげに眉根を寄せてさらに説明を続ける。
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:35:02.93 ID:1e9/xGBr0

「演習の開始時刻はあくまで作戦開始時刻に過ぎないという事です。」

「今まで皆が皆、開始時刻に出撃を律儀に守ってきた事もあってか

 開始時刻=出撃時間と勘違いが進んでいたようですがね。」

「開始時刻前に攻撃をしたりしなければ

 演習海域の何処に潜んでいても

 それはルール違反にはならないという事です。」

「じゃっ、じゃぁ、何故それを全員に言わない!?」



鹿島の言葉に反駁しようとする候補生。

しかし、それを遮り言葉を続ける鹿島。



「私達学校側になんら不都合もありませんので

 それをいちいち訂正、説明する必要性が無かったという事です。」



つまりは勝手にやれという事。

そして、目を細く、獲物を見つけこれから嬲る心算の捕食動物の顔をして鹿島は続ける。



「その程度の事を気付けない、

 見抜けない方が実戦でものになるとでも?」

「改めてお伝えします、この演習開始と同時の攻撃には

 なんらルール違反はありません。」



鹿島はこの事態を予感していた。

対戦相手の候補生に最初に会った時に戦場帰りの香りを感じていた為。

実戦の現場に立った経験があるかどうかは別として

その相手からは実戦を知っている人間が纏う独特の香りがしていた。

だからこそ。

この演習時刻が作戦開始時刻に過ぎないことを踏まえ演習をぶつけてくる事を見抜いていた。
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:36:17.16 ID:1e9/xGBr0

(とはいえ、最後の最後で見せて来るというのは

 他に真似をされて自分に使われる事を防ぐ目的もあるという事でしょうね。)



だけに。



(提督に任官されている方であれば

 ここで冷静に作戦中止の判断を下されるのでしょうか?)

(最も実戦であればそもそもの対潜哨戒網が抜かれているという時点で

 間抜けどころではないでしょう。)



ここでの演習終了は鹿島にとって面白くない。

鹿島はもっと、もっと、この面白い状況を見たいのだ。

人の不幸は蜜の味。

それも、親の権力、権威を傘に着て

好き勝手してきた相手が不幸に墜ちるさまを見るのは………。

至極。愉悦である。

813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:37:25.43 ID:1e9/xGBr0

(で、あれば。私が演じるべき役割も自然と決まるものですね。)

「それで、候補生さんは演習を続行されますか?」



この手の無駄に自己評価が高い相手を引けなくさせるためには煽る事が一番。



「ここで演習の終了を選択する事も良いと思いますよ。」

「御来賓の皆様がどう思われるかは分からないですけれど……。」



海軍上層部がこの演習を見ているという事実を思い出させてやる。

そうすればこの手の無能は頭に血が上り冷静な判断は下せなくなるだろう。



「続行に決まっているだろうが!!

 まだ、大和型戦艦の2人に空母の五航戦の2人も無傷。」

「重巡の2人にしたところで中破と小破だ!

 対潜にしても島風が残っている!

 演習を続けるのに支障なんぞない!」

「了解いたしました。では、演習続行という事ですね。」

「大破判定を出した子達については規定どおりに

 演習海域から離脱させ学校の方へ向わせます。」



所謂ゾンビ行為を防ぐ為である。

そして、鹿島は目の前の候補生が安い挑発に乗せルビコンを渡らせる。

その返答を聞いた鹿島の笑顔は実に恍惚であった。

814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:42:36.63 ID:1e9/xGBr0
鹿島がS女王
お馬鹿島もいいですしエロ女王なのもいいです
実際他の作者様での鹿島は割とそんな感じの役どころが多いですし…
ですが、こういう知恵が回り尚且つサドっ気のある鹿島もいいなぁって思うんです
物語の進みが遅くて本当に申訳ありません、香港のなんか現実がやばい事なっててあれれ?な状況
中国そこまで馬鹿じゃないと思っていたんですが現実は小説よりも奇なり……
いつも乙レス、感想レス本当にありがとうございます
前回の更新の後にいただいたいくつかの暖かいレス、固定で読んでくださっている事のありがたみを
改めて実感いたしました、なるべく更新を早めに行えるよう頑張っていきますのでこれからもお付き合いの程
どうぞ、宜しくお願いいたします
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 01:30:47.21 ID:t9cxth530
回りこみやすい島だらけの地形を選んだか
これは似たもの艦隊が生きるね
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 06:09:55.11 ID:TrT726nr0

固定観念にとらわれると現場に出てから困ることはよくある。
欺いてかわして隙きを突かねばこの先生き残れないね。
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 08:11:47.34 ID:usIqfFKPO
携帯からですが1です
相手側の人数足りていないことに今更気付きました
長門、陸奥がいる事にしてください
申し訳ありません
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 20:33:43.02 ID:4j9W/cXN0
乙乙
立ち絵だけ見た時の鹿島のイメージが完全にこれだ
サド鹿島いいよね
でもやはり本家のゆるふわ鹿島を二次創作で見ない
819 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:14:41.08 ID:xNtdGOdc0
このスレを使い切る勢いで提督の過去編を頑張るぞ…
暑い毎日が辛い、少しだけ更新いたします
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:16:14.07 ID:xNtdGOdc0

私、今回の演習の監視員である練習巡洋艦香取は考える。

目の前の候補生という人物について。

今まで見てきた候補生と比べ明らかにそれは異質だった。

そして、それが異質であると気付く相手がいるかどうかを

本人は観察して楽しんでいるようでもある。

さらに言えば。



「あっ、香取先生。そろそろ移動しますので無線機もっていきますね?」


開始時刻を過ぎて僅か10分ほどで

艦娘達への指示を出すのに使用する無線機のみもち移動を開始しようとするありさま。



「どちらへ移動されるおつもりですか?」



「はぁ。演習におけるルールブックを読む限り演習開始後は

 開始地点にいなくてもよいようですので

 司令部としての機能を他所へ移動しようかと思ったしだいです。」



演習開始時、候補生は所定の開始地点にいる事。

この一文の解釈をそうとるかと腹の中で笑う。

確かに妹として一緒に教官を務める鹿島が気に入る訳だ。

この候補生はルールの穴を解釈の仕方でいかようにも取れるというやり方を心得ている。

この手の人物は相当な曲者なのだ。

821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:17:36.06 ID:xNtdGOdc0

「いずれ敵がここを直接殴りに来るでしょう。敵司令部の破壊は基本ですからね。」

「はて。そう思われる根拠は?」



あれ?という顔で此方を見てくる。

しまったかしら?どうやら相手はこちらを高く評価してくれていたらしい。

これは下手をうったかしら?



「教官はなかなか点数を与えるおつもりが無いようですな。

 さすがに手厳しい方と評判なだけある。」



あっ、黙っていたら何か勝手に解釈してもらえてみたい。

これはいい兆候ね。



「成程。今までの演習の記録を見る程度の注意力のある候補生であれば

 同じ演習海域の使いまわしくらいには気が付きます。」

「出撃ドックにしても帰還ドックにしても設備を一朝一夕で設ける事はできません。」

「簡易的、その時だけ使えればいいやという事で作る事も可能でしょうが

 学校として卒業試験以外の様々な訓練での使用を考えると

 固定で作ってしまう方が楽なのは自明の理。」

「どうぞ。続けてください。」



ここはもう少し喋らせた方がよさそうね。存外饒舌に語る人物の様ね。
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:18:50.44 ID:xNtdGOdc0

「演習時のドックの選び方にあえての法則性を作っているように見ました。」

「お答えしかねますね。」

「気付くものが気付けば勝手に利用してくれというやり方ですね。

 まさしく事前にどれだけの情報を仕入れ、

 それを分析し己の優位性を確保できるかどうか。」



候補生の情報収集、分析能力についても

裏での採点ポイントなのを気付いているみたいね。

この候補生さんはやるわね……。



「過去のデーターにアクセスできるようにしているのも、

 やってみろと言っている様で。なかなか楽しめました。」

「あらあら、これは、なかなか。」

「私程度の者が考え付くのであれば相手も考え付くというのはまた真理かと思います。」



そんなわけないだろと突っ込みを入れたくもある。

よっぽど丹念に複数年分の演習記録を見ないと

法則性など分からないだろうに。



「演習開始時点での開始位置。

 司令部を置いている位置が分かれば、私なら殴りに行きます。」



確かに敵司令部を殴ってはいけないというルールには書いていないけれど。

清々しい笑顔で爽やかにルールに違反していませんよねと

言外に含むのは悪党だなと思わずにはいられないわね。

823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:20:34.89 ID:xNtdGOdc0

「コロンブスの卵とは言いますが自分が一番であるかどうかはまた別ですから。」

「となれば敵にやられる前に尻に帆をかけて三十六計逃げるになんとかですよ。」

「部下にやることは伝えていますから面倒がやってくる前に雲隠れです。」



なんとまぁ、この候補生は指揮をとる気が無いらしい。呆れた。

いえ、これはあれね。戦が始まった時には既に終っている。

ここまで丹念に情報を分析しそれに対処すべく細工を終らせているという事。

開始直後の相手被害状況も考えれば後はやる事が無いという事ね。

準備段階での差が勝敗を決めるとはよく言ったものね。



「了解いたしました。候補生さんとご一緒しましょう。何が手伝えますか?」

「あっ、お手伝いいただくようなことはなにも……。」


恐縮したような態度を見せるがこれは絶対にそう思ってないやつね。

なんて油断の置けない相手であろうか。

本当に恐ろしい相手だわ。
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:22:22.25 ID:xNtdGOdc0

香取が提督と会話をして提督の人となりを改めて分析していた時。

提督もまた、候補生として考えていた。

目の前にいるこの練習巡洋艦香取という女性は恐ろしく侮れない相手だと。

なんせ、あの雰囲気だけで人を殺せそうなものを漂わせていた鹿島の姉妹艦娘だ。

そのおっとりとした雰囲気は紛れも無い欺瞞という奴だ。

見た目だけの妹と違いその雰囲気までもおっとりとかつ言葉は悪いが凡庸に見せかける。

並大抵のものじゃ出来ない。

先程の質問への答えに対してもそうだ。

移動を開始すると告げる前のやり取りに対してもそうだ。

何故かと問うて来た。

その質問の意図が分からずに間抜けな顔を見せてしまったに違いない。

これは恐ろしく減点をされているかもしれない。

825 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:23:43.78 ID:xNtdGOdc0

なぜなら試験の答案用紙に

その答えに至った課程を一切書かずに答えのみを書くようなものだからだ。

論理的にその答えに至った過程も見るのがこういった演習型の試験にも関わらず

答えのみしか答えない生徒というのは非常にまずいだろう。

その答えに至った理由を説明できないというのは

理解が悪い自分の部下に対して何も説明できないという事。

早い話指揮官能力に問題ありと言える。

自分の指示を部下に納得の行く形で説明が出来ないというのは実に不味い。

命令の一言で済ませることが出来るというのが軍人ではあるが

部下へ嚙んで含んで理解、納得した上で動いてもらわないと

その成果は芳しくないのが当たり前。

さらに言えば人徳、人望など望むべく無く、

戦場の露となるべく後ろ弾を拝領するという事になりかねない。

だが、提督はまた、香取教官は以外に慈悲深い相手なのやもしれないと思った。

826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:25:01.00 ID:xNtdGOdc0

というのも質問の後に敢えて沈黙という間を作ってくれたからだ。

これがこちらをとがめる心算であれば

即時に何故その考えに至った事を説明しないなどととがめられただろう。

間を作って敢えてこちらに答えを促したという事は

こちらに多少なりとも好意的であるということ。

となればやることは一つ。

説明の不足を一気に語り、減点されることのなきようにというやつだな。

身分を校長以外知らない以上、流石に上の面子を潰すわけには行かない

饒舌に喋りすぎていないかが心配だ。

なんせ下から這い上がる演出の為にわざとに成績を落とした状態である。

これ以上減点を貰おうものなら幾ら自分の実力を上が把握しているといっても

渋顔の一つくらい覚悟しなければならないだろう。

無能に座らせる椅子は無いというのが上の立場だからだ。

説明は終ったが……、どうだ?満足してくれたかな?

………、よし、了解してくれた!

まったく。この教官は何を考えているか分からないから恐ろしい相手だ。

827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:25:40.88 ID:xNtdGOdc0

そして、提督が香取の底知れなさについて畏怖の念を覚えている時。

この候補生さんの思考の柔軟さはなんとも恐ろしいわね。

香取もまた、候補生である提督に畏怖の念を覚えていた。

結果、お互いの考えは同じであるがため、抱く感想はまた同じ。



((まったく、油断の出来ない相手だ(ね)、苦笑しかでない))



提督と香取はお互いの顔を見てひきった笑顔で笑い合うのであった。

828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:26:54.98 ID:xNtdGOdc0

提督達が笑い合っていた丁度その頃、

山城は腕時計で作戦開始時刻になったことを確認し動き出す。

彼女が立つのは海面………。

ではなく、演習海域のとある丘の茂みの中である。



「虫が多くて気持ち悪い……、はぁ−、不幸だわ……。」



と、いつもの愚痴をいい。

事前に提督から伝えられた作戦内容を思い出しつつ。



「ほんと、相手が不幸だわ……。」



彼女はにんまりとその口唇を吊り上げたのだった。
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:30:21.62 ID:xNtdGOdc0
ここまでお読み頂きありがとうございました
皆様、熱中症にはお気をつけください、経口保水液がおいしいとか感じられるような状況はアウトです
いつも感想レス、乙レス、ありがとうございます
周りこめる地形条件、ウルフパック作戦、そして色々
卑怯だろ!というやつです、まさしく勝てばよかろうなのだ!を時で行く糞野郎を提督はやります
ではでは、次回の更新もお読みいただけると幸いです、ここまでお読み頂きありがとうございました
夏イベント、ほんとどこいくんでしょうね?バケツが不安だわ…
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 07:52:51.12 ID:6nwtO7WdO
乙!
831 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 09:45:32.06 ID:33TPt9nPo
香取からそこはかとないポンコツ臭がして笑った
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 11:31:04.13 ID:f1uEgEbX0
乙乙
別にポンコツではないんだろうけど比較対象がずば抜けてるせいでポンコツに見える
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 12:11:39.44 ID:ONkDfwo2O
乙です。
猛暑でおかしくなりそうですが
続きをはやくはやく希望します
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 13:07:59.41 ID:PVnQXPBi0
このお互いに先の先まで読みすぎて結局普通の結論に落ち着くところが好き
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 13:09:54.60 ID:gAoWBJj30
提督賢しすぎて回りこみすぎた挙句一周回ってお互いいいところに落ち着いとるw

孫子をしっかり修めてなお将たる素養のうち五分の二が片鱗も現れないとこ見るとこの時点では響に言った通り腰落ち着けて艦隊指揮する気なかったんだろうなあ
836 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:27:28.30 ID:pvOQ4SiX0
毎週何曜日に更新とか出来る程に筆が早いといいんでしょうけれど…
などなど思いつつちまちました更新速度です
お時間宜しければお読みいただけると幸いです
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:29:47.98 ID:pvOQ4SiX0
扶桑、山城達が別行動をとっている際、

叢雲たちもまた行動を開始していた。



「それにしてもこう、ばらばらでいいのかねぇ」



猫かぶりの口調から普段の口調に戻り隼鷹が分隊の旗艦を務める叢雲に聞く。



「戦力の分散、逐次投入は無能と言いたいのは分かるわよ。」

「実際私も馬鹿じゃないのって具申したわよ。」



そして叢雲へ提督が返した言葉は。



「あいつったらこう言うのよ?

 まともに敵を圧倒的暴力で殴れるなら策を練ったりする必要なんかねぇ。」



提督の口調を真似しつつ。



「圧倒的な暴力の前には戦術、戦略なんか意味がねぇんだ。

 って開きなおるのよ?!」

「あー、確かにあの提督なら言いそうだわ。」



艦隊内では既に候補生という呼び方ではなく提督、

司令官呼びで通っているらしく隼鷹が叢雲の物まねに相槌を入れる。



「俺達みたいな弱小戦力の寄せ集めじゃ奇手奇策。相手を出しぬかねぇと勝てねぇ。」

「なら相手を徹底的に虚仮にしつつ怒らせるのが重要だ。怒りは最も我を忘れさせるからな。」

「怒りに我を忘れた相手を潰すのは簡単だ。」

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。だそうよ。」



提督の口調を真似しつつ隼鷹に話す叢雲。



「負けない要素をがっつりつくって相手のミスをまつか……。」

「負けた相手の精神を食い破るえげつなさ。惚れるねぇ。」

「千年殺しでもするつもりかね。」


相手にトラウマでも与える心算かという隼鷹の指摘。


「さてと、出番はそろそろかしらね。」


叢雲が片手をあげ近くにいる暁に出番が近いことを教える。


「待ちに待った出番ね!」

「えぇ、そうよレディ。幕はあがったわよ。」


そして、叢雲達が待ち構えるなかまた演習相手も動き出した。
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:30:50.18 ID:pvOQ4SiX0

「この演習は既に負け戦なのではなかろうか?」



最初の不意打ちを受けて艦隊の被害甚大にあるにも関わらず

指揮官の候補生が演習続行を選択した事に疑義を唱える長門。



「行けといわれた以上は行かねばなるまいよ。」



長門の疑義を命令であるがゆえに仕方なしと答える武蔵。



「翔鶴さんに瑞鶴さん。偵察機の索敵状況はどうですか?」



空母の二人に敵艦を見つけたかどうかを尋ねる大和。



「偵察機が敵を見つけたわ!駆逐2の軽空母1よ!」



瑞鶴が報告を上げる。



「敵の部隊として随分と細かく戦力を分けているな……。」



長門がいぶかしむのも無理ない。

初手で潜水艦娘達による奇襲を受けたのだ。

戦力的に見て劣勢である叢雲達がその戦力を更に細切れにさせて行動しているという事は

何某かの策、伏兵なりが存在していると考えるに難くない。

839 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:32:39.94 ID:pvOQ4SiX0

「潜水艦を何処かに潜ませておいて伏せ撃でしょうね。」



敵の今までの演習内容をみれば

俗に言う郡狼戦術を好んで利用している事が分かる。

ましてや自分達の対潜能力のある艦娘達が

最初にそのほとんどを退場させられている事を考えればその意図は明らか。



「でしたら空母艦載機での遠距離攻撃のみで、艦砲射撃は止めますか?」

「今回のMVPも私達姉妹が貰う事になりそうですね。」



含みのある笑みと共に翔鶴が言う。

演習大会については当たり前だが提督候補生の指揮能力だけではなく、

その指揮下にある艦娘の能力も当然、考査の対象となる。

成績最優秀で卒業するには当たり前だが

優勝したチーム内で当然の様に戦績を重ねる事が重要。

候補生の調整能力が長けていればチームとなる艦隊内での役割分担や

演習後の報告書での手心などで不満が出ないようする事も出来るであろう。

そういったマネジメントが上に立つものには欠かせないのである。

それを疎かにすれば鎮守府ないで戦果を争う者達で派閥が出来たあげくの

足のひっぱりあい等が起こるというもの。

だが、この艦隊を率いる候補生はその辺が実にお粗末だったようで

空母の姉妹は戦艦の砲撃よりも長射程である艦載機の攻撃を生かし

常に戦果をほしいままにしていた。

島風や大破判定で退場した娘達はまだ対潜での活躍の場もあったが

長門や陸奥、大和や武蔵。

そして重巡の二人からすれば空母の姉妹に

活躍の場の殆どを取られている状況が大会中ずっと続いている。

その胸奥に渦巻く感情は一体どれほどのものかといえよう。

840 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:34:25.88 ID:pvOQ4SiX0

一方その頃、提督と香取は既に移動した先でポーカーに興じていた。



「これは随分ブラフを効かせていたのですね。」



香取が降りた後に提督が出した手札はただのワンペア。

それに対して香取の手札はスリーカード。

何試合目かの感想戦。香取は提督が口八丁、手八丁。

そして顔の表情を目まぐるしく変えて

その表情を読むことを難しくさせていたことへ驚嘆を込め言葉を語る。


「そうですね。私は顔に出やすいですから。」

「とはいえ、これでやっと五分ですか。」


香取と提督のポーカーは勝敗がやっと同じになった。



「続けますか?」



香取の問いに対して提督は答える。



「止めときましょう。

 どうも勝ちを譲っていただいているような節もありますし。」

「五分に持ち込めて気持ちよく終れる間に終るのがマナーというものでしょう。」

「遊びは禍根を残さないようにという事ですか。」

「えぇ、今後も気持ちよく付き合いたいのであればですね。」



香取は提督の言葉の含みを捉える。


「成程、足るを知る者は富む、ですか。」


香取が中国の故事で応じれば。


「和を持って尊しを為すでもあります。」



提督は日本の故事で応じる。
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:35:59.67 ID:pvOQ4SiX0

「ですが、やろうとしていることは風林火山ですね。」



提督の行動がその実、間逆である事を香取は指摘。



「敵と味方の区別は大事ですですから。」



そして提督はその理由を述べる。



「気持ちは分かりますが……。」



しかし、と指を一本立て香取は語る。



「組織の中に敵を作りすぎるのはよくないと思いますよ?」

「この演習の結果は既に見えている通りでしょう。」

「ですが相手の候補生は提督として着任する事は間違いないと思います。」



香取が語る。


「………、それを私に語っても大丈夫なのですか?」


提督が疑問をぶつける。



「話せる範囲内で、機密漏洩に当たらない

 ぎりぎりのサービスではありますが心配はご無用です。」



香取が語る内容は提督にとっては既知の事。

そして提督はそれを阻止する為に動いているわけだが

香取がそれを知ることは無い。

重要なのは香取が語ったという事にこそある。



「意味の分かる方と見込んだ上ですので。」



こともなげに言うと思うが。



842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:36:46.39 ID:pvOQ4SiX0

「………。そこまで私を買っていただく理由はなんでしょうか?」

「そうですね。

 妹ほど私は戦闘能力が高いわけでは有りませんので

 観察能力を高めた結果といった所でしょうか?」

「教師という職務上、人を見る目がないと勤まらないのは当然ですが

 それを更にどう選別、育成するかというのは経験以外の部分も必要です。」



香取がメガネをくいと持ち上げる。



「文字通りにお眼鏡にかなったと?」

「そうですね、個人的に応援をさせていただきたくなる程度には、です。」

「………。今後も精進いたします。」



提督が香取と友誼を結ぶ。

それはあくまで個人としてだが、

後々を考えればお互いの利を見据えてでもあった。

843 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:38:52.99 ID:pvOQ4SiX0


「じゃぁ、まっ、私と翔鶴姉ぇがさくっと倒すのを見てて貰いましょうか。」



悪気を感じさせはしないのだが…、

だけに性質が悪く、聞くものによっては癪に障る。

びんと音を立て放たれた矢が艦爆、

艦攻へと変化するのを長門達は見届け動き出す。



「隼鷹、そろそろお客さんが来る頃よ。」

「任せときなって。陰陽型の取り得はねぇ……。」



ばざりと巻物を一気に広げ祝詞を言祝ぐ。



「迎撃が早いってことさねぇ。」



彼女の巻物から召喚されたそれは戦闘機のみであった。

しかし、その数は。



「あたしの扱う艦載機は全て戦闘機だ。

 腹に魚雷、爆弾抱えた鈍重どもには遅れをとらないよぉ!」



まして提督がその操作の癖を見、

悪い所を相手へ付け入る隙に見せかける騙しを教え、

長所を徹底して伸ばさせた騙しの出来る艦載機妖精達。

そしてそれでいて本流は外れない。

あくまで応用は基礎の上に成り立つ。


「へへへ。さぁてぇ、性能に胡坐をかいたお嬢さん方にどれだけ通用する事かねぇ。」


ひゃっはぁ!と特大の感嘆詞をあげ全機無事発艦させたのだった。

程なくして演習相手の偵察機が自分達の方へ再度やってくるのを見届け

叢雲は自分達の艦隊内で使われている周波数で無線を飛ばした。


「こちらチェックメイト、ホワイトルーク!」

「キング!クイーン!ビショップ!ナイト!応答願うわ!」


チームとしての呼称、小隊、

といっても少ない戦力を更に細かくしているだけなのだが。

それを呼びかけ、叢雲の呼び出しに艦娘達が応ずる。


「虎は檻に入った!繰り返す!虎は檻に入った!」


提督が最初の奇襲で演習を相手がリタイアしなかった場合の、

もっとも続行するだろうがと付け加えた上で叢雲へ語った作戦を実行に移す。

その上で思い出すのは。
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:40:20.86 ID:pvOQ4SiX0

「俺の艦隊指揮での仕事は作戦立案の参謀職だ。

 現場で即応して人員を動かす上での指揮官はお前さんだな。」

「指揮官とはいってもだ、現実その場にいるわけじゃないからな。

 お前さん達には独断専行してもらった方がいい。

 責は俺が負うから好きにしろ。」

「臨機応変、場合によっちゃ勝ちをくれてやれ。

 お前達を何かで失う方がおしい。」



勝つつもりではあるがその中心にすえる価値観の天秤はつねにぶれない。

そういう提督の真摯な態度が好ましいなと改めて思い、

できない事は出来る相手に投げるというなんとも鷹揚な態度を思い出す。

相手が任せると投げてくるなら、こっちはやる事をやるだけと

今まで司令官と仰いだ連中との違いに少し頬が緩むのを感じる。



「さて、みんな!締めて掛かるわよ!」



叢雲が掛け声を掛ければそれに応と一同が答えるのだった。

猛獣とて檻に入れば逃げられない。敵は既に術中にある。

最初に異変を感じたのは当然ながら空母姉妹だった。



「あれ?攻撃隊が全部おとされちゃった。」

「軽空母の搭載機数にしちゃ数が多い気がする。」



瑞鶴が攻撃隊の第一陣があっさりと撃墜された事に感想を漏らす。



「こちらへの攻撃は考えずに全艦載機を戦闘機にしているようですね。」



冷静に自己の艦載機を動かしながら翔鶴が分析する。



「あたしらが一方的にスコアで負けてるもんなぁ。」



摩耶のこの一言は余計だった。

現状の認識として実に正しいのだが、余計な一言だった。



「確かに負けていますね。」


大和が言えば。
845 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:42:18.72 ID:pvOQ4SiX0

「流石に何日も演習に時間を割くことは無いだろうしな。」

「艦隊殲滅が勝利条件として設定されてはいるが

 せいぜい掛けて一昼夜といった所か。」



と大和の言葉をひきとり武蔵が言う。



「まさかとは思いますが敵はこちらを適当にあしらい

 時間が来るまで逃げる気でしょうか?」



大和が懸念を述べれば。



「夜戦となれば向うに分がある。

 ましてや潜水艦が残っている事を考えれば日が落ちれば此方は分が悪い。」



冷静に分析するのは長門。

ちっと盛大に舌打ちするのは誰であったか。



「敵は戦力を分散して逃げ回る事で

 此方を戦果で上回させることなく判定勝ちを狙う心算ですか。」

「随分と腰抜けで卑怯な作戦ねぇ。」



大和が叢雲達はそうと目論んでいる物と断定し

翔鶴がそれを軟弱者となじる。

もっとも時間切れによる判定勝ちを狙う心算なのであれば

叢雲達が戦闘に消極的であり戦力を細かく分散させて

ひたすら逃げるというのは一見、理に適っている。

(だが、果たしてそうであろうか?

 初手でこちらに潜水艦がいるという事を特に印象づけた相手が

 その様な単純な考えで動くのであろうか?)

(確かに初手のあれは卑怯ではあるが実に有効であり

 こちらの耳を奪うという意味でも重要であったし。)

(何より、戦力でみれば潰した方がいい戦艦である私達ではなく

 対潜艦を先に狙うという明確な意思が見られた。)

(しかし、それほどの相手がその様な稚拙な策をとるのであろうか?)

(こちらが既成概念に捕らわれているのを馬鹿にしたような戦術だが……)



勘という奴だろうか、長門は大和と翔鶴の考えに疑問を感じた。

艦隊の旗艦は大和である。なので、長門が出来たのはあくまで助言。

846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:43:19.50 ID:pvOQ4SiX0

「敵の意図が分かりかねる。

 一旦どうするか指揮官の候補生殿に指示を仰いではどうだろうか?」

「そうね、長門の言う事ももっともだと思うわ。

 慎重に進めるべきではないかしら?」



陸奥の援護射撃。そして。



「私も摩耶もここは慎重に行くべきだと意見は一致しています。」

「潜水艦に対する備えは今の私達には薄いです。」



鳥海が懸念を述べた。

叢雲達であればわざわざ提督に指示を仰がずとも意思決定が出来ただろう、

また、提督に判断を仰いだとして提督ならば相手の企みを看破、

或いは単純に乗らないという選択をしたのだろうが……。

提督との、その指揮官の差がここでも運命を分けた。



「小細工があったところでお前達の戦力なら蹂躪できるだろうが!」

「いいから敵をぶっつぶしてこい!

 戦力を分散しているなら各個撃破しやすいだろうが!」

「これ以上俺に恥をかかせるな!」



候補生からの怒気と苛立ち交じりの無線が返ってくる。

そしてそれを聞いた大和が長門へよこす視線は余計な事を聞いた所為で

いらぬ叱責を受けたといわんばかりのそれである。

結果、彼女達は指揮官である候補生が命じるまま叢雲達に対峙することとなったのだった。

847 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:48:15.29 ID:pvOQ4SiX0
ここまでお読み頂きありがとうございました、本日の更新終了です
欧州3海域かぁ…、有用艦娘掘り放題!(尚掘れるとは)だといいのですが
前回みたいなうぇぇ…、じゃない事を祈るばかりです
作品中で少し鶴姉妹の性格が感じ悪いのは申訳ありません、
あくまで作中の演出的な部分なので嫁にされてる方には本当に申訳ありません
お分かりかと思いますが既に内部分裂の兆しがががが……
いつも乙レス、感想レスありがとうございます、お読みくださっている皆さんからの暖かいレス本当に感謝しております
次回の更新もお時間よろしければお読みいただけると幸いです
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/21(水) 02:29:08.04 ID:uVpe+Wos0
社会学者が講演会でいってた「3人集まれば文殊の知恵というが馬鹿は何人集まろうが烏合の衆です」が実に刺さる未来が見える
そして聞きたかった作戦時間がかなり長いことがわかって楽しみが増えた
霧などの気象確率もリサーチ済みだろうしまだまだブッ込んできそう
849 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/21(水) 03:34:26.60 ID:jeokajMT0
おつです
候補生のうちにいやらしい相手との戦闘を経験できている大和たちは
運が良いのかもしれませんね。
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/21(水) 23:46:59.62 ID:GNzJAKyY0
乙乙
ゲームだとMVPだけだけど実際妬み僻みとかありそうだよなあ
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:47:46.46 ID:sON5tDsC0
皆様こんばんは
イベントにつっこんでおりますいっちです
サブ欧州艦が豊富だったためさっそくリシュリューのサブでE1やってます
今回は楽に全てが終るといいなぁと、終りよければ全て良しでいきたいですね
今回の分の更新となります、お時間宜しければお読みいただきますようお願いいたします
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:49:09.32 ID:sON5tDsC0

「敵、攻撃機部隊第一陣撤収を確認!」

「了解!私達ホワイトルーク小隊は

 手はずどおりに水道を抜ける形に進路を取るわよ!」



隼鷹が翔鶴達正規空母の攻撃隊に自己の全艦載機を

戦闘機に振り分けた上での迎撃に成功した旨を旗艦の叢雲に報告。

それを受けて叢雲達は島と島の間、彼女達中小型艦艇が小回りを利かせやすい水路、

一般に言う水道を通る進路を選択する。



「隼鷹!艦載機の収容は!?」

「完了!」

「レディ!目標は!?」



叢雲の呼びかけに少し先を先行する暁が応える。



「偽装ブイを発見したわ!」

「了解!さぁ、かくれんぼの時間よ!」



叢雲達はある意味で大和達を相手する心算はなかった。

先にも述べたが横綱相手に幕下がまともに戦って勝てるか?という奴である。

番狂わせなんてものはそうそう起こるものではない、

起こり得ないからこそ番狂わせなのだ。

そして、それを起こす為の下準備はきっちりとしてきていた。



「偽装ブイ確認、各員無線、電探使用は敵艦隊をやり過ごすまで禁止よ!」



枝、葉をこんもりと生やし、一見すれば島の一部のように見せかけたただのブイ。

よっ、と、そのブイの枝を掻き分け中にある空間の中に身を潜ませる一同。

853 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:50:08.48 ID:sON5tDsC0

「第二次攻撃隊、目標ロスト。」



第一次攻撃隊が全滅したため改めて発艦させた

二次攻撃隊から目標とする相手の失跡報告。



(どこへ雲隠れした?)



翔鶴が第一次攻撃隊が居た海域周辺を探る。

程なくして、駆逐2、軽空母1の敵編成を見つけた。



「居たわね……、雑魚は大人しくやられるといいわ。」



敵の小隊へ向け艦隊全体を移動させている最中で

翔鶴の下卑た笑顔に長門は嫌気する。

味方であるはずの仲間に対して嫌気がさすとはな、

と、やや自嘲気味に今の境遇を考えれば。



(最初に負けが確定しているのに続けるこの演習になんの意味があろうものか。)



今やっているのは負けを認められずに悪戯に時間を引き延ばすだけの行動。

実戦であれば撤退戦に移るべき局面なのだ。



(忌々しい。)



戦局を見極められない軍隊の結末は相場が決まっている。
854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:51:33.64 ID:sON5tDsC0

そもそも。



(第一次攻撃隊が向って全滅の後、第二次攻撃隊が見つけた敵の位置は

 敵が移動していると考えたとしても距離が離れすぎている。)

(連中の編成をみれば軽空母は低速に分類される飛鷹型。移動速度があり得ん。)

(となれば、この小隊は先のとは別物と考えるが妥当。)



と考えを纏めるも先の意見具申の結果を思えば。



(せん無きことか。)



「長門さん、この先は島と島の間の狭くなっている水路をゆく事になります。」

「複縦陣で中央に翔鶴さん達を配置する形で進軍しようと思います。」



大和の声に意識を戻し意図を理解する。



「島風に先陣を切らせ対潜哨戒に当たらせ

 我ら長門型が先頭警戒、前衛という事か。」

「えぇ。摩耶さんと鳥海さんのお二人は中央側へ回し、

 私達姉妹は後方警戒、後衛を行います。」



妥当。狭い水路を通るのであれば最も脅威となるのは潜水艦での待ち伏せ。

こちらの対潜能力を初手で削っている状態であればそれを狙わない訳は無い。

だが、こちらとしては最も長距離攻撃に長ける空母が生きていれば良い為、逆転を期待する事は出来る。

演習相手の艦娘は自分達砲撃に長ける戦艦達とまともに組み合える戦力ではない。

敵艦隊直掩航空隊を奪う、あるいは戦艦の射程内にとらえてしまえばこちらが蹂躪できるのだ。



(だが、それをさせてくれる相手ではないだろうな。)

(そして付け加えるなら潜水艦娘達の逃げ道が無くなるような場所で伏撃は行わないだろう。)

(だろう、だろうの推論ばかりか……。まったく。)



負けと悟り自身の指揮官の無能さをしればこそ

第三者的視点で客観的に現状を分析できるだけに

敵の愚に期待するのは無能だろうと思う。
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:52:41.09 ID:sON5tDsC0

「了解した、陸奥との二人で前衛を任された。」



隊列を組みなおし改めての進撃。



「ホワイトビショップよりキング、クイーンへどうぞ!」

「敵の釣り上げに成功!といっても食べても鉄と脂でしょうけどね!」

「こちらキング。了解。配置についているわ。」

「釣り上げお疲れ様。戦域離脱を確認次第砲撃へ移行するわ。」



飛鷹の呼び出しに扶桑が答える。



「同じくクイーン。

 これからは私達がおもてなしの時間という事ね。」



飛鷹が翔鶴達空母の第二次攻撃隊からの攻撃をかわしながら

扶桑と山城へ無線を飛ばす。



「前方に敵潜水艦の脅威は今の所見当たらないよ!」



島風が聴音機、探信儀それぞれの反応で潜水艦がいない事を連絡。

艦隊が警戒しながら水道へと進んでゆく。

攻撃隊が見つけた敵目掛けてわき目も振らずに……。

そして、その時は来た。



「ようこそ、お客様。お客様をお迎えできた事は実に無上の喜び……。」

「さぁ、貴方達を歓待するために私達姉妹がお贈り致しますは、素晴らしき。」

「あなた方の為の……、極上のランチ。」



まさにこれから敵を蹂躙する事への喜びからか山城がうきうきと歌いだす。

856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:54:21.67 ID:sON5tDsC0

「Be our guest 」



熱い、鉄の、それも砲弾という名のプレゼントによるおもてなし。

時刻は丁度昼時に差し掛かる。



「Be our guest 」



扶桑、山城、両名が歌う歌が無線から聞こえてくる。



「あらら、ご機嫌ね。」



とは大和達を釣りあげた飛鷹。



「うちの砲火力の女神達がご機嫌だと相手にとってご愁傷さまね。」

「そうだね、戦場の女神といえばいつだって勝利の女神。」



飛鷹が相手を気遣う台詞をいうのを引き取り響が更に続ける。



「敵にとっては死神かもしれないね。」

「戦士をあの世へと連れて行く戦乙女(ヴァルキリー)には

 人数が足りないのじゃないかしら?」



戦乙女は9人、対して扶桑達は2人。



「飛鷹さん。だからこそ私達にとっては勝利の女神なんじゃないかしら?」



飛鷹と響が扶桑達を勝利の女神か死神かと話している所に雷が結論づける。



「確かに雷の言うとおりだね。」



大和達がもしも、島へ注意を向けていれば違和感に気付いたかもしれない。

偵察機たちが飛鷹達を追うだけではなく周囲の島の地形を

注意深く見ていれば気付けたかもしれない。

だが、彼女達の注意は潜水艦へのそれと、駆逐艦が有する長距離射程武器である魚雷、

自分達が現在負けているスコアを逆転させる為に飛鷹達を叩き潰す事へ向けられていたため

その注意が左右の島へ向けられる事はなかった。

結果、彼女達は再び一方的に殴りつけられることとなった。

857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:55:38.50 ID:sON5tDsC0

雷鳴の如き砲声が海峡に響く。



「あ゛ぁ゛!?」



それは実にタイミングをきっかりと合わせた砲撃。

右の島の山の山頂付近と左の島の丘陵地帯のやはり頂上付近からの砲撃。

初弾は翔鶴の眼前に着弾。



「初弾から本射だと!?」



目標物への観測用の砲撃もなくいきなり当ててくる本射、

効力射に驚愕する長門。

砲撃の一発目が撃たれたという事は続く運命は……。



「総員、耐砲撃態勢!各員左右の敵砲撃に応戦!」



前衛の長門が指示を出すが。



「当たり前といえば当たり前だけど……、敵の位置には当てずらいわね……。」



陸奥が扶桑達が居るであろう場所を睨みながら呻く。

海上から陸上にある目標物への砲撃は

戦艦同士での砲撃と比べ当たり前だが当てづらくなる。

沿岸要塞に設置される沿岸砲の攻略には艦船での攻撃は向いておらず

真珠湾攻撃が航空機による奇襲作戦になったのもオアフ島に揚陸できる場所が見つけられなかった結果、

要塞の無数の沿岸砲の前に艦船での攻撃は全滅と判断された経緯がある程である。

それほど陸に固定された、特に高所に設置された砲というは厄介なのである。


858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:57:00.30 ID:sON5tDsC0

「上から下を狙うのと、下から上を狙うのではまた威力が違うものよね。」



くすりと笑い砲を撃ち続ける扶桑。



「欠陥だ、時代遅れだ、色々口さがない事を言う人達も多いけれど

 戦艦の主砲の威力は本物よ?」



山城の主砲が火を噴き、砲声が雷鳴の如く響く。



「散布界が狭いだと!?」



当ててくるその砲撃に長門が驚愕する。

戦艦の主砲の命中は良くて撃った弾の2〜3%と言われる。

これをカバーする為に数を撃つのが本来の戦艦同士での砲撃戦である。

そして、目標に対して最も遠い着弾点と

最も近い着弾点の距離を表したものが散布界と呼ばれる物だが。

それが狭いという事は当然ながら目標物に対して集弾されているという事であり。



「左舷に被弾!」



瑞鶴が悲鳴をあげ、被弾の報告。



「みなさん!左右の島の砲撃地点へ向けて砲撃を行ってください!」



旗艦の大和が指示をだす。



「ちぃ!」



武蔵が苛立ち舌打ちをする。

左右の島からの砲撃は丁度、その散布界が重なるように砲撃をされており

特に砲弾が集約するように狙われている。

その狙いは明確。そう、空母の鶴姉妹である。

艦隊で目となる高空からの視野を持つ二人。

散布界が重なれば命中弾も増える。まして左右からの挟み撃ちによる砲撃。

当てないほうが難しい状況である。

859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:58:18.10 ID:sON5tDsC0

「させるかよ!」



武蔵が砲弾の雨の中、左の島の丘陵地を狙うが目立った効果を挙げることはない。

先程から続く島からの艦砲射撃は海面を揺らし照準が揺れる大和達は正確な砲撃が出来ない。

火力がいかにあろうと狙いが悪ければ効果は望めない。



「砲撃を休む事無く行い弾幕をはり敵からこちらを見えなくするんだ!」

「敵の位置を把握できない以上は手数を稼ぐ形で敵の反撃を防ぐんだ!」

「皆!この海峡を早く抜けるぞ!」



大和が指示を出しきれていない事をみてとった長門が矢継ぎ早に指示をだす。



「島風、水道の出口が一番危険になる!

 先に抜けて周囲に敵潜水艦が居ないか確認を頼む!」



長門が島風に指示をだす。島風は既に扶桑達の砲撃の範囲外にある。

潜水艦を伏せるなら一番効果が認められる位置が水道の出口。

その付近に潜水艦が居ない事を唯一残っている対潜艦の島風に

急ぎ確認させている間に砲撃は止んだ。

860 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 01:00:12.15 ID:sON5tDsC0

「敵に砲撃をさせないためこのまま砲撃を行いつつ離脱だ!」



長門が陸奥達へと指示。



「大和!水路を抜けた後一旦全体の被害の確認を行う事を進言する!」

「……、わかりました。」



砲撃が途中で止んだのは長門達の砲撃が

扶桑達に当たり黙らせる事に成功した訳では無いことを長門は理解している。



「戦艦の私達を移動砲台として機動的砲撃、

 機動火力として陸上戦力として組み込むやり方。」

「提督は柔軟な思考をされる方と思わない?」



大和や長門達の砲撃が本格化して被害を出す前に悠々と離脱せしめ、

海上を移動する扶桑が近くを並走する山城に言葉をかける。



「そうですね。私達姉妹の能力を考えた上で

 これが最も適切と言ってきたのには少々腹が立ちますが。」


姉の扶桑へ返す言葉には含みがある。



「ですが、姉さまもそうだと思いますが。

 私達よりずっと性能が上とされる娘達を一方的に砲撃して蹂躪できたというのは

 実に楽しく気分が高揚しました。」

「貴方は正直ね。でも、私もそうよ。」

「それに、随分と無駄に弾薬の消費もさせる事ができたわ。」



その表情は実に晴れやかかつ誇らしく堂々としたものである。



「はい。私達が退いた後も無人の場所への砲撃で無駄に弾薬を消費してくれていましたね。」

「えぇ、そうね。山城。これは実に大きなアドバンテージになると思わない?」

「はい、姉さまの言うとおりです。」



そして、無事役割を果たした事を叢雲達仲間へと無線にて連絡したのだった。

861 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 01:01:08.93 ID:sON5tDsC0

「翔鶴は大破か……。」

「電探に敵艦影は反応なしよ…。」



長門が被害を確認している間に陸奥が周囲の状況確認。



「あたしと鳥海も大破だな。敵さんの砲撃は恐ろしく精度が高かったかんな。」

「多島海での演習ですから敵の方々がまた同じような作戦をとる可能性はあると思います。」

「まっ、あたし達は大破だからここで演習終了だ。」

「茶番劇を終れると思うと清々するね。じゃ鳥海いこうぜ。」

「そうですね……、皆様。御疲れ様です。」



そういい、摩耶と鳥海は艦隊を離れていった。



「翔鶴姉。」

「瑞鶴?貴方をとっさに庇ったおかげで貴方は発着艦が出来る程度の損害で済んでるわね。」

「大破で抜ける私達の仇、しっかりとって頂戴。」



がしっと瑞鶴の肩をつかみ気合を入れる翔鶴。

その目は自分を大破に追い込んだ敵を許すなと物語る。

そして、潜水艦への周囲警戒を行いつつ

大和達は自分達の被害確認を行い再度指揮官の候補生へ連絡を行った。

862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 01:03:02.03 ID:sON5tDsC0

「………、お前達から相手はみえなかったんだろ?」

「なら、どうせ誰が大破したかなんか見えてないだろ。」

「違反行為だ?監視の教官をどうするか?……、お前達が考える事じゃない!」

「翔鶴は中破だ。改二改装相当の艤装を持たせてるんだぞ!?」

「あっさりやられてるんじゃない!敵は周囲にまだいるだろ!?」

「待ち伏せしてこそこそやっている様な卑怯な連中だ!実弾つかってでも倒して来い!」



鹿島が席を外す…、花を詰みに行っている間に

大和達から来た無線での連絡に違反行為をしろと指示を下す候補生。



(なぜ傍受されていないと思うのでしょうか?理解に苦しみます。)

(それに艤装の被害状況も逐一モニターされているというのに馬鹿極まってますね。)

(しかし、このままの放置したほうが楽しいのでしょうが、

 放置しておくと今後の問題になりますし。)

(さて、いかにしたものでしょうか……。)



鹿島はこの状況に一人頭を悩ませるのであった。

863 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 01:20:00.31 ID:sON5tDsC0
鹿島が頭を抱えるくらいのお馬鹿!という事で本日の更新はここまでです
戦略爆撃機なんか実装される事ないやろーとか冗談で2部の頭で敵に使ったら運営さんが実装してきたよ…
やめて?と本気で思いましたです、基地というか資源にどれ程の被害が出ることやらやら
今回の更新の途中で触れています艦砲射撃ですが対地で狙う時は要塞なんかの目標物がでかければまぁまぁあたりますが
多くは牽制とか戦艦などをずらーっと並べて下手な鉄砲なんとやらで数で圧倒して陸上の敵を潰すやり方になります
ノルマンディーの時はウォースパイトもその前の海戦で船底に大穴が開いていたにも関わらずコンクリートで穴を塞ぎ
艦砲射撃の為の数として無理やり参加させられていました、それ程に数が足りなかったともいえますが……
一般的には迎え撃つ陸上側は、数的劣勢の場合はさっさと海岸線を放棄して内陸へ誘引し個別に撃破
あるいはもっとも無防備になりやすい敵上陸部隊の上陸時を狙うようなやり方で対抗する事になります
ノルマンディーがブラッディービーチになったのはこういう事情、艦砲射撃他でしっかり敵の陣地をつぶせなかったり
上陸に対しての敵障害物をしっかり排除できてなかった、また、E2甲報酬の風呂桶がかなりの数、沈んだなどなど
兵士を裸で敵地に放り出すみたいな事をやらかしていたからああなったわけですね、兵士の命が紙切れ一枚より軽い
真珠湾は作中でも触れましたが上陸させる事が不可なのと砲の数でも上回ることが出来なかった為航空機での奇襲となりました
毎度、更新がまちまちかつ不定期ですがお読みくださりありあとうございます
感想レス、乙レス、お気軽に残していただけるといっちが喜びます、是非お願いいたします
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 02:55:59.09 ID:CJjHi2JM0
チャーチルが駄々こねて嫌がるアメさんにシングル作戦主導してもらった手前、イギリスはノルマンディを意地でも成功させないといかんかったしね
手柄立てないと戦後のケーキの奪い合いに参加できない
しかしまあ不甲斐ない五航戦だわw
俯瞰視点で戦場を見ることのアドバンテージを全く活かすことができないどころか理解すら出来てないな
攻撃機の道中とか全く見てないまである
865 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 04:28:17.83 ID:MymPi0qMo
866 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 06:20:07.49 ID:M4DjwyLv0
おつです
867 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 12:53:16.01 ID:rtkQe4OMo

まあ一応養成校の新米艦娘だし若きハゲ提督とその手解きを受けた娘達の相手をしろって方が酷だって話だよね
全てが終わった後に受け入れるかどうかよな、楽しみ
868 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/02(月) 20:49:34.48 ID:sfVbGD7w0
何となく思ったが扶桑姉妹は人間だった時一卵性双生児だった気がする
他の姉妹艦娘となんか雰囲気が違う、何というかお互いの精神的な距離が近いというか限りなく類似な印象
869 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/06(日) 19:59:24.33 ID:jv7eHjiXO
続きまだなのか
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/10(木) 15:48:14.43 ID:InPKVz0go
気付いたらもう一月以上か
わたしまつわ
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/10/25(金) 00:03:22.49 ID:Tz4B+Khy0
色々やる気の問題でまったく書き進められず書き貯めを作る事もできず…
残念っぷりが爆発しておりましたが生きていました
お時間宜しければどうぞ、読んでやってください
872 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:05:54.99 ID:Tz4B+Khy0

鹿島が頭を悩ませていた頃、提督達は何をしているかというと。



「香取先生、コーヒーが入りましたよ。」

「色々準備されているんですね。」



香取がちらりと見やるのは濃い緑色のコーヒーメーカー。

電動工具で有名な会社の現場作業向カラーの製品。



「ポータブルバッテリー式ですか。」



なかなか事前に準備をして物を持ち込んでいると考える香取。

演習海域に点在する島々に色々と物資を持ち込んでいるのだろう。



「いつの間にご準備を?」

「さぁて、そいつは内緒です。」



直接に聞いて答えるわけは無いか……。

演習時、艦娘は出撃後は燃料、弾薬の補給は補給艦を随伴させていない限り、

帰還して補給するのはルール上は禁止されている。

これは実戦的演習を行う為の一環であり出撃後に

補給が受けれない場合を想定の元でのルール。

しかし、物資を海上に隠す、つまり点在する島などの拠点に

あらかじめ置いておきそれを演習中にこっそりと利用する事は禁止されていない。

というよりもする人が居る事を想定していない為ルール上、

それを裁くため基準が無い。



「コーヒーはブラックがお好きですか?

 それともミルクを入れてカプチーノにされますか?」

にこにこと笑顔で聞いてくる相手のその言葉はまるで。

(黒じゃなければ白であると言っているようね。グレーは限りなく黒であっても黒ではないか……。)



つまりは。


(グレーは白。つまりルールになにも違反はしていない。彼を減点したり裁く事は出来ない。)

873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:06:51.53 ID:Tz4B+Khy0

裁く法がなければ合法という屁理屈、

しかしそれを罰するには法がなければ罰する事が出来ないのもまた事実なのだ。



(どこでこんなずるを覚えたものか…、

 この候補生は本当に何者なのだろうかしら?)



受取ったコーヒーを飲みながら相手を見れば

演習海域が映るタブレットに表示される駒をせわしなく動かしている様子。

だが、部下である艦娘達へ指示を飛ばすことは無く、

受ける連絡は位置と戦果の報告のみである。

そしてたまに、報告の確認を監督の為についている自分へとするのみである。

タブレットへ入力している時以外はカードゲームや読書、

或いは飲食で暇つぶしを優雅に行っており指揮を見せることが無い。

その所為も有り香取は提督の実力を今だ把握できずにいた。

そんな中、提督の手が大駒、おそらく空母を相手艦隊から除外入力をした所で

香取からの視線に気付いたのか手を止めた。
874 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:08:24.38 ID:Tz4B+Khy0

「部下達からの連絡で相手の空母に大破判定を与えたとありましたので

 戦果の確認をしていただけますか?」



恐らくは間違いないのだろうが本部側に連絡されているであろう

相手側の被害とのつき合わせ。

最初の潜水艦たちによる奇襲を含めてどこでどの艦娘を落すのかを

計算ずくと思われることを考えれば目の前でのけた空母の駒は既に大破判定と思われる。



(テストの答案の答え合わせをしているような感覚を覚えるわね……。)



奇妙な感覚を覚えつつ香取は提督の催促に促され監督官として戦果の問い合わせを行った。



(えっ!?)



提督が目の前で除外した空母が健在。つまりは。



(鹿島ぁぁぁ ―――――― !!!!!!)



報告を行わなかったのかと妹に怒りの無線カットインを行う。

もちろん提督の前で行う事は出来ない為、

少し離れた位置で、である。
875 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:10:47.73 ID:Tz4B+Khy0

「どういうことなの!?」

「あっ、あのですねぇ?

 私にも流石にどうしようもない事ってのはある訳ですよ。」



無線の向うからは普段の様子とは180度真逆のおたおたした声が聞こえる。



「だからといって戦果、被害報告を誤魔化して良い訳ないでしょう!?」

「でっ、でもですね?あちらの親は……」



演習相手の親は中将。

確かにもっている権力で言えば黒を白に出来る相手。

更に言えば今日の演習最終戦は海軍の首脳陣が観覧しているのだ。

忖度したくなるのも判る。



「それでも審判である私達が不正を黙認して良い訳がないでしょう!?」



まったくもってその通り。ぐうの音も出ない正論である。



「まさか、あなた…。」



面白さを優先して不正を黙認したんじゃないわよねと

言い掛けた辺りで香取は背後から突き刺すような視線に気が付いた。



「香取先生、いかがなさいました?」



その声の主は、笑顔で、ゆっくり、はっきりと聞こえる声で語りかける。



「確認に時間がかかっていらっしゃるようですが?」



願いが叶う物なら振り向か無くていいでしょうか?と何かに縋りたくなるような

そんな思いで香取が振り向けば其処には満面の笑顔を浮かべた提督がいた。

大きく息を吸い酸素を脳に送る、

これは笑顔に見えるが絶対に笑っていない奴であると

香取の自己防衛本能が最大限の危機を知らせているためである。

その危険を知らせるというのは、この危険を目の前にしては

まったく意味の無いものであるが……。

そう、目の前の手を振り上げて今にも振り下ろす寸前の羆を指差して、

これ危険ですよね?と訊ねるくらいに無意味である。

876 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:12:13.41 ID:Tz4B+Khy0

「香取先生……、煙草をいただいてもいいですかねぇ?」



先程までの無駄に畏まった口調がとれ、

やもすればこちらを馬鹿にするかのような

野卑た笑顔の口元から発せられた言葉は意外にも喫煙の許可だった。

どうぞと相手の落ち着き払った笑顔に引き攣った笑顔で返せば、

慣れた手つきでオイルライターの火をつける提督。

提督がポケットから取り出した煙草は

現在流通している中では高級品に分類されるもである。

それを口に咥え、火をつけ、フィルターの限界まで燃え尽きるように一気に息を吸い、

肺へとそのバニラのアロマを含んだ煙を無理やり流し込む。



「…………、やぁ、随分と不味い煙草だ………。」



一言、煙草の感想を述べ吐き出した煙が周囲に燻り、その煙を提督が纏う。

その佇まいは此の世に悪魔というものが顕現したのであれば

そうだと信じてしまえそうな程に禍々しい雰囲気と気配を纏っていた。

そしてゆっくりとした動作で眉間に出来た皺を揉み解すようにもんだ後に一言。



「馬鹿の相手も疲れるな……。」



ポツリと漏らしたその言葉は間違いなく本音から来るものであろう事は間違いない。

香取が恐怖そのものへと視線を向けている中、その恐怖は無線機のスイッチを入れた。



「あの……、その……。」

「あぁ、えぇ、それ以上は不用ですよ。何が起きたかは理解しました。」



香取が言葉を紡ぐ前にそれを手と冷ややかな笑顔で制す。

877 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:15:44.03 ID:Tz4B+Khy0

「それを言えば知らなかったが『 お互いに 』成り立ちません。」



にかりと歯を見せて笑う提督、

その笑顔はとても直視できるものではない。

憤怒であろうか、いや、失望とも幻滅とも。

それら様々な感情が提督を支配しているように見えた。



「やれやれ、仕事といきますか……。」



こきこきと首を動かし、ぐるりと肩を回し無線機の送信スイッチを押す。



「ホワイトルーク他全小隊、CPの提督だ。応答してくれ。」

「ホワイトルーク、旗艦叢雲よ。」



提督からの呼びかけに各小隊の旗艦達が応じる。



「今からCPの俺が全体指揮を執る。各員死ぬ気で動け。

 マップコードは聞き漏らすな。」

「俺がお前達を最適な射線、射角が取れるように誘導する。敵は一人も逃さん。」



そう言うとタブレットに映る海図に配置された駒を一気に動かし

矢継ぎばやに移動先の指示を出し始める提督。



「両舷全速で動かしてくるわね……。」



提督から次々と出される移動指示に艤装の主機が唸りを上げている状態。



「叢雲、索敵情報は全部提督へ先に送るのかい?」

「えぇ、指示前は私に送ってもらっていたけど今からはあいつへ先に送って頂戴。」

「今の所、此方の経路指定が主だけれど先程までの双子(ジェミニ)作戦から

変更されたのは間違いないわ。となると索敵情報は今まで以上に重要になる。

だからあいつは今必死に頭を回転させて敵を潰す方法を幾通りも考えている所だと思うの。」

「まぁ、既に答えが出ているような気もしなくもないんだけれどね。」

「だからその答えを早く出す為にも敵の位置は間違いなく重要よ。」



叢雲が隼鷹に索敵機の増数も含めて指示をだす。
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:16:16.84 ID:Tz4B+Khy0
「まぁ、敵さんの位置は大まかにつかめてっからそれはいいんだけどさ。」



叢雲の言葉に隼鷹が先程まで有利に展開を進めていた作戦を

何故捨てるのか提督の意図が分かりかねると疑問を述べる。



「あぁ、あいつの意図が分からないってことかしら?

 そうね作戦名から察するに大まかには変更はないと思うわ。

 それから、そうね…、うーん、あいつの考えが私の考え通りなら

 そろそろ索敵機の帰還に関して欺瞞行動をやめて

 こちらの位置をばらす方向の指示がくるはずよ。」



叢雲が言い終えると同じくして提督からホワイトルーク小隊の隼鷹へその通りの指示が来る。
879 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:17:24.22 ID:Tz4B+Khy0

「へぇ〜。言った通りだよ。」

「そう、それならそろそろ扶桑か山城と合流になるんじゃないかしらね。」

「えぇ、その通りよ。私が貴方達と合流よ。お世話になるわ。」



声のする方向をみやれば海上迷彩仕様の

ブルージャケットを被った扶桑がその姿を見せた。



「扶桑がこちらに来てくれたのね。となると山城は単艦移動かしら?」

「えぇ、提督からの指示を個別に受けていたからあの娘は単艦で指定位置へ移動でしょう。」

「妹を危険な目に合わせてごめんなさいね。」



戦艦を単艦で移動させる。それは囮にするという使い捨てとしか言えない行動。



「いいぇ、提督の指示を聞けば一番重要な役割のようですし。」

「ただ、単艦行動中に敵に見つからないといいなとは思っているわ。」



叢雲の言葉に首を振りつつその言を否定する。

つまり役割としては囮ではない事を理解しているという事。



「そうね、囮の役割は恐らく飛鷹達かしらね。」

「そう上手く食いついてくれるかねぇ?」



叢雲と扶桑は山城の役割を理解しており

敵を釣り上げる役割の囮は叢雲達か飛鷹達という事になる。

880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:20:02.17 ID:Tz4B+Khy0

「山城の移動が航跡等で見つからないといいのだけれど……。」



不安の声を漏らす扶桑。その心配は姉として当たり前である。



「扶桑。短期間ではあるけれどあいつの下で

 一緒に演習を勝ち上がってきたのなら分かるでしょう?」

「今回の双子作戦について海上迷彩仕様のジャケットを渡してまで

 移動が分からなくしておきたかった貴方を

 わざわざ分かるようにして此方に寄越したのよ?」

「こちらかあっち、まぁ、あっちなんだろうけれど。

 とりあえず山城に注意が行かないように細工をしているに決まっている。」

「万一、敵に見つかったとしても、それを計算に入れていないわけは無いでしょうね……。」



叢雲が提督の計算高さを知っているでしょうと扶桑に同意を促せば。



「そうね、司令官が私達の自主性に任せた作戦行動から

 自らの禁を破ってまで指揮を執るっていうんだもの。」

「何も考えていないわけはないわ!」



どやっと暁が言葉を返す。



「でも……。」

「あら?どうしたの?」



暁が少し不安そうに顔を曇らすのに扶桑が何事かと訊ねれば。



「司令官にそれだけの決断をさせたって事は

 よっぽど腹に据えかねる事態が起きたって事でしょう?」

「相手がかわいそうだなぁって思ったの。」

「そういえば貴方の妹が相手方に居たわね。提督に任せておけば多分大丈夫よ。」



妹の心配をする暁に同じく姉として妹を思う気持ちは同じと扶桑が応じる。


「妹の電は大丈夫かしら……。」


ふと思い出すのは暁の妹が相手方の秘書艦であるという事。


(寧ろ、問題があるとするなら響かしらね………。

 と私が考えるくらいの事ならあいつが思いつかないわけないし。)

(双子作戦なんて事を考えてもそうなのだろうし…、

 飛鷹には私に話がされていない指示が出て居そうね。)

「まぁ、あいつの事だから何も考えていないという事は無いでしょ。」


そう答えると、叢雲はさんと房状になったお下げを揺らし無線で出された移動目標へ向きなおすのだった。
881 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:24:27.43 ID:Tz4B+Khy0
少ないですが今回更新分終了です、秋刀魚、鰯漁の間にまた頑張って書き溜めれるように気合を入れなおします
提督お怒りモード!そして残り1000に行くまでに終れるか!?のチキンレースの模様、まぁ大丈夫でしょう
では、また次回の更新もお付き合いいただけると大変ありがたく思います、1ヶ月以上も音沙汰無しで申訳ありませんでした
ご心配のレス、ありがとうございます、お読みいただいた貴方に感謝しつつ、本日もこれにて!
ではでは!ここまでお読み頂きありがとうございました!
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/25(金) 06:05:44.08 ID:qjuzyHLk0
乙です
鹿島さんも中間管理職なんですねぇ
883 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/25(金) 09:37:24.98 ID:V2dXL6DLo
おつ
884 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/30(水) 03:55:53.03 ID:pNhlXE5C0
乙乙
提督は勿論だけど叢雲達もすげぇ優秀なのでは
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:48:41.44 ID:ADblsM4a0
秋イベやるんか…
秋、冬合同とおもってたんだけどなぁ…
ねじ稼ぎがとまんないのに…
少しばかり更新です
886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:50:27.78 ID:ADblsM4a0

本部観覧用テント内



元帥が状況の説明を受けながらふむと口を開く。



「なかなか、中、小型艦艇の強みを生かした戦い方をしているな。」

「表示されている艦艇の位置関係をみれば相手に対峙しているのは

 二つに分かれた小隊のうちの一つになるように誘導しているようだな。」

「多島海という地理的優位性を実によく利用している。」



元帥が海域選択を褒めれば、軍令部戦略参謀長の大将が続く。



「それもですが初手で王手を掛けるに等しい

 潜水艦隊での奇襲というのもなかなかですな。」

「校長に聞けば演習相手の出撃地点はお互いには知らされることが無いそうですよ。」



ほうと元帥が続きを促すように口元を緩める。



「つまり何某かの諜報活動、分析なりで

 相手の出撃地点を割り出し事前に潜ませていたという事か。」

「相手の戦力を最初に最大限削る。実に実戦的なやり方だな。」



元帥が提督を褒める。



「とはいえ、あまりにも卑劣なやり方ではないでしょうか?」

「禁止をされていないからやっても罰を受けることが無いという

 確信犯的行動はいただけないかと思います。」



否定的言を述べるのは現状いいとこなしの候補生の父親である中将。

彼からすれば息子の肩をもたねばというより

息子の評価が地を這うことになれば自分の評価も下がるのは必定。

少しでも自分への被害を抑える為に相手である提督を扱き下ろさねばならないのだ。



「中将、君は深海棲艦達との戦争で負けたとして

 相手が卑怯であるという言い訳が立つと思っていたりするのかね?」



提督の評価を下げようとする意見に眉間に皺を寄せ、

睨付ける視線を中将へ向け咎める様な強い口調で訊ねる司令長官。

887 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:51:29.83 ID:ADblsM4a0

「まさかと思うが人外連中相手に君は交戦規定が必要とでも言い出すつもりかね?」

「確かに演習は艦娘同士で行うがその想定はあくまで対深海棲艦だ。」

「我ら人類の不倶戴天の敵である奴らから

 勝利を得る為に卑怯だのといっていられる現状かね?」



鬼気迫る、いや、無能な部下への呆れと叱責、

その双方ない交ぜの感情が中将へと向けられる。



「司令長官の仰る通り、やはり決勝戦まで勝ちあがってきただけありますな。」

「決勝戦だけありましてどちらの提督候補生も優秀なようです。」



上官の発言が司令長官の不興を買ったのを察知し、

司令長官の覚えが目出度い候補生を褒めつつ

それに張り合える相手もなかなかだとその双方を褒める大佐。

ようは自分の上司の息子の肩をもちつつ、

さらに上が褒める相手もよいしょというなかなか計算が効いた世辞というやつである。



「……、そうではあるか。」



ふむんと考え込むように手を顎に当てる司令長官。

そして。



「校長、それぞれの候補生が率いている艦娘候補生達の総評を聞いてもよいかね?」



司令長官が横に控えていた校長へと水を向けた。

888 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:52:54.24 ID:ADblsM4a0


「はい!ええっとそうですね。

 こちらの、重量艦を多用されている中将殿の息子様が率いている艦隊に

 所属する候補生達は個人としての成績は実に優秀です。」

「特に大和型の二人の命中率は成績優秀でして……。」



長々と続く説明を冷ややかな目で眺めつつ参謀長が分かった分かったと口を開く。



「成程、今現状負けている側の艦娘達が成績優秀なのはわかった。」

「そして、勝っている側の艦娘が平均的、

 いや、一部においては評価が良くない事もわかった。」



そして、校長を黙らせる一言が出る。



「ならば何故、勝負の勝敗が逆ではないのかね?」



しんとテント内が静まり返る。

この問いに答えられる者がいるとすれば……。



「参謀長もなかなか答えにくい質問を投げかけるじゃないか。」



やれやれと笑い声を押し殺したような顔で元帥が口を開く。


889 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:54:17.27 ID:ADblsM4a0

「単純に指揮官の差が出たといった所だろう。

 そして、その指揮官がいかに艦娘本来のポテンシャルを引き出せているかと言った所だな。」



明朗快活、実にはきはきと、面白くてたまらないといった声音で元帥が語る。



「指揮官と部下の関係が良好である事、問題における意識の共有、

 つまりはパーフェクトコミニケーションがなされねば

 命令以上の事はこなそうとしないだろう。」

「軍人として命じられた事以外をしないというのは有る意味正しい。」

「命令以外の行動をとった結果の作戦失敗という事もあるからな。」



元帥の言葉はテント内にいる全員に語りかけるかのように続く。



「だがだ、命令を実行し戦果、

 そう、我らにとって重要な勝利という目標の達成には

 時として与えられた命令について出来る事を考える必要性が有るのだよ。」

「命令の範囲内で出来る事を拡大解釈というのは時として

 独断専行という言葉で悪く言われる事もあるがね、

 それを自己で考えて実行できる者程逆境に強い。」

「そして、好機においては時として猪突猛進を行い赫赫たる戦果をあげる。」

「これが成せるのは普段から考える事を訓練付けられているからだ。」

「考えるという事は常に事態打開の為に動く為に足を止めることをしない。」

「そういった底の、地の部分を勝っている側の艦娘候補生は鍛えられているのだろう。」

「扶桑型といった艦種として旧型に分類される彼女達を

 陸上砲台として利用する等の柔軟性。実に良く考えられているではないか。」



元帥が戦術、艦娘の素質について褒めれば戦略参謀長も続く。

890 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:55:42.29 ID:ADblsM4a0

「負傷して砲のみ稼動可能な艦娘を砲台代わりに使った事例は

 最前線で何例か報告がある。」

「そういった戦訓も良く情報として収集し

 自己の艦隊の作戦に落としこんでいるのは工夫だな。」

「そして、ここ一番という所で、初手の潜水艦での攻撃にしても、

 この砲台としての利用にしても最大かつ最適なタイミングだ。」

「この最終戦に至るまではその手札を見せなかった事により

 相手に使われるかもしれないという警戒心を抱かせる事を防いだのは実に見事。」

「知る者は言わず、言う者は知らず。情報の重要性という事も実によく心得ていると言える。」

「結果として艦娘の成績が優秀であった側が負けている。」

「もっとも、成績に関してはここまで相手がしてやられているのを考えれば

 能ある鷹は爪隠すの可能性がないとも言い切れんがな。」



参謀長の言葉に司令長官が畳み掛けるように続く。



「付け加えるなら部下として運用している艦娘達それぞれに、

 大局、情勢を見て自由に動けるだけの権限を投げているであろう事も分かりますな。」



目を細め面白そうに司令長官に続きを促す元帥。



「通信記録を見る限り勝っている側の候補生は位置情報、

 戦果報告程度しか受取っていないようですからな。」

「作戦内容を事前に話した後は現場の裁量で内容の変更等を認めているのでしょう。」

「最終目標が達成されれば問題ないという大胆な割り切りですな。」



ちらと参謀長の方をみる司令長官。

891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:56:44.06 ID:ADblsM4a0


「耳が痛いな。

 確かに作戦を我々軍令部が立案しそれを各鎮守府に作戦大綱として伝達した後は

 各鎮守府に歯車として動く事を強要している部分はある。」

「そうせねば軍という一つの群、全体を動かすのに綻びが生じるからだ。」

「時として一つの作戦を実行するのに緻密にいくつもの作戦が絡み合う。」

「それこそ精密機械の様にだ。一つの破綻が全体の破綻につながりかねんのだよ。」



現状の再確認とばかりに参謀長が答える。



「といっても現場で状況に応じて修正が効かぬのでは時として死ねと言うのに等しいだろう。」

「もう少し作戦に柔軟性を持たせるべきだろう。

 現状では我々前線で指揮をとる提督達はただの繰り人形に過ぎん。人材が育たんぞ?」



それぞれの立場での危機感から軍が抱える問題点へと話が逸れていき始めるが……。



「まぁまぁ、二人ともそこまでにしときたまえよ。」

「君達二人のいう事はどちらも正しい、ゆえにいつまでたっても結論はでぬだろう。」

「その議論についてはまた別の機会を設けようではないか。」

「それに今はそれを論ずる為にここに来ている訳では無いという事を思い出したまえよ。」



元帥が大将の二人を諌めて場を納める。

892 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:58:08.63 ID:ADblsM4a0

そして。



「存外それについての一つの答えがこの演習に詰まっているとも言えるとは思えんかね?」



元帥が大将の二人に問いかける。



「君達はこの演習の勝敗をどう考える?」

「そうですな。このまま順当に終るでしょう。」


司令長官が述べる。



「私もそう思いますな。盤面を引っくり返すとすれば関が原における小早川。」

「あるいはハンニバルに対するカルタゴ政府。

 強烈な裏切り者でも用意出来ない限りは無理でしょう。」



参謀長もまた同意する。



「成程、現場と作戦畑の長それぞれの意見は同じか。」

「まぁ、私もその様に思うが何があるか分からんのが戦場だからな。

 最後まで楽しませてくれるといいとは思っている。」

「中将。君はどう思うね?」



元帥、大将二名の意見に反論を述べる事が出来るわけも無く。



「私も御三方のおっしゃる通りの結果になるかと思います……。」



消え入るような声で賛同を示すしかない中将だった。

893 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 01:02:53.85 ID:ADblsM4a0
以上更新此処まです
艦これSSでは提督と艦娘が主人公なの為そのバックボーンというか背景というか
偉い人達が現状を語るみたいなのあんまり無い印象を受けますね、
退屈ととられかねないので書かないという部分もタタあるのかもしれませんがその辺り良くわかんないですね…
難しいです…、自分の作品内ではくどくならない程度には触れていきたくもあります
そうしないと提督の立場とか世界情勢が分かりにくいので、お読みいただいている方にはご迷惑をおかけします
ではでは、お読み頂きありがとうございました、乙レス、感想レスいつも励みになっております
お気軽に残していただけるといちが喜びます、では、次回もお読みいただけると幸いです
ここまでお読み頂きありがとうございました!
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/06(水) 01:11:52.57 ID:VSMiXmnP0
乙です
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/06(水) 10:46:34.25 ID:jkjSOFCMO
乙です。
元帥以下の高級将校に艦娘を率いた経験がるか。その辺りはどうなんでしょうか。
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/06(水) 11:18:01.20 ID:HGZqT1Ovo

最後に不穏な雰囲気を感じさせてきたな
もし裏切り者が出るとしたらまあ誰かは想像つくけど……よく考えれば無能提督にそんな甲斐性があるわけもないか
897 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/07(木) 00:54:03.94 ID:WJ/zw5AN0
将、軍に在りては君命をも受けざる所あり
孫子の九変は確かに中々難しい所だ
馬謖然り、これを引用して大敗を喫した将は数知れず
大勝を収めたものはあまり語らない
海軍が提督に求めている待命は兵卒の美徳だし海軍は艦娘の運用体系がまだ定まってないと見た
898 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/07(火) 02:29:52.50 ID:7JwiKUZmo
あけおめほ
899 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 22:58:55.64 ID:NMWLJ5Lo0
皆様、大変遅くなりましたが新年あけましておめでとうございます
Win7のサポート終了に伴い不調のPCを更新したらいろいろデータの互換がなかったり
オープンオフィスのワードの使い勝手の悪さに閉口
そして、定番化しつつある書けない病の発症で遅くなりました
保守感謝いたします、忘れずにお待ちいただいてくれている人がいるのは励みになりますね…
よろしければ、どうぞお読みください、少しばかり人によっては胸糞な話があるかもしれません
900 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 23:04:37.71 ID:NMWLJ5Lo0
「はい、ではそのように。」


中将の子息、その候補生からの指示を翔鶴が受ける。

提督たちが微修正を行い艦隊の再度の展開を行っている頃、

相手もまた作戦変更を行っていた。


「翔鶴が旗艦となり指示を出すのか?」


索敵範囲が広い偵察機を飛ばせる空母が旗艦として艦隊の指揮を執るそれはおかしくないのだが。

それが何故今になって本来の大和から変更されるのかという疑問を長門は抱かずにいられなかった。

さらに言えば翔鶴は本来、大破判定でこの場から撤収していないといけないはずでもある。


「翔姉ぇ、敵艦隊の位置が分かったよ。」


索敵機を回収しながら手短に叢雲たちのいる位置を伝える瑞鶴。


「了解しました。今まで位置をわからないように行動をしてきたわりに

 あっさりと見つかる様な行動をとっているようですね。」

「まー、何某かの罠だよねー。」


翔鶴の言葉に瑞鶴が返す。


「翔鶴、すまないが疑問に答えて貰えないだろうか?」


あくまで丁寧な態度を崩さずに翔鶴に今になっての旗艦変更や何故、

とどまっているのかの疑問を再度ぶつける長門 。


「チッ。うるせぇなぁ。いい加減、黙ってくれない?」

「候補生から何も言われてないんだろうなって事はわかってたけどさぁ。」


いかにも長門への返答が煩わしいと言わんばかりに言葉遣いがぶっきらぼうになる翔鶴。


「あんた達はさ、成績は優秀だけどいつも中将の息子である候補生に意見をよくしてたじゃない?」


「あれさ、ほんと迷惑だったのよね、正しいのかもしれんないだけどさ。

 あんたが意見するせいでしょっちゅう不機嫌になってたのよね、あれ。」


自分達の指揮官をあれと呼び本当に嫌そうな顔をしながら話をする。

実際、長門は候補生の指示がおかしな時や理解し難い指示が来た際には

納得がいく説明を求めたり自分の立場から意見の具申をする事が多かった。

遠ざけられる事を覚悟はしての意見具申は候補生の為を思えばこそ。


「あんたさ、卒業してさ、前線というかまぁ、あれよ。鎮守府に着任(つける)と思ってる?」


長門の質問に答えずに長門へ質問を返す翔鶴。
901 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 23:09:42.94 ID:NMWLJ5Lo0
「一体どういう意味だ?」

「あー、やっぱりねぇ。そうよねぇ。」

「いえね、なんという事でもないのよ。

 大和型は未だにレア、稀少艦娘。適合者も少ないから猶更よね。」

「でも、私たちは違う。」


翔鶴が語気を強め言う。


「私に瑞鶴、それにあなた達長門型。今となってはその艤装の入手も容易い。」

「最前線の提督たちの誰もが渇望した初期と比べれば今は十分に揃っている。」

「さらに言えば、新米兵士が艤装性能が勝るといえどベテラン勢に割って入れるか?」

「少し考えればその可能性くらい頭のいいあんたならわかるでしょ?」


長門を睨めつけながら言葉を吐く。

艦娘の艤装が開発され新型としてロールアウトされてから

月日がたてば稀少といえどある程度の数は普及する。

その製造に莫大な資材を消費する事と適合する者が少ない大和型は

未だに稀少だがそうでないものはちょっと珍しい程度にまで収まっているのだ。


「珍しいって稀少価値、そうね、プレミアってのは何も提督連中だけに作用するわけじゃないわけよ。」

「まして、私たち艦娘の一般人への情報は制限されている。」


話の意図が読めないと長門が翔鶴へ告げる。


「前線であぶれた艦娘の行き先の噂くらいあんたも聞いたことあるんじゃないの?」


間抜けを見るといった笑顔で翔鶴は語る。


「艦娘の中でもレア、さらに言えば前線の提督達の手垢がついていない処女(新品)」

「なかなかいい商品だと思わないかしら?」


つまりは海軍の闇である。

深海棲艦との戦いに国際社会を巻き込んで同盟国と共同でといくら負担を分散した所で

戦争というのは穴の開いた樽に水を灌ぐかのように金が消える。

特別措置法で新税の設立や国債の発行を行ったり、

海運を使う企業に協力を要請という形で恫喝しての出資を募ったり。

裕福な篤志家や著名な投資家達へ海軍への寄付を呼びかけ。

考えられる様々な方法で金が集められる中で相手への見返りとして

最も手軽かつ手早い手段の一つが売春という胸糞の悪い手段である。

もちろんだが世間一般的な人身売買的なものよりはいい待遇なのは当たり前ではある。

場合によってはそのまま除隊後に妾、あるいは本妻として結婚というのも僅かばかりにはあるらしい。

さらに、メリットだけいえば海軍は不要な艦娘の面倒をみずに済み、

相手はそこいらの一般女性が束になってもかなわない美女とくれば満足のいかない男はいない。

少し、性癖に歪んだ相手がいたとしても海軍があまり酷い目に合わないように

監視はしているという事であるから問題はないのであろう。

建前上はであるが。 また、それを行っているのも海軍が主体としてやっている事ではないという形らしい。

すべてはらしい、かもしれない、の噂である。
902 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 23:15:25.20 ID:NMWLJ5Lo0
「私はそんなの嫌よ?だから我慢してあのピザに抱かれたってのに……」

「ここで負ける様な事になればそんな目になるかもしれない。」

「負けなくてもまぁ、あんた達はわかんないけどね。」


ふんと鼻をならし再度、長門達を睨みつける翔鶴。

なにせ指揮官は海軍内でそれなりに権力のある中将の息子である。


「で、まぁ、私はあんた達よりあれから信用を受けてた分こういう時の指示も受けてるって訳。」

「ここまで言えば理解できんだろ、お前ら娼婦になりたくないなら私に黙って従え。」


乱暴にしかし、あくまでも目的は勝利という事への秘策があると続ける。


「相手の中から裏切り者が出る手筈になってる。」


なっ、と驚愕の言葉を言いかける長門。

だが、自分達の指揮をとる候補生の事を考えればなりふり構わずやるだろう事は理解できた。

そして、時を同じくして翔鶴達が今後について移動をしながら話をしていた時。

叢雲たちも今後の動きについて話を行っていた。


「さてと、連中はどっちの部隊に食いついてくれることかしらねぇ。」

「あら、私たちのいるこちらで間違いないのじゃないかしら?」


叢雲の言葉に扶桑が返せば。


「何事も絶対はないって言いたくはあるけど間違いないだろうというか………。」

「そうね、あいつ、まぁ、司令官なんだけど。」

「あいつが言うには相手にはったりを利かすためには自信が無いような事でも

 自信をもって堂々とした態度でいれば相手側が確信をもって会話をしていない限りは

 引くことがおおいそうよ。」


どういう事かしらと暁が尋ねそれに叢雲が続ける。


「会話をしていて相手がつねに堂々として話をしていれば

 相手の専門外の事なんかだと簡単に騙せるって事かしらね?」

「詐欺師の手口とも言えるのだけどね?権威や客観的に見えるデータ。

 つまりは騙そうとしている相手が客観的に見ても信用できるデータとかね。

 大学教授とか公的機関認証とかそういった類よ。」

「あいつ曰く、嘘ってのは本当が9割、嘘1割くらいでつくとまずバレないそうよ?」

「あとから聞いても本当に細かい部分でしかないから、
 
 そんなことありませんと言えば相手もそうだったかな?になりやすいそう。」


脈絡もなく詐欺師、人をいかに騙すかの講座が始まったことに疑問符を浮かべる隼鷹、暁。
903 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 23:20:36.37 ID:NMWLJ5Lo0

「つまりは提督の変更した仕掛けは信じる者は掬われるという最低な罠という事かしらね?」


扶桑が理解したとばかりに言葉を続ける。


「あー、そうそう、そういう事。

 詐欺とか騙される人って自分が信じたい嘘を言われるとそれを信じちゃうみたいなのね。」

「信者と書いて儲け(もうけ)みたいなやつよね。」

「今の私たちのいる位置と飛鷹達のいる位置を考えてもらえるかしら?」


隼鷹が現状の二つの艦隊の位置について説明、全員での認識の共有を兼ねて話始める。


「そうだねぇ、飛鷹達はいま島影に停泊している状態だね。」

「側面の島にはそれなりに高さのある山もある。

 周囲についちゃ敵の侵攻方向を制限しやすいがこちらの脱出口も限られるあまりいいとはいえないね。」


と隼鷹が一般論を言えば。


「だけれど水深はそれなりにあるから

 潜水艦の娘たちも待機できる場所がそれなりにあるわけよね。」


事前の下調べで分かっている海底状況について暁が述べる。


「付け加えるなら空襲での強襲という事であれば山側から行えば

 山が壁になるから電探が働かないので練度の高い艦載機乗りが高度を低く山伝いに飛ぶことで

 ギリギリまで気付かれにくいという敵側への利点もあるわ。」


扶桑が敵側からの視点について意見を述べる。


「一方で、私たちのいる場所については四方が開け確認をしやすく、

 また足下の水深もまた潜水艦が潜むのに十分。」

「こういった状況下で取るとしたらどうでるかしら?」


叢雲がにこりとしながら暁に語り掛ける。

「そうね、順当に考えるなら飛鷹さん達の方へは襲撃をするにしても艦隊ではないのじゃないかしら?」

「あまりにもあからさまに罠っぽいもの。」

暁の言葉にうなずく叢雲。

「そうさねぇ、あたしらはしょせん軽空母だからね。」

「艦載機を艦戦に全振りして敵の数を減らしたといっても

 あっちの正規空母の娘達にはまだ攻撃機は残っているだろうしね。」

「少しでも提督の罠に懲りているならあからさまな方にはいきたかないねぇ。」

隼鷹がそういえば。

「罠を仕掛けられていても私たちの方へ攻撃を仕掛けるのであれば、

 まだ四方が開けている分だけ対処しようあるかしら?」

と扶桑が続く。

「私達のそれぞれの位置がどちらかが襲撃されても

 直ぐに駆けつけることができるような位置取り展開している事をつかんでいたとしても。」

「こちらに来ざるを得ないってわけよね。」

最後に叢雲が引き取る。
904 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 23:23:01.73 ID:NMWLJ5Lo0

「相手に選択肢を与えているように見せかけて巧妙に、

 いや今回については強制的に一つの選択肢しか与えていない。」

「最初の潜水艦娘達の襲撃に海峡部での伏撃。

 二度あることはなんとやらじゃないけど流石に見え見えの罠にのるわきゃないわな。」



隼鷹がもっともな意見を言う。



「さっきの詐欺師の話じゃないけれど言葉巧みに相手の思考誘導して騙すって事で

相手は騙されたと気づかないって話もあったわね。」

「あくまで、自分がそうと決定したと認識させる事が大切だって。」

「提督もつくづく悪だねぇ。」


叢雲達に攻撃がいくように仕掛けた提督の思考への罠に感想を述べると隼鷹がその感想を述べる。

叢雲達がちゃくちゃくと準備をしていた時、提督も動き始めていた。



「えっ、あっ、はい。了解いたしました。」



香取が提督達の艦隊の被害報告を提督から受ける。


「軽空母飛鷹、駆逐艦雷、中破、駆逐艦響、小破。ですね。」

「ほんとうに宜しいんですね。」

「えぇ、よろしくお願いいたします。」


提督が香取に自艦隊の被害を報告する。

提督の態度があまりにも余裕綽々であったため聞き返してしまったが……。

どうやら間違いはなかったようである。

一体何を考えているのやらと香取が提督の思考に思いを馳せる。

そして、その意図に気づき背中に冷や汗が噴き出るのを意識するのはほんのあと数分後の事であった。
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/20(月) 23:31:53.39 ID:NMWLJ5Lo0
以上少ないですが本日分の更新です
1レスの改行ぎりぎりまで入れての巻いていっております!残りが少ないから仕方ないですね!
皆様、イベントどうでしたか?いちは甲甲甲甲乙甲!で駆け抜け初の全艦娘コンプいたしました、めでたい
そして、初月も追加で掘り更に鎮守府の層を厚くしていっておりますです
イベ後の大型でサラトガ狙いましたが大鳳(三人目)が来ました…、うん、色違いで持てるから便利ですね!(白目)
この後の展開は多分毎回察しのいいレスを下さってる方とか気付かれるんじゃないかしら?と思っています
お読みくださっている皆さんがいろいろ考えてレス下さってるのはいい意味で毎回ドキッとしながら読んでいます
では、最後に一言いっちから、提督は狡猾、さんはい!提督は狡猾!
ここまでお読みいただきありがとうございました、乙レス、感想レス、いつも励みになっています
お気軽にレスを残していただけると本当にありがたいです、次回もよろしければお読みください
906 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/21(火) 01:19:52.03 ID:nkxRqoEX0
新年投下乙です
自分も甲甲甲甲乙甲での攻略でしちゃ
907 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 14:27:12.79 ID:+asJ9zFC0
へぇ中破…なるほど

艦隊側でやりたいことはなんとなく分かったけどこれ敵のおつむが程よく悪いが絶望的にバカではないという絶妙な残念さが大前提な気が
長門が土壇場(今)で一皮剥けると負けはしないが冷や汗かかされそう
908 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/19(火) 01:01:33.30 ID:cQpzdrR50

「この局面で中破かね?」


飛鷹達の中破の報せはそれぞれに驚きを与えた。

ある者は失点を取り返す好機ととらえ顔を喜色に染め。

ある者はこれから何が起きるのかと好奇に染めた。

また、ある者はやれやれ悪い癖が出たと呆れ気味に顔をしかめ。

そしてある者はここでその中破という事態が

どう盤面を動かすのかと深く思考を巡らせる。

まさしく三者三様。

しかし、その根底で皆が考えるのは、もうすぐこの演習の結果が終わるという確信である。

その結果がどうなるかというのは別にして、という但し書きはつくが。



「よし!よし!よし!」



まさしく小躍りするという表現が正しい様にその候補生は喜んでいた。



(今までいいようにやられていましたからね……)



その様を呆れと憐れみを持った表情でみる鹿島。

最も教官としての彼女から見れば相手が偉いさんの息子というだけでやっている行為はすべて黒。

演習相手の提督と比べて黒に限り無く近い白色ではなく純然たる黒なのである。

ゆえに自分の職務を遂行するのであれば早々に、いかにこの試合を終わらせるか、

そして自分に火の粉が掛かってこないように立ち回るか。

それが重要なのである。
909 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/19(火) 01:04:10.08 ID:cQpzdrR50

といっても香取と比べれば鹿島の頭痛と胃痛の負担は軽いものではある。



「さてと、馬鹿が喜んでいるんだろうなぁ。」



下卑た笑いを浮かべ口に煙草を咥え火をつけ呟くのは提督である。

香取はこの相手の素性をここに来てようやく把握した。

違和感の正体、そう、ここで提督の素顔が見れた時点でようやく把握したのだ。

この相手。海軍上層部が送り込んだ現役の提督、それもバリバリの前線帰り。

恐らくその目的は養成学校の調査、綱紀粛正。

冷徹かつ確実にその任務を行うことの出来る相手であることは間違いないだろう。

どおりで妹の鹿島が鼻につくくらいの血の香りがする相手と喜ぶわけだ。

或いはそれに類する戦歴を持ったピカピカの勲章持ち、

一言でいえば大好き深海殺し、である。

普通なら優位に進めている戦況で部下の中破をわざわざ受けに行くわけがない。

いや、その報告は欺瞞情報であろうことは間違いなく、そして報告させた意図が不明なのだ。

なにせ、ここまで周到に準備を行い敵の機先を制し、

相手の策をすべて児戯として捻じ伏せてきている者がである。

まともな思考を持っていればこの中破をわざわざ受けたのは何かの罠としか考えないだろう。

いや、むしろ敵を破滅させる為の一里塚、

もといすでに首に匕首が突きつけられていると気づこうものである。

更にこれを罠としてみれば恐らくは中破のダメージは受けていないであろう事が考えられるのだ。



「香取先生?いかがなさいましたか?」



にこりと向けるその笑顔、試合開始までは爽やかに見えていたが、

今となってはその笑顔はまるで魔王か混沌の破壊神か。

一つ返事を間違えればそこで終わる。

この相手、間違いなく自分も粛清対象に入れているに違いないのである。

返事を間違えればリストの一行目に見事、華丸急上昇なんてことになりかねない。

自分に見せたこの笑顔はまさしく死刑判決前の、次はお前だの予告に違いないのである。

これはいけないと香取はその頭脳をフル回転させ、薄氷を踏む思いでその喉奥から絞り出す。

そして、その返事はこれだった。



「全ては計算づくですか。なかなかのお手並み。これは特別に加点が必要なようですね。」



あくまで余裕を持った対応と思わせることに主眼を置きつつ

言葉は冷静さを保った上で自分の動揺を悟られないようゆっくりと語った。

香取はこっちに怒りの矛先を向けないでくれぇと

土下座せんばかりの心持ちなのは悟られないように全力で表情を装う。

この場にいるのは誠実に、そう職務に忠実な一人の教官なのである。

そういう体を装わないと間違いなく粛清されてしまうと

香取が笑顔を引きつらせながら返事をしたのは無理からぬ事であるのだ。
910 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/19(火) 01:08:54.16 ID:cQpzdrR50

一方の提督はというと顔に出さないものの内心実に穏やかではなかった。

敵のやり方へ怒り心頭に発する、という訳ではなく

冷静さを失い自分の素をよりにもよって香取の前にさらしたことについてへの焦りである。

これは実にまずい、今日の演習は偉い人たちが来ているのである。

今日はこれまでやってきた事の集大成を上司の前でプレゼンして商品、

つまりは自己の売り込みをして次の仕事への権限を勝ち取る為の場なのだ。

あくまで一候補生が落ちこぼれな底辺から優勝という逆転劇を演じなければならない

という上司が描いた台本の演目に沿った演技が求められているのである。

なればこそ、最後の最後まで単なる提督候補生を演じて、

香取達にはそうと思って貰わないといけないのだ。

だが、現実はどうだろうか?

冷静さを失い演習相手を全滅させる事へ作戦を大幅に変更しようとしている。

実践において平均的な提督であれば作戦目標が達成できないとなれば出来る範囲内で行動するだろう。

負けているのであれば被害を抑えつつの撤退、

勝利しているのであれば戦果拡張を狙うか被害を出さないためにそこで戦闘を終結するかである。

そう、あくまで平凡手、手堅い一手しか打たないものだ。

敗北状況下で全滅か逆転かの博打を打ったり勝利状況下で休むことなく敵殲滅の為の前進、

追撃殲滅戦をやる為に作戦変更するなど余程の経験や自信がないと出来たものではない。

所謂、勝負勘、ここが引き際、ここが攻め時の機を見る感覚は

実戦経験が無いと培われるものではないからだ。

そう、つまり、ここで提督がそれを指示したことによって

香取に私はこういうものですと名刺を渡してしまったようなものなのである。

冷静になった後に香取をみてみれば引きつった笑みが能面の様に張り付いている。

やり過ぎた、そして悟られた。

提督がこう思わないはずがないわけで、提督は相手の心情を図るべく

駆逐艦が潜水艦の位置を知るために探信儀から音を出すように様子見の声掛けをした。

素性がバレてしまえばそれを理由に、そう、不正入学として今行われているこの試合を

強制的に終了されても仕方がない場面だからだ。

そうなれば上が書いた台本から外れるばかりか期待された役割を演じきれない愚か者の烙印を押されかねない。

それは実に困るなんてものではない、だからこそ、提督は香取に一声かけた。

『いったいどうされましたか』 と。

提督の心の声が聞こえたなら、頼む、気づいたことをみなかったことにしてくれという絶叫が聞こえていただろう。

そして、一瞬の沈黙、それはほんの数秒だが体感として実に長く重い間であった。

待ち望んだ香取からの返事は。

『 特別に加点が必要のようですね 』である。

そう、提督は勝ったのだ。勝訴を勝ち取った被告人の様に全身でその喜びを表現したいくらいである。

教官の香取は提督の正体に気づいていながら敢えて見なかった事にすると宣言したに等しいのである。

ふふふふふ。

うふふふふふふふ。

お互いの心の声を押し殺し二人は笑う。お互いに自分の望む結果を得られたと確信して。

提督と香取のこのお互いへの誤解は結果としては良い方向へ向かう事となったのは言うまでもない。
911 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/19(火) 01:11:23.73 ID:cQpzdrR50

その頃、海上では隼鷹が自身の旗下にある艦載機達へ指示を飛ばしていた。



「中破ねぇ。盛り上がってきたわね。」



叢雲が語れば。



「これも一つの可能性として提督は語られていましたし、

 対処も事前に決められていた想定内ね。」


扶桑がこれからの動きが楽しみと返す。

敵のやり方に不満を覚えていた叢雲達が提督が敵を殲滅に目標を変えた事に喝采をあげていた。

そして敵対する翔鶴達もまた中破の報で作戦を変更していた。

そして長門と陸奥は考えるのを止めた。

二人は先の裏切り者が出る予定であると翔鶴に告げられた時点でこの試合を投げる事に決めた。

それは姉妹艦であるが故の阿吽の呼吸でアイコンタクトでの意思疎通。

今も目の前で中破の報せに良しと喜び

事実確認のための偵察機を飛ばそうともしない翔鶴達に愛想も尽きたのだ。

実戦ともなれば卑怯、卑劣も当たり前のように起こるだろう、そして行わねばならないだろう。

名誉を求める事の出来ない作戦に携わらねばならないこともあるだろう。

だが、と、長門は考える。自分の命を掛け金として積むのだ。

納得のいく命令を下す提督の下で働きたい。

正式に艦娘として戦うようになり命を落とすような事になるのでれば悔いのないように散りたい。

しかして、今自分に指示を出している奴はその対極に位置しておりその下では死んでも死にきれない。

だからこそ、端的に言えば『 やってらんねぇや 』と二人がなったのだ。

そして、艦隊の助言役としてこの最終戦以外でも

色々細かく旗艦をフォローしていた長門が投げた事でこの試合の趨勢は決まった。

試合後、何故に我らの指揮官が相手の候補生でなかったのかと

ため息交じりに長門は叢雲に語ったそうである。

912 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/05/19(火) 01:14:31.27 ID:cQpzdrR50
エタ……エターナルフォースブリザード!
少しだけ更新です、お待ちいただいていたかたおりますでしょうか?
いらっしゃると少しばかり僅かな期待……、愛想つかされてて仕方ないわけですしね……
仕方ないね…、お読みいただきありがとうございました
感想、乙レス、気軽に残していただけるとイッチが喜びます
誤解の美学は考えるのが結構大変、でも読んでいて楽しいですね、お互いに誤解したままだけどいい結果が出て万事よし!
大事です
913 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 01:21:35.42 ID:3AQFTJmWo
>>912
乙乙
待ってたよー
914 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 04:41:35.96 ID:ZGUAbTGSo

待ってた
915 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 08:00:54.47 ID:mjcAsGAB0
おつ
まってたよー
916 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 10:50:06.70 ID:DRSrIhJ/O
香取と提督の深読みが微笑ましい
917 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 21:16:33.98 ID:0l/yy0DGo
待ってた乙
帰ってきてくれて嬉しいわ
918 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 00:05:04.56 ID:RmhDnurG0
投げたのは「試合」だけかな
惨敗確定の現状、お偉いさんに価値を示すなら祁山の王平たるしか
島津の退き口じゃあ大した提督にはスカウトされそうにない
919 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 00:56:29.92 ID:E0/y+fbuO
920 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 00:59:56.00 ID:E0/y+fbuO
書き込みに問題ないようですね…
モバイルWifiなんでちょっと書き込みテストしました
一月ぶりでなんですが更新いたします
921 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 01:02:45.50 ID:E0/y+fbuO

「やぁ。そろそろ合流できそうだから撃たないでもらえるかな?」


長門達の無線に周波数を合わせた上で連絡を入れてきたのは。


「響?きちんと始末はしたんでしょうね?」


翔鶴がその首尾の確認の返答をすれば。


「まぁ、てこずって私も被害を受けたけどきちんと行動不能にはしておいたよ。」

「偵察機で確認はしなかったのかい?」


言外に当然しているよねの雰囲気に、してないと言えるわけもなく当然のようにしたと答える翔鶴。


「響はこれから我々と行動を共にするのか?」


不平不満、不信と疑念、それらをないまぜにした表情そのままに響へと尋ねる長門。

922 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:05:10.46 ID:E0/y+fbuO

「長門が私を警戒するのは分かるよ。むしろ、しないほうがおかしい。」

にこりと笑いながら長門達の付近に現れ合流してくる響。


「更に言葉を続けるなら味方を裏切ってまでこちらに来る相手が

また、裏切らないかと警戒しないのならそれは実に目出度いね。

私なら、そんな相手は警戒してしかるべきだと考えるよ。」



長門の心の内奥を見透かすかのように話を続ける響。

曰く、姉妹艦にして長門達の候補生の秘書艦を務める電を

助けるために裏切りを引き受けた事。

そして同じく姉妹である雷、そして仲間である飛鷹を攻撃するのには

やはり躊躇いが無かった訳ではない事。

しかし、この試合で響達を指揮する提督が負けずに勝ってしまった場合に

電が受ける責め苦を考えれば裏切り者の不名誉を受けてでも提督に負けて貰わなければならない事。

後の事を考えれば響の指揮官であれば裏切った理由についても説得ができるであろう事。

そして。



「私の指揮官の候補生はなかなか情にもろいからね。

後で涙でも見せれば許してくれるよ。」

「彼は甘ちゃんだ。」

「それで、私は陣形のどこに位置取りをすればいいのかな?」



響が語った事について長門は意見を口に出さずに考えていた。

それは一見、筋は通っている。だが、と長門は考える。

響の語った話はあらかじめ用意された答えではなかろうかと。

そして訝しみ、胡乱な視線を向ければ響はやれやれといった仕草をした。

923 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:07:41.45 ID:E0/y+fbuO
「長門は私に対しての警戒が実に強いようだね。

仕方ないとは思うけれど、少しは信用してもらえないかな?」



気持ちが顔に出て苦虫を嚙み砕したかのような顔をしていたのであろう。

響が苦笑する。そして長門を咎める様に眉根をひそめ、睨みつける翔鶴。

翔鶴に睨まれたこともあり、意見する具申する気もなかったが

更なる不興を買いこれではもう何を言っても聞き入れてもらえないだろうなと考える長門。



「やれやれ、信じて貰えないのは仕方ない。じゃ、信用の無い私は先頭で体を張りますか。」



そして、旗艦の翔鶴と二三会話を交わした後、

響はそう言い残し輪形陣の外周、その先端へと移動していった。

恐らく響の役割に気が付いたのは自分だけなのだろうが

これを翔鶴に具申する気力は長門にはとうに無くなっていた。

また、先の響の言葉による毒。

これが艦隊内での適切な意見のやりとりを阻害する事を達成したことを考えれば

仮に意見具申したとしてもその結果を予想することは容易い。

響の役割は恐らくこういう事なのだろうなと長門は考え始める。

響は自身の指揮官を形式上、裏切り仲間を中破へと追いやりこちらの艦隊に合流。

一見すれば裏切るという予め言われていた任務を達成し、

その報告の為に翔鶴達に合流、さらには減った部隊の戦力の増強とプラスになる部分が大きい。

しかしこれは希望的観測に過ぎないのだ。

響が自分から長門へと語ったように響が裏切っておらず、

飛鷹達の損害も偽装されたものであった場合どうであろうか。

翔鶴達の部隊はいつ牙を向くか分からない敵という、

内に危険を抱えたまま演習を継続する事となる。

一連のやりとりを考えればいつ自分達へ魚雷をむけるかもしれない相手を輪形陣の後端、

或いは内側へ抱え込むことなど出来るわけがないと考えるのが当たり前である。

924 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:09:53.95 ID:E0/y+fbuO
だからこそ響が陣形の一番外、かつ先頭に行くのを止めることはしなかった。

だが、と首筋にちりちりとした物を感じながら長門は考える。

試合が開始されてから自分たちをいいように翻弄してきている相手である。

響の裏切りが仮に相手候補生の予想外だったとして

それに対処できない程の相手なのか?という事には、

はなはだ疑問であると言わずにいられない。

いや、すぐにそれを利用して何か仕掛けてくるような相手であろうなと考える。

寧ろ、響が裏切る事を予測して、そしてそれを響本人から指示が出ていることを聞き出し

裏切ったように見せかけて合流しなさいと電を救う手立てを考えた上で命じている可能性もある。

此方と比べてあちらはお互いへの信頼関係の醸造も出来ていると見受けられる事から

そういった他者へ言えない秘事も相談出来る環境は出来ていると考えられる。

長門達の候補生からの命令を守りつつ本来の指揮官への義理を通すやり方はいくらでもあるだろう。

そう、なにも響がこちらに合流した後に長門達を攻撃せずとも

相手を利するやり方など幾らでもあるのだ。

例えば現在先頭を務める島風と交代して自分が先頭に立ち、対潜警戒をするといったもの。

敵の艦隊には現在、魚雷の残弾も残っており行方が掴めていない潜水艦娘達がいる。

彼女たちが近づいてきた際に故意に報告をしなければ長門達には見つけるすべがない。

その危険性を考ると島風と位置を入れ替えさせることが出来ない。

消去法的に響を先頭へと向けたが先頭であってもその危険性は変わらず、

他の手段を取られる可能性もある。
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:12:52.17 ID:E0/y+fbuO

もし響が自分たちの位置情報を垂れ流していたとしたらどうか?

艦隊での艦の位置が予め分かっていれば空母艦載機による攻撃の順番もおのずと決まる。

場当たり的に目標をばらけさせるのではなく集中運用で一人ずつ確実に屠ればいいのである。

攻撃が始まれば響は対空射撃のふりをして攻撃機をスルーすれば長門達の被害は増えるだろう。

さらに響が先頭である理由を付け加えれば、

響たちの艦隊からの攻撃による『 誤爆 』のリスクを低くする事も考えれ、

艦隊の進行方向を誘導する意図もあると深読みできなくもない。

つまり、響は先ほどの会話で仕方なしに先頭へ行ったように見せかけて

実は先頭以外に行き場が無いように誘導し、

先頭に立つ事でいくつもの優位性を敵へ与える可能性があるのである。

この相手候補生の勝利へのあくなき執念は

自分たちの指揮官のそれと比べて実に丁寧かつ精緻、

そして何よりギリギリのルール違反にならないであろう所を見極めたやり方。

なにせ自分たちの候補生が先に指示した裏切りの指示を利用して

響に敢えて合流後は『 何もしない 』を響にさせるのである。

何もしなければ何かする事と比べ事が露見することは、まずない。

響を電を利用して裏切りをさせた事実は演習の記録に残るかもしれないが

その裏切りを利用して何もさせなかったというのは何もしなかっただけに記録に残らない。

長門は妙な強者への妙な信頼感というべきか、いや、相手の候補生が優秀だからこそ、

その思考をなぞり次の手を考えらる単純さに感嘆を覚えていた。

これが仮に自分たち指揮官だった場合は却って何をしでかすか分からない所だろう。

寧ろそれ見た事かと裏切りを審判としてついている教官に報告し

その場で試合終了をさせるかもしれない。

或いは後々の強請等のネタに利用しようとするかもしれない。

何にしろ、どうせ碌なことにならないだろう。

翻って、この演習相手候補生の動きを考えば、将棋で対局相手の性格、

癖を熟知した上でその上を行くために何手も先を読み考える楽しさがそこにはあった。

ひとつ、問題点があるなら今回の相手は常に真剣を首筋にあてた上で

禅問答をしてくるような情け容赦の無い相手という事だろうか。

答えを間違えれば即で首が跳ねられる、そして、こちらの艦隊内、

指揮官との不和を見抜いて響に自分の信頼を落とさせるダメ押しをさせている事を考えれれば

自分が艦隊の要となっている事も見抜かれていると考えるに容易い。

強者に認められるというのは名誉なことなのだがな、と、少しばかり嬉しくなるものの。

その結果が徹底的なまでの離間工作である。

926 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:17:37.30 ID:E0/y+fbuO
長門が思考を巡らせていた頃、響は輪形陣の外側へと移動し、

対潜警戒を行いつつ艦隊の早期警戒艦として先頭を務める島風に声をかけた。

「お疲れ様。島風は流石の速度だね。」

響の機関と島風の機関ではその最大船速には当たり前のように差があり、

結果、島風が響のやや前を行くような形で航行する形となる。

そして、詰将棋の様に相手の思考をなぞっていた長門は響がこちらに来た理由、

島風を救う事は難しいかもしれない事を理解したために行動へ移った。

響が翔鶴率いる艦隊に合流した結果何が起こるかが理解できれば、

その時が来れば響は必ず行動を起こす。

何もしないことを行動を起こすというのもおかしな話だと

自嘲の笑みがこぼれるのを抑える事に苦労しつつ、

長門は翔鶴に万一の際の盾としてと具申し響と他の仲間の間に位置する順番へと移動する。

…………

……………………

ぱしん。

とある地点にて静寂に包まれる中、音が響き渡る。

周囲にもうもうと煙が立ち込める中、その柏手はよく響いた。

その拍手をした者は二礼し、何かの儀式でも始めようかという雰囲気を纏う。

拍手をし、その厳かな雰囲気を身に纏うは飛鷹である。

飛鷹は胸元から何かが書きつけられた紙を取り出し、よく通る声でそれを朗々と読み上げ始めた。

「高天原に神留り坐す 皇親神漏岐 神漏美の命以ちて ………」

飛鷹が読み上げるそれは大祓詞と呼ばれる祝詞である。

内容としては大まかには穢れ、罪、過ちを祓うものである。

その為、飛鷹が読み終えた後、その場は静寂に包まれ、

言いようの無い厳かな雰囲気が場を支配していた。

そして、その中で飛鷹が発艦用為に巻物を開け甲板の巻物の上に何かの部品らしき物を置いた。

実に小さな部品であったのだが、

一瞬にしてそれを中心として周囲の空間を歪めるようにして大気が凝縮されていき

そこに戦闘機が複数顕現した。


「靖国より現世に戻りし英霊の皆さん、敵の殲滅、どうぞよろしくお願いいたします。」


普段の命令的口調ではなくあくまでお願いという形で召喚、

発艦用の巻物の上に顕現した戦闘機達に告げる飛鷹。

そして、その艦載機に乗る者たちは鷹揚に頷くとその機体のエンジンを轟と響かせ大空へと消えていった。


「お疲れ様!」


飛鷹の執り行っていた儀式を黙って見つめていた雷が声をかける。

「ありがとう。にしても、提督もどこからあんな物を手に入れたのかしら……。」

飛鷹があんなものと言うのは先ほどの召喚に使われた媒体である。

「そんなに危険なものなの?」

雷の問いかけに陰陽型軽空母にもそれぞれ得意とする発艦方式の違いはあるけれどと

前置きした形で飛鷹は説明を始める。
927 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:25:10.73 ID:E0/y+fbuO

一般的な陰陽型は神道型も道術型も共通して紙の人型を使い

それに英霊を降ろして妖精として顕現させて戦闘機妖精、攻撃機妖精として行動して貰う。

魂を卸す媒介が紙という事もあり妖精そのものの意識は薄く、

コントロールという部分は容易い。

しかし、容易い分、指示を出す側が熟達していなければ恐ろしく弱なる問題点がある。

これは弓道型も同じでありその艦載機の強さは召喚者の熟練度に依存する形となる。

極めれば呑波呑舟、大喰らいの一航戦と強者として名をはせた艦娘程となる事も可能ではある。

飛鷹が今回行った召喚方式はこの一般的な物とは少し違う。

英霊を降ろす媒介がその英霊に所縁のある物を利用している点である。

この降ろし方であれば指示者の熟練度はそれ程必要としない。

何故ならば英霊を降ろすのに所縁ある物を使用している為

現世との結びつきが人型を使った場合と違い強固になる為であり。

その結果として顕現した艦載機達は英霊になる前と同じように

自己の意識をしっかり持ちその持てる技量で敵を殲滅することが可能であるからである。

その為、降ろす英霊が名のある搭乗員の英霊であればあるほど

その強さは桁違いとなり艦載機操作の熟練度は低くともその強さを大喰らいの二人に迫る事も出来るのだ。

928 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:37:18.42 ID:E0/y+fbuO
ここまでお読みいただいた方は、

なぜその方式が一般的ではないのだろうかと思われるだろう。

そう考えるのは無理からぬ事であり実際にそう思われても仕方のない事である。

しかし、メリットがあればデメリットがあるというもので

これに関してはデメリットが大きすぎて採用がされていないのである。

そのデメリットとは術者、この場合は召喚主である艦娘の巫女としての力量が問題となってくるの為である。

この力量が不足していた場合、英霊を現世に繋ぎとめるために多くの霊力を奪われ

最悪生命力を持ってそれに変える事となり死に至る事があるのだ。

デメリットの方が大きすぎる事もあり紙製の人型での召喚方が確立されてからは

その方式で英霊を召喚する者はいない。

もとより使いこなせたのも陰陽師型軽空母では過去に一人居たのみであり。

その者は千曳岩の龍驤、黄泉路塞ぎの龍驤、冥府の官吏、死霊使いの龍驤。

いくつもの呼び名を持ち圧倒的な霊力で持って多くの英霊を使役したと言われる存在。

また、英霊として呼びだした中には『 艦娘 』も含まれていたとか。

海軍の記録上居たという在籍記録は無いがその活躍により命を繋いだものもいるという話はあり

かといって何処かの鎮守府に在籍していたのかどうかは定かではない。

先の召喚方法についてもどこからともなく一人で救援に来た龍驤が目の前で艦載機を呼びだし

『 艦娘 』を顕現させたときに行ったやり方から推測、そして研究をされての推測に過ぎない。

その研究の過程で命への危険性が指摘され

巫女としての力が足りないものには絶対にさせない事とされた禁術でもあるやり方なのだ。

提督は飛鷹にその危険性をじっくりと説いた後に

本人の希望を聞き安全幅を多めに取ったうえでその媒介物を渡している。
929 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:41:19.65 ID:E0/y+fbuO

「とはいえ、普通に降ろすよりどんどん霊力を持っていかれている気がするわ。」


艦載機妖精たちは疲労しない、その代わりにそれを使役する艦娘達が疲労する。

これは空母艦娘達に共通ではあるが、飛鷹は疲労以外に自身の術者としての霊力の減少を訴える。


「そんなに大変なの?」

「えぇ、でもそれに見合うだけの力は感じられるわね。」

「実際に戦闘が始まってみないと分からないけど、

 とっておきの切り札として提督が隠しておきたかったのは理解できる危険な手札よ。」

「へぇ、さすが司令官ね!」



常にどれほど先を見据え手を先じて打っているのかと考えると

自分の指揮官でありながら空恐ろしいものを感じる飛鷹ではある。

味方にさえ恐れを抱かせることすらある上官というのはあまり上に居て嬉しいものではない。

しかし、雷の様に盲信し、追従をするのであればこれ以上なく最高の指揮官なのであろう。

きっと提督として前線に立つのであればうまく立ち回らないと

煙たがられるタイプなんだろうなと考えうまくその補佐をしてあげる位置に、

卒業後も共に戦えるのであればいいのにと思わずにはいられない飛鷹であった。

930 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/28(日) 01:55:14.37 ID:E0/y+fbuO
イベント始まりましたねぇ
前段でのドロップがすごく豪華、タシュケにサラトガ、涼月、大和
未確認ではありますがイヨも落ちるとか?これは追加で掘らねばなりませんね
報酬、泥艦については特に…です、心があまり現状ではときめかないです
何事も守りに入ると衰退するというのはよくありますがあんまり攻めすぎると寿命を縮めるだけですね
時代劇のような王道、テンプレ物がなぜ人気を獲得でき長寿なのであるか?という部分の話になりますが
いつぞやの最終海域報酬艦みたいに、報酬艦として画像が出た段階で 「…………」 となったのを思い出す次第です
あの時の最終報酬艦さんはぶっちゃけ未だに慣れないこともありモスボール状態です
あれ?可愛いと言われる方のなんというか?どこが可愛いのか未だに理解できないんですよねー……
戦力が整ってくると報酬、ドロの新艦は艦娘としての性能より長く愛でていくことができるかの方が重要です
性能駄目でも別の艦に置き換えられますし、その逆もまたしかりです
(但し、ネルソンのみ除く、彼女はいるといないで取れる選択の幅がかなり変わりますので…)
戦艦としてみたとき性能としては劣るものの人気を獲得している新顔のコロラドとか、ガンさんとか
フレッチャーは改二が早かったなぁという印象、あれ、龍驤のパリピから普通に戻った?くらいの衝撃でしたね
なんというか、にんともかんともですね、新艦より既存レア艦の複数艦持ちを目指してしばらくは攻略より堀優先になりそうです
ではでは、みなさまここまでお読みいただきありがとうございました
待ってたとのありがたいお言葉をおかけいただき本当にありがとうござす、次の更新を早められるよう頑張ります!
感想、乙レス、お気軽に残してください!是非、よろしくお願いいたします!
931 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 09:36:30.18 ID:Ypn7o10hO
話が良く練られているだけに途中での感想って書きづらいのよね
続きも期待してます
932 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 12:14:11.38 ID:KcJx1UaiO
乙です。
イベントは7月に入るまで様子を見てから挑むつもりです
933 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/29(月) 00:45:16.74 ID:h3jkQ5aI0
最善も次善も許されない状況で意地を見せるかビッグセブン
934 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/30(火) 12:56:15.40 ID:1QOw9AC7O
久々の投稿とおもったら小説みたいな投稿で
全飛ばしで読む記もおきない
935 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/30(火) 13:27:22.00 ID:5nIEh8DjO
バカ城の嫉妬みたいな日本語やめーや
936 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/09(日) 04:54:53.67 ID:+Gkhv7lWo
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/17(月) 00:52:17.49 ID:IHuDNWy0O
久しぶりに投稿来てたと思ったらなんだか趣向が変わったのかな?これじゃないって書き方で…
938 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/16(水) 12:36:14.81 ID:g0F72HIno
まだかなー
読者様()の声気にせず今まで通りの続き待ってます
939 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/26(火) 10:36:47.18 ID:3HVfbF9+o
940 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/18(水) 08:05:46.88 ID:XOKMFNjpo
待機
941 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/02(水) 22:09:51.86 ID:pFIuXi+uo
942 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/21(月) 07:59:22.51 ID:chSqu/uAO
ほしゅ
943 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/05(火) 04:02:40.38 ID:TlMAbIL40
保守
944 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/07/30(土) 06:16:26.25 ID:w7ZUY/D30
はい
945 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/22(土) 22:45:45.53 ID:90u/NGitO
流石にもう厳しいか?
946 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/14(木) 05:26:54.82 ID:zZ2HOdTfo
保守
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/19(火) 20:11:53.27 ID:Cd2Lx5Zh0
保守
948 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/08/09(金) 23:12:12.14 ID:nF6IEOyj0
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