【アイマスSS】「ランクDアイドル」

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15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:01:20.50 ID:q6OJlgc60
そんな私を、ファンの人たちは応援してくれる。
あの時から何も変わってない私なのに、それでも応援してくれる。顔なんてみんな覚えてしまった。
いつもラジオにメールをくれる人、毎月決まって十五日に手紙を送ってくれる人、お米だったり野菜だったりを送ってくれる人、高価なものを送ってくれる人。
その人たちは決まって、私にこう言ってくれる。
「これからだよ。 俺たちはトップアイドルになれるって信じてるから」
10年間、Dランクで足踏みし続けてる私をそう言って応援してくれる。
応援し続けてくれている。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:01:51.58 ID:q6OJlgc60
>>14
ありがとうございます。
次から空けてみます。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:03:39.97 ID:q6OJlgc60
でも私はファンを裏切り続けている。

それに私はもう一つ裏切り続けている存在がある。

私が今まで倒してきたアイドルの「思い」だ。

ランクDで足踏みする者は少なくはない。

夢を諦めきれずにそこで一歩進んでは一歩下がるを繰り返している。

だが時間は有限ではない。

「25歳」という業界で信じられているジンクス。何人も見てきた。

これでランクCに上がれなければ、引退するというものを。

そして私はその人たちを破ってきた。

遠慮なんてできなかった。

私だってランクCに上がりたいから。

そして負かしたアイドルは、私に「ランクCに上がりたかった」という思いを託して消えていく。

私と同期だったみんなも、私に託して辞めていった。
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:05:07.34 ID:q6OJlgc60
託された私が、上がれなければその人たちの思いは無駄になってしまう。

そう考えると、止まることなんて出来なかった。

言い訳かもしれない。

私がただ辞めたくない、アイドルにしがみついていたいという醜い気持ちを、ファンや上がれなかった人の思いを利用して綺麗に見せているだけなのかもしれない。

「呪いにかかりますよね」

私にそう言った人がいた。私が二十二歳の時のことだ。

同級生が大学を卒業し、それぞれの進路に進もうとしているのを見て、焦りを感じた私に二つ下の彼女はそう言った。

彼女も二年間ここに留まってる住人であった。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:07:21.94 ID:q6OJlgc60
「Dランクに留まってる人はそれだけ戦って、勝ってるってことですからね。 勝った分だけ思いを背負ってしまう。 で、その思いが重い呪いになるんです。 どこまでも自分を縛る……」

私は彼女になんと答えだろうか。

思い出せない。

そんな彼女は、私を倒してCランクに上がってすぐに妊娠して引退した。

彼女の担当プロデューサーとの子供であった。

もしまた会えたら聞いてみたいことがあった。

「あんだけ見たかったCランクの景色は、そんな簡単に捨てられるものだったの」と。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:09:34.31 ID:q6OJlgc60
そんな呪いとなった重い思いで諦めきれなくなってた私の首切り役となった人がいる。

上泉玲音だった。あの時は十五歳だったと思う。

デビューからかすか二ヶ月でランクDまで上がってきたそんな彼女。

後からプロデューサーに聞いた話だが、彼女はこう呼ばれていたらしい。

「アイドルを終わらせる者」と。

曰く、アイドル戦国時代には出てくるのだという。

その圧倒的なポテンシャルで、並み居るライバルたちをなぎ倒し、ごく自然にトップアイドルになる者が。

一つ前は日高舞で、今回はこの上泉玲音。

そういう業界の見立てだったらしい。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:11:22.00 ID:q6OJlgc60
そしてその見立ては正解であった。

同じ舞台に上がったものだから分かる。

彼女は生まれついてのアイドルであった。

彼女の歌い上げる歌は目の前に情景が広がってくるようであったし、彼女の踊りは曲すらも無粋で、床を叩く足音だけで完成するものであった。

私が十年、いや一生かけてもたどり着けない境地。

そこに彼女はいた。

手を伸ばすだけ無駄、憧れるのさえおこがましい。

そして彼女は三週間足らずでCランクに上がった。

私は彼女に、私の背負ってるものを全て託すことに決めた。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:12:28.04 ID:q6OJlgc60
「頑張ってね上泉さん。 あなたならトップアイドルも夢じゃないわ」

「ありがとうございます。 えぇ、恐らくアタシはトップアイドルになるでしょうね。 ……でもそれじゃあ足りないんですよ」

「トップアイドルになるってのに、何が足りないの」
上泉さんは、ほんの少し寂しそうにこう言った。

「ライバルですよ」と。

その言葉の意味はよく分からなかった。

トップアイドルを目指す上で、ライバルがいないに越したことは無いだろうに。

それから一年もせずに彼女はトップアイドルになった。

その当時だと10人ほどいたトップアイドルを全て負かし、日高舞以来の「アイドルマスター」を手にした。

だがアイドル戦国時代は終わらなかった。

「アイドルマスター」なった上泉さん、いや玲音が、その座を超えてしまったからだ。
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:13:19.51 ID:q6OJlgc60
いつしか彼女は「オーバーランクアイドル」と呼ばれるようになっていった。

日本中が玲音に湧いている中、10年Dランクにい続けた私は、ひっそりと引退の話は決まった。

先のジンクスを知っていた事務所もプロデューサーも、同意した。

本音を言えば玲音のせいでアイドル界のバランスが壊れていたので、私なんかよりもっと若い、これから花開く子たちに専念したかったのだろう。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:14:14.18 ID:q6OJlgc60
ラジオとコラムの仕事もそれに伴い、終了となった。

楽しかったし、良い評価もいただいていたのだけれども、アイドルを引退する私が、そうやってアイドルで取ってきた仕事をするのはなんか違うように感じられた。

いつでも戻ってきていいよ、と言ってくれたのは救いだった。

「アイドル」としてはダメだった私も、こっちではそこそこの存在になれていたらしい。

新聞や雑誌に取り上げられるわけもないが、引退の発表。緩々と仕事量を減らしていき、引退ライブへのレッスンを行なう。

歌う量は、過去五年の中で最高だ。

久しぶりに動かす筋肉たちが最後の悲鳴をあげるのが、なんとなく嬉しかった。

空いた時間は今まで貰いっぱなしになってたファンレターへのお返事を書いていく。

貰った分だけ返せるように。

そしてパッとしない天気の中、私は引退ライブを終えた。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:14:57.03 ID:q6OJlgc60
ファンのみんなからのサプライズの合唱だったりで泣かせたり、泣かせられたりした引退ライブは終わり、私たちは事務所へと戻った。

「お疲れ様」

コーヒーと砂糖を三つ渡しながら、プロデューサーはそう言った。

今日で終わりだと言うのに、優しくなったりなどはしない。いつものように反省会をする時、そのままだった。でもそうはならなかった。

「何かやり残したことはないか?」

最後なのに、とプロデューサーに苦笑する準備をしていたのに、全くの無駄になってしまった。

そしてその問いに対する答えは決まっていた。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:16:09.60 ID:q6OJlgc60
「無いよ。 やりきった、今はそう思う」

「……そうか、よかった」

沈黙。

これもまた居心地の悪いものではない。

お互いになんとなく過去を振り返っているんだと感じられた。

チラッと見た目があって、笑いあった。

「で、これからどうするよ」

「ビール、ビールを飲んでみたい! あとタバコとかも吸ってみたい」

25にもなるのに、それらを嗜まなかったのは私の『アイドル』へのちょっとした意地だった。

そうあるべきだと思ったし、そうだと信じていた。

そうじゃないと知ったのは偶然にも、Dランクでの足踏みが五年を超えた20歳でのことだったのだけれども。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:17:02.76 ID:q6OJlgc60
「……タバコはやめとけ。 健康に悪い。『アイドル』としての人生は終わったかもだけれども、お前の人生はまだ長いんだから」

プロデューサーは呆れながらそう言った。

そりゃそうだ、と素直に納得した。

「というか、俺が言ったこれからってのは、」

「これからどう生きていくか、でしょ」

「そう。 ラジオとかの仕事やる?」

「んーそれも有りだとは思うけれども」

そう言って私は考え込む。

一応レッスンの期間に色々なことを考えたのだが、いい案は浮かばなかった。

とりあえず生活のために、もう一度頭を下げてやらせていただくか。

それとも実家に戻り、婚活を頑張るとかでもいいかもしれない。

そんなことをグルグルと考えてる時、ハッとした。思いついた。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:17:59.68 ID:q6OJlgc60
「私、『アイドルマスター』を取る!」

「……今日、引退したんだよな。 お前は」

「そうだよ?」

「そんな一般人がどうやって『アイドルマスター』取るんだよ」

「取れるでしょ? アイドルじゃなくてもさ!」

私がそう言うと、プロデューサーはぴしゃりと自分の額を叩いた。

「プロデューサー、でか」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:18:56.11 ID:q6OJlgc60
『アイドルマスター』という称号は、日高舞がトップアイドル中のトップアイドルになった時に創設されたランクだ。

恐らく玲音は2代目を取ることになるだろう。

そしてこれには逸話がある。

『私がここまで来られたのはファンとプロデューサーのおかげよ! それなのに賞が私だけっておかしいと思わないの?」

と大クレームをつけたことにより、『アイドルマスター』はファン賞とプロデューサー賞が作られた。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:20:25.86 ID:q6OJlgc60
「ってことは、今後はプロデューサー志望ってことでいいのか」

「うん」

これから先、もっとアイドルになりたい子は増えていくだろう。

けれども勝ち残れるのはほんの一握り。

そして時に悩み、挫けそうになることも多々ある。私は、そんなあの子たちの支えになりたい。

これまで背中を押され続けた私だけれども、今度は私が背中を押す番だ。

多分それが「25歳の大人」ってもんだ。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 19:21:07.37 ID:q6OJlgc60
「おーけー、なら人事に話通しとくから空いてる日付を教えてくれ」

「……面接からなの!」

「そりゃまぁ一応雇うわけだしな。 履歴書もちゃんと用意しとけよ」

書き方は自分で調べろ、とプロデューサーは言う。

ちくしょう、私が一度も書いたことないからって馬鹿にしやがって。

でも確かにこの時、私の胸はこれから起こる未知のものへのワクワクが高鳴っていた。

二人して笑いながら出た夜の空は、スッキリと晴れていた。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/26(月) 19:21:56.69 ID:q6OJlgc60
お読みいただきまして、ありがとうございました。
最初の方は文字が詰まってしまい、読みにくくなって大変申し訳ありませんでした。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 23:33:33.45 ID:mWe3b7BDO
乙乙。
どこでも誰にでもこの手の話はあるし、だからこそ尊いよね。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/27(火) 14:09:39.53 ID:6RS9LgzpO
アイマスキャラ関係ないんならオリジナルでやれよ
アイマスでやる必要性皆無だろ
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/05(月) 12:25:44.71 ID:TqJ5hP7Q0
なんでやねん
アイマス世界の設定どっぷり漬かってるし有名人出てるやん
逆にこれオリジナルでやったら説明臭い文章だらけになるし、アイマスのパクリ言われるで
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