バットマン「グランド……オーダー?」 マシュ「その2です」

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525 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:01:23.45 ID:z9IWeJy60


………………

ダビデ「ところでマシュ、今夜僕の寝床に……」

ブルース「……」ピクッ

ダビデ「……来なくても今日はひとりで眠れそうだな!」

ブルース「……そうか、何よりだ。どうしても眠れないようだったら私を呼べ。夜通し見張っておいてやる」

ダビデ「……勘弁してくれ……」


マシュ「??? え、えっと……では、私はこれで失礼しますね」

ブルース「……ああ。良い夜を」

マシュ「は、はい。また明日」

ブルース「また明日」

ダビデ「じゃあブルース、また明日に!」スタスタ

ブルース「お前の部屋はこっちだ」ガシッ

ダビデ「引っかからないかー!」

ブルース「油断も隙もない奴だ……」ズルズル


526 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:01:57.28 ID:z9IWeJy60


………………


ブルース「……19世紀頃、ヨーロッパでは大規模な産業の変革が発生……これを産業革命と呼び……」ペラッ

ブルース「……蒸気機関の発明、改良が進められ……手工業から機械工業への発展が……」ペラッ、ペラッ

ブルース「……この事が、消費者や生産者の立場をより強固に決定づけ……貴族、中流、労働者などの階級が……」ペラッ


ブルース「……」チラッ

時計『2:13』

ブルース(そろそろ休むか。レイシフトへ向け、体調は万全にしておきたい……)パタン


ブルース「……」


ブルース(……不安が、襲ってくる。何もかもが上手く行っていると、絶対に、その反動が来るという不安が……)

ブルース(今のこの瞬間、私は確かに幸せなのかもしれない)

ブルース(だが、心のどこかで、もう一人の私が冷たく嘲る。しょせん儚い夢なのだと)

ブルース(……破滅は、足音をたてない……)



527 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:02:25.62 ID:z9IWeJy60


………………

ソロモン「もう一度言ってみろ」

???「俺が向かう。お前の策だけでは上手く行く保証がない」

ソロモン「……虫けら相手に、策だと? 笑わせる。賢いつもりか」

???「そう言って、いくつの特異点を突破されてきた? 残りは四つ。お前の策は確かに上策ではあるが、万全を期しているとは言い難い」

ソロモン「……」



528 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:02:54.45 ID:z9IWeJy60

ソロモン「……お前にはバビロニアを任せる。そう言った」

???「奴らがそこまで到着する前に決着をつけるのが最善だ。俺は常に最善を好む」

ソロモン「だからお前が出ると? お前が消滅した時、誰が責任を取る?」

???「俺は死なない。少なくとも、人間の状態で一度は破った相手だ」

ソロモン「……何を恐れている?」

???「俺に、恐れはない。だが奴らに……植え付ける必要がある。道の先には破滅が待っているという恐怖を」

ソロモン「面白い。……実に面白いぞ」


529 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:03:22.00 ID:z9IWeJy60


ソロモン「良いだろう。せいぜい奴らを破滅の道へ誘い込め」

???「……朝飯前だ」

ソロモン「……」


ソロモン(……フン、何をするつもりかは知らんが……折角この私のサーヴァントとして召喚してやったのだ。ここで実力をハッキリみせてもらおうか……)


ソロモン「では、ベイン。お前をロンドンへ飛ばす」

ベイン「……」



530 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:03:52.54 ID:z9IWeJy60


………………

ブルース「っ」ガバッ


時計『07:00』ピピピ‼ ピピピ‼ ピピピ‼


ブルース「……」


ブルース(嫌な夢を見た……気がする。なんだったんだ……)


ポロン、ポロン、ポロロン♪


ダビデ「おはようブルース、爽やかな目覚めをお届けするダビデサービスだよ」ウィーン

ブルース「……成程、悪夢を見たわけだ……」ドサッ

ダビデ「ちょっと? 僕への扱いが全般的に酷くない?」

ブルース「いや……良い音色だ。とても癒される」

ダビデ「取ってつけたような感想だなー!?」



531 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:04:31.24 ID:z9IWeJy60


ピーンポーンパーンポーン……


レオナルド『おはようカルデア。外は生憎の吹雪だが、インドア派な我々には無関係だ。これより第四回レイシフト前、最後のミーティングを始める。管制室へ集合してくれ』

ダビデ「だってさ」

ブルース「……行くぞ」ムクリ

ダビデ「はいよ」スクッ


自動ドア「」ウィーン……



532 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:05:15.75 ID:z9IWeJy60


マシュ「あ、マスター、ダビデさん。おはようございます」

ダビデ「おはようマシュ。今日も綺麗だ」

マシュ「へっ!? あ、は、はい、ありがとうございます……?」

ブルース「……おはようマシュ。体調に異常は無いか」

マシュ「はい……いえ、奇妙な夢をみたような気がするんですが、忘れちゃって……」

ブルース「……そうか。まあ、所詮夢だ」


533 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:05:44.30 ID:z9IWeJy60

フォウ「……フォ〜〜ウ……」モゾモゾ

ダビデ「ちょっとタンマ。なんだこの獣、今どっから出て来た?」

マシュ「わわ、フォウさん。最近は隙があったら私の身体に潜り込もうとしてくるんですよ」

ダビデ「う……羨ましいぞ! 僕もその谷間にダイブ……」

ブルース「……」ピクッ

ダビデ「……するのはやめておくよ!」

ブルース「賢明な判断だ。流石は王だな」

ダビデ「いや、王ってのはやめてくれ……僕は羊飼いだから……」


534 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:06:14.55 ID:z9IWeJy60


………………

ドクター「……来たね」

ブルース「遅くなったか」

レオナルド「いいや、時間通りだ。おはよう」

ダビデ「おはよう! ところでキミの名前を聞いていなかったね、美しい人!」

レオナルド「ははは、私は中身がオッサンだから口説くのはやめとくんだな」

ドクター「見境がないな……これで偉大な存在っていうんだから歴史だっていい加減なものだよ」ブツブツ

マシュ「あ、あははは……」



所長「はい、無駄話はやめ! これより第四回レイシフト前、最後のミーティングを始めます! 全員居るわね?」


職員達「「「はい!!」」」



535 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:06:48.03 ID:z9IWeJy60


所長「今回のレイシフト先は19世紀後半のロンドン。解析していく内に、この特異点は霧に覆われているという事が判明しました」

ブルース「……霧?」

所長「ええ。とても濃い霧で……朝昼晩、晴れる事のないものよ。魔術の関与があるかどうかまでは判明しませんでしたが、その線も十分考えられる」

ブルース「ふむ……」


ブルース(……)


マシュ「五感、ですよね」

ブルース「……そうだな。視界が効かないとなると、音だ」

マシュ「はい!」


所長「レーダーも一応強化済みだけど、過信は禁物よ。令呪は三画まで。生身でのサーヴァントとの交戦はできるだけ避ける事」

ブルース「了解した」

所長「良いわ。じゃあ、サポート班!」

職員達「「「はい!!」」」

ドクター「はい!」

レオナルド「はいな」



536 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:07:27.65 ID:z9IWeJy60


………………


所長「レイシフト要員は09:00までに準備を整え、コフィンへスタンバイを済ませる事! では動いて!」


マシュ「……お先に失礼しますね、マスター」

フォウ「フォウ、フォーウ!」

ブルース「ああ、あちらで会おう」

ダビデ「えーっと、これに入れば良いのかい?」

ブルース「そのボタンは押すな。ここの赤いボタンだ」

ダビデ「えっと……おお!」

コフィン「」プシュー……

ダビデ「いいなあコレ! ワクワクするぞ……よーし。ダビデ、いきまーす!」

ブルース「……あちらで会おう」プシュー……


537 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:07:57.37 ID:z9IWeJy60

ブルース「……」ガチャリ、シュルッ。ガキ

ブルース「……」ガキリ、カチッ。スチャッ

マスク「」

ブルース「……」スッ

バットマン「……」



ドクター「……よし、全員スタンバイできたね」


538 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:08:26.53 ID:z9IWeJy60


ドクター「時刻、08:57。ブルース・ウェイン、マシュ・キリエライト、ダビデの三名がコフィンにスタンバイ完了」

職員A「存在証明式、稼働開始! 肉体観測、順調!」

職員B「電子機器類、異常なし! 電力量チェック……クリア!」

職員C「シバの時代特定も良好です! 19世紀後半、特異点のロンドンを捉えています!」


所長「では……ロンドンへのレイシフト、カウントダウン開始!」

職員達「「「了解、カウントダウン開始!」」」


ドクター「……」

レオナルド「……やっぱりダビデは嫌いかい?」

ドクター「好きにはなれない。僕には無理だ」

レオナルド「まあ、仕方ないけど……サポートの手は抜かないように」

ドクター「当然だ! ブルースくんとマシュを守らなきゃ!」



539 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:08:52.34 ID:z9IWeJy60


(((破滅は足音をたてない)))

(((ベイン。お前をロンドンへ飛ばす)))


バットマン(……いや、ただの夢だ)

ドクター『レイシフト10秒前! 9! 8! 7! 6! ……』

バットマン「……」

ドクター『3! 2! 1!』

バットマン「……」グッ

『0』


540 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:09:30.48 ID:z9IWeJy60


………………


バットマン「……」ムクリ


バットマン(硬い地面……いや、石畳か。レイシフトは成功したようだが)


バットマン「……マシュ。ダビデ。何処に居る」

バットマン(見えない……酷い霧のせいで、視界は3〜5メートルほどに制限されてしまう)


541 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:09:59.12 ID:z9IWeJy60

バットマン「何処だ、マシュ、ダビデ」スタスタ

バットマン(はぐれたか? レイシフトはランダム要素もあるらしい、こういう事も起こらない訳ではないのだろう……)

バットマン「……ドクター、マシュとダビデの位置を割り出せるか?」

通信機『ザザッ……ザザザザザザザ……』

バットマン「……駄目か……」スタスタ


バットマン「……?」チラッ

バットマン「……!!」ダッ


542 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:10:30.47 ID:z9IWeJy60


マシュ「……あ、ああ……」グッタリ

バットマン「マシュ。どうした。何があった」タッタッ

マシュ「ます、たー……私は、もう……」プル、プルプル……

バットマン「……!? 馬鹿な、どこでこんな傷が……」


バットマン(明らかに致命傷だ。何故だ? 誰が?)


強盗「……馬鹿な奴だぜ。お前を守るために俺に飛び掛かってきやがった」

バットマン「……!?」


バットマン(こいつは、あの時の……両親を殺した、あの……!)



543 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:10:58.80 ID:z9IWeJy60


強盗「大人しくテメェを差し出しときゃ良かったのによ」

バットマン「……どういう事だ……何故……」

マシュ「ますた……さよなら……」シュウシュウ……

強盗「ほら、またテメェのせいで人が死んだ。感想はどうだ?」

バットマン「……違う、違う! こんな……」

バットマン(齟齬だ。齟齬がある。銃声すらなかった。もみあう音さえ聞こえなかった。理性を失うな、ブルース……!)


(((……スター! マスター! おきて……)))

(((……不味いぞ、何かきてる……)))


バットマン「……!!!」


544 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:11:36.52 ID:z9IWeJy60


ドクター『ブルースくんのバイタルに異常が……なんだこの霧は!? 凄まじい毒性反応だ……今解析にかけてる!』

バットマン「……ばかな、……ありえない……」

マシュ「マスター! ドクター、マスターが急に倒れてうわ言を……」

ダビデ「霧の向こうからすごい量の足音だ! 何か来るぞ!」

マシュ「っ……マスター……!」

バットマン「マシュ……マシュ、マシュか!」ガバッ

マシュ「ま、マスター!?」

バットマン「……起きたぞ、状況を!」ムクッ

ダビデ「起きてくれてよかった! 何か来るぞ!」


ザン、ザン、ザン、ザン、ザン……


545 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:12:23.72 ID:z9IWeJy60

ドクター『毒の解析が完了した! これは……どうやら、脳に著しいストレスを与えるガスが霧に混じっているようだ。具体的に言うならば、対象に恐怖を体験させるガスだ! サーヴァントならともかく、人間が吸えばイチコロだぞ!』

バットマン「……覚えがある」

ドクター『そうか……ってなんでキミ、立ってられるんだ!? 常人なら発狂モノの恐怖がキミを襲ってるハズだぞ!?』

バットマン「毒物影響下の自覚はある。だが想像で世界を塗りつぶしはしない……」

マシュ「……!」

バットマン「やるぞ、マシュ、ダビデ。この状況に対処する……」



546 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:13:02.42 ID:z9IWeJy60


『ハハハハハハハハハハハハハハハ!! 苦しいか、バットマン!』

バットマン「……この声は……」

『チチチチチ、誤魔化しても駄目だ……お前の心臓は既に掴んだ。恐怖しているな? 身体の震えは隠せても、心の震えは決して隠せない……』

バットマン「……スケアクロウだ。全員構えろ、サーヴァントも来るぞ!」

『さあ、教えてやろう……この世のたったひとつの真実! 恐怖を!』


バットマン「……警戒しろ……」

マシュ「はい」スッ……

ダビデ「……」


ザン、ザン、ザン、ザン、ザン……



ロボット軍団「……」ザン、ザン、ザン、ザン、ザン……


マシュ「……な……」

ダビデ「冗談だろ、この量……」

バットマン「……」



「さあ」


スケアクロウ「恐怖しろ」スー……

バットマン「!!」バッ



547 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/17(土) 02:13:31.86 ID:z9IWeJy60


第四章


死界魔霧都市 ロンドン


548 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/03/17(土) 02:17:25.03 ID:z9IWeJy60
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました
549 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/03/17(土) 02:20:37.93 ID:z9IWeJy60
スケアクロウ

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%A6_(%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%9E%E3%83%B3)

ベイン

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%82%A4%E3%83%B3


今回の悪役の参考資料です。

https://www20.atwiki.jp/nijiame/

550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/17(土) 07:49:08.93 ID:05Z1wx48o
大物揃ってんなぁ
霧のロンドンてもうガス充満しちゃってるのか
それに加えてついにベイン
凄いハードモード
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 09:49:14.72 ID:CElREEq8O
アズラエルかナイトウィング喚んだ方がいいな
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/17(土) 13:17:53.40 ID:g2JQeIBDO
ロビンやバットガールもサーヴァントになってる可能性があるんか…
アルフレッドも召喚できたりして
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/17(土) 15:44:04.48 ID:psC9fTs+0
バベッジに対してどんな反応示すか楽しみだな
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/24(土) 13:13:49.40 ID:KY2YvdpNo
ゴッサムバイガスライトのアニメ発売されたな
なかなか良かった
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/24(土) 18:56:53.10 ID:Y6mLoDQfo
Fateで思い出したけどDr.フェイトってどんぐらい強いんだっけ
556 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:04:28.58 ID:IA8vUwsQ0

………………

ベイン「……」ドシ、ドシ

ベイン「……」グルリ

ベイン(……霧が深い。それにこの気に入らない匂い……恐怖ガスが霧に混じっているのか)

ベイン(サーヴァントの身体というのは、どうやら毒物にも耐性が付くらしい……)

ベイン(それに、目や耳も実に良く利く)ピタッ


ベイン「誰だ。こそこそつけて来ているのは」

???「おやぁ? バレてしまいましたか、これは失敗! ワタクシとっても反省しておりますぅ!」


557 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:04:59.42 ID:IA8vUwsQ0

ベイン「……お前は」

???「申し遅れました、ワタクシはメフィストフェレスなる者でして。人の破滅を見るのが三度の飯より大大だーい好きなだけの道化師ですぅ!」

ベイン「ほう……フフフ。人を不快にさせるピエロならよく知っている。それで、そのお前がどんな用で俺の前に立ったんだ?」ゴキゴキ

メフィストフェレス「あぁいえいえ、決して敵意はございません。ただアナタ、破滅の匂いがとっても濃いので……ついつい来ちゃったんですよう。許していただけますかぁ?」ヘラヘラ

ベイン「……」


558 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:06:32.14 ID:IA8vUwsQ0

ベイン「……良いだろう。お前に役割を与えてやろう、ピエロ」

メフィストフェレス「ワタクシはメフィストフェレスですが……」

ベイン「俺が通った後を破壊して回れ。人が居れば特に残酷に痛めつけて殺せ。悲鳴を上げさせろ」

メフィストフェレス「……へえ」

ベイン「時には殺さず、瀕死の状態で道に転がせ。目印をつけていけ。そうすれば……」

メフィストフェレス「そうすれば?」

ベイン「……もっと面白い奴らが現れる」

メフィストフェレス「ウフフフ……なんだか、ワタクシよりよほど悪魔っぽいですねえ」

ベイン「では行け。俺は『準備』を整える」



559 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:07:33.93 ID:IA8vUwsQ0


ベイン「……」ドシ、ドシ


ベイン(連中のアジトまでの道中、まずすべき事は、バットマンの側に付きそうな野良サーヴァントの撃破)

ベイン(その後、それ以外の反抗勢力を各個撃破……まとまってしまう前の撃破が好ましいが、さてそう上手くいくか)

ベイン(『B・P・M・S』からの連絡によれば、サーヴァントによるレジスタンス団体は今のところひとつ……俺がバットマンを倒すのと、そいつらがバットマンに接触するのはどちらが早いか……)


ベイン「……やはりあのピエロを焚きつけたのは正解だったか」ドシ、ドシ


ベイン(事態は常に不利な方向へ進むと見た方が良い。バットマンの悪運の強さは天性のものだ)

ベイン(……だが、俺はお前の弱点を、恐怖をよく知っている。今回の特異点が今までのように簡単に行くと思うな、ミスター・ウェイン)



ドドォォォォォォ……ドッガァァァァァァァ……ヒャハハハハハハハハ‼ アヒャハハハハハハハハハ‼


ベイン「……」フッ
560 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:08:28.55 ID:IA8vUwsQ0


………………

バットマン「ダビデ! ロボット達を寄せ付けるな! マシュ! スケアクロウを抑え込め!」

ダビデ「了解……そらっ!」ヒュンッ


石「」ヒュォォォォッ


ロボットA「ガガガッ!!」ドガッシャァァァァァ、プシュー‼


バットマン(あのロボット……破壊された瞬間、蒸気が内部から噴出した? つまり蒸気機関で動いているという事か……?)


マシュ「やああっ!!」ブォン

スケアクロウ「フハハハハハ!! ならば、もう一度霧の中に身を浸そう……」ズォォォォ

マシュ「くっ……敵、視認不可能! ドクター、レーダーはどうですか!」

ドクター『……駄目だ、まともに機能しない! 霧が含む魔力がこちらの想定以上に高濃度だ、対応は急いでいるが……視野以上には広がらないと思ってくれ!』

マシュ「……っ……マシュ・キリエライト、これより敵の追撃に……」

バットマン「待て! 互いに目の届く範囲から離れるな、ここではぐれたら終わりだ!」


561 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:09:04.01 ID:IA8vUwsQ0


マシュ「ですがマスター! これでは……」

バットマン「……落ち着いて凌ぐんだ。戦況に変化が現れる瞬間は必ず来る。それまで絶対に焦ってはならない……」

マシュ「っ……はい」

バットマン「よし、ダビデ、マシュ。固まるぞ、このまま……」ドクン


(マシュの焦る心がこのまま膨らみ、いつか手の届かない場所まで行ってしまうのでは?)


バットマン(……くだらない想像だ……現実を把握しろ)


(手の届かない場所で、そのまま殺されてしまうのでは?)


バットマン(……集中しろ!)


マシュ「マスター! 敵ロボット、腕の武装を展開しました!」


ロボットB『ロックオン』ウィーン、ガチャリ……


マシュ「あれは……銃です!」

バットマン「マシュ、ダビデの防御を! ダビデ、そのまま攻撃を続けろ! 狙うのは足元だ!」

ダビデ「りょーうかい……フッ!」ビュオッ


562 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:10:00.38 ID:IA8vUwsQ0


ロボットB『発射』バババババババ


マシュ「くっ……」ガギギギギギギギギギギギ‼

ダビデ「そぉらっ!」ヒュンッ


石「」ヒュゥゥゥゥゥゥッ


ロボットB『ガガガガ!』ドガァッ


バットマン「良し……」ドクン


(あれは銃だ。私の両親を殺したのと同じ凶器だ)


バットマン(……違う。今はマシュも居る。守る盾だ)


(だが、その彼女を守るのは誰だ? あの夜と同じように、撃たれて倒れないのか?)


バットマン(……黙れ! 彼女は私が守る、そんな事はさせない……!)


スケアクロウ「恐れているな? 聞こえるぞバットマン」

バットマン「……!!」


563 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:10:51.41 ID:IA8vUwsQ0


スケアクロウ「私の目は誤魔化せない……見えている。今は堪えていても、この注射針を刺せばたちまち正体を現すだろう」カチャ……

バットマン「……」スッ

スケアクロウ「くくく……抵抗できるつもりか? 私は強大な身体能力を手に入れた……サーヴァントという身体は素晴らしい!」

マシュ「マスター! 下がってください!」ババッ

スケアクロウ「おおっとぉ、こちらでも忠実なコマドリを飼っているようだな。そろそろ一人では無力だと気付いたか」

マシュ「……」ガシャリ

バットマン「マシュ、注意しろ。奴の注射……あれは恐らく、恐怖ガスを濃縮させた液体だ……打たれれば、危険だ」

スケアクロウ「くくく……相変わらず恐怖には敏感なようだ。良いぞ、流石はバットマン……」



564 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:11:41.55 ID:IA8vUwsQ0

スケアクロウ「……さあ、恐怖を体験する準備は良いか」

マシュ「……」ジリッ

バットマン「……ドクター、地形の観測を……」



ガッシャァァァァァァァァン‼ オラオラオラァァァァァ‼



バットマン「!?」バッ

マシュ「え……?」


ロボットC『ガガガッ!』ドドッ、ガシャァァァァ

ロボットD『ギギゴゴゴ……』プシュー……

???「雑魚どもが、引っ込みやがれ! 俺の獲物はテメェらじゃねえ!」ブンッ、ガッシャァァァァァァァァ‼


ダビデ「おいおい誰だ、あんなに大量のロボットの群れを……うおっ!?」ドドッ

???「おら退けェ!!」ダダッ



スケアクロウ「……おっと、招かれざる客だ。流石に分が悪い……また会おうバットマン」ズゥゥゥゥ……

バットマン「待て!」ヒュンッ

バットラング「」ヒュォォォォォオォォォォォォ……スカッ


565 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:12:20.58 ID:IA8vUwsQ0

???「ああクソっ、また逃げやがったのか!
……なんで逃がしたんだテメェら!!」ガァッ

マシュ「ご、ごめんなさい!?」

バットマン「……」

???「チッ……腰抜けが。盾ヤロウも居るってのに、それを使いもせずに……」

マシュ「え……えっと、私ですか?」

???「お前以外に誰が盾を持ってんだよ……ああ、チクショウ、気に入らねえ奴の匂いだらけだ此処は!」

バットマン「お前は誰だ。ここで何をしている」

???「あん? 俺は……」


566 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:12:52.99 ID:IA8vUwsQ0


???「俺はモードレッドだ。アイツらと戦ってる」

バットマン「モードレッドだと? ……イングランド、円卓の騎士の……あのモードレッドか」キッ

モードレッド「そうだ。なんか悪いかよ」

バットマン「……」


バットマン(……モードレッド。最も勇猛な騎士とされた、騎士王の息子……)


モードレッド「……睨みやがって、やるってのか」ガチャリ


バットマン(……そして、騎士王を殺した裏切りの騎士)


マシュ「ご、ごめんなさい。その、マスターは……普通に見つめるだけで睨んでるみたいになっちゃうので……」

フォウ「フォウ、フォーウ」ピョンッ

モードレッド「うわっぷ!? ったく、なんだってんだ……」



567 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:13:22.27 ID:IA8vUwsQ0


ダビデ「……ブルース、あの凶暴そうなかわいこちゃんは味方か?」

バットマン「……さあな。今のところは警戒しておくのが妥当だ」

モードレッド「フン、どうもそっちの黒いのとはそりが合わなさそうじゃねえか」

バットマン「原因は自分がよく分かっていそうだが」

マシュ「ま、マスター……」

モードレッド「……あぁ?」ギロッ

バットマン「……」


568 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:13:51.52 ID:IA8vUwsQ0

モードレッド「……チッ、使えそうな戦力ならジキルのところに連れて行ってやろうと思ったのによ」

バットマン「……判断するのは私だ。使えるか使えないか……それを決めるのは単純な力だけではない」

モードレッド「力がねえヤツなんざ興味もねえな」チャキリ

バットマン「こんな挑発に乗ってやすやすと剣を構える、それがお前の弱さだ。力があってもそれでは先が思いやられる」

モードレッド「……」ピキッ

マシュ「マスター、それ以上は……」

ダビデ「おいおい、何か余裕がないなぁ。ブルース、もうちょっと大人の対応を……」


569 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:14:25.56 ID:IA8vUwsQ0


バットマン「……余裕……」

モードレッド「……」


(コイツが裏切って私達全員を皆殺しにする可能性もある)


バットマン「……いや、そうだな……すまない。少し……思考が偏っていた」

モードレッド「……フン、めんどくせえ奴」

マシュ「すみません、マスターはその……顔見知りというか……」

モードレッド「良いぜ、そっちが妙な動きをしたら叩っ斬ればいいだけだ。ついて来いよ」

バットマン「何処へ」

モードレッド「俺達の家へだ」



570 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:14:56.89 ID:IA8vUwsQ0


………………

ドクター『らしくなかったじゃないか、ブルースくん』

バットマン「……そうか? いや、そうだな……少し、過敏になっていた」スタスタ


バットマン(らしくないと言えば、ダビデに対するドクターの対応もおかしかったように思うが……)


バットマン「……常に最悪を想定してしまう。人の考えなど、ひと呼吸で変わってしまうものだから」スタスタ

マシュ「……」スタスタ


ドクター『……ひと呼吸で、か。確かにそうかもしれないね……』


571 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:15:23.48 ID:IA8vUwsQ0




ドクター『ところで、毒の影響はどんな感じだい?』

バットマン「理性的な恐怖とそうでない恐怖を見分けるようにしている。この霧が少しでも薄くなればまだマシだろうが……それこそ、呼吸の度に毒を吸入している状況だ。この対処法がいつまで持つか……」

ドクター『うーん……こっちで解毒剤を研究してみるよ。完成したら成分を表示する。そちらでも精製できるよう、出来るだけ容易に手に入る成分を選択してみる……』

バットマン「……そうか」フッ

ドクター『なんだい?』

バットマン「初めてドクターらしい言葉を聞いた気がしてな」

ドクター『そう!? ……えへへ、そうかなあ。プロっぽかった?』

バットマン「ああ。……ありがとうドクター、よろしく頼む」

ドクター『うんうん、任せてくれ!』

ダビデ「へえ、頼もしいな。優秀なドクターなんだ」

ドクター『うるさいぞ!』

ダビデ「ちょっと!? 対応が違い過ぎるだろう!?」


572 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:16:34.82 ID:IA8vUwsQ0


ダビデ「だいたいなんだってキミはそんなに僕に辛く当たるんだ!」

ドクター『自分の胸に手を当てて訊いてみたらいいと思うな! 無自覚たらしネグレクト王! 女の敵! モテない男の敵! 人類の8割を敵に回してるのを自覚しろよ!』

ダビデ「ちょっと待った!! なんだか不名誉な称号ばっかりだが、ちゃんとした功績だって残してるんだからな! 味方だってそれなりに多いさ!」

ドクター『昔の王様だったらどんなに少なくても何かしらの功績は残してる! それなりって言ってもどうせ味方は羊ばっかりだろう!?』

ダビデ「羊を馬鹿にしたな!?」



ギャーギャー‼ ワーワー‼



モードレッド「なんだアイツら」

マシュ「あ、あはは……け、喧嘩するほど仲がいいとも言いますし」

モードレッド「……どうでも良いけどうるせえんだけど……」

マシュ「それは……っ、構えて下さい。前方から何か来ます」


573 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:17:04.02 ID:IA8vUwsQ0



ガシャン、ガシャン、ガシャン……


自動人形A「……」ガシャン、ガシャン

自動人形B「……」ガシャン、ガシャン

自動人形達「「「……」」」ガシャン、ガシャン、ガシャン



マシュ「あれは……機械の人形でしょうか。マスター、指示を」

バットマン「……」


バットマン(……関節部分から噴き出す蒸気。これも蒸気機関か……)


モードレッド「オラァ!」ブンッ、ガッシャァァァァァァァァ‼

マシュ「も、モードレッドさん!? まだ敵と決まったわけじゃ……」

モードレッド「チンタラしてんのが悪りいんだろうが! 敵か味方か分からなきゃ、取り敢えずぶっ壊せばいいんだよ!」

バットマン「……」


574 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:17:32.90 ID:IA8vUwsQ0



マシュ「マスター、どうしましょう」

バットマン「……あの人形は敵だ。殲滅するぞ」

マシュ「了解しました!」ガシャリ

モードレッド「そぉらっ!」ブンッ、ゴッシャァァァァァァァ‼

ダビデ「せいっ!」ヒュンッ

石「」ヒュォォォォォンッ


人形D「ギギギギーーー!!!」ガッシャァァァァァァァァン‼


マシュ「……たああああっ!」タッタッ、ブォンッ‼



575 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:18:00.65 ID:IA8vUwsQ0


………………


???「……アリス、アリスは何処だ……これだけ広い図書館なら、本くらいあるハズだろう……」ガサゴソ

???2「全く、これだけの本の海の中から特定のものを探し出すだと! 本を元の棚に戻すマナーの良い連中ばかりではなかっただろうに、よくもまあ!」ガサガサ

???3「あら、おじさま達。そこで何をしていらっしゃるの?」

???「キミは……あぁ、キミも物語の一部か。手伝ってくれ、不思議の国のアリスが……時代脚色の極めて少ないモノがここにはあるハズなんだ」

???2「マッドハッター! 誰彼構わず声を掛けるのはやめろと……む、そこに居るのは……また、面倒な奴だな」


576 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:18:44.39 ID:IA8vUwsQ0

???3「めんどうなやつ……私の事かしら、小さな紳士さん」

???2「俺は小さな紳士などという間抜けな名前ではない。全く……」

???3「ごめんなさい、小さな紳士さん。でも、名前が無ければ、どう呼べば良いのか分からないの」

???2「……呼ぶならせめてアンデルセンと呼べ。お前はそこで何をしている」

???3「わたし? 私はありす(わたし)よ、アンデルセンさん」

アンデルセン「……はあ!?」

マッドハッター「なんと! キミがアリスだったか……!」バタバタ


577 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:19:25.13 ID:IA8vUwsQ0


アンデルセン「まっっっっっったくなんて事だ! この狂人に適当に付き合ってやっているつもりが、まさか本物のアリスに出会ってしまうとは……」

マッドハッター「はやくお茶の準備をするんだ、アンデルセン! アリス、ああアリス。キミと会いたかったよ、ずっと夢見てた!」

???3「……おじさま。これがあなたの夢だったのね。でもごめんなさい、私はありすだけどありすではないの」

マッドハッター「なんと……だが良い、アリス。僕はそんな事を気にしない。キミが誰かの為の物語であるならば……こうして共に紅茶を飲む事に、意味はあるのだ」

アンデルセン「……『誰かの為の物語』(ナーサリー・ライム)か。何故狂人はいつも詩的なんだ、世の中の皮肉を感じざるをえん」

???3「ナーサリー・ライム……すてき。私も、そうなれるかしら」

アンデルセン「……全く、さっきまで正体不明だった少女に名前まで付けたか。マッドハッター、お前さては相当頭が切れるんじゃないのか」

マッドハッター「はやく! 紅茶を用意してくれ、アンデルセン!」

アンデルセン「……そんなワケがなかったな」コポポポポ……

マッドハッター「さあ、聞かせてくれ。キミが知るアリスの全てを!」


578 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:20:13.83 ID:IA8vUwsQ0


………………

ベイン「……」ドシ、ドシ……ピタッ


ベイン(……)


ベイン「……」スッ



……、…………タンッ


???「っ」ギュォッ


ベイン「フン」ガシッ、ドシャァッ

???「いたっ……!」ドサリ



579 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:20:40.77 ID:IA8vUwsQ0


ベイン「霧を使って上手く立ち回ったつもりか? 足音をあれほど派手に立てているようじゃ……フフフ、甘いな」グググググ……

???「はなせ!」ジタバタ

ベイン「そちら次第だ。……さあ、名前を言え。その名に価値があれば、上手く使ってやる」ググッ

???「くぅっ……わたしは、ジャック……ジャック・ザ・リッパー」

ベイン「……ほう、切り裂きジャックか。史上稀に見る犯罪者……その正体がここまで幼い少女だったとはな」パッ

ジャック「っ」ババッ

ベイン「良いだろう。お前の事は見逃してやる。何処へなりと行くがいい」


580 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:21:18.41 ID:IA8vUwsQ0


ジャック「……どういうつもり」

ベイン「利用するまでもないという事だ。お前の恐怖は皆を巻き込む」

ジャック「……」

ベイン「フフフ、その目。そして後世に伝わるほどの犯罪。お前が何かにとりつかれたように人を殺して回った理由、それは執着心だ」

ジャック「……なにをしってるの」

ベイン「……」ジッ


581 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:22:58.94 ID:IA8vUwsQ0


ベイン「頬にはねた血液。血の指紋。つい先ほど殺人を犯したが、かなり抵抗を受けたようだな。初撃からこれほどに抵抗するのにはそれなりの体格が必要になる……つまり大人だ。
漂う香水の匂い、また女性をやったようだな」

ジャック「……」

ベイン「英霊は全盛期の姿で召喚される。全盛期が『幼い子供』? ……想像力を生業とする者ならともかく、アサシンでそれは考えにくい。子供時代が幸福の絶頂だったとも考えられるが、その線で行くと『その姿』で大量殺人鬼のように歪み果てる理由もない」

ジャック「……」

ベイン「つまりお前は不幸な子供、殺人のターゲットは女性。子供時代に死亡したか……それとも、まともに成長すらできなかったか。いずれにせよ、大人の女性、自分の母親に強い恨みを……」

ジャック「……」シュン


ベイン(……)


ベイン「……違うな。お前は捨てられたのか、物心がつく前に」


582 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:24:04.88 ID:IA8vUwsQ0


ジャック「っ……なんでわかるの」

ベイン「……」


(((父さんは何処なの?)))


ベイン「見れば分かる。そうか、成程……フフフ、面白い。どうやら俺は勘違いをしていたようだ」

ジャック「どういう事」

ベイン「行け。お前と同じ目をした男を知っている」

ジャック「……?」

ベイン「殺せ。お前にとっての『親』を探して回れ。そうすればきっと、目的がお前を見つけるハズだ」

ジャック「……」

ベイン「それとも、ここで俺と無益な闘いを繰り広げでもするか? 俺は全く構わんが」ゴキゴキ

ジャック「……」ジリジリ


583 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:24:47.16 ID:IA8vUwsQ0

ジャック「……」ジリジリ……ズォォォォ……

ベイン「……行ったか。賢明な判断だ」


ベイン(尤も、少し残念でもあるが……主を持たないサーヴァントというのは、あの程度のものなのか)


ベイン「……まあ良い。行くとしよう……鼻が利くというのは、良い事だ」ドシ、ドシ


………………


ナーサリー「それでね、ありすったら……」

マッドハッター「ほうほう……?」

アンデルセン「……待て。何か来るぞ」ピクッ



584 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:25:37.35 ID:IA8vUwsQ0

マッドハッター「アンデルセン、今良いところじゃないか。席を立つにはまだ早い」

アンデルセン「嫌な予感がする……おい、図書館の扉はきちんと閉めただろうな」

マッドハッター「勿論だ。カギを閉めて、誰も入れないようにしたとも」

アンデルセン「……クソ、なんだこの寒気は……特大の不吉がやってくる前触れのような……」


ドゴッシャァァァァァァァァァァ‼


アンデルセン「……!! 今の音は、正面玄関の……!」

マッドハッター「なんだ、誰だ!?」



585 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:26:57.93 ID:IA8vUwsQ0


ベイン「……俺の嗅覚によれば、此処に誰か居るハズだが」ボキボキ


アンデルセン「誰かは知らんが、お前の来る場所ではないぞ筋肉ダルマ!」ギュギュギュォッ


光弾「」ギュォォォォォォォォッ


ベイン「ほう」ドドドッ……シュゥゥゥゥゥゥゥゥ……


アンデルセン「……クソ、付け焼き刃とはいえこうもあっさり弾かれるとは!」


ベイン「いや、効いた。なかなか良い攻撃だったぞ、小僧」ドシ、ドシ


マッドハッター「騒がしいな、誰が……!! べ、ベイン……!?」


ベイン「ジャービスか。お前もこっちに来ていたようだな」


ナーサリー「……お、おじさまがもう一人? 随分、その……いかつい見た目ね」

586 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:27:43.91 ID:IA8vUwsQ0

マッドハッター「お逃げ、アリスの分身さん! アイツは危険だ、悪いドラゴンだよ!」

ナーサリー「わ、悪いドラゴン……とても怖いのね」

ベイン「フフフ、まだ物語に没入するクセが治っていないようだな。骨を何本折られるまでそうやっていられるか、数えてやろう」

マッドハッター「……! アンデルセン、お前も逃げるんだ」

アンデルセン「……マッドハッター」

マッドハッター「アリスを頼んだよ! 必ず生き延びてくれ、彼女は私の全てなんだ!」

アンデルセン「……分かった。陳腐な言葉になるが……また会おう」

マッドハッター「……」



587 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:28:34.12 ID:IA8vUwsQ0

ナーサリー「アンデルセン、駄目よ! このままじゃマッドハッターさんが危ないわ!」

アンデルセン「馬鹿め! 奴は危険を承知で時間稼ぎを引き受けたんだ、さっさと奥に潜り込むぞ!」パシッ、ダダッ

ナーサリー「おじさま! 乱暴は駄目、絶対に駄目よ! 私、怒るんだからあああぁぁぁ……」ズルズルズルズル



ベイン「……お前程度で時間稼ぎになると思ったのか、ジャービス」

マッドハッター「……ならないかもしれないな。でも、こうして……」チリン……チリン……

ベイン「……っ……しまった、マインドコントロール波か……その立ち位置も、計算して……」ヨロ

マッドハッター「……さあ、精神の世界へ旅立つとしよう。そこでなら、私もキミと対等以上にわたり合えるかもしれない……」チリン……チリン……

ベイン「……ぐっ……」ドシン……



588 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:29:03.14 ID:IA8vUwsQ0



(((お前の名はベイン)))

(((意味は『破滅』)))

(((お前は父親の罪を償うために刑務所に居る。それを忘れるな)))

(((でも、父さんは何処なの?)))

(((……アイツは……)))


589 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:29:34.72 ID:IA8vUwsQ0

(((あ……が……)))

(((ナメるな。僕はお前の道具じゃない)))

(((やりやがった! たった8歳のガキがアイツを殺しやがったんだ!)))

(((悪魔め! こっちに来るな!)))

(((……孤独は恐ろしいか?)))

(((……ヴェノム注入計画を……)))

(((バットマン。ゴッサムを恐怖で支配する鉄の男)))


ベイン「……!!」カッ



590 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:30:09.61 ID:IA8vUwsQ0


ベイン「……」ガシッ

マッドハッター「な……!? ば、馬鹿な……悪夢から、これほど早く目覚めるだと……」

ベイン「悪夢か……フフフ、ジャービス。俺は慣れている」グググググ……

マッドハッター「……あ……あが……」ジタ……

ベイン「……この世に現実以上の悪夢など、存在しない」ゴキリ

マッドハッター「…………」

ベイン「……」ポイッ

マッドハッター「……」ドシャッ

591 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:30:38.76 ID:IA8vUwsQ0


ベイン「……」ムクリ

ベイン(広大な図書館の奥まで逃げ込んだか……)

ベイン「フン」

ベイン(そこまで生に執着するならば、好きにするがいい……追って潰す価値もない小物共だ)


ベイン「……」ドシ、ドシ


ティーカップ「」カチャ……


592 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:31:12.61 ID:IA8vUwsQ0


………………

モードレッド「おーい、帰ったぜ」トントン

ドア「」ガチャ……

???「やあ、お帰り……うん? お客さんが多いようだね」

バットマン「……」

マシュ「こ、こんにちは」ペコリ

ダビデ「やあ、どうも」ニコッ

???「……信用できる人達なのか?」

モードレッド「良いから入れろって、何かあってもぶった切れば良い話だし」スタスタ

???「あっ、おい。……はあ、仕方ないな。どうぞ」

バットマン「……失礼する」スタスタ


593 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:31:48.63 ID:IA8vUwsQ0


………………

???「ソファが空いてるから、座って。お茶はお出しできないけど……」

マシュ「いえ、お構いなく。大丈夫です」

バットマン「……話は聞いている。モードレッドと二人、霧に覆われたこのロンドンで、未だに抵抗活動を続けているとか……確か、名はジキルと」

ジキル「ああ。抵抗活動と言っても、霧の原因の調査に出かけたり、目に入った機械軍団を破壊したり……そんな事ばっかりだけど。名乗り遅れた、僕はヘンリー・ジキル」

マシュ「マシュ・キリエライトです」

ダビデ「ダビデだよ。ほら、イケメン美声超強肩で有名な……」

バットマン「私はブルース・ウェインだ。調査で何か分かった事はあるか?」

ダビデ「遮らないでくれるかな!? ホラ今名乗ってる途中だから!」


594 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:33:34.39 ID:IA8vUwsQ0


ジキル「分かってきた事は多い。まず敵はひとつの団体だけじゃなくて、野良サーヴァントにも居るらしく……爆弾で人を殺す者、鋭利な刃物で人を解体する者、帽子で人を操る者が居るようだ」

バットマン「帽子で……人を?」

ジキル「ああ、失礼。帽子のサーヴァントは『居た』と言うべきか……最後の情報では、図書館に入っていったっきり姿を現さないらしい」


バットマン(帽子……マッドハッターか。図書館に入っていった……という事は、またアリスでも探しているのか)


バットマン「すまない。話を切ってしまった。それにしても、何処からそんな情報を仕入れるんだ?」

ジキル「僕は一応、この時代に生きる人間でね。霊薬調合の心得があって、科学者として身を立てているんだ。ツテもそれなりにあるよ」

バットマン「ツテが……」


バットマン(おかしい……ヘンリー・ジキルはもう少し前の時代、物語によって創作された人間だと思っていたが……同姓同名の別人か?)


595 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:34:28.48 ID:IA8vUwsQ0


ジキル「だから、この霧がロンドンを覆った時も、いちはやく研究に乗り出せた。この霧……僕たちは『魔霧』と呼んでいるんだが、これは膨大な魔力と、人を恐怖に陥れる毒を含んでいるらしい」

バットマン「……」

ジキル「最初期はロンドンのあちこちで暴動が起きた。恐怖で我を忘れた人々が、互いに殺し合っていた。だが、それも沈静化しつつある……いや、暴動が起きるほどの人数がロンドンに居ないんだ」

バットマン「死んだのか」

ジキル「僕の試算でも、数十万単位の人間が死んでいる。恐怖毒だけでなく、濃厚な魔力も、耐性の無い人間を蝕んでいるんだ。このままではロンドンがもぬけの殻になるのも時間の問題だろう」

バットマン「……それを止めるために、私達が来た」

ジキル「そうだね。それじゃあ、そろそろそちらの話を聞かせてもらえるかな?」

バットマン「私達は……」



596 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:35:09.95 ID:IA8vUwsQ0


………………

モードレッド「へえ、特異点ね。他に七つもこんな場所があんのか?」

マシュ「はい。三つは既に私達で解決しましたので、残りはこのロンドンを含めて四つです」

ジキル「世界に打ち込まれた七つのボルトのひとつ。それがこのロンドンか……」

バットマン「私達は、この特異点の原因である聖杯を探している。……協力を要請したい」

ジキル「もちろん、願ったり叶ったりだよ。こちらとしても、この魔霧は取り除きたいものだしね」


モードレッド「……フン」

バットマン「何か異論があるなら聞くが」

モードレッド「ああ? ねえよ、ほっとけ」

バットマン「……」

モードレッド「……」

ダビデ「ほ、ほーら! 同盟締結! イェー! 仲良くしよう、な!?」

モードレッド「……チッ」

バットマン「……」


597 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:36:15.57 ID:IA8vUwsQ0



ジキル「魔霧の発生源だが……突き止めようにも、そう派手には動けない。だが、モードレッドから聞いた話によると……どうやら首謀者は『B・P・M・S』と、イニシャルで呼び合っているらしい」

バットマン「本当か」

モードレッド「嘘なんか吐くかよ。あのスケアクロウってヤツが笑いながら言ってたんだ。多分本当だろ、間抜け面だったし」

バットマン「……」


バットマン(B・P・M・S……Sはスケアクロウか。では残りは……)


バットマン「思い当たる人物は居るか」

ジキル「残念だけど、知り合いに当てはまりそうな人は居ない。
……魔霧発生から三日、掴んだ手掛かりはこれだけだ。スコットランドヤードに連絡しようにも、彼らも霧のせいで碌に動けない。政府からの支援も、魔霧が阻んでいる状況だ。動けるのは実質、今ここに居る人員だけだと思ってくれ」


598 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:36:56.98 ID:IA8vUwsQ0



フォウ「フォウ……」

ジキル「……そして、さっそくだけど頼みたい事がある。良いかな、ブルース」

バットマン「聞こう」

ジキル「さきほど、ツテから連絡を貰っていると言ったが……できれば、その人物の保護を頼みたい」

バットマン「……保護か。誰だ、それは」

ジキル「彼の名はヴィクター。ヴィクター・フランケンシュタイン」


599 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:37:35.69 ID:IA8vUwsQ0



………………


ベイン「……ここがお前達のアジトか。随分こじんまりとしたものだな」

P「……地下へ行けばもっと大きな空間があります。それよりようこそ、ミスター・ベイン。歓迎しますよ」

M「生憎『B』と『S』は席を外しているが……よく来てくれた。これで我らの計画はより盤石なものとなるだろう」

ベイン「御託は良い。仕事だ。今、最も計画の邪魔になっているのはどいつだ?」

M「……成程、聞いていた通りの男だな。では本題といこう」


600 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/03/25(日) 21:38:01.23 ID:IA8vUwsQ0


M「我々の動きを監視し、その情報を反抗勢力へ流している者が居る。そいつの始末を頼みたい」

ベイン「誰だ。そいつの名を言え」

M「スイス人の科学者。死体を繋ぎ合わせ、至高の魂を作り上げようとした哀れな男」

ベイン「……」

M「ヴィクター・フランケンシュタインだ」



601 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/03/25(日) 21:38:34.85 ID:IA8vUwsQ0
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました
602 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/03/25(日) 21:40:01.65 ID:IA8vUwsQ0
https://www20.atwiki.jp/nijiame/

マッドハッターもキャラクターBiosに説明が収納されていると思いますので、興味があれば是非ご覧ください
603 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/03/25(日) 21:43:38.88 ID:IA8vUwsQ0
いえ……ごめんなさい、マッドハッターはやはりアーカムシリーズをプレイして頂くのが分かりやすいと思います。
面倒な方は調べなくても、マッドハッターはここからの話に一切かかわらないので大丈夫です
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/25(日) 22:02:43.13 ID:5Xq7gceGo

流石はベイン強すぎる
頭脳プレーも行けすぎるし現状並の鯖じゃ太刀打ちも出来ないのでは…
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/25(日) 22:19:47.01 ID:+il2mQ6Ho
マッドハッターは録に映像化されてないからなぁ
アーカムシリーズをプレイするのが一番どういう奴なのかわかり易い

まぁプレイしなくても描写した範囲の事が判れば問題無いけど
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/25(日) 22:48:54.84 ID:Pzq4qcC4o

マッドハッター、邦訳ではどれに出てたかな

あとやっぱ理性あるベインは半端ないな
アーカムオリジンズとか
607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/27(火) 20:11:40.47 ID:xG9iBxvbo
最近ネットフリックスに来たドラマゴッサムの第三シーズンとか
608 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/03/28(水) 02:10:26.67 ID:6fQTsRS20
誤りを見つけたので訂正させて下さい。

513

所長「見なさい! パイプなんて蒸気が噴き出しっぱなしじゃないの! これもう!?」



所長「見なさい! パイプなんて蒸気が噴き出しっぱなしじゃないの! これもうまともに機能してないわよ!?」
609 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/03/28(水) 19:46:51.74 ID:bo4yILo00
すみません、またキャラ会話のミスです……

576

???2「……呼ぶならせめてアンデルセンと呼べ。お前はそこで何をしている」

???2「……呼ぶならせめてアンデルセンと呼べ。お前は何だ」

に脳内補完をお願いします
610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 14:30:33.98 ID:WIB5KtK8O
わざわざ乙
611 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:24:41.94 ID:XAEQl6mw0

………………

バットマン「……」スタスタ

モードレッド「……」スタスタ

バットマン「……」スタスタ

モードレッド「……チッ」スタスタ

マシュ「あ、あのー……」

モードレッド「あ? んだよ」

マシュ「いえ、その……道はこちらで合っているのでしょうか」

モードレッド「ん、おぉ。そうだな、こっちで合ってる。……ジキル、花屋の看板が見える方だったよな?」

通信機『ああ、そうだね。そこから少し行った場所にヴィクターの家があるハズだ』


612 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:25:12.30 ID:XAEQl6mw0

ジキル『ブルース、簡易の恐怖ガス緩和剤の効果はどう?』

バットマン「……かなりマシだ。だが……時折、発作じみて幻覚が現れる。しばらく外に居れば、すぐ効果切れになるだろう」

ジキル『そうか……やはり本格的な解毒剤が必要なようだ。こちらでも研究を進めてみる』

バットマン「頼んだ。帰ったらまた血液のサンプルを提出する」

ジキル『ああ、よろしく頼むよ』



613 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:25:46.24 ID:XAEQl6mw0


バットマン(……?)


バットマン「……なんだ、この匂いは」

マシュ「……うっ、何かが焦げる匂い……?」

モードレッド「……言われてみりゃ、なんだこれ。気持ちワリい匂いだな」

ダビデ「……肉が焦げる匂いだ、これは……」


614 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:26:15.78 ID:XAEQl6mw0


プスプス……ガラガラッ


ダビデ「……おい、ブルース。見ろあれ」

バットマン「……」

ダビデ「まるで爆弾で吹っ飛ばされたみたいな家屋だ、こんなの普通じゃないぞ」

バットマン「……あぁ、普通じゃない。ジキル、聞こえるか」

ジキル『ああ、聞こえているよ。なんだ?』

バットマン「確か、爆弾を使って人を殺害するサーヴァントが居ると言っていたな」

ジキル『……そうだな、そういうサーヴァントも召喚されているみたいだ』

バットマン「……この惨状はそいつの仕業に違いない」

マシュ「酷い……」グググッ

バットマン「……深呼吸しろ、マシュ。好ましくない緊張は取り除け……被害を少しでも抑える方法を考えよう」


615 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:26:42.24 ID:XAEQl6mw0


モードレッド「どうするよ? 爆弾魔は放っておくか、それとも……」

バットマン「……ここはやはり、」

マシュ「追いましょう。放っておけません。絶対に」グググ……

バットマン「……?」

マシュ「あ……いえ、ごめんなさい。判断は、マスターに委ねます」

バットマン「いや……止めるべきだろう。私もそれに賛同する……ジキル、少し保護に遅れが生じるが、構わないな」

ジキル『分かった。ヴィクターも心配だが、爆弾魔の手掛かりを掴んだなら是非そっちを解決してくれ』

バットマン「良し……犯人の追跡を開始する」


616 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:27:19.25 ID:XAEQl6mw0


モードレッド「けどよ、追跡っつったってどうやって……」

バットマン「……方法はある」スタスタ

モードレッド「あ、おい。……んだよ、一人行動大好きかよ」

バットマン「お前達は立ち入るな。現場の保存状態が良いままで観察したい」



バットマン(破壊の痕跡に触れれば、犯人の足取りも分かる……)スタスタ

残骸「」パラパラ……

バットマン「……」ガシッ、ズズズ……


父親の死体「」

母親の死体「」

子供の死体「」


バットマン「……」スッ、カチャカチャ


バットマン(……惨いものだ。父親と母親は子供を庇おうとしたのだろうが……爆弾の威力が大きすぎた。衝撃で子供も死亡、両親は爆発の直撃を受けて遺体の大部分が欠損……)


(逃げろマーサ、ブルース)

バットマン(……)



617 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:27:50.87 ID:XAEQl6mw0


(ブルース、これ以上私達のような悲劇を繰り返させないで)

(ブルース、頼む。私達は苦しんだ。お前も苦しんだじゃないか。これ以上何故戦う必要がある?)


バットマン「……」


マシュ「……マスター? 大丈夫ですか?」

バットマン「ああ、大丈夫だ。こちらには来るな。手掛かりを掴んだ」

ダビデ「本当かい、やるな」

バットマン「あぁ……」


618 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:28:38.96 ID:XAEQl6mw0



バットマン「まず、爆弾は東南東の方角で爆発した。爆破の衝撃がリビングを突き抜け、机の上にあったと思われる新聞紙、帽子、人形が吹き飛んでいる。
だがこの家から見た東南東の建物は無事なものばかりだ。これほど無差別な破壊を繰り返すならば、通り道にあったものは全て爆破するだろう。という事は犯人は正反対の方向から来たんだ」

マシュ「……」

バットマン「……恐らくあの位置に窓があった。窓から……西北西から対角へ爆弾を放り込み、この家を爆破」


バットマン(通り魔的、何の準備も許さないほど唐突な犯行だったのは両親の身体の向きから分かる。咄嗟に子供を抱きかかえたは良いが、爆発の衝撃が来た方向をカバーしきれていない)


バットマン「……そして破壊の痕跡はこの家から西へ、西へと続いている。つまり、西へ行けば犯人を追える」

モードレッド「いちいち回りくどい野郎だな。最初から西に行けって言えよ」

バットマン「行くぞ」

モードレッド「……待てよ? それじゃあヴィクターの家にも近付くじゃねえか。一石二鳥ってヤツか」

バットマン「……」


バットマン(……あまりにも出来過ぎた偶然だ。何か……何か、重大な事を見落としている気がする……)


(((ベイン。お前をロンドンへ飛ばす)))


バットマン「……」


バットマン(嫌な予感がする)


619 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:29:33.49 ID:XAEQl6mw0


バットマン「……全員、警戒してくれ。何か、出来過ぎている……」

モードレッド「出来過ぎている、だあ? ったくテメェは、自分の幸運も素直に受け入れられねえのか」

バットマン「……世界に運は無い。だが策略は存在する。誰かが私達を誘導しているとは考えられないのか」

モードレッド「考えすぎだろ。見た目が陰険だと考え方まで陰険になんのかよ」

バットマン「陰険で結構だ。だが危険なのは、影と執念、カリスマを併せ持った男だ。今回の敵にそれが居る可能性は高い」

モードレッド「だから何だ、剣で吹き飛ばせばいいだろが」

バットマン「謀略で絡まった剣にどれほどの力がある」

モードレッド「教えてやろうか」チャキ

マシュ「お、お二人とも、落ち着いて下さい!」

バットマン「……」


(消せ。不穏分子だ。ここで消せ。マシュ、ダビデが居れば十分な戦力だ。いつ裏切りを受けるか分かったものではない)

(マシュが死ぬぞ。ダビデが死ぬぞ。それは何故だ)

(モードレッドが裏切るからか? それとも、私達が永遠の命を持っていないからか?)


バットマン「……」

モードレッド「……」


620 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:30:35.67 ID:XAEQl6mw0



ポロン、ポロン……ポロロン……

〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜〜♪

バットマン「……!」

モードレッド「……ああ?」

ダビデ「〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜♪ ……っと。どうだい、落ち着いたかな?」

バットマン「……」

モードレッド「……チッ、なんだってんだよ」

マシュ「ダビデさん……」

ダビデ「二人とも、ちょ〜っと余裕が無さすぎるなぁ。ほら、深呼吸深呼吸。力んだ体をリラックスさせるんだ」


621 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:31:12.98 ID:XAEQl6mw0



バットマン(……)スー、ハー……

バットマン「……そうだな。悪かった」

モードレッド「……フン。どうせ行くしか無いんだろ、行くぞ」

マシュ「……マスター」

バットマン「迷惑をかけた。すまない……」

ダビデ「いいや、良いのさ。久しぶりに歌えて気持ち良かったし」ポロロロロン♪

バットマン「……行こう」


622 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:31:56.90 ID:XAEQl6mw0



マシュ「あ、あの。マスター」

バットマン「どうした、マシュ」

マシュ「今、マスターが苦しんでいるのは……私が、爆弾魔を追うように提案したから、ですか?」

バットマン「……苦しんでいる?」

マシュ「その……さっき、家の瓦礫を覗き込んだ時から、雰囲気が険しくなったというか……」


(((ブルース、これ以上私達のような悲劇を繰り返させないで)))


バットマン「……お前の責任ではない、マシュ」

マシュ「ですが……この霧もそうです。マスターの、負担なら……私の我儘で、傷付けているなら……」


623 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:32:24.46 ID:XAEQl6mw0


バットマン「……大丈夫だ。私はそうやわではない」

マシュ「……」

バットマン「マシュ、不安は分かる。人が死ぬ霧の中、出歩く危険性も理解している。いつ敵が濃霧の中から湧いて来るか、気が抜けない厳しさも」

マシュ「はい……」

バットマン「……だがお前は、訓練を積んできた。霧の中に足音が響けば聞こえる耳を持ち、敵が襲って来れば切り返すだけの技術を身に付けた」

マシュ「そう……ですよね」

バットマン「ああ、そうだ。……それに、何かあれば……ごほん、あぁ。たよ……たよr……力を合わせよう」

マシュ「……はい! そうですよね、力を合わせれば……!」

バットマン「……ああ。お前は優秀だ、マシュ」



マシュ(そうだ……私はもう、あの時とは違う。だから……だから、先輩のような事には、ならない)




624 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/04/02(月) 19:32:54.98 ID:XAEQl6mw0



………………


ヴィクター「……ああ……私の、私の試みは……とうとう、失敗に終わったか」

???「……ぁ……ウゥ……」モゾモゾ

ヴィクター「ふ、くくく。私が、作りたかったのは……完璧な乙女だったと、いうのに……何処で間違ったのだろうな、私は」

???「……ウゥゥ……」シュン

ヴィクター「……そうだろう、涙も流せない乙女よ。望まれずして生まれた乙女よ。お前は、私の……人生をかけた失敗作だったのだ」

???「……」


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