他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
BBS2ch
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
更新
検索
全部
最新50
THREAD AND RESPONSE
Check
Tweet
1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/08(月) 00:40:39.62 ID:9z+7Ciky0
瞼を開くと、暗闇が飛び込んで来た。起き抜けの頭で「まだ夜中だったのかしらん」と考えたのも束の間、すぐに何かがおかしいと違和感を覚えた。というのも私は電気を点けたままにしないと眠れない派で、いつも照明器具の類は全てキラキラに点けたまま眠るのだ。おかげで月々の電気代がかさんで貧乏苦学生の私は四苦八苦しているのだが、そればっかりは仕方がない。
何せ暗闇の中だとおばけが出て来ても気付けないからね。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1515339639
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/08(月) 00:41:23.30 ID:9z+7Ciky0
ここで改めて周囲を見渡してみる
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/01/08(月) 00:42:23.63 ID:9z+7Ciky0
黒。黒。黒。黒。黒。
一面に広がる黒。
墨汁をそのままぶちまけたかのような黒。
自分の手足すら黒に塗り潰される、この上なく純粋な真っ暗闇。
ここに私が大好きな光が入り込む余地はありそうもない。
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/08(月) 00:43:14.32 ID:9z+7Ciky0
私はあまりの恐怖に『いやー』だとか、『きゃー』だとか、感情のおもむくままに叫びそうになったが、そこでふと「これってもしかして誘拐じゃあないの?」という疑念が脳裏をよぎり、続いて「もしここで音を立てたりしたら誘拐犯を刺激しちゃわないかしら?」という懸念を抱き、すんでの所で叫ぶのをやめて、代わりに履いていた靴を脱ぎ、振りかぶって全力投球したら壁に当たってドギャンとド派手な音を立てた。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/08(月) 00:43:44.08 ID:9z+7Ciky0
ちなみに私は小学生の頃から草野球チームのピッチャーをしていたので肩には自信があるのだ。
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/08(月) 00:44:11.73 ID:9z+7Ciky0
しーん、という静寂が辺りを包み込む。
静けさが逆に怖くてしばらくその場でガクブル震えていたが、どうやら何も起きそうもないと悟った私は意を決して、暗闇の中を移動することにした。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/08(月) 00:45:23.80 ID:9z+7Ciky0
先刻靴を投げた時の感触から、奥行きが広い部屋であることが予想された。
少なくとも半分以上がガラクタで埋め尽くされた四畳半の私の部屋よりは広い。
ここが私の部屋ではないことだけは間違いなさそうだ。
そうして「ここに引っ越せたらなー」などと考えながら歩いていると、何かにつまずいた。
手にとったところ私をこけさせたのは、さっき投球した私の靴であることが分かった。
どうやら壁際に辿り着いたらしい。
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/08(月) 00:46:12.13 ID:9z+7Ciky0
私は壁にペタペタと手を当てて、出口を探し求めたが、扉も窓も見つからなかった。
その代わりに途中で暗視カメラのような手触りのものを見つけたがそれは念入りに踏みつけて壊しておく。
そして部屋の四方を大方調べ尽くし「ああ、やっぱり私は捕らわれの籠の鳥なんだわ」と諦めかけた所で壁際の天井から『糸』が垂れ下がっていることに気付いた。
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/08(月) 00:46:56.43 ID:9z+7Ciky0
えいやっ、と糸を引いて見たところ、糸がびっくりしたかのように震えた。
私もまた驚いて、思わず強めに糸を引っ張ったら、もうやめてくれと言わんばかりにピンと糸が張られた。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/08(月) 00:47:32.84 ID:9z+7Ciky0
私「もしかして向こうにも人がいるの?」
ピン、と糸が蠕動した。
私「あなたも一人なの?」
ピン
私「じゃああなたもここに連れてこられたの?」
ピン
私「それとも、私をここに連れて来た誘拐犯さんだったりするの?」
ピン、ピン
私「それは"違う"ということ?」
ピン
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/08(月) 00:48:08.17 ID:9z+7Ciky0
どうやら糸が一回引っ張られるのは『YES』、二回引っ張るのは『NO』という意味らしかった。
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/08(月) 00:48:50.35 ID:9z+7Ciky0
私「あれ、でもどうしてわざわざ糸を引っ張るの? 私の声は聞こえているんでしょ?」
【糸】:ピン
私「ならあなたも声を出せばいいのに、もしかして声を出せないの?」
【糸】:ピン
どうやら糸の向こう側はこちら側とはまた違った状況のようだった。
私は視界がない代わりに声を出せる状態で放置されていたのに、向こうは声を出せない状態で監禁されているらしい。
向こう側の状況を詳しく説明して貰いたいところだが、"YES"か"NO"以外の意思の疎通が出来ない以上、それは難しそうだった。
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/08(月) 00:49:30.49 ID:9z+7Ciky0
私「そうなると、何を話したらいいか困るわね……」
【糸】:ピン
私「……さっき私が起きた時の靴のアレ、驚かせちゃったかな」
【糸】:ピン
私「ごめんなさい、寝ぼけてて。情けないことしちゃった」
【糸】:……。
私「まあその後転けた方が情けなかったでしょうけど」
【糸】:ピン。
私「あら、あなたって結構毒舌なのね」
【糸】:ピン。ピン。
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/08(月) 00:50:15.02 ID:9z+7Ciky0
どうやら思っていた以上に、糸一つでもコミュニケーションは取れるらしい。
私は何だか不思議な気持ちになった。
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/08(月) 00:51:29.84 ID:9z+7Ciky0
私「……私ね。ここに来る直前、男の子とお酒を飲んでたの」
【糸】:ピン。
私「もしかして相槌打ってくれてるの?」
【糸】:ピン。
私「ありがと。……さて問題です。その男の子とは私の彼氏でしょうか? それともただの友達だと思う?」
【糸】:ピン、ピン
私「はは、どっちかわかんないや。……正解はただの友達でした。まあ、男女二人きりで飲むなんて恋仲だと思われても仕方がないのだけどね」
【糸】:ピン
私「……うん。でも私はそんな風には思わなかった。ただの気の合う友達くらいに考えてた。でも相手は違ったみたい」
【糸】:ピン
私「そりゃそうだってことかしら? 確かに私ももっと早く感づいていてもよかったのでしょうけど……告白されたのよ」
【糸】:ピン
私「もちろん断ったわ。私は少なくともまだその男の子のことが好きではなかったから」
【糸】:ピン、ピン
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/01/08(月) 00:52:02.95 ID:9z+7Ciky0
私「あなたは気がなくても試しに付き合ってみる派なのかな。でも私は違う。きちんと好きになってからじゃないと付き合えない派なの」
【糸】:ピン
私「でも告白された直後って、好意そのものは嬉しいというか……何といえばいいのかしら、"そういう気分"になってしまうものよね。恋に恋する、に近いのかな」
【糸】:ピン
私「あなたも、なんだ」
【糸】:ピン
私「……ねぇ、つりばし効果って知ってる?」
【糸】:……ピン
私「不思議だよね。顔も名前も知らない。お互いのことがまだ分からない。きちんと話したことすらない。ただこうやって糸を伝って意思の疎通をしているだけなのに……だからこそ、なのかな。私、あなたのこと嫌いじゃないわ」
【糸】:…………ピン。
私「……ああ、やっぱり??」
17.18 KB
Speed:0
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
続きを読む
名前:
E-mail
(省略可)
:
書き込み後にスレをトップに移動しません
特殊変換を無効
本文を赤くします
本文を蒼くします
本文をピンクにします
本文を緑にします
本文を紫にします
256ビットSSL暗号化送信っぽいです
最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!
(http://fsmから始まる
ひらめアップローダ
からの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)
スポンサードリンク
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)