【ラブライブ】真姫「その罪は何色か」【仮面ライダーW】

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

104 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/15(月) 20:53:44.31 ID:hpLbw2HE0
ーーーーーー




ーー コンコン ーー




中の返事を待って、私は扉を開けた。
そこにいたのは、




葵「まきちゃん!」

真姫「こんばんは。葵ちゃん」




葵ちゃんの姿があった。
昨日と変わらず、ベッドに横になった彼女の姿は、窓から差し込む月の光のせいか、どこか幻想的で儚げに見える。



真姫「こんな時間まで起きてると、体に障るわよ」

葵「あ、えっと……ごめんなさい」



素直に謝る葵ちゃん。

なんでこの時間まで起きてたの?
そう尋ねると、彼女はまた窓の外に輝く月を見ながら答えた。




葵「綺麗な満月だったから」




彼女に倣って、そちらを見る。
真っ暗闇に、はっきりと浮かぶ満月は確かに綺麗ね。
105 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/15(月) 20:57:52.39 ID:hpLbw2HE0


葵「それで、どうしたの? こんな夜中に」



しばらくして、葵ちゃんはそう聞いてきた。



真姫「…………ちょっと、葵ちゃんに聞きたいことがあったの」

葵「わたしに?」

真姫「……えぇ」



小首を傾げる葵ちゃん。

…………。

正直、これは彼女本人に聞くのは憚られること。
それだけならば、カルテを見たから知っている。
けど、私は聞かなきゃならない。



真姫「ねぇ、葵ちゃん」

葵「うん」

真姫「貴女、血液の病気なのよね」

葵「…………うん。そうだよ」

真姫「…………それも……えぇと」




葵「…………重い病気、なんだって」



106 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/15(月) 21:06:00.52 ID:hpLbw2HE0
言葉を選んでいる間に、彼女はそう言った。
さらに、続ける。



葵「たぶん、わたしには聞こえないようにしてたんだと思う」

葵「けど、聞いちゃったの」



お母さんと先生の会話。
それから、お母さんの辛そうな泣き声も。
だから、



葵「言葉、選ばなくてもいいよ。まきちゃん」

真姫「…………」



そう言って笑う彼女。
その顔は、まるで……。



真姫「………………」

葵「…………はぁ、スクールアイドルやってみたかったなぁ」

真姫「…………」

葵「あと2年もしたら高校生だったのに! でも、こんな体だしね、しかたないしかたない」

真姫「…………」



……あぁ、そっか。
だからなのね。

だから、彼女はーー



ーーーーーー
107 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/15(月) 21:08:36.26 ID:hpLbw2HE0
ーーーーーー




ーー ガチャッ ーー



『…………』

葵「…………すぅ……すぅ」

『…………』スッ




ーー ナデッ ーー




葵「……んっ」

『っ』

葵「………………すぅ」

『……………………』クルッ

108 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/15(月) 21:09:28.45 ID:hpLbw2HE0




真姫「やっぱり現れたわね」

『っ!』



109 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/15(月) 21:22:36.92 ID:hpLbw2HE0
病室から出ようとするその人物を呼び止めた。
葵ちゃんを起こさないような小声でも、なんの音も聞こえない深夜ならよく響く。

その人物、いえ、そのドーパントはこちらに向き直った。
月に照らされて、その風貌がよく見える。



いつか凛が見たという姿とは違い、吸血鬼に似た姿じゃない。
全身は赤。
液体のようなものが右腕から胸にかけてを覆っている。
顔はノッペリとしていて、顔のパーツは見当たらない。
左手だけは、5本の指と掌という人間と同じような形。
葵ちゃんの頭を撫でていたのも、こちらの手だった。

本物のドーパントを見たは初めてだったから、恐怖を感じるのかと思ってたけど……。
私の心のなかは穏やかだった。

それはきっと、葵ちゃんを慈しむ『彼女』の表情を見たような気がしていたから。
110 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/15(月) 21:28:19.77 ID:hpLbw2HE0

????『……貴女、なんで』

真姫「ここにいるのが分かってたからよ」

????『分かってた……?』

真姫「えぇ」



犯行の動機が葵ちゃんにあるのなら、きっとここに来るんじゃないかと思ってたから。
……正直、半分は賭けだったけど。



????『……そう』



ドーパントはそれだけを呟いて、また葵ちゃんを見つめている。

……そう。
やっぱり、そうなのね。
その様子を見て、予想が確信に変わる。

『検索』だったかしら。
それをしてもらったのは、メモリの名前と能力までだった。
その先は、私が直接確かめたかったから。



葵「…………んん……」

????『……っ』

真姫「…………いつまでもここにいたら、葵ちゃんを起こしてしまうわね」

????『…………』

真姫「外で話をしましょうか」

????『…………』

真姫「ねぇーー」
111 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/15(月) 21:30:32.07 ID:hpLbw2HE0





真姫「ーー紅花先生」





????『…………そう』

????『ばれていたのね』スッ




紅花「…………出ましょうか。彼女が起きてしまうわ」




ーーーーーー
112 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/15(月) 21:31:27.16 ID:hpLbw2HE0
短いですが、本日はここまで。
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/15(月) 22:56:59.56 ID:Fl24P5+3O

メモリ使っててもそれなりに理性残ってるのか
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/16(火) 05:31:13.89 ID:a5m+PVsEO
メモリとの相性が良ければ、理性が無くならないんじゃないかな?井坂先生とかインビシブルとかイエスタデイみたく良すぎても駄目だけど
115 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 10:07:50.07 ID:ZoiY3X6S0
少し更新。
116 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 10:25:12.23 ID:ZoiY3X6S0
ーーーーーー



紅花「いつ、分かったの?」



屋上に着くと、彼女はフェンスに背を預け、そう訊ねた。
気づかれるような真似はしていないはずだけど。
さらに、そう続ける。



真姫「引っ掛かったのは、襲われた患者さんが貧血程度で済んでることです」

真姫「ドーパントの力が強力なのは分かってたわ。だから、なにか目的があるんじゃないかと思った」



なるほど。
紅花先生は私の言葉に相槌をうつ。



真姫「例えば、この病院で不祥事を起こすだけならもっと血を抜き取って死者を出せばいい」

真姫「でも、それをしなかった」

紅花「メモリ使用者が病院関係者なら当然じゃない」



誰だって職はなくしたくないもの。
少し笑いながら、そう言う紅花先生。
確かに、それもあるかもしれない。

だけど、私はその言葉に首を振る。



真姫「抜き取られた量もおかしいんです。全員がその体型に合わせて、一定の割合抜かれてた」

紅花「…………」

真姫「注射器でならまだしも、メモリを使って血を一定の量、しかも、その人の体型に合わせて抜き取るなんて、慣れが……いえ、相当の知識と技術が必要、でしょ」

紅花「……そう、ね」



だから、少なくとも看護師になって数年の藤さんや真白さんにはできないはず。
117 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 10:36:04.69 ID:ZoiY3X6S0

紅花「なら、私以外にも黒崎や緑もいたんじゃないの?」

真姫「そう。あの二人にも可能よ」

紅花「なら、なぜ私を疑ったのかしら?」



それは、資料室で見つけたある共通点があったから。
あの後、全員のカルテを確認した。
私の読み通りだった。
全員が、



真姫「AB型のRH−……ですよね」

紅花「そう。そこまで分かっていたのね」

真姫「カルテ、確認しましたから」

紅花「……犯罪よ、それ」

真姫「うっ……」



それに関しては、言い返せなかった。
確かにそれはそうよね……。



紅花「まぁ、いいわ」

紅花「それで? 私を捕まえるつもり?」



彼女の雰囲気が変わる。

白衣のポケットの中。
たぶんもう、メモリを手にしてる。
118 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 10:41:45.55 ID:ZoiY3X6S0


真姫「…………」



ポケットの中のスマホに触れる。
通話画面にしてたから、このまま発信すればすぐに凛に繋がるようにしてあった。

けど、私は




真姫「…………いえ」

真姫「捕まえません」




彼女の問いにそう答えた。

捕まえない、と。
だから、スマホから手を離す。




紅花「…………なんのつもり」




紅花先生は変わらず、こちらを警戒してる。
ポケットからも手は出さない。

睨み合うような状況が続く。



真姫「…………」

紅花「…………」


119 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 10:48:04.50 ID:ZoiY3X6S0





真姫「…………治してあげて」




紅花「…………っ」



沈黙を破ったのは私から。
それを、彼女の目を見て、伝えた。



真姫「ガイアメモリを使ってるのは、葵ちゃんのためなんでしょ……」

紅花「…………」

真姫「あの娘の病気は、血を総取替えでもしないと治らないって藤さんに聞いたわ」

紅花「っ、藤……余計なこと……」

真姫「でも、そんなことそうそう簡単にできるものじゃない。手術ができたとしても、長時間の手術に彼女が耐えられるかも分からない。普通の手段じゃ…………治療はかなり難しい」

紅花「…………えぇ」



真姫「だから、手を出したその『ブラッド』のメモリに」



120 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 10:54:11.95 ID:ZoiY3X6S0



『ブラッド』



穂乃果の協力者を名乗る人物が出した答えがそれだった。

血液を操作することができる能力を持っていて、血を抜き取ることは勿論、それを他の人間に輸血することもできる。
それで凛はやられたみたい。

さらに、使用者が人体の構造に精通していればいるほど、その精度とスピードは上がっていく。
そんな能力も秘めているらしい。

つまりーー




真姫「貴女がガイアメモリに手を出したのは、病院の名を陥れるためでも、患者さんを襲うためでもない」

真姫「葵ちゃんを」

真姫「生きることを諦めてるあの娘を救うため、なんでしょ」




それが私が辿り着いたこの事件の真相だった。
121 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 11:00:43.85 ID:ZoiY3X6S0


真姫「…………」

紅花「…………」



彼女の目を見つめる。
彼女は、視線を反らして、



紅花「救う……ね」



自虐的に呟いた。

おこがましいわ。
私はただ自分の担当患者のそんな姿を見ているのが嫌だっただけよ。



紅花「そのために、他の患者も傷つけた。本末転倒ね」

真姫「……でも、紅花先生は」

紅花「…………えぇ」




紅花「それでも、私はあの娘を治したい」




真姫「…………」



この言葉は本当だ。

……いつか見たことがある。
手術の日の朝、パパがしてた表情と同じ……覚悟を決めた表情をしてたから。
122 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 11:09:08.90 ID:ZoiY3X6S0

真姫「…………血はもう足りてるんですか」

紅花「え……?」



私の言葉に、紅花先生はポカンとした表情を返してきた。
そんな顔は珍しい。



真姫「葵ちゃんを治療するための血液です。ABのRH−ですよね」

紅花「あっ……確か輸血用の血液もあったから…………あと一人分、かしら」

真姫「なら、すぐ始めましょう」

紅花「は? だから、あとーー」



真姫「ここにいるじゃない」



私が指差す先にいるのは、勿論私自身。

偶然もあるものね。
これなら、これ以上患者さんを傷つけることはないし。
だから、よかった。
だって、私もーー




真姫「あの顔……」

真姫「あの娘の表情、気に食わなかったのよ!」




ーーーーーー
123 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 11:10:05.62 ID:ZoiY3X6S0
ーーーーーー
124 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 19:39:34.25 ID:ZoiY3X6S0
ーーーーーー



紅花「…………」

真姫「…………」



手術室。
手術台の上には、紅花先生が抱えて連れてきた葵ちゃんがすやすやと眠っていた。
……よく起きないわね。



紅花「中々起きないのよ。だから、朝も藤が困ってるわ」



そう言って、彼女は笑う。
その表情はどこか穏やかで、葵ちゃんのことを大切に思ってるのが分かる。



紅花「外で待ってるのはお友達?」

真姫「…………えぇ」



凛のことね。
念のため連れてきたけど、流石にここにまで入らせるのもどうかと思って、手術室の外で待ってもらってる。



紅花「彼女、仮面ライダーよね」

真姫「……えぇ。最近なったばかりだけど」

紅花「そう。あの子には悪いことをしたわね」



悪いこと。
あぁ、拒絶反応のことね。

確かに大変だったけど、1日で治るくらいだし。
ここに来るまでも、紅花先生と私と凛、一緒だったけど、特に気にした様子はなかったわね。
125 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 19:43:26.17 ID:ZoiY3X6S0

紅花「後で謝っておいてもらえる?」

真姫「……そんなの自分でーー」

紅花「私には襲ってしまった人に会わせる顔がないもの。患者も含めて、ね」

真姫「………………分かりました」



私の答えに満足したのか、ひとつ頷く紅花先生。
深呼吸をしてから、それを取り出した。




紅花「…………さぁ」スッ




『ブラッド』



ブラッド『……手術を始めましょう』



126 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 19:53:47.48 ID:ZoiY3X6S0
紅花先生が姿を変えた。
葵ちゃんの病室で見た、あの赤いドーパントだ。

彼女がスッと右手をあげると同時に、その腕にまとわりついていた液体が放出される。
そのまま、形を変え、



『…………』

真姫「……人?」

ブラッド『えぇ。助手よ』



真っ赤な液体は人の形になって留まっている。
助手と言ったけど……。



ブラッド『……じゃあ、血少し貰うわよ』

真姫「……はい」

ブラッド『お願い』

『…………』



指示に反応するように、人形は動いた。
私の腕を取って、そのまま人形の頭が液体に戻り、私の腕を包んだ。



真姫「……っ」

ブラッド『奇妙な感覚でしょうけど、少し我慢して』

真姫「っ、は、はい……」

ブラッド『………………』

真姫「…………」

ブラッド『………………もういいわ』



1分もせずに、彼女はそう言って、人形を止める。
それに従うように、人形はまた頭の形を取り戻した。

これで、足りたのよね?

息を吐く、と同時に眩暈がした。
軽い貧血のような症状。
……なるほど、これがそうなのね。



真姫「っ」フラッ

ブラッド『…………座っていなさい』




ブラッド『すぐに終わらせるから』



127 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 20:01:25.30 ID:ZoiY3X6S0


ブラッド『戻りなさい、人形』

『…………』



右手をかざす。
すると、さっきまで人の形を保っていたそれは形を無くし、また彼女の腕に流れ込んでいく。



ブラッド『…………っ』

真姫「……紅花先生」

ブラッド『………………さぁ、包みなさい』



今度は、葵ちゃんへ向けて手をかざす。

かざした手から液体が放出。
みるみるうちに、葵ちゃんの体を包み込んだ。



真姫「…………息は……」

ブラッド『できるわ。この力は包み込んだ人間の血液だけを抜き取るものなの』



それを考えると、このメモリは中々に恐ろしい。
これが悪用されてたら……。
考えたら、背筋が震えた。
128 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 20:07:11.55 ID:ZoiY3X6S0

真姫「あっ」

ブラッド『………………よし』



別のことを考えていたら、目の前の状況が変化した。
いつのまにか葵ちゃんを包む液体から、何本もの管状の物が伸びていた。



真姫「…………これは……」

ブラッド『…………葵ちゃんの体から抜き取った血液よ。混ざらないように外に出してるだけ』

真姫「は、はぁ……」

ブラッド『っと、残念ながら、ここからは話している余裕はないわ』

真姫「っ」



……………………。

そこからはあっという間だった。
葵ちゃんを包んでいた液体が踊るように宙を舞う。

その光景を見て、私は、




真姫「…………綺麗」




ポツリと呟いていた。



ーーーーーー
129 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 20:12:24.62 ID:ZoiY3X6S0
ーーーーーー




ーー バンッ ーー



凛「あっ」



手術中のパネルの光が消えた。
これ、終わったってことだよね!

扉を見ると、



真姫「…………」

紅花「…………」



中から真姫ちゃんたちの姿が出てきた。



凛「あっ」

真姫「待たせたわね、凛」

凛「えっと…………どうだったの?」

真姫「…………」



凛の質問に、




真姫「成功よ、ほら」



葵「すぅ…………」

凛「おぉ!」



その女の子の姿が答えだった。
すやすやとなにもなかったかのような穏やかな寝顔。
それを見る真姫ちゃんの表情も明るい。
130 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 20:19:49.87 ID:ZoiY3X6S0

凛「よかったにゃぁ」

真姫「えぇ、ほんとにね」



紅花「…………っ」



安心してた。
これで事件も終わりだねって。

だから、凛も真姫ちゃんもその変化を見逃してたんだ。



紅花「…………葵さんをお願い」

真姫「……え? あ、あの!」



真姫ちゃんの制止も聞かず、紅花先生は足早に去ってしまった。
って、えっと?



凛「……とりあえず、この子病室まで連れてく?」

真姫「…………えぇ」

凛「じゃあ……んしょ!」



真姫ちゃんじゃ連れてくの無理だろうし、ここは凛の腕の見せどころにゃ!
首と膝下に腕を入れて、抱き上げる。
いわゆるお姫さまだっこってやつ。



凛「よーし! じゃあ、行くにゃ!」

真姫「……凛、葵ちゃんよろしく」

凛「って、真姫ちゃん!? どこいくの!?」

真姫「紅花先生を追うわ!」



ーーーーーー
131 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 20:22:08.46 ID:ZoiY3X6S0
ーーーーーー
132 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 20:30:23.37 ID:ZoiY3X6S0
ーーーーーー


屋上。
紅花先生の後を追って辿り着いたのはそこだった。



真姫「……紅花先生」

紅花「…………」



私の呼び掛けに、ビクッと体を震わせる先生。
うずくまるように、体を丸めている。



真姫「紅花……先生」



もう一度、呼び掛ける。
けれど、彼女は振り返らない。
その代わりに、



紅花「っ、ぐっ……」



聞こえてきたのは、呻き声。
って!



真姫「っ」



慌てて駆け寄る。
そして、顔色を確認するために、彼女の顔を見たーー



真姫「なっ……!?」



ーーと同時に、たじろいだ。

彼女の顔は普通じゃなかった。
血管が浮き上がり、それが胎動していて……。



紅花「は、はっ……」

真姫「紅花先生っ! ねぇ!」

紅花「っ、は、はなれ、なさい……」

真姫「え……?」



苦しそうなその言葉はよく聞こえなくて。
だから、もう一度、聞いたの。
今、なんて……?
それに答えるように、今度は耳に刺すような叫び声で彼女は言った。





紅花「離れてっ!!!!」




『ブラッド』


133 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 20:35:53.49 ID:ZoiY3X6S0


紅花「あ、アァぁぁあ……!』

紅花『ぁぁァァアっ!!!』



真姫「っ、なにが……」



後退る。
叫び続ける彼女の体がみるみる変わっていく。

彼女のすべてが赤に包まれる。

葵ちゃんを包んだあの真っ赤な液体。
あのときの綺麗さはない。
ただ、彼女を飲み込まんと猛り狂う。



真姫「……っ、こんなの……」



ポツリと呟いた言葉は届かない。
彼女の絶叫に消されてしまう。

やがて。
彼女は姿を完全に変えた。




ブラッド『………………ア、アァァ……』




言葉をもたない。
意思もない怪物に。
134 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 20:40:22.65 ID:ZoiY3X6S0

真姫「……紅、花先生……?」

ブラッド『…………ア、ァァ』

真姫「なんで……」



返答はない。
もう言葉は届かない。



真姫「……っ」





…………知ってた、はずなのに。

アイドル研究部の時の事件。
あれで分かってたはずだった。

ガイアメモリが人を変えてしまうことを。

私達にあれだけ好意をもってくれていた『あの娘』でさえ大きく変えてしまった。
それだけ、危険なもの。




真姫「わかってたのに……」



135 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 20:43:55.06 ID:ZoiY3X6S0
いや。
……違う。
分かったつもりになってただけ。
それで、勝手に判断した。



紅花先生なら、ガイアメモリに負けないんじゃないかって。
きっと正しいことに使えるんだって。



でも、現実はそう甘くなかった。
現に彼女は、



ブラッド『ア……アァァア』



メモリに飲まれてしまっている。




真姫「っ、私の……せい……」



危険だって分かってたのに……。
なのに、私が大丈夫だって甘いことを考えたせいで……。



真姫「ごめん、なさいっ……」


136 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 20:45:03.56 ID:ZoiY3X6S0






「大丈夫」

「…………真姫ちゃんのせいじゃないよ」





137 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 20:46:41.14 ID:ZoiY3X6S0


真姫「……え……?」



顔を上げる。
そこにいたのは、



凛「大丈夫にゃ」

真姫「…………凛」



凛がいた。
138 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 20:52:04.08 ID:ZoiY3X6S0

真姫「……凛、でも……」

凛「……でも、じゃないよ」



私の言葉を否定して。
凛は、一歩、私の前に出た。
紅花先生と私の間に、割って入るような形。

そして、続ける。




凛「真姫ちゃんが協力するって決めてなかったら、きっと葵ちゃんは助かってないよ」




それは、そう、だけど。
でも、そのせいで……。



凛「それに、紅花先生だって悪くない」

凛「たしかに他の人の血は抜き取ったみたいだけど」

凛「……でも、誰も不幸になってないもん」



真姫「……凛」



凛「凛はさ」

凛「難しいことはわかんないにゃ」

凛「でも、きっと誰も悪くないし、誰のせいでもないんだよ」

凛「だって、ひとりの命が助かったのはホントなんでしょ?」
139 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 20:56:37.40 ID:ZoiY3X6S0


真姫「っ、えぇ」



頷く。

そうよ。
紅花先生が葵ちゃんを救ったのは事実だもの。
…………うん。



真姫「…………でも、このままじゃ」

凛「分かってるにゃ!」

真姫「…………ねぇ、凛」

凛「うん」




真姫「お願い」

凛「うん」




『サイクロン』



凛「変身っ!」



『サイクロン!!』




凛の体に風がまとわりつく。
そして、風が止んだ頃、そこにはその姿があった。




サイクロン『…………今、助けるからね』



140 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 21:01:48.43 ID:ZoiY3X6S0


ブラッド『ァァア……』



よろよろと。
彼女が近寄ってくる。

背中からは管のように伸びた液体。
それが、



ーー ブンッ ーー



凛の方に!



真姫「りーー」

サイクロン『ふっ!』ブンッ



私が声を呼ぶ前に、凛が手を振る。
それに合わせて、風が吹いたかと思えば……。



ブラッド『ア……ア゛ァァ……』



管が消し飛んだ。

それだけで終わりじゃない。
彼女は体から管を、2本、3本……いえ、それ以上の数を出してくる。

でも。



サイクロン『はぁぁぁっ!』ブンッ



一払いで、管は霧散していく。
141 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 21:05:33.00 ID:ZoiY3X6S0



ブラッド『ア゛ァァ!』



管を消される度に、彼女は叫ぶ。
苦しげな声で。



真姫「…………っ」



それを聞いてるのが辛い。
だから、私はーー




真姫「凛っ!」




叫んだ。
お願いだから、早くーー。

その思いに答えるように、凛は頷く。
そして、





『サイクロンマキシマムドライブ』



サイクロン『……………………ライダーキック』




ーーーーーー
142 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 21:06:49.80 ID:ZoiY3X6S0
ーーーーーー




こうして。
事件は幕を閉じた。




ーーーーーー
143 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 21:07:31.37 ID:ZoiY3X6S0
ーーーーーー
144 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 21:13:51.97 ID:ZoiY3X6S0
ーーーーーー




葵「ねぇねぇ、まきちゃん!」

真姫「……なに?」




数日後。
私は葵ちゃんの病室に来ていた。

ベッドに横にはなっているけれど、もう体には何の異常もない。
健康そのもの。
そんな彼女は、




葵「いつ、退院できるの?」




それが口癖になっていた。

重病が急に消えてしまったということもあり、病院側としては検査はしなくてはいけない。
だから、退院まではもう少しかかるようで。



真姫「……藤さんに聞きなさいよ」

葵「だって、藤ちゃん、わたわたするだけで答えてくれないから」

真姫「……あぁ」



何となく想像できるわね。
慌ててるところ。
…………今後が不安だけど……。
145 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 21:19:13.76 ID:ZoiY3X6S0

葵「あ!」

真姫「なに?」

葵「まきちゃんは知ってる?」




葵「なんでわたしの担当の先生変わっちゃったか」




真姫「…………」



葵ちゃんの質問。
それに私は答えられない。
事実を教えるわけにもいかないし……。

だから、話題をそらす。



真姫「葵ちゃんは……」

葵「うん!」

真姫「…………紅花先生がよかったの?」



正直、彼女は結構性格はきつかった。
医師としてはすごい人だとは思うけどね。

だから、きっと葵ちゃんとしては今の方がいいんじゃないかと思って。
けど、




葵「うん!」

葵「だって、紅花先生の手、あったかかったから」




彼女は笑った。
146 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 21:22:56.41 ID:ZoiY3X6S0

葵「なんかね、わたしが寝てるときによく撫でてくれたみたいで」

葵「それがすごく優しくて、きもちよかったんだ」



真姫「…………そう」



そっか。
葵ちゃんには伝わってたのね。
紅花先生の思いが……。



真姫「ねぇ、葵ちゃん」



私は彼女の名前を呼ぶ。
そして、それを告げた。





真姫「スクールアイドルやってみない?」






ーーーーーー fin ーーーーーー
147 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 21:23:44.60 ID:ZoiY3X6S0
ーーーーーー
148 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 21:24:26.02 ID:ZoiY3X6S0
ーーーーーー
149 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 21:28:31.03 ID:ZoiY3X6S0
ーーーーーー




ーー コンコン ーー




紅花「…………はい」

??「……失礼します。病院にまで押し掛けてしまい申し訳ありません」

紅花「……どちら様、かしら」

??「…………」




??「…………メモリの関係者、とだけ言えば分かっていただけますか」




紅花「っ」

??「そんなに身構えないでください。私は貴女に害をなそうとしているわけではありませんから」

紅花「じゃあ……」

??「お聞きしたいだけです」




??「貴女にメモリを渡した人物のことを」



150 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 21:35:05.00 ID:ZoiY3X6S0

紅花「…………」

??「…………こう聞いた方がよろしいですか?」




??「『亜坂真白』という人物について教えてもらえますか?」




紅花「……そう。やはり彼女は……ただの看護師じゃなかったわけね」

??「はい。彼女はガイアメモリに関わる事件を起こし続けています」

紅花「…………あなたも?」

??「……………………はい」

紅花「教えるのは構わないけれど……」

??「…………」

紅花「まずは、貴女の名前を教えてもらえる?」

??「……そうでしたね。失礼いたしました」

??「私はーー」






海未「園田海未」

海未「ただの復讐者ですよ」






ーーーー To be continued ーーーー
151 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/01/16(火) 21:40:41.47 ID:ZoiY3X6S0
以上で
『真姫「その罪は何色か」』完結になります。

レスをくださった方
読んでくださった方
稚拙な文章・表現にお付き合いいただき、ありがとうございました。

以下過去作等です。
よろしければどうぞ。

1作目
にこ「さぁ、お前の罪を数えろ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1500978922/

2作目
凛「さぁ、お前の罪を数えろ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510213255/

3作目
海未「私の罪を」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1512647204/

また続き書きます。
かっとなって百合作品も書くと思いますが。
その時はあたたかい目で見ていただけると幸いです。
では、また。
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/16(火) 22:01:04.33 ID:8RYGC5LB0

続き期待してる
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/16(火) 22:49:11.24 ID:z0ARjndu0

今回も良かった、次も期待!
あと百合の方も期待!
92.40 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)