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【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その2だよ」【×影牢】

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570 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/17(土) 11:46:39.44 ID:bgBHVRZoo
1レスだけご容赦ください。
これは個人的な独り言なんだけれど。

もともとはこっち(罠だらけ)が主流だったのに、
そも前日譚の「墓場島鎮守府?」の方が知られてるみたいなのは
どうしたもんかねえ? というのがありまして……。

だって、艦娘メインの話の続きが、
サ終したブラゲのキャラが出てくる話なのよ?

絶対読むときに混乱するというか、もういいやってなっちゃうと思うんだよねえ……。

で、こっちを読まないと絶対ハッピーエンドに辿り着けない。これ既定路線です。
あっち(墓場島鎮守府?)だけで終わるよう話を展開すると、どうしてもいい結末に導けません。
私の構成力と想像力では無理です。スーパー御都合主義を爆発させないと無理です。

とりあえず描くだけ描きます。描き切ります。
ご覧になっている皆様、もうしばらくお付き合いの程をよろしくお願い申し上げます。
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/17(土) 12:14:40.89 ID:jZ6+7B0v0
乙です

あっちはエピソード0みたいな立ち位置だしね
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/24(土) 09:36:48.67 ID:I+c4+vh70
こっちはクロスオーバーなので○○系スレ的な紹介されにくいのがデカそうな気が
私自身もようつべの艦これss紹介で墓場島知って色々探してその2まで辿り着いて
とりあえず最新まで読んだ後に向こうが前日譚と知ってこっち読み始めたので…
573 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:36:47.08 ID:ci5cBJ3jo
>571-572
まあ仕方ないでしょうかね……
そもそもあっちが動画サイトに転載されたのもでかいんでしょうね。
クロスオーバーでも受け入れてこちらを読んでくださってる方が
いらっしゃるのはありがたいことです。


それでは続きです。
574 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:37:31.50 ID:ci5cBJ3jo

 * 医療船内 大会議室 *

朝潮「……司令官、全員揃いました!」ビシッ

提督「おう、ありがとな」

吹雪「すっごい久し振りな気がしますね、みんな揃うの!」

北上「てか、よくこの人数が一つの部屋に収まったねえ?」

名取「なんでもありなんですね、この船……」

提督「まあ、人数ぎりぎりだな。メディウムがいたらあふれてたはずだ」

時雨「僕も参加して良かったのかな?」

扶桑「いいに決まってるわ。ね、山城?」

山城「ええ、もちろんです扶桑お姉様」

島妖精A「わたしたちにも声がかかるとは思わなかったが……」ヒョコッ

島妖精C「忘れずにちゃんと声をかけてくれて嬉しいけどね!」

長門「今回は一体どんな話だ?」

提督「ちょっと悩んでることがあってなあ。お前ら全員にかかわることだし、ちゃんと俺の口から話しておこうと思うんだ」
575 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:38:15.88 ID:ci5cBJ3jo

提督「まず……一度座ってもらったところで悪いが、全員席を立ってくれ。ちょっと班分けをさせてもらう」

全員「「???」」

提督「これから名前を呼ばれた奴は、こっち側に座ってくれ。如月」

如月「は、はい!」

提督「吹雪、朧」

長門「……着任順か?」

神通「だとしたら不知火さんが呼ばれていませんね」

提督「電、由良、明石、朝潮、霞、初春、比叡、伊8……」

不知火「……これは、まさか」

提督「榛名、那珂、扶桑、山城、加古、鳥海。1つめの班は以上だ」

提督「それから2つ目の班は利根、暁、雲龍、初雪、山雲、大和、武蔵……ああ、それと時雨もここに入ってくれ」

時雨「僕も?」

提督「ああ。で、残りが3つ目の班だ、妖精たちも含めてな」

雲龍「龍驤とは別の班なの……?」シュン

武蔵「ずいぶん人数差があるな?」
576 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:39:01.69 ID:ci5cBJ3jo

不知火「司令。これはもしかして……」

提督「まあ待て不知火、俺が言う」

不知火「……」

提督「おそらく不知火のほかにも察してる奴はいると思うが、この班分けは、轟沈したことがあるかどうか、で、分けている」

 「!!」ザワッ

利根「吾輩たちはどういう扱いなのだ」

提督「お前らはグレーゾーンってとこだな」

提督「海軍の連中は、轟沈した艦娘が深海棲艦になることを恐れている」

提督「初雪や暁、雲龍は、轟沈こそしてないものの、海上で意識を失っているし、利根も一度は人の手によって死にかけた」

提督「山雲は、完全なとばっちりとはいえ、深海棲艦と物理的な接触事故を起こしている」

提督「沈む前の記憶を持ってきている時雨も、正直どっちに分類したらいいかわからねえ」

提督「そして大和と武蔵は、あの鎮守府で建造された艦娘だ。大和の風評もひどいもんだし、余所でどういう扱いされるかわかったもんじゃねえ」

日向「余所?」

最上「提督、もしかして……!」
577 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:39:46.62 ID:ci5cBJ3jo

提督「で、なんでこんな班分けをしたかというとだな。できればお前らには、俺の手下(てか)から離れてほしいと思ってるんだ」

 ザワッ!

潮「そ、そんな……!?」

提督「その優先順位として、轟沈してない艦娘を優先して送り出したいと考えている」

金剛「Noooooooooooooooooooooooo!」

長門「どういうことだ提督!!」

提督「先の会議で知っての通り、俺はあの島で『提督』を続けることになった」

提督「ただ、その立ち位置はこれまでと全然違う。海軍から離れて、人間の敵となりうる深海棲艦とメディウムも束ねることになる」

提督「単純にそれだけなら、俺は世界の敵とみなされて、そのまま撃滅させられるところだろう」

提督「しかし、海軍から、深海棲艦との対話の場を設ける、という条件付きで、存続を認められることになった……」

提督「言い方はどうあれ、俺の立場はそういうところだ」

全員「「……」」

提督「島に常駐するのは、そういった環境でも問題ないと胸張って言える奴らだけにしたいんだ」

提督「メディウムたちとはこれまで一緒に暮らしてきたし、そこまで険悪にはならなかったが、深海棲艦とは戦争してきた間柄だ」

提督「艦娘との因縁だって浅いわけじゃねえだろう。それに、海軍から離れるってのも艦娘にとっては一大事じゃねえかな」
578 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:40:46.01 ID:ci5cBJ3jo

提督「だからこそ、轟沈を経験している艦娘であっても、早めにその不安材料を解消する方法を見つけて、外に出てほしいと思ってる」

如月「私は平気よ?」

提督「……まあ、なにがなんでも全員追い出したいわけじゃねえ。一緒にいるのが望みなら、そうできるようにしたい」

提督「人間がいなくても艦娘が住める場所を作るのが最終的な目標でもあるし、俺自身の望みではあるが……」

提督「ここにいる全員を深海棲艦と向き合わせて全部面倒見ろってのは、さすがになあ……手や口どころか体が足りねえよ」

提督「徐々に慣らしていきたいってのもあるし、最初は苦労するだろうから、少人数から始めて様子を見たい、ってのが俺の本音だ」

初春「なるほどのう……」

提督「妖精たちも深海棲艦たちと同居なんてしたことないだろう?」

島妖精B「まあ、確かにね〜」

提督「でだ。今回、3つ目の班に分けた艦娘は、問題こそ起こしてはいるものの轟沈したわけじゃねえ」

提督「深海棲艦になる可能性はないだろうし、深海棲艦とは少し『遠い』艦娘だと思ってるんで、優先して移動の候補に挙げたというわけだ」

霧島「……理にはかなっていますね」

提督「神通と五月雨は、前にいた鎮守府から誘われてるんだろ? 俺にもその話が来たし、さっき直接会ってきた」

提督「それ以外にも、これまで俺が提督業やってて、ある程度は信じてもよさそうな連中との付き合いもできた」
579 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:41:31.02 ID:ci5cBJ3jo

提督「いい機会だから、これを機に何人かは転籍したらどうかと思ってる」

 ザワザワ…

提督「例えば、若葉」

若葉「ん?」

提督「お前、五月雨と一緒に礼提督んところに行かねえか?」

五月雨「!!」

若葉「……新米提督だろう? なぜだ」ジロリ

提督「おそらくお前の因縁の相手は、五月雨の因縁の相手でもある」

若葉「!!」

五月雨「レ級と、戦ってたんですか……!?」

提督「若葉が言ってた敵艦の特徴が似てんだよ。これから鎮守府そのものを再建しなきゃならねえ俺たちと一緒にいるより……」

提督「レ級の撃破を目指す五月雨たちと一緒のほうが、打倒するための士気も、遭遇する確率も高いはずだ」

提督「それから、若葉は入念に準備するほうだからな。戦力不足の状態でレ級と戦おうとするなら、それを諫めもするだろう」

若葉「ふむ……」
580 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:42:16.50 ID:ci5cBJ3jo

提督「それと長門」

長門「私か!?」

提督「お前もお目付け役として、五月雨たちと一緒に行ってみねえか?」

提督「五月雨をスカウトしてきた新しい提督ってのが、言ってしまえば小娘なんだ」

提督「いくら父親が憲兵の隊長だとしても、海軍でやっていけるかと訊かれたら、厳しそうだな、ってのが俺の正直な第一印象だ」

五月雨「……」

提督「お前に、五月雨と若い提督の保護者というか、指南役になってもらうのはどうか、ってな」

長門「むう……」

提督「一応言っておくが、潮もついて行っていいぞ」

潮「えっ!?」

提督「最上と三隈も一緒にどうだ?」

最上「えっ」

提督「礼提督の父親が憲兵の隊長なんだ。女性提督でもあるし、少なくとも最上が受けたようなセクハラ騒ぎは起きないと思いたいな」

三隈「は、はあ……」
581 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:43:00.86 ID:ci5cBJ3jo

提督「龍驤と陸奥と、それから雲龍も一緒に行くか?」

陸奥「!!」

龍驤「う、うちも!?」

提督「長門が行くなら陸奥が一緒でもいいだろうし、その陸奥とよくいる龍驤たちもどうせなら、ってな」

雲龍「私も一緒に行っていいの!?」パァッ

提督「班分けとしてはグレーにしたが、ここまで見てきて特に不安になる要素もねえし、悪くはねえと思ってる」

長門「……」カンガエチュウ

提督「まあ、これは俺からの命令じゃなくて『提案』だ。行きたくない奴は行かなくていいし、今すぐ結論出せって話でもねえ」

若葉「そうか。では、若葉は五月雨と一緒に行かせてもらいたい」

提督「ふふ、決断が速えな……んじゃあ若葉は連絡させてもらう」

五月雨「若葉ちゃん……!」

提督「一応断っておくが、変なこと言って新米提督を困らせるんじゃねえぞ?」

若葉「若葉は変なことなど言わないぞ」

五月雨「うーん……でも、時々変なこと言いますよね? 特訓は死ぬまでやりたいとか。死んだら駄目ですよ?」メッ!

若葉「……そうか」ポリポリ

初春(あの若葉が毒気を抜かれておる……案外良いコンビかもしれんの)
582 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:43:45.84 ID:ci5cBJ3jo

提督「まあ、転籍するかどうかはゆっくり考えてくれ。他にも何人かに個別に連絡が来てるんだ」

長門「というと誰だ?」

提督「まず、黒潮」

黒潮「へ!? うち!?」

提督「戦艦馬鹿の仁提督から、お前の安否を確認させろと話が来てる。お前、これを機に雪風たちと合流したらどうだ?」

黒潮「……!!」

提督「ついでに日向と伊勢。お前らも黒潮についてけ」

伊勢「ええ!?」

日向「どういう意図があっての発言だ」

提督「あいつ、海軍に入る前に余所の日向に助けられてんだ。戦艦贔屓なのもそれがきっかけなんだが、確か伊勢型はいなかったはずだ」

提督「ちいとばかし単細胞で猪突猛進のきらいがあるが……ま、一度話をしてみるのもいいんじゃねえかと思ってよ」

日向「ふむ……」

黒潮「なあ、うち、指名手配されてたんちゃうん?」

提督「それなら解除してもらったぜ。それっぽい艦娘がうちの鎮守府に流れ着いて、そのまま埋葬したっつってな」

提督「書類も艤装も全部燃えちまったし、確かめようがねえからなあ?」ニヤリ

黒潮「……あ、あくどいやっちゃなあ……!」
583 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:44:30.83 ID:ci5cBJ3jo

提督「それから古鷹と朝雲」

朝雲「あー……」

古鷹「もしかしてL提督ですか?」

提督「ああ。なんでもあいつ、びっくりしすぎて過呼吸起こしてぶっ倒れたとか言ってやがったな」

朝雲「えええええ!?」ガタッ

古鷹「だ、大丈夫だったんですか!?」ガタタッ

提督「一応、香取からは、大したことはねえって話はあったぞ」

提督「あと、足柄、千歳、加古、鳥海も無事かどうか確認してほしいって話も来てた」

加古「ってことは……鹿島たちかねえ?」

鳥海「そうだと思います」

足柄「あたしたちの場合は海風ね」

千歳「なんだか懐かしいわね〜」

提督「加古と鳥海は難しいが、古鷹と朝雲、足柄と千歳はL提督んところに行ってもいいと思ってんだ。あいつも割とまともになったし」

提督「できれば加古と鳥海も……ついでに山雲も連れてって良い保証を、どうにかして付けてやりてえな」

朝雲「!!」

山雲「……!!」
584 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:45:15.98 ID:ci5cBJ3jo

提督「それから隼鷹」

隼鷹「!」

提督「ショートランド泊地にいるR提督と連絡が取れた。お前らに難癖をつけたJ少将は、今回のクーデターの首謀者だ」

提督「果たしてJ少将の判断が正しいものだったのか。細かい事情聴取のため、一度日本へ帰還させられるらしい。お前も同席しろとのことだ」

隼鷹「……ほ、ほんと?」

提督「ああ、ついでに飛鷹も一緒だとよ。できればそのまま、3人とも日本に帰れるよう手配するそうだ」

隼鷹「……い、いやったあああああ!!」ヒャッハー!

提督「それから……神通」

神通「はい」

提督「謀殺されたと思われてたF提督が生きてたんだってな?」ニッ

神通「はい……!」

提督「お前に関しちゃあ何も心配してねえから、F提督のところに行くことに異論はねえが……お前からはなにかあるか?」

神通「……提督」ピシッ

提督「ん」
585 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:46:00.88 ID:ci5cBJ3jo

神通「F提督のかたきを取らせていただいたこと……そして、F提督の元へ戻れるという、これ以上ない結果に導いてくださったこと……」

神通「この神通、感謝の気持ちでいっぱいです……!」ポロポロ…

提督「……ここまでやってこれたのは、お前が力を貸してくれたからだ。こっちこそ、感謝してるぜ。神通」

神通「提督……! 本当に、ありがとうございました……!!」ペコリ

提督「……」フフッ

隼鷹「ほんとマジ感謝だよぉ! あたしからもちゃんとお礼を言わせておくれよぉ!!」ウルウル

提督「おう、けどまだ油断すんじゃねえぞ? 一応は事情聴取だからな」

提督「あとは、川内と暁。お前らはX中佐のところに行ってみねえか?」

暁「えっ!?」

川内「提督!?」

提督「なんだその鳩が豆鉄砲食らったようなツラは。せっかく昔の仲間に逢えたんだ、一緒にいたほうがいいだろ」

川内「そ、そりゃあそうかもだけど……」

暁「司令官はそれでいいの?」

提督「俺はお前らがいいようにすればいいと思ってるが? むしろ響やX中佐のほうがそうしたいって思ってんじゃねえのか?」

暁「……」ウーン
586 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:46:45.95 ID:ci5cBJ3jo

提督「でだ。後出しで悪いが、俺がこうやってお前たちに移動を勧める理由というか目的が、実はほかにもうひとつある」

川内「え、それってなに?」

提督「この島の領海に入る際、かつてあの島に滞在していた艦娘が同伴していることを、島近辺に入る条件のひとつにしたいと思ってる」

全員「「!」」

霞「それってつまり、私たちを通行許可証の代わりにするつもり?」

提督「ああ。お前らの紹介、随伴がなければ、俺たちに攻撃されても文句を言うな、ってことにしたいんだ」

朧「いつかのテレビ局の人たちみたいな騒ぎを起こされたくないですもんね」

提督「勝手に島の中を物色されるなんざ、不愉快極まりねえ。深海棲艦の連中にしたって、同じかそれ以上に嫌悪するだろうさ」

千歳「っていうか、普通に不法侵入っていうか、領海侵犯よね?」

提督「国際法に従うならな。中には猫をかぶって、お前らに?をついたうえで俺たちを騙し討ちしようとしたり……」

提督「あるいは、そいつらの都合のために俺たちを騙して利用しようとする奴も現れるかもしれない」

提督「そういう奴らを問答無用で排除するために、そういう取り決めにしたいんだ。治外法権なんか認めさせる気はねえからな」

川内「私たちにX中佐のところへの移動を勧めたのは、そっちの理由のほうが強いってこと?」

提督「X中佐のような連中に対してはそうだな。お前たちの感覚で、これなら俺と話ができそうだ、って判断してもらいたいってのもある」

提督「とはいえ、X中佐はそんな心配も必要なさそうではあるが」
587 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:47:31.39 ID:ci5cBJ3jo

提督「で、今の時点で深海棲艦と積極的にコンタクトを取りたいのは、おそらくX中佐とF提督……H大将もまあ入るか?」

提督「楽観的な見方だが、その3人が粗相することはおそらくないだろう。メディウムの出番はしばらくないと見ていいだろうな」

隼鷹「X中佐の叔父のほうの大将は?」

提督「あいつは駄目だろ、会わせても顰蹙買って終わりだ。態度でけえし、どんな場面でも自分の意見を押し通そうとしてるし」

隼鷹「あー、やっぱり?」

那智「隼鷹、お前もH大将に制止されていたのを見ただろう。わかってて言ってないか?」

隼鷹「ひひっ、まあねえ」

武蔵「……そう考えると、H大将のところにも誰かに行ってもらったほうがいいわけか」

提督「ま、そうだな。縁ができたのは朧だが、轟沈経験艦だし……」

北上「それなら、あたしが行こうかねえ?」

明石「北上さん!?」

北上「霰と満潮も。大将の下で働けるってのはなかなか魅力的だと思うけど、どーぉ?」

霰「ありかも……」コク

満潮「まあ、私はいいけど……」
588 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:48:15.98 ID:ci5cBJ3jo

明石「い、いいんですか?」

北上「いいもなにも、あたし自身は環境激変したあの島に居続けるのは難しいよねー、って、フツーに思うわけさ」

北上「多分、名取とかもそうなんじゃないの?」チラッ

名取「そ、そうですね……」

北上「あたし的にはさ、せっかくまた話せるようになった明石たちと繋がりが切れるのもなんだし……」

北上「だったら、これからもこの島に関わりのある人んところに行ってみるのもいいかもね、って」

明石「うーん……」

北上「それにあの人、秘書艦が大井っちらしいんだ。どんな人か、ちょっと気になるよねー」

提督「おおいっち?」

明石「球磨型軽巡洋艦、4番艦の大井さんです。北上さんは3番艦で、この二人は改装によって重雷装巡洋艦になるんです」

明石「ちなみに5番艦の木曾さんも、改装の2段階目で重雷装巡洋艦になります」

提督「ふーん……まあ、信用するかどうかは北上が決めてくれ、俺はそれに従うさ。朧も最初の口利きを頼む」

朧「はいっ」

提督「とりあえず。まずは俺からそういう提案をして、向こうが素直に飲んでくれるか、ってとこだな」
589 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:49:00.75 ID:ci5cBJ3jo

提督「俺の言いたいことはだいたいこんなところだ。何か質問は?」

如月「ねえ、司令官は、いつからあの島に住むつもりなの?」

提督「正直、とっとと荷物まとめて島に移動したいんだがな……昨日乗り込んできた新顔の船医がもう少し検査させてくれってうるせえんだよ」

提督「島は泊地棲姫が整地したらしいが、どんな設備があるのか確認しておきたいし……ニコたちも自分の持ち物持参してくるらしいしよ」

提督「俺たちの……つうか、艦娘の分の生活スペースも早いうちに確保しておきたいんだよな」

如月「ニコちゃんからも、体調が万全でないなら早く島に来て、魔力槽に入ってほしいって言われてたわよね?」

提督「ああ。あの医者いろいろ面倒臭えし、検査すっぽかすか……どうせあのヤブの好奇心からくる検査だろうしな」

加古「そのうち解剖させろとか言い出したりしないだろうね?」

提督「……なくはなさそうだな」

龍驤「そら洒落にならんで……」ゾワワ

利根「うむ……」ゾワワ

提督「あ、そうだ。そういや、俺の預金通帳ってまだ使えんのか? 足りないものがあったら買い物したいんだが」

不知火「それでしたら、不知火が預かっております。まだ使用可能だと思いますが」

提督「俺の戸籍の扱いとかどうなるかがわかんねえからな。早めに何かしねえと、死人扱いされて使えなくなるかもしれねえな」
590 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:49:45.56 ID:ci5cBJ3jo

提督「それから一番気になるのはドックと工廠だ。まさか残る艦娘にも魔力槽に入れとかいうのはちょっとなあ」

明石「あー……それはそうですねえ。工具類も、最低限のものは持ち出してきたけど……またいろいろ揃え直しかあ」ガックリ

提督「焼失したものが結構どころじゃなく痛いんだよな。発電機とか風呂とか、食堂に作ったステージとか……」

那珂「ああー……」

霧島「音響設備もそうですね……」ガックリ

比叡「あの厨房も燃えちゃったんですよね……」ガックリ

初雪「畑や花壇もそう……」ドンヨリ

山雲「ああー……」ガックリ

神通「ですね……」ウナダレ

武蔵「……手塩にかけてきただけに、なくなったと思うとつらいものが多いな」

大和「諦めて買いなおせるものは買いなおしましょう。ないものはないもので、改めて新設するしかありませんね」

吹雪「どうせならもっと大きく作り直さないと! 私たちだけじゃなく、深海棲艦やメディウムも住むわけですし!」

提督「……そうだな。将来を見据えて、がっつり作り直さないとな……!」

大和「そうです。そういう意味では、提督……いよいよ提督の夢をかなえるときが来たのですね」
591 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:50:31.03 ID:ci5cBJ3jo

提督「ああ、そういうことだ。そうだな……ちったあ気合入れるか……!」

不知火「司令……!」

吹雪「司令官! やる気になってくださったんですね!!」

暁「これまで物騒な方向にしかやる気を出さなかった司令官が、ものすごく健全な方向でやる気になってるわ!」

比叡「これなら安心ね!」

電「安心なのです!!」

明石「成長したなあ……」ウンウン

霞「やっと真面目になったわね。ほんっと、長かったわ」ハァ…

提督「……」

武蔵「貴様の日頃の行いの問題だろうが。そう面白くなさそうな顔をするな」

提督「いやまあ、いいけどよ……」

朝潮「司令官! 朝潮は、これからも司令官のために尽力させていただく覚悟です!」ビシッ

吹雪「あっ!? 朝潮ちゃんずるい! 私だって頑張っちゃうんだから!」

朧「朧も、あたらしい居場所と提督を守り抜きます!」
592 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:51:15.96 ID:ci5cBJ3jo

如月「うふふ、みんな張り切ってるわねぇ」ニコニコ

金剛「ぐぬぬ〜、なんだか向こうのグループがうらやましいデース……!」

摩耶「いやいや金剛さん、あっちのグループは仮りにも轟沈したんすから。うらやましいとか言っちゃ良くねえっすよ」

霧島「そうですよ金剛お姉様。私たちは、私たちにしかできないことをやるべきでしょう」

金剛「ぐぬぬぅ〜」

提督「とりあえず、今の時点で俺と一緒にあの島に住むつもりのやつ、手を挙げてく」

金剛「ハーイ! ハイハイハイハイハーーーイ!」ブンブン

不知火「金剛さん、ステイ」ギロリ

金剛「」スッ…

榛名「……」

提督「……金剛は一度冷静になってから判断したほうがいいな」

金剛「テートクゥ〜……」ウルウル
593 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:52:00.94 ID:ci5cBJ3jo

提督「いや、まじめに考えろよ。今のお前は勢いだけじゃねえか……とりあえずほかに希望者は?」

如月「はーい」キョシュ

吹雪「はいっ!」バッ

朧「はいっ!」バッ

伊8「はい」スッ

朝潮「はいっ!」ビシーッ

大和「大和も残ります!」ビシッ!

榛名「榛名も大丈夫です!」キョシュ!

提督「……」

長門「この辺も説得しても無駄そうだと思うがな」

提督「……一応、面談させてもらうからな?」

比叡「私も、一応居残りかな〜……特に行く当てもないし」

明石「うーん……」

霞「明石さんは手を挙げないの?」

明石「さっき提督が言ったとおり、設備が心配なの。私が行っても、工廠がないんじゃ役に立てないだろうし……霞ちゃんは?」

霞「あたしはまだ考え中。ついて行っても役に立てるかは別よ」
594 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:52:45.81 ID:ci5cBJ3jo

提督「他にもそういう不安があるなら教えてくれ。今すぐ決めろって話じゃねえし、保留でいいぞ。他には?」

扶桑「はい」キョシュ

山城「扶桑お姉様ぁぁ!?」

扶桑「あら、なあに山城?」

山城「ふ、ふそ、扶桑お姉様はここに残るんですか!? 深海棲艦と一緒の生活ですよ!?」

扶桑「ええ、心得ているわよ。私は常々提督にお世話になってるもの。これからも変わらず提督のお力になれればと思っているわ」ニコー

山城「うぐぐ……」

那珂「うーん、那珂ちゃんも残ろうかなあ」

山城「んなっ!?」

提督「……お前がそう言うとは思わなかったな。いいのか?」

那珂「とりあえずー、昔、提督さんが言ってた、那珂ちゃんの出自を隠して〜って話は、もう通用しませんよね」

那珂「そうなると、轟沈した艦娘が外へ出ても問題ないことが証明されないと、那珂ちゃんとしても安心できませんしー」

那珂「せっかくだから、深海の子たちにも、那珂ちゃんのライブ見てもらってもいいかなーって!」

提督「じゃあステージ設営は必須、と。できれば屋内で欲しいとこだが、そこは家主と相談だな」

那珂「はーい!」

山城「……」
595 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:53:30.88 ID:ci5cBJ3jo

時雨「それじゃあ、僕も一緒に残ろうかな」

山城「しぐっ!?」

時雨「考えてみたら、提督以外に既知の人がいないしね。それに、提督にお願いしたいこともたくさんあるし」

提督「俺にか?」

時雨「うん。提督に相談に乗ってもらいたいんだ」

提督「相談ね……わかった。それは今すぐでなくてもいいのか?」

時雨「うん、落ち着いてからでいいよ。ありがとう」

山城「……」

扶桑「それで、山城はどうするの?」

那珂「山城ちゃん?」

時雨「山城?」

山城「……う、うぐぐ……わ、わかりました! 私も一緒に行きます!」グスッ

那珂「な、なんで泣いてるの!?」

山城「だ、だって、みんなで私を仲間外れにぃ……」グスグス
596 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:54:16.05 ID:ci5cBJ3jo

扶桑「そんなことないわ。それとも、そんなに提督と一緒が嫌なの……?」

山城「そ、そんなことはありませんけどぉ……!」ボロボロボロ

時雨「山城は素直に行きますって言えないだけなんだよ」

扶桑「ふふっ、そういえばそんなところもあるわね」ナデナデ

那珂「ほらー、山城ちゃん、泣かない泣かない」ナデナデ

時雨「山城は面倒臭いなあ」ナデナデ

山城「な、なんでみんなで私の頭をなでるんですか!?」

扶桑「あら、嫌だった?」

山城「いえ……もっと撫でててください」カオマッカ

提督「本当に面倒臭え奴だな」

山城「提督にだけは言われたくないわっ!!」ガーッ
597 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:55:01.47 ID:ci5cBJ3jo

提督「……やれやれ。他には?」

初雪「……ん」キョシュ

提督「初雪!? お前も残んのか!?」

初雪「うん……練度、低くないし。ちょっとだけ、本気出す、から、見てて」フンス!

提督「……まあ、やる気出してくれてるんなら……そうか、お前もか……」ウーン

初雪「……不安?」

提督「正直言えばな」

初春「ふぅむ……わらわはどうしようかのう。外の世界を見て回りたいところじゃが……」

提督「それなら初春も保留ってことにしとくか。お前の場合、轟沈したことを隠して不知火と一緒に外回りした実績もあるしな」

初春「うむ。先送りで頼む」

提督「あとは……」

敷波(あたしはどうしようかな……残っていいと思うけど)チラッ

由良(提督さんのところに残りたいとは思うけど……)ウーン

電(今のままだと敷波ちゃんだけ離れ離れになっちゃうのです……)ウーン

敷波(何悩んでんだろ、あの二人)

大淀「……」

敷波(大淀さんもすごい顔して悩んでるみたい……別に悩む必要なさそうなんだけどなあ)チラッ
598 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:55:45.76 ID:ci5cBJ3jo

提督「あとは考えがまとまってねえようだし、こんなとこか? 逆に、若葉のほかに余所の鎮守府に行きたい奴はいるか?」

白露「はーい!」

島風「白露!?」

提督「白露か。どこか行く当てあるのか?」

白露「ないよ! ないけど、北上さんたちが言ってたことを私たちに当てはめて考えてみたの」

白露「それで、冷静に私たちがこの島で何ができるかを考えると、あんまりないような気がするんだよねー」

白露「それだったらさ、この辺の波の具合とか知ってるわけだし、外に出て案内役をしたほうがいいかなあと思って!」

提督「なるほど……」

白露「それに、提督は私たちのことを心配してくれてるわけでしょ? 深海棲艦と一緒にいて衝突しないか、って」

白露「私も不安がないわけじゃないし、提督が心配してくれてるなら、その通りにして一度距離をとってもいいかな、って思ったんだよね」

提督「……」

白露「どしたの?」

提督「いや……お前、そんなに聞き分け良かったか?」

白露「なにそれ!? 私はいつもお利口さんだよ!?」
599 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:56:31.30 ID:ci5cBJ3jo

提督「話を全部聞き終わる前にすっ飛んでいく奴が何を言ってんだ」

白露「そんなことないし!? 島風もいいよね?」

島風「う、うん……」

白露「? 島風、どうしたの?」

提督「白露が心配なんだろ。その改造しまくった艤装がお前の負担になってないか、とか、離れ離れにされないか、とかな」

島風「そ、そう……うん」モジモジ

白露「島風……」

提督「その辺は俺から釘を刺さなきゃな。二人一組で連れてこいって条件付き付けるって手もある。悲観はさせねえよ」

島風「そ、それもあるけど! そうじゃなくて!」

提督「んん?」

島風「提督には、いろいろ相談に乗ってもらったし……お仕置きは嫌だったけど、すっごくお世話になったから……」

島風「提督と離れ離れになるのも、寂しいな、って」ウルッ

白露「う、うん……それはね、あるよね」ウツムキ

提督「……」アタマガリガリ
600 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:57:16.52 ID:ci5cBJ3jo

不知火「……専属の連絡員、あるいは輸送艦隊という形で関わっても良いかもしれませんね」

島風「えっ!? なにそれ!」

白露「そういうのもあるの!?」

不知火「この島の艦隊の独立にあたり、様々な形で人員を増やす必要が出てくるでしょう」

不知火「どのような役割が不足しているか、不知火が本営へ確認しましょう」

提督「悪いが頼む。俺が顔を出さなきゃいけないような要件があれば回してくれ」

不知火「承知しました」

青葉「……でしたら、青葉もそのあたりのお堅い役割をいただいたほうが良さそうですねえ?」

提督「まーたお前は危ない橋を渡りたがんのか?」

青葉「どうせ余所へ行っても厄介者扱いされるでしょうからね〜」

提督「ま、その辺はお前を受け入れてくれる奴がいるかどうか、だな。他に、希望がある奴はいるか?」

筑摩「あの……」ス…

利根「筑摩?」
601 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:58:00.89 ID:ci5cBJ3jo

筑摩「利根姉さんが良ければ、なのですが……私と利根姉さんも、F提督の鎮守府へお世話になるのはいかがでしょうか」

利根「なに!?」

神通「筑摩さん……!?」

筑摩「利根姉さんは、よく神通さんから相談を受けていたそうなので。一緒に赴いて、これからも何か力になれれば……と思いまして」

利根「むう……!」

筑摩「もちろん、神通さんやF提督の賛成を得られれば、ですが」

神通「い、いえ! そのお申し出は、私には、とても嬉しいです……!」パァッ

利根「……」ムゥ…

筑摩「利根姉さん?」

利根「ん!? あ、ああ、大丈夫じゃ。ちと思うところがあってなあ……」

神通「利根さん……?」

利根「吾輩がF提督のもとへ参ずるのはやぶさかではない。それが通れば、良い話……ありがたい話だと思っておる」ウデクミ

利根「ただ気がかりは、吾輩も一度、メディウムたちの魔力槽へ入ったことがあるからのう……」
602 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:58:45.93 ID:ci5cBJ3jo

利根「提督の体の件があったように、吾輩も何かしら影響を受けてはいまいか、という不安はある」

神通「!」

筑摩「!」

明石「ああ……確かに、ないとは言えないかもしれませんねえ」ウーン

利根「魔力槽には如月も入ったそうじゃが、この鎮守府に残るという以上、そこまでの心配は無用であろう」

利根「じゃが、吾輩がここから離れて問題を起こしたとなれば、神通たちの活動にとって負担となり妨げになる」

利根「杞憂であればよいと思うが、そこが不安ではあるな」

神通「そう……ですか、それは確かに……」

筑摩「利根姉さん……」

利根「重ねて言うが、筑摩の提案が受け入れられれば、それはありがたい話だと思っておる。前向きに考えたいとは思っておるのじゃ」

神通「……」

筑摩「利根姉さん……」

提督「その辺はニコと相談ってとこか。この手の話題は、ルミナあたりが目を輝かせそうだが」

古鷹「文字通り輝かせてますからね」フフフッ

龍驤「古鷹も輝いとるやんけ」ツッコミ

 アハハハ…
603 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 17:59:31.05 ID:ci5cBJ3jo

利根「……」

利根(むう……吾輩の立場なら島に残るのが妥当だと踏んでいたが、まさかそうくるとは……)

利根(確かに筑摩の言う通り、神通についていけば、外の世界に触れられるし、気掛かりであった神通の話し相手にもなれる)

利根(さすがは筑摩、妙案である。しかしじゃ……)ムムム…

利根(提督とのスキンシップやちょっとした身の回りのハプニングが楽しかったというのもまた事実……!)

利根(島に残ってもう少し提督とじゃれあいたいが、そんな理由で島に残ると言い出せば、姉としての威厳にかかわる!)グギギ…!

利根(筑摩は筑摩で可愛い妹ではある……じゃが、あの春画本のような予期せぬドキドキ感にも憧れる……!)

利根(ああ、何たる俗物的な……このような吾輩の破廉恥な本音を知ったとしたら、筑摩も神通も吾輩に幻滅するであろう……!!)

利根「うぐうう、吾輩は、どうすればいいんじゃあ……!!」アタマカカエ

神通(利根さん……ごめんなさい、私のために……!)ウルッ

筑摩(利根姉さん……!)ホロリ

島妖精A(……利根から邪な気配が感じられるのは何故だろう)タラリ

島妖精G(しかも珍しく神通がツッコんでないね)

島妖精A(だから直接脳内にツッコミを入れるなと! お前本当に魚雷妖精か!?)
604 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 18:00:15.86 ID:ci5cBJ3jo

提督「まあとにかくだ。留まるにしても出ていくにしても、お前たちには全員無事でいてほしい」

提督「とにかく困ったときは俺に言え。なんとかしてどうにかすっからよ」

霧島「……根拠がアレですが、頼もしいですね……」

長門「ああ。ただ、ひたすら物騒な感じも否めないが」

五十鈴「ほんと、いざ頼ったらすごいことになりそうで怖いわね……」

朝雲「そ、そうですね……メディウムどころか深海棲艦も味方につけちゃいましたから」

那智「その気になれば鎮守府一つ、潰しかねないか……そうせざるを得ないような場面が来なければ良いが」

提督「話は以上だ。他に何かあるようなら、個別に聞きに来てくれ。解散!」

 ザワザワ…

提督「さてと……」

如月「司令官!」

提督「ん? どうした」

如月「早速だけど、島に行きましょう?」

吹雪「行きましょう行きましょう!」

提督「そうだな……」
605 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 18:01:00.95 ID:ci5cBJ3jo

明石「あ、提督。私も見に行っていいですか? 工廠のスペースがあるかどうか確認したいんで。工廠の妖精さんたちも連れていきますね」

提督「ああ、残るつもりなら場所を確保しないとな」

朧「……提督? 明石さんを引き留めないんですか?」

提督「そりゃあ、明石みたいに残ってもらえると助かる艦娘はいるが、そいつらだけ声をかけるわけにはいかねえだろ」

提督「残る残らねえは当人の意志を優先したいんだよ。これを機に新しい居場所を見つけてもいいだろうし」

提督「むしろ俺は、お前たちが残ってくれることに頭を下げて礼を言わなきゃならねえ。島が燃えたのは俺の不始末なんだからな」

如月「またそうやって自分ひとりで背負い込むんだから」ムスー

朧「どうやったらそこまで卑屈になれるんですか」ジトッ

吹雪「そうですよ! これから深海棲艦とも一緒に過ごすんですから、しっかりしてください!」

提督「いや、これ普通に俺の不始末だろ? つうか一度死んでるお前らがそういうこと言うのは、なんか違う気がするんだが」

電「司令官さんだって死にそうな目に何回も遭ってるのです!」

初春「馬鹿は死んでも治らんときたか。筋金入りじゃのう」

長門「やれやれ。久しぶりだな、このやりとりも」

提督「いや……今回ばかりは、俺が責められるのが正しいような気がするのは俺だけか?」
606 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/09/24(土) 18:01:46.60 ID:ci5cBJ3jo
と言うわけで今回はここまで。
次回やっと島に(一旦ですが)戻ります。
607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/11(火) 15:15:33.81 ID:Ktr4r0zy0
乙です。このシリーズ死ぬほど好き
608 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:29:47.32 ID:0D02rL2Vo
刹那五月雨撃ち

続きです。
609 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:30:47.03 ID:0D02rL2Vo

 * 墓場島沖 洋上 *

 ザザーン…

(提督を艤装の上に乗せた大和と艦娘の一団が、島に向かって航行している)

霞「勝手に抜け出してきたけど、大丈夫なのかしら……」

明石「心配なら、霞ちゃんだけ戻る?」

霞「わ、私は朝潮姉や明石さんのほうが心配よ!?」

提督「まあ、不知火に言伝を頼んだし、あいつらが俺たちを攻撃するような真似もしないだろう」

如月「司令官のお世話をしてた看護師さんも、本営から来た船医さんが暴走気味だから気をつけて、なんて言ってきたものね……」

提督「あの野郎、まじめに俺を解剖するつもりだったのかね」

大和「あぶないところだったかもしれませんね?」

明石「あの看護師さんの立場が悪くなってないといいですけどね……」

提督「……」

明石「あ、メディウム使って船医さんに何かしようとか考えないでくださいよ!?」

提督「なんだ、駄目か」
610 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:31:32.81 ID:0D02rL2Vo

明石「駄目ですよ! あの人、看護師なんですから! 怪我人出したら、悲しむのも忙しくなるのもあの人ですよ!?」

提督「しょうがねえな……」

朧「というか、提督に手を出した時点でニコちゃんたちが黙ってないと思うんだけど」

榛名「それを考慮しても、今後も検査はお断りしたほうがよろしいでしょうね」

那珂「そのほうがいいね〜」

提督「……ああ」チラッ

如月「どうしたの司令官?」

提督「……ちょっと人数多すぎねえか?」

如月「それはまあ……そうねぇ……」

長門「……いま提督がこちらを見たな」

伊8「やっぱり、人数多すぎだって思ってるんじゃないですかね?」(←長門の艤装に乗っかり)

金剛「Hey, 長門! 島に行くということは、あなたは島に残るつもりデスカ!?」

長門「いいや、そこはまだ決めていない。金剛は残るつもりなのか?」

金剛「私は残るつもりでいマース!」

長門「……そうか。それはそれで構わないが」チラッ
611 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:32:31.83 ID:0D02rL2Vo

由良「……」チラッ

電「……」チラッ

敷波「……? なんか、みんなあたしを見てる?」

長門「ああ。敷波、お前も島に残るのか?」

敷波「うん。残るつもりだよ?」

由良「……!」ビックリ

電「……!」ビックリ

敷波「あ、何その顔。もしかしてあたしだけ余所に行くと思ってたの?」

電「そ、それは……」

由良「だ、だって、轟沈してないし……」

敷波「ふーん」

伊8「初雪ちゃんも残るって言うし、その辺は自由でいいんじゃない?」

初雪「うん……」コク

敷波「そうだよー、ほら、大淀さんも追いかけてきてるしさ?」ユビサシ

大淀「!?」ギクッ!

伊8「なんで離れてついてきてるんですかねえ……」

敷波(大淀さんもなんていうか、意外と臆病なんだよね。わかるけどさ)

吹雪「司令官! 建物が見えてきましたよ!!」

提督「!」

朧「……近くで見ると、本当に岩だらけですね」

提督「そうだな……」

612 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:33:17.49 ID:0D02rL2Vo

 * 島の東岸 *

提督「すげえな……この辺りはほぼ元通りじゃねえか?」

大和「この辺りも溶岩で覆われていたはずなのですが……全部綺麗に取り払われてますね」

如月「むしろ前よりも綺麗になってる気がするわ」

榛名「提督! あそこにニコさんが!」

朧「ル級さんたちもいますね」

 *

ニコ「やっと来てくれた……遅いんだから、もう」

泊地棲姫「ル級ノ言ッタ通リ、余計ナ奴ラモ、大勢連レテ来タナ」

ル級「……ソレ、提督ガ聞イタラ、怒ルワヨ?」

軽巡棲姫「アア……提督……!」ソワソワ

 ザザザァ…

大和「提督、到着いたしました!」ヒョイッ

提督「うおっ……と、ありがとな、大和」ストン

軽巡棲姫「提督!!」タタタッ
613 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:34:01.57 ID:0D02rL2Vo

軽巡棲姫「アア……提督、会イタカッタ……!」ヒシッ

提督「おお、いきなりだな……わざわざ出迎えてくれるなんて、悪いな」ナデナデ

泊地棲姫「フ……光栄ニ思エ」

軽巡棲姫「……♪」スリスリ

ニコ「……」ジト…

泊地棲姫「イツマデ、クッツイテル」グイ

軽巡棲姫「……何ヲスル」ピキッ

泊地棲姫「コノ男ハ、私ト話ヲシニ来タノダ」

ニコ「違うよ。魔神様は、ぼくに逢いに来てくれたんだよ」ニコニコ

軽巡棲姫「……」ピキキッ

泊地棲姫「……」イラッ

ニコ「……」フンッ

 火花< バチバチバチ…

提督「……」

ル級「アノ3人ハ放ッテオクトシテ。提督ハ、体ハ大丈夫ナノ?」
614 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:34:47.02 ID:0D02rL2Vo

提督「ん−……いまいち本調子とは言えねえが、そんなことよりお前たちや、この島がどうなったかのほうが気になってな」

ル級「ソウカ」ニコ

如月「ねえ、ル級さん? ちょっと気になったんだけど……」

如月「この港といい、ここから見える白い建物といい、その見た目とかが以前とそっくりなのよね」

提督「如月もそう思うか?」

ル級「ソレハソウダ。前ノ鎮守府ノ建物ヲ真似テ作ッタンダカラ」

提督「マジか。けど、なんでわざわざそんなことを?」

ル級「最初ハ、泊地棲姫ガ自分ノ思ウママニ作ロウトシテイタノ」

ル級「デモ、アノ船ノ話シ合イデ、提督ガ今後執務シヤスイヨウニ……ト考エルト、前ノ建物ノ間取リガ丁度良イコトニ気付イテネ」

ル級「私ヤ、メディウムタチノ記憶ヲ頼リニ、作リ直スコトニナッタノヨ」

大和「それで、違和感をあまり覚えなかったんですね……!」

提督「とはいえ、この港は以前とは比べ物にならないくらい綺麗だな。それに、少し広くなってないか?」

ル級「ソコハ私タチモ使イヤスイヨウニ直シテイル」

提督「前の鎮守府と同じでリサイズもして、か……そうだとしたらありがたいな。もしかして、ドックとか食堂とかも同じなのか?」

ル級「ドックモ拡張シテイル。食堂モソウダガ、マダ作リカケダ」

明石「ドックができてるんですか!?」
615 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:35:31.65 ID:0D02rL2Vo

ル級「明石モ来テイタノカ。見テモラエルト助カル。厨房ヤ共同ノ風呂モ設計中ダカラ、見テホシイ」

比叡「厨房もできるんですか!?」ワクワク!

那珂「ステージはあるの!?」キラーン!

初雪「……あと、畑も作ってほしい……!」ソワソワ

伊8「お風呂も気になります……!」

ル級「ソレカラ、今後コノ島ヲ訪レル人間タチヲ招キ入レル、館モ作ル予定ダ」

提督「ああ……なるほど。島の役割としちゃあ、そりゃ必要だな」

ル級「案内シヨウ。コンナニ大人数デ来ルトハ思ッテナカッタガ……」

 <ダーーーーリーーーーーーン!

提督「うん?」

キャロライン「ダーーーリーーーーン!!」トテテテッ

ミュゼ「ま、待ってえぇぇ!」ゼェゼェ

タチアナ「な、なんで、下駄と着物であんなに速く……」ハァハァ

ソニア(あの2人の足が遅いだけなんだけどなあ)タッタッタッ
616 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:36:16.88 ID:0D02rL2Vo

提督「おう、キャロラインか。ちょっとしか離れてねえはずだけど、なんだか久し振りだな」ナデナデ

キャロライン「エヘヘー、ダーリンの新しいおうち、作るの手伝ってるノ!」ニパー

ソニア「あっ、ずるーい! あたしも手伝ってるしー!」

提督「ソニアもか。ありがとな」ナデナデ

ソニア「えへへ……」ニコニコ

ミュゼ「ぜぇ、はぁ……あ゛ー、疲れたぁぁ……ご主人様、来るなら来ると連絡してくださいよ〜。まだお掃除終わってないんですから!」

キャロライン「あれ、お掃除だったノ? お掃除してるのか散らかしてるのか、わからなかったヨ?」

ミュゼ「!?」

ソニア「だよねー、それでよくテツクマデをどこかに置き忘れてきちゃうし」

ミュゼ「そ、そそっそ、そんなことありませんー! 今回はちゃんと持ってきてますー!」

提督(今回は、か……)

タチアナ「そ、それで、魔神様は本日はどうして急にこちらに?」

提督「単純にお前らの顔を見に来たのと、こっちの整地を始めてるって言うから、その様子を見に来たんだ」

タチアナ「そうでしたか……! ご足労いただきありがとうございます」
617 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:37:01.51 ID:0D02rL2Vo

提督「この辺りも溶岩に包まれていたはずだが、よくここまで作り直せたな?」

タチアナ「それはそちらの泊地棲姫の力ですね。名の通り泊地を作る能力を備えておりまして……」

タチアナ「彼女の力と深海の謎のテクノロジーによって、溶岩から軽量かつ頑丈な石壁を生成しております」

タチアナ「それらを特殊な工法で組み上げることで大幅な工数減を実現し、ただいま驚異的な速度で復旧しております」メガネクイッ

提督「よくわかんねえが、すげえことやってんだな」

タチアナ「ただ、木材だけは調達できませんので、それらを使用しない箇所を中心に工事を進めております」

提督「木材以外にも不足してるものはあるだろ? 発電機だったり、食堂の設備や食器類だったり……」

提督「そういった外から買う必要のある不足品を調べに来たってのも、今回の目的だ」

タチアナ「……ま、魔神様直々に選定なさるのですか!?」

提督「ああ。つうか、なんでそんなにショック受けてんだ?」

ソニア「それはタチアナが設計に携わってるからだよー」

提督「そういうことか。そこまで緊張すんな、小姑みたいなつまんねーケチをつけるつもりはねえからよ」

提督「とにかく工廠あたりから見に行くか。案内頼めるか?」

タチアナ「はい、お任せを。ル級さんも同行していただけますか」

ル級「エエ、ソノツモリヨ」
618 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:37:46.45 ID:0D02rL2Vo

キャロライン「ダーリン、一緒に回るネ!」ミギテツナイデ

ソニア「私も一緒に行くね!」ヒダリテツナイデ

如月「あらら……先を越されちゃったわ」

大和「越されちゃいましたね」フフッ

金剛「Holy shit !!」グォォ!

長門「ちびっこ相手にむきになるな、大人げない」

キャロライン「コンゴーも一緒にお手々繋ぐ?」ミギテサシダシ

金剛「Um...Charrolline、まずはその右手の剣山を外してくだサイ……」

キャロライン「オーゥ、ソーリーネ」ゴソゴソ

明石「新しい工廠かあ〜、楽しみ〜!」ワクワク

朝潮「明石さんが元気になってる……」

霞「まあ、良かったんじゃない?」

長門「おい、お前たちも仲違いしている場合じゃないぞ?」

軽巡棲姫「!?」

泊地棲姫「イツノ間ニ!?」

ニコ「ま、待ってよー!?」
619 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:39:16.57 ID:0D02rL2Vo

 * 島から帰船して *

 * 墓場島沖 医療船内 *

H大将「あの男は医者の言うことも聞かずに何を勝手な真似をしているんだ……!」

朧「その軍医さんですが、本当に提督の体を心配しているんでしょうか?」

H大将「なに?」

朧「提督が、治療に関係のない検査が多すぎるって、訝しんでましたよ」

朧「提督を看ていた看護師さんも、心配して如月に声をかけてきたくらいですし」

H大将「……」

朧「それに、島に移住しようとしている深海棲艦だって、いつまでも提督が船から降りてこなかったら心配します」

朧「痺れを切らして船が攻撃されたりでもしたら……」

H大将「わかったわかった。朧君の言うことも一理ある。しかしだ、せめて行くなら行くと事前に連絡しろ」

H大将「この船の乗組員に混乱を招いたり、本営の反対派を刺激したりするような真似はよせと言っているんだ」

朧「……わかりました、すみません」

H大将「とにかく、本営から来たあの軍医が、提督に悪い意味で興味を持ち始めたということだな?」

朧「そうですね。そのうち提督を解剖させろと言ってくるんじゃないか、とも言ってました」

朧「なので、この船での治療も終わりにしたいと言っています」

H大将「まったく……本営も余計なことをしてくれたものだ」

朧「それから、これからの島の出入りについて、提案があるんですが……」
620 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:40:16.78 ID:0D02rL2Vo

 * 同医療船内 *

 カリカリ…

提督「よし。こんなところか。やっぱ見に行って正解だった」フー

大淀「提督、朧さんはどちらへ?」

提督「H大将んところへ報告させに行った。ついでに、島への出入りの条件についても決めるように伝えてもらってる」

提督「でだ、大淀は輸入とか貿易の話は詳しいのか?」

大淀「え? ええ、一応は」

提督「発電機やユンボみたいな大型機材とかを島に持ち込むのに、非該当証明書とか面倒な手続きが多くてよ……」

提督「欲しいものリストは作ったが、それを軍事目的には使いませんとか、逐一書面に起こさねえと駄目なんだと」

大淀「これまでは最初から軍事的な作業で使うということで、特例扱いで簡略化していましたから、それは仕方ありませんね」

大淀「もう一つ心配なのは財源ですが……」

提督「それはもう、最初はタチアナの言ってたアレを使うしかねえだろうよ」

大淀「……やはりそうなりますか……」ウーン
621 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/13(木) 22:41:14.27 ID:0D02rL2Vo
短いですが、今回はここまで。
622 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:04:00.00 ID:pdfJKJ4Go
続きです。
623 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:04:49.56 ID:pdfJKJ4Go

 * 医療船内 小会議室 *

提督「……というわけで、この鎮守府に滞在したことのある艦娘を、島に入るときに同行させてもらいたい」

X中佐「なるほど。信用できる人間の安全を確保する方法としては、至極わかりやすいね」

大淀「X中佐には軽巡洋艦川内と駆逐艦暁。H大将にはこちらにいる……」

北上「重雷装巡洋艦、北上様だよー」

大淀「……それから、駆逐艦霰と満潮を移籍させていただきたいと考えています」

X中佐「暁たちは、響が探していたI提督時代の仲間だね。そういうことなら歓迎させてもらうよ」

H大将「……」

北上「ありゃ。なんかあたし、歓迎されてない?」

H大将「そういう意味じゃない。単純に、島に上陸するための条件としては、かなり厳しいなと思っただけだ」

朧「そんなに厳しいですか?」

H大将「俺はそう思う。やはり、そこまでしないと人間は信用されないのか?」

提督「できねえだろうな。例えば軽巡棲姫を説得できると思うか?」

H大将「弾丸にされた深海棲艦か? それは貴様にしか無理だろう」
624 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:05:32.77 ID:pdfJKJ4Go

H大将「それよりその条件では、将来的に貴様の艦娘が大忙しになるんじゃないか? 少尉の部下の艦娘はそこまで数が多くないだろう?」

提督「? そんなに何度も頻繁に来るつもりでいるのか?」

H大将「そうじゃない。これから各国の代表がこぞってこの島に来ることになれば、その分だけ艦娘が必要に……」

提督「待て待て、気が早えよ。今はまだ『日本の海軍』と『深海棲艦の一部の勢力』の話し合いの場ができただけだ」

提督「是が非でも成功させる気でいるんだろうが、俺はそこまで簡単に話が進むとは思ってねえぞ」

X中佐「少尉は深海棲艦たちと仲が良いんじゃないのかい?」

提督「俺たちが以前から交流していたのはル級一人だけだ。それもあくまで個人的にだぞ」

提督「いきなり見知らぬ深海棲艦呼びつけて、お前ら仲良くしろなんて言って聞かせられるような力はねえんだぞ?」

X中佐「泊地棲姫とはどうなんだ?」

提督「あいつとも割と最近の関係だ。大佐が泊地棲姫に喧嘩を売って、泊地棲姫を使って俺と中将を謀殺しようとしたとき初めて接触したんだ」

H大将「そうなのか……? 俺たちは、それ以前から泊地棲姫とお前に関係があって、大佐を挟み撃ちにしたとも考えていたんだが」

提督「あー、そこから説明がいるのか。まず、泊地棲姫が島に攻めてきたのは、大佐のせいだ」

提督「大佐の部下が艦娘に、泊地棲姫の塒を荒らすだけ荒らして、墓場島へ引き上げて誘導しろ、と指示したんだとよ」

提督「俺の艦隊を泊地棲姫にぶつけて、島の中が手薄になったところで、戦渦に巻き込まれた形で俺と中将を暗殺する算段だったらしい」

X中佐「……泊地棲姫を挑発して、その敵意を墓場島に向けさせたわけか」
625 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:06:17.42 ID:pdfJKJ4Go

提督「信じられないなら、中将のところの赤城や加賀たち航空部隊や、うちの名取、弥生、初霜あたりに話を聞いてくれ」

提督「名取たちは、大佐の部下だったB提督の元部下で、泊地棲姫の塒に特攻させられた当事者だからな」

北上「そこはあたしも証言できるよ。A提督の計画書見つけたり、名取たちが墓場島へ逃げてるところを助けたりしてるからね」

提督「俺たちが泊地棲姫の軍勢を追っ払えたのも、半分以上はメディウムに頼ったおかげなところもある」

朧「まともにぶつかってたら、物量に押されて息切れしてたと思います」

H大将「……追い払ってから、またお前が会ったのか?」

提督「ああ。とりあえず、順を追って説明すると……」

提督「初めて俺があいつに会ったのは……確か、俺が大佐に軽巡棲姫の弾丸で撃たれて死んで、深海棲艦化して……」

X中佐「え?」

提督「海の上走って、元凶の大佐の身柄を泊地棲姫に引き渡した時だな?」

朧「ですね」

H大将「……」

提督「で、そのあと、泊地棲姫が島に出向いてきて、俺に深海に来ないかって誘われて……」

提督「お詫びみたいな感じで、泊地棲姫が鹵獲してた初霜を引き渡してもらって、それからしばらくは島の洞窟に住んでたんだよな?」
626 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:07:01.68 ID:pdfJKJ4Go

朧「そうでしたね」

X中佐「……」

H大将「……」

北上「いやー、すごいことやってるよね。正直、いま聞いても何言ってるかよくわかんないし、事実なら事実でドン引きするよね〜」

H大将「ああ……その話、本当なんだな?」

大淀「事実です。提督が大佐に撃たれて脈が取れなくなったときや、後に深海棲艦化して海へ出たときは、私がその場にいて確認しました」

朧「朧も海上で深海棲艦化してる提督を見ましたし、それからしばらくして泊地棲姫が初霜を連れてきていたところも見ています」

提督「ああ、泊地棲姫がこっちに来た時は、朧もいたんだっけか」

朧「はい。確か、初霜が裸にリボンぐるぐる巻きにされてましたよね?」

X中佐「ぶっ!!」

提督「……それ、言わなかったほうが良かったんじゃねえか? 初霜の名誉のためにも」

北上「いったいどんな格好させられてたのさ……」

朧「えっと、後ろ手に縛られて、脚はこう、がばーっと……」

X中佐「言わなくていいよ!?」
627 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:07:46.64 ID:pdfJKJ4Go

H大将「それより、お前が深海棲艦化したというが、どうやって人間に戻ったんだ」

提督「深海棲艦化できたのは、俺の体に弾丸が埋まっていた間だけだ」

提督「生き返って身体が元通りになりかけた時、傷も塞がって、胸の奥に埋まっていた弾丸が体の外側に出てきて……」

提督「それを取ったら、深海棲艦の力が抜けていった、って感じだな」

H大将「弾丸になっていた軽巡棲姫が力を貸していた、と解釈できるわけか。聞けば聞くほどすさまじい話だな……」

H大将「もうひとつ訊こう。少尉、泊地棲姫がお前を深海に誘ってきた理由はなんだ?」

提督「理由? 理由……そういやその辺は全然聞いてなかったな」

提督「深海棲艦化して海の上を走って泊地棲姫と遭遇してたから、単純に俺を仲間だと認識したからだと思うが……?」

大淀「チッ……この朴念仁が」ボソッ

朧「!?」

提督「!?」

H大将「……」

北上(心の声がだだ洩れだねえ……)

H大将「まあ……なるほど、よくわかった。泊地棲姫の態度からして、薄々……いや、多分そうではないかと思っていたが」

朧「多分、そうですね……」
628 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:08:34.49 ID:pdfJKJ4Go

H大将「……質問を続けよう。大佐の部下はどうしたんだ」

提督「俺がメディウムに指示して全員を始末させた」

X中佐「……!!」

H大将「貴様がやったと?」

提督「ああ。あの日、俺とメディウムが丘の上でやって見せたように、全員、嬲り殺した。艦娘たちには手を出させていない」

X中佐「……」

H大将「……」

北上「それ。あたしは、すこーし、すっきりしたけどね」

X中佐「な……!?」

北上「あたしの前の司令官だったA提督はさ、金のために自分の艦娘に裏帳簿作らせて、用が済んだら雷撃処分するような男でさ」

H大将「……」

北上「で、その不正を手伝わされてたのが明石。あたしたちに欠陥品を装備させる、とか言って引きずり込んだらしいんだ」

北上「あたしは、その明石と一緒に魚雷の開発をしてたくらいには仲が良かったんだけど……」

北上「よりによってあいつはあたしに明石を雷撃させたのよ。丁度、重雷装巡洋艦に改装した直後だったせいでねえ」

北上「明石の置手紙であいつの不正をあたしが知ったのは雷撃処分の前日。どっちみち、あたしは明石を助けられなかった」
629 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:09:16.91 ID:pdfJKJ4Go

北上「どうしようもないから、明石と一緒に作った失敗作の魚雷で、明石を沈んだように見せかけるしかなくて」

北上「間違って直撃しないように調整しながら、ばんばん撃ちまくって明石が処分されたように思わせて。でも結局、明石とはそれっきり」

提督「……」

北上「そのあとはA提督があたしを怖がっちゃってね。あたしが友達相手でも容赦しなかったって思ったんだろうねえ」フフッ

北上「それ以来、A提督の直接の指揮から外れてさ。霰と満潮と一緒に、愚連隊じゃないけど、支援艦隊みたいなことをしてたわけよ」

北上「そのおかげで……いつだったか、中将の暗殺なんて物騒な計画書を見つけて」

北上「決行日に墓場島へ行ったら、めちゃくちゃ深海棲艦がいて。あたしが雷撃したあの明石たちがいて……」

北上「ちょうど、A提督がメディウムたちに始末されるとこだったんだよね」

X中佐「……」

北上「まあ、そういうわけなんで、これでも提督には感謝してるんだ。明石と再会できたし、あたしがA提督を撃たなくて済んだし」

H大将「……少なからず問題のある提督たちだったと?」

朧「そう、ですね。潮も、あの中の一人が大嫌いだった、って言ってました」

提督「潮はくっそ凶悪なセクハラされてたからな。内容は吐き気と頭痛がするから言わねえぞ」

H大将「そうか。なら後で聞かせてもらうぞ」ハァ…

朧「結局聞くんですか……」

H大将「内容が惨たらしいものなら、そうであるほど聞かざるを得ん。不始末は起因元から断たねばならんし、再発防止策の検討も必要だ」
630 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:10:01.81 ID:pdfJKJ4Go

H大将「で? 大佐の部下をそうしたのなら、大佐もそうするつもりだったのか?」

提督「大佐は、泊地棲姫に始末させるつもりだった。落とし前をつけさせる意味でな。そこで俺がヘマしてあいつに撃たれちまった」

大淀「……あの時は、本当に生きた心地がしませんでしたよ」

提督「実際死んだしな。深海棲艦になって生き返ったのはもっとびっくりしたが」

提督「で、まあ、いろいろあったが、とりあえず全部大佐と泊地棲姫がやったことにして、ごまかしながら後始末をした」

H大将「それを俺たちが怪しんだ、というわけだな。それを察知した貴様が泊地棲姫を呼んだと」

提督「いいや、そこは違う。泊地棲姫との共闘を画策したのはメディウムたちの独断だ」

H大将「貴様が泊地棲姫を呼んだわけではない、と?」

提督「俺がいろいろ知っていたら最初からメディウムを島の中に待機させたし、朧だってみすみす殺させたりしてねえよ」フンッ

朧「提督……」

H大将「……なるほど。信じよう」

X中佐「しかし、どうしてメディウムたちは泊地棲姫たちと手を組んだんだ? 少尉にはそういう意図はなかったんだろう?」

朧「うーん、もしかしたら、島に来た人間全員を殺すのに最適な方法を選んだ、とかじゃないですか?」

提督「そうかもな。それに、準備で島に来るのが遅れてしまったとも言ってたし……」

提督「ニコにもニコなりの考えがあったんだろうが、海軍側もそれぞれ思惑が違っていたせいで、いろいろ予定が狂っちまったのかもしれない」
631 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:10:46.79 ID:pdfJKJ4Go

提督「そもそも、あんな騒ぎにするほうが俺としては想定外だったんだ。島だって燃やすつもりはなかったし……」

提督「あんたたちを適当にやり過ごして、何もせずそのまま帰ってもらうつもりでいたんだぞ。信じなくてもいいけどよ」

大淀「もしかして、提督がそういうふうに平和的に構えていたのを、ニコさんたちが危ないと思ったんじゃありませんか?」

提督「俺のどこが平和的なんだよ……」

大淀「結果的にはそう見える、という話です。大将たちをやり過ごそうとしたのは、提督が平和的だからじゃなくて、厭世的だからでしょう?」

提督「まあ、そうだけどよ……」

H大将「俺たちが警戒されていたわけか?」

提督「まあ、警戒せざるを得ない状況ではあった」

提督「誰の差し金か確かめられなかったが、大将たちが来る少し前に、艦娘を引き連れた船が島の周りを探ってたりしてたからな」

H大将「ふむ……」

提督「ところで、ちょっとひとつ確認させて欲しいんだが、いいか?」

H大将「なんだ?」

提督「死んだ奴らの狙いは、大将二人の暗殺と、その罪を俺におっ被せるつもりだった、ってことでいいんだよな?」

H大将「ああ。証拠はないが、俺もそうだと認識している」
632 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:11:31.76 ID:pdfJKJ4Go

提督「大将とX中佐は俺たちを引き入れるつもりだったようだが、H大将は俺たちをどうするつもりだったんだ?」

H大将「俺は、深海棲艦と関わりを持っているであろう貴様を拘束するつもりでいた」

H大将「俺もJ少将も、深海棲艦との和睦は無理だと考えていたし、深海棲艦を殲滅するならばスパイの存在は絶対に許せないと考えていた」

H大将「深海棲艦を海から排除するという一点においては、J少将と志を同じくしていたというのは間違いない」

提督「それなのに、あんたも消されそうになったのは、なぜだ?」

H大将「おそらく、深海棲艦から武器を作る話に反対していたからだろう」

H大将「製造するにしても、そのために深海棲艦を鹵獲するにしても危険が付きまとうだろうし」

H大将「研究するまでは良いだろうが、深海棲艦の遺骸を武器として流用したと知れては、深海棲艦も黙ってはいないだろう」

H大将「深海棲艦が人間に対する怒りや恨みから生まれていたとしたら、却ってそれを煽ることになる」

H大将「そもそも、敵とはいえ、ご遺体から武器を作ろうというのは、人の道としてもどうかと思っている」

提督「J少将には、それを話したのか?」

H大将「ああ、話している。あいつにも思うところはあるだろうが、倫理観を外れるような真似はやめて欲しかったからな」

H大将「しかし、島の南側で見つけたJ少将の部下の狙撃手も、朧君を撃ったあの士官も……」

H大将「深海棲艦から作った弾丸を持っていたのだから、俺の理屈は通じなかった……むしろ目障りだったと、いうことなんだろうな」

提督「……」
633 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:12:17.35 ID:pdfJKJ4Go

X中佐「……はぁぁ……」

北上「んおぉ、でっかいため息ついて……大丈夫〜?」

X中佐「あんまり大丈夫じゃないよ……同じ海軍だというのに、なんでこんなに、みんな仲良くできないんだ……」

X中佐「対立があるのはわかる。仕方ないと思ってる。けど、ここまで……誰かを亡き者にしようって考えて実行するのは理解できないよ」

提督「ったく、このお人好しめ……つくづく軍人に向いてねえな」

X中佐「ちょっ……!?」

H大将「まあ、こういう人物だからこそ、俺たちに見えないところを見つけてくれる人物だと思って、重用されているわけだが」

提督「そうかもしれねえが……それで無防備に何度もあの島に入ろうとしてたのは、危なっかしいにもほどがあるだろ」

X中佐「危なっかしい?」

提督「ああ、考えてもみろ、あの島は悪さするのにもってこいの場所じゃねえか。舞台として整いすぎてんだ」

提督「潮の流れのせいで行き来しづらい、拠点としても大して重要じゃない、過去に流刑地扱いされてるようないわくつきの島」

提督「不慮の事故が起こって死んだって、まああの島だからしょうがないで片付けられる。こんなに人殺しに適した場所、ほかにあるかよ」

提督「そういう場所にほいほいお忍びで来やがって、危ねえって言う外ねえってんだよ。島への道中に誰かに暗殺されたらどうすんだ?」

X中佐「……」
634 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:13:01.78 ID:pdfJKJ4Go

提督「それに、妖精たちが言うには、島に俺が着くより前は、大佐が気に入らない奴を島へ放置して餓死させてたらしいぞ?」

X中佐「そんなことまで!?」

H大将「そういう話も知っているなら早くしろ……!」

提督「それ聞いたのはおとといだぞ、おととい。妖精たちが俺に気を使って言えなかったっつうし、しょうがねえじゃねえか」

北上「えー……じゃあなに? 提督も文字通り島流しにされてたってわけ?」

提督「ああ、初期艦すらつけてもらえず、建造ドックも壊れたままで働けとか、寝ぼけたこと言われたからな」ケッ

提督「しかも通信機は大佐の鎮守府に直通回線一本だけだ。この間は赤城と事務的な話しかしてねえ」

H大将「よく生き延びてこられたな……」

提督「俺の場合は、中将に気にかけてもらってたおかげで物資が多少は届いていたのと……」

提督「妖精と話せたおかげで、いろいろ協力してもらえたから生活できてたってところが違うかな」

提督「とにかく、今回の騒ぎも、そのひとつ前の中将と俺の暗殺計画も、あの島で起こったことだからしょうがない、で済まそうとしたんだろ」

提督「丁度ここに、濡れ衣を着せるのに都合のいい下っ端もいる。一緒に始末すりゃあ証拠も消せるしよ」ヘッ

X中佐「笑っていられる話じゃないよ……」

提督「笑ったっていいだろ。結果的に馬鹿どもが返り討ちになったんだ、笑い飛ばさねえと俺がやってらんねえよ、くそが」

H大将「……あの娘が言っていた通り、人間の自業自得と言わざるを得ないな」ハァ…
635 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:13:47.14 ID:pdfJKJ4Go

北上「その場所が海軍と深海棲艦の話し合いの場になるっていうのも、なんとも皮肉が効いてるねえ」

大淀「本当にそうですね……」

X中佐「……」ガックリ

H大将「……X中佐」

X中佐「すみません……さすがにちょっと、滅入ってしまって」

X中佐「状況は、良くなっているんです。深海棲艦と話し合える場所ができたのは、本当に喜ばしいことです」

X中佐「しかし、ここまで……結果的に、海軍の不始末を少尉一人に押しつけ、全部処理してもらってます」

X中佐「かつ、これからも深海棲艦との対話で間に立ってくれると言ってくれています」

X中佐「何から何まで全部、少尉に頼りすぎですよ……!! 僕たちは海軍ですよ? なんて情けない……」

H大将「X中佐……」

X中佐「……それでも。それでも、やっていくしかないですけどね」

X中佐「深海棲艦と……戦いを回避する方法を……なんとか、模索していかないと……」

提督「そうだな。いつまでも俺が手を貸せるとは限らねえ。むしろ、俺がいなくても何とかしてもらえるようにしてもらわねえとな」

X中佐「……」コク
636 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:14:31.95 ID:pdfJKJ4Go

提督「……ま、あんたは俺にいらねえお節介焼いてきてたからなあ。心配ではあるが、信用してないわけじゃない」

提督「変な真似さえしなきゃあ、話し合うくらいはできそうだと思ってる」

X中佐「……!」

提督「まずは実績を作ることだろうな。例えば、島の海域に入ったら、絶対に戦闘しない、とか」

提督「深海棲艦を相手にひとつ約束事を作って、それが守れるかどうか……深海棲艦が約束を守る奴かどうかって見極めもいるだろうが」

H大将「……」

提督「ま、こういうのは、時間をかけて見守るしかねえさ。俺が、轟沈した艦娘を保護したように」

提督「俺が……こいつらに、信じてもらえるようになったように」

朧「提督……!」

大淀「提督……!!」

X中佐「……うん……そうだね……!」

H大将「……」

北上「……いやー、本っ当になんでだろうね? こんなこと言う人が魔神だよ? 罠の頭領だよ? いろいろ間違ってない?」

提督「いや、俺はあくまで妖精と艦娘とメディウムと深海棲艦を保護するってだけで、人間はどうでもいいからな?」
637 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:15:17.06 ID:pdfJKJ4Go

提督「俺自身も晴れて人間じゃなくなったし。ぶっちゃけ人間が死滅しようが最早全っ然構わねえんだからよ」

大淀「提督!!」ギョッ

X中佐「……」

H大将「……」

提督「ま、俺の本音はこうだからな。人間が深海棲艦とこれからどう接していくにしても、俺からは基本、口は出さねえぞ?」

H大将「ああ。責任重大だな、中佐」

X中佐「ええ、そこは何とかしてみせます……!」

H大将「それで、島での我々の安全は保障してもらえるのか?」

提督「そこは……まあ、そこはそうだな。俺が信頼している艦娘と一緒なら危害を加えないよう、周知徹底させる」

提督「とはいえ、泊地棲姫の艦隊が全員俺に従うかわからねえから、それはこれからしっかり統制しなきゃな……」ウーン

朧(大丈夫なんじゃないかなあ……あの洞窟にいた時も、提督の言うこと聞いてた気がするし)

提督「あの島の海域が非交戦地域であることを、他の深海棲艦にも通達したいし……」

大淀「海軍にしても私たちにしても、話し合いを持つためにはもう少し準備期間が必要ですね」

H大将「そうだな。海軍の中でも、今後深海棲艦と交渉にあたる人材を用意せねばならん」
638 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:16:02.78 ID:pdfJKJ4Go

大淀「私たちも同様に、島の中の整備を整える必要があります。そこで……海軍と取引をお願いしたいのですが」

H大将「取引?」

大淀「はい、例えば、かつて島で使用していた発電機や、小型のショベルカーなどの設備、電気工事用の電線や水道管の敷設……」

大淀「それから艦娘用の入渠ドックや建築用木材、私たちが使用していた生活必需品の購入をお願いしたいのです」

H大将「……ふむ」

提督「工事が必要なら、その期間は泊地棲姫たちには島から離れてもらう。メディウムたちも退避させよう」

提督「代金は、こいつで支払いたい」ゴソッ ゴトゴトッ

X中佐「なんだい? その石は……」

H大将「……!! 少し、見せてもらっていいか」

提督「ああ」

H大将「……」

X中佐「H大将?」

H大将「……少尉。お前は、どこでこれを?」

提督「噴火した海底火山の溶岩の中から採掘した」

H大将「なるほど……」
639 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:16:46.85 ID:pdfJKJ4Go

X中佐「H大将、この石は一体……?」

H大将「……これはもしや、ダイヤの原石か?」

X中佐「え!? こ、これがですか!?」

H大将「ああ。もし本物なら、こんな手のひらに収まらないサイズの石は見たことがないぞ……!?」

提督「炭素を高温で圧縮して作られるのがダイアモンドだって聞いたことがある。マグマの中で作られるとも言われてるらしいな」

提督「それでだ。その原石がどの程度の価値があるか、そいつを持ち帰って鑑定してほしいんだ」

提督「その上で業者を4、5件回ってもらって、それぞれに見積もりを取ってもらいたい」

提督「俺たちは、信頼できそうな値を付けたところにそいつを売って、その金で備品の調達をしたい」

提督「その業者が他にも欲しいというなら、採掘できた分のなかからいくつか渡そうと思ってる」

H大将「……これは何かの罠ではないだろうな?」

提督「その石自体は罠でもなんでもねえよ、ごくごく真っ当な取引だ。ただまあ、違う意味では罠だと言える」

H大将「何を企んでいる」

提督「……メディウムはな、悪人の魂を欲しているんだよ」ニタリ

X中佐「……」

提督「そのダイヤは撒き餌みたいなもんさ。このサイズなら確実に値はつくし、どこで採れたか確実に訊かれるはずだ」

提督「訊かれたらこの島で採掘されたものだと、正直に答えてくれていい。島に深海棲艦が棲みついていることも忘れずにな」
640 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:17:31.70 ID:pdfJKJ4Go

提督「島がいかに危険かを聞いて、まともな奴なら諦めるだろう。だが、危険を承知で採掘しに来るっていうのなら……」

提督「メディウムたちが諸手を挙げて歓待してやろう、ってだけさ」ニヤァ…

H大将「……」

X中佐「……」

大淀(またそこでそういう悪い笑顔を……)

北上(こういうところはマジでメディウムの親玉だよねえ……)

H大将「……怪我をさせずに捕縛というわけにはいかんのか」

提督「命の保証は無理だ。言ったろ? 魂を欲しているって。ストレートに言えば、メディウムにとって人間は餌に等しいんだ」

X中佐「餌……」

提督「料理をするとき、食材を切ったり、煮たり、焼いたり、塩コショウを振ったりして、おいしくするだろう?」

提督「それと同じように、欲にまみれた人間を、華麗に吹き飛ばし、屈辱的な目に遭わせ、残虐に殺すことによって……」

提督「悲憤と無念にまみれた、魔力が満ち満ちた魂に磨き上がる。ちょっとひと手間、というやつだ」

提督「メディウムはそういう昏(くら)い感情を含んだ魂が大好きで、特に極悪人の魂は念入りに磨き上げる傾向にある」

提督「どうせ食うなら、おいしく召し上がりたいだろう? メディウムたちにもそういう『ささやか』な欲望があるんだよ」

H大将「……」
641 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:18:17.60 ID:pdfJKJ4Go

提督「俺が、人間がこの島に入って欲しくないと考える理由の一つがそれだ。来てもいいが、友好関係を築きたいなら、長居はして欲しくない」

提督「さすがに海軍だって、発布した忠告を無視して面倒を起こす奴らにまで、世話を焼くなんて下世話な真似はしねえよな?」

H大将「……それは、そうだな」

X中佐「ですね……我々では注意喚起が関の山でしょう」アタマカカエ

提督「それでいい。金に目がくらんだ命知らずが、どこかへ消えるだけの話だ、海軍が気に病んだり責任を感じたりすることじゃない」

提督「そういうわけなんで、メディウムも深海棲艦に負けず劣らず危険な存在だ」

提督「あんたたちの身の安全のためにも、俺が信頼する艦娘と同行してもらって、メディウムの捕食対象ではないことを示してほしい」

X中佐「……わかった。さしあたり、艦娘の帯同の件と、この原石の査定の件だね。すぐに取り掛かろう」

提督「そうしてもらえると助かる。俺も島で、海軍を受け入れる準備に取り掛かる」

提督「何せ話し合う場所すら、いま作っている途中だからな。準備ができ次第、連絡を取らせてもらう」

大淀「あの、提督? 通信販売のカタログの取り寄せもこの場で一緒にお願いできないでしょうか」

H大将「カタログ?」

大淀「はい。以前、私たちは生活用品や私物を買うのに、市販の通信販売のカタログを使っていました」

大淀「例えば長門さんのミシンですとか、比叡さんの包丁ですとか。執務室のソファやドライヤーなどもそれを見て購入しています」

H大将「長門がミシン……だと?」クビカシゲ
642 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:19:02.37 ID:pdfJKJ4Go

X中佐「通販で? お金はどうしていたの?」

大淀「そ、それは、提督のお給料から出していただいて……」

X中佐「えええ……」

提督「俺が金を使う機会がなかったんでな。朧は小説本買ったんだっけか」

朧「はい! ハードカバーの新書を買いました!」

提督「娯楽もなかったんで、余所の鎮守府から遊び道具を寄付してもらったこともある。例えばトランプとか、将棋盤もそうだったよな?」

大淀「あ……! そういえば、そうですね……」ガックリ

朧「大淀さん、将棋のセットを島から運び出してなかったんですか」

大淀「それもありますが、それよりも有名棋士の指南本が……」

朧「ああ……」

H大将「……わかった。そういうことなら、取り寄せさせよう。予算についても問題のない範囲で検討させる」

大淀「ありがとうございます!」ペコリ

朧「あ、提督のお給料が入ってる口座とかもそのままにしてもらえますか?」

H大将「不知火が言っていた件か? 経理ができる奴を呼んだほうが良さそうだな」

X中佐「そうですね。契約が継続できないなら、ご家族への相続とか考える必要もありますし」

提督「……」ビキッ

朧「あ」ビクッ
643 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:19:47.50 ID:pdfJKJ4Go

提督「悪い……もうひとつ、大事なことを言い忘れていた」

H大将「なんだ?」

提督「俺に、親と、弟がいることは知っているか?」

X中佐「? 君の家族がどうかしたのか……?」

提督「……あいつらには、絶対に連絡を取るな」

X中佐「! ……理由を聞いても?」

提督「あいつらは俺の敵だからだ。あいつらは俺にとって家族でも何でもない……!」

X中佐「……」ゾク

H大将「……過去に、大佐がお前の父親へ献金していた記録があったな。それが関係しているのか?」

提督「いや、それはそうじゃねえ……」

朧「提督は、妖精さんが見えるっていうだけで、両親からもひどい扱いを受けてきたんです!」

提督「……おい」

大淀「朧さんの言う通りです。提督の人間不信は、提督のごりょ……両親の影響が最も大きいと思われます」

大淀「その献金は、大佐が提督の身柄を買い取るために、提督がどうなっても口出しされないようにするために支払ったものです」

北上「うわあ……マジで?」ドンビキ
644 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:20:34.95 ID:pdfJKJ4Go

大淀「はい。提督はその両親から疎まれていました。提督もその人たちを家族と呼ぶことはできない、と、過去にも仰っていましたし……」

大淀「そもそも提督は父親から勘当されています。縁を切ったはずなのに、お金のやり取りがあること自体、おかしいと言わざるを得ません」

提督「……」

X中佐「……そうなのか?」

提督「喜んだのは違いないだろうな。勘当したはずのゴミを引き取ってもらえた上に金まで貰えたんだ」ケッ

X中佐「……」

提督「そういうわけなんで、間違っても、連中を俺に会わせようとか考えるなよ」

提督「この場で話し合ったことも何もかも、この船もろとも怒りに任せてひっくり返しちまうかもしれねえからな……」

H大将「なるほど。献金がお前に関係ないのならそれでいい。遠慮なく告発していいな?」

提督「ああ、遠慮はいらない、思う存分やってくれ。俺はあいつとは縁が切れてるし、二度と会いたいと思っていない」

提督「あの男は自分の名誉が一番大事な人間だ。そのために俺の名前を利用するかもしれねえが、それも全否定してくれていい」

H大将「わかった。先方がお前のやることに口を出してこないよう、念入りに叩き潰しておくとしよう」

提督「……」ペコリ
645 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:22:16.84 ID:pdfJKJ4Go

 * *

北上「……提督も苦労してんだねえ」

提督「まあ、な。家族に相続、って言葉が出てこなかったら伝え忘れるとこだった。危なかったな」

北上「なんかさあ、H大将もこれで提督に貸しを作れたとか思ってんじゃない?」

提督「それはそれで別に構わねえさ。あいつを社会的に潰そうってんなら俺は協力するし」

提督「そもそも海軍の不始末を処理するために必要なことをやってるだけだろ? この話には貸しも借りもねえと思ってるがな」

朧「とりあえず、いい方向に進むといいですね。今回は嘘も言ってませんし、すっきりできたと思います!」

提督「……一点だけ、嘘ついてんだけどな」

大淀「え? どこですか?」

提督「メディウムが悪人の魂を欲しているって言ったろ?」

北上「うん。間違ってんの?」

提督「ああ、悪人も善人も関係ねえんだ。本当は」

大淀「……」

朧「……」

北上「……あー、うん。まあ、そうね……」

大淀「あの、提督? それでは、メディウムが人間をいたぶって殺すというところは……」

提督「あれは本当だ。あれはニコから聞いたのをそのまま話した感じだな。魂に対する味付けって聞いてる」

提督「とにかく、俺たちと友好的な相手には手を出さないように教育するさ」

提督「四方八方に喧嘩売って敵を増やして、とんでもない奴を相手にしなくちゃいけなくなった、ってのが一番面倒臭えしな」

大淀「ええ、ぜひそのようにお願いします」
646 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/17(月) 22:24:21.70 ID:pdfJKJ4Go
今回はここまで。
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/18(火) 12:35:02.86 ID:raMf9AyV0
乙です。ハッピーエンドは近いかな?
648 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:31:04.18 ID:1LUsbeXzo
>647
概ね解決はしそうですが、まだまだフラグが残ってますので……今回も回収です。

続きです。
649 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:31:45.94 ID:1LUsbeXzo

 * 翌日 昼前 *

 * 墓場島沖 医療船内 小会議室 *

卯月「少尉! 無事だったぴょん!?」

弥生「元気そうで良かった……」

望月「いやあ、やばいことになったんだねえ、あの島。また住めるの? せっかくだし、あたしたちのいる大湊に来ない?」

提督「……」

W大佐「どうかしたか、少尉」

提督「……いや、珍しい顔が出てきたなと」

鳳翔「そんなに珍しいでしょうか?」

提督「ああ、久し振りというか、お前たちとはもう会うこともないと思っていたくらいだが」

卯月「少尉ったらつれないぴょーん! うーちゃんが少尉を放っておくと思ったら大間違いだっぴょん!」

提督「いたずらする気ならやめとけよ? 洒落にならない連中が来たからな」

卯月「ぷっぷくぷぅ〜! そーんな脅しに屈するうーちゃんじゃないっぴょーん!」

卯月「艦娘ならぬ罠娘だって聞いてるぴょん? うーちゃんとは仲良くできそうだっぴょん!」ニヒヒヒッ
650 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:32:30.94 ID:1LUsbeXzo

提督「やめとけ。お前は洒落が通じない相手に粗相して、追いかけられてズタボロになる未来しか見えねえ」

弥生「わかる」ウンウン

望月「卯月って、触っちゃいけない相手ほど触りたがるもんね」ウンウン

卯月「みんな辛辣ぴょん!?」

鳳翔「大丈夫な人もいるでしょうけれど……」

提督「そうだなあ、フウリやマーガレット、ハナコ、シャルロッテ……あとジュリアか。あのあたりなら、罠的にまだ洒落が通じそうだがなあ」

鳳翔「まあ。その方々は、どんな罠なんですか?」

提督「ん−、タライ、フライングケーキ、ウォッシュトイレ、バナナノカワ、ハリセンってとこか」

卯月「めっっっっちゃ興味あるぴょん!!」キラキラッ!

提督「よし、卯月にはルイゼットとエレノアを紹介してやるか。ギロチンとメイデンハッグのメディウムだ」

卯月「死ぬぴょん!? 少尉はうーちゃんを殺す気ぴょん!?」

提督「冗談だよ。それより……」

鳳翔「はい、ご紹介させていただきますね。こちらはW大佐」

W大佐「……よろしく。こいつは秘書艦の伊勢」

W伊勢「よろしくね!」
651 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:33:15.71 ID:1LUsbeXzo

W大佐「それから、軽巡洋艦の球磨と、戦艦の榛名だ」

W球磨「よろしくだクマ」

W榛名「よろしくお願いします」

提督「……ああ」

鳳翔「こちらのW大佐はX中佐のご友人で……」

W大佐「先日の作戦に参加していた一人だ。H大将閣下に懇意にさせてもらっている」

提督「……艦隊を出していたのか」

W大佐「ああ、作戦時にはこの球磨と榛名を出撃させていた」

W球磨「球磨は、まさかあんなコトになるなんて、思ってなかったクマ。とりあえず、あの罠の女の子たちは、ここにはいないんだクマ?」

提督「……まあ、一応は、な」

W球磨「ふーん……潜んでてもいいけど、襲ってこなければいいクマ」

W球磨「かかってくるなら球磨は容赦しないクマ。でも、仲良くできるんなら、そうしたいクマ」

W伊勢「まあ、今日は懇親を深めるって話で聞いてたから、さすがにここでまで警戒はしなくてもいいと思うけどね」

W球磨「そうあってほしいクマー」ウナヅキ

提督「……H大将の部下なら、深海棲艦は殲滅するべきって思想の連中が多いと思っていたが……そうじゃねえのか?」

W大佐「確かに、そういう思想を持つ者は多いな。今回の件で、H大将がお前たちや深海棲艦との話し合いを始めたことに動揺している者もいる」

W大佐「しかし私自身は、深海棲艦とどのように向き合うかについては、特にこうだと決めつけてはいない。普段からX中佐とも話をしているしな」

W大佐「むしろ、深海棲艦とはいったい何者なのか。何が目的なのか。それを知ることのほうが、戦争の終結には重要だと思っている」

提督「……」
652 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:34:00.84 ID:1LUsbeXzo

W大佐「今日はあくまで顔合わせの場だと聞いている。かかわった以上、君がどんな人物なのか、色眼鏡なしに見てみようと考えている」

提督「……この先、どのくらい顔を合わせるかはわからねえがな」

W大佐「ふむ。まあ、そうなるかな」

提督「……なんつうか、日向みたいな男だな?」

W伊勢「そう! そうなのよ! 最近ほんっとに日向に似てきたの! あなたもやっぱりそう思う!?」ズイッ!

提督「お、おう……」

W球磨「伊勢、食いつきすぎクマ……落ち着くクマ」

W大佐「それからもう一人。そっちにいるのが……」

卯月「司令官も早くこっちに来るぴょん!」

W榛名「……」

W大佐「V提督だ。今はここにいる卯月たちの艦隊を指揮しているそうだ」

V提督「……」ペコリ

鳳翔「N提督が鎮守府をおやめになってからいらした、後任の提督です」

提督「ふーん……」チラッ

W大佐「俺と同じく、V提督もX中佐と同期なんだ」

提督「同期? そう言う割には、部屋の隅っこで随分と控えめにしてんじゃねえか?」

提督「おそらく、穏やかじゃねえ空気を放ってる奴が、そこにいるからだろうけどな。どうなんだ? 榛名……!」

W榛名「……」

V提督「……」
653 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:34:45.68 ID:1LUsbeXzo

W大佐「まあ、無理もない事情があるんだ。君に話すほどのことでもないんだが……」

鳳翔「ええと、みなさん? 今日は特別な席を用意しておりまして」

望月「鳳翔さーん、大丈夫? なんか違う意味で特別な席になってるっぽいんだけど」

提督「だな。なんでこんな険悪な雰囲気なんだか……卯月がいなけりゃ息苦しくてかなわねえ」

卯月「……うーちゃん、褒められてるぴょん?」

提督「おう。素直にMVP喜んどけ」

 トントン

大和「失礼いたします、準備が整いました!」

鳳翔「あら、丁度よかった。ではみなさん、こちらへどうぞ」

W大佐「……鳳翔、あなたは何を企んでいる?」

鳳翔「企むだなんてそんな。一緒に昼餉をと思いまして」

W大佐「……?」

鳳翔「さあ、V提督もこちらへ」

V提督「あ、ああ……」

W榛名「……」ジロリ
654 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:35:30.78 ID:1LUsbeXzo

 * 廊下 *

大和「こちらです」

W大佐「……ん? この匂いは、カレーか?」

V提督「……!」

W榛名「これは……!」

卯月「鳳翔さんのカレーの匂いだっぴょん!!」パァッ!

望月「やっりい! おなか減ってたんだー」

鳳翔「ふふっ、私の作ったものよりおいしいと思いますよ」

V提督「鳳翔……まさか、お前……?」

鳳翔「逃げてはいけませんよ……提督」ニコッ

V提督「……!」

大和「お待たせしました、お連れしましたよ!」

雲龍「噂をすれば、ね」

陸奥「!」

比叡「あ……!」

龍驤「お、来よったんか!」
655 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:36:15.92 ID:1LUsbeXzo

提督「比叡はともかく、雲龍に陸奥に龍驤? なんでお前たちがここに?」

龍驤「おってもええやんか、うちと陸奥は懐かしい顔と話しとったんよ?」

提督「懐かしい?」

球磨「なんで間宮さんが二人いるクマ?」

鳳翔「はい、ご紹介します。こちらは私たちの鎮守府の間宮さん」

間宮「少尉、おひさしぶりです」ニコッ

鳳翔「そしてこちらは、かつて幌筵の以提督鎮守府にいた、間宮さんです」

提督「!!」

以間宮「はじめまして……!」ペコリ

提督「以提督……あの骨と皮だけになってた、あの写真の間宮か!?」

鳳翔「はい、御覧の通り、一生懸命リハビリしまして、ここまで回復いたしました」

球磨「リハビリ、クマ?」

提督「こっちの間宮は働かされすぎてガリガリに痩せてたんだよ。うちの龍驤と陸奥も同じ鎮守府にいたんだ」

陸奥「昔話に花が咲いちゃってね。みんなの邪魔はしないから安心して」
656 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:37:00.62 ID:1LUsbeXzo

鳳翔「そしてもう一人、ここにいる皆さんにご紹介したいのが、こちらの墓場島鎮守府の比叡さんです」

V提督「……まさか」

W大佐「おい、もしかして……」

W榛名「あなたは……!!」

鳳翔「はい。もと、V提督鎮守府所属の、比叡さんです」

比叡「……」ニコニコ

V提督「っっ!!」

W榛名「……い……生きてらしたんですね……!!」

比叡「え?」

W榛名「私です、比叡お姉様!! 私は……私はかつて、V提督のもとで働いていた、あの榛名です!!」

比叡「ひええええ!? そうなの!?」

W大佐「鳳翔。これがあなたの狙いだったのか?」

鳳翔「はい」

提督「なるほど、榛名が睨みを利かせてたのはそういう理由か」
657 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:37:45.67 ID:1LUsbeXzo

卯月「……みんななんで驚いてるのか、よくわからないぴょん」

W大佐「それは……」

V提督「待ってくれ。俺が話そう」

弥生「司令官……?」

V提督「これは俺の失態だ。俺が……比叡を傷付けたのが、すべての発端であり、原因だ」

提督「原因、ねえ……? とりあえず話してもらおうじゃねえか」

V提督「俺とW大佐、それからX中佐が同期だったことは、Wからもあった通り……」

V提督「海軍に入った当初は、そこにUとYを含めた5人で、いつも決まった時期に飲み会を開いていたんだ」

V提督「初めてうちの艦隊に戦艦が来たとか、いまだに空母が来ないとか……自分の艦隊自慢をしていたんだが」

V提督「だんだんと戦艦の……金剛型の話題になって、比叡の作る料理の話になった」

V提督「UにしてもYにしても、各々の鎮守府の比叡が作る飯はどうしようもなくマズかったらしい」

V提督「だが、うちの比叡は違った。全然、そんなことはなく……初めて出されたカレーも、あっという間に平らげたくらいだった」

比叡「……!」

V提督「それを、俺は……」

W榛名「……」
658 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:39:00.96 ID:1LUsbeXzo

W大佐「……その酒の席では、Vが、自分のところの比叡のカレーはおいしいと言っていたんだ」

比叡「!!」

W大佐「ただ、それをUとYがことあるごとに馬鹿にして囃し立てていたんだ。お前の味覚はおかしい、と」

W大佐「あいつらはあいつらで自分たちの経験からそう言っていたんだろう。それ自体は間違ってはいなかったと思う」

W大佐「だが、あれは言いすぎだった。俺が傍から聞いていても、その貶め方は不愉快だった」

W大佐「かといって俺やXが制止しても、比叡が着任してないからとわからないんだと聞き入れられることもなく」

W大佐「だったら、Vの鎮守府に来て、比叡の出したカレーを食べてみろ、という話になって……」

V提督「……そこで俺が、やっちゃいけないことを、やったんだ」

比叡「……」

W榛名「それで……あんなことを……っ!!」ギリッ

W大佐「……」

提督「そうか。そこで、用意した比叡のカレーを、皿ごと投げ捨ててみせた、ってことか」

望月「なんだそれ!?」

W榛名「そうです……ご友人を招いた席で……なぜあのようなことを、V提督がしたのか……!!」
659 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:40:45.81 ID:1LUsbeXzo

W大佐「おそらくだが。あれは、UやYに対する当てつけだろう? UやYが『こんなもの』と言っていたのをあいつらに認めさせ……」

W大佐「そして自分は、あいつらが称賛したものを捨てて見せて、自分のほうが上だと見せつけたかった。そんなところじゃないか」

弥生「……本当、ですか」

V提督「……そうだ……おおむね、そんなところだ……」

W大佐「それで後悔して自分の腹を撃ったと。まったく、馬鹿な男だ」

卯月「撃ったぴょん!?」

W大佐「ああ、拳銃でな」

鳳翔「……」

W榛名「そんな……そんなつまらない理由で……!!」ギリギリッ

W榛名「その、つまらないプライドのせいで! 比叡お姉様がどれだけ苦しんだか……!!」ジロッ

提督「ああ、まったくだ。島に比叡が流れ着いて目を覚ましてから一週間……いやそれ以上か。飯を食おうとしなかったからな」

提督「下手すりゃあ、そのまま死んでたぜ」ジロッ

鳳翔「……」

提督「何を考えてこんな席を作ったのかは知らねえが……おい、比叡。この場は、お前の好きにしていいぞ」

比叡「! いいんですか?」
660 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:42:16.34 ID:1LUsbeXzo

提督「ああ。この場はお前が一番優先されていいだろう。そっちの榛名も、それでいいか?」

W榛名「……わかりました。比叡お姉様にことを委ねるということであれば、異論ございません」

W大佐「……」

比叡「それでは……」コホン

比叡「みなさん椅子におかけください」

全員「「……」」

提督「は?」

W榛名「比叡お姉様?」

比叡「いや、は? とかじゃなくて。これからご飯を食べるんだから、みんな座って、って言ってるんだけど」

V提督「……ひ、ひえ」

比叡「ストップ!!」

 (手のひらをV提督へ向けて制止する比叡)

比叡「ごめんなさいとか、すみませんでしたとか、そういうセリフは聞きたくありません!」

V提督「……」

比叡「だから、おとなしく座っててください」

W榛名「……」
661 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:46:01.98 ID:1LUsbeXzo

鳳翔「さ、比叡さんもそう仰ってますし、みなさんもお座りください」

球磨「確かに、そう言われて突っ立ってる理由はないクマ」

望月「ま、まあ、そういうことなら……」チャクセキ

卯月「座るしかないぴょん!」チャクセキ

W伊勢「そうだね、みんな座ろ?」

大和「さ、提督もどうぞ」イスヒキ

提督「お、おう……」

望月「あれ? 鳳翔さん、なんか椅子多くない?」

鳳翔「実はもう一組、この席に招いている方がいるんですが、まだ来ていないようで……」

<ハ、ハナセ!!

<オトナシクシテクダサイ!!

提督「あれは……!!」
662 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:49:31.50 ID:1LUsbeXzo

N大尉「俺が行く必要はないだろう!? 妙高、放してくれ!」エリクビツカマレ

妙高「いい加減、覚悟を決めてください! 磯波さん、提督の足を持ってください!」グイグイグイ

磯波「は、はい……!」ガシッ

N大尉「い、磯波!? は、放せ! はな……!!」

提督「お前、N中佐か!?」

N大尉「て、提督准尉……!!」

妙高「ふう……鳳翔さん、N大尉をお連れしました」

鳳翔「ありがとうございます。いけませんよN大尉、秘書艦を困らせては」ウフフッ

N大尉「い、いや、しかし……」

鳳翔「それから、今の提督は少尉です。少尉も、今のN提督は大尉ですので、お間違えないよう」

提督「ああ、そういやそうだったか」

N大尉「はぁ……いやはや失礼した。まったく、またみっともないところを見せる羽目になったな」

龍驤「おぉお! N大尉やんか!! ひっさしぶりやあ!!」

N大尉「!? 龍驤と……陸奥? も、もしかして、以提督のところにいた二人か!?」

陸奥「はい、あのときはありがとうございました」ペコリ
663 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:50:30.88 ID:1LUsbeXzo

龍驤「見てみい! あの鎮守府にいた間宮も、回復したんよ!」

以間宮「N大尉、大変お世話になりました」ペコリ

N大尉「おお! 顔色が全然違うなあ、元気になったみたいで良かった! 俺はあの時は何の役にも立てなくて……本当にすまなかった」

龍驤「そんなことないって! あの啖呵を切ったあの時は格好良かったで!!」

N大尉「いやあ、それほどでも……ところで、後ろの胸の大きなお嬢さんはどちら様で?」デレッ

龍驤「」ズコッ

雲龍「?」

妙高「N大尉? 鼻の下が伸びていますよ?」コメカミヲコブシデハサンデ

N大尉「あだだだだだ!?」グリグリグリ

球磨「この人は何をしに来たんだクマ」

鳳翔「この方はN大尉。こちらにいる龍驤さんたちを以提督鎮守府から助け出したきっかけを作った方です」

望月「え、N提督、そんなことしてたの!?」

提督「知らなかったのか?」

卯月「全然知らなかったぴょん」
664 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:53:31.29 ID:1LUsbeXzo

妙高「こちらの間宮さんが私たちの鎮守府に来た時のことは承知していますね?」

望月「うん、前の鎮守府で働かされすぎてガリッガリだったんだよね?」

妙高「その間宮さんを助ける手助けをしたのも、N大尉ですよ」

卯月「全然知らなかったぴょん……!!」

望月「N提督かっこいいじゃん!?」

弥生「見直しました……!」

球磨「そのN大尉を、なんでこっちの駆逐艦たちが知ってるんだクマ?」

W大佐「V提督が来る前は、N大尉が鎮守府を仕切っていたからだ。かつて洗脳ツールを使った提督がいただろう、N大尉がその一人だ」

球磨「マジかクマ……」

提督「ついでに言うと、うちの大和をそのツール使って横取りしようとしやがった」

球磨「うわ、それマジで駄目なやつクマ……」

妙高「そういう過去もありますが、こちらの間宮さんの快気祝いということもあって、N大尉をこの席にお招きしたという次第です」

提督「なるほどねえ……」

N大尉「正直、どの面下げて准尉……じゃなかった、少尉のいる場にいたらいいのか、わからないんだが……」

提督「今まさに似たような状況の奴がいるから、お前までぐちぐち言わなくていいぞ」

N大尉「その理屈は意味が分からんぞ!?」
665 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:54:32.53 ID:1LUsbeXzo

鳳翔「W大佐とV提督には一度お会いしていると聞いてますので、紹介は不要ですね?」

N大尉「あ、ああ、そうだな。まあ一度しか挨拶したことがないんだが……」

比叡「お待たせしました!!」ガチャ

望月「うおおおおーー!?」ガタッ

卯月「カレー来たぴょおおん!!」ガタッ

比叡「鳳翔さんたちは配膳のお手伝いお願いします!」

鳳翔「ええ、お任せください」

間宮「さ、行きましょう!」

以間宮「はいっ!」

W榛名「あ、私も……」

比叡「大丈夫! 榛名は座ってていいから!」ニコッ

W榛名「あ……」

鳳翔「N大尉たちもどうぞおかけください」

N大尉「あ、ああ」

 カチャカチャ…
666 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:55:31.28 ID:1LUsbeXzo

W球磨「おお……実際に目の前に並ぶと、においだけで涎が出てくるクマ」

W伊勢「すごいね、なんかいろいろ光ってるっていうか、輝いてる気がする」

W大佐「あの時以来……あの時以上だな」

N大尉「これは、提督少尉のところの比叡が作ったのか?」

鳳翔「はい、そうですよ」

N大尉「そうか。これはすごいな、香りだけでこんなにそそられるカレーは初めてだ」

W球磨「大尉は、これが比叡の作ったご飯だと聞いても驚かないクマ?」

N大尉「ああ、俺はあの島で執務をしたことがあって、そのときに比叡の作ったご飯を三食いただいたことがある」

W球磨「最初から腕前を知ってたクマ?」

N大尉「いやあ、さすがに最初は俺も驚いたよ。比叡が作ったと聞いて思わず聞き返したのは確かだ」

N大尉「しかしそこの大淀から、比叡は仮にも御召艦なのだからこのくらいはできて当然だ、と窘められてな……」

N大尉「確かに失礼だとも思ったし、御召艦だったというのも事実なんだから、なるほどとも思ったんだ」

V提督「……」

N大尉「だから、驚きはするが、大袈裟に驚くのも失礼かと思っている。が、これはちょっと大袈裟に驚いても良さそうだよな?」

W球磨「良さそうクマ」ウンウン
667 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 13:56:30.72 ID:1LUsbeXzo

比叡「熱いので気を付けてくださいね!」コトッ

V提督「! ……俺も……いいのか?」

比叡「はい、どうぞ!!」

W榛名「……」

鳳翔「行き渡りましたね。それではお召し上がりください」

提督「んじゃまあ、いただくか」

卯月望月「「いただきまーす!!」」クワッ!

弥生「ふたりともうるさい……」

卯月「ぱくぱくぱくぱく」

望月「もぐもぐもぐもぐ」

間宮「一心不乱に食べ始めましたね……」

弥生「……静かになった」

卯月「止まんないぴょん……」モギュモギュ

望月「うっめ……マジうっめ……」モギュモギュ
668 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:01:02.09 ID:1LUsbeXzo

N大尉「本当にうまいな……磯波はどうした? 遠慮しないで食べていいんだぞ?」モグモグ

磯波「は、はい……では……」オソルオソル パクリ

磯波「……」モグモグ

磯波「んんん〜〜〜〜〜!!!」キラキラキラッ

V提督「おお、光ってる光ってる。妙高も遠慮するなよ?」

妙高「はい、そのようにいたします」ニコ

W大佐「俺たちも食べるとしようか」

W球磨「おかわりいただけるクマ?」キラキラ

W伊勢「早っ!?」

W球磨「カレーは飲み物クマ」キリッ

W大佐「訳わからんこと言ってないで、ちゃんとよく噛んで食べろ」

V提督「……」

W榛名「……」ジトッ

比叡「あれ? お召し上がりにならないんですか?」

V提督「あ、いや……」
669 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/10/29(土) 14:02:01.04 ID:1LUsbeXzo

比叡「どうぞ、お召し上がりください!」

V提督「俺……いや、私は……」

比叡「どうぞ!!」ズイ

V提督「……」

W榛名「……」

V提督「……」カチャ…

V提督「……」パク

V提督「……」モグモグ…

比叡「お味のほうは、いかがですか?」

V提督「ん、あ、ああ……そうだな……」

比叡「……」ジッ

V提督「うまい、な……」

比叡「良く聞こえなかったんで、もう一回お願いします!!」

V提督「!?」

W榛名「!?」

提督「……」
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