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【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その2だよ」【×影牢】
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470 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/20(土) 05:37:47.23 ID:X4U9SEBM0
乙です
保守
471 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:38:36.60 ID:6E2y+z4To
お待たせしました、続きです。
472 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:39:31.36 ID:6E2y+z4To
* *
(花畑の真ん中に、大きな黒い穴が開いている)
提督「おお……なんかすげえことになってんな、こりゃ」
暁「ここだけ地面がとけてるみたい……」
時雨「穴の中はまるで雲の中みたいだね。真っ黒で、稲光も見えるよ」
提督「なのに音が全然してこないのが不気味だな」
――時雨様……
時雨「エフェメラ!」
――ここまで、魔神様を導いていただき、ありがとうございました……
提督「この声の主がエフェメラか……」
暁「ねえ、エフェメラさんってどこにいるの?」
――私の躯は、遥か彼方……皆様とお目見えすることは、かないません……
――されど……私の声が、魔神様に届いていること……喜ばしく、思います……
提督「……礼しか言えねえってか」チッ
時雨「そうだとしても、提督、ちゃんと労ってあげなよ」
暁「そうよ、ここまでしてくれてるんだから、お礼を言わなきゃ!」
473 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:40:15.93 ID:6E2y+z4To
提督「……おい、エフェメラ」
暁「言い方!!」プンスカ!
提督「しょうがねえだろ、俺はいつもこんなんだ……おい、エフェメラ」
――魔神様……
提督「お前の望みは何だ?」
暁「……なんでそんなことを聞くの?」
提督「礼を言うだけじゃ物足りねえと思ったからだ。せめてなにか、ひとつくらい借りを返してやんねえとな……」
時雨「提督らしいね」フフッ
――私の……
提督「ああ、そうだ。お前の望みを言え」
――私の望みは……
――魔神様の……望みがかなうこと……!
提督「……」
――あなたの望みこそが……私の望み……
――あなたの願いこそが……私の願い……!!
提督「……」
474 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:41:01.15 ID:6E2y+z4To
暁「司令官みたい」ボソッ
時雨「そうだね。似た者同士だ」
提督「なんなんだよまったく……」
――私の力が……魔神様の幸せのために使えるのならば……これ以上の、喜びはありません……!
提督「なんでこういう奴ばっかりなんだよ……やめてくれよ、本当によ」アタマガリガリ
暁「司令官が両手を使って頭をかくところ、初めて見たわ」
時雨「そうとう照れてるんだね」
提督「観察してんじゃねえよ! ったく……」
提督「とにかく、この穴に落ちれば現世に戻れる、っつうか、俺たちが元の肉体に戻って生き返られるわけか?」
――その通りにございます……
時雨「そっか。じゃあ、僕はここでお別れだね」
提督「!」
暁「えっ、どうして!?」
時雨「僕は、もう死んでるからね。僕の体も、墓場島に埋めてもらったけど、今は溶岩の中じゃないかな」
暁「あ……!」
475 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:41:45.90 ID:6E2y+z4To
ザワワワワワッ!
提督「な、なんだ!?」
暁「ね、ねえ、お花が一斉に逃げちゃったわ!?」
時雨「なにがあったんだろう……」
??「見つ、けた……」ズルッ
提督「誰だ……!?」フリムキ
時雨「!」
暁「ひっ……!? な、なにこれ!? ヘドロのかたまりみたいなのが……喋ってる!?」
??「見つけたぞ……! 今、墓場島と言ったな……!」
??「やっぱり……あの島の提督は、悪い奴だったんだ……」ビチャッ
提督「ああ? なんだこいつ?」
??「忘れたとは言わせないぞ……おまえのせいで、俺たちは死んだんだ……!」ベチャア…
提督「なんだそりゃ」
??「とぼけるな!! よくも、俺たちを殺しやがってぇ……!!」
提督「だから誰だよお前は……」
476 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:42:47.44 ID:6E2y+z4To
時雨「……ねえ、この人、もしかして、島で死んだテレビ局のスタッフじゃないかな?」
提督「テレビの……ああ、土左衛門になった奴のどっちかか?」
??→クルー3「ふざけた奴め! 俺たちを殺しておいて、覚えてすらいないって言うのか!!」
提督「死んだのはお前のせいだろ。なんで俺に責任を押し付けてんだよ」
クルー3「まだとぼけるのか! 深海棲艦の仲間を使って、俺たちを殺した裏切り者めぇ!」
提督「ル級のことか? それだったら俺はあいつにお前を殺せなんて頼んでねえし」
提督「お前がル級の気に障るようなこと言ったんじゃねえのか? それ以前に俺は島から出てけって最初から言ってたろ」
提督「その忠告を無視し続けたお前の自己責任だろうが。なんでもかんでも他人のせいにすんじゃねえよ、くそが」
クルー3「黙れ黙れぇえ! 極悪人の分際でぇええ! お前こそが、死ぬべきなんだあああ!」
クルー3「轟沈した艦娘が深海棲艦になるなんて噂を利用して、艦娘を私物化してたくせに……!」
クルー3「艦娘は、正しい人間に使われるべきなんだ! お前みたいな深海棲艦が、艦娘を利用するなああ!!」グゴォ!
提督「……ああやだやだ、なんかくっそ面倒臭え奴に絡まれたぞ、こりゃ」ハァ
暁「ね、ねえ……早く誤解を解いた方がいいんじゃない? 司令官が悪者ってわけじゃ……」アセアセ
クルー3「深海棲艦が正しいわけがあるかあああ!」グワッ!
暁「……」ドンビキ
477 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:43:31.94 ID:6E2y+z4To
時雨「とりつく島もなさそうだね……」
提督「いるんだよなあ、自分の主張が正しいと盲信して、他人ぶん殴りながら被害者ぶる奴」
時雨「……ずいぶん具体的だね?」
クルー3「お前みたいな奴を、みすみす生き返らせてたまるかああ!!」
クルー3「俺が退治してやるううう! 地獄に落ちろおおおお!!」グワッ!
暁「な、なによそれええ!?」
提督「暁、時雨、下がってろ」
クルー3「お前が、艦娘に命令するなあああ!!」ビャッ!
提督「うお!?」バッ
時雨「うわっ!?」バッ
提督「なんだあ? ヘドロ飛ばしてきやがった……!」
時雨「ちょっと提督! こっちに飛ばさせないでよ!」
提督「お前こそ俺の後ろに陣取るなよ!」タタッ
クルー3「逃げるなああ!」ブンッ!
提督「場所変えようってんだろうが! つうか、それ以前に触りたくねえな、くそが……!」
478 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:44:16.97 ID:6E2y+z4To
――魔神様……私の力を……!
(地面に空いた穴の中から、赤青黄色の三色の光が飛んできて、提督の体に入り込む)
提督「……これは……!?」
――魔神様……私の力を……どうか、お使いください……!
提督「……!」
暁「司令官! 危ないっ!!」
クルー3「死ねえええ!」グワッ!
キュワワワワワ…
クルー3「え?」フワッ
暁「な、なにあれ?」
UFO<キュワワワワワ…
(突如現れた小さなUFOがクルー3の体を持ち上げる)
クルー3「は、放せぇえええ!?」ジタバタ
時雨「ユ……UFO?」ポカン
暁「UFOが、泥のお化けを捕まえちゃった……」
クルー3「な、なんだこりゃああ!?」
479 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:45:00.69 ID:6E2y+z4To
提督「なるほど……使えるな」
――ああ……魔神様……!
提督「……助かった。早速使わせてもらったぜ、お前の力」
暁「あ、あのUFO、司令官が呼んだの……!?」
提督「おう。これも魔神の力らしい。もともとメディウムたちも、魔神の力のひとつなんだが……」
提督「それが分離して自由意思を持つようになった。ま、お前たち艦娘と似たようなもんだと思ってくれていい」
時雨「じゃああのUFOも……」
提督「そのうちメディウムとなって俺たちの前に現れるかもな」
提督「まあ、それはさておいて、だ」ジロリ
クルー3「ち、ちくしょう、放せぇええ!! この、化け物があああ!!」ジタバタ
提督「……化け物ねえ。お前だって、十分化け物だと思うがな?」
クルー3「そんなわけがあるか!!」
提督「いやいや化け物だろ、つまんねえ謙遜すんな。そんな姿で私は人間ですとか言えたもんかよ」
クルー3「いいや、俺は人間だ……!」
提督「俺たちはここで、さっき別の人間たちと出会ってきたんだが、そいつらは少なくともお前みたいな姿はしていなかったぞ?」
480 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:47:46.01 ID:6E2y+z4To
提督「ここにいる艦娘の二人だってそうだ。生前の姿のまま、ここに存在している」
提督「俺は人間の器に深海棲艦の魂が入ったからこんな姿なんだが、偉そうに言ってるお前の今の姿はどうなんだ?」
クルー3「……俺は……『俺たち』は……!」ガクガク
時雨「……なんか様子が変だよ?」
提督「それなんだが、あのクルーの魂に変な混ざり物が見えるんだよ」
暁「混ざり物?」
提督「ああ、どうもエフェメラから魔神の力を受け取った拍子に魂というか正体が見えるようになったみたいなんだが……」
提督「どうも似たような思想の魂を引き寄せて合体してるみたいなんだ」
時雨「……じゃあ、あのクルーの魂には、全然関係ない魂も混ざってるってことかい?」
提督「おそらくな。他人の主張に乗っかって、自分の不満もどさくさ紛れに晴らそうって連中とか」
提督「その騒ぎそのものを面白がって、面白可笑しく便乗拡散する連中、現実世界でもいるだろう?」
時雨「それもまた具体的だね?」
クルー3「……俺たちは……オ、オレタチハァァァアガアアァ!!」
暁「司令官!? 余計に話が通じそうになくなってるんだけど!?」
提督「ちっ、不純物のほうが強かったか。じゃあ仕方ねえ」
481 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:48:31.01 ID:6E2y+z4To
(何もない空間から現れる発射装置)
暁「! な、なにその機械!?」
時雨「空中に何かの発射台が……!」
提督「カオリ・ボールスパイカーってメディウムがいたろ? あれのサッカーボール版だ」
キックオフ<ズバァン!
クルー3「グエェエ!?」ドゴォ!
ゴロゴロ…ベチャッ
提督「そんでお次は……」
オクトパスアーム<ヴジュルルラァ!!
クルー3「ヒ、ヒギャアアア!?」ジュルジュルジュル!!
暁「ひいいい!?」ビクッ
時雨「うわ……!」
提督「クラーケンじゃねえから安心しろ。あのタコ足であいつを一箇所にかき集めて……」
時雨「な、なんでかき集めるの?」
提督「これ以上あいつらの魂が拡散しないようにだよ。で、とどめはこいつだ」バッ
キューブフリーザー<グォングォングォン…
482 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:49:32.36 ID:6E2y+z4To
暁「な、何か四角い機械の箱が降りてきたわ!? あれも司令官の罠なの!?」
提督「ああ、まあ見てろ」
キューブフリーザー<ゴォォォォ!
時雨「……静かになったね?」
キューブフリーザー<グォングォングォン…
暁「……上に上がって行っちゃった」
クルー3「」カチンコチン
時雨「綺麗に氷漬けになったね……」
提督「……今更だが、魂だけの世界でも罠の力は通用するんだな」
暁「司令官、この人どうするの?」
クルー3「……」カチンコチン
提督「こんなの誰かに処分してもらうしかねえな。どこへ持ってったらいいか、誰かわからねえかな?」
時雨「この氷を運んで、また人を探すの?」
提督「いや、この氷塊は凍らせ方が特殊だから、ちょっと強い力で押してやると、そっちへつるつる滑っていくようにできてる」
提督「だから、ゴール地点まで一直線に滑られてやることができれば、俺たちが運んでいく必要はない」
483 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:50:16.23 ID:6E2y+z4To
時雨「……ということは、また花に聞いてみるといいのかな?」
ザザザ…!
提督「お、察してくれたみたいだな」
暁「……ねえ、おかしいわ? お花が近づいてこないわよ?」
提督「んん? そうだな……あ」
暁「どうしたの司令官」
提督「暁……お前、動くなよ……!」ジロリ
暁「え……?」
(提督の頭上の何もない空間からマシンガンが現れて、暁に銃口を向ける)
暁「し、司令官!?」
時雨「提督!?」
提督「……踊れ」
マシンガンダンサー<ダララララララ!!
暁「きゃああああ!?」ピョンピョン(←暁の足元を機銃掃射)
時雨「て、提督!? 暁を撃つとか、何を考えてるの!?」
484 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:51:01.29 ID:6E2y+z4To
提督「……」
暁「し、し、司令かああああん!?」ピョンピョン チュインチュイン
提督「……よし、こんなもんか」
マシンガンダンサー<ピタッ
暁「し、司令官!? 一体何を考えてるの!?」プンスカ!
時雨「暁に当たったらどうする気だったの!?」
提督「安心しろ。ありゃあ床にしか当たらないように狙ってんだ。で……」
暁「……??」
(提督がおもむろに暁に近づいて、暁の両足の間の地面を掴むと)
??「ぐえっ!!」
暁「ひっ!?」ビクッ
時雨「え!? なんなの、今の悲鳴!」
提督「暁の足元に、こいつが潜んでいたんだよ。おら、出てこい!」ズルルッ!
時雨「なにそれ!? 影絵人間!?」
??→クルー5「……ふ、ふへへ、見つかっちまった……」ドロォ
暁「」アッケ
485 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:51:46.22 ID:6E2y+z4To
提督「お前、さっきのテレビクルーの仲間だろ。一緒に死んだ奴だな?」
クルー5「へ、へへへ……」メソラシ
提督「花が俺たちの近くに寄ってこなかったのは、こいつが潜んでたせいだな」
時雨「でも、どうして暁の足元に?」
提督「……暁のスカートの中を覗き見したかったとかか?」
暁「!!」バッ!
クルー5「ぐえへへ……スカートを抑えて恥ずかしがる幼女……うひひひっ」
暁「〜〜〜!!」ゾワワッ
時雨「うわあ……」
提督「そういうことかよ……こういう不埒な奴は……」
フッキンマシーン<ガジャッ!!
提督「こういう機械に乗っけて」ポイッ
クルー5「うおっ!?」ガシャッ
提督「運動で煩悩を追い出してやるといいな」
フッキンマシーン<ガッションガッションガッション!!!
クルー5「うおおおおおお!?」ガシャガシャ
486 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:52:33.46 ID:6E2y+z4To
時雨「ねえ、提督? さっきのマシンガンの罠は、暁を狙ったんじゃなくて、足元に潜んでたあの人を狙ったってことなのかな?」
提督「そういうことだ。ただ、あの罠自体は、誰かを対象にしないと狙いが定まらなくてな……悪いが、暁を的にしちまった」ナデナデ
暁「も、もう!! 怖かったんだからね! って、頭を撫でないでよ!!」プンスカ!
クルー5「お、俺はいつまで、腹筋してなきゃ、いけねえんだあああ!?」ガシャガシャ
提督「そりゃあ死ぬまで……って言いたいが、もう死んでるしなあ。この辺で止めてやるか」グッ
イビルアッパー<ズガシャアァン!!
クルー5「!?」
(フッキンマシーンごとぶっ飛ばされたクルー5が)
クルー5「ぶげっ!?」ベチャッ
(クルー3の氷漬けの氷塊の上に落下する)
キューブフリーザー<グォングォングォン…
クルー5「げ、ちょっと待ってくれ! 俺はまだ……うぎゃああああ!?」
時雨「……」
暁「……」
キューブフリーザー<グォングォングォン…
クルー3&5「」カチンコチン
提督「よし。これでまとめて始末できるな」
487 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:53:16.87 ID:6E2y+z4To
クルー5『ちくしょう! どうしてまたお前なんかと一緒に……!』
クルー3『それはこっちのセリフだ! なんでお前が……!』
暁「な、なんか声が聞こえない?」
提督「氷漬けにしたとはいえ、魂だからな。思念って意味での声が漏れてきてるんじゃねえか?」
クルー3『俺たちは、人間のために正しいことをしようとしたんだぞ!』
クルー5『まだ言ってんのかよ! 人間のためとか言うけど俺は頼んでねーぞ!』
クルー3『いい加減にしろ! 俺たちの言ってることが正しいんだ!』
クルー5『うるせーうるせー! なんでお前らに従わなきゃならねーんだ!!』
時雨「まだ言い争ってるみたいだよ」
提督「……ま、どうでもいいか。こいつら、どこに向かわせてやるといいかな?」
ザザザ…!
暁「今度はお花が集まってきてくれてるわ!」
提督「お、そっちか。案内ありがとな。んじゃ、滑らすぞ……せぇ、のっ!!」グッ
氷塊<ツルツルツルーー!
クルー3『お前のせいで艦娘が……!』
クルー5『お前が悪いんだろうが……!』
氷塊<ツルツルーー…
488 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:54:16.94 ID:6E2y+z4To
時雨「最後の最後まで仲間割れしてるなんて……彼らには失望したよ」
暁「なんだか、可哀想な人たちだったわね」
提督「まったく……俺は、恵まれてんなあ」
時雨「急にどうしたの?」
提督「ああ、あのテレビクルーの周りに取り憑いた雑霊が、あいつを煽るような性質の奴ばっかりでなあ……」
提督「そこへ行くと、俺の周りにいる艦娘たちは、俺が行き過ぎるとみんな真面目に止めてくれたからな」
提督「だから、俺は恵まれてたんだな、って思っただけさ」
時雨「提督……」
提督「だからこそ」クルリ
提督「生き返られるなら、ちゃんと戻って、義理を通さねえとな。暁もそうだろ?」
暁「……そ、そうね!」
(大きな穴のそばへ3人が歩いて近づく)
提督「……改めて見ると、すげえ光景だな」
時雨「積乱雲の中を飛ぶ航空機が見る光景だね」
暁「見たことあるの?」
時雨「前の鎮守府で、山城が飛ばした偵察機の写真をみせてもらったことがあるんだ」
489 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:55:00.71 ID:6E2y+z4To
時雨「扶桑とはほとんど話す機会がなかったけど、山城には結構かまってもらったからね……」
提督「D提督のせいだな……」
暁「時雨……」
時雨「さ、ふたりとも。みんな、君たちを待ってるんだ。早く戻ってあげなよ」
提督「……そうだな。けど、このまま飛び込んで大丈夫なのか? 雷とか鳴ってんだが……」
時雨「大丈夫だと思うよ。僕たちも魂だけの存在なんだから、雷に打たれて死ぬとかありえないよ、多分」
提督「それもそうか。よし、じゃあ暁、お前、先に行け」
暁「はあ!?」
提督「お前の腰が引けてて心配なんだよ。お前がちゃんとここから飛んだとこを確認したいだけだ」
提督「それに、よくレディーファーストって言うしなあ?」
暁「うぐ……わ、わかったわよ!」
提督(まあ、悪いほうの意味のレディーファーストだよな、これは)
時雨(毒見役って意味のほうだね……)
暁「い、いくわよ!? 暁も、飛べるんだから!」
提督「おう」
時雨「うん」
490 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:55:45.89 ID:6E2y+z4To
暁「……」ウデデハバタキ
暁「……」カラダヲヒネリ
暁「い、いくわよ!!」ソノバジャンプ
提督「おう」
時雨「うん」
暁「……」クッシン
暁「……」ウデヲグルグル
暁「……っ! ……っ!」ゼンクツ
暁「……」シンコキュー
時雨「早く飛びなよ」ケリンチョ
暁「ぴっ!?」ヨロッ
暁「ぴゃあああぁぁぁぁぁ……」ヒュゴーーーーー…
提督「真っ逆さまだな……」
時雨「結局、手助けしてあげないと駄目なんじゃないか」ヤレヤレ
提督「少しは怖がってもいいだろ……くくっ」
時雨「……ふふっ、笑っちゃ悪いよ」
491 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:56:30.86 ID:6E2y+z4To
提督「よし。暁も行ったし、そんじゃあ俺も覚悟決めて、行くか」
時雨「フリはいいからね?」
提督「ああ。世話になったな」
時雨「ふふっ。これで少しは、扶桑たちを立ち直らせてくれた君に恩を返せたかな」
提督「十分すぎる。扶桑たちにもよろしく伝えておくよ……あっちで、ここでの出来事を忘れてなけりゃいいんだが」
時雨「ありがとう……」ニコ
スッ
提督「じゃあな、時雨」タッ
バッ!
提督「……!」ゴォッ
ヒュゴーーーーー…
時雨「……」
時雨「……」
時雨「……行っちゃった」
時雨「扶桑や山城と、もう少し一緒にいたかったけど……しょうがないか」
492 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:57:20.93 ID:6E2y+z4To
時雨「さてと。僕は……どうしようかな。中将さんたちを追いかけてみようかな……」
グイ
時雨「えっ?」
グイグイ
時雨「な、なに!? 穴の方に引っ張られてく……!」
――時雨様……
時雨「! エフェメラ……!」
――あなた様にも、御礼申し上げます
時雨「いや、いいよ。僕の心残りもこれで……」
――私から……時雨様へ、最後の贈り物を……
時雨「え?」フワッ
時雨「ええっ!? なんで宙に浮いてるの!?」ジタバタ
――さようなら、時雨様。あなた様にも、魔神様の御加護があらんことを……
時雨「ま、待って!? 僕のからだは……」
ポイッ
時雨「ぽいって夕立じゃないんだからうわあああぁぁぁぁ……!?」
ヒュゴーーーーー…
穴< シュウゥゥゥ…
穴< フッ…
平地< シーン…
* * *
* *
*
493 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/23(火) 00:04:40.19 ID:yiVf+SCAo
というところで今回はここまで。
今回登場したイビルアッパー以外の罠は、
エフェメラから力を借りた、と言う意味で、影牢〜もう1人のプリンセス〜に登場した
DLCの罠で統一しました。
494 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/23(火) 09:42:12.87 ID:oktbFUMI0
乙です。あかん、もう続きが気になる
495 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/23(火) 19:47:54.22 ID:sH9qaPfL0
乙
しぐあか……意外と有りなんじゃないかな
496 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:10:24.37 ID:Vi+uqldio
それでは続きです。
497 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:11:18.54 ID:Vi+uqldio
* 墓場島周辺海域 *
* 医療船内 *
(人工呼吸器や点滴などの管がたくさん取り付けられて眠っている提督)
提督「」シュコー…
看護師「……容体に変化なし。心拍数や血圧も正常値……」カキカキ
如月「……」(提督の眠るベッドの傍らで椅子に座って提督を見つめている)
タッタッタッタッ…
ニコ「魔神様!!」バッ
如月「!?」
ニコ「あれ?」
如月「ニ、ニコちゃんどうしたの……?」
ニコ「……魔神様はまだ目を覚ましてないの?」
如月「え、ええ……まだ、見ての通りよ?」
ニコ「うーん、おかしいな……なんとなく、魔神様の気配を感じたんだけど」
如月「そうなの? 看護師さん、特に変わったところはなかったんですよね?」
看護師「はい。特にこれといった変化は何もありませんね」
ニコ「……そう」
498 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:12:03.25 ID:Vi+uqldio
大和「失礼します、ニコさんはこちらにいらっしゃいました?」ヌッ
不知火「慌てて走っていたようですが、なにかあったんでしょうか」
ナンシー「もー、ニコちゃんだめだよー、ニコちゃんが慌ててるとみーんな落ち着きがなくなっちゃうんだから〜」
不知火「艦娘もメディウムも、深海棲艦勢も一様に同じ思いです。どうか、落ち着いた行動をお願いいたします」
ニーナ「ただでさえ私たちは人間たちに警戒されていますから……ニコさんに万が一があっても困ります」
ニコ「ニーナもナンシーも、随分人間どもに丸め込まれちゃったね?」ジトッ
ニーナ「ニコさんがそのように殺気立つからですよ……」
ナンシー「あたしだって、マスターを魔力槽に入れてあげるのが一番いいとは思うけどさ? 神殿は遠いじゃん?」
大和「ニコさんが御自身で仰っていたではありませんか。魂が離れた場所から肉体を遠ざけると、その魂が戻ってこなくなると」
ニーナ「この近辺で、人間に近しい身体が生命を維持できる場所、というのがこの船の中の設備しかありません」
ニコ「わかってるよ。わかってはいるけど……」
如月「……!」
ピピー ピピピピー
看護師「脳波計が……!」
ニコ「魔神様!?」
499 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:12:47.67 ID:Vi+uqldio
如月「今、司令官の指が……」
提督「」ピク
ナンシー「動いてる!!」
看護師「ちょ、ちょっと失礼します! 如月さん、提督さんに声をかけてもらえますか!?」
如月「は、はい! 司令官! 司令官、聞こえる!?」
看護師「血圧と心拍数が上昇……瞼の下で眼球も動いてる……!」
看護師「このまま声をかけ続けてください! 皆さんも、うるさくならない程度に!」
不知火「司令……!!」
ニコ「魔神様! ぼくだよ!」
ナンシー「マスター! 早く起きてよ!!」
大和「提督!!」
ニーナ「魔神様!!」
如月「司令官!!」
提督「……」シュコー…
提督「……う……!」
500 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:13:32.49 ID:Vi+uqldio
如月「司令官!!」
ニコ「魔神様!!」
大和「提督!!」
ナンシー「マスター!!」
不知火「司令!!」
ニーナ「魔神様!!」
提督「……う……る、せぇ……耳元、で、叫ぶな……!」
如月「司令官……!」ウルッ
ニコ「聞こえてるのなら……早く、返事をしなよ……!」ウルウル
提督「なん、だ、この……眩しいし、なんだこの、邪魔くせえマスク……背中も、痛ってえ……」
不知火「当然、ですよ……何日眠っていたと思うんですか……!」グスッ
ナンシー「早く魔力槽に入れてあげようよ! ね!!」ピョンピョン
大和「うええええん、提督良かったああああ!」ナミダジョバー
ニーナ「あ、あの、みなさん落ち着いて」オロオロ
501 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:14:17.56 ID:Vi+uqldio
* しばらくして *
看護師「……修復材入りの湿布を貼ってすぐ治るだなんて」
明石「まあ、あの人は特殊なんですよ。人間じゃないというか」
伊8「血液検査だって、普通の人間の血液型に合致しなかったんでしょう?」
看護師「え、ええ、まあ。でも、艦娘とも違うみたいですし……」
明石「そうですか〜……だとすると、深海棲艦かな?」
看護師「あ、あの、少尉さんは、人間だったんですよね……?」
伊8「はい、そうでしたよ。スタートは人間だったと思います。けど、何度か死んだり体を作り替えられたりしてるみたいですし……」
看護師「えええ……?」
*
提督「5日?」
如月「そうよ? 司令官は5日間、ずっと眠り続けていたの」
提督「そんなに経ってやがったか……」
ニコ「おかげでいろいろ話は整理できたけどね」
502 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:15:03.35 ID:Vi+uqldio
不知火「何があったか、順を追って説明します」
提督「ああ、頼む」
不知火「まず……司令からの通信が途絶えた後、ブラックホールのメディウムであるベリアナさんが、司令のところにいたそうです」
不知火「ベリアナさんはニコさんからの指示で、司令が逃げ遅れた時を想定し、ブラックホールで異次元へ逃がして保護するつもりでした」
不知火「ですがその際に、ベリアナさんがブラックホールを作るのに必要な魔力を補充するための魔法石が、島の丘の上で割れてしまい……」
不知火「その石の力と引き換えに、女神妖精さんが復活しました」
提督「……」
不知火「女神妖精さんは、その力で司令と如月たちを復活させ、かつ、島に埋葬した、轟沈した艦娘の魂を呼び起こし……」
不知火「その艦娘たちの魂が火山活動で発生した溶岩の流れを堰き止めたことで、私たちが島に乗り込んで司令たちを運び出せたんです」
不知火「メディウムたちのサポートもあって、全員無事に溶岩の中から脱出できた……というのが、あの日、島で起こったことです」
提督「……妖精はどうなった?」
不知火「……わかりません。ただ、妖精さんは、死なないで消えるだけ、と言っていました」
提督「……」
不知火「その後、保護された司令と如月、電、朧、吹雪、初春の5名がこの医療船で治療を行い、駆逐艦の5名は無事回復」
不知火「そして本日、司令が目を覚まされたと」
503 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:15:47.84 ID:Vi+uqldio
提督「艦娘は全員無事なのか? 沈んだりした奴はいないな?」
不知火「轟沈した艦はありませんが、燃える島を見て気を失った暁が、いまだに目を覚ましていません」
提督「暁が!? ……変だな、あいつ、俺より先にこっちに戻ってたはずだぞ?」
不知火「……は?」
如月「ど、どうして司令官が、戻ったってわかるの?」
提督「あー……ちょっと話が長くなるから、あとでな。ほかに……メディウムたちはどうした?」
不知火「はあ……メディウムは全員無事です。交戦したメディウムもいるため、無傷ではありませんでしたが」
提督「軽巡棲姫や、ル級たち深海棲艦はどうなった?」
不知火「深海棲艦全体の被害状況は把握しておりません。しかし、軽巡棲姫やル級さんといった、司令と交友のある深海棲艦は無事です」
提督「被害ゼロってわけじゃねえんだろうな。全員この船にいるのか?」
不知火「いえ、この島の所属以外の艦娘の何名かは、今回の件の報告のため本営に呼び出されています。それから……」
ニコ「メディウムの中でも血の気の多い子たちには、一度この船から降りてもらってるよ」
ニコ「具体的に言うと、ケイティーやコーネリア、ルイゼットみたいな過激派や、いるだけで危ないウーナやイーファ、ティリエにマリッサ……」
提督「確かに、ケイティーやマリッサは特にやべえな」
504 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:16:33.34 ID:Vi+uqldio
ニコ「それから、ユリア、ヴィクトリカ、エレノアみたいに酒を飲んで騒ぐ子たちとか、引き籠りたいっていうイサラやカサンドラ」
ニコ「じっとしていられないアマラやクリスティーナ、カトリーナ、シャルロッテ、オディール、ヨーコ、シェリル、リンメイ……」ユビオリカゾエ
ニコ「とにかく大人しくできない子たちには、一旦深海棲艦の拠点に行ってもらってるよ」ハァ…
提督「……思ったよりも騒々しい奴が多いよな、メディウム連中は」
不知火「ただでさえメディウムの殆どが物騒な武器を持っていますからね……」
如月「素手なのはヒサメさんと、イブキちゃんとオリヴィアさんくらい?」
ナンシー「ベリアナとヴェロニカもだね!」
提督「残ってる方数えたほうが早そうだな」
ニコ「今度からきみがぼくたちのご主人様なんだからね? ちゃんと面倒臭いって言わずに面倒見てよ?」
提督「そこで先手打つなよ……誰の入れ知恵だ?」
ニコ「そこそこ付き合ってきてるんだ、そのくらい察せないと思った?」
提督「やれやれ……そうかよ」カタスクメ
505 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:17:18.46 ID:Vi+uqldio
不知火「それから、深海棲艦もこの船には乗っていません」
不知火「その代わり、司令が目覚めるまでの間、この船を取り囲んで移動できないようにしています」
提督「じゃあ、俺が姿を現せば、あいつらも解散するってことか?」
不知火「はい。その際に、司令を含めての話し合いを行いたいと、海軍から申し出があります」
提督「……なんか、面倒臭そうな話だな?」
不知火「面倒かもしれませんが、良い話だと思います。司令にとって、待ち望んでいたお話かと」
提督「……?」
不知火「それからもうひとつ。司令が住んでいた××島ですが、島の北部にあった火山の活動により、すべての施設が焼失しました」
提督「……」
不知火「島の再建については、勝手に泊地棲姫が陣頭指揮を執っています」
提督「は……?」
506 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:18:02.33 ID:Vi+uqldio
* 同じころ *
* 別の病室 *
暁「」シュコー…
(人工呼吸器をつけてベッドで眠る暁をじっと見つめるヴェールヌイ)
ヴェールヌイ「……」
コンコンコン
川内「入るよ」チャッ
電「失礼します、なのです」
ヴェールヌイ「!」
川内「……暁は、まだ目を覚ましてないのか」
ヴェールヌイ「……」コク
電「私たちの司令官さんは、少し前に目を覚ましたそうなのです」
川内「提督が目を覚ましたからね。暁も起きないかと思ってきてみたんだけど」
川内「そう、都合よくはいかないかあ……」
507 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:18:48.34 ID:Vi+uqldio
ヴェールヌイ「……電」
電「? なんですか?」
ヴェールヌイ「この暁は、中破してあの島に流れ着いてきたそうだね」
電「はい」
ヴェールヌイ「……その時のこと、詳しく教えてくれないか」
電「詳しく……ごめんなさい、電が遠征していた時のことなので、状況そのものはあまり詳しくないのです」
電「流れ着いてしばらくの間、3日くらい寝込んでたとは聞いていますが……」
電「暁ちゃんを治療した明石さんは、ドロップ後に何かあったんじゃないか、って言ってました。話を聞きたいなら、呼びますか?」
ヴェールヌイ「そうだね……お願いしようかな」
川内「! 暁が……泣いてる……!」
暁「」ツゥ…
ヴェールヌイ「!」ガタッ
電「あ、暁ちゃん! 大丈夫ですか!?」テヲニギリ
暁「あ……しれ……か……!」
川内「うわごとで何か言ってる……!」
508 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:19:33.65 ID:Vi+uqldio
ヴェールヌイ「暁!」
暁「しれ……あ……ああっ……」ウーン
電「し、しっかりするのです!!」
暁「司令官……っ!!」ビクビクッ
暁「はうっ……!」ビクンッ
パチリ
電「……」
川内「……」
ヴェールヌイ「……」
電「……あ、暁ちゃん?」
暁「あ、あれ? ここは……電? 川内さんに……響? このマスク、なに?」キョロキョロ
ヴェールヌイ「暁……私は、ヴェールヌイだよ」ウルッ
川内「良かったぁ……本当、良かったよ、目を覚ましてくれて……!」ヘナヘナ
電「暁ちゃん、大丈夫なのですか? 海の上で意識を失ってから、5日も眠っていたのです!」
暁「い、5日も!?」
509 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:20:17.78 ID:Vi+uqldio
川内「そうだよ〜、心配したんだから! さっきなんかうなされてたし、いったいどんな夢見てたの?」
暁「夢……」
暁「……司令官と一緒にいた夢を見たわ……なんか、とても嬉しかったんだけど、悲しい夢……」
電「暁ちゃん?」
暁「そうよ……私、どうして忘れていたのかしら」
ヴェールヌイ「暁……?」
暁「あの日、鎮守府が燃えて……私が逃げたせいで燃えちゃって……」
川内「暁……?」
暁「私、夢の中で……天国で、I提督に会ったの」
ヴェールヌイ「!!」
川内「!!」
暁「I提督は、好きな人がどこかに行かないように……翔鶴さんが沈んで離れ離れにならないように、あんなことをしたんだって……!」
川内「……I提督に、会ってきたって……?」
暁「そうよ。翔鶴さんも、司令官に川内さんや響にもよろしく、って言ってて……私、どうしてこんな大事なことを忘れてたのかしら」
ガバッ!
暁「きゃ……川内さん!?」
510 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:21:03.28 ID:Vi+uqldio
川内「もう、なんだよぉ……やっぱり、私の知ってる暁だったんじゃないか……!!」ギュゥ
暁「せ、川内さん、苦しいってば……!」
川内「苦しかったのはあたしだよ!! I提督のことを知らないか、って聞いたときに、知らないって答えたじゃないか!」グリグリグリ
ヴェールヌイ「……そうか。記憶を失っていたのか。探しても見つからないはずだよ」
暁「えっ?」
ヴェールヌイ「川内さん。私も、混ぜてくれないかな」ポロポロ
ヴェールヌイ「探していたんだ。暁のことも。川内さんのことも」
川内「は、ははは、みんないたんじゃないか……! 響も、いたんじゃないか……!!」ガシッ
ヴェールヌイ「川内さんこそ、新しい鎮守府で命令違反なんかするから……!」ギュウ
川内「しょうがないよ! 強くなりたくても、そうさせてもらえなかったんだから!」
暁「ちょ、ちょっと待って!? えっ!? 川内さんって、あの川内さん!? ヴェールヌイも、あの響なの!?」
川内&ヴェールヌイ「「気付くのが遅い!!」よ……!!」オシタオシ
暁「きゃああ!?」オシタオサレ
電「ふ、ふたりとも! 暁ちゃんは病み上がりなのです!!」
511 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:21:48.03 ID:Vi+uqldio
* 墓場島沖 海上 *
ヲ級(哨戒中)「……」
イ級「」ザバザバ
ロ級「」ザババー
イ級「?」
ヲ級「? ドウシタ」
イ級「……!」
ヲ級「海中ニ、波? ……ナニカガ、集マッテイル……?」
ドボーーーンン!!
ヲ級「!?」ビクーッ
イ級「!?」ビクーッ
ロ級「!?」ビクーッ
ゴボゴボゴボ…
時雨「ぷはあっ!!?」ザバァッ
ヲ級「……」
イ級「……」
ロ級「……」
512 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:22:32.65 ID:Vi+uqldio
時雨「はー……ひどいことするなあ、エフェメラは。問答無用で穴に放り込むなんて、何を考えてるんだ……」ザブッ
時雨「あれ? ここは……海!? どこだろう……?」キョロキョロ
ヲ級「……」
イ級「ナンダコイツ」
ロ級「チョットアヤシイ」
イ級「ホウゲキヨウイ」ジャキッ
ロ級「ホウゲキヨウイ」ジャキッ
時雨「うわあ!? ぼ、僕はあやしくなんかないよ!?」
ヲ級「アヤシイ奴ガ、自分デ自分ヲ、アヤシイト言ウワケガナイダロウ」
時雨「それはそうだね」
イ級「ダカラウツ」
ロ級「ウツ」
時雨「ちょっ、待ってよ!?」
ザザザッ
山城「ちょっと、誰かと思えば……」
那珂「時雨ちゃんじゃなーい! きみ、どこの鎮守府の子?」
513 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:23:18.50 ID:Vi+uqldio
時雨「あっ、山城! 那珂ちゃんも!」
アカネ(in那珂の艤装)「ねえねえ那珂ちゃん、この子だーれ?」ヒョコ
那珂「時雨ちゃんだよ! 白露型の2番艦で、白露ちゃんの妹だね!」
時雨「山城助けてよ! 僕があやしいからって撃たれそうになってるんだから!」ヒシッ
山城「……あなた、びしょぬれじゃない。何があったの?」
時雨「えっ? ああ、これは上から落ちてきて……」
山城「上?」ミアゲ
那珂「上って言っても、雲しかないよ? 何か飛んでたら、ヲ級ちゃんが気付くと思うんだけど」
イ級「デモコイツ、オチテキタミタイ」
ロ級「オチテキタミタイ」
山城「は? みたい?」
ヲ級「突然、何カガ水面ニ衝突シタヨウナ衝撃ハアッタ。ダガ、落チテキタ、トコロヲ見テイナイ」
山城「なにそれ……」
ヲ級「少クトモ、私ハ、コノ艦娘ガ落下シテイルトコロヲ見テイナイシ、落下スルトキノ風ノ音モ感知シテイナイ」
那珂「えー? ヲ級ちゃんでも落ちてくるのに気付かないって、どういうこと?」
514 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:24:02.51 ID:Vi+uqldio
時雨「……あれ? 何気なく山城に抱き着いたけど、僕に触れられるの?」
山城「は?」
時雨「……山城にも、触れる……」ペタペタ
山城「ちょっ……なに、何なのよ。どこまさぐってるの」セキメン
時雨「そうだ、僕の足は!?」バッ
アカネ「な、なんで自分でスカートまくってるの!?」
時雨「足もついてる……胴体も繋がってる」
山城「……時雨?」
時雨「ねえ、ここどこかな? もしかして……墓場島?」
那珂「う、うん、そうだよー?」
時雨「……そうか……それじゃあ、僕は、戻ってきたんだ……!」
ヲ級「戻ッテキタ?」
時雨「そう。僕は、かつて、この島の海岸に流れ着いて、埋葬してもらったんだよ」
山城「……」
時雨「ここへ辿り着く途中に砲撃を受けて、体が半分になって、そのまま……」
515 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:25:02.70 ID:Vi+uqldio
ヲ級「轟沈シタノカ」
山城「……」
時雨「うん。それでも運よく、この島に漂着して、無事だったみんなに看取ってもらえて」
山城「……」ブワッ
時雨「僕のかつての体は、この島の丘に……もう全部溶岩で燃えちゃったと思うけど」
時雨「どこらへんかな……とにかく、この島に埋めてもらったんだ」
ヲ級「……」
時雨「そのあと、那珂ちゃんには歌ってもらったんだよね」ニコ
那珂「……!!」
ヲ級「ソコマデ覚エテイルノカ。マルデ蘇ッタヨウナ言イ方ダナ?」
時雨「そういうことになる……」
ガッシィ!!
時雨「ね゛っ!?」ダキツカレ
山城「……あんたねえ」ダキツキ
516 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:25:47.57 ID:Vi+uqldio
時雨「や、やましろ……?」
山城「どこまで、お騒がせなのよ……あんたはっ……!」
時雨「や、山城、痛いよ……苦しいってば」
山城「痛いならいいじゃない!! 苦しいのも! 生きてる証拠よ!!」ボロボロボロ
時雨「山城……!」
ヲ級「……ソレデ、ヲ前タチハ、何ノ用ダ?」ヒソヒソ
那珂「あ、ごっめーん! 提督が目を覚ましたよ、って」
ヲ級「ソレハ早ク言エ!!」カンサイキハッシン!
那珂「泊地ちゃんも軽巡ちゃんもイライラしてたもんね〜」
* *
時雨「……というわけで、僕は提督と暁と一緒に、天国の手前で現世に戻る道を探していたんだよ」
山城「改めて聞くと、とんでもない話ね……辻褄が合うとはいえ、普通だったら信じないわよ? そんなファンタジーな話」
時雨「信じてくれないの?」
山城「信じるわよ。D提督鎮守府の話といい、その後の埋葬の話といい、整合が取れてるんだもの」アタマオサエ
517 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:26:32.39 ID:Vi+uqldio
泊地棲姫「ヤハリ、アイツハ深海ニ縁ノアル者ダッタカ」
軽巡棲姫「私ハ最初カラ、私タチト一緒ダト思ッテイタワ」
ル級「私タチガ触レテモ、体ガ無事ダッタリ、狂ッタリシナカッタノハ、ソウイウ理由ネ?」
時雨「だと思うよ」
アカネ「まさかエフェメラが絡んでたなんて!!」プンスカ
那珂「アカネちゃんはエフェメラちゃんって子のこと、知ってるの?」
アカネ「知ってるよ! ニコちゃんが言ってたけど……」
アカネ「魔神様を復活させることができる人間に入れ知恵して、魔神様を自分のものにしようとしてる嫌な奴だって!」
時雨「……確かに、見方によってはそう解釈できるね」
那珂「でもでも、そのエフェメラちゃんが、時雨ちゃんを復活させたわけでしょ?」
アカネ「うー……」
時雨「そういうことになるかな……だけど、いくらなんでも、僕の艤装というか、体までは復活させられないと思うんだけどなあ」
518 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:27:23.40 ID:Vi+uqldio
ヲ級「ソウイエバ、ヲ前ガ落チテクル前ニ海中デ、何カガ集マルヨウナ気配ヲ感ジタ。ヲ前ノカラダヲ作ッテイタノカモシレナイ」
ル級「天国カラ魂ガ落チテキタ、ッテイウ意味デノ、ドロップ艦、ッテコト?」
那珂「魂が着水した瞬間に体を作った、って感じなのかな?」
泊地棲姫「オソラク、ソウイウコトダロウ。今マデ、聞イタコトハナイガ」
山城「今更だけれど、私たちって本当に何者なのかしら」
那珂「そういう話なら、日向ちゃんあたりに訊くとイイかもね!」
山城「嫌よ。日向は話が長すぎるんだもの」ムスッ
時雨「……」
山城「何よ、時雨。にやにやして」
時雨「ううん、そうやって表情をころころ変える山城がかわいいなあって」
山城「!?」カオマッカ
那珂(わかる!!)ウンウン
アカネ(那珂ちゃんすっごい頷いてる……)
519 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:29:17.88 ID:Vi+uqldio
というわけで今回はここまで。
これまで書いた文章を、渋あたりに全部見直し添削した上で載せ直そうかと考え中です。
まずはその前に書き切らねば。
520 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 21:55:02.58 ID:IsSLY4A+o
それでは続きです。
521 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 21:56:01.70 ID:IsSLY4A+o
* 医療船 甲板上 *
「提督ー!!」キャー!
「司令官!」キャー!
「魔神様ー!」キャー!
「マスター!!」キャー!
提督「……なるほど。こんだけギャラリーがいたんじゃ、艦内の一部屋には収まりきらねえか」
ニコ「ここからさらに深海棲艦たちも来るんでしょ?」
提督「だと猶更艦内には入れられねえか。それで、あの四角いテーブルに全員座らせるのか? どう見ても席が足りねえぞ」
不知火「いえ、全員ではありません。あれは今回特別に用意した席です」
提督「?」
大将「よう、待たせたな!」
提督「!」
H大将「全員揃っているのか?」
大将「深海の奴らはまだ来ていないようだな」
522 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 21:56:47.84 ID:IsSLY4A+o
X中佐「あ、少尉! 目を覚ましたんだね、良かった!」ニコ
提督「……」
H大将「なんだその顔は。貴様の無事を喜んでいるというのに」
提督「あんな目に遭わされてすぐへらへらできる人間がいるかよ。もとはと言えばお前らがこの状況を作ったんじゃねえか」
H大将「確かにあんなことはあったが、ここにいる俺たちくらいは信用してほしいものだな?」
大将「むしろ俺たちも被害者だったんだぞ!」
提督「そんな理屈が通用するかよ、くそが。しかも5日ぶりに目ぇ覚ましてすぐ会議だ? お前ら俺をなんだと思ってんだ」
赤城「相変わらずのようですね、少尉。安心しましたよ」
提督「赤城……! お前まで来たのか? 大袈裟だな」
赤城「私が来るのが大袈裟でしょうか? そこまで他人事ではないと思っていますが?」
提督「十分に大袈裟だよ。面倒臭え話になりそうだ」ハァ
赤城「面倒という意味ではそうかもしれませんね。あなたのこれからを左右する重要な話を始めるのですから」
深海艦載機< ゴォォォ…
提督「!」
523 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 21:57:32.75 ID:IsSLY4A+o
不知火「あれは、あちらの偵察機のようですね」
赤城「深海勢の到着ね……!」
不知火「案内に向かいます」
赤城「はい。お願いしますね」
*
不知火「お連れしました」
ル級「……! 提督! 目ヲ覚マシタノカ!」パァ
提督「おう、なんか、いろいろ迷惑かけたみたいで悪かったな」
大将「俺たちと応対が違うな……」
提督「当たり前だ。ル級とお前らを一緒にするな」
大将「普通逆だろうが!」ビキビキ
泊地棲姫「マッタク……アマリ待タセテクレルナ」
軽巡棲姫「早ク彼ヲ、コチラニ渡シナサイ……!」ギロリ
提督「おいおい、もう臨戦態勢なのかよ。少し落ち着け」
軽巡棲姫「!! ア、アナタガ、ソウ言ウナラ……」モジモジ
泊地棲姫「……」イラッ
524 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 21:58:16.66 ID:IsSLY4A+o
提督「俺も面倒ごとは嫌いなんだ。とにかく、話があるならとっとと済まそうじゃねえか」
大将「……貴様、最初の時より随分と態度がでかくなったな」
提督「今更取り繕う必要もねえからな。少し前からお節介焼きにきてたX中佐はともかく、お前らだって信用できるかどうかわかったもんじゃねえ」
大将「貴様、せっかく俺が取り立ててやろうと言うのを……!」
H大将「よせ。奴の言い分も当然と言えば当然だ」
大将「それは俺の責任じゃないだろう。お前たち……いや、J少将が勝手にやったことだ!」
H大将「そうかもしれんが、この場では迂闊なことを言うなよ。下手をすれば、ここにいる艦娘たちでさえも黙ってないだろうからな」
X中佐「そうですよ。ここは彼に協力を取り次いでもらわなければいけない場面なんですから。友好的に行きましょう」
H大将「だいだいお前はいつもワンマンでゴリ押しが過ぎる。なんでもかんでもお前の力で思う通りになると思うな」
大将「ぐぅ……」
提督「そういや、中将は来てねえのか?」
X中佐「うん、中将閣下には本営に戻っていただいたよ。その際に、今回の件は僕たちに一任する、とお言葉をいただいてる」
提督「この手の話なら顔を出すかと思ったんだが……まあ、齢も齢だしな。おとなしくしてもらったほうがいいか」
X中佐「足のこともあるからね」
525 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 21:59:01.59 ID:IsSLY4A+o
H大将「とにかく、全員揃ったようだな。少尉は我々の正面、そこにかけたまえ」
H大将「深海棲艦は右手に。それからメディウム? 君たちは左手だ」
ニコ「魔神様の隣じゃないんだ……」ムスッ
H大将「それを言い出すと深海棲艦たちも隣の席を欲しがるだろう。不服だろうが揉めないよう平和的に頼む」
ニコ「……」
提督「まあ、一理あるか。ニコ、悪いがそこに座ってくれ」
ニコ「……魔神様がそう言うなら」ムスッ
ニーナ「あら? 不知火さんは向こうに座るんですか?」
提督「あいつは一応、中将の部下だからな」
ニーナ「そうだったんですか……」
タチアナ「ニコさん、私たちをお呼びでしょうか」
ノイルース「話し合いにはニーナとナンシーが出ると思っていましたが、何か問題でも?」
ニコ「ああ、残虐系メディウムだけだと意見が少し偏りそうだからね。それにタチアナは、泊地棲姫と一緒にいたんだよね?」
タチアナ「はい、島の再開発についての今後の見解をまとめています」
提督「島の再開発……? 泊地棲姫が関わったってやつか?」
タチアナ「はい。本案件に関しては私にお任せを」
526 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 21:59:46.72 ID:IsSLY4A+o
如月「それじゃ、司令官、私たちはこっちで……」
提督「ん? おい待て、お前らは同席しないのか?」
大和「申し訳ありません……」
提督「……俺が話せってことか。くそ面倒臭え……」
ナンシー「マスター頑張ってね〜!」フリフリ
X中佐「メディウムはそこにいる4名でいいのかな?」
タチアナ「ええ、始めてください」
X中佐「深海棲艦からは3名で」
ル級「泊地棲姫、軽巡棲姫、ソレカラ私。アト2人ハ後カラ出サセテモラウ」
X中佐「後から? ……とりあえず、承知したよ」
H大将「こちらは海軍大将のTとH、それから中佐のX。艦娘からは提督と親しい中将麾下の赤城と不知火に出てもらう」
大将「うむ、では始めようか!!」
大将「議題は、提督少尉の処遇についてだ!!」
全員「「……!」」ザワ…
527 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:00:36.70 ID:IsSLY4A+o
ニコ「気に入らないなあ。ぼくたちの魔神様を人間の所有物扱いするなんて……!」イラッ
ニーナ「所詮は人間ですから。人間の物差しでしか推し量れない哀れな生き物……!」ユラッ
軽巡棲姫「提督ハ渡サナイワ……!」ヌラッ
泊地棲姫「アア、ドウセ奴ラニ飼イ殺シサレルニ決マッテイル……!」ギラッ
不知火「開会早々から殺気立っているのですが」
H大将「お前、もう喋らんほうがいいな?」
大将「なぜだ!? こんな人材を捨て置けというのか!?」
X中佐「退席させましょうか」
大将「おい!?」
赤城「話を戻しましょう。最初に、海軍が所有していた××国××島の鎮守府が焼失した件について!」
赤城「本件については自然災害とし、提督少尉の過失はないものと認めました」
赤城「この災害で被災した海軍の人員および設備の被害については、本会では割愛させていただきます」
赤城「問題は、提督少尉の今後について」
赤城「海軍は、今回被災した少尉には、引き続き海軍に所属する『提督』として、艦隊の指揮を執って欲しいと考えています」
528 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:01:47.89 ID:IsSLY4A+o
赤城「そのことについて、少尉から何か申し立てはありますか?」
提督「……もし、嫌だと言ったら?」
赤城「そうなれば、あなたは海軍を解任され、日本へ送り返されることでしょうね。あなたはそれで良いと?」
提督「良いとは言えねえな。ぶっちゃけ、妖精と艦娘がいなかったら、ここまでまともに生きてすらいなかっただろうし」
提督「人間嫌いの俺が、今更、艦娘との繋がりを断って人間社会へ復帰しろと言われても、無理に決まってんだ」
提督「それに、こうなったから言わせてもらうが、着任当初も初期艦すらつけてもらえずに人間の都合でこの島に追いやられて」
提督「さんざんこき使って疑うだけ疑って、今度は帰れだと? これだけ危険な目に遭わせておいて、ふざけてんのか」
X中佐「……」
提督「ま、お前らにしてみりゃ、大佐が悪い、としか言えないのかもしれねえけどな」
提督「それに、俺の意思を差し置いても、今は状況が変わった。仮に俺が日本行きを望んだとしても、こいつらが黙っちゃいないだろうな」
泊地棲姫「ソウダナ。ソレナラ提督ハ我々ガコノ場デ貰イ受ケルゾ、チカラヅクデナ……!」
ニコ「ぼくたちは日本とか言う場所に行ってもいいよ。魔神様のために働ければ、ぼくたちはどこへでも一緒に行くよ」
X中佐「……きみたちなら、僕たちと友好関係を結べると?」
ニコ「人間と? 思い上がらないでほしいね」フン
ニーナ「本当なら、この場にいる人間すべて、刈り取って魔神様にその魂を捧げているところです。身の程を知りなさい」
X中佐「……」
529 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:02:31.55 ID:IsSLY4A+o
提督「メディウムと人間が仲良くするなんてのは無理だな。メディウムがどういう存在か、少しは話を聞いたろ?」
H大将「罠の化身、と言う話だったな?」
提督「ああ。生きた人間を陥れて殺すための罠の化身だ」
提督「処刑や拷問に使われた道具が元になっているメディウムもいる。どういう気性の連中か、言わずとも察しが付くだろう?」
提督「そういう面もあってか、メディウムたちはこことは別の世界で、長い間、人間たちから迫害されてきた」
提督「こいつらがこっちの世界に来たのも、俺と中将の謀殺を目論んだ連中に対する、俺の怒りと憎悪を察知したからだ」
H大将「……」
提督「仮に俺を日本へ帰そうものなら、メディウムも一緒に日本へ行くことになるだろう」
提督「その結果がどうなるか……人命を守るのがお仕事の人間なら、放っておくわけにはいかないよなあ?」
大将「ま、待て! その前に、貴様は人間でありながら、なぜその罠の化身たちの主になったんだ!」
提督「言ったろ。俺が人間を死ぬほど嫌いになったからだよ。なあ、ニコ?」
ニコ「そうだね。同じ人間として生まれ落ちたにも関わらず、生まれたときから卑下され、ありとあらゆる主張を否定されてきた」
ニコ「魔神様が生まれ出でるのに必要な要素のひとつ……人間に対する諦観と悲憤、累積された憎悪。それが僕たちをこの世界に呼び寄せた」
ニコ「他にも、あの島にたくさんの死が集まっていたことや、魔神様自身の出生も関わってはくるけれど、一番肝心なのはそこだね」
H大将「……よくそれで海軍に入ろうと思ったな」
提督「妖精が見えるってだけでスカウトされた結果さ」
530 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:03:31.41 ID:IsSLY4A+o
提督「バイトも人間関係が原因で長続きしねえし、とりあえずの飯の種になりゃあいいなと思ってただけだ」
H大将「人が嫌いなくせに、人の言うことを聞いていたのか?」
提督「連れ添った妖精が悲しむから無駄死にしたくなかったってだけだ。はっきり言って人間はどうでもいい」
提督「これでも妖精たちと本から最低限の倫理観ってもんを教わってるつもりだぜ? 生きてる人間どもは誰一人教えてくれなかったがな」
ニコ「これまで魔神様が、人ならざる者に頼って生きざるを得なかっただけでも、その辛労辛苦は察して余りある」
ニコ「それに加えて人間どもが、いかに魔神様に対して無礼な態度をとってきたか……!」
ニコ「ぼくたちの怒りは、そいつらを10回ずつ殺しても物足りないくらいなんだよ。人間の言うことに従うなんて屈辱の極みだ」ジロリ
ニコ「魔神様が控えろというから、仕方なく従っているだけだということを、肝に銘じておいてほしいね」フンッ
H大将「……」
ニコ「それに、今の魔神様は人間の姿をしているけど、既に人間ではなくなっているって、お前たちも知ってると思うんだけど?」
大将「なにぃ!? それはどういうことだ!!」ガタッ
大将「俺は聞いていな……ん? 待てよ? もしかして、X中佐の言っていた、人間が人間ではなくなる、という話か……?」
X中佐「僕も少佐が言っていたことをそのまま伝えただけですので、詳しくは聞いていませんが……」
X中佐「少尉の入院中に彼の血液型などを調べたところ、血液そのものが人間のそれとは成分がまったく別物でした」
大将「では、今の少尉は、いったいなんなのだ?」
531 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:04:16.71 ID:IsSLY4A+o
X中佐「……少尉。説明、できるかい?」
提督「そうだな……」ウーン
提督「確か、X中佐には、俺が一度死んだ、ってことも伝えたよな?」
大将たち「「!?」」
赤城「そ、それはどういう意味ですか!?」
提督「俺はあの日、大佐に撃たれて殺された。そしてその時、俺の胸を貫いた銃弾だったのが、そこにいる軽巡棲姫だ」
軽巡棲姫「……」
H大将「なんだと!?」
提督「大佐の一味が、過去に深海棲艦の艤装を使って武器を作ろうとしていたことは覚えているな?」
提督「その武器の威力を試す実験台にされていたところを逃亡して来たのが、うちの鎮守府の如月だ」
X中佐「!!」
提督「大佐一味はどうにかして深海棲艦を鹵獲し、そいつらを加工して武器にして……やがて銃弾を作るまでに至った」
提督「おそらく軽巡棲姫もどこかで鹵獲されて『生きたまま』武器に加工されたんだろう。そりゃ人間を嫌って当然さ」
大将「生きたまま!? どういうことだ!」
泊地棲姫「ワタシタチ深海棲艦ハ、死ネバ何モカモ水ノ泡ト化ス。艤装ダケガ残ルトイウコトハナイ」
532 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:05:02.46 ID:IsSLY4A+o
泊地棲姫「ナカニハ、艦娘ニ撃破サレルコトデ、艦娘ニ変化スルモノモイルガ……」
泊地棲姫「イズレニシロ、艤装ガ残ッテイル、トイウコトハ、生キテイル……ソコニ魂ガ残ッテイル、トイウコトダ」
大将「なんという……あいつらは、本当にろくでもないことを!!」ダンッ!
H大将「まったく……狂っているな。そこまで道を外れるか、頭が痛いな」
大将「……しかし、そうだとしてもだ。なぜ少尉は銃で撃たれたのに生き返ったんだ?」
提督「俺の魂が、半分は深海棲艦だから、らしい」
ニコ「えっ」
メディウムたち「「えっ」」ドヨッ
艦娘たち「「えっ」」ドヨドヨッ
大将たち「「はあ?」」
軽巡棲姫「……ハァ、ジャナイガ」
泊地棲姫「ヤレヤレ……」
提督「ま、信じられないだろうな。見た目はほぼ人間っぽいっつうか、体そのものは人間だったんだからな」
ニコ「魔神様、それはぼくも初耳だよ」
533 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:05:46.30 ID:IsSLY4A+o
ル級「証人ヲ呼ブワネ」
X中佐「証人?」
スタスタ…
ヲ級「連レテキタ」
時雨「あ、提督。久しぶり」
提督「……時雨!? 久しぶりって……お前、来たのか!? っつうか戻って来られたのか!?」ガタッ
時雨「うん、見ての通り、ドロップしたてだけどね」ニコ
提督「……夢じゃなかったのかよ」アッケ
大将「時雨じゃないか。こいつが何かしたのか」
時雨「特になにかをしたわけじゃないけど。まあ、一部始終を見てきた、って言うべきかな」
大将「見てきた?」
時雨「うん。例えば、あの日、スタンガンを使われて拘束された後、朧に見つけてもらって2階の執務室から飛び降りたこととか」
大将「!」
時雨「朧がヲ級になったり、初春がル級になったりとか」
H大将「!!」
時雨「この人が魔神になった提督に腰を抜かして一緒に逃げそうになったこととか」
大将「お、おい!?」
534 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:06:31.66 ID:IsSLY4A+o
H大将「時雨はあの場にはいなかったな。なぜそこまで知っている?」
時雨「僕は、もとD提督鎮守府の時雨。かつてあの島に……墓場島に漂着して、埋葬された艦娘の一人さ」
ザワッ…
扶桑「……」
五月雨「……」
朝雲「嘘でしょ……」
山城「はぁ、やっと戻ってこれたわ」
那珂「あ、時雨ちゃんもあっちにいるんだね!」
扶桑「……山城。あそこにいる、時雨が……D提督のことを……」
山城「はい。あそこにいるのは、かつて私たちと一緒の鎮守府にいて……私たちがあの島の砂浜で看取った、あの時雨です」
扶桑「……戻って……きたと、いうの……?」ポロポロポロ
山城「はい……!」コクン
大将「つ、つまり、お前はあの島にいた幽霊だったと?」
時雨「うん。そのあと、僕は天国に行く途中まで行って、そこで提督と出会ったんだ」
535 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:07:16.27 ID:IsSLY4A+o
H大将「……少尉は天国に行けたのか」
X中佐「そ、それはさすがに失礼では……!?」
H大将「いや、人を殺す罠の軍団の総大将だぞ?」
ニコ「そもそも魔神様が天国とか地獄とか、そういう場所に行くこと自体おかしいと思うんだけどな?」ウーン
時雨「もともと提督は人間として生まれたんだし、そこらへんはきっといろいろあるんだよ。まあ、その話は置いておくとして……」
時雨「とにかく、空の上で僕が出逢った提督は、全身真っ白で、顔にひびが入って、そのひびが橙色に発光する、深海棲艦の姿だったんだ」
ル級「姫級ヤ、鬼級ニ、ソウイウ子イタワヨネ?」
泊地棲姫「ソウダナ。例エバ、重巡棲姫トカカ」
全員「「……」」
提督「だから妖精とも話せるし、ル級たち深海棲艦に触れられても平気だったってわけらしい」
H大将「……信じがたいが、理屈としては成り立つな……」
時雨「提督のお母さんに話を聞くといいよ。その人、若いころに海難事故に遭ってて、その時に深海棲艦のようなものに襲われているはずなんだ」
赤城「……それでは、大佐に撃たれた提督が生き返ったのは、弾丸にされた軽巡棲姫のおかげだったと?」
提督「多分、な。大佐に撃たれた俺も、大佐の道具にされた軽巡棲姫も、言いようのない思いを抱いていたのは事実だったと思う」
536 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:08:03.66 ID:IsSLY4A+o
提督「正直、あの場で何があったのかは、覚えちゃいないしわからないんだが……結果的には、そういうことだと思ってる」
軽巡棲姫「私ハ、アナタノオカゲダト思ッテイルケド?」
提督「そうなのか? お前も自覚ないんじゃ、ますますわかんねえな」
提督「でだ、撃たれて生き返ってから、軽巡棲姫の弾丸が生きているとわかったから、泊地棲姫に育ててくれと頼んだ結果、こうなったわけだ」
全員「「……」」
提督「あ、そうだ、泊地棲姫」
泊地棲姫「! ナンダ?」パァッ
提督「お前に大佐預けてたろ。軽巡棲姫の餌にしろって言ってた、あれ。今はどうなってんだ?」
大将「んなっ!?」
泊地棲姫「アア、アレカ? 駆逐艦用ノ巣トシテ使ッテイタガ、ソロソロ捨テナケレバナ……」
H大将「!?」
提督「なんだ、まだ生きてたのか? 随分しぶといな」
泊地棲姫「見ルカ?」
提督「いや、いい。見たら怒りが再燃して手を出しそうだ、適当に始末しておいてくれ」
泊地棲姫「デハ、ソウシヨウ」
X中佐「……この場に中将閣下がいなくて本当に良かったよ」ハァ…
537 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:08:47.13 ID:IsSLY4A+o
赤城「話を戻しますが、提督が日本へ帰る、という選択肢はなくなったと考えてよろしいですね?」
X中佐「そ、そうだね……限りなく難しいと言えるだろうね」
H大将「ああ。この状況では、日本へ帰したほうがデメリットが大きいと思えるな」
大将「むぐ……!」
赤城「では……」
提督「俺がどこへ行くか、って話なんだろうが、その前に赤城。あの島は今後どういう扱いになるんだ?」
赤城「そうですね……しばらくは立ち入り禁止になるでしょう。人が出入りできる状態にはありません」
赤城「海軍はこの島の鎮守府を借りていたわけですから、その後××国へ返すことになりますね」
提督「……結局、俺が海軍に残ることを選択した場合でも、あの島に残る選択肢はないってことだな?」
ル級「提督ハ、アノ島ヲ気ニ入ッテイタノヨネ?」
提督「まあな。面倒くせえ人間もそうそう来ないし、気楽なもんだった」
泊地棲姫「ダカラ、私タチガアノ島ヲ奪ッテヤロウ。提督ヨ、一緒ニ住メ」ニヤリ
大将「お、おい! そんな勝手な真似は許さ」
X中佐「いいんじゃないでしょうか」
大将「んなっ!?」
H大将「X中佐!?」
538 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:09:31.68 ID:IsSLY4A+o
X中佐「僕は賛成ですよ。せっかくですし、少尉の配下の艦娘も一緒に住むのはいかがでしょう」
提督「は……?」
大将「甥っ子君、正気か!?」
X中佐「正気ですよ。考えてもみてください、今や少尉は深海棲艦と友好関係を結んだ超重要人物です。ここから引き離すのは逆効果では?」
H大将「それは確かにそうだが……」
X中佐「少尉の部下の艦娘にしても、深海棲艦になる恐れがあったとはいえ、少尉とこれまで無事に過ごしてきました」
X中佐「島の殆どが燃えてしまったあの島を再び人が住めるようにするには、相当な時間と労力が必要でしょうが……」
X中佐「彼が望むのであれば、あの島に住み続けても良いのではないかと思っています」
大将「そ、それができれば苦労はしないだろうが……」
X中佐「それに、彼はかつてこう言っていたんですよ。艦娘たちが人間に干渉されることなく暮らせる場所が欲しいと」
X中佐「自分たちの、艦娘たちの『国』が欲しいと」
大将たち「「!!」」
ル級「……」フフッ
ニコ「……国、か……」
提督「……お前……!」
539 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:10:16.41 ID:IsSLY4A+o
X中佐「これまで我々は、侵略者としてしか、深海棲艦を見てこなかった」
X中佐「その深海棲艦たちと、今、僕たちはここで対話ができている。僕は、できることならこの対話をもっと続けたい」
X中佐「そこに、人間と深海棲艦との共存の道があることを信じたい……!」
大将「そういうことなら……そうだな」
H大将「……」
X中佐「そのためにはまず、ここにいる深海棲艦たちに僕たちと戦わない意思があるかどうか」
X中佐「これからも戦わずにいられるか、その確約を取るのと一緒に……」
X中佐「メディウムにも心変わりしてもらう必要がありますが、それは気長に心変わりを待つか」
X中佐「あるいは、こちらも彼女たちが魔神と崇める提督と、僕たちの安全を保証するための約束事を取り付けられるか、でしょうね」チラッ
ニコ「……魔神様が手を出すなと言うのなら、従わざるを得ないかな?」
ノイルース「私たちの在り方としては、あまり望ましくはありませんが」フゥ…
大将「しかしそれでは、引き換えに何を請求されるかわからんぞ……」
X中佐「今更何を仰るんですか。もともと僕たちが目指していた深海棲艦との停戦を想定したときも同じことを論じてきたでしょう」
X中佐「どんな要求が出るか予測がつかないと、これまで何度も話し合って、何度も同じ結論を出してきたじゃありませんか」
X中佐「今ここでそんな及び腰な態度を見せてどうするんです!?」
大将「それはそうだが……」
540 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:11:02.16 ID:IsSLY4A+o
X中佐「相手の要求は聞くだけは聞く。そのうえで可能なものは飲み、我々が飲めないものは詰めて妥協案を探す。そうだったでしょう!?」
大将「それこそ何を請求されるか……」
赤城「大将閣下?」ジロリ
大将「ぐ……」タジッ
X中佐「僕は、この島を提督とその配下の艦娘、この場にいる深海棲艦、そしてメディウムたちに明け渡したほうがいいと思っています」
X中佐「今後も彼らと対話するための場所として……それが世界の平和に繋がるのであれば、それだけの価値はあるかと」
提督「……」
H大将「大将はともかく、少尉も不服そうだな?」
提督「別に。人間の世界は面倒だからな。やることが多そうだな、って思ってるだけだ」
X中佐「仮に嫌だと思っても、この島以外に提督がどこかへ行く当てもないんじゃないのかな?」
提督「……そりゃあ、まあ、な」
X中佐「僕たちが望むのは対話だ。この島の海域でを非交戦海域とし、深海棲艦の領土として、中立地帯として使わせて欲しい」
X中佐「メディウムや深海棲艦が望むものをまとめ、少尉を通して交流から始めたい」
X中佐「そこから、交易であったり、和解できる道を探したいんだ。お互いの安全と、共存のために」
全員「「……」」
541 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:11:46.73 ID:IsSLY4A+o
X中佐「どうでしょう。メディウムたちにしても、深海棲艦にしても、そこまで悪い条件ではないはずです」
ニコ「……」
ル級「……」
H大将「……」
大将「むうう……」
ニコ「みんなどう思う?」
ニーナ「私たちの領地で、生殺与奪を私たちで決められるのであれば……」
ノイルース「悪くはありませんね……魔神様の判断にお任せして良いのではないでしょうか」
タチアナ「ええ、私もそれで良いと思います」
泊地棲姫「フフフ……人間ガ、私タチノ領地ヲ認メルカ……!」
ヲ級「画期的ダナ」
ル級「私ハ賛成ネ。提督ガ、イイッテ言ウナラ、ソレデイイワ」
軽巡棲姫「提督ト一緒ニイラレルナラ……」ポ
X中佐「どうだろう、少尉。この島の代表として、僕たちと……各国の首脳と、条約を整理してみないか?」
提督「……」
赤城「少尉……!」
提督「……」
542 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:12:31.40 ID:IsSLY4A+o
提督「……」ハァ
提督「面倒臭えが、やるしかねえか……」
ザワッ…!
提督「不知火。悪いが頼りにさせてくれ。国際法ってやつか? そういうのとか、細かい取り決めが全然わかんねえんだ」
不知火「……わかりました。赤城さんにも相談させていただきたいのですが、よろしいでしょうか」
赤城「ええ、喜んで承ります」
提督「それから、そういう法律ってのは人間の公序良俗とか、人間の作った常識で固められてるはずだ」
提督「メディウムや深海棲艦が受け入れられないものは突っぱねるつもりでいる」
大将「ぐぬ……!」
泊地棲姫「私タチガ、ワザワザ人間ニ、断リヲ入レル必要ガナイカラナ。今モ、勝手ニ海域ヲ支配シテイルダロウ」
X中佐「確かに、今はルール無用だね。だとしたら、この島の領海だけでも、交戦しないように条約を結べないだろうか?」
赤城「できればこの場で仔細を決めたいところですが……」
H大将「少し待て。黙って聞いていたが、これは領土問題だ。世界各国が黙って見過ごすとは思えない」
泊地棲姫「ホウ……? ソレナラモウ遅イゾ。スデニ私タチガアノ島ヲ好キニシテイルカラナ」
タチアナ「ええ、すでに再開発を進めております。人間が入り込む余地などありません」
H大将「おい!?」
543 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:13:16.77 ID:IsSLY4A+o
提督「……だったらもう、泊地棲姫の言うように強奪したことにしたほうが早いな」
大将「はああ!?」
提督「海底火山の噴火で島の鎮守府が焼失したのは事実」
提督「噴火の兆しを深海勢力が察知していて、それを機に泊地棲姫が海域に攻め込んできた、という話にすればいい」
提督「人間の介入など許されない状況だったことにすりゃいいんだ。火山活動は完全に天災、人間が抗えるはずもない」
提督「島に調査に来た連中はただの不運。あとはこの船が見逃された理由と、こうやって交渉できている理由を適当にでっち上げりゃいい」
不知火「でっち上げる……ですか」タラリ
提督「生憎、俺は巻き込まれて寝てたようなもんだからな。どうやってこの状況作ったのか、俺にはうまく話を作れねえ」
提督「深海側が交渉役に俺を選んだ理由もなんだっていい。気分で選んだと言っても通用するだろ」
提督「全部ありのままに伝えても別に構わねえぜ? どうせそうなって困るのは、身内を謀殺しようとした海軍だろうしな」クックックッ
H大将「……他人事のように言ってくれるな……」ハァ
赤城「少尉。顔が悪者になっていますよ」
提督「あん? 俺はこれが地だぞ?」
赤城「まったく……こうも開き直られると可愛くありませんね」
提督「馬ぁ鹿、俺のどこを見て可愛いとか言ってんだ」
赤城「あなたが自覚していないだけで、可愛いところはたくさん見てきましたよ?」フフッ
ル級「ソノ話、アトデ詳シク」
提督「おい」
544 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:14:04.59 ID:IsSLY4A+o
大将「まったく、貴様は何を考えているんだ……お前の望みはなんなんだ!?」
提督「ふん。そんなものは決まってる」
提督「俺の望みは、俺に付き従ってくれている奴らの平穏だ」
提督「人間を排除した、妖精、艦娘、深海棲艦、メディウムの安息の地を作ること」
提督「人間に虐げられ、轟沈させられた艦娘が、人の手に頼らずとも生きていける場所。それが俺の理想であり、望みだ」
X中佐「少尉……」
大将「俺たちを邪険にしていたのは、そういう理由か……?」
H大将「やれやれ、ようやく腹の底を見せたか……面倒な男だ」
不知火「……司令。その理想の中には、司令も入っていますか?」
提督「ん?」
不知火「かつて司令は、その理想には人間であるご自身も不要だと仰っていました」
不知火「しかし、今の司令は人間ではありません。そのお考えを改める気にはなりませんでしょうか」
X中佐「そんなこと考えていたのか!?」
提督「ああ……まあ、言ってたな。島の住人を艦娘だけにしたくて、最初は俺も島からいなくなる予定でいたんだ」
ザワ…!
545 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:14:48.69 ID:IsSLY4A+o
提督「けどまあ……こう言っといてひっくり返すのはみっともねえけど、その話は、なしにするしかねえな」アタマガリガリ
提督「目立つのは嫌いなんだが、海軍とかとこれから話をするうえでは矢面に立たねえといけないだろうし……」
提督「こうやってメディウムやら深海棲艦やらとも縁ができた以上、下手に喧嘩させたくもねえし……」
提督「まあ、いち住人として、いてもいいんなら……」
ル級「何言ッテルノ。アナタハ、イナイト、困ルノヨ」ニッ
提督「……」
ニコ「そ、そうだよ、ぼくたちは魔神様と一緒にいるためにここにいるんだから!」ガタッ
軽巡棲姫「提督ハ渡サナイワ!」ガタッ
如月in傍聴席「抜け駆けは許さないわよ!!」
大和in傍聴席「提督を独り占めにはさせません!!」
「提督ー!!」キャー!
「司令官!」キャー!
「魔神様ー!」キャー!
「マスター!!」キャー!
提督「……」セキメン
546 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:15:32.06 ID:IsSLY4A+o
ル級「ホーラ、イナイト困ルデショウ?」ニヤニヤ
提督「……くそ。なんか、恥っずいな、これ……」ウツムイテカオカクシ
不知火「司令があからさまに恥ずかしがっているところは初めて見ました」キラキラッ
赤城「レアショットですね」キラキラッ
ル級「コレガ、可愛イ、ダナ?」キラキラッ
ニコ「うん……まあ、いいんじゃないかな」チラッチラッ
タチアナ(そこで真っ向から見ようとしないあたりがニコさんらしいと言いますか……)
H大将「最早我々が口を挟めるような空気ではないな。認めてやるしかないんじゃないか? なあ」
X中佐「ですね。特にメディウムは海軍で扱うには荷が重すぎると思いますが、いかがでしょう」
大将「……むううう……」ガックリ
キャーキャー!
提督「……っだあああ! お前ら少し静かにしろ! 恥ずかしい!」ミミマデマッカ
ピタッ
提督「ったく……とにかくあの島は俺たちが好き勝手していいよな? っていうか、してるらしいけどよ……」
H大将「そうだな。人間の手には負えない。その方向で本営にも話を伝えよう」
提督「ああ、そうしてもらえるとありがたい」
547 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:16:19.98 ID:IsSLY4A+o
提督「そういうわけなんで、深海棲艦もメディウムも、この船の人間には手を出さないでくれよ。今後、俺が指示した連中も同様に頼む」
ニコ「……魔神様ともあろうお方が、下手に出すぎじゃないかな?」
提督「そうか? この世界で、あの島に住んで攻撃されないっつう確約を得られただけでも、十分すぎる話だと思うぞ?」
提督「俺たちの望みは俺たちの平穏だ。これ以上駄々こねても、敵視されるだけでいいことなんかありゃしねえ」
提督「そもそも罠がこれ以上目立ってどうすんだ? 潜んでなんぼだろう? 俺たちが目立つのは俺たちのシマだけでいいんだ」
提督「無断で踏み込んできた奴を、丁寧に入念に執拗に派手に、飛ばして刻んで潰してやるのがお前らの本分なんじゃねえのか?」
ノイルース「それは確かに……」
ニーナ「その通りですね……」
タチアナ「ええ、同意いたします」
ニコ「……なんだか、言いくるめられてる気がする」
赤城「こういう時の物言いだけはお上手ですよね、少尉は」フフッ
不知火「はい」コク
大将(もしかして、俺たちも言いくるめられてるのか?)タラリ
H大将「やれやれ……深海側のスパイかと疑っていたが、それ以上の相手だったな。X中佐、責任重大だぞ」
X中佐「そうですね……最善を尽くします」
548 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/09(金) 22:17:16.08 ID:IsSLY4A+o
というわけで、今回はここまで。
549 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 10:59:05.36 ID:bgBHVRZoo
続きです。
550 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:00:01.16 ID:bgBHVRZoo
* それからしばらく後 医療船内 ロビー *
提督「やれやれ、話が長すぎだ……」ノビー
如月「司令官、お疲れ様でした」
提督「おう、マジで疲れたぜ……ル級たちにしてもニコたちにしても、よくもまあ我慢して長いこと座っててくれたもんだ」
提督「ニコたちも、俺に面倒をかけられないとか言ってル級たちと一緒に島に引き上げていったし……聞き分けが良すぎて申し訳ねえな」
如月「人間に手を出さないには、こうするのが一番、って言ってたものね」
大和「後でちゃんとお礼をしに行かないといけませんね」
吹雪「司令官!」ズイ
朧「提督!」ズズイ
朝潮「司令官!! ご快癒、おめでとうございます!!」ズビシッ!
提督「おう……って、お前らもよく生きて……」
金剛「テートクゥゥ!! 生きてて良かったデース!!」ウシロカラダキツキー!
提督「うおっ!?」ガッシィ!
榛名「金剛お姉様!? ずるいです!」
551 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:01:45.61 ID:bgBHVRZoo
金剛「Woo... ちゃんと生きて動いてくれてマス……この感触も久し振りデース」マサグリマサグリ
提督「お前はどこを触ってん……だっ!」アタマガシッ
金剛「はっ! ちょ、テート……Noooooo !!」メキメキメキ
電「金剛さんも相変わらずなのです!」
暁「本当ね……まあ、仕方ないのかもしれないけれど」クスッ
提督「お、電と暁か。電も生きてるなら何よりだ。暁、お前も倒れてたんだって?」
暁「え、ええ、それで、その……司令官、覚えてる?」
提督「ん? 天国っつうかあの世の話か?」
暁「……やっぱり、夢じゃなかったのね。こうしてお話してると、司令官も普通の人間に見えるのに……」
提督「ちゃんと覚えてるのか。ということは、I提督のことも覚えてるな?」
暁「うん……司令官は、I提督のことは知ってたの?」
提督「一応な。ただ、それを教えてお前がどうなるかわからなかったから、俺からは話を振らないようにしてたんだ」
暁「そうだったのね……」
川内「せめてあたしにだけでも、I提督を知ってるって言ってくれれば良かったのに!」
提督「そうは言うが、わからなかったからな。俺の方こそ早く言って欲しかったぜ」
552 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:04:17.77 ID:bgBHVRZoo
川内「あれ、気付いてなかったの?」
提督「以前お前が、夜中に鎮守府を攻撃されて敗走したとか言ってたけど、それだけじゃなあ?」
提督「お前が関係者かどうか確信が持てなかったってのに、余計なこと言って引っ掻き回されたら目も当てられねえし」
提督「向こうの夢でも翔鶴に、川内と響によろしく、って言われてきたが、そいつがお前のことだとどうやってわかるよ?」
川内「まあ、それもそうだけど……向こう、かあ」
提督「そうだ、五月雨はいるか? 金剛と五月雨にも伝えておかなきゃならないことがある」
金剛「What's ?」
*
金剛「Q中将が……そうデスカ……!」
提督「自分の息子が存命なら引き合わせてた、とか言ってたからな。お前のことを評価もしていたし、心配もしてるようだったぞ」
五月雨「P少将にも……お会いしてたんですね……」グスッ
暁「よろしく頼むって言ってたわ。私の無念は背負わなくていい、無事でいて欲しいって、言ってたのよね」
提督「ああ。お前のことになった途端、むきになるくらいには気にかけてたな」
五月雨「……P少将……」ポロポロ
553 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:05:01.64 ID:bgBHVRZoo
提督「ところで、時雨はどこ行った? あいつもこの話を聞いたうちの一人なんだが」
朝雲「あー、時雨なら、ほら、あっちあっち」
扶桑「時雨……!」ダキツキー
時雨「むぎゅう……」ダキツカレ
日向「扶桑が、さっきからずっと時雨を抱いて放そうとしないんだが」
白露「私たちだって時雨を歓迎したいんだよ!?」
提督「……」アタマオサエ
山城「あの、扶桑お姉様? そろそろ時雨を解放してあげ」
扶桑「嫌」
山城「」ピシッ
山城「」
山城「」
山城「」ヒザカラクズレオチ
朝雲「山城さん!?」
554 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:05:46.99 ID:bgBHVRZoo
日向「まったく、何をしているんだ。扶桑、そのままだと時雨が窒息するぞ。また時雨を天国に送り返すつもりか?」
扶桑「えっ? し、時雨!? だ、大丈夫!?」ユサユサ
時雨「……ぷはっ!? こ、ここはどこ!? 僕は誰!?」
扶桑「良かった、無事だったのね時雨!」ダキシメッ
時雨「ぐえっ」
朝雲「扶桑さん!?」
日向「無事でもないし、また絞まってるぞ……これはどうしたものやら」ハァ
提督「ったく……しょうがねえな」
朝雲「あ」
提督「扶桑? お前ももうちょっと聞き分けがいいと思ったんだけどなあ?」アタマツカミ
扶桑「え? 提督、何を……あ、あああ!? い、痛い痛いああひぃいぃぃいい!?」メキメキメキ
金剛「扶桑の口からこれまで聞いたこともないような悲鳴が出てきたデース……」
日向「腕が緩んだな。やれやれ……時雨、無事か?」ヒョイ
時雨「はぁ……またお花畑が見えるかと思ったよ。ありがとう」
555 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:06:32.87 ID:bgBHVRZoo
朝雲「ちょっと、こっちで山城さんが扶桑さんに食い気味に拒絶されたせいで崩れ落ちてるんだけど」
山城「……フコウダワ……」イジイジ
時雨「山城、元気出して」ナデナデ
扶桑「い、いたたた……噂には聞いていたけれど、提督からいただいた初めてがこんなに痛いだなんて……」ポ
伊8(言い回しが卑猥)
時雨「扶桑、まだ余裕あるみたいだね? もう一回提督に掴んでもらう?」ハイライトオフ
扶桑「ひっ!? え、遠慮しておくわ……!?」アセアセ
時雨「そう? ならいいけど、本当にいいの?」ハイライトオン
扶桑「もう十分よ……あの痛さは直接頭に響いてくるみたいで、体が裏返るかと思ったくらいだもの……」ハァ…
朝潮「わかります。司令官のアイアンクローは、この世のものとは思えないほどの痛さでした……!」ウンウン
電「司令官さんの握力はどう考えてもおかしいのです」ウンウン
霞「……ちょっと待って、朝潮姉もやられたことあるの!?」
朝潮「え、ええ、まあ……」ポ
暁「電もそうなの?」
電「な、なのです……」モジモジ
556 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:07:16.27 ID:bgBHVRZoo
金剛「これで扶桑も仲間デース」ニヤニヤ
大和「アイアンクロー仲間ね!」クスッ
暁「そういうことに仲間意識を持つのはどうかと思うけど?」ジトッ
霞「あいつから手が出るレベルで注意を受けてるってことでしょ?」ジトッ
日向「ああ。恥じ入りこそすれ、嬉しそうにしているのは問題じゃないのか」ジトッ
大和如月金剛朝潮電「「ごめんなさい」」
伊8(はっちゃんもアイアンクローされたことあるけど、他人の振りしていようっと)
吹雪「ふふっ、みんな、だらしないなあ。私はアイアンクローされたことないもんね!」ドヤッ
朝雲「アイアンクローは貰ってなくても、吹雪は暴走してデコピンで吹っ飛ばされたことがあるじゃない。威張れる立場にないんじゃないの?」
吹雪「それは言わないでぇぇぇ!!」イヤァァァ!
日向「……まあ、騒々しいのはいつものこととしてだ。先ほどまでの話からすると、提督は死者に会ってきた、ということなのか?」
提督「ああ。あの場でも話に出ていたが、暁や時雨もそういうことだよな?」
時雨「そうだね。僕の場合、まさかこの世に戻ってくることができるなんて思ってもいなかったけど」
日向「……時雨はこちらに戻ってくるつもりはなかったのか」
時雨「うん、戻れる体がなかったからね。島に漂着したときも胴から下がなかったし、溶岩で全部燃えちゃったしね」
557 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:08:30.49 ID:bgBHVRZoo
日向「ふむ……では、なぜ時雨は戻ってくることができたんだ?」
時雨「多分だけど……エフェメラの力、かな」
日向「エフェメラ?」
時雨「魔神に仕える従僕の名前だよ。同じ個体が複数いて、それぞれが魔神のために動いてるみたいなんだ」
時雨「その中の一人が少尉の身を案じていたんだけど、直接手を出せないからって、僕が声をかけられたんだよ」
提督「もしかしたら、手を貸してくれたお礼に時雨をこの世に戻してやったのかもな」
日向「なるほど……その話、詳しく聞かせてもらいたいが、いいだろうか」
提督「俺も聞きたいな。俺にも関わる話なんだろう?」
時雨「そうだね。僕もたくさん話したいことがあるからね」ニコ
白露「その前に私たちにも歓迎させてね! 時雨!」
時雨「僕は走らないよ?」
白露「なんでよ!?」
山城「普通走らないわよ……」
558 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:09:32.71 ID:bgBHVRZoo
* 翌日 朝 *
* 医療船内 小会議室へ通じる廊下 *
五月雨「会わせたい人……ですか?」
X中佐「ああ。島があんなことになって、君たちを心配してくれている人が来てくれてね」
X中佐「彼らはその中でも、熱心に君たちのことを案じている人たちだ」
神通「誰でしょう……?」
祥鳳「こちらです。どうぞ」チャッ
X中佐「ありがとう。さあ、二人も入って」
五月雨「は、はい! 失礼します!」
神通「失礼します……」
隊長「ん……来たか」
五月雨「……あ、あなたは……憲兵隊長さん!!」
隊長「いかにも。覚えていてくれたか、駆逐艦五月雨。貴様は息災なようでなによりだ」
神通「……!!」
559 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:10:45.77 ID:bgBHVRZoo
五月雨「た、隊長さんが私に話を……?」
隊長「否。私はこの二人の付き添いだ」
若い女性提督「!」ケイレイ
松葉杖をついた若い提督「……」ペコリ
五月雨「この人たちが……?」
神通「……ああ……!!」
五月雨「? 神通さん?」
神通「生きて……生きて、らしたのですね……」ポロポロ…
五月雨「えっ」
神通「F提督……!」
若い提督→F提督「ああ。隠してて、すまなかった」
ヒュオッ(瞬間的に神通が消えて)
女性提督「ふあっ!?」
シュバッ!(F提督の目の前に神通が現れる)
隊長「……」
五月雨「……」
560 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:11:30.77 ID:bgBHVRZoo
F提督「……」パチクリ
X中佐「えっ、なにあれ。神通って瞬間移動できるの?」ヒソヒソ
祥鳳「は、速すぎて見えなかったんですが……」ヒソヒソ
F提督「驚いたな。いつの間に忍者みたいになったんだい? せっかく、駆け寄ってきたところを受け止めようってつもりでいたのに」フフッ
神通「ご無理を、仰らないでください。後ろに車椅子が見えますよ?」
F提督「そのくらい、見栄を張らせてくれてもいいじゃないか。本当に久し振りの再会なんだ」
F提督「……神通、連絡もせず、黙っていてすまなかった。会いたかったよ」ナデ
神通「……わた、わたしも、です……! また、こうして、お会いできるなんて……!!」ブワッ
神通「あなたの、葬儀があったことだって……終わってしまってから、知ったんですよ……!!」ギュ…
神通「無念、でした……あなたのそばに、いなかったことが……船が襲われたときに、私がそばにいればと、何度も、何度も……!!」
F提督「神通……」ダキヨセ
五月雨「す、すみません、この方は、神通さんとどのような関係なんですか?」
X中佐「ん? 君は知らなかったのか。彼はF提督、神通のかつての司令官だよ」
X中佐「彼は、深海棲艦との対話の方法を探していた提督の一人で、同じ目標を持つ提督のグループを僕の叔父である大将が支援していたんだ」
X中佐「けれど、数年前に彼らの乗った船が襲撃されて、彼とほか数名の乗員を除いてみんな亡くなってしまった……」
561 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:13:30.84 ID:bgBHVRZoo
F提督「私たちの船が襲撃されたとき、大将殿の遠征部隊が近くにいてね。私は運よく助けていただいたが……多くの仲間を失ってしまった」
F提督「私も死にかけ、今もリハビリを続けているが、神通がいるという島が襲撃されたと知って、いてもたってもいられなくなって」
五月雨「それでこちらにいらっしゃったんですか……」
F提督「こちらに来るのはもう少し後にするつもりだったんだが、神通に逢いたくてね……大将殿に特別に許可を戴いたんだ」フフッ
神通「F提督……!!」
F提督「あの襲撃事件のとき、神通がいなくて本当に良かったと思ったよ」
F提督「あの場にいて応戦しようものなら、間違いなく殺されていただろうからね。そう思えるくらい、あの船への攻撃は苛烈だった」
X中佐「襲撃された巡視船は、そこまでやるのかと思うくらい破壊されていた」
X中佐「その危険性から、大将はF提督たち生存者の存在を隠して、襲撃者の手掛かりを探っていたんだ」
F提督「そして、今回の騒ぎと、最近の調査で、中将閣下を襲撃しようとした、息子である大佐とその一味……」
F提督「そして彼らと通じ、利用していたJ少将が怪しいというところまで、ようやく分かったんです」
F提督「その際にはこちらの陸軍の皆さんにも協力をいただきまして」チラッ
隊長「……」
562 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:15:01.08 ID:bgBHVRZoo
F提督「その甲斐もあって、あとは彼らがどんなことをしたのか、追い詰めて暴こうとしていたのですが……」
X中佐「重要参考人は燃えてしまったと」
F提督「そうですね……残念ですが」
F提督「しかし、だからこそ、私がこうして神通と再会できたというのもあります。そこは痛し痒し、ですかね」フフッ
五月雨「……」
X中佐「さて! 今度は五月雨に紹介しよう! 礼提督!」
五月雨「えっ」
女性提督→礼提督「はいっ! 改めまして、お久し振りです! 五月雨さん!!」ビシッ!!
五月雨「お久し……え、えええええ!?」
五月雨「まっ、ちょっと待ってください!? 礼提督……って、もしかして!? あの『礼ちゃん』ですか!?」
礼提督「はいっ!! 私は……」
隊長「いかにも。私の娘だ」
礼提督「って、お父さん!?」
五月雨「う、うわああああ……! 数年ぶりですよね!? 背も大きく……で、でも確か、弁護士を目指してたって……」
礼提督「はい、その時はそうでした……」
563 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:15:45.97 ID:bgBHVRZoo
礼提督「ですが、五月雨さんたちが襲撃され、P少将が亡くなったと聞いて……どうしても、そのかたきを、と……!」
五月雨「……!!」
礼提督「五月雨さん……お願いがあります! 私の、秘書艦に……初期艦になってください!!」
五月雨「えええ!?」
礼提督「私にとってP少将は、第二のお父さんでした……そのお父さんの無念を、どうしても晴らしたいんです!!」
礼提督「P少将の初期艦だった五月雨さんと、一緒にかたき討ちを果たしたいんです!!」
五月雨「……」
――私の無念は背負わなくていい、無事でいて欲しいって
五月雨「……」
礼提督「お願いします!!」
五月雨「……礼ちゃん……いえ、礼提督」
礼提督「はいっ!!」
五月雨「そのような理由であれば、私は、秘書艦をお受けすることは、できません」
隊長「!」
礼提督「え、えええ!? ど、どうしてですか!?」
564 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:16:45.66 ID:bgBHVRZoo
五月雨「P少将が……提督が目指していたのは、この海の……この世界の平和です」
五月雨「私たちが戦う相手は、深海棲艦ではなく、この海の安全を脅かすものです……!」
礼提督「……あ……!」
五月雨「確かに、私は、私の仲間を沈めたあのレ級が許せません。提督が死を覚悟してまで討とうとしたあいつを、私は許せません」
五月雨「けれど、そのレ級のせいで、もっと多くの人たちが、私たちと同じ悲しみを味わうことのほうが、許せない……!!」
五月雨「そして、そのレ級を打倒する力を……撃滅できる力を持たなかった私自身も……!!」
隊長「……」
五月雨「でも、それだけじゃないんです。レ級以外にも、罪のない人々を襲う深海棲艦がたくさんいます」
五月雨「そして、残念ながら、罪のない人々を襲うのが、深海棲艦以外にもいるということを、私は知ってしまいました」
隊長「……」ウツムキ
五月雨「礼提督……私たちの敵はそのすべてです」
五月雨「礼提督は、そのたくさんの敵すべてと、戦う覚悟はおありですか……?」キッ…!
五月雨「あなたは、自分の選んだ正義を、貫き通すことができますか……?」
礼提督「う……」タジッ
隊長「……」
565 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:18:15.85 ID:bgBHVRZoo
礼提督「……申し訳、ありません……私は、そこまで考えを至らせていませんでした」
礼提督「私はただ……あの鎮守府で笑っていたみんなが、いなくなっちゃったのが、本当に悲しくて、悔しくて……」グスッ
五月雨「……」
隊長「五月雨。不肖の娘が申し訳ない」ペコリ
隊長「その父親として、改めてお願いがしたい。娘の……礼提督の秘書艦として、提督の心得というものを教示していただけないだろうか」
五月雨「隊長さん……!」
隊長「愚かなことにこの私も、陸と海の違いはあれど、P少将の友人として、志を共にした同士として、無念を晴らしたい気持ちがあった」
隊長「五月雨にも、そういう気持ちがあるものと思い込んでいたのだ」
隊長「軍人の矜持を忘れ、知らぬうちに復讐に心を捕らわれていたこと……ただただ恥じ入るばかりだ」
隊長「五月雨。P少将を知る艦娘として、娘を導いてほしい。お願いできないだろうか」ペコリ
礼提督「お父さん……」
五月雨「……」
礼提督「五月雨さん……お願いします!」バッ!
五月雨「……」
566 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:19:16.32 ID:bgBHVRZoo
五月雨「わかりました。海のことを……この世界のことを、考えてくださるのでしたら、引き受けます!」
礼提督「五月雨さん……!!」
隊長「……ありがとう。礼を言う」
五月雨「あ、でも、私も、そんなに偉そうなことを言えた立場じゃないんですよ」エヘヘ
五月雨「隊長さんはご存じだと思いますが、P提督は、私が無茶をして死んでしまわないように、あの島へ送ったんです」
五月雨「実際、私もあのときは、ただレ級を倒すことしか考えていませんでしたから……礼提督と同じように」
隊長「……」
五月雨「でも、あの島で、提督と出会って……あの島の艦娘のみんなと出会って、私の見ている世界がどれだけ狭いかを知ったんです」
五月雨「いろんな人がいて、いろんな考え方があって……その中で、私にできることは何か」
五月雨「正しいことはひとつじゃなくて。どんなものにも、良いところと悪いところがあって。すごく、複雑だってことを知ったんです」
五月雨「それから……人間なのに、人間や艦娘にひどいことをする人がいるってことも……間違ったことをする人がいるってことも、知りました」
五月雨「礼提督には、そういう人になってほしくありませんし……それに、一番は、みんな無事で……生きててほしいって、思うんです」
礼提督「……」コクン
567 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:20:30.98 ID:bgBHVRZoo
五月雨「あまりうまく説明できませんし、伝わったかどうかわかりませんけど……だから、これから、たくさんお話ししましょう!」
五月雨「良いと思ったことも、悪いと思ったことも。たくさん話し合って、進んでいきましょう!」ニコッ
礼提督「はい……はいっ!!」コクコク
礼提督「良かった……五月雨さんみたいな艦娘が秘書艦になってくれて、本当に良かったですううう!」グスグス
五月雨「な、泣きすぎですよ!?」
礼提督「だ、だってぇ、一度は断られましたしい!!」ウエーン
X中佐「……なんというか、身の引き締まる思いだね」
祥鳳「はい……!」
F提督「良い艦娘だ……ところで神通?」
神通「はい?」ニコニコ
F提督「どうして私は君にお姫様抱っこされているのかな?」
神通「脚がおつらそうでしたから……」ニコニコ
568 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:21:16.75 ID:bgBHVRZoo
F提督「車椅子に乗せてくれていいんだが……」
神通「私は大丈夫ですよ」ニッコニコー
X中佐(嬉しそうだなあ……)
祥鳳(くっついていたいんでしょうね……)
隊長「コホン。余程再会が嬉しかったと見えるが、慎んだほうがいい。私も、この場で憲兵の仕事をしたいと思ってはいないのでな」
神通「わかりました……」ションボリ
F提督「神通はいつからこんなにお茶目になったのかな……」クルマイスノセラレ
神通「お茶目……?」
神通「」ポクポクポク
神通「」チーン
神通「あ、あああ……私ったらなんてはしたないことを……」カオマッカ
F提督「自覚してなかったのか……」タラリ
五月雨「如月ちゃんや大和さんたちの影響かなあ……」タラリ
X中佐「この場にビスマルクがいなくて良かったかもしれないなあ」
祥鳳「ああ……やりかねませんね、ビスマルクさんなら」
569 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/17(土) 11:27:10.16 ID:bgBHVRZoo
今回はここまで。
いろは順で言うと、現時点で加(か)まで出ているので次は与(よ)なのですが、
「墓場島鎮守府?」側で使うかもと思って、少し飛ばして礼(れ)で命名しています。
仇敵がレ級なので、丁度いい対比なのかもしれません。
そしてF提督、影牢エンドの場合はそのまま死んだことにしてますが、
こちらのルートでは生きてたことにしました。
フラグ回収ルートなので、その辺は大目に見てください。
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