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【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その2だよ」【×影牢】
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420 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:47:16.16 ID:r0JdSGTYo
時雨「肉体から引き剥がされて魂だけになった姿だから、よくわかるでしょ?」
提督「魂……!?」
時雨「そう。提督、あなたは、深海棲艦の魂と人間の魂が混ざりあった魂を持つ人間だよ」
提督「混ざっ……深海棲艦と!? 俺が!? なんでだ!?」
時雨「提督のお母さんが、学生の時に海難事故に遭ったことは知っているかい?」
提督「……いいや、知らねえ。初めて聞いた。母親が海の近くに行きたがらないのはそのせいか?」
時雨「だと思うよ。提督のお母さんは君が生まれる前、その事故で、深海棲艦に接触していたんだ」
提督「……」
時雨「数年前、海に突然現れた深海棲艦。そのもととなっている魂そのものは、海に姿を現す以前から存在していたんだ」
時雨「その眠っていた魂が、生きている人間……つまり、海難事故によって海に放り出された人間を感知し、接触した」
時雨「そこにいた人たちは体を奪われたり、彼らの持つ怨嗟によって精神を蝕まれ狂わされたり……たくさんの人が『人』ではなくなった」
時雨「提督のお母さんも、深海棲艦の魂に襲われた一人なんだよ」
提督「……」
時雨「本当なら、提督のお母さんも狂人になるはずだったんだけど、そうならなかった理由がふたつ」
時雨「ひとつは、乗り移った深海棲艦の魂が弱っていたせい。もうひとつはに救助されてから海から離れたこと」
時雨「そのおかげで、提督のお母さんは狂うことなく生き延びたと思うんだ」
421 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:48:02.10 ID:r0JdSGTYo
時雨「そして提督のお父さんと結婚し、新たな命を宿したときに、その命が持ってきた『人間』の魂と結合した」
時雨「そうして生まれたのが、提督……君なんだ」
提督「……」
時雨「……」
提督「あいつが……母親が、俺に異常なくらい怯えていたのは、そういうことか?」
時雨「多分ね。そして、その君の出生に目を付けたのが魔神の手先だね」
提督「ニコのことか?」
時雨「ううん、魔神のために作られた自動人形(オートマタ)……エフェメラって名前なんだけど」
時雨「彼女が君のお父さんに接触して、不幸を君に押し付けるように仕組んだ、って聞いてるよ」
提督「じゃあ何か。俺は生まれる前から魔神に目を付けられてたってことか」
時雨「そういうことだね」
提督「冗談きついぜ……最初っから俺の人生ハードモードだったんじゃねえか」
時雨「でも、結果的に魔神に食べられたりしなかったんだ。妖精に感謝しないとね」
提督「食べる!? なんだそりゃ!?」
時雨「魔神の目的は、邪悪な魂を食らうこと。本当なら提督は、魔神に捧げられる生贄となるはずだったんだよ?」
時雨「ハードモードどころか、最初からバッドエンド直行が既定路線だったんだ」
提督「……」
422 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:48:46.26 ID:r0JdSGTYo
時雨「君があらゆる人間から忌み嫌われ、謂れのない恨みや悪意を一身に浴びれば……」
時雨「いずれはすべての人間を憎み、世界そのものを憎むような、凶悪極まりない人間になるはず」
時雨「ましてや魂の半分は深海棲艦。そうなっていたら人間ですらなくなってたかもしれない」
提督「……俺は魔神の餌になるためにこんな目に遭ったってことか」
時雨「深海棲艦が混ざった君の魂が、御馳走に見えたんだろうね」
時雨「その目論見を狂わせたのが、妖精との出会いさ。あんなに早く、提督が妖精と出会うなんて、彼らも予想外だったみたいなんだ」
提督「それだけでそんなに変わるのか?」
時雨「ねえ、提督は、妖精から何を教えてもらった?」
提督「……」
時雨「本当なら、周囲の人間から教えてもらうはずのいろんなことを、妖精たちから教えてもらったんじゃないかな」
提督「……ああ、そうだ。俺に『常識』を教えてくれたのはあいつらだ」
提督「人の世に絶望しても、あいつらは俺を励ましてくれた。よく声をかけてくれたし、俺を見捨てたりもしなかった」
時雨「提督は人間に失望していたんだよね? でも、妖精には良い感情を持っていた」
提督「……」コク
時雨「妖精たちの干渉を想定してなかったエフェメラは、君を邪悪に染めるため、それ以降も君のお父さんに何度も接触してる」
423 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:49:31.26 ID:r0JdSGTYo
時雨「あることないことを焚きつけて君の立場を悪くしつつ、彼の政治活動を裏から支援して」
時雨「君のお父さんの信頼を得ながら、結果的に君が人間を憎むように仕向けていたんだよ」
提督「……だからあいつは、ぽんぽんと調子よく出世していたのか」
時雨「弟さんがいたのもそれに拍車をかけた感じだね。父親と弟の評価が高ければ高いほど……」
提督「俺に対する風当たりは強くなる、ってか。まさしくその通りだな、その時点でそのエフェメラとかいう奴の術中にはまってたわけか」
時雨「その結果があの島への左遷だね。でも、それで結果的に人間社会から離れることができたのは、ある意味一番の幸運だったと思うよ?」
提督「……もしかして、お前もあいつらに巻き込まれたのか?」
時雨「さあ、どうだろう? わからないけど、僕がいた鎮守府はエフェメラの存在に関係なく、もともとそうだったんだと思うよ?」
時雨「その人の場所から君のいる鎮守府に流れ着いて……そこでみんなを見守っている中で、君を守りたいという人と出会った」
提督「俺を……?」
時雨「エフェメラは、実は一体だけじゃなく、数体いるらしいんだ。それこそ僕たち艦娘みたいに。そのエフェメラもそれぞれに思いがあって……」
時雨「魔神のために君を魔神の贄にしたがっている個体もいれば、魔神となりうる君の力になりたいって個体もいる」
時雨「僕は、その君の力になりたいっていうエフェメラに、協力してほしいと言われているんだよ」
時雨「今の話も、そのエフェメラから聞いて知ったんだ」
時雨「まさか、ここでこうやって君と話ができるなんて、思ってもいなかったけど、ね?」
提督「……」
424 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:51:01.32 ID:r0JdSGTYo
時雨「それから、君がここに来たのは、君と一緒にいた女神妖精のおかげだよ」
提督「妖精の……!? あいつは、消えたんじゃないのか」
時雨「そう。君と一緒にいた女神妖精は、深海棲艦で作った弾丸によって、この世界から消滅した」
時雨「でも、それは死ではなく、現世に存在し続ける力を失っただけ。ようは、世界から一時的に追い出されちゃったんだ」
時雨「君が気を失った後、ブラックホールのメディウムが君を助けに来てくれて……」
時雨「その時に彼女が持っていた、魔力の元である魔法石の力で、妖精が戻って来ることができたんだ」
時雨「本当は、そういう用途で魔法石を持ってきたわけじゃないみたいだけどね」
提督「……」
時雨「その後、提督や如月たちを島から脱出させるため、女神妖精の力が島を包み込んで君たちの肉体を守り……」
時雨「それと一緒に、これまでに島に埋葬された艦娘の魂が力を得て、君たちを炎や溶岩から逃がす手伝いをしてくれた」
時雨「だから、さっきの如月たちがこっちに来ているか、と言う質問には、こっちには来てないと思う、って答えられると思うんだ」
時雨「女神妖精の力が発揮されたということは、如月たちの傷は治って、魂は自分の体に戻っているはずだから」
提督「そうなのか!? ……生きて、いるんだな……!?」
時雨「おそらくね?」
提督「でも、そういう見込みなんだな? それなら……良かった」
425 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:51:46.61 ID:r0JdSGTYo
時雨「ただ、君たちを救助するために島に近づこうとした軽巡棲姫は、女神妖精の光に近づいたときに苦しんでいたんだ」
時雨「女神妖精のあの光は、深海を棲み処とする深海棲艦にとって毒なんだと思う。要は、轟沈から艦娘を救うための力だからね」
提督「……じゃあ、俺は……」
時雨「君は、半分深海棲艦だからね。肉体から追い出されたっていうか、強制的に成仏させられたんじゃないかな?」
提督「成仏……」チーン
時雨「だからこんなところにいるんだと思うよ」
提督「……いや、まあ、そうかもしれねえが」
提督「それよりも、よく俺とあいつが何十年も一緒にいられたな!? 俺とあいつって相反する属性持ちじゃねえか」
時雨「だからこそ出会ったのかもしれないね。君みたいな沈みかけの魂を救えるのが、女神妖精なんだから」
提督「……もしかしなくても、俺が妖精たちと話ができたのも、俺が半分深海棲艦だからってことだよな?」
時雨「うん、きっとそうだね」
提督「……ああ、くそ。俺の今の見た目からして信じられねえが、いろいろ納得できる辺りどうしようもねえな……!」
時雨「ねえ、提督? 君がなぜそんな姿なのか、ここにいるのか……僕の言いたいことを理解はしてもらえたと思うんだけど」
提督「……」
時雨「今度は、僕の質問に答えて欲しいんだ」
提督「……なんだ?」
426 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:52:32.29 ID:r0JdSGTYo
.
時雨「提督。君は、死にたいのかな? それとも、生きたいのかな?」
提督「……」
.
427 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:53:17.08 ID:r0JdSGTYo
時雨「……」
提督「はぁぁ……」
時雨「ため息ついてないで答えて欲しいんだけどな」
提督「急かすなよ。まさかここで、俺がその質問をされる側に回るなんてなあ……」
時雨「……」
提督「……正直、俺の出番はここまでだと思ってたんだ」
提督「如月たちを巻き込んじまった。だから俺も、嫌な奴らを焼き払って、一緒に燃えてしまおうと思ってた」
提督「でも、あいつらは……如月たちは、無事なんだよな?」
時雨「多分ね?」
提督「ル級たちはどうしてんだ? 海軍の連中に捕まってないだろうな?」
時雨「さあ?」
提督「ニコたちも……あっちで待ってんだろうなあ。わざわざ別の世界から訪ねてくるくらいだし」
時雨「……」
提督「……戻るか」アタマガリガリ
時雨「!」
428 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:54:01.62 ID:r0JdSGTYo
提督「どの面下げて、って気もするが……このままじゃあ、如月たちにも、ル級たちにも、ニコたちにも迷惑かけちまう。未練が残っちまう」
提督「つけられる始末はきっちりつけとかねえとな。死ぬのはそれからだ」
時雨「……素直じゃないね?」
提督「そうか?」
時雨「まあ、いいか。早く帰って、みんなを安心させてあげよう」
提督「そうだな。そうと決まれば……」
提督「……」
提督「どこ行ったらいいんだ?」
時雨「……」
提督「どこ行くと戻れるんだ? 時雨、知ってるか?」
時雨「……」メソラシ
提督「視線が泳いでるぞ。俺を焚きつけておいて、それはねえだろ」
時雨「僕が知るわけないじゃないか……僕は、エフェメラが行けって言った通りに行かざると得なかっただけなんだから」ムー
提督「時雨も丸投げされたのかよ……んじゃ仕方ねえ、とりあえず手掛かり探すか?」
時雨「そうだね、そうして欲しいな」
429 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:54:46.52 ID:r0JdSGTYo
提督「とはいえ……どこに行くかだな」ウーム
時雨「……」
提督「なあ時雨? ありきたりな発想だけどよ、仮にここが天国だとしたら、下は下界っつーか、人間界、って認識してもいいよな?」
時雨「うーん、そうかも……ね?」
提督「……」
時雨「なにか気になることでもあったの?」
提督「さっき、鏡代わりに見たその池の水。綺麗すぎて、水面というより薄い膜みたいなんだよな」
時雨「……確かにそうだね?」
提督「もしかして、あの池の底がもといた世界につながってたりはしないか……って思ったんだ」
時雨「そう……だね。可能性はあるかも」
提督「ちょっとあの池の中を覗いてみるから、俺が落ちないように足を抑えててくれ」ネソベリ
時雨「うん、わかった」ツカミ
提督「よ……っと」チャプン
ゴォォォォ…
提督「おお……」チャパッ
時雨「どうだった?」
430 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:55:31.37 ID:r0JdSGTYo
提督「この下は地獄だった。地獄の天井につながってるぞ、ここ」
時雨「」
提督「あちこち燃えてるわ血生臭えわ、燃えた人間やら人骨やらが転がってるわ悲鳴上げてるわでマジ地獄だった」
時雨「えええ……」
提督「洞窟っつうか、ただっ広い洞穴に篝火がたくさん置いてあって、筋骨隆々の獄卒もいて、これが地獄絵図かーって感じですごかったぞ!」ワクワク
時雨「……なんでそんなにテンション高いの?」
提督「もうちょっと見てていいか」チャプン
時雨「提督!?」
提督「おお、マジすげえ……獄卒もちゃんと牛頭馬頭(ごず・めず)じゃねえか、すげえな」キラキラ
提督「うん? なんだありゃ。女の鬼か? 体にツギハギ模様があるな……」
女の鬼?1「貴様なぞこうじゃ!」
女の鬼?2「我等の痛み、思い知れ!」
燃えている亡者「ぎゃあああ!」
提督「あの鬼……もしかして」
グイグイ
提督「ん? どうした時雨」ザパッ
431 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:56:16.43 ID:r0JdSGTYo
時雨「提督、こんなところで油を売ってないで、早く現世に戻る手がかりを探しに行こうよ」
提督「まあ待てよ。ちょっと見覚えのある顔が地獄にいるんだ。利根っぽかったんだが」
時雨「ええ?」
提督「お前もちょっと見てみろよ、少しでいいから」
時雨「う、うん……あ、ちゃんと足を掴んでてね?」
提督「おう」
時雨「……それじゃ、いくよ」チャプ…
時雨「……」
時雨「……」
時雨「……ふう」ザパッ
提督「どうだった?」
時雨「本当に地獄だったね……びっくりだよ」
時雨「それから、あの亡者を滅多刺しにしてた女の人たち、確かに利根さんに見えるね?」
提督「だったよなあ? ちょっとあいつらと話してみてもいいか?」
時雨「え?」
432 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:57:01.80 ID:r0JdSGTYo
提督「どうやったら元の世界に戻れるか、聞けるかもしれねえし」
時雨「……」ウーン
時雨「……」ウーーン
時雨「……わかった。いいけど危なかったらすぐに引き上げてね」
提督「おうよ」
チャプッ…
提督「こんな薄い膜一枚で地獄と隔たってるってのも、すげえな……」
提督「おーい! 利根ーーー!!」
ザワッ!!
獄卒たち「な、なんだなんだあ!?」
女の鬼?1→利根1「だ、誰じゃ! 吾輩を呼ぶのは!」キョロキョロ
提督「おう、やっぱり利根だったか。上だ、上!」
利根2「上?」ミアゲ
利根3「うお!? なんじゃ貴様! 深海棲艦か!?」
利根4「いや待て、あやつは……おぬし、もしや墓場島の准尉か!?」
433 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:57:46.13 ID:r0JdSGTYo
提督「おう、よくわかったな! お前らここで何してんだ!?」
利根1「知れたこと! 吾輩たちを切り刻んだこの男に仕返しをしておるのだ!」
提督「は!? まさかそいつ……」
利根2「これはかつてのM提督の慣れの果てよ!」
利根3「おぬしも聞いたであろう! 吾輩たちが受けた仕打ちを!」
提督「だからその体の傷かよ。それはそうと、なんで服が腰巻だけなんだよ!?」
利根4「これが地獄のスタイルじゃからな! 郷に入らば郷に従えというだろう!」
提督「なんでそういうところは馬鹿正直なんだよ……胸隠せ、胸」セキメン
牛頭「おーーい、そこの天井の、多分人間の兄ちゃん!!」
提督「!」
馬頭「あんた、こいつらの知り合いか!?」
提督「一応なー!」
馬頭「だったら、こいつらをここから出ていくように説得してくんねーか!?」
提督「ああ? どういうことだ!?」
434 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:58:31.34 ID:r0JdSGTYo
牛頭「この嬢ちゃんたちは、本当ならここで働く必要はねえんだよ!」
牛頭「この野郎がいるってんで、わざわざこっちに訪ねてきて、俺たちの仕事をやらせて欲しいって言ってきてんだ!」
馬頭「おかげで俺たちゃあ暇で暇で! 筋肉がなまって仕方ねーんだよ!」ムキッ
提督「あー……」
牛頭「頼むぜ兄ちゃん! こっちに来た時ゃあ少し手加減してやっからよ! ちょっと助けてくれよー!」
提督「……」ウーン
利根1「あの男は地獄に来るかのう……?」
牛頭「そうなのか?」
利根2「艦娘に対してだけは激甘じゃからのう。助けて、と言えば誰でも助けてくれるんじゃないか?」
馬頭「本当かよ。そういえば、お前もさっき助けてっつったよな」
牛頭「ああ……」
提督「しゃあねえな……うまくいかなくても文句言うなよ!」
利根3「助ける気になったみたいじゃのう……」
馬頭「あー、ありゃ地獄に来ねえや。来ても俺たちと同じになりそうだぜ」
利根4「そうなのか! ならばなおのこと、ここを離れるわけにはいかんな!」ワクワク
提督「いや、俺はそういうの御免だぞ!? 面倒臭えのは嫌だからな!」
利根1「なぬぅ!?」
435 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 22:59:16.32 ID:r0JdSGTYo
牛頭「……怠惰の罪で向こうに堕とされそうだな」
馬頭「ああ、あっちのハーデスの叔父貴あたりの区画のほうか」
提督「それに俺はまだそっちに行く気はねえぞー!」
馬頭「だよなあ。あそこから顔出してるってことは、まだあいつ三途の川を渡ってねーし……」
提督「それより利根! お前らのやってることは逆効果だぞ、そこの獄卒たちの言う通り、とっとと帰ってこい!」
利根2「な、なにを言うか! それでは吾輩たちの無念を晴らせぬではないか!」
提督「何言ってんだ、むしろ、お前らがかまってやってるから、そいつが喜んでんだろうが」
利根3「なんじゃと?」
提督「そいつがお前らを殺して飾ってたのは、ずっと自分の手元に置いておきたかったからじゃねえのかー?」
提督「確かそいつの望みは、笑ったり怒ったりするお前らのいろんな姿が見たかったって話だったよな?」
提督「お前らがそんな恰好でそいつを取り囲んで、怒ったり罵ったりしてるのも、同じ状況じゃねえのかよ!」
利根4「……!」
提督「大勢の利根に注目されてることを嬉しがってんだよ、そいつは!」
提督「今お前らがやってることは、ある意味そいつの望みをかなえてやってるのと同じなんだよ!」
利根1「そ、そうなのか……!?」
436 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 23:00:03.40 ID:r0JdSGTYo
牛頭「そうだよ! あの兄ちゃんの言う通りだ!」
牛頭「俺も長いこと亡者を痛めつけてるが、そいつの悲鳴は苦痛って感じじゃねえんだ! 全然こいつへの戒めになってねえ!」
利根2「だ、だとしたら、吾輩たちはどうすればいいんじゃ……!?」
提督「そうだな……そいつのことは忘れて、全然違うところで幸せになりゃあいいんじゃねえの?」
提督「そいつが寝取られ趣味でなけりゃあ、お前らに見向きもされなくなった方がつらいと思うぞ?」
馬頭「あ、俺それわかる。カミさんに無視されんの、すげえ勘えるわ」
馬頭「うちのカミさんに愛想尽かされたら、寂しくて死ぬかもしれねえ」
利根3「なんと……おぬし、妻帯者であったか」
馬頭「そこ驚くとこかよ!?」
提督「そういうわけだから、どんな形になってても利根が好きな奴なら、お前らに二度と会えないようにした方が拷問になると思うぞ!?」
利根たち「「……」」カオヲミアワセ
提督「そんな奴のために、お前らが時間を使ってやる必要はねえ! 忘れちまえ、そんな奴!」
利根4「そのほうが、良さそうじゃのう……!」
牛頭「!!」
437 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 23:01:01.15 ID:r0JdSGTYo
亡者「えっ、ちょっと待っ」
利根1「……こやつがあからさまに焦ってる辺り、まさしくそういった思惑があったのじゃろうなあ」ジロリ
利根2「うむ、そのようだ……二人とも、吾輩たちの我儘のために、おぬしたちの仕事を奪ってしまって、申し訳なかった」ペコリ
馬頭「お、おう。まあ、嬢ちゃんたちが恨みを晴らしたい気持ちもわかるからな」
牛頭「あんなに鬼気迫る感じで責めてたんじゃあ、余程の恨みがあったんだろうしなあ……ま、とにかくわかってもらえたんならありがてえ」
牛頭「ここから向こうの針山の左側の道を一里ほど行くと、図体のでかい髭面の親父がいるからよ。帰り道はそいつに訊いてくれ」
利根3「承知した。何から何まですまんな」ペコリ
利根4「では参ろうか。提督よ! おぬしにも礼を言うぞ!!」ブンブン
亡者「待ってくれ! 利根! 利根えええ!!」
牛頭「おー、やっと悲鳴が悲鳴らしくなったぜ。兄ちゃん、あんがとな!」
提督「おう! ところで知ってたら教えてくれ!」
牛頭「なんだあ!?」
提督「元の世界に戻りたいんだが、どこ行きゃいいんだ!?」
馬頭「なんだお前、現世に行きたいのか!?」
438 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 23:01:46.26 ID:r0JdSGTYo
牛頭「だったら適当に歩いて行け! お前が行きたい方向に、花が避けて道ができるはずだ!」
提督「マジか……わかった!! ありがとうな!!」
馬頭「こっちこそありがとなー!」
トプン
馬頭「ふー……やっと俺たちも仕事ができるぜ」
牛頭「お前、カミさんに無視されたとかあったのかよ」
馬頭「最近まともに仕事できなかったからなあ。筋肉が落ちたもんで、あんたみたいな駄馬は知らないって言われてよ〜」ハハハ
馬頭「ま、これで俺の運動不足も解消できるし……」
牛頭「そうだな。張り切っていくかあ!!」
亡者「あ、ああ……」ガックリ
牛頭「がっかりしてないで、お前は自分の罪を悔いてろっての……よっ!」ドスゥ
亡者「ぎゃあああああ!」
馬頭「おお、いい悲鳴だねえ。やっぱ地獄はこうじゃねえとなあ!」ゴギャッ
牛頭「今度からはああいう特別ゲストは招かないほうがいいな。他の亡者も裸の女にいろめきだってたし、なあ!」グシャッ
馬頭「そうだな、変に希望を持たせるような対応は良くねえな」ドシュッ
牛頭「地獄だもんな、ここ!」
牛頭馬頭「ぎゃははははは!!」
439 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 23:02:31.36 ID:r0JdSGTYo
* 花畑 *
時雨「随分長い間、話し込んでたと思ったら、そんなことがあったんだ……」
提督「まあな。あとはあそこの利根たちが、まともな鎮守府に行ければいいんだが」
提督「そこの獄卒が言うには、目的地まで花が道を開けてくれて、俺達が行きたい場所に案内してくれるらしい」
時雨「そうなの?」
提督「ああ、試してみようか」スクッ
提督「現世に戻る道はどっちだ……?」スッ
花<ザワッ
花<ザザザザァ…ッ
提督「おお……すげえ」
時雨「道が開けた……本当に花が避けてくれてる」
提督「よし、そうと決まりゃあ、行くとするか。時雨もいいか?」
時雨「うん!」
440 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/25(土) 23:04:28.77 ID:r0JdSGTYo
というわけで、今回はここまで。
書き始めた頃はこんな設定がなく、書いてる間に二転三転してましたが、
この形がしっくりきたので提督の正体はこんな感じです。
441 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/06/26(日) 00:13:54.49 ID:dCCTzD4vo
おつおつ。めざせハッピーエンド
442 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 21:54:16.35 ID:aL/lLQ8Vo
今回もフラグ回収編です。
続きです。
443 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 21:55:17.44 ID:aL/lLQ8Vo
* *
提督「行けども行けども同じ景色だな」
時雨「道ができてるとはいえ、進んでいるのかもわからないくらいまっすぐだね」
提督「ったく、どこまで行けば……ん?」
時雨「……女の子の声、かな?」
提督「……」
時雨「なんだか泣き叫んでる感じがするね」
提督「聞き覚えのあるような声じゃねえが……ちょっと行ってみるか」
時雨「あっ、提督待って!」タッ
* *
「やーだーーー! いっしょにいるのーー!!」ビエェェェン
スキンヘッドの壮年男性「これはどうしたものか……」
小太りの中年男性「このまま見過ごすわけにはいかんでしょう」
壮年「……しかし、これはどう手を付けたらいいか、わからんぞ」
中年「あの抱きかかえた艦娘をどうにかせねばなりませんな……」
444 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 21:56:01.80 ID:aL/lLQ8Vo
時雨「なんだろう、誰かいるね?」
提督「行って見てみるか?」
時雨「うん、そう……待って。提督はここにいて」
提督「なんでだよ」
時雨「提督、自分の見た目が深海棲艦なの、忘れてる?」
時雨「その姿で人前に出てきたら、女の子が逃げると思うんだけど」
提督「……わかったけどよ……任せていいのか?」
時雨「うん。僕に任せてよ」
スタスタ
時雨「ん?」
時雨「んんん??」タラリ
大きな女の子「うわぁぁぁぁんん!!」
(身の丈4メートルあろうかという5歳児くらいの巨大な少女が人形?を抱えて座っている)
時雨(……遠近感が無茶苦茶だよ……こんなに大きいだなんて思わなかったじゃないか)タラリ
445 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 21:57:03.20 ID:aL/lLQ8Vo
壮年「ん? お前は……」
中年「あれは……見覚えがありますな。ああ、君! もしかして、君は艦娘じゃないか?」
時雨「え? あ、はい、そうだけど……この熊より大きいサイズの女の子は……?」
中年「申し訳ないが我々も良く知らないんだ。泣き声につられてきてみれば、我々の話を聞かずに泣きっぱなしでね……」
壮年「否、話はしたのだ。だが、この娘は聞く耳を持たん」
中年「言い方が悪いのですよ! このくらいの子にはもう少し優しく声をかけてあげないと!」
時雨「……僕が、話してみようか?」
中年「お願いできるかい?」
壮年「……気を付けてくれ」
時雨「……」コクン
ジリ…ッ
時雨「やあ、こんにちは」
女の子「ぐす……なあに? あなたも、このこをとりあげにきたの?」
時雨「この子? 君の持ってる、そのにんぎょ……う!? ま、待って! その人形、良く見せて……」
女の子「……あなたも」
時雨「……っ」ゾク
446 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 21:57:46.92 ID:aL/lLQ8Vo
女の子「あなたも、しょうかくをとりあげようとするの!?」
時雨「そ、それは」
女の子「こないでえええ!!」ブンッ
時雨「うわっ!?」バッ
女の子「しょうかくは、わたしのものなの! こないでよおおお!!」ブゥンッ
時雨「……やばっ……!!」
提督「時雨危ねえ!!」バッ
ドガッ
提督「ぐお!?」ブットバサレ
時雨「い、いたた……提督!?」
提督「うぐ……」ゴロゴロ…ドサッ
時雨「提督、大丈夫かい!? 僕を庇って……!」
提督「くそ……痛くはねえが、頭がグラグラしやがる……時雨は大丈夫か」
時雨「う、うん、大丈夫……!」
提督「なあ、あいつが抱えてる人形、艦娘じゃねえのか? 『しょうかく』とか呼んでなかったか?」
時雨「……そうだね。あれは、翔鶴型航空母艦の一番艦、翔鶴さんだ……!」
447 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 21:58:32.05 ID:aL/lLQ8Vo
中年「な、なんだ!? 深海棲艦が艦娘を庇っただと!?」
壮年「軍服を着ているぞ……何者だ」
女の子「だれにも……だれにも、しょうかくは、わたさない……!!」
翔鶴「……ぐぅ……!」ギリギリッ
提督「……ったく、どういうことだよ」ジロッ
女の子「……なあに? まだ、わたしたちをいじめるの?」グスッ
時雨「提督、睨んじゃ駄目だよ!」
提督「ちっ、やべえな、警戒されてら……こっちからは手ぇ出してねえだろうがよ、くそが」
時雨「……その提督の言葉遣いが一番良くないと思うんだけど?」
??「あら? もしかして……司令官?」
提督「あん?」フリムキ
??→暁「ひいっ!? し……深海棲艦っ!?」
提督「暁!? なんでお前がこんなところに!?」
暁「……え!? あ、あなた、私を知ってるの!? もしかして本当に、墓場島の、提督少尉なの!?」
提督「……参ったな、マジでうちの暁かよ……」
448 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 21:59:16.82 ID:aL/lLQ8Vo
暁「参ったのは私の方よ!? 司令官が深海棲艦になっちゃうなんて……!!」プルプル
提督「それは俺も知らなかったんだから我慢しろ。そんなことよりここから離れろ、危ないぞ」
暁「え?」
女の子「……」テイトクニラミ
提督「くそ、あの図体で暴れられちゃたまったもんじゃねえ。隙見て逃げなきゃ……」
暁「あれは……あの子は」
提督「!? おい、暁!? 近付くな!」
時雨「暁!!」
暁「私、あの女の子、知ってるわ……」
提督「はあ!?」
時雨「どういうこと!?」
暁「……私、どうして忘れてたのかしら」
449 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:00:02.16 ID:aL/lLQ8Vo
女の子「……」
暁「……ねえ、あなた、I提督でしょう?」
提督「!!」
中年「て、提督!?」
壮年「I提督……だと!?」
女の子「……」
暁「私、思い出したの。あなたのこと」
暁「だって、私にいろんなことを教えてくれた、最初の司令官だもの。忘れちゃったりしたらいけないわよね」
暁「だから……忘れてて、ごめんなさい」ペコリ
女の子「……え……?」
暁「ねえ、I提督……ううん、司令官!」
女の子「……!」ビクン
暁「司令官は、私のこと……暁のこと、覚えてる?」
女の子「……あ、か……」
450 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:00:46.93 ID:aL/lLQ8Vo
暁「私、司令官を一目見て、素敵な女性だと思ったの。司令官は、暁が見習わなくちゃいけない、理想なレディーだって」
暁「思った通り、司令官とのお話は、本当に楽しかったわ。いろんなことを教えてもらったし」
暁「レディーになるための普段の振る舞いとか、心がけとか……私の悩み事とかも! たくさんたくさん、聞いてもらったわ!」
女の子「……」
暁「それなのに、忘れちゃってて……本当にごめんなさい」
暁「なんで忘れてたかっていうと……怖かったんだと思う。司令官と一緒にいるのが楽しかったから、余計に思い出したくなかったんだと思うの」
提督「……」
暁「司令官は覚えてるかわかんないけど、あの時、私は……司令官が怖くて逃げだしたの」
暁「たくさんの深海棲艦に囲まれて、鎮守府もたくさん攻撃されて」
暁「それで、司令官がずっと悩んでたの、私、覚えてるわ。資材がなくなって、補給もままならなくなって」
女の子「……う、あ……」
暁「それでも翔鶴さんが無理を押して出撃して、翔鶴さんが大破してぼろぼろになって……司令官が、ちょっと、おかしくなっちゃって」
暁「そのあと……私、見ちゃったの。司令官が、翔鶴さんを……翔鶴さんのからだを、切り裂くところを」
提督「……!」
暁「ねえ、どうしてなの!? そんなに翔鶴さんを大事にしてたのに! 今だって、大事に翔鶴さんを抱きしめてるのに……!」
女の子「……ア、カ、ツキ……! う、ううう……!」
451 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:01:32.02 ID:aL/lLQ8Vo
暁「どうして、あんなことをしたの!? 司令官……暁に教えて」
暁「司令官は、暁のお話をちゃんときいてくれたわ! 暁も、司令官が困っていたら、お話を聞いてあげたいの!」
女の子「……」
暁「お願い、I提督……司令官!!」
女の子「……ママの……」
暁「……」
女の子「……ママの、おかおが、なくなっちゃったの……」
暁「……!?」
女の子「けーさつのひとがね、ママのおかおを……だれかが、もっていっちゃった、っていうの……」プルプル
暁「……!!」
壮年「……っ!」
女の子「ママにあえなくて、さびしくて、かなしくて……」
女の子「すきなひとのおかおが、なくなっちゃうのは、いやなの……!」
女の子「しょうかくは、すき……すきなひと。わたしの、たいせつなひと……」
女の子「だから、どこにも、いかないように……だれにも、とられないように……!!」ギュ…
提督「……だから、翔鶴の首を……!」
452 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:02:16.83 ID:aL/lLQ8Vo
暁「……駄目よ……そんなことしちゃ、駄目よ」ウルッ
女の子「……」
暁「司令官は、人の心を思いやれるひとになりなさいって、教えてくれたじゃない」
暁「司令官は、人の痛みがわかるひとになりなさいって、教えてくれたじゃない……!」ヒシッ
女の子「……あ……」
暁「そんなふうに、きつく抱きしめたら、翔鶴さんが痛いって、いつもの司令官ならわかるはずよ……!」グスッ
暁「お願い! 翔鶴さんを……翔鶴さんを助けてあげて!」
女の子「あああ……!!」
暁「司令官……! 思い出して! 司令官っ!!」ギュウ
女の子「あ、あああ、ああああああ!!」
ゴォッ!
中年「突風が……!」
提督「……な、なんだ……?」
時雨「見て、女の子が……!」
453 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:03:01.78 ID:aL/lLQ8Vo
女の子「し、しょうかくぅ……!」チンマリ
翔鶴「う……」フラッ
暁「翔鶴さん大丈夫!?」ガシ
翔鶴「え、ええ……ありがとう、暁ちゃん」
提督「元のサイズに戻った……のか?」
時雨「みたいだね……」
女の子「ごめん、なさい……ごめんなさい、しょうかく……」グスグス
翔鶴「……I提督」
女の子「いやだったの……しょうかくが、どこかにいっちゃうのが、いやだったの……」グスッ
女の子「うみのそこにしずんだら、あえなくなっちゃう……それが、いやだったの……!」
女の子「はなればなれに、なりたくなくて……ごめんなさい……ごめんなさい!!」ボロボロボロ
翔鶴「I提督……私こそ、申し訳ありませんでした」
翔鶴「あなたの言う通りにしていれば、私も大破しなかったかもしれなかったのですから……」ダキヨセ
454 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:03:47.05 ID:aL/lLQ8Vo
翔鶴「I提督……これからはずっとお傍にいますから、安心してください」ナデナデ
女の子「しょうかく……しょうかくうう!!」ウワーン
提督「いいのかよ、安易にそんなこと言って」
翔鶴「……私は、I提督から愛情にも似た信頼を寄せられていたことを、日々感じていました」
翔鶴「この人を全力で守りたい。そう思ったからこそ、あの日私は、I提督の制止を振り切り、深海棲艦と戦ったんです」
翔鶴「結果的に大破して、このようなことになってしまいましたが……これはI提督の命に背いた私への罰ですから」
提督「……ったく、このお人好しめ」ハァ
暁「翔鶴さん……」ウルッ
壮年「I提督は30歳近いはずだったが……」
時雨「あなたは、I提督を御存知なんですか?」
壮年「私は直接の面識はないが、私の姉が彼女を知っている。一時期、姉が彼女の面倒を見ていたからな」
中年「そ、そうなのですか!?」
壮年「姉とその息子が警察官なのだが……姉経由で、甥がストーカー殺人の捜査に参加することになったことを聞いたのだ」
壮年「犯人が被害者の首から上を持ち去るという猟奇的な犯行でな。その被害者の第一発見者が、被害者の娘だったそうだ」
455 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:04:47.86 ID:aL/lLQ8Vo
暁「……それが、I提督なの……?」
壮年「そうだ。事件の捜査中、彼女を預かってくれる親戚筋が見つかるまでの間、私の姉が彼女の面倒を見たのだ」
壮年「その子が海軍で艦隊の指揮を執ると聞いたとき、不思議な縁を覚えたものだった。それが……あのようなことになろうとは」
中年「子供の姿になっていたのは何故なのでしょう……」
提督「ショックで幼児退行でも起こしてた、とかじゃねえか? それか、その齢まで巻き戻ってやり直したかった、とかな」
中年「……なるほど……」
提督「そういや、父親はどうしたんだ? 母親が死んだときに引き取らなかったのか」
壮年「父親も事件の数年前に事故死している。その事故も犯人が仕組んだものではないかと言われていたが、証拠はない」
壮年「事件当時はストーカーという言葉もなく、好きな人間を殺そうとする心理がわからず犯人と見られていなかったのも災いした」
提督「……そういう話かよ」
壮年「犯人は、被害者の首と一緒に焼身自殺を図ったが、その前に捕まった。終身刑が言い渡され、今も存命のはずだ」
提督「あぁ? 刑務所で遊ばせてんのか? とっとと殺しゃあいいものを」
壮年「私はそれで良かったと思うぞ。奴は、死んで被害者と同じところに行こうとしていたのだ」
壮年「わざわざ殺してやって、それで犯人が望み通りになって喜ぶほうが私は面白くない」フンッ
提督「ああ、なるほど……そりゃ確かに」
456 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:05:31.81 ID:aL/lLQ8Vo
壮年「それに……誰かが裁いて殺して終わりというのも、それはそれで味気ないものだ」
中年「それは……お察しいたします」
提督「……?」
壮年「まあ良い。この場を収めてくれたことには礼を言おう。だが、それよりも」ジロリ
壮年「貴様だ。墓場島の、提督少尉と言ったな?」
提督「……ん? あ、ああ」
壮年「貴様、未だに少尉なのか。あれからどのくらい経ったと思っている? なんの手柄も立てておらんのか」
提督「は?」
中年「そちらですか!? せめて外見を指摘なさるべきでは!?」
壮年「馬鹿者、どうせこの姿もこの男の心根の表れだろう! 些末なことだ!」
中年「些末じゃありませんよ! 深海棲艦ですよ!? いたずらに刺激しないでくださいよ!」
時雨「ねえ提督? このふたり、もしかして、提督のことを知ってるんじゃない……?」
提督「そうっぽいな……俺に関わりある時点でろくでもねえ話なんだろうけどな」
中年「ろくでもないとは何事だ!!」クワッ
提督「うおっ」
457 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:06:31.72 ID:aL/lLQ8Vo
中年「私がどんな思いでお前に五月雨を託したか! 貴様に何がわかる! やはり所詮は深海棲艦か!」ウオオオ!
時雨「今、いたずらに刺激するなって言ってたよね」
壮年「言っていたな」ウム
中年「中将殿!?」
提督「……五月雨? 中将? お前らもしかして……五月雨送って来たP少将と、金剛送ってきたQ中将か?」
壮年→Q中将「! ああ、その通りだ」
中年→P少将「我々のことを知っていたか……面識はないよな?」
提督「あぁ!? 忘れてられっかよ! あんな面倒臭え形で五月雨押し付けやがって! ちゃんと憲兵隊長から引き継ぎしたんだぞ!」クワッ!
提督「死にたがってたあいつを落ち着かせて納得させるのに、どんだけ回りくどいことしたと思ってんだ、くそが!」
P少将「お、おお!? それはすまん……」
提督「中将も中将だ! あの金剛を一方的にこっちに送り付けやがって……あいつに落ち度はなかっただろうがよ!」
Q中将「……そうかもしれん。だが、あの金剛は、私とはあわん」
提督「ああ?」
Q中将「あの金剛は、私には毒だ。すぐ抱き着くわ、Loveだなんだと喚くわ、時間と場所というものを理解しておらん」
Q中将「既婚者にああいった態度はよせと、私は何度も説教している」
提督「あいつ、弁まえてたとか言ってやがったのに、全然そんなことなかったんじゃねえか!」アタマカカエ
458 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:07:17.05 ID:aL/lLQ8Vo
Q中将「妻が食堂で働いていることも知っていた。それをそれとなく会わせられるように画策したり……」
Q中将「息子の死以来、私と妻がぎこちないからその仲を取り持とうとしていたんだろう。そんな余計なことなど、しなくて良かったのだ」
提督「……やれやれ、半分はあってんのか」
Q中将「それで、金剛とはどうなんだ」
提督「どうって、何が?」
Q中将「金剛と契りを結んだのかと訊いている」
提督「してねえよ。ただでさえ資材不足の島なのに、戦艦をほいほいとリミッターまで訓練できるわけねえだろ」
Q中将「カッコカリの話ではない! あの器量良しの金剛を受け入れられんというのか!?」
提督「何言ってんのかわかんねえ」
Q中将「まったく、ここまで甲斐性なしの根性なしだったとは……!」
提督「だから意味がわかんねえっつうの。根性は関係ねえだろ」
暁「……ねえ、Q中将さんは、金剛さんを提督のお嫁さんにしてあげようとしてたってことなの?」
Q中将「そうだ」
提督「」ピシッ
時雨(提督の顔にひびが……)
459 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:08:16.85 ID:aL/lLQ8Vo
Q中将「貴様の噂は何度か耳にしていたからな。轟沈を経験した艦娘と暮らすとあっては、命がいくつあっても足りんだろう」
Q中将「おまけに建造した大和が問題児だと聞いている。貴様の身を守り、世話を焼くものが一人くらいいたほうが良いと思って金剛を送ったのだ」
Q中将「正直なところ、あの金剛は、息子が存命であれば引き逢わせてやりたいと思ったほどだ。そこまで言わんとわからんのか貴様は」ジロリ
提督「おいおい……余計なお世話すぎるぞ、このジジイ」ウヘァ
時雨「この人もなんだかんだ言ってお節介焼きだね」ヒソヒソ
提督「ま、いいけどよ。あの時は金剛がいてくれたおかげで五月雨が大人しくなってくれたんだから、感謝してねえわけじゃねえ」
P少将「五月雨が!?」
提督「ああ。あいつが俺んとこに来た時は、憲兵に噛み付いたせいで猿轡までさせられて来たからな。くっそ凶暴だったんだぞ」
提督「おまけに、島の艦娘借りてレ級退治に行かせろって、あんたと同じこと言ってたんだ。落ち着かせるのに苦労したんだからな?」
暁「そういえば五月雨、金剛さんにあやされてたわね……」
P少将「なんと……こんなところでまで中将閣下にお世話になっていたとは」
提督「あいつに頭撫でられると、なぜか歯向かう気がなくなるからな……今思っても、あの時いてくれて良かったと思うぞ」
P少将「五月雨……」
提督「五月雨には、あんたの手紙を渡しといた。あんたは自分を憎むよう仕向けてたようだが、そうはなってないから、安心しろ」
提督「それから、憲兵の隊長にも感謝しとけよ。五月雨の身柄を引き継ぐ俺のために、手の込んだ資料作って持ってきたんだからな」
P少将「そうか……すまない。本当にありがとう、恩に着る」フカブカ
460 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:09:01.67 ID:aL/lLQ8Vo
Q中将「解せんな。そこまで気遣いできる男が、あの金剛を受け入れんとは」
提督「面倒臭えから嫌なんだよ、そういうの」
Q中将「」
P准将「」
時雨「……」
暁「司令官!! そういうところよ!? そんなことまで面倒臭がらないの!!」プンスカ
提督「面倒臭がって何が悪いんだ。俺は、俺抜きであいつらに幸せになって欲しいんだよ。艦娘が、人間なしでも暮らせるようになって欲しいんだ」
提督「人間嫌いが人間社会にいたって、そのうちろくでもない事態になることくらいわかるだろ?」
提督「俺が現世に戻ろうとしてるのも、その道筋をしっかりつけるためだ。俺のけじめをつけるためだ……!」
提督「魂も半分深海棲艦なんだぞ? 艦娘に迷惑かけたくねえってだけなんだよ!」
Q中将「だったらまっとうに生きればいいだろうに。艦娘に好かれていると理解しているのなら寄り添えというのだ」
提督「俺に結婚願望はねえよ。両親が最悪のくそなんで、遺伝子を残したくねえ。俺の家系なんぞ死に絶えちまえと思ってる」
提督「ついでに言えば性行為も無理だ。そういう漫画見ただけでゲロ吐くような男が、女と幸せな家庭なんてできるわけねえ」
Q中将「……」
P少将「……」
461 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:09:46.87 ID:aL/lLQ8Vo
時雨「でも、EDは治ったよね?」
提督「……」
時雨「それが治ったのは艦娘と一緒にいたからじゃないの?」
提督「……」
時雨「それから、肉体も人間じゃなくなったから、遺伝子も全部変わったんじゃない?」
提督「……かもしんねえけどよ」
Q中将「それはどういうことだ!?」
P少将「体も深海棲艦になったのか!?」
提督「深海化はしてないが……ただの人間じゃなくなってはいるな。メディウムとか説明してもわかんねえだろ」
P少将「……めでぃ……?」カオヲ
Q中将「……確かによくわからんな」ミアワセ
翔鶴「あの、少しよろしいでしょうか」
女の子「えっと……」(←翔鶴に抱きかかえられ中)
P少将「お、おお、どうしたね」
Q中将「だいぶ落ち着いたようだな」
462 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:10:32.25 ID:aL/lLQ8Vo
暁「翔鶴さん、大丈夫?」
翔鶴「ええ。暁さんに、I提督が聞きたいことがあるんだそうです」ニコ
暁「司令官が?」
女の子「……あかつきちゃん……このひと、こわく……ない?」
暁「!」
女の子「あかつきちゃんは、このひとに、こわいおもいを、していない?」
暁「……全然! 怖くなんかないわ!」ニコッ
暁「私たちが悪いことをすれば怖いけど、そうじゃなければお話も聞いてくれるし、暁たちのいいところも褒めてくれるわ!」
暁「私が鎮守府に来た時はずーっと怖い顔をしてたけど、このごろはそうでもなくなったし……」
暁「自分のことをすごく悪く言うところだけは嫌いだけど、そこ以外は、とってもいい司令官よ!」ニパッ
Q中将「……」
P少将「……」
提督「……」アタマガリガリ
女の子「あかつきちゃん……」
翔鶴「良かったですね、I提督」
463 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:12:02.53 ID:aL/lLQ8Vo
女の子「そうね……それなら、おわかれしてもだいじょうぶね」ニコ
暁「……え?」
ザワザワザワッ!
(足元の花が一斉に動いて道を作る)
(Q中将とP少将、I提督を抱えた翔鶴の道が一方へ伸びて)
(提督と時雨、暁の道は別の方向へ伸びていく)
暁「あ……!」
女の子「あかつきちゃん」ストッ
女の子「あかつきちゃんは、まだいきてるの」テクテク
女の子「だから、わたしとはここでおわかれ」
暁「しれい、かん……」ポロポロッ
女の子「おもいだしてくれて、ありがとう」ダキツキ
女の子「わたしは、あなたのしあわせをねがっているわ。さようなら、マイ・フェア・レディ……!」ギュ…
暁「司令官……ありが、とう……!!」ボロボロボロ
464 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:13:01.86 ID:aL/lLQ8Vo
Q中将「……我々も、征かねばならんか」
P少将「そのようですね……」
提督「……」
Q中将「貴様に丸投げするようで悪いが、金剛のことは頼むぞ。それから、少し貴様自身のことも考え直せ」
P少将「五月雨のことも、よろしく頼む……私の無念は背負わなくていい。無事でいて欲しいと、伝えてくれ……!」
提督「俺のことはともかく……あいつらは悪いようにはしない。あいつらにとって、一番良いようにするつもりだ」ケイレイ
Q中将「……」ケイレイ
P少将「……」ケイレイ
提督「ふー……さて、俺たちも行くか」クルッ
時雨「うん」
翔鶴「少尉さん」
提督「ん?」
翔鶴「暁ちゃんのこと、よろしくお願いします。川内さんや響さんたち、かつての鎮守府の皆さんにも……もし出会うことがあれば、どうぞよしなに」
提督「……ああ、わかった」
女の子「あかつきちゃん、ばいばい……!」フリフリ
暁「……っ! ば、ばいばい……!!」ブンブン
465 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:13:47.90 ID:aL/lLQ8Vo
* *
暁「……ぐすっ、うっ……」ボロボロ
提督「暁、大丈夫か? 泣いててまともに歩けないなら背負ってくぞ?」
暁「っ、い、いいわ……だいじょ……ふぐっ、うううっ」グズグズ
提督「思いっきり泣いてすっきりしたほうが良くねえか?」
暁「……だい、じょぶだ、って……泣いてなんか、いられ、ないわ! ぐずっ、I提督が、心配しちゃうでしょ!?」
提督「……そうか。それもそうだな」
時雨「ねえ、提督こそ、少し急ぎすぎなんじゃないかな?」
提督「かもしれねえけどよ……あんなの見せられちゃあ急ぎたくもなる」
暁「? どういうこと?」
提督「今の俺たちは幽霊と同じで、体から魂が離れてる。魂が抜けた体ってのは死んでんのと同じだろ?」
提督「俺たちがここに長居すればするほど、あいつらを心配させてるってことになるなら、急いだほうがいいよな」
暁「それは、そうね……」
時雨「……」
提督「それはいいとして、暁はなんでここに来たんだ? お前も死にかけたのか?」
暁「なんで……うーん……確か、島の鎮守府が、燃えているのを見たとき……だったと思う」
466 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:14:32.22 ID:aL/lLQ8Vo
暁「I提督の鎮守府も、深海棲艦の攻撃で燃やされたの。それを思い出したときに、頭が割れそうなくらい痛くなって」
暁「それで、気付いたら、ここにいたのよね……なんでか、わからないけど」
提督「……もしかしたら、だが」
暁「うん……」
提督「お前がI提督の鎮守府で起きたことを忘れたいと思うほどのときと、同じくらいひどいことが起きて……お前自身が耐えられなくなったのかもな」
提督「それか、I提督が、あるいは翔鶴が、無意識にお前を呼んだのかもしれねえ。一緒に来ないか、って」
提督「お前も、I提督の鎮守府のことを思い出したからこそ、その呼びかけに応えて、ここにきた……って話は、どうだ」
暁「……」コクン
提督「ま、どっちが正解かはどうでもいいか……良かったな暁、あの二人に会えて」
暁「……っ!」
提督「あの二人も、お前の様子を見て笑ってたもんな」フフッ
暁「んぐ……うっ」ブワッ
時雨「……提督。女の子を泣かすのは感心しないよ?」
提督「別に泣かせたくて言ったわけじゃねえよ。思い出させたのは悪かったけどよ……」
提督「でもまあ、そうか。好きな相手を、見送ったんだもんな。そう、なるか……」
467 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:15:36.64 ID:aL/lLQ8Vo
時雨「提督? そこで僕の顔を見て、何を思ったの?」ムー
提督「……」
時雨「提督!?」
提督「なんでもねえよ。お前が聞いた質問に、死にたいと答えなくて良かったって、ちょっと思っただけだ」
提督「俺が死んで、あいつらがどんな顔するか考えると、ちょっとバツが悪ぃな、ってよ……」
提督「お前のときの扶桑や山城も、そうだったしな……」
時雨「……!」ジワッ
提督「いや、悪ぃ。泣かせるつもりは……」
――……れ……さま
時雨「!」
――しぐ……さ……
時雨「エフェメラ!?」
提督「どうした、しぐ……」
――しぐれさま……!
提督「うお、なんか聞こえてきた……なんだこの声」
暁「司令官も? 時雨のこと、呼んでるわよね?」
時雨「え!? ふたりにも聞こえるの!?」
提督「お、おお……もしかしてこいつがエフェメラって奴か?」
――聞こえるのですね……? そのまま……お進みください……
時雨「行こう、声の方へ!」
提督「そうだな、暁も行けるか?」
暁「大丈夫よ!」
468 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/16(土) 22:18:04.26 ID:aL/lLQ8Vo
というわけで今回はここまで。
469 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/07/17(日) 09:45:21.98 ID:yFyokRQX0
乙です。もう続きが気になって夜も九時間しか寝れない
470 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/20(土) 05:37:47.23 ID:X4U9SEBM0
乙です
保守
471 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:38:36.60 ID:6E2y+z4To
お待たせしました、続きです。
472 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:39:31.36 ID:6E2y+z4To
* *
(花畑の真ん中に、大きな黒い穴が開いている)
提督「おお……なんかすげえことになってんな、こりゃ」
暁「ここだけ地面がとけてるみたい……」
時雨「穴の中はまるで雲の中みたいだね。真っ黒で、稲光も見えるよ」
提督「なのに音が全然してこないのが不気味だな」
――時雨様……
時雨「エフェメラ!」
――ここまで、魔神様を導いていただき、ありがとうございました……
提督「この声の主がエフェメラか……」
暁「ねえ、エフェメラさんってどこにいるの?」
――私の躯は、遥か彼方……皆様とお目見えすることは、かないません……
――されど……私の声が、魔神様に届いていること……喜ばしく、思います……
提督「……礼しか言えねえってか」チッ
時雨「そうだとしても、提督、ちゃんと労ってあげなよ」
暁「そうよ、ここまでしてくれてるんだから、お礼を言わなきゃ!」
473 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:40:15.93 ID:6E2y+z4To
提督「……おい、エフェメラ」
暁「言い方!!」プンスカ!
提督「しょうがねえだろ、俺はいつもこんなんだ……おい、エフェメラ」
――魔神様……
提督「お前の望みは何だ?」
暁「……なんでそんなことを聞くの?」
提督「礼を言うだけじゃ物足りねえと思ったからだ。せめてなにか、ひとつくらい借りを返してやんねえとな……」
時雨「提督らしいね」フフッ
――私の……
提督「ああ、そうだ。お前の望みを言え」
――私の望みは……
――魔神様の……望みがかなうこと……!
提督「……」
――あなたの望みこそが……私の望み……
――あなたの願いこそが……私の願い……!!
提督「……」
474 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:41:01.15 ID:6E2y+z4To
暁「司令官みたい」ボソッ
時雨「そうだね。似た者同士だ」
提督「なんなんだよまったく……」
――私の力が……魔神様の幸せのために使えるのならば……これ以上の、喜びはありません……!
提督「なんでこういう奴ばっかりなんだよ……やめてくれよ、本当によ」アタマガリガリ
暁「司令官が両手を使って頭をかくところ、初めて見たわ」
時雨「そうとう照れてるんだね」
提督「観察してんじゃねえよ! ったく……」
提督「とにかく、この穴に落ちれば現世に戻れる、っつうか、俺たちが元の肉体に戻って生き返られるわけか?」
――その通りにございます……
時雨「そっか。じゃあ、僕はここでお別れだね」
提督「!」
暁「えっ、どうして!?」
時雨「僕は、もう死んでるからね。僕の体も、墓場島に埋めてもらったけど、今は溶岩の中じゃないかな」
暁「あ……!」
475 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:41:45.90 ID:6E2y+z4To
ザワワワワワッ!
提督「な、なんだ!?」
暁「ね、ねえ、お花が一斉に逃げちゃったわ!?」
時雨「なにがあったんだろう……」
??「見つ、けた……」ズルッ
提督「誰だ……!?」フリムキ
時雨「!」
暁「ひっ……!? な、なにこれ!? ヘドロのかたまりみたいなのが……喋ってる!?」
??「見つけたぞ……! 今、墓場島と言ったな……!」
??「やっぱり……あの島の提督は、悪い奴だったんだ……」ビチャッ
提督「ああ? なんだこいつ?」
??「忘れたとは言わせないぞ……おまえのせいで、俺たちは死んだんだ……!」ベチャア…
提督「なんだそりゃ」
??「とぼけるな!! よくも、俺たちを殺しやがってぇ……!!」
提督「だから誰だよお前は……」
476 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:42:47.44 ID:6E2y+z4To
時雨「……ねえ、この人、もしかして、島で死んだテレビ局のスタッフじゃないかな?」
提督「テレビの……ああ、土左衛門になった奴のどっちかか?」
??→クルー3「ふざけた奴め! 俺たちを殺しておいて、覚えてすらいないって言うのか!!」
提督「死んだのはお前のせいだろ。なんで俺に責任を押し付けてんだよ」
クルー3「まだとぼけるのか! 深海棲艦の仲間を使って、俺たちを殺した裏切り者めぇ!」
提督「ル級のことか? それだったら俺はあいつにお前を殺せなんて頼んでねえし」
提督「お前がル級の気に障るようなこと言ったんじゃねえのか? それ以前に俺は島から出てけって最初から言ってたろ」
提督「その忠告を無視し続けたお前の自己責任だろうが。なんでもかんでも他人のせいにすんじゃねえよ、くそが」
クルー3「黙れ黙れぇえ! 極悪人の分際でぇええ! お前こそが、死ぬべきなんだあああ!」
クルー3「轟沈した艦娘が深海棲艦になるなんて噂を利用して、艦娘を私物化してたくせに……!」
クルー3「艦娘は、正しい人間に使われるべきなんだ! お前みたいな深海棲艦が、艦娘を利用するなああ!!」グゴォ!
提督「……ああやだやだ、なんかくっそ面倒臭え奴に絡まれたぞ、こりゃ」ハァ
暁「ね、ねえ……早く誤解を解いた方がいいんじゃない? 司令官が悪者ってわけじゃ……」アセアセ
クルー3「深海棲艦が正しいわけがあるかあああ!」グワッ!
暁「……」ドンビキ
477 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:43:31.94 ID:6E2y+z4To
時雨「とりつく島もなさそうだね……」
提督「いるんだよなあ、自分の主張が正しいと盲信して、他人ぶん殴りながら被害者ぶる奴」
時雨「……ずいぶん具体的だね?」
クルー3「お前みたいな奴を、みすみす生き返らせてたまるかああ!!」
クルー3「俺が退治してやるううう! 地獄に落ちろおおおお!!」グワッ!
暁「な、なによそれええ!?」
提督「暁、時雨、下がってろ」
クルー3「お前が、艦娘に命令するなあああ!!」ビャッ!
提督「うお!?」バッ
時雨「うわっ!?」バッ
提督「なんだあ? ヘドロ飛ばしてきやがった……!」
時雨「ちょっと提督! こっちに飛ばさせないでよ!」
提督「お前こそ俺の後ろに陣取るなよ!」タタッ
クルー3「逃げるなああ!」ブンッ!
提督「場所変えようってんだろうが! つうか、それ以前に触りたくねえな、くそが……!」
478 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:44:16.97 ID:6E2y+z4To
――魔神様……私の力を……!
(地面に空いた穴の中から、赤青黄色の三色の光が飛んできて、提督の体に入り込む)
提督「……これは……!?」
――魔神様……私の力を……どうか、お使いください……!
提督「……!」
暁「司令官! 危ないっ!!」
クルー3「死ねえええ!」グワッ!
キュワワワワワ…
クルー3「え?」フワッ
暁「な、なにあれ?」
UFO<キュワワワワワ…
(突如現れた小さなUFOがクルー3の体を持ち上げる)
クルー3「は、放せぇえええ!?」ジタバタ
時雨「ユ……UFO?」ポカン
暁「UFOが、泥のお化けを捕まえちゃった……」
クルー3「な、なんだこりゃああ!?」
479 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:45:00.69 ID:6E2y+z4To
提督「なるほど……使えるな」
――ああ……魔神様……!
提督「……助かった。早速使わせてもらったぜ、お前の力」
暁「あ、あのUFO、司令官が呼んだの……!?」
提督「おう。これも魔神の力らしい。もともとメディウムたちも、魔神の力のひとつなんだが……」
提督「それが分離して自由意思を持つようになった。ま、お前たち艦娘と似たようなもんだと思ってくれていい」
時雨「じゃああのUFOも……」
提督「そのうちメディウムとなって俺たちの前に現れるかもな」
提督「まあ、それはさておいて、だ」ジロリ
クルー3「ち、ちくしょう、放せぇええ!! この、化け物があああ!!」ジタバタ
提督「……化け物ねえ。お前だって、十分化け物だと思うがな?」
クルー3「そんなわけがあるか!!」
提督「いやいや化け物だろ、つまんねえ謙遜すんな。そんな姿で私は人間ですとか言えたもんかよ」
クルー3「いいや、俺は人間だ……!」
提督「俺たちはここで、さっき別の人間たちと出会ってきたんだが、そいつらは少なくともお前みたいな姿はしていなかったぞ?」
480 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:47:46.01 ID:6E2y+z4To
提督「ここにいる艦娘の二人だってそうだ。生前の姿のまま、ここに存在している」
提督「俺は人間の器に深海棲艦の魂が入ったからこんな姿なんだが、偉そうに言ってるお前の今の姿はどうなんだ?」
クルー3「……俺は……『俺たち』は……!」ガクガク
時雨「……なんか様子が変だよ?」
提督「それなんだが、あのクルーの魂に変な混ざり物が見えるんだよ」
暁「混ざり物?」
提督「ああ、どうもエフェメラから魔神の力を受け取った拍子に魂というか正体が見えるようになったみたいなんだが……」
提督「どうも似たような思想の魂を引き寄せて合体してるみたいなんだ」
時雨「……じゃあ、あのクルーの魂には、全然関係ない魂も混ざってるってことかい?」
提督「おそらくな。他人の主張に乗っかって、自分の不満もどさくさ紛れに晴らそうって連中とか」
提督「その騒ぎそのものを面白がって、面白可笑しく便乗拡散する連中、現実世界でもいるだろう?」
時雨「それもまた具体的だね?」
クルー3「……俺たちは……オ、オレタチハァァァアガアアァ!!」
暁「司令官!? 余計に話が通じそうになくなってるんだけど!?」
提督「ちっ、不純物のほうが強かったか。じゃあ仕方ねえ」
481 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:48:31.01 ID:6E2y+z4To
(何もない空間から現れる発射装置)
暁「! な、なにその機械!?」
時雨「空中に何かの発射台が……!」
提督「カオリ・ボールスパイカーってメディウムがいたろ? あれのサッカーボール版だ」
キックオフ<ズバァン!
クルー3「グエェエ!?」ドゴォ!
ゴロゴロ…ベチャッ
提督「そんでお次は……」
オクトパスアーム<ヴジュルルラァ!!
クルー3「ヒ、ヒギャアアア!?」ジュルジュルジュル!!
暁「ひいいい!?」ビクッ
時雨「うわ……!」
提督「クラーケンじゃねえから安心しろ。あのタコ足であいつを一箇所にかき集めて……」
時雨「な、なんでかき集めるの?」
提督「これ以上あいつらの魂が拡散しないようにだよ。で、とどめはこいつだ」バッ
キューブフリーザー<グォングォングォン…
482 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:49:32.36 ID:6E2y+z4To
暁「な、何か四角い機械の箱が降りてきたわ!? あれも司令官の罠なの!?」
提督「ああ、まあ見てろ」
キューブフリーザー<ゴォォォォ!
時雨「……静かになったね?」
キューブフリーザー<グォングォングォン…
暁「……上に上がって行っちゃった」
クルー3「」カチンコチン
時雨「綺麗に氷漬けになったね……」
提督「……今更だが、魂だけの世界でも罠の力は通用するんだな」
暁「司令官、この人どうするの?」
クルー3「……」カチンコチン
提督「こんなの誰かに処分してもらうしかねえな。どこへ持ってったらいいか、誰かわからねえかな?」
時雨「この氷を運んで、また人を探すの?」
提督「いや、この氷塊は凍らせ方が特殊だから、ちょっと強い力で押してやると、そっちへつるつる滑っていくようにできてる」
提督「だから、ゴール地点まで一直線に滑られてやることができれば、俺たちが運んでいく必要はない」
483 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:50:16.23 ID:6E2y+z4To
時雨「……ということは、また花に聞いてみるといいのかな?」
ザザザ…!
提督「お、察してくれたみたいだな」
暁「……ねえ、おかしいわ? お花が近づいてこないわよ?」
提督「んん? そうだな……あ」
暁「どうしたの司令官」
提督「暁……お前、動くなよ……!」ジロリ
暁「え……?」
(提督の頭上の何もない空間からマシンガンが現れて、暁に銃口を向ける)
暁「し、司令官!?」
時雨「提督!?」
提督「……踊れ」
マシンガンダンサー<ダララララララ!!
暁「きゃああああ!?」ピョンピョン(←暁の足元を機銃掃射)
時雨「て、提督!? 暁を撃つとか、何を考えてるの!?」
484 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:51:01.29 ID:6E2y+z4To
提督「……」
暁「し、し、司令かああああん!?」ピョンピョン チュインチュイン
提督「……よし、こんなもんか」
マシンガンダンサー<ピタッ
暁「し、司令官!? 一体何を考えてるの!?」プンスカ!
時雨「暁に当たったらどうする気だったの!?」
提督「安心しろ。ありゃあ床にしか当たらないように狙ってんだ。で……」
暁「……??」
(提督がおもむろに暁に近づいて、暁の両足の間の地面を掴むと)
??「ぐえっ!!」
暁「ひっ!?」ビクッ
時雨「え!? なんなの、今の悲鳴!」
提督「暁の足元に、こいつが潜んでいたんだよ。おら、出てこい!」ズルルッ!
時雨「なにそれ!? 影絵人間!?」
??→クルー5「……ふ、ふへへ、見つかっちまった……」ドロォ
暁「」アッケ
485 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:51:46.22 ID:6E2y+z4To
提督「お前、さっきのテレビクルーの仲間だろ。一緒に死んだ奴だな?」
クルー5「へ、へへへ……」メソラシ
提督「花が俺たちの近くに寄ってこなかったのは、こいつが潜んでたせいだな」
時雨「でも、どうして暁の足元に?」
提督「……暁のスカートの中を覗き見したかったとかか?」
暁「!!」バッ!
クルー5「ぐえへへ……スカートを抑えて恥ずかしがる幼女……うひひひっ」
暁「〜〜〜!!」ゾワワッ
時雨「うわあ……」
提督「そういうことかよ……こういう不埒な奴は……」
フッキンマシーン<ガジャッ!!
提督「こういう機械に乗っけて」ポイッ
クルー5「うおっ!?」ガシャッ
提督「運動で煩悩を追い出してやるといいな」
フッキンマシーン<ガッションガッションガッション!!!
クルー5「うおおおおおお!?」ガシャガシャ
486 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:52:33.46 ID:6E2y+z4To
時雨「ねえ、提督? さっきのマシンガンの罠は、暁を狙ったんじゃなくて、足元に潜んでたあの人を狙ったってことなのかな?」
提督「そういうことだ。ただ、あの罠自体は、誰かを対象にしないと狙いが定まらなくてな……悪いが、暁を的にしちまった」ナデナデ
暁「も、もう!! 怖かったんだからね! って、頭を撫でないでよ!!」プンスカ!
クルー5「お、俺はいつまで、腹筋してなきゃ、いけねえんだあああ!?」ガシャガシャ
提督「そりゃあ死ぬまで……って言いたいが、もう死んでるしなあ。この辺で止めてやるか」グッ
イビルアッパー<ズガシャアァン!!
クルー5「!?」
(フッキンマシーンごとぶっ飛ばされたクルー5が)
クルー5「ぶげっ!?」ベチャッ
(クルー3の氷漬けの氷塊の上に落下する)
キューブフリーザー<グォングォングォン…
クルー5「げ、ちょっと待ってくれ! 俺はまだ……うぎゃああああ!?」
時雨「……」
暁「……」
キューブフリーザー<グォングォングォン…
クルー3&5「」カチンコチン
提督「よし。これでまとめて始末できるな」
487 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:53:16.87 ID:6E2y+z4To
クルー5『ちくしょう! どうしてまたお前なんかと一緒に……!』
クルー3『それはこっちのセリフだ! なんでお前が……!』
暁「な、なんか声が聞こえない?」
提督「氷漬けにしたとはいえ、魂だからな。思念って意味での声が漏れてきてるんじゃねえか?」
クルー3『俺たちは、人間のために正しいことをしようとしたんだぞ!』
クルー5『まだ言ってんのかよ! 人間のためとか言うけど俺は頼んでねーぞ!』
クルー3『いい加減にしろ! 俺たちの言ってることが正しいんだ!』
クルー5『うるせーうるせー! なんでお前らに従わなきゃならねーんだ!!』
時雨「まだ言い争ってるみたいだよ」
提督「……ま、どうでもいいか。こいつら、どこに向かわせてやるといいかな?」
ザザザ…!
暁「今度はお花が集まってきてくれてるわ!」
提督「お、そっちか。案内ありがとな。んじゃ、滑らすぞ……せぇ、のっ!!」グッ
氷塊<ツルツルツルーー!
クルー3『お前のせいで艦娘が……!』
クルー5『お前が悪いんだろうが……!』
氷塊<ツルツルーー…
488 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:54:16.94 ID:6E2y+z4To
時雨「最後の最後まで仲間割れしてるなんて……彼らには失望したよ」
暁「なんだか、可哀想な人たちだったわね」
提督「まったく……俺は、恵まれてんなあ」
時雨「急にどうしたの?」
提督「ああ、あのテレビクルーの周りに取り憑いた雑霊が、あいつを煽るような性質の奴ばっかりでなあ……」
提督「そこへ行くと、俺の周りにいる艦娘たちは、俺が行き過ぎるとみんな真面目に止めてくれたからな」
提督「だから、俺は恵まれてたんだな、って思っただけさ」
時雨「提督……」
提督「だからこそ」クルリ
提督「生き返られるなら、ちゃんと戻って、義理を通さねえとな。暁もそうだろ?」
暁「……そ、そうね!」
(大きな穴のそばへ3人が歩いて近づく)
提督「……改めて見ると、すげえ光景だな」
時雨「積乱雲の中を飛ぶ航空機が見る光景だね」
暁「見たことあるの?」
時雨「前の鎮守府で、山城が飛ばした偵察機の写真をみせてもらったことがあるんだ」
489 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:55:00.71 ID:6E2y+z4To
時雨「扶桑とはほとんど話す機会がなかったけど、山城には結構かまってもらったからね……」
提督「D提督のせいだな……」
暁「時雨……」
時雨「さ、ふたりとも。みんな、君たちを待ってるんだ。早く戻ってあげなよ」
提督「……そうだな。けど、このまま飛び込んで大丈夫なのか? 雷とか鳴ってんだが……」
時雨「大丈夫だと思うよ。僕たちも魂だけの存在なんだから、雷に打たれて死ぬとかありえないよ、多分」
提督「それもそうか。よし、じゃあ暁、お前、先に行け」
暁「はあ!?」
提督「お前の腰が引けてて心配なんだよ。お前がちゃんとここから飛んだとこを確認したいだけだ」
提督「それに、よくレディーファーストって言うしなあ?」
暁「うぐ……わ、わかったわよ!」
提督(まあ、悪いほうの意味のレディーファーストだよな、これは)
時雨(毒見役って意味のほうだね……)
暁「い、いくわよ!? 暁も、飛べるんだから!」
提督「おう」
時雨「うん」
490 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:55:45.89 ID:6E2y+z4To
暁「……」ウデデハバタキ
暁「……」カラダヲヒネリ
暁「い、いくわよ!!」ソノバジャンプ
提督「おう」
時雨「うん」
暁「……」クッシン
暁「……」ウデヲグルグル
暁「……っ! ……っ!」ゼンクツ
暁「……」シンコキュー
時雨「早く飛びなよ」ケリンチョ
暁「ぴっ!?」ヨロッ
暁「ぴゃあああぁぁぁぁぁ……」ヒュゴーーーーー…
提督「真っ逆さまだな……」
時雨「結局、手助けしてあげないと駄目なんじゃないか」ヤレヤレ
提督「少しは怖がってもいいだろ……くくっ」
時雨「……ふふっ、笑っちゃ悪いよ」
491 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:56:30.86 ID:6E2y+z4To
提督「よし。暁も行ったし、そんじゃあ俺も覚悟決めて、行くか」
時雨「フリはいいからね?」
提督「ああ。世話になったな」
時雨「ふふっ。これで少しは、扶桑たちを立ち直らせてくれた君に恩を返せたかな」
提督「十分すぎる。扶桑たちにもよろしく伝えておくよ……あっちで、ここでの出来事を忘れてなけりゃいいんだが」
時雨「ありがとう……」ニコ
スッ
提督「じゃあな、時雨」タッ
バッ!
提督「……!」ゴォッ
ヒュゴーーーーー…
時雨「……」
時雨「……」
時雨「……行っちゃった」
時雨「扶桑や山城と、もう少し一緒にいたかったけど……しょうがないか」
492 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/22(月) 23:57:20.93 ID:6E2y+z4To
時雨「さてと。僕は……どうしようかな。中将さんたちを追いかけてみようかな……」
グイ
時雨「えっ?」
グイグイ
時雨「な、なに!? 穴の方に引っ張られてく……!」
――時雨様……
時雨「! エフェメラ……!」
――あなた様にも、御礼申し上げます
時雨「いや、いいよ。僕の心残りもこれで……」
――私から……時雨様へ、最後の贈り物を……
時雨「え?」フワッ
時雨「ええっ!? なんで宙に浮いてるの!?」ジタバタ
――さようなら、時雨様。あなた様にも、魔神様の御加護があらんことを……
時雨「ま、待って!? 僕のからだは……」
ポイッ
時雨「ぽいって夕立じゃないんだからうわあああぁぁぁぁ……!?」
ヒュゴーーーーー…
穴< シュウゥゥゥ…
穴< フッ…
平地< シーン…
* * *
* *
*
493 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/23(火) 00:04:40.19 ID:yiVf+SCAo
というところで今回はここまで。
今回登場したイビルアッパー以外の罠は、
エフェメラから力を借りた、と言う意味で、影牢〜もう1人のプリンセス〜に登場した
DLCの罠で統一しました。
494 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/23(火) 09:42:12.87 ID:oktbFUMI0
乙です。あかん、もう続きが気になる
495 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/23(火) 19:47:54.22 ID:sH9qaPfL0
乙
しぐあか……意外と有りなんじゃないかな
496 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:10:24.37 ID:Vi+uqldio
それでは続きです。
497 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:11:18.54 ID:Vi+uqldio
* 墓場島周辺海域 *
* 医療船内 *
(人工呼吸器や点滴などの管がたくさん取り付けられて眠っている提督)
提督「」シュコー…
看護師「……容体に変化なし。心拍数や血圧も正常値……」カキカキ
如月「……」(提督の眠るベッドの傍らで椅子に座って提督を見つめている)
タッタッタッタッ…
ニコ「魔神様!!」バッ
如月「!?」
ニコ「あれ?」
如月「ニ、ニコちゃんどうしたの……?」
ニコ「……魔神様はまだ目を覚ましてないの?」
如月「え、ええ……まだ、見ての通りよ?」
ニコ「うーん、おかしいな……なんとなく、魔神様の気配を感じたんだけど」
如月「そうなの? 看護師さん、特に変わったところはなかったんですよね?」
看護師「はい。特にこれといった変化は何もありませんね」
ニコ「……そう」
498 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:12:03.25 ID:Vi+uqldio
大和「失礼します、ニコさんはこちらにいらっしゃいました?」ヌッ
不知火「慌てて走っていたようですが、なにかあったんでしょうか」
ナンシー「もー、ニコちゃんだめだよー、ニコちゃんが慌ててるとみーんな落ち着きがなくなっちゃうんだから〜」
不知火「艦娘もメディウムも、深海棲艦勢も一様に同じ思いです。どうか、落ち着いた行動をお願いいたします」
ニーナ「ただでさえ私たちは人間たちに警戒されていますから……ニコさんに万が一があっても困ります」
ニコ「ニーナもナンシーも、随分人間どもに丸め込まれちゃったね?」ジトッ
ニーナ「ニコさんがそのように殺気立つからですよ……」
ナンシー「あたしだって、マスターを魔力槽に入れてあげるのが一番いいとは思うけどさ? 神殿は遠いじゃん?」
大和「ニコさんが御自身で仰っていたではありませんか。魂が離れた場所から肉体を遠ざけると、その魂が戻ってこなくなると」
ニーナ「この近辺で、人間に近しい身体が生命を維持できる場所、というのがこの船の中の設備しかありません」
ニコ「わかってるよ。わかってはいるけど……」
如月「……!」
ピピー ピピピピー
看護師「脳波計が……!」
ニコ「魔神様!?」
499 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:12:47.67 ID:Vi+uqldio
如月「今、司令官の指が……」
提督「」ピク
ナンシー「動いてる!!」
看護師「ちょ、ちょっと失礼します! 如月さん、提督さんに声をかけてもらえますか!?」
如月「は、はい! 司令官! 司令官、聞こえる!?」
看護師「血圧と心拍数が上昇……瞼の下で眼球も動いてる……!」
看護師「このまま声をかけ続けてください! 皆さんも、うるさくならない程度に!」
不知火「司令……!!」
ニコ「魔神様! ぼくだよ!」
ナンシー「マスター! 早く起きてよ!!」
大和「提督!!」
ニーナ「魔神様!!」
如月「司令官!!」
提督「……」シュコー…
提督「……う……!」
500 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:13:32.49 ID:Vi+uqldio
如月「司令官!!」
ニコ「魔神様!!」
大和「提督!!」
ナンシー「マスター!!」
不知火「司令!!」
ニーナ「魔神様!!」
提督「……う……る、せぇ……耳元、で、叫ぶな……!」
如月「司令官……!」ウルッ
ニコ「聞こえてるのなら……早く、返事をしなよ……!」ウルウル
提督「なん、だ、この……眩しいし、なんだこの、邪魔くせえマスク……背中も、痛ってえ……」
不知火「当然、ですよ……何日眠っていたと思うんですか……!」グスッ
ナンシー「早く魔力槽に入れてあげようよ! ね!!」ピョンピョン
大和「うええええん、提督良かったああああ!」ナミダジョバー
ニーナ「あ、あの、みなさん落ち着いて」オロオロ
501 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:14:17.56 ID:Vi+uqldio
* しばらくして *
看護師「……修復材入りの湿布を貼ってすぐ治るだなんて」
明石「まあ、あの人は特殊なんですよ。人間じゃないというか」
伊8「血液検査だって、普通の人間の血液型に合致しなかったんでしょう?」
看護師「え、ええ、まあ。でも、艦娘とも違うみたいですし……」
明石「そうですか〜……だとすると、深海棲艦かな?」
看護師「あ、あの、少尉さんは、人間だったんですよね……?」
伊8「はい、そうでしたよ。スタートは人間だったと思います。けど、何度か死んだり体を作り替えられたりしてるみたいですし……」
看護師「えええ……?」
*
提督「5日?」
如月「そうよ? 司令官は5日間、ずっと眠り続けていたの」
提督「そんなに経ってやがったか……」
ニコ「おかげでいろいろ話は整理できたけどね」
502 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:15:03.35 ID:Vi+uqldio
不知火「何があったか、順を追って説明します」
提督「ああ、頼む」
不知火「まず……司令からの通信が途絶えた後、ブラックホールのメディウムであるベリアナさんが、司令のところにいたそうです」
不知火「ベリアナさんはニコさんからの指示で、司令が逃げ遅れた時を想定し、ブラックホールで異次元へ逃がして保護するつもりでした」
不知火「ですがその際に、ベリアナさんがブラックホールを作るのに必要な魔力を補充するための魔法石が、島の丘の上で割れてしまい……」
不知火「その石の力と引き換えに、女神妖精さんが復活しました」
提督「……」
不知火「女神妖精さんは、その力で司令と如月たちを復活させ、かつ、島に埋葬した、轟沈した艦娘の魂を呼び起こし……」
不知火「その艦娘たちの魂が火山活動で発生した溶岩の流れを堰き止めたことで、私たちが島に乗り込んで司令たちを運び出せたんです」
不知火「メディウムたちのサポートもあって、全員無事に溶岩の中から脱出できた……というのが、あの日、島で起こったことです」
提督「……妖精はどうなった?」
不知火「……わかりません。ただ、妖精さんは、死なないで消えるだけ、と言っていました」
提督「……」
不知火「その後、保護された司令と如月、電、朧、吹雪、初春の5名がこの医療船で治療を行い、駆逐艦の5名は無事回復」
不知火「そして本日、司令が目を覚まされたと」
503 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:15:47.84 ID:Vi+uqldio
提督「艦娘は全員無事なのか? 沈んだりした奴はいないな?」
不知火「轟沈した艦はありませんが、燃える島を見て気を失った暁が、いまだに目を覚ましていません」
提督「暁が!? ……変だな、あいつ、俺より先にこっちに戻ってたはずだぞ?」
不知火「……は?」
如月「ど、どうして司令官が、戻ったってわかるの?」
提督「あー……ちょっと話が長くなるから、あとでな。ほかに……メディウムたちはどうした?」
不知火「はあ……メディウムは全員無事です。交戦したメディウムもいるため、無傷ではありませんでしたが」
提督「軽巡棲姫や、ル級たち深海棲艦はどうなった?」
不知火「深海棲艦全体の被害状況は把握しておりません。しかし、軽巡棲姫やル級さんといった、司令と交友のある深海棲艦は無事です」
提督「被害ゼロってわけじゃねえんだろうな。全員この船にいるのか?」
不知火「いえ、この島の所属以外の艦娘の何名かは、今回の件の報告のため本営に呼び出されています。それから……」
ニコ「メディウムの中でも血の気の多い子たちには、一度この船から降りてもらってるよ」
ニコ「具体的に言うと、ケイティーやコーネリア、ルイゼットみたいな過激派や、いるだけで危ないウーナやイーファ、ティリエにマリッサ……」
提督「確かに、ケイティーやマリッサは特にやべえな」
504 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:16:33.34 ID:Vi+uqldio
ニコ「それから、ユリア、ヴィクトリカ、エレノアみたいに酒を飲んで騒ぐ子たちとか、引き籠りたいっていうイサラやカサンドラ」
ニコ「じっとしていられないアマラやクリスティーナ、カトリーナ、シャルロッテ、オディール、ヨーコ、シェリル、リンメイ……」ユビオリカゾエ
ニコ「とにかく大人しくできない子たちには、一旦深海棲艦の拠点に行ってもらってるよ」ハァ…
提督「……思ったよりも騒々しい奴が多いよな、メディウム連中は」
不知火「ただでさえメディウムの殆どが物騒な武器を持っていますからね……」
如月「素手なのはヒサメさんと、イブキちゃんとオリヴィアさんくらい?」
ナンシー「ベリアナとヴェロニカもだね!」
提督「残ってる方数えたほうが早そうだな」
ニコ「今度からきみがぼくたちのご主人様なんだからね? ちゃんと面倒臭いって言わずに面倒見てよ?」
提督「そこで先手打つなよ……誰の入れ知恵だ?」
ニコ「そこそこ付き合ってきてるんだ、そのくらい察せないと思った?」
提督「やれやれ……そうかよ」カタスクメ
505 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:17:18.46 ID:Vi+uqldio
不知火「それから、深海棲艦もこの船には乗っていません」
不知火「その代わり、司令が目覚めるまでの間、この船を取り囲んで移動できないようにしています」
提督「じゃあ、俺が姿を現せば、あいつらも解散するってことか?」
不知火「はい。その際に、司令を含めての話し合いを行いたいと、海軍から申し出があります」
提督「……なんか、面倒臭そうな話だな?」
不知火「面倒かもしれませんが、良い話だと思います。司令にとって、待ち望んでいたお話かと」
提督「……?」
不知火「それからもうひとつ。司令が住んでいた××島ですが、島の北部にあった火山の活動により、すべての施設が焼失しました」
提督「……」
不知火「島の再建については、勝手に泊地棲姫が陣頭指揮を執っています」
提督「は……?」
506 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:18:02.33 ID:Vi+uqldio
* 同じころ *
* 別の病室 *
暁「」シュコー…
(人工呼吸器をつけてベッドで眠る暁をじっと見つめるヴェールヌイ)
ヴェールヌイ「……」
コンコンコン
川内「入るよ」チャッ
電「失礼します、なのです」
ヴェールヌイ「!」
川内「……暁は、まだ目を覚ましてないのか」
ヴェールヌイ「……」コク
電「私たちの司令官さんは、少し前に目を覚ましたそうなのです」
川内「提督が目を覚ましたからね。暁も起きないかと思ってきてみたんだけど」
川内「そう、都合よくはいかないかあ……」
507 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:18:48.34 ID:Vi+uqldio
ヴェールヌイ「……電」
電「? なんですか?」
ヴェールヌイ「この暁は、中破してあの島に流れ着いてきたそうだね」
電「はい」
ヴェールヌイ「……その時のこと、詳しく教えてくれないか」
電「詳しく……ごめんなさい、電が遠征していた時のことなので、状況そのものはあまり詳しくないのです」
電「流れ着いてしばらくの間、3日くらい寝込んでたとは聞いていますが……」
電「暁ちゃんを治療した明石さんは、ドロップ後に何かあったんじゃないか、って言ってました。話を聞きたいなら、呼びますか?」
ヴェールヌイ「そうだね……お願いしようかな」
川内「! 暁が……泣いてる……!」
暁「」ツゥ…
ヴェールヌイ「!」ガタッ
電「あ、暁ちゃん! 大丈夫ですか!?」テヲニギリ
暁「あ……しれ……か……!」
川内「うわごとで何か言ってる……!」
508 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:19:33.65 ID:Vi+uqldio
ヴェールヌイ「暁!」
暁「しれ……あ……ああっ……」ウーン
電「し、しっかりするのです!!」
暁「司令官……っ!!」ビクビクッ
暁「はうっ……!」ビクンッ
パチリ
電「……」
川内「……」
ヴェールヌイ「……」
電「……あ、暁ちゃん?」
暁「あ、あれ? ここは……電? 川内さんに……響? このマスク、なに?」キョロキョロ
ヴェールヌイ「暁……私は、ヴェールヌイだよ」ウルッ
川内「良かったぁ……本当、良かったよ、目を覚ましてくれて……!」ヘナヘナ
電「暁ちゃん、大丈夫なのですか? 海の上で意識を失ってから、5日も眠っていたのです!」
暁「い、5日も!?」
509 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:20:17.78 ID:Vi+uqldio
川内「そうだよ〜、心配したんだから! さっきなんかうなされてたし、いったいどんな夢見てたの?」
暁「夢……」
暁「……司令官と一緒にいた夢を見たわ……なんか、とても嬉しかったんだけど、悲しい夢……」
電「暁ちゃん?」
暁「そうよ……私、どうして忘れていたのかしら」
ヴェールヌイ「暁……?」
暁「あの日、鎮守府が燃えて……私が逃げたせいで燃えちゃって……」
川内「暁……?」
暁「私、夢の中で……天国で、I提督に会ったの」
ヴェールヌイ「!!」
川内「!!」
暁「I提督は、好きな人がどこかに行かないように……翔鶴さんが沈んで離れ離れにならないように、あんなことをしたんだって……!」
川内「……I提督に、会ってきたって……?」
暁「そうよ。翔鶴さんも、司令官に川内さんや響にもよろしく、って言ってて……私、どうしてこんな大事なことを忘れてたのかしら」
ガバッ!
暁「きゃ……川内さん!?」
510 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:21:03.28 ID:Vi+uqldio
川内「もう、なんだよぉ……やっぱり、私の知ってる暁だったんじゃないか……!!」ギュゥ
暁「せ、川内さん、苦しいってば……!」
川内「苦しかったのはあたしだよ!! I提督のことを知らないか、って聞いたときに、知らないって答えたじゃないか!」グリグリグリ
ヴェールヌイ「……そうか。記憶を失っていたのか。探しても見つからないはずだよ」
暁「えっ?」
ヴェールヌイ「川内さん。私も、混ぜてくれないかな」ポロポロ
ヴェールヌイ「探していたんだ。暁のことも。川内さんのことも」
川内「は、ははは、みんないたんじゃないか……! 響も、いたんじゃないか……!!」ガシッ
ヴェールヌイ「川内さんこそ、新しい鎮守府で命令違反なんかするから……!」ギュウ
川内「しょうがないよ! 強くなりたくても、そうさせてもらえなかったんだから!」
暁「ちょ、ちょっと待って!? えっ!? 川内さんって、あの川内さん!? ヴェールヌイも、あの響なの!?」
川内&ヴェールヌイ「「気付くのが遅い!!」よ……!!」オシタオシ
暁「きゃああ!?」オシタオサレ
電「ふ、ふたりとも! 暁ちゃんは病み上がりなのです!!」
511 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:21:48.03 ID:Vi+uqldio
* 墓場島沖 海上 *
ヲ級(哨戒中)「……」
イ級「」ザバザバ
ロ級「」ザババー
イ級「?」
ヲ級「? ドウシタ」
イ級「……!」
ヲ級「海中ニ、波? ……ナニカガ、集マッテイル……?」
ドボーーーンン!!
ヲ級「!?」ビクーッ
イ級「!?」ビクーッ
ロ級「!?」ビクーッ
ゴボゴボゴボ…
時雨「ぷはあっ!!?」ザバァッ
ヲ級「……」
イ級「……」
ロ級「……」
512 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:22:32.65 ID:Vi+uqldio
時雨「はー……ひどいことするなあ、エフェメラは。問答無用で穴に放り込むなんて、何を考えてるんだ……」ザブッ
時雨「あれ? ここは……海!? どこだろう……?」キョロキョロ
ヲ級「……」
イ級「ナンダコイツ」
ロ級「チョットアヤシイ」
イ級「ホウゲキヨウイ」ジャキッ
ロ級「ホウゲキヨウイ」ジャキッ
時雨「うわあ!? ぼ、僕はあやしくなんかないよ!?」
ヲ級「アヤシイ奴ガ、自分デ自分ヲ、アヤシイト言ウワケガナイダロウ」
時雨「それはそうだね」
イ級「ダカラウツ」
ロ級「ウツ」
時雨「ちょっ、待ってよ!?」
ザザザッ
山城「ちょっと、誰かと思えば……」
那珂「時雨ちゃんじゃなーい! きみ、どこの鎮守府の子?」
513 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:23:18.50 ID:Vi+uqldio
時雨「あっ、山城! 那珂ちゃんも!」
アカネ(in那珂の艤装)「ねえねえ那珂ちゃん、この子だーれ?」ヒョコ
那珂「時雨ちゃんだよ! 白露型の2番艦で、白露ちゃんの妹だね!」
時雨「山城助けてよ! 僕があやしいからって撃たれそうになってるんだから!」ヒシッ
山城「……あなた、びしょぬれじゃない。何があったの?」
時雨「えっ? ああ、これは上から落ちてきて……」
山城「上?」ミアゲ
那珂「上って言っても、雲しかないよ? 何か飛んでたら、ヲ級ちゃんが気付くと思うんだけど」
イ級「デモコイツ、オチテキタミタイ」
ロ級「オチテキタミタイ」
山城「は? みたい?」
ヲ級「突然、何カガ水面ニ衝突シタヨウナ衝撃ハアッタ。ダガ、落チテキタ、トコロヲ見テイナイ」
山城「なにそれ……」
ヲ級「少クトモ、私ハ、コノ艦娘ガ落下シテイルトコロヲ見テイナイシ、落下スルトキノ風ノ音モ感知シテイナイ」
那珂「えー? ヲ級ちゃんでも落ちてくるのに気付かないって、どういうこと?」
514 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:24:02.51 ID:Vi+uqldio
時雨「……あれ? 何気なく山城に抱き着いたけど、僕に触れられるの?」
山城「は?」
時雨「……山城にも、触れる……」ペタペタ
山城「ちょっ……なに、何なのよ。どこまさぐってるの」セキメン
時雨「そうだ、僕の足は!?」バッ
アカネ「な、なんで自分でスカートまくってるの!?」
時雨「足もついてる……胴体も繋がってる」
山城「……時雨?」
時雨「ねえ、ここどこかな? もしかして……墓場島?」
那珂「う、うん、そうだよー?」
時雨「……そうか……それじゃあ、僕は、戻ってきたんだ……!」
ヲ級「戻ッテキタ?」
時雨「そう。僕は、かつて、この島の海岸に流れ着いて、埋葬してもらったんだよ」
山城「……」
時雨「ここへ辿り着く途中に砲撃を受けて、体が半分になって、そのまま……」
515 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:25:02.70 ID:Vi+uqldio
ヲ級「轟沈シタノカ」
山城「……」
時雨「うん。それでも運よく、この島に漂着して、無事だったみんなに看取ってもらえて」
山城「……」ブワッ
時雨「僕のかつての体は、この島の丘に……もう全部溶岩で燃えちゃったと思うけど」
時雨「どこらへんかな……とにかく、この島に埋めてもらったんだ」
ヲ級「……」
時雨「そのあと、那珂ちゃんには歌ってもらったんだよね」ニコ
那珂「……!!」
ヲ級「ソコマデ覚エテイルノカ。マルデ蘇ッタヨウナ言イ方ダナ?」
時雨「そういうことになる……」
ガッシィ!!
時雨「ね゛っ!?」ダキツカレ
山城「……あんたねえ」ダキツキ
516 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:25:47.57 ID:Vi+uqldio
時雨「や、やましろ……?」
山城「どこまで、お騒がせなのよ……あんたはっ……!」
時雨「や、山城、痛いよ……苦しいってば」
山城「痛いならいいじゃない!! 苦しいのも! 生きてる証拠よ!!」ボロボロボロ
時雨「山城……!」
ヲ級「……ソレデ、ヲ前タチハ、何ノ用ダ?」ヒソヒソ
那珂「あ、ごっめーん! 提督が目を覚ましたよ、って」
ヲ級「ソレハ早ク言エ!!」カンサイキハッシン!
那珂「泊地ちゃんも軽巡ちゃんもイライラしてたもんね〜」
* *
時雨「……というわけで、僕は提督と暁と一緒に、天国の手前で現世に戻る道を探していたんだよ」
山城「改めて聞くと、とんでもない話ね……辻褄が合うとはいえ、普通だったら信じないわよ? そんなファンタジーな話」
時雨「信じてくれないの?」
山城「信じるわよ。D提督鎮守府の話といい、その後の埋葬の話といい、整合が取れてるんだもの」アタマオサエ
517 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:26:32.39 ID:Vi+uqldio
泊地棲姫「ヤハリ、アイツハ深海ニ縁ノアル者ダッタカ」
軽巡棲姫「私ハ最初カラ、私タチト一緒ダト思ッテイタワ」
ル級「私タチガ触レテモ、体ガ無事ダッタリ、狂ッタリシナカッタノハ、ソウイウ理由ネ?」
時雨「だと思うよ」
アカネ「まさかエフェメラが絡んでたなんて!!」プンスカ
那珂「アカネちゃんはエフェメラちゃんって子のこと、知ってるの?」
アカネ「知ってるよ! ニコちゃんが言ってたけど……」
アカネ「魔神様を復活させることができる人間に入れ知恵して、魔神様を自分のものにしようとしてる嫌な奴だって!」
時雨「……確かに、見方によってはそう解釈できるね」
那珂「でもでも、そのエフェメラちゃんが、時雨ちゃんを復活させたわけでしょ?」
アカネ「うー……」
時雨「そういうことになるかな……だけど、いくらなんでも、僕の艤装というか、体までは復活させられないと思うんだけどなあ」
518 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:27:23.40 ID:Vi+uqldio
ヲ級「ソウイエバ、ヲ前ガ落チテクル前ニ海中デ、何カガ集マルヨウナ気配ヲ感ジタ。ヲ前ノカラダヲ作ッテイタノカモシレナイ」
ル級「天国カラ魂ガ落チテキタ、ッテイウ意味デノ、ドロップ艦、ッテコト?」
那珂「魂が着水した瞬間に体を作った、って感じなのかな?」
泊地棲姫「オソラク、ソウイウコトダロウ。今マデ、聞イタコトハナイガ」
山城「今更だけれど、私たちって本当に何者なのかしら」
那珂「そういう話なら、日向ちゃんあたりに訊くとイイかもね!」
山城「嫌よ。日向は話が長すぎるんだもの」ムスッ
時雨「……」
山城「何よ、時雨。にやにやして」
時雨「ううん、そうやって表情をころころ変える山城がかわいいなあって」
山城「!?」カオマッカ
那珂(わかる!!)ウンウン
アカネ(那珂ちゃんすっごい頷いてる……)
519 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/09/01(木) 21:29:17.88 ID:Vi+uqldio
というわけで今回はここまで。
これまで書いた文章を、渋あたりに全部見直し添削した上で載せ直そうかと考え中です。
まずはその前に書き切らねば。
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