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【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その2だよ」【×影牢】
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220 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/28(日) 16:18:49.97 ID:80gS1WPZo
??→鳥海(深海化)「摩耶……! 久シブリネ、元気ソウデ良カッタ……!」ニコッ
摩耶「鳥海も……その顔色だと元気かどうかちょっとわかんねーな」
加古「髪の毛まで白くなっちゃったもんねえ」
鳥海「フフッ、私ハ大丈夫ダカラ、安心シテ」
摩耶「大丈夫なのはいいけどさ、なんで鳥海が加古のところに来てるんだ?」
鳥海「差シ入レヲ持ッテキタノ。ホラ、加古ハドコノ鎮守府ニモ属シテナイデショウ?」
摩耶「加古、お前、深海からも差し入れ貰ってたのか!?」
鳥海「エッ?」
加古「いやあ、助かるよ〜。両方から差し入れ貰って、備蓄できるくらいには、あたしも生活できてるしさあ」
摩耶「ちゃっかりしてやがんなあ……まあ、鳥海に会えたからいいけどさ。ほら、こっちはあたしたちからの差し入れだ」
加古「へへ、いつも悪いね〜」
摩耶「なんだよ、今更いいって」
鳥海「ソウヨ、私タチノ善意デヤッテルンダカラ」
加古「……だからこそ言わなきゃいけないんだけどさ」
221 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/28(日) 16:19:34.42 ID:80gS1WPZo
加古「二人とも、もうここに来ないでほしいんだ」
摩耶「なんだって?」
鳥海「ソレハ、ドウシテ……?」
加古「最近、双方からの偵察機が飛んできてる感じなんだよね。視線も感じるようになってきたし。それが誰かはわかんないけどさ」
加古「二人とも親切であたしに差し入れ持ってきてるのは、よーくわかってる」
加古「でも、余所からしてみたら、敵に内通してる相手に資材を横流ししてるようなもんじゃん」
摩耶「……」
加古「特に鳥海は、今の姿こそ深海棲艦みたいだけど、艦娘を裏切ったようなもんだろ?」
加古「こんなことしてたら、深海棲艦たちにだって疑われるんじゃないかな、って」
鳥海「……」
加古「まー、甘えてたあたしが一番悪いんだけどさ。でも、両方とつながりを切るのもためらったのは事実だし」
加古「お返しというわけじゃないけど、丁度、摩耶と鳥海が一緒にいるときに、話したくってさ。時間を合わせられる機会を作りたかったんだー」
加古「あたしくらいならともかく、摩耶と鳥海が逢うチャンスがなくなったら嫌だなって思ってたんだよね」
摩耶「加古……」
222 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/28(日) 16:20:20.76 ID:80gS1WPZo
加古「ってわけでさ! あたしもこの島から引っ越すんだ。だから、二人と会う機会ももうないと思う」
鳥海「大丈夫ナノ?」
加古「どうかなぁ……ぶっちゃけ不安しかないけど、やるしかないっしょ。こんな生活も始めてから三か月経つし、なんとかなるよ」ニシシ
摩耶「……そうか」
鳥海「ミンナトオ別レシテ、三カ月経ツノネ……」
摩耶「そんなになるんだな……」
鳥海「デモ、コノ姿ニナッテカラ、マタ摩耶トコンナ風ニガデキルナンテ、思ワナカッタワ」クス
摩耶「そだな。こうやって、戦わずに済んでること自体、すげえことだよな」
鳥海「ネエ、摩耶。ミンナハ元気ナノ?」
摩耶「……正直、あんまり良くねえかな」
鳥海「エ……?」
摩耶「何から話したらいいもんかな……いや、いいニュースが全然ねえんだよ」
加古「……」
223 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/28(日) 16:21:04.45 ID:80gS1WPZo
摩耶「まず、霧島さんたち……金剛姉妹は、あれから一カ月謹慎処分になったんだ。金剛さん以外はみんなあの研究施設に行ったからな」
摩耶「相当罵声も浴びせられたんだけど、金剛さんが全部頭を下げてくれて、事なきを得たって……」
摩耶「言われる筋合いのないことまで金剛さんが丁寧に対応してくれて、それ以上のお咎めは無し……ってさ」
鳥海「……」
摩耶「けどよ、その後の扱われ方もひどいもんだぜ!?」
摩耶「無茶な転戦をやらされて、何度も沈みそうになったっていうし……」
摩耶「一番酷なのは比叡さんかな……うちの比叡さんって料理上手だったろ?」
摩耶「けど、提督と別れて以来、料理させてもらえてないんだ、って」
摩耶「一度だけ、比叡さんが料理をふるまったことがあったらしいんだ」
摩耶「当然、評判は良かったんだけど、その次の日に余所の比叡さんがとんでもねえもん作ったせいで……」
摩耶「やっぱり厨房に立たせちゃ駄目だ、ってなっちまって……元気、なかったんだよなあ」
加古「なんでそうなっちゃうかなあ……」
224 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/28(日) 16:21:50.01 ID:80gS1WPZo
摩耶「それから大淀だけど、提督の生まれ故郷に行ってみたい、っつってそのままいなくなっちまった」
摩耶「初雪も一緒に行ったらしいんだけど、二人とも行方不明なんだよ」
摩耶「同じ時期に山火事があって、どっかの村がまるっと燃えちまったって話もあって」
摩耶「もしかしたら、そいつに巻き込まれたのかもしんねーんだ」
鳥海「ソンナ……」
摩耶「ほかにも、那智みたいに引退したやつや、青葉とか連絡取れないやつが多くなっちまったしさ……連絡とれんのは島の調査隊くらいだよ」
加古「……摩耶は、今は本営にいるんだっけ?」
摩耶「ん、ああ。ただ、本営は本営で拠点をどこに移すか、いまだに揉めてんだよ」
加古「あー、横須賀っていうか、関東がもうアレだからねえ」
摩耶「舞鶴だと日本海側で不便だし、呉や大湊じゃあ本州の端っこ過ぎるし……」
鳥海「神戸トカ、紀伊半島アタリニ新シク作ルシカナイト思ウワ」
摩耶「結局は横須賀が一番いいと思うんだけど、異常気象の影響が残ってて、関東一帯はまだインフラが回復してないのも痛えんだ」
摩耶「そのインフラ整備は陸軍が引き受けてるけど、あの騒動のせいで陸軍と海軍の仲は最悪の状態なんだよな」
加古「海軍が活動するためのインフラは後回しにされそうだねえ」
摩耶「ああ。あたしはしばらくお家騒動に巻き込まれて日本国内から動けないだろうなぁ……」
225 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/28(日) 16:22:34.87 ID:80gS1WPZo
摩耶「ここに来たのも遠征部隊の護衛を任されたからさ。ほんっと、運が良かったぜ」
鳥海「ソレジャ、アマリユックリシテイラレナイノ?」
摩耶「そういうこと。だからなおさら、今日は会えて良かったよ」
鳥海「……摩耶。私モ、ヒトツダケ伝エテオクワ」
鳥海「ショートランド泊地ニハ、近ヅカナイデ」
摩耶「……どういうことだ?」
鳥海「私ハ、泊地棲姫ト一緒ニ、北ヘ向カウツモリナノ」
鳥海「ソノ私タチトハ別ノ深海ノ艦隊ガ、ショートランド泊地ヘ向カッテイルワ……」
摩耶「ここ最近、深海の動きが不自然だって誰かが言ってたけど、そういうことか……」
加古「んじゃ、あたしもそっち方面には向かわないほうがいいってことだね」
鳥海「エエ。ソレカラ……」
鳥海「軽巡棲姫ダケハ、ドコニ向カッテイルカ、ワカラナイノ」
摩耶「!」
226 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/28(日) 16:23:19.53 ID:80gS1WPZo
鳥海「モシ見掛ケタラ……デキレバ、気付カレル前ニ、逃ゲテ」
摩耶「わかった」コク
加古「了解、了解っと。いやー、怖いねえ」
摩耶「ああ……あたしもそろそろ行かなきゃな」
摩耶「最後にさ、二人に逢えて良かったよ」
鳥海「摩耶……元気デネ」ニコ
摩耶「ああ、鳥海も。加古もな!」ニッ
加古「んー」フリフリ
ザァッ
摩耶「じゃあなーー!」
鳥海「……」ブンブン
加古「……」
鳥海「ソレジャ、私モ行クネ」
加古「ん」コク
227 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/28(日) 16:24:04.91 ID:80gS1WPZo
鳥海「今マデ、アリガトウ……!」ニコ
加古「……こっちこそ」ニコ
ザザァ…
加古「……」
加古「行っちゃったねえ……」ノビーッ
加古「さぁて、あたしも荷造りして……昼に行くか、夜に行くか……」
加古「昼のうちに行くかあ……夜は夜で寝たいしなあ」
加古「……」ミアゲ
加古「……また偵察機が飛んでこないといいけど……」
228 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/06/28(日) 16:24:51.48 ID:80gS1WPZo
今回はここまで。
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/06/28(日) 18:54:46.55 ID:eU3lZaIK0
乙
不穏な空気が……
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/06/29(月) 09:42:40.28 ID:ivSCvRT6o
こっちも更新来てたの気付かなかった
後はエピローグだけなはずなのに
そう簡単には終われそうに無い気配が・・・
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/08/19(水) 00:46:05.39 ID:WX//Dm6F0
ほしゅ
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/03(土) 04:20:12.62 ID:I3Bnb4hS0
保守
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/09(月) 00:59:31.57 ID:5/tt3syw0
ほしゅ〜
234 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:46:44.36 ID:ZzhBdZhho
続きです。
235 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:47:33.86 ID:ZzhBdZhho
* 墓場島沖 *
長門「……」
利根「この辺りも久しぶりじゃな……!」
五十鈴「……」
利根「景色はだいぶ変わってしまったがの……」
利根「かつて緑が生い茂っていたあの島が、溶岩に覆われて今や岩の塊じゃ」
潮「……」
利根「ふむ……風の雰囲気も心なしか味気ないというか」
筑摩「利根姉さん……」
利根「む、なんじゃ筑摩」
筑摩「その……」
利根「まあ、言いたいことはわかる。しかし、いくら嘆いても元通りにはならん」
利根「吾輩も、この島には楽しい思い出をたくさん貰ったからな。この有様を見て、どうしようもない無力さを味わっておる」
筑摩「……」
236 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:48:17.57 ID:ZzhBdZhho
利根「どうして、こうなったんじゃろうなあ」
五十鈴「……本営も無神経が過ぎるわ。いくら私たちがここに住んでいたからって、喜べなんて言う?」
利根「まあ、かといって、他人にこの島を探索させるのも……」
長門「ああ。気に入らないな」
潮「3か月……なんだかすごく長い間待たされた気がしますね……」
筑摩「……いつか」
利根「?」
筑摩「いつか、この島に戻ってくる日は、くるのでしょうか」
長門「……難しいだろうな。ただでさえ深海棲艦との戦いで、金も資材も逼迫している」
五十鈴「この調査だって、近々打ち切りになるでしょうね……予算の都合で」
利根「あと、何度……来ることができるんじゃろうな」
潮「……? 誰か、近づいてきてます!」
長門「あれは……!」
237 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:49:02.28 ID:ZzhBdZhho
ザザァ…
ル級「アラ、生キテイタノ? 久シ振リネ……」
長門「ル級……!? 無事だったか!」
ル級「エエ。アナタ達モ、変ワッテハイナイヨウネ?」
長門「そうでもないが……普通に戻ったと言うべきか」
利根「吾輩は戸惑っておるがな。かつての提督からは、吾輩たちに作戦の立案から何からすべて任されておったからのう……」
筑摩「本当ならそれもおかしな話なんですよ。提督が作戦を考えて、提督が進軍するかどうかを決めるのが普通なんですから」
潮「言い方は悪いですけど、丸投げ、ですもんね……」
長門「提督には相応しい言い方でもあるがな」フフッ
五十鈴「この島自体が本営から丸投げされてたようなものでしょ? イレギュラーもいいところだわ」
長門「ああ。そのおかげで我々が救われたというのも、なんと言うか、だな」
ル級「……ナツカシイナ」
ル級「覚エテイルカ? ココデ会ッタトキノコトヲ」
長門「ああ。まさか浜に深海棲艦が流れ着いているとは思わなかった」
238 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:49:46.93 ID:ZzhBdZhho
利根「……あのときか。吾輩が立ち直れていなかった時の話じゃな」
潮「ル級さんに、勝負を挑まれた、って話ですよね……?」
ル級「……長門」
長門「ん?」
ル級「モウ一度、勝負ヲシタイノダケレド、引キ受ケテクレル?」
長門「何……?」
ル級「スッキリシナイ日ガ続イテルノ。気分転換シタイノダケレド」
長門「……私もだ。陰鬱な気分を、一度忘れてしまいたかったところだ」
ル級「……」ニコ
長門「潮、合図を頼む」
潮「えっ? は、はい!」
ザァァ…
五十鈴「あの二人、何する気なの?」
潮「あ、合図って、何をすれば……」オロオロ
239 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:50:32.42 ID:ZzhBdZhho
利根「……あの二人は決闘する気じゃ」
五十鈴「決闘!?」
利根「うむ……あのとき一緒にいたのは朝潮じゃったな。沖に出たあの二人の間に砲撃し、水柱を立てたんじゃ」
ル級「……」ガシャン
長門「……」ガシャッ
利根「あの時と同じじゃな。長門とル級が艤装を展開して睨み合ったままじゃ」
潮「あ、あの二人の間に撃つといいんですか?」
利根「うむ。頼むぞ」
潮「は、はい!」ジャキッ
ドーン
ヒューーー
ル級「……」
長門「……」
240 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:51:17.30 ID:ZzhBdZhho
ボチャーン
ル級「!」ギンッ!
長門「!」カッ!
ル級「ハァッ!」ドガガガガン!
長門「うおお!」ズドドドドン!
ドドドドーン!!
潮「……!!」
五十鈴「ちょ、ちょっと! なんで二人とも、回避しないのよ!?」
筑摩「ね、姉さん、止めないんですか?」
利根「筑摩、それは無粋というものだ」
利根「第一、あの間に割って入って止められると思うか」
筑摩「それは……」
241 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:52:02.24 ID:ZzhBdZhho
ル級(中破)「……ッ!」ガンガンガン!
長門(中破)「ハァァ!」ドンドンドン!
潮「も、もうやめたほうが……!」
利根「うむ、これ以上は……」
ル級(大破)「ウオォォオオ!」
長門(大破)「!!」
ドガァァァン!
利根「な……!?」
ル級「グ……」メラメラメラ…
五十鈴「ちょっと!? 今、自分から当たりに行かなかった!?」
長門「ル級、貴様……!」
ル級「コレデ、イイ……」
長門「!!」
242 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:52:47.30 ID:ZzhBdZhho
ル級「コレ以上、海ヲ彷徨ッテイテモ、ナニモ感ジナイ……」
ル級「歓ビモ、悲シミモ、怒リスラモナイ……虚無ノ世界」
ル級「私ニハ、戦イスラ、意味ヲ為サナイ……」
長門「……」
ル級「コレデ、イいンダ……」
ル級「スベて……終エるコトガデきる……」
ル級「ナがト……アりガとう……」
ドゴォォォン!
ゴボッ ゴボゴボゴボ…
長門「ル級……っ!!」
利根「あやつ、最初からそのつもりで……」
筑摩「……深海棲艦の他の仲間のところに行くことはできなかったんでしょうか」
潮「ル級さん……」グスッ
五十鈴「……とりあえず、長門さんの応急処置をしましょ?」
利根「う、うむ、そうだな……」
243 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:53:32.23 ID:ZzhBdZhho
* *
潮「……これで、少しはもつと思います」
長門「……ああ、すまない」
五十鈴「近隣の鎮守府に応援を呼んだわ。と言っても、そのパラオも最近攻撃を受けてるらしいから、あまり余裕がないけれど」
利根「パラオもか?」
筑摩「関東が機能不全になって以来、泊地も攻撃を受けるようになったんですよね」
五十鈴「ええ、でも、トラックやショートランドみたいに南西海域の泊地だけだったの」
五十鈴「それが半月ほど前から、パラオやリンガ、ブルネイでも被害が出てきてて……」
潮「押し込められて戦線が下がっているんですね……」
五十鈴「言いたくないけど、メディウムたちの反乱がなければ私たちだってもっと戦えてたはずなのよ」
五十鈴「そもそも、本営が私たちを使って実験しようとしてたの悪いんだわ」
五十鈴「そうでなかったら、本営がメディウムたちに付け込まれることもなかったんだから!」
長門「……そうかも、しれないな」
潮「……」
筑摩「……」
244 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:54:17.57 ID:ZzhBdZhho
利根「うむ。メディウムに認められた提督が、この島で提督を続けていただけでも、違っていたであろうな」
利根「さすれば、ル級も悲嘆にくれることはなかった……」
五十鈴「……」
利根「提督が存命のころは、おそらく戦争が終わっても、この島で暮らし続けるのではないか、と思っておった」
利根「人間の手を借りることなく、艦娘が暮らせる世界。おそらくその中には、ル級たち深海棲艦も含まれていたはずじゃ」
潮「それじゃ、ル級さんは……」
利根「うむ……ル級は、そんな未来を見出したからこそ、今の未来を悲観してしまったのかもしれぬ」
利根「もっとも、なぜ深海棲艦が人間たちを襲うのか、未だに謎のままではあるが……」
利根「戦い以外に己の存在価値を見出せぬから、そうであったと吾輩は考えておる」
長門「……」
利根「かくいう吾輩たち、艦娘の中にも、戦って散ることを望んでいる者は少なくはなかろう」
利根「かつて船であった吾輩たちも、戦没したものが大半。ゆえに悲願を達成した後の未来を想像できぬ者が多い」
利根「もしかしたら、提督はそんな者たちを導こうとしておったのかもしれんな」
筑摩「利根姉さん……」
245 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:55:07.68 ID:ZzhBdZhho
利根「されど、やんぬるかな。今となっては全て終わってしまったこと。吾輩たちは吾輩たちができることをせねばならん」
利根「まずは長門を無事に連れ帰り、本営で修理せねばな……」
五十鈴「……あら?」
潮「? ど、どうしたんですか?」
五十鈴「七時の方向……北に船がいるわ。あの形、海軍の巡視船かしら」
潮「もう助けに来てくれたんですか?」
五十鈴「おかしいわ。私たちは日本から南下してここへ来たのよ?」
五十鈴「パラオに向けて応援を要請したのに、どうして私たちの後ろから……北から船が来るの?」
筑摩「そういえば……」
五十鈴「それに、パラオからの援軍だとしても、いくらなんでも早すぎるわ。もっと時間が……」
ヒュ
ボシュッ
筑摩「ごふっ……」
五十鈴「!?」
246 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:56:17.45 ID:ZzhBdZhho
…ガァァァ…ン…
長門「今のは銃声か!?」
筑摩「」グラッ
利根「筑摩!?」
バシャァァァン!
利根「筑摩!! しっかりするんじゃ!」ダキカカエ
筑摩「利根……姉、さん……」
五十鈴「な……」ワナワナ
長門「筑摩はあの船から狙撃されたのか!? みんな伏せるんだ! 私の艤装に隠れろ!!」
潮「そ、狙撃って、そんな……! どうして筑摩さんが撃たれるんですか!?」
利根「長門! 幸いにも筑摩はまだ沈んではおらぬ! 島の反対側に逃げ……」
ドパァァン!
利根「」
筑摩「え」
247 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:57:17.92 ID:ZzhBdZhho
…ガァァァ…ン…
長門「利根えええええ!!」
バッシャアァァァン!
潮「ひ……!!」
筑摩「姉、さん……?」
ゴポッ
筑摩「待って……」
ゴボッ ゴボボボ…
筑摩「待って、逝かないで……!」
筑摩「姉さ、ねえ……さ……!!」
トプン…
筑摩「……あ……ああ……」
長門「なんだ……なんだというんだ!?」
五十鈴「静かにして……!」
長門「何を! ……五十鈴?」
248 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:58:17.18 ID:ZzhBdZhho
五十鈴「いいから聞いて! これ……さっきから傍受してる無線。聞こえる?」ジジッ
無線『二射目も命中。首尾はどうだ』
無線『馬鹿。いくらなんでもヘッドショットするやつがいるか』
五十鈴「……」
無線『過去の報告だと、頭に命中して深海化した駆逐艦もいただろうが』
無線『スナイパーライフルじゃ殺傷力が高すぎて、弾丸が貫通しちまうんだよ。弾丸が対象の体内に残らなきゃだめだ』
無線『なんだと? せっかくこの距離から当てたのに』
五十鈴「……」
潮「な……何なんですか……この会話」
無線『頭を吹き飛ばした方は即死したみたいだな。威力があることはいいことだが、実験としては失敗だ』
無線『そういうことなら最初から二射目を撃たせるな。で、残りは』
無線『残ってるのは軽巡1と駆逐1だな。戦艦もいるが瀕死の状態だ、間違って殺してしまっては意味がない』
無線『ほかに用意した銃は?』
無線『オートマチックのハンドガンと、サブマシンガン、ショットガン、それからアサルトライフルだな』
無線『リボルバーじゃねえのかよ。だったらサブマシンガンにするか。取りに行くから、射程まで近づいてくれ』
無線『了解』
249 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:59:02.59 ID:ZzhBdZhho
五十鈴「……なによ、これ……こんなのに、筑摩さんと、利根さんは……!」ワナワナ
長門「……潮、五十鈴。二人は逃げてくれ」
潮「長門さん!?」
長門「私が時間を稼ぐ。本営のお遊びにこれ以上付き合ってはおれん」ヨロッ
五十鈴「無理よ! そんな体でまともに戦えるわけないじゃない! それに私たちがみんなを見捨てたりできると思う!?」
長門「どうせ死ぬのなら、戦って死ぬだけだ。実験台になど、されてたまるか……!」
筑摩「……そう、ね」ムクリ
筑摩「どうせ死ぬのなら……げほっ……どうせ沈むのなら、利根姉さんの敵を討ってからよ……!」ヨロッ
五十鈴「だから無理だって言ってるでしょ! まともに立っていられないじゃない!」ガシッ
筑摩「たとえそうでも……」ググッ
筑摩「五十鈴、あなたとはずっと一緒に戦ってきた仲間ですもの……その仲間を、守りたいと思うのはいけないこと……!?」
五十鈴「……っ!」
長門「五十鈴。潮を頼む!」
潮「長門さん!!」
巡視船<ザザァァァ…!
長門「来るぞ!」
250 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 17:59:47.55 ID:ZzhBdZhho
一旦、ここまで。
251 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 21:02:35.72 ID:ZzhBdZhho
続きです。
252 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 21:04:32.31 ID:ZzhBdZhho
巡視船<ドガァァァン!
長門「な、なんだ!?」
潮「あれは……!?」
魚雷<シュパァァァ…
巡視船<ドガァァァン!
潮「ぎょ、魚雷です! どうして……!?」
長門「何が起こってるんだ……?」
電探<ピコーンピコーン…
五十鈴「こ、これ見て! すごい数の深海棲艦がこの一帯に……!」
駆逐イ級「」ザバッ!
駆逐イ級たち「」ザバザバッ!
潜水カ級たち「」ユラ…ッ!
無線『この海域にこんなに深海棲艦が潜んでるなんて聞いてないぞ!』
無線『早く離脱しろ!』
253 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 21:05:43.96 ID:ZzhBdZhho
駆逐イ級「グパッ」ジャコッ!
砲弾<ドゥン!
無数の砲弾<ドンドンドンドン!
無数の魚雷<シュパパパァァァ…!
巡視船<ドガドガドガァァァン!
無線『うわああああ!! ザザッ……ジー……ブツッ』
長門「駆逐艦と潜水艦ばかりだな……」
駆逐イ級「」ザバッ
駆逐ロ級「」ザバッ
重巡ネ級「」ザバァ
五十鈴「見て……あれは……!」
潮「あ、あのネ級、頭に、穴が開いています……!」
長門「もしかして……」
筑摩「利根……姉さん……!?」グスッ
254 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 21:06:42.53 ID:ZzhBdZhho
重巡ネ級「……」チラッ
筑摩「!」
重巡ネ級「……」ザシャァッ ドガーン
五十鈴「一瞬こっちを見て、頷いたように見えたわ……」
長門「だとしたらやはりあれは利根なのか……?」
筑摩「姉……さん……!」ボロボロボロ
いきなり長門たちの前に引き返してきた駆逐イ級「」ザザァ
五十鈴「?」
駆逐イ級「」ジャコッ!
長門「しまっ……!!」
煙幕弾<ボフン!!
長門「!?」
五十鈴「な、なに!?」
??「さ、みなさんはこっちですよぉ!」
潮「あ、あなたは……!!」
255 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 21:07:32.47 ID:ZzhBdZhho
* 墓場島 南岸 *
遠くで炎上している巡視船< ゴォォォ…
??「よく燃えますね〜」
長門「まさか、お前に助けられるとはな……青葉」
??→青葉「うーん、まさかだなんて、どういう意味でしょう? 青葉、そんなに頼りないですか?」
長門「そういう意味じゃない。青葉、お前わかってて言ってるだろう?」
青葉「えへへへ……」ポリポリ
五十鈴「……筑摩さん」
(波打ち際に筑摩が寝かされている)
五十鈴「……どうして? どうしてよ……!?」グスッ
青葉「おそらく、最初からこれが狙いだったんじゃないですか?」
青葉「今の本営に対して比較的従順ではあるものの、不安要素を抱えた艦娘たちです。体よく始末する方法として……」
長門「青葉」
青葉「……」
256 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 21:08:47.44 ID:ZzhBdZhho
五十鈴「……いいわよ。厄介がられたのは確かだもの……」
長門「……利根と筑摩のことは許せないが、表立って敵対するのも考え物だ。これからどうしたものかな」
潮「……こうなるしか、なかったんでしょうか……」
青葉「今となっては、青葉はこうするしかなかったと思いますよ?」
青葉「巡視船内の通信は青葉も傍受しましたが、深海棲艦製の弾丸を使って、皆さんの殺害を図ったのは事実です」
青葉「あわよくば深海棲艦化の実験台にしようともしてましたよね。未だに続けてるんですねえ、あの実験」
青葉「青葉が情報を散々リークしたのにまだ続いてるってことは、実験の継続が認められたってことなんでしょうか?」
五十鈴「……深海棲艦の調査、って意味では、認められてるみたいよ」
青葉「ん〜、そうなんですか。もうちょっと根っこから揺さぶらないと駄目だったんですねえ。ちょっと先走りしちゃったかなあ?」
五十鈴「先走りって……まだなにか企んでるつもり!?」
青葉「ええ、本営に近い協力者にお願いして、今回の襲撃事件についても問い質そうとしてまして」
長門「……連中に具合の悪い情報を突き付けても力づくで揉み消すだろう。あまり意味はないと思うぞ?」
青葉「その時はその時、ですよ。残念な結果になったときはそれ相応の結末になるだけです」
青葉「そうはなってほしくありませんけどね。真面目に頑張ってる提督の方々が不憫でありませんよ」ハァ…
潮「……本当に……」ウツムキ
257 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 21:09:32.08 ID:ZzhBdZhho
ネ級「……」ザザァ…
長門「!」
青葉「戻ってきましたか。向こうの始末は終わりましたか?」
ネ級「……」コク
ネ級「……」ジッ…
(横たわる筑摩を見つめるネ級)
青葉「ああ、なるほど。筑摩さんを弔いたいんですね」
ネ級「……」コク
ネ級「……」ジッ…
潮「……わ、私たちを見てるんですけど……?」
青葉「ああ、それは筑摩さんを連れて行っていいか、皆さんにも訊いてるんですよ」
長門「そうか……私たちにはどうにもできないからな。よろしくお願いしたい」
潮「……そう、ですね……お願いします」コクン
五十鈴「……丁重に、弔ってあげて……」ウツムキ
ネ級「……」コク…
(筑摩を抱きかかえ、ネ級が海に消えていく)
258 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 21:10:47.29 ID:ZzhBdZhho
五十鈴「……はぁ……これからどうすればいいの、私たち」
五十鈴「味方のはずの海軍に襲われて、敵のはずの深海棲艦に助けられて……!」
青葉「一応怪しまれないように、イ級さんに煙幕弾を持たせて、戦ったふりだけするようにお願いしたんですがねえ?」
青葉「もし戻ろうとするなら、海軍と深海棲艦の攻撃から命からがら逃げてきた、ってストーリーで行けると思いますけど?」
五十鈴「……無理じゃないかもだけど……」
潮「あ、あの、青葉さん……」
青葉「はい?」
潮「その……青葉さんの髪の毛が、ずっと濡れてるのって……やっぱり……」
五十鈴「!」
長門「……」
青葉「……あー……はい。お察しの通り、ですよ」ニコ…
潮「……あの、ごめんなさい……!」ウルッ
青葉「あーいやいや、どうぞお気になさらず! 青葉、もともと危ない話に首を突っ込んでましたから!」
青葉「こうなることはある意味予想通りなんです。だから気にしないで!」
長門「……そのお前が姿を現したのは、どうしてだ?」
青葉「それはですね、皆さんがこちらに来る情報を掴みましたので、一度話をしたかったんです」
青葉「ここまできたんだし、正直に言っちゃいましょう!」
青葉「皆さん! 『こちら側』に来ませんか!?」
長門「……!」
五十鈴「……っ!」
潮「……」
259 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/14(土) 21:11:47.44 ID:ZzhBdZhho
今回はここまで。
260 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:12:18.05 ID:zXo21c+Jo
続きです。
261 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:13:18.13 ID:zXo21c+Jo
* ほぼ時を同じくして *
* 舞鶴鎮守府 大会議室 *
「……ということで、まずは本営を神戸に移す案で進めます」
「関東地方のインフラの復旧については、陸軍が担当することになった」
「我々が関東で活動しようとしても、陸の連中はいい顔をしないだろう。関東地方の防衛は手薄になる」
「大湊の諸君に頑張ってもらうしかないが、物流がな……」
「まったく、なぜ横浜が……!」
「それもこれも『魔神』などという化け物のせいだ! なんで海軍の施設を乗っ取ったりしたんだ!」
「魔神などとそれらしい名前がついているが、結局は深海棲艦と同じだろう! やつらが我々を敵視しているから……」
ザワザワ…
仁提督「……責任転嫁もいいところだな」ボソッ
L提督「聞こえますよ、仁提督」ヒソッ
仁提督「だが、この事態は海軍の自業自得だとは思わんかね、L君」
仁提督「海軍は、極秘裏に艦娘を使った実験をしていたんだぞ? そんなことをやっていれば、付け込まれて然るべきだろうに」ヒソヒソ
L提督「仁提督……っ!」
262 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:14:03.26 ID:zXo21c+Jo
仁提督「ふん……海軍として、国民に対し後ろめたいことをやった。そして、その報いを受けた。それだけのことだ」
仁提督「そしてそういう時に決まって犠牲になるのは、何も知らなかった民間人だ」ハァ
L提督「……」ハァ
扉<コンコン
「ん?」
扉<チャッ
榛名「失礼いたします」スッ
「誰だ?」
「艦娘の榛名だな……どこの鎮守府のだ?」
「会議中だ、艦娘が入ってきて良い会議ではない!」
「速やかに退室せよ!」
榛名「申し訳ございません。元帥閣下をはじめとした皆様に、大至急お伝えしたいことがございます」
榛名「先立って決定した通り、深海棲艦の侵攻を止めるべく編成された選抜隊がショートランド泊地へ出発致しました」
榛名「その選抜隊より連絡があり、本営が事前に察知していた情報より、明らかに敵戦力は泊地戦力を上回っていることを確認したとのことです」
榛名「そのため、泊地から救援要請が来ています。大至急、援軍をお願いに参りました」
「何?」
263 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:14:49.66 ID:zXo21c+Jo
「馬鹿な。深海も、ショートランドにそんな戦力を向けてどうもならんだろう」
「後で調査したうえで検討する。榛名、退室せ……」
榛名「それから……」
「!」
榛名「過去に火山活動によって壊滅した××国××島……過去に墓場島と呼ばれていた島の調査隊が襲撃されました」
榛名「調査隊は艦娘で編成されていましたが被害甚大、ほぼ壊滅状態……」
榛名「襲撃犯の使用した武器に、深海棲艦の遺骸から製造された武器が使用されていたそうです」
ザワ…ッ
榛名「深海棲艦から武器を作る技術は、海軍の中でも最重要機密として厳秘管理されているはず」
榛名「その武器を襲撃犯が持っていたというのは、どういうことでしょう?」
「「……」」
仁提督「……あの榛名……もしかして、墓場島のやつじゃないのか?」ヒソッ
L提督「まさか? その榛名はパラオ沖で没したと聞いていますよ?」
仁提督「なに?」
264 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:15:33.08 ID:zXo21c+Jo
榛名「……海軍はなぜ、この戦況で足の引っ張り合いをしているのですか?」
ドヨッ
「き、貴様、言うに事欠いて何を根拠にそのようなことを……!」
榛名「榛名は気付いてしまいました」
榛名「ショートランド泊地に送られた選抜隊の人選に、偏りがあると」
榛名「深海棲艦と友好関係を結ぶ方法を模索していた人たち、深海棲艦から武器を作るのに反対していた人たち」
榛名「それから、今の本営の主要な派閥と意見の合わない人たちや、陸軍とパイプのある人たち……」
榛名「そして、墓場島にいた艦娘たち」
L提督「!」ガタッ
仁提督「お、おい!? 落ち着け!」グイ
「そんなものは偶然だ。我々は、今動くことのできる戦力を送り込んだまでのこと」
「本土もまた、関東地方の防衛がままならない状況にある。すべての戦力をショートランドに割くわけにはいかん」
榛名「緊急事態ではない、ということですね?」
265 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:16:18.47 ID:zXo21c+Jo
「そうだ。わかったら速やかに退……」
榛名「果たしてそうでしょうか?」ガサッ
「なんだその紙袋は」
榛名「ショートランド泊地近海の深海棲艦の動向について、本営が入手した情報のすべてです」
榛名「日時と一緒に写真に収めてあります。ご覧になりますか?」バサ
「……これは、本物なのか?」
「もしこれが本物だとしたら、ショートランド泊地に艦隊を集めないと泊地が落とされるぞ……!」
「いったいどこからこの情報を?」
榛名「このメモリーです」スッ
榛名「この中に、本営の特定のメッセージを受け取るための認識コードが入っていました」
榛名「今お配りした情報は、この接続コードを使用できるユーザー限定に配信されていた、厳秘情報です」
「……な、なぜ貴様がそんなものを!」
榛名「これは、深海棲艦と魔神に襲撃された、あの研究施設で見つけたんです」
ザワ…!
266 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:17:02.94 ID:zXo21c+Jo
榛名「つまり、あの研究施設で働いていた人が、この情報を見ることができていた……」
榛名「そして、ショートランド泊地に向かわせられた人たちが、どういう人たちか……」
榛名「榛名が何が言いたいか、お分かりになりますね?」
「……」
仁提督「……本営の意思にそぐわない者を、激戦となるショートランドへ送り込み、戦死に見せかけ始末しようとしている、とでも言いたいのか」
L提督「仁提督!?」ギョッ
榛名「はい、その通りです」ニィッ…
仁提督「っ……!」ゾク
榛名「ショートランドへ送られた戦力も、この敵戦力の前では焼け石に水です。ただただ犠牲が増えるだけ」
榛名「それなのに、それ以上動こうともしないと仰るのであれば……泊地の者たちを見殺しにするおつもりだと、そういうことですね?」
「貴様! いち艦娘でありながら口が過ぎるぞ!」
榛名「榛名は、泊地の危機をご報告に」
「艦娘が我々の決定に口を出すなと言っている!」
267 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:17:47.68 ID:zXo21c+Jo
榛名「そうですか……ですが、榛名は……」
メキ
榛名「榛名はもう……」
メキメキメキ
榛名「大丈夫ではありません」
バギン! バギン!
榛名「榛名はもう、『口』を出さずには、いられないんです……!」
(榛名の艤装が裂けて、裂け目に歯が生える)
ザワッ…!
「う……!!」
「き、貴様、深海棲艦か!?」
榛名「何をとぼけておられるんですか? これは、あなたがたが望んだ姿ですよ?」
「俺たちが望んだだと……?」
榛名「かつて、艦娘養成所、という、艦娘育成を目的とした海軍の外部組織がありました」
榛名「外部組織と銘打たれてはいますが、それは建前……実態は、海軍の実験用艦娘の管理施設です」
268 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:18:32.86 ID:zXo21c+Jo
榛名「研究所では、艦娘と深海棲艦の実態を調査すべく、深海棲艦を鹵獲しての調査が始まり……」
榛名「その中で、深海棲艦の艤装から武器を作る技術の研究を進めるとともに、同様に艦娘の艤装から武器を作る研究もなされていました」
榛名「しかし、艦娘からはなかなかうまくいかず……ならば艦娘を深海棲艦にできないか、というふうに研究がシフトしていったのです」
「何を根拠にそんな作り話を……」
榛名「榛名は、そこで研究対象として実験台にされていた艦娘の一人です」
ドヨッ…!
榛名「研究所は実験のために、艦娘を、精神的にも肉体的にも追い詰めて轟沈させ……」
榛名「絶望を与えて深海棲艦化させようとし、それを観察しようとしたのです」
榛名「結果は失敗でした。榛名たちは轟沈こそしましたが、深海棲艦化することなく、あの島の砂浜に流れ着きました」
榛名「そこで榛名は、提督少尉……当時は准尉でしたけれど、彼を慕う艦娘によって運良く助けられ……」
榛名「これまで艦娘として、戦い続けることができたんです」
仁提督「やはり……あの榛名……!」
L提督「墓場島の……!?」
269 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:19:19.23 ID:zXo21c+Jo
榛名「榛名は幸せでした……提督小尉の下で、艦娘としての本分を全うすることができたのですから」
榛名「ですが、榛名が敬愛した提督も、海軍の内輪もめによって命を落としました……決して、火山活動が原因ではありません」
L提督「……っ!」
仁提督「……」
シ…ン
榛名「提督少尉を死に追いやり、その悲劇の原因となった研究は未だに継続され、今なお仲間を己の都合のために死地に追い込む……」
榛名「榛名は、今の海軍に失望を禁じ得ません……!」
「だから、深海棲艦になったと……?」
榛名「……深い失望によって、こんな姿になるなんて、榛名は想像したこともありませんでした」
榛名「ですから、その問いには、はいと答えることはできません」
榛名「でも、榛名が深海棲艦になってしまったのは……事実ですね……ふフっ、ふふふフフ……!」ザワ…
チャキッ
拳銃を構える将官1「元帥閣下、ここはお任せを」
元帥「……任せたぞ」
将官1「はっ!」
270 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:20:03.00 ID:zXo21c+Jo
榛名「……お待ちを、元帥閣下。ショートランド泊地への援軍の件は、どうな」
ドンッ
榛名「ぐ……」ヨロッ
L提督「!!」
仁提督「……!」
将官1「黙れ。艦娘の……否、深海棲艦の分際で意見するか」
榛名「……げふ……っ、は……榛名、は……」
将官1「まだ倒れんか……女の皮をかぶった化け物め」
ドンドンドンッ
榛名「っ!! あ、ああああ……!」ガクッ
榛名「げほっ……げほげほっ……」ビチャビチャッ
「……」
榛名「榛名は……」
榛名「榛名は、金剛お姉様を誇りに思っていました……」フラ…
榛名「どんなときも前を向き、私たちと、人間を助けることを……愛をもって接することを、没する時まで忘れなかった、金剛お姉様……」
271 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:21:07.10 ID:zXo21c+Jo
榛名「でも、あなたたちは……本当に、人間を助けようと思って、この海軍を率いているのですか」
シーン…
将官2「その通りだ。我々は人間のために戦っている」ガシャン
「な、なんだあのでかい鞄」
将官2「海を亡霊どもから取り戻す。その成就のためには、艦娘も、海軍の人間も、駒として扱うだけの話だ」ガパッ ガシャッ
榛名「!!」
仁提督「機関銃……だと!?」
機関銃<ガガガガガガ…!
榛名「あ……」
榛名「あが、あああ……!!」
将官1「艦娘も深海棲艦も、本当ならこの海には不要なものだ……!」
将官2「勝手に海からやってきて、我が物顔で跋扈する貴様らに、これ以上の勝手は許さん……!!」
榛名「ぐ、ぐぅ……」ヨロッ
272 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:21:48.26 ID:zXo21c+Jo
将官1「まだ生きているのか……おい」
将官3「ああ、こいつでとどめだ」ジャコッ
散弾銃<ドガンッ!
ドチャッ
「「……」」
シーン…
L提督「う、うう……おえっ」ヨロッ
仁提督「お、おい、大丈夫か!?」
仁提督「すまん、あけてくれ! こいつは民間出身なんだ、トイレに連れて行く」ガタッ
L提督「うぐ……す、すみません」
チャッ バタン
L提督「……うう」ヨロヨロ
仁提督「……」
ヒョイ
L提督「うえっ」カツガレ
仁提督「悪いが少し我慢しろ」カツギアゲ
L提督「す、すみま……うぷっ」
仁提督「礼には及ばん。俺も気分が悪い……一刻も早くあの場から離れたかったところだ」
273 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:22:33.20 ID:zXo21c+Jo
* トイレ *
ジャー…
L提督「……」グッタリ
仁提督「今日はもう仕事は無理だろう……俺も戻りたくもない、帰るぞ」
L提督「はい……ご迷惑おかけしました」
仁提督「謝らんでいい。陸自出身の俺だって耐えられた絵面じゃなかった。民間出身のお前じゃショックを受けて当然だろう」
L提督「……それも、ありますが」
L提督「僕の鎮守府にいた古鷹や朝雲も、僕の不手際で墓場島に行っていた時期があったんです」
L提督「あの二人の身に何かあったらと思うと……」
仁提督「……」
L提督「こんなことになるなんて……!」
仁提督「考えるのは後にしよう。早く帰って体と頭を休めておけ」
L提督「古鷹……」グス
274 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:23:18.30 ID:zXo21c+Jo
仁提督「ショートランド泊地にも、この事実を伝えなければならんだろうな」スマホトリダシ
仁提督「……仁提督だ。金剛、帰り支度だ。ああ、予定より早いがこれから戻る、L提督も一緒だ」
仁提督「車を出しておいてくれ……少々気に入らんことがあってな。L提督もそれで気分を悪くした」
仁提督「俺も今回ばかりは海軍に愛想が尽きそうだ。遠地勤務も考えなければ……」
ズズゥン…!
仁提督「!? なんだ、この揺れは……!」
L提督「仁提督……早く、この建物を出ましょう……!」アセビッショリ
仁提督「な……L提督、その汗はどうした!?」
L提督「わかりません……けど、悪寒が……!」ガタガタ
仁提督「……金剛! すぐ車を出せるよう準備しておけ! 切るぞ!」ピッ
仁提督「L提督、お前は妖精が見えるんだったな!? だとしたら嫌な予感しかせん! 走るぞ!」ダッ
L提督「は、はい……!」ヨロッ
275 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:24:02.84 ID:zXo21c+Jo
* 大会議室 *
将官1「……う、撃て! 早く撃てっ!」
機関銃<ガガガガガガガ…!
榛名?「……」バチュンバチュンバチュン
将官2「ひ、被弾しながら迫ってくる!?」
将官1「効いてないのか!?」
将官3「どけ!」ジャキ
散弾銃<バガンッ!
榛名?「……っ!」バジュッ
ドシャッ
将官3「とどめだ!」
散弾銃<バガンッ! ドガンッ! ズドンッ!
シュゥウウゥ…
276 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:24:48.06 ID:zXo21c+Jo
将官1「やったか!?」
将官3「……!」
榛名?「……」ムクリ ジワジワジワ…
将官1「だ、駄目だ……」
将官2「な、なぜ再生するんだ!? これまでの実験でも効くと言ってたんじゃないのか!」
榛名?「ナゼ?」
榛名?「理由ハ簡単ヨ……コノ子モ、海ノ底ヲ見テキタカラヨ……!」
将官1「ど、どういう意味だ……!?」
榛名?「理解スル必要ハ、ナイワ……ドウセ、ココモ海ニ沈ムノダカラ」グラ
ドシャッ
倒れた榛名の血だまりの中から現れる戦艦棲姫「アナタタチノ、血ノ海ニ、ネェ……!!」ズルゥ
「「「!!!」」」
277 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:25:35.60 ID:zXo21c+Jo
「せ、戦艦せ……」
戦艦棲姫『グオォォオオ!!』 ドガン!
「に、逃げろ!」
「退避!! 退避だ!!」
ドガンドガン!
「うわああああ!」
ドゴオオォォォォ…!
戦艦棲姫「フフフ……!」
ドガンドガン!
ドガンドガンドガン!
戦艦棲姫「アァ、血ノ海モ良イケレド……火ノ海モ良イワネエ?」
ドガンドガンドガンドガン!
戦艦棲姫「ホォラ、嫌ナラ、抵抗シテ御覧ナサイ……!」
ドガドガドガドガーーーーーン!
278 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:26:18.44 ID:zXo21c+Jo
ゴオオォォォォ…!
戦艦棲姫「……アァ……ミンナ、ミィンナ、壊レテシマッタワネ……フフフ……!」
(ぼろぼろになった榛名を抱きかかえる戦艦棲姫)
戦艦棲姫「沈メルダケデハ飽キ足ラズ、殺メ、弄ビ、同胞ヲ傷付ケル道具ニスルナンテ……」
戦艦棲姫「『ヒト』デナケレバ何ヲシテモ構ワナイノカシラネェ」
戦艦棲姫「……」
戦艦棲姫「理解デキテイタナラ、アナタガコンナ目ニ遭ウハズガナイモノネ……」
戦艦棲姫『オォォオオオオォォォオオオ!!』
(戦艦棲姫の艤装が吠えると、数多の弾丸が黒い霧になって艤装の口に吸いこまれる)
戦艦棲姫「サア……『ミンナ』デ海ニ還ルワヨ……フフフフッ」ニコ…
* * *
* *
*
279 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/18(水) 22:27:02.72 ID:zXo21c+Jo
今回はここまで。
280 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/19(木) 19:09:08.62 ID:jvqkVgK/O
待ってた、エピローグとは・・・
281 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/21(土) 09:53:09.64 ID:YEnpxF420
乙です。おおぅ…こりゃ魔神提督側もヤバそうだなぁ…
282 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/21(土) 18:42:14.81 ID:3uqJHgTNo
ああ…復活した提督の魔神棒が干からびてないか心配だな…
283 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/21(土) 20:07:26.06 ID:I8THug57o
まずはひとつ懺悔。
もうひとり、影牢サイドから出さないといけないキャラが出てしまったので、こちらをご参照ください。
ttps://www.gamecity.ne.jp/kagero3-2/character_06.html
「影牢 〜もう1人のプリンセス〜」に出てくるエフェメラです。
この話では、純粋に「罠だらけ」に出たキャラと
「トラップガールズ」のキャラだけで完結させるつもりでしたが、
前日譚にあたる「墓場島鎮守府?」に出てきていたL提督や仁提督、エフェメラを出さないと
話の辻褄が合わなくなってしまい、力不足を露呈してしまったのが悔いが残るところです。
それでは、短いですが続きです。
284 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/21(土) 20:09:03.50 ID:I8THug57o
* とある回顧録 *
『……私が海難事故に遭ったのは、高校二年の秋でした』
『船が転覆し、私を含めて数百もの人が海に投げ出されて、その大多数が命を落としました』
『私はその海難事故で運よく生き残った一人でしたが、その時に海中で恐ろしいものを見たのです』
『それが何者なのかはわかりません。明確に覚えてもいません。ただ、漠然と、恐ろしかったことだけを、覚えています』
『それからというもの、暗くて深い、海の底にいる夢を見るようになりました』
『私は怖くて、海から離れたくて、山村から来た男性と結婚し、海から逃げるようにその山村へと移り住みました』
『やがてその男性との子を授かり、田舎の暮らしにも徐々に慣れていきましたが』
『それでも、私は海の底を見ているような夢を見続けていました』
『しかし、その夢をぱったりと見なくなったのは、あの子を産んでからです』
『いつしか私の体に纏わりついていた、水の中のような浮遊感が消え……』
『あの子を産んだことで、漸く地に足がついたような感覚を覚えたのです』
285 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/21(土) 20:09:48.34 ID:I8THug57o
『そのせいか、私は、どうしても、あの子を可愛いと思うことができませんでした』
『泣き声はサイレンのようで、抱いてもそれが水袋のように思えて、どうしても、愛情を注ぐことができなかったのです』
『夫は、もう一人、子供を作りたいと言いましたが、私は不安でした。この子と同じ思いを、その子にも抱くのではないかと』
『しかし、二人目はそんな思いを微塵も抱くことなく、ころころと可愛い笑顔を見せてくれたのです』
『私が息子と呼べるのは、この子だけでした。もう一人の、あの子は、私にとっては、得体の知れない何かなのです』
『私は話しかけることができませんでした。恐ろしくて、遠巻きに見ていることしかできなかったのです』
『最近になって、艦娘という女性の集団が、海に出没する化け物たちを倒しているというニュースを見ました』
『シンカイセーカンという化け物たちもテレビに映し出され……それで、私は思い出したのです』
『私の夢にずっと出てきていたのは、あの海難事故で見た恐ろしいものは、あれではなかったのかと』
『そして、私のお腹から出てきた『あれ』も、そうだったのではないのかと』
『こんなことを、誰にも言えませんが、そうだったのではないかと、感じているのです……』
286 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/21(土) 20:10:33.71 ID:I8THug57o
* 舞鶴鎮守府襲撃事件より二年後 *
* 日本某所 選挙事務所 *
テレビ『歴史的瞬間です! ついにシンミン党による政権交代が実現しました!』
議員「バンザーイ!」
議員「幹事長おめでとうございます!」
幹事長「皆、よくやってくれた! ありがとう!」
幹事長「ところで、『彼』はどこへ行ったんだ?」
議員「い、いえ、それがつい先ほどから退席しておりまして」
幹事長「この政権交代の立役者だというのに、どこへ行ったというんだ?」
287 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/21(土) 20:11:18.50 ID:I8THug57o
* 事務所の一室 *
(誰もいない事務所の一室で、提督の父親がたたずんでいる)
提督父「……」
ス…
提督父「……!」フリムキ
謎の女性「……盗聴器は、私がすべて処理致しました。ご安心を」
提督父「……ご苦労」
謎の女性「……」ペコリ
提督父「ようやくだ」
提督父「やっとここまで来た……!」
288 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/21(土) 20:12:03.05 ID:I8THug57o
* 回想 数十年前 *
プリント『○○村 ダム工事に関する連絡会』
若かりし頃の提督父「くそっ、頭の固い役人どもめ……俺たちの村を見捨てる気か!」グシャッ
提督父「村の連中も、最初は俺たちにやめさせろと言ってたくせに、ほいほい手のひらを返しやがって」
提督父「俺だけが馬鹿させられたようなもんじゃねえか!」
提督父「せっかく大学まで出たのに仕事がなくて帰ってきたからって、面白半分で好き勝手に噂しやがるし」
提督父「こんなことならこんな村に戻ってこなきゃよかったぜ……!」
提督父「ガキももうすぐ生まれるし、金もねえから逃げるわけにもいかねえ……!」
提督父「くそっ! なんで、どいつもこいつも俺を認めようとしねえんだ……!!」
カタッ
提督父「誰だ!」
謎の女性「……はじめまして」
提督父「だ、誰だお前は!? 変な恰好しやがって……どこから入ってきた!」
謎の女性「私は、エフェメラと申します」
提督父「エフ……? 外人か? 俺に何の用だ」
289 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/21(土) 20:12:48.38 ID:I8THug57o
エフェメラ「……我らが神の命に従い、あなたの元へ馳せ参じました」
提督父「カミ? ……宗教の勧誘か? そういうのは要らねえよ。余所へ行け、余所に」シッシッ
エフェメラ「……このままでは、あなた様は出世とは無縁の人生を送ることになります」
提督父「ああ? 何が言いたいんだ」
エフェメラ「私は、あなた様に信心や金銭を求めるつもりはありません」
エフェメラ「ただひとつ。我らが神に、あるものを捧げていただければ、あなたの人生の成功をお約束いたします」
エフェメラ「あなた様が望む、地位も、富も、名誉も、一族の繁栄も……」
提督父「はぁ……?」
エフェメラ「……」
提督父(……おかしい……言ってることはどう考えてもおかしいのに、こいつの瞳から視線を外せねえ)
提督父(ただの人間じゃねえことはわかる……いや、人間なのか? こいつ、何者だ……?)
エフェメラ「……」
提督父「おい……何が望みだ?」
エフェメラ「私が求めるのは……」
エフェメラ「これから生まれてくる、あなた様の子の、人生そのものを戴きたく」
提督父「!? な、なんだそりゃあ!」
290 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/21(土) 20:13:33.06 ID:I8THug57o
エフェメラ「もし、あなた様が御子の不幸を望まないのであれば、そのようにもできますが……」
エフェメラ「そのようにしたのなら、あなた様はこれからもこの小さな村で小さく暮らし、やがて生涯を終えることになりましょう」
提督父「何を根拠に……!」
エフェメラ「ですが」
提督父「っ!?」ビク
エフェメラ「我らが神が、あなた様に降り懸かるすべての理不尽と不条理を、すべてあなた様の子に移し替えるのです」
提督父「なんだそりゃ……ガキを、身代わりにしろ、ってことか?」
エフェメラ「はい」
提督父「……待てよ、矛盾してるぞ。お前はさっき、一族の繁栄も夢じゃねえっつったよな?」
提督父「俺の子供が不幸になったら一族の繁栄なんて有り得ねえんじゃ……」
エフェメラ「不幸になるのは、これから生まれてくる子供だけです」
提督父「これから? 二人目以降は問題ねえ、って意味か?」
エフェメラ「はい」
提督父「……」
291 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/21(土) 20:14:18.39 ID:I8THug57o
エフェメラ「これから生まれてくるその子は、やがて世迷言を言い出すでしょう」
エフェメラ「誰も理解できぬ妄言に始まり、反抗、反発、離反……その子は、間違いなく誰からも認められない不幸な人生を歩むでしょう」
エフェメラ「災いの海より生まれし忌み子……あなた様は、それと道連れなさるおつもりですか?」
提督父「……災いの、海……?」
エフェメラ「はい……心当たりもありましょう」
提督父「……」
提督父「……俺の妻は、学生の時に海難事故に遭っている。海のそばには住みたくない、プールも嫌だというほどだ」
提督父「それが関係しているのか?」
エフェメラ「……あなた様の奥様にどのような過去があったかは、私の語るところではありません」
エフェメラ「ですが、奥様の身籠りしその命には、間違いなく、海との深き縁がありましょう」
提督父「……」
292 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/21(土) 20:15:03.28 ID:I8THug57o
エフェメラ「……」
提督父「本当に……」
エフェメラ「……」
提督父「お前は、本当に、俺に損をさせないんだな?」
エフェメラ「はい、その通りです、『ご主人様』」
* * *
* *
*
* 現在 事務所の一室 *
提督父「……あれから三十年か」
エフェメラ「……」
提督父「あのときから全く姿形が変わらん貴様は、やはりこの世のものではないのだな」
エフェメラ「……」
293 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/21(土) 20:15:48.38 ID:I8THug57o
提督父「海は化物が蔓延(はびこ)る魔境となった。だが、それを退治しようとする化物も、時を同じくして現れた」
提督父「エフェメラ……貴様はどちら側だ?」ジロリ
エフェメラ「……」
提督父「ふん、まあいい。貴様が何を企もうと、貴様は俺たちの一族の繁栄を約束した」
提督父「貴様にくれてやった『アレ』を海軍が買い取り、その数年前には海軍の内紛と火山の噴火で死んだと聞いているが……」
提督父「それが俺との約束を反故にする理由にはならない。そうだな?」
エフェメラ「はい。その通りにございます」
提督父「ならば良い。まだ政権を取っただけで、その地位を盤石にするためには時間がいる」
提督父「くれぐれも、俺たちに何もないようにな」
エフェメラ「畏まりました」
提督父「……」
バタバタバタ
コンコンコン ガチャッ
議員「先生! こちらにいらしてたんですか!」
294 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/21(土) 20:16:33.21 ID:I8THug57o
議員「おひとりで何をなさっていたんですか?」
提督父(エフェメラの奴は消えたか……)
提督父「悪いな、さすがに疲れて、気分転換したかったところだ」
議員「テレビの取材が来ていますよ!」
提督父「ああ。今行く」
スタスタ…
再び現れるエフェメラ「……」
エフェメラ「我らが魔神様の真の復活には、大量の魂が必要……」
エフェメラ「人間も、艦娘も、深海棲艦も……増やして、刈り取り……等しく魔神様の糧とするだけ」
エフェメラ「すべては、魔神様のために」
295 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/11/21(土) 20:17:33.01 ID:I8THug57o
今回はここまで。
このシナリオは、次回が最後になります。
296 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/11/28(土) 04:37:27.25 ID:fk38xRnS0
追いついた...めっちゃ面白かった!けどやっぱ救われないなぁ
墓場島の方でまだ出てきてない娘たちの話がどういうものになるのか楽しみ。
これは推測だけども、艦娘に深海棲艦製の弾丸を撃ち込んだらその弾丸が成長して深海棲艦になるっぽい?そして中でも怨念が強いと姫級とかが出てくるのかな?
エピローグだから魔神提督の大反撃はもう起こんない感じだね。
まエピローグの途中ですが、ここまで読ませていただいて何度か泣かされました。本当に良い作品をありがとうございます!
297 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:43:17.09 ID:CV0FGmfpo
それでは、最後です。
298 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:44:32.18 ID:CV0FGmfpo
* 本営 *
不知火「……以上、ご報告いたします」
新元帥「ご苦労だった。相変わらず苦しい戦況か……」
不知火「はい。しかし、それよりも……」チラッ
テレビ『……以上、シンミン党本部より、喜びの声をお伝えしました。続きまして、惨敗した現政権の……』
新元帥「……俺たちの存続も危うい、か」
不知火「……」
新元帥「負け戦続きで海外の泊地も攻め込まれ、資材調達もままならない」
新元帥「かといって泊地を手放せば、いよいよ奴らの攻撃が本土にまで迫ってくる……」
新元帥「舞鶴の一件が引き金だったかな……」フゥ…
テレビ『……防衛大臣はこれまで、今の艦娘を主力とした海軍の必要性を訴えてきましたが……』
テレビ『今回の選挙結果は、それが改めて否定されたということになります……』
新元帥「……」
不知火「……」
299 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:45:18.05 ID:CV0FGmfpo
新元帥「不知火。我々の任務は変わらない」
不知火「はっ」
新元帥「引き続き、深海棲艦の邀撃と、泊地の防衛に当たってくれ」
不知火「承知しました」ビシッ
クルッ スタスタ…
扉<パタン
新元帥「……」
テレビ『未だ謎の多い深海棲艦なる勢力が制海権を広げる中……』
テレビ『艦娘と呼ばれる女性たちがその戦線に立つことに多くの国民が疑問を抱いていました……』
テレビ『今回の選挙によって、民意は大きく艦娘不要論に傾いたことがうかがえます……』
新元帥「……」
テレビ『……新政府与党は、今回の選挙で国内海外に駐留する海軍と、その支配下の艦娘をすべて撤退させ……』
テレビ『海軍を解体、それに代わる組織を編成し、艦娘を国防に従事させる公約を掲げてきました……』
新元帥「……」ピッ
テレビ「」プツン
新元帥「……」
300 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:46:02.28 ID:CV0FGmfpo
* 本営 埠頭 *
不知火「……」スタスタ…
不知火「!」
若葉(中破)「……不知火……!」
不知火「若葉……! 無事でしたか……!」
若葉「……ああ。やっとだ……やっと、五月雨のかたきが取れた」ニコ…
若葉「だが……」
不知火「……」
若葉「また、近くの鎮守府が襲撃された。軽巡棲姫の仕業だ」
不知火「……あの人も、まだ司令の影を追いかけ続けているのですね」
若葉「ああ。提督を求めて単身で鎮守府へ攻め込んでは、その鎮守府の司令官を殺害する……『提督』ではないという理由でな」
301 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:46:47.03 ID:CV0FGmfpo
若葉「若葉たちのかつての提督は、もうこの世界にはいないというのに」ゴソ
不知火「……」
若葉「……」カチン シュボッ
不知火「……煙草ですか。怪我に障りますよ」
若葉「一服だけさせてくれ」ライターサシダシ
不知火「?」
若葉「若葉は、みんなの無念を晴らしたい。かたきを取りたくて戦っている」
若葉「このライターも、誰かの形見だ……これで、やっと報告できると思ったんだ」
不知火「……献杯ならぬ、献煙、ですか」
若葉「……」スパ…
若葉「しかしだ……こうやって誰かの無念を晴らしても、それ以上にまた別の新しいかたきが増えていく」
若葉「すべてのかたきを取る日は、くるんだろうか……」フー…
不知火「……」
302 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:47:32.05 ID:CV0FGmfpo
若葉「……すまない、湿っぽくしてしまったな」フラ…
不知火「!」
若葉「大丈夫だ、一人で歩ける。不知火も任務があるんだろう? 手遅れになる前に、行ってきてくれ」
グニャ
不知火「……?」
グニャグニャア…
不知火「?? 空間が、歪んで……!?」
若葉「不知火……!?」
(不知火の周囲の景色がねじ曲がり、球状の薄い膜が出来上がると)
若葉「不知火っ!!」
パチンッ!!
(風船が割れたときのような甲高い炸裂音が響いて)
(次の瞬間、不知火の姿が消えている)
若葉「……し、不知火っ!!」
若葉「な、なんてことだ……!」
303 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:48:36.64 ID:CV0FGmfpo
* ??? *
不知火「……こ、ここは?」キョロキョロ
(中世の王宮の大広間のような場所)
不知火「……」
不知火「……」
不知火「……」ピク
不知火(背後に恐ろしい気配が……!)ゾワッ
クルッ
提督「よお、不知火」
不知火「……!!」バッ
提督「!」
不知火「……あ、あなたは……司令、ですか……!?」
提督「……ふん、お前にここまで警戒されるとはな。俺もだいぶ変わっちまった、ってことか」
不知火「……」
304 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:49:17.34 ID:CV0FGmfpo
提督「いいさ、俺はこの変化に後悔はしていない。なるべくしてなった、こうなることを俺は選択したんだ」
提督「今の俺なら、お前を殺すのも躊躇しないだろうな。だからこそのお前の態度なんだろうが……」
不知火「……っ」ジリッ
提督「そう身構えんな……っつっても、無理矢理こんなとこに呼び出してちゃあ当然か」
提督「少なくとも俺はお前を手にかける気はない。話をしに来たんだ」
不知火「話……ですか」
提督「ああ、不知火。お前も、こちら側に来い」
不知火「!」
提督「俺がお前を呼び寄せたのは、それを伝えたかったからだ」
提督「人間どもはお前らの奮戦に感謝もせず、それどころか、お前らを支援する人間どもすら厄介者扱いしているじゃねえか」
提督「お前がこれ以上人間に与したところでいいことがあるのか?」
提督「艦だったころとは人間の質が違う。かつてのように、お前たちの帰りを待つ者も、お前たちの無事を願う者もあまりに少なくなった」
305 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:50:01.53 ID:CV0FGmfpo
提督「不知火。お前は何のために戦う? 報われもしないのに血と汗を流して、それでいいのか?」
不知火「……不知火は……!」
提督「……」
不知火「……」
提督「そうか。なら好きにしろ。邪魔はしねえよ」
不知火「司令……!?」
提督「そんな顔して即答できないくらい悩んでたんじゃ、こっちに来たくないか、来ることができない余程の理由があるんだろ」
提督「不安要素抱えたままこっちに来たんじゃあ、いざって時の判断力が鈍る。そういうのはよろしくねえ」
不知火「……申し訳、ありません」
提督「いいさ。不利も無理も承知で足掻きたいって姿勢、少し呆れてもいるが、お前らしいとも思う」
提督「だから俺たちはお前には手を出さねえよ。こいつはお前たちの戦争だからな」
不知火「司令……」
提督「……ただし。それはお前が戦えている間の話だ」
不知火「!」
306 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:50:47.10 ID:CV0FGmfpo
提督「俺たちは、この世界に戻り、人間どもを駆逐する気でいる」
不知火「な……!!」
提督「俺はもともとこちらの世界の人間だった。だからこそ、けじめをつけてやろうって考えてる」
提督「お前が海に沈んだとき。お前が戦うすべを失ったとき。お前が人間に絶望したとき……!」
提督「そのときは、俺たちはお前のすべてを攫いに行く」
不知火「……っ」
提督「……そうだな、最後に懐かしい顔に会わせてやるか」
コツ…コツ…
不知火「……! あ、あなた方は……!」
大和「お久し振りです……!」ニコッ
扶桑「不知火は、立派になったわね……!」ニコッ
不知火「大和さんと、扶桑さん……!? ご、ご無沙汰、しております……!」
不知火「それにしても、そのお召し物は……? 艤装は失われてしまったのですか?」
提督「……」
307 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:51:32.07 ID:CV0FGmfpo
山城「姉様!」
タタタッ
山城(深海化)「姉様……アラ、モシカシテ、不知火……?」
不知火「山城さん……!?」
山城「何シテルノヨ、私ト姉様ノ顔ヲ、何度モ見比ベテ」
提督「山城の姿に驚いてんだよ。別れたときはまだ深海化してなかったろ」
山城「ソウイエバ、ソウダッタカシラ」
提督「でだ……なあ不知火? なんでこの二人は、深海化してないと思う? なんで艤装がないと思う?」
不知火「……」
不知火「……あ」ビクッ
不知火「……ま、まさか……!!」
不知火「お二人は……メディウムに……!?」
提督「その通り。大和も扶桑も、艦娘じゃなくなったんだ」
308 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:52:17.11 ID:CV0FGmfpo
提督「覚えてるか? 吹雪は、文字通り吹雪を呼ぶようになったよな」
提督「大和と扶桑の名前の付け方の法則は何だったかな」
不知火「……国名……」
提督「そう、国だ」ニヤリ
提督「お前が舞台から退場したら、この二人に出番をくれてやろうと思う」
不知火「……っ!!」
提督「わかるよな? 人間どもの最期を締めくくるのに、最高だと思わねえか」
不知火「……あ、あなたは……っ!!」
提督「言ったろ? お前が戦えていればいいんだ」
提督「お前が戦えている間は、俺たちは手を出さない。それだけの話だ」
不知火「……」
提督「できれば、こいつらに出番がないのが一番望ましいんだがな?」
ニコ「そんなこと、これっぽっちも思っていないくせに」スッ
不知火「ニコさん……!」
309 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:53:02.17 ID:CV0FGmfpo
ニコ「久しぶりだね、不知火。ディニエイルが君のことを気にかけていたよ」ニコッ
不知火「そ、そうですか……」
如月「もう、心配していたのは彼女だけじゃないわ?」スッ
不知火「如月……!」
如月「不知火ちゃん、久しぶりね。もういい加減、むこうには見切りを付けたら?」
不知火「……っ」
如月「若葉ちゃんもそうだけど、いつもぼろぼろになるまで頑張ってるでしょう? 心配してるのよ?」
不知火「……」
ニコ「不知火?」
不知火「申し訳ありません、司令。不知火はまだ、そちらには行けないようです」
提督「……ほう?」ニヤリ
不知火「不知火は、まだ、諦めきれません。まだ戦えます。戦い抜いて、この戦争を終わらせます……!」
提督「……そうか」
(提督が手をかざすと、何もない空間に扉が現れる)
310 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:54:17.43 ID:CV0FGmfpo
提督「その扉をくぐれば、元の場所に戻れる」
提督「俺たちは、お前に手を貸すことはない。ただ、お前の検討を祈るとしよう」
不知火「……」
提督「だから精々頑張りな、悔いが残らないように……お前の戦争を終わらせるといい」
提督「後のことは何も心配するな。最悪の状況になったら、全部俺たちに任せておけ」ニヤリ
不知火「……っ」ギリッ
不知火「行って、参ります……!」
ダッ
扉<バシュンッ!
(不知火を異世界に転送した扉が、音とともにはじけて消える)
如月「あーあ、不知火に睨まれちゃったわ。やん、怖い怖い」
扶桑「提督? 少し、不知火に強く当たりすぎではありませんか?」
提督「いいじゃねえか、反骨心があって……どんな魂に育つか、俺は楽しみだぜ?」
311 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:55:02.39 ID:CV0FGmfpo
ニコ「もう、そうやってぼくたちに手が付けられなくなったらどうする気?」
提督「その時はその時さ」ジワ…
(提督の姿にもやがかかり、口元に牙をのぞかせる)
提督「俺ガ喰エバイイ。ソレデ終イダ」
大和「まあ。提督が直々に? なんて羨ましい」ウフフ
提督「なんだ。そんなに俺のメシになりたいのか?」シュッ
大和「はい、提督とひとつになれるんですよね?」
提督「フン、お前にはまだ働いてもらわなきゃいけねえからな。もう少し我慢しな」
山城「ナニヲ唐突ニ、イチャツイテルンデスカ」イラッ
扶桑「ふふっ、山城? 嫉妬してるの?」
山城「シテマセン」
ペタッペタッ
伊8(深海化)「提督」スッ
提督「よう、戻ってきたか。どうだった?」
312 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:55:49.52 ID:CV0FGmfpo
伊8「青葉サント話シテキタケド、ミンナ準備デキテルミタイ」
由良(深海化)「何人カハ、コッチニ合流シタイッテ言ッテタワ」
提督「そうか。連中に会うのも久々だな」
由良「提督サンニ会エルノヲ、ミンナ楽シミニシテルミタイネ……フフッ」
朝潮(深海化)「司令官! 北方海域ノ深海棲艦勢力トノ交渉、無事成立致シマシタ!」ビシッ
朝潮「防衛ノタメ、攻撃時ノ援護コソデキマセンガ、撤退時ノ救援ハ約束シテイタダケルコトニナリマシタ!」
提督「よし。後ろから撃たれないための最低限の約束はできたな」
ニコ「魔神様。メディウムのみんなも、準備はできているよ」
提督「そうか。久々だな、こんなでかい戦いは」
ニコ「……楽しそうだね、魔神様」
提督「ああ、楽しいな。人間どもが、自分で自分の首を絞めるさまは、何度見ていても飽きねえぜ」
提督「あの国の政府がひっくり返った。これまで深海の連中をかろうじて抑えてきた艦娘を、あいつらは全員武装解除させるつもりだ」
扶桑「まあ。提督、それってもしかして」
313 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:56:32.29 ID:CV0FGmfpo
提督「そうだ。不知火にも、戦うなと指示が来るはずだ。その瞬間、不知火はどう思うだろうな……」
提督「そしてその後、不知火がどんな行動に出るか……見ものだと思わねえか?」ニヤリ
如月「だから、不知火が戦えなくなったら、って言ってたのね」ニィッ
大和「提督はお戯れが好きですね」フフッ
扶桑「不知火は、大人しく武器を捨てて、人間が狩られることを選ぶかしらね……?」ニヤァ
山城「拒否スレバ人間ノ反感ヲ買ッテ、マスマス艦娘ノ立場ガ悪クナルンデショウネ。アァ、不幸ダワ」ニタリ
ニコ「あとは海軍そのものが独立勢力になれるかどうか、だけど……国家を敵に回すも同然だろうから、苦しいだろうね?」
提督「だろうな」
ニコ「どの道、不知火は『詰み』だったってことだね」
提督「いいや、詰んでるのは新政府の甘言になびいた連中さ。不知火はそのトリガーに過ぎねえよ」
提督「俺の贔屓目もあるが、不知火は今も必死に戦っている艦娘の一人だ」
提督「その働きも認められずに処分されようものなら……全部、ぶっ潰したくもなるよなあ?」
全員「「……」」ウナヅキ
314 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 10:57:17.35 ID:CV0FGmfpo
提督「もうじき、海から艦娘が消える」
提督「人間に尽くしてきたあいつらが、人間によって滅ぼされるんだ」
提督「それでも艦娘は、健気に人間のために戦い尽くして、潰えていくんだろう」
提督「だからこそ、艦娘が戦える間は、人間に手出しはしないし」
提督「だからこそ、艦娘が消えた後は、人間どもに容赦はしない」
提督「全員に、晩餐会の準備をしろと伝えろ」
提督「不知火が絶望の淵に沈んだ時が、開始の合図だ」
提督→魔神「さあ、人間狩りを始めるぞ」
提督「鎮守府が罠だらけ?」 END
315 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 11:03:06.65 ID:CV0FGmfpo
だらだら書き連ねましたが、これ以上は書き綴る話がない、ということで、これで完結です。
エンディングは悩みましたが影牢ベースに、提督が魔神になって世界を追い込むストーリーに仕立てました。
今回書き上げたシーンの他にも、例えば、
提督の足跡を求めて、提督の故郷を訪れた大淀と初雪がひどい目にあって村を滅ぼしたりとか、
摩耶が金剛型がどうなったか調べていくうちにいろいろやばい事態が展開していったりとか、
軽巡棲姫が狂気ををまき散らして人間にも伝播していったりとか、明石と北上がグレて単独勢力作ったりとか、
一部の艦娘が戦うことをやめて民間人になったが、政権交代によって、元も含めて艦娘が全員拘束対象になる事態が発生し、
棋士に転職したL提督と同じく民間に入って一緒に暮らしていた香取が捕まるニュースがテレビで流れたりとか、
さらにそれを見ていた那智が、働いていたラーメン屋の店長から「逃げてくれ」とお金を渡されて逃亡劇が始まる、とか
深海化して鬼化した那珂と姫化した神通が、理性にしがみついて深海化を拒む川内をねちねちと言葉責めしたりとか、
書けそうなネタは沢山あったのですが、延々とバッドエンドばかり描き続けたくないので、
特に重たいところというか重要なところだけピックアップした次第です。
それから、対立の構図として、
・提督+艦娘→メディウム
・提督+艦娘+メディウム→海軍&深海棲艦
・深海棲艦+メディウム→海軍+艦娘
・艦娘+フォージド→深海棲艦+メディウム
・艦娘+深海棲艦+メディウム→魔神(提督)
といった感じに一通り描こうと思うと、こういう話の展開にしなければならず。
全方向的なハッピーエンドを望んでいた人には申し訳ありませんが、
こんな影牢らしい結末になってしまいました。
提督の最後の台詞も、その世界を象徴した台詞にしたので、これはこれで話としては綺麗に収まったと思っています。
ここまで読み続けていただいた方に感謝を。
そして、
316 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 11:04:52.76 ID:CV0FGmfpo
続きです。
.
317 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 11:06:17.07 ID:CV0FGmfpo
……。
……。
……誰かな? 僕を呼ぶのは……。
『我が声に応じてくださりありがとうございます』
僕を呼んだのは君かい?
『はい。私は、エフェメラと申します』
世界の最後まで、見せてもらったよ。
君が、この結末を描いたのかい?
「いいえ」
『……!』
誰……!?
「望んだのは愚かな男」
「自らの権力欲のために、我が子を因果の生贄に差し出した男」
エフェメラが、もうひとり……!?
『……』
318 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 11:07:02.70 ID:CV0FGmfpo
「そしてそれを望まずして為したのは、人の憎悪と傲慢と不条理を一身に受けた、生贄の子」
「希望の藁を握りしめたまま絶望の深淵に沈み……」
「人ならざる者たちの力を借りて生還した……」
「昏き海と魔を統べる神に祝福されし忌まわしき子」
……。
「男が混沌を生む」
「その目論見は正しかった」
「更に好都合だったのは、番いの女が海の魔物に襲われたこと」
「その身に宿した深淵の災禍の力を、我らが神が欲したのです」
……神が欲した?
「はい」
「極上の贄として、喰らうために」
……。
319 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2020/12/06(日) 11:07:47.50 ID:CV0FGmfpo
「ですが、その魂は、私の目論見を超えてしまった」
「供物になるはずだった子羊が」
「その男をも飲み込む狼になったのは、私にも予見することができなかった」
「魔神様は、贄の子の肉体と同化して、現世に降臨なさいました」
「そして世界は、少しずつ絶望に蝕まれ、光を失いながら緩やかに終焉を迎えるだけになった……」
「魔神様が世界そのものとなる」
「私も、それを待つのみとなりました……!」
……それが、君たちの望みだと言うんだね?
『いいえ』
……君は違うのかい?
『私は……私たちは、魔神様に造られし自動人形(オートマタ)……』
『そこにいるエフィメラは、魔神様が統べる世界を望むもの』
『私は、魔神様が望む未来を望むもの』
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