桃子「私のサンタさん」

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1 : ◆W56PhqhW.M :2017/12/25(月) 04:26:30.17 ID:eVTNZvKo0
前作

静香「未来はサンタさんに何をお願いしたの?」未来「へ?」(ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1513683394/)

のサイドストーリーてきなやつです

端的に言えば、桃子がサンタさんを信じていない話です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1514143589
2 : ◆W56PhqhW.M :2017/12/25(月) 04:29:59.33 ID:eVTNZvKo0
 近々、劇場でクリスマスパーティをするらしい。

 俺がその情報を得たのはほんの数日前。クリスマスの装飾をしている最中に、この劇場のアイドル———佐竹美奈子からそう提案されたのだ。本来はこちらからクリスマスパーティの企画を持ち寄るつもりであったが、アイドル主体のパーティというのもおもしろいと思い、この件はアイドルたちに一任することにした。

 最初は美奈子とその周辺のメンバーが準備をしてくれていたのだが、噂は広がり、今ではほぼ全員が手伝いに参加している状況だ。各々の得意なことを活かし、装飾、料理、出し物、などただの身内パーティで終わらすには勿体ないほど豪勢なものが出来上がりつつある。アイドルたちが、パーティを楽しいものにしたいと思う気持ちを、すぐに仕事に結び付けて考えてしまうのは俺の悪い癖だろうか。
3 : ◆W56PhqhW.M :2017/12/25(月) 04:31:11.30 ID:eVTNZvKo0
 そんなことを考えているうちに、あれよあれよと日は過ぎ去りパーティ当日、24日になった。天井まで届きそうなクリスマスツリー、壁一面の切り絵、ツリーに負けないくらいの高さを誇るクリスマスケーキ、テーブルいっぱいに並べられたサンタコスチュームの茜ちゃん人形…… は違うか。劇場の小さな一室が、無限大の夢が詰まったテーマパークへと変化を遂げた。

 会場を見渡す。本当によくぞこれまで立派な会場を準備してくれたと思う。この絵は可奈が描いたもので…… こっちのは育か…… それとこの良く分からないのは…… 静香だな。

 会場一つにつけても、アイドル一人ひとりの個性が眩しいくらいに光を放っていて、これを見れただけでも全員のスケジュール調整を頑張った甲斐があったと思う。あとはこの輝きが連鎖反応を起こして相乗効果を生み出すようにするのが俺の仕事だ。無限の可能性に興奮を覚え、年甲斐もなくワクワクしてしまった。
4 : ◆W56PhqhW.M :2017/12/25(月) 04:32:11.81 ID:eVTNZvKo0
 部屋の鑑賞を続ける。本当にどれも面白いものばかりだ。しかし、まつりが未来に馬乗りになっているものだけは良くないのだろうか…… 後で未来は説教だな。

 一つの絵を見つける。母親と父親に挟まれて嬉しそうにしている女の子の絵だ。プレゼントを貰って嬉しそうにしている。この絵を描いたのは、

「あ、こんな所で何してるのお兄ちゃん?」

突然、背後から声をかけられ振り向く。声の主は周防桃子、765プロライブシアターの一員で、この絵を描いた張本人だ。

「何を面白そうに見ているのって、あっ……」

桃子の顔が僅かに暗くなる。それもそうだ。彼女の家庭事情は決して円満とはいえないものである。少々焦りを含んだ声で続ける。
5 : ◆W56PhqhW.M :2017/12/25(月) 04:33:09.58 ID:eVTNZvKo0
「へぇ〜 いい絵だね。誰が描いたんだろうね? 育とかかな?」

周防桃子を深く知らない人間なら見逃していた違和感だろう。しかし、俺はこれを見逃さず、そして確信に至った。この絵を描いたのは間違いなく桃子だ。99%の予想が100%の確信に昇華した。俺は気づいていないふりをする。

「そうだな。俺も全然分からないけど、みんなが集まった時に聞いてみるよ」

「お兄ちゃん、せっかくのパーティなのに犯人捜しみたいなことしちゃ空気を悪くしちゃうよ。知らないからこそ、いいこともあるんだよ」

「そう言われちゃしょうがないな。この件に関しては胸の中にしまっておくよ」

 そう言うと桃子は安心したのか、頬を緩ませた。しかし、俺の頭の中では依然、バツの悪そうな桃子の顔が消えることはなかった。
6 : ◆W56PhqhW.M :2017/12/25(月) 04:33:57.48 ID:eVTNZvKo0
それから程なくしてアイドルたちは全員集合しパーティは始まった。企画までしっかりと練られていてビンゴ大会や、プレゼント交換など楽しいものばかりだ。俺はというとこの日のために準備してきたプレゼントを皆に配っている。子供組はもちろんのこと、大人組には特に喜んで貰えたみたいでよかった。そして次は、桃子の番だ。

「メリークリスマス、桃子。俺からのクリスマスプレゼントだ」

「お兄ちゃん、みんなの分準備したんでしょ? 大変じゃなかった?」

「いや、みんなの喜ぶ顔が見れると思うと全然苦じゃなかったよ」

「随分自信家だね。呆れた。それにしても……」

桃子は俺の姿をジロジロと見る。
7 : ◆W56PhqhW.M :2017/12/25(月) 04:35:24.54 ID:eVTNZvKo0
「あはははは! お兄ちゃん、サンタの格好全っ然にあってないね!」

「うぐっ…… まぁ分かってたけどさ……」

「これ見て似合ってるなんて言ってくれる人は誰もいないんじゃない?」

思い返してみれば、確かに誰にも言われてないような…… いや、星梨花だけは言ってくれたような……?

「うっせえな。そんなこと言うならプレゼントは没収するぞ」

「!! 嫌だよ、これはもう桃子のだもんね♪」

「ははは、冗談だよ」

桃子にプレゼントを渡し終えて、俺はまだ渡せてないアイドルたちに残りのプレゼントを配った。全て配り終えるころにはもう十分な時間になっていた。大人組が二次会の予定を立てているのをよそ目に、俺は未成年組を家まで送り届ける。
8 : ◆W56PhqhW.M :2017/12/25(月) 04:36:27.41 ID:eVTNZvKo0
「プロデューサーく〜ん! 終わったらいつものところ行くわよ〜!」

俺は分かりました、と告げるだけして送迎の準備に取り掛かる。音無さんや青羽さん、社長と協力して、家までの距離や年齢を考慮し、順番に車で送り届けていく。そして最後の一人となった

「悪いな、杏奈。最後になってしまって」

「ううん…… 杏奈、いつも遅くまで起きてるから…… 大丈夫です」

「何度も言ってるけど夜更かしはあまりしないようにな…… サンタさんは眠っている良い子のもとにしか来ないんだぞ?」

「大丈夫…… お母さんが、昼間においてくれる……」

こいつ、確信犯か。こういう媚びの売り方は芸能界でも使えるのだが…… 複雑な気持ちだ。
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