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柊志乃「前夜祭」
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1 :
◆K5gei8GTyk
[saga]:2017/12/25(月) 00:00:12.14 ID:qZxm5qP90
地の文有りモバマスssです。
誕生日おめでとうございます。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1514127605
2 :
◆K5gei8GTyk
[saga]:2017/12/25(月) 00:00:48.15 ID:qZxm5qP90
アイドルに貴賤はない。
年齢、性別、出身や売り出し方まで、アイドルというものには今や星の数ほどの多様性がある。
その魅力は実際に間近で体験しなければ、数値や書面からではとても計り知ることができない。
もしかするとその存在は比喩に留まらず、本当の意味で星なのかもしれなかった。
アイドル達の持つそのひかりが、彩り鮮やかに輝き、応援する人を照らし出してくれるのだから。
3 :
◆K5gei8GTyk
[saga]:2017/12/25(月) 00:01:42.70 ID:qZxm5qP90
だから、アイドルに貴賤はない。誰もが誰かの憧れであり、心のよりどころなのだ。
4 :
◆K5gei8GTyk
[saga]:2017/12/25(月) 00:02:21.77 ID:qZxm5qP90
明日のタイムスケジュールを確認する。
本当はもう頭のなかに入りきっているけど、その上でも念には念を入れて。
窓の外を見ればしんしんと夜が更けていて、ガラスの縁は微かに結露していた。
今、事務所にはおれしかいない。
エアコンが鈍く唸る以外はなんの物音もしない、静かな空間だった。
時計は午後九時を指している。
5 :
◆K5gei8GTyk
[saga]:2017/12/25(月) 00:03:03.71 ID:qZxm5qP90
「ああ」
背もたれに身体を預けて、力なく声を上げる。
昼から通しでリハーサルがあって、その足で事務所に帰り着いたから、かなりこたえた。
本来は明日に備えて休息を取るべきなのに、どうも落ち着くことができなくて、いっそ事務所にいる方がましだった。
6 :
◆K5gei8GTyk
[saga]:2017/12/25(月) 00:03:46.00 ID:qZxm5qP90
その時、事務所の扉が控えめにノックされる。
「お疲れさまです」
少しだけ開いた扉から顔を覗かせたのは彼女だった。
「明日の忘れ物でもしましたか、志乃さん」
すぐに身体を起こして声をかけると、彼女の表情が綻び、小さくかぶりを振った。
「あなたがいるかな、と思って」
7 :
◆K5gei8GTyk
[saga]:2017/12/25(月) 00:04:32.47 ID:qZxm5qP90
暖かそうなニット帽を脱ぎながら、事務所のなかに入ってくる。
リハーサルとはいえかなり体力を消耗している筈なのに、当の彼女は飄々としていた。
「早く休んだ方がいいですよ」
「あなたこそ、こんな時間にどうしたの?」
「……おれは、なんといいますか、明日のことで心が落ち着かなくて」
「私のライブなのに?」
そう言って、悪戯っぽい笑みが浮かぶ。
おれはなにも言葉を返さず、ただ頷いた。
彼女はふい、と辺りを見回して、それからまたおれを見た。
「時間があるなら、一緒にお茶でもどうかしら」
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