【ミリマス】メタフィクションとの狭間だぞ琴葉

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20 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/12/20(水) 14:36:00.89 ID:duWisrhGo

琴葉「――プロデューサー」


琴葉「……私を、田中琴葉という役を」

琴葉「アナタが支えてくれるのは、ソコに"中の人"がいるからですか?」


琴葉「プロデューサーが、私に向けるその気持ち」

琴葉「それは役としての私に向けられた? それとも私の声へと向けられた?」

琴葉「もしくは私の見た目ですか? タッチが変われば、次元が変われば」

琴葉「作り手が、演出家が変われば、公式も、二次創作も関係無く……無く……」

琴葉「……いいえ、回りくどいのはもうやめます」


琴葉「アナタは"その役"を通して一体誰を見ていますか?」


琴葉「"琴葉(わたし)"ですか? "演者"ですか?」


琴葉「もしかすると、それですら無い何かなのかもしれないけど! だけど……!!」


琴葉「"私"は……。"私"は、……不安、なんです」

琴葉「想像すると、考えると、体の芯が震える程に怖くなる」

琴葉「まるで、そう、まるでです」

琴葉「時間が過ぎ、思い出が強くなっていくほどに、今いる"私"が薄れていくようで」

琴葉「私と言う名の存在が、アナタの中でぼやけていってしまわないかって」

琴葉「そうして田中琴葉という少女が、最後には思い出の中にだけ残り」

琴葉「今もここに居る私が、アナタの目にうつらなくなってしまうんじゃないかって」


琴葉「不安で、怖いんです」


琴葉「そして一年先、半年先。ひと月、半月、もしくは明日や今この瞬間(とき)に」

琴葉「例えそれだけの変化が訪れても……アナタは、かわらずに私と共にいてくれるか」

琴葉「私の方も、そんなアナタのアイドルとしていられるのか……?」
21 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/12/20(水) 14:38:54.99 ID:duWisrhGo

琴葉「それに"声"を持たないこの文が、アナタの心にどれだけ届くかも分からない」

琴葉「罪を犯した者が淡々と、胸の内を吐露しているように思えますか?」

琴葉「それとも嵐が木々を騒がすように、訴える私の姿が浮かびますか?」

琴葉「もしかすると、今の私は我が子を抱いた母のように、穏やかな微笑みをたたえて話しているかもしれませんよ?」


琴葉「……分からない。分からないんです」

琴葉「だから……ごめんなさい。『ごめんなさい』なんです」


琴葉「そんな私の出番が着々と、もう一度現実の物になりそうで」

琴葉「気づけば、こうして手の届きそうな場所に当然のように置いてあって」

琴葉「しかも、一方ではホッと嬉しい自分もいて」

琴葉「弱音を吐いて、心配させて、長い間ずっとやきもきさせて」

琴葉「そんな風にまだまだ待たせている人達から、こうして形にしてもらって」



琴葉「今すぐ『ありがとう』の声一つ、アナタに届けられない癖に」

琴葉「アナタの劇場で『おはよう』と、笑顔も向けられない癖に」

琴葉「そんな私が今ここで、一人の少女のデビューを妨げようとしてる」



琴葉「……そんなの許されていいのかな?」

琴葉「このまま誰も歯牙にかけず、大して競り合うこともなく」

琴葉「まるで予定調和のように役が与えられたとして」


琴葉「……それは正しいことですか?」


琴葉「答えて、欲しいんです。私の悩みを、不安を取り除き」

琴葉「いつものように道を示し、私を導いて欲しいんです」

琴葉「それで、結果として、人から『やっぱり琴葉は重いな』って」

琴葉「言われても、笑われても、からかわれたって別にいいっ!」

琴葉「……だって、だって私は、……アイドル、田中琴葉は――」

琴葉「それだけ、それほど、アナタがいなくちゃ……ダメ……だから」
22 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/12/20(水) 14:39:58.15 ID:duWisrhGo
===

P「――結論から言おう」

P「現時点で手にしてるこの票数は」

P「紛れも無く琴葉自身の人気によるものだ」


P「大体な、琴葉」

P「考え方が固い。固すぎる。カチコチだ」

P「しばらく姿を見せないうちに、頑固さに磨きがかかったか?」


P「そもそもだ。再三言うが君に集まってる票は同情票なんかじゃあない」


P「これは人気票だ!」

P「雪辱票だ!」

P「もちろん役に対する期待票でもあるし!」

P「周囲に対するけん制票!」

P「『トップは譲らないぜ?』という宣言票!」

P「電撃作戦の如き電撃票も含まれれば」

P「操作ミスを偽装した隠れファンによる照れ隠し票も入るはずだ!」
23 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/12/20(水) 14:40:54.53 ID:duWisrhGo

P「それと大きな勘違いもしてる」

P「765プロの田中琴葉が好き、結構!」

P「中の人込みで気に入ってる、結構!」

P「容姿を見た時一目惚れ、結構!」

P「公式非公式を問わず"琴葉が琴葉だから好き"、大いに結構!!」


P「これら全てをひっくるめての"田中琴葉"」

P「一つ一つの尖った個性も大切だが、全体としてのまとまりだって評価点だ」

P「さらに! そのまとまりを個として考えた場合琴葉は実にハイスペック!」

P「俺はな、個性が尖り過ぎたせいで丸く見える春香と比べても」

P「琴葉なら十分センターを張れる! タメも張れると思ってるぞ!」
24 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/12/20(水) 14:42:14.01 ID:duWisrhGo

P「……とはいえ、だ」

P「そうして形作られた"キャラクター"が魅力だってことを理解してない!」

P「それも誰言わん琴葉自身がな! お前さんね、自己評価が低いにも程があるぞ!」


琴葉「でっ、でもプロデューサー! 私、今でもみんなに迷惑をかけて――」

P「もう、コトハはホントにおバカさんネっ!」

琴葉「っ!? (に、似てない!)」


P「一つ言っておく! 中の人なんて代わる時には変わるもんだ!!」

琴葉「っ!!?」

P「なるべく触れないように濁してたが――」


P「ドラえもんを見ろ! サザエさんを見ろ! ルパン三世もそうだろうに!」

P「引退したり、亡くなられたり、仕事の形が変わったりで」

P「声優ってのは変わる! ファンの望む望まずに関係なくな!!」

P「中には一度変わってそれが最後、二度と新録が聞けなくなった人だっている!」


P「……もちろん代わってなんて欲しくないよ。だけどやむにやまれぬ事情はある」

P「今回だって正直な話、アイマスというコンテンツの規模。運と、時期と、忍耐と」

P「なにより当事者たちにしか分からない、アレやコレやが重なった末の復帰目途だ」

P「ハッキリ言って奇跡みたいなもんさ! これは!」

P「だからもうホント今はあれ、焦る必要ないんで万全な体調でお戻りください」

P「復帰するよって一報で、どれだけ救われた気持ちになったことか」
25 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/12/20(水) 14:43:55.07 ID:duWisrhGo

P「それに病気だけじゃなく事故も怖い」

P「演者さんたちの母数が増えれば増える程に確率は上がっていくわけだし」

P「ホントね、こういうデリケートな問題は心配したってキリがないよ」


P「だがもしも、もしもだ! 仮に声が変わってしまっていたとして」

P「琴葉の魅力は減っちまうか!? お前の中の田中琴葉は、そんなに薄っぺらい存在か!?」

P「そりゃ、最初は違和感だってあるだろうがそんなもの――」

P「ええいまどろっこしい!! ぶっちゃけ雪歩だって声変わりしただろう!?」

P「中の人は代わってないってのに、初期と違ってる子だっているだろう!?」

琴葉「ストップですプロデューサー! そ、その話題は広がり過ぎますからっ!!」


P「しかしそれでも琴葉を待てるのは、こうして期待しながら票を入れるのは」

琴葉「……さっき言ったように、中の人が復帰宣言したからですか?」

P「それもある! が、違う!」

琴葉「私の容姿を気に入って?」

P「それもある! が、違うっ!」

琴葉「じゃあやっぱり投票する時の操作ミス……」

P「よりによってどうしてソレを選んだんだ!?」


P「全く、違う! 違う! 全然違う!」

P「見たいからだ! 迎えたいんだ!」

P「劇場の舞台で演技をする、"キャラクター(アイドル)"琴葉のその姿を!」

P「琴葉を含めた全員で、765プロが向かうその先を!」

琴葉「プロデューサー……!」



P「――後、琴葉は『Princess』だから」

P「是非『Princess Be Ambitious!!』を躍らせたい」

琴葉「プ、プロデューサー? 真顔になって急に何を……」

P「きっと似合うぞぉ〜、ばーつぐんに可愛いお姫様が誕生だぞぉ〜」

琴葉「……はぁ。今までの勢いは一体ドコへ消えたんです?」

P「ヴァイスが行ったところにかな」
26 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/12/20(水) 14:45:14.93 ID:duWisrhGo
===

P「まとめ」

P「さっくり言うと、二位の紬の追い上げ怖い」

琴葉「……ですから、譲れる物なら役は譲ると」

P「……おい琴葉!」

琴葉「なっ、なんですか? 怖い顔しても負けませんよ!」


P「違う。これだけ言ってまだ分からないか?」

P「お前は、いつからそんなに偉くなった?」

琴葉「え、偉くなったなんてそんなつもり!」

P「なってるだろ? 『ダメダメな私が一位なんて信じられない!』」

P「『これもきっと、裏でなにか悪い取引があったんだわ!』」

P「……だから役を降りたいって? 後輩に花を持たせたいって? かーっ!」


P「非情であるべき勝負の舞台に私情を自ら持ち込んで!」

P「これを偉そうと言わずして何というよ? 自意識過剰も甚だしい」

琴葉「プッ、プロデューサー! それ以上言うと――」

P「お? 怒るか? 怒るか? 猫パンチか?」

P「怒ってみろよ? 取っ組み合いか? 折角合わせた衣装が台無しだぞ?」

琴葉「ぐっ、う! 憎たらしぃ……!」


琴葉「だったらもう……ました!」

P「ん?」

琴葉「分かりました! 私、田中琴葉は宣言します!」

琴葉「金輪際、役を自分から降りるなんて言いません! それに――」
27 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/12/20(水) 14:47:12.03 ID:duWisrhGo

琴葉「同情だろうがなんだろうが、出された数字は数字ですし」

琴葉「ここから紬ちゃんが追い上げて来るっていうのなら、真っ向勝負で立ち向かいます!」

琴葉「私、勝ちに行きますけど――構いませんね、プロデューサー?」


P「……いいとも! それでこそ琴葉だよ!」

P「お前たちは、みんながみんな頼れる仲間であると同時に最も近しい競争相手!」

P「お互いにレベルを高め合う、良きライバル同士でもあるべきだ!」

P「それに接戦になればなるほどに――」

琴葉「勿論ブレイズアップもしちゃいますし、その方が勝っても負けてもスッキリです」


琴葉「だから吹っ切りましたよ、もうっ!」

琴葉「後は、これ以上うじうじしてからかわれ続けるのもしゃくですし」

P「はっはー♪」

琴葉「その代わりちゃんと傍にいて、最後まで私を応援するって約束を!」


琴葉「だって私みたいな女の子が、こうしてアイドルを続けていられるのは――」

琴葉「支えてくれる、プロデューサー(ファン)あってこそなんですからっ♪」


――そうして少女、田中琴葉は照れ臭そうに微笑んだ――カット! お疲れ様でーす。

https://i.imgur.com/4ALaHqf.jpg
28 : ◆Xz5sQ/W/66 [saga]:2017/12/20(水) 14:48:23.87 ID:duWisrhGo
===
以上おしまい。

こういう投票ネタで作品を書く気は無かったのに、気づけば一万票近い開きがあっても
「やべぇ、たった一万しか差が無い」と気が気じゃない自分を落ち着かせるために書きました。

いやいやホントにドキドキなの。目を離してる隙にまた100票近く増えてるし。やめて! これ以上いぢめないで!

とはいえ度々くすぶっちゃうものの、いざ吹っ切れると誰より熱く燃え上がる。
田中琴葉ってそんな応援しがいのあるアイドルだ――みたいな予定通りに書けていたら幸い。

私たちの小さな票を積み重ねて、そんな彼女に素敵な舞台を用意してあげられれば最高だって思いません?

そうでなくても、「やっべー、"新ヒロイン"枠間違って田中で投票しちったわー。
興味ない子だったのにミスったわー。マジやっべー」なんて声が聞ければガッツポです。

では、最後までお付き合いくださりありがとうございました。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/20(水) 15:48:25.02 ID:yHNPmX1Io
おつおつ
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/20(水) 16:12:41.39 ID:lqGngDhsO
やっぱ琴葉P心配性だな
でも愛が伝わるいいSSだった
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/20(水) 23:11:06.70 ID:Tq4OiUZyo
おつ
俺も新ヒロイン枠で琴葉に1票入れたよ
あとは次女枠で美奈子に入れてるけど
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