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久「あんたが三年生で良かった」京太郎「……お別れだな」

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579 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:26:11.17 ID:6u5ud7w80
んじゃ、そろそろスタートします
580 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:32:02.56 ID:6u5ud7w80


京太郎「ん〜……太陽が眩しいぜ」


「夜勤おつかれさん」

京太郎「お、今日は早いね」

「ちょっと早起きしちまっただけだ」

京太郎「はは、それで出勤早めるなんて真面目だな」

「どうせやることもないつまらない人間だよ」

京太郎「そう言うなよ。恋人とかいねーの?」

「生憎、遠距離だよ」

京太郎「おいそれと会いにも行けないな」

「お前は?」

京太郎「毎日会ってるよ」

「チッ、自慢かよ」

京太郎「まぁ、毎回病院じゃムードもへったくれもないけどな」

「病院?」

京太郎「ああ……俺のツレ、ちょっと体悪いんだ」


581 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:37:20.30 ID:6u5ud7w80



京太郎「おはようさん」

怜「んー、おそーい」

京太郎「そう言うなって。こちとら夜勤明けだ」

怜「今日のおみやげは?」

京太郎「べったら漬」

怜「なんでやねん」

京太郎「いや、近所のおばさんから東京土産だからってもらって」

怜「浮気?」

京太郎「うちの母親より年上だぞ。どんだけストライクゾーンが広いんだよ」

怜「はやりんは?」

京太郎「全然いける」

怜「ふんふん……ギルティやな」

京太郎「夢を見るだけならタダだろっ」

582 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:43:52.06 ID:6u5ud7w80


京太郎「……それで、具合は?」

怜「可もなく不可もなく?」

京太郎「なんで疑問系よ」

怜「見解の相違みたいな?」

京太郎「つまりあれか、大丈夫って言ってるのは自分だけと」

怜「や、実際問題あらへんし」

京太郎「やっぱり自己申告は信用ならねーな」

怜「じゃあ確かめて、どうぞ」

京太郎「えー、悪いのはここですかー?」モミモミ

怜「やーん、すけべー」

583 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:50:12.66 ID:6u5ud7w80


――コンコン


竜華「そろそろええかな?」

怜「もうちょい」

京太郎「おしまいだ」

怜「えー?」

京太郎「おとなしくしとけ。入院中だろ」

怜「む〜」プクー

竜華「あはは、フグみたい。突っついてもいい?」

怜「ハリセンボンやねん。触ると怪我するで」

竜華「はいはい、お土産持ってきたから機嫌直してなー」

怜「待ってました! ――って、なんでべったら漬やねん!」

竜華「近所のおばちゃんにもらって」

怜「ネタ被り!」


京太郎(というか、出処が同じなんだよなぁ)

584 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:54:47.88 ID:6u5ud7w80


怜「2セットももらってどないせいっちゅーねん」

京太郎「そりゃあ、ご飯のお供だよ。朝昼晩って」

怜「まさかのべったら漬漬けかい」

京太郎「ズケズケと言ってくれるな」

怜「んー、あんまおもろくないなぁ……やり直しで」

京太郎「なにぃ?」

竜華「……」プルプル

怜「竜華、お花摘みなら我慢せぇへんほうがええで?」

竜華「ち、ちがっ……」

怜「ならトイレ?」

京太郎「それどっちも同じな」

怜「言わぬが花」

京太郎「お花摘みだけに?」

怜「う〜ん……座布団一枚っ」

京太郎「よっしゃ」

585 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:05:13.60 ID:6u5ud7w80


竜華「ごめん、診察あるからそろそろ」

京太郎「ん、そうか」

怜「次は甘いのがええな」

京太郎「リクエストとは生意気な」

竜華「あはは……うん、次はケーキ買ってくる」

怜「おおっ、じゃあ楽しみにしとる」

竜華「先生の言うこと、ちゃんと聞いておとなしくしとること……ええ?」

怜「べったら漬を食べるぐらいならええやんな」

竜華「多分、それぐらいなら」

京太郎「それじゃ俺も……」

怜「えー? もう帰るん?」

京太郎「いや、お花摘み」

怜「その隠語はレディース専用やねん」

京太郎「んー……山へ芝刈りに、とか?」

怜「はい座布団没収ー」


竜華「……」


586 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:11:25.23 ID:6u5ud7w80



京太郎「しかし医者かぁ……あらためてすごいよな」

竜華「うん、頑張ったから」

京太郎「勉強も運動も麻雀も強くてすごい……というかやばいってのはよく聞いたけどな」

竜華「やばいって」

京太郎「安心しろ。やばいやつならなんでか知り合いによくいるから」

竜華「……須賀くん、トイレは?」

京太郎「お前を送ってからでもいいだろ」

竜華「別にうちは……」

京太郎「さっき、泣きそうだったろ」

竜華「――っ」

京太郎「勘違いだったら悪いけどな……俺には辛そうに見えた」

竜華「うっ、うぅ……」ポロポロ

京太郎「……もしあいつのことなら、話してくれないか?」


587 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:20:24.12 ID:6u5ud7w80



京太郎「……」


『……もうダメかもしれへんって』

『治療で進行を遅らせることはできても、改善はしてへんって……』

『入院も長いし、このままやったら……』


怜「大丈夫? 胸揉む?」

京太郎「それよりもギュってしていいか?」

怜「もち。スキンシップならウェルカム」

京太郎「ああ……」ギュッ

怜「んっ」


京太郎(俺になにができる?)

京太郎(もう先が長くないかもしれないこいつに、なにをしてやれる?)

京太郎(……いや、まだダメだって決まったわけじゃない)

588 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:30:08.46 ID:6u5ud7w80


怜「今日は情熱的やん」

京太郎「いつも心の中ではこんなもんだよ」

怜「やぁん、もしかしてケダモノになっちゃう?」

京太郎「ここが病室じゃなきゃな」

怜「じゃあお持ち帰りしてもよし」

京太郎「良くなったらな」

怜「はよ良くなれー、はよ良くなれー」

京太郎「よし、その意気だ」

怜「うーん、ニケツしたい!」

京太郎「退院したらな」

怜「じゃあ……結婚したい」

京太郎「……退院したら、盛大に式挙げようぜ」

怜「指輪は?」

京太郎「頑張って用意する」

怜「ならうちも頑張って治す」

京太郎「ちょっと飲み物買ってくるわ」

怜「ん……ふわぁ、うちはもう一眠りしとこかな」

京太郎「ああ、おやすみ」


589 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:37:13.50 ID:6u5ud7w80



京太郎「……くそっ」ガンッ


京太郎(何が退院したらだ……!)

京太郎(あんな言葉、ただの逃げじゃねぇかよ!)

京太郎(でもダメだ……あんなに辛いなんて)

京太郎(……泣けるなら俺が泣きてぇよ)


「あら、京太郎さん」


京太郎「……どうも、園城寺さん」

「そんな他人行儀な呼び方しなくてもいいんですよ?」

京太郎「はは……お義母さんはまだ早いですから」

「そんなことない……だってあなたは、もう何年もあの子の傍にいてくれたじゃない」

京太郎「俺は……なにもできないですから」

「いてくれるだけで十分ですよ」

京太郎「……」


京太郎(それでも、俺は……!)


京太郎「すみません、夜勤明けなんで失礼します」

「ごめんなさい、眠いところを引き止めてしまって」

京太郎「いえ。それよりも、今は寝てるんでそっとしといてやってください」


590 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:48:09.14 ID:6u5ud7w80



「よう、お疲れか?」

京太郎「ん、ああ……」

「今日も見舞い行ってたんだろ?」

京太郎「まあな……」


京太郎(ここ最近、あいつの前でちゃんと笑えてるか怪しい)

京太郎(ぎこちなくないだろうか……あいつに、心配をかけてないだろうか)

京太郎(知らないのなら、気取られるわけには……)


「ほら、飲めよ」

京太郎「悪いな……えっと」

「リュージでいい」

京太郎「あれ、そんな名前だったっけ?」

リュージ「昔から仲がいいやつからはそう呼ばれてんだよ」

京太郎「……ああ、苗字と名前から取ってるのか」


京太郎(なんか、ハギヨシさんみたいだな)

591 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:57:07.66 ID:6u5ud7w80


京太郎「じゃあ俺のことも京ちゃんでいいぜ」

リュージ「いや、気持ち悪い」

京太郎「当たり前だ。俺も男からそんな呼び方されたら気持ち悪い」

リュージ「はっ、今日も夜勤だろ? 居眠りしないようにな」

京太郎「そっちこそ、早起きしすぎて夜中に出勤するなよ」

リュージ「言ってろよ」


京太郎(……こういうの、なんか久しぶりだな)

京太郎(こっちに来てから、同年代のやつと付き合う機会が減ったしな)


「須賀くん、ちょっといいかい?」

京太郎「はい」

「……彼に、なにかされなかったか?」

京太郎「なにかって……コーヒーもらったぐらいですよ」

「そうか、ならいいんだ」

京太郎「なにかあるんですか?」

「その、あまり大きな声では言えないんだけどね……」


592 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 02:03:10.21 ID:6u5ud7w80



京太郎「暴力団、ね」


『あくまで噂なんだけど……暴力団と付き合いがあるって』

『もちろん噂は噂だけどね。ほら、なにか問題があった時に困るじゃないか』


京太郎「……だからなんだってんだよ」

京太郎「それだったら俺だって、極道の娘と友人関係だっての」

京太郎「まったく、つまんねーこと言いやがってよ」


怜「んん……もう昼?」


京太郎「なんだ、せっかく寝顔見てたのに」

怜「あかんなぁ、女子のすっぴんのぞくとか犯罪行為やで?」

京太郎「アホ、何回一緒に寝たと思ってるんだよ」

怜「はい、セクハラ発言いただきましたー」

京太郎「おっと、これは迂闊だったな」

怜「ふふん、出るとこ出たら大変なことになるやろな?」

京太郎「マジか……見逃してくれっ、なんでもするから!」

怜「ん? 今なんでもするって――けほっ、けほっ」

京太郎「おい、大丈夫かよ」

怜「けほっ……ちょい休めば――げほっ、げほっ!」

京太郎「明らかに酷くなってるだろ! 看護師さん呼ぶからなっ」


593 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 02:13:49.85 ID:6u5ud7w80



京太郎「……まだか」


『治療で進行を遅らせることはできても、改善はしてへんって……』


京太郎(あれじゃあ、改善するどころか……)


――ガラッ


京太郎「――っ、先生、あいつはっ?」

「容態は落ち着いて、今は寝ています」

京太郎「そうですか……」

「ただ、徐々にですが病状は悪化の傾向にあります」

京太郎「……やっぱり、そうなんですね」

「……清水谷先生から聞いていましたか」

京太郎「俺が無理に聞き出したんです」

「彼女は園城寺さんのために医師を志したそうですね……気の毒な話だ」

京太郎「なんで、もうダメみたいに言うんですか」

「入院してもう数年……投薬を続けていますが、病は徐々に進行している」

京太郎「じゃあ打つ手はないって言うんですか!?」

「ゼロとは言えません。しかし……」

京太郎「お金の問題だったらなんとかするし、俺にできることならなんだって……!」

「……金銭の問題でも、あなたにどうにかできることでもないんです」


「病気の完治の芽があるとすれば、それは……心臓の移植しかないんですよ」


594 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 02:22:31.94 ID:6u5ud7w80



京太郎「……なあ、清水谷」

竜華「なに?」

京太郎「心臓の移植って、難しいのか?」

竜華「……先生から聞いたんやね」

京太郎「まるで、移植には期待できないみたいな言い方だった」

竜華「正直、難しいと思う」

京太郎「難しい手術なのか?」

竜華「技術的にもやけど、まずドナーが見つからへん」

京太郎「誰でもいいってわけじゃ、ないんだよな」

竜華「うん……合わん臓器を移植しても、ダメになるだけやから」

京太郎「そうか……」フラッ

竜華「帰るん?」

京太郎「悪い、一人にしてくれ」


595 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 02:28:13.53 ID:6u5ud7w80
眠し……沈みます
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/16(月) 02:50:38.37 ID:6K/6Ze7eO
寝乙
597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/16(月) 21:38:24.67 ID:g77xl1D20
良い夢を見るのよ!乙!
598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/16(月) 21:52:01.58 ID:Cn46IvuA0
ここまでのヒロイン二人エンドはハッピーエンドにはならないからこれから先もと思うと読んでて辛い
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 07:27:38.86 ID:BHcbBcUA0
なんでや前回の久と照は割とハッピーだったやろが
京太郎が自身の何かを犠牲にする傾向が高いが
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 11:10:41.69 ID:LqlO70M10
乙です!
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 12:32:04.06 ID:XgRREifrO
ハッピーエンドが良いよね
602 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/17(火) 23:52:40.60 ID:qDH7AUeq0
こんばんはー
昨日はぐっすり寝たので今晩はやろうかと

もう少ししたら始めます
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 00:13:50.20 ID:D2b/MG0vO
お埋まってる
604 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 00:48:53.95 ID:soQ9kuNI0
危うく寝るとこだった……

んじゃ、始めます
605 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 00:53:25.30 ID:soQ9kuNI0



『……金銭の問題でも、あなたにどうにかできることでもないんです』

『病気の完治の芽があるとすれば、それは……心臓の移植しかないんですよ』


京太郎「はは……本当に、俺にできることってないんだな」

京太郎「カピの時で慣れたつもりだったんだけどな……」ドンッ


「おい、兄ちゃん。ぶつかったっちゅーのに挨拶もなしか?」


京太郎「ああ……悪いね」

「誠意、足らんとちゃうか?」

京太郎「なんだよ……金欲しいなら最初からそう言えよな」

「なに言うとんのや。わいは金なんてせびらん。あくまで兄ちゃんから渡してくるんや」

京太郎「……チッ、小悪党が」

「あぁ? 今なんつった!?」

606 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 00:58:51.64 ID:soQ9kuNI0


「そこまでにしとけよ」


「邪魔すんなや! 今はこのボケと――」

「いいから、黙って、引け」グイッ

「――っ、あんたは」

「上の方にもよろしく言っといてくれ」

「……しゃあないわな。入院はごめんや」


「おい、もう行ったぞ」

京太郎「ああ……助かったよ」

「えらく不景気なツラだな。パチスロでスったか?」

京太郎「俺に構うのはよして……リュージ?」

リュージ「なんだよ、気づいてなかったのか」


607 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 01:05:23.22 ID:soQ9kuNI0



リュージ「コーヒーでいいか?」

京太郎「できればスポドリがいい」

リュージ「はっ、奢ってもらう上にリクエストってか」ガコン


リュージ「ほらよ」

京太郎「……ちゃんと聞き入れてくれるお前もたいがいだな」

リュージ「そんな死人みたいなツラされたらな」

京太郎「……」

リュージ「……恋人に、なにかあったのか?」

京太郎「もうダメだって言われたよ」

リュージ「……無神経だったな」

京太郎「いい。別に何かが変わるわけじゃない」

リュージ「もう危ないのか?」

京太郎「いいや、そうは言われてない」

リュージ「なら、できることもあるだろうさ」

京太郎「わかんねぇよ……どうすればいい?」

リュージ「そんなの、俺にわかるわけないだろ」

京太郎「……だよな」

リュージ「噛み付く気力もなしか……仕方ねぇな」

608 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 01:10:53.42 ID:soQ9kuNI0


リュージ「ほら」

京太郎「あん?」

リュージ「番号ぐらい交換しても、損はないだろ?」

京太郎「ナンパかよ。気持ち悪いな」

リュージ「言ってろ」


リュージ「ったく……休みの日に辛気臭いツラ見せんなよな」

京太郎「休み? そうだったっけ」

リュージ「おいおい、そこまでかよ……お前もう帰って休んどけ」


609 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 01:18:12.85 ID:soQ9kuNI0



京太郎「……できること、か」

京太郎「こんなにも心が折れそうなのに、なにしろって言うんだよ……」


――ピンポーン


京太郎(こんな時間に……)

京太郎(面倒だし、居留守だな)

京太郎(……今はまともに対応できなさそうだし)


――ガチャ


京太郎「……あん?」

610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 07:01:06.06 ID:58qOYipZ0
寝乙どすえ
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 15:50:45.78 ID:0KHY8McY0
お?寝落ちか?
612 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 23:56:00.52 ID:soQ9kuNI0
寝落ちを繰り返す今日この頃

もうちょっとしたら始めます
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 00:12:27.07 ID:8/OEuYrzO
ザメハ
614 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 00:27:35.41 ID:f/Vld5IY0
まだ寝てないのに……

んじゃ、スタートします
615 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 00:35:40.65 ID:f/Vld5IY0


京太郎(カギを開けられた?)

京太郎(待て、合鍵を持ってる奴なんて――)


竜華「あ、やっぱり居留守してた!」


京太郎「お前、どうして」

竜華「結構前に、怜から秘密の合鍵だって渡されて」

京太郎「あいつ、人の家の鍵を勝手に」

竜華「……それだけ、須賀くんのことが心配ってことやん」

京太郎「……」

竜華「ご飯食べた?」

京太郎「食欲、わかなくてさ」

竜華「じゃあ待っとって。材料買うてきたから、台所借りるな」


616 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 00:43:11.72 ID:f/Vld5IY0



京太郎「ごちそうさま」

竜華「完食やん。お腹すいとったんやね」

京太郎「それか、コックの腕が良かったのかもな」

竜華「おだてたってなにも出ぇへんからね?」

京太郎「そりゃ残念」

竜華「洗い物するから、テレビでも見ててなー」

京太郎「……どうして、来たんだよ」

竜華「須賀くん、まいっとるんやないかなって」

京太郎「お前もそうだろ」

竜華「うん、だから……どない辛いかわかる」

京太郎「……」


竜華「さ、湿っぽい話は終わり終わり。食器片付けたらお茶入れるから」

京太郎「手伝うよ」

竜華「ええから座ってて」

京太郎「客に全部やらせるのはさすがにな。ま、今更だけど」

竜華「ふふ、ホンマにな」


617 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 00:48:04.65 ID:f/Vld5IY0



竜華「それじゃあ、うちそろそろ帰るな」

京太郎「ありがとな」

竜華「少しは元気出た?」

京太郎「ああ、食べた飯の分は」

竜華「それなら作った甲斐あるわぁ」

京太郎「……」ガシッ

竜華「……え? 須賀くん?」

京太郎「悪い、もう少しいてくれないか? 今は一人になるのが、怖いんだ」

竜華「……うん」


618 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 00:55:42.88 ID:f/Vld5IY0



竜華(はっきり言うと、それは未練でした)

竜華(もう大分前に終わったと思っていた初恋の火は、未だに燻っていて)

竜華(それを自覚した頃には、もう手遅れで)


竜華「今だけでええから、竜華って呼んで……?」

京太郎「ああ……竜華」

竜華「京くん……京くん京くんっ」


竜華(うちと、須賀くんは……)


619 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 01:01:12.05 ID:f/Vld5IY0



竜華「――」スゥスゥ


京太郎「なにやってんだ、俺は……」


京太郎(ずっと長い間ご無沙汰だったってのはある)

京太郎(不安で不安で誰かに傍にいて欲しかったってのもそうだ)

京太郎(だけど……こんなのあいつに対する裏切りじゃねぇかよ)


竜華「ん、んん……あれ、知らん天井」

京太郎「清水谷……」

竜華「須賀くん……?」

京太郎「昨日の夜は、すまなかった」

竜華「ああ、そか……うち、須賀くんと」

京太郎「俺は、自分の不安を紛らわすために、お前を……」

竜華「……うん、せやったらお互い様」


竜華「昨日の夜のことは、ただの夢……それでええやんな?」

京太郎「……お前がそう言ってくれるなら」


京太郎(……なんて言ったが、割り切ることはできそうにない)

京太郎(あいつへの罪悪感が、突き刺さったままだからだ)


620 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 01:11:05.01 ID:f/Vld5IY0



怜「むぅ、なんか今日は不景気顔」

京太郎「世相ってのが顔に出ちゃうタイプなんだ」

怜「なんやそれ新しい」

京太郎「ここで名言……人の顔は世相を映す鏡である」

怜「んー、自分で名言とかないわぁ。座布団没収」

京太郎「くっ……どうせ椅子だから痛くも痒くもないけどなっ」

怜「じゃあ椅子没収」

京太郎「おいおい、お上の横暴にはさすがの農民も黙っちゃいないぜ?」

怜「せやったらお城に招待やで」ポンポン

京太郎「お邪魔しますよー」

怜「農民ちょろっ」

京太郎「農民たるものお上の暮らしに憧れ抱いてるんだよ」

怜「しかしここでトラップカード発動!」

京太郎「罠だったのかよっ」

怜「毒を盛られて身動き取れへん農民は、あわれ城主の抱き枕に……!」

京太郎「なんだ、そんな罠だったら――」


『今だけでええから、竜華って呼んで……?』

621 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 01:15:05.24 ID:f/Vld5IY0


京太郎「――っ」ビクッ

怜「え……どないしたん? 手と手が触れても恥ずかしい年頃?」

京太郎「悪い、実は下痢してて」

怜「うーわー」

京太郎「実はいつ切り出そうか迷ってたんだけど」

怜「もうええから、はよトイレ行かんかい」

京太郎「アイルビーバック!」


怜「はぁ……まぁ、しゃあないわな」


622 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 01:24:17.77 ID:f/Vld5IY0



怜「っちゅーことがさっきあって」

竜華「あー……」

怜「一瞬また顔出したら、すぐ帰ってもうたし」

竜華「そればっかりは、須賀くんも仕事あるから」

怜「いちゃいちゃできんかった分、竜華の膝枕で埋め合わせてや」

竜華「はいはい、どうぞ」ポンポン

怜「あー、これやこれ」


怜「竜華が主治医やったら、きっと毎日が膝枕やな」

竜華「それで良くなったら万々歳なんやけど」

怜「これやったら京太郎もきっとイチコロやん」

竜華「あはは……うち、一回振られてもうたし」

怜「合い鍵、有効活用しとる?」

竜華「正直あんま使っとらんなぁ」

怜「ほほう、一度は使ったと?」

竜華「……怜、須賀くんとうちはなんにも――」

怜「あらへん、とは言わへんよね?」

竜華「――っ」

怜「……竜華、正直すぎとちゃう?」

竜華「……ごめん」

怜「まぁ、京太郎も不景気なツラしとったし……触ろうとしたら逃げたし」

623 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 01:29:58.11 ID:f/Vld5IY0


怜「せやけど……よかったぁ」


竜華「……え?」

怜「これなら、うちがいなくなっても安心やなって」

竜華「なんで、そない……」

怜「みんなわかりやすすぎやねん。お母さんは妙に優しいし」

竜華「ううん、まだ……まだわからへんからっ」

怜「……ありがとう」

竜華「お礼なんてええから!」

怜「せやけど……うん、竜華なら京太郎のこと頼めるし、京太郎なら竜華のこと任せられる」

竜華「なんでそない……諦めたようなこと、言うん……?」ポロポロ

怜「……実を言うと、もう未来が視えへん」


怜「せやから、お先真っ暗なんやなーって……あはは」


624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 01:41:41.32 ID:O9F/0GS10
待ってました!!!
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/19(木) 02:14:06.05 ID:isFGzLk10
すやすや
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 09:23:30.20 ID:iuCL2ULTO
眠いからね。
仕方ないね
627 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 19:40:56.68 ID:Trg1xuEe0
ご飯のあとにこんばんはー

今日は夜勤があるので今のうちにちょっと進めとこうと思います
628 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 19:49:06.44 ID:Trg1xuEe0



京太郎「はぁ……」

リュージ「今日はため息か。最近はなにかと暗いな」

京太郎「色々あるからな」

リュージ「……やっぱり悪いのか?」

京太郎「それはそうなんだけど……実は、浮気しちゃったんだよ」

リュージ「お前……冗談か?」

京太郎「それならため息も出てねぇよ……」

リュージ「バカじゃねぇのか?」

京太郎「いっそ死にたい……」

リュージ「そう言うなって。同じバカ野郎がここにもいる」

京太郎「お前も?」

リュージ「まぁ、今はそんな相手いないけどな」

京太郎「おい浮気野郎」

リュージ「てめぇが言うな!」


リュージ「……でも、あれだ。そのぐらいの間違い、みんなやらかしてるんだよ」

京太郎「お前さ、もしかして元気づけようとしてくれてたりするのか?」

リュージ「勝手に言ってろよ」


629 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 19:58:15.06 ID:Trg1xuEe0



京太郎「みんなやらかしてる、か」


京太郎(だからって、許されるわけじゃないよな……)

京太郎(なら、やることは一つか)

京太郎(間違えたなら、正さないとな)

京太郎(……悪い、清水谷)コンコン


『はーい、どうぞー』


京太郎「おはよう、よく寝られたか?」

怜「もうバッチリ」

京太郎「そうか……話あるんだけど、いいか?」

怜「なに? 竜華と浮気したって話?」

京太郎「そうなんだ……って、知ってたのかよ!」

怜「昨日本人から聞いて」

京太郎「あ、ああ……先越されたな」

630 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:05:36.75 ID:Trg1xuEe0


京太郎「ごめん……謝って済む問題じゃないけど」

怜「まぁ、別にええんやない?」

京太郎「お前、軽すぎだろ……」

怜「これが他の誰かなら許さへんけど」


怜「それに……もう死ぬ人間が出しゃばっても、ろくなことあらへんよ」


京太郎「……今なんつった?」

怜「隠そうとせんでもええよ。もう知っとるから」

京太郎「……気をつけてたんだけどな」

怜「せやから、うちのことは気にせぇへんように。存分竜華といちゃいちゃしてやー」

京太郎「……ダメだ」

631 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:13:36.00 ID:Trg1xuEe0


京太郎「お前がそう言ってるのは、諦めてるからだろ」

京太郎「怒って突き放されるならいい。浮気者って詰られるのも納得がいく」

京太郎「でも、諦めたからって許されるのは、認められない」

京太郎「お前の親友に手を出したクズだけど……お前のことが好きなんだよ」

京太郎「だから、諦めを抜いたお前の本音が聞きたい」


怜「……またきっついことを」

京太郎「言いたくないか?」

怜「別に、さっきのが本音やし」

京太郎「そうか……わかった」


632 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:23:40.84 ID:Trg1xuEe0



竜華「……これからどんな顔して合えばええんやろ」

竜華「怜と……須賀くんにも」

竜華「あ〜! 全然仕事に手ぇつかんわぁ」


京太郎「清水谷!」


竜華「ひゃいっ」

京太郎「俺は決めたぞ」

竜華「な、なにを?」

京太郎「あいつの病気を治す」

竜華「……本気なん?」

京太郎「当たり前だろ」

竜華「どれだけ難しいか、わからへんわけやないよね?」

京太郎「それでもだよ。だから、力貸してくれ」

竜華「……須賀くんは、まだ諦めてないんやな」

京太郎「もう鬱々してるのには飽きたしな」

竜華「うん……わかった」


633 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:29:55.79 ID:Trg1xuEe0



京太郎「まず第一に、あいつの病気を治すには移植しかないんだな?」

竜華「この数年、色々と処置を施してみたんやけど、どれも決定打にはならずや」

京太郎「たしか、手術も一回したよな」

竜華「せやけどすぐ再発した」

京太郎「……病気がわからないってわけでもないんだよな?」

竜華「うん……うちも色々な論文読んで調べてみたけど……治療法に関してはまだわからへん事も多いみたいで」

京太郎「今の投薬は効いてないんだったか」

竜華「軽いのなら、それで良くなってくはずなんやけど……」

京太郎「あいつのは特別重いやつだってか……」

竜華「……うん」

京太郎「……じゃあ、まずあれからいってみるか」

竜華「どないするん?」

京太郎「コネを使う」


634 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:36:42.60 ID:Trg1xuEe0



透華『まったく……久しぶりに連絡してきたかと思えば』

京太郎「なぁ、頼むよ。とりあえず一回診てくれるだけでいいからさ」

透華『あなた、もう少し頼み方というものがあるのではなくて?』

京太郎「悪い、ふざけてる時間も惜しいんだ」

透華『ふぅ……わかりましたわ。最高のスタッフをそちらへ向かわせます』

京太郎「サンキューな!」

透華『お礼を言うぐらいなら、たまにはこちらへ帰ってきなさいな』


635 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:42:48.78 ID:Trg1xuEe0



竜華「どうやった?」

京太郎「最高のスタッフを送ってくれるってよ」

竜華「あの龍門渕の……須賀くんて、もしかして人脈すごない?」

京太郎「やばいやつなら知り合いにたくさんいるって言ったろ?」

竜華「なんか、どうにかなりそうな気ぃしてきた」

京太郎「その調子だ」


竜華(せやけど、世界的にも有名な龍門渕でもダメやったら……)


京太郎「そういえば、こっちに来るってことは病院の設備を使うってことだよな? 病院的にそれ大丈夫なのか?」

竜華「うーん……ここも龍門渕グループの病院やから、多分」

京太郎「マジか、初めて知ったぞおい」


636 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:48:19.20 ID:Trg1xuEe0



怜「ほぉほぉ、あの龍門渕が」

京太郎「最高のスタッフを連れてくるってよ」

怜「ドクターK? それともX? もしくはBJか、意表をついてお家とか?」

京太郎「どいつもこいつもフィクションじゃねぇか」

怜「それぐらいのインパクトがあるとええなってことやん」

京太郎「インパクトはないけど腕は最高峰だ」

怜「せやろか?」

京太郎「そうなんだよ」

怜「遭難?」

京太郎「病院で遭難ってありえないぐらい珍事だな」

怜「ところで、あれってそうなん?」

京太郎「だから遭難ネタはもういいっての」

怜「や、あそこのヘリ。龍門渕っぽいマーク」

京太郎「んー?」

637 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:56:11.11 ID:Trg1xuEe0


『おーほっほっほ!』


京太郎「……うわぁ」

怜「どしたん?」

京太郎「ちょっと幻聴」


京太郎(まさか自ら乗り込んでくるってことはないよな?)


怜「そういえば、この病院ってヘリポートあったん?」

京太郎「……どうだったっけ?」


638 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:01:45.79 ID:Trg1xuEe0



透華「着陸しますわよ!」

ハギヨシ「お嬢様、この病院にはヘリポートがないようです」

透華「んなっ、我がグループの経営する病院がなんたることですのっ!」

ハギヨシ「直近の着陸可能ポイントへ向かいます」

透華「ぐぬぬ……ヘリでインパクト満点な登場をするつもりが……!」



怜「あ、なんか向こうに飛んでいった」

京太郎「やっぱヘリポートなかったんだな」


639 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:11:28.96 ID:Trg1xuEe0



透華「来ましたわ!」

京太郎「なんでお前が来ちゃったんだよ……」

透華「当然ですわ。話を受けた当人がいないのはおかしいでしょう?」

京太郎「なんにしても、来てくれてありがとな」

透華「……ふんっ」


透華「それで、あなたが……清水谷竜華さんですわね?」

竜華「はじめまして……怜をよろしくお願いします」ペコッ

透華「ええ、もちろんですわ。しかし、これだけは言っておかなければなりません」

竜華「……」

透華「医者であるあなたならばわかっているとは思いますが……絶対に治るという保障はありませんわ」

竜華「それでも……少しでも可能性があるのなら」

透華「……結構」


640 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:16:29.70 ID:Trg1xuEe0



京太郎「いやぁ、久しぶりに長野にいた時のこと思い出したよ」

竜華「執事さんと話しとったけど、友達だったん?」

京太郎「色々お世話になった人だよ」

竜華「須賀くんがお世話に? なんか新鮮」

京太郎「そうでもないよ。今だって色んな人の世話になってる」

竜華「そうなん?」

京太郎「飯作ってもらったりとかな」

竜華「……」


竜華(ただの夢……そう言ったのは自分自身)

竜華(せやけど、あの夜のことを忘れることなんてできなくて……)

竜華(うちの頭によぎったのは――)

641 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:21:39.30 ID:Trg1xuEe0


京太郎「清水谷?」

竜華「――な、なに?」

京太郎「疲れてるのか?」

竜華「あー……ちょい寝不足かも。色々調べ物してたし」

京太郎「ありがとうな、あいつのために」

竜華「ううん、うちも諦められへんし」


竜華(その言葉にはどこか空虚な響きがあって)

竜華(ホンマに諦めきれへんのは、なんなのか)


『――彼の隣に、誰もいなくなれば』


竜華(あの時よぎった言葉は、それをなによりも示していて)

竜華(せやから……きっと、天罰が下ったんやと思います)


642 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:24:20.99 ID:Trg1xuEe0



怜「そかー……ダメやったかぁ」

竜華「ごめん……変に期待させて」

怜「まぁ、だれもうちの病気にはかなわんっちゅー話やな。マジ強」

竜華「ごめん、ごめん……」

怜「せやからもうええっちゅーねん」

竜華「だって、うち……」

怜「……竜華が泣いとるの、見る方が辛いわ」

竜華「ま、待っとって……今泣き止むから」ゴシゴシ


竜華「……うぅ」グスッ


竜華「ごめん、無理ぃ……」

怜「しゃあないなぁ……ほら、うちのふとももで思う存分泣くとええで」ポンポn

竜華「怜がおかしくなったぁ!」

怜「なんでやねん」


643 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:27:06.06 ID:Trg1xuEe0



京太郎「……うまくいかないもんだな」

竜華「……うん」

京太郎「龍門渕でも、もう移植しかないって?」

竜華「それが見つかるか見つからへんかは……」

京太郎「運次第、か」

竜華「うちのせいやろか」

京太郎「だれのせいでもない。でも、もしあいつが運悪くこの病気にかかったなら……」


京太郎(それは、俺のせいなのかもしれない)


京太郎「でもまだだ。まだ見つからないって決まったわけじゃない」

竜華「うん……」


644 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:30:06.47 ID:Trg1xuEe0



京太郎(だけど、見つからないまま時は過ぎ)

京太郎(決定的な一言が告げられた)



「もって、あと半年でしょう」

京太郎「……冗談じゃない、ですよね」

「……残念ながら」

京太郎「そう、ですか……」



京太郎(清水谷も、怜の両親も泣いていた)

京太郎(それでも俺は泣けなかった)

京太郎(泣いてしまったら、その事実を容認してしまうような気がして)

京太郎(無性に怜に会いたくなった)

京太郎(まだそこにいることを、抱きしめて確認したかった)


645 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:32:05.99 ID:Trg1xuEe0
というわけで、中途半端だけど仕事に行ってきます

前回よりは短いとか言ったけど、あれは嘘です
最長記録更新します

それじゃ
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/20(金) 23:15:10.26 ID:49cgDGk60
>>645
乙です!!
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 00:23:38.65 ID:MFpM+S9Ho
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 08:48:08.56 ID:P7XYTnsa0
乙!これからどうなる?
649 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/21(土) 23:51:17.83 ID:HBepE5v30
こんばんはー

今日で終わるかどうか……

もうちょっとしたら始めます
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 23:52:16.66 ID:NnjjJPfto
夜勤明けなのにお疲れ様です
651 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 00:21:54.65 ID:a8S7wHTo0
んじゃ、始めます
652 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 00:23:33.17 ID:a8S7wHTo0



京太郎「……怜」

怜「どしたん――うわっ」


怜「……ついに我慢の限界?」

京太郎「いいから黙って抱きしめられてろ」

怜「まぁ、うちは無理っぽいから竜華にでも――」

京太郎「言うなっ!」


京太郎「頼むから、何も言うな……」

怜「……そか、聞いてもうたんやな」

京太郎「お前……知ってたのかよ」

怜「もうダメなのわかっとったし、それなら早めに知らせてやーって」

京太郎「なんで、そんなに落ち着いてるんだよ」

怜「もう未来も視えへんから……素敵な未来でも視えたらよかったんやけどなぁ」

京太郎「素敵な、未来……」

653 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 00:31:06.86 ID:a8S7wHTo0


『名前、もう考えとる?』

『ああ……男だったら望で、女だったら希とかいいんじゃないか?』

『そらまた希望に溢れとるなぁ』

『まだ全然膨らんでないのに気が早いかな?』

『今から未来でパンパンになるんやな、うちのお腹』

『まぁ、そうだな』

『目一杯パンパンされた結果やな』

『怜……もうちょっと言い方ないのか?』

『じゃあ、まぐわったとか?』

『また直球だな』

『ええやん。ともかくヤってデキちゃったんやから認知してな、ダーリン』

『結婚してるのに認知もなにもないだろうが……』

『ふふ、せやな』

654 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 00:36:30.52 ID:a8S7wHTo0


京太郎(ああ、俺は……こいつをあの未来に連れて行けなかったんだな)


京太郎「く、そ……」


京太郎(もうダメだった)

京太郎(今まで出なかった涙は、あっさりと堰を切って)

京太郎(嗚咽をかみ殺すのに精一杯で、ただただ抱きしめる)


怜「……あかんなぁ」

京太郎「うっ、くっ……」

怜「せめて笑って見送って欲しいんやけど」

京太郎「無茶言うな、バカ野郎……!」

怜「だって、そうやないと……うぅ」


怜「うちも、我慢できへんやんかぁ……」

655 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 00:45:56.23 ID:a8S7wHTo0


京太郎「怜、お前泣いて……」

怜「うっさいあほぉ!」


怜「生きたい、まだ生きてたい、死にたくなんかない……!」

怜「まだしたいことたくさんある。行きたいとこもたくさんある!」

怜「せやけど泣かんようにって、みんな笑ってられるようにって我慢した!」

怜「あほっ、あほあほっ、この浮気者ぉ! なんで竜華に手ぇ出した!」

怜「みんなご破産! 台無し! 怜ちゃんの笑って旅立とう計画全部パー!」

怜「京太郎なんて、京太郎なんて――けほっ、けほっ」


京太郎「わかった、わかったから……もう無理すんな」

怜「はぁ、はぁ……じゃあ、最後に一個だけ約束して」

京太郎「ああ」

怜「最後まで、傍にいてほしい」

京太郎「お安い御用だな」

656 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 00:51:37.42 ID:a8S7wHTo0


京太郎(怜の叫びは、ずっと俺が聞きたかったものだった)

京太郎(何もかも取り払った、素の感情)

京太郎(だから俺は一つ決意した)


京太郎「最後まで、一緒だ」


京太郎(必ず、こいつを救ってみせると)

京太郎(……どんな手を使ってでも)


657 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 00:57:16.82 ID:a8S7wHTo0



京太郎「清水谷、一応聞くけど……俺の心臓は使えないよな?」

竜華「無理。体格も合わんし、血液型も違うから」

京太郎「そうか……」

竜華「それに、須賀くんの心臓をもらっても、怜は喜ばへんよ」

京太郎「だよな……移植に必要な条件って?」

竜華「さっき言った体格や血液型、それにその心臓が健康かどうか」

京太郎「病気の心臓もらっても確かに困るよな」

竜華「……須賀くん、まさか変なこと考えてる?」

京太郎「知っておきたかっただけだ。いつドナーが現れるかわからないしな」

竜華「怜を悲しませんようにして……お願いだから」

京太郎「心配すんな。俺がまた笑い合えるようにしてやるよ」



京太郎「体格、血液型、健康かどうか……」


京太郎(正規の手段で手に入らないのなら、非正規の手段に頼るしかない)

京太郎(即ち――臓器売買)


658 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 01:04:25.87 ID:a8S7wHTo0



智葉『……久しぶりの電話がそれか』

京太郎「悪いな。でももう後がないんだ」

智葉『自分が何を言っているか、わかっているのか?』

京太郎「ああ……もしなにか知ってるなら、教えて欲しい」

智葉『残念ながら、うちの組はそういったことに手を出していない』

京太郎「そうか……なら他をあたってみる」

智葉『須賀、考え直すなら今だぞ』

京太郎「……ありがとな。でも、もう決めちまったからさ」

智葉『……バカだな、お前は』

京太郎「そんなの、自分が一番知ってるよ」



京太郎「ガイトがダメとなると……やばい、他に伝手がない」

京太郎「……いや、あるにはあるけど」

京太郎「これ下手したら縁切られるな」

京太郎「だけど……やるしかない」


659 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 01:11:49.28 ID:a8S7wHTo0



透華『却下ですわ』

京太郎「情報だけでいいんだ。龍門渕グループなら世界中で糸を張れるだろ?」

透華『それでその情報を渡して……あなたはどうするつもりですの?』

京太郎「俺はあいつを救う。それだけだ」

透華『……売買される臓器が、どのように用意されるかは知っていて?』

京太郎「大体、予想はつく」

透華『それでも……だれかの犠牲の上に成り立っているかもしれない臓器を、手に入れると?』

京太郎「そうだよ……それぐらいしか方法がないからな」

透華『……こんな時に、自分の無力を痛感するとは……』

京太郎「頼むよ。俺には後がないんだ」

透華『……考え直す気は?』

京太郎「それができたら、こんなこと頼んでない」

透華『私は……あなたのことを兄のように思ってましたわ』

京太郎「意外だな。嫌われてるとは思ってなかったけど」

透華『ですが、それも今日まで――』


660 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 01:17:24.62 ID:a8S7wHTo0



京太郎「……二度と連絡するな、か」

京太郎「当たり前だ。これからやらかそうって人間と関わりたくなんかないよな」

京太郎「……それよりも、どうする?」

京太郎「こうなったらもう、それっぽい建物に乗り込んで直談判しか……」

京太郎「――いや、待て……もしかしてあいつなら」プルルル


『もしもし』


京太郎「リュージか?」

リュージ『その声は……須賀か』

京太郎「話がある。今から会えないか?」


661 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 01:25:02.82 ID:a8S7wHTo0



リュージ「……追い詰められているとは思ってたけどよ」

京太郎「……どうにかならないか?」

リュージ「そもそもなんで俺に頼んだ」

京太郎「そういう連中と関係があるって小耳に挟んだ」

リュージ「チッ……まぁ、事実だがよ」

京太郎「いきなりこんなこと頼むのはどうかと思う……けど、やり方を選んでられないんだ」

リュージ「関わり合いにならないならそれが一番だと思わねぇのか?」

京太郎「やり方を選んでられないって言ってるだろ」

リュージ「……そんなに大事か?」

京太郎「やれるなら俺の心臓でもいいぐらいだ」

リュージ「羨ましいな……俺も久しぶりにあいつに会いたくなってきたよ」

京太郎「会いに行かないのか?」

リュージ「しがらみがあるんだよ。カタギのお前にはわからないかもしれないけどな」

662 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 01:29:39.21 ID:a8S7wHTo0


リュージ「俺がしてやれるのは話を取り次ぐところまでだ」

京太郎「十分だ」

リュージ「金に関しては一切面倒見ない」

京太郎「なんとかする。なんだったら俺の臓器をいくらかくれてやってもいい」

リュージ「ところで、移植をするにしても医者のアテはあるのか?」

京太郎「あ……普通の病院じゃダメ、だよな?」

リュージ「当たり前だろバカ野郎……チッ、しょうがねえから知り合いを紹介してやる。腕はいい」

京太郎「すまないな……お前にメリットがあるわけでもないのに」

リュージ「そうでもないさ。お前に恩を売れる」

京太郎「金が欲しいならもうちょっと待て。心臓にいくらかかるかもわからないんだ」

リュージ「そういうのはいらねぇよ。いざとなった時の替え玉とかだ」

京太郎「……ラーメンじゃないよな?」

リュージ「身代わりって言えばいいか? 似たような体格してるしな」

京太郎「やばい、命の危険を感じるぜ……」

リュージ「いざとなったらの話だよ。ま、仲良くしようや」


663 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 01:32:13.71 ID:a8S7wHTo0



怜「今日は京太郎、来ぉへんな」

竜華「どないしたんやろな」

怜「ついに愛想尽かしたんかなぁ」

竜華「それだけは絶対ない」

怜「……傍にいてって言うたのに」

竜華「大丈夫、須賀くんが怜をほったらかしにするなんてありえへんから」

怜「せやろか?」

竜華「せやせや」


京太郎「――怜っ」ガラッ

664 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 01:40:19.33 ID:a8S7wHTo0


竜華「ほら、来た」

京太郎「悪い悪い、ちょっと遅くなっちまった」

竜華「もうちょい静かにしてな?」

京太郎「おっと、ちょっと興奮してたから」

怜「えらいご機嫌やん。キャバクラ帰り?」

京太郎「ちげーよ」

怜「じゃあおっパブ?」

京太郎「さらに酷くなってんじゃねーか」

怜「じゃあ現地妻?」

京太郎「いねーよ!」

竜華「ふふ……須賀くんが遅かったから、不安で不安でしかたなかったやんな?」

怜「まぁ、小指の先程度には」

京太郎「全然平気じゃねーかよ」

竜華「照れ隠し照れ隠し」

京太郎「わかってるよ……遅れて悪かった」

怜「誠意、プリーズ」

京太郎「なんだ、山吹色のお菓子か?」

怜「お主も悪よのぉ……やなくて、ちょい寝るから手ぇ握っててな」

京太郎「はいはい、おやすみ」

怜「うん」


665 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 01:44:43.55 ID:a8S7wHTo0



怜「――」スゥスゥ


京太郎「がっちりホールドされた」

竜華「これやと動けへんね」

京太郎「俺も帰ってちょっと寝たいんだけどな」

竜華「このまま寝る? せやったら、かけるもん持ってくるけど」

京太郎「そうだな。勝手にいなくなったら、次は本当に山吹色のお菓子を要求されそうだし」

竜華「夜勤多いから、体は大事にせなあかんよ?」

京太郎「慣れればどうってことないよ」

竜華「……怜のため、なんやな。昼間に時間ができるようにって」

京太郎「俺がしたいようにしてるだけだ」

竜華「須賀くん、変なこと考えとらんよね?」

京太郎「大丈夫だ。きっと全部良くなる」

竜華「それって……」

京太郎「悪い、眠くなってきた」

竜華「あ、うん……ちょっと待っててな」


666 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 01:48:03.93 ID:a8S7wHTo0



竜華「きっと全部よくなる……一体須賀くんはなにを」


『清水谷、一応聞くけど……俺の心臓は使えないよな?』


竜華(ううん……いくら心臓が必要とはいえ、使えへんのを用意しても意味なんてない)

竜華(須賀くんもそれはわかっとるはず)

竜華(じゃあ、全部良うなるって?)

竜華(それがもし、心臓をどうにかして手に入れるという事なら……)


竜華「――まさかっ」


667 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 01:55:04.84 ID:a8S7wHTo0



怜「ぶー、詐欺やん。詐欺詐欺」

京太郎「仕方ないだろ。働かざる者食うべからずだ」

怜「世知辛い世の中やなぁ」

京太郎「なにかあったら呼んでくれ。すぐ駆けつける」

怜「ホンマに?」

京太郎「ああ」

怜「トイレ行きたいから来てって言うたら?」

京太郎「それはさすがに怒る」

怜「やっぱ詐欺やん」

京太郎「けどちゃんと行くよ」

怜「や、さすがにトイレの介護はまだいらんし」

京太郎「ったく……じゃあ行ってくる」

怜「おでかけのちゅーは?」

京太郎「顔上げて」

怜「んっ――」


京太郎「あんまり清水谷に心配させるなよ」

怜「膝枕ぐらいやで」

京太郎「むしろ俺がされたいぜ」

怜「浮気者ー」

京太郎「ははっ、じゃあまた明日な」


668 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 01:59:33.89 ID:a8S7wHTo0



怜「ふぅ……やっぱ体力落ちとんなぁ」


竜華「――怜っ、須賀くんは!?」


怜「仕事行くって」

竜華「そう……」

怜「イタズラでもされたん?」

竜華「う、ううん、なんでもあらへんから」


竜華(須賀くん……)


669 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 02:02:34.40 ID:a8S7wHTo0



京太郎「明日だ……明日になれば全部良くなる」

京太郎「あいつの病気も、なにもかも」


リュージ『用意できるってよ』

京太郎『本当か!?』

リュージ『運が良かったな。品薄で、今回を逃せば当分……半年は手に入りそうにないとよ』

京太郎『そうか……』

リュージ『あと、お前の健康状態が知りたいそうだ』

京太郎『この前受けた健康診断の結果でいいなら』

リュージ『十分だ』

京太郎『それは、俺から持ってくってことだよな?』

リュージ『金を用意できないならそうなる。大丈夫か?』

京太郎『大丈夫に決まってるだろ』


京太郎「そのためなら、俺の体を切ることだって……」プルルル


『リュージ』


京太郎「もしもし、リュージか?」

リュージ『須賀か? くっ――事情が変わった』

京太郎「なにか、あったのか?」

リュージ『……とりあえず今すぐ合流したい』

京太郎「わかった」


670 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 02:07:56.25 ID:a8S7wHTo0



リュージ「……よう」

京太郎「お前、その怪我」

リュージ「単刀直入に言う。心臓は手に入らない」

京太郎「どういう、意味だよ」

リュージ「横取りされた。どこぞの組のお偉いさんの娘が入用だそうだ」

京太郎「……こっちが先に話をつけた。そうだよな?」

リュージ「お前は客としての信用がない。だからより確実に金を出す方に靡いた。そういうことだ」

京太郎「――ざけんなっ」ガンッ


京太郎「ここに来てっ、どうしてっ、そんな邪魔が入るっ!」ガンッガンッ


京太郎「くそっ――」

リュージ「やめろ。そんなことをしてもなんにもならない」ガシッ

京太郎「お前はどうにもできなかったのかよ!?」グイッ

リュージ「悪い……直談判しに行ってこのザマだ」

京太郎「その怪我……」

リュージ「かすり傷だ……くっ」

京太郎「放置しておくわけにはいかないだろ……それに、一度落ち着いて相談したい」


671 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 02:14:59.57 ID:a8S7wHTo0



竜華「傷口が開きますので、しばらくはむやみに動かさないでください」

リュージ「ああ、すまないな、先生」

竜華「……あなたは、須賀くんとどういう関係なんですか?」

リュージ「なんだ、先生はあいつの知り合いか」

竜華「答えてください」

リュージ「ただの同僚だよ」

竜華「本当ですか?」

リュージ「ウソは言ってない」

竜華「でも、本当のことも言ってない」

リュージ「先生……あんた鋭いな」

竜華「呼吸とか目の動き、表情筋の強張りでそれぐらいは」

リュージ「とんでもねぇ知り合いがいたもんだ」

竜華「話していただけますか?」

リュージ「……いいぜ。ただし、一つだけ頼みを聞いてもらいたい」


672 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 02:19:44.39 ID:a8S7wHTo0



京太郎「傷は?」

リュージ「この通りだ。無理するなって言われたがよ」

京太郎「そうか……それで、どうする」

リュージ「どうもこうもない……詰みだ」

京太郎「渡す臓器を増やしてもか?」

リュージ「渡すって保証がないからな」

京太郎「……くそっ」

リュージ「……もし、向こう以上の金を直接叩きつけられるなら、話は別だがな」

京太郎「結局、金か……」


竜華「須賀くん……!」


リュージ「おっと、お前の浮気相手が来たようだな」

京太郎「お前、なんでそれを」

リュージ「引っかかったな。カマ掛けだ」

京太郎「……やられた」

リュージ「俺は退散するぜ」


673 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 02:25:02.98 ID:a8S7wHTo0



竜華「どうして、相談してくれなかったん?」

京太郎「何の話だよ……悪いけど、今は時間が――」

竜華「全部聞いた、あの人から」

京太郎「リュージの野郎……」

竜華「須賀くん、ダメ……いくらなんでも、そない」

京太郎「じゃあ他にどうすればいい!」

竜華「怜の望み通りにしてあげて!」

京太郎「それじゃああいつは……!」

竜華「それでも!」


竜華「それでも……怜は喜ばへんよ」


京太郎「……生きていれば、希望はあるだろ」

竜華「須賀くんが犠牲になっても?」

京太郎「犠牲になるつもりなんてない……それに、俺はあいつを失うなんて耐えられないんだよ」

竜華「ずるいわぁ、そんなん」

京太郎「ああ、結局は自分のためだ」

竜華「……なら、うちのためにって言うたら、思いとどまってくれる?」

京太郎「……悪い」

竜華「あはは……また振られてもうた」

674 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 02:31:41.81 ID:a8S7wHTo0


ハギヨシ「お取り込み中のところ、失礼」


京太郎「ハギヨシさん、どうしてここに」

ハギヨシ「お嬢様が、最後に渡すものがあると……こちらを」

京太郎「このケースは?」

ハギヨシ「中に一億円、現金で入っています」

竜華「い、一億!?」

ハギヨシ「手切れ金だと仰せつかりました」

京太郎「はは……また律儀な」

ハギヨシ「それでは、私はこれで失礼いたします」


ハギヨシ「……君の友人としてなにもできなかった私を許してください」


京太郎(そうか……これで)

京太郎(これで、お別れなんだな)

京太郎(この金を受け取るなら……)


京太郎「……でも、これで希望ができた」


675 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 02:40:32.76 ID:a8S7wHTo0



リュージ「はぁ……ったくよ。ままならねぇなぁ」

リュージ「あいつはうまくいくと思ったんだけどな」

リュージ「……チッ、ここらが潮時か」


京太郎「リュージ!」


リュージ「なんだ、妙案でも浮かんだか?」

京太郎「これだけあればイケルよなっ」

リュージ「お前これ……銀行強盗か?」

京太郎「ちげーよ、もらいもんだ」

リュージ「金の出処はともかく……これだけあればお釣りが来るな」

京太郎「じゃあ!」

リュージ「ああ、早速――待て」

京太郎「どうした」

リュージ「マズい、嗅ぎつけられた」

京太郎「どういうことだよ」

リュージ「――伏せろっ」グイッ


――パンッパンッ


京太郎「なんだこれっ、撃たれてるのか!?」

リュージ「走るぞ!」

京太郎「くそっ」


676 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 02:48:41.54 ID:a8S7wHTo0



京太郎「どうなってんだよ……!」

リュージ「俺たちの妨害をするなら、考えられるのは一つだ」

京太郎「心臓を横取りした連中が手を回したってのか」

リュージ「……悪い、おそらくマークされてたのは俺だ」

京太郎「なんでだよ、どうしてこうなった!」

リュージ「文句を言いに行って揉めてな……そのせいだろうな」

京太郎「なんでそんなことしたんだよ。そうしなけりゃ怪我だってしなかったろ」

リュージ「さぁな……許せなかったんだろうさ」

京太郎「許せなかった?」

リュージ「筋を通さねぇやつは嫌いでね」

京太郎「……ありがとう」

リュージ「なんだよ気持ち悪い」

京太郎「少しでも俺のことを気にしてくれたんだろ?」

リュージ「……勝手に言ってろよ」

677 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 02:54:31.54 ID:a8S7wHTo0


リュージ「これからの話だが……まず第一にこいつを守り通す必要がある」

京太郎「これを直接見せないといけないんだよな」

リュージ「百聞は一見に如かずってやつだ」

京太郎「それで心臓を買い取って」

リュージ「俺の知り合いに移植手術を頼む」

京太郎「問題は、道中安心できないってことか」

リュージ「よっぽど娘の命が大事なんだろうな」

京太郎「……俺と同じか」

リュージ「同情なんてするな。キリがないぞ」

京太郎「わかってる」

リュージ「それじゃあ、まずはここを切り抜けるところからだ」

京太郎「……囲まれてるのか?」

リュージ「完全に囲まれる前に逃げるぞ!」


678 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/22(日) 02:58:13.16 ID:a8S7wHTo0



京太郎「はぁ、はぁ……まだ来るのか?」

リュージ「わか、らねぇ……けど、これで終わるはずがない」

京太郎「マジかよ……」

リュージ「ほら早速――おらぁっ」バキッ

「がっ――」

京太郎「しつこすぎるだろうが――よっ!」ドカッ

「ぐぅっ」


リュージ「意外に動けるな。なにかやってたのか?」

京太郎「ハンドボールと、執事殺法を少々」

リュージ「執事殺法?」

京太郎「次来るぞ!」

リュージ「チッ、キリがねぇな!」


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