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久「あんたが三年生で良かった」京太郎「……お別れだな」

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202 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:04:51.32 ID:I2BQY5xn0


京太郎(やっぱり、一筋縄じゃいかなさそうだな)


京太郎「なあ、小蒔と話したいことがあるんだけど」

初美「姫様なら神境ですねー」

京太郎「なら外に呼んできてもらえるか?」

初美「内緒話ですか?」

京太郎「ああ、ちょっとお前らの日常をぶっ壊すことになるかもしれないけど」

初美「それはまた、穏やかじゃないですねー」

京太郎「だから、先に謝っておきたい」

初美「……霞ちゃん、ですか?」

京太郎「ああ」

初美「ふぅ……なら仕方ないですねー」


203 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:07:23.52 ID:I2BQY5xn0



霞「……」


霞(時間が解決してくれる、というけれど)

霞(この痛みはいつになったら消えてくれるのかしら)

霞(……いいえ、痛いなんてこと自体ありえない)

霞(だって、私は――)

204 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:10:45.71 ID:I2BQY5xn0


京太郎「今、暇か?」

霞「……来ていたのね」

京太郎「ああ、先に手紙は送ったよな」

霞「そうね……」

京太郎「話がしたい」

霞「ごめんなさい、ちょっと忙しいの」

京太郎「そうか。じゃあいつならいい?」

霞「わからないわ。少したてこんでいるから」

京太郎「……もしかしなくても、避けようとしてるだろ」

霞「そんなこと――」

京太郎「ないとは言わせないぞ」

霞「……」

京太郎「小蒔たちも気づいてる。お前が辛そうだって」

霞「そんなこと、ないわ」

京太郎「薄墨も言ってた。ここにいるのがいやなんじゃないかって」

霞「そんなわけ……」

京太郎「ないって言えるなら、ちゃんとこっち見て話せよ」

霞「……いやよ」

京太郎「いいからっ」グイッ

霞「あっ……」

205 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:13:51.82 ID:I2BQY5xn0


京太郎「……泣いてるじゃないか」

霞「どうして……どうしてこんなことするのよ」

京太郎「お前の本心が聞きたいから」

霞「話せば、離れてくれるの?」

京太郎「聞いてから決める」

霞「ふぅ……なら、話すわ」


霞「……望んでここに来たはずなの」

霞「初美ちゃんたちと一緒にいたくて、ここに来たはずなのに……」

霞「でも、怖いの……」

霞「お役目だからって、務めを果たさなきゃって……そう思ってたのに」

霞「でも、あの夏の……私が失敗して、小蒔ちゃんを危険な目にあわせたあの時から……怖くてたまらないの」

霞「またああなるんじゃないかって、私の失敗で全てを失うんじゃないかって……」

霞「だから、もっと……もっと心を強く持たなくちゃいけないの」

霞「たとえそれで、自分の心が押し殺されたとしても」

206 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:16:20.32 ID:I2BQY5xn0


京太郎「それが、お前の本心か」

霞「……もう、いいでしょ。いつも通りでいさせて」

京太郎「悪いけど、無理だ。そもそも、俺が一番聞きたかったことがまだだから」

霞「……どういう意味かしら」


京太郎「あの時、俺はお前が大丈夫だって言ったから、その言葉に甘えた」

京太郎「結局のところ、踏み込む覚悟と勇気が足りなかったんだ」

京太郎「お前の言葉で決心がついたよ」

京太郎「お前が不幸ぶって自分を抑え込むなら、俺が無理やりにでも引きずり出してやろうって」

京太郎「他のだれでもない、俺がお前を幸せにしたい」

京太郎「俺はお前が好きだからさ、なんでもなくても笑ってるとこが見たいんだよ」


京太郎「ダメか?」

霞「……聞かなかったことにするわ」

京太郎「じゃあ何度だって言うよ……俺は――」

霞「……ダメ、やめて」

京太郎「お前が、石戸霞が――」

霞「やめてって、言ってるでしょ……!」

京太郎「――好きだ」

霞「言わないでって、言ったのに……」

207 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:19:16.07 ID:I2BQY5xn0


霞(だってこんなの……応えられるわけがない)

霞(私が応えてしまったら……)

霞(でも、もう――)


霞「だってあなたにそれを言われたら、私はきっと抑えられなくなるから……」

霞「ずっと、ずっと蓋をしてようと思ったのに……」

霞「――好き、あなたのことが好きなの!」

霞「そうよ、初恋よ!」

霞「本当はなにもかも捨ててあなたといたい!」

霞「でも、私にはそれができないの……!」


京太郎「それがお役目だから、か」

霞「ええ、そうよ」

京太郎「先に謝っておく。俺はお前のこのままでいたいって願い、ぶっ壊すから」

208 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:22:04.87 ID:I2BQY5xn0


小蒔「霞ちゃん」


霞「――っ!」

小蒔「全部、聞いてました」

霞「ち、違うの、今のは……」

小蒔「全部本心、なんですよね?」

霞「そんなことっ」

小蒔「私もずっと聞きたいことがあったんです」


小蒔「霞ちゃんは、私の身代りというお役目をどう思っていたのかを」


小蒔「今までずっとずっと聞けませんでした」

小蒔「霞ちゃんの優しさに甘えて……ううん、きっと怖かったんです」

小蒔「一緒にいたいから……それを聞けば、離れてしまうかもしれないから」

小蒔「でも、きっとそれがいけなかったんですね」

小蒔「だから聞かせてください」

小蒔「霞ちゃんは、私の身代りという立場でいいのかどうかを」

209 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:24:45.66 ID:I2BQY5xn0


霞「……いいわけ、ない」

霞「うんざりしていたわ……」

霞「なにかを我慢して、なにかを諦めて」

霞「それがお役目だから、お役目だからって……」


小蒔「……そうですか」

霞「ごめんなさい……忘れて」

小蒔「ううん、忘れません」


小蒔「霞ちゃん、あなたをこの神境から追放します」


霞「……え?」

小蒔「お役目があなたの幸せを縛るというなら、解放します」

霞「ま、待って」

小蒔「今までありがとうございました……本当に」

霞「小蒔ちゃん、私は……!」

210 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:28:19.61 ID:I2BQY5xn0


小蒔「それと、京太郎様」

京太郎「ああ」

小蒔「私の、大事なお姉さんをお願いします」

京太郎「もちろんだ」

小蒔「それと――えいっ」ペチッ


小蒔「これが私の心を弄んだ罰、ということで」


京太郎「……痛いな」

小蒔「じゃあ、これから霞ちゃんを大事にしてあげてください」

京太郎「わかってるよ」


霞「小蒔ちゃん、私は、私は……」

初美「いつまで呻いてるのですか」

霞「初美、ちゃん?」

初美「これ、最低限の荷物はまとめておいたのですよ」

霞「そんな、私本当に……」

初美「……自業自得なのですよ。無理に抑え込んでるから」

霞「だって、私はそうすることでしか……」

初美「ほら、さっさと行っちゃうのですよ」

霞「あっ……」

211 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:31:58.45 ID:I2BQY5xn0


霞「それでも、私はみんなと……!」

初美「そんなの、私たちだって一緒なのですよ……!」


初美「でも、霞ちゃんは自分の幸せを見つけようとしないから!」

初美「だれかのため、だれかのためって……だれかのせいにしてるから!」

初美「だからっ、ここから離れて、いっぱいいっぱい幸せになってもらうのですよ!」


初美「だから、私からもおねがいするのですよ」

京太郎「当然だろ」

初美「憎たらしいですねー」

京太郎「……お前たちから大事なもの、奪ってくからな」


霞「あ、あぁ……」

小蒔「……いつか、あなたが心の底から幸せだと思えるようになるまで」

霞「小蒔、ちゃん……」

小蒔「それまで、お別れです」


212 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:34:45.70 ID:I2BQY5xn0



霞「……」フラフラ

京太郎「ほら、転ぶぞ」

霞「……ついてこないで」

京太郎「俺が放っておくと思うのか?」

霞「……」

京太郎「なあ、どこ向かってるんだ?」

霞「……わからないわ」


霞「私には、もう帰れる場所なんて……」


京太郎「なら、俺と一緒に来るか?」

霞「……元はといえば、あなたがっ」パンッ

京太郎「――いって」

213 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:39:57.45 ID:I2BQY5xn0


霞「あなたが、あんなことをするから!」パンッ

霞「あなたが、私なんかを選ぶから!」パンッ

霞「あなたが……私たちの前に現れたから!」パンッ


霞「あなたが、あなたがあなたが……!」グイッ

京太郎「ちょっ、叩きすぎ――んむっ」

霞「――あなたが、好き。それでも、好きなの……」

京太郎「……そうかよ」

霞「許さない、絶対に許さないわ……だから――」


霞「――ずっと、放さないで」


214 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:42:48.90 ID:I2BQY5xn0



「……結局、親子ってことなのかしらね」

「京太郎か?」

「霞ちゃん、連れ出しちゃったって」

「そうか」

「心配じゃないの?」

「あいつならなんとかするだろ。それよりも、君は大丈夫なのか?」

「まぁ、これで直りかけてた実家との関係も悪化しちゃうけどね」


「でも、これで良かったんじゃないかしら?」

「ほら、私たち今、幸せじゃない?」


215 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:45:34.33 ID:I2BQY5xn0



小蒔「……」


巴「姫様、考え事ですか?」

小蒔「ちょっと、空を見てました」

巴「空、ですか?」

小蒔「この空の下に、霞ちゃんもいるんだなって」

巴「……せめて私も見送りたかったですね」

小蒔「ごめんなさい、私の独断で」


春「まったくもってその通り」


春「おかげで黒糖を渡せなかった」

巴「あはは、はるるはブレないね」

春「明星たちはまだ落ち込んでるけど」

巴「……しかたないかな、私だって……」

小蒔「……」

216 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:50:04.18 ID:I2BQY5xn0


小蒔(霞ちゃんがいなくなって、色んな変化がありました)

小蒔(たとえば御飯です)

小蒔(ほとんど霞ちゃんが受け持ってたのを、みんなで分担するようになりました)

小蒔(それと、私たち一人一人も……)

小蒔(初美ちゃんはみんなのお手本になろうと頑張ってます)

小蒔(巴ちゃんは明星と湧と一緒にいる時間が増えました)

小蒔(多分、二人が寂しくないようにだと思います)

小蒔(春は相変わらずのように見えて、黒糖の量がちょっぴり増えました)

小蒔(そして私は――)


小蒔「霞ちゃん……」


小蒔(こうして、時々空を見上げて祈っています)

小蒔(どこか遠い空の下で、あなたたちが幸せに暮らしていますように……と)




『エンディング――どこか遠い空の下で』
217 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:50:50.25 ID:I2BQY5xn0
というわけで終了

眠いのでおやすみなさい
安価は多分明日で
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 01:58:52.00 ID:pN8Apj4zo
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 02:02:26.36 ID:DHeDSADk0
乙ー
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 04:21:12.99 ID:tCGg8ifbo
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/13(土) 12:10:28.53 ID:6NZVYlg40
乙です!
222 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/13(土) 23:22:04.81 ID:zB5Vp4J90
昨日はぐっすりスヤスヤでしたね……

それはそうと、安価取りたいんですけど、人いますかね?
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:23:23.71 ID:LzvLWxJT0
はーい
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:23:59.42 ID:RGoEm4TgO
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:24:29.85 ID:p0Qziyf80
はーい
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:24:45.64 ID:/rOtzcpTO
おいっす
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:26:40.80 ID:66xGAIFOO
はいよ
228 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/13(土) 23:29:02.37 ID:zB5Vp4J90
それじゃ、この中からお好きなのをどうぞ
済がついてるのは選べません


個別

大星淡 済
天江衣 済
桧森誓子 済
姉帯豊音 済
三尋木咏 済
神代小蒔 済
ネリー・ヴィルサラーゼ 済
宮永照  済
エイスリン・ウィッシュアート 済
白水哩 済
竹井久 済
福路美穂子 済
松実玄 済
薄墨初美 済
滝見春 済
石戸霞 済
園城寺怜 済
真屋由暉子 済
清水谷竜華 済
鶴田姫子 済


特殊

久照
久美穂子
小蒔霞
哩姫 済
怜竜


32分まで
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:29:29.65 ID:p0Qziyf80
小蒔霞
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:29:33.51 ID:66xGAIFOO
久照
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:30:33.51 ID:LzvLWxJT0
小蒔霞
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:30:54.94 ID:/rOtzcpTO
小蒔霞
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:31:18.42 ID:RGoEm4TgO
怜竜
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:31:25.26 ID:k/aUUG8uo
小蒔霞
235 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/13(土) 23:32:02.03 ID:zB5Vp4J90
締切
とりあえず割ってきます
236 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/13(土) 23:34:55.68 ID:zB5Vp4J90
コンマ判定

小蒔霞:3の倍数以外
久照:3の倍数、かつ奇数
怜竜:6の倍数


直下
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:35:22.85 ID:k/aUUG8uo
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:35:24.71 ID:RGoEm4TgO
はい
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:35:24.93 ID:/rOtzcpTO
240 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/13(土) 23:36:57.11 ID:zB5Vp4J90
3の倍数じゃないので姫様と霞さんで
……またシリアスなんですけど

今日はこれで失礼します
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:37:24.30 ID:LzvLWxJT0
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:37:53.63 ID:66xGAIFOO
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:38:17.39 ID:k/aUUG8uo
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:44:57.40 ID:/rOtzcpTO
おつおつ
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 14:40:30.46 ID:QdR8N43f0
待ってます!
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/15(月) 21:05:05.02 ID:toBHPCbV0
任せる
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 22:28:58.26 ID:kLSMISTd0
大丈夫か?
248 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/23(火) 23:47:07.94 ID:LDw8BXtf0
お久ー

顔とか洗ったら始めます
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/23(火) 23:47:38.12 ID:EZi224EoO
お久しぶり
250 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:22:02.42 ID:OgX8QW8y0
んじゃ、そろそろ始めます

多分これまでのエンディングの中で最長じゃないかと
251 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:30:12.65 ID:OgX8QW8y0


『お名前と連絡先、教えていただけませんかっ』


京太郎「うっ……」


『愛しています、京太郎様』


京太郎「こ、まき……」


『好き、好きなの……あなたが好きなの』


京太郎「うぁ……」


『お願い、今だけだから……明日からはいつもの私に戻るから……』


京太郎「お、れは……」


京太郎「――っ」ガバッ

京太郎「……はぁ、なんつー夢見てんだ」

252 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:34:02.22 ID:OgX8QW8y0


霞「おはよう、今日は遅いのね」


京太郎「なんだよ、また勝手に入ってたのか」

霞「だってあなた、私が作らないとちゃんと朝ご飯食べないじゃない」

京太郎「ちょっとぐらいなら食べなくっても大丈夫だって」

霞「いいから食べて。もうできてるわ」

京太郎「ああ、いい匂いすんな……」グゥ

霞「お腹は正直なのね」クスクス

京太郎「別に食べたくないわけじゃないから」

霞「じゃあ用意しちゃうわね」


253 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:36:41.59 ID:OgX8QW8y0



京太郎「ごちそうさま」

霞「おそまつさま」


霞「ねえ、今日は?」

京太郎「珍しいことに暇。たまにはごろごろしてようかな」

霞「そうね、ゆっくり休んで。家事は私がやっておくから」

京太郎「お前だって仕事あるだろ。いいよ、別に」

霞「今日はお休みなの」

京太郎「……あー、そうだったか」

霞「だから気にしなくてもいいの」

京太郎「じゃあちょっと出かけるわ」

霞「なら掃除しておくわ」

京太郎「だから、お前がそこまでする必要ないって」

霞「いいえ、だって私は――」


京太郎「ただのお隣さん、そうだろ?」

254 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:40:35.80 ID:OgX8QW8y0


京太郎「だからさ、俺のことなんて気にしなくてもいいんだよ」

霞「……どうして、そんなことを言うの?」

京太郎「もう十分だってことだよ。いつまでも引きずってないで前を向かないとな」

霞「――いやっ!」


霞「あなたの口からそんな言葉聞きたくない!」

霞「あんなことになっても私を引き留めたのにっ、傍に置いたくせに……!」

霞「突き放すなら最初から突き放してよ!」

霞「それなら、私もあなたを……」フラッ


京太郎「おい、霞っ」ガシッ

霞「あなたを……諦められたのに」

京太郎「……もういいから。寝てろよ、顔色悪いぞ」

霞「……部屋に戻るわ」ヨロヨロ

京太郎「どうせ隣に戻るだけだったらここで休んでろ。俺はなんか買ってくる」

霞「あ、待って――」


京太郎「んじゃ、おとなしくしてろよー」バタン


霞「……ただのお隣さんだったら放っておけばいいじゃない」


255 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:46:23.28 ID:OgX8QW8y0



小蒔「葉桜……」


『――っと、ギリセーフ……大丈夫か? お転婆姫さんよ』


小蒔「もう、随分前のことみたいです」

小蒔「そのころの私はまだなにも知らなくて」

小蒔「大好きな人たちと会えなくなるなんて思いもしないで……」


春「姫様、そろそろ」


小蒔「わかりました、今行きます」

春「……大丈夫?」

小蒔「春が心配するようなことはありませんよ」

春「そう……」


『関節キスは好きな人と、本当のキスは契りを結んだ殿方と』


小蒔「今なら、お母様の言葉の意味が分かる気がします」

小蒔「……本当に好きな人とは結ばれないから、なんですね」

小蒔「京太郎様、霞ちゃん……」


小蒔(小蒔は今日、夫婦となる殿方と顔を合わせます)

小蒔(……京太郎様以外の男性と)


256 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:50:47.91 ID:OgX8QW8y0



巴「姫様の様子、どうだった?」

春「いつも通りに見えた」

巴「そう……」

春「でも、平気なはずない」

巴「……どうしてこうなっちゃったんだろうね」

春「そんな決まってる。……全部、あの人のせい」

巴「はるる、それは――」

春「私は絶対許さない……許せない」

巴「……」


巴(はるるがこんなに怒るなんて……)

巴(そっか、好きだったんだもんね)

巴(私も……)

257 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:55:28.34 ID:OgX8QW8y0


初美「はいはいはーい、暇ならこっちを手伝うのですよー」


初美「ほら、はるるは向こう。明星たちがテンパってるのですよ」

春「ん、わかった」タタタ


巴「ごめんね、ちょっと姫様が心配で」

初美「それは無理もないのですよ」

巴「でも、はっちゃんは変わらないね」

初美「私まで沈んでたら、暗くてどうしようもないですからねー」

巴「……うん、そうだね」

初美「ささ、巴ちゃんは表のお掃除を手伝うのですよ」

巴「えっと、ちょっと難しいかな」

初美「まぁまぁ、サボりたい気持ちはわかりますがねー」

巴「そうじゃなくて、はるるが向こう行っちゃったから私が姫様についてないと」

初美「うげっ、じゃあ広い境内をひとりきりで掃除ですかー!?」


258 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:59:52.70 ID:OgX8QW8y0



京太郎「引きずってないで前を向け、ね」

京太郎「……まぁ、自分のこと棚に上げないと何も言えなくなるよな」


「あら? たしかあなた石戸さんの……」


京太郎「えーっと、どちらさまでしたっけ?」

「やだもう、忘れちゃったの!?」

京太郎「んー……」


京太郎(いや、本当にだれだっけ?)

京太郎(というかこのおばさん、なんとなくうちの母親と同じにおいがする……)

京太郎(……母さん、元気かな)


京太郎「……そうだ、たしか霞の職場の先輩でしたっけ」

「そうそう、やっと思い出してくれた?」

京太郎「すいません、ど忘れしちゃってたみたいで」


京太郎(てか、一度ちらっと顔合わせただけだよな、たしか)

259 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:09:59.31 ID:OgX8QW8y0


「霞ちゃん、無理しないようにちゃんと見ててあげてね。昨日だって大変だったんだから」

京太郎「昨日? なにかあったんですか?」

「フラフラしてたし、吐き気で食欲もなかったみたいなの」

京太郎「そんなに具合悪かったのか……」

「だからカレシのあなたがしっかり看病してあげること。いい?」

京太郎「彼氏じゃないです」

「そうなの? 時々一緒に帰ってるみたいだし、てっきり同棲してるものだと思ってた」

京太郎「昔からの知り合いで、今はただのお隣りさんですよ。親切にしてもらってますけど」

「えー? 霞ちゃんはあなたにラブだと思うんだけど」

京太郎「ははは、そんなまさか」

「さてはあなた……朴念仁で唐変木ね!」

京太郎「そんなわけ……」


京太郎(……ないわけないよなぁ)


「とにかく、霞ちゃんの気持ちにしっかり応えてあげること! それとも、カノジョさんいたりするの?」

京太郎「いない、ですね」

「じゃあなんも問題ないわね!」

260 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:17:45.04 ID:OgX8QW8y0


京太郎(あるよ、ありありだよ)

京太郎(そもそも俺は……)


『……俺は小蒔と一緒に生きていくことにした』


京太郎(一回断ったようなもんだろ)

京太郎(そんな都合よくいってたまるか)


京太郎「すいません、買い物あるんでそろそろ」

「あ、もしかして霞ちゃんのお見舞い?」

京太郎「今朝も具合悪そうにしてましたから」

「やっぱり? じゃあお大事にって伝えておいてくれる?」

京太郎「もちろん」

「それと、風邪だったら誰かに移せばって言うし……ね?」

京太郎「……」

261 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:23:23.00 ID:OgX8QW8y0


京太郎(ね? じゃねーよ)

京太郎(ホントこういう手合いは……)


「じゃあ、うちの本屋のアイドルをよろしくね」

京太郎「アイドル?」

「知らない? 霞ちゃん目当てのお客さん、結構いるんだけど」

京太郎「初耳ですね」

「うかうかしてたら取られちゃうかも……じゃあね〜」


京太郎「……ま、その方が全然いいよな、今よりは」

京太郎「あいつにとっても、俺にとっても」

京太郎「だけど……もう半年か」

京太郎「潮時ってやつなのかもな」


262 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:26:00.07 ID:OgX8QW8y0



『……俺は小蒔と一緒に生きていくことにした』


霞(わかってる。彼は小蒔ちゃんを選んだ)


『お前にだけは言っとかなきゃいけないと思ったから』


霞(やめて……そんなこと聞きたくもない)


『……さぁ、ここでサービスタイムだ。恨み言でも罵倒でも、なんだったら包丁まではギリオーケーだ』


霞(だけど、私は我慢して……)

霞(我慢して我慢して我慢して我慢して我慢して――)


『お願い、今だけだから……明日からはいつもの私に戻るから……』


霞(――取り返しのつかない間違いを一つ、犯してしまった)


263 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:29:57.46 ID:OgX8QW8y0



霞「んっ……」


霞(……寝ちゃってたのね)

霞(それにしても……)


霞「なんて、ひどい夢なの……」

霞「すごい寝汗……着替えたいわ」


京太郎「ほら、サイズ合わないだろうけど」


霞「どうしてここに……」

京太郎「自分の部屋にいるのは当然だろ」

霞「そう、だったわね」

京太郎「具合は?」

霞「平気よ」

京太郎「本当か? お前の先輩に昨日も具合悪かったって聞いたけど」

霞「……だから今日はお休みになったの」

京太郎「なるほど、休まされたのか。お前の平気、大丈夫は信用できないからな」

霞「あなたも人のことは言えないじゃない」

京太郎「自分のことは棚上げしなきゃ、なんにも言えないからな」

霞「呆れた開き直り……」

京太郎「それよりも飯とシャワー、どっちにする?」


264 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:34:50.61 ID:OgX8QW8y0



霞「ごちそうさまでした」

京太郎「おそまつさまでした」


京太郎「はは、今朝とは逆だな」

霞「ごめんなさい、あなたの手をわずらわせてしまって」

京太郎「いいって。普段世話になってるし、それに料理も久しぶりで楽しかったし」

霞「でも私は……」

京太郎「はい、ここでデザートの登場だ」

霞「あなたに対してもとても償いきれない――むぐっ」

京太郎「いいからオレンジ食え」

霞「……しゃべらせてくれてもいいじゃない」

京太郎「今日のお前は辛気臭いことばっかだしな。……それに、そもそも悪いのは俺だから」

霞「それは――むぐっ」

京太郎「はいもう一個ぉ」


265 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:40:59.42 ID:OgX8QW8y0



初美「うへぇ……やっと終わったのですよ」

初美「まったく……こーんな広いところを一人で掃除しろとか、罰ゲーム以外の何物でもないですねー」


久「やっほー、元気してた?」


初美「あれれ、お久しぶりなのですよ」

久「久しぶり。他の人たちは?」

初美「中ですね」

久「じゃあちょっと上がらせて……って、いきなりアポなしで来ちゃったけど大丈夫?」

初美「思いっきり来客予定があるのですよ」

久「あらら、我ながらバッドタイミングね……それじゃ、手短に挨拶だけにしようかな」

初美「えーっと、それは、なんといいますか……」

久「京太郎たち、いるんじゃないの?」

初美「……もういないのですよ」

久「もしかして出かけちゃった? あちゃー、本当にタイミング悪いわねぇ」

初美「……」

266 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:49:44.94 ID:OgX8QW8y0


初美「もう帰っては来ない、という意味なのですよ」


久「えーっと、浮気でもして追い出されたとか?」

初美「……」

久「え、やだ、黙らないでよ。本当にそうなの?」

初美「それは……」

久「はぁ……まぁいいや。じゃあ神代さんに聞いてくる」

初美「ダメなのですよ」

久「しょうがない……じゃあ大人しく帰って――」


久「――やるわけないでしょっ」ダッ


初美「あっ、待つのですよ!」

久「そう言われて待つ奴なんているわけないでしょ!」

初美「たしかに!」


267 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:52:48.68 ID:OgX8QW8y0



『ごめん、俺にはもうここにいる資格がないんだよ』

『それでもっ、私は京太郎様と……!』

『……ホントごめんな、小蒔』


小蒔(あの時、無理にでもついていけたら)

小蒔(お母様の言いつけを破ってでも、外に出ていっていれば)

小蒔(私は、今も京太郎様と……)


『霞ちゃん……』

『みんなのこと、お願いね』

『……はい』


小蒔(一人で背負いこんでいることには気づいていたはずなのに)

小蒔(聞きたいことがあったはずなのに)

小蒔(それとずっと向き合わないまま、私は……)


268 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:56:40.81 ID:OgX8QW8y0



『こらー! 観念するのですよっ』

『あーもう、しつっこいわねぇ!』


巴「あれ? はっちゃんと……だれ?」

小蒔「だれか、来客でしょうか?」

巴「なんだか聞き覚えのある声のような」


久「お邪魔します!」


巴「た、竹井さん!?」

久「京太郎、どこ行った――うわっ」

初美「やーっと捕まえたのですよ!」

久「ちょっと、放してよ……!」

初美「放せと言われて放す奴はいないのですよ!」

久「さっきの意趣返しかっ」

初美「その通り!」

269 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:01:48.61 ID:OgX8QW8y0


巴「えっと、何事なのかな?」

初美「不法侵入なのですよ!」

久「そっちがはっきりしたこと教えないからでしょ!」


久「一体京太郎に何があったっていうのよ!」


巴「えっと、それは……」

久「ほら、口つぐむ」

初美「とにかく、今日はお客さんが来るからもう帰るのですよっ」


小蒔「二人とも、下がってください」


巴「……わかりました」

初美「むぅ、姫様がそういうなら」


270 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:07:24.94 ID:OgX8QW8y0



久「それで、なにがあったの?」

小蒔「あの二人……京太郎様と霞ちゃんは、問題を起こして追放された……それだけです」

久「問題って?」

小蒔「お答えできません」

久「あのバカが石戸さんと浮気したとか?」

小蒔「お答えできません」

久「……しばらく会わないうちにすっかり他人行儀ね」

小蒔「……今までがおかしかったんだと思います」


小蒔「あの夏の日に、あなたたちを迎え入れなければ」

小蒔「私は恋も嫉妬も……なにも知らないままでいられた」


小蒔「……お引き取りください。もう話すことはありません」

久「そうね……だけど一個だけ言わせて」


久「悲劇のヒロイン気取り?」

久「自分からはなにもしようとしないで被害者面?」

久「要するに諦めたんでしょ。あいつのことも石戸さんのことも」

久「アホらしい……こんな女に取られたなんてね」


久「それじゃ、さようなら。なんにもできないかわいそうなお姫様」

小蒔「帰って! 帰ってください!」

久「言われなくても!」


271 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:10:17.56 ID:OgX8QW8y0



久「あーもう、むしゃくしゃする……!」

久「信じて送り出した幼馴染が行方不明って? しかも破局してるし!」

久「こんなことならもっと……」


初美「ちょっと待つのですよー」


久「なに、お礼参り?」

初美「どこの不良ですか」

久「違うの?」

初美「ちょっと姫様のフォローをと」

久「……まあ、こっちも多少八つ当たりは混じってたけどね」

初美「やっぱり。フラれた女の未練は――いひゃいいひゃい!」

久「喧嘩なら買うわよ?」ギリギリ


272 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:16:35.30 ID:OgX8QW8y0



霞「……」ムスッ

京太郎「まだ怒ってるのかよ……悪かったよ。たしかにあのオレンジはちょっと酸っぱかった」

霞「……オレンジはおいしかったわ」

京太郎「じゃあなに、問答無用で口に突っ込んだことか?」

霞「……」

京太郎「やっぱそれかぁ。無理やりはよくないよな、うん」


霞(違う、そうじゃない)

霞(私が何よりも許せないのは、自分)


『自分のしたことの意味、わかっていますね?』

『……はい。どのような罰も甘んじて受け入れます』

『ならば、ここを去りなさい。それがあなたに与える罰です』

『わかり、ました』


霞(現状に、幸せを感じてしまっている自分が許せない)

霞(私のせいでなにもかも壊れてしまったのに)

霞(それなのに、どうしてこの人は……)

273 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:19:33.85 ID:OgX8QW8y0


霞「どうして、あの時私を引き留めたの? 私なんてほうっておけばよかったのに」

京太郎「あのなぁ、あんな糸の切れた凧みたいなやつ、放っておけるわけないだろ」

霞「……そうね、あなたはそんな理由で無茶をする人だったわね」

京太郎「……あとはさ、居場所がほしかったんだよ」


京太郎「あそこにいられなくなって、今更帰るわけにもいかなくてさ」

京太郎「じゃあ俺はどこに行ったらいいんだろうって」

京太郎「そしたらお前が隣にいて……よし、こいつのために頑張ってみようって」

京太郎「……いや、結局は自分のためだな」


霞「自分のため……」

京太郎「ああ、思えば強引につき合わせちゃってたよな」

霞「それで、あんな倒れるまで無理して働いて……」

京太郎「……二部屋分の家賃はさすがに失敗したと思ってるよ」

霞「同じ部屋でも構わなかったわ」

京太郎「それでも線引きはいるだろ、やっぱり」

霞「今は、必要?」

京太郎「……霞」

274 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:23:40.57 ID:OgX8QW8y0


『それでもっ、私は京太郎様と……!』


京太郎「悪い、まだ……」

霞「……でも、あなたは私を傍に置いた」

京太郎「ああ」

霞「私を、必要としてくれたのよね?」

京太郎「そうだよ」

霞「そう……」


霞「今日は帰るわ……また明日」


275 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:27:48.98 ID:OgX8QW8y0



『あなたは、あの子の傍にいる資格を失った』

『……』

『その意味はわかりますね?』

『……はい』

『それならば、早いうちに去ることです。……これ以上辛くなる前に』

『お世話に、なりました……』

『……結局、こうなってしまうのですね』


京太郎「……俺は、もうあそこには戻れない」

京太郎「小蒔と一緒にいる資格も、ない」

京太郎「ここが俺の今の居場所」

京太郎「そしてここにはあいつが、霞がいる」

京太郎「それなら、このままあいつと……」


『私も……愛しています、京太郎様』


京太郎「――っ」ダンッ

京太郎「どんだけ未練ったらしいんだ、俺はっ……!」


276 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:30:44.84 ID:OgX8QW8y0



『そしたらお前が隣にいて……よし、こいつのために頑張ってみようって』


霞(……もし、許されるならこのまま)

霞(過去を全部捨てて、彼と一緒にいられるなら……)


――ピンポーン


霞(来客? こんな朝早くに)

霞(彼は仕事に行ったし……)


『あれ、こっちも留守?』


霞(この、声は……)


277 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:33:28.16 ID:OgX8QW8y0



久「えーっと、ここかな?」

久「……うん、住所も建物の名前もあってる」

久「201は……あった」ピンポーン


久「……出ない」

久「まぁ、働いてるならしょうがないか」

久「じゃあ次は隣ね」ピンポーン


久「あれ、こっちも留守?」

久「まいったわねぇ……」

久「んー、場所はわかったし、また夕方にでも――」


霞「やっぱり、竹井さん」

278 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:36:24.74 ID:OgX8QW8y0


久「あら、いたんだ」

霞「どうしてここが……」

久「まぁ、色々伝手があって、調べてもらったの」

霞「……何の用?」

久「元気にしてるかの確認。神境では色々とあったみたいだし」

霞「そう……小蒔ちゃんたちに会ったのね」

久「色々とわけわからなくてさ、みんな口つぐんじゃうし」

霞「無理もないわ。……いい思い出とはとても言えないもの」

久「それで、当事者のあなたならどうかなって」

霞「悪趣味ね」

久「だってそれであいつが苦しんでるんだったら、なんとかしたいし」

霞「……そう、彼のために」

久「あ、本人には言わないでよ。恥ずかしいから」

霞「わかっているわ」

久「それで、話す気ある?」

霞「……」


279 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:43:03.22 ID:OgX8QW8y0



久「……大体わかったわ。それでここに来たわけ」

霞「ええ……神境を出た後は、彼がこの部屋を見つけてくれて……私の分の家賃まで賄って」

久「はぁ? そんな無茶してたの?」

霞「一度、倒れたわ」

久「あのバカ……」

霞「……彼は悪くないわ。私が精神的にまいっていたせいよ」

久「それなら意地張らないで、一部屋だけにしちゃえばよかったじゃない」

霞「線引き、なんだって」

久「はぁ……そういう関係じゃないからってことでしょ」

霞「……ええ」

久「ありがと……それとごめんなさい」

霞「悪かったのは私よ。あなたが気にすることはないわ」

久「それでも、辛くなかったわけじゃないでしょ?」

霞「……どうかしら」

久「思うに、それが一番悪いのよ。我慢しすぎ」

霞「初美ちゃんにも、同じことを言われたわ」

久「じゃあ2対1ね」


久「それじゃ、そろそろお暇するわ」


霞「これからどうするの?」

久「あいつの顔見てから決める」


280 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:47:45.12 ID:OgX8QW8y0



京太郎「デネブ、アルタイル、ベガ……夏の大三角か」

京太郎「今頃インハイか……なつかしいな」

京太郎「ん?」ガチャ


京太郎(鍵、開いてる?)

京太郎(また霞が上がってるのか)


久「あ、おっかえりー」


京太郎「……久ちゃん? なんで?」

久「鍵だったら石戸さんにちょっと貸してもらったから」

京太郎「いやいや、そこじゃなくて」

久「大学なら休みだから。ほら、夏休み」

京太郎「そこでもないから……どうしてここにいるってわかったんだよ」

久「龍門渕さんとか智葉とか、あと獅子原さんのカムイ? とか色々協力してもらったのよ」

京太郎「なにそれこわい」

久「とりあえず、体は大丈夫そうで安心した」

京太郎「ま、丈夫なのが取り柄だしな」

久「でも一回倒れたんだって?」

京太郎「うぐっ」

久「それも変な意地張って」

京太郎「ま、まあ……もうそれは過去の話だから」

久「そうね……じゃあ本題」

281 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:50:57.10 ID:OgX8QW8y0


久「神代さんと別れたんだって?」


京太郎「……」

久「……はぁ、やっぱりそうなるか」

京太郎「もう終わったことだって」

久「って口で言ってるだけでしょ」

京太郎「そんなこと――」

久「全部聞いたから」

京太郎「……霞からか?」

久「ちょっと気の毒なことしたけど」

京太郎「できるならそっとしておいてほしいんだけど」

久「あんたがさ、もう振り切って幸せそうにしてるなら、それでもいいと思った」

京太郎「幸せだよ、十分にさ」

久「そうそう、薄墨さんから聞いたんだけどね」

282 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:54:57.84 ID:OgX8QW8y0


久「神代さん、新しい婿を取るんだって」


京太郎「……そりゃそうなるだろ」

久「それで、感想は?」

京太郎「別に」

久「その割には辛そうな顔してるじゃない」

京太郎「俺にはもう関係ない」

久「なんでそう思うのよ」

京太郎「だから、もう終わったことだって――」

久「ウソつくな」


久「私があんたのウソを見抜けないわけないでしょ」


久「終わったなんて思えてない」

京太郎「……やめろ」

久「関係ないなんて思えてない」

京太郎「やめろ」

久「あんたはまだ、神代さんのことが――」

283 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:59:38.39 ID:OgX8QW8y0


京太郎「――やめろって言ってるんだよ!!」


京太郎「未練なんてあるに決まってんだろ!」

京太郎「今でも夢に見る! 起きたら隣にいないことがたまらなく辛い!」

京太郎「だけど俺になにができる!?」

京太郎「俺はもうあそこにいる資格がないんだよ!」


京太郎「はぁ、はぁ……」

久「……」

京太郎「だから、もう……ほっといてくれ」

久「資格ってなに?」

京太郎「それは――」


久「あんた、要するに逃げたんでしょ」

久「俺には幸せにする自信がないからって」

久「それでこんなところで腐って……」

久「いい加減にしろ、この種無し野郎っ!!」

284 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:02:39.50 ID:OgX8QW8y0


京太郎「このっ、ピンポイントでデリケートゾーン抉りやがって!」

久「相手のことを考えて? そうしたほうが幸せだから?」

京太郎「ああ、そうだよ!」

久「大人になったつもりかこの朴念仁!」


久「ストーカーまでして私を麻雀に引き戻したあんたはどこ行った!」

久「好きなら、愛してるなら、自分の手で幸せにしてみせなさいよ!」

久「それであんたも幸せになってさ……私を、安心させてよ」

久「この女と一緒になって、良かったんだって」


京太郎「……結局、自分のためかよ」

久「そうよ、悪い?」

京太郎「いや、わかりやすくていい」

久「それで、どうするのよ」

京太郎「あの日、伝えられなかったことを伝えに行く」

久「向こうの都合は?」

京太郎「知るかよ、そんなの」

久「……それでいいのよ」


285 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:04:44.54 ID:OgX8QW8y0



『未練なんてあるに決まってんだろ!』

『今でも夢に見る! 起きたら隣にいないことがたまらなく辛い!』

『だけど俺になにができる!?』

『俺はもうあそこにいる資格がないんだよ!』


霞「……」


霞(わかってる……いえ、わかってた)

霞(だって、朝起こそうとしたら寝言で呟いてるし)

霞(彼は今でも小蒔ちゃんを愛しているんだって)

霞(まだ半年しか経ってないのに……忘れられるわけないじゃない)

霞(私なんて、一年経っても無理だったんだから……)


霞「だれかのため、自分のため……」


霞(私は……)


286 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:07:28.02 ID:OgX8QW8y0



久「せいぜいフラれないようにね」

京太郎「そうしたらまた日本一周でもして、それからまたアタックするよ」

久「なにそれ、すっごい迷惑」

京太郎「焚き付けたのは久ちゃんだからな」


京太郎「じゃ、ちょっと行ってくる」


久「……やっぱり人間、そうそう変わらないわよね」

霞「あなたの気持ちも?」

久「さぁ、どうかな」

霞「……私も行くわ」

久「我慢はやめるの?」

霞「さぁ、どうかしら」

久「……なんにしても、後悔だけはしないようにね」

霞「大丈夫よ、もうそれには慣れっこだから」


霞「それに……もう一人じゃないから」


287 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:09:43.22 ID:OgX8QW8y0



小蒔「……」

巴「姫様、もうお休みになったほうが――」

小蒔「もう少し、星を見ていたいんです」

巴「……わかりました。それじゃあ、お茶とお茶請け、持ってきますね」

小蒔「はい、お願いします」


小蒔(……ダメですね。まだみんなを心配させちゃってます)

小蒔(霞ちゃんもこんな気持ちだったんでしょうか?)


小蒔「今日会った殿方……私は、あの方と」グッ

小蒔「ふぅ……いけませんね、ちょっと気晴らし……また木に登ってみましょうか」

小蒔「その方が、星もよく見えますよね」


288 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:13:21.94 ID:OgX8QW8y0



小蒔「んしょ、よいしょ……登れました!」


『あーもう、気ぃつけろよー』


小蒔「……心配しなくても、もう慣れちゃいました」

小蒔「あなたがいない、日常にも……」

小蒔「だから、私は……」ポロッ

小蒔「あれ、おかしいです……悲しくなんて、ないのに」

小蒔「……ウソです」

小蒔「全部全部ウソです」

小蒔「好きです、傍にいてほしいです、愛しています」

小蒔「京太郎様……!」


京太郎「呼んだかー?」


小蒔「え……きゃっ――」ガサッ

289 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:16:01.21 ID:OgX8QW8y0


京太郎「――っと、ギリセーフ……大丈夫か? 小蒔」

小蒔「どう、して……」

京太郎「あの日さ、やり残したこと思い出して」

小蒔「……お引き取りください、あなたはもう」

京太郎「知らねーよ。しきたりとか立場とかお役目とか、そういうのはもううんざりだ」


京太郎「資格がないって、お前はダメだって言われて諦めてた」

京太郎「そんで、その方がお前のためになるって決めつけて逃げてた」

京太郎「でも、それでいいわけないんだよ」

京太郎「だって俺は、あの時全部伝えてなかったんだから」

京太郎「俺がどうしたいか、俺がなにをしたくないか」

京太郎「そんな当たり前なことを、伝えられなかったんだ」


『それでもっ、私は京太郎様と……!』


京太郎「お前は、ちゃんと言おうとしてくれたのにな」

小蒔「……」

京太郎「だから言うよ」

290 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:18:55.94 ID:OgX8QW8y0


京太郎「小蒔、お前と一緒にいたい。離れたくない」

京太郎「資格なんて知らないし、いらない」

京太郎「お前に人並みの幸せをやることはできないかもしれないけど、俺なりに幸せにする」

京太郎「だから、ずっと俺の傍にいてくれないか」


小蒔「どうして……どうして今更そんなこと言うんですか」

小蒔「二人がいなくても頑張ろうって、みんなを支えていこうって思ってたのに……」

小蒔「全部、全部ダメになっちゃいました……!」ポロポロ


京太郎「じゃあ俺の目論見通りだ」

小蒔「ひどいですっ、最低ですっ、人非人ですっ」

京太郎「それぐらいで一緒にいられるなら安いもんだよな」

小蒔「京太郎様なんて、京太郎様なんて……」

291 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:24:17.20 ID:OgX8QW8y0


巴「……姫様」


小蒔「と、巴ちゃん」

巴「正直になってください」

小蒔「そんな、私はっ」

巴「寝言で自分がなんて言っているか、わかってます?」

小蒔「うっ……」

巴「そんな夢に見るぐらいなのに、大丈夫なわけないじゃないですか」

小蒔「でも、私は霞ちゃんからみんなのことを……!」

292 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:27:16.93 ID:OgX8QW8y0


春「よろしくされる側の姫様がよく言う」


小蒔「春まで!」

春「姫様が頑張ったらむしろ空回るし」

小蒔「ひどいです!」

春「大丈夫大丈夫って言って余計心配させてるし」

小蒔「そんなことないですっ」

春「知らぬは当人ばかりとはこのこと」

小蒔「あうっ」

293 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:30:22.07 ID:OgX8QW8y0


初美「まぁ、努力だけは花丸ですけどねー」


小蒔「初美ちゃん!」

初美「中身が伴ってないので結局ダメダメなのですよ」

小蒔「ダメダメじゃないです!」

初美「それはそうとですね」

小蒔「わきに置かないでください!」

初美「特別ゲスト、つれてきたのですよ」

294 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:32:41.83 ID:OgX8QW8y0


霞「……久しぶりね」


小蒔「え……」

巴「霞、さん」

春「……」

京太郎「……お前もついてきてたのか」

初美「入り口でうろうろしてたのを確保したのですよ」

霞「……ちょっと、入りづらくて」

京太郎「まぁ、気持ちはわかるよ」

初美「何を言うのですか。ずけずけと入ってきたくせに」

京太郎「それで遠慮するかどうかは別問題だろ」


小蒔「ちょっと待ってください!」


小蒔「正直に言います……私は、また二人に会えて嬉しいです。でも……」

霞「……ええ、もう元には戻れない」

小蒔「――っ」

霞「みんな、少し小蒔ちゃんと二人きりにしてもらってもいいかしら?」

295 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:36:22.38 ID:OgX8QW8y0


初美「好きにするのですよ」

巴「……姫様がいいなら」

春「……知らない」

霞「ありがとう、みんな」


京太郎「じゃあ、待ってる間お茶でももらうか」

初美「どんだけ図々しいのですかっ」

京太郎「まぁまぁ、来客だと思ってひとつ」

春「黒糖、用意する」

巴「お茶、冷めちゃったから淹れなおしてきますね」

初美「それでなんで歓迎ムードですか!」


296 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:39:14.32 ID:OgX8QW8y0



小蒔「……霞ちゃん」

霞「半年ね、あれから」

小蒔「はい、半年ぶりです」

霞「……実は、ここに来る途中、小蒔ちゃんのお母様と連絡を取ってきたの」

小蒔「お母様と、ですか?」

霞「ええ……」


297 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:42:24.41 ID:OgX8QW8y0



『それが、どういう意味か分かっているのですか?』

霞「はい、重々承知しています」

『あなたの役目はたしかにあの子の身代わり……しかし、それが神代に成り代わるなど』

霞「私は神代にはなれません……でも、この子なら」

『まさか……』

霞「ええ、彼の子供です」

『ありえません……だからこそ彼は居場所を失ったというのに』

霞「可能性はゼロではなかったはずです」

『それでも、限りなく低い。なぜなら――』

霞「はい、それは他ならぬ私が一番よくわかっています」


霞(もう大丈夫だと思ってた)

霞(でも、抑えきれなかった)

霞(私はあの日――)


『好き、好きなの……あなたが好きなの』

『お願い、今だけだから……明日からはいつもの私に戻るから……』

298 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:45:05.55 ID:OgX8QW8y0


霞(彼は、私をやさしく引き離して、首を横に振った)

霞(そして我に返った私は、その場を逃れようと走り出して……)


『霞っ』


霞(私をかばった彼は、交通事故で生殖機能をほぼ失った)

霞(神代の婿の役目は、子をなすこと)

霞(それを果たせないのであれば、その資格を失う)


霞「彼はきっと小蒔ちゃんを連れ出します。そうなったら、代わりが必要かと思われます」

『……』

霞「それとも、ウソだと疑いますか?」

『……いいえ、あなたはそんなつまらないことはしないはず』

霞「……」


霞(彼は何も知らない)

霞(この子のことも、私を抱いたことも)

霞(いいえ、あれは私が彼を術で眠らせて……)

299 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:46:56.78 ID:OgX8QW8y0


『いいでしょう……あなたの覚悟をくみ取ります』

霞「ありがとうございます」

『……これで小蒔は幸せになれると思いますか?』

霞「ええ、彼とならきっと」

『私は、あなたにも幸せになってほしかった』

霞「私に、ですか?」

『あなたは、昔の私に似ていたから……』

霞「……」


『なんだよ、また勝手に入ってたのか』

『だってあなた、私が作らないとちゃんと朝ご飯食べないじゃない』

『ちょっとぐらいなら食べなくっても大丈夫だって』

『いいから食べて。もうできてるわ』

『ああ、いい匂いすんな……』グゥ

『お腹は正直なのね』クスクス

『別に食べたくないわけじゃないから』

『じゃあ用意しちゃうわね』


霞「私は幸せでした……だから、きっと大丈夫です」


300 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:49:52.79 ID:OgX8QW8y0



小蒔「霞ちゃんたちが戻ってこられるようになった……そうですよね?」

霞「……戻るのは私だけよ」

小蒔「え、じゃあ京太郎様は……」

霞「それはもう、どうしようもないの」

小蒔「そんな……」

霞「だから、あなたが一緒に行ってあげて」

小蒔「……え?」

霞「私があなたの代わりになる……だから」

小蒔「そ、そんなのダメですっ」

霞「どうして?」


小蒔「……ずっと、怖くて聞けませんでした」

小蒔「霞ちゃんはずっとお役目のために我慢してて……」

小蒔「それはとても辛いことだったんじゃないかって」

小蒔「私の、身代わりという立場が」

301 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:52:17.69 ID:OgX8QW8y0


霞「……よかったのよ」

霞「辛かった、苦しかった、うんざりしてた」

霞「でも、みんなと一緒にいられた」

霞「離れてようやく、私の居場所はあそこだったんだって気づいた」

霞「それに……ねえ、触ってみて?」


小蒔「えっと……」オズオズ

霞「ここにもう一人いるの」

小蒔「霞ちゃん、それって」

霞「彼は小蒔ちゃんにあげるけど、彼の子は私がもらうわ」

小蒔「そんな、もうダメだって言ってました」

霞「ゼロとゼロに近いでは、大きな違いがあるということね」

小蒔「羨ましいです……でも、霞ちゃんはお母さんになるんですね」

霞「ええ」

小蒔「……決めました」

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